784:2017/09/17(日) 01:38:34.11 ID:
提督「ありがと♪……そういえば」額をつなぎの袖で拭って、モンキーレンチを工具箱に戻しながら言った

ミッチャー提督「なに?」

提督「ジェーンはどんな車に乗っているの?……米軍の准将さんなんだから、やっぱり黒塗りの「リンカーン・コンチネンタル」とか?」

ミッチャー提督「あははっ、ノーウェイ(ないない)♪…最近の米軍ときたら「駆逐艦三隻に提督が一人」って具合だから、何でもかんでもワシントンの小役人みたいな奴らに査察を食らっちゃあ、イヤミな叔母さんみたいにネチネチやられるのよ?……リンカーン・コンチネンタルなんか乗ってたら何を言われるか分かったものじゃないわ」

提督「そうなの?」

ミッチャー提督「そうよ。だいたい貧乏な准将どのにリンカーンなんか維持できないわよ、年中うちの「レディ」たちと一緒に週末のバーベキューだとか、お出かけだとかしててピーピーなんだから。それに、あれは運転手に運転してもらう車だし私向きじゃないわ……っていうか、写真見せなかったっけ?」

提督「見てないわ。写真があるの?……ふふ、お財布とかに入れているのね♪」

ミッチャー提督「ヘイ、止してよ…スマートフォンってものがあるのを知らないわけ?」ポケットからスマートフォンを取り出し、画像を探し始めた…

提督「へぇぇ…便利なものね」

ミッチャー提督「アーユゥ、キディン、ミィ?(冗談でしょ?)…今どきスマートフォンも持ってないの?支払いとかはどうしてるのよ?」

提督「え?…現金とカードだけど」

ミッチャー提督「参ったわね…こっちに来てから電子マネーは通じないし、アメックスも使えないなんてことはあったけど……」

提督「別にリラとユーロ札があれば困らないもの」

ミッチャー提督「はぁ……お、あったわよ」

提督「どれどれ…?」画面をのぞきこむと、黄色いスポーツクーペのボンネットに腕を乗せポーズを取るミッチャー提督と、横に立っているフレッチャーが写っていた…

提督「あら、速そうな車♪」

ミッチャー提督「ふふん、「プリマス・バラクーダ」71年モデル…ため込んだ数万ドルをはたいて買った自慢の一台なの♪」

提督「いかにもアメリカって感じね」

ミッチャー提督「まぁ、買えたのは本当に偶然だったんだけどね…」

………

…数年前・サンディエゴ…

ミッチャー提督「そろそろちゃんとした車が欲しいわね」…当時太平洋艦隊の少佐だったミッチャー提督は、ヒンジがひしゃげているおんぼろなピックアップのドアをどうにか閉めると、下見をかねて自動車ディーラーのひしめき合っているブロックに車を走らせた……ようやく貯めた数万ドルの入った財布と、強盗よけの「お守り」としてホルスターに突っこんである.45口径のコルトをお供に、駐車場の一角に車を停めた…


ミッチャー提督「ここね」…軍関係者には割引もあると聞いてきた自動車ディーラーの店は、ピカピカのフォードやダッジから、きれいに整備された中古車までずらりと並んでいる。ディーラーの男はミッチャー提督を車に詳しくない「お嬢さん」だとでも思ったのかやたら愛想がよく、付きっきりで話しかけてくる……

ディーラー「…自動車はアメリカで生まれました、日本の発明品じゃありません。少し後れをとりましたが、今や巻き返しの時です」近くにあった新型のキャデラックに案内して自慢げに言う…大きいばかりの新型キャディを見て仏頂面のミッチャー提督……

ミッチャー提督「…キャディは好きよ」(…ただし、75年以前のね)

ディーラー「キャディがお好き?結構、ではますます好きになりますよ♪…シートはビニール、本革だと夏は暑いしひび割れはするし、汗で滑るし良いことなんかありませんよ…天井は高くて大柄な方でもゆったりだ♪」

ミッチャー提督「…」

ディーラー「どうぞ回してみて下さい…いい音でしょう?余裕の音だ、馬力が違います♪」

ミッチャー提督「……別のはある?」

ディーラー「おや…お気に召しませんでしたか?」

ミッチャー提督「まぁ、そうね……って、あれは売り物?」モータープール(駐車場)の奥にひっそりと停めてある一台に視線が行った

ディーラー「ええ売り物ですよ。ご覧になりますか」案内された先にはダッジの払い下げパトカーや中古のバンに並んで、黄色いプリマスが鎮座していた

ミッチャー提督「嘘でしょ…いくら?」

ディーラー「ええ、そうですね…ざっと2万ドルでいかがです?」

ミッチャー提督「乗ってもいいかしら?」

ディーラー「ええどうぞ…パワフルで豪華、まさに古き良きアメリカの車です。いかがです?」

ミッチャー提督「そうね。でも一番気に入ったのはね…」

ディーラー「…なんです?」

ミッチャー提督「…値段よ」ドル札を渡すと、中古ピックアップは捨て値で買い取ってもらい、意気揚々と乗って帰った…

………

ミッチャー提督「と…まぁ、そんな具合で買ったのよ」

提督「そういうことってあるものなのねぇ…」つなぎから着替えてメイクをするためにテラスで別れた…

785: :2017/09/17(日) 02:23:24.21 ID:
…数十分後… 

提督「はい、お待たせ♪」涼しげなアメジストのネックレスとイヤリングに、軽いピンク色のルージュ。シンプルなスカートにブラウスと動きやすい格好でランチアを停めた… 

アヴィエーレ「よし…じゃあ行こう!」 

カヴール「ふふ、では後部座席はお二人でどうぞ♪」 

ミッカ「はい、ありがとうございます」 

アヴィエーレ「眺めのいい助手席がよかったなぁ…風も感じたいし」 

カヴール「まぁまぁ…帰りは代わってあげますから」 

アヴィエーレ「まぁ、ならいいや」 

ミッカ「提督、準備いいですよ」 

提督「そう?…じゃあ出発♪」 

アヴィエーレ「よーし、アヴァンティ(前進)!」 


……… 

…近くの町… 

提督「さてと…買い物リストは……と」提督たちが日ごろお世話になっている小さな田舎町はのんきな空気が流れていて、町中がみんな顔馴染みのような気楽な町だった 

カヴール「まずは…お菓子屋さんですね」 

提督「はいはい…みんな甘い物は好きだものね」 

…菓子屋… 

提督「こんにちは」 

菓子屋のおじさま「いらっしゃい、海軍さん」…渋い声の「おじさま」が腕を振るっている菓子屋は艦娘たちと提督のお気に入りで、地味だけれどしっかり作られた焼き菓子が絶品だった…もちろんムースやクリームの乗ったケーキも美味しいが、そうそう持って帰れないので大抵は焼き菓子だった 

提督「えーと…普通のクッキーと市松模様のクッキーをそれぞれ五十枚…一口マロンパイを六十個……」 

菓子屋の奥さま「あらあら…いつもご贔屓に♪」菓子屋のおじさまが奥に引っ込み追加を持ってくる間に、ほっそりしたしとやかな奥さまが出てきて袋に詰めてくれる… 

提督「こんにちは、奥さま♪」 

奥さま「ふふ、奥様だなんて恥ずかしいですよ…ただの菓子屋ですもの」 

提督「いいえ、優雅でお綺麗ですよ……ご主人がうらやましい」 

奥さま「もう、お上手ですこと♪…よかったら割れちゃったクッキーも持って行って下さいな。……あなたがたも焼き菓子はお好き?」カヴールたちにもにっこり微笑みかけてくれる 

カヴール「うふふっ、もちろんです…甘い物はお茶の時間をより幸せにしてくれますから♪」 

アヴィエーレ「しかも、こんな見目麗しい奥さんが手ずから作られたとあればなおさら…ね♪」 

ミッカ「ここのお菓子は美味しいですから大好きです」 

奥さま「もう、みんなお上手なのね……よかったら、切り落としのケーキも持って行って?」ピスタチオ入りケーキの端っこも紙袋に詰めてくれた 

カヴール「ふふ、ごちそうさまです♪」 

奥さま「いいのよ…ご近所さんに配るにしても毎日だと飽きられてしまうし、普段からたくさん買って下さいますからね」 

おじさま「…追加の分です。……まだ熱いから、持って帰ったら袋の口を開けて冷まして置いてください…」 

提督「はい、わかりました♪」復活したリラ札を数枚取り出した 

おじさま「毎度どうも…今後ともご贔屓に……」 

奥さま「またいらして下さいね♪」 

………
788: :2017/09/18(月) 01:16:01.26 ID:
提督「さて次は……雑貨屋ね」 

カヴール「何かと必要なものが出てきますからね…さ、参りましょう♪」すっ…と指を絡めてくる 

ミッカ「あ…じゃあ私は反対側を」 

アヴィエーレ「はは、まるで親子連れだね♪」石畳が敷かれた道の一歩先に立って、振り返りつつからかうアヴィエーレ 

提督「ふふ、親子ですって♪……ねぇ、カヴール…親子だとしたら私とあなた、どっちが奥さんかしら///」 

カヴール「む…それは難しい質問ですね……///」 

ミッカ「私が子供なのは決定済みですか…」 

提督「だって、ねぇ…カヴールは子供には見えないわ」 

ミッカ「そうですか……あ♪」 

提督「なぁに、何か思いついた?」 

ミッカ「…提督とカヴールの「カンピオーニ婦妻」っていうのならいかがでしょう?」 

提督「なるほど…それ、いいわね♪」 

カヴール「それなら私も提督の奥さんになれますし、提督も婦人のままでいい訳ですね♪」 

提督「ふふ、そうね…ありがと、ミッカ♪」優しく頭を撫でた… 

ミッカ「あっ…///」 

カヴール「あ、私も撫でて下さい♪」 

提督「はいはい…じゃあ少し屈んでくれ…る?」つま先立ちして頭を撫でる… 

カヴール「うふふっ…提督の手、柔らかくて暖かいです♪」撫でている手を取ってそっとキスをした… 

提督「あんっ、もう///」頬を赤らめて上目遣いでカヴールを見た 

アヴィエーレ「あー、はいはい…ごちそうさま。…甘いなんてものじゃないよ、全く……」さりげなくもらったクッキーの袋に手を突っこみ、ぼやきながらぼりぼりかじっている… 

