ダイヤ「狐の嫁入り」(前編)

141: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:44:07.81 ID:NMHIafx00


ピピピピ 
ピピピピ… 


梨子「……」ポチッ 


梨子「……」 


梨子「ついに来たわね…」 



【8月9日:黒澤ダイヤ失踪から6日】 



花丸「じゃあ、行ってくるずら!」 


善子「見てなさい…黙示録を我が手に収めてくるわ」 


梨子「二人とも、お願いね!」 


理亞「姉様、行ってきます…」シブシブ 


聖良「楽しんでおいで」ニコッ 


プップー 
ブロロロロ… 


しいたけ「ふわぁ……」ムニャムニャ



引用元: ・ダイヤ「狐の嫁入り」

142: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:45:17.54 ID:NMHIafx00


鞠莉「ただいまより第52回、歩学祭の開会をここに宣言します」 


ヒュゥゥゥゥゥゥ… 
パーン!パパーン!! 


ワァァァァァァァァァァ!!!! 



………… 
…… 


理亞「はぁ…」 


理亞「こういう賑やかなところは苦手なのに…」 


花丸「おーい理亞さーん!!」タッタッタッタッ… 


理亞「遅過ぎ」 


善子「仕方ないでしょ。開会式長過ぎなのよ」 


理亞「花丸だっけ?さっさと浮世絵のとこに案内して」 


花丸「うん、行くずら」 


善子「……」 


善子(ダイヤさんがいなくなってあっという間の6日間だった…) 


善子(この3日間は特に時間を大切にしないと…)

143: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:45:56.92 ID:NMHIafx00


「いらっしゃいませー!ゆっくりご覧くださーい」 


理亞「ふーん、これが富嶽三十六景…昨日資料で嫌という程見たけど実物は実物。中々迫力あるじゃん」 


善子「ズラ丸、確か並びもずっとこの順番なのよね?」 


花丸「うん。絶対に順番を変えたりしないっていうお約束があるらしいよ」 

ーーーーーーーーーーーーーー 

・青山圓座枩(あおやまえんざまつ) 
・武州玉川(ぶしゅうたまがわ) 
・相州江ノ島(そうしゅうえのしま) 
・御厩河岸より両国橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしゆうひみ) 
・信州諏訪湖(しんしゅうすわこ) 
・駿州片倉茶園(すんしゅうかたくらちゃえん) 
・登戸浦(のぼとのうら) 
・身延川裏不二(みのぶかわうらふじ) 
・礫川雪ノ旦(こいしかわゆきのあした) 
・駿州大野新田(すんしゅうおおのしんでん) 

ーーーーーーーーーーーーーー 

理亞「本当にこの中に暗号が?」 


善子「絵を見たって素人の私には全然分からないわ」 


花丸「やっぱ、そういうのをかじってる聖良さんに送って解いてもらった方が早いずら」 


善子「そうね」ピロリン 


理亞「さあ、とっととターゲットを探そう」 


花丸「さっき開会宣言が終わってからも体育館にいたから、まだそんな遠くに行ってはないと思うよ」 


善子「……」 


善子「本当にあの人なのかな…」 


花丸「善子ちゃん…それは……」 


理亞「今更何言ってるの。早くして」

144: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:46:39.28 ID:NMHIafx00


パーンパパーン! 


梨子(始まったみたいね…) 



聖良「小原鞠莉」 


梨子「……」 


聖良「彼女は今年、50年ぶりにこの地に身を下ろした神隠し。間違いないでしょう」 


梨子「はっきり言いますね」 


聖良「考えてみてください。2年振りに海外から帰ってきたばかりの生徒がどうして生徒会長になれるのでしょう?」 


梨子「それは…」 


聖良「神隠しは化けた人間の記憶や記録を勝手に植えつけることで、何の違和感も無く人々の生活に溶け込んでいます。ですがどうしても矛盾してしまうこともある。違う角度から見つめないと…見つめようとしないと絶対に気付かないようなこともあります」 


聖良「他にも小原鞠莉な怪しい点はたくさんあります。記憶操作が起こる前に皆さんが体験した淡島神社での出来事、学校に行っても常にどこかを徘徊しているところ、千歌さんと曜さんのピンチにーー」 


梨子「やけに詳しいんですね」 


聖良「はい。善子さんが胸の内を語ってくれましたからね」 


梨子「善子ちゃんが!?」 


聖良「ずっと彼女を疑っていたそうです。しかし同時にそんな自分を否定して常に葛藤の中にいたのです。仲間を疑うなんてできない、でも怪しい…と。それをあなたや花丸さんに話せずにいたことも悩んでいたそうです」 


梨子「そうですか…」 


梨子(善子ちゃん…優し過ぎるよ……) 



ピロリン!

145: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:47:36.24 ID:NMHIafx00


聖良「噂をすれば…善子さんから連絡です。展示されている富嶽三十六景の写真が送られてきました」 


梨子「思ったより随分早いわね…」 


聖良「理亞の性格ですから…とっとと済ませたかったのでしょう」 


梨子「うわ…こんなにたくさん…」 


聖良「成る程…やはりこの順番は絶対なのですね」 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー 

・青山圓座枩(あおやまえんざまつ) 
・武州玉川(ぶしゅうたまがわ) 
・相州江ノ島(そうしゅうえのしま) 
・御厩河岸より両国橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしゆうひみ) 
・信州諏訪湖(しんしゅうすわこ) 
・駿州片倉茶園(すんしゅうかたくらちゃえん) 
・登戸浦(のぼとのうら) 
・身延川裏不二(みのぶかわうらふじ) 
・礫川雪ノ旦(こいしかわゆきのあした) 
・駿州大野新田(すんしゅうおおのしんでん) 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー 


聖良「富士に統一性、共通性が無い…やはりこれは絵では無く名前にカラクリがありそうですね」 


梨子「あ!聖良さんここ見てください!!」 


聖良「ん?」 


《1833年(天保4年)8月11日 十一人 萬》 

146: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:48:59.08 ID:NMHIafx00


梨子「何かの日付でしょうか…」 


聖良「1833年…旅を終えた北斎が富嶽三十六景を売りだしていた頃…」 


聖良「そしてこの8月11日という日付…偶然にしては出来過ぎている。やはり北斎は神隠しのことを知っていたに違いないですね」 


聖良「で、最後の 十一人 萬 という謎の文字」 


梨子「確か北斎は一人旅をしていたわけではないんですよね?」 


聖良「そうですね。何人か付き人がいたそうですが…それが十一人であるかは分かりません」 


梨子「日付は1833年8月11日から内浦に絵を送っていたことを表していて、十一人は旅の人数、萬は当時の印鑑か何かですかね?」 


聖良「それかそんなの全く関係なしに全て暗号の可能性もあります。日付は数字なのに人数は漢数字で統一していないところが怪しいですからね」 


聖良「漢数字の十一を含めて数字は10あります。絵の数も10。順番にこだわるということは絵の名前と、数字と同じ位置にある文字が呼応していると考えるのが妥当でしょう」 


聖良「つまり、まずは1833年の1.8.3.3。1番目から4番目の絵の名前の1文字目、8文字目、3文字目を2つ抜き出すと…」 


梨子「1つ目の絵は1文字目だから、青山…の『あ』!2つ目の絵は8文字目だから、…玉川の『わ』!3つ目と4つ目の絵は3文字目だから、それぞれ相州、御厩河岸の『し』と『ま』!」 


梨子「あわしま!すごいです聖良さん!!」 


聖良「このまま同じように当てはめていくと…」 


聖良「あ・わ・し・ま・ゆ・く・の・み・こ・す」 


梨子「……」 


聖良「……」 


梨子「そんな甘くはありませんでしたね」 


聖良「ですね…考え直しましょう」

147: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:50:07.45 ID:NMHIafx00


「茶道部寄って行きませんかー!!」 

ザワザワ… 

「2A映画やってまーす!!」 

ザワザワ… 

「昼から体育館でバンドやりまーす!!」 



鞠莉「……」 



理亞「見つけた」コソコソ 


善子「出店には目もくれないで歩いてるわ」コソコソ 


花丸「こんなに美味しいのに勿体無い」モグモグ 


果南「金持ちに庶民の味は分からないのよ」モグモグ 




理亞「いくつか手短に突っ込ませてもらう」 


理亞「食うな!誰だ!お前も食うな!!」ビシッ 

花丸「理亞さんもじゃがバター食べる?」モグモグ 


理亞「いらない!」 


果南「誰だなんて酷いなー。Aqoursの松浦果南だよ」モグモグ 


理亞「あ、あぁ…」

148: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:51:13.65 ID:NMHIafx00


果南「久しぶりだね!遠いのにワザワザ来てくれるなんて…もしかして暇してた?」モグモグ 


理亞「…」イラッ 


果南「あれ?お姉さんの方が見えないけど…もしかして迷子?」モグモグ 


理亞「…」イライラッ 


果南「あ、じゃがバター食べーー」 


理亞「いらないって言ってるでしょ!!」ドカーン! 


善子(何この恵まれし煽りの才能) 


花丸(本人悪気はないんだけどなぁ…) 


鞠莉「……」テクテク 


理亞「動いた!」 


果南「ははぁん。さては鞠莉に惚れたな?尾行をするためにわざわざ北海道からーー」 


理亞「もう帰る」 


花丸「ごめんなさい!」 


善子「彼女、ワザとじゃないの。堕天使に誓うわ」 


理亞「…ったく」 


果南「ふふっ…実はね、私も鞠莉を追跡してたんだよ」

149: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:52:07.91 ID:NMHIafx00


花丸「え!?」 


善子「なんでよ?」 


果南「最近の鞠莉、なんか怪しいしちょっと後をつけてみれば秘密が分かるんじゃないかって思っててね」 


善子(成る程…願ったり叶ったりね) 


花丸(頼もしいずら…多分鞠莉さんの追跡は果南さんが一番慣れてるはず) 



理亞「分かった。だったら三人で後をつけて。じゃ」スッ 


善子「ちょ、急にどうしたのよ!?」 


理亞「私は迷子だから。姉様を探すのよ」ギロッ 


果南「?」 


花丸(あー完全にキレてる) 


理亞「他に怪しい人物がいないか探しとくから…ターゲットは任せる。その人無理」ヒソヒソ 


花丸「分かったずら」ヒソヒソ 



善子「何よあの子」 


果南「よ~し、こっそり追跡するとしましょうか…」 


花丸(大丈夫かな~)

150: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:54:24.12 ID:NMHIafx00


善子「……」 


花丸「……」 


果南「……」 



鞠莉「……」ガチャ 


果南「入っていったよ…」 


善子「ズラ丸…これでどんな感じ?」 


花丸「えっと、部室、化学準備室、音楽室、理事長室…そして生徒会室……」 


善子「見事に模擬店の無い教室だけをウロウロしてるわね」 


果南「もしかして…教室の順番に何か意味があるのかな…」 


花丸「デジャヴずら」 


果南「デジャヴ?」 


花丸「いや、何でもないずら」

151: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:54:52.82 ID:NMHIafx00


善子「頭文字だと《ぶ・か・お・り・せ》…違うわね」 


花丸「最後の文字だと《つ・つ・つ・つ・つ》…ずら…」 


善子「当たり前でしょ?全部『室』で終わるんだから…」 


果南「階もめちゃくちゃだし何か法則はないのかな?」 


果南「毎日こんな風に歩き回ってるなんて…一体どういうつもりよ……」 


鞠莉「……」ガチャ 


善子「出てきたわ!」コソッ 



花丸「ん?」 


果南「また階段に向かってるよ」コソッ 


善子「はぁ…登ったり降りたり…こっちの身にもなってほしいわ」コソッ 


果南「行こう」スッ 


善子「はいはい、了解」スッ 




花丸(鞠莉さんのほっぺた…遠くてよく見えなかったけど……) 


善子「ズラ丸!」 


花丸「あ、うん!」スッ 




ーーあれは、涙の跡。

152: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:56:24.13 ID:NMHIafx00


「チュロス売ってまーす!!!」 


「家庭部、クッキー焼きました!!」 



理亞「はぁ…ホント疲れる」 


理亞「大体肩の力抜いてこいってどういう意味?こんな騒々しいところ疲労で逆に肩凝り固まるってのに」 


理亞「明日は姉様に張り込みをーー」 


「パンフレットどうぞー」パサッ 


理亞「あ…どうも」スッ 


理亞「うわ…どんだけド派手に作ってるのこれ。見苦しいイラストばっかりあしらってるせいで肝心の出店の案内が見にくすぎ」ペラッ 


理亞「ん?」 


理亞「最後のページのこれは?」 


夕凪の梢 

黄昏迫る 港町 
津々浦々を 紅く染めん 
眠りにつかん 風と波 
静か穏やかの 安らぎ破り 
顔を覗かせよ 妖百鬼 
吹き荒れる 風と波 静寂よ沈め 
ああ我ら強くあらん 全てに抗い 
ああ我ら浦の星 ここに有り 


理亞「…ああ、校歌か。さっき体育館から聞こえてきた歌と同じだ」 


理亞「で、曲名が《夕凪の梢》ってどういうこと?普通は《◯◯高校校歌》でしょ。作曲者の名前も書いてないし…」 


理亞「ん?」 


理亞「えっと…『《夕凪の梢》は日本一高くそびえる富士に体を向けその想いを届けるよう元気よく歌うことで生徒達のーー』」 


理亞「……」 


理亞「いらない」クシャ

153: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:57:15.18 ID:NMHIafx00


「17:30になりました。本日の模擬店は終了です。片付けをし、速やかに下校の準備に移ってください」 


善子「はぁ…」 


果南「結局、一日追いかけ回すだけで終わっちゃったね…」 


花丸「とくに成果無しずら…」 


善子「ホント分からないわ。おんなじ部屋を何度も何度も行ったり来たり…何がしたいのよ」 


果南「鞠莉…どうして…」 



理亞「ちょっと」 


花丸「あ、理亞さん」 


理亞「帰る。早く」クイッ 


善子「先に帰ってればよかったじゃない…」 


理亞「姉様にくどくど言われるの嫌だから」 


善子「はぁ…めんどくさいわねぇ…」 


果南「あれ?近くに泊まってるの?」 


花丸「うん!千歌ちゃんのおうちーー」 


花丸「ん!?」ガバッ 


理亞「言わなくていいから」ググッ 


果南「へえ、そうなんだ。だったら私もーー」 


理亞「いい」 


果南「?」 


理亞「明日姉様を連れてくるので旅館には来ないでください」 


果南「あ…」 


花丸(あーあ…) 


善子(完全に嫌われてるわね) 


果南「じゃあみんな…また明日……」ショボン 


花丸「さ、さよなら…」

154: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:57:54.70 ID:NMHIafx00


プップー 
ブロロロロロロ… 


理亞「なんなのあの人!失礼にも程がある!!」 


花丸「まあまあ、果南さんも悪気があったわけじゃ…」 


善子「スカッとを通り越して少しかわいそうだったわ。見てて…」 


理亞「絶対明日は行かない」プイッ 


花丸「ずらぁ…」 


理亞「…それで、何か分かったの?」 


善子「…さっぱりよ。挙動は明らかにおかしかったけど尻尾は見せなかったわ」 


花丸「やっぱり11日にならないとダメなのかな…」 


理亞「私も、特に怪しい人は見かけなかった。大体あの写真に写ってたおかっぱ頭が現代にそのまま現れたらひと目でわかるでしょ」 


善子「はぁ…何も分かんないまま一日が終わっちゃったじゃない…」 


花丸「あとは帰って梨子さん達と暗号を解くしかないずら」 


善子「そもそも暗号なの?あれ」 


理亞「……」 


善子「ちょっと、聞いてる?」

155: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:58:31.80 ID:NMHIafx00


理亞「…ん?ああ、ごめん」 


善子「何ぼーっとしてるのよ」 


理亞「別に…富士山見てただけ」 


善子「はぁ?」 


理亞「常に景色に富士山があるあなたたちには分かってもらえないかもしれないけど、結構驚いたの。私たちがイメージする富士山って頭が白くて、そこから下が青っぽい山肌なんだけど…いざ本物を見てみたら雪も積もってないし夕陽に染まって真っ赤だし……」 


善子「そんなの当然でしょ?夏の夕方なんだし」 


理亞「そうね。でも驚いたの。山って言えば緑、アルプスって言えば白、富士山って言えば青と白ってイメージがあるでしょ?でも、そう言うのは実際に見てみないと本質が分からないんだなって…先入観で決めつけるのはよくない。そう思っただけ」 


善子「やっぱよく分かんないわ、あなた」 


理亞「別にいい、分かってもらわなくて」 


善子「…」 


理亞「…」 


花丸「ず、ずらぁ…」

156: 名無しさん 2017/01/16(月) 18:59:29.71 ID:NMHIafx00


花丸「えっ!?全く分からなかった!?」 


梨子「ごめんねみんな…」 


聖良「すみません皆さん…文字は早々に違うと判断して絵の解読に移っていたのですがさっぱりで…」 


理亞「姉さん私寝る…」ヨロヨロ 


聖良「ああ、お疲れ様。楽しめたかい?」 


理亞「…」ギロッ 


聖良「そうか…楽しかったんだね?」 


聖良「明日も行ーー」 


理亞「いや」ゴロン 


聖良「いやそう言わずに…」 


理亞「姉様が行って」 


聖良「もし明日も行ってくれたら北海道に帰る前に動物園に連れてってあげるけど…」 


理亞「……」 




理亞「本当?」 


善子 梨子 花丸「!?!?!?」 


聖良「ああ、本当だよ。上野動物園にしよう。パンダに会える」 


理亞「分かった。明日も行く」 


聖良「頼んだよ?理亞」 



善子「成る程ね。よーく分かったわさっきの本質やら先入観やらの話」 


理亞「……」スゥスゥ…

157: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:00:09.85 ID:NMHIafx00


ーーーーーーーーーーーーーーーーー 

1833年(天保4年)8月11日 十一人 萬 

・青山圓座枩(あおやまえんざまつ) 
・武州玉川(ぶしゅうたまがわ) 
・相州江ノ島(そうしゅうえのしま) 
・御厩河岸より両国橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしゆうひみ) 
・信州諏訪湖(しんしゅうすわこ) 
・駿州片倉茶園(すんしゅうかたくらちゃえん) 
・登戸浦(のぼとのうら) 
・身延川裏不二(みのぶかわうらふじ) 
・礫川雪ノ旦(こいしかわゆきのあした) 
・駿州大野新田(すんしゅうおおのしんでん) 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー 


花丸「うーーーーん…」 


聖良「やっぱり文字の方でしょうか?この数字と漢字が暗号で…」 


梨子「私は絵を見ても分かんないから文字の方で解きます…」 


善子「私も」 



2時間後… 



聖良「……」 


梨子「やっぱ分かんない…」グデン 


善子「魔力切れよ…」 


花丸「うーーーーん…」 


善子「ズラ丸、あんたも休んだら?」 


花丸「富士山が一つ…富士山が二つ…」 


善子「羊みたいに数えないで」 


………… 
…… 



花丸「富士山が三十五つ…富士山が三十六つ…」 


梨子「結局最後までやるのね…」 


花丸「富士山が三十七つ…富士山が三十八つ…」」 


聖良「!!」

158: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:01:13.88 ID:NMHIafx00


善子「あぁ、そういえば四十六ーー」 


聖良「それです!!」ビシッ 


花丸「ずら!?」 


梨子「急にどうしたんですか!?」 


聖良「私としたことが忘れていました。そうです。この絵は全部で四十六枚でした…」 


聖良「つまり追加の十作である『裏富士』が紛れていたんです。この中で裏富士に当たるのは…『駿州片倉茶園』、『身延川裏不二』、『駿州大野新田』…この三作品だけ後ろから数字を数えてもう一度当てはめてみましょう」 


