1: SSまとめマン 2010/04/20(火) 00:29:41.92 ID:pqf.Puk0
「デビルメイクライ」シリーズと「とある魔術の禁書目録」のクロスです。

○今までの大まかな流れ

本編 対魔帝編 

外伝 対アリウス&ロリルシア編

上条覚醒編

↓←今ここ

上条修業編(予定)


本編については、ダンテ「学園都市か」で検索すればまとめてくださったサイトが出てきます。

○過去スレ

一スレ目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1267417603/

二スレ目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1269069020/


○有志の方がうpして下さった過去ログ(dat)
ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/88288.zip
pass:dmc


※DMC勢はゲーム内の強さよりも設定上の強さを参考にしたため絶賛パワーインフレ中。
それに伴い禁書キャラの一部もハイパー状態です。

※また、妄想オリ設定が結構入ります。
ダンテ・バージル・ネロの生い立ちやキャラ達の力関係、世界観、幻想殺し等『能力』の正体など。

引用元: ・ダンテ「学園都市か」【MISSION 03】

5: SSまとめマン 2010/04/20(火) 00:49:02.36 ID:pqf.Puk0
―――

常盤台女子寮。

御坂「あが……ぐぐぐ…」
御坂は机の上に広げている冊子と睨めっこをしていた。
荷造りはすでに終わり、任務要項に目を通していた。

辞書程の厚さがある。
とてもじゃないが一晩で暗記できるレベルではない。
前頁に目を通しきれるかどうかも危うい。

しかもその内容。様々な事態への備えなのだろうが、余りにも多岐にわたりすぎている。

規則や報告の仕方等事務的な物から、悪魔との戦闘方法、
奇襲された場合の上条の保護の仕方等のボディガード術、
負傷した場合の応急手当の仕方、
現地で買える食材で作る病み上がりの上条の為のレシピ、
様々な日用品の現地での呼称などなど。

御坂「…むぐ…」
重要そうな物だけを選別して暗記していくが、それでも頭がパンクしそうだ。
だが御坂はここで弱音を吐くつもりは無い。

御坂は上条の保護役なのだ。
上条はこれから困難に立ち向かおうとしている。
この程度で御坂が負けてしまう訳には行かないのだ。

6: SSまとめマン 2010/04/20(火) 00:50:20.97 ID:pqf.Puk0
黒子「…」
自分の机に向かい、ジャッジメントの書類を書いていた黒子が心配そうに御坂を見る。

黒子「お姉さま、少し休まれては?」

御坂「……むむむ…」

黒子「おっっっねえっさま!!!!」

御坂「……へ?」

黒子「少し息を抜かなければ逆に非効率ですの!」

御坂「……そ、そうね…15分くらい休憩するわ」

御坂がふらつきながら椅子から立ち、そのままベッドに進んでうつ伏せに倒れこむ。

御坂「もがー」

黒子がくるりと体を回し、椅子に前後逆の姿勢で座り、背もたれの部分に両腕を乗せる。

黒子「無理はいけませんの!行く前から疲労を溜めてどうするんですの!?」

御坂「うーん……そうだよねぇ」

7: SSまとめマン 2010/04/20(火) 00:52:56.77 ID:pqf.Puk0
上条と同じく、御坂も例のダミーの計画に参加するという事でしばらく学校・寮から離れる事になった。
もちろん関係者である黒子は真実を知っている。

黒子「全く……体調だけは崩してはいけませんの!!向こうでは何が起こるかわかりませんのよ!!」

御坂「……はいはい……ごもっともで…」

黒子「ですから…」

御坂「?」

黒子「わたくしも連れて行ってくださいましぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
黒子がテレポートしてうつ伏せになっている御坂の背中へ飛び掛った。

御坂「うげぇ!!!!ちょっと!!!」

黒子「お姉さまと離れるなんて!!!黒子はぁ!!!黒子はぁあああああ!!!!ほひょぉぉぉぉぉおお!!!!」

御坂「だぁああらぁあああ!!!!」
御坂の体が放電する。

黒子「うぎぃぃぃぃぃ!!!!久しぶりですのおおおおお!!!!」

8: SSまとめマン 2010/04/20(火) 00:56:26.82 ID:pqf.Puk0
数分後。

毛先が少し縮れている黒子が御坂の方を向きながら自分のベッドに腰掛けていた。
御坂はさっきと同じ姿勢で寝そべっていた。

黒子「…離れるどころかあの類人猿と一緒に行くなんて……これは正に試練ですの……」

御坂「えへへへへ…そう…一緒に行くの。あいつと一緒一緒♪」
寝そべり、顔を黒子のほうに向けたまま御坂はニヤニヤする。

黒子「全く……お姉さま。一つ言わせて頂きますの」

御坂「なぁに?」

黒子「あの殿方には修道服を着た方がいますの。お姉さまは気付いておられないようですが、あの関係はどう見ても―――」

御坂「うん。知ってる」

黒子「」

御坂「いいの」

黒子「お、お姉さま…?」

御坂「そりゃ悔しいけど…でもあいつが笑ってくれるなら良いかなって」

黒子「…んまぁ……」

10: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:06:42.25 ID:pqf.Puk0
御坂「それに……確かにあたしはあいつにそういう風に見られてないけど…」

御坂「でも大事に思ってくれてる」

御坂「あの子には負けるけど、でもあたしの事も凄く大事にしてくれてる」

黒子「お、お姉さま……」

御坂「大満足ってわけじゃないけど、それでも充分嬉しいかなって」

御坂「あいつが笑ってくれて、それでその顔が見れるなら何だって良いの」

黒子「なんと……まあ……」

御坂は四六時中上条の事を強く想い続けるあまりある種の境地に達してしまったのだ。
正に『聖女』だ。少なくとも黒子の目にはそう映った。

黒子「素晴らしい……美しいですの…お姉さまが今まで以上に輝いて見えますの…後光が差しておりますの……!!!」
黒子がプルプルと震え始める。

御坂「……でも…諦めたわけじゃないから」

黒子「……ん、んん?」

御坂「隙があったら押しまくるわよ。残念ながら今のところ隙は無いみたいだけど」

御坂「でも一つくらいあるでしょ?何年でも何十年でも待つわよ」

御坂「最後に一緒の墓に入ったほうが勝ちなんだから」
御坂が狡賢そうな笑みを浮かべた。

黒子「……」
黒子の見解は外れていた。
どうやら『聖女』ではなく、メーターが振り切れてぶっ飛んでしまったようだった。

黒子は思った。
どう足掻いても御坂には勝てないと。

―――

12: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:14:10.93 ID:pqf.Puk0
―――

上条宅。

上条「ふぅ~」
風呂から上がり、歯磨きを終えたところだ。

タオルを肩にかけ、バスルームのドアを開けリビングにでる。

白いパジャマを着てもう寝る準備が出来ているインデックスがベッドに寄りかかりながらテレビを見ていた。
芸人が出ているのであろう。賑やかなざわめきがテレビから発せられていた。

禁書「おかえりなんだよ!ちゃんと暖まったかな?」

上条「おう、ほかほかで上条さんは幸せですよ!」

この時期、長時間夜風に吹かれるのはさすがに身に応える。

そのおかげ(?)で家に着いた時、
繋いでいた手がかじかんで中々外れなかったというささやかな事件があった。

上条「さて…」
玄関に向かい、やや大きめのバッグを開ける。
忘れ物が無いかどうか荷物の再点検だ。

上条「…おし……全部あるな」

別に忘れてもトリッシュがいればすぐ戻れるのでどうにかなるだろうが、
無償でお世話になるのだ。できるだけ迷惑をかけたくない。

病院にいた時にステイルから聞いたが、通常のダンテの依頼料は、
僅か数分で終わるような簡単な仕事でも日本円に換算すると最低でも数十万単位らしい。

そのダンテを数週間拘束するなどとんでもない額になる。

13: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:21:05.48 ID:pqf.Puk0
イギリスもネロをアドバイザーとして雇うのに、
学園都市製の最新鋭の戦闘機が数機買える程の金を積んだという。

あのスパーダの一族だ。それでも安いだろう。

ダンテやネロ達は別に金にはこだわり無く、気に入ったらタダでも依頼を受ける。

というかネロは寄付したりフォルトゥナ復興の為に使い、ダンテの場合はレディ等に持っていかれる為、
両者の手元にはほとんど残らない。


だがそこは人間側の、依頼する側の体裁というものだ。
人間にとっての額の多さはその契約の信頼度・重要度を表すものだ。

ましてやイギリスの場合は国家としてのプライドがある。


そんな話を聞いて上条は鳥肌が立ったが、幸いにも今回は報酬無しでやってくれるらしい。
どうやらインデックスのおかげらしいが彼女はあまり詳しくは話してくれなかった。

そんな事で、貧乏・質素倹約が板についている上条は、ダンテとトリッシュにとにかく迷惑をかけないようにと心に決めていた。
それこそご飯仕度や掃除など何でもやるつもりだ。

そして上条のせいで同行するハメになった御坂にもだ。
(御坂は嬉々として行くが)

上条「よし…」
上条は立ち上がり、玄関から離れると机を挟んでインデックスの向かいに座った。

14: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:26:37.87 ID:pqf.Puk0
上条「ふひ~、あちいあちい…お?」
シャツをパタパタと捲り扇ぎながら携帯を開く。
御坂からメールが来ていた。

禁書「とうま~湯冷めしちゃうんだよ~」
インデックスがテレビの方を向きながら気の抜けた声で言う。

顔を見なくても分かる。眠いのだろう。昨日から色々あって疲れが溜まっているはずだ。

上条「へいへい~」
御坂からのメールを見ながら軽い返事をする。

明日からの事についての業務的な内容だったが、
その下の方には、可愛らしい絵文字が使われたまるで旅行に行くようなテンションの文があった。

上条「(あいつ……俺の為にこんなに明るく振舞って……うう…)」
御坂は本当に楽しみなのだが、当然の如く上条は勘違いして受け取った。

上条「ん?」
ふと気付くと、小さな寝息が聞こえていた。

顔をあげると、インデックスが目を瞑っていた。頭がゆらゆらと揺れている。

上条「そうだな……もう寝るか」
御坂に手早く返信し、目覚めのアラームを設定して携帯を閉じて机の上に置いた。

目覚まし時計もあるのだが、明日は絶対に寝坊は出来ない。
上条もそれなりに疲れが溜まっているので、ほっとくと昼まで寝てしまいそうなのだ。

15: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:32:52.18 ID:pqf.Puk0
上条「よっこらせっ……とな」
上条は静かに立ち上がり、テレビの前まで行きくと屈んで電源を切った。

その時だった。

上条「…ッ」

消えたテレビに映った自分の顔。

瞳が赤く輝いていた。
その光はすぐに消えたが、上条はそのままの姿勢で数秒間固まっていた。

上条「……」
インデックスの方を向き、彼女を抱き上げようと膝の裏と背中に手を回した。

上条「……よっと」
立ち上がり持ち上げる。
すんなりと特に重みも無く。

上条「……」
インデックスが軽いのではない。

この感覚は前にも経験済みだ。


上条の腕力が異常に増しているのだ。


上条「…わかってるさ……わかってる…」

16: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:37:07.89 ID:pqf.Puk0
上条はインデックスを静かにベッドの上に降ろし、優しく掛け布団をかける。
そして電気を消した。

カーテンの間から月明かりが差し込み、インデックスの透き通るような白い肌を淡く照らす。

そっとその顔を撫でる。

しっとりしつつハリのある肌。
女の子特有の甘美な香りがほのかにしてくる。

細い首。パジャマの襟の間から鎖骨が見える。

上条「……」
上条はただ見つめていた。
いつもなら思春期男児特有の欲情が湧いてきただろう。
いや、今もその感情が一切無い訳ではない。

飛び掛りたいという下劣な思いも確かにある。

だがそれ以上に。

その感情が脇に簡単に押し退けられてしまうほどに。

上条は彼女の事を『純粋』に『美しい』と思った。
あまりにも美しく、触れると壊れてしまいそうだ。

天使とはこういうのを言うんだろうな と上条は思った。

実際に存在している『天使』ではなく、芸術的概念で言う『天使』だ。

17: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:40:50.24 ID:pqf.Puk0
上条はベッドの脇に座った。
ベッドに軽く肘を付き、インデックスの寝顔を見つめる。

いつものようにバスルームで寝ようと思っていたが、考えが変わった。
できるだけこの『天使』の姿を目に焼き付けておこうと思ったのである。

寝ている女の子を、本人の知らない間に見まくるというのはいただけない。
それは上条の良心にも思いっきり引っかかる。

だが今日だけは。

上条「今日ぐらいは……神サマだって許してくれるさ…」

今日ぐらいはわがままをしてもいいだろう。

インデックスの顔を眺めながら小さな声で呟く。

上条「俺、絶対に戻ってくるからな」

上条「全部…今までどおりに戻る…」


上条「また一緒に笑って」

上条「一緒に泣いて」

上条「一緒にご飯を食べて」


上条「一緒に暮らそうぜ」

18: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:45:57.62 ID:pqf.Puk0
上条「一緒に冒険…いやそれはもうお腹一杯だな」

上条「……平和に暮らそうぜ」

小さな寝息を立てているインデックスに向けて言葉を続ける。

上条「そうだ…俺、言ってないことがあるんだ…」

上条「俺……記憶が無いんだ…」


上条「お前と会った頃の……あの時の俺とは違うんだ…」


上条「……」


上条「…俺」


上条「俺、お前の事が―――」


上条「―――」


上条は言った。
素直な気持ちを。

当然、寝ているインデックスからは反応は返ってこない。

19: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:48:12.09 ID:pqf.Puk0
上条「……ぶっ…はははは」
上条は小さく笑った。

あまりにも卑怯で無様だ。ムードもクソも無い。
それどころか相手は寝ているのだ。

これがネロなら強くストレートに、ダンテならクールにカッコよく、
最高のオーラを放って起きている相手にキメただろう。

上条「……まだまだですね上条さんは…今のはナシで」


上条「戻ったらちゃんと言うよ」


上条「戻ったらな……」


そのまましばらくインデックスの顔をぼんやりと眺め続けた。
そしていつしか眠気が襲ってきて、上条はベッドに顔を突っ伏した。
ほのかなインデックスの香りの中で、上条はまどろみへ落ちて行った。

夜が更けていく。


上条は知らない。知る術がないだろう。

しばらくの後に彼が『戻った』とき。

最愛の少女は彼の言葉を『聞ける』状態では無いという事に。

―――

20: SSまとめマン 2010/04/20(火) 01:49:23.06 ID:pqf.Puk0
今日はここまでです
再開は明日の夜11時辺りから

25: SSまとめマン 2010/04/20(火) 02:20:18.90 ID:pqf.Puk0
>>22
上条修業編の次か、その次あたりなので仰るとおり回収はしばらく後に

>>23
大体1レス五分くらいです

36: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:03:48.09 ID:pqf.Puk0
―――

事務所『デビルメイクライ』の地下のトリッシュの仕事部屋。

薄暗く埃っぽい部屋の壁は全面が本棚で覆い尽くされており、
本棚に入らない書物がその前に平積みにされていた。

あちこちに魔具や魔界の言語が書かれた古めかしい紙、魔導書が無造作に積みあがっている。

人間が入るには余りにも危険すぎる部屋だ。

トリッシュはその部屋の中で、書物の山を漁っていた。
アレイスターに見せたいものがあるのだ。

それはトリッシュが長年研究してきた『人間界』についてのレポート。

トリッシュから見れば、先の寿命の件の他にも人間界にはおかしい点がある。

『力』についてだ。

魔界も天界も全ての世界は元は同じ『種』から成長した。
だがなぜ人間界だけ、人間界に住まう者達だけがこんなにも非力なのか。
数多の世界があるが、その弱さはダントツの最下位だ。

そういう法則が元からあったとしても余りにも弱すぎる。
まるで『何か』によって強引に押さえつけられているような感じだ。

そしてその『何か』の拘束は、2000年前の魔界による侵略防がれた直後から更に強まった気がする。
そう、天界からあの『神の子』が降りてきた時期から。

37: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:09:53.35 ID:pqf.Puk0
『天界』がこの件に何らかの形で関っているかもしれない、とトリッシュは思った。
魔界と比べればその力は小さいが、一癖も二癖もある油断できない勢力だ。

神として降り、信仰を集める。更には力を垂れ流し、人間はそれを『魔術』と称して使っている。
フォルトゥナ等魔界から力を引き出している人間達もいるが、天界の場合は自らが進んで放出しているのだ。

なぜ天界の神々はこんなに人間界に関っているのだろうか。

そしてなぜ。

人間界そのものの『神』はいないのだろうか。

魔界には魔帝をはじめ何人もの『神』が歴史上登場した。
天界なんか今でも多数の『神』が乱立している群雄割拠だ。

魔界の神も天界の神も、元々は熾烈な競争を這い上がってきた強者だ。

ではなぜ『人間』の中からそういう者が這い上がって来ない?

なぜ人間界から『神』は生まれない?

なぜ人間界そのものの『力』が使えない?

38: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:13:36.02 ID:pqf.Puk0
トリッシュはダンテと共に人間界に住まうようになってからその異常な点に気付いた。
そしてしばらく調べてみたものの、疑問を解決する手がかりはないまま月日は過ぎた。

いつしか『学園都市』、『超能力』という言葉を耳にするようになったが、
それも天界の力を行使する魔術の一種だろうと思っていた。

二ヶ月前までは。

だが実際にその力を目の当たりにし、自分の予想が外れていたことが分かった。

彼等の『能力』は天界でも魔界のものでもない、全く別の力だった。

そしてトリッシュの頭に一つの説が浮かんだ。
この『能力』こそが『何か』によって押さえつけられていた人間界そのものの『力』の一部ではないのか? と。

そして能力について調べ始めた結果、
『魔術』は『能力者』に対抗する為に構築された、『能力』と『魔術』を同時に見に宿すと肉体が破壊される、
と言われているらしい事がわかった。

トリッシュは思った。やはり天界の曲者共が何らかの形で関っているかもしれないと。
トリッシュは天界の事が嫌いだ。

中にはそれこそ人間に崇拝されるに相応しい良心的な者達もいるが、大半は自らの権力の拡大に固執している。

それも魔界のように潔い力と力の正面衝突ではなく、姑息でセコイ手段を使ってだ。

ついこの間、天界の一部の者達ととある人間達の教団がジュベレウスを復活させようとしたが、それでも纏まらなかったのだ。

そんな天界が人間界に何らかの形で関っているとしたら。
そしてそれが人間を虐げるものならば。

『デビルメイクライ(こちら側)』としては黙っているわけには行かない。

39: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:18:29.63 ID:pqf.Puk0
トリッシュ「あった」

トリッシュが書物の山から一枚の古めかしい紙を引っ張り出した。
魔界の言語だが、アレイスターなら大体はわかるだろう。

全部読んでもらわなくてもいいのだ。

トリッシュがその人間界の『謎』に気付き意識しているというのを伝えられればいい。

言葉で喋るのも良いが、こうして実際の研究資料を直接見せたほうがインパクトがあるだろう。
こちらの本気度がわかるはずだ。

あの男は恐らくこの謎の答えを知っているはずだ。

そしてあわよくばもっと情報を得ることが出来るかもしれない。
力ずくで吐かせる事もできるが、相手は学園都市のトップだ。人間の社会的に少しマズイ。

トリッシュ「ふふ…」
トリッシュは小さく笑った。

計画に無かった思いつきの行動だが、それもまた楽しい物だ。
トリッシュだってダンテ程ではないがたまには思いつきで行動することもある。

あのアレイスターがどんな反応をするか。

人間の反応を見るのは面白いのだ。

トリッシュ「さて、『坊や』、今行くからね」

その古い紙をひらひらさせながらトリッシュは黒い円に沈んでいった。


―――

40: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:22:29.09 ID:pqf.Puk0
―――


バッキンガム宮殿の一室。

薄暗い質素な部屋に、神裂、ネロ、最大主教、そして女王エリザードがいた。

この埃っぽい部屋は女王がいるにはあまりにも相応しくないが、何百年も前から王室が使っていた秘密の場所である。
結界が何重にも張られ、いざという時のシェルターでもあるのだ。

中央に大きな机があり、上座に女王が座していた。
その右側に最大主教が座り、神裂は下座の方に立っていた。
ネロはドアの横の壁に寄りかかっていた。

神裂は先日の『謎の襲撃者』について報告していた。

世界最高峰の魔術的要塞である聖ジョージ大聖堂に易々と侵入し、
そして天使化していなかったとはいえ、この神裂を圧倒した女だ。

目的はわからない。

トリッシュの提案で、この件は保留する事となった。
今現在、イギリス国内の悪魔掃討、そして例の『覇王』の事件の調査で手が一杯なのだ。

実際に戦った神裂は、これ程の新たな脅威を放置するのは納得しづらかったが、
この目の前にいるイギリスのトップ二人がトリッシュの案に同意した為従うしかない。

42: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:26:53.23 ID:pqf.Puk0
エリザード「ふむ……お主の刀を見て退いたのか」

神裂「はい」

最大主教「ネロ殿。どう思いになりける?」

ネロ「……」
実はまだ、魔具と化した神裂の七天七刀の『親』がバージルだということは誰にも言っていない。

言うか迷ったが、先にトリッシュやダンテに言った方がいいだろう。
この場は適当に流すを事にした。

ネロ「さぁな」
ネロは軽く首を傾けて肩を竦めた。

エリザード「お主でもわからぬか……」

エリザード「ご苦労。戻ってもいいぞ」

神裂とネロがドアの方へ向く。

ネロが木製の分厚いドアを開け、レディファーストで神裂を先に行かせた。
そして自分も出ようとした時。


最大主教「ネロ殿。そなたにはもうしばし話がありけるのよ」

ネロ「あ?」

43: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:30:15.88 ID:pqf.Puk0
エリザードが扉の向こうの神裂に合図をする。

その意味を悟った神裂は部屋から離れ廊下を進んでいった。
ネロが扉を閉める。

ネロ「秘密の話ってか?何だってんだ?」
ネロがめんどくさそうな表情でエリザードへ目を向けた。


エリザード「『自動書記』についてだ」


ネロ「なんだそりゃ?」

最大主教「禁書目録の自動防御及び制御魔術でありけるの」

ネロ「で?」

エリザード「それの遠隔制御霊装がの」


エリザード「四日前の深夜に強奪されてな」


ネロ「……」
四日前の晩、つまり例の覇王の事件の時だ。

44: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:34:39.10 ID:pqf.Puk0
エリザード「あの混乱を利用されたのだ」

神裂・ステイル・ネロは人工悪魔と不完全ながらも現出した覇王と戦い、シェリーは北部で上条達を保護、
バッキンガム宮殿を守っていた騎士団長ら騎士の精鋭部隊は王室の避難に付き添った。

戦力が分散し、一時的にバッキンガム宮殿の防備が手薄になったのだ。

ネロ「どういう物なんだそれは?」

エリザード「その名の通り、禁書目録の自動書記を遠隔操作できる。つまり禁書目録の行動を制御できるのだ」

最大主教「そして禁書目録内の『記録』も引き出せる事が可能でありけるのよ」

エリザード「もちろん、フォルトゥナ製の『魔界術式』の魔導書もな」


ネロ「へぇ……犯人は?」


最大主教「それが分かりけるなら苦労はせぬの」


エリザード「だから今、全力で調べているのであろう」


ネロ「……なるほどね」

強大な力がある者が襲撃してきたにもかかわらずその件を保留し、
未だに手がかりがつかめない、特定できそうも無い、
四日前の事件の黒幕探しに全力を注いでいるのはその為だろう。

45: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:40:13.44 ID:pqf.Puk0
エリザード「ウィンザーに残留していた力と、宝物庫に残留していた力が完全に一致したのだ」

最大主教「同一犯、もしくは同組織の犯行」

ネロ「神裂達には教えねえのか?」

最大主教「ふふ、色々事情がありけるのよ」

最大主教がイタズラ好きそうな笑みを浮かべる。
彼女は結構な歳だが、見た目は『かなり容姿の整った18歳』だ。

だがそんな可愛らしさもネロには逆効果だった。

ネロ「……(好けねえババアだ)」

エリザード「これは最高機密だ」

ネロ「……で、俺に手伝えと?」

エリザード「うむ。手を貸して欲しい」

ネロ「悪魔掃討はどうする?」

エリザード「もちろん、平行して」


ネロ「チッ……」

どうやら更に忙しくなるようだ。
だが断るわけにも行かないだろう。

イギリス側は最後の頼みの綱としてネロに頼んでいるのだろう。
国内の仕事がおろそかになる危険を知っていながらだ。

46: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:43:58.04 ID:pqf.Puk0
エリザード「現状を見る限り、まだ使用されてはいないようだ」

エリザード「だが盗って行ったからにはいずれ使う気なのは間違いない」

ネロ「だろうな」

最大主教「よきかしら?」


ネロ「……良いぜ。その依頼も受けてやる」


エリザード「当然、報酬は上乗せする」

ネロ「別にいらねえよ。その金でウィンザーの街でも直すんだな」

エリザード「それはありがたい」

エリザード「後々、そうだな……明日辺りからでも動いてもらおうぞ」

ネロ「……OK」

ネロはそっけなく返事をしながら二人に背を向け、扉を乱暴に開けて出て行った。


―――

47: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:47:00.39 ID:pqf.Puk0
―――

窓の無いビル。

アレイスター「……」

水槽の前5m程の所にトリッシュが立っていた。

アレイスター「何の用だ?世間話しにきたのではないだろう?」

トリッシュ「ええ」
トリッシュがニヤリと笑い、右手に持つ紙を顔の横にあげる。

アレイスター「何だそれは?」

トリッシュが無言のまま笑みを浮かべ、水槽の方へ歩いていく。
そしてアレイスターが読めるように、逆さまに紙を水槽に押し付けた。


アレイスター「…………」


トリッシュ「へぇ……」

人間なら気付かないだろう。

だがその紙を見た瞬間。

アレイスターの心拍数があがり、僅かに彼の心がブレたのをトリッシュは察知した。

48: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:50:43.09 ID:pqf.Puk0
アレイスター「………」

トリッシュ「どう思う?私間違ってるかしら?」

アレイスター「……そこに気付くとは……さすがだな」

トリッシュ「ありがと」

アレイスター「……」
トリッシュは一体どこまで知っているのだろうか。
なぜこのタイミングなのか。

そして。

アレイスターの目的に感づき始めているのだろうか。

全てを見通す彼の目でも、トリッシュの真意は見えなかった。
彼女はただ不気味に笑っていた。

49: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:55:10.32 ID:pqf.Puk0
トリッシュ「あら、かわいい顔するじゃないの。あなたもやっぱり人間ね」

アレイスター「……」

このタイミングでこれを伝えるか。
この金髪の妖艶な女が何を考えているのかわからない。

これ以上関らせるのを阻止する為に、上条当麻の学園都市外への『連れ出し』を却下することもできる。

だがそんな事をしたってどの道彼らは易々と連れ出してしまうだろう。
彼らが はいそうですか と悪魔化している上条をほおっておくはずも無い。

なにせ上条の体の中の力はあのベオウルフのものなのだ。
そこらの雑魚悪魔ならまだしも、大悪魔レベルとなれば彼らとしても黙って見ているわけにはいかないだろう。

わざわざアレイスターに許可を求めに来たこと自体がかなり良心的なのだ。

アレイスター「……」

慎重に言葉を選ばなければならない。
この場での選択を間違えば、最悪プランが完全に瓦解する可能性がある。

元々悪魔達の思考など予想がつかない。
似た部分は多くあれど、根本的なところが全く別物だ。

50: SSまとめマン 2010/04/20(火) 23:58:33.50 ID:pqf.Puk0
アレイスター「……何が知りたい?」

トリッシュ「そうね…」
トリッシュが小首を傾げ、色っぽい半目をアレイスターに向ける。

トリッシュ「じゃあ、今の私の考えを簡単に述べるから、よかったら添削して?」

アレイスター「……話せ」

トリッシュ「寿命。あれは人為的なモノ。人間界の外の『誰かさん』が作った」

トリッシュ「人間の魂は固く繋がれ、生死の『運命』は外部から操作されている」

トリッシュが両手を広げてアレイスターの返答を促す。

アレイスター「……続けて」

トリッシュ「そしてそれと同時に人間界の真の姿が隠蔽されつづけている。今の人間界の姿は偽物」

アレイスター「……」

トリッシュ「『能力』は『それ』が僅かに溢れ出てきたもの。つまり人間界そのものの力」

トリッシュ「で、『誰かさん』はそれを処分するために能力の無い人間に力を与え、『魔術』として行使させた」

トリッシュ「それでしばらくは安定していた」

アレイスター「……」

51: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:03:32.39 ID:gOAfcgs0
トリッシュ「でも月日が流れ、人間が『科学』を手にした時、その安定は覆された」

トリッシュ「『とある人間』がその『科学』を使って能力者を人工的に増やしたから」
トリッシュがアレイスターの目を真っ直ぐ見つめる。

トリッシュ「『誰かさん』達は人間がここまで頭を使える種族とは思っていなかったみたいね」

トリッシュ「そしてその『人間』は徐々にその力を引き出し強め、範囲を広げていっている。『AIM拡散力場』と呼んで」

トリッシュ「で、その『人間』の目的は?」

トリッシュ「戦争?」

トリッシュ「報復?」

トリッシュ「力を解放して己が人間界の神になる?」

トリッシュ「人間界を新しく作り直す?」


トリッシュ「それとも人間達の魂の解放?」


トリッシュ「どう?」

アレイスター「……言う事は無い」
それは間違っている部分が無いという意味か、それとも何も教えないという意味か。

トリッシュ「……」

52: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:07:40.66 ID:gOAfcgs0
アレイスター「少し補足を付けてあげよう」

トリッシュ「あら。嬉しいわね」

アレイスター「スパーダがやってくる遥か前、人間界にも『神々』や『天使』がいた」

トリッシュ「……」

アレイスター「人間界の中にも『天界』と呼べる層が存在していたのだよ。魔界での魔帝の『玉座の界』のようにな」

トリッシュ「……」

アレイスター「ある時、彼らは不意をつかれ『奴等』によってその『界』ごと封印された」

アレイスター「『神』はバラバラにされ、『天使』は『器』を砕かれた」

アレイスター「その時から人間界は力の根源を失ったのだ」

アレイスター「そして侵略者の『奴等』が入れ替わりに『神』と称して降臨し、人間達の魂を『鎖』に繋いだ」

トリッシュ「そんな事があったのね」

アレイスター「当時の出来事は人間の歴史から抹消された」

トリッシュ「へぇ」

アレイスター「ふん、こんな辺境の小さな世界など魔界は一切意識してはいなかっただろう」

アレイスター「それに君達は多くの世界を滅ぼしている最中で忙しかっただろう?」

トリッシュ「ふふ、そうね」

53: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:10:24.93 ID:gOAfcgs0
アレイスター「だがその『界』と『力』が失われたわけでは無い」

アレイスター「事実、『力』は能力として現出している。そして『神』や『天使』達も死んではいない」


アレイスター「私はその『天使』の一人と会った」


トリッシュ「……へぇ…私も会いたいわね」


アレイスター「そう簡単に会わせる訳にはいかないよ。こちらも色々事情があるのでな」

実はもしかしたら二ヶ月前に人間界側の戦力として
動員されていた可能性があったのだが、それは言う必要は無いだろう。

アレイスター「……今言えるのはここまでだ」

トリッシュ「いいわ。面白い話聞かせてくれてありがとうね」
トリッシュは紙を丸め、それを顔の横で軽く振った。

トリッシュの足元に黒い円が浮かび上がった。


アレイスター「待て。こちらも聞きたいことがある」

54: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:13:08.05 ID:gOAfcgs0
トリッシュ「何?」


アレイスター「なぜスパーダはこれを黙認していたのだ?」


スパーダは人間の味方だ。
ではなぜ魂が虐げられ自由を失っていた人間達を解放しようとしなかったのか。

彼程の力なら解放することはできただろう。


トリッシュ「さぁ」

アレイスター「君でもわからないのか」

トリッシュ「スパーダが何を思っていたのかなんて彼自身にしかわからないわよ」

アレイスター「……」


トリッシュ「でもただ一つ言える事は」


トリッシュ「彼が愛したのはその時の『力なき弱き人間達』だったってことね」

55: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:15:34.49 ID:gOAfcgs0
アレイスター「……」

トリッシュ「もし人間界が力を失ってなかったら」

トリッシュ「彼の心を揺さぶる事は出来なかったかもしれないわね」

アレイスター「……最後にもう一つ」

トリッシュ「どうぞ」


アレイスター「私の目的。その答えを知りたくは無いのか?」


トリッシュ「知りたいわよ」

アレイスター「ではなぜそこを直接聞かない?」

トリッシュ「だって、楽しみじゃない?」


トリッシュ「人間が懸命に足掻いて自分自身の力で立ち上がる姿はイイ物よ」


トリッシュ「その目的がどうあれね。それはあなた達『人間の歩み』なんだから」

56: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:18:30.31 ID:gOAfcgs0
『人間の歩み』。

その歩みに『外』からの意思が関与しているのならばダンテ達は介入するだろう。
だがこれは人間自身が決めた行動だ。

『今のところ』はダンテ達が割り込む余地は無い。

ダンテ達は人間同士の戦争などにも介入しない。
その行動目的が悪意であろうと、当事者が人間である限りそれは『人間の歴史』だ。

それもまたダンテ達が守るべき人間の一面なのだ。


アレイスター「……」

トリッシュ「ま、楽しみにしてるわね」


トリッシュ「でも」


だが『今のところ』だ。


トリッシュ「『見てる』からね。常に」

57: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:21:13.49 ID:gOAfcgs0
この件は人間界だけの問題では無い。
いずれ『外』とも摩擦を起こすだろう。

アレイスター「……」


トリッシュ「じゃあね」
トリッシュが笑みを浮かべながら黒い円に沈んでいった。


アレイスター「……」

果たしてダンテ達が敵となるか味方となるか、それとも最後まで傍観するのか。
その時になってみなければわからない。

アレイスターにも予測できない。

だが彼は止まるつもりは無い。
もし刃を交えなければならなくなったら。

全力で戦うまでだ。
勝ち目が無くてもだ。

それが全てを捨て、この道を信じ進んだ彼の信念だ。

―――

58: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:23:06.06 ID:gOAfcgs0
―――

翌日の正午ちょうど。

とある病院の会議室。

ここに上条、インデックス、ダンテ、御坂、そして一方通行と土御門がいた。
上条は大きなショルダーバッグを肩に掛け、御坂は彼女の体に似合わぬほど大きなキャリーバッグを脇に置いていた。

インデックスは着替え等が入った小さなバッグを持ちながら上条の隣に立ち、
ダンテはソファーに寝そべり小さな寝息を立てていた。

上条はそんなダンテを見て少し面白かった。
あのダンテがこんなに可愛らしい寝息を立てるとはかなりギャップがある。

まあ、逆に豪快なイビキをかくのもなんか似合わない気がするが。

別のソファーには一方通行と土御門が座っていた。

土御門はアレイスターの代理として見送りに立ち会うことになったらしい。
インデックスはこの後そのまま一方通行と共に行動する手はずになっている。

上条「……」

落ち着かない。
旅行に行く直前の、空港で飛行機を待っているような感覚だろうか。

隣にいるインデックス、そして近くにいる御坂もそわそわしているのが分かる。

60: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:27:07.77 ID:gOAfcgs0
禁書「とうま……」
インデックスが上条の袖を引っ張る。

上条「な、何だ?」
上条はインデックスの顔をぎこちなく見下ろした。

少し照れくさいのだ。
あのままベッドの脇で突っ伏したまま寝てしまい、朝起きた時はなんとインデックスが彼の頭を抱きしめていたのだ。

その前の晩は少し自分のわがままを許したが、さすがにこの朝の件のレベルまでは無理だった。
上条は動揺しながらすぐに跳ね起きた。

幸いな事にインデックスは起きなかった。

果たしてインデックスはそれを知っているのだろうか。
寝てるままの無意識でそうしたのか、それとも一度起きてそうしたのか。

上条にそれを聞く勇気は無かった。

禁書「電話するんだよ」

上条「お、おう、毎日するぜ」

そんな二人の会話(主に上条)を見ながら、
御坂は一見すると穏やかだがどこかに陰のある笑みを浮かべていた。

御坂「(……あたしは一緒に行ける。あたしは一緒に行ける。だから悔しくないだから悔しくない)」

61: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:32:02.20 ID:gOAfcgs0
土御門「……最近随分とお熱いぜよ、あの二人」
土御門が隣に座っている一方通行を肘で突きながら呟く。

一方「知ッたこッちゃねェよ」

土御門「手出すなよ?」

一方「死ね」

土御門「まぁ、お前にすればちょっと成長しすぎか。心配ないにゃーかみやん」

土御門「それにこいつには愛しい愛しいラストオーダーちゃんもいるから大丈夫だぜよ」

一方「テメェいつかマジで殺してやる」


そうやってしばらく適当に時間を潰していると、
部屋の中央に黒い円が浮き上がりトリッシュが現れた。

トリッシュ「揃った?行くわよ」

一方通行と土御門が立ち上がり、
インデックスと上条、そして御坂が緊張のせいか特に意味も無いが姿勢を正した。

トリッシュ「……」

相変わらず寝息を立てて安らかに眠っているダンテにトリッシュは視線を落とす。
そして歩いて近付きソファーを強く蹴った。

62: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:35:49.30 ID:gOAfcgs0
ダンテ「……んぁ……」

トリッシュ「起きなさい。時間よ」

ダンテが髪を掻き上げながらかったるそうに上半身を起こす。

ダンテ「……時間かッッッ……ぁぁぁあ」
そして体を伸ばして大きな欠伸をした。

土御門がトリッシュの方に向かう。

土御門「かみやんの事頼んだぜよ。規則は守ってな」

トリッシュ「ええ」

土御門「なあ、聞いていいか?アレイスターに何か言ったか?」

先ほどアレイスターの所に呼ばれたとき、彼は見るからに不機嫌だった。
感情の欠片すら今まで見せてこなかったアレイスターが、眉間に皺を寄せてしかめっ面をしていたのである。

あんな顔を見るのは初めてだ。

トリッシュ「さぁ」
トリッシュは軽く流した。心当たりは大有りだが。

土御門「そうか……まあいいぜよ」

土御門は上条の方へ向いた。

土御門「かみやん」

上条「おう」

63: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:39:41.82 ID:gOAfcgs0
土御門「頑張るんだにゃー」

上条「ああ」

土御門「できれば俺にも毎日電話欲しいにゃー」

上条「そ、そうか……いいぜ!」

土御門「……冗談だぜよ。かみやん緊張しすぎだにゃー!」

上条「あは、ははははは…」
上条がばつが悪そうに苦笑いする。

土御門「まあ、インデックスは任せるんだにゃ。24時間とはいえないが、俺も見張るぜよ」

上条「そいつは頼もしいぜ!!ありがとな!!」


土御門「『膜』もしっかり守るにゃー。あのロリコンにはやらねえぜよ」


上条「ぶッ!!!バカッてめぇ!!!!!い、いらねぇよ!!!い、いや、違う!!そ、それはマジで困る!!!」

上条「い、いやいや!!!ち、違う!!!そういうことじゃなくてな!!!ぁああ!!!!」
上条が手を激しく動かしながら動揺する。

何のことを言っているかわからないインデックスと御坂はキョトンとし、
一方通行は額に青筋を浮かび上がらせていた。

トリッシュとダンテはニヤニヤしながら生暖かい目で上条を見ていた。

土御門「はっは~落ち着くにゃ。ちょっとからかっただけだぜよ。ほら、体がほぐれただろ?」

65: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:45:05.07 ID:gOAfcgs0
上条「…………………………はぁ……」
緊張は確かに無くなったが、逆に力が抜けすぎてしまった。


