1: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:07:27.438 ID:jgPK6wbcD
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
細野かずえ(20) 女子大生
【奇跡のタロット占い】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
細野かずえ(20) 女子大生
【奇跡のタロット占い】
ホーッホッホッホ……。」
引用元: ・喪黒福造「このタロットカードをあなたにプレゼントしますよ」 女子大生「えっ、いいんですか?」
2: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:09:12.016 ID:jgPK6wbcD
ある日、朝。あるアパート。部屋の中で、ファストファッションに着替える若い女性。
女性が洗面所の鏡に向かい、化粧をしている。彼女は鼻歌を歌い、何か楽しそうな様子だ。
テロップ「細野かずえ(20) 東京平成大学2年」
かずえ(今日は待ちに待った初デートの日だ……)
テレビをつけるかずえ。テレビに映っているのは、朝の情報番組の占いのコーナーのようだ。
テレビ「おうし座のあなた……。今日は何をやっても絶好調!まさに、最高の運気の日です」
「そんなあなたのラッキーアイテムは……」
かずえ(やった!私の星座のおうし座が、今日は絶好調で最高の運気だって!)
(まさに、いいデート日和になりそうじゃん!)
ある遊園地。入り口で待ち合わせをしていた彼氏に会うかずえ。
手をつなぎ、遊園地を歩く2人。このまま、順調にデートが続くかのように見えたものの……。
女性が洗面所の鏡に向かい、化粧をしている。彼女は鼻歌を歌い、何か楽しそうな様子だ。
テロップ「細野かずえ(20) 東京平成大学2年」
かずえ(今日は待ちに待った初デートの日だ……)
テレビをつけるかずえ。テレビに映っているのは、朝の情報番組の占いのコーナーのようだ。
テレビ「おうし座のあなた……。今日は何をやっても絶好調!まさに、最高の運気の日です」
「そんなあなたのラッキーアイテムは……」
かずえ(やった!私の星座のおうし座が、今日は絶好調で最高の運気だって!)
(まさに、いいデート日和になりそうじゃん!)
ある遊園地。入り口で待ち合わせをしていた彼氏に会うかずえ。
手をつなぎ、遊園地を歩く2人。このまま、順調にデートが続くかのように見えたものの……。
3: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:11:13.306 ID:jgPK6wbcD
数時間後。遊園地のカフェの中。テーブルに向かい合い、アイスコーヒーを飲む彼氏とかずえ。
楽しそうな表情のかずえに対し、彼氏は冷めた表情をしている。
彼氏「実は俺、どうしても言いたいことがあるんだ……」
かずえ「ん……?何なの?」
彼氏「俺とお前は、何から何まで価値観が違う。だから、このまま交際をしていてもうまくいかないと思う」
かずえ「で、でも……。付き合いを続けていれば、お互いが分かりあえるはず……」
彼氏「そんなことはあり得ない。だから、お互いが傷つかないうちに別れたほうがいいだろう」
かずえ「え!?それじゃあ……」
彼氏「もちろん、今日限りでお前と別れるってことさ。今までありがとな……」
かずえ「そ、そんなぁ……!!」
そのままカフェを去る彼氏。途方に暮れた表情になるかずえ。席に一人残されたかずえを見つめる他の客たち。
楽しそうな表情のかずえに対し、彼氏は冷めた表情をしている。
彼氏「実は俺、どうしても言いたいことがあるんだ……」
かずえ「ん……?何なの?」
彼氏「俺とお前は、何から何まで価値観が違う。だから、このまま交際をしていてもうまくいかないと思う」
かずえ「で、でも……。付き合いを続けていれば、お互いが分かりあえるはず……」
彼氏「そんなことはあり得ない。だから、お互いが傷つかないうちに別れたほうがいいだろう」
かずえ「え!?それじゃあ……」
彼氏「もちろん、今日限りでお前と別れるってことさ。今までありがとな……」
かずえ「そ、そんなぁ……!!」
そのままカフェを去る彼氏。途方に暮れた表情になるかずえ。席に一人残されたかずえを見つめる他の客たち。
