245: :2018/11/27(火) 22:01:51.11 ID:
~~~~ 


隊長「着いたか」 


風が潮の香りを運ぶ、この町は海岸地方の港。 

時刻は昼過ぎ、早朝はユニコーン、朝は復讐者戦となかなかの密度な一日。 

治癒魔法で身体は健康そのものだが、その気分はすでに疲弊の極みであった。 


帽子「買いものが終わったら、しばらく寝て過ごそうよ...」 


女賢者「正直、今日はそうしてたかったですけど...さすがに食べ物がないとなると...」 


帽子「さっさと済ませようか」 


女賢者「まずは、紙を調達しましょう、あれがないといろいろ困ります」 


隊長(どの世界も、紙は必需品のようだな) 


帽子「あとは何を買うんだい?」 


女賢者「そうですね...水は賢者の塔に井戸があるので」 


女賢者「紙と物持ちのいい食べ物を大量にってところですかね」 


隊長「...了解」 


~~~~ 


~~~~ 


帽子「紙、なかなか見つからないね」 


女賢者「どこも品切れですね...もう少し粘りましょう」 


隊長「もうすぐ夕暮れだな」 


──ぐぅ~... 

時間の経過を告げる音が響き渡る。 

思えば朝食である女僧侶の手料理以来、なにも食べていない。 

鳴ってしまうのは当然であった。 


女賢者「...す、すみません///」 


帽子「仕方ないさ...それより、どこかで遅めの昼食でもどうだい?」 


隊長「...賛成だ」 


女賢者「は、はい...///」 


帽子「...ん、あの人に聞いてみようか」 


隊長(時々、帽子の行動力には驚かされる...) 
246: :2018/11/27(火) 22:02:49.78 ID:
帽子「そこの方」 


???「...ん? なんだ?」 


帽子「ここらでオススメの料理店はあるかい?」 


???「お、それなら俺がやってる店にきな!」 


帽子「おぉ! それはいいねっ!」 


店主「そんじゃ、ついてきな!」 


隊長「...強運だな」 


女賢者「もしかしたら、固有能力かもしれませんね...」 


帽子「うん? 早くいこう」 


隊長「あぁ...」 


~~~~ 


~~~~ 


帽子「お、葡萄酒...」チラ 


隊長「...好きにしろ」 


女賢者「え、いいんですか?」 


帽子「すみません、私はとりあえず葡萄酒で」 


女賢者「私は桃酒で」 


隊長(...女賢者も向こう側だったか) 


店主「あいよ、で、ガタイのいい旦那は?」 


隊長「...俺は水────」 


偶然にも出会うことのできたこの隠れ家的な料理店。 

当然彼はいつもどおり、効率的に水分を得ることができる水を選ぼうとした。 

しかしそれは少数意見であった、民主主義が彼を追い込む。 
247: :2018/11/27(火) 22:03:35.45 ID:
帽子「──キャプテン、飲まないのかい?」 


女賢者「おいしいですよ?」 


隊長(アルハラか...腹をくくるか) 


隊長「...林檎酒で」 


店主「あいよ! ちょっとまってな!」 


帽子「いまのうちに、食べ物を選ぼう」 


女賢者「あっ、これおいしそうですね」 


隊長(...えぇい、もうやけくそだ) 


店主「はいよ、飲み物お待ちどう!」 


帽子「きたきた、楽しみだね」 


女賢者「ふふっ...これだけは堪りませんね」 


隊長「あぁ...どうにでもなれ」 


──かんぱ~いっ! 

3人の声が重なる、1人はここまで元気ではないが。 

隊長は大学生活振りに酒を摂取するハメとなってしまった。 

それがどれ程の地獄を生み出すか、帽子はまだ知らない。 


~~~~ 
248: :2018/11/27(火) 22:04:18.40 ID:
~~~~ 


帽子「...」 


女賢者「わたしなんてっっっ!!! どうせよわいですよっっ!!!!」 


隊長「そんなことはないッッッ!!!! おまえはつよいッッ!!!」 


女賢者「うそですっっっ!!!! あのときだってあんまりやくにたてなかったですもんっっ!!!!」 


隊長「おまえのまほうがなければしんでいたッッッ!!!!」 


帽子「ほら、店の方に迷惑になるよ...」 


店主「...なんだかしらねぇが、面白いから別にかまわねぇぜ、今は他の客もいないし」 


帽子「そんな...」 


帽子(しまった...2人ともかなり弱いみたいだな...) 


女賢者「きゃぷてんさぁん...」キラキラ 


隊長「...つよくなりたいなら、おれについてこいッッ!!」 


女賢者「はいっ!!」 


帽子「...どーしよっか」 


帽子(でもまぁ、キャプテンの面白い姿みれて良しとするか) 


~~~~ 
249: :2018/11/27(火) 22:05:12.89 ID:
~~~~ 


女賢者「...うぅん」 


女賢者「...へっ?」 


女賢者「どこ...ここ...」 


???「...起きたかい?」 


目がうまく開かない、町の街灯が眩しく感じる。 

酒というものは恐ろしい、先程まで一緒にいた人物を把握することができない。 

帽子を被ったこの金髪の男、彼以外の何者でもないというのに。 


女賢者「...だ、誰ですかっっ!?」 


帽子「誰って...帽子だよ」 


女賢者「ぼ、帽子さん...? 何が起きたんですか?」 


帽子「...ふたりとも酔いつぶれたんだよ」 


帽子「もう夜になっちゃったから、今日は宿に連れてきたってとこさ...」 


隊長「グォオオオオ...」スピー 


女賢者「な、なんかすみません...」 


帽子「いや、構わないさ」 


帽子(キャプテンの面白いの見れたし) 


女賢者「...」 


女賢者(まさか...私のだらしない寝顔見られた...?) 


女賢者「...///」 


帽子「うん? まだお酒抜けてないならお風呂入ってきたら?」 


女賢者「だ、大丈夫ですっ、おやすみなさいっ!///」 


帽子「...うん? さぁて、私も寝るか」 


~~~~ 
250: :2018/11/27(火) 22:06:19.20 ID:
~~~~ 


隊長「頭が痛い...」 


女賢者「...奇遇ですね、私もです」 


帽子「...ふたりとも弱いね」 


隊長「俺は滅多に飲まないからな...」 


女賢者「私は、強くありませんからね...お酒は好きですけど」 


帽子「まぁまぁ、ところで朝一番なら紙が簡単に手に入るんじゃないかい?」 


女賢者「そ、そうですね...いきましょうか」 


隊長「あぁ...あとなるべく大きな声をださないでくれ...」 


帽子(弱々しいキャプテン、面白いな) 


女賢者「さぁ、いきましょうか」 


~~~~ 


~~~~ 


女賢者「紙は買えましたね」 


帽子「あとは食料だね」 


隊長「Oh...jesus...」フラフラ 


帽子「...キャプテン、ほらいくよ」 


隊長「Okay...」 


帽子「...異世界語はわかんないよ」 


女賢者「...なにか人だかりができてますね」 


帽子「本当だ、なんだろうね...いってみるかい?」 


女賢者「まぁ...時間はありますしね、いきましょう」 


思わず異世界語を漏らしてしまう隊長、そんな彼と共に帽子は前に進む。 

そこにはなにやら人だかりが、まるでなにかを心配しているような声が聞こえる。 

いったいそこに何があるのか、帽子は手前側にいた漁師に話しかけた。 
251: :2018/11/27(火) 22:08:27.16 ID:
帽子「やぁ、何かあったのかい?」 


漁師「いやそれがよ、空から女の子が降ってきたんだよ」 


帽子「...空から? ちょっと通してくれ」グイッ 


女賢者「ほら、きゃぷてんさんも」 


隊長「Understand...」フラフラ 


帽子「──こ、これは...」 


雑踏を掻い潜る、そこには確かに女の子が寝転がっていた。 

よく見ると傷だらけ、なにか暴行された後なのかもしれない。 

だがそこではなかった、帽子が思わず息を呑んだのは彼女の足であった。 


帽子「...足がない、まるで魚のような下半身だ」 


女賢者「...人魚ですかね」 


女賢者「とりあえず..."治癒魔法"」ポワァッ 


漁師1「なんだ、ねぇちゃん魔法使えるんか」 


漁師2「じゃああとは任せたぞ~、仕事が始められねぇからな」ゾロゾロ 


帽子「あ、ちょっと! ...もうみんな行ってしまったか」 


帽子(まぁでも魔物の心配をしていたみたいだし...ここの人たちは温厚だな) 


さすが商業主義、魔物に対しての偏見などない。 

そんな理想にも近い光景を彼は目に焼き付ける。 

彼女の魔法がこの子を癒やす、すると彼女は目を覚ました。 


人魚「────うん...? ここは...?」 


女賢者「こんにちは」 


人魚「──に、にんげんっっ!?!?」 


帽子「まってくれ、別に悪さをするわけじゃないんだ」 


人魚「そ、そんなこといわれてもしんじられないっっ!!!」 


女賢者「...わかりました、せめて海まで連れて行ってもいいですか?」 


人魚「へっ...? ってここ陸っ!?」 


帽子「...よければ、何があったか教えてくれるかい?」 


帽子「私たちは君がここで倒れてたのを発見して、そこで彼女が魔法を使って治癒させただけなんだ」 


帽子「...ただ、それだけさ...信じてくれるかい?」 
252: :2018/11/27(火) 22:10:02.49 ID:
人魚「...ありがとうございます...でも、何があったかは喋れません」 


女賢者(...ユニコーンといいこの方、魔物との協調性が高いですね) 


帽子「そうか...ねぇ、やっぱり海に戻したほうがいいのかい?」 


女賢者「そうですね、基本的にお魚と一緒なので、長時間の陸活動は身体に悪いみたいですよ」 


帽子「だ、そうだ...せめて海まで連れてってもいいかい?」 


人魚「...おねがいします」 


帽子「よしキャプテン、出番だ...って...」 


隊長「────」 


女賢者「...死んでますね、よっぽどお酒に弱いみたいですね」 


帽子「...女賢者さんは人魚さんを、私はキャプテンを運ぶよ...」 


女賢者「わかりました、さぁ安心してくださいね」 


人魚「は、はいっ」 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「...なるほどな、そんなことがあったのか」 


浴びるほどに水を飲む、乾ききった喉が癒えていく。 

これで二日酔いがマシになるだろう、久々に襲いかかった頭痛は隊長をボコボコにしていた。 


帽子「...そういえば自己紹介をしてなかったね、私は帽子」 


女賢者「女賢者です」 


隊長「...Captainだ」 


人魚「わ、わたしは人魚です...」 


帽子「そんなことをいっているうちに、綺麗な砂浜についたね」 


女賢者「港町ですからね、海は近いです」 


女賢者「...それじゃ、放しますね」 


人魚「あ、ありがとうございましたっ!」 


人魚「このご恩は一生忘れませんっ!」 


淡々とした会話、この程度の距離感が丁度いい。 

深く介入することはこの子にとって不都合である、そう察知した帽子。 

せっかくの奇縁だがここは手放すしかない、女賢者が海に彼女を戻そうとしたその時。 
253: :2018/11/27(火) 22:10:57.34 ID:
隊長「──待てッッ!!!! 放すなッッッ!!!」 


女賢者「──えっ?」 


???「ミツケタミツケタ...ニンギョヒメミツケタ...」 


――――バシャッッッン!!!!! 

聞こえたのは、辿々しい言葉。 

そして巨大な魚影とともに現れたのは、赤き悪魔。 


帽子「で、でかいぞ!?」 


人魚「ひっ...いやぁッ!!!」 


女賢者「──ク、クラーケン...っ!?」 


隊長(今度はクラーケンか...本当になんでもいるな...) 


クラーケン「ソイツヲヨコセ、ニンゲン」 


人魚「ひっ...」ブルブル 


帽子「...どうやら、迎えに来たってわけじゃないみたいだね」 


女賢者「同感です、これでは渡すことはできません」 


クラーケン「ソレジャ...ッ!!!」 


―――シュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ... 

吹き付けられたのは黒い何か。 

タコだろうがイカだろうか、この手の軟体生物はこれを仕掛けてくる。 

墨が地上の空気に馴染む、それが目くらましになることは必然であった。 


女賢者「──きゃあっ!?」 


帽子「煙幕ッ!? 女賢者さんと人魚さんがッ!!!」 


隊長「女賢者ッ! 海から離れろッッ!」 


女賢者「しまったっ────」 


煙幕に包まれたのは、女賢者と背負っている人魚。 

そして感じたのは背中が軽くなる感覚、それが何を意味しているのか。 

あの海洋生物の触手が、彼女だけを拉致する。 


隊長「──クソッ!」ダッ 


帽子「キャプテンッ!?」 


隊長が煙幕の中に突っ込む。 

未だ二日酔いが冷めていないというのに。 

頭痛に苦しめられた怒りを込めて、彼は奇策に身を委ねる。 
254: :2018/11/27(火) 22:13:18.62 ID:
隊長(――――見えたッッ!!!)スッ 


──グサァッッ! 

何かが刺さる音、そして続くのは痛みに悶える大声。 

一体何が起きたのか、その様子は直に明るみになる。 


クラーケン「────アアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?」 


隊長「帽子ィッッ!! 手伝えッッ!!!!」グググ 


帽子「わかったッ!」ダッ 


女賢者「...めちゃくちゃですね、あの小さな刃物であのデカブツを止めてるのですか」 


人魚はクラーケンに捕まってた、そこまでは理解ができた。 

しかし隊長はうつ伏せの状態、ナイフでクラーケンの足を地面ごと串刺しにしていた。 

文字通りの足止め、とても人間技には思えないが、意外にもこの魔物は非力であった。 


クラーケン「ハ、ハナセェ...!」 


隊長(まずい、ここは砂地だ...もうもたない...!)グググ 


帽子「──はぁッッ!!!」グサッ 


帽子も続いて、奇妙な柄の剣で足を串刺す。 

その剣はナイフよりも深い地盤に刺さり、支えの強い泥の部分まで到達していた。 

そして更に拘束を補助する、それは彼女の魔法。 


女賢者「ブツブツ..."拘束魔法"」 


女賢者(拘束魔法は苦手なんですけど...詠唱が長く出来た分なんとかなりましたね...) 


クラーケン「クッソッオ...」 


隊長「──!」スチャッ 


──ダンッ ダンッ ダダンッ 

足をハンドガンで狙い撃ち、足を千切る。 

その足が掴んでいたのは人魚、彼女の身体は開放されそのまま落下し始めた。 

落下地点にいるのは彼女、先程拉致を許してしまったせめてもの償い、落下する人魚を受け止めようとする。 


クラーケン「ギャアアアアアアァァァ...」 


人魚「──きゃっ!?」 


女賢者「おっと、大丈夫でしたか?」グイッ 


人魚「は、はいぃ...」 
255: :2018/11/27(火) 22:14:46.46 ID:
隊長「帽子、もう離していいぞ」 


帽子「ふぅ...意外と貧弱だったね...見掛け倒しか」 


クラーケン「クソォ...オボエテロォ!!!!」ザブン 


クラーケンは拘束魔法をうけつつ、器用に足を駆使して海へ逃げていった。 

命を奪うまでもない、そう判断した彼らはその様子を眺めるだけであった。 


隊長「なんだったんだ...?」 


帽子「さぁね...よかったら教えてくれるかい?」 


人魚「...じ、実は」 


女賢者(どうやら、話す気になってくれたみたいですね...) 


人魚「わ、わたしは人魚姫なんです!」 


帽子「そ、そうなのか」 


女賢者「詳しくは知らないですけど、たしか海底に人魚の王国があるらしいですね」 


隊長(大層な話だな...) 


人魚「それで...今は王国と反乱軍とで戦争状態なんです...」 


帽子「──!」ピクッ 


人魚姫と称する彼女の話。 

そこには反応せざる得ない言葉が存在していた。 

帽子の雰囲気が変わる、それは当然であった。 


人魚「だから、外出も制限されていて...とてもさみしかったんです...」 


人魚「出来心だったんです...今日、無断でお城の外に...」 


人魚「そしたらわたしは、さっきのくら、くらー...クラーケンに...ひっく...」 


帽子「...落ち着いて、ゆっくりでいいからね」 


人魚「は、はい...野生のクラーケンに追われて...攻撃されて...その衝撃でふきとばされて...」 


隊長「...なるほどな」 
256: :2018/11/27(火) 22:16:01.70 ID:
女賢者「状況はつかめましたね...どうしますか?」 


帽子「ど、どうしようか...」 


帽子「うーん...」オロオロ 


人魚「ぐすっ...」 


隊長(...悩んでいるな、一押ししてやるか) 


隊長「...帽子、俺は雇われだ」 


帽子「...キャプテン?」 


隊長「だから、なにがあろうとお前に着いて行く」 


帽子「...ありがとう!」 


多くの言葉はいらない、それが彼を支えてくれる。 

一見ドライに見えて、その中には熱きナニかが秘められている。 

そんな関係性、とても魅力的と思えてしまった彼女も動く。 


女賢者「...私も、ここで去るのはひどいですからね」 


帽子「決まりだね! よし、人魚さん?」 


人魚「な、なんですかぁ...? ひっく...」グスグス 


帽子「私達をその王国に連れてってくれないかい?」 


人魚「──で、でもいま戦争中であぶないんですよ...っ?」 


帽子「大丈夫、彼らならきっと、"慣れてる"」 


隊長「...そうだな」 


女賢者「ですね」 


人魚「でも、でも...」 


???「良いのではないですか?」 


会話に突然参入する、第三者。 

その声の主は、聞き間違えではければ海の方から聞こえる。 

声色は女のもの、そこにいたのは間違いなく、この子と同じ種族の者。 
257: :2018/11/27(火) 22:17:34.37 ID:
隊長「...誰だ」 


???「申し訳ありません、立ち聞きしてしまいました」 


人魚「人魚衛兵っ!? どうしてここにっ!?」 


帽子「...味方か」 


衛兵「先ほどの闘い、助かりました...あなた方がいなければ今頃、姫は...」 


衛兵「...そこで、こちらから頼みがあります」 


帽子「...なんだい?」 


衛兵「恐らく、戦争はここ数日で終わるでしょう」 


衛兵「ですが、その数日はどうしても人員が足りなくなる...ので、あなた方に姫を護衛してもらいたいのです」 


願ってもいない、姫を護る王国側からそうお願いされるのなら話は早い。 

だが彼には1つ気がかり、疑問に思うことが芽生えていた。 

なぜ戦争という複雑な代物を、数日で終わらせることができると豪語するのか。 


隊長「なぜ、終わると確信できる?」 


衛兵「...王国側の最終兵器の発動許可が下りたからです...これで、反乱軍は壊滅でしょう」 


隊長「...」 


帽子「...わかった、その要求は飲もう」 


女賢者「思ったより、大事なことになりそうですね」ヒソッ 


隊長「なにがあれ、俺は帽子に着いて行く」ヒソヒソ 


女賢者「...私も、大賢者様にあなた達に着いて行けと言われてるので」 


隊長(最終兵器とやら、気になるな...まさか核みたいなモノじゃないだろうな...) 


大事になる、そう女賢者は隊長にだけ囁いた。 

そんな中、彼はその最終兵器の危険性を妄想し始める。 

だが危険なのは隣りに居た、彼女は海に散らばったモノを見てしまった。 


女賢者「──って...ああああアァァァァ!!!!!!」 


隊長「ど、どうしたッ!?」 


女賢者「か、紙が...海に...」ガーンッ 


帽子「あ、あちゃー...」 


女賢者「...クラーケン...許されません...!」メラメラ 
258: :2018/11/27(火) 22:18:42.44 ID:
衛兵「...ではいきましょう、さぁ姫こちらに」 


人魚「まって! 人間は海じゃ息ができないよ!」 


帽子「あ」 


隊長(...異世界ならなんとかなると思っていたが...だめなようだ) 


衛兵「しまった...すっかり忘れてました、どうしますか?」 


女賢者「...ちょっとまっててください」 


隊長「なにか策があるのか?」 


女賢者「単純な調合でなんとかなりますよ」 


帽子「さ、さすが賢い者...」 


~~~~ 


~~~~ 


女賢者「この魔法薬...そしてこの欠片を調合して、瓶にいれれば...」 


女賢者「...完成です」 


彼女が作り出したのは、液体の入った瓶に何かしらの欠片を入れた物であった。 

これで一体、どうすれば海に突入できるのか。 

心底疑問に思った帽子は尋ねた。 


帽子「なんだいコレは?」 


女賢者「この欠片は、魔法を一定時間維持できる代物なんです」 


女賢者「厳密に言うと特殊な鉱石なんですが...魔法の欠片と呼ばれています」 


隊長「...ほう」 


女賢者「それに..."防御魔法"」 


瓶の欠片に防御魔法をかけた。 

これがどのようにして、効能を見せるのか。 

彼女は説明を続ける、不思議そうにこちらを見ている人魚たちを尻目にして。 


女賢者「防御魔法は、いうなれば身体の周りの環境が固定されるものなんです」 


隊長「...なるほどな」 


帽子「えっ、わかったのかい?」 


女賢者「まぁ、実際海にはいればわかります」 