トリッシュ「さて、禁書目録」

一方「おィ」
一方通行がインデックスに顎でこっちに来いと合図をする。

インデックスが上条の正面に行き、顔を見上げた。

禁書「……」

上条「アクセラレータ」

一方「あァ?」

上条「頼んだぞ」


一方「チッ……俺を誰だと思ッてやがンだァ?」


一方「サッサと済ませて帰ッてこィや三下ァ」


上条「おう!」

66: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:47:38.13 ID:gOAfcgs0
ダンテとトリッシュが上条と御坂の方へ向かい、二人を挟むように並ぶ。

禁書「トリッシュ」

禁書「短髪」


禁書「ダンテ」


インデックスが順に三人の顔に目を向けていく。

トリッシュ「ええ」

御坂「う、うん」



ダンテ「任せろ。お嬢ちゃん」



インデックスが再び上条の顔を見上げた。

上条「大丈夫だ」

禁書「……絶対に戻ってくるんだよ」

上条「おう」

67: SSまとめマン 2010/04/21(水) 00:51:27.61 ID:gOAfcgs0
禁書「……約束して」

上条「誓うよ」

禁書「絶対なんだよ」

インデックスが左手を上条に伸ばした。
上条は右手で優しく掴んだ。


上条「絶対戻って来る」


御坂「……(あばばばばばばば)」

トリッシュ「行くわよ」
四人の足元に大きな黒い円が浮かび上がり。


禁書「とうま」

上条「インデックス」


そして姿が消えた。
インデックスの左手から暖かい感触が消えた。

彼女はそのままの姿勢で数分間立ちつくしていた。
背後の二人はその間何も言わず、ただ黙って待っていた。

―――

上条覚醒編 おわり

81: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:08:32.55 ID:EXBrS4Y0
上条修行編

―――
『こちら』の時刻は深夜。


上条「ここが……」

御坂「………へ?」

四人は事務所デビルメイクライの一階に立っていた。
床は木目、壁は石造りで洋風の古い建物だ。

一階はホールとなっていた。

壁には得体の知れない金属の彫刻らしき物や、
何か得体の知れない剥製のような物がたくさん雑に掛けられている。

あちこち傷だらけのビリヤード台、所々カバーの剥げたくたびれたソファー。
所々色がくすんでいるドラムやギター。
ホールの隅にある古いジュークボックス。

そしてホールの中央辺りに置かれている大きな机。
机の上には古いレトロな電話と積み上げられた雑誌。
その後ろには大きめの『二つ』の椅子があった。

その机と椅子の後ろ側は物置のように様々なガラクタが積み上げられていた。

82: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:12:59.80 ID:EXBrS4Y0
上条「おおお……」
上条はホールの中をまじまじと見渡した。

以前ベオウルフを介してダンテの記憶も見た。当然この事務所も見た覚えがある。
だが実際に来て見るとやはり違う。妙に感動する。

あのスパーダの息子、ダンテの家なのだ。
その感動もまた記憶を見た上条だからこその物だろう。

それにあの時よりも随分と様変わりしている。
当時はまだ物がほとんど無くガラガラだった。

御坂「わぁ……」

トリッシュ「ようこそ」


トリッシュ「『デビルメイクライ』へ」


御坂「あ、お、お邪魔します!」

上条「お、お世話になります!!」
二人がダンテとトリッシュに礼をする。

トリッシュ「ええ」

ダンテ「ふぁ……ああ」
ダンテが大あくびをしながら、ゆらゆらと歩いて離れていった。

そしてコートを脱ぎビリヤード台の上にぶん投げ、
そのまま歩きながら今度はベストとその下の黒いインナーを脱いでソファーにぶん投げた。

上半身裸のまま更にそのまま歩き、ホールの隅のドアを開けて中に入っていった。
シャワーを浴びに行ったのである。

84: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:16:32.17 ID:EXBrS4Y0
トリッシュ「まあいつもあんな感じだから」

トリッシュ「じゃあ来て」

トリッシュがホールの奥へ歩き始めた。
上条はショルダーバッグを背負い、御坂はキャリーバッグを引きながらその後に続いた。

トリッシュ「このホールは主に来客用、事務所の顔ね」

トリッシュ「さっきダンテが入ったところがバスルームとトイレ」

一向はそのまま進み、ホールの隅の階段を上がる。
一段一段上がるたびに古い木目の板が軋む。

御坂「む!むん!むむむっ!!!」

大きなキャリーバッグを持ち上げようと御坂が奮闘していた。
金属製のキャリーバッグなので電磁力で持ち上げることも出来るが、中に電子機器もいくつか入っている為それは論外だ。

上条「俺が持つよ」

見かねた上条がキャリーバッグの取っ手を掴みヒョイと軽々と持ち上げた。

御坂「ありがとッて…わっ!!あんたそんなに…」
力があったっけ? と続けようとしたが、ハッと気付いて言葉を止めた。
悪魔化してきているため腕力があるのだ。

86: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:22:02.95 ID:EXBrS4Y0
御坂「…ご、ごめん」

上条「ははは!!!いいって!!行こうぜ!!!」
上条は一切気にする風も無く階段を上がっていった。

御坂「(あたしってば早々……だめね…)」
御坂は少し肩を落としながらその上条の後を追って上がって行った。


階段の上は薄暗い廊下だった。

トリッシュ「この部屋はダンテの仕事部屋」
トリッシュは階段に一番近い所にある扉を指差した。

ダンテが主に銃器の改造を行う部屋である。
また、良く使う魔具等も置いてある。

トリッシュが廊下を進み二人がついていく。

二つ目の扉の前でトリッシュが止まった。

トリッシュ「イマジンブレイカー。ここがあなたの部屋よ」
そして扉を開け、電気を付けた。

上条「……」

部屋の中央には大きな薄汚いベッド、壁際にある今にも倒れてきそうなぼろいクローゼット。
それだけしかなかった。

窓のカーテンすらない。
そして裸の室内灯は不規則に点滅していた。

トリッシュ「もともとダンテの部屋だったんだけどね」

トリッシュ「彼はいつも下のソファーで寝てるから」
ちなみにダンテの着替えはさっきの仕事部屋に置いてある。

87: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:26:53.30 ID:EXBrS4Y0
上条「……」

上条は恐る恐る部屋に入り、ベッドにショルダーバッグを下ろした。
その途端凄まじい量の埃が舞い上がった。

まるでスモークが炊かれたかのような「もや」の中に上条の姿が消える。

上条「……」

トリッシュ「あとで自分で掃除しなさい」

トリッシュ「じゃあ来て」
呆然としている上条をほっといてトリッシュは御坂に顎で合図をした。

御坂「う、うん」

その隣の部屋の扉の前でトリッシュは止まった。

トリッシュ「ここがあなたの部屋」

御坂「……」
御坂は緊張した。

上条と同じく、自分の住む部屋の惨状を覚悟した。

トリッシュが扉を開け電気をつけた。

御坂「……へ?」

88: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:29:32.71 ID:EXBrS4Y0
その部屋の中は余りにも予想外だった。

上条の部屋とは正反対に、埃っぽさの欠片も無かった。
たった今掃除されたかのようにキレイだった。

アンティーク調のおしゃれなベッド、同じくきれいな装飾が施された化粧台と大きなクローゼット。
床に敷かれた高そうな絨毯、そしてこれまたアンティークな小さな机がベッドの傍にあった。

壁際にはもう一つ大きな机と椅子。机の上には電気スタンドがあった。

窓には高そうなしっかりとした生地のカーテンがついていた。

その部屋はまるで映画の中に出てくるような洋風の美しい空間だった。

御坂「な、な、な……!」

トリッシュ「10年位前にある女の子が一時期居候してたの」

トリッシュ「その子の家具よ」

トリッシュ「今でもたまに遊びに来るからダンテが撤去しないで残してるの」

トリッシュ「それと私が一応掃除しておいたから」

御坂「うぅううう!!!ありがとう!!!本当にありがとう御座います!!!」

トリッシュ「当然でしょ。女の子を廃墟部屋に住まわす訳にいかないわよ」

上条「……うう…くそッ…」
扉の所に立っていた上条はうな垂れていた。

89: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:32:38.16 ID:EXBrS4Y0
トリッシュ「じゃあ今日はもう休んでいいわよ」

トリッシュ「二人とも色々とやることあるでしょ」

上条「……掃除とかな……」

御坂「……あ、あたしも手伝ってあげるから」

トリッシュ「それと、時差もあるし眠くないと思うけど早めに寝たほうがいいわよ」

トリッシュ「シャワーはダンテがもうすぐあがるから少し待ちなさい」

御坂「あの……キッチンはどこ?」
任務要項によれば御坂が上条のご飯を作ると言う事になっている。

トリッシュ「あ~、あそこ」
トリッシュは廊下の突き当りの左側を指差した。

トリッシュ「一階にもあるんだけど、もう何年も使ってないから」

トリッシュ「使うのなら二階のね」

御坂「は、はい」

91: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:36:22.95 ID:EXBrS4Y0
>>90 アニメでパティ嬢が

トリッシュ「あと二階のトイレはそっち」
トリッシュは廊下の突き当たりの右側の扉を指差した。

トリッシュ「それと言っておくけど、ダンテの仕事部屋と地下の私の仕事部屋には勝手に入らないように」


トリッシュ「下手したら死ぬわよ」


上条「…おう」

御坂「わ、わかりました」

きっととんでもなく危険な物が無造作にゴロゴロ置かれているのだろう。
この二人にもそれは簡単に想像できた。

トリッシュ「じゃあ、朝までごゆっくり」
トリッシュは踵を返して階段を降りていった。

上条「……」

御坂「よ、よし!!掃除しよっか!!!」

上条「うう……ありがとう…ありがとう…」

93: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:44:17.09 ID:EXBrS4Y0
上条は部屋の惨状を見て、掃除は朝までかかると思っていた。
というか掃除機どころか箒も雑巾もないのにどうやって掃除しようか考えていたが、
それは御坂が解決した。

御坂が静電気を使って埃を器用に集めていった。
まるで綿菓子のように埃がボール状に纏まっていく。

そんな事で僅か10分で部屋は綺麗になった。

上条「すげえな!!!お前本当に器用だな!!ありがとな!!」
上条はもう埃の舞い上がらないベッドにショルダーバックを置き、
中から服やら何やら生活用品を出しながら賛美の声をあげた。

御坂「へへん!!こんぐらい簡単よ!!」
御坂はしばらくそのまま上条をニコニコしながら見つめていた

上条「……ん?お前も自分の荷物出して来いよ?」

御坂「あ、そ、そうね!!あははははは…!」

と、その時一階のホールで扉が乱暴に開け放てる音が響いた。
続いて重い乱暴な足音。

上条「んあ、あがったみたいだな。御坂先に入って来いよ」

御坂「う、うん!!そ、そうする!!」
御坂は小走りで部屋を出て行った。

上条「……あいつもこれからの事で緊張してんだろうな…」

上条は荷物の中からバスタオルと着替えを出し、部屋を出て1階へ降りていった。
それと同じく御坂も風呂道具を持って階段を降りていった。

95: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:47:19.45 ID:EXBrS4Y0
ダンテは上半身裸で椅子に座り、机の上に足を組んで上げていた。
そしてワインボトルをラッパ飲みし雑誌を捲り始めた。

御坂「あの~……お風呂いい?」

ダンテ「ご自由に」
ダンテがそっけなく答え、御坂はバスルームの方へ向かって行った。

上条がゆっくりとダンテの方へ向かい、机に寄りかかった。
ダンテは特に気にすることも無くワインを飲み雑誌を読んでいる。

上条「なあ……聞いていいか?」

ダンテ「何だ?」
雑誌に目を向けたままダンテが返事をする。

上条「具体的に……何するんだ?」

ダンテ「まずお前に悪魔の力を引き出させる」

上条「へ?」

ダンテ「お前が悪魔化している時の状態を調べたいんだとよ。トリッシュが」

96: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:52:24.11 ID:EXBrS4Y0
ダンテ「それを調べてから解決策を探すって訳だ」

上条「なるほど……」

ダンテ「それと平行して俺がお前に悪魔の力の使い方を叩き込む」

上条「……」

ダンテ「治すまで時間がかかりそうだしな。その間、ただ垂れ流しておくわけにもいかねえだろ」

上条「そうだな……」

ダンテ「覚悟しとけ坊や」
ダンテがニヤリと笑みを浮かべ上条の顔を見た。

上条「?」

ダンテ「言ったろ?血ヘド吐くってよ」

上条「……おう」

上条「上等だ。何だって乗り越えてやる」

ダンテ「ハッ。良い根性だ」

97: SSまとめマン 2010/04/22(木) 23:55:26.09 ID:EXBrS4Y0
バスルーム。

御坂は呆然としていた。

御坂「何よ……コレ……」

広いがらんとした部屋の隅にバスタブがありその上にシャワーが付いている。
その周りにカーテンがあるいかにも欧米的な作りだ。

それと対角線の角に便器。
そしてまた別の角には、
コインランドリーに置いてあるようなドラム式の洗濯機がドンと無造作に置かれていた。

だが御坂を驚かせたのは別の事だ。


その汚さだ。


御坂「…ここも掃除しなきゃね…」
御坂の前髪に電気が走る。

そのまま御坂は思いつきで掃除をし、
上条がシャワーを浴びる事ができたのは一時間後であった。

―――

99: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:00:06.00 ID:mTc0LDc0
>>98 あれっそうだったっけ。って調べてみたら孤児院住みだった……すまん…無かった事に…

―――

学園都市。
こちらの時刻は午後二時を過ぎたところだ。

一方通行はとあるマンションの一室にいた。
教員でありアンチスキルでもある黄泉川の家だ。

家主である黄泉川本人は当然仕事中で家にいない。

今、その家の中はかなり賑やかになっている。

二人の騒がしい少女がいるのだ。

一方「……るせェな…クソッ…」
ソファーに座り缶コーヒーを飲みながら一方通行は呟いた。

芳川「とか言いつつまんざらでもない」

向かいの椅子に座り小難しい本を読んでいた芳川が、
一方通行のその言葉にいらぬ捕捉を付けた。

一方「テメェもうるせェ」

100: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:07:14.78 ID:mTc0LDc0
上条達が出発した後、土御門と別れたインデックスと一方通行は
この黄泉川のマンションに向かった。

二人はその間無言だった。
インデックスはうつむき、一方通行も何も喋らなかった。

そのまま二人は目的地であるマンションにつき、
一方通行は黄泉川宅のインターホンを鳴らした。

そして重苦しい空気を纏った彼らを出迎えたのは。

ドアから飛び出して来た、はち切れんばかりの笑顔の打ち止めであった。

思わぬ再開に戸惑うインデックスに打ち止めは飛びつき、
そしてそのまま家の中へ引っ張り込んでいった。

黄泉川・芳川には昨日の夜に「もう一人居候が増える」と伝えてあった。
なにか訳ありなのもいつもの事と、二人とも理由を聞くことなく快諾した。

黄泉川にいたっては やったじゃん!家族が増えたじゃんよ! と喜んでいた。

裏の事情を知っている打ち止めは当然快く受け入れた。
なにせインデックスは、打ち止めや一方通行にとってとある事件以来の恩人でもあるのだ。


二人が来てから一時間。

今のインデックスは打ち止めとテレビを見ながらぎゃあぎゃあと楽しそうに騒いでいる。

一方通行は顔には出さなかったが、少し安堵した。
ずっとあんな陰気な感じでいてもらったらさすがに困る。

102: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:12:26.46 ID:mTc0LDc0
一人になるとインデックスはまた沈んだ顔になっているが、
打ち止めと一緒に騒いでいる間は笑顔だ。

まあ初日なのだ。
強引なやり方であろうが、笑顔を浮かべてくれたら上々だ。

だが。

一方「……チッ…」

予想はしていたが、さすがにうるさ過ぎる。
インデックスにはもう少し『落ち込んで』いてほしいとさえ思った。
今すぐにでもチョーカーのスイッチを入れて音を遮断したい気分だ。

この空間に数週間も居なければならないとは。
24時間の護衛という任務、そして上条の大事な者を預かっている以上、そう簡単に離れるわけにはいかない。

芳川「今日はハンバーグだって。材料は黄泉川が買ってくるってさ」

一方「……」

打ち止め「ハンバーグ!!!?わーい!!!ってミサカはミサカは晩ごはんが待ちきれずに跳ねてみたり!!!!」

禁書「むむむッ!!!!!!!!おおおおおお腹減ったんだよ!!!!!!」

一方「………アァ……早く帰ッてこィや三下ァ……頼むぜェ…」

一際大きな声で騒ぐ二人。
それを無視して読書し続ける芳川。
そしてソファーでうな垂れる一方通行。

彼の苦行も始まったばかりである。

―――

104: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:18:17.55 ID:mTc0LDc0
>>101 ありがとう。お願いします。
>>103 第一話のOPまでの一連の流れは何度見ても鳥肌もの

―――

事務所デビルメイクライ。

翌朝。

上条「……」
意識が徐々に戻っていく。

上条「……う…ん…」
まぶた越しに強い光が差し込み、彼の睡魔のベールを剥ぎ取っていく。

上条「………(?)」
ぼんやりした意識の中で、誰かの気配を感じた。
誰かがすぐ傍で自分を見ているような感覚。

上条「……」
そして上条はパチッと目を開けた。

視界に入ってきたのは痛んだ木目の天井と。

御坂の顔だった。
ベッドの端に腰掛け、彼の顔を覗き込んでいた。

上条「…………み……さか?」

105: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:22:27.05 ID:mTc0LDc0
御坂「んはぁっ!!!!」
御坂が跳ねるように慌てて立ち上がった。

上条がそんな御坂を特に気にすることも無く欠伸をしながらゆっくりと上半身を起こした。

上条「ふぁああああッ………あ~、おはよ……」
上条がトロンとした目で御坂に朝の挨拶をする。

御坂「お、お、おはよ!!!さ、さっさと起きなさいよ!!!」

御坂が顔を真っ赤にしながら言葉を返した。
10分ほど上条の寝顔を眺めていたなど口を裂けてもいえない。

上条「……なんだそのカッコ?」

気付くと、御坂はラフな私服の上にゲコ太を模した大きな緑色のエプロンを付けていた。

御坂「!!!あっえ、えーっと!!!あ、朝ご、ご飯作ったから!!!そ、そ、その!!!アアアアアアアンタの分も!!!」

御坂「キ、キッチンにいるから!!!さ、さっさと目覚まして来るのよ!!!」
言うだけ言って御坂は小走りで部屋を出て行った。

107: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:26:14.46 ID:mTc0LDc0
上条「……お~、ありがとな…」
一人になった上条は寝ぼけたまま礼を言った。

窓から朝日が差し込む、
ベッドとクローゼットしかない廃屋のような部屋でその声は小さく反響した。


数分後。


上条「ぷはっ…うう…さぶッいな…」

上条は二階のトイレに備え付きの洗面台で顔を洗っていた。
今の季節、冷水で顔を洗うのは厳しい。

鏡で自分の顔を見る。

上条「おし!」
そして遂に始る試練に向けて気合を入れ軽く両頬を手で叩いた。

トイレから出て、すぐ近くのキッチンのドアを開ける。
その途端、食欲を刺激するおいしそうな香りが鼻の中を満たした。

上条「おおお…」

御坂「あ、そっちに座って」
キッチンに向かっている御坂が背を向けたままテーブルの端を指差した。

上条がいそいそと席に着く。

108: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:28:37.09 ID:mTc0LDc0
御坂「はいはいはいはい」

御坂がキッチンとテーブルを行き来し、朝食を並べていく。

バターが塗られたトースト、レタスやトマト等のサラダ、スクランブルエッグとベーコン。
そして牛乳と水とフォーク。
小さなテーブルの上はそれだけで埋まってしまった。

上条「お~」

御坂「よしっと」

御坂が上条の向かいの席に付く。

上条「お~うまそうだぜ」
上条がまじまじとテーブルの上を眺める。

御坂「……」
御坂はその上条の姿を見つめていた。顔が徐々に赤くなっていく。

御坂「(ヤバイってこのシチュエーション!!!!)」

御坂「(これじゃあまるで……!!!まるで夫婦みたいじゃない!!あああああばばっばああ!!!)」

御坂「ちょ、ちょっと適当でゴメンね。夜はちゃんとしたの作るから」

上条「お前……飯作れたんだな…」

御坂「ッ!!!何よ!!!あたしだってこんくらい……!!!」

109: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:32:55.71 ID:mTc0LDc0
上条「おおおお悪い悪い!!!あ、ありがとな!!く、食おうぜ!!!」

御坂「ったくッ!……いただきます!」

上条「い、いただきます」
二人は手を合わせ、そしていそいそと食べ始めた。

上条「んん、んまいぞ」

上条がトーストに噛り付きながら言う。

御坂「……嬉しいけど、トーストを褒められてもねえ」

御坂「そうそう、これ、全部今朝あたしが買ってきたの」

上条「?」

御坂「何も食べ物無かったのよココ」

上条「あ~…」
まあ予想できたことだ。あの二人が料理を作る姿など想像できない。

大方いつも外食やデリバリーで済ませているのだろう。
というか生粋の悪魔であるトリッシュは物を食べる必要があるのだろうか と上条は思った。
一応一階のホールに冷蔵庫らしき物があったが、恐らく飲み物系しか入っていないだろう。

上条「まあ、水が出て火も使えただけでも良かったってか」

御坂「そうね」

110: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:36:04.42 ID:mTc0LDc0
上条「てかよ、金あんのか?」

御坂「学園都市製のATMあったから。換金もそのままATMでできたし」

上条「そうか…って御坂英語喋れたのか?」

御坂「簡単な話はできるわよ」

上条「……」

御坂「しばらくこっちにいるからアンタも覚えたほうが良いんじゃない?」

上条「覚えたほうがいいって……そう簡単にできませんよ御坂さん…」

その時、部屋のドアが開きトリッシュが現れた。

トリッシュ「おはよ」

上条「おはよう」

御坂「おはようございます」

トリッシュはそのままテーブルに進み、サラダの皿から一枚のレタスを摘み上げ口に運んだ。

トリッシュ「うん、うん」
口を動かしながら何やら小さく頷いている。

トリッシュ「あ、そうそう、10時になったら始めるから」

上条「……」

御坂「……」

二人の顔が引き締まる。今の時刻は9時を回ったところだ。

112: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:40:51.10 ID:mTc0LDc0
トリッシュ「あなたはダンテと一緒に」
トリッシュが上条を見ながら言う。

上条「ああ」

トリッシュは御坂に目を移した。

トリッシュ「あなたはここに残りなさい」

御坂「……へ?」

トリッシュ「今後の生活用品や食材買ったりとか色々用事があるでしょ?」

御坂「い、いや、あたしも同行しなきゃ……!」

トリッシュ「今日はそんなに大事なのじゃないから。それに見ないほうがいいと思うわよ」

上条「(見ないほうがいい……)?」

御坂「で、でも!!」

トリッシュ「言う事聞かなかったら学園都市に戻すわよ?」

御坂「ぐ、ぐぅ…」

トリッシュ「大丈夫だから。今日はコッチにいなさい」

上条「(コッチ?どこかに行くのか?)」

御坂「うん…」

113: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:43:43.59 ID:mTc0LDc0
朝食と歯磨きを終え、上条は自室に戻っていた。
ベッドに腰かけ、深く息を吐く。

上条「……遂に始まるんだな…」

上条「あっ」
上条はふとある事を思い出し、バッグから携帯を取り出した。

上条「向こうは……そろそろ寝る時間かな?」

そしてとある番号に電話をかけた。
コール音は一度、すぐに相手が出た。

禁書『とうま!!!!!!!』

上条「おう!そっちはどうだ!?」

禁書『大丈夫なんだよ!!!晩ごはんもたくさん食べたんだよ!!とうまは!?」

上条「おう!特に問題はねえぜ!」
まだ寝ただけで本題は始まっていないが、問題ないのは確かだ。

上条「…って随分そっち賑やかだな?」
携帯越しからかなり賑やかな女性と幼い女の子の声が聞こえる。

上条「(…?どこにいんだ?)」

その時、部屋のドアが開きトリッシュが顔を出した。

トリッシュ「時間よ」

114: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:47:15.60 ID:mTc0LDc0
上条「あ、お、悪い!時間だ!」

禁書『時間?』

上条「ああ!また夜に…そっちは朝か、そん時に電話するぜ!」

禁書『あ、う、うん!!待ってるんだよ!!!』

上条「じゃあな!!迷惑かけるなよ!」

禁書『うん!!がんばるんだよ!!!』

携帯を切りポケットに入れトリッシュを追って部屋を出て、一階に降りた。
その上条の姿を見てダンテがソファーから立ち上がる。

ダンテ「行くぜ」

上条「おう!……ってどこにいくんだ?」
トリッシュが上条の横に並ぶ。


トリッシュ「ネバダ」


トリッシュが笑みを浮かべながら答えた。
同時に黒い円が出現する。

上条「……へぁ?」

三人の姿は消えた。

115: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:51:17.32 ID:mTc0LDc0
ダンテ、トリッシュ、上条はネバダ砂漠のど真ん中に立っていた。
ジリッと肌が焼けるような日差し。乾いた埃っぽい空気。

そして見渡す限りの荒野。

上条「……一体何すんだ?」

トリッシュ「半径10km圏内には人間はいないから好き勝手できるわよ」

ダンテ「OK」

上条「……好き勝手?」

トリッシュ「終わったら呼んで」
トリッシュがダンテに黒い石のようなものを投げ渡した。

そしてすぐに黒い円に沈んでいって姿を消した。

上条「なあ…一体…?」
これから何をするのか検討が付かない。

ダンテ「あ~、そうだな……」
ダンテが顎をさすりながら上条を見る。

ダンテ「上は脱げ」

上条「は?」

ダンテ「さっさとしろ。上半身裸だ」

120: SSまとめマン 2010/04/23(金) 00:57:23.48 ID:mTc0LDc0
ダンテ「『力を使って』俺に向かって来いって事だ」

上条「……どうやって?」

ダンテ「暴走した時の事でも思い出しな」

上条「あ、ああ」

上条は目を瞑り、この間のデパートの事を思い出す。

上条「……」

上条「……」

上条「……」

上条「……あの……難しいです……」

ダンテ「しょうがねえな」

ダンテは首を鳴らし、続けて手の骨を鳴らした。
いかにも 殴り合いの準備中です と言っているような仕草だ。


ダンテ「やっぱこうするしかねえか」


上条「……あの~……何をするんでせう?」
凄く嫌な予感がする。

121: SSまとめマン 2010/04/23(金) 01:02:47.66 ID:mTc0LDc0
ダンテ「さっさと『覚えろ』」


ダンテ「さもねえと死ぬぜ?坊や」


次の瞬間ダンテは地面を蹴り、一気に距離を詰めてきた。


上条「―――いぃ゛?!!!」


反応する間も無く。


上条の胸にダンテの右拳がめり込んだ。
体内から何かが折れる湿った不気味な音。

上条「がぁッッッッ!!!!」

口からを血を噴き出しながら上条の体が5m程宙を舞い、地面に叩き付けられた。

ダンテ「おいおい、このレベルでもまともに受けちまうのか?」
ダンテが手を広げて、嘲笑的な笑みを浮かべた。

ダンテにとってはかなり優しく、遅めに小突いただけだ。

123: SSまとめマン 2010/04/23(金) 01:06:11.49 ID:mTc0LDc0
ダンテ「あ~、暇つぶしにもなんねぇな」

ダンテは呆れたような目を上条に向けながら歩いていく。

上条「がッ……!!」
胸を凄まじい激痛が襲う。
肋骨が何本も折れているらしい。

肘を地面に突き何とか起き上がろうとした時。



ダンテ「いつまでオネンネしてる?」


ダンテの蹴りが上条のわき腹に食い込んだ。

上条「ガフッッッ……!!!」

更に5m程上条の体が吹っ飛んだ。
そして間髪いれずに宙を舞う上条の足が掴まれ。


ダンテ「ほら、濃厚なキスしてやれよ。『ネバダ』にな」


そして地面に思いっきり叩きつけられた。
肉片が飛び散り、不気味な篭った破砕音が響く。

124: SSまとめマン 2010/04/23(金) 01:11:20.55 ID:mTc0LDc0
上条「……あがぁッ……」

あっという間に血まみれになった上条は地面の上で力なくもがいた。
体が全く動かない。

列車に撥ねられるレベルの衝撃だ。
全身の骨が砕け内臓は潰れた。

視界が徐々に暗くなっていく。

ダンテ「……」

血まみれでボロボロな、
どこからどうみても『助かる見込みの無い』上条をダンテは見下ろした。

ダンテ「hummm.....」

だが上条は死ななかった。
傷がゆっくりと塞がっていき体が再生しつつある。

僅かだが、死の危険によって悪魔の力が引き出されているようだ。
体も一応人間以上には頑丈らしい。


しかしこの程度ではまだまだ全然足らない。

125: SSまとめマン 2010/04/23(金) 01:13:40.99 ID:mTc0LDc0
上条「ぶはぁッ……!!!」
上条は勢い良く起き上がった。

上条「はぁッ…」

ダンテ「起きたか」
近くの岩の上に座っていたダンテから声。

上条「……」
上条は先ほどの情景を思い出す。
ダンテに『瞬殺』された。

だがその瞬間、体の中からあの『力』が少し湧き出てきたのを感じた。

上条「そうか…」
上条は理解した。
この『やり方』が一番手っ取り早いのだ。

ダンテ「立て。もう一度だ」

上条「……ああ」

上条は表情を引き締め地面に手を付いて立ち上がった。

ダンテが岩から跳ねるように降り、
手を広げて小馬鹿にするような笑みを浮かべた。

ダンテ「来い。坊や」

129: SSまとめマン 2010/04/23(金) 01:19:51.09 ID:mTc0LDc0
その後、約三時間の間ダンテの『しごき』は続いた。

三時間とだけ聞けば、『苦行』としては短いように感じるかもしれない。
だがその内容は凄まじく『濃い』ものだった。

頭を割られ、骨を砕かれ、内臓を叩き潰され、
普通の人間なら200回以上も死んでいるであろう凄まじい苦痛に満ちた地獄の三時間だ。

しかし上条はその『死』の痛みを堪え何度も何度も立ち上がり、ダンテに向かっていった。
ダンテはその上条を容赦なく叩きのめした。

そしてこの一方的な組み手が始まってから三時間後、上条は遂に完全に意識を失った。
地面に力なく横たわり、ピクリとも動かなくなった。

だがその傷の再生速度は明らかに速くなっていた。徐々に悪魔の力が引き出されてきているのだ。

ダンテ「……」

ダンテは意識を失っている上条の腕を掴み、乱暴に担ぎ上げた。
そしてコートのポケットから通信用の黒い石を出し握った。

ダンテ「トリッシュ。来い」

トリッシュ『あら、終わったの?』

ダンテ「とりあえずな。のびちまった」

トリッシュ『ふふ。今行くわ。次は私の「番」ね』

ダンテは黒い石をコートのポケットに放り込み、
その手で上条の服を拾った。


ダンテ「まあ初日の『前半』としちゃあ上々だぜ。坊や」


―――

130: SSまとめマン 2010/04/23(金) 01:21:11.18 ID:mTc0LDc0
今日はここまで
再開は明日の夜11時辺りからです

145: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:09:05.20 ID:mTc0LDc0
―――


御坂「はぁ…」

御坂は一階のホールのくたびれたソファーに座っていた。
上条が出発してから三時間が立つ。

トリッシュは帰ってきたかと思うと、
鍵を御坂に投げ渡し「ちょっとでかけるから」とすぐにまたどこかに消えていった。

御坂はトリッシュを見送った後外出し、適当に買い物を済ませた。
ちなみにここ一帯はスラム街でかなり治安が悪いが、当然御坂の場合は心配は無い。

実際、買い物を済ませて事務所に帰って来る際に、
視点の定まってない見るからに薬中のチンピラが、
聞き取りにくい崩れた英語で御坂に絡んできた。

御坂は『いつも通り』軽く電撃を放って追い払った。

通常、学園都市外での能力使用は固く禁じられているが、今回は当然許可されている。

147: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:16:44.38 ID:mTc0LDc0
御坂「あ~ぁ……」
特に意味も無く気の抜けた声を放った。
空しくホールに響く。

ヒマなのだ。

こう何もしていないと、あの少年の事ばかりを考えてしまってますます心配になる。

荷物も整理したし、生活用品等も一通り調達したし、今日の夜の献立ももう決めた。
買い物の帰りに小さな汚い本屋に寄ってみたが、御坂がいつも読んでいる週間の漫画雑誌は無かった。
それどころか日本語の書籍自体が無かった。
まあ当然だが。

英語もそれなりに読めるので、英語媒体の物でもいいかと思ったが、御坂が読みたくなるような物は無かった。
そして目を背けたくなるような本が多かった。

思いっきり成人向けの雑誌が、とくに分けもされずに棚のあちこちに陳列されていた。
グラマラスな金髪女性が股を大きく開けていたりなどなどその表紙もかなりどストレートな物ばかりだった。
御坂は顔を真っ赤にさせて店を後にした。


御坂はソファーに座りながら携帯を見た。
黒子にでも電話をかけようかと思ったが今日本は深夜だろう。

御坂「あ~…」


その時、ホールの中央に黒い円が出現した。

148: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:19:22.78 ID:mTc0LDc0
御坂「!!!!」
御坂は飛び上がるようにソファーから起き上がった。

黒い円からトリッシュとダンテ、そしてダンテに担がれた、上半身裸の上条が出現した。

御坂「お、おかえりっ!!!……って!!ちょ、ちょっと!!!えっえっえええ!!!!!」
血まみれで力なく体が伸びている上条。
御坂はすぐにダンテの所に駆け寄った。

当然御坂は半ばパニックになりかけるが、トリッシュが制止した。

トリッシュ「大丈夫。すぐ起きるから」

ダンテは持っていた上条の服をビリヤード台の上に放り投げ、彼をを担いだままバスルームに向かった。
御坂がその後を小走りで追った。

ダンテは上条をバスタブに乱暴に放り込み、シャワーの蛇口を捻った。
大量の冷水が容赦なく上条の体を打ち付ける。
こびり付いた血や砂が流されていき、バスタブの底に赤い水が溜まる。

ダンテ「おら」
ダンテがシャワーを掴み上条の顔に至近距離からぶっかけた。

上条「ぐぶほぉあああ!!!ぶへぇえええ!!!!」
しばらくして上条が口を金魚のようにパクつかせながら目を覚ました。

150: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:28:12.42 ID:mTc0LDc0
上条「ぶはッ…!!!ごはッ…!!!ふぁあああ…」
上条がバスタブの中で上半身を起こし顔を擦った。

ダンテ「よう」

ダンテがシャワーを止め、ふざけた調子の笑みを浮かべる。

御坂「だ、だいじょうぶ!!!?」
御坂がバスタブの脇に屈み、上条の方へ上半身を伸ばす。
今にもバランスを崩してバスタブの中へ転げ落ちそうな体制だ。

上条「あ、ああ…大丈夫だぜ」

御坂「一体何があったのよ!!!?」

上条「あ~…」
上条がダンテの顔を見上げた。

ダンテはニヤリと笑みを返した。

上条「……『修行』だ」

御坂「しゅ、しゅぎょう?」

トリッシュ「次コッチ」
トリッシュが開いたドアから顔と手だけを出して手招きした。

トリッシュの顔には不気味なほどに妖艶な笑みが浮かんでいた。

151: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:32:56.44 ID:mTc0LDc0
バスルームから出て、一向はトリッシュの地下の仕事部屋に向かった。

薄暗く埃っぽい部屋の壁は全面が本棚で覆い尽くされており、
本棚に入らない書物がその前に平積みにされていた。

普段は魔導書が無造作に開かれたまま置かれていたりと、人間にとってはかなり危険な部屋だが、
上条と御坂が入るとあってトリッシュは少し片付けた。

少なくとも見ただけで精神が侵されるような物は見えないように閉まった。

上条「つ、次は何すんだ?」
上条は濡れたままの上半身を擦り、寒そうにしながらトリッシュに聞いた。


トリッシュ「脱ぎなさい」


上条「……………………へ?」

御坂「……………………え?」

今、上条は上半身裸だ。この状態の上条に「脱げ」と言うことは。

トリッシュ「早くしなさい」

上条「……下をか?」


トリッシュ「当然」


トリッシュ「全部」


御坂「ぶふッッッッ!!!!」

152: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:38:31.20 ID:mTc0LDc0
上条「ちょちょちょちょ!!!!おおおいぃぃぃぃ!!!」

トリッシュ「何?何でもやるって息巻いてたのにこんなのに尻込みするの?」

上条「うぐっ……どうしてもか…?」

トリッシュ「全裸の方が見やすいのよ」

トリッシュ「そのチンケな羞恥心で効率を下げたいなら別に良いけど」

上条「……わ、わかった…」
上条が意を決してベルトに手をかけた。

御坂「あわわわわわあわあわあがががががが」
御坂には出来るだけ多くの事を見聞きして報告する義務がある。
そしてそれ以上に上条の事には常に立ち会っていたい。

だがさすがに。
いや、嬉しくない訳ではないのだが、余りにも急な展開過ぎて心の準備が出来ていないのだ。

トリッシュ「……あなたは出てれば?」

御坂「んぎぎぎぎ………」

上条「……御坂は見たく無いだろ?出てた方が…」

御坂「いや!!!いいえ!!!って違くて…いやいやいあやじゃへgヵういmkあsp」

トリッシュ「じゃあ目瞑ってなさい。私達の会話だけでも充分でしょ」

御坂「は、はいぃいぃぃぃぃぃ!!!」

153: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:42:06.10 ID:mTc0LDc0
御坂が顔を両手で覆った。
背を向ければいいのだが、体は前を向いたままだ。

ダンテはニヤニヤと笑っていた。

上条「よし…じゃあ…」

上条は神妙な面持ちで下を脱いだ。
覚悟は決めていたのだが、やはり少し内股になってできるだけイチモツを隠そうとしてしまう。

当然、そんな抵抗も無駄だ。丸見えだ。

トリッシュ「じゃあそこに寝て」
トリッシュが近くの大きな木製の古い机を指差した。

トリッシュの態度は先と全く変わらない。
ダンテが出発前日に言った通り、トリッシュにとって上条は『モルモット』なのだろう。
上条のブツを見ても全く反応を示さなかった。

ダンテ「へえ、結構立派なのもってんじゃねえか」

だがダンテは思いっきり反応した。
反応したというよりは上条をからかっているのだろう。

上条「る、るせぇ!!」

御坂「へ?!へ?!何が!!?」

上条「き、気にすんな!!!そのままにしてろ!!!」

156: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:48:50.32 ID:mTc0LDc0
上条はぎこちなく指示されたテーブルの上に仰向けに寝そべった。

トリッシュ「さてと…」
トリッシュの手には鉛筆ほどの大きさの、先端が尖った金属の棒らしきもの。

上条「……」
とてつもなく嫌な予感がする。

トリッシュ「ほら寝てなさい」

上条「お、おう」
上条は頭を倒し、天井を仰いだ。

トリッシュ「じゃあちょっと痛むけど我慢して」
次の瞬間、上条の胸に凄まじい激痛が走る。


上条「んぎぃ!!!いってぇええええええええええ!!!」


上条が驚いて顔を上げ自分の胸を見る。
トリッシュは黒い金属製の杭を突き刺していた。
しかもその痛みは尋常じゃない。

まるで体内を無数の針で刺されているような激痛だ。
トリッシュが力を流し込んでいるせいだ。


トリッシュ「ん~良い声ね。人間の悲鳴って最高。正に芸術ね」

そう言いトリッシュは更に深く差込んだ。


上条「ぎゃひぃいいいいいああああああ!!!!」

157: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:53:06.74 ID:mTc0LDc0
御坂「な、なに!!?なにやってんの!!!!??」
顔を両手で覆っている御坂が声をあげた。

上条「何でもねええええええ!!見るなああああああああ!!!!」

トリッシュ「寝てなさい」
トリッシュは足を素早く上げ、起き上がりかけていた上条の顎をヒールのかかとで強く抑えた。

上条「んぐぉおお!!!!」

トリッシュは杭をゆっくりと引き抜いた。
そして傷口が塞がっていくのをまじまじと見つめていた。

トリッシュ「へぇ」

トリッシュは上条の体の中の力の動きを見ているのだ。
どのように反応しているか、流れは、量は、性質は。

この方法が刺激を与えられて一石二鳥だ。

ちなみに麻酔は効果が無いので使わない。
悪魔に効く麻酔なんかあれば対悪魔戦術の革命が起きるだろう。

こうして上条の苦行の後半戦が始まった。

『一日目』の分の。

158: SSまとめマン 2010/04/23(金) 23:56:53.40 ID:mTc0LDc0
上条「ひぃいいいっぃぃぃぃぃいいいい!!!!!

