1: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:32:43.55 ID:60BbHll00
ひゅうっと冷たい風が通り過ぎる

うう……寒い……Pチャンまだぁ?

こんなに寒いなら手袋を持ってくれば良かったな

冷たくなっちゃった手を合わせて、ほうっと息をかける

ちょっぴりあったかくなって、すぐにまた冷たくなっちゃう

「さむ……」

夜空を見上げると、お月様が静かに光ってる


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1519295563

引用元: ・【モバマスSS】前川みく「待ち合わせ」

2: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:35:29.18 ID:60BbHll00
雲一つなくて、今日はとても綺麗に見えるな

うう……上向いてると首元が開いて寒い

みくが寒さに震えていると、革靴が石畳をこつこつと叩く音

「お待たせ。寒いのに悪かったな」

ほんとだよ、みくの手はひえひえなんだからね

「もう、遅いよっ! とは言えないもんね。お疲れ様、Pチャン」

いつも、みくたちのために頑張ってくれてるもんね

3: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:38:51.90 ID:60BbHll00
まぁ、それはそれとして

みくの手がこんなに冷たくなっちゃったから、Pチャンにあっためてもらおうかな

「どうした? そろそろ行くぞ」

ちょうどよくPチャンが背中を向けたので、こっそりと忍び寄って

「……えいっ!」

そして、少し遅れてからPチャンの変な声

「つめてぇ! はっ、離せみく!」

あー、Pチャンのほっぺあったかいにゃあ……

4: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:39:58.93 ID:60BbHll00
「みくの手がこんなにひえひえになっちゃんだよ? 責任とって」

「責任ってお前なぁ……あ、ラーメンでも食いに行くか」

ラーメンかぁ、体も温まりそうだしそれも良いかも

「後、俺のほっぺから手を放せ」

「それは聞けないお願いかにゃ、それと魚介系はなしだよ?」

「ちっ……」

今舌打ちしたよね? 絶対したよね?



5: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:42:05.97 ID:60BbHll00
Pチャンとみくの「待ち合わせ」

別に付き合っていたり、デートをするわけでもなくて、いつもの場所で待っているってだけ

でも、Pチャンを待っている時のみくはきっと退屈とか、そんな感じじゃなくて

んー……言葉にするのはちょっと難しいかも

その日のお仕事のこととか、ほかのアイドルの子たちのお話をして

時間があれば一緒にご飯食べて、それでおしまい

この「待ち合わせ」が始まってから、Pチャンと帰るのがとても楽しい


****

6: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:45:35.49 ID:60BbHll00
みくが事務所のソファで雑誌を見ている時

「悪いみく、今日の待ち合わせは無しだ」

Pチャンがみくを見つけるなり、そう言った

「う、うん。お仕事忙しそうだもんね」

「埋め合わせはいつかするからさ」

なーんだ、残念……今日も一緒に帰れると思ったけど仕方ないか

今日はどこかでご飯食べて帰ろうかな

あ、蘭子ちゃんがハンバーグ美味しいところ見つけたって言ってたし、そこ行ってみよ

7: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:53:18.38 ID:60BbHll00
今日はハンバーグ♪ 蘭子ちゃんのお墨付きなら期待できるかも

食べたカロリーはレッスンで消費するから大丈夫! なはず

まだ見ぬハンバーグにテンションが上がっちゃって、いつもの「待ち合わせ」の場所を通りすぎる

……そこで、見慣れた二人の背中を見つけた

待ち合わせでもないのに誰かを待つPチャンと

ふわりとしたボブカットでスレンダーな女性、え……楓さん?

二人がこちらに歩いてきたので、思わず隠れちゃった

なんで隠れてんの……普通に声かければよかった

これじゃ、何かみくが悪いことしてるみたい

8: 名無しさん 2018/02/22(木) 19:55:10.77 ID:60BbHll00
「これからどうしましょう?」

「そっすね……時間もありませんから、とりあえず物を見たいと思います」

「ええ、わかりました。素敵な物があると良いですね」

むぅ……なんか楽しそうに話してるし

「タクシー拾いますから、ちょっと待っててください」

ふぅん、楓さんにずいぶんと優しいんだね

二人の会話を聞き逃すまいと、隠れながらできるだけ近づいてみる

9: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:01:44.94 ID:60BbHll00
でも、そんなに上手くいくわけなくて、前のめりになりすぎた

気づいた時にはバランスを崩していて、楓さんに気付かれちゃった

「あら……みくちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様です、楓さん」

Pチャンとどこに行くんですか? とは聞けなかった

「一緒に帰りたいところだけど、今日は用事があるの。ごめんなさい」

深くお辞儀をする楓さん

用事……Pチャンとの、何の用事?

10: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:04:25.63 ID:60BbHll00
「えっと、みくは一人でも帰れるので……」

失礼しますと頭を下げて、楓さんから逃げるようにして走り出した

後ろからPチャンと楓さんの声が聞こえた気がしたけど、気にしない

人込みを抜けて、とにかく走る

息が上がってもお構いなしに、とにかく前へ、嫌なことが追いかけてこないように

でも、やっぱり限界はあるわけで、公園の近くで足が動かなくなっちゃった

……ちょっと休憩していこうかな、ベンチもあるみたいだし

11: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:09:10.68 ID:60BbHll00
はぁ……みく何やってるんだろう

ベンチに座って、ため息をひとつ

白い息がふわりと登って、やがて消える

そこに残るのはもやもやした、嫌な気持ちだけ

楓さんとPチャンどこに行くのかな、ご飯? お酒?

