1: 名無しさん 2013/01/10(木) 23:58:05.46 ID:K9QxRI9Ro
最初にお断りしておきます

長くなりそうです…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1357829885

引用元: ・男「…へ?」 魔娘「だから…」

2: 名無しさん 2013/01/10(木) 23:59:01.48 ID:K9QxRI9Ro
シスター ペラッ

リー リー…

シスター「…おや?もうこんな時間ですか…」

リー リー…

シスター「つい読書に熱中してしまいました」

シスター「人間の書物もなかなかに面白いですね」

シスター「…続きは明日にして、もう寝ましょう」

キィ パタン

リー リッ シーン…

シスター「…おや?」

3: 名無しさん 2013/01/10(木) 23:59:40.94 ID:K9QxRI9Ro
…ガサッ ガサッ

シスター(こんな夜中に…誰か来たのですかね…)

シスター(旅人でしょうか…でもこの足音は森のほうから聞こえてますね…)

ガサッ ガサッ

シスター(とりあえず様子を伺いましょう…)ソー…

ガサッ ガサッ…ドサッ!

?『ほぎゃあ…ほぎゃあ…』

シスター「赤子の声!?」

バタン! タタタタ…

4: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:00:14.78 ID:CasTSGYNo
シスター(これは!?女性と…赤子ではないですか!!)ヒョイ

赤子「ほぎゃあ…ほぎゃあ…」

シスター(赤子は元気なようです…女性のほうは…っ!?)

シスター(酷い怪我…それに出血量も多い…これは…)

??「はあ…はあ…ぼ…坊やを…」

シスター「お静かに。あなた達を家の中に連れて行きます」ヒョイ

??「はあ…はあ…」
  ・
  ・
  ・

5: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:01:01.49 ID:CasTSGYNo
~家の中~

シスター(母親のほうはおそらく助からない…人間で言うとまだ二十歳前後の若さなのに…)

??「はあ…はあ…」

シスター「…出来るだけの手当てはしました」

??「はあ…はあ…」

シスター「赤子は隣のベッドで寝ています。あまりキレイではないので申し訳ないのですが」

??「はあ…はあ…」

シスター「…あなたはエルフですね?しかも…この真っ白な髪と肌に赤い目は…ダークエルフ」

ダークエルフ「はあ…んっ…はあ…」


6: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:01:28.46 ID:CasTSGYNo
シスター(膨大な魔力をもちながらも太陽の日に当たると衰弱するため行動するのは夜のみ。日中外に出るときは常に黒いマントを纏わなければならない…)

シスター(そのため“ダークエルフ”と呼ばれてエルフ族の中で忌み嫌われる存在…初めて見ました)

シスター「会話も辛そうですね…念を使います」

ダークエルフ コクン

シスター「では…」

7: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:02:04.61 ID:CasTSGYNo
~~~~~念話~~~~~

ダークエルフ:

私はエルフの町はずれに住んでいたダークエルフです。

この子は私の子供で、父親は人間です。

5年前、人間達がエルフの町に立ち寄られたときに契りを交わしました。

そのときに出来たのがこの子です。

この子の父親は必ず戻ってくるとおっしゃりましたが、結局戻っては来ませんでした。

風の噂では旅の途中で軍隊に殺されたと…

8: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:02:48.33 ID:CasTSGYNo
私は一人でもこの子を育てる決心をしましたが村人達は猛反対しました。

元々私がエルフ族の中でも異端のダークエルフだったことも理由の一つですが、エルフと他の生き物との混血はほぼ間違いなく異常能力児が生まれるのです。

この子の場合は転移と念動でした。

村人達は私達親子を亡き者にしようと機会を伺っていたのでしょう。

私の両親が交易に出かけ、家には私たち二人しかいないときに襲い掛かってしました。

私はこの子を守るため必死で逃げました。

でも、産後の身体で…しかも生後3か月のこの子を抱いて逃げるのは限界がありました。

魔法で解毒や回復をしながら逃げていたのですが魔力も尽きたところに追手が迫ってきて…

そのとき目の前が真っ白になって…おそらくこの子の力なのでしょう…見たことの無い森の中にいたのです。

あたりの様子を伺っていると竜の臭いがしたので…それを頼りにここまで来たのです。

9: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:03:46.60 ID:CasTSGYNo
シスター:

分かりました。

今は静かにおやすみなさい。

そして早く身体を直して…


ダークエルフ:

いいえ。自分の体のことは自分が一番分かっています。

…御迷惑は承知でお願いします。

どうか…どうかこの子を…育てていただけないでしょうか


シスター:

…分かりました。

10: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:04:19.12 ID:CasTSGYNo
ダークエルフ:

ああ…この子の成長が見れないのは心残りですが…最後にあなたに出会えたことを感謝します…

…この子を私の隣に寝かせてくれませんか?


シスター「…」ヒョイ

赤子「う?」

ソッ…


シスター:

…これでいいですか?


ダークエルフ:

ええ。ありがとうございます。

最後に坊やにおっぱいを飲ませてあげたくて…

~~~~~~~~~~

11: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:04:47.05 ID:CasTSGYNo
シスター「…」

赤子 チュパチュパ

ダークエルフ ナデ…ナデ… ポロッ

赤子 チュウチュウ

ダークエルフ ナデ…ナデ… ポロポロ…

…フッ パタ…

シスター「…」

赤子 チュパチュパ

シスター「…庭の陽のあたる場所にお墓を作りましょう」

13: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:08:10.56 ID:CasTSGYNo
~シスターのベッド~

シスター「よしよし…」

赤子「だぁーあー」

シスター(エルフの寿命は竜と同じぐらい…つまり人間の10倍程度あります。妊娠期間は約4年半…)

シスター(この子の母親の言うことを信じると、あの時期に妖精の国にまで行くような人間は勇者様一行しか…)

シスター(となると…この子の父親は先代勇者様一行のうちの勇者様か盗賊様ですか…)

14: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:08:49.70 ID:CasTSGYNo
>>12 初ファンタジーなので満足していただけるかどうか…

15: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:09:32.16 ID:CasTSGYNo
赤子「うーあー」パタパタ

シスター「おなかがすいたのですか?いまミルクを…」

赤子「うー」ペシペシ

シスター「…私のおっぱいは見掛けは立派ですが母乳は出ませんよ?」

赤子「うー!」

シスター「仕方がないですねぇ…ちょっとだけですよ?」

赤子「だー」

ポロリ

赤子 チュパチュパ

16: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:10:01.50 ID:CasTSGYNo
シスター「…出ないでしょう?」

赤子 チュパチュパ

シスター「ミルクを準備しますから、そろそろ離して下さい」

赤子 チュウチュウ

シスター「…まさか…出てるんですか?」

赤子 チュパッ

シスター「あ…白い液体が…」

ジワァ…

シスター「…これが母乳ですか…」

17: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:10:29.78 ID:CasTSGYNo
~家の中~

赤子 スヤスヤ

ペラッ ペラッ

シスター「…母乳の出が悪いときはおっぱいをマッサージするといいと聞きましたが…」

ヌギヌギ

シスター「こうですか…」モミモミ

シスター「乳首の回りも…」クリクリ

ジワァ

シスター「あ」

ゴソゴソ

シスター「…パンツ変えなきゃ//」

18: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:11:04.83 ID:CasTSGYNo
~庭~

パンパン

シスター「これで洗濯も終わりですね」

シュイン

赤子「うー」

シスター「…また転移してきたんですか?仕方がないですね…」

ヒョイ

シスター「よしよし」

赤子「あきゃきゃ」

シスター「ふふふ」

「その子が例の子ですね?」

19: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:11:33.57 ID:CasTSGYNo
シスター「あ!賢者様!!お帰りなさいませ!!」

賢者「ただいま帰りました」

赤子「うきゃあ」

賢者「かわいいですね」

シスター「ええ」

賢者「…」

シスター「…なにか?」

賢者「いえ、そうやってあやしているところを見ると…本当の母親のようですね」

シスター「そう見えますでしょうか」

賢者「それにその洗濯されたオムツ…おや?」

20: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:12:28.86 ID:CasTSGYNo
シスター「どうなさいました?」

賢者「貴女の下着もたくさん干されていますが…あれは?」

シスター「あ、あれは…母乳の出が悪いので母乳マッサージをしていたらパンツが濡れて…」

賢者「…え?」

シスター「どうして母乳ではなく粘液が出るのでしょうか…」

賢者「…その前にどの本を見てマッサージをしているんですか?」

シスター「家の中にありますが」


21: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:12:57.20 ID:CasTSGYNo
~家の中~

シスター「これです」パサッ

賢者「こ、これですか!?」

シスター「はい」

賢者「…まず最初に言っておきます。これは確かに乳房を揉みますが、これでは母乳は出ません」

シスター「え?」

賢者「これは性感マッサージの本です」

シスター「あ…//」

22: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:14:17.95 ID:CasTSGYNo
賢者「…はぁ。母乳マッサージの本はこちらです」パサッ

シスター「私はまたなんて恥ずかしい間違いを!//」

賢者「まったく…貴女の慌て者ぶりは竜だったときから変わっていないようですね」

シスター「あぅ…//」

賢者「それにしても…なぜこんな本がここに?」

シスター「それはその…以前道に迷っておられた旅人を泊めたことがあるのですが…」

シスター「その人が置いていかれたものの中にそれが…」

23: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:14:44.63 ID:CasTSGYNo
賢者「…まあいいです。それより今度からはそっちの本を見てマッサージなさい」

シスター「えっと…読んでもよく分かりません…」

賢者「しょうがないですね…後で私が手本を見せますから、そんなに落ち込まないでください」

シスター「はい…」
  ・
  ・
  ・

24: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:15:16.32 ID:CasTSGYNo
賢者「なるほど…手紙では相談できないことと言うのはそのことなのですね」

シスター「はい。母親は転移と念動と言っていましたが…」

シスター「今はまだ私のいるところに転移してきたり、ミルクのビンを動かしたり、私が部屋を出ようとすると軽く引き止められるぐらいなのですが…」

賢者「そうですか。しかし…不思議な能力ですね。いくらダークエルフの子供とはいえ…」

シスター「どういうことでしょうか?」

25: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:15:47.75 ID:CasTSGYNo
賢者「エルフは元々幻聴や幻覚、催眠術などの特技を持っています」

賢者「念動は催眠術の応用と考えると説明が付かないことは無いのですが…」

賢者「転移については魔力の消費が激しいのです。それなのにこの子は疲れた様子もない…」

赤竜「この子の母親は転移はできなかったようです」

賢者「であれば、転移については父親の能力を受け継いでいるのではないかと思うのです」

シスター「父親ですか…」

26: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:16:25.33 ID:CasTSGYNo
賢者「貴女は父親のことについて、何か聞いてはいないのですか?」

シスター「…」

賢者「…どうしました?」

シスター「いえ…母親から聞いたのはその…父親は5年前にエルフの町に来た人間だと…」

賢者「えっ!?」

シスター「すみません…」

賢者「…なぜ貴女が謝るのですか?」

シスター「父親のことを黙っていたので…」

賢者「それは気にすることではないですよ?それより…これは厄介ですね」

27: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:16:52.46 ID:CasTSGYNo
シスター「…なにがですか?」

賢者「ひとつはこの子の素質についてです」

シスター「素質…ですか?」

賢者「はい。5年前と言うと魔界、しかもエルフの町のような、交易では行かないような魔界の奥にまで行くような人間は私たちぐらいでしたから…」

シスター「では、やはり…」

賢者「わかりませんが…その可能性は否定できないですね…」

シスター「…」

28: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:17:33.76 ID:CasTSGYNo
賢者「…しかし、腑に落ちないところもあります」

シスター「なにがですか?」

賢者「私たちは確かにエルフの町に寄りましたが…二日ほどですぐに出発したのですよ」

賢者「それに、ダークエルフは見かけたことすら無かったのです」

賢者「ですので、勇者か盗賊がダークエルフとそのような関係になる期間はなかったはずです」

シスター「では父親は誰なんでしょうか?」

賢者「それは…いえ…勇者ならば転移呪を習得していたので、もし面識が有るのならダークエルフの元に夜な夜な通うことはできたでしょうが…エルフの結界もありますし…」

29: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:18:03.21 ID:CasTSGYNo
シスター「では…」

賢者「…もし父親が勇者ならば…今後もいろいろな能力に目覚める可能性があります」

シスター「勇者様はそんなに優れた能力を持っておられたのですか?」

賢者「ええ。ただ…それらを熟練する前に魔王討伐に出立されましたので…」

シスター「…」

賢者「それともうひとつは…あの小娘が勇者に子供が居たことを知ると…」

シスター「小娘って…魔法使い様のことですか?」

賢者「それはまあ…なるようにしかならないのでほっときましょう」

賢者「それに…あの娘とは連絡が取れないままですし。まったくあの小娘は…」

30: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:18:36.34 ID:CasTSGYNo
シスター「は、はい…ではこの子については…」

賢者「…今後どんな能力に目覚めるか分かりません。なるべく目を離さないことですね」

シスター「はい」

賢者「それと…今までと変わらず面倒を見ることです」

シスター「それは…はい。私もこの子が本当に自分の子のように思えて…」フッ

賢者「…言葉が分かるようになったらその力の制御方法を教えたほうがいいですね」

シスター「分かりました」

賢者「…」

31: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:19:02.82 ID:CasTSGYNo
シスター「…なんでしょうか?」

賢者「いえ…この森で結界に捕まっていた貴女を助けてからもう10年が過ぎました。そろそろ竜に戻って自分の世界に帰ってほしいと思っていたのですが…」

シスター「…今はこの子の成長を見るのが楽しいのです。ですから…」

賢者「私も女ですからその気持ちも分かります。でも貴女は…」

賢者「…いえ、無粋なだけですね。何でもありません」

シスター「…はい」

32: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:19:36.36 ID:CasTSGYNo
~家の前~

ホー ホー…

賢者「では、そろそろ出発します」

シスター「せめて今夜だけでもお泊りになったほうが…」

賢者「…やめておきます。私はお尋ね者ですから、長居をすると迷惑をかけることになります」

シスター「でもあれは!」

賢者「どう言い訳をしても私が勇者を見捨てたことには変わりはありません。それに…」

賢者「私も自身を許せていないのですよ」

シスター「賢者様…」

33: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:20:06.20 ID:CasTSGYNo
賢者「二度と会えないわけではありません。手紙ならまたいつでも使い魔を使ってやり取りできますから」

シスター「はい…でも、こんなことは間違っています!」

シスター「5年前、賢者様は勇者様とともに旅立ち、それこそ命がけで戦ってらっしゃったのに!!」

シスター「勇者様が賢者様たちを安全なところに避難させるために!自らお残りになったというのに!!」

シスター「それを!お国の方々は勇者様を見捨てた極悪人などと!!」

シスター「これでは賢者様や勇者様が御可愛そうではありませんか!!」

賢者「…いいのですよ」

シスター「よくないです!」

34: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:20:37.07 ID:CasTSGYNo
賢者「人は弱いものです…希望が潰えたとき、何かのせいにしないと心が壊れてしまうのです」

シスター「でもっ!」ポロッ

ギュッ

シスター「!?」

賢者「私は、私のために涙を流してくれる、貴女がいるだけで十分なのですよ」ナデナデ

シスター「うぅ…」

賢者「…ありがとう、赤竜。私のために泣いてくれて」

シスター「うぅ…けんじゃさまぁ…」グスッ

35: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:21:07.14 ID:CasTSGYNo
賢者「あ、そういえば」

シスター「なんでしょうか」

賢者「その子の名前はなんと言うのですか?」

シスター「あ…まだ決めていません」

賢者「そうですか…では、名前を決めてあげてください」

シスター「あの…賢者様に決めていただきたいのですが…」

賢者「私がですか?」

シスター「はい。お願いします」

36: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:21:42.30 ID:CasTSGYNo
賢者「では…『男』というのはどうでしょう?」

シスター「『男』ですか…呼びやすくていい名前です」

賢者「ふふふ。私もついに名付け親ですか」

シスター「ええ。ですから賢者様もここで一緒に…」

賢者 フルフル

賢者「…また帰ってきますから」

シスター「…はい。お待ちしております」

賢者「…では。“転移呪”」

シュイン

シスター「賢者様…」


37: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:22:39.27 ID:CasTSGYNo
~森の南の峠~

シュタッ

賢者「…勇者」

~~~~~賢者の回想~~~~~

  賢者「勇者!もう魔力も尽きました!!」

  勇者「くそっ!こいつら次々と沸いてきやがるっ!!」

  ザシュッ!

  魔族兵1「ぐああ!!」

38: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:23:06.62 ID:CasTSGYNo
  賢者「もう…ここまでですか…」

  勇者「まだだっ!まだ諦めるな!!」

  賢者「でも!盗賊と魔法使いはもう動けないんですよ!?」

  勇者「まだいけるっ!」

  キィン!ザクッ

  魔族兵2「うがあ!!」

  賢者「逃げようにももう道具もありません!」

39: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:23:46.11 ID:CasTSGYNo
  勇者「これを使え!」ピラッ

  賢者「これは…転移符!?」

  勇者「俺がこいつらを引き付けておく!その隙に行くんだ!!」

  賢者「勇者も一緒に!」

  勇者「俺も後から行く!盗賊と魔法使いを頼む!!」

  ガキッ!ブォン!

  賢者「わ、わかりました!先に“辺境の港”に行って…後ろ!!」

  勇者「!?」

  ザクッ!

  勇者「…ぐうっ」ポタポタ

40: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:24:12.83 ID:CasTSGYNo
  賢者「勇者!!腕が!!」

  勇者「は…早く行け!!」ドンッ ザシュッ

  賢者「くっ…て、“転移”ぃ!!!」

  シュイン…シュタ

  ドサドサッ

  賢者「くぅ…な、何とか辺境の港に転移できたようですね…」

  賢者「とりあえず村に行って盗賊と魔法使いを手当てしないと…」ヨロッ

  賢者「勇者…すぐに行きますから…どうか御無事で…」

~~~~~~~~~~

41: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:24:45.63 ID:CasTSGYNo
賢者(それから3日…体力が回復した私達は再び魔界のあの場所へ行きました)

賢者(そこにはおびただしい血の跡と、勇者のものと思われる切り落とされた腕が…)

賢者(その腕を持ち帰り王様に報告すると、勇者を見殺しにした極悪人だと罵られ…)

賢者(私たち3人は逃げるように王都を後にして…)

賢者(そのあと手配書が貼られているのを見て3人で行動するのは危険だからといってバラバラになり…)

賢者(盗賊とは今でも連絡が取れていますが小娘…魔法使いとは連絡が取れなくなって…)

賢者(あの子は勇者に惚れていましたから…勝手に魔界に行って勇者を探しているのでしょうね…)

賢者(勇者を探しているのは私達も同じですが…)

42: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:25:13.34 ID:CasTSGYNo
賢者「でも…あの子が勇者の子供かもしれないとは…」

賢者「…ならば私達はあの子を命を懸けて守りましょう」

賢者「それで罪滅ぼしになるとは思いません。自己満足だと分かっています。でも…」

賢者「…赤竜、しばらくその子を頼みます」


43: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:25:56.40 ID:CasTSGYNo
~5年後・家~

幼男「ねーねーシスター」

シスター「なんですか?」

幼男「これ!」

フワッ

シスター「これは…桔梗ではないですか」

幼男「うん!」

シスター「…この花が咲いているところまでは大人の足でも1日はかかります…」

シスター「あなたはまた転移を使ったのですね?」

幼男「う…ごめんなさい…」

44: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:26:31.13 ID:CasTSGYNo
シスター「あなたのその力は人から恐れられるものです」

シスター「だから本当に必要な時にしか使ってはいけないとあれほど…」

幼男 シュン…

シスター「…どうしてこの花を取ってこようと思ったのですか?」

幼男「だって…」

シスター「叱らないから言って御覧なさい」

幼男「…きょうはおかーさんの日でしょ?」

シスター「あ…」

45: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:28:09.50 ID:CasTSGYNo
シスター(すっかり忘れていました…今日はこの子の母親…ダークエルフの命日でした)

幼男「だから…おかーさんにあげようと思って…」

シスター「!?」

ギュッ

幼男「いたいよぉ」

シスター「男、あなたは優しい子ですね…」グスッ

幼男「…ないてるの?どこかいたいの?」

シスター「いえ…嬉しいのです…」

幼男「うれしいのになくの?へんなの?」

シスター「あなたもいずれわかるときが来ますよ…」

シスター(ダークエルフ…あなたの子供は優しい子に育っていますよ)


46: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:28:59.01 ID:CasTSGYNo
~数日後・森の中~

幼男「あ、ミツバチだ」

ブーン

幼男「あの木の洞のなかに入ってっちゃった」

幼男「あそこにミツバチさんのおうちがあるんだ…」

幼男「そうだ!ハチミツもってかえったらシスターよろこぶかな?」

幼男「よいしょ、よいしょ…」

幼男「ミツバチさん、ハチミツをちょっとちょうだいね」

47: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:29:25.57 ID:CasTSGYNo
ブーン

幼男「わわっ!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

ブーンブーン

幼男「…もう!とまれっ!!」

ブーン ピタッ

幼男「よし、いまうのうちに…」

シュイン

幼男「ふぅ…もうちょっとでミツバチさんにさされるとこだった…」

シスター「どうしたのですか?」

幼男「あ、シスター!」

48: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:29:52.54 ID:CasTSGYNo
シスター「…なにを持っているのですか?」

幼男「えへへー。はい!」

シスター「これは…ミツバチの巣の欠片ではありませんか」

幼男「うん!」

シスター「…また転移を使いましたね?」

幼男「う、うん…ごめんなさい…」

シスター「…」

幼男「…ごめんなさい。ねんどーもつかっちゃった…」

49: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:30:19.55 ID:CasTSGYNo
シスター「やっぱり念動も使っていましたか…」

幼男「うん…」

シスター「…今日は大目に見ます。帰って蜂蜜茶を飲みましょう」

幼男「うん!わーい!!」

テクテク トテトテ

幼男「はっちみっつはっちみっつうれしいなー♪」

シスター「ふふふ」

50: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:30:58.26 ID:CasTSGYNo
~家の中~

シスター「はい、どうぞ。熱いから気をつけて」

幼男「うん!いただきまーす!!」

幼男「ふーっふーっ…あちっ…おいしー!」

シスター「…ふぅ。おいしいですね」ニコッ

幼男「…ねえ、シスター」

シスター「なんですか?」

幼男「きょうは…おこらないの?」

シスター「なぜ?」

幼男「だって…てんいもねんどーもつかっちゃったのに…」

51: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:31:25.54 ID:CasTSGYNo
コトッ

シスター「男、あなたはこの蜂蜜を取るときに蜜蜂を殺そうとしましたか?」

幼男「ううん」

シスター「なら怒る必要はありません」ニコッ

幼男「…よくわかんない…」

シスター「では…例え話をしましょう」

幼男「おはなし!?」ワクワク

52: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:31:55.84 ID:CasTSGYNo
シスター「…あるところに小さな村がありました」

シスター「その村では開拓民と呼ばれる人々が家畜を飼い、畑を耕し、一生懸命生きていました」

シスター「人々の働きもあり、村は大きく、豊かになりました」

シスター「ところがそこに大きな竜がやってきました」

幼男「竜が!?」

シスター「…竜は抵抗する人々を炎の息と尻尾で払い除け…」

シスター「家畜の豚や牛をたくさん食べて帰っていきました」

幼男「…」

53: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:32:24.01 ID:CasTSGYNo
シスター「人々は落胆し悲しみましたが…被害は家畜が殆んどで畑もほとんどが無事だったため、また一生懸命働いています」

幼男「…りゅうってひどいことするね…」

シスター「そうでしょうか?」

幼男「だって!ぶたさんやうしさんたべちゃったんだよ!?」

シスター「でも人の被害はごく僅かですよ?」

幼男「でも…」

54: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:32:53.51 ID:CasTSGYNo
シスター「…では、人を蜜蜂に、竜を男、あなたに置き換えてみましょう」

幼男「…え?」

シスター「蜜蜂は一生懸命巣を作り、蜜を集めてきました」

シスター「そこへあなたがやってきたのです」

幼男「あ…」

シスター「あなたは蜜蜂の巣の一部を取り、帰っていきました」

幼男「うぅ…」

55: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:33:21.28 ID:CasTSGYNo
シスター「…男、私はあなたを非難しているのではないのです」

シスター「生きるためには食べ物が必要です。あなたや竜のしたことは生きるために必要なことなのです」

幼男「うん…」

シスター「だから叱らないのですよ」ニコッ

幼男「でも…ミツバチさんにわるいことしちゃった…」

シスター「あなたは必要以上に蜜蜂を殺さなかったのでしょう?」

幼男「うん…」

56: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:33:49.72 ID:CasTSGYNo
シスター「なら大丈夫ですよ。蜜蜂は働き者ですから、あなたが取ってきた分ぐらいはすぐに修復します」

幼男「…そうかな?」

シスター「ええ。ですから思い悩むのはおやめなさい」

幼男「…うん!」

シスター「それと、無益な殺生はしないことです」

幼男「うん!わかった!!」

シスター「いい返事です」ニコッ

57: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:34:15.72 ID:CasTSGYNo
~数日後・近くの村~

ヒソヒソ ヒソヒソ…

幼男「?」

ヒソヒソ ヒソヒソ…

幼男「…ねえ、シスター」

シスター「どうしたのですか?」

幼男「なんかこっちをみてるひとがいるよ?」

シスター「…気にしてはいけません」

幼男「でも…」

シスター「大人しくしていましょう」

幼男「うん…」
   ・
   ・
   ・

58: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:35:23.64 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「いつもありがとね。あんたのベーコン、評判いいんだよ」

シスター「ありがとうございます」

幼男「シスターはイノシシベーコンつくるの、じょうずだもんね」

肉屋のおばちゃん「あははは。お礼を言うのはこっちだよ。あんたのおかげで売上上がってんだからね」

シスター「こちらも助かります。いつもいいお値段で買っていただいてますから」

シスター「賢者様のこともあるのにこんなによくしていただいて…」

肉屋のおばちゃん「…気にしなくていいんだよ。賢者様にはあたしらも随分助けてもらったんだ」

肉屋のおばちゃん「賢者様が理由もなしにあんなひどいことするわけない。きっとそうするしかなかったんだよ」

シスター「…」

59: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:35:52.72 ID:CasTSGYNo
幼男「…ねえ、おばちゃん」

肉屋のおばちゃん「ん?なんだい?」

幼男「賢者様ってなにしたの?」

シスター「こ、これっ!」

肉屋のおばちゃん「いいんだよ。坊や、賢者様はなーんにも悪いことはしてないんだよ?」

幼男「ふーん…じゃあ賢者様はいいひとなんだね!」

肉屋のおばちゃん「そうだよ。賢者様はいい人さ。あははは」

幼男「そうだよね!いっつもおみやげくれるもんね!!」

60: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:36:20.68 ID:CasTSGYNo
シスター「…ありがとうございます。それでは」ペコッ

肉屋のおばちゃん「ああ。またベーコン持ってきておくれよ」

幼男「おばちゃん、ばいばーい!」

シスター「…じゃあ、必要なものを買って帰りましょう」

幼男「うん!」

シスター「ふふっ…え?」

チンピラ1「へっへっへー。とおせんぼ♪」

61: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:37:06.74 ID:CasTSGYNo
シスター「…なにか用ですか?」

チンピラ2「へへっ。ちょっと付き合ってくんねーかなあ?」

チンピラ3「金持ってんだろ、金」

チンピラ4「いい体してんじゃん。俺たちと楽しもうぜ」

幼男「!?」

シスター「心配しなくてもいいですよ」

幼男「でも…」

62: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:37:42.62 ID:CasTSGYNo
シスター「私に任せなさい。そこの石を拾ってくれませんか?」

幼男「…これ?」ヒョイ

シスター「はい。…あなた達」

チンピラ‘s「なんだよ」ニヤニヤ

シスター スッ…ゴキッガキガキ…

幼男「すごい!石をにぎったら砂になっちゃった!!」

チンピラ‘s「…」ゴクリ…

63: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:38:23.35 ID:CasTSGYNo
シスター「私たちに手を出すなら、手加減はしませんよ?」

チンピラ‘s「き、今日はこのぐらいにしといてやる!!!」ダダダダ…

シスター「…逃げましたか。それが賢明です」

幼男「んー…あ、あった!」

シスター「なにをしているのですか?」

幼男「んー!」

64: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:38:51.24 ID:CasTSGYNo
シスター「あなたには石を砕くのは無理ですよ」

幼男「んんーっ!!」ゴキッ

幼男「「…はあ。われたけど砂にはならないや」

シスター(な、なんという…私は竜の力がありますがこの子は…)

シスター「あなたには驚かされますね」

幼男「え?」

シスター「…なんでもありません。さ、帰りましょう」

幼男「うん!」


65: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:39:20.44 ID:CasTSGYNo
~数日後の夜~

バサバサバサ

シスター「…賢者様の使い魔ですか。ご苦労様です」

梟(使い魔) ホーホー

カサカサ…

66: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:39:53.87 ID:CasTSGYNo
  赤竜へ

  お元気ですか?