上条「本当にごめんなさいいいいい!!!!!ごめんさないいいいいい!!!!!」

上条の脳裏に今までの思い出(約半年分しかないのだが)が駆け巡った。
走馬灯だ。

それはどっからどう見ても拷問にしか見えなかった。
いくら体が治るとはいえ、あまりにもキツイ。

トリッシュは場所を移して上条の体中を何度も差して回った。
胸から始まり、腹、上腕、下腹部、首、太ももといった風に徐々に範囲を広げて。

そのたびに上条が悲痛な叫びをあげ、ダンテはニヤニヤと笑い、
トリッシュは色っぽい不気味な笑みを浮かべていた。

トリッシュの力が流れ込んでいる杭は正に最凶の拷問器具と化している。


まあここまで力を流し込む必要は無いのだが、そこはドSなトリッシュの趣味だ。


上条「んきゃああああああああぁふおおああああああああああああ!!!!!!!」

ダンテ「ハハ、お前喜んでねえか?」


トリッシュ「あなた、本当に良い声で『鳴く』わね」

そこはドSなトリッシュの趣味だ。

159: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:01:07.01 ID:urstnuE0
トリッシュ「……」
トリッシュの手が上条の股の真上で止まった。

上条「―――ま、まさかッ…!!!」
そのまさかだ。

上条「そ、そこは……!!そ、そこだけはッ……!!た、頼む!!!!」
上条が泣きそうな顔で懇願する。

ダンテ「ぷははっ!!お前本当に面白えな!!!いいじゃねえかどうせ治るんだしよ!!!」
ダンテがそんな上条を見て吹き出す。


上条「マジであんたら悪魔だ!!!悪魔だぁあああああ!!!!いやあああああああ!!!!」


トリッシュ「あらまぁ良い顔ね。喜んでくれてお姉さん嬉しいわよ」


トリッシュ「ご褒美あげちゃう」


トリッシュが足で上条を押さえながら、不気味なほどに美しい笑みを浮かべた。
そして杭を持つ手を躊躇い無く降ろした。


上条「んぎゃぁあああああひぃぃぃぃぃいあああああああんぐぉあああああひぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

上条は正に地獄を味わった。

ダンテは血ヘドを吐くと言っていたが、それはダンテがやる事ではなく、
トリッシュがやる事を言っていたようだ。

厳しい事になるとは聞いていたが、上条の予想を遥かに超えていた。
そもそも、あの『ダンテ』が『血ヘドを吐く』という表現を使う時点で気付いておくべきだったのだ。

163: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:07:14.02 ID:urstnuE0
数分後。
ゲッソリとした上条はメソメソと泣きながら服を着ていた。

上条「…………うう……おうち帰りたい……」

御坂「ね、ねえ……だ、大丈夫だからね、ね?」
その横で御坂が慰めていた。

ダンテ「どうだ?」

トリッシュ「ん~2%ってところね」
まだその程度しか上条の悪魔の力は引き出されていない。

ダンテ「どのくらいまで必要だ?」

トリッシュ「50か60。そこまで行けば『見えて』くるわよ」

ダンテ「具体的には?」

トリッシュ「そうね……あの暴走時のレベルを制御して維持できれば完璧」

ダンテ「あ~、時間かかりそうだぜ」


トリッシュ「もう少し厳しくしてもいいんじゃない?」


ダンテ「だな」


トリッシュ「まあコツを掴めばすぐに伸びると思うけど。記憶もあるし」

上条は以前ベオウルフを使ったし、暴走時の事も覚えている。
その時の感覚を上手く利用する事ができればすぐに力の使い方を覚えるだろう。

165: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:14:21.47 ID:urstnuE0
トリッシュ「はい、じゃあこれで今日は終わり」


トリッシュ「これが『一日分』のメニューね」


上条「…………ま、待て…まさか今のも毎日やるのか?」

トリッシュ「当然でしょ」

上条「………………あひぃ……」

ダンテ「なぁに、一週間もすりゃあそんくれえの痛みなんざ慣れるさ」

御坂「ねえ、な、何したの?」
御坂はずっと顔を覆っていたため、上条の身に降りかかった災難を知らない。
ただ、とてつもなく苦痛に満ちていたのは分かるが。

上条「………御坂……お前は『人間』だよな……ううううう」

御坂「?」

ダンテ「ウダウダうるせぇな。お前も『悪魔』になりかけてんじゃねえか」

トリッシュ「さ、ちょっと遅いけどお昼にしましょ」

ダンテ「ああ、腹減った」

上条「……うああああ……」

四人は地下室から出て行った。
こうして上条の一日目の試練は幕を下ろした。


―――

169: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:22:15.99 ID:urstnuE0
―――


ロシアの内陸部。

季節は冬。
ロシア名物冬将軍が猛威を振るい、
一帯には人の存在を示すものは何一つ無く、見渡す限りの無人の雪原だ。

だがその地下は違った。

地下にある巨大な円形状のホール。
元々はロシア成教の『殲滅白書』の拠点であったが、今は別の者が占有している。

中央に大きな机と椅子が一つずつ置いてあった。

その椅子に一人の華奢な、一見すると若い男が座っていた。
赤い長めの髪に赤のストライプのスーツ。
何もかもを見下しているような高慢な目つき。

ローマ正教、『神の右席』のリーダーであり事実上のローマ正教のトップである男。

右方のフィアンマ。

椅子の手すりに肘をつき、こめかみに人差し指を当てて思想にふけっていた。


その時。

すぐ背後に気配を感じた。

171: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:27:16.85 ID:urstnuE0
フィアンマ「俺様の後ろに立つとはな」
その背後の人物にフィアンマは振り返らずに言葉を飛ばした。

フィアンマ「アリウス」

葉巻の匂いが漂ってくる。


アリウス「後ろに立ったらどうだというのだ?」


フィアンマ「反射的に殺してしまいそうだよ」

アリウスは咳き込むような低い声で嘲笑的に笑った。

アリウス「試してみるか?ん?小僧」

アリウスがゆっくりと歩き、フィアンマの横へ向かった。

フィアンマ「ふん。で用は?」

アリウスが机の上に何かを乱暴に置いた。
重い金属音が響く。

フィアンマ「……もう少し丁寧に扱ってくれないか?これは大事なモノなのだが」

アリウスが置いた物。
それは小さな円筒形の金属の塊。
小さなリングが多数ついており、ダイヤル式の南京錠のようにも見える。

つい最近イギリスから消えた、禁書目録の『自動書記』の遠隔制御霊装だ。

172: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:31:11.37 ID:urstnuE0
フィアンマ「まあ、とりあえず礼を言おうか。聞いたよ。大変だったのだろう?」

フィアンマ「スパーダの一族に散々な目に合わされたらしいじゃないか」

アリウス「他人事にできるのも今だけだぞ小僧。いずれ貴様も奴等の刃の前に立つ事になるのだからな」

フィアンマ「それは恐ろしい。せいぜい楽しみにしておくよ」
フィアンマが軽く笑みを浮かべた。

そう、『いずれ』だ。

『今の状態』ならば軽く一蹴されてしまうだろう。

アリウス「それで、準備はどうなっておる?」
アリウスが机に尊大な態度で腰掛け、葉巻をくゆらせる。

フィアンマ「七割というところだ」

フィアンマ「『こっち』の準備はほぼ完了したがな、『向こう』は予想以上にてこずっている」

アリウス「あの『魔女』か……」

フィアンマ「そうだ。建て直しにはまだしばらく時間がかかる」

フィアンマ「そっちはどうなんだい?」

アリウス「六割程度だ。まだ『アルカナ』が全て揃っていない」

フィアンマ「頼むよ。雑魚悪魔共なんかいくらいたって意味が無いんだからな」

173: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:34:06.86 ID:urstnuE0
アリウス「……」

フィアンマ「動けるのはお互い早くて一ヶ月後か」

フィアンマ「……少し危険だな」
フィアンマが机の上の遠隔制御霊装を見ながら呟いた。

アリウス「……」

フィアンマ「あのネロが『コレ』の捜索に参加する事になったらしい」

アリウス「それは貴様の問題であろうが。せいぜい隠れるんだな」

フィアンマ「そう言わないでくれ。冷たいな」


アリウス「他にも問題はあるぞ」
アリウスが顔をしかめながら煙をゆっくりと吐いた。


アリウス「『魔女』とバージルが接触している可能性が高い」


フィアンマ「……ふん」

174: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:40:28.84 ID:urstnuE0
フィアンマ「……」
ダンテとネロ、そしてイギリス清教と学園都市の監視はいくらかできている。

だがあの二人の動きはほぼ全く『見えない』。

もしこちらが動く前に、向こうが察知して動き出したら。

あの『魔女』とバージルの手にかかれば、
準備の整っていないこちら側など一夜で叩き潰されてしまうだろう。

フィアンマ「全く……碌な情報を持ってこないなお前は」


アリウス「……それとダンテと幻想殺しとやらだ」

アリウス「貴様の大事な『核』であろう?どうするのだ?その内大悪魔並みの力を行使できるようになるぞ?」


フィアンマ「なぁに。それにはいくつか方法はあるさ」
フィアンマは手を軽く広げ不敵な笑みを浮かべた。

フィアンマ「とにかく、今は見ているしか無いだろう」

フィアンマ「ダンテの所にいる以上、手は出せないしな」

アリウスは低い笑い声を上げた。
そして机から離れ、フィアンマに背を向けて歩き始めた。

175: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:44:07.33 ID:urstnuE0
フィアンマ「死なないでくれよ?俺様の事が終わるまでは生きていてくれ」
フィアンマがアリウスの背中へ言葉を飛ばした。

アリウス「それはこっちの台詞だ。小僧」
アリウスは振り返りフィアンマの顔を見据えた。

フィアンマとアリウスはお互いに挑発的な笑みを向けた。

それは仲間に向けるものではなく、敵へ向けているようなものだった。

実際、二人はいずれぶつかるかもしれない。
計画が成功すれば力の頂点に二人が君臨する事になるのだ。

今は当面の利害が一致している為に、お互い『協力』という名目で利用しあっているだけだ。

この二人にとって、『味方』というものは存在しない。

利用できるか敵か。それだけだ。

黒い円が出現し、見下すような笑みを浮かべたままアリウスは沈んでいった。

フィアンマ「ふん……クソジジイが…」

―――

176: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:48:06.79 ID:urstnuE0
―――


御坂は自分の部屋にいた。
四人でピザを食べ、この後は自由時間だ。

トリッシュは再びどこかに消え、ダンテは下のソファーで昼寝をしている。
上条も自室で疲労の為寝ている。

御坂「……」
机の上に、報告用に渡されたミサカネットワークに接続できるイヤホンが置かれていた。

このイヤホンには今回の為に少し手が加えられており、接続すれば自動で御坂が見聞きした情報がそのまま送信されるらしい。
つまり報告書なども作らなくて良いというわけだ。それと昨日以前の情報は引き出されないとの事らしい。

過去のプライベートの記憶を妹達に見られることは無いとの事だ。

御坂「じゃあ……いっちょやりますか」
御坂はそのイヤホンを手に取り、恐る恐る耳にかけた。

その瞬間。

『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま この女狐め』
『ミサカ一同お待ちしておりました』
『抜け駆けお姉さま』
『お姉さま』
『わーい!!お姉さまだー!!』
『ずるいですお姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉s

御坂はすぐにイヤホンを外した。

177: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:51:39.70 ID:urstnuE0
御坂「……」

予想はしていたが、それはそれは凄まじい物だった。
ずっとつけていると頭が狂いそうだ。

御坂「はぁ……もう一度やるか」
御坂は再び耳にかけた。

『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま』
『なぜ切ったのですか?』
『お姉さま』
『この女狐め』
『ノリが悪いですお姉さま』
『お姉さま』
『おn

御坂「ストォォォォオッッッツップ!!!!!静かにッ!!!!」

『ミサカ達静かに!!!これはお姉さまの命令だよ!!』
『……』
『……チッ』
『……』
『……ケッ』

御坂「っよし……いい?一度に喋らないでね」

180: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:55:09.95 ID:urstnuE0
御坂「っていうか、あんた達この中では普通に喋れるのね?」

『データ量が無駄に増えますので』
『お姉さまのつけている受信機はそこらへんを削除してます』

御坂「へぇ…」

『では早速データを』
『早く見せてください』
『どれどれ』
『ぐふふ』

御坂「……」

『ほうほう』
『なるほどなるほど』
『おお、おお』
『ふむふむ』

御坂「……」
御坂の脳から情報が送信され妹達が目を通しているのだろう。

~~~~~~~~

『おや、素晴らしい寝顔』
『保存』
『保存』
『何でここで決めないんですか?弄り放題じゃないですか』
『根性ありませんね』

御坂「……」

182: SSまとめマン 2010/04/24(土) 00:59:35.40 ID:urstnuE0
『一緒にご飯ですか』
『これどうにかして感覚共有できないんですか?』
『憎…いや羨ましい』
『デレちゃって不甲斐ないですねお姉さま』

御坂「……」

~~~~~~~~

『ほう……上半身裸とは』
『素晴らしい』
『水も滴る良い男とはこの事を言うのですね』
『あの水いくらですか?』
『保存』
『あ、この臆病な子犬みたいな顔も素晴らしいですね』
『保存』
『けっこう筋肉質ですね素晴らしい』
『いや~本当に素晴らしい』


御坂「……」

183: SSまとめマン 2010/04/24(土) 01:04:36.34 ID:urstnuE0
『なん……だと……?』
『ほう………下も脱ぐと……』
『トリッシュさん良い事言いますねいやホント』
『うひょひょ』
『トリッシュさん神です』
『トリッシュさんになら抱かれても良いです』
『なるほど……なるほど…』
『ミサカ達よ、刮目せよ。我等は進化する』


御坂「……」


『……ってなんでそこで見ないんですか』
『……あれ、黒くなったんだけどコレはデータ破損ですか?天狗の仕業ですか?』
『……なんですかコレは。最悪です。最悪すぎます』
『……さんざんひっぱっておいてこれですか』
『意気地無しお姉さま』
『こらー!!!お姉さまをいじめちゃダメだよ!!!!』
『うっさいチビ』
『黙れクソ上司』
『死ね』
『腰抜けお姉さま』
『バーカお姉さまのバーカ』
『お姉さまは一万人を失望させました』
『臆病女狐』
『根性無し』
『バーk

御坂「だぁあああああうるさいうるさい!!!!」
御坂はイヤホンをむしりとり、部屋の隅へぶん投げた。

その後、上条の悲痛な叫びのオーケストラでミサカネットワークは大混乱に陥ったという。

―――

203: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:11:04.15 ID:rHfIezA0
―――


とある大陸の内陸部にある古い洋館。
うっそうと茂る深い森の中にその城のような館は立っていた。
壁面をツタが覆い、ところどころ崩れている。

『人間』はここ数十年住んでいない。

『人間』はだ。


辺りはしんと静まり返り、動く者の気配は無い。
風による木の葉のざわめきすら無い不気味な静寂。

だがその静寂が突如破られた。

凄まじい炸裂音が響き、洋館の二階の壁が爆散し爆炎が噴き出し、窓ガラスが飛び散る。

続けて乾いた銃声が連続する。

そしてもう一度凄まじい炸裂音。

その後、再び辺りは静寂に包まれた。

204: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:13:19.64 ID:rHfIezA0
洋館の二階。

その大きな部屋は床板が剥げ、天井や壁が崩れていた。
残っている壁には無数の巨大な弾痕。

そして部屋の中央に一人の女性が立っていた。
手に持つサブマシンガン、MP5Kの銃口から一筋の煙がゆっくりと上がっていた。

胸元が大きく開いた白いジャケットに、パンツが見えそうなくらいギリギリのホットパンツ。
高そうなサングラスをかけ、無造作なショートヘア。
露になった太ももには銃と弾装、腰にも多くの武器がぶら下がっており、
背中には先端に巨大な刃がついた身長ほどもありそうな大きなロケットランチャー。

人間の中では世界最高峰のデビルハンター。

レディだ。

レディ「これだけ?」
レディは左手を腰にあて、右手に持つMP5Kで軽く肩を叩きながら、
少し残念そうに呟いた。

この洋館に居座っているという悪魔狩りの依頼を受けてきたのだ。

レディは心躍らせながらここに来たが、
出迎えてくれたのは『ムシラ』という猿のような下等悪魔ばかりだった。

205: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:17:30.69 ID:rHfIezA0
レディ「……何よ…つまんないわね」
レディは呟いた。

そして踵を返して部屋を出ようとした時。

レディ「―――」
胸の奥で妙なざわつき。
高等悪魔が出没する時の感覚だ。

レディは振り返った。

すると5m程のところ、この大きな部屋の中央に。

ゴートリングが立っていた。
全身から黒いもやが溢れ、目が赤く輝いている。

高等悪魔の中でも上位に位置する、強大な力をもった存在。
到底人間の手には負えないと言われている悪魔。

部屋全体、そして建物全体がこの高等悪魔の放つ力で振動する。

レディ「あはっ―――」

だがレディは笑った。
つまんなそうだった顔に見る間に心底嬉しそうな笑みが浮かぶ。


レディ「―――『当たり』 ね♪」

207: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:24:43.66 ID:rHfIezA0
ゴートリングが憤怒の篭った咆哮をあげ、次の瞬間猛烈な速度でレディに飛び掛った。

レディ「―――」

そして普通の人間には到底見えない速度でゴートリングはその拳を振り下ろした。
だがその拳は当たらなかった。

レディはギリギリのところで横に跳ね転がり、その振り下ろされた『破壊』から逃れた。

ゴートリングの拳が床をスナック菓子のように粉砕する。

レディの頬には一筋の赤い線。
飛び散った床の木片がかすったのだ。
そしてじわりと赤い液体が垂れ、顎先へと伝っていく。

レディはその血を下で軽く舐めた。

レディ「んん、そうこなくっちゃね」
そして笑みを浮かべた。

レディは能力も無い『人間』だ。
だが『普通』では無い。

先のゴートリングの攻撃は『見えて』いたわけではない。
勘で避けたのだ。

レディの先祖は戦巫女。
2000年前に先祖はスパーダと共に魔界と戦ったと代々伝えられてきた。

優れた戦巫女の母、そして数百年に一人現れるかどうかという天才的な素質を持っていた父、『アーカム』。

彼女はその二人の『才能』を色濃く受け継いでいる。

聖人が天界の加護を受けているのなら、レディは魔界の加護を受けているのだ。
そして何よりも彼女の強さの根源は、数多の戦いによって鍛え上げられた超人的な感覚と経験だ。

208: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:27:41.44 ID:rHfIezA0
レディは屈んだままの姿勢で右手のMP5Kを向ける。
そして引き金を絞った。

複雑な術式が刻まれ、大量の魔力が篭められた破魔の銃弾がばら撒かれる。

その大量の銃弾がゴートリングの側面にめり込んでいく。
だがゴートリングの外皮は非常に固く、このレディの作った破魔の銃弾でさえ貫通しなかった。

レディ「やっぱ固いわね」

ゴートリングは咆哮をあげ、振り返るようにレディの方へ腕を振るい横に薙ぎ払った。
衝撃波で床板が剥げていく。

人間程度の脚力では、横や後方に避けても間に合わない。
ましてやダンテ達のように真上に高く跳躍することも出来ない。

レディ「はッ―――!!!」

レディは前に飛び出した。
その凶悪な腕の下を掻い潜ってゴートリングの懐に飛び込んだ。

ちょうど、屈んでいるレディの背中に背負っているロケットランチャーの砲口が、ゴートリングの顎の真下に来る。
レディは瞬時に背中へ手をまわし、ロケットランチャーの引き金に指をかける。

レディ「これはどう?」

そしてそのままの姿勢で引き金を引いた。
轟音が響き、燃焼ガスが噴出し床板が捲れあがる。
表面に術式の刻まれた、先端の尖った杭のようなロケット弾頭がゴートリングの顎下に食い込んだ。

209: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:31:18.63 ID:rHfIezA0
顎下に杭のような弾頭が突き刺さり、ゴートリングが呻く。
レディは瞬時に身を低くして前に飛び、ゴートリングの股下を滑り込むようにして潜り抜けた。

そしてレディがゴートリングの背後に『脱出した』と同時に弾頭の遅延信管が炸裂した。
大爆発が起こり、崩れかかっていた天井や壁、床が更に吹き飛んだ。
だがゴートリングの体が盾となってレディにはその爆発は到達しなかった。

レディはスライディングしながら振り返り、腰に下がっているソードオフショットガンを左手で引き抜いた。
そしてゴートリングの膝裏へ一発ずつ、至近距離から放つ。

通常のショットガンなら傷一つつかないが、
レディの放つ銃弾は術式が刻まれ、莫大な量の魔力が練り篭められている。

散弾の雨を浴び、ゴートリングの膝が力なく曲がり、巨体が仰向けに倒れる。

ゴートリングの顎から胸にかけて、先の爆発で大きな穴。

レディは立ち上がり、右手のMP5Kを放り投げ腰についている手榴弾を一つ手に取る。
この手榴弾もまた対悪魔用に凄まじく強化されているものだ。

レディは親指で安全ピンを器用に引き抜き。

レディ「まあ暇つぶしにはなったわよ」

後ろに跳ねながら、仰向けに倒れているゴートリングの胸の傷穴に放り込んだ。

次の瞬間、ゴートリングの体が爆散した。
レディの凄まじい畳み掛けるような攻撃により、傷を再生させ治すヒマもなくゴートリングは敗れ去った。

210: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:34:26.49 ID:rHfIezA0
レディ「さて……」
レディは体についたチリを手で払いながら、MP5Kを拾う。
そして弾倉を交換しながら粉塵に包まれている『爆心地』へゆっくりと歩いていった。

粉塵が徐々に晴れる。

すると、ゴートリングの鎖骨辺りから上が転がっていた。
その目はまだ赤く光っていた。

レディ「『こっち』来ないでよ。向こうで大人しくしてれば良いものを」
レディはMP5Kの銃口を向けた。

『…来る……』
脳内に直接響いてくる低い声。

レディ「うるさいわねとっとと死になさいよ」
レディの指が引き金を引き始めたが。

『我等が王、我等が主が……』

その言葉を聞いてふと止めた。


レディ「―――は?」

211: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:38:47.12 ID:rHfIezA0
『あのお方が再び『立つ』…我等が王よ…………』

その悪魔の言葉を聞いてレディの顔が段々引きつっていく。

覇王の事を言っているのだろうか?

いや、それはない。

悪魔達が『主』、『王』と呼ぶ存在は一人しかいない。

『魔帝』だ。

覇王は魔界の統一玉座に座る前にスパーダによって封印されたため、そうは呼ばれていない。
だが魔帝は二ヶ月前にスパーダの一族達の手によって完全に滅んだはず。

魂ごと完全にだ。
どこにもその『力』の欠片は存在していないはずだ。

つまり復活の可能性はゼロ。

ではこの目の前の死にかけの悪魔は『誰の事』を言っているのだろうか。


レディ「―――何を言ってんの?」
レディがゴートリングの頭部へ銃口を向けたまま問う。


だが悪魔は何も言わなかった。
ただ小さく、その山羊のような口が曲がった。
レディにはわかった。

この悪魔は笑っている と。

次の瞬間、ゴートリングの頭部が白くなりひび割れ、砕け散って砂となって消えた。


―――

212: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:44:15.90 ID:rHfIezA0
―――


上条がデビルメイクライに居候して10日経った。

上条はこの生活にすっかり慣れていた。

さすがにあのトリッシュの凌辱的な『拷問』は厳しいが。
(御坂は相変わらず顔を手で覆いながら立ち会っている)

朝起きて御坂の手作りの朝食を食べ、
ダンテと共にネバダ砂漠に行き文字通り『挽肉』になるまでしごかれ、
戻ってすぐにトリッシュの地獄の検査を受けて遅めの昼食。

その後は昼寝したり御坂と話したり、また彼女に英語を教わったりして過す。

たまに御坂の買い物に付き添い外出し、周辺をぶらぶらしたり
ちょっとした喫茶店に寄ったりして時間を潰した。

心の底から嬉しそうに振る舞う御坂を見て上条の疲れも癒された。
整った顔の女の子の笑顔を見るのは悪くは無いものだ。

ちなみに御坂にとっては昇天してしまいそうなくらい幸せな時間だ。

そうやって午後を過ごし、夜に御坂の手作りの晩御飯を食べ、
インデックスに電話して眠りにつく。

それが上条の一日だ。

213: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:48:26.99 ID:rHfIezA0
上条の内なる悪魔の稼働率は15%。

ダンテやトリッシュの予想を上回る速度で上条は力を引き出し始めていた。
感覚が鋭くなり、身体能力、反射速度が軒並み向上していった。
ダンテ達から見ればまだまだだが、高等悪魔とそれなりに戦えるレベルだ。

更に上条はその力を使いこなし始めてきていた。

その上条の習得速度やセンスにはダンテすら少し驚いた。
ダンテ達と比べれば遠く及ばないものの、かなりの素質がある。
本当に元は人間だったのか? と疑いたくなる程だ。

元々かなり喧嘩慣れしており、右手1本でとんでもない敵を打ち倒してきたが、
それでも説明できないレベルだった。

そしてトリッシュが少し驚いた点がもう一つあった。
これには御坂も驚いた。

御坂から英語を教わっているのだが、その習得速度が異常なのだ。

ここに来たときは挨拶や簡単な単語程度しか分からなかった上条が、
いまや、簡単な日常会話なら特にどもることなくスラスラと喋れるようになっていた。
(それに伴ってダンテやトリッシュも『いつも通り』英語を使い始めた)

たった10日でだ。

その覚え方も面白い。
ノートに何度も書きこんだりするのではなく、直感的に飲み込んでいったのである。

上条曰く「あれっ俺今英語で喋ってるな」という感覚らしい。

『覚える』のではなく、気づいたら『知っている』というものだ。

どう考えても先の力の使い方を学ぶ速度と言い英語の件といい、普通では無い。

214: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:53:39.83 ID:rHfIezA0
トリッシュは二ヶ月前から思っていたが、この少年は実は馬鹿に見えてかなり頭が冴えているらしい。
そして直感的な感覚もかなり鋭い。

馬鹿と天才は紙一重と言うが、正にその言葉通りだ。

というか、この少年は『元』から少し人間離れしている。

大体、右手にしか無効化の力が無い。それ以外はタダの人間。
それなのに御坂が勝てないとは。

トリッシュはそれを最初聞いた時は信じる事ができなかった。

普通の人間が雷速に反応するなど到底無理だ。
避雷針になったとしても話が出来すぎている。

あの二ヶ月前にベオウルフをつけて無理やり蘇生させた時も、すぐにベオウルフの力を使い始めた。
ステイルなんかは無数の術式でガチガチに固めてやっとイフリートを操作する事ができた。
御坂は電気の性質を完璧に理解していた為にアラストルを使えた。

だが上条の場合は、
PCを触ったことも無いアナログ人間が、OSの入ってないPCをいきなり使いこなすようなものだ。
『ベオウルフの記憶を見たから』だけでは説明がつかない。

そして彼の『魂』の頑丈さも普通では無い。
先日暴走した時も、彼の本来の魂が耐えられずに押しつぶされて消滅していてもおかしくないのだ。
たとえ消滅しなかったとしても、確実に破壊され廃人と化してたはずだ。

トリッシュからすれば暴走した時点で完全アウトなのだ。

だが上条はまともなまま、そして五体満足で生き延びた。
しかもその次の日には退院できるレベルまで回復だ。

前々からトリッシュは疑問を持っていたが、先日の件とこうして一緒に過す事で確信した。
この少年は元から普通では無いと。

216: SSまとめマン 2010/04/27(火) 00:58:26.83 ID:rHfIezA0
『上条当麻』という研究材料はトリッシュの好奇心をくすぐる。

上条が普通じゃない原因は彼が元から持っている『幻想殺し』によるものなのだろうか。
それが悪魔化の刺激によって顕著になってきているのだろうか。

彼の力もまた他の能力と同様、天界でも魔界の物でもない、『人間界の隠された力』か。
だがそう決め付けるのは早計だ。

なにせ他の能力と比べれば余りにも異質すぎる。

『人間界の隠された力』としても、少なくとも『全く一緒』ではないだろう。

通常の『能力』と上条の『幻想殺し』。

トリッシュからすると、魔界で例えるなら通常の悪魔の力と魔帝の『創造』の力のように、
生まれた場所は同じでも本質的な次元が違うような関係に見える。

このまま悪魔化が進み、魂と力の器が肥大化したら、彼が元から持つ力はどうなるのだろうか?

彼の中に巨大な『何か』が眠っているとするのなら、それが目を覚ますのだろうか?

彼の右手自体も悪魔化したらどうなるのだろうか?


この『上条当麻』という少年は一体何者なのだろうか?


この『研究素材』はトリッシュの好奇心を強く揺さぶる。
しかし今の彼女には答えを出すことは出来なかった。

何せ『幻想殺し』の情報が無いのだ。
『人間界の隠された力』などつい最近気付いたことで、トリッシュにとってはまだまだ未知の領域だ。

それに一応『幻想殺し』について調べることも固く禁止されている。
今、それをわざわざ破って学園都市との関係をこじらせるのはあまり好ましくない。

だが彼女はほくそ笑む。
いずれ答えを出してやる と。
とにかく知りたいのだ。

それこそ、今の仕事をほっぽり出して上条を徹底的に解剖してみたいくらいだ。

その執念じみた知識欲もまた、『力』に固執する悪魔の本能からくる衝動だ。

―――

217: SSまとめマン 2010/04/27(火) 01:06:19.79 ID:rHfIezA0
―――


ネバダ砂漠のど真ん中。

上条は仰向けで地面に倒れていた。

上条「がぁ……」
全身の傷が湿った軋むような音を立てて塞がっていく。

上条「ッ…」
ぎこちなく上半身を起こした。
裸の上半身は相変わらず血まみれだったが、傷は全て消えていた。

右手以外はだ。

上条「……」
白いギプスのような物に覆われている右手を見る。

右手の地肌が一切見えないように包帯を巻き、
その上にトリッシュとダンテが加工した魔界の金属生命体のプレートを被せ、
そして学園都市製の強化ギプスで固定しているのだ。

これぐらいしないと、この激しい組み手の中で右手は簡単に千切れ飛んでしまうだろう。

トリッシュによると、ほんの僅かだが徐々にこの右手も悪魔化してきているという。

だが、依然この右手の治癒力・耐久度は相変わらず人間並みなのだ。

ダンテ「ヘィ!!どうした!?もう降参か!?」
10m程の所に立っていたダンテがまるで犬を誘っているかのように手を叩きながら挑発する。

上条「へっ!!!」
上条が左手で口の血を拭い勢い良く立ち上がった。

218: SSまとめマン 2010/04/27(火) 01:09:53.23 ID:rHfIezA0
上条「おおおおおお!!!!」
上条が地面を蹴りダンテに突進する。
人間の限界を遥かに超えた脚力は上条の体を一瞬でダンテの前に運んだ。

上条は左拳をダンテの顔面目がけて振るう。
だがダンテは欠伸をしながら顔を軽く傾けそれをかわした。

そして次の瞬間、上条の顎に下からダンテの膝蹴りが振るわれた。
上条の顎が一発で粉砕され、彼の体は20m程宙を舞った。

しかし上条は地面には叩きつけられなかった。
空中で体制をひらりと身を建て直し、地面に着地した途端、再びダンテへ向けて一気に突き進んだ。

ダンテ「humm......」

その突進してきた上条へ向けてダンテは足を振るう。

完璧なカウンターのタイミングだったが、上条は瞬時にそれに反応した。
咄嗟に左手をかざしガードする。この速度に慣れ始めてきたのだ。

更に、徐々に悪魔としての力を使いこなし始めている。
左手が白く輝き、悪魔の力で『強化』される。

ダンテ「いい動きだが―――」


だがまだまだだ。


ダンテの蹴りは上条の左手を砕き、そのまま首に炸裂した。


ダンテ「―――避けるか防ぐかの判断はまだつかねえか」

上条の首があさっての方向へひん曲がり、彼の体は大きくスピンしながらぶっ飛んでいった。

219: SSまとめマン 2010/04/27(火) 01:15:01.14 ID:rHfIezA0
上条「んぐぁっ!!!!!」
首が大きく曲がり、骨が粉砕される。

上条の体は人形のように地面を弾み、20m程吹っ飛ばされた。

普通なら死ぬだろう。

上条「ふんがぁ!!!」
だが上条は僅か5秒後に再び立ち上がった。
あさっての方向に曲がっていた首も砕かれた左手と顎も完全に再生していた。


上条「ぶはぁ!!!まだまだぁ!!!」
上条が血を吐き、右手で拭いながらダンテを睨む。

ダンテ「(……慣れてきたな……もうちょっと強くいくか)」

ダンテ「来い」

上条「らぁ!!!」
上条が再び地面を蹴り突進する。

だが次の瞬間、ダンテの姿が消えた。

上条「へぁ―――?」

そして赤い光の塊が目の前に現れたと思った瞬間に胸に強い衝撃。
肋骨が砕け、肺と心臓が潰される。
何が起こったのかわからないまま上条は後方に大きく吹っ飛ばされ地面に叩きつけられた。

上条「げはぁ…!!!」

気付くとダンテが地面に這いつくばる上条を見下ろしていた。


ダンテ「おめでとさん。レベルアップだ。坊や」


上条「……ハッ!!!上等だぜ!」

上条は口から溢れる血を左手で拭い、勢い良く立ち上がった。



―――

220: SSまとめマン 2010/04/27(火) 01:16:53.95 ID:rHfIezA0
今日はここまで
再開は恐らく明日の夜12時辺りからです

色々と忙しくなってきたので、少しペースが落ちると思います

231: SSまとめマン 2010/04/27(火) 23:44:09.46 ID:rHfIezA0
―――


御坂は事務所の一階のホールのソファーに座っていた。

御坂「あ~…」
気の抜けた声。
ダンテと上条は毎度の如く『修行』に行き、トリッシュもいつもと同じくどこかに外出中だ。

この時間帯は特に何もする事が無く、いつもヒマなのだ。
洗濯も掃除も済ませ、晩の献立も考え終わり、そして留守番。
いつもの事だ。

それにこの事務所には不思議なくらい客が来ない。
少なくとも御坂達が滞在してから一度も来ていない。

ここの経営は大丈夫なのだろうかと御坂は時々思う事がある。

だが今日は違った。
御坂がソファーでのびていると、突如玄関の大きなドアが乱暴に開いた。

一瞬トリッシュが帰ってきたと思い上半身を起こしたが、入ってきたのは別人だった。

胸元が大きく開いた白いジャケットに、パンツが見えそうなくらいギリギリのホットパンツ。
高そうなサングラスをかけた、無造作なショートヘアのグラマーな女性であった。
露になった太ももには銃と弾倉、腰にも多くの武器がぶら下がっており、
背中には先端に巨大な刃がついた身長ほどもありそうなロケットランチャーを背負っていた。

御坂「……ッ!!」
明らかに、どっからどうみてもカタギではない。

御坂は立ち上がり、前髪に電気を走らせながらその奇妙な客人を警戒して見据えた。

その女はそんな御坂の緊張なんか気にも留めずに普通に入って来た。

「ダンテは?いないの?」

女が事務所の中を見渡しながら、流暢な英語で呟いた。

御坂「い、いないわよ!」
御坂がぎこちない英語で返す。

232: SSまとめマン 2010/04/27(火) 23:48:39.44 ID:rHfIezA0
女が軽く鼻を鳴らし、御坂の方を向いた。
そしてサングラスの端を摘み、軽く下ろした。

下げられたサングラスの上端から、赤と青のオッドアイの瞳が現れた。

御坂「…!」

女は上目遣いのまま御坂を舐めるように見た。

御坂「……」
御坂は前髪に電気を走らせながらジッと睨み返した。


「ところであんた誰?」


御坂「あ、あんたこそ何よ!?」
御坂は言いながらあたしは何様よ と思った。
相手は少なくともダンテの知人だろう。

恐らく御坂が部外者なのだ。
だが、この目の前の女から向けられる異様な威圧感と殺気で、
反射的に敵対的な態度を取ってしまった。

女はそんな御坂を見ながら、首を傾け小さく笑った。
まるで小馬鹿にしているかのように。

御坂「な、何よ!?」

233: SSまとめマン 2010/04/27(火) 23:54:08.51 ID:rHfIezA0
「まあいいわ。待たせてもらうから」

女はそっぽを向いて、近くのビリヤード台に腰掛けた。
そして恐らくダンテが適当に置いたであろう、ビリヤード台の上にある雑誌を手に取り捲り始めた。

御坂「……」
御坂は電気を前髪に走らせたまま、警戒の態度を崩さずにソファーに座った。

数十分。

重苦しい沈黙の空気。
重苦しい空気を醸し出しているのは御坂だけなのだが。

女はそんな御坂を気にも留めず、
まるでカフェテリアで午後の休息をとってるかのように優雅に雑誌を捲っていた。

と、そんな時、再び事務所のドアが大きく開けられた。

「よう!!ダンテェ!!トリッシュ!!いるか!?」

またもや御坂の知らない人物だった。

姿を現したのは小太りのチビな男だった。
くたびれたコートにハットとサングラス。脇には大きなトランクを抱えていた。

御坂「わひゃ!!!」
御坂は驚き、先よりもさらに放電しながら再び立ち上がった。

女も流し目で凍て付くような視線をその男に向けた。

234: SSまとめマン 2010/04/27(火) 23:58:13.61 ID:rHfIezA0
「……って!!!おおおおい!!何だよ!!!」
男が二人の視線を浴びて玄関のところで戸惑う。

「相変わらず声がデカイわね。エンツォ」

エンツォ「す、すまん……で、レディ、あっちのガキはなんだ?トリッシュの親戚さんか?」

エンツォ「なんかバリバリ言ってるぜ?」

レディ「知らない」

御坂「……」

エンツォ「ダンテとトリッシュは?」

レディ「知らない。あの子に聞けば?」
レディと呼ばれた女が御坂の方に目を向けた。

御坂「…!」

エンツォと呼ばれた小太りの男がノソノソと事務所内に進み、
下品な笑みを浮かべながら御坂に近付いてくる。

エンツォ「へへへ、なあおチビちゃん……」

御坂「……」
チビにおチビちゃんと呼ばれ少しイラっとする。

御坂の前髪から、それ以上近付くなとでも言うかのように小さな電撃がエンツォの足元に放たれた。

エンツォ「ひぃいいい!!!す、すまん!!悪かった!!!」
跳ねるようにエンツォは数歩後ずさった。

235: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:02:43.85 ID:Q.OOMDg0
御坂「な、何っ?」
あからさまな嫌悪感を浮かべた顔でエンツォに言葉を放った。

エンツォ「……ダンテとトリッシュはど、どこかな?」
レディと違い、この男の英語は汚くて少し聞き取りづらい。

御坂「出かけた」

エンツォ「そうか……いつぐらいに帰って来る?」

御坂「知らない」

エンツォ「ああ……ったく何だよ…早く来いって言っておきながらよぉ…」

エンツォがブツブツと不満を漏らした。

エンツォ「あのアマ……なんでこうどいつもこいつも…」


トリッシュ「何?文句ある?」


エンツォ「うひぃいあああ!!!!」
エンツォの背後にいつの間にかトリッシュが立っていた。

236: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:06:40.42 ID:Q.OOMDg0
御坂「ト、トリッシュさん!!この人たちは…!」

