1: 名無しさん 2017/09/01(金) 20:38:33.43 ID:YVD9GEze0
私は悲しい……また槍王が出なかった。そしてカルナが来た。
こんなことがあっていいのか!

ちくしょう!

という気分で書きます。よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1504265913

引用元: ・ぐだ男「おうち帰る」 マシュ「は?」

3: 名無しさん 2017/09/01(金) 20:46:39.06 ID:YVD9GEze0
マシュ(突然先輩が私の部屋に来たと思ったら唐突に『おうち帰る』と告げられた)

マシュ「えっ……おうちって……えっ? 帰宅? 何故突然!?」ガビーンッ

ぐだ男「いや別に突然でもなくって。ダヴィンチちゃんには一か月前に申請してたんだけど」

ダヴィンチ「バッチリ許可出したよー。ガッツリ一週間くらい家に帰すよー!」グッ

マシュ「ええっ!? な、聞いてないです!」

ぐだ男「言ってないからね! だって連れてく気さらさらないもの」

マシュ「何故!?」

ぐだ男「危険とかないし、逆に言うとただの退屈な家に帰るだけだし……」

マシュ「わ、私も一緒に……!」

ダヴィンチ「ん? いやマシュはダメだよ。申請してないし」

ダヴィンチ(いや申請したとして彼女って外に出していいんだっけ? ロマニに任せっきりだったからなー)

マシュ「」

ぐだ男「そういうことで俺がいない間のカルデアは任せたぞ! マシュ!」

マシュ「」

ぐだ男「信じてるからな!」グッ

マシュ「……」

マシュ「……ハイ、ゴキタイニ、ソエルヨウ、ガンバリマシュ」ガクガク

ダヴィンチ(いとかなし、という趣だねえ)

4: 名無しさん 2017/09/01(金) 20:54:08.03 ID:YVD9GEze0
マシュ(ぐ……確かに危険が何もないのなら私がついていく理由はなにも……)

マシュ(いやそもそもサーヴァントの力が使えないのだから危険があったとしても行けない!)

マシュ(わかる。凄くわかるのですけれども。単純に誘われなかったのが、なんというか……!)

BB「えー。またハッキングですかー? 最近多いですよねー、こういうの」

マシュ「んっ?」

マシュ(BBさんの声……?)

エリザ「またって何よ。私が一番乗りじゃないの?」

BB「実はあなたで四人目くらいなんですよねー。マスターについていく申請と許可の偽造を頼んだの」

マシュ「!?!?」

エリザ「そ。まあ別にいいわ。確かに他の連中が無理やりついていくことに関しては想定内だったし」

エリザ「で? 他の三人って誰なの?」

BB「デオンくんちゃんさん、巌窟王さん、ジャックさんですね」

BB「巌窟王の人のみは間違って才囚学園へ送っちゃいましたけど」

マシュ(作品が違う!)ガビーンッ!

5: 名無しさん 2017/09/01(金) 21:00:53.20 ID:YVD9GEze0
BB「報酬は……そうですね。最低でもこれくらいは必要かと」

マシュ(そう言いながらBBさんは指を三本立てた)

マシュ(さ、三百万……ドルでしょうか? いや、円? 髪の色は変ですが、どうやら日系ですし)

エリザ「面の皮の厚いヤツね。一度ハラワタブチ晒してやろうかしら」

BB「そういう減らず口はもう飽き飽きですので。どうします?」

エリザ「ちっ……やるわよ。やればいいんでしょ。ほら」バリッ

マシュ(バリッ?)

エリザ「ピノ三個……! 半分も……うう……!」

マシュ(って報酬ピノ!? 安ゥッ)ガビーンッ!

6: 名無しさん 2017/09/01(金) 21:06:33.80 ID:YVD9GEze0
BB「あ。当然星があったらそれを頂きますので」

エリザ「鬼ィ! 悪魔ァ! 腹黒ヒロイン! 非処女!」エグエグ

BB「原作の話は本当やめて。じゃあちょいちょいと申請と許可を偽造しますので。あとは適当に頑張ってください」

エリザ「うわーん!」ダッ

マシュ「……」

マシュ(申請と許可の……偽造?)

マシュ(本来なら咎めるべきですが……!)

BB「見ちゃいましたね?」ヌゥッ

マシュ「ぴいっ!?」ビクッ!

BB「あなたの分も通しておくので、それで見逃してくださいな」

BB「口止め料ってことで」

マシュ「……」

マシュ「お、お願い……します……!」

8: 名無しさん 2017/09/01(金) 21:17:02.92 ID:YVD9GEze0
BBの日記
今日は色んな人から仕事を頼まれて大忙し!
暇だったので多大な報酬と引き換えに、どんどんハッキングしちゃいました!
ふぅー! 脳無し共がぞろぞろと、本っ当にイライラさせられます。ちょっと手が滑って巌窟王さんのみ別のところに送っちゃいました☆

……どうしよう。これ。流石に怒られるかな……ていうか元に戻せるんですかね……。

最終的にデオンくんちゃんさん、マシュさん、エリザさん、ジャックさん、茨木童子さんがついていくことになったようです。

はてさて、どうなることやら!

9: 名無しさん 2017/09/01(金) 21:30:25.69 ID:YVD9GEze0
次の日

ぐだ男「さてと……そろそろ行こうか」

ぐだ男「久しぶりの実家だ。羽伸ばそう」ガラガラガラ

マシュ「……」コソコソ

デオン「……」コソコソ

エリザ「……」コソコソ

ジャック「……」コソコソ

茨木「……」コソコソ

ダヴィンチ(んー。あんなに大量に外出許可出したっけなー)

ダヴィンチ(ま、いっか)

ダヴィンチ「下山はうちのスタッフに任せてー! 車で空港まで送るから!」

ぐだ男「はーい」

デオン「我々はマスターとは別の車に乗って下山するぞ? OK?」

エリザ「OK!」

ジャック「じゃがりこ食べたい」

茨木「持ってきておるぞ。備えあれば憂いなしというヤツよな」

マシュ(偽造とは言え、申請と許可は通っているのに何故隠れて……)

マシュ(……いや私もまだ顔を見せられない、とは思いますけど。期待にそえるよう頑張るとか言ってこの体たらくですし)

10: 名無しさん 2017/09/01(金) 21:39:22.78 ID:YVD9GEze0
飛行機の中

ぐだ男「うう……微妙にきもちわるい。酔ったかな……」ガクガク



飛行機の後ろの方


茨木「びーふ! おあ! ちきん!」

茨木「違うな。間違った。びーふ! あんど! ちきんよ! どっちも持って来い、きゃはは!」

ジャック「ねぇー。マシュー。あのCAって解体していいCA?」

デオン「機内上映というのはこれで見るのか?」

エリザ「何よコレ。シャフトの作品しか入ってないわよ」

マシュ「品揃え悪っ……いやある意味で品揃えはいいんですかね!?」

11: 名無しさん 2017/09/01(金) 21:54:00.50 ID:YVD9GEze0
日本の空港

ぐだ男「ついた……ああ、凄い! 右見ても日本人、左見ても日本人!」

ぐだ男「あとなんか空気が懐かしい! 完全に現代の日本だ!」

ぐだ男「おっと。ベルトコンベアから荷物受け取らないと。ええっと俺のキャリーケースは……」

キャリーケース「」ウィンウィン

ぐだ男「あ、来た来た。タグも間違いなく俺の……?」

ラウンドシールド「」ウィンウィン

骨刀「」ウィンウィン

羽根付き帽子「」ウィンウィン

血塗れのマイクセット「」ウィンウィン

CAの服を着せられた肉塊「」ウィンウィン

ぐだ男「」

12: 名無しさん 2017/09/01(金) 22:03:24.36 ID:YVD9GEze0
マシュ「あっ! あれ! 私たちの荷物ですよ! 早く受け取らないと!」

茨木「うおおおおお! 勝手に吾の荷物を運ぶなーーー!」

デオン「あ。羽がちょっとほつれてる……」

エリザ「衣装の管理はもうちょっと丁寧にやりなさい……ってマイクセットが血塗れになってる! なんで!?」

ジャック「あ、ごめん。私たちのだね。ちゃんとCAの制服で包んだんだけど」

マシュ「解体しちゃダメって言ったのに!」

デオン「いや。これは未調理のチキンだね。気に入ったのかい?」

ジャック「うん! あとでおかあさんに食べさせてあげるの!」

エリザ「どっちにしろ盗難だから犯罪なのは変わらないけどね」

ぐだ男「」

五騎「あっ」

14: 名無しさん 2017/09/01(金) 22:16:49.92 ID:YVD9GEze0
エリザ「来ちゃった(はぁと)」ウインクッ

ぐだ男「来ちゃった!?」ガビーンッ!

デオン「マスター。こんな話がある。あるフランスのスパイがロシアから帰国するときに、急ぎ過ぎて馬車で事故って足を折ったんだが」

ぐだ男「お前の話だそれはッ! そして多分関係ない話だ!」

ジャック「おかあさん! チキン! おいしかったの! 食べて!」

ぐだ男「気持ちは嬉しいけどこっそり返してきなさい!」

茨木「なあ汝ー。あそこで売られてるお土産買ってー」

ぐだ男「イバラギンに至ってはもう弁解を諦めてるしッ!」

マシュ「……」

ぐだ男「マシュ……」

マシュ「その……あれ、あの……」

マシュ「……ごめんなさい。BBさんに買収されました」

ぐだ男「BBィーーーッ!」

15: 名無しさん 2017/09/01(金) 22:28:07.53 ID:YVD9GEze0
ぐだ男「五人だけか? 五人だけだと言ってくれ。これ以上は絶対にダメだ」

ぐだ男「現時点でも限界超えてるけどな!」

デオン「ダンテス氏も来たがっていたようだが、なにか失敗したらしいな」

エリザ「ええ。ここにいるのは五人だけよ」

ジャック「失敗?」

マシュ「まあそれはいいでしょう。先輩! 大丈夫です! 私たちは私たちでホテル取ってますので!」

マシュ「まさか先輩の家に押し入ったりはしません!」

ぐだ男「よ、よかった。そうだよな! 流石にマシュは常識を弁えてる! 偉い!」

茨木「なんだこの小倉トーストラングドシャというお菓子はーーー! ありえないほど美味いぞ!」モシャアア!

ぐだ男「ここ羽田なのになんで名古屋土産が!?」

エリザ「あっ! アイツ私たちの共用財布使ってない!?」

デオン「本当だ。いつの間に」

ジャック「ずるいー」

ぐだ男「ああもう滅茶苦茶だよ!」

マシュ「本当にすいません!」

16: 名無しさん 2017/09/01(金) 22:36:16.24 ID:YVD9GEze0
BBの日記
マスターからクレームが来ました。どうやら無事にあの五人はマスターと合流できたようです。
はてさて、どうなることやら。あのホテルにはちょっとした細工をしたので、実はそうそう話は上手く転がらないんですよねー。

……そういえば巌窟王さんからも連絡来ました。写真付きで。

才囚学園で生徒たちと一緒に脱出に向けて戦っているようです。何やってんですかあなた。

23: 名無しさん 2017/09/02(土) 09:16:44.46 ID:dSpFeBJp0
近場のカフェ

茨木「吾は知っている。なんでも知っているぞ?」

茨木「なんでもこういう店には『ぱふぇ』なる巨大な菓子があるのだろう?」

茨木「クリーム! チョコ! アイス! なんかカリカリしたヤツ! 水菓子その他色々と盛り合わせたアレ!」

茨木「なんだアレは! あんなものがこの世にあっていいのか! キメラテック・オーバー・ドラゴンだってまだ大人しいぞ!」

茨木「というわけで吾はアレに勝負を挑んでみたいのだが、どうか!?」

デオン「また今度にしろ」

エリザ「ウェイター。BLTサンドとミルクちょうだーい」

ジャック「チキン南蛮サンド!」

ぐだ男「マシュは?」

マシュ「あ、えーと私は……カツサンドで」

ぐだ男「……まさか日本のカフェでサーヴァントたちと一緒に食事とることになろうとは」

マシュ「ごめんなさい」

ぐだ男「いや。いい。来てくれたのならそれはそれで嬉しいし」

ぐだ男「でも何で来たの? 観光?」

マシュ「先輩についてきたかったからです」

ぐだ男「特に見どころのある場所に住んではいないんだけど……」

デオン(女心がわかってないな)

エリザ(男か女かハッキリしてないヤツに女心説かれても……)

茨木(パフェ食べたかったなぁ)グスン

24: 名無しさん 2017/09/02(土) 09:30:11.28 ID:dSpFeBJp0
ぐだ男「ま、いいや。サーヴァントが一緒に来ちゃった以上、マスターとしてそれなりに世話焼かないと」

茨木「その世話を焼くの中には『偉大なる茨木童子にぱふぇを献上する』というのも含まれていると思うのだが!?」

ぐだ男「含まれてないです」

茨木「ちくせう」

ぐだ男「そういえばお前、角はどうした」

茨木「ん? そんなものAランク変化で既に隠したわ。普通の人間が吾を見たらSAN値チェックものだろう?」

ぐだ男(そういえばハロウィンでもそんなことしてたような……)

エリザ「私は隠してないけどね。ギリギリ『コスプレです』で通ったわ」

ジャック「ペーパーナイフですで通ったよ」ギャランッ

ぐだ男「ナイフ出しちゃダメ……」

ジャック「はーい」

マシュ「すみません。せっかくの休日を」

ぐだ男「いいって。休暇の内容が変わっただけだ」

25: 名無しさん 2017/09/02(土) 09:44:11.69 ID:dSpFeBJp0
ぐだ男「ところで、取ったホテルってどこ?」

エリザ「地図で見たらそこまで離れてないはずだけど」

デオン「あれだな。事前に写真で見た。ほら、窓から見えるアレだよ」

ぐだ男「でかいな。資金不足に喘いでるって話だったはずじゃ」

マシュ「コネがあったそうで安くできるそうです」

エリザ「まあ? 超一流アイドルの私としてはアレでも不足しているくらいなんだけど――」


ドカァァァァンッ!


ぐだ男「爆発したぞ」

エリザ「人生初のスイートルームがーーーッ!」ガビーンッ!

デオン「楽しみにしてたんじゃないか」

マシュ「……えっ。ていうか爆発? えっ、えっ!?」

26: 名無しさん 2017/09/02(土) 09:49:34.23 ID:dSpFeBJp0
ホテル

従業員「申し訳ございませんお客様。どうやらスイートルームが悪意のある誰かに爆破されたようでして……」

ぐだ男「……桜の臭いが酷いな。なんだこれ」

従業員「火薬に芳香剤が仕込まれていたようです。おそらくすぐに散ると思われますが」

マシュ「桜……? 桜……」

エリザ「まったくふざけたヤツね! 誰よ、私のスイートルームを爆破したのは!」プンプン

デオン(どう考えてもBBだろ)

ぐだ男(わかりやすく署名してやがる……)

マシュ(タイミング的にもジャストすぎますしね……)

27: 名無しさん 2017/09/02(土) 10:02:19.43 ID:dSpFeBJp0
従業員「破壊されたのは一部屋だけでしたので、四名様ならばまだ受け入れることはできるのですが」

従業員「残念なことに、五名様の内の一人は……」

デオン「空きがないからあぶれる、か?」

従業員「ええ。一室も空きがありませんので」

エリザ「えっ。待って。それって何? 普通の部屋や馬小屋すら空いてないっての?」

従業員「さようでございます」

ぐだ男「というかそもそも営業そのものを続行できるんですか?」

従業員「かなり前にはホテルが丸ごと爆破されたこともありますので、慣れっこでございます」

マシュ「ホテル丸ごと!?」ガビーンッ

茨木「どうでもよいわ。さっさと話を纏めよ」

ジャック「誰が仲間はずれになる? ついでに、その一人は宿をどうするの?」

五騎「……」ジーッ

ぐだ男(す、すごい見られてるぅーっ……!)

28: 名無しさん 2017/09/02(土) 10:20:15.02 ID:dSpFeBJp0
ぐだ男「……一人くらいなら俺の家に受け入れるよ」

五騎「!」

ジャック「ねえみんな。聞いた?」

茨木「くっはははははは! 聞いた。聞いたぞ! 聞いておるぞ?」

茨木「なんでも現代日本のおもてなしというものは、すぷらとぅーんをやりながら炬燵に入りお菓子を貪る退廃の極みなものらしいではないか!」

茨木「興味があるぞ? 絶対に行くぞ?」

ぐだ男(この時期に炬燵に入ったら蒸し殺しにされるけどな)

エリザ「じゃんけんね。勝ったヤツがコイツの家に行くってことで。安心して? 一週間あるから順番で全員行けるでしょう」

デオン「代わりばんこ制なのか……いいだろう。やるか」

マシュ「恨みっこなし、ですよ!」


じゃーんけーん!

34: 名無しさん 2017/09/02(土) 14:35:05.33 ID:dSpFeBJp0
その後

茨木「くはははははは! 吾の! ストレート勝ちよ!」

エリザ「一回で全員負けたわね」

デオン「なんで全員パーを出してしまったんだ……」

マシュ「こればっかりは運ですので……」

ジャック「ざーんねん。じゃあまた今度ね。おかあさん」

ぐだ男「うん。じゃあえっと……茨木はうちで引き取るからな」

ぐだ男「で。宿はこれでいいとして、観光の方はどうする? 助けは必要か?」

デオン「それなんだが、予定が変わってしまったからね。観光の方に関してマスターは一切ノータッチでいい」

ぐだ男「えっ? なんで?」

デオン「色々事情があるからね」

エリザ「ちょっとちょっと。何勝手に話進めてるのよ」

35: 名無しさん 2017/09/02(土) 14:41:57.81 ID:dSpFeBJp0
デオン「よく考えろ。考えようによってはこれはチャンスだ」ヒソヒソ

デオン「我々は一人ずつ確実にマスターの家へと潜り込める」ヒソヒソ

エリザ「それはそうだけど、観光のときもできれば一緒にいたいわよ。楽しいし」ヒソヒソ

デオン「私だってそうだが……よく考えろ。私たちの観光についてくる必要のないマスターは傍に誰もいないフリー状態だ」

デオン「つまり、二人きりになれるチャンスが増えるということだ」

エリザ「あっ」

デオン「対して、観光のときにまで私たちの傍についている、ということになったら……」

ジャック「カルデアと何も変わらないよねー。賑やかなパーティ、ちんどんしゃん」

エリザ「それは……考えてみれば、確かに里帰りについてきた意味がないわね……」

デオン「というわけで観光に関し、彼は何もしないでいただこう」

デオン「そして私たちは順番が回ってきたとき、存分に二人きりの状態を利用して彼と遊べばいい」

マシュ(ふ、二人きりで……)

エリザ「ところでこの後輩、さっきから顔真っ赤にして一言も喋ってないわよ」

デオン「ふっ。気が早い。他に質問は?」

エリザ「なし」

デオン「作戦会議終了! 解散!」

36: 名無しさん 2017/09/02(土) 14:49:25.76 ID:dSpFeBJp0
デオン「話はまとまった。私たちは問題はない。こっちはこっちで観光を楽しむさ」

ぐだ男「そうか?」

デオン「茨木。キミの荷物はこっちで預かろう。私の部屋に放り込んでおく」

茨木「よかろう。かさばるものやお土産は貴様に預ける。丁重に扱えよ?」

エリザ「で。次は誰の番にするの?」

マシュ「後でまたじゃんけんして決めましょうか」

ジャック「何して遊ぶー?」

マシュ「……え、と。それじゃあ、先輩。また明日……」

ぐだ男「おう。休日、存分に楽しんでこい」

マシュ「はい!」

37: 名無しさん 2017/09/02(土) 15:07:24.65 ID:dSpFeBJp0
ぐだ男「……うん。家族にも話は通したよ。友達連れていくってことになった」

ぐだ男「先に言えって怒られたけど」

茨木「なるほど。友達か。よし」ゴソゴソ

ぐだ男「ん?」

茨木「その一、天真爛漫乙女。その二、クールビューティ優等生。その三、ほわほわ系おっとり少女。どれがいい?」

ぐだ男「何が!?」

茨木「一応これでも渡辺綱を騙せる程度には演技力に自信はある。汝の家族を相手に角を立てたくないしの」

ぐだ男(そういえばコイツ、気配りとかするタイプの鬼だった……)

茨木「ひとまず汝の家族の前ではそれなりに猫を被る。汝も面喰ったりするなよ?」

ぐだ男「よ、よろしくお願いします」

茨木「莫迦め。吾の方が客なのだ。それはこちらの台詞であろう」

ぐだ男(真面目だ……!)

45: 名無しさん 2017/09/02(土) 19:35:47.33 ID:dSpFeBJp0
茨木「よし。行くぞ。案内するがいい」

ぐだ男「ああ」

茨木「ところで汝の家には何がある? すうぃっちか? ぴーえすふぉーか?」

ぐだ男「一応PS4はあるけど……」

茨木「くっは! 胸が高鳴るわ!」

ぐだ男(小学生男子かよ)

茨木「事前に調べた限りでは新宿を経由して行くのであろう?」

茨木「新宿……一度迷ったが最後よな。前の特異点では散々な目に遭った」

ぐだ男「ああ、そっか。一度来たことはあったな」

茨木「然り。故に吾はもう油断はしない」

茨木「ほれ」

ぐだ男「ん?」

茨木「手を繋げ。それが一番わかりやすいであろう」

茨木「せいぜい吾をえすこぉーとしろ?」ニヤニヤ

ぐだ男「……了解」

46: 名無しさん 2017/09/02(土) 19:48:03.24 ID:dSpFeBJp0
新宿

ぐだ男「ここまで来ればもう乗り換えはしない。あとは一直線だ」

茨木「ふむ……やはり特異点とは違うな。ここは。まともに人がうじゃうじゃいよる」

ぐだ男「……そうだな。俺たちが特異点で暴れ回ったお陰だ」

茨木「くはは。いやここまでくると壮観至極。酒呑が一緒ならドーンってやってたな。ドーンって!」

ぐだ男「やめてくれ……あ。そういえばお前、酒呑童子連れてこなかったんだな?」

茨木「誘いはしたが、来なかったのだ。『でぇとと日にち被っとんなぁ。ごめんなぁ』って」

ぐだ男(多分金時関係の予定と被ってたんだろうけど、まともなデートじゃないんだろうな……)

茨木「む。そうだ。土産にTOKI●のサインを強請られたのだ。TOKI●とはどこにいるのだ?」

ぐだ男「そうそう簡単に会えないんじゃないかな……」

47: 名無しさん 2017/09/02(土) 19:58:30.40 ID:dSpFeBJp0
ぐだ男の故郷

茨木「きゃはは! ついた! ついたぞ! ついた……けど……」

茨木「本当に何もないな。実は埼玉だったりしないか?」

ぐだ男「しないしない。本当に俺の故郷です」

茨木「ま、よいわ。吾の目的は主に汝の家だからな」

ぐだ男「何も無いから大したおもてなしはできないけど……」

茨木「ううん! 『私』、『あなた』の家がとっても楽しみなんです!」キラキラキラ!

ぐだ男「はぎゃっ!?」ガビーンッ!

茨木「私……ずっと見てみたかったんです。あなたの生まれ育った町。生まれ育った家……家族……」

茨木「ずっと一緒だったんです。興味を持つなって方が無理ですよ!」キラキラキラ

ぐだ男「ごめん! 先に言うべきだった! お前の口調は『方言』で通すから演技をやめてくれ!」

ぐだ男「すげぇ気持ち悪い!」ガタガタ

茨木「ちっ」

48: 名無しさん 2017/09/02(土) 20:10:28.56 ID:dSpFeBJp0
ぐだ男宅

ぐだ男「……ああ。俺の家だ」

茨木「マンションか。一軒家を想像していたが」

ぐだ男「本当パッとしない家だけど、それでいいならあがっていってくれ」

ぐだ男「……なんか今更だけど、人類史救ってよかったなぁ」

茨木「……ん? お? おい。マスター」

ぐだ男「何?」

茨木「超低級だが地縛霊がいるぞ。多分あの一番上の角っこの部屋だ」

ぐだ男「後でこっそり祓おう! それ俺の家だ!」ガビーンッ

茨木「事故物件か……酔狂よなぁ」

49: 名無しさん 2017/09/02(土) 20:24:59.59 ID:dSpFeBJp0
茨木「そういえば汝の家には今、誰がいるのだ?」

ぐだ男「お母さんがいるはずだよ。お父さんは仕事中」

ガチャリンコ

ぐだ男「ただいまー! 一年ぶりに帰ってきたよー!」

ドヨォォォォン

ぐだ男「湿気ぎゃあ!」

茨木「カビ臭っ! 何事だ!?」

母「ああ……お、おかえりーーー……」ガタガタ

ぐだ男「……」

茨木「あそこで這いつくばっている貞子はなんだ? 駆除していいのか?」

ぐだ男「俺の母さんだよッ! 貞子になってるけど!」ガビーンッ!

母「ぐはぁっ」ビシャッ

茨木「御母堂、吐血したぞ」

ぐだ男「母さーーーんッ!」ガビビーンッ!