  貴女の手紙にあった男の力について私なりに考察してみました。

  貴女は勇者の素質の一つと思っているようですが、

  勇者にはそれほどの腕力はなかったように思います。

  ですので、他の要因が考えられます。

  これは私の推測ですが、貴女は男に母乳を与えていましたね。

  その結果、男は母乳を通し貴女の力を身につけたと考えられないでしょうか?

  あくまで推測なので断定はできませんが、その可能性が高いと思いますよ。

  
  追伸:男も5歳になったことですし、そろそろ男に読み書き計算を教えてやってください。


67: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:40:22.42 ID:CasTSGYNo
パサッ

シスター「…」

シスター「私の母乳で男があんなに強くなるなんて…」

シスター「…ふふふ。これが成長する喜びなのですね」


68: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:40:50.05 ID:CasTSGYNo
~3年後・森の中~

童男「…」

ガサガサッ ブヒィ!

童男「…っ!」

ガッ ザシュッ ドサッ

童男「やったー!」

シスター「長鉈の扱いにも慣れてきましたね」

童男「あ!シスター!!やったよ!!イノシシを仕留めたよ!!」

シスター「はい。よくやりましたね。これはまた…大きなイノシシですね」

童男「へへへ」

69: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:41:17.71 ID:CasTSGYNo
シスター スッ…

シスター「森の神よ。お恵みに感謝します」

童男「感謝します…」

シスター「…さ、家に帰って捌きましょう」

童男「うん!これでまたベーコンを作れるね!!」ニコッ

シスター「ふふふ。男は本当に食いしん坊ですね」

童男「い、いいでしょ!?シスターの作るベーコン、美味しいんだもん!」

70: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:41:59.46 ID:CasTSGYNo
シスター「では…」

童男「あ、僕が持ってかえるよ」グイッ

シスター「じゃあ、お願いします」

トテトテトテ

童男「ねえねえ、シスター」

シスター「なんですか?」

童男「この鉈、すごいね!木でも岩でも、このイノシシでもなんでも切れちゃうよ!!」

シスター「なんでも切れるのは男、あなたの腕です」

童男「そっかなー?そうじゃなくてこの鉈が良く切れるからだよ、きっと」

71: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:42:27.26 ID:CasTSGYNo
シスター「…その長鉈は私が作ったものですから、そんなにいいものではありませんよ?」

童男「ううん。この鉈がすごいんだよ!」

シスター「じゃあ、そういうことにしておきましょう」

シスター(この子も大分腕が上がってきましたね)

男「今日は庭で採れた玉葱とお肉で串焼きにしようよ!」

シスター「そうですね」クスッ

72: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:43:09.29 ID:CasTSGYNo
~2年後・ダークエルフの墓~

シスター「…」

男「…」

スッ

シスター「…お墓参りはこれぐらいにして、男の10歳の誕生日をお祝いしましょう」

男「うん。でもなんで今日が僕の誕生日なの?」

シスター「それはあなたのお母さんから誕生日を聞いていたのですよ」

男「ふーん。だから今日が誕生日なんだ」ニコッ

シスター(本当は私が決めた日なんですが)フッ…

73: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:43:36.71 ID:CasTSGYNo
男「どうしたの?」

シスター「なんでもありませんよ?」

シスター(それにしても…ダークエルフによく似てきましたね…きれいな顔立ちです)

男「でも…なんだか寂しそうに見えるよ?大丈夫?」

シスター「…男、あなたは本当に優しい子に育ちましたね」

男「そっかなー?もしそうだと嬉しいな♪」

74: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:44:07.08 ID:CasTSGYNo
シスター「どうしてですか?」

男「だってシスターが喜んでくれるでしょ?シスターは僕のもう一人のお母さんだもん」ニコッ

シスター「!?」

ダキッ

男「どうしたの?」

シスター「男…ありがとうございます…」ポロッ

男「え?泣いてるの?」

シスター「ええ…嬉しくて…」


75: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:44:35.09 ID:CasTSGYNo
~その日の午後・村~

肉屋のおばさん「はい。今日はこれだけね」チャリン

シスター「いつもすみません」

肉屋のおばさん「こっちも儲けさせてもらってるんだからお互い様だよ。あははは」

シスター「それでは、失礼します」

肉屋のおばさん「またよろしくね」

男「おばちゃんばいばーい」

76: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:45:28.99 ID:CasTSGYNo
シスター「小麦粉と卵…砂糖も買わないといけませんね」

男「ねえねえ!おっきいケーキにしようよ。ねえ!!」

シスター「ふふふ。男は本当に食いしん坊ですね」

男「だ、だってケーキなんて久しぶりなんだもん!」

シスター「早く買い物を済ませて帰りましょう」

ズズーン…


 

77: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:46:16.01 ID:CasTSGYNo
男「な、なに?なんの音!?」

キョロキョロ

シスター「あ、あれは…黒竜!」

男「すごい…3階建ての教会と同じぐらいの大きさだ…」

リュウダー!! ニゲロー!! タスケテー!! コワイヨー!!

黒竜 クンクン…

男「なにしてるんだろ…」

78: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:46:43.89 ID:CasTSGYNo
シスター「食べられそうなもののにおいを探しているのかもしれませんね…」

男「…じゃあ牧場のほうに行くのかな…」

シスター「おそらく…」

黒竜 ギロッ

シスター「!!」

シスター(目が合いました…目的は私ですか!?)

79: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:47:11.19 ID:CasTSGYNo
シスター「…男、よく聞きなさい」

男「なに?」

シスター「私は森に向かいます」

男「森に逃げるの?」

シスター「いえ…あの黒竜が探しているのは私です」

男「…え?」


80: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:47:44.34 ID:CasTSGYNo
シスター「だから私が囮になってあの竜を森に誘き寄せますから、村人を安全なところに非難させてください」

男「あ、安全なところって!?」

シスター「街道の方です!時間がありません。行きますよ!」

シスター ダッ!

男「あ!シスター!!」タッ

タタタタ…

シスター(やっと森に入りました。ここならば誰にも見られずに変化が…え?)

男 タタタタ


81: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:48:14.60 ID:CasTSGYNo
シスター(くっ!なぜ男が!!)

シスター「ついてきてはダメ!早く村人を非難させて!!」タタタタ…

男「いやだあ!シスターと一緒に行くー!!」タタタ…

シスター「男!あなたが来ると足手まといです!!早く戻りなさい!!」

男「いやだー!!」

シスター「…戻れと言ってるんだ!!」ゴウッ!

男「!?」ズサー

82: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:48:45.64 ID:CasTSGYNo
男「ひどいよ!火の玉なんか投げて!!」

シスター「早く戻れ!」ギロッ

男(こ、怖い…こんな怖いシスターを見たのは初めてだ…)

男「わ、わかったよ…戻るよお…」

バッサバッサ

男「!!」

シスター「くっ…遅かったか」

黒竜 ジー


83: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:49:50.77 ID:CasTSGYNo
男「こ、このお!」ブンッ

シスター「男!やめろ!!」

黒竜『…ふん』ブォン!

男「尻尾!?うわぁあああ!」ズサアー

シスター「男!?大丈夫ですか!?」

男「うぅ…」

84: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:50:40.44 ID:CasTSGYNo
シスター「…よくも…男にっ!手を出したなぁああ!!」

ズズズ…メリメリメリメリ!!

男「し、シスターが赤い竜に!?」

赤竜 グォオオオ…

赤竜『…早く村に戻れ』ジロッ

男「う、うん!転移!!」

シュイン

85: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:51:14.70 ID:CasTSGYNo
赤竜『…』

黒竜『…久しぶりだな』

赤竜『まだ諦めていなかったのか』

黒竜『お前以上の雌などいなくてな』

赤竜『それでわざわざこんなところまで探しに来たのか。ご苦労なことだ』

黒竜『…赤竜よ。我が妻となれ』

赤竜『笑止!貴様も竜ならその力で我を従えさせればよかろう』

黒竜『貴様も変わらぬな…致し方なし…か』

赤竜『そっちが来ぬなら…行くぞ!!』


86: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:52:06.24 ID:CasTSGYNo
~村の中~

シュイン

男「ふぅ…」

ドケドケー! ハヤクニゲロー!!

男「みんなー!竜は森に行ったよー!!だから街道のほうに逃げるんだよー!!」

エッ? モリガドウシタッテ!? リュウガ2ヒキイルゾー! モウダメダー!!

男「みんなー!落ち着いてー!!街道のほうにー!!」

カイドウダッテ!? ハヤクイコウ!! ドケドケー!!

男(みんなようやく街道のほうに逃げ出した…)

男「…よし!」

シュイン


87: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:52:34.15 ID:CasTSGYNo
~森~

シュイン

男(竜は…いた!)

黒竜『我とともに帰るのだ!』ブォンッ!

赤竜『我は誰の命も受けない!』ゴォオオオ!!

男(すごい…近づけない…)

グォオオオ!! ガァアアア!!

男「…シスター頑張れ!」

赤竜『!?』

88: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:53:06.04 ID:CasTSGYNo
黒竜『隙ありッ!』

グワッ!

男「あっ!黒い竜が喉に噛み付いた!!」

赤竜『しまっ…!!』

黒竜『落ちろぉおお!!』

ブォンブォン!! ブォン!…バタバタ…ビクッ ビクッ…ドサァ…

黒竜『…やっと落ちたか…』

89: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:53:43.64 ID:CasTSGYNo
男「うわぁああっ!シスターっ!!」

黒竜『やめろ』

男「シスターを返せぇええ!!」シュイン

黒竜(消えた!?)

シュイン

男「うおおおお!!」シュン!

黒竜『なっ!早い!!しかし無駄だ!人間の刃物ごときで我が切れるとでも』

ザクッ!

黒竜『なっ!?腕に傷が!?』

男「あ…当たった!」


90: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:54:17.93 ID:CasTSGYNo
黒竜『…貴様ぁああ!!』ブォン!!バチーン!!

男「うわぁあああ!!!」ズザザー!!

黒竜『…ふん。しかし…我に傷をつけるとはこやつ…』

男「うぅ…」

黒竜『…いや、今は我が妻となるものを連れ帰らねば』グイ

バサッ バッサバッサ…

男「し…シスタぁ…」


91: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:57:04.56 ID:CasTSGYNo
~3日後・家~

男「…今日は…市の日か…」

男「ベーコン売りに行かなきゃ…」

男「…よいしょ」

ガチャ

男「…いってきます」

パタン


92: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:57:34.68 ID:CasTSGYNo
~村~

男「…あれ?」

オーイ ニバシャガキタゾー ヨシ、コレヲツンデクレ

男「…みんなどうしたのかな。家から荷物を運び出して…」

男「それより、早くベーコンを売りに行こう」

タタタ…

93: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:58:03.83 ID:CasTSGYNo
男「おばちゃーん!」

肉屋のおばちゃん「…おや、男かい。今日はどうしたんだい?」

男「うん、ベーコンを売りにきたんだ」

肉屋のおばちゃん「そうかい。ちょっと見せてみな」

男「はいこれ」

肉屋のおばちゃん「これは…シスターが作ったヤツだね?」

男「うん…これで終わりなんだ。後は僕が作ったやつしか…」

94: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:58:32.69 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「そうかい…今日はこれで引き取らせてもらうよ」チャリン

男「こんなに…ありがとうおばちゃん!」

肉屋のおばちゃん「いいんだよ。うちもあんたからベーコンを買うのはこれで最後だからねぇ…」

男「…え?」

肉屋のおばちゃん「…ほら、この間竜が2匹出ただろ?それで駐在兵が逃げ出しちゃってさあ…」

肉屋のおばちゃん「あ、駐在兵を責めてるんじゃないよ?あんな竜が2匹も出たんじゃあねえ…」

男(かたっぽはシスターなんだけどな…)

95: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:59:05.48 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「それでさ、役人がこの村を放棄しろって言ってきてさ」

男「え?なんで!?」

肉屋のおばちゃん「この先また竜が出るかもしれないからって…」

肉屋のおばちゃん「だからここを捨てて、もっと安全なところにみんなで引っ越せってさ」

男「…おばちゃんも?」

肉屋のおばちゃん「…ああ。この村は結構好きだったんだけどねぇ。みんな越しちまうし…仕方がないさね」

男「そう…」


96: 名無しさん 2013/01/11(金) 00:59:35.24 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「…どうだい?あんたも一緒に来ないかい?」

男「…え?」

肉屋のおばちゃん「あんたもひとりじゃ大変だろ?だからさ…」

男「…いいの?」

肉屋のおばちゃん「うちも大変だけどさ…毎日御飯が食べられるくらいには蓄えもあるしね」

肉屋のおばちゃん「もしその気ならさ、明日の昼頃にここに来なよ」

肉屋のおばちゃん「兵隊さんが護衛についてくれるっていうんでさ、みんな一緒に出発するんだ」

男「…お昼だね。分かった。ありがとう、おばちゃん」

タタタタ…

肉屋のおばちゃん「…ホンットに素直ないい子だねえ…」

97: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:01:35.88 ID:CasTSGYNo
~翌日・朝~

男「…」

男「じゃあ、いってきます。落ち着いたら時々帰ってくるから…」

男「…待っててね。お母さん」

男「あとはシスターに置手紙しとかなきゃ」


98: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:02:04.09 ID:CasTSGYNo
  シスターへ

  肉屋のおばちゃんと一緒に、ちょっと離れたところに引っ越します。

  場所がはっきりしたらまた書置きしにきます。

  もしそれまでに帰ってきてたら待っていてください。

  男より


99: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:02:31.34 ID:CasTSGYNo
男「これでよし」

男「じゃあ…」

男(…この家ともしばらくお別れだね…)

男「…いってきます!」

100: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:03:00.17 ID:CasTSGYNo
~村・昼前~

ガヤガヤ オーイ、モウコレデゼンインソロッタノカー?

肉屋のおばちゃん「あんまりいい馬車じゃないけど我慢しておくれよ?」

男「ううん。いい馬車だね!」

村人A「…おい、そのガキも連れて行くのか?」

男「え?」

101: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:03:28.45 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「そうだよ。何か文句でもあるのかい!」

村人B「そいつは森の一軒家のシスターんとこのガキじゃねーか!連れてくんじゃねーよ!!」

肉屋のおばちゃん「何言ってんだい!こんな子供をほったらかしていくなんて、気が知れないね!!」

村人A「何言ってやがる!シスターって言ったら赤い竜になった化け物じゃねーか!!」

男「!!」

肉屋のおばちゃん「…へ?」

102: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:03:57.67 ID:CasTSGYNo
村人B「そいつも竜に化けるんじゃねーのか!?そんなやつを連れて行くなんて正気じゃねえ!!」

肉屋のおばちゃん「な、なにいってんだい!シスターが竜に化けるなんて…寝言は寝てからいいな!」

村人A「俺ぁこの目で見たんだ!シスターが森に入ったすぐあとに森の中から赤い竜が出てきたんだぜ!」

村人A「だからあの2匹目の竜はシスターが化けたに違いないんだ!その証拠にあれからシスターを見たヤツはいねえだろ!!」

肉屋のおばちゃん「じゃあ実際に化けるとこを見たわけじゃないじゃないか!」

103: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:04:28.38 ID:CasTSGYNo
村人A「じゃ、じゃあ!シスターはどこに行ったんだよ!!竜に化けて黒いのと一緒にどっかいっちまったに違いねえ!!」

村人B「そうだそうだ!そのガキはシスターんとこにいたから、そいつも竜に違いねえ!!」

肉屋のおばちゃん「じゃあこの子が竜に化けるって言う証拠はあるのかい!!」

村人A「じゃあ竜に化けないって言う証拠があるのかよ!!」

男「…」

104: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:04:56.39 ID:CasTSGYNo
騎士「何をもめているんだ!」

村人A「あ、騎士様!こいつ、竜の仲間なんですよ!!」グイッ

男「あっ」ヨロッ

騎士「…どこから見ても人間の子供じゃないか」

村人B「で、でも!コイツが世話になってたシスターは竜になって…」

騎士「…酔っているのか?暢気なもんだな」スタスタ…

村人A、B「「あっ!き、騎士様!!」」

105: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:05:25.72 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「ふんっ!証拠もないのに騒ぐんじゃないよ!!」

男「…ねえ、おばちゃん」

肉屋のおばちゃん「あんたはなーんにも、心配しなくていいんだよ?あたしがついてるからね!」

男「僕…やっぱりここに残るよ」ニコッ

肉屋のおばちゃん「…へ?」

106: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:05:53.03 ID:CasTSGYNo
男「僕、やっぱりあの家にいたいから。じゃあねー!」タタタ…

肉屋のおばちゃん「あ!ちょっと!!お待ちよおー!!」

男「ばいばーい」ノシ タタタ…

肉屋のおばちゃん「あ…くっ!」ガバッ

村人A、B ビクッ

肉屋のおばちゃん「あんたたち!あんな子供に気を使わせて!恥ずかしくないのかい!!」

村人A「おおお、俺たちゃ間違っちゃいねえ!」

村人B「そそ、そうだ!あいつは竜の仲間なんだ!!いなくなってほっとしたぜ!!なあ!?」

村人A「そうだそうだ!」

107: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:06:24.77 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「あんたたちぃ!」

騎士「やめておけ」グイ

肉屋のおばちゃん「き、騎士様!」

騎士「さっきから見ていたが、あの子は立派じゃないか」

騎士「自分がいればお前達が争う。だから自分はこの村に残る。また竜が来るかもしれないのにだ」

村人A「だってあいつは!竜の仲間なんですぜ!?」


108: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:07:40.88 ID:CasTSGYNo
騎士「…証拠はあるのか?」

村人B「だ、だから!それはあいつが世話になっていたシスターが竜に化けたんでさあ!!」

騎士「ではそのシスターとやらは何をしたのだ?」

村人A「な、なにって…」

騎士「私は、黒い竜が村に現れたあと森の中に赤い竜が現れ、黒い竜と共にどこかへ飛んで行ったと聞いているが?」

村人B「だからその赤い竜がシスターで!」

109: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:08:14.36 ID:CasTSGYNo
騎士「…だとしたらシスターとやらは村を守るために竜に変化したのではないか?」

村人A「そ、そんなの聞いたことねえ!人が竜になるなんて!!なあ!?」

村人B「あ、ああ!そうだそうだ!!」

騎士「お前らが知らないのは無理もない。とうの昔に失われた秘術だからな」

村人A、B「「へ?」」

騎士「…手配中の賢者は優秀だったと聞く…もしかしたらその秘術を復活させていたのかもしれない…」

村人A、B「「…」」

110: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:08:47.89 ID:CasTSGYNo
肉屋のおばちゃん「あんたたち!わかったろ!!さっさとあの子を迎えにいきな!!」

村人A、B「「ひぇっ!」」

騎士「…いや、もう時間がない」

肉屋のおばちゃん「…え?」

騎士「出発の時間だ」

肉屋のおばちゃん「そ、そんな…」

騎士「悪いな。あの子一人のために村人全員を危険な目に合わすわけにはいかないのだ」

村人A、B((ほっ…))

111: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:09:14.69 ID:CasTSGYNo
騎士「…さ、行くぞ」

肉屋のおばちゃん「ちょ、ちょっと待ってよ!書き置きだけ置いてくるからさ…」

騎士「…早くするんだぞ?」

村人A「お、俺たちは悪くない…」ブツブツ…

村人B「そ、そうだ…あのガキは竜の仲間なんだ…」ブツブツ…


112: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:09:45.36 ID:CasTSGYNo
~家・ダークエルフの墓~

男「えへへ…帰ってきちゃった…」

男「今日から一人…ううん、お母さんと二人だね。あはは…」

男「…おばちゃんたちを見送りに行ってくるね」

シュイン…


113: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:10:13.87 ID:CasTSGYNo
~村はずれの木の上~

男「…」

ヒヒーン ガラガラガラ…

男「おばちゃん…ばいばい…」

ガラガラ…ヒュー…

男「行っちゃった…」

ポロッ

114: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:10:41.01 ID:CasTSGYNo
男「!!」グイッ

男「な、泣いてない!これは汗!汗なんだから!!」ゴシゴシ

グゥ…

男「…こんなときでもおなかはすくんだなぁ」

男「…村に何かないかな?」


115: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:11:09.91 ID:CasTSGYNo
~無人の村~

男「…あはは。肉屋のおばちゃんちに来ちゃった…あれ?」

ヒラヒラ

男「何か貼ってある…なんだろ?」


116: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:11:36.93 ID:CasTSGYNo
  男ちゃんへ

  連れて行けなくてごめんなさい。

  せめてもの償いに、店の中に食べ物を置いておきました。

  あと、畑の野菜は自由に食べていいですから。

  あんたを置いていくことは残念ですが、精一杯生きてください。

  さようなら。


117: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:12:03.71 ID:CasTSGYNo
男「おばちゃん…」グスッ

男「これは…ハムに干し肉に玉ねぎにパンに…すごい…いっぱいあるよ」

男「ありがとうおばちゃん…僕、頑張るからね」


118: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:12:39.05 ID:CasTSGYNo
~1週間後・ダークエルフの墓~

男「…」

男「じゃあ、村の畑に行ってくるね。おかあさん」

賢者「ここに居たのですか」

ビクッ

男「…あ、賢者様!」

賢者「久しぶりですね」

トテテテテ ギュッ

賢者「どうしたのですか?」

男「うぅ…うわぁああああん!!うわぁあああん!!!」

賢者「…」ナデナデ
  ・
  ・
  ・

119: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:13:05.85 ID:CasTSGYNo
男「ヒック…ヒック…」

賢者「…落ち着きましたね」

男「…うん…ヒック」

賢者「使い魔が赤竜宛の手紙を持って戻ってきたので気になってきたのですが…何があったのですか?」

男「うん…あのね?」
  ・
  ・
  ・

120: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:13:36.85 ID:CasTSGYNo
賢者「そうですか…黒い竜が赤竜を連れて行ってしまったのですね…」

男「うん…」

賢者「…」

男「…ねえ賢者様」

賢者「はい?」

男「シスターは…竜…なの?」

賢者「…ええ。シスターはこの森で罠に掛かっていた赤竜です」

121: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:14:05.16 ID:CasTSGYNo
賢者「それを私が見つけ、彼女を罠から解放したんです」

賢者「すると彼女は恩返しだと言って人に変化し、私といっしょに暮らすようになったのです」

男「そうなんだ…」

賢者「…ショックですか?」

男「うん。でも…竜だったけどシスターはシスターだもん…」

男「僕のもう一人のお母さんだもん…」

賢者「男…」

122: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:15:53.20 ID:CasTSGYNo
男「もう村にはだれもいないの…ひとりぼっちなんだ、僕…」

賢者(先ほどの男の話では、もうこの付近に人間はいないとのことですね…)

賢者「…私がいますよ?」

男「え?」

賢者「…ここはもともと私の家なのです。訳あって私は村を出ましたが…」

賢者「そのあと赤竜がこの家を守っていたのですよ」

男「…一緒に住んでくれるの?」

賢者「嫌ですか?」

男「ううん!」ダキッ

123: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:16:20.61 ID:CasTSGYNo
賢者「今日からは私が母親代わりです。いいですか?」

男「うん!」

賢者「いい返事です」

男「えへへ…あのね?」

賢者「なんですか?」

男「…ありがと」ニコッ

賢者「はい」ニコッ


124: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:17:32.30 ID:CasTSGYNo
~数日後~

ザクッ ザクッ

男「こんなもんかな?」

男「…おばちゃん、野菜を残してくれてありがとう」

賢者「…男、こんなところにいたのですか」

男「あ、賢者様!」

賢者「…ここは村人の畑ですか?」

男「うん。肉屋のおばちゃんが残してくれた畑なんだ」


125: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:18:01.61 ID:CasTSGYNo
賢者「勝手に収穫しているのですか?」

男「ううん。あそこに張り紙がしてあるよ。もって行っていいよって」

賢者「そうですか。良かったですね」

男「うん!」

賢者「それはそうと…男、私はこれから出かけてきます」

男「おでかけ?」

賢者「はい。盗賊…仲間のところに行ってきます」

男「はーい…」

126: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:18:33.99 ID:CasTSGYNo
賢者「どうしたのですか?元気が無いようですが?」

男「…帰ってくる?」

賢者「ええ。ちゃんと帰ってきますよ」

男「だったら…うん。いってらっしゃい」

賢者「はい。いってきます。“転移呪”」

シュイン

男「…」


127: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:19:00.86 ID:CasTSGYNo
~盗賊がいる町~

シュイン

賢者「人を隠すには人の中…とはいうものの…」

ヒラヒラ

賢者「手配書がそこここに張られていますね…まったく、肝が据わっていると言うか…」

賢者「…あまりゆっくりしては居られないですね。フードをしっかり被って急ぐとしましょう」


128: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:19:28.27 ID:CasTSGYNo
~盗賊の家~

賢者「…ここですね」

コンコン

ギィ…

賢者「久しぶりですね盗賊。また随分髭を伸ばしたんですね」

盗賊「ああ。変装するより楽だからな。ま、入ってくれ」

賢者「はい。お邪魔します」パタン

129: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:19:56.36 ID:CasTSGYNo
盗賊「で?迎えにくると言っていたが…どこに行くんだ?」

賢者「私の家です」

盗賊「ほう」

賢者「貴方に紹介したい人がいます」

盗賊「誰だ?まさか…勇者か!?」

賢者「いいえ」

盗賊「じゃあ…誰だ?」

賢者「…まずは会ってもらったほうが早いと思いまして」

130: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:20:22.53 ID:CasTSGYNo
盗賊「連れてきていないのか?」

賢者「ええ。今あの子を村から連れ出すのは得策ではないと思うので」

盗賊「わかった。荷物を取ってくるからちょっと待ってくれ」

賢者「はい」

131: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:20:51.49 ID:CasTSGYNo
~町中~

テクテク

盗賊「で、相手はどんな人物なんだ?」

賢者「そうですね。見かけは子供です」

盗賊「中身は大人なのか?」

賢者「いえ、中身も子供です」

盗賊「ただの子供じゃねえか」

賢者「ええ。一見どこにでもいる普通の子供です」

132: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:21:22.06 ID:CasTSGYNo
盗賊「ん?やけに含みを持たせた言い方じゃないか」

賢者「ええ。実は…」

クイニゲダー!アソコダー!ニガスナー!