トリッシュ「ああ、心配しないで。知人だから」

エンツォ「な、なあ、そのお嬢ちゃんなんなんだ?アンタの親戚か?」

トリッシュ「違うわよ。人間よ。訳ありでね」

レディ「……能力者ってやつ?」

トリッシュ「そう」

レディが雑誌を後ろに放り投げ、ビリヤード台から跳ねるように降りて御坂の方へ向かった。
そしてズイッと彼女を覗き込み、珍しそうにジロジロ見た。

御坂「……ッ!!な、な、な…」

レディ「へぇ~……電気使い?」

御坂「そ、そうだけど」

レディ「どんくらい使えんの?」

御坂「えっと……大体10億ボルトくらいの…」

レディ「すっごいわね。人間の癖してそこまでできるなんて。私も能力者になりたいわ」

御坂「……?」

レディ「私も人間。よろしくね電気使いちゃん」

238: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:14:46.87 ID:Q.OOMDg0
エンツォ「へっはぁ~すげえな、能力者って始めて見たぜ」

トリッシュ「あなたはあんまり見ないほう良いんじゃない?」

トリッシュ「この子気味悪がってるわよ」

エンツォ「お、おい!それどういう意味だ!!この野郎!!」

トリッシュ「いいから来て」

エンツォ「うおいっ!」
トリッシュがエンツォの襟を引っ張り机の方へ連れて行く。

低身長小太りのエンツォと高身でスレンダー(出るところはかなりでているが)なトリッシュ。
それはまるで教師が肥満の生徒を引っ張っていくような光景だ。

エンツォ「わぁったからよ!」
エンツォがトリッシュの手を振りほどき、机の上に大きなトランクを載せた。

トリッシュ「見せて」

エンツォ「おうおう」
エンツォがトランクのいくつもある複雑な厳重なロックを手馴れた手つきで外していき、開けて広げた。

御坂「?」
その中には、不気味な光沢を放つ奇妙な金属の塊、
古めかしい分厚い本、

そして妙な模様のある黒い拳銃が入っていた。

トリッシュ「ありがと」
トリッシュが金属の塊を手に取り、点検するように眺め机の上に置いた。
次に本を手にとってペラペラと捲り、机の上に置いた。

そして最後にその拳銃を手に取った。

239: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:19:33.91 ID:Q.OOMDg0
M1911コルトガバメントを改造した物だ。
通常の物よりも銃身とスライドが長く、そして肉厚になっている。
一見するとダンテのエボニーに似ている。
あれよりも一回り小さいが。

表面は黒く滑らかで、黒曜石のような光沢を放っていた。

スライドの側面には木の枝のような銀色の紋様、
そしてその『枝』の先、銃口あたりには十字を二つ重ねたような、
『光の輝き』をあしらったようなこれまた銀色の紋様。

トリッシュ「へぇ…」
トリッシュはその銃のスライドを引き、マガジンを出し入れし、左手を真っ直ぐ伸ばして構える。

エンツォ「へへへ、どうだ?」

トリッシュ「ええ。さすがロダンね。良い仕事するわ」
そして引き金のところで手馴れた手つきでクルクルと西部劇の一幕のように回した。

レディ「見せて」
御坂の傍に立っていたレディが興味津々の顔をしてトリッシュとエンツォの方に歩いていった。

トリッシュがその拳銃をレディに差出す。

レディ「……」
レディが重そうに受け取った。

レディ「へぇ…良い銃だけど…」

レディ「相変わらずあんた達が使うのって重いわね。どっち?ダンテの?」

トリッシュ「違うわよ。あたしでもダンテでもない」

240: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:24:50.91 ID:Q.OOMDg0
レディ「じゃあ?使い魔に持たせるとか?」

トリッシュが顔を横に振った。


トリッシュ「とある坊やにね」


レディ「何?あんた達子供でもできたの?」

トリッシュ「……あなた殺すわよ」

トリッシュ「『居候君』のよ」

御坂「……!!!」
御坂はピンと来た。

恐らく、いや間違いない。
トリッシュが言う居候君・坊やとは一人しかいない。


つまりあの銃は上条に―――。


御坂「(あいつの……!)」

トリッシュ「……」
その時、トリッシュが宙を見つめて動きを止めた。

トリッシュ「ちょっと待ってて。今ダンテ達を迎えに行ってくるから」

241: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:28:28.43 ID:Q.OOMDg0
トリッシュは銃を机の上に置き、黒い円に沈んでいった。

レディ「ダンテ『達』?」

と、10秒ほどでトリッシュと共にダンテが戻ってきた。
ダンテの肩には『いつも通り』血まみれでのびている上半身裸の上条。

御坂「お、おかえり!!!」

ダンテ「おう」

ダンテ「お前らも来てたのか」
ダンテがレディとエンツォを見る。

エンツォ「ようダンテェ!!……ってその坊主はなんだぁ?」

レディ「へぇ……その坊や?」

トリッシュ「そう」

ダンテ「ちょっと待ってろ」
ダンテがバスルームの方に向かっていき、御坂がその後を小走りで追っていった。

242: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:31:24.10 ID:Q.OOMDg0
開かれたバスルームのドアからシャワーの音が聞こえる。

レディ「で、あの坊や、何?」
机に腰掛け、置かれている銃を指で撫でながらトリッシュに問う。

トリッシュ「まあ、ベオウルフと人間の相の子、ってところね」

レディ「ベオウルフ……ああ、二ヶ月前の例の子ね。ダンテから聞いたわよ」

トリッシュ「そうそう」

エンツォ「……なんだぁ?もしかして『ここ』の新しい従業員にでもすんのか?」

トリッシュ「さぁ。どうかしら」
トリッシュがニヤリと笑った。

「ぶほぁ!!!!げほッ!!!げはぁっ!!!」

バスルームから少年のものと思しき咳が聞。

ダンテ「トーリーッシュ」
続けてダンテの声。

トリッシュ「はいはい」
トリッシュがバスルームに向かった。

243: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:34:11.20 ID:Q.OOMDg0
ダンテがバスルームから出て、エンツォとレディのいる机の方へ歩いてくる。

バスルームからはトリッシュに続いて上半身裸の上条と御坂が出て、
そのまま地下室へ続く階段の方へ向かっていった。

レディ「何してんの?」

ダンテ「『育て』てる」
ダンテが机の上にある新品の銃を手に取り、点検するように眺めながら答えた。

レディ「悪魔化させんの?」

ダンテ「まあな。それで終わりじゃねえが。最終的には人間に戻すのが依頼内容だ」

エンツォ「?じゃあさっさと悪魔の部分殺せば良いじゃねえのか?おめぇの剣ブッ差したりしてよ」

ダンテ「それができねえからこうしてんだろ」

レディ「魂ごと融合してんだって」

エンツォ「……それって…無理じゃねえのか?『悪魔を人間に転生』させるなんざ聞いたことねえぜ?」

ダンテ「転生じゃなくひっぺ剥がす」

245: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:37:35.12 ID:Q.OOMDg0
エンツォ「それじゃあますます無理じゃねえか。どうやるつもりなんだよ」

ダンテ「だから今その方法を探してんじゃねえか」
ダンテが持っていた銃をエンツォに向けた。

エンツォ「……うぉッ!!!な、何すんだよ!」
弾は入って無いが、さすがにいきなり銃口を向けられると驚いてしまう。

ダンテ「イイ銃だ。ロダンに礼言っといてくれや。近い内に店に顔出すともな」

エンツォ「おおう、そうだ」
エンツォがコートのポケットからくしゃくしゃの紙を取り出した。

エンツォ「その銃の仕様だ」

ダンテがその小さな紙切れを受け取り、鼻を鳴らしながら眺めた。

この銃はダンテがロダンに注文した物だ。

ダンテのエボニー&アイボリーをモデルとし、
ベオウルフの力に耐えられる、またベオウルフの力でブーストできるように、
そして秒間10発の連射に耐えられるように とだ。

つまりダンテのエボニー&アイボリーの下位互換だ。
ちなみに出来上がった現物は15kg程、ダンテのエボニー&アイボリーの約半分の重さだった。

当然、自動装填の術式も組み込まれている。
上条に使わせる場合は右手で触れないようにさせなければならないが。

247: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:41:18.17 ID:Q.OOMDg0
ダンテ「いいじゃねえか。最高だぜ」
仕様書を眺めながらダンテが笑みを浮かべた。

エンツォ「へへへ……ところでよ…あのよ…」
エンツォが下品な笑みを浮かべて、胸の前で両手をすり合わせる。

ダンテ「いつも通りツケといてくれ。この銃の代金はお前が立て替えとけ」

エンツォ「………へーへー」
まあいつも通りだ。


「んぎゃあああぁぁぁぁぁあああああひぁああああああああんぎいいいいいいいぁあああああ!!!!!!」


地下室の方から突如悲痛な叫びが聞こえてきた。

エンツォ「うおぃっ!!!!!な、なんだよ!!!!」
エンツォが驚き、慌てふためく。

ダンテ「ハハァ、始まったか。なぁにいつもの事だ」

ダンテが気にする風も無く銃を弄る。
手馴れた手つきで分解し、パーツを机の上に並べていく。

248: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:44:16.03 ID:Q.OOMDg0
レディ「で、具体的に何してんの?」
レディが引き金の部分のパーツを持ち上げ、重そうに手の平の上で転がす。

ダンテ「午前中は俺がぶちのめしてその後にトリッシュが『遊ぶ』」
ダンテが銃身の部分のパーツを顔の前に持ち上げ、覗き込みながら答えた。

レディ「面白そうね。手伝ってあげよっか?」

ダンテ「『どっち』を?」

レディ「当然ぶちのめす方。トリッシュの悪趣味なことには付き合いたくないわよ」

ダンテ「いいぜ。朝10時前に事務所に来い」

レディ「OK」

ダンテ「言って置くがよ、油断すると痛い目に合うぜ?あの坊や結構強くなってるしよ」

レディ「私を誰だと思ってんの?『悪魔も見惚れる』世界一美しいデビルハンターよ」

ダンテ「……」

エンツォ「……ぶふっへっへっへ…」

レディ「何がおかしいの豚野郎。金玉ぶち抜くわよ」

エンツォ「……いや……悪い」

250: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:50:23.01 ID:Q.OOMDg0
地下室のドアが開く音がする。
そして見るからに機嫌が良いトリッシュが戻ってきた。
その後ろにメソメソと泣く上条と、彼を慰める御坂。

ダンテ「よう、楽しかったか?」
ダンテが銃を組み上げながら三人の方へ声を飛ばした。

トリッシュ「最高よ」

レディ「本当悪趣味ね」

トリッシュ「何よ」

ダンテ「つーかよ、お前は今日何の用だ?また暇つぶしか?」

レディ「あ~……」
例の洋館での件で来たのだ。
なんでもないタダのたわ言かもしれない。だが一応は伝えておいたほうがいいだろう。

レディ「この間ゴートリングを殺したんだけどさ、そいつが死ぬ前に喋ったの」


レディ「『あのお方が再び立つ。我等が王が』って」


ダンテの手が止まった。


ダンテ「………………へぇ」


レディ「……って、ちょっといい?」
レディがホールの隅でゲッソリしてうな垂れている上条に目を向けた。

251: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:54:55.14 ID:Q.OOMDg0
ダンテ「あ~、おい!イマジンブレイカー!来い!」
ダンテが手招きをする。

上条がうつろな目でふらふらしながら彼らの所へ向かった。
御坂が上条の背中をさすりながら後に続く。

レディ「へぇ……この子がベオウルフの…」

上条「ど、どうも…」

レディ「はじめましてって、そっちははじめてじゃないわね」

上条「あ…はい…まあ一応」
上条はベオウルフの『記憶』を見た事によってレディとエンツォを知っている。

エンツォ「この坊主もあれか?能力者ってやつか?」

トリッシュ「まあね。能力者で悪魔ってところかしら」

エンツォ「すげえな坊主!!!聞いてるぜ!よくあんな代物とくっついて生きてられんな!」

上条「は、はあ」

エンツォ「で、能力はなんだ!?火とかか!?」

トリッシュ「なんて言えばいいのかしらね……イマジンブレイカーって言って、魔術とか片っ端から消しちゃうの」

エンツォ「……はぁ?」

252: SSまとめマン 2010/04/28(水) 00:57:47.04 ID:Q.OOMDg0
トリッシュ「レディ。弾一つちょうだい」

レディが腰から銃の弾倉を1本引き抜き、銃弾を一つ押し出して机の上に転がした。

表面に術式が刻まれ、魔術的に強化された破魔の弾丸だ。

トリッシュ「これ、触って」
トリッシュが上条へ言う。

上条「おう」
上条が右手の拘束具の人差し指の部分だけ外す。

そしてその弾丸を人差し指で軽く触った。

すると次の瞬間、銃弾にひびが入りそして細かく砕け散った。

エンツォ「うおおお……まじかよ!!!!」

エンツォがその砕けた銃弾を食い入るように見る。

レディ「へぇ~おっもしろいわね」

トリッシュ「凄いのよコレ。魔帝の『創造』もぶっ壊しちゃったんだから」

レディ「あ~そういえばそんな事もいってたわね」

エンツォ「おいおい……マジかよ……すんげえぞそれ……」

253: SSまとめマン 2010/04/28(水) 01:01:21.19 ID:Q.OOMDg0
レディ「消せる力の量とかには上限は無いの?」

トリッシュ「一応あるみたい。そうね………ダンテが魔人化した時とかの力は無理かしら」

トリッシュ「でも、純粋な力を消すには上限はあるけど、内部の構造をぶっ壊すのには制限は無いみたい」

トリッシュ「魔帝の『創造』だって力を正面から消したんじゃなくて、『方程式』を破壊して崩壊させたような感じだし」

レディ「へぇ~。原理は?」

トリッシュ「さぁ」

レディ「……」

エンツォ「しっかし……それにしても『ふざけた』力だぜ……お前さん達もアレだが、この坊主も中々やばいじゃねえか」

レディ「ところでさ」

トリッシュ「何?」

レディ「さっきの弾の代金、ちゃんと借金に上乗せしとくから。一発だからって見逃さないわよ」

ダンテ「………」

トリッシュ「………」


―――

277: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:09:04.39 ID:OPQrPOg0
―――

学園都市。

とあるマンション。
時刻は夜中。
黄泉川と芳川、そしてインデックスと打ち止めは奥の寝室で並んで寝ている。

リビングの中は静かだった。
ただ聞こえるのは、缶コーヒーをすする音。

一方「……」
一方通行は缶コーヒーを左手に持ちソファーに座っていた。

そしてもう一人。

机を挟んで一方通行の向かいの椅子に座っている赤毛の長身の男。

ステイル。

彼もまた一方通行と同じ銘柄の缶コーヒーを飲んでいた。

ステイル「……そうだな…はっきり言っておこう」
ステイルが手に持つ缶コーヒーに目を落としながら、神妙な面持ちで静かに呟いた。

一方「……なンだ?」


ステイル「これはコーヒーとは言えない。泥水だ」


ステイル「日本人にありがちだけどね、何でも缶に詰めれば良いってもんじゃないんだよ」

一方「るせェ」

278: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:13:49.11 ID:OPQrPOg0
ステイルはインデックスの様子を見に来たのだ。
一方通行とステイルは直接会話したことは無かったが、二ヶ月前の事件の後、お互いを病院で何度か目にした。
それにステイルは彼が『学園都市最強』のレベル5第一位というのを知っていた。

彼はいきなりこのマンションに押しかけて来たが、インデックスの友人という事もあって黄泉川は快く家にあげ、
一緒に夕食まで食べたのだ。

ステイルは誰とも馴れ合わない気質だが、黄泉川や芳川はそんな人物を相手にするのは慣れっこだ。
それにステイルも少し上機嫌だった。

インデックスが彼を親しい『友人』のように出迎えてくれたのだ。
彼女が記憶を失ってから、ステイルはあくまで良くて『知り合い』だった。

だが二ヶ月前、ステイルが命を捨てかけてまでインデックス救出の為に戦った事により、
インデックスの中でステイルの株がかなり急上昇していたらしい。

そんな事で、同僚や部下達が見たら、気持ち悪がってしまうほど柔らかい表情でステイルはすごした。


ステイル「とまあ……それはさておき…彼女の件だが…」

一方「……俺は保育士じゃねェ。サービスの文句は受付ねェぞ」

ステイル「いや、今回はただの確認さ。特に文句も無い」

一方「……」

ステイル「彼や土御門が信頼しているのなら構わないんだけどね」

ステイル「彼女を預けるのなら一度直で会っておかないとね」

一方「……へェ」

279: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:18:11.76 ID:OPQrPOg0
ステイル「まぁ、君も『それなり』に強いらしいし任せるよ」

一方「……」
そのステイルの言葉で一方通行の眉毛がピクリと動いた。

一方「テメェ……今『それなり』ッつッたな?」

ステイル「それが?この僕が認めたんだ。喜びなよ」

一方「ヘェ。そいつはありがてェ。ガリガリのマッチ棒野郎に認められるとはよォ。俺も随分とエラくなッたもンだ」

その挑発的な言動を聞いてステイルの眉毛もピクリと動いた。

ステイル「僕も本当は信じられないんだけどね。こんな色白のモヤシ野郎が学園都市最強だなんて」

痩せているのはお互いサマなのだが。


一方「そォかいじゃァそのお日サマみてェな頭にねじ込んでやろうかァ?今なら地球の自転ベクトルもプレゼントしてやるぜェ」


ステイル「僕も君を少し焼いてあげようか。こんがり小麦色にね。特別に超新星爆発並のサービスしてあげるよ」


一方「……」

ステイル「……」

二人は小さく笑みを浮かべたまま、笑っていない鋭い目をお互いに向けた。

280: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:21:05.36 ID:OPQrPOg0
一方通行は風の噂(主に土御門)により、このステイルが悪魔化した炎使いだと言う事は知っている。
ステイルもまたこの一方通行が、『学園都市最強』の名を冠するに相応しい力を持っているというのは知っている。

だがお互いが二ヶ月前に、誰とどのように戦ったかという事までは知らない。


二人とも戦略兵器級、それこそ小国程度なら一人で滅ぼせる程の力を持っているのは自覚している。
そしてその強さが自分の存在証明でもある。

力にある意味固執しているそんな二人が、それも他人を貶すような態度がナチュラルである彼らが、
こうして二人っきりになるといがみ合うのも当然だ。

黄泉川からすれば正に思春期のガキのガンの飛ばしあいに見えるだろうが、
そのガキ達の力は戦略兵器級なのだから困ったものだ。

二人ともこうして実際に話してみて確信した。
『こいつはいけ好かない』と。

ステイル「……まぁ…」

一方「……アァ」

ステイル「こんぐらいにしておこう」

一方「だな」

だが二人はある方面ではそこらの大人よりも『熟成』している。
二人とも『戦場』が日常の者だ。

一時の感情や衝動に身を任せるのは『戦士』として失格だ。
そんな事をする者はただのケダモノなのだ。

まあ二人ともたまに大事な者を守る為に『ケダモノ』になってしまう事があるのだが。

283: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:30:10.93 ID:OPQrPOg0
ステイル「……とにかく、任せるよ」

ステイル「報告はそっちでもしているだろうが、『サブ』として土御門にも報告してくれ」
ステイルが缶コーヒーを口に運びながら言う。

一方「アァ」

ステイル「……それにしてもマズイなこれは」
手に持っていた缶コーヒーを見ながら眉間に皺を寄せる。

一方「チッ……じゃァ飲むんじゃねェよクソが」

ステイル「ああ、悪いね。せっかく出してもらったのに。ちゃんと飲みきるよ」

ステイル「社交辞令さ。イギリス紳士は礼を守らなきゃね」

一方「それを言ッてんじゃねェよ。おしゃべりな野郎だぜ」

ステイル「ああそうそう、一つ言っておくよ」

一方「アァ?」

ステイル「彼女『には』手を出さないでおくれよ?」


ステイル「もし手を出したら少なくとも僕と天草式の『天使』が君を殺しに来るよ」


一方「……」
一方通行の頭の中に、サングラスをかけた金髪のアロハシャツの男の顔が浮かんだ。

一方「……………(土御門の野郎…ぜッてェいつか殺す)」


―――

285: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:35:51.34 ID:OPQrPOg0
―――

事務所デビルメイクライ。

レディとエンツォが帰った後、
ダンテ、トリッシュ、上条、御坂は一階のホールで遅めの昼食をとっていた。

机の上には三枚のピザ。
ダンテは椅子に座り、背もたれに思いっきり寄りかかりながら、
上条と御坂は近くのソファーに座ってピザを食べていた。

トリッシュも机に軽く腰掛け、ピザを摘んでいた。

ダンテ「……」

トリッシュ「どういうことかしらね」

ダンテ「さぁな」

ダンテとトリッシュは、先ほどレディが伝えてきたとある悪魔の最期の言葉について話していた。

レディは 死ぬ間際のうわ言かも と言っていたが、完全に無視することはできない。
その言葉を放ったのが高等悪魔ならば尚更だ。

上条と御坂はピザを食べながら黙って二人の話を聞いていた。

トリッシュ「まあ、復活はありえないわよね」

287: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:40:19.33 ID:OPQrPOg0
ダンテ「多分な」

トリッシュ「多分って何よ。あなた達が止めを刺したんでしょ?」

ダンテ「ああ。全部吹き飛ばしたぜ。木っ端微塵で跡形もなくな」

トリッシュ「本当に?」

ダンテ「ウソはいわねえ。魂は完全に消えた。あのクソ野郎は完全に死んだ」

トリッシュ「……魂はね……でも『力』がどこかに残ってたら?」

ダンテ「んなもんどこかにあったって使えるやつなんざいねぇだろ」

トリッシュ「あなたぐらいなら使えると思うけど?」

ダンテ「……」

トリッシュ「バージルも。ネロもギリギリ使えるわね。あと封印されてる覇王とかも」

トリッシュ「魔界の大悪魔達の中にも何人かいるかもしれないわね」

ダンテ「使う奴がいたらまた叩き潰す。それで文句ねえだろ」

トリッシュ「……」

ダンテ「つーかあんくれぇの力なんざ残ってたら目立ちすぎてすぐに気付くだろ」

288: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:44:59.17 ID:OPQrPOg0
トリッシュ「……形を変えて残してたら?」
トリッシュが上条の右手を見た。

魔帝の『創造』に触れ、それを破壊した右手を。

トリッシュ「例えば……『力』ではなく『情報』として。『記憶』とか」

ダンテ「……へぇ」

上条「……ん?」

トリッシュ「案外近くにあったりして」

ダンテ「……面白え」

トリッシュ「まあ、忘れて。ただの一人言」

ダンテ「気にすんな。こっちの話だ」
ダンテも上条を見ながらニヤリと笑った。

上条「……お、俺の事か?」

ダンテ「何でもねえ」

トリッシュ「忘れなさい。ま、そのうち喋ってあげるから」

トリッシュ「今やる事に専念しなさい」

上条「お、おう……」

289: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:47:27.92 ID:OPQrPOg0
ダンテ「そうだ、坊や」
ダンテが上半身を起こし、机の上にある黒い銃を手に取った。

そして引き金の部分に指をかけクルっとまわし上条の方に差し出した。

上条「……へ?」

ダンテ「ほれ」

上条「あ、ああ」

上条が不思議そうな顔をしてソファーから立ち上がり、
机の方に行きその銃のグリップを左手で恐る恐る握った。

ダンテ「どうだ?」

上条「どうって……?」

ダンテ「お前のだ」

上条「………………はぃいいい?!!!!」

御坂「(やっぱり……!!)」

ダンテ「お前がこれから使う。名前でもつけてやんだな」

290: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:50:22.47 ID:OPQrPOg0
上条「……ナ、ナゼ?」

ダンテ「あった方が色々便利だぜ?楽しいしよ」

ダンテ「スパイスだスパイス」

上条「……………」

トリッシュ「ダンテからプレゼントなんてそうそう貰えないわよ。おめでと」

上条「…………ハ、ハイ…」

上条はその左手にある銃を顔の前に持ち上げまじまじと眺める。

ダンテ「あとよ、生身の右手で触るなよ?」

上条「へ……?」

ダンテ「装填用の術式が剥げる。術式がねえと一瞬で弾が切れんぜ」

上条「そ、そうか……でも俺、銃の使い方なんか…」

ダンテ「教えてやる」

トリッシュ「ああ、そうそう、明日特別講師が付くから」

上条「?」

293: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:55:16.62 ID:OPQrPOg0
ダンテ「お前が『知ってる』奴だ。」

上条「……は、はあ」

御坂「ま、まあよかったんじゃない?、ほ、ほら、それも結構サマになってるし!」

上条「そ、そうか?」
上条が戸惑いと嬉しさが混ざった笑みを浮かべる。

御坂「でさ、ところで……一つ良いかな?……」
御坂が何か言いたそうにもじもじする。

トリッシュ「どうかした?」



御坂「そ、その……あたしも……欲しいかな~って…」



御坂が上条の銃をチラチラ見ながら小さな声で言った。

トリッシュ「……」

ダンテ「…………何言ってんだお前?」

294: SSまとめマン 2010/04/29(木) 23:59:55.37 ID:OPQrPOg0
御坂「あたしも……何か……そ、その、あたしはそういう為にここに来てるんじゃないのは知ってるけど…」


トリッシュ「……」
トリッシュは二ヶ月前の事を思い出した。
御坂はブリッツをダンテの銃を使って一撃で屠った。

この少女は確かにかなりの力を持っているが、戦闘時はほとんど無駄にしているようだった。
ダンテの銃のように、力を無駄なく束ねて一点集中できる物があればかなり戦い方も効率化されるだろう。

ダンテ「……」
ダンテもまた思い出した。
この少女はダンテの知る限り、『強い』のがかなり好きらしい。

はっきり言うと戦闘狂の気がある。


この間の地下駐機場のときもアラストルを手にしてかなり喜んでいた。
(ちなみにアラストルはまだ見つかっていない)

それに、この少女は上条の傍にいて彼を守りたいからとにかく強さを欲しいのだろう。
上条の横で並んで戦いのだ。

御坂「お願いします!!!お願い!!!」


ダンテ「……あ~」

295: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:03:31.43 ID:jDb3X/w0
トリッシュ「……」
トリッシュがダンテの顔を見る。

トリッシュ「いいんじゃないの?パパって作ってあげれば?」


御坂の子猫のような目を見てダンテが手を広げた。

ダンテ「あ~……しょうがねえな」


御坂「!!!!」
御坂の顔がパーッと明るくなった。

ダンテ「だがわざわざロダンに注文はしねえ。俺があり合わせで作るからそれで我慢しな」

御坂「うんうん!!!お願いしますッ!!!!」

ダンテ「あと弾は自分で買え。レディから」

御坂「?レディってさっきの…」

トリッシュ「あなたは悪魔じゃないから弾頭強化出来ないでしょ?」

トリッシュ「チタンとかで強化したのでも別に良いけど、レディに術式で強化してもらった弾の方が安いと思うわよ」

トリッシュ「そっちの方が悪魔には効果抜群だし」

ただし、比べると安いというだけだ。

その分野のスペシャリストが一発一発術式を刻んで作る破魔の銃弾だ。
普通の弾よりは遥かに高い。

296: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:05:26.06 ID:jDb3X/w0
ダンテ「明日もあいつ来るからそん時に話しな」

上条「(明日?特別講師ってレディさんか?)」

御坂「は、はぁ…」
少ししか話していないが、あの女はなんか苦手だ。
まあこの感覚は、初めてダンテと会った時も味わっのだから一時的なものだろうが。

トリッシュ「お金はあるんでしょ?レベル5はお金持ちって聞いたけど」

御坂「ま、まあそれなりには……」

ダンテ「油断するなよ」

御坂「へ?何が?」

ダンテ「ぼーっとしてるとよ、全部搾り取られるぜ」

御坂「?」


―――

297: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:12:22.54 ID:jDb3X/w0
―――

四人で遅めの昼食を食べた後、
トリッシュはいつも通りフラッとどこかに行き、
ダンテは上条の銃を調整・御坂の武器を作るために仕事部屋に篭り、
上条は軽く御坂と談話した後自室で昼寝していた。

そして御坂は自分の部屋で洗濯物を畳んでいた。

コインランドリーに置いてあるような大型の洗濯機で上条と自分自身の服を洗い、
一番日当たりの良い御坂の部屋で干していたのだ。

当初は上条の服をいちいち手にとっては頬を赤らめてボーっとしていたが、
今はテキパキとこなせるようになった。

相変わらず少し頬を赤らめているが。

ちなみに妹達には
『所帯じみて来ましたね』とか『一つくらいパンツ盗んでもわかりませんよ』
『匂い嗅がないんですか』などなど好き勝手な事を毎晩言われている。

本音を言ってしまえば嗅いでみたいのだが、
それをやってしまうと越えてはいけない一線を越えてしまいそうな気がするのだ。
身近に、その一線を越えてしまった、彼女を「お姉さま」と慕うツインテールの少女等の良い例がある。

それに妹達も見ている。
これ以上『姉』としての威厳を落とすのは御坂のプライドが許さない。

御坂「よしっ…と」

二人分の服を畳み終え、積み上げられている上条の服を見ながら表情を引き締めた。

御坂「じゃあ…行きますか」

上条の服を持ち、立ち上がり部屋を出る。
そしてすぐ隣のこの服の主の部屋の扉の前で立ち止まり、一度深呼吸した後軽くノックをした。

298: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:15:58.78 ID:jDb3X/w0
御坂「……」
上条はこの時間はいつも爆睡している。
当然返事は返ってこない。

御坂「お、お邪魔します」
御坂がゆっくりと扉を開けた。

案の定上条はベッドで仰向けに大の字になって寝ていた。

御坂がおずおずと、上条の寝顔をチラチラと見ながら部屋に入る。

御坂「……」
御坂は扉を静かに閉めた後、真っ直ぐと上条の所へ直行した。
そしてベッドの脇へ洗濯物を下ろし、自分も屈んだ。

上条の寝顔をじっくり眺める。
これもは『日課』だ。

御坂「……」
御坂の頬が徐々に赤くなっていく。
これもまた『日課』だ。

そして上条の頬を人差し指で軽くつついた。
これは五日前から増えた『日課』だ。

御坂「(……やっばいって!!ひょおおおおおお!!やばいやばい!!!)」
御坂は声を出さぬままその場でわたわたとはしゃぐ。


上条「んん………」
上条が少し動く。

御坂「(やばい!!!!まじやばいって!!!!!!!あばばばbあmhskkk)」

こうして数十分すごした後、御坂は上条の服をぼろいクローゼットにしまう。
そしてまたベッドの横に座って上条を眺めたり軽く触ってすごす。

これが上条が昼寝している間の御坂の日課だ。

299: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:18:46.11 ID:jDb3X/w0
上条の服もしまい終わり、後は上条が目覚めるまで彼の寝顔を眺めるだけだ。
御坂はベッドの横にすわり、両肘をベッドの上に乗せる。

御坂「……ふにゃ~」
ジーっと小さな寝息を立てている少年の顔を見つめる。
ずっとこうしていてもいいくらい幸せな時間だ。

その時。上条がもぞもぞと体勢を変え始めた。

御坂「!!」
一瞬起きたかと思い驚いたがそれは違ったようだ。
そしてそれよりも、この直後に上条が発した寝言の方が御坂の心に強く刺激を与えた。


上条「……イン……デックス」


御坂「……」
その言葉を聞いて御坂の表情に少し影が落ちた。

御坂「……うん。そうだよね」

わかっている。
この少年があの少女の事をどう想ってっているのかなど、端から見れば一目瞭然だ。

御坂「……」
だがそんな事は重々承知だ。

確かに悔しいが、それはもう覚悟して自分でも納得している事だ。

300: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:21:10.06 ID:jDb3X/w0
それこそ上条がこっちに振り向いてくれれば最高だが、
今はこうして傍にいられるだけで充分だ。

御坂は上条の顔を見て穏やかに微笑んだ。
一瞬差していた影が彼女の顔から消えた。

こうやって誰かの為に、誰かを思って迷うことなく試練に飛び込んで突き進んでいく上条が好きなのだ。
自分の事など一切顧みず。

インデックスはもちろん、この少年は御坂の事にも命をかける。

この部分がきっかけで惚れてしまったと言っても過言ではない。

彼は御坂に多くの物を与えてくれた。

想い人であり、そして救世主だ。

御坂「……」
御坂は上条の顔を見ながら、心の中で改めて決意した。

彼が望むのなら、自分もそれを命がけで守る と。
彼の大事なもの全てを、彼が守ろうとするもの全てを守る と。

そして彼そのものを守る と。

その優しい目を、優しい笑みを何が何でも守ると。

例え目を向けてくれなくても良い。

だからその背中の後ろで、横で。

傍で彼とともに戦う と。

301: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:23:41.41 ID:jDb3X/w0
御坂「……あたしも頑張らなくちゃ!ね!」
御坂は顔を引き締める。

と、その時だった。
いままで上条に夢中なせいで気付かなかったが、
耳を済ませてみると壁の向こうから話し声が聞こえた。

御坂「……?」
ダンテの仕事部屋の方からだ。

今トリッシュはいないはずだ。
では誰と話しているのだろうか。

御坂「……」
あまり良い事ではないが、御坂は聞き耳を立てた。

何やら低い声が聞こえる。

御坂「……」
耳に集中する。

会話の内容が徐々に聞こえてきた。

『なるほど』

『なるほど』

最初は一人の声だと思っていたが、よくよく聞いてみると
同じ声の『二人』の者が喋っているようだった。

『ダンテも優しい』

『優しいダンテ』

『小娘に銃を手作りとは』

『銃を手作りとは』


「お前等しゃべんなつってんだろ」
そしてダンテの不機嫌そうな声。


御坂「……?」

304: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:27:23.88 ID:jDb3X/w0
『我は前から思っていた』

『我も思っていた』

『『ダンテは本当は優しいのだ』』


「うるせぇ」


『認めぬのか?』

『認めるのだ』

『主自身が気付かない点を』

『指摘し』

『気付かせるのも』

『『我ら忠実なる僕の使命』』


「黙れつってんだよ。つーかお前ら何でここにいんだよ」


『それは主が』

『我等を』

『『呼んだからだ』』


「それ二ヶ月前の話だろ」

305: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:34:13.28 ID:jDb3X/w0
『何?』

『何だと?』

『だが確かに』

『そうだ確かに』

『『あれは二ヶ月前』』


「さっさと帰れ」


この双子の魔具は借金の肩代わりではなく、
ダンテがあまりのうるささに耐えかねてエンツォに売ってしまったのだ。

その為、ダンテが使わない時はいつもエンツォの倉庫の奥底に閉じ込められていた。

だが二ヶ月前に久々に召喚されたのが相当嬉しかったのだろう。
そのままデビルメイクライに居ついているという訳だ。

ちなみに買い取ったエンツォも特に文句は言ってこない。

むしろ厄介払いが出来たと喜んでいた。

なにせ主の命令もろくに聞かないのだ。
エンツォの指示で静かになるわけが無い。

306: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:36:19.69 ID:jDb3X/w0
『あの時』

『我等は』

『数年ぶりに』

『『ダンテに召喚されたのだ』』


「いい加減にしねえと換気扇とガスコンロ代わりに使うぞ」


『そしてダンテは』

『我等を手に持ち』

『『振るった』』

『なんとも』

『なんとも』

『『甘美なひとときだったことか』』

『あれはs


「うるせぇ黙れいい加減しろやてめぇら」


次の瞬間、固い金属同士を強くぶつける音が壁越しに聞こえた。


「No talking.」


続くダンテの声。
そして静かになった。

御坂「……」

―――

307: SSまとめマン 2010/04/30(金) 00:37:41.48 ID:jDb3X/w0
今日はここまでです。
明日はちゃんと夜11時頃から投下できます。

318: SSまとめマン 2010/04/30(金) 23:24:58.13 ID:jDb3X/w0
―――

翌日。

ネバダ砂漠のど真ん中。

地面に仰向けに倒れている上半身裸の上条。

上条「ぐふッ…いってぇ……」

その上条から20m程離れた場所に、ニヤつきながら立っているダンテ。

そしてその二人から40m程離れた所にある岩に座っている御坂とレディ。
二人はダンテと上条の組み手を眺めていた。

上条が立ち上がり、ダンテに再び突進し攻撃する。
それをダンテは軽々といなしかわし、上条を一方的にぶちのめす。
そして上条はまた地面に倒れる。

その繰り返しだ。

上条が倒れるたびにそれを見ている御坂の体もビクンと跳ねる。
大丈夫なのはわかっているのだが、さすがに想い人が何度も何度も半殺しにされるのを見るのは少々キツイ。

だが御坂は目を背けようとはしなかった。

試練に立ち向かう上条を見守るのもまた彼女の義務であり、そして彼女自身が決意したことだ。
(さすがにまだトリッシュの『検査』を見る勇気は無いが)

319: SSまとめマン 2010/04/30(金) 23:30:35.67 ID:jDb3X/w0
御坂「……うひぁ…」

レディ「へぇ~。タフねあの坊や」

レディはあの二人を眺めながら少し懐かしい気持ちになった。
かつて、若かりし頃自分もダンテにあんな感じで遊ばれたのだ。

あの今の二人のように友好的な関係ではなかったが。

なにせレディは本気でダンテを殺そうとして向かっていたのだから。


もう十数年前の事件の事だ。

その事件の中心地、『テメンニグルの塔』に飛び込んでいく前まで、彼女は己を最強のデビルハンターと自負してた。

だがその自信はあっけなく砕かれた。

次々と現れる、伝説級の神クラスの大悪魔達。
そしてそれを軽々と打ち破っていくスパーダの息子。

悪魔と人間の圧倒的な差を見せ付けられた。
その凄まじい悪魔同士の戦いを見た。

彼女はそれを目の当たりにして恐怖した。
だが彼女は止まらなかった。

その圧倒的な力を見るたびに、恐怖を上回るどす黒い怒りが彼女を覆い尽くした。

あの力を手に入れる為に父は悪魔に転生したのだ。

その『くだらない欲望』のせいで母は生贄にされ殺された。

そんな力なんて、悪魔達なんて全て滅ぼしてやる と。

父を殺し。
悪魔を殺し尽くす。

当然、ダンテ達半人半魔も例外ではない。

その底なしの怒りが当時の彼女の原動力だった。

320: SSまとめマン 2010/04/30(金) 23:33:17.53 ID:jDb3X/w0
そしてその過程で遂にダンテと直接激突した。

己の持ちうる全ての技と力をダンテにぶつけた。
全ての怒りを叩き付けた。

だがあっさりと完敗した。

戦いが始まってからダンテに当てることができた銃弾はたった一発。

それもダンテはわざと避けようとしないで額で受け止めた。

まるで彼女のと憎しみと怒りを知り、それを全て正面から受け止めるかのように。
お前の苦しみを全部背負ってやるとでも言うかのように。

彼女の信念に正面から向き合い、あえて徹底的に捻じ伏せた。
彼女の中に渦巻いていた禍々しい思念を吐き出させ、叩き潰したのだ。


最終的に、レディは父を殺害するという目的を己の手で果たした。

だがその直後に流した『涙』。

ダンテが彼女の中に渦巻いていた、負の思念を叩き潰していなかったら、
その儚い雫は落ちていなかったかもしれない。

ダンテに会っていなければ、彼女は底無しの憤怒に身を任せ、どこまでも堕ちていったかもしれない。
そのまま父の遺体を八つ裂きにしていた事だろう。

ダンテが彼女の心を『人間』のまま繋ぎとめたのだ。

321: SSまとめマン 2010/04/30(金) 23:38:15.45 ID:jDb3X/w0
今も一見遊んでいるように見えて、実はダンテはあの少年を救おうとしている。

欠伸をし、緊張感の欠片も無い舐めたような態度をとり、ヘラヘラと笑う。
『どうでもいい』だの『めんどくせぇ』だの『しるか』などなどの適当な言動。

だがその下、誰にも見せない底の部分では、絶対に揺るがない熱い信念が常に力強く鼓動している。

悪魔的な絶対に揺るがない芯と人間的な強く純粋な情念。
それが見事に融合した、彼の『最強』たる所以の『魂』。

一見何も考えて無さそうであり、全ての行動が行き当たりばったりに見える。

だが蓋を開けてみれば、最初から計算していたのか?と聞きたくなるくらいに、
完璧なタイミングでピースが組みあがっていき、全てが丸く収まりダンテの狙い通りの結末となる。

