816:2017/09/27(水) 16:56:05.05 ID:
…午後・執務室…


提督「あれだけ片づけたのに、またこんなに書類の山が……一体何の書類なのよ、もう……」素晴らしい日差しと涼やかな風がステキな午後だと言うのに、文書が山ほど届き、げんなりしている提督…

カヴール「まぁまぁ…お手伝いいたしますから」

ライモン「わたしもいますよ…何でも言って下さいね♪」

提督「ありがとう、二人とも……それにしても、イオニア海管区の司令官に恨みを買うような事をしたかしらね…」ため息交じりに書類の封筒を開けては中身を読んでいく…

カヴール「ざっとですが、重要なものとそうでないものはより分けておきました」

提督「助かるわ…はぁ、地中海の体積よりローマのスーペルマリーナにある書類の方が多いんじゃないかしら…って、……え?」ふと読み飛ばしかけた書類を二度見して、今度はむさぼるように読み始めた…

カヴール「どうしました?」

提督「参ったわね……頑張って大型潜を増やしてきたのに、司令部からまたこんなのが来たわ……」上端には海軍の公文書にある仰々しい「錨とロープが絡み合って、三色旗とイタリアの星章が四等分に描かれた盾」が刷ってある…提督はその書類をカヴールに滑らせ、「参ったわ…」と両手を上にあげた

カヴール「失礼して…ふむふむ……」

ライモン「文章の中身は…聞いても大丈夫ですか?」

提督「ええ、どっちみち私からも言うことになるし…」戻してもらった書類を今度はライモンに渡した

ライモン「えーと…前文が長いですね……」

提督「いつものことよ…三段目くらいからが本文だったわ」

ライモン「えーと…「この数か月間における『タラント第六鎮守府』のイオニア海、並びに要請を受け行われたアドリア海管区への援護は成功裡に終わった。このことは本官としてもはなはだ欣快(よろこばしいこと)である」……提督、褒められているようですが?」

提督「その後が問題なのよ…偉い人たちが甘い言葉を先に書いてあるときは大体後に「にがーい薬」が入っているんだから……」

ライモン「そうですか?……「この戦績並びに諸般の事情を総合的に考慮し、タラント第六鎮守府を夏季作戦である『ケルケナー諸島方面』を担当する鎮守府として任命し、同鎮守府司令官には、目的完遂のため尽力することを期待する」…とありますね」(※ケルケナー諸島…マルタ島の南西、チュニジア沿岸にある)

提督「その『ケルケナー諸島方面』作戦って言うのがね……次のページに書いてあるから読んでみて」

ライモン「はい。えーと…「現在、北アフリカでは干ばつによる農作物の不作、および「深海棲艦」の活動による沿岸漁業の出漁見送りが続き、住民の栄養状態が悪化しており、国際的な援助の手が差し伸べられている」…昨日の新聞にも出てましたね」

提督「そうね…それはいいことだけど、問題はその後なのよ……」

ライモン「では、続きを読んでみますね…「しかしながらこの援助物資を輸送するにあたって民間船を使用することは、深海側の攻撃もありえることから危険、かつ困難であり、特にケルケナー諸島方面における「深海棲艦」の活動が活発であり、我が方が制海権を得ていないことから適切ではない…」確かにあそこは深海棲艦の「巣」みたいなものですから……」

提督「一時期のマルタ島沖ほどではないにしてもね…」

ライモン「ええ、もの凄かったそうですから…「したがって、今回の輸送任務には隠密性に優れた『輸送潜水艦』の使用が望ましく、貴鎮守府がこれを有しない場合は「建造」に関わる資材、および各種の手続きにおいてイオニア海管区司令部より支援を行うこともありうる」…とありますよ」

提督「全く、信じらないわ…「深海お化け」がウヨウヨしているところに大事な艦娘を送り込めって言っておきながら、「まぁ、手続き程度なら手伝ってやらないこともない」って言う素っ気なさなんだから……」

ライモン「確かにそうですね……でも、もう一個任務が書いてありますよ?」

提督「そっちはまぁ…「飴と鞭」の「アメ」の方ね……読んでみたら分かるわ」

ライモン「そうなんですか?…「また、ケルケナー諸島周辺において大規模な「輸送船」タイプの「深海棲艦」が目撃されている。この「輸送船」タイプが実際に何らかの「補給」を担っているかは不明であるが、護衛が付随していることからも深海棲艦にとって重要な存在であることは確実である。…貴官は、商船攻撃に向く『大型潜水艦』をもってこれを攻撃すべし。この場合も必要であればイオニア海管区より援助を得られることに留意されたし」…つまり」

提督「大戦中、在リビアの陸軍に向けて補給任務をやったでしょう?あれと同じよ…」

ライモン「なるほど」

 

817: :2017/09/28(木) 01:08:04.62 ID:
提督「…で、二つ目の任務が「船団相手に好きなだけ暴れておいで」っていう任務…と、まぁ、いずれにせよまた建造することになったわけね」 

カヴール「しかしこの書き方…」 

提督「…まだいない『大型潜水艦』から考えても、建造するべき艦は決まっているようなものね……ふぅ、仕方ないわ。やるからには無事に帰ってこられるような作戦を立てないといけないし…せっかくけちんぼな司令部が「建造に関わる資材、および手続き」を手伝ってくれるって言うのなら、ありったけ要求を出しちゃいましょう」 

カヴール「了解…工作室の機械もいくつかお払い箱にしたいところでしたものね♪」 

提督「…あとは輸送作戦をどうやって成功させるか……腕の見せ所ね」 

……… 

…その日の夜・食後… 

ミッチャー提督「フランチェスカ」 

提督「んー…?」 

ミッチャー提督「何か悩み事でもあるの?…聞いてあげるよ?」バーカウンターでちびちびドライ・マティーニをすすりながら声をかけてきた 

提督「…分かる?」 

ミッチャー提督「分かるよ、いつもより笑顔が少なかったしさ。何だか夕食も上の空で食べてたでしょ……「バトルシップ」みたいな、カウチポテトでお気楽に見られるような映画でも流そうか?」 

百合姫提督「…どうしたの?具合でも悪いの?」 

エクレール提督「聞いてあげてもよろしいですわよ?」 

提督「そう…じゃあ聞いてもらえるかしら」 

ミッチャー提督「いいよ?……ははぁ、さてはフランチェスカのことだから色恋の話だね。二人と同時にデートすることになったとか♪」提督を背の高いスツールに座らせると、冗談めかして言った 

提督「それなら良かったのだけど…」次の輸送作戦の話をぽつぽつとした… 

ミッチャー提督「……あー、つまり「トーキョー・エクスプレス」のイタリア版ってわけね」 

百合姫提督「なるほど…フランチェスカの次の作戦は「東京急行」なのね……私はどうにかなったけど、あれは潜水艦を使っても難しいわね」 

提督「ええ…どっちみちやらないわけにもいかないし……困ったわ」 

ミッチャー提督「海図ある?……ちょっとテーブルの方に行こう」 

提督「そうね…ライモン、申し訳ないけど「北アフリカ沿岸」の海図を取って来てくれる?」 

ライモン「はい」…さっと立ち上がり、足早に海図を取りに行った 

ミッチャー提督「それで…と。まず作戦の利点と欠点は?」海図を持ってきてもらい、テーブルに広げると腕を組んだ 

提督「うーん…利点は潜水艦だから被発見率が低いこと……欠点は水深が浅いから潜航できる海域が少ない上に、たとえ潜航していても海が澄んでいると見える場合があること…後は、上空に敵機がうじゃうじゃいること…かしらね」 

ミッチャー提督「しかし、何も潜水艦じゃなくたってねぇ…戦時中とちがってマルタ島はそっちの物なんだし、基地だけ借りて航空隊を発進させれば脚(航続距離)も届くし……上空援護を付けて、軽巡辺りに物資を積ませた「高速補給艦隊」を編成するわけにはいかないの?」 

提督「それも考えたわ…何しろ大戦中のイタリア王国海軍といえば、陸軍のおかげでそればっかりやらされたくらいだから……」 

エクレール提督「でしたらやり方も熟知しているのではありませんの?」 

提督「だから困っているのよ。相手はシップキラーの「ボーファイター」に「サンダーランド」、「ハリファックス」、「ソードフィッシュ」……上空援護が付いたとしても厳しいって分かりきっているから……戦時中はそれで沈められた艦も多いし…」 

ミッチャー提督「むむむ…うちはそういう「強行輸送」みたいな作戦がなかったからなぁ……」 

百合姫提督「何か助言できればよかったのだけど…ごめんなさい」 

エクレール提督「なかなか嫌な任務を押し付けられましたわね……」 

提督「むぅ…とにかく今日は寝て、明日建造してから考えることにするわ」 

ミッチャー提督「それがいいよ…私なんてトイレで上手い作戦を思いついて、下着だけで飛び出したことあったわよ」 

エクレール提督「まぁ…」 

百合姫提督「私は柱に頭をぶつけて思いついたことがあるわ」 

提督「じゃあ私も何かにぶつかってみればいいわけね……話したおかげで少し楽になったかも♪」 

ミッチャー提督「じゃあ寝る前に一杯作ってあげる…よく冷えたマルガリータ、塩なしで♪」 

提督「ふふ、ありがとう♪」 

………
818: :2017/09/28(木) 01:49:32.38 ID:
…翌朝… 

提督「んー…」 

カヴール「おはようございます、提督。今日はいい天気なのでタオルケットを洗いますよ……提督、起きないと触っちゃいますよ…?」 

提督「だめ、触らないで!」 

カヴール「えっ…」叱られたテリアのような寂しい表情を浮かべたカヴール…… 

提督「あぁ、違うの!……「タオルケットに触らないで」って言いたかったの…ほら、見て?」タオルケットのしわを指差した 

カヴール「タオルケットが何か…?」 

提督「あっ…いえ、そのね……起きようと思ってタオルケットをめくったら、たまたまケルケナー諸島の形になったから、何かいいアイデアが出るかも…って」 

カヴール「そうでしたか…気づかずに失礼しました」 

提督「ごめんなさい、私こそ大声出したりして。……昨夜はまんじりともできなかったし、むしろカヴールにいっぱい触って欲しいかも…///」 

カヴール「でしたらタオルケットを崩さないよう、別のところで…♪」 

提督「ええ…いっぱい甘えさせてね?」 

カヴール「はい♪」 


……… 

…朝食… 

提督「うーん…」コンソメスープに手を付けないで何事か考えている… 

ディアナ「あの…お気に召しませんでしたか?」 

提督「ううん…いいの、気にしないで?」 

ディアナ「そうですか…」 

バウサン「提督は一体どうしたのだ…カヴール?」 

カヴール「どうやら、スープの表面に浮いた油が北アフリカの沿岸に見えているようでして……」 

バウサン(ピサニ級中型潜)「例の「補給作戦」とやらか…難儀をしている子供たちに物資を届けるのはやぶさかではないが、あれだけの哨戒網をくぐり抜けろ……とは、最近の上層部ときたら全く…」 

ベネデット・ブリン(ブリン級大型潜)「同感です…私がスーペルマリーナにいた時なら装甲艦の艦隊をもってして突破を図りますな」 

クィンティノ・セラ「私の爆装艇がもっと活躍できれば、相手の泊地に夜襲を行う所なのですが…」 

ブリン「セラ、君のせいではないよ。我々もまだまだ大英帝国に追いついていない、ということなのだろう……おや」提督はしばらく見ていたスープを一気に飲み干し、急にメモを取り出した… 

提督「カヴール、まずは建造して新しい娘に会ってみましょう。…作戦はそれから考えたって遅くないわ」 

カヴール「はい」 

提督「ディアナ…スープ、美味しかったわ。おかげでいい考えが浮かびそうよ♪」 

ディアナ「ふふ、ありがとうございます…♪」 

提督「ところで…足柄はいる?」 

足柄「何、ここよ?」 

提督「今回の建造、貴女にいて欲しいの…姫には許可を取ってあるけど、いい?」 

足柄「うちの提督に許可取ったなら文句なんかないわ…それで、どうすればいいのかしら?」 

提督「とにかく建造に立ち会ってもらえる?」 

足柄「一体どうしたの?…潜水艦と私に何か接点でもあるの?……ねぇ、ちょっと///」…指を絡めて手をつなぐ「恋人つなぎ」に真っ赤になる足柄と、微笑を浮かべているカヴール 

ヴェットール・ピサニ「…何が何やら」 

フルット「ふふ、ああいう時の提督はきっと何か考え付いています……きっとうまく行きますよ♪」 

コマンダンテ・ファー・ディ・ブルーノ(カッペリーニ級大型潜)「そうね…提督ならいい作戦を思いつくはずよね♪」 

………
819: :2017/10/03(火) 10:47:11.04 ID:
…工作室… 

足柄「で、私を連れ出してどうするのよ?…潜水艦の建造をするんじゃないの?」 

提督「いえいえ、足柄が必要なのよ♪」 

足柄「よく分からないわね…でもまぁ、必要だっていうのならお手伝いするわ」 

トレーリ(マルコーニ級大型潜)「提督、準備できました♪」 

提督「ありがとう」 

バルバリゴ(マルチェロ級大型潜)「さぁ、どうぞ」 

提督「ええ。…じゃあ足柄、準備はいい?」 

足柄「いいけど……ちょっと恥ずかしいわね、これ///」提督は足柄の後ろから抱きつくような形で建造装置のレバーに手を乗せた…背中に提督の柔らかい胸が当たり、顔を赤くする足柄… 

提督「それじゃあ、スタート♪」 


…建造中… 

足柄「にしても…どうして私なのよ?」 

提督「んー…艦娘と一緒にレバーを引くと上手く行く感じがするし、今回は足柄じゃないとだめなの」 

足柄「説明になってないわよ…気持ちは嬉しいけど///」 

提督「まぁまぁ…赤くなって可愛いわ♪」 

足柄「な…これは赤くなってるんじゃないのっ!……ここが暑いせいよ///」 

トレーリ「もぉ、相変わらず日本の女の子は可愛いですね♪」 

バルバリゴ「ふむ…ヴェネツィアにもいい女はたくさんいたが、東洋の美女も魅力的で悪くない……」 

足柄「ちょっと、止めてよ…恥ずかしいじゃない」 

提督「…」 

足柄「…ねぇ、提督さん」 

提督「…」 

足柄「もしもし?」 

提督「…」 

トレーリ「見事に考え込んでいるみたいね」 

足柄「…」ぱんっ!……目の前で手を叩いた 

提督「うわ!…どうしたの、一体?」 

足柄「それはこっちが聞きたいわよ、何を考え込んでいたの?……また輸送作戦のこと?」 

提督「ええ…ちょうどこの古いシミがチュニジア沖の海図に見えて……」 

足柄「考え過ぎてもいいことないわよ?……「下手な考え休むに似たり」「案ずるより産むが易し」ってね」 

トレーリ「あ、それ聞いたことあります「アンズより梅が安い」って♪」 

足柄「それは江戸時代の地口(じぐち)ね…神戸にいたにしても、なかなか変なこと知ってるのね……」(地口…だじゃれ、言葉遊びのこと) 

提督「トレーリは三カ国語出来るし、物知りよね♪」トレーリの頭を軽く撫でる提督 

トレーリ「わぁ、嬉しい♪……提督、もっと褒めてくれたら何か出るかも♪」 

提督「ほんと?……じゃあ、目がくりっとしてて可愛い♪」 

トレーリ「ひとーつ♪」 

提督「髪も滑らかで触り心地がいいわ♪」 

トレーリ「これでふたーつ♪」 

提督「肌がすべすべで…指がほっそりしててきれい……♪」両手でトレーリの手を包み込み、それから腕に頬ずりをする… 

トレーリ「みーっつ……って、何してるの///」 

提督「だって…♪」

820
:2017/10/04(水) 01:01:04.68 ID:
足柄「あぁ、はいはい…砂糖吐きそう……黙って作戦のこと考えていてくれた方が良かったわ」

バルバリゴ「いつものことだから致し方ないな」

トレーリ「うん、そうね///」そう言いつつも褒められてまんざらでもないトレーリ…困ったような恥ずかしいような表情で眉を寄せ、えくぼを浮かべている…

提督「もう…私の事を浮気性みたいに言わないで?そんなことないんだから」

バルバリゴ「…耳がおかしくなったかな?」

足柄「全く、よく言うわね」…紅茶をすすりつつあきれたように言う

提督「…あ、そろそろ時間ね♪」

バルバリゴ「それに、ごまかし方も上手くなった」


…慌てて直立不動の姿勢を取り、潜水艦を迎える提督たち。眩しい閃光が消えて並んでいたのは相当大柄な潜水艦が六人で、どうやら四人と二人の組に分かれているらしい。背も高ければむっちりと肉感的なわがままボディは潜水艦らしからぬボリュームで、二回りは小さそうな「艤装」からはち切れそうな胸やふともも、ぴっちり食い込んだヒップ、秘所の割れ目の形もくっきりわかる食い込み具合に提督だけでなく、一緒にいたトレーリやバルバリゴ、足柄も生唾を飲んだ……


提督「は…初めまして///」ずっしりと重く、たわわに揺れる乳房にしどろもどろにになりながら自己紹介を終える提督

大型潜「よろしくお願いします、提督閣下。ではこちらも着任の報告をいたしましょう」四人組の大型潜は艤装の水着の上から金モール付きの制服を羽織って、腰に軍刀を提げている…

提督「え、ええ…///」

大型潜「緊張することはありません。…カーニ級大型潜、「アミラリオ・カーニ」です。提督にはぜひ我々を使いこなしてほしいと思います♪」ぎゅっと抱擁され、挨拶のキスを頬にされると、提督はすっかり骨抜きにされたようにぼーっとしている…

バルバリゴ「…」後ろからふとももをつねる

提督「…あぁ、ごめんなさい。続けて?」

大型潜「同じくカーニ級、「アミラリオ・カラッチォロ」…先代は戦艦になるはずでしたがお流れになってしまいました。また戦中は自沈する羽目になってしまいましたから…今度こそリベンジさせてもらいます」

提督「ええ…きっと出来るわ」

カラッチォロ「嬉しい言葉です…ではごあいさつに……♪」ちゅ♪…と音高く頬にキスをされ、すっかり甘えた表情になってとろけている提督

大型潜「同じく、カーニ級のアミラリオ・ミロ。…提督は優しそうな方で良かった♪」

提督「ふふ、ありがとう…///」またまた抱擁されて背中をぽんぽん…と叩かれ、左右の頬にキスを受けつつも滑らかな腰に手を回す提督……

ミロ「ふふふ…いたずらなおててですね♪」提督の手をそっと腰から外すと、その手にもキスをした…

提督「まぁ…///」

大型潜「…ミロ、よろしいかな?」

ミロ「あぁ、すみません…お待たせしました」

大型潜「いやいや…構わんよ。……初めまして、提督。同じくカーニ級大型潜、「アミラリオ・サイント・ボン」である。以後お見知りおきを♪」

提督「偉大な海相をお迎え出来て光栄です…肖像画もちゃんとありますよ」

サイント・ボン「いや、なに…私はその名にあやかっただけだから……今度はアルビオン(英国)に一泡吹かせてやろうとは思っているけれどね♪」

カラッチォロ「同じく!…あの海賊どもを「我らが海」から追い払いましょう!」

提督「英国…ではなくて、その姿に似た「深海棲艦」だけれど……よろしくお願いします」

サイント・ボン「なぁに、どちらでも構わないとも…だが、あの一騎打ちの相手は敵ながら見事だった……ああいう好敵手を今度は退けてみたいものだ♪」

821:2017/10/04(水) 02:00:39.47 ID:
提督「さてと…それであなたたちは……」


…カーニ級の隣に並んでいるのは双子のようにそっくりな大型潜で、やっぱり艤装からはち切れそうな胸やふとももをしていて、髪は灰色であちこちに跳ねている。特に頭の上の方は犬の耳のような形になっていて、金色の瞳と相まって狼そっくりに見える。妹らしい方は少しいたずらっぽい……というより少し無邪気で小悪魔な感じがする…手にはたっぷり食べ物が入った柳のカゴを持っていて、艤装の上から古代ローマ風のトーガをまとっている…


大型潜「初めまして、R級のロモロです。武器はないけど頑張るわね……それにしても…提督、甘くていい匂い♪」提督が挨拶にキスしようと身体を近づけると、すんすん…と匂いを嗅いでささやいた

提督「…ありがとう♪」

ロモロ「いいえ…本当に甘くて……美味しそう…♪」(あぁ…すっごい甘い匂い……抱きたい……したい…やりたい…っ♪)

大型潜「もう、ロモロはいっつもそうなんだから♪……提督、私はR級の「レモ」、お姉ちゃんとも仲はいいのよ?…よろしくね♪」ぎゅっと腰にしがみついてきて、甘ったれたような口調で自己紹介した

提督「ええ、よろしくね…ローマ建国の双子を迎えられて嬉しいわ♪」

レモ「さすが提督、詳しいのね♪…それにしても、お姉ちゃんの言うとおりで「デリシャスメル」ね♪」(あぁ…もう可愛い……無理やりどこかに連れ出して、いきなり押し倒して犯しちゃいたい…いや、いっそ立ったまま……♪)

バルバリゴ「…なんというか……目が爛々としてるな…」白い犬歯を見せて「にぃっ」と笑みを浮かべている双子にさすがのバルバリゴも腰が引けている…

提督「はいはい、二人ともあんまりくっつかないで…もう、転んじゃうでしょう♪」

ロモロ「そんなこと言わないで、提督♪」

レモ「提督…柔らかくてあったかーい♪」

提督「もう、二人とも人懐っこいんだから♪」

足柄「で…どこに私が必要なわけがあったのかしら」

提督「ふふ、この「R」級の「ロモロ」と「レモ」は狼の乳で育った双子だもの……「飢えた狼」の足柄ならちょうどいいかと思って♪」

ロモロ「へぇ…そっちのお姉さんは狼さんなのね♪」

レモ「じゃあお母さんみたいなものね♪……ね、お母さん…おっぱいちゅうちゅうしていい?」

足柄「だ、駄目に決まってるでしょうが!…だいたい私は出ないわよ///」

レモ「ざんねーん…」

ロモロ「その分牛乳でも飲みなさい?」

レモ「そうね、牛乳だってお乳だもんね…レモ、かしこーい♪」

提督「はいはい…じゃあ食堂に行ってお昼にしましょう。カーニ級のみなさんも、どうぞこちらへ♪」

カーニ「いきなり「お昼」なんて…やっぱり平和なのね♪」

サイント・ボン「ふふ、せっかくだからくつろいでいただくとしよう♪」


…しばらくして・食堂…


提督「どう、おいしい?」

ロモロ「美味しいっ♪…このお肉、食べごたえがあって……んむんむ…」猪のあばら肉をトスカーナ風ハーブ焼きにした、かなり歯ごたえのある一品にかぶりついては食いちぎっている…

レモ「美味しいっ…やっぱりお肉がいいね♪」むしゃむしゃと真っ赤な猪肉に食らいつき、赤ワインをごくごく飲みほしている…汗を垂らし、らんらんとした瞳に火照った頬で視線を向けてくるたびに、提督は電撃を受けるような感じがした……

サイント・ボン「あぁ、結構なことだ……この銘柄はいい年の物だね」…白ワインをそっと口に含むサイント・ボン

ベネデット・ブリン「そうですね。…海相、もう一切れ鱒はいかがですか?」淡白な味の鱒はシンプルな香草焼きとして出されている…

サイント・ボン「あぁ、ありがとう…いただこう」

提督「お味はいかがですか?」

サイント・ボン「そんなにかしこまらずとも…私は海相ではなく、あくまでもカーニ級の「アミラーリオ・サイント・ボン」なのだからね♪」

カヴール「いえいえ…私たちからすればその名前だけでも尊敬するに値しますから」

サイント・ボン「どうも弱ったね…ドリア、そちらのお皿が空だよ?」

ドリア「あぁ、わざわざすみません…」

サイント・ボン「いやいや…いいんだよ。提督もよかったら鱒をお取りしよう」

提督「ではお願いします…」

サイント・ボン「うむ♪」

822:2017/10/04(水) 03:14:11.03 ID:
…新着艦紹介…


大型潜…カーニ級(アミラーリオ級)。1941年生まれ。四隻


参戦直前に計画された(特殊な目的の艦を除いた)イタリア大型潜最後の航洋型潜水艦。単殻・サドルタンク式

イタリア潜最大の大きさを誇り、強力な武装を施した大型潜。
特に商船攻撃を重視し、MAS(魚雷艇)などに採用される450ミリ(大抵の潜水艦は533ミリ)という細めの魚雷を装備したが、それを艦首8門、艦尾6門の計14門、再装填用の予備魚雷を合わせて36発というものすごい数を装備し、なおかつ司令塔の前後に100ミリ単装砲1基ずつを備えた重武装艦。


1635トン/2136トンと並みの駆逐艦以上の排水量を誇り、主機は4370馬力(ディーゼル)/1800馬力(電動機)で速度17ノット/8.5ノットと速度もそこそこ。魚雷、主砲の他に13.2ミリ連装機銃2基も備えている。


その大きさの割に動きも機敏だったと言い、「アミラーリオ・カーニ」が大西洋で行動したほか、地中海でも活躍した…が、英軍の猛烈な攻撃で一隻は自沈、二隻は戦没し、残ったのはネームシップの「カーニ」だけだった

…特に「アミラーリオ・サイント・ボン」は英潜「アップホルダー」と浮上砲戦を挑み、一騎打ちで戦ったが雷撃を受け撃沈されたが、このU級潜水艦「アップホルダー」は赫々たる戦果を持つ英潜「最優秀艦」で、駆逐艦「リベッチオ」、潜水艦「トリケーコ」を撃沈、軽巡「ジュセッペ・ガリバルディ」を撃破、他に商船19隻、11万9000トンを沈め、イタリア水雷艇「スピカ」に沈められるまで暴れ回った名艦だった


…カーニ級の艦名は偉大な提督、海相の名で、特にリッサ海戦の敗戦後に巻き起こったイタリア海軍不要論・縮小論を造船監「ベネデット・ブリン」と打ち消してその拡大と発展に努めた「海軍中興の祖」である名海相サイント・ボン(海相1873~92…最後は現役のまま死去)や、ナポレオン戦争時代「英軍には降伏しない」と最後まで頑張り、最後はネルソン提督に絞首刑にされた「フランチェスコ・カラッチォロ」提督などがいる


………

艦娘「カーニ」級は肩から金モールの制服を羽織り、軍刀を持って凛々しく堂々としている……はずが、そのむっちりと豊満な身体を「二回りは小さい」艤装で包んでいるせいでかなり色っぽい状態に…「サイント・ボン」はにじみ出る風格のせいで誰からも敬われるがもっと普通に扱って欲しい様子



………

輸送潜水艦…R級(ロモロ級)。1943年生まれ。完成2隻(計画12隻)


本来は「日本との間で貴重な物資の交換に使おう」という目的で計画されたが、北アフリカの戦局が悪化するにつれて日本の丁型(潜輸大型…伊三六一型とも)と同じように、警戒が厳しく水上補給が難しい前線に「潜航して物資を送り届けよう」…となった輸送潜。

部分複殻構造の艦で、艦内には四つに分かれた貨物倉を有しており貨物610トンを運べる。12隻の計画は開戦してからの資源不足で不可能になり二隻で終わった。完成が遅すぎたため輸送任務に就くこともなく、実績は残していない


2155トン/2560トンの排水量で、主機は2600馬力(ディーゼル)/900馬力(電動機)。速度は14ノット/6.5ノット。一部は450ミリ魚雷2門を艦首に備えたがほとんどの艦は20ミリ機銃3基だけと、最低限の自衛用火器しか備えていない


………

艦名があったのは完成した「ロモロ」と「レモ」だけだが、この「ロモロ」と「レモ」は伝説でローマを建設したと言う双子、いわゆる「ロムルスとレムス」のこと。


…戦(いくさ)の神マルス(火星)とレア・シルヴィアの間に産まれた「ロムルスとレムス」は、王座を奪っていた祖父の弟が「大きくなって正統な後継者となり、自分を殺すのでは」と恐れたためテヴェレ川に流され、流れ着いたところにいた雌狼の乳で大きくなった。
その後人に拾われてその事実を知ると祖父の弟を倒して祖父に王権を返し、自分たちは「流れ着いていたところに町を作ろう」と町の建設を始めた…ところが地面に線を引いていたロムルスを「できっこないよ」とからかったためケンカになり、結局果し合いの末レムスはロムルスに殺されてしまう…この時ロムルスが「この場所は以後誰にも越えさせない」と誓ったためにローマは外敵から守られているという……その後女っ気がなかったローマはお祭りにかこつけて近隣のザビーネ人の女たちを連れて行ってしまい、「ザビーネ女の略奪」という彫刻にもなっている




艦娘「R」級は豊満なボディにローマ風のトーガ、手には食べ物いっぱいの柳のカゴを持っている。髪と目は「狼に育てられた」伝説のせいか瞳は金色、髪は灰色で犬耳のようになった部分もあり、嗅覚が鋭い。「レモ」はよく「ロモロ」のやることをからかって怒られているが気にしておらず「レモかしこーい」が口癖だったりする…と同時にローマ建設時代の一件があるのか、常に発情期で女に飢えていて、提督でさえ隙あらば手籠めにして食べ散らかしてしまいそうな勢いだったり……


………



825:2017/10/07(土) 02:00:52.35 ID:
…翌朝・食堂…

提督「みんな、いいかしら?」珍しく朝の全体会議をかけた提督に、艦娘たちはざわついていた…提督と言えば朝食後に「コーヒー片手でゆったり新聞を読みながら過ごす」はずが、珍しく真剣な表情で演説台に立っている……

提督「はい、ありがとう……今朝集まってもらったのは他でもないわ。…今回、この鎮守府に向けてイオニア海管区から次期作戦の通達がありました」一層ざわついた室内が収まるのを待って続けた…

カヴール「みなさん、お静かに願います」

提督「…続けるわね。今回の作戦ですが……」

リットリオ「…ごくっ」

チェザーレ「…」

提督「今回の作戦内容は、「ケルケナー諸島方面における物資輸送作戦」及び「ケルケナー諸島・トリポリ沖に活動する敵輸送船団への攻撃」です」途端にため息とも不安な喘ぎともつかないものが一斉に漏れた…

ドリア「提督…それは……」

バルビアーノ「ケルケナー諸島作戦といえば厳しい任務として有名なんですよ……合同作戦とかではなくて、参加する鎮守府はここだけなんですか?」

提督「ええ、うちだけで行います」

リベッチオ「…でも、あそこは深海側の艦がうじゃうじゃいるって言うし」

フルット「…参りましたね……」

提督「こほん!…みんなの不安は分かっています。ですが、今回の作戦における任務の重要さは言うまでもないわ……北アフリカへ人道支援物資を輸送することの意義は、みんなも分かってくれるわよね?」

チェザーレ「確かにな…」

バンデ・ネーレ「大戦中と違って陸軍の無茶ぶりに応える作戦でもないわけだし…要はドラム缶を乗せて突っ走ればいいのね?」

提督「いいえ…深海側の哨戒網が厳しいので、水上での強行輸送はよんどころない時の奥の手……ということになっているの」

フォカ「…じゃあ、水中輸送?」

提督「それをこれから説明する所よ……今回の作戦で主体になるのは「R」級輸送潜水艦二隻および、機雷敷設能力…言い換えれば、物資搭載能力のある大型潜水艦「ピエトロ・ミッカ」と、「フォカ」級の三隻。場合によっては物資輸送が可能な「カルヴィ」級、「カッペリーニ」級、「リウッツィ」級、「マルコーニ」級大型潜も候補になります」

コマンダンテ・カッペリーニ「それは構いませんが…援護はもらえるのでしょうか?」

提督「うちの鎮守府に所属している航空機を飛ばして上空援護にあたらせるために、シチリア島のメッシーナ、アウグスタなどの基地を借りるつもりでいます…あとは海軍のP3「オライオン」対潜哨戒機が上空から深海側の動きを探ってくれます」

レジナルド・ジュリアーニ(リウッツィ級)「…あとは神の御心によると」従軍神父の名を取った「ジュリアーニ」だけに、僧服姿で十字を切った…

ルイージ・トレーリ(マルコーニ級)「私だって日本まで行けたんですから、きっと大丈夫ですよ!」

提督「ええ、そうね。でも、私としては万全の体勢で挑むつもりでいます……この中の誰かがいなくなるなんて考えられないもの。…ですから、作戦まではかなり厳しい訓練をしてもらいます」

トレーリ「うぇぇ…」

提督「…その分、上手く行ったらうんとぜいたくなパーティを開くことを約束するわ」

ロモロ「まぁ…やってみるだけやってみよう?」

フォカ「そうね…」

ディアナ「私も全力で支援させていただきます」

エリトレア「同じく!……食べないと元気も出ないですから、いっぱいご飯を作らなきゃ…ですね♪」

提督「そうね。厳しい訓練になるから加給食も作ることにします…といっても、陽動と間接援護を兼ねた艦隊も出撃させる予定だから、みんなも他人事じゃないのよ?」

リットリオ「久しぶりにこの主砲が活躍するわけですね♪」

デュイリオ「間接援護とはいえ、重要な任務……わたくしデュイリオ、全力で当たらせていただきます!」

提督「…みんな、ありがとう」

チェザーレ「何を水くさい…では諸君、今日から猛訓練というわけだ……ローマ帝国の威信を示し、ブリタニアを我らが海から駆逐せよ!」

ガリバルディ「ええ、やってやろうじゃない!」

サウロ「イタリアの栄光をアルビオンに見せてやるわ!…いざ、アヴァンティ!(前進!)」

一同「「アヴァンティ!アヴァンティ!」」…誰かが持ち出した大きなイタリア国旗をみんなで振り回し、「アヴァンティ!」の掛け声が沸き起こった

提督「…ここまでみんながまとまったのは初めてかも知れないわ……」

カヴール「それだけ気力が充実しているのですよ…あとは「提督に格好いい所をみせる」気になってもいるのでしょう」

提督「理由はどうであれ、みんな無事に戻ってくればそれでいいわ…とにかく、うまく行ったらパーティ以外にも何かごほうびをあげないと……」

カヴール「でしたら、「提督と一晩過ごせる権利」がいいですよ♪」

提督「…考えておくわ」
826:2017/10/07(土) 10:51:37.50 ID:
…午後・波止場…

提督「じゃあ、来たばっかりで大変だろうけど……訓練、頑張って」…仮想敵の駆逐艦たちが哨戒する中を「見つからずに」目的地に着く訓練ということで、波止場には今回の輸送作戦に参加する潜水艦たちが艤装を付けて並んでいる……提督は白の制服姿で、一人一人に声をかけた

ロモロ「いえいえ、お任せあれ♪」ばいんっ♪…薄灰色の水着がはち切れそうなロモロがおどけたような敬礼をすると、乳房が揺れた

提督「え…ええ///」競泳スタイルの「艤装」から胸がはみ出し、谷間をぐっと強調している…提督は凝視しかけて、あわてて視線をずらした

レモ「ふふん…レモに任せて♪」ゆさっ♪…こちらも艤装に胸やお尻が食い込んでぱっつんぱっつんのレモ……

提督「任せるわ…訓練とはいえ、怪我だけはしないようにね///」

レモ「だいじょーぶ♪……じゃあ、いってきまーす♪」

提督「行ってらっしゃい」

カッペリーニ「では、行ってまいりますので」

提督「ええ、頑張ってね」

トレーリ「じゃあ、行ってきます♪」

提督「頑張って♪」

トレーリ「はい、頑張ります♪」

提督「…さて、じゃあ私も頑張りましょうか」

カヴール「では私も訓練が入っていないので、お付き合いします♪」

提督「ありがとう♪」


…通信室…

提督「さて…と」通信室の電話をとりあげ耳に当てると、最新版の「海軍年鑑」をめくり、番号を探した…

カヴール「?」

提督「えーと……あ、あったわ」とある番号を見つけると、ページをめくっていた手を止めてボタンを押した…提督の耳に「ルルルル…ルルルルッ」と呼び出し音が聞こえる…

声「もしもし…海軍司令部、海図測量部ですが」

提督「もしもし、こちらはイオニア海管区タラント第六鎮守府司令官のカンピオーニ少将ですが、そちらにカルリーニ大佐はいらっしゃいますか?」

声「…少々お待ちください」しばし電話の向こうでやり取りする声が聞こえると、すぐに誰かが受話器を取った

別の声「もしもし、代わりました。海図測量部のカルリーニです」…甘ったるいような、それでいて冷めたようなアルトの声が耳に心地よく響く

提督「こんにちは…久しぶりね♪」

カルリーニ大佐「まさか……フランチェスカ?」

提督「ええ、そうよ…挨拶を送るわね♪」ちゅ♪…と電話越しに投げキッスの音を送った

カルリーニ大佐「海軍公報で見た時そうじゃないかとは思ったけど…もう少将とは驚いたわね……で、何が必要なの?…最新版の海図?私のフィアット?それとも脱ぎたてのブラとパンティ?……ちなみに今日は黒の紐みたいなのよ♪」