?「ひぃいいい!!」トテテテテ

ドンッ!

?「あっ!」ズササー

賢者「あっ!フードが」パサ…

町人1「おいあんた!そのガキをこっち…に?」

133: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:22:00.97 ID:CasTSGYNo
?「ひゃっ!」ビクビク

ヒソヒソ ヒソヒソ…

町人2「お、おい…あれは手配書の…」

町人3「ああ。“賢者”に間違いない…俺たちの敵う相手じゃ…」

町人4「ど、どうすんだよ…兵隊呼ばないとやべえよ…」

ザワザワ…

盗賊「…どうする?」

賢者「決まってるでしょう?…“転移呪”」

?「え?きゃあああ!!」

シュイン…

町人‘s「「「「…い、いっちまった…助かった…」」」」


134: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:22:33.24 ID:CasTSGYNo
~男の家の近く~

シュイン シュタッ ドサッ

?「みぎゃっ!」

賢者「大丈夫ですか?」

?「うぅ…いたいよお…」

盗賊「…連れてきたのか?」

賢者「ええ、呪式の展開範囲の関係でしかたなく。いけませんか?」

盗賊「いや…」ジー

?「…な、なに?」


135: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:23:33.25 ID:CasTSGYNo
賢者「盗賊、そんなに見つめると嫌われますよ?」

盗賊「あ、ああ…けど…」

賢者「…普通の女の子ですよ?角と羽と尻尾が生えて耳が長いだけの」

?「…え?」ペタペタ

?「あっ!…あっ!でてる!!変化が解けちゃってる!!」アタフタ

盗賊「…慌ててるみたいだぞ?」

賢者「そうですね。どうしたんでしょう?」

?「はわわ…はわ…あ、あれ?」

136: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:24:07.99 ID:CasTSGYNo
盗賊「で、家はどっちだ?」

賢者「そうですね…あっちに行けば家があります」

盗賊「よし。行くぞ。荷物はこれで全部だな」

賢者「ええ。荷物を持たせてすみません」

盗賊「へへへ。俺は力仕事も得意なんだぜ?」

賢者「ふふふ。貴女も…なんて呼べばいいかしら?」

?「え?あ、はい…魔娘…です…」

賢者「…では魔娘もいっしょに行きましょう」

?改め魔娘「…え?」


138: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:24:42.87 ID:CasTSGYNo
賢者「大したものはありませんが食事もありますから。食い逃げするほどおなかが空いていたんでしょう?」

魔娘「う、うん…」

賢者「立てますか?」

魔娘「あ、うんっしょ…っ!いたっ!」

賢者「…足をくじいたみたいですね。ほら」スッ

魔娘「え?」

賢者「肩を貸しますよ」

魔娘「い、いいの?」

賢者「ええ」

ヒョコ ヒョコ

139: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:26:03.19 ID:CasTSGYNo
>>137 とりあえず今月中には完結したいですねwww

140: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:26:42.34 ID:CasTSGYNo
魔娘「…へんなの」

賢者「なにがですか?」

魔娘「だって…私は人間じゃないのに…」

賢者「些細なことです」

魔娘「え?だって…」

賢者「…私は以前、竜と一緒に暮らしていたことがあるんですよ?」

魔娘「え!?」

141: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:27:20.35 ID:CasTSGYNo
賢者「意思の疎通が出来るのであれば、むやみに怖がる必要はないでしょう?」ニコッ

魔娘(側近は “人間”のこと、ずるがしこくて、隙があれば騙そうとする油断できない相手だって言ってたけど…)チラッ

賢者「…なんですか?」

魔娘「あ、ううん!…あの…」

魔娘「あなた達は人間から逃げてるみたいだけど…どうして?」

賢者「…私達は仲間を見捨てたお尋ね者なのですよ」

142: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:27:59.92 ID:CasTSGYNo
魔娘「罪人なの?」

賢者「ある意味そうですね…」

魔娘「そうは見えないけどなぁ…」

賢者「…罪か否かは人が定めた法によって決まるのですよ」

賢者「私達はその法によってお尋ね者になったのです」

魔娘「でも、仲間を見捨てたのだって何か理由があるんじゃ…」

賢者「結果がすべてなのです。理由は意味がないのですよ」

魔娘「そんなの…法が間違ってるよ…」

143: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:28:32.74 ID:CasTSGYNo
賢者「…貴女は優しいのですね」

魔娘「そ、そんなことない!」

賢者「ふふふ。私は貴女が気に入りました。もし行く宛てがないのなら…一緒に暮らしませんか?」

魔娘「え?」

賢者「やっぱり罪人といっしょでは嫌ですか?」

魔娘「あなた達は罪人じゃないと思うから…でも…いいの?私、人間じゃないよ?」

賢者「かまいませんよ。大勢のほうが賑やかでいいですから」

魔娘「…やっぱり変なの」クスッ

賢者「ふふふ。ほら、見えてきましたよ」

144: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:29:10.95 ID:CasTSGYNo
~男の家~

男「…はぁ」

コンコン

ピクッ

男「…」

ガチャ

賢者「ただいま帰りました」

男「!」ダキッ

145: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:29:46.84 ID:CasTSGYNo
賢者「すみません。ちょっと手違いがあって遅くなってしまいました」ナデナデ

男 ギュッ

賢者「…帰ってこないと思っていましたか?」

男「…うん」

盗賊「ほう…見た目は完全に人間だな。よいしょっと」ドサッ

男「え?誰?」

魔娘「あ…」

男「え?え?」

146: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:30:23.73 ID:CasTSGYNo
賢者「ああ。このふたりは今日からここで一緒に暮らすことになった盗賊と魔娘です」

盗賊「盗賊だ。よろしくな、坊主」

魔娘「…魔娘…です」

男「あ、男です」ペコッ

盗賊「うむ」

魔娘「?」クンクン

男「な、なに?」


147: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:30:51.54 ID:CasTSGYNo
魔娘「…ふうん…そっか」

男「な、なにが?」

賢者「食事の用意が出来ましたよ。と言ってもパンとハムとチーズですが」

魔娘「わーい!あ、ちょっと肩貸して?」

男「う、うん。いいよ」

ヒョコヒョコ フワッ

男「!?」

魔娘「どうしたの?」

男「な、なんでもない!」ブンブン

男(女の子っていい匂いがするんだな…)
  ・
  ・
  ・

148: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:31:20.79 ID:CasTSGYNo
賢者「…さ、もう夜も遅いですから寝なさい」

男「はーい」

魔娘「おやすみ」

賢者「貴女もですよ?」

魔娘「え?あ、私はまだ…」

賢者「貴女は見たところ男とそう変わらない年に見えます。ですからもう寝たほうがいいですよ?」

魔娘「…はーい」

男「…あ、でもベッドが二つしかないよ?」

賢者「足りない分は明日村から調達しましょう。今夜は男と魔娘は一緒に寝てください」


149: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:31:58.71 ID:CasTSGYNo
魔娘「え?」

男「ぼ、僕はいいけど…」チラッ

魔娘「…いいわ」

男「…へ?」

賢者「それじゃ二人とも、おやすみなさい」

魔娘・男「「はーい」」


150: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:32:25.33 ID:CasTSGYNo
~男の部屋・ベッドの上~

魔娘「もうちょっとそっちにいってよ」モゾモゾ

男「無理。落ちちゃうもん」

魔娘「もう!しょうがないわね…」

男「…」

魔娘「…ねえ」

男「…なあに?」

魔娘「あなたも驚かないのね…」

男「なにが?」

151: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:32:54.46 ID:CasTSGYNo
魔娘「だってほら」ピコピコ

魔娘「私、人間じゃないのよ?角も尻尾もあるし…」

男「…僕も半分は人間じゃないからね」

魔娘「…そうね」

男「え?知ってたの?」ガバッ

魔娘「ええ。匂いで分かるわ。男、あなた…エルフと人間のハーフでしょ?しかも竜の血も混ざってる」

男「ふーん…よくわかるね。でも竜の血は混ざってるんじゃなくて…小さい頃、竜のお乳で育ったらしいから…」

魔娘「竜のお乳?そんなの出るの?」

男「出るみたいだよ?」

魔娘「ふーん…そっか」

152: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:33:30.48 ID:CasTSGYNo
男「…ねえ」

魔娘「なあに?」

男「きみ、いくつ?」

魔娘「れでぃーに年を聞くのは失礼よ?」

男「れでぃーって…子供じゃん」

魔娘「なっ!?失礼ねー。あなたも子供じゃん」

男「…」

魔娘「…」

魔娘「…ま、いいわ。9歳よ」

153: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:33:57.23 ID:CasTSGYNo
男「年下だね。僕は10歳」

魔娘「その割には私より幼稚ね」

男「そうなの?」

魔娘「そうよ。友達にも言われない?幼稚だって」

男「友達…居ないんだ」

魔娘「え?」

男「僕はずっとここでシスターと暮らしてたからね。村には時々しか行かなかったから…」


154: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:34:24.37 ID:CasTSGYNo
魔娘「…そっか。私と同じね」

男「そうなの?」

魔娘「私、小さいころからお城の中で暮らしてたし、友達なんて…」

男「そっか…じゃあさ、友達にならない?」

魔娘「は?」

男「だって初めてなんだもん。同じぐらいの子とこんなに話したのは」

魔娘「そう言えば…私もそうね」


155: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:34:50.87 ID:CasTSGYNo
男「ね?いいでしょ?」

魔娘「…嫌よ」

男「え?なんで?」

魔娘「だって私とあなたじゃ身分が違うもの。私はしゅお…っ!」

男「なあに?」

魔娘「な、なんでもない!とにかく、私はあなたと友達になる気はないの」

156: 名無しさん 2013/01/11(金) 01:35:24.49 ID:CasTSGYNo
魔娘「…でも、どうしてもって言うなら…この家に居る間は友達になってあげてもいいわよ?」

男「うん!ありがとう!!」

魔娘「ベ、別にお礼を言われるようなことじゃないわ!」

男「あははは。じゃあ僕のことは“男”って呼んでよ」

魔娘「分かったわ。じゃあ私のことは“魔娘”って呼んでいいわよ」

ドアの外:賢者(気になってきてみましたが…仲良くなったみたいですね)


169: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:40:34.56 ID:CasTSGYNo
~別室~

パタン

賢者「ようやく寝たようです」

盗賊「そうかい。あいつらは仲良くやれそうだな」

賢者「分かりますか?」

盗賊「ああ。大きな声も聞こえなかったしどちらかが部屋から出てくることもなかった」

盗賊「と言うことはとりあえず問題はないということだろ?」

賢者「そうですね」クスッ

盗賊「ん?」

170: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:41:01.44 ID:CasTSGYNo
賢者「いえ。貴方が魔娘をすんなり受け入れたことがちょっと信じられなくて」

盗賊「まあ俺も…魔族のことを知っているからな」

賢者「ええ。彼等も私たち人間と変わりません」

盗賊「ああ。知性も理性もあるし、ケンカも仲直りだってできる」

盗賊「魔界に行ってみて、こっちの“魔族”のイメージってのがどんだけ歪んでいるか分かったからな」

盗賊「それに相手は子供だぜ?いくら魔族とはいえ、子供に手を出しちゃダメだろ」

賢者「ええ。そうですね」

171: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:41:28.74 ID:CasTSGYNo
盗賊「…ところで」

賢者「はい?」

盗賊「俺は何をしたらいいんだ?」

賢者「…分かっているでしょう?」

盗賊「ま、大体な。男を鍛えるんだろ?」

賢者「それも大事なことですが…貴方には男の父親になってほしいのです」

盗賊「はぁ?」

172: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:42:09.46 ID:CasTSGYNo
賢者「…あの子は今まで赤竜と二人で暮らしてきました」

賢者「ですから、“漢”として見本になる男性に接することがなかったのです」

賢者「盗賊、貴方には父親らしく振舞っていただき、そして“漢”を男に教えてほしいのです」

盗賊「…まったくえらいことを言うもんだ。ま、あんたは仲間だし頼まれりゃなんでもやるけどよ」

賢者「お願いします」

盗賊「ああ。それと…魔娘のことなんだが…」

賢者「あの子は私が淑女の嗜みを教えますよ」

盗賊「いや、そうじゃなくてよ…あの子の正体についてなんだが…」

173: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:42:40.20 ID:CasTSGYNo
盗賊「…あの子は今まで見たどの魔族とも違う姿をしている」

盗賊「…赤い髪に緑の目、黄色の角に白い肌と羽と尻尾とは…」

盗賊「賢者にはあの子がどんな魔族かわかるか?」

賢者「私にも皆目見当がつきません…ただ…」

盗賊「ただ?」

賢者「人間に変化することは出来ても、追ってくる町人を振り切ることが出来ないのですから、そんなに強い魔族ではないと思うのです」

174: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:43:13.58 ID:CasTSGYNo
盗賊「そうかい…あの子に直接聞いてみるか…」

賢者「それは私がします。貴方がすると脅しているように見えますから」

盗賊「そんなに人相が悪いか?」

賢者「ええ。貴方は眼つきが悪いですから」

盗賊「えらい言われようだな」

175: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:43:40.32 ID:CasTSGYNo
賢者「…さ、そろそろ私達も寝ましょう」

盗賊「そうだな。賢者はベッドを使え」

賢者「貴方はどうするのですか?」

盗賊「俺は床の上でも平気だ」

賢者「…一緒に寝ましょうか」

盗賊「へへへ。俺の理性を信じてくれるのは嬉しいが…」

賢者「あら、そんなものは信じていませんよ?」

盗賊「…それは誘っていると取るぞ?」

賢者「かまいませんよ?ねえ、旅をしてた頃みたいに…」

盗賊「…今夜は寝かせねえぞ?」

賢者「そんな体力があるんですか?」

盗賊「…言ったな?」ニヤッ

176: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:44:09.68 ID:CasTSGYNo
~翌朝~

チュンチュン…

男「…ん…んんーっ!」

男 ネボケー

魔娘「…スー…スー…」

男「…起こさないように…」ソロー…

パタン

男「…ん?この匂いは…」クンクン

177: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:44:36.07 ID:CasTSGYNo
ガチャ

盗賊「よう。おはよう」

男「あ、おはようございます…」

盗賊「ホットミルクならあるぞ。飲むか?」

男「あ、はい。ありがとうございます…このミルク、どこから持ってきたんですか?」

盗賊「ああ。下の村跡を見に行ってきたんだが、そこに牛が何頭かいてな」

男「そうなんですか。その牛はどうしたんですか?」

盗賊「連れてきた。庭にいるぞ」

男「うわー!すごいなぁ!!」

178: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:45:22.81 ID:CasTSGYNo
盗賊「これでしばらくはミルクには困らないだろ」

男「いえ、そうじゃなくて…僕だったら牛を連れて帰ることなんて出来なかっただろうなって…」

盗賊「…後で牛の扱い方を教えてやるよ」

男「ホントですか?」

盗賊「ああ。牛は農作業や荷物の運搬にも使うんだ。扱いを覚えておいて損はねえだろ」

男「ありがとうございます!」

盗賊「他にも知りたいことがあるなら、俺で分かることなら教えるぜ」

男「はい!お願いします!!」

盗賊「へっ。いい返事だ」

179: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:45:50.71 ID:CasTSGYNo
ガチャ

賢者「…おはようございます…」

盗賊「ああ、おはよう」

男「おはようございます…どうしたんですか?」

賢者「なんでもありません…ちょっと腰が痛いだけです」トントン

盗賊「ははは…」

男「?」

180: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:46:17.37 ID:CasTSGYNo
賢者「それより男。魔娘を起こしてくれませんか」

男「あ、はい」

パタン

賢者「…いい感じでしたね」

盗賊「何のことだ?」

賢者「先ほどふたりで話していたでしょう?」

盗賊「見てたのかよ」

181: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:46:47.10 ID:CasTSGYNo
賢者「ええ。正直驚きましたよ」

盗賊「なんでだ?」

賢者「盗賊は子供が苦手だと思っていましたからね。それより昨夜のことなんですが…」

賢者「少しは加減してくださいよ。久しぶりなんですから」

盗賊「わるいわるい。今まで溜め込んでいたもんが一気に爆発しちまった」

賢者「まったく…おかげで腰痛ですよ…」

182: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:47:26.83 ID:CasTSGYNo
~朝食中~

モグモグ…

盗賊「食べ終わったら村に行って良さそうなベッドを取ってこようぜ」

男「はい」

盗賊「牛車の手綱は男に任せるからな」

男「え?」

盗賊「頼んだぞ」

男「あ、はい!」

魔娘「私も行くー!」

賢者「そうですね。一緒に行ってらっしゃい」

男「賢者様は?」

賢者「私は掃除と洗濯がありますし、お昼の準備もしないといけませんからね」

賢者(本当は腰を休めたいんです)

184: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:48:46.57 ID:CasTSGYNo
~村~

ガラガラガラ…

魔娘「…どの家も蛻の殻ね。全然壊れてないのに…」

男「…」

盗賊「この村は竜に襲われたらしいな。それでここに住む人たちはこの村を捨てたそうだ」

魔娘「でも何も壊れてないように見えるわ」

盗賊「なんでも別の竜が森に誘導したんだってよ。そして竜は2頭ともどこかに飛んでいってしまったそうだ」

魔娘「ふーん…」

魔娘(その竜は何しにこんなところまで来たのかしら…)

186: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:51:47.90 ID:CasTSGYNo
盗賊「…よし、この辺でいいだろ」

男「どうどう…」

魔娘「この家に入るの?」

盗賊「ああ。この家のベッドを頂くとしよう。男、牛車をそこに繋いどいてくれ」

男「はい」

ギュッ

男「はぁ…緊張した…」

187: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:52:15.00 ID:CasTSGYNo
盗賊「鍵が掛かってるな…ちまちま開けんのもめんどくせえし…男、その鉈を貸してくれ」

男「え?これですか?」

盗賊「ああ」

男「…はい」

盗賊「おう----なっ!?」ガクッ!

男「だ、大丈夫ですか?」

盗賊「あ、ああ…大丈夫だ。けど…なんだこの鉈は?」

盗賊(見た目ではせいぜい1、2kgほどなのに…こりゃあ5kg以上あるぞ!)

188: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:52:42.75 ID:CasTSGYNo
男「シスターが作った鉈です」

盗賊「シスターが作った?」

男「ええ」

盗賊「竜が鍛えた鉈…それでこの重さなのか。…ふんっ!」

ガキン

盗賊「よし、開いた…男、運び出すのを手伝ってくれ」

男「あ、はい」

189: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:53:11.48 ID:CasTSGYNo
~帰り道~

ガラガラガラ…

男「~♪」

盗賊「牛の扱いも大分なれてきたな」

男「そ、そうですか?」

盗賊「ああ」

魔娘「そうそう♪行きはよく揺れたけど今はそんなに揺れないしねー」

男「そう?っていうか、魔娘って行きも帰りもずっと牛車に乗ってない?」

魔娘「あら。私はか弱い女の子ですもの♪」

盗賊「ははは。男、オンナって言うのは我侭な生き物だ。少しぐらいなら我慢しろ」

男「は、はい…」

190: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:53:39.20 ID:CasTSGYNo
~昼食後~

一同「「「ごちそうさま」」」

賢者「はい。おそまつさま」

盗賊「…ふたりとも。ちょっと休んだら外に出てきてくれ」

男「あ、はい」

魔娘「いいけど…なにをするの?」

賢者「貴方達の力を見せてもらいたいのですよ」

魔娘・男「「ちから?」」

191: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:54:06.78 ID:CasTSGYNo
~家の前~

ガチャ

盗賊「お、出てきたな」

魔娘・男「「…」」

賢者「そんなに緊張しなくてもいいですよ」クスッ

魔娘「は、はい」

賢者「では…どんな特技があるか教えてください。まずは魔娘から」

魔娘「え?私?」

192: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:54:33.40 ID:CasTSGYNo
賢者「そうです。貴女は“変化呪”が出来ますよね。あとは何が出来ますか?」

魔娘「あとは…“回復呪”とか“解毒呪”とか…」

賢者「なるほど…白魔法ですか。ちょっと頭に手を置きますよ?」

ボワン

魔娘「え?え?」

賢者「…魔娘。貴女は…」

魔娘 ギクッ

193: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:55:02.95 ID:CasTSGYNo
賢者「…貴女には強力な封印がしてありますね」

賢者「…そのせいで魔法が制限されています」

魔娘「…」

盗賊「封印がとけたらどうなるんだ?」

賢者「それは分かりませんが…回復魔法が全体全回復ぐらいまで使えるようになるかもしれませんね」

男「すごいや…」

194: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:55:32.18 ID:CasTSGYNo
盗賊「ふうん。他に使える魔法はないのか?」

賢者「それは分かりません。そもそもこの封印自体、完全ではないのです」

盗賊「どういうことだ?」

賢者「普通封印は例外を作らないものなのです」

賢者「ところがこの封印は“変化呪”と“回復呪”、それに“解毒呪”の三つだけは封印していないのですよ」

盗賊「なるほど…妙だな…」

賢者(こんな封印を張れるなんて…どんな術者でしょうか。いえ、それより…)

賢者(術者から離れると魔力の供給が止まり術が解けるはずなのですが…この封印はどうなっているのでしょう…)

195: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:56:11.32 ID:CasTSGYNo
賢者「…とにかく、今は“変化呪”と“回復呪”の二つについて鍛えていきましょう」

魔娘「…え?」

賢者「“解毒呪”は鍛えようがありませんが“変化呪”と“回復呪”は鍛えることでより強い効果が得られるようになります」

魔娘「そう…なのかしら?」

賢者「今まで貴女の身を助けてきた魔法です。鍛えておいて損は無いでしょう」

魔娘「う、うん…」

196: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:56:44.36 ID:CasTSGYNo
盗賊「…次は男。お前にはどんな特技があるんだ?」

男「あ、僕は“転移”と“念動”です」

賢者「もうひとつ、“力”ですね」

盗賊「ま、まあ…“転移”は分かるんだが…“念動”と“力”というのはよく分からねえんだが…」

賢者「そうですね…男、できますか?」

男「う、うん。じゃあ…ここからあの道のずっと先に転移します」

シュイン

魔娘・賢者・盗賊「「「!?」」」

197: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:57:18.86 ID:CasTSGYNo
魔娘「なに今の!?呪文も唱えずに…あんな“転移呪”、見たことないわ」