50: 名無しさん 2017/09/02(土) 20:30:15.76 ID:dSpFeBJp0
茨木「ああ。なんだ。何が起こっているのかと思えば、吾の妖気にあてられて地縛霊が強化されてしまったようだ」

ぐだ男「霊障か! 茨木、祓うぞ!」

茨木「心得た」

地縛霊「お前もろう人形にしてやろうかァーーーッ!」

茨木「アンパーンチ」バキッ

地縛霊「ぎゃばんっ」ブシュウ

茨木「除霊完了よ」

ぐだ男「弱ッ」

茨木「バカめ! 吾が強いのだ!」

母「あ、元気になった」

51: 名無しさん 2017/09/02(土) 20:38:52.58 ID:dSpFeBJp0
母「あら、ぐだ男。ごめんなさい。恥ずかしいところを見せちゃったわね」

ぐだ男「い、いいんだよ! そんなことより大丈夫!? さっき死にそうになってたけど!」

母「バッチリ全快よグヘァ」ビシャッ

茨木「あ、また吐血した」

ぐだ男「無理するなーーーッ!」

茨木「この国の救急車の番号は何番だ?」

母「あら。あらあらあら……ぐだ男。あなた、友達って女の子だったの」

茨木「あ。茨木……です。よろしくお願いす……します」ペコリ

母「ふふ。ふふふふふふ」

母「孫の顔くらいは見たかったわ」ガクリ

ぐだ男「母さーーーんッ!」ガビーンッ!

61: 名無しさん 2017/09/03(日) 18:54:09.40 ID:8JDxdGfM0
その後

茨木「……悪いことをした。まさかしょっぱなから御母堂を病院送りにしてしまうとは」

ぐだ男「いや。いいんだ……極初期段階で霊障を祓えたから、どうも症状は単なる血液不足で済んだみたいだし」

ぐだ男「あの分なら軽く輸血して、経過を見たらすぐ退院だろ」

茨木「むう。この場合、旅行保険とは適応されぬものなのだろうか」

ぐだ男(思ったより気にしてるみたいだな。鬼なのに)

茨木「勘違いをするな。吾は吾が意図しない人的被害を是としないだけだ。心配しているわけではないぞ?」

ぐだ男「そういうことにしておくよ」

茨木「しかし御尊父殿にはどう説明したものか……」

ぐだ男「俺からやっとく。どうせお父さんは病院の方に直行だからな」

茨木「なに?」

ぐだ男「そのまま病院近くの漫画喫茶に泊まるって……あ! 気にするなよ! お前のせいじゃない!」

茨木「それはそうだが。吾が気にしているのは別のことだぞ?」

ぐだ男「ん?」

茨木「二人きりだ」

ぐだ男「……んっ!?」

62: 名無しさん 2017/09/03(日) 19:02:04.04 ID:8JDxdGfM0
茨木「きゃはは! いやまさかここまで完璧な二人きりの状況を作り出せるとは! 吾も予想外だ!」

ぐだ男「今となっては怪しいぞ! お前、まさか地縛霊を見たとき『しめた』とか思わなかっただろうな!?」

茨木「さてどうであろうなぁ? いや確かに意図的に地縛霊を強化することくらいはできようが、五分前のことなどとんと覚えておらぬわ」

ぐだ男「鬼ィ!」

茨木「莫迦め! 今頃気付いたか! きゃっはは!」

茨木「して。ぴーえすふぉーのソフトは何があるのかの……おお……!?」

茨木「FF十五があるではないか! 退屈せずに済みそうよな!」

ぐだ男「えっ。マジで?」

茨木「む? 汝……のものではないのか。当然よな。一年以上家を空けていたのだから」

ぐだ男「お父さんの趣味……ってわけでもなさそうだな。買っておいてくれたのか……」

茨木「きゃは。随分と思われていたようだ。妬けるぞ?」

ぐだ男「……」

茨木「料理も霊障の影響でカビだらけだ。飯はどうする?」

ぐだ男「外食しよう。ゲームは帰ってきてから」

茨木「今夜は長くなるぞ……?」ニヤァ

63: 名無しさん 2017/09/03(日) 19:13:11.86 ID:8JDxdGfM0
ファミレス

茨木「……?」

茨木「こんなものか? ぱふぇとは思ったより小さいものなのだな?」

ぐだ男「ここのヤツはコロコロ買える値段で提供されてるからな。それなりに小さいぞ」

ぐだ男「でも結構腹は膨れる」

茨木「ケチめ。まあいい。とにかく食べる」

茨木「……むう……これは……」

茨木「プリン。アイスクリーム。チョコアイスの味が……調和しているだと……!?」

茨木「この調和の正体は……そうか。バナーナ! バナーナだな! 溢るる滋味で子を抱く母のように優しく纏めておる!」

茨木「これは値段以上だ……値段以上の逸品だ、が!」

茨木「少ねぇぇぇぇぇぇ! こ、これが人間のやることか……あまりにも……あまりにも少ない……!」ワナワナ

ぐだ男「パフェ一つでどこまでエキサイトしてんだよ……」


リュウノスケェェェェ! 最高ニcoolナパフェヲ見セテアゲマショウ!

流石ダヨダンナァ!


ぐだ男「あれ。あっちも結構エキサイトしてるな……そんな美味しいのか?」

茨木「分けんぞ。絶対」

64: 名無しさん 2017/09/03(日) 19:23:00.58 ID:8JDxdGfM0
prrr

ぐだ男「電話? 非通知……」

茨木「出る必要あるまい?」

ぐだ男「まあ何かイヤな予感するけど一応出るよ」ポチリ

ぐだ男「もしもし?」

BB『セーンパイっ! どうですか!? ときめきでメモリアルに残る甘い日々を過ごしていますかー?』

ぐだ男「顔がうるさい」

BB『顔がッ!?』ガビーンッ

ぐだ男「いやなんかもうお前、どんな顔してんのか声でわかる。ウゼェ」

BB『ちょ、酷くないですか。ていうか私に対する扱いがメフィストさん級に悪いですよねセンパイ』

BB『そこまでされる謂われはないんですが』

ぐだ男「俺の予定を勝手に改竄するような後輩にはお似合いの対応だ。あとメフィストはお前より待遇が上だ」

BB『帰ったら床這いつくばらせて靴を舐めさせてあげます』

ぐだ男「そういうところだぞ?」

65: 名無しさん 2017/09/03(日) 19:31:20.63 ID:8JDxdGfM0
BB『まあこっちもこっちで悪いとは思ってたんですよ? 勝手にこんなことして』

ぐだ男「胡散臭ぇー」

BB『流石に逆ギレしますよ?』

ぐだ男「逆ギレだと自覚できてんのならやめろよ……!」

BB『まあともかく、困ったときはそれなりに責任は取りますって報告です』

BB『イタズラは後始末までしっかりと、ね?』

ぐだ男「あ、よろしく頼む。実は」

BB『お母さんの入院費はご心配なくー。あとコレに関してカルデアにレポートで提出する必要はありません』

BB『外に出たサーヴァントが被害出した、なんてクソ真面目に報告したらどんな目に遭うか……』

ぐだ男「もみ消すのか?」

BB『プルプル……僕、悪いBBじゃないよ……』

ぐだ男「……程ほどにな。ある程度はこっちでも泥被るから」

BB『あんっ! マスターの優しさで、脳味噌フットーしそうだよぉ!』

ぐだ男「顔がうるさい」

BB『またっ!?』ガビーンッ!

BB『じゃ、そういうことで。そろそろカルデアの内部から傍受されちゃうかもなので』

ぐだ男「了解……」

66: 名無しさん 2017/09/03(日) 19:46:38.81 ID:8JDxdGfM0


茨木「ば、バカな……国が滅んだ……? 昨日?」

茨木「昨日吾は何をしていた……!? 猫ちゃんのために魚釣ってた……!」ガタガタ

ぐだ男(ゲームに熱中してやがる……)

ぐだ男「……あ。ジュース切れた。コンビニに補給しに行く」

茨木「む? よせ。やめろ。行くな」

ぐだ男「え?」

茨木「せっかく二人きりなのだ。それに、一人でげぇむしてても楽しくない」

ぐだ男「……そうか?」

茨木「あ、でも吾が汝と一緒に行く分にはまるで問題はないな!」

茨木「な!」

ぐだ男「一人だけでいいって」

茨木「くはは! 莫迦め! 汝に決定権などあると思うか?」

ぐだ男「……まったくお前ってヤツは」

茨木「……そういう趣向も悪くはないと思うのだが、な」

ぐだ男「ん?」

茨木「……できるだけ『お前』ではなく名前で呼べ。そっちのがなんかいい」

ぐだ男「……茨木童子」

茨木「くは。もっと優しい感じで……」

ぐだ男(妙に甘えてくるな、今日は……いや、違うな。普段から甘えてきてるか。甘え方の質が違うだけで)

67: 名無しさん 2017/09/03(日) 19:56:59.05 ID:8JDxdGfM0
茨木「今日は汝は吾一人が独り占めだからな! とにかく思いついた贅や趣向を片っ端から試させてもらうぞ!」

茨木「今日は寒いので無駄にくっついてみたりとか!」ダキッ

ぐだ男「うわっ!」

茨木「おお、これは……いいな。酒呑とか傍にいたら恥ずかしくてとてもできぬ」

茨木「決めたぞ。寝るときもこんな感じで」

ぐだ男「お前、魔力放出で温まれるから必要ないだろ」

茨木「必要のないことを贅と呼ぶのだ。それに」

ぐだ男「それに?」

茨木「イヤではなかろう?」

ぐだ男「……」

茨木「……えっ? い、イヤなのか?」

ぐだ男(ぐっ……!)

ぐだ男「イヤじゃないです……」

茨木「そうであろう!」

ぐだ男(あー……寝てる間に溶かされて酒にされてないかだけが心配だな……)

ぐだ男(酒呑童子じゃないし、茨木ならその心配ないか?)

ぐだ男(いや、金時も鬼の危険性については言ってたし、一応それなりに警戒はしておくか……)

茨木「おい。何をしておる?」

ぐだ男「ん?」

茨木「汝の方からも吾を抱きしめよ……心細いであろう」

ぐだ男「……」

ぐだ男(警戒持つかなぁ!? これ!)

68: 名無しさん 2017/09/03(日) 20:06:39.90 ID:8JDxdGfM0
浅草 雷門周辺

BB『……という感じですね! イバラギンさんとセンパイの様子!』

マシュ「こ、これは……」

デオン「ふむ。デレッデレだな」

エリザ「喉からゴロゴロ音がしないのが不思議ねー」

ジャック「私たちもおかあさんに抱きしめられながら寝てみたいなー」

マシュ「待って。そこじゃなくって。まずそこじゃなくって!」

マシュ「これ盗撮ですよね!? どうやってカメラしかけたんですか!?」

BB『……』

マシュ「BBさん?」

BB『本当に聞きたいですか?』ギンッ

マシュ「ア、ハイ。ナンデモナイデス」

デオン「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ」

エリザ「え? なんで急に名言言ったの?」

ジャック「で。次は誰だっけ?」

デオン「私だな。おそらく母上も帰ってくるころになるだろう。いい感じにフォローしておくさ」

ジャック「よろしくね?」

デオン(ついでにカメラも駆除しておこう)

BB(とか考えているだろうから今は使ってない別のカメラを明日は使おう)

マシュ(って考えているんだろうけど、黙っておこう……)

ジャック(人形焼き美味しい)モグモグ

72: 名無しさん 2017/09/04(月) 17:53:38.49 ID:31YJvBuz0
マシュ「……でも。ふふっ。微笑ましいですね。茨木さんも二人きりだとハメを外すみたいです」

デオン「ああ。そうだな。地縛霊事件に関しては証拠がないので目を瞑るとしよう」

エリザ「……ん? 待って。何か様子が変よ?」

マシュ「え?」

茨木『さて。それではマスター。風呂に入るぞ。背中を流せ』

ぐだ男『はいはい』

デオン&マシュ&エリザ「何ィーーーッ!?」ガビーンッ!

ジャック「どうしたの?」

マシュ「せ、先輩が茨木さんとお風呂に……!」

ジャック「え? いつも通りじゃない? 私たちもお風呂に一緒に入ってるよ?」

デオン「余罪が増えたッ!」ガーン!

エリザ「え……ちょ、これ。あれ? 何? 何なの?」ワナワナ

73: 名無しさん 2017/09/04(月) 17:57:41.82 ID:31YJvBuz0
マシュ「BBさん! 洗面所と風呂場の監視カメラは!?」

BB『えっ』

マシュ「……BBさん?」

BB『はっ、はあ!? 何言っちゃってんですか!? そんなところにカメラ仕込むわけないじゃないですか!』

BB『常識で考えてくださいよ!』

マシュ「がふっ」ガビーンッ!

デオン「カルデアでも最大級に非常識なヤツに常識を説かれた」

エリザ「私なら自殺してるわね」

マシュ「す……すいませんBBさん……私が浅はかでした」

ジャック「謝らなくってもいいよー。ナメクジにキスするより屈辱的でしょ?」

BB『どいつもこいつも私のこと何だと思ってるんですか』

74: 名無しさん 2017/09/04(月) 18:02:02.33 ID:31YJvBuz0
BB『あ、でも音声を拾うくらいなら可能ですよ』

マシュ「いいえ! いいえ! これに関しては看過できません!」

マシュ「今すぐ先輩の家に直行して、この蛮行を止めてきます!」

デオン「待った。その必要はない」

マシュ「えっ」

エリザ「その理由は?」

デオン「絵だけ見れば確かに完全にアウトだが……それを言ったら、そもそも私たちの盗撮自体がそもそもアウトだ」

マシュ「ぐっ……それは……!」

デオン「何よりも、これはチャンスだしな」

マシュ「えっ?」

デオン「マスターが茨木童子と一緒に風呂に入っている……その事実を私が今知ったということが大事だ」

デオン「押せば私もこのくらいは……ふふふ」

マシュ「デオンさーーーんッ!?」ガビーンッ!

75: 名無しさん 2017/09/04(月) 18:09:09.85 ID:31YJvBuz0
エリザ「……そうねえ。切り札としては悪くはないかしら」

エリザ「もしもアイツが私のことを拒絶したら、このことをネタにして思いっきり脅しかけてやるわ」ニヤァ

マシュ「いやいやいやいやいやいや! ダメですよ! 脅しのネタにするために看過しろと!?」

デオン「私はそこまでは考えてない。が、まあ万が一にでもマスターが私のことを拒むのなら吝かではないな」

ジャック「私たちにはネタはいらないよ。この魔法のステッキを使えば一発だもん」ギャランッ

マシュ「ナイフです、それはッ!」

マシュ「だ、ダメです。絶対に! そんなつもりなら猶更止めてきます!」

デオン「浅草から彼の家まで行くのには結構時間がかかるぞ。そのころには全て終わっているんじゃないかな」

マシュ「がっは……!?」

マシュ「……い、いえ。入浴を阻止できなかったとしても、これ以上なんらかの罪を犯そうとしているのなら……」

マシュ「更なる罪を重ねる前に、私が止めることができるはずです!」

デオン「なるほど。一理ある。どう思う? ジャック・ザ・リッパー」

ジャック「……」

76: 名無しさん 2017/09/04(月) 18:15:29.41 ID:31YJvBuz0
ジャック「マシュは偉いね……」

マシュ「えっ」

ジャック「私たちはね、おかあさんが大好き。でもね、マシュのことも好きなんだよ」

ジャック「おねえちゃんがいたら、こんな感じなのかなって」

マシュ「じゃ、ジャックさん……」

ジャック「マシュはいい子で、頑張り屋で……私たちにも優しくって……」

ジャック「そんないい子なマシュにはイースターエッグをプレゼントしてあげる」ピンッ

コロンッ

マシュ「……?」

マシュ「……いえ、これはイースターエッグではなくフラッシュバ――」


ドカァァァァァァン!


マシュ「~~~~~~ッッッ!」

デオン「よし。警察が来る前にマシュを拘束。連行。夜が明けるまでホテルで監禁しよう」

エリザ「白百合の騎士のくせに真っ黒ね、アンタ」

デオン「ふふふ。私だって休日はハメを外すさ」

BB『サンクトペテルブルクみたいに! サンクトペテルブルクみたいに!』

デオン「黙れ」

ジャック「縛るよー」

77: 名無しさん 2017/09/04(月) 18:24:00.38 ID:31YJvBuz0
マシュ「むぐー! むぐうー!」ジタバタ

デオン「暴れなくってもすぐに拘束は解く。そうだな、二人が就寝したあたりで」

エリザ「さてと。二人がこれからどんな醜態を晒すのか見物ね……」

エリザ「できるだけ参考にしないと……」

ジャック「爆音のせいで騒がしくなってきちゃった。早く行こう?」

デオン「縛ったマシュをまともに運ぶのは難易度が高いな。エリザ。飛行して輸送してくれ」

エリザ「えー。面倒くさーい」

マシュ(なんなんですか、この手際の良さ!)ガビーンッ!

79: 名無しさん 2017/09/04(月) 19:45:13.64 ID:31YJvBuz0
BB『……』

BB(一応、BBちゃんの手に負えないヤツは出来る限り初期段階で同行できないよう除外してたんですけど、よく見たら……)


ジャック:混沌・悪
茨木童子:混沌・悪
エリザ:混沌・悪
デオン:中立・中庸
マシュ:秩序・善


BB『あれ? 混沌・悪率多いような……』

BB『……ま、いっか!』

デオン「BB。映像の中継は止めるな」ニヤァ

エリザ「ついでに録画もお願いねー」バッサバッサ

マシュ「もがー!」

80: 名無しさん 2017/09/04(月) 19:48:52.05 ID:31YJvBuz0
茨木「あー。さっぱりしたー……」ツヤツヤ

ぐだ男「二人じゃあの風呂狭いだろ。のびのびはできなかったな」

茨木「いや。それはそれで乙であったぞ?」

茨木「さあ。そろそろ寝るとするか」

ぐだ男「……」

茨木「先も言ったが、布団は一つでいいからな?」

ぐだ男「マジか」

茨木「せいぜい寝首を掻かれぬよう、気を付けよ?」

ぐだ男(それも心配だけどさ……)

81: 名無しさん 2017/09/04(月) 19:51:58.10 ID:31YJvBuz0
十分後

ぐだ男(……電気を消して、二人して布団に潜り込む)

ぐだ男(やっぱ微妙に熱いな……確かに今日は冷えるけどさ)

茨木「……くくく」

ぐだ男「ご機嫌だな」

茨木「当然であろう。中々できぬ趣向ゆえな」

茨木「……ああ、いい匂いだぁ……本当に」スンスン

ぐだ男「……お、おい……」

茨木「お、い、し、そ、う」ニヤァ

ぐだ男(やっぱりあまりにも軽率だったかもしれない!)ガビーンッ!

82: 名無しさん 2017/09/04(月) 19:57:53.45 ID:31YJvBuz0
ぐだ男(闇の中にあってもコイツの眼光だけは爛々と光って見える)

ぐだ男(宝石だとか蛍だとか、そういうのが持っている神秘的な光みたいで美しい。が、怖い!)

茨木「……」ペロ

ぐだ男「うっ……」

ぐだ男(首筋を舐められた)

茨木「いいなぁ。いいなぁ……顔つきはどう見ても凡夫なのに、凄くいいなぁ……!」ペロペロ

ぐだ男「茨木。まさか本当に俺を食ったりは……」

茨木「……」ガブリ

ぐだ男「いっつ!」

ぐだ男(まだギリギリ甘噛みで片付けられる程度の痛み。だが、その内エスカレートしそうだ。その気配がある)

茨木「……」

茨木「血で汚れるかもしれんな。よし」ゴソゴソ

ぐだ男「ん? おい。おい。暗闇でよく見えないが、まさかお前」

茨木「服を脱いでおるぞ?」

ぐだ男「」

83: 名無しさん 2017/09/04(月) 20:08:22.24 ID:31YJvBuz0
茨木「汝も血で服を汚したくなければ脱いでもよいぞ?」

ぐだ男「遠慮しておきます!」

ぐだ男(流石に布団の中で男女両者素っ裸はまずい! 一緒に風呂に入っておいて今更感凄いけど!)

茨木「はぁっ……はぁっ……あむっ」ガブリッ

ぐだ男「いたっ……!」

ぐだ男(今度は強く噛まれ、血が滴り落ちる感覚が肌を伝う)

ぐだ男(こ、これはまずい……明日には骨になってるかも……!)ゾッ

茨木「……高揚してきたぞ……いいなぁ。なんか汝の悲鳴と苦悶の顔を見ていると……こう、凄く……!」

茨木「もっと欲しくなるぞ」ニヤァ

ぐだ男「流石に全部はやれないぞ!? まだカルデアでやること沢山残ってるんだから!」

茨木「……」

茨木「汝、吾のマスターであろう。いよいよ危なくなったら手綱を取れ」

茨木「まだやめたくない。もっと欲しい」

ぐだ男「茨木童子……!」

茨木「んっ……ちゅ……れろ……」

ぐだ男(……鬼の食事はまだ続く)

ぐだ男(仮に、本当に俺が言ったところで止まるのか?)

ぐだ男(……)

ぐだ男(怖いので考えるのをやめた。それに――)

茨木「……ああっ……!」

ぐだ男(正直、ここまで悦んでいる茨木童子を中途半端なところで止めたくない)

84: 名無しさん 2017/09/04(月) 20:14:07.35 ID:31YJvBuz0
ホテルの一室


デオン「……」

エリザ「……真っ暗闇で何も見えないわね。水音と悲鳴と布ずれの音は聞こえるけど。あと茨木の甘い笑い声」

デオン「布団で何かしているということしかわからないな」

ジャック「大人のプロレスごっこ?」

デオン「BB。画面を明るくできないのか?」

BB『いやぁー。あえて暗闇ではまったく視界が通らなくなるカメラをしかけたので無理ですねー』

BB『ブルーレイだと闇が全部晴れます』

エリザ「見えるんじゃない」

マシュ「見たいような、見たくないような……」

デオン「ふむ。まあいい。こっちも似たようなことをすればいいだけだ」

デオン「……」

デオン「いや、これ以上のことをすればいいだけだ」ニヤァ

エリザ「本当真っ黒ねアンタ。あの王妃が見たら泣くわよ」

デオン「黙っていてくれ」

エリザ「いいけど」

BB『私は黙っていられません!』キラッ

デオン「死んでくれ」

88: 名無しさん 2017/09/05(火) 19:20:24.08 ID:ieoj2/n50
BBの日記
イバラギンさんの番が終わり、次はデオンくんちゃんさんの番。
あの時期のフランス人って大抵堪え性がないからなー。心配だなー。
場合によってはジャックさんの荷物に入れておいた天然痘ウイルスが役に立つかもしれません。一応彼女? 彼? には罹患したという逸話がありますので。死因ではないにしろ足止めはできるでしょう。

ところで巌窟王さんから黒い本の形をしたアーカイヴデータが送られてきました。タイトルは学級日誌。
才囚学園の生徒十六人のプロフィールと、恩讐的(?)に点数が高いところを纏めたデータのようです。

うんうん。全部手打ちですか。生徒同士の恋模様とか激情とか屈託とか細かく書かれていて中々見ごたえが――


マジで何やってんですかあの人ッ!


仮のマスターは夜長アンジーさんという女の子だそうです。
やべぇ、ありえないほど馴染んでるんですけど。帰ってきますよね? 帰ってくるんですよね?
学級日誌の行間の節々から、あの『クハハ』という笑い声が聞こえてくるようです……ウゼェ!

90: 名無しさん 2017/09/05(火) 19:29:54.04 ID:ieoj2/n50
ホテルロビー

茨木「くはは! 楽しかったぞ!」

ぐだ男「マシュ。治療用スクロールとか持ってない?」ボロッ

マシュ「噛み傷だらけッ!?」ガビーンtゥ

デオン「エキサイトしすぎだ」

エリザ「ああもう。危うく私の分までなくなるところよ」

ジャック「いたいのいたいのとんでけー」

ぐだ男「ありがとジャック」

マシュ「す、すぐにスクロールを取って来ます!」バタバタ

91: 名無しさん 2017/09/05(火) 19:36:46.72 ID:ieoj2/n50
シュワァァン!

ぐだ男「あー、痛かった」

マシュ「い、茨木さん……! マスターになんてことを!」

茨木「いいっ!? いや、吾も悪いとは思ったのだぞ! 思ったのだが!」アタフタ

茨木「そ、その……マスターが優しすぎてな。かなりギリギリまでやってしまった。すまぬ」

エリザ「あー。わかるわかる。私もたまにコイツのこと刺殺したくなるもの。どうせ許してくれるし」

マシュ「!?!?」ガビーンッ

デオン「諦めよう、マシュ。悪属性とはこういうものだ」

ぐだ男「一緒に歩むこと自体は可能だと確信してるけど、決定的にわかりあうことは不可能な面子だからな」

マシュ「せ、先輩も先輩です! もっと強く拒絶してくれれば、こんな怪我……!」

ぐだ男「し、死んでないから大丈夫だ! なっ!」

茨木「大丈夫だぞ!」

マシュ「……酒呑童子さんに報告します」

ぐだ男&茨木「にゃんとぉ!?」ガビビーンッ!

