21: 名無しさん 2018/06/03(日)17:18:29 ID:aif
その日の私は、どうも調子がおかしかった。

調子と言っても体調だとかそういうのじゃなくて、なんて言うか、そわそわして落ち着かなかった。

そこにあるはずのものが、欠けている感覚……とでも言えばいいのか

とにかく、原因に思い当たる節も見当もつかないまま、事務所の扉を開けて、いつも通りに挨拶をして………

「あれ加蓮、髪切ったのか?」

「へ?」

出合い頭、プロデューサーさんに怪訝な顔で指摘されて。


引用元: ・加蓮「イモ掘ったら何か食いついてきた」ぷちかれ「ポテエエ」

22: 名無しさん 2018/06/03(日)17:18:49 ID:aif
「いや、随分思い切ったイメチェンだなと思って……加蓮?」

髪? 髪が何かおかしいのだろうか。
そう思って手を触れてみる。

今日の髪型はカントリースタイルのツインテールに巻きを加えた所謂コロネヘアーで、小さい頃からわりとよくこの髪型で過ごしていたのもあってか、個人的には収まりがいい部類だ。

この髪型でソワソワするなんてこと、ないハズだけどな…と触ってみて、違和感。

いや、違和感と言えばもう一つある。

TVが警報音を鳴らしながら臨時ニュースを伝えているのである。

23: 名無しさん 2018/06/03(日)17:20:13 ID:aif
「依然として原因は謎のままですが、突如として発生したこの巨大竜巻は…」


けたたましい警報音と、私の髪の違和感。
もう一度、そこにあるはずのものを撫でようとして、でもやっぱり。

「コロネが………ない…まさか……」


そう。

私のコロネは。


竜巻になっていた。

24: 名無しさん 2018/06/03(日)17:20:36 ID:aif

「それでは現場から中継です。現場の輿水幸子ちゃーん」

ニュースキャスターの合図で中継先へと映像が切り替わる。

聞き覚えがありすぎる名前を聞いたような気もしたが置いておくとして。


○LIVE

フギャー? メガマワリマスネェ?

デスガコノテイドノカワイクナイタツマキデボクガ

ボクガドウニカナルトオモッテイルナラオオキナマチガイデスヨ

ボクハタツマキヨリカワイイデスカラネエ??


「以上、竜巻の内部より中継でした」


どうやら事は一刻を争うらしかった。

25: 名無しさん 2018/06/03(日)17:20:52 ID:aif
「やべえ…やべえよ……このままじゃ…とばされる……」

見れば、プロデューサーさんも顔を青くして震えていた。

当然だ。もしかすればあの竜巻は事務所に接近する可能性だってある。

コロネが落ちたか外れたか、何かの拍子で竜巻になってしまったのだから、現場はこの付近。
少なくとも都内の私の自宅から事務所までの間に落としたことになるわけで。


「とばされる……不始末の責任で……ちひろさんにとばされる……」ガタガタ

いよいよもってのっぴきならない状況だった。

26: 名無しさん 2018/06/03(日)17:21:14 ID:aif
あの竜巻をどうにかする事はできるだろうか。
考えるだけバカげている。
本来風の力はそこらの爆弾など問題にならない威力なのだ。人一人にどうにかできるわけもない。

考えるだけムダ…なのかな
半ば諦めて頬に手をつく。

すると、何かが手に触れた。

「あれ……これ…片方まだ残ってる…」

もう片方のコロネが、所在なさそうにぷらぷら佇んでいた。

27: 名無しさん 2018/06/03(日)17:21:36 ID:aif
「このコロネも、落とせば竜巻になったりするのかなぁ…」


ぼんやり呟いて窓から外を見ると、竜巻は事務所の前まで迫ってきていた。



「あぁ…終わった…俺は飛ばされるんだ……飛ばされてちひろさんにWILDWINDGIRLされてしまうんだ…」

Pさんは涙目でわけのわからないことを言い始めた。

部屋の隅ではぷちかれ達が仲良くハリケーンポテトをかじっていた。

どうせ食べきれないのになぁ、と思っているとすぐに

「ハリケーンポテポ」「ポテテ」

ちょこちょことそのポテトを押し付けに来た。皮肉にも、私のコロネそっくりのポテトである。

28: 名無しさん 2018/06/03(日)17:22:00 ID:aif
「いや……違うか…巻き方が逆じゃん」


そのポテトは私のコロネと巻き方が正反対で、むしろ今竜巻と化した方のコロネと同じ方向に…………


「……あ」

「そう言えば今日のコロネ……右と左で巻き方逆だったっけ……」

「ポテエ?」「ポテテ?」

「うん、アンタ達、お手柄!」

「ポテテテ?」「ポッテー?」「ポーイ!」

キャッキャキャッキャと喜ぶぷち達を尻目に、私は事務所の屋上へ飛び出した。

「待っててよ…あの竜巻、なんとかできるかも…!」

29: 名無しさん 2018/06/03(日)17:22:18 ID:aif
「モットツヨーク モットヤサシークー」

屋上に上がると吹き散らされそうな風の中、元気にユミラウネが歌っていた。

いざとなったらこの子も避難させなきゃいけなかったのだが、あまりの事態に文字通り頭から吹っ飛んでいた。

「けど……これでその心配も、終わりっ!」

ブチッ。
最後一つのコロネを引きむしり、私は。

「いっ………けえええええっ!!」

「イキノコレー」

にこにこユミラウネの応援歌を受けて。

私のコロネは竜巻と化し。

逆回転によって、2つの竜巻は無事、相殺されたのだった。

30: 名無しさん 2018/06/03(日)17:22:34 ID:aif
余談であるが、竜巻に逆回転の竜巻をぶつけてそう簡単に消えるものか、と言われればそれは確かに疑わしくもあるのだけど。

そもそも、あの竜巻は私のコロネなのだ。

コロネが竜巻に変わる世界に、常識など通用しないのである。悪しからず。

31: 名無しさん 2018/06/03(日)17:22:54 ID:aif
「消えました!竜巻が突如として現れたもう一つの竜巻と衝突し……あ、はい、現場から映像が届いています、現場の幸子ちゃん?」


「いやー、まったくカワイくない竜巻でしたねえ、ボクに正面から挑むなんて」

「竜巻にも勝るボクのカワイさ、特番で放送してくれてもいいんですよ、今なら…」

「フフーン!」

「そう、フフーンと………え?」

「カワイイ!カワイイ!フフーン!」

「な、なんですこのちっちゃい生き物は!?」

「フフン」

「も……もしやこれって前代未聞の大発見なのでは……!それもボクに似てこんなにもカワイイ生き物が…」

「そうです、これで特集を組みましょう!題して輿水幸子のカワイさ100本勝…」

ぷつん。

「以上、頭に男性用ブリーフパンツを乗せたカワイイ輿水幸子ちゃんからの中継でした。」

32: 名無しさん 2018/06/03(日)17:23:08 ID:aif
「………増えたね」

「ああ、増えたな、ぷち…」

「乗ってたね、頭に」

「ああ、俺のブリーフだったな……」


おわれ。

34: 名無しさん 2018/06/14(木)17:11:15 ID:MmW
密かに更新しようか企む私