賢者「いいえ…あれは“転移呪”ではありません」

魔娘「え?今のはどうみても“転移呪”でしょ?」

盗賊「あれは…“物質入替え”か?」

賢者「…そうですね」

魔娘「“物質入替え”?なにそれ?」

賢者「普通の”転移呪“は術者を目的地まで運ぶんですが男の場合は…」

賢者「転移先の物質と男を入替えてるのです。つまり、二つの物質を瞬時に交換しているのですよ」

賢者「…それと魔力を感じないのは…」

198: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:58:03.07 ID:CasTSGYNo
シュイン

男「はぁ…どうですか?」

魔娘・賢者・盗賊「「「…」」」

男「…どうしたの?」

賢者「…男、その“転移”は…どれぐらいの距離まで出来ますか?」

男「え?えっと…試したことはないんですけどかなり遠くまでいけると思います」

賢者「そうですか」

199: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:59:08.21 ID:CasTSGYNo
男「…シスターには見える範囲内でしか使っちゃいけないって言われましたけど…」

賢者「それでは…例えば、その“転移”でそこの川に行けますか?」

男「…え?」

賢者「確かめたいことがあるのです。やってくれますか?」

男「う、うん…でも、あそこの川、浅いけど水があるから足が濡れちゃうよ?」

賢者「確かめるために必要なのです。お願いします」

男「うん…」

シュイン バシャッ

200: 名無しさん 2013/01/11(金) 23:59:35.59 ID:CasTSGYNo
魔娘「え?なんで水が!?」

賢者「やはり…」

盗賊「…」

シュイン

男「はぁ…これでいいですか?」

賢者「ええ」

盗賊「…やっぱりな」

男「え?」

201: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:00:06.08 ID:Xs2jh4y4o
賢者「…男、その特技はあまり使わないほうがいいかもしれませんね」

男「どうして?」

賢者「…貴方が体力を消耗しているのが気になるのです。魔力を消費しない分、体力を消費しているのではないですか?」

男「うん、ちょっと…疲れてるかな?」

賢者「疲労度はおそらく転移先の物質の密度や距離に比例すると思われます」

賢者「つまり、何もない所だと疲労は少なく、水や岩などの密度の高い所だと疲労が激しいのではないでしょうか」

賢者「ですから、“転移”については目で見える範囲でしか使用しないほうがいいでしょう」

男「よくわかんないけど…はーい」

202: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:00:33.18 ID:Xs2jh4y4o
賢者「…続いて“念動”ですか」

男「はーい。じゃあ…魔娘、僕に向かって石を投げてよ」

魔娘「え?いいの?当たったら怪我するわよ?」

男「そのときは魔娘の“回復呪”で直してね。でも当たらないけど」

魔娘「言ったわねぇ!?もう手加減してやんないから!えいっ!」

ビュン

男「むんっ!」

ピタッ

魔娘「…え?石が…浮いてる?」

203: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:01:00.35 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「これは…おもしれえな」

賢者「“防壁”に似ていますね…しかしこれも…体力を消費するようですね」

男「え?これは使っても疲れないよ?」

賢者「それは消費する体力量が少ないと言うことですよ」

男「そっか。えいっ!」

ヒュー…ン

魔娘「…石が…飛んでっちゃった…」

盗賊「止めるだけじゃなく、動かすこともできるのか…」

204: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:01:38.22 ID:Xs2jh4y4o
賢者「最後に、“腕力”ですね。男、お願いします」

男「じゃあこの石で…ふんっ!」

がキッゴリゴリ…パラパラパラ…

盗賊「石が砂に!?」

魔娘「すごい…男は怒らせちゃダメね…」

男「えへへへ。やっとシスターと同じぐらいになったよ」ニコッ

賢者「この力は赤竜の母乳で育ったために身についた赤竜の力なのでしょう」

盗賊「話には聞いていたけど…すごいな」

205: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:02:06.79 ID:Xs2jh4y4o
賢者「盗賊」

盗賊「なんだ?」

賢者「男の能力を生かすため、鍛錬をお願いします」

盗賊「俺は教えるのは苦手だって言ってんだろ」

賢者「このままだと男は能力を無駄にしてしまいます」

賢者「…私達はいつ何が起こるかわかりません」

賢者「ですから、せめてこの二人が一人でも生きていけるように、出来る限りのことをしてあげたいのです」

206: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:02:34.23 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「わかったわかった。おい、お前たち」

魔娘・男「「は、はい」」

盗賊「これから俺達がお前たちを鍛える。いいな?」

魔娘・男「「よろしくお願いします」」

盗賊「よしよし」

賢者「…では、明日から勉強と鍛錬をがんばりましょう」

魔娘「うぅ…勉強はイヤ…」

男「僕も…」

207: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:05:03.13 ID:Xs2jh4y4o
~夜~

ガチャ

賢者「子供達は寝ましたよ」

盗賊「そうか。なあ…」

賢者「今夜は堪忍してくださいな」

盗賊「そうか…いや、そうじゃなくてだな」

賢者「違うのですか?あら残念…」

盗賊「…え?」

賢者「え?」

208: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:05:48.39 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「…はぐらかそうとしてるだろ」

賢者「…」

盗賊「賢者、お前、魔娘の状態を調べた後、明らかにおかしかったぞ?」

賢者「…ばれていましたか」

盗賊「何があったんだ?」

賢者「…仕方ないですね。黙っておこうと思ったのですが…」

盗賊「そうやって一人で抱え込むのは昔からの悪い癖だぞ?」

盗賊「話すことで楽になることもあっからよ。言ってみろよ」

209: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:06:40.10 ID:Xs2jh4y4o
賢者「それでは…封印に隠されて分かりづらかったんですが…魔娘の魔力は膨大です。私に匹敵するぐらいに」

盗賊「なんだって!?」

賢者「そして封印についてですが…ある条件で封印が壊れる。そんな気がするのです」

盗賊「条件?」

賢者「そうです。不思議な、そして不可解なことですか…封印の今の状態は、特定の魔法のみ魔力を使うことが出来る状態なのです」

賢者「誰が、一体なんの目的でこんな手の掛かることをしたのか分かりませんが…」

賢者「封印を破る、その鍵となるのが“変化呪”と“回復呪”、“解毒呪”の魔法なのではないかと」

盗賊「ふーん…」

210: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:07:12.77 ID:Xs2jh4y4o
賢者「もうひとつ、私が気になるのは使える魔法の種類です」

盗賊「魔法の種類がなんか関係あるのか?」

賢者「“回復呪”は初級者でも使える魔法ですが、“解毒呪”や“変化呪”は上級者で無いと扱えない魔法なんです」

盗賊「ほう。つまり、魔娘は上級魔法が使える呪者だってことか。てことは封印した呪者はかなりの使い手だな」

賢者「そう言うことです」

盗賊「…魔王か?」

賢者「可能性は否定できません。彼女は私達が知るところの魔族とは異なる容姿をしていますから、魔王の血縁者かもしれませんね」

盗賊「…ヤバくないか?それ」

賢者「それはそれで運命ですよ」ニコッ

盗賊「お前…すげえな…」

211: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:08:38.01 ID:Xs2jh4y4o
~~~~~魔娘の夢~~~~~  

  モクモクモク…

  魔娘「げほっげほっ…なんで煙が?」

  ガチャ

  魔娘「…なにこれ」

  チャキーン ボワッ カキーン…

  魔娘「…なんで?なんでみんな殺し合いしてるの!?」

  ボウッ

  魔娘「ひっ!」ビクッ

212: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:09:05.54 ID:Xs2jh4y4o
  トテテテテ

  魔娘「ヒック…お父様ーっ!そっきーん!どこー!!」グスッ

  側近「姫様!」

  魔娘「側近!お父様はどこ!?」

  側近「今お連れします!失礼!!」ヒョイ

  タタタタタ…

  側近「この部屋です!」

  バタン

  主王「魔娘っ!」

  魔娘「お父様!」

213: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:09:33.48 ID:Xs2jh4y4o
  トテテテ ダキッ

  主王「無事であったか…怪我は無いか?」

  魔娘「うん…お父様…」

  主王「ん?」

  魔娘「なにがあったの?なんでみんな殺し合いしてるの?」

  主王「…反乱だ」

  魔娘「反乱?」

  側近「軍の過激派が反乱軍に寝返りました」

  魔娘「なんで!?」

214: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:10:15.71 ID:Xs2jh4y4o
  側近「主王様は人間界に干渉することを禁じておられます」

  側近「しかし、それを不服とする軍の過激派が反乱軍と手を組んだのです」

  魔娘「え?」

  側近「彼らは人間界に侵攻したがっていましたから…」

  主王「…」

  側近「場内の兵士の中にも寝返ったものがいるようです。いつの間に勢力を広げたのか…すみません。私のミスです」

  主王「…よい。私の監督不行き届きだ。すまぬ」

215: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:11:18.32 ID:Xs2jh4y4o
  魔娘「…そんなの!お父様の魔法でやっつけちゃえばいいのよ!!」

  主王「…そうもいかないのだ。奴らはゴブリン族などの弱い魔族を人質にしておるゆえな」

  主王「…我の魔法では人質まで殺めてしまうのだ」

  魔娘「そんなの!人質なんて関係ないでしょ!?」

  主王「そうはいかん。支えてくれる民があってこその王なのだ。民を犠牲にして何が王か」

  側近「…姫。ここから一刻も早く脱出してください」

  魔娘「…え?」

216: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:11:51.80 ID:Xs2jh4y4o
  側近「主王様と私は反逆者と戦います。しかし姫は…」

  魔娘「いや!お父様と一緒にいる!!」

  側近「姫!」

  魔娘「いやだもん!」

  主王「…娘よ。我はこの戦乱を治めるため先頭に立って戦わねばならん」

  主王「お前を守るほど余裕は無いのだ…」

  魔娘「うぅ…」

217: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:12:26.12 ID:Xs2jh4y4o
  主王「この国はしばらくは戦乱が続くであろう。しばらくは人間界で過ごすがよい」

  魔娘「…え?」

  側近「姫の魔力を検知されないとも限りません。念のため姫の魔力に制限を設けましょう」フィン…

  魔娘「え?ちょっ!ちょっと!!なにするの!?」

  側近「…“変化呪”と“回復呪”、“解毒呪”は使えますが、他の魔法は使えませんのでお気をつけください」

  魔娘「いや!わたしもここに残る!!」

  主王「言うことを聞くのだ。娘よ」

  魔娘「いやよ!ずっとお父様と一緒に居るの!!」

  主王「聞くのだ!!」

  魔娘 ビクッ

218: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:13:08.65 ID:Xs2jh4y4o
  主王「…すぐに迎えに行く。それまでの辛抱だ」

  魔娘「…絶対迎えに来てね?」

  主王「うむ。約束しよう」

  側近「…では。“転移呪”!」

  魔娘「え?きゃぁあああ!!」

  シュイン

  魔娘「おとうさまぁぁぁぁぁ…」
    ・
    ・
    ・

219: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:13:46.44 ID:Xs2jh4y4o
  シュイン ドサッ

  魔娘「いった~い…」サスサス…

  側近「大丈夫ですか?」

  魔娘「いたいよぉ…ここどこ?」キョロキョロ

  側近「ここは以前、私が調査に来たことのある町です」

  魔娘「ふーん…」

  側近「…姫様、これから先は人変化を解かずにお過ごしください」

  魔娘「え?」

220: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:14:16.04 ID:Xs2jh4y4o
  側近「この町では人の子であれば、教会で衣食住を保障してくれるみたいなのです」

  魔娘「え?きょうかい?え?」

  側近「…では、御無事で」

  シュイン

  魔娘「え?側近!そっきーん!!」

  シーン…

  魔娘「…どうしよう…とりあえずきょうかいのほうに行ってみようかな…」
    ・
    ・
    ・

221: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:14:42.66 ID:Xs2jh4y4o
  魔娘「…あ、あそこじゃないかな?」

  サア、ミチクサヲセズニカエリマショウ ハーイ

  魔娘「あ!こっちに来る!?」サッ

  コソコソ…

  魔娘(あれは本で見たことがあるわ…人間の子供ね!)

  魔娘(茂みの中に隠れて…見つからないように…え!?)

  モブ幼女 ジー

222: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:15:09.95 ID:Xs2jh4y4o
  魔娘(み…見つかった!もう終わりだわ!!)

  モブ幼女『…おねーちゃん、つのとはねがみえてぅよ?』コソッ

  魔娘「はわわ…え?」

  モブ幼女 ジー

  魔娘「…と、とりあえず変化で…」フォン

  魔娘「…これでどう?」

  モブ幼女「…うん。だいじょーぶ」トテトテトテ

  魔娘「あ…いっちゃった…きょうかいにはもう誰も居ないみたい…」

  グゥウ…

  魔娘「おなか空いた…町に行けば食べるものがあるかな?」
    ・
    ・
    ・

223: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:16:14.83 ID:Xs2jh4y4o
  ガヤガヤガヤ…

  魔娘「うー…人がいっぱい…ん?」クンクン

  魔娘「これは…りんごの匂い!」

  トテテテテ

  魔娘「あ、あの馬車にいっぱいりんごが!」

  コロリン

  魔娘「あ!落ちた」トテテテ ヒョイ

  シャリ

  魔娘「…すっぱい…でも…おいしい…」

224: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:16:41.84 ID:Xs2jh4y4o
  町人1「おい!」

  魔娘 ビクッ

  町人1「そのりんごはうちのだ。食べたんなら御代を払ってもらおうか」

  魔娘「か、“火炎呪”!」

  シーン…

  町人1「なんだあ?お前、金持ってないのか?ああ?」

  魔娘「”火炎呪“!”火炎呪“!!”かーえーんーじゅーっ“!!」

  シーン…

225: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:17:10.58 ID:Xs2jh4y4o
  町人1「…てめえ、親どこよ?」

  魔娘「ひぃいい!!!」トテテテテ

  町人1「あ!おい逃げるな!!食い逃げだー!」

  アソコダー!ニガスナー!

  魔娘「ひぃいいい!!」トテテテテ

  ドンッ!

  魔娘「あっ!」ズササー

  魔娘(リンゴが…)

  賢者「あっ!フードが」パサ…

226: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:17:39.36 ID:Xs2jh4y4o
  町人1「おいあんた!そのガキをこっち…に?」

  魔娘「ひゃっ!」ビクビク

  ヒソヒソ ヒソヒソ…

  町人2「お、おい…あれは手配書の…」

  町人3「ああ。“賢者”に間違いない…俺たちの敵う相手じゃ…」

  町人4「ど、どうすんだよ…兵隊呼ばないとやべえよ…」

  魔娘(…え?みんなこの人を見てる…じゃあ今のうちに逃げれば!)

  コソコソ

  シュイン

  魔娘「え?きゃあああ!!」

~~~~~~~~~~

227: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:18:06.18 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「!?」ガバッ

魔娘(ゆ…夢…)

魔娘(嫌な…怖い夢…)

チラッ

男「スー…スー…」

魔娘「…ちょっとでいいから一緒に…ね?」

モゾモゾ

魔娘「…おやすみ」

228: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:18:33.35 ID:Xs2jh4y4o
~翌朝~

男「んー…ん?」ネボケー

魔娘「スゥ…スゥ…」

男「…なんで一緒に寝てるの?」

229: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:19:00.03 ID:Xs2jh4y4o
~午後~

魔娘「ねむかったぁ…」

男「あ、頭が痛い…賢者様のお勉強、難しかったね…呪文の種類っていっぱいあるんだ…」

賢者「ほら。二人とも午後の鍛錬の時間ですよ」

魔娘・男「「はーい」」
  ・
  ・
  ・

230: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:19:27.32 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「んじゃあ午後の鍛錬を始める。男はこっちだ」

魔娘「え?私は?」

賢者「貴女はこっちです」

魔娘「はーい…」
  ・
  ・
  ・

231: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:19:53.87 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「男、お前の柄物はその長鉈だけか?」

男「はい。なんでも切れて便利がいいんですよ」ニコッ

盗賊「そうか…ちょっと構えてみな」

男「はい」

スッ

盗賊(なんだあの構えは!?地面すれすれまで姿勢を低くして…)

男 フッ

盗賊(気配を消した!?)

カッ ブオン!

盗賊「!?」

232: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:20:21.13 ID:Xs2jh4y4o
男「…こんな感じですけど」

盗賊「…」

盗賊(あのくそ重たい鉈で衝撃波を出しやがった…勇者でさえ旅の終盤でやっと習得した技だってぇのに…)

男「…あの、盗賊さん?」

盗賊「ん?ああ、わるいわるい。お前、そのかまえは誰に教わった?」

男「あ、シスターに教わったんです。いつもこうやって熊やイノシシを捕まえてたんですよ」

盗賊「なるほどねぇ。それであの居合いか…」

233: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:20:57.09 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「ところで、その一撃をかわされたらどうすんだ?」

男「そういう時は逃げます」

盗賊「やっぱりな。一撃を放った後は殆んど無防備だもんな」

男「でも、今まで大丈夫でしたよ?」

盗賊「そりゃ相手が動物だからな」

男 ピクッ

234: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:21:23.83 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「まあ、男の動きも大体分かったし、鍛錬の方針も大体決まった」

盗賊「まずは防御を覚えないとな」

男「防御?」

盗賊「ああ。今のお前は目の前の相手を一撃で倒すことはできても、人間や魔族が相手の乱戦だとすぐにやられちまう」

盗賊「まずは防御だ。それができるようになりゃあ逃げ回ることもねーだろ」

男「は、はあ…」

盗賊「最初は気配を読む練習からだ。敵や味方がどこに居るか、ちゃんと分かるようになんねーとな」

男「は、はい!」

235: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:21:50.49 ID:Xs2jh4y4o
~木の下~

魔娘「木陰涼しー♪」

賢者「そうですね」

魔娘「…あの…」

賢者「なんですか?」

魔娘「鍛錬…しないんですか?」

賢者「…もうそろそろですかね」

盗賊「おーい」

賢者「さ、行きましょう」

魔娘「え?は、はい」

236: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:22:27.61 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「さっそくだけど頼むわ」

魔娘「え?おと…こ?」

男 グター…

賢者「…やりすぎじゃないですか?」

盗賊「こんぐらいやんなきゃ上達しねーだろ?」

賢者「…まあいいです。では魔娘、男を回復してやってください」

魔娘「あ、はい…“回復呪”」

ぱぁ…

男「…あ、痛くなくなった」

237: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:23:02.74 ID:Xs2jh4y4o
賢者「…今度は回復度を大きくしてみてください」

魔娘「う、うん。“中回復呪”」

…プスン

魔娘「…あら?」

賢者「…魔娘。貴女は“中回復呪”の練習からですね」

魔娘「…はい…あ、“変化呪”のほうは…」

賢者「失念していました。そうですね。では…貴女は何に変化できますか?」

魔娘「今は人間だけです…」

238: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:23:30.14 ID:Xs2jh4y4o
賢者「そうですか。変化については私も詳しくは無いのですが…」

魔娘「賢者様は何に変化できるんですか?」

賢者「私は竜に変化できますよ?」

魔娘「りゅ、竜!?」

賢者「貴女にもそこまで出来るようになって欲しいのですが」

魔娘「無理です…」

賢者「やる前から諦めたら、出来るものも出来ませんよ?」

魔娘「…」

239: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:23:57.16 ID:Xs2jh4y4o
賢者「貴女には天賦の才があります。私はそれを延ばすお手伝いをしたいのです」

賢者「ですが、貴女がそれを望まないのであれば…私は無理強いはしません」

魔娘「…」

魔娘(もし私に力を使いこなす能力があれば…お父様の傍にいられたのかな…)

賢者「…どうですか?」

魔娘「…お願いします」

賢者「分かりました」ニコッ

賢者「それから男」

男「は、はい」

賢者「貴方も“回復呪”、“火炎呪”、“雷撃呪”、“凍結呪”等の基本的な呪文は覚えておきなさい。きっと役に立ちますから」

男「はーい…」

240: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:24:35.10 ID:Xs2jh4y4o
~6年後~

男「…」

…ヒュン!

男「ナイフ!」ヒョイ カカカカ

盗賊「甘い甘い!」シュシュシュシュッ

男「連投!?衝撃波で吹っ飛べ!ふんっ!!」ブォン!カチャカチャン…

盗賊「まだまだあ!それ!」ヒュンヒュン

男「弓矢!?横に飛んで!」ズザサー

賢者「“大雷撃呪”!!」

男「な!?“転移”!」シュイン

バリバリバリズズゥウウン!!!

241: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:25:02.25 ID:Xs2jh4y4o
賢者「…」

盗賊「…っ!後ろかっ!」シュッ

男「爆弾!?あっち行け!」バシィ!

ヒュー…

魔娘「…え?ちょっ!ちょっとお!!へ、“変化呪”!!」

男「あ」

ズズゥウウウン…パラパラパラ…

賢者「…直撃ですね」

男「みたいですね。あははは…」

魔娘「こらっ!」ペシッ!

男「いてっ!」

242: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:25:35.24 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「『あははは』じゃないわよ!」ペシッ

男「いてっ!ご、御無事で何より…」

魔娘「無事じゃないわよ!見てよ!!髪の毛がちょっと焦げちゃったじゃない!!」

賢者「魔娘も油断大敵ですよ?怪我はありませんか?」

魔娘「あ、はい。メタルスライムに変化するタイミングがちょっと遅れたけど何とか」

賢者「よかったです。にしても…あの爆弾はやり過ぎではないですか?あんな大きな穴をあけてますよ?」

盗賊「よく言うぜ。賢者だって都市攻撃魔法の“大雷撃呪”まで使ったくせに」

ヤイノヤイノ

243: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:26:02.27 ID:Xs2jh4y4o
男「ふたりともやりすぎだって。なあ?」

魔娘「ええ。別の意味でもヤリ過ぎだけどね」

男「あー。確かにな…」チラッ

男(魔娘も結構でかい胸になったなぁ。シスターには負けるけど…)

男(…シスター、どうしてるんだろ…ん?)

魔娘 ジトー

男「な、なんだよ…」

魔娘「えっち」

244: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:26:28.68 ID:Xs2jh4y4o
男「な!?誤解だ!!」

魔娘「よく言うわよ!さっきから私の胸元見てるじゃない!!」

男「それはシスターのこと思い出してっ!!」

魔娘「…シスター?」

男「あ…な、なんでもない!さあて、ちょっとぶらついてくるかなー(棒)」スタッ

魔娘「…」

245: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:26:55.92 ID:Xs2jh4y4o
~夜~

魔娘「スー…スー…」

男「…」ムクッ

ミシッ ミシッ… パタン

男(荷物荷物っと…あった。あとは…)

コソコソ

キィ… パタン


246: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:27:37.02 ID:Xs2jh4y4o
~家の前~

男「…ふぅ。見つからなかったみたいだな」

盗賊「誰にだ?」

男「え!?」ドキッ

盗賊「こんな夜中に、どこに行こうってんだ?」

男「いやその…ちょっとそこまで?」

盗賊「…」

男「あの…」

盗賊「…魔界か?」

男「…」

247: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:28:03.79 ID:Xs2jh4y4o
賢者「まったく…どうして黙って行こうとするのですか?」

男「あ」

賢者「…赤竜を探しに行くのですよね?」

男「…はい」

賢者「もう…生きていないかもしれませんよ?」

男「…」

賢者「それでも行くのですか?」

男「…はい」

248: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:28:55.22 ID:Xs2jh4y4o
賢者「…そうですか。では、この使い魔を連れて行きなさい」

男「え?反対しないんですか?」

盗賊「かわいい子にゃあ旅をさせろってな。ほれ、地図だ。」

男「あ、ありがと…」

盗賊「それと…これも持ってけ」

男「…これは?」

盗賊「俺が使ってたお守りだ。鉈の柄にでもつけてろ」

男「…はい」

249: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:29:24.62 ID:Xs2jh4y4o
賢者「…私は反対なんですが…盗賊が行かせろと五月蝿いのですよ」

男「盗賊さんが?」

盗賊「まあ、アレだ。ヤバくなったらさっさと帰って来い。命あっての物だねだからな。それと…」

トテテテ

魔娘「はあ…はあ…間に合った…」

男「え?魔娘!?」

魔娘「あなたねえ!私に黙ってどこに行こうって言うのよ!!」

男「え…あ…」

250: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:30:50.19 ID:Xs2jh4y4o
盗賊「シスターを探しに、魔界に行くんだとよ」

魔娘「やっぱり…で?魔界のどこに行けば竜に会えるか知ってるの?」

男「う、ううん…」

魔娘「ったく…しょうがないから私も一緒に行ってあげるわ!」

男「え?いやそれは」

魔娘「どうせ魔界のことロクに知らないんでしょ?そんなんじゃ竜のところに着く頃には爺さんになってんじゃない?」

男「うっ」

251: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:32:23.55 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「だからよ。どう?いいでしょ?賢者様」

賢者「…くれぐれも危険なことをしてはいけませんよ?貴女はレディーなのですからね?」

魔娘「はい。わかりました」

盗賊「シッカリ守るんだぜ?お姫様をよ!」バシン

男「痛いって」

252: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:33:07.64 ID:Xs2jh4y4o
賢者「魔娘」

魔娘「はい」

賢者「この旅の間、貴女は人に変化したままでいなさい。そのほうが面倒が無いでしょう」

魔娘「分かりました」

賢者「それから…」チョイチョイ

魔娘「なあに?」

賢者『男も年頃ですから注意なさい』コソコソ

魔娘「なっ!何言ってるんですか!!//」

賢者『もしそうなっても慌てないで-----』コソコソ

男「あのふたり…何話してるんだ?」

253: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:33:36.86 ID:Xs2jh4y4o
賢者「いいわね?」

魔娘「…//」コクン

盗賊「…よーし!行って来い!!」

賢者「時々でいいですから使い魔を使って手紙をよこしなさい」

男「はい!」

魔娘「じゃあ、いってきまーす!!」ノシ
  ・
  ・
  ・

254: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:34:03.35 ID:Xs2jh4y4o
賢者「…ようやく旅立ちましたね」

盗賊「ああ。ようやくだな」

賢者「男も魔娘も…立派に育ってくれました」

盗賊「よく頑張ったな賢者」

賢者「貴方が協力してくれたおかげですよ」

盗賊「よせやい」

賢者「寂しくなりますね…」

盗賊「そうだな…」

255: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:34:35.63 ID:Xs2jh4y4o
コテン

盗賊「賢者?」

賢者「ちょっとこのままで…」

盗賊「ん…」

賢者「…」

盗賊「…なあ」

賢者「なんですか?」

盗賊「奴等が帰ってくるまで…ここで待ってようぜ?二人でよお…」

賢者「…はい」

256: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:35:10.45 ID:Xs2jh4y4o
~無人の村の家~

魔娘「ねえ!なんでこんな近くで休むのよ!!」

男「いやまあ…もう賢者様達にもばれてるし…ここならベッドで休めるからさ」

魔娘「夜通し歩くのかと思ってたのに…」

男「まあまあ。明日からはテントで寝たりすることになるんだし、今日ぐらいはさ」

男「それにここは…小さい頃に世話になった肉屋のおばちゃんの家なんだ」

魔娘「それで?」

男「だから…村を出る前にここに来たかったんだ」

魔娘「…しょうがないわね」

男「ゴメンな?」

魔娘「いいわよ。もう寝ましょう?」

男「ああ。じゃ、おやすみ」

魔娘「おやすみー」

257: 名無しさん 2013/01/12(土) 00:36:09.90 ID:Xs2jh4y4o
今日はここまでにします

おやすみなさいノシ

270: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:26:06.24 ID:Xs2jh4y4o
>>258-269 ありがとうございます

>>268 >>269はスマホ版かな?
PC版はこちらに置いてます

http://blog.livedoor.jp/ssdobin64/

271: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:26:40.88 ID:Xs2jh4y4o
~二日後~

テクテク

魔娘「…ねえ」

男「なに?」

魔娘「まだ次の村につかないの?もう疲れたんだけど」

男「もうすぐ着くと思うんだけど…あ、あれじゃないか?」

魔娘「ん?…えー!?まだあんなに歩くのぉ?」

男「晩飯までには余裕で着くって。さ、歩こう」

272: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:27:07.24 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「…“変化呪”」 ボンッ

男「…スライムに変化してどうするんだ?」

モゾモゾ

男「あ、おい!なんで俺の鞄に入ってくるんだよ!!」

スライム(魔娘)『疲れたから寝るわ。あとはよろしくね?』

男「あっくそ!…しょうがないなぁ。村の手前までだぞ?」

スライム プルルン♪

273: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:27:33.94 ID:Xs2jh4y4o
~最初の村~

テクテクテク

魔娘「はあ…宿まだあ?」

男「ちょっと待てって。村の人に聞いてみるから」

魔娘「もう我慢できないわ。早くして…」

男「まったく…あ、すいませーん。宿ってどこにありますか?」

モブ村人「ああ、それだったらその先をずっと行って右側にあるよ」

男「ありがとうございます」

?1「おい、あんた」

274: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:28:47.75 ID:Xs2jh4y4o
男「はい?」

?2「…あんた、その先の村から来たのか?」

男「は、はい」

?1「やっぱり!てめえ男だな!」

男「え?…あ!あんたひょっとして…」

?1改め元・村人A「みんな聞いてくれ!俺がいた村は竜に襲われて住めなくなった!!」

?2改め元・村人B「コイツはその竜の仲間なんだ!こいつを村に入れるな!!」

エ?ソウナノカ? ソウイエバアイツラアッチカラキタヨナ… ッテコトハアノフタリハリュウノナカマ?

