※巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」(前編)

353: 名無しさん 2017/10/15(日) 09:59:51.89 ID:GpwPH0rj0
クライマックス推理 

最原「それじゃあ、昨日の朝から事件を振り返ってみよう」 

最原「動機ビデオや夢野さんのマジカルショーのゴタゴタで目が眩んでいる中、巌窟王さんを呼び出した女生徒がいた」 

最原「多分、秘密裏に二人きりで会いたいとでも言ったんだろうね。そうしておけば巌窟王さんは秘密を洩らさないから」 

最原「ただ、ここで犯人に一つ目の不運があった」 

最原「巌窟王さんは確かに生徒に対して無防備に相談したりはしなかったけど、電話で『女性へのプレゼントの相談』をしてしまったんだ」 

最原「巌窟王さん自身もそこから秘密はバレることはないとタカをくくってたんだろうけど、これが犯人に訪れた一つ目の不幸だよ」 

最原「巌窟王さんが倉庫で何かを探しているのを白銀さんが目撃し」 

最原「百田くんが『倉庫にいた』と巌窟王さんから聞いただけなら、この真相に辿り着けなかったかもしれない」 

最原「犯人が女性だって真相にね」 

最原「そして巌窟王さんが殺害現場に持ち込んだ万年筆が、後々犯人に最大の不幸を呼び込むことになるんだ」


引用元: ・巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」

354: 名無しさん 2017/10/15(日) 10:08:29.40 ID:GpwPH0rj0
最原「犯人は約束通り呼び出し場所に現れた巌窟王さんに奇襲をかけ、気絶させたはずだ」 

最原「その後、犯人は巌窟王さんの手首を切り裂き、シンクに水を溜め、ダンベルで手首をシンクの底に固定したんだ」 

最原「そして巌窟王さんの体の中から血液を抜き出し、彼が死にそうになったところで蘇生させるということを繰り返す拷問じみた殺害を決行した」 

最原「これは、後々行うトリックのために、犯人が少しでも巌窟王さんの体重を減らそうと考えた結果行われたものだよ」 

最原「そのときの証拠は、血の溜められたシンクに沈んでいたダンベルのジョイント部分に血痕として残っている」 

最原「こうして巌窟王さんの体重の削減を終えた犯人は、更なる削減を始めた」 

最原「……巌窟王さんの『大きさ』の削減だ。死後硬直が始まる前に四肢を折りたたみ、手錠で固定して小さく纏めたんだよ」 

最原「こうして二重に巌窟王さんの体へ工作を終えた犯人は、その死体を担いで星くんの研究教室の窓へと向かった」 

最原「そこには犯人が事前に作ったロープウェイがあったはずだ。体育館、研究教室の窓枠と、浮き輪の取っ手に凄まじい負荷がかかった痕があったけど」 

最原「あれはそのトリックを使った際にできたものなんだよ」 

最原「犯人はヒールの高い尖った靴を履いていたから、星くんの研究教室でそれを脱いでから浮き輪に乗ったはずだよ」 

最原「そしてそのとき、巌窟王さんのポケットから思いもよらないものが落ちた」 

最原「それとは知らずに持ってきた王馬くんの秘密道具」 

最原「三日間は絶対にインクの落ちない万年筆だよ」

355: 名無しさん 2017/10/15(日) 10:18:21.53 ID:GpwPH0rj0
最原「ともあれ、犯人はロープウェイを使うことによって体育館に移動した」 

最原「夜時間に生徒が立ち入るのはアウトの校則はおそらく死体には適応されないんだろうね」 

最原「そうでなければ口を滑らせた巌窟王さんの証言と話が絶対に食い違うから」 

最原「犯人は窓枠からできる限り体育館に入らないよう注意しながら、マジカルショーの要であるピラニアの水槽の中に巌窟王さんの死体を入れた」 

最原「事前に仕切りを作って、ピラニアに死体が食べられないようにしてからね」 

最原「そしてここから犯人の隠蔽工作が始まった」 

最原「まずダンベル、シンクなどの『夥しい血のついたもの』を徹底的に塩素系漂白剤で洗浄」 

最原「もしかしたらインクの方も洗おうとしたかもしれないけど……絶対に落ちないからね。諦めたんだ」 

最原「隠蔽工作が終わったころには、犯人自身も相当漂白剤の臭いがついてただろうけど……」 

最原「自分の部屋にはそれを落とす準備が一通りされていたから、自室にさえ帰ることができればまるで問題はない」 

最原「……そう。問題はないはずだったんだ。最後の不幸がそこに待ち構えてさえなければ」 

最原「帰ってこない巌窟王さんを心配したアンジーさんが、ずっと自室の扉の前で待ってたんだよ」 

最原「もしも漂白剤の臭いを漂わせているところをアンジーさんに見られたら、計画はすべて台無しだ」 

最原「……かと言って、シャワールームに戻るのも、超高校級のメイドの研究教室の洗濯機を使うのも論外」 

最原「星くんの研究教室のシャワールームは事件現場だし、洗濯機で服を洗うとしても乾かす手間がある」 

最原「仕方がないから犯人はアンジーさんが寄宿舎から立ち去るときを、身を潜ませてじっと待つことにしたんだ」 

最原「それは夢野さんのマジカルショーが始まる八時のことだった」

356: 名無しさん 2017/10/15(日) 10:30:14.13 ID:GpwPH0rj0
最原「やっとアンジーさんが立ち去った後、すぐに犯人は自室へと戻り」 

最原「用意しておいたものを使って漂白剤の臭いを短時間で片付け」 

最原「服は丸ごと着替えて急いで外に出て、途中で出会った百田くんとも合流し、マジカルショーに何食わぬ顔で現れた」 

最原「……あとは夢野さんのマジカルショーのクライマックス、ピラニアが仕切りと死体ごと水槽に落ちればすべてカタが付く」 

最原「時間制限の設けられた体育館での死体発見は、普通に上手く行けば『夜時間以前にアリバイのない人間』を狙い撃ちにできる最高のトリックだ」 

最原「でもこれも不運に見舞われた。百田くん以外全員に、偶然にもアリバイができてしまったんだよ」 

最原「巌窟王さんと約束していたはずのない、男子生徒の百田くんのみアリバイがない……」 

最原「白銀さんが目撃した巌窟王さんはプレゼントを物色中で」 

最原「百田くんが巌窟王さんを目撃したとき、つまり午後九時の女生徒は誰一人として約束に動いていない」 

最原「なら消去法的に巌窟王さんが約束をしていた時間というのは夜時間ということになり、死亡推定時刻も完全に一致する」 

最原「巌窟王さんが約束していた女生徒が事件に関係のない可能性は『その女生徒が名乗り出していない』という事実が裏付けてしまっている」 

最原「……犯人は女生徒。そして漂白剤の臭いを身に纏っている。更に朝の八時まで自室に戻れていないから、それまで臭いは取れていない」 

最原「アンジーさんが証明した夜時間以降のアリバイのない人間で、この条件に一致する人はたった一人しか存在しない」

357: 名無しさん 2017/10/15(日) 10:33:25.98 ID:GpwPH0rj0
最原「……"超高校級のメイド"、東条斬美さん!」 

最原「今回の犯人は、キミしかいないんだよ!」 


ガシャガシャガシャッ 

バキィィィンッ! 



COMPLETE!

358: 名無しさん 2017/10/15(日) 10:35:56.07 ID:GpwPH0rj0
休憩します!

359: 名無しさん 2017/10/15(日) 17:13:19.89 ID:GpwPH0rj0
東条「……」 

東条「そう。それがあなたの出した答えなのね」 

最原「うん。ここまで来ると、被害者に巌窟王さんを選んだ理由もなんとなくわかるよ」 

アンジー「……取り返しが付くからじゃなかったのー?」 

アンジー「ああ、いや。ちょっと真面目になるね」 

アンジー「取り返しが付くからじゃなかったの?」 

アンジー「……ねえ?」 

東条「……」 

最原「復讐されたくなかったから。でしょ?」 

最原「東条さんは巌窟王さんが死なない可能性にかけてたんだ」 

最原「アンジーさんを急かした理由も、死体の情報を隠滅するためじゃなくって」 

巌窟王「……自分のやったことの成否の確認、か」 

星「裸足になってくれるな?」 

東条「もういいわ。ここまでにしましょう」 

東条「……プールサイドって、滑らないように摩擦を付けて、ちょっとザラついていたでしょう?」 

東条「体育館の窓枠から飛び降りて、着地したときに右足をちょっと擦過してしまったの」 

東条「そこまで酷い傷にはなっていないけど……確かに傷にはなっているわ」 

茶柱「……今のって」 

獄原「認めた……ってことだよね?」

360: 名無しさん 2017/10/15(日) 17:20:55.84 ID:GpwPH0rj0
東条「それに、この服は脱げないわ。メイドとしての誇りだし、それに」 

東条「……恥ずかしいし」 

最原「あ、う、うん。確かにそのタイツを脱ぐとなると、かなりスカートが……」 

夢野「言わんでいい言わんでいい。転子にぶん投げられるぞ」 

茶柱「がるるるるるるるる!」 

最原「……」 

最原「ご、ごめん」 

巌窟王「クハハハハハハ! 良い趣味をしているな、最原!」 

巌窟王「だがいいぞ! 男なら仕方のないことだ! 他者の肌を見たい、触れたいと思うのは当然の――」 

茶柱「巌窟王さぁーん?」スタスタ 

巌窟王「クハ?」 

茶柱「キエエエエエエエエエエエ!」ブンッ 

巌窟王「ぐあああああああああああ!?」 


ドガシャアアアアンッ! 


真宮寺「……終わったネ」 

天海「事件? 巌窟王さん? どっちが?」 

キーボ「いや、まあ……どっちもでしょうね……」

361: 名無しさん 2017/10/15(日) 17:25:00.91 ID:GpwPH0rj0
モノクマ「ぐー……ハッ! 寝てた!」 

モノクマ「あ、いい感じにもう議論の結果が出たみたいですね?」 

モノクマ「それでは、お手元のスイッチで投票してください!」 

モノクマ「必ず誰かに投票してくださいね。さもないと、死が与えられちゃうからね?」 

モノクマ「……投票の結果、クロとなるのは誰か!」 

モノクマ「その結果は、正解なのか不正解なのかーッ!」 

モノクマ「さあ! どうなんだー!?」 

巌窟王「……」←茶柱という血文字のメッセージを床に書いて事切れている

362: 名無しさん 2017/10/15(日) 17:32:32.08 ID:GpwPH0rj0
東条:十六票 
巌窟王:一票 

結果は……大正解! 

モノクマ「なんとっ! 今回もだいせいかーい!」 

モノクマ「今回の事件の犯人は……超高校級のメイドである、東条斬美さんなのでしたーッ!」 

東条「……」 

茶柱「……改めて現実を突きつけられるとショックですね」 

茶柱「東条さん。教えてくれませんか? 何故こんな凶行を……!」 

茶柱「みんな、転子たちに世話を焼いてくれる東条さんのことが大好きだったんですよ?」 

茶柱「きっと巌窟王さんだって……!」 

入間「その巌窟王、そっちで死んでるぞ……?」 

王馬「正確に言うと茶柱ちゃんに殺されたんだけどね」 

赤松「生きてる! 生きてるよ! 痛みに耐えて大人しくなってるだけで!」 

巌窟王「床が……硬い……」 

アンジー「膝枕貸してあげようかー?」 

巌窟王「厚意に甘えよう」 

最原「ごめん! せめてこっちの話には最低限参加してくれないかな!?」ガビーンッ!

364: 名無しさん 2017/10/15(日) 17:37:29.38 ID:GpwPH0rj0
東条「一刻も早く外に出なければならなかったのよ」 

東条「……どうしても……何を犠牲にしたって……!」 

白銀「それって、もしかして」 

星「そうか。例の動機ビデオだな? そこには一体何が映ってたっていうんだ?」 

星「……俺たちの最大の味方だったアンタが、一気に敵に変わっちまうような内容」 

星「……聞かせてくれねーか?」 

東条「言っても信じてくれないでしょうね。だから、動機ビデオを直接見た方が速いと思うの」 

モノクマ「あ、映像データならこっちにあるから、それを裁判場上部のモニターに大写しにするね!」 

モノクマ「これが! 東条さんの動機ビデオでーっす!」

365: 名無しさん 2017/10/15(日) 17:49:54.96 ID:GpwPH0rj0
五分後 

最原「……」 

最原「はあ?」 

最原(思わず素っ頓狂な声を出してしまうような内容だった) 

最原(とても現実味がなくて、ともすればバカバカしいとも言える内容) 

最原(でもこれが現実だったとしたら、これ以上にない動機になってしまう) 

赤松「東条さんが総理大臣……?」 

赤松「え、つまり……えっ?」 

王馬「そっか。なるほど。東条ちゃんはここにいる十六人の命と、外にいる国民の命を秤にかけたわけだ」 

王馬「……ま。国民の方に秤が傾くのは当然かな。最大多数の最大幸福ってヤツだね」 

巌窟王「なるほど。そして、国民の方に万全の状態で戻るのであれば俺の存在は邪魔だな」 

巌窟王「どれだけ立派なお題目があろうと、我がマスターの命を危険に晒したのであれば復讐しないわけにもいくまい」 

巌窟王「禍根を完全に断つためであれば理論上の最善手ではあったわけだ」 

アンジー「痛いの痛いの飛んでけー」ナデナデ 

キーボ「凄い頭撫でられてますが、患部ってあそこなんですかね?」 

茶柱「いや。体全体がビターンッてなったので体全体です」 

最原「ああもう! ちょいちょいアンジーさんに膝枕されてる巌窟王さんに意識が行って集中できない!」

366: 名無しさん 2017/10/15(日) 17:53:00.85 ID:GpwPH0rj0
夕飯作るので休憩!

367: 名無しさん 2017/10/15(日) 18:46:34.83 ID:GpwPH0rj0
東条「だから私は、どうしても外に出なければならなかったのよ」 

東条「……例えあなたたちに恨まれようと」 

東条「あなたたちの屍を踏みにじることになろうと……!」 

最原「……それは」 

最原(これ以上、言葉を続けることはできなかった) 

最原(これは命を賭けた戦いであり、コロシアイだ) 

最原(……巌窟王さんに助けられる可能性など度外視した、鉄の覚悟に支えられた犯行) 

最原(動機ビデオを見ていない僕に、反論の余地はない) 

赤松「違う」 

最原「……え?」 

赤松「それは違うよ東条さん!」 

赤松「だって……誰かを犠牲にして、その人を仮に助けることができたとしてもさ!」 

赤松「助けた後はどうするの!? 一生、そのために犠牲にした何かを背負って生きて行かなきゃならないんだよ!」 

赤松「ダメだよそんなの……絶対にダメ!」 

東条「……背負う覚悟ができていなければ、こんなことは初めから――!」 

赤松「それに! そんなの無責任すぎるよ!」 

東条「……は?」 

赤松「『国民のために才囚学園のみんなを犠牲にした』って、どういうことかわからないの!?」 

赤松「『国民のせいで才囚学園のみんなは死んだ』って、簡単に言い換えることができちゃうんだよ!?」 

赤松「自分一人で背負うとか、そんなのただの格好つけだよ!」 

赤松「あなたのやろうとしたことは、自分の大事なものに汚い泥をかけるようなものなんだよ……!」 

赤松「自分で自分の大事なものを汚すとか……そんなバカなことをするのは……」 

赤松「私だけで……充分だよぉ……!」ポロポロ 

最原「……赤松さん」 

巌窟王「……」

368: 名無しさん 2017/10/15(日) 18:52:45.84 ID:GpwPH0rj0
東条「優しいのね、あなたは」 

東条「……でもお願い。泣かないで、赤松さん」 

東条「私はそんな涙を向けられる資格はないの」 

東条「……今までも、今も、これからも……!」 

赤松「東条さん……!」 

東条「……やめてって言ってるでしょう」 

東条「お願い。もう私に優しくしないで」 

東条「決心が鈍るから」 

巌窟王「!」 

最原(……これって……) 

最原(悲しい人だな、東条さん。しかも律儀だ) 

最原(まだ諦められないんだね)

369: 名無しさん 2017/10/15(日) 19:08:30.12 ID:GpwPH0rj0
モノクマ「じゃ、大体の疑問が解けたところで、そろそろ行っちゃいましょうか!」 

モノクマ「ワックワックドキドキのおしおきタイムでーっす!」 

百田「来やがったな、この野郎! テメェの思い通りに行くと思うなよ! なあみんな!」 

王馬「は? みんなって誰?」 

百田「あ?」 

春川「……本当に助けていいと思う?」 

百田「は、ハルマキ? 何言ってんだよ。東条は仲間だろ? 助けて当たり前じゃねーか!」 

天海「そうっすね。仲間なら助けて当たり前っすよね」 

百田「おお! 天海はよくわかってんじゃねーか! なら」 

天海「……仲間なら、ね」 

百田「……おい。なんだその言い方は」 

百田「まさか、東条はもう仲間なんかじゃねーとでも言うつもりか?」 

星「おい百田。それ以上はやめておけ」 

星「……それ以上の言葉は、この件を無かったことにする言葉だ」 

星「巌窟王が殺されたこと。東条が俺たちを殺そうとしたこと。東条の覚悟を無かったことにすること」 

星「赤松の涙を無かったことにする言葉だ」 

百田「……ッ!」 

星「……禍根はある程度は残してこそ価値がある」 

百田「ざ……っけんなよ! それじゃあ東条が!」 

最原「悪いけど、僕も星くんと同意見だよ」 

百田「終一?」 

最原「……東条さんのやったことは、無かったことにしちゃいけない。禍根だって当然残る」 

百田「……」 

最原「無かったことにする必要も、ないしね」 

百田「!」 

巌窟王(……ほう)

370: 名無しさん 2017/10/15(日) 19:21:52.50 ID:GpwPH0rj0
東条「……そう。それでいいの。私はもう、あなたたちに助けられる価値のない存在」 

東条「あなたちを裏切った人間」 

東条「……ズルいわね、赤松さん。あなたのせいよ?」 

赤松「え?」 

東条「あなたがあんな優しいことを言わなければ、私は何が何でも同情を引いて……みんなを扇動して、足掻いてみせたでしょう」 

東条「私の覚悟に一滴の躊躇を生んだのは、あなたの言葉」 

東条「……あなたみたいな人が、この空間では一番恐ろしいのかもしれないわね」 

赤松「……!」 

東条「一人も仲間がいなくなっても構わない」 

東条「後ろ指を差されても構わない」 

東条「……どんなに汚れても、絶対に辿り着いてみせる」 

東条「私は……私は……!」 

最原(東条さんのやろうとしていることに見当は付いたけど) 

最原(僕はそれをあえて見逃すことにした) 

百田「おい、東条! 何をする気だ! 待――!」 

最原「百田くん」 

百田「なんだよっ!」 

最原「……最後までやらせてあげよう」 

最原「ケジメはどんな形でも取らなきゃいけない」 

最原「……彼女の悪意の在処は、あの鉄の決意だ」 

最原「なら最後の最後まで足掻かせて……全部無駄だったことを心底から思い知らせて……絶望させて……」 

最原「……決意を、叩き潰すんだ」 

百田「アイツは何一つとして間違っちゃいなかったんだぞ」 

最原「わかってるよ。わかってる。でも……」 

最原(やらないと。やらせてあげないと、ダメなんだよ……!)

371: 名無しさん 2017/10/15(日) 19:29:59.58 ID:GpwPH0rj0
東条「生き残ってやる」 

東条「逃げて、逃げて逃げて逃げて逃げて……!」 

東条「絶対に死ねない。死んでたまるものかッ!」 

東条「四肢が折れようと、血をどれだけ流そうと……絶対に生き残ってやるッ!」ダッ 

モノクマ「えっ」 

白銀「……逃げ……た……?」 

真宮寺「……無様で醜いネ。どこまで逃げたところで果ての壁に阻まれるのに」 

夢野「口調の割には上機嫌そうじゃな……って、そんなこと言ってる場合じゃないぞ!」 

夢野「東条! どこに逃げるんじゃ! そんなことしなくっても巌窟王が……!」 

巌窟王「助けんぞ」 

夢野「……んあっ!?」ガビーンッ 

アンジー「神様?」 

巌窟王「……これでいいのだろう? 最原」 

最原「よくないよ。よくないんだ。でも……!」ギリィ 

最原(全員揃って、ここから出るためには……これしかないんだ……!)

372: 名無しさん 2017/10/15(日) 19:39:15.75 ID:GpwPH0rj0
モノクマ「……まあいいや。超高校級のメイドである、東条斬美さんのために」 

モノクマ「とっておきのおしおきを、用意させていただきましたーーーッ!」 

茶柱「巌窟王さん! 本気じゃないんでしょう! 東条さんがいなくなったら、転子たちは……」 

茶柱「今まで、何のために議論してきたんですかッ!」 

巌窟王「……」 

茶柱「最原さんっ! なんとか言ってください!」 

茶柱「アンジーさん! あなたの言うことなら巌窟王さんだって……!」 

アンジー「……」 

茶柱「なんで……誰も何も言わないんですか?」 

茶柱「……!」ダッ 

春川「よしなよ。巻き込まれたくないなら行かない方がいいって」ガシッ 

茶柱「だって、こんなの、あまりにも……!」ポロポロ 

モノクマ「それでは! 張り切って参りましょう! おしおきターイム!」 

東条「死んでたまるか……死んでたまるか……」 

東条「死んでたまるかああああああああああ!」 



トウジョウさんがクロに決まりました。 
おしおきを開始します。

373: 名無しさん 2017/10/15(日) 19:46:28.90 ID:GpwPH0rj0
苦悶の糸 

超高校級のメイド 
東条斬美処刑執行 

東条「死ねない……死ねない死ねない……国民の皆様のところに戻るまでは……!」ダッ 

東条(いつの間にか私は、よくわからない空間に来ていた) 

東条(どれだけ逃げても追ってくる国民の影。アレに捕まったらおそらく八つ裂きなのだろう) 

東条(最終的に、廊下の前と後ろを固められて身動きが取れなくなった) 

東条(……まだ、死ねない。決意は無駄にできない) 

東条(気が付くと、目の前に茨でできたロープが垂れ下がっていた) 

東条(どう見ても罠だけど、縋りつかないわけにも……いかない。掴んだときの痛みはどうでもいい)ブシュッ

374: 名無しさん 2017/10/15(日) 19:50:55.33 ID:GpwPH0rj0
モノタロウ「えーっと……嬲り殺し用の障害物のスイッチってコレだったっけ?」 

モノダム「ウン。ソレデイイヨ」 

モノファニー「あ。モノスケは観察係ね。上手く操作できるように、穴の真下から指示してちょうだい!」 

モノスケ「ええで! ワイに任しとき!」 



苦悶の糸上部 

東条「……」 

丸鋸「」ウィイイイインッ! 

チェーンソー「」ギイイイイイイッ! 

東条「……止まれない……私は……」 


ブシュッ! ザシュッ!

375: 名無しさん 2017/10/15(日) 19:54:30.52 ID:GpwPH0rj0
東条(……痛い) 

東条(凄く……痛い。信じられない) 

東条(でも……止まれない) 

東条(私は……!) 


ザクザクザクッ 


東条「ううっ……ああああああああ!」 

東条(痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い!) 

東条「……助け……」 

東条「……」 

東条(……そんなこと言う資格、私にはもうなかったか)

376: 名無しさん 2017/10/15(日) 20:02:46.71 ID:GpwPH0rj0
東条(死ねない。死ねない。だから上に向かわないと……上に……上に……) 

東条(……逃げ切って、皆様のところに戻って……守らないと……) 

東条(そうでなければ私は何のために……仲間を裏切ったのか……) 

チカッ 

東条「!」 

東条(空が見える。やっと、脱出できる!) 

東条「やっ――!」 

東条「……え?」 

東条「……絵?」 

東条(……まあ、そうよね。罠に決まって……) 

東条(ああ。茨の糸が切れそう。ここまでどれだけ昇ってきたのかしら) 

東条(落ちたら……死ぬ?) 

東条「う、い……ひ……いや。切れないで。私は死ねなっ……!」 

ブチッ! ブチブチッ 


東条「――!」 

東条「お願い……誰か……」ガタガタ 

東条(死ねない死ねない死にたくない死ねない死ねない……?) 

東条(……あ、あれ? 今、なんて思ったのかしら) 


ブチブチブチッ! 


東条「……にたくない」 

東条「誰か……助けて……」 

東条「死にたくないッ!」 


ブチイッ! 


東条「あ――」 

東条(切れちゃっ……た)

377: 名無しさん 2017/10/15(日) 20:07:03.57 ID:GpwPH0rj0
「――まったく我慢強すぎるな。あの人間城塞を思い出したぞ、東条」 

モノスケ「お?」 


ブワアッ! 


バキバキバキバキバキンッ! 

モノスケ「ぎゃああああ! なんか凄い風がーーー!?」ガビーンッ! 

モノタロウ「ええーーーッ!? 嬲り殺し用のギミックが勝手に大破していくーーー!?」 

「クハ……クハハハハハハハハ!」 

「クハハハハハハハハハハハハ!」 


ガシィッ 

東条「……?」 

東条(……あ、れ。死んでない……?) 

「だが東条!」 

東条「え……?」 




巌窟王「俺を! 呼んだな!」ギンッ! 

東条「……巌窟王、さん」

378: 名無しさん 2017/10/15(日) 20:12:19.93 ID:GpwPH0rj0
巌窟王「さぁて、それではここから手荒くなるぞ?」 

巌窟王「もしかしたら先ほどまでの処刑の方が生温く感じるような地獄の業火だ」 

巌窟王「……ついでにアイツらの内の一匹を屠ってみせよう」 

東条「なんで……?」 

巌窟王「愚問だな! 死ねない、ではなく『死にたくない』と言ったのだ、お前は」 

巌窟王「それが答えだ! 俺を殺してみせた鉄の決意はその瞬間に死んだ!」 

巌窟王「ならば、処刑はもう完了したも同然だろう!」 

巌窟王「さあ! フィナーレだ! このまま地獄に共に戻るぞ! 東条ォ!」ギンッ 

東条「……う……!」 

巌窟王「……泣くな。笑え。二度と見られない最高の復讐劇だぞ?」ニヤァ

379: 名無しさん 2017/10/15(日) 20:18:53.85 ID:GpwPH0rj0
モノスケ「うう……メガネメガネ。メガネはどこや! ワイのメガネ!」 

モノタロウ「モノスケー! 早くしないと! なんかあのお姫様抱っこしてる凄い恰好いいヤツがロックオンしてるからー!」 

モノファニー「頑張ってー! あと少し左よー!」 

モノスケ「わかっとるわそんなこと! あんまり急かすなや!」カシャッ 

モノスケ「あ、今なんか手に触れた。これや!」 


ガシャンッ 


モノスケ「え。何今の音?」 

最原「……」ニジリニジリ 

最原「あ。ごめん。うっかり踏みつぶしちゃった」 

モノタロウ「ええーーーッ!? なんでここに!?」 

最原「いや、あのままだと茶柱さんが春川さんを振り切りそうだったから……」 

最原「落ち着かせるために代わりに僕が来ただけで……説明する必要もないな」 

最原「巌窟王さーん! お膳立ては整ったよー!」 

巌窟王「上出来だ! 最原ァ! そこから離れているがいい!」 

巌窟王「さあ東条! 特等席から見ているがいい! これが俺の宝具……」 

巌窟王「虎よ、煌々と燃え盛れッ!」 


ビュンッ! 


モノスケ「うお……うおおおおおおおおおお!?」 



ドカアアアアアンッ!

380: 名無しさん 2017/10/15(日) 20:25:14.11 ID:GpwPH0rj0
巌窟王「……クハハ。脆いな。あまりにも」 

巌窟王「さて。あと残るところは三匹か」 

モノタロウ「いや。ゼロだよ。すぐに逃げるからね」 

モノファニー「撤退よー!」 

モノダム「ワー」 


ピューッ 


巌窟王「……ふん」 

東条「……え、と。巌窟王、さん」 

巌窟王「もう何も言わなくていい。早く仲間たちのところへ戻るぞ」 

東条「私は……」 

巌窟王「裏切り者だから、か? ならばもう一度やり直せばいい」 

東条「!」 

巌窟王「……そうだろう? 最原」 

巌窟王「ン? 最原?」 

最原「」チーン 

東条「……多分だけど、吹き飛んだモノスケの頭がモロに後頭部に当たったようね」 

巌窟王「だから離れていろと言ったのだ」 

最原「う、うう……大丈夫。気絶はしてないから」フラフラ 

巌窟王「戻るぞ」 

最原「うん」

386: 名無しさん 2017/10/16(月) 19:28:58.98 ID:cCnxtp+w0
裁判場 

獄原「……あっ! か、帰ってきた……帰ってきたよ! 三人とも!」 

百田「終一ィ! 東条! 巌窟王!」ダッ 

ガシッ ブンッ 

百田「ぐえっ」 

赤松「え。百田くん、なんでいきなりすっ転んでるの?」 

百田「い、いや。なんかいきなり体がフワッて」 

茶柱「ちょーっと百田さんはそこで寝転んでてくださいね。転子がまず最初に言いたいことがあるので」スタスタ 

百田「茶柱?」 

茶柱「……最原さん」 

最原「……」 

最原(何か言ってくるなら茶柱さんだろうな、とは思っていた) 

最原(彼女は巌窟王さんのマントにくるまれているズタボロの東条さんを一瞥し、泣きそうな顔になってから僕を見る) 

最原「あの――」 


パァンッ!

387: 名無しさん 2017/10/16(月) 19:36:26.45 ID:cCnxtp+w0
茶柱「……何が……ケジメ?」 

茶柱「何が禍根? 何が……絶望ですか……!」 

茶柱「あなたは……ッ!」 

最原「……う」 

最原(グーパンより平手打ちの方が、精神的に何倍も来るな……) 

最原(それよりなにより、茶柱さんが泣きながら、震えた声で語りかけてくるのが、辛い) 

茶柱「東条さんを許すって言ったじゃないですか!」 

茶柱「なのに……こんなの! こんなに東条さんをボロボロにして!」 

茶柱「あなたは……転子たちは! 人を裁けるほど立派な人間じゃないんですよ! 誰一人として!」 

茶柱「すぐに助けていれば、東条さんは、こんな……!」 

巌窟王「茶柱。仕方が無かったのだ」 

茶柱「……」 

巌窟王「先ほど最原は言ったな? 無かったことにする必要はないと」 

巌窟王「……罪を無かったことにするのと、罪を許すことはまったくの別だぞ」 

巌窟王「罪を許すために必要な痛みもある」 

茶柱「詭弁です」 

巌窟王「にべもないな。だが事実だ」 

巌窟王「……有耶無耶にしたら、同じことの繰り返しだったぞ」 

茶柱「……」 

東条「茶柱さん……」

388: 名無しさん 2017/10/16(月) 19:40:00.47 ID:cCnxtp+w0
茶柱「わかってるんですよ。こっちだって!」 

茶柱「でも……納得できなくって!」 

茶柱「こんな酷い手段しか用意できない自分が悔しくって!」 

茶柱「転子は……無力で……拳の振りどころもなくって……!」 

茶柱「おかしいですよ。東条さんも、最原さんも、巌窟王さんも……誰も間違ってないのに、なんで傷つくんですか」 

茶柱「こんなの本当に地獄ですよ……!」 

巌窟王「……茶柱。お前は根本的な見誤りをしているようだな?」 

茶柱「え?」 

巌窟王「修正すべき間違いならあるだろう」 

茶柱「……それって……」 

モノクマ「……」 

モノクマ「あらら。また助けちゃったんだ?」

389: 名無しさん 2017/10/16(月) 19:47:02.37 ID:cCnxtp+w0
巌窟王「……赤松のときと答えは同じだぞ」 

モノクマ「別にいいよ。赤松さんのときとは違って、生かすメリットもこっちにあるしね」 

モノクマ「うぷぷ。次の被害者も決まりかなぁ?」ニヤァ 

東条「!」 

モノクマ「流石に、巌窟王さんも生徒から東条さんを庇うことはできないよね。なんでか知らないけどさ」 

モノクマ「あ、それとも東条さん。また殺ってみる? 外に出たいって意志、それ自体は変わってないでしょ?」 

東条「私は……!」 

白銀「……ちが、うよ」 

モノクマ「ほえ?」 

白銀「私たちは……もうこんなこと絶対にしないよ!」 

白銀「だってそうじゃないと、今までのことが全部無駄になっちゃうもん!」 

春川「……そう、だね。同じことの繰り返しは誰でも御免でしょ」 

百田「白銀……ハルマキ……!」 

獄原「無力……そうだね。その通りだよ。でもゴン太たちは強くなれる!」 

獄原「生きている限り、負けないんだ!」 

赤松「ゴン太くん!」 

モノクマ「……へえ? やってみれば?」 

モノクマ「その表情が絶望に変わる瞬間は、そう遠くないと思うけど?」ウププ 

最原(……なんだ、このモノクマの態度。前回の学級裁判のときも思ったけど) 

最原(余裕すぎないか?)

390: 名無しさん 2017/10/16(月) 19:53:36.82 ID:cCnxtp+w0
巌窟王「……ああ。そうだ。言い忘れていたぞ、モノクマ」 

巌窟王「先ほど俺が言った許しに必要な痛み云々は、あくまで一般論だ」 

モノクマ「?」 

巌窟王「俺は何も許さない。復讐者だからな」 

巌窟王「だが憎しみの対象を見誤るような蒙昧でもない!」 

巌窟王「俺が赤松から受けた痛み……東条から受けた痛み……!」 

巌窟王「そのすべてを、何倍にもして貴様に返してやろう! 必ずな?」 

モノクマ「……」 

モノクマ「うぷ」 

巌窟王「クハ」 

モノクマ「うぷぷぷぷぷぷぷぷ……」 

巌窟王「クハハハハハハハハハ……」 

モノクマ&巌窟王「ハーーーッハッハッハッハッハッハッハ!」 


ガコンッ 

モノクマ「あぎゃっ! 顎が外れ……! 今日はここまで! バイバーイ!」 



ドロンッ 


最原「あ、行っちゃった」

391: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:01:12.31 ID:cCnxtp+w0
最原(さて、後は……) 

東条「……」 

最原(……東条さん、どう接すればいいかな) 

最原(もう大体全部、カタはついたと思うけど) 

巌窟王「おい。東条」 

東条「……何かしら?」 

巌窟王「そのマントはお前に預ける。必ず洗って返せ」 

巌窟王「それと……」 

東条「……?」 

巌窟王「……次はもうちょっとまともな食事をよこせ」 

東条「!」 

巌窟王「朝から麻婆豆腐はいくら何でもないだろう……」 

東条「えっ? 好物だと聞いていたのだけど」 

巌窟王「何ィ?」 

王馬「俺知ってるよ! ゴン太がそう東条ちゃんに吹き込んだんだよね!」 

東条「いえ、王馬くんから聞いたのだけど」 

巌窟王「……」ジーッ 

王馬「……」ダラダラダラ

392: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:09:28.08 ID:cCnxtp+w0
王馬「死んでたまるかああああああああああ!」ダッ 

巌窟王「我が征くは恩讐の彼方!」バッ 


ドタドタドターッ 


百田「……マイペースすぎんだろ。アイツら」 

春川「なんか全部バカらしくなっちゃった。東条。上についたら何か作ってくれる?」 

東条「……それは依頼と受け取って……いいのかしら?」 

真宮寺「いいんじゃない? 少なくともキミのことを怖いと思っている人間はいても」 

真宮寺「怒ってる人間は一人もいないヨ」 

入間「あ? いや俺様は怒ってるぞコラ! 貴重な一日を無駄にさせやがって!」 

東条「……ふふっ……あはは……ごめんなさい」 

東条「埋め合わせは、必ずするわね?」 

東条「それと、ありがとう。私のことを許してくれて」 

茶柱「転子たちは謝るべきなんですけどね。東条さんに酷いことをしたのは事実です」 

茶柱「というか! 東条さん怪我してますからね! 依頼を断ってもいいんですよ!」 

東条「いえ。全力を尽くすわ」 

東条「休むのは……まあ、後にさせてちょうだい」 

東条「……一からやり直すんですもの。これくらいは!」ギンッ! 

茶柱「うう! 転子が押されかねないほどの気迫……!」 

最原「……はあ」 

最原(よかった。なんとかなりそう、かな?) 

最原(これで全部元通り……)グニャァ~ 

最原(あれ。目が回る……)フラッ

393: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:17:21.41 ID:cCnxtp+w0
アンジー「お疲れさまー、終一ー!」ガシッ 

最原「アンジーさん?」 

最原(……アンジーさんに抱き留められてしまった) 

アンジー「さっきのダメージがまだ残ってるんだねー! 神様の攻撃の余波をモロに食らったダメージ!」 

アンジー「止めは転子のビンタかなー!」 

茶柱「……あ、謝りませんからね。最原さん」 

最原「はは……うん。それでいいよ」 

夢野「さて。上に帰ったら最原はそのままベッドに直行じゃな」 

夢野「一番頑張っておったしのう」 

天海「今回も大活躍でしたね、最原くん!」 

最原「いや大活躍だったんじゃなくって大半はアマデウス斎藤に無駄な手間を取られて」 

天海「さあ! 帰るっすよ! 俺たちの地獄へ!」シャキーンッ 

天海「いつか全員で脱出してやるんす!」 

最原(話を逸らされた!)ガビーンッ! 

アンジー「じゃ、終一はアンジーが責任を持って部屋まで送り届けるよー!」 

百田「おう。頼んだぜ!」 

星「……ふん。まあ、悪くない日だった、か」

394: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:23:57.57 ID:cCnxtp+w0
最原(そして僕たちは上へ戻る) 

最原(いつ終わるともしれない地獄の日々に) 

最原(それでも、いつの日か絶対に、みんなで出られる日が来る) 

最原(……僕たちは、そう信じることが段々できるようになってきた) 

最原(なってきた……のは、いいんだけど) 



最原の私室 夜 


アンジー「終一……一緒にドロドロになっちゃおう?」 

最原「……」 

最原(あのダルダルの黄色いパーカー以外『何も』身に纏っていないアンジーさんにベッドの上で追い詰められている) 

最原「……」 

最原「なんでーーーッ!?」ガビーンッ! 

アンジー「んとねー! 疲れた! から! 粘膜接触で魔力の回復を図るのだー!」 

最原(そういえばあの本にそんな記述があったかもしれない!?)

395: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:31:16.37 ID:cCnxtp+w0
最原「……いや! 待って! 確かアレって魔力供給のパスをどうこうするって記述だった気がする!」 

最原「粘膜接触で魔力の回復ができるとは……書いてなかったような……!?」 

最原「いやそれ以前に粘膜ってどこの粘膜!?」 

アンジー「終一ー……」スリスリ 

最原(聞いちゃいない) 

アンジー「……終一も服を脱いで?」 

最原「ま……待って待って。落ち着こう。落ち着いて話をさせて」 

最原「そうだ! そんな理由でこんなことしちゃダメだよ! もっと自分を大事にして!」 

最原「いくら巌窟王さんのためだからってさ!」 

アンジー「……誰でもいいってわけじゃないよ?」 

最原「えっ」 

アンジー「……アンジーの目を見て……今は終一しか映ってない」 

アンジー「ねえ……きっと楽しいよー?」ツツーッ 

最原(熱い息を吹きかけられて、指先で首筋を撫でられる) 

最原(ま、ずい。なんか段々なにも考えられなくなってきた) 

最原(ていうか誰でもいいってわけじゃないってどういう……) 

アンジー「……終一……」 

最原(アンジーさんの顔が段々とこちらに近づいてきて……) 


ピピピピッッ ピピピピッ 


アンジー「……あ。門限だ」 

最原「え」 

最原(アンジーさんのポケットから聞こえる電子音で止まった。多分この音は目覚まし時計だ) 

最原(……目覚まし時計を持ち歩いてるの?)