エリザ「終わったわねー、二人とも」

92: 名無しさん 2017/09/05(火) 19:44:04.45 ID:ieoj2/n50
ジャック「ねえねえおかあさーん」

ぐだ男「なに?」

ジャック「朝起きたときに茨木が裸だったけど、なんで?」

ぐだ男「」

マシュ「……先輩」

ぐだ男「」ビクッ

マシュ「先輩」

ぐだ男「」ガタガタ

マシュ「先輩」ゴゴゴゴゴ

エリザ「やめなさい。心臓に負担がかかりすぎて死ぬわよ」

ぐだ男(なんでジャックはうちのことを見てきたみたいに話すんだろう……!?)ガタガタ

93: 名無しさん 2017/09/05(火) 19:47:30.06 ID:ieoj2/n50
デオン「ともかく、今日は私の番だ。観光の土産は期待している」

デオン「ふふふ。今日は忙しくなるぞ。マスター」

ぐだ男「あ、お、おう……」

ぐだ男「……サンクトペテルブルクみたいな待遇は期待するなよ?」

デオン「一応弁解させてもらうが、私は一応あそこに公務で行ったんだ!」

デオン「ついでに、文献にあるような贅沢三昧もしてないぞ! 少ししか!」

ぐだ男(してんじゃねーか)

マシュ(……ひとまず、デオンさんなら安心でしょうか……?)

100: 名無しさん 2017/09/06(水) 20:23:57.86 ID:vY3arngU0
マシュ「……行ってしまいましたね」

エリザ「デオン……デオンねー。カルデアではマシュの次の古株だったかしら。次点で私だけど」

マシュ「そうですね。冬木市から今に至るまでずっと私たちを守ってきてくれた頼り甲斐のある騎士です」

エリザ「アイツ割と欲しがるわよ。あの王妃やフランス系サーヴァントがいない場所では特に」

マシュ「え?」

エリザ「なんというかねー……経済観が違うのよね、根本的に」

茨木「堪え性はないな」

ジャック「食べられる? 今度は性的な意味で」

マシュ「えっ」

エリザ「うーん、デオンの伝記には妙に色恋の話が少ないのよねー。アイツの好みって何なのかしら」パラパラ

茨木「今はひとまずマスターであろうよ。まあごっこ遊びのようなものかもしれんが」

マシュ「なんかみんな妙にデオンさんの生前に詳しいと思ったら……!」

マシュ「エリザさんの持ってるそれ、伝記ですね!? デオンさんの!」

茨木「吾がマスターの家から拝借してきたぞ。正確に誰のものかはわからんが、カルデアに来る以前から知っていたようだな」

BB『……あ。それマスターの部屋にもありましたね。多分こっちのはカルデアの図書室から借りて来たものだと思いますが』

マシュ「あの二人にそんな因縁が……!」

マシュ「……」

マシュ「マスターの部屋に……?」

BB『あ。ご心配なく。マスターのいない間の不法侵入ですので甘い展開はありませんでしたよっと』

マシュ「後でお説教です」

BB『はい』

101: 名無しさん 2017/09/06(水) 20:32:43.29 ID:vY3arngU0
ぐだ男家

デオン「ここがマスターの家……か」

デオン「ふむ。確かに……どことなくキミの残り香を感じるね」

ぐだ男「変な言い方はよしてくれ」

デオン「おっと、すまない。気を悪くしないでくれ。こちらも少し気分が高揚しているんだ」

デオン「……ふふっ。で、マスター」

ぐだ男「なんだ?」

デオン「これくらいの量で大丈夫かな?」

ぐだ男「え。何それ……チャフ?」

デオン「うん。チャフ。そこら辺にばら撒けばあらゆる電波機器は一時的に使用不可になる」

デオン「BBがジャックの荷物にせっせこ入れていたのを見たんだ」

ぐだ男「……」

ぐだ男「で、デオン。まさかそれをバラ撒いたりしな――」

デオン「ぽいっと」ポイッ


ボォォォンッ!

102: 名無しさん 2017/09/06(水) 20:37:09.18 ID:vY3arngU0
ザザーッ

マシュ「……」

エリザ「BB。復旧は?」

BB『無理ぽ』

ジャック「あー。確かにチャフが無くなってるね」ゴソゴソ

BB『もう。扱いには気を付けてって言ったのに』

マシュ「先輩ーーーッ!」ガビーンッ!

BB『チャフが晴れたら復旧はすると思いますが……多分今、デオンさんは絶対に見られたくない何かをマスターにしているでしょうね』

茨木「具体的には?」

BB『ドロドロのキッスとか?』

マシュ「ドロドロの!?」

BB『ヤられちゃった』

マシュ「ピットくんみたいに言わないでくださいッ!」

103: 名無しさん 2017/09/06(水) 20:44:11.03 ID:vY3arngU0
茨木「魔酒よ。憂いても仕方がないぞ? というか序盤からこんなに飛ばすつもりなら」

エリザ「以降は大人しくするでしょうね。それなりに。BBを楽しませるようなマネもしたくないでしょうし」

ジャック「カメラの向こうでゲタゲタ笑われてるんだと思うと気分最悪だしねー」

BB『てへっ』

エリザ「鑑賞会一旦中止ー。今日は銀座で寿司食べに行くわよー」

茨木「最近の寿司屋はパフェを出すらしいな!?」キラキラ

エリザ「回らない寿司屋だから期待するだけ無駄よー」スタスタ

マシュ「先輩……どうかご無事で……!」

104: 名無しさん 2017/09/06(水) 20:54:15.69 ID:vY3arngU0
デオン「さあ。これで助けは呼べない……キミはまさに私の手の平の上というわけだ」ニヤァ

ぐだ男「お、お前……なんのつもりだ?」ヒキッ

デオン「監視カメ、ゲフンゲフン! もとい、キミが助けを呼べない今のうちに!」

デオン「私が!」

デオン「色々する!」ズギャァァァン!

ぐだ男「こ、この野郎! 正気か!? 部屋の中でチャフばら撒いたりしたら」

デオン「掃除が大変だな! だが安心しろ! 後で私が全部片づける! そしてジャックに返す!」

ぐだ男「使用済みのものを返すのならそれはゴミ処理だろッ!」

デオン「騎士道にもとるようなことはしないさ! しないとも! 何故ならば!」

デオン「休日だからな!」

105: 名無しさん 2017/09/06(水) 21:01:34.98 ID:vY3arngU0
デオン「覚悟しろ……私はキミに……私は……?」

ぐだ男「ん?」

デオン「……」




デオン「具体的に何するか考えてなかった……!」ガーンッ!

ぐだ男「チャフまで用意しておいて!?」ガビーンッ!

デオン「ああ……えーと、えーっと……ひとまず」ダキッ

ぐだ男「……え? ひとまず……何?」

デオン「だ、抱き着いてみたりとかー……?」カァァ

ぐだ男「……」

ぐだ男「お前、悪いこと考えるの得意じゃないだろ」

デオン「くそう」エグエグ

106: 名無しさん 2017/09/06(水) 21:07:52.91 ID:vY3arngU0
デオン(BBの監視カメラの完全除去は不可能だろうな、と思った)

デオン(なので発想を変えるしかなかった。除去せずに無力化させればいいと)

デオン(無力化できるのはせいぜいが三分かそこら。あんまり長い時間はない)

デオン(その短い時間で何をするのか……まったく考えてなかった!)

デオン(最悪の場合、開き直れば……つまりBBに嘲笑されることを気にしなければもっと色々できる! できるが!)

デオン(くっそーーー! それを差し引いても、このチャンスをモノにできなかったのは痛すぎるーーー!)

ぐだ男「別にいいって。甘えたいのなら素直にそう言えば」

デオン「……!」

ぐだ男「もう長い付き合いなんだからさ」

デオン「でも……」

ぐだ男「というか、今まで守ってもらってきたからさ。甘えてもらいたいんだ。こっちが」

デオン「む……」

107: 名無しさん 2017/09/06(水) 21:14:54.86 ID:vY3arngU0
デオン「じゃ、じゃあその……あの……キス……とか」

ぐだ男「ん?」

デオン「……する方じゃなくって、してもらいたい。キミの方から」

ぐだ男「……お、おう。いきなりハードル高いな」

デオン「頬でも手の甲でも好きなところに。唇でもいいが」

ぐだ男「……あー、えーっと……ごめん、頬で」

デオン「ふふっ。いいよ……来て……」

ぐだ男「……」



チュッ

108: 名無しさん 2017/09/06(水) 21:19:45.34 ID:vY3arngU0
ザザーッ

BB「あっあー……ダメですね。まだ復旧できません」

BB「チッ。古典スパイだと侮っていましたか。ジャックさんに渡したオモチャが裏目に出てしまいましたね」

BB「この分だと天然痘ウイルスも処理された後……」

ピロリンッ

BB「ん? あ、巌窟王さんからだ。なになに?」

BB「『卒業アルバムを作ることになったのでカメラマンをよこせ。ゲオルギウス希望』……っと」

BB「『知るかボケッ!』と返信」ピロリンッ

BB「……」

BB「監視カメラに次ぐ別の監視手段を考えるべきですね」ニヤァ

111: 名無しさん 2017/09/07(木) 20:45:24.37 ID:ltx+bvf/0
虚構殺人遊戯 才囚学園

巌窟王「……突っぱねられてしまったか……」

巌窟王「夜長アンジーに『俺の黄金律の力を見るがいい!』と大見得切ったからな。どうしたものか……」

巌窟王「……」

巌窟王「クハハ! カメラを一から学ぶしかあるまい!」ギンッ

巌窟王「見ているがいいモノクマよ! 俺は! 俺の仮初のマスターは!」

巌窟王「この絶望的な学園を、あえて楽しんでやるぞ! あえてなぁ!」

巌窟王「さて、図書室はどこだったか……地下だったな」スタスタ


五分後


カシャッ


巌窟王「……ム? 今、本棚が光ったか?」

112: 名無しさん 2017/09/07(木) 20:51:53.95 ID:ltx+bvf/0
ガンッ


ぐだ男「うわあああああ! 巌窟王、上だーーー!」ガバァッ

デオン「うわっ、ビックリした。な、何?」ドキドキ

ぐだ男(ここは……俺の家、か……)

ぐだ男(そうだ。デオンが掃除している間、暇だったから寝ていたんだった……)

ぐだ男「あー、変な夢見た……巌窟王が砲丸程度でやられるわけないよな……」

デオン「ん……? まあ、魔力も何もない砲丸なら死なないと思うけど……?」

デオン「あ、マスター。掃除は終わったよ」

ぐだ男「……本当だ。なんなら昨日より綺麗になったくらいじゃないか」

デオン「ふっ。エミヤから色々教わった成果が出たな」キラーンッ

ぐだ男「色々してるんだな、デオン……」

113: 名無しさん 2017/09/07(木) 21:03:15.51 ID:ltx+bvf/0
デオン「さてと。ここまで色々したところで……」

デオン(もうBBの監視カメラも復活しているだろうから)

デオン「まともな活動に戻ることにしよう。母上はいつ帰ってくる?」

ぐだ男「今日、だな。父さんも一緒だ」

デオン「そうか。ならば……できる限り豪勢な料理で迎えてあげないとな」

デオン(交渉事の基本として、食事をしているときはタイミングと挙動で主導権を握れるからな)

ぐだ男「お前、料理もできるのか?」

デオン「いや? 流石に日本料理に関しては無理がある。ので」

ぐだ男「ので?」

デオン「この札束で出来得る限り、出前を取るぞ」バサッ

ぐだ男「……」

ぐだ男「デオン。その札束、どこにあった?」

デオン「私たちサーヴァント五人は共用の財布を持っていたんだ。観光用の。主にマシュが管理することになっていたんだが」

デオン「そこからゴッソリ抜いてきた」キュピーンッ

ぐだ男「マシューーーッ!」ガビーンッ!

デオン「流石にカードまでは抜いてないので、銀座で回らない寿司でも食べに行かない限りは大丈夫だ!」

ぐだ男「行った場合は!?」

デオン「ダヴィンチかイシュタルに金を借りることができる。トイチで」

ぐだ男「死んだ方がマシかもしれない!」

114: 名無しさん 2017/09/07(木) 21:12:14.54 ID:ltx+bvf/0
デオン「きっと大丈夫さ。なにせ悪属性が固まっているからね。借りる以外にも方法はある」

ぐだ男「例えば?」

デオン「カツアゲ」

ぐだ男「……!?」



一方そのころ 銀座の外れ


エリザ「オラオラオラオラーーーッ! 財布をよこしなさいよーーー!」ドカァァンッ

ジャック「悪そうな人を中心的に狩っていこうね!」ザクッ

茨木「くっはははははは! 血がたぎるわ!」バキバキッ

マシュ「」

モヒカンチンピラ「が、がはっ……な、なんだテメェーらは……!」

エリザ「チャーリーズエンジェルよ!」ビシィッ

マシュ「絶対に違います!」ガビーンッ!

119: 名無しさん 2017/09/08(金) 20:19:44.94 ID:AfTYhIWY0
ぐだ男「……BBに情報の隠滅は任せよう。身から出た錆だとは言え可哀想になってきたな」

ぐだ男「この予測ばっかりは外れてほしいけど」

デオン「まず間違いなく狩ってるだろうね」

ぐだ男「そもそもお前が財布から金をスらなければ……」

デオン「え? 何故?」

ぐだ男(罪悪感なし!)ガビーンッ

ぐだ男「いや、なんでもない……」

デオン「出前は寿司でいいかな?」カタカタ

ぐだ男「うおーーー! 当たりまえみたいにうちのパソコン使って注文してるーーー!」

デオン「特上。特上。ルンルン」

ぐだ男「並にしろ並にッ!」

120: 名無しさん 2017/09/08(金) 20:32:18.85 ID:AfTYhIWY0
ピロリンッ

ぐだ男「ん。母さんからメール……ああ。昼には帰ってくるってさ」

デオン「夕飯時に来るよう手配しよう。金銭についての心配は『職場先のキャリアでエリートな人だから問題ない』と説明をば」

ぐだ男(もう断っても無駄だなコレ……)

ぐだ男「了解。デオン、後でマシュたちには謝っておけよ」

デオン「マシュには謝る。その他は私が帰るころには『何に怒っていたのか』どころか『怒っていたという事実』すら忘れてるだろうから謝らない」

ぐだ男「最低だ!」

デオン「ははは。話をこじらせないためだよ。沈黙は金だ」

ぐだ男(カエサルには劣るけど、そういえばコイツも話術で人を煙に巻くの得意なんだよなー)

ぐだ男(……いや中途半端に知恵ついてるからカエサルのカモにされるのか……)

121: 名無しさん 2017/09/08(金) 20:44:01.07 ID:AfTYhIWY0
デオン「……」

デオン「甘えさせてくれるんだろう? まだまだ序の口だよ?」

ぐだ男「わかってるよ。任せとけって」

ぐだ男「しかしお前、マリーの前だともっと真面目なキャラなのになぁ!」

デオン「彼女の前ではね? 今の私はルイ15世を相手にしているときの私に近いかな」

デオン「彼の前では結構、今と同じように甘えさせてもらったから」

ぐだ男「『これ以上の出費はマジでやめて』って手紙で怒られたことあるんだっけ、お前」

デオン「……」

ぐだ男「お前宛てじゃないけどルイ十五世が『デオンやばい(かなり意訳)』と手紙に書く程度にヤンチャしてたんだったな?」

デオン「生前の私を調べてくれるのは嬉しいが、もうちょっとまともな逸話をチョイスしてくれ!」

ぐだ男「ロシアの女帝に『うちの国に来ないか』って伝言されたときに『私はフランスの騎士ですので』って突っぱねた話とか?」

デオン「そうそう!」

デオン「えっ……あっ、えっ……? そんなことあったっけ……? 心当たりはあるけど……」

ぐだ男「自分でもうろ覚えじゃねーか!」

122: 名無しさん 2017/09/08(金) 21:01:14.61 ID:AfTYhIWY0
デオン「いやぁー……言いそうだなー、あの女帝さまなら……」

デオン「おっと。むかしのことを思い出すのは後。準備を進めよう」

デオン「酒も必要だな……ワインとか。あ、身分証明ができるもの……」

デオン「いや落ち着け。パスポートは持ってきた。BB製の偽造のヤツだけどキッチリ二十代だ……」ブツブツ

ぐだ男「……妙に気合入ってるな?」

デオン「後続の連中にケチつけられたら堪らないからね。印象操作くらいは全力でやるさ」

デオン「酒の席でならカエサルにだって負けないよ、私は」

デオン「……そう。酒の席でなら……クリスマスでのあれは何かの間違いだ……!」ギリッ

ぐだ男(どうだろうなー……酒の席でもアイツが隙を見せるとは思えないけど)

123: 名無しさん 2017/09/08(金) 21:09:15.23 ID:AfTYhIWY0
数時間後

父「あっはっはっはっは! デオンちゃんは面白いなぁ!」

デオン「ふふっ。この程度はフランス人の嗜みです」ニコニコ

母「ヴィヴ・ラ・フラーンス! ひっく」

デオン「お母さま。病み上がりなのですから、あまり無茶は……」

母「大丈夫よー……なんならもう昨日の時点で退院できるくらいだったんだかりゃー」

母「もー。デオンちゃんってば心配性!」

デオン「当然です。だってあなたは、ぐだ男くんの母上なんですから。私にとっても大事です」ニコニコ

母「やっだーキュンと来ちゃったー」

父「あはははははは!」

デオン「……」ニコニコ

デオン(チョロいな)ニタァ

ぐだ男「素が出てんぞ白百合の騎士」

デオン「おっと」ニコニコ

ぐだ男(あっという間に懐柔しちゃったよ。速ァ! そして白百合の騎士、黒ォ!)

ぐだ男(いやむしろ俺の両親がチョロすぎるのか!?)

124: 名無しさん 2017/09/08(金) 21:18:45.78 ID:AfTYhIWY0
ぐだ男(再会の挨拶もそこそこに、デオンの挨拶を済ませた後、夕飯の時間に寿司を取って、両親のコップに酒を注ぐ)

ぐだ男(流れ作業だったな……流石にスパイだ。動きが全部自然)

母(なんか昨日と違う子のような……?)グビグビ

ぐだ男(……と、お母さんは思っているだろうが、アルコールの果てへと冷静な思考はフライアウェイ)

ぐだ男(まあ茨木との顔合わせは一瞬だったしな……)

ぐだ男(ところで後続に憂いは残さないみたいなことをデオンは言っていたが、何かする気なのか?)

デオン(もちろん、何もしない! 私がやるのは私だけの印象操作だ!)ギンッ

デオン(仮に私がやれることがあるとしたら、後続のために『マスターの友達はみんないいヤツだ』という先入観を刷り込むことくらいだろう)

デオン(あと軽い二日酔いを起こさせて、二人の思考回路を明日に至るまで鈍くする)

デオン(……ハハッ。チョロいな)ニタァ

ぐだ男「デオン。顔、顔」

デオン「おっと」ニコニコ

125: 名無しさん 2017/09/08(金) 21:30:49.80 ID:AfTYhIWY0
父&母「」バタンキュー

デオン「この勝利は、フランス王家の勝利でもある!」

ぐだ男「最終的にはマリーにチクるぞ」

デオン「やめてくれ。その方法は私に効く。やめてくれ」ガタガタ

ぐだ男「あーあー! 完全に潰れちゃったよ! 普段こんなになるまで飲まない人たちなのに!」

デオン「……ちょっと心配になるくらい人が好すぎだったな。彼らは今まで無菌室にでも暮らしていたのか?」

ぐだ男「うーん、言い返せない!」

デオン「まあ二人を布団に運ぶのは任せてくれ。一応筋力には自信がある」

ぐだ男「この際だから聞くけどさ。お前の筋力のステータス、バグじゃないの?」

デオン「エミヤのような見せ筋とは違うよ」




夜空に浮かぶエミヤ座(おっと。心は硝子だぞ……)

126: 名無しさん 2017/09/08(金) 21:37:01.33 ID:AfTYhIWY0
デオン「処理終了。明日に誰が来るかはわからないが……まあ大丈夫だろう。あの分なら」

デオン「頭の動きが鈍くなってるだろうからな」

ぐだ男(明日は家には極力入れない方向で予定組もう……二日酔いのお母さんを煩わせたくないし……)ズーン

デオン「さて。じゃあ、そろそろ私たちも」

ぐだ男「おっと。そうだ。デオンの分の布団も敷かないと……」

デオン「ん? 何を言っているんだい?」

ぐだ男「え」

デオン「布団は一つだけでいいよ?」ニコニコ

ぐだ男(またこのパターンかよッ!)ガビーンッ

130: 名無しさん 2017/09/09(土) 22:28:14.99 ID:p2p0TuZQ0
虚構殺人遊戯 才囚学園

巌窟王「」チーン

赤松「がっ、巌窟王さんが図書室の中で血塗れになって死んでるーーーッ!」ガビーンッ

最原「巌窟王さーーーんッ!」


ピンポンパンポーン


モノクマ「死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!」

最原「そ、そんな……!」

百田「クソッ! マジかよ……! 巌窟王を殺したヤツを、命懸けで探せって……!?」

最原「無理だ……! 僕には、そんなこと……!」

巌窟王「――諦めるのか?」ザッ

モノクマ「えっ」

巌窟王「それもいいだろう。つまらない結果だが結末は結末だ」

巌窟王「だが! もしも! 貴様の心の中に恩讐の牙が残っているのならば!」ギンッ!

巌窟王「俺はお前たちの手を取ろう! さあ! 血塗られたパズルを解き明かすのだ!」

最原「巌窟王さん……!」

アンジー「よーっし! 犯人をみんなで捕まえよー!」

生徒一同「おー!」

モノクマ「えっ。待って。待って。ねえ。誰が被害者だっけ? あれっ!?」

モノクマ「オマエなんで生きてるの!?」ガビーンッ

巌窟王「HPがギリギリ一桁くらいは残った」フラフラ

アンジー「令呪で回復させるねー」キンッ

モノクマ「」



その後、無事に犯人は見つかったが、おしおき装置を巌窟王が処刑途中にぶっ壊したので実質上の死亡者はゼロだった。

残り人数 十六人+一騎


To Be Continued...

132: 名無しさん 2017/09/09(土) 23:12:11.73 ID:p2p0TuZQ0
ぐだ男(というわけで、布団を敷いて、またしてもサーヴァントと同衾)

ぐだ男(慣れな……くもない。いつもは静謐のハサンとか頼光とか清姫とかがテケテケしてくるからな)

ぐだ男(なによりも……)

デオン「すぴー」

ぐだ男(俺をリードする気満々だったデオンは布団に入った途端に寝息を立て始めた)

ぐだ男(まあ、酒に付き合ったわけだしな。アルコールをガブ飲みすれば眠くもなる)

ぐだ男(……サーヴァントって食事も睡眠も必要ないはずなんだけど)

デオン「むにゃ……最愛王よ……このワインは必要経費です……」

デオン「破綻寸前……? ははは、わかりやすい嘘を。経済はもうとっくに破綻してますよ」

デオン「だから……私にもっと年金……むにゃむにゃ」

ぐだ男「生前の夢見てやがる……マリー・アントワネットのときとはやっぱりギャップありすぎだよな」

ぐだ男「……」

ぐだ男「まあ、いいか。休日だもんな」

ぐだ男「おやすみ、白百合の騎士」

133: 名無しさん 2017/09/09(土) 23:21:00.50 ID:p2p0TuZQ0
ホテルの一室

マシュ「……何も聞こえませんね」

エリザ「何もやってないからでしょう? 一緒に布団に入っちゃった時点で安心しきって寝ちゃったのね」

マシュ「サーヴァントに睡眠は……」

エリザ「必要ないわよ? でも娯楽としてはいまだ有効だし、それ言ったらほら。フェルグスだって……」

ジャック「サーヴァントにセックスは必要ないよねー?」

マシュ「んなぁっ!?」

エリザ「……ボカしなさい。えっちぃのは許可しないわよ」カァッ

ジャック「ごめんなさーい」

茨木「で。明日は誰だ?」

ジャック「私たち!」

マシュ「……」

エリザ「……」

茨木「……」

茨木「誰も言わないようなら代表して吾が言うが?」

エリザ「頼むわ」

茨木「ジャック。寝込みの腹を裂くなよ?」

ジャック「……えへっ」

134: 名無しさん 2017/09/09(土) 23:26:51.87 ID:p2p0TuZQ0
BBの日記
どうも私たちの目にしているデオンさんは、シュヴァリエ・デオンのダメな逸話が多分に含まれているようです。
微妙にポンコツアンドロイド……いやアンドロイドじゃないな。まあいいや。

あの時期のフランス系サーヴァントは、善悪以前に卑近的な経済観が合わないので、扱いにはクセの把握とコツが必要なのですが、あのマスターなら平気でしたね。

さて、次はジャックさんが行く予定らしいですが。ジャックさんが行く予定らしいですが?
……正気なんですかね? 旅行サーヴァントのみなさん。上質なコカインでもキメてます?