梨子「そうすると…『あ・わ・し・ま・ゆ・か・の・じ・こ・ん』です」 


聖良「これでも意味が成り立たない…」 


花丸「うーんなんか納得いかないずら」 


聖良「何がです?花丸さん」 


花丸「この駿州…って静岡県のことだよね?それが裏富士って言われるのが心外ずら」 


聖良「まあ追加の作品ですし仕方ありませんよ」 


善子「多分ズラ丸が言いたいのはそういうことじゃないと思うわよ」 


聖良「?」 


梨子「どういうこと?」

159: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:02:00.10 ID:NMHIafx00


花丸「我ら静岡県民の抱える永遠の確執…」 


善子「そう、それは山梨県との領土問題!!」 


聖良「?」 


花丸「静岡県民は富士山を自分たちの県のものだと思ってて」 


善子「逆に山梨県民は富士山を山梨県のものだと思ってるのよ」 


花丸「それに静岡県民は山梨から見る富士のことを裏富士って言うし…」 


善子「山梨県民は静岡から見る富士のことを裏富士って言うのよ」 


梨子「へぇ…知らなかったわ」 


聖良「成る程…確かに心外と言いたくなる気持ちも分かります。裏富士にはそう言った確執でお互いをーー」 


聖良「……」 


聖良「…成る程、そういうことですか」 


善子「え?今のしょうもない話で何か閃いたの?」 


聖良「しょうもなくなんてありません。北斎はちゃんともう一つの裏富士を理解していたんです」 


聖良「道理でよそ者には分からないわけだ…」 


梨子「どういうことですか?」

160: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:02:47.15 ID:NMHIafx00


聖良「富嶽三十六景追加の十作品を裏富士と呼ぶのとは別に、ここ内浦…つまり静岡県の視点では山梨県の富士も裏富士と呼びます」 


花丸「なるほど…つまりこの中にある山梨県の富士山…『信州諏訪湖』と『身延川裏不二』も数字を反対から数えるんだね!」 


梨子「あれ?でも『身延川裏富士』って追加の十作品って意味で既に裏富士よね?」 


聖良「裏の裏…つまりこれは表ってことです。前から数字を数えましょう」 


善子「そうすると… 

ーーーーーーーーーーーーーーー 

1833年(天保4年)8月11日 十一人 萬 

●裏富士 

・青山圓座枩(【あ】おやまえんざまつ) 
・武州玉川(ぶしゅうたまが【わ】) 
・相州江ノ島(そう【し】ゅうえのしま) 
・御厩河岸より両国橋夕陽見(おん【ま】やがしよりりょうごくばしゆうひみ) 
●信州諏訪湖(しんしゅ【う】すわこ) 
●駿州片倉茶園(すんしゅう【か】たくらちゃえん) 
・登戸浦(のぼと【の】うら) 
●●身延川裏不二(【み】のぶかわうらふじ) 
・礫川雪ノ旦(【こ】いしかわゆきのあした) 
●駿州大野新田(すんしゅうおおのしんで【ん】) 


『あ・わ・し・ま・う・か・の・み・こ・ん』 

になるわね…これでも意味が分からないわ…」 



聖良「また行き止まりですね…」

161: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:03:52.04 ID:NMHIafx00


ーー更に1時間後… 


花丸「……」スヤスヤ 


善子「ズラ丸脱落ね」 


梨子「仕方ないよ、もうこんな遅いし…」 


聖良「煮詰まりそうでしたがつい長引いてしまいましたね…視点を変えてみましょう」 



聖良「日付とは別にあるこの漢字…やはりこれが鍵ではないでしょうか…」 


【1833年(天保4年)8月11日 十一人 萬】 


善子「そもそも最後の漢字が読めない…」 


梨子「これは『よろづ』じゃなかったかしら?」 


聖良「そうですね。しかし何故よろづなのでしょう…」 


善子「今は昔…竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり…」 


梨子「それ、竹取物語だよね?」 


善子「ええ。補習で覚えさせられたんだけど、確かよろづは『色んな使い方がある』って意味よね?」 


梨子「…分かった!この漢字の『十一人 萬』はいくつかの使い方があるってことよ!」 


聖良「そうだとすると、やはりこの十一の一つ目の使い方は11に置き換えての文字に当てはめる…というもので間違いなかったですね。他には…」 


善子「確かよろづって、『萬』って漢字以外に『万』とも書くわよね?八百万(やおよろず)とも言うし…」 


梨子「待って!だとしたら『十一人 万』になる!更に人という字ををにんべんに変換して漢字の一と合体させると『千』!!」 




三人「十千万!!!!!!!!!!」

162: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:05:00.41 ID:NMHIafx00


梨子「この旅館の名前!!!」 


善子「灯台下暗しってこと!?信じられない…」 


美渡「あれ?まだ起きてたの?」スススッ 


聖良「…すみません。騒がしくしてしまったでしょうか?」 


美渡「いいよ。今日は他にお客様いないし…」 


美渡「…それに、何だかよく分かんないけど千歌達のために頑張ってくれてるんでしょ?ありがとう…」 


梨子「美渡お姉さん…」 


美渡「志満ねえもおんなじ気持ちだからさ。私や志満ねえにできることがあったら何でも言いつけて!」 


梨子「ありがとうございます!」 


聖良「…それではさっそくお聞きしたいのですが、こちらの旅館…十千万はいつから経営されていますか?」 


美渡「チェックインは14:00からだけど…」 


聖良「質問の仕方が悪かったですね、すみません。こちら十千万が創業を開始されたのは何年ですか?」 


美渡「うーん…確か明治20年だから1887年だったと思うけど…」 



聖良「北斎の時代と微妙に合わない…」 


梨子「北斎はもう少し前ですよね?」 


美渡「あ、でも実際は大正7年(1918)なんだけどね」 


梨子「え!?」

163: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:06:03.16 ID:NMHIafx00


聖良「どういうことですか!?」 


美渡「十千万は元々、漁村の旅籠(はたご)として別の場所で経営してたんだけど、県道開通に合わせてここに移動して観光旅館を始めたんだよ。それが大正7年(1918)」 


梨子「元々十千万があった場所はどこですか?」 


美渡「ごめんそこまでは…」 


聖良「……」 


聖良「…では、当時の場所からこちらへ移転された時の物を保管している倉庫はありますか?」 


志満「あら?ここにいたのね」 


美渡「げっ」 


梨子「志満お姉さん!」 


志満「夜更かしして何のお話かしら?私も混ぜてほしいわ」 


志満「夜の後片付け、明日は全部お願いね」ボソッ 


美渡「ひっ」 


梨子「あはは…」 


美渡「そ、それでさっきの話の続きを…」 


聖良「あ、そうでした。えっと…大正7年当時、元々の旅籠からこちら十千万に経営を移された際に持ち込まれた物を保管している倉庫があるかどうかなんですが…」 


美渡「志満ねえ分かる?」 


志満「うーんそうねぇ…先代の方々に聞いてみないと何とも言えないかな。多分分からないと思うけど…」 


梨子「やっぱりそんな昔の物ーー」 


志満「あ!!」 


梨子 聖良「!!」

164: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:07:04.35 ID:NMHIafx00


美渡「志満ねえ何か思い出したの!?」 


志満「そうだわ…ふふっ、そうね。あの時は美渡ちゃん、まだ赤ちゃんで千歌ちゃんも生まれてなかったわね」 


美渡「え?」 


志満「平成9年(1997)に十千万の全館新装の工事をしてね?当時私はあちこちにビニールシートが張られた旅館の様子に驚いて旅館中を探検してたんだけど、その時一つだけ改築をしないでそのままにしてある部屋があったの。近くで大工さんが話してたのを聞いたんだけど、そこは昔の旅籠から移してきたものを保管してあるって言ってたわ」 


聖良「これは…」 


梨子「驚いたわ……」 


美渡「ま…マジ?」 


聖良「そ、その部屋はどこにあますか!?」 


志満「ふふっ、その前に…」チラッ 


善子「……」スヤスヤ 


梨子「あ、善子ちゃんいつの間に…」 


志満「三人共風邪引いちゃうと困るからとりあえず毛布を掛けてあげてから行きましょ?」パサッ 


聖良「はぁ…理亞は着替えもしないで…」パサッ 


聖良「ん?」 


聖良(ポケットに何か…)クシャ 


聖良(これは文化祭のパンフレット…ふふっ。なんだ、やっぱ楽しんでたじゃん)

165: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:08:44.07 ID:NMHIafx00


梨子「ここが…」 


美渡「《富嶽の間》…棟の隅っことは言え我が家にこんな部屋があったなんて全っ然知らなかった…」 


聖良「名前からしてここで間違いないでしょう」 


志満「開けるわね?」ガチャ 


ギギギギギ… 


梨子「ケホッ!?埃が凄い…」 


聖良「窓が無くて真っ暗…外部から隠す必要があったってことでしょうか?」 


美渡「懐中電灯持ってきて正解だったなこりゃ…」パチッ 


志満「こんなに散らかってたのね…こんなガラクタの山から何を探せばいいのかしら?」 


聖良「何か葛飾北斎に関係するものがあるかもしれません。それを探してください」ガタッ 


聖良(北斎は十千万…いや、前の旅籠が創立するもっと前に暗号を作り絵と共にこの地へ送っていた…時系列がおかしいのは気になるけど…) 


美渡「じゃあ追加の懐中電灯持ってくるよ」ガタッ 


美渡「ん?」ガタガタッ

166: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:09:20.05 ID:NMHIafx00


聖良(その謎も分かるかもしれない…) 


志満「どうしたの?」 


美渡「あれ、おかしいな…」ガタガタッ 


美渡「ふんっ!!!!!!」グググググ… 


美渡「ぷはぁ…!!」 


美渡「……」 


聖良「?」 


志満「美渡…ちゃん?」 


梨子「まさか…」 


美渡「……」クルッ 


美渡「閉じ込められちゃった…」 


梨子「え…」 



えええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!?!?!?

167: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:09:50.91 ID:NMHIafx00


ピロロロロロロ… 
ピロロロロロロ… 


理亞「う…朝……」モゾッ 


理亞「あれ?」 


理亞(毛布?) 


花丸「くかー」スヤスヤ 


善子「むにゃむにゃ…」 


理亞「ちょっと」ツンツン 


花丸「…ずら?」 


理亞「ずら?じゃなくて、姉様は?」 


花丸「あれ?いない…梨子さんも…まさか文化祭に行ったのかな?」 


善子「…ん?」パチッ 


理亞「まさか。荷物とかここに置きっ放しだし」 


理亞「ん?」 


ーーーーーーーーーーーーーーー 


1833年(天保4年)8月11日 十一人 萬 


・青山圓座枩(【あ】おやまえんざまつ) 
・武州玉川(ぶしゅうたまが【わ】) 
・相州江ノ島(そう【し】ゅうえのしま) 
・御厩河岸より両国橋夕陽見(おん【ま】やがしよりりょうごくばしゆうひみ) 
●信州諏訪湖(しんしゅ【う】すわこ) 
●駿州片倉茶園(すんしゅう【か】たくらちゃえん) 
・登戸浦(【の】ぼとのうら) 
●●身延川裏不二(【み】のぶかわうらふじ) 
・礫川雪ノ旦(【こ】いしかわゆきのあした) 
●駿州大野新田(すんしゅうおおのしんで【ん】) 


『あ・わ・し・ま・う・か・の・み・こ・ん』 

ーーーーーーーーーーーーーーー

168: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:11:16.18 ID:NMHIafx00


理亞「まさかこれが答え?意味が分からない」 


理亞「……」 


理亞(この散らかりよう…私が眠っても相当遅くまで頭ひねってたんだ) 


花丸「結局答え出なかったのかな…」 


善子「うーん…陽の光……体が溶ける…」ノビー 


理亞「寝ぼけてないで早く支度して。もう…先に行ってるから」スッ 


善子(何よ。動物園行きたいからって張り切っちゃって) 


花丸「それにしても梨子さん達どこへ行ったんだろう…」 


善子「ん?携帯が四つあるけど…」 


花丸「ほんとだ…これが梨子さんと聖良さんのだから…あり得るとしたら志満お姉さんと美渡お姉さんずら」 


善子「四人でどこかへ行ったってこと?」 


花丸「何か分かったのかもしれないね」 


善子「そうね…もう時間が無いわ。せめて今日中に異世界に行く方法と神隠しの正体を暴かないとね。じゃあ行きましょう。待たせるとうるさいから」スッ 


花丸「ずら」スッ 



「ふうっ…全く、美渡ねえも志満ねえもどこ行っちゃったのさ仕事放ったらかして。練習遅れちゃうってのに」プリプリ 



善子 花丸「!?!?!?」 


「ん…?」クルッ 


「!!!」 


花丸「あ…ああ……」 


善子「嘘…でしょ……」 




千歌「は…花丸ちゃん…それに善子ちゃん!?!?」 


【8月10日:黒澤ダイヤ失踪から7日】

169: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:12:31.96 ID:NMHIafx00


梨子「ん……」 


パチッ! 


梨子「うっ…眩しい…」 


美渡「あ、ごめん…」 


志満「おはよう梨子ちゃん…って言っても、何時か分からないんだけどね…」 


梨子「そうだ…閉じ込められたんでしたね…」 


聖良「本当に申し訳ありません…私が扉を閉めなければ…」 


梨子「仕方ないですよ!昔からそのままで扉が老朽化するのも無理ないですし」 


美渡「いや…私たちが定期的にこの部屋を掃除していればこんなことに…」 


志満「とにかく…探しましょう?」 





志満「あの後、聖良ちゃんが話してくれた事が全部本当ならもう時間が無いと思うわ」 


梨子「……」 


美渡「……」ゴクリ 


聖良「そうですね」

170: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:13:32.04 ID:NMHIafx00


千歌「………」 


花丸「ごめんね突然こんなこと…」 


善子「信じてもらえないかもしれないけど全部本当なの」 


千歌「曜ちゃんは…」 


花丸「まだ寝てるよ。でも千歌さんが目覚めたなら曜ちゃんも時期に起きてくるかも…」 


千歌「そう…」 


花丸「安心して?ずっとみんなで頑張って謎を解いてきたしそれにーー」 



千歌「少し頭冷やしてくるね…」フラッ 


花丸「!!」 


善子「あ…待ってーー」 


バッ! 


善子「ちょっとズラ丸!!」 


花丸「頭の整理がつかないのは当然だよ…しばらく放っておこう?」 


善子「……」 


善子「分かったわよ…」

171: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:14:53.05 ID:NMHIafx00


………… 
…… 


花丸「千歌さん」 


千歌「……」 


花丸「部屋入っても大丈夫ずら?」 


善子「……」 


千歌「うん…」 


花丸「……」ススッ 


千歌「私ね…?」 


善子 花丸「!!」 


千歌「最初梨子ちゃん達がそう言いだした時、怖かった。Aqoursで…七人で頑張っていこうねって、ずっとやってきたのに突然知らない人がAqoursだ!って言われて」 


花丸「……」 


千歌「梨子ちゃんも善子ちゃんも…それに花丸ちゃんも、そんな酷いこと言うような人じゃないし三人揃ってどうしちゃったんだろうって思った」 


千歌「次の日に勘違いだったって言われて…一体何だったんだろうって思ったけど、それ以上にすっごく安心した。やっぱAqoursはAqoursで…それ以上でもそれ以下でも無いんだって……歩学祭も七人で最高のステージにしたいなって…」 


千歌「でもランニングしてて気が付いたらこんな……」 


花丸「千歌さん……」 


千歌「やっぱ分かんない…分かんないよ!!!!神隠しだとか異世界だとか北斎だとか…こんなに日が経って文化祭が始まってて鞠莉さんが犯人で疑われてて曜ちゃんも眠ったままで…みんなどうしちゃったの!?Aqoursはどうなっちゃったの!!?なんでこんなバラバラになっちゃったの!?今まで頑張ってきたじゃん!!あんなに仲良かったじゃん!!なのに…なのになんで……」ボロボロ

172: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:15:45.39 ID:NMHIafx00


花丸「千歌さん……」 


善子「……」 


千歌「…さっきの話が本当ならそのダイヤって人のせいだ…その人がみんなをバラバラにしたんだ…」 


花丸「違うよ千歌さん!」 


善子「そうよ!ダイヤさんはーー」 


千歌「美渡ねえは…志満ねえはどこ?」 


善子「!!」 


善子「それは…分かんない……」 


千歌「二人もそのダイヤって人がどこかにやっちゃったんでしょ?全部全部全部全部ダイヤが悪いんだよ!!!」 


善子「違うって言ってるでしょ!!なんで分かってくれないのよ!!」ドン! 


花丸「二人とも落ち着いて!!!」 



理亞「散々待たせて!早く準備してって言ったのにこんなところで何やってるの!?黒澤ダイヤを救わなくていいワケ!?」ガラガラガラ!

173: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:16:42.34 ID:NMHIafx00


千歌 善子 花丸「!?!?!?」 


理亞「なっ…高海千歌……あなたどうして」 


千歌「Saint Snowの理亞さん…どうしてここに……それに今ダイヤって…」 


理亞「……」 


理亞「はぁ…そういうことか。だから喧嘩してたのね。合点がいった」スッ 


千歌「え…」 


理亞「……」グイッ 


千歌「り、理亞さん近ーー」 



ギュッ… 


千歌「!?!?」 


善子 花丸「!?!?」 


理亞「私だってあなたと同じ。何がなんだかさっぱり分からない。神隠しだなんだって…バカみたいよね?何言ってんだって話よね?何ワケわかんないことで必死になって涙垂らしてんだって思うわよね?せっかく楽しみにしてた旅行の行き先でこんなことが起きて正直フザケんじゃねぇよって気持ち」 


善子「あなた何を…」 


花丸「……」 

174: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:17:28.89 ID:NMHIafx00


理亞「ん」パサッ 


千歌「これは…」 


理亞「暗号のメモ。新しい紙。なのにこんなに書き殴ってボッロボロ」 


千歌「……」 


理亞「来て」グイッ 


千歌「ちょっ…」 




理亞「……」ズカズカ 


千歌「理亞さん…どこへ…」 


千歌「!!!」 


理亞「その紙よりひどいのが何十枚ってある。ここの資料、全部姉様や桜内梨子、それにそこの二人が調べ尽くした。何でだと思う?」 


千歌「え…こんな…」 


理亞「ん」グイッ グイッ 


花丸「痛っ!」グイッ 


善子「ちょっと何すんのよ!?」グイッ 


理亞「見て二人の手」 


千歌「ボロボロ……」

175: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:18:54.81 ID:NMHIafx00


善子「離して!」バッ 


花丸「……」バッ 


千歌「なんで…」 


理亞「分からない?こんな何がなんだか分からないバカみたいな事に必死になってる理由」 


理亞「あなたの大好きなAqoursのため」 


千歌「!!!!」 


理亞「記憶が無いんだから起こってることを分かろうとしたって無駄。そうでしょ?そこは私も同じ。でもあなたが悠長に眠ってる間私は近くでこの子達を見てた。Aqoursのために考えてAqoursのために泣いてAqoursのために必死になってAqoursのために仲間を疑った」 


花丸「……」 


善子「……」 


千歌「みんな…」 


理亞「私は友情とか愛情とかそんなの分からない。でもこの子達や姉様を見てて初めて感じた気持ち。多分それがそうなんだと思う…」 


理亞「あなたが寝てる間にバラバラになったAqoursはあなたが寝てる間に元に戻ろうとしてきた。でもダメ。そんな時ついに目が覚めたAqoursのリーダー高海千歌。あなたならどうする?どう動き出す?」 


千歌「……」 


理亞「正直納得できないこともたくさんあると思う。それは仕方ない。理屈を全部分かってなんて言えない。でもこれだけは言える」 


理亞「あなたが動き出さなきゃAqoursは一生バラバラのまま。仲間を信じて」 


千歌「……」 


善子「くっ…」ポロッ 


花丸「千歌さん…」 




千歌「夢を見たんです」 


理亞「!!」

176: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:19:34.51 ID:NMHIafx00


千歌「淡島神社で凄く怖い曜ちゃんに殺されそうになって命からがら旅館に戻ってきたらそこにいた皆も私を殺そうとしてくる。その瞬間淡島神社に戻ってまた殺されそうになる。それが何度も何度も繰り返されて……」 


千歌「でも、少しずつ内容が変わっていくの。私を殺そうとしてた人が一人…また一人って私を守ってくれるようになる。そして最後はみんなが私を守ってくれるようになった…」 


千歌「嬉しかった…嬉しかったけどダメだなぁって思った。なんで守られてばっかなんだろうって。なんでこんなに弱いんだろうって…」 


千歌「…だから花丸ちゃんと善子ちゃんから話を聞いた時、Aqoursのために私が動かなきゃ…守らなきゃって思った。でも同時に、このまま鞠莉さんを疑って動いたらもう今までのAqoursじゃ無くなっちゃうんじゃないかって思った…」 


千歌「だから受け入れられなくて…ごめんなさい。花丸ちゃんや善子ちゃん…それに梨子ちゃんや聖良さんがこんなにも頑張ってくれてたなんて全然知らなくて……私リーダー失格だ」 


善子「そんなこと…!」 


千歌「でも!!!」 


善子「!!」 


千歌「私も頑張りたい!私はバカだし頼りないし鞠莉さんを疑えないしダイヤさんってのが誰なのかも分からない…でも!みんなを信じたい助けたい!!みんなよりできることは限られるけど…Aqoursが元通りになるのならリーダーとして力になりたい!!」 


花丸「マルもだよ…本当は鞠莉さんのこと疑いたくなんてない。本当にこのままでいいなんて思ってないずら。だからコソコソしないでちゃんと話し合うべきだと思う!」 


善子「ええ、私もよ。こんなやり方じゃAqoursは元通りにならないから…そして絶対にダイヤさんを取り戻して千歌さんに本当のAqoursの素晴らしさを思い知らせてやるわ!」 


花丸「あとルビィちゃんも!!」 


千歌「絶対にAqoursを…いつもの生活を取り戻そう!」 


オーッ!! 