アヴィエーレ「ところで三人とも…」 

提督「?」 

アヴィエーレ「…盛り上がっているところを悪いけど、目的地を通り過ぎちゃったよ?」 

提督「えっ?」 

アヴィエーレ「ほら、雑貨屋はそこの角だろう?」 

カヴール「あらあら…」 

提督「ごめんなさいね…すっかりうわの空だったわ」 

アヴィエーレ「そうみたいだね」引き戸を開けてくれた 

提督「あら、ありがとう♪」 

アヴィエーレ「いえいえ…どうぞ、カンピオーニ「ご婦妻」♪」 

カヴール「まぁ…照れちゃいますね♪」 

ミッカ「子供扱いはともかくですが…この両親だったら嬉しいです」 
789: :2017/09/18(月) 02:14:20.10 ID:
…店内… 

提督「えーと…」買い物のメモを片手にカヴールの持っているカゴに商品を入れていき、ついでに薄暗く涼しい店内にほっとしてあちこち見て回った 

提督「釘のセット二つに……カッターナイフの替え刃…電球四つ……30メートル以上のホース…」 

カヴール「庭のホースがこの間だめになってしまいましたからね…よく持ってくれましたが」 

提督「切れたところから水が噴き出して大騒ぎだったものね……野菜用の液肥…」 

ミッカ「菜園のトマトがどんどんなっているから、少し施してあげないといけないわ」 

提督「そうね♪……えーと、麻ひも一巻き…洗濯バサミ……洋服ハンガー……」どさっ…とカゴに積み込んでいく 

カヴール「ふふ、こういうお買いものは生活感があって楽しいですね♪」 

提督「そう?…あ、そういえば」 

カヴール「どうなさいました?」 

提督「うちの鎮守府に犬か猫が来るじゃない?……首輪とリードも買おうかしら」 

ミッカ「でも、どんな子が来るか分からないのですよね…少し気が早いのでは?」 

提督「あー…言われてみればそれもそうね。……じゃあ買うのはまたにして、どんなのがいいか下見だけしましょう♪」 

アヴィエーレ「それなら…こんなのはどうだろう?」指差したのはシンプルな黒革の首輪で、留め具の所にはしっかりした鋲が打ってある 

提督「悪くないわね、丈夫そうでいいと思うわ♪」 

ミッカ「私はこれがいいと思います♪」可愛い桃色のリボン風首輪で、白い子猫や子犬に似合いそうなデザインだった 

提督「ふふっ、ミッカは可愛いのが好きなのね♪…カヴールは?」 

カヴール「そうですね…これがいいのではないでしょうか」シックな飾りのついた首輪を持ち上げた 

提督「それもお洒落でいいわね……さて、身体も涼しくなったしお会計に行きましょう♪」 

……… 

…数分後・街角… 

提督「…それにしても暑いこと」…かんかんと太陽が照りつけるなか、提督とアヴィエーレはサングラスをかけ、カヴールはシックなリボンと飾りのついた貴婦人のような帽子をかぶり、ミッカは涼しげな麦わら帽子をかぶっていた 

アヴィエーレ「うぁー…溶けそうだよ……」 

ミッカ「…どこかでひと泳ぎしたいです」 

カヴール「冷たいものでもあればいいのかも知れませんね…」と、視線が街角の屋台に止まった… 

提督「…あー、ジェラートね」 

アヴィエーレ「一つ買おう…お金はあるんだし」 

ミッカ「そうですね…私も欲しいです」 

提督「いいわ、じゃあ私が買ってあげる♪……カヴールは?」 

カヴール「まぁ…よろしいのですか?」 

提督「ええ、もちろんいいわ♪…すみません、ジェラートを……何味がいい?」 

アヴィエーレ「普通のミルク仕立てに…レモン、イチゴか……涼しげだからレモンにしよう」 

ミッカ「イチゴがいいです♪」 

カヴール「ではミルクを」 

提督「…私もミルクで♪」 

屋台のお姉さん「はい♪……可愛いお嬢さん方にはサービスね♪」手早く三角錐型にジェラートを盛ると、ウィンクしてもう一しゃくいして乗せてくれた… 

提督「あら、うれしい♪」 

お姉さん「いいのよ♪……どれも美味しいから、仲良く味見してみて…ね?」 

提督「ふふっ、ぜひそうさせてもらいます♪」ジェラートを持って小さい広場の銅像の下、石造りの台座に腰かけた… 

アヴィエーレ「んー、美味い♪……なんだか鎮守府のみんなに悪いなぁ」 

提督「どうかしら…もしかしたら姫が日本の美味しいお菓子を出して、お茶会でもしているかもしれないわよ?」 

カヴール「ふふ、でも私は提督の舐めたジェラートが一番美味しいと思いますよ…♪」ぺろっ…と大きく舐めとった♪ 

提督「あ、そんなにとるなんてずるいわ……カヴールのも舐めさせてもらうわね♪」…れろっ♪

790
:2017/09/19(火) 01:03:28.45 ID:
…同じ頃・鎮守府…

百合姫提督「くしゅっ!……噂でもされているのかしら」百合姫提督は睡蓮の柄が入った浅葱色の小袖を着て、食堂にいた艦娘たちに抹茶とお菓子を振る舞っていた。大き目の菓子皿に懐紙を敷き、四種類のお菓子が盛り合わせにされている……

フェラリス「ガリレイ?…ほら、お茶の時間だからこっちに来て?」

ガリレイ「もう少し待って……今いい所だから…」

百合姫提督「あらあら…すっかりお気に入りみたいね」…暇そうにしていたアルキメーデ級大型潜、「ガリレオ・ガリレイ」に百合漫画を渡してみた所、すっかり気に入ってむさぼるように読みふけっている…

フェラリス「まぁ、ガリレイは略号が「GL」だから♪」

(※略号…イタリアで駆逐艦以下の小型艦に必ず書いてあるアルファベット二文字の頭文字。駆逐艦は戦時を通して艦首、潜水艦は30年代まで司令塔側面に大書していた。「ガリレオ・ガリレイ」は通称ガリレイ(Galilei)で、これを縮めて「GL」になる)

百合姫提督「あぁ、なるほど…」

フェラリス「ほら、早く来ないとなくなっちゃうかもよ?」

ガリレイ「んー…」生返事でページをめくっている…

フェラリス「仕方ないわね、もう……先にたべちゃいましょう」

百合姫提督「ごめんなさいね…私もお茶の時間が済んでから渡せばよかったわ」

ミッチャー提督「まぁいいんじゃない?…それより、なんだか渋い見た目のお菓子が多いわね」

百合姫提督「そうかしら?……見た目は地味でも、どれも地元で愛されてきた銘菓だから一個づつ説明してあげる」

エンタープライズ「それはいいですね。ぜひお願いします…日本のお菓子は奥深いですから」

百合姫提督「はい♪……えーと、今日のお茶菓子は四国銘菓の盛り合わせにしてみました」

足柄「四国っていうのは、呉を挟んで向かい側にある大きい島のことよ」

ミッチャー提督「あー…あの島ね。了解」

百合姫提督「…私ね、日本でも四国の四県を正しく言えない人がいて残念に思っているの…人は優しいし、気候は温暖だし、食べ物は山海の珍味が揃っているし…」

フェラリス「いい所なんですね」

百合姫提督「ええ。ここみたいに温暖で、レモンや柑橘の栽培も盛んな所よ」

フェラリス「なるほど…では、きっとお菓子も美味しいことでしょうね♪」

百合姫提督「そうね、きっと気に入ってくれると思うわ……まずは「讃岐うどん」で有名な香川県の「おいり」よ♪」…小さく丸いお菓子に白や薄桃色、黄色や緑の色付けがされている