提督「んー…脱ぎたての下着もなかなかそそられるけど……今回はチュニジア・リビア沖の海図と、海底の詳細な地形図一揃いが欲しいの」

カルリーニ大佐「了解。じゃあ優先リストの一番上に乗っけておいてあげるから…そうねぇ……明日には送り出すわ」

提督「そんなに早く?…助かるわ、今度お礼に素敵なレストランに行きましょう♪」提督とっておきの甘い声でささやいた

カルリーニ大佐「いいのよ、私と貴女の仲なんだから……それに作戦なんでしょ?…上手く行くように祈ってるわ」

提督「ありがと…愛してるわ♪」

カルリーニ大佐「もう…ムラムラするからその声は止めて……それじゃあ、チャオ♪」

提督「チャオ♪」

カヴール「…」なかば呆れたような顔で提督を見ている

提督「どうしたの?」

カヴール「いえ…相変わらず口説き上手でいらっしゃいますね」

提督「…別に口説いているわけじゃなくて、ナポリで一緒の部屋だったから親しいだけよ」

カヴール「そうですか…」
827:2017/10/07(土) 11:57:52.31 ID:
提督「ええ♪」…相づちを打ちながら電話帳になっている「海軍年鑑」の後ろの方のページをめくる

提督「あった…えーと……」肩で受話器を挟み、指で電話番号の所を差し示しながらボタンを押した

声「はい。こちらは海軍航空隊パレルモ基地、スキッピ伍長です…どのようなご用件でしょうか」

提督「もしもし…こちらはタラント第六鎮守府司令官、カンピオーニ少将ですが……アントネッリ飛行隊長はいらっしゃいますか?」

伍長「中佐ですか?…少しお待ちください」後ろでP3「オライオン」対潜哨戒機の甲高いエンジン音が響いている…と、受話器を置かないでしゃべっているらしい伍長の声が提督にも聞こえた……

伍長「少尉、隊長はどこか知りませんか?…今「タラント第六鎮守府の司令」で少将だとか言う、甘い声の人から電話がかかって来たんですが……」

少尉「嘘つけ、どうせ隊長の女だろ?……あの人ときたら基地の電話で女を口説くんだぜ?」

伍長「さぁ…それはともかく、隊長はいないんですか?」

少尉「待てよ…聞いてやっから……おーい、誰か「女たらし」の隊長見てないか?」

女性の声「どうした、何か用か?」…電話越しにハスキーな女性の声が聞こえた

少尉「うえっ!…一体どこにいたんです、隊長?」

女性の声「ロッカーで着替えていたら君の声が聞こえたんだよ。…さて、少尉。私が「女たらし」であるという「現状認識」は正確でよろしいが、私が六時の方向にいても気づかないとは「後方警戒」の訓練不足だな…」

少尉「いや…その……」

女性「…便所掃除、三日だ。私がミグだったら撃墜されていたところだぞ…スキッピ伍長!」

伍長「はい、隊長!」

女性「その「甘い声の女性」は待たせてあるのか?」

伍長「は、はい!」

女性「じゃあ私が代わろう……ところで伍長、コーヒーでも飲みたい気分じゃないのか?」

伍長「ええ…はい、飲んできます」

女性「ゆっくり行って来い……もしもし、アントネッリです」どっかりと座る音がして、少し塩辛い女性の声が耳に入ってくる

提督「…相変わらずね、ジュリア♪」

アントネッリ中佐「おや、君からとは嬉しい驚きだ…フランチェスカ♪」

提督「もう、聞こえたわよ……基地の電話で女の子を口説くなんて駄目じゃない♪」

アントネッリ中佐「全く、スキッピ伍長は仕方ない奴だな、保留にもしないで……でも、君が叱る可愛い声が聞けたから良しとするか」

提督「相変わらず女の子を口説いているのね…イケない人♪」

アントネッリ中佐「ふふっ…君ほどじゃないさ、フランチェスカ……そのステキな声を聞くだけで濡れてきそうだよ♪」

提督「相変わらずお上手ね…ところで」

アントネッリ中佐「何かな…タラントまで行くのはちょっと厳しいが、どうしてもというならバイクを飛ばして行くよ?」

提督「いいえ…実はね……」事情を説明する提督

アントネッリ中佐「なんだ、そんなことならお安いご用さ…哨戒訓練のルートを少しいじればいいだけだからね♪」

提督「出来るの?…恩に着るわ」

アントネッリ中佐「なーに、フランチェスカのためさ…かわりにに今度会ったら一日中部屋から出さないぞ♪」

提督「もう、ジュリアったら♪」

アントネッリ中佐「ふふっ。それじゃあ、その件は了解した…任せておいてくれ♪」

提督「助かるわ…それじゃあね♪」

アントネッリ中佐「ああ、また♪」
828:2017/10/09(月) 01:25:22.64 ID:
カヴール「あの…提督」

提督「なぁに?」

カヴール「本当に何でもない関係なのですか?…私にはどうも信じられないと申しますか……」

提督「ふふっ…どうかしらね♪」また別の番号に電話をかけながら、カヴールに向けていたずらっぽい笑みを見せる提督

カヴール「むぅ…」

提督「……もしもし、軍情報部ですか?私はタラント第六鎮守府のカンピオーニ少将ですが、ミカエラ・フェリーチェ大尉は今どちらに?…ええ、お願いします」

提督「…こんにちは、ミカエラ。ええ、私よ♪」電話越しの相手に耳を傾けてからくすくす笑った

提督「そうなの…ええ、とっても可愛い娘たちよ……もう、妬かないの♪」

提督「ええ、そうなの…それでね、良かったらチュニジア沿岸からリビア辺りの情報を少し教えてくれないかしら?……そう、良かった♪」

提督「ありがとう、じゃあ今度会う時はうんとお洒落していくわ……本当にありがとう♪」かちゃりと受話器を置くなり、すぐ次の番号を回し始める…

カヴール「…提督、一体どうやってそこまでの人脈を作ったのです?」

提督「え?……普通に士官学校の同期とか…あとはあちこちの任地で知り合ったお友達だけど?」

カヴール「そうですか…」

提督「あ、もしもし…タラント第六鎮守府司令官のカンピオーニです、そちらのマリア・ヴィオレッタ少佐は今……え、まだ昼食から戻っていませんか…分かりました」受話器を置くと携帯電話を取り出し、電話をかけた…

提督「もしもーし、マリア?…はぁい、フランチェスカよ♪……なぁに、その嫌そうな声は?…お昼してる所なのよね、何を食べてるの?……黒オリーヴとチーズのピッツァに…スパゲッティ・ポモドーロ?美味しそうね♪」

提督「え?用件を早く話せって?…もう、ベッド以外でも相変わらずせっかちなんだから……」途端にきんきん声が携帯から漏れ、提督は携帯電話を耳から離しスピーカーホンに切り替えた

声「…ばか!真っ昼間からなんてこと言うのよ!」

提督「だって……楽しかったでしょ?私にメイドの格好をさせて鞭を振るわせる…マリアったらぶたれながらとっても悦んでたものね♪」

声「だから昼間っから何だっていうのよ!……あのね、携帯電話は秘話回線じゃないのよ?」

提督「私は困らないわ…だいたいあの後、私のせいにしようとした貴女がいけないのよ?」

声「はぁ……負けたわ、何をすればいいの?」

提督「さすがマリアね、話が早くて助かるわ…来週あたりから一週間ぐらい、AWACS(空中早期警戒機)の訓練飛行ルートをすこーし南に動かしてもらえるかしら?」

声「距離はどの位?」

提督「そうねぇ…南に五海里も動かしてもらえれば充分……大丈夫、領空侵犯どころかイタリア領空すら出ないわ」

声「分かったわよ…もう」

提督「ふふ…よろしくお願いね、はしたないお嬢さま♪」

声「もう、フランチェスカのばか///」

提督「ふふっ、チャオ♪」

カヴール「あの…何やらずいぶん刺激的な……///」

提督「あぁ、マリアのこと?……ふふっ…まだ大尉だったころに士官宿舎の部屋で「メイドさんにお仕置きでぶたれるお嬢さま」ごっこをしてたら鞭の音を聞かれちゃって……」

カヴール「それは…その、何とも気まずいですね///」

提督「マリアったら何があったか聞きに来た海軍憲兵に「私は彼女につき合っていただけなので…」なんて白々しい嘘をついてくれたから…幸い知り合いの憲兵だったからウィンク一つで見逃してくれたけど……それ以来彼女に頼みごとをする時は簡単でいいわ♪」

カヴール「士官宿舎でなさったのですか…///」

提督「部屋に招かれたらマリアが準備万端整えてたのよ…全く、どこであんなの買ったのかしら?…ともかく、これで準備は出来たわね」

カヴール「もうそろそろ練習組も戻って来るころですね」

提督「…あら、本当ね。それじゃあ加給食の準備に行きましょう♪」

カヴール「分かりました」

………
829:2017/10/09(月) 02:30:44.50 ID:
…厨房…

提督「さてと…加給食といっても……何を作ろうかしらね」

ディアナ「激しい運動のあとですから、カロリーの摂取が大事ですね」

提督「んー…冷蔵庫には何があるかしら?」

ディアナ「卵に、鶏の手羽が結構あります…あとはハムの消費期限が近いのでそれを使いたい所です」

提督「あ…じゃあ手早くハム入りのカルボナーラでも作りましょうか♪……エリトレア」

エリトレア「はい」

提督「パスタの方はお願い」

エリトレア「了解しました♪」

提督「ディアナ、卵とハムを出してもらえる?」

ディアナ「はい、よしなに…♪」

提督「じゃあ…カヴール、お皿を出しておいて?」

カヴール「はい♪」


…大きいアルミのパスタ鍋いっぱいにごぼごぼとお湯が沸き、エリトレアが小さじ二つばかり塩を入れる。幅の広いフェットチーネが鍋に入るとひらひらと広がっていき、卵の形をしたタイマーのスイッチを入れた。……提督はその間にハムと卵、生クリームを準備する…「本来ハムは入れない」などと言う北部の原理主義者もいるカルボナーラだが、提督はハムの消費期限が近いこと、それに、「疲れて帰ってくる艦娘たちに少しでも栄養を取ってもらいたい」と、目をつぶることにした。ハムは後ろ脚に比べて安価な豚の前足のハムで、もうあんまり残っていない肉を大きい包丁で骨から削ぎ落した。卵と生クリームは大きいボウルで手早く混ぜ、とろりとしたバニラ色の液体が出来上がった…


カヴール「お皿は置いておきますね」

提督「ええ、ありがとう♪」


…提督は平たいアルミのフライパンを取り出すと、たっぷりのバターを切りだしてフライパンに落とし火をかけた。バターがぶちぶち言いながら溶けると切ったハムをさっと入れ、じゅうじゅうと香ばしい音と匂いを立てるまで、アルミにキズを付けない木べらで炒めた…戦時下では貴重な金属だったアルミのフライパンはディアナが大事にしている物なので、使いこまれてよく油がなじんでいる割に痛みや汚れも少なく、愛用されていることが分かる…


エリトレア「そろそろパスタを上げますよ?」

提督「…了解」


…炒めたハムを人数分に分けておき、慎重に火加減を調節して卵液を注ぎ込む……火が強いとあっという間に炒り卵に化けてしまう…慎重に手早くかき混ぜ、ゆで上がったフェットチーネを入れ、ハムも戻してさっと和える…卵液をボウルで湯せんする方が簡単で上手く行くが、そこはせっかく頑張ってきた艦娘たちへの加給食なので、律儀に作ろうと決めていた…


カヴール「はい」濃紺と金で縁取られたお皿を差しだした

提督「ん、ありがとう」…トングでパスタを渦巻き状に乗せ、カルボナーリ(炭焼き)の名の通りになるよう、ペッパーミルで黒胡椒を振りかけた

ディアナ「まぁ…お上手です」

提督「ふぅ…人数分やらないといけないから結構大変ね……」次々とカルボナーラを作っては、エリトレアとカヴールがテーブルに並べていく…

ディアナ「代わりましょうか、提督?」

提督「大丈夫」…最後の一つまで完成させると両手をポンとはたいてフライパンを流しに浸け、エプロンを外した…と、がやがやいう声が近づいてきて、食堂のドアが開いた…

ロモロ「ロモロ、戻りました…ぁ♪」

カッペリーニ「ふぅ…疲れました……」

トレーリ「手は洗ってきましたよ、加給食があるって聞きましたけど…って、わぁぁ♪」

レモ「デリシャスメルだね、美味しそう♪」

フレッチャー「私たちの分まであるのね…サンクス、準備してもらって嬉しいわ♪」…鎮守府の駆逐艦と一緒に仮想敵を買って出てくれたフレッチャーも、少しくたびれた様子で席に着いた

提督「どうぞ、召し上がれ♪」

フォカ「んーっ…美味しいわ♪」

カッペリーニ「カルボナーラもいいものですね…あぁ、空腹だったので染みます♪」

提督「ふふ、よかった♪」

………
833:2017/10/10(火) 01:20:48.50 ID:
…数日後・執務室…

提督「うーん……」その日の夕食もそこそこに執務室にこもった提督はバスローブ姿で、海図のコピーに青ペンで補給ルートを描いてはくしゃくしゃと丸めて捨て、そのたびに衛星画像を重ねてみたり、海底の地形図を当ててみたりしながら頭を抱えていた……

カヴール「提督、コーヒーですよ」

提督「うー…」そばにそっと置かれたコーヒーカップにも気づかず、うんうん唸っている…

カヴール「提督っ」

提督「うわ!……カヴール、どうしたの?」

カヴール「コーヒーをお持ちしましたよ、クリームと砂糖入りです」

提督「ああ、ありがとう…」赤ペンで描き入れた「深海棲艦」の哨戒ルート、台風予想図のような緑の線に、MAD(磁気センサー)やソナーの範囲を表す同心円を描いたP3対潜哨戒機のルート、ひときわ大きいAWACSのレーダー範囲を示す青い円と飛行ルートをにらみつつ、無意識にコーヒーをすする…

ライモン「提督、お探しの資料です」書類棚から持って来た資料を抱えてライモンがやってきて、卓上の「バベルの塔」が崩れないよう、そっと執務机の上に置いた…いつもはある程度整っている提督の執務机も今はめちゃくちゃで、雑然と積み上がった資料と色ペン、ディバイダー、コンパス、分度器などが散らかっていた…

提督「ありがとう…」さっそくページをめくり、あごに手を当てて考え込む提督…時々思い出したようにコーヒーをすすり、額にペンを当てたりしながら考え込んでいる

カヴール「提督。そこまで思いつめなくても、最初の案で十分大丈夫だと思いますが…?」

提督「カヴール…気遣ってくれるのは嬉しいけど、私は今ここにいるみんなに怪我をさせるようなことはしたくないの……それも私の思慮が足りなかったせいなんてことになったら、私は自分を許せないわ…」

カヴール「ですが、あまり根を詰めて考えていても疲れてしまいます…しっかりお休みになることも提督の大事な務めですよ」

提督「そうね…ありがとう、カヴール……もう止めるわ。二人とも遅くまでありがとう」

カヴール「いいえ、私でよければいつでもどうぞ」

ライモン「しっかりお休みになって下さいね、提督…では、失礼します」

提督「ええ、お休み…」二人を送り出してから、また席に座る提督…いつしか夜も更けてきて、背後の窓からのぞく月が徐々に沈んでいく……しばらく海図を眺めているうちに、だんだんまぶたが重くなり、線がぼんやり霞んできた…

提督「ふわぁ…」提督はもっといいルートが出来上がるまで眠らないでいようと思っていたが、「少しだけ」とまぶたを閉じた…案外冷える海風と、床から上ってくるひんやりした夜気が足元を冷やしていく…

提督「…くしゅっ!」うとうとしているうちにすっかり目を閉じてしまった提督は、小さく一つくしゃみをした…

………

…二日後…


カヴール「もう、ですから私が言ったではありませんか…しばらくは絶対安静になさって下さい、いいですね?」腰に手を当て、心配しながらも提督を叱りつける…

提督「ええ……こほっ!けほっ!」心労と無理な執務が響いていたのか、薄着で冷たい夜風に当たりながら眠ってしまっただけで風邪を引いた提督…ベッドに寝かされた提督は水銀体温計を脇に挟んで、ベッドの中ではぁはぁと息を荒げている…

ライモン「提督…大丈夫ですか、何か欲しいものはありますか?」心配そうにのぞきこんでくるライモン…頭の下にはタオルを巻いた氷枕、脇のナイトテーブルには水差しとグラスが乗っているが、まだ何か足りないかのようにあちこち見回している

提督「大丈夫…ごほっ!……うつるといけないから…離れていた方がいいわ……」顔は熱で上気していて、タオルケットやら布団やらに包まれている…

カヴール「何か召し上がりますか?」

提督「う゛ー…喉が痛いから……柔らかいものが…いいわ…」と、タイマーが鳴ってカヴールが体温計をとりあげた…

カヴール「38.1度…立派な風邪です……何かお持ちしますから、食べたらすぐお休みになって下さい、いいですね?」

提督「了解…38.1度……リットリオ級の主砲と同じ数字ね…げほっ、ごほっ!」

カヴール「もう、こんな時までそんなことを……とにかく安静になさっていてください。…それと、ご用があったら食堂か私、さもなければライモンの部屋にかけて下さい」ナイトテーブルにどこかから持って来たダイヤル式の内線電話を置いた

提督「ありがとう…うー、げほごほっ……」普段の物柔らかな声もすっかりかれて、ハスキーなシャンソン歌手そこのけになっている…

カヴール「それでは、何か作ってきますから…ゆっくり眠って下さいね」

提督「ええ…ごめんなさい……」

カヴール「いいのですよ…今回の作戦のために寝ずに頑張っていたのですから……早く治してくださればそれで十分です」

提督「ええ…そうするわ…」

834:2017/10/10(火) 01:58:25.19 ID:
…しばらくして…

カヴール「提督、起きていらっしゃいますか?」かちゃかちゃと皿の鳴る音が聞こえ、大きな銀のお盆を持ったカヴールが入ってきた…

提督「ええ…いい匂いね……」

カヴール「食べられそうですか?」寝室のテーブルに一旦お盆を置いて、提督の顔をのぞきこんだ

提督「どうにか…」

カヴール「それは良かったです…では、上半身を起こしますよ」…ベッドの背板に枕を置き、そこにもたれかかることが出来るよう提督を支えた

提督「ありがとう…」ネグリジェ姿の提督はお姫様抱っこのように上半身を起こしてもらい、ベッドにもたれかかった

カヴール「まずは手を拭いてくださいね」…まだ温かい蒸しタオルで手を拭いた

提督「はぁ…はぁ……」

カヴール「大丈夫ですか?」

提督「ええ…熱の割には食欲があるわ」お盆の上の物を確認する提督…

カヴール「でしたらすぐによくなりますよ…スープから召し上がりますか?」

提督「ええ…喉も乾いたし……」

カヴール「分かりました…では、「あーん」してください」スープ皿を片手に持って、スプーンを口もとに近づける…

提督「あー…ん」湯気の立つチキンスープがじんわりと喉を流れ下って行く…薄い塩とコンソメだけのスープは懐かしさすら感じる優しい滋味豊かな味で、飲み終えるとそっと次の一口が差しだされた…

カヴール「いかがですか?」

提督「おいしい…」飲むほどに身体の中が暖まっていき、じんわりと汗をかき始めた…スープを飲み終えると、提督は小さくつぶやいた

カヴール「よかった…時間をかけたかいがあります。次はどれにしましょうか?」

提督「その美味しそうなのは…」

カヴール「オムレツです…召し上がりますか?」

提督「ええ…」中がとろとろと流れ出すような、黄色い柔らかな木の葉型のオムレツをスプーンですくってもらい、一口ずつ含むように食べる…どうやら卵一つで作ったらしく、もう少し食べたいと思ったもののすぐに無くなってしまった…

提督「もうちょっと食べたかったわ…」

カヴール「まぁ…食べられるなら大丈夫ですね。……でも、朝はこのくらいにしておきましょう、甘い物もありますし」ガラスの器に入ったアイスクリームを近づけた…

提督「あら…嬉しいわ……身体が熱くて…冷たいものが欲しかったの…」

カヴール「そのようですね…お水も後で持ってきます」小さじでバニラのアイスクリームをすくって、ツバメの親鳥のように口に運ぶカヴール

提督「…ふぅ、美味しかったわ……」

カヴール「ふふ、よかったです…さてと、後はお薬です」風邪薬の錠剤を取り出した

カヴール「粉薬以外もあるんですから…いい時代ですね?」

提督「そうね…感謝しないと……」錠剤を含み、喉の痛みをこらえてグラスいっぱいの水で流しこんだ…

カヴール「はい、結構です…後はお休みになって下さい。またお昼になったら来ますので」

提督「了解…」

カヴール「おやすみなさい…」提督をまたベッドに寝かせると布団をかけ、お盆を持って出て行った

提督「はぁ…ふぅ……」熱と、筋肉痛のような関節のきしみにうんうん言いながらも、風邪薬のおかげで眠りについた…
835:2017/10/10(火) 10:32:57.30 ID:
…昼頃…

カヴール「提督、起きていらっしゃいますか?」

提督「うーん…おはよう、カヴール……」

カヴール「調子はいかがですか?」

提督「おかげ様で少しは眠れたわ…」

カヴール「何か食べられそうですか?」

提督「ええ…お腹は空いているわ」

カヴール「よかったですね、トレント?」

提督「…トレント?」

トレント「提督っ…しっかりしてください、私……心配で心配で…!」七隻のイタリア重巡でも最初に産まれ、一番華奢な重巡トレント級…その特徴をよく表しているトレントは長身で細身、性格は奥ゆかしく「引っ込み思案」といってもいいほど遠慮深い…そのトレントが枕辺で泣きそうな顔をして立っている…

提督「大丈夫よ…泣かないで?……ただの疲れだから…けほっ!」

カヴール「トレントが提督のために何か作ってあげたいから…というので、スープを作ってもらいました……さ、冷めないうちにどうぞ?」

トレント「提督のために一生懸命作りましたから…どうぞ召し上がってください…」

提督「ありがとう、嬉しいわ…」近づけてもらったスープ皿には綺麗なクリーム色のスープが入っている…

トレント「クリームスープです…ゆっくり召し上がってください」

提督「そうするわ……すぅ」コーンクリーム缶とたっぷりのミルクを少しの塩と香りづけ程度のバターで仕上げ、上にパセリを散らしたクリームスープ…温かくてとろりとしたスープは、トレントが噴きこぼれないようにじっと火の前に立って作ってくれたものらしい……病身の胃腸にじーんと沁みた…

提督「あぁ…美味しい……」一口ごとに食欲が出てきて、結構な勢いでスープをすすった

トレント「美味しいですか?…よかった…」心からほっとした表情で椅子に座った…

提督「ええ、とっても…これならすぐ元気になれるわ」そう言ってお盆を見たが、後は寝室にある小型冷蔵庫に入れておくための水差しの替えと、昼の薬しか載っていない…

提督「カヴール…もう少し何か欲しいのだけど……やっぱり止めておいた方がいいのかしら…?」もしカヴールの親切心ならむげにしてはいけないと、遠慮がちに聞いた…

カヴール「ふふ…そんなことはありませんよ、まだ出来上がっていないので……あ、来ましたよ?」

百合姫提督「こんにちは、フランチェスカ…大丈夫?」お盆の上に土鍋を載せてやってきた百合姫提督と、一緒に付いてきたミッチャー提督…それと、訓練を終えたばかりのはずなのに疲れも見せずにやってきた「ルイージ・トレーリ」が入ってきた

ミッチャー提督「やぁ、風邪引いたって?…ついてないね」

提督「ええ…でも食欲はあるし……喉が痛いのと熱があるだけよ…う゛ー……ごほっ」

ミッチャー提督「うわ…普段の優しい声はどこ行っちゃったのやら……今ならジョージ・A・ロメロ監督の映画に出られるわね…」(※ジョージ・A・ロメロ…世の中のほとんどのゾンビ映画を手掛けてきたゾンビ映画界の巨匠)

提督「ひどい言われようね…げほっ!」

百合姫提督「あんまりお話してはだめよ…喉が痛むのでしょう?……さぁ、これを食べて?」

トレーリ「百合姫提督との合作ですから…ちちんぷいぷい……早く良くなりますよーに♪」呪文を唱える真似をしながらミトンをはめて土鍋の蓋を開けた…何やら卵でとじられたものから、ふわっと湯気が上がる…

提督「美味しそうだけど…何かしら」

百合姫提督「かき卵入りのおかゆを作ってみたの…食べる?」

提督「ええ…いただくわ」

トレーリ「最初はフィンチが「日本通としてはぜひ『おかゆ』を作りたい」って言ったんですけど…あぶなっかっしいから私と百合姫提督が代わりに…フィンチの分は気持ちだけ受け取ってあげてください♪」

提督「そうなの?……あーん」小さいお鉢によそってもらい、さらに百合姫提督がスプーンでふーふーして差しだした……

百合姫提督「どう?」

提督「かゆ…うま……」

百合姫提督「ふふ…そんなのどこで覚えたの?」

提督「誰かが言ってたのを覚えていたから…他に言う時もなさそうだもの……あふっ、おいひい…」

トレーリ「それにしても…フィンチのあれにはびっくりでした」…

………
836:2017/10/10(火) 11:56:50.38 ID:
…一時間ほど前・厨房…

カヴール「トレントのスープ、美味しそうですね…これならきっと召し上がってくれますよ♪」ことことと煮え始めたトレント特製のスープをのぞきこんで、にっこりと微笑みかけたカヴール

トレント「本当ですか?…それより提督の具合は大丈夫なんでしょうか…」

カヴール「ええ、大丈夫ですよ…さてと、後は何を持って行ってあげましょうか……」

フィンチ「カヴール、ジァポーネでは風邪を引いた時に「おかゆ」なるものを作るのが定番だと聞いているぞ?」たまたま食堂にいたフィンチが声をかけてきた…

カヴール「おかゆ…ですか……残念ながら私はどう作るのか知らないので…フィンチはご存じなのですか?」

フィンチ「無論、日本通だからな!」

カヴール「でしたら提督に「おかゆ」を作ってもらえますか、喜んでくれますよ♪…ちなみ「おかゆ」とはどのような料理なのですか?……映像で見た限りではとろとろした白いポタージュのようなものに見えましたが…」

フィンチ「ふむ。あー…「おかゆ」というのは、いわゆる和風に仕上げたリゾットのようなものだな」厨房にやってきて腕組みをして言う……ドイツ潜として没したせいかどことなくきりりとした雰囲気で、言うこともそれらしく聞こえる…

カヴール「リゾットですか…なるほど」

フィンチ「うむ…まずは土鍋で米を炊くことにしよう」幸い百合姫提督に教わっていたので水加減は大丈夫で、土鍋にご飯を炊いた…が、おかゆは米から煮ることを知らなかったので、普通の固さに炊きあがった…

フィンチ「おぉ…上手く炊けたな……さてと…うーむ」棚を眺めて、サクランボジャムを取り出した

百合姫提督「あら…フィンチ、ご飯を炊いたの?……上手に炊けているわね」たまたま食堂に来た百合姫提督がご飯の香りに気が付いて、様子を見に来た

フィンチ「うむ…病床の提督に「おかゆ」を持って行ってあげようと思っているのだ……蓋が固いな」

百合姫提督「あの…フィンチ?」

フィンチ「なにかご用かな、百合姫提督?」

百合姫提督「ええ……その、おかゆ…なのよね?」

フィンチ「いかにもさよう」

百合姫提督「どうしてサクランボジャムを開けようとしているの?…何かもう一品甘い物を作ってあげるの?」

フィンチ「ああ、いや?…これはおかゆの真ん中にに入っている「アレ」なのだが」

百合姫提督「…梅干し?」

フィンチ「そう、梅干しと言ったかな…とにかく赤い「アレ」の代役として入れようと思ったのだが…瓶の口が固くて……」

百合姫提督「…フィンチ、申し訳ないけどおかゆに甘い物は入れないのよ?……よかったら私と一緒に作りましょう?」

フィンチ「おぉ…本場の味の作り方を見せてくれるのか……「百聞は一見にしかず」と言うものだな」

トレーリ「…ルイージ・トレーリ戻りましたぁ。あー…疲れましたよぉ……ガッビアーノの爆雷は遠慮なさすぎなんですから…訓練なのに頭がガンガンする……って、フィンチ、ご飯炊いたの?」

フィンチ「提督におかゆを作って差し上げようと思ってな…百合姫提督に指導してもらっているところなのだ」

トレーリ「あー…うん、なるほどね……百合姫提督、私も手伝います♪」ジャムの瓶と百合姫提督の困ったような表情を見たトレーリはだいたいの事情を察して言った

百合姫提督「トレーリは帰って来たばかりで疲れているでしょう…私とフィンチで大丈夫よ?」

トレーリ「まぁまぁ、「乗りかかった船」ですから…ね?」

百合姫提督「そうね…じゃあお手伝いをお願いします♪」

トレーリ「はーい♪」そっと百合姫提督にウィンクをするトレーリ…

百合姫提督「梅干しはないから…私の好きなかき玉のおかゆ……どっちかといえば卵雑炊なのかしら…にしましょう♪」

フィンチ「うむ…日本の提督が好きな味なら間違いはないだろうからな…」

トレーリ「ご飯が炊けているみたいですし、和風のスープを作ったところに入れれば上手く行きますね♪」

百合姫提督「そうね、そうしましょう」

…結局、ご飯が多すぎるので半分以上は取り出しておにぎりとしてトレントたちに振る舞い、残りのご飯でおかゆを作ることにした……たまたまあった和風だしの素と少しの塩でさっぱりとしたおつゆを作り、水でさっとすすいだご飯を入れてことこと煮た…最後に溶き卵を回し入れて蓋をし、しっかりと蒸らした…

………

トレーリ「という訳だったんですよ」

提督「ありがとう…おかげで甘いおかゆじゃなくて美味しい卵のおかゆを食べられるわ」

トレーリ「たくさん召し上がれ♪」
837:2017/10/11(水) 01:03:20.74 ID:
提督「ふー…するっ……すすっ…」

百合姫提督「まだあるから、食べられそうならいっぱい食べて?」

提督「ええ…すす…すすぅ……」最後までおかゆを食べ、ほっと息を吐いて小鉢を渡した…食後の冷たいゼリーも食べて人心地ついた提督は、ベッドの上で半身を起こしたまま話を聞いた…

百合姫提督「しっかり食べられたようでよかったわ…偉いえらい♪」…頭を撫でる百合姫提督

提督「も…もう、子供じゃないのよ///」

ミッチャー提督「ま、いいじゃないの…和風美人に頭をなでなでしてもらえてさ?」

提督「結構恥ずかしいのだけど…で、ジェーンはお見舞いに来てくれたの?」

ミッチャー提督「あぁ、そうそう…忘れる所だったわ。…はい♪」掛け布団の上にぽい…と何かを置いた

提督「…風船ガム?」取り上げた物をしげしげと見ると、果物の絵が描いてある風船ガムの包みだった

ミッチャー提督「あれ、知らないか…映画だと必ず風船ガムをお見舞いに持ってくるのよ♪」

提督「ありがとう、後でいただくわ」

ミッチャー提督「ええ、そうして♪」

カヴール「ところで提督…だいぶ汗をかいたようですね?」微笑を浮かべながら聞いた

提督「そうね……もうぐっしょり…」ネグリジェは肌に張りつき、身体中べたべたして気持ちが悪い…

カヴール「そうだと思いました…♪」提督浴室からお湯が入った洗面器とタオルを持ってきて、しっかりと絞った…

百合姫提督「あら…」

トレーリ「あ、もしかして…♪」

カヴール「風邪を召していらっしゃるのですから、入浴は出来ませんが……これなら大丈夫です♪」

提督「ありがとう…じゃあタオルを貸して……?」カヴールが「うふふ…」と微笑して小さく首を振った

カヴール「風邪を引いている時に頭を動かすと、ふらふらして気持ち悪くなってしまうでしょうから…私が拭いて差し上げます♪」

提督「え?…そんな、いいわよ…そのくらい自分で出来るわ」

カヴール「だめです、病気なんですから…さぁ、私に身を任せてくださいね……♪」タオルを手に怪しげな笑みを浮かべている

提督「え…いや、でも///」

百合姫提督「……お鍋を片づけてこないといけないわ。フランチェスカ、また後でね♪」

ミッチャー提督「あー…午後の映画を準備してきてあげないと。今日は「南太平洋」にでもしようかなー…っと」

提督「え…ちょっと……」

百合姫提督「それじゃあ、またね♪」

ミッチャー提督「どうぞごゆっくり…バーイ♪」

カヴール「うふふ…トレントとトレーリも……提督のことを拭くの手伝って下さいね♪」

トレント「いえ…でもっ……提督の身体…っ///」

トレーリ「はぁい……提督ったら熱で上気した顔が色っぽい…♪」普段の透き通ったきらきらした瞳が、欲情でどろりと染まった…

カヴール「さぁ…腕から拭って差し上げましょうね♪」…提督は何をされるかと身構えていたが、想像していたような拭き方ではなく、優しく丁寧に拭いてくれたのでほっとした

提督「ふぅ…気持ちいいわ」提督は安心して身を任せると、身体の力を抜いた

カヴール「反対側はトレーリ、お願いします♪」

トレーリ「了解…ふふっ、提督の肌……すべすべ♪」

提督「今は汗でべたついているからそうでもないと思うけど……やっぱり拭いてもらうだけでも、身体がさっぱりしていいわ」腕を持ち上げられて、脇を拭いてもらう…汗で蒸れていたので、自家製ミント水入りの爽やかな匂いがするお湯で拭いてもらうといい気分になった……

838:2017/10/11(水) 01:41:53.64 ID:
トレーリ「拭きおわりましたよ、カヴール…♪」

カヴール「では一旦絞りましょう……さて♪」タオルを絞ると、急に甘ったるい笑みを浮かべた…

提督「な…何かしら///」

カヴール「こちらも汗で蒸れて気持ち悪いでしょう…私が拭いてあげますね♪」布団をめくるとネグリジェを脱がせにかかる…

提督「え、ちょっと…待って///」熱で力も入らない提督はカヴールのなすがままで、あっという間に肩のスリップを外され、胸をはだけさせられた…

カヴール「ふふっ…谷間がむんむんと蒸れて、上気したお顔も期待していらっしゃるようで……もう、我慢できなくなってしまいそうです♪」

提督「も、もう…やっぱりこういうことがしたかったのね///」

カヴール「はい、風邪の時は拭いてあげるのが定番だそうですから…♪」ねっとりした手つきで乳房にタオルを当てて、谷間を拭うカヴール…

提督「んっ…んんっ///」

カヴール「ふふ…可愛らしいお声で……風邪ですっかり弱った提督も思う存分好きにしたくなると言いますか…♪」

トレーリ「うんうん…っ♪」

トレント「熱を出している提督も…守ってあげたくなる感じがして……好きです///」

提督「んっ…はぁ、はぁ……あんっ…どこを撫でているの…っ♪」

カヴール「拭いて差し上げているだけですから♪……さてと、乳房の下にも汗がたまって気持ちが悪いでしょう……トレント、拭いてあげたらいかがでしょう?」

トレント「は、はい…///」ずっしりした乳房を持ち上げ、そっとタオルを持った手を差しいれる…

トレント「…あっ…しっとりして……柔らかい///」

提督「ん…んっ///」

トレーリ「…やっぱりこの鎮守府は最高です♪」

カヴール「うふふ…トレント、反対側はトレーリにお任せしましょう♪」

トレーリ「提督…♪」

提督「な…何かしら、トレーリ……」

トレーリ「こっちも汗ばんでいるでしょう?……拭いてあげますね♪」

提督「いえ…そこは自分でやるから……っ///」

トレーリ「あれぇ?……ここもずいぶん汗ばんでいるみたい…ね♪」

提督「あっ、あっ…んんっ///」

カヴール「私も拭いてあげます…トレーリ、交代しましょう♪」

トレーリ「はーい♪」

カヴール「あらあら…トレーリが拭いているのに、ずいぶんとべとべとしているようですね…♪」

提督「はぁ、はぁ……だって…んっ///」

カヴール「うふふ…トレントも拭いてあげてくださいな、きっと悦んでくれますから♪」

トレント「その、いいんですか…?」

提督「ええ、トレント…お願い……///」

トレント「で、では…失礼します……」

提督「んっ、んっ…あぁ…っ♪」ひくひくと身体をひくつかせ、とろりとした表情で力なく枕にもたれかかる提督…

カヴール「…では、後は私が拭きますから……お二人とも、ご苦労様でしたね♪」

トレーリ「ふふっ…また拭いてあげたいわ♪」

トレント「はぁ…柔らかかった……」自分の手のひらをじっと眺めて握ったり開いたりしている…

提督「もう…早く着替えさせて///」

カヴール「はいはい♪」

………
839:2017/10/11(水) 15:22:04.64 ID:
…その日の夜…

提督「あー…お腹空いた……」風邪薬と愛情がいっぱいこもった食事のおかげか、昼に比べて熱が下がってきた提督…そうなると暇を持て余し始め、ベッドの上でごろごろしながらナイトテーブルの本をめくってみたり、作戦の手順が気になったりと落ち着かない……