理亞「はぁ…ほんと分かんない。こういうの」 


理亞「まあ、悪くはないかも…」ボソッ

177: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:20:00.82 ID:NMHIafx00


ダダダダダダダダダダッ 



理亞「ん?」 


果南「千歌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ダダダダダダダダダダッ 


理亞「げっ…」 


千歌「果南ちゃん!!」 


果南「よかった…千歌……目が覚めたんだね……」ダキッ 


千歌「うん…ごめんね心配かけて…」ギュッ 


理亞「なんでいるのよ…」ボソッ 


善子「私が呼んだのよ。悪い?」ボソッ 


理亞「バカ」ボソッ 


花丸「あはは…」

178: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:21:22.87 ID:NMHIafx00


果南「…成る程ね、だからコソコソ鞠莉を追っかけてたのか」 


果南「それにこの部屋の散らかりよう…じゃあ、ずっとそのダイヤって人を助けるために奮闘してたんだね」 


花丸「ごめんなさい…」 


善子「やっぱ怒ってる?この間言ったこと未だに引きずってて…でも冗談じゃないの。信じて…」 


果南「……」 


理亞「やめてよ?さっきみたいなクドクド面倒くさいの…」ボソッ 


果南「はぁ…信じるよ」 


善子 花丸 理亞「!!!」 


果南「最初聞いた時は耳を疑ったけど…ここまで不可解なことが続くと流石に信じるしかなさそうだね…」 


果南「それに、花丸達が言う本当のAqoursっていうの興味あるし」 


千歌「果南ちゃん!!」 


果南「何よりかわいい千歌達をこんな目に合わせたその神隠しが許せないから」 


花丸「じゃあ…!!」 


果南「協力するよ。私も千歌と一緒でなんにも分かんないからできることは限られるけどね」 

179: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:21:57.88 ID:NMHIafx00


千歌「わぁ…!!」 


善子「よし!どんどんAqoursが元通りになっていくわ!!」 


理亞「ほっ…」 


善子「じゃあズラ丸、指揮お願い」 


花丸「ずら!?」 


善子「聖良さんがいなくなった今、一番頭がキレるのはズラ丸なんだから」 


千歌「花丸ちゃん!」 


果南「私たちもしっかりサポートするよ!」 


理亞「私も一番まともだと思う」 


花丸「…うん、分かった!」 


花丸「…とりあえずやらなきゃいけない事は、梨子さん達を探す事、異世界に行く方法を突き止める事、鞠莉さんと直接話し合うこと、神隠しの正体を暴くこと」

180: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:23:33.78 ID:NMHIafx00


善子「梨子さん達、本当に大丈夫なの?」 


花丸「まず、机の上に四人の携帯があったから四人が一緒にいるということは間違いないずら」 


花丸「…理亞さん、梨子さん達の靴あった?」 


理亞「確かあった。姉様のも」 


千歌「志満ねえと美渡ねえのもあったよ!」 


花丸「なら大丈夫。聖良さんと梨子さんが連絡手段の携帯を置いて志満お姉さんと美渡お姉さんを連れて靴も履かずに淡島へ侵入するなんて考えられないずら」 


花丸「それに、マル達に毛布がかけてあった。旅館で働く志満お姉さんだよ?もし遠くへ行こうものなら先にマル達を布団まで運ぶと思う。毛布で済ませたってことは、多分すぐに戻るつもりだったんじゃないかな?」 


果南「じゃあどこに行ったんだろう?」 


花丸「マルが寝るまでずっと一緒に北斎の暗号とにらめっこしてたから、あの後何か分かったんだと思う。それで美渡お姉さんや志満お姉さんを呼んで二人にしか分からないことを聞いたんじゃないかな?例えばこの旅館のこととか」 


千歌「!!」 


花丸「恐らく、それで梨子さんと聖良さんはそこに行く為に二人に案内してもらったんじゃないかな?そして何かしらの事故があって四人で閉じ込められちゃったんだと思う」 


善子「つまり助けを待ってるってことよね?」 


千歌「なら私が探す!!この旅館のこと知ってるのは私だけだから…絶対に助けたい!!」 


花丸「任せたずら!」

181: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:24:20.34 ID:NMHIafx00


花丸「それから曜さんの側にいてあげる人も必要だよ。千歌ちゃんより長く寝てる分もしかしたら重要な記憶を取り戻すかもしれないずら」 


果南「それなら任せて!私が側にいるよ。私も分からない側の人間だし、曜が目覚めた時変に混乱させないように状況を説明する。それに旅館の仕事、ちょっとくらいなら分かるから千歌を手伝う!」 


花丸「分かったよ!」 


千歌「ありがとう果南ちゃん!」 


花丸「じゃあまた昨日の張り込み組三人で文化祭へ向かおう!もし他に怪しい人がいたら絶対に逃さないようにするずら!」 


善子「ええ、そのつもりよ!」 


理亞「了解」 


果南「鞠莉のこと、頼むね?」 


花丸「任せるずら!」 


花丸「明日がタイムリミットの11日。もう時間がない。必ず今日中に全てを成し遂げるずら!」 


オォォォー!!! 


理亞「…お、お~っ」 


しいたけ「わんわん!!わん!!!」

182: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:25:06.59 ID:NMHIafx00


ヒュー…パン!パパーン!! 


「いらっしゃいませー」 

ザワザワ… 

「券お持ちの方こちらにお並びくださーい」 

ザワザワ… 



花丸「色々あってお昼過ぎになっちゃったずら…」 


善子「色々あってよかったじゃない。本当に…」 


花丸「うん」 


花丸「本っ当によかったずら♪」 


花丸「あ、ところで理亞さんはもう行った?」 


善子「とっくにね」 


花丸「できれば理亞さんが見つけてくれればマル達がこんなことしなくてもいいのにね…」 


善子「あ!出てきた!」 



鞠莉「……」テクテク 



花丸「また昨日みたいに学校中を歩き回るはず。教室に入って行ったら突入して問い詰めるずら」 


善子「まだ疑いが完全に晴れたわけじゃないしくれぐれも油断しないようにね…」

183: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:25:33.46 ID:NMHIafx00


梨子「はぁ…見つからない…」ドサッ 


聖良「明かりも一つで効率が悪いですね」 


美渡「……」カチカチピカピカ 


志満「美渡ちゃん眩しい」 


美渡「はいすみません…」 


美渡「……」 


志満「……」 


美渡「やっぱ扉にタックルして助けをーー」 


聖良「ダメです。ただでさえ老朽化してるのにそんなことしたら壁や天井が崩れてきます。下手したら上の階がそのまま落ちてくるかもしれません」 


美渡「はいすみません…」ショボン 


美渡「…で、でもこのままじゃ助けを待つしかないってこと?」 


聖良「理亞達が気付いて私たちの捜索を始めていればいいのですが…神隠しと勘違いしてパニックになっている可能性も十分にありえます」 


美渡「神隠しなんてただの作り話だと思ってたのに…まさか内浦で本当に起こるなんてな……」 


梨子「…本当に信じてくださって…協力してくださってありがとうございます。急にこんな現実離れしたワケ分からない話をされても困りますよね…」 


美渡「いや?急にじゃないさ」 


梨子「え?」 


美渡「ここ最近ずっと遅くまでウチで頑張ってくれてたの知ってるからさ。大切な大切な千歌達のために必死になってる人を信じないなんてそりゃできないよ」 


志満「そうねぇ。私達も千歌ちゃんの…いえみんなのお姉さんとして力になれればいいと思ってるわ」 


梨子「美渡お姉さん…志満お姉さん…」ジワッ 


美渡「その神隠しってのの首根っこ捕まえてしいたけに食わせてやる!」グッ 


志満「しいたけをなんだと思ってるの?」

184: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:26:12.11 ID:NMHIafx00


志満「…コホン、多分神隠しされたダイヤちゃんって女の子が戻ってくればみんなの記憶も元通りになるんじゃないかしら?本当の全員が揃ったAqoursのステージ、見てみたいわ」 


梨子「本当にありがとうございます…」ポロッ 


聖良「とにかく今は理亞達を信じて、私達は私達にできることをしましょう」 


美渡「よし、懐中電灯の電池が切れる前にとっとと北斎の物を見つけちゃおう!」ガサガサ 


志満「あ、そこの山は崩れーー」 


美渡「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ドンガラガッシャーン! 


志満「まぁ…」 


梨子「だ、大丈夫ですか!?」 


美渡「助けて…」チーン 


聖良「ん?あそこにある木箱……」 


志満「とりあえず重いのをどかしましょう?梨子ちゃんそっち持ーー」 


聖良「ちょっと失礼します!」ギュッ 


梨子 志満「!?」 


美渡「いだだだだだだ踏んでる踏んでる!!」ジタバタ 


聖良「よし取れた!」 


美渡「よしじゃない!!」

185: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:26:54.35 ID:NMHIafx00



…… 


美渡「はぁ…助かった」 


聖良「すみません、大丈夫ですか?」 


美渡「しいたけが乗ってきた時より苦しかった…」 


聖良「なっ…///」 


梨子「と、とにかく箱を開けましょう!」 


志満「この箱…他の物と違って全く埃を被ってないわ…それに木も装飾もしっかりしててかなり大事なものなんじゃない?」 


美渡「これはかなり怪しいな」 


聖良「恐らくこれが異世界への鍵を握ってるのは間違いないでしょう」 


美渡「……」 


志満「……」 


梨子「……」ゴクリ 


聖良「開けますよ?」 



せーのっ!! 

186: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:28:03.97 ID:NMHIafx00


ガラガラガラガラ… 


花丸「……」 


善子「入ったわね」 


花丸「化学準備室…この辺りは歩学祭で使われてないから周りに誰もいないずら」 


善子「何かあっても助けは呼べない…ってワケね」 


花丸「決めたように、あえて神隠しのことには触れずに明日のステージのことを話そう」スタスタ 


善子「分かってるわよ」スタスタ 


ピタッ… 


花丸「開けるずら…」ドキドキ 


善子「ええ」ドキドキ 


花丸「も、もし鞠莉さんがーー」 


善子「ズラ丸」 


花丸「!!」 


善子「信じるのよ」 


花丸「……」 


花丸「分かったずら!」バッ 


ガラガラガラガラガラガラ!! 


善子 花丸「!?!?」 


花丸「あ…あれ?」 


善子「いない…どういうこと?」 


花丸「!!」 


ヒュォォォォォォォ… 


花丸「窓が開いてるずら…まさか飛び降りたんじゃ!」 


善子「ここは1階よ!」 



鞠莉「お久しブゥリデース」 


善子 花丸「!?!?」クルッ

187: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:28:43.94 ID:NMHIafx00


美渡「な…なんだ……?」 


梨子「巻物……?」 


志満「まぁ…中身はボロボロね…」 


聖良「志満さん、破かないように開いてもらえますか?」 


志満「ええ。慎重に…慎重に…」クルクル 




聖良「!?!?!?!?!?!?」 


梨子「この絵は…」 


志満「随分汚れてて見にくいけど…何かの行列かしら?境内に向かって歩いているのを後ろから絵にしたみたいね」 


美渡「あ!奥にちょびっと富士山が描いてある。あれ?でもこの場所どこかで見たような…」 


聖良「淡島神社」 


三人「!!」 


美渡「そうだ!淡島神社の境内だ!!」 


梨子「どうして淡島神社が…それにこの行列は…」 


志満「あら?ここを見て!《葛飾北斎》の名前が書いてあるわ!!」 


美渡 梨子「!!!」 


梨子「なんで北斎の絵が…」 


聖良「成る程…そういうことでしたか」

188: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:29:29.71 ID:NMHIafx00


美渡「分かったのか!?」 


聖良「はい。これが北斎の暗号が示していたものです」 


梨子「え!?」 


聖良「見てください、この行列。何かおかしいところはありませんか?」 


美渡「…おかしいところ…いや、普通の行列のように見えるけど…みんな袴を着て笠を被ってるとか?」 


梨子「真ん中の人だけ美しい着物を着てる…くらいですかね」 


志満「耳…」 


美渡 梨子「!?」 


志満「よく見て…後ろ姿で見にくいけど、袴の人はみんな笠から耳が飛び出してるわ。その真ん中の人以外みんな頭から耳が生えてるの…」 


美渡「なっ…!?」 


梨子「これは人間じゃない!?」 


聖良「狐です」 


志満 梨子「狐!?」 


梨子(やっぱり千歌ちゃんがうなされてた時のあれは…)

189: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:32:39.50 ID:NMHIafx00


聖良「先程の北斎の暗号、《あ・わ・し・ま・う・か・の・み・こ・ん》…何かしっくりこないと思っていたんですが、もう一捻りあったんです」 


聖良「漢数字の《十一》にあたる平仮名は最後の二文字《こん》。後ろにあった文字《萬》にならい、まだ他にも使い方があるとしたら……ここだけが漢数字である意味は?それは《こん》が漢字の音読みである事を示しているのではないでしょうか?」 


梨子「つまり音読みに《こん》を持つ漢字…ってことですか?たくさんあると思いますけど…」 


聖良「確かにそうですが、これが狐に関するものだとしたらすぐに説明が付きます。こうです!!」 

ーーーーーーーーーーーーーーー 


1833年(天保4年)8月11日 十一人 萬 


・青山圓座枩(【あ】おやまえんざまつ) 
・武州玉川(ぶしゅうたまが【わ】) 
・相州江ノ島(そう【し】ゅうえのしま) 
・御厩河岸より両国橋夕陽見(おん【ま】やがしよりりょうごくばしゆうひみ) 
●信州諏訪湖(しんしゅ【う】すわこ) 
●駿州片倉茶園(すんしゅう【か】たくらちゃえん) 
・登戸浦(【の】ぼとのうら) 
●●身延川裏不二(【み】のぶかわうらふじ) 
・礫川雪ノ旦(【こ】いしかわゆきのあした) 
●駿州大野新田(すんしゅうおおのしんで【ん】) 


『あ・わ・し・ま・う・か・の・み・こ・ん』 


こん=魂=たま、たましい 


『アワ シマ ウ カ ノ ミ タマ』 


『淡島宇迦之御魂神(あわしまうかのみたま)』 

ーーーーーーーーーーーーーーー

190: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:33:47.07 ID:NMHIafx00


聖良「葛飾北斎が何故この内浦に富士を描く文化を残し人々に興味を持ってもらおうとしたのか?何故内浦から江戸に帰った後売れ行きが良かったからだと別の理由で誤魔化して作品の名前にそぐわなくなってしまうにも関わらず追加の十作品、通称裏富士を描いたのか。何故歩学(富嶽)祭を毎年開催し同じ絵を送りつけるようになったのか?」 


聖良「それは、この絵の存在を示す暗号を作る為。それが神隠しの正体だと知ってもらう為。誰かにその忌まわしき呪いを断ち切ってもらう為」 


聖良「富嶽三十六景は三十六枚では無い。しかし四十六枚でも無い。約180年もの間、誰にも見つからなかった隠されし四十七枚目の作品…《淡島宇迦之御魂神(アワシマウカノミタマ)》 
これが葛飾北斎の内浦に捧げた全て!!!」 


梨子「……」 


志満「……」 


美渡「……」 


美渡「…驚きで言葉も出ない」 


梨子「このために北斎は……」 


志満「…でも、宇迦之御魂神(ウカノミタマ)ってお稲荷さんだよね?淡島神社とは何も関係ないわ…」 


美渡「あ、それに一番最後の《神》って漢字が余っちゃう…」 


聖良「《神》に関しては正直はっきりとは言えません。しかし複数の可能性があります。まず、《神》という漢字の部分は発音しないので暗号から省いた可能性…」 


聖良「次に、単に《神》という漢字が入るのを知らなかった可能性。富嶽三十六景の一つに《甲州石班澤(こうしゅうかじかざわ)》がありますが、《かじか》という字は《鰍》と書くので、北斎が間違えたとされています。つまり北斎が漢字に弱かった故に起きてしまった可能性です」 


聖良「最後に、本来は伏見稲荷神社を始めとした各地で神聖な神として祀られている宇迦之御魂神が、何故か淡島神社に棲みつく悪霊となっていたため《神》という表記を抜いた可能性」 


梨子「成る程…」 


聖良「そして、その淡島神社と宇迦之御魂神の関連性の謎…これは最終的にこの旅館の謎とも結びつきます」 


美渡「え?」 


志満「どういうこと?」

191: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:34:28.87 ID:NMHIafx00


ーーーー 
ーー 


「今日からたこ焼き200円に値下げするんでお願いします買ってください!」 

ザワザワ… 

「この後15:00から体育館で書道部による巨大書き初めショーやりまーす!」 

ザワザワ… 



「まいどありーっす!」 


理亞「……」モグモグ 


理亞「……」モグモグ 


理亞「……」 


理亞「……」 


理亞「寂しい」 


「あの~すみません」 


理亞「!!」 


「もしかしてSaint Snowの鹿角理亞さんですか?ですよね!!」 


理亞「そうだけど」 


「私、すっっごく好きなんです!よかったら握手してください!!」 


理亞「う、うん…///」ギュッ 


「わぁぁぁぁぁ/// 超嬉しい!まさかこんなところで会えるなんて思わなかったから…全国頑張ってください!ずっと応援してます!!」タッタッタッタッ 


理亞「……」 


理亞「……」 


理亞「楽しい」 

192: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:35:30.14 ID:NMHIafx00


理亞「…コホン、そうじゃなかった」 


理亞「…思ったけどこれ私いる?」 


理亞「神隠し、どの道明日には学校に姿見せるんだろうしこんなとこフラフラしててもしょうがない」 


理亞「小原鞠莉は国木田花丸と津島善子が追ったし家には高海千歌と松浦果南が姉様の捜索と渡辺曜の看病をしてるし…」 


理亞「私にできることって何だろう」 


理亞「黒澤ダイヤのいる異世界に行く方法…そんなの何を調べたらいいか分かんないし…」 


理亞「ん?」 


理亞「確か黒澤ダイヤには妹がいて…黒澤ルビィとか言ったっけ?」 


理亞「引きこもってるとか言ってたけど…家にいるかな?」 


理亞「……」 


理亞「行こう」

193: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:36:21.05 ID:NMHIafx00


ーーーー 
ーー 

聖良「仮に北斎が未来を見ていたとしたら?」 


聖良「時代と照らし合わせてこう考えてみてはどうでしょう?北斎は昔…1823年頃から富嶽三十六景の作成に取り掛かるため、風景を探しに旅に出ました」 


聖良「そして1830年8月11日、旅を終え江戸に戻る頃たまたま寄った内浦の淡島神社から見える富士を絵にしようと思い足を運んだところ、そこで見てしまった。あの絵の奇妙な行列風景を。しかしそれは近い未来に起こりうる悲劇の始まり。北斎はその幻となって表れた未来を見た」 


聖良「その日泊まった宿で北斎は夢を見た。狐に呪い殺される夢を。その正体はあの神聖なお稲荷さん、宇迦之御魂神の変わり果てた姿だった」 


聖良「北斎は淡島神社や夢で見たものを口外すると殺されると思い、その時の風景を絵にしてその旅館にこっそり預けた。その旅館の未来も知っていたから…そして、この地に様々な富士の文化を残すよう努めた後江戸に戻った」 


聖良「そして裏富士の制作にとりかかった。何故なら既存の三十六枚では暗号が完成しないから。そして、三年後…あの暗号にあった1833年(天保4年)8月11日より毎年内浦に富士を送ることを始めた」 


聖良「さて、北斎が亡くなってとっくにそんな文化も染みついていた1887年、北斎が泊まった旅館は旅籠となり繁盛するようになった。そんなドタバタに揉まれ北斎の預けた絵はいつしか倉庫の奥へ…」 