ミッチャー提督「日本的な色合いね、パステルカラーで可愛いと思うわ」

百合姫提督「ふふ…味も素朴で美味しいの。お餅を乾かしてふくらませるのだけど、丸い形なのは「心を丸くする」っていう意味もあるそうよ」

ミッチャー提督「へぇぇ…私なんかとげとげしいばっかりだから一つ食べておくわ……」指でつまんで「おいり」を口に放り込み、ピーナツのようにぽりぽり噛んだ…

百合姫提督「ちなみに讃岐の一部では嫁入りに使われることもあるみたいね」

フェラリス「へぇ……それはともかく、飽きの来ない味ですね」頭の上でひゅんひゅんと磁石を浮遊させながら、つまんでは口に入れる…

トリチェリ(Ⅱ)「…なかなか美味しいわ、いくらでも食べられそう」

バニョリーニ「ふふ…美味しいな……ほら、あーん?」隣に座っているルイージ・トレーリの頬に片手をあてて、反対側の手でつまんだ「おいり」を差しだした…

トレーリ「じ、自分で食べられますから…///」

バニョリーニ「そうか…じゃあ、ジオベルティ……あーん♪」

ジオベルティ(オリアーニ級)「う……あ、あーん///」

バニョリーニ「ふふ、いい子だね…♪」首筋をくすぐってからバニョリーニもつまんだ

オリアーニ「うちの妹たちに手を出さないで…この女ったらし!」

バニョリーニ「おや…妬いているのか、可愛いね♪」

オリアーニ「…ばか、そんなのじゃないわよ!」

バニョリーニ「ふふ、いいんだよ♪……百合野提督、お次は?」

百合姫提督「次は…これにしましょう、阿波踊りで有名な徳島の「霰糖」(あられとう)ね。四国は香川の「和三盆糖」で有名だけど、徳島も昔から砂糖の産地なの。その和三盆を精製するとき、ふるいに残るのがこの「霰糖」なの…」

ランポ(フォルゴーレ級)「…んっ、美味しい……♪」白い小石のようにも見える粒をそっと口に入れると、天然の砂糖きびならではの素朴な甘さがじーんと広がっていく…

百合姫提督「美味しい?……よかった♪」

791:2017/09/19(火) 01:54:13.64 ID:
ミッチャー提督「んー…やっぱり日本らしいね、アメリカにはこういうシンプルなお菓子はあんまりないから」

百合姫提督「ふふ、お味はいかが?」

ミッチャー提督「うん、美味しいよ…甘いだけじゃない「風味」って言うのがあるね♪」

百合姫提督「良かった…抹茶も召し上がれ♪」

カッペリーニ「すー……あぁ、日本の味ですね」

トレーリ「ね…渋いけど美味しい♪」日本派遣組のトレーリとカッペリーニは懐かしげに抹茶をすすっている…

タッツォーリ(カルヴィ級大型潜)「うぇぇ…苦いですね、これがいわゆる「青汁」ですか」…トレーリとカッペリーニが日本まで長躯した思い出に浸りながら抹茶をすすっている一方、自称「日本通」の「エンリコ・タッツォーリ」は眉をひそめていた……

足柄「誰が青汁よ…抹茶よ、抹茶……うちの提督に失礼なこと言わないの」

百合姫提督「いいのよ…タッツォーリ、美味しくなかった?」

タッツォーリ「いえ…美味しくないわけでは……苦み走った深みが実に日本らしい…」

百合姫提督「ふふ、タッツォーリには宇治抹茶より、ココアやモカの方が良かったかしら?」

タッツォーリ「いえ…苦いのはブルーマウンテンも平気ですから……この葉っぱのような青い味がどうも…」

百合姫提督「じゃあ…少し貸してくれる?」抹茶の器を受け取り小さじで砂糖を入れると、厨房から取ってきたミルクを注いだ

タッツォーリ「?」

百合姫提督「…抹茶ミルクだけど、これなら美味しく飲めると思うの」

タッツォーリ「なるほど、では……」

百合姫提督「どうかしら?」

タッツォーリ「美味しいです、これならいっぱい飲めます♪」

カッペリーニ「抹茶はいっぱいいただくものじゃないのよ、タッツォーリ♪」

百合姫提督「ふふ、いいのよ♪……他にも抹茶ミルクにしたい人?」

セラ「なら、私もお願いします…」

ミラベロ「私もお願いするわ、どっちの味も楽しみたいもの…ね♪」

百合姫提督「はいはい♪」

チェザーレ「ふむ…チェザーレはこの苦味、結構好きだぞ」

リットリオ「うー…私は甘いのがいいです、抹茶ミルクにしてください……」

百合姫提督「はい、どうぞ。…とはいっても、次のお菓子は甘いから口直しになると思うわ」

リットリオ「そうですか、嬉しいですっ♪」

百合姫提督「ふふ…」白あんのような色をしたようかんが二切れ、懐紙の上にずらして並べてある

チェザーレ「で、どのようなお菓子なのであろうか…ぜひお聞かせ願いたい」

百合姫提督「ええ…これは鰹や坂本竜馬、皿鉢(さわち)料理で有名な「土佐」…つまり高知県の「百合羊羹」よ♪」

バニョリーニ「百合…羊羹……っ!」…ガタッ!……椅子から身を起こして、また座りなおした…

ドリア「まぁ…素敵です♪」

ガリバルディ「ほほう♪」

エウジェニオ「……百合羊羹…良い響きね♪」

ミッチャー提督「食いつきがいいわね…」

百合姫提督「百合根を練り込んである羊羹で、名前がいいから買ってみたの…よく練ってある羊羹で、味わいもしっとりしてて良かったわ」

エウジェニオ「そうですね……ふふ、美味しい♪」

ポーラ「はい、ザラ姉さま…あーん♪」

ザラ「あーんっ♪……んむ、んむ…じゃあポーラも、あーん♪」

ポーラ「あーん…ふふっ、美味しいですねぇ~♪」

ザラ「そうよね…ほら、フィウメ、ゴリツィアも「あーん」して?」

フィウメ「あーん……ザラ姉に食べさせてもらうと格別ですね♪」

ゴリツィア「姉さまたちと一緒にお菓子を食べられて……幸せです♪」
792:名前:自動あぼーん : 自動あぼーん
793:2017/09/19(火) 11:15:07.51 ID:
…同時刻・近くの町…

提督「ふー…買ったわね」ランチアのトランクに買ったものを詰め込み、再びお買い物のメモ片手に街を歩いている…

カヴール「楽しいお買いものでしたよ」

提督「そうね…えーと、次は……」

カヴール「どうやらさっきのでおしまいのようですね」

提督「そう、なら街歩きしながらお買いものでもしましょうか」

アヴィエーレ「お、やった♪」

ミッカ「何を買おうか迷ってしまいますね…♪」

提督「好きなものを買うといいわ…ただ、あんまり大きいものは乗せられないから届けてもらうことになるけど……」

アヴィエーレ「そうか…じゃああれはどうだろう?」

提督「?」…アヴィエーレが指差した通りの角には小さな店がたたずんでいる…古びた外観で、ガラスのショーウィンドウに何やら企業のステッカーらしいものがいくつも貼りつけてあり、入り口には赤と青に塗り分けられ、そこに白い星二つが横並びしているマークの電飾看板が置いてある……

アヴィエーレ「わからないかなぁ…ほら、星二つと言えば」

提督「…少将?」

アヴィエーレ「…それもそうだけどさ。まぁいいや、入ればわかるよ」腕を取って引っ張っていく

提督「はいはい…♪」

カヴール「では私たちもついて行きましょう」

ミッカ「はい」

アヴィエーレ「ほら、ここまでくれば分かるよね?」

提督「あー…模型店なのね」…近づくと提督にも店の正体が分かった。ガラスのショーウィンドウに積み重ねてあるのはプラモデルの箱で、うち数段分は店主の作品なのか、完成したキットが麗々しく飾ってある

アヴィエーレ「ふぅ…よし、入ろう」


…店内…

提督「こんにちは…」カラコロと鈴が鳴り、ひんやりした空気と古本屋に似たような紙の匂いが漂う店内にそっと脚を踏み入れた…

店主「…いらっしゃい」カウンターの席に座っている店主は白いヒゲを生やし、使いこまれたエプロン姿で昨日の新聞をめくっていたが、提督たちが入ってくると新聞をたたみ、ゆっくり出てきた

提督「どうも…」

店主「何かお探しで?」

提督「いえ…私ではなく彼女が」

アヴィエーレ「…この町にこんないいお店があったなんて知らなかったよ」しゃがみこんで箱絵を確認して、ときおり引っ張り出しては表面のホコリを手で払っている

店主「お嬢さんは模型作るのかい?」…飛行機好きの「世界的アニメーション監督」にそっくりな店主はにっこりして聞いた

アヴィエーレ「ええ、飛行機のプラモデルを…」

提督「そうなの?」

アヴィエーレ「あれ…見せたことなかったっけ?」

提督「見てないと思うわ…何を買いたいの?」

アヴィエーレ「んー…これにしようか、それともこっちか……」マッキC.205V「ヴェルトロ」と、レジアーネRe2005「サジッタリーオ」(射手座)のキットを並べ、値札を見て思案している…

提督「両方は買えないの?」

アヴィエーレ「うん、ちょっと値段がね…」

店主「お嬢さん…中身は同じなんだけど、こっちにあるのでよければ割安だよ?」…片隅から引き出して来たキットは箱がへこんでいて、紙も日に焼けてしまっている

アヴィエーレ「あ、ならそれで♪」

店主「はい、どうもね……道具や材料は揃っているのかい?」

アヴィエーレ「はい、一通りあるので大丈夫です♪」目を輝かせ、大事そうに紙袋を抱えた

店主「そうか。上手にできるといいね……これからもちょくちょくおいで」アヴィエーレにもう一度にっこりした

提督「…私もやってみようかしら」

店主「そうだね…雨の日も退屈しないし、手先が器用になるよ。……日曜日以外はいつでも開いてるから、またどうぞ」
794:2017/09/19(火) 11:52:42.41 ID:
…しばらくして・鎮守府…