今から考えるに、やっぱり巌窟王さんの行先をミスったのかなり痛いなぁ……あ、そういえば、また学級日誌が届いてたんだった。後で見ないと。

138: 名無しさん 2017/09/10(日) 22:34:35.43 ID:CMAZ5mQJ0
巌窟王の学級日誌
この前の学級裁判において、夜長アンジーに令呪を一画使わせてしまった。自らの不甲斐なさに笑いが出てくる。
だが、この身一つで生徒たちを導けるとは最初から毛頭思っていない。

ただ全力を尽くすのみだ。

全力を尽くすと言えば、さっき意外な人物から相談を持ち掛けられた。早速俺の出番らしい。
『二人きりで内密に話したいことがあるので、星の研究教室へ来い』という旨の手紙を直接手渡して来たのだ。

この状況だが、アイツならば信用に値するだろう。

ところで、さっき角材とかロープとか夢野の研究教室に放置されていた水槽の蓋とか、星の研究教室にあったはずの手錠とかプールの浮き輪とか、とにかくよくわからないものを調達していたが、一体何に使うのだろうか。件の相談に関係があるのか?

まあいい! 待て、しかして希望せよ、だ!

139: 名無しさん 2017/09/10(日) 22:40:41.83 ID:CMAZ5mQJ0
ガツンッ

ゴボゴボゴボッ……!



ぐだ男「うわああああああ! 巌窟王があああああ!」ガバァッ

ぐだ男「はあ……はあ……夢か」

ぐだ男「まあそうだよな。あの巌窟王が角材で殴られた程度で気絶とかしないよな……」

ぐだ男「……」

ぐだ男「あれ? デオンがいない」


キャッキャッ


ぐだ男「あ。リビングから声がするな」

デオン「大丈夫ですか? すみません、飲ませすぎてしまいましたね。水を持ってきました」

母「ありがとう……うっぷ」

父「はっはっは。こちらの自業自得だから気にしなくていいよ、デオンちゃん」

ぐだ男「……完璧に取り入ってる……!」

140: 名無しさん 2017/09/10(日) 22:46:35.39 ID:CMAZ5mQJ0
数時間後 ホテルロビー


デオン「……というわけで、こちら側の心象を良くした上で、相手方に二日酔いのバステを付与した」

デオン「この状況を使いこなせるかどうかは人による、はずだったんだけど」

ジャック「次は私たちが行くよー!」キラキラキラ

デオン「……早まったか」

エリザ「大丈夫。大丈夫よデオン。仲間なんだから信じましょう?」

デオン「そうだね。ところでエリザ、仲間と自分の美容、どっちが大事かな?」

エリザ「美容だけど?」

デオン「そこで即答できるあたりが悪属性の所以だよ……」

ぐだ男「俺とお前らの仲間の定義、絶対違う」

マシュ「長く一緒にいても理解不能ですからね……」

茨木「理解不可能と言わないあたりが魔酒の甘さよなぁ?」

141: 名無しさん 2017/09/10(日) 22:53:42.69 ID:CMAZ5mQJ0
マシュ「じゃあ、そういうことで先輩。これも決まりですので……」

茨木「……愉快な死体にならないように、気張るのだぞ?」

エリザ「ジャック。一応言っておくけど、おさがりならいらないからね?」

マシュ「え?」

デオン「中古は御免だってことだよ」

マシュ「……」

マシュ「エリザさんも大概ですよね!?」ガビーンッ

茨木「人のことどうこう言う資格は一番ないなぁ?」

エリザ「何よう! 別にいいじゃない! 新品の方が甚振り甲斐あるもの!」

ジャック「おかあさん! 行こう!」ニコニコ

ぐだ男「……じゃ、マシュ。行ってくるな!」

マシュ「せ、先輩!」

ぐだ男「大丈夫だ! 多分!」

マシュ「絶対じゃないんですね、やっぱり!」ガビーンッ!

142: 名無しさん 2017/09/10(日) 23:05:17.98 ID:CMAZ5mQJ0
マシュ「行きました。行ってしまいましたね……」

茨木「死ぬか生きるか、賭けるか?」

エリザ「私、生きる方! 今回もなんだかんだ無事で済むでしょ」

デオン「私も生きる方で」

茨木「奇遇よな。吾もだ」

茨木「ふむ。じゃあ魔酒が死ぬ方に賭けよ。これでバランスが……」

マシュ「取れてないですし縁起悪いですしッ!」

エリザ「っと、そうだ。BBから荷物が届いてるそうよ?」

マシュ「え? BBさんから?」

エリザ「怪しすぎるから、まだ開けてないんだけど……」

デオン「そもそもどうやって届けたんだ?」

茨木「考えるだけ無駄よな。仮に方法がわかったとしてロクなものではあるまいよ」

エリザ「いっそのこと捨てる?」

マシュ「……いえ。一応、開けてみましょう……」

エリザ(凄いイヤそうな顔)

143: 名無しさん 2017/09/10(日) 23:12:02.37 ID:CMAZ5mQJ0
プレゼントボックス「」ゴテゴテッ

マシュ「……凄くゴテゴテしいプレゼントボックスですね」

茨木「そうさなぁ。この大きさだと、人の頭蓋くらいは入りそうなものよな?」

マシュ「想像してしまうのでやめてください」

プレゼントボックス「BB-……ちゃんねるー……いやもうちょっと声のトーン上げて……」ブツブツ

マシュ「……」

エリザ「ね? 開けたくないでしょ?」

デオン「今、中から聞こえたのってBBの……」

マシュ「何も聞こえてません」

エリザ「は?」

マシュ「何も聞こえなかったんです。なので、私が開けます」

デオン「急に悲壮な決意を固めたぞ。どうしたんだ彼女」

茨木「苦労のし通しで自暴自棄になっているようだな?」

エリザ「やっぱりカツアゲはまずかったかなー」

デオン(やっぱりカツアゲしてたんだな……)

146: 名無しさん 2017/09/11(月) 19:30:38.66 ID:iMg8tRJp0
デオン「待てマシュ。開けることには賛成だが、何もキミがこれ以上苦労することはない」

デオン「エリザに開けさせよう」

エリザ「あっはっはっはっは……私ッ!?」ガビーンッ

デオン「キミが苦労させたんだから当然だろう」

エリザ「アンタが財布から金くすねなきゃやんなかったわよッ! この乱費セイバー!」

茨木「念のため。吾らは悪人しか相手にしなかったぞ? マスターの理念に賛同しているわけではなくとも、仮にも隷従しているのだから当然よな」

エリザ「アイツが私に隷従しているんだけどね! いやそれは今はいいわよ!」

エリザ「どうしても私じゃないとダメ!?」

デオン「BBのこと、最悪でも死んだ方がマシだという目には遭うだろうが、死にはしないだろう」

エリザ「……あー、はいはい。わかったわよ! 開ければいいんでしょ!」

エリザ「……鬼が出るか蛇が出るか……!」カパッ

プレゼントボックス「」カラッ

エリザ「あれ……? 空?」

デオン「何?」

147: 名無しさん 2017/09/11(月) 19:34:26.13 ID:iMg8tRJp0
デオン「本当だ。空だ……?」

茨木「妙だな。とびきり邪悪な気配は尚も漂っているというのに」

マシュ「え……? 何も入ってないんですか?」

エリザ「本当よ。ほら」

マシュ「どれどれ」


ニョキッ


マシュ「んっ?」

デオン「……プレゼントボックスから腕が生えてきたぞ?」

エリザ「いえ、それよりあの腕が持ってるのって、どう見てもビリーが持っているような拳銃――!」



バァァァンッ!


マシュ「がっはーーー!?」

茨木「魔酒の眉間にぶち込んだーーーッ!?」ガビーンッ!

148: 名無しさん 2017/09/11(月) 19:38:24.87 ID:iMg8tRJp0
デオン「しまった! これはマシュがターゲットのプレゼントだったんだ!」

エリザ「えっ、何? どういうこと!?」

茨木「吾らが見ても空だったのに、魔酒が覗いた途端に腕が生えて、銃をぶっ放した。つまり最初から標的を絞っていた、ということよな」

エリザ「そうじゃなくって! なんでマシュに拳銃をぶっ放す必要があったの!?」




??「なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け……」

三騎「あっ」

??「ふふふっ。驚いてますね。じゃあこの勢いを保ったまま……!」

??「BB---! チャンネルーーーッ!」

149: 名無しさん 2017/09/11(月) 19:46:45.99 ID:iMg8tRJp0
ザザーッ ピロピロピロピロピロ…… シャキーンッ


BB?「はい、というわけでやって参りました東京!」

BB?「BBチャンネル出張版、たった今からスタートですっ!」

BB?「司会進行は御覧の通り、いつもの邪悪で可愛いあなたの後輩、BBがお送りいたします!」

エリザ「……」

エリザ「えっ? BB? BBなの?」

BB?「はい? どこからどう見てもBBちゃんですよ? エリザさん、どうかしたんですか?」

BB?「鳩がツノトカゲの血液ビーム食らったような顔してますよ!」

エリザ「例えがマニアックすぎるわよ! 爬虫類に詳しいヤツじゃないとわからないわよ!」

デオン「どうでもいい!」

茨木「……確かにこの、なんだ? 意味があるようでまったくないクソトークはBBのものだな?」

デオン「ああ、だが大問題だ。コイツが本物のBBだとすると……!」

エリザ「あ、あなた……何したの?」

BB?「見ての通りですが?」

デオン「やっぱりなのか……!」




デオン「マシュの体を乗っ取ったのか!」ガビーンッ

マシュの姿をしたBB「はいはーい! 大正解! ハワイにご招待してあげましょうか?」キュピーンッ

150: 名無しさん 2017/09/11(月) 19:53:06.79 ID:iMg8tRJp0
デオン「マシュの人格はどうした、ド外道」

マシュBB「名前で呼んでくださいっ」キラーンッ

エリザ「マシュの人格を返しなさいよクソ外道」

マシュBB「名前で呼んで……」

茨木「羅生門大怨起で解除できるか?」

エリザ「よく見なさい。どう見てもバフじゃなくってバステでしょうが。無理よ」

茨木「ふむ。そうか。ならば吾にできることと言えば、コイツに罵詈雑言を浴びせることだけだな」

茨木「くたばれ超外道ッ!」ガァッ

マシュBB「最終的には泣いちゃいますよー?」

151: 名無しさん 2017/09/11(月) 19:56:34.04 ID:iMg8tRJp0
マシュBB「大丈夫ですよー。肉体の主導権を握っただけで、マシュさんの人格にはノータッチですから」

マシュBB「聞こえないでしょうが、今も私の脳内ではマシュさんの声がガンッガン響いてるんですよー?」

マシュBB「え? 何? ふんふんなるほど……」

マシュBB「子ギルくんの体操服礼装、どうしてないんですかって? 運営に要望でも出してみましょうよマシュさんっ!」

デオン「絶対にそんなこと言ってないだろうな」

エリザ「なんかマシュなら言いそうな気が一瞬だけしたけど、よく考えてみたら言うわけないわね」

茨木「なんか凄く言いそうだがな? 何故だろうな?」

マシュの人格(言いませんよッ!)ガビーンッ

152: 名無しさん 2017/09/11(月) 20:02:06.34 ID:iMg8tRJp0
デオン「……まあお前のことだろうから飽きたらやめるだろうが……」

エリザ(逆に言うと飽きるまでやめないんだろうけどね……)

デオン「次の疑問に移るか。お前の本体はどうした?」

マシュBB「分霊みたいなことをしてるだけだから、ちゃんとカルデアにいますよ!」

マシュBB「ちなみに、結構無理してます。本体と分身の私、どっちも人格を維持しているだけで頭が割れそうに痛いです」

デオン「さっさとやめてしまえ。そして私たちの旅から疾く失せろ」

エリザ「デリート! デリート!」

茨木「でざーと! でざーと!」

マシュBB「味方がどこにもいねぇ……!」

153: 名無しさん 2017/09/11(月) 20:10:39.83 ID:iMg8tRJp0
マシュBB「まあまあ。そんなことは言いっこなしですよ。せっかくサポートに来たのに」

デオン「なんだと?」

マシュBB「監視、ちょっと手ぬるいなって思って。もうちょっとカメラをグレードアップさせようかなって」

マシュBB「流石にそこまでやるんなら私が直接手を汚さないと、なので。こうしてイレギュラーな手段で来たってわけです」

デオン「……」

エリザ「……」

茨木「……」

デオン「紅茶でも淹れよう」

茨木「東京ば●奈でも食べるか?」

エリザ「肩揉んであげましょうか?」

マシュ(変わり身早ッ!)

マシュBB「現金過ぎですね」

デオン「ふっ。なんのことだ? 親友よ」ニコリ

エリザ「LINE交換する?」

茨木「簒奪した品の分け前についての説明はこの書物に記しておいたぞ? 何、同胞なのだから当然よ」ニヤァ

マシュBB「あははっ。私利私欲見え見えで反吐が出るような仲良しごっこをありがとう」ニコニコ

156: 名無しさん 2017/09/11(月) 20:36:27.61 ID:iMg8tRJp0
十分後

マシュBB「……というわけで、私がここからカメラ搭載ドローンで二人を監視する感じで」

エリザ「これ私のときにも使われるんだ、と思うと複雑だけど、今は心強いわ。やるじゃないBB」

マシュBB「えへへー。それほどでもー!」

エリザ「でもマシュの顔でBBの笑顔されると吐きそうになるから笑わないで?」ニコニコ

マシュBB「そろそろ訊こうかと思っていたんですが、なんでみんな私に当たり強いんですか。この旅を手配したのも私ですよ?」

デオン「自分を知れ」

茨木「そもそもBB。汝、吾らのこと好きじゃないだろう?」

BB「……」

BB「てへっ?」

デオン「お前のそういう自分に不利な質問をされたときに適当にはぐらかすところを一番信用していない」

157: 名無しさん 2017/09/11(月) 20:40:32.45 ID:iMg8tRJp0
エリザ「ねえ。さっそくコレ飛ばしてみせてよ」

マシュBB「えー。今ですかー? しょうがないですねー」


カチッ ブゥゥゥン


デオン「おお。飛んでるな」

茨木「ふむ。だが動かせない、というのでは笑い話にもならんぞ?」

マシュBB「大丈夫ですよーっと。ほらほら」

ブゥゥゥン

エリザ「きゃあ!? こっちに飛ばさないでよ!」

マシュBB「逃げろ逃げろーーー! 迷宮の出口に向かってよーーー!」ゲラゲラ!



ザザッ


BB(ん? 本体の方で何かがあったようですね。一体何が……ッ!)

158: 名無しさん 2017/09/11(月) 20:44:44.41 ID:iMg8tRJp0
カルデア

BB「なんか心配になっちゃって、ついに巌窟王さんの方にもカメラ飛ばしちゃいました……」

BB「さぁて、どうなってるかな。そろそろ脱出できたかなー」


ピッ



巌窟王「」プカー

赤松「巌窟王さんが水槽の中でぷかぷか浮いてるーーーッ!」ガビーンッ!

最原「巌窟王さーーーんッ!」


ガブガブガブッ


百田「ま、まずい! 巌窟王がピラニアに食われッ……!」

巌窟王の骨「」ジャァァァン!

アンジー「骨になっちゃったね」

最原「今度こそ絶対死んだーーーッ!」ガビーンッ




BB「ブーッ!?」

159: 名無しさん 2017/09/11(月) 20:47:43.14 ID:iMg8tRJp0
マシュBB「がっ、巌窟王さーーーん!?」ガビーンッ

エリザ「ぎゃあああああ!」ガリガリガリッ

茨木「おいBB! BB! エリザの角がドローンに削り取られているぞ! BBィーーーッ!」

マシュBB「……あっ。令呪一角で復活した……よかったー、ギリギリ間に合って」フー

エリザ「なくなるー! なくなるー! 私のチャームポイントがなくなっちゃうー!」ガリガリガリッ

デオン「やっぱりBBは信用するべきじゃないな」

163: 名無しさん 2017/09/12(火) 22:13:14.74 ID:3k0JJ4pp0
ぐだ男&ジャックサイド

ジャック「……」

ジャック「今、なんて言ったの?」

ぐだ男「俺の家はしばらく連れて行かない。このままどこかで遊ぶぞ」

ジャック「マジカルなステッキの出番?」ギャランッ

ぐだ男「ナイフだそれは。落ち着け」

ジャック「マジ狩る腹裂くー……」キャルンキャルン

ぐだ男「物騒な呪文やめて。仕方ないだろ、うちの両親二日酔いなんだから」

ジャック「むー」

ぐだ男「その代わり、今からドンキ行って、適当なボール買ってさ。公園で遊ぼう?」

ぐだ男「ダメか?」

ジャック「……仕方ないなぁ」ニコッ

164: 名無しさん 2017/09/12(火) 22:16:40.92 ID:3k0JJ4pp0
ドンキ

ジャック「狭い! 棚が高い! 凄い!」キラキラキラ

ぐだ男「いつ来ても圧迫感あるよなー……えーとボールはっと……」キョロキョロ

ジャック「おかあさーん! お菓子も買っていい?」

ぐだ男「五百円までに抑えろよー」

ジャック「はーい!」

ジャック「……」

ジャック「きのこ? たけのこ?」

ぐだ男「宗教戦争が起こるから、その二つはやめてくれ」

165: 名無しさん 2017/09/12(火) 22:23:09.82 ID:3k0JJ4pp0
ジャック「むいー。五百円で買える量って結構少ないね?」

ぐだ男「充分だ充分」

店員(あの二人、兄妹かしら。ふふ、随分と微笑ましい……)

ジャック「おかあさーん、あれ何ー?」

店員「!?」

ぐだ男「……大人の玩具だな。ジャックには必要ないかなー」

ジャック「ふーん」

店員(えっ。おかあさん? 若っ! そして男っぽい!)ガビーンッ

ぐだ男(あの店員やたらこっち見て来るな……?)

166: 名無しさん 2017/09/12(火) 22:34:11.74 ID:3k0JJ4pp0
公園

ぐだ男「ということで辿り着いたぞ、公園!」

ジャック「わーい!」

ぐだ男「ボールを持てい!」

ジャック「はーい!」

ぐだ男「……何して遊ぼうかな……トス、レシーブ、二人でのリフティング……」

ジャック「……」

ぐだ男「ジャック?」

ジャック「あれなーに?」

ぐだ男(と、言ってジャックが指さしたのはブランコだった)

ぐだ男(二つ席が並んでおり、もう片方では母親が娘のブランコを押してやっている)

ぐだ男「ブランコだな」

ジャック「そうじゃなくって、後ろであの女の人は何してるのかなって。危なくない?」

ぐだ男「……」

ぐだ男「よし。最初はアレ乗るか」

ジャック「?」

167: 名無しさん 2017/09/12(火) 22:43:24.68 ID:3k0JJ4pp0
ジャック「あははははははっ! 楽しいー!」

ぐだ男「おーう。それはよかった。もっと押すかー?」

ジャック「あははっ! 落ちちゃうよー!」

ぐだ男(お前の身体能力なら一回転したところで問題なさそうだけどな)

おばちゃん「あら。妹さん?」

ぐだ男(隣でブランコ押してたお母さんに話しかけられた)

ぐだ男「みたいなものです」

おばちゃん「ふふっ。いいわね、仲良くて」

ぐだ男「家族ですからね」

ジャック「おかあさーん! ジャンプしてみてもいいー?」

ぐだ男「絶対にやめろ! 色々バレる!」

おばちゃん(おかあさん?)

168: 名無しさん 2017/09/12(火) 22:49:33.11 ID:3k0JJ4pp0
十分後

娘「一緒に遊ぼう! 砂場で山とか作ってみよう!」

ジャック「いいよー! 最終的には蹴って崩そう!」


キャイキャイ


ぐだ男(なんか流れで仲良くなってしまった……まあ情操教育的には良さそうだし、いいか)

おばちゃん「ふふっ。ごめんなさいね。うちの子と遊んでもらっちゃって」

ぐだ男「いえ。こちらこそ」

おばちゃん「ところで、砂場ってたまにとんでもない物が埋まってたりするから、後で手は洗わせないとダメよ?」

ぐだ男「とんでもないもの?」

おばちゃん「犬とか猫とかのフンとか」

ぐだ男「……気を付けておきます」

ぐだ男(手慣れてるなー)

ぐだ男「……」

ぐだ男(ああ、平和だ! 地縛霊が強化されたり、無駄にチャフをバラまいたりしない!)

ぐだ男(帰ってきてから一番平和かもしれな――!)

ジャック「ん?」ピクッ

ぐだ男「お?」

169: 名無しさん 2017/09/12(火) 22:56:17.97 ID:3k0JJ4pp0
ジャック「ねえ。このバケツで水をくんできてくれない?」ニコニコ

娘「うん、いいよ! すぐに持ってくるねー!」

ジャック「……」スンッ

ぐだ男(ジャックは友達が自分から視線を逸らし、背を向けた時点でナイフを取り出した)

ぐだ男(あの角度からだと彼女の体に隠れておばちゃんからは何も見えないし、友達は言わずもがなだろう。背中に目玉でも付いてない限り)

ぐだ男「ジャック!?」

ジャック「ひょいっと」ブンッ!

ぐだ男(ジャックは一息でナイフを投げた。道路側に向かって)

ぐだ男(ナイフは道路を走っていた車のタイヤに激突。パンク音が響き、大きくバランスを崩した車体はガードレールにぶつかって停止した)


ガシャァァァン!


娘「えっ!?」ビクッ

おばちゃん「……事故?」

ジャック「おかあさーん! あの車、交番の指名手配の写真に載ってた人が乗ってるー!」

ぐだ男「はっ?」

ジャック「児童性愛者で連続殺人鬼のやばい人が乗ってるー!」

ぐだ男「はあっ!?」ガビーンッ!

170: 名無しさん 2017/09/12(火) 23:04:46.85 ID:3k0JJ4pp0
連続殺人鬼「ぐ、ご……!」ガチャリンコ

ぐだ男(中から血を流しながら出てきたのは、確かに人相が悪い男だった)

ぐだ男「……えーと、ちょっと待て。ちょっと待てよー……確かにあの顔は見覚えがある!」

ぐだ男「まずい。なんてこった! 人違いじゃない! 本物だ!」ガビーンッ

ジャック「あと、多分中に数人……うん、一応数人いる」

ぐだ男「……なんで『一応』なのかわかっちゃったよ。クソッ!」

おばちゃん「な、な……!?」ガタガタ

ぐだ男「ジャック! 面倒なことになる前にアイツを――!」

連続殺人鬼「ひっ! く、来るな! 中にいるヤツを殺すぞ!」

ぐだ男「……ッ!」

ジャック「……」

ジャック「え? もう死んでいる人を、どうやって殺すの?」

連続殺人鬼「なっ……!?」

連続殺人鬼「……」

ジャック「……」

ジャック「あはっ! バカだね! 苦し紛れでも反論すればバレなかったのに!」ニヤァ

連続殺人鬼「!?」

ぐだ男(このロリおっかねぇーーー!)ガビーンッ!

171: 名無しさん 2017/09/12(火) 23:17:20.42 ID:3k0JJ4pp0
連続殺人鬼「……はっ! なら別にいいさ! 人質なんて現地調達できるんだからなぁ!」ダッ

娘「え?」

ぐだ男「まずい! ジャック!」

ジャック「はぁい」ヒュパッ

連続殺人鬼「捕まえたァ」ガシッ

娘「い、いやあ! 離して!」

ジャック「大丈夫。もう離れてるよ」


ズルッ

ボトッ


連続殺人鬼「……」

連続殺人鬼「は? 俺の……手首が……?」

ジャック「綺麗に切ったから、今すぐ手術すればくっつくよ?」ニコッ

娘「……」

娘「」フッ バターンッ

ぐだ男「あーーー! いたいけな少女に余計なトラウマができたーーー!」ガビビーンッ

おばちゃん「……」ガタガタ

ぐだ男(彼女に至っては恐怖で喉が機能してない! 本当にごめんなさい!)