~~~~ 
259: :2018/11/27(火) 22:21:01.45 ID:
~~~~ 


女賢者「全員もちましたか?」 


帽子「...本当に大丈夫かい?」 


隊長「さっさといくぞ」スッ 


女賢者「そうですね」 


帽子「ちょ、ちょっと! ってあれ...?」 


隊長「...つまりは防御魔法で、周りの空気を固定したってことだ」 


隊長(身体全体が1つの大きな気泡に包まれている...子ども向けの映画で見たことあるな) 


女賢者「砕けた言い方をするなら、海水を防御しているってところですかね」 


女賢者「まぁ、陸地にいるようなものなので、水の影響を受けないので泳いだりはできませんが」 


帽子「な、なるほどね...でもこれ、時間制限あるんだろ?」 


女賢者「まぁ、防御魔法なら半日もちますかね」 


帽子「は、半日すぎたらどうするんだい?」 


女賢者「そのときは、瓶に魔法薬をいれれば引き続いて欠片が維持してくれます」 


女賢者「ほら、こんなにたくさん買ってきましたよ」 


隊長「重そうだな、持とう」 


女賢者「ありがとうございます、優しいですね」 


帽子「いやぁー...なんか新鮮な気分だよ」 


見えない鎧が、海水を防御する。 

太陽に照らされる海面、魚はいつもこの神秘的な光景を見ているのだろうか。 

人間たちが海底を歩く様をみて、人魚たちも新鮮な気分に陥る。 
260: :2018/11/27(火) 22:21:54.84 ID:
衛兵「...すごいな」 


人魚「人間が海の中を歩いてる...」 


女賢者「おや、これは...」 


隊長「海藻?」 


海藻からは気泡が多くでている。 

隊長の世界でも見ることができるその光景。 

光合成をする海の植物、こちらの世界のソレは排出量が多いようだった。 


女賢者「これは、新鮮な空気を作ってくれる海藻ですね、すこし採取しておきましょう」 


隊長(...酸素の問題も大丈夫そうだな) 


衛兵「さっ、こちらについてきてください」 


隊長(...しかし、弾丸はどうしても水中に放つことになるな) 


隊長(...威力は期待できないな) 


水中に向かって銃弾を放てばどうなるか。 

それは過去にも軍事訓練で行われていた、どうやっても無残な結果になる。 

彼が強敵と対峙してしまったら、どうすればいいのか。 


~~~~ 
261: :2018/11/27(火) 22:23:06.10 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
262: :2018/11/28(水) 22:31:01.47 ID:
~~~~ 


女賢者「...綺麗ですね」 


帽子「そうだね...とても美しい」 


隊長(俺の世界じゃ見ることはできないな...この光景は) 


そこにあったのは、太陽光が微かに届く海底世界。 

綺羅びやかな海底都市の繁華街を歩いてく中で、その幻想的な光景に思わず視線を奪われる。 

そして彼らは都市中心の城門へとたどり着く、すると近寄ってくるのは。 


???「──姫様ッ!? お戻りですかッ!?」 


人魚「はいっ!」 


???「おぉ...なんということでしょう...」 


???「む...なぜ人間がここにッ!?」ジャキッ 


塀の都でも見たことのある役職。 

彼はこの都市の警備を担っている。 

人魚の門番、そのエモノはとても鋭い槍であった。 


衛兵「...彼らは姫をお救いくださりました...なので客人です」 


人魚門番「そ、そうでございますか...失礼」 


衛兵「さぁ、いきましょう...いつ戦闘になるかわかりませんのでお早く」 


帽子「あ、あぁ...」 


隊長(しかし、海底を歩くのはなれないな...) 


女賢者「いきましょう」 


そして彼らは門を通ることを許された。 

そこはとても荘厳な造りをしている、海中でこのような建築技術をどのようにして得たのか。 

そのような事を不思議に思いながらも城内廊下を歩いていく、すると到着したのは。 
263: :2018/11/28(水) 22:33:41.03 ID:
衛兵「こちらに」 


帽子「...本当に入って大丈夫なのかい?」 


女賢者「ここは...王室じゃないですか」 


衛兵「姫を助けていただいたので王が直々に話をしたいと...」 


隊長「...帽子、頼んだぞ」 


帽子「...え!?」 


女賢者「すみません、私はこういった場になれていないので...」 


隊長「まかせたぞ、王子」 


帽子「...仕方ないなぁ」 


衛兵「では、あなた方はあちらから傍聴席へと...帽子殿はこの扉から...」 


──ガチャッ... 

重々しい扉が開く、そしてそこに鎮座するのは当然。 

この海底世界を統べる最高責任者、人魚の王がそこに。 


衛兵「王よ、彼の者達を連れてまいりましたっ...!」 


人魚王「...ほう、貴殿らが我が娘を...」 


帽子「お目にかかれて光栄です...」 


彼は跪く、それが王に対する最大の礼儀。 

その佇まいは正しく王子、徹底的に叩き込まれた所作に育ちの良さが伺える。 

そんな様子を彼ら2人は傍聴席で眺めていた、眺めることしかできなかった。 


人魚王「...よい、貴殿らの活躍は聞いておる」 


人魚王「是非、我が軍に力を貸してくれ」 


帽子「...わたくし共でよければ、喜んで」 


帽子「ですが...失礼ながら、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」 


その瞬間、海中だというのに空気が張り詰める。 

ややピリついたその雰囲気、王室の周りで警護する者がたちがざわめいた。 

衛兵たちから無礼であるぞ、とそのようなヤジが聞こえたが王がそれを受理する。 
264: :2018/11/28(水) 22:35:11.50 ID:
人魚王「...よい、質問を許可する」 


帽子「...ありがたき幸せ...では早速」 


帽子「1つめ...なぜ、戦争が起きているのですか?」 


人魚王「ふむ、それはだな...少し前にこの城を襲ったものがいる」 


人魚王「其奴は今の反乱軍の"統率者"と言う者だ」 


人魚王「そして統率者を英雄視してる奴らが集まり、戦いを吹っかけてきておる」 


帽子「...なぜ襲われたのですか?」 


人魚王「知らぬ、だが許しがたいことが起きたのだ」 


人魚王「それは城が襲われた時に、我が妻にケガを追わせたことだ」 


帽子「...話し合いはしたのですか?」 


人魚王「...奴らの話は聞きとうない」 


帽子「...」 


これ以上は深く追求することは許されない。 

周りの衛兵どもがざわついている、自分の好奇心でソレを煽れば問題だ。 

気持ちを切り替える、そのために彼は質問を飲み込んだ。 
265: :2018/11/28(水) 22:36:49.12 ID:
帽子「...わかりました、次の質問で最後です...最終兵器とは?」 


人魚王「それを聞いてくるか...それは秘密だ」 


人魚王「しかし、これで反乱軍を根絶やしにできるのは確かだ」 


帽子「...一方的な虐殺は、遠慮したいですね」 


まずい、自分でそう思ったときには遅かった。 

思わず口に出てしまった、その不敬極まりないその発言。 

衛兵たちの顔を伺うことができない、そんな俯いたままの彼に王は問いた。 


人魚王「では、問おう...なにが正解なのかを」 


帽子「...」 


人魚王「...どちらかが勝つまで、争いは終わることはないだろう」 


人魚王「平和にするには、戦争相手をいち早く倒さねば...国民がそう望んでいる」 


隊長(...) 


帽子「...失礼致しました」 


人魚王「よい、若い者はいろいろ考えるだろう」 


人魚王「皆の者、そう目くじらを立てるな...丁重に饗せ、我が娘の恩人だぞ」 


謁見はこれにてお開き、王は彼らに猜疑心を抱く衛兵を宥めた。 

帽子はここまで連れてきてくれた衛兵に導かれ、王室から退室した。 

そんな彼の様子をみて、女賢者は吐露する。 


女賢者「...大丈夫ですかね」 


隊長「...今、あいつは同じ壁にぶつかっているな」 


女賢者「...そうですね」 


~~~~ 
266: :2018/11/28(水) 22:38:26.86 ID:
~~~~ 


衛兵「では、こちらの部屋をお使いください」 


女賢者「はい、ありがとうございます」 


隊長「...」 


衛兵「それでは、呼ばれるまで待機をお願いします」 


彼女に連れられたのは、客間だろうか。 

そこで待機を命じられる、おそらく戦いが始まるまで待たされるだろう。 

だが時間の経過などどうでもいい、今は帽子で目線を伏せている帽子が気がかりであった。 


帽子「...はぁ」 


隊長「...言いたいことをここでぶちまけろ」 


女賢者「貯めこむのは身体に毒です、私たちがしっかりと聞きますよ」 


帽子「...そうだね」 


帽子「私たちの今の目標は、魔王を倒して新たな魔王に云々...ってことなんだけど」 


帽子「それが、この王国とかぶちゃってね...」 


帽子「この王国側からすれば、統率者とかいう人たちは魔王軍みたいなモノさ」 


帽子「だけど王は...その人たちを根絶やしにすると言った、先日まで私が悩んでいたことをしようとしている」 


悩んでいたこと、それは魔王をただ討てばどうなるか。 

統率する人物を失えば魔王軍は壊滅するどころか、敵意のない魔物まで残党刈りされるだろう。 

それがこの海底世界でも起こり得ようとしている、それが帽子の懸念であった。 
267: :2018/11/28(水) 22:42:16.42 ID:
帽子「同族同士ですら戦争をするだなんて...本当に、魔王を倒して魔物と平和に共存できるんだろうか」 


隊長「...どうだかな」 


帽子「...うん?」 


隊長「たぶん、逆だ」 


帽子「逆?」 


隊長「...妻を傷つけられたことに激昂しているんだろうな」 


隊長「恐らく何度かは話し合いに応じる場面はあっただろう...だがここの王はそれに応じなかった」 


隊長「確かに向こうから仕掛けられた戦いだ、非はあちらにある」 


隊長「...だがそれを考慮しなければ人魚王のやっていることは魔王と同じだ」 


帽子は統率者が魔王と同じことをしていると思っていた。 

だがその事実は逆であった、この王国側が魔王と同じことをしているに違いない。 

そう睨んだ彼はここがその本拠地であることを憚らずに言い放ってしまった。 


女賢者「先程の謁見で私も思いましたが...侵略こそはしていませんが、攻撃的な部分は魔王に似たものを感じましたね」 


帽子「...なおさらこの戦争を放置はできない」 


帽子「でも、どうするか...」 


隊長「そうだな、反乱軍の"帽子"みたいな奴の話を聞いてみたらどうだ?」 


帽子「────ッ!」ピクッ 
268: :2018/11/28(水) 22:44:18.57 ID:
隊長「...いいか、気をつけろ」 


隊長「お前の目標は殺しではない、聞く耳を持たない魔王を倒し無理やり説得させることだ」 


隊長「だが反乱軍のお前は人魚王を殺そうとしているに違いない」 


扉の外から、何やらドタバタと音が鳴り響く。 

だがそれを厭わずに彼は話を進めていく。 

そして彼らも、ただ、隊長の話を聞くのみであった。 


隊長「...言いたいことは1つだ」 


隊長「お前の力でこの戦争を平和にできれば、魔物との共存を勝ち取る為の経験値になるはずだ」 


帽子「...やってやろうじゃないか!」 


──ガチャッ! 

客間の扉が突然開かれた、そこにいたのは顔なじみのあの衛兵。 

一体何が起きたのか、そんなことは言わずともわかる。 

もう準備は完了だ、彼ら人間3人はすでに立ち上がっていた。 


衛兵「──失礼します! って...あれ?」 


女賢者「...お呼ばれのようですね」 


隊長「...行くぞ」 


帽子「...あぁ!」 


~~~~ 
269: :2018/11/28(水) 22:45:34.94 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
270: :2018/11/29(木) 21:54:11.43 ID:
~~~~ 


衛兵「──では、私と共に姫をお守りください」 


城の中が慌ただしい、状況は切迫した模様であった。 

様々な兵たちが槍を構え外に飛び出しているなか、彼女だけは違っていた。 

この衛兵の職務は姫を護衛すること、そのためにこの人間たちを誘致したのであった。 


隊長「今はどういう状況だ?」 


衛兵「反乱軍が攻めてきました...が、どうやらこの戦いで最終兵器を使うみたいですね」 


帽子「──ッ!」ピクッ 


女賢者「...姫はどこに?」 


衛兵「こちらです! 急いで!」 


隊長「...反乱軍はどこから攻めてきている」 


衛兵「西の方向です! さぁ早くっ!」 


急いでいるというのに、彼女は質問攻め合っていた。 

少しばかり口調が乱暴に、それに伴うのは集中力の欠如。 

隊長は彼女に聞こえない程度の小さな声で指示を仰ぐ。 


隊長「...お前と女賢者は反乱軍に迎え」 


帽子「...キャプテンは大丈夫なのかい?」 


隊長「まかせろ、絶対になんとかしてみせる」 


女賢者「...任せましたよ」 


隊長「衛兵が扉を開けたら行け...」 


女賢者「...」 


帽子「...」 


衛兵「ここの部屋に姫がいる! 今扉を開けますね!」 


──ガチャッ 

いち早く姫を安全な場所へと誘導しなければならない。 

そんな焦燥感が許してしまったのは、逃走者であった。 

何が起きたのかわからない、突然この場から去っていった2人に目を丸くする人魚が1人。 


人魚「────へ?」 
271: :2018/11/29(木) 21:55:45.57 ID:
衛兵「──どこに行くつもりだっ!?」 


隊長「...まて、姫のほうを優先しろ...どうやら重荷に耐えきれなくなって逃げたようだな...腰抜け共め」 


衛兵「...くそっ! この忙しいときにっ!」 


隊長のその言葉、味方を蔑むことで妙な信頼感を産ませていた。 

腰抜け共め、そのような言葉に共感してしまった彼女は納得してしまう。 

いやこの場合は納得せざる得ない、真偽を確かめている暇などないからであった。 


人魚「な、なにがあったんですか?」 


衛兵「反乱軍が来ました! 私たちと逃げましょう!」 


~~~~ 


~~~~ 


帽子「──はぁッ...はぁッッ...!」 


帽子「...くッ、水中だとうまく走れないな!」 


女賢者「我慢しましょうっ! 急いで反乱軍と話をしなければっ!」 


帽子「──いたぞッッ!!」 


そこにいたのは、衛兵たちに食って掛かる野蛮な者共。 

身なりはお世辞にも、良いとは言えない。 

それはなぜか、衣服に意識を向かせる余裕がないからであった。 


反乱軍1「王国軍めェ! 人魚王を解雇させろォッ!!!」 


反乱軍2「貧民の現状を無視しやがって!!」 


女賢者「...原因は貧富の不満ってところですね」 


帽子「原因がしっかりしてて助かるよ...それより統率者を探そう!!」 


反乱軍3「人間がいるぞッ!?」 


反乱軍4「王国側のようだ!! 構わずに殺せ!!!!」 


帽子「...海中でどこまでいけるか...頼むぞユニコーン...ッ!」スッ 


女賢者「ブツブツ..."地魔法"」 


帽子は剣を抜き、女賢者は魔法を唱えた。 

海底の砂底から大地がめくり上がり、襲いかかる。 

その威力は怪我をしない程度に、絶妙に調整されていた。 
272: :2018/11/29(木) 21:56:51.36 ID:
女賢者「...足止めはまかせてください」 


帽子「ありがとう! さぁ統率者と話がしたい!!」 


衛兵1「な、なにをいってるんだッ!? 貴様ら王国側だろ!!」 


衛兵2「反乱軍に耳を貸すな! 人間!!!」 


女賢者「混沌としてきましたね...」 


帽子「これでいいッ! 戦況を掻き乱して時間を稼げればッ!!」 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「...どこに向かっているんだ?」 


衛兵「王国から少し離れた...! あの塔です!」スッ 


人魚「──あ、あれ!」 


彼女が指さしたのは隔離された塔、その見た目はとても堅牢な造りをしている、 

これなら戦火がこちらに向いても一安心と言えるだろう。 

だがこの人魚が反応したのはそこではない、目に前に現れた奴に反応したのであった。 


クラーケン「──コンドハニガサンゾ...!」 


隊長「...またか」 


衛兵「く、クラーケン...お前を相手にしている暇はないんだぞっ!?」 


クラーケン「オマエニヤラレタアシ、イタカッタゾ」 


クラーケン「...コロシテヤル、ゼンインコロス」 


人魚「ひっ...」 


隊長(見事に治ってやがる...治癒能力持ちか?) 


隊長「恨むなよ...先に仕掛けてきたのはお前だからな」 


顔つきが変わる、彼の正義とは敵に一切の容赦をしないということ。 

殺すまでもないと先程はリリースした、だが向けられた殺意がこの軟体動物を敵として判断させる。 

この場にいる護衛対象を狙っていなければ、動物みたいな相手にこのような睨みを効かせることはないだろうに。 


~~~~ 
273: :2018/11/29(木) 21:57:31.83 ID:
~~~~ 


帽子「はぁッ...はぁッ...」 


反乱軍1「この人間...つえーぞッ!!!!」 


衛兵1「貴様らァ...人間の分際で王国に歯向かうつもりかッッ!」 


女賢者「まずいですね...キリがありません...」 


女賢者(私たちは地面から足を離して動くことはできない...) 


女賢者(一方で人魚たちは海中を自由自在に...対等に戦えてるだけで凄いというのに...) 


帽子「頼む...もう少しだけ頑張ってくれ...私の身体...ッ!」 


女賢者「ぐっ..."衝魔法"」 


──ガッシャアアアアアアァァァンッ!!!!! 

絶妙に調整された魔法、というわけではなかった。 

疲労感が隠せない、鎧のみを丁寧に破壊してのではない。 

鎧しか破壊できなかった、もうそれほどの力しか残っていない。 


衛兵2「──鎧が砕けたッ!!!」 


衛兵3「クソォ! 邪魔するなァ!!」 


反乱軍2「統率者はまだか!? あいつがいればここを打開できるッ!」 


帽子「──女賢者ぁ! 耐えるぞ!!」 


女賢者「わかってますっっ!!」 


~~~~ 
274: :2018/11/29(木) 21:58:33.68 ID:
~~~~ 


隊長「──ッ!」スチャ 


──バババババッ 

発砲音とは裏腹に、その弾速は申し訳程度のものであった。 

水中での弾速は鈍みの極み、その一方でクラーケンの動きは機敏であった。 

ここは奴の環境、海洋生物相手に人間が勝る要素などない。 


クラーケン「アタラナイ...アタラナイヨ...」 


隊長(クソ...水中じゃ速度も威力も期待できない) 


クラーケン「──クラエ!!!」 


──ヒュンッ! 

その音は風を切る音、ではなく海を切る音であった。 

鞭のようにしなるクラーケンの足が、なぎ払い攻撃をしてきた。 

被弾はしなかったが、その動きで発生した水圧に隊長が吹き飛ばされてしまう。 


隊長「──うおおおおおおおおおおッッ!?!?」フワッ 


隊長(足が地面から離れ...踏ん張りが効かない...ッ!) 


衛兵「大丈夫ですか!?」ガシッ 


まるで無重力空間、宇宙で身を投げるとどうなるか。 

それ最も近い表現であった、妙な浮遊感で彼は動けずにそのまま吹き飛ばされかける。 

その様子を察知した衛兵が素早く泳いで隊長を受け止めてくれた。 


隊長「あぁ...助かる」 


隊長(はやり、人間ってだけで圧倒的に不利だ...どうする...) 


衛兵「まずいですね...」 