提督「ただいま、みんな♪」

ライモン「お帰りなさい♪」ちゅっ…と音高く頬にキスをするライモンに提督はにっこりして、荷物の紙袋を抱えたままお返しのキスをした

チェザーレ「お帰り。荷物を持とう♪」ミッカの荷物を受け取り、運んであげるチェザーレ

ミッカ「あぁ、助かります…運ぶのは得意ですがちょっと大量だったので、ふぅ……」

ドリア「さ、アヴィエーレも荷物を♪」ドリアも優しくアヴィエーレに声をかけた

アヴィエーレ「いや、これは私の買い物だから平気さ……気持ちだけ受け取っておくよ♪」ニッ…と口の端に笑みを浮かべ、指二本で小粋な敬礼をすると駆け足で部屋にあがって行った…

提督「ちゃんと手を洗うようにねー?」後ろ姿に呼びかける

アヴィエーレ「任せておいてー…!」

ミッチャー提督「おーおー…結構な買い物だね」玄関に迎えにきたミッチャー提督も感心したような声をあげた

提督「疲れたわ。暑かったし……」

ライモン「じゃあ荷物は片づけておきますから、シャワーでも浴びてきて下さい」

提督「いい?……じゃあお願いしようかしら」

チェザーレ「ミッカ、貴君もそうするといい♪」

ミッカ「いいのですか?」

チェザーレ「無論だ…たまにはチェザーレも手伝わせてほしいのでな♪」

提督「ありがとう、チェザーレ♪……さ、ミッカ。チェザーレがそう言ってくれるのだから、お礼を言ってシャワーを浴びに行きましょう?」

ミッカ「ありがとうございます、チェザーレ」

チェザーレ「なに、気にするな♪」片手でひょいと紙袋を持ちあげ、紅いマントをひるがえして持って行った…

百合姫提督「じゃあシャワーを浴びて来たらお茶にしてあげる…さっき私たちで食べたお菓子、ちゃんととっておいたから」

提督「ありがとう、姫…それじゃあさっぱりしてきます♪」

百合姫提督「いってらっしゃい…じゃあもう一度お茶を点ててくるわね♪」

エクレール提督「……ふわぁ…朝から騒がしいことですわね、何事ですの?」階段を下りてきたエクレール提督はシルクのパジャマ姿でぼーっとしている…

ミッチャー提督「や、おはよう♪……といっても太陽はすっかり昇ってるし、フランチェスカは買い物に行ってきた所だよ」

エクレール提督「…もうそんな時間ですの?」

ミッチャー提督「そうだけど?」

エクレール提督「あの、正確には…?」

ミッチャー提督「こっちの時計で1045時…ま、たまにはいいんじゃない?」

フレッチャー「フランス人はお寝坊だもんね♪」

エクレール提督「はぁ…参りましたわね。……ちょっとシャワーで汗を流してきますわ」

ミッチャー提督「ふふ、行ってらっしゃい♪」…大浴場で提督と出くわしてどんな騒ぎになるかと思いつつ、ニヤニヤしながら見送った

………
795:2017/09/20(水) 01:26:39.09 ID:
…大浴場…

提督「はぁ…気持ちいい……」ざーっ…と心地よいシャワーの湯が提督のふっくらとした白い肩を流れ、艶やかなふとももを伝って床に落ちていく…

ミッカ「…よかったら流しましょうか」こちらは一旦シャワーを止め、身体洗い用のスポンジにもこもこと石けんの泡を立てている…

提督「そうね、せっかくだからお願いしていい?」最近は撫でているだけでしっかり洗った気がしないスポンジより、足柄にもらった「へちま」や、少し目の粗いタオルの方が好きな提督だったが、せっかくの申し出なので受けることにした…

ミッカ「はい…じゃあ一旦シャワーを止めますね」きゅっ…と栓をひねり、ぽたぽたと雫を垂らす提督の裸身にそっとスポンジをおいた…

提督「あー…もっと力入れても大丈夫よ……ふぅ…」しゃこしゃことスポンジで擦ってもらい、肩、腕、背中と洗ってもらう

ミッカ「このぐらいでいかがでしょう…よいしょ……」すべすべした背中にスポンジを這わせ、一生懸命こするミッカ…

提督「うん…いい具合よ…」

ミッカ「腕を上げてください…脇の下に汗がたまりますから」

提督「胸が大きいとなおのことね」…たゆん…っ♪

ミッカ「ええ、よく分かります」ぷるんっ♪…ミッカもほど良く豊かな乳房を揺らしうなずいた

提督「ふふっ…くすぐったい♪」

ミッカ「あ、ごめんなさい…脇はだめでしたか」

提督「ううん、気持ちいいけど手つきが優しいからくすぐったかったの」

ミッカ「そうでしたか…私は姉妹がいないので、洗いっこのようなものにはあまり縁がなくて……」

提督「でも気持ちよかったわよ?…ありがとう、あとは私が出来るから♪」スポンジを受け取ると乳房を持ち上げ、汗ばんだ胸元や谷間を流していく…と、微笑を浮かべてミッカを見た

ミッカ「…?」

提督「よかったらミッカのことも洗ってあげましょうか?」

ミッカ「そんな…提督に洗ってもらうなんて申し訳ないです…」

提督「いいのよ、せっかく洗ってくれたのだし……それとも命令しないとだめ?」

ミッカ「う……で、では…お願いします」

提督「よろしい♪」一度スポンジをきれいに流して、泡をたてなおした…ジャスミンとバニラ、それに涼しげなミントの香りがふわりと広がる……

提督「じゃあ…腕から行きましょうね」手首からそっと円を描くようにスポンジを進めていき、二の腕、しっとりした肩と洗っていく…

ミッカ「あっ…ぁ……///」

提督「次は背中ね…」片手のスポンジで色白の背中を優しくこすっていき、同時に空いている方の手で、少しこわばっている肩甲骨を解きほぐすように撫で上げて行った……

ミッカ「あっ…んっ……♪」

提督「じゃあ、前に回るわね…」

ミッカ「いえ……前は自分でできますから…///」

提督「まぁまぁ、せっかくですもの……ね♪」

ミッカ「分かりました…///」

提督「きれいな肌をしているわね…///」提督はうつむいたミッカと正対する形で立つと、滑らかな鎖骨からふっくらとした胸、意外とむっちりしたお腹から張りのある腰……と、湯気に頬を上気させながら丹念にスポンジを滑らせていく

ミッカ「…あのっ、もう充分です……から///」提督の手とスポンジがそっと内またを撫でていくと、ミッカはひくっ…と身体をよじらせた

提督「だめよ?…ここも汗がたまりやすいのだから……綺麗にしておかないと…///」艶のあるふとももから手を下ろしていき、最後は足下にしゃがんで頬ずりするような形でふくらはぎ、足首と丁寧に洗っていった…

ミッカ「はぁ…っ……んっ///」とろけたような表情で提督を見おろし、恍惚の表情を浮かべるミッカ…と、湯気が揺らめいて誰かが入ってきた……

エクレール提督「ふぅ…全くわたくしとしたことが……寝坊だなんて恥ずかしい限りですわ…」

ミッカ「…あっ」ふと湯気が晴れて目線があった…

エクレール提督「あら……って…あ、貴女方!?」

提督「おはよう、マリー…貴女もシャワーに?」

エクレール提督「そ、そんなことより一体何をなさっているんですのっ…朝から大浴場でなんて……し、信じられませんわ!」

提督「なにが…普通のことじゃないの?」

エクレール提督「ば、馬鹿なことを言わないで下さいまし!……その、いくら貴女でも…そ、そんな///」


796:2017/09/20(水) 02:16:57.35 ID:
提督「…洗ってあげているだけよ?」

エクレール提督「えっ!?……今、何とおっしゃいまして?」

提督「洗ってあげていただけよ…それがなにか?」

エクレール提督「…本当ですの?」

ミッカ「は、はい…提督のおっしゃる通りです、その…私はそんなに丁寧にされては気恥ずかしいので、そこまでしないで欲しいと言ったのですが……」

提督「だって…ミッカのこと洗ってあげたかったの♪」

エクレール提督「では、その…ごくごく普通に洗っていただけなのですね?」

提督「ええ、そうよ……それとも、私とミッカでどんな想像をふくらませていたのかしら♪」いたずらっぽい笑みを浮かべてからかった

エクレール提督「そ、そんなことありませんわっ…!」

提督「そう?……てっきり私がしゃがみ込んでミッカの花芯をねぶっているように思ったのかしら…と」

エクレール提督「あ、あり得ませんわ…っ///」

提督「ふふっ…マリーは想像力が豊かなのね♪……まぁいいわ。私たちはそろそろ上がらせてもらうから、ゆっくりシャワーをどうぞ♪」

エクレール提督「え、ええ…そうさせてもらいますわ///」

提督「…よかったらお流ししましょうか♪」

エクレール提督「け、結構ですわっ!」

提督「そんなつれないこと言わないで?……一緒に狭い浴室で絡み合ったまま洗いっこした仲じゃない♪」

エクレール提督「そ、そんな昔のこと…っ!」

提督「そんなに昔じゃないわ♪……ところで…」エクレール提督に近づき、ほっそりした身体をしげしげと眺めた

エクレール提督「は、はい…なんですの?」

提督「…少し胸が大きくなったみたいね。肌つやもよくなったし、やつれた感じが無くなって……美味しそうよ♪」…さわっ♪……提督はぺろりと舌なめずりをするとエクレール提督に抱きつき、まだ肉の薄いヒップを撫でた…