聖良「更に時は過ぎ大正7年(1918)、当時の旅籠がここ三津浜に移転したのは。旅館は北斎が未来を見据え、暗号で示した通り《十千万》という名前になった。しかし既に北斎の渾身の一枚の存在を知る者は誰もおらず、私たちが今いるこの倉庫で長い眠りにつくことになった」 


聖良「…さて、黒澤ダイヤさんが神隠しにあった現在は2018年。過去に神隠しがあったのは浦の星女学院創立2年目の1968年、十千万としての経営が始まったのが1918年。何か気付きませんか?」 


梨子「あ!!50年サイクル!!!」

194: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:40:25.87 ID:NMHIafx00


美渡「つまり1918年にも神隠しがあったってこと!?」 


聖良「これだけでは1918年の神隠しを証明できません。たまたま50年サイクルになってるだけかもしれないので。しかし更に50年前の1868年のとある出来事が完全に証明してくれます」 



梨子「1868年…前に花丸ちゃんが熱く語ってた気がします。確か神社とお寺がきっぱり別れて…」 


梨子「!!」 


美渡 志満 梨子「神仏分離令!!!」 


聖良「これが全ての元凶。元々神道と仏教は共存するものとしてきましたが、神道から仏教を排除しようと1868年4月5日より本格的に始まった運動です」 


聖良「そこで廃仏毀釈、つまり寺院、仏像、教典、仏具等の破壊が行われました。その動きは過激で、中には壊すことだけが目的の野蛮な輩も多くいたということです」 


聖良「恐らく、そんな輩に多くの稲荷像が壊されたのではないでしょうか?もう一度北斎の《淡島宇迦之御魂神》を見てください」 


美渡「あ!こことここ…鳥居の前に描いてあるの稲荷像だ!両方ともボロボロ…」 


聖良「この運動で大量に出た稲荷像の破片を、当時居住者の居なかった淡島まで運び不法投棄し埋めたことで狐の怨念が密集、増幅したのでしょう。それに怒った狐達の最上位である《宇迦之御魂神》が狐の霊魂を従えこの忌まわしい事件に繋がったのでしょう」

195: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:42:04.94 ID:NMHIafx00


聖良「北斎がどこまで分かっていたのかは正直分かりません。十千万として経営を始める1918年から悪夢が始まると予言していたのか?しかし絵にある壊れた稲荷像を見ると廃仏棄釈を予言していたとも考えられます」 


聖良「しかし彼は自分の作品を暗号として未来に生きる私たちへ託してくださいました。今内浦にあるのどかな富士の文化は、彼による警告だったのです…」 


梨子「……」 


志満「……」 


美渡「……」 


美渡「…なんかさ、そう聞くとかわいそうな気もするよね。姿は見えないけど、今までずっと人々に拝められ愛されてきたと思っていたのに一部の馬鹿な人間が好き勝手に壊して棄ててったんだから…裏切られたんだからそりゃ怒っても仕方ないよね」 


志満「でも、それが神隠しをして良い理由にはならないわ。罪のない幼気な女の子が連れ去られちゃったわけでしょ?」 


梨子「確かに像を壊して捨てたことは悪い事ですが、それを恨んで仕返しするのも悪いことだと思います!現にダイヤさんや千歌ちゃんや曜ちゃんがこんなことになったのも…」 


美渡「ま、まあ確かに…」 



聖良「しかし困りました」 


三人「?」 


梨子「何がですか?」 


聖良「神隠しの歴史や原因は分かりましたが、その異世界に行く方法は北斎も突き止めていなかったようです。廃仏毀釈が起き始めた1868年時点で彼はもう亡くなっているので仕方ないのですが…このままではダイヤさんを助けることはできません」

196: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:42:48.72 ID:NMHIafx00


梨子「そんな…」 


梨子「何か…何かあるはず……」 


梨子「…あの、千歌ちゃんと曜ちゃんの事件があってから淡島を訪れている人はいますか?」 


美渡「結構いると思う。勿論淡島神社にもね。特に立入禁止とかの騒ぎにはなってなかったと思うよ」 


志満「特にこの3日間は混むと思うわ。歩学祭のついでに寄って行く人も多いだろうし…」 


梨子「つまり…訪れた人がむやみやたらに異世界に引きずり込まれるってことは無さそうですね」 


聖良「どうでしょう…明日はタイムリミットの11日です。何かが起きてもおかしくありません」 


美渡「50年前はまだ淡島がリゾート開拓されてなくて人はいなかった。だとしたら今年は今までの神隠しとは違う。大勢の人が巻き込まれる可能性が大きい!!」 


志満「どうしましょう…明日は書き入れ時だろうし営業中止なんてないでしょうね…」 


梨子「そもそもこの話をしても誰も信じてくれないと思います…」 


美渡「くっそ…どうしたら…」 


聖良「つまり明日、淡島を訪れるはずの人々を自然と歩学祭に誘導し安全が確保されたところで私たちが異世界への道を開きダイヤさん救出に向かうのが最善ですね」 


美渡「課題が一つ増えちゃったな…」 


梨子「何か方法があるんですか!?」 


聖良「淡島へ向かうはずの人々が思わず歩学祭に訪れたくなること…それは……」 


梨子「それは……」 


志満「……」 


美渡「……」ゴクリ 




聖良「Aqoursのステージです」

197: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:43:56.42 ID:NMHIafx00


梨子「え!?」 


聖良「正直望みは薄いです…千歌さん達が目覚めるかどうかも分かりませんし、鞠莉さんが《淡島宇迦之御魂神》の可能性も低くはありません…」 


梨子「……」 


聖良「ですが、これはAqoursにしかできないことです。μ'sを夢見て奇跡の産声を上げ、ひたすら上を目指し奮闘するも東京で大敗を喫する…しかしそこから…0から立ち直る驚異的な底力で再びのし上がって予備予選合格…太陽のように輝くために遠くに光る小さな星を目指す…タフで、貪欲で、猪突猛進で、最高なあなた達ならきっと奇跡を起こすはず」 


梨子「聖良さん…どうしてそこまで…」 


聖良「ふふっ…信じてます。Aqoursを…」 


美渡「うん。あの子、昔からピンチの時は涙流して立ち上がって必ずひっくり返してきたからさ。姉の私なら分かる。あのバカ千歌なら絶対にやってくれる。なっ、志満ねえ?」 


志満「ふふっ…そうね。破天荒なところ…誰に似たのかしら?」チラッ 


美渡「なっ…なんでこっちを見る…?」ビクッ 


聖良「ふふっ♪」 


梨子「皆さん…」 



ドン!ガタガタガタ… 



四人「!!」 


梨子「あ…」 


志満「さあ…」 


美渡「眠り姫のお目覚めかな?」ニシシ 


聖良「奇跡の号令がかかりますよ」クスッ 



ガラガラガラガラガラガラ!! 



梨子「あぁ…」ポロッ 



千歌「みんな!助けにきたよ!!」

198: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:45:27.85 ID:NMHIafx00


梨子「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」ダッ 


ギュッ! 


千歌「のわっ!?」ステン 


梨子「ちかちゃんちかちゃんちかちゃぁぁぁぁぁぁん!!!」ブワッ 


千歌「もう…梨子ちゃんてば」ギュッ 


志満「よかった…」グスン 


美渡「うんうん…」ズビッ 


聖良「助かりました。ありがとうございます。千歌さん」 


千歌「うん!梨子ちゃん、美渡ねえ、志満ねえ、Saint Snowの鹿角聖良さん!心配かけてごめーーー」 



ドクン… 



千歌「!!!!!!!!!」 


千歌「……」 


志満「…?」 


美渡「千歌…?」 


聖良「…どうしたんですか?」 



千歌「分かる…分かるの……」 


聖良「分かるって何がですか!?」 


千歌「ダイヤさんとルビィちゃん」 


聖良 美渡 志満「!!!!!!!」

199: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:46:53.17 ID:NMHIafx00


聖良「思い出したんですか!?全部分かるんですか!?」 


千歌「Aqoursは全部で9人で…明日になったらダイヤさんが消えちゃうから…なんとかして取り戻さないと…」 


美渡「えっと、これは…記憶がその、5日より前に戻ってるってこと!?」 


志満「眠っている間に思い出したのね!」 


聖良(ん?これは記憶操作が起きるの前の記憶戻っている…というよりーー) 



ドサッ… 


四人「!!!」 


梨子「……」 


千歌「梨子ちゃん!!」 


聖良「どうしたんですか梨子さん!?」 


梨子「う…うぅ……」 


志満「とにかく、部屋まで運びましょう!」 


美渡「分かった!」 


千歌「梨子ちゃん…どうして…」 


聖良(なんで梨子さんが…) 


聖良(一体何が起きているんだ…) 

200: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:47:35.10 ID:NMHIafx00


ブロロロロロ… 


理亞「来ちゃった」 


理亞「黒澤家…ここね」 


理亞「……」ドキドキ 


理亞「…どうしよう。お邪魔する口実がない」 


理亞「二人を連れて来ればよかったかな」 


理亞「猫が迷い込んだとかなんとか適当な理由つけーー」 


理亞「ん?」 


理亞「扉が少し開いてる…」 


ガラガラガラ… 


理亞「ごめんくださーい」 


シーン… 


理亞「誰もいない」 


理亞「……」ドキドキ 


理亞「ここまで来たんだから引き返すワケにはいかない」スッ

201: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:48:14.42 ID:NMHIafx00


ギシギシ… 


理亞「…本当に広い屋敷。迷いそう」ギシギシ 


ウゥッ…エッ…エグッ……グスッ…… 


理亞「!!」 


理亞「泣き声…これが黒澤ルビィ?」 


理亞「ていうかいるなら出てよ…」 


…… 


理亞「あのー?」コンコン 


グズ…ヒック……エェッ…… 


理亞「花丸…さんの友達の理亞と言います。入ってもよろしいですか?」 


ウゥ…グズッ……エグッ 


理亞「……」 


理亞「……」イラッ 


理亞「さっきからメソメソメソメソ…」ワナワナ 


理亞「もう入るから!」ガラガラ! 


理亞「!!!!!!」

202: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:49:22.39 ID:NMHIafx00


理亞「ちょっと何よこれ…」 


理亞「富士山の絵?ビリビリに破れてる…」 


ルビィ「うぅ…グスッ……ヒック……」ポタポタ 


理亞「あなたが黒澤ルビィ?もう、いつまで泣いてんのよ。それにこんな部屋中散らかして…やり過ぎ。一体どうしたっての?」 


理亞「ん?」 


理亞「この絵は…」パサッ 


理亞「何これ…新しいの描いてたってこと?」 



「ルビィちゃーん!!遅くなってごめんね!!!」ドタドタドタ 


「待ちなさいよズラ丸!!!」ドタドタドタ 



理亞「なっ!?」 


善子 花丸「!!!」 


花丸「理亞さん!!」 


善子「何よこの部屋…まさかあなた…」 


理亞「違う!私も今来たばっか!来てみたら鍵が開いてて声のする部屋に入ってみたら…」 


ルビィ「うぅ…グスッ……ヒック……」ポタポタ 

203: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:49:56.19 ID:NMHIafx00


花丸「ルビィちゃんどうしたの!?」 


善子「ルビィ!これズラ丸と描いてた絵でしょ?なんで破いたりなんかするのよ!」 


理亞「こっちに完成した絵がもう一枚ある」ヒラッ 


花丸「あ!」 


善子「…ど、どういうことよ!」 


理亞「はぁ…本当にこの子がAqoursのメンバーなの?」 


ルビィ「うぅ…ぐすっ……うぇぇ……」ポタポタ 


花丸「ルビィちゃん…完成させてたんだ……」 


花丸「あれ?」 


理亞「ん?」 


善子「何?」 


花丸「ルビィちゃんこの富士山…」パサッ 





花丸「どこで描いたの?」

204: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:50:45.40 ID:NMHIafx00


理亞「どこ…って、内浦でしょ」 


善子「そんなことは分かってるでしょ」 


花丸「これ…これ見て何か気付くことない?」 


善子「気付くことって…高所から内浦全体と海を捉えてて…それから虹がかかってて、遠くに富士山が見えてるわ」 


理亞「見れば分かるでしょ」 


花丸「高所って…どこ?」 


善子「えっと…学校の前の坂?発端丈山?長浜城跡?」 


花丸「どこも違うよ…だって……」 




花丸「この絵には…この絵には淡島がどこにも写ってない…」 


善子 理亞「!?!?」 


理亞「…ってことはまさかこの子」 


善子「淡島神社から描いたの…?淡島に行ったの!?!?!?」 


花丸「ルビィちゃん!!」 



ルビィ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」 


善子「ちょ、ちょっとルビィ!?」 


理亞「いきなりどうしたの!!」 


花丸「ルビィちゃん!!どういうこと!?」 



ルビィ「お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!ダイヤお姉ちゃぁぁぁん!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

205: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:51:37.90 ID:NMHIafx00


善子 花丸 理亞「!?!?!?!?!?」 



花丸「ダイヤ…ルビィちゃんの口からダイヤお姉ちゃんって……」 


花丸「戻ったの!?記憶が戻ったのルビィちゃん!?」 


善子「そうよルビィ!!あんたにはダイヤっていうお姉ちゃんがいるのよ!!」 


理亞「黒澤ダイヤ…まさか本当に……」 


ルビィ「うわぁぁぁぁぁごめんなさぁぁぁぁい!!!ルビィの…ルビィのせいで……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」 


善子「どういうこと!?」 


理亞「このままじゃ拉致があかない。姉様に連絡する」プルルルルル 


花丸「ルビィ…ちゃん……」 


理亞「お願い姉様……」プルルルルル 


理亞「出て……」プルルルルル 


理亞「無事でいて……」プルルルルル 


ガチャ… 


理亞「姉様!!!!!」

206: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:52:36.60 ID:NMHIafx00


梨子「……」スゥスゥ 


曜「……」クゥクゥ 


果南「……」スヤスヤ 


ルビィ「うゅ……」スヤスヤ 



志満「今日は家にルビィちゃんしかいないらしいわ。親御さんと連絡して、良くなるまでここで寝かせとくことにしといたからもう安心してちょうだい」 


千歌「果南ちゃんも、今日一日旅館の仕事してくれて疲れちゃったみたい。それにほら、あんなに散らかってた部屋がピカピカになってる」 


志満「本当に面目無いわね…」 


善子「ほっ…よかった……」 


花丸「でも、千歌さんも…本当に目覚めてよかったです。それに記憶も…」 


千歌「うん。心配かけてごめんね。とりあえず今分かってることは一式整理できてるよ」 


志満「じゃあ、私と美渡ちゃんはまだ仕事があるから…後は頼むわね。千歌ちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、聖良ちゃん」 


三人「はい!」 


千歌「うん!!」 


志満「それに理亞ちゃんも?」 


理亞「!!」 


理亞「は、はいっ…」 


ピシャッ…

207: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:54:13.22 ID:NMHIafx00


花丸「……」 


善子「……」 


千歌「……」 


理亞「……」 


聖良「まずは皆さん、私の不注意でこのような形でご心配をおかけすることになり大変申し訳ありませんでした」 


理亞「姉様!!」 


千歌「そんな、謝らないでください…!」 


聖良「花丸さんの冷静な推理と千歌さんの救助…そしてみなさんの信頼が無ければ今頃閉じ込められたままだったでしょう」 


花丸「聖良さん…」 


善子「そういうのはお互い様よ。謝るのもいいけど、作戦会議に移った方がいいんじゃない?もう時間がないわ」 


聖良「!」 


聖良「…ふふっそうですね」 


聖良「では今日一日で非常に大きく動いた事が何点かあります。整理してみましょう」カキカキ

208: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:57:14.59 ID:NMHIafx00


・北斎の謎の解明 
・神隠し=狐の仕業だと判明 
・千歌さん起床、記憶の復活(?) 
・梨子さん意識喪失 
・ルビィさん記憶復活(千歌さんとは別?) 
富士山の絵を描くのに淡島を訪問(?) 
・明日11日、淡島から観光客を避難させなければ非常に危険だという可能性の浮上 



聖良「こんなところでしょう…」 


花丸「北斎と十千万の謎は驚いたずら…まさか神仏分離が元凶だったなんて…」 


善子「それに…ルビィもどうしちゃったのよ。急に記憶が戻るなんて…」 


千歌「眠っちゃったから本当に戻ったかは分からないけど…ダイヤさんの名前を口にしたんだよね?」 


理亞「ええ。お姉ちゃんお姉ちゃんって喚き散らしてわ」 


花丸「それに、ルビィちゃんの描いた絵…」 


善子「ええ。どう見ても淡島神社の拝殿裏から眺めた富士山よね。まさかルビィ…」 


聖良「いえ、ルビィさんは淡島へ行っていないと思います」 


四人「!?」 


千歌「それってどういうことですか!?」 


聖良「今日は歩学祭ということもあってか、日中旅館の前の道もかなりの人通りだったんですよね?」 


千歌「はい、いっぱい通ってました。しいたけもびっくりしたのかさっきまでずっと吠えてて…」 


花丸「美渡お姉さんが必死に寝かし付けてたずら」

209: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:58:16.94 ID:NMHIafx00


聖良「失礼承知で言いますが…学校に行けないルビィさんがこんなに人の多い日に一人で淡島へ行けるでしょうか?」 


花丸「確かに…近くのお店にマルと行く時も車が通るだけで背中に隠れるルビィちゃんだけど…」 


聖良「それにこの絵をよく見てください。今日は丸一日、雲一つない快晴だったんですよね?」 


花丸「そうだけど…」 


花丸「あ!そうか!だからこの絵みたいに虹なんて出てなかったし雨雲もなかった!!」 


善子「確かに…でも、この絵の具の乾き具合からして描いたのは今日で間違いないと思うけど…」 


聖良「そうですね。つまりルビィさんは今日、淡島神社へ行かず家でこの絵を完成させたということになります」 


聖良「ではこの絵はどうして描くことができたのでしょうか?…そうですね最近、虹が出たのはいつだか分かりますか?」 


善子「虹…?そんな日あったかしら…?」 


花丸「あった!!」 


善子「!?」 


千歌「そうだ…思い出した!あの日…ダイヤさんがいなくなった8月3日、ダイヤさんが練習に来る前、雨上がりに8人で淡島へランニングしに行った時…!!」 


花丸「淡島神社に着いて休憩している時、境内の裏から虹が見えたずら!」 


善子「あぁ、そうね。こんな感じだったわね…雨雲が裂けて海に陽が射してて…そこに浮かぶ綺麗な虹……」 


千歌「それで学校帰ってきてダンス練してる時に天気雨になって善子ちゃんが風邪引いちゃって梨子ちゃんにくしゃみぶっかけたんだよね…もう随分昔の事のように感じるよ…」 


聖良「間違いありませんね。ルビィさんはその時の情景を絵にしたのでしょう」 

210: 名無しさん 2017/01/16(月) 19:58:53.51 ID:NMHIafx00


花丸「なんで元々の絵を破いてまでこれを描いたんだろう…記憶を取り戻したのと関係あるのかな」 


聖良「何故ルビィさんは記憶を取り戻したのか…いえ、取り戻しかけたのか…という表現の方が正しいですかね。本人の意識が戻らないとなんとも言えないので…」 


聖良「…8月3日に淡島神社で虹を見た時、ルビィさんはどんな反応をしていたか記憶にありますか?」 


千歌「確か…すごく驚いていたと思います」 


花丸「 驚いていた…というより喜んでいたずら。いや、もっと前…ランニングで淡島へ向かっている時もルンルンだったような…」 


善子「成る程ね。そう言えば虹を見て何枚も写メ撮ってたわね。確かにこのヨハネのように美しい虹だったけど、子供じゃないんだから…って思ったわ」 


千歌「えぇぇ!?私も大好きだよ虹。本当は写メ撮りたかったのに…」 


花丸「中々お目にかかれないからね」 



花丸「え…?」 


聖良「その虹はルビィさんにとって喜ばしいものであっーー」 


花丸「ちょっと待つずら!!」ガタッ! 


