369: :2018/12/02(日) 21:58:30.02 ID:
~~~~ 


隊長「...ここは?」 


帽子「...」 


隊長「──帽子ッッ!?」 


少女「...」 


隊長「少女もッッ! 大丈夫だったか!」 


隊長「どうした...? ふたりとも無言だぞ?」 


少女「...■■■」 


少女の口から、聞き取れない言語が発せられる。 

その黒い音は、隊長に鳥肌を立たさせる。 


隊長「しょ、少女...?」 


隊長「背筋が...なにが起きた...?」 


帽子「■■■■」 


──ゾクゾクゾクッッッ... 

背筋が凍りつく、その音はとても不快であった。 

大切な彼らであるはずなのに、隊長は距離を取ろうとする。 

すると、何者かに足を掴まれた。 


隊長「あ、足が...ッ!?」 


少女母「──どお゛じで...どお゛じでだずげでぐれ゛な゛い゛ん゛でずがぁああああああああ」 


隊長「────は、離せッッッ!!!!」 


隊長「やめろッッ!!! 近寄るなッッッ!!!」 


────■■■■■■■■■■■■■ 

黒が隊長の身体に触りこむ。 

まるで売女に撫でられたかのような不快感。 

吐き気まで催すそれは、隊長を狂わせる。 


隊長「触るなッッッ...!」 


隊長「誰かッ...誰か助けてくれェッッッ!!!!」 


隊長「Help...me...ッ」 


???「...大丈夫、大丈夫だから」ギュッ 


~~~~ 


370: :2018/12/02(日) 21:59:44.73 ID:
~~~~ 


隊長「―――ハッ...」 


魔女「私が...いるから...」 


隊長「はぁッ...夢...ッ!?」 


魔女「起きた...? すごいうなされてたわよ...大丈夫?」 


隊長「はぁっ...はぁっ...」 


魔女「まだ震えてるわ...」 


―――ぎゅっ... 

暖かい、乙女という者はこれほどに心安らぐものなのか。 

悪夢にうなされていた彼を癒やすのには魔法などいらない。 


魔女「...寒くない? 恐くない?」 


隊長「...魔女」 


魔女「1人じゃ...全部抱え込んじゃうでしょ...?」 


魔女「私は...ずっと一緒にいるわよ...」 


隊長「ま、じょ...」 


魔女「大丈夫だからね...?」 


隊長「...暖かい」 


魔女「...でしょ?」 


隊長「...もう、深夜か」 


魔女「そうよ...冷えて凍死するのはいやだから、こうしてましょ?」 


隊長「...凍死はいやだからな」 


魔女「...ふふっ」 


~~~~ 
371: :2018/12/02(日) 22:00:47.96 ID:
~~~~ 


隊長「...!」パチッ 


隊長「...朝か」 


隊長「...」 


魔女「すぅ...くぅ...」スピー 


隊長「...魔女、起きろ」 


魔女「ん...! ...ふわぁ~あ...おはようぅ」 


隊長「いい日差しだな...」 


魔女「そうね...ちょっといろいろ済ましてくるわね」 


隊長「あぁ...」 


隊長「...」 


起きたそこには、魔女が肌を重ねてくれていた。 

暖かい、人の温もりが彼の狂気を祓ってくれていた。 

彼女がいなければ、隊長はどのような男に変貌していたのだろうか。 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「それで、どこに向かうんだ?」 


魔女「このまま暗黒街に向かうわ」 


隊長「暗黒街?」 


魔女「魔界に最も近い都のことよ、治安は最悪よ最悪」 


隊長「なるほどな...」 


魔女「そういえば、魔王子はどうするのよ」 


魔王に歯向かい、それから消息不明になってしまったという噂。 

大賢者が言うには利害の一致でともに行動してくれるかもしれない。 

そんな彼のことをどうするか、隊長は一先ずの考えを提案した。 


隊長「...暗黒街で手がかりがあれば探そう、ひとまずな」 


魔女「わかったわ、とりあえず向かいましょうか」 


隊長「あぁ、行くか」 