396: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:35:32.65 ID:cCnxtp+w0
アンジー「じゃ、アンジーもう帰るねー!」セッセッ 

最原「あ、う、うん」 

アンジー「ぐっばいならー!」 

最原(アンジーさんはせっせと服を着込んで、手際よく僕の部屋から出て行った) 

最原(……ただ。本当に急いでいたのだろう) 

最原「……パンツ……忘れて行ってる……」ズーン 




アンジーの私室 

アンジー「……あ。パンツ忘れちゃったー。終一の部屋に」 

巌窟王「そうか。すぐに殺して取り返してこよう」

397: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:38:27.40 ID:cCnxtp+w0
食堂 

王馬「……にしし……障害があればあるほどゲームは盛り上がるもんだからね」プシューッ 

王馬「みんなが寝静まってる内に、どんどん盛り上げていこっかー!」プシューッ 

王馬「よし! これでOK! 完璧! 誰が見てもすぐにわかるよね! これで!」 

カランッ 

王馬「このスプレー缶はもういらないや」 

王馬「明日がとても楽しみだなぁ……」ニヤァ 



食堂の壁『春川魔姫は超高校級の暗殺者!』

398: 名無しさん 2017/10/16(月) 20:40:21.31 ID:cCnxtp+w0
第二章 
その限りなく地獄に近い天国に光は差すか 

END 


残り人数 

十六人+一騎 


TO BE CONTINUED 



巌窟王のマントを手に入れました!

402: 名無しさん 2017/10/17(火) 17:53:17.11 ID:2gcyMwHX0
朝 

最原「……ふあーあ……昨日は……本当に酷い一日だった」 

最原(雨降って地、固まるの諺のように行ってくれれば重畳なんだけどな) 

最原(さて。昨日は東条さんもあんなこと言ってたけど、怪我も酷いから無理はさせられない) 

最原(まだ八時になってないけど、今のうちに食堂に行って……東条さんを無理やり休ませるか、さもなくば手伝うかはしよう) 

最原(……昨日の茶柱さんの涙が、まだ僕の心に残ってる。あの選択を間違いだとは思わないけど……罪悪感を覚えないかどうかは別だ) 

最原「さて。行こう」 

ガチャリンコ 

巌窟王「……昨日はアンジーが世話になったようだな?」ゴゴゴゴゴゴ 

最原「」 

巌窟王「共に来い」 

最原(死んだな僕) 



第三章 

Unlimited 在校生 Works

403: 名無しさん 2017/10/17(火) 18:05:04.84 ID:2gcyMwHX0
朝 

百田「ふあーあ……昨日はいい一日だったぜ。結果として東条の悩みとも全力でぶつかり合えたしな」 

百田「さぁって! 今日も一日、ぶちかますとするか!」 

ざわ・・・ざわ・・・ 

百田「……ん? なんだ? 騒がしいな」 

キーボ「あっ! も、百田クン! 大変です! 食堂に……!」 

百田「ん?」 



数分後 食堂 

百田「なんだこりゃ……壁一面に、文字? スプレーかこりゃあ」 

星「いや。それよりも書かれている内容の方が問題だぜ」 

白銀「春川魔姫は……超高校級の暗殺者!?」ガビーンッ 

入間「こりゃあ、ひょっとするとモノクマの新しい動機ってヤツじゃねーのか?」 

百田「……あ? なんだそりゃ。なんでコレが動機になんだよ」 

星「忘れたわけじゃねーだろう。俺たちはコロシアイを強要されているんだぜ」 

星「そんな中、もしも春川の才能が実際に超高校級の暗殺者だった場合は……」 

赤松「……いや。関係ないよ。そんなの。春川さんは春川さんだもん」 

赤松「第一! これが本当かどうかなんて、春川さんに訊かないとわからないし!」 




春川「……なに、これ……」 

赤松「あっ」 

王馬「うん! 赤松ちゃんみたいなこと言う人が出るかと思って、連れて来たよ! 件の春川ちゃん!」 

百田「おいハルマキ。コイツは……」 

春川「……!」

404: 名無しさん 2017/10/17(火) 18:10:15.66 ID:2gcyMwHX0
ダッ 

百田「ハルマキ!」 

王馬「ありゃりゃ、逃げちゃった。認めたようなモンだよね、コレ!」 

百田「クソッ! 待てよハルマキィ!」ダッ 

星「……」 

星「おい王馬。コレを書いたのはアンタだな?」 

王馬「え? 違うよ? 何を根拠に言ってるの?」 

星「今までモノクマは動機の提示を、俺たちの真正面からやっていた」 

星「全員に。平等に。同時に。わかりやすくな」 

星「だがコレはどう見ても春川を狙い撃ちにしている。モノクマの署名も一切ない」 

星「そして……春川の才能の真実を知っている生徒は、俺とアンタだけだ」 

白銀「えっ!? そ、それって、どういうこと……!?」 

王馬「……にしし……俺から説明しよっか」 

星「あっさり認めやがって……食えない野郎だ」 

入間「なー。東条はどこ行ったー? 俺様は腹が減ったぞー」 

赤松「空気……読もうよ入間さん……」

405: 名無しさん 2017/10/17(火) 18:17:21.73 ID:2gcyMwHX0
寄宿舎周辺 中庭への階段寄り 

百田「ああ、くっそ足速ェ! 止まれハルマキィ!」 

春川「……」ピタッ 

百田(お。止まった) 

春川「……アレ。本当だよ」 

百田「そうか」 

春川「……誰だか知らないけど、やってくれたね。私の努力が全部パァだよ」 

百田「……まさか、あの研究教室の中って」 

春川「『色々』ある」 

百田「……そうか」 

春川「……引いたでしょ? 引いたよね」 

春川「当たり前だよね」 

百田「……ハルマキ。俺ァ――」 

春川「もう私に近づかないで。私は……」 

春川「……せっかく、みんな結束しそうだったんだよ。私がいたら邪魔だよ。どう考えてもさ」 

百田「そんなこと――!」 

春川「あるんだよ」 

百田「……」 

百田(そう言うなり、ハルマキは再び、走り出そうとした) 

春川「だから、もう私に関わらな――」 



巌窟王「クハハハハハハハハ!」ビュンッ 


ドカァァァァァンッ 


春川「ひでぶっ」 

百田「ハルマキが超速度で走る巌窟王に轢かれて吹っ飛んだーーーッ!?」ガビーンッ! 

春川「ごはっ」ベシャッ 

百田「ハルマキ! しっかりしろ! ハルマキー!」

406: 名無しさん 2017/10/17(火) 18:24:40.79 ID:2gcyMwHX0
中庭 

巌窟王「戻ったぞ! 倉庫から持ってきたマシュマロだ!」ギンッ 

アンジー「神様ありがとー!」 

最原「……えーと……何これ……」 

真宮寺「焚火」 

天海「鉄串」 

東条「あとキッチンペーパー、新聞紙、アルミホイルで包んだキャンプ用の食材よ」 

焚火「」パチッパチッ 

最原「朝からやることじゃ……ないよ……明らかに」 

獄原「でもちょっとワクワクするよね!」 



ハルマキィィィィィ! 


最原「ん? 遠くで百田くんの声が聞こえたような……」 

巌窟王「始めるぞ!」ギンッ!

414: 名無しさん 2017/10/18(水) 18:05:31.14 ID:1a0hgLso0
夢野「んあー。巌窟王が最原を取り調べするらしいぞ? 楽しみじゃのー」 

茶柱「はあ。いや、それの何が楽しみなんです?」 

夢野「なんでも巌窟王がアンジーから『取り調べと言ったらカツ丼だよねー』って言われたらしくての」 

夢野「で。東条に頼もうにも凝った料理ができないくらい手がボロボロじゃろ?」 

夢野「カツ丼はやめよう。誰がやっても知識があればできるそれなりのものにしよう」 

夢野「じゃあ焚火囲んで色々焼いて食べることにしようってなったんじゃ」 

茶柱「発想にちょっとスキップかかってますね」 

夢野「冒険の経験やフィールドワークの経験のある真宮寺と天海」 

夢野「なんかもう見た目からして野趣溢れるゴン太とかも巻き込んで」 

夢野「今は中庭あたりでもう色々やっておるころ……?」 




百田「ハルマキーーー! 目を開けろってハルマキーーー!」 

春川「」チーン 

百田「ハルマキーーー!」 

夢野&茶柱「」 




中庭 

巌窟王「夢野が遅いな……後で五月蠅いだろうから茶柱も誘ってくると言ってたはずだが……」 

巌窟王「まあいい! 取り調べを開始する!」ギンッ 

アンジー「吐けー!」 

最原「……取り調べとは名ばかりだよね」 

真宮寺「焚火を囲んでマシュマロ焼きつつ下らない話に興じる……」 

天海「ノリが修学旅行の『お前誰好き暴露会』のまんまっすよねー」フーフー 

東条「……」ボッ 

最原「東条さん。マシュマロを火に近づけすぎ。引火してる……」 

東条「……ごめんなさい。普段はこんな失敗しないのだけど」 

最原(やっぱり怪我が尾を引いてるのか。包帯だらけだし……)

415: 名無しさん 2017/10/18(水) 18:12:39.71 ID:1a0hgLso0
獄原「でもなんでゴン太たちのことまで誘ってくれたの?」 

巌窟王「ついでだ。お前たちに話しておかなければならないことがあってな」 

天海「それは?」 

巌窟王「俺のホームからここに物資が転送されてくる」 

最原「!」 

巌窟王「……だが、前回の天海の仮面のように、アレは学園のどこに出るかは大雑把にしか決められないらしい」 

巌窟王「最低限、現状で足を運べるどこかに転送するとは確約させたが……足で探すにはそろそろ学園が広すぎるからな」 

真宮寺「なるほど。そこで僕らの出番というわけだネ」 

天海「具体的な物資の内容は?」 

東条「モノによっては状況の打開を図れるかもしれないわね」 

巌窟王「カメラとプリンター。そして写真術のマニュアルだ」 

最原「期待して損した!」ガビーンッ! 

アンジー「卒業アルバムの野望は未だ潰えてないのだー!」キラキラキラ!

416: 名無しさん 2017/10/18(水) 18:21:48.75 ID:1a0hgLso0
最原(……っと。そうだ。野望でなんとなく思い出した。そこまで大仰なものじゃないけど) 

最原(アンジーさんの血液をどうにかして採取したいって入間さんから依頼されてたんだったな) 

最原(報酬は天海くんの動機ビデオデータ……昨日は色々なゴタゴタがあったからできなかったけど) 

最原(……普通に健康診断に誘う感じでいいか) 

巌窟王「最原。何をアンジーのことをじっと見ている?」 

最原「……い、いや。なんでもないよ」 

巌窟王「……」ジーッ 

最原「……」ガタガタ 

巌窟王「そうか!」ギンッ 

最原(無意味な間を置くのやめてほしいなぁ。寿命縮むから)ズーン 

東条「……」ボッ 

天海「東条さん。またマシュマロに引火してるっす」 

東条「ごめんなさい……」 

獄原「アルミホイルの方はまだかな」ワクワク

417: 名無しさん 2017/10/18(水) 18:25:52.48 ID:1a0hgLso0
休憩します!

418: 名無しさん 2017/10/18(水) 20:29:21.38 ID:1a0hgLso0
カルデア 

BB「さてと。転送終了。どこに行ったかまではわかりませんが……」 

BB「引き続き片手間にこの空間の解析を進めますか」 

BB「多分、かなり答えは単純で、単なる並行世界だと思うんですけど……」 

BB「それも剪定事象みたいな『何らかの理由で手が届かなくなったレベルの別世界』じゃない……もっと普通の」 

BB「……ダメだ。今一歩足りませんねー。明らかに手がかりが不足してます」 

BB「それにしては何か、世界観が滅茶苦茶すぎるんですよね。まるで、そう」 

BB「この学園だけじゃなくって、外の世界まで誰かに用意されているような……」 



才囚学園 

春川「……ハッ!」パチリ 

百田「おお! 気が付いたかハルマキ!」 

夢野「ふいー、ひやひやしたわい。怪我も特になさそうじゃの」 

茶柱「……ん? でも何か様子がおかしくありませんか?」 

百田「んなことねーって。な、ハルマキ」 

春川「私は誰?」 

百田「」 

茶柱「」 

夢野「」 


春川は記憶を失った

419: 名無しさん 2017/10/18(水) 20:36:31.05 ID:1a0hgLso0
数時間後 

巌窟王「……行くぞ」 

天海「ええ。ここから先は……」 

真宮寺「競争、だネ」 

東条「全力を尽くすわ」 

アンジー「みんながんばー!」キラキラキラ 

最原「うん。えーっと……頑張るよ。片手間に」 

最原(というか物資一つ探し出すのに凄い無駄にやる気出してるなぁ) 

巌窟王「さて。ひとまず食堂に道具を片付けに行くか」 

東条「洗い物は……」 

最原「当然僕たちがやるよ。東条さんは無理しないで」 

東条「……」 



食堂 

最原「春川魔姫は……って、え!? 何これ!?」ガビーンッ 

巌窟王「残酷なことだ」 

天海「マジっすか!」 

赤松「みんな気づくの遅いよ!」ガビーンッ! 



情報はやっと全員に行き渡った

420: 名無しさん 2017/10/18(水) 20:43:09.76 ID:1a0hgLso0
獄原「よし! ゴン太も頑張ろう! 卒業アルバムって楽しそうだしね!」キラキラキラ 

獄原「まずは外を虱潰しに探して……」フラッ 

獄原「ん……なんだろう。一瞬、目が霞んだような……気のせいかな?」 



夢野の研究教室 

夢野「この五円玉をじーっと見ていると、ほら、段々と記憶が蘇って……」チクタクチクタク 

春川「ううっ……確か私は超高校級の暗……」 

百田「……」 

春川「……パンマンだったような」 

茶柱「誤魔化し方下手すぎますね」 

夢野「くっそーーー! 失敗じゃ!」 

百田「いやこれ以上ないくらい成功してっから安心しろ!」

426: 名無しさん 2017/10/19(木) 17:15:13.66 ID:dcUyXBR80
巌窟王「今日のところは訓練は休んで、物資の探索をするか」 

アンジー「にゃははー! 神様と一緒ー!」 

巌窟王「……なるほど。学級裁判を一つの区切りとして、学園の区画が解放されていくのか」 

アンジー「いつも神様はこういうときに部屋に引きこもってたから知らないよねー!」 

巌窟王「俺にもやることがあるからな」 

アンジー「……ねえ神様ー。楓の学級裁判のときに言ってた個人的な目標って、なに?」 

巌窟王「言う必要はないな」 

アンジー「アンジーにできることは」 

巌窟王「ない」 

アンジー「……命令されれば何でもするよー?」 

巌窟王「ない」 

アンジー「……」 

アンジー「……」ムク 

巌窟王「む? 今むくれたか?」 

アンジー「にゃははー! まっさかー! 神様の言葉でむくれることなんて未来永劫ありえないよー」 

アンジー「……超高校級の美術部であると同時に、超高校級の巫女だからね」 

巌窟王(初耳だ。話半分に聞いた方がいい事実かもな) 

アンジー(明らかに信憑性に乏しいから聞き流そうって顔してる……)

427: 名無しさん 2017/10/19(木) 17:30:46.82 ID:dcUyXBR80
アンジー「確か終一が新しい区画を開放させているはずだよー。何よりも優先させるって言ってたし。行ってみよう!」 

巌窟王「……今度こそお前の研究教室があればいいがな」 

アンジー「そだねー!」 




新しい区画 

巌窟王「む? これは……見た限り超高校級の民俗学者の研究教室か?」 

真宮寺「……」ゲシッゲシッ 

真宮寺「ダメだ。扉が開かないネ。木製に見えるのにそうじゃないみたいだ」 

入間「燻蒸消毒機能つってたな? 超高校級の民俗学者らしいクソ陰気な機能だぜ」 

入間「ま、中に閉じ込められてるキーボはロボットだ。燻蒸ガスくらいヘーキだろ」 

巌窟王(あそこにいるのは真宮寺と入間か) 

アンジー「美兎ー! 是清ー! どうかしたかー!」 

真宮寺「朝に聞いた物資の捜索しているついでに、自分の研究教室が実装されているって聞いたから覗いてみたんだけどネ」 

入間「それに同行してやってた俺様がたまたま見つけた燻蒸機能スイッチを押してな」 

入間「で。その燻蒸消毒にキーボが巻き込まれた状態で研究教室が閉鎖されちまったってわけだ」 

巌窟王「燻蒸……」 

アンジー「博物館とかがたまにやってる消毒方法だねー。有毒ガスで建物の中を満たして虫、カビ、その他美術品に有害なものを除去するんだよー」 

真宮寺「流石は超高校級の美術部。詳しいネ」

428: 名無しさん 2017/10/19(木) 17:39:05.39 ID:dcUyXBR80
モノクマ「ちなみに、この燻蒸消毒で使うのはボクが制作した万物に終焉をもたらす猛毒……」 

モノクマ「モノクマ印の地球環境破壊ガスだから、人間なら一息吸えば一発で死ぬよ。虫やカビなら言わずもがな!」 

モノクマ「ま、赤外線センサーで『中に人がいるかどうか』を判別してから消毒作業は行われるから大丈夫だけどね!」 

巌窟王「ほう」 

アンジー「仮に神様が閉じ込められても大丈夫だよねー? 毒利かないもん」 

巌窟王「巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)は防毒の効果があるからな」 

巌窟王「第一、俺が使う炎は毒入りだ。仮に俺を毒殺するのであれば物理法則に則った通常のものは話にならない」 

真宮寺「それも巌窟王さんの毒炎を凌駕するものでなければ不可能、か。大分難易度高いネ。覚えておくヨ」 

入間「で。この燻蒸消毒機能の解除はどうすんだ?」 

モノクマ「一度発動したら三十分経つまで解除できないよ!」 

巌窟王「……真宮寺。燻蒸消毒が始まってどのくらい経った?」 

真宮寺「もうすぐ三十分だネ」 


カシャンッ 

ガララッ 


キーボ「う、うわああああん! 死ぬかと思いましたーーー!」 

入間「お。出てきやがった」

429: 名無しさん 2017/10/19(木) 17:47:58.64 ID:dcUyXBR80
入間「あー。ちょっと見せてみろ……相変わらず凄いカラダ……!」ハァハァ 

入間「っと、いけねぇ。軽くだ軽く。本格的なコトは俺様の研究教室で……じっくりしっぽり……!」 

真宮寺「ガスの除去は終わっているのかな」 

モノクマ「最後の十分でガスを除去しにかかるから大丈夫だよ!」 

キーボ「ずっと叫び続けてたのに全然返事も助けも来ないから本当に怖かったです!」 

アンジー「うーん。でもコレ便利だけど危ないよねー」 

真宮寺「中に人がいるときは使えない以上、大丈夫じゃないかな」 

キーボ「ぼ、ボクは……」 

入間「大丈夫だったじゃねーか。そもそも毒ガスが利かないのなら考慮にすら値しないっつーの」 

キーボ「ロボット差別です……」シュン 

アンジー「あれ? いつもより元気ないぞー、どしたー」 

キーボ「もう叫び疲れてしまったので……」 

真宮寺「あ。そうだ。二人とも。奥の方に超高校級の美術部の研究教室もあったヨ」 

巌窟王「行くぞアンジー!」ダッ 

アンジー「おー!」ダッ 

真宮寺「……ククク。仲良きことは美しきかな、だネ」 

入間「も、もう我慢できない。ここでおっぱじめちまおうぜ……!」 

キーボ「え。ちょっと。入間さ……うひゃあああ!?」 

真宮寺「これは美しくない」

430: 名無しさん 2017/10/19(木) 17:49:01.29 ID:dcUyXBR80
休憩します!

431: 名無しさん 2017/10/19(木) 18:47:36.34 ID:dcUyXBR80
超高校級の合気道家の研究教室 

最原「……ふう。これで今回の解放された場所は全部かな」 

最原(物資は見つからなかったな。だとすると既に解放されていた既存の場所にカメラ類が転送されている可能性が高いけど……) 

最原(通りすがりでも見かけた覚えはない。ということは『既に解放されている場所』で尚且つ『僕が行ったことない場所』の可能性が高い) 

最原(……ついでだ。春川さんの研究教室に行こうか) 

茶柱「転子の研究教室がついに実装ですってーーー!」バターンッ 

最原「あ。茶柱さん」 

茶柱「……」 

ガチャリンコ 

最原(無言で出て行った……まあ謝らないとか言ってたしな) 

最原(……仕方ないか。間違ってないからって、正しいわけじゃない) 

最原「……仲直りは無理だろうな。ただでさえ男子が嫌いだし。茶柱さん」

432: 名無しさん 2017/10/19(木) 18:59:07.03 ID:dcUyXBR80
超高校級の暗殺者の研究教室 

カメラ類「」ドーンッ 

東条「……見つけた。こんな物騒な場所に……」 

東条「早くこれを巌窟王さんに届けないと」 

ズキッ 

東条「……ダメね。この手じゃ。うっかり落として壊したりしたら取り返しが付かないもの」 

東条「あとどのくらいで治るのかしら」 




夢野の研究教室 

夢野「よいかー。この五円玉をじーっと見つめるんじゃぞー……」 

夢野「スリー。トゥー。ワン。ヒミコ!」カッ 

春川「ぐー」スヤァ 

夢野「なんか想像以上に催眠術がハマりすぎて楽しくなってきたのう」 

百田「遊んでんじゃねーよッ!」ガビーンッ 

夢野「スリーサイズを上から順に言えー」 

春川「ななじゅうな――」 

百田「起きろハルマキィ! これ以上は夢野のオモチャになるだけだぞ!」ガクガク!

433: 名無しさん 2017/10/19(木) 19:16:38.47 ID:dcUyXBR80
超高校級の美術部の研究教室 

巌窟王「ふむ。チラリと見ただけだが、真宮寺のよりは幾何か施設が大人しいな」 

アンジー「充分! 充分だよー! これで今までできなかったこともたくさんできるようになるー!」 

巌窟王「……嬉しいか?」 

アンジー「うん! それもこれも神様のお陰だよー! ありがとねー!」 

巌窟王「……」 

巌窟王「なんとなく思っていたのだが、やはりな」 

アンジー「ん?」 

巌窟王「アンジー。お前からの魔力供給は、お前が表に出す感情の量に比例するらしい」 

アンジー「……元から抑えてないけどー?」 

巌窟王「さて。それはどうだろうな」 

巌窟王(それに、ここから先は言うつもりはない。言ったところで自傷行為に走られても面倒だからな) 

巌窟王(……どうやら怒りや悲しみ、不満やフラストレーションの爆発、漏洩が鍵になっている) 

巌窟王(今まで絆を育んできたのは決して無駄ではない) 

巌窟王(……先ほどはむくれていないと否定されたが……その虚栄、いつまで続くかな?) 

巌窟王(俺は聖女などに仕える気は毛頭ないのだ) 

アンジー(……神様が何を考えてるのか、なんとなくわかるよ) 

アンジー(怒れと言われれば怒るし、喜べと言われれば喜ぶのに……) 

アンジー(……どうして願ってくれないの? アンジーの何が悪いの?) 

アンジー「……感情、か」 

アンジー(……あの夢や、学級裁判での頑張りを見てから、終一の顔が脳裏にチラつくんだよねー) 

アンジー(終一なら教えてくれるのかなー。頭いいし……ね) 

巌窟王(猛烈にタバコ吸いたくなってきた……早く脱出をしたいものだ……)

434: 名無しさん 2017/10/19(木) 19:22:34.85 ID:dcUyXBR80
食堂 

白銀「……なんかさ。地味に歯車が軋んでいる気がするんだよね」 

星「そりゃそうだろう。いくら上手く行こうが、同じ空間に十六人も閉じ込められてるんだ」 

星「人間関係はイヤでも進展する。その過程で何かが軋むこともあるだろう」 

白銀「……元には戻れないのかな」 

星「無理だろうな」 

星「それに……なんだろうな。アンタがそういうのを一番楽しんでいるように見えるぜ」 

白銀「……気のせいじゃない?」 

白銀「……気のせいだよ」 

星「……」 



星(そろそろ、嵐が来るかもな) 

星(東条のときとは比較にならない嵐が……)

440: 名無しさん 2017/10/20(金) 19:07:30.20 ID:o7q8B6c00
夕飯の時間 

春川「へえ。ここが食堂……いっぱい人がいるね」 

茶柱「まだ治ってないんですか」 

夢野「まだ治っておらんぞ」 

最原「どうしたの春川さん」 

百田「……巌窟王にやられた……」 

春川「……で。食事ってどうするの? 作るの? 誰かが作ってくれるの?」キョロキョロ 

最原「い、いや。東条さんはまだ怪我が治ってないから無理……」 


トントントン 


最原「あれ。包丁の音?」 

王馬「あれれー。東条ちゃんが料理してるー」 

東条「ええ。心配かけさせたわね。簡単なものしか作れないけどすぐに用意するわ」 

獄原「だ、大丈夫? 無理しなくっていいんだよ?」 

東条「無理なんかしてないわ」 

獄原「よかった! それなら安心だね!」 

アンジー「……安心だー! 全部元通りだよー!」 

茶柱「……?」 

最原(元通り……本当に?)

441: 名無しさん 2017/10/20(金) 19:16:33.61 ID:o7q8B6c00
三十分後 

最原「おいしい……」 

最原(味噌汁と焼き魚とご飯……シンプルだけど間違いなく美味しい) 

最原(流石に米はとげないから、これだけはレトルトみたいだけど) 

東条「よかった。みんなのお口にあって何よりよ」ピクッピクッ 

赤松「……待って。東条さん、手が震えてない?」 

東条「!」 

茶柱「すいません。その手袋の下、見せてくれませんか?」 

東条「……今は食事中よ。見ない方がいいわ」 

夢野「んあ? どういう意味じゃ?」 

星「……」 

入間「?」モグモグモグ 

最原「……やっぱり元通りとは行かないよね。そう簡単には」 

天海「見せてほしいっすね。今すぐに。じゃないと逆にメシが喉を通らないっす」 

東条「……」 


スッ 


ボタッ 


入間「んなっ! うえ……!」 

キーボ「入間さん。余計なことを言うくらいなら目を背けていてください」 

入間「……あーはいはいわかってるっつーの!」 

最原(東条さんの手袋の下は包帯でグルグル巻きだった) 

最原(……しかも、その手袋が真っ赤に染まって、赤いモノが滴り落ちている) 

最原(手袋の中にもいくらか溜まっていたようだ。そちらからも垂れている)

442: 名無しさん 2017/10/20(金) 19:26:06.07 ID:o7q8B6c00
茶柱「酷い。そんな手でどうやって……!」 

東条「倉庫から持ってきた痛み止めで、なんとかなったわ」 

白銀「それってダメージそのものが無効化されてるわけじゃないから! 絶対!」 

百田「無理に手を使って傷口が開いたってのか……バカ野郎!」 

東条「大丈夫よ。細心の注意を払っていたから、料理の中には入ってないわ」 

百田「そういう問題じゃねーんだよ! 誰か手当できるヤツは……!」 

天海「俺がやるっすよ。簡単なものしかできないっすけど」 

春川「……なんでこんなに傷だらけな人に料理させてるの?」 

夢野「完璧にシクッたわ。東条! しばらく料理はしなくてよいぞ!」 

東条「でも……」 

茶柱「でもは禁止です! 天海さん、よろしくお願いします」 

天海「心得たっす」 

東条「……ごめんなさい……」 

茶柱「……」ギッ 

最原(う。凄い目でこっち見てるな、茶柱さん……) 

王馬「にしし! 東条ちゃんを止めなかった時点で同罪なのに、最原ちゃんに八つ当たり? 良い身分だね! 茶柱ちゃん!」 

茶柱「ッ!」 

最原「王馬くん!」 

王馬「ん? なあに? 庇った礼なら後で講座に振り込んでくれればいいよ?」 

最原「礼なんか……!」 

赤松「……やめようよ。誰も悪くないんだからさ」 

最原「……」 

最原(クソ……!)

443: 名無しさん 2017/10/20(金) 19:35:22.68 ID:o7q8B6c00
赤松「……そ、そうだ! さっき東条さんから預かったんだけどさ!」 

赤松「カメラとかその他の機器が学園に届いてたんだよ!」 

赤松「今は私が預かってるんだけど……」 

赤松「巌窟王さんはどこ?」 

アンジー「しーらない!」 

赤松「そ、そっか」 

アンジー「届け物ならアンジーが預かるよー!」 

赤松「じゃあ……お願いしようかな」 

春川「巌窟王って誰?」 

最原「春川さん本当に大丈夫?」

444: 名無しさん 2017/10/20(金) 19:40:50.46 ID:o7q8B6c00
どこかの教室 

巌窟王「ニコチンが足りなさ過ぎてイライラするが、アンジーが真似するので吸うわけにはいかない……!」ガタガタ 

モノクマ「偉いですねー。ちなみにこの学園に来てから、あなたが禁煙していることはキチンと把握しています!」 

モノクマ「身内に祝ってもらうのも禁煙のモチベーションを上げる一つの方法ですよー」 

モノダム「頑張レ。頑張レ」 

モノファニー「大丈夫よー! アタイたちがついてるわー!」 

モノタロウ「依存症に負けるなー!」 

巌窟王「クハハ……祝い、か……考えておこう」 



依存症のカウンセリングを受けていた

448: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:52:32.51 ID:o7q8B6c00
数十分後 

アンジー「じゃ、すぐに取りに行くけど……大きいのならバッグを用意してから行くよ?」 

赤松「そうだね。結構かさばるから運ぶものがあるといいかも。そんなに大きくなくてもいいけど」 

アンジー「そかそかー! じゃ、倉庫に寄ってから行くねー!」ピューッ 

最原「……」 

最原(今は傍に巌窟王さんはいない。チャンスかな)スッ 



倉庫 

アンジー「ふんふんふーん」ゴソゴソ 

最原「……アンジーさん。ちょっと話したいことがあるんだけど」 

アンジー「ん?」 

最原「あのさ。実は……」 

アンジー「あ。待って。終一、そこから先は急ぎじゃないなら今度にしてー?」 

最原「え」 

アンジー「アンジーも終一に用があったんだー! 明日になったら裏庭のあたりに来てよー!」 

最原「……できれば巌窟王さんはなしで話したいんだけど」 

アンジー「!」 

アンジー「……」ニコニコ 

最原(……なんだ? 不機嫌になるのならわかるけど、明確に上機嫌になった?) 

アンジー「いいよ。じゃ、そういうことで……ね?」 

最原「うん」

449: 名無しさん 2017/10/20(金) 20:56:27.32 ID:o7q8B6c00
茶柱「……東条さん、心配ですね。あのままだとずっと傷口開きっぱなしにしそうで」 

夢野「そうじゃのー。じゃ、見張りを立てるとするか」 

茶柱「見張り?」 

夢野「『明日マジカルショーをするので手伝ってくれ』という名目でヤツを一日中傍に置いておく」 

夢野「当然、重労働はナシの方向じゃ。これなら問題ないじゃろう」 

百田「お? ハルマキの記憶の復元はどうすんだ?」 

夢野「……忘れとったわ。さて……」 

茶柱「あ。じゃあそちらは私が担当します。体を動かせばフッと戻る何かがあるかもしれません!」 

茶柱「転子の研究教室に案内しますとも!」 

春川「研究教室ってなに?」 

百田「……頼む。なんかもう色々不憫だ……」

454: 名無しさん 2017/10/21(土) 06:39:11.45 ID:tv0/5s9u0
モノクマ「お疲れ様でしたー。次のカウンセリングの予約はよろしいですかー」 

巌窟王「どうせ暇だろう。そんなものはいらん」 

モノクマ「またのお越しをー」 

モノタロウ「あ、これ気休めの飴だよー。タバコ欲しいときになったら舐めてねー」 

パクッ 

巌窟王「……」ナメナメ 

モノファニー「一も二もなく舐め始めたわね……」 

モノダム「本当ニ辛インダネ」 

巌窟王(帰るか)スタスタ 


アンジーの部屋 

巌窟王「……」ガチャガチャ 

巌窟王「鍵がかかっているな。まだ帰ってきてないのか」 

巌窟王「門限までには帰ってくるだろうが……」 

ガチャリンコ 

赤松「じゃあ、アンジーさん。結構重いけど頑張ってね」 

アンジー「もっちもちー! じゃ、ぐっばいならー!」 

巌窟王(なんだ。赤松の部屋にいたのか)

455: 名無しさん 2017/10/21(土) 06:45:06.08 ID:tv0/5s9u0
アンジー「おお! 神様! ジャストタイミングー!」 

巌窟王「少し待ったぞ」 

赤松(そこは正直に言っちゃうんだ……) 

アンジー「この鞄の中にねー! 斬美が見つけたカメラ他の機材が入ってるよー!」 

巌窟王「……何?」ゴゴゴゴゴゴ 

巌窟王「アンジー。その言葉、偽りはないだろうな」ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

巌窟王「俺を騙したが最後、臓腑を生きながら炭化させられる地獄の苦しみを味わうと知っての言葉か?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

赤松(なんで無駄に脅すの!? 怖いよ!)ガビーンッ! 

アンジー「騙してないから怖くないよー」ケロリ 

赤松(アンジーさん凄い平然!) 

巌窟王「そうか」 

巌窟王「……」 

巌窟王「飴をやろう」 

アンジー「わーい!」 

アンジー「おいしー!」ナメナメ 

赤松「……前々から思ってたけど仲いいよね。二人とも」

456: 名無しさん 2017/10/21(土) 06:52:12.63 ID:tv0/5s9u0
巌窟王「それで、俺がいない間に何か変わったことは?」 

アンジー「あのねー。斬美がねー……」 


ガチャリンコ 


赤松「……二人して部屋に入って行った……本当に一緒に住んでるんだ」 

赤松「あれ? でも巌窟王さん、鍵は?」 

モノクマ「スペアキーの類は用意してないからアンジーさんと一緒に入るしかないねー」 

モノクマ「巌窟王さんだけが部屋に残る場合は後でアンジーさんが戻ってきて、巌窟王さんを外に出してから閉めてるよ」 

赤松「へー」 

赤松「……うわっ! モノクマ!」 

モノクマ「なんかもう神出鬼没が当たり前すぎて、そんな反応が懐かしくも嬉しいなぁ」

457: 名無しさん 2017/10/21(土) 06:52:43.06 ID:tv0/5s9u0
休憩します!

458: 名無しさん 2017/10/21(土) 09:43:57.45 ID:tv0/5s9u0
カルデア 

BB「……何回も見返してやっと掴めましたよ」 

BB「この空間、あの白黒クマの許可が出ない限りは死人でも外に出れない結界になってるんですね」 

BB「偶然か必然かはわかりませんが……魔術の神秘の塊のサーヴァントすら外に出さないとは恐るべし、です」 

BB「……ただやっぱりあそこまで損傷して復活できる仕組みの方はわかりませんけど……」 

BB「うーん。お茶でも淹れてきましょう。続きはそれから」スタスタ 



五分後 


ナーサリー「BBー。暇なのだわー。またスミソニアンにハッキングしてお友達と遊ばせて……」 

ナーサリー「あら。いない」 

ナーサリー「……ん? でも何かの映像をつけっぱで外に出て行ったみたいなのだわ」 

ナーサリー「コピって部屋に持ち帰ってみましょう」カタカタ 


ピロンッ 

後にBBは語る。『月の聖杯戦争出身の英霊は機械に強いからイヤなんですよ』と。 
女神たち中心に才囚学園の記録は大人気となった。

459: 名無しさん 2017/10/21(土) 10:49:06.86 ID:tv0/5s9u0
翌日 

百田「……一晩寝た内に記憶がこっそり戻ったりとかは」 

春川「してない」 

百田「だよなぁ」 

茶柱「では、春川さん。転子の研究教室へとお連れしましょう!」 

茶柱「あ。朝ごはんは事前に教室に運んでおいたので」 

百田「……しかし、テメェ大丈夫か? ハルマキは超高校級の暗殺者だぞ?」 

茶柱「はい? よりによって百田さんがそれを言いますか?」 

茶柱「……いえ。平時であれば転子だって警戒してますよ。拘束した方がいいとすら思ってます」 

茶柱「でも転子は最原さんのやり口を認めたくない」 

茶柱「『許しに何らかの代償が必要』とか神様かヤマの言い分ですから」 

茶柱「……愚かでも何でも、転子は一方的かつ無条件で人を信用したいのです」 

茶柱「最原さんのやり口は……転子にとっては外道のそれにしか見えませんでした」 

百田「……アイツだって悩んでたんだぜ?」 

茶柱「……許すきっかけがあれば」 

百田「お前――!」 

茶柱「……失言です」 

春川「???」

460: 名無しさん 2017/10/21(土) 11:14:01.77 ID:tv0/5s9u0
百田(……アイツは怒ってるんじゃないな) 

百田(いやまあ実際に怒っちゃいたんだろうが、もうそれは学級裁判で終一を引っ叩いたときに清算できてる) 

百田(今のアイツはただ『東条のために怒っている』だけで『怒っているから怒っている』ってのとは違う) 

百田(終一は……まあ気付いてるだろうが、許してくれなんて口が裂けても言わないヤツだよな……) 

百田「……探すか。終一」 

百田「案外、早く仲直りできるんだぜ」 



アンジーの私室 

巌窟王「クハハハハハ! 読める! 読めるぞ! コレがカメラというものか!」 

巌窟王「BBには礼を言わねばなるまい! 我が黄金律で! 桜の木を一本丸ごと送ろう!」 

巌窟王「アンジー! 外に繰り出すぞ! 今から卒業アルバムの制作計画を実行に――!」 

アンジー「アンジー今日用事あるからパスするよー」 

巌窟王「予定があるなら仕方ないな!」ギンッ 

巌窟王「さあ! 始めるぞ! 俺一人で!」

461: 名無しさん 2017/10/21(土) 11:15:08.66 ID:tv0/5s9u0
休憩します!