~~~~ 
275: :2018/11/29(木) 21:59:36.77 ID:
~~~~ 


帽子「──ほらほら、そんなんじゃ、止められないよッッ!!!」 


──キィンッ カンッ ガギィンッ!! 

帽子の華麗な剣撃に、対抗していた者は為す術なし。 

一体その細身の身体のどこに、その体力が眠っているのか。 

長時間に渡る戦況は、未だに人間にかき乱されたままであった。 


衛兵3「こ、降参だ...」 


帽子(...統率者はまだかッ!?) 


女賢者「──帽子さん後ろっっ!!!」 


反乱軍4「──オラァッ!」 


──ガギィーンッ! 

その音は直撃した音ではなく、弾かれた音。 

一瞬意識をそらしたが為に許してしまったその攻撃。 

それは魔法によって守られる、だがそれが女賢者の顔色を青くする。 


帽子「──ッ!?」 


反乱軍4「なッ!? どうなってやがる!?」 


帽子(欠片の防御魔法か...助かるが...) 


女賢者「──喰らわないで!! 防御魔法が壊れたらあなたはっ!!」 


帽子「...やっぱりね、じゃあ気をつけないとねっ!」 


彼たちは防御魔法によって、海中での行動を得ている。 

それが破れてしまえばどうなるか、ここは海底、すぐさまに浮上など不可能。 

呼吸ができなければ待っているのは暗い海、もう二度と攻撃を受けることは許されない。 

そんな時であった、ついに目的の人物が現れる。 


???「...お前が場を乱している人間か」 


帽子「あれはッ!」 


衛兵5「──統率者が現れたぞ!!! "アレ"をもってこいッッ!!!」 
276: :2018/11/29(木) 22:02:58.39 ID:
女賢者「統率者...っ!」 


統率者「...お前ら、何がしたいんだ?」 


帽子「...聞けッ! 王国側と話し合って、この戦争を終わらせてくれ!」 


統率者「...それができんから、実力行使をしているわけだ」 


帽子「私がッ! 私が仲介役になるさッ!! だから戦いをやめてくれッ!!!」 


衛兵4「貴様、王国を裏切るのかッッ!?」 


帽子「黙れッ! 貴様らがやろうとしてることは魔王と同じだ!!!」 


帽子「とにかく話を聞いてやってくれ...ッ! 貧富の差の現実をッ!」 


全くの部外者である帽子という男、それはまるで当事者のような口ぶりであった。 

魚は熱に弱い、この水温以上の熱を見せる偽善者に告げる、それは反乱軍たちの覚悟。 


統率者「...お前の熱意は伝わった、だがもう引くことは出来ん!!」 


統率者「────お前らッッ!!!! 一斉にかかれェェェッッッ!!!!!!」 


女賢者「くっ..."地魔法"」 


統率者の号令により、反乱軍は一斉に突撃し始める。 

それを阻止しようと女賢者は海底の大地を荒らし、目くらましをする。 

だが泳ぎだした反乱軍はもう止まることはない、そんな彼らに用意されたモノとは。 


衛兵7「──最終兵器をもってきたぞッッッ!!!!」 


帽子「...なんだあの巨大な大砲みたいなのはッ!?」 


女賢者「...あれはっ!?」 


帽子「知っているのかッ!?」 


女賢者「いいえっ! でも、あれからとてつもない魔力を感じますっ!」 


女賢者「あれを使われては、どんな魔法でもとんでもないことにっ!?」 


帽子「くそッ! なんとしても止めないとッ!」 


統率者「恐れるなッッッ!!!! 押し通れええええェェェェェェッッ!!!!」 


帽子「────とまれえええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」 


──□□□□□□□□□□□ッッッッ!!!!! 

戦場の轟音は、白に包まれる。 

そして海底世界に響き渡るのは、存在しないはずの生物の声。 

聞き間違えでなければ、馬の嘶きのような音が聞こえた。 


~~~~ 
277: :2018/11/29(木) 22:04:22.91 ID:
~~~~ 


クラーケン「ヒヒヒ...ニンゲンヨワイナァ...」 


隊長「クソッ...銃弾が当たらん...」 


衛兵「...クラーケンには前々から手を焼かされていましたが...今日は特にですね」 


クラーケン「クッチマウゾ...」 


隊長(銃器も役に立たん...かと言ってあの巨体相手にナイフや体術は...)ピクッ 


隊長(...そうだ、まだこれがあるッ!) 


アサルトライフルやハンドガンでは遅すぎる。 

そもそもあたったところで致命傷すら与えることはできない。 

ナイフも当然だめ、だが彼にはもう1つ選択肢がある。 


隊長「...あいつの動きを数秒でもいいから止められるか?」 


衛兵「なにか、策があるんですか?」 


隊長「一か八かだ...このままジリ貧のままよりはいいだろう?」 


衛兵「私が命に変えても止めてみせます...っ!」 


長くに渡る戦闘で、彼たちにあらたな信頼が芽生えていた。 

どちらにしろここでクラーケンに殺されてしまえば、後ろで隠れている人魚もヤラれてしまう。 

自分には策など思い浮かばない、ならばこの赤の他人であるこの男に賭けるしかない。 


衛兵「...クラーケン、私が相手だ!」 


クラーケン「ニンギョガカテルカナァ...?」 


衛兵「──やぁっっっっ!!!!!!」ダッ 


──ブンッ! ブンッ! シャッ! 

彼女が得意とするのは、突撃型の槍術。 

海水の中だというのに、その槍捌きは見事なものであった。 

短距離水泳と伴うその攻撃が、クラーケンを思わず怯ませる。 


クラーケン「グッ...」 


―――シュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ... 

そんな危機を感じ取れば、行ってくるのは生物としての習性。 

海の水が墨と馴染む、とてつもない精度の目くらましが彼たちを襲う。 
278: :2018/11/29(木) 22:05:52.11 ID:
隊長(また蛸墨かッ!) 


──ババババババッッ 

闇雲に墨の中を射撃する。 

だがお粗末な速度の銃撃など当たるわけがなかった。 


クラーケン「アタランヨ...アタラン!!」 


衛兵「...軟弱者のお前が窮地になるとそれを行う、ずる賢い者ということは知っている」 


衛兵「私が唯一できる魔法...受けてみろっっ!!!」 


衛兵「全ての魔力を...」 


衛兵「"属性付与"..."水"っっ!!!」グッ 


隊長「──今だッッ!!!」 


──ババババババッ 

だがこの射撃の真意は別物であった。 

闇雲に発射していた訳ではない、クラーケンの行動を誘発させるために行っていた。 

あの軟体は銃撃を一度我が身に受け威力を知っている、必ず回避しようとする臆病さを逆手に取った策。 

アサルトライフルからの攻撃を避けようと動き回る、それが墨の範囲外へと誘導しているとも知らずに。 


クラーケン「────!?」 


衛兵「──そこだああああああああああああッッッ!!!!!」ブンッ 


隊長(──速いッッ!?) 


──グサァッッッ!!!!!!! 

彼女の投げた槍は、とてつもない速度。 

まるで水と同化したようにも見えた、槍はクラーケンの足の付け根を捕らえ深く地面に突き刺さっている。 

砂浜で見せたあの足止めを、この海底でも行なったのであった。 


衛兵「──今ですっっ!!!」 


隊長「──ッ!」ダッ 


クラーケン「クッ...ナメルナァ!!!!」グググ 


衛兵「まずい...槍が抜けそうだっ! 急いでっ!!」 


隊長(間に合わんッッ!!!) 


──□□□□□□□□□□□ッッッッ!!!!! 

その時だった、クラーケンに何かを施そうと走り出す。 

だが逃げられるかもしれない局面、隊長の背後からとてつもない光が差した。 
279: :2018/11/29(木) 22:07:12.32 ID:
クラーケン「──グッ!? ナンダッ!?」 


隊長「────今だッ! これでも喰いなッッ!!」ピンッ 


衛兵(何かを口の中にいれたっっ!! あれが策なのかっ!?) 


隊長「...離れろッ!!」 


衛兵「──っ!」 


―――――――――ッッッッ!!!! 

音にならない何かが起きた、彼が蛸の口の中に入れたのは手榴弾であった。 

爆発はせずとも、とてつもない衝撃がクラーケンの身体の内部から生まれる。 

その魔物の最期は物凄く惨たらしいモノであった。 


クラーケン「────」グチャァッ 


隊長「...Yuck」 


衛兵(破裂...食べさせたのは爆弾だったのか...) 


衛兵「...姫様、もうでてきて大丈夫ですよ」 


人魚「もう平気...?」 


衛兵「えぇ...大丈夫です、クラーケンは仕留めました」 


衛兵(あの死に様は、見てないようですね...よかった) 


隊長「...悪いが俺は仲間と合流する...状況を乱して済まなかった」 


衛兵「...お好きにどうぞ、私はあの塔の中で姫を護衛します」 


衛兵「ありがとうございました...乱されたとはいえあなたが居なければクラーケンに殺されていましたから」 


隊長「...あぁ」 


不貞腐れてはいても、隊長という男に助けられた。 

なんとも言えない絶妙な空気感、それを背中に彼は城の方へと向かっていった。 


衛兵「...」 


~~~~ 
280: :2018/11/29(木) 22:08:23.51 ID:
~~~~ 


統率者「...なにが起きたんだ」 


帽子「はぁッ...はぁッ...」 


女賢者「はぁっ...はぁっ...あ、あなたの剣...」 


帽子「凄い輝いているね...はぁッ...よくわからないけど...」 


帽子「も、もう立っていられない...」バタン 


女賢者(今のは...もしかして魔法...?) 


女賢者(でも帽子さんは魔力をもっていない...もしかして、この剣が...) 


女賢者(魔剣の資料は少ない...謎が多いですね...それもユニコーンのだなんて...) 


女賢者(深く追求したいですけど...私も体力が限界みたいですね...) 


光りに包まれたとと思えば、殆どの者が倒れている。 

意識を失っているわけではないが、立つことが困難なようだった。 

なんとか立ち上がっているのは統率者という実力者のみであった。 


帽子「はぁッ...はぁッ...軍が戦闘不能になっても...まだ闘いを続けるのかい?」 


統率者「...それでも、闘う、弱き者たちのためにっ...!」 


???「...本当にそれでいいのか?」 


立ち上がっているのは彼だけではなかった。 

この海の世界を統べる、その王が君臨しておられた。 

その面持ちはどこか震えている、先程の光による影響なのだろうか。 


統率者「...人魚王」 


人魚王「...最終兵器が出たのでな、ついてきてみれば...周りの者は全員倒れてしまっていた」 


統率者「...今更、話し合いなど許されないぞ」 


人魚王「...許す許されないを一旦置いてくれ」 


人魚王「あの光を見て、不思議とこう思った...一度、話を聞かせてくれないか?」 


帽子が創り出したあの光、その眩しさが一度己を冷静にさせたのだろうか。 

話し合いなどしないと言っていた王が、自らの発言を撤回した。 

応じる機会は今しかない、こんな単純なことをなぜ今まで意気地になっていたのか。 
281: :2018/11/29(木) 22:11:37.56 ID:
統率者「...いいだろう」 


統率者「話は簡単だ...貧民街は実在している、しっかり見てくれ...」 


人魚王「...」 


統率者「知っているか?貧しい者たちは、1日の食い物すらとれない日がある」 


統率者「頼む、彼らの...生きる姿を見てくれないか?」 


人魚王「...前々から、どうするか悩んでいた」 


人魚王「この国民たちが、貧民街の者たちに暴力的な事件に巻き込まれることが多発していた...」 


人魚王「私は制裁として、そこを見ないことにした...まるで、餓鬼の仕返しのようだ」 


統率者「...こちら側に非があることを、俺は目をつむっていた...更には最愛の妻にケガが起きれば、激怒するのも...」 


統率者「...王よ、お互いに見直さないか? この国を」 


人魚王「...そうだな、より良い国を作ろう」 


──わあああああああああああああああああああああっっっっ!!!!! 

海底に歓喜の雄叫びが轟く、どこにその様な力が残っているのか。 

例え立つことができなくとも、彼らは喜ぶことができる。 

人も魔物も関係ない、喜べば自然と腹から声を出すことができるだろう。 


人魚王「なんだ、お前たち、起きてたのか」 


統率者「...ハッハッハッ!」 


女賢者「凄い...まるで物語の結末みたい...」 


帽子「はは...身体を張った甲斐があったよ...」 


人魚王「帽子殿...貴殿の行動に我は心を撃たれたのだ」 


統率者「...そうだな、お前があんなに叫ぶからつい喋っちまったよ」 


人魚王「貴殿のその優しさ、そしてあの温かい光がなければ統率者を理解できなかっただろう」 


人魚王「単純な原因でも、意地になって耳にしなかっただろう」 


統率者「...人間に借りができたな」 


帽子「はははは! やったね!」 
282: :2018/11/29(木) 22:12:38.68 ID:
???「Happy end?」 


喜びでこの戦場が満ち溢れている。 

様々な声がかき乱されているなか、異世界の言葉が聞こえた。 

そこにいたのは当然彼であった。 


帽子「──キャプテン戻ってたのか!」 


隊長「あぁ」 


女賢者「今の言葉は?」 


隊長「いい結末になったか? って意味だ」 


帽子「それはもちろん! そのはっぴーえんどってやつさ!」 


衛兵「...ついてきてみれば、凄いことになってますね」 


人魚「お父さん!」 


人魚王「おぉ、我が娘よ...もう争うことは永遠にない」 


人魚王「もう厳重な鍵のかかった部屋にいる必要もないのだ」 


人魚「うん!」 


隊長「...帽子、やったな!」 


帽子「あぁ! やったよ!」 


女賢者(...人魚...魔物の国を人間が平和にするだなんて) 


女賢者(...これなら...本当にこの世界を平和にできるんじゃ) 


~~~~ 


~~~~ 


帽子「はぁ...疲れたな、ひっく」 


当然行われたのは宴である、時はあっという間に過ぎ去っていた。 

王や統率者の仲間たちに囲まれ、さらにはお礼を受け取れと要求された。 

したがって彼は隊長や女賢者と一緒に飲めずにいた、英雄というものは忙しい。 


帽子(お礼なんか、いらないんだけどなぁ...) 


帽子(っと...この部屋だっけ)ガチャ 


隊長「おう、帰ってきたか」 


女賢者「おかえりなさい」 
283: :2018/11/29(木) 22:13:39.88 ID:
帽子「おや、ふたりとも飲んでないのかい?」 


隊長「弱いからな」 


女賢者「ですね」 


帽子「そうか...しょうがないね」 


隊長「だからいまから飲むぞ」 


帽子「...へっ?」 


女賢者「今日は帽子さんも悪酔いしてもらいますからね」 


帽子「げぇ...」 


隊長「お前が人魚たちに大量に飲まされるのは予測できた」 


隊長「さぁ覚悟しろ」 


帽子「まってくれ...もう私は既に飲み過ぎてるんだ」 


女賢者「問答無用です」 


──ガチャっ 

それだけではない、彼を落とすために追加されたのは。 

偶然が帽子を追い込む、まさかこの堅物衛兵も酒の魔力には抗えないようだった。 


衛兵「失礼します、今日はこの部屋で泊まってくださ...なんだ二次会ですか? 私もまぜてくださいっ!」 


人魚「わっ! 楽しそう!」 


帽子「はは...どうにでもなれ」 


~~~~ 
284: :2018/11/29(木) 22:14:27.12 ID:
~~~~ 


隊長「やりやがったなッッ!!! これで魔王もなんとかなるなッッ!!!!」 


帽子「あっはっはっはっはっ!!!! まかせろっっ!!!」 


衛兵「ぐすっ...もっと魔法が使えるようになりたいんですっ...」 


女賢者「うふふふふ...私が教えてあげますよ...」サワサワ 


衛兵「あっ...どこさわっているんですか...」 


隊長「...PORNOは許さんッッ!!!!」クワッ 


女賢者「うわっ!! ごめんなさいごめんなさいっ!!」 


衛兵「きゃぷてんさぁん...」キラキラ 


帽子「あっはっはっは!!」 


人魚「...地獄だ」 


お酒を飲むことが許されなかった人魚の姫。 

その言葉通り、この光景は地獄であった。 


~~~~ 
285: :2018/11/29(木) 22:15:39.01 ID:
~~~~ 


人魚王「...もういってしまうのだな」 


帽子「...そうですね」 


帽子(頭痛いし) 


隊長「だな」 


隊長(二日酔いが厳しいし) 


衛兵「本当はもっと一緒に痛かったんですが...」 


衛兵(頭痛がひどいし) 


女賢者「申し訳ありませんが、時間が迫ってるんで」 


女賢者(帰って寝たい) 


人魚王「ふむ...せめて、我が妻を一目見てくれ」 


人魚「ふわぁ~あ」 


人魚王「コラ、客人の前であくびなどするな」 


人魚「ごめんなさい...」 


???「ふふ、楽しそうですね」 


昨夜の1件の影響で、この場にいる者たちの大体が二日酔いを患っている。 

正直言って、帰りたい、だが王様を無碍にすることはできない。 

そんな絶妙な感情を抱いていると、透き通るようなキレイな声が聞こえた。 
286: :2018/11/29(木) 22:17:41.78 ID:
人魚王「調度良かった、あれが我が妻だ」 


人魚妃「初めまして、人魚妃です」 


帽子「...どうも、お初にかかります」 


人魚妃「このたびは多大な恩を...」 


帽子「いえいえ、私は正しいとおもった行動をしたまでです」 


人魚妃「...あなたのような人が、たくさんいれば良いですね」 


帽子「...どうもありがとうございます」 


人魚王「ふむ、時間が限られているみたいだな」 


人魚王「また、時間があるときに訪ねてくれ、そのときは大歓迎をする」 


帽子「ええ! ではまたっ!」 


衛兵「帽子さん、きゃぷてんさん、女賢者さん...本当にありがとうございました!」 


隊長「...あぁ、またな」 


人魚「また会いましょうねっ!」 


王室を出るとそこには、大量の衛兵や元反乱軍、そして民間人が並んでいた。 

それは海底都市の出口まで続く、未来永劫において忘れることのできない光景であった。 

彼らは語り継がれるだろう、人間3人が険悪だったこの都市を和合したことを。 


隊長「ん...? あれは」 


統率者「...待っていたぞ」 
287: :2018/11/29(木) 22:19:38.35 ID:
帽子「どうしたんだい?」 


統率者「急いでいるようだが...せめて、これだけでも貰ってくれ」 


女賢者「これは...?」 


統率者「それだけだ、じゃあな! お前らのことは忘れないぞ」 


統率者は気を使ってくれたのか、早く去っていった。 

彼から渡されたのはボール状のなにか。 

これはどこかで見たことのある代物であった。 


帽子「なんだいこれは?」 


女賢者「...微かに、魔力を感じますね...水属性の」 


隊長「貰っておいて損はないだろう」 


帽子「...これ、スライムの奴とちょっとだけ似てるな」 


女賢者「コレは?」 


隊長「あぁ、たしか盟友の証だったか?」 


女賢者「これも、魔力を感じますね、水属性の」 


帽子「綺麗だな、大事にとっておこう」 


隊長「しかし...ここから港町までどのくらいだったか?」 


女賢者「......いまのうちに魔法薬と海藻を補充しておきましょうね」 


隊長(長距離に備えろってことか...) 


帽子「...賢者の塔に戻ったら、大賢者さんたちが出て来るまで寝てようか」 


女賢者「賛成ですが、そのまえに買い物が残っています...」 


隊長「...はぁ、荷物持ちか」 


~~~~ 
288: :2018/11/29(木) 22:20:24.81 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
289: :2018/12/01(土) 23:12:20.09 ID:
~~~~ 


大の大人達が、砂浜で大の字で倒れている。 

旅の疲れ、なれない海中、そして陽気なお天道さま。 

勝てるわけがなかった、彼らは睡魔という敵に呪われる。 


隊長「はぁ...いい日差しだ」 


女賢者「正直...動きたくないですね」 


帽子「...夕方までこうしてないかい?」 


女賢者「...さっさと済ませて賢者の塔のやわらかぁ~い布団で寝るか、今のままか...」 


隊長「...前者だな」 


帽子「同感だ」 


女賢者「...立てません」 


帽子「同感だ」 


隊長「ほら、立て」 


帽子「やめろ! 無理やり立たせるな!」 


女賢者「きゃぷてんさんの鬼...」 


隊長「俺は一刻も早く布団で寝たいんだ...」 