エクレール提督「なっ…何をするんですの///」

提督「うふふ…それじゃあ、また後でね♪」去り際に投げキッスを送るとミッカと指を絡め出て行った…

エクレール提督「も、もう…あんなことされたら、疼いて仕方ありませんのに……んっ///」くちゅ……と、困ったような表情で指を秘所に差しいれた…

………

…しばらくして・食堂…


ミッチャー提督「そう言えば、出かける前に車の話になったじゃない?」満面の笑みを浮かべた提督とミッカ、エクレール提督とどこか満足げなリシュリューが「百合羊羹」や「一六タルト」を味わっている姿を見ながら切りだした…

提督「ええ、そんな話したわね…ジェーンがあの格好いいクロームイエローのプリマスとどうやって出会ったか、とか……それで?」

ミッチャー提督「いや、日本のお姫さまとエクレール提督、二人はどんな車なのかな…って思ってね」

提督「マリーの車なら知ってるわ…小さい灰色のシトロエン・2CV(ドゥシュヴォア)よね」

ミッチャー提督「あぁ、あのちっこいトタン板の物置きみたいな……実用性は抜群よね」

エクレール提督「あら、フランチェスカ…わたくしも大佐ですし、もういい加減2CVではありませんわ♪」自慢げなエクレール提督

提督「あら、そうなの?」

エクレール提督「ええ…今はかのシャルル・ド・ゴールも愛用した「シトロエン・DS19」に乗っておりますの♪」

ミッチャー提督「あぁ、DS19…あの「ムール貝」みたいなデザインで、車高を変えられたり、油圧制御でマニュアル車なのにクラッチ操作がいらないとかいう……」

提督「フランスらしいと言えばフランスらしい車ね」

エクレール提督「引っかかる言い方ですわね…優雅で革新的、しかも乗り心地も抜群ですわ♪」

提督「フランス車のいい所は、たとえデザインが絶望的でも足回りだけは最高な所だもの…DS19はデザインも悪くないし、いい車を買ったわね♪」

エクレール提督「ふふ、全くですわ♪……ところで百合野提督はどのような車をお持ちなんですの?」



797:2017/09/20(水) 15:57:09.09 ID:
百合姫提督「私?」

提督「そうね、私も知りたいわ♪」

ミッチャー提督「…きっとあれだ、環境に優しいとかなんとかいう最近の流線型をしたやつね♪」

百合姫提督「えぇ…と、私の車はマツダの初代「ロードスター」なんだけど……」

ミッチャー提督「ロードスター…あぁ、あれね!」

提督「どんな車だったかしら?……日本車は良く知らないの」

ミッチャー提督「まぁ待ちなさいって。ロードスターってこれよね?」スマートフォンで画像を検索し、百合姫提督に見せた

百合姫提督「そうです…」

提督「どれどれ?」エクレール提督と二人で回してもらったスマートフォンを眺めた…画面には濃緑色の2シーター・オープンクーペが写っている……

エクレール提督「なるほど…まぁ日本車にしては良い形の車ですわね」

提督「おしゃれな車じゃない♪濃い紅とかに塗られたらアルファロメオだって言われても信じそうね…でも濃い緑だと、イギリスのロータス辺りに見えるわ」

ミッチャー提督「ロータス・エリーゼ辺りに似てるわよね」

提督「それにしても意外ね…姫のことだからもっとおとなしいセダンとか、それこそハイブリッド・カーとかに乗っているイメージだったわ」

百合姫提督「ふふ…そうよね。……実は色々訳あって買ってもらった車なの」

提督「そうなの?…その話、ぜひ聞きたいわ」

ミッチャー提督「そうね。お昼までやることもないし」

エクレール提督「お菓子とお茶もありますし、よろしかったらお話下さいな」

百合姫提督「いえ…そんな話すほどのことでは……」

足柄「いいじゃない、話してあげなさいよ♪」

百合姫提督「そう?…じゃあ……」百合姫提督はお茶をひとすすりしてから話し始めた…

………

…数年前・日本…


百合姫提督「ふぅ…久々の帰省ね……」車窓からぼーっと窓の外を眺めている…

…ゴトゴトと走るローカル線の車窓には波打つ青々とした田んぼと里山、ときおり大きな一軒家の農家が映り、遠くには海が線になって霞んでいる……関東地方の田舎に実家がある百合姫提督だったが、この一年は呉鎮守府に配属されていた上「深海棲艦」相手の作戦で忙しく、昇進と横須賀の一鎮守府を任されることになった、その合間に帰省を実行していた…

百合姫提督「んっ…」新しく肩に付いた金モールがまだなじんでいないせいで、制服が少し窮屈に感じられる…

車内アナウンス「…次は……駅…お降りの方はお忘れ物、落し物をなさいませんよう、ご注意ください…」

百合姫提督「…忘れ物……なし。…制服、よし」荷物の鞄二つを両手に提げ、手際よく身の回りを確認すると小さい駅のホームに降り立った…

百合姫提督「あ…涼しい……」

…都心から一時間ばかり離れただけで草の青い香りと涼しい風、蝉しぐれが響き渡る…駅前は相変わらず何にもなく、潰れかけた雑貨屋とタクシー会社が一軒づつと、数軒きりの商店街が細々と営業している。小さいロータリーには地域の特産物をかたどった何とも言えない石像が立っていて、目印らしいものと言えばそれしかない……百合姫提督は一台だけいたタクシーに乗りこんだ…


タクシーの運転手「あれ、もしかして百合野さんとこの…?」住所を告げるとミラー越しに顔をのぞいた…

百合姫提督「ええ、そうです」

運転手「あぁ…やっぱりね。みなさん相変わらず元気ですよ」

百合姫提督「そうですか」町から少し走っただけで道の左右は田んぼと畑だけになってしまい、思い出したように農家があるばかりだった…

運転手「…はい、着きましたよ」百合姫提督の実家は田舎によくある典型的なお屋敷で、寺のような門と御影石の表札がかけてある

百合姫提督「はい、ありがとうございます」荷物を持ってタクシーを降り、開けっ放しの門を抜けた…思い出深い庭も相変わらず広く、周囲には刈り込んだ松や槇の木が植えてあるが、やたら広い母屋の近くだけは花壇やプランターがしつらえてあり、洋風の庭になっている…

百合姫提督「ただいま…♪」案の定鍵のかかっていない玄関を開けた…


800:2017/09/21(木) 01:45:17.51 ID:
年配の婦人「あら、いつ帰って来たの!?」

百合姫提督「たった今よ…ただいま、おばあちゃん♪」やたら間口の広い玄関で靴を脱ぎ、端に揃えて置いた…靴下だと滑りそうな、飴色をしただだっ広い木の廊下と、田舎のお屋敷によくある「輪切りにして艶をかけた木の切り株」や、色んなトロフィーがにぎにぎしく飾ってある……

百合姫祖母「まぁまぁまぁ…大きくなったわねぇ……それにその制服!…金モールがたくさんついて……おじいさん、何しているんです、孫が帰って来たんですよ!?」

百合姫提督「いいのいいの…私が居間に行けばいいから……おじいちゃんは町議会じゃないの?」

祖母「今日はお休みの日よ…さ、ゆっくりしてちょうだいね……あなたのお父さんとお母さんもそろそろ畑から戻ってくるから」

百合姫提督「そう、じゃあその間にご先祖様にお線香でも……」


…居間…


百合姫祖父「おぉ…よく帰って来たな、元気か!」かくしゃくとしている百合姫提督の祖父は、居間でテレビの高校野球を流しつつ座椅子に座っていたが、入ってきた孫娘を見て声をあげた…天井の高い和室の壁には、先祖の写真が順を追って飾ってある……

百合姫提督「ただいま、おじいちゃん…これ、お土産ね♪」

祖父「おぉ、そうか!……じゃあ、婆さん、それ…受け取ってな、仏壇にあげておきなさい!」

祖母「はいはい…」テレビの音量を絞り、仏壇にお菓子の箱をお供えして「おりん」を鳴らした…

百合姫提督「…」仏壇の前で正座して手を合わせる百合姫提督

祖父「いや、良く帰って来た……大きくなったなぁ!…おい婆さん、ほら…棚にお菓子があったろ!出してあげなさい!」気ぜわしくあれこれ大声を張り上げる…

祖母「…この間の寄り合いでもらったお菓子ですか?」

祖父「そうだ、「何とか」っていうえらいお菓子があったろ」

百合姫提督「私のことはいいから、おばあちゃんも座って?…そんなにお腹も減ってないし…」

祖父「そんなことはないだろう…じゃあ、ほら…これ食べなさい!」お盆に乗せてあった饅頭を渡してくる…

百合姫提督「ありがとう、おじいちゃん…じゃあいただきます」…どのみちなにか食べるまで延々とお菓子を勧めてくるのは分かっているので、ありがたくお饅頭をいただく…と、エンジン音が聞こえてきて徐行で走る音が近づくと、停車させたらしくぱったり止まった