レディはそんなダンテに神秘性を感じる事が多々あった。

まるで本物の『全能の神』だ。
全ての事象が彼の思い通りに動いているように見えた。

ダンテにそんな事を言ったら鼻で笑われ一蹴されるだろう。

しかし、彼に惹かれる者は皆意識していなくとも、
どこかで無意識の内にそういう目で彼を見ているはずだ。
トリッシュもレディも、あの少年も皆。


レディは常々思う。

ダンテは不思議な存在だ と。


レディは組み手をする二人を懐かしそうな目で見ながら、小さな笑みを浮かべていた。

322: SSまとめマン 2010/04/30(金) 23:41:04.81 ID:jDb3X/w0
レディ「……全く…相変わらずね」

御坂「…?」

御坂が隣のレディの小さな笑みに気付く。

レディ「何?」

御坂「い、…なんでもない」

レディ「……あ~そうそう聞いたわよ」

御坂「?」

レディ「私から弾買いたいんだって?」

御坂「あ、うん。ダンテがあたしの作ってくれるって…」

レディ「いいわよ。売ってあげる。口径は?」

御坂「……へぁ?」

レディ「ああ、まだ何も聞いてないのね」

御坂「うん……まだ何も。今作ってくれてる最中らしいけど…」

ふと気付くといつのまにか静かになっていた。

特に汗もかいてない普段どおりのダンテがコートをなびかせて颯爽と、
血と汗と土にまみれたズタボロの上条がヨロヨロと御坂達の方へ歩いてくる。

ダンテ「休憩だ」

上条「ふへぁ……」

御坂がタオルを手にして岩から飛び降り、上条の元へ駆け寄った。

323: SSまとめマン 2010/04/30(金) 23:46:06.50 ID:jDb3X/w0
御坂「だ、大丈夫?!」

上条「はは、いつもの事だぜ。大丈夫だ」
上条が御坂の手からタオルを受け取ろうとしたが。

御坂「あ、あたしが拭くから!!!!す、座って休んで!!!」
御坂がタオルを持つ手を引っ込める。

上条「おう、いいのか?サンキュ!」

上条は近くの岩へ腰かけ、その前に御坂が屈んで上条の顔を少しぎこちなく拭いていく。

上条「う……お」

御坂「ん……むむ…」

上条「……」

御坂「……」

さすがの上条も、このシチュエーションがどういったものなのか気付く。
二人とも少し目を俯き、ぎこちない。


レディとダンテは少し離れた、大きな岩に寄りかかりながらその二人を眺めていた。

レディ「何アレ?なんか妙にムカつくんだけど」

ダンテ「あ?いつもの事だ。気にすんな。ほっとけ」

325: SSまとめマン 2010/04/30(金) 23:46:58.91 ID:jDb3X/w0
レディ「そうそう、あの電気使いに銃を作ってあげてんでしょ?」

ダンテ「まぁな」
ダンテ自身が手作りしているのは、別に御坂の為に特別なのを作ろうとしているからでは無い。

そっちの方が安上がりなのだ。
ロダン等のその線のスペシャリストに発注するとかなりの金がかかる。
ダンテとしては借金が別に増えても良いのだが、トリッシュがうるさいのである。

それに御坂『程度』にロダンが作った業物を持たせても、その性能を100%引き出すことはできないだろう。

そしてダンテは銃弄りが好きだ。そこで娯楽も兼ねて作っている。

レディ「で、口径は?」


ダンテ「12.7x99mm」


レディ「……は?」


ダンテ「大体…そうだな、6,000m/sでも融解しないようにお前お得意の術式で強化」

ダンテ「それと対悪魔仕様で。一発でゴートリングを三体貫けるくらいにしてくれ」


レディ「…………………………あの子に何持たせる気?」

329: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:00:21.95 ID:g084P7k0
ダンテ「いや、あの嬢ちゃんはもうでっけえ大砲持ってるからよ」

ダンテ「俺はその性能を効率よく引き出せる『銃身』を作るだけだ」

レディ「ベースは?」


ダンテ「ブローニングM2」


レディ「……ぶふッ……デカ過ぎんじゃないの?」

ダンテ「お前あのお嬢ちゃんの必殺技見たらデカ過ぎとは言えなくなんぜ」

レディ「必殺技?」

ダンテ「どうやってんのか知らねぇけどよ、コインを電気で飛ばすんだとさ」

ダンテ「ゴートリングも一発で貫いたぜ?」

レディ「………電気…」
レディが御坂の方を見る。

相変わらず固まっている上条の体を御坂は頬を赤らめながらぎこちなく拭いていた。


レディ「レールガン?リニアモーターガン?コイルガン?」

ダンテ「あ?……お前何喋ってんだ?」

レディ「あ、わからないか」
超ド級の機械音痴のダンテに次世代の技術の事を言っても無駄だ。


レディ「ってあんた原理も知らないで何作ってんの?」

ダンテ「知るかよ。俺は頑丈なのを作るだけだ」

レディ「……」

330: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:06:20.25 ID:g084P7k0
ダンテ「何だ?何か文句あっか?」

レディ「……なんていうか…本当に相変わらずね…」

ダンテ「まあ後にしようぜ」

ダンテ「おい!!!イマジンブレイカー!!!始めんぞ!!」
ダンテが上条の方へ叫ぶ。

上条「お、おう!!!!」

ダンテ「次はお前だぜ。レディ」
ダンテが岩に肘を乗せて寄りかかりながら頭を傾けレディを見る。


レディ「あ、やっとね。待ちくたびれちゃった」

レディがつかつかと上条の方へ向かい、
御坂が小走りで慌てて離れていていく。


上条「へ?」

レディ「次は私」

歩くたびに体中の装備同士が擦れる音。
そしてレディが上条から20m程離れている所に立つ。

331: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:10:56.38 ID:g084P7k0
ダンテ「ちょっと趣向と相手を変えてな!いつも同じやり方じゃ飽きちまうだろ?!」
30m程離れた場所の岩に寄りかかっているダンテが声を飛ばす。

上条「……い、いや…」
上条にとって飽きるとか感じる余裕すらない日々だったのだが。

ダンテ「違う戦い方も経験しとけ!坊や!」

上条「お、おう」

レディ「はじめるわよ」

レディ「……」

上条「……」

静かに、向かい合ったまま10秒ほどが経過した。

レディ「何?来ないの?」
レディが不機嫌そうに首を傾げる。


上条「だって……なぁ、レディさん『人間』だろ」

上条「能力者でもねえし…」

上条「もし間違って殺しちゃったりでもしたら……俺まだそういう加減できねえし…」


レディ「……………へぇ」
その上条の言葉でレディの表情が変わった。

空気が凍る。


ダンテ「あ~……やっちまったな坊や」
ダンテがそのレディの様子を見ながらポツリと呟いた。

333: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:14:25.58 ID:g084P7k0
レディ「まぁまぁまぁ……こんなに舐められたの久しぶりね」

レディは相変わらず笑みを浮かべているものの、
さっきまでのふざけたような空気は完全に消えていた。


レディがサングラスを外し、胸元にかける。

凍て付くような鋭いオッドアイの瞳が上条へ向けられた。

上条「うお……あれっ俺なんかしたか……?」
その異様なレディの威圧感に押され上条が少したじろぐ。


レディ「ダンテェェェェッ!!!!」


レディが上条を見据えながら声を張り上げた。
突然の大声で上条がビクっとする。

ダンテ「あぁ?」


レディ「このクソガキさぁ!!!!」


レディ「殺しても良い?!!!」


ダンテ「……まぁ程々にな!!!」



上条「……あれ、俺もしかしてヤバイ…感じ?」
鈍感な上条がようやく自分の置かれている状況に気付く。

337: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:19:51.92 ID:g084P7k0
先に動いたのはレディだった。

レディが右手を腰のMP5Kにまわし、左手で手榴弾を二つほど、指にピンの輪を引っ掛けるようにして取る。

上条「―――」
レディが目にもとまらぬ速さで、二つの手榴弾をピンを抜かないまま上条の方へ高く放り上げた。
その二つはどう見ても上条の所へ落ちる軌跡ではなく、それぞれ離れた場所に向かって放物線を描いた。

上条「?」
そして次の瞬間、レディの右手のMP5Kから大量の銃弾が放たれた。

上条「―――うぉ!!!」
いきなりだったが、上条は悪魔の感覚で反射的にかわす。

上条「(あれっ……これだけか?)」

上条はひらりひらりと銃弾をかわし、素早く跳ねながらレディへと進む。
サブマシンガン程度の弾速ならば、今の上条にとってかわす事は容易だ。

記憶によれば、レディの身体能力はあくまでも人間のレベル。
破魔の銃弾はかなりの威力だが、避けてしまえばどうってことは無い。

つまりそのまま距離を詰めて近距離戦に持ち込めば勝利 と上条は思っていた。

―――と思っていたのだが。

上条「―――へ?」
気付くと、先ほど宙に放り投げられていた手榴弾が顔のすぐ真横に降って来た。

そしてその手榴弾にレディの銃弾が直撃した。

顔から僅か30cmという至近距離で、尋常じゃないくらいに強化された対悪魔用の手榴弾が爆発する。

339: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:25:07.46 ID:g084P7k0
無数の破魔の破片と爆風を浴び上条の体が大きく横にぶっ飛ぶ。

上条「んぐぉおおお!!!!」

開始早々ズタボロになった上条の体が宙を舞う。
そして地面に叩きつけられる瞬間。

上条はその地面に見た。

先ほどレディが投げたもう一つの手榴弾が地面に転がっていた。

上条「やっべ―――!!!」
気付いた時は既に遅し。

その手榴弾にもレディの銃弾が食い込んだ。

そして再び至近距離で爆発した。
上条の体が再び宙を舞った。

上条「ぐぁ……」
地面に叩きつけられる。


レディ「なっさけないわね。この程度でも喰らっちゃうなんて」


レディ「さっさと立てやクソガキ」

340: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:29:05.03 ID:g084P7k0
上条「痛ッ…!!」
体に食い込んでいる破魔の破片が、傷の再生を阻害する。いつもよりもかなり遅い。
体内の力がかき乱される。

世界最高峰のデビルハンターのレディが作った弾なのだから当たり前だ。
悪魔の治癒能力を妨害する機能があってもおかしくはない。
むしろ当然だろう。

そしてさっきの戦術も。
上条が銃弾を避けることを見越され誘導されていたのだ。

完璧に動きが読まれている。完全にレディの手中だ。

数多の死線で培ってきた経験と、鍛え上げられてきた技と感覚。

世界最高峰のデビルハンターの名は伊達ではない。


上条「くっそ……!!ああ、甘く見て悪かったぜ!!!」
上条が口から溢れる血を左手で拭いながら立ち上がる。

レディ「そうその意気。もっと苦しんでもがいて」

上条「……上等だぜッ!!野郎!!!」



レディ「殺してあげる」


レディ「バッラバラにして ね」



レディが心底嬉しそうな、そして不気味な笑みを浮かべた。


上条「……………………い、いや、それはカンベンしてください……さっきの事なら謝りますので…」
その強烈な本物の殺意に上条は完全に押されてしまった。


ダンテ「ま、せいぜい頑張れや。坊や」
ダンテは相変わらずニヤニヤしていた。


―――

342: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:35:28.75 ID:g084P7k0
―――


イギリス。

バッキンガム宮殿の地下室。厳重な結界が張られている蔵書。

ネロ「………………んが…」

ネロは本に埋もれたその部屋で、机の上に足を組んで上げて寝ていた。
先日から例の事件の黒幕、『遠隔制御霊装の強奪犯』の捜索に就く事になった。

とは言うものの、実際に各地で情報を集めているのは王室直属の、学園都市風に言えば『暗部』の者達だ。
今のところ、ネロ自身がやることはその集められた情報を選別し統括することである。

要するにヒマなのだ。

掛け持ちである対悪魔戦のアドバイザーという仕事ももうほとんど終わっている。
イギリスの騎士や魔術師達の中には、もう一人前の『デビルハンター』と言っても過言ではない者達も続々と増えつつある。

机の上には様々な書類、そして遠隔通信用の書物型の霊装が開かれたまま置かれていた。

その通信霊装が光出す。

ネロ「んあ……」

ネロの目がゆっくりと開く。
そしてぎこちなく腕を上げ、体を伸ばして大あくびをする。

343: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:39:22.66 ID:g084P7k0
ネロ「……」
眉間に皺をよせ、寝起きの不機嫌な顔で、机の上の光る通信霊装をジロっと睨む。

そしてその上に足を乱暴にドンと載せた。
本来は手を載せて起動するのだが。

ネロ「……なんだ?」

『お時間はよろしいでしょうか?』
通信霊装から若い男の声。

ネロ「良いからさっさと用件を言え」

『ヴァチカンに潜入していた者より報告です』

ネロ「続けな」

『枢機卿の者数人が、ウィンザー事件の直後にロシア成教『殲滅白書』の幹部と秘密裏に接触していました』
例の事件はウィンザー事件と呼ばれている。

『目的は不明です。ただ、かなりの隠密行動でした』

ネロ「へぇ…」
ローマ正教とロシア成教の同盟は周知の事実だ。
それなのにわざわざ影でコソコソ動き接触するということは、外に『知られたくない』事情があるのだろう。

『それと、ヴァチカンでは『悪魔の力』の痕跡は発見されませんでした』

『現地の指揮官によると、少なくとも「ヴァチカンには悪魔の力を行使する者はいない」との見解です』

『後ほど詳細なデータをそちらに』

ネロ「……」

345: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:42:57.38 ID:g084P7k0
『もう一点、興味深い報告がありました』

ネロ「言え」

『「悪魔と融合した銃」が三つ、リスボンで目撃されました』

ネロ「……」

『ウロボロス社製の小銃に複数の下等悪魔のムシラを結合した、恐らく人造悪魔かと』

ネロ「恐らく?」

『はい。捕獲はできませんでした。発見と同時に攻撃を仕掛けてきたため応戦、その後逃げられたと』

ネロ「……」
人造悪魔。
例の事件の黒幕もその線のスペシャリストだ。
何せ大悪魔クラスの人造悪魔を生み出したのだから。

ネロ「完成度は?」

『8名でも捕獲できませんでした。その内3名が死亡』

騎士団や必要悪の教会から選抜された、「デビルハンター」として認められた者が猛者が8人。
それを退けて離脱したとなるとかなり完成度が高い人造悪魔だ。

346: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:47:50.73 ID:g084P7k0
ネロ「作った野郎の痕跡は?なんかねえか?破片とかよ」

『何も入手できなかったと』

ネロ「……チッ…」

銃の現物の破片でもあれば、
そこからその銃の購入者を割り出して特定することもできるが、それは無理なようだ。

『続けてもう一つ。ローマ正教及びロシア成教圏内に多数の霊装兵器が配備されつつあります』

『全容はつかめませんが、その形式は第二次大戦時の戦時体制に酷似しています』

『ただ、同じような演習が何度も、一昨年にも行われていた為、これが本物の実戦配備なのかどうかは判断しかねます』

ネロ「…………」

『それともう一つ。これは科学側の件ですが……何しろかなり大きな動きですので。よろしいでしょうか?』

ネロ「言え」

『ウロボロス社が、隠密裏にかなりの低価格で大量の兵器を売りさばいているようです』

『未発表の最新兵器まで元値の1割程度です。中にはタダ同然の取引も。買い手はロシア、イタリア、フランス』

『各国とも凄まじい量の兵器を買い漁っています』

ネロは少し引っかかった。
この三国はローマ正教・ロシア成教と強いつながりを持ち、
ウロボロス社や学園都市等の多国籍にまたがる科学勢力を敬遠していた国だ。

民間同士のつながりはあったとしても、国が進んで前に出てくることは無かった。

この三国は、兵器は自国開発を主としていたはず。

ネロ「……全部隠密裏か?」

『はい。完全に水面下の行動です。一切公表されていません』

『ウロボロス社は共同関係にある学園都市側にもその事実を隠しています』

347: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:53:56.52 ID:g084P7k0
ネロ「……で、イギリスは?買ってねえのか?」

『報告の中にはありませんでした。その点はご自身で「上」にお聞きになった方が確実かと』

ネロ「……そうだな」

ネロ「……」
明らかに不穏な動きだ。どうみても戦争準備だ。
だがウィンザー事件と結びつけるにはまだ早い。

ローマ正教もロシア成教も、そして各国も悪魔達の力を目の当たりにして急いで軍備拡張をしているのかもしれない。

それにもし大きな戦争が起こるとしても、今のところそれは人間同士の戦いと思われる。
ネロが出る幕ではない。

ネロは『イギリスの為』に動いているわけではないのだ。

悪魔の関わりが無いのなら、ネロには関係ない事だ。

人間同士の戦争なら好き勝手やってくれというスタンスだ。

ネロ「他は?」

『以上です』

ネロ「下がれ」

『了解』

ネロ「―――」
とその時だった。

ネロの頭に突如一つの、『最悪の説』が浮かんだ。


ネロ「待て」

348: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:55:49.46 ID:g084P7k0
それはあまりにも突拍子も無い荒唐無稽な説だ。
ネロ自身でさえ疑いたくなるような内容だ。

だがどんなに小さな、有り得無そうな可能性でも一応調べる必要がある。

ネロ「最後に一ついいか?」

『なんでしょう?』

ネロ「リスボンの人造悪魔、ウロボロス社製の銃だったな?」

『はい』



ネロ「ウロボロス社の件で、それと同型の銃は取引されてるか?」



『少々お待ちを』
通信霊装の向こう側から紙を捲るような音が聞こえてくる。
おそらく報告書を調べているのであろう。

『ありました』

ネロ「数は?」


『ロシアに3万丁、イタリアに5000丁、フランスに2万丁』

350: SSまとめマン 2010/05/01(土) 00:59:18.19 ID:g084P7k0
ネロ「……………」
ウロボロス社製のメジャーな商品の一つだ。
大量に取引されていてもおかしくない。

だが、もし今頭の中に浮かんでいるこの荒唐無稽な説が正しかったら。


人造悪魔を作った者はウロボロス社自体に関る者で。


この銃全てが人造悪魔だったら。


そしてもしそうならば。


取引されている他の兵器も人造悪魔の可能性がある。



そしてリスボンの人造悪魔は報告を聞く限りではかなりの完成度。
その製造者がウィンザー事件の黒幕と同一犯だったら。

ネロ「……」
これが正しかったらとんでもない事態になる。

だがそうと決めるのはまだまだ証拠が足らない。
証拠も無く推測に推測を重ね、飛躍させたものはただの妄想であり狂言だ。

だが可能性はゼロとは言いきれない。

『この報告書も後ほどそちらに』

ネロ「……ああ」

351: SSまとめマン 2010/05/01(土) 01:06:20.69 ID:g084P7k0
通信を追え、ネロは机に足を乗せたまま、静かに考え込んでいた。
突拍子も無い説だというのは分かっている。

だが妙な胸騒ぎがする。
悪魔的な勘が何かに引っかかる。

この事も頭に留め、一つの答えの姿として候補に入れて置くべきだ。
そして女王達にも報告しておくべきだ。

ネロの頭の中で様々な憶測が飛び交う。
相手の狙いは戦争。それも人造悪魔を使った。

取引している国、そしてその規模から、相手はイギリスか学園都市、もしくはその両方。
魔術サイドと科学サイド、それぞれの内部が割れて全面戦争が起こるというのか?

最終的な目的は?
裏で手を引いてるのは魔界で、再び侵略する為の橋頭堡作りなのか?

それとも人間自らが悪魔の力に手を染め、その力を人間同士の戦争に使うつもりなのか?

この説が正しければネロも介入せざるを得ない。
これは『人間同士の枠』を越えたモノになる。

覇王とウィンザー事件、禁書目録の遠隔制御霊装、ローマ正教側の不穏な動き。

ネロの頭の中でギチギチと音を立てるかのように、この不吉なピースが結びついていく。

ネロ「………………」

まだまだこの図式にの空き埋めるべき、見つかっていないピースは大量にある。
もともと結びつかない、ただの妄想かもしれない。

だがこれがもし正しかったら。

正に最悪のパターンだ。

2000年前の大戦に匹敵する、とんでもない規模と領域の戦火が人間界を包むかもしれない。

ネロ「………マジでクソだな」

―――

361: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:30:28.08 ID:g084P7k0
―――


上条が銃弾を掻い潜りながらレディに突進する。

だが避けているはずなのに上条の体に何発も食い込んでいく。
レディは上条の回避先を事前に的確に予想しその空間へ銃弾を『置いて』いっているのだ。

そこへ上条が自分から突っ込んでくる形になる。

かわせなかった分も、力を左手や両足の脛に集中させて銃弾を弾き捌くが、その動きすら予測されていたのか、
手足の間を潜り抜けて銃弾が食い込んでくる。

上条の動きは、このデビルメイクライでの『修行』が始まった頃に比べれば別人のように見違えたが、
相手のレディは一枚どころか何枚も上手だ。

上条「いぎッ!!!!」
激痛が走り、銃弾に刻まれている術式によって傷口が痺れて治癒が遅れる。
そこに再びレディの銃弾がピンポイントで食い込んでいく。

この銃弾に対抗する為に右手を使おうとも思ったが、術式がなくなっても相手は『銃弾』。
発砲には見たところ通常の炸薬も使われている。

つまり生身の右手で受け止めて術式を破壊しても、銃弾がそのまま人間程度の耐久力しかない右手を貫く。

前日に実験したとおり銃弾は砕け散るだろうが、それはこの状況を打開する役には立たない。
ただ『散弾』に変わるだけだ。

右手があっという間に蜂の巣になってしまうだろう。

右手に出来ることは、傷口に指を突っ込んで体内の銃弾に触れてその効果を打ち消すことだけだ。

飛んでくる銃弾はかわすしかない。

362: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:33:01.82 ID:g084P7k0
上条はなんとか避けようと、出来るだけ変則的な動きを心がける。
だがレディはそれでも軽々と銃弾を上条に当ててくる。

上条「(クッソ!!!!!こうなったら!!!!)」

上条は顔をガードするかのように左手を前にかざし、力を集中させる。
左手が眩く白く輝きだす。

上条「おぁあああぁあああああ!!!!!」
そして真っ直ぐに突進していく。

ゴリ押しだ。

レディ「芸が無いわね」

レディが突進してくる上条に大量に銃弾をぶち込んでいく。

全弾が上条の守られていない腹部へと食い込んでいく。

だが彼は腹を守ろうとはしなかった。
左手は顔の前から動かさなかった。

もし腹を守ろうと左手を下ろしたら、レディは確実に顔面へ銃弾を叩き込んでくる。
そうなれば絶対に怯んでしまい、また手榴弾等で吹っ飛ばされるのがオチだ。

上条「んがああああああああああ!!!!!!」
上条は激痛を堪えて突き進む。

レディ「(……それなりに考えてるみたいね)」


レディ「(甘いけど)」

363: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:38:43.63 ID:g084P7k0
上条が遂にレディの所へ到達する。
もう手を伸ばせば届く距離だ。

上条「ハァアアアア!!!!!」
上条がガードに使っていた左手を勢い良く伸ばした。

レディを掴んで取り押さえるべく。
その手は人間では到底捕捉出来ない速さだ。

レディも避けれなかった。

まあ避ける必要が無いのだが。

左手を伸ばしたと同時に上条の瞳に、平行に並ぶ二つの大きな銃口が映った。
レディがソードオフショットガンをいつの間にか手に持ち、上条のがら空きになった顔へ向けていた。


レディ「ハロー」


上条「―――」


次の瞬間、至近距離でショットガンがぶっ放された。

364: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:43:19.33 ID:g084P7k0
顔面へとてつもない衝撃を受け、上条の頭部が大きく仰け反った。

そして首から下は突進の慣性によって前方に跳ね上がり、
上条はまるで足を滑らせて転んだかのように、その場の地面に背中から叩きつけられた。

上条「げぼぁ――!!!」

ミンチ状態になった顔面から血が噴出す。

視界が点滅しぼやける。
立ちくらみをおこしたかの様ににそのぼやけてる景色が回転する。
耳鳴りがし、周囲の音をまともに聞く事ができない。


上条「…がッ……んぁ……んぎ!!!!」
そうしていると突如左手の肘辺りに激痛が走り、そして何かで固定でもされたのか全く動かなくなった。

上条「!!!」
何が起きているのか分からないうちに続けて右足と左足の膝の部分にも激痛が走り、同じく動かなくなった。
そして最後に胸に激痛。

上条「んぐあああああああああああああああああああ!!!!!」
トリッシュの『拷問』の痛みに似ている。

やっと頭部が再生してきたのか、視界と聴覚が徐々に元に戻る。

そして上条は自分が置かれている状況をようやく見て確認する事ができた。

レディが、先端に刃が付いている巨大なロケットランチャーを上条の胸に突き立てていた。

左手の肘、両足の膝には複雑な術式が表面に刻まれている杭形のロケット弾頭が突き刺さり、
上条を地面に磔にしていた。

弾頭に刻まれている術式のせいか、力が全く入らない。

そして右手はワイヤーのような物で地面に固定されていた。

365: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:48:42.28 ID:g084P7k0
レディ「おはよ」

レディがニヤつきながら上条を見下ろす。

上条「クソッ…!!!」
なんとかして抜け出そうとするも力が入らない。

レディ「クソガキ。あんたの負け」

上条「………ぐッ…」
どうやらそのようだ。

これが実戦だったのなら、今頃弾頭が炸裂して上条は見るも無残な姿になっていただろう。

体に突き刺さっている今の状態でもこうなのだ。
この弾頭の破片を全身に満遍なく大量に浴びてしまったら、再生どころの話では無いだろう。

上条「俺の……負けです」

レディ「そうそう」

レディ「で、あんたを負かした相手の名は?」

上条「…?」
なんでそんな事を聞くのだろう。

上条「レ、レディさん」

レディ「違う」
レディが足で上条の喉元を踏みつけて押さえつけた。

上条「ふが!!!」


レディ「『世界一美しくそして最強のデビルハンター、レディ様』」

366: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:50:59.97 ID:g084P7k0
上条「へ、へが??」

レディ「で、あんたを負かした相手の名は?」

上条「…………『世界一美しくそして最強のデビルハンター、レディ様』」

レディ「OK」


ダンテ「いいか、お嬢ちゃん。この世には絶対怒らしちゃなんねえモンがある」
そんなレディを遠くから眺めながら、ダンテは横にいる心配そうな表情を浮かべている御坂へ声をかけた。

御坂「……は、はい」


レディ「じゃあおしまい」


レディは上条の顎から足を離し、

上条「んぐ!!!」

胸に突き刺していたロケットランチャーを乱暴に引き抜き、そのままスタスタと離れていった。
相変わらず上条は地面に磔にされたままだ。

上条「へっ?……ま、まて!!!」

367: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:54:07.89 ID:g084P7k0
上条「お、おい!!!これ外してくれよ!!!」
地面に磔にされている上条が、離れていくレディの背中へ叫ぶ。


レディ「殺すつったでしょ。バラバラにして」


レディが背中越しに上条に声を飛ばした。
そして指を軽くパチンとならした。

上条「……へぁ?」
その時、カチンと妙な音が三つ。
弾頭の方からだ。

ふと目をやると。

弾頭に刻まれている術式が淡く光り始めていた。

上条の悪魔の目に、その弾頭の中に莫大な力が渦巻き、圧縮されていくのが映った。

上条「……ま、マジかよ!!!!」


上条「……ちょ、ちょ、ちょっとまてぇええええああああ!!」

レディは聞く耳を持たずにどんどん離れていく。

上条「頼む!!!!頼むからあああああ!!ごめんなさいいいいい!!!!!」


上条「お願いします!!!!!俺が悪かったです!!!!だかr


次の瞬間三つの弾頭は爆発した。

ダンテ「……あ~」

369: SSまとめマン 2010/05/01(土) 23:59:27.42 ID:g084P7k0
ダンテ「……あ~………」

大爆発。
轟音が響き、衝撃波が発生し、無数の破片が飛び散る。

そして上条も『飛び散った』。

粉塵が辺りを覆った。

御坂「……!!!!!ちょ、ちょっと!!!!!……うそッ………まってよ!!!!!」

御坂が形相を変えて走り出そうとした時。
ダンテがその手を掴んだ。

ダンテ「ここにいな」

御坂「な、ななッ!!!!!!!!離してってば!!!!!」

ダンテ「おとなしくしてろ」
ダンテがもう一方の手で御坂の顔を、無理やり覆った。
今御坂が言ったら、とんでもない姿に成り果てた上条を見るハメになるだろう。

御坂「離してよ!!!!!離せあああああああ!!!!」
御坂が放電しジタバタするもダンテの拘束はびくともしない。

レディ「何?随分荒れてるみたいだけど」
レディが何事も無かったかのような顔で近付いてくる。

御坂「あああああああああああ!!!!!」


ダンテ「………お前少しやりすぎだぜ」


レディ「何よ。殺しても良いって言ったじゃないの」

370: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:02:36.73 ID:8hUunYQ0
「がふ!!!うげふッ!!!!うげえええええっっっふ!!!!んがああああいってぇえええええ!!!!!」

その時だった。
粉塵の向こうから少年の咳と雄叫びが聞こえた。

「んぎぃいいいあああ……んぐぉいおお…」

ダンテ「お」
とりあえず生きていたようだ。
そして声が出ているという事は少なくとも頭部は元に戻ったらしい。

御坂「―――!!!!」


レディ「………チッ」


御坂「ちょ、ちょっと!!!!!大丈夫!!!!??」
御坂が粉塵の向こうへ声を張り上げた。

上条「だ、げふッ!!!…いじょうぶだ!!!!大丈夫!!!!」

粉塵の向こうから上条の声が返ってくる。

上条「今そっちに……い、いや!!!!!待て!!!!!」
上条が何かに気付いたかのように声を強めた。

御坂「な、何!!!!??怪我でもしてるの!!!!!??」

上条「い、いや、そうじゃなくてな!!!!!それは大丈夫なんだが……」

上条「なんつーか……そのよ、と、とにかく来るんじゃねえ!!!!」

371: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:03:41.30 ID:8hUunYQ0
ダンテ「ハッハァ」
ダンテは笑った。
上条が何に慌てているか分かったのだ。

レディ「……」
レディも当然気付いているだろう。
肩を小さく竦めてダンテと顔を見合わせた。

トリッシュの必殺の弾頭三つの大爆発だ。

上条は全て剥ぎ取られたのだ。体の大半も吹き飛ばされて総取っ替えしたのだろう。

つまり全裸だ。

ダンテはニヤつき、御坂の手をわざと放した。
御坂が形相を変えて、能力まで使って弾丸のように上条がいる粉塵の中へ消えていった。

砂漠という環境もあってか、粉塵はもうもうと立ち込めて一向に晴れる気配が無い。

ダンテ「……」

レディ「……」

しばらくして御坂の怒号とともに雷鳴が響いた。
そして慌てながら御坂をなだめようとする上条の叫びが続く。


ダンテ「へっへっへ」

レディ「……ほんとガキ臭いこと好きね」

ダンテ「なんだよ。面白えじゃねえか」

372: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:05:40.42 ID:8hUunYQ0
レディ「あ~、それにしても本当に腹立つわ」

ダンテ「あ?まだやり足らねえか?」

レディ「それもあるんだけど……あれほど頑丈とはね」


レディ「私の特製弾頭三発も喰らっておきながら死なないなんて」


ダンテ「つーかよ、今のあれ、結構ギリギリだったぜ?」
もう一発弾頭があったら上条は本当に死んでいたかもしれない。


レディ「うん、足らなかったみたい」


レディ「もう一発持ってきてれば良かったわね」


ダンテ「……………おぃお前マジで…」


レディ「冗談よ冗談」


レディはニコッとあざとい作り笑いを浮かべた。

ダンテ「……」

373: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:10:10.12 ID:8hUunYQ0
レディ「ま、本元がベオウルフだしね。今回はこんなもんでしょ。ろくに準備もしてなかったし」

レディ「次はフル装備で本気でやらせてもらうから」


ダンテ「ハッ。(もう呼ばねえよ)」


レディ「で、どんくらい引き出してんの?力。二割ってところ?」

ダンテ「……そんぐれえだな」

レディ「ふーん。じゃあ私が勝てるのも今のうちね」


ダンテ「まあな(もう戦わせねえけどな)」


レディ「何普通に同意してんの?もっと何か良い言葉かけれないの?」

ダンテ「(相変わらず面倒くせぇ奴だな)」

今回はレディが圧勝したが、実際に持っている『力』の量なら現時点でも上条の方が遥かに強大だ。
だが力の量は必ずしも戦闘の強さに直結するわけではない。

確かに今のレベルでも上条は既に強大な力を有しているが、戦い方はまだまだ未熟だ。
だがそのレディとの差も時期に埋まるだろう。


レディ「本当に悪魔って『ふざけてる』連中よね」

ダンテ「良く言うぜ。お前も充分ぶっ飛んでるじゃねえか。それ以上いくと一生独身だぜ」


レディ「……ねえ、あんたにリベンジして良い?もう一発くらいぶち込ませてよ」

ダンテ「ハッハァ。やれるもんならやってみな。『お嬢ちゃん』」

374: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:14:14.99 ID:8hUunYQ0
相変わらず粉塵の向こうからは雷鳴とともにぎゃあぎゃあと少年と少女の叫び声が聞こえる。

ダンテ「おい!!!次はじめんぜ!!!!」
ダンテが粉塵の向こうへ声を飛ばした。

上条「おう……って!!!!なんでもいいからなんか着る物を……だぁああああっあぶね!!!いってぇええ!!!」

上条「よ、よせってば!!!つーか直撃してんじゃねえか!!!お、おいココは寄せ!!!どこ狙って…んぐぅうぅぅぅぅうおおおお!!!!」

御坂「んぎゃああああああああああ!!!いやああああああ!!」

ダンテ「お嬢ちゃん!!!!お前はこっちに来いや!!!!」

ダンテ「騒がしい連中だぜったくよ」
ダンテが近くの岩の上にかけてあった、上条の上着を右手で掴み上げ、
左手で上条の使う黒い銃を取る。

そして気だるそうに粉塵の中へ向かっていった。

レディ「あら、すっかり『保護者』ね」
レディがそのダンテの背中に小馬鹿にしたような声を飛ばす。

ダンテ「お前もナデナデしてほしいか?『お嬢ちゃん』。可愛がってやんぜ?」
ダンテが歩き離れながら、ふざけた調子の声を背後のレディに飛ばす。

レディ「嫌よ。かわりにトリッシュでも撫でてあげれば?」

ダンテ「ハッ。そいつはお断りだ。殺されちまう」

ダンテはヘラヘラと笑いながらそのまま粉塵の中を進んでいく。
時間がたったせいか粉塵が少しづつ晴れてきている。

しばらく進んだところで、今にも蒸気を噴出しそうなくらい顔を真っ赤にした御坂が猛ダッシュですれ違っていった。

376: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:20:09.20 ID:8hUunYQ0
ダンテは更に進む。
粉塵が徐々に晴れ、直径20m程のクレーターが姿を現す。

上条「いってぇ……」

そしてその真ん中に全裸の上条が両手で股間を覆いながら立っていた。
やはりあの爆発で服は全て吹き飛んでしまったらしい。

右手の防具も、表面の強化ギプスが跡形もなく消え、
魔界の金属生命体製の黒い手甲が剥き出しになっていた。

ダンテ「なさけねえな」

上条「う、うるせえ!!!あいつココに当てやがったんだぜ!!!」

上条が右手で自分の股間を指差した。

ダンテ「…………」

そんな上条を見た時、ダンテの脳裏にいつかの記憶が蘇った。

ギター形態のネヴァンを抱いたまま寝てしまい(ry


ダンテ「………ああ……そいつは……キツィな……」

上条「……へ?」
突然のダンテの同意に上条は少し戸惑った。

ダンテ「まあいい」

ダンテは右手に持っていた上条の上着を彼へ向けて放り投げた。
上条がそれを掴み、腰に巻く。

上条「ふぅ……」
これで一応大事なところは隠れた。風が吹いたり激しく動けばチラチラ見えるだろうが。

ダンテ「ほれ」
ダンテが左手の銃を差し出した。

上条「……?」

ダンテ「次はコレの練習だ」

―――

377: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:26:25.27 ID:8hUunYQ0
―――

ネロはバッキンガム宮殿の豪奢な廊下を早歩きで歩いていた。
左手には黄ばんだ古めかしい羊皮紙の冊子。

たまにすれ違う者はそのネロの見るからに不機嫌な顔を見て一瞬凍り、
そして慌てて脇に寄って頭を下げる。

イラついているネロは無視して進む。

そして、とある大きな扉の前まで来た。
衛兵がその扉の横に立っている。

「お、お待ちを!!!」
衛兵がネロを制止させようとするが、ネロは無視してそのまま突き進み、扉を乱暴に蹴り開けた。

部屋の中には長い机。
見るからに高そうなスーツを着た、上層部の者達がその机を囲んで座っており、
上座にシンプルでありながら豪奢なドレスを着たエリザード女王が座していた。

皆大きく目を見開いて、いきなり部屋に踏み込んできたネロを見る。

恐らく何かの会議中であったのだろう。
机の上には書類らしきものが並んでいた。

ネロ「全員出ろや」

ネロが強烈なオーラを放ちながら、威圧的な声を放った。

378: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:28:36.68 ID:8hUunYQ0
ネロの凄まじい空気に圧倒され、女王を省く全員が慌てて逃げるように部屋を出て行く。

エリザード「……ふむ」
エリザードはネロの非礼を特に咎めなかった。
彼がここまでするのなら、それ相応の理由があるのだろう。

ネロがつかつかとエリザードのいる上座へ向かう。

ネロ「読め」

ネロが持っていた冊子をエリザードの前へ乱暴に放り投げた。
机にバサリと音を立てて落ちる。

ネロは近くに会った椅子を引き寄せ、乱暴に座った。

エリザード「……」
それはネロが作った報告書だ。

先の『最悪の説』のだ。

エリザード「……」
エリザードは無表情のまま目を通していく。

379: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:29:56.97 ID:8hUunYQ0
エリザード「……証拠は?」
エリザードが報告書を捲りながら声だけをネロに飛ばす。

ネロ「ねえよ」

エリザード「ではなぜ?」

ネロ「勘だ」

エリザード「……」
これがネロではなかったら、エリザードは聞く耳を持たなかっただろう。

だがネロだ。

『ネロ』の、『スパーダの孫』の勘だ。

到底無視することはできない。


エリザード「……これは…困ったものだな…」

エリザードが冊子を閉じ、軽く前に放り投げながら天を仰いだ。

380: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:31:34.11 ID:8hUunYQ0
ネロ「まあ、可能性の一つだ」

エリザード「……」

確かに荒唐無稽だ。
証拠も何も無い。

だがこのネロの説は、エリザードも妙に納得した。
今までの事件が見事に繋がる。

エリザード「……」
信じたくは無い。否定したい。
だが納得してしまっている自分もいる。

エリザード「これが正しい確率は?」

ネロ「さぁな。裏付ける証拠もねえし。今の状況を見る限りじゃ、かなり低いだろうな」

エリザード「……問い方をかえよう。『悪魔の勘』は何と言っておる?」


ネロ「……100%だ」


ネロの言葉を聞いてエリザードの顔から血の気が引いていく。

381: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:34:40.34 ID:8hUunYQ0
エリザード「……」