聖良「!?」 


千歌「花丸ちゃん!?」 


善子「ど、どうしたのよ大きい声出して…」 


花丸「善子ちゃん!今なんて…」 


善子「そんな大きい声出してーー」 


花丸「その前!!」 


善子「え!?ヨハネのように美しい虹ーー」 


花丸「その前だよ!!」 


善子「なんなのよ…虹を見て何枚も写メ撮ってたのよ…」 

211: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:00:47.09 ID:NMHIafx00


花丸「写メ…間違いないよね?」 


善子「ま…間違い無いけど…」 


聖良「花丸さん、どういうことですか?」 



花丸「ルビィちゃん、携帯持ってないって言ってた…」 


善子「!?」 


聖良「なっ…!?」 


千歌「どういうこと!?」 


花丸「5日…みんなの記憶が無くなった日の夜、マルのばあちゃんも混ぜてアルバム見たよね?あの後、ルビィちゃんの家に行って会った時そう言ってたずら…マルとお揃いのやつを買ったはずなのに……だから家の電話に連絡するしか……」 


善子「なんでルビィの携帯が…そこまで改変されてるってこと?」 


理亞「…そう言えばあなた、言ってたわよね?まだ事件で騒々しくなってた4日の朝、黒澤ルビィに連絡しても返ってこないって言ってたけど、あの時は持ってたの?」 


花丸「いや…どうだろう…」 


花丸「!!」 


花丸「そうだ!3日、ルビィちゃんは淡島を降りてからずっと何か様子がおかしかった!悲しそうというか不安そうというか…それまでウキウキしてたのに…」 


善子「帰りのバスも乗り遅れそうになってたわよね…何してたのかしら」 



聖良「成る程…そういうことでしたか…」 


千歌「聖良さん?」 


善子「何か分かったの?」 




聖良「全てが繋がりました。仮説ではありますが、恐らくこれで間違い無いと思います。心して聞いてください」 

212: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:05:39.12 ID:NMHIafx00


花丸「…」ゴクリ 


聖良「8月3日、この時点でまだルビィさんは携帯を持っています。淡島神社で皆さんがランニングの休憩をする中、ルビィさんは嬉しそうに虹を撮っていました。何故か?」 


聖良「恐らく、その写真をダイヤさんに見せたかったんじゃないでしょうか?」 


花丸「!!」 


聖良「その時ダイヤさんはまだ練習に参加していなかったんですよね?だとしたらその珍しい情景を是非写真に収め、後で大好きなお姉さんに見せたい…そう思ったんじゃないでしょうか」 


聖良「そして何故降りてから悲しそうだったのか。それは淡島神社に携帯電話を置き忘れてしまったからです」 


千歌「ルビィちゃん…そうだったの!?」 


聖良「そう考えれば全てが繋がります。恐らく気の弱いルビィさんは言えなかったのでしょう。降りてからまた神社へ戻りたいなんて…」 


聖良「そして部室に戻ってから再度雨が降ったことでその不安は増す。花丸さんとお揃いで買ったもの…それに防水とは言え濡れて壊れていないだろうか…写真は消えてないだろうか…そこで練習終わりに、勇気を振り絞ってダイヤさんに言ったのでしょう」 


ーー 
ーーーー 


ルビィ『お姉ちゃん!!』 


ダイヤ『!!』 


ダイヤ『ル…ルビィ!まだ残っていたんですの?』 


ダイヤ『早く帰らないと花丸さん達に置いていかれーー』 


ルビィ『あの!!!!』 


ダイヤ『!?』 


ルビィ『……』 


ダイヤ『ルビィ?』 

213: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:07:05.21 ID:NMHIafx00


ルビィ『今日、ランニングして淡島神社で休憩した時携帯置き忘れちゃった…どうしよう……』 


ダイヤ『なっ…どうして練習中に携帯電話をーー』 


ルビィ『ごめんなさい!!!』 


ダイヤ『!?』 


ルビィ『今日ね、淡島神社から虹が見えたんだよ。すっごく綺麗な虹…ルビィ、お姉ちゃんに見せたくて…喜ばせたくて写真撮ったんだけど置いてきちゃった…うぅ…どうしよう……』グズッ 


ダイヤ『……』 


ダイヤ『ルビィ』 


ルビィ『うゆ?』 


ポンッ 


ルビィ『!?』 


ダイヤ『ありがとうルビィ…お姉ちゃん、とっても嬉しいですわ』 


ルビィ『お姉ちゃん…』グズッ 


ダイヤ『でもルビィ、遠慮して皆さんの前で言わない必要なんてないんですのよ?そんなことで怒る人なんて誰もいないんですから…』 


ルビィ『うん…』 


ダイヤ『携帯は必ずお姉ちゃんが取ってきますわ。だからルビィは先に帰っていてください』 


ルビィ『ごめんねお姉ちゃん…』 


ダイヤ『帰ったら、写真のことたくさん話しましょ?』ニコッ 


ーーーー 
ーー

214: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:07:56.98 ID:NMHIafx00


聖良「しかし願い叶わずダイヤさんは神隠しに遭ってしまった…これが4日にルビィさんと連絡が取れなかった理由です」 


千歌「だからバスに遅れてきたんだ…」 


善子「馬鹿、携帯のことぐらい言いなさいよ…」プルプル 


聖良「そして、何故5日以降ルビィさんが携帯を持っていないことになっているのか」 



聖良「それは、今ルビィさんの携帯が異世界にあるからです」 


四人「!?!?」 


聖良「ダイヤさんの存在が無かったことにされたように、ルビィさんの携帯も異世界に行ったことで無かったことにされたのです」 


聖良「そして、これが重要なポイントです。ダイヤさんと共に消えたということは…」 


花丸「ルビィちゃんの携帯はダイヤさんが持っている」 


聖良「そういうことになります」 


聖良「そして、今回何故ルビィさんの記憶が戻りかけているのか」 


聖良「……」 


千歌「聖良さん?」 


聖良「これは良い知らせと悪い知らせになります」 


善子「何よ…」 


花丸「……」ゴクリ 


理亞「……」 


聖良「まず、良い知らせとして…ダイヤさんは生きています」

215: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:09:13.28 ID:NMHIafx00


四人「!!!!」 


聖良「向こうでダイヤさんはルビィさんの携帯を見て強く感情が高ぶったのではないでしょうか?その時ダイヤさんの気持ちがルビィさんの携帯を通し、次元を超えてルビィさんとリンクしたことでルビィさんは記憶が戻りかけているのです」 


千歌「ダイヤさん…生きてる…」 


花丸「よかった…無事なんだね……」 


理亞「ほっ…」 


善子「でも…悪い知らせって…」 



聖良「…何故、ダイヤさんはルビィさんの携帯の写真を見て感情が高ぶったのでしょうか?」 


善子「それは嬉しかったからじゃない?妹が自分のために撮ってくれた写真を見れて…」 


聖良「嬉しかったから…それではルビィさんと気持ちがリンクしません」 


聖良「逆はどうですか?ダイヤさんはルビィさんの携帯を開きその写真を見てこう思ったとしたら…」 




聖良「なんで自分はルビィを信じてあげられなかったんだろう。ごめんねルビィ。ごめんね…」

216: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:10:06.63 ID:NMHIafx00


花丸「!?」 


千歌「ごめんねって…」 


聖良「そう。ルビィさんがダイヤさんに対して抱いていた感情と同じです。二人は自責の念がリンクしたのです」 


善子「でもどうして!ダイヤさんはルビィを信じて無かったって…」 


聖良「ここからは完全に想像ですが…3日の練習終わり、ルビィさんがダイヤさんに例のお願いをした後、ダイヤさんは戸締りをしていました。その時に何かがあったのでしょう。ルビィさんの発言を一気に疑ってしまうような何かが…」 


花丸「窓…」 


聖良「?」 


花丸「事件になってた4日の朝、マル達学校に忍び込んだんです。そしたら4階の一番隅の廊下の窓だけが開いていて…」 


聖良「何か校舎の写真はありますか?」 


千歌「梨子ちゃんが前に、初めてこの学校に来た時に音ノ木坂の友達に送るために撮った写メを何回か見せてくれたよ」 



聖良「梨子さん失礼します…」ポチポチ 


梨子「……」スゥスゥ 


聖良「……」 


聖良「ここですか。確かににここの窓からは富士山に街に…そして淡島がよく見えますね」

217: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:11:37.05 ID:NMHIafx00


聖良「例えばですが、ダイヤさんが戸締りをしている時にこの窓から淡島神社で発光現象がありそれを目撃したとしましょう。直前まで皆さんにいじられていたというダイヤさんはこう思うはずです」 


聖良「成る程…これは全部ドッキリだったのか。みんなの様子がおかしかったのも全てこの後淡島神社に来るであろう私を驚かすための前座。それでルビィはあんなことを言って私をおびき寄せようとしたのか。しかしあれではドッキリがバレバレだ。誰かが警察に連絡する前に止めに行かないと」 


聖良「そしてダイヤさんは窓を閉めることも忘れて淡島へ向かった。しかし、そこに潜んでいたのはAqoursではなく神隠しの魔の手…」 


聖良「こうしてダイヤさんは異世界に連れ去られた。そこで携帯の写真を見てルビィさんや皆さんを疑っていたことを強く後悔したのでしょう。その時にダイヤさんが見たルビィさんの写真が、ルビィさんの脳裏に伝わり衝動的にこの絵に描いた。そして記憶が戻りかけた…こういうことだったのです」 


善子「そんな……」 


千歌「ダイヤさん…ごめんなさい…」 


花丸「マル達がダイヤさんを…」 


理亞「……」 


聖良「あなたたちは悪くありません。どの道ダイヤさんは淡島に向かっていたのですから…むしろ結果的にルビィさんの記憶を取り戻す機会になったのです」 



聖良「問題点はそこではありません。あくまでダイヤさんの気持ちの受け取り方の話ですから……本当にマズいのはルビィさんの携帯の件、そして発光現象が《淡島宇迦之御魂神》により仕組まれていたことです」 

218: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:13:36.11 ID:NMHIafx00


善子 千歌 花丸「!?!?!?」 


聖良「皆さん、淡島神社で虹を見た時惜しいことをしたなと思いませんでした?せっかく美しい虹があるのに携帯を持って来ていなかったこと…」 


千歌「それはかなり…」 


花丸「確かにちょっと勿体無いと思ったずら」 


善子「でも、そんなの予測できないし、激しく動き回るのに携帯なんて持ちーー」 


善子 千歌 花丸「あ!!!!!」 


聖良「そうです、普通ランニングやダンス練で激しく動くと分かっているのに携帯をポケットに入れるようなことはしません」 


聖良「しかしあの場でただ一人、ルビィさんは携帯を持っていました。それは何故か?《淡島宇迦之御魂神》にひっそり呟かれていたのでしょう。『雨が止んだから淡島の頂上に着いた頃には綺麗な虹が見えるかもね。後でダイヤに見せてあげたら?』と。それにまんまと乗ってしまったルビィさんは携帯を手に胸躍らせ淡島神社に向かったのでしょう。そして隙を見て携帯電話を奪い、恐らく賽銭箱の下にでも隠したのでしょう。気の弱いルビィさんなら言い出せないと分かっていたから。そして姉のダイヤさんに相談することも、そのダイヤさんがいつも戸締りをしていることも知っているような人物」 


善子「……」 


花丸「……」 


千歌「……」 


理亞「……」 


聖良「悪い知らせはそう…残念ですが、やはり神隠しの犯人である《淡島宇迦之御魂神》はAqoursメンバーの誰かに化けていることになります」

219: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:14:58.02 ID:NMHIafx00


善子「あのーー」 


聖良「善子さん、花丸さん。今日学校であったことは後でゆっくり聞きます。あなた達が無事ここにいるということ、嬉しく思ってますよ…」 


善子「……」 


花丸「……」 


千歌「信じたくなかったけど…」 


聖良「申し訳ありません千歌さん。今は我慢してください。あなただけはみんなを信じてあげてください。明日のこともありますので…」 


千歌「はい…」 


善子「本当にライブをやるって言うの?」 


聖良「はい。淡島から人を遠ざけるためです。美渡さんや志満さんにも協力を要請しました」 


聖良「メンバーは千歌さん、花丸さん、善子さん、果南さん、鞠莉さん…そして梨子さんと曜さんの7人です。勿論、淡島宇迦之御魂神も含まれていますが…」 


花丸「二人は目が覚めるのかな…」 


聖良「それに関しては大丈夫です。恐らく、二人の目が覚める方法が分かりました」 


千歌「えっ!じゃあ今すぐにでも!!」 


聖良「千歌さん」

220: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:16:31.37 ID:NMHIafx00


千歌「!!」 


聖良「それももう少し待ってください」 


千歌「……」 


千歌「分かりました…」 


聖良「最後に、私達が異世界に行く方法ですが…残念ながらこれはよく分かっていません」 


善子「これよね…最大の問題は…」 


花丸「ダイヤさんが失踪したのも、千歌さんと曜さんが意識を失ったのも日が暮れる時間だったけど何か関係あるのかな?」 


聖良「黄昏時…ですか。確かに可能性はありますが、この時間に神社を訪れた人もいると思います。何か他にもあるのではないのでしょうか…」 


千歌「つまり、最悪明日の夕方までに行く方法が見つかれば…」 


聖良「条件が複雑ならチャンスは限られますが…そうする他ありません」 



聖良「…それでは、明日の作戦会議に移ります」

221: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:17:15.41 ID:NMHIafx00


ピピピピッ 
ピピピピッ… 


梨子「う、う~ん…」ポチッ 


梨子「朝…?」 


梨子「!!」 


梨子「私、千歌ちゃんに助けてもらって…その後……」 


梨子「あれ?でもどうして…この記憶は一体…」 



果南「おはよう梨子」 


梨子「!!」 


果南「体調はどう?」 


梨子「ええ…大丈夫です」 


梨子「あれ!?」 


果南「ん?」 


果南「あぁ、曜なら…」 



ガラガラガラ!!! 


曜「おはヨーソロー!!」 


梨子「よ…曜ちゃん…」 


梨子「曜ちゃぁぁぁん!!!」ガバッ 


曜「おわっ!?」ドサッ 


果南「ちょ、ちょっと二人とも病み上がりなのにそんなドタバタ…」 


美渡「うるさいぞバカ千歌ー!!」ドンガラガッシャーン 


果南「あ」

222: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:17:55.95 ID:NMHIafx00


美渡「!!」 


曜「あ…お、おはようございます」 


梨子「ひぅぅ…」ズビッ 


美渡「そうか、目覚めたんだな…よかった!」ニシシ 


志満「あら?」スッ 


志満「まあ!曜ちゃん!!本当に目覚めたのね!もう大丈夫なの?」 


曜「はい!心配おかけしました」 


曜「大丈夫だよ梨子ちゃん。もう全部分かってるから」ボソッ 


梨子「うん…」 


千歌「う~ん…朝から何ぃ?美渡ねえ…」フラフラ 


千歌「あ!!!」 


曜「千歌ちゃん!おはヨーソロー!!」 


千歌「曜ちゃん!!!」 


曜「千歌ちゃん!!」ギュッ 


花丸「うんうん」 


善子「堕天の成り行きを見守るのも我の役目…」 


理亞「なんだこれ」 


聖良「あははは…」

223: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:18:51.15 ID:NMHIafx00


千歌「コホン…」 


千歌「みんな、今日はついに運命の日だよ!今までいっぱい辛いことがあったけどそれも今日でおしまい!絶対にダイヤさんを取り戻して…これから二度と同じ悲劇が起きないよう戦おう!!」バッ 


梨子「…」バッ 


曜「…」バッ 


花丸「…」バッ 


善子「…」バッ 


果南「…」バッ 


美渡「…」バッ 


志満「…」バッ 


聖良「…」バッ 


理亞「…」バッ 




千歌「Aqours!!」 


全員「サーンシャイン!!!!!」バッ! 



【8月11日:黒澤ダイヤ失踪から8日】

224: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:19:50.09 ID:NMHIafx00


ヒュー…パーンパパーン!! 


「ねえ、ポスター見た?今日の17時30分から屋上でAqoursとSaint Snowの合同ライブやるって!」 


「マジ!?友達が昨日鹿角理亞さん見たって言ってたからまさかとは思ったけど…このためなんだね!」 


「しかもサプライズ演出があるらしいよ!私超楽しみ!!」 


「でも大丈夫かな?お昼に雨降るみたいだけど…」 


ーーーー 
ーー 


千歌「17時30分から屋上で合同ライブやりまーす!!」ヒラヒラ 


梨子「見に来てくださーい!!」ヒラヒラ 


花丸「もしもし果南さん、淡島の様子はどう?」 


果南『うん、計画通り遊覧船をいくつか貸してもらったよ。夕方になったらその時に淡島内にいるお客さんや従業員を船に乗せて周辺を観光するようにお願いした。これならチケット買ってるし営業妨害にはならないでしょ?多分。…それと、船の中のモニターでライブの様子が見られるようにしてもらった!』 


花丸「ありがとう!!」 


果南『Saint Snowは?』 


花丸「例の演出のために美渡さんと志満さんが車で送っていったずら!」 


果南『分かった。私もすぐに学校に向かうね』 


花丸「うん!また後で!!」ガチャ

225: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:20:22.57 ID:NMHIafx00


ーー屋上 


善子「ワン!ツー!スリー!フォー!」パンパン 


曜「はっはっ…」シュビドゥバ 


善子「さすがね。こんなにブランクがあったのに完璧に踊れてるわ…」 


曜「ほっ…」ドサッ 


曜「懐かしいなこの屋上…」 


善子「そうね…」 


曜「今日でこの7人が集まるのも…」 


善子「……」 


善子「もう少しでみんなが来るわ。ステージ設営もやらなきゃだし頑張りましょ」 


曜「うん…!」 

226: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:20:57.51 ID:NMHIafx00


ーーーー 
ーー 


千歌「すごい…まだお昼なのに全部配り終わった!」 


梨子「うん!お客さん、いっぱい来そうだね!」 


花丸「そろそろ練習へ向かおう!」 


「千歌ー!!!」 


千歌「あ!」 


よしみ「頼まれてたスカイランタン、もうすぐ出来そうだよ!」 


いつき「空いてる教室をいくつかスカイランタン製作体験教室にしてみたら物凄い人が集まってさ!仕事がない子や先生も協力してくれて…前回のPVの時よりたっくさんあるからね!」グッ 


むつ「もう運び始めちゃっていいかな?」 


千歌「みんな…」 


梨子「ありがとう!出来たやつはもう運んじゃって!!」 


むつ「分かったよ!」タッタッタッタッ 


ギュッ! 


千歌「!!」 


よしみ「病み上がりなんだから無理しないでね!何かあったら私たちが全力でサポートするから!」 


いつき「うんうん!」 


千歌「ありがとう…本当にありがとう…」ギュッ 


千歌「絶っっ対に成功させるからね!!」

227: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:22:16.25 ID:NMHIafx00


パラパラパラ… 


果南「ごめん遅くなって!」ガチャ 


千歌「果南ちゃん!」 


梨子「淡島の方は大丈夫ですか?」 


果南「無事、スカイランタンも全部届いたよ」 


花丸「良かったずら…」 


曜「準備はほとんど出来たね」 


果南「あとは雨が強くならなければいいけど…」 


ガチャ… 


全員「!!」 


善子「あ!!」 


鞠莉「ハァイ…お久しブゥリデース…」 


曜「鞠莉さん…」 


梨子「……」ゴクリ 


果南「鞠莉…あんた今までどういうーー」 


鞠莉「何も聞かないで!!!!」 


果南「!?」 


千歌「……」ビクッ 


花丸「……」 


鞠莉「ライブが終わったら話すから…だから今は何も聞かないで……」 


果南「……」 


果南「分かった…」 


千歌「…じゃあ、全員揃ったし通して練習しよう!」

228: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:23:08.46 ID:NMHIafx00


「17:00になりました。17:30より開催の《Aqours×Saint Snow スペシャル合同ライブ》を見学される方は屋上にお集まりください。また、本日淡島より特別に出航する遊覧船からもその映像をご覧になれます。尚、ライブの関係上、閉会式の開催が大変遅くなります他、生徒の多くが参加できない可能性を考慮し、本日、18:00から開催予定の閉会式は中止とし、明日の朝礼で行います。繰り返しますーー」 


ザワザワ… 

ザワザワザワ… 


梨子「うわ…こんなにたくさん集まってる…」 


善子「我が鼓動よ…如何なる理由で刻の波長に乱れが生じる?」ブツブツ 


果南「大丈夫。深呼吸して?ライブも、この後の作戦もきっと成功するよ」 


果南「…って、あれ?曜と花丸は?」 


千歌「さっきトイレに行ったような…」 


鞠莉「……」

229: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:24:08.90 ID:NMHIafx00


ジョバァァァァァァァ… 


花丸「ほっ…」ガチャ 


曜「大丈夫?もうすぐ始まるよ」 


花丸「うん!」 


花丸「…それより、どう?」 


曜「正直マズいね…このままだと…」 



プルルルルルル! 