声「あれ…誰か来てるのかな、靴がある」

百合姫提督「お父さん?……私よ♪」廊下に向けて声を張りあげる

百合姫父「あれ、呉にいたんじゃなかったのか…?」居間に入ってきた百合姫提督の父親は喜びながら少し驚いた…

百合姫母「まぁまぁ…立派な制服だこと……ほら、汚すといけないから貸しなさい?」相変わらずほっそりと色白で、子供扱いが抜けきれない母親…

百合姫提督「いいわ、自分でやるから…それよりお父さんもお母さんも、手を洗ってきて?座ってお茶でも飲みましょう?」天袋の溝に制服の上着をかけたハンガーを引っかけ、ブラウスと制服の白いスラックス姿で扇風機を近づけた…

父「それにしても立派だね…士官学校の時以来、久々にこの格好を見たよ……」

母「あなたはこの格好が似合うものね…凛々しくて素敵よ♪」百合姫提督ににっこりした

百合姫提督「止してよ…別に格好で指揮するわけじゃないのよ……それに実際に着てみると重くて暑苦しいから大変だし……そうそう、言い忘れていたけど昇進したの」

母「そうなの?…えーと、今は中佐だったわよね……次は大佐だったかしら?」

百合姫提督「そう。小さいけれど鎮守府も任されることになったの…だからしばらくはあちこち転属させられることはないと思うわ」

父「そうか、良かったねぇ…その「鎮守府」はどこにあるんだい?……まさか稚内とか、パラオとかじゃないだろうね?」

百合姫提督「横須賀なの…これでもっと頻繁に帰ってこられるわ♪」

父「横須賀なら近いね…安心だよ」

祖父「そうか、横須賀か!…じゃあ写真を撮ってな、それから外で食事にしよう!……すき焼きか、てんぷらか…それとも鰻がいいか?」

祖母「あんまりせかさないであげて下さいな…疲れて出かけたくないなら、何か作るからね?」

百合姫提督「ええ、分かってるわ…♪」

………
803:2017/09/23(土) 01:10:33.83 ID:
………

…外食後…

百合姫祖父「どうだ、美味かったか!」

百合姫提督「うん、とっても美味しかった。でももうお腹一杯で……」町までタクシーを飛ばし、料理屋で天ぷら、鰻、寿司…と宴会のような勢いで料理を食べさせられ、小さいお腹がはち切れそうな百合姫提督……

祖父「そんなことないだろう、あんまり天ぷらも食べてなかったし…それならほら、甘い物を食べなさい!」…ついでに「甘い物は好きだろう!」と、帰り際に町のケーキ屋で6号のホールケーキまで買い、食べるようせっつく祖父

祖母「まぁまぁ、深雪(みゆき)は昔から少食な方でしたから」(※深雪…百合姫提督の名前)

祖父「まぁ、そうだな!…でもたくさん食べないといかんぞ、提督さんなんだからな」

百合姫提督「はい、努力します……」

母「ところで深雪、あなたも…その……「鎮守府」だっけ?」

百合姫提督「うん、鎮守府で合ってるわ」

母「その鎮守府とやらを持つんでしょう…何か要るものがあるんじゃない?」

百合姫提督「うーん…とはいっても、旧海軍じゃないから日本刀やピストルもいらないし、服は制服の一揃いで足りるし……あ」

母「ほら、何かあったでしょう?…あなたは昔っから欲しがらない子供で、聞き出すまで言わないんだから♪」

百合姫提督「いや…こればっかりは自分で買わないと……」

母「いいから言いなさい?…お祖父ちゃんもお父さんも、あなたに何か買ってあげたいんだって」

父「うん、母さんの言うとおりだよ…ほら、言ってごらん?」

百合姫提督「…うん、でも高い買い物だからねだるのは悪いよ……」

祖父「何を言っているんだ!…我が家で初めての提督なんだから、おじいちゃんが何でも買ってやろう……時計か、宝石か!」相変わらずせっかちの上、すぐ孫娘に買ってあげたがる悪いくせが出ている…

祖母「おじいさん、そんなにせかしたらますます言いにくいですよ…ねぇ?」

母「言うだけ言ってみなさいな?…買う買わないはその後で決めたっていいんだから」

百合姫提督「うん…じゃあ、その……車を。…さすがに自転車だと「提督として如何なものか、せめてもう少し…」って偉い人に言われて……」

父「車かぁ…確かに安い買い物じゃないねぇ……」

母「そうねぇ…中古でも数十万は……」

祖父「なんだ、車か!…何がいい、「センチュリー」か、「クラウン」か…それとも「プレジデント」か!」

父「お父さん、そういう車だと深雪が偉い人ににらまれるから駄目だよ」

祖父「どうしてだ、提督なんだから構わんだろうが?」

百合姫提督「いえ…提督と言ってもまだ大佐だからせいぜい駆逐隊司令っていうぐらいで、あんまり高い車だとそれも……」

祖父「そうか……おぉ、そうだ!…物置にお前の車があるだろう、あれを渡してやりなさい。どうだ?」

父「え…あれはもう昔のだから……」

祖父「だっていい車なんだろう?…「何とか」って」

父「え、でもずっと乗ってないし…ホコリかぶってるよ」

祖父「そんなのはきれいにすればいいだろう。ほら、見に行くぞ!」

父「分かったよ、父さん…」

百合姫提督「じゃあ一緒に行くね」

804:2017/09/23(土) 01:57:02.33 ID:
…物置…

父「よいしょ…」縁側からサンダルを履くと表に出て、母屋の横手にある物置のシャッターを開けた…車二台分は入る大きな物置には様々な農機具や古い農薬噴霧器が積み上げられていて、その手前に一台の車がカバーをかけて停めてあった…

祖父「そうだ…ほら、カバーを外してみせてあげなさい」

父「分かったよ…よいしょ……っ!」ぶわっ!…と砂ぼこりが舞い上がる

百合姫提督「すごい速そうな車…」

祖父「何だっけ?…「スカイなんとか」言うんだろ?」

父「スカイラインね…68年から72年に生産されたスカイライン、「ハコスカ」っていうやつだね」

百合姫提督「ハコスカってなぁに?」

父「うん、それはね「箱みたいなスカイライン」だからだよ…でも、ずっと乗ってなかったからパーツもすっかりだめになってるし……」

祖父「そうか…乗れないのか?」

父「だめだと思うよ」

祖母「仕方ないですよ、おじいさん。ずっと動かしてなかったのですから……それにお祝いが使い古しでは深雪がかわいそうですよ」

祖父「うむ…そうだな。よし……じゃあ明日な、自動車の店に行くから、朝七時には起きて支度しておきなさい!」

父「いくら何でも早くないかな?」

百合姫提督「まぁまぁ…言わせてあげよう?」

母「そうね。…じゃあ明日は早いんだから、早めに寝るのよ?」

百合姫提督「はい」


…翌日…


祖父「ほら、ここだ!」…新車と勘違いしているのか、祖父のクラウンに無理やり乗せられて、街道沿いの中古車販売店へ来た百合姫提督と父親

父「…あの、父さん」

祖父「なんだ、ここの先代はわしと同じ中学だったからな!……でな、ここの息子さん、知っとるだろ?ほら、駅前の床屋の息子と友だちで……」

父「悪いね…おじいちゃんはいつもこうだから……」

百合姫提督「ううん…平気。いいのがあるかもしれないし」

祖父「ほら、この車なんかどうだ、それともこっちか?」どうやってもセダンタイプを選ばせたいらしく、そうした車を次々指差す

百合姫提督「ううん…」

祖父「値段なら気にするな!…こっちのはどうだ、車内は革張りシートだし木のパネルだぞ?」

百合姫提督「なら…あれがいい」きれいに磨かれた一台の「マツダ・ロードスター」が屋内展示場に置いてある…

祖父「あんなのでいいのか?……ほら、こっちのはエンジンをかけるとメーターが光る仕様そうだ」

百合姫提督「ううん…あれがいいの」

祖父「なんだか小さい車だな…昔あったホンダの……なんだっけか?」

父「ホンダの「S600」じゃないか、父さん?」

祖父「そうそう、それだ!…さもなきゃ「ヨタハチ」みたいな車だな……本当にこっちじゃなくていいのか?」…内装は豪華な一台を指差す

百合姫提督「これにするわ」

祖父「そうか…じゃあ、これ買って帰るから!」

父「……中古だけどいいのかい?」

百合姫提督「いいわ。スマートで乗り心地もよさそう♪」



………
805:2017/09/24(日) 01:41:09.48 ID:
百合姫提督「それで私の車が決まったの…最初はそこまで思い入れもなかったんだけど、乗っているうちに気に入って……」

提督「そういうのってあるわよね…それより」

百合姫提督「?」

提督「もし気に障ったら謝るけど……姫って「深雪」なんてきれいな名前なのに、あんまり使わないわよね?」

ミッチャー提督「確かに…変な名前ならとにかく、「ミユキ」って「深く積もった雪」のことでしょ?……幻想的でいい名前じゃない♪」

エクレール提督「まぁ、そういう意味なんですの…きっと冬に産まれたんですのね……色も白くてそんな感じがしますわ」

百合姫提督「ありがとう……実際大雪の日に産まれて、両親にはいつも「あの時は病院まで「ジムニー」を飛ばして行ったんだよ」なんて言われるのだけど…」

提督「?」

足柄「ふぅ……まぁ提督さんたちは知らないでしょうから無理ないわね。…「深雪」って艦が吹雪型駆逐艦にあったのよ」

ミッチャー提督「あー…もしかして不運な「フネ」だったの?」

足柄「ある意味ではそうだし、別な考え方をすればむしろ幸運だったのかもしれないわ」

百合姫提督「子供の頃に知ったの……「深雪」って襲撃演習中に煙幕から出てきた「電」にぶつけられて沈没しているって。幸い艦隊が近くにいたから死者は数人で済んだのだけど…以来あんまり縁起のいい名前じゃないなって思って、鎮守府では「美雪」とか、略して「雪」って書いたり……」