462: 名無しさん 2017/10/21(土) 13:36:00.33 ID:tv0/5s9u0
CM 

ピロロロロロ…アイガッタビリィー 

BB「クレオパトラさぁん!」 

クレオパトラ「!」 

BB「何故あなたは映画を見たにも関わらずその記憶がないのか」 

BB「何故帰った記憶がないのか」 

BB「何故化粧のノリが普段より今一なのくわァ!」 

白銀「……!? それ以上言うなー!」ダッ 

BB「その答えはたった一つ」 

白銀「やめろー!」 

BB「あはぁー……」ニヤァ 

BB「クレオパトラさぁん! あなたが映画の最中で……うっかり寝落ちしてしまった女だからだァーーー!」 

BB「あーっはっはっはっはっはっはっは!」 

クレオパトラ「私が……映画の最中で寝落ち……? 嘘よ。私を騙そうとしている……!」 

白銀「そそそ、そうだよ! クレオパトラさんはまだ劇場に行ってないだけ……!」 

ポロッ 

クレオパトラ「あら? ポケットから何か落ちて……」 

来場記念ポスカ『HFの映像化! 叶わない願いなんかじゃなかった! byこやまひろかず』 

クレオパトラ「うわあああああああああ!」←劇場で寝落ちしたことを思い出した 

白銀「クレオパトラさーーーん!」ガビーンッ 

上映中の寝落ちは多大な損失を産みます。 


劇場版Fate/staynight Heaven's feel 
大好評上映中 


白銀「また行こう?」 

クレオパトラ「はい……」エグエグ

464: 名無しさん 2017/10/21(土) 13:37:48.66 ID:tv0/5s9u0
一切完勝! やっとだぜ! 
さておき、今回のガチャで仲間に入ったパライソちゃんを育成しにかかるのでもうちょっと後

468: 名無しさん 2017/10/21(土) 18:13:41.43 ID:tv0/5s9u0
夢野「というわけで、じゃ。今日はウチに付き合ってもらうぞ。東条」 

東条「ええ。依頼とあらば」 

夢野「と言ってもそこまでの重労働はさせる気は……」 

夢野(……いずれバレることではあるが気遣ってることをわざわざ口に出すこともないか) 

夢野「なんでもない。本題に入るぞ」 

夢野「次のマジカルショーは屋外でやる。風船にガスを入れて入れて入れまくるのじゃ!」 

東条「了解」 

夢野「……やってやろうではないか。利用されたままでは終われないからのう!」 

東条「利用してごめんなさい……」 

夢野「違う! 東条ではなくモノクマに言ったのじゃ! やるぞ! まずは材料を倉庫に調達じゃ!」 

東条「ええ」

469: 名無しさん 2017/10/21(土) 18:17:23.92 ID:tv0/5s9u0
校舎内 

巌窟王「ふむ。卒業アルバムはまず『どんな場所で学びを受けたか』を知るために校舎を撮影するものなのか」 

巌窟王「ではひとまず校舎内を撮影して……」 

ズルウッ ゴチンッ 

王馬「にしし! いやあ、巌窟王ちゃん! 言い忘れてたけどそこ、シャンプーをたまたまぶちまけちゃったから足元注意だよ!」 

王馬「いやあ! 遅かったかー! 言うの遅れてごめんね巌窟王ちゃん!」 

王馬「巌窟王ちゃん? がんくつ……」 

王馬「……死んでる……」 

※別に死んでなかった

470: 名無しさん 2017/10/21(土) 18:26:09.73 ID:tv0/5s9u0
数十分後 

巌窟王「……ハッ! また燃やされたいか王馬ァ!」ガバァッ 

巌窟王「くっ。逃げたか……相変わらず逃げ足の速いヤツめ」 

巌窟王「カメラは無事だったな」 

巌窟王「……む? 外で何かやっているか?」 




裏庭 

最原「……遅いな。アンジーさん」 

アンジー「やっはー! 終一! 遅くなってごめんねー!」スタスタ 

最原「あ! アンジーさん!」 

アンジー「いやぁー。おめかししてたら遅くなっちゃってー!」 

最原(おめかし? なんで? 確かにいつもより気持ち綺麗だけど) 

最原「ええっと。実はアンジーさんに頼みたいことがあるんだけど」 

アンジー「……内容が見事一緒だったらビンゴー! だねー!」 

最原「え?」

471: 名無しさん 2017/10/21(土) 18:26:54.69 ID:tv0/5s9u0
夕飯の休憩!

472: 名無しさん 2017/10/21(土) 19:35:13.47 ID:tv0/5s9u0
夢野「ゼハー……ゼハー!」ヒューヒュー 

東条「喉から酷い音がしてるわよ。やっぱり私がそのボンベを……」 

夢野「よい! この程度軽い軽い!」ヒューヒュー 

夢野「ウチを誰だと思っておる……超高校級の魔法使い、夢野秘密子じゃぞお!」 

夢野「この程度の重みで音を上げていたら巌窟王に笑われてしまうわい!」 

東条「……」 

夢野「安心しろ東条。ウチらは仲間じゃろう」 

夢野「仲間なんじゃから……ウチらのことを信じてもいい!」 

夢野「一度や二度の裏切り程度、なんてことない!」 

夢野「いざとなったら巌窟王が助けてくれる!」 

夢野「ウチらがそれに応える方法は、信じることじゃ」 

夢野「手がボロボロで……体もボロボロで……心もボロボロで……」 

夢野「これじゃあ助けてもらった価値なんてないって思っておるのなら大間違いじゃ!」 

東条「……!」 

夢野「助けられたからには無価値ではいられないなんて、とんだ誤解じゃ」 

夢野「価値があるから助けたんじゃろッ! だから……ごめんなさいとか、言わんでいい!」 

夢野「笑ってほしいんじゃ! みんな! お主に! だから、ウチは……!」フラッ 

夢野「うわわっ」 

東条「夢野さん!」 


ガシッ 


巌窟王「……これを運べばいいのか?」 

夢野「んあ……巌窟王」 

巌窟王「その体格でよくやる。興が乗ったぞ、夢野」ニヤァ

473: 名無しさん 2017/10/21(土) 19:47:44.60 ID:tv0/5s9u0
巌窟王「ヘリウムガスのボンベか? こんなものを何に……」 

夢野「……ま。後のお楽しみじゃ」 

夢野「まったく美味しいところばっかり持っていく天才じゃのー、お主」 

巌窟王「クハハ」 

東条「夢野さん」 

夢野「なんじゃ?」 

東条「……ありがとう」 

夢野「……礼なら巌窟王に言えばよいのではないか? 結局ボンベ運べなかったしのう」 

東条「それもだけど、あの……」 

夢野「さっさと行くぞ。今日の夜までには完成させたい」スタスタ 

東条「……そうね。そうしましょう」フッ 

巌窟王「笑ったな?」ニヤァ 

東条「!」 

巌窟王「……アイツの魔法とやらもバカにできないのかもな」 

東条「……憧れている人が隣にいるから頑張れるのでしょう?」 

巌窟王「誰のことだ?」 

東条(……とぼけてるんじゃなくて本気でわかってないわね、これ)

474: 名無しさん 2017/10/21(土) 19:50:25.98 ID:tv0/5s9u0
休憩します! 
この後、巌窟王サイドで何が起こるのかは大体本編の通りなので最原サイド行きます。 
後で

475: 名無しさん 2017/10/21(土) 21:24:26.23 ID:tv0/5s9u0
裏庭 

最原「ということで、アンジーさんに血液を提供してもらいたいっていうのが僕の頼みなんだけど」 

アンジー「ふーん。蘭太郎の動機ビデオと、美兎の研究のために、ねー」 

アンジー「……ちょっとそれは無理かなー」 

最原「え」 

アンジー「いや、多分ね。神様がこの場にいたら『いい機会だ、受けるがいい』って言うと思うんだけど」 

アンジー「アンジーは……やめた方がいいと思うなー」 

最原「あれ」 

最原(基本的に巌窟王さんの言うことには逆らわないアンジーさんが、珍しい) 

アンジー「美兎が本当に欲しいのはアンジーのデータじゃなくってー……」 

アンジー「ううん。これ以上は言わない方がいいや」 

最原「……?」

476: 名無しさん 2017/10/21(土) 21:28:00.06 ID:tv0/5s9u0
アンジー「あ、でもでもー! こっちの要求を聞いてくれるのなら考えてあげてもいいよー!」 

最原「ん」 

最原(譲歩案を出してくれるのは助かるな。天海くんの正体を知るためには、ある程度無茶な条件でも飲んでもいいし) 

最原(コロシアイを強要されてる状況下だ。命より軽いものなら……) 

アンジー「結婚してー」 

最原「……」 




最原「は?」

480: 名無しさん 2017/10/22(日) 08:44:27.85 ID:nwUELrJE0
巌窟王「……理解に苦しむな。またやるのか。マジックショー」 

夢野「マジカルショーじゃ! ……とかお主に言ってもなんか虚しいが……」 

夢野「細かいことはよいか。今度は屋外で、この大量の風船を使ったショーをするんじゃ!」 

巌窟王「アンジーはどうした? 今回は手伝っていないのか」 

東条「捕まえようとしたのだけど、断られてしまったの。何か用事があったようね」 

巌窟王「ふむ。今日は妙に落ち着かない様子だったからな。ヤツもヤツで何か考えているのだろう」 

巌窟王「まあいい。我が仮初のマスターの理念に従い、お前たちが望むのなら手を貸してやらないこともないが?」 

夢野「お主本当にアンジーのことが大好きじゃのう」 

巌窟王「俺が? クハハ、まさか!」 

巌窟王「俺のマスターは過去現在未来にただ一人。あれとはお互いの利害の一致に伴った薄っぺらな関係しかない」 

巌窟王「この関係に抱く想いも、同様に薄っぺらなものだとも」 

巌窟王「大体アレは共に歩むにしては幼過ぎる。雛鳥のように後ろをヨチヨチ歩きでついてくる程度が関の山だろうよ」 

東条「その割には甘やかしているように見えるけど」 

巌窟王「サーヴァントだからな!」ギンッ!

481: 名無しさん 2017/10/22(日) 08:45:36.27 ID:nwUELrJE0
百田「まあ、確かにアンジーに対して特別扱いはしてねぇだろうな」 

百田「テメェは俺たちのことみんなが大好きなんだもんな! わかってるぜ!」ニカッ 

巌窟王「……気持ちの悪いことを言うな」 

夢野「百田。お主どこから湧いて出てきた」 

百田「終一を探してたら派手な風船が大量に見えたからよ。ちょっと寄ってみただけだ」 

夢野「ついでじゃ。百田も手伝うがよい。風船がもっと大量に必要だから……って、あ!」 

フワッ 

夢野「あー。一個無駄にしてしまったわい」 

巌窟王「クハハ! 任せろ! あの程度の高さ、造作もない!」 

ドンッ! 

東条「……跳んだわね」 

夢野「あ、キャッチした」 

百田「おお。無駄に一回転して校舎の屋根に着地したな」

482: 名無しさん 2017/10/22(日) 08:46:28.98 ID:nwUELrJE0
巌窟王「クハハハハハ! どうだ!」 

百田「無駄にテンション上げてるなー」 

夢野「造作もないって自分で言ってたのにのう」 

東条「巌窟王さん。そこ結構な急斜面になってるから、気を付けて降りてね」 

巌窟王「任せろ! 昇ったのだから降りることなぞ更に容易い――」 

巌窟王「む?」 

巌窟王(裏庭に誰かいるな……あれはアンジーと最原か?) 

巌窟王(一体何をして……) 

アンジー「終一ー! アンジーのお婿さんになってー!」キラキラキラ 

最原「ええっ!?」 

巌窟王「!?!?」ガビーンッ! 


ズルゥッ 


百田「足を滑らせたーーーッ!?」ガーンッ! 

夢野「言わんこっちゃない!」

483: 名無しさん 2017/10/22(日) 08:51:38.75 ID:nwUELrJE0
ベシャッ 

最原(ん? なにかがどこかで落ちたような音が……) 

最原(それどころじゃない!) 

最原「ど、どういうこと!? それが交換条件!? 冗談だよね!?」 

アンジー「やだなー。こんな冗談言わないよー。仮にそうだとしたら悪趣味すぎるしー」 

最原(確かにこれが嘘だったら下手したらトラウマものだよな……) 

アンジー「なんならここで証明できるけどー?」 

最原「え」 

アンジー「……アンジーの言葉が嘘じゃないって」 

アンジー「『どこまでやれば』本当だと認めてくれる?」 

アンジー「……なんでもするけど?」 

最原「」 

最原(身の危険を感じる……!)

484: 名無しさん 2017/10/22(日) 08:53:13.54 ID:nwUELrJE0
休憩します!

485: 名無しさん 2017/10/22(日) 14:16:41.44 ID:nwUELrJE0
最原「なんで僕なの? 僕なんかしたっけ?」 

アンジー「学級裁判で神様とは違う答えを出した」 

アンジー「それ以前にもあったけど、このときピンと来たんだよー!」 

アンジー「二人が揃えば無敵だってさー!」キラキラキラ 

最原「いや、僕は……」 

最原(そんなに大したことはしていない。絶対に) 

アンジー「神様は間違えない。神様は強い。神様は救ってくれる」 

アンジー「でもね。できないことはあるよ。だからアンジーたちがいるの」 

アンジー「あとアンジー一人にもできないことはあるし……」 

アンジー「だから、ね? 終一がいれば安心なんだー」 

最原「要は勧誘じゃ……いや、そうだよ! これ勧誘だよ!」 

最原「別に結婚する必要はないよね!?」 

アンジー「あるよー」ダキッ 

最原(問答無用で抱き着かれた!?)ガビーンッ!

486: 名無しさん 2017/10/22(日) 14:26:37.74 ID:nwUELrJE0
アンジー「……神様はすぐに帰っちゃうから」 

最原「……」 

最原「まさかアンジーさん、寂しいの?」 

アンジー「別にー。真の絆は別れた程度で消えたりしないしねー」 

アンジー「でも一つくらい手元に残る絆があってもいいかなーって」 

最原「そういう理由ならお断りだ」 

アンジー「!」 

最原「……僕は巌窟王さんの代わりになれないよ」 

アンジー「……」 

アンジー「ふぅん……」ニヤァ 

スッ 

最原(離れた……) 

アンジー「……」 


スタスタスタ 


最原(そして俯いたまま、どこかに行ってしまった……) 

最原(……言い方がキツすぎたかな。でもこれ以上どう言えば……)

487: 名無しさん 2017/10/22(日) 14:33:56.66 ID:nwUELrJE0
アンジー(わざとだよ。わざとアンジーは自分でも『これはないな』って告白をしたんだよ) 

アンジー(……ああ。なんか……いいなぁ。終一はいい。凄く) 

アンジー(心臓がドクドク言ってる。顔から火が出そう。体がとってもふわふわしてる) 

アンジー(もちろん、あの打算的な言葉に嘘はない。ないけどー……) 

アンジー「……」 

アンジー(神様がアンジーに願わない理由は、アンジーになにか悪いことがあるから) 

アンジー(終一は悪いことを見つける天才) 

アンジー(そしてきっと……神様はアンジーが『終一が欲しい』って言ったら相談に乗ってくれる。優しいから) 

アンジー(……この関係性はきっと運命だよ。だからー) 

アンジー「諦めるとは言ってないよー。一言も。一っ言も、ねー……」ニヤァ

488: 名無しさん 2017/10/22(日) 14:41:26.44 ID:nwUELrJE0
巌窟王サイド 

巌窟王「」チーン 

夢野「たたたたた大変じゃあ! 巌窟王! 死ぬな巌窟王おおおおおお!」 

百田「東条! 俺たちはどうしたらいい!?」 

東条「夢野さんは倉庫から布製の担架を持ってきて」 

夢野「わかっ……!」 

夢野「いや担架!? 布製の!? それって運ぶ人間が二人必要なヤツじゃろ!?」 

東条「二人いるわよ? 私と百田くん」 

百田「東条は除外に決まってんだろ!」 

夢野「ウチは……ウチは……!」 

夢野「見せてやるわい! 魔法のパゥワーをなぁ!」ギンッ 

百田「ヤケクソになってんじゃねーよ! 無理なら無理って言っていいかんな!?」 

夢野「うわああああああああん! 担架ーーー!」ダッ 

百田「よし。アイツは行ったな……俺は他の人手を探して来る! 安心しろ! アテはある!」 

東条「よろしくお願いするわね」 

東条「さて。私は簡易的に応急処置を……この包帯で……」マキマキ 

包帯ぐるぐる巻き王「」チーン 

東条(ミイラ男みたいになってしまったわ……)

489: 名無しさん 2017/10/22(日) 14:46:20.91 ID:nwUELrJE0
超高校級の合気道家の研究教室 

百田「ハルマキ! 茶柱! いるかーーー! 大変だ! 巌窟王が」 

茶柱「チェスト竹●房ォォーーーイッ!」ブンッ 

百田「え。茶柱今何を投げ……」 


ガンッ 


百田(薄れゆく意識の中、俺は思った……) 

百田(そういえばネオ合気道って木刀までならOKって言ってたな)バタリッ 

百田「」チーン 

春川「はあ……はあ……いや木刀をぶん回すならともかくとして投げるってどうなの……」ゼェゼェ 

茶柱「はあ……はあ……春川さんが意外にできる人だから仕方なくって……!」ゼェゼェ 

百田「気絶している場合じゃねぇ!」ガバリッ

490: 名無しさん 2017/10/22(日) 14:51:01.03 ID:nwUELrJE0
百田「おい! 事情は後回しにするが人手が必要だ! どっちか俺と一緒に来い!」 

茶柱「今いいところです! 決着が付くまであと幾分かかかるので、そこで見学してた真宮寺さんに頼んでください!」 

百田「おお! ジャストタイミングだな! 真宮――」 

真宮寺「」チーン 

百田「死んでるーーーッ!?」ガビーンッ 

春川「なんかいつの間にか死んでた」 

百田「明らかにテメェらの巻き添え食らったんだろ! 起きろ真宮寺ィ!」 

真宮寺「うう……世界は危ないものでいっぱい……」 

百田「違う! ここだけが特別に危険なだけだ! 起きろォ!」ガクガク 



結局巌窟王の搬送は時間がかかった。大事には至らなかった

491: 名無しさん 2017/10/22(日) 14:54:40.54 ID:nwUELrJE0
休憩します!

492: 名無しさん 2017/10/22(日) 16:16:34.81 ID:nwUELrJE0
東条の私室 

包帯王「……ハッ! 今、何時だ?」ガバァッ 

東条「起きてすぐの一言がそれなの?」 

包帯王「……夢野のマジッ……」 

包帯王「マジカルショー。見逃すわけにはいかないだろう?」 

包帯王「……」 

包帯王「ところで何故俺はこんなところにいる?」 

包帯王「確か夢野の風船を取ったあと名状しがたい何かを見たような……?」 

東条「何を見たのかは知らないけど、その後あなた屋根から落ちたのよ」 

包帯王「……」 

包帯王(……忘れたフリをしただけだ。我が身の忘却補正が恨めしい)

493: 名無しさん 2017/10/22(日) 16:25:44.75 ID:nwUELrJE0
夜 屋外 

赤松「あ! 来たよ、巌窟王さん!」 

包帯王「来ないと思ったか?」ギンッ 

夢野「前回は来なかったじゃろ、お主」 

東条「……」 

夢野「……何度も言うが、気にするな東条。アレはモノクマのせいじゃからな!」 

夢野「気にしているヤツなぞ……」 

王馬「……」ニヤニヤ 

包帯王(夢野。『誰もいないぞ』と言ったらアイツが絶対に『えー! 俺は気にしてるよー!』と傷口を開きにかかるぞ)ヒソヒソ 

夢野(今気づいたわい) 

夢野「……王馬くらいしかおらんわッ!」 

王馬「!?」ガビーンッ! 

夢野「……かっかっか」 

王馬「……気にしてる、わけ、ない、だろ……」ヒクヒクッ 

獄原「王馬くん。笑顔が物凄く引きつってるよ。大丈夫?」 

王馬「先読みされたのがめっちゃ不満……」ガタガタ 

包帯王「クハハハハハハ!」 

夢野「かーっかっかっかっかっか!」

494: 名無しさん 2017/10/22(日) 16:36:42.94 ID:nwUELrJE0
入間「ところでテメェなんで包帯グルグル巻きなんだよ。コンドームのコスプレか?」 

包帯王「……?」 

包帯王「……!」 

バサッ 

巌窟王「……」 

最原「気付いてなかったんだ……」 

巌窟王「他に気になることがあったから、な」 

最原「え? 何それ?」 

巌窟王「……」 

巌窟王「言う義理があるか?」ギリィッッッ 

最原「!?」ビクゥッ!

495: 名無しさん 2017/10/22(日) 16:43:20.18 ID:nwUELrJE0
アンジー「にゃははー! 今度は全員揃ってるねー!」 

真宮寺「ククク。ま、前とは違うからネ。僕たちは」 

白銀「そうだね! 巌窟王さんのお陰で、段々一つに纏まってきたって感じがするよね!」 

星「……ふっ。悪くはねー、か」 

天海「で? 今度はどんな魔法を見せてくれるんすか? 夢野さん」 

夢野「今度? 違う……ウチは本当の魔法なぞ、まだ一度も見せたことはないぞ?」 

夢野「全てが終わったとき、お主はこういうじゃろう」 

夢野「『産まれてこなきゃよかったっす』となァ!」ギンッ 

天海「笑顔は!?」ガビーンッ! 

夢野「始めるぞ!」

496: 名無しさん 2017/10/22(日) 16:56:38.78 ID:nwUELrJE0
夢野「じゃあひとまず手始めに……」ゴソゴソッ 

最原(ん。帽子の中を漁り始めた) 

ズルウッ 

夢野「モノクマから貸してもらった倉庫のアイテムカタログじゃ」デンッ 

最原(既にこれがマジックだな……凄い分厚い) 

ズルゥッ 

夢野「人数分あるぞ?」デンッデンッデンッ 

最原(もう既に凄い!) 

春川「何コイツ。マジシャン?」 

茶柱「夢野さんは超高校級のマジシャンなんですよ!」 

夢野「魔法使いじゃ魔法使い!」プンプンッ!

497: 名無しさん 2017/10/22(日) 17:08:59.57 ID:nwUELrJE0
夢野「じゃあまず、巌窟王! 欲しいものがあったら言えい! そのカタログの中からの!」 

巌窟王「コーヒーミルがあるな」 

夢野「……目ん玉飛び出させないよう気を付けるんじゃぞー?」ギュムギュムッ 


パァンッ 


巌窟王「!」 

最原(割れた風船の中からコーヒーミルが! カタログと同じヤツ!) 

夢野「プレゼントフォー・ユー! じゃ!」ニコニコ 

巌窟王「……」 

巌窟王「フッ……悪くない」 

夢野「ここまでやれば、後に何が起こるのかはわかるじゃろう?」 

茶柱「夢野さぁん!」 

春川「この『たのしいどうぶつえん』って本が欲しいんだけど」 

夢野「あ。お主ら二人は強制的に医療グッズ限定じゃぞ」 

茶柱&春川「」 

夢野「ボロッボロじゃからな」 

茶柱&春川「」ズーン 

最原「……喧嘩でもした?」 

百田「そういうわけじゃねーんだが……」

498: 名無しさん 2017/10/22(日) 17:18:58.88 ID:nwUELrJE0
夢野「さあ。まだ風船は大量にあるぞ! カタログに書いてあるものなら何でも出してやろう!」 

夢野「これがウチの! 魔法じゃぞ!」 

巌窟王「……」ニヤリ 

最原(滅茶苦茶上機嫌だ……) 

キーボ「あ、あの! じゃあボクは……」 

パァンッ 

夢野「オイルをやろう」 

キーボ「……」 

最原(滅茶苦茶複雑そうだ……ていうか返事を聞く前にやってるし) 

夢野「さあ! どんどん行くぞ!」

499: 名無しさん 2017/10/22(日) 17:25:25.92 ID:nwUELrJE0
最原(その後も夢野さんの魔法は続いた) 

最原(前みたいな悲劇は特にない。ただ夢野さんが生徒の要望に応えてどんどん風船を割って、中からプレゼントを出して配るだけ) 

最原(……平和だった。こんな状況でも、確かに) 

真宮寺「東条さん。昨日とは別人みたいになってるネ」 

東条「!」 

真宮寺「……ククク。顔が晴れやかになってるヨ。僕にはわかる」 

東条「ええ。夢野さんのお陰よ」ニコリ 

真宮寺「……」 

夢野「かーっかっかっか! さあ! 風船は残り僅かじゃぞう!」ニコニコ 





真宮寺「……完璧、だネ」 

東条「どうかした?」 

真宮寺「なんでもないヨ」

500: 名無しさん 2017/10/22(日) 17:26:02.45 ID:nwUELrJE0
休憩します!

501: 名無しさん 2017/10/22(日) 20:55:50.71 ID:nwUELrJE0
巌窟王「……」 



巌窟王の回想 


ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ「さあ! プレゼントをどんどん配りますよー!」 

JDASL「え? なんですかししょー。あのなんか黒炎出してる怖い顔のおじさんにもあげてきなさい……?」 

JDASL「え。あの正気ですか。サンタって子供にしかプレゼントは……いや、いいですけど……」 

JDASL「あ、あの……プレゼント……さっき王妃様に貰ったとっておきのマカロンなんですけど……」 

JDASL「……うう……後で私が食べようと思ってたのに……え? いい? くれてやる?」 

JDASL「貰ったものをどうしようが俺の自由だろうって……? ば、バカにしないでください!」 

JDASL「それはそれとして論理は完璧ですから貰いますけどね! 返しませんからね! いいんですね!?」 

JDASL「や、やったぁ……」 


回想終了 


巌窟王「……」プッ 

最原「何か思い出し笑いしてる……」

502: 名無しさん 2017/10/22(日) 20:59:37.42 ID:nwUELrJE0
夢野「さて。風船も残り一個じゃのう」 

夢野「……今までの学園生活の立役者である巌窟王にやろうかの?」 

巌窟王「辞退しよう。それは我がマスターのアンジーに渡せ」 

夢野「了解じゃあ。ではアンジー。他に欲しいものはあるか? 既に結構渡しておるが」 

アンジー「うーんとねー……」 

アンジー「終一!」 

夢野「そうかー。最原かー。よし、それじゃあ」 

夢野「は?」 


パァンッ 


最原「……」 

巌窟王「……」 






一同「……」 

一同「……ゑ?」

503: 名無しさん 2017/10/22(日) 21:04:17.78 ID:nwUELrJE0
最原(最後の風船は割れた。だが中身が現れることはなかった) 

夢野「それって……どういう意味で?」 

アンジー「お婿さんに欲しいなー。終一が」 

赤松「……」 

巌窟王「……」 

最原(そして……みんなの視線がこちらに向く……) 

最原(僕はいつの間にか冷や汗でビッショリで……いつの間に流れていたのかまったくわからなくって……) 

巌窟王「最原」 

最原(その声を聞いた途端に震えが止まらなくなった) 

最原(もう熱いのか寒いのかわからない。熱砂の砂漠のど真ん中のように熱いし、冬の湖の中のように冷たい気もする) 

ポンッ 

巌窟王「……返事は?」ゴゴゴゴゴゴゴ 

最原「さっき伝えました……」 

巌窟王「なんと?」 

最原「断ったんです……」 

最原(涙も止まらない。後ろから肩に手を置かれているけど振り向けない) 

最原(ここが地獄かな?)

504: 名無しさん 2017/10/22(日) 21:10:16.15 ID:nwUELrJE0
最原(おかしいなあ。さっきまで僕たちは……) 

最原(束の間の平和を甘受してたはずなのになぁ……) 

巌窟王「……」 

巌窟王「……そうか……」 

巌窟王「よし。燃やすぞ?」 

最原「」 

赤松「やめてーーー! お願い、巌窟王さん落ち着いてーーー!」ガビーンッ! 

百田「アンジー! 冗談だよな!? 冗談なんだろ!?」 

アンジー「冗談じゃないよー! 本当に終一と結婚したいんだってー!」キラキラキラ 

キーボ「わあ。素敵な笑顔」 

入間「ダサイ原にとっては悪魔の笑顔だけどな……」 

春川「えーと、なに? 状況がよくわからないけど……」 

春川「おめでとう?」パチパチパチ 

王馬「おめでとー!」パチパチパチ 

アマデウス斎藤「静まりたまえー! 静まりたまえー!」 

獄原「その仮面まだ持ってたの!?」

505: 名無しさん 2017/10/22(日) 21:15:28.05 ID:nwUELrJE0
最原(こうして夢野さんのマジカルショーは混沌の内に終わった) 

最原(アンジーさんの爆弾発言による余波を残して……) 

最原(後に何が起こったのかは覚えていない) 

最原(あまりにも……大騒ぎしすぎて疲れたので、バッタリ気絶するように眠ったこと以外は覚えていない……) 

巌窟王「我が霊基を犠牲にしてでも、この学園を破壊する……最原ごと……な」 

白銀「もうやめて巌窟王さん! 最原くんの精神的ライフポイントはゼロよ!」 

巌窟王「はなせ!」 

夢野「じゃあ後片付けは明日に回して今日はもう解散じゃあ。めんどい」スタスタ 

真宮寺「真っ先に逃げちゃったネ」 

東条「……ふふっ……」

510: 名無しさん 2017/10/23(月) 18:53:30.77 ID:yOGFXvaj0
翌日 食堂 

赤松「で。えーと。昨日は色々あったけど」 

アンジー「終一ぃー」スリスリ 

最原「……」ズーン 

赤松「されるがままに抱き着かれてるね。最原くん……」 

百田「おい。こんなところ巌窟王に見られたら、またアイツ怒るぞ」 

アンジー「あ。大丈夫。今日の神様は部屋で不貞寝してるから」 

夢野「メンタル弱ァ……」 

アンジー「少し経ったらモノクマにカウンセリング頼んでるから部屋に来ないでくれって」 

星「本当にショックだったんだな……」 

東条「まあ……彼は夜長さんのことを相当可愛がっていたから当然と言えば当然かしら」 

王馬「それを横からかっさらうとか、最原ちゃんも相当命知らずだよねー!」 

王馬「……」 

王馬「本当に死にたいの?」 

最原「ガチトーンで問いかけるのやめて……!」ガタガタ

511: 名無しさん 2017/10/23(月) 18:57:28.48 ID:yOGFXvaj0
最原「ええっと、アンジーさん。僕はそろそろ……」 

アンジー「どこ行くのー? アンジーもついていくよー!」キラキラキラ 

最原「あの……本当に迷惑じゃないっていうか、迷惑じゃないんだけど僕たちは離れてた方がいいっていうか……」シドロモドロ 

最原「いややっぱり迷惑なので近づかないでくれると嬉しいなぁ!」 

真宮寺「もう形振り構ってられないんだネ」 

春川「百田。私、思い出した。ああいうのをスケコマシっていうんでしょ?」 

百田「あんまり思い出しても嬉しくない知識だな……」 

茶柱「……」 

最原「……」 

茶柱「……ハッ……」スタスタスタ 

最原(めっちゃ見下した笑み浮かべてどこか行っちゃった……)

512: 名無しさん 2017/10/23(月) 19:02:37.84 ID:yOGFXvaj0
数十分後 屋外 

夢野「と、いうわけで! 後回しにしたマジカルショーの片付けを開始する!」 

夢野「が! その前に!」 

最原「その前に?」 

夢野「……ウチの研究教室から手品用の鳩が一匹いなくなったんじゃ」 

夢野「最原。片手間に探してほしいんじゃが」 

最原「う、うん。任せてよ」 

最原(鳩……?) 



同時刻 アンジーの私室 


モノクマ「どんな気分ですか?」 

巌窟王「シャトーディフにとらえられた数年後並みに頭が重い……」 

巌窟王「未来に希望が持てない……これが現実なのか……」 

モノクマ「明日はアンジーさんも一緒にカウンセリングした方がいいかもしれないですねー」 

巌窟王「段階をいくつか吹っ飛ばしてるな! 真面目にやれ!」 

モノクマ「はぁい」

514: 名無しさん 2017/10/23(月) 20:24:54.57 ID:yOGFXvaj0
中庭 

最原「……鳩……鳩か……安請け合いしちゃったけどそうそう簡単に見つかるわけないよな」 

最原「というか既に外に逃げちゃった可能性もあるし……」 


ドガシャーンッ! 


入間「あああんじゃこりゃあああああああああッ!」 

最原「!?」ビクゥッ 

最原(今の声……研究教室の方か?) 

バターンッ 

入間「ち、ちくしょう! やりやがったな! やぁりやがったな、ちくしょーーー!」 

入間「……ハッ! ダサイ原! テメェの仕業かァ!? ああん!?」 

最原「え? 何が?」 

入間「とぼけてんじゃねぇ! 俺様の研究教室から巌窟王と同じ色の……!」 

入間「……な、なんでもねぇ……!」 

入間「……クソッ……クソッ……ふざけやがって……! 燃やされる前に取り返さねぇと」ブツブツ 

最原「……?」 

最原(不満気な声を漏らしながら、入間さんは自分の研究教室へと戻って行った)

515: 名無しさん 2017/10/23(月) 20:28:13.33 ID:yOGFXvaj0
図書室 

天海「さーてと。それじゃあ俺はいつも通り、魔術に関する書籍の再分析を……」 

天海「……ん……?」 

天海「あれ。これは……そんな!?」 

天海「ページがいくつか破り取られてる!? なんで!?」ガビーンッ 



中庭 

最原(そう。この時点で、わかってもよかった) 

最原(一度狂った歯車は、元には戻らないんだってことを……) 

最原(……わかってもよかったんだ)

520: 名無しさん 2017/10/24(火) 20:52:17.73 ID:4wi8FiL30
王馬「完成! 悪の総統印の落とし穴ー!」 

獄原「ええっ!? 土を掘ってみれば虫さんがいるかもって王馬くんが言ってたから掘ったんだけど!?」 

王馬「ああ、ごめんねゴン太。今のは嘘なんだ。冗談だよ」 

獄原「冗談だった! よかった!」 

白銀「王馬くーん。こんなところに呼び出してなんのつもりー?」スタスタ 

獄原「あれ。白銀さんも呼んでたの?」 

王馬「ちょっと用事があって……ああっ! 白銀ちゃん! あそこに!」 

白銀「え?」 

王馬「あそこに野生のマフィア梶●がーーー!」ビシィッ 

白銀「マフィアさーーーん! 羽海野チカ先生のサインくださーい!」ダッ 


ズボォッ 


白銀「きゃー!」 

王馬「……マフィアのサイン貰いなよ……まあいいや」 

王馬「悪は滅びた。このまま放置して帰るぞ、ゴン太!」 

獄原「……」 

王馬「ん? どうした木偶の坊?」 

獄原「う……」 


バタリッ 


王馬「……は? ゴン太?」

521: 名無しさん 2017/10/24(火) 21:11:52.21 ID:4wi8FiL30
三十分後 獄原の私室 

東条「過労ね」 

白銀「か、過労!? なんで!? ゴン太くんがそういうのと一番無縁そうなのに!?」 

獄原「う、うう……最近は巌窟王さんに憧れて、トレーニングしてたからかな……」 

獄原「寝る前に腕立て伏せ一万回腹筋一万回スクワット一万回背筋一万回インナーマッスル強化トレーニングもろもろ多数とか……」 

王馬「わかっていたことだけどやっぱりお前、バカだろ」 

獄原「ご、ごめん……」 

白銀「って言ってる割には部屋まで運んだり東条さん呼んだり……男のツンデレ?」 

王馬「やだなー。俺が優しいからだよ。もう白銀ちゃんにはわかってたことだと思ったんだけどなー」 

白銀「え。やさしさ? どの口が?」 

王馬「ショック!」

522: 名無しさん 2017/10/24(火) 21:18:26.38 ID:4wi8FiL30
夕方 食堂 

鳩「くるっぽー」 

夢野「おお! ハトムギ! 帰ってきたか!」 

最原「ええっと……近くの木に留まってたからどうにか連れてきたけど」 

最原「ハトムギ……」 

夢野「よくやったぞ最原。後で撫でてくれてもよいぞ?」 

最原(僕が撫でる側かよ) 

最原「……巌窟王さんが食堂にいないのはともかくとして」 

最原「他にもアンジーさんやゴン太くんがいないな」 

東条「獄原くんは……しばらく食堂には来れないと思うわ」 

王馬「アイツは過労でぶっ倒れてるからね」 

百田「なにぃ!?」 


ヤイノヤイノ 


最原「……」 

最原(……なんだろう。特に何が起こったってわけじゃないんだけど……) 

最原(イヤな予感がする……)

523: 名無しさん 2017/10/24(火) 21:22:32.53 ID:4wi8FiL30
アンジーの研究教室 

ボオッ 


巌窟王「これは……!」 

アンジー「どう? これがアンジーの……神様に捧げる、本気だよ……」ニヤッ 

巌窟王「……なんてことを……アンジー……!」 

アンジー「罰は受ける。だから神様、どうか……」 

アンジー「アンジーの話を、聞いて?」

524: 名無しさん 2017/10/24(火) 21:25:01.15 ID:4wi8FiL30
最原(……水面下で何が起こっているのか、なんて僕たちに知る由はなく) 

最原(知ることができたとして、何を変えられたわけでもない) 

最原(次の日の夜。僕たちは直面しなければならなくなる) 

最原(……多くの人間を巻き込んだ『最悪』の事件に)

528: 名無しさん 2017/10/25(水) 18:31:01.27 ID:g+XyUiG70
翌朝 

最原「……」 

最原(体が……重い) 

最原(何故だろう。昨日からイヤな予感が止まらない) 

最原(……周期的にはそろそろモノクマの動機の提示があってもおかしくないころだけど) 

最原(……警戒はしておこう。とにかく、朝ご飯を)ガチャリンコ 



巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴ 

最原「」 

巌窟王「……すぐに済む。時間は取らせない」 

最原(瞬殺的な意味で?)

529: 名無しさん 2017/10/25(水) 18:34:09.21 ID:g+XyUiG70
巌窟王「……」ポンッ 

最原「え」 

最原(肩に手を置かれた……そこから炭化させられるのかなー。急所を燃やされてサクッと逝きたいんだけど) 

巌窟王「……」 

巌窟王「アンジーを……頼んだ……」 

最原「え」 

巌窟王「不本意だ。不本意だが……!」 

巌窟王「マスターの意志を曲げる矜持を俺は持たない。故に、これ以上は何も言うことはない」 

巌窟王「……本当に……不本意だ……」スタスタ 

最原「いやそんな悲しそうな顔されても……」 

最原「待って。行かないで。あの!」 

最原「だから僕、断ったんだってーーーッ!」ガビーンッ!

533: 名無しさん 2017/10/25(水) 19:34:12.24 ID:g+XyUiG70
食堂 

最原「……あの……アンジーさん……」 

アンジー「なぁに、終一ー? なんでも言ってー! 未来の夫婦なんだからねー!」キラキラキラ 

最原「くっつくのをやめてください……」 

アンジー「それはヤダ」 

赤松(ガチトーンだ……) 

最原「だから僕は巌窟王さんの件が仮になかったとしてもアンジーさんとは付き合えないんだって……」 

アンジー「終一ー」スリスリ 

最原「主従揃って話を聞かないなぁ、もう!」 

王馬「巌窟王ちゃんは? どうしたの?」 

百田「……さっき学園の屋根で寂しそうに空を見上げているのを見たぞ……」 

春川「凄い遠い目をしてたね」 

天海「……ちょっと様子見てくるっす。相談したいこともあるので」スタスタ

534: 名無しさん 2017/10/25(水) 19:45:35.79 ID:g+XyUiG70
白銀「でも凄いよねアンジーさん。この前までは最原くんからアンジーさんを殺してでも奪い取る勢いだったのに」 

最原「元からもらってない……!」ガタガタ 

白銀「どうやって説得したの?」 

アンジー「……秘密ー!」 

アンジー「真面目な話、ちょっと言えないような手段だしさー……」 

アンジー「神様から本気で心配されちゃう始末だったし……」 

アンジー「……だから、ね? アンジーの犠牲のためにも、お願い。お婿さんになってー!」キラキラキラ 

最原「知ったことじゃないッ!」 

真宮寺「最原くんも最原くんで、なんか不自然なくらい拒絶してるよネ?」 

真宮寺「そんなに仲悪かったっけ? あるいは他に好きな人がいるとか?」 

最原「いや、それは……!」 

最原(アンジーさんの告白の理由が死ぬほど不誠実だったからなんだけど……) 

最原(……万が一巌窟王さんの耳に入ったらマズイよな。代わりがいるだなんて思われたくないだろうし) 

最原「……」 

赤松「え? 本当に好きな人がいるの?」 

最原「いないけどさ!」

535: 名無しさん 2017/10/25(水) 19:55:36.48 ID:g+XyUiG70
入間「……くそ……見つからねぇ……ちくしょう……善行詰んだ俺様になんて仕打ちを……」ブツブツ 

鳩「くるっぽー」 

夢野「なんか調子悪いんじゃよなー。変なものでもついばんだかー?」 

東条「吐き出させてみせましょうか? いっそのこと出るまで待つのも手だとは思うのだけど」 

王馬「……で。ゴン太はどうしたんだっけ?」 

星「過労でぶっ倒れてるって話だったろうが」 

最原「……」 

最原(……やっぱりいつも通り平和、だよな。気のせいだったのかな) 

アンジー「にゃははー!」 

最原「本当に離れてよ……!」 

茶柱「……」 

茶柱「……フッ……」スタスタ 

最原(アンニュイな笑み浮かべてどっか行っちゃったよ……)

536: 名無しさん 2017/10/25(水) 19:59:28.63 ID:g+XyUiG70
屋外 

天海「それでーーー! よく見てみたら破り取られたページっていうのがー!」キィィィン! 