『表』の部分だけでも、人間社会全体を揺るがす規模の、
それこそ第三次世界大戦と呼ばれてもおかしくない戦争になる。

表の部分だけでそれだ。

そこに魔術サイドと科学サイドの『裏』、更には悪魔の力さえも加わる。
そしてネロの報告書は、それさえもただの『始まり』に過ぎないかもしれないと暗示していた。

もっと大きな何かが起こると。

エリザード「……」

ネロ「一つ言っておくぜ」

ネロは重く、確かな声をエリザードに放った。

ネロ「わかってるだろうけどよ、ちゃんとハッキリさせておく」


ネロ「俺は『イギリス』の味方じゃねえからな」


エリザード「……それはわかっておる」


そもそもネロがイギリスと契約を交わしたのも、イギリスに悪魔が大量に出没するからであって、
そこに住まう『人間』達を悪魔達から守る為、そして自らの力で身を守る術を教える為だ。

『イギリス』を守る為ではない。
たまたまその土地の国がイギリスだったというだけだ。

遠隔制御霊装の件に協力しているのも、その強奪犯がウィンザー事件の黒幕との関係が濃厚だからだ。

382: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:37:57.64 ID:8hUunYQ0
戦力だけで言えば、今のイギリスはローマ正教側と全面衝突しても互角以上に渡り合える。

『悪魔』と『天使』を保有し、対悪魔戦で鍛え上げられ、『魔界魔術』を習得した百戦錬磨の騎士・魔術師の大部隊もある。

圧倒的な戦力だ。

だがそれが逆にイギリスの足枷にもなるのだ。

今のところネロは『こちら側』だ。
相手陣営の裏で手を引いているのはウィンザー事件の黒幕なのだから。

だが一旦戦争が始まったら。

イギリスはその『悪魔の力』の使い方には注意しなければならない。
使い方を誤れば、ネロが味方では無いどころか『敵』として対峙する事も充分有り得る。

人造悪魔を狩り、黒幕を追い詰めるのには制限は無い。
むしろその為の戦力なのだ。どんどん使って良い。

だがもしイギリスが自国の保守に走りすぎた場合。
悪魔の力を本来の用途以外に大々的に使った場合。

極端に言えば、『勝利』を求めるあまり、悪魔の力を使ってローマ正教側の『人間』を徹底的に殲滅し滅ぼそうとするなどだ。


その場合、ネロとダンテの『人間という種族の保護』の信念に抵触する可能性がある。

383: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:39:36.42 ID:8hUunYQ0
ネロ「アンタらがどう動こうと知らねえがよ」


ネロ「自重しろよ」


エリザード「……重々承知だ」


ネロ「ま、とにかくまず今やることはだな、」

エリザード「戦争を避ける。これが第一だな」

ネロ「だな。俺もできるだけ動く。先に『根元』を狩っちまえば戦争なんざ起きねえしな」

エリザード「うむ。頼んだぞ」


ネロ「まぁ俺としちゃ、今すぐヴァチカンに乗り込んで片っ端から尋問してぇんだけどよ」


エリザード「ははッ。そんな事をやられてはこちらが困ってしまうわ」
今そんな事をしてみれば、ローマ正教側からはイギリスがネロをけしかけたと見えるだろう。

いや、彼らもネロが『イギリス』の為に動く事は無いというのは知っているが、格好の開戦の口実になるだろう。

今のネロは何かと動きにくい立場なのである。

ネロ「まあな」

384: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:41:37.32 ID:8hUunYQ0
ネロが椅子から立ち上がり、扉の方へ向かう。

ネロ「ああ、そうだ」
ネロが立ち止まり、振り返った。

ネロ「トリッシュもこの間から動いてくれてるからよ。今後は少しばかり捗ると思うぜ」

エリザード「それは頼もしい。……で、どこまで話したのだ?」

ネロ「遠隔制御霊装以外は全部」

エリザード「……ふむ…そうだ。こちらも一つ」

ネロ「あ?」

エリザード「先ほどな、ローマ正教側からある申し出があってな」

エリザード「ウィンザー事件の捜査に協力したいと」

ネロ「ぷッはははっ!!」
ネロは拭き出した。

裏で戦争準備をしておきながら、表では歩み寄ってくるとは。
あからさま過ぎる。ますます怪しくなってくる。

エリザード「さっきの会議もな、その為の緊急招集でな」

ネロ「ハッそいつは悪いな邪魔してよ」

エリザード「なぁに。自らの地位を守ることしか能が無い、死に底無いのジジイ共のボヤキを聞くこと無くてせいせいしたわ」

385: SSまとめマン 2010/05/02(日) 00:43:26.52 ID:8hUunYQ0
ネロ「で、どうすんだ?」

エリザード「当然、こっちも『歩み寄って』やる」

ネロ「まあ、だろうな」
突き放すよりは、応じた方が得る物も多い。

まだ確実な向こうの狙いはわからないが、こちらは戦争を回避したいのだ。
それならばどんな形でも、例えそれが策略が張り巡らされたまがい物のパイプでも、
とにかく繋がりを持っておいた方が言い。

こちらの言葉を伝える手段が何も無いよりはマシだ。

エリザード「大使をヴァチカンに招待したいとな」

ネロ「大使の使命はあったか?」

エリザード「それはない。高官なら誰でもかまわないと」

ネロ「じゃあこれから決めるのか?」

エリザード「もう決めておる」


エリザード「神裂だ」


ネロ「……へぇ」


本物の『天使』の神裂がヴァチカンへ。


ネロ「……お似合いじゃねえか」 

―――

402: SSまとめマン 2010/05/03(月) 23:40:03.77 ID:GdSv2rI0
―――

学園都市。

時刻は夜中。

とある路肩に止めてあるキャンピングカー。

その中に土御門、結標、海原の三人のグループメンバー。

そして。

アイテムの元リーダー、麦野沈利がいた。

彼女は一方通行がいつも使っていた簡易ベッドに座っていた。
失われた右目と左腕の肩口からは青白い光が迸っている。

右手の袖口からチューブが伸び、隣においてある、
取っ手が付いた一辺が30cm程の箱に繋がっていた。

彼女の体はボロボロなのだ。
この機械はその彼女の生体活動を補佐する物だ。

麦野がなぜここにいるかというと、
彼女は一方通行の代わりとしてグループに所属する事になったからだ。


麦野「で、……もう終わったんでしょ?」
麦野が苛立ちの篭った声を放つ。

たった今、4人は任務を済ませてきた。
先日のデパート立てこもり事件を起こしたテロリストの残党を皆殺しにしてきたのだ。

403: SSまとめマン 2010/05/03(月) 23:43:43.58 ID:GdSv2rI0
土御門「仕事はな」

土御門「だけどよ、もう少しばかり付き合って欲しいぜよ」

土御門が運転席の方を向きながら壁を強めに叩いた。
それに運転席の男が反応し、キャンピングカーを出す。

麦野「……はあ?悪いけど帰るわよ」
麦野が脇に置いている箱型の機械の取っ手を右手で掴み、立ち上がろうとする。

海原「そう言わずに。少し話しませんか?」

麦野「何?グループって馴れ合いチームなの?随分とまあ、めでたいわね」

土御門「少しお前の事調べさせてもらったぜよ」

麦野「……あ゛?」
麦野の残った左目がかすかに殺意を帯びる。
右目の穴の光が彼女の感情に合わせて強まる。

海原「全部知ってますよ。アイテムの内部抗争、あなたがそうなった訳、下っ端と元同僚を殺そうと追い回していたこと」

麦野の眉間に皺が寄り、右目の光がますます強くなる。

麦野「あ~着任早々なのに。もう殺したくなってきちゃった」

だが海原は一切動じずに言葉を続けた。


海原「それと先日の第23学区の件」

麦野「……」
その言葉を聞いて、麦野の眉がピクリと動いた。

404: SSまとめマン 2010/05/03(月) 23:48:37.79 ID:GdSv2rI0
土御門「あの件の事を調べてるな?」

麦野「……」

そう、確かに調べている。

あの日から麦野の目に映る世界が変わった。

『上』に良いようににこき使われ利用され、殺し殺される『日常』。
それが今まで麦野にとって『普通』だった。

だがあの日以降、そう思えなくなってしまった。

もう今や、この光の差さないどん底の世界にいるのは我慢できなかった。


暗い地下駐機場での戦い。

彼女の前に現れた正に『天使』のような怪物。
その圧倒的な存在の前に彼女のアイデンティティは脆くも砕け散った。
全てを捨て死を受け入れかけた。

そこに現れた赤いコートの男。

どん底まで堕ち、怒りも憎しみも全て剥がされ、諦めと絶望の海に沈んでいた彼女を軽々と運び上げた男。

血なまぐさい濁った過去と思念を脱ぎ捨てて上へ上へと向かった。

一度手に入れかけた彼女の魂を逃さないと言うかのように、崩れ押し寄せてくる壁と天井。
その間を突き抜けて彼女の体を運んでいく真紅の烈風。

駆け抜けた爽やかな風。

全ての闇から、全ての重石から解き放たれ、まるで翼が生えたかのような浮遊感。

そして眼前に現れた、突き抜けるような青い空。

それと男の放った『自由』という言葉。


麦野は思った。

あの瞬間、自分は『自由』だったと。

あの時、麦野は知ってしまった。

そこから『見える』景色を知ってしまった。

405: SSまとめマン 2010/05/03(月) 23:50:11.17 ID:GdSv2rI0
あの日以来、彼女の心が叫ぶ。

あの『翼』が欲しい と。

このクソッタレな世界から。

このクソ溜めに繋ぎとめる足枷から。

この体を解放し空高く運びあげる『翼』が。


「何様だ。そんな権利でもあると思っているのだろうか。
 散々血にまみれ、数多の人生を断ち切ってきた分際で。
 せせら笑い、快感を感じながら儚い命を叩き潰してきたクズの癖に。

 地を這い無様な断末魔を上げ、肉と血を腐らせ腐臭を放ち、蛆に食われ朽ち果てていくのがお似合いだ」


そんなことは分かりきっている。
自覚している。

だがそれでも。

それでも『翼』が欲しいのだ。


一度絶望の底に落ち、何もかも諦めたのだ。
もう何も怖くない。 もうなりふり構わない。

プライドも、暗部としてのケジメも、闇の世界のルールも何もかもクソ喰らえだ。
わがまますぎると言われようが、筋が通ってなかろうが、自業自得・因果応報だろうが知ったこっちゃ無い。
誰一人許さないとしても、彼女は『自由』が欲しい。

とにかくもう一度あの『高さ』からの景色を見たいのだ。

408: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:04:53.28 ID:OLEJxXQ0
あの日以来、麦野は一人で事件の事を調べていた。
あの異質な怪物たちの正体、そして赤いコートの男の事が何としても知りたかった。

そして麦野はしばらくして、例の事件は最重要機密となった事を知った。
それも麦野にとってうってつけだった。

具体的に自由を手に入れる方法も見えてきたのだ。

自由になるにはまず上層部との関係を覆す。

『上層部』が軟化してしまうほどのネタをちらつかせてだ。
そして体の完全な治療、暗部からの完全離脱、そして『自由』の保障を確約させる。
(ちなみに彼女の体を完全に治療しないのも、彼女を繋いでおく為の『首輪』の一つだろう)

ネタとしてあの事件はかなり良い物だろう。

あれ程の異質すぎる存在だ。
レベル5の麦野でさえ手も足も出ない力の存在だ。

きっと重要度はレベル5よりも遥かに上の『何か』だ。正に御あつらえ向きだ。

ネタとしても充分、そして純粋に知りたいという欲求もある。

そういうことで麦野はあの怪物共、
そして彼女に一瞬だけ『翼』を与えてくれた、あの男の情報をとにかく集めはじめた。

だが得られる結果は芳しかった。
というか10日以上も奔走したが、何も情報は得られなかった。

というか、麦野は戦闘や作戦指揮は得意だが、諜報活動は元々あまり得意では無い。
下されてくるオーダーも大抵が戦闘主体のものだった。

それにいくらレベル5といっても、麦野一人でやれることは高が知れている。
アイテムとしてその力をフル活用できたのも下部組織のサポートがあってこそだ。

彼女の自由への道、『翼』を手に入れる という目的は早くも頓挫し始めていた所だった。

409: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:08:10.48 ID:OLEJxXQ0
麦野「……」

土御門「お前の事は全部調べさせてもらったぜよ。メルトダウナー」

土御門が身を乗り出し、不敵な笑みを浮かべながらサングラスの上端から目を出して麦野を見上げた。

土御門「あんまり捗ってねえだろ?情報収集」

麦野「……」
麦野が立ったまま、土御門を鋭い目で見下ろす。

麦野「で、何よ?それがどうかしたの?」


結標「言っておくけど、どの道そのネタじゃアレイスターを揺さぶれないわよ」

結標が壁に寄りかかりながら、軍用ライトを右手でクルクルと回す。


麦野「……」
麦野の表情が殺気を帯びる。

アレイスターに自分の動きがバレているのか?
このクズ共は自分の殺害を命じられているのか?

麦野は右袖のチューブを引き抜いた。


麦野「戦るってんの?」

土御門「落ち着け。そうじゃないぜよ。戦う気は無い」

410: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:13:07.05 ID:OLEJxXQ0
麦野「じゃあ?飼い主に尻尾ふりながら今の事を報告しにでもいくってんの?」
右目から閃光が空気を切り裂く音を立てて、威嚇しているかのように噴出す。

海原「違います」

土御門「はっきり言っちまうとな、お前と俺達の最終目的は一緒だってことだぜよ」

麦野「………は?」

土御門「理由は知らねえし知ったこっちゃねえが、とにかく『上』と同じテーブルに座りたいんだろ?」

麦野「……」

海原「こちらにも皆それぞれ訳アリでしてね」

麦野「……」

土御門「いや~良かったぜよ。お前が『忠犬』じゃなくてな」

麦野「なるほど…ね……」
『忠犬』という表現で意味が分かる。
このいけ好かない連中は、飼い主に噛み付き、
『首輪』を外そうと画策している『狂犬』のようだ。

自分と同じだ。

麦野「……とりあえず…話だけでも聞くわ」

麦野はゆっくりと簡易ベッドに座った。
だが右袖のチューブはいつでも戦闘態勢に入れるように外されたままだった。

411: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:15:27.39 ID:OLEJxXQ0
土御門「まずな、これから起こる出来事なんだが、」

土御門「近い内にな、とんでもない事が起きる可能性が高い。世界規模のな」

麦野「……?」

土御門「『世界』が変わっちまう程のだ。それこそ、学園都市でさえ存亡の危機に立たされるレベルのだ」

麦野「ぶはっ」
いきなりの突拍子も無い話で麦野は思わず笑ってしまった。

海原「……」


土御門「かなり信用できる確かな情報だぜよ。俺がそっちのスジからさっき手に入れたばかりのな」


麦野「ざけんな。んな与太話を聞く暇なんざ……」

海原「ウソを言う必要なんて無いでしょう」

麦野「……ま、いいわ。で、それが起こるとして?」

土御門「つまりその時は学園都市も切羽詰る」

海原「そこを利用するという訳です」

麦野「へぇ……なるほどね」

413: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:20:21.74 ID:OLEJxXQ0
土御門「一方通行を含めた俺達、そしてお前」

麦野「……」

土御門「どうだ?面白くなると思わねえか?」

麦野「………」

存亡の危機に立たされるレベルの事態。
学園都市は当然、その問題を解決する為に全力を尽くすだろう。

そこで暗部の反乱。
外に全力で集中するべき時に内で発生した大きな問題。

学園都市側にある選択は二つ。

武力による強引な解決か、軟化して交渉のテーブルにつくか。

だがこの反乱を起こす者の中にはレベル5第一位がいる。
更に第四位が加われば、それはそれは強大な勢力になるだろう。

鎮圧は不可能ではないだろうが、もし戦うとすれば学園都市も大きなダメージを負うだろう。
上層部としては、そんな重要な時期にこんな事態は避けたいはずだ。

となると上層部は交渉のテーブルにつく可能性が高い。

414: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:28:52.58 ID:OLEJxXQ0
土御門「確かに動きとしてはデカ過ぎるかもしれないけどよ、もうなりふり構ってらんねえぜよ」

土御門「学園都市自体が危ねえんだ。このまま大人しくしてれば俺達もどうなるかわからねえぜよ」

麦野「……」
それは言えている。
最悪、自分達は二ヶ月半前と同じく戦力として狩り出されるだろう。
道具として。捨て駒としてだ。

土御門「この大きなチャンスは逃すわけにはいかねえ」

海原「こちらの駒はできるだけ多い方が良いのです。今の時期にこうして会えた事はお互いにとって幸運でしょう」

結標「相手が相手なだけにね。戦力が充分って事は有り得ないの」


土御門「この『船』に乗る気はねえか?メルトダウナー」


結標「お互いにとって利益があると思うけど」

海原「それぞれ理由と目的を持つ者同士として、お互い『利用』し合いませんか?」

学園都市への反乱。
それぞれが絶対に引けない理由を持っている。

ある者は何かを守る為に。
ある者は何かを得る為に。

その為に『学園都市の前』に立つ必要があるのだ。

麦野もまたその一人だった。

麦野「……」

これを断る理由は見当たらない。
彼女の目的への歩みは完全に頓挫していた所だ。

そんな時に受けた、この土御門達の誘いは正に救いだ。

麦野「―――いいわよ。乗る」

415: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:31:22.26 ID:OLEJxXQ0
土御門「はは、決まりだぜよ。じゃあ―――」

麦野「その前にちょっといい?」

土御門「何だ?」

麦野「一つ条件があるんだけど」

土御門「言ってみろ」


麦野「この船にさ、もう『三人』分の席空いてない?」


土御門達はニヤリと笑った。
麦野の行動は全て掴んでいるのだ。
彼女が誰の事を指して『三人』と言っているのか容易に想像がつく。

その点は麦野も先からの土御門達の言動で気付いている。
だからあえてその三人の名前を出さ無かった。

土御門「へぇ~………」

海原「……」

土御門達が手に入れた情報によると、麦野はあの三人を殺そうとしていたらしいが、
第23学区の件で何か考えが変わったのだろうか。

だが、ここは暗部。他人のプライベートなどお互いに興味が無い。
ただ力を提供してくれればそれで充分だ。
理由を聞くのは野暮というものだ。

麦野「答えは?」

土御門「いいぜ。構わねえぜよ」

海原「まあいいでしょう。その内の二人はかなり使えそうな方ですし」

416: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:35:43.66 ID:OLEJxXQ0
麦野「それでさぁ、もうちょっと要望があるんだけど」

土御門「へぇへぇお次はなんでしょうかい?」

麦野「その三人さ、『ゲスト』として乗せて」

土御門「……ぁ?」

海原「それは……どういう意味ですか?」

麦野「私一人で四人分の『切符』買うから、あとの三人は交渉する時に乗せて」

結標「………『乗組員』じゃなくて『ゲスト』 って意味ね…」

土御門「……らしくねえなメルトダウナー」
さすがの事に土御門も思わず突っ込んでしまった。

冷酷非道の虐殺女帝として暗部の間で名を馳せていたこの怪物女が、つい最近まで殺そうとしていた三人を自由への船に乗せ、
更にその『切符』を無償で配ろうとしているとは。

どういう心境の変化があったのか、土御門もさすがに少し興味がわいた。


麦野「うるせぇよ。どうなのよ。無理っつんなら乗らねーわよ」

土御門「……お前が他の三人の分も働いてくれるってんなら問題はねえぜよ」

海原「……まあ、呑みましょう。レベル5がもう一人加わるなら安いもんでしょう」

麦野「ならよし」

417: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:39:57.67 ID:OLEJxXQ0
麦野「じゃあ話続けて」

土御門「OK。一つずつ話していくぜよ」
土御門が身を乗り出し、仕切り直すようにパンと一度手を叩いた。

土御門「まず…第23学区の件からは手を引け。忘れろ」

麦野「……はぁぁあ?」

土御門「あのネタじゃ『上』は揺さぶれない。学園都市自体にはあんまり関係ねえんだぜよ」

土御門「というか下手にアッチに進むとだな、もっと『ヤバイ連中』に目をつけられるかも知れねえ」

もっとヤバイ連中。
学園都市よりも敵に回すと恐ろしい勢力があるとでも言うのか。

麦野「……」

土御門「お前も見ただろ?『あの力』の矛先がこっちに向いたら全部終わる」

海原「『彼ら』を絶対に敵に回してはいけません」

結標「下手に動かれて敵対でもしたら困るからね。そっちは土御門に任せて」

土御門「俺が専門なんでな。そっち方面は任さしてもらう」

麦野「……なっ…」

418: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:43:00.13 ID:OLEJxXQ0
麦野はコートの内ポケットに入っているバラを意識する。
彼女にとって『自由』の象徴。

忘れろと言われてもそれはできない。
むしろ麦野は知りたい。
今の目的とは関係な無く純粋にだ。

だがそれは後回しにした方が良いだろう。
今は自由、『翼』を手に入れるのが先決だ。

麦野「……わかったわよ」

土御門「よし」

麦野「で、具体的に何をするの?まさか事が起きるまで待ってろって言うつもり?」

土御門「いや、動いてもらうぜよ。できるだけ交渉用のネタを集めといたほうが良い」

麦野「まあ、それも言えてるわね」

切羽詰った事態の時に、レベル5が二人と歴戦の暗部組織という時点でネタとしてはかなりの物だが、相手が相手だ。
充分ということはない。


麦野「何か良いネタでもあるの?」


土御門「『ドラゴン』」

419: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:43:59.30 ID:OLEJxXQ0
麦野「……はぁ?」

ドラゴンと聞けば普通は竜の類を思い浮かべるだろう。
このときの麦野も同じだった。

その麦野の反応を見て三人は やっぱり という仕草をする。

土御門「知らねえか。ま、当然だな」

麦野「何よそれ?」

土御門「知らない」

麦野「からかってんの?」
麦野の右目と左肩口から青白い閃光が迸る。

土御門「これから調べるんだぜよ」

土御門「滞空回線の機密コードの一つだ」

麦野「……」

土御門「ドラゴン。このコードだけ一切情報が無い。この文字だけだ」

麦野「……なるほどねぇ」

土御門「興味あるだろ?アレイスターが何としても隠したがっているモンだ」
土御門が狡賢そうな笑みを浮かべた。

土御門「調べてみる価値はあると思うぜ?」

土御門「いい『ネタ』になるかもしれねえぜよ」

420: SSまとめマン 2010/05/04(火) 00:49:05.51 ID:OLEJxXQ0
麦野「……調べる方法は?」
麦野が土御門に合わせて不敵な笑みを浮かべた。

土御門「『色々』だ。ま、間に合いそうも無かったら理事会の一人でもとっ捕まえて無理やり吐き出させるぜよ」

土御門「襲撃でもしてな」

麦野「それは私の得意分野ね」

土御門「ああ、それとな、もう一ついい切り札がある」

海原「こちらはもう手に入れてましてね。上層部もまだ気付いていません」

土御門「いや~、掘り出すのは苦労したぜよ」

麦野「…?」

土御門「それはな、強力なネタにもなるし、何よりもお前がいることでかなりの戦力増強ができる」

海原「これも我々にとってかなり幸運でしてね。あなたのような能力の持ち主じゃなきゃ到底扱えないブツでして」

土御門「本当はレールガンが適任だったんだけどな、お前でも充分扱えるモンだ」

海原「まあ、使い方を間違えたら皆終わりなんですが」

結標「綱渡りなんだけどね。ま、今更そうも言ってられないでしょ」


麦野「ちょっと、今度は何?」



土御門「―――『アラストル』って聞いたことあるか?」


―――

422: SSまとめマン 2010/05/04(火) 01:01:50.30 ID:OLEJxXQ0
―――


事務所デビルメイクライ。

上条「いひぃいいいいいいいいでええぇええええええ!!!!」

上条の悲鳴が響く。
午前中のダンテのしごきを終え、いつも通り事務所に戻ってのトリッシュの『検査』だ。

全裸で机の上に仰向けになっている上条。
その上条に、相変わらずご機嫌な顔で杭をブッスブッス差しているトリッシュ。
それを見ながら壁に寄りかかってニヤニヤしているダンテ。

御坂は『色々』あって精根尽き果てたらしく、今ホールのソファーで休んでいる。


トリッシュ「……と、OK、おわり」

トリッシュが古い布で杭についている血を拭き取る。

上条「うへぁ………うぅ…」
上条はヨロヨロと、ぎこちなく机の上から降り、近くにおいていた上着を先と同じように腰に巻きつけた。


その上着には、ドングリ程の淵が焦げた穴が所々に開いていた。

銃弾が貫いた跡だ。

423: SSまとめマン 2010/05/04(火) 01:08:00.46 ID:OLEJxXQ0
レディの『制裁』の後、上条の修行のメニューに新たな要素、『銃』が加わった。
戦い方の幅を広げる便利な物である。

しかし、別に戦闘能力を強化するのが目的ではない上条からすれば、特に必要が無い様に感じられたが、
ダンテ曰く『銃は悪魔狩りに欠かせないスパイス』とのことで『必修科目』らしい。

それにこれはただ単にダンテの趣向という訳ではない。

銃を使わせ、体内の力を収束させて弾頭強化を行わせる。
つまり悪魔の力を更に上手く扱えるように鍛えるのである。

それは上条の中の力にも刺激を与え、
『悪魔の力をより引き出す』というダンテ達の一番の目的にも繋がる。


ということで上条は銃の扱い方を半ば強引に教わされる事になった。
当然ろくに説明も無くいきなり使わされる形で。

だが新たな要素が加わったとはいえ、組み手の内容が劇的に変わったわけではない。
変わった点は、上条が負う傷の種類に銃傷が加わったぐらいだ。

上条が銃弾を放ってもダンテはひらりひらりとダンスしているかのようにかわし、
上条の放った銃弾を銃弾で『撃ち落し』、更に指でデコピンするかのように弾き返す。

そして「こうやれ」と言い、弾頭強化した魔弾を放ち、上条へ何発も叩き込んだ。

相変わらず上条はぶちのめされ、新要素の銃でぶち抜かれ地面に何度も倒れた。
 
その後いつも通り最終的に意識を失ったという訳だ。

424: SSまとめマン 2010/05/04(火) 01:11:55.20 ID:OLEJxXQ0
ダンテ「どんくれぇだ?」
相変わらず死相が出ている上条を、ダンテが壁に寄りかかり横目で見ながらトリッシュに声を向けた。

トリッシュ「驚くわよ。大体35くらい。レディがかなり刺激になったみたいね」
昨日までは20%いくかいかないか程度だった。
たった一日で、約15%も引き出したのだ。

ダンテ「へぇ」

トリッシュ「……レディにはもうやらせないでね」

ダンテ「……わかってる」

上条「上条さんも……もう嫌です……」

確かにこの成長は素晴らしい。
だがあまり急激に引き出すと、暴走して元に戻らなくなってしまう可能性もある。
いくら上条の魂が頑丈とはいえ、何度も暴走させてしまうとかなりの負担がかかってしまうだろう。

というか暴走するかどうか以前に、レディの『制裁』は本当に死んでしまうかどうかというギリギリのラインだった。


ダンテ「ま、結果的には良しとしようぜ。大分レベルアップしたしな」

トリッシュ「まあ上手く力を使えてるかどうかはまた別の話だけどね」

トリッシュも横目で上条を見やる。

力をかなり引き出してはいるが、実際に上手く使えているのは半分程度だろう。
まあそれでも状態としてはかなりいい方だ。

425: SSまとめマン 2010/05/04(火) 01:14:30.80 ID:OLEJxXQ0
トリッシュ「ああそう……ちょっと良いかしら?」

トリッシュがダンテの顔を見つめる。
そして眉をピクリと動かした。

ダンテ「……」
ダンテはその意図を悟った。

ダンテ「イマジンブレイカー」

上条「んぁ……なんだ?」
上条が虚ろな目でダンテの顔を見る。

ダンテ「さっさと服着てソファーで寝てるお嬢ちゃんのとこ行ってやれ」

上条「はぃ?」

ダンテ「お前の『坊や』見たからああなってんだろ。ちゃんとフォローしてやれ」

上条「へ……あ、あれは…」

ダンテ「良いからさっさと行け」

上条「お、おう…」

上条が腰に巻かれている上着を抑えながら、少しふら付きながら地下室から出て行った。

トリッシュ「あら、あなたにも一応乙女心のフォローとかの概念あったのね」

ダンテ「うるせぇな。で、何か話があんだろ?」


トリッシュ「まあね。ネロから面白い話聞いちゃったの」

426: SSまとめマン 2010/05/04(火) 01:17:58.26 ID:OLEJxXQ0
トリッシュはネロから聞いたことを簡単にダンテに説明した。

ウロボロス社とローマ正教側の動きと人造悪魔。

ネロの説によればウロボロス社にウィンザー事件の黒幕が関っており、
人造悪魔がローマ正教側へ大量にばら撒かれつつあると。

悪魔の力が行使される戦争が起こるかもしれないと。


ダンテ「……ハッハァ…随分と派手なパーティになりそうだぜ」
ダンテが不気味な笑みを浮かべる。

トリッシュ「でしょ、面白そうよね」

トリッシュ「とりあえず私が探るから。あなたは坊やの件を今まで通りに進めて」

今のダンテが『暇』じゃないのは幸運だった。
上条の件が無かったら、ダンテは単身ウロボロス社にすぐに乗り込んで大暴れするだろう。

だがこの件は非常にデリケートだ。
フォルトゥナの時と同じく、先にトリッシュが影で動いて下地を作っておいた方が良いだろう。

ダンテを解き放つのは勝負を決める時だ。

それにネロの話によれば、今見えている事の後ろにももっと何かがある可能性が高いとの事だった。
それにはトリッシュも同意した。

ウィンザー事件の黒幕の目的の一つが、覇王の完全復活というのは確実だ。
だが、それだけではこれ程までの戦争を起こそうとする理由にはならない。
復活と戦争。

この他にも『何か』があるのだ。
この二つのワードを繋げる『何か』が。

その辺りもトリッシュが先に探りを入れておいた方がいいだろう。

ダンテ「OK」

トリッシュ「ああ、そうそう、坊やの件が終わる前にパーティが始まったらどうする?」

ダンテ「さぁな。そん時はそん時だ」
ダンテはわざとらしく方を竦めた。

トリッシュ「ま、任せるわ」

427: SSまとめマン 2010/05/04(火) 01:22:11.13 ID:OLEJxXQ0
トリッシュ「……それにしてもね。覇王なんて……お馬鹿さんはいつもどこかにいるわね」

トリッシュ「スパーダの一族も忙しいわねぇ」

ダンテ「なぁに、『親』の尻拭いは『子』がするもんだ」

ダンテ「それにあの野郎とは色々とあってだな」

ダンテ「また遊びてえと思ってたんだ」

あの野郎。ウィンザー事件の黒幕。
学園都市でダンテと戦った後、ウィンザーで覇王の力の一部を引き出したあの男。


ダンテ「覇王―――最高の『暇つぶし』になりそうだ」


口を横に裂き、殺気と狂気と喜びの混じった笑み。
一瞬目が赤く光り、トリッシュでさえ息が詰まるような威圧的なオーラが噴出す。


ダンテ「ヘッハァ。俺の獲物だぜ」


トリッシュ「……見つけたらちゃんととっておいてあげるから」

そんなダンテを見て、トリッシュは少し例の黒幕に同情した。
この男にこれ程までに気に入られているとは、本当にご愁傷様だ。

まあ、相手もわざわざダンテに直に喧嘩売る辺り、それを承知しているだろう。
人間にも結構骨のある奴がいるらしい。

そういう勝ち気がまたダンテをそそるのだ。

ダンテ「待ち遠しいぜ。よろしくな。俺はいつでもいい」

一瞬姿を見せた悪魔の『顔』は影を潜め、いつものふざけた笑みに戻っていた。

ダンテはコートをなびかせて、扉に向かい地下室から出て行った。


トリッシュ「……本当に相変わらずね」

そんなダンテの逞しい背中を眺めながら、トリッシュは微笑しながら呟いた。


―――

436: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:06:30.83 ID:A74GXvE0
―――

窓の無いビル。

アレイスターはミサカネットワークから送られてきたデータを閲覧していた。

アレイスター「……」
上条は安定したまま急速に悪魔化していっている。
恐らく、体組織はもう既にかなりの部分が悪魔のものとなっているだろう。

トリッシュの『検査』自体の映像は御坂が目を伏せているため無いものの、何をやっているのかは容易に想像が付く。
それにトリッシュはご丁寧に解説までしてくれている。
この解説は御坂とミサカネットワークの向こう側、このアレイスターへ向けられているものだろう。

アレイスター「……」
今のところ順調だ。
このまま上手くいけばプランも大きく短縮できるだろう。
それこそ一気に最終段階まで飛ぶ事ができる。

元々あの『竜王の顎』を本格的にフル稼働させる為に、彼の魂の『器』としての強化が必須だったのだ。
この過程が一番デリケートであり、そして手間も時間もかかるものだった。

だが悪魔化によってその過程が一気にすっ飛ぶのだ。

二ヶ月前からの悪魔サイドの関りによって、一時はプラン全体を停止する必要もあるのではと思われたが、
幸いな事にこの巨大なイレギュラー因子は彼のプランを成功へと導きつつある。

だがあくまでイレギュラーであり、それなりに危険も伴う。

彼のプランも急速に進んでいくが、
それと同時に世界の流れも予測がつかない方向へ変わりつつあるのだ。

437: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:09:34.39 ID:A74GXvE0
根絶したと思われていた魔女によるジュベレウスの死。
それに起因する天界の混乱と、その戦いによる弱体化。

バージルの復活、ネロの覚醒による魔剣スパーダの完全な覚醒。

魔帝の死による魔界の混乱。
それによる各世界間のパワーバランスの崩壊。

『悪魔』と『天使』を手に入れ力を増大させたイギリス清教。

それを見て学園都市に不気味な程に低姿勢で歩み寄ってきたローマ正教とロシア成教。
それと同時に行方を眩ませたローマ正教、『神の右席』のトップ。

イギリスを始めとする人間界の歪み。
それに起因するアリウスの動き、解けかかっている覇王の封印。

その後のアリウスとローマ正教・ロシア成教の不穏な動き。
とんでもない低価格で最先端兵器を売りさばき大国へ根を回していくウロボロス社。

兵器として世界中へ拡散されていく『人造悪魔達』。

水面下で莫大な力が渦巻き、徐々に崩れ行く人間社会。


今の人間界は、いつ炸裂するかもわからない爆弾の上に載っている状況だ。

438: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:11:13.02 ID:A74GXvE0
数多の世界の者達がこの人間界を中心とする、魔界と天界の動乱に注目している。
アレイスターとしてはこれは避けたかった事態だ。

なにせ、その動乱の中心にあの『上条当麻』もいるのだから。
無数の者達が上条を『見る』。

そうなれば誰かが上条の中にあるモノに気付くのも時間の問題だ。
アレイスターの目的に気付くのもだ。

そして天界に気付かれれば。
天界の者達は全力で、あらゆる手段を使ってでもアレイスターを止めにかかるだろう。

そうしなければ天界そのものが結果的に『滅ぶ』のだから。
学園都市に天界の軍勢が直接押し寄せてくるかもしれない。

そんな事態になればアレイスターは完全に孤立する。
今は一応同盟を結んでいるイギリス清教も、その本質は『天界』に帰属する組織だ。

もし気付いていたら、この瞬間にでも彼らは宣戦布告し、全魔術サイドが敵にまわるだろう。



そして魔界。
この勢力はどう動くか予測がつかないが、味方につくことは絶対にありえない。

なにせ絶頂を極めていた魔界の覇権が地に落ちたのは人間界のせいなのだから。
そして魔帝の死により、その怨嗟には更に拍車がかかっている。

何かあったら、その混乱に乗じて魔界は必ず動く。

ましてやアリウスの目的が達成され覇王が復活したら、魔界はその旗の下に集い再び大規模な侵略行動を起こすかもしれない。
あのスパーダの一族がいるとはいえ、全面戦争となれば人間界には必ず大きな傷跡が刻まれる。

これ以上人間界を歪ませられると、アレイスターのプランにとって障害となりうるのだ。
現にイギリスを中心として人間界に流れ込んで来る魔界の力が、AIM拡散力場に徐々に干渉し始めている。

439: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:13:00.12 ID:A74GXvE0
スパーダの一族。これは最大の懸念の一つだ。
守護者でありながら大きな障害でもある。
離れたくとも、今は離れられない。

今の上条を育てるにはダンテ達の手が必要なのだ。

今、上条当麻は悪魔化し、その内包する力も徐々に覚ませながら成長してきている。
その傍にはトリッシュとダンテ。

トリッシュは見たとおりかなり頭がキレる。
そしてダンテも一見なにも考えて無さそうだが、その嗅覚と頭の回転はトリッシュ以上かもしれない。

そんな二人が上条を、『幻想殺し』を見ているのだ。
今のところ、トリッシュ達は『幻想殺し』を調べないという条件をしっかり守ってくれている。

だがその内、調べる事も必要が無いくらいに丸わかりな状態になってしまうかもしれない。
上条が成長するにつれてその可能性が徐々に高くなってきている。

いつか、彼の中の『モノ』が何かの衝撃で溢れるかもしれない。


彼がその右手で触れてきた『記憶』が。


どうやって『力』を消し、『構造』を崩壊させてきたか。

どうやって『相殺』と『分解』を行っているのか。

その原理が知られてしまえば大変な事になる。

441: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:18:47.76 ID:A74GXvE0
アレイスターにとってその中に詰め込まれている『記憶』は必要ない。
成長しきって完全に目覚めた、フル稼働できる『竜王の顎』が必要なのだ。

ダンテ達もその『記憶』の存在を知ったとしても興味は無かっただろう。
二ヶ月前までは。


あの右手が魔帝の『創造』に触れるまでは。


これはアレイスターにとって一番大きな誤算であり、利用しようがない要素だ。
あの二ヶ月前の件はアレイスターにとって鬼門だった。

彼の当初の計画では、ダンテとバージルが衝突、その隙に一時的に強化された一方通行が禁書目録を奪還するという物だった。
上条が悪魔化するのも戦線に加わる事も完全に予想ができなかった。

ましてや魔帝の『創造』に触れてくるなど。

あの少年はとんでもない物を身に宿してしまった。


ダンテ達が上条のにある『記憶』に気付いたら。
いや、もう薄々感づき始めているだろう。

最悪、上条が処分されるかもしれない。
いくらダンテが約束を守る男でも、『創造』とあれば何よりもその処分を優先するはずだ。


なにせスパーダの一族の運命を2000年に渡って縛り続けた存在なのだ。
2000年に渡って人類を脅かし続けた力なのだ。


どんな手を使ってでも最終的に処分しようとするだろう。

442: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:20:54.79 ID:A74GXvE0
今のアレイスターは正に綱渡り状態だ。

だが今、上条を成長させるにはダンテ達の手が必要だ。

これを避けて通るわけにはいかないのである。
ゆっくり上条を成長させている暇は無い。

今の状況からプランを成功させるには、ダンテ達に上条を預けるしかないのだ。

もう時間は無い。
世界の流れは止まらない。

巨大な爆弾の導火線には点火され、カウントダウンが始まっている。

今のアレイスターに出来ることは一つ。

『流れ』に『追いつかれる』前に事を成し遂げる。

どうやら1000年以上の寿命はいらなかったらしい。
この一度きりで全てが決まる。

今しか無い。

学園都市が滅ぼうが知ったこっちゃない。

今、この時の為に築いてきたのだ。
成功の為とあらば、全てを失っても良い。

この命もだ。

443: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:24:03.48 ID:A74GXvE0
ちなみもう一つ、先日アレイスターの耳に飛び込んできた情報があった。

『グループ』とその周辺の動き。
『一方通行』と『原子崩し』の結託。

だがこれはアレイスターにとって特に問題でもない。

彼らはこの戦争に付け込んで、学園都市そのものを人質にとってこちらと交渉するつもりらしい。
だが前述の通り、アレイスターはこの戦争以降は学園都市がどうなろうと知ったこっちゃ無い。

残念ながら、哀れなネズミ達の計画は最終的に瓦解するだろう。

この行動を半年前にでも起こしていたら、少しはアレイスターを困らせた事ができたかもしれない。
だがもう遅い。

今のアレイスターにとって学園都市の保守は二の次なのだ。

理事会の者を殺され、『ドラゴン』の情報を引き出されたところで痛くも痒くも無い。
もう隠し隠れる必要も無いのだから。

むしろ、これはアレイスターにとって好都合だ。

444: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:25:30.75 ID:A74GXvE0
いまや彼のプランの要の一つとなっている『一方通行』。
彼が自ら進んで『舞台』に上がってくる。