ライモン「提督、起きていらっしゃいますか?…夕食をお持ちしましたよ」ノックの音がして、お盆を持ったライモンが入って来た…お盆の上には耳付きの深い器と耐熱ガラスのコップ、パンの入った小さいカゴが載っている…

提督「あぁ、ライモン…ちょうど空腹だった所よ」

ポーラ「提督ぅ~、大丈夫ですかぁ~…?」一緒に顔を見せに来たのは重巡ポーラ…ブラウスをはだけ気味にし、顔が赤くなっている…

提督「ポーラこそ大丈夫…顔が赤いけど?」

ポーラ「ポーラはぁ…大丈夫ですよぉ~♪」椅子に座ると、上半身をゆらゆらさせながら微笑している…

提督「…ねぇライモン、ポーラは酔ってるの?」

ライモン「ええと…まぁ、それに近いと申しますか……とりあえずお食事にしましょう、それから話しますので」

提督「そうね…美味しそう♪」


…ライモンが夕食に持ってきてくれたのは食べやすいよう薄く切ったパンとチーズ、まだ湯気を立てているビーフシチュー…どうやらすね肉と一緒にこっくりと煮込んだらしく、ルーの中でたっぷりの玉ねぎとブラウンマッシュルームがとろりと煮とろけていて、上から生クリームが垂らしてある……脇のグラスは金属で縁取りをされた耐熱のマグカップで、湯気を立てているホットワインがなみなみと入っている…


提督「すごくいい匂いね…♪」シチューにそっとスプーンを入れて口に運んだ…赤ワインとローリエ、牛のすね肉と玉ねぎの香りが食欲をそそった……

提督「うん…よく煮えていて美味しいわ」

ライモン「よかったです…♪」

提督「せっかくだからワインといただくわね」ガラスのマグカップをとりあげ、ホットワインをすすった…スパイス入りの赤ワインが身体中を暖めながら喉を下っていく…

提督「うん…ちょうどいいわ、誰が作ったの?」

ポーラ「はぁ~い…ポーラですよぉ~、えへへぇ♪」

ライモン「最初はワインを付けるつもりはなかったのですが…実は……」

提督「何だかさっきと似たような感じがするわね…」


…数十分前・夕食の支度中…

ライモン「ディアナさん、そろそろ提督にも夕食を持っていきますので」

ディアナ「はい…では、お盆と……食欲はあるようですし、きっとシチューは食べられますね」

ライモン「そう思います、後は何か温かい飲み物でも作ってあげようかと思うのですが…」

フィンチ「ライモンドよ、ならば私にいい考えがあるぞ」

ライモン「いい考え…ですか?」

フィンチ「うむ…日本では病気の時に「卵酒」を飲むと聞くぞ……作ったことはないが、そう難しいものでもあるまい♪」

ライモン「フィンチ、気遣ってくれる気持ちは嬉しいですが…作ったことがないものを提督にお出しするわけには…」

フィンチ「頼む、ライモンド…このフィンチ、昼はおかゆを作ってあげようとしたが上手く行かなかったのだ……ぜひ「汚名挽回」させてくれないか?」

足柄「あのね、汚名は「返上」よ……挽回してどうするのよ?」横須賀の間宮に頼まれ、ディアナに料理のレシピを聞いていた足柄が呆れたように言った

フィンチ「言い方はさておき…頼む、武士の情けだ……」

ライモン「分かりました、そんなに熱心に頼まれては断れません…じゃあ作ってみましょうか♪」

フィンチ「すまないな…まぁ「卵酒」と言うのであるから……」ボルドーの赤ワインを取り出して銅の片手鍋にごぼごぼ注いで火にかけ、そこに卵を割り込もうとした…

足柄「ちょっと!……いきなり何する気!?」

フィンチ「卵酒だが…?」

足柄「どこがよ!?……あぁ、もう…こういう生かじりの知識って怖いわ…」

ポーラ「どうしたんです~?」夕食の手伝いに来ていたポーラが、コルクを抜く軽やかな音を聞いて厨房をのぞきこんだ…

足柄「えーと…今、フィンチが卵酒を作ろうとしたのよ……」

ポーラ「でもぉ…料理用以外にぃ~、日本酒なんてありませんよ~?」

足柄「はぁ…見れば分かるわ」
840:2017/10/11(水) 16:12:59.74 ID:
ポーラ「えーと…これは何ですかぁ~?」割りかけた卵にふつふつとたぎり始めている赤ワイン…

足柄「見ての通りよ」

フィンチ「いや…「卵酒」と言うからてっきりワインに卵を落としこんだものかと……」

ポーラ「それは…あんまり飲みたくないですねぇ~…」

ライモン「それにしてもこのワインはどうしましょうか…」

ポーラ「ん~…じゃあポーラに任せてもらえますかぁ?」

ライモン「そうですね…では、お願いします」

フィンチ「済まぬな…ポーラ」

ポーラ「いいんですよぉ~…それにぃ、せっかく沸かしてくれたのですからぁ…これを使っちゃいましょー♪」瓶に残っているボルドーをグラスに注いで味見をし、少し思案してから手を叩いた

フィンチ「これで何か出来るのか…いやはや、さすがポーラだ」

ポーラ「えへへぇ、褒めても何も出ませんよぉ?」ディアナからシナモンやオレンジを受け取り、振り入れたり絞ったりするポーラ…時々鍋のワインを小皿にとっては味見をし、立ちのぼるワインの湯気を吸いこんだ…

ライモン「どうですか?」

ポーラ「美味しいですよぉ~♪……フィンチ、これなら提督も喜んでくれますねぇ♪」

フィンチ「いや…私は何もしていないのだが……」

ポーラ「フィンチがワインを温めてくれたから~、ポーラも思いついたんですよぉ~?」

フィンチ「そ、そうか…///」

ポーラ「えへへぇ、美味しいですねぇ…♪」

ライモン「あの…ポーラ?」

ポーラ「はぁ~い、どうしましたぁ?」

ライモン「大丈夫ですか…その、酔ってませんか?」

ポーラ「ポーラはぁ、酔ってなんかいませんっ♪」

ライモン「じゃあ…何本ですか?」人差し指を立ててみる

ポーラ「一本ですねぇ~……ちゅぅぅ…っ♪」

ライモン「な、何をするんですか///」

ポーラ「美味しそうなので味見しちゃいましたぁ~♪」気づけばボルドーの瓶は空になって、カウンターの上で横になっている…と、ポーラがブラウスをはだけ始めた……

足柄「ちょっと…はしたないわよ///」…本来は神戸生まれのしとやかなハイカラさんだけあって、ボタンを留めてあげようとする足柄

ポーラ「だってぇ、暑くなってきちゃったんですよぉ♪」胸元をはだけ、ぱたぱたと扇ぐ…

足柄「…ごくり///」白い胸が服の隙間からちらりとのぞき、扇ぐ度にふるふると揺れる…

ライモン「…とりあえずスパイス入りワインは出来たようですし……ディアナさん、お盆を貸して下さい」

ディアナ「そうですね、持って行ってあげて下さい…」

ポーラ「じゃあ、ポーラも一緒に行きますねぇ…えへへぇ♪」

………

ライモン「という訳でして…」

提督「まぁ、そうだろうとは思ったわ…これで酔ってないんだから、ある意味ポーラってすごいわよね……」

ポーラ「えへへぇ、褒められちゃいましたぁ♪」

提督「ふふっ…そうね♪……ライモン、とっても美味しかったわ。ごちそうさま」

ライモン「はい、よかったです…早くよくなってくださいね///」

提督「ええ、そうね…どうしたの?」

ライモン「あの…風邪は移すと治るって言いますし……」ライモンが顔を近づけ、ちゅっ♪…と唇が重なった

提督「もう…だめよ、ライモンに風邪がうつったら困るわ///」

ライモン「その時は…提督がキスしてください///」

提督「ええ…そうするわ♪」
841:2017/10/12(木) 01:51:51.17 ID:
…その日の深夜…

提督「はぁ…喉、乾いた……」寝苦しさを覚えて目を覚ました提督はひどく汗をかいていた……ベッドの脇、小机の上に乗っているガラスの水差しは空で、冷蔵庫に入っていた分も飲み干してしまっていた…

提督「0200時…どうしようかしら……」カヴールを起こすのは悪いと思ったが、さりとて食堂まで降りていけるだけの元気はなかった…暑さを我慢できず布団をはねのけ思案していたが、とうとう来てもらってから謝ることにして、内線電話をとりあげた…

提督「お願い…出てちょうだい……」数分前には喉の渇きに耐えかねて洗面台の水道水に口をつけようかとも思ったが、お腹を壊すのが見えていたのでさすがにあきらめていた…リリリン、リリリリン…ッ!……と、むなしく呼び出し音が鳴っている…

声「アロー?」どういう訳かエクレール提督の声が聞こえた…

提督「え…マリー?」

エクレール提督「ええ、わたくしですわ…こんな時間に起きていて、具合は大丈夫ですの?」

提督「ごめんなさい…ちょっと寝苦しくて……カヴールにかけたつもりだったのだけど…」

エクレール提督「構いませんわ、まだ寝ていませんでしたし…何か欲しいのでしょう?……わたくしでよければ持って行ってあげますわ」

提督「ごめんなさい、マリー……喉が渇いて…厨房の冷蔵庫にミネラルウォーターと氷があるの…水差しに入れて持ってきてもらえるかしら……」

エクレール提督「ええ、すぐ持って行ってあげますわ…待っていて下さいな」

提督「ありがと…」

…数分後…

エクレール提督「入りますわよ?」滑らかな生地のナイトドレス姿で水差しとグラスを持ち入ってきた…他にも何かこまごましたものをお盆に載せ、寝室のテーブルに置いた…

提督「ありがとう…」

エクレール提督「構いませんわ…フランチェスカ、熱は下がりました?」普段はフランス人を絵にかいたような理屈ばかりこねるイヤミな性格で、フランス以外を見下したような事ばかり言っているエクレール提督だが、二人きりになると意外に優しい所もある…提督の前髪をかきあげるとそっと額を当てた……

エクレール提督「まぁ…結構な熱ですわね……今、氷枕の替えを出してあげますわ」

提督「マリー…あんまり近づかない方がいいと思うわ……風邪がうつるといけないから…」

エクレール提督「フランチェスカ…何のかのと言っても、相変わらず貴女は優しいですわね……さ、わたくしの事は気にせずお飲みなさいな」

提督「メルスィ…」

エクレール提督「冷たいミルクも持ってきましたけれど、そちらにします?」

提督「ありがとう…ミルクがいいわ…」

エクレール提督「ウィ…さぁ、どうぞ?」

提督「ありがとう…ごくっ…ごくんっ……」頭を傾け一気に飲み干した…

エクレール提督「氷枕の新しいのですわ…失礼しますわね」タオルを巻き、すっ…と氷枕を差しいれた……

提督「はぁ…冷たくて気持ちいい……」身体を起こしているのもおっくうで、氷枕を入れ替えてもらうと横になった…

エクレール提督「替えの水差しは持ってきましたから、冷蔵庫に入れておきますわね…それと、シュー・ア・ラ・クレームを持ってきてあげましたから、元気になったらお食べなさいな?」

提督「ええ…こんな真夜中にごめんなさい…」

エクレール提督「いいんですのよ…わたくしと貴女の仲ですわ……それに、わたくしはイタリアの風邪ごときうつったりはしませんもの」

提督「そう…フランス人のイヤミには風邪も通用しないのね……」

エクレール提督「貴女こそ、風邪を引いていてもその軽口は相変わらずですのね……でも、その調子では相手にもなりませんわ…まぁ、しばらく一緒に居てさしあげますわね」…椅子を近くに引き寄せると座って、そっと頭を撫でた

提督「ありがとう……すぅ…すぅ……」

エクレール提督「まぁ…ずいぶんとあっさり眠ってしまいましたわね……フランチェスカ…モン・ナムール(愛しい人)…」そっとキスをして、寝顔を眺めていた…
842:2017/10/13(金) 01:13:57.57 ID:
…翌日・食堂…

提督「みんな、おはよう…迷惑かけてごめんなさい」

ライモン「提督っ!…大丈夫ですか?……さぁ、座って下さい」

提督「心配かけたわね、もう大丈夫よ♪」ちゅ♪…と頬にキスをし、反対側の頬に手を当てた

ライモン「それは…良かったです///」

アッテンドーロ「姉さんときたら「提督提督」で、もうなんにも手に付かないんだもの…良くなってくれて嬉しいわ」

提督「それは迷惑かけたわね、ムツィオ」

アッテンドーロ「いいのよ…いつも姉妹でべたべたしてると、どこかの重巡みたいになりかねないもの」

ザラ「…悪いかしら?」

アッテンドーロ「いいえ?…それとも思い当たる節でもあるのかしら」

ザラ「別に?…だって私たちは仲良しだものね、ポーラ♪」

ポーラ「えへへぇ…ザラ姉さまは優しいですからぁ♪」

フィウメ「とにかく提督が良くなってくださって…心から嬉しいです♪」

ゴリツィア「心配したんですよ、提督…みんなで何か持って行ってあげようかと相談もしましたし……」

ボルツァーノ「でもお邪魔して具合を悪くさせてはいけないから…って我慢していたんです」

提督「あらあら…」ボルツァーノにぎゅっと抱き着かれまんざらでもなさそうな提督は、順繰りに優しくザラたちを抱きしめた…

バンデ・ネーレ「あ…提督、良くなったんだ……♪」普段は黒ばかり着ているが、珍しく白いワンピースのバンデ・ネーレ

提督「おかげ様で…今日は白い服なのね?」

カヴール「バンデ・ネーレはいい娘ですから…「提督が治るまでは縁起が悪い黒を着ない」と言ったのですよ」

提督「まぁ…ありがとう」

バンデ・ネーレ「おかげで着るものに困ったよ…特に下着はなかなか借りる訳にも行かなかったから……」

提督「え…じゃあもしかして……///」

バンデ・ネーレ「残念だったね、今日は着てるよ♪」ちらりとワンピースの裾をつまみあげた…

提督「あら残念…でも着てる方が素敵よ?……綺麗な脚にはお洒落なランジェリーが必要だもの。野菜にドレッシングが必要なようにね♪」席に着いてウィンクした…

バンデ・ネーレ「ふふ、すっかりいつも通りだね♪」

ドリア「今朝はみなさんにぎやかですね…まぁ♪……おはようございます、提督。身体の具合は良くなったのですか?」ひと足遅れてやってきたドリアが気遣って言った

提督「おかげ様で♪」座っている提督は暑い盛りながら、カヴールが用心して着せてくれた分厚い豪奢なガウンに包まれている……が、確かに血色もよくなっていた

シロッコ「もう…散々心配したんだよ?」

提督「ごめんね、シロッコ…♪」

マルチェロ「うむ…我々「提督たち」も心配で仕方なかったぞ」

…中世の提督が名前になった大型潜「マルチェロ」級や「カッペリーニ」級、中型潜「ピサニ」級、名海相「サイント・ボン」をはじめとする大型潜「カーニ」級の面々が口々に言った

提督「ごめんなさいね…」

カヴール「さぁさぁ、お話は食後になさってください…提督、熱も引いたことですし、今度はうんと食べて栄養を付けて下さい♪」大きいマグカップにたっぷり入ったミルクコーヒー、チーズがたっぷりかかっていい匂いを立てているペンネ…それにフレンチトーストが二枚……

提督「えぇ、もうお腹が空いて……何でも食べられそう」

デュイリオ「あら、でしたらわたくしを召し上がってみませんか?……きっととろりと甘くって、出来立てのカスタードクリームみたいですよ…♪」近くで朝食を楽しんでいたデュイリオが甘い声でささやいた

提督「うふふっ…それはもうちょっと元気になってからじゃないと♪」クリームチーズをのせ、ハチミツがかけてあるフレンチトーストをナイフで切り分け、フォークで口に運ぼうとした…と、厨房からエクレール提督が姿を現し、向かいに座った…

エクレール提督「元気になったようですわね、フランチェスカ…これはわたくしの特製ですの」フレンチトーストは一枚が斜めに立てかけてあり、上から綺麗にハチミツをかけてある…シナモンも軽く振ってあり、甘いいい匂いがする…

提督「とっても美味しそうね…このステキな芸術品を崩して食べてもいいかしら?」

エクレール提督「もちろん構いませんわ…ボナペティ♪(召し上がれ)」

提督「メルスィ♪」…焼き目の付いた外側は香ばしく、たっぷりと卵と砂糖が染みこんだ真ん中は甘くてしっとりしているフレンチトーストは極上の一皿だった

提督「んー、甘くて柔らかい……きっと天国の雲にかぶりついたらこんな味じゃないかしら♪」

エクレール提督「もう…大仰ですわね///」

843:2017/10/13(金) 02:19:33.60 ID:
提督「んー…ペンネも美味しいわ♪」

カヴール「もう少し召し上がります?」

提督「えぇ、いただくわ♪」

チェザーレ「おぉ、よく食べるな…元気になったようで結構だ♪」

バリラ「お母さんいっぱい食べる娘は好きよぉ♪」

フェラリス(アルキメーデ級大型潜)「提督、よかったら磁気治療もどうですか?」回転磁界の発見者のせいか、金属のスプーンを中空に浮かべながら怪しげな笑みを見せる…

ガルヴァーニ(ブリン級大型潜)「いやいや…ここは電気刺激がいいんじゃないかしらぁ♪」こちらはカエルの実験で「神経伝達が電気信号である」ことを発見したガルヴァーニだけあって、今にも電気でひくひくさせたがっているように見える…

提督「…その、気持ちは嬉しいけど……」

カヴール「提督は病み上がりですから、刺激は避けないといけません…お二人とも、別の機会になさってください♪」

フェラリス「あーあ、残念」

ガルヴァーニ「きっと気に入ると思ったのに…」

レオナルド・ダ・ヴィンチ(マルコーニ級大型潜)「そうね…なら私が発明した機具ならどう?」不世出の大天才にして、潜水艦も発明したダ・ヴィンチがにこりとした…

提督「うーん…ダ・ヴィンチの発明品なら……」

カヴール「だめです…だいたい「アレ」を提督に使ったら刺激が強すぎます」

ダ・ヴィンチ「そう言われればそうね…じゃあ提督用を開発しないと……ちょっとアトリエに行ってくるわ♪」残っていたパンに適当な肉や野菜を挟んで、紫の薄いケープをはためかせながら飛び出していった…

カヴール「ああなったらしばらくは部屋にこもりきりですね…結構いい発明品もあるだけに、期待してしまうのが何とももどかしいといいますか……」

提督「そうね。ダ・ヴィンチときたら、ちょっとした木材と歯車だけですごいものを作るものね…」すっかり満足した提督はコーヒーのおかわりをもらい、朝刊に目を通し始めた…と、すでに朝食を終えていたらしいミッチャー提督とフレッチャー、エンタープライズがやってきた

ミッチャー提督「やれやれ、新聞を忘れたわ……って、フランチェスカ!…モーニン(おはよう)、元気になったみたいね?」

提督「グ・モーニン…おかげさまですっかり良くなったわ。きっと風船ガムのおかげね♪」

ミッチャー提督「はははっ、それはよかったわ……よいしょ」…ミッチャー提督は近くの席に腰かけ、駆逐艦や潜水艦たちにかこまれておしゃべりしている提督を見ながら、エンタープライズと一緒に海軍誌「ネイバル・トゥディ」や「ニューヨーク・タイムズ」をめくった…一方フレッチャーは「小難しいニュースはノー・センキュー」と、戦前から特徴的な題字のレタリングが有名だった映画・芸能ニュース専門紙「ヴァラエティ」をめくっている……

提督「ジェーン、何かニュースはあった?」

ミッチャー提督「ええ。…太平洋艦隊で不祥事があって数人の提督が解任されたの。読んであげる…「太平洋艦隊在籍のマイケル・ステューピッド少将、およびジョン・フール少将は先の作戦で無用な損害を出し、多くの『カンムス』(艦娘)に無用な負傷を負わせ、また司令部の資材を私的に流用したことで査問会にかけられ、解任された」…だそうよ」

提督「それにしても解任?…最近にしてはずいぶん厳しい措置ね」

ミッチャー提督「いいのよ、少しくらい解任した方が……最近は例の「深海棲艦」相手で戦果を挙げる士官が多いから昇進はよくあるでしょ?」

提督「ええ、まぁ」

ミッチャー提督「…その割に降格や解任は「イメージダウンだ」ってめったにやらなかったから、今では「フリゲート艦三隻に提督一人」なんてありさまなのよ…ほんと「ゲット・アウト」のマティアス大将が海軍作戦部長になってよかったわ……ま、おっかないけどね♪」

エンタープライズ「…マームはそういうけれど、実際はマティアス大将のお気に入りなんです」

提督「ふふ、分かるわ♪…ジェーンは好き嫌いがはっきりしているから、きびきびした人には好かれるのよね?」

ミッチャー提督「ないない…私だっていつ「ミシガン湖鎮守府」に飛ばされるか分かったものじゃないわ♪」

提督「ふふっ、きっとジェーンなら大丈夫♪」

ミッチャー提督「はははっ、信用してもらってるようで嬉しいわ」


844:2017/10/14(土) 02:04:36.95 ID:
…午前中・大浴場…

提督「はー…久しぶりのお風呂ね……」わしゃわしゃと石けんを泡立て、タオルでごしごし洗いはじめた…

カヴール「では後ろは私が♪」頭にタオルを巻いたカヴールが、ぴたりと背中をつけてくる

提督「……カヴール、暖かいのね///」

カヴール「も、もう…提督も暖かいですよ///」背中に手を当てて身体を押し付け、頬を肩甲骨の辺りにくっつけた…

提督「カヴール…///」

カヴール「提督…♪」

…二人が頬を染め、今にも唇が触れんばかりになったその時、入り口の扉が開いてがやがやと数人が入ってきた…

ロモロ「さぁ、身体を洗いましょう……って、あら?…提督、良くなったのね!?」…ばいんっ♪

レモ「もう、心配したんだよー?」…ばるんっ♪

アミラーリオ・サイント・ボン「提督は数日ぶりの入浴ですな……たまった汚れと汗をしっかり流して、充分温まるようになされよ」…むちっ♪

提督「そうねぇ…それに大浴場にいるといいことも多いわね♪」…大型潜とは思えないカーニ級とR級の豊満な身体を見てにこにこしている

アミラーリオ・カーニ「…みんなスタイル抜群ですものね♪」

アミラーリオ・カラッチォロ「それ、分かるわ…♪」ねっとりとカーニ級姉妹の身体を眺めた…

アミラーリオ・ミロ「もう、姉上ったらに妹に欲情してどうするのです…いけない人ですね♪」そう言いつつ胸を強調して、まつげをぱちぱちさせた…

提督「うふふ、いい眺め……♪」

カヴール「もう、提督ったら…私というものがありながら♪」ばしゃっ!…怒ったようなふりをして、頭からお湯をかけた

提督「もう、カヴールったら何をするのっ♪」

カーニ「ふふ…カヴールも提督と仲がよろしいようで……では私たちはお風呂に浸かってきますので♪」

提督「はーい、また後でね♪」

………

…午後・執務室…


提督「はー…お昼も美味しかったわ♪」


…かなり激しい訓練にいそしんでいる艦娘たちのために、エリトレアはいつもよりこってりした料理を多く出していた…チーズがたっぷり使われた四角くて生地の分厚いローマ風ピッツァに、素晴らしい名物料理が多く、冗談交じりに「肥満の街」と言われるボローニアの肉厚に切ったハムと、ひき肉のタリアテッレ……ボトル半分の濃い赤ワインもほど良く胃に収まり、提督はガウンを着て執務室の椅子に座っていた…開けた窓からは午後の訓練に参加している駆逐艦のシルエットと訓練爆雷の音、硝煙のにおいが入って来ている…


カヴール「しっかり召し上がっておりましたものね♪」

提督「ええ、それなのにこの書類の山よ…全く、食欲をなくすわね。数日しかたっていないのに…」

カヴール「仕方ありません…今回の「大型潜建造」に合わせて提出した、機材の更新に関するもののようですし」

提督「あー、あれね…それにしたって、訓練も追い込みに入っている時にこんな書類でわずらわせないで欲しいわね……」提督は嫌になっていったん書類を放り出し、双眼鏡をつかむと窓から訓練の様子を眺めた…

提督「あー…フレッチャーもいる。さすがジェーンの所の艦娘ね、いい動きをしているわ……あら?」機敏で重兵装、レーダーやソナーも抜群のフレッチャーだけあって動きにもそつがない…と、提督は急に倍率を動かした……

提督「失探?……フレッチャーが?」明るいイオニア海には不似合いな、濃いブルーグレイとグレイの迷彩を施したフレッチャーが「我、敵潜をロスト」と信号旗を揚げた…同時に周囲を慌てたように駆け回り、潜水艦を探す「ソルダティ」級駆逐艦と軽巡「ジュッサーノ」級……

提督「まぁまぁ…私がだらしなく寝込んでいた間に素晴らしい成長ぶりだわ♪」…窓から身をのりだし、食い入るように索敵の様子を見つめる提督

カヴール「ええ、これだけの短期間とは思えない長足の進歩です」

提督「後は目的のブイの所までたどり着けるかどうかね…」沖合にぽつんと浮いているオレンジのブイが目的地「アフリカ」で、そこで浮上すれば潜水艦側の任務成功となる……提督が双眼鏡に目をあててしばらく眺めていると、ぼこぼこと海面が泡立って潜水艦の司令塔が現れた…

カヴール「あれは…トレーリですね」目のいいカヴールは双眼鏡なしで、遠方に浮上している潜水艦が誰なのか言った…確かに信号旗が揚がると「ルイージ・トレーリ」と発信している

提督「トレーリったらすごいわ♪…後でうんと褒めてあげないと♪」そう言っている間にも「アフリカ」にたどり着いた潜水艦が続々と浮上し、自慢げに阻止側の艦娘たちに向けて信号を送った

カヴール「提督が風邪を引いている間、みんなとても頑張っていましたから♪」

提督「みたいね…この調子ならそろそろ作戦を始められるわ。…できれば絶対確実になるまで待ちたいけれど、司令部からは期限を切られているから……」表情を曇らせる…

カヴール「大丈夫ですよ…あの娘たちなら♪」

提督「…そうね、私が心配そうにしていてはいけないものね……さぁ、じゃあこの「書類で出来たヴェスビアス火山」を始末しちゃいましょう♪」

カヴール「はい」

845:2017/10/15(日) 01:35:58.36 ID:
…数日後、作戦日の朝…

カヴール「アテンツィオーネ(気をつけ)」朝の食事を終えると全体に集合がかけられ、一同そろって食堂に集まった……艤装を身にまとった艦娘たちの間を通って演説台に向かう提督は珍しく「イタリア王国海軍」時代の制服をほうふつとさせる白い詰襟姿で、いつものような優しい笑みではなくきりりと唇を引き締めている。演説台に立った提督に合わせ、カヴールの号令がかかる…


提督「えー…いよいよ本日より『ケルケナー諸島方面作戦』を開始します。目的は人道支援であり、内容はチュニジア、ないしリビア「トリポリ」への物資輸送となります」そうした作戦で撃沈された軽巡「バルトロメオ・コレオーニ」やトゥルビーネ級駆逐艦の「エスペロ」は居心地が悪そうに身体を動かした…

提督「本作戦は潜水艦を使って敵哨戒網をかいくぐる難度の高い作戦です。もちろん海軍航空隊、鎮守府の基地航空隊の援護はありますし、間接援護の艦隊として戦艦を中心とした部隊も出撃させます……」見ないようにしていたがつい作戦のカギである「R」級や「カッペリーニ」級に目線が行ってしまう…

提督「とはいえ、発見された場合は強行せずに帰投すること…必要とあれば物資の投棄もやむをえません」

提督「…最後に、みんなが戻ってきたら盛大に作戦成功の晩餐会を開きます……おいしい鶏のローストが待っているから、絶対無事に帰ってくること!」…テーブルにはシャンパンのグラスが置かれていて、提督は自分のグラスをとりあげた

提督「では、大漁と無事の帰投を願って…乾杯!」

一同「「乾杯!」」グラスを掲げて一気に飲み干し、出撃組は波止場に向かった…


…波止場…

提督「…気を付けてね、ロモロ」今回の主役である潜水艦たちを見送りに来た提督…波止場に並んだ一人ずつと順番に手を握り、左右の頬にキスをする……当初は一グループ六隻の部隊を四つまで運用することになっていたが、たびたび手が足りない鎮守府の援護をして戦果を挙げたおかげか、今では最大三十六隻の大きな艦隊を運用する許可が下りていた…

ロモロ「お任せあれ♪…「ローマは一日にしてならず」……あれだけ練習したんだもの、絶対上手く行くわ♪」

レモ「そのとーり、レモとお姉ちゃんにお任せです…戻ってきたらレモは提督と……じゅるっ♪」舌なめずりをして提督を眺めるレモ…こんな時でも屈託のないロモロとレモに、提督も少しほっとした……

カッペリーニ「私も困っている人たちに物資を届けられるよう、精一杯努力いたします」

トレーリ(マルコーニ級大型潜)「トレーリも頑張ってきますね♪」

提督「気を付けるのよ?」

トレーリ「大丈夫ですっ、日本まで行くのに比べたらお散歩みたいなものですから♪」

提督「トレーリ…距離は近いけれど、油断しちゃだめよ」両肩をつかんで顔を近づけた…

トレーリ「は…はい///」

ミッカ「大型機雷敷設潜ピエトロ・ミッカ、出撃準備よし…ふぅ、補給作戦は何度やっても慣れないものですね……」戦中は補給任務に明け暮れたミッカも、やはりどこか落ち着かない……

提督「落ち着いてやれば大丈夫…きっとうまく行くわ」

ミッカ「…そうですね、私も頑張ります」

アトロポ(フォカ級大型敷設潜)「命の糸は私が切るのよ…深海の連中じゃないわ」…寿命を司る三人の女神「モイライ」の一人で、ハサミを持った「アトロポ」(アトロポス)は裁ちばさみをしゃきん…と鳴らした

提督「その意気よ…だって私とアトロポには赤い糸が結ばれているものね」

アトロポ「それなら……その糸だけは切らないでおいてあげる♪」

提督「ええ…ありがとう♪」

アトロポ「ふ…じゃあ行ってくるわ」艦を「呼び出せる」深さの沖合に向かっていく潜水艦たち…ついで援護の戦艦隊が波止場にやってきた……


リットリオ「提督、リットリオも頑張ってきますね♪」くりっとした瞳をきらめかせ、提督のキスを嬉しそうに受ける

チェザーレ「ブリタニアの艦隊相手に戦うのは久しいな……しかし今回は陽動のようなものだからな、うんと暴れさせてもらおう!」腰にローマ風の長剣を差し、紅のマントも堂々としたチェザーレ…

デュイリオ「うふふっ…帰ってきたらうんとごほうびをいただくわ、提督…♪」いつものように悩ましげな声を出しながらも、しゃんとしているデュイリオは、ふと思い出したように小さく片手を振ってみせた

ドリア「提督…このドリア、必ず任務を成功させます」こちらも、いつものおっとりした様子ではなく凛々しげな表情を見せるドリア

提督「ええ…みんな、期待しているわ」

リットリオ「はい…では第一戦艦戦隊、出撃しましょーう♪」高速戦艦らしく軽やかに沖に出ていくリットリオと、それに追随するチェザーレたち…
846:2017/10/15(日) 02:48:17.38 ID:
エウジェニオ「ふふっ…出撃前に幸運の女神さまとキスできるなんて最高ね♪」…続いてやってきたのが戦艦隊の護衛に付く水雷戦隊の二隊…旗艦には高速補給任務に就いたこともある「デュカ・ダオスタ」級軽巡エウジェニオと、イタリア軽巡の至宝「アブルッツィ」級の「ジュセッペ・ガリバルディ」…そして高性能の「ソルダティ」級駆逐艦がそれぞれのグループに四隻づつ……

ガリバルディ「提督、私に任せておいて…♪」女好きでもあるガリバルディはぱちりとウィンクした…

提督「ええ、リットリオたちの守りは任せたわ」

レジオナリオ「提督!ローマ軍団の栄光にかけて、チェザーレ様は私が何としてもお守りします!」艦名が「レジオナリオ」(ローマ軍団兵)だけあってチェザーレに心酔している…

コルサーロ「へっ…ま、あたしがバッサリやっちまえばいいわけね♪」ソルダティ級第二グループの「コルサーロ」(※地中海のアラビア海賊…英語で言う「コルセア」)はシミタール(三日月刀)を腰のベルトにぶちこみ、にやりと凄んでみせた

提督「勇敢なのね…でも、無理はしないで?」

コルサーロ「よしなよ、提督…そんなこと言われたらせっかくの気合いが抜けちまう♪」

ヴェリーテ「コルサーロは相変わらずですね…」大戦中、受けた損傷の修理を早めるため、未成に終わった「カリスタ」(戦車兵)と接合した経緯がある「ヴェリーテ」(軽歩兵)は左右の瞳の色が違うオッドアイで、顔も半分ずつ微妙に違って見える……二重人格めいたところなど、色々な所で二人分の特徴を持っているヴェリーテは背中に短銃身仕様のカルカーノ小銃を背負い、戦車兵の皮コートを羽織っている…


グラナティエーレ「とにかく、しっかり戦艦を守ればいいのよ」…ソルダティ級第一グループの「擲弾兵」ことグラナティエーレは「ディアボリ・ロッシ」(※赤い悪魔…戦中のイタリア手榴弾が危険であることを示すために赤く塗装されていたことから……が、実際には投げても不発だったり、逆にピンを抜いていないのにいきなり爆発したりと味方にとって危険な手榴弾だったので、皮肉をこめてつけられたあだ名)と言われた手榴弾を腰のベルトに下げている…


アスカーリ「んだ、戦艦さ守れれば後はどうとでもなるでな…///」相変わらずアフリカ訛りが治らない「アスカーリ」(植民地兵)は赤いフェズ(トルコ帽)に褐色の肌で、提督のキスを受けると真っ赤になった…

アルティリエーレ「とにかくぶっ放してやればどうにかなるわよ」…何につけても弾幕と火力を要求する「アルティリエーレ」(砲兵)…数学が得意で巨砲にあこがれていて、よくリットリオについて回っている

アヴィエーレ「今日は上空援護が完璧だから大丈夫さ…」アヴィエーレは長い絹のマフラーを後ろに垂らし、オールバックの髪をかきあげた

フチリエーレ「どんな相手でも一発でおしまいにしてやればいいわ」ライフル歩兵の「フチリエーレ」は銃身が長いバージョンのカルカーノ小銃を背負って、ぐっとこぶしを握った…

提督「それじゃあ、気を付けてね」

エウジェニオ「了解♪…水雷戦隊、出るわよ!」

ガリバルディ「では、私たちも行こうか♪」

提督「行ってらっしゃい…帰りを待ってるわね」

ガリバルディ「任せておいて」

提督「これで全員出撃したわね……って、だあれ?」…作戦に参加するすべて艦を送り出したはずの提督だったが、また誰かの足音がしたので振り向いた…





847:2017/10/16(月) 00:57:21.54 ID:
ミッチャー提督「ハーイ♪」ミッチャー提督がカーキ色の略装に「DD-445 フレッチャー」の野球帽をかぶってやってきた…両脇には艤装を付けたエンタープライズとフレッチャーを従えている…

提督「ジェーン?…エンタープライズとフレッチャーも、艤装を付けてどうするの?」

ミッチャー提督「ヘイ、冗談は止してよ…どういう意味か分かるでしょ?」

提督「一緒に出撃するつもりなの?…だめよ、何かあったときに貴女にまで責任がふりかかって来てしまうわ……気持ちは嬉しいけど…」

ミッチャー提督「ちっちっ…誰が「一緒に出撃する」なんて言った?……うちのエンタープライズとフレッチャーは「イタリア艦隊の戦いぶりを観察する」ために、ア・リトル(ほんのちょっと)沖に出るだけよ……その途上で敵さんに出会ったら、まぁ「自衛のために」艦載機を出すことになるだろうけど♪」

