1: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:37:45.75 ID:paLw0J5A0
伊達「どうもサンドウィッチマンです。よろしくお願いしまーす」

富澤「名前だけでも、覚えて帰ってください」

伊達「いやいやホントにね」

伊達「まぁ世の中興奮することっていっぱいありますけども、
   一番興奮するのはアレだな、アイドルになるって時な」

富澤「間違いないね」



伊達「いやー長らく候補生だった俺にもようやくプロデューサーが付くのか」

伊達「晴れて俺もアイドルとしてデビューか、興奮してきたな。
   よし、ちゃんとレッスンしておくとするか」

伊達「よっ、ほっ」

富澤「あのー、ダイエット中すみません」

伊達「してねーよ、レッスンしてんだよ、なんだお前」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1508499465

引用元: ・サンドウィッチマン 漫才『アイドルマスター』

2: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:41:08.10 ID:paLw0J5A0
富澤「なんかアイドルになりたい人を見たくて」

伊達「なんだなりたい人を見たいって、見世物じゃねぇぞ。見られる仕事だけど。
   あのさ、俺人を待ってんだよ。忙しいからどっか行ってくんねぇかな」

富澤「え、ちなみに誰を待ってるんですか?」

伊達「あん? プロデューサーだよ」

富澤「それはつまりプロの方の?」

伊達「つまらなくてもプロだよ。プロってそういう意味じゃねぇだろ、なんだデューサーって。
   いいからさ、あんたこの事務所の人?」

富澤「あ、はい」

伊達「ならちょっとそのプロデューサーって人探してきてくれねぇかな。
   約束の時間なのにまだ来ねぇんだよ」

富澤「僕だってそう暇じゃないんですよ」

伊達「えっ? あぁそうか、それは悪かったな」

富澤「急いで探してくるからそこで待っていなさい」

伊達「行くのかよ、なんだ今のやり取りは」

3: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:45:43.42 ID:paLw0J5A0
富澤「あのーすみません」

伊達「早ぇな、ちゃんと探したの?」

富澤「なんか僕がプロデューサーみたいです」

伊達「お前かよ! もっと早く言えよ」

富澤「ナンカボクガプロデューサーミ…!」

伊達「早口で言えって意味じゃねぇよ!
   何で本人が知らねぇんだよ、大丈夫かこの事務所?」

富澤「僕もこの間、社長って人からスカウトされて来たばっかなんですよ」

伊達「あぁそうなの? ひょっとしてアレか、ティンと来たってヤツか」

富澤「チンコ切った?」

伊達「チンコ切ってねぇよ、女の子になっちゃうわ。
   唐突に下ネタ言わせんなよ、お前の担当アイドルだぞ」

富澤「えっ、お、お前が?ww」

伊達「お前とか言うな、何がおかしいんだよ笑ってんじゃねぇよ」

4: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:48:13.48 ID:paLw0J5A0
富澤「まぁそういうことならね、今後とも頑張ろうな」

伊達「担当と分かった途端急に尊大だな。まぁいいかプロデューサーだし、よろしく頼むわ」

富澤「ちなみにキミ、名前は何て言うんだい?」

伊達「知らされてねぇのかよ。伊達だよ、伊達みきおっつんだ」

富澤「ほうほう、じゃあ愛称は?」

伊達「愛称? あぁ、確かにアイドルなら愛称で呼ばれる機会も増えるだろうな。
   月並みだけどさ、友達からは伊達ちゃんなんてよく言われるかなー」

富澤「よし、じゃあそんなおデブちゃんと俺で今日から…」

伊達「誰がおデブちゃんだ! 失礼なヤツだなホントに、伊達だ伊達っ」

富澤「ちなみに、前職は何力団にいたのかな?」

伊達「暴力団しかねぇだろそれ。なんなんだよ、どういう経歴だ」

富澤「理由(ワケ)あって、アイドル!」

伊達「そんな後ろ暗い過去ねぇわ! おかしいだろ、ケジメ付けてカタギの世界出てアイドルっておかしいだろ。
   ダンサーだよ、ダンスやってたんだこれでも俺は」

富澤「それはつまり踊る方の?」

伊達「つまらなくても踊るわ。なんだ踊らないダンサーって、眠らない街みてぇじゃねぇか」

5: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:50:16.15 ID:paLw0J5A0
富澤「あともう一つ、キミに聞いておきたいんだが」

伊達「何だよめんどくせぇな」

富澤「キミは将来、アイドルになって何をやりたいんだ?」

伊達「えっ? 何をやりたいって、今後の夢とかそういうことなら、そうだなぁ。
   まずはやっぱCDデビューして、営業とかイベントやって」

富澤「おぉ…!」

伊達「順調に売れたらライブやって、あとオーディションとかフェスにも出て勝ちまくって、どんどんファンを増やしてさぁ」

富澤「うんうん!」

伊達「色んな番組にも出て、ゆくゆくはドームで単独ライブとかしてトップアイドルになりたいよなぁ!」

富澤「ハハハハハハハ!」


富澤「ちょっと何言ってるか分かんない」

伊達「何で分かんねぇんだよ、お前の仕事だろ割と」

7: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:56:18.25 ID:paLw0J5A0
富澤「とにかく、初めに言っておきたいことがある」