4: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:13:13.028 ID:jgPK6wbcD
遊園地。大勢の一般客たちがアトラクションを楽しむ中、浮いた様子のかずえ。
一人になったかずえがベンチに座り、泣きじゃくっている。
かずえ「ウ……、ウウウ……。ウワアアアアアアア……」
遊園地の中にいる喪黒福造。喪黒は、遠くの方のベンチでかずえが泣いているのを見つける。
かずえの方へ近づき、彼女の隣に座る喪黒。
喪黒「お嬢さん、何か辛い出来事でもあったのですか?」
かずえ「はい……」
喪黒「何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
かずえ「ええ。実は……」
身振り手振りを交え、喪黒に今日の出来事を説明するかずえ。
喪黒「なるほど。突然の失恋……というわけですか。それはお気の毒ですなぁ」
かずえ「はい。私としてはこれ以上なくショックですよ……」
一人になったかずえがベンチに座り、泣きじゃくっている。
かずえ「ウ……、ウウウ……。ウワアアアアアアア……」
遊園地の中にいる喪黒福造。喪黒は、遠くの方のベンチでかずえが泣いているのを見つける。
かずえの方へ近づき、彼女の隣に座る喪黒。
喪黒「お嬢さん、何か辛い出来事でもあったのですか?」
かずえ「はい……」
喪黒「何なら、私があなたの相談に乗りましょうか?」
かずえ「ええ。実は……」
身振り手振りを交え、喪黒に今日の出来事を説明するかずえ。
喪黒「なるほど。突然の失恋……というわけですか。それはお気の毒ですなぁ」
かずえ「はい。私としてはこれ以上なくショックですよ……」
5: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:15:14.410 ID:jgPK6wbcD
喪黒「まあまあ、細野さん。今日の失恋から立ち直ることは可能なはずです」
かずえ「それができればいいんですけど……。まだ心の準備が……」
喪黒「細野さんはまだ若いですから……。人生はこれからですよ」
「あなたのような若い人たちのお力に、少しでもなれたらいいのですが……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
かずえ「ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
かずえ「は、はあ……」
喪黒「失恋も貴重な人生経験の一つなのです。それに、長い人生には波乱の出来事も当然含まれていますし……」
かずえ「でも、今日がこんな日になるとは予想もしていなかったんですよ。何しろ、今日は最高の運気の日なのに……」
喪黒「今日が最高の運気の日とは、一体どういうことです?」
かずえ「ほら……。朝のテレビの占いのコーナーでは、私の星座の運気が最高だったんですよ」
喪黒「そうですか……。ところで、細野さんの星座は?」
かずえ「それができればいいんですけど……。まだ心の準備が……」
喪黒「細野さんはまだ若いですから……。人生はこれからですよ」
「あなたのような若い人たちのお力に、少しでもなれたらいいのですが……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
かずえ「ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
かずえ「は、はあ……」
喪黒「失恋も貴重な人生経験の一つなのです。それに、長い人生には波乱の出来事も当然含まれていますし……」
かずえ「でも、今日がこんな日になるとは予想もしていなかったんですよ。何しろ、今日は最高の運気の日なのに……」
喪黒「今日が最高の運気の日とは、一体どういうことです?」
かずえ「ほら……。朝のテレビの占いのコーナーでは、私の星座の運気が最高だったんですよ」
喪黒「そうですか……。ところで、細野さんの星座は?」
6: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:17:12.399 ID:jgPK6wbcD
かずえ「おうし座です」
喪黒「ほう……。もしかするとあなた、占いを信じやすい性格でしょう?」
かずえ「その通りです」
喪黒「だとすると、血液型占いとかも……」
かずえ「もちろん、信じていますね」
喪黒「分かりました……。そんなあなたのために、ちょうどいいものがあるんですよ」