エンタープライズ「艦載機は状態も万全です。…装備はF6Fにヘルダイバー、アヴェンジャー、5インチ主砲に40ミリボフォース、20ミリエリコン………まぁ、深海お化けが向かってくると言うのならウズラの群れみたいに蹴散らしてあげますよ♪」

フレッチャー「こっちもばっちり。深海のあまっこどもに一発ぶちかましてくるわ♪」

ミッチャー提督「…という訳でね、波止場を借りるよ♪……ビッグE、フレッチャー…準備オーケー?」

エンタープライズ「オーケーよ、マーム」

フレッチャー「オーケイ!…頭はクール、ハートは最高にホットになってるわ!」

ミッチャー提督「グレイト!…それじゃあ、出撃!」

エンタープライズ「行ってくるわ」

フレッチャー「カンピオーニ提督、戻ってくるまでに私たちの分のごちそうも用意してよね♪」

提督「ジェーン…」

ミッチャー提督「なぁに、怒られたって構いはしないわ。こういう時に力を貸さないで何が「提督」よ……って、どうやらそう思ったのは私だけじゃないみたいね♪」…あごをしゃくった先には艤装を付けた「足柄」、「龍田」、「リシュリュー」、「ジャンヌ・ダルク」と、きっちりと軍装を身にまとっている百合姫提督とエクレール提督が歩いてきていた…

提督「二人とも…」

百合姫提督「どうせなら途中までお見送りしに行きたいって言うから…ね、足柄?」

足柄「えぇ、ただのお見送りよ、お見送り!……別に陽動攻撃するつもりなんかないわよ?」

龍田「そうよぉ…勘違いされても困るわねぇ♪」そう言いつつ、にっこり笑みを浮かべる

提督「ありがとう、姫。……それにマリー、貴女まで来てくれるなんて思わなかったわ…♪」

エクレール提督「勘違いなさらないで欲しいですわね?……わたくしは必要なものが出来たので、リシュリューとジャンヌを急ぎトゥーロンまで戻さなければならなくなりましたの……ただ、そのルートが少し南寄りなだけですわ///」

リシュリュー「ええ、あくまでもそういうことですので…」

ジャンヌ「そういうことです!…神のご加護を受けフランスを勝利に導くこのジャンヌが、どうしてイタリアなど助けましょうか!」

提督「……マリー、心から感謝するわ」

エクレール提督「ですから、わたくしはあくまでトゥーロンから取って来てほしいものがあるだけですわ…!」

足柄「さぁ、早くしないと「お見送り」できなくなるわよ!」

百合姫提督「そうね…重巡「足柄」、軽巡「龍田」、出撃準備よろしい?」

足柄「準備よし、いつでも行けるわ!」

龍田「同じく、準備よし♪」

百合姫提督「よろしい…それでは出撃、どうぞ!」

足柄「了解…足柄、出るわ!」

龍田「龍田、行くわよぉ♪」

エクレール提督「さて…リシュリュー、ジャンヌ」

リシュリュー「いつでもよろしいですよ」

ジャンヌ「こちらも!」

エクレール提督「では出撃…いえ、その……行ってらっしゃいな」

リシュリュー「高速戦艦リシュリュー、参ります」

ジャンヌ「練習巡洋艦、ジャンヌ・ダルク、行きます…フランスに栄光を!」

ミッチャー提督「これで全員ってわけだね…さぁ、通信室に行こうか♪」

提督「ええ」

………
848:2017/10/16(月) 02:31:57.52 ID:
…通信室…

提督「さてと…」

…席に着いて肘を机に乗せ、指を組み合わせる提督…艦隊用の無線電信の前にはマルコーニが座り、いつでもモールス信号のキーを叩けるように身構えている…ライモンは机に固定されている大きい海図の上でT字型の棒を使って青い駒を動かし、艦隊の動きをプロットしている……提督の右隣では小さい金の十字架を首にかけているカヴールが立ち、左には提督が通信をさばききれないときのために、数人がインコムをつけて座っている。そして一段後ろの「観覧席」にミッチャー提督たちが腰掛けている……

ミッチャー提督「まぁ、まだ動きはないだろうね」

提督「そうね……あっ」海軍航空隊の周波数に合わせてある無線機が鳴り始め、提督は対応するスイッチを入れ、インコムを耳にかけた…

無線「こちら「ビアンカ(白)1」……タラント第六、聞こえますか…どうぞ?」P3対潜哨戒機のアントネッリ中佐から無線が入った…

提督「こちらタラント第六、ビアンカ1、感度明瞭です…どうぞ」

アントネッリ中佐「タラント第六、こちらは現在、高度3000メートルで哨戒飛行中…何か見つけたら随時連絡するわ、どうぞ」

提督「了解、みんなの分もお礼を言わせてもらうわ…ありがとう。どうぞ」

アントネッリ中佐「お気になさらず♪…以上、通信終わり」

ミッチャー提督「…?」

提督「P3のパイロットの中佐なんだけど、哨戒ルートを変更してくれたの」

ミッチャー提督「P3オライオンか…やるじゃない」

提督「手に入る支援は何でも使わないとね…」と、空軍からの無線が点滅した

トリエステ「…こちらタラント第六、感度明瞭です、どうぞ」トリエステが応答し、司令官に代わると相手に告げた…スイッチを切り替えうなずいた提督

無線「…こちら「ステラ(星)4」、タラント第六へ敵情報あり、どうぞ」AWACSの訓練飛行ルートを変えてもらうようヴィオレッタ少佐に「頼んだ」かいあって、索敵訓練中のAWACS(空中早期警戒機)が敵を見つけてくれた……とはいえこれも「深海棲艦」の特性なのか、艦娘が装備する大戦中のレーダー以外では上手くコンタクトが捉えられず、ぼんやりと「そこに何かがいる」程度にしか映らない…

提督「こちらタラント第六司令官、内容をお願いします。どうぞ」

無線「敵影あり、位置は…」座標を聞いて海図をにらむ提督…

提督「敵の詳細は分かりますか、どうぞ?」…だめもとながら一応聞いてみる提督

無線「こちらステラ4、相変わらずコンタクトはぼやけていて詳細不明…反応は小型で数は五、18ノットで東に向けて航行中。どうぞ」

提督「…了解、引き続き敵情報があったら通信願います、どうぞ」

無線「ステラ4、了解…そちらの「艦娘」たちが無事帰投できるようこっちからも祈っておきますよ、司令官」

提督「こちらタラント第六、感謝します…そちらもよい飛行になりますように、以上」

無線「どうもありがとう。通信終わります」…通信を伝達するとライモンが紅い駒を置く……

ミッチャー提督「うーん…」

提督「戦艦戦隊へ連絡、「敵艦あり。シルエットは小型、数は五……」位置と座標、速度と進行方向もね」

マルコーニ「了解」トトン・ツーと小気味よいモールスの音が響く…

提督「ふー…」緊張をほぐそうと深呼吸し、机の上に置かれた濃いコーヒーをすすった…

………

…一方・食堂…

フェラリス(アルキメーデ級大型潜)「うー…」難しい作戦に出撃しているみんなの事が心配で、落ち着かない様子のフェラリス…

ガリレイ(アルキメーデ級)「あー…うーん……」こちらも歩き回ってみたり、貧乏ゆすりをしてみたりと忙しいガリレイ…

オリアーニ「あぁ、もう!うっとうしいわね!」…こちらも心配でしょうがないが、「新型軽巡について行ける優秀な艦隊型駆逐艦」として模範を示そうと、雑誌をめくり落ち着いたふりをしていたオリアーニ…が、目の前でウロウロしているアルキメーデ級の二人にこらえきれなくなって叱りとばした

フェラリス「そうは言っても…」

ガリレイ「みんなのことが心配なのよ。まだ安全な海域だって分かっていても、北アフリカ沿岸に敵影があった…っていうし」

オリアーニ「分かってるわよそんなこと!…暇だから落ち着かないのよ、いつもの「錬金術」とやらをやったらどう?」

ガリレイ「錬金術は集中していないと失敗するから…部屋を吹き飛ばしたくはないし」

オリアーニ「あぁ、もう使えないわね……何か他にないわけ?」

フェラリス「あとは…えーと……」

ガリレイ「…ギターくらいね」

オリアーニ「ギターね…いいじゃない、みんなに聞かせてあげれば喜ぶわよ♪」

ガリレイ「うーん…まぁ、そうね……じゃあ、取って来るわ」

フェラリス「あんまり披露したくはないのだけど……」
849:2017/10/18(水) 11:59:10.52 ID:
ガリレイ「取って来たわ…よいしょ」ガリレイは椅子に腰かけて飾り気のないギターを抱えた…

フェラリス「ふー…まぁ、やってみましょうか」

オリアーニ「そうそう、軽くでいいから♪」

セラ「お二人とも、ギターですか?」

フェラリス「そうだけど…まぁ、良かったら聞く?」スペイン内乱時、秘密裏にフランコ側に参加した思い出があるせいか、スペイン帰りをやたら隠そうとする二人……実際はほとんど隠せていないが、それもまたチャームポイントになっている

セラ「はい。やっぱり出撃しているみんなのことが気になりますし、集中できなかったので…」読みかけの「クオレ」にしおりを挟んで閉じると、椅子を近寄せた

クリスピ「私もそうする…いい?」セラの横から本を眺めていたクリスピも、セラが本を閉じたので椅子を引っ張ってきた…

オリアーニ「ほら、始めなさいよ♪」

ガリレイ「ん、じゃあ始めようか…」軽く音を出し、お互いに視線を合わせる二人…二、三回胴を叩くと弾きはじめた


…最初こそ恐るおそると言った具合の二人だったが、そのうちにスペインの風を思い出してきたのか演奏に熱が入っていく。曲は情熱的でハイテンポなルンバ・フラメンカで、だんだん暇を持て余していたり、出撃組の様子が気になって集中しきれないでいたみんなが集まり出した…


ジュッサーノ「…二人とも上手ね」ファッション雑誌を広げたままテーブルに伏せて置き、椅子を持ってくるとセラにささやいた

セラ「…はい」

アヴィエーレ「へぇ、うまいもんじゃないか……あ♪」

ルカ・タリゴ(ナヴィガトリ級)「どうしたの…?」

アヴィエーレ「いや…この曲、私がやっているゲームのオープニング曲なんだ……日本のゲームなんだけど、この間提督に注文してもらってね」

タリゴ「…フラメンコがテーマ曲ってことは、スペインを舞台にしたゲーム?」

アヴィエーレ「いや、ジェット戦闘機の空戦ものだよ…相手の女性エースが引退してフラメンコ・ダンサーになっているのさ……」

タリゴ「へぇ…そうなの」

アヴィエーレ「またこの曲が華々しい空戦によく合っているんだ…『よう、相棒』ってね♪」

タリゴ「今度貸してもらおうかしら…」

アヴィエーレ「あぁ、いいよ」

エスペロ(トゥルビーネ級)「…二人とも」

アヴィエーレ「あぁ、ごめんごめん…」

ガリレイ「…こんなだけど少しは楽しめた?オリアーニ?…って!?」

フェラリス「どうしたのガリレ……うぇ!?」…二人が曲を終えてふと視線を上げると、十数人が椅子を持ってきて囲むように座っていた

ガリレイ「ちょっと!?……いつからこんなにいたの?」

オリアーニ「そうねぇ……だいたい二、三分あたりから…って所じゃないかしら」

フェラリス「うわぁぁ…どうしよう……///」

ジュッサーノ「恥ずかしがることはないじゃない…上手だったし」

ガリレイ「そこじゃないんだって……あぁ、もう///」

アヴィエーレ「とっても上手だったよ♪」

提督「…そうね、上手だったわ」

アヴィエーレ「うわっ!?…提督っ?」不意打ちにびっくりして飛び上がった

提督「はーい、アヴィエーレ♪」…普段はキザっぽいアヴィエーレの仰天した様子が面白く、提督は失礼にならない程度でにっこりした

ジュッサーノ「出撃組の様子はどう?…エウジェニオとガリバルディなら大丈夫だと思うけど……」

提督「ええ…しばらく安全な海域だから、その間にみんなの様子を見に来たの……急ぎの連絡にはこれもあるし」詰襟のきつそうな胸ポケットに押し込んである携帯電話を指差した…

オリアーニ「私たちはそこそこ上手くやってるわ」

提督「そう、ならいいわ…お昼は好きにしていいけど、エリトレアの手伝いはしてあげてね」

オリアーニ「了解」

………
850:2017/10/19(木) 01:28:37.27 ID:
…通信室…

提督「はい、戻ったわ」

ミッチャー提督「みんなの様子はどうだった?」レーダー画面を眺めつつ声だけかけた

提督「ん、仲良くやってたわよ…そろそろお昼食べて来たら?」

ミッチャー提督「そうだね、ドンパチはまだ始まらない感じがするし……じゃあちょっとパクついてくるわ」不思議と戦闘が始まりそうになると、その気配を察知できるミッチャー提督が「今はまだ始まらない」と席を立った…

百合姫提督「では、私も…」百合姫提督は年上のミッチャー提督に遠慮していたのか、少し遅れて席を立った

提督「マリーは?」

エクレール提督「ノン…わたくしはまだ空腹ではありませんの」

提督「そう?…食べられるうちに食べておかないと、いざという時にお腹が減って頭が回らないわよ?」

エクレール提督「ですから大丈夫ですわ……」そう言ったそばから、くぅぅ…と小さくお腹が鳴った

提督「ほらね?…レーダーは私が見ておくし、何かあったら携帯電話にかけてあげるから」

エクレール提督「ですが…」

提督「いいから行ってらっしゃい…横でずっとグーグー言われてたらかなわないわ」

カヴール「ふふっ…♪」

エクレール提督「わ…分かりましたわ///」カヴールに小さく笑われて恥ずかしくなったのか、急に立ち上がると出て行った…

提督「ふぅ…全く強情なんだから」

カヴール「きっと提督の前ですから、やせ我慢していたのですね…可愛い方ではありませんか♪」

提督「うふふ…そうね。…ところで、カヴールも今のうちに行ってきたら?」

カヴール「そうですね、まだ友軍の制空圏内ですし……提督はどうなさいます?」

提督「さっき食べてきたわ…エリトレアの作った美味しいアラビア風カレーとカツレツをご飯で♪」お腹をぽんぽんっ…と軽く叩き、いたずらっぽくウィンクした

カヴール「まぁ、カレーとご飯とは珍しい組み合わせですね?」

提督「ふふっ…エリトレアいわく、足柄が出撃前に手伝ってくれたそうよ」

カヴール「そうですか……ではせっかくですし、いただいてきましょう♪」

提督「ええ、美味しかったわよ♪……通信機は私が見ておくから、マルコーニたちも交代で行ってらっしゃい。ちゃんと取っておいてくれているけど、あれは冷めると美味しくないわ」

マルコーニ「じゃあ…行ってこようかな♪」ヘッドフォンを外すと提督に預け、カレーの匂いに鼻をひくひくさせながら出て行った…

提督「えぇ、ゆっくり味わっていらっしゃい♪」

トリエステ「ライモンド、お先にどうぞ?」奥ゆかしい性格のトリエステだけあって、さっそくライモンに譲ろうとする

ライモン「いえ…わたしはまだ平気ですから、トリエステこそ食べてきて下さい」こちらも控えめ、かつ気配りの出来るライモンだけあってトリエステに譲った…

提督「ふふ…もう、分かったわ♪」苦笑いしながら内線電話に手を伸ばした…

提督「食堂、聞こえる?…早くなって申し訳ないのだけど、午後の当直でお昼を済ませた誰かを通信室に呼んでもら…シロッコ?そう、じゃあ少し早いけれどお願いするわ」受話器を置くとにっこりした

提督「シロッコとザラが来てくれるそうよ。二人が来たらあなたたちは食堂に行って、たっぷり食べてくること…命令よ♪」

ライモン「は、はい…///」

トリエステ「了解///」

提督「よろしい♪」
851:2017/10/19(木) 02:48:29.38 ID:
…同時刻・イオニア海…

足柄「私の特製カツレツは気に入ってくれたかしらね?」…つたないイタリア語と英語と日本語のちゃんぽんで、何とかエリトレアに「勝つ」と「カツ」でゲン担ぎになっていることを説明して、出撃前にカツレツを揚げてきた足柄……とはいうものの、カツレツそのものは揚げたての端っこを味見がてら一切れつまんだだけで、艦上で食べているのは三角形の握り飯だった…

龍田「気に入ったと思うわぁ…足柄のカツレツは本当にさくさくで美味しいもの♪」お互いに握り飯を頬張り、抜けるように青い上空に目を向けながら手信号でやり取りする…

足柄「龍田の「竜田揚げ」も美味しいわよ…さすが、名前の由来になったって言われるだけあるわ」

龍田「まぁ、うれしいわぁ…でも、誰も「竜田揚げ」って書いて、「龍田」揚げって書いてくれないのよねぇ……」言いながら百合姫提督が持たせてくれた握り飯をしげしげと眺めた…


…今回の難しい作戦に頭を悩ませていた提督を見て、百合姫提督は数日前から足柄と龍田を陽動艦隊に同行させようと考えていた。そして出撃前夜には「当日分のお昼だけでも」と、二人に五目飯の握り飯を準備していた……手の小さい百合姫提督が一生懸命大きくなるように握ったらしい三角形の「握り飯」は可愛らしい感じに仕上がっていて、無骨な「握り飯」というより、「おむすび」と言った方が似合っている…


龍田「美味しい…♪」前方を輪形陣で進む、軽やかな淡灰色と濃い灰色で迷彩を施したイタリア艦隊を見つつ、もう一口頬張った…


……経木の弁当箱に互い違いに入れられ、三個が上手く納まっている「おむすび」は刻んだ牛肉、人参…それにどうやってイタリアで手に入れたのか、牛蒡(ごぼう)に椎茸、油揚げが入っていて、砂糖と醤油、みりんで甘辛く味付けされている…硬めに炊いたご飯にうまく煮汁が染みこみ、噛むたびにじんわりと風味が広がる…


龍田「ふぅ…ごちそうさま」小さく手を合わせると弁当箱を閉め、今度は瓶のサイダーを取り出して王冠をポンとはねあげ、ちびちびすすった…

龍田「んー…美味しいわぁ♪」前部14サンチ主砲の脇に座って脚を投げだし、心地よい海風に髪をなびかせた……

龍田「向こうでは今頃カレーを食べている頃かしらねぇ…」


…そのころ・鎮守府の食堂…

カヴール「エリトレア、いい匂いですね」

マルコーニ「うぅむ、何ともたまらないスパイシーな香りだねぇ」

ライモン「なんだか、お腹が空いてきちゃいますね♪」

トリエステ「なんとも刺激的な感じですね」

エリトレア「そうでしょう♪……何しろエリトレア特製の「アフリカ風カレー」ですからね、ひと味違いますよぉ?」…周囲にに赤と緑、金色で幾何学模様が描かれたエキゾチック風な皿に、たっぷりとバターライスを盛った……端っこには刻んだピクルスが載せてあり、湿っぽくならないよう別皿に「足柄のカツレツ」が置かれている…


カヴール「まぁ、美味しそう」まだ鍋で湯気を立てているカレーをたっぷりとよそう…黄色っぽくて、野菜が煮とろけているカレーからは、ペルシャあたりのスーク(市場)のような香辛料の香りが立ちのぼってくる……

エリトレア「ごゆっくりどうぞ♪…おかわりもたっぷりありますからね♪」…よく見るとエリトレアもアフリカの民族衣装のような紅い服を着て、雰囲気を出している…

ライモン「今日はエリトレアもアフリカ風ですね、よく似合ってますよ」

エリトレア「いやぁ…そんなに褒められたらサービスしちゃいますよ?」へらでもう一しゃくい分バターライスを盛った…

ライモン「え…こんなに食べられませんよ…」

エリトレア「大丈夫ですって、きっとぺろりですから♪」

ライモン「そ…そうですか……」カレーを盛って席に着いた…側には辛い食べ物によく合う、熱いストレートの紅茶がガラスのポットに入っている……

カヴール「では…♪」スプーンで丁寧にすくって口に運んだ…と、にっこりするカヴール

エリトレア「どうですかぁ?」厨房から声をかけてきた

カヴール「とっても美味しいです♪」

…エリトレア言うところの「アフリカ風」豚を使わないカレーのことらしく、今回は鶏腿肉のぶつ切りと手羽元がゴロゴロ入っている。それをどうやらスパイスと玉ねぎ、トマトでよく炒め、それをスープストックで伸ばしたものらしい……ピリリと辛くさっぱりした汁気の多いカレーと、ぱらりとしたバターライスがよく合う……時々明るい金色に揚がっているさくさくしたカツレツを食べ、口が辛くなってきた時は渋めのオレンジペコーをすする…

ライモン「ん…本当に美味しいです♪」

エリトレア「でしょう♪」

………


854:2017/10/21(土) 02:17:44.93 ID:
…食後…

ミッチャー提督「いやぁ、旨かったね♪…ライス・アンド・カリーにチキンのカツレツ、最高の組み合わせだったよ♪」

エリトレア「カツレツは足柄さんが揚げたのを出しただけですし、そんなにほめられると照れちゃいますね♪」

エクレール提督「いいえ、なかなか美味しかったですわ。良く煮込まれた鶏がほろほろと崩れて……それにスパイスの比率もなかなか…少なくともコリアンダーにクミン、ケイパーに唐辛子、黒胡椒とカイエンペッパー(赤胡椒)…あとはナツメグにローリエが入っていましたわね?」

エリトレア「うわ!……よく分かりましたね?」

エクレール提督「これでもスパイスやハーブにはうるさい方ですもの」

百合姫提督「私はスパイスの事を良く知らないけど……最初は炒めた玉ねぎのおかげで少し甘くて、そのうちピリッと辛くなって美味しかった…汗かいちゃったわ」…カレーが跳ねないように上着は脱いでいたが、紅潮した頬を軽く押さえ、汗ばんだ額を手ぬぐいで拭った……

カヴール「百合姫提督の言うとおりですね…辛くて食欲が刺激されました♪」少し恥ずかしそうにおかわりしていたカヴール…口もとを上品に拭うと熱い紅茶をひとすすりした…

ライモン「チキンのカツも美味しかったです、胸肉だからさっぱりしてましたね」

エリトレア「はい、ささみや胸肉は煮込むとパサパサになってしまいますから…どうしようかと思っていたら足柄さんが「カツレツにしましょう」って、アイデアをだしてくれたんです♪」

百合姫提督「あぁ…ふふ♪…それはね、「チキンと勝てるようにチキンのカツレツにしたら?」って私が言ったからなの♪」一人でくすくす笑っている百合姫提督…

エリトレア「あー…ダジャレですか……」不思議そうなカヴールたちやミッチャー提督たちに何とか説明するエリトレア…

ミッチャー提督「はははっ、なるほどね♪…じゃあポークは?」

百合姫提督「とんかつだと「とんとん拍子で勝つ」ように…ね♪」

ミッチャー提督「ビーフは?」

百合姫提督「んー…相手を「ぎゅうぎゅう」の目に合わせるのかしら?」

エリトレア「これ以上は止めて下さいよ…私は通訳じゃないんですからねっ?」

ミッチャー提督「ソーリィ…訳しにくい事を聞いて悪かったわね……」と、不意に何かを考え込むミッチャー提督…

エリトレア「…どうしました?」

ミッチャー提督「いや、なんだか引っかかるような…敵さんに動きがあるような気がするわ……日本でカツレツと言えば「ウースターソース」をかけるから、「ウースター」つながりで駆逐艦を連想したのかも知れないけど…」

エクレール提督「ウースター…?」

百合姫提督「えーと、確か「アドミラルティ改W級」で…第一次大戦には間に合わなかったけれど、第二次大戦では海峡艦隊の在籍になっていた……基準排水量1140トン…速度はだいたい33ノット、主砲は4.7インチ(12センチ)単装4基に…確か53.3センチ三連装魚雷発射管が二基……旧式ながら「ツェルベルス作戦」で「プリンツ・オイゲン」と「グナイゼナウ」に肉薄して、多くの死傷者を出しつつも母港に自力で帰還した勇敢な駆逐艦でしたね…」

ミッチャー提督「うん、アナポリスでも満点の答えだね♪」

エクレール提督「…あの、わたくしにはどうも思い出せないのですが」

ミッチャー提督「そう?…やたら艦橋の高い二本煙突の駆逐艦なんだけど…ジャストウェイ(ちょいまち)……」スマートフォンに入れてある「ジェーン軍艦年鑑」を探した…

ミッチャー提督「あった…はい、これ」

エクレール提督「これですの…確かに主砲が背負い式で、艦橋も艦の大きさに比べてずいぶん高いようで……なんというか、かなりアンバランスですわね」

ミッチャー提督「そうね、一応当時では珍しいレーダー搭載の駆逐艦でね。…笑えるとしたら「ウースター」だけにあだ名が「ソース瓶」だったことかな…とにかく、そろそろ戻ろうか」

カヴール「では、私たちも戻りましょうか?」

ライモン「はい、そうしましょう」

トリエステ「了解」

………

…通信室…

カヴール「カヴール、ただいま戻りました」

ライモン「軽巡モッテクッコリ、同じく」

トリエステ「重巡トリエステ、戻りました」

提督「お帰りなさい…あら、ジェーンも戻って来たの?」

ミッチャー提督「うーん…何か気分がざわざわしてね。レーダーはどう?」

提督「今のところ静かなものよ?……リットリオたちも接敵してはいないし、ロモロたちの方もまだ水上航行しているわ」

ミッチャー提督「そう、なら考え過ぎかな…」
857:2017/10/23(月) 02:08:50.74 ID:
提督「どうかしら…ジェーンの直感って外れたことがないものね……」と、言い終わらないうちにレーダーにぽつんと点が出た…薄暗い画面に出た淡い蛍光グリーンの点には軍の識別コードも民間機の便名も出ていない…

百合姫提督「フランチェスカ、あれ…」

エクレール提督「本当に出ましたわね…?」

ミッチャー提督「当たって欲しくない時に限ってこうなんだから…全く、笑えるわ……」そう言っている間にもAWACSから無線が入ってくる…

AWACS「こちらステラ4、タラント第六へ。敵情報に更新あり、どうぞ!」

提督「こちらタラント第六、ステラ4へ…内容をどうぞ?」

AWACS「こちらステラ4…敵シルエット、速度200キロ程度、コンタクトは単数。針路北東。おそらく航空機……一時間ほどでそちらの艦隊と接触の可能性あり…どうぞ」

提督「了解…機種は分かりますか、どうぞ?」

AWACS「あー…大きさと速度から、おそらく深海側の「ウォーラス」飛行艇、あるいは「ソードフィッシュ」雷撃機ではないかと思いますが、はっきりしません、どうぞ」

(※スーパーマリン・ウォーラス(セイウチ)…大戦中イギリス艦の観測機や救難・哨戒機として活躍した三座の水陸両用飛行艇。コクピット前後に.303ブリティッシュ口径のヴィッカース「K」機関銃を付けた開放型銃座がついている。…カタログスペックは凡庸だったが無類の頑丈さと長い航続距離から活躍し、英軍将兵に愛された)

提督「了解、艦隊に連絡を入れます…情報に感謝します」

AWACS「いえいえ、これが本業なので…ステラからは以上」

提督「了解、通信終わります……マルコーニ、リットリオに打電して「空中早期警戒機より通信…単機の航空機をレーダーで捕捉、そちらと接触の可能性あり」…」

マルコーニ「はい!「……レーダーで捕捉…そちらと接触の可能性あり」…打電終わりました」

提督「了解…」指を組んで肘を机に置いている…

………


…イオニア海・シチリア島沖の東数十キロ…

リットリオ「んっ?……ちょっと待って、通信が来たの」チェザーレと「手旗の練習を兼ねて」おしゃべりに興じていたリットリオに電文が届いた…白い詰襟姿の士官に紺と白のセーラー服を着た水兵が敬礼して電文を渡し、それを横から眺めるリットリオ……

チェザーレ「うむ…こちらも受信している」…艦橋にいるチェザーレの脇を、はっきりしたイタリア王国海軍将兵の姿が駆け抜けていく…あまりにもはっきりしていて「幽霊」とも「幻影」とも言いがたいその姿が急に慌ただしくなり、次々と伝令や通信紙を持った水兵が行き来する……

リットリオ「敵機確認だって…どう思う、チェザーレ?」

チェザーレ「別に「どう」と言うこともないだろう……それが敵なら、相応の火力をもって相手をするだけのこと…違うかな?」

デュイリオ「そうですね、しっかりお相手をしてあげないと失礼ですもの♪」

リットリオ「んー…それはそうなんだけど…交戦規定とか、そういうのは……」

チェザーレ「ふむ。聞いていた限りでは交戦規定はただ一つ…「生き残れ」だと提督も言っていたぞ?」

リットリオ「そういえばそう言ってたかも…じゃあ、準備する?」

チェザーレ「そうだな…まだ早いが情報は伝えた方がいいだろう」

リットリオ「了解。…はーい、ちゅうもーーく!」信号旗をメインマストに掲げ、艦橋から外の回廊に出ると声を張りあげた…

ガリバルディ「了解、見えてるわ。駆逐隊へ、右舷側の援護に付くわよ」するりと護衛位置に付いたガリバルディ

エウジェニオ「信号を了解♪…さぁ、もう少し詰めて左舷側に付くように」

…エウジェニオも駆逐隊の陣形を少し縮めさせ、中央にくさび型に並んだリットリオたち戦艦隊を入れる…その後方、艦隊の中心には「お客様」のエンタープライズ、リシュリューを置き、その後ろ、V字に並んだ後衛の左右に足柄、龍田が付き、V字の頂点にはジャンヌ・ダルク。…対空・対潜能力の高いフレッチャーはエンタープライズたちのそばを遊弋している……

リシュリュー「しかし…何ともちぐはぐなものですね」ふふ…と微笑するリシュリュー

エンタープライズ「同感ね♪」

…艦首の甲板に赤と白の斜線でカラフルな対空識別帯を塗装している以外は単色だったり、淡いグレイと濃いグレイで雲形迷彩や折れ線の幾何学迷彩、艦首にニセの艦首波を白く描いたりと、それぞれバラバラな迷彩を施しているイタリア艦……それに囲まれているのは濃いブルーグレイとグレイの二色迷彩を施したビッグEにフレッチャー…フランス風グレイに面倒なグラデーションが入った迷彩のリシュリューと単色のジャンヌ…濃いネズミ色で明るい地中海では明らかに浮いている足柄と龍田……

リットリオ「いいですね…それでは皆さん、警戒を強めてくださいね?」

エウジェニオ「了解…外側の警戒は任せるわ♪」

レジオナーリオ「了解、ローマの栄光のために!」

コルサーロ「は、深海の飛行艇なんか八つ裂きにしてやるさ♪」…手のひらに唾を吐きかけ、アラビア風の三日月刀を抜くと柄に馴染ませた…

ヴェリーテ「コルサーロは相変わらず勇ましいですね…」そう言うと「もう一人の」ヴェリーテが声をあげた

ヴェリーテ「んー…戦車なら得意なんだけどねぇ……」軽歩兵用のカルカーノ短小銃と、肩にひっかけているベレッタ・モデル1938「モスキト」(蚊)短機関銃を装填した…

グラナティエーレ「ウォーラスに見つかれば、次は猛烈な空襲と決まってるわ…ま、やってくるといいわ♪」艦名が擲弾兵とあって鉄火場には慣れている「グラナティエーレ」は、晴れ渡った上空を眺めて不敵な笑みを浮かべて見せた…
859:2017/10/25(水) 01:44:23.63 ID:
…数十分後…

リットリオ「来ませんねぇ…針路を変えちゃったんでしょうか……?」

ガリバルディ「ま、普段はあれだけ哨戒機がうろちょろしているんだから…そのうちにこっちを見つけるでしょうよ」

…すでに「総員配置に就け!」は済んでいて、リットリオは双眼鏡で水平線を探っていた……イタリア艦としては珍しく開戦直後から数少ないレーダー、EC-3「グフォ」(Gufo)を搭載していたリットリオだったが、不調続きでアテにならないレーダーよりむしろ目の良さをいかし、ガラス張りの眺めのいい艦橋から抜けるように青い空を索敵し、しばらくすると一旦双眼鏡を下ろして艦首を見おろした……二番砲塔の上に設置されているブレダ・37ミリ連装対空機銃の機銃座には、ヘルメットをかぶった水兵たちが配置に就いている…


リットリオ「このまま見つからないと陽動にならないですねぇ…」そう言って肩をすくめた瞬間、右舷側の駆逐艦「フチリエーレ」が甲高い声で叫んだ…

フチリエーレ「機影っ!右舷二十度!」

ガリバルディ「…ほぉら来た!機種は!」

フチリエーレ「あー…」双眼鏡に目を押し付けるフチリエーレ…

アヴィエーレ「ウォーラスだね…間違いない」航空機好きのおかげで、シルエット識別も一流のアヴィエーレ

ガリバルディ「了解。…心配のタネが減ったわね、リットリオ?」

リットリオ「そうですねぇ……それでは、対空戦用意!」

チェザーレ「うむ、待っていたぞ!」チェザーレは個人的なアクセントに、メインマストの戦闘旗と一緒にでかでかと「SPQR」(ローマ軍団)と金で縫い取られた真紅の旗を掲げている…

ガリバルディ「みんな、油断しないでよ?」

アスカーリ「んだ、任せといて欲しいもんだな」駆逐艦たちはきれいに艦隊の外側を守り、120ミリ連装主砲、37ミリ・ブレダ連装機銃、20ミリ・ブレダ連装機銃を向けている…


…一流の戦闘機や爆撃機・雷撃機に比べてひどく遅いウォーラス飛行艇の「推進式のエンジンを上下翼の間に挟んだ羽布張り複葉」というクラシカルなシルエットがゆっくり近づいてくる…リットリオは防御されている装甲艦橋に行こうか一瞬だけ考え、後ろにある金庫室のような重い動力扉を眺めたが、ウォーラス相手にそこまですることはないと思い直した……相手が攻撃力のほとんどないウォーラスだからと言うのもあったが、びびびっ、と風に引っぱられて鳴るイタリア海軍旗、紺碧の海、雲一つない青い空、暖かくて白い波しぶきを送ってくる海風……スリットでしか外を見られない薄暗い司令塔に入りたくないほど、地中海の夏の気持ち良さを集めたようないい天気だった……


リットリオ「通信が送られていますから…そろそろ頃合いでしょうねぇ」…速い速度で叩かれている深海側のモールス符号をキャッチしたリットリオは片舷に六基ずつ並んでいる90ミリ高角砲に指示を飛ばした……スマートなデザインの砲塔に収まった高角砲が徐々に旋回していき、仰角を取る…

リットリオ「目標、ウォーラス水偵!…距離、8000メートル…照準!」

デュイリオ「…では、リットリオにお任せしましょう」

リットリオ「了解♪…それでは、行きますよぉ……右舷一番、撃て!」パウッ!…90ミリ高角砲がひらめくと、数秒後にはかすかな点のように見えるウォーラスのそばでパッと煙が上がった…

チェザーレ「おや、惜しいな…」

リットリオ「む…初弾なんですよ?……右舷二番、てっ!」…旋回を始めて側面をさらしたウォーラスの、しゃちほこのように機体後部が跳ね上がったシルエットが砲煙で隠れる…

アルティリエーレ「おぉ、上手です♪」…「砲兵」だけに巨砲にあこがれ、日頃からリットリオを尊敬の目で見ているアルティリエーレがほめる

リットリオ「むぅ…でもまだ命中には程遠いですね……右舷三番、撃てっ!」…と、偶然うねりに乗ったおかげか、ウォーラスの近くで砲弾が炸裂した……白い煙を引いてゆっくり離脱していくウォーラス…

エンタープライズ「エンタープライズよりリットリオ…追撃にヘルキャットを出しますか?」甲板上で待機させているシーブルーのF6Fを出撃させるか聞いてきた(※ヘルキャット…F6Fの通称「地獄のネコ」……実際にはスラングで「あばずれ女」のような意味)

リットリオ「止めておきましょう…対潜哨戒の艦爆だけでいいと思います」

エンタープライズ「了解、そうします…それと、見事な射撃でした」

リットリオ「グラツィエ♪…これで深海側がこっちに気を取られて、潜水艦のみんなが苦労せずにアフリカへ行きつければいいんですけど…」



………
860:2017/10/25(水) 03:12:40.31 ID:
…その日の夜・2200時ごろ…

ロモロ「ふー…基地の食事が恋しいわ……」潜水艦の狭い厨房で作られ、ご丁寧にディーゼル燃料の臭いまでしていたパンと缶詰のオイルサーディン、チーズとボローニアソーセージ、それにぬるいミネストローネというしょうもない夕食を思い出し、肩をすくめた…辺りは一面の星空で、大した速度も出ていないのでディーゼル機関のゴトゴトいう音も気にならない……