天海「目次を見てみる限り『令呪の移譲』についての項目でー!」ポヒュンポヒューン! 

天海「なくなったページがページっすからー! 凄いイヤな予感がするんすよー!」ポヒュキィィンッ! 

巌窟王「……」ボーッ 

天海「ダメだ。聞いてるのか聞いてないのか全然わかんない……」 

モノタロウ「ねー。そろそろエグイサル返してー。お父ちゃんから他の拡声装置を何かしら借りてくるからさー」 

天海「ごめんなさいもうちょっと……」

540: 名無しさん 2017/10/26(木) 19:33:56.54 ID:VeeOGTSw0
百田「さてと。色々ゴタゴタがあったが、今日こそは終一を見つけて茶柱のところにけしかけてやるぜ」 

百田「終一ー! どこだー!」 

赤松「さっきアンジーさんから逃げて全力疾走してたけど……」 

百田「アイツ本当に面倒ごとに巻き込まれる天才だな……」 

アンジー「終一ー。どこー?」キョロキョロ 



超高校級のメイドの研究教室 

最原「……しばらくクローゼットの中に隠れていよう」

541: 名無しさん 2017/10/26(木) 19:40:27.27 ID:VeeOGTSw0
数時間後 

トントントントン 

最原「……ハッ! しまった、寝ちゃってた」 

最原「ん……包丁の音?」 

最原(……ちょっとだけクローゼットを開けて覗いてみよう) 

茶柱「食材を切るときは猫の手……食材を切るときは猫の手……!」 

東条「ふふ。そう。上手よ、茶柱さん」 

最原(……茶柱さんが東条さんと料理してる……) 

東条「ごめんなさい。手が無事だったなら手伝わせたりはしなかったのに」 

茶柱「いいんですよ! むしろ転子は東条さんの役に立てて嬉しいくらいです!」 

最原「……」

542: 名無しさん 2017/10/26(木) 19:52:30.11 ID:VeeOGTSw0
茶柱「……でもゴン太さんの過労を治すためとは言え、これから深夜までアク取りでしょう?」 

茶柱「大丈夫ですか? なんなら転子も手伝いますが……」 

東条「いいのよ。仕事ですもの。なにより私がやりたいの」 

茶柱「でも……」 

東条「……みんな優しすぎるわね。本当に」 

東条「大丈夫。自分を犠牲にしすぎるようなことは、みんなのためにもしないわ」 

茶柱「……ん……ちょっとは立ち直ったようですね」 

茶柱「よかった。でも、転子は結局なにもしてあげられませんでした」 

茶柱「……それが心残りです」 

東条「その言葉だけで充分すぎるわ」 

東条「でもそうね、もしも私のために何かをしたいというのなら、もう一つ」 

茶柱「なんですか?」 

東条「……最原くんのことを、あんまりイジメすぎないであげて?」 

茶柱「ッ!」 

最原(……別にいいのに。茶柱さんは僕を責める資格がある) 

最原(というより、彼女みたいな主張を持っている人間がいないと、逆にこの空間が狂っていくだけだ) 

最原(……許してくれなんて言えないしね。図々しすぎて)

543: 名無しさん 2017/10/26(木) 20:01:02.14 ID:VeeOGTSw0
東条「思うに、私だけじゃないのよ。自分を傷つけることで罪悪感を軽くしようってもがいてる人は」 

東条「最原くんは、茶柱さんに憎まれることを当然のことだって思っているんでしょうけど」 

東条「茶柱さん。あなたも……」 

茶柱「……許したいと思っているのに、きっかけがないからできない」 

最原「!」 

茶柱「東条さんにはかないませんね」 

東条「メイドですもの。このくらいは当然だわ」 

茶柱「……そうですね。東条さんも、もう大丈夫そうです」 

茶柱「あの男死のことは心底気に食わないのですが、東条さんがそう言うのであれば」 

茶柱「……許す努力はしてみます」 

最原「……」 

最原(僕は許されていいのかな) 

最原(よく……わからないや) 

最原(茶柱さんは凄いなぁ。あんなに怒ってたのに、僕のことを許す努力をするって?) 

最原「……う……!」ポロッ

545: 名無しさん 2017/10/26(木) 20:05:58.86 ID:VeeOGTSw0
茶柱「じゃあ転子はこれで! 東条さんも本当無茶しないでくださいねー!」 

東条「大丈夫よ。まだ無茶をすると手から出血してしまうもの」 

東条「この痛みがリミッターになってくれるわ」 

茶柱「あんまり使ってほしくないリミッターですね……」 

茶柱「じゃ、転子は行きます。お疲れ様でしたー!」ピューッ 

東条「また明日、ね」 

東条「……さてと」 

東条「そろそろ出てきたら? 最原くん」 


ガチャリンコ 


最原「……」グスッ 

東条「なんでそんなところに……」 

最原「アンジーさんから逃げてた」 

東条「そう」

546: 名無しさん 2017/10/26(木) 20:17:30.66 ID:VeeOGTSw0
最原「……本当凄いね、茶柱さん。僕を許すって?」 

最原「間違ってないだけで、東条さんに酷い傷を負わせたのは事実なのにさ」 

最原「別に許さなくってもよかったのに……」 

東条「最原くん。いいのよ」 

最原「……」 

最原(……何一つとしてよくない。僕は、そうとしか思えない) 

東条「……みんなに許されるチャンスをくれたこと、感謝してるわ」 

最原「やめてよ。キミを助けたのは巌窟王さんだ。それに東条さんが僕に感謝なんかしたらさ」 

最原「……なんか共謀してたみたいに見えちゃうよ。東条さんもそれはイヤでしょ」 

東条「ふふ。そうね。だから一度きりしか言わないわ」 

東条「それに、私を助けてくれたのは確かに巌窟王さんだけど……」 

東条「あなただって、巌窟王さんと同じくらい格好いいのよ?」 

最原「僕が?」 

東条「ええ」 

最原「……」 

最原「はは。面白い冗談だね、それ」 

東条「えっ」 

最原「……もうこれ以上は話さない方がいい、よね」 

最原「必要もなさそうだ。キミはもう大丈夫」 

東条「待って。冗談のつもりじゃ……」 

最原「……じゃあね」スタスタ 

東条「……」 

東条「卑屈すぎ……ね」

547: 名無しさん 2017/10/26(木) 20:23:02.70 ID:VeeOGTSw0
最原(……僕は正しくない。でも間違ってもいなかった) 

最原(大丈夫。もう東条さんは裏切らない。自分を無暗に傷つけたりもしない) 

最原(……少し早めだけど、僕は部屋に戻ることにした) 

最原(アンジーさんとも鉢合わせず。このまま僕は……時間を潰して……) 




数時間後 夜時間 三つの空き部屋 


ギコ……ギコ…… 


真宮寺「ふう……こんなもの、かな」 

真宮寺「さて。誰かに気付かれる前に片付けないと」セッセッ 


ガララッ 


真宮寺「……ッ!?」 

アンジー「あれれー? 是清ー! こんなところで何してるのー?」 

真宮寺「……」 





ガンッ!

552: 名無しさん 2017/10/27(金) 17:36:25.74 ID:2i6irfEA0
最原「……ん……?」 

最原(時間は十一時五十分……なんだかすごく中途半端な時間に起きてしまった) 

最原「……睡眠が浅いのかな。寝なおそう」 

最原「……」スヤァ 


ドンドンドンッ 

ピンポンピンポンピンポーン! 


最原「!」ガバァッ 

最原「……誰だ? こんな時間に」 

ピンポンピンポンピンポーン! 

最原「はい! 今出るからそんな慌ててインターホン押さないで!」 

ガチャリンコ 

茶柱「た、たたたっ、大変です最原さぁん!」 

最原「……茶柱さん? 珍しいね。時間も変だけど」 

茶柱「そ、そんなことを言っている場合じゃなくって! 早く! 外に出て!」 

最原(その慌てようは尋常ではなかった。段々と頭が冴えてくる) 

最原「何があったの?」 

茶柱「て、転子の……転子のッ!」

553: 名無しさん 2017/10/27(金) 17:39:18.88 ID:2i6irfEA0
茶柱「超高校級の合気道家の研究教室が燃えてるんですーーーッ!」 

最原「……」 

最原「はあッ!?」ガビーンッ 



寄宿舎の外 


最原「……た、確かになにか焦げ臭い! 尋常じゃないくらい!」 

最原(ついでに中庭の方角が妙に明るい気がする!) 

茶柱「転子は他のみなさんも起こしてくるので、最原さんは研究教室の方へ!」 

茶柱「人数集めて消火活動すれば、どうにかなるかもしれません!」 

最原(そんなレベルだとは思えないけど……でも様子も見たい。乗ろうか) 

最原「わかった! 先に行ってるね!」ダッ

554: 名無しさん 2017/10/27(金) 17:46:58.13 ID:2i6irfEA0
茶柱の研究教室「」ボオオオオッ! 

最原「う……なんだこれ。不自然なくらいに炎上してる……」 

最原「なんでこんなことに――!」 


オオ……オオオオオ……! 


最原「ん? この声……なんだ?」 

巌窟王「おおおおおおおおおお……ッ!」 

最原「……巌窟王さんの声? どこから……?」キョロキョロ 

最原「……」 

最原「嘘でしょ」 

最原(燃え盛る研究教室の中。黒い炎がチラりと見える) 

最原(何度も僕たちを助けてくれた、あの黒い炎は見間違えるはずもなく……!) 

最原「巌窟王さん!? 何してるの!?」 

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおお……!」 

最原(その炎の主はしかし、出てくる気配が何故か無かった)

555: 名無しさん 2017/10/27(金) 17:51:59.88 ID:2i6irfEA0
最原「……そうか。茶柱さんが慌ててた理由がなんとなく理解できた!」 

最原「中に巌窟王さんがいるからか!」 

最原(なんで中にいるのかは皆目見当も付かないけど) 

茶柱「さ、最原さぁん! ひとまず夢野さんと百田さんを連れてきましたよー!」ドタドタッ 

夢野「なんじゃあ!? こりゃあ!」ガビーンッ 

百田「おいおい! 冗談だろ! あん中に巌窟王がいるってのかよ!」 

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおおお……!」 

茶柱「あの声と炎の色を見ても、まだそんなことが言えると!?」 

百田「マジかよ」 

最原「色々質問があるけど、最初にこれだけは」 

最原「人数が少なくない!?」 

茶柱「今は赤松さんが転子の代わりに部屋を回って人を集めてます!」 

最原(じゃあ後から増員が期待できるってことかな) 

最原「茶柱さん! 状況を教えてくれない!?」 

最原「何があったの!?」

556: 名無しさん 2017/10/27(金) 18:01:52.40 ID:2i6irfEA0
茶柱「ことの発端は今から大体十分前のことでした。寝付けなくって、転子が寄宿舎の外に出たんです」 

茶柱「外の空気を吸って気分でも入れ替えよう……とか、そんな理由で」 

茶柱「そのときちょうど寄宿舎へと戻ってきていた巌窟王さんと顔を合わせました」 

茶柱「そのときです。どっちが先に気付いたのはもうまったく覚えてませんが、転子の研究教室が炎上していることに気付きました」 

茶柱「二人して研究教室まで走って行って、それで……」 

茶柱「巌窟王さんが炎の中に『何か』があることに気付いて、言ったんです」 

茶柱「『人手が必要かもしれない』と」 

茶柱「……聞き返す前に巌窟王さんは一人で……ん? うん……ええ」 

茶柱「『一応一人で』中に入っていってしまいました」 

最原(なんかところどころ不明瞭っていうか、あえてボカされた部分がある気がするけど) 

最原「なるほど。大雑把な事情はわかったよ」 

百田「とにかく、中に巌窟王がいんだな!? ならさっさと鎮火させるぞ!」 

夢野「このままじゃ巌窟王のスモークステーキの出来上がりじゃあ! 一刻を争う!」 

夢野「このあたりに水道は……!」 

茶柱「一番近いものはあっちにあります! バケツもいくつかそこに!」 

夢野「バケツリレーの開始じゃあああああああッ!」ダッ 

百田「行くぞおおおおおおッ!」ダッ 

最原「……」 

最原(なんだ? 巌窟王さんは何に気付いた……?)

557: 名無しさん 2017/10/27(金) 18:07:50.23 ID:2i6irfEA0
巌窟王「……やはり見つけたぞ。これは……!」 

焼け焦げたペットボトル「」ボロッ 

巌窟王「だが『ヤツ』が見つからない! どこだ。どこにいる!」 

巌窟王(火事で発生する有毒ガスは問題なく無毒化できるが……それはそれとして熱い) 

巌窟王(この火事を発生させたのは間違いなく生徒だ。ならば俺がその影響を受けるのも必定) 

巌窟王(あまり長い時間はかけられないな) 

巌窟王「……何故だ。何故魔力の供給が安定しない……こんなときに……!」 

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおッ!」

560: 名無しさん 2017/10/27(金) 19:27:13.22 ID:2i6irfEA0
十二時五十分 

最原「ダメだ! 全然鎮火しないよ!」 

赤松「なんならさっきより火力が上がってる気もするんだけど……!」 

百田「……ごほっ……ごほっごほっ……!」 

百田「やべ、ちょっと出た」ゴシゴシ 

春川「百田?」 

百田「ヘーキだ! まだやれるぞ! 俺ァ!」 

巌窟王「おおおおおおおおおおお……!」 

天海「……妙っすね。一体あの中で何をしてるんでしょう。巌窟王さんは」 

最原(もしかしたら何かを言っているのかもしれないけど……) 

最原(それを聞き取れる程度には巌窟王さんの声が漏れてきてくれないんだよな) 

最原(そうか。火事って結構、音も凄いんだな)

561: 名無しさん 2017/10/27(金) 19:40:41.16 ID:2i6irfEA0
午前一時十分 

夢野「よしキーボ! 行けい! 今こそ救助ロボの力を見せるときじゃ!」 

キーボ「そんな目的のために作られたわけじゃありません! 無理です! 死にます!」 

最原「……」 

最原(いつの間にか人が増えている……のは、赤松さんが声をかけてくれたおかげだろうけど) 

最原「……?」 

最原(人が……減ってる気がする) 

最原(いや、最初のときと比べると間違いなく増えてる。んだけど……) 

最原(さっきいたはずの人がいなくなったりしてないか?)キョロキョロ 

最原「茶柱さんは?」 

夢野「んあ? 転子?」 

キーボ「さっき『ちょっとしたらすぐ戻ってきます』って言って、どこかに走って行きましたが」 

最原「……」 

最原(待てよ。巌窟王さんの『人手が必要になるかもしれない』って、どういう意味だ?) 

最原(てっきり火事をどうにかするのに、って意味だと勘違いしてたけど……!) 

最原「……茶柱さんを探して来る!」 

夢野「んあ?」 

最原「ごめん、時間はかけないから!」

562: 名無しさん 2017/10/27(金) 19:46:55.12 ID:2i6irfEA0
最原(考えろ。こんなときに茶柱さんが現場を離れるに至った理由……!) 

最原(……そうだ。赤松さんが生徒を呼んだのは寄宿舎の中でのことだ) 

最原(だとすると寄宿舎にいない人間は当然呼べない) 

最原(じゃあ、茶柱さんは『赤松さんでは呼べない人』を呼びに行ったんじゃ……) 

最原(もしかしたら倉庫に何か便利な道具……消火剤とかを取りに行ったのかもしれないけど……) 

最原(どっちにしろ空振りにはならない。僕が行くべきは……!) 




超高校級のメイドの研究教室 

茶柱「……おかしいですね。ここで料理しているはずなんですけど……」 

茶柱「女子トイレにも姿はありませんでしたし……」キョロキョロ 

茶柱「ううーん。引き返すべきですかねー……?」 

茶柱「あれ。なんでしょう。この掃除道具用ロッカー……なにか……変ですね?」

563: 名無しさん 2017/10/27(金) 19:48:50.33 ID:2i6irfEA0
超高校級のメイドの研究教室周辺 

最原「ふう……ふう……疲れてきたな……ちょっと走り過ぎたかも」 

最原「でも急がないと、だよな。巌窟王さんをあのままにはしておけないし……」 


……アアアア……! 


最原「ん?」 

茶柱「……いやあああああ……!」 

最原「……茶柱さんの声? いや……」 

最原「悲鳴?」

564: 名無しさん 2017/10/27(金) 19:52:29.37 ID:2i6irfEA0
最原「……!」ダッ 

最原(気付いたら走り出していた) 

最原(……段々と茶柱さんの声が大きくなっていく) 

茶柱「誰か……誰かああああああああ!」 

茶柱「お願い! 誰か助けてえええええええ!」 

茶柱「誰か……誰かああああああああ!」 

最原(辿り着いた先は、超高校級のメイド教室の入口) 

最原(悲鳴は中から聞こえてきている) 

最原(僕はそのドアノブを握ったとき、手に汗をかいていたことに気付いた) 

最原(……疲れ? 違う。僕は……ドアを開けたくなかったんだ) 


ガチャリンコ 


最原「茶柱さん! どうか……した……?」 

最原「え?」 

最原(その先にある光景を、僕は一番見たくなかった)

565: 名無しさん 2017/10/27(金) 19:56:23.21 ID:2i6irfEA0
茶柱「あ、あ、あう……最原、さん……!」 

茶柱「助けて……!」 

最原「……」 

最原(助けを求められているのに、足がすくんで動けない) 

最原(ドアを開けた先にいるのは、血塗れの茶柱さん……?) 

最原(違う) 

最原「東条さん……?」 

最原(血塗れで、ぐったりしている東条さん。それを抱いて泣きじゃくっている茶柱さんの姿だった) 

最原(……僕は……巌窟王さんの言葉の意味を、勘違いしていたんだ) 



第三章 

Unlimited 在校生 Works 非日常編

568: 名無しさん 2017/10/27(金) 20:24:21.51 ID:2i6irfEA0
最原(東条さん……) 

最原(超高校級のメイドとして、僕たちに奉仕してくれていた女の子) 

最原(……責任の大きさを利用されて、僕たちを裏切りはした。でも罪悪感も呑み込んで、先に進める人だった) 

最原(これから、いいことがいっぱいある。あるはずだったんだ。なければいけなかったんだ。この人は) 

最原(その東条さんが――) 

茶柱「最原さん……!」 

最原「……死んでるの?」 

茶柱「……」 

茶柱「動かなくって……ぐったりしてて……」 

最原「……」 

最原「嘘だ……こんなの。起きてよ……東条さん!」 

最原「目を開けてよ、東条さんッ!」 





東条「了解したわ」スック 

茶柱&最原「え゛」 

東条「……頭がくらくらするわね。ごめんなさい。次の指示を貰う前に治療してもいいかしら?」フラフラ 

最原「……」 

最原「生きてるじゃんッ!」ガビーンッ 

茶柱「う、うえええええええええん! よかったあああああああああ!」ダバーッ

569: 名無しさん 2017/10/27(金) 20:29:26.10 ID:2i6irfEA0
茶柱「え、ええと! 治療できる人……天海さんを呼んできますね! ちょっと待っててください!」ダッ 

最原「あ、う、うん!」 

東条「……つっ……!」 

最原「大丈夫? 東条さん……って」 

最原(そんなわけがない。どう見ても無事じゃない) 

最原(ただ、傷口からはいまいち殺意を感じないのも確かだ) 

最原(……手加減されてる?) 

最原(大雑把に見て、血が流れ出てるのは頭部。出血は酷そうだが、意識もハッキリしているし、止血さえすれば現時点では問題はなさそうだ) 

最原「……他に怪我はない?」 

東条「手が……痛いわ」 

最原「手?」 

東条「両手が……ちょっと動かすのを躊躇する程度には、痛いの」 

最原「……手袋を取って見せてくれる?」

570: 名無しさん 2017/10/27(金) 20:38:01.23 ID:2i6irfEA0
ボタボタッ 

最原「……!」 

最原(手袋の下には包帯。これは前に見た通り) 

最原(ただ、その包帯ごと手が真一文字に切り裂かれていた) 

最原(両手ともに) 

東条「これは……どういうことかしら?」 

最原「……」チラッ 

最原(考えろ。茶柱さんは東条さんを抱きしめていた) 

最原(抱き上げた……って感じじゃない。どこかから東条さんが落ちて来るか倒れて来たのを受け止めてああなった感じだ) 

最原(だとすると、その前の東条さんはどんな状態だった?) 

最原(……すぐ近くに掃除道具を入れる縦長のロッカーがある。ドアは開かれていて、モップが倒れて飛び出している) 

最原(床には引きずったような痕……) 

最原(後で茶柱さんから訊かないとなんとも言えないけど、茶柱さんが発見するまで東条さんはこの中にいたのかな) 

最原(……いや。いたはずだ。ロッカーのドアの隙間に固まった接着剤がついてる) 

最原(多分これでドアを固定して東条さんがドアに倒れ込み、外に飛び出すのを防いだんだろう) 

最原(……わからない。なんでこんなことを……?) 

最原(……いや。心当たりはある。最悪の可能性だけど)

572: 名無しさん 2017/10/27(金) 20:42:38.16 ID:2i6irfEA0
最原(でも現段階で東条さんを見つけたのが僕と茶柱さんだけでよかった) 

最原「……」 

最原「東条さん。お願いがあるんだけど」 

東条「何かしら?」 

最原「包帯は持ってるよね。自分で自分の傷を治療するためにさ」 

東条「……そうね。手から出血したときのために、替えの包帯は常に携帯してるわ」 

最原「だったらさ――」

573: 名無しさん 2017/10/27(金) 20:45:55.18 ID:2i6irfEA0
午前一時ニ十分 

巌窟王「……もう、いいな……これだけやれば充分だ。ヤツはここにはいない!」 

巌窟王「クハハ……やってくれたな。誰だかはわからないが、随分とナメた真似をしてくれる……!」 

巌窟王「さて。後は脱出するだけだが……」 

巌窟王「難しいか? これは」 

巌窟王「……」 

巌窟王「また始まるかもしれないな。学級裁判が」 

巌窟王「すまない。アンジー」

583: 名無しさん 2017/10/28(土) 19:55:07.32 ID:Ko5u1CU20
百田「……」 

百田「なんか巌窟王の声が聞こえてこなくなったぞ? 気のせいか?」 

白銀「た、多分コレ、気のせいじゃないよ……!」 

星「ちっ。このままだと、鎮火した後で巌窟王の焼死体を拝む羽目になるぜ」 

キーボ「入間さーーーん! 大変ですー! ここを開けてくださーい!」バンバンッ 

天海「……入間さんの研究教室って鍵あったんですっけ?」 

夢野「どうでもよいわ! とにかく水をかけ続けなければいかんぞ!」 

赤松「でもそのころまでに巌窟王さんが生きてるかどうか……!」 


バシャァッ 


春川「?」 

百田「……」ポタポタッ 

春川「百田? なんで急に水を被ったの?」 

百田「行く!」 

春川「は?」 

百田「うおおおおおおおおおおお!」ダッ 

春川「……はあッ!?」ガビーンッ

584: 名無しさん 2017/10/28(土) 19:59:12.79 ID:Ko5u1CU20
午前一時三十分 

ボオオッ 

巌窟王「……くっ!」 

巌窟王(笑い話にもならんな。恩讐の炎で万物を焼き尽くして来た俺が焼死などと……) 

巌窟王(あと一歩が果てしなく遠い。ここまでか?) 

巌窟王(……ふん。考えるだけ無駄だな。俺に諦める権利などないのだから) 

ガクリッ 

巌窟王「……足に力が入らなくなってきたな」 

巌窟王「ならばもう、這っていくしかないか?」 

百田「そんなことはねぇぞ! 巌窟王!」 

巌窟王「!」 

百田「助けに来てやったぜ! ありがたく思え!」ニィッ 

巌窟王「……」 

巌窟王「ふっ。バカめ」 

百田「んだとコラ!」

585: 名無しさん 2017/10/28(土) 20:06:27.23 ID:Ko5u1CU20
巌窟王「……あと十メートルほど前進したい。肩を貸せ。そこからは俺がなんとかする」 

百田「お? なにか奥の手があんのか?」 

巌窟王「機会は一度きり。かつ一瞬だ。そこですべてが決まる」 

百田「へっ。そういうの俺の大好物だ! やってやらァ!」グイッ 


ズリッ……ズリッ…… 


百田「……こんなボロボロになるまで、ここで何してたんだよ」 

巌窟王「おそらく気付くヤツは気付いたはずだが……」 

巌窟王「……アンジーは外にいたか?」 

百田「あ? いや……悪ィ。よくわかんねー。誰がいたか、いなかったとか、この混沌だと判別しづらくってよ」 

百田「最低限、夢野とハルマキがいたことは覚えてるんだが……」 

巌窟王「そうか。それなら……やはり俺はハメられた、ということだろうな」 

百田「……あー?」 

巌窟王「外に出てから話そう。とにかく前へ!」 

百田「おうっ! ……っと」フラッ 


ガシッ 


春川「……もう片方の肩は私が持つから。しっかりしてよ」 

百田「は、ハルマキ!? なんで……」 

春川「こっちの台詞なんだけど。殺されたいの? ほら。前に行くんでしょ」 

百田「……ははっ!」 

巌窟王「……」ニィッ

586: 名無しさん 2017/10/28(土) 20:15:14.72 ID:Ko5u1CU20
百田「見ろよ巌窟王……俺たちは、強ェだろ?」 

巌窟王「ああ」 

百田「……助けてよかったって思うだろ?」 

巌窟王「そうだな」 

百田「……だから、俺たちもお前のことを助けてやんよ。それが仲間だからだ」 

巌窟王「……そうか」 

百田「とか言っている間にもうそろそろじゃねーか?」 

巌窟王「よし。一度、俺から離れろ。二人とも」 

巌窟王「……よくやった」 

春川「……上から目線がムカつく」 

巌窟王「そう言うな。許せ」ニヤァ 

巌窟王「さて。奥の手を出そう」ゴソゴソ

587: 名無しさん 2017/10/28(土) 20:20:39.05 ID:Ko5u1CU20
モノダム「ムグー! ムグウー!」ジタバタ 

百田「」 

春川「」 

巌窟王「それでは行くぞ。思い切り! 大きく振りかぶって!」ギンッ 

巌窟王「せーのっ!」 

百田「待て」 

巌窟王「ム?」 

百田「なんだそれ?」 

巌窟王「モノダムだ。俺の予備のマントでグルグル巻きにして身動きを取れなくした状態の」 

春川「いやまあ何をしようと文句はないんだけど、一応聞いておくね」 

春川「そいつをどうする気?」 

巌窟王「こうする気だ!」 

巌窟王「疑似宝具、展開!」 

巌窟王「ヘラクレス直伝!」 

巌窟王「オリジナル『ブーメランサー』改め……」 

巌窟王「友よ、お前のことは忘れない(ブーメランサー・モノダム)!」ブンッ 



モノダム「ムグウーーー……」 


カッ! 

ドカァァァンッ!

588: 名無しさん 2017/10/28(土) 20:25:17.01 ID:Ko5u1CU20
百田「……壁に大穴が開いたな」 

春川「外が見えるね」 

巌窟王「何をしている! 走れ!」 

巌窟王「あと三秒ほどで屋根が落ちて来るぞ! 潰されたいのか!」 

百田「そういうことは先に言えェ!」ガビーンッ 


ベキミシミシッ 


春川「という会話をしている内にもう余裕が――」 

百田「ぎゃああああああああ!」 

巌窟王「クハハハハハハハハ!」 



ドガシャアアアアアッ! 



――モノダムは星になった。巌窟王という友を救うために。 

きっと、彼らは生涯忘れない。自分たちのことを救ってくれた、あの優しいナマモノを……

594: 名無しさん 2017/10/28(土) 21:23:55.62 ID:Ko5u1CU20
巌窟王「クハハハハハハ! 脱出できたぞ! 俺自身信じられん!」 

百田「たっく……よく考えれば壁壊したら、そりゃあ天井が降ってくるわな。考えなしにもほどがあるぜ」 

巌窟王「だが生きているぞ。全員な。結果こそがすべてだ」 

巌窟王「……いや。過程を蔑ろにするわけではないが、な」 

百田「ああ。とにかく生きてりゃ儲けモンだ! な、ハルマキ!」 

春川「」チーン 

百田「ハルマキィーーーッ!?」 

巌窟王「む?」 

モノダムの首「」ゴロッ 

巌窟王「ふむ。どうやら逃げるとき勢い余って、モノダムの首に足を引っかけて転び、地面に突き出た尖った岩に額をしこたま打ち付けたようだな」 

春川「」ダクダクダク 

巌窟王「引くほど流血しているな」 

百田「死ぬなハルマキィーーーッ!」

595: 名無しさん 2017/10/28(土) 21:28:03.72 ID:Ko5u1CU20
春川「……ハッ!? 私の名前は春川魔姫! 超高校級の暗殺者」ガバリッ 

百田「うおおっ! 急に起きた!」 

春川「そ、そう……思い出した! 私はこの前、巌窟王にハネ飛ばされて……記憶を……!」 

春川「……」チラッ 

巌窟王「?」 

春川「フンッ!」ブンッ 

巌窟王「がはぁ!?」ゴキィッ 

百田「ハルマキの上段回し蹴りが見事に決まったーーーッ!?」 

春川「これでチャラ」フン 

巌窟王「」チーン

596: 名無しさん 2017/10/28(土) 21:33:47.35 ID:Ko5u1CU20
ドタドタドタッ 

夢野「んあ! 天海! こっちじゃこっち! なんか凄い音がしたと思ったら脱出しておるぞー!」 

天海「了解っす! 応急処置でいいのならすぐに……!」 

茶柱「いやいやいや待ってください! こっちの方が先ですってば! 東条さんの研究教室で……!」 

巌窟王「……なんだ? 騒がしくなってきたな」 

真宮寺「ククク。おかえり、巌窟王さん。みんな心配していたんだヨ?」 

茶柱「……ああ、もう! いいです! 確かにこっちも治療必要そうですもんね!」 

茶柱「じゃあせめて巌窟王さんだけでも連れて行きます! 彼が傍にいれば安全ですからね!」 

天海「いや、そんなこと言われても……」 

百田「……んだよ。他に誰か怪我してんのか?」 

赤松「実は、超高校級のメイドの研究教室で東条さんが……」

597: 名無しさん 2017/10/28(土) 21:37:09.13 ID:Ko5u1CU20
かくかくしかじかえりえり~ 

巌窟王「……」 

巌窟王「天海を連れて行くぞ」ガシッ 

天海「え。百田くんと春川さんは……」 

巌窟王「応急処置なら自分でできるだろう?」 

春川「……はいはい。行ってらっしゃい、巌窟王」 

百田「おう! 後のことは俺たちに任せておけ!」 

茶柱「こっちです、こっち!」ダッ 

巌窟王「行くぞ、天海!」 

天海「はいっす!」

598: 名無しさん 2017/10/28(土) 21:42:58.54 ID:Ko5u1CU20
巌窟王(……やはりアンジーはいなかった) 

巌窟王(やはり俺は誰かにハメられたのだ) 

巌窟王(……しかし本当の標的は俺ではない。決して) 

巌窟王(だとすると、真の標的は……!)

602: 名無しさん 2017/10/29(日) 10:44:02.70 ID:HeBOzWiX0
超高校級のメイドの研究教室 

最原「……遅れてくれて逆に助かったけど……茶柱さん遅いな」 

東条「ここから中庭まではそこまで距離はないはずだけども……」 

最原(……仕込みは上々。あとはコレが役に立たないのを祈るばかりだ) 

最原「手は大丈夫?」 

東条「痛みはまったく引いてないけど大丈夫よ。治療自体は上手くいっているわ」 

最原(やっぱり大丈夫じゃないな……思ったより怪我が酷かったから当然か) 

最原(……血塗れの包帯、落とさないようにしないとな) 



ガシャァァアンッ! 


最原「!?」ビクゥッ 

巌窟王「しゃらくさい! ここからロープを下ろすから全力で登れ、天海!」 

天海「了解っす!」 

最原「巌窟王さんが窓ガラスを破壊してやってきたーーー!?」ガビーンッ! 

天海「すぐに行くっすよー! 東条さー……」 


ブチッ 


巌窟王「む。急に軽くなったな。下りたのか?」 

天海「わあー……」 


ベシャッ 


最原「落ちてるんだよッ!」ガビーンッ! 


天海は後で普通に階段からやってきた

603: 名無しさん 2017/10/29(日) 10:50:35.29 ID:HeBOzWiX0
午前一時四十分 

天海「なんだ。頭の怪我は既に最原くんが応急処置したんすか」 

天海「……適切っすね。これなら大丈夫っすよ。本当なら一度病院に突っ込んで検査とかさせたいところっすけど」 

最原「そっか。よかった」 

天海「俺は茶柱さんから『東条さんが誰かに襲われて凄い怪我してる』としか聞いてないんすけど……」 

天海「頭以外にどこか怪我はないっすか?」 

東条「……」チラッ 

東条「ないわ。どこにも。頭以外はいつも通りよ」 

巌窟王(……何故今、最原に視線を投げかけたのだ?) 

巌窟王「まあいい。最原を借りるぞ。後のことは天海に任せておけ」 

最原「え?」 

巌窟王「……アンジーが行方不明だ。これだけ言えばわかるか?」 

最原「!」 

最原「……うん」 

巌窟王「行くぞ!」

604: 名無しさん 2017/10/29(日) 11:25:58.54 ID:HeBOzWiX0
アンジー捜索道中 

最原「というか結局、なんで巌窟王さんは炎上中の研究教室なんかに突っ込んだの?」 

巌窟王「ことの発端は……ひとまずあまり言いたくはないのでボカすが」 

巌窟王「アンジーの作品が発端だ」 

最原「作品?」 

巌窟王「様々な要因が積み重なって、俺とアンジーは頻繁に別行動を取るようになっていた」 

巌窟王「ふと俺はアンジーに用ができてアンジーの研究教室へと向かったのだが……」 

巌窟王「どれだけ待ってもヤツがそこに現れることはなかった」 

最原「あれ。確かアンジーさんの門限って」 

巌窟王「夜時間。つまり十時だ」 

巌窟王「……だがヤツは創作活動に打ち込みたいと言うので条件付きで夜時間の延長を認めさせた」 

巌窟王「条件は二つ。創作しているときは鍵を閉めること。研究教室の鍵は俺に預けること、だ」 

巌窟王「創作途中での外出は……トイレなどもあるだろうから黙認せざるを得なかったが」 

巌窟王「もしかしたらどこかですれ違ったのかもしれないと考え、俺は一度寄宿舎に戻った」 

巌窟王「……そこであの火事だ」 

最原「なるほど……」 

最原(アンジーさんは巌窟王さんのことを徹夜で待ってたりしてたけど、巌窟王さんは堪え性なさそうだしな) 

最原「アンジーさんへの用って、出迎え以外でのことで?」 

巌窟王「……」 

最原「ああ、やっぱり出迎えだったんだ」 

巌窟王「それ以外にもあるぞ。関係ないので言うつもりはないがな」

605: 名無しさん 2017/10/29(日) 11:33:14.73 ID:HeBOzWiX0
最原「でもそれって火事を発見するに至った経緯であって、火事に突っ込んだ理由ではないよね?」 

巌窟王「……」 

最原「それも言いたくない?」 

巌窟王「……」 

最原(露骨に話を打ち切ってる……余程答えたくないのかな) 

最原(でもなんとなくわかった。巌窟王さんが研究教室に突っ込んだ理由) 

最原(アンジーさんの所在をさっきから異常に気にしてるって点を考えれば明らかだよな) 

最原「火事の中にアンジーさんのパーカーでも見えたの?」 

巌窟王「……似たようなものだ」 

最原(やっぱり) 

巌窟王「……無駄話はこれで終わりだ。早くヤツを探すぞ」 

巌窟王「死んではいない。死んではいない、はずだ」 

最原「……」 

最原(凄く不安そうだ。こんな巌窟王さん見たことない) 

最原(……早く見つけないと)

608: 名無しさん 2017/10/29(日) 16:54:25.26 ID:HeBOzWiX0
最原「……」 

最原(こうして眺めてみると……超高校級のメイドの研究教室から超高校級の美術部の研究教室までの道って) 

最原(ほぼ一直線だな。迷わない。普通の学校なら一階から二階、三階に上がるときは別の階段があったりするのに) 

最原(間には超高校級の昆虫博士の研究教室や、超高校級のテニスプレイヤーの研究教室もあったりして……) 

最原(……見通しがいいのに隠れやすい。隠れる人間には妙に優しいな) 

最原(あそこより奥の区画はまだ解放されていないわけだから、奥に何人いるかを予測するのも……工夫すればいくらでもできそうだな) 

最原(袋小路になっているわけだし……) 

最原(……) 

最原「超高校級の美術部の研究教室周辺に行こう」 

巌窟王「そこにアンジーがいるのか?」 

最原「可能性は高いと思う」 

最原(……間に合ってくれ!)

609: 名無しさん 2017/10/29(日) 17:07:39.39 ID:HeBOzWiX0
巌窟王「……ム。赤外線センサーがなくなっているな?」 

最原「赤外線センサー?」 

巌窟王「さっきこの階段の周辺にあったのだが……今はどうでもいいな」 

最原「……」 

最原「それってさ! 巌窟王さんがアンジーさんを出迎えしたときはあった!?」 

巌窟王「なかったな。俺には忘却補正があるからまず間違いないぞ。あったのは俺がここから寄宿舎に戻るときだけだ」 

最原(確定! アンジーさんはここより上にいる!) 

最原「急ごう!」

610: 名無しさん 2017/10/29(日) 17:11:31.45 ID:HeBOzWiX0
某所 

ウゾウゾ……ウゾウゾ 


アンジー「う……あ……?」 

アンジー(……気持ち、悪い……体中に何かが張り付いてる気がする……) 

アンジー(暗い……気持ち悪い。頭が……ふわふわする……) 

ギシッ 

アンジー(……よくわからないけど、体が動かない……?) 

アンジー(縛られてるの……?) 

ウゾ……ジュルッ…… 

アンジー(やだ……離れてよ……) 

アンジー(怖い……) 

アンジー(……でも何か、助けを呼んだらいけない理由があったような……?) 

アンジー(そもそもどうしてこんなことになったんだっけ……?)