鞄から小箱を取り出す喪黒。喪黒が小箱を開けると、中には紺色のカードがいくつも入っている。
かずえ「これは……」
喪黒「タロットカードですよ。今から、あなたの近い未来を占おうと思っています」
かずえ「私の近い未来が分かるんですか?」
喪黒「そうです。私が今からやるタロット占いは、『スリーカード』と呼ばれるやり方です」
タロットカードを切り、ベンチの上に3枚のカードを置く喪黒。
喪黒「ほう……。もしかするとあなた、占いを信じやすい性格でしょう?」
かずえ「その通りです」
喪黒「だとすると、血液型占いとかも……」
かずえ「もちろん、信じていますね」
喪黒「分かりました……。そんなあなたのために、ちょうどいいものがあるんですよ」
鞄から小箱を取り出す喪黒。喪黒が小箱を開けると、中には紺色のカードがいくつも入っている。
かずえ「これは……」
喪黒「タロットカードですよ。今から、あなたの近い未来を占おうと思っています」
かずえ「私の近い未来が分かるんですか?」
喪黒「そうです。私が今からやるタロット占いは、『スリーカード』と呼ばれるやり方です」
タロットカードを切り、ベンチの上に3枚のカードを置く喪黒。
7: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:19:13.412 ID:jgPK6wbcD
喪黒「まずは1枚目、過去のあなたを表すカード……。これは『月』の正位置のカードですか」
「不安や迷い……。幻にとらわれていて、周囲や現実が見えなくなっているようですねぇ」
かずえ「え、ええ……。言われてみれば、当てはまっているかもしれませんね」
喪黒「次に2枚目、現在のあなたを表すカード……。これは『塔』の正位置のカードですか」
「予期せぬ災難、崩壊……。突然起きた破局に対し、あなたは為すすべもありません」
かずえ「じゃあ、彼との関係は……」
喪黒「残念ながら、修復不能でしょう。まさに、今のあなたはどん底です」
かずえ「そ、そんな……」
喪黒「しかし……。人間は一度どん底を迎えた後、必ず這い上がるものですから……。元気を出してください」
かずえ「ど、どうも……」
喪黒「そして3枚目、近い未来のあなたを表すカード……。これは『愚者』の正位置のカードですか」
「新たな始まり、無限の可能性……。全てはこれからであり、何を始めるのもあなた次第です」
かずえ「じゃあ、私は……」
「不安や迷い……。幻にとらわれていて、周囲や現実が見えなくなっているようですねぇ」
かずえ「え、ええ……。言われてみれば、当てはまっているかもしれませんね」
喪黒「次に2枚目、現在のあなたを表すカード……。これは『塔』の正位置のカードですか」
「予期せぬ災難、崩壊……。突然起きた破局に対し、あなたは為すすべもありません」
かずえ「じゃあ、彼との関係は……」
喪黒「残念ながら、修復不能でしょう。まさに、今のあなたはどん底です」
かずえ「そ、そんな……」
喪黒「しかし……。人間は一度どん底を迎えた後、必ず這い上がるものですから……。元気を出してください」
かずえ「ど、どうも……」
喪黒「そして3枚目、近い未来のあなたを表すカード……。これは『愚者』の正位置のカードですか」
「新たな始まり、無限の可能性……。全てはこれからであり、何を始めるのもあなた次第です」
かずえ「じゃあ、私は……」
9: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:21:12.257 ID:jgPK6wbcD
喪黒「ひょっとすると、新しい出会いがあるかもしれませんよ」
「新しく出会った恋人とともに、初恋のように純粋に恋を楽しむ……それが、近い未来のあなたでしょうなぁ」
かずえ「本当にそんなことが起きるんですか?」
喪黒「可能性はかなり高いでしょう。タロットカードが示した答えなのですから……」
かずえ「そんなにすごいんですか?タロット占いって……」
喪黒「はい。直感でカードを選ぶことを通じ、自分の第六感で運命を見抜く……。それがタロット占いの特徴なのです」
「だから……。タロット占いというものは、どの占いよりも的中率が高いんですよ」
かずえ「へぇ……。ずいぶん奥が深いんですね。タロット占いって……」
喪黒「数あるタロットカードの中でも、占いの的中率が高いのがこのカードなんです」
「細野さん。このタロットカードをあなたにプレゼントしますよ」
かずえ「えっ、いいんですか?」
喪黒「細野さんの人生のお役に立つのならば、望むところです」