172: 名無しさん 2017/09/12(火) 23:28:26.53 ID:3k0JJ4pp0
連続殺人鬼「ひ、い、ぎゃああああ! 助けっ――!」

ジャック「当然助けないよ?」ヒュパッ

連続殺人鬼「ほべっ」ドターンッ

連続殺人鬼「あ、あれ……俺の足……俺の足首が……!?」ウゾウゾ

ジャック「いもぉーむしー」ルンルン

ぐだ男「粉雪のリズムで残酷なワード口ずさむのやめてくれ!」


ズシュッ グチャッ バキッ


連続殺人鬼「ぎゃああああああああああっ! や、やべて……死にたくな……死にたくない……!」

連続殺人鬼「お、お願い、助けて……!」

ジャック「なんで?」

ぐだ男(なんで!?)ガビーンッ

ジャック「あなたが殺した女の子たちは、同じことを言わなかったの?」

連続殺人鬼「あ、あぎゃ、いぎいいいい……!?」

ジャック「どっちにしろ殺さないけどね。おかあさんに怒られちゃうもん」

ジャック「ねっ?」ニコニコ

ぐだ男「……」

ジャック「殺した方がよかった?」

ぐだ男「いや、いい。それでいい。切り口綺麗だから確かに手術すれば問題なくくっつきそうだしな……」

ぐだ男(流石に両手両足はやり過ぎだけどな……)

ぐだ男「失血死しないよう最低限の処置はしてやれ。後はもう全部BB頼みだ」

ジャック「はーい!」

ぐだ男(すまん、BB)

177: 名無しさん 2017/09/13(水) 19:57:54.04 ID:XTNvSKUc0
ジャック「ふいー! 終わったー!」キラキラキラ

ジャック「さーてとっ。それじゃあ砂の山の続きを……?」

ジャック「あれ? 寝てる。しょうがないなぁ、こんなところで」

娘「」チーン

ぐだ男(ショッキングすぎる絵を間近で見た挙句に、かなりの血飛沫を浴びたんだから仕方ないよなぁ……)

ぐだ男(……)

ぐだ男(そういえば最初は俺も、ジャックの蛮行を見たときは吐いたな……イヤな慣れだ)

ジャック「ねえ。大丈夫? そんなところで寝たら風邪引く……」

おばちゃん「……!」ダッ


ドンッ


ジャック「きゃっ」

ぐだ男「ジャック!」

ぐだ男(おばちゃんが友達を心配するジャックを突き飛ばして、気絶してぐったりしている小さな体を抱き上げた)

ぐだ男(……まあ、これだけやったら当然の反応か)

おばちゃん「……」ガタガタ

ジャック「……え? どうしたの? 私たち、何かした?」

ジャック「なんでそんなに怖い顔で睨むの?」

ぐだ男「ジャック」

ジャック「……助けてあげたのに……ねえ。なんで?」

ぐだ男「ジャック!」

ジャック「……」

ぐだ男「行こう。人が集まると逃げきれなくなる」

ジャック「……うん、わかった」

178: 名無しさん 2017/09/13(水) 20:09:19.59 ID:XTNvSKUc0
虚構殺人遊戯 才囚学園

最原「そうか……犯人は星くんの研究教室と、体育館の間をロープウェイで移動したんだ!」

星「なるほど。俺の研究教室と体育館の窓だと、俺の研究教室の方が高いからな。一方通行だがトリックは成立させられる」

百田「決まりだ! 犯人は巌窟王の死体を、星の研究教室から体育館まで直に運んだんだ!」

アンジー「……」

アンジー「うーん、本当にそうかなー?」

最原「えっ?」

真宮寺「おや? 夜長さんには、何か反論があるみたいだネ」

アンジー「いや、痕跡は残っているから、トリックが使用されたという一点のみは賛成なんだけどさー……」

アンジー「それ、かなり難しくないかなって思っただけなんだよねー」

最原(難しい……?)

巌窟王「……アンジー。余計なことを言うな」

アンジー「おっと。ごめんなさい神様」

春川「……前から訊きたかったんだけど、夜長はなんでソイツのことを神様って呼んでるの?」

巌窟王「その説明は面倒だ! 省け!」ギンッ

最原(今更だけど、被害者が議論に参加している殺人事件って前代未聞だよな……)ズーン

179: 名無しさん 2017/09/13(水) 20:21:20.01 ID:XTNvSKUc0
最原(……いや、待てよ。巌窟王さんを見て気付いたけど、アンジーさんが言った『難しい』の意味って……!)

最原「体格……?」

巌窟王「!」ギクリ

最原「そうか。手作りのロープウェイで、ただでさえ足場が不安定なのに、巌窟王さんの体を乗せた状態でロープウェイを使うのは……!」

入間「犯人自身の体重も加わっていたはずだから、発車、走行中、停車のいずれにおいても危険度は高ぇーだろうな?」

入間「言うなれば……夜の田舎道を全裸で歩くようなスリル……あぁん、想像しただけで……!」

王馬「入間ちゃんって本当存在自体が不快だよね」

入間「」

アンジー「ちなみに神様の身長は185cm、体重は75kgだよー!」

巌窟王「アンジー!」

アンジー「……ごめんなさい」シュン

最原(……? なんだ? 巌窟王さんのさっきからの態度……)

最原(焦ってる?)

百田「確かに不可能じゃないにしろ、かなり難しそうだな……」

春川「そもそも、最原の推理が間違ってるって線は?」

赤松「痕跡がこれだけ残っているんだから、今更その線を考えるのは難しいと思うんだけど……」

巌窟王「どうでもいいではないか! 俺の死体はロープウェイで運ばれたのだ!」

巌窟王「その点を加味するに、既に怪しい人物を指摘することすら可能なはずだが!?」

最原「……」

最原(やっぱりだ……巌窟王さんは何かを隠している!)

最原(確かに今の段階でも犯人を指摘することは可能だけど……)

最原(……?)

最原(……そう、か! 巌窟王さんが隠したいのって、もしかして!)

180: 名無しさん 2017/09/13(水) 20:29:35.48 ID:XTNvSKUc0
最原「……事件の全貌が見えたかもしれない」

茶柱「わかりました! やっぱり最原さんの推理が間違っていたんですね!」

最原「違くてさ。そもそもの話、僕たちが星くんの研究教室に目を付けたのって、水槽の中に手錠が落ちていたからだよね?」

最原「僕たちはさっきまで、巌窟王さんを溺死させるときに、抵抗を弱めるために手錠を付けたものだと思っていたけど……」

最原「だとしたら、どうして手錠が水槽の中に落ちてたのかな? 溺死させた後でしまえばよかったのに」

巌窟王「……」ギリッ

東条「そう言われると不自然ね……単純に鍵が見つからなかった、という可能性は?」

夢野「星に嫌疑をかけるため、あえて残しておいたとも考えられるのう」

最原「多分これは犯人のちょっとした工作の副産物だよ」

百田「ちょっとした工作、だと?」

最原「……ひとまず、最初から考えてみよう」

最原「巌窟王さんの、本当の『死因』からさ!」ズバァァァンッ!

巌窟王「ぐぅっ……!」グサッ

181: 名無しさん 2017/09/13(水) 20:41:44.66 ID:XTNvSKUc0
入間「水の中にいたんだから溺死だろ? あったりまえじゃねーかダサイ原」

最原「それなんだけど、モノクマファイルには巌窟王さんの死因が書かれてなかったんだよ」

最原「というか全体的に、今回のモノクマファイルは当てにならないほど情報がなかったよね?」

百田「死亡推定時刻すらわかんなかったからな……犯人のトリックの要なんだから当然だけどよ」

キーボ「……この話運びからすると、最原クンにはもうわかっているんですね? 巌窟王さんの本当の死因が」

巌窟王「……話を脱線させるな。もう犯人など決まっているだろう」

最原「……」

最原「巌窟王さんの本当の死因は『失血死』だ」

巌窟王「ちぃっ……!」

赤松「し、失血死? 溺死じゃなくって……?」

最原「星くんの研究教室のシンクを調べた人ならわかると思うんだけど、あれって事件発覚後には過剰なほど洗浄されてたんだよ」

百田「ああ。すっげー薬品臭かったな。多分アレは漂白剤、か?」

最原「変だよね。ただの溺死なら、こんなにシンクを洗う必要なんかないのに」

最原「逆に言うと、あのシンクは洗われる前は、なにか取り返しの付かない汚れがビッシリ付いてたんじゃないかな?」

最原「つまり……巌窟王さんの血で汚れていたはずなんだ!」

最原「いや、それどころじゃない。多分、巌窟王さんの血でシンクが満たされていたはずだ!」ズバァァン!

茶柱「み、満たされていたッ!?」ガビーンッ

白銀「血液でッ!?」ガビーンッ!

182: 名無しさん 2017/09/13(水) 20:48:59.90 ID:XTNvSKUc0
真宮寺「ククク……なるほどね。話が見えて来たヨ」

真宮寺「犯人は巌窟王さんの血液を抜き、体重をその分だけ削減した……最原くんはそう言いたいんだネ」

真宮寺「でも最原くん、その推理には穴があるよ」

最原「犯人は血を抜いて巌窟王さんの体重を軽くしたいのに、人体から血液を抜くと死んでしまう……って点なら解決できるよ」

真宮寺「え?」

茶柱「えーっと……最原さんは当たり前のことを何しみじみと言っているんですか?」

春川「医学的に、人体から血液をすべて抜くのはほぼ不可能って話だよ」

春川「まず出血が起こるのは『心臓が動いている間のみ』だからね」

百田「終一の推理は『巌窟王の死体を軽くするためには血液を抜く必要があるが、血液を抜くと血流が止まる』っつー矛盾があるわけか」

最原「平気だよ。それでも人体はかなり軽くなるはずだ」

最原「巌窟王さんが死にそうになる度に『蘇生』させればいいんだからさ!」

巌窟王「よせ……その先は地獄だぞ」ギリィッ!

183: 名無しさん 2017/09/13(水) 20:59:25.64 ID:XTNvSKUc0
最原「星くんの研究教室には送球装置があったんだけどさ。それのコンセントが不自然に切断されていたんだよ」

最原「多分、犯人は巌窟王さんの体を生きた状態でシンクに固定して、手首かどこかを切り裂いた後、水をためたシンクに手首を突っ込ませたんだ」

最原「おそらくそのときの巌窟王さんの姿勢は、傷が心臓の位置より低くなるように、身をシンクの淵に寄りかからせる形になっていたはずだよ」

最原「気絶させた巌窟王さんの死体から血液を抜いていく過程で、巌窟王さんが死にそうになったときに……」

最原「犯人は切断したコンセントを使って巌窟王さんの体にショックを与えたんだ」

入間「……は!? なんだその超原始的AED! マジで言ってんのか!?」ガビーンッ

最原「乱暴でも後遺症が残ってもどうでもよかったはずだよ。だって、最終的には殺すんだからさ。いくら乱暴でも構わない」

赤松「……ちょ、ちょっと待って。最原くん。何を言って……!」

最原「こうやって犯人は、巌窟王さんの体から血を抜き、死にそうになったらショックで蘇生させ……」

最原「また血を抜いて、死にそうになったらショックで蘇生させ……」

最原「それを何度も何度も繰り返して……!」

東条「待って。仮にそれで致死量を遥かに超える量の血を抜いたとしても、まだ彼の体はかなりの重さが残っていたはずよ?」

東条「そんな工作をしたところで、気休めにしかならないわ」

最原「……」

最原「折りたたんだんだ」

キーボ「は?」

巌窟王「ッ!」

184: 名無しさん 2017/09/13(水) 21:08:18.06 ID:XTNvSKUc0
最原「巌窟王さんはマントを着こんでて、その体は水槽の中でもほとんど隠れてたけどさ」

最原「そのときの巌窟王さんの五体は、果たして無事だったのかな?」

白銀「ピラニアに食べられちゃったわけだから、地味に無事じゃないよね?」

最原「その前は?」

赤松「……ピラニアに食べられる前の、巌窟王さんの状態?」

王馬「うーん、わからないなー……『誰かさん』がアンジーちゃんを急かして、巌窟王ちゃんをさっさと蘇生させちゃったからね」

王馬「ほとんど検視はできなかったんだよねー。誰かさんのせいで!」

最原「……」

最原「僕は……覚えてるよ。巌窟王さんの骨、特に手足の関節や骨は、外れていたり折れていたり、酷い有様だった」

アンジー「アンジーも覚えてるよー! 神様のことを一瞬たりとも見逃せないからねー!」キラキラキラ!

アンジー「あ、なんならその光景を絵に描いたものを持ってきてるけど?」

赤松「い、いい。見たらなんか気分悪くなりそうだから……」

百田「……終一。折りたたんだって、まさか……!」

最原「重さを軽減できたら、次は大きさだ。そのときの巌窟王さんの状態が無事だったとは思えない」

最原「不自然に残ったあの手錠は、多分留め金の代わりに使われたんだ」

最原「巌窟王さんの死体は、あの時点では『自分の胴体を自分の手足でがんじからめに縛り付け、それを手錠でロックする』ような姿勢だったはずだよ」

赤松「えっ!?」

天海「……それは……想像もしたくないっすね……」

天海「だとすると、巌窟王さんがさっきから妙に焦っているのは、それを思い出したくないから?」

アンジー「神様には忘却補正があるから、元から何一つとして忘れないってー!」

巌窟王「……」

185: 名無しさん 2017/09/13(水) 21:13:54.08 ID:XTNvSKUc0
王馬「にししっ! いやぁ、そうかそうか! わかっちゃった! 巌窟王ちゃんも優しいよねー!」

王馬「ねえみんな! 仮に最原ちゃんの推理が本当だったとしたら、犯人はどんな人物だと思う?」

茶柱「ど、どうって……」

赤松「ここから出るためだからって、私たちを信じてくれていた巌窟王さんを拷問じみた手段で殺して……」

赤松「しかも、殺した後も巌窟王さんの体をまるで物みたいに扱って……!」

赤松「……」

王馬「許せない。いや……そうは思ってないヤツも『怖い』とは思ったはずだよ」

王馬「思い出してほしいんだけど、巌窟王ちゃんの理念は『全員揃っての脱出』でしょ?」

王馬「だとしたら、間違っても言えないよねぇ……自分を殺した人間が、まさかそんな残酷なヤツだったなんて!」

巌窟王「……」

東条「確かに……ここまでの蛮行を犯した人間と、今まで通り接することができる人なんていないでしょうね」

春川「今回のクロもどうせ巌窟王が助けるんだと思っていたけど、この分だと考え直した方がいいかもね」

巌窟王「春川……」

186: 名無しさん 2017/09/13(水) 21:20:29.73 ID:XTNvSKUc0
百田「で? どうなんだ巌窟王! お前、本当にそんな酷ェ殺され方したってのかよ!」

百田「それでもお前は黙ってるってのかよ!」

巌窟王「……」

赤松「巌窟王さん、答えて……! 全部覚えてるんでしょう? だったら……!」

最原「……その献身は、間違ってるよ」

巌窟王「何?」

最原「いくら僕たちを助けるためだからって……自分のことをそこまで犠牲にするなんて」

最原「自分の死の真相を隠そうとするなんて……!」

最原「そんな献身なら、僕たちはいらないんだ!」

巌窟王「――」

巌窟王「くは……は……」

巌窟王「クハハハハハハハハハハ」

巌窟王「クハハハハハハハハハハハハハハ!」



巌窟王「違う、違う違う!」反論!

187: 名無しさん 2017/09/13(水) 21:28:18.86 ID:XTNvSKUc0
巌窟王「献身……献身と宣ったか? よりにもよってこの俺にッ!」

最原「えっ?」

巌窟王「ならば答えてやろう。俺の死因は溺死だッ! それ以上でも以下でもない!」

最原「う、嘘だ! それなら何で、さっきの巌窟王さんは焦ってたんだよ!」

巌窟王「そんなことはどうでもいい! 被害者の俺自身が証人だ!」

巌窟王「お前の推理は間違っているぞ! 一丁前に調停者を気取るな、探偵!」ギンッ!

最原「……」

最原「曲げる気はない」

巌窟王「なにィ?」

最原「僕は……僕自身のために、この主張を曲げる気はない」

最原「真相を知らなきゃ、僕たちは前に進めない!」

最原「どんな罪を犯したのか知らないと、僕たちは何も許せない!」

最原「何よりも、あなたの名誉のためにも、この裁判は中途半端なところで終わらせちゃダメなんだッ!」

巌窟王「……許すため、と来たか。俺には永遠にない発想だな」

巌窟王「いいだろう。そこまで言うのならば覚悟を決めろ。俺は容赦はしない」

巌窟王「貴様の推理で! 俺の反論を! 見事斬り伏せてみせろッ! 最原終一ィ!」ボウッ!

188: 名無しさん 2017/09/13(水) 21:32:01.32 ID:XTNvSKUc0
カルデア

BB「おおー。なんか盛り上がってきましたねー。あの巌窟王のガン飛ばしに堪えるなんて、あの子も中々肝が……」


prrrrr


BB「っと、マスターから電話だ。いいところなのに」


ピッ


BB「はいはーい、こちらBBちゃんでーっす。どうかしましたかー?」

ぐだ男『BBィーーー! 今ちょっと警察に追われてるんだけど、どうしたらいい!?』

BB「いいところだったのに超の付くほどのハードワーク持ってきましたねぇ!」ガビーンッ!

199: 名無しさん 2017/09/14(木) 20:21:32.58 ID:Q+OkZrTU0
ジャック「おかあさーん。大分包囲網が完成してきてるから、最終的には何人か解体しないとダメになるかも」

ぐだ男「我慢して! 最悪の場合、俺が全部の罪背負って逮捕されるから!」

ジャック「えー? やだ」

ぐだ男「というわけで、俺が逮捕されて警察の人たち皆殺しか、逃げ切って全部丸く収まるかのどちらかだ!」

ぐだ男「助けてくれ!」

BB『あっあー……随分と楽しいことになってますね』

BB『うーん、いつもなら無駄に遠回りさせて面白おかしく甚振った後で助けるんですが……』

ぐだ男「おい」

BB『今はちょっとこっちも別件で忙しいので、全力を尽くしましょう!』

BB『そうですね。近くのカーショップにオートパイロット搭載の試験車があるので、それに乗ってくれれば脱出させます』

ぐだ男「カルデアから操作するのか? ラグが酷くなるだろ」

BB『今は大丈夫です。今はね』

ぐだ男「……あー?」

200: 名無しさん 2017/09/14(木) 20:24:52.83 ID:Q+OkZrTU0
ぐだ男「まあいい! とにかくカーショップにゴーだ!」

ジャック「あはは! 今日はもうずっと楽しいね、おかあさん!」

ぐだ男(お前はそうだろうけどなぁ)



五分後


店員「いらっしゃいませー」

ぐだ男「ジャック!」

ジャック「はいはーい!」


ザクッ


バラッ


全裸の店員「……」

全裸の店員「きゃー!?」ガビーンッ

ぐだ男「おーっし! 今の内だ! さっさとオートパイロット付きの車を探すぞ!」

BB『いやぁー、手段を選んでられない状況とは言え、最低ですねー』

ぐだ男「平和的に無力化させただけだ!」

201: 名無しさん 2017/09/14(木) 20:30:18.42 ID:Q+OkZrTU0
ぐだ男「……ナンバープレート確認! これだな!」

ガチャリンコ

ぐだ男「乗ったぞBB!」

BB『体験用の車だから、営業中は当然鍵がかかってないと思いましたとも!』

BB『ハッキング開始!』

BB『完了!』

ぐだ男「速ッ!」

BB『あとはマシュさんに乗り移った私ゲフンゲフン、じゃなくて紛れもなく私が操作します!』

ぐだ男「……」

ぐだ男「……は? 今、なんて?」

BB『質問は受け付けなーーーい!』


ギュイイイイインッ!


ぐだ男「いげっ」

ジャック「うわ、酷い運転」

BB『最後のガラスをぶち破れーーー!』


ガシャーーーンッ!


ぐだ男「余罪がどんどん増えて行ってる気がするーーー!」ガビーンッ!

202: 名無しさん 2017/09/14(木) 20:35:35.03 ID:Q+OkZrTU0
BB『一晩の間、絶対安全に過ごせる隠れ家を用意しましょう』

BB『一晩もあれば、後は私があなたたちの罪を綺麗さっぱり痕跡すら残さず消してあげますよ』

BB『カースド・キューピッド・クレンザーです』

ぐだ男「それそんな宝具だったっけ?」

BB『ま、いいじゃないですか。どうでも』

ぐだ男「まったく……」

ジャック「おかあさん。この先、多分検問所だけどどうするの?」

ぐだ男「……おい。加速してないか?」

BB『え? そうじゃないと検問所をぶち破れないでしょう? 当たりまえじゃないですか』

ぐだ男「ジャックー。衝撃がかかるだろうからシートベルトしめておこうなー」カチャカチャ

ジャック「はーい!」カチャカチャ

203: 名無しさん 2017/09/14(木) 20:45:48.64 ID:Q+OkZrTU0
ガシャァァァンッ!

警察官A「ぎゃあああああああ!」

警察官B「イ゛ェアアアアアア!」

警察官C「ひでえぶすっ」

ジャック「あははははははっ! 人がゴミのようだー!」

ぐだ男「あはははははは。もう何も見たくねぇー」

BB『全員死んでませんよ?』

ぐだ男「多分俺の心がそろそろ壊死する」

ぐだ男「……まあ、一段落したな。お母さんに今日は帰れないってメール打っても?」

BB『問題ありません』

ぐだ男「はあ……ある意味好都合だけどさ」ポチポチ

ジャック「二人きりだね、おかあさん」

ぐだ男「お? おう」

BB『いや私もいますけど』

ジャック「黙って? 解体されたい?」ニコニコ

BB『……はーいはい』

204: 名無しさん 2017/09/14(木) 20:52:54.87 ID:Q+OkZrTU0
BB(……ちっ。状況が状況だったとは言え、ハメられた感が満載ですね)

BB(辿り着く隠れ家は当然センパイの家ではなく、ジャックさんと二人きりで夜を明かす)

BB(近くに彼を助けるサーヴァントも当然いない。令呪で呼ぼうにも、呼ぼうとしたその時点で瞬殺できる俊敏の持ち主ですしねぇ)

BB(彼女の道徳心と常識の枷を一度でも解いてしまったらお終いですよ、センパイ)

ぐだ男「あー、腹減った」

ジャック「……」

ジャック「おなか……?」

BB(……)

BB(きっと! 大丈夫! 多分!)

205: 名無しさん 2017/09/14(木) 21:01:58.78 ID:Q+OkZrTU0
カルデア

BB「さてと。東京の方の私に後は任せるとして、こっちはこっちで視聴を続行しないと!」

BB「あ。もう投票終わって……あーあー見逃しちゃいましたよ」

BB「まあいいや。今からでも楽しくなりそうですし」



ブツンッ


ダヴィンチのアナウンス『えー。緊急連絡。緊急連絡』

ダヴィンチ『エジソンとテスラの大喧嘩の結果、カルデアのほぼ全電力系統にサージが発生』

ダヴィンチ『ごめんねー! 電源を落としちゃいけない重要機関以外の電力供給はストップさせてもらうよーん!』

BB「あんっの電気バカコンビ共ーーーッ!」ガビーンッ


電力が復旧した後、学園の方のゴタゴタはほとんど片付いていた。ただ当然BBには過程がわからなくなったが。
その後、BBの仕返しによってエジソンとテスラは『君の名は』状態になり、二人は自殺寸前まで精神が摩耗しました。めでたしめでたし。

209: 名無しさん 2017/09/15(金) 18:48:55.50 ID:w+CSx/f80
マシュBB『はい到着ーーー! ここがあなたたちの隠れ家ですよー!』

ジャック「わーい! ついたー! 最悪の運転からやっと解放されるー!」

ぐだ男「繊細さの欠片もない運転だったな……!」

マシュBB『えへっ』

ぐだ男「ところでさっきから気になっていたんだが……」

ぐだ男「なんか声がマシュになってないか? BB」

マシュBB『……』

ぐだ男「……いや、気のせいか? 喋り方は完全にBBだもんな……」

BB(よかったー、電話越しで)

210: 名無しさん 2017/09/15(金) 18:56:04.67 ID:w+CSx/f80
ぐだ男「で。ここが隠れ家、ね」

マシュBB『御覧の通りの廃ビルです。潰れる前はパチンコ屋だったそうですよ』

マシュBB『明日の夕方までは絶対に人っ子一人来ません。安心して休んでください!』

ぐだ男「食事はどうしたらいい?」

マシュBB『生活必需品はおおよそ中に取り揃えておいたので、中から一切でなくとも問題ないですよ!』

ぐだ男「……身から出た錆なんだからお前にこんなことを言うのは、本当、かなーり癪なんだが」

マシュBB『なんです?』

ぐだ男「マジでごめん。もうちょいソフトに事件を解決してたら、こんなことには……」

マシュBB『よしてくださいな。共犯者からの謝罪なんて聞きたくありません』

ぐだ男「……」

マシュBB『じゃ、そういうことで。あ、そうだセンパイ』

マシュBB『コンドームはあえて設置しておきませんでした! 褒めて!』

ぐだ男「ぶっ殺すぞッ!」

211: 名無しさん 2017/09/15(金) 19:05:24.86 ID:w+CSx/f80
ぐだ男(……さて。電話を切った今気付いたが、BBは『外に出るな』とは言わなかったな)

ぐだ男(アイツが言ったのは、この隠れ家の安全性と利便性のみだ)

ぐだ男(理由はわかる。多分、アイツはジャックのことを警戒してんだろうなぁ)

ぐだ男(いざってときは逃げても構わない、か……余計な気を回してるな。ファッション系ラスボスめ)

ジャック「おかあさーーーん! なんでかわからないけど、中に高橋留美子作品が大量に揃ってるーーー!」

ぐだ男「余計な気を回しすぎだアイツは! 本当にッ!」

ジャック「見ないの?」

ぐだ男「見るよッ!」

212: 名無しさん 2017/09/15(金) 19:15:56.43 ID:w+CSx/f80
ホテル

マシュBB「……別に今日も、昨日までみたいに観光しててもよかったんですよ?」

マシュBB「私だけでカメラのセットアップはできますし?」

デオン「それなんだが、無計画にじゃんけんでマスターに同行するサーヴァントを決めていた弊害が出てな」

エリザ「今日はジャックの計画していた観光プランを実行する予定だったんだけど、ほら、ね?」

マシュBB「ああ。その点をまったく考慮せずに送り込んだから手持無沙汰、と」

マシュBB「アホしかいないんですか、ここは」フゥ

茨木「ふん。バグの化身に言われたくはないな」

マシュBB「そういえば、昨日と一昨日の旅行計画は誰と誰のものなんですか?」

エリザ「昨日が私」

デオン「浅草が私だな」

茨木「明日は吾が計画した『すいーつびゅっふぇ蹂躙計画』よ。池袋にあるらしいからな?」ニヤァ

マシュBB「あ、それ私も興味ありますね。連れてってくれます?」

茨木「……汝を仲間外れにすると、魔酒も自動的に仲間外れになってしまうからな」

茨木「仕方あるまい」チッ

マシュBB「ありがとうございまーす!」ッシャァ!