伊達「初めじゃねぇじゃねーか、既に」

富澤「アイドルに必要な三要素を、キミに教えておきたいんだ」

伊達「? おぉ、何だよ教えてくれよ」


富澤「アイドルの三要素、それはまず、ビジュアル」

伊達「あぁ、確かに容姿が良くねぇとな。俺ちょっと自信ねぇけどさ」

富澤「そして、次にダンス!」

伊達「おぉ! それなら自信あるぜ、元ダンサーだからな。で、三つ目は?」

富澤「最後にボウカー!」

伊達「ボーカルだろたぶんそれ。何だよボウカーって、何で元楽天の外野手になってんだよ」

富澤「BCリーグの福島ホープスに寝返ったけれど」

伊達「寝返ったとか言うな、頑張ってんだろ。
   もはや三要素じゃねぇわ、ボウカーしかアイドルになれねぇじゃねーか」

8: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:59:29.69 ID:paLw0J5A0
伊達「ふざけてねぇでさ、俺のことさっさとプロデュースして売り込んでくれよ」

富澤「まぁ慌てるな。まずはしっかりとレッスンをすることが大事だと俺は思う」

伊達「おっ? まともなこと言うじゃんか、そりゃそうだな」

富澤「さっそく始めよう。まずはビジュアルレッスンだ」

伊達「うわ、いきなりビジュアルかよ。何やらされんだろう、俺大丈夫かな」


富澤「表情を作る練習だ。今から俺が言う感情を、表情や仕草で表現してみてくれ」

伊達「あぁ、ビジュアルってそういうレッスンなんだ!
   そっか、『嬉しい』だったら嬉しそうな顔とか、例えばこういうこと?」ニコッ!

富澤「じゃあさっそくいくぞ!」

伊達「聞けよ、もうまぁいいや。よし来い!」



富澤「『すごい』!」

伊達「……ッ」


伊達「いや、何だ『すごい』って。どういうのだよ『すごい』表情って」

富澤「こう、ワァーッ! ていう?」

伊達「ていう?じゃないよ。漠然としすぎてプラスかマイナスかすら分かんねぇわ」

9: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:02:05.54 ID:paLw0J5A0
富澤「分かった、気を取り直してもう一度やるぞ」

伊達「頼むぜホントに」


富澤「いくぞ……『憎い』!」

伊達「……ッ」ギュッ…!


富澤「『怒り』!」

伊達「……」クワッ!


富澤「『睨み』!」

伊達「……」ギロッ!


富澤「『脅し』!」

伊達「何見てんだ、あぁん!?」


富澤「『カチコミ』!」

伊達「おうおう取ったらァッ!!」

伊達「おかしいだろ! 全部怖い系とかヤクザ系だし最後もはや表情関係ねぇだろうが!」

富澤「よし、合格だ」

伊達「何が合格だよ、笑ってんじゃねぇよ全然嬉しくねぇわ」

10: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:03:35.46 ID:paLw0J5A0
富澤「ビジュアル良し、と……それじゃあ、次はダンスだな」メモメモ

伊達「おう、それなら任せてくれよ。なんたって元ダンサーだからなコレでも」

富澤「じゃあ適当にやってみて」

伊達「投げやりか。まぁいいや、後で吠え面かくなよ」

伊達「よっ、ほっ」



富澤「…………フン」

伊達「……!?」


富澤「フッフッフ……」

11: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:05:54.80 ID:paLw0J5A0
伊達「な、何だよ……」


富澤「ハッハッハッハッハッ!」

伊達「何がおかしいんだよ! 俺のダンスの何がおかしいんだ!」


富澤「あれだけ息巻いていたから、どれほどのものかと思えば」

伊達「な、何っ!?」

富澤「今のダンスを見ただけで、キミのレベルが知れてしまったよ」

伊達「何てこった、俺の人生をかけてきたダンスが、あんなちょっとの時間でもう見抜かれたのかよ!?」

富澤「見る人が見ればな」

伊達「見れるヤツを連れて来いよ。全然意味ねぇじゃねーかお前が見ても、何がおかしかったんだよホントに」

12: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:09:53.81 ID:paLw0J5A0
富澤「ダンスは、フフフ……っと」メモメモ

伊達「何だよフフフって気持ち悪ぃな、良いのか悪いのかも分かんねぇし」

富澤「よし、いよいよレッスンも大詰めだ」

伊達「もう最後かよ! いいのレッスンこれで!?」

富澤「最後はボーカルだ」

伊達「ボーカルね、俺カラオケは好きだけど上手くできっかなぁ」


富澤「じゃあまずこのマイクを持って」

伊達「おぉ、さっそくか。マイクね、はいはい」

富澤「両手で握って」

伊達「えっ、握り方もあるの? 両手で握るって、何か聖子ちゃんみたいだな」

富澤「肩の高さで持って、足は肩幅で開いて」

伊達「ほうほう」

富澤「後は来たボールをよく見てなるべく引っ張ってライトへ叩き込む!」

伊達「うん、ボウカーだな。ボウカーだわ、途中で何となく分かったわ、左打ちだ確かに」

13: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:15:17.45 ID:paLw0J5A0
伊達「おかしいだろ、ボウカーじゃなくてアイドルになりたいの! ボーカルレッスン!」