ザワザワザワ

魔娘「え?な、なに?どうしたの!?」

275: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:29:14.85 ID:Xs2jh4y4o
男「…走るぞ」ボソッ

グイッ

魔娘「え?あっ!ちょっ…ちょっとお!!」

タタタタタ…

元・村人A「あ!逃げたぞ!!石を投げろ!!」ビュン

元・村人B「やましいことが無けりゃ逃げないはずだ!やっぱりあいつは竜の仲間なんだ!!」ビュン

モブ村人「で、出て行けー!」ビュン

ボスッ ドンッ

魔娘「いやん!いたっ!なんでよお!!」トテテテテ

男「黙って走れ!」タタタタタ
  ・
  ・
  ・

276: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:29:48.96 ID:Xs2jh4y4o
男「はぁ…ここまで来れば大丈夫だろ」

魔娘「はぁ、はぁ…何よあいつら!何個か当たったわよ!!痣になったらどうするのよ!!“回復呪”!」

男「…あの人たちは元々家の近くの村に住んでたんだ」

魔娘「顔見知りってこと?それであんな仕打ちするなんて…あなたいったい何したのよ!!」

男「…俺が10歳のとき黒い竜が村にきて、シスターが赤い竜に変化して囮になって村人を避難させたんだ」

男「それで、あの人達はシスターが竜に変化するところを見たとか言ってたんだ」

男「だからあの人たちにとって見れば、自分達はシスターに騙されたって思ってんだろ」

男「で、俺はいつもシスターと一緒だったから、竜の手先ってことになってると思うんだ」

277: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:30:33.03 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「それってただの誤解じゃない!しかも男が一方的に悪者にされて!!」

男「まあ、しょうがない。あの頃俺はまだガキで、どうすれば誤解が解けるかなんて考えることもしなかったからな」

魔娘「なんか悔しい…」

男「…悪いな。今日は宿には止まれそうにないから村を迂回して街道を進もう」

魔娘「えー!?」

男「ほら。スライムに変化して鞄に入れ」

魔娘「…しょ、しょうがないわねっ!“変化呪”!」ボフン

278: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:31:04.46 ID:Xs2jh4y4o
~夕方~

男「結局最初の村からそんなに離れられなかったな」

魔娘「あー!今日はベッドで寝られると思ってたのにい!!」

男「じゃあ魔娘だけ最初の村に戻るか?」

魔娘「男はどうするのよ」

男「俺はここにテントを張って寝る」

魔娘「じゃあ私もここで寝るわ」

男「無理しなくてもいいんだぞ?」

魔娘「む、無理じゃないわよ!寂しがり屋の男が心配だからでしょ!!」

279: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:31:30.50 ID:Xs2jh4y4o
男「はいはい。じゃあテントを張るのを手伝ってくれ」

魔娘「しょうがないわね…」

男「よし。じゃあそっちを持って…ん?」

魔娘「…蹄の音?」

男「…誰か来る」

魔娘「え?」

パカラッ パカラッ カカッ カッ

村長「どうどう」

男「…誰だあんた?」

280: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:32:00.72 ID:Xs2jh4y4o
村長「私は最初の村の村長です」ニコッ

魔娘(胡散臭い中年親父ね…)

村長「…あなた達、今日はここで休むんですか?」

魔娘「ええ。村に泊まろうかと思ったけど無理みたいだからね」

村長「そう言えば誰かが言ってましたね。竜の仲間だって」

男「…で?何か用か?」

村長「そうとんがらないでください。あなた…腕に覚えはありますか?」

男「まあ、少しぐらいなら」

281: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:32:55.44 ID:Xs2jh4y4o
村長「だったら畑の魔物を退治してくれません?」

男「スライムとか?」

村長「スライムなんか子供でも倒せますよ。畑の中におる魔物を退治してほしいんです」

男「けどさ、俺、村人達に石投げられて何とかここまで逃げてきたとこなのに…」

村長「村の中には入らんから心配しなくてもいいですよ。直接畑に行ってくれれば」

男「いやまだやるって決めてないけど」

村長「…報酬は金貨5枚です」

魔娘「やります!」

※金貨1枚=銀貨100枚=銅貨10,000枚、銅貨1枚≒10円


282: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:33:36.99 ID:Xs2jh4y4o
男「ちょっと待て!魔娘、お前何考えてんだよ!!」

魔娘「お金よ!?金貨5枚よ!?旅をするなら金は必要でしょ?」

男「だからって…あんな目にあったのに…」

魔娘「それはそれ。これはこれでしょ?」

男「そ、そうだけど…人助けになるし、まあいいか」

魔娘「そうそう♪」

魔娘(ホント、男ってお人よしだわ)

283: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:36:45.26 ID:Xs2jh4y4o
村長「じゃあ決まりですね?」

男「ああ。で、畑の場所は?」

村長「村の手前の森側です。頭がでかくって、近づくとガスを吐いて眠らされていまいます」

魔娘(特徴からしてお化けキノコかしら…)

男「で、報酬の受け渡しは?」

村長「成功報酬です。魔物を倒してくれたら払いますよ」

魔娘「ふーん…」

284: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:37:11.73 ID:Xs2jh4y4o
男「じゃあ、ちょっと行ってくる」

魔娘「私も行くわ」

男「…へ?」

魔娘「魔物の知識もちょっとはあるのよ?弱点を知ってるやつかもしれないしね」

男「まあ、そう言うことなら…」

村長「…では、案内します」
  ・
  ・
  ・

285: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:37:43.19 ID:Xs2jh4y4o
村長「あいつです」

お化けキノコ バフゥ…

男「…結構でかいな」

魔娘「あれはお化けキノコね。男の凍結魔法でイチコロじゃない?」

男「え?」

魔娘「どうしたの?」

男「いや…火炎魔法で焼いたほうがうまそうじゃないか?」

魔娘「はあ?あなたあれを食べるって言うの!?」

286: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:38:15.94 ID:Xs2jh4y4o
男「食えないのか?」

魔娘「当たり前じゃない!毒にあたっても知らないわよ!?」

男「毒があるのか…じゃあダメだな」

魔娘「それに火炎魔法だとすぐに動きを止められないでしょ!?反撃してきたらどうする気!?」

男「…凍結します」

魔娘「わかればよろしい」

村長「あの…そろそろ…」

男「あ、はいはい。じゃあ…出来るだけ近づいて…」

287: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:38:43.51 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「仕方ないわね…」

男「え?」

魔娘「なに?」

男「魔娘も来るのか?」

魔娘「あのねえ…お化けキノコは毒を持ってるのよ?男が毒にやられたら誰が解毒するの?」

男「あ、そっか」

村長「…大丈夫ですか?」

魔娘「大丈夫よ。こう見えても腕は確かだから」

村長「それならいいのですが…」

魔娘「じゃあ、行ってくるわね」

村長 ニヤリ

288: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:39:10.15 ID:Xs2jh4y4o
~畑~

男「…そろそろ射程距離かな?」

お化けキノコ バフゥ…

男「これ以上近づくとガスにやられるな…」

魔娘「そうね。一撃で仕留めなさいよ」

男「ああ。…“凍結呪”!」

お化けキノコ「!?」

カチコチカチコチ…

男「…こんなもんかな?」

魔娘「やりぃ!」

パカラッパカラッ

男「…え?村長?」

魔娘「何してるのよ!追うわよ!!」

男「あ、ああ」

289: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:39:57.66 ID:Xs2jh4y4o
~最初の村~

魔娘「村に入ってっちゃったわね…」

男「しかも村の入り口に村人が集まってるし…」

男「ひょっとして俺達…騙された?」

魔娘「そうみたいね…」

村長 ニヤニヤ

魔娘「どうでもいいけどあの顔!腹が立つわね!!」

290: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:40:24.71 ID:Xs2jh4y4o
男「…諦めるか?」

魔娘「誰が!ちょっと村長!!」

村長「おやおや。竜の仲間が何か言ってますよ?」ニヤニヤ

魔娘「…村長。あれで終わったって思ってるの?」

村長「ああ、終わりましたよ。あの魔物は死にました。もうあなた達に用はありません」

魔娘「あなたバカ?あれで終わるわけないでしょ?」

村長「なに?」

291: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:40:53.41 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「お化けキノコはね、胞子を飛ばして増殖するの」

魔娘「私達は親玉は倒したけど胞子までは片づけてないのよ?残念ねえ」

村長「うそです!そんな話信じられません!!」

魔娘「嘘だと思うんなら明日の朝、あの畑に行ってみればいいわ。小さなキノコが生えてるはずだから」

村長「なっ!」

魔娘「胞子を片付けるには男の火炎魔法で一気に焼却しないと無理ね~」ニヤッ

魔娘「でもさっきのお金も貰ってないし、私達はこんな気分の悪い村に居たくないからもう出発するわ」

村長「っ!」

292: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:41:20.57 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「じゃあね。さようなら~」フリフリ

男「え?マジで行くのか?」

魔娘「当たり前でしょ?ほら、行くわよ!」グイッ

男「あ、ああ…」

村長「待ちなさい!」

魔娘「いやよ」

村長「…すみませんでした!だから胞子も片づけてください!!」

魔娘「…報酬は?」

村長「…き、金貨5枚です!」

294: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:41:48.64 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「…10枚」

村長「…え?」

魔娘「金貨10枚。さっきのも合わせて金貨15枚。前金でいただくわ」

村長「そんな無茶な!」

男(魔娘、すごいな…)

魔娘「だったらいいわよ?じゃあね」

村長「…ま、待ってください!」

魔娘「…用意できたの?」

村長「き、金貨10枚で…」

295: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:43:18.43 ID:Xs2jh4y4o
>>293 ありがとうございます

296: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:43:45.11 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「はあ?何言ってんのよ。金貨15枚よ」

村長「あなた達は最初から分かってて魔物をやっつけたんでしょう!だから合わせて10枚です!!」

魔娘「話にならないわね」プイッ

村長「くっ…わ、わかりました!金貨15枚です!!」

魔娘「前金でよ」

村長「分かってます!今持っていきます!!」

魔娘「最初から素直に出してれば金貨5枚で済んだのにねえ」ニヤッ

男(今度から交渉は魔娘に任せよう。うん)

297: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:44:17.72 ID:Xs2jh4y4o
~次の日~

魔娘「…ふぁああ…」

男「大あくびだな」

魔娘「しょうがないでしょ?夜通し歩きづめだったんだから…」

男「だからテントで寝ようって言ったのに…」

魔娘「男ってホントに気楽よねえ…もし寝てるときにあの村の連中が襲ってきたらどうするのよ」

男「負ける気しないんだけど」

魔娘「あなた反撃する気?そんなことしたら私達がお尋ね者になっちゃうでしょ!?まったく…」

男「なんでさ」

298: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:44:45.69 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「あのねえ…向こうのほうが人数が多いのよ?“あいつらがいきなり襲ってきた”って言われたら、わたし達のほうが悪者になっちゃうでしょ?」

男「そっか…お前、頭いいんだな」

魔娘「あなたがバカなだけよ」

男「ひどいなおい」

魔娘「それより次の村まであとどれぐらいなの?」

男「地図によると…この距離なら夕方ぐらいだな」

魔娘「ええー!?そんなにあるの!?」

男「歩いてれば着くさ。行くぞ」

魔娘「はーい…」

299: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:45:16.93 ID:Xs2jh4y4o
~廃村~

ヒュー…

男「…」

魔娘「…ひどい…」

男「…家の中にまで押し入って皆殺しか…」

魔娘「あんな小さい子供まで…メチャクチャね…」

男「しかも金目のものは全部持っていかれてる…」

魔娘「…誰がこんなことを…」

男「…野盗だろうな」

魔娘「え?」

300: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:45:54.42 ID:Xs2jh4y4o
男「家具についてる傷を見てみな?どう見ても鉈とか剣とかで切りつけた傷だ」

魔娘「じゃあ…」

男「この辺で鉈や剣を扱うのは人間だけだろ?」

魔娘「そうね…でも…どうして!?どうして人間は同族殺しを平気でするの!?」

男「…」

魔娘「魔族はこんなことしない!こんなひどいことはっ!!」

魔娘「男も!こんなことするって言うの!?」

男「人間はいっぱいいるから…中には狂った人間もいる…」

魔娘「だからって!」

男「…他の家を見てくる」

魔娘「うぅ…」グスッ
  ・
  ・
  ・

301: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:46:21.89 ID:Xs2jh4y4o
男 ゴソゴソ…

ミシッ ミシッ

魔娘「…男…さっきはゴメン…」

男「…」

魔娘「…あの光景見て頭に血が上っちゃった…ホントにごめんなさい…」

男「…もういいって。気持ちを切り替えようぜ」

魔娘「うん…なにしてるの?」

男「掃除してベッドで寝られるようにしてるんだ」

302: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:46:48.60 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「…え?ここで寝るの!?」

男「ああ。この家は空き家だったみたいでほぼ無傷だったから、ベッドや毛布を他の家から持ってきたんだ」

魔娘「…」

男「…いやか?」

魔娘「…しょうがないわね。徹夜で歩いてたから眠いし」

男「じゃあそっちのベッド使ってくれ」

魔娘「その前にお祈りしましょ?村人たちのために…ね?」

男「…そうだな」

303: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:47:16.01 ID:Xs2jh4y4o
~翌日~

テクテクテク

魔娘「んーっ!心なしか足が軽いわ♪」

男「ははは。そりゃ良かった。スライムに化けてるとは言え魔娘が鞄の中に入ってくると重いからなぁ」

魔娘「なによ。あたしが重いって言うの?ぶーぶー」

男「ほら。ぶーぶー言って豚みたいじゃん」

魔娘「失礼ね!私のどこが豚なのよ!!」

男「ぶーぶー言うとこ」

304: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:47:42.17 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「…“変化呪”」 ボフッ

男「…おいなんでオークに化けるおい止めろ鞄の中に入ろうとするな重いって重いから止めろ止めてってばイヤホント勘弁してくださいお願いします」

オーク(魔娘)『…何か言うことあるでしょ?』

男「すみません魔娘さんは容姿端麗です豚みたいと言ってすみませんでした」

オーク(魔娘)『わかればよろしい。“変化呪”』ボワン

男「…はぁ…」

305: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:48:10.52 ID:Xs2jh4y4o
~夜・テント~

パチパチ…

魔娘「…スー…スー…」

男「ふぁああ…」

バサバサバサッ ホーッ ホーッ

男「ん…使い魔が帰って来たか」

シュッ

男「ご苦労さん。ほら、ハムだ」ポイッ

使い魔 シュッ ハムハム…

男「そんなに慌てるなって。ははは。手紙はっと」カサカサ

306: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:48:39.39 ID:Xs2jh4y4o
  男へ

  最初の村では魔娘の機転でうまく切り抜けたようですね。

  貴方のことですから暴れたりすることはないと思いますが、

  くれぐれも民に手を出さないよう気をつけなさい。

  廃村のことですが…人は欲望を理性で制御します。

  ですが、稀にそれができない人もいます。

  そういった人が欲望のままに村を襲ったのでしょう。

307: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:49:07.38 ID:Xs2jh4y4o
  これは私考ですが、彼らがそうなった原因のひとつは子供のころにあると思われます。

  人は生まれた時は丸い心を持っています。

  それが成長するにつれ、嫌なこと、怒ること、悲しいことなどで傷がつきます。

  心の傷は温かい心で包まれるか、時間をかけないと治りません。

  そうして治った傷の周りが膨らみ、心が大きくなっていくのです。

  そのおかげで理性的な行動ができるようになると思っています。

  ところが、心の傷が治らないうちにまた傷つけられると、心が削れて小さくなります。

  廃村を襲った人たちも心が削れて理性的な行動ができなくなったのではないでしょうか。

  だから欲望のままに行動すると考えます。

  そういった人と争うと貴方の心も削れてしまいますので、出来るだけ争うことのないようにしてください。

308: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:49:33.97 ID:Xs2jh4y4o
  追伸:魔娘とはうまくやっていますか?喧嘩はしていませんか?

  貴方達が居なくなってここは静かになり少し寂しくなりました。

  盗賊も心なしか元気がありません。

  貴方達の目的が早く達成され、無事帰ってくることを願って止みません。


309: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:50:01.13 ID:Xs2jh4y4o
男「…」カサッ

男(やっぱり賢者様はすごいな…)

男「“心が削れる”か…そうなんだろうな…」

魔娘「スー…スー…」

男(…明日、魔娘にもこの手紙を見せよう)

男(けど“貴方達の目的”って…俺の目的だろ?)

310: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:50:41.15 ID:Xs2jh4y4o
~小さな町~

魔娘「…小さいけど必要な施設は整ってるわね」

男 キョロキョロ

魔娘「ちょっと男!そんなにキョロキョロしないの!!」

男「いやだってさ、話には聞いてたけど町なんて初めてだからさ。すごいなぁ…あ、あれは?」

魔娘「あれは両替屋ね。お金を両替してくれるの。ちょうどいいからこの金貨を両替してもらいましょう」

男「え?なんで?」

魔娘「金貨は高額貨幣だから、使いやすい銀貨や銅貨に変えてもらうのよ」
  ・
  ・
  ・

311: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:51:09.57 ID:Xs2jh4y4o
両替屋「まいどありぃ」

男「両替するだけで銀貨3枚とられたぞ?」

魔娘「しょうがないでしょ?そこいらのお店だと金貨が使えないところもあるし」

男「そうなのか?」

魔娘「あなたねぇ…買い物したことないの?」

男「買い物ぐらいしたことあるさ」

男「けど、金貨なんて見たことないからな。どれだけ価値があるかわかんなかったよ」

魔娘「…まあいいわ。宿を探しましょう」

男「そうだな」

312: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:52:26.01 ID:Xs2jh4y4o
~宿屋~

魔娘「ツインで」

宿屋「銀貨15枚だよ」

魔娘「高いわねえ…」

宿屋「この町には他に宿屋は無いぞ」

魔娘「…しょうがないわね」チャリン

宿屋「ほれ。部屋は2階の一番奥の部屋を使ってくれ」

魔娘「ありがと」チャラ

トントントン…

313: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:53:01.10 ID:Xs2jh4y4o
男「なあ。わざわざ同じ部屋にしなくていいんじゃないか?」

魔娘「そうしたいのは山々だけど、お金がもったいないでしょ?」

男「そりゃまあそうだけど…」

魔娘「何よ今さら。同じベッドで一緒に寝たこともあるんだから、今さら同室ぐらいでガタガタ言わないの!」

男「ベッドで一緒に寝てたのはもっと小さいころだろ?」

魔娘「細かいことは気にしないの!」

ガチャ

魔娘「へえ。使いこんでるわりにはよく手入れされてて結構いい部屋じゃない?」

男「ああ。シーツも洗剤の匂いがして清潔そうだし」

魔娘「じゃあ、荷物を置いて町の散策に行きましょ」

男「そうだな」

314: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:53:29.26 ID:Xs2jh4y4o
~飯屋~

魔娘「んー!おいしー♪」

男「賢者様の料理に似てるけど…どうやって味付けしてるんだ?」

魔娘「たぶん胡椒ね。賢者様のは生姜で味付けしてておいしかったけどまた違った味わいね」

男「うん。これはこれでうまいな」

魔娘(男ってホントにおいしそうに食べるわね)
  ・
  ・
  ・

315: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:53:56.66 ID:Xs2jh4y4o
男「…さて、腹もふくれたし、町をブラブラするか」

魔娘「そうね。腹ごなしも兼ねてね」

ブラブラ…

男「…こうやってみるといろんな店があるな」

魔娘「そうね。食材屋、武器屋、防具屋、道具屋、飯屋に酒場、口入屋もあるわね」

男「ほかの店は見たことあるけど…口入屋って初めてだな」

魔娘「そうね。覗いてみる?」

男「ああ」
  ・
  ・
  ・

316: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:54:28.69 ID:Xs2jh4y4o
男「ふーん…いろんな仕事を斡旋してるな」

魔娘「私たちみたいな旅人はね、手持ちのお金が少なくなったらこういうところで仕事をもらうのよ」

魔娘「報酬は仕事の内容によって決まるわ。難しい仕事ほど報酬は多いわね」

男「へえ…よく知ってるな」

魔娘「賢者様が教えてくれたでしょ?」

男「え?…あー、そういえば聞いたことある…かも?」

魔娘「あなたって…ちゃんと勉強してたの?」

男「ははは…」

317: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:54:56.67 ID:Xs2jh4y4o
口入屋「あんたたち、旅人かい?」

魔娘「ええ」

口入屋「そうかい。旅は若いうちにしといたほうがいい。仕事を探してるのかい?」

魔娘「いいえ。ちょっと見学させてもらってます」

口入屋「ははは。見学って言っても今は店の手伝いか農家の手伝いぐらいしかないだろ」

男「…これは?ひとつだけ報酬がすごいけど」

口入屋「ああ。それは野盗の討伐隊だな」

男「討伐隊?」

318: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:55:23.91 ID:Xs2jh4y4o
口入屋「近くの村…と言っても歩いて1日はかかるが、そこが廃村になったんだ。知ってるか?」

魔娘「…ええ」

口入屋「その村は野盗に襲われたって噂だ。だから王都から兵隊さんが討伐に行くんだが、その手伝いさ」

口入屋「その仕事は直接討伐するわけじゃないんだが、なにしろ行き先が危険なんで報酬が高いのさ」

男「そうですか…」

口入屋「それから、その仕事はあんたらには無理だ」

魔娘「そうですね」

男「え?なんで?」

319: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:55:50.86 ID:Xs2jh4y4o
魔娘「ほら。下のほうに条件があるでしょ?」

男「ん?…あ、これか。“なお、応募者は当地の土地勘があるものに限る”か」

口入屋「そういうこった。うちも紹介する限りは条件を満足する人でないと、店の信用にかかわるからな」

魔娘「そろそろ行きましょうか。じゃあ、お邪魔しました」ペコッ

口入屋「また来てくれよ。かわいいお嬢さん」

男 ペコッ
  ・
  ・
  ・

320: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:56:18.47 ID:Xs2jh4y4o
男「…なあ。あの討伐って出来るんだろうか?」

魔娘「…無理ね。もうあの近くにはいないでしょうね」

男「そうだよな…人の気配なんか微塵もなかったしな」

魔娘「ま、この町が潤うんならいいんじゃない?」

男「なんで?」

魔娘「兵隊がいるんならその分お金を使ってくれるでしょ?その分この町のお金が増えるんだからね」

男「なるほどなあ」

魔娘「…あなたって」

男「ん?」

魔娘「ホンットに世間知らずねぇ…」

男「ほっとけ」

321: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:57:07.05 ID:Xs2jh4y4o
~森の中の街道~

テクテクテク

魔娘「見通しが悪いわ…」

男「森の中だからな」

テクテクテク…

魔娘「っ!?」

男「しっ!」

ガサガサ ガサガサ

魔娘「…囲まれてるわ」

322: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:57:46.32 ID:Xs2jh4y4o
男「…7人か」

バサバサ!