それとも……ううん、こんなこと考えれば考えるほど嫌な気分になる

だけど、だけど……

12: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:12:16.95 ID:60BbHll00
嘘はついてほしくなかったかな

二人で出かけるなら、そう伝えてくれてもいいのに……

そりゃあ、みくもいい気分じゃないけど……それでも嘘をつかれるよりかは全然良いよ

空を見上げると、いつかの空みたいにお月様が綺麗に見えた

お月様は大きな空で一つだけで寂しくないのかな?

それとも、周りのお星様とお友達で平気なのかな?

みくは何だか一人ぼっちに思っちゃって、悲しいな……

13: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:15:23.22 ID:60BbHll00
「ここにいたのか……」

みくとお月様の間に見慣れた顔

「ほっといて、猫ちゃんは気まぐれなの」

走ってきたのかな、Pチャンの息がぜぇぜぇしてる

「ほっとけるかよ……くそ、最近運動不足がたたってるな……」

息を整えるためか、Pチャンが深呼吸を何度か

「楓さんはどうしたの? 早く戻ったほうが良いよ」

「あれは……みく、俺の話を聞いてくれ」

嘘をついておいて、よくそんな事言えるね

14: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:19:42.41 ID:60BbHll00
「都合が良すぎると思わない? みくに嘘までついて」

「あれは確かに俺が悪かった、すまない」

頭を下げるぐらいなら、最初からやらなければいいんじゃないかな

「話はそれだけ? みくはもう帰るから」

体も冷えてきたし、もうPチャンと話すことはないかな……

「待ってくれ、あれは……理由があるんだ」

弱弱しい言葉で、そんなになっても言い訳するんだ

……それなら、もういいや

15: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:26:26.20 ID:60BbHll00
「どうせ大した理由じゃないんでしょ? お疲れさまでした」

適当にお辞儀をしてから、Pチャンに背中を向けて歩き出す

今日は李衣菜ちゃん呼んでたくさん愚痴っちゃおうかな

そうだ、スイーツとかいっぱい買ってやけ食いしちゃうんだからっ

「……みくの誕生日が近いから、プレゼントを見繕ってもらおうかと思ったんだ」

みくの足を止めたのは、そんな一言だった

「本当は俺が選べば良かったんだけど、自信がなくてさ……」

みくの誕生日。そっか、そういえばそろそろだった

16: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:28:58.80 ID:60BbHll00
「楓さんとお酒飲んだり、ご飯食べに行くんじゃなかったの?」

「トップアイドル様に手なんか出せるかよ、明日から飯が食えなくなる」

ふぅん、そっか

「でもさ、なんで嘘なんてついたの? それに、他の女の人と買いに行こうとしたの?」

「それは……」

困ったように頭をかいて、Pチャンがゆっくりと口を開いた

「こうでもしないと買いに行く時間が取れなかったんだ。最近いつもみくを送っていたし」

17: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:37:38.54 ID:60BbHll00
あ……確かに最近は毎日みたいにPチャンと帰ってたかも

「楓さんは……みくちゃんのプレゼントなら私が選びませんと! とかつまらないダジャレ言って、な?」

楓さんはぶれないにゃあ……

じゃあ、つまりはみくの勘違いってことかな? でも、やっぱり嘘はよくないよね?

「でもでも……やっぱり嘘は良くないよ? みくの気持ちわかる!?」

今日も一緒に帰れるって思ってたのに、嘘までつかれたみくの気持ち

「ねぇ、Pチャンに……わかるの?」

18: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:45:34.18 ID:60BbHll00
「すまない。みくのためと思って動いたけど……この通りだ」

「謝るのなんて誰でもできるよっ! なんで? ……なんでみくに……」

気持ちが抑えられないや、もう自分でもどうしたらいいのかわからない

「ばか、ばかばかっ! Pチャンなんて大っ嫌い!!」

子供みたいにPチャンを一方的に責めちゃったけど

みくは自分自身も大っ嫌いになっちゃいそうだった

勝手に涙が溢れて、目の前が滲んでいく

その中で、Pチャンが困った表情をしているのだけはわかった

19: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:49:33.45 ID:60BbHll00
「みく……」

Pチャンがみくに少しずつ近づいてくる

「見ないで……泣いてる顔見られるの、嫌だから」

Pチャンと顔を合わせたくなくて、そっぽを向くけど

「ふにゃあっ!?」

みくのほっぺを抑えて、無理やり顔を正面に戻された

「ちゃんと顔を見せろ、みくの顔を」

離してほしいのに、顔を見られたくないのに

体に力が全然入らなくて、Pチャンの手を振りほどけない

20: 名無しさん 2018/02/22(木) 20:57:37.93 ID:60BbHll00
「Pチャンの、ばか……」

みくのばか……心の中でそう呟く

「ああ、馬鹿で良いよ」

ほっぺに触れているPチャンの手はまだ冷たいけど

胸の奥がぽかぽかしてきて、全然気にならない

なんだろう……不思議な気持ち

「ごめんな、こんな思いさせちゃって……」

「謝っても許してあげない、こういう時は行動で示すの」


21: 名無しさん 2018/02/22(木) 21:05:14.78 ID:60BbHll00
「行動? ……今誰もいないよな」

きょろきょろと辺りを見回すPチャン。そして、こほんと咳払いをしてから、みくに顔を近づけてくる

それから、おでこの辺りにちょっとカサついてて温かい感触がした

「今回はこれだけだ。それにしても、みくのほっぺ本当にあったかいな」

恥ずかしそうに言うPチャンに、みくはできる限りの笑顔で返す

「仕方ないにゃあ。みくのほっぺであったまっていいよ」

Pチャンの手に自分の手をそっと重ねて、包み込む

このあったかい気持ちをくれた人を離さないように




おしまい

22: 名無しさん 2018/02/22(木) 21:06:28.28 ID:60BbHll00
読んでくれた人に感謝を

みくにゃん担当P、また、みくにゃんを愛する方たちに送ります