213: 名無しさん 2017/09/15(金) 19:28:45.99 ID:w+CSx/f80
マシュBB「お、映った映った……!」

デオン「む? ここは廃ビルか? なんでこんなところに」

マシュBB「色々あったんですよねー」

エリザ「そういえばBB。さっき子イヌと電話してたみたいだけど」

マシュBB「説明はしますけど、今は……よし。カメラの自動操縦AIは正常に機能中」

マシュBB「あとはセンパイにバレない限りはオールタイム監視です」

茨木「BBは頭がいいな。何故そんなに残念なのか不思議なレベルの頭の良さよ」

マシュBB「褒めるフリして貶すのやめてくれません?」

エリザ「……なんかもうマシュの姿をしたBBに慣れてきちゃったわ」

デオン「む。しまった。私もだ。もう違和感がない」

茨木「早めに解決しないと取り返しがつかなくなるかもな……?」

214: 名無しさん 2017/09/15(金) 19:40:11.39 ID:w+CSx/f80
ジャック「……」

ジャック「鉄砕牙って初期と終盤で明らかに太さが違うよね」

ぐだ男「読むの早いな!?」ガビーンッ

ジャック「おかあさーん。お腹空いたー」

ぐだ男「はいはい。じゃあ何か作ろうか」

ぐだ男「……」

ぐだ男「インスタントしかねぇな。BBのヤツ、ツメが甘いぞ」

ジャック「お湯はあるよ? 電気通ってるから、ポットもあるし」

ぐだ男「うーん。味気ないけど……仕方ないか」

215: 名無しさん 2017/09/15(金) 19:59:30.06 ID:w+CSx/f80
マシュBB「サーヴァントに食事は必要ないってもうわかってるはずなのになぁ」

エリザ「だって、本当にお腹が空いた気がするんだもの。要求くらいするわ」

デオン「……彼女の場合は本当にお腹が空いているのか疑問だけどな」

デオン「単純に甘えているだけかもしれない」

茨木「『甘えているフリ』をしているだけ、とも言えるな」

茨木「……吾はその気になれば全力でマスターに甘えることができるが、アレは違うだろう」

エリザ「そういうのやめましょう。気が滅入ってくるから」

茨木「くは。すまぬな」

マシュBB「……」

BB(なんかみんな思い思いの方向にぶっ飛んでる割には仲いいんですよねー)

マシュ(特異点で背中を預ける生活を続けていれば、さもありなんです)

BB(私も仲良くしたいなー!)キラキラキラ

マシュ(……ある意味でもう馴染めているような……いえ、なんでもないです)

216: 名無しさん 2017/09/15(金) 20:11:10.05 ID:w+CSx/f80
マシュBB「……あ。忘れてた。そういえばこの状態だと……」

茨木「どうした?」

マシュBB「いえ。二つの人格を独立させた状態で一つの脳にぶち込んでいる状態だと、ちょっと困ったことがあって」

デオン「なんだ。こちらの問題か。いいだろう、もう消えていいぞ」

マシュBB「スイーツビュッフェ行くまで消えません!」

マシュBB「いえ、そんな大した問題じゃないんですよ。ただ『睡眠が必要になる』って副作用があるだけで」

茨木「……別に寝てもよいが」

マシュBB「寝方を忘れました」

エリザ「AI特有の悩みね」

マシュBB「ジャックさんの荷物ってどこです? 彼女には違法ラインの強力な睡眠剤を渡しておいたんですが」

マシュBB「今日はそれ使って寝ます」

デオン「それなんだが、BB。どうしてジャックにだけ色々と危険な玩具を渡したんだ?」

マシュBB「このメンバーの暴走を止めてくれるサーヴァントとして私が送り込んだ子ですからねー」

エリザ「えっ。聞いてないんだけど」

デオン(荷物の中に天然痘ウイルスがあったのは、そのせいか……)

エリザ「まあいいわ。ジャックの荷物はここよ」

マシュBB「さぁて、それじゃあ睡眠薬を拝借してっと……」ガサゴソ

マシュBB「……」

マシュBB「あれ? ない」

デオン「は?」

マシュBB「おかしいですね。ちゃんとここに入れておいたはずなんですが」

茨木「ここにないのなら、ジャックが持っているのではないか?」

エリザ「ああ、アレじゃない? 今、ジャックが子イヌの飲み物に砕いて混ぜた粉末」

マシュBB「ああ、アレですね」

デオン「あ。マスターが寝た」




全員「……」

全員「ジャアアアアアアアアアック!?」ガビーンッ!

219: 名無しさん 2017/09/15(金) 20:37:09.87 ID:w+CSx/f80
ジャック「……さーてとっ。今から色々やっちゃうよ!」

ジャック「マシュと契約しているせいで防毒の加護があるからどうだろうなって思ってたけど……」

ジャック「問題なさそうだね。うーん、薬の類は通るのかな? わかんないや」

ジャック「じゃあさっそく」



prrrrrr!



ぐだ男「う、ぐ……電話……!?」

ジャック「あ、やっぱり効き目薄かった」

ジャック「ひょいっと」


スパッ


ジャック「携帯の処理終了。これで今度こそグッスリだよ、おかあさん!」

ぐだ男「ぐー」スヤァ

220: 名無しさん 2017/09/15(金) 20:44:15.73 ID:w+CSx/f80
エリザ「今から賭けの内容変更していい?」

マシュBB「いやぁー。もうノーモアベットでしょう」

茨木「呑気だな」

マシュBB「……あっ、痛っ! やめっ……!」

デオン「ん?」

マシュ「先輩ーーーッ! 起きて! お願い起きてーーー!」

エリザ「あ。やっと肉体の主導権戻ったわね」

デオン「おかえりマシュ」

マシュ「ただいまです! そんなこと言ってる場合じゃないですけど!」

茨木「……ま、大丈夫であろうよ」

マシュ「えっ?」

茨木「仲間だぞ。信じてみせよ」

マシュ「……」

エリザ「いや丸め込まれちゃダメよ。茨木の言ってることは典型的な詭弁だから」

エリザ「世の中には信じちゃいけない仲間もいるでしょうに」

221: 名無しさん 2017/09/15(金) 20:58:33.66 ID:w+CSx/f80
ジャック「何しよっかな。何しよっかな」

ジャック「……」

ジャック「そういえば茨木、おかあさんのこと食べてたけど……」

ジャック「そんなにおいしかったのかな?」


サクッ


ジャック「うーん……あんまりパッとしないなぁ。私たちの趣味じゃないや」ペロペロ

ぐだ男「ジャック……!」

ジャック「……」

ジャック「やっぱり効き目薄いね? あんまり効いてないでしょ」

ぐだ男「お、前っ……」

ジャック「なぁに、おかあさん。なんでも聞くよ?」

ジャック「……聞くだけ、だけど」

ぐだ男「別に睡眠薬なんてなくっても……俺は抵抗なんかしないぞ……!」

ジャック「……」

ぐだ男「怖がってるのか? いつもはこんな小細工、使わないのに……」

222: 名無しさん 2017/09/15(金) 21:03:37.98 ID:w+CSx/f80
ジャック「……」

ジャック「忘れてたんだけどさ。私たちって、殺人鬼だったんだよね」

ジャック「おかしいよね。公園でアイツを切り刻むまでは、本当に普通の女の子の気分だったんだよ」

ジャック「普通の人が誕生日や自分の名前を忘れないのと同じくらい、私たちは私たちのことを殺人鬼だってことを覚えてるのにさ」

ジャック「だからまあ、ショックだったなぁ。助けた相手に、あんな目で見られるなんてさ」

ぐだ男「あれは仕方なかっただろ」

ジャック「……でも理不尽だよ」

ぐだ男「……」

ぐだ男(まあ、確かに。そう言われると、ぐうの音も出ない)

ぐだ男(別にバケモノに産まれてきたくって産まれたわけじゃないしな)

223: 名無しさん 2017/09/15(金) 21:10:46.67 ID:w+CSx/f80
ジャック「……ねえ。抵抗しないって、どこまでのことを言ってるの?」

ぐだ男「……」

ジャック「茨木みたいに全身噛み傷だらけにする程度なら大丈夫? デオンみたいに父親母親を邪魔者扱いされて排除されるのもOK?」

ジャック「腹を裂かれても、悲鳴を上げないでいてくれる?」ギャランッ

ぐだ男「痛いのはイヤだよ。当然だろ」

ジャック「そっか」

ぐだ男「……でも、そんなことする必要は特にないだろ」

ジャック「……そう?」

ぐだ男「別にさ、そんなことしたくって睡眠薬入れたわけじゃないもんな」

ジャック「……」

ぐだ男「ジャック……おいで」

ジャック「……ッ!」



ヒュッ!

224: 名無しさん 2017/09/15(金) 21:18:50.35 ID:w+CSx/f80
ぐだ男「……ああ、もう。世話を焼かせる……」

ぐだ男「抱き着きたいのなら初めからそう言えって」

ジャック「……ううっ……うえっ……!」

ぐだ男「ほら。体が怠くって、お前の頭を撫でるのにすら一苦労だ。どうしてくれるんだよ」

ジャック「だって……! 昼間に拒絶されたの、本当に……!」

ぐだ男「よくあることだ。これからも何回もある」

ぐだ男「でも大丈夫だ。お前のこと受け入れてくれるヤツなんて、俺含めて他にいくらでもいる」

ぐだ男「……俺は大丈夫だから。薬なんていらなかったんだよ」

ジャック「ごめんなさいっ……! おかあさん、ごめんなさいいっ……」

ぐだ男「……」

ぐだ男「あ、まずい。もう意識が……」

ぐだ男「ジャック……俺は……俺のことを慕ってくれるお前のことを……」

ぐだ男「……」

ジャック「……うう、うええ……!」

ジャック「うえええええええええん……!」

225: 名無しさん 2017/09/15(金) 21:24:45.60 ID:w+CSx/f80
マシュBB「……」

マシュBB「ムカつきますね。本当に死んだみたいな顔で寝てますよ」

エリザ「いつの間にか肉体の主導権奪い返しているアンタの方がムカつくわよ」

デオン「マシュー。遠慮はいらないよー。どんどん肉体の主導権を勝ち取っていくんだぞー」ニコニコ

茨木「……ま、吾を従えるマスターが、こんなところで死ぬ道理もあるまいよ」

茨木「信じていたぞ?」

エリザ「ポンコツ首魁のくせして、たまにガチのカリスマ見せるわよね。アンタって」

茨木「たまにではない! 常に出ているから汝が気付いていないだけよ!」

マシュBB「ま、これで峠は過ぎましたかね。後に残っているのは……」

マシュBB「……残って、いるのは……?」

エリザ「……」ニヤァ

マシュBB「……」

マシュBB「あっ」

デオン「気付いたか。まだ峠は残ってるぞ」

228: 名無しさん 2017/09/16(土) 09:52:16.36 ID:7bRVCpvu0
虚構殺人遊戯 才囚学園

巌窟王「……理解に苦しむな。またやるのか。マジックショー」

夢野「マジカルショーじゃ! ……とかお主に言ってもなんか虚しいが……」

夢野「細かいことはよいか。今度は屋外で、この大量の風船を使ったショーをするんじゃ!」

巌窟王「アンジーはどうした? 今回は手伝っていないのか」

東条「捕まえようとしたのだけど、断られてしまったの。何か用事があったようね」

巌窟王「ふむ。今日は妙に落ち着かない様子だったからな。ヤツもヤツで何か考えているのだろう」

巌窟王「まあいい。我が仮初のマスターの理念に従い、お前たちが望むのなら手を貸してやらないこともないが?」

夢野「お主本当にアンジーのことが大好きじゃのう」

巌窟王「俺が? クハハ、まさか!」

巌窟王「俺のマスターは過去現在未来にただ一人。あれとはお互いの利害の一致に伴った薄っぺらな関係しかない」

巌窟王「この関係に抱く想いも、同様に薄っぺらなものだとも」

巌窟王「大体アレは共に歩むにしては幼過ぎる。雛鳥のように後ろをヨチヨチ歩きでついてくる程度が関の山だろうよ」

東条「その割には甘やかしているように見えるけど」

巌窟王「サーヴァントだからな!」ギンッ!

229: 名無しさん 2017/09/16(土) 09:58:52.31 ID:7bRVCpvu0
百田「まあ、確かにアンジーに対して特別扱いはしてねぇだろうな」

百田「テメェは俺たちのことみんなが大好きなんだもんな! わかってるぜ!」ニカッ

巌窟王「……気持ちの悪いことを言うな」

夢野「百田。お主どこから湧いて出てきた」

百田「終一を探してたら派手な風船が大量に見えたからよ。ちょっと寄ってみただけだ」

夢野「ついでじゃ。百田も手伝うがよい。風船がもっと大量に必要だから……って、あ!」

フワッ

夢野「あー。一個無駄にしてしまったわい」

巌窟王「クハハ! 任せろ! あの程度の高さ、造作もない!」

ドンッ!

東条「……跳んだわね」

夢野「あ、キャッチした」

百田「おお。無駄に一回転して校舎の屋根に着地したな」

230: 名無しさん 2017/09/16(土) 10:03:23.45 ID:7bRVCpvu0
巌窟王「クハハハハハ! どうだ!」

百田「無駄にテンション上げてるなー」

夢野「造作もないって自分で言ってたのにのう」

東条「巌窟王さん。そこ結構な急斜面になってるから、気を付けて降りてね」

巌窟王「任せろ! 昇ったのだから降りることなぞ更に容易い――」

巌窟王「む?」

巌窟王(裏庭に誰かいるな……あれはアンジーと最原か?)

巌窟王(一体何をして……)

アンジー「終一ー! アンジーのお婿さんになってー!」キラキラキラ

最原「ええっ!?」

巌窟王「!?!?」ガビーンッ!


ズルゥッ


百田「足を滑らせたーーーッ!?」ガーンッ!

夢野「言わんこっちゃない!」

231: 名無しさん 2017/09/16(土) 10:07:59.79 ID:7bRVCpvu0
巌窟王(バカな……あの子供のように俺の後ろを付いて回っていた夜長アンジーが……!?)

巌窟王(俺はいつかカルデアに帰る。きっとその後、アンジーは幸せな一生を過ごすのだろう)

巌窟王(美術に生き、誰かと出会い、誰かと別れ、誰かと添い遂げ、誰かを見送り誰かに見送られる……)

巌窟王(そんななんでもない、しかし掛け替えのない一生を過ごすのだ……そう思っていた。だが……)

巌窟王(この落下するような浮遊感……俺はショックを受けている?)ヒューッ

百田「うおおおおお! 巌窟王が屋根から落ちたーーーッ!」


ベシャッ


東条「あ、よかった。土の部分に落ちたから、多分死んではいないわ」

夢野「巌窟王ーーーッ!」ダッ

232: 名無しさん 2017/09/16(土) 10:16:58.02 ID:7bRVCpvu0
巌窟王(まさか……こんなに早いとは。神への信仰がなければ、あるいは俺がいなければ何もできない、あの童女が……)

アンジーの幻影『神様ー! 追いかけっこしよー!』

アンジーの幻影2『神様ー! 新しい絵を描きたいなー!』

アンジーの幻影3『神様ー! もうちょっと髪を洗う手つきを優しくしないとハゲちゃうよー!』

東条「大丈夫? 気分はどう?」

巌窟王「気分……だと……?」

巌窟王「……」

巌窟王「胸が張り裂けそうで苦しい」

東条「緊張性気胸になっている恐れがあるわね。処置を開始するわ」

夢野「ヒンッ!! 死ぬな巌窟王!」

巌窟王(相手はあの最原か……俺と舌戦を繰り広げ、勝ってみせたあの探偵……)

巌窟王(……)

巌窟王「認めない……まだ不十分だぞ探偵め……!」

東条「百田くん。そこにあるレンガを取ってくれるかしら?」

百田「お? これか」ヒョイッ

巌窟王「クハハハハハッ! 俺はまだ、認めないぞ!」ギンッ

巌窟王「ここから先に進みたければ俺を倒してから――!」

東条「麻酔!」

ガンッ

巌窟王「」ガクリ

東条「あなたには治療が必要よ」

百田「それ本当に麻酔か?」

夢野「巌窟王ーーーッ!」ガビーンッ!

233: 名無しさん 2017/09/16(土) 10:21:37.93 ID:7bRVCpvu0
ぐだ男「父ちゃんかお前はッ!」ガバァッ

ぐだ男「……夢か……どんな夢だったか忘れたけど……」

ぐだ男「ん。ここは……ああそうか。逃走中だったな」

ジャック「……すー……」スヤァ

ぐだ男「……」

ぐだ男「……後でBBに電話するか。心配されてたみたいだしな」

ぐだ男「次は誰と一緒になるんかなー」

ぐだ男「……」

ぐだ男「エリザだったら今度こそ死ぬかもな……」

236: 名無しさん 2017/09/16(土) 10:55:04.51 ID:7bRVCpvu0
近場の商店街

ぐだ男「だー! やっと見つかった! 公衆電話!」

ジャック「ごめんね。うるさかったから、つい斬っちゃった」

ぐだ男「物理的に斬ることないだろ! 何も!」

ぐだ男「えーと、小銭小銭……」


ジリリリリリリンッ


ジャック「……公衆電話が鳴り始めたけど?」

ぐだ男「ご丁寧にどうも」


ガチャリ


マシュBB『おっはー! 大丈夫ですか。生きてますか。死は救いだと思いますかー?』

ぐだ男「ああ。お前のお陰でなんとかな。もう外を歩いてても大丈夫か?」

マシュBB『大丈夫ですよ。もうあなたたちの罪は綺麗さっぱりなかったことになりました』

マシュBB『ひとまず、どこかでタクシーを拾ってホテルまで来てくださいな』

マシュBB『料金は旅行サーヴァントたちが立て替えますので』

ぐだ男「了解。ジャックを返しに行くよ」

ぐだ男「……で。次に俺と同行するサーヴァントって」

マシュBB『……聞きたいです?』

ぐだ男「……その態度で既に答えたも同然だよ……!」

238: 名無しさん 2017/09/16(土) 14:06:37.03 ID:7bRVCpvu0
ホテル

マシュBB「センパイ! よかった! 無事だったんですね!」

ぐだ男「おお、マシュ! 心配かけるようなことは何も起きなかった……ぞ?」

ぐだ男「……」

ぐだ男「……?」

デオン(凄いな。この短時間でもう違和感を覚えてるぞ)

エリザ(面白いから黙ってましょう)プププ

マシュBB「センパイに何かあったらと思うと……私……私……!」

マシュBB「センパーイ!」ダッ

ガシッ

マシュBB「……抱き着こうとしたんですけど、どうして抵抗するんですか?」ギリギリ

ぐだ男「い、いや。なんでだろう。悪寒が酷いっていうか……」ギリギリ

マシュBB「センパーイ。後輩からの好意は素直に受け取るべきですよー?」ニコォ

ぐだ男「……」

ぐだ男「BBじゃねぇかコイツ!」ガビーンッ

茨木「おお。凄いな。バレないように最低限の演技はしていたのに、もう気付いたか」

ぐだ男「マシュの表情でBBの笑い方すんのやめろ! 死ぬほど気持ち悪い!」

マシュBB「オブラートに包むとかできないんですかね?」

239: 名無しさん 2017/09/16(土) 14:21:36.34 ID:7bRVCpvu0
かくかくしかじかBBかわいい

ぐだ男「お前なー……マシュに迷惑だからそういうのやめろって……」

マシュBB「えへっ?」

茨木(凄いな。マスターに関する監視についての話題には一切触れずに、旅行サーヴァントのサポートのために来たという口実で誤魔化したぞ)

デオン(伊達にラスボスじゃないんだなぁ)

エリザ(真相を抱えたまま泥を被って肝心なところを隠すのは大得意なヤツだからね)

マシュBB「別にいいじゃないですかー。マシュさんにも一応許可取ってますしー」グリグリ

ぐだ男「事後承諾だろ、その話だと。どう考えても。脇腹のあたり指でグリグリすんのやめろ」

マシュBB「セーンパーイ! 許してくださいよー! 私だって頑張ってるんですよー!」ガシッ

ぐだ男「腰のあたりに纏わりつくのやめろ! 鬱陶しい!」

マシュBB「ほらほらー! 色々と押し付けてあげますからー!」グイグイ

マシュBB「あ、でも心まで好きにできるとは思わないでくださいね! 既に私、好きな人いますので!」

ぐだ男「もう何回も聞いてるからわかってるよ!」

エリザ「……」

エリザ「あれやばいんじゃない?」

デオン「何が?」

エリザ「だってマシュの人格は眠ってるわけじゃないんでしょ?」

茨木「あっ」

マシュBB「……あれ? なんか体温が不自然に上がってきました。あれぇ?」カァァ

デオン「BB! 今すぐマスターから離れろ! マシュの人格の方が限界に近づいてる!」

マシュBB「げっ! さっきから妙に静かだと思ったら!」ガビーンッ!

ぐだ男「……」

ぐだ男「そうだ! お前今、マシュじゃん! やばい、無邪気にじゃれすぎた!」

エリザ(BBと普段からそんなことやってんの?)

デオン(酔狂だなぁ)

240: 名無しさん 2017/09/16(土) 14:33:26.77 ID:7bRVCpvu0
マシュBB「今クールダウン中です。いやー、参った参った。初心な女の子とボディをシェアするのって大変ですね」

エリザ「はっ! 純情さで言えばあなただって」

マシュBB「スミス&ウェッソーーーン! あの竜娘を黙らせてよー!」

マシュBB「もーう、BBちゃんはしょうがないなー!(裏声)」

マシュBB「はい! M500---!(裏声)」チャリラチャッチャチャーン

エリザ「えっ」

マシュBB「ファイア」カチッ


ドバァァァァンッ!


エリザ「ぎゃああああああ! 危ねぇーーーッ!」ガビーンッ

茨木「これを扱っていたのが狂スロットであれば間違いなくサーヴァントでも死んでいただろうなぁ」

ぐだ男「日本で当たり前みたいにリボルバーをぶっ放すなーーーッ!」

241: 名無しさん 2017/09/16(土) 14:40:23.14 ID:7bRVCpvu0
ぐだ男「……で。大体予測はできているが、今日俺に同行するサーヴァントって……」

マシュBB「アレです」

デオン「アレだ」

茨木「アレよ」

ぐだ男「……」

エリザ「満を持して登場した……そう! 私よ!」

ぐだ男「ですよね……」

マシュBB「ご安心を。一応、彼女からは『槍以外の拷問器具や武器』は取り上げてますので」

ぐだ男「槍があればチェイテ城呼べるんだから関係ないだろ……」

マシュBB「……気休めには充分でしょう?」

エリザ「ふふっ。妙な心配はしなくても大丈夫よ子イヌ」

エリザ「今日はしないわ。今日はね」

ぐだ男「……今日は、か……」

242: 名無しさん 2017/09/16(土) 14:43:10.96 ID:7bRVCpvu0
ジャック「おかあさーん!」タッタッタッ

ぐだ男「お。ジャック。どうかしたか?」

デオン「む。そういえばさっきから姿が見えなくなっていたな。どこに行ってたんだ?」

ジャック「荷物漁ってたー!」

茨木「あの愉快な玩具群を……?」

ジャック「これあげるー!」

ぐだ男「……これ何?」

ジャック「GPS-! 行方不明になっても安心! すぐ見つけてあげるね!」ニコニコ

ぐだ男「あ、ありがとう……」

ぐだ男(行方不明になるような目に遭うのか……)

エリザ「別れの挨拶は済んだかしら。じゃあ、行くわよ!」

244: 名無しさん 2017/09/16(土) 18:08:19.64 ID:7bRVCpvu0
マシュBB「……さぁて。ここからは私たちVSエリザさんの知恵比べになりますね」

デオン「そしてエリザはその知恵比べにすぐ飽きて即行でいつも通りの悪行に戻るだろうな」

茨木「容易に予測できすぎる……」

ジャック「大丈夫大丈夫。早速最初の知恵比べには勝ってるから」

マシュBB「……荷物を漁ってきただけじゃなかったんですか?」

ジャック「そんなに大したことはしてないけど、荷物の内容の確認はしてきた」

ジャック「あのね? デオンのときに使われたチャフを覚えてる?」

デオン「ああ。ちゃんと纏めてペットボトルに詰めてジャックに返したヤツだろう?」

ジャック「で、それを更に私たちが改めて散布装置にぶち込んでみようかな……」

ジャック「ってところで考え直して、改造したの」

マシュBB「え? 改造?」

ジャック「あのね? あれってピンを外してから数秒で起爆するようになってたけど、ピンを抜いた途端に起爆するようにしたんだよ」

ジャック「で、中身も変えた。今アレの中に入っているのは、デオンに対する天然痘みたいなエリザへの対抗策だよ」

マシュBB「……えっ? アンデルセンさんに作ってもらったアレ?」

ジャック「アレ」

245: 名無しさん 2017/09/16(土) 18:13:45.53 ID:7bRVCpvu0
エリザ(ふっふっふ……まさか連中は思ってもないでしょうね)

エリザ(私がチャフをジャックの荷物の中からこっそり持ち出してきたなんて!)