龍田「特型で唯一戦没じゃなくて平時の沈没だものねぇ……しかも提督の最初の艦が「電」だったのよ…」

百合姫提督「そうなの。別にどっちが悪いわけでもないのに、最初はお互い気まずくて…」

提督「なるほど…」

百合姫提督「それでも、士官学校でずいぶん考えを改めたのよ?……一時期は「なんでこんな名前にしたの、雪風とかなら良かったのに」って思ってたほどだけど」

提督「なぁに、士官学校にもっと運のない名前の同級生がいた…とか?」

ミッチャー提督「あるいは悲惨なほど頭の悪そうな名前の子がいたのかも……実際アナポリスにもいたわよ、「パリス」とか、「エンジェル」とかいう、親がイカれたペパロニのピザ食ってトリップしてたらしい名前の同期…」

提督「ふふふっ…その舌も相変わらず冴えているわね♪」

ミッチャー提督「ははっ、「アナポリスの女アーレイ・バーク」って言われたぐらいだからね♪」

百合姫提督「ふふ…面白いけどそうじゃなかったわ……同期にいたのは「早蕨美保」(さわらび・みほ)っていう子で…」

足柄「縁起悪いどころじゃないわよね…震えが来るわ……」

龍田「聞くだけでぞっとするわぁ…」

提督「えーと…その名前はそんなに悪いの?」

百合姫提督「ええ、まぁ…」

足柄「何しろ駆逐艦「早蕨」は行方不明で喪失、後に建造された「蕨」は「美保関事件」で衝突して沈没…」

ミッチャー提督「うわ…それは嫌だろうね……」

百合姫提督「ええ。それで、その早蕨さんに言われたの「深雪くらいで良かったでしょ?…私なんて「嶺上開花の直撃」みたいなものよ…って」

提督「えーと、「嶺上開花」が何かはよく分からないけど…とにかく縁起の悪い名前だったのね……」

百合姫提督「ええ…以来「もっと悪い名前だったかも…」って考えたら、深雪でよかった思えるようにはなったわ…とにかく同期は縁起の悪い名前が多くて、教官にも「なに…お清めの塩でも撒こうか?」って言われた程だったもの」

足柄「そうだったの?」

百合姫提督「ええ…だって、「畝傍」(うねび)さんに「如月」さん、「大山鳳子」(おおやま・ほうこ)で「大鳳」さんってあだ名だった人がいて…「古賀峯子」っていうそっくりさんみたいな名前の人がいて……」

龍田「…それはよっぽどねぇ」

足柄「もういいわよ…お菓子が消化できなくなるから……」

提督「…深雪でよかったわね?」

百合姫提督「…改めてそう思ったわ」

ミッチャー提督「じゃあ、深雪がいい名前だってことを祝して乾杯…抹茶だけど♪」

提督「乾杯♪」…こつりと茶碗をぶつけた

エクレール提督「乾杯ですわ♪」

足柄「乾杯よ♪」

龍田「かんぱーい♪」

百合姫提督「ふふ…ありがとう……♪」
808:2017/09/25(月) 14:22:12.80 ID:
…そう言えば一応解説を…


美保関事件(みほのせきじけん)…戦前に連合艦隊が赤青両軍に分かれて行った演習中に起きた多重衝突事故。


夜間襲撃によって戦艦「陸奥」などに雷撃を行おうとした水雷戦隊の先頭艦、軽巡「神通」が防御側の「陸奥」や軽巡「龍田」などに発見され、探照灯の照射を受けたことで襲撃を放棄し回頭、側面にいた樅(もみ)型駆逐艦「蕨」に衝突…「蕨」はボイラーの爆発などで数分も経たずに船体が両断し沈没。「神通」に後続していた軽巡「那珂」も回避を試みたが間に合わず樅型駆逐艦「葦」(あし)に衝突、損傷した


…レーダーもない時代、臨時編成の部隊に息を合わせるのが難しい夜間襲撃を行わせた軍令部にも問題がなかったとは言えないが、米英に挑もうと言う「月月火水木金金」の空気の中で訓練を「減らす」「見直す」といった発言は出来ず、結局「神通」艦長が軍法会議を待たず自決して終わった



……「樅」型駆逐艦自体は艦首楼型の船体を採用し、艦橋前の窪み(ウェル)に魚雷発射管を置くなど、平甲板型で荒天に弱かった英駆逐艦の模倣から脱却した優秀な駆逐艦で性能もよく、その形は峯風型・神風型・睦月型にも引き継がれた
810:2017/09/25(月) 15:57:10.79 ID:
…数日後・朝…

提督「ふわぁ…ぁ……」ベッドの上で大きく伸びをして、裸に薄いバスローブを羽織っただけの提督は窓に近寄ると外の様子を眺めた…

カヴール「あら、おはようございます。目覚めのコーヒーはいかがですか?」朝から髪を内向きにカールさせ、ほんのり薄化粧も施しているカヴールがにっこりしながら、棚のマグカップを取り出した

提督「おはよう、カヴール…ふわぁ……まず歯を磨いてくるわ…」あくびをかみ殺しながら生返事をすると、浴室としてはあまり使っていない提督浴室に入って洗面台に向かった

提督「…しゃこしゃこ……」洗面台に置いてあるマグカップに立ててある歯ブラシを水でゆすぎ、チューブの歯磨き粉をつける

カヴール「いつものでいいですねー?」

提督「それふぇいいふぁ……しゃこ…」泡をこぼさないように上を向いて「それでいいわ」と答える…

カヴール「はーい」

提督「しゃこしゃこ…がらがらがら…ばしゃばしゃ……」歯を磨いてうがいをし、顔を洗うとようやく目が覚めた…

カヴール「はい、どうぞ♪」マグカップに入った、少しだけ甘いミルクコーヒーを渡してくる

提督「ありがとう…今日の海はどう?」

カヴール「はい。気象報告ですと今日は一日快晴で、風はほぼなく、海も穏やか…とのことです。」

提督「そう、いいわね♪」

カヴール「ええ、それに提督も久しぶりにゆっくり出来ますね?」

提督「そうね。大型潜水艦が増えて長距離の哨戒任務も交代で出来るようになったから、ローテーションも楽になったし、海軍司令部に送るこまごました書類も書かなくて済むわ♪」

カヴール「ええ、全くですね…今日は文書便の日ですが、そんなに大変なものもないでしょうから……」

提督「…映画でも見ながらのんびりさせてもらいましょうか♪」

カヴール「それもいいですね、ミッチャー提督は映画好きなので面白いのを流してくれますし♪」

提督「この間は「史上最大の作戦」だったわね」

カヴール「ええ、何でも「…戦争映画はナポリの米艦隊が山ほど持ってるから送ってもらえるんだ」って言っていましたね」

提督「みたいね……そういえば、昨夜は変な夢を見たわ」

カヴール「と、言いますと?」

提督「どういうわけか私が造船所の乾ドックにいて、プリエーゼ造船官に「プリエーゼ・シリンダー」の解説を受けながら船底に頬ずりしてたの……」

カヴール「まぁ…ふふ♪」

提督「ね、夢とはいえおかしいわよね♪」

カヴール「いいえ、ふふっ♪……だって、昨夜の提督ったら私の胸に顔を押し付けてお眠りだったのですもの♪」

提督「あー…それでそんな夢をみたのね……道理で変な夢だと思ったわ///」

カヴール「うふふっ、私のプリエーゼ・シリンダーは外からは見えませんが……結構、ボリュームたっぷりですから♪」ゆさゆさと大きな胸を揺らしてみせた

提督「言われてみると、ライモンやアオスタたちも軽巡なのに意外と大きいし…きっと着やせするタイプなのね……」あごに手を当てて考え込む

カヴール「きっとそうでしょうね…豊満な胸のお好きな提督からすれば喜ばしいことですか?」

提督「ふふっ…確かに大きい胸は好きだけど、手のひらに収まるような小ぶりな胸も好きよ?」

カヴール「あら…それでは競争相手が多くなってしまいますね」

提督「うふふ……カヴールの大きくて柔らかい胸は格別だから大丈夫♪」ふにゅっ…♪

カヴール「あんっ♪…もう、朝から交戦するおつもりですか?」

提督「今日は時間があるもの……」そう言ってカヴールのずっしりと柔らかな乳房を揉みしだこうとしたとたん、ぐぅ…とお腹の音が鳴った……

カヴール「ふふ、いい所でしたのに…♪」

提督「そうね…食堂に行きましょう」残念そうにもっちりした乳房から手を放し、くすりと微笑んだ…
812:2017/09/26(火) 01:25:01.93 ID:
…食堂…