富澤「午後からラッスン?」

伊達「誰も言ってねぇよ! あぁーやるなやるな手を叩くな、笑顔で元気よく手を叩くな!
   他所の芸人ネタは結構デリケートだからやるな!」


富澤「じゃあもう一度、マイク持って」

伊達「ったく。こうでいいの?」

富澤「いや、片手でいいや」

伊達「さっき両手っつったじゃねぇか。まぁいいや、こうね?」

富澤「足を開いて」

伊達「ふむふむ」

富澤「前を見る」

伊達「そうだな、前だな」

富澤「やや中腰で前傾姿勢」

伊達「ほうほう」

富澤「後は来たボールをよく見て上手く処理して内野へ送球!」

伊達「うん、ボウカーだよな? たぶんそうだわ。確かに外野守備のクッションボール得意だったわ、こうやってな」

14: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:17:05.51 ID:paLw0J5A0
伊達「あのさ、大丈夫なの!? 俺アイドルじゃなくてボウカーに近づいてっけどさ、着々と!」

富澤「アイドル目指してボウカーってwww」

伊達「お前がやらしてんだろうが! 何笑ってんだよ!」


伊達「あぁもういいやふざけやがって。付き合ってらんねぇよ」スッ

富澤「? ちょ、キミ。いや伊達」


富澤「伊達……伊達、いや、よしお!」

伊達「みきおだよ俺は」

富澤「よしお! よしお、よ……よしのぶ!」

伊達「みきおだっつってんだろが! 何回言わせんだお前ホント」

富澤「いいからそこに座れ」

15: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:18:27.45 ID:paLw0J5A0
伊達「あぁん?」

富澤「そこに座れっ!」

伊達「チッ……なんなんだよ」スッ

富澤「座れ! ……座れ! すーわーれっ!」

伊達「座ってるわ! 何で最後ちょっと楽しそうに言ったんだよ」


富澤「いいか、俺はキミのためを思って……」

富澤「ちょ、何を偉そうに座ってんだ立てバカ!」

伊達「座れって言ったのお前だろーが! ふざけてんのか!」スクッ

富澤「……」

富澤「いやふざけちゃいないさ」

伊達「何で今ちょっと考えたんだよ、何でふざけたかふざけてないか考えたんだよ」

16: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:20:56.98 ID:paLw0J5A0
富澤「とにかくだな、俺は伊達ちゃんがちゃんとしたアイドルになれるよう…」

伊達「急に伊達ちゃんとか言うな。
   大体なぁ、もうウンザリなんだよさっきみたいなレッスンはよぉ!」

富澤「何だとぉ?」


伊達「長い候補生時代、それでも夢を諦めきれない俺は、不安を抱えながらも静かに耐えて……」

伊達「やっとプロデューサーが付いて! これで俺もようやくアイドルになれるんだって興奮したさ」

伊達「それがどうだよ」

伊達「ビジュアルレッスンでは、ヤクザの表情をやらされ……」

伊達「ダンスレッスンでは、知りもしねぇ野郎に大笑いされ……」

伊達「ボーカルレッスンでは、ボウカーにされ……」

伊達「ぶっちゃけそこまで引っ張れねぇよ、ボウカーのモノマネでよ」

伊達「そんななぁ、ふざけたプロデューサーに期待を裏切られたこの俺の気持ちが!」

伊達「信じた夢をバカにされた俺のこの気持ちが!」

伊達「お前みたいなヤツに分かってたまるかよ!!」

富澤「もう一度言ってみろ!!」

伊達「どっからだよ!! すげぇ喋ったわ」

17: 名無しさん 2017/10/20(金) 21:24:38.81 ID:paLw0J5A0
富澤「まぁ悪かった。キミの気持ちも、分からないでもない」

伊達「ホントかよ、ウソくせぇなぁ、ていうか分かれよ」

富澤「初めてのプロデュースということもあり、俺もどうやら、気負っていたのかも知れないな」

伊達「あぁ、そういやお前も新人か」

富澤「これから、キミの意見にも真摯に耳を傾け、共にトップアイドルを目指していこう」

富澤「どうか俺に、キミの夢を叶える手助けを、させてくれないか」

伊達「な……何だよ急に。ちょっと嬉しいじゃねぇか、えぇ?」


富澤「それでな、最後にこれだけはキミにお願いしなきゃならないんだが」

伊達「何だよ、言ってみろよ」

富澤「この事務所のアイドルになるならチンコ切って」

伊達「女の子になっちゃうの俺!? もういいぜ」

伊達・富澤「どうも、ありがとうございました」


~おしまい~