花丸 曜「!!」 


花丸 曜 「来た!」 


曜「もしもし!」ガチャ 


花丸「聖良さん!」 


聖良『もしもし曜さん!…それに花丸さん!異世界に行く方が分かりました!!』 


花丸「ずら!?」 


曜「どうやって行くんですか!?」

230: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:25:46.31 ID:NMHIafx00


聖良『理亞が持っていた歩学祭のパンフレットにこの学校の校歌が載っていました』 

~夕凪の梢~ 

黄昏迫る 港町 
津々浦々を 紅く染めん 
眠りにつかん 風と波 
静か穏やかの 安らぎ破り 
顔を覗かせよ 妖百鬼 
吹き荒れる 風と波 静寂よ沈め 
ああ我ら強くあらん 全てに抗い 
ああ我ら浦の星 ここに有り 


曜「ああ、《夕凪の梢(ゆうなぎのこずえ)》ですね!それがどうかしたんですか?」 


聖良『何故浦の星女学院の校歌なのに曲名が《夕凪の梢》なのか気になって調べてみたんです。すると、とんでもない事実が分かりました!』 


聖良『これは元々校歌なんかじゃなかったんです!調べたらこの曲が存在する記述があるのは1868年以降…最初の神隠しが起きた年だったんです!』 


曜「えっ!?」 


花丸「なんでその年から…」 


聖良『おそらくこれは神隠しと同時に生まれた曲…《淡島宇迦之御魂神》が異世界に生贄を引き込むために作った曲です。これをとある条件下で歌うと異世界の扉が開いてしまうのです!』 


曜「その条件は!?」 


聖良『曜さん、《夕凪(ゆうなぎ)》と《梢(こずえ)》の意味はなんですか?』 


曜「えっと…夕凪は、海辺で夕方に風が吹いて無い状態のことです!海から陸の方向に向かって吹いてる風が、夜に逆向きになるまでの間しばらく無風になります!それが夕凪です!梢は…」 


花丸「木の枝のことずら!!」 


聖良『そうです。つまり《夕凪の梢》は夕方に風が止み、全く揺れてない木の枝のことを表しています』 


聖良「…そして、この曲は富士山の方角に向かって歌うそうですね?」

231: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:27:03.90 ID:NMHIafx00


聖良「富士山に身体を向けて歌った場合海、それから陸はどちらの方向になりますか?」 


曜「えっと…左側に海、右側に陸になります」 


聖良「それを踏まえたもう一度歌詞を見てください… 


~夕凪の梢~ 

黄昏迫る 港町 
津々浦々を 紅く染めん 
眠りにつかん 風と波 
静か穏やかの 安らぎ破り 
顔を覗かせよ 妖百鬼 
吹き荒れる 風と波 静寂よ沈め 
ああ我ら強くあらん 全てに抗い 
ああ我ら浦の星 ここに有り 


この歌詞の中では一度風が止み、もう一度風が吹いています。 
つまりその間…真ん中の4行目と5行目が《夕凪》の時間となります。 
最初は海の方向…つまり左方向から風が吹くので一番左の文字《黄》《津》《眠》… 
そして夕凪は無風なので真ん中の文字《の》、《よ》… 
再び風が吹いた時は陸の方向…つまり右方向から風が吹くので一番右の文字《め》、《い》、《り》… 
これらを繋げて読むと…』 


曜 花丸「狐の嫁入り!!!!!」 



聖良『仮に風が吹いた時の梢…つまり枝の揺れる向きにある文字が答えだとしたら最初は一番右の文字、真ん中はそのまま、最後は一番左と逆になるのですが、この歌詞はこの世界と対になる異世界を示しています。枝が無い位置に見えない何かがある…そういった認識でしょう。まあどの道答えは《狐の嫁入り》で正しいと思います」 


聖良『つまり異世界に行くための条件は、1868年から50年毎の8月3日~8月11日であること、夕凪の時間であること、その時間にこの歌を歌うこと、そして…狐の嫁入り、つまりその日に天気雨が降っていること!!』

232: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:28:36.33 ID:NMHIafx00


曜「じゃあ今日、まだチャンスはあるってことですね!」 


聖良『はい。恐らく…ダイヤさんは放課後の戸締りの時間によくそれを歌っていたのでしょう。そして狐の嫁入りのあった8月3日の放課後の夕凪の時間も…まあ、《淡島宇迦之御魂神》はダイヤさんのそんな習慣も知っていたんでしょうけど』 


曜「でも、私と千歌ちゃんが淡島神社で意識を失った日は…確かに日付も時間も天気雨も当てはまるけど、《夕凪の梢》は歌いませんでした!」 


花丸「マルのせいだ…」 


曜「え!?」 


聖良『どういうことですか!?花丸さん!』 


花丸「あの日の夕方…善子ちゃんと歌っちゃって…途中までだったけど、まさかこんなことになるなんて…ごめんなさい」 


聖良『途中まで…成る程、だから二人はギリギリのところで助かったわけですね』 


曜「…いいよ花丸ちゃん。気にしないで」 


花丸「!!」 


曜「過ぎちゃったことは仕方がないよ。それに私も千歌ちゃんも無事だからさ。今大事なのはその方法でダイヤさんを救うことだよ!」 


花丸「うん…分かった…!」 


聖良『曜さん、お得意の体感天気予報で夕凪が発生する時間を調べられますか!?』 


曜「試してみます!!」ダッ 


花丸「ずら!」ダッ

233: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:29:16.72 ID:NMHIafx00


ガラガラガラガラ! 


サァァァァァァァ…… 


曜「雲が無いのに雨が降ってる…」 


花丸「狐の嫁入りの条件達成ずら…」 


曜「……」スッ 


ヒュォォォォォォ… 


曜「……」 


曜「……」 


曜「18:10~18:30頃だと思います。短い…短過ぎる…普通はもっと長いんですが、なんだろう。空気が重い…」 


聖良『その時間なら想定内です!私達が入れ替わるタイミング、18:00から体育館で閉会式が同時進行するはずです。式中のプログラム上校歌を歌うと思うので、それが夕凪の時間と被ーー』 


曜「中止です」 


聖良『え』 


曜「閉会式はライブの関係で明日に延期になりました。そのタイミングでSaint Snowと入れ替わって私たちが淡島へ行っても異世界への扉は…」 


聖良『そんな…では誰かが歌って残るというのは!?』 


花丸「元々全員で行く作戦だったから、誰か一人でも残ったら《淡島宇迦之御魂神》に怪しまれるよ!」 


曜『おわっ!?』 


聖良『どうしました曜さん!?』 


千歌「もう!こんなところで何してたの!」グイグイ 


果南「ライブ始まっちゃうよ!!」グイグイ 


花丸「ずらぁ!?」ズルズル 


曜「すみません時間ですまた後で!」プツッ 


聖良『ちょっと曜さん!?曜さん!!』 


聖良『切れた……』

234: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:30:14.37 ID:NMHIafx00


ザワザワ 

ザワザワザワ… 


「まもなくステージが始まります!今しばらくお待ちください!!」 


サァァァァァァァァ… 



千歌「……」 


梨子「……」 


曜「……」 


花丸「……」 


善子「……」 


果南「……」 


鞠莉「……」 


千歌「辛かったね…」 


梨子「うん…」 


千歌「怖かったね…」 


花丸「ずら…」 


千歌「分かってほしかったよね…」 


善子「ええ…」 


千歌「分かってあげたかったよね…」 


果南「うん…」 


千歌「寂しかったよね…」 


鞠莉「……」 


千歌「諦めないって誓ったよね…」 


曜「うん…覚えてるよ千歌ちゃん」

235: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:31:44.96 ID:NMHIafx00


千歌「この8日間で色んなことがあった。大切な人がいなくなった。Aqoursが壊れかけた。ライブも一日だけになった」 


千歌「でも、色んな苦労を乗り越えた。大切な人のために戦った。壊れてしまわずに元に戻ろうとした。そして、こうして一日だけのライブにみんなが集った」 


千歌「行こう。みんなが待ってる。私たちAqoursをずっと支えて、応援してくれたみんなが…」バッ 


梨子「…」バッ 


曜「…」バッ 


花丸「…」バッ 


善子「…」バッ 


果南「…」バッ 


鞠莉「…」バッ 


千歌「Aqours!!」 


全員「サーンシャイン!!」バッ!

236: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:32:36.70 ID:NMHIafx00


見ーたーことーなーい夢の軌道 

追いかーけてぇぇぇ!!! 



パァァァァァァン!!! 


ワァァァァァァァァァァァ!!! 




ーー遊覧船 


「始まった!!」 


「曜ちゃぁぁん!!」 


「ヨハネ様に祈りを!!」

237: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:33:03.85 ID:NMHIafx00


ーー 
ーーーー 


「……」 



「ん……」 



「ここは…」 



「ああ……」 



「そうでしたわ…私……」 



「ルビィ…疑ってごめんなさい……」 



「本当に…本当に美しい写真ですわ……」 



「そしてみなさん…申し訳ありません…」 



「……」 



「…あれからどれくらい経ったのでしょう」 



「ん?」 



「!!」 



「お腹の傷が…塞がってますわ……」 



「それにこの模様は……」 




シュボッ!シュボッ!シュボボッ!! 



「!!!」 


ーーーー 
ーー

238: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:34:06.47 ID:NMHIafx00


ワァァァァァァァァァァァ!!! 



千歌「ありがとうございまぁぁす!!」 


曜「さあ、続いて四曲目です!みなさん!お手持ちのスカイランタンの用意はいいですかー!!!!」 


ワァァァァァァァァァァァ!!! 


梨子「遊覧船でご覧の皆さんもよろしいですかー!!!!」フリフリ 


ーー遊覧船 


「梨子ちゃあああああん!!!」 


「いつでもいいよぉぉ!!!」 


「ヨハネ様に堕天の光を…」 



千歌「それでは聴いてください。 
《夢で夜空を照らしたい》」 



ポワッ…チラチラ… 


チラチラ…チラチラ… 



ワァァァァァァァァァァァァァ!!! 


「おおおお!すごい!!」 


「綺麗…この間よりいっぱいある!!」 


「ママ!私が飛ばしたやつ!!」 


「あ!海の方からも飛んでる!!」

239: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:35:31.12 ID:NMHIafx00


ーー 
ーーーー 


聖良『明日のライブの演出でスカイランタンを飛ばしてください』 


千歌『スカイランタン!』 


花丸『PVの時のずら』 


善子『何でまた…』 


聖良『ダイヤさんが連れ去られた時、淡島神社で発光現象…いえ、狐火が見えた可能性があります。もし明日のライブ中にでもそれが現れたら集まった一般の方がそれを見て不審に思うはずです』 


千歌『じゃあスカイランタンで誤魔化すってことですね!』 


聖良『今回は船の上からも飛ばしますからかなり効果的だと思います』 


聖良『きっと、かなり盛り上がりますよ』キラッ 


ーーーー 
ーー 



善子「~~♪(成る程…よく考えたわね)」 


花丸「~~♪(そろそろ時間ずら)」 



~♪ 


ワァァァァァァァァァァァァァ!!! 


千歌「ありがとうございました!!!」 


全員「ありがとうございました!!!」

240: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:36:31.00 ID:NMHIafx00



「あ!見て!海の方!!」 


「フェリーだ!あれ渡辺さんちのじゃない!?」 


「こっちに来るよ!」 


「すごい光ってる!何だろう!!」 



『みなさん、ステージ上のモニターにご注目ください』 



千歌「今だ!みんなはけて!」ササッ 


全員「了解」ササッ 



パッ!! 


「あ!フェリーの上と中継が繋がってる!」 


「甲板に誰か立ってるよ!!」 


「Saint Snowだ!!」 


ワァァァァァァァァァァァァァ!!! 


デデッデデッデッデッデッデ… 
デデッデデッデッデッデッデ… 


聖良「最高だと 言われたいよ 真剣だよ!」 


聖良 理亞「We gotta go!!」 


ヒュ~~…ドーン!ドドーン!!

241: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:37:31.72 ID:NMHIafx00


ーー学校前坂道 


千歌「はぁ…はぁ…」タッタッタッタッタッ 


曜(風が弱くなってる…もうすぐ時間だ)タッタッタッタッタッ 


花丸「どうしよう!このままじゃ異世界に行けないよ!」タッタッタッタッタッ 


梨子「でもとにかく淡島に行かないと!!」タッタッタッタッタッ 


果南「ちょっと待って!鞠莉がいない!!」タッタッタッタッタッ 


善子「あああもう!私が探してくる!!!」タッタッタッタッタッ 


梨子「ちょっと善子ちゃん!!!」タッタッタッタッタッ 

果南「くっ…仕方が無いよ時間がない!花丸!!私の水上バイクに乗って!」バッ 


花丸「ずら!」バッ 


曜「私、鞠莉さんのバイクを動かすよ!千歌ちゃん、梨子ちゃん狭いけど乗って!」バッ 


千歌「うん!」バッ 


梨子「お願い曜ちゃん!」バッ 



果南「出発!」ブルルン! 


曜「しっかり掴まってよ!」ブルルン! 



ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!! 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!! 

242: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:38:10.26 ID:NMHIafx00


ーー遊覧船 


「いいぞぉぉぉ!!」 


「せーの!!」 


「「「聖良 Come on!!」」」 



ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…… 



「ん?何?」 


「水上バイクだ!」 


「こっちに来るわ!」 


バビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!! 


「「!?!?」」 


ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…… 


「何?今の…」 


「ねえ、Aqoursが乗ってなかった?」 


「バカ言え、ついさっきまで歌ってただろ!」 


「見て!Saint Snowの新曲よ!」 



ワァァァァァァァァァァァ!!!

243: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:39:22.01 ID:NMHIafx00


ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…… 



果南「よし!」ザッパーン! 


曜「着いた!」ザッパーン! 



千歌「作戦通り、私と梨子ちゃんと曜ちゃんが異世界に行く!善子ちゃんはいないから…花丸ちゃんと果南ちゃん!私たちが行った後、巻き込まれないようにしばらくしてから神社手前の椅子のところで待ってて!ダイヤさんを救出したらすぐ受け渡すからボートまで走って!!!」タッタッタッタッタッ… 


果南「分かった!」 


梨子「お願いね!!」タッタッタッタッタッ… 


花丸「必ず生きて帰ってきてね!」 


曜「任せて!ヨーソロー!!タッタッタッタッタッ… 



シーン… 


果南「……」 


花丸「……」 


果南「本当に大丈夫かな…」 


花丸「…うん、狐火が見えたらすぐに向かうずら」 


花丸(まずい…このままじゃ異世界に行けない) 




梨子「はっ…はっ…はっ…」タッタッタッタッタッ… 


千歌「本当に…本当に異世界に行けるのかな…」タッタッタッタッタッ 


梨子「分からない…でも行くしか…」タッタッタッタッタッ 


曜(まずい…善子ちゃんは歌のことを知らない…衣装のままだから携帯も無いしどうやって伝えれば…)タッタッタッタッタッ

244: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:39:49.41 ID:NMHIafx00


ーー校庭の隅 


ワァァァァァァァァ… 


鞠莉「ふふっ…盛り上がってるわね」 


タッタッタッタッタッ… 


鞠莉「……」 


善子「はぁ…はぁ…はぁ…」 


鞠莉「ハァイ…ヨハネ。お疲れ様?」 


善子「聞かせてもらうわ。昨日の続き」 


鞠莉「ふふっ…」 


善子「……」ゴクリ 


善子(ん?) 


善子(4階のあの窓…誰かがいる!) 


善子(いや…もう1人!) 

245: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:40:21.44 ID:NMHIafx00


ーー淡島 


果南「……」 


花丸「……」 


果南「まだ見えないね」 


花丸「う、うん…」 


果南「少し登っとく?」 


花丸「そうするずら…」 


タッタッタッタッタッタッタッタ… 



ーー淡島神社 


千歌「はぁ…はぁ…はぁ…」 


梨子「着いた…着いたけど…」 


千歌「何もない!!」 


梨子「そんな…じゃあやっぱり…」 



曜(くっ…ここまでか……) 



花丸(どうしよう…もうダメずら……) 






ルビィ「……」スゥッ… 


ルビィ「黄昏迫る 港町♪」

246: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:41:48.30 ID:NMHIafx00


ルビィ「津々浦々を 紅く染めん♪」 


ルビィ「眠りにつかん 風と波♪」 


ーー 
ーーーー 


ダイヤ『ああ!またアイス落としたりして!』 


ルビィ『うゆゆ…』ポロポロ 


ダイヤ『ほら、もう泣かないの!こっちあげるから食べなさい?』 


ルビィ『うん…』 


ーーーー 
ーー 


ルビィ「静か穏やかの 安らぎ破り♪」 


ーー 
ーーーー 


ルビィ『ルビィは花陽ちゃんかな~♪』 


ダイヤ『私は断然、エリーチカ!生徒会長でスクールアイドル!クールですわ♪』 


ーーーー 
ーー 

ルビィ「顔を覗かせよ 妖百鬼♪」ポロッ 


ーー 
ーーーー 


ダイヤ『お帰りなさい』 


ルビィ『お姉…ちゃん?』 


ルビィ『うっ…うぅ…』 


ルビィ『うわぁぁぁぁぁぁん!!』ガバッ 


ダイヤ『よく頑張ったわね』ギュッ 


ーーーー 
ーー 

ルビィ「ふ…吹き荒れる…グスッ…風と波…静寂よ沈…め…」ポロポロ

247: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:42:41.23 ID:NMHIafx00


ーー淡島神社 


クォォォォォォォォォン… 
シャララン…シャララン… 


千歌 梨子 曜「!!!!!!」 


千歌「この音!夢で聞いたのと一緒だ…!」 


曜「うん!多分異世界に繋がりかけてる!」 


梨子「みんな!茂みに飛び込んで!!」ガサッ 


千歌「うん!」ガサッ 



曜(誰かが…誰かが歌を歌っているんだ…)ガサッ 

248: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:43:07.05 ID:NMHIafx00


ーー教室棟4階窓 


ルビィ「ああ…グスッ…我ら強く…ヒック…あらん…す、全てに…ううっ…抗い」ボロボロボロ 


ーー 
ーーーー 

ダイヤ『携帯は必ずお姉ちゃんが取ってきますわ。だからルビィは先に帰っていてください』 


ルビィ『ごめんねお姉ちゃん…』 


ダイヤ『帰ったら、写真のことたくさん話しましょ?』ニコッ 


ーーーー 
ーー 


ルビィ「うっ…うう……」ガクッ 


ルビィ「お姉ちゃん…」ポタポタ 


スッ… 


ルビィ「!!」 


?「大丈夫。あなたたら最後まで歌える。大好きなお姉ちゃんを助けるために一緒にここまで来た。違う?」 


ルビィ「……」 


ルビィ「うん…」スッ 


ルビィ「……」ヨロヨロ 


ルビィ「ああ…我ら浦の星……」ボロボロ 


ルビィ「ここに…あ…り……」ボロボロ 


ルビィ「うっ…うぅ……」ボロボロ 



ルビィ「うわぁああああああああん……

249: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:43:56.79 ID:NMHIafx00


ーー淡島神社 


ボッ!ボッ!ボッ! 


千歌 曜 梨子「!?!?!?」 


ボッ!ボボッ!ボボボボッ!! 


千歌「火だ…」ボソッ 


曜「あんなにたくさん…」ボソッ 


千歌「それに月が真っ赤だよ…」 


曜「夢とおんなじだ…」 


梨子「待って!何か階段を登ってくる…」ボソッ 


クォォォォォォォォォン… 
シャララン…シャララン… 


梨子「狐の鳴き声と鈴の音…狐の嫁入りという名の生贄の儀式ね…そしてあの行列……北斎の絵によれば真ん中に一人だけ人間の女性がいた。おそらくそれが…」 


クォ"ォォオオ"ォ"ォォォォン… 

シャララン…シャララン… 

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ… 



千歌(ひぃっ……)コソコソ 


曜(しっ…静かに千歌ちゃん)コソコソ 



クォ"ォォオオ"ォ"ォォォォン… 

シャララン…シャララン… 

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

250: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:45:48.71 ID:NMHIafx00


梨子(袴も…提灯も笠も下駄もみんなボロボロ…その下に見える肌は…どう見ても人間じゃない。狐。その狐が二足歩行で列を成して…歩いてる……) 



クォ"ォォオオ"ォ"ォォォォン… 

シャララン…シャララン… 

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ… 



梨子(ただ、確かに怖さは勿論あるんだけど…それ以上に…) 


梨子(なんだか物悲しい…) 


梨子(…って、ダメよ狐にほだされちゃ!)ブンブン 


梨子(!!) 