~~~~ 
290: :2018/12/01(土) 23:13:45.09 ID:
~~~~ 


女賢者「買いものは済みましたね...帰りますか」 


帽子「お、重い...」 


隊長「お前、俺をみてもそれを言えるか?」 


帽子「...」 


女賢者「さぁ、さっさと帰りましょう」 


先日の買い物袋はどこかに置いてけぼりにしてしまったようだ。 

つまりは全てを買い直した、そんな大荷物を持たされるのは彼らであった。 

ようやく賢者の塔に帰ることが許される、その帰路で帽子がつぶやいた。 


帽子「そういえば今日で5日目だよね」 


女賢者「そうですね...予定通りならあと2日以内で修行が終わると思います」 


隊長「...早いもんだな」 


帽子「そうだね...それにしても、ここから荒野地帯を抜けるのは大変そうだね」 


女賢者「...弱音を吐かないでください、実感しちゃうじゃないですか」 


帽子「と、いうか海中だとろくに食べた気しないからもうペコペコだよ...」 


隊長「昼食を済ませてから出発すればよかったな」 


帽子「いや...それは一昨日と同じハメになるよ」 


女賢者「失礼ですね」 
291: :2018/12/01(土) 23:14:36.56 ID:
帽子「...この距離、魔法で何とかならないかい?」 


女賢者「大賢者様なら、転地魔法を使えるんですが...あいにくですね」 


帽子「その魔法はどんなものなんだい?」 


女賢者「そうですね、転移魔法の長距離版ですね...転移魔法自体がとても高等な魔法なのですが...」 


女賢者「転地魔法は、例えるなら...賢者の塔から塀の都まで一瞬で到着させることのできる魔法です」 


帽子「...すごいな」 


女賢者「ただし、とても長い詠唱が必要ですけどね」 


帽子「ふぅん...私も使ってみたいね、魔法」 


帰路の雑談は魔法の話題で会話が弾んでいた。 

そんな中、女賢者はそれに関連するある思いを告げる。 

それは先程の帽子に関する出来事、海底都市の激戦を沈めた白きあの光。 


女賢者「それなんですが...」 


帽子「ん?」 


女賢者「海底王国でその剣が光輝きましたよね?」 


隊長「...やはりソレの仕業だったか」 


女賢者「あの光...どことなく魔法に似ていましたね」 


帽子「...そうなのかいッ!?」 


女賢者「魔剣の研究は進んでいないので確証はできないですけどね」 


女賢者「思えば、その剣からは微妙に魔力を感じることが...」 


帽子「そうか...ついに魔法剣士にでもなってしまったか!」 


女賢者「いえ、だから魔法かどうかは────」 


帽子「──なんだか気分が高揚してきたよ!」キラキラ 


隊長「...はしゃいでるな、あの荷物をもって」 


女賢者「...案外、子どもっぽいですよね」 


隊長「...だな」 


~~~~ 
292: :2018/12/01(土) 23:15:09.00 ID:
~~~~ 


帽子「やっと賢者の塔がみえたね」 


隊長「...流石に疲れたな」 


女賢者「...」 


女賢者「...急ぎましょう」 


帽子「どうしたんだい?」 


荒野地帯、その地平線の先には目的地の塔が見える。 

到着は間もなくだが、この遺跡の入り組んだ道のりが彼らの足を阻む。 

やっと休息を取ることができると表情を緩めたそんな時だった、ただ1人だけは違っていた。 

なぜ急ぐ必要があるのか、それはすぐに分かる。 


???「お前が、噂の奴か...」 


隊長「──!」スチャッ 


その只ならぬ雰囲気に思わず、彼は荷物を捨ててまで武器を構えた。 

そこにいたのは至って普通の見た目をした人物が1人。 

人間か魔物かはわからないが、その姿だけを見ればやや逞しい男と表現できるだろう。 


女賢者「...どちら様で? 魔王軍ではなさそうですが...」 


帽子「...」 


魔闘士「...俺の名前は魔闘士」 


魔闘士「そこの人間...」 
293: :2018/12/01(土) 23:15:34.91 ID:
「手合わせ願おうか...」 









294: :2018/12/01(土) 23:16:46.65 ID:
隊長「──ッ!?」 


──ピリピリピリッ... 

空気が張り裂けそうな程の威圧感が発せられる。 

その男の名は魔闘士、すでに臨戦状態であった。 

一体彼は何者なのか、そしてなにが目的なのか。 


帽子「やれやれ、また戦闘か...」 


魔闘士「...俺はそいつにだけ用がある、他は邪魔だ失せろ」 


隊長「...どうやら俺が目当てのようだな」 


女賢者「1対1をお望みのようですが...そうはいきませんよ?」 


魔闘士「...手は打ってある」 


帽子「...なんだと?」 


魔闘士「俺の連れが1人、この塔にいる」 


魔闘士「...早く行かないと、大賢者が死ぬぞ」 


女賢者「な...ッ!?」 


隊長「──俺に構うなッ! 行けッッ!!!!」 


帽子「しかしっ!」 


隊長「相手の条件を飲むんだッ!」 


魔闘士「早くいけ、邪魔だ...」 


女賢者「...すみません、きゃぷてんさんっ!」ダッ 


帽子「くッ...死ぬなよッッ!!!」ダッ 


魔闘士の要望通り、1on1に持ち込まれてしまった。 

彼には例の入れ墨が見当たらない、どうやら本当に魔王軍ではない模様であった。 

ならばなぜ、この隊長という男を狙うのか。 
295: :2018/12/01(土) 23:17:44.95 ID:
隊長「...」 


魔闘士「...こないのか?」 


隊長「────ッ!?」ピクッ 


相手の様子を見てから、動くつもりであった。 

しかしそれは出来なかった、それはなぜか。 

気がついたときには、眼前に魔闘士が迫っていたからであった。 


魔闘士「...遅い」スッ 


隊長「──グアァァッ...!?」 


──ドガッァァッッッ!! 

強烈な一撃、不意打ちでもないというのに真正面から受けてしまう。 

その蹴りは凄まじく、人間にしては大柄な彼を吹き飛ばした。 

だがそれだけなら話はわかる、隊長が驚いたのはその跳躍距離であった。 


隊長「ゲホッ...ゲホッ...ふざけてる...どんな蹴りならここまで吹き飛ぶんだ...」 


隊長(まずい...今のでアサルトライフルがどこかに...) 


魔闘士「さぁ立て」 


隊長「──ッ!」スチャッ 


魔闘士「...!」 


──ダンッ ダンッ 

隊長は牽制程度にハンドガンを仕方なく放つ。 

だが魔闘士は動かずにいた、その必要がないと瞬時に理解したために。 

そして彼は何かを掴んだ。 


隊長「────ッ!?」 


魔闘士「...フッ、確かに大した威力だな」 


魔闘士「だが、俺には見えるぞ」パッ 


──からんからん... 

彼が手を開くとそこには。 

地面に落としたのは弾丸であった、金で出来た偽物だが差し支えない威力を誇るというのに。 

それをわざとらしく地面に捨て落とす、その光景に思わず隊長は息を呑む。 


隊長「...まるでHollywood movieだな」 


~~~~ 
296: :2018/12/01(土) 23:18:25.47 ID:
~~~~ 


帽子「くそッ! 次から次と闘いばかりだなっ!」 


女賢者「おしゃべりは後です! それよりも早く...!」 


多忙が重なる、だが今回のソレは今までの比ではない。 

嫌な予感が彼らの原動力となり、遺跡を駆け抜ける。 

そして到着した賢者の塔、その1階には奴がいた。 


???「俺様を探してるのかァ?」 


帽子「──ッ!」 


女賢者「...魔闘士とやらのお連れですか?」 


魔剣士「そうだァ...俺様の名前は魔剣士、待ってたぜェ?」 


口調に特徴のあるこの男、まるでゴロツキのような喋り方をしている。 

名は魔剣士、背中にはその名に相応しい妙な感じのする大剣を背負っている。 

この男も、魔闘士と同様にかなりの手練なのかもしれない。 


帽子「くっ...!」スッ 


魔剣士「おォ...お前も剣士か、しかもその剣...魔剣だなァ?」 


魔剣士「奇遇だな、俺様も魔剣だぜェ?」スッ 


女賢者「な...なんて魔力の量なんですか...その剣...っ!」 


女賢者(帽子さんの魔剣...ユニコーンの比にならないっ!?) 


魔剣士「...俺様は、お喋りより闘いのほうが好きなんだ」 
297: :2018/12/01(土) 23:19:40.07 ID:
「いくぜェ?」 









298: :2018/12/01(土) 23:20:20.81 ID:
帽子「──うっ...!?」 


──ピリピリピリッ... 

剣を構えただけだというのに、すでに冷や汗が止まらない。 

やはりこの男、魔闘士と同等の実力者であることが伺える。 


女賢者「────帽子さん前ですっ!」 


帽子「──えっ...」 


魔剣士「...おせぇよ」 


魔剣士「──斬り上げェェッッッ!!!」ブンッ 


―――ザシュッッッッッ!!!!!! 

あんなに大きなエモノを持っているというのに。 

その速度は、何も荷物を持たないでいる帽子の全力疾走よりも遥かに速い。 

決して目で負えない速度ではない、だがその予想外な疾走が帽子の意識を鈍くさせていた。 



帽子「──なっ...」 


──バキィィィッ... 

疾走からの剣撃、帽子は腰から肩にかけて斬り上げられた。 

そのはずだった、本来なら胴体が離れていてもおかしくない威力。 

だが聞こえる音は肉が離れる音ではなく、何かが割れる音であった。 


帽子「...グッ!?」 


女賢者(あれは防御魔法...そうかあの瓶をまだ持っていたんですね) 


帽子(今ので壊れたっぽいなぁ...) 


魔剣士「...結構ずるいことするんだなァ」 


魔剣士「ブチ殺されても文句いうなよ?」 


帽子「...悪かったね、もう油断しないよ」 


~~~~ 
299: :2018/12/01(土) 23:21:08.71 ID:
~~~~ 


隊長「はぁッ...はぁッ...!」 


魔闘士「...どこへ隠れた」 


隊長(...!)ピクッ 


ザッ...ザッ...ザッ... 

足音が聞こえる、彼は遺跡の遮蔽物で身を隠している。 

乱れる呼吸を一瞬にして整え、来るべき時を待つ。 


隊長(...) 


隊長(......) 


隊長(.........) 


魔闘士「...隠れても無駄だぞ」 


隊長「────ッ!」スチャッ 


隊長への牽制、その発言が決め手であった。 

その声の聞こえ方から察するに、すぐ近くに違いない。 

隊長が物陰から奇襲を行った。 


魔闘士「──そこかッ!?」 


隊長「────デヤッッッッ!!!!!」 


──バキィィィィィィッッ!!!!!! 

魔闘士の顔面に拳が決め込まれた。 

普通の人間が喰らえば顔面崩壊もあり得るその威力。 

だが彼は人間ではない、魔物であった。 


隊長「なッ...!?」 


魔闘士「...いい拳だ、人間にしてはな」 


隊長「──ッ!」スチャッ 


──ダンダンッ! 

効果が得られないとわかれば、すぐさまに対応を変化させる。 

先程は無力化されてしまったが、この距離ならいけるかもしれない。 

隊長は急いでサイドアームのハンドガンを抜き、撃ちこんだ。 
300: :2018/12/01(土) 23:22:08.31 ID:
魔闘士「あたらんぞ」スッ 


隊長(...避けただとッ!? この距離でかッ!?) 


隊長「...クッ!」スッ 


魔闘士「刃物か...それも無意味だ」ガッ 


隊長「──なッ!?」グググ 


今度はナイフを取り出すが、不発に終わってしまう。 

彼の腕が魔闘士によって簡単に抑えられてしまった。 

その腕力は、筋骨隆々であるこの隊長の力を寄せ付けなかった。 


隊長(全く動かせないッッ!!!)グググ 


魔闘士「...復讐者を倒したと聞いて期待をしていたが...興ざめだ...」スッ 


―――ドガアアアァァァァァァァァァアンンッッッ!!!!!! 

おそらく利き腕ではない左腕から繰り出した。 

その拳力は凄まじく、先程蹴飛ばされたときよりも身体が吹っ飛ばされてしまう。 

吹き飛ばされ着地した、その余波により遺跡の一部が瓦礫へと変貌する。 


隊長(だ、だめだ...強すぎる...) 


隊長(一旦、隠れなければ...)ズルズル 


魔闘士「チィ...また隠れたか...」 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「...あっけねェな」 


帽子「はぁッ...はぁッ...!」 


女賢者「っ...っ...!」 


魔剣士は別に特別なことはしていない。 

ただ、剣を振り回していただけ。 

だがそれだけで、帽子と女賢者の息を上がらせていた。 


魔剣士「...そんなんで良く、魔王軍に喧嘩を売ったなァ」 


帽子「...私にはやることがあるんでね」 


魔剣士「...何が目的かしらねェけど、このままじゃここで死ぬぞ?」 


帽子「...死ぬわけには...行かないんだッ!」 

301: :2018/12/01(土) 23:23:18.98 ID:
女賢者「けほっ..."衝魔法"」 


──ゴォォォォォォォ...! 

空気中に現れたのは、衝撃を纏う魔法。 

だがそんなモノ、魔剣士の前では唯の的に過ぎなかった。 


魔剣士「...おらよォッ!」ブンッ 


――――スパッ...! 

剣から放たれた気のようなモノが、彼女の魔法を真っ二つにする。 

その光景が彼らの絶望感を強くする。 


女賢者「う...そ...」 


帽子「魔法を...斬っただと...?」 


魔剣士「"竜"の魔剣を甘く見すぎだァ...お嬢ちゃん」 


女賢者「────っ!?」 


──ぞくっ...! 

魔剣士が彼女に向かって睨みつけた。 

魔法を使ったわけではない、ただ本当に睨んだだけ。 

それがキッカケであった、彼女を支える精神力が斬られてしまった。 


女賢者「うっ────」フラッ 


帽子「女賢者さんっ...!?」 


魔剣士「気絶したか、まァ仕方ねェよな...しっかし、お前の魔剣」 


帽子「...っ!」ビクッ 


魔剣士「全然活かせてねェな...死ぬ前に教えてやるよ」 


帽子「...なんだと?」 


魔剣士「俺の教え方はひどいぜ? 魔剣を活かすまえにやっぱ死んじまうかもなァ!」ダッ 


帽子「──速いっ!?」 


魔剣士「オラッ! 前方だァ! 剣構えろオォォォ!!!」 


帽子「──クソッ!! 舐めやがってッ!!!」スッ 


──キィンッ カンッ ギィィィィンッ!!!! 

大きな動物ですら斬り伏せれそうな大剣、それに対峙するのは刺突用の細い剣。 

とても不安定な鍔迫り合いが発生する、絶対的に後者が不利だというのに耐えれている。 

これが魔剣同士の争いというモノであった。 
302: :2018/12/01(土) 23:24:12.22 ID:
魔剣士「オラオラオラオラァァ!! 魔剣ってのはなァッ!」 


魔剣士「もっと豪快に使うんだよォッ! ちょっとやそっとのことでは折れねェからなァッ!」 


帽子「──くそッ! お喋りは嫌いなんじゃないのかッ!」 


──キィンッ! ガチャァッ!!! ガギィーンッ!!! 

激しい剣撃同士が牙を向き合う。 

だがそれを可能にしているのは、彼側の配慮であった。 


魔剣士「お喋りできる程に手ェ抜いてんだァ! 退屈なんだよォッ!!!」 


帽子(くっ! 私が交えられる程度まで手を抜いてるのかっ!) 


魔剣士「──おらよォッッッ!!!!!!」ブンッ 


帽子「しまっ────!」 


――――ガギイィィィィィィィンッ!!!! 

この男、口調とは違いかなり曲者である。 

力加減を調節する、その細かな動作が可能にしたのは弾き落とし。 

帽子の魔剣は吹き飛ばされてしまった。 


魔剣士「...ホラ、拾いに行けよ」 


帽子「...どこまでも下でに見やがって」スッ 


魔剣士「よォし...行くぞォッ!!!!」 


帽子「...その油断、後悔させてやるからなッ!」 


~~~~ 
303: :2018/12/01(土) 23:25:26.65 ID:
~~~~ 


隊長「くっ...くっ...」ズルズル 


隊長(くそっ...勝てる策がみつからん...!) 


瓦礫の中を匍匐前進で進んでいく。 

こうすることで身を隠し、一時的にこの場を凌ぐ。 

それしか行えない、今の隊長に魔闘士を倒せる手段などない。 


魔闘士「...どこだ」 


隊長(まずい...魔闘士がすぐ近くにいる...) 


ザッ...ザッ...ザッ...ザッ... 

息を潜め、時が流れるのを待つ。 

すると聞こえたのは足音、それが徐々に離れていく。 

危機はさった、そんな隊長は息苦しい瓦礫の中である物を発見する。 


隊長(アサルトライフル...!) 


隊長(拾いに行きたいが...それだとここから出なければならない...) 


隊長(...身を隠せる場所は見当たらない、奴が完全に離れたら向かうか) 


ザッ...ザッ...ザッ... 

耳をすませば、まだ魔闘士の気配を感じることができる。 

遺跡の残骸を隠れ蓑にするしかないこの現状。 

この世界に来て一番のピンチ、一体どうすればいいのかを彼は考え尽くす。 


隊長(どうするッ...どうやってあの怪物を倒す...ッ) 


隊長(氷竜、暗躍者、追跡者、捕縛者、復讐者、クラーケン...) 


隊長(今まで倒した奴らは総じて銃器の威力に驚いていた...) 


隊長(だが、今回の魔闘士は格が違う...銃弾が当たる気がしない...) 


隊長(...魔闘士の動き、全く目が追いつかん...それに銃弾を素手でつかみやがる...) 


隊長(...どうやら遠ざかったようだな、今がチャンスだ...とりあえずアサルトライフルを拾おう) 


隊長が瓦礫から身を出し、アサルトライフルを拾おうとした瞬間。 

なぜこの男がここに立っている、足音は完全に遠くに向かったはずなのに。 


魔闘士「...やはり、ここにいたか」 
304: :2018/12/01(土) 23:26:21.71 ID:
隊長「──Jesus...」 


魔闘士「残念だったな」 


隊長「...遠ざかってると思っていたが」 


魔闘士「悪いな...生憎、足は速いのでな」 


隊長(ふざけるな...秒速100mとかそんな次元の話になるぞ...ッ!?) 


魔闘士「興ざめだ」 


隊長「──!」ビクッ 


隊長がついに、恐怖心を魔闘士に植え付けられてしまった。 

そして隊長は首を捕まれ、身体を持ち上げられてしまう。 

その苦しみは、復讐者の時とは比べ物にならない。 


魔闘士「フンッ、期待しなければよかったな」 


隊長「ガハァッッ...ク、クソォッ...!」グググ 


魔闘士「死にぞこないが────」 


魔闘士「────」 


魔闘士の声が聞こえなくなった。 

それは己が死にかけているからであった。 

魔闘士の首絞め、彼を仕留められるのはもう時間の問題であった。 


隊長(くそ...この世界にはこんな奴らがいるのか...) 


隊長「I'm not...ready to die────」 


視界が真っ暗になる、どうやら本当に終えてしまっていた。 

異世界へと訪れた隊長の冒険はここまで。 

彼は魔闘士という男に息の根を止められてしまったのであった。 


~~~~ 
305: :2018/12/01(土) 23:27:32.35 ID:
~~~~ 


???「□□□□、□□□」 


???「目を覚ませ」 


???「瞳を開けなさい」 


──ぱちりっ 

謎の声が聞こえる、その指示通りに視界を開くとそこには。 

なぜなのか、たった今命を落としたばかりだというのに。 

それどころではない、彼は遺跡とは全く別の場所へと佇んでいた。 


隊長「...What's」 


???「初めまして、異世界の者よ」 


隊長「...Who are you?」 


???「記憶が混乱しているようだ」 


隊長「What are you talking about?」 


???「少し、記憶を正してあげよう」ポワン 


体長「────ッ!?」ピクッ 


(「え、えぇっと...私は少女です...」) 


(「私の名前は...魔女よ」) 


(「私の名前はそうだな...帽子だ」) 


隊長「...あぁ」 


(「いたたた...誰か助けてぇ~」) 


(「どこまでもついていきましゅ!」) 


隊長「思い出した...」 


???「君は、この世界でCAPTAINと名乗っていた」 


隊長「...そうだ」 
306: :2018/12/01(土) 23:28:31.34 ID:
???「君の行動は、とても素晴らしい」 


隊長「...お前は誰だ?」 


???「私は神、いえ...神に最も近い存在と言おうか」 


隊長「...GOD?」 


???「君は今、魔物に殺されかけている...だがまだ死んでいない」 


隊長「...」 


???「だから、君の奮闘に免じて...1度だけ機会をあげよう」 


隊長「...どういうことだ?」 


──ぽわぁっ... 

優しい明かりが隊長の身体を包み込む。 

それだけではない、なにか別の光も入り込んだような。 


???「君に1つだけ、魔法を貸してやろう」 


???「...神業を受け取るんだ」 


隊長「ま、まってくれ...」 


隊長「なぜ俺はこの世界にいるんだ...?」 


???「...君に幸あれ」 


隊長「頼む...教えてくれ...っ!」 


???「□□□、□□□□□□」 