レモ「もぉー、基地のご飯と比べるなんて…全くお姉ちゃんったら♪」


…ドイツの「U・ボート」と違って雨風は防げるが、その分視界の悪い屋根と窓がある司令塔から、夜間哨戒の駆逐艦やコルヴェット艦がいないか入念に探しつつ、レモはお菓子をぱくついた……ロモロたち潜水艦隊は哨戒艦を避けるために潜航していた後なので、暑さと湿気を払おうと冷たい水を飲み、百合姫提督が持たせてくれた広島銘菓の「もみじ饅頭」をむしゃむしゃ食べていた……こしあんとふんわりした生地の「もみじ饅頭」は美味しい上に片手でつかめるので、双眼鏡を見ながらでも食べられた…


トレーリ「でも、私も早く基地のご飯が食べたいです……」こちらは行先が「アフリカ」と言うことでエリトレアが積んでくれたバナナを剥いて、浮上後の疲労回復食にしながら言った…

カッペリーニ「バナナもいいですけれど…ね。あの頃はなかなか食べられませんでしたし……」いまではすっかり安くなったバナナを感慨深そうに眺めるカッペリーニ…

ミッカ「そうですね…でも私は「北アフリカ」と言えば、やっぱりナツメヤシですね」赤黒く、クセのあるプルーンのようなナツメヤシ(デーツ)をつまみながらいった…

アトロポ「そうね…私はナツメヤシ派だわ」ねちっこい乾燥ナツメヤシをゆっくり噛みながら目をこらした…まだ北アフリカの海岸線は見えていないが、何となく砂漠の匂いが漂ってくるような気がしていた……

ロモロ「それにしても…昼間にリットリオたちが陽動してくれたおかげか、全然警戒艦艇が見当たらないわ」…普段なら嫌と言うほどウロウロしている深海側のコルヴェットや護衛駆逐艦、フリゲートなどがさっぱり見当たらない……

ミッカ「それはありがたいですが…それでも機雷はあるかも知れないし、気を付けた方がいいですね」

レモ「うんうんっ、そうだね…それにしても重いなぁ……」船倉に600トンも栄養食や粉ミルクを積んでいるせいで、うねりを受けるとワンテンポ遅れて艦が揺れる……

トレーリ「大丈夫ですか、レモ?」

レモ「うん、へーき…巨乳の人と同じようなものだし♪」そう言うレモ自身がぴっちりした競泳水着からはち切れそうな身体をしていて、身動きするたびにずっしりした胸が揺れ、ヒップが水着に食い込んでいた……

トレーリ「あ、分かります…遅れて揺れるんですよね」トレーリ自身も大型潜なのでその気持ちはよく分かった…

ロモロ「でもいいこともあるわよ…♪」

ミッカ「そう?」

ロモロ「物の置き場所ができるもの♪」たゆん…と揺れる乳房の間に鉛筆とディバイダーを挟み込むと六分儀を持って天測したり、食べかけのお菓子を上手く置いたりしていた……

ミッカ「なるほど…私だと、ちょっと厳しいですね……」決して小さい方でもないミッカだったが、胸を寄せてみたり、腕組みして押し上げてみたりしても出来なかった……

ロモロ「んー、まぁ…私たちは大きすぎるから……いつもは結構不便だもの」

トレーリ「そうなんですか?」

ロモロ「えぇ、そりゃ不便よ…ちょうどいい下着はなかなかないし、ぽよんぽよん弾んでしょうがないから走る時なんかは遅くなっていけないわ」

トレーリ「あー…なるほど」

レモ「うんうん、レモだってたまにはピンクの可愛いふりふりがついた下着が着たいのに…たいていはいやらしい紫とか黒のランジェリーばっかり……」

カッペリーニ「なかなかうまく行かないものですね……では、作戦を終えて帰投したら提督に聞いてみたらいかがでしょう?」

レモ「提督に?」

カッペリーニ「きっと探してくれますよ♪」

レモ「そっか♪……でもレモは提督に下着を選んでもらうより…提督の下着姿を見たいかも♪」

カッペリーニ「あぁ…まぁ、気持ちはわかりますが」

レモ「帰ったら…提督にごほうびをおねだりして……ふふ♪」


………

…鎮守府・通信室…


提督「…くしゅっ!」

カヴール「あら、いけませんね…冷房のせいでしょうか」…軽いケープを肩にかけた

提督「いいえ…なんだか、誰かにいやらしい妄想でもされているような気がするわ……」

………
862:2017/10/27(金) 01:20:23.69 ID:
…通信室・0300時…

ボルツァーノ「提督…少しお休みになったらいかがですか?」カヴールと交代で深夜直を請け負ってくれた重巡ボルツァーノは、「昼寝をしていたので」とまだ元気な様子でいる……

提督「ありがとう……でもこの時間は気が抜けないから…ふぁ……ぁ」あくびをかみ殺し目尻に涙をためつつ、マグカップで何杯目かの濃いコーヒーに手を伸ばす…レーダー画面には刻々と変化する味方の位置と、AWACSとP-3対潜哨戒機が捕捉している敵性コンタクトが表示されている……

アッテンドーロ「そんな生あくびしているようじゃあまともな判断なんかできっこないわ…ボルツァーノの言うとおり、少し休んだら?」…提督に「命令」され、隣の空き部屋に据え付けた簡易ベッドで休んでいるライモンに代わり、妹のアッテンドーロが大テーブルの海図上で駒をプロットしていたが、インコムを付けたまま振り返りもせず言った……

ミッチャー提督「だね…長丁場なんだし、少し休んだ方がいいと思うけど?」あくまでもオブザーバーとして控えめなミッチャー提督

百合姫提督「私もそう…ふぁ…あ…」慌てて手で口元を押さえる百合姫提督…

エクレール提督「そうですわ…無用の損害を出したくないのなら万全の体勢を整えるのが筋でしょう?」

提督「分かった、分かった……ボルツァーノ、十五分だけ寝かせてもらうわ…寝ている間に何か変化があったら起こしてちょうだいね?」

ボルツァーノ「はい…提督、退室されます」

提督「いいえ、ここでいいわ…」後ろにあるゆったりした「お偉方の席」に座ると、しっかりしたヘッドレストに頭を乗せて目を閉じた……

ボルツァーノ「…あら…あっという間に眠っちゃいました……」羽織っていたカーディガンを脱ぐとそっと提督の身体にかける…

ミッチャー提督「無理もないよ…ずっと相手の動きを読んで判断し続けていたんだから……」横目でちらっと見ると穏やかに笑った…

提督「すぅ…すぅ……」

………




ボルツァーノ「…とく」

提督「う…むにゃ……」ほのかに甘い花の香りと優しい揺れが感覚として伝わってくる……

ボルツァーノ「…いとく」

提督「ん…」

ボルツァーノ「…提督、おはようございます」

提督「…っ。おはよう、ボルツァーノ……状況は?」

ボルツァーノ「はい。今は0430時、状況に変化はありません」

提督「0430時?…あれだけ「十五分で起こして」って言ったのに、どうして起こしてくれなかったの」

ボルツァーノ「提督はお疲れでしたし、状況も安定してましたから」

提督「…笑いごとじゃないのよ、ボルツァーノ……私が針路変更の命令を出すつもりだったとしたらどうするの?」

ボルツァーノ「…失礼ですが、提督は艦隊に細かい針路までいちいち指示するような口うるさい性格じゃありません。…リットリオとミッカに一任しているはずですし、もし仮に転針させるつもりだったのなら、私たちにも事前に教えてくれているはずです」

ミッチャー提督「…フランチェスカ、あんまりボルツァーノに言わないでやって?私も起こすのを止めさせたんだ…大丈夫、まだ状況はひっくり返っちゃいないよ」

提督「そう……ボルツァーノ、ごめんなさい。寝起きで頭がすっきりしていないのかも……」

ボルツァーノ「大丈夫です…寝起きなんですから無理もないですよ」

ミッチャー提督「顔でも洗っておいでよ?もし何かあったら呼ぶから」

提督「ありがとう…ジェーンこそ寝ないで平気なの?」

ミッチャー提督「ははっ、私は「丈夫なのが取り柄」ってやつでね…コーヒーの飲み過ぎで胃がむかむかしてるのと、そろそろトイレに行きたいぐらいなものよ」

提督「…じゃあすぐ戻るから、帰ってきたら化粧室へどうぞ?」

ミッチャー提督「アイアイ・マーム。待ってるよ♪」

………
863:2017/10/27(金) 03:12:30.98 ID:
…作戦二日目・0500時…

提督「さて…と」顔を洗いさっぱりし、通信室にハムのサンドウィッチとミルクコーヒーを持ってきてもらって軽くお腹もふくれた提督…すっかり冴えわたった様子で指示を飛ばす……

提督「こちらタラント第六、ステラ4へ…そちらのコンタクト「赤06」の詳細を教えてもらえますか、どうぞ?」転送されてくるレーダー画面に目ざとく緑の点を見つけると、インコムをとりあげた

AWACS「こちらステラ4、タラント第六へ。コンタクト「赤06」は速度およそ250、針路035、数は四…おそらく「ボーファイター」……そちらの艦隊へ向かいつつあるようです。どうぞ」…機内に簡易厨房や仮眠室、トイレまであって「二十四時間営業」のAWACSから昨日のオペレーターとは違う、可愛い女性の声が入る…

提督「了解、それでは…」

AWACS「待ってください。タラント第六へ、さらにコンタクトあり……「赤07」と命名…速度およそ200、針路030…大型グループ、おそらくこちらは「ソードフィッシュ」…そちらの艦隊の推定位置に向かいつつあり。注意を促すことを推奨します」

提督「了解、ご忠告に感謝します」

AWACS「いえいえ…タラント第六、こちらの分まであの「深海のお化け」をやっつけて下さい。以上」

提督「ええ、そうします。通信終わり」

カヴール「いよいよですね…爆撃機や雷撃機がやってくるわけですか……」

提督「ええ…まぁ、ハチの巣をつついたのだからそうなるわ……さぁ、じゃあ「うち」の航空隊を出してくれるよう、シチリアの空軍基地に電話を入れないと…」空軍直通の電話をとりあげてダイヤルした…

………

…シチリア島・トラーパニ空軍基地…


下士官「はい、こちらトラーパニ」


…明け方の空が管制塔をまばゆい黄色に照らし、滑走路わきの草は朝露に濡れていた……コンクリート張りの滑走路に今どきの「ユーロファイター・タイフーン」や「パナヴィア・トーネード」が駐機している向こう側、戦時に使われていた草地の駐機場には各「鎮守府」所属で、艦隊の援護のためシチリアへ進出している第二次大戦時のマッキやレジアーネ、サヴォイア・マルケッティの飛行機が集まっている。最初こそ速度や性能の違いから勝手が分からず扱いに困っていたが、今では空軍基地の管制官もすっかりおなじみになっている……


下士官「了解、タラント第六ですね?…すぐ発進させます」紅い電話を置くと士官に声をかけた

下士官「主任、タラント第六所属の戦闘機隊を発進させるよう電話が来ました」

士官「了解…タラント第六は……あぁ、あそこだ」


…科学者にも金モールべたべたの「エライ人」にもどういう仕組みか全くわからないが、古めかしいダイヤル式電話で昔の基地に電話を入れるとちゃんと反応がある……アメリカでは幻想SF作家「ジャック・フィニイ」の「ゲイルズバーグの春を愛す」で、これと似たようなことが起きるので、これを「ゲイルズバーグ現象」と呼んでいたりするらしい……

士官「タラント第六所属の戦闘機隊、出撃要請…目標位置はマルタ島南東沖40キロ。艦隊に向かいつつある敵爆撃機・雷撃機を迎撃されたし」


…電話をかけると受話器越しに当時の基地のざわめきや飛行士たちの悪態が聞こえてくる…士官はそっと電話を置くと「向こうの」滑走路を眺めた……当時の編制から言うとバラバラではあるが、滑らかできれいなデザインのマッキC202「フォルゴーレ」がエンジンを始動させ、当時の格好をした「妖精」なのか、革の飛行服姿のパイロットたちが操縦席に駆けつけ、機付整備兵がエンジン始動クランクを回しているように見える……


下士官「きれいなもんですね。…速度こそ600キロも出ませんが、おれは今のユーロファイターなんかより好きですね」

士官「ああ、俺もガキのころはよくプラモデルで作ったもんさ…」

…「ドルッ、ドルッドルッドルンッ…!」と、低い響きのDB601エンジンを始動させては次々と滑走路から出撃していくC202戦闘機には、当時の航空団(Stormo…ストルモ)や飛行隊(Squadriglia…スクアドリア)のマークが描きこんである…

士官「おーおー…あれは第四航空団だな」…双眼鏡で胴体の飛行隊番号とエンブレムを見ては感想を漏らした


…エースが集う第4航空団は第一次大戦時代の騎兵上がりのエース、「フランチェスコ・バラッカ」にあやかり、王冠をいただいた盾型紋章に「カヴァッリーノ・ランパンテ」(Cavallino Rampante…「後足立ちする若馬」バラッカの個人紋章。戦後にはフェラーリが許可をもらってエンブレムにしている)を描き、第9航空群は黒地に白馬、第10航空群は白地に黒馬と色で分かれている……特に飛行機好きのアヴィエーレが提督にキスの嵐を見舞ったのが中の一機、第10航空群の84飛行隊長「84-1」号機で、1942年にはエース「フランコ・ルッキーニ」大尉(最終スコア21機)その人の乗機だった…


下士官「あれはどこの飛行隊ですか、少尉?」

士官「んー、あれか?…あー、「黒猫」だから…第51航空団だな」


…サンドイエローにオリーヴグリーンで「煙の輪」迷彩を施したマッキの胴体の後部、識別用の白帯の所に黒丸の縁取りをし、その中に「黒猫が前足で薄緑色のハツカネズミを取る」シルエットを描いた第51航空団「黒猫」……エースの「バナナ」ことエンニオ・タラントラもいた航空団で、大戦時はローマ、ナポリ、シチリア、チュニジアと転戦を重ねた…

士官「次は第三航空団か…あそこもキラ星のようにエースがいたはずだったな……」


…やはり白の胴体帯の所に描かれているエンブレムは、薄青の逆三角形の中に「歯を剥きだし手にダガーを持ったハチ」のコミック風イラストが入っている…航空団の名前もそのものずばりで「ヴェスパ・アラビアータ」(怒ったスズメバチ)と言い、「スズメバチ」だけあって多くのエースを出している…


士官「…よし、みんな発進したな。あとはタラント第六の司令官次第だな」

下士官「海軍さんがどれだけ出来るか見ものですね」次第にDB601エンジンの音も遠ざかり、朝の管制塔はまた静かになった…

………
864:2017/10/28(土) 02:39:10.71 ID:
…0530時・マルタ島沖数十キロ…

リットリオ「鎮守府から通信、「空軍より情報あり、敵航空機多数接近中!」…機種、おそらくソードフィッシュおよびボーファイター!」

チェザーレ「なら対空戦の準備としゃれこもうか♪」艦橋で朝日を浴びながら紅のマントをひるがえしつつ艦隊を眺めると、320ミリ主砲、100ミリ連装対空砲、20ミリ対空機銃を見回した…

ドリア「みなさん、ちゃんと朝食は済ませました?」昨日は何か考え込んでいて静かだったドリアも、今朝は晴れ晴れとした表情をしている…

デュイリオ「ええ、戦闘配置についていた割には美味しくいただけましたよ♪」

…厨房の火は落としてあったが、軍用の噛みごたえがある胚芽入りクラッカーと「対空戦は目が命」だからと鎮守府から持ち出してきたブルーベリージャム、少し粉っぽいチェダーチーズと胡椒の効いたサラミソーセージの厚切り、タマネギのピクルスにグラス一杯の赤ワインを詰め込んでいた…

エウジェニオ「おかげ様で。冷たいおかずしかなかったけど美味しかったわ」

ガリバルディ「駆逐隊のみんなもちゃんと食べたわね?…途中で空腹になっても相手は待ってくれないのよ?」

アスカーリ「うんとこさ食べたよ…もう腹がくちくなって眠りそうだ♪」

ガリバルディ「寝たら主砲を叩きこむわよ?」

アスカーリ「心配せんでいいだよ、ガリバルディ…いくら何でも爆弾が落っこちてくりゃあ目覚めるだでな♪」ニッと笑ってウィンクしてみせた

アヴィエーレ「それにうちの航空隊も出撃したって言うし、きっとここまでたどり着く前に全機撃墜さ」首に巻いた紅いスカーフをひらりと払って、髪に櫛を入れるアヴィエーレ……

アルティリエーレ「ま、戦闘機の洗礼が済んでもこっちにはリットリオの381ミリ砲が待ってるもの…来るならこい、って所よね♪」

フチリエーレ「…私もきっちり当てて見せますから」

リットリオ「みんなやる気みたいですね♪」

フレッチャー「イタリアさんっていうのはやる気になると強いって言うし…どの程度か見せてちょうだいね?」…朝から「乾燥卵ではない」新鮮な卵で作ったスクランブルドエッグに、ポテトのフレンチフライ、ミックスベジタブルの缶詰、脂っこい焼きソーセージを食べ、満足げに口元を拭っているフレッチャー

リットリオ「ふふ、いいですよ♪」

エンタープライズ「こらこら、フレッチャー。あんまり偉そうにしてるとしっぺ返しを食らうわよ?」

フレッチャー「オーライオーライ…ビッグEがそう言うなら大口は叩かないでおくわ」

エンタープライズ「グッド、それでいいわ…リットリオ、艦隊防空にうちのF6F-5を上げたいの、27ノットまで増速の許可を」

リットリオ「了解、幸い海は凪いでいますし、駆逐艦たちもついてこられるでしょう…許可します♪」

エンタープライズ「ロジャー(了解)…27ノットまで増速!飛行隊は発進準備!」


…すでに甲板に係止していたスリートーン迷彩のF6F「ヘルキャット」にばらばらと搭乗員が駆けつける……ぐっと速度を上げたエンタープライズの、風がひゅうひゅう鳴る甲板で次々とプラット&ホイットニーの「R-2800」、2200馬力のエンジンが回り始める…さすが当時のアメリカ製エンジンだけあって、自機のダイナモだけでちゃんと始動を始め、整備員がクランクを回したり始動車が駆けつける必要もない……


アヴィエーレ「おぉ、すごいね……デザインはともかく、技術じゃとっても追いつけないな…」

エンタープライズ「イェス、何しろジーク(ZEKE…零戦21型)に勝つための機体だから…頑丈さではピカイチだし、装備もなかなかよ?」


…「ヘルキャット」は一見したところがっちりしていて、マッキC202「フォルゴーレ」やC205「ヴェルトロ」のようにほっそりと美しい姿ではなく、ドイツの「メッサーシュミットBf109」のような鋭く精悍なスタイル、あるいは流麗なイギリスの「スピットファイア」やフランスの「ドヴォアティーヌD520」に比べて、いかにも不格好で鈍重そうに見えるが、よく見ると後部胴体はぎゅっとおにぎり型に絞られ、後ろ上方の視界を確保している……何より熟成した技術だけで作り上げられた「ヘルキャット」はまったくトラブルとは縁がない。速度こそ600キロそこそこと、2000馬力級の戦闘機にしては少し遅いが、運動性も意外とよく、分厚い防弾板に自動防漏式の燃料タンク…と、多少の弾にはビクともしない無類の頑丈さを誇り、新米パイロットの多くが助けられている…


エンタープライズ「オーケイ、飛行甲板はオール・クリアー…一番機、クリアー・トゥ・ローンチ(発艦準備よし)……テイクオフ!」…轟々と重々しいエンジン音を上げて発艦するF6F。尾翼にはエンタープライズの符号「M」が白文字で書いてある…

アヴィエーレ「おぉ……おぉぉ」

エンタープライズ「全機発艦!上空で待機させます…これで上空のカバーはばっちり、ノープロブレムです」ぐっと親指を上げて見せるエンタープライズ

リットリオ「了解…ちょっとむずがゆい感じですけどね……」米海軍機と直接撃ち合った経験こそないが、戦中は敵方だった「白い星」の国籍マークを描いたヘルキャットが上空にいるとどうも落ち着かない…

…艦隊後方…

足柄「うー…ぞわぞわするわね……」足柄はリットリオ以上に落ち着かず、首筋辺りを撫でながらちらりと横目で上空を見上げる……

龍田「分かるわぁ……撃たないようにするので必死よぉ…」龍田は見上げるたびに25ミリ対空機銃を向けそうになる…

リシュリュー「おやおや…F6Fとは、何ともいやはや……」こちらは戦後に供与を受け海軍で運用しただけに、懐かしさを込めて優雅に手を振るリシュリュー…

ジャンヌ「懐かしいです、あのころのフランスは栄光に包まれていましたから…」

リシュリュー「ともかく、これで上空は問題なしですな…あとはあちらがどう出るか……」

………
865:2017/10/29(日) 01:31:47.47 ID:
…同時刻・鎮守府…

提督「はい、ええ…「ケルケナー諸島の北東十数キロに、重巡二、軽巡三、駆逐艦六の敵艦隊…20ノットで接近中」ですね?…了解」

ライモン「プロットを完了、艦隊への接敵までおよそ一時間!」

提督「結構……もしもし、トラーパニ?…タラント第六ですが、本鎮守府所属の雷撃機隊へ発進を要請します…ええ、はい、助かります…」

トレント「対潜哨戒機から連絡、「トリポリ沖北西数キロに敵コンタクト、針路北西、速度12ノット、数は四…コルヴェット艦「花」級と思われる…」とのことです!」

提督「了解、輸送潜水艦隊に敵座標を転送…追伸に私信で「気を付けて」と伝えて」

トレント「了解、伝達します」

レオーネ「空軍の空中早期警戒機から連絡、「先ほどの敵ソードフィッシュ隊『赤07』には十数機の護衛が合流したもよう…おそらくスピットファイア」とのこと!」

提督「了解……トラーパニ、タラント第六ですが…追加の発進要請です。戦闘機隊の第二波として第73、96、97飛行隊の27機を発進させてください」

トレント「輸送潜水艦隊より打電「了解、潜航し接触を回避する…一同より愛を込めて」とのこと」

提督「了解…あのコンタクトは何?AWACSに問い合わせて!」

レオーネ「了解した」


ミッチャー提督「…うーん」

百合姫提督「相手は航空攻撃の後に艦隊を送り込んでくるつもりでしょうか…」

ミッチャー提督「ほぼ間違いないだろうね、陣形は乱れているし疲れも出るから……だけど空母がいないのが気になるのよ…」

エクレール提督「戦艦もおりませんわね…」

ミッチャー提督「まさかAWACSのレーダーをごまかせるとも思えないけどね…」


…0550時・マルタ島沖…


リットリオ「見えました…だけど、まぶしいですね……!」東から接近してくる雷撃機は昇ってくる太陽を背にしていてまともに直視できそうにない…

アヴィエーレ「ちっ!……だけどあのシルエット、ボーファイターで間違いないよ!」


…接近してくる「ブリストル・ボーファイター」は双発爆撃機「ボーフォート」の戦闘・多用途機型で、一見すると可愛らしく見えないこともない、ずんぐりした丸っこいシルエットだが、イスパノ20ミリ機関砲や爆弾、魚雷、ロケット弾など、多種多様な武装バリエーションと頑丈な機体を持ち「ささやく死神」と自称していた…実際、地中海や大西洋で多くの艦船を屠り、「シップキラー」の称号をほしいままにした恐ろしい相手でもある…

(※ささやく死神…当時の東南アジア戦線で「日本兵がつけた」あだ名だとされるが、そう言ったあだ名は日本側にはなかったのでプロパガンダか……装備している「マーキュリー」エンジンの音が遠くでは聞こえず、接近してから急に大きく聞こえることからイギリス側がそう名付けたらしい)


ガリバルディ「で、うちの空軍はどこにいるのよ!」

アヴィエーレ「まぁまぁ……ほら、来たよ♪」アヴィエーレが満面の笑みを浮かべ上空に向けて指をさした…青い空を背景にして小さくゴマ粒のように見えるのは、きれいな編隊を組んだマッキ「フォルゴーレ」で、稲妻の名にふさわしい勢いで次々とダイブをかけた……

アヴィエーレ「いいぞっ…一機やった!」…高倍率の据え付け型の双眼鏡でのぞくと、低空を這うようにして回避する「ボーファイター」に、次々と「フォルゴーレ」が切り込んでいく様子が見える……フォルゴーレの素晴らしい活躍ぶりにアヴィエーレはぞくぞくした…

ガリバルディ「あら、空軍もやるわね♪…ところでリットリオ、戦闘機の撃ち漏らした雷撃機に対して射撃許可を求めるわ」

リットリオ「はい。…接近してくる相手には任意で射撃を許可します!」

ガリバルディ「了解、じゃあ千人隊の力を見せてやらないとね♪……第一、第二砲塔、目標、右舷二十度の敵雷撃機!距離、16000!…照準!」…ガリバルディの152ミリ三連装主砲が旋回し、仰角を付けた…連装の二番砲塔も同じように旋回して照準をつける……

ガリバルディ「じゃあ、今日の一発目は私からね……一番砲、撃てッ!」バウッ!…と主砲が吼え、遠くの空に煙のシミが残った……

ガリバルディ「うーん…少し短いか……」

リットリオ「なかなかいい位置でしたよ…もう少し上げです」

ガリバルディ「了解…寄ってきてるから15500で行きましょう……二番砲、てっ!」距離を測りつつ一門ずつ放つ…

リットリオ「至近弾です!」

ガリバルディ「私から見ても今のはなかなかいいわ…二番砲塔、照準……撃てっ!」

………
866:2017/10/29(日) 03:22:35.31 ID:
…数十分後…

リットリオ「敵機視認!…ソードフィッシュです!」遠くからでも分かる鈍足の複葉機がノロノロと近づいてくる…

エンタープライズ「また古めかしい機体を……でも、油断は禁物ね」骨董品とはいえ「ビスマルク」撃沈のきっかけを作ったりと、大金星を挙げることの多い「ソードフィッシュ」だけに、上空援護の「ヘルキャット」に指示を飛ばし警戒を強めた…

アヴィエーレ「まぁ、うちのフォルゴーレがあっさり片づけてくれるはず……あ、マズイな…スピットだ!」


…それまで悠々とボーファイターとソードフィッシュに食らいついていた「フォルゴーレ」に、今度は深海側の「スピットファイアMkⅤ」が襲いかかる……あごのような不恰好な防砂フィルターのせいで通常型より「十数キロは遅い」砂漠用スピットに対して、「6000メートルまでなら、マッキは空の王者だった」(10機撃墜のエース、フェルナンド・マルヴェッツィ大尉)という「フォルゴーレ」はお互いに好敵手だった……しかも鎮守府の「フォルゴーレ」はアヴィエーレが熱心に育て上げたベテラン揃いだけにそうやすやすと落とされはしない…が、こうなるとフォルゴーレも雷撃機の相手どころではなくなった…


リットリオ「…各艦、対空戦闘の用意を!」

アルティリエーレ「リットリオ…必ず守ってあげるからね!」

リットリオ「グラツィエ♪…アルティリエーレも被弾しちゃダメですからね?」

アルティリエーレ「ええ、任せておいて!」


…しばらくして…


ガリバルディ「ちいっ、しつこいわね!」…落下式増槽の機構がそもそもないマッキC202「フォルゴーレ」はスピット相手に十数分の華麗な空中戦を見せると再補給のために帰投してしまい、リットリオ以下の艦隊は次々と押し寄せるソードフィッシュとボーファイターの対応に追われていた……

アルティリエーレ「回頭、面舵いっぱァーい!」バンバンバンッ!…と20ミリブレダ機銃が次々と保弾板(弾倉の一種)を空にし、時々投下される魚雷をやすやすとかわす……

足柄「全く…零戦の数機でもいたらあっという間なのに!……25ミリ機銃、右舷から雷撃機!」

龍田「あぁ、もう…もっと大きい身体なら防空巡にもなれたのにねぇ!」とぼしい25ミリ対空機銃を振り回し、銃身も焼けよと撃ちまくる足柄と龍田…

ジャンヌ「あぁ、この鈍足がうらめしいです!」…練習巡洋艦だけあって速度は27ノットそこそこのジャンヌ……ブルボン王家の「百合の紋章」が入った小旗を槍につけ、銀の胸甲姿で両脚を踏まえている……

リシュリュー「ノンノン…わたくしはドイツ艦とはひと味違いますよ、モナミ(きみ)?」前部には主砲、後部には副砲と高角砲が集中しているエキセントリックな設計のリシュリューだが、速度は列強の戦艦でもトップクラスで、大きさに似合わず動きが速い…

エンタープライズ「…三番機、機銃の残弾は?…了解、帰投せよ……六番機、敵撃墜を了解…グッジョブ♪」接近される前に次々と「ソードフィッシュ」を撃墜するエンタープライズの搭載機…かつての味方にそっくりな相手を撃つのはやりにくいが、きっちり艦隊防空をこなしている……

フレッチャー「A砲塔、グッドキル!…これでスコアが6機になったわ!」…当時最先端だった「SC」、「SG」レーダーと近接信管として有名な「VT信管」、おまけにヤマアラシのような20ミリ・エリコン機銃や40ミリ・ボフォース機銃が相まって、強烈な弾幕を張り巡らせるフレッチャー…

(※エリコン…多くの国でライセンス生産され、現在でも使用している国があるスイス生まれの傑作20ミリ機関砲。ボフォース…戦中、アメリカやイギリスでライセンス生産され活躍したスウェーデン製40ミリ機関砲、こちらも国によっては現役……たいていの場合20ミリ以上の自動火器は『機関砲』扱いだが、海軍では40ミリ程度までが『機銃』)

リットリオ「…艦隊旗艦より各艦へ、鎮守府より至急報!「…敵艦隊接近、重巡二、軽巡三、駆逐六!」注意してくださいっ」

エウジェニオ「この忙しい所にとんだお客様ね…たとえ美女でも時と場所をわきまえて欲しいわ♪」

エンタープライズ「…リットリオへ、上空の敵はほとんど片付いたので、今度はヘルダイバーとアヴェンジャーを発艦させたいのですが?」


(※カーチス・ヘルダイバー…SB2C急降下爆撃機。ドイツの「シュトゥーカ」に感銘を受け開発され、空母「翔鳳」などを沈めたものの、戦前の設計で型落ちになってしまったSBD「ドーントレス」の後継機。搭載量が「ドーントレス」の倍近い1トンほどになり、マリアナ海戦以降で急降下爆撃を担った。戦艦「大和」や「比叡」などの撃沈に功績があったが安定性など基本設計に問題があり、戦後すぐに退役した)

(※グラマン・アヴェンジャー…TBF/TBM雷撃機。それまでの主力、TBD「デバステーター」は米雷撃機として初の単葉、金属外皮構造と進歩的ではあったが、開戦以後あっという間に旧式化してしまい、その後継機として開発された。全備重量6トン以上と重量級だったが、「グラマン鉄工所」とあだ名されたグラマン社の機体らしい頑丈さと、コクピット後部の動力銃座など実用上役に立つ装備を充実させ、連合艦隊への攻撃から船団護衛まで幅広く活躍した。「TBM」はジェネラル・モーターズ(GM)の生産型で多少改修されている)

リットリオ「了解、発艦をお願いします…でも、うちの方からも雷撃機が来るそうですよ?」

エンタープライズ「それはいいわね…サヴォイア?」

リットリオ「はい、SM79「スパルヴィエロ」(ハイタカ)です♪」

エンタープライズ「了解、じゃあこっちからも援護機を出しましょうか?」

リットリオ「あれだけ空戦を行ってましたけど…状態は大丈夫ですか?」

エンタープライズ「オフコース。まぁ、「ワンサイド・ゲーム」っていうやつね♪」

リットリオ「了解、ではお願いします」

エンタープライズ「オーケイ♪」

867:2017/10/30(月) 02:40:32.20 ID:
アヴィエーレ「……ふぃー…戦闘に入る前に少し詰め込んでおこうかな…」汗をぬぐうと冷水をごくごく飲み干し、小さいサクランボのパイにかぶりついた…甲板上では山と積まれた空薬莢を水兵たちが片づけ、終わると持ち場の周囲で座り込んだ……

リットリオ「そうですね……私から「酒保ゆるす」を出しますから、甘い物なんかは随意に食べちゃってください♪」…そう言うと嬉しそうにクルミ入りパウンドケーキをぱくついた

ドリア「私はまだあんまり活躍していませんが…せっかくなのでいただきましょう♪」カスタードクリームのタルトを丁寧に食べる

足柄「ちょうどひもじくなってきたところだったのよ♪」硝煙で煤けた顔をばしゃばしゃっ…と洗うと手ぬぐいでよく拭き、手鏡を見ながら髪の乱れを直した……満足が行くと懐から取り出した甘納豆とコンペイトウに取りかかった…

龍田「戦闘の後はお腹がすくものねぇ…」缶入りのドロップをいくつか取り出すと口にいれ、頬をふくらませて満足そうにしている龍田…

エンタープライズ「ヘイ、ガールズ!人に艦載機の発艦をさせといてそれはないんじゃない?…私だってお腹ペコペコなのよ?」

フレッチャー「オーケイ、それなら今のビッグEにぴったりな曲をかけよっか♪」

…にやにやしながらレコードを回すと、ビッグバンドの「ベニー・グッドマン楽団」から「ドント・ビー・ザット・ウェイ」(その手はないよ)を流し、ついでに「お口で溶けて手で溶けない」マーブル型チョコレート「M&M」をいくつか口に放り込んだ……

エンタープライズ「はっはっは、ナイス・ジョークね……フレッチャー、後で覚えておきなさいよ?」エンタープライズは「ヘルキャット」や「アヴェンジャー」の発艦を済ませると艦橋の椅子に座り、脚を組むと「ハーシー」のチョコレート・バーにかじりついた……

リシュリュー「…甘い物は素早くエネルギーになりますからね、まことによろしいものですよ」エクレール提督が持たせてくれたマドレーヌをじっくり味わって食べる

ジャンヌ「ふぅ…このジャンヌ、あの程度の戦闘など何ということもありませんでしたが…まぁ、せっかくですし頂くとしましょう♪」待ちきれない様子でリボンをかけた紙袋を開けると、外がさくっとして、中がふわっとしている甘いマドレーヌをつまんだ……

リットリオ「ふふっ、みんな鋭気をやしなってくださいね♪」


…0700時ころ・鎮守府…

トレント「提督、リットリオから打電!…「我が艦隊は敵雷撃機隊の撃退に成功、被害なし。『酒保ゆるす』をかけ菓子を喫食中なり…友軍戦闘機隊、エンタープライズ搭載機ともに大いに活躍、撃墜十数機にのぼる……引き続き、友軍雷撃機の活躍にも期待す」とのことです!」…それを聞くと一同から「わーっ!」と歓声が上がり、提督も少しほっとした……

カヴール「まぁ…よかったです」

ライモン「安心しました…」

提督「そうね…でも敵の艦隊が残っているわ、まだ油断は禁物よ」そう言いながらも小さく息を吐いた…

提督「陽動は上手く行っているみたいだけど、ミッカたちは大丈夫かしら……」レーダー画面に映る、ミッカたちを示した点を見て腕組みした…


…0710時・チュニジア沖数十キロ…

ミッカ「何というか、今日は静かですね……」いつもなら浮上している暇もないほど敵の「アンソン」双発爆撃・哨戒機や「サンダーランド」大型飛行艇がうようよしているが、今日に限ってターコイズブルーの明るい空は静かなままで、何か食べ残しでもくれないかと、物ほしげなカモメが数羽飛んでいるだけの時間が過ぎていた…

ロモロ「水上の敵もいないし、いいことね♪」20ミリ対空機銃以外の武装がない輸送潜水艦「ロモロ」と「レモ」からすればありがたいかぎりで、双眼鏡を持ちながらではあったが、安心してドライフルーツの入ったスポンジケーキをほおばっていた…

カッペリーニ「そうで……左舷三十に艦影っ!」水平線を几帳面に見張っていたカッペリーニが、灰色のシルエットを目ざとく見つけた…

ロモロ「げほっ!…警報!」

ミッカ「急速潜航ッ!……全く、「悪魔の噂をすれば悪魔がやってくる」とはよく言ったものですね!」ハシゴを滑り降り、慌てて司令塔ハッチを閉めて潜航する…

ミッカ「…潜舵戻せ…ようそろ……排気弁閉め…両舷電動機、前進半速……」最後は床に飛び降りたミッカは慌てたあまりレバーに脇腹をぶつけ、ずきずきうずく場所に手を当てて操艦指示をだしていた……頭上を走るパイプからポタポタと水滴が垂れ、深度計が50メートルあたりを指した…