梨子(いた…あれだ。真ん中に大事そうに囲まれて歩いてる着物のあの人…) 


梨子(狐のお面をしてるけど…間違いなくあの髪は……) 


梨子(ダイヤさん!!) 



ザッ…ザッ…ピタッ… 



千歌 梨子 曜(!?!?) 


千歌(止まった…) 



『《ウカノミタマ》サマガミエナイ…』 


『ギシキノジカンニアラワレナイ…』 



曜(狐の言葉が分かる……)ボソッ 


千歌(うん…)ボソッ 



『!!!』 


『ニンゲン!ニンゲンノニオイ!!』

251: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:47:14.24 ID:NMHIafx00


千歌 梨子 曜(!?!?!?)ビクッ 


『ニンゲン!ニンゲンダ!!』 


『ニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン!』 


『ニクイニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン!!』 


『ユルサナイ…クイコロシテヤル…』 


『グォ"ォォォ"ォ"ォ"ォオォ"ォ""ン』ゴキゴキ 


『ギュォォ"ォ"ォォォ"ォ"ォ"オ"ォン"』ゴキゴキ 


梨子(ひっ…)ガクガク 


曜(殺される…)ガクガク 



ガサッ!! 


『!!!』 


梨子 曜「!?!?!?!?!?」 



千歌「ダイヤさんを返して!!!」

252: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:47:59.44 ID:NMHIafx00


梨子(千歌ちゃん!!) 


曜(こうなったら…) 


ガサガサッ!! 


曜「そうだ!ダイヤさんを返して!!」バッ 


梨子「お願い!!!!」バッ 


『ニンゲンダ!!!』 


『ニンゲンダニンゲンダ!!!』 



ダイヤ(!?) 


ダイヤ(この声……まさか!!) 


バサッ! 


ダイヤ「千歌さん!梨子さん!曜さん!!」 


千歌 梨子「ダイヤさん!!!」 


曜「よかった…無事だった!!」 


ダイヤ「逃げてください!あなた達も殺されてしまいます!!」 



千歌 梨子 曜「嫌です!!!」 


ダイヤ「!?」

253: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:48:47.64 ID:NMHIafx00


ダイヤ「どうして…私はみなさんを疑った……故にこうして捕らわれーー」 


梨子「ダイヤさん!!!!!!」 


ダイヤ「!!!」 


梨子「…元の世界ではダイヤさんの存在が無かったことになってます!ダイヤさんだけじゃない…今までこうしてさらわれた人はみんな忘れられてるんです!!それって…それって悲し過ぎます!!好きとか嫌いとか…よりもいなかったことになってるって悲し過ぎます!!!」 


ダイヤ「梨子さん…」 


曜「でも記憶を持っていた、思い出した私達はすぐに結束してダイヤさんを救いたい!って思いました!!みんな待ってるんです!!!誰も責めてなんかいません!!!ダイヤさんはみんなが必要としてます!!!」 


ダイヤ「曜さん…」 


千歌「ダイヤさん。富士山の写真…見ましたか?」 


ダイヤ「!!!」 


千歌「とっても美しいですよね。私も写真、撮りたかったなって思いました…でも、私は嬉しかった。だって、ここ淡島神社のてっぺんで8人でその美しさを共有できたから。でも満足してない…だってダイヤさんがいなかったから!!」 


ダイヤ「千歌さん…」 


千歌「ダイヤさん!戻ってきてください!!笑ったり、泣いたり、頑張ったり…そういうの全部Aqoursみんなで経験していきたい!誰か一人でも欠けたら嫌だ!!みんな…みんな待ってるんです大好きなんですダイヤさんのこと!!」 


千歌「ルビィちゃんが悲しんでる!!」 



ダイヤ「はっ!!!!」 

…… 
………… 


ルビィ『お姉ちゃん…ごめんなさい……』 


ダイヤ『ルビィ…ごめんなさい……』 


………… 
…… 


ダイヤ「ああ…」ポロッ

254: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:49:51.12 ID:NMHIafx00



『クイコロセ!!!』 


『ニンゲンヲクイコロセ!!!』 


『ニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン!!』 


『グォ"ォォォ"ォ"ォォ"!!!!』 



?『我が神聖なる地にて長きに渡り住を成し、醜き邪念でその安寧を損ねる不届き者よ…』 


千歌 梨子 曜『!?!?』 


ダイヤ『!?!?』 



??『消え去れ!!!!!』ズォォォォォォ!!!! 



『グォ"ォォ"ォォ"ォ"ォ"!?!?』ズズズ 


『カラダガトケル!?!?』ズズズ 


『ニンゲンユルザナイユルザナイユルザナイィィィィィィ…』ズズズ 


スゥゥゥゥ…… 



千歌「狐が……」 


曜「全部消えた……」 


梨子「今の声どこかで…」 


ダイヤ「……」フラッ 


ドサッ… 


千歌 梨子 曜「ダイヤさん!!」ダッ 


ダイヤ「うっ…うぅ……」 


梨子「お腹…お腹を抑えてる!」 


曜「ちょっと失礼します…我慢してください…」ゴソゴソ 


千歌 梨子 曜「!!!」 


千歌「何これ…狐の歯型と文字がいっぱい…」 


梨子「多分狐の呪いよ…!」 


曜「どうしよう…!」

255: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:50:42.17 ID:NMHIafx00


?「はぁ…はぁ…」タッタッタッタッタッ 


?「狐火が…狐火が見えた…」タッタッタッタッタッ 


?「畜生…」タッタッタッタッタッ 


………… 
…… 


?「はぁ…はぁ…はぁ…」 


?「早くあっちに行かなければ……」 


?「!!!」 


?「なんだこれは…!?」 


?「き、狐火じゃない……」 


?「ど、どういうことだ!?」 



???「スカイランタンです」 


?「!?!?」 


???「ライブの演出で飛んできたんでしょうかねぇ?それとも…」 


???「あなたを欺くために仕掛けてあったんでしょうかねぇ?そんなに必死に走って…」 


?「どうして……」 


???「8月3日、黒澤ルビィさんを言葉巧みに誘い携帯電話を持って来させ、神社に隠し、それを囮にして黒澤ダイヤさんを淡島神社へおびき寄せ神隠し。今日まで記憶を失ったフリをして何食わぬ顔でみなさんと接してきた…そうですよね?」 







聖良「松浦果南さん…いえ、《淡島宇迦之御魂神》!!!」 


果南「どうして貴様がここにいる!!!」

256: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:52:12.14 ID:NMHIafx00


花丸「はぁ…はぁ…」タッタッタッ… 


聖良「お疲れ様です花丸さん。道中で殺されなくてよかったです」 


花丸「酷いずら…」 


果南「どういうことだ!?何故貴様がここに!!」 


聖良「中身が漏れてますよ。果南さんのまま冷静に話してください」 


聖良「あそこのフェリーで踊っているのは美渡さんと志満さんです」 


果南「なっ…!?」 



ーーフェリー甲板 


理亞(美渡)「はぁ…はぁ…本当にこんな変装でバレないんだよなこれ…?」フラフラ 


聖良(志満)「はぁ…はぁ…大丈夫よ。モニターの方には今日事前に撮影した本物のSaint 
Snowの合成映像を流してるから…お客さんはみんな中継してるって思い込んでるわ!」ヨロヨロ 


理亞(美渡)「はぁ…はぁ…全く、一日で既存曲のダンス全部覚えろなんて無茶言って…」フラフラ 


聖良(志満)「はぁ…はぁ…ふふっ。これも狐さんを化かし返すためなんだから我慢我慢!」ヨロヨロ

257: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:53:10.30 ID:NMHIafx00



………… 
…… 


聖良「正直、曜さんの電話を受けた時は《夕凪の梢》を歌う方法が無いと一瞬諦めかけましたが…理亞、そしてルビィさん…ナイスです」 



ーー教室棟4階窓 


ルビィ「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」ガバッ 


理亞「よくやったわ。泣き虫なんて言ってごめんなさい。あなたは強い。本当によく頑張ったんだから…」ギュッ 


理亞(分かるわ。姉を慕うその気持ち…)ギュッ… 


理亞「ん?」 


理亞「校庭の隅にいるのは…」

258: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:55:07.15 ID:NMHIafx00


………… 
…… 


果南「ふーん…じゃあ最初から私をハメるために行動してたんだ」 


聖良「ええ、そうですよ。まあ、異世界に行く方法が分かったのはついさっきでしたからヒヤヒヤしましたが…逆にそれでよかったのですね。もし昨日の夜に分かっていたら机のメモに書いてしまっていましたから。朝一で起きて部屋を物色し推理状況を確認していたであろうあなたにバレていたのは間違い無いですからね」 


果南「昨日、朝来て驚いたよ。まさかこんなに推理が進んでるなんて思わなかったからね。旅館の手伝いやら散らかった資料の整理したフリして物色してみれば…ったく、北斎のジジイ余計な事しやがって…誤算だった」 


花丸「とにかくこの8日間は誤算だらけだったよね?」 


果南「……」 


花丸「8月3日の黄昏、ダイヤさんを異世界へ連れた。例え4日に警察の捜査が来ても分かるはずないし…強いて言えばルビィちゃんが携帯電話のことや果南さんがランニングに持っていくよう指示したことを漏らさないで欲しいと思っていたぐらい。幸いにもルビィちゃんはショックで事情聴取すら受けられない状態だったから無事5日になって皆の記憶から消え、11日は生贄の儀式…狐の嫁入りが今年も無事成功するだろうと思っていた」 


聖良「最初の誤算は梨子さん、善子さん、そして花丸さんが淡島へ潜入したこと」

259: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:56:08.34 ID:NMHIafx00


聖良「神隠しの直後、記憶操作前の4日の淡島は非常に『不安定』な状態でした。その状態で入り込めば何が起きるか分かりません。それを恐れたあなたは直ぐさま花丸さん達を呼び戻しました」 


聖良「そしてそれがそのまま二つ目にして最大の誤算へ。三人の記憶が何故か消える事無く残ってしまったことです」 


聖良「5日の朝、それはそれは驚き警戒したでしょう。しかし6日には皆勘違いだった、気のせいだった、疲れていたと口にしていたので大丈夫だろうと高を括ったのです。裏でダイヤさん救出のために必死に動いていたとも知らず」 


花丸「果南さんはよく天気を気にしていたずら。異世界に行くための条件がたまたま揃ってしまうのを恐れていたから」 


花丸「不幸にもその心配は形となってしまったずら。それは6日、天気雨(狐の嫁入り)の起きた日の夕方にマルと善子ちゃんが校歌を歌ったこと」 


花丸「梨子さん曰く一人で図書室の新聞を調べていたら鞠莉さんを探してる果南さんが来て、天気雨に変わった直後に図書室を飛び出して行ったって」 


花丸「それはマル達の校歌を察知したから。なんとか途中でやめさせることはできたけれどもう既に遅かった。新たなる誤算は…」 



聖良「千歌さん、曜さんが異世界に入りかけた事」

260: 名無しさん 2017/01/16(月) 20:59:24.16 ID:NMHIafx00


聖良「無論あなたは行方不明と聞いて心当たりが無いはずがない。近所の人の捜索隊に加わり我先にと淡島神社へ向かうとそこには倒れている二人がいた。…二人は全く目を覚めませんでしたが、いつか目を覚まし、もし何かを見ていたとしてそれを口にするようなことがあれば…と酷く恐れました。なんなら異世界に行ってしまって狐にでも食われてた方がよかったんですかね」 


聖良「次の日の7日、お見舞いという体で様子を見るため千歌さんの旅館を訪れたあなたとすれ違いで私と理亞は到着しました。もっと早くお会いしたかったです」クスッ 


果南「……」 


花丸「9日、文化祭初日。マル達が様子のおかしい鞠莉さんを追っかけてるのを見た時に思った。もしかしたらまだ事件を追っているのではないかと。でも、誰もが鞠莉さんに不信感を抱いていたのは明白…これだけでは何とも言えない。一応マル達に便乗して十千万に行こうとしたけど理亞さんに酷く嫌われたことでその機会を失っちゃったずら」 


聖良「そして昨日、10日の朝…あなたは非常に焦ったでしょう。千歌さんが目覚め、密かに進められていた推理の現状を知り、更に私や梨子さんが忽然と姿を消したのですから。あなたは何が起きているか分からなかった。あと一日で全てが終わるという時…」 


聖良「花丸さんの推理で私たちが神隠しにあったのでは無いと知ると、旅館に残ることを決めた。何故なら資料を物色できるし続いて目覚める可能性のある曜さんを見張ることができる良い機会だから」 


聖良「そして極め付けは千歌さんの突然の記憶の復活。そして曜さんの記憶が復活した状態での起床…そしてこれに気付けなかったこと。そして異世界に行く方法は分からなかっただろうから大丈夫だろうと、先程までの演技に騙されたことです」 


果南「けっ…厄介な奴等だ。ちょこまかうろちょろ…だが何故記憶が残ったり戻ったりした?」 


花丸「善子ちゃんのロザリオずら」 


果南「なっ!?」

261: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:42:37.53 ID:NMHIafx00
花丸「最初にマル達がここに侵入した時善子ちゃんがこのロザリオを配ったずら」ジャラン 


花丸「これは善子ちゃんが魔術店で特別に仕入れたものなんだけど、素材は野犬の牙。狐の天敵…」 


花丸「不安定な淡島神社へ行っても被害が無かったのは、これがマル達の記憶を守ってくれたからなんだよ」 


花丸「でも拝殿の裏で梨子さんはそれを落とした。そしてそのロザリオは千歌さんによって拾われ、眠っている間もずっと握りしめていた。だから少し時間はかかったけど千歌さんにかかった呪いが消え、幸いにも目を覚ますことができた」 


聖良「ロザリオにそんな力があると確信したのは《富嶽の間》に閉じ込められた私達を千歌さんが救い出し、梨子さんが千歌さんに抱きついた時です。その瞬間、梨子さんは倒れ千歌さんの記憶が戻りました。千歌さんはロザリオの持ち主の梨子さんの記憶を得たのです。逆に梨子さんは、淡島神社でロザリオを落としてから果南さんの家に行くまで、不安定な瘴気に当てられれていました。その時のツケが千歌さんに働いたプラス作用とは逆のマイナス作用として遅れてやってきたのです」 


果南「そんなこと言ったらその時、善子のロザリオは神社の途中の階段に落ちてた!そして私が拾った!つまりずっとロザリオを手にしてなかった善子はとっくに意識と記憶を失っているはず!」 


花丸「善子ちゃんが持っていたのは一つじゃなかったずら」 


果南「!?」 


花丸「あのロザリオを大量に買い占めてジャラジャラ持ち歩いてた。果南さんが拾ったのはその一つずら」 


聖良「その仕組みを理解した私達は昨日の夜、眠っている梨子さんと曜さんと…起きている千歌さん、花丸さん、善子さんがそれぞれロザリオを持ち輪になって手を繋いだのです。これで二人の意識と記憶の回復、更に二人にも現状や推理状況を把握してもらうべく念じたのです。梨子さんはともかく曜さんが今朝取り乱さなかったのはそのため。隣で眠っていたルビィさんの記憶変化はダイヤさんとの気持ちのリンクによるもの…それに、そもそも4日以降淡島に行っていないのでこの方法は効果がありません。そして、その隣で眠っていたあなたは…」 


果南「犯人だからやる必要が無いと?」 


聖良「ふふっ…その通りです」 


果南「いつ私だって分かったわけ?」 



262: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:43:42.71 ID:NMHIafx00


花丸「おかしいと思う点はいくつもあったずら例えば6日の朝のこんな会話… 


ーー 
ーーーー 


曜「はぁ…ほんとやな季節だなぁ…」ショボン 


果南「当日何もなければいいけど…」 


曜「うん…今のうちにてるてる坊主でも作ろうかな…」 


ーーーー 
ーー 

なんで果南さんは『当日』なんて言い方をしたんだろうって。その時点ではまだ三日間開催するはずのAqoursステージだったのにこの言い方は変ずら。まるで11日に的を絞ったような…」 


花丸「それからマルがルビィちゃんと絵を描いて十千万に戻ってきた時、いつもは大人しいしいたけが引っ切り無しに吠えていたずら。最初は直後に訪れたSaint Snowのお二人に吠えてたと思ったんだけど、本当は直前に訪れていた果南さんに吠えていたずら。昨日も人通りが多かったから驚いていたわけではなく、果南さんが朝来てから…ずっと旅館の中にいる得体の知れない何かに向かって吠えていた…美渡さん曰く向かってずっと旅館の方を向いていたって」 


花丸「まあ他にもいくつか怪しいところはあったんだけど、全然気付けてなかったずら。何故なら鞠莉さんを犯人だと思い込んでいたから」 


花丸「4日、ダイヤさんが淡島で消えたってのを聞いた時真っ先に思ったのは、果南さんか鞠莉さんは目撃しなかったのかな?ってことずら。船とかを見て色々推理をしたのもそうだけど、もっと確信に近づいたことがあった」 


花丸「それはその日の朝学校に行った時に4階の窓が一箇所開いてたこと。その日教室棟は、捜査の関係で立ち入り禁止だったから窓の様子は昨日のダイヤさんの戸締りの様子がそのままになってたってずら。そこの窓から見える淡島は島の裏側。何にもない島の裏側を見て異常を察知できる場所なんててっぺんの淡島神社くらいしかないずら」

263: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:44:51.65 ID:NMHIafx00


花丸「そしてその淡島神社に行くには島に降りてから左側を周る。つまり果南さんの家の前を通らなければいけない。だから、なんで夜にこっそり侵入した暗闇のマル達に気付いて、まだ陽が出ている時に通ったダイヤさんの存在に気付かなかったのかなと思ったずら」 


花丸「でもそんなの、もしかしたらダイヤさんが右…鞠莉さんの家のある淡島ホテルの方を周って遠回りして神社に行ったかもしれないし、ダイヤさんに気付かなかったのも偶然かもしれない。だからはっきり言えなかったんだよ」 


花丸「それに、淡島神社に侵入した時も果南さんが助けてくれたと思いこんでいた上、鞠莉さんの不可解な行動もあったし、次の日の鞠莉さんの冷たさ…更にその次の日からの不審な教室徘徊もあってか、果南さんを疑うことなんて微塵も無かったずら」 


花丸「昨日、化学準備室で鞠莉さんを問い詰めるまでは」 


果南「ふーん、やっぱ鞠莉…何か分かってんだ?」 


花丸「いや、」 


果南「?」 


花丸「何も分かっていなかったずら」

264: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:45:27.18 ID:NMHIafx00


ーー校庭隅 


善子「あなたは昨日私とズラ丸にこう言った。『思い出せない。何も思い出せないの』って…」 


鞠莉「イエス…」 


鞠莉「……」 


鞠莉「すっごく…すっごく辛かったわ。私って、なんて最低なんだろうって思った…こんなんじゃAqoursにいられないって…」 


鞠莉「千歌と曜のピンチに駆けつけられなかったのも本当にごめんなさい。Aqoursが…いや、果南が怖かったの…」 


鞠莉「だから本当は、今日のステージも出ていいのかなって思ったわ。みんなを不安がらせて、私自身も整理できてない気持ちでステージに立とうなんて…」 


善子「……」 



理亞「誤解は解けたの?徘徊金髪おばあちゃん」スッ 


善子 鞠莉「!?!?」 


鞠莉「ホワッツ!?…あなたどうしてここに…」 


理亞「ああ。あなたも知らないんだ。そうだった。でも面倒くさいから後にして」 


善子「ルビィ!」 


ルビィ「すぅすぅ…」 


理亞「安心して。疲れて寝ちゃっただけだから。この子はちゃんとやってくれた。今頃淡島では姉様達が…」 


善子「そう…頑張ったわねルビィ…」 


ルビィ「むにゃ…お姉ちゃん……うゆ…」スヤスヤ

265: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:46:04.77 ID:NMHIafx00


花丸「善子ちゃんと一緒に鞠莉さんに問い詰めてたみたずら。そうしたら一言だけ…」 


花丸「思い出せない…何も思い出せない…って」 


果南「!!」 


花丸「最初は、ダイヤさんの存在が記憶から抹消されてるからだと思ったけど…本当は果南さんもいなかったから…三年生がスクールアイドルをしていたという過去がそもそも記憶に無かったから…」 