~~~~ 
307: :2018/12/01(土) 23:30:13.36 ID:
~~~~ 


隊長「──ガハッ...!」 


魔闘士「...驚いたな、まだ息があったか」 


死亡したと思われていた、気がついた時には首絞めから開放されていた。 

地面にボロ布のように投げ捨てられたこの身体、だがそれは今までのモノとは違う。 

なぜだろうか、隊長のここ数日分に渡る戦闘による疲れがとれているような気がする。 


魔闘士「トドメを刺してやる...」ダッ 


魔闘士が一瞬で間合いに入ってきた。 

先程までの隊長ならここでまた蹴り飛ばされていただろう。 


隊長「──Eat thisッッ!!」 


魔闘士「────グッ!?!?」 


──ドスッッ!! 

あまりにも鈍い音が鳴り響いた。 

隊長は魔闘士にかなり重そうなボディブローを炸裂させた。 


魔闘士「...なッ!?」 


隊長「──Oneッッ!!」 


──ドスッ...! 

透かさず隊長は追撃を始める。 

再びのボディーブロー、鈍い音が2発目。 


隊長「──Twoッッ!」 


魔闘士「────ゲハァッ...!?」 


──バキィィッ...! 

そして軽めのストレート、それは魔闘士の胸元に決まる。 

魔物とて身体の構造は人間、そう踏み込んだ隊長は急所であろう左胸を殴る。 

そこにあってほしいのは心臓、彼の思惑は的中し、魔闘士は悶た。 


隊長「────HAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」 


──バギィィィィッッッッッッッ!!!! 

そして最後に放ったのは、渾身の一撃。 

フィニッシュブロー、強烈な拳が魔闘士の顔面にぶち当たる。 

先程は余裕の表情で受けていたその顔を、思い切り吹き飛ばす。 


魔闘士「──グゥゥゥウウウッ...!?」ドサッ 


隊長「...ふぅ」 
308: :2018/12/01(土) 23:31:47.88 ID:
魔闘士「グッ...人間程度が、調子に乗るなよ」ムクッ 


魔闘士「...どうやら先程まで本調子じゃなかったようだな?」 


隊長「...」 


魔闘士「...面白い」 


魔闘士「この魔闘士の業...その眼で確認するがいい────」スッ 


──ガシィッッッ!! 

気づいたら取っ組み合いをしていた。 

お互いの両腕からミシミシと音がなる、とてつもない圧力同士がぶつかりあう。 


隊長「────グッ...!」グググ 


魔闘士「ほう...これを反応するか...」グググ 


隊長「...魔法か?」 


魔闘士「残念ながら魔法は得意じゃない...俺はただ、ひたすら早く動いているだけだ」 


隊長「...ふざけているな」 


魔闘士「悪いが、しゃべる余裕は貴様にないぞ」スッ 


隊長「しまっ────」 


────ガクンッ! 

魔闘士は足をさばいて隊長を転ばせてきた。 

取っ組み合いをしている最中だというのに、とても軽やかな足業であった。 


隊長「──グッ!?!?」ドサッ 


魔闘士「────喰らえッ!」スッ 


そして腹部めがけてかかと落としを仕掛けてきた。 

これを喰らえば、胴体に深い傷を追うことになるだろう。 

なんとか力を振り絞り、横に向けて転がることで回避する。 


隊長「──あぶないなッ!」スチャッ 


隊長「――――ッ!?」 


隊長(な、なんだ...この感覚は...) 


──ダンッ ダダンッ!! 

回避後はすぐに立膝の状態に、そしてハンドガンを構えた。 

その時、妙な感覚が隊長の身体を包み込む、だがそれを気にしている場合ではない。 

違和感を覚えながらも彼は発砲する、そして魔闘士はそれを受け止めようとする。 

彼の銃弾は再び魔闘士の手のひらに吸い込まれた。 
309: :2018/12/01(土) 23:32:34.56 ID:
魔闘士「それは効かぬと────」バッ 


──□□□... 

弾丸を掴み取ったその手の内から、この音が聞こえた。 

それは彼に鳥肌を立たせる、なぜ人間がこの代物を得ているのか。 

そしてなぜ自分は、こんなにも激痛を味合うハメになったのか。 


魔闘士「────グゥゥゥウウウウウウッッ!? これはッ!?」 


隊長(なんだがわからんが、チャンスだ!)ダッ 


魔闘士「...しまっ────」 


隊長「────ハッッ!!」 


──グサ□□□...ッッ!!! 

隊長は首をめがけた、そして魔闘士に刺すことができた。 

魔闘士は反応が遅れた、が腕を盾にすることで首を守った。 

しかしそこにも、あの白い音が付着する。 


魔闘士「──ッ!? ...これもかッ!?」 


隊長「なんだこれは...?」 


魔闘士「グッ、これは...光...なぜ...ッ!?」 


先程まで通用しなかった隊長の攻撃、今はなぜだか効果的であった、先程とは何が違うのか。 

隊長の頭の中で浮かび上がるのは、先程の神業とかいう代物。 

あれは現実だったのか夢だったのかはわからない、だが己の身に何かが授けられたのは確かであった。 


魔闘士「────1分だ」 


隊長「...?」 


魔闘士「悪いが、残された時間は1分だ」 
310: :2018/12/01(土) 23:33:07.49 ID:
「その1分で貴様にもう一度地べたで寝てもらう...」 









311: :2018/12/01(土) 23:34:17.72 ID:
隊長「――ッ...!?」 


その言葉の威圧感、それは脅しではない。 

彼はついに本気をみせた、己に危害を産ませるこの男に。 


魔闘士「...遅いぞ」シュンッ 


隊長「──わかっているッ!」 


──バシッ! 

気づけば魔闘士は隊長の背後に回っていた。 

それに気づいた彼は背面左エルボーを繰り出すが、手のひらで受け止められてしまった。 

だがそれだけではない、彼は同時に右手も背面に向けてハンドガンを構えていた。 


隊長「──ッ!」スチャ 


魔闘士「小細工を...ッ!」スッ 


──ダン□□ッ! 

ギリギリのところで回避されたが、耳に銃弾のかすり傷を当たることができた。 

これは完全に不意打ち、白き音が混じっていなくとも魔闘士に傷つけることができるだろう。 


魔闘士「──くッ!?」 


隊長「────ハァッッ!!」ドガッ 


避ける動作を予測して、隊長は魔闘士に蹴りをいれる。 

それは魔闘士の鳩尾に入る、回避行動に気を取られ防御策を取ることができずにいた。 


魔闘士「──ゲホッ...!?」 


隊長「────ッ!」スチャッ 


──ダン□ッ ダン□ッ ダダン□ッ! 

軽快な発砲音、それはすべて魔闘士を捉えていた。 

鈍い痛みが彼の動きを制限する、銃弾キャッチや回避もすることができない。 


魔闘士「──グッ...ッ...!?」 


隊長(全弾命中...) 


隊長「見えても避けれなければ意味がないぞッ!」 


魔闘士「黙れっ...!」ヒュン 


──ドゴッォォォッッ!!!! 

彼は銃痕の激痛をこらえながらも、隊長の懐に入り込んだ。 

そして浴びせるのは信じられない威力の掌打。 

防弾チョッキ越しでも感じるその衝撃が、彼の身体を遠くまで吹き飛ばした。 


隊長「──ゲハァッ...!?」ドサッ 
312: :2018/12/01(土) 23:35:57.99 ID:
隊長「ぐッ...」スチャッ 


──ダン□ッ ダン□ッ! 

吹き飛ばされたその場所は、衝撃の影響で土煙がこみ上げる。 

それが隊長の身を隠してくれた、その中から発砲を行う。 


魔闘士「...危ないな」スッ 


隊長「...今の感じ、避けられたか」 


隊長(...腕ほど足は発達してないってことだな) 


距離がなければ避けることが出来ない、距離がなくても弾を掴むことができる。 

魔闘士の情報が徐々にあけてゆく、それ故に対処方も徐々にわかってゆく。 

完全に隊長のペースが戻ってきている。 


隊長(なら...) 


隊長(────今だ!)ダッ 


魔闘士「──そこかっ!」 


魔闘士(──刃物ッ!) 


土煙から突如飛び出してきた隊長、その右腕にあるナイフを彼は目視してしまった。 

どうやら隊長は魔闘士の胸めがけ、右手でナイフを刺そうとしているようだった。 

そう認識してしまった、左手に忍ばせたハンドガンを見逃してしまう程に。 


隊長(かかった...!) 


──ダン□ッ ダン□ッ! 

刃物を蹴りで弾き落とそうと身構えていたら、突如身体に激痛が走る。 

如何に武の達人だとしても、初めて見るその武器の性能を完全に把握することができない。 

この反則地味た攻撃速度、そして隠密性、それを予測することは極めて難しい。 


魔闘士「──貴様ぁ...ッ!?」 


隊長の思惑通り、蹴りを入れようとした足に全弾命中させる。 

それを耐えきれる者などいない、思わず膝をついてしまった。 

その圧倒的な隙を逃す訳にはいかない。 


隊長「────AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッ!!」 


──バキィッッッッッ!!!!!!! 

強烈なアッパー、それが魔闘士の身体を吹き飛ばすのは簡単だった。 

身体が宙に浮いたと思えば、そのまま倒れ込んでしまう。 

このまま犯人確保をすることは難しくないだろう。 


隊長「──ッ!」ササッ 


隊長(よし、マウントポディションを取ったぞ────) 
313: :2018/12/01(土) 23:36:38.66 ID:
魔闘士「──どこを見ている...」 


倒れ込んだ魔闘士にのしかかり、眉間にハンドガンを構えようとした。 

マウントポディション、それが成功していたのなら勝利は目の前であった。 

しかしこの男は素早すぎた、気づけば横に手刀の構えをして立ち尽くしていた。 


魔闘士「動くな」スッ 


隊長「...早すぎるぞ」ピタッ 


魔闘士「...詰みだな」 


隊長「...」 


隊長(この手刀が、本物の刀のように俺の首をはねることは簡単だろうな...) 


魔闘士「...死ね」 


隊長「──ッ!」 


2度目の敗北、今度は完全な調子だと言うのにも関わらず。 

殺される、その現実が彼の目を泳よがせる。 

その目線の先には腕時計、針がある事実を知らせてくれていた。 


魔闘士「...と、いいたいところだが」 


魔闘士「時間が過ぎた...また、殺しに来てやろう」 


隊長「...」 


魔闘士「...名は?」 


隊長「...Captainだ」 


魔闘士「...そうか、覚えておこう」 


魔闘士「──さらばだ...」 


魔闘士は影を残すほど素早く移動し、どこかへ消えてしまった。 

その時、隊長の身体にも異変が起こる。 

常時微かに聞こえていた、白き音が止む。 


隊長「...帽子たちと合流せねば」 


~~~~ 
314: :2018/12/01(土) 23:37:41.29 ID:
~~~~ 


魔剣士「...へっ、口ほどにもねェな」 


帽子「ぐっ...そぉ...っ!」 


魔剣士「これじゃ、その魔剣も可哀想だぜ」 


帽子は扱かれていた、魔剣士による剣術の授業に。 

だがそれは暴力の限りであった、魔物である彼に追いつけるわけがない。 

息が上がる、身体は痛い、もう彼は動けない。 


帽子「私は...平和のために...闘わねばならない...っ!」 


魔剣士「...頭のなかお花畑かよ」 


魔剣士「それができれば、魔王もやってらァ」 


帽子「うるさいッ...はぁッ...はぁッ...魔王の政策は平和を求める魔物にも辛いだろうに...!」 


魔剣士「...まァ、俺様には関係ねェな、魔王直属の部下でもなんでもねェし」 


帽子「ゲホゲホッ...じゃあ君は...なんでここにいるんだい...?」 


魔剣士「...さァな、探しものついでに魔闘士に連れられてな」 


帽子「はぁッ...くっ...はぁッ...」 


魔剣士「...たく、魔王の気が違ってから禄な事になってねェな」 


帽子「ッ...?」 


魔剣士「...初めて会った時の魔王は、良い奴だったんだがなァ」 


帽子「どういう...ことだ...?」 


魔剣士「さぁな、クソ爺の痴呆でも始まったんじゃねェの?」 


魔剣士「...お喋りはもういい」 


帽子「くッ...!」 


魔剣士「...その魔剣、寄越せばお前らを見逃してやるよ」 


魔剣士「まァ、魔闘士を相手にしてる奴の命は、俺様には保証できねェけどな」 


帽子「...ふざけるな」 


魔剣士「...あっそ、じゃあ死体漁りでもしてその魔剣を助けてやるか...」 
315: :2018/12/01(土) 23:38:11.87 ID:
「じゃあ...死ねッッ!!!!」 









316: :2018/12/01(土) 23:39:09.91 ID:
帽子「私はッ...民のために...薄幸の魔物のためにッ...」 


────□□□□ッッ...! 

光が帽子を包み込む、その発光源は彼の右腕。 

ユニコーンの魔剣だ、それは身体だけではなく、言語も白くする。 


帽子「□...まだ...□□ッ...死□わけには...」 


魔剣士(──この光...まさかッ!?) 


魔剣士「へェ...良い線いってるなァ...その魔剣、差詰めユニコーンの代物だろ?」 


魔剣士「──みせて...みろやああああアァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」 


帽子「────いかないんだあああ□□□□□□□□□□□□□□□ッッッッッ!!!!!!」 


―――――――ッッッ!! 

音にならない鍔迫り合い。 

衝撃と衝撃がぶつかり合う音、その余波で賢者の塔の壁が悲鳴を上げている。 


帽子「□□□□□□ッッッッ!!!!!!」 


魔剣士「へェ...お前キテるぜェッッ!!!!」 


帽子「□□□ッッ!!!!」 


魔剣士「小細工なしだァ!!! お前を殺してやるよォォォッッッッ!!!!!」 


帽子「□□ッッッ!!!!!」 


―――ッッ!!!! ッッッッッ!!!! ――ッッ!!! 

激しい轟音、それは意識を失っていた者を起こすのには申し分なかった。 

この世のものとは思えない光景に、女賢者は戸惑いを隠せなかった。 


女賢者「な、なにが起こってるんですか...」 


女賢者(目は覚めましたけど...と、とても参加できない...激しすぎる...) 
317: :2018/12/01(土) 23:39:54.51 ID:
魔剣士「オラオラオラオラァッッ!!! どうしたァッッ!?」 


帽子「□□□□□□□□□□□ッッッッッ!!!!」 


女賢者「た、建物がボロボロに...」 


女賢者(剣気だけで...魔法のマの字もないのに、この規模の戦いができるのですか...!?) 


帽子「□□ッッッ!!!!」 


魔剣士「はっはァッ! わりィけど、もう時間がねぇみたいだァッ!」 


帽子「...□□ッッ!!!」 


魔剣士「これが最後の一撃だァ...てめぇも繰り出してみろォ! できんだろッ!!!」 


時間がない、それは本来の意味ではない。 

魔剣士は帽子の限界を予期していた、あの戦い方じゃ持たないことを。 

だからこそ誘った、本気が出せるうちに全力をぶつけてもらう為に。 


女賢者「──まずい! "防御魔法"っっ!!!」 


帽子「□□□□□ッッッッッ!!!!!!」 


魔剣士「喰らいな..."竜"の一撃をなァッッッ!!!!」 


―――――――――――――――――ッッッッッ!!!!!!!!!!!!! 

お互いの魔剣から発せられるのは、剣の気。 

魔法ではない何かが、飛ぶ斬撃が耳を貫く重音を鳴り響かせた。 


~~~~ 
318: :2018/12/01(土) 23:40:50.95 ID:
~~~~ 


隊長「...塔の1階部分が消し飛んでいる...ッ!?」 


隊長(帽子達は大丈夫かッッ!?)ダッ 


隊長「──帽子ッッ!! 女賢者ッッ!!!」 


消し飛ばされた賢者の塔の一部。 

激戦が伺える、彼らの安否を確認する為に彼は走り出した。 

するとそこにたのは、3人であった。 


女賢者「──きゃぷてんさんっ!?」 


隊長「──お前はッ...!?」スチャッ 


魔剣士「...あァ? 魔闘士はどうした?」 


隊長「...撃退してやった」 


魔剣士「...へェ...やるじゃねぇか」 


隊長「...帽子から離れろ、今すぐにだ」 


帽子「ぐっ...あっ...」 


魔剣士「へーへー、わかったよ...これ以上なにもしねェッて」 


帽子「ま...て...」 


魔剣士「...はんッ、"馬"が"竜"に勝てると思うなよ」 


魔剣士「じゃあな────」 


魔剣士は颯爽と、どこかへ消えてしまった。 

それを追うものはいない、今必要なのは応急処置。 

倒れ込んだ帽子に治癒魔法を施す彼女が情報を共有してきた。 
319: :2018/12/01(土) 23:41:44.87 ID:
女賢者「な、何者だったんでしょうか...魔王軍でもなさそうですし」 


隊長「さぁな...それより帽子は大丈夫か」 


帽子「あぁ...だが、もう何もやる気はおきないよ...立てやしない」 


女賢者「わ、私も...」ヘタッ 


隊長「...ほら、おぶされ」 


女賢者「へっ、きゃぷてんさんは大丈夫なんですか?」 


隊長「お前らよりは大丈夫だ、早くしろ」 


女賢者「は、はい...」 


隊長「よっと...おい帽子、手をとれ」 


帽子「あぁ...ありがとう」 


女賢者「私と武器をおぶさり、帽子さんの肩をもつなんて...どんな体力してるんですか?」 


隊長「さぁな、俺ももう限界が近い、さっさと布団に入って寝よう」 


帽子「と、いうか...ホコリ立ってない2階ならどこでも寝れそうだよ...」 


女賢者「私も...恥ずかしながら」 


隊長「そうか...じゃあ、そこで我慢してくれ...」バタン 


女賢者「──びっくりした...でも...私も...」スヤァ 


帽子「正直...どうでもいい...寝たい...おやすみ...」スヤァ 


やはり、彼も限界であった。 

2階にたどり着くやいなや、倒れるようにゆっくりと意識を失った。 

そして彼らもそれに続く、隊長たちの激動の1週間は終わった。 


~~~~ 
320: :2018/12/01(土) 23:42:19.46 ID:
~~~~ 


大賢者「なぁ~に倒れておるんじゃ...」 


隊長「...ん?」パチ 


大賢者「おはよう」 


隊長「...大賢者か」 


大賢者「女賢者も、帽子も死んでるように寝ているのう」 


隊長「いろいろあったからな...」 


大賢者「ふむ、まぁその話はあとで聞こう」 


大賢者「修行はおわったぞ、丁度1週間でな」 


隊長(...海底王国をでたときは5日、つまり2日間ここで寝てたわけか) 


隊長(...記憶が正しければ、この世界にきてから2週間目か) 


隊長「...魔女たちは?」 


大賢者「お主らと同じで、どこかで死んだように寝てるわい」 


隊長「...とりあえず、一旦集まるか」 


大賢者「そうじゃのう...ほれ、女賢者」 


女賢者「うぅん...ふぇ...ん?」 


女賢者「...だ、大賢者様!」 


大賢者「ふむ、大分打ち解けたようじゃのう」 


女賢者「す、すみません! 顔洗ってきます!」ピュー 


大賢者「...歳相応の女賢者を見るのは初めてじゃ、いいことじゃのう」 


隊長「いくつなんだ?」 


大賢者「ふむ、引き取って8年...当時は13歳じゃったかから21歳かのう」 


隊長「...若いな」 


大賢者「...手を出すなよ?」 


隊長「...ボケが始まったか?」 


大賢者「ほっほっほっ! 帽子を起こしてやるのじゃ」 
321: :2018/12/01(土) 23:43:13.97 ID:
隊長「...帽子、起きろ」 


帽子「────」 


大賢者「...死んでいるんじゃないかのう」 


隊長「...帽子、スライムたちに会えるぞ」 


帽子「────ッ」ガバッ 


帽子「おはよう」 


大賢者「うむ、おはよう」 


隊長(...現金なやつ) 


隊長「...あーそうだ、マガジンに弾を込めないと」 