ミッカ「よろしい…潜望鏡深度へ……艦首五度上げ、艦尾五度下げ……水平…」手近なパイプにつかまり、聴音機のヘッドフォンに片耳を当てる……

ミッカ「……どれどれ」潜望鏡に片目を当て、ぐるりと回して周囲を確認した…

…幸い気づかないでいてくれたらしい深海側の艦はコルヴェットの「花」級で、地中海向けらしい淡いグレイと明るいグレイグリーン、ホワイトの迷彩が施されているように見える…が、もっとじっくり観察すると、迷彩に見えるのは「呪われたカリブの海賊」か、さもなければ幽霊船のようになった艦の肌に張りついた海草や貝殻の色で、姿自体もあちこちにくっついたカキ殻やフジツボのせいで、何となくぼんやりかすんで見えることに気がつく……

ミッカ「ここまで来て「花」級に出くわすなんて…」


…一本煙突で艦橋の前面にメインマストがあり、ずんぐりした小タルのような「花」級は1000トンにも満たないような小さいコルヴェットで、速度は18ノットも出ればおんの字…「コルヴェット」とはいうものの、その姿は小さい商船か捕鯨船にしか見えず、水上用の武装も艦首楼に装備された4インチ(10.2センチ)単装砲一門に後部の台上に装備された2ポンド(40ミリ)単装機銃一基とお寒い…が、艦尾には数十発の爆雷と爆雷投射機を据え付け、イギリスが開発し「アスディック」(ASDIC)と呼んでいたソナーも搭載した強敵で、多くの潜水艦が沈められている……商船構造なので軍艦の建造にノウハウのない小さい造船所でも生産でき、小回りが効き実用性に優れた「近海用の優れた対潜コルヴェット」で、イギリス海軍が長く途絶えていた「コルヴェット」の艦種を復活させたほど有効利用され、百隻余りも建造されたどの艦にも花や植物の名前が付けられている……


ミッカ「っ!」…潜望鏡をのぞいていると、艦橋から辺りを眺めている「深海棲艦」の姿が見えた……蒼白と言ってもいい白い肌に、さめたパールグレイのような色の髪…頭には枯れた珊瑚や死んだ貝殻のように真っ白な色をした花飾りをつけている……

ミッカ「もういいです…潜航、深度70メートルで静止……」そのまま聴音を続けていると、一時間ほどでスクリューの音が去って行った…
868:2017/10/31(火) 01:21:51.88 ID:
…0800時・ケルケナー諸島沖数十キロ…

リットリオ「では、敵艦隊に備えて陣形を二重くさびにします。エンタープライズ、リシュリュー、足柄、ジャンヌ・ダルク、龍田、フレッチャーは後方について下さい…お客様にキズをつけたら怒られちゃいますから♪」

リシュリュー「せっかくの主砲なのですが…まぁ、仕方ありませんね」

足柄「ま、もてなしてもらっている立場で文句を言っちゃあいけないわよね…龍田、下がるわよ?」

龍田「はぁーい」

フレッチャー「エンタープライズ、私たちも後ろにつかないと……ヘイ!」

エンタープライズ「待って……リットリオ!こっちのアヴェンジャーが接敵したわ!……重巡「州」(カウンティ)級二隻、防空軽巡「C」級二隻、駆逐艦「種族」(トライバル)級二隻に「G」級四隻…現在交戦中!」

リットリオ「了解、では27ノットで急行しましょう!……駆逐隊は大丈夫ですか?」

エウジェニオ「今日は凪ぎだから平気よね…ね、ヴェリーテ?」

ヴェリーテ「はい、エウジェニオ……大丈夫です///」

ガリバルディ「むしろリットリオ、そっちこそ大丈夫?」

(※リットリオの「バルバス・バウ」が当初ひどく振動を起こし、あまりにも波を起こすので艦首1メートルあまりを延長する改修を受けている…公試時には艦橋までしぶきが飛んできて「一番主砲が射撃できない」とまで言われた)

リットリオ「むぅ…ちゃんと改修してありますよ!」

ガリバルディ「ならいいけど、がぶって主砲が撃てないなんて言わないでよ?……期待してるんだから♪」

リットリオ「はい、ちゃーんとリットリオの斉射をお見せしますよ♪」

ガリバルディ「頼むわよ♪」

………

…0830時…


リットリオ「むっ……艦影視認!敵艦隊!」

チェザーレ「待ちくたびれたぞ!…雷撃隊の具合はどうだ?」

エンタープライズ「第一波は魚雷を投下して帰投中です…「ヘルダイバー」は私たちが交戦する頃に上空につくよう時間を合わせてあります」

ドリア「さすがです♪……では、主砲の装填をしましょうか」

リットリオ「そうですね…各砲塔、榴弾を装填!」


…レーダーや電子機器でこそ遅れをとっていたが、なかなか進歩的な所も多いイタリア艦は駆逐艦用の主砲(120ミリ)以上のほとんどに、電動式の自動揚弾、旋回、俯仰機能がついている……リットリオの弾薬庫には自転車のチェーンを大きくしたようなものに、麻袋からコーヒー豆をすくう金属シャベルのような「アレ」を平たくしたような、一種の「樋」がくっ付いている……巨大な砲弾と薬嚢二つがその「樋」に乗せられるとチェーンが駆動し、砲弾と薬嚢は上に向かう「揚弾機」に引き渡されて上昇していく…そのまま砲尾に続いているレールから電動ラマー(弾込め棒)で押し込まれると、砲の尾栓がガチャンと閉じた……


リットリオ「主砲装填完了!…副砲、装填完了!」

チェザーレ「こちらもだ……カウンティ級重巡の装甲ならやすやすと撃ちぬける!」相変わらず大きなローマ軍団の旗をイタリア海軍旗と一緒に掲げ、紅いマントを堂々と後ろになびかせている…

ドリア「装填完了、私も大丈夫です」

デュイリオ「私も大丈夫ですよ…いつでもです♪」
869:2017/10/31(火) 02:45:16.59 ID:
リットリオ「では……待ってください、深海側から平文でこちらに向けて打電してきています!」…まだ敵艦の姿がけし粒ほどの大きさにしか見えない中、急にすっとんきょうな声をあげた……

チェザーレ「うむ、チェザーレも受信している……言うなればイシュカン・コミュニケーションだな…」

リットリオ「えぇと、本文は…「グッド・モーニング、イタリア艦隊の皆さま。こんな遠くまでお散歩ですか?…港に居座る退屈な「任務」を放り出したくなるような好天ですからお気持ちはわかりますが、ちゃんと帰途の燃料はお持ちでしょうか?……こちらもせっかくですのでお近づきになりたいところですが、ここは『戦闘海域』なので、お怪我なさらないよう帰投されることをお勧めします……」ですって!」…イギリスらしさ満載の、皮肉たっぷりで慇懃無礼な電文を読み上げた……

チェザーレ「ブリタニアの野蛮人が生意気なものだ…射程距離に入ったら思い知らせてやらんとな」

アスカーリ「何だァ、あの女ッ子(あまっこ)はずいぶん偉そうでぇか!……もじゃもじゃの海草みてぇな髪ィして、船体にァカキ殻とフジツボをうんとこさくっつけて、鰻の腹か生焼けのパンみてぇな生っちろい色をしておきながらこォだな生意気なこと抜かすか…あの減らず口は魚雷さ一発ぶッ食らわさねぇと閉じねぇだな?」…かんかんになったアスカーリは頭のトルコ帽そこのけに真っ赤になって怒っている

ガリバルディ「ちょっと、落ち着きなさい!……訛がひどくなって何言ってるか分からないじゃない。だいたい、イギリスの連中がああいうこと言うのはいつものことでしょうが…」

リットリオ「むぅ…こうなったら砲撃の前にちゃんと返信してあげようじゃありませんか」

デュイリオ「ふふっ…ならアスカーリの言った「鰻の腹みたいに生白い顔」はぜひ入れませんと♪」

エウジェニオ「イタリア人と悪口の言いあいで勝てると思ったのかしら?……おっと、もちろん砲撃戦でもね♪」

リットリオ「えーと…「ウナギ」の英語が分からないんですが……」

ドリア「エンタープライズに聞けばいかがです?」

リットリオ「…いえ、その単語が分からないから聞きたいんですよ?」

ドリア「あぁ…そうですね……足柄さんならわかるんじゃないでしょうか?」

リットリオ「あぁ!…じゃあ足柄さんに聞いてみましょう♪」さっそく発光信号でモールスを打ちはじめたリットリオ…


…艦隊第二陣…

足柄「リットリオから信号?…やっぱり相手がイギリス艦だからかしら。えーと、なになに…「英語で『ウナギ』の綴りを教えて下さい」?……あー、さっきの電文にやり返そうってわけね…「了解。E・E・Lで『イール』」っと♪」

エンタープライズ「ワッツロォン(どうしたの)?」

足柄「あー…リットリオから「イール」の綴りが知りたいって言って来たの」

エンタープライズ「なるほど…ま、口の上手いイタリアさんだもの……きっとうちのマームもかなわないような「名文」を送ってくれるわよね♪」


…艦隊第一陣…

リットリオ「できました…打電します♪」

チェザーレ「ふふ、どんな返事をくれるかな?」

…リットリオが皮肉とブラックユーモアたっぷりの返信を打電する。その間にも敵艦隊の姿は徐々に大きくなり、今では煙突とマストのてっぺんが水平線からのぞいていた…

リットリオ「打電しました!…ついでですから「ごあいさつ」もしましょうか」精巧なガリレオ社製・二重式測距儀を回し、距離を測る……

リットリオ「目標、敵先頭艦…距離、22000メートル!」

チェザーレ「むむっ…そっちの381ミリ主砲なら楽勝だろうが、こっちの主砲だとぎりぎりだな……」

ドリア「まぁ、せっかくですし」

デュイリオ「そうですよ♪」

チェザーレ「うむ、分かった…照準!」…戦艦四隻の主砲が一斉に右舷よりの敵艦に照準をつける…


…旧イタリア王国海軍では「砲撃の観測が混乱するから」と、一隻の敵艦には一隻の味方艦しか目標を定めてはいけないことになっていた…が、そのせいで攻撃が散漫になり、悪くすると「他艦が目標にしているから」と砲撃を手控えてしまうことさえあった……提督は「もし弾着が見たいなら順番に射撃するようににすればいいし、交叉してからは命中率に構わないで」有力な目標に集中して砲撃を見舞うよう改めさせた…


アスカーリ「しかし提督も面白いことさ言うな……でもたすかに、新しい方法の方がいいかもしれねぇだな」

アヴィエーレ「ふふ、昔のやりかたは色事師が一人で一人を口説くようなものだからね…上手く行くかどうかは相手次第なわけだ」

アスカーリ「そんなら、今のやりかたはどうなるだね?」

アヴィエーレ「んー…うちのレディたちが集団で相手の小娘を手籠めにするようなものかな?」

アスカーリ「そいつはタチがよくねぇだ…」

870:2017/10/31(火) 12:06:49.26 ID:
アヴィエーレ「海戦なんてそんなものだろう?」

ガリバルディ「…二人とも、ばかな事を言ってると砲弾が飛んでくるわよ?」

アスカーリ「了解だぁ」

アヴィエーレ「了解、真面目にやるよ」

アルティリエーレ「いよいよリットリオの斉射が見られる訳ですね…うー、ぞくぞくします」

リットリオ「それでは期待に応えないといけませんね……一番主砲、よーい…てっ!」ゴウッ!…381ミリ主砲が轟き、海面がブラストで波立つ……

チェザーレ「では、チェザーレも続くぞ…撃て!」…さすがにリットリオの主砲には及ばないが、それでも雷鳴のような音を響かせる320ミリ主砲

ドリア「撃て!」

デュイリオ「撃てっ!」

リットリオ「むぅ…近弾です、300伸ばしてください!」

ドリア「まぁ、「初弾から当たる」なんて奇跡みたいなものですから…二番砲塔、照準よろし!」

チェザーレ「どうもこの主砲のやつ…弾着がバラけていけないな……照準よし」

デュイリオ「リットリオ、私も照準よしです」

リットリオ「了解……撃て!」測距儀で見てもまだ小さい敵艦の周りに、白い水柱が次々と上がった…

リットリオ「遠弾…100下げ!」

ドリア「装填完了!」再装填に数分はかかる戦艦の主砲…その間にじりじりと相手の艦影が大きくなってくる……

リットリオ「距離17000…撃てっ!」

ドリア「撃て!」

チェザーレ「撃てっ!」

デュイリオ「撃てぇ!……あら、交叉したようですよ!」

リットリオ「はい、交叉しました!次の斉射は命中するはずです!…三番主砲、撃て!」敵艦隊に向かって斜めになるように接近し、旋回範囲いっぱいに回した後部主砲も射撃に加わる……発射の爆風で艦橋までびりびりと震える…

リットリオ「んっ?……今の斉射はどこに落ちたか見えました?」

ドリア「いえ…もしかして命中したのでは?」

デュイリオ「はい、命中です!こちらから見えました!」

チェザーレ「…ほぅ、リットリオはさすがだな……おっと、そろそろ相手の203ミリも射程圏内か」次第に距離が詰まってくると、白っぽい明色の迷彩を施した敵の艦隊が見えてきた…

ガリバルディ「いよいよね…」

エウジェニオ「リットリオへ、敵重巡はおそらく「ケント」級!…203ミリ砲八門に四連装魚雷発射管二基、速度31ノット!」三本煙突でどっしりしたシルエットの重巡「ケント」級の姿が見え始める…

足柄「ケント級?…それなら私が相手したいわね!」

(※ケント級…約一万トンの条約型重巡「州」(カウンティ)級の第一弾。長大な海上輸送網と植民地警備のために『安くて小さい』軽巡洋艦を多く持ちたかったイギリスだったが、一隻ごとの性能を高くした日・米の8インチ砲重巡に対抗するため、いやいやながら作られた重巡。海軍軍縮条約の『一万トン』という制限の中、速度と火力を重視したせいで装甲が25ミリというお粗末に……「ドイツ海軍を喜ばせるための艦」や、役立たずでお金ばかりかかることから「白いゾウ」などと皮肉られた。戦前に急遽装甲を追加、111ミリとし、大戦中は援ソ船団の護衛や地中海方面作戦で奮戦した……スピットヘッド観艦式で英記者が「飢えた狼」足柄と比較して「ホテルみたいな」艦だと言ったのはこのクラスで、実際に長期の航海に耐えられるよう居住性がよかった)

リットリオ「エウジェニオ、敵重巡はケント級、了解。…足柄さん、出ちゃダメですよ?」

足柄「仕方ないわね…せっかくライバル対決だと思ったのに」

エンタープライズ「リットリオ!本艦搭載の艦爆、間もなく投下コースに入ります!」

リットリオ「了解、投下しちゃってください!」

エンタープライズ「了解、この攻撃をかわしたらほめてあげるわよ♪」…護衛の軽巡と駆逐艦が主砲や八連装2ポンド「ポンポン砲」をふりあげ、急降下する「ヘルダイバー」を阻止しようと砲弾を撃ちあげる……とはいえ、「地獄へと降下する者」九十度に近い角度でダイブをかけるヘルダイバーに命中弾を与えられるような対空砲はほとんどない…たちまち艦隊の周りに水柱が林立する…

アヴィエーレ「これはすごい…!」



871:2017/11/02(木) 01:40:56.41 ID:
チェザーレ「一番主砲、再装填完了!…目標、重巡ケント級!……距離は…」測距儀で敵艦を見ると、最初は眼鏡をかけていないときのようにぼやけていて、それが双眼鏡のようにぴたりと鮮明な像を結ぶと正しい距離が出る……

チェザーレ「…16000メートル!」

リットリオ「エウジェニオ、ガリバルディ、もう有効射程でしょう…駆逐隊の先頭にいる「トライバル」級を狙って下さい!」

エウジェニオ「了解、熱い口づけをお見舞いしてあげましょう♪」

ガリバルディ「私の新型主砲の命中率…見せてあげるわよ」…と、水平線近くに機影が見え始めた

フチリエーレ「右舷に機影!」

ガリバルディ「もう、このタイミングで!」

アヴィエーレ「あれはサヴォイアだよ、友軍機だ!……雷撃隊が来てくれたのさ」


…三発エンジンで、操縦席後方が盛り上がったような独特の形をしているサヴォイア・マルケッティSM.79「スパルヴィエロ」がエンジン音を響かせ、水面ぎりぎりに降下する…淡いブルーグレイの腹部に抱いている750キロ魚雷を落とそうと、前部固定機銃を撃ちっぱなしにしながら敵艦隊に突っこんでいき、次々と魚雷を投下するとそのまま深海側の艦隊を突っ切り、離れたところで旋回して去っていく……


リットリオ「投下を確認!……命中は、あったようです!」駆逐艦の一隻が白い煙を上げ、徐々に艦隊から遅れていく…

エンタープライズ「ナイスワーク!…あの雷撃隊、ガッツがあるわ」

リットリオ「ありがとうございます、エンタープライズ♪…艦隊各艦へ、このまま距離を取りつつ交戦します……駆逐隊のみんなには申し訳ないですが、こちらの主砲を有効活用させてもらいましょう!」

レジオナリオ「せっかくチェザーレの前で奮闘してみせようと思ったのに…」

アルティリエーレ「猛練習した砲撃を試したかったわ……」こちらも少し不満そうなアルティリエーレ…

ガリバルディ「まぁまぁ。こっちに損害が出ないのが一番なんだから……それにリットリオの事だもの、相手が駆逐艦だけになったらちゃんと交戦させてくれるわよ」

チェザーレ「うむ、ガリバルディの言うとおりだ…む、煙幕を展張し始めたな……」

ドリア「あれは「G」級駆逐艦ですね……『土ボタル』には見えませんが」

チェザーレ「ふぅむ、「G」級か…だとしたら「ヒッパー」にしたように体当たりしてくるかもしれないぞ?……諸君、注意することだ」

レジオナリオ「大丈夫です、私が一歩も近づけさせはしません!」

チェザーレ「ふふ、心強いな…任せたぞ♪」

レジオナリオ「はいっ!」

リットリオ「むぅ…それにしても照準が付けにくくなりましたね……マストのてっぺんしか見えません」

デュイリオ「仕方ないですよ…集中射撃を加えれば少しは命中弾もあるでしょう」

リットリオ「ええ、そう思います…では、目標は左側の「ケント」級に!」

チェザーレ「うむ、承知した」

ドリア「はい…お昼までに片づけてしまいましょう?」

コルサーロ「ひゅぅ、ドリアの姐さんは何とも勇ましいこって!」

ドリア「もう、姐さんは止めてください」

コルサーロ「でも「姐さん」じゃないとしたら年から言ってもバアさ……いや、何も言ってないだろ」

ドリア「…言ったら怒りますからね♪」

デュイリオ「私も…怒っちゃいますよ♪」

………
872:2017/11/02(木) 03:16:42.95 ID:
…1030時…

リットリオ「主砲、てっ!」ゴウッ!…また主砲が吼え、砲弾が飛翔していく……

チェザーレ「むむ…また回避した。重巡にしてはしぶといな…」片方の「ケント」級はエンタープライズの爆撃を受けて停止し、ずぶずぶと沈み始めている……残る一隻のケント級は時おり射撃を見舞いつつ、中破している二隻の「C」級防空軽巡と攻撃を回避している…

足柄「こっちの砲撃も浴びせているって言うのに…いい加減沈みなさいっ!」

リシュリュー「ふむ、なかなか当たらないものですね……」

ドリア「もういい加減にしてほしいですね…撃てっ!」ガウッ、ドォォ…ンッ!……ドリアの主砲が斉射を見舞った…と、水柱の間に包まれたケント級…

リットリオ「お見事、命中です!」…煙幕の間からちらちら見えるケント級は三本煙突の一本が無くなり、三番砲塔もあさっての方向を向いて止まっている

ドリア「まぁ、ここまで上手く命中するとは……それにしてもガリバルディはお見事でしたね」

ガリバルディ「まぁね、軽巡の二隻は私とエウジェニオが仕留めて、それぞれ大破戦闘不能…残りの一隻も被弾していて、もう速度が出ないみたいね」

リットリオ「駆逐艦はどうですか?」

ガリバルディ「あー…トライバル級の一隻はエウジェニオ、レジオナリオ、グラナティエーレと交戦して撃沈。グラナティエーレが二発被弾で小破。G級の一隻はさっき煙幕を展張しようとして前面に出てきたときに、アルティリエーレとアスカーリが砲撃をお見舞いしたわ」

リットリオ「命中しました?」

ガリバルディ「それが分からないのよ、煙幕の影に隠れてくれたものだから…もう一隻のトライバル級はエンタープライズのヘルダイバーが撃沈したわ」

リットリオ「そうですか…いずれにしても見事でしたね♪」…と、硝煙と煙幕の黒い煙を払うように、爽やかな海風が吹きはじめた……

エウジェニオ「まぁ、いい風♪」

ドリア「あら…相手も見えてきましたよ」

チェザーレ「ふむ……さっきのアルティリエーレたちの砲撃は上手く命中したようだな、あそこで傾いているのはG級だろう?」艦首を海面に突っこみ、艦尾が少し持ちあがったまま停止している……

リットリオ「あ…敵重巡、沈没していきます!」次第に沈みながらも後部砲塔が射撃を続けているが、もうそこまでの勢いはない……あたりの海面には海藻がまとわりつき、白化した珊瑚のような色をしている「深海棲艦」の残骸に混じって、大破して停止しているG級が二隻……残りの二隻のG級は旗艦のケント級に許可されたらしく、高速で退避していく…

デュイリオ「さすがに持たないと判断したのでしょう…射撃を継続しますか?」

リットリオ「うーん……心苦しいですが、また脅威になるかもしれませんから…射程距離の間は砲撃を続けて下さい」

デュイリオ「了解」

アスカーリ「ほォら見ろい、あんな事さ言うからこうなるだよ!…あのもじゃもじゃの海藻頭を洗って出直すがいいだ!」途端にヒュッ!…と音を立てて砲弾が至近距離に降り注いだ

アスカーリ「うへ!……あんだね、あの距離で聞こえてるとは地獄耳だぁね…」

ガリバルディ「…リットリオ、G級に斉射をお願いするわ……アスカーリの分をお見舞いしてあげて?」

リットリオ「了解、駆逐艦ですし副砲でいいですね…行きますよぉ?……撃て!」

ガリバルディ「あ、当たったわ。これで少しはこりるでしょうよ……ところでリットリオ、沈みかけの敵艦は降伏させてやりたいのだけど、いいかしら?」

リットリオ「向こうが降伏してくれれば、ですが……向こうの性格を考えるとまず無理でしょうね」

ガリバルディ「それでも一応やってみるわ……そうよね、エウジェニオ?」…そう言っている間にも一隻は二つに折れて沈んでいき、ガリバルディは少しせかすように言った

エウジェニオ「ええ♪…じゃあ私が降伏勧告してあげましょう、取って食べたりはしないから…って♪……みんなは損傷があれば応急修理、なければ空薬莢だとかを片づけて元の陣形に戻って?」

ヴェリーテ「了解」

エウジェニオ「さてさて……そちらのG級駆逐艦へ、こちらはイタリア海軍の軽巡エウジェニオ・ディ・サヴォイア……貴艦は誇りを持って、充分勇敢に戦われたわ。これ以上貴女の勇敢さを示すための戦闘は不要でしょう……軍艦旗を降ろし、私たちの救助を受けられますよう勧告します」

G級「イタリア軽巡エウジェニオへ……たとえ轟沈しようとも、このG級…ホワイト・エンサイン(英海軍旗)を掲げる限り、肉が骨から削ぎとれるまで戦う!…ジョージ国王陛下、万歳ぁぁーい!」青白い姿の「深海棲艦」G級はそう言うと、1基だけ発射可能だった魚雷発射管の四発を一気に放った

ガリバルディ「危ないっ!」

エウジェニオ「…っ!」さいわい速度を落としきっていなかったので、慌てて舵を切り回避するエウジェニオ

コルサーロ「エウジェニオ!……こんちくしょうめっ!」撃つ機会のあまりなかった120ミリ連装主砲を近距離から叩き込む…

G級「………」喫水線下に砲弾を浴び、滑らかに沈んで行った…

コルサーロ「大丈夫かよ!エウジェニオっ?」

エウジェニオ「ええ…やるかも知れないと思ってたから大丈夫。それにあのG級はもう沈みかけてたし、貴女が撃つまでもなかったわ……でも気持ちは嬉しかったわよ、コルサーロ」

コルサーロ「お、おぅ…とにかく無事で何よりだ///」

リットリオ「…とにかく目的は達したわけですし…そろそろ帰投しましょう」

エンタープライズ「そうね…それにしても、最後に「ジョージ国王陛下万歳」ねぇ…今はエリザベス女王の時代だっていうのに……」頭を振ってため息をついた…

………
873:2017/11/02(木) 03:46:11.90 ID:
…登場艦解説…


駆逐艦…「トライバル」(種族)級


…第一次大戦の頃にもあった、世界各地の「原住民」の種族名をつけた駆逐艦。第一次大戦時の「旧トライバル」級では損害を受けてそれぞれ前半分と後ろ半分だけになった「ズールー」と「ヌビアン」を接合した「ズビアン」のエピソードが有名


第二次大戦時の「トライバル」級は1934頃から計画され、1938~39年に竣工した新型駆逐艦で、それまでの「A」~「I」級駆逐艦で『数を揃えるために安上がりで強雷装』の小さい艦ばかり作っていたイギリスが、『12.7センチ砲を搭載した日独の駆逐艦に対抗する』ため、砲力を高めた大型駆逐艦…基準排水量1870トンで速度36.5ノットの二本煙突艦


…武装は対空射撃可能な4.7インチ(12センチ)連装砲4基、21インチ(53.3センチ)4連装魚雷発射管1基、2ポンド4連装「ポンポン砲」1基、12.7ミリ4連装機銃1基、爆雷投射機2基と爆雷20発……と、当時としては水上火力、近接対空火力がかなり高かったが、開戦後はさらに対空火器が必要と分かり、生き残っていた艦は三番主砲を4インチ(10.2センチ)高角砲に換装した。優秀な駆逐艦だったが『駆逐艦にしては大きすぎるし高すぎる』と、保守的なイギリス海軍ならではの文句も出た


……ドイツのポケット戦艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」が捕虜にしたイギリス人を乗せ(当時中立だった)ノルウェーのフィヨルドに逃げ込んだドイツ補給艦、「アルトマルク」に切り込みをかけ、これを拿捕した「コサック」の勇敢さと、その時の切り込み隊が叫んだとされる「イギリス海軍ここにあり!」は有名…が、性能が良かったぶん厳しい戦場に投入され、16隻のうち残ったのは4隻だった


………


駆逐艦「G」級


1933年計画艦で9隻が1936年就役。排水量は1335トン(嚮導型は1485トン)で速度36ノット


すべて「G」から始まる艦名をつけている駆逐艦で、前級「F」級の縮小・改修型。

1933年の演習で、それまでの4連装魚雷を積んだ駆逐艦による集団攻撃だと「一つの目標(大物)に集中しすぎてしまう」と分かり、一隻で充分目標を撃沈できるような「強雷装艦」を意識し始めた。そのため、「グローウォーム」(Glowworm…ツチボタル)に21インチ(53.3センチ)5連装魚雷発射管2基を試験的に搭載したことが特徴的


武装は4.7インチ単装砲4基(嚮導型は5基)、21インチ魚雷4連装発射管2基(グローウォームは5連装2基)、12.7ミリ4連装機銃2基、爆雷投射機2基、爆雷20個


…有名なのは5連装魚雷を装備した「グローウォーム」で、ノルウェー作戦で交戦中弾薬を撃ちつくし、ドイツ重巡「アドミラル(アトミラール)・ヒッパー」に体当たりした勇敢な最後が知られる。戦後イギリスの作家アリステア・マクリーンが書いた「女王陛下のユリシーズ号」ではそれを下敷きにした場面が出てくるなどイギリスにとっては記憶に残る駆逐艦……どの艦も地中海や大西洋の厳しい戦場で酷使され、生き残ったのは3隻だけだった


………





874:2017/11/04(土) 01:38:54.46 ID:
…1100時ころ・鎮守府…

ガルヴァーニ(ブリン級大型潜)「提督、陽動艦隊より打電!…「リットリオより鎮守府。…我、重巡二隻を含む深海側の戦隊11隻と交戦し、「リットリオ」および「エンタープライズ」搭載機、それぞれ重巡「ケント」級を撃沈。「C」級軽巡二隻を「ガリバルディ」、「エウジェニオ」が協同撃沈。一隻は「ガリバルディ」の砲撃により大破沈没…「トライバル」級駆逐艦二隻のうち一隻は「エンタープライズ」搭載機、もう一隻は「エウジェニオ」、「レジオナリオ」、「グラナティエーレ」が協同撃沈……」


ミッチャー提督「グレイト…ビッグEは後でほめてやらないと……」


ガルヴァーニ「…「G」級駆逐艦のうち一隻は「アルティリエーレ」、「アスカーリ」の砲撃により大破、救難開始直前に両断し沈没。一隻は大破航行不能状態にあり「エウジェニオ」が救難を試みたものの、雷撃を行い抵抗したため「コルサーロ」が砲撃し撃沈…残る二隻は約30ノットの高速で退避、「リットリオ」以下砲撃の数斉射を行うも命中弾は得られず…」


提督「深追いは危険だからそれでいいわ、リットリオの好判断ね……」


ガルヴァーニ「…以上の戦果を挙げ、損害は「グラナティエーレ」の駆逐艦主砲による被弾二発、および「チェザーレへ」の至近弾による損傷のみ。各艦見事な働きをし、特に「エンタープライズ」、「フレッチャー」、「足柄」の奮闘見事なり…」損害軽微と聞いた途端に部屋中でわぁぁっ!…と黄色い歓声が上がった……


百合姫提督「……ふふ…きっと二人とも頑張ったのね。…弾よけのお守り、効果があってよかったわ」

エクレール提督「…リシュリューとジャンヌが被弾するわけありませんものね♪」

提督「ちょっと、みんな静かに!…気持ちは分かるけど……ガルヴァーニ、続きは?」


ガルヴァーニ「…よって陽動艦隊は当初の目的を達し損害軽微。燃料、砲弾にも余裕あり。引き続き作戦を継続するか指示乞う」…とのことですが」



提督「了解…「鎮守府よりリットリオ。…「リットリオ」以下、艦隊の目標達成を心より嬉しく思う。…が、それ以上に各艦に重大な被害がなかったことが喜ばしい。「リットリオ」の艦隊指揮および各艦の技量は称賛に値する……作戦継続については、当初の目的は達成された以上『長居は不要』…敵制空権下より退避し、帰途にマルタ島周辺海域を哨戒し帰投せよ」…書けた?」

ガルヴァーニ「書きました…これで打電しますか?」

提督「いいえ。『追伸』として…「今回支援に加わった「エンタープライズ」、「フレッチャー」、「リシュリュー」、「ジャンヌ・ダルク」、「足柄」、「龍田」には厚く感謝の意を表明し、それぞれの提督たちに代わりキスを送る……ねぎらいと心からの愛を込めて。フランチェスカ」としてもらえる?」


ガルヴァーニ「了解…打電しました」

提督「…ふぅ、やったわ♪……後はロモロたち輸送潜水艦とサイント・ボンたち『輸送船団攻撃』組の作戦完了待ちね」

ミッチャー提督「リットリオたちもこっちに近づくほど援護が受けやすくなるからね…もっとも、近場とはいえ海中に潜んでいる奴がいるかも知れないけど……」

百合姫提督「そうね。私も出撃の時はいつも言っているの…『作戦は帰投するまでが作戦です』って」

提督「そうね…でも少し安心したわ……って、安心したらお腹が空いてきたわね…」

ミッチャー提督「ははっ、きっとリットリオたちもそうなんじゃないの?」


…数分後・ケルケナー諸島沖…

リットリオ「「…心からの愛を込めて。フランチェスカ」……エンタープライズたちはそう言ってもらえてうらやましいです」

エンタープライズ「もう、リットリオだってうんと褒められてるじゃないの」

チェザーレ「うむ、その通りだ…それにリットリオ、頬をふくらませている時間があったら提督の言うように退避した方がいいと思うが?」

リットリオ「ほっぺたなんて膨らませてませんっ!…そうですね、輪形陣を取って退避します。針路北北東、20ノット……チェザーレ、至近弾を受けたそうですが、20ノット出せますか?」

チェザーレ「うむ、チェザーレは大丈夫だ。喫水線より上だったのでな」

グラナティエーレ「それにしても…お腹がぺこぺこ」

エウジェニオ「駆逐艦はすぐお腹空くのよね。可愛いわ…ぁ♪」

グラナティエーレ「何よ、そのいやらしい目つきは……とにかく、食事にしましょうよ」

リットリオ「そうですね…戦闘配置はまだ解きませんから、冷たいものが中心になりますが……」

グラナティエーレ「いやいや、これで充分よ…」軍用クラッカーにレバーのパテや厚切りチーズ、サーディン、キュウリのピクルス…と、一枚ごとに違うものを載せると、ワインの小瓶とオレンジ一つを横に置いて食べ始めた……

足柄「何だか美味しそうなもの食べてるわねぇ……もっとも、これのほうが落ち着くけど♪」三角形の『握り飯』は戦闘配置に就いていたせいで悠長なことはやっていられないと、梅干しだけのものが二つ入っていた…と、龍田から信号が送られてくる……

足柄「どうしたのかしら…なになに「…今日のお昼はぜいたくね『卵焼き』と『かまぼこ』が入っているわ♪」……ですって?ちょっと待ってよ、私の方はそんな贅沢してないって言うのに、何で龍田が「かまぼこ」だの「卵焼き」だのって……どこで「ギンバエ」したわけ?」(※ギンバエ…たかること)
875:2017/11/04(土) 03:00:18.98 ID:
足柄「えーと?…「双眼鏡で見てみれば分かるわ」ですって?」…双眼鏡で龍田の艦橋を拡大すると、指で黄色い何かをつまんでいたずらっぽい笑みを浮かべている龍田が見える……

足柄「あれ、どう見てもたくあんにしか見えないけど……って、落語じゃない!」

(※落語「花見酒」…貧乏長屋の一同が茶目っ気のある大家につき合わされ、「ものがないなりに」花見を楽しもうとする噺…『卵焼き』はたくあん、『かまぼこ』は大根の漬物、酒は番茶の煮だしたものと、『お酒盛り』ならぬ『おチャカ盛り』をする)


足柄「ってことは…「かまぼこ」は大根の漬物なわけね?」信号をやり取りすると、龍田がうなずいているのが見えた…

足柄「もう、ばかばかしい…それならこっちは浴びるほど『酒』を飲んでやるわよ♪」アルマイトのやかんから湯呑みに注いだ、冷めたほうじ茶をぐいぐいあおる…

足柄「ふぅ…のどが渇いてたからちょうどいいわ……それにしてもあれだけ撃ちまくられて損害なし…やっぱり提督のお守りが効いたのね……」首から提げていた紫のお守りを撫でた…


…一方・龍田…


龍田「ふふっ、足柄ったらあんなにびっくりして…驚かせるかいがあるわぁ♪」指先についた米粒をひょいとつまみ、それから残っていた「卵焼き」を口に入れてばりばり噛んだ…

龍田「そういえば…まだ鉢巻きを取ってなかったわ」トンボの柄が入っている縁起のいい鉢巻きを取ると、額を拭い椅子に腰かける……周囲は上天気でからりと暑く、ちぎれ雲がいくつかぷかぷかと浮いている…

龍田「ごくん…ごくんっ……」やかんのほうじ茶を湯呑みに注いで飲みほした……それからしげしげとお守りを眺める…足柄のは紫だが龍田のは紅で、「竜田川」だけに金のもみじが刺繍してある……

龍田「提督も物好きよねぇ…うちの艦隊みんなにこれをあげるなんて……おかげでしばらくはすっかり毛が無くなっちゃったのよね…♪」ひとりごとを言いながらその様子を思い出して、少しいやらしい微笑を浮かべる龍田……

龍田「ふー…涼しくなってきたし、後は戻るまで何も出てこなければいいわねぇ……」双眼鏡を巡らせ、流麗なイタリア艦を観察する龍田…ちょうど左舷には「ジュリオ・チェザーレ」が並んでいる……