野盗1「おおお、おまえら!金目の物を置いていけ!」ガタガタ

野盗2「へへへんなことしたら、ぶぶぶ、ぶっ殺すぞ!」ガタガタ

野盗‘s ゾロゾロ

魔娘「…どうするの?」

男「どうするって…とりあえず」チャキ

ブォン!メキメキメキ…ズドン

魔娘(鉈の衝撃波で大木を真っ二つにしちゃった…)

野盗‘s ゴクリ

323: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:58:15.42 ID:Xs2jh4y4o
男「やるんなら相手になるけど…手加減しないぞ?」

野盗‘s ガサガサガサガサ

魔娘「逃げちゃった…賢明な判断ね。…あ」

野盗1「ひぃいい!!こここ、腰がぁああ!!!」ジタバタ

男「…逃げ遅れたみたいだな。おい」

野盗1「いいい、命だけは御助けをぉおお!!」

男「ちょっと聞きたいんだけどさ」

野盗1 ビクッ

男「…あんたら、なんで野盗になったんだ?」

野盗1「…へ?」

324: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:58:42.31 ID:Xs2jh4y4o
男「木を切り倒しただけで逃げるなんて野盗っぽくないだろ?」

野盗1「…」

魔娘「ちょっと!」

男「なんだよ」

魔娘「さっさと行きましょうよ!面倒なことは御免だわ」

男「…でもさ」

魔娘「いいから!ほら、荷物持って!!」

男「で、なんでだ?」

魔娘「男!もう!!」

325: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:59:11.10 ID:Xs2jh4y4o
野盗1「…わ、わしら…食っていけなくなったんだ…だから…」

男「食っていけないって?」

野盗1「…わ、わしらはこの近くで牧畜をしてたんだ…けど…魔物に牛と豚を食われて…」

魔娘「そ、それがどうしたのよ…また子牛を買ってくればいいでしょ!?」

野盗1「そそ、そんな金なんかねえ!国にこの土地を押し付けられて…開墾してようやく牧草地にしたんだ…」

野盗1「し、借金して牛と豚を買って…やっと売りに行けると思ったところに魔物の襲撃だぁ…」

男「…」

野盗1「もう金を貸してくれるとこもねえ…このままじゃ家族みんな死んじまう…だからあんたらを襲ったんだ」

魔娘「…」

326: 名無しさん 2013/01/12(土) 23:59:38.37 ID:Xs2jh4y4o
男「…なあ」

魔娘「な、なによ…あ!」

男「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!!」

魔娘「いやよ!これは私のお金なんだから!!ちょっと!!やめなさいって!!」

327: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:00:05.56 ID:YMePBMp5o
~街道~

テクテクテク

男「…なあ、いつまでむくれてんだ?」

スライム(魔娘) ブス-

男「重いからいい加減鞄から出てほしいんだけど」

スライム プイッ

男「…ちょっと金貨が減っただけだろ?」

スライム『ちょっと!?金貨10枚がちょっとな訳ないでしょ!?』

328: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:00:33.11 ID:YMePBMp5o
スライム『だいたいねえ!あなたは人が良すぎるわ!!あんな話を信じるなんて!!』

男「だってさ、あのまま放っておくのは寝覚めが悪いし…」

スライム『だったらあんたが何とかしなさいよ!私のお金を使うんじゃなくて!!』

男「いやだってあのお金は俺が魔物を倒して貰ったもんだし」

スライム『それは最初の5枚だけ!あとの10枚は私のおかげでしょ!?それをあなたは!!』プクー

男「だー!分かった分かった!!分かったから鞄の中で膨れるな!!次の町でまた稼ぐから!!」

スライム『当然よ!』

男「まったく…」

329: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:02:35.58 ID:YMePBMp5o
~山麓都市~

「さあさあ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!めずらしいものが目白押しだよお!!」

「ねえお兄さん。チョンの間銀貨30枚でいいわよ♪」

「今日のあなたの運勢は!?当たるも八卦当たらぬも八卦!」

「今日ツいてるあなた!スロットでツキを生かしましょう!!」

男「すごいな」キラキラ

魔娘「そう?」

男「だってこんなに活気がある町は初めてだし」

魔娘「盗賊さんの情報によるとここは王都と西側の町のちょうど真ん中にあって、中継点として賑わってるらしいわ」

男「そっかー」

330: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:03:19.47 ID:YMePBMp5o
魔娘「くれぐれも変な店にはいかないようにって書いてあるわ。って言ってる傍から!」

立ちんぼの女「お兄さんかわいいわねえ♪どう?いいことシ・テ・ア・ゲ・ル♪」

男「い、いいこと…ですか?」

魔娘「ちょっと!何やってんのよ!!早くこっちに来なさい!!」グイッ

男「あ。ちょっ、ちょっと!」

立ちんぼの女「あらあ?連れが居たのね」

魔娘「そういうこと!ほら早く!!」

立ちんぼの女「たまには違う女もいいわよお?」クスクス

魔娘「ダメです!」

男「ばいばーい…」

331: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:03:47.08 ID:YMePBMp5o
魔娘「まったく…ちょっと目を離すと…油断も隙もあったもんじゃないわ」

男「…なあ」

魔娘「何よ!」

男「…なんでそんなに怒ってるんだ?」

魔娘「怒ってないわよ!」

男「いや明らかに…」

魔娘「怒ってません!!」

男「は、はい…」
  ・
  ・
  ・

332: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:04:30.82 ID:YMePBMp5o
「腕に覚えのあるやつは寄っといで!5人勝ち抜きで金貨15枚!10人勝ち抜きだと50枚だ!!」

男「あれは?」

魔娘「闘技場ね。ちょっと覗いてみる?」

男「そうだな」ワクワク

魔娘「…ちょっとだけよ?」

男「わかってるって」
  ・
  ・
  ・

333: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:05:08.84 ID:YMePBMp5o
魔娘「どう?」

男「どうって言われても…」

魔娘「勝てそう?」

男「まあ、あれぐらいならな。ヒノキの棒で打ちあってるだけだし、みんなそんなに強くないし」

魔娘「ちょっと!そんなこと大きな声で言わないの!!」

「強くないだって?」

「生意気なこと言ってんじゃねえぞガキ!」

「じゃあお前出てみろよ!!」

男「え?え?」

魔娘「…ほら。こうなっちゃうんだから…」
  ・
  ・
  ・

334: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:05:38.52 ID:YMePBMp5o
「すげえぞあのガキ…」

「あっという間に4人抜きだ」

「しかも全部一撃で…」

魔娘「次で5人抜きね…この辺がころ合いかしら」

オオーッ!

「あのガキ5人抜きしやがったぞ!」

「ああ。けど次は…」

「6人目は誰だ?」

「あの怪力男だ」

335: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:06:13.24 ID:YMePBMp5o
男「…すごいでかいな」

怪力男「テメエなんか一撃でつぶしてやる」

男「そうもいかないんだな」ヒュン

怪力男「な!消えた!?」

男「上だよ」ブンッ

怪力男「っ!」ガキッ

ギリギリギリ…

怪力男「…な、なんちゅう力だ!」

男「ガキの頃から鍛えてるんでね」

336: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:06:52.46 ID:YMePBMp5o
怪力男『と、取引しねえか?』コソコソ

男「取引?」

怪力男『…ああ。あんたが負けてくれたら金貨20枚出そう。どうだ?』

男「なんでだ?」

怪力男『ここで俺に勝ったらアンタ、ここの連中につけ狙われるぞ』

男「それは…困るな」

怪力男『だろ?だから』

337: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:07:20.81 ID:YMePBMp5o
男「けど、あんたが金貨20枚払う保証はないよな?」

怪力男『ちゃんと払う!』

男「それで、あんたのメリットは?」

怪力男『俺は引き続きここで働ける』

男「…」

怪力男「…」

男「…分かった」

338: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:07:47.20 ID:YMePBMp5o
男「こうさーん!」

オオーッ!

「なんで降参なんだ!」

「互角の勝負だったじゃないか!」

「最後までやれー!」

レフェリー「あの…ホントに降参なんですか?」

男「ああ。さっきの鍔迫り合いで腕がしびれちまってな」

レフェリー「では…勝者、怪力男―!」

オオーッ

怪力男『闘技場の出口で待っててくれ』ボソボソ

男『分かった』ボソッ

339: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:08:14.45 ID:YMePBMp5o
魔娘「男!」

男「おお。わるいな。負けちまった」

魔娘「…まあいいわ。いい引き際かもね」

男「え?」

魔娘「こういうのってね、闘技場に雇われてる相手に勝つと後が厄介なのよ」

男「よく知ってるな」

魔娘「当然よ。盗賊さんが言ってたでしょ?」

男「あー。そういや言ってたような…」

340: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:08:45.91 ID:YMePBMp5o
魔娘「それにあなた、あのオトコと何か取引してたでしょ?」

男「え?そこまで分かるのか?」

魔娘「私は耳がいいの。忘れてるでしょ」

男「うん…忘れてたわ」

ザワザワ ヒソヒソ

魔娘「…早く出ましょ」

男「え?次の対戦見ようよ」

341: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:09:16.26 ID:YMePBMp5o
魔娘「いつまでもここにいるとあなたが負かした連中に取り囲まれるわ」

男「そうか?あいつら負けたんだからもう掛かってこないんじゃないか?」

魔娘「一人だとね。でも何人か纏まってきたら厄介でしょ?」

男「うーん。そうだな」

魔娘「…やっぱりあなたは私が居ないとダメね」

男「お世話になります姐さん!」

魔娘「誰が姐さんよ!」

342: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:09:44.69 ID:YMePBMp5o
~闘技場・出口~

魔娘「…ねえ。ホントに来ると思ってるの?」

男「分かんねえよそんなの」

魔娘「ちょっと!怪力男が来なかったら参加料の金貨3枚が無駄になるのよ!?」

男「まだ1枚残ってるだろ?」

魔娘「何言ってるのよ!お金が無くなったら旅を続けられないでしょ!?」

男「そんときはまた口入屋で仕事探せばいいだろ?」

魔娘「そんなこと言って!金貨3枚稼ぐのがどんなに大変か分かってるの!?」

怪力男「ずいぶん賑やかだな」

魔娘・男「「!?」」

343: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:10:10.89 ID:YMePBMp5o
怪力男「ほら。金貨20枚だ」

チャラ

男「確かに」

魔娘「預かるわ」

怪力男「けどよ、あんた強いな」

男「さっきも言ったけど、ガキの頃から鍛えられてたからな」

怪力男「そうかい。あんたを鍛えたやつは相当腕が立つんだろうな」

男「…ああ」

344: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:10:51.22 ID:YMePBMp5o
魔娘「ねえ。質問があるんだけど」

怪力男「なんだ?」

魔娘「あなたほど強かったらもっといい仕事があるんじゃない?」

怪力男「…あそこは割がいいんだ。それに…」

怪力男「俺は学がない。だから騙されることが多いんだ」

怪力男「あそこは…俺みたいな頭の悪い奴でも稼げる場所なんだ」

男「けどさ、こんなことしてたら儲からないじゃないか?」

怪力男「…一回でも負けると収入はゼロだ。それなら金を払ったほうがまだマシだ」

怪力男「あのあと3戦して金貨30枚稼いだからな。20枚払ってもまだ10枚残る」

345: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:11:21.46 ID:YMePBMp5o
男「そっか…その…悪かったな」

怪力男「何がだ?」

男「いや…俺が出場しなかったらもっと稼げてたんだろ?」

怪力男「そんなことか…誰も損はしてねえ。だったら文句はねえだろ?」

魔娘「なんだ。しっかり考えてるじゃない」

怪力男「生き残るための知恵ってやつさ」

魔娘「でも、男との約束をすっぽかしてトンズラすることもできたんじゃない?」

怪力男「そんなことして悪い噂が立ってみろ?もうあの仕事ができなくなるだろうが」

男「それも生き残るための知恵…か」

346: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:12:22.78 ID:YMePBMp5o
怪力男「そういうこった。そんじゃ俺は戻るわ。あんたらも早くここから立ち去ったほうがいいぜ?」

魔娘「分かってるわ」

怪力男「そんじゃな」

男「ああ」

魔娘「…話が分かる相手でよかったわね」

男「そうだな」

魔娘「じゃあ、宿を探しましょ」

347: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:12:48.78 ID:YMePBMp5o
~菓子屋~

男「このケーキください」

店員「毎度ありがとうございます」

魔娘「なんでケーキなんか買うの?」

男「今日は誕生日じゃないか」

魔娘「あ…」

男「魔娘ももう…16歳か」

魔娘「ええ…一ヶ月ほどだけど男と同い年よ?」

348: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:13:15.59 ID:YMePBMp5o
男「あははは、そうだな。二人っきりだけど、祝おうぜ。な?」

魔娘「…そうね。あなたにしてはいい提案だわ」ニコッ

男(魔娘、笑うと半端なく可愛いのに口がなぁ…)

魔娘「…なあに?」

男「なんでもない」

魔娘(よく見ると男もだんだんいい顔つきになってきたわね。まだまだ世間知らずのアマちゃんだけど)

349: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:13:42.26 ID:YMePBMp5o
~宿屋~

男「じゃあ、魔娘の誕生日を祝って」

魔娘・男「「かんぱーい!」」

ゴクゴクゴク

男「ぷはーっ!うまい!!」

魔娘「ただの緑茶じゃない」

男「気分だよ気分」

魔娘「…ま、いいけどね」

バサバサバサ ホーッ ホーッ

男「ん?賢者様の使い魔だ。手紙がついてる」

魔娘「賢者様?」

350: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:14:14.57 ID:YMePBMp5o
男「ああ。なになに?“魔娘、誕生日おめでとう”だって」

魔娘「それだけ?」

男「うん」

魔娘「そっか…」

男「どうした?」

魔娘「なんか…嬉しいなって」

男「なんで?」

魔娘「だってさ、使い魔まで使って寄こした手紙なんだよ?それなのに“誕生日おめでとう”だけって…」

魔娘「きっとね、ただその一言だけを言いたかったんだなーって」

魔娘「その一言にいろんな思いを込めたんだろうな…って思ったのよ」

351: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:14:41.71 ID:YMePBMp5o
男「…」

魔娘「…ホント、お母さんみたいね」グスッ

男「…だな」

魔娘「…じゃあ食べよっか!」

男「そうだな!」

魔娘「それじゃ…」

魔娘・男「「いただきまーす」」

352: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:15:43.44 ID:YMePBMp5o
~王都~

ワイワイガヤガヤ

男「賑わってるなー」

魔娘「そうね。これはすごいわね…」

男「いろんな店があるな」

魔娘「まずは宿屋ね。荷物を置いたらブラブラしてみましょうか」

男「そうだな」
  ・
  ・
  ・

353: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:16:09.63 ID:YMePBMp5o
男「それにしてもすごい町だな」

魔娘「そうね。迷子になりそうだわ」

男「あ、あそこ宿屋じゃないか?」

魔娘「行ってみましょう。安いところだといいけど」

354: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:16:41.86 ID:YMePBMp5o
~宿屋~

宿主「すまんね。空いてるのはダブルの部屋だけなんだ」

男「そうですか…」チラッ

魔娘「ほかに宿屋はないの?」

宿主「まあ、あるにはあるが…今日はどこも空いてないと思うよ?」

魔娘「どうして?」

宿主「あんたら知らないのかい?新勇者様が明日、魔王を倒す旅に出るんだよ」

男「あ…」チラッ

魔娘「…」

355: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:17:15.39 ID:YMePBMp5o
宿主「ほら、最近また魔物が増えてきただろ?どうやら魔王が勢力を拡大しているらしいんだ」

宿主「それで新勇者様が魔王を討伐に行くって話だ。明日はそのパレードさ」

男「そうですか…」

宿主「それを見ようってんで近隣の町や村から見物客が大勢押し寄せててね」

宿主「だから今日明日はこの王都で空いてる宿屋はないと思うよ?」

宿主「うちだって一部屋でも空いてるのが奇跡みたいなもんなんだから」

魔娘「…しょうがないわね。じゃあその部屋をお願いします」

男「え?」

356: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:17:53.94 ID:YMePBMp5o
魔娘「なあに?」

男「いいのか?」

魔娘「私は気にしないわよ?」

男「いや…」

魔娘「なによ。今までずっと一緒のテントで寝てたでしょ?」

男「そうじゃなくてな?」

魔娘「はっきりしないわね…行くわよ」

男「あ!ちょっと待てって!!」

357: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:18:35.27 ID:YMePBMp5o
~宿の部屋~

魔娘「ふーん。ま、こんなもんね」

男「…魔娘、お前ホントに大丈夫か?」

魔娘「何が?」

男「いや…新勇者様って言ったら…魔族の敵だろ?」

魔娘「…関係ないわ」

男「けど…」

魔娘「…あのね、男」

男「うん」

魔娘「魔族は人間を敵とは見てないの」

男「え?」

358: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:19:15.98 ID:YMePBMp5o
魔娘「魔族の認識はね、敵対すれば敵、友好的なら客人なの。たとえそれが人間や勇者であってもね」

男「けど、今までの勇者は魔王と敵対していたんだろ?だったら人間は敵じゃないのか?」

魔娘「男、あなたは知らないでしょうけど、魔界に来る人間は勇者達だけじゃないのよ?」

男「え?」

魔娘「例えば商人とか、冒険者とか。そういう人間達は皆友好的だわ。もっとも、奥地まで来るのはごく一部だけどね」

魔娘「…勇者が魔王と敵対しても、今迄でせいぜい10人ほどでしょ?それに比べれば商人たちのほうがはるかに多いのよ」

魔娘「だから、私個人の考えはね、人間の多くは友好的だけど、勇者のように定期的に来る暗殺者もいる。こんなところかしら?」

男「なるほどなぁ。でもそれだと、勇者様を止めようとしたりとかはしないのか?」

魔娘「…そうしたいけど無理ね。だって勇者は国中の期待を背負ってるんですもの」

359: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:19:43.07 ID:YMePBMp5o
魔娘「これまでも説得しようとした魔族はいたわ。でも…勇者は魔王を目指した」

魔娘「それぐらい重いものなの。勇者に圧し掛かる期待はね」

魔娘「そういう訳だから、私一人がどうこうできる問題じゃないの」

魔娘「だから…放っておくしかないのよ」

男「納得できないんだけど…」

魔娘「あなたには理解できないでしょうね」フッ

男(なんでそんな寂しそうな顔をするんだ?)

魔娘「…荷物は置いた?じゃあ町をブラブラしましょ」

男「あ、ああ…」

360: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:20:17.08 ID:YMePBMp5o
~町中~

サアサ、ヤスイヨヤスイヨー コレヲカワナイナンテソンシテルヨダンナー

男「…お祭りみたいだな」

魔娘「そうね…新勇者の旅立ちをお祭り騒ぎにしちゃってるわね」

男「まあ、おかげでいろんな屋台が出てて楽しいんだけどな」

魔娘「そうね。あ、あの屋台からおいしそうな匂いがするわ!」

男「ホントだ。行ってみよう」

ドンッ

魔娘「あ、すみまs」

貴族「なんだ貴様!庶民の分際で貴族である私にぶつかるだと!?兵士!兵士はいるか!!」

兵士「はっ!お呼びですか貴族様!!」

貴族「このガキが!こともあろうかこの私に!!ぶつかってきたのだ!!」

361: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:20:43.01 ID:YMePBMp5o
兵士「はっ!これは失礼しました!!早速連行します!!」

兵士「さっさと来るんだ!グイッ

魔娘「え?ちょっ!ちょっと!!」

男「ちょっと待てよ!」

兵士『銀貨10枚だ』ボソッ

男「…え?…あ、ああ…」チャリン

兵士『…行け』ボソッ

男「…行くぞ」

魔娘「え?う、うん」
  ・
  ・
  ・

362: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:21:10.67 ID:YMePBMp5o
~飯屋~

ワイワイガヤガヤ…

男「ふぅ…結構歩いたな」

魔娘「そうね…さすがの私も疲れたわ…」

店主「注文は?」

男「あっと…俺はこのパンとりんごジュースと羊肉の壷煮を。魔娘は?」

魔娘「私はりんごジュースだけで」

男「じゃあ、それで」

店主「はいよ」

363: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:21:35.87 ID:YMePBMp5o
男「…ったく。屋台で食い過ぎだって」

魔娘「男だって食べてたじゃない」

男「俺はセーブしながら食ってたんだよ」

魔娘「あー。そういえばあなた、私の3倍は食べるものね…」

男「魔娘が食わな過ぎなんだって」

魔娘「ほっといてちょうだい。オンナのコはこれが普通なのよ」

魔娘「それに、あなたみたいにいっぱい食べてると、すぐにボストロールみたいになっちゃうわよ」

男「ならないって」

364: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:22:06.38 ID:YMePBMp5o
店主「ほい、おまち。銀貨4枚にまけとくよ」コトッ

男「じゃあこれで」チャリン

店主「まいど」

男「それにしても込んでるな…いつもこうなのか?」

店主「ははっ。いつもこうならもっと店が大きくなってらあな。今日明日だけさ」

男「…あ、新勇者様か」

店主「ああ。明日、魔王討伐に出立されるんだ」

魔娘「ねえ」

店主「なんだい?お嬢ちゃん」

魔娘「“お嬢ちゃん”って言うのは気に入らないけど…今回の新勇者はどんな人なの?」

365: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:22:36.37 ID:YMePBMp5o
店主「そうさな…すごい斧の使い手らしいな」

男「斧?」

店主「ああ。どんなものでも真っ二つにするって話だ」

店主「しかも斧っていうと愚鈍なイメージがあるが、なかなかに素早いらしい」

魔娘(力とスピードね…)

店主「けど、魔法とかは…なあ?」

魔娘(魔法は苦手…と)

店主「まあ、魔法はお仲間に任せるとして…戦闘は新勇者様の御活躍に期待だな」

店主「なんせ、先代勇者様がやられて直系の血筋は途絶えたけど、今回の新勇者様の斧捌きは先代様の剣を超えてるって話だ」

魔娘(つまり、斧以外は先代には及ばないと)

366: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:23:07.20 ID:YMePBMp5o
男「お仲間ってもう決まってるんですか?」

店主「ああ。戦士様に僧侶様に女魔導師様だ」

魔娘(バランス重視の布陣ね…)

男「最初から一緒におられるんですか?」

店主「そうさ。先代勇者様は御自分でお仲間を集められたが、今回は王様のほうで集めておられたんだ」

魔娘(ちょっと胡散臭いわね…)

男「それじゃ、すぐにでも魔界に出発できますね」

店主「ところがそうはいかねえんだ」

魔娘「なんで?」

367: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:23:38.73 ID:YMePBMp5o
店主「いきなり魔界になんていってみろ。最初っから強い魔物を倒していかなきゃならないだろ?」

男「そうですね」

店主「だから、しばらくはこの大陸で魔物を退治しながら実力をつけるのさ。強い魔物相手でも倒せるぐらいにな」

店主「それにこっちの大陸にも魔物の拠点みたいなもんがあるしな。それらを潰すのが先なんだとさ」

男「なるほど…」

オーイ、チュウモンタノムー

店主「あ、今行くよー!…じゃあな」

魔娘「ありがとう。面白かったわ」

店主 ノシ

368: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:25:08.75 ID:YMePBMp5o
~宿の部屋~

男「今日はいろんなもの買ったな。食料とか道具とか」

魔娘「そうね。薬草に毒消しに服とか…」

男「服はちょっと違うんじゃないか?」

魔娘「なに言ってるのよ。オンナノコにとって服なんて消耗品よ?」

男「いやいや、それは違うだろ」

魔娘「違わないわ。例えば男は薄汚れた格好のオンナノコってどう思うの?」

男「え?そりゃあ…あんまりいいもんじゃないな…」

魔娘「でしょ?私も小まめに洗って出来るだけ清潔にしてるのよ?あなたの服も一緒にね」

魔娘「でも、やっぱり傷んでくるじゃない?だから新しくしたかったのよ」

370: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:25:54.06 ID:YMePBMp5o
男「それで3着も買ってたのか?」

魔娘「そうよ。それだけあれば着回しが出来るでしょ?」

魔娘「そうすれば傷みも少ないし、いつも清潔でいられるわ」

男「そっか…いや、それでいいのか?うーん…」

魔娘「…それにしても賑やかね」

ワイワイガヤガヤ

男「みんな明日の新勇者様の旅立ちをひと目見ようと来てるんだ。しょうがないさ」

魔娘「さっさと寝ればいいのに」

男「出発は昼頃だって言うから、今夜は飲んで騒ぐつもりなんだろ」

魔娘「まったく…いい迷惑だわ」ゴソゴソ

371: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:26:20.07 ID:YMePBMp5o
>>369 はいwww

372: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:27:08.36 ID:YMePBMp5o
男「なんだ。もう寝るのか?」

魔娘「ええ。久しぶりのベッドだもの。さっさとシャワー浴びて、ゆっくり寝たいの」

男「じゃあ俺もそうするか」

魔娘「一緒に入るの?」

男「なんでだよ!さっさとシャワー浴びてこい!!」

魔娘「きゃー。男が襲うー(棒)」

男「襲うか!っていうか襲って欲しいのか!?」

魔娘「…っ//」

374: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:27:43.76 ID:YMePBMp5o
男「え?…そこで黙られると…」