『ドラゴン』に接触したいのなら。

『エイワス』に会いたいのならお望み通りそうしてあげるだけだ。
ちょうどアレイスターもそうさせようとしていた所なのだから。

学園都市内、科学サイド内の動きなら全てアレイスターの手の平の上だ。
彼らは知らず知らずの内にアレイスターの敷いた線路の上を進んでいくだろう。

アレイスター「……もう少し…もうすぐだ」
水槽の中で小さくほくそ笑む。


歯車は更に加速していく。

その流れは彼をも運んでいく。

アレイスターは確信していた。
不安要素はたくさんあるが、最後の最後に勝つのは己だと。


確かに、彼が『知る限り』の状況からならそう確信できるだろう。


だがアレイスターが『知らない』要素が目の前にあった。
彼は気付いていなかった。

その歯車の一つに大きなほころびがある事に。

プランそのものを一瞬で砕いてしまう程の巨大な爆弾が紛れ込んでいた事に。

学園都市外、科学サイド外、そして人間界の外からやってきた最悪のイレギュラー。

ここに来て彼は見誤ってしまった。

この猛烈な速度の流れの中で、見落としてしまったのだ。


『アラストル』を。


―――

445: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:30:57.27 ID:A74GXvE0
―――

事務所デビルメイクライ。

二階のキッチン。
上条と御坂は夕食を食べ終わり、食器を並んで洗っていた。

御坂「……」

上条「……」

会話は無い。
午前中、御坂は上条のムスコを見てから一言も口を聞いてくれなかった。
顔を真っ赤にして俯き、上条に何かを聞かれたときは頭を振って答えた。

上条は最初は怒っているのかと思っていたが、言葉を放たないとはいえ、
一応首振りで話に答えてくれるのでそうではないらしい。

乙女心がわからない上条は、自分のムスコが見られた事が原因とは全く考えていなかった。

上条「……(こいつ……風邪でも引いたのか?)」
顔を少し火照らせてる御坂を見ながら上条は思った。

そうではなく、御坂は未だにパニック状態が冷めていないだけなのだが。

上条「なあ……」
食器を洗いながら、となりの御坂に声をかけてみる。

御坂「……」
御坂がやや俯き加減で上条に顔を向ける。

上条「お前具合悪いのか?」

御坂は頭を横に強く振る。

上条「いやいやいや無理すんなよ?明日は休んでも良いぞ?たまには俺が飯作るから」

御坂は更に強く頭を振った。

446: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:33:18.68 ID:A74GXvE0
上条「(う~ん……こいつ絶対に何かおかしいぞ……体調が悪いんじゃねえかな…)」

上条「(あ、もしかして……女の子の日ってやつか?)」

上条「(でもなあ……インデックスはこうはならないしなあ……やっぱ違うかな…)」
インデックスは『お腹が減るといつも以上に不機嫌になる』という症状だった。

まあ、ともかく上条の推理は全て的外れだ。

上条「……」

御坂「……」

そのまま二人でしばらく後片付けをしていると、一回の方から勢い良く扉が開く音が聞こえてきた。
いつもこの時間帯はダンテがシャワーを浴びている。

これはダンテがあがった音だろう。
その証拠に、乱暴な足音のあとに椅子にドカリと座る音、そして机の上に足を叩きつけるように乗せる音が聞こえた。

上条「お……あがったな…御坂、入ってきて良いぞ。俺が片しとくからよ。今日は早く寝な」

御坂が首を横に振る。

上条「う~ん……じゃあ俺が先にパッて入って来るぜ?」
上条が手を軽く振って水を切った後、タオルで拭く。

と、その時だった。

上条「……ん?」

御坂が俯きながら上条の袖を掴んでいた。

447: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:35:54.99 ID:A74GXvE0
上条「どした?」

御坂「……」
御坂は俯き、モジモジしている。

上条「――――」
そんな御坂の姿を見て上条はハッとした。

上条「(………………………そうか…)」

上条「(わかった……わかったぞ……)」

上条「(御坂お前………)」

上条は御坂がこうなっている原因を突き止めた―――


上条「(見ちまったんだもんな……)」


―――つもりだったが。


上条「(俺が半殺しになるのを。怖かったんだな……そりゃそうだ……)」

上条「(俺が午前中何をしているか、初めて具体的に知ったんだもんな……)」

相変わらず大ハズレだ。

448: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:37:29.13 ID:A74GXvE0
上条「御坂……すまん……」

御坂「……?」

上条「すまん。あんなモン(俺のスプラッタ)見せちまって……」

御坂「―――ーッ!!!!!」

上条「そりゃあ見たくねえよな……あんなモン……」

御坂「い、いや……そ、その…!!!」
御坂の顔が一気に真っ赤になる。


上条「でもよ………俺はああしなくちゃダメなんだ」


御坂「―――ッ!!!!!!!!!!!(何が!!!??見せなきゃダメってんのッッッ!!!??)」

御坂「(も、ももももももももしかしてそういう性癖!!!!!??)」


上条「俺が(この道を)選んだ。俺が決めたんだ。これは俺が自分から求めてやってることなんだ」


御坂「(自分から……決めて……選んで……あたしに……求めて…にゃばばばばばぁああぎkhぐんmsヴぁぁああ!!!!!!!!!!)」
最早思考は昼辺りから色々とぶっ飛んでいる。
そしてこれだ。

遂に御坂の中で何かのピンが弾け爆発する。

御坂の頭の中が晴れ渡った。
爽やかに。


御坂「(うん、問題ない。そんな性癖どうってことない。当麻なら問題ない。別にOKOK。むしろ頂きます全部あたしが見ればいいだけ)」

御坂「(つーかコレってもしかして勝った?あたしあのシスターに勝っちゃった?)」

―――

449: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:40:30.32 ID:A74GXvE0
―――

トリッシュは例の件の調査を終え、事務所に戻ってきた。

トリッシュ「……?」

だが一階のホールは無人だった。
いつもなら、この時間はダンテは定位置で飲んだくれてるはずだ。

トリッシュ「……」
まあ行きつけの店にストロベリーサンデーでも食べに行ったのかもしれない とトリッシュは思った。
何も言わずにフラッと行ってしまう事も多々ある。

トリッシュはホールを通り抜け、地下室の仕事部屋に向かおうとした。
だがその時、二階から僅かな気配がした。

トリッシュ「……ダンテ?」

妙だ。これはあえて気配を消している。
誰にも見つからないようにだ。
いつも傍にいるトリッシュじゃないと察知できないくらいに反応が小さい。

この事務所にいる非番の時は一切抑えずに垂れ流しているはず。

これは完璧に仕事モードだ。

トリッシュ「……」
トリッシュの目の色が変わる。

トリッシュは気配を消し、一切音を立てずに、二階へと続く階段を上がっていった。

そして二階の廊下に出ると。


トリッシュ「……あなた何やってんの?」
トリッシュが呆れた声を放った。

廊下の先、キッチンの扉の横の壁に、ダンテがワインボトルを片手に寄りかかっていた。
足元には、黒い布に包まれた長さ1m程の棒のような物が転がっていた。

キッチンの扉の向こうからは上条と御坂の声が聞こえてきている。

ダンテはトリッシュの姿を見ると、ニヤけながら人差し指を口に添えた。

トリッシュ「……」

静かにしろという合図だ。

―――

450: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:45:04.92 ID:A74GXvE0
―――


上条「あれはキツイだろうな……」

御坂「……」

上条「……嫌なら無理して見なくてもいいぜ。お前はいつも通りこk」

御坂「んんんんん!!嫌じゃない!!!!!見る!!!!!!!見たい!!!!」
御坂がいきなり顔を上げ、上条の目を真っ直ぐ見て大声で叫んだ。
その顔は湯気が上がりそうなくらいに紅潮していた。

上条「うぉぉお!!!!!」
あまりのオーラに上条は圧倒された。

上条「み、見たいって?!!!!(俺のスプラッタを)」

御坂「み、見る!!!!(上条の×××を)」

御坂「アンタが見せたいってんなら良いわよ!!!!!見る!!!!アンタがそうしたいってんなら!!!!」
御坂は最早自分が何が言っているのか良くわかっていなかった。

御坂「んぎぃいいいいいい!!!!!!ハァッ!!!!」

御坂が口を固く縛り、拳を握り、仁王立ちする。


御坂「さあいいわよ!!!!見せなさい!!!!思う存分!!!!」



上条「…………はい?」


御坂「C'mon! Hurry up!!!!」

451: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:48:41.21 ID:A74GXvE0
上条「……あのう……見せろって……今でしょうか?」
上条は思った。この場でスプラッタ状態になれとでも言うのでしょうか と。

御坂「な、何よ!!!!」

上条「い、いや……大体どうやるんだよ!!!!」

御坂「ど、どうって……!!!!!」
御坂は思った。 ベルトを外してズボンを脱げば降ろせば と。

上条「つうかよ!!!相手は!?御坂がやってくれるのか!?」

御坂「あああああああああああたしいぃぃぃぃ!!!!??」

御坂「(あたしが降ろすの?!!!って相手って……まさかぁあああああああああああああ!!!!!)」

御坂「いぃいいいいいいいいいいい良いわよ!!!!!」


上条「っていうか、それ以前に家の中じゃダメだって!!!」


御坂「な、何で??!!!!!!!外の方が問題じゃない??!!!!!!」


上条「だって戦(ヤ)れば事務所壊れんだろ!!!!ダンテさんに怒られんぞ!!!」


御坂「(ヤればって……本当に…!!!!!ちょ、ちょっと待って!!!!!!そんなに激しいの!!!!!!!???)」


御坂「ま、待って待ってよ!!!!あたし………そ、その……!!!!!」

上条「?」

453: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:52:29.50 ID:A74GXvE0
御坂「そ、そういうことするの……は、初めてだし……そ、その……優しくしてくれないかな……」

上条「……は?何言ってんだお前?(戦うの)初めてじゃないだろ。散々やってるじゃねえか」

御坂「―――ッ!!!!!ヤ、ヤってないわよ!!!!!!!!」

上条「おい……お前本当に大丈夫か?もしかして頭でも打ったんじゃあ……」

御坂「ヤってない!!!!!ヤってないつーの!!!!!!」
御坂が凄まじい形相で上条に突っかかる。


上条「い、いや、二ヶ月以上前から思いっきり悪魔ぶっ殺してんじゃねえか!!!!」


御坂「だからぁあああああ!!!あたしは処j……………………は?」


上条「へ?」

御坂「はい?」

上条「……ど、どうしたんでせう?」


御坂「………」

上条「………」

とその時だった。

「ぷふッ……」
扉の向こうから、微かに笑い声が聞こえてきた。

御坂「………」

上条「………」

454: SSまとめマン 2010/05/06(木) 00:56:23.43 ID:A74GXvE0
上条「………」

御坂「ねえ……あたしがこうなってる理由、何だと思ってる?」


上条「み、見ちまったからだよな?」

御坂「……何を?」


上条「俺が半殺しになるの」



御坂「………う……うわぁあああああああああああああああああああああんんんんんん!!!!!!!」
御坂が顔を真っ赤にして、扉に突っ走る。

上条「お、おい!!!!!!なんだってんだよ!!!!!」

御坂が勢い良く扉を開けた。
だがキッチンの外には出れなかった。


ダンテ「………ププププ……いやあ、ヤるなら家の中でもいいぜ?思う存分、盛っちまいなよ。…プフッ」

トリッシュ「人間の思春期って面白い思考回路してるわね」
口を抑えて笑いを堪えているダンテと、穏やかな笑みを浮かべているトリッシュが立っていたからだ。


御坂「ひあああああああああああああああああああんんんんんん!!!!!!!!」

459: SSまとめマン 2010/05/06(木) 01:04:47.50 ID:A74GXvE0
上条「へ?!へ!?」

ダンテ「へっへへへへはぁ……坊や…へっへ……お前はパーフェクトだ」

ダンテ「ぶふッ…パーフェクトすぎる。パーフェクトな『0点』だ。世界遺産並だ。非の打ち所がねえへっへへへ」

ダンテが笑いを漏らしながら上条を『採点』する。

ダンテ「Devil May Amazed(悪魔も呆れる)ってか?ヘッヘヘヘハハハヘヘヘ……」

上条「な、なにがだよ?!」


御坂「ひぃいいいいあああああああんんんん!!!!!!」

ダンテ「だから………ハハッ…言ったじゃねえか…このお嬢ちゃんがへばった理由hんkぎggg」
次の瞬間、トリッシュがダンテの首に手を当て電気を流した為、彼の言葉がそこで遮られた。


トリッシュ「ほんとガキね。あなたも。このクソガキ共」


そして上条の頭の顔に小さな電気を飛ばした。

上条「いぎッ!!!!いでぇえええ!!!!俺が何したってんだよ!!!!」

御坂「……ひあああああ!!!!!どいてえええええええええ!!!!!!」

御坂がトリッシュとダンテの間を抜けて自分の部屋に向かおうとする。

と、その御坂の手をトリッシュが掴んだ。

御坂「はなしてぇえええええええ!!!!!もう寝るぅうううううううううう!!!!!!」

トリッシュ「ダンテがあなたに用があんだって」

ダンテ「………………完成したぜ。お嬢ちゃんの『大砲』がよ」

首元から煙が上がっているダンテが、足元に置いていた長さ1m程の包みを持ち上げた。

御坂「…………ふぇ?」

461: SSまとめマン 2010/05/06(木) 01:11:06.91 ID:A74GXvE0
10分後。
四人はキッチンの小さなテーブルを囲み、その上に置いてある黒い包みを眺めていた。

御坂は疲れてしまったのか、それとももうどうでもよくなってしまったのか、腑抜けた顔をしていた。
ちなみにダンテの首元からはまだ煙が上がっていた。

ダンテ「ほらよ」

ダンテが黒い布を剥ぎ取った。
姿を現したのは、黒い金属の塊。

直径15センチはあろう丸太のような棒の先に長方形の箱がくっついているような形だった。
その箱からは斜めに棒が突き出していた。
一見すると、柄が曲がっている棍棒のようだ。

その箱とは反対側の先に、直径1cm弱の穴、銃口が開いていた。

御坂「こ、これが……あたしの?」

ダンテ「ああ」

ダンテがあり合わせで作った御坂専用の銃だ。
ブローニングM2重機関銃をベースに、その銃身を魔界の金属生命体の物と取替え、
駆動部も同じ金属生命体でコーティングしたものだ。

462: SSまとめマン 2010/05/06(木) 01:12:54.90 ID:A74GXvE0
完成した現物の重量は50kgを越えている。
そして引き金とグリップ、例の曲がった柄のような部分の配置も反動を一切考慮していない。

だが御坂専用なのだ。
重さも反動も考慮する必要は無いだろう。


ダンテ「発射速度は500発/分。連射可能だ。ま、装弾数は10から200までお好みで」

ダンテ「銃身は7万度まで耐えられる。一万発連射したところで銃身は一ミクロンも歪まねえぜ」

ダンテ「ライフリングの磨耗も心配しなくていい。自動で修復する」

ダンテ「射程はお前がどんだけ力を流し込むかで決まる。まあ、最大出力にすりゃ地平線の端までは届くだろ」

ダンテ「それと安全装置はねえから注意しな」
首元からまだ煙が上がっているダンテが立て続けに説明をした。

上条「……」

トリッシュ「……」

御坂「……」

ダンテ「とりあえず持ってみろ」

463: SSまとめマン 2010/05/06(木) 01:18:37.48 ID:A74GXvE0
御坂が恐る恐る手を伸ばし、柄のようなグリップを握る。
そして能力を使い持ち上げた。

ダンテ「どうだ?」

御坂「……良い感じかも…!」
手にしっくりくる。
グリップも握りやすい。

ダンテ「お前砂鉄集めて剣とかに出来るんだろ?それも銃身の形変えられるぜ?」

御坂が頷き、力で操作する。
すると銃身が薄くなり、長さ1.5m程の漆黒の刃となった。

御坂「な、なにこれえええええ!!!!す、すごいすごいすごい!!!!!!」

ダンテ「強度はそうだな……それで撃つ弾を弾けるレベルだ」

御坂「!!!!」

トリッシュ「(『魔具もどき』ってところかしらねアレ)」

上条「(これが本物の『魔改造』ってか)」

ダンテ「操作をやめれば元の形に戻る」

御坂が操作をやめると、刃は元の銃身の形に戻った。

御坂「きゃああああああああ!!!!!!すっごい!!!!やばいやばい!!!!!」

464: SSまとめマン 2010/05/06(木) 01:25:34.39 ID:A74GXvE0
御坂「ありがとうございます!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!」
御坂がその巨大な大砲を抱きしめ、ダンテに何度も礼をする。

ダンテ「大事にしろよ」

御坂「はい!!!!!抱いて寝ます!!!!!!!」


トリッシュ「(……こんなもん持たせてどうすんのよ……)」
トリッシュが、首元からいまだに煙が上がっているダンテを呆れた目で見た。

ダンテ「なんだよ」

トリッシュ「やりすぎ」

ダンテ「これは男のロマンだ」

トリッシュ「女の子が持つ物に男のロマン追求してどうすんの?」

トリッシュ「何考えてんの?頭おかしいの?バカなの?もっと欲しいの?これ?」

トリッシュが右手を顔の横にあげる。
指先には金色の電気が走っていた。

ダンテ「……明日にしてくれや。俺は寝る」

トリッシュ「いいわよ。一発で寝かせてあげる」

ダンテ「ハハ、生憎子守唄はいらねえよ」

トリッシュ「遠慮しないで」
トリッシュがダンテの首へ再び手を当てた。

ダンテ「お前nglsgれぎksss」

―――

478: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:12:06.35 ID:02VBpOI0
―――


バッキンガム宮殿。

地下の蔵書。

ネロは机の上に足をあげ、だらしなく椅子に座っていた。
相変わらず蔵書の中は散らかっている。

壁際には古めかしい本が積み上げられ、机の上にも黄ばんだ羊皮紙が大量に散らばっていた。

そしてその机の前。

ネロの向かいの椅子に、神裂が座っていた。
その後ろの扉には腕を組んでるステイルが寄りかかっていた。

神裂「五日後に決まりました。向こうは枢機卿を出してくるそうです」

ネロ「誰が同行する?」

神裂「五和を」

ネロ「へぇ……まあ、とにかく気をつけな」

神裂はイギリス清教の大使として、ローマ正教の総本山であるヴァチカンに向かうのだ。
今の時期、わざわざ相手の本拠地に赴くと言う事は自殺行為に等しい。

例えるならば、大きく顎を開いた獅子の口の中に飛び込んでいくようなものだ。

だから。

神裂「ふふ、心配いりませんよ」

だからイギリス清教はその口の中に巨大な爆弾を放り込む。

もし噛み砕こうとすれば、頭もろとも吹き飛んでしまうほどの爆弾を。

479: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:17:29.24 ID:02VBpOI0
神裂「ネロさんは自分の仕事の心配を」

神裂がイタズラっぽく笑う。
こうしてみると年相応の18才の女の子だ。

ネロ「ハッ良く言うぜ」

ステイル「万が一の対策もちゃんとある」
扉に寄りかかっていたステイルが薄く笑いながら話の輪に加わってきた。

ステイル「『神裂を救出』しなければならなくなった場合、僕がヴァチカンに『投下』される」


ステイル「弾道弾ミサイルでね。15分で行ける」


ステイル「その間、シェリーがココを守護する」

ネロ「……ま、問題ねえな」

ステイル「そうするのは最後の手段なんだけどね」

ステイルが『投下』されるのは、どう足掻いても全面戦争が避けれなくなった場合だ。
ヴァチカンでイギリス清教所属の『悪魔』が戦闘行為をするのだ。
宣戦布告に等しい行動だ。

そもそも神裂に救出が必要と言う時点で、ヴァチカンは廃墟になっている可能性が高い。
それはもう既に戦争状態だ。


神裂「その必要ありません」
神裂が顔を引き締め、毅然とした声をあげる。

ステイル「……」


神裂「……絶対に戦争は起こさせません」

480: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:22:59.48 ID:02VBpOI0
ステイル「……ああ、同感だ。絶対に避けなければならない」

ネロ「……だな」

だがそれはタダの気休めにしか過ぎなかった。
悪魔の勘が行っているのだ。

絶対に戦争は起こると。

同じく悪魔であるステイルも微かに感じていた。
そして天使である神裂も。

三人は、心の奥底ではもう確信している。
いずれ戦争が起きると。

神裂「……」

ネロ「……」

ステイル「……」

ネロ「まああれだ」
重苦しい空気を断ち切るかのように、ネロが両手を広げ軽い声色で声を放った。

ネロ「神裂が戻ったら飲もうぜ。また非番の連中片っ端から集めてよ」

ステイル「いいね。僕も君にリベンジしたいしね」

ネロ「ハハッ上等だぜ。もう一度フォルトゥナ式で教育してやる」

神裂「……あのぅ……」

ネロ「あ?」

神裂「その……私飲めません…」

ネロ「知るかよ。茶でも飲んでな」

481: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:27:47.74 ID:02VBpOI0
ネロ「とにかく付き合え」

ステイル「ああ、次は君がメインなんだ」

ネロ「顔ぐれえ出しな」

神裂「……は、はあ。わかりました。ではそろそろ時間ですので」

神裂が椅子から立ち上がり、それに合わせてステイルも扉のノブに手をかける。

神裂はこれから出発するのだ。
五日後と言ったが、それは会合の日時だ。

事前にイタリア入りし、済ませなければならない事務処理がたくさんあるのだ。


ネロ「待て」


ネロがその神裂の背中に声を飛ばした。

神裂が振り向くと、ネロは右手拳を差し出した。

ネロ「とにかくだ。お前が『戻ったら飲む』」


ネロ「キャンセルはナシだ。許さねえ」


ネロが神裂の目をジッと見つめ言い切る。

482: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:29:04.51 ID:02VBpOI0
神裂「……ふふ…」

それは、言い換えれば「神裂が戻った時、宴会が『できない』状況は許さない」ということだ。

戦争は避けようはないのかもしれない。

だが先延ばしは出来る。
できるだけ時間を稼ぐ。

そうすれば、戦争を避けるという道も見つかるかもしれない。


神裂がネロの方へ進み、彼の右拳に自分の左拳を軽くぶつけた。


神裂「当然です!当たり前ですよ!」

ネロ「OK。問題はねえ」


ネロ「行って来い。神裂火織」


神裂「はい!!行ってきます!!!」


―――

483: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:31:59.83 ID:02VBpOI0
―――

事務所デビルメイクライ。

上条は自分の部屋のベッドに寝そべり、天井をボーっと見上げていた。

上条「……いてぇ…」
先ほどトリッシュによって、電撃を鼻先に叩き込まれたせいで未だにヒリヒリ痛む。

一応右手をかざしてみたが、トリッシュの力は体内の奥深くまで浸透しているらしく効果は無かった。
鼻を引きちぎり右手を突っ込めばこの痛みは消えるだろうが、それだと比べ物にならない激痛を味わうので本末転倒だ。

上条「……」
隣の部屋からは御坂の嬉しそうな声が聞こえる。
さっきからスゴイだのヤバイだのを連呼している。

恐らく部屋の中でいろいろ弄ったり、剣型に変形させては戻したりを繰り返しているのだろう。


上条「……んあ?」
ふと携帯の時刻を見た。

上条「お、そろそろいいな」
学園都市はちょうど朝だ。
もうインデックスも起きている事だろう。

上条は携帯を握り、お馴染みの番号へ電話をかけた。

ワンコールで相手が出る。


禁書『とうま!!!!!おはようなんだよ!!!!!』

484: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:40:19.73 ID:02VBpOI0
上条「おおう…相変わらず出るのはええな!!!おはよ!!!」

上条は知らないが、彼はいつもこの時間帯にかけているので、
インデックスは毎度欠かさずスタンバイしている。

禁書『そっちはどう!?大丈夫!?』

上条「おう、問題はねえぜ」
いつものやりとりだ。

ちなみに、インデックスは上条が具体的にどんな目に合っているかは知らない。
もし知ってしまえば発狂してしまうだろう。

上条「お前はどうだ?ちゃんと飯食ってるか?」

禁書『うん!!!あのね―――』

インデックスが昨日一日の出来事を嬉しそうに事細かく喋る。
上条は穏やかな笑みを浮かべ相槌を打ち、彼にとって心温まる歌のような少女の声に聞き入る。

上条にとって最高の癒しだ。
この声を聞けば、全ての疲れが吹き飛び、そして安眠できる。

486: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:45:48.05 ID:02VBpOI0
禁書『―――なんだよ!!!』

上条「はははそうか~!」

禁書『でねでね……んん?』

上条「?」
インデックスが向こうで誰かに話しかけられ、言葉を止めた。

禁書『ちょっとまって。あくせられーたが話があるって。今かわるんだよ』

上条「お、おう」
上条は少し嫌な予感がした。
まさかインデックスが何か迷惑かけたのか と。

電話越しに 少しだけなんだよ!!!すぐ終わらせて!!! とインデックスの声が聞こえた。

上条「……」


一方『よォ』

上条「おう」

一方『どォだ?そっちはよォ』

上条「……へ…あ、ああ、特に問題ねえぜ」
少し拍子抜けした。
開口一番に文句を言うと思って身構えていたのだ。

487: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:50:48.66 ID:02VBpOI0
一方『そォか。そィつはイイ』

上条「ま、まあな」

一方『……』

上条「……」

少しばかりの沈黙。

お互いともなんとなく古い友人のように思っていたが、お互いをそこまで知っているわけではない。

確かに拳を重ね、魂をぶつけ合い会話をし、背中を合わせてお互いを信頼して共闘もしたが、
こういう平時ではどういう風に接すればいいのかお互いともわからなかった。
何を話せばいいか分からないのである。

一方『……つーかよ』
先に口を開いたのは一方通行だった。

一方『話し長ェよあのガキ。テメェもよ』

上条「あ、あ~、もしかして待ってたのか?」
30分以上もインデックスと話していたのである。
代わるタイミングを待っていたが、ついに耐えかねてインデックスに代われと言ったのだろう。

一方『まァな。まァ……ガキは話が長ェってのはどこも共通みてェだな』

上条「みたいだな。ま、お互い色々と苦労してるみたいだな」

一方『まァな………って、ンなこたァどォだっていィんだよ!!!クソがァ!!!』

いきなり一方通行が語気を荒げ、凄まじい勢いで自分に突っ込みを入れた。

上条「……」

488: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:54:31.52 ID:02VBpOI0
一方『なンでテメェなンぞとグダめいて、苦労を共有しなくちゃなンないんですかァァ゛?!!!!アァァ゛ァ゛!!!??』

上条「……なんか…その……すまん」
上条は お前がその話を振ってきたんじゃねえか と思ったが、
それを突っ込むと色々面倒になりそうだったのでここは謝った。

一方『チッ………つーかよ、テメェはいつ帰ってくンだ三下ァ?』

上条「あー、まだわかんねえな」

一方『大体でもわかンねェのか?』

上条「ん~……全然」

一方『……クソッ』

上条「?何かあんのか?……まさかインデックスがなんか迷惑を……」

一方『それはねェ。あのクソガキにも見習わしてェくれェに大人しくしてる」

上条「おおおお……そうか……良かった……」
上条は心の底から安堵した。

一方『色々あンのは俺だ』

上条「?」

一方『……「用」があンだ。大事な「用」がな』

489: SSまとめマン 2010/05/07(金) 00:59:06.45 ID:02VBpOI0
上条「いつだ?」

一方『さァな。だが近い内にだ』

上条「う~ん……丸一日とかあける位の用か?」

一方『まァな』

上条「むむむむ……とりあえずステイルに連絡してみるぜ」
ステイルなら二つ返事ですぐに飛んでくるだろう。

一方『つーかよォ、そっちに連れてけや』

上条「そ、それは……」
それは色々と面倒な処理が必要になるのは上条も知っている。

上条「うーん………待てよ……そうだ」

上条「俺が一時的に戻るってのはどうだ?その日だけ俺が代わりに面倒を見る」

一方『いや……代わりじゃねェ。『交代』だ。俺はその日以降面倒は見ねェ』

上条「……そんな長い期間の用事なのか?」

一方『多分なァ』

上条「……と、とにかく、とりあえず近い内に一度帰れないかトリッシュさんに話してみるからよ」

上条「できればだが、そん時にちゃんと話そうぜ」

一方『……あァ。早く帰って来い。三下ァ』

上条「ああ、できるだけ早く行くよ」

490: SSまとめマン 2010/05/07(金) 01:05:37.97 ID:02VBpOI0
一方『話してェのはこンだけだ。じゃァガキに代わんぜ』

上条「おう」

一方『いや……最後に一つ聞く』

上条「?」

一方『ダンテよォ……なンか言ってねェか?』

上条「何かって……何が?」

一方『学園都市に関係することでだ』

上条「……特に何も聞いてないけど……なんかあったのか?」

一方『いや、何も聞いてねェなら別に言い』

上条「……ちょっとまてよ……そうだ、確かまだ魔具の一つが返って来ないって言ってたな」

上条「『まあいつか返ってくる』っていつも通り笑ってたけどな。それだけかな、学園都市の話が出たのは」


一方『……………………………………………………へェ。そいつは「知らなかった」ぜェ』


一方『じゃァな三下ァ。早く帰って来い』

上条「おう」


―――

491: SSまとめマン 2010/05/07(金) 01:10:48.11 ID:02VBpOI0
―――


とあるマンション。

一方通行はインデックスに携帯を投げ渡した。

インデックス「わ!!!ちょ、ちょっと!!!」
インデックスがわたわたと慌てながらキャッチし、すぐに耳にあて大声で再び喋りはじめた。

一方通行はソファーに乱暴に座った。
背もたれの上辺に後頭部を当て、天井を仰ぐ。

一方「……」
黄泉川がつくっているのだろう、朝食の香りが鼻腔を優しく刺激する。

一方「……」
こうやって過してもう二週間が経とうとしている。

あまりにも場不相応だ。
こんな自分がこんなに明るいところで暮らしているなど。
そしてそれを悪くは無いと思っている自分もいる。

誰も殺さず、笑顔に囲まれてだ。

一方「……」

そう、この笑顔。

この笑顔をなんとしても守らねばならない。

492: SSまとめマン 2010/05/07(金) 01:15:11.04 ID:02VBpOI0
とんでもない何かが起ころうとしている。
恐らく戦争だろう。

相手が誰かは知ったこっちゃ無いが、土御門曰く学園都市は厳しい戦いを強いられるとのことだ。

自分は必ず戦力として動員される。
ミサカネットワークという強い情報網を持つ、妹達と打ち止めも利用されるかもしれない。
アンチスキルである黄泉川は兵として動員されるかもしれない。

前線に立つことはないであろう芳川も、この学園都市に残れば危険かもしれない。

このままだと全て壊れるかもしれない。

一方「……」

だから彼は動く。


打ち止めを守る為に。

その少女の周りの『世界』を守る為に。

学園都市に固く繋がれている鎖を断ち切る為に。

『アレイスター』という死神から逃れるために。

今が立ち上がる時だ。

493: SSまとめマン 2010/05/07(金) 01:20:03.37 ID:02VBpOI0
中に住まうものにとって最大の禍である『学園都市の危機』は、一方通行達にとっても最終通告だ。

だが皮肉な事に、一方で彼らにとってこれ以上ない程の最大のチャンスともなる。

役者は全て揃った。

『アラストル』もある。

後はとりあえず『ネタ』をできるだけ漁りながら時期を待つだけだ。

一方「……」

『アラストル』。

一方通行はこれには少し迷いがある。
使って良いのだろうかと。

土御門や海原は使う気マンマンらしいが、一方通行は少し気が引ける。

確かにアラストルがこちらにとって究極の切り札になるだろう。



今、こちら側にはレベル5が二人いる。

しかし、いくらレベル5がとはいえ、『学園都市の能力者』である。
つまりアレイスターの手の平の上だ。

だからアレイスターの裏をかくには彼の手の外、彼の手が届かない領域の力が必要なのだ。

そこで『アラストル』なのだが。

494: SSまとめマン 2010/05/07(金) 01:28:17.07 ID:02VBpOI0
確かに有用だ。

だが一方通行は知っている。

実際に直で目にしたことの無い土御門や海原とは違う。

彼はその領域の力を直にこの身で味わっている。
圧倒的な破壊を目の当たりにし、底なしの恐怖と絶望を味わった。

『あんな物、あんな力、人間の手には到底扱えない』

それが一方通行の考えだ。
あのアレイスターでさえ及び腰になってしまう領域だ。

一方「……」

一方通行は迷っていた。
事を成し遂げるには『アラストル』の使用が必要なのだ。
それはわかっている。

自分達だけじゃ、あまりにも頼りなさすぎる。

だが『アラストル』を使うという事には、自滅するという可能性も含れている。

アレイスターにとってイレギュラーだが、一方通行達にとってもイレギュラーなのだ。

一方「……クソッ…」

あまりにも危険すぎる。
しかし使うしかないのだろう。躊躇っている余裕は無い。

一か八かの賭け。
負ければ全てを失う。
そしてこの賭けを降りればもう二度と立ち上がれない

だから道はただ一つ。

勝つだけ。

絶対的な勝利を手にする。

そしてその為には『アラストル』が必要なのだ。

一方「…………」

495: SSまとめマン 2010/05/07(金) 01:36:55.97 ID:02VBpOI0
鎖を砕き、自由への切符を手に入れる為の戦い。
かけがえの無い存在をその『船』に乗せる為の戦い。

当然、彼は己自身がその『船』に乗るつもりは無い。
クソはクソ溜めに残るのが相応しい。

学園都市が滅ぶというのなら共にする。

一緒に消えて無くなるべきだ。

一方「……カカッ…」
一方通行は天井を仰ぎながら小さく笑った。

こんな自分達の姿が何となく滑稽だ。

あまりにも無様なだ。
クズが寄り集まって足掻く。

見るに耐えない薄汚れた戦いだ。

所詮悪役のカス共だ。
こういう戦い方しか出来ないのだ。

ヒーローの様に己が身一つで、拳のみで掴み取ることは出来ないのだ。


一方「……」
己が見たヒーロー達の姿を思い出す。


ボロボロになりながらも前に突き進むツンツン頭の少年。

赤いコートをなびかせ、華麗に疾駆していく銀髪の男。


忍び寄ってくる運命をねじ伏せ、鎖など自力で簡単に引き千切ってしまう強き『主人公達』を。


一方「………かっけーなァ…おィ…」


―――

506: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:12:47.23 ID:efQIU8E0
―――


事務所デビルメイクライ。
時刻は深夜。

ダンテは一階のホールのソファーに寝そべり、うとうとしていた。
いい具合にアルコールがまわり、極上の一時だ。

だがその至福の時間が、電話のけたたましい音で中断される。

ダンテ「………」
だがダンテはソファーから動かない。
面倒臭いのだ。

机の上の電話は相変わらず鳴り響いている。

ダンテ「………」

根競べだ。
電話の主が先に諦めるか、ダンテが降参して受話器を取るか。

ダンテ「………」

電話が鳴って3分が経過した。
徐々にダンテの苛立ちがつのってゆく。

ダンテ「………」

だが彼は負けない。
そうと決めたのなら、意地でも突き通す。
どんな戦いだろうと負けねえ と。

その時だった。

トリッシュが早歩きで地下室へ続く階段の方から、
ダンテが寝そべっているソファーの方へ真っ直ぐに進んで来た。

トリッシュ「出なさいよ」

そしてソファーを思いっきり蹴飛ばした。衝撃でダンテは床に転げ落ちた。

508: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:17:08.12 ID:efQIU8E0
ダンテの小さな戦いはそこで終わった。

トリッシュ「いい歳こいて居留守とか。ホントしょーもないわね」

トリッシュはそう吐き捨て、早歩きで机に向かい受話器を取った。
ダンテは悪態を付きながらモタモタとソファーに這い上がっていた。

トリッシュ「Devil May Cry」

机に軽く腰掛け一言。

トリッシュ「ねえ。合言葉アリだけど」

トリッシュが、再びソファーの上に寝そべっているダンテへ声を飛ばした。
その言葉を聞いてダンテが勢い良く上半身を起こした。

ダンテ「場所は?!」
ダンテが見るからにワクワクしている笑みを浮かべトリッシュに声を飛ばした。

トリッシュ「というかかわって。エンツォだから」

ダンテ「ハッハァ!」
ダンテがひらりとソファーから飛び起き、一切無駄のない華麗な動きで進みトリッシュから受話器を奪い取った。

ついさっきソファーから無様に蹴落とされた男とは別人のようだ。

トリッシュ「……ったく…」
トリッシュはそんなダンテを呆れた目で眺めた。

509: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:21:19.04 ID:efQIU8E0
ダンテが相槌をし、ハハッと笑い、そして 任せろ と言って受話器を放り投げる。
宙を舞った受話器は、まるで磁石にでも吸い寄せられているかのようにストンと元の位置に収まった。

トリッシュ「何だって?」

ダンテ「タレコミだ。四日後にリスボンの港に例の人造悪魔を積んだ船が入るとよ」

トリッシュ「へぇ……ウロボロス社の?」

ダンテ「ああ。その次の日もだ。二日続けて入るとよ」

トリッシュ「面白いわね。そろそろ現物が欲しかったところなのよね」
現物が手に入れば、
それを調べる事によってかなり詳細な黒幕についての情報を掴むことができる。

トリッシュ「いいわ、私がいk」

ダンテ「俺が行く」

トリッシュ「……」

ダンテ「そろそろパーっとやりてぇんだよ。良いだろ?」
ダンテが軽く手を広げニヤける。

トリッシュが呆れたようなため息を付く。

トリッシュ「ま、いいわよ。あなたが決めることだし。じゃあ私はその二日間の間坊やの面倒を見るから」

ダンテ「ヘッハァ!」

510: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:28:47.79 ID:efQIU8E0
トリッシュ「わかってると思うけど」

ダンテ「あんま暴れんな だろ?わかってる」

トリッシュ「……」
わかってはいるが、その言いつけを守るとは言わない。
いつもの事だ。

どうせその船が真っ二つに折れて爆沈でもするのだろう。
先にトリッシュが早めに何体か捕獲しておかないといけない。

その時、階段を降りてくる音が聞こえた。

トリッシュ「あら、まだ起きてたの?」

上条が階段の所に立っていた。

上条「おう。電話しててな。でさ、ちょっと話あんだが……いいか?」

トリッシュ「どうぞ」

上条は簡潔に説明した。
インデックスの面倒を見ていた一方通行が、近い内にその役から降りなければいけないと言う事。
とりあえずその事を話す為に、今週中にでも少しだけでも向こうに顔を出したいと。

トリッシュ「……へぇ」

511: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:30:42.25 ID:efQIU8E0
トリッシュ「ちょうど良いわね」

ダンテ「だな」

上条「?」

トリッシュ「良いわよ。ダンテが四日後から出かけるから。二日間」

上条「!!」

トリッシュ「一日目はあなたの力を調整するわ。二日目はお休みにしてあげる」

今の荒削りのままだと、ダンテやトリッシュの傍から離すのは少し不安だ。
一日かけて『バリ』を削り落とし、上条の力をある程度安定させてからの方が良いだろう。

上条「ってことは………戻って良いのか!!!?」

トリッシュ「ええ。一日だけだけど」

上条「おう!!!全然おっけーだぜ!!!!」

ダンテ「ま、久々に羽伸ばしてきな」

上条「ああ!!!サンキュ!!!」

こうして上条は五日後に一時帰宅する事になった。


―――

512: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:39:55.06 ID:efQIU8E0
―――