…チェザーレ艦上…

チェザーレ「うむ、美味い」…食に「こだわりがない」と言えばうそになるが、サラダオイルが「髪用の香油」でも怒らなかったり、出された物に「文句をつけながら食べる」ようなことはしないよう部下を戒めたりしたチェザーレだけあって、冷菜ばかりの昼食にも文句をつけず食べている……

チェザーレ「厚切りのチーズはいいな…噛みごたえがある……」癖のあるゴルゴンゾーラ・チーズをしっかり味わい、小瓶の赤ワインで流し込む…

チェザーレ「ふむ…ワインも上等だ。ポーラの鑑定眼には感謝せねば……」ラベルをしげしげと見てつぶやく…

チェザーレ「それにこの軍用クラッカーも食感がざくざくしていてそう悪くない……戦中の「アジノ・モルテ」やポレンタ(トウモロコシのオートミールのようなもの。貧しい食事の代名詞)ばかりの食事に比べれば「雲泥の差」というやつであるな…」最後の一枚には黄色いバターとラズベリージャムを塗り、こぼさないよう口に運んだ……


(※アジノ・モルテ…「死んだロバ」缶。「砂漠のキツネ」にも書かれている戦中イタリアの軍用牛缶で、『AM』と印字されていたが、相当まずかったことからイタリア兵がつけたあだ名。ドイツ軍にも提供され「アルター・マン」(爺さん)とか、「アルマー・ムッソリーニ」(死んだムッソリーニ)などと散々に言われた)


チェザーレ「しかし…ロモロたち輸送潜は上手くやっているだろうか」食べ終わってナプキンで両手を拭うと、じっと考え込んだ…


…同時刻・チュニジア沿岸から百キロ圏内…


ロモロ「はぁぁ…っ、空気が美味しいし空が眩しい!」またしてもウロウロしていたコルヴェット「花」(フラワー)級のせいで潜航を余儀なくされていたミッカ以下の「輸送潜水艦」隊……やっと静かになって浮上したロモロはハッチを開けて周囲を警戒し、それが済むと「うーん…」と伸びをした

レモ「ねぇ、お昼食べよっ?」

ミッカ「そうですね…お昼にしましょう」…ミッカは司令塔にお盆を持ってきて折りたたみ椅子に腰かけ、周囲に目をこらしつつ黒オリーブとチーズをつまみ、タマネギやズッキーニ、ニンジン、それにえんどう豆やヒヨコマメを煮こんだ具だくさんのトマトスープをすすりつつ、フォカッチャをちぎった…

レモ「んー、デリシャスメル……んぅ、美味しい♪」

ロモロ「ほんとにね♪」ロモロとレモは二人とも同じ考えだったらしく、ほぐした固ゆで卵とアンチョビを薄切りのパンにのせ、黒胡椒を利かせたオープンサンドウィッチにかぶりついた……

カッペリーニ「私もお昼にしましょう…おぉ、潜航明けと言うのもありましょうが、これは美味ですね♪」…カッペリーニは裂いた冷製チキンと紅いパプリカのマリネをパンで挟み込んで丁寧に食べる……

アトロポ「私もお昼としましょう」…タンの燻製と赤玉ねぎのマリネ、それにチーズとモモの缶詰を開けた

トレーリ「みんな美味しそうですね♪」ニンニクと唐辛子、タマネギをゆっくり油で温めて香りを出し、そこに加えた生米をトマトスープで煮こんだ舌触りのいいリゾットをクラッカーと一緒に口に運んだ……

ミッカ「いよいよ沿岸部に近づきますから、みんなしっかり食べておかないとだめですよ?」

レモ「りょうかーい…でもレモは船倉が一杯だから船体は重いし、しっかり食べたらお腹まで重くなっちゃうね♪」

ミッカ「そこはまぁ…上手くやって下さいな」

ロモロ「そうよ、食べる量ぐらいきっちりわきまえなさい」

レモ「へぇ…お姉ちゃんだって狼みたいにがつがつ食べてるくせにね♪」

ロモロ「あ…そういうこと言うの」

ミッカ「二人とも、食べ終わったなら周囲の警戒です」

ロモロ「了解」

レモ「はぁーい♪」
878:2017/11/05(日) 01:43:04.61 ID:
…1600時・鎮守府…

提督「んー…すん…すんっ……」明け方の仮眠をのぞいては、昨晩からずっと通信室に詰めていた提督……少し状況が安定したせいもあって、昨日からシャワーも浴びず過ごしていたことが気になるらしい……制服の襟元を嗅いだりしては眉をひそめていた…

エクレール提督「…一体どうしたんですの?」

提督「いえ、少し臭うんじゃないかって気になって…でも、お風呂に行っている間に状況が変わったらと思うと……」

エクレール提督「香水はつけてみました?…少しはさっぱりした感じになりますわ」

提督「ええ…一応つけてみたんだけど……」小さい「フェラーリ」の香水瓶を手の中で揺らした……

エクレール提督「どれ…少しつけてみて下さいな」手首に一吹きしてもらうと、小粋なエクレール提督らしく手首を揺らしてファースト・ノット(立ちのぼる最初の香り)を嗅ぎ、それからセカンド・ノットの香りをじっくり吸い込んだ…

提督「どう、マリー?」

エクレール提督「そうですわね…てっきり自動車メーカーだけに潤滑油の匂いでもする香水かと思いましたが、なかなかいい香りですわ」

ミッチャー提督「へぇ…どれどれ」提督の首筋に鼻を近づける

提督「ちょっと、ジェーン…昨日からまともにお風呂に入っていないからだめよ///」

ミッチャー提督「平気平気♪……私なんてハワイでむちゃくちゃ忙しかった時、三日も入浴もシャワーも抜きだったわよ?」

百合姫提督「それにフランチェスカ、全然臭ったりしてないわ。でも…もしよかったらシャワーだけでも浴びて来たら?やっぱり爽やかな気分の方が頭が冴えると思うの」

ザラ「そうね、私も行って来た方がいいと思うの。何かあったら内線で呼ぶし…」

フィウメ「私たちでも充分無線への対応は出来ますから…どうぞ行ってきてください」

提督「そう、じゃあ部屋でシャワーを浴びて来るから…十分で戻るわ」駆け足で飛び出して行った…

カヴール「ふふっ、真面目なんですから…♪」

ヴェットール・ピサニ(ピサニ級中型潜)「それが提督のいい所だろう…もっとも、潜水艦ではシャワーも浴室もなかったからな。数日どころか数週間は洗面台の塩水で海水石けんを使うのがせいぜいだった……気にすることもあるまいに、年頃のお嬢さんだな♪」

ナウティロ(フルット級中型潜)「まったくです…それにドイツ潜なんかは『清潔ぶってると獲物が逃げる』なんて言ってました……」

ピサニ「では輸送船攻撃にいそしむサイント・ボンたちのためにも風呂は止めるか、はははっ!」

ナウティロ「それは止めて下さいよ?…隣は私なんですから。だいたい、カーニたちだってまともに入浴なんか出来ていないはずですし、ピサニまでやらなくても……」

ピサニ「ははっ、冗談だ……それにしても、カーニたちの『獲物』が見つかるといいがな」


…リビア沖数十キロ・海中…

アミラーリオ・カーニ「ふぅ…潜航中とはいえ蒸し暑いですね……」


…それまでの二日間、「アミラーリオ・カーニ」級の四隻はチュニジアからリビア沖にかけて、深海棲艦の「輸送船」がケルケナー諸島へ向かうための「補給ルート」を逆走するように、西から東へと航行していた…が、ちっとも相手に出くわさないので一時間ほど前から潜航し、深海棲艦の「スクリュー音」でも聞こえないかと全周囲聴音で索敵していた……艦内のむっとこもった空気はじっとりと蒸し暑く、カーニの豊満な身体から汗がしたたり落ちては大きな胸の谷間やずっしりと重量感のあるヒップ、むちむちしたふとももの間にたまる……


カーニ「上着は脱いでしまいましたし……あと脱げるものは…」金モールの付いた白い提督の服とサーベルの剣帯、ぴっちりとした競泳水着風の「艤装」は艦長室のハンガーにかけてある……カーニが改めて見おろした上半身は汗でびしゃびしゃの開襟シャツ一枚、下はカーキ色の半ズボンに革のサンダル…と、当時のイタリア陸軍や空挺隊の熱帯用装備をかき集めたような恰好をしている……

カーニ「…誰かが見ているわけでもないし、別にかまいませんよね……?」正確には当時の格好をした乗組員の「幻影」のようなものが配置に就いているが、彼らは直接どうこうするわけでもなく、「艦娘」を見たり聞いたりもしないので気にならない…

カーニ「んっ…くうっ!」茶革のベルトを外すとふとももに張りついている半ズボンを脱ごうと身をよじらせ、そのたびにばるんっ!…と乳房が揺れて汗が飛び散る……

カーニ「くっ…えいっ!……ふぅ、ふぅ…ふぅー…」何とかズボンを脱ぎ捨てると、白いショーツからはち切れそうなヒップが揺れ、ヒップと秘所の割れ目に布地が食い込んだ…

カーニ「はぁー…少しは涼しいですけど……あんまり変わらなかったですね…」と、潜望鏡をのぞいたカーニは一瞬ぱちぱちとまばたきし、それから水平線のかなたに霞んで見える船団の姿を見つけた。……ほんの少しだけ空より色の濃いシルエットを見つけると、全速で船団を追跡できるよう浮上の用意に取りかかった…

………
879:2017/11/07(火) 01:54:49.59 ID:
…1800時・シルテ湾の沖合十数キロ…


カーニ「機関両舷全速!左舷二十度へ転針!……明るいうちにあの船団の横手に回り込みます!」

サイント・ボン「承知した。しかし機関が全力だと気持ちのいいものだ……こう、元気が出てくるようだな」

カラッチォロ「ええ…それにしても、夕風が涼しくて気持ちが良いですね」

カーニ「そうですね……くしゅっ!」西日が傾くと急に涼しくなって、カーニは慌てて長ズボンを引っ張り出してきた…

ミロ「カーニ、夜は冷えますよ?」

カーニ「分かってます…ちゃんと着ましたよ」


…1900時…

……リビアにあるシルテ(スルト)とベンガジの間、南に大きくくぼんでいる形のシルテ湾…戦中はイタリア領リビアの「キレナイカ」と言われていた地方を結ぶ沿岸航路で、その岸辺にある「エル・アゲイラ」「メルサ・ブレガ」「ベンガジ」と言った場所は、『砂漠のキツネ』ロンメル将軍と、それにどうにかついて行こうとしたイタリア王国陸軍が砂煙をあげて駆け回った場所でもある……今はリビア領になっているが最近は沿岸に「深海棲艦」が跳梁跋扈していて、民間船は行き来できずにいる……


サイント・ボン「ふむ…少々船団攻撃には不向きな晩ですな……」ちらりと上空を見上げる「アミラーリオ・サイント・ボン」……船団の隻数や護衛艦艇を観察していたが、沈んだばかりの夕日に代わって銀色の月が明るく水面を照らしているのを見て、大きく肩をすくめた…

カーニ「ええ、月が明るすぎますね…」カーニたちは日が沈むまでに船団の北側へと回り込むことが出来たので、船団は月光を背にして浮かび上がり、反対に自分たちは月のない海面を航行していた…が、それにしても月光が明るすぎた……司令塔の窓越しに双眼鏡でのぞくと、深海棲艦の薄暗いシルエットがいくつも並んでいるのが見える……

ミロ「それにしても大物がいっぱいいますね…護衛も少ないようですし……」向こうにぼんやり浮かび上がっている深海側の「船団」には、大きなデリックのあるものや、艦首楼のあるもの、はたまた三島式の構造をした昔懐かしい形の貨物船……のような「深海棲艦」が、四列縦隊の四角い陣形を作っている…


(※三島式…「みしましき」。三島型「さんとうがた」とも。…船首、中央、後部に一段高くなった楼を設けているタイプの貨物船で、大戦頃までは多く建造された。間のウェル・デッキ(窪み)が船倉部分になるが、今では輸送効率が悪いのでほとんど建造されない)


カラッチォロ「そうですね…ずいぶん手薄に見えます…」貨物船より色の淡いコルヴェット「花」級の迷彩姿が二つに、「ハント」級護衛駆逐艦らしいほっそりした姿が一つ……

カーニ「これだけ月が明るいと潜水攻撃でしょうかね…」昼の暑さは日が沈むとあっという間に消え、今度はうすら寒く感じるほどだった……革のコートを羽織り、あごに指を当てるカーニ

サイント・ボン「それがよろしいのではないかな?」

カラッチォロ「私もそう思いますが…戦隊の先任はカーニですから」

カーニ「……分かりました、潜航して雷撃します!」

サイント・ボン「了解した」

ミロ「了解」

カーニ「ここが正念場ですね…!」…するりと潜航するサイント・ボンたちに続いて、カーニも潜航をかけた


…潜航したカーニは潜望鏡に取りつき、しきりに左右を見回す……船団の向こうに護衛艦艇はいないか、距離を取っている間接護衛のコルヴェットはいないかと探し回ったが、結局護衛は三隻だけのように見える……


カーニ「そういうこともあるのでしょうか……敵船団、相対方位080度!…速度、9ノット!…距離、2000メートル!……魚雷深度は3メートル!…前部魚雷発射管一番から八番、後部発射管一番から六番まで注水!」魚雷発射管前扉を開けられるよう、発射管に注水して圧力を慣らす…発射管がゴロゴロ言って注水が終わる……


カーニ「発射管前扉開け!……発射は扇状発射で、指揮はここでとります!」

…これがドイツ潜なら傑作映画「U・ボート」(Das Boat)から、クラウス・ドルディンガーの名曲「U-96のテーマ」が流れるような場面で、カーニは士官帽を後ろ前にして潜望鏡をのぞきこむと、いかにも重そうな輸送船を眺めた……そしてU・ボートなら、照準器に繋がった自動計算機が相手の針路や角度に合わせて照準を自動で調整してくれるが、残念ながらイタリア潜にはそこまで進んだ装置はついていない……カーニは速度と見越し角を計算しながら針路を変える…


カーニ「第一の目標は船団中央のあれにしましょう…回頭、面舵一杯っ!」次第に艦の正面へ回ってくる、一万トンはありそうな重々しいシルエットに狙いを定めた……緊張と興奮で冷たい汗がしたたり、潜望鏡をつかむ手も汗でぬるぬるする……

カーニ「……前部発射管一番から八番、よーい……発射!」頃合いのいい所で、ドスッ…と細身の450ミリ魚雷が扇状に撃ちだされる……

カーニ「そのまま回頭!後部一番から六番、よーい…撃て!」ぐるりと円を描くように舵を回しながら、後部発射管の六発も撃ちだしたカーニ…

カーニ「お願いだから…ちゃんと当たってね……」潜望鏡を眺めていると、魚雷に気づいたらしい一隻が照明弾を打ちあげ、途端に船団は大混乱になった…不意打ちで、しかも14門の発射管を持つ「カーニ級」四隻からの一斉発射……さすがに「ハント」級は駆逐艦だけあってかわしたようだったが、深海の「輸送艦」は次々と水柱を噴き上げて速度を落としていく……

カーニ「やった、命中っ!……発射管前扉閉め!潜航!」慌てて駆けまわる「ハント」級と「花」級の追跡をかわそうと一気に潜航するカーニ…提督が測量部に頼んで用意してくれた海図とにらめっこして海流の強い所を選ぶと、力不足の電動機が出せる速力に数ノットを足す……

カーニ「はぁぁ…あとは誰にも爆雷が来なければいいんですが……」そう言っている間にも遠い爆雷の「ズシーン」というイヤな響きが聞こえてきた…

カーニ「どうかみんなが無事でありますように…」気づかれないように慎重に舵を取って戦闘海域から抜け出した…

………
880:2017/11/08(水) 01:00:22.74 ID:
…0040時・鎮守府…

提督「フルット…カーニたちからの打電は?」

…まだ夜も宵のうちに「攻撃開始」の暗号電を送って来てからと言うもの、数時間も梨のつぶて状態でだんまりのカーニたち…振り払っても振り払ってもイヤな予感がして、胃に冷たいしこりが出来ている気分の提督だったが、艦娘たちの前で落ち着きを失ってはいけないとしっかりと椅子に座り直し、もう六杯は飲んでいる冷めかけのコーヒーをすすった……

フルット「いえ、まだ……」交代して艦隊向け通信機の席に着いているフルットも、整った顔を少し心配そうにしかめている…

提督「そう…いくら爆雷攻撃を受けたにしても、ここまで遅いと気になるわね……」

カヴール「まぁまぁ。もしかしたら哨戒機が飛んでいて浮上出来ないのかもしれませんし、通信アンテナが破損したのかもしれません……淹れたてのコーヒーを持ってきて差し上げますね」つとめて穏やかに振る舞うカヴールだが、落ち着きなく首にかけた小さい十字架をいじくっている…

提督「あー…コーヒーは止めておくわ、胃がむかむかするから……」

カヴール「では食堂から何か持ってきましょう…」すっと立ち上がって扉を開けた…

フルット「カーニから打電あり!」

提督「本当っ!?……こほん…内容は?」ガタンと椅子から跳ね起きたが、慌てて冷静な様子で聞き直した…

フルット「はい、内容は…「船団攻撃成功。斉射によって「輸送船」タイプ八隻を撃沈。他に輸送船四隻航行不能、「花」級一隻を含む三隻を大破させ、「ハント」級護衛駆逐艦および「花」級コルヴェットにより五時間にわたり爆雷攻撃を受く……」だそうです」

提督「そう…みんな無事なのね?」

フルット「はい、まだ電文の続きがあります…「追跡を受けた『アミラーリオ・ミロ』は爆雷攻撃を受け一時浸水するも現在は問題なし。『アミラーリオ・サイント・ボン』は魚雷一発が不発、安全装置をかけ投棄……帰投する」

提督「了解。それで……」

フルット「待ってください…まだ追伸があります」

提督「追伸?」

フルット「はい。「爆雷がまだ頭に響くので頭痛薬を用意されたし」とのことです」

提督「ふふっ…冗談が言えるくらいだから相当上手く行ったのね♪」

一同「わーっ!」拍手喝采が飛んだが、今度は提督も制止しようとはしなかった

カヴール「攻撃成功、よかったですね?」

提督「ええ…残るはミッカたち「物資輸送任務」のグループだけだから、後はそれに集中すればいいわけだし……」

ミッチャー提督「コングラチュレーション(おめでとう)…真っ先に言えて嬉しいよ」

提督「まだ早いわ…ここにみんなが帰って来るまではね♪」

ミッチャー提督「ウップス!(おっと)…それはそうだったね、ソーリィ」…おどけて額を叩いてみせた

カヴール「ふふ、でもお気持ちは嬉しいですよ…よかったら何かお飲み物をお持ちしましょうか?」

ミッチャー提督「ならコーヒーをもう一杯もらうわ…ちょいまち……」カップの底に残っていた冷たい残りを一気にすすると丁寧に渡した

提督「んー…私はココアにするわ」

カヴール「お二人は何になさいますか?」

百合姫提督「あ…わざわざ気を使ってくれて……それなら私もホット・ココアにします…」

カヴール「宇治抹茶もありますが、ココアで構いませんか?」

百合姫提督「ええ…どうもありがとう」

カヴール「エクレール提督はどうなさいます?」

エクレール提督「そうですわね…ならカフェ・オ・レをお願いしますわ」

カヴール「はい♪」
881:2017/11/08(水) 02:04:19.25 ID:
…同時刻・マルタ島南東沖…

ドリア「ふぅ…それにしても何てきれいな月……」艦橋に立って温かい紅茶をすすりながら、緑色がかった月を眺めている…

リットリオ「きれいですね……それにとっても明るいです」本が読めそうなくらい明るく真ん丸な月に、リットリオも双眼鏡を動かす手を休めて空を見上げた……

エウジェニオ「ふふ…こんな夜は少しおセンチな「ルナ・ナポレターナ」なんていいかもしれないわね」

(※『Luna Napoletana』…1961年のカンツォーネ。歌はマーリオ・マリーニ。日本語タイトルは「夢のナポリターナ」で、ザ・ピーナッツが「ルナ・ナポリターナ」としてカバー、人気を博した)

ヴェリーテ「いいですね…お願いします」

エウジェニオ「ええ…愛らしい天使にそう言われたら断れないわ♪」

ヴェリーテ「そんな…私は愛らしくなんてないですよ……二人分の身体をくっつけたようなものですから…」

エウジェニオ「もう、そういうこと言わないの…二人分の優しさと愛らしさをあわせ持っているなんて素敵だと思うわ……さぁ、歌ってあげる♪」

ヴェリーテ「は、はい…///」


エウジェニオ「♪~ルナ・ルナ・ルナ・ルー…カルメッラ・ノン・チェ・ピゥ……ルナ・ルナ・ルナ・ルー……カルメッラ・ノン・チェ・ピゥ…」
(月、月、月…カルメッラはもういない……月、月、月…カルメッラはもういない…)

「♪~オー・ルナ・ルーナー…ナポレターナ・セ・トロッポィグラタ・ロ・サイ・ペルメ…」
(おぉ、月よ、ナポリの月…あなたはあまりにも恩知らず……なぜだかあなたに分かるだろうか…)

「♪~オー・ルナ・ルーナーぁ…ナポレターナぁぁ…ノン・ミィ・ヴォイ・ディーレ・ドゥヴェ・カルメ…」
(おぉ、月よ、ナポリの月……あなたは僕に言いたくないんだね、カルメッラの居場所を…)

「♪~マ・ダント・ヴァッチォ・クァンド・チェリ・トゥー……マ・ダッティ・ジォルノ・ノン・ロ・ヴィスタ・ピゥ・アッドゥスタ…」
(僕にキスしてくれたんだ、お前がいる時に。僕に「一日」を与えてくれた彼女……なのにあれから会っていないんだ。彼女はどこにいるんだ…)

「♪~オー・ルナ・ルーナー…ナーポーレターナ…センツァ・カルメッラ・ノン・ヴィヴォ・ピゥ……」
(おぉ、月よ、ナポリの月…僕はカルメッラなしに生きてはいけない……)


エウジェニオ「どう?…私のカルメッラ……♪」

ヴェリーテ「その…上手でした///」

エウジェニオ「それだけ?……まぁいいわ、帰ったら二人で月を眺めてワインでも傾けましょうね♪」

ヴェリーテ「え、ええ…そうですね///」


…艦隊中央部…

エンタープライズ「見事な月ね…幸い夜間哨戒の敵はいないみたいだし、安心出来るわ」

フレッチャー「音楽でも流す?」

エンタープライズ「うるさいのは却下よ…何か良いのがある?」

フレッチャー「グレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」は?」

エンタープライズ「グッド♪…あれは好きよ」

フレッチャー「オーケイ、レコードをかけるわ…」戦前「グレン・ミラー楽団」の優しい音色が蓄音機から流れ始める…


「♪~I stand at your gate…and the song that I sing of moonlight…」
(僕は貴女の家の門に立ち、そして月光の歌を歌う…)

「♪~I stand and I wait for the touch of your hand in the june night…」
(六月の夜…僕は立って、貴女の手にそっと触れるときを待っている…)

「♪~The roses are singing a moonlight serenade…」
(バラの花々が「ムーンライト・セレナーデ」を歌っているなか…)


フレッチャー「…懐かしいわね……あの頃を思い出すわ」

エンタープライズ「いつ聞いてもいい曲ね…なんだかホームシックになりそうよ……」

………
882:2017/11/10(金) 00:35:19.36 ID:
…翌朝0500時・チュニジア沿岸…

ミッカ「それにしても素晴らしい朝ですね…少し寒いですが……ぶるるっ」…作戦三日目の朝、もうすぐチュニジアに到着しようというミッカたち輸送潜グループ……周囲は朝霧が立ち込め、まだ夜の冷え込みが残っているせいか革のコートがないと少し肌寒い……襟を立てて身震いしたミッカ…

ロモロ「もう、運動すれば寒さなんかへっちゃらよ?」

レモ「すぐに暖かくなるもんね…レモ、かしこーい♪」司令塔の中で腕を振り回しながら、しきりに飛び跳ねているロモロとレモ……

ミッカ「若いお二人は元気ですね……私にはとっても…」熱いコーヒーの入ったカップを両手で包むようにして持ち、ふーふーしながらすする

トレーリ「ミッカ、年は関係ないかも…私も暖かい飲み物の方がいいもの」濃く淹れたニルギリにラムを垂らし、砂糖を二さじ加えたものをゆっくり喉に流し込む……トレーリがいくら双眼鏡を動かしても、まだ周囲は霧の中で天測もできない…が、紅茶の香りに交じってふと漂ってくる砂漠の匂いは目的地が近いことを感じさせる…

カッペリーニ「そうですね……おや、アトロポ…どうかしました?」

アトロポ「ううん……私としたことが…身体がこわばって…あいたた……」腰を伸ばし身体をひねるアトロポ…さすがに丈夫な「艦娘」も一晩中夜の空気にさらされているとあちこちきしんだような感じがする……

カッペリーニ「お気の毒に…暖かいスープでもお召しになるといいですよ」

アトロポ「全く…寿命を司る女神がこれではいい笑い者ね……」

ミッカ「まぁまぁ…チュニジアはもうすぐです、頑張りましょう」

アトロポ「そうね…早くこの荷物を降ろして帰りたいわ」

ミッカ「さてと…それでは鎮守府に位置報告をしませんと」


…同じころ・鎮守府…


エクレール提督「ボンジューゥ、フランチェスカ…サ・ヴァ(お元気)?」

提督「ウィ。サ・ヴァ…メルスィ♪……エ・ヴ(そちらは)?」

ミッチャー提督「はー…フランチェスカはすごいねぇ……私はフランス語なんてからっきしだから。こほん…ボンジュール、サバー?」

エクレール提督「…全く英語にしか聞こえませんわね」

ミッチャー提督「そうね…あきらめてコーヒーでも飲んでるわ」真っ黒けな「塩入りブラック・コーヒー」をすする…

百合姫提督「フランチェスカは外国語が得意なのね…すごいわ♪」

提督「ありがとう、姫♪」ちゅっ♪…と頬に軽く口づけをしただけで、真っ赤になってしまう百合姫提督

百合姫提督「も、もう…///」

カヴール「提督」

提督「はいはい」

カヴール「輸送潜グループより打電ありです…「我、北アフリカ沿岸に到達…チュニジア海軍の先導でメデニーヌ近郊の港湾に入港の予定」だそうです」

提督「そう、とうとう着いたのね…よかった♪」

バリラ(バリラ級大型潜)「うふふ…よかったわね、提督。…バリラお母さんは提督のこと信じてたわよ♪」提督をぎゅっと抱きしめるバリラ…

パンテーラ(レオーネ級駆逐艦)「おめでとう…ちゅっ♪」

カドルナ(カドルナ級軽巡)「おめでとうございます、後は帰りだけですね」

ライモン「数日とは思えないほど長かったですね……でも、無事に着いてよかったです」

提督「そうね…うんとぜいたくなごちそうを用意しないと♪」



883:2017/11/10(金) 01:44:49.85 ID:
…0915時・メデニーヌ近郊…

ミッカ「これで物資の積み下ろしは完了ですね?」

国連職員「はい。イタリアからはるばるご苦労さまでした」港では青い帽子の国連職員と青いベレー帽の国連軍士官、それに金モールのチュニジア海軍士官がテントで出迎えて、アラビア風の濃い甘い紅茶でもてなしてくれた……

ミッカ「いえいえ…これも私たちの愛のなせるわざですから♪」

国連職員「愛…ですか。……そうですね、人類同士が愛し合えることが世界平和への道ですからね」

ミッカ「ええ、まぁ♪」(本当は愛しい人のためですが……せっかく善意の解釈をしてくれたのですし、訂正することもありませんね♪)

チュニジア海軍士官「とにかくご苦労さまでした…良かったら地元のバザールものぞいてみますか?……最近は観光客も来ないので何か買ってくれれば地元の商人も喜ぶでしょうし、時間があるようなら下士官に案内させますよ?」

レモ「わぁ、楽しそう!…ね、行こうよミッカ?」

ミッカ「はいはい…まずは鎮守府に打電してみましょうね♪」


…十数分後・鎮守府…

ゴリツィア(ザラ級重巡)「提督、ミッカからです…「国連軍士官、チュニジア軍下士官の案内付きで地元を散策したく、許可願う…予定は1500頃まで」と打電してきていますが…どうしますか?」

提督「いいと思うわ…「許可します。楽しんでいらっしゃい」と打電して?」

ゴリツィア「了解♪」

百合姫提督「ふふ、チュニジアなんてエキゾチックで素敵…きっとカサブランカみたいなところなんでしょうね……」

提督「そうね、お土産に期待しましょう……なんてね♪」

カヴール「…何はさておき、きっと提督には買ってきてくれますよ♪」

提督「ふふっ…お土産なんかよりも、ミッカたちが緊張をほぐしてくれればそれで充分よ♪」ぱちりとウィンクをして無邪気な笑みを浮かべた…


…しばらくして・チュニジアのバザール…


…狭い道の両側にごちゃごちゃと立ち並んでいる商店は土壁だったりタイル張りだったりしているが何となく統一感があって、黒いヴェールやスカーフをまとった女性や、白いシャツに派手な刺繍がされたベストを着こんだ男性が行き来している……と言っても、近海に「深海棲艦」がうろついているせいか観光客は少なく、お土産や海産物を扱う商店はたいてい店を閉めている…


レモ「わぁ…美味しそう……デリシャスメル♪」…香ばしい匂いがするアラビア風羊の串焼きに、平べったくて大きいアラビア風パン……医薬品や乳幼児向けの栄養食こそ輸送が必要だったが、ごく一部の店では商売上手な店主たちがまだ頑張って声を張りあげていた

ミッカ「せっかくですから買ったらどうかしら?」

レモ「いい?…それじゃあこれ下さい♪」国連職員の通訳さんに訳してもらって、長い串焼きを買うレモ……イタリア・リラが通じないので、通訳さんに両替してもらった現地のコインを取り出す…

通訳「店主のおじさんいわく「また来てな、お嬢ちゃん!」…だそうですよ」

レモ「んー…また輸送作戦があればね……あーん♪」むしゃむしゃとスパイスのきいた串焼きにかぶりつき、がっしりした羊肉を食いちぎるレモ…

カッペリーニ「あら…可愛いバッグ。手作りですか?」フェルトらしいバッグを眺めて、ひげの店主に聞く

通訳「これは全部手作りだそうです…「良かったらお土産に買っていかないか」と言っていますよ」

カッペリーニ「そうですね…じゃあこれとこれを♪」値切りを楽しみつつ、カッペリーニはお土産を兼ねたバッグを数個買った…

ミッカ「これ、綺麗ね……これを買いたいのですが」センスのいい金のネックレスを見つけて、値段を聞いてもらう

ミッカ「え?……まぁ、お手頃…その値段なら買えます♪」

アトロポ「ふふ…いい布地ね……3メートルばかりもらうわ」手のハサミをならしつつ、豪奢な感じがする布を買いこむアトロポ…

トレーリ「とっても素敵…これを買います♪」宝石のはまったペアの指輪やネックレスをいくつか買って、さっそくネックレスをかけてみるトレーリ…

ミッカ「ふふ…楽しいですね♪」数日ぶりの陸を楽しみ、あちこちの店をひやかして回った…


………
884:名前:自動あぼーん : 自動あぼーん
885:2017/11/11(土) 01:35:36.09 ID:
…1610時・鎮守府沖…

リットリオ「チェザーレ、機関の具合はどうですか?」

チェザーレ「うむむ……別に機関も軸路もおかしくないし、破損もないのだが…チェザーレも年かな」冗談めかしてみるが腑に落ちない顔をしている…

エウジェニオ「可愛い女の子を抱けば年なんてすぐ忘れるわ…ねっ♪」

チェザーレ「ははは、違いない♪……この数日は一人寝の淋しさと言うやつを散々味わったからな」

ロモロ「チェザーレ、下に潜ってみましょうか?…潜望鏡を使えば何か見えるかも知れないわ」

チェザーレ「いや、ローマの生みの親にわざわざ潜ってもらうなどおそれ多いのでな……鎮守府の浴場でこの老体をゆっくり休ませてもらうとしよう♪」

フチリエーレ「ねぇ見て、みんなが手を振っているわ♪……おーい♪」



…1620時・波止場…

カヴール「全体、整列!」鎮守府中の艦娘たちと提督たちがそれぞれの正装を着て鎮守府の波止場から庭にずらりと並び、ザラ級重巡がそれぞれイタリア海軍旗、アメリカ海軍旗、フランス海軍旗、海上自衛隊旗をささげ持ち、華々しい軍楽隊……のレコードで艦隊を出迎えた

リットリオ「リットリオ以下第一戦艦隊、ただいま帰還しましたっ!」

ミッカ「物資輸送潜水艦隊、ただいま帰投いたしました!」

カーニ「通商路攻撃艦隊、帰投しました!」

提督「みんな、本当によくやってくれたわ…私、あなたたちがいなくて寂しかったわ♪」堅苦しい行事の嫌いな提督だけあって、脚に「装具」をつけて「浮いて」いるリットリオにさっそく抱き着いてキスをした…

リットリオ「も、もう…提督ったら♪」

提督「…ふふっ、お帰り♪」

リットリオ「ただいま…提督っ♪」

提督「ん♪…ところでチェザーレの速度が出ないそうだけど……艤装を直せば船体も戻るのよね?」

チェザーレ「うむ、どういう訳かそうなっているな」

提督「ならチェザーレは先に入渠して、艤装の修理を……」

チェザーレ「どうしたのだ、提督?」

提督「いえ……チェザーレの脚に海藻みたいなものが絡んでいるから…それのせい?」

チェザーレ「おや、道理でさっきからくるぶしがぬるぬるすると思ったが…しかしなぁ、提督、コロンボの頃にサルガッソー海が恐れられたのは海藻のせいではなく無風帯のせいだぞ?……それに75000馬力のチェザーレに絡みつく海藻などあるわけあるまい?……」(※大西洋の「亜熱帯性無風帯」…かつてはホンダワラなどの海藻が集まり漂流し、そこにつかまると船が動かなくなるとされた「魔の海域」と言われた)

提督「まぁ、そうね…」

チェザーレ「いずれにせよ、海藻がついているのは気分のいいものでは……ずいぶんと重いな」…ざばぁ

深海棲艦「…」

チェザーレ「何っ!」

深海棲艦「言ったはずでしょうが…肉が削ぎとれるまで戦うと!」後ろからチェザーレを羽交い絞めにする深海棲艦…

リットリオ「提督っ、下がって!」

提督「チェザーレ!…引きはがせる!?」

チェザーレ「力ではこちらが上だが…引きはがそうにもフジツボと貝殻だらけでな!」確かにアルチンボルドが描いた「魚」の人物像のように、姿かたちは貝殻やぬめっとした藻類で出来ている……

ミッチャー提督「なら銃がいるわ!…フランチェスカ、武器庫へ早く!」

提督「ええ!…全員、どうにか深海棲艦を食い止めて!」
886:2017/11/11(土) 02:42:31.72 ID:
…武器庫…

ミッチャー提督「全くあの「深海お化け」も大したもんだよ…はるばる船底に引っ付いてきたなんてね!」鍵を開けてもらうと中に飛び込んだ

提督「笑いごとじゃないわ…姫、使い方分かる?」自分用に握りやすいベレッタM12Sサブ・マシンガンをひっつかみ、9mm×19の弾倉数本をベルトに突っこむと銃器保管箱から銃を取り出す…

百合姫提督「え…ええ」

提督「なら姫はこれで…安全装置は外してあるから、スライドを引けば撃てるわ!」イタリア軍制式採用のベレッタM92・ピストルと予備の弾倉数本を渡す

百合姫提督「分かったわ!」

提督「マリー、これ使える?」M12Sをもう一丁とりだした

エクレール提督「当然ですわ、早く!」

提督「ええ!」銃の扱いは今一つの百合姫提督を援護しようとエクレール提督が飛び出して行った…

ミッチャー提督「…フランチェスカ、いいのがあるじゃない!」そう言っている間に、ガシャリ!…と棚から取り出したのは、本来二階テラスの三脚に取りつけるMG42/59(イタリア・ライセンス仕様のMG3)軽機関銃…それをランボーそこのけに腰に抱え、手早く100発の弾薬ベルトを装填し、残りを腕に回した…

提督「さすがね…じゃあ行きましょう!」二人して駆けだした…


…波止場…

チェザーレ「放さないか…この、ブリタニアの亡霊めっ!」冷たくぬめりのある青白い指が喉にかかって締め付けて来るが、後ろになびかせていたローマ風マントを首元で留めていたおかげで締めつけがゆるかった……