魔娘・男「「…」」

男(い、いかん。魔娘のことが急に愛おしくなってきた…抱きしめたい…)

魔娘「…なんてね。ビックリした?」

男「なっ!?」

魔娘「あらあ?ひょっとして…襲いたくなったの?」クスクス

男「…ちょっと出てくる」

バタン

魔娘「…え?」

375: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:28:10.14 ID:YMePBMp5o
>>373 ありがとうございます

376: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:28:37.46 ID:YMePBMp5o
~大通り~

ブラブラ…

男「…明日、ここから新勇者様が旅立つのか…」

立ちんぼの女「あらあ?お兄さん一人い?」

男「あ、あの…」

男(暗くてよく見えねえな…)

立ちんぼの女「…ねえ。あたしといいことし・な・い?」

ドキッ

377: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:29:05.36 ID:YMePBMp5o
男「え?い、いいことって?」

立ちんぼの女「もう。分かってるくせにぃ~」クネクネ

男(あ…いい匂いが…しかも胸の谷間が丸見え)

兵士「おい!」

男「え?」ドキッ

立ちんぼの女「あらあ、兵士さん。最近お見限りだったじゃない?」

兵士「すまんな。いろいろ忙しくてな」

立ちんぼの女「それでぇ?今は大丈夫なのぉ?」

兵士「ああ。今日は臨時収入があったからな。今からおまえと…」ニヤニヤ

立ちんぼの女「そうなのぉ?うれしいわぁ。あ、お兄さん。また今度ねぇ」ヒラヒラ

男「あ、ああ…」

378: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:29:48.37 ID:YMePBMp5o
男(もう宿に戻るかな)

ブラブラ…

魔娘「---見つけた!!」ダキッ

男「おわっ!アブねえ!!」

魔娘「なにしてるのよ!早く帰ってきなさいよ!!」

男「…俺、テントで寝るわ」

魔娘「…え?」

男「魔娘も俺なんかに襲われたくないだろ」

魔娘「そ、そうじゃなくて!」

男「他に空いてる宿もないしな」

魔娘「だから!」

男「あっちのほうなら徹夜組のテントにまぎれるし、ちょうどいいだろ」

379: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:31:08.47 ID:YMePBMp5o
魔娘「…ごめんなさい」

男「…」

魔娘「調子に乗っちゃったわ。ごめんなさい」

魔娘「まさか男がそこまで怒るとは思わなかったの…」

男「…怒っちゃいないよ」

魔娘「怒ってるじゃない…」

男「違うよ。魔娘に思ってたことをズバリ言われて、居心地が悪くなったんだ」

魔娘「…え?」

男「俺はあのとき魔娘を抱きしめたいと思ってた。魔娘を襲っちまうかもって…な?」

男「だから部屋から出た。それだけだって」

魔娘「…」

男「とりあえず宿に戻ってテントを取ってこないとな」

380: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:31:43.70 ID:YMePBMp5o
魔娘「…やだ」

男「…へ?」

魔娘「いやだ!男と一緒に寝る!!」

男「ちょっ!おまっ!!声でかいって!!」

魔娘「ねえ…お願いだからあ…ひとりにしないでよお…」ポロッ

男「!?」

魔娘「もう…ひとりになるのはイヤなのよぉ…」グスッ

男(魔娘が泣いたのは初めてだ…)

男「…襲うかもしれないぞ?」

魔娘「…ヒック…」コクン

男「…わかった」

381: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:32:23.84 ID:YMePBMp5o
~宿の部屋~

モゾモゾ

男「…こら。あんまりくっつくな」

魔娘「どうして?」

男(うっ。その上目遣いと匂い…反則だろ)

男「…どうしても。襲っちまうぞ?」

魔娘「…いいよ」

男「だからそういうことを軽く言うなって」

魔娘「…男だからいいの」

ドキン

382: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:32:50.28 ID:YMePBMp5o
男「だから…そういうことをだな…」

魔娘「…」チラッ

男(あ、あかん…限界かも…)

バサッ

魔娘「…え?」

男「ちょっとトイレ」

男(2、3発抜かないとやばいな…)

383: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:34:04.34 ID:YMePBMp5o
~朝・宿の部屋~

魔娘 ブスーッ

男「なんでむくれてんだよ」

魔娘「だって!昨夜せっかく覚悟を決めたのに!!」

男「襲って欲しかったのか?」

魔娘「そ、そうじゃないけど…」ゴニョゴニョ

男「…なに言ってんだ?聞こえないぞ?」

魔娘「…今朝あんなに大きくしてた癖にって言ったの!!」

男「へ?…ばっ!あれはただの生理現象だっての!!」

魔娘「ふんっ!どうだか!?痩せ我慢のしすぎじゃないの!?」

男「確かに我慢はしてたけど…魔娘、かわいいし…」

魔娘「っ!?と、当然じゃない!!//」

384: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:34:36.67 ID:YMePBMp5o
男「だから…そういうことはもう少し先にとっておいてくれ」

魔娘「どうしてよ…」

男「今はまだ魔娘とのことを真剣に考えられないからな。シスターのことが片付くまで…」

男「それまで…待ってて欲しい」

魔娘「…それまでに私が心変わりしたら?」

男「それはそれでしょうがないな」

魔娘「え?それだけ?」

男「他にどうしろと?」

魔娘「…こっそり私の後をつけるとか?」

男「ストーカーじゃねえか!!」

385: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:35:17.87 ID:YMePBMp5o
~大通りの見えるところ~

ザワザワ ガヤガヤ ワイワイ

男「すごい人だな」

魔娘「そうね。人いきれがすごいわ」

男「徹夜組がいたのも納得だな」

魔娘「で、私達はなぜこんなところにいるの?」

男「とりあえずここからなら人ごみよりはよく見えるだろ?」

魔娘「でもここ…宿の屋根よ?」

宿主「ははは、すまんね。ほれ、差し入れだ」

男「あ、すみません」

宿主「ほら、そっちのお嬢さんも」

魔娘「あ、ありがとう」

386: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:35:45.77 ID:YMePBMp5o
宿主「どうだい?見えるかい?」

男「ええ。なんとか」

宿主「そうかい。うちは大通りには面してないが横道沿いにあるからな」

宿主「屋根に上れば大通りも少しは見える」

男「十分ですよ。高さがある分新勇者様の顔もはっきり見えそうだし」

魔娘「りんごおいしい」

男「おい!話を聞けっての!!」

宿主「いいってことよ。それより、そろそろ見えるころだぜ?」

男「あ、はい」

ウォオオオオ!!!

魔娘「…来たみたいね」

387: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:36:26.20 ID:YMePBMp5o
男「先頭は…戦士様みたいだな」

魔娘「そうみたいね。むさ苦しいオトコだわ」

宿主「おいおい…」

魔娘「次は…女魔導師かしら?」

宿主「イカスねぇ。涎もんだな」ジュルリ

男「すげえおっぱい…」ゴクリ

魔娘「オトコって…」ハァ…

388: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:37:00.41 ID:YMePBMp5o
男「次は…僧侶様か」

魔娘「…ふ~ん」

男「なんだよ。その余裕な態度は…」

宿主「まあ、あれならお嬢さんのほうがデカイもんな」

魔娘「っ!//」

男「なんだ。そういうことか」

魔娘「~!!!」

ドスッ バキッ

男・宿主「「…」」ピクピク…

389: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:37:46.01 ID:YMePBMp5o
魔娘「あ、そろそろ新勇者が見えるわよ」

男「いてて…どれどれ?」

新勇者 ノシ

男「あれが新勇者か…俺より年上みたいだな」

魔娘「でもなにかしら…覇気が感じられないわね…どっちかって言うと農家のお兄さん的な?」

宿主「お仲間の3人のほうが精悍な感じがしたよな」

男「…ま、これで新勇者様一行も見れたし、明日からはこっちの用事を済まそうぜ」

魔娘「そうね。でも本当に城の中には入れないのかしら?」

390: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:38:12.38 ID:YMePBMp5o
宿主「少し前までは旅人でも城の中はおろか、王様にも謁見できたが、最近はまったく出来ないって話だぞ?」

男「王都まで来ることはめったにないから城内を見たかったんだけどなぁ…」

魔娘「しょうがないわ。明日は役所に行って許可証をもらいましょう」

男「そうだな。許可証をもらわないと東の関所を通れないもんな。その先の港にも行けないし…」

宿主「ま、城内見学は無理としても、許可証ぐらいなら役人に金貨1枚でもつかませればすぐに出るだろうよ」

魔娘「…おじ様。その話、詳しく聞かせてくださる?」ニコッ

男「目が笑ってないよ!」

391: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:39:12.85 ID:YMePBMp5o
~翌日・役所~

役人「申請書は受領した」

男「はい」

役人「うぉっほん…申請書は受領した」

男「は、はあ…」

魔娘「もう!鈍いわね!!これよ!!」

チャリン

役人「…手続きをしてくる。ちょっと待ってろ」

魔娘「…ね?金貨1枚で全て解決よ」

男「なんだかなあ…」

392: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:39:47.03 ID:YMePBMp5o
~宿の部屋~

男「道具は道具袋に入れて…」

魔娘「薬草と毒消しはこっちにちょうだい」

男「ほいっと」ポイッ

魔娘「ありがと。…テントもいい加減草臥れてきたわねぇ…新しくする?」

男「そうだな…所持金に余裕があればな」

魔娘「余裕はあるわよ?」

男「そっか。じゃあ新しくするか?」

魔娘「ええ。今度は寝心地がよさそうなのにしましょう」

男「そうだな。今のは重いし寝心地悪いし汚れてるし…だもんな」

魔娘「盗賊さんのお下がりですものね」

男「…今までご苦労さん。ありがとな」バサバサ…ガサゴソ

魔娘「…じゃあ、今からお店に見に行くわよ」

男「はいはい」

393: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:40:13.99 ID:YMePBMp5o
~翌日~

男「お世話になりました」

宿主「ああ。またおいでよ」

魔娘「この町に来ることがあったらね」

宿主「おう。期待せずに待ってる」

男「それじゃ」ノシ

魔娘「行ってきます」ノシ

宿主「関所はその道をまっすぐだ。気をつけてな」ノシ
  ・
  ・
  ・

394: 名無しさん 2013/01/13(日) 00:40:56.62 ID:YMePBMp5o
男「いい町だったな」

魔娘「そうかしら?」

男「え?だってさぁ…」

魔娘「役人は賄賂付け。治安はいい加減。貴族は庶民を見下してるし…庶民はその分逞しく生きてたわね」

男「いや、そうだけどさ…宿主さんや店主さんみたいにいい人もいただろ?」

魔娘「それは私達がお金を持ってるからよ。お金が無かったら見向きもされないわ」

男「いやいや、それはないだろ」

魔娘「…男はお金で苦労したこと無いでしょ?だから分からないのよ…」

男「魔娘だって苦労したこと無いだろ」

魔娘「私はりんご一個で犯罪者扱いされたのよ?」

男「…へ?」

魔娘「初めてこっちの世界に来たときに…なんでもない。行きましょ」

男「おい待て途中で言うの止めるな気になるだろおい待てって」

406: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:15:51.22 ID:YMePBMp5o
~港~

男「これが海…」

魔娘「潮の香りがすごいわ…」

船乗り「なに当たり前のこと言ってんだオメエら」

男「あ、すみません。初めて海を見るもんで」

船乗り「初めて?そりゃまたずいぶんと田舎から来たんだなあ」

男「すいません」

魔娘「わたしは初めてじゃないわよ!馬鹿にしないで!!」

船乗り「威勢のいい姉ちゃんだな。船酔いすんなよ?」

魔娘「するわけないでしょ!?」

407: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:16:18.80 ID:YMePBMp5o
~船上~

魔娘「うぇえええ…」

男「大丈夫か?」

フルフル

男「…水飲むか?」

魔娘「うぇええ…ほっといて…うぷっ!」

男「ほら。バケツ交換するから貸してみ?」
  ・
  ・
  ・

408: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:16:46.65 ID:YMePBMp5o
船員「お嬢さんの様子はどうだい?」

男「あ、おばさん。あいかわらずですねぇ」

船員「おばさん言うな!…ま、あたいで手伝えることがあったら遠慮なくいいなよ。ね?」バシン

男「背中が痛いですって…そのときはお願いします」

船員「じゃあ、あたいは厨房に戻ってるから」ノシ

男「…ゲロ捨ててこなきゃ」

タイヘンダー ヤツガデタゾー シンロヲカエロー

男「…ん?甲板のほうが賑やかだな…」

409: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:17:22.43 ID:YMePBMp5o
~甲板~

ホヲアゲロー ヤリモッテコイ モウダメダー

男「…これは…?」

船乗り「どけどけどけー!」

男「どうしたんですか!?なにがあったんですか!!」

船乗り「やつだ!やつが出やがった!!」

男「やつってなんですか!」

船乗り「クラーケンだよ!イカの化けもんだ!!」

男「…え?」

海の上:クラーケン『キシャーッ!!!』

410: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:18:02.20 ID:YMePBMp5o
船乗り「早く逃げねえと食われちまう!!」

男「…うまそう」

船乗り「…はあ?」

男「あれって焼いたら食えますかね?」

船乗り「イヤ…そりゃイカだから食えないことはねえと思うけど…」

男「じゃあ決まりですね」ニコッ

クラーケン『キシャーッ!!』

「ヤツが足をマストに巻きつけてきたぞ!!」

「もうダメだ…この船はおしまいだ…」

男「はーい。ちょっとどいてくださいね」

411: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:18:37.01 ID:YMePBMp5o
船乗り「お、おい…なにやってんだよ!」

男「え?足を切り落として焼いて食おうかと」

船乗り「テメエ馬鹿か!そんな長鉈なんかでクラーケンが切れるもんか!!」

男「やってみなきゃわかんないでしょ?」

船乗り「なに言ってやがる!銛もささらねえようなヤツなんだぞ!?」

男「でもこのままじゃ海中に引きずり込まれるでしょ?」

船乗り「そ、そりゃそうだけどよ…」

男「さて…」

スラァ…

男「…ふんっ!」ズバアッ!

クラーケン「シャーッ!!」

ブクブクブク…

412: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:19:04.73 ID:YMePBMp5o
船乗り「おお!」

「なんだあいつ?」

「クラーケンの足を切ったぞ!」

「いまだ!速度を上げろ!!」

船乗り「す、すげえな。あんた…」

男「しっ!…まだ来る!!」

船乗り「…へ?」

男(舳先に回り込んだ…体当たりする気だな)

タタタタ

船乗り「お、おい!どこ行くんだよ!!」

男(ここが船の先端…ここでヤツが浮き上がってくると同時に…)

男(最大の衝撃波で切るっ!!)チャキッ

413: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:19:31.32 ID:YMePBMp5o
船乗り「お…おい…クラーケンのヤツ…この船目掛けて突っ込んでくるぞ!」

「今度こそ終わりだああ!!」

「あいつがクラーケンを切ったから!」

「なんで俺たちがこんな目に!!」

男「…」

船乗り「…そんな低い姿勢でなにを…」

男(海面が盛り上がったときが勝負だ!)

海面:モリッ

男「いまだっ!」ブォンッ!!

クラーケン「!!」

船乗り「う…海が切れたっ!」

ドドーン!!
  ・
  ・
  ・

414: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:20:05.04 ID:YMePBMp5o
男「”火炎呪”」ボゥ

パチッパチパチ…

船乗り「…魔法で焼いてやがる…」

男「…香ばしい匂い♪もう焼けたかな?」

ガツガツ

男「…味はいいけど固いな…耳のほうはどうかな?」

船乗り「ほ…ホントに食ってる…」

船員「…すごいね、あんた。クラーケンを撃退したってヤツ、初めて見たよ」

男「足1本と耳のところを少しだけしか収穫がないんですけどね」モグモグ

船員「…で、それをなんの躊躇いも無く喰らってるなんてさ…ナニモンだよ、まったく…」

415: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:20:56.99 ID:YMePBMp5o
魔娘「…私にもなにかちょうだい」

男「ん?もう大丈夫なのか?」

魔娘「ええ…何かお腹に入れとかないと胃が痛いのよ…」

船員「パンとミルクならあるわよ?」

魔娘「お願い」

船員「ちょっと待ってな」

男「船酔いのほうは?」

魔娘「今は殆んど揺れてないから…」

船員「ほら、パンとミルク」

魔娘「ありがとう」

船員「あのクラーケンがいたところが一番荒れてる場所だったからね。そこを過ぎると割と静かなもんさ」

416: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:21:25.50 ID:YMePBMp5o
船乗り「それにしても…クラーケンが出てきたのって何十年ぶりじゃないか?」

船員「そうだねぇ。たぶん20年ぶりぐらいじゃないかい?」

船乗り「…やっぱり魔王が勢力を伸ばしてるって噂は本当なのか?」

船員「どうだかねぇ…」

魔娘「・・・」パクパク

「おい、ちょっと通してくれ」

船員「あ、船長」

417: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:21:51.45 ID:YMePBMp5o
船長「…あんたがクラーケンを撃退してくれたのか?」

男「ええ、まあ」モグモグ

船長「まだ若いな…酒は飲めるか?」

男「あ、まだ飲めないですね」

船長「…後で礼をせねばならんな。とりあえずありがとう」

男「気にしないでくだs」

魔娘「お礼はお金でお願いします!」

男「お、おい!」

魔娘「この船に乗るのだってお金が掛かったのよ?旅を続けるにはお金があるに越したことはないの!」

船長「…いいだろう。下船するときに渡そう」

魔娘「約束よ?」

418: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:22:17.33 ID:YMePBMp5o
~港町~

男「…よっと」ヒョイ

魔娘「よいしょ…やっと着いたわね」

船員「さて…と。あたいは食料なんかを調達しに行くけど、あんたらはどうする?」

魔娘「あ、私達も行きます。ついでに宿も…」

船員「わかったよ。宿屋にも案内するから安心して」

魔娘「はい」

男「すいません」

船員「なに言ってんだい!あんたはあたいたちを救ってくれた英雄なんだ!!船長にも言い付かってるしね」

419: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:22:45.91 ID:YMePBMp5o
男「あの…これって貰いすぎじゃ…」

船員「いいのいいの。あの船とあたいたちの命、金貨50枚じゃ安いぐらいさ。あははは」

魔娘「でもさすがにこれは…」

船員「気にしなさんな。それより、ここを曲がったら市場だからね」

テクテク…クルッ

男「おお!」

魔娘「いろんな露天商がいっぱい!」

420: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:23:12.84 ID:YMePBMp5o
船員「へへーん。どう?ここの市場は古今東西、いろんなものが集まってくるのさ」

船員「王都の市場じゃお目にかかれない品物だっていっぱいあるんだよ?」

男「これはなんだろう?」チャラ

商人A「それは北の町の一品で氷の剣でございます」

魔娘「これは?」

商人A「それは氷のローブです。これを着ると熱い地方でも涼しく過ごせますよ?」

船員「もし砂漠の都市に行くなら必需品だね」

魔娘「そうなんですね」

421: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:23:40.82 ID:YMePBMp5o
船員「…それじゃ、あたいは食料品を買い込んでくるわ。後でさっきの曲がり角においで。宿まで案内するから」

男「あ、はい。それじゃ」

魔娘「ねえ。とりあえず一通り流し見してから欲しいものを探さない?」

男「そうだな。どんなものを売ってるか先に見よう」

魔娘「決まりね♪」

男「楽しそうだな」

魔娘「だって見たことも無いようなものがいっぱいあるんだもの♪」

男「…ほどほどにな?」

魔娘「分かってるわよ。あ、これはなあに?」

商人B「これは南の町の~~~」

男(ホントに分かってんのかなあ…)
  ・
  ・
  ・

422: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:24:06.73 ID:YMePBMp5o
魔娘「これで終わりかしら?」

男(疲れた…なんで魔娘は平気なんだよ…)

魔娘「ねえ、そこの人。これで市場は終わりなの?」

町人「え?あ、いや…あっちにもあることはあるが…行かないほうがいいぜ?」

魔娘「どうして?」

町人「…気分のいいもんじゃないからさ。特にあんたみたいなお嬢さんには刺激が強いだろうしな」

魔娘「ふーん…あっちにあるのね?男、行くわよ」

男「いや…この人がやめろって言ってるし…」

魔娘「何言ってるのよ。ここまで来て見ないで帰るなんてありえないわ。ほら、早く」

男「あ、ああ…」

町人「…どうなっても知らねえぞ?」

423: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:24:46.58 ID:YMePBMp5o
~別の市場~

魔娘「…なにこれ…」

男「…魔物とか人とかを売ってるなんて…」

町人「奴隷市場さ」

魔娘「え?」

町人「あんたたち、何も知らないみたいだから心配になってな?」

男「あ、さっきの…」

魔娘「ねえ。奴隷市場ってことは…ここで売ってるのは…」

町人「ああ。全部奴隷さ。スライムとかの愛玩用の魔物、牛車や農作業用の魔牛、それから人間もな」

男「人間も!?」

424: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:25:16.97 ID:YMePBMp5o
魔娘「同族を奴隷にしてるの!?」

町人「ああ。ひどいもんだろ?」

男「なんで…」

町人「この町では重犯罪者は奴隷として売買されるんだ。あんた、知らないのかい?」

男「はい…知りませんでした…」

魔娘「…あ!」

男「え?」

425: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:25:45.44 ID:YMePBMp5o
町人「…あの羽と尻尾…淫魔だな。見たところ11,2歳位か?飛べないように羽を切ってあるな」

男「まだ子供じゃないか…」

町人「たぶんこの国に迷い込んだところを捕まったんだろ」

魔娘「ひどい…」

男「…ああいう人型の魔物も売られているんですか?」

町人「ああいうのはめったにないね。10年に一回程度かな?だからいい値がつく」

魔娘 ギリ…

男「金貨50枚か…どうする?」

魔娘「決まってるじゃない!」
  ・
  ・
  ・

426: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:26:11.98 ID:YMePBMp5o
商人C「まいどありい」ニヤニヤ

町人「買っちまったよ…以外と金持ってんだな、あんた達」

男「もうあんまり残ってないけどな」

魔娘「もう大丈夫よ…一緒においで?」

子淫魔 ビクビク…

町人「…で?そいつをどうするんだい?」

魔娘「決まってるわ。連れていくのよ」

男「え?マジで?」

427: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:26:37.88 ID:YMePBMp5o
魔娘「なによ。文句あるの!?」

男「いや、だってさ…」

魔娘「もう決めたの!さ、行くわよ」

子淫魔 ジー

男「ったく…あ、ありがとうございました」

町人「いや…こんな町だけどいいとこもあるんだ。嫌いにならないでくれよ?」

男「ええ…」
  ・
  ・
  ・

428: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:27:04.24 ID:YMePBMp5o
魔娘「どう?この服」

男「かわいいんじゃないか?」

魔娘「じゃあこの服と…」

男「まだ買うのか?」

魔娘「あと2,3着は買うわよ」

男「…もうあんまり金ないぞ?」

魔娘「その時はまた男が稼いでね」

男「やっぱり…」ガクッ

429: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:27:31.08 ID:YMePBMp5o
子淫魔「…ご、ごめんなさい…私を買っちゃったからお金が…」

男「いや、それはいいんだよ。臨時収入があったからね」

魔娘「そうそう。気にしなくていいのよ」ニコッ

子淫魔「でも…」

男「…それより、そろそろさっきの曲がり角に行かないと。船員さん、待ってると思うぞ?」

魔娘「もうそんな時間?じゃあ、行きましょうか」

子淫魔 コクッ

430: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:27:58.57 ID:YMePBMp5o
~待ち合わせ場所の曲がり角~

船員「お、やっと来たね」

男「すいません、お待たせしちゃって」

船員「いいってことさ。…ん?」

子淫魔 コソコソ

船員「…どうしたんだい?その子は?」

魔娘「たまたま奴隷市場で売ってて…」

船員「それで買っちまったのかい?どうするんだよ、そんな魔物なんか連れてたら変な眼で見られるよ?」

魔娘「でも…ほっとけなくて…」

船員「…まあいいや。それじゃ宿に行くよ」

男「あ、はい」

431: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:28:25.83 ID:YMePBMp5o
~宿~

船員「ごめんよ」ギィ…

町人「いらっしゃい…おや?あんた達…」

男「あ、さっきの…また会いましたね」

町人「ああ。俺はこの宿の主人をしてるんだ」

魔娘「すごい偶然ね…」

船員「ここはこの町で一番マシな安宿だよ」

町人「もっといい宿もあるが…値段がうちとは一ケタ以上違うからな」

魔娘「そうなんですね」

432: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:28:51.56 ID:YMePBMp5o
町人「で、部屋はどうする?」

男「あっと…ツインとシングル、一部屋ずつでお願いできますか?」

町人「それなら4人部屋のほうが安いぜ?」

男「あー…けど…」チラッ

魔娘「…いいわ。それでお願いします」

町人「はいよ。2階の手前の部屋だ」チャラン

魔娘「ありがと。さ、行くわよ」

子淫魔 コクッ

男(…大丈夫か?マイサン…)

433: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:29:17.62 ID:YMePBMp5o
~部屋の風呂~

ゴシゴシゴシ

魔娘「さ、お湯をかけるわよ」

子淫魔「ん」

ザバー

魔娘「よく拭きましょうね」ゴシゴシ

子淫魔「…ねえ」

魔娘「ん?なあに?」

子淫魔「お姉ちゃん…魔族?」

魔娘「魔娘でいいわよ。やっぱりわかるのね」

子淫魔「うん…」

434: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:29:45.66 ID:YMePBMp5o
魔娘「…ええ、私は魔族よ。でも他の人には内緒ね?」