ザラ「おはようございます、提督」ちゅっ…♪

フィウメ「おはようございます♪」

ゴリツィア「お、おはようございます…///」

提督「おはよう♪」ちゅ♪…ザラたちの頬に挨拶のキスをして、にっこり笑みを浮かべる提督

ポーラ「おはようございまーす、提督ぅ……ん~♪」

提督「ポーラもおはよう……さすがに朝からは飲まないのね♪」冗談めかしてウィンクする

ポーラ「もぉ、ポーラが~…お酒ばっかり飲んでるみたいに言わないで下さい~…」

提督「そうね…昼までは飲まないものね」

ポーラ「当たり前ですよぉ~。美味しいワインで~…人生を楽しむ時はぁ……お腹一杯で、昼のうららかな日差しを浴びながらいただくのが一番なんですからぁ~♪」

提督「ふふ、そうね…♪」

ポーラ「でもぉ…寝起きの気だるい雰囲気でいただく午前中のシャンパンもぉ~…悪くないですよねぇ~♪」

提督「ふふ、もう……朝はコーヒーにでもしておきなさい♪」

ポーラ「分かってま~す♪」

提督「うふふっ…ポーラもなかなか「哲学」をお持ちのようで……あら」…普段は「パリジェンヌらしい」という理由でクロワッサンと、フランス式のお椀に入ったカフェオレで済ますエクレール提督だが、いい匂いの朝食につられたのか、フランス人が大好きな焼き立てパンと一緒にたっぷりと料理をよそっている……

提督「ボンジュゥ、マリー♪……サ・ヴァ?(元気?)」リシュリューとジャンヌを連れ、朝からメイクもばっちりなエクレール提督にフランス語で声をかけた…

エクレール提督「ウィ。サヴァ、サヴァ…メルスィ♪……エ・ヴ?(そちらは?)」

提督「おかげさまで…そうそう、そうやってしっかり食べないと身体に悪いわよ?」……朝からだと少し重い気がしたが、チーズの屋根が美味しそうな「オニオングラタンのスープ」をとり、それから「東南アジア風コールドチキン」を皿に載せた…ネギ油の香りと糸唐辛子、バジルがアクセントになっていて食欲をそそってくれる…

ディアナ「提督、おはようございます。今日はエリトレアの担当ですが…ふふ、美味しそうですね」…それまで厨房を一人で切り盛りしてくれていたディアナだが、「エリトレア」のおかげでレパートリーも広がり、交代で休みも取れるようになったので雰囲気にも余裕がにじみ出ていた…

提督「エリトレアはアジア風とか、東アフリカ風の料理が多いわよね…どれも目新しいから楽しみよ♪」

ディアナ「そうですね♪」手際よく、丁寧に料理を乗せた…

提督「ではでは…♪」異国風のコールドチキンと熱々のオニオングラタン・スープ、食後には爽やかな甘さのスイカとメロンの盛り合わせを心ゆくまで味わい、食べ終えるとコーヒーをすすりながら海を眺めた……

カヴール「いい眺めですね…♪」

提督「そうね、カモメが鳴いているわ…」

ガッビアーノ「さすらえる一羽のガッビアーノ(カモメ)をお呼びかな…?」小柄な身体にくりくりした黄色い瞳…と、可愛らしい見た目の割に、どこかつかみどころのない物腰の「ガッビアーノ」が側によってきた

提督「ふふ、呼んではいないけど…どうぞ?」

ガッビアーノ「ありがとう…止まり木をくれてうれしいよ♪」隣の椅子にちょこんと座ると、アイスコーヒーをすすった

提督「相変わらずいい天気だけど……暑いわね…」朝から気温が上がっていき、提督は眉をひそめた…百合姫提督のくれた風鈴も無風なので鳴ってくれない……

エンタープライズ「…少しいいですか」ばるんっ♪……提督が閉口していると「ビッグE」が自分の「ビッグE」を揺らしながら声をかけてきた…

提督「あら、エンタープライズ…何かご用かしら?」

エンタープライズ「はい、マームから「よかったら会議室で映画でも見ませんか」とのお誘いです」たゆん…っ♪

提督「そう言えば映画を流してくれるのだったわね。分かりました…「すぐに行くのでまだ始めないでください」と伝えてもらえる?」

エンタープライズ「アイアイ。そのように伝えます」

ガッビアーノ「…大きかったな」

提督「胸が?」

ガッビアーノ「うん。……ところで、もしよかったら一緒に行きたいけど…流浪のカモメを連れて行ってくれるかな?」

提督「映画?…もちろんどうぞ」

カヴール「では私もご一緒させてください♪」

提督「ええ、みんなで見ましょう…♪」
813:2017/09/26(火) 11:36:19.36 ID:
…会議室…

提督「わ…涼しい♪」

カヴール「冷房というのは便利なものですね…少し冷えすぎてしまうのがいただけませんが……」カヴールは古き良き時代の淑女だけあって「エアコンというのが苦手でして…」と、薄いひざ掛けを持ってきていた

ミッチャー提督「おー、来たか…待ってたよ」カーテンを閉め切った会議室に入ると、さっそく塩味のポップコーンが入ったボウルを渡された

提督「ポップコーンまで…わざわざありがと」

ミッチャー提督「気にしないで♪……よーし、みんな準備はいいかい?」スクリーンを下ろし、再生機器の向きを調整した…

セラ「はい、いつでもどうぞ♪」

リベッチオ「待ちくたびれたよぉ!」

カミチア・ネラ「面白い映画だといいけど…何を流すのですか?」座っているのはほとんど駆逐艦たちで、ポップコーンを手にわくわくした様子でいる…

ミッチャー提督「そうだねぇ…今日は1957年の映画でアカデミー賞も取った「眼下の敵」にしよう、何しろ駆逐艦が奮闘する映画だからね」

オリアーニ「いいわね♪」

提督「昔観たことがあるけど…ちゃんと見るのは久しぶりかも」

ミッチャー提督「オーケイ…それじゃあ、始めますかね♪……では皆様、上映中は立ち歩いたりなさらず、お静かに願います♪」…開演のブザーを物真似すると、リモコンの「再生」を押して席についた……


…トランペットのファンファーレが鳴り、映画会社のロゴがサーチライトで照らされる有名な演出が流れ、そして青い海を一隻だけで航行する護衛駆逐艦の凛々しい姿が映る。軽やかに波を切る駆逐艦の姿に合わせ、勇壮さと緊張感があるテーマ曲が立派なシンフォニーに演奏され、特に緊張感のある一節になると、正面から接近してくる駆逐艦の姿を潜望鏡の十字線が捉えた……


提督「うわー…懐かしい……」
 
ミッチャー提督「ふふ、この間の文書便に乗せてもらったんだ…アーカイブにあるっていうからね……お、始まった…」赤文字で流れるキャストの文字が終わると、護衛駆逐艦の後甲板に向かう士官が映る…カーキ色の制服姿で手にはパイプをもち、気さくに水兵たちに話しかける…

………

士官「やぁ、海軍のポテトは無尽蔵かね?」甲板に座り込んでジャガイモを剥く水兵に話しかける…

水兵「あいにくと」

士官「…こう蒸し暑いとやってられんね」…帽子を脱いで後部甲板室の脇に立っている二人に話しかける

水兵A「ええ、今夜は甲板で寝ますよ」

士官「深夜からスコールになると言ってたぞ」そう言って後部主砲から爆雷投下軌条の方に歩いて行く…

水兵B「…なかなかうまくは行かないもんだな」

水兵A「まったくだ」



………

ストーリーは南大西洋を行く護衛駆逐艦バックレイ級が、嵐の夜、レーダーで潜水艦の司令塔をキャッチして始まる……ロバート・ミッチャム演じる護衛駆逐艦の艦長は元貨物船の航海士で、U・ボートに船を撃沈されて同乗していた妻を失った人情味のある男だが、乗組員からは「左舷と右舷の区別もつかない素人」だと思われている…一方、通商破壊船の入手した暗号表を受け取りに行くⅨ型U・ボートは、厳格な指揮官で古めかしい海の男を、名優クルト・ユルゲンスが見事に再現している……

クリスピ「レーダーかぁ…いいなぁ」…武装と言えば数門の3インチ(76ミリ)砲と爆雷投射器、40ミリ・ボフォース機銃に20ミリ・エリコン機銃だけと、護衛任務向きとはいえ小柄なバックレイ級にもかかわらず、レーダーとソナーを完備したアメリカ海軍の豊かさにあこがれている…

ピガフェッタ「あ…危ないっ!」他に航行する船もない海域での潜水艦と護衛駆逐艦…一対一の駆け引きに息を飲み、魚雷をかわすシーンでは思わず手を握りしめる…



艦長「爆雷一番、撃て!」…実際の護衛駆逐艦を借りて撮影しただけのことはあり、ぐぐっ…と重々しく動く艦と、高く上がる爆雷の水柱がリアリティを出す…

トゥルビーネ「うんうん…あの時はこうだった……」

サウロ「そうね…」

………

…映画が終わって…

提督「はー…涼みがてらのつもりが、ポップコーンも食べないで見ちゃったわ。何回か見たからラストは知っているのに」

サウロ「でも…ああいう終わりかたって、いいと思います」

リベッチオ「き…緊張したぁ……」

ウソディマーレ「やっぱり潜水艦は嫌いです…あぁ、疲れた……」

ミッチャー提督「ははは、まぁお茶でも飲んで…でも、みんなも緊張するくらい良くできてるってことなんだね」

提督「ジェーン、今日はわざわざありがとう。おかげで楽しめたわ」

ミッチャー提督「いえいえ…まぁ、毎日何かしら映画は流してるから、気が向いたら来てね♪」にっこり笑ってDVDを箱にしまった…