深海棲艦「お前一人でも道連れにしてやるわ!」

レジオナリオ「リットリオ、主砲斉射の許可を!……チェザーレには当てないで撃つ!」

リットリオ「却下します!鎮守府に当たってしまいます…だいたい、私たちでも120ミリ砲の直撃なんて耐えられるはずありません!」

レジオナリオ「なら20ミリ機銃を!後ろから抱きついているんだからチェザーレには当たらない!」

リットリオ「だめです!20ミリの銃弾がどこに飛ぶか分かったものじゃないでしょう!」

ドリア「とにかく、チェザーレから深海棲艦を引き離さないと…!」もやい綱を輪っかにして深海棲艦の首にひっかけた…

エウジェニオ「手伝うわよ!…艤装を付けていないみんなは離れていなさい!……この招かれざるお客さまにはお帰りいただくから!」

深海棲艦「うぐっ…きっ!」丈夫なもやい綱を喉にあてがうと、ごつごつしたフジツボやらカキ殻やらでこすり、あっという間にぶつりと切った…

カヴール「くっ…知恵も回るようですね……チェザーレ、今助けますからね!」

チェザーレ「姉上、心配無用だ!…ブリタニアの小娘に遅れを取るチェザーレではない!」

深海棲艦「そうかしら、マカロニさん!」ぐいぐいと喉を締め上げる…

ザラ「…チェザーレ、提督たちが来ましたよ!」

提督「みんな射線からどいて!…チェザーレ!」剣帯を指差す…

チェザーレ「…!」剣の鞘でみぞおちに突きを入れるチェザーレ…途端に深海棲艦のぬめっとした手がほどけて後ろにのけ反った

ミッチャー提督「テイク・ディス(食らえっ)…ビッチ!」バララッ…バララランッ…!と、MG42/59の二脚を持って腰だめ撃ちにするミッチャー提督…

深海棲艦「うっ…く」ばりばりと貝殻や破片が飛び、よろめくと波止場にのし上げた深海棲艦……よく見ると脚まで甲殻のように貝殻やフジツボで覆われていて、くるぶしから先だけが白っぽい脚になっている

ミッチャー提督「ちっ…なんて丈夫なやつなの!」弾切れの軽機関銃を放り出すと腰のホルスターから愛用のコルト.45「ガバメント」を抜き、甲殻の欠けた所に撃ちこむ…

提督「代わって!」ダダダダッ!…と小気味いい連射音を響かせ、エクレール提督とベレッタ短機関銃の弾倉を撃ち尽くす……が、まだ甲殻が剥がれず、立ち上がるとゆらゆら歩いてきた…

百合姫提督「大人しくしなさい…!」パン、パンッ!…と一発ずつM92ピストルの弾を撃ちこむ……

提督「あきれるほど殻がついているみたいね…!」…と、ディアナが駆け寄ってくる

提督「ディアナ、危ないから下がって!」

ディアナ「いいえ…これなら通じるかも知れませんから!」きりきりと弓を弾き絞り、ビィィ…ン!…と弓弦の音をさせて放った

深海棲艦「…くっ!」割れそうだった部分がバリッと大きく剥がれ落ち、深海棲艦はバランスを崩して倒れた…

ミッチャー提督「銃弾より威力のある弓とは恐れ入ったわ…!」

提督「とにかく押さえこまないと…!」
887:2017/11/12(日) 01:09:38.42 ID:
カヴール「手伝います!」

提督「でも素手じゃ触れそうにないわね…っ!」慌てて誰かが持って来た油まみれの古毛布をフジツボやら貝殻がまとわりついている腕にかぶせると、ぐっと押さえ込みにかかった…

フチリエーレ「私も力を貸すわ!」…散々撃ちこんだがちっとも効かなかった6.5ミリ・カルカーノ小銃を放り出すと「深海棲艦」に飛びついた

ミッチャー提督「みんな、のしかかって!」

深海棲艦「…ええぃ、退け!」力いっぱい腕を払うと取りついた数人は弾き飛ばされ、今度は提督に馬乗りになると波止場のレンガに押さえつけた…

提督「ぐっ……!」

深海棲艦「やれるものならやってみなさいよ…銃弾を撃ちこもうものならこの小娘にも当たるわよ?」

ミッチャー提督「ファック…たしかにあれじゃあ撃てないわね!」コルトの弾倉を素早くリロードしていたが、狙いようがない…

提督「けほっ…思っていたより力強い抱擁ね……誰か代わってくれないかしら…?」

ライモン「提督っ!」

エクレール提督「どうします、あのままでは窒息してしまいますわ!」

ミッチャー提督「アイ・ノウ!(分かってる!)…シット、何か良い手は……」

ポーラ「…はぁ…もったいないですねぇ~……せっかく開けようと思った五十年もののシェリーなのにぃ~……」ガンッ!…後ろからそっと近づき、「五十年もの」のシェリー酒の瓶で後頭部を引っぱたいた…

深海棲艦「…っ!」ばったりと倒れ込む深海棲艦…

カヴール「ポーラ、よくやりました!」

セラ「すごいです!」

エウジェニオ「…いいけど「彼女」をどかさないと。提督が下敷きなのよ?」

カヴール「分かっています…提督っ!」

ライモン「大丈夫ですかっ!」

提督「えぇ…おかげさまで……けほっ…」カヴールたちに助けられ、下から引っ張り出された提督…せっかく整えた髪にはぬるぬるした海藻のようなものがまとわりつき、染み一つなかった白い正装には海水やら緑がかった汁やらがついている……

提督「ふぅ…とんでもないお客様だったわ……目を覚まさないうちに拘束するしかないわね…」

チェザーレ「すまない…チェザーレが速度が出ないときに気づけばこうはならなかった……」

提督「いくらチェザーレでもこれは気づけないわ…それより、みんな無事?」

リットリオ「全員無事です!…提督こそ怪我はありませんかっ!?」

提督「大丈夫よ…あぁ、それでいいわ」今度こそ切られないようにと、数人が鎖を持って来て縛り上げた…

提督「それとディアナ、貴女のおかげでチャンスが出来たわ…お礼を言わせて?」

ディアナ「おそれ多いことでございますが…どうぞ、よしなに……♪」

提督「んっ♪」ひざまずいて手の甲にキスをした…

ディアナ「まぁ…///」

ミラベロ「提督、縛り上げたわ…それで、どうするのかしら?」

リボティ「ふふ……きっと「お慰み」に使うのかも…ね」

提督「リボティ」

リボティ「おっと…口が滑った」

百合姫提督「それにしても…本当にどうすればいいのかしら……」

ディアナ「そうですね……」

エリトレア「あのぅ…」

提督「エリトレア…何か考えたの?」

エリトレア「とりあえず……この「殻」みたいなの、よく見たら結構食べられるものもありますよ?」
888:2017/11/12(日) 02:05:45.84 ID:
提督「え…まさかこれを食べるつもり……?」海岸に打ちあがって腐りかけた海藻のような臭いと古い魚のような臭い、それに潮の匂いが混じりあって鼻をつまみたくなるような臭いをさせている…

エリトレア「いえ…だってなかなか高いのも交じっていますし、ちゃんと新しい海水で潮を吐かせればイケるんじゃないでしょうか♪」二色迷彩…のように見えるフレアースカート風の艤装には、確かにムール貝やら小ぶりで食べごろなカキやらが張りついている…

ディアナ「なるほど…言われてみるとカキにムール貝……タコも張りついていますし……」

提督「でもこんなにひどい臭いだけど…?」制服についてしまった緑の染み…巻き貝の「苦い所」にたまっているような色の染みを嗅いでみて眉をひそめた…

カヴール「ですがいずれにせよ、この「甲殻」を剥がさないと素手で触る事も出来ませんし……ディアナ、エリトレア…できますか?」

ディアナ「おそらくは…」

エリトレア「やってみますねっ♪」

カヴール「分かりました…ではお願いします!」

提督「ちょっと、カヴール…!」

ポーラ「むぅ…五十年もののシェリーを割ってしまった代わりにしてはちょ~っと割が合いませんが……ポーラ、我慢しますっ♪」

ディアナ「ええ、そうしてください…提督を助けてくれたわけですし、上手く調理できたらポーラに特別美味しいペスカトーレをごちそういたしますから」

エリトレア「そういうことです♪」

ポーラ「待ってますよぉ~♪」

ディアナ「はい♪……誰か、工作室から金槌を持ってきてくれませんか?」厨房からギラリと光る大型の包丁を持ってきて、甲殻の隙間にこじ入れる…

チコーニャ「お待たせ♪」ガッビアーノ級コルヴェットの「チコーニャ」がコウノトリらしくカゴに金槌やノミを入れて持って来た…

提督「ディアナ、エリトレア…お願いだから「身体」には傷をつけないようにね……?」

ディアナ「はい…♪」重なり合ったカキ殻の隙間にこじ入れた包丁を金槌でとんとんっ…と押し込んでいく……側にはバケツがいくつも置いてあり、食べられそうな貝類やエビ・カニ類、タコやイカは次々とバケツに放り込まれていく…

深海棲艦「…」バリッ…と剥がれるカキ殻やフジツボ、カメノテや縁の鋭い貝類……次第に「艤装」の下に隠れていた青白いぬめっとした姿が現れてくる…

ミッチャー提督「ジーザス…こんなの初めて見るわ……」

フレッチャー「ホーリィ・カウ!(ぶったまげた!)…あんな気持ち悪い姿なのに、下は意外と普通に見えるわ……」

提督「あ…胸の所が剥がれる……」固く重なっていた甲殻の隙間にノミを入れ、コツコツと叩いていくと大きな一片が剥がれた

エウジェニオ「あら…意外と普通……それに結構胸もあるじゃない…これなら抱いてもいいわ♪」剥がれた殻の中には白くてぬめっとしているが、案外普通の身体らしいものが見える……粘液のせいで妙にテラテラしている胸と引き締まったお腹を見てエウジェニオは冗談を言った…

カヴール「エウジェニオ…そこまで好みの範囲が広いとは思いませんでした……」

エウジェニオ「もう、冗談よ?……でも、提督もこれなら抱いてみたいと思わない?」

提督「んー……生臭いのさえなければ、イケなくもない……っていうところかしら」

エクレール提督「ありえませんわ…どういう趣味ですのっ?」

リシュリュー「いくら何でもエキセントリックですな」

ドリア「あらら?…主砲が前にしかないリシュリューが言えるのかしら」

リシュリュー「おや……私の設計は非常に理論的かつ合理的に導き出された物です…そちらこそ、わざわざ6割も改装するとは……そこまでするのなら新戦艦を作った方が安上がりだったでしょうな?」

ドリア「む…レディの体型と年齢を言うのはぶしつけだと思いますが?」

リシュリュー「これは失礼…ドリア嬢は自分のお年が気になる頃でいらっしゃる…」

エクレール提督「リシュリュー、おやめなさい」

提督「ドリアも…ほら、一番大きな殻が剥がれるわ……!」

エリトレア「ふ…んっ!」バリバリッ!…と甲殻が剥がれ、つるりとした身体が中から滑るように出てきた……側にいたザラやチコーニャが慌てて鎖やらロープで「身体」の方を縛りなおす……

ミッチャー提督「うわぁ…何ていうか、剥き身にしたオイスターだわ」

提督「じゃあレモンをかけて食べる?」

ミッチャー提督「いや…遠慮しておくわ、あたるといけないから」

ディアナ「とりあえず剥けましたが…どうなさいますか?」

提督「んー…何か着るものでも渡して、鍵のかかる頑丈な部屋に……いえ、まずは大浴場で洗いましょう」

チェザーレ「ならチェザーレが連れて行くとしよう」ドリアやリットリオも手伝って担ぎ上げた…
889:2017/11/12(日) 02:59:41.90 ID:
…大浴場…

チェザーレ「さて…大浴場まで連れてきたはいいが……はたして水か、それともお湯か?」

ドリア「シャンプーや石けんは使っても大丈夫でしょうか?」

提督「さぁ…とりあえず水にしておいた方がいいような気がするわ」制服の上着とスラックスはクリーニングに出すことにして洗濯場に放り出し、下着とワイシャツだけでやってきた提督……

アスカーリ「んだけども、ほんにまぁ…こうして見るとなかなかのべっぴんでねぇか……」何かあったときのためにと、一応カルカーノ小銃を抱えて来たアスカーリ…

リットリオ「…まぁ、とりあえずかけてみましょう♪」シャワーの水を出して「海藻みたいな」ぬるぬるの頭からかけた…

深海棲艦「うっ…ぷ!」

チェザーレ「目を覚ましたぞ…提督、距離を取れ!」

深海棲艦「何を…っぷ!……いきなり水責めとはね…でも私には効かないわよ、マカロニさん?」軽蔑するような言い方でせせら笑った

チェザーレ「失礼な奴だな、ローマ第一の市民に向かって……ブリタニアは未開の国だから風呂もないとはいえ、こうして洗ってやっているのが分からないか?」

深海棲艦「洗ってどうしようというのよ…見せ物にでもする?」

提督「全く、わがままなお嬢さんなんだから…どんな時でもユーモアを忘れない英国海軍らしくないわよ?」

深海棲艦「うるさい…このブラッディ・フール!(大間抜け)」

提督「あら…そう♪」シャワーの栓をお湯に変えた…

深海棲艦「熱っ!…ちくしょう、火傷するっ!」

提督「しないわよ…30度もないくらいでしょうし……リットリオ、シャンプー取って?」

リットリオ「はい、でも気を付けてください……噛みつくかもしれませんよ?」

深海棲艦「誰がよ、このおたんちん!」

アスカーリ「こら、じたばた暴れるでねぇ!」

提督「はいはい…目をつぶっておきなさいね?」

深海棲艦「誰が敵の言うことなど!」

提督「全く…手がかかるわね」わしゃわしゃと泡立ててみるがぬめぬめのせいでほとんど泡が出ない…

提督「あー…一回流して?……数回洗わないとこのべとべとはとれないわ…」お湯を浴びたせいか少しだけ青白い肌が色味を取りもどし、ただの白い肌に近づいたように見える……

深海棲艦「ちくしょうっ、この……放せ!」

提督「リットリオ、しっかり押さえて!」暴れる猫より手におえない深海棲艦の頭に泡立てたシャンプーをつけ、ごしごし洗った…


…しばらくして・食堂…


提督「はー…ふぅー…」

チェザーレ「ふぅ…戦闘より疲れた気がするな」

リットリオ「そうですねぇ」…どうにか深海棲艦を押さえつけて全身を洗い、ぬめりを取ってからぬるいシャワーを浴びせた提督たち…大浴場を出ると古タオルでごしごしこすり、適当な服を着させてから空き部屋に放り込んだ……波止場での格闘もあって、すっかり疲れ切った提督はバスローブ姿でチェザーレたちと食堂に座り、ちびちびとキァンティをすすっている…

提督「明日のパーティのごちそう、何がいい…チェザーレ?」

チェザーレ「あー…海の匂いがするものは欲しくないな……」

提督「リットリオはー…?」

リットリオ「牡蠣は見たくないですねぇ……」

提督「そうよね…ふぅ……まだ生臭いわ…」髪についたぬるぬるを取るのに、リットリオに何度も流してもらった提督…にもかかわらずまだ変な臭いがとれないでいる……

ミッチャー提督「お疲れさま」こちらもシャワーを浴びて、カーキ色のシャツとスラックスの略装に着がえているミッチャー提督…会釈するようにウィスキーのグラスを持ち上げた

提督「今日はありがとう、ジェーン。おかげで助かったわ」

ミッチャー提督「いやいや…しかし.45口径が効かないとは思わなかったから肝をつぶしたよ」

提督「私だって…あの近距離でベレッタ短機関銃が通用しないとは思わなかったわ」

ミッチャー提督「ま、お互いに無事でよかったから…乾杯」

提督「乾杯♪」頭にバスタオルを巻いた姿でグラスをコツン…と合わせ、キァンティを喉に流し込んだ…

………
892:2017/11/14(火) 11:07:52.19 ID:
…翌朝…


提督「よしっ…準備完了!」いつもより早く目を覚ますと、朝食もそこそこに身支度に取りかかる提督…長くずっしりした明るい栗色の髪をきゅっとお団子にまとめ、首回りがくたっとなっていて染みまでついているTシャツと、くたびれた綿パンを着る…腕時計や指輪は外し、メイクもほとんどしていない……

ライモン「気合十分って言う感じですね♪」

提督「それはもう…「作戦成功おめでとうパーティ」の準備だもの♪」

ライモン「わたしも手伝います」

提督「だーめ…ライモンは作戦中ずーっと頑張ってくれていたから、今日はお休み♪」

ライモン「でも、それなら提督だって…」

提督「んー…そこまで言うなら……お手伝いをお願いしようかしら」

ライモン「いいんですか?」

提督「ええ…一つ思いついたから♪」


…しばらくして・厨房…


提督「はい、かけて?」厨房のすみっこにストゥール(腰掛け)を置いてライモンを座らせ、首にナプキンをかけた…

ライモン「あの…この状態で何をお手伝いすればいいんですか?」

提督「ふふっ…味見をお願い♪」

ライモン「いえ…あの……わたしはお手伝いしたいと思って…」

ディアナ「味見も大事なお手伝いですよ?…何回も味見をしていると舌が麻痺してきてしまいますから」

エリトレア「そうですよっ…全く、レモがハリッサ(唐辛子で作るチュニジアの辛い調味料)なんか買ってくるから……うー…まだ舌がピリピリしますぅ…」

ガッビアーノ「そうそう。という訳で私もいるんだ…優しい月の女神さまが哀れなカモメに食料を恵んでくれると言うからね……」いったい小柄な身体のどこに入るのか分からないが、とにかく何でもよく食べるガッビアーノ…厨房をうろうろしては調理台に置かれた材料をつまみ食いしている……

提督「まぁ、そういう訳だから…よろしくお願いするわね♪」

ライモン「はぁ…わかりました」

ディアナ「さてと…まずは下ごしらえですね……提督、準備はよろしいですか?」

提督「ええ♪」ファサッ!…と、銃撃戦にのぞむチョウ・ヨンファがコートを羽織るように白いエプロンをまとった……

ディアナ「では…作戦開始ですね♪」


………

…ディアナ、エリトレア、提督が厨房に立って料理を始め、ポーラは食堂でワイングラスを磨いている…残りの艦娘たちは誰かに呼ばれるか、さもなければ面白そうな作業に手を貸しては、きゃあきゃあと歓声をあげている……


ディアナ「提督、このタンの燻製をサイコロ状に切ってもらえますか?」

提督「はいはい…あら、この包丁いつもよりもっと切れるわ♪」…双子のマークが入っているドイツのブランド包丁「ツヴィリング」は、「切れすぎないように作ってあります」がうたい文句のゾーリンゲン製だったが、それにしても滑らかによく切れる…

ディアナ「ええ…昨日、あの「深海棲艦」から貝や蟹の甲殻を剥がすのに使って刃が欠けてしまいましたから……あの後研ぎ直したのです」

提督「そうだったの?私が銃の手入れをしている間にそこまでしてたなんて…本当にディアナはやることが速いわね」

ディアナ「いえいえ…厨房は私が預かっているようなものですし……エリトレア、もちろん貴女もですが」

エリトレア「うふふっ、そう言われるとくすぐったいですねぇ…♪」




893:2017/11/14(火) 12:02:02.53 ID:
提督「インゲン豆が茹で上がったわ…ここでいいかしら?」

ディアナ「はい…エリトレア、ニンジンの方もタンと同じくらいに切って下さい」

エリトレア「はいはい!」

ジュッサーノ「ディアナ、お湯をかけておけばいいのね?」

ディアナ「はい…とりあえずお湯さえわかしておけば何でもできますから……あ、バンデ・ネーレ、ちょうどいい所に来てくれました」

バンデ・ネーレ「何かお手伝いが必要かな?」

ディアナ「ええ…冷蔵庫にしまってある大海老を出して下さい」

バンデ・ネーレ「了解」

リベッチオ「ディアナ、これつまんでもいい?」

ディアナ「個数があるものでなければ…ちょっとだけですよ♪」

リベッチオ「ありがと♪……うん、これ美味しい!」

ディアナ「そうですか?そう言ってもらえてよかったです。でも、あんまり味見してはダメですよ?…せっかくのごちそうが入らなくなってしまいますから♪」

提督「ディアナ、ゼラチンが溶けたわ…コンソメスープはどこ?」

ディアナ「あぁ、はいはい…奥の片手鍋ですよ」

提督「ん、了解…溶かし込んでいいわね?」

ディアナ「はい。全部使って構いませんよ」

提督「分かったわ」

エリトレア「ディアナ、野菜はみんな洗っておきました♪」

ディアナ「ではサラダと料理に使う分をわけておいてください……あらいけない、タイマーが…!」

提督「私がやるわ……どうすればいい?」メレンゲを泡立てながら聞いた

ディアナ「裏ごししたら生クリームでのばしてください」

提督「了解…作戦指揮もこういう風にきびきびできたらいいのにね、ライモン?」

ライモン「いえ、今回の作戦も見事だったと思いますよ?」

提督「あら、嬉しい…そういう可愛い事を言ってくれるライモンには任務をあげます……はい、あーん♪」泡立てたレモン・メレンゲを泡だて器でしゃくって人差し指にのせ、ライモンにつき出した…

ライモン「あーん…っ、美味しいです///」

サントーレ・サンタローサ(バンディエラ中型潜)「もう…二人ともいちゃついてないで手伝って下さいよ!……私、座礁なんて嫌ですよ…?」お皿を数十枚も重ねてふらふらしているサンタローサ…

デス・ジェネイス(ピサニ級中型潜)「サンタローサ…そういう時は私を呼んで、手伝うから」三分の一ほどをサンタローサから取って腕に抱えた

サンタローサ「ふぅ……思っていたよりずっと重くって…助かりました♪」

ジェネイス「気にしないで…ジェノア人はみんな優しくて、勇敢で、気立てがいいんだから♪」

ヴェットール・ピサニ(ピサニ級)「ちょっと待て…ジェノヴァ人よりもヴェネチア人の方が優しいぞ?……ほら、私が持ってあげよう♪」残りの皿をほとんど取り上げて抱えた…

サンタローサ「あのぉ……二人でそんなに持ってしまったら、私がお手伝いする意味ないですよ?」

ピサニ「いいんだよ、サンタローサ。きみがあくせくすることはない……ゆっくり休んでいたまえ♪」

ジェネイス「ふーん…人の物真似で点数を稼ごうなんて、さすが物売りのヴェネチア人ね」

ピサニ「…誰にでもつっかるのは向こう見ずのジェノヴァ人らしいな」

ジェネイス「…へぇ」

ピサニ「ほぉ…」

チェザーレ「二人ともまたやっているのか……ガリバルディに怒られるぞ?」

ジェネイス「うぇ…それは勘弁」

ピサニ「…駆逐艦や潜水艦にも「一つのイタリア」派は結構多いからな……今のところは止めておこう」

チェザーレ「結構」
894:2017/11/15(水) 01:14:36.27 ID:
ザラ「うーん、百合の花も飾って、きれいなテーブルクロスもかかってるし、リボンも上手く出来てるし……って…ポーラ、まだあのシェリーの事もったいなかったと思っているの?」グラスを拭きながらため息をついているポーラ…

ポーラ「だってぇ…五十年もののシェリー……ポーラ、ひと月分のお小遣いを貯めて…今度の作戦が終わったらぁ~…みんなで空けようと思っていたんですよぉ~…?」

ザラ「そうは言っても…あのままだったら提督があの深海棲艦にむしゃむしゃ食べられちゃったかもしれないのよ?」

ポーラ「そうなんですけどぉ~……うぅ、みんなで飲みたかったです~…」

ザラ「はぁ…ちょっと待ってて?」


…厨房…

提督「じゃあ注ぐわね…」長方形の型にコンソメ風味の溶かしたゼラチンを注ぎ込む…半分ほどで一旦注ぐのを止めると見栄えよくタンやニンジン、インゲンマメを散らし、上からまたゼラチンを注ぐ……これを冷蔵庫で冷やせば見た目も涼しげな前菜のアスピック(ゼラチンの煮こごり)が出来上がる…

ディアナ「私はこちらでかかりきりなので…提督、引き続き前菜をお願いします!」

…厨房の外にある直火のグリルを前に、汗をかきながら猪のあばら肉をローストにするディアナ…厨房では大きいソースパンに赤ワインとハチミツ、数種類のスパイスを入れた「秘伝のワインソース」を前にエリトレアが火加減を見て、同時に大海老に包丁を突き入れては二つに叩き割り、パセリとオレガノ、粒マスタードの入った特製マヨネーズをたっぷりとかけて「大海老のグリル・マヨネーズソース」の準備に余念がない…

ザラ「失礼するわね…提督、ちょっといい?」

提督「なぁに?」トマトスライスにモッツァレラチーズとバジルをのせた「カプレーゼ」とオリーブを沿えた鯛のカルパッチョを同時に準備している提督…目線を包丁からそらさずに聞いた

ザラ「ごにょごにょ……」何か耳打ちするザラ…

提督「あー…それなら私の部屋の冷蔵庫の一番下、ピンクのリボンをかけた袋に入っているわ」

ザラ「ん…ありがとう、提督♪」

提督「いいえ、こちらこそ……ポーラには早めに見せてあげてね♪」

ザラ「了解っ♪」


…一方・屋外…

百合姫提督「ふぅ…暑いわね、ディアナ」

ディアナ「ええ……でも、作戦に参加したみんなのためですから」

百合姫提督「そうね。……ふぅ、でも大変ね…」巨大な猪肉をひっくり返そうと格闘しているディアナの脇で、パタパタとうちわで扇いでいる百合姫提督……よく見ると、網のすみっこの方を貸してもらって大きなウナギを扇いでいる…

ディアナ「それにしても…面白い調理法ですね……ふぅ…」炭がぱちぱちと熾っているグリルの脇には庭のテーブルを持ってきてあって、卓上に氷水の入った大きい水差しとグラスが置いてある…

百合姫提督「そうね…ヨーロッパの人はあんまりウナギの料理法がないみたいだし…」ウナギの調理は習得に一生かかると言うだけあって、目打ちをしてさばいてみたものの頭は取れかけ、身もギザギザになってしまっていた…が、とにかくさばいたウナギを蒸し器にかけ、一生懸命白焼きにしている百合姫提督……

ディアナ「それにしても……面白いものですね♪」

百合姫提督「ええ、笑ってしまったわ♪」

………

…作戦二日目・艦隊戦たけなわのころ…

足柄「回避!…取りかぁぁじ…いっぱぁーい!!」

龍田「14サンチ砲、一斉撃ち方…撃て!」バウッ!……もうもうと上がる発砲煙でむせ返りながら敵艦隊を確認する龍田…

足柄「それにしても…全く、たまには砲弾じゃなくてウナギでも放りこんでくれればいいじゃない!」深海側の艦隊に悪態をついていると至近弾が降ってきた…

龍田「きゃぁっ!」

足柄「龍田、損害は?」

龍田「大丈夫…被害なし……って、うふふふっ♪」

足柄「…この忙しい時に何が面白いのよ!?」

龍田「足柄…深海棲艦にはもう文句が言えないわ……うっふふ♪」

足柄「一番砲、撃て…どういう意味よ!?」

龍田「見て…ほら♪」どうしたことか大きなウナギがしぶきと一緒に艦橋に飛び込んできてのたうっている…

足柄「なるほどね…帰ったらさばいてもらって一杯やりましょう……撃てっ!」

………

百合姫提督「帰投してすぐの深海棲艦騒ぎの後、龍田がバケツに入ったウナギを持って来た時はどうしたのかと思ったわ……っぷ、煙が…」バタバタと扇ぎつつ、煙で目をしょぼしょぼさせている

ディアナ「ふふっ…さてと、だいたい火が通りました……お先に失礼します」
895:名前:自動あぼーん : 自動あぼーん
898:2017/11/17(金) 01:17:26.83 ID:
…夕方…


…ごちそうの用意が整ったテーブルには銀色の脚付きの器や豪奢な皿が所狭しと並べられている……長いテーブルには白いテーブルクロスが敷いてあり、長テーブルの中央には大きな花瓶に入ったみずみずしいオリエンタルリリーが活けてある…


提督「えー…まずは今回の「ケルケナー諸島方面作戦」お疲れさまでした。みんなが奮闘してくれたおかげで損害もなく、無事に作戦を終了することが出来てほっとしています」

アヴィエーレ「提督の指揮がよかったのさ♪」

カラビニエーレ「…こら、静かに」

提督「と、いう訳で約束のパーティを開くことになりましたが、ここでもう一つ嬉しいお知らせがあります…」手紙を片手に眉を上げてみせる提督と、それを聞いてざわめく食堂…

提督「この手紙によると、みんなが待っていた「社会福祉公社」からの犬が数週間以内にやってくることになりました♪」わぁぁっ!

提督「ふふ、みんなここにワンちゃんが来るのを待っていたものね……それでは、乾杯しましょう!…みんな、グラスを持って?」

提督「…作戦成功と、アメリカ、フランス、日本の提督と艦娘たちとの友好…そして新しい仲間の到着を祝して……乾杯っ♪」

一同「乾杯!」

提督「さぁ、みんな。もうスピーチはしないから好きなだけ食べて?」…しきたりの答礼を「堅苦しいのはよそう」と言ってくれたミッチャー提督たちにウィンクして席に着いた……お腹を空かせた提督はさっそく前菜から取りかかった


…前菜は琥珀色の中に牛のタンやインゲンマメが入っているフランス風の煮こごり「アスピック」と、碁盤目模様になっている綺麗なテリーヌ、鯛のカルパッチョ、それに太陽の恵みがいっぱいの南イタリアにはふさわしいカプレーゼ…提督はぷるっとしたアスピックにナイフを入れ、口に運んだ…


提督「んっ…いい味……♪」コンソメの風味と、固めのゼラチンの中に浮いているタンや茹で野菜の食感が口の中でほどよく溶けていく…

エクレール提督「なるほど…なかなか上品で美味しいですわ」

リットリオ「ほんと、美味しいです……もう一切れいただきます♪」

提督「前菜でお腹一杯にならないようにね?」

リットリオ「はいっ♪」

提督「せっかくだからカルパッチョも…」薄切りの鯛を透かして下のお皿に描かれた模様が見える…オリーブオイルの舌触りの良さと鯛のほのかな甘みが、高級な岩塩の塩味、オリーブのわずかに油っぽい味とよく合う……

百合姫提督「ん…美味しい♪こんなに美味しいカルパッチョ、銀座の高級イタリアンでも食べられないと思うわ」

足柄「そうね…でも個人的には刺身の方がいいわ」

龍田「まぁまぁ、これも美味しいじゃない♪」

提督「ふふ…日本は素材を大事にするお国柄だものね、足柄がせっかくの鯛をいじくり回しているように感じるのも無理ないわ♪」ちょっと偉そうに通ぶってみてから茶目っ気たっぷりに微笑して、ワインのグラスを軽く揺すぶった

百合姫提督「ううん、気にしないで?これも美味しいわ」

提督「いいのいいの…食の好みはそれぞれだもの♪」

ミッチャー提督「まぁね……私はこういうお洒落な料理とは縁がなかったからやりにくいよ♪」

フレッチャー「私もよ、マーム。…鉄板で焼いたペッパーステーキとかじゃないと落ち着かなくって……」マナーはわきまえているものの、フォークとナイフを手にコチコチになっている…

提督「フレッチャー、みんな気にしないからくつろいで食べて?」

フレッチャー「いや、まぁ……」

ミッチャー提督「無理もないよ…サンディエゴでもノーフォークでも、「パーティ」って言ったらバーベキューだったものね」

エンタープライズ「マームのせいじゃないわ、あれだけメンバーがいるとそれしかないでしょうし」

ミッチャー提督「なんか悪いね、エンタープライズ…ノーフォークに戻ったらハンバーガーでもごちそうしてあげるわ♪」

エンタープライズ「じゃあパティはビーフのダブルでね♪」

ミッチャー提督「オーケイ♪」

899:2017/11/17(金) 02:26:30.79 ID:
提督「お次は…スープやパスタね」

…朝から十数人が手伝った手打ちのパスタにひき肉をたっぷり絡ませた「ボローニア風タリアテッレ」か、トマトの爽やかな酸味が効いた冷製パスタのカッペリーニ……それと、「ジャガイモの芽が出てきていたので…」とディアナが言い訳しながら作ったヴィシソワーズはエクレール提督への心遣いで、ガラスの食器に入って見た目も涼しい…

エクレール提督「すぅ……美味しいですわ。トレ・ビァン♪」…ひとすすりすると珍しく素直に褒めた

リシュリュー「ほほぉ…これはこれは見事なヴィシソワーズですな♪」舌触りの悪さも無ければ塩味もちょうどよい…それに手順もよかったらしく「生クリームがぬるくなって生臭い」ということもない……

ジャンヌ「あぁ、なんと素晴らしい…やはりフランスの料理は世界一ですね!」

チェザーレ「…うむむ、このタリアテッレは素晴らしいな♪」

ディアナ「喜んで頂けて何よりです…♪」

ジュッサーノ「本当に美味しい…あぁ、とっても幸せ♪」

カドルナ「うぅん……カッペリーニを食べたのですが…せっかくなのでタリアテッレももらうことにします」

提督「ふふ、いいじゃない…いっぱい食べて大きくなるのよ♪」滑らかな泡の立つスプマンテをシャンパングラスで楽しんでいたが、しっかりした味わいのタリアテッレに合わせてコクのある赤ワイン「バルバレスコ」に切り替えた…

カヴール「うふふっ…私、ほど良くお腹が空いてきました♪」すでにボトル半分ほどの赤ワインを空け、微笑しながらたっぷりと料理を取るカヴール…

デュイリオ「いけない…私、食べ過ぎてしまいそう……とっても美味しいんですもの♪」そう言いながらテーブルの下でストッキングを履いた脚を伸ばし、つま先で提督の太ももをくすぐる…

提督「あんっ…もう///」

ディアナ「…みなさん、ピッツァがちょうどいい具合に焼けましたよ♪」デュイリオの脇を通りながら声をあげる

デュイリオ「あらあら……ディアナ、わざとですね?」

ディアナ「おや、何の事でしょう…ところで、一切れお取りしましょうか?」

デュイリオ「…ええ、頂きます♪」

チェザーレ「おぉ、ローマ風ピッツァか♪」

レモ「やったぁ、嬉しいっ!」


…四角く切ってあるローマ風ピッツァと、薄くてさくさくした生地で三角形のナポリ風ピッツァ……ローマ風はエダムやモッツァレラと言った数種類のチーズがこってりととろけて、表面に黒オリーブが散らしてある…ナポリ風のピッツァはまさしくナポリ発祥の「ピッツァ・マルゲリータ」で、白、赤、緑のトリコローリ(イタリア三色旗)カラーが目にも鮮やかで、いい匂いをさせている…


提督「ふふ…では、公平に一切れずついただきます♪」

ドリア「まぁ、素敵な考え…私もそうさせてもらいます♪」

オリアーニ「提督たちもやっているし…私が両方とってもいいわよね……」

マエストラーレ「そうね…じゃあ私も♪」

フィウメ「あれ……ポーラ姉さま、ワインがなくなってしまいました」

ポーラ「本当ですねぇ~、それでは~…次を開けましょ~う♪」ぽんっ…と栓を抜くと立ちのぼるワインの香りを吸い込み、それから優雅な手つきでグラスに注ぐ…

エウジェニオ「ポーラ、私にもいただける?」

ポーラ「はぁ~い♪」

エウジェニオ「ふふ…いいものね、美味しいワインと食事……それに可愛い女の子たち♪」とくとくとくっ…口の広いワイングラスに濃い赤色の液体が注がれるとエウジェニオはゆっくりと口に含んで味わい、それから優雅な姿勢でしどけない表情を浮かべた…

ナウティロ(フルット級中型潜)「///」

ゴルゴ(フルット級)「…けほっ、こほっ!」

アレサンドロ・マラスピーナ(大型潜マルコーニ級)「ふふっ…可愛い娘を口説くなら私も負けてはいないよ、エウジェニオ?」戦中イタリア潜として大西洋初戦果を挙げたせいか、とにかく手が早い「アレサンドロ・マラスピーナ」……隣に座っていたスクアロ級中型潜の「デルフィーノ」はすでに撃沈状態で、テーブルの上に置いた手を重ねて、頬を桜色に染めてもたれかかっている…

デルフィーノ「あぅ…ん……んっ、んっ…///」しきりに脚をもじもじさせ、口をだらしなく半開きにしている…

アレサンドロ「ふふ…デルフィーノは賢いから、食事が終わるまで待てるね?」

デルフィーノ「はい…待てます……ぅ///」

アレサンドロ「ふふ…いい娘だね♪」手の甲を優しくさすった…

デルフィーノ「んんっ…んぅ///」

………