614: 名無しさん 2017/10/29(日) 22:12:14.76 ID:HeBOzWiX0
巌窟王の影響をモロにうけてる生徒のログ 

最原 
本当は帽子を付けていたいが赤松にからかわれるので外している。人の視線に関しては気合で慣れた。 
アンジーのアタックに関して一番困ったことは巌窟王に目の敵にされたこと。割とショックだった 
本人は巌窟王の背中を追いかけているつもりだが、割と独自の方向に暴走しがち。気持ちは本物なので無自覚に味方を作る。 

夢野 
巌窟王に対して『お主にとっての魔法使いとは』と訊ねたことがあるが、そのときイリヤを連想した巌窟王が『作詞?』と答えたためたまに作詞している。赤松協賛。 
なおイリヤはネロとかエリザの歌の作詞とかしている。 

入間 
第一印象でこそ魔術に対して懐疑的だったが、今となっては全力で魔術を解析しにかかっている。伊達に発明家やってないので解析力は折り紙付き。 
巌窟王の見立てでは魔術回路の質と量は両方ともに『アンジーよりかなり下』くらい。 

天海 
アマデウスの仮面を外した後は全力で巌窟王のサポートに回る。 
才能を思い出せていないため他の生徒に対して引け目を感じているが、できることをしようと考え方を変えようとしている。 
アマデウスの仮面そのものを手放す気はない。 

獄原 
凄まじいトレーニングの結果、過労で倒れることとなった。 
未だに誰一人として知る由もないが、この後、彼は超ゴン太として復活を遂げることとなる。 
半分嘘である。 

アンジー 
段々『自分の感情』を表に出すようになってきている。だがそれを指摘すると仮に巌窟王が相手だったとしても否定する。 
それ自体が感情の証明になっているということに彼女が気付くことはない。 
『巌窟王に甘やかされている』という理由でカルデアの女神連中から目を付けられている。好奇の視線的な意味で。

618: 名無しさん 2017/10/30(月) 19:19:26.73 ID:SUngxkLl0
超高校級の美術部の研究教室周辺 

最原「ここからは別行動を取ろう! ここまで絞り込めれば、本腰入れて探せば見つかるよ!」 

最原「身軽な巌窟王さんは超高校級の民俗学者の研究教室を調べてて! あっち広すぎるから!」 

巌窟王「了解した」 

最原(アンジーさんの研究教室は巌窟王さんがいたから除外) 

最原(残るは三つの空き部屋と、謎の超巨大な機械があったあの部屋のみ……) 

最原(……三つの空き部屋の方を調べよう! 確かあそこは床下にスペースがあったはずだ!)ダッ 



三つの空き部屋:中央 

最原「あれ……なんだろう。微かに何か燃えたような臭いがするような……?」 

最原「……それどころじゃないな。床板を剥がしてみよう!」 

最原「アンジーさん! いる!?」ガリッガリッ 

最原(……結構隙間なくピッチリ並べられているから爪が引っかからないと、いまいち剥がしにくいな……!) 



「む……ん……」 



最原「!」 

最原(……いた。いや、絶対にいる。微かな声だから聞き逃しそうだったけど) 

最原「……ッ!」ガリィッ 

最原(無理でもなんでもいい。とにかく自分の手が傷ついてでも、急いで床板を取っ払う) 

最原(だけど床下は思ったよりも遥かに薄暗かった) 


モゾッ 


最原(床下に何かが蠢いているということ以外は何も見えない) 

最原「……そうだ! 蝋燭! 燭台!」 

ガッ 

最原(そして僕は蝋燭で床下を照らして……) 

最原(照ら……して……?) 

最原「……え、あ、ひ……!?」

619: 名無しさん 2017/10/30(月) 19:24:41.76 ID:SUngxkLl0
超高校級の民俗学者の研究教室 

巌窟王「……なんだこれは。アルミホイルの……破片?」 

巌窟王「何故こんなものがここに……」 

最原「うわあああああああああああああッ!?」 

巌窟王「!」 



中央の空き部屋 

最原「あ、あ、ああ……?」ガタガタ 

最原(僕が見ているものは現実か?) 

最原(……いや……夢なんかじゃない。この手に刻まれた傷が、痛みがそれを証明している) 

最原(床下に広がる光景は、明らかに常軌を逸していた) 

最原(……常軌を逸して、グロテスクだった) 

巌窟王「最原、ここかッ!?」ガララッ 


ズンズンズンッ 


バキィッ! 


巌窟王「ぐあああああ! 床板が抜け……違う! この部屋ではない! 隣か!」 


ガララッ 


巌窟王「最原! ここだな!? 何が……?」 

巌窟王「……アンジー?」

620: 名無しさん 2017/10/30(月) 19:31:48.57 ID:SUngxkLl0
最原(巌窟王さんと共に深淵に目を奪われる。そこにいたアンジーさんは、着衣が乱れていた) 

最原(パーカーは限界まではだけ、ビキニはズレて、上履きも脱げて転がって裸足だ。いつもより露出度が上がっているように見える) 

最原(だけどそれを呑気に眺めていられる状況ではない) 

最原(アンジーさんの健康的な褐色の肌には、ところどころ『くっついていた』) 

最原(あれは……) 

巌窟王「ヒル、か……?」 

最原(そう。血を吸い上げ、丸々と太っているヒル) 

最原(……アンジーさんは荒縄で縛り上げられている状態だ。無抵抗に……血を吸われていた) 

最原(あまりにも酷い光景だった)

622: 名無しさん 2017/10/30(月) 19:35:50.34 ID:SUngxkLl0
休憩します! 
……ここから非日常編スタートでもよかった気もする

623: 名無しさん 2017/10/30(月) 20:46:53.89 ID:SUngxkLl0
巌窟王「……」 

巌窟王「獄原を呼ぶ必要があるな。こういうのはヤツの得意分野だろう」 

最原「今すぐ燃やすわけにはいかないの……?」 

巌窟王「……燃やしたところで傷口から延々と出血するだけだ」 

巌窟王「安心しろ。すぐに戻ってくる」グシャッ 

最原「……」 

最原(頭を乱暴に撫でられた……) 

最原「……巌窟王さん」 

最原(気付いたときには巌窟王さんは消えていた) 

最原「……僕は……やっぱり無力なのかなぁ……」 

最原「うっ……ううっ……!」 

アンジー「……む……ん……?」 

最原「!」 

最原(アンジーさんの目が薄く開いた。薄暗くて今一判別しづらいけど、視線がこちらに向いている気がする) 

最原「アンジーさん!」 

アンジー「む……んん……」ギシッ 

最原「あ……口になにかハメられてるの?」

624: 名無しさん 2017/10/30(月) 20:53:58.27 ID:SUngxkLl0
最原「待ってて、今それは解くから……体の方は……」 

最原「ごめん。ヒルを毟り取られたら出血が酷くなるだけだから、今は我慢して」ガタガタッ 

最原(床板を更に剥がす。一枚、二枚剥がれれば、後は簡単にどかすことができた) 

最原「……随分と本格的な猿ぐつわだな……」 

最原(口の中に丸めた布を突っ込んでから、それを吐き出させないようにぐるりと布で口周辺を巻くタイプだ) 

最原(口の中に含ませる布の量によっては、これだけで体力が消耗する) 

アンジー「……ぷ……は……しゅう……いち……」 

最原「アンジーさ……!?」 

最原(酒臭ッ!?) 

最原(猿ぐつわを解いた瞬間に充満する酒の臭いに、思わずむせ返りそうになる) 

最原(……いや、気付いてなかっただけで、もう既に臭っていたのかもしれないが、それにしても凄まじいアルコール臭だ) 

最原(一番酷い臭いの元は) 

最原「……猿ぐつわの布に……何か沁み込ませてあるな。これはワイン?」 

アンジー「あ……うう……」 

最原「……」 

最原(泣いている場合じゃなくなったかもしれない) 

最原(なんだか次は凄く……) 

最原「腹が立ってきた」

625: 名無しさん 2017/10/30(月) 21:01:29.15 ID:SUngxkLl0
最原(何かの間違いで鼻が詰まってたら窒息死していたかもしれない。布を誤飲してもやっぱり窒息) 

最原(……仲間のことをなんだと思ってるんだ……!) 

アンジー「終、一……お願いが、ある、の……」 

最原「なに? 口の周りがベトつくんなら、ハンカチがあるから……」 

アンジー「そうじゃ、なくって……令呪……!」 

最原「……ん?」 

アンジー「令呪、あげるから……アンジーの替わりに……神様を、守って……」ポロッ 

アンジー「アンジーがいなくなっても、令呪を引き継いだ誰かがいれば、神様は消えないから……ひっく……!」ポロポロッ 

最原「……」 

最原「大丈夫。アンジーさんは死なないから」 

最原「もう僕が見つけたから」 

最原「すぐに巌窟王さんがゴン太くんを連れて来るよ。そうしたら助かるから」 

アンジー「えうっ……アンジーは……ひっく……アンジーは……」ポロポロッ 

最原「……」 

最原「泣いちゃダメだよ。水分は大事だからさ。今は」スッ 

最原「僕がいるから、もう怖くないよ」

626: 名無しさん 2017/10/30(月) 21:07:46.39 ID:SUngxkLl0
寄宿舎 

巌窟王「獄原! 悪いが緊急事態だ! 今すぐ俺と共に来い!」ドンドンッ 

巌窟王「……ええい、時間も惜しい。ドアを破壊してでも連れて……!」 

ガチャリンコ 

巌窟王「?」 

巌窟王(ドアの鍵が開いている?) 

巌窟王「獄原?」 

獄原「……むにゃ……」スヤァ 

巌窟王「……無事だな」 

巌窟王(しかし、枕元に置かれているこの大量の炭酸飲料はなんだ? いくつか飲みさしだが……) 

巌窟王(……) 

巌窟王「王馬の見舞いか。なるほど。鍵をかけるのを面倒臭がったな?」

627: 名無しさん 2017/10/30(月) 21:13:27.58 ID:SUngxkLl0
獄原「……ふあ……ん? 誰かに担がれて……る……?」 

巌窟王「我が征くはアンジーの傍ら!」ズダダダダダッ 

獄原「……」 

獄原「なんだ夢か!」 

巌窟王「夢ではない! ひとまず事情を今から説明する!」 

巌窟王「このまま俺に身を任せていろ! そうら、すぐに到着だぞ!」ギンッ 

獄原「え、え? 何っ……ええっ!?」ガビーンッ

628: 名無しさん 2017/10/30(月) 21:19:48.00 ID:SUngxkLl0
中央の空き部屋 

ガララッ 

巌窟王「連れて来たぞ! 最っ……!」 

アンジー「終一。好き。本当に好き……大好き……」 

最原「……最初からそう言っていれば……」 

最原「あっ」←巌窟王と目があった 

巌窟王「……最初からそう言っていれば……?」 

巌窟王「何だと言うのだ? なんだと……」ガクリッ 

バターンッ 

巌窟王「」チーン 

最原「魔力不足から来る体力不足と心労のダブルパンチで倒れちゃったーーーッ!?」ガビーンッ 

獄原「ごめん! 巌窟王さん! 今はそれどころじゃないから放置させてもらうよ!」 

獄原「すぐにヒルさんをアンジーさんから離すね!」ダッ

633: 名無しさん 2017/10/31(火) 18:39:07.30 ID:zpsM/qck0
午前二時 

獄原「……ひとまずヒルさんをアンジーさんから離して、ヒルさんの抗凝固作用を持った唾液を分解する酵素も投与したから大丈夫……」 

獄原「……って言いたいんだけど、ちょっとコレ手遅れだったね」 

最原「は?」 

巌窟王「……アンジーはまだ生きているぞ?」 

獄原「うん! わかる! それはわかるんだけど……! いや、ハッキリ言って助かる余地はあるんだけど」 

最原「逆に言えば『助かる余地が多少はあるって程度』には消耗してるってこと?」 

巌窟王「……」 

巌窟王「待て、しかして――」ポワッ 

アンジー「うぐっ……!」 

巌窟王「……ダメだな。この消耗状態では、本末転倒になりかねない」 

最原「何しようとしたの?」 

巌窟王「回復宝具を使おうとした……が、無理だった。仕方がないな」ポチポチ

634: 名無しさん 2017/10/31(火) 18:45:52.00 ID:zpsM/qck0
BB『はーい! いつもニコニコあなたの傍に寄り添う後輩、BBちゃんでーっす!』 

巌窟王「我がマスターが死にそうだ。助けてくれ」 

BB『……え。あの。いつものクソ迂遠な言い回しと、チクチク責めて来るハイテンションな嫌味はどうしました?』 

巌窟王「頼む」 

BB『……』 

BB『わかりました。おふざけなしで行きますよ。何が必要です?』 

巌窟王「泥酔した状態で出血している。水分と輸血の設備だ」 

BB『はいはいっと……あー。カルデアの礼装の類は転送できませんよ。アレに手を付けたら本気でデリートされちゃいます』 

BB『カルデアに縁のある人間しか使えませんしね』 

巌窟王「わかった」

635: 名無しさん 2017/10/31(火) 18:56:54.33 ID:zpsM/qck0
巌窟王「治療設備が届く。今度は気合を入れて俺の近くに転送されるように手配するようだ」 

最原「……助かるかな?」 

巌窟王「死ぬと思っているのか? 俺のマスターだぞ?」 

巌窟王「俺が死なせない」 

最原「……」 

最原(ピンチのときに巌窟王さんほど頼りになる人はいないよな……本当になんとかなる気がしてきた) 

BB『はい! 転送しましたよー! あんまり大量には送れないのですが!』 

巌窟王「あるだけマシだ。さあ! どこに転送されて」 

ヒュンッ 

グシャッ 


巌窟王「ぐああああああああああ!?」 

最原「巌窟王さんが設備の下敷きにーーーッ!」ガビーンッ!

636: 名無しさん 2017/10/31(火) 19:03:56.56 ID:zpsM/qck0
巌窟王「ぐううううう……!」 

巌窟王「クハハハハハハ! 幸運だった! 俺が下敷きになったお陰で機材と輸血パックは一切無事だぞ!」 

最原「凄くポジティブ!」 

BB『私が指示しますので、ひとまずテキパキやっちゃってくださーい』 

獄原「アンジーさん! 助かるよ! 巌窟王さんが助けてくれるよ!」 

アンジー「……うん……」 




最原(こうして混沌の内に始まった夜は、ひとまずの終わりを告げた) 

最原(でも……アンジーさんはまだ助かっていない) 

最原(これからどう転ぶかも不明瞭だ) 

最原(そして……この状況を心の底から面白がっているヤツが一人いた) 

最原(……半分くらいの確率で乗ってくるとは思っていたけど) 



モノクマ「うぷぷ……これだね……全員生き残っちゃったお陰で用意した動機がパァになっちゃってたけど」 

モノクマ「……これを動機にしちゃお。それを望んでいる人もたくさんいるみたいだしね……」 

モノクマ「うぷぷ……うぷぷぷぷぷ……」

641: 名無しさん 2017/11/01(水) 18:41:09.94 ID:NnV3cor60
午前二時十分 

巌窟王「……」 

巌窟王「顔色が良くならないぞ」 

BB『ああーっ……コレ、現実的な治療の範囲だと危ないかも……!』 

巌窟王「何……?」 

BB『本当に消耗しきってるっていうか……バイタルは機械越しにモニタできてるので治療に全力は尽くしますけど』 

BB『助かるかどうかは五分五分と言う他に……なさそうです』 

最原「そんな!」 

獄原「な、なんとかならないの!? 巌窟王さんの友達なら、魔術でもなんでも使うとかさ!」 

巌窟王「友達ではない。そしてそれは不可能だ」 

巌窟王「……そういうモノを送ったとして、使える人間がいない」 

BB『ただコレは現状は、の話です。他に味方に付けられそうな人とか設備とかありませんか?』 

巌窟王「……」 

巌窟王「モノクマ……しかいないだろうな」 

最原「最悪な着地点だ……!」

642: 名無しさん 2017/11/01(水) 18:43:40.96 ID:NnV3cor60
モノクマ「はいはーい! お呼びしましたかー!」ボヨーンッ 

獄原「うわっ! 出た!」 

モノクマ「で? なに? 用があるの?」 

巌窟王「アンジーを助けろ」 

モノクマ「いいよ!」グッ 

巌窟王「これでよし」 

最原「……」 

最原「は?」 

最原「はあ!?」ガビーンッ!

643: 名無しさん 2017/11/01(水) 18:49:01.55 ID:NnV3cor60
最原「いやいやいや! 巌窟王さん! 何もよくないけど!?」 

最原「モノクマ! 確かお前、生徒同士のコロシアイには関知しないって校則で……!」 

モノクマ「あー。うん。それはそうなんだけどさ……」 

モノクマ「オマエラがコロシアイを成立させる前に見つけちゃったから、もうコロシアイに関しては『破綻した』とみなしたよ」 

最原「校則に関してはそれで納得するとして、だ!」 

最原「何を企んでる!? 怪しすぎるぞ!」 

モノクマ「あ。バレた。いや、アンジーさんの体の中に謎の改造を施そうとか考えてませんよ?」 

巌窟王「……そんなことをしたら確実に貴様を燃やすぞ」 

モノクマ「まあ大丈夫! アンジーさんは一〇〇%治すから!」 

モノクマ「ただし……最原くんが察した通り、タダで、とはいかないなぁ……?」ニヤァ 

最原「……!」

644: 名無しさん 2017/11/01(水) 18:57:05.17 ID:NnV3cor60
モノクマ「そこまで理不尽なことを要求する気はないよ。むしろ、オマエラの利になることかもね……?」 

巌窟王「言ってみろ」 

モノクマ「アンジーさんを殺そうとした『未遂犯』を議論すること。これがボクの提示する条件だよ」 

最原「……議論? えっと、それって……」 

獄原「学級裁判みたいに、ってこと?」 

モノクマ「エサクタ!」 

モノクマ「もちろん未遂だから正しい犯人を指摘したとしてもおしおきはなし」 

モノクマ「間違った人間を犯人扱いしても、これまたおしおきはなし」 

モノクマ「ただし……多数決によって選ばれた生徒が、犯人かそうでないのか、の成否の確認のみは通常の学級裁判と同様」 

モノクマ「つまり『一〇〇%公正に』行われるよ」 

モノクマ「謂わば疑似学級裁判だね」 

最原「疑似……」

645: 名無しさん 2017/11/01(水) 19:02:10.94 ID:NnV3cor60
最原「……これがお前にとって、どんな得になるんだ?」 

モノクマ「あらら。凄い疑り深いね。人生損するタイプ」 

モノクマ「……これがボクの提示する新たな動機だから、とだけ言っておくよ」 

最原「!」 

モノクマ「トリックが破綻しちゃった犯人にとっては『やり直し』のチャンスだしね。コレ」 

巌窟王「……確かに、このままアンジーがズルズル死にかけの状態のままだと……」 

最原「そうか。アンジーさんの口から犯人の名前が漏れるんだ。もしかしたらトリックも全部喋られるかも」 

最原「そのまま死んじゃったら学級裁判は盛り上がらない。だからモノクマはアンジーさんの治療を申し出たんだな?」 

最原「……治療するって名目で隔離して、アンジーさんの記憶に『何か』するために」 

巌窟王「生徒たちの記憶を奪ったモノクマだ。再度記憶を封印すること程度、容易いだろうな?」 

モノクマ「うぷぷ」

646: 名無しさん 2017/11/01(水) 19:08:53.80 ID:NnV3cor60
モノクマ「そこまでわかっているんなら、ボクの提示する条件の前提もわかってるよね」 

巌窟王「アンジーに『誰にやられたのか』を訊ねるのもアウト。そういうことだろう」 

モノクマ「イグザクトリー!」 

モノクマ「アンジーさんの声で、誰が犯人かを聞いた人間が一人でも出た場合、この取引はナシだよ」 

モノクマ「すべて白紙に戻してもらう」 

モノクマ「……それでもいいかもね? 助かる確率はゼロじゃないんでしょ?」 

BB『コイツ……』 

巌窟王「飲もう。アンジーは連れていけ」 

最原「巌窟王さん!」 

巌窟王「……ただし。助かったアンジーの身に、何か余計な付録でも付いていたら……わかるな?」 

モノクマ「うぷぷ。大丈夫だよ! ボクは殺人ドクターの異名を持つからね!」 

最原「殺しちゃってるじゃないか!」 

最原「いや、それ以前に……!」 

巌窟王「文句は受け付けない。犬にでも食わせておけ」 

最原「……」 

獄原「ええーっと。で、どういうことになったの?」 

モノクマ「こういうことになったの!」 


ピンポンパンポーン!

647: 名無しさん 2017/11/01(水) 19:13:25.67 ID:NnV3cor60
モノクマ『死体が発見されまし……あ、ごめん! 誤報です!』 

モノクマ『死体は発見されませんでしたが、これより、一定の捜査時間を設けます!』 

モノクマ『疑似学級裁判に関する資料をすぐに全員に配りますので、詳細はそこを参照してくださーい!』 


ブツンッ 


最原「……モノクマ」 

モノクマ「なぁに?」 

最原「いつまでもお前の思い通りになると思うなよ」 

最原「こんなところ、いつか絶対に抜け出してやる」 

最原「……絶対にだ!」 

モノクマ「……うぷぷ。無理なのになぁ……! オマエラはどこまで行っても、ボクの肉球の上で踊ってるだけなんだよ」 

モノクマ「うぷぷぷぷぷ……あーっはっはっはっはっは!」

649: 名無しさん 2017/11/01(水) 21:21:03.88 ID:NnV3cor60
疑似学級裁判概要 

・正しいクロを指摘してもおしおきは行われません。 
・間違った生徒をクロと指摘した場合においてもおしおきは行われません。 
・上記のルールの都合上、間違ったクロを指摘した場合はクロが誰なのか周知されません。 
・ただし、多数決によって指摘された人物がクロだった場合は『正解である』と必ず周知されます。 
・なお、被害者である夜長アンジーさんの発言権は確実に制限されます。ご了承ください。 


最原「……シロにとっては危険人物を知るチャンスで、クロにとってはやり直すチャンス、か……」 

最原(ミスリードだな。実際のところ、これでせっかく沈静化してた生徒間の軋轢が更に深く、強くなる) 

最原(……でも、乗らないわけにもいかないよな) 

最原「調査を始めるよ。ひとまず、今夜何があったのかを一から調べなおす」 

最原(いや……今から考えると、遡る時間が一夜で済むかどうか疑問だな……) 

モノクマ「それじゃあ、さっそくアンジーさんを集中治療室へ――!」 

最原「待って。アンジーさんの体でまだ調べられてないことがある」 

最原「それが終わるまではここで治療して」 

モノクマ「薄い本みたいに?」 

最原「うるさい!」 

巌窟王「……最原」 

最原「ん?」 

巌窟王「変な気を起こすなよ……」ゴゴゴゴゴゴゴ 

最原「大丈夫! 大丈夫だから!」アタフタ

650: 名無しさん 2017/11/01(水) 21:28:36.55 ID:NnV3cor60
数分後 

最原「頭の出血痕は打撃によるものだな。それと、口の中が荒れ放題だ。何か棒みたいなものを入れられて引っ掻き回されたような」 

最原「……あとやっぱり酒臭い。未成年にしてはありえないレベルだ」 

モノクマ「これも消耗の理由だね。ただ出血しただけなら、ここまで危険なことにならないよ!」 

BB『大分強いお酒をガバガバ飲まない限りはこうはなりませんよ。血中アルコール濃度もアホみたいに高いです』 

最原「猿ぐつわに沁み込ませてあったワインは……どう考えてもダメ押しだな」 

最原「これに沁み込ませた量だけじゃ、どうしたって足りない」 

巌窟王「……」 

最原「……巌窟王さん?」 

巌窟王「もういいか?」 

最原「あ、ご、ごめん! もう大丈夫だよ! モノクマ!」 

モノクマ「オーキードーキー!」 

アンジー「……神、様……」 

巌窟王「もう何も喋るな。次に会うときまでにすべて片付けておいてやる」 

アンジー「……」コクリ 

最原(アンジーさんはモノクマに連れられて、どこかに行ってしまった) 

最原(巌窟王さんの脅しもある。多分、大丈夫だ。そう信じるしかない)

655: 名無しさん 2017/11/02(木) 19:52:39.48 ID:FJRBmP5u0
BB『しかしおかしいですね。縄みたいなもので縛られていた割には抵抗の痕が少ないような……』 

最原「え?」 

BB『まったくない、というわけではないんですが、微妙に少ないんですよ。擦り傷が』 

獄原「……アンジーさんは消耗してたんだから当然じゃない?」 

最原(いや……それはおかしい。だってアンジーさんが縄で縛りつけられていたのは……) 

最原「おっと。そうだ。荒縄も調べないと」 

巌窟王「……これは超高校級の民俗学者の研究教室にあったものだな」 

獄原「え? そうなの?」 

最原「それ、間違いない?」 

巌窟王「我が忘却補正にかけて断言しよう」

656: 名無しさん 2017/11/02(木) 19:58:43.54 ID:FJRBmP5u0
最原「……そうだ! 疑似学級裁判のことが周知されたのなら、一番に見なきゃいけないところがあったんだ!」 

巌窟王「どこだ?」 

最原「東条さんの研究教室! 行ってくるね!」ダッ 

巌窟王「ふむ……手分けした方がいいか?」 

巌窟王「……そうだな。こちらは獄原から話を聞こう」 

獄原「え? ゴン太に?」 

巌窟王「あのヒルについてだ。そもそも虫の類はこの学園に『ほぼ』存在しないのではなかったのか?」 

獄原「う、うん。ゴン太の研究教室にいるもの以外はね。あのヒルさんも間違いなくゴン太の研究教室にいたものだよ」 

巌窟王「昆虫ではないな? ついでに言うと『虫』かどうかも怪しいぞ」 

獄原「確かに、ハッキリ言ってヒルさんを虫と言い張るのはクモさんやカニさんを虫と言い張るのと同じくらい強引だけどさ」 

獄原「いたんだから仕方ないよ」 

巌窟王「……ふむ」

657: 名無しさん 2017/11/02(木) 20:05:57.08 ID:FJRBmP5u0
巌窟王「あのまま誰にも見つからなければ、アンジーはどうなっていた?」 

獄原「死んでいた……と、思う……」 

獄原「なんでかはわからないけど、ヒルさんが限界を越えて血を吸っていたんだ。あのままだったら確実に助からなかったよ」 

獄原「……あ、あれ?」 

巌窟王「どうかしたか?」 

獄原「ヒルさんが一人見当たらなくって……おかしいな。アンジーさんから引き離したときはいたのに」 

巌窟王「……逃げたのではないか?」 

獄原「うーん。お腹が壊れそうになってたから、それは考えにくいんだけど」 

獄原「おーい! 出てきてよー!」 

巌窟王「ふむ。どうせこの場にはまだ調べるべきことがある」 

巌窟王「ついでだ。そいつも探してやろう」 

獄原「名前はヒル御前だよ!」 

巌窟王「ヒル御前! 出てくるなら今のうちだぞ! クハハハハハハ!」ギンッ!

658: 名無しさん 2017/11/02(木) 20:13:16.87 ID:FJRBmP5u0
東条の研究教室 

最原「……さてと。東条さん、まだいる?」 

東条「ええ。ここに」 

茶柱「あ! 最原さん!」 

最原「え? 茶柱さん?」 

最原「……そういえば、天海くんを呼んだ後、どこに行ってたの?」 

茶柱「倉庫で飲み物とか治療道具とか見繕ってたんですよ。それより!」 

茶柱「なんですか、疑似学級裁判って! アンジーさんは無事なんですか!?」 

最原「……一応」 

茶柱「ハキハキ言いなさい!」 

最原「命に別状はないよ。治療をしているのはモノクマだけど、こういうときのアイツは約束を破らない」 

東条「……口惜しいわね。私の手が無事なら――」 

最原「東条さん!」 

東条「……あ。ごめんなさい。そうだったわね」 

茶柱「?」 

最原(さてと。東条さん、茶柱さん以外にも、捜査のためにここに来た人が何人かいるな……) 

最原(……しっかり観察しないと)

662: 名無しさん 2017/11/03(金) 18:59:55.95 ID:qs7/ZpKX0
真宮寺「……」ゴソッ 

真宮寺「……?」 

最原(割と素直に引っかかってくれたな……ゴミ箱に注意しすぎだ) 

最原(犯人はキミだな。真宮寺くん) 

最原「茶柱さん。ちょっと確認したいことがあるんだけど」 

茶柱「なんです?」 

最原「ここに来たのっていつ?」 

茶柱「……最原さんとそんなに変わらないですよ」 

最原「そっか。じゃあちょっと頼みたいことがあるんだけど」 

茶柱「?」 

最原「……ここじゃなんだから、ちょっと外に出て話そう」 

茶柱「変なことしたら被害者第三号にしてやりますよ?」 

最原「しないって!」

663: 名無しさん 2017/11/03(金) 19:04:56.99 ID:qs7/ZpKX0
巌窟王サイド 

巌窟王「ヒル御前は見つからなかったが……色々とわかったことがあったな」 

BB『どう考えてもアンジーさん、この部屋でぶん殴られてますね』 

獄原「凶器の床板。床下の血だまり。この二つがあるのなら、ほとんど決まりなんじゃないかな……」 

巌窟王「それと、さっきから気になっていたのだが……何かコゲてる臭いがするな」 

獄原「巌窟王さんのマントじゃない?」 

巌窟王「……」 

BB『いえ。臭気はこの部屋からも間違いなく』 

BB『……この部屋で何か燃えたんでしょうか。ライトでもあれば焦げ跡を探せますよ?』 

巌窟王「もういい。見つけた。証拠写真も今撮ろう」カシャッ 

巌窟王「こんなことのために転送したものではないのだがな」

664: 名無しさん 2017/11/03(金) 19:09:51.87 ID:qs7/ZpKX0
ガララッ 

百田「巌窟王! アンジーはどこだ!?」ドタドタッ 

巌窟王「今はモノクマが治療している。命に別状はないだろう」 

百田「……クソッ! あんなヤツに頼らなきゃいけねーなんてよ……!」 

春川「ここが事件現場?」ヒョコッ 

巌窟王「というよりは発見現場だが……その認識でも間違いはないかもな」 

キーボ「証拠が残っているかもしれません! 今こそ追加されたボクの機能を見せるとき」ビカーッ! 

百田「いぃーーったい目がァーーーッ!?」ギャァァァ! 

春川「うっさい」ベシッ 

百田「ごめんぬッ!」 

百田「とにかく、ここの調査は俺たちに任せろ! 巌窟王!」 

百田「俺たちが付いてる! 今回の事件もぜってぇー見つけるかんな!」 

巌窟王「……」フッ 

BB『機嫌いいですねー』 

巌窟王「黙れ」

666: 名無しさん 2017/11/03(金) 19:41:46.92 ID:qs7/ZpKX0
茶柱「……その程度なら別にいいですけど、でもそんなウソにどんな意味が?」 

最原「ハッキリ言って、怪しい人は三人くらいいるんだけどさ」 

最原「……絞り込むには足りないんだ。決め手が」 

最原「多分、そのウソがあれば炙り出しできる」 

茶柱「その三人の中に、もしかして東条さんも入ってたりします?」 

最原「するよ」 

茶柱「……ヌケヌケと良くもまあ。本当に死にたいんですか?」 

最原「ごめん。でもだから必要なんだ。茶柱さんの協力がさ」 

茶柱「……」 

茶柱「大前提として、その計画には」 

最原「東条さんには事前に言ってあるよ」 

茶柱「東条さんが噛んでるのなら……仕方ないですね」 

茶柱「……いいでしょう。協力します。でも一言だけ言わせてください」 

最原「なに?」 

茶柱「サイッテーです」 

最原(……仲直りできると思ったんだけどなぁ! 泣きたい!)

667: 名無しさん 2017/11/03(金) 19:50:16.76 ID:qs7/ZpKX0
再び東条の研究教室 

最原「さてと。それじゃあ引き続き調べないと」 

天海「あ。最原くん。戻ってきたんすね」 

最原「ん。天海くん」 

天海「……それじゃあ、俺はこれで。ここはもう結構人手足りてるっぽいっすし」 

天海「俺は中庭の方に戻って、あっちの捜査に加わることにするっす」 

天海「バトンタッチってことで」 

最原「あ……そっか。天海くん、茶柱さんが来るまで東条さんの傍にいてくれたんだね」 

最原「……ごめん。二人きりにさせちゃって。怖かった?」 

天海「凄く怖かったっすよ!」 

天海「……東条さんに事情を聞いてみたら、誰に襲われたのかわからないって話じゃないっすか」 

天海「正体不明の殺人未遂犯。一体、誰なんでしょうね」 

最原(……アンジーさんに殺意があったことは間違いないんだろうけど) 

最原(東条さんの方に殺意は無さそうなんだよな。ただ気絶させて閉じ込めただけだ) 

最原(……誰にやられたのかわからない、か。おおよそ予想通りだけど、東条さんから詳しい話を聞かないと) 

東条「いいわよ。いくらでも話すわ」 

最原「あれ。口に出てた?」 

東条「エスパーだから」 

最原「え」 

東条「……当然冗談よ」クスリ 

最原(東条さんだと冗談に聞こえない……)

670: 名無しさん 2017/11/04(土) 19:51:37.05 ID:GnQR9ocd0
東条の証言 

東条「料理をしている最中で、ドアがノックされたのよ」 

東条「入ってもいい、って言っても一向に入ってくる気配がなくって、ノックだけが延々と聞こえて来たの」 

東条「もしかしたら両手が荷物で塞がっているのかもしれない、と思ってドアに近づいて、ノブを捻ったところで……」 

東条「逆にドアを思い切り開けられて、額を思い切りドアにぶつけてのけぞって」 

東条「そのまま『誰か』が馬乗りになって、私の頭を思い切り殴打したの」 

東条「……薄れゆく意識の中、無念だけがあったわ」 

東条「『私らしい報いではあるけど、これ以外の方法で恩を返したかったわね』って」 

最原「うん。本当に無事でよかった」 

東条「犯人の顔は見ていないわ。仮に見ていたとしても、何かで顔を隠していたでしょうね」 

最原「ところで、ついこの学園の食事事情を知っている東条さんにもう一つ聞きたいんだけどさ」 

最原「お酒ってどこで手に入る?」 

東条「……アンジーさんは泥酔していた、とモノクマから聞いたから、当然聞かれると思ったわ」 

東条「手に入る……というよりは、既に私が管理しているのよ」 

最原「え?」 

東条「開けゴマ!」 

カッ 

ゴゴゴゴゴゴゴ! 

ガシャンッ 

最原「なんか凄い大仰な仕掛け扉が現れたーーーッ!?」ガビーンッ!

671: 名無しさん 2017/11/04(土) 19:55:41.32 ID:GnQR9ocd0
茶柱「凄い! 声帯認証なんですか!?」キラキラキラ! 

東条「いいえ。リモコンで開閉するわ」シャキーンッ 

最原「え!? じゃあ今の開けゴマってなに!?」 

東条「ノリよ」 

最原「ノリ良いな!?」ガビーンッ 

真宮寺「う。凄くヒンヤリした空気だネ」 

東条「ワインセラーなのだから当然よ」 

東条「ちなみにこの隠し扉、別に私自身は隠していたわけじゃないから、知っている人は知っているわ」 

東条「『絶対に飲酒目的では使わない』と契約書にサインさせた後で入間さんにも渡したりしてたし」 

最原「ん? 待って。飲酒目的でないなら入間さんはワインを何に使ったの?」 

東条「発明品、と言っていたかしら。燃焼促進剤に転用するとか言ってたわね」 

最原「……」 

最原(燃焼促進剤、ね)

672: 名無しさん 2017/11/04(土) 20:07:42.72 ID:GnQR9ocd0
最原(ひとまずここで調べられることはコレで全部、かな) 

最原(僕も天海くんが行った中庭に行ってみよう) 

最原(そもそも僕の視点では、あそこからが事件の発端だしな) 

最原「茶柱さん。まだ聞きたいことがあるから、良ければ僕と一緒に中庭まで来てくれないかな?」 

茶柱「……チッ」 

最原(凄い顔で舌打ちされた……けど拒絶はされてないみたいだ) 

最原(OKでいいのかなぁ……) 

最原「じゃ、じゃあ。行こうか?」 

茶柱「ヘラヘラしなくても大丈夫です。別に仲良くする気ありませんので」 

最原(ぐはぁ)

674: 名無しさん 2017/11/04(土) 21:39:02.50 ID:GnQR9ocd0
巌窟王サイド 真宮寺の研究教室 

BB『BBちゃんスーパーまとめタイーム!』 

BB『巌窟王さんが何故か火事場に突っ込んだと思ったら東条さんが襲われててアンジーさんが殺されそうになってましたとさはい終わり!』 

獄原「そんなことが起こってたなんて……全然気付かなかったよ! 不甲斐なさ過ぎてごめん!」 

巌窟王「フン。バカめ。もとより生徒たちに大した期待など寄せてはいない」 

巌窟王「お前たちは足手まといにならなければそれでいいのだ」 

獄原「足手纏い……?」 

獄原「ゴン太たちのことか……」 


ドシュウウウウッ! 


獄原「ゴン太たちのことかーーーッ!」ドカァァァァァァンッ! 

BB『あ、あれ!? 巌窟王さん! 学園のどこかから、ていうか巌窟王さんの周囲に謎の高エネルギー反応があるんですが!』 

BB『具体的に言うとカルデアのログに残っているゲーティアとかティアマトよりヤバい感じの!』 

巌窟王「ゴン太しかいないぞ。計器の故障だろう」 

獄原「ハッ! ゴン太は一体……?」 

BB『あ、消えた』

675: 名無しさん 2017/11/04(土) 21:49:36.30 ID:GnQR9ocd0
獄原「……でも調査なら巌窟王さん一人でもできるんじゃないかな。ゴン太がいたところでそれこそ……」 

獄原「足……で……まと……」ユラァ 

巌窟王「いや。獄原は俺の傍を離れるな。証拠の信用が下がる」 

巌窟王「お前は俺の見つける証拠が確かにここにあったことを証明するためにここにいる」 

獄原「ああ、そっか。巌窟王さんが犯人って可能性もあるからね」 

巌窟王「逆に、お前が犯人である可能性もある。つまりこれはお互いの潔白を証明するための相互扶助、と言ったところか」 

獄原「うん! 全力でそーごふじょするよ!」 

巌窟王「やはり間違いなく、あの荒縄はこの研究教室にあったものだな。それと……」 

巌窟王「……先ほどのアルミの破片が気になるな。少しこの研究教室を調べてみるか」 

巌窟王「BB。ここの情報は記録しておけ。後で最原に纏めて渡す」 

BB『アイアイ』

680: 名無しさん 2017/11/05(日) 16:26:13.19 ID:DPK5/rae0
東条の研究教室 

真宮寺「……」 

真宮寺(どうしようか。利用価値があるから彼女を殺すのは後回しにしたけど、今は偶然にも二人きりになってしまったわけだし) 

真宮寺(捜査中に東条さんが今度こそ死んだら、茶柱さん大泣きするかなァ……)ゾクッ 

真宮寺(ここで殺すメリットは皆無なんだけど) 

白銀「さあ! じゃあ引き続き捜査を続けようか!」 

真宮寺「あれ。いたのキミ」 

白銀「え。酷くない?」

681: 名無しさん 2017/11/05(日) 16:29:37.17 ID:DPK5/rae0
中庭 

最原「……ほぼ鎮火してる?」 

夢野「お主が立ち去った後で色々あってぶっ潰れたんじゃ。その直後から火の手が弱まってのう」 

茶柱「ああ……さっきまでそれどころじゃありませんでしたけど、こうして見ると泣けてきます」 

茶柱「転子の研究教室がぁ……」 

最原「でも何か不自然だな」 

夢野「具体的にはどこがじゃ?」 

最原「……あれ。巌窟王さんの炎じゃない?」 

夢野「さっきまで巌窟王がそこにいたんじゃ。残り火ではないのか?」 

茶柱「それなんですが……転子の勘違いでなければ、あの炎は巌窟王さんが中に入る前からあったものです」 

最原「……それ本当?」 

茶柱「嘘を吐く理由がありません」 

最原(段々見えて来た。いや、予測できてきたかもしれない)

682: 名無しさん 2017/11/05(日) 16:36:29.10 ID:DPK5/rae0
最原「ところで……赤松さんと星くんは入間さんの研究教室周辺で何してるの?」 

赤松「入間さーん! いい加減出てきてよー! いるのはわかってるんだよー!」ドンドンッ 

入間「この研究教室はテメェらのような貧乳モンキー共には解放してねぇんだよー!」 

入間「なんだ疑似学級裁判って! 命がけでないのなら、んなもんに俺様が参加してられるか!」 

星「……」 

星「いや。俺は見ているだけだぜ」 

最原「あ。そうなんだ……」 

星「後で天海が倉庫からバールを持ってきてドアをこじ開ける手筈になってるし、俺の手は必要ねぇだろう」 

最原(うーん。あっちの方は三人に任せよう) 

最原(今は夢野さんにもいくつか聞いておきたいことがある)

683: 名無しさん 2017/11/05(日) 16:38:57.65 ID:DPK5/rae0
休憩して……映画館に行ってきます!