「このタロットカードは、あなたの生き方をいい方へ導いてくれるでしょう」
「新しく出会った恋人とともに、初恋のように純粋に恋を楽しむ……それが、近い未来のあなたでしょうなぁ」
かずえ「本当にそんなことが起きるんですか?」
喪黒「可能性はかなり高いでしょう。タロットカードが示した答えなのですから……」
かずえ「そんなにすごいんですか?タロット占いって……」
喪黒「はい。直感でカードを選ぶことを通じ、自分の第六感で運命を見抜く……。それがタロット占いの特徴なのです」
「だから……。タロット占いというものは、どの占いよりも的中率が高いんですよ」
かずえ「へぇ……。ずいぶん奥が深いんですね。タロット占いって……」
喪黒「数あるタロットカードの中でも、占いの的中率が高いのがこのカードなんです」
「細野さん。このタロットカードをあなたにプレゼントしますよ」
かずえ「えっ、いいんですか?」
喪黒「細野さんの人生のお役に立つのならば、望むところです」
「このタロットカードは、あなたの生き方をいい方へ導いてくれるでしょう」
10: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:23:20.390 ID:jgPK6wbcD
かずえ「あ、ありがとうございます……。このカード、大事に使いますから……」
喪黒「どういたしまして。その代わり、あなたには約束していただきたいことがあります」
かずえ「約束!?」
喪黒「そうです。このタロットカードで占いをするのは、1日に1回のみにしておいてください」
「いいですね、約束ですよ!?」
かずえ「わ、分かりました……。喪黒さん」
夜。アパート。かずえはいつの間にか、自分の部屋に帰っている。彼女の頭の中に、喪黒の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「このタロットカードは、あなたの生き方をいい方へ導いてくれるでしょう」)
かずえ(それにしても、不思議な感じの人だったなぁ……)
喪黒から貰った名刺を見るかずえ。
彼女が喪黒から貰った名刺の裏の白地には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。
喪黒「どういたしまして。その代わり、あなたには約束していただきたいことがあります」
かずえ「約束!?」
喪黒「そうです。このタロットカードで占いをするのは、1日に1回のみにしておいてください」
「いいですね、約束ですよ!?」
かずえ「わ、分かりました……。喪黒さん」
夜。アパート。かずえはいつの間にか、自分の部屋に帰っている。彼女の頭の中に、喪黒の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「このタロットカードは、あなたの生き方をいい方へ導いてくれるでしょう」)
かずえ(それにしても、不思議な感じの人だったなぁ……)
喪黒から貰った名刺を見るかずえ。
彼女が喪黒から貰った名刺の裏の白地には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。
11: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:25:55.786 ID:jgPK6wbcD
コタツに向かい、ノートパソコンを操作するかずえ。パソコンの側には、大学ノートとシャープペンシルがある。
かずえ(なるほど……。タロットカードには、22枚の大アルカナと、56枚の小アルカナがあるのか……)
彼女は、タロットについてネットで検索している。ネットのサイトには、タロットカードの種類が解説されている。
タロットカードの種類について、大学ノートへメモをするかずえ。
東京平成大学。教室内で、経営学入門の授業を受ける学生たち。後ろの方の席に座るかずえ。
教授「テイラーの科学的管理論と、メイヨーの人間関係論の違いは……」
かずえ(果たして、この授業は人生の役に立つんだろうか?私には、そうは思えない……)
(そもそも、今通っている東京平成大学は三流私大なんだから……)
(この大学を卒業しても、ろくな仕事が見つからないのは目に見えてるじゃん)
退屈そうな表情で授業を聞くかずえ。教室内には、居眠りをしている学生や、スマホでゲームをしている学生もいる。
大学ノートを眺めるかずえ。これは、タロットカードの種類についてメモをした例のノートだ。