子淫魔「うん…でも、なんで人間といっしょに居るの?捕まっちゃったの?」

魔娘「…いいえ。私は自分の意志で男についていってるの」

子淫魔「どうして?」

魔娘「私は…ううん、それはいいわ。それよりあなたはなんで人間に捕まったの?」

子淫魔「私…大人になるために人間の精を吸いに、お姉ちゃんたちと一緒にいっしょにこっちに来て…」

魔娘「…淫魔の“成人の儀式”ね」

子淫魔「うん。でも…途中ではぐれちゃって…転移魔法は使えないから帰れないし…」

子淫魔「それで…小屋の中に隠れてたら人間に見つかって…」

魔娘「それで売られたの?」

子淫魔 コクッ

435: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:30:30.28 ID:YMePBMp5o
魔娘「そうなのね…でも、もう大丈夫よ?」

子淫魔「…ありがとう。でも…お金、いっぱい使わせちゃったでしょ?」

魔娘「そんなの気にしなくていいのよ」

子淫魔「でもお礼しなきゃ…お連れさんのお相手したらいいの?」

魔娘「ダメ!っていうか、男に手を出したら私が許さないわよ!?」

子淫魔「う、うん…でもどうして?」

魔娘「どうしても!でないと一緒に連れて行かないわよ?わかった?」

子淫魔「う、うん…じゃあ、わたしはこれからどうなるの?」

436: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:30:56.99 ID:YMePBMp5o
魔娘「そうねえ…私達は今、魔界…主王国に向かってるの」

子淫魔「え?」

魔娘「妖精の国も通るから、おうちに帰してあげる。それでいい?」

子淫魔「…おうちに帰れるの?」

魔娘「ええ」

子淫魔「…うぅ…うぇええん…」

魔娘「心配しなくていいの。私達がちゃんとお家まで連れて行ってあげるから。ね?」ナデナデ

子淫魔「ヒック…うぇえええん…」

437: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:31:23.27 ID:YMePBMp5o
~宿の部屋~

子淫魔「スー…スー…」

魔娘「うふふふ。かわいい寝顔…」ナデナデ

男「風呂、上がったよ」フキフキ

魔娘「はーい」

男「…かわいそうにな…まだ子供なのにこんな目にあって…」

魔娘「ええ…」

男「食事の時も『こんなごちそう、食べていいの?』って…どんな物食わされてたんだよ…」

魔娘「想像に難くないわね…」

438: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:31:49.20 ID:YMePBMp5o
男「金の残りは金貨5枚ほど…これで魔界まで行けるのか?」

魔娘「ううん…また途中で稼いでほしいんだけど…」

男「…まあいいけどさ」

魔娘「…男、今夜はこのままこの子といっしょに寝るわね」

男「ああ、俺はこっちのベッドで寝るよ。おやすみ」

魔娘「おやすみ」


439: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:32:15.89 ID:YMePBMp5o
~翌朝~

男「で、今日はどうするんだ?」

魔娘「一刻も早くこの町を出たいけど…まだ買うものがあるし…今日一日滞在するわ」

男「そっか…じゃあ、子淫魔が起きたら町に出るか」

魔娘「そうね。そうしましょう」


440: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:32:42.46 ID:YMePBMp5o
~町中~

魔娘「…ごめんね?」

男「いいって。この先は砂漠地帯だから子淫魔にも氷のローブは必要だし」

魔娘「でも…おかげで今夜の宿代ぐらいしか残らなくって…」

男「…まあ、道具も食料もある程度揃ってるし、何とかなるだろ」

子淫魔「あの…ごめんなさい…」

男「謝るなって。な?」クシャ

子淫魔「う…うん…」

441: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:33:09.22 ID:YMePBMp5o
ワイワイ ガヤガヤ

男「ん?なんかあっちのほうが騒がしいな」

魔娘「何かしらね」

男「ちょっと行ってみる。魔娘たちは先に宿に戻ってるか?」

魔娘「…そうね。厄介なことに巻き込まれても面倒だものね」

男「ん。じゃあ気をつけてな」ノシ

魔娘「男、あなたもね」ノシ

442: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:33:52.99 ID:YMePBMp5o
男「…さて。なにが…あ」

新勇者「---。---。~~~」

男「新勇者様だ…」

男「どこに行くんだろ…なんかすごく高そうな宿に入っていったな」

男「…あれ?そういえばお仲間はどこに?」キョロキョロ

男(ちょっと回り道して帰るか)

443: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:34:20.48 ID:YMePBMp5o
~露天商の市場~

男「ここで見つからなかったら宿に帰ろう…」

ブラブラ…

男「…ん?あれは…僧侶様!?」

僧侶「---。---?」

商人「---!---!!」

男「あ、あの杖を買うのかな?…あ」

僧侶 スタスタスタ

男「どこに行くんだろ?」

444: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:34:46.47 ID:YMePBMp5o
~奴隷市場~

男「…まっすぐここに来たよ、あの僧侶様…」

僧侶「---。---?」

商人「---。---?」

男「…魔牛を買ったみたいだな…っていうか、僧侶様はこの奴隷市場を見てなんとも思わないのか?」

僧侶 スタスタスタ

男「あ、また歩き出した。どこにいくんだ?」
  ・
  ・
  ・

445: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:35:13.30 ID:YMePBMp5o
~広場~

男「…こんな人の少ない広場でなにをするんだろ?」

僧侶「---!---!!」

ヒョオオオオ!!!

魔牛「---!!!」ピシピシピシピシ…コチーン

男「えっ!?」

僧侶「…どうしました?」クルッ

男(うわぁ…氷みたいにつめたい視線だ…)

446: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:35:45.01 ID:YMePBMp5o
男「…な、なにをしてたんですか?」

僧侶「なにって…見てのとおりですが?」

僧侶「新しく買ったこの氷の杖の威力を知りたくて、魔牛で試しただけです」

男「!?」

僧侶「…まあ、値段相当の威力ってところかしら?」ポンポン

男「あ、あの…」

僧侶「…まだなにか?こう見えても忙しい身で…あら?よくみるといいオトコじゃないですか」

僧侶「普段なら質問には答えないのですが、聞きたいことがあるならお答えしますよ?」

447: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:36:31.15 ID:YMePBMp5o
男「…さっき奴隷市場にいましたよね?」

僧侶「ええ。そこの魔牛を買いました」

男「あそこには…人間の奴隷も売っていました。それはどう思いますか?」

僧侶「ふーむ…奴隷とはいえ、さすがに人間で威力を試すのは気が引けますね。これでも神に仕える身ですから」

男(話がかみ合わない…)

男「そうではなくて…奴隷の売り買いについてどう思いますか?」

僧侶「おや?質問の意図がよく分からないのですが…あ、ああ。そういうことですか」

僧侶「つまりあなたは奴隷制度について私の意見を聞きたいと」

男「そ、そうです…」

僧侶「奴隷制度は国に認められた立派な市場です。労働力の売り買いになんら疑問は生じません。これでいいですか?」

男「…」

448: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:37:25.75 ID:YMePBMp5o
僧侶「あなたがなにを期待していたか分かりませんが、私達パーティーの目的は魔王を倒すことです」

僧侶「国の制度云々は私達の目的にはありません。ですのでこのような質問は止めてもらいたい」

男「…」ギリッ

僧侶「また同じような質問をするなら…あなたを敵と見なしますよ?」ジロッ

男「…分かりました。失礼します」クルッ

スタスタスタ

僧侶「…いいオトコなのに反体制派ですか…もったいない…」


449: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:37:56.03 ID:YMePBMp5o
~宿の部屋~

ガチャッ

魔娘「あ、おかえり」

子淫魔「お、おかえりなさい」

男「…ただいま」

魔娘「なんだか暗いわねぇ…ねえ、何があったの?」

男「…実は…」
  ・
  ・
  ・

450: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:38:22.44 ID:YMePBMp5o
魔娘「それで怒って帰ってきたの?」

男「怒るって言うより…情けなくてさ…」

魔娘「なにが?」

男「…シスターは生き物は全て平等だって…そう教えてくれたんだ」

男「そりゃ弱肉強食だからさ、弱いものを強いものが…って言うのは分かるよ?けど…」

男「意思の疎通が出来る魔族とか、同属の人間同士なのに奴隷とか…そんなの平等じゃないだろ?」

魔娘「…そうね」

男「シスターは家畜も家族だって言ってた…だからちゃんとお世話するんだって…でも奴隷はなんで違うんだ!?」

男「シスターも僧侶も、同じく神に仕える身なのに…なんでこんなにっ!!」

451: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:38:56.27 ID:YMePBMp5o
魔娘「熱くならないで、男。あなたがそう思うのは分かるわ」

魔娘(男の価値観はシスターの価値観と同じですものね)

魔娘「でもね…僧侶にシスターと同じものを求めてはダメよ」

男「なんでだよ!」

魔娘「…男、シスターは竜なの。人間じゃないわ」

男「!?」

魔娘「私はさっきあなたが言ったこと、よく分かるわ。だって魔界の教えとそう変わらないもの。ねえ?」

子淫魔 コクコク

452: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:39:40.47 ID:YMePBMp5o
魔娘「きっと元々の教えは魔界の教えとそう変わらなかったはずよ?でも…」

魔娘「人間は自分達の都合のいいように教えを捻じ曲げてる…そんな気がするわ」

男「…賢者様もか?」

魔娘「賢者様はそういうんじゃ無くてもっと違う目でみてる…達観してるっていうのかしら?」

魔娘「だからこその賢者様。そうでしょ?」

男「…」

魔娘「それにね、今回の新勇者パーティーは王様じきじきに集めたって話だったわね?」

魔娘「だったら国の決めたことに反対するわけ無いわ。当然の結果よ」

男「…そっか…」

453: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:40:06.59 ID:YMePBMp5o
魔娘(ようやく落ち着いたみたいね…)

魔娘「じゃあ、さっさと準備をしましょう。明日の朝一番には出発するわよ」

男「え?なんで?」

魔娘「…お金が無いからこれ以上長居するわけには行かないの。わかった?」

男「…わかりました」

魔娘(でもこれではっきりしたわね。新勇者一行とは仲良くなれないわ)


454: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:40:36.67 ID:YMePBMp5o
~翌日・砂漠地帯~

ジリジリジリ…

男「…暑い…」

魔娘「だらしないわねぇ…」

子淫魔「あの…わたしたちは氷のローブがあるから…」

男「…こっちは普通の鎧だっての!」

魔娘「しょうがないわね…ほら」

455: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:41:05.10 ID:YMePBMp5o
男「え?」

魔娘「このタオルを凍らせて首元に巻いてれば大分違うと思うわよ?」

男「そっか。”凍結呪”」カチーン

男「…ひょーっ!つめてー!!」

魔娘「これで幾分かはマシでしょ?」

男「ああ!ありがとな!!」

魔娘(魔法がつかえるんだから、ちょっと考えればすぐ思いつくんだけどねえ…)

456: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:42:23.32 ID:YMePBMp5o
~五日後・砂漠の道~

ザッ ザッ ザッ

魔娘「ねえ…まだなの?」

男「ああ…明日には着くと思う…」

子淫魔 フラフラ

魔娘「…昨日からなにも食べてないから辛いわ…」

男「仕方ないだろ?暑さで傷んじまったんだから…」

ブシューッ!

男「砂の柱!?」

457: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:42:49.42 ID:YMePBMp5o
魔娘「今のなに!?」

子淫魔 コソコソ

男「静かに!ちょっと見てくる」

魔娘「気をつけてね」

男(この砂丘の向こうだったな…)ソロー…

グモモモモ…

「---!---!!---!!」

男(あれは…サンドワームがキャラバンを襲ってるのか?)

458: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:43:16.89 ID:YMePBMp5o
魔娘「どう?」

男「サンドワームがキャラバンを襲ってる」

魔娘「え?どこどこ?」

男「ほら、あそこだ」

魔娘「あ…このままだとあのキャラバンは全滅するわね」

男「どうする?」

魔娘「それは男次第よ。助けられるほどの体力がある?」

男「どうかな…”念動”で動きを止めて”凍結呪”で弱らせてトドメって感じなら何とかなりそうだけど」

459: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:43:43.00 ID:YMePBMp5o
子淫魔「…あのサンドワーム…なんか変」

男「ん?どういうことだ?」

子淫魔「あの…えっと…なんだか追い払おうとしてるみたいなの…」

魔娘「え?…あ、あそこ!巣みたいなのがあるわ!!」

男「え?…あ、ホントだ。じゃあ、あのキャラバンが巣に近づいたから襲ったのか?」

魔娘「だったらあの人たちを巣から遠ざければいいんじゃない?」

男「よし、やってみる!」

魔娘「サンドワームは毒を持ってるから気をつけてね!」

460: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:44:21.30 ID:YMePBMp5o
~キャラバン~

商人「うわっ!うわあああ!!」

従者「こここ、こないでぇええ!きゃあああ!!」

グモモモモ

ドォオオオン…ピタッ

商人「うわああ…あ?う、動きが止まった…」

男「あの砂丘の向こうに逃げろ!急げ!!」

461: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:44:47.13 ID:YMePBMp5o
商人「あ、あんたは?」

男「そんなの後だ!早く逃げろ!!」

商人「は、はい!!」

ドテドテドテ…

サンドワーム「シューッ…」

男「悪いがちょっとだけ時間を稼ぐぞ。”凍結呪”!」

メリメリメリメリ

サンドワーム「シュッ!」

462: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:45:16.95 ID:YMePBMp5o
男「よし。うまい具合に顔を凍らせたぞ!」

ドドーン ドドーン ドドドド…

男(…ちっ!砂の中に潜った…ヤバイな)

シーン…

男「…どこだ?」

ブシュウウウ!!

男(な!?真下から!?)

男「くっ!…”転移”!!」シュイン

ドドーン…

サンドワーム「シュ?」キョロキョロ

ズルズルズル…

男「…行ったか」

463: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:45:43.02 ID:YMePBMp5o
商人「ありがとうございます!あなたは命の恩人です!!」

男「いやまあ…無事で何よりです」

従者「ホントに助かりましたよ。近道をしようとしたらサンドワームが現れて…」

魔娘「そんなことするから襲われるのよ。ほら、あそこ。サンドワームの巣があるわ」

商人「え?…あ、あそこですか?」

魔娘「そう。だから巣を守るためにサンドワームが攻撃してきたのよ」

従者「なるほど。これからは急いでいてもいままでの道を通ることにしますよ」

魔娘「それがいいわね」

464: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:46:10.27 ID:YMePBMp5o
商人「ところで…あんたたち、見たところ冒険者みたいだけど、どこに行くんですか?」

男「あ、俺達はこの先の砂漠の都市に行くんです」

商人「それは良かった!」

魔娘「なにが?」

従者「我々は砂漠の都市の商人なんです。これから商品を町まで持って帰るところでして」

商人「よろしければ私達のキャラバンとご一緒願えませんか?」

男「え?」

従者「こちらとしてもあなたが一緒だと心強いですし」

魔娘「でも…」

465: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:46:44.96 ID:YMePBMp5o
商人「ん?そちらのお嬢ちゃんは…淫魔かい?」

子淫魔 コソコソ

従者「…魔族も一緒ですか…まあ、いいんじゃないですか?」

魔娘・男「「え?」」

商人「いえね、私達は魔族とも取引があるんですよ。最も、最近は取引量も激減ですけどね」

男「それっていいのか?確か国は魔界との交易は禁止してるはずじゃ…」

466: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:47:26.97 ID:YMePBMp5o
商人「あははは。私ら商人に国や種族の違いなんて関係ないですよ」

従者「魔界のものは貴族の方に高く売れるんですよ。珍しいものですからね」

商人「それに人の手では作り出せないものもありますし。妖精族の光る布とかね」

従者「ですから、私達は魔族だからといっていやがることはないですよ?」

男「それなら…なあ?」

魔娘「…そうね。この子ももうフラフラだし…お願いするわ」

商人「では、参りましょう」

467: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:48:12.12 ID:YMePBMp5o
~砂漠の都市~

男「ここが砂漠の都市か…案外緑が多いな」

魔娘「そうね…もっと埃っぽいのかと思ってたわ」

商人「ははは。この町は枯れることのないオアシスのおかげで潤っているんですよ」

子淫魔 キョロキョロ

従者「それはそうと…ほら、見えてきましたよ。あれが私達の店です」

男「うわあ…」

魔娘「…市場がそのまま入ってそうな大きさね…」

468: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:48:52.53 ID:YMePBMp5o
商人「ははは。まさにそうですね。あの中にいろんな小売り屋が入っているんです」

従者「武器、道具、防具…なんでも揃ってますよ」

男「すごいな…」

商人「後でゆっくりごらんになってください。まずは私の家に…」
  ・
  ・
  ・
商人「ここが私の家です。さ、中へどうぞ」

魔娘・子淫魔・男「「「…」」」

魔娘「…すごい家ね」

商人「いえいえ、大したことはありませんよ」

469: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:49:18.89 ID:YMePBMp5o
~商人の家~

ズラーリ

男「なんか…見たこともない豪華な料理が並んでるんだけど…」

魔娘「すごいわね…」

子淫魔 ゴクリ…

商人「ささ。どうぞ遠慮なく食べてください」

魔娘・男・子淫魔「「「…いただきます」」」

魔娘「あ!これおいしい!!」

子淫魔 モグモグ

男「どれもおいしいです!」

470: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:49:46.10 ID:YMePBMp5o
商人「お口にあったようでなによりです…ところで」

魔娘「…なあに?」

商人「あなた方はどこまで行かれるおつもりですか?よろしければお話していただけませんか?」

魔娘「…私達は魔界に行きます」

商人「魔界に!?なんでまた!?」

男「…シスターが竜に攫われたんです…それで探しに…」

魔娘「それで、この子は魔界の案内役にと思って…」

子淫魔「え?」

魔娘『とりあえずそういうことにしておいて?』コソコソ

子淫魔『う、うん…』コソコソ

471: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:51:15.03 ID:YMePBMp5o
商人「そうですか…大変な旅になりますよ?」

魔娘「承知のうえよ」

商人「…私で力になれることがあったらなんなりとお申し付けください。あなた方は私の命の恩人ですから」

男「ありがとうございます」

商人「あ、それからこれを…」ドサッ

男「…なんですか?」

商人「助けていただいたお礼です。少ないのですが…」

魔娘「なにこれ!?金貨!?」

商人「100枚ほど入っています」

472: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:51:41.88 ID:YMePBMp5o
男「そ、そんなに!?」

商人「私は商人です。商人は商品に見合った金額を提示します」

商人「あなた方は私の命と商品を守ってくれた…それに対する正当な金額です」

男「でも…」

魔娘「…ありがたく頂きます」

男「え?」

473: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:52:09.98 ID:YMePBMp5o
魔娘「男、これは商人さんの気持なの」

魔娘「普通に傭兵を雇えば金貨20枚ってところなのにこの金額よ?ありがたく頂くべきだわ」

商人「そちらのお嬢さんは分かってらっしゃる…商人の才があるようだ」

魔娘「褒め言葉として受け取っておきます」

商人「…今日はお疲れでしょう。今夜はこの屋敷でゆっくりお休みください」

男「ありがとうございます」

474: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:52:59.37 ID:YMePBMp5o
~寝室~

魔娘「天蓋付きのベッドなんて久しぶり♪」

子淫魔「ふかふか~♪」

男「…」

魔娘「どうしたの?」

男「いや…いつもさ、もっと固い寝床で寝てたから落ち着かなくってな…」

魔娘「そうね。安宿のベッドとかテントと比べたら天と地ぐらい差があるわね」

男「すごいなこれ…」

子淫魔「スー…スー…」

魔娘「ふふふ。もう寝ちゃってるわ」ナデナデ

男「ずっと歩きっぱなしだったもんな…魔娘は大丈夫なのか?」

475: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:53:42.24 ID:YMePBMp5o
魔娘「わたしは大丈夫。歩くのにも慣れてきたからね」

男「そうだな。最初の頃はすぐにスライムに変化して俺の鞄の中に入ってたもんな」

魔娘「そうね」クスッ

男「旅を始めてからもう随分経つんだな…」

魔娘「…ねえ、男」

男「ん?」

魔娘「男は魔界に行って…シスターを探すのよね?」

男「ああ」

魔娘「じゃあ…そのあとは?」

男「…へ?」

魔娘「だから…」

476: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:54:12.65 ID:YMePBMp5o
魔娘「…この子を淫魔の町に送っていって、竜の国でシスターを見つけたとして…そのあとは?」

男「シスターを見つけたあとか…まだ何にも考えてねえや。ははっ」

魔娘「そう…」

男「…魔娘はどうするんだ?」

魔娘「え?」

男「魔娘も魔界が故郷なんだろ?家に帰るのか?」

魔娘「…私にはもう帰る家がないの…」

男「え?」

魔娘「私はそっき…叔母の魔法で人間界に…ね?」

477: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:54:39.91 ID:YMePBMp5o
男「なんで…」

魔娘「…私の住んでいたところで暴動があってね、私の身を案じた叔母が私を人間界に避難させたのよ」

魔娘「でも…すぐに迎えに来るって言ってたけど…結局来なかったわ」

男「…」

魔娘「だから…私の家はきっともう無いのよ…」

男「そんなの!行ってみないと分かんないだろ!?」

男「それにさ、ほら…探したけど魔娘の居所が分からなくて迎えに来てないだけかもしれないしさ。な?」

478: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:55:07.78 ID:YMePBMp5o
魔娘「ううん…叔母やお父様だったら私がどこに居てもすぐに見つけるわ」

魔娘「だから…ヒック…だから…」

男「魔娘…」ギュッ

バサバサバサ ホーッ ホーッ…

男「…使い魔だ。ちょっと見てくる」

魔娘「…うん…ヒック」

ホーッ ホーッ

男「ごくろうさん。ほら、干し肉だ」

ハムッ ハムハムッ…

男「ははは。どれどれ?」カサッ

479: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:55:33.44 ID:YMePBMp5o
  男へ

  もう砂漠の都市ですか。大分魔界に近づいたようですね。

  どうですか?二人とも仲良くしていますか?

  辺境の港に着いたらまた使い魔を寄こしてください。

  魔界に行くと連絡できなくなりますから。

  それと…淫魔の子供を買った時は驚きましたが、二人で決めたことなら何も言うことはありません。


  元気で旅を続けてください。

  それでは。

  賢者

480: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:56:00.09 ID:YMePBMp5o
魔娘「なんて書いてあるの?」

男「うん…子淫魔を買ったこと、あんまりよく思ってないかも…」

魔娘「まあ、当然ね。普通に考えたら男の貞操の危機だもの」

男「いや、俺はロリコンじゃないから」

魔娘「分かってるわ。男はどちらかと言うとマザコンですものね」

男「いや、それも違うだろ」

魔娘「じゃあ…シスコン?」

男「違うって!」

481: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:56:26.57 ID:YMePBMp5o
魔娘「…ふふふ」

男「な、なんだよ…いきなり笑いだして…」

魔娘「やっぱり私達は湿っぽいのは似合わないわ。こうしてバカな話をしているほうが私達らしいもの」

男「…そうだな!」

魔娘「じゃあ、そろそろ寝るわね。おやすみ、男」

男「ああ、おやすみ」

482: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:56:52.99 ID:YMePBMp5o
~翌日~

魔娘「…ふぁあ~あ…あら?」キョロキョロ

魔娘「いない…どこに行ったのかしら?」

男「zzz…」

魔娘「ちょっと男、起きなさい」ユサユサ

男「zzz…ん?…zzz…」

魔娘「男、起きて。子淫魔がいないの」

男「ん…ん?…子淫魔が?」ネボケー

483: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:57:19.96 ID:YMePBMp5o
魔娘「そうなの。男、あなた知らない?」

男「いや、俺は今まで寝てたし…」

ガチャ

子淫魔「あ、おはようございます」

魔娘「どこに行ってたの?心配したわよ?」

子淫魔「あ、あの…お腹がすいたので何か食べるものをって…」

男「で、何かあったか?」

子淫魔「あ、はい♪」ニッコリ

男「そうか。なにを食べたんだ?」

子淫魔「…え?それは…その…」チラッ

魔娘「…ははーん…」ピン

484: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:57:46.40 ID:YMePBMp5o
男「ん?どうした?」

魔娘「ううん、なんでもないわ。私達も早く着替えて、朝御飯にしましょ?」

魔娘『口の横に…ついてるわよ』コソコソ

子淫魔『え?…あ、あの…ごめんなさい』コソコソ フキフキ

魔娘『男のじゃ無ければいいわ。それに無茶な吸い方はしてないんでしょ?』

子淫魔『う、うん。溜まってたぶんだけしか…』

魔娘『だったらいいわ。許してあげる』

子淫魔『ホント?』

魔娘『羽を直すのに滋養がいるんでしょ?』

子淫魔『…知ってたんだ…』

男「…なに話してるんだ?」

485: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:58:12.95 ID:YMePBMp5o
~商人の部屋~

商人「…ん?なんだか今朝はスッキリしてるなぁ…溜まっていたものが全部出たみたいな?」


486: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:58:39.73 ID:YMePBMp5o
~食事中~

商人「今日は皆さん、どうされますか?」

男「この町を散策しようかと」

商人「それはそれは。では、私が御案内しましょう」

男「え?それはさすがに悪いんで…」

商人「まあまあ。そうおっしゃらずに」

魔娘「では、お願いします」

商人「はい、こちらこそ。では、私は町を案内する準備をしてきます」

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487: 名無しさん 2013/01/13(日) 23:59:05.91 ID:YMePBMp5o
男「…なあ、商人さんって、なんか動きが軽くなってないか?」

魔娘「そうね…」

従者「あのすっきりとした顔…軽やかなステップ…もしかして…私というものがありながら…」ワナワナワナ

男「おい魔娘…従者さんがすっごい顔になってるんだけど?」

魔娘「ホントね…」

魔娘『…ねえ、何回吸い取ったの?』コソコソ

子淫魔『えっと…さ、3回?』コソコソ