花丸「だから鞠莉さんは学校中をうろついていたずら。なんで私が生徒会長なんだろう。なんで私は日本に戻って来たんだろう。昔のスクールアイドルってなんだろう…あそこに行けば…いやあそこに行けば果南さんとスクールアイドルをしていたことやその他諸々の記憶が蘇るかもしれない…忘れているワケが無い。そう信じて何度も何度も…それが確信に変わるまでずっとマル達の元に来れなかった…一番辛かったと思う。無い記憶を信じてずっと抱えていた鞠莉さんは…」 


果南「……」 


果南「成る程ね」 


果南「…何もしないで明日を迎えれば泣きも悲しみも傷つきもせず綺麗サッパリ忘れられたってのに…人間とは愚かだな」 


聖良「バカはあなたです。150年もの間その魂を紡ぐため罪のない少女を犠牲にしたのです」 


果南「人間は皆同じだ。己の欲望のままに創造し少しでも気に入らないと破壊を繰り返す。そんな身勝手な立ち振る舞いに我がシモベたちもこの地に捨てられたのだ。ただ50年前のこの人間は実に我ら狐に忠実でな?自らその身を器として捧げてくれた…」 


聖良「50年前のこの人間…って」 


聖良「!!」 


花丸「まさか…果南さんって…」 



果南「ああそうだ。50年前に我が連れ去ったのは1968年8月11日当時18歳だった松浦果南」

266: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:47:08.46 ID:NMHIafx00


花丸「そんな…果南さんが50年前の犠牲者…」 


聖良「つまりあの写真の空白が果南さん、おかっぱ頭が当時のあなた…つまり《淡島宇迦之御魂神》ってことですね」 


果南「1868年。廃物毀釈で愚かな人間が多くの稲荷像を壊し、この島に捨てたことで我が子達の霊魂が集った。それまで人間を信じていた私は怒りに震え大社を飛び出した。我が子達を鎮めるためこの地に足を降ろすことにしたは良いが、ここは元々我の住む場所では無いが故、50年でその身が滅びてしまうことを知った」 


果南「我は50年に一度、この地への扉として機能する呪いの曲をこの地へ放った。それが《夕凪の梢》。それは自然と人間に歌われるようになった。そして50年後の1918年。人の出入りの珍しいこの地に一つの旅館が建った。当時そこで働いていた一人のおかっぱの少女は新たなこの地に興味を持った。そして8月3日の夕方、天気雨の降った日。少女はとある丘から《夕凪の梢》を富士に向かって歌った。そして、扉を開いた少女は我が器に相応しいと思い泣き喚くのを横目に連れ去った。そして11日に《狐の嫁入り》儀式を行い我はその少女の姿となった」 


聖良「酷い……」 


果南「時は経ち50年後の1968年。我はその少女の姿で再びこちらの世界に現れた。すると例の丘に浦の星女学院という学び舎が建っていた。我はそこの生徒として潜り込んだ。そこで出会ったのは当時18歳の松浦果南。彼女は学び舎のリーダー的存在で周りからも慕われていた。気さくな彼女は我にも優しく次第に打ち解けていった」 


果南「そして運命の日、私は彼女に面白い遊びがあると例の条件を全て達成させた後淡島へ誘い込み異世界へと連れた」 

267: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:47:44.79 ID:NMHIafx00


聖良「なんて残酷な…」 


果南「しかし松浦果南は事情を知ると抗うこと無く我に身を委ねた」 


花丸「どうして!!」 


果南「松浦果南は優しかった。こうなったのは私達人間のせいだ。だからこの身は捧げる。でもどうかこれ以上犠牲を出すのはやめてほしい。私で終わりにしてほしい…と」 


聖良「果南さん…」 


花丸「じゃあどうして…どうして今年、果南さんが千歌さんや曜さんと幼馴染だという《設定》で…ダイビングショップの娘という《設定》で…Aqoursのメンバーという《設定》で!!こんな…こんなこと……」 


花丸「あなたは約束をーー」 


果南「約束?」 


花丸「!!!」 



果南「ひゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

268: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:48:12.21 ID:NMHIafx00


聖良 花丸「!?!?」 


果南「そんなもの守るわけ無いだろう!?裏切るに決まっているだろう!?元々人間の裏切りにより我はこうなった!!!全て人間が悪いのだ!!!人間の言葉なんぞ信じるものか!?ひゃははははははははははははははははははははは!!!」 


花丸「ひどい…ひどすぎる…」グッ 


果南「さあお喋りは終わりだ!!!お前達を殺し我らの世界に忍び込んだ奴らも殺し我は黒澤ダイヤを新たな器とし再びーー」 



果南「再び……」 



果南「……」 



聖良「再び…?どうするんですか?」 



果南「どういうことだ…儀式の気配が…我が子達の気配が…しない!?」 



聖良「千歌さん達がダイヤさんを救出したようです。あなたの器はもうありません」 



果南「何を…」 



ヒュォォォォォォォォ… 



パラパラパラパラ… 



果南「!?!?」

269: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:48:47.06 ID:NMHIafx00


聖良「18:32。時間稼ぎがうまくいきましたね。夕凪の終わりです。つまりあなたはもう向こうの世界に行くことすらできない。終わりです」 


果南「わ…我が身が……滅びていく……!?」パラパラパラパラ… 


花丸「……」 


聖良「……」 


果南「そんな…こんな人間の……小癪なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」パラパラパラパラ… 


果南「グォォ"ォォォォォ"ォ"ォォォ………」パラパラパラパラ… 



サラサラ… 
ヒュォォォォォォォォ… 



花丸「……」 


花丸「終わった…」 


聖良「あっけない最後でしたね」 


花丸「…やっぱりショックです。マルの知ってる果南さんが実は……」 


聖良「仮に本物の松浦果南さんがこの時代の人間だったとしても、みなさんの知っているAqoursだったと思いますよ」 


花丸「え?」 


聖良「50年前の写真であの空白は常に輪の中心だった。みんなのお姉さん的存在で、傷付きやすく自らを犠牲にしてしまう程優しい…本当に優しい果南さんは、花丸さんの…いえ、みなさんの知っている果南さんそのものです」 


花丸「確かに…そうだよね。果南さん…」 


聖良「さあ、神社へ向かいましょう。千歌さん達が待っています」 


花丸「うん…!」 

270: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:49:47.50 ID:NMHIafx00


ダイヤ「はぁ…はぁ…」ググッ 


千歌「このままじゃダイヤさん死んじゃう!」 


梨子「とにかく水上バイクまで運びましょう!」 


曜「ダメだよ!こっちは異世界だから…」 


千歌「じゃあどうしたら…」 



スゥゥゥゥゥゥゥゥゥ… 



千歌 梨子 曜「!?!?!?」 


曜「なっ…なに!?」 


千歌「見て!月が戻ってるよ!!」 


梨子「禍々しい空気が無くなってる…間違いない!」 



千歌 梨子 曜「戻ってきたんだ!!」 


ダイヤ「うっ…」スゥゥゥゥゥゥ… 


千歌「ダイヤさん!」 


曜「傷が無くなっていく…!」 


梨子「…と言うことは聖良さん達、やってくれたのね…」 



花丸「おーい!!」タッタッタッタッ 


千歌「あ!花丸ちゃーん!!」 


花丸「!!」 


ダイヤ「は…花丸さん…」 


花丸「ダイヤさん…」 


花丸「う…うぅ……」 


花丸「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」ガバッ 

271: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:50:22.63 ID:NMHIafx00


ダイヤ「ちょ、ちょっと花丸さん!?苦しいですわ!」 


聖良「今はしばらくそうさせてあげてください。一番長く頑張っていた分、心に溜まっていたものも相当な物なんです」スッ 


ダイヤ「あなたはSaint Snowの…どうしてここに!?」 


聖良「ふふっ」 


千歌「よかった…よかった…」ズビッ 


曜「うん…終わったんだね…」グズッ 


花丸「うぇぇぇダイヤさぁぁん…」スリスリ 


梨子「……」 


ダイヤ「そうですか…」 


ダイヤ「花丸さん、千歌さん、曜さん、鹿角聖良さん…」 


ダイヤ「そして梨子さん…」 


梨子「……」ピクッ 


ダイヤ「本当に、ありがとうございますわ」ニコッ 


梨子「うっ…うぅ……」ポタポタ 



梨子「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」

272: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:51:18.89 ID:NMHIafx00


「ご来場の皆様にお知らせです。本日のライブは終了致しました。忘れ物の無いよう、先生方の指示に従って速やかに下校してください。先程連絡しました通り、閉会式はーー」 



美渡「はぁ…お、終わった…」グデッ 


志満「明日は筋肉で動けないかもね…」バタッ 


美渡「でもまあ…みんな上手くやってくれた……よね?」 


志満「ええ。ほら、あそこ見て」 


美渡「!!」 


美渡「淡島神社から何か飛んでる…」 



美渡「スカイランタン!!!」 


志満「そういうこと」ニコッ 


美渡「はははっ…」 


美渡「バカ千歌ー!!よくやったぞー!!!!」ゴロン 


志満「ふふっ」ゴロン 


志満(明日渡辺さんちにお礼しに行かないとね…ここまでやってもらったんだし…)

273: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:51:49.04 ID:NMHIafx00


「坂道暗いので気をつけてお帰りくださーい」 


ルビィ「すやすや…」 


善子「ルビィ変わろっか?ずっとおぶってるでしょ?」 


理亞「いい」 


善子「あっそ」 


理亞「……」 


理亞「ありがとう」 


善子「!!」 


理亞「ありがとう。津島善子」 


善子「え、ええ…」 


善子「こ、こちらこそ…ありがとね?」 


理亞「うん…」 


鞠莉「……」 


善子「あなたのバイク、勝手に使っちゃったと思う…ごめん」 


鞠莉「ふふっ…いいわよ。だって…」 


鞠莉「ダイヤのためでしょ?」ニコッ 


善子「思い出したの…!?」 


鞠莉「うーん…なんかよく覚えてない!色々!!」 


理亞「はぁぁ!?!?」 


理亞「あなた、私達がどれだけ苦労したか分かってるの!?!?」 


善子「バカ!ルビィ起きちゃうでしょ!!」 


理亞「うるさい!!」 


善子「うるさいって何よ!」 


善子 理亞「ぐぬぬぬぬぬぬ…」 


善子 理亞「ふん!!」プイッ 


鞠莉「ふふふっ」

274: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:52:35.00 ID:NMHIafx00


ーー十千万 


善子「あ…ああ……」 


ダイヤ「善子さん。心配かけて申し訳ありません…そして、ありがとうございますわ」ニコッ 


善子「うぅっ……」ボロボロ 


鞠莉「ダイヤぁぁぁ!!」モギュッ 


ダイヤ「ま、鞠莉さん!?」 


鞠莉「なんだかすっごく久し振りな気がするわ~!!」スリスリ 


ダイヤ「ちょ…ちょっと鞠莉さん…!」 


ダイヤ「まあ、確かに…本当に久し振りですわ…」ギュッ 


理亞「ん」グイッ 


ダイヤ「!!!!」 


ルビィ「うゆ……」スヤスヤ 


ダイヤ「ル…ルビィ…」 


理亞「私からは何も言わない。目が覚めたらゆっくり…ゆっくりお話してあげて」 


ダイヤ「うっ…うぅ……」ボロボロ 


ダイヤ「ありがとうございます…」ダキッ 


ルビィ「えへへ…お姉ちゃん……」スヤスヤ 


ダイヤ「!!!」 


千歌「ダイヤさん、今日は泊まってく?」 


ダイヤ「いえ、今夜はルビィと二人にさせてください」 


梨子「本当に大丈夫ですか?」 


ダイヤ「ええ。ご心配ありがとうございますわ…また明日、学校でお会いしましょう」 


花丸「あ!マルも送ってく!」タッタッタッタッ

275: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:53:14.16 ID:NMHIafx00


………… 
…… 


曜「行っちゃったね」 


千歌「そうだね」クスッ 


千歌「よーし!じゃあみんな!!今夜はパーッとやるよ!!」ガラガラガラガラ 


理亞「いや寝る」ズカズカ 


千歌「えええ!?せっかくダイヤさんを助けたんだし!!」 


曜「そうだよ!今夜くらい盛り上がろうよ!おじゃましまーす!」ズカズカ 


鞠莉「シャイニー!!」ズカズカ 


善子「どんだけ元気なのよ…もう魔力切れ……」 


善子「あ!魔力で思い出した!!ヨハネのロザリオのこと感謝しなさいよ待ちなさい!!」タッタッタッタッタッ! 



梨子「ふふふっ」 


しいたけ「わん!わんわん!!」 


梨子「しいたけ?」 


しいたけ「グルルルルルル…」 


梨子「どうしたの?」 


梨子「!?」クルッ 


聖良「……」 


しいたけ「わん!わん!わんわん!!」

276: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:53:46.11 ID:NMHIafx00


ザザーン… 


梨子「お疲れ様です」 


聖良「お疲れ様です。本当に」 


梨子「聖良さん…それに理亞さんには大変お世話になりました」 


聖良「いえ、ほんの気まぐれですよ…Aqoursのみなさんには感謝していますので」 


梨子「そうですか…」 


聖良「……」 





梨子「動物園の約束、果たせそうにありませんね」

277: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:54:16.21 ID:NMHIafx00


聖良「バレてたんですね」 


梨子「だって聖良さん…作戦会議の中で一度も、私たちが異世界に行ってからの事を話さなかったじゃないですか。普通あんな危ないところに生身で突っ込もうなんて無鉄砲過ぎます。でも聖良さんの目は自身に満ち溢れていた。私を信じろって…そして」 


梨子「助けてくれた」 


聖良「……」 



聖良「…いいんです。明日になれば忘れてしまっていますよ。理亞だけでなく、あなたたちも…」 


聖良「鹿角聖良なんていなかった…実際そうです。今みなさんや世間がSaint Snowだと思い込んでいるものは元の『鹿角理亞』に戻る。今、理亞が姉だと思い込んでいる私はいなくなり元の一人っ子に戻る。果南さんと共に忘れられるのです」 


梨子「そんな…どうして…」 



聖良「見守っていましたから」 


梨子「!?」

278: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:55:12.23 ID:NMHIafx00


聖良「あなたたちの成長をずっと。見てきましたから。そんなあなた達が魔の手にかかるのが許せなかった。だから拝殿を破ってみようと思ったんです」 


梨子「あ…じゃあ、4日に鞠莉さんが不可解な動きをしたのも、意識を失わなかったのも!!」 


聖良「私です。私が拝殿を飛び出る時の霊波で時空が歪み、拝殿の前にいた鞠莉さんの時間と拝殿の裏にいたあなた達の時間に差が生じたために起きたんです。ほら、その後に鞠莉さんを探しにきた使用人にはそれが起き無かったでしょう?その二人は私の余波により無事だったのです。記憶以外は…」 


梨子「……」 


聖良「申し訳ありません。この件に関しては皆さんに黙っていました。正直あの時は《淡島宇迦之御魂神》の存在どころか誰が犯人かも分かっていなかったので、この現象について私も知らないフリをする必要がありました。もし梨子さん善子さん花丸さんの中に《淡島宇迦之御魂神》がいたとして、私の正体と現象の詳細を明かしていたら…ということもありまして」 


聖良「結果的にこれが鞠莉さんを疑うきっかけとなってしまいました。これは私の致命的なミスです」 


梨子「いえ、そんなこと…」 


聖良「私は今から150年前に表れた得体の知れない悪霊に封じ込められずっと深い眠りについていました。しかし、今年になって闇の中にいる私に響く光があったんです」 


聖良「それはあなた達です。あなた達の希望に満ち溢れた声が私の眠りを徐々に覚ましていったのです」 


梨子「!!」

279: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:55:42.34 ID:NMHIafx00


聖良「しかし、そんな伸びゆく若葉を刈り取ろうとする魔の手が迫っているのを感じました。だから何とかして助けてあげたいと思いました」 


梨子「それで鹿角聖良という架空の人物の姿になってみんなに記憶を植えつけた…」 


聖良「残酷でしたかね…本当に申し訳ありません。でも、どうか分かってください。私はあなた達を助けたかったんです。その為にあなた達を試したりもしましたが、叱咤激励のつもりだったんです」 


梨子「聖良さん…」 


聖良「私もみなさんとの調査で、深く眠っていた時に起きた様々な事件が次々浮き彫りになってきて、自分はとんでも無いことをしたのだ気付きました」 


聖良「本来守るべきはずの私がいなくなったことで多くの人に不幸が降り注ぎ…そして忘れ、忘れられていく…」 


聖良「…今回、それの罪滅ぼしが出来ただけで満足です。それではさようなら…」スッ 



梨子「待って!!!!」

280: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:56:14.64 ID:NMHIafx00


聖良「!!」 


梨子「あなたは私達に抱えきれないくらい大きなものを残してくれました…」 


梨子「記憶は無くなってしまうかもしれないけど…今日までにうんと強くなったAqoursはあなたがいてくれた証になります!!!」 


聖良「梨子さん…」 


梨子「理亞さんだって!!!」 


聖良「!!」 


聖良「…そうですね」 


聖良「あの子は強くなりました…独りを好みずっと寂しくスクールアイドルをやっていましたから…あなた達の出会いと今日までの戦いで大きく変わったと思います」 


梨子「聖良さんが残してくれたものも大きいと思いますよ」 


聖良「だといいですね…ふふっ。しかし強くなった彼女はまたいずれ、あなた達の強敵となってステージに現れますよ。覚悟してくださいね」 


梨子「楽しみにしてますよ…」 


聖良「それでは私はこれで…またランニングに来てくださいね。いつでも待ってますから…」フッ 


ヒュォォォォォォォォォォォォォ… 


梨子「……」 





梨子「ありがとうございます。淡島弁財天様…」

281: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:57:01.81 ID:NMHIafx00


ーー3週間後 


理亞『マリア、カナリア~?』 


『『『カヅノリアぁぁぁ!!!』』』 


理亞『スクールアイドルは~?』 


『『『遊びじゃない!!!』』』 


理亞『はーい!元気いっぱい鹿角理亞でーす!今日もみんなとダンスなう♪』 


ワァァァァァァァァァァ!!! 


『はい、というわけで今大注目のスクールアイドル鹿角理亞さんですがーー』 



ポチッ 


『先月、淡島で大量に掘り起こされた石像の破片ですが、本日は専門家のーー』 


千歌「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 


美渡「いつまでテレビ見てんの~?学校遅れるよ?」 


千歌「志満ねえ!美渡ねえがチャンネル変えたぁぁ…」ジタバタ 


志満「ふふっ。はいはい」 


ピンポーン! 


282: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:57:36.36 ID:NMHIafx00


282 

梨子「千歌ちゃーん。始業式遅れちゃうよー?」 


千歌「げっ…マズい……」 


美渡「そ~らみろ」 


千歌「行ってきまーす!!」タッタッタッタッ 


美渡「全く…」 


ポツッ… 


美渡「ん?」 


サァァァァァァァァ… 


美渡「げっ…雨だ!」 


志満「あら…雲がかかってないのに…珍しいわねぇ」 


美渡「それより千歌のやつ、傘持って行ってないよ!」ドタバタ! 


志満「まあ、どうしましょう!もうバス行っちゃったわ!」ドタバタ!

283: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:58:14.98 ID:NMHIafx00


サァァァァァァァ… 


ダイヤ「……」バサッ 


狐の嫁入り、 夏も盛りのこの季節、雲が無いにもかかわらず滝の如く降り注ぎ洗濯物の乾燥を躊躇わせる傍迷惑な天気雨のことを言いますの。 


ーーただ、 


バキッ! 


ダイヤ「!?」 


ルビィ「折りたたみ傘壊れちゃった…うゆ…」 


ダイヤ「はぁ…」 


ダイヤ「ほら、入りなさい」スッ 


ルビィ「うん…ありがとうお姉ちゃん」ギュッ 


ダイヤ「ええ」ギュッ 


ダダダダダダダダダダッ 


ダイヤ「?」 


千歌「ダイヤさーん傘入れてー!!」ギュッ 


ダイヤ「ち、千歌さん!?」 


梨子「お邪魔しまーす!!」ギュッ 


ダイヤ「梨子さんまで!ちょっと何をしてるのです!?そんなに入れるわけーー」 


千歌「梨子ちゃんそっち詰めてよ!」グイグイ 


梨子「左肩濡れちゃうよ!千歌ちゃんがそっち詰めてよ!!」グイグイ 


ルビィ「ピギィィィィィィ!!」ギュウギュウ 


ダイヤ「ふふっ…」 



ーーただ、 
ーー永遠に降り続いて欲しいとも思いますわ 


終わり

284: 名無しさん 2017/01/16(月) 21:58:49.99 ID:NMHIafx00
最後まで読んでくださりありがとうございました。