~~~~ 


~~~~ 


女賢者「おはようございます」 


帽子「おはよう」 


隊長「...まる2日は寝てたぞ」 


女賢者「...どおりでお腹の虫が」 


帽子「どうしようもない程、お腹減ったね」 


女賢者「私は食事の準備をしてきます」 


女賢者「...この1週間の事はそこで語りましょう」 


隊長「...だな、気になることは山ほどある」 


女賢者「...そろそろですかね、ではお二人で水入らずで」スタスタ 


帽子「...変に気を使ってくれたね」 


隊長「まだ21歳らしいぞ、若いのにしっかりとしている」 


帽子「私の1つ下か」 


隊長(...こいつもこいつで若いな) 


―――ガチャッ! 

すると突然、扉は開けられた。 

わずか一週間だというのにもかかわらず、懐かしく思えてしまう。 

心なしか顔つきが変わった、それでいていつもどおりの彼女たちがそこにいた。 
322: :2018/12/01(土) 23:43:59.88 ID:
魔女「はぁ~...疲れた」 


スライム「まだねむいよ...」 


ウルフ「ふぁ~あ...! この匂いは...ご主人っ!」 


隊長「おう、久しぶりだな」 


ウルフ「♪」スリスリ 


スライム「...帽子さんっ!」 


帽子「やぁ、見違えたね」 


スライム「あなたも? なにか顔つきが変わった?」 


帽子「...いや、決心がついただけだよ」 


スライム「??」 


魔女「...きゃぷてん、久しぶりね」 


隊長「...あぁ、どうだったんだ?」 


魔女「ふふっ、それは実戦までお楽しみに!」 


隊長「...頼りにしてる」 


帽子「さて、女賢者さんが食事の準備をしてくれてるし、行こうか」 


ウルフ「ご飯っ!」 


魔女「...やっとまともなモノを食べれるのね」 


隊長「...何を食べてたんだ?」 


魔女「...魔法薬を固形化したモノ」 


隊長「...ものすごくまずそうだな」 


魔女「ものすごくまずいのよ...」 


~~~~ 
323: :2018/12/01(土) 23:44:59.62 ID:
~~~~ 


大賢者「ほっほっほっ、ではまずこちらから話そう」 


大賢者「皆は食べながら聞くといい」 


食卓を大人数で囲む、皆もの凄い勢いで食らう。 

各々空腹の事情があった、食べることに集中せざる得ない。 

そんな彼らに大賢者は図らう、彼1人だけが会話を続けてく。 


大賢者「まず、ウルフについてじゃ」 


隊長「...」モグモグ 


大賢者「ウルフには、魔力を体術に活かすモノを教えた」 


帽子「と、いうと?」モグモグ 


大賢者「魔力で身体を強化したのだ、格闘術はずば抜けているぞ」 


隊長「ほう」モグ 


ウルフ「わふっ」モグモグ 


大賢者「スライムには、補助魔法とスライム固有の能力を強化した」 


帽子「ふむ..."水化"とか言うやつかい?」モグ 


大賢者「そうじゃ、今のスライムに炎属性や水属性は無意味じゃのう」 


大賢者「水化、それは身体を水と同化させることで様々な恩恵を受けれるのじゃ」 


スライム「えっへん!」ゴクゴク 


大賢者「じゃが、スライム族は自身の属性関係なく風属性に弱いのじゃ、それを気をつけろい」 


大賢者「まぁ、恐らく一番成長したのはスライムじゃな、楽しみにしておれ」 


スライム「...えっ!? そうなのっ!?」 


魔女「う~ん...私もそう思うなぁ」モグモグ 


帽子「すごいな、スライム...」モグ 
324: :2018/12/01(土) 23:45:54.02 ID:
大賢者「最後に魔女、彼女は本来の修行に近い強化をした」 


大賢者「彼女の属性である、風属性と補助魔法を強化...この3人で一番魔法が使える者は魔女になったのう」 


魔女「ふふん!」モグモグ 


大賢者「それに、錬金術も習得したから...お主のその武器も思う存分に使えるじゃろう」 


隊長「なんだと...それは助かる」モグ 


大賢者「特に雷魔法に注目じゃな、期待しておれ」 


魔女「だってさ!」モグ 


隊長「あぁ、頼りにしている」モグモグ 


彼女らの修行の成果、それはかなりのモノであった。 

場の雰囲気はかなり明るいもの、だがどうしてもそれを変えなければならない。 

食事を一旦やめ、帽子は真剣な声色で話を振った。 


帽子「...では、こちらで起きたことを話そう」 


女賢者「...そうですね」 


大賢者「...何が起きたんじゃ?」 


帽子は、この1週間に起きたすべて語った。 

それはあまりにも、沢山の出来事であった。 


大賢者「...なるほどな」 


魔女「そんなことがあったのね...」 


スライム「...」 


ウルフ「くぅーん...」 
325: :2018/12/01(土) 23:46:48.97 ID:
大賢者「...分かる範囲で順に答えよう」 


大賢者「まずその剣はその通り、"魔剣"じゃの」 


帽子「魔剣かぁ...」 


大賢者「残念じゃが、魔剣については強力な剣ということしかわからんのう...」 


帽子「...なるほど」 


大賢者「...では次に、復讐者が使った"属性付与"という魔法...単純なおかつ、強力な魔法じゃのう」 


帽子「どういう魔法なんだい?」 


大賢者「簡単にいえば、武器や物に属性をつけることじゃ」 


大賢者「剣に炎の属性付与をすれば...その剣に炎が帯びる、そういうことじゃ」 


魔女「私も、覚えたわよそれ...とても覚えるのに時間がかかったわ...」 


女賢者「え...凄いですね、私には無理だったのに...尊敬します」モグモグモグモグ 


魔女「ありがと、きっとあんたもそのうち習得できるわよ」 


大賢者「まぁ、魔法を維持させればそれに近いこともできるが、それだと魔力の消費量が凄まじくなる」 


大賢者「一方で属性付与なら、一度かけてしまえば数時間はそのままじゃ」 


大賢者「魔法で一番魔力を消費させられるのは維持することなんじゃ、だからこそ属性付与の手軽さは強力なのじゃ」 


帽子「...なるほど」 


大賢者「そして...あくまで仮説じゃが、その魔剣には"光属性"の魔力を感じる」 


女賢者「光属性...通りで感じたこともない魔力なわけです」 


大賢者「海底王国や、その魔剣士のときに帯びたのは光属性のなにかじゃ」 


帽子「...そんな大層な武器なのかこれ」 


大賢者「うむ、大事にするがよい...そうすれば自身も強くなる」 


スライム「...難しくなってきた」 
326: :2018/12/01(土) 23:48:17.53 ID:
大賢者「次で最後じゃ..."魔闘士"と"魔剣士"については宛がある」 


帽子「...いったい何者なんだい?」 


大賢者「あれは魔王軍ではなく、魔王の息子"魔王子"の付き人達じゃ」 


帽子「魔王子...?」 


大賢者「じゃが、魔王子は数年前に行方不明になったと噂されておる」 


帽子「...もしかして彼らはその魔王子を探しているのか」 


大賢者「うむ...そして、もしかしたら魔王子は交友的かもしれんぞ」 


帽子「え、なんだって...?」 


大賢者「魔王子が失踪した直前に...父の政策が気に入らず、歯向かったと噂もたっている」 


大賢者「可能性の話じゃが、魔王子と利害の一致ということで味方にできるかもしれん」 


帽子「...魔王の息子となれば、色々と心強いな」 


大賢者「...魔王城に向かいつつ、魔王子も探してみればどうじゃ?」 


大賢者「そしたら、魔王子に平和的交渉を...とにかく可能性が増えるってことじゃな」 


帽子「...そうだね! 探したほうが良さそうだ!」 


隊長「それなら、あいつらより先に魔王子を見つけなければな」 


帽子「そうだね...魔王子がどんな考えをしているのか置いておいて、彼らがいては交渉する暇もない」 


隊長「...どうやら、次の目的が決まったようだな」 


ウルフ「がんばるっ!」 


スライム「魔王の息子...怖かったらどうしよう...」 


魔女「どっちにしろついていくだけよ」 


帽子「準備ができ次第、出発だ!」 


大賢者「ふむ、では出発時にまた尋ねれおくれ」 


女賢者(...ごちそうさまでした) 


魔女(どうでもいいけど、この子すごい食べてたわね...) 


隊長「魔女、これも複製できるか?」 


魔女「できるけど...ってこれは?」 


隊長「これは手榴弾だ、爆弾だな」 


~~~~ 
327: :2018/12/01(土) 23:49:09.98 ID:
~~~~ 


大賢者「それにしても、海底の戦争を止めるなんてな」 


帽子「あれはさすがに骨が折れたよ」 


スライム「なんかすごいことしてたんだね」 


隊長「...準備できたぞ」 


魔女「おまたせ」 


魔女に手榴弾を複製してもらった。 

だがその間に帽子は1つ案を持ち出してきた。 

それは冒険のしおり、これから先の目的地についてだ。 


帽子「キャプテン」 


隊長「どうした」 


帽子「一度、塀の都に寄ってもいいかい?」 


帽子「民になにもいわずに出て行って、心配をかけてると思うんだ」 


帽子「...一度、旅を宣言してこないとって思ってね」 


隊長「...たしかに、そうとも言えるな」 


魔女「それなら、そこで旅の支度をするっていうのはどう?」 


帽子「それはいいね、そうしよう」 


隊長「それじゃ、きた道を戻るとするか...」 


大賢者「まてまて、そこで出番のようじゃな」 


女賢者「転地魔法の出番ですね」 


隊長(例の魔法か...) 


隊長「...では、頼む」 


帽子「...大賢者様、本当にありがとうございました」 


大賢者「いいんじゃ、いいんじゃ」 


大賢者「皆がいなければ、死んでいたし...女賢者も成長しなかったじゃろう」 


女賢者「...帽子さん、きゃぷてんさん...どうかご健闘を」 
328: :2018/12/01(土) 23:49:52.95 ID:
大賢者「...復讐者の言葉が本当なら、まだ時間があるようじゃな」 


大賢者「魔界に突入するための準備をしっかりするんじゃぞ...」 


帽子「えぇ、問題は魔界の戦闘がどれほどのものか...」 


大賢者「大丈夫じゃ、魔剣士や魔闘士より強い者はそういないはずじゃ...」 


大賢者「それに打ち勝ったのなら、きっと魔界でも勝てる...」 


大賢者「...話が長くなってしまった、では気をつけるのじゃぞ」 


隊長「あぁ...また会おう」 


帽子「さらば...」 


魔女「...この恩は忘れないわ」 


スライム「がんばってくるよ!」 


ウルフ「バイバイ!!」 


大賢者「..."転地魔法"」 


隊長たちが光にまみれる。 

光が消えると隊長たちも消えていた。 

魔法が彼らを遠くまで運んでくれた。 


大賢者「...頼んだぞ」 


女賢者「ご達者で...」 


大賢者「ところで、1階を修理せねばじゃのう...」 


女賢者「げぇ...」 


~~~~ 
329: :2018/12/01(土) 23:50:35.01 ID:
~~~~ 


隊長「ここは...」 


気がつくと、彼らは草原に足を踏み入れていた。 

見覚えがあるここは、草原地帯。 

大賢者の魔法が、確かに彼らを運んでくれた。 


帽子「すぐそこに塀の都があるね」 


スライム「わたしたちはどうしよう...」 


隊長「...お前たちはここで待機しててくれ」 


帽子「悪いね...ここは魔物への偏見があるんだ」 


ウルフ「わんっ!」 


魔女「はいはい、早く戻ってきてよね」 


隊長「あぁ...なにか欲しい物はあるか?」 


ウルフ「おかしっ!」 


スライム「お水っ!」 


魔女「うーん...あっ、錬金術に火種と紙がいるの」 


隊長「そうなのか」 


魔女「一応今もある程度あるけど...予備も買っておいて!」 


帽子「うん、わかったよ」 


隊長「...ではいってくる」 


~~~~ 
330: :2018/12/01(土) 23:51:28.09 ID:
~~~~ 


門番1「止まれ」 


門番2「...この前の奴じゃないか」 


相変わらず、門番の2人は隊長を呼び止める。 

だがそこにはもう1人いる、その彼は帽子を脱いだのであった。 


隊長「...」 


帽子「いや、私だ...通してくれないか?」 


門番1「──お、王子様!?」 


門番2「いままでどちらに...まさか、そいつに連れさらわれていたのですか!?」 


帽子「違うよ、彼は私を護衛してくれていたのさ」 


門番2「し、失礼いたしました...」 


帽子「いや、勝手にいなくなった私に非がある...」 


帽子「悪いが、通らせてもらうよ」 


門番1「はっ! どうぞお通りください!」 


隊長「...本当に王子だな」 


帽子「いや、今は帽子だよ」 


~~~~ 
331: :2018/12/01(土) 23:52:41.84 ID:
~~~~ 

帽子「──な、なんだこれは...!?」 


人混みは前回きた時と同じだが、明らかに様子がおかしい。 

街には、魔物に対しての掲示物が散乱されていた。 


隊長「こんなに魔物は恨まれているのか...?」 


帽子「...魔物死すべし、騎士団が魔物駆除作戦決行、根絶やしにしろ...なんて物騒なことを書いているんだ」 


隊長(何だこの街...なにか違和感...雰囲気を感じる...) 


隊長(そうだ...これは神と名乗る者の────)ピクッ 


隊長「──帽子をかぶれ!」 


帽子「──ッ!」サッ 


町民1「貴様ら、よそ者だな...これを読めッッ!!」グイッ 


帽子「これは...聖書?」 


この世界にも宗教は存在する。 

しかしこの宗教の教え、昔から魔物を悪く扱うモノであった。 

それがこの都の魔物嫌いを助長させてしまったのか。 


隊長「まさか...これを読んでか...?」 


帽子「い、いや...聖書自体は昔から読まれていたさ...この都にもある程度は浸透していた」 


帽子「確かに、魔物を悪く書かれていたけど...ここまで煽られるようなはずでは...」 


帽子「これではまるで...」ピクッ 


そこで、ある張り紙が目に入る。 

その内容はこの都の王の謁見を伝えるものであった。 

なぜ今になって昔から読まれていた聖書に煽られてしまったのか、答えはこの国の者に聞くしかない。 


帽子「...」 


隊長「いくぞ...」 


帽子「あ、あぁ!」 