684: 名無しさん 2017/11/05(日) 21:39:07.10 ID:DPK5/rae0
最原「夢野さん。マジカルショーのときのカタログ、まだ持ってる?」 

夢野「なんじゃ? あんなもの今更どうするんじゃ?」 

最原「えっと、そのカタログの中の赤外線センサーの項目が見たくって」 

夢野「どれどれ」ニュルンッ 

最原(いつの間にか分厚いカタログを持ってる!)ガビーンッ 

夢野「ああ。これじゃな。コレは確かアンジーと入間に渡したぞ」 

最原「入間さんとアンジーさんに?」 

夢野「ちなみに有効範囲は……」 

夢野「お主なら知っておろうな。首謀者探しのときに使うことを検討したのではないか?」 

最原「有効範囲が嘘みたいに狭すぎるのと、二対だから意外と目立つっていう二つの弱点があったからね」 

茶柱「有効範囲?」 

最原「ええっと、仮に誰かがセンサーに引っかかっても十m離れてたら警報器が鳴らないんだよ」 

最原「だから赤松さんの学級裁判のとき、コレを使うのは諦めたんだ。僕らは教室に張る予定だったからね」 

茶柱「十mじゃあ……確かにほぼ役立たずですね」 

夢野「まあ、入間はコレを改造して『学園中どこにいても警報器が鳴るように有効範囲を広げられるぜ』と息巻いておったぞ?」 

夢野「欲しいというのであれば入間に頼んでみてはどうじゃ?」 

最原(そんなことも言ってたかもな?) 

最原「ところで夢野さん。センサーを配った順番は? アンジーさんと入間さんのどっちに先に配ったか覚えてる?」 

夢野「入間の方が先じゃったぞ。後からアンジーが入間の貰ったセンサーをじっと見た後『アレと同じの欲しい』と言ってきたから間違いない」 

最原(ビンゴ。となると……やっぱり入間さんから話を聞かないとな)

685: 名無しさん 2017/11/05(日) 21:41:26.69 ID:DPK5/rae0
最原「あ。最後にもう一つ。本当に関係ないことかもしれないんだけどさ」 

最原「僕が見つけたあの鳩、元気?」 

夢野「元気じゃぞ。東条協力のもとに異物を吐き出させたからの」 

最原「結局、何を食べてたの?」 

夢野「さっぱり意味がわからんが……」 





夢野「アルミホイルの破片を食っておったな」

687: 名無しさん 2017/11/06(月) 12:22:58.05 ID:YUDhDoeb0
最原「で、えーと……まだ入間さんここを開けないの?」 

赤松「うん。なんか完全に何もかも面倒くさいって感じで外のものを完全シャットアウトしてるね!」 

赤松「アナ雪のマネしても全然ダメだよ! ギリギリでノッてくれたときは『もしや』って思ったんだけど!」 

最原「……」 

最原「えーと、ちょっとみんな、ドアから離れてくれるかな? 考えがあるんだけど」 

赤松「ん? うん。わかった。何するの?」 

最原「ちょっと内緒話を……」 

最原「入間さん」 

入間「あ? ダサイ原か?」 

最原「……」ゴニョゴニョゴニョ 

入間「ッ!」 


ガショーーーンッ! 


入間「ウェルカムトゥようこそ俺様パーク!」 

赤松「一瞬で開いたーーーッ!?」ガビーンッ

688: 名無しさん 2017/11/06(月) 12:29:29.83 ID:YUDhDoeb0
入間「で! 例のモノは……ああ、いい! 言わなくていい! 後で貰うからな!」 

入間「ボンクラども! 聞きたいことがあればなんでも言え! 答えてやるかどうかは別だけどなァ!」ヒャッハー! 

赤松「え? なに? なんかかつてないほど上機嫌になってるよ!?」 

星「……何を言った?」 

最原「ごめん。言いたくない、かな……」 

星「そうかい。じゃあ何も聞かねーよ」 

最原「入間さん。確認したいことがあるんだけど、アレって入間さんの発明品?」 

入間「アレ? って、なんだ。茶柱の研究教室が燃えてんじゃねーか、なにが……」 

入間「あっ」 

赤松「ん? えーっと……私には燃えカスしかないように見えるんだけど」 

星「……」 

星「いや、そうか。わかったぞ。お前さん、なんてくだらないものを作りやがる」 

赤松「ん?」 

入間「……あひい……な、なんて……なんて酷いことを……!」ガタガタ 

最原「その反応、やっぱり」

689: 名無しさん 2017/11/06(月) 12:35:41.98 ID:YUDhDoeb0
入間「巌窟王と同じ色の炎を出す俺様の燃焼促進剤がーーーッ!?」ガビーンッ! 

赤松「……はい?」 

星「なるほど。段々繋がってきやがったぜ。複数の事件がいくつかのファクターで」 

最原(そろそろ固まってきたかもしれない。すべての事件の犯人が、同一犯って可能性に収束してきた) 

最原「入間さん! 聞きたいことがもう一つ!」 

最原「入間さんの研究教室から、他に盗まれたものは!?」 

入間「ね、ねぇよ……ねぇけど……ねぇように見えるけど?」 

最原「ちょっと今すぐ赤外線センサーを分解してみて欲しいんだけど!」 

入間「あ? あのロリペド女から貰ったヤツのこと言ってんのか?」 

入間「……ちょっと待ってろ。えーと確かこの辺に。あった」ヒョイッ 

入間「分解分解ヨーソロー」バラッ 

入間「あ?」 

最原「……どう?」 

入間「……俺様のほどこした改造が綺麗さっぱり『元に戻って』やがる……!」ガタガタ 

入間「え? なにこれ。新手のホラー? それが見えたら終わり?」 

赤松「それ、最初から改造してなかったり……」 

入間「んなわきゃあるか! 間違いなく改造したっつーの!」

690: 名無しさん 2017/11/06(月) 12:44:37.88 ID:YUDhDoeb0
最原「……よし。これも大体予想通り」 

最原「ええっと、入間さん。最後に、入間さんが作ったこの扉の『鍵』をもう一度見せてほしいんだけど」 

入間「お? おお……」 

入間「あっ」ピコーンッ 

赤松(ん? 何この反応) 

入間「いいぜいいぜ! 入れ入れ! そしてじっくりしっぽり眺めていけ!」 

赤松「あ、じゃあ私も……」 

入間「ダサイ原限定だ! ド貧乳松! じゃあな!」 

ガシャンッ 

赤松「ええーっ……」 

赤松「……天海くんまだかなー……」

691: 名無しさん 2017/11/06(月) 12:48:18.60 ID:YUDhDoeb0
入間「……おい。なんだよこの気持ち悪ィの……」 

最原「入間さんが欲しがってたものだけど……」 

入間「ざけんなよ……俺様が欲しかったのは……」 

最原「いや、大事なのはコレの中身でさ……」 

入間「……お? おお……おおおおおおお!」 

入間「すごいのほおおおおお! ずっと……ずっと欲しかったものが、おほおおおおお!」 




天海「バール持ってきたっすよー」スタスタ 

赤松「天海くん。今すぐこの扉破壊して」 

天海「え。脅すだけって予定じゃ」 

赤松「破壊して。コン・パッショーネな感じに破壊して」 

天海「いやわけわかんないんすけど」 

赤松「すぐ」ギンッ

693: 名無しさん 2017/11/06(月) 17:31:57.44 ID:YUDhDoeb0
ガシャコンッ! 

天海「あ。開いたっすよ」 

赤松「……そう」 

天海(なんか凄いデストロイヤーな目つきしてたんすけど……怖ァ……) 

最原「……なるほど。やっぱり前に見た通りだな。外から鍵を操作する機能がないんだね」 

入間「たりめーだろ。あくまで俺様が引きこもれればいいんだからよ」 

最原(入間さん以外の誰かが引きこもったときに外から開けられなくなるっていう欠点は……) 

最原(……どうせ想定してないんだろうな。入間さんのことだし) 

最原(……取引は終了。疑似学級裁判が終わったタイミングで天海くんに渡そう) 

天海「?」

694: 名無しさん 2017/11/06(月) 17:49:18.67 ID:YUDhDoeb0
最原「そうだ。入間さん。最後に一つ」 

最原「……燃焼促進剤にお酒使った?」 

入間「カッシェロ・デル・ディアブロだろ? 使ったぜ。ていうか使い切ったぜ」 

天海「……チリワインのことっすか? どこからそんなものを」 

最原「学級裁判のときに言うよ。使い切ったってことは……」 

入間「ああ。新しく『アレ』を作るんなら再度あのメイドババァに頭下げなきゃなんなくなるからよ」 

入間「……だからブチ切れてたんだ。わかんだろ?」 

最原「入間さん。あの燃焼促進剤のことが重要になるかもしれないから、原材料を書いたメモか何か持ってきた方がいいよ」 

入間「あー?」 

最原「……あ、じゃあ僕はこれで。もう一度、超高校級の美術部の研究教室のあたり調べて来るね」スタスタ 

茶柱「ついて行きますよ。証拠の信用を落とさないためにはツーマンセル以上での行動が重要ですので」 

天海「……」 

赤松「……気に入らないな」 

天海「何がっすか?」 

赤松「なんか……追い詰められれば追い詰められるほどさ」 

赤松「最原くんのやり口が段々巌窟王さんに似ていくんだよ」 

赤松「……似合ってないのに」

695: 名無しさん 2017/11/06(月) 18:12:09.70 ID:YUDhDoeb0
巌窟王サイド 

巌窟王「……詳しく調べてみても綺麗なものだったな」 

巌窟王「なんなら、事件以前よりも綺麗になっている。逆説的に何かあったということか」 

獄原「でもそれを証明できないよね。巌窟王さんの記憶を覗く方法はないんだし……」 

巌窟王「……消毒機能のセンサーは赤外線を探知するんだったな……」 

巌窟王「獄原。キーボを呼んでこい。すぐに確かめたいことがある」 

獄原「うん! わかった! キーボくーーーん! こっちに来てーーー!」ボエエエエエッ 

巌窟王(耳が痛い)

696: 名無しさん 2017/11/06(月) 18:16:09.49 ID:YUDhDoeb0
五分後 

キーボ「は!? また燻蒸消毒機能に巻き込まれてみろって!? なんで!?」 

巌窟王「なに、確かめたいことがあるだけだ」 

キーボ「……それ、事件に何か関係があるんですか?」 

巌窟王「さて、どうだろうな。まあ無駄にはなるまいよ。それと」 

巌窟王「頼みたいことが一つ。キーボ。中にいる間、前と同じように『大騒ぎ』していろ」 

キーボ「……わ、わかりましたよ」 

巌窟王「操作パネルはアレだな。よし」ポチポチ 

巌窟王(……センサーは全部で八つ。床の四隅に四つ。天井の四隅に四つ……) 

巌窟王(これに感知されると燻蒸消毒機能は働かない、だったな) 

巌窟王「三十分後にまた会おう! なぁに、すぐに済む!」ギンッ 

キーボ「うう」

697: 名無しさん 2017/11/06(月) 18:20:22.64 ID:YUDhDoeb0
ガシャァァァンッ! 

キーボ「行ってしまいました……ここ雰囲気的にも凄いイヤなんですよね。怖くて」 

キーボ「まったく。巌窟王さんも人間ではないのだから、多少はボクの気持ちがわかると思ったのに」 

キーボ「ああ、この後、またあのなんか宇宙的恐怖を感じるような虹色のガスが出てきて……」 

キーボ「あれ」 

キーボ「……?」 

キーボ「出てこない? 何も?」

698: 名無しさん 2017/11/06(月) 18:20:49.40 ID:YUDhDoeb0
休憩します!

699: 名無しさん 2017/11/06(月) 19:12:38.03 ID:YUDhDoeb0
最原サイド 研究教室に行く道中 

茶柱「……」 

茶柱「何を渡したんですか? 入間さんに」 

最原「アンジーさんの血液。前からの取引だったから」 

茶柱「……言いたくないって言ってくれれば、こっちだって知らないままでいてあげたものを……」 

茶柱「取引の内容は?」 

最原「天海くんの動機ビデオのデータと交換。なんで入間さんが持っているかは……色々あったと言うしかないな」 

茶柱「……」 

最原「どうやって採取したのかは聞かないの?」 

茶柱「ヒルでしょう」 

最原「ああ、うん。流石にわかるか……」 

茶柱「……ゴン太さんが怒りますよ」 

最原「流石にヒルをどうこうする気はないよ。入間さんに言い含めておいたし。必要なのは中身だけ、だ」 

茶柱「次に、アンジーさんに無許可でこんなことをしたら……」 

最原「当然、巌窟王さんは激怒するだろうね」 

最原「……でもやれたんだから仕方ないよ」 

茶柱「……」 

茶柱「巌窟王さんに告げ口しないとは思わないんですか?」 

最原「それならそれで仕方ないかな」 

茶柱「あなた……!」

700: 名無しさん 2017/11/06(月) 19:20:26.57 ID:YUDhDoeb0
茶柱「転子のことを利用しないでくださいよ! ふざけないで!」 

最原「え? 利用? したっけ?」 

茶柱「だから、その顔! なんかもう『自分は裁かれて当然の人間です』ってツラ! 凄いイラつきます!」 

最原「……実際そうだし」 

茶柱「そうですね! でも転子は! だからと言って、最原さんのことをぶん殴ったとしても!」 

茶柱「その罪悪感を清算したりはできないんですよ……!」 

茶柱「ふざけないで……! 転子はあなたのことを」 

最原(許したいと思ってた、でしょ) 

最原「それ以上は言わないで」 

最原「……甘えちゃいそうだしさ」 

茶柱「甘えていいんですよ! なんでもかんでも背負いすぎです!」 

茶柱「あなたのやり方は巌窟王さんみたいな『いくら背負っても折れない強いヤツ』の立ち回りです!」 

茶柱「あなたは……!」 

最原「弱い、けどさ……いいよ別に。どうせ、この学園にいる間だけだ」 

最原「……ごめん。心配かけさせちゃったかな?」 

茶柱「まさか」 

茶柱「ただ……絶望的に似合ってないだけです」 

最原「……」 

最原(……無理なものは無理、か。マネくらいはできると思ったんだけど) 

最原「調査を続けよう。それで犯人を見つけて……」 

茶柱「……またあんなことをするんですか?」 

最原「……」 

茶柱「……呆れ果てて涙も出てきそうですよ」

701: 名無しさん 2017/11/06(月) 19:28:21.27 ID:YUDhDoeb0
茶柱「もうちょっと弱くていいんですよ。人間なんですから」 

茶柱「矛盾だらけだろうが問題はありません」 

茶柱「ただ……重荷を背負いすぎるのはやめた方がいいです」 

茶柱「自分が泥を被れば周りが上手く行く、とか傲慢です」 

茶柱「……あなたなら実際上手くできてしまう辺りが本当に救いようがないところですが」 

茶柱「お願いですから自分の身も顧みてください。あなたも仲間なんですから」 

茶柱「上から目線でなんでもかんでも救おうと思わないでください。転子たちそこまで弱くありません」 

茶柱「……わかりましたか?」 

最原「うん」 

最原「……はは。男子が嫌いなだけで本当に優しいな、茶柱さんは」 

茶柱「ウッゼー。本当に。最終的にはコンクリの床の上で投げ技ですよ?」 

最原「ほ、本当にやめてね。死ぬから」

704: 名無しさん 2017/11/07(火) 18:10:44.41 ID:iKwi2pO/0
超高校級の美術部の研究教室周辺 

最原「よし、来れた、と」 

茶柱「結構時間かかってます。早めに済ませられるのなら早めにしましょう!」 

最原「うん! そのつもり……?」 

最原(……酒の臭いがする?) 

最原(こっちから?) 

茶柱「あれ? 最原さん? どこに?」 

最原「えっと……スライド錠のところから臭いが……」 

最原「……カバン、かな。なんか見覚えあるような……」 

最原(そうだ。確かアンジーさんが使っていたヤツだ。巌窟王さんの写真機材一式を輸送するときに使った……) 

最原「中身は……」ゴロンッ 

最原「……ワインの瓶? しかもかなり度数が強いヤツだな」 

最原「一本丸ごとなくなってる……」 

茶柱「これ、もしかしなくっても……!」 

最原(でもなんでこんなところに。研究教室の外、スライド錠のドアの手前なんかに……?)

705: 名無しさん 2017/11/07(火) 18:15:06.89 ID:iKwi2pO/0
最原「スライド錠のドアは……閉まってるな」ガタガタ 

最原「……事件当時はどうだったのかな」 

最原「確か巌窟王さんは……」 

茶柱「ところで最原さん」 

最原「なに?」 

茶柱「研究教室の中から声が聞こえるんですけど……」 

最原「ん? 誰かいるんでしょ?」 

茶柱「なんかギャーギャー言ってるんですが……」 

最原「……え」

706: 名無しさん 2017/11/07(火) 18:20:52.76 ID:iKwi2pO/0
研究教室の中 

王馬「ぎゃああああああああ! 痛い! コメカミぐりぐりマジ痛いーーー!」 

獄原「王馬くーーーんッ!」 

巌窟王「解放されたくば今すぐ蝋燭を離せ。この責め苦が延々と続くだけだぞ……!」グリグリグリ 

王馬「百田ちゃんパースッ!」ポイッ 

百田「えっ」 

百田「アツゥイ!」キャッチ 

春川「でもキチンとキャッチできたじゃん。今のうち」 

百田「お、おう! じゃあ――!」 

巌窟王「よせ! やめろ! それを見るな!」 

巌窟王「『それ』に火を付けるんじゃない!」 


ボォウッ 


春川「――」 

百田「……そう、か。こういう仕組みに……アンジーはこんなモンまで作れたのか」 

巌窟王「……!」 

百田「……わぁーってるよ。一応やってみただけだ。すぐに消すっつの」フッ

707: 名無しさん 2017/11/07(火) 18:25:36.28 ID:iKwi2pO/0
研究教室の外 

最原「……」ガチャガチャ 

最原「開かない。中から鍵がかけられてるみたいだ」 

茶柱「中に誰かいることは間違いないんですけどね。何してるんでしょう」 


ガチャリンコ 


最原「あ。開いた」 

百田「お。終一。戻ってきてたのか」 

最原「あ。百田くん」 

最原(――と、奥には王馬くん、春川さん、ゴン太くんと……) 

巌窟王「……」 

最原(なんか顔に手を当てて凄い凹んでる様子の巌窟王さん) 

最原「何があったの?」 

百田「アレだアレ」 

最原「アレ?」 



巌窟王のろう人形「」デデーンッ! 



最原「うわあビックリした! 何アレ!?」 

春川「夜長が作ったらしいよ。凄い似てるよね」 

最原「に、似てるなんてものじゃないよ! 生きてるって錯覚するくらい凄い良くできてる!」 

王馬「アンジーちゃん、本当に巌窟王ちゃんのことが大好きだったんだろうね」 

王馬「四六時中凝視してなければ才能があろうがなかろうが『この段階』までは行けないって」 

巌窟王「……フン」

708: 名無しさん 2017/11/07(火) 18:31:32.58 ID:iKwi2pO/0
王馬「でも……見れば見るほど悲しくなってきちゃうよね……だって」 

王馬「これがアンジーちゃんの遺作なんだと思うと、本当に残念で無念で俺はッ! 俺はァ……!」 

百田「死んでねえよアホウ」 

春川「……でも凄い技術力だよね。あんな仕掛けどうやって……」 

巌窟王「やめろ。みだりに話すな」 

最原「……やっぱり何か機嫌悪いよね? 何があったの?」 

最原「あと百田くん。なんで蝋燭なんか持ってるの?」 

百田「……まあ色々あったんだよ。必要になったら裁判中に話す」 

最原「そ、そう?」

709: 名無しさん 2017/11/07(火) 18:34:20.70 ID:iKwi2pO/0
休憩します!

711: 名無しさん 2017/11/07(火) 19:01:35.59 ID:iKwi2pO/0
最原「……巌窟王さん。あのさ。このカバン、見覚えがあるよね?」 

巌窟王「む……? アンジーのカバンだな」 

巌窟王「今朝はアンジーの私室の隅にあったはずだ。何故お前が持っている?」 

最原「今朝は、か……」 

最原「あ、さっき研究教室の外……スライド錠のドアの前に放置されていたのを見つけたんだ」 

百田「外だと? アンジーの研究教室の中にあるんならギリギリ納得できなくもねぇけどよ……外だと?」 

王馬「……」 

王馬「ねえ巌窟王ちゃん。確かアンジーちゃんのことを探しているときに、この研究教室に寄ったんだったよね?」 

王馬「アンジーちゃんがいないことを確認した後、巌窟王ちゃんはこの研究教室の鍵をどうした?」 

巌窟王「流石にこれ以上の門限の延長は認められない、と思ったからな。鍵を閉めて下の階へと降りたぞ」 

巌窟王「こうしておけば研究教室に戻ったアンジーも気付くだろうからな。俺が研究教室を訪ねて、入れ違ったことを」 

最原(ということは……!)

712: 名無しさん 2017/11/07(火) 19:09:26.40 ID:iKwi2pO/0
キーンコーンカーンコーン! 

モノクマ『えー! それではみなさん、そろそろ始めちゃいましょうか!』 

モノクマ『前代未聞の疑似学級裁判を!』 

モノクマ『犯人を議論したいのなら裁判場を貸してあげてもいいよ! 面白いしね、うぷぷ!』 

モノクマ『ていうか強制的に議論させるけどね! 何が何でも! 議論させるけどね!』 

モノクマ『いつも通り、裁判場へ続く赤い扉へとお集まりくださーい!』 




最原「……時間か」 

茶柱「行きましょう。後のことは裁判中に明らかにするべきです」 

茶柱「……気楽に行きましょうよ! だって、今回は誰も死んでなかったんですから!」 

百田「アンジーからしたらとんでもねぇ話ではあるが……確かにな。今回は命がけってわけでもねぇし」 

春川「……」 

春川「そんなスタンスでいいのかな」 

王馬「足をすくわれちゃう……かもよ?」 

百田「うっせー!」 

最原「行こうか」 

巌窟王「……」

713: 名無しさん 2017/11/07(火) 19:15:54.14 ID:iKwi2pO/0
赤い扉の中 エレベーター周辺 

白銀「あ! やっとこれで揃ったね!」 

入間「おっせーぞ短小共! どこでシコってやがった?」 

最原「いや、ごめん……ちょっと誤算があって」 

巌窟王「三十分は意外と長かったな」 

キーボ「……置いてかれるかと思いました。本気で……!」 

巌窟王「犠牲は無駄にはならなかった。許せ」 

キーボ「もう! もう!」プンスカ! 

赤松「何があったの?」 

最原「なんか、キーボくんが真宮寺くんの研究教室に閉じ込められてたみたいで……」 

入間「ん? ああ……」 

最原(……ん。なんか入間さんが妙な反応見せたな) 

最原「……後でいいか。そのための学級裁判だし」

714: 名無しさん 2017/11/07(火) 19:24:38.32 ID:iKwi2pO/0
裁判場到着 

モノクマ「おかえりー! 待ってたよー、オマエラー!」 

東条「……二度と帰ってきたくはなかったけどね」 

夢野「仕方ないじゃろう。一応、必要なことじゃ」 

王馬「アンジーちゃんの治療と引き換えの議論だっけ? 面倒臭いなぁ。巌窟王ちゃんの友達も意外と役立たずだよね」 

prrrr! 

巌窟王「なんだ?」ピッ 

BB『覚えてろ王馬小吉……! 地べたを這い、泥水を啜ってでも、今の台詞を後悔させてやる……!』 

王馬「だってさ! 口は災いの元だよゴン太! 謝れ!」 

獄原「ご、ごめん!」 

百田「お前だお前ッ!」 

巌窟王「コイツのことは気にするな。半分以上口だけだ」 

白銀「残りの半分は!?」ガビーンッ!

715: 名無しさん 2017/11/07(火) 19:33:09.33 ID:iKwi2pO/0
モノクマ「あ。巌窟王さん。もうモノクマーズの数が足りなくって組体操で椅子を作れなくなっちゃったから」 

モノクマ「代わりにアンジーさんの席についていいよ」 

巌窟王「……了解した」 

モノクマ「うぷぷ……死んではいないけど、やっと一人欠けたね……学級裁判っぽくなってきました!」 

百田「にゃろー、最低な喜び方してやがる」 

天海「気にするだけ無駄っす。無視しましょう」 

巌窟王「……さあ。本番はここからだ。才囚学園生徒一同!」 

巌窟王「議論を始めるぞ! 隣人を疑い、隣人を信じ、隣人を庇い隣人を糾弾する……」 

巌窟王「喉が焼け付くような陰惨な裁判を繰り広げようではないか!」ギンッ 

百田「わかるように言え、巌窟王!」 

巌窟王「いいだろう、つまりこういうことだ!」 

巌窟王「『狂気の有無』を、計りとれ! 俺が重要視するところはそこだけだ!」 

最原「狂気……狂気、か」 

最原(……あるに決まってる) 

最原(そして、それを証明しきったときに僕は……その狂気の所有者を許せるだろうか) 

最原「……うん。わかった。見つけるよ、犯人」 

最原「前みたいに!」 





最原(三度始まる。極限の議論、狂気の演目) 

最原(僕たちの……学級裁判が!)

717: 名無しさん 2017/11/07(火) 21:42:30.88 ID:iKwi2pO/0
巌窟王 エドモン・ダンテス 

我が名は巌窟王(モンテ・クリスト)。 
愛を知らず、情を知らず、憎悪と復讐のみによって自らを煌々と燃え盛る怨念の黒炎と定め、すべてを灰燼に帰すまで荒ぶるアヴェンジャーに他ならない。 
この世界に寵姫(エデ)はおらず、ならばこの身は永劫の復讐鬼で在り続けるまで……というのはカルデアでの話。 

旅行先を間違えたとはいえ、一応旅行は旅行。偶然出会った生徒たちとの出会いはそれなりに大切にしている。 
『旅の恥はかきすてと言うだろう?』 

絆LV1 
マスターはサーヴァントのステータスを見ることができる。ただしアンジーはその権利をすべて放棄した上で巌窟王との契約を履行。 
結果、実質上の巌窟王のステータスはすべて『不明』となった。 
実際のところ、まともに測定はできない。なにせアンジーの都合、もとい感情で簡単に上下するので…… 

絆LV2 
基本的に人理焼却が行われた世界にしか存在できないエクストラクラス故に、自らのマスターもカルデアのマスターただ一人と定義している。 
だが事故ったものは仕方がないので、アンジーにもそれなりに世話を焼く。 
さながら兄か父のように見えるが、本人にそれを指摘しても否定するかはぐらかすだろう。 
なお、ここまでする理由は特にない。強いて言うなら『巌窟王自身が想像するサーヴァントのヴィジョン』を正直に実行しているだけ。 
極論、契約したのが王馬だったとしても似たようなことになっただろう。(契約者がアンジーで本当によかったとは思うが) 

絆LV3 
宝具の解放はほとんどできないと言っていい。 
巌窟王は本来、檻に対してこれ以上のない特攻を持つが、その効力すら実質ほとんど死んでいる。 
モノクマの校則が強力なのか、それとも別の理由があるのかは定かではない。 
なお、脱出の意思が死んでいるわけではない。檻は檻。巌窟王故に必ず破壊してみせる。 

絆LV4 
モノクマは巌窟王にとって、存在自体が許せない不倶戴天の敵である。 
世界にあまねく理不尽と悪意の具現そのものである彼を、巌窟王は何をどう間違っても許さないだろう。 
見逃すことはありえない。何故なら自らは間違っても『エドモン・ダンテス』などではないのだから。 

人間性を取り戻し、見逃すなんて展開は―― 

絆LV5 
?????????

719: 名無しさん 2017/11/08(水) 18:03:03.72 ID:FAYKKJf+0
学級裁判 開廷 

モノクマ「えー! 今回はまったく関係ないルールが多数ありますが、一応、学級裁判の簡単なルールをいたしましょう!」 

モノクマ「学級裁判では『誰が犯人か』を議論し、その結果はオマエラの投票により、決定されます」 

モノクマ「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき。だけど、もし間違った人物をクロとしてしまった場合は」 

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、生き残ったクロだけに晴れて卒業の権利が与えられます!」 

BB『えー。ではここから先は私が補足をば』 

BB『しかし今回の学級裁判はあくまでも疑似です。どのような結果になろうとおしおきはありません!』 

BB『ただし学級裁判の公平性のみは通常時と同様。投票された人間が犯人だった場合は、その結果が周知されます!』 

モノクマ「わかりやすい補足をありがとう! えーと……誰オマエ?」 

BB『エデかもよ!?』キャピーンッ 

最原「はっ!? この人が!? 嘘でしょ!?」ガビーンッ! 

巌窟王「もちろん嘘だ。吐き気を催すような嘘だ」 

巌窟王「……AIは嘘を吐けないのではなかったのか?」 

BB『えー? そんなキャラ設定ありましたっけー? 忘れちゃいましたー』キャルンキャルン

720: 名無しさん 2017/11/08(水) 18:10:13.62 ID:FAYKKJf+0
王馬「俺は興味が無かったから全然捜査してないんだけどさー。今回の学級裁判で議論するのって『どの犯人』のこと?」 

巌窟王「……ふむ。なるほど。様々な事件が多発していたからな」 

巌窟王「いいだろう。まずは『何が起こったのか』を簡単に纏めるぞ」 

BB『あのー。モノクマさん。ちょっとコネクターとか貸してくれません?』 

BB『裁判場の上部のモニターを使えれば手っ取り早いんですが』 

モノクマ「え? アレ使いたいの? うん、わかった。使っていいよ!」ポイッ 

BB『よしっと……じゃあ巌窟王さん。デバイスと席についてる端子をコネクターで繋いでくださいな』 

巌窟王「繋いだぞ」カチッ 

BB『じゃあみなさーん! 裁判場上部のモニターをごらんくださーい!』 

モノクマ「あ。ウイルスを仕込んだりしたらデバイスをドカンするからよろしくね?」 

BB『そんな小細工しませんってー』 



モニター「」ブゥンッ…… 




赤松「あ。アレって……才囚学園の全景のCG……?」 

百田「すげーな。よくできてやがる」 

最原(……本当に何者なんだろう。この人。並大抵の技術力じゃないよな……)

721: 名無しさん 2017/11/08(水) 18:20:13.23 ID:FAYKKJf+0
BB『まず最初。第一の事件が発覚したのは十一時四十分ごろ』 

BB『アンジーさんを探して彷徨っていた巌窟王さんと、偶然そのとき外に出ていた茶柱さんが第一発見者』 

BB『超高校級の合気道家の研究教室が大炎上しており、巌窟王さんが何かに気付いて燃える研究教室へと吶喊』 

BB『面喰った茶柱さんが寄宿舎へと戻り、最原さんを中心とした生徒たちを叩き起こし、消火活動を開始しました』 

BB『あ。補足したいことがあったらなんでも言ってくださいね。このまとめ、巌窟王さんの証言から再構成したものなので』 

茶柱「今のところ事実と食い違うところは一切ありません」 

百田「でも結局、巌窟王はなんで炎の中に突っ込んだんだ?」 

BB『おっと。補足は受け入れても質問は後回しでお願いします。続けますよー』 

BB『消火活動は中々捗らず、一時間以上かけたものの研究教室は尚も大炎上』 

BB『そんな折り、茶柱さんが消火活動から消えていることに気付いた最原さんが、彼女を探し始めたのが第二の事件発見の発端です』 

BB『これも巌窟王さんからの伝聞ですが……ここから先は最原さんと茶柱さんから直接聞きましょうか』 

最原「うん。そういえば巌窟王さんには簡単にしか言ってなかったしね」

723: 名無しさん 2017/11/08(水) 19:34:51.28 ID:FAYKKJf+0
最原「僕が中庭から全力疾走で東条さんの研究教室に向かったのが一時十分ごろの話だよ」 

最原「そのとき、僕は茶柱さんが『東条さんを呼びに行ったんじゃないか』って推理してて、実際それはドンピシャだったんだけど」 

最原「……東条さんの研究教室で、僕は目を疑うようなものを目にしたんだ」 

茶柱「血塗れの東条さん、ですよね。本当にビックリしましたよ。掃除用具を入れるロッカーを開けたらいきなりですもの」 

東条「……世話をかけたわね。本当に」 

入間「んだよ。掃除用具のロッカーの中に何があったんだ?」 

入間「……ハッ! ま、まさか……全――!」 

茶柱「違います」 

入間「まだ言い終わってないのに!?」ガビーンッ! 

最原「うん! 絶対に違うと思う!」 

最原「……その瞬間は見てないけど、茶柱さんが言っている『いきなり』って」 

茶柱「東条さんが倒れ込んで来たんですよ。ぐったりと脱力した状態の」 

赤松「気絶してた……ってこと?」 

BB『これが第二の事件。東条さんの襲撃事件のあらまし、ですかね』 

茶柱「……」 

茶柱(ここですね) 

茶柱「ええっと、そこから転子と最原さんの『二人がかりで』東条さんを応急処置」 

茶柱「しばらくして落ち着いたあたりで転子は中庭へと戻ったんです」 

最原(……よし。茶柱さんは忘れてないな)

724: 名無しさん 2017/11/08(水) 19:47:26.74 ID:FAYKKJf+0
天海「それって、俺を呼んで本格的に治療を施すためっすよね」 

天海「……期待してくれるのは嬉しいんすけど、俺も東条さん以上のことはできないんすよね」 

天海「しかし二人がかりで……っすか。てっきり茶柱さんはテンパってすぐに外に出たモンだと思ってましたよ」 

茶柱「ハンッ! 男死が勝手なイメージで転子を語らないでください!」 

BB『じゃあ話を元に戻しますよー。ここから先は巌窟王さんもやっと帰還。事件に本格参戦です!』 

百田「俺とハルマキに感謝しろよ巌窟王! 俺たちがいなきゃ今ごろこんがりローストだぜ?」 

巌窟王「クハハ。思い上がりもそこまで行くと滑稽だな。恩着せがましいぞ百田」 

春川「強がりだけは一級品だね」 

BB『巌窟王さんが火事の研究教室から出てこれたのは一時三十分くらいですねー』 

BB『そのとき巌窟王さんは消火活動に参加していた生徒を全員認識したはずです。忘却補正もあるので、この点に関しての証言は後で行いましょう』

725: 名無しさん 2017/11/08(水) 19:57:30.26 ID:FAYKKJf+0
BB『そして一時四十分に紆余曲折ありながらも天海さんが東条さんのもとへ到着』 

BB『巌窟王さんはなおも発見できなかったアンジーさんを探すため、最原さんを連れて調査を開始』 

BB『ついに恐怖の第三の事件発覚に至るのです……!』 

東条「泥酔した状態のアンジーさんが、三つの空き部屋の中央の床下で、無抵抗に血を吸われていた……」 

王馬「ゴン太の研究教室にいたはずの医療用ヒルに、だっけ?」 

赤松「あ、あれ? ちょっと待って王馬くん。ヒルだとは確かに説明受けたけどさ」 

赤松「……出所がどこかなんて聞いたっけ?」 

王馬「ああ。それに関してはこう答えるよ。俺はヒルがゴン太の研究教室にいたのを知ってたんだ」 

最原「あのさ。この場でハッキリさせておきたいんだけど」 

最原「疑似学級裁判のことを聞いたとき、どの程度事件の情報をモノクマから聞いたの?」 

白銀「アンジーさんが殺されかけたってこと。アンジーさんが発見時どういう状況だったのかってこと」 

白銀「あとは第一発見者が最原くんと巌窟王さんだった、ってことだけかな」 

真宮寺「東条さんの襲撃事件に関しては、茶柱さんが中庭に戻ってくるなり慌ててまくし立てたこと以上の情報は知らなかったヨ」 

真宮寺「まあ、後で調査はしたけどネ」 

最原(なるほどね……)

726: 名無しさん 2017/11/08(水) 20:15:02.39 ID:FAYKKJf+0
BB『さて。まとめは大体こんなものでしょう。あとは巌窟王さんが写真を撮ったりしてたので、必要とあらば上のモニターに情報を追加しますよ』 

最原「ええっと……やっぱり名前を知らないのは不便だな」 

最原(何回か巌窟王さんが『ビィビィ』って言ってるのは聞こえたけど) 

最原「とにかくありがとう。助かったよ」 

BB『どういたしまして!』 

王馬「で。結局、俺たちはどの事件の犯人を議論すればいいの?」 

王馬「確かにすべての事件が一夜に起こった以上、同一犯の可能性は高いけどさ」 

王馬「高いってだけで、三つの事件の犯人がすべて別人って可能性も否定できないよね?」 

モノクマ「お答えしましょう! 今回の疑似学級裁判で議論すべきは、夜長アンジーさんを殺そうとした未遂クロです!」 

モノクマ「あまりお勧めはしませんが……一切の議論なく適当に犯人を決めて投票するのもアリっちゃアリですよ」 

モノクマ「その場合、アンジーさんを人数に含めれば十七分の十六の確率でハズレですけどね!」 

真宮寺「もしも正しいクロを指摘できれば周知される、とは言うけどさ」 

真宮寺「それって裏を返せば、投票した人がシロだった場合は『シロだということが周知される』って認識でいいんだよネ?」 

モノクマ「もちろん。ま、ほとんど意味ないと思うけどね」 

百田「たった一人の犯人を見つけ出すための裁判なわけだからな」 

星「……後でアンジー本人に聞けばいい話じゃねーのか?」 

モノクマ「悪いけどそれは不可能だよ。アンジーさんの事件に関する記憶は奪っちゃうからね」 

モノクマ「もしも正しいクロを指摘できれば、意味がないから奪わないけど。無駄な労力とリソース使いたくないし」 

星「なるほどな。エグイ真似をしやがる」

727: 名無しさん 2017/11/08(水) 20:40:18.27 ID:FAYKKJf+0
巌窟王「さあ。前提はすべて出そろったぞ。議論を本格開始するに不足したものは何一つとしてない」 

天海「そっすね! じゃあさっそく議論を開始して……!」 

王馬「いや議論するまでもないだろ! こんなグロい殺し方でアンジーちゃんを殺そうとするのは……!」 

王馬「超高校級の昆虫博士の獄原ゴン太しかいねぇーだろうがよォーーー!」ズバァァァンッ! 