かずえ(なるほど……。タロットカードには、22枚の大アルカナと、56枚の小アルカナがあるのか……)
彼女は、タロットについてネットで検索している。ネットのサイトには、タロットカードの種類が解説されている。
タロットカードの種類について、大学ノートへメモをするかずえ。
東京平成大学。教室内で、経営学入門の授業を受ける学生たち。後ろの方の席に座るかずえ。
教授「テイラーの科学的管理論と、メイヨーの人間関係論の違いは……」
かずえ(果たして、この授業は人生の役に立つんだろうか?私には、そうは思えない……)
(そもそも、今通っている東京平成大学は三流私大なんだから……)
(この大学を卒業しても、ろくな仕事が見つからないのは目に見えてるじゃん)
退屈そうな表情で授業を聞くかずえ。教室内には、居眠りをしている学生や、スマホでゲームをしている学生もいる。
大学ノートを眺めるかずえ。これは、タロットカードの種類についてメモをした例のノートだ。
14: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:28:12.584 ID:jgPK6wbcD
とある部屋。室内で、液晶テレビを見るかずえら学生たち。テレビの画面には、何かのアニメが映っている。
かずえのモノローグ(私が所属しているサークルは、いわゆる『オタサー』みたいなものだ)
(活動内容はオールラウンドに渡っていて、人間関係のつながりも緩やかだ)
一同が見ているアニメは、中世ヨーロッパ風の世界観のようだ。占い師の老婆が水晶玉で、主人公の勇者を占う。
老婆「おお……。おぬしはどうやら、選ばれたお方のようじゃ……」
老婆の託宣に耳を傾ける主人公。テレビの画面を食い入るように見つめるかずえたち。
アニメを見終わり、部屋を出るかずえたち。女子学生がかずえに声をかける。
女子学生「今度、他の大学のサークルと合コンをやろうと思うんだけど……。細野さんも参加する?」
かずえ「うん……。そりゃあ、もちろん私も参加しようと思ってる……」
大学キャンパスを出て、家路をたどるかずえ。かずえの頭の中に、喪黒の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「ひょっとすると、新しい出会いがあるかもしれませんよ」)
かずえのモノローグ(私が所属しているサークルは、いわゆる『オタサー』みたいなものだ)
(活動内容はオールラウンドに渡っていて、人間関係のつながりも緩やかだ)
一同が見ているアニメは、中世ヨーロッパ風の世界観のようだ。占い師の老婆が水晶玉で、主人公の勇者を占う。
老婆「おお……。おぬしはどうやら、選ばれたお方のようじゃ……」
老婆の託宣に耳を傾ける主人公。テレビの画面を食い入るように見つめるかずえたち。
アニメを見終わり、部屋を出るかずえたち。女子学生がかずえに声をかける。
女子学生「今度、他の大学のサークルと合コンをやろうと思うんだけど……。細野さんも参加する?」
かずえ「うん……。そりゃあ、もちろん私も参加しようと思ってる……」
大学キャンパスを出て、家路をたどるかずえ。かずえの頭の中に、喪黒の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒「ひょっとすると、新しい出会いがあるかもしれませんよ」)
15: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:30:17.010 ID:jgPK6wbcD
2週間後、朝。アパート。タロットカードを切り、1枚のカードをコタツの上に置くかずえ。
かずえ「いつも通り、ワンオラクルで占ってみよう。えーと、今日の合コンは……」
かずえはタロットカードをめくる。
かずえ「これは、『太陽』の正位置……!ポジティブなエネルギーに充ち溢れたこのカードなら……」
「素晴らしい出会いがあるかもしれない!魅力的な人物からプロポーズされるとか……」
夜。居酒屋チェーン店「鳥王子」。
テーブルを囲む大学生たち。テーブルの上には、料理が山のように盛られている。
かずえに、別の大学に通う男子学生――加賀美隆一が声をかける。
隆一「いよぉ、かずえ!久しぶりだな!」
テロップ「加賀美隆一(20) 日東大学2年」
かずえ「あ!隆ちゃん!!」
酒に酔い、話が盛り上がる合コン参加者一同。
かずえ「いつも通り、ワンオラクルで占ってみよう。えーと、今日の合コンは……」