※バレてます。

エリザ(今は自動操縦状態になっているドローンが私たちを見張っている状態だけど)

エリザ(さて、ここでチャフをバラまいたら果たしてどうなるかしら?)

エリザ(ドローンは使用不可。その間に私は子イヌを連れてどこかへ蒸発)

エリザ(さぞ驚くことでしょうねぇ! 間抜け面を拝めないのが残念だわぁ!)

エリザ(さあ! 早速コレを使って……)

エリザ「……」

エリザ「こ、子イヌ。ちょっと聞きたいことが……」

ぐだ男「なに?」

エリザ「これ、ピンってどこにあるんだと思う?」

ぐだ男「……え。これチャフじゃん。なんで持ってるの」

エリザ「え、ええと……」

ぐだ男「使っちゃダメだぞ」

エリザ「……」

エリザ「……はい……」シュン

246: 名無しさん 2017/09/16(土) 18:21:44.64 ID:7bRVCpvu0
ホテル内

どっかの学士『ああんの、どこに出しても恥ずかしいド低級サーヴァントがああああああ!』

マシュBB「という声がどこからか聞こえてくる程度には予想以上におバカでしたね」

ジャック「……せっかくの『人間化アンプル』が……」

茨木「人間化?」

デオン「……まさか、アンデルセンに作ってもらった品物というのは……」

マシュBB「人外を条件付きで人間へと変える宝具……だったんですが」

マシュBB「ほら。人魚姫は声を代償に人間へと変わっていたでしょう? それと同じものがあの中に入っていたんです」

デオン「普通なら声が出せなくなるというのは紛れもなく副作用、デメリットなんだろうが……」

茨木「エリザに対してのみは『竜の力が使えなくなる』のと『声が出せなくなる』のとで、メリットしか存在せんな」

マシュBB「作らせるのめっちゃ苦労したんですよー! サンクトペテルブルクにカンヅメにさせたりして!」

マシュBB「そう! デオンくんちゃんさんも大好きな、あのサンクトペテルブルクにぶち込んだりして!」

デオン「マシュに感謝しろ。特に感謝しろ。さもなくばこの場でお前の首を斬り落していた」

ジャック「落ち着きなよー」

247: 名無しさん 2017/09/16(土) 18:36:12.23 ID:7bRVCpvu0
エリザ「あっ! そうだ! カラオケ! カラオケというものに行ってみたいわ!」

エリザ「私、日本に来たら絶対にコレだけはやっておきたいと思っていたもの!」

ぐだ男(絶対言うと思った!)ガビーンッ

ぐだ男(さて、ここでエリザをカラオケに連れて行ったとしよう。被害人数は如何ほどになるだろうか)

ぐだ男(ソニックブレスがカラオケの個室内で留まるわけもなく、おそらく防音装置を突き破って隣の部屋の人間も死亡)

ぐだ男(更にはわけのわからない共振作用が起き、建物そのものにダメージが行く)

ぐだ男(大地震か終末が来たかのように揺れる建物。エリザの声のダメージが比較的少ない離れた距離にいた者も逃げ遅れ……)

ぐだ男(最終的な被害者は三桁を下らないだろう!)シャキーンッ!

ぐだ男(ということを彼女に素直に言ったところで)

エリザ『いくらなんでもそこまで大きな声は出ないわよ!』

ぐだ男(という『自分自身が音痴である』という点を完全無視した反論で強引に連れていかれてしまうだろう)

ぐだ男(考えろ……! 被害者が一人たりとも出ない、誰もが幸せになる結末を夢想するんだ……!)

ぐだ男(何か……何かないか……!)



エミヤ『――ついて来れるか』

ぐだ男(エミヤ……! 俺に力を貸してくれ……!)

248: 名無しさん 2017/09/16(土) 18:40:28.54 ID:7bRVCpvu0
ぐだ男(今打てる最善の手がある! それは!)

ぐだ男「その前にさ。俺、昨日は家に帰ってなかったんだ」

ぐだ男「お母さんのところに帰って安心させたいんだけど」

エリザ「あ、そうね。家族は大事だわ」

エリザ「いいでしょう。まずは先にそっちね!」

ぐだ男(先延ばし! ひとまずコレで時間を稼ぐ!)

ぐだ男(考えろ……逆転の一手をその間に考えるんだ……!)

249: 名無しさん 2017/09/16(土) 18:46:20.58 ID:7bRVCpvu0
池袋

マシュBB「うーん。エリザさんがピンを抜いて散布装置を起爆させてくれれば全部丸く収まったのですが」

ジャック「おかしいね。頭脳戦って知能での殴り合いのはずなのにね」

デオン「相手のバカさ加減を計算に入れていなかったせいで逆にこちらがドツボに嵌まるとは」

茨木「実はわざとやっているのではないか?」モヒモヒ

マシュBB「エリザさんですからねー。どちらとも言えるはずです」

マシュBB「……」

マシュBB「さっきからなんか視線を感じるのですが」

デオン「茨木を見ているのだろう。体格にしてはありえないほど食べているからな」

茨木「む? 食べ放題のすいーつびゅっふぇなのだろう? 食べて当たりまえなのではないか?」

ジャック「ひとまずこの場にいる全員の目玉を抉れば視線は気にならなくなるよ?」

マシュBB「ナイスアイディーア!」グッ

デオン「やめろ」

251: 名無しさん 2017/09/16(土) 19:40:22.81 ID:7bRVCpvu0
マシュBB「……いや。対抗策はまだ残されてますね」

デオン「アンプル以外でか?」

マシュBB「歌姫の方をどうにもできないのなら、干渉できる場所は限られるでしょう?」

ジャック「……ああ、なるほどね」

茨木「舞台か」

マシュBB「ピンポーン!」

デオン「できるのか?」

マシュBB「この大都市全域を停電させたら、流石にカルデアからの粛清は免れないでしょうから……」

マシュBB「それ以外の方法でカラオケボックスを潰す方法は……」

マシュBB「いえ、違いますね。舞台をぶっ潰すのではなく、歌姫を舞台に行かせない方向で考えるべきです」

デオン「……どうやら考え付いたようだな。認めたくないが、お前の頭脳に関しては信頼している」

マシュBB「あはっ! もっと素直に褒め称えてくださいよー!」

マシュBB「……さて。やりますか」ニヤァ

252: 名無しさん 2017/09/16(土) 19:48:43.01 ID:7bRVCpvu0
ぐだ男の家

ぐだ男「ただいまー!」

母「あら。お帰りなさい。昨日はお楽しみでしたね?」

ぐだ男「冗談でも息子に向かって言うセリフじゃないィ!」ガビーンッ

母「……で。そちらの子は?」

エリザ「お初にお目にかかります。エリザベート・バートリーと申しますわ」ペコリ

ぐだ男「え」

エリザ「今日は彼の誘いに甘え、こうして付いてきた次第です」

エリザ「この国には来たばかりで、右も左もわからない小娘ですが、どうかよろしくお願いいたします」ニコリ

ぐだ男「……!?」

ぐだ男「あっ」

ぐだ男(そういえばコイツ、忘れがちだけど貴族だった!)ガビーンッ!

母「あらあらまあまあ……」

母「随分と上品な子ね」

ぐだ男(エリザのことを評しているとは思えないような言葉が出てきた!)

253: 名無しさん 2017/09/16(土) 19:55:08.58 ID:7bRVCpvu0
母「……」

母「その角と尻尾は?」

エリザ「あっ」

ぐだ男「まあそうなるよね! そこ気になるよね!」

エリザ「ど、どうしよう子イヌ! せっかくキメたのに早速化けの皮が剥がれちゃう!」アタフタ

ぐだ男「あー……」

ぐだ男「別にいいんじゃないか? 外行きの態度で固める必要はないって」

エリザ「むいー……!」

ぐだ男(演技でできるレベルを遥かに超えていたけどな)

ぐだ男(やっぱコイツ、お嬢様なんだなぁ……)

254: 名無しさん 2017/09/16(土) 20:11:43.90 ID:7bRVCpvu0
ぐだ男(さてと。家まで来たのはいいが……果たしてコイツの興味を引くものを俺は用意できるだろうか)

ぐだ男(ゲームか? 小説か? いや……どれも効果は微妙だな)

ぐだ男(音楽ならコイツの興味を引けるだろうが、余計にカラオケに行きたいとか言い出しかねないしな)

ぐだ男(どうする!)ギンッ

母「……この尻尾、本物?」

エリザ「お母さまなら触ってもいいけど……?」ブンッブンッ

ぐだ男(隙を見てBBに電話……携帯はジャックに壊されたので固定電話限定だが……)

ぐだ男(歌姫の方をどうにかすることはほぼ不可能だろうから、舞台の方をどうにかしてほしいが)

ぐだ男(いや、アイツならそんな生易しいことは考えないか。やるとしたらそう)


ドカァァァァンッ!


エリザ「きゃっ」

母「え? 爆音?」

ぐだ男(階段とエレベーターの両方を爆破して俺たちを家に孤立させるとか……)

ぐだ男「……」

ぐだ男「手ェ早ッ!」ガビーンッ!

255: 名無しさん 2017/09/16(土) 20:26:42.64 ID:7bRVCpvu0
マシュBB「そう! センパイの家はマンションの一番上! その端!」

マシュBB「つまりエレベーターと階段の両方を潰してしまえば……」

デオン「マスターは下に降りられない。家の中で孤立する」

マシュBB「あーっはっはっは! まあサーヴァントなら下に降りられるでしょうが?」

マシュBB「旅行サーヴァントは原則、目立つことはしないんですよ! できないんですよ!」

マシュBB「だってそもそも申請も許可も偽造ですからねぇ! そこを突かれないためには大人しくするしかない!」

茨木「そこをエリザが忘れていたら?」

マシュBB「私たちの詰みです!」

デオン「ひいてはBBの罪だな」

ジャック「さよならBB。いなくなったらすぐに忘れたいサーヴァント選手権第一位だったよ」

茨木「吾らは汝の勇姿をやはりすぐに忘れたい」

マシュBB「……」

マシュBB「びえええええええええええんっ!」ダバーッ!

デオン「あ、ついに泣いた」

マシュ「……嘘泣きじゃないですね。肉体の主導権私に渡して、本当に引っ込んでしまいました」ポロポロ

ジャック「まだ涙止まってないけど?」

マシュ「嘘泣きじゃないですから……流石にみなさんイジメすぎです……」

256: 名無しさん 2017/09/16(土) 20:44:18.69 ID:7bRVCpvu0
BBの日記
みんな酷いです。本当に酷いです。私はただみなさんが面白おかしく無様に足掻いている姿を見ていたいだけなのに。
手足をもがれた虫のように無意味にグネグネしている様を見ていたいだけなのに。

何故理解してくれないのでしょうか。利害は一致しているのに。

……ん? よく考えたらこちらの自業自得でした! ヤッホーーーウ!
さて。あとはエリザさんの知能にかけるしかないですね。私たちの目論見通りに行ってくれれば、あとは何も問題はありません。

あ、そうだ。また巌窟王さんの学級日誌が届いたんでした。
ついでに巌窟王さんが撮ったらしき写真も数点。卒業アルバムに備えろ、というメモ書きも。

……は!? まさか私に作れと!? 流石にそこまでやれないです! こっちも忙しいですし!

写真のデータをコピって送り返しましょう。えいっ。

258: 名無しさん 2017/09/16(土) 21:27:02.42 ID:7bRVCpvu0
虚構殺人遊戯 才囚学園

巌窟王「……なんということだ……卒アルの編集の当てが外れた……」

巌窟王「アンジーと俺でやれるだろうか……」

巌窟王「……」

巌窟王「クハハ! 考えていても仕方ない、か。待て、しかして希望せよ、だ!」ギンッ

巌窟王「ひとまずアンジーにこのことを知らせないとだな……」

巌窟王「アイツはまた自分の研究教室に引っ込んでいるのだろうか」スタスタ



五分後

巌窟王「……やめろと言ったのだが、やはり俺の似姿のろう人形を作っていたか」

巌窟王「しかしいないな。どこに行った?」

???「チッ。ここはダメか」

巌窟王「……今、誰かいたか?」

巌窟王「……」

巌窟王「何故だ? 胸騒ぎがする……」

259: 名無しさん 2017/09/16(土) 21:39:42.66 ID:7bRVCpvu0
ぐだ男「……なんでだろう。俺自身にはまったく危機は迫ってないはずなのに、胸がゾワゾワする」

エリザ「カルデアにいるサーヴァントが何か危機的な目にでも遭ってるんじゃない?」

エリザ「今は関係ないわよ。休日だし」

ぐだ男「そう、だな。俺にはどうにもできないか……」

エリザ「あーあ。カラオケ行きたかったのに」

母「エレベーターと階段が同時に壊れるなんて、こんな偶然あるのねぇ」

エリザ「ねぇ?」

ぐだ男(絶対に偶然じゃない)

ぐだ男(……)

ぐだ男「あ。そういえば母さん。食糧は大丈夫?」

母「缶詰めと米くらいならあるわよ」

ぐだ男「そっか……じゃあ一応大丈夫かな」

エリザ「缶詰め……あれ美味しいわよね。割と」

ぐだ男(意外とエリザの機嫌もいいし……)

260: 名無しさん 2017/09/16(土) 22:26:26.75 ID:7bRVCpvu0
ぐだ男「メシの加工と盛り付けくらいは俺がやるよ。母さんまだ二日酔い抜けきってないでしょ」

母「普段はあんなに飲まないのに、なんであんなにあおったのかしら?」

ぐだ男(つくづくごめんなさい)

エリザ「あっ! 料理なら私も得意だけど?」

ぐだ男「お前は絶対に台所に入るな」

エリザ「」

ぐだ男「俺だってまだ死にたくない」

エリザ「栄養はちゃんと考えてるのに……」エグエグ

ぐだ男「味を考えろ! 味を!」

エリザ「パラケルススみたいな味は整ってるけどそれ以外が意味不明なかき氷よりマシじゃない!?」

ぐだ男「どっちもどっちだッ!」

261: 名無しさん 2017/09/16(土) 22:43:28.21 ID:7bRVCpvu0
母「……ふふっ。仲がいいのね」

エリザ「あっ」

エリザ「……」カァァ

ぐだ男「恥ずかしがらなくていい。大体のことは許せる人だから」

エリザ「もうちょっとしおらしくしていようって思ってたのよ……」

エリザ「……いいふうに見られたいって思って当然でしょ?」

ぐだ男「……」

ぐだ男「そうだな。俺もそうかも」

エリザ「え」

ぐだ男「俺の家にお前を呼んでさ。俺のテリトリーでもてなしてさ」

ぐだ男「……お前に笑って欲しいって思ってるよ」

エリザ「……」

エリザ「はっずいわね。お互いに。顔から火が出そう」カァァ

ぐだ男「俺もだ」

母(初孫は近いわねー)

262: 名無しさん 2017/09/16(土) 23:05:12.08 ID:7bRVCpvu0
prrrr

ぐだ男「……このタイミングでの電話……」

母「はいはい、今行きますよーっと」

ぐだ男「いい! 多分俺あてのヤツだから!」


ガチャリンコ


マシュBB『私が来た!』

ぐだ男「やっぱりな」

マシュBB『話が早いですね。ひとまず言いたいことが一つ』

マシュBB『エレベーターの方は一日で修理が終了する程度の損傷しか与えてないので、頑張って!』

ぐだ男「……」

マシュBB『今夜はお楽しみですね?』

ぐだ男「……」

マシュBB『……電話越しで無言の圧を放つの、やめてくれません?』

ぐだ男「ロクでもないこと考えさせたらお前の右に出るヤツはいないよ」

ぐだ男「悪の素質がないだけ新宿のアーチャーよかマシだけどさぁ」

マシュBB『そうだ。やっと伝える機会が来たので教えておきますね』

マシュBB『あのチャフの散布装置、ちょっとした仕掛けが施されてます』

ぐだ男「仕掛け?」

マシュBB『あれをエリザさんが使うと、エリザさんは人間化した上に声が出なくなります。使うかどうかは任せますが』

ぐだ男「……もう使わないでいいだろ」

マシュBB『芽はおおよそ摘みましたが、念のためです。それでは』

ぐだ男「ああ。じゃあな」

264: 名無しさん 2017/09/17(日) 07:52:40.27 ID:XMU1sJYp0
マシュ(……BBさんはいつの間にかカルデアにいた謎のサーヴァントですが)

マシュ(先輩とは仲がいいですよね)

BB(ま、色々とあったんですよー。さっきも言いましたけど好きな人は別にいますんで、そう心配しなくても大丈夫です)

BB(恋人? 思い人? そういうのとは無縁ですね)

BB(強いて言うならモルモットと美人研究員。どんなに良く言っても利害の一致に伴った相棒?)

マシュ(……良く言い過ぎです)

BB(面倒くせぇー……相棒でもアウトなんですか……)

BB(私がセンパイにベタベタするのがイヤなら、先回りしてあなたがベタベタしてればいいのに)

マシュ(いや、それは……)

BB(変な遠慮や臆病が産むものなんて、非生産的なものばかりですよ。私とか)

マシュ(……?)

265: 名無しさん 2017/09/17(日) 08:05:07.08 ID:XMU1sJYp0
BB(そういえば、どうするんです?)

マシュ(どうするとは?)

BB(もう残ったサーヴァントはあなただけですけど。センパイとの同行サーヴァント)

マシュ(……)

マシュ(……ハッ!?)ガビーンッ

BB(え。今気づいた?)

マシュ(ど、ど、どうしましょう……何かお土産とか買った方がいいのでしょうか。あわわ)

BB(あははっ! 面白いほど狼狽してますねぇ!)

BB(あはははははははは……)

BB(あー、もう! 世話焼けるなぁ!)

266: 名無しさん 2017/09/17(日) 08:17:11.15 ID:XMU1sJYp0
エリザ「缶詰めも、ちょっと調理すれば結構バケるものねー。おいしかったわよ?」

ぐだ男「エミヤならもうちょっと上手くやれたんだろうけどなぁ」

エリザ「贅沢は言わないわ。今は、だけど」

ぐだ男「助かる」

母「お風呂が沸いたわよー」

ぐだ男「……先に行っていいぞ」

エリザ「じゃあ遠慮なく……」

エリザ「……」

エリザ「……好みの子がいれば『入浴剤』にしたのに」

ぐだ男「忘れたころにぶっこんでくるのやめろ!」

267: 名無しさん 2017/09/17(日) 10:58:46.41 ID:XMU1sJYp0
母「……」

母「セアカサラマンダーは浮気を許さない爬虫類だそうよ?」

ぐだ男「突然なに!?」ガビーンッ

ぐだ男「……あとセアカサラマンダーはトカゲっぽいけど両生類だよ!」

母「あなたの部屋、そういえば音は漏れないような作りだったわね」

ぐだ男「余計な気を回さなくていいから!」



風呂場

エリザ「……そういえばネロとかあの発情狐とか、マスターと一緒に風呂入ったとか言ってたわね」

エリザ「どうせなら私も一緒に……」

エリザ「……恥ずかしすぎて死んじゃいそうだからパスね」

268: 名無しさん 2017/09/17(日) 11:14:48.11 ID:XMU1sJYp0
茨木「なんだ。ジャックのときよりも平和ではないか」

デオン「流石にアイツもやることなすこと先回りされたら仕方あるまいさ」

ジャック「好みの女の子もいないみたいだしねー」

茨木「……そういえば、今更気にすることでもないかもだが」

茨木「吾の場合の対抗策はどのようなものだったのだ?」

ジャック「神便鬼毒酒だったよ。ジュースみたいな缶に入れてた」

マシュBB「冷蔵庫に入れなくっても常にキンキンに冷える、ちょっとした謎技術も使ってました」

茨木「ん? 待て。酒呑が神便鬼毒酒を他の誰かに振る舞うことなぞ」

マシュBB「もちろんありえませんでしたよ。なので臭気から成分をできる限り分析して模倣した神便鬼毒酒レプリカです」

マシュBB「酒呑さんに味見させてみたら『流石に味は数段劣るけど、これと言って何が悪いって点もあらへんなぁ』と笑ってましたよ」

マシュBB「安酒らしい味わいだー、とか言って」

ジャック「……ん? 待って。茨木。知らなかったの?」

茨木「なに?」

ジャック「だって、チャフだけじゃなくって新便鬼毒酒レプリカも無くなってたんだよ?」

ジャック「私たちはお酒を飲まないし、デオンも安酒には興味ないだろうし……マシュは?」

マシュBB「知らないって言ってますけど」

デオン「……ジュースみたいな缶に入れていた、と言っていたな?」

茨木「冷蔵庫に入れなくともキンキンに冷えていたんだったか?」

全員「……」



マシュBB「ま、まさかですよね?」

270: 名無しさん 2017/09/17(日) 16:08:18.18 ID:XMU1sJYp0
ぐだ男「……女性の風呂って長いんだよなー」

ぐだ男(エリザに関しては角とか尻尾とか長い髪とか、洗わなきゃいけないポイントが大量にあるから更に)

ぐだ男「暇だ……そして今度こそ平和だ……」

prrrrr!

ぐだ男「電話?」


ガチャリンコ


マシュBB『センパイ! 多分まだ間に合います!』

ぐだ男「一体どうした?」

マシュBB『これは詳細を省くが、結論を言うとセンパイは死にます』

ぐだ男「一体どうした!?」ガビーンッ!

マシュBB『エリザさん、着替えと一緒に何か缶のようなものを持っていきませんでしたか!?』

ぐだ男「……」

ぐだ男「なあ。前々から薄々感付いてたけど、やっぱりお前監視してるだろ」

マシュBB『……』

マシュBB『……バトンタッチ』

ぐだ男「あ?」

マシュ『……ハッ! えっ!? BBさん!?』

ぐだ男「BBはお前……いや、違うな。お前マシュか! 紛らわしい!」

マシュ『BBさんは引っ込んでしまいました。ああもう、都合が悪くなった途端に!』

271: 名無しさん 2017/09/17(日) 16:13:26.24 ID:XMU1sJYp0
マシュ『さっき発覚したことなのですが、おそらくエリザさんはジュースと間違えて缶に入った神便鬼毒酒を持って行ってます!』

ぐだ男「マジで?」

マシュ『もしも! もしアレをエリザさんが飲んだら、悪酔い必至です! 今までの工作が全部パァです!』

マシュ『なんとしてでも飲まれる前に取り上げてください!』

ぐだ男「取り上げろって言ったって……どこにあるんだ?」

マシュ『どんな状況でもキンキンに冷える特殊加工がされているということなので、おそらくエリザさんはそれを……』

ぐだ男「ああ、わかった。風呂上りの冷たいジュースは美味しいもんなぁ」

ぐだ男「時間が惜しい。色々言いたいことはあるが、また後で、だ」

マシュ『御武運を! 先輩!』

272: 名無しさん 2017/09/17(日) 16:19:52.51 ID:XMU1sJYp0
エリザ「ふぅー。いいお湯だったわ。ちょっと長風呂になっちゃったけど」

エリザ「でも備えあれば嬉しいのよ! キチンと水分は持ってきているわ!」

エリザ「まったくもう。BBはジャックばかり贔屓しすぎなのよ。私のことも少しは労ってよね」

エリザ「オヤジ臭い趣向だけど、誰も見ていないし。さあ今こそ……」グッ


バターンッ!


ぐだ男「エリザァ! それを飲むなーーー!」

エリザ「……」

エリザ「……えっ」

ぐだ男「ぎ、ギリギリだったか! まあいい! とにかくそれをこっちによこせェ!」ダッ

エリザ「あ、ちょっ、やめ……これ私の……」ヒョイッ

ぐだ男「いいから!」スカッ

エリザ「良くないわよ! ていうか私、バスタオル一枚なんだけど! やめ……!」ヒョイッ

ぐだ男「ここまで来てー! BBたちの工作を台無しにするわけにはいかないんだよォ!」スカッ

ぐだ男「生きるためにだ!」

ぐだ男「うおおおおおおおおおおお!」

エリザ「きゃっ」


ハラリッ

ドターンッ!

273: 名無しさん 2017/09/17(日) 16:28:47.56 ID:XMU1sJYp0
ぐだ男「……掴んだ! 回収成功! SCP財団でもやっていけるんじゃないか、俺は!」

エリザ「……あ、あう……!」カァァ

ぐだ男「お?」

ぐだ男「……」

ぐだ男(全裸のエリザを組み敷いている)

ぐだ男(誰が?)

ぐだ男(……俺だ!)ガビーンッ!

エリザ「……い、イヤァ……心の準備が……まだなのにィ……!」エグッ

ぐだ男「前々から気になってたんだけど、お前確か結婚したの十五歳だよな? 男慣れしてなさすぎじゃないか?」

エリザ「い、今の私は十四歳よぅ……!」

ぐだ男(いけない。混乱しすぎて変なこと口走った! あわわわわ!)