獄原「ち、違うよ! ゴン太は虫さんに人殺しをさせたりしないんだッ!」アタフタ 

春川「でも現実に、あの医療用ヒルは獄原の研究教室で育てられていたヤツだよね?」 

獄原「う、うん。そうだけど。でもそもそも、ゴン太の研究教室にいたヒルさんを全員かき集めたとしても」 

獄原「あんな……人一人を殺せるような量の血を吸ったりできないんだよ!」 

東条「……確かに。獄原くんの研究教室にいたヒルだけで人を殺せるとは思えないわね」 

東条「体格の小さい星くんなら別だけど、今回襲われたのは夜長さんなのだし」 

最原「ゴン太くん。発想を変えてみよう。どうやったらあの数のヒルだけで人を殺せるようになるのか」 

獄原「い、イヤな発想の変え方だね……」 

最原「ごめん。でも超高校級の昆虫博士であるキミの力が必要なんだ」 

巌窟王「……例えば、だが。ヒルが飲んでいたアンジーの血液に何らかの『混ぜ物』がしてあったとしたら、どうだ?」 

最原「……?」 




赤松「あれ……意外とゴン太くんのヒルのこと知ってた人多いね」 

東条「獄原くんが定期的に他の生徒に対して『献血』をお願いしていたから。その弊害で、ね」 

赤松「け、献血……」

731: 名無しさん 2017/11/09(木) 17:41:48.94 ID:rlUnF97o0
最原「アレしか考えられないよね。発見時のアンジーさんは何故か酷く酔っていて、酒臭かった」 

最原「……多分、ヒルを狂わせた元凶は『アンジーさんの血中アルコール濃度』……平たく言えば酒だよ」 

百田「さ、酒だぁ?」 

獄原「あ、そっか。それならありえるよ」 

獄原「ヒルさんたちにとって、アルコールは麻薬に等しいからね」 

獄原「もしも血を吸われている人の血中に、大量にアルコールがあったとしたら……」 

獄原「うん! あの数のヒルさんたちだけでも、一人を殺す程度なら充分足りると思うよ!」キラキラキラ 

王馬「空気読めよゴリラ! そんな誇らしげに言うな!」 

最原(今日の王馬くんは当たりが強いなぁ) 

獄原「ご、ごめん」 

王馬「まあそれは置いといて……酒? 学園の中に酒なんてあったっけ?」 

最原「あったと思うよ。さっき『酒の持ち主本人』から教えられたから間違いない」 

東条「……私の研究教室の隠し扉の先よ。今まで言う機会がなかったけど、ワインセラーがあったの」 

天海「東条さんの?」 

東条「……でも私は犯人じゃないわよ」 

天海「さて、それを決めるのは、俺でもキミでもないっすけどね」 

東条「……」

732: 名無しさん 2017/11/09(木) 17:42:45.42 ID:rlUnF97o0
茶柱「で、でも本当に、アンジーさんはお酒を飲んだっていうんですか?」 

春川「あるいは血中に直接注射された……とも考えられない?」 

巌窟王「いや……アンジーは間違いなく酒を口から飲んだはずだ」 

巌窟王「最原。その根拠、お前なら答えられるだろう?」 

最原「……」 

最原(なんだ? さっきからの巌窟王さんの態度。まるで僕を試しているような……?) 

最原「ええっと……うん。アンジーさんの口の中は、何かを無理やり突っ込まれたみたいに荒れ放題だったんだ」 

最原「多分だけど、あの荒縄で雁字搦めに縛り上げた後で、無理やり酒瓶を口の中に押し込まれたんだろうね」 

夢野「き、聞けば聞くほど、今回の犯人はエグすぎるぞ……!」ガタガタ 

キーボ「……そういえば、あのアンジーさんを縛り上げた荒縄。あれは真宮寺くんの研究教室にあったものでは?」 

真宮寺「あ、本当だ。よく気づいたネ」 

百田「なんだ? 今回の犯人は、やたらあっちゃこっちゃから材料を調達してんな」 

春川「獄原の研究教室の医療用ヒル。東条の研究教室の酒。真宮寺の研究教室の荒縄……」 

春川「どれも鍵がかかってない研究教室だから、これで容疑者を限定するには弱すぎるけど」 

最原(無視するのは無理、っていう程度には気になるな……)

733: 名無しさん 2017/11/09(木) 17:49:55.20 ID:rlUnF97o0
BB『……あ! 巌窟王さん! ひとまずちょっと席を外すので、画像データの操作とかお願いしますね!』 

巌窟王「俺はお前ほど芸が細かいわけではないが……まあいいだろう」 

BB『あー、もう忙しい忙しい……!』 

白銀「ね、ねえ。その人一体何をしている人なの? 仕事的な意味で」 

巌窟王「そうだな。一言で言うと……」 

巌窟王「……」 

巌窟王「一言では言えんな!」ギンッ 

天海「皮肉なことにその答えが既に一言っすね」 

最原「ええっと……それじゃあ巌窟王さん。上部モニターの操作はお願いするよ」 

王馬「議論を続けよっか」 



カルデア 

イシュタル「……今からBBの部屋に行くわよー」 

ナーサリー「役者交代! 楽しみね、楽しみなのだわ!」ルンルン!

734: 名無しさん 2017/11/09(木) 18:17:22.83 ID:rlUnF97o0
最原「……アンジーさんの襲撃事件に関しては特に謎はないよね」 

赤松「え? そうなの?」 

春川「まあ……襲撃場所はまず間違いなく、夜長が見つかったあの部屋だし」 

春川「ヒルに殺人を委託した理由も大体わかるしね」 

キーボ「というと?」 

春川「暗殺者、つまり第三者に殺人を委託した人間がやることなんて決まってるでしょ」 

春川「対象の死亡推定時刻にアリバイができるよう立ち回ることだよ」 

星「となると、逆に怪しいのは……消火活動に参加していた人間ってことになるか?」 

夢野「んあ? 何故そうなる?」 

天海「あのタイミング、つまり夜に人が集まるイベントなんてアレ以外になかったっす」 

天海「もしもアンジーさんが、あのままヒルによって失血死させられてたとしたら……」 

赤松「あ。ほとんどの人にアリバイがない……!」 

天海「それはそれで犯人にとって有利っすけど、でもわざわざヒルを使う理由としてはお粗末っすよね」

735: 名無しさん 2017/11/09(木) 18:25:22.60 ID:rlUnF97o0
獄原「でもヒルさんの噛み傷は独特なんだよ? 計画が全部終わった後、アンジーさんをゴン太が見れば殺害方法はわかるはずだし」 

獄原「そしたら死亡推定時刻にこれと言った意味がないってすぐにバレちゃうんじゃないかな」 

春川「どうとでもなる」 

獄原「え」 

春川「……死体の状態を死後に変化させる術なんて、それこそ無数にあるわけだし」 

春川「家庭で手に入る範囲の洗剤だけを組み合わせて、人体をドロドロに溶かしたこととか一度や二度じゃないよ?」 

赤松「ど、ドロドロ!?」 

東条「……最悪、水に漬けておくだけでも人体は二目と見られない有様になるわけだし」 

東条「なによりこれはあくまで『殺人未遂事件』。この後どうなる予定だったのかを考えることに価値はあっても――」 

巌窟王「現状に大した意味はない、か」 

巌窟王「……」 

最原「巌窟王さん?」 

巌窟王「いや……ふとアンジーの声が聞こえないな、と疑問に思っただけだ」 

巌窟王「いなくて当たり前だというのに」ズーン 

白銀「アンジーさん難民になってる!」ガビーンッ!

736: 名無しさん 2017/11/09(木) 18:33:45.97 ID:rlUnF97o0
赤松「だ、大丈夫!? 巌窟王さん、アンジーさんの代わりに私が頭撫でてあげようか!?」 

巌窟王「やめろ……」 

夢野「なんならウチのことを撫でてくれても構わんぞ!」 

ギュンッ 

巌窟王「……」ナデナデ 

夢野「おおー。これは中々……」 

最原「夢野さんを撫で始めたッ!?」ガビーンッ! 

天海「割と本気でロスってるっすね。かなり症状が重篤っす」 

巌窟王「……」 

巌窟王「虚しい……」ズーンッ 

夢野「んあっ!?」ガビーンッ! 

ギュンッ 

王馬「あ、元の席に戻った」 

夢野「ウチの小動物的かわいさの何が不満じゃと……!?」ガタガタ 

茶柱「夢野さんは可愛いです。巌窟王さんにはそれがわからないのです」

737: 名無しさん 2017/11/09(木) 18:34:46.61 ID:rlUnF97o0
休憩します!

738: 名無しさん 2017/11/09(木) 19:55:17.62 ID:rlUnF97o0
巌窟王「……謎なら一つ残っているな。アンジーの事件に関しては」 

星「今は少しでも手がかりが欲しい。なんでも言え」 

巌窟王「アンジーが具体的にいつごろ襲撃されたか、だ」 

王馬「ああ、そっかー。それ大事だよねー」 

百田「アンジーが襲撃を受けたタイミングによっては、他の事件との関連性も見えてくるだろうからな」 

百田「確かにそこは絶対に判明させるべきだぜ」 

赤松「うーん……アンジーさんが襲撃されたタイミングか」 

最原「……それを示す証拠ならあったかもしれない」 

最原「ほら。茶柱さん、アレだよ」 

茶柱「……ああ、アレですか!」 

茶柱「って言っても他の人にはわからないので、詳しく言いなさい! 詳しく!」 

最原「ご、ごめん! ええっと、超高校級の美術部の外にあった、アンジーさんのバッグだよ!」 

百田「あ? ああ、そういやそんなもんもあったな?」

739: 名無しさん 2017/11/09(木) 20:04:19.84 ID:rlUnF97o0
赤松「アンジーさんのバッグって……前に私の部屋から写真機材を運ぶときに使ったアレ?」 

巌窟王「ああ。間違いないな。具体的に言うと……」 

ナーサリー『コレのことね! みんな、上部モニターに注目して?』 

真宮寺「最近、何度かコレを使っている姿を見たことがあるヨ。確かに夜長さんのものだネ」 

巌窟王(む? 今の声は誰のものだったか……?) 

最原「この証拠品は発見された場所と、内容物が重要なんだよ」 

最原「まず発見場所はさっき言った通り、超高校級の美術部の研究教室の外だったんだ」 

天海「外? 中ならわかるっすけど……」 

白銀「それで、バッグの中には何が入ってたの?」 

最原「ワインのボトルだよ。しかも度数がかなり強烈なヤツ」 

最原「中身は全部なくなってたけどね」 

王馬「へえ」 

百田「ってことは、アンジーを泥酔させた酒ってのは……」 

最原「間違いなくコレだよ。東条さん、どう?」 

東条「そうね。確かにそれは私の研究教室のワインセラーにあったものよ。保証するわ」

740: 名無しさん 2017/11/09(木) 20:14:55.88 ID:rlUnF97o0
赤松「……よくわからないよ。なんでアンジーさんのバッグにワインのボトルが?」 

最原「多分、犯人に襲撃されたとき、アンジーさんはこのバッグを背負ってたんだ」 

最原「アンジーさんを殴って気絶させた後、犯人はあちこちから必要なものを持ってきてたけど……」 

最原「その一連のアイテムは、すべてこのバッグで輸送していたんだろうね」 

最原「それで、このバッグがなんで研究教室の外に置かれていたのかって言えば……」 

巌窟王「俺が外に出るときに、研究教室のドアを閉めたから、だろうな」 

巌窟王「本来であれば、そのバッグは『アンジーが良く行く場所』にあるのが自然だ。ボトルごとそこに移動させる腹積もりだったのだろう」 

春川「でもそれは無理だった。他に処分できそうな場所も思いつかなかったから、スライド錠の前に置かれてたってこと?」 

百田「……待てよ。確かにこれで『一連の工作が終わった時間』が『巌窟王が去った後』ってことはわかったけどよ」 

百田「それでも肝心の『アンジーが事件に巻き込まれた時間帯』がまだ限定できてねーぞ」 

茶柱「あ、本当です! 全然気づきませんでした! これだけだとまだ……!」 

最原(いや。限定できるはずだ。でもこれを指摘すると……多分巌窟王さんがまた怒るだろうなぁ)

741: 名無しさん 2017/11/09(木) 20:33:39.52 ID:rlUnF97o0
最原(……話を逸らそうか。巌窟王さんの様子を見よう) 

最原「アンジーさんのバッグを犯人が使ったってことは、つまり犯人に襲われたときにアンジーさんがコレを持っていたってことだよね」 

王馬「でもそれって凄い偶然だよねー。赤松ちゃんのバッグみたいに、四六時中持っていたわけじゃないし」 

最原「……アンジーさんが襲われたこと自体が偶然だったとしたらどうだろう」 

春川「何か心当たりがあるの?」 

最原「いや……でも何か、今回の事件は『まともな計画性』があまり見えてこないなって思ったんだ」 

最原(僕の推理通りの真相なら、犯人はそれぞれの事件で一石二鳥、三鳥を狙いすぎてる) 

最原「突発的な犯行だったんじゃないかな。だって、巌窟王さんはアンジーさんが研究教室の外に出ることを良しとはしてなかったよね?」 

巌窟王「……ああ。できるだけ研究教室の傍から離れるな、とは言ったな」 

巌窟王「ただし『真っ直ぐ寄宿舎へと帰る場合』は別だぞ。あそこから寄宿舎への道はほぼ一本道」 

巌窟王「俺がアンジーを迎えに行くタイミングとぶつかったとしたら、ほぼ確実に顔を突き合せることになるからな」 

天海「アンジーさんはバッグを背負い、研究教室から寄宿舎へと帰ろうとしていた」 

天海「だけどその道中、何故かアンジーさんは三つの空き部屋の中央の部屋へと寄って……」 

天海「何故か襲撃され、殺されかけた」 

白銀「うーん。地味によくわからないな。アンジーさんは空き部屋で何を見たんだろ」 

星「むしろ『そこで誰が何をしたのか』が気になるがな。アンジーが殺されかけるほどの秘密……余程犯人は見られたことが気に食わなかったんだろう」

742: 名無しさん 2017/11/09(木) 20:42:57.18 ID:rlUnF97o0
赤松「むしろ『誰かと待ち合わせしてた』って線はどう? ほら、前の巌窟王さんの事件みたいにさ」 

百田「あのアンジーがか? 巌窟王に無許可で?」 

巌窟王「ありえんな」 

赤松「……うん。確かにありえなさそうだね。アンジーさんが巌窟王さんより優先させる物事なんて、最原くん以外に思いつかないし」 

王馬「あ! じゃあ犯人は最原ちゃんなんじゃない!?」 

最原「え?」 

茶柱「そうなんですかッ!? 騙されかけましたよ最原さん!」 

最原「い、いや。僕じゃないけどッ!?」ガビーンッ 

春川「……これ以上夜長の事件に関して議論してても埒が明かなさそうだね」 

最原「う、うん。だからさ。この証拠品から見えてくる別の現場に、そろそろ目を向けてみようか」 

最原(……ちょっと遠回りになるけど仕方ないな。本当なら『襲撃された時点でバッグに何が入ってたか』を議論するのがいいんだけど) 

最原(巌窟王さんのスタンスが見えてこないからな) 

最原「ワインのボトル……これを調達したのがいつだったのかを議論することが、アンジーさんの襲撃の時間を特定することに繋がるはずだよ」 

夢野「ハッ……そうじゃった! それがあったわい!」

748: 名無しさん 2017/11/10(金) 23:25:53.74 ID:JAI/jDVy0
白銀「そっか! アンジーさんのバッグを奪ったことが始まりなら……!」 

最原「少なくともアンジーさんが襲われた時間は、東条さんが襲われる時間より前ってことになるよね」 

百田「東条! どうなんだ?」 

東条「私が襲われたのは十一時ニ十分前後のことよ。残念ながら凶器はわからなかったけどね」 

春川「東条の研究教室と、空き部屋の間を何回も往復する途中には、凶器なんていくらでもあったはずだよ」 

春川「……私の研究教室とか」 

百田「全部終わった後で、軽く水洗いして元に戻せば立派な証拠隠滅になるだろうな……あれだけ凶器があれば」 

王馬「まったく! 持ち主として、もうちょっとしっかり管理しててほしいよね!」 

春川「……」ビキッ 

赤松「いつも通りの王馬くんの悪口だよ。そんな目くじら立てないで……」アタフタ

749: 名無しさん 2017/11/10(金) 23:35:56.39 ID:JAI/jDVy0
巌窟王「……東条が襲われているころ、となると。俺は美術部の研究教室にいたな」 

巌窟王「だがいつまでたってもアンジーが戻ってこなかった。故に俺は……」 

茶柱「鍵を閉めて、寄宿舎の方へとアンジーさんを探しに赴き、あの火事を発見した……」 

茶柱「むむ? でもおかしいですね。襲われて、その後アンジーさんはどこにいたんですか?」 

最原「気絶した状態で空き部屋の床下に放置されていた……って考えるのが自然じゃないかな」 

最原「もしかしたらその時点で、縄で縛られて、猿ぐつわもされていたかもしれない」 

最原「あそこから真宮寺くんの研究教室は目と鼻の先だし、それに……」 

天海「万が一、巌窟王さんがアンジーさんを床下で発見したとして、その時点では外傷は頭の傷のみ」 

天海「学級裁判が起こらない以上は『後でアンジーさんに事情を聞いた巌窟王さんが激怒する』以上のトラブルは起こらないってことっすね」 

キーボ「それ普通に死活問題ですよね?」 

王馬「命懸けの謎解きゲームをやるよりは遥かにマシなペナルティだと思うけどね」

750: 名無しさん 2017/11/10(金) 23:46:28.51 ID:JAI/jDVy0
赤松「でも、よく巌窟王さんに見つからずにアンジーさんを隠せたよね」 

天海「相当運が良かったのか……いや、あの階の構造を考えるとそうでもないっすね?」 

星「超高校級の美術部の研究教室は、現状では学園の一番奥の部屋だ」 

星「アンジーを襲った後で、空き部屋から出たときに巌窟王の後ろ姿でも見ていたとしたら……」 

夢野「少なくとも、巌窟王がアンジーを探しているということ『だけ』は丸わかり、というわけか」 

巌窟王「勘のいいヤツなら、その後俺が研究教室に残ってアンジーを待つことも予測できたかもしれんな」 

巌窟王「……あるいはそれが犯人の最大の賭けだったのか」 

白銀「随分とピーキーな立ち回りだね……」 

最原「いや。巌窟王さんの行動を更に限定する方法なら、まだあったはずだよ」 

巌窟王「……なに?」 

最原(……ダメだ。外堀を埋める形じゃ埒が明かない) 

最原(もう少し踏み込んでみるか……! 巌窟王さんの反応が気になる)

752: 名無しさん 2017/11/11(土) 07:47:01.35 ID:U0JupB7y0
赤松「どういうこと? 巌窟王さんの行動を限定する方法って……」 

入間「バイブのスイッチでも見つけたか?」 

天海「入間さーん、入間さーん。ステイ。それ以上口を開くとまた王馬くんに罵倒されるっすよー」 

王馬「やだなー! ゲロ臭い口臭の入間ちゃんのことなんてバカにできるわけないじゃん! ゲロ臭さが移るー!」 

入間「手遅れじゃねーかッ!」ガビーンッ! 

最原「限定……というよりは特定に近いかもしれない」 

最原「ほら。巌窟王さん、超高校級の美術部の研究教室に行く途中の階段でさ、無くなったものがあったじゃない?」 

巌窟王「……もしや赤外線センサーのことか?」 

東条「赤外線センサー?」 

最原「うん。夜時間に人を訪ねようって考える人なんてほとんどいないだろうし……」 

最原「赤外線センサーに反応があったら、それは高確率で『巌窟王さんが去った』ってことになる」

753: 名無しさん 2017/11/11(土) 07:51:22.54 ID:U0JupB7y0
春川「そんなものがあったの?」 

巌窟王「ああ。我が忘却補正にかけて断言しよう。アンジーの研究教室のある階層へ続く階段には赤外線センサーが配置されていた」 

巌窟王「……」 

赤松「あ。また急に黙っちゃった」 

夢野「またアンジーロスか? 世話が焼けるのー」 

茶柱「いやいや。流石に巌窟王さんもそこまでじゃ……」 

巌窟王「……」ズーン 

キーボ「いや確かに実際そうじゃなかったんでしょうが、夢野さんの発言がスイッチになって再発したようですね」 

王馬「全裸土下座で謝れよ夢野ちゃんさぁ!」 

夢野「ううっ……ご、ごめんなさ……巌窟王……」ヌギヌギ 

白銀「やめてーーーッ! 児ポ法に引っかかる! 児ポ法に引っかかっちゃうからーーーッ!」ガビーンッ!

754: 名無しさん 2017/11/11(土) 08:00:57.06 ID:U0JupB7y0
巌窟王「だが、あの赤外線センサーが現れたのは」 

最原「わかってる。『巌窟王さんが研究教室を去るとき』で『巌窟王さんが階段を上ったとき』は無かったんだよね」 

最原「次に、僕と一緒にアンジーさんを探すときには消えていた」 

星「巌窟王を警戒してたにしちゃ、何か行動がチグハグだぜ」 

赤松「そこまで警戒するのなら、最初から赤外線センサーを付けておけばいいって話だしね……」 

夢野「そもそもあの赤外線センサーは『有効範囲が異常に狭い』んじゃぞ。犯人自身の立ち回りも相当限定されるはずじゃなあ?」 

入間「ま、俺様にかかりゃあ、あんなガラクタ同然のセンサーでも華麗に改造できっけどな」 

最原「それだよ!」バンッ 

入間「ひいいいいッ!? いきなり大声出すんじゃねーよぉ!」ビクウッ 

入間「あ、ちょっと濡れた」 

赤松「最悪だ! モノクマ! 替えのパンツ持ってきて!」 

モノクマ「ごめんボクも関わりたくない!」

755: 名無しさん 2017/11/11(土) 08:08:37.05 ID:U0JupB7y0
最原「入間さん。あの赤外線センサーを夢野さんのマジカルショーで貰ったとき、なんて言ってた?」 

入間「も、もう覚えてねーけど……?」 

夢野「一字一句とはいかんが、ウチは覚えておるぞ」 

夢野「『俺様にかかりゃあ学園中どこにいても警報器が鳴るようにできるぜ』とか言っておったな?」 

入間「実際できるし、したし……なんか元に戻っちまったけど」 

百田「あ? 元に戻った?」 

最原「そうなんだよ。入間さんの改造を施したはずの赤外線センサーは、事件発覚後には何故か元の何の変哲もない状態に戻ってたんだ」 

最原「多分、誰かが『未改造のセンサー』と『入間さん改造のセンサー』をこっそり入れ替えたんだと思う」 

キーボ「ということは……!」 

最原「うん。あのセンサーに誰かが引っかかったら、学園中どこにいても巌窟王さんの行動を特定できるんだよ」

757: 名無しさん 2017/11/11(土) 09:54:23.58 ID:U0JupB7y0
真宮寺「でも一体どのタイミングでそのすり替えは行われたのかな?」 

百田「巌窟王がアンジーを迎えに行ったときには、階段にそんなもん仕掛けられてなかったんだろ?」 

百田「じゃあ東条が襲われた十一時ニ十分より後じゃねーのか?」 

春川「バカでしょ。夜長を襲った後で入間の研究教室に行って、わざわざ階段に戻ってセンサーを取り付けるとか」 

春川「そんな危険なマネをするくらいなら何もしない方がマシだよ。だって巌窟王とバッタリ出くわしたら最後なんだからさ」 

最原「そのすり替えなんだけどさ。発覚したのが事件後なんだよ。入間さん、改造するだけ改造して、その後まったく使ってなかったんじゃない?」 

入間「ああ。よくあることだぜ? 俺様は捕まえた魚にエサをやるのは面倒なタイプなんだ」 

入間「犬なら話は別だけどな! バターとかガンガンやるぜ?」 

キーボ「第一、入間さんは事件の最中、ずっと研究教室に引きこもってましたよね?」 

キーボ「火事の間、ボクは定期的にドアを叩き続けてましたからわかります」 

東条「そうなると……話がおかしいことになるわね」 

東条「夜長さんが襲撃されたのは偶然の可能性が高いのに、改造センサーのすり替えが行われたのは、どの事件よりも前の話……」 

最原「あ。待って。僕は『誰かが』センサーをすり替えたって言っただけで『犯人が』すり替えをやったとは言ってないよ」 

天海「え? それ、どういうことっすか?」 

最原「改造センサーを取り付けたのは犯人だろうけど、それにしてはタイミングがチグハグだ」 

最原「でも全然不自然じゃないんだよ。犯人と改造センサーのすり替えを行った人物が、別人なんだからさ!」 

巌窟王「……」 

最原(……やっぱり巌窟王さんは知ってたな。この調子だと) 

最原(改造センサーのすり替えを行った人物は間違いなく……!)

758: 名無しさん 2017/11/11(土) 10:04:26.97 ID:U0JupB7y0
赤松「……もしかして、アンジーさんってこと? 改造センサーのすり替えを行ったのって」 

最原「そう考えるのが一番妥当だよ。犯人視点で考えてみるとわかりやすいかな」 

最原「センサーを取り付ける前と、センサーを取り付ける後……その間に何があったのか」 

最原「その時点では犯人は赤外線センサーを持っていなかった。だからセンサーを取り付けるという発想が無かった」 

最原「でもアンジーさんと犯人の間で何かが起こり、犯人はアンジーさんを襲撃」 

最原「その後、巌窟王さんがアンジーさんを探していることに気付いた犯人は……」 

最原「どうにかして巌窟王さんの動向を遠隔で特定する方法はないかと考えて、手始めに手近の材料を探し始める」 

最原「……アンジーさんのその時点での持ち物の中に、赤外線センサーがあったんじゃないかな」 

最原(なんでそんなものを偶然持っていたのかは気になるけど……多分、入間さんに返すつもりだったんだろうな) 

最原(……入間さんが気付く前にこっそりと)

759: 名無しさん 2017/11/11(土) 10:15:58.77 ID:U0JupB7y0
百田「でもそれってよ、犯人がアンジーの持っていたセンサーのことを入間が改造してチューンナップしたってことを知らねーとおかしいよな」 

百田「本来のセンサーの機能って信じられないくらいショボかったんだろ?」 

巌窟王「……犯人は知っていたのかもしれんな。アンジーがすり替えを行ったことを」 

夢野「入間がセンサーを改造すること自体は、マジカルショーに参加していた人間……つまり全員知る機会があったはずじゃ」 

夢野「……というか、今から考えるとアンジーの言動もその時点でなにか不可解じゃった」 

最原「入間さんがセンサーを受け取った後で、アンジーさんは夢野さんから『アレと同じのが欲しい』って注文されたんだよね」 

夢野「あのセンサーそのものは倉庫にいくらでも替えがあった。すり替えは誰にでも可能だったと言えるんじゃが……」 

夢野「……アンジー、ハッキリ言って隠す気皆無じゃな。わかりやすすぎるぞ」 

星「ある意味で入間のことを舐め切ってた、と言えるかもしんねーな。気持ちはわからんでもねーが」 

入間「ち、ちくしょう! ふざけやがってあのサイコカルトブス!」

761: 名無しさん 2017/11/11(土) 12:32:25.23 ID:U0JupB7y0
最原「ええっと、入間さんが研究教室に引きこもり始めたのって具体的には」 

入間「夜時間より前だな。その後は寝落ちてたぜ。キーボがドアをガンガン叩いてるときは流石に目が覚めたが」 

入間「面倒だったので居留守を使ったぜ!」 

天海「あのドアって内側からしか鍵が掛けられないから、鍵がかかってる時点で居留守として破綻してるんすけどね」 

赤松「これまでわかっている犯人の足取りを考えると、火事の間中ずっと一所にいるわけにはいかないから……」 

赤松「入間さんは犯人じゃないのかな?」 

キーボ「ボクもずっと入間さんの研究教室の前に張り付いてたわけじゃありませんが」 

キーボ「でもボクが扉を叩くタイミングで都合良く研究教室に戻ってドアを閉めるのって凄い労力ですよ」 

キーボ「入間さんのアリバイだけは真の意味で完璧かもしれません」 

星「逆に、あの消火活動に参加していた連中は『いつ欠席しようがほぼお構いなし』だ」 

星「巌窟王が研究教室から脱出した後は混乱も収まって、誰がいるかを判別できるようになったが……」 

最原「そこだよね。鎮火もしくは巌窟王さんが脱出した後でやっと個々人のアリバイが成立し始める」 

最原「……その時間帯にアンジーさんが死ぬように調整すれば、殺人の委託にも意味が出てくるんじゃないかな」

762: 名無しさん 2017/11/11(土) 13:27:55.89 ID:U0JupB7y0
真宮寺「ククク……でもちょっと待ってくれないかな。話が段々軌道に乗り過ぎてきたからネ」 

百田「ん? 何か異論でもあんのか真宮寺」 

真宮寺「いや……ただ消火活動に参加していたヤツが逆に怪しいって論法はちょっと乱暴すぎるんじゃないかなって思っただけだヨ」 

真宮寺「ちょっと話を巻き戻させてもらうけど、犯人は夜長さんを泥酔させるお酒をどうやって調達したっていうの?」 

春川「それは……東条の研究教室に行って、東条を引っ叩いて気絶させて、隠し扉の向こうから悠々と奪ったって話じゃないの?」 

真宮寺「かもネ。それに対する反論はないんだけどさ」 

真宮寺「もう一つ可能性があるんじゃないかなって思ったんだヨ」 

王馬「それって東条ちゃんがすべての事件の犯人である可能性のこと?」 

東条「……それは」 

王馬「ないない! ありえないよ! だって東条ちゃんは俺のママなんだよ!」 

百田「違ぇーけどな」 

王馬「仮に前回の超残酷な事件の犯人だったとしても、外に出ることを諦めきれてないとしても」 

王馬「全身を切り刻まれたり心をぶち折られたりの蹂躙の末に心を若干病んでしまったとしても」 

王馬「なんかもう犯人臭が凄すぎて逆にあるよね!?」 

百田「どっちだよ」

763: 名無しさん 2017/11/11(土) 13:38:28.04 ID:U0JupB7y0
最原(ハッキリ言って、この謎はそこまで難しくない。だって途中で破綻したから。故に肝があるとしたら絶対にここだ) 

最原(何が何でも押し通してくると思ってたよ真宮寺くん) 

最原(さて。ここからが正念場だ。決定的な証拠は何もない) 

最原(……一言でも間違えたら真実は永遠に闇の中だ) 

最原「東条さんが犯人って……待ってよ。だって彼女は」 

真宮寺「怪我をしていた? 掃除用ロッカーに閉じ込められてた?」 

真宮寺「前回の裁判で改心した?」 

真宮寺「いやいや……楽観的すぎるネ。そんなの全部嘘かもしれないじゃないか」 

茶柱「あなた……それ以上口を開いたら、転子のネオ合気道で床と仲良しにさせてあげますよ?」 

茶柱「もしくは壁と抱き合う面白新体操でもさせてあげましょうか?」 

百田「どんな新体操だよッ!」ガビーンッ!

765: 名無しさん 2017/11/11(土) 16:02:31.91 ID:U0JupB7y0
巌窟王「……」ジーッ 

東条「……あまり私のことを見ないでくれると嬉しいのだけど」 

東条「照れるわ」テレッ 

赤松「怖いんじゃなくて!?」ガビーンッ! 

巌窟王「安心しろ。お前のことは恨んではいない。疑ってもいない」 

巌窟王「……真実がどうあれな」 

最原(現状は、って言ってるも同然だな。本当に東条さんが犯人だった場合は……) 

最原「前回の学級裁判がどうあれ、今回もそうって考えるのはそれこそ乱暴じゃない?」 

真宮寺「ククク。まあ確かに、説としてはどっちもどっちかもネ」 

最原(譲る気が更々ないな……)

766: 名無しさん 2017/11/11(土) 16:12:52.90 ID:U0JupB7y0
最原「このトリックは『アンジーさんの死体を後で加工する』って工程があったはずだ」 

最原「だから、東条さんが気絶させられた状態で掃除箱のロッカーに入れられたのも当然意味があるはずなんだよ」 

真宮寺「東条さんがアンジーさん死亡時点でのアリバイがない状態を作り出すため、だよネ?」 

真宮寺「でもこれはこれで、話が上手く纏まりすぎてる気がするんだよネ」 

最原「……」 

春川「確かに。何か事件が起こったときに前科者を疑うのは当然の流れではあるよね」 

春川「議論する価値くらいはあるんじゃない?」 

巌窟王「無条件に信じるよりはマシか」 

東条「……私は犯人じゃないわ」 

東条「今度こそ。あなたたちを裏切ったりしない」 

王馬「嘘臭いなぁ……」ニヤァ 

百田「黙ってろ!」 

獄原「えーと、それじゃあ……何をすればいいの?」 

最原「東条さんの証言の中に、信用できるものがあるかどうかを議論しよう」 

最原「でも確か巌窟王さんは」 

巌窟王「先を急いでいた上に、俺が調べたのはアンジーが見つかった階層が中心だ」 

イシュタル『ああー……東条がいる階層に関する写真はほとんどないわねー』 

巌窟王「……」 

巌窟王「イシュタルか?」 

イシュタル『げげっ!? ナーサリーのときは反応しなかったのになんで私だけピンポイントでわかるのよ!?』

767: 名無しさん 2017/11/11(土) 16:22:45.73 ID:U0JupB7y0
巌窟王「ナーサリーライムもいるのか。いいかイシュタル。間違っても機械をいじるなよ」 

巌窟王「貴様はパソコンを適当にいじって壊した後で『何もしてないのに壊れた』と言うタイプの英霊だからな」 

巌窟王「ブルーレイレコーダーすらまともに扱えないだろう」 

イシュタル『ちょ、見て来たみたいに言わないでよ。実際そこまで酷くないし!』 

ナーサリー『安心して! 私がいれば何も問題はないわ!』 

最原「……何人いるの? 電話の向こうに」 

巌窟王「ざっと百人ほどだ」 

キーボ「なんでそう意味のわからない冗談を言うんですか」 

巌窟王(冗談なら笑えたのだが) 

巌窟王「気を取り直して始めるぞ!」

768: 名無しさん 2017/11/11(土) 19:10:51.57 ID:U0JupB7y0
獄原「東条さんは誰かに殴られて気絶した後、ロッカーに閉じ込められたんだよね?」 

東条「犯人の顔、凶器、その他色々はいまいち思い出せないわ」 

百田「凶器が見つからねぇのは、誰かがどこかに処分したからだよな」 

百田「……そうだよ。東条に凶器の処分は不可能じゃねーか? ハルマキの研究教室に片付けるっつったって……」 

茶柱「あ。そうですよ! 東条さんは血塗れで、転子が発見したときもほぼ傷は塞がりかけでしたが出血中ではあったんです!」 

茶柱「傷そのものは本物でしたから、アレを作った後で凶器を片付けるのは……」 

春川「廊下に血痕が残るから危険、か」 

春川「……いい根拠なんじゃない? 私も廊下に血痕があるのなんて見てないし。掃除したにせよ、そこそこ距離があるから時間がかかるしね」 

天海「……」 

天海「いや、その、実は……」 

白銀「さっきは言い忘れてたんだけど、私たち凶器は見つけてた……んだよね」 

最原「え?」 

天海「ほら、俺って東条さんのところに駆けつけるときに、窓から入ろうとして転落したじゃないっすか」 

天海「そのときに視界の隅に何か黒光りするものが見えて、急いでたから無視したんすけど……」 

天海「入間さんの研究教室が解放された後で気になって、窓の下の方に戻ったんすよ。そしたら」 

最原「……あったの!? 凶器が!?」 

天海「転落したとき折れた枝の隙間からバッチリ見えてたので回収してきたっす」 


ゴトリ 


天海「……新しい証拠。血塗れのハンマーっすよ」 

真宮寺「掃除する範囲の問題も、一部屋だけならほぼ問題にならないんじゃない?」 

真宮寺「ククク。というか東条さんが発見された場所がそもそも掃除用ロッカーだしネ」 

白銀「バックトラックよろしく、血痕を掃除しながら掃除箱に入れば……掃除用具も片付けられるよね」 

天海「だって掃除用具入れのロッカーっすもんね」 

最原「……!」

769: 名無しさん 2017/11/11(土) 19:46:20.20 ID:U0JupB7y0
茶柱「さ、最原さん! 何か反論はないんですか!?」アタフタ 

最原(ある!) 

最原「天海くん。それってただの凶器であって、東条さんを疑う理由には足りないんじゃない?」 

最原「むしろ東条さんに疑念を向けるための偽装工作の一つだとも言えるはずだ!」 

天海「……」 

最原(まずいな。僕の説も『こういう解釈もできる』っていう説の一つに過ぎない) 

最原(みんな東条さんを疑って……) 

百田「それだけか終一?」 

最原「えっ」 

百田「早くなんか言え! 東条に投票されちまうぞ!」 

赤松「凶器があったところで自分自身を殴るってことが本当に可能なのかな?」 

赤松「いや、東条さんには可能そうだけど、でも……!」 

獄原「ゴン太も……一度裏切られたからって、東条さんのことを疑うのは……無理だよ」 

茶柱「最原さん……!」 

夢野「なんか言えい最原! これで打ち止めではないじゃろう!」 

最原「……」 






巌窟王「何を意外そうな顔をしている?」 

最原「巌窟王さん?」 

巌窟王「……お前も信じたいのだろう? 東条を」 

巌窟王「ならば、それに追従したいと思う人間が現れて当然だ」 

巌窟王「東条を信じたいという願望だけではない。コイツらは、お前を信じたいとも願っているのだ」 

巌窟王「……忘れるな。この場に敵なぞ、モノクマ以外に誰もいない」 

最原「ッ!」

770: 名無しさん 2017/11/11(土) 19:55:39.77 ID:U0JupB7y0
星「そうだな。俺たちだって東条のことを信じたい」 

星「……信じたいから疑ってるんだ」 

キーボ「この場に敵なんて誰もいない……? それって犯人も含めて、ですか?」 

真宮寺「ある意味、それを知るための学級裁判だよネ」 

真宮寺「……この学級裁判が終わったときどんな結末を迎えるのか、それが楽しみだヨ。僕は」 

入間「ド変態野郎が。理解できねー趣味だぜ」 

春川「……自分で自分のことを殴ることは可能だよ。多分、東条だって……」 

白銀「うん。私だって東条さんが再びこんなことをしたなんて思いたくないけど……」 

天海「それでも、前回の学級裁判の件があるんすよ。無条件に信じるわけにはいかないんす……!」 

王馬「……あれ?」 

天海「ん? どうしたんすか? 王馬くん」 

王馬「……あ! 気付いちゃった気付いちゃった!」ピコーンッ 

白銀「え? 気付いたって……何に?」 

王馬「みんな! 裁判場をよく見てよ!」 

王馬「意見が真っ二つに割れてるよ!」 

最原「あっ」 

百田「っつーことは……!」 




モノクマ「簡単なことだ! 友よ!」待った!

772: 名無しさん 2017/11/11(土) 22:05:09.27 ID:U0JupB7y0
モノクマ「はいはい一旦ストップー! いい具合に現場が乱れてきたからねー!」 

モノクマ「それではお待ちかね、才囚学園の誇る『変形裁判場』の御登場でーっす!」 

百田「いや誰も待ってねーよ!」 

巌窟王「モノクマ。今回の俺はアンジーの代理出席だ」 

巌窟王「……参加しても文句はあるまい?」 

モノクマ「当然です!」 

巌窟王「……」ワクワク 

巌窟王「……」ソワソワ 

赤松「明らかに楽しみにしてるね」 

天海「前回の学級裁判のときにモノクマに詰め寄ってたっすからねー」 

最原「……東条さん。当然、自分の潔白を主張する側だよね?」 

東条「……最原くん」 

最原「お願いだ。東条さん。僕たちのために戦ってよ」 

最原「そのために僕はいくらでも力を貸す」 

東条「……ええ。もちろんよ。私を救ってくれたあなたにこそ、私の滅私奉公は相応しい」ニコリ 

最原(東条さんは絶対に犯人じゃない。議論が続けばそれがわかる) 

最原(とにかく……今は議論を続けさせるために、一時的にでもいい!) 