かずえはタロットカードをめくる。
かずえ「これは、『太陽』の正位置……!ポジティブなエネルギーに充ち溢れたこのカードなら……」
「素晴らしい出会いがあるかもしれない!魅力的な人物からプロポーズされるとか……」
夜。居酒屋チェーン店「鳥王子」。
テーブルを囲む大学生たち。テーブルの上には、料理が山のように盛られている。
かずえに、別の大学に通う男子学生――加賀美隆一が声をかける。
隆一「いよぉ、かずえ!久しぶりだな!」
テロップ「加賀美隆一(20) 日東大学2年」
かずえ「あ!隆ちゃん!!」
酒に酔い、話が盛り上がる合コン参加者一同。
16: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:32:39.800 ID:jgPK6wbcD
数日後。BAR「魔の巣」に入店するかずえと隆一。席にいる喪黒。
かずえ「こんにちは、喪黒さん」
喪黒の隣の席に、かずえと隆一が腰掛ける。
喪黒「その様子を見ると……。どうやら、新しい出会いがあったようですなぁ。細野さん」
かずえ「ええ。合コンに参加した場所で幼馴染と出会い、そのまま交際が始まるなんて……」
喪黒「どうです?例のタロットカードの的中率の高さは本物でしょう?」
かずえ「はい。おかげで、私はこのタロットカードに心からハマりました」
「毎朝ワンオラクルで今日の運勢を占うのが、私の日課になったくらいですから」
喪黒「ほう……、そうですか。ただ、私としては、あなたにどうしても忠告しておきたいことがあるのですよ」
かずえ「は、はあ……」
喪黒「時に、占いに頼るのもいいかもしれません。人間は何かと心に弱さを抱えていますからねぇ……」
「しかしながら……。自分の人生は、自分自身によって切り拓いていくものなのですから……」
「従って……。占いの結果は、あくまでも参考程度にとどめておくべきですよ」
かずえ「え、ええ……。十分に承知していますよ」
かずえ「こんにちは、喪黒さん」
喪黒の隣の席に、かずえと隆一が腰掛ける。
喪黒「その様子を見ると……。どうやら、新しい出会いがあったようですなぁ。細野さん」
かずえ「ええ。合コンに参加した場所で幼馴染と出会い、そのまま交際が始まるなんて……」
喪黒「どうです?例のタロットカードの的中率の高さは本物でしょう?」
かずえ「はい。おかげで、私はこのタロットカードに心からハマりました」
「毎朝ワンオラクルで今日の運勢を占うのが、私の日課になったくらいですから」
喪黒「ほう……、そうですか。ただ、私としては、あなたにどうしても忠告しておきたいことがあるのですよ」
かずえ「は、はあ……」
喪黒「時に、占いに頼るのもいいかもしれません。人間は何かと心に弱さを抱えていますからねぇ……」
「しかしながら……。自分の人生は、自分自身によって切り拓いていくものなのですから……」
「従って……。占いの結果は、あくまでも参考程度にとどめておくべきですよ」
かずえ「え、ええ……。十分に承知していますよ」
17: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:34:52.166 ID:jgPK6wbcD
1か月後、朝。アパート。旅行の準備を整えたかずえ。いつもの通り、彼女はワンオラクルでタロット占いをする。
コタツの上に置かれたカードをめくるかずえ。
かずえ「お、『星』の正位置のカードが出た……。明るい未来で、希望が持てる……。よかった……」
新幹線に乗るかずえと隆一。上空は雲ひとつない快晴のようだ。
隆一「かずえー。俺たちの運勢をタロットで占ってみてくれよ」
かずえ「えーーっ!!でも……」
かずえの頭の中に、喪黒による忠告の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒このタロットカードで占いをするのは、1日に1回のみにしておいてください」)
隆一「いいから、やってみろよ」
かずえ「しょうがないな……。じゃあ、ヘキサグラムでやってみようか」
座席に付いたテーブルを開くかずえ。彼女はタロットカードを切り、7枚のカードをテーブルの上に置く。
コタツの上に置かれたカードをめくるかずえ。
かずえ「お、『星』の正位置のカードが出た……。明るい未来で、希望が持てる……。よかった……」
新幹線に乗るかずえと隆一。上空は雲ひとつない快晴のようだ。
隆一「かずえー。俺たちの運勢をタロットで占ってみてくれよ」