274: 名無しさん 2017/09/17(日) 16:40:34.95 ID:XMU1sJYp0
エリザ「うう……で、でも……男はみんな狼なんですものね……」

ぐだ男「えっ」

エリザ「……いいわよ、来ても……怪物を殺すのはいつだって人間でしょ……?」

ぐだ男「えっ。えっ」

エリザ「……茨木がアンタにしたみたいに、私のことも食べてもいいわよ?」

ぐだ男「エリザさぁん!? 決意固めるの早すぎじゃない!?」ガビーンッ

ぐだ男「なんでこういうときだけ諦め早いんだ!」

エリザ「……興味ないの?」

ぐだ男「……」

ぐだ男(今それを考えたくはなかった! 白い肌! 上下する胸! どこからどこまで柔らかそうなカラダ)

ぐだ男(そう! うっかり手元に飛び込んでしまったこのチャンス! 無駄にするにはあまりにも惜しい!)

ぐだ男(普段は高圧的で嗜虐的な性格が先行してて絶対考えることはないが、コイツ一応美少女なんだよなぁ!?)

ぐだ男(そうだ……このチャンスを拒むのに必要なのは鉄の心……!)



エミヤオルタ『――ついて来れるか』

ぐだ男「……」

エミヤオルタ『……』

エミヤオルタ『ん? おい。おい。返事をしろ。ついてくるんだよな? ついて来れるんだろう?』アタフタ

ぐだ男(うおおおおお! 当然だ! 俺は……俺は……!)ガタガタ!

275: 名無しさん 2017/09/17(日) 16:51:40.63 ID:XMU1sJYp0
エリザ「……それとも……私に魅力はない?」スッ

ぐだ男(葛藤している内に、組み敷かれているエリザに空いている右手を握られた)

ぐだ男(空白に等しい脳内に、それを拒む余剰などあるわけもなく、エリザに導かれるままに移動したそれは――)

エリザ「……ちょっとはあるわよ」


ムニュ


ぐだ男「――」

ぐだ男(しっとりと濡れた胸へと置かれた)

ぐだ男(決して大きくはない。だが、触れた先からくっついて、少しずつ沈み込んでいくようで――)

エリザ「っ」

ぐだ男「あ、ごめん。痛かった?」

エリザ「……別に、いい……」プイッ

ぐだ男「……」

ぐだ男(俺はどうしたらいい!? 答えろ! 答えてみろ! 俺の脳内のエミヤオルタ!)


ダァンッ


エミヤオルタ『もう知らん。理性だけは殺してやったからありがたく思え』スタスタスタ

ぐだ男(エミヤオルタ貴様ァァァァァァァ!)ガビーンッ!

276: 名無しさん 2017/09/17(日) 17:01:25.18 ID:XMU1sJYp0
プッツーン!

ぐだ男(き、切れた……俺の中で何かが切れた。決定的な何かが……)

ぐだ男「エリザ……」

エリザ「んっ……!」



母「さっきドタバタ音がしたけど、大丈夫ー?」ヒョコッ

二人「あっ」

母「……」

母「……ごめんなさい」シュンッ

ぐだ男「いや、いいんだよ! 助かったよ! なんかクールダウンした一瞬で!」

エリザ「で、出てって! 今更さけど凄く恥ずかしくなってきたから!」アワアワ

ぐだ男「うん、ごめん! 本っ当ごめん!」バッ

母「初孫チャレンジ失敗」ボソッ

ぐだ男「今なんて言った!?」ガビーンッ!

278: 名無しさん 2017/09/17(日) 22:21:40.35 ID:XMU1sJYp0
ホテル

マシュBB「風呂場周辺にカメラ取り付けてなかったの痛かったなぁ」

茨木「まあ絶対に面白いことにはなっておっただろうな」

茨木「……ふむ。神便鬼毒酒レプリカは回収終了か」

茨木「吾の嫌いなものは毒入りの酒だぞ? あんな胸糞悪いものを用意して……いい度胸よな?」

マシュBB「胸の大きさなら自信があります!」

マシュBB「……」

マシュBB「……今はマシュさんの体ですけど!」

デオン「マシュだってそれなりにあるぞ」

ジャック「これで今度こそトラブルの種は消えたかなぁ」

マシュBB「……まさかエリザさんが神便鬼毒酒を持っていったことについて、私に怒る気はないですよね?」

マシュBB「ジャックさんの荷物を勝手に漁ったのはエリザさんですよ?」

マシュBB「そもそもジャックさんにそんな物を持たせたお前が悪い、という反論も筋違いです」

マシュBB「この旅行に乗ったのはあなたたちですしね」

デオン「……そうだな。私たちが全員悪い。だが」

茨木「必死よな。そこまで吾たちに怒られるのがイヤか?」

マシュBB「精神的な耐久度そろそろ残ってないんですよ」

ジャック「結構メンタル弱いよねー。変なところで強靭なのに」

マシュBB「さて。じゃあそろそろ寝る時間ですかね。まあエリザさんのこと、布団は別々に注文するでしょうが」

279: 名無しさん 2017/09/17(日) 22:24:27.95 ID:XMU1sJYp0
エリザ「……」

エリザ「一緒の布団で寝たい」

ぐだ男「意外な提案だな」

エリザ「……ダメ?」

ぐだ男「俺はいいよ。でもお前、さっきあんなことがあった後で」

エリザ「お願いだから決心鈍るようなことを、これ以上言わないでよ……」

ぐだ男「……」

エリザ「……わかるでしょ?」カァァ

ぐだ男「……」ダラダラダラ

280: 名無しさん 2017/09/17(日) 22:33:50.88 ID:XMU1sJYp0
マシュ「わかりません。わかりませんッ! 何一つとして!」ズガァァァンッ!

茨木「ぎゃあっ!? 突然出てきおったな!?」

マシュ「こ、こんな……お母さまが同じ屋根の下にいるのに、そんな……!」

マシュ「先輩! まさかこんな提案に乗ったりはしないですよね!?」

マシュ「色々な意味で危険すぎます!」

バチバチッ

マシュ「ぐっ」

マシュBB「……ビックリしたぁ。いきなり肉体の主導権を強奪されました」

デオン「奪還の間違いだ外道」

ジャック「私たちだけなら、それっぽいことをする前に二人を二度とくっつかないように解体できるけど?」

デオン「アナスイ感あふれる解決方法はやめろ」

デオン「止める権利は私たちにはない。ただ……」

茨木「ただ?」

デオン「……エリザ一人を抱くのなら、私も相手をしてもらわないと不公平だなぁ?」ニヤァァ

茨木「汝は鬼か?」

ジャック「本物の鬼に言われるあたり色々終わってるよね」

デオン「うるさいぞ」

281: 名無しさん 2017/09/17(日) 22:41:21.05 ID:XMU1sJYp0
ぐだ男(考えろ……今のエリザはBBたちの妨害工作によって徹底的に牙と翼を折られた無垢な子竜だ)

ぐだ男(抱こうと思えば抱ける。特に拒絶はされないだろう)

ぐだ男(……というかあまりにも魅力的すぎて多少のデメリットは目を瞑ってもいいくらいだが……)

ぐだ男「……」

エリザ「……」カタカタ

ぐだ男「……はあ」

ぐだ男「やめよ。流石に震えてる女の子襲うほど狼になれないよ」

エリザ「……ヘタレ」

ぐだ男「お互い様だ。ほら、布団は二枚敷くぞ」バサッ

エリザ「……怖いのは確かにそうだけど」

エリザ「ちょっとくらいのリスクなら目を瞑ってもよかったわ」

ぐだ男「……やっぱりサーヴァントとマスターって似るのかな。俺も似たようなこと考えてたよ」

282: 名無しさん 2017/09/17(日) 22:48:43.61 ID:XMU1sJYp0
エリザ「……布団、くっつけて」

ぐだ男「あいあい。電気消すぞー」

パチンッ

エリザ「うん。あのね、マスター」

ぐだ男「なんだ?」

エリザ「……寝ている間、手を握ってるくらいはいいでしょ?」

ぐだ男「それくらいならお安い御用だな。ほら」

エリザ「……ん」キュッ

エリザ「え、へへ……あったかい」

エリザ「……寒くなったらくっついてもいいでしょ?」

ぐだ男「それは」

エリザ「勘違いしないで。くっつくだけよ」

ぐだ男「……勝手にすればいいんじゃないか?」

エリザ「ありがと……」

エリザ「……なんでかしら。カラオケにも、スイーツビュッフェにも行ったわけじゃないのに」

エリザ「本当、なんでもないことしかしてないのに。凄く幸せだわ」

ぐだ男「……それはよかった」

283: 名無しさん 2017/09/17(日) 22:56:49.27 ID:XMU1sJYp0
エリザ(……まあそれはそれとして、頭痛は酷いわね)

エリザ(コイツ、人が好すぎるわ。竜の娘と同じ部屋で寝るなんて)

エリザ(……ふ、ふふっ。寝ている間に拘束することなんて私には簡単よ)

エリザ(延長コード。ガムテープ。服。無意味に置いてあるダンベル。その他様々なもので雁字搦めに縛り上げることは簡単よ)

エリザ(BBは私の槍以外のすべてを拷問器具を奪ったつもりでしょうけど、拷問なんて身の回りのもので簡単に済ませられるわ!)

エリザ(指一本を噛み千切ってやろうかしら……腕一本をへし折ってやろうかしら……両目を抉って飴玉みたいに舐めてみたいわ!)ゾクゾクッ

エリザ(とっても頭が痛いの。それくらいなら許してくれるでしょう?)

ぐだ男「エリザ」

エリザ「んっ? なに?」

ぐだ男「俺も幸せだよ」

エリザ「……」

ぐだ男「いや、まあ、それだけだ。うん。もう寝よう?」

エリザ「……」

エリザ(また今度にしましょう)

284: 名無しさん 2017/09/17(日) 23:10:58.58 ID:XMU1sJYp0
茨木「……特に何も起こってないようだな?」

デオン「チッ」

ジャック「白百合の騎士が聞いて呆れるなぁ」

マシュBB「消化不良なら私と賭けチェスでもします?」

デオン「やめておく」

マシュBB「おや。生前ではかなりやったものだと聞いていましたが?」

デオン「流石にカモる相手くらいは選ぶさ」

茨木「というかデオン。生前そんなくだらないことやってたのか」

デオン「略奪よりは幾分かマシだと思うが?」

ジャック「どっちもどっちだよー」

マシュBB「……さてと。それじゃあ明日は……」

デオン「マシュの番だが……まさか貴様まで行くとは言わないだろう?」

マシュBB「一人じゃ心細いんですって」

茨木「本当にそう言っているのだとしたら魔酒よ。頼る相手を致命的に間違っておるぞ」

ジャック「ウサギの足に願掛けした方が千倍生産的なのに」

マシュBB「み、見返してやるぅ……!」ワナワナ

287: 名無しさん 2017/09/18(月) 08:22:30.49 ID:Zkbjj15e0
虚構殺人遊戯 才囚学園

赤松(巌窟王さんが私たちを守ってくれたおかげで、この極限の状況下においても私たちは正気を保っていられた)

赤松(きっと頑張れば全員で脱出できるはず……そう思った矢先だった)

赤松(アンジーさんの殺人未遂事件が起こったのは)

赤松(第一発見者は巌窟王さんと、それに同行していた最原くん)

赤松(現場は三階の空き部屋三つの中の、真ん中の部屋。その床下)

赤松(アンジーさんは何故か泥酔した状態で、荒縄で雁字搦めに縛り上げられ、無抵抗に医療用ヒルの群れに血を吸われていた)

赤松(助け出されたアンジーさんは尚も意識不明。生死の境をさまよっている)

赤松(こんな惨い殺し方でアンジーさんを葬ろうとした人が……私たち十六人の中にいる……?)

モノクマ「犯人を議論したいのなら裁判場を貸してあげてもいいよ! 面白いしね、うぷぷ!」

赤松(そして始まった……命はかかってないけど、緊張感だけは本物の、疑似学級裁判が)

288: 名無しさん 2017/09/18(月) 08:32:18.99 ID:Zkbjj15e0
王馬「いや議論するまでもないだろ! こんなグロい殺し方でアンジーちゃんを殺そうとするのは……!」

王馬「超高校級の昆虫博士の獄原ゴン太しかいねぇーだろうがよォーーー!」ズバァァァンッ!

獄原「ち、違うよ! ゴン太は虫さんに人殺しをさせたりしないんだッ!」アタフタ

春川「でも現実に、あの医療用ヒルは獄原の研究教室で育てられていたヤツだよね?」

獄原「う、うん。そうだけど。でもそもそも、ゴン太の研究教室にいたヒルさんを全員かき集めたとしても」

獄原「あんな……人一人を殺せるような量の血を吸ったりできないんだよ!」

東条「……確かに。獄原くんの研究教室にいたヒルだけで人を殺せるとは思えないわね」

東条「体格の小さい星くんなら別だけど、今回襲われたのは夜長さんなのだし」

最原「ゴン太くん。発想を変えてみよう。どうやったらあの数のヒルだけで人を殺せるようになるのか」

獄原「い、イヤな発想の変え方だね……」

最原「ごめん。でも超高校級の昆虫博士であるキミの力が必要なんだ」

巌窟王「……例えば、だが。ヒルが飲んでいたアンジーの血液に何らかの『混ぜ物』がしてあったとしたら、どうだ?」

最原(……混ぜ物……?)

最原(いや、でも意外だな。生徒同士で争わせるのは理念に反するだろうに。巌窟王さんがヒントを与えるようなことを言うなんて)

最原(……考えるのは後にしよう。ヒルにゴン太くんの想定以上の、それこそ人が死にかねない量の血を吸わせる方法……!)

最原「アレしか考えられないよね。発見時のアンジーさんは何故か酷く酔っていて、酒臭かった」

最原「……多分、ヒルを狂わせた元凶は『アンジーさんの血中アルコール濃度』……平たく言えば酒だよ」

百田「さ、酒だぁ?」

289: 名無しさん 2017/09/18(月) 08:39:28.39 ID:Zkbjj15e0
獄原「あ、そっか。それならありえるよ」

獄原「ヒルさんたちにとって、アルコールは麻薬に等しいからね。満腹中枢がおかしくなっちゃうんだ」

獄原「もしも血を吸われている人の血中に、大量にアルコールがあったとしたら……」

獄原「うん! あの数のヒルさんたちだけでも、一人を殺す程度なら充分足りると思うよ!」キラキラキラ

王馬「空気読めよゴリラ! そんな誇らしげに言うな!」

獄原「ご、ごめん」

王馬「まあそれは置いといて……酒? 学園の中に酒なんてあったっけ?」

最原「あったと思うよ。さっき『酒の持ち主本人』から教えられたから間違いない」

東条「……私の研究教室の隠し扉の先よ。今まで言う機会がなかったけど、ワインセラーがあったの」

天海「東条さんの?」

東条「……でも私は犯人じゃないわよ」

天海「さて、それを決めるのは、俺でもキミでもないっすけどね」

東条「……」

290: 名無しさん 2017/09/18(月) 08:49:35.07 ID:Zkbjj15e0
茶柱「で、でも本当に、アンジーさんはお酒を飲んだっていうんですか?」

春川「あるいは血中に直接注射された……とも考えられない?」

巌窟王「いや……アンジーは間違いなく酒を口から飲んだはずだ」

巌窟王「最原。その根拠、お前なら答えられるだろう?」

最原「……」

最原(なんだ? さっきからの巌窟王さんの態度。まるで僕を試しているような……?)

最原「ええっと……うん。アンジーさんの口の中は、何かを無理やり突っ込まれたみたいに荒れ放題だったんだ」

最原「多分だけど、あの荒縄で雁字搦めに縛り上げた後で、無理やり酒瓶を口の中に押し込まれたんだろうね」

夢野「き、聞けば聞くほど、今回の犯人はエグすぎるぞ……!」ガタガタ

キーボ「……そういえば、あのアンジーさんを縛り上げた荒縄。あれは真宮寺くんの研究教室にあったものでは?」

真宮寺「あ、本当だ。よく気づいたネ」

百田「なんだ? 今回の犯人は、やたらあっちゃこっちゃから材料を調達してんな」

春川「獄原の研究教室の医療用ヒル。東条の研究教室の酒。真宮寺の研究教室の荒縄……」

春川「どれも鍵がかかってない研究教室だから、これで容疑者を限定するには弱すぎるけど」

最原(無視するのは無理、っていう程度には気になるな……)

最原(……ゴン太くん、東条さん、真宮寺くんの中に、犯人がいるのか……?)

最原(アンジーさんを殺そうとした犯人が)

291: 名無しさん 2017/09/18(月) 08:58:29.78 ID:Zkbjj15e0
カルデア

BB「おおー……気になる。先が気になりますよ、この展開……」

BB「犯人は一体誰――」



prrrrr!


BB「っと、いいところなのに!」

ガチャリンコ

BB「はいはい! こちら可愛いBBちゃんです!」

マシュ『あ、あの……さっきから肉体の主導権私に渡して、どこに行ったのかなって思って……』

マシュ『心配になって電話したんですけれども……』

BB「えっ」

BB「……あっ! もう朝!? 嘘でしょお!?」ガビーンッ!

BB「リアタイで見たかったのにいいい!」


結局BBは今回も見逃した

292: 名無しさん 2017/09/18(月) 09:09:36.42 ID:Zkbjj15e0
ホテル

マシュBB「あー……あーあーあー……」

マシュBB「体がもう一つ欲しい」

デオン「次にそんな悍ましいことを言ったら今すぐカルデアに戻って斬ってやるからな」ギリィッ

茨木「万死に値する」

ジャック「裸に剥いて雪山に放置したい……」

マシュBB「そこまで言います!?」ガビーンッ!

マシュ(犠牲は私一人で充分です)

BB(マシュさんまで!)

293: 名無しさん 2017/09/18(月) 09:17:41.97 ID:Zkbjj15e0
マシュBB「さてと。じゃあ作戦会議でもしますか。しばらく二人で相談しますので、話しかけないでくださいねー」

デオン「……余計な入れ知恵はするなよ、BB」

マシュBB「変なことは言いませんよ。大胆なことは言うかもしれませんが?」ニヤァ

茨木「デオン。次に、なんて悠長なことは言わずに今コイツを斬るべきでは?」

デオン「マシュの名誉のためにも、いっそのこと体ごと殺るのも優しさか……」ギャランッ

ジャック「マシュ……大好きだよ……!」エグッ

マシュ「やめてください! 大丈夫ですから!」

デオン「冗談は置いといて、そろそろエリザとマスターが起きる時間だな」

茨木「監視再開だな」

ジャック「わーい!」

295: 名無しさん 2017/09/18(月) 18:15:33.47 ID:Zkbjj15e0
旅行サーヴァント概評(BBちゃん独断と偏見込み)

マシュ・キリエライト
むかしの自分を見ているようでイライラする。
私とセンパイがベタベタしているのを見てモヤッとした気持ちになるのは、まあ別にいいとして。
泣き寝入り率がかなり高いのがネックすぎます。いい子ちゃんすぎてかなりつまらない子。
ただ、こういう真面目な人ほど一旦坂を駆け下りれば止まらなくなるので、そこら辺だけは楽しみです。

シュヴァリエ・デオン
エリザさんの拷問癖、茨木さんの堪え性の無さ、ジャックさんのキレッキレな殺人癖。
それらすべてを無表情で流して引っ張っていける強さを持っているのに、なんで私のことだけ見逃してくれないのか理解不能です。
ジッサイコワイ。
あの王妃がいない場所だと自分に甘く他人にももっと甘い、みたいなスタンスを取っているようです。
私にも甘くしてもらえませんかね。

エリザベート・バートリー
私にとってはとても馴染みの深いサンシタその一。
頭の中は糖度ガン上げのスイーツ系サーヴァント。
デオンさんに並んだ古参のサーヴァントなので、バカっぽい言動の割に経験値はすさまじく高いです。
皮肉なことに経験値の高さのせいで著しいテンションのカーミラ化が起きていますが、そこを指摘したらガチで殺されかねないので内緒です。

茨木童子
酒呑童子の腰巾着、あるいは金魚のフン。
ひとまず甘いお菓子を与えておけば文句は言わないので、(使い勝手は)いい子。
更に、このメンバーの中では意外なことに気遣いが一番できます。
他のメンバーもこの子くらい頭スッカラカンならなぁ。

ジャック・ザ・リッパー
私がこの旅行に同行させたクレーバーサイコロリ。
目的はサーヴァントたちが暴走したときに、その凄まじい俊敏でもって制圧すること。
……なのですが、うっかりしてました。この子自身も暴走率高いんです。
一歩間違えたら大惨事でした。彼女のサイコ加減舐めてたなぁ。
次はもう間違えません。

296: 名無しさん 2017/09/18(月) 18:26:43.49 ID:Zkbjj15e0
エリザ「……すかー……」スヤァ

ぐだ男「……」

ぐだ男(背中に思いっきりくっつかれてるぅー……)

ぐだ男(ほとんどないも同然だが、胸のあたりが柔らかくって気持ちいい)

ぐだ男(薄いけどないわけじゃないのだ!)

ぐだ男(とか言っている場合じゃないな。これは。どうしよう)

ぐだ男(エリザを起こさないように布団から出れるだろうか?)

ぐだ男(……)

ぐだ男「出来る。出来るのだ」

ぐだ男「ゆっくりそーっとそーっと」

エリザ「ハッ」パチリ

ぐだ男「寝覚め良すぎ!」ガビーンッ!

エリザ「……」

エリザ「……おはよ」カァァ

ぐだ男(火竜じゃないはずなのに体温がめっちゃ上がってきた)

ぐだ男「あ、ああ。うん。おはよう」

エリザ「昨日寒かったから、くっついたわ。いいって言ったでしょ?」

ぐだ男「……その……色々柔らかくって……落ち着かないんですが……」

エリザ「サイッテー!」バシッ

ぐだ男「俺に当たるなよ!」

297: 名無しさん 2017/09/18(月) 18:36:30.25 ID:Zkbjj15e0
ぐだ男「……朝になったな。確認するべきことは一つだ」

エリザ「え? 何? 夢じゃないかどうかの確認? 拷問技術があるからすぐにできるけど?」

ぐだ男「ほっぺ抓る程度に留めておけよ。そうじゃなくって」

ぐだ男「エレベーター、そろそろ修理終わったかなって」

エリザ「ああ……」

エリザ「……あんまり長居すると里心付いちゃいそうだから、もう帰る準備するわね」

ぐだ男「了解。じゃあ俺はエレベーターの確認してくる」

エリザ「修理できていたらさっさと帰るわ。お母さまに挨拶してからだけど」

ぐだ男「……」

ぐだ男「ところで里心って……お前、ホテルでも上手くやってるんだなぁ」

エリザ「心外ね。あっちにいるサーヴァントたちはみんな仲間よ」

ぐだ男「BBもか?」

エリザ「忌々しいけどね。腐れ縁よ」

ぐだ男「……そうか」

298: 名無しさん 2017/09/18(月) 18:45:23.83 ID:Zkbjj15e0
ホテル

デオン「……ふむ。アイツ、身内には甘いな。ちょっと信用しすぎじゃないか?」

ジャック「あー。普段は憎まれ口ばっかり叩いてるくせに、いざってときには一番最初に泣いちゃうからねー」

ジャック「ほら、終局特異点でマシュが蒸発死したときもさ」

デオン「懐かしいなぁ。確かにこっちまで胸が痛くなるくらい泣いてたなぁ」

茨木「仲間のために泣けるのに、なんで他の人間に対しては……」

デオン「ははは。茨木。そこまでだ」ニコニコ

ジャック「多分その台詞はそれ以上言ったら私たち全員に刺さる。やめておこう?」ニコニコ

茨木「都合の悪いところから目を逸らす天才だな汝ら」

茨木「……む?」

デオン「どうした?」

茨木「BBとマシュはどうした?」

デオン「……ッ!?」

ジャック「あっ、いない」

299: 名無しさん 2017/09/18(月) 18:52:56.27 ID:Zkbjj15e0
デオン「……くそっ! やられた! BBにマシュを連れていかれた!」

ジャック「やっぱり余計な入れ知恵される前に殺すべきだったねー? マシュごとでもいいからさ」ギャランッ

茨木「よせよせ。流石にもう魔酒も成長したのだ」

茨木「なんでもかんでも鵜呑みにするような子供ではない」

デオン「確かにそうだが……」

デオン「……」

ジャック「カルデアにいるサーヴァントに連絡してBBを暗殺してもらう?」

デオン「難しいな。私たちの申請と許可の偽造を担当しているのがそもそもBBだ」

デオン「カルデアにそんな連絡を入れた途端に何をされるか……」

茨木「静観しかあるまいよ。まあアイツも流石に限度は知っておろう」

茨木「命懸けで悪ふざけをするというのなら、こちらも命を狙うが、それだけだ」

デオン「……仕方ない。剣を向ける先がないのなら、な」

ジャック「保留! だね!」


※ぐだ男「おうち帰る」 マシュ「は?」(後編) へ続く