~~~~ 
332: :2018/12/01(土) 23:53:50.96 ID:
~~~~ 


帽子「間に合った...」 


隊長「あぁ...どうなっているんだ...?」 


広間にたどり着いた、そこは人だかりでとても進む事はできない。 

そして中心の櫓に存在するのは当然彼の父であった。 

これを王と呼ばずになんと呼ぶのか、彼はついに発言を行う。 


王「妻は...私の優しい妻は...庭にケガをしている魔物を見つけて...癒してあげていた...」 


王「当時の私は魔物に嫌悪感をもっていなかった...とても微笑ましいとおもっていた...」 


王「なのに...魔物は恩を仇で返した...!」 


王「私の妻は...憎きことに、魔物に殺された...」 


王「...赦されることではいッ!!」 


町民1「そうだそうだ!」 


町民2「魔物を根絶やしにしろッッッ!!」 


町民3「殺せッッッッ!!! 魔物を殺せッッッ!!!!」 


王の言葉に煽られて、町民たちは興奮してゆく。 

父の言っていることは事実ではないかもしれない、帽子はそれに怒りを感じ始めていた。 

なぜ決めつける、謀殺したのは魔物ではないかもしれないというのに。 


帽子「ど、どうなってるんだ...ッ!?」 


隊長「落ち着け...」 


王「...そして、私の最愛の息子...」 


王「それも行方不明に...きっと魔物の仕業であろう...」 


町民4「なんだって!?」 


町民5「やっぱり、魔物は信じられん...」 


帽子「待て、私はここに────」ダッ 


隊長「──ッ!」ガバッ 


あらぬ発言に、帽子が声を上げようとした。 

それを隊長が抑える、ここで動いてはいけない。 


帽子「ど、どうして止めるんだッ!?」 


隊長「今注目をされたら、何が起こるかわからん...ともかく抑えろ...」 
333: :2018/12/01(土) 23:54:42.13 ID:
王「そして私は...神から啓示を頂いた...魔物を根絶やしにしろと...」 


王「私は決断した...城の兵士たちで騎士団を作成し、魔物を駆逐することを...」 


王「彼らたちなら草原地帯一辺を駆逐してくれているだろう...その神の力を得た装備を持つ彼らなら」 


帽子「...ッ!」 


隊長「...」 


隊長(まるで悪質なCult...読み手の曲解だ) 


帽子「く、狂っている...こんなもの...まるで神の狂信者だ...」 


隊長「...」 


さすがの隊長も、冷静いられなくなりそうだった。 

しかし、王の一言でふたりとも青ざめてしまう。 

それはなぜなのか、騎士団と呼ばれる者たちが影響していた。 


王「──そして今日! 騎士団が帰ってくる!」 


町民6「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 


町民7「祭だ! 祭りを開け!!!」 


町民8「穢れた魔物が少しでもいなくなったのね!」 


帽子「キャ、キャプテン...?」 


隊長「ッ...!?」 


帽子の顔が真っ青になる、隊長も硬直してしまう。 

騎士団は草原地帯の魔物を駆逐した、ならば彼らはどこにいるのか。 

彼らはどこからこの都へ帰還するのか、それは魔女らがいる草原地帯である。 


帽子「──も、戻るぞ!!!」 


隊長「──あ、あぁ!」 


彼らはきた道を戻ろうとする、だが時はすでに遅かった。 

後ろを振り返れば、そこには甲冑を着た者たちが行進をしていた。 

そして、先頭のリーダーと思わしき人物が王に向けて発言する。 


王「おぉ! 騎士団よ、よくぞ戻ってきた」 


騎士団長「はっ、募る話はありますがまずはこちらを御覧ください...」 


隊長「──なっ...」 


帽子「あああああ...」 
334: :2018/12/01(土) 23:57:13.73 ID:
騎士団長「今日、ここに帰還する際に...愚かにも都付近に居座っていた魔物を捕らえました」 


指示通りに動いてる騎士団の中から、囚われている者が3名。 

その顔は知りたくないほど知っていた、似合わない鎖でつながった首輪をしていた。 

一体なぜ、賢者の修行を終えた彼女たちがこうも簡単に囚われているのか。 


町民9「お、おい...魔物を連れてきて大丈夫なのか...?」 


騎士団長「ご安心を...神のご加護を頂いている...魔物など怖くはない」グイッ 


スライム「いたいっ...」 


魔女「放しなさいよ!」 


ウルフ「がるるるるるる...」 


魔女、スライム、ウルフは囚われの身に。 

首輪を繋がれそれを引っ張られているその姿など見たくもなかった。 

なぜ彼女たちは魔法を使わないのか、なぜか光り輝いている槍を突きつけられているからなのか。 


帽子「──キャプテン! はやくなんとかしなければッッッ!!」 


騎士団1「黙ってこっちにこい!!」グイッ 


魔女「きゃっ────」 


──ドサぁっ... 

乙女の悲痛な叫び、婦女暴行が彼の逆鱗に触れる。 

だがまだ彼は動けない、その現実味のない光景が足を縛る。 


隊長「は...?」 


帽子「──キャプテンッッッ!!!」 


ウルフ「──はなせっっ!! はなせって言ってるだろおおおおぉぉっっ!!」 


彼よりも早く動いたのは、同じく囚われている狼。 

魔女が虐げられたことをきっかけに、ウルフの感情が爆発する。 

だが抵抗虚しい、首輪が彼女を犬にしてしまう。 


騎士団2「うるさい犬だ...」グイッ 


ウルフ「ひっ────」 


帽子「──キャプテンッッッ! おいッッ!」 


──バキィッ! 

ウルフのお腹はそんな音をたて殴られた、隊長のモノに比べれば生ぬるすぎるそのパンチ。 

それが彼女の目元に涙を溢れさせる、その光景が嫌という程視認できてしまった。 


ウルフ「ぁ...ぅ...」 
335: :2018/12/01(土) 23:58:14.91 ID:
「た...たすけて...ごしゅじん...」 









336: :2018/12/01(土) 23:59:44.03 ID:
その声は誰にも回りにいるギャラリーたちには聞こえなかっただろう。 

だが消えゆくような声は、隊長にはしっかりと聞こえていた。 

感情が爆発する、ようやく彼も硬直の仮面を剥ぎ取ることができた。 


隊長「────ッ」 


隊長「...ウルフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッ!!!!!」 


声を荒げながら野次馬を押しのけて、見世物と化している場所に特攻する。 

街人たちがざわめく、そしてその場から離れようとして視界が晴れてゆく。 


町民10「な、なんだ!?」 


町民11「きゃぁあああっ」 


魔女「...キャプテンっ!?」 


スライム「帽子さんも...っ」 


ウルフ「ご...ごしゅじん...」 


騎士団長「...魔物の肩を持つ者か? 捕まえろ」 


隊長の目の前に数十人の騎士団が現れた。 

だがそれが何だというのか、彼は隊長である。 

これまで様々な障害を押しのけてきた、あまつさえは人殺しのプロでもある。 


隊長「────帽子ッ!!!」 


帽子「わかってるッッ!!!」 


隊長「──いけッッ!!」 


帽子「あぁッ!!」ダッ 


──ガキィィィイッィィンッッッ!!! 

隊長は甲冑越しにストレートを決め込む。 

拳に鈍い痛みが走るが、今はそれどころではなかった。 


騎士団1「うわあああぁっっ!?」 


騎士団2「なんで馬鹿力だ...こいつも魔物か!?」 


騎士団3「お前ら、剣を抜け!!」 


隊長が一人で騎士団を陽動し、帽子を魔女たちを助けにいった。 

人間業とは思えないその暴れっぷりに騎士団は慌てふためく。 
337: :2018/12/02(日) 00:00:58.11 ID:
騎士団長「王よ、こちらに避難を...」 


王「あ、あぁ...」 


騎士団長は帽子を察知し、王を避難させる。 

その間に帽子が彼女たちに接触した。 


帽子「──大丈夫かッ!?」 


スライム「帽子さんっ...ごめんなさい...」 


帽子「話は後だッ!」 


魔女「首輪を外して! まともに動けないわっ!」 


ウルフ「そ...そいつが...っ!」 


騎士団4「...鍵は渡さんぞ!!」 


帽子「クソッッッッ!!!!!」スッ 


──キィンッ! カチャッ! 

騎士団と帽子の剣劇が始まる、だがその優劣は明らかだった。 

この程度の騎士なら簡単に勝てるだろう、そのはずだった。 


帽子「────逃げるなッッ!!」 


騎士団4「時間稼ぎをすれば、お前の仲間などすぐに...」 


帽子(このままじゃ時間がッッッ...!!) 


時間を稼がれてしまえば、状況は不利になる。 

光を放つ槍がコチラに向いている、そして徐々に距離を詰めてきている。 

槍兵がこの剣劇に参加されては、どう考えても帽子が負けてしまう。 


隊長「──帽子ッッ!!」 


帽子「────ッ!?」 


隊長「待ってろッ...!」 


──ガッッッ! 

騎士の剣をアサルトライフルで防御する。 

彼のその眼差しは、すでに騎士団に向けていなかった。 


騎士団1「──オラァッッ!!!」ドカッ 


──ガチャンッ...! 

だがよそ見は禁物、いくら帽子の様子が気になるからといえ。 

騎士団の1人が彼のアサルトライフルを蹴飛ばした。 


騎士団1「死ね!!!!!!」 
338: :2018/12/02(日) 00:02:12.27 ID:
隊長「──ッ!」スチャ 


─ダンッ! 

彼にはもう1つ武器がある、むしろこちらのほうが恐ろしい。 

手のひらサイズのその武器、その視認性の悪さと威力が相まる。 

騎士団の持つ剣がハンドガンの射撃により弾かれる。 


騎士団1「ぐっ...剣が吹っ飛んだだと...」 


隊長「──どけッッ!」ドカッ 


騎士団1「うああっっ!?」 


騎士団2「なんて力だッ!?」 


隊長は騎士たちに捨て身のタックルを浴びせる。 

すると見世物広場と化している方向への視界が開く。 

そのまま彼は僅かな隙間へ飛び込んだ、そして構えたのは。 


隊長「────ッ!」スチャ 


──ダンッ ダンッ ダンッ! 

帽子にはその光景がスローモーションで見えていた。 

ありえない、あの小さな武器から発射される鉄のようなモノがこちらに。 

その軌道にはブレがない、とてつもない精度を誇っていた。 


帽子「なッ...!?」 


騎士団4「──うわっっ!?!?」 


──チャリンっ カラカラカラ... 

本当に僅かな隙間からあの音速で鉄を飛ばす武器を構えてた。 

1秒も経っていない、その時間で照準を合わせていた。 

それは奴の篭手を捉えていた、篭手ごと弾き飛ばされた鍵が帽子の足元に転がる。 


帽子「──みんなッ!」ガチャガチャ 


ウルフ「げほっげほっ...」 


魔女「いたた...」 


スライム「うぅ...ありがとう」 


帽子は一番ぐったりしているウルフを背負う。 

槍兵は愚か、騎士団の多数は状況を悪く思ったのか。 

少し距離を置き始めていた、逃げるなら今しかない。 
339: :2018/12/02(日) 00:02:52.83 ID:
帽子「...逃げるぞッ!」 


スライム「う、うん...っ!」 


魔女「──わかったわっ!」 


2人ともすぐに走りだそうとした。 

その時であった、肝心の人物が合流していない。 

飛び込みからの射撃を行えば、その身体は無防備になる故に。 


騎士団5「いいかげんにしろ!!!! この化け物め!!!!」ガシッ 


隊長「くッ...!?」 


騎士団6「全員でのしかかれ!」 


魔女「──きゃぷてんがっ!!」 


帽子「────そんなッ!?」 


隊長は完全に拘束された。 

帽子たちは立ち止まり、彼を助けようとする。 

すると彼は吠える、その自己犠牲が帽子を惑わす。 


隊長「俺に構うなッッッッ!!!!!!!!!!!」 


騎士団7「そいつらも逃がすな!!!!!」 


騎士団8「処刑しろッ...!!」 


帽子「──くッ...行くぞッッッ!!」 


魔女「待ってよっ!!! あいつが死んでもいいのっ!?」 


騎士団長「逃しはせんぞ...」 


気づくと進路には騎士団長が立ちふさがっていた。 

時間をかけている暇はない、逃げるか、立ち止まるかの2つ。 

その2つの選択肢が帽子を悩まさせる。 


帽子「くッ...」 


魔女「帽子っ! どうすればいいのっ!?」 


隊長「──いけえええええええええッッッッ!!」 


騎士団長「貴様ら...覚悟しろ」 


スライム「帽子さんっっ!!!」 


帽子が選択を迫られ軽く混乱する中、耳元で声が聞こえた。 

忘れてはいけない、仲間の大切さを思い出させる一言。 
340: :2018/12/02(日) 00:03:20.12 ID:
「ごしゅじんを...たすけてあげて...」 









341: :2018/12/02(日) 00:04:11.66 ID:
帽子(──あぁ、彼はいつもすぐに決断してくれていたな...) 


帽子(キャプテン...君はすごい...) 


帽子「──殺すなッ、いけッ!!」 


魔女「──"雷魔法"」 


──バチバチバチッ...! 

稲妻が彼を拘束している騎士たちにぶちあたる。 

その雷は仲間を助けたいだけである、威力は絶大でいても殺傷力はなかった。 


騎士団6「うわああああ!?!?」 


騎士団7「魔法だ!! 魔物の仕業だ!!」 


騎士団8「皆の者! 槍を...槍兵はどこに行ったッ!?」 


帽子「スライムッッ! ウルフをッッ!!」ポイッ 


スライム「──ウルフちゃんっ!」ダキッ 


なかば強引にウルフをスライムに向けて投げる。 

彼も助太刀しなければならない、あの大切な異世界の男を。 

だから、目の前の障害を斬り伏せなければならない。 


騎士団長「どこの馬の骨かしらぬが...王に恥をかかせた罰だ」 


帽子「馬の骨にめちゃくちゃにされてるのは誰だろうねッッ!!!」 


──ガギィィィィィィインッ...! 

大男と華奢な男の鍔迫り合いが始まる。 

体格では圧倒的に帽子が不利だが、なぜか帽子が圧倒していた。 

それは、ユニコーンの魔剣が彼に力を与えているからであった。 


騎士団長「ちぃぃ...貴様ら...」 


帽子「悪いけど、とっとと逃げさせてもらうよ!」 


騎士団長「...」 


騎士団1「反逆者を殺せッッ!!!」 


騎士団2「逃すなッッ!!!! 処刑だッッ!!」 


隊長「──魔女ッッ!」 


魔女「あんた達...ただじゃ置かないんだから...!」 


──バチバチバチ... 

魔女の周りに電気のオーラが纏う。 

感情が彼女の魔法を強くする、電撃が人を殺すことなど容易。 
342: :2018/12/02(日) 00:05:16.40 ID:
隊長「...殺すなッッ!!!」 


魔女「わかってるっっっ!!!!!!!!!!」 


──バチィンッッッ! 

その言葉と裏腹に、雷魔法が最高の威力に達した音が聞こえる。 

それには訳があった、なぜ魔女たちが捕まっていたのかが理由であった。 


魔女「こいつら! 魔法を無力化してくるのよっ!!」 


隊長「...何ッ!?」 


魔女「そうじゃなきゃ、簡単に捕まらないわよっっ!!!」 


騎士団9「恐れるな! 我々には神のご加護がある!!」 


騎士団10「囲め!!! 逃すなッッ!! 槍兵の到着を待てッ!」 


スライム「魔女ちゃん!」 


魔女(本当は私がウルフに治癒魔法をしたいけど...そんな余裕ないっ!) 


魔女「スライム! 私たちが壁になるからウルフを癒やしてあげてっっ!」 


スライム「うん!」 


隊長「スライムも治癒魔法を使えるのか!」 


魔女「そういうのは後! それより前ッ!!」 


騎士団10「貴様の罪は重いぞっっ!!!」 


隊長「──デヤッッッッ!!!!」 


──ガキィィィィィィンッ!!!! 

鉄を殴る音が響き渡る。 

彼の手はもう血だらけ、アドレナリンが痛みを緩和させていた。 


騎士団10「こ、こいつ...鎧越しにこの威力...!」ガクン 


隊長「くっ...拳が痛むな...」 


スライム「..."治癒魔法"」ポッ 


ウルフ「あ...ありがとっ!」 


魔女のものと比べると、少し頼りない光がスライムから現れる。 

それでもウルフを癒やすのには十分であった。 

気力を取り戻した狼は立ち上がった。 
343: :2018/12/02(日) 00:06:48.47 ID:
騎士団9「突撃しろっっっ!! 何を恐れているっっ!!!」 


騎士団11「あの人間、化け物みてぇだっっ!!!」 


隊長(...魔法は無力化してくる奴がいるみたいだな、ならば頼れるのは物理的な攻撃だけだ) 


隊長「...俺とウルフで突破するぞ! 魔法はだめだッッッ!!」 


隊長「ウルフ! 殺さない程度に力を発揮しろッッッ!!」 


ウルフ「わかっった!!」 


スライム「帽子さんはっ!?」 


隊長「あっちだッッ!!! いくぞッ!」 


ウルフ「――──ハッ!」 


──ダダダダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!! 

その蹴りからは、魔剣士が使った剣気のような質量のある何かが飛び出していた。 

それが何十回にも及ぶ連続蹴りから発せられる、威力と殲滅力はこの場にいる者の中で一番。 

ウルフは立ちふさがった騎士団のすべてを退けた。 


隊長「...あとで褒めてやる!」 


ウルフ「やった!!」 


魔女「行くわよっ!!」 


~~~~ 


~~~~ 


帽子「──よっと」 


──ギィンッ カンッ!! ガギィィンッ!!! 

細い一撃が、騎士団長の剣を押しのける。 

魔剣士と戦い、圧倒的な経験を積んだ彼に勝てる人間などそうそういない。 


騎士団長「貴様...やるな...」 


帽子「それはどうも────」 


──ガギィィィィイィィィィィイィィィンッッ!!! 

完全に冷静さを取り戻した彼。 

そんな帽子に騎士団長は剣を弾き落とされてしまう。 

勝敗はついた、神のご加護とは何だったのか。 


騎士団長「くっ...剣が...」 


帽子「剣術に神のご加護は効かなかったみたいだね────」 
344: :2018/12/02(日) 00:07:55.98 ID:
騎士団12「──一斉にやるぞッッ!!!」スッ 


騎士団13「者共! かかれぇぇええええいっっっ!!!」 


帽子「──ッ!?」 


──ザクッ ザクッ! ザクッ!! 

帽子は突如として囲んできた騎士団に刺突される。 

油断したわけではない、彼だもなかなかの手練であった。 

だがその剣撃は不発に終わる、彼らが斬ったのは帽子ではなく水であった。 


帽子「...!」ゴボボ 


騎士団12「な、なんだ!?、水!?」 


スライム「帽子さんっ! 大丈夫っ!?」 


帽子(そうか、これはスライムの中か...!)ゴボボ 


少し大きくなったスライムが帽子を体内に取り込む。 

水に剣を刺してもなにも起きない。 


隊長「出来したッッ! ウルフッ!!」 


ウルフ「あたたたたたたたたたたっっ!!」 


──ダダダダダダダダダダダダッッッ!!! 

今度は拳の百烈拳が繰り出される。 

当然、そこからは拳気と比喩できるモノが発射される。 

それが騎士団を屠るのは簡単であった。 


帽子「...ふっ、そういえば初めて全員で闘うね!」 


隊長「あぁ!」 


魔女「そういえばそうね」 


スライム「ふっふっふ...私に物理攻撃は無意味だよ!」 


ウルフ「ガルルるるるるるるるるっっ!!」 


隊長「...このまま前方を強行突破だッ!!!」 


魔女「それなら時間を稼いで! 私に策があるわよっ!」 


スライム「あれをやるのね!」 


ウルフ「ご主人! 魔女ちゃんを守ってね!!」 


隊長「まかせろッッ!!!」 
345: :2018/12/02(日) 00:09:13.15 ID:
騎士団14「覚悟ッッ!!!」ブンッ 


帽子「おっとっとっ! そうはいかないよ!」 


魔女を護るべき、仲間の4人がそれぞれ抵抗する。 

隊長はハンドガンや体術で、ウルフは卓越した格闘技で。 

帽子は剣術で、そしてスライムは己の身を盾にすることで騎士団の攻撃を無力化させる。 


魔女「ブツブツ...」バチバチ 


魔女「ブツブツ...」バチバチバチ 


魔女「ブツブツ...」バチバチバチバチ 


――――――バチィンッッッッッッ!!!!!! 

そして、彼女は充電し終えた。 

今まで聞いたことのないその雷の音は凄まじかった。 


魔女「いくわよっっっ!!!!!」 


隊長「―――ッ!」 


魔女「これでも無効化できるかしらっ! "雷魔法"ッッ!!!!!!」 


――――――――――――――! 

聞こえない、何も聞こえなかった。 

その尖すぎる雷は、すべてを飲み込む。 


騎士団14「よけろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 


魔女から超巨大な、とてつもない威力の雷球がとび出す。 

雷球が通った場所には何も残らなかった、これが賢者の修行を終えた者に許される魔法。 

人が巻き込まれた形跡は無し、絶妙な軌道であった。 


魔女「...どうだっ!」 


隊長(Comicbooksでこんな技を見たことあるぞ...) 


帽子「...このまま城の外へッ!!」 


そんな様子を影から見張る者が。 

先程剣を弾かれてしまった、この国の兵の長。 


騎士団長「...」 


騎士団1「団長、死者は今のところ出ていません、どういたしますか!」 


騎士団長「...アレをもってこい...1人でも捕まえてみせる」 


~~~~ 
346: :2018/12/02(日) 00:10:34.49 ID:
~~~~ 


帽子「もう少しで外だ...ってッ!?」 


魔女「──あいつらっ!!」 


精鋭1「精鋭部隊の名にかけて、貴様らを捉える!!」 


精鋭2「この光り輝く槍を受けてみろッ!」 


スライム「あいつら!! 魔法を無効化する奴らだっっ!!!」 


精鋭3「この槍の前では魔法は使えんぞ...魔物共め...っ!」 


隊長「あいつらか...ッ!」 


魔女「...だめ、魔法が使えないっっ!!!」 


帽子「クソッ!!」 


精鋭4「隙ありっっ!!!!」ブンッ 


魔女「きゃっ!!!」 


帽子「しまったッ!!!」 


隊長「まずいっ! 分断されたッッ!!!」 


隊長と帽子、魔女とウルフとスライムに分断されてしまった。 

それよりもスライムたちの様子がおかしい、どうやらあの槍が封じているのは魔法だけではなさそうだった。 

だがそれを伝えている暇などない、隊長にも襲いかかる者が続く。 


隊長「──ッ!」 


精鋭1「行かせはしないぞ...っ!」 


隊長(...殺すことができるのなら、簡単なのだが) 


隊長(流石に鎧相手に銃殺は厳しい...やはり頼れるのは体術か) 


隊長「──ウルフッッ!!! 俺たちが行くまでスライムと魔女を守ってくれっっ!!」 


ウルフ「うんっっ!!!!」 


スライム「ごめんね、ウルフちゃん...」 


魔女「あいつら...本当に厄介ね」 


精鋭2「魔物め...殺してやる...」 
347: :2018/12/02(日) 00:11:29.73 ID:
スライム(──そうだ!) 


スライム「ウルフちゃん! 魔女ちゃん! おねがい!」 


魔女「──えっ!?」 


魔女(スライムの身体の一部がどこかに伸びている...?) 


スライム(どこだ...どこだ...っ!) 


ウルフ「あたたたたたたたたっっっ!!!」 


──ダダダダダダダダダダダダッ!!!! 

ウルフの拳気が精鋭たちを近寄らせない。 

だがそれはいつまで持つのか、獣だとしてもその体力は有限である。 


精鋭3「これは魔法ではない! 神のご加護は無意味だっ!!」 


精鋭4「チィィ、近寄れん...!」 


精鋭5「攻撃の合間を狙えッッ!!!」 


精鋭6「獣とはいえいずれは体力が尽きるであろうっ!!」 


魔女「くっ...ウルフが止まるまでにスライムの策がきまれば...!」 


ウルフ「はぁっはぁっ...」 


──ダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!! 

心なしか速度が落ちた、鍛え上げられたといってもまだその身体には慣れていない。 

彼女は力を得てからまだ1週間も経っていない、体力のペース配分など熟知できるはずがなかった。 


スライム(──これだ!!) 


ウルフ「も、もうダメ...っ!」フラッ 


魔女(キャプテン達も足止めされてる...もうだめっ...!) 


スライム(えぇっと、確か...!) 


(ウルフ「これ、どうやってつかうの?」) 


(隊長「こうやって、ねらいをつけるんだ」) 


(ウルフ「こう?」) 


(隊長「そうだ、で、そのひきがねをひけばおわりだ」) 


精鋭3「──かかれぇっっ!!!!」 


──バババババババババッッッ!!!! 

強烈な発砲音、だがその狙いは甘く本来の威力は発揮されなかった。 

しかし、その狙いの甘さが人を殺さずに済むものであった。 
348: :2018/12/02(日) 00:12:55.95 ID:
精鋭3「うわあああっっっ!?!?」 


魔女(この音...きゃぷてんの武器の音?) 


スライム「うひゃぁ~...すごい重たいし反動がきつい...」 


魔女「──それを持ってこようとしてたのね!」 


スライム「なんとかみつけたよ...身体の一部を伸ばして...」 


ウルフ「スライムちゃん、ありがとう!」 


精鋭1「くそっ...」 


隊長「どうやら分断作戦も失敗のようだな」 


──ガギィィィィンンッ!!! 

分断していた精鋭たち、その武装が徐々に解除される。 

帽子の剣術や、隊長の蹴りなどにより弾き落とされた、この場には大量の剣が落ちてる。 


帽子「キミの剣もどこかへ行ってしまったよ」 


精鋭1「畜生...っ!」 


隊長「...よし! このまま門から出るんだッッ!!!!」 


スライム「な、なんとかなりそうだねっっ!」 


魔女「早く行くよっっ!!!」 


ウルフ「わんっ!」 


すると、士気を挙げるためかある人物が大声を挙げる。 

それは唯一無二の存在、彼の大切な肉親である。 

だが今は、父親を見るその目はとても冷ややかであった。 


王「反逆者共を捕まえるんだっっっ!!!」 


帽子「――父さんっ...!」ピタッ 


隊長「帽子――ッ!? 足を止めるなッ!」 
349: :2018/12/02(日) 00:14:15.85 ID:
帽子「――――っ!?」 









350: :2018/12/02(日) 00:16:11.46 ID:
──グサァッッッ...! 

その時、彼の胸を貫いたのは。 

赤黒く染まるその弓、一体誰から放たれたのか。 


騎士団長「...私の弓技からは決して逃れることは出来んぞ」 


騎士団1「おおおおおおおおおおおおおおおっっっ!」 


精鋭3「ついに一人を殺したぞっっ!!!」 


王「この勢いに続けぇっっっっ!!!」 


帽子「―――っ」 


──バタンッ...! 

彼はそのまま、力を失い倒れる。 

もう起き上がれない、身体が冷たくなる感覚が迫る。 


スライム「──いやあああああああああああああああああああああああああああああっっっ」 


スライム「いやだああああああぁぁぁぁぁぁっ、帽子さんっっっ」 


魔女「う、嘘...でしょ...?」 


ウルフ「──っっ!?」 


隊長「...帽子? 帽子ぃ...?」 


帽子「あ...く...」 


隊長「──帽子ッッ! しっかりしろッッ!!!」 


隊長(まずいッッ!! 完全に胸を貫いているッッ!!!) 


隊長は応急的に手で止血をする。 

手が紅に染まる、だがそれは胸から出る一方。 

止まらなかった、どうしても止めることはできなかった。 


隊長「血が止まらないッ! 止めてくれ...ッ!」 


帽子「キャプ...テン...」 


隊長「喋るなッ...! 喋らないでくれ...命に関わる...ッ!」 


スライム「"治癒魔法"っっ!! "治癒魔法"っっっ!!!!」 


覚えたてのその魔法、しかし発動しない。 

憎たらしいほどに輝くあの槍がそれを許してくれない。 


精鋭2「無駄だ! 魔法はこの槍の前では使えんぞ!」 


騎士団5「今だ! かかれっ!!!!」 
351: :2018/12/02(日) 00:20:21.55 ID:
ウルフ「―――ッッッ!」 


──ダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!! 

その威力は今までのとは桁が違う。 

彼女の心理の奥底には、理性があった。 

だが今は違う、この拳気は人を殺せてしまうかもしれない。 


騎士団5「ぐあああああああああああああッッッ!?」 


精鋭2「よ、鎧が砕けた...今までの威力じゃないぞッッ!!!」 


ウルフ「フッー...! フッー...! 近寄るな...ッッ!!!」ギロッ 


精鋭2「ひっ...」 


スライム「"治癒魔法"っっっ!!!」 


魔女「スライムっっ! 落ち着いてっっ!!!」 


スライム「いやだっ! "治癒魔法"っっ...お願いっっ!」 


隊長「帽子ッッ! 死ぬなッッ!!!」 


帽子「み...んな...わ...たし...の...夢...まかせ...たよ...」 


隊長「任せるなッッ!!! 夢を実現させるのはお前だッッ!!!」 


スライム「死なないでっっ!!! 帽子さんっっ!!!」 


帽子「くやしい...ま...だ...やりた...いこと...あるの...に...」 


魔女「嘘でしょ...お願い...夢なら覚めて...っ!」 


隊長「お前はここで死ぬような奴ではないッ...弱音を吐くなッッ!!」 


帽子「...魔女...さん...あなたの...ま...ほう...にはお世話に...なった...よ」 


魔女「やめて...っ」 


帽子「ウルフ...キミ...の...勇敢さ...そして...癒やしは...素晴らしかっ...た」 


ウルフ「ひ...ぐっ...」 


帽子「スライム...私は...キミに...恋を...してた...」 


スライム「わたしもよ......置いて行かないで...」 


帽子「キャプテン...君は...最高の仲間だ...よ...」 


隊長「...」 


帽子が隊長の手を強く握る。 

紅きその手が、帽子の美しい手を染め上げる。 

その手はあの時の、復讐者のような。 
352: :2018/12/02(日) 00:21:34.57 ID:
帽子「頼む...どうか...平和を...勝ち取ってくれ...っ!」 


帽子「憎しみなどない...世界にしてくれ...」 


隊長「...あぁ、任せろ」 


帽子「...あり...がとう...友よ」 


強く握られていた手は次第に弱々しくなっていく。 

命が尽きるその時は、あまりにも呆気なかった。 

帽子が息絶える、それと同時に帽子が外れて綺麗だった顔を見せてくれた。 


帽子「――――」 


隊長「...」 


スライム「やだ...やだやだ...もういや...」 


魔女「こんなのってないよ...」 


ウルフ「...」ポロポロ 


町民1「お、おい...あれって...」 


騎士団6「王子じゃないかっっっ!?」 


騎士団長「なっ────」 


王「────なんだとっ...!!!!」 


次第に王子の死が都を駆け巡る。 

だがそれが何だというのか、失った者は二度と戻ることはない。 

彼らは立ち尽くすことしか許されない、王子の遺体を連れ去ろうとする彼らを止めることすらできなかった。 


隊長「...いくぞ」グイッ 


隊長(軽い...こんな身体で今までの死闘を繰り広げていたのか) 


魔女「...うん」 


スライム「いや...いやだよ...」 


ウルフ「スライムちゃん...いこっ...?」 


先程まで死に物狂いで隊長たちを追いかけてきた。 

だが、今になってはもう誰も跡を追おうとするものは誰もいなかった。 

そこに残ったのは、夕焼けの紅と彼の紅であった。 