かずえ「えーーっ!!でも……」
かずえの頭の中に、喪黒による忠告の言葉が思い浮かぶ。
(喪黒このタロットカードで占いをするのは、1日に1回のみにしておいてください」)
隆一「いいから、やってみろよ」
かずえ「しょうがないな……。じゃあ、ヘキサグラムでやってみようか」
座席に付いたテーブルを開くかずえ。彼女はタロットカードを切り、7枚のカードをテーブルの上に置く。
18: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:38:01.175 ID:jgPK6wbcD
かずえ「えーーと……。1枚目の過去を表わすカードは、『節制』の正位置。これまでの私たちは、控え目な関係……」
「2枚目の現在を表わすカードは、『恋人たち』の正位置。今の私たちは、ラブラブな関係……」
「3枚目の近い未来を表すカードは、『死神』の正位置。うわっ……!そ、そんな……!!」
隆一「気にすんなって。残りの4枚も見ようよ」
かずえ「4枚目の周囲や状況を表すカードは、『戦車』の逆位置。不安に支配されて暴走……」
「5枚目の無意識の願望を表すカードは、『悪魔』の正位置。ドロドロとした欲望が渦巻いているってこと……」
「6枚目の対策を表わすカードは、『月』の逆位置。つまり、幻から覚めて現実を見ろってこと……」
みるみる不安な表情になるかずえ。彼女が7枚目のカードをめくると……。
かずえ「7枚目の最終結果を表すカードは、『世界』の正位置!『世界』のカードは、タロットの中では最高の運気……」
「や、やった!!私たちの恋愛は、見事に成就するんだ……!!」
憂鬱な表情が一転し、ほっとした顔つきになるかずえ。
高速道路を走る高速バス。乗客は3人だ。かずえと隆一に対し、後ろの座席に座る例の男――喪黒が声をかける。
喪黒「細野かずえさん……。あなた約束を破りましたね」
かずえ「も、喪黒さん……!!」
喪黒「あなたは、ワンオラクルをやるのが日課ですよねぇ」
かずえ「え、ええ……。そうですけど」
「2枚目の現在を表わすカードは、『恋人たち』の正位置。今の私たちは、ラブラブな関係……」
「3枚目の近い未来を表すカードは、『死神』の正位置。うわっ……!そ、そんな……!!」
隆一「気にすんなって。残りの4枚も見ようよ」
かずえ「4枚目の周囲や状況を表すカードは、『戦車』の逆位置。不安に支配されて暴走……」
「5枚目の無意識の願望を表すカードは、『悪魔』の正位置。ドロドロとした欲望が渦巻いているってこと……」
「6枚目の対策を表わすカードは、『月』の逆位置。つまり、幻から覚めて現実を見ろってこと……」
みるみる不安な表情になるかずえ。彼女が7枚目のカードをめくると……。
かずえ「7枚目の最終結果を表すカードは、『世界』の正位置!『世界』のカードは、タロットの中では最高の運気……」
「や、やった!!私たちの恋愛は、見事に成就するんだ……!!」
憂鬱な表情が一転し、ほっとした顔つきになるかずえ。
高速道路を走る高速バス。乗客は3人だ。かずえと隆一に対し、後ろの座席に座る例の男――喪黒が声をかける。
喪黒「細野かずえさん……。あなた約束を破りましたね」
かずえ「も、喪黒さん……!!」
喪黒「あなたは、ワンオラクルをやるのが日課ですよねぇ」
かずえ「え、ええ……。そうですけど」
19: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:40:29.974 ID:jgPK6wbcD
喪黒「では、これは一体どういうことですか?」
かずえにスマホを見せる喪黒。スマホの画面には、かずえが新幹線でタロット占いを行う写真が写っている。
かずえ「ああっ!!」
喪黒「私は言ったはずです。例のタロットカードで占いをするのは、1日に1回のみにしておけ……と」
「それにも関わらず……。あなたはワンオラクルに加えて、新幹線内でもタロット占いをしましたねぇ……」
かずえ「す、すみません!!だって、隆ちゃんが頼んだものだから、どうしても……」
喪黒「言い訳はよしてください。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は隆一とかずえに右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
隆一「ギャアアアアアアアアア!!!」 かずえ「キャアアアアアアアアア!!!」