最原(みんなに納得してもらわないと!)

773: 名無しさん 2017/11/11(土) 22:07:27.21 ID:U0JupB7y0
意見対立 

東条は犯人なのか? 


犯人だ! 
真宮寺 
王馬 
入間 
天海 
白銀 
春川 
星 
キーボ 

犯人じゃない! 
最原 
百田 
赤松 
東条 
獄原 
茶柱 
夢野 
巌窟王 

スクラム開始!

778: 名無しさん 2017/11/12(日) 10:49:27.22 ID:WK3AjLHm0
天海「『凶器』のハンマーは研究教室の近くで見つかったんすよ?」 

最原「東条さん!」 

東条「『凶器』の処分を私がやったという根拠としては弱いわね」 

入間「アンジーを泥酔させた『ワイン』は東条の研究教室のものだろ?」 

最原「赤松さん!」 

赤松「『ワイン』だけで決めつけるのは無理だと思うけど……」 

白銀「東条さんなら掃除用ロッカー周辺の血痕の『掃除』もできたよね?」 

最原「ゴン太くん!」 

獄原「犯人にだって『掃除』はできたはずだよ?」 

春川「東条は誰かに発見されることを予測して『掃除用ロッカー』に隠れたって可能性は?」 

最原「茶柱さん!」 

茶柱「転子が『掃除用ロッカー』を調べたのは偶然ですよ。予測できるはずがありません」 

キーボ「犯人ではないと言うのなら『根拠』を示して欲しいのですが……」 

最原「夢野さん!」 

夢野「その『根拠』を示すために議論を進めようと言っているんじゃ!」 

王馬「なにか事件が起こったときに『前科者』を疑うのは当然でしょ?」 

最原「百田くん!」 

百田「『前科者』だからって疑うのもそれはそれで危ねぇなあ?」 

星「一連の事件が『東条』に可能だったのは事実だろう?」 

最原「巌窟王さん!」 

巌窟王「『東条』以外にも怪しい者はいたはずだぞ」 

真宮寺「彼女は『消火活動』には参加していなかったはずだよネ?」 

最原(僕が!) 

最原「むしろあの『消火活動』に参加していた人こそが怪しいんだ!」 



全論破! 

『これが僕(私)(俺)(転子)(ウチ)(ゴン太)たちの答えだ!』 


BREAK!

779: 名無しさん 2017/11/12(日) 11:04:03.11 ID:WK3AjLHm0
最原「お願いだみんな! 東条さんのことを信じてよ!」 

最原「議論をもう少し進めれば、彼女が犯人じゃないことを証明できるはずなんだ!」 

天海「最原くん……」 

王馬「でもさぁ最原ちゃん。東条ちゃんが前回、殺意丸出しで俺たちのことを蹴落とそうとして、巌窟王ちゃんを殺したことを忘れてないよね?」 

王馬「確かに結果的に全部無事で済んだとは言っても、アレを全部引きずらずに議論するってのは、それはそれで不可能だって」 

東条「……」 

夢野「そうじゃの。ウチらは全員、確かに東条に殺されかけた」 

夢野「……じゃが殺されかけただけじゃぞ! 巌窟王を殺したことはともかくとして起こってない出来事に関して責めるのは論外じゃ!」 

王馬「それ言ったらさぁ。今回の裁判だってそもそも『未遂事件』を議論してるんだよね?」 

王馬「アンジーちゃんのことを直接見たわけじゃないけどさ。相当グロテスクな有様だったんでしょ?」 

王馬「『結果的になんともなかった』ってことがそんなに重要なのかなぁ?」 

王馬「未遂だったから許すっていうのは、偽善以外の何物でもないはずだよ?」 

百田「ハッ! 俺たちのやっていることが偽善なら、テメェの言っていることは欺瞞だぜ王馬!」 

百田「俺は! 終一を信じる! そして終一が信じた、東条のこともだ!」 

赤松「……ね。今回の裁判は命がけじゃないんだしさ、もうちょっと肩の力抜いて行こうよ」 

赤松「それで、この前の裁判のときみたいに仲直り。私たちならきっとできるって!」 

王馬「……」 

王馬「……綺麗ごとだなぁ。甘ぇよ」 

白銀「だがその甘さ、嫌いじゃないぜ!」クマー 

真宮寺「何故今いいセリフを……」

782: 名無しさん 2017/11/12(日) 16:28:56.11 ID:WK3AjLHm0
王馬「まあそれはそれとして、巌窟王ちゃん。前回事件の被害者であるキミの口から言いたいことはないの?」 

巌窟王「……?」 

星「……おい。まさか質問の意図自体わからないとでも言うつもりじゃ……」 

巌窟王「……」 

星「言うつもりみてーだな……」 

巌窟王「アレはもう終わった事件だろう。俺が口を挟める余地が一体どこにある?」 

巌窟王「何よりも議論を脱線させるべきではない。禍根は確かに残っているが、それはモノクマに叩き込むべきものだ」 

巌窟王「……何度も言わせるな。俺の敵はモノクマただ一匹のみだぞ」 

最原「巌窟王さん……!」 

巌窟王「念のため言っておくが、敵の敵だからと言って味方だなどと勘違いするな」 

巌窟王「俺は夜長アンジーのサーヴァントだ。お前たちのことなど……」 

百田「わかってる! つまり味方ってことだな!」 

巌窟王「……」 

春川「かつてないほど苦い顔になってる」 

赤松「百田くんはさ。空気を読むべきだよね」 

百田「?」

783: 名無しさん 2017/11/12(日) 16:45:42.55 ID:WK3AjLHm0
春川「議論を進めること自体は構わないけどさ。でも他に事件に対する疑問点とかある?」 

最原「……火事だよね」 

茶柱「転子の研究教室大炎上事件……ド派手な割に話題に上がるのが最後になってしまいましたね」 

真宮寺「普通に考えるのなら、校舎から注意を逸らす目的と、アリバイを確保する目的のために犯人が燃やしたって考えるべきだけど」 

真宮寺「この場合、まず大前提として誰かが火事を『発見』する必要があるよネ?」 

百田「まあ、ヒルに殺人を委託した最大のメリットが無くなっちまうしな」 

入間「火事の第一発見者って二人いたよな? 巌窟王と……ん? 茶なんとかだったか?」 

茶柱「茶柱ですッ! 茶柱転子!」 

王馬「……ってことは、まさかの茶柱ちゃんが犯人説浮上!?」 

茶柱「へ?」 

巌窟王「……」ジーッ 

茶柱「いやいやいや違います違います違いますってェ!」 

巌窟王「違うと言っているぞ」 

獄原「よかった! じゃあ違うね!」キラキラキラ 

巌窟王「クハハハハハハ! 違うな!」ギンッ 

赤松「巌窟王さんって、たまに信じられないほど単純になるよね。普段は言動が滅茶苦茶遠回しな割にさ」

784: 名無しさん 2017/11/12(日) 16:57:49.38 ID:WK3AjLHm0
最原「そもそも、ずっと気になってたんだけどさ。なんで夜時間に寄宿舎の外に出ようって思ったの?」 

最原「巌窟王さんの場合はアンジーさんを探すためっていう明確な理由があったけど」 

茶柱「……」 

最原「茶柱さん?」 

茶柱「死んでください……」ギリギリギリ 

最原「なんでッ!?」 

茶柱「最悪な……最悪なところにツッコミを入れてくれましたね……これじゃあ話さなきゃいけなくなるじゃないですか」 

茶柱「茶柱転子がこの事件の最中、ずっと抱えていた秘密を」 

キーボ「茶柱さんの……秘密?」 

茶柱「告白しましょう。茶柱転子は……実は……」ガサッ 

最原(そう言うと茶柱さんはポケットの中から、一枚の紙を取り出した)

785: 名無しさん 2017/11/12(日) 17:02:38.07 ID:WK3AjLHm0
茶柱「最原さんへ。今までずっと探偵として学級裁判での余計な推理、本当にありがとうございま死ね」 

最原「は?」 

茶柱「前回、前々回も色々と余計でうざったくって重要な嫌われ役を引き受けてくださり、その心労はいかほどなのか転子には想像が付きません」 

赤松「……え?」 

茶柱「特に前回の東条さんの事件のときの、あなたのクソみたいな提案は、転子の中に殺意が産まれるには充分なイベントでした。くたばれ」 

百田「……ん?」 

巌窟王「……手紙だな?」 

ナーサリー『手紙なのだわ』 

イシュタル『手紙ねぇ』 

ナーサリー『いい感じのBGMを流して雰囲気を盛り上げるのだわ!』ポチッ 

春でも夏でも冬でもないアンジェラ『はいけえーこの手紙ー。読んでーいるあなたはぁー』 

最原「え。何コレ。何の話ッ!?」ガビーンッ!

786: 名無しさん 2017/11/12(日) 17:10:25.93 ID:WK3AjLHm0
茶柱「でも、転子にはとてもマネできないことをしてくれたのも確かです」 

茶柱「転子では、東条さんを救うことはきっとできなかったでしょう」 

茶柱「……転子には、その能力が致命的なまでに欠けていました。心だけでは無理だったのです」 

東条「……これ、謝罪文ね?」 

最原「くたばれとか言ってなかった?」 

茶柱「結局のところ、人間は適材適所。そして、綺麗ごとだけでは生きていけないのです」 

茶柱「でもそれはきっと、人間は全員汚いマネをしないと生きていけないという意味ではなく」 

茶柱「……あなたのような汚れ役を引き受けてくれる優しい大馬鹿がいるということなのです」 

最原「……」 

茶柱「あなたが救ったのはきっと東条さんだけじゃない。転子他、この学園にいる生徒全員があなたに救われたのです」 

茶柱「転子はずっと考えてました。誰も汚れない方法はなかったのかと。でもいつまで経っても答えは出ませんでした」 

茶柱「そして、いつまで経っても答えが出ないのであれば、すべてが手遅れになってしまうのです」 

茶柱「……答えを出せるあなたのことが、きっと転子はずっと羨ましかった」 

茶柱「だから今までキツく当たってしまった」 

最原「茶柱さん……」

787: 名無しさん 2017/11/12(日) 17:17:35.27 ID:WK3AjLHm0
茶柱「……転子は今この場をもって、あなたに対する禍根を捨てることにしました」 

茶柱「でも一つ条件があります」 

茶柱「……次にああいうバカなマネをするときは、巌窟王さんだけではなく、転子にも、いや他の誰かにも相談してほしいのです」 

茶柱「一人だけで汚れ役を実行するとか、そういう恰好いいマネを独り占めさせられません」 

茶柱「転子たちは確かに巌窟王さんほどに力はありません。ですが、仲間のことを思っているのは事実で、真実です」 

茶柱「忘れないでください。あなたが汚れを引き受けようと思ったとき、その背中を見ている仲間がいることを」 

茶柱「転子たちも、あなたのことを助けたいと思っていることを」 

茶柱「次に、あなたへの謝罪を」 

茶柱「最原さん。本当に、すみませんでした」 

茶柱「最後に、この一言だけ伝えさせてください」 

茶柱「……ありがとうございました」

788: 名無しさん 2017/11/12(日) 17:24:05.55 ID:WK3AjLHm0
ウッウッ グスッ グスッ 

夢野「い、いや、転子……なんで唐突に手紙を読みだしたのかさっぱりわからんが、なんか謎に涙が出て来たぞ」グスングスン 

百田「ああ。心が籠ったマジな手紙だったぜ」スンスン 

真宮寺「ひっく……な、なるほど……茶柱さんが今まで何を思っていたのか、よく伝わってきたよ……誰かタオル持ってない?」ポロポロ 

モノクマ「わあ凄い。一瞬で裁判場の空気がしんみりムードに」 

巌窟王「……」 

赤松「もしかして巌窟王さんも泣いてる? 帽子深く被って真上見てるけど」 

巌窟王「巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)は精神干渉系のスキルを軽減する。小娘の手紙程度で泣きはしない」 

最原(微妙に涙声になってない? いや気のせいか?)

789: 名無しさん 2017/11/12(日) 17:28:25.28 ID:WK3AjLHm0
茶柱「えー。というわけで、転子はこの手紙を何度も何度も手直ししてて……」 

茶柱「で。ずっと机に向かってたから疲れちゃって、外の空気吸おうかなーって外に出たところで」 

巌窟王「俺に会ったというわけか……」 

茶柱「ええそうです……って、なんで帽子深く被って真上見てるんですか」 

巌窟王「アイマスク代わりだ。あまりの退屈さに眠くなってしまってな」 

茶柱「ちょ、ちょっと……もう……確かに慣れないことしたなって思いましたけど」オロオロ 

星「気にしないでいい。明らかな強がりだからな」 

茶柱「へ?」 

最原「え、ええと……あの、茶柱さん……」 

茶柱「返事は後! 議論を再開しますよ!」 

最原「え、ええーっ……」

791: 名無しさん 2017/11/12(日) 19:32:03.19 ID:WK3AjLHm0
最原「ええっと、じゃあ議論を元に戻すけど……」 

イシュタル『確か茶柱と巌窟王が火事を認識したのが十一時四十分ごろの話よね』 

ナーサリー『ええ。その時点で茶柱の研究教室は不自然に大炎上していたと彼から聞いているわ!』 

イシュタル『この場に信長がいなくて良かったわねー。アイツ、笑顔で自分の死ネタをぶち込んで来るからたまに空笑いしか出てこなくなるのよ』 

ナーサリー『持ちネタが増えるのはいいことなのだわ! 私もあと十回くらい死んでみようかしら!』 

イシュタル『はいはーい。危ないブラックジョークはそこまでよー』 

真宮寺「巌窟王さん。何なのこの人たち」 

巌窟王「俺に! 訊くな!」ギンッ! 

百田「話がここまで戻ってきたところで、やっとこの疑問にとっつけるかもな」 

百田「結局、なんで巌窟王は炎上中の研究教室に入ったんだ?」 

最原「……」 

最原「心あたりが……あるかもしれない」

792: 名無しさん 2017/11/12(日) 19:43:42.54 ID:WK3AjLHm0
春川「……うっ……ぐすっ……」 

春川「その心当たりって?」キリッ 

最原「切り替え早いのか遅いのかよくわからないな……」 

最原「えと、アンジーさんを探しているときにさ、巌窟王さんに確認したんだけどさ」 

最原「なんで大火事の研究教室に突っ込んだのかって」 

最原「……具体的には何も教えてくれなかったけど、なんで入ったのかを遠回しに一応教えてくれたよ」 

赤松「え? アンジーさんを探すためだよね?」 

最原「は?」 

赤松「だって火事の研究教室の中からずっと『アンジー! どこだ!』って叫びがちょいちょい聞こえて……」 




裁判場全体「……」 

赤松「……」 

赤松「えっ!? 聞こえてなかったの!?」ガビーンッ 

夢野「言うのおっそいわァーーーッ!」ウガァッ! 

赤松「ご、ごめんなさぁーーーい!」

793: 名無しさん 2017/11/12(日) 19:55:26.01 ID:WK3AjLHm0
天海「俺たちは消火活動の途中、たまに聞こえてくる巌窟王さんの咆哮しか聞こえてなかったっす」 

天海「だから誰一人としてその真意に気付けなかった。でも気付いてた人もいたんすね!」 

最原「む、無駄に遠回りしてしまった……!」 

赤松「え? え? ちょっと待って、本当に聞こえてなかった? 本当に? 誰も!? 一人くらいはいたでしょ!? ねえ!」 

百田「……俺よー。お前のことをずっと『自称ピアノバカ』だと思ってたんだけどよー」 

百田「実際本当にバカだったな……」 

赤松「がはあ!?」グサァッ 

春川「やめてよ百田! アンタにバカ呼ばわりとか、自殺するしかなくなっちゃうから!」 

百田「ハルマキも歯に衣着せることを覚えようぜ!」 

最原「……まあともかくとして……」 

最原「そうなんだよ! 巌窟王さんはアンジーさんを探してたんだ!」

794: 名無しさん 2017/11/12(日) 20:01:27.24 ID:WK3AjLHm0
百田「でもよ。アンジーを探してたからって、なんで巌窟王が燃えてる研究教室の中に入ったんだ?」 

百田「それも隣にいたはずの茶柱に大した説明もなしに。相当慌ててたとしか思えねーぞ」 

最原「……多分、見えたからだよ。炎上中の研究教室の中に、アンジーさんに関連してる何かが」 

巌窟王「……」 

最原「茶柱さん。教えてくれないかな。炎上中の研究教室で、何か気付いたことはない?」 

茶柱「気付いたことって言っても……そんな大したものは見てませんよ?」 

茶柱「ただ妙なことがたった一つあったってだけで」 

星「妙なこと?」 

茶柱「あの研究教室、何故か黒く燃えてたんですよ」 

王馬「はえ?」 

茶柱「ええっと、だから……巌窟王さんが入る前から、巌窟王さんと同じ色の炎を出して燃えている部分があったんです」 

キーボ「え? それって……」 

入間「ッ!」 

天海「巌窟王さん。何か心当たりはないっすか?」 

巌窟王「……」 

最原(またダンマリ、か……)

797: 名無しさん 2017/11/13(月) 18:33:52.08 ID:H39M8jCv0
最原「……なんとなくさ。巌窟王さんが今回の裁判で、どういう話題になると黙るのかわかってきたよ」 

最原「アンジーさんに不利益になるようなことは口を閉ざしてるよね?」 

真宮寺「え? そうなの?」 

巌窟王「……」 

星「なるほどな。赤外線センサーの話題に入ったとき、最初の内こそ饒舌だったが……」 

赤松「アンジーさんがすり替えを行ったって話題に入ったときは黙ってたね……」 

巌窟王「……ふん。だが義理に欠いたつもりはないぞ。そもそも赤外線センサーの話題が出たのは俺が覚えていたからだろう?」 

百田「そりゃそうだな。その件のセンサーを見たのがそもそもテメェしかいなかったわけだしよ」 

最原「今回の場合、その巌窟王さんと同じ色の炎っていうのがそうなんだろうね」 

最原「アンジーさんにとって不利益になるもので、なおかつアンジーさんを想起させるもの」 

巌窟王「……」 

夢野「また黙ったぞ」 

王馬「こんなときになってまでアンジーちゃんを守りたいんだねー。随分と頑固っていうか律儀っていうか……」

798: 名無しさん 2017/11/13(月) 18:42:57.24 ID:H39M8jCv0
最原「もうこの際、単刀直入に聞いてしまおうか」 

最原「巌窟王さん。アンジーさんが入間さんの研究教室に忍び込んで、色々盗んだことを知ってたよね?」 

入間「は?」 

巌窟王「……」 

最原「……やっぱりね」 

入間「ま、待て! アンジーが俺様の研究教室から盗んだ、だァ!? まさかセンサーだけじゃなくって……」 

最原「巌窟王さんの炎と同じ色を出して燃える燃焼促進剤」 

最原「……ここまで来たら間違いないよ。アンジーさんはそれも盗んでたんだ!」 

百田「あ?」 

春川「……あっ」 

王馬「……あー」 

白銀「あ、あれ? 何人か変な反応してる人がいるけど……どうしたの?」 

百田「心当たりがあってよ。入間! 本当にそんなもん作ったのか?」 

入間「作った! でも無くなった! いつの間にか! う、嘘だろ……ショックすぎて涙が出て来たんだが……!」

799: 名無しさん 2017/11/13(月) 18:58:28.91 ID:H39M8jCv0
真宮寺「ちょっと待ってほしいんだけど、本当に巌窟王さんの炎色を出す方法がそれしかなかったわけじゃないよネ?」 

真宮寺「仮に、夜長さんが入間さんの研究教室からそんな燃焼促進剤を盗んでいたとして……」 

真宮寺「それ以外にも二通り、その炎色を出す方法があるはずだヨ」 

白銀「え? 二通りもあるの?」 

真宮寺「まず一つ目に、巌窟王さん本人が研究教室に着火させた場合」 

真宮寺「そして二つ目に、入間さんが新しく、その燃焼促進剤を作って使用した場合」 

真宮寺「ああ、この二つ目の可能性には『燃焼促進剤はすべて盗まれたわけではない』というパターンも含んでるヨ」 

春川「その辺、どうなの入間?」 

入間「俺様の燃焼促進剤は2Lのペットボトルに入れて保管してたんだが……」 

入間「それ一本ですべてだぜ。ついでに、新しくも作ってねぇ! そこのメイドババァに問い合わせればわかるはずだ!」 

東条「……えっ?」 

入間「えっ?」 

王馬「いや、なにもわかってないって顔してるけど」 

入間「ええっ!?」ガビーンッ

801: 名無しさん 2017/11/14(火) 18:54:08.15 ID:5ivEFUPL0
入間「忘れたとは言わせねぇーぞ! テメェ、俺様にワインを渡す交換条件として色々クドクド言ってたじゃねーか!」 

入間「目の前で燃焼促進剤の原液に加えるためのワインを、材料になる部分とそうでない部分に分離させるところも見せただろ!」 

東条「……ああ。そうね。確かに」 

東条「入間さんは私の渡したカッシェロ・デル・ディアブロを間違いなくすべて消費していたわ。何を作るためだったのかは今知ったけど」 

夢野「かっしぇろ……なんじゃ?」 

天海「チリワインっすよ。意味は悪魔の蔵。あまりにも美味すぎて泥棒が多発したから、ワインを守るために流した嘘が由来っす」 

最原「あの蔵には悪魔が出るって噂だよね。登校中の電車の広告に書かれてたから知ってるよ」 

天海「あ。最原くんって東京出身っすか? もしかしたら同じ電車に乗ってたかもしれないっすね」 

巌窟王「……悪魔の蔵、か。さて、果たして東条の隠し酒蔵に立ち入った悪魔とは誰なのだろうな?」 

東条「ともかく、カッシェロ・デル・ディアブロに関しては、私の襲撃後でもほぼノータッチだったわ」 

入間「俺様の燃焼促進剤はその『悪魔の蔵』のワインじゃねーと作れねぇんだよ! だから新しく作った可能性はナシだ!」 

真宮寺「そうなると、次の可能性は巌窟王さんが放火した可能性だけど」 

イシュタル『あっあー。ごめんなさーい、ちょっと口を挟んでいいかしらー?』 

ナーサリー『オズの魔法使いから耳よりの情報よ!』 

白銀「え? オズの魔法使いって詐欺師じゃなかった?」

802: 名無しさん 2017/11/14(火) 19:01:00.15 ID:5ivEFUPL0
イシュタル『あのね? 仮に巌窟王の炎で何かに着火したとして、燃えているものから黒い炎が出たりはしないのよ』 

イシュタル『だって一般的な炎色反応とは別物なんだもの。その炎は巌窟王の精神性そのもの。木造建築物を発火させたところで……』 

ナーサリー『ええ! 絶対に、素敵な彼の素敵な炎と同一なものにはならないわ! なんなら裁判場で試してみたらどうかしら?』 

赤松「……って言ってるけど」 

百田「だとすると……だ」 

百田「アンジーが燃焼促進剤を盗んだかどうかはこの際置いておくとして、盗まれた燃焼促進剤が使われたってことだけは確かだぞ!」 

王馬「いやー……百田ちゃん。キミはもうわかってるはずだよね」 

王馬「ついでに春川ちゃんも、さ」 

春川「……うん。燃焼促進剤を盗んだのは夜長だよ。間違いない」 

最原「心当たりがあるって言ってたね。聞かせてくれるかな?」

803: 名無しさん 2017/11/14(火) 19:18:52.19 ID:5ivEFUPL0
春川「超高校級の美術部の研究教室に入ったヤツなら知ってると思うんだけどさ」 

春川「夜長のヤツ、巌窟王の蝋人形を作ってたんだよ。それも完成度が狂気じみてるの」 

百田「ああ。初めて見たときはマジでビビッたぜ。いや……初めて見たときっつーか」 

王馬「そうだねー。あれって初めて見たときは『あれ? 巌窟王ちゃんじゃん』って思うんだけど」 

王馬「よくよく見てみると蝋人形だってことに気付いて、そのとき初めて凄い驚くんだよねー」 

百田「そうそう! そんな感じのヤツだ!」 

キーボ「その蝋人形がどうかしたんですか?」 

百田「……手の平に、芯があったんだよ。普通の蝋燭みてーな芯がな」 

最原「え?」 

最原「……まさか! それって!」

811: 名無しさん 2017/11/15(水) 17:53:36.30 ID:rtUdcKNz0
最原「黒い炎が出た……とか?」 

百田「ああ。ドンピシャだ終一」 

春川「いや。微妙に間違ってるよ。最原」 

最原「え?」 

百田「何言ってんだよ。間違いねーって」 

春川「百田。確かにアンタは間違ってない。ただ最原の方は認識にズレがあるんだよ」 

春川「アレは実際に見るのと見ないのとでは決定的に違うんだって」 

王馬「あー。物凄く抽象的だけど、春川ちゃんの言ってることもわかるなー」 

王馬「ただ『火を付けると黒い炎が出る』ってだけだと薄っぺらなくらい凄かったんだよね、アレ」 

王馬「字面だとそうとしか言えないんだけどさ」 

巌窟王「……アンジーは……狂っていた」 

最原「!」 

巌窟王「俺を再現するためだけに、ありとあらゆる手段を使い、常人には困難な計算を感覚と肌と経験則で踏破し」 

巌窟王「……アレを作ってみせたのだ」 

赤松「巌窟王さん?」 

巌窟王「ここまで暴かれたら、もう黙っている方がアンジーにとって不利益だろう」

812: 名無しさん 2017/11/15(水) 18:01:56.22 ID:rtUdcKNz0
巌窟王「入間。この裁判の結果はどうあれ、後でアンジーには謝罪させよう」 

入間「認めるんだな? 俺様の研究教室から燃焼促進剤と、赤外線センサーを盗んだことを!」 

巌窟王「……」ポイッ 

焼け焦げたペットボトル「」カランッ 

入間「……これ……は!」 

巌窟王「燃える研究教室の中で見つけた。見覚えがあるな?」 

入間「間違いねぇ! 燃焼促進剤を入れていたペットボトルの容器だ!」 

星「……完全に決まったな。巌窟王が証言した以上、もう疑いの余地はねーはずだぜ」 

星「犯人の一連の工作にな」 

最原「……」 

獄原「あ、あれ? 今度は最原くんが黙っちゃったよ?」 

最原「……」 

赤松「最原くん? どうかしたの?」 

最原「……」 






最原「わかった。アンジーさんが、なんで空き部屋に向かったのか」

813: 名無しさん 2017/11/15(水) 18:20:45.60 ID:rtUdcKNz0
最原「まず、アンジーさんは研究教室の外に出たんだ。そのときの持ち物は、犯人の一連の工作を振り返ればわかるはずだよ」 

キーボ「巌窟王さんの行動を特定するための赤外線センサー。研究教室の放火に使ったと思われる燃焼促進剤」 

キーボ「この燃焼促進剤はアンジーさんが研究教室の中にいる可能性を巌窟王さんに示すブラフの意味もあったはずです」 

百田「まあ、巌窟王はアンジーが盗んだことを知ってたわけだしな。充分ブラフにはなるか」 

春川「でもブラフにしてはあからさますぎるよね? ちょっとは疑ったりしなかったの?」 

巌窟王「もちろん疑った。だが……一割だろうが一分だろうが、アンジーが中にいる可能性がある以上は」 

東条「サーヴァントとして突っ込まないわけにはいかなかった、というわけね」 

最原「実はアンジーさんの持ち物がもう一つあったとしたら、どうだろう」 

巌窟王「もう一つ?」 

最原「多分、アンジーさんはあの蝋人形を作るときに、テストのために蝋燭を空き部屋から持ってきてたんじゃないかな」 

最原「実際にそのギミックを起動させてみたりしたはずだよ」 

巌窟王「そうだな。確かにヤツは……」 

巌窟王「……バカな! 何故俺は今まで気付かなかった! 忘れてはいなかったというに!」 

獄原「え? どうかしたの?」 

最原「そうなんだよ。あの研究教室の近場で蝋燭……あるいは火種を調達しようと思ったら空き部屋が一番手っ取り早いんだ」 

最原「そして、一連の工作アイテムをアンジーさんが持っていたとすると、彼女は研究教室から出るとき何を考えていたのかもわかる」 

最原「……後片付けだよ」

815: 名無しさん 2017/11/15(水) 19:20:39.23 ID:rtUdcKNz0
夢野「じゃが巌窟王は研究教室の外に出るな、と言い含めておったんじゃろ?」 

キーボ「いや。ただ『帰る場合に関してはその限りではない』と付け加えておいたはずです」 

キーボ「だとすると、帰り道の途中にちょっと立ち寄る程度の位置にある空き部屋に向かうのは自然ではないでしょうか」 

天海「蝋燭を戻すだけなら一分もかからないっすからね」 

天海「そこで犯人と鉢合わせ。何かが起こってアンジーさんは気絶させられた……」 

最原「具体的に何が起こったのかまでは、僕にもわからない。でも推測はできるはずだよ」 

最原「巌窟王さん! ゴン太くん! あの部屋、何か臭ってたよね?」 

獄原「……あ。そういえば、何かコゲ臭かったよね。火事から戻ってきたっていう巌窟王さん以外にも何かが燃えた痕跡があったよ」 

巌窟王「BBにも臭気計で確認させた。あの場で何かが燃えたのは間違いないようだ。それも事件の起こった前後のかなり真新しいタイミングで」 

最原「……巌窟王さん。あと一つ確認させてくれるかな」 

最原「僕の叫び声を聞きつけて、駆けつけてくるときに変な物音が聞こえたけどさ」 

最原「……床が抜けたりしなかった?」 

巌窟王「……抜けたな」 

最原「……犯人が何を考えていたのかは流石にわからない。でも何か、そこそこ労力がかかることをしていたんだとしたら」 

最原「例えばそう。床の横木を切る、みたいな力のいる作業をしていたとしたら……」 

最原「……予測は無意味だな。じゃあこう言おう」 

最原「アンジーさんのことを犯人が殴ったとき、床には何か『燃えやすいもの』が置かれていたはずだ」 

最原「『重労働をして体が温まってきたから脱いで畳んでおいた服』とか、そんなものがさ」

816: 名無しさん 2017/11/15(水) 19:35:16.63 ID:rtUdcKNz0
真宮寺「なにか随分と確信を持った言い方だネ。燃えた布のカスでも見つけたのかな?」 

最原「それは見つけてないよ。でもこう考えると納得できるんだ」 

最原「犯人が研究教室を燃やした理由……そこに裏の目的があったのかもしれない」 

東条「裏の目的……?」 

最原「犯人はアンジーさんを殴った。それも何の計画性もなく突発的に」 

最原「床に蝋燭が転がり、犯人が呆然としている内に火は燃え広がった」 

最原「そして、その小火を慌てて処理している内、犯人の体のどこかには無視できないレベルの傷が残った」 

最原「……つまり、火傷だよ。多分、手のひらか手首かにできたんじゃないかな」 

最原「後でアンジーさんの学級裁判が起こったときに、議論が発展して『火傷したヤツが怪しい』ってことになったときを犯人は恐れたはずだ」 

最原「だから、犯人は火傷を負ってもおかしくないシチュエーションを作り上げた」 

茶柱「……アレはアリバイ工作以外に、自分の傷の言い訳への意味もあったと?」 

王馬「おっとー! じゃあつまり、怪しいのは春川ちゃんか百田ちゃんかなー?」 

百田「この火傷は巌窟王を助けたときに負ったモンだぞ!」 

春川「ついでに言っておこうか。確かに私たちは煙や火に燻されたけど、手の平とかは無事だよ」 

春川「普通、慌てて小火を処理しようとしたら真っ先に火傷する部位は緊張のせいでずっとグーだったからね」 

巌窟王「あるいは、俺に肩を貸したときに腕を掴んでいたりな」

817: 名無しさん 2017/11/15(水) 19:47:52.09 ID:rtUdcKNz0
入間「じゃあ! この中で火傷を負っているヤツが犯人でブッ決まりなんだな!?」 

入間「おっしゃーーー! 全員全裸になりやがれーーー! 俺様がケツの穴まで観察してやっからよー!」 

赤松「やだよ! 普通に!」 

最原「それに、もうその必要はないよ。だってもう、ずっと前の段階から犯人なんて一人しかいないんだからさ」 

真宮寺「え?」 




最原「……真宮寺くん。キミなんじゃないの? 悪いんだけど、ちょっとその手の包帯を取ってくれる?」 

真宮寺「……」 

真宮寺「えっ」

818: 名無しさん 2017/11/15(水) 20:11:26.75 ID:rtUdcKNz0
百田「真宮寺が……犯人だと?」 

真宮寺「待ってヨ。なんでそう思ったの?」 

最原「かなり話は巻き戻るんだけどさ。一人だけこの議論中に気になることを言ってた人がいたんだ」 

赤松「それが真宮寺くんってこと?」 

最原「いや。違うよ。東条さんだよ」 

東条「え?」 

最原「あのときの言葉がずっと引っかかってたんだ。ほら、いつ赤外線センサーのすり替えが行われたのかって話題のときに」 

最原「キーボくんが火事の間中はドアを叩いていたって話を聞いたときに――」 



東条『そうなると……話がおかしいことになるわね』 

東条『夜長さんが襲撃されたのは偶然の可能性が高いのに、改造センサーのすり替えが行われたのは、どの事件よりも前の話……』 



百田「それがどうしたんだ? 入間は言ってたじゃねーかよ、引きこもり始めたのは夜時間より前だってよ」 

最原「うん。そう。それを知ってたなら全然不自然な発言じゃない」 

最原「ただこの発言が裁判中に出たのは『入間さんがいつから引きこもっていたのか』の発言をする前なんだよ」 

最原「東条さんは学級裁判以前から知ってたんだ。少なくとも今夜『入間さんはずっと研究教室にいた』ってことを」 

東条「……ええ。そうね。知ってたわ。だって彼女は」 

入間「俺様の、この学園に来てからの最高傑作が盗まれたんだぞ。警戒して当たり前だろうが!」 

入間「だから、この事件以前から俺様は自分の研究教室に立ち寄る頻度を滅茶苦茶上げてたんだ!」 

最原「あの階層ってアンジーさんと真宮寺君の研究教室以外には、かなり大きな機械があって、入間さんは定期的にそれの調査もしてたよね?」 





入間「んなモン休止に決まってんだろ! 少なくとも無邪気にやってられる気分じゃなかったんだからよ!」 

最原「それだけ聞ければ充分だよ」

819: 名無しさん 2017/11/15(水) 20:26:10.20 ID:rtUdcKNz0
最原「……犯人がアンジーさんを殺す決断を下したとき、おそらく一連の工作はかなり巻きで行われたはずだ」 

最原「だとするとさ。少なくとも東条さんが襲撃された十一時ニ十分から大雑把に逆算したとしても」 

最原「アンジーさんが襲撃された時間はかなりの確率で夜時間ってことになるよね?」 

最原「……アンジーさんが普段は絶対に順守していた門限を超している時間だ」 

王馬「それが何?」 

最原「いや。ただ犯人が『アンジーさんを突発的に襲うほどの何かを空き部屋でやっていた』と仮定したとして」 

最原「入間さん、アンジーさんがやってくるはずがないと犯人が確信していたとして」 

最原「それでもまだ不十分だよね。だって一人、その階層にやってくる可能性がある人間が残ってるんだからさ」 

茶柱「……あ」 

茶柱「そうか。真宮寺さんですね!? あの階層に用がありそうな人なんて他にいません!」 

最原「犯人がそこまで警戒心を弱めていた理由として考えられるのは、犯人が真宮寺くんがやってくるわけがないと確信していた場合か」 

最原「……犯人が真宮寺くん自身だった場合の二通りだよ」 

真宮寺「……」 

真宮寺「ククク。超高校級の探偵のキミとしてはあまりにも弱い根拠だネ」 




最原(わかってる! だってコレはこじつけだ!) 

最原(決定的な証拠は何もないんだから!)

821: 名無しさん 2017/11/16(木) 20:34:36.81 ID:o9iNpo8B0
真宮寺「……ククク。ま、気にすることはないヨ。誰にだって間違いはあるし……それに」 

真宮寺「今回の事件は間違っても次がある」 

最原「!」 

真宮寺「……ククク、ククククククク」 

最原(……逃げられるな。このままだと) 

最原(そしてまた繰り返される、かな?) 

最原「……」 

最原(ちょっとでいい! 真宮寺くんのことを揺さぶることさえできれば……!) 

最原(ギリギリのところまで追い詰めることさえできれば! アレを使えるのに!) 

真宮寺「この分だと、犯人が火傷した可能性っていうのも疑わしい――」 






巌窟王「我が征くは恩讐の彼方!」反論! 

最原&真宮寺「え?」

822: 名無しさん 2017/11/16(木) 20:41:21.06 ID:o9iNpo8B0
巌窟王「いや。最原は間違ってないぞ? 間違いなくお前が犯人だ。真宮寺是清!」 

最原「……」 

最原「えっ? 巌窟王さん? 何言ってるの?」アタフタ 

百田「テメェが言い始めたことだろうが」 

巌窟王「最原。証拠が足りないと言うのなら、俺の証拠を分けてやろう」 

最原「!」 

巌窟王「俺はお前を信じよう。探偵として!」 

巌窟王「……調停者の類は(ほぼ)気に食わないが、現時点では仕方あるまい!」 

巌窟王「仮契約だ。我が炎を存分に使うがいい!」 

最原「……それって」 

巌窟王「この裁判の最中のみ、俺はお前に応えよう」 

巌窟王「サーヴァント、アヴェンジャーの名にかけて、だ!」 

最原「……」 

最原(……負けられなくなったな) 

最原(綱渡りに近い議論になるけど、このまま突っ切る!) 

最原(そうでなければ僕たちは……この裁判を乗り切ったとしても!) 

最原(……欠けてしまう。絶対に!) 





学級裁判 中断

823: 名無しさん 2017/11/16(木) 20:46:54.00 ID:o9iNpo8B0
カルデア劇場 

ナーサリー「さあ! イシュタル! 始めましょう! 一体何から話そうかしら!」ワクワク 

イシュタル「……えっ。何このコーナー。え? 何?」アタフタ 

ナーサリー「学級裁判の合間には、こうやって与太話を挟むものだと聞いたのだわ!」 

ナーサリー「なんかダークネスで胡乱なブラックでギリギリのトークを繰り広げればいいって聞いたの!」 

イシュタル「誰から!?」ガビーンッ! 

ナーサリー「うふふ、良い調子よイシュタル! 流石は闇属性の女神なだけあるわ!」 

イシュタル「闇じゃないのだけど! どちらかというと光属性なのだけど!?」 

ナーサリー「闇属性の女神はみんなそう言うのだわ……」 

ナーサリー「ていうか神って大体闇属性な気がするの。アンデルセンとか」 

イシュタル「アンタの作者(かみ)の内一人と一緒にしないでくれる!? ていうか何このコーナー……え!? 見られてんの!?」 

イシュタル「……」 




イシュタル「金星の女神、イシュタルですっ! 光属性よ!」キラキラキラ 

ナーサリー「みんなの物語、ナーサリーライム! 病み属性ね!」キラキラキラ

824: 名無しさん 2017/11/16(木) 20:52:00.86 ID:o9iNpo8B0
短い話のはずなのにもうこんなにスレが使われちゃったのは、どう考えてもスレの方が短いから。『僕は長くない』。 
さておき、ペース配分が面倒臭くなったので一回切って別スレに移動します! 

このままだと余計に中途半端なところで切れちゃうしね! 


次回 

巌窟王「亜種並行世界!」 アンジー「虚構殺人遊戯:才囚学園ー!」