~~~~


 355: :2018/12/02(日) 21:43:59.74 ID:
~~~~ 


隊長「...」 


魔女「スライム...」 


スライム「ひっぐ...ぐすっ...」 


ウルフ「スライムちゃん...」 


夕焼けに染まりながら歩き出す。 

頭を強く殴られたような感覚が続く、これは本当に現実なのか。 

そんな時、隊長とスライムはあることを思い出した。 


隊長(ここ、確か...) 


(帽子「綺麗だな...墓はここに立てたいね」) 


隊長「...ここに墓を建てよう」 


スライム「...ここって帽子さんが言ってた場所だよね...ぐすっ」 


隊長「...冗談が現実がなるなんてな」 


隊長「...ウルフ、手伝ってくれ」 


ウルフ「...うんっ」 


隊長とウルフは自分の手が泥だらけになるのを厭わずに、穴を掘り始める。 

やがてその穴は、人が入れるほどの大きさへと変わる。 

土葬、それは彼の世界でも行われる弔いである。 


隊長「...このくらいでいい」 


ウルフ「...」 


隊長「...埋めるまえに、声をかけてやれスライム」 


スライム「うん...」 


隊長「...俺たちはすこし距離をとるぞ」 


魔女「わかった...」 


ウルフ「...」 


スライムのプライバシーに配慮して、聞こえないように距離をとる。 

そんな心配りができる程に彼は冷静であった。 

仕事柄、仲間が命を失うことは慣れている、嫌な慣れであった。 
356: :2018/12/02(日) 21:44:59.38 ID:
隊長「...」 


ウルフ「...」 


魔女「...そもそも、私たちが捕まらなければ...」 


ウルフ「ひっぐ...」 


隊長「捕まったのは魔法を封じられて、ウルフは魔女たちを人質にとられた...ってところか」 


魔女「...そうよ」 


隊長「...」 


隊長「...殺したのはお前たちではなく、あの民たちだ」 


魔女「...そう、そう言ってくれるだけで助かるわ」 


ウルフ「帽子...」 


スライム「...もういいよ、ありがと」スッ 


隊長「...わかった、埋めてくる」 


隊長「...」 


帽子「────」 


隊長「......帽子」 


帽子「────」 


隊長「...Rest in peace」 


~~~~ 
357: :2018/12/02(日) 21:46:10.68 ID:
~~~~ 


隊長「...埋めてきたぞ」 


魔女「...それは?」 


隊長「...あいつの形見だ、この冒険で役に立てよう」 


亡き帽子が愛用していた、このレイピアのような剣。 

そこには彼の意思、それはユニコーンをも懐かせるモノ。 


魔女「...そうね、それなら帽子も喜ぶわね」 


隊長「あぁ...さて、進むか」 


魔女「...そうね」 


スライム「...ごめんなさい、わたしはいけないよ」 


スライム「わたしはここで...帽子さんといる...」 


隊長「...そうか...そうだな、スライムは帽子に着いてやってくれ」 


ウルフ「...あたしも、スライムちゃんといる...ごめんなさいご主人...」 


ウルフ「せっかく強くなったのに...やくにたてなくてごめんなさい...」 


隊長「いや、いいんだ...お前たちは十分助けになった...だからそんな悲しいことを言わないでくれ」 


隊長「...2人とも、気をつけろよ」 


ウルフ「うん...」 


スライム「これ...忘れてるよ」 


隊長「...拾っといてくれたのか、ありがとう」 


スライムが拾ってくれた、彼の主要武器。 

手渡されたアサルトライフルを握るその腕は、とても力強かった。 


隊長「...魔女、行くぞ」 


魔女「...またね、ウルフ、スライム」 
358: :2018/12/02(日) 21:47:00.25 ID:
スライム「...まって!」 


隊長「...どうした?」 


スライム「...これ、あなたの分」スッ 


隊長「...これは?」 


スライム「帽子さんに売っちゃったから...持ってないんでしょ?」 


スライム「きゃぷてんさんも...とっても大事な友だちだから」 


隊長「...あぁ」 


隊長は少し力みながら、手渡されたものを握る。 

手のひらサイズのボールみたいなものをしまいながら先を進みはじめる。 

こうして、隊長はスライム、ウルフ、そして帽子と別れを告げた。 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「...」 


魔女「...」 


隊長「...魔王はどこにいるんだ?」 


魔女「...魔界の中心にある魔王城ね」 


魔女「人間界の端っこにある、魔界に通ずる大橋を渡れば魔界に行けるのよ」 


魔女「そこへ行くには...このまま山を登って麓の村から"暗黒街"に向かう直線距離が近いわ」 


魔女「山を遠回りすることもできるけど、面倒くさいでしょ?」 


隊長「...そうだな」 


隊長「麓の村か...久しぶりだな」 


隊長(少女は元気にしているだろうか...) 


魔女「今日は山にある大賢者の別荘に泊まろうよ」 


隊長「...あぁそうだな」 


~~~~ 
359: :2018/12/02(日) 21:48:05.92 ID:
~~~~ 


魔女「ふぅ...久々ね...ここ」 


隊長「お前と出会ったのはここだったな」 


魔女「...そうね、それより早く入りましょう?」 


隊長「ここの景色は綺麗だったが...今日は天候が悪いみたいで見えないな」 


魔女「そもそも、夜だしね」 


隊長「...」 


魔女「...私...隣の部屋で寝てるわね」 


隊長「...あぁ、おやすみ」 


本当なら話したかった、だがそんなことはできない。 

隊長は1人、書斎の椅子に腰掛けて休息を取ろうとする。 

溶け切っていない氷の影響でやや肌寒い、そして張り詰める静寂が彼を狂わせる。 


隊長「...帽子」 


隊長「...」 


隊長「...」 


隊長「...」 


隊長「...」 


旅で誤魔化していたが、感情がじわじわと押し寄せてくる。 

1人というものは、これ程にも残酷な孤独なのか。 

耳をすませば、聞きたくない彼女の声が聞こえてしまう。 
360: :2018/12/02(日) 21:48:31.10 ID:
「ひっぐ...ぐす...えぐっ...」 









361: :2018/12/02(日) 21:49:17.82 ID:
隊長「────...ッ」 


隊長「ッ、Fuckッ...!」 


隊長「俺は死と隣合わせの仕事をしている...っだから慣れてるのに...っ!」 


隊長「グッ...ウゥッ...!」 


隊長「帽子ぃ...ッ!」 


~~~~ 


~~~~ 


魔女「おはよう!」 


隊長「...元気だな」 


魔女「いつまでも、悲しい顔してたら、あいつだって喜ばないわ」 


隊長「...」 


隊長には帽子の存在が大きすぎた。 

この異世界での、かけがえのない親友であった。 


隊長「...そうだな」 


魔女「それじゃ、麓に向かおっか」 


魔女「ちゃんと、この山を凍らせてたのは氷竜ですって弁解してよね!」 


隊長「...あぁ、いくか」 


隊長(...今日も景色はみえないか) 


魔女「うわっ...霧に覆われてるわね...」 


隊長「あれなら、下山したときには晴れてるだろう」 


魔女「そうね...じゃあ行きましょうか」 


隊長「あぁ...」 


~~~~ 
362: :2018/12/02(日) 21:50:28.25 ID:
~~~~ 


隊長「────嘘...だろ...?」 


あまりの出来事に隊長は絶句する。 

麓の村、その惨劇を目の当たりにしてしまう。 

どうして、一体何が起きたのか、彼の情報処理能力は著しく劣り始める。 


魔女「なにこれ...村がないじゃない...っ!?」 


魔女「こ、これって...ば、爆発跡...?」 


隊長「...」 


―――ガサガサッ... 

その時、物音が鳴り響いた。 

あまりの光景に固まることしかできない彼がようやくハッとする。 


隊長「──少女かッ!?」ダッ 


魔女「まってっ!」 


隊長「少女ッッ!? どこだッッッ!!!」 


魔女「...落ち着きなさい、もう誰も居ないみたいよ」 


隊長「そんなはずはないッ! ここには俺の恩人がいるんだッッッ!!!」 


魔女「きゃぷてん...」 


隊長「少女ッ! 少女母ッ! いるのなら返事をしてくれッッ!!!」 


魔女「...落ち着いてっっ!」 


隊長「...FUCKッッ...どうしてこんなことにッ...!?」 


魔女「──うっ...!」 


冷静になってみると、ひどい臭いが放たれていた。 

それは人間だった物が腐り始めた、とても嫌な臭いであった。 

隊長は瓦礫に埋まってる人を見つける、それは見慣れていた人であった。 


隊長「──少女母ッ!?」 


少女母「────」 


隊長「大丈夫かッッッ!? いま助けるぞッッッ!!」グイッ 


―――ボロンッッ... 

瓦礫の下敷き担っている彼女の腕を引っ張った。 

するとそのような音を立ててしまった、何かが抜ける。 
363: :2018/12/02(日) 21:51:35.81 ID:
隊長「―――ッ」 


魔女「―――う゛っ...」 


あまりの出来事に魔女が催してしまった。 

口を抑えることで、なんとか吐き出さずに済んだ。 


魔女「げっほっ...げほっ...ひどいっ...」 


隊長「...」 


???「──いやはや、側近様の命令でまた訪れてみたら...まだ人間がいたか」 


魔女「──誰ッッ!?」 


偵察者「無礼だぞ小娘、この偵察者に質問など愚かだ」 


突如現れたその男の名は、偵察者。 

腕には例の入れ墨、どう考えても魔王軍であった。 

その口ぶりから察した、魔女は彼に追求を始める。 


魔女「...あんたがやったの...これを?」 


隊長「...」 


偵察者「あぁ、そうさ」 


偵察者「私がここの村の人間の1人を洗脳し、勇者が訪れたら自爆魔法を唱えるように仕掛けていたのさ」 


魔女「ひどいっ...許せないっ...!」 


偵察者「許さなくて結構、貴様らも同じく洗脳して有効活用してやる」 


偵察者「まぁ安心しろ、自爆魔法を使っても奇跡的に周りの人間は助かるかもな」 


魔女「...どういうことよっ!」 


偵察者「クハハ、面白い話をしてやろう」 


偵察者「ここで洗脳したものは自爆魔法でこの村を消し去ったが」 


偵察者「なんと、そいつの娘は奇跡的に助かったのだ...貴様らも同じ機会が訪れたら奇跡を祈るんだな」 


隊長「...」ピクッ 


娘という単語、それに反応してしまった。 

魔王軍が現れたというのにも関わらず、ずっと硬直していた彼が動く。 
364: :2018/12/02(日) 21:52:40.42 ID:
隊長「...おい」 


偵察者「なんだ?」 


隊長「洗脳したのは誰だ」 


偵察者「名前など知るか、金髪の村人だ」 


隊長「―――─ッ!」 


偵察者「...お喋りは終わりだ、貴様らはここで私に捕まってもらう」 


偵察者「..."拘束魔法"」 


―――――...... 

先制の魔法、その詠唱速度はかなり早い。 

この惨劇を前に軽く平常心を失っている魔女には反応できない代物であった。 

だがおかしい、彼の魔法は発動しなかったのだった。 


魔女「...あれっ?」 


偵察者「なっ!? なぜ魔法が使えぬッ!?」 


魔女も偵察者も理解が出来ない、その一方輝かしい光が現れる。 

原因はこれしかない、帽子の魔剣が光り輝く。 


隊長「...□□」 


偵察者「なっ...!」 


偵察者「その光...! 光魔法かッ!?」 


隊長「...お前」 
365: :2018/12/02(日) 21:53:20.23 ID:
「楽に死ねると思うなよ...」 









366: :2018/12/02(日) 21:54:29.69 ID:
魔女「ひっ...」 


──ダン□ッ! 

殺意と共に放たれた、白き音を伴う銃弾。 

偵察者の右足にハンドガンを発砲する、当然偵察者は跪いてしまう。 


偵察者「──ぐぅぅぅぅうぅ!?!?」ドサッ 


偵察者(なに...!? 私の身体は側近様によって強化されているはずっ!?) 


隊長「...どこをみてる」 


偵察者「──速いッ!?」 


──バギィィィィィィィィィィイイイイイッッ!!!!! 

強烈なストレートが決まり、偵察者の身体が吹き飛ばされる。 

魔闘士程とはいかないが、人間がこの跳躍距離を出せるのか。 

とてもない怒りが彼に力を与える。 


偵察者「はぁっ...ぐぅ...なにが起こった...?」 


偵察者「はぁっ...はぁっ...た、立てん...それに...」 


隊長「...」スッ 


隊長が魔剣を抜く、その魔剣は光り輝かくモノだった。 

しかし徐々にその光は鈍く、色が濃く変貌する。 

その光景が、偵察者を震え上がらせた。 


隊長「...■」 


偵察者「な、なんだ...!? この魔力、光と闇...両方感じるぞ...!?」 


隊長「...■■」 


偵察者(まずいっ...にげなければ...)ズルズル 


──グサ■■ッッッッッッ!!!!!! 

逃げようとする偵察者の足に魔剣が突き刺さる。 

クラーケンを足止めしたこの索、同じく偵察者も餌食になる。 

剣は黒い音を交えて、彼を苦しめる。 


偵察者「があああああああああああああああああああッッ!?!?」 


偵察者(くそッ...地面にまで刺さって動けん...ッ!) 


隊長「You can't run away...」 


偵察者「ま、まて! ...た、助けてくれッ...!」 
367: :2018/12/02(日) 21:55:39.44 ID:
隊長「...」 


偵察者「悪かった...ッ! 望みはなんだッ!? できることなら叶えてやるッ!」 


隊長「...」 


偵察者「頼むっ...まだ死にたくないんだっ...」 


隊長「...DIE」 


偵察者「...へっ?」 


──ぐしゃああぁぁぁっっっ...! 

隊長は思い切り、踏み込んだ。 

この憎たらしい男の腕を。 


偵察者「ぐああああああああああああああ腕がああああああああああッッ!!!」 


隊長「...」 


偵察者「やめてくれえええ...踏まないでくれ...ッ」 


──ぐしゃあぁっっっ...! 

何度も、何度も彼は踏み込む。 

やがて奴の腕はひしゃげてしまう。 


偵察者「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁあ!!!!!!」 


隊長「DIE DIE DIE DIE...」 


──ぐしゃっ ぐしゃあっっ めきゃっっっ... 

腕に踏み心地を感じなくなると、次は足。 

偵察者という男を心が晴れるまで踏み潰す。 


偵察者「た、たすけてええええええええええええぇぇぇ...」 


隊長「DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ!」 


──ぐしゃっ ぐしゃっ ぐしゃあああっっっ ぐちゃっ 

もう、彼に踏める場所などない。 

だが隊長は止まらない、憎しみが晴れるまで永遠に。 


偵察者「あああぁぁぁぁぁぁ......」 


隊長「DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ!」 


隊長「────MAST DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEッッッ!!!」 


──ぐちゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっっっ!!!!!! 

────ぐちゃっ! ぐちゃっっ!! 

この世界にきて最も残酷な殺し方だった、だが踏みつける音は一向に終わらなかった。 

気づくともう黄昏時であった、深緑のマフラーが首元の寒さを忘れさせていた。 
368: :2018/12/02(日) 21:56:53.15 ID:
偵察者「────」 


隊長「...■■」 


隊長「...」スッ 


偵察者だったモノから魔剣を引き抜き、鞘に収める。 

すると彼を包んでいた、黒い音は消え失せた。 


隊長「...」 


魔女「ひっぐ...ひぐっ...」 


ぽろぽろっ...そんな音が聞こえるぐらい涙を流していた。 

彼の変わりように、泣くしかなかった。 


隊長「...どうしてこんなことに」 


魔女「しらないよぉ...もうやだよぉ...こわいよぉ」 


隊長「...」 


(復讐者「貴様の瞳...復讐に襲われるだろう...」) 


隊長「...もう、着いて来るな」 


隊長「俺は...またこんなことをしてしまうだろう...」 


魔女「いやだぁ...1人にしないでよ...」 


隊長「...いまからでも、村に帰るんだ」 


魔女「ひっぐ...ひっぐ...」 


隊長「...ほら、水だ...これを飲んだら行け」スッ 


隊長が水筒を取り出し渡そうとする。 

それが限界であった、我を忘れ朝から夕方まで踏みつけを行えばそうなる。 

隊長の体力は限界であった、足元はふらつく。 


隊長「――ッ...」グラッ 


魔女「──きゃぷてんっ!」 


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