かずえと隆一が乗った高速バスは、枯れ木だらけの林の中を走っている。気がつくと、空は闇夜となっている。
枯れた林の周りには、コウモリが数匹飛んでいる。いくつも錆が浮かび、急に老朽化が進むバスの車体。
かずえにスマホを見せる喪黒。スマホの画面には、かずえが新幹線でタロット占いを行う写真が写っている。
かずえ「ああっ!!」
喪黒「私は言ったはずです。例のタロットカードで占いをするのは、1日に1回のみにしておけ……と」
「それにも関わらず……。あなたはワンオラクルに加えて、新幹線内でもタロット占いをしましたねぇ……」
かずえ「す、すみません!!だって、隆ちゃんが頼んだものだから、どうしても……」
喪黒「言い訳はよしてください。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」
喪黒は隆一とかずえに右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
隆一「ギャアアアアアアアアア!!!」 かずえ「キャアアアアアアアアア!!!」
かずえと隆一が乗った高速バスは、枯れ木だらけの林の中を走っている。気がつくと、空は闇夜となっている。
枯れた林の周りには、コウモリが数匹飛んでいる。いくつも錆が浮かび、急に老朽化が進むバスの車体。
20: 名無しさん 2018/10/15(月) 18:43:34.765 ID:jgPK6wbcD
隆一「なんか薄気味が悪いところだな……」
かずえ「うん……。喪黒さん、このバスはどこを走っているんですか?あっ、喪黒さんがいない!!」
周囲の様子が変であることに気づき、座席を立つかずえと隆一。2人は運転席に向かう。
かずえ「ねぇ、運転手さん。このバス、本当に目的地へ向かっているんですか……!?」
かずえが運転席の方を見ると……。そこには、制服姿のまま白骨化した運転手が座っている。
骸骨となった運転手の手が、ハンドルを動かす。恐怖のあまり、悲鳴を上げるかずえ。
かずえ「キャアアアアアアアアアッ!!!」
とある道の駅の前にいる喪黒。
喪黒「この世には、理性で説明できない人知を超えた力が、どこかに存在していますが……。占いの神秘もその一つと言えましょう」
「そもそも、近代を迎える前は、占いは立派な科学として扱われていましたし……。現代でも、占いを信じる人は後を絶ちません」
「しかし、占いにのめり込み過ぎることは、思考停止につながりますし……。下手をすれば、自分自身を見失う恐れさえもあります」
「結局のところ……。占いに頼るよりはむしろ、自分の頭でものを考え、自分で人生を切り拓くことこそが大事なのかもしれません」
「ところで、細野さんたちは占いの通り、めでたく恋愛が成就しそうですねぇ。ただし、2人の恋はあの世で結ばれるわけですが……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
かずえ「うん……。喪黒さん、このバスはどこを走っているんですか?あっ、喪黒さんがいない!!」
周囲の様子が変であることに気づき、座席を立つかずえと隆一。2人は運転席に向かう。
かずえ「ねぇ、運転手さん。このバス、本当に目的地へ向かっているんですか……!?」
かずえが運転席の方を見ると……。そこには、制服姿のまま白骨化した運転手が座っている。
骸骨となった運転手の手が、ハンドルを動かす。恐怖のあまり、悲鳴を上げるかずえ。
かずえ「キャアアアアアアアアアッ!!!」
とある道の駅の前にいる喪黒。
喪黒「この世には、理性で説明できない人知を超えた力が、どこかに存在していますが……。占いの神秘もその一つと言えましょう」
「そもそも、近代を迎える前は、占いは立派な科学として扱われていましたし……。現代でも、占いを信じる人は後を絶ちません」
「しかし、占いにのめり込み過ぎることは、思考停止につながりますし……。下手をすれば、自分自身を見失う恐れさえもあります」
「結局のところ……。占いに頼るよりはむしろ、自分の頭でものを考え、自分で人生を切り拓くことこそが大事なのかもしれません」
「ところで、細野さんたちは占いの通り、めでたく恋愛が成就しそうですねぇ。ただし、2人の恋はあの世で結ばれるわけですが……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
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