バッキンガム宮殿地下。
とある蔵書。

ネロは険しい表情で椅子に座り足を机に乗せていた。

ネロ「……」
この妙な胸騒ぎ。日に日に徐々に強くなってきている。

悪魔の勘が叫ぶ。
『数日中に開演する』と。

ネロ「……」

一番近い、大きなイベント。それは五日後に行われる神裂とローマ正教の枢機卿との会合。

ネロ「……」
神裂を信頼し任せるか。
それとも女王に直談判でもして中止させるべきなのだろうか。

だが悪魔の勘は「そんな事は無駄だ」という。
どちらの道を選んでも結局『開演』すると。

ネロ「……最悪だな……ホント最悪だぜ畜生が…」

その時、机の上の通信霊装が光りだした。

513: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:42:03.85 ID:efQIU8E0
ネロ「……」
報告の時間はいつも大体決まっている。
つまり、この通信はそれ以外。

嫌な予感がする。

机に乗せている足で通信霊装を乱暴に叩き起動する。

ネロ「あ?」

『フォルトゥナからネロ殿に』
通信霊装からの男の声。

ネロ「……」
予想通り報告ではなかった。

そしてフォルトゥナから。
ネロの顔が少し引きつる。

心当たりがある。
ここ最近なんやかんやでしばらく家に帰っていない。

ネロ「……つなげ」

『了解』

数秒後。

『ネロ?』
通信霊装から、穏やかで優しいハープの音色のような透き通った女性の声。

その声を聞いてネロは机から足を下ろし、一瞬で姿勢を正した。

ネロ「悪い!!色々忙しくてっ!!!……本当に悪い!!!」
そしてネロは相手の話を聞かずに即座に謝罪をした。

相手はキリエだ。

514: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:48:16.40 ID:efQIU8E0
キリエ『うん、いいの、それはしょうがないよ』
声だけで分かる。
素直で優しい、まるで天使のようなキリエは何も怒っていないだろう。
だが逆に素直すぎて、彼女の寂しさもビシビシ伝わってくる。

ネロ「すまん!!!本当にすまん!!!!」

キリエ『いいってばもう……そうそう、ご飯とかちゃんと食べてる?』

ネロ「ああ、大丈夫だぜ」

キリエ『洗濯とかちゃんとしてる?』

ネロ「お、おう、してるぜ。そっちはどうだ?」

キリエ『うん、特に何も問題ないよ。あ、そうそう……』

そこからキリエは女の子特有の世間話を始めた。
その内容は、同じ世界にいるのかと思いたくなる程に微笑ましいものだった。

キリエの話した内容はお隣さんのわんちゃんが子犬を無事出産したとか、
家の前の花壇のお花が咲いたとか、孤児院の子が元気 などなど。

その美しい歌のようなキリエの話をネロは穏やかな笑みを浮かべ、優しく相槌を打ちながら聞いていた。

今のネロにとって最高の安らぎだ。

515: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:53:01.26 ID:efQIU8E0
しばらくそうしてキリエの話を聞いていると、蔵書のドアが軽くノックされた。

ネロ「(チッざけんな誰だクソッタレぶっ殺すぞクズ野郎)」

ネロ「おっと、わりぃ!ちょっと待ってろ」

キリエ『…それでね…えっ?、あっうん』

ネロは通信霊装の書物を閉じ、緩んだ表情を一瞬でいつもの冷たい仕事モードに戻した。

ネロ「入んな」
そして扉に向けそっけなく声を飛ばした。

扉が開き、黒いローブに身を包んだ背の高い修道女がいそいそと入ってきた。
緩いローブ越しからでもわかるそのグラマーな体。
ローブについている帽子を深く被り、俯いている為顔は見えない。
手には黄ばんだ古めかしい紙。

特におかしい点は無い。
こうして『暗部』の者が報告書を直に持ってくる場合も多々ある。

ネロ「……」

だがネロはその妙な『空気』に気付いた。


ネロ「―――止まれ」


ネロの制止を受けて、『グラマー』な修道女は部屋に数歩入ったところで止まった。

516: SSまとめマン 2010/05/09(日) 00:59:43.19 ID:efQIU8E0
ネロは椅子の背もたれに寄りかかりながらその修道女を睨む。

ネロ「―――で、どちらさんだあんた?『来客』の予定はねえはずなんだが」

修道女が顔を上げた。
ローブの帽子の下から、黒縁のメガネをかけた整った女性の顔が見えた。
そして―――口元のほくろ。

女は色っぽい笑みを浮かべている。

ネロ「………」

ネロは一目で気付いた。
この顔やほくろ、メガネや体格は神裂の証言と完全に一致している。

聖ジョージの襲撃犯だ。

「はじめまして。坊や」

女が口を開いた。
その声は不気味なほどに色っぽい妖艶な物だった。

ネロ「遊びてえのか?バァさん」

ネロは右手を隠しもせずに顔の横にあげ、指を曲げながら力んで関節を鳴らした。
異形の右手の青い光が強まる。

同時に目が赤く光る。

「あら、ダディに似て冷たいのね。でもそういうところもセクシーで可愛いわよ」

そんなネロを見ても女は一切動じずに、余裕の篭った妖艶な笑み。


ネロ「……(ダディ……?)…親父を知ってんのか?」

518: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:06:44.59 ID:efQIU8E0
「よ~く知ってる」

女が熱い吐息を漏らし、身をくねらせる。

ネロ「……」
なぜか無性に腹が立つ。今すぐにでも叩き切りたい。
なんというか、初めてダンテに会った時の感覚に似ている。

自分が幼稚園児扱いされているのだ。

ネロ「……へぇ…じゃあ聞かせてもらおうか?ああ?」
ネロが苛立ちを隠しもせずに上半身を起こし、机の上に右手を叩きつけるように乱暴に乗せた。

「待って。私は別に『遊び』に来たわけじゃないの」

ネロ「へぇ。てっきりそうだと思ってたがよ」

右手の光が増す。
ネロは後ろに立てかけてあるレッドクイーンを意識する。

何かあればすぐにデビルブリンガーを伸ばし、そして叩っ切る為に。

「可愛い子ねぇ。ちゃんと聞きな。アンタのダディから『伝言』よ」


ネロ「……あ?」


「『今すぐイギリスと縁を切れ』」


「『魔術サイドとも学園都市とも、どの人間の勢力とも関るな』」


「『即刻フォルトゥナに戻れ』」


ネロ「………………は?」

519: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:11:03.91 ID:efQIU8E0
「ちゃんと伝えたわよ。じゃあね」
女は手をひらひらさせ、ファッションモデルがターンするかのように華麗に踵を返して扉の方へ向かった。

ネロ「おいッ!!!……待てやババア!!!」
ネロが勢い良く立ち上がる。
その反動で座っていた椅子が後ろに倒れた。

「……あんまりババアって言わないでくれる?」
女が立ち止まり、振り向かないまま不機嫌そうな声を背後のネロに飛ばす。

「それ結構ムカつく」

ネロ「るせぇ!!!」

ネロがデビルブリンガーを一気に伸ばした。
女を鷲掴みにしそのまま扉に叩きつけるべく。


「You want to touch me? Huuummhum....Bad boy」


その巨大な右手が女の体に触れる瞬間。

ネロ「―――!」

女の体がバラバラに、いや、小さな無数の黒い蝶になった。
ネロのデビルブリンガーはその蝶の群れを突き抜け、そのまま扉をブチ破った。

ネロ「―――チッ!!!!」

女の体はどこにも無かった。
そして蝶の群れも一瞬で掻き消えた。

520: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:15:49.36 ID:efQIU8E0
ネロは机を飛び越え、女が最後に立っていた場所に着地する。
そしてその床に右手を当てる。

力が僅かに残留していたものの、追跡に利用できるような情報は一切無かった。

ネロ「……何だってんだクソ……」

父が伝言とは?

あの女は何者か?

その関係は?

あの女が先日の聖ジョージ大聖堂襲撃犯なのは確実だ。
イギリスに対して友好的では無いのは確実だ。

もしかして父もあの女と同じくイギリスに対して非友好的なのか?

そしてあの伝言の内容。

ネロ「……」

これは確実にこれから起こる戦争に深く関係しているはずだ。

一体何がどうなっているのか。

父は何を知っているのか。

何を望んでいるのか。

そして何をしようとしているのだろうか。

521: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:18:29.26 ID:efQIU8E0
ネロは己の異形の右手に目を落とす。
いつもと変わらず、この『向こう』側に父の存在を感じる。


ネロ「なあ……知ってんだろ?」
右手を見ながら小さく呟いた。


ネロ「教えてくれよ……何が起こってんだ?……親父ィ…」


『ネロ?ネロ?』


その時、自分を呼ぶ透き通った声に気付いた。
どうやら先ほど右手を机に叩き載せた拍子で起動してしまっていたらしい。

ネロは慌てて机の方に戻る。

ネロ「悪い!!!…色々立て込んでてな…」

ネロ「……ってどこから聞いてた?」

キリエ『えっと……女の人が「遊びに来たわけじゃない」って……」

となると本題は全て聞かれていた。

ネロ「(クソ…)」
ネロは、このキリエだけはこういう暴力と殺戮の禍々しい世界から遠ざけておきたかった。

彼女だけは触れさせてはならないのだ。
絶対に関らせてはならないのだ。

ネロ「……」

523: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:25:55.00 ID:efQIU8E0
キリエ『それと…お義父さまの伝g』

ネロ「キリエ。今の事は絶対に誰にも話さないって誓ってくれ」

キリエ『……うん』

ネロ「……よし。じゃあまた後で、次はこっちから連絡するよ」
背後からざわめきが聞こえる。
大方、扉が破壊された騒ぎで警備の魔術師達が大慌てでこの地下に降りてきたのだろう。

キリエ『待ってる』

ネロ「じゃあ―――」

キリエ『ネロ』

ネロ「……ん?」

キリエ『愛してる』

ネロ「俺も愛してるぜ」
通信霊装の向こうから照れくさそうな小さな笑いが聞こえた。

キリエ『じゃあね』

ネロ「おう」
ネロは通信霊装をゆっくりと閉じた。

頭の中が混乱している。

ネロ「……………何が何だってんだよ…」

ネロは机に手を突いて、寄りかかった姿勢のまま一人吐き捨てるように呟いた。

―――

524: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:28:06.88 ID:efQIU8E0
―――


事務所デビルメイクライ。

上条は自室のベッドの上に座っていた。
下でトリッシュと日程を話し合った後、すぐにインデックスへ電話を掛け、彼女と一方通行に伝えたところだ。

五日後の朝にトリッシュに学園都市に送ってもらう、つまり向こうに着くのは五日後の夜だ。
それから丸一日の自由時間という訳だ。

インデックスはこれでもかという位に大はしゃぎし、
上条にも聞こえてくるくらいに一方通行に うるせェ!!!! と向こうで怒鳴られていた。

上条「ははぁ~!!」
上半身を勢い良く倒し、天井を見る。

上条「久々だな~……」

考えてみると、インデックスとこんなに長期間離れたのは初めてだ。

上条「………うへへ…へへはあ……」
久々にあの愛おしい天使に会えると思うと、ニヤニヤしてしまう。
自分でも分かる。今の己の顔はかなり気持ち悪いだろう。

上条「……ん?」
そうやってニヤニヤしていたところ、ふと隣の部屋からの声に気付いた。

御坂が何やら大声をあげている。

上条「……」
まだあの大砲ではしゃいでいるのかと一瞬思ったが、どうやらそれは違うようだ。
何やら誰かと話しているようだ。
電話でもしているのだろうか と上条は思った。

525: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:31:00.88 ID:efQIU8E0
「うるさい!!!!皆黙っててば!!!黙りなさい!!!」

上条「……」
誰かと電話越しか何かで喧嘩しているようだ。

「ちょ、ちょちょちょ…!!!!!消しなさい!!!!」

「見ないで!!!!見ちゃだめだって!!!」

「共有って……ダメだって!!!お願い!!!!いやぁあああ!!!!」

「全部消せってば!!!!だめぇ!!!!見んな!!!」

「ちょっと!!今『保存』って言ったの出てきなさい!!!出て来い!!!!出て来いやぁあああああ!!!!」」


「保存すんなゴルァアア!!!!!!!そこさりげなく長さ測ろうとしてんじゃねぇええええ!!!!」


「てめぇら試し撃ちの的にすっぞウラァァァァアア!!!!!!!」


「アァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛!!!!…………へ?……ウソ…そんなに長いの…?…た、確かに…そんぐらいあったような…」


「……え?!もっと大きくなるの?!!に、二倍ぃい?!!」


「………ってうるせェエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!!!!!!!!!」

上条「……」

526: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:34:44.48 ID:efQIU8E0
上条「……」
そういえば、五日後に学園都市に帰る事を御坂にも伝えとこうと思っていたのだが、
今はやめておこう と上条は判断した。

上条「……明日でいっか」
上条はティッシュを耳に詰め、部屋の電気を消し床についた。

相変わらず隣の部屋からは御坂の怒号が聞こえてくる。

上条は夢にも思っていなかった。
自分のムスコの映像が一万人の手に渡った事に。

己が今リアルタイムで公開処刑されているなど。

上条「……まあ元気そうでなによりだぜ。早く寝ろよ。御坂。おやすみ」
壁に向かって小さく呟く。

そして。


上条「おやすみ。インデックス」


五日後に会えるであろう、地球の裏側の少女へ向けて。

そう、『五日後』。

それは『開演』の時。

―――

528: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:37:14.78 ID:efQIU8E0
―――


とある深い森の中にある、古い廃屋。

時刻は深夜。
満月の月明かりが、周囲をぼんやりと照らしていた。

その廃屋の前に、黒いボディスーツに身を包んだグラマラスな女が立っていた。
右足に体重を乗せ体をしならせ、右手にはスティックの付いたキャンディ。

魔女、ベヨネッタ。

ベヨネッタ「ヴァチカンに行くのあのエンジェルちゃんだって」

ベヨネッタ「五日後の昼に会合を開くみたい」

ベヨネッタ「どうする?良い機会だと思うけど」
ベヨネッタが星空を仰ぎながら声を放った。

その声の相手は、廃屋の屋根に座って瞑想している男。

後ろに撫で付けた銀髪。
青いコート。傍らには黒い鞘に納まった日本刀。

バージル。

529: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:41:40.75 ID:efQIU8E0
ベヨネッタは廃屋の屋根に座っているバージルへ向けて言葉を続ける。

ベヨネッタ「も~う待ちくたびれちゃった。これ以上おあずけなんか無理」

ベヨネッタ「アンタももうそろそろ暴れたいでしょ?」

バージルが静かに目を開け、傍らの閻魔刀を掴み立ち上がった。

ベヨネッタ「どう?」


バージル「……異論は無い」

ベヨネッタ「じゃあ『天使』は任せて」
その言葉を聞いてベヨネッタが甘い吐息を吐き、妖艶な笑みを浮かべる。


ベヨネッタ「で、思いっきりブッ差してもいいの?あの『刀』?成功する確率は半々だと思うけど」


バージル「構わない。『天使』は殺せ」


ベヨネッタ「Huuum.Okaaay」

530: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:44:04.47 ID:efQIU8E0
ベヨネッタ「そうそう、ところで坊やはどうすんの?一応伝えたけど」

ベヨネッタ「結局動かなそうよ坊や。『親』に似てガンコっぽいし」

ベヨネッタ「アンタの『弟』も。それとあの金髪悪魔が色々嗅ぎまわってるけど」

バージル「……必要な場合は俺が行く」

ベヨネッタ「……手を引かなかったらどうするの?」

バージル「その時はその時だ」

ベヨネッタ「……………仲良いんだか悪いんだか。面白い家族ねえ」

ベヨネッタ「じゃあもう行きましょ。色々下見も必要だし」

バージル「一人で行け」

ベヨネッタ「?」
ベヨネッタが大げさに首を傾げる。

ベヨネッタ「一緒に来ないの?」

バージル「さっさと行け」


ベヨネッタ「もう……ノリ悪いったらありゃしないわね」

531: SSまとめマン 2010/05/09(日) 01:49:20.74 ID:efQIU8E0
ベヨネッタ「じゃあ何かあったら『喚ぶ』から。ダディ♪」

ベヨネッタが腰をくねらせ軽くウインクをする。


バージル「失せろ」


バージルが親指で閻魔刀の鍔を弾いた。
僅かに姿を現した刃が月明かりを浴びて不気味に光る。


ベヨネッタ「もう、そんなに嫌われてると悲しくなっちゃう」

ベヨネッタ「恐い恐いって坊やに言われない?ダーディ?」

ベヨネッタがキャンディを咥え、相変わらず舐めた態度で笑みを浮かべる。
このバージルにこんな態度で接する事ができるのはダンテか彼女ぐらいだろう。

バージル「……」
バージルが猛烈な殺意の篭った赤く光る瞳で睨み返す。

だがその瞳に晒されても尚ベヨネッタは一切動じなかった。

ベヨネッタ「はいはいわかったってば。じゃあね」
ベヨネッタは踵を返して森の中へ、腰をくねらせながら消えていった。


バージル「……………」

―――

542: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:03:43.24 ID:mJZkMyM0
―――

四日後。夜

事務所デビルメイクライ。

上条は自室のベッドに寝そべっていた。
朝の内にダンテはトリッシュに送られて、嬉々としてリスボンに向かった。

トリッシュはすぐに帰って来て、そのまま上条の調整に入った。
全身にいつものように杭を差して。

上条にとっていつもと同じ『拷問』だったが、トリッシュ曰く違うらしい。
まあ、とにかくこれで暴走する可能性はほぼゼロだという。
今日一日は絶対安静という条件付だが。

その後、トリッシュは再びダンテの元にいった。
明日の朝に上条を学園都市に送る為に戻ってくるという。

上条「……へへへへ…」
今から半日後はもう学園都市だ。
インデックスが傍にいることだろう。

そう思うと自然と顔が綻んでしまう。

543: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:07:51.54 ID:mJZkMyM0
ドアが軽くノックされる。

上条「おう」

ドアが開き、隙間から御坂がヒョコッと顔を出した。

御坂「えへへへ……準備できた!」

上条「おいおい、気が早いな。明日の朝なんだぜ?」

御坂「だって……久しぶりに戻るんだし…」
もう荷物を持って、今すぐにでも出発できる体勢の御坂が部屋に入ってくる。

上条「………って!それも持ってくのか!!?」
上条は勢い良く上半身を起こした。

彼が突っ込んだのは御坂の背中にある黒い棒状の大きな包み。
例の『大砲』だ。

良く見ると、手にも大きな箱型のバッグを持っている。
あのバッグにも見覚えがある。
昨日レディが持ってきた、術式強化を施した弾が300発程入っているバッグだ。

御坂「へ?うん。そうだけど」
御坂が 何かおかしい? とでも言いたげな顔で上条へ言葉を返した。

544: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:16:05.21 ID:mJZkMyM0
上条「持ってってどうすんだよ!!!使う気かよ!?」

御坂「だ、だって!!!あたしはアンタの護衛なんだから!!!万が一に備えなきゃ!!!」

上条「……」
決して自惚れているわけじゃないが、自分には到底護衛が必要とは思えない。
この二週間でかなりダンテに鍛えられたのだ。

あの暴走時程とはいかないものの、光を集めて擬似的にベオウルフ風の装具も出現させられる。
学園都市の基準に照らし合わせれば、今の自分はレベル5クラスだと上条は思っている。

だが護衛も御坂の仕事であり義務の一つなのだから、しょうがないだろう。

上条「まあ……無闇に使うなよ」

御坂「フンだ!!……ってアンタはアレ持ってかないの?」
御坂が部屋の隅にある、小さなテーブルに乗っている黒い拳銃を指差した。

上条「……俺はいいかな」

持っていく気は無い。
インデックスにはあまり見られたくないのだ。

いつも通り、『ただの上条当麻』として会いたい。

御坂「……そう…」

とその時だった。

一階の電話がけたたましく鳴り響いた。

545: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:20:16.16 ID:mJZkMyM0
上条「……一応出た方が良いよな?大事な件かも知れねえし」

御坂「……うん」

上条がベッドから飛び起き、廊下に出て階段を駆け下りていく。
御坂が荷物を上条の部屋に降ろして、そのすぐ後ろに続く。

上条は1階に降りると、素早く滑り込むように机の上の受話器を取って耳に当てた。

上条「はいはいこちらDevil May Cry」

エンツォ『んお?あの坊主か?俺だ俺。エンツォだ』

上条「あ、あ~どうも」

エンツォ『ダンテかトリッシュいるか?悪魔狩りの依頼が入ったんだがよ』

上条「いや、まだ二人とも帰って来てないぜ」

エンツォ『ああ、クソッ……そういやぁそうだったな……参ったぜ…』

エンツォ『…………待てよ。おい坊主!』

上条「ん?」


エンツォ『お前がやってみねぇか?』

547: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:24:47.47 ID:mJZkMyM0
上条「……はい?何をでせう?」


エンツォ『お前が悪魔退治すんだ』


上条「………………はぃいいいいいいいい?!!!!」


御坂「何!!どうしたの!!!?」

エンツォ『お前強いだろ!?何せベオウルフだしよ!!二ヵ月半前も魔帝軍とやりあったんだろ!?なら余裕だぜ!!!』

エンツォ『ギャラも出るぜ?1万5千ドルだ。悪くはねえだろ?』

上条「いやいやいやいや……すんません……無理です。動くなって言われてるし…」

エンツォ『ダメか?!できるだけ早く!!!い、いや、今すぐやってもらわなきゃヤベェんだ!』

上条「ああ……悪いけど………(……って『今すぐじゃないとヤバイ』?)」
エンツォが言ったその言葉が妙に引っかかる。
そんなに急を要する自体なのだろうか。

エンツォ『そうか……悪いな。邪魔したな。他を当たってみるぜ』

上条「……ちょっと待ってくれ。今すぐじゃないとヤバイってどういう意味だ?」

エンツォ『んあ?……まあ…その悪魔共な、ココ最近毎晩のように人間をぶっ殺して喰ってるらしい』

上条「!!!!!」

エンツォ『退治が一日遅れるたびに人間が殺されるってこった』


上条「………ッ!!!!!!!!!」
そんな事を聞いてこの上条が黙っていられるわけがない。

良心の塊であるこの少年が、人が殺されるのを黙って見ているわけがない。

エンツォ『まあそういうことだ……じゃあn』


上条「―――俺がやる!!!今すぐ行く!!!!」

548: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:29:48.18 ID:mJZkMyM0
御坂「ちょ、ちょっと……どうしたの…!?」
いきなり声を荒げた上条に驚き、御坂がオロオロする。

エンツォ『うおおおお!!!!良いのか!!!!?』

上条「当然だ!!!!俺がそいつら全員ぶっ飛ばす!!!!」

エンツォ『こりゃあ良い!!!場所は―――」
エンツォが場所を伝える。

上条が相槌を打ち即座に暗記していく。
こういう時の彼の頭の回転は人間離れしているのだ。

その悪魔達がいる場所は、ここから20km程離れた街のスラム街にあるそうだ。
悪魔の力を使って駆ければ10分もしない内に行けるだろう。

エンツォ『連中は全員下等悪魔らしい。お前なら5秒もしねえ内に片付けられるだろ。じゃあ頼んだぜ!!!』

上条「おう!!!!任せな!!!」

ちなみにトリッシュから絶対安静と言われ、当然悪魔の力の使用も禁止されていたが、
上条にとって、人の命と天秤にかける間でもない。

それに下等悪魔が相手なら、暴走するような状況にはほぼ確実にならないだろう。

上条は受話器を置き、御坂の方へ向いた。

御坂「ね、ねえ…ど、どうしたの?何かあったの?」


上条「悪魔狩りだぜ!!!!」
そう一言だけ告げると、上条は階段に向かい一気に駆け上がっていった。


御坂「……はぃ?ちょ、ちょっと!!!」
御坂がその後を追う。

551: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:43:02.60 ID:mJZkMyM0
上条は自室に駆け込み、真っ直ぐに小さな机に向かい銃を左手で取る。
そしてスライドを引き、動作を点検した後に慣れた手つきで弾倉を入れ、
力を流し込んで自動装填の術式を起動する。

上条「よし」

その銃を腰のベルトの部分に差込み、今度はクローゼットに向かい右手を保護するための手甲を手に取った。

御坂「ね、ねえ……悪魔狩りって?」

上条「これから退治に行く」
手甲を右手に装着しながら上条が答える。

御坂「こ、これからって…!!?」

上条「俺は行くぜ」
右手を開いたり閉じたりして馴染ませる。
金属生命体である手甲は上条の腕の形に合わせてフィットするように形を変えた。

手のひらの部分だけは素肌が出ている。
これはダンテと相談の上で、戦闘中にも幻想殺しを使えるようにした物だ。
右手を守るときは手を拳を握れば良い。

御坂「だ、ダメよ!!!トリッシュさんが……!」


上条「すぐに退治しねえと人が死ぬ。理由はそれだけで充分だろ」


御坂「……」
その上条の目を見て御坂は諦めた。
彼の心に火がついたのだ。
こうなるとてこでも動かなくなるのは何度も経験済みだ。


御坂「……わかった。でもあたしも行くから。拒否する権利は無いからね」
御坂が踵を返し、足早に荷物の方へ向かい、大砲の包みを剥す。
そしてバッグを開け弾を取り出し、装填していく。

上条「おう。だがお前は見てるだけでいいぜ」

上条「俺に任せろ。全部俺の獲物だ。全員俺が叩きのめす」

御坂「……そう」

―――

553: SSまとめマン 2010/05/10(月) 01:50:21.83 ID:mJZkMyM0
―――

リスボンの港。

ダンテはコンテナを下ろす為の大きなクレーンの鉄骨の上に寝そべっていた。


ダンテ「……」
正面は月明かりが反射している水平線。
後ろはリスボンの夜景。

空はうっすらと明るくなりつつある。
もうすぐ日が昇るだろう。

ダンテ「……つまみには悪くはねえ景色だ」
ワインボトル片手に一人呟く。

そうやってしばらく時間を潰していたところ、背後に気配を感じた。

ダンテ「見つけたか?」
ダンテがワインボトルに口をつけながら、振り返らずにそのまま声を放った。

トリッシュ「ええ」
そのトリッシュの言葉と同時に、ダンテの前に黒い小銃が放り投げられてきた。
クレーンの鉄骨とぶつかり金属的な音を放つ。

トリッシュ「小銃はざっと500丁ってところかしら。それと戦車が三台、戦闘ヘリが一台」

トリッシュ「小物は無理やり合成した人造悪魔ね。デカブツはインフェスタントかそれ系統のが複数取り憑いてるみたい」

トリッシュがダンテの後ろからそのまま説明する。
ダンテは放り投げられてきた小銃を手に取り眺めていた。

ダンテ「おい、随分おとなしいな。コレ」

トリッシュ「それは持ち帰りやすいように封印式ぶちこんであるから。中に入ればかなり盛大におもてなししてくれると思うわよ」

ダンテ「それなら文句はねえ」
ダンテが後ろのトリッシュの方へ小銃を放り投げた。

554: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:03:48.57 ID:mJZkMyM0
ダンテ「で……どの船だ?」

ダンテが上半身を起こし、トリッシュの方を見る。

トリッシュ「あそこ」
トリッシュが1kmほど離れた所に停泊している巨大な貨物船を指差した。

トリッシュ「船倉のカーゴに」

ダンテ「へぇ…」

トリッシュ「いい?二隻目が来るまで待ちなさいよ?」

今やってしまうと、襲撃の報を受けた二隻目が引き返してしまうかもしれない。
狩られるとわかっててみすみす寄航はしないだろう。

トリッシュ「下手したらお楽しみが半分になるわよ」

ダンテ「へーへー」

ダンテが手をひらひらさせ、再び寝っころがった。

トリッシュもその場に座った。

ダンテ「……帰らねえのか?」

トリッシュ「見張り。あなたの」

ダンテ「……」

トリッシュ「ワインちょうだい」

ダンテ「……これは俺んだ」

トリッシュ「ケチ」

ダンテ「……」

―――

555: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:10:20.75 ID:mJZkMyM0
―――


とあるスラム街。

時刻は午前二時。

その寂れた町の一角、路地の裏に薄汚いクラブがあった。
日中も常に影になって日の光がささない。
夜の今はその闇が更に強い。

路地の奥。

唯一の光源である、オレンジ色のランプが照らしていた薄汚い木製の扉。
扉には手描きで「OPEN」と書かれているプレートが下がっていた。

その前に、フードを深くかぶった全身黒尽くめの少年が立っていた。

フードのついた黒い皮製のくたびれたジャケット、黒いカーゴパンツ、そして黒いハイカットの革靴。
フードの影がまるで黒いアイマスクのように落ち、少年の鼻から上を隠していた。

だがその瞳だけはその影のカーテンを貫いて光を放っていた。

少年の左手がゆっくりとノブに伸びる。
そして掴み、まわし、扉を開けた。

来客を知らせる鈴の音色とともに、少年はその暗いクラブに入っていった。

556: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:14:00.54 ID:mJZkMyM0
クラブの中はガランとしていた。
掃除の時のように円テーブルの上には椅子が上げられ、ステージの上にも誰も立っていない。

三人の客と思しき、見るからにカタギではない目つきの悪い男が奥の机を囲んで酒を飲んでいた。
カウンターには顔に傷があるこれまた強面のバーテンダーが一人。

クラブの中にはこの四人しかいなかった。
音楽も鳴っていない。

唯一営業中と思わせてくれるのは暗めに設定されている室内灯だけだ。

客やバーテンダーの睨むような視線を向けられたが、
少年は特に気にするそぶりも見せず、カウンターに進み円椅子に腰掛けた。

バーテンダー「よう、坊主。ここはガキの来るところじゃねえぜ?」

バーテンダーが嘲笑的な笑みを浮かべ、少年に言い放った。
少年の背後から客のものと思しき笑い声。

「水、くれないか?」

少年が口を開いた。

バーテンダー「んなもんは置いてねえ。これしかねえよ」
バーテンダーがショットグラスにウイスキーを注ぎ、少年の前に乱暴に叩きつけるように置いた。

「……これだけか?」

バーテンダー「ああ」

「他にもあるんじゃねえのか?」


「―――人間の『血』とかよ」

557: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:17:27.51 ID:mJZkMyM0
少年のフードの下の、光に当たっている口の端が僅かに上がる。
探りを入れているかのような、挑発的な笑みだ。

バーテンダーは相変わらずニヤニヤしていたが、その目の色が鋭く冷たいものに変わった。

「なあ、妙な話を聞いたんだ」
少年は笑みを浮かべたまま言葉を続ける。

「なんでもこの辺りで人を喰う『悪魔』が出るってよ」

バーテンダー「……」

「笑っちまうよな。なんのホラー映画だっつーの」

バーテンダー「……」

「でもよ、あながち嘘でも無いらしいんだ」

「実際に何人も跡形も無く失踪してるらしいぜ」



「んで、ここも血の匂いがプンプンしてるしよ」



バーテンダー「……」
バーテンダーは相変わらず笑みを浮かべていた。

少年の背後に座っていた三人の男が立ち上がる。

559: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:21:33.77 ID:mJZkMyM0
>>558そのまんまです

「へっへ。血の匂いか」

三人の内の一人が、不気味に笑いながら、カウンターに座っている少年の背中へ声を飛ばした。

「確かに匂うぜ。へっへへへ。腹ぁ減ってきちまった。そろそろ『仕入れ』の時間だなぁおい」
もう一人も下品な笑みを浮かべながら呟く。

「しょうがねえ。俺が―――」
三人目がゆらりと前に出る。
見開かれた目が赤く輝き、指先から黒く巨大な爪が皮膚を裂いて生える。

そして。

「―――奢るぜぇぇえええええ!!!!」

カウンターに座っている少年の背中へ、手を振り上げ人間離れした脚力で一気に飛びかかった。

その凶悪な爪が少年の背中に食い込もうとした時。

一発の銃声が鳴り響いた。

突進していた男は額から赤い液体を撒き散らせながら大きく仰け反り、後方に吹っ飛ばされ、テーブルを叩き潰して床に転がった。

バーテンダー「―――」

二人の男とバーテンダーの顔が一瞬凍る。

カウンターに座っていた少年がゆらりと立ち上がった。
左手には、一筋の煙があがっている黒い拳銃。

「俺が奢るよ」

少年が深く被っていたフードを右手で降ろし、微笑を浮かべながら声を放った。


『遠慮はしなくていい―――』


瞳が赤く輝いているツンツン頭の少年。
声は『悪魔特有』のエコーがかかっている。


『―――上条さんが奢ってあげるぜ!!たっぷりとよ!!!』

560: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:23:30.67 ID:mJZkMyM0
二人の男が、到底人間の物とは思えない咆哮を上げた。
その瞬間、皮膚がはち切れる様に裂け、その下から黒いザラついた『本体』が姿を現した。

トカゲ人間のようなシルエットの、全身が黒い悪魔。
瞳は赤く輝き、手足の先には鋭い爪、そして大きく裂かれ開かれた口からはおぞましい牙。


上条『来いよ』


上条が笑みを浮かべ、右手で手招きをした。

それに応じたかのように二体の悪魔が一気に飛びかかる。
同時に上条が前に踏み込んだ。

上条『―――』

一体目が上条の顔面へ手を突き出す。
だが上条は軽く頭部を傾けてスレスレでかわした。
右頬から僅か数センチの所を黒い巨大な爪が突き抜けていく。

そしてかわすと同時に、左肘の突きを悪魔の胸部へ叩き込んだ。
鈍い炸裂音と共に、突進してきた慣性もかかって悪魔の体が大きく『く』の字に曲がる。

だがその衝撃で後ろに吹っ飛ぶのは許されなかった。

上条は、肘の突きが炸裂したと同時に、畳んでいたその左腕を一気に伸ばす。

上条『―――ハァ゛ッ!!!!』

銃を握っている拳が悪魔の顔面へ叩き込まれた。

一瞬の間の二連撃。
悪魔の体はその場で床に叩きつけられた。
木製の床板の破片が飛び散り、大きな穴が穿たれる。

561: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:25:54.58 ID:mJZkMyM0
それはほんの一瞬の出来事だった。

常人なら何も見えなかっただろう。
そして飛び掛っている悪魔達自身も何が起こったのかわからなかった。

ほぼ同時に突進していた二体目の悪魔は、
その上条の異常な戦闘能力を『認識する前』に、彼の間合いへと侵入してしまった。

上条は左腕を勢いよく引き、その反動で体を『駒』のように回転させる。

上条「―――ッ―――」

そしてその『駒』は一回転し再び元の方向、二体目の悪魔の方へ向く。
白く光り輝く『左足のハンマー』を引き連れて。

上条「―――ッラァァァァァァァァァァァァァアア!!!!!!!」

上条の回し蹴りがカウンターとなって二体目の悪魔の顔面へめり込んだ。
直撃の瞬間、白い光がその『ハンマー』から溢れ、柔らかい肉を金属の塊で打ち付けるような炸裂音が響いた。

衝撃波でクラブ内の机・椅子・ステージありとあらゆるものが薙ぎ倒され、床板が捲れ上がっていく。
そして悪魔の体は跡形も無くチリと化した。

上条「―――シッ!」
振り切った左足を畳み、息を短く吐きながら右足で軽く跳ねる。

562: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:27:57.23 ID:mJZkMyM0
バーテンダー『なッ―――』
先の三体の悪魔と同じように、本来の姿を現していた『バーテンダー』の悪魔が、
カウンターの影でその上条の立ち回りを見て固まっていた。

バーテンダー『(ここは逃げるしか―――)』
バーテンダーの足元に黒い円が浮かび上がる。

そして直ぐにバーテンダーの体が沈み始めていく。

だが次の瞬間。

上条「待てや―――」

上条がバーテンダーの方へ振り向き、跳躍し一瞬でカウンターを飛び越えて、彼の目の前に着地した。

そして上条は右手を床に叩きつけた。
ちょうどバーテンダーの足元に浮かび上がっていた、黒い円の『淵』に。

次の瞬間、黒い円は割れ砕け散った。


悪魔の使う移動用のこの黒い円。
原理は、悪魔の力で強引に空間を切り裂いて『穴』を作るという物だ。

ただの空間の亀裂である『穴』自体には、上条の右手の効果は無い。
だがその淵、『身から離れた』悪魔の力によって、空間を切り崩し『穴』の形を維持している部分。
亀裂を元に戻そうとしている空間の力を塞き止めている堤防。

そこには上条の右手は通じる。

そしてこのバーテンダーのように移動途中に、下半身だけ沈んでいる時にその穴を塞がれたらどうなるだろうか。

空間を自分自身の手で歪められる程の力を持っていない、
このバーテンダーのような下等悪魔達は当然真っ二つになる。


激痛に襲われたバーテンダーの咆哮が、半壊したクラブの中に響いた。

563: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:35:27.88 ID:mJZkMyM0
上条がその上半身だけとなったバーテンダーを光輝く足で蹴り、踏みつけて押さえる。
そして左手の銃をバーテンダーの顔へ向けた。

上条『奢るって言ったじゃねえか。ノリが悪いな』

バーテンダー『……!!!!』

上条『まあ、「向こう」に帰るってんのも別にいいけどよ、』

上条『どうせまた来るんだろ?人間はお前等にとってご馳走だもんな』

バーテンダー『……我等にとって餌。本来は我等の糧となるべき卑小で下等な存在。何が悪い』

上条『いいか?人間はそんなもんじゃねえ』

上条『お前等よりも高潔とはいわねえ。でもよ、「下」でもねえ』

上条『お前等の生き方もルールも分かる。だがよ、それは「向こう」での話しだ』

上条『確かによ、お前等の行動自体は向こうのルール通りだ』

上条『だがよ、ここは魔界じゃねえ。人間界だ』

上条『「こっち」にも『こっち』のルールがある』


上条『「こっち」にいる限り、間違ってんのはお前等だ』


バーテンダー『………ふざけるな……』

566: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:41:44.84 ID:mJZkMyM0
上条『勘違いすんじゃねえ。こっちはお前等の庭でも領地でもねえ』

上条『人間はお前等のもんじゃねえ』

上条『お前等には人間を殺す権利はねえ』

上条『もしその権利があると思ってんなら―――』


上条『もしそう思ってんならよ―――』



上条『―――そんな幻想ぶっ殺す』


上条の顔に怒りの色が現れる。
それは虐げられ殺された人間達を代弁しているかのような憤怒。


銃を握る手に力が入り、引き金が小さな軋む音を立てて徐々に引かれていく。

バーテンダー『黙れ小僧!!!!……そもそも貴様も我等が眷属でありながら……忌まわしき逆賊めが!!!』
バーテンダーの目が更に強く赤く光る。
その声も、光もどす黒い、救いようの無いほどの憤怒が篭っていた。

いや『救う』という表現は合わないだろう。
改心させる事が出来たとしても、それは彼らの概念からすると堕落だ。

悪魔達と人間達の概念は根本的な部分から違うのだ。
人間が救いと考える物も彼らにとっては拷問と化す。

人間の正義が彼らにとっての悪であり間違いである。

567: SSまとめマン 2010/05/10(月) 02:49:32.17 ID:mJZkMyM0
バーテンダー『なぜわからぬ!!!』

上条『わかってるさ。その上で言ってる』

バーテンダー『ではなぜ人間共に付く?!!!なぜだ!!!?貴様は悪魔だ!!!』

なぜ?

上条『違えよ。俺は―――』


守りたいたいからだ。


上条『「上条当麻」だ』


人間達を。
あの愛しい少女を。


上条『それ以外でも。それ以上でもそれ以下でもねえよ』


その為なら戦う。

ありとあらゆる力を使ってでも。


上条『一応聞くぜ。どうすんだ?もう二度と来ねえってんなら見逃しても良い』


バーテンダー『DARBS CNILA OL AMMA (くたばれ 忌まわしき者)』
バーテンダーは猛烈な憎しみの篭ったエノク語を発した。

忌まわしき者。
悪魔達から見れば、魔界のルールに照らし合わせれば今の上条は正にそうだろう。


上条『……そうか』
上条の顔に一瞬悲しそうな影が差す。


上条『じゃあこれは上条さんの奢りだぜ。ちゃんとあの世まで持っていけよ』

上条は引き金を引ききった。
一発の銃声がクラブ内に響く。


―――