~~~~ 
372: :2018/12/02(日) 22:01:55.74 ID:
~~~~ 


魔女「綺麗な紅葉ね、ここ」 


隊長「...俺がこの世界にきた時、俺はここで倒れてた」 


魔女「えっ! そうなの?」 


隊長「あぁ...もしかしたら、なにか手がかりがあるかもしれん...少し探索してみよう」 


魔女「えぇ」 


隊長「...」 


(少女「え、えぇっと...私は少女です...」) 


ここは少女が彼を助けてくれた場所、だからこそ思い返した。 

そんな彼女の父親は、偵察者の卑劣な策により無惨なことに。 

だが偵察者の話が本当なら、消息は不明だが奇跡的に助かっているとのこと。 


隊長(...奴の話によると、少女はまだ生きている) 


隊長(どうか、無事でいてくれ...ッ!) 


隊長「...」 


──スタスタッ...ガッッ! 

そんな腸煮えくり返りそうなことを冷静に考えていると。 

なにかに足が引っかかった、紅葉の落ち葉だらけ故に足元のでっぱりに気が付かなかった。 


隊長「──おわっ!?」フラッ 


魔女「な、なに? 大丈夫?」 


隊長「躓いただけだ...」 


隊長(...)ジー 


隊長「ん...! これはッ!?」 


──ガサガサガサッ... 

なんとなく、何に引っかかったのか気になった。 

躓いた箇所をよく凝視してみる、落ち葉によって全貌が見えないが、その見覚えのあるシルエット。 
373: :2018/12/02(日) 22:03:32.69 ID:
魔女「なにかあったの?」 


隊長「これは...なぜここに...ッ!?」 


魔女「それって、あんたがいつも使ってる武器に似てるわね」 


隊長「あぁ...これは俺の世界にある武器だ...なぜここに...?」 


隊長(...どこか、見覚えがあるな) 


隊長(...) 


隊長(...) 


隊長(...ッ!)ピクッ 


(犯人3「う、うごk」) 


(隊長「遅いッッッ!!!!」ドガッ) 


隊長(──あの時、犯人から蹴っ飛ばした時の奴かッ!) 


そこにあったのは、頼れる新たな武器。 

どういう因果かはわからないが、隊長と共にこの世界に訪れていたようだ。 

この武器の名はショットガン、アサルトライフルにはできない芸当をしてくれる心強い銃器。 


隊長「これは...戦力になるぞ」 


魔女「異世界の武器ってことは、すごい威力なんでしょうね」 


隊長「俺の世界の中でも、こいつは特に威力が高いぞ」 


魔女「へぇ...」 


隊長「...7発内蔵、6発付属ってところか」 


隊長「これも、弾を複製できるか?」 


魔女「むしろ、そっちのほうが単純そうで楽だわ」 


隊長「では早速頼む」 


魔女「はいはい、ちょっとまっててね」ガサゴソ 


ショットガンに付属しているシェルラックから、1発の実包を魔女に手渡した。 

すると彼女は衣服にある小さな収納から物を取り出し、錬金術の準備を行う。 

理科の実験に使いそうな容器やらマッチ、紙や針など、どれも手軽なものであった。 
374: :2018/12/02(日) 22:05:20.23 ID:
魔女「うーん...炎魔法を覚えられなかったのが悔しい」ボッ 


隊長「これに何を入れるんだ?」 


魔女「ここに紙と私の血を入れるのよ」 


隊長「血か...痛くないのか?」 


魔女「もう修行で慣れちゃったわよ...っ」チクッ 


魔女「それで、錬金術用の詠唱をするの...これは大賢者様しかしらないみたいよ」 


隊長「ほう...紙が金に変わるのか」 


魔女「そうよ、ブツブツブツ...」ポワッ 


魔女「...無事、完成ね」 


隊長「もう金になったのか」 


魔女「慣れってやつね...それじゃ、弾を貸して」 


隊長「おう」スッ 


魔女「..."複製魔法"っ!」 


容器に入ったドロドロの金が、形を変え始める。 

その現実味のない光景、やはり魔法というものは凄い。 

まるで手品師のトリックを見るような、そんな純粋な気持ちで彼は見ていた。 


隊長「おぉ...」 


魔女「あとはこれの繰り返しね...何個つくるの?」 


隊長「とりあえず6の倍数個で頼む」 


魔女「じゃあ18個ね..."複製魔法"」 


隊長「助かるぞ...魔女」 


魔女「どうってことないわよ」 


隊長(この弾は、いままでレーションに入れていた部分に入れておこう...) 


隊長(レーションには悪いが...水筒と同じ場所に...ちょっと窮屈だがしかたない) 
375: :2018/12/02(日) 22:08:27.26 ID:
魔女「それにしても...両手に今までの大きい方の武器を持って、背中に今の武器...重くないの?」 


隊長「...慣れってやつだな」 


魔女「ひぇーおそろしい、おそろしい」 


隊長(...両方の銃器にベルトがついてるとはいえ、両方背負った時は持ち替えが大変だな) 


魔女「ついでに、他のやつも作ろうか?」 


隊長「ならハンドガンとアサルトライフルのも頼む」 


魔女「まかせなさいっ!」 


~~~~ 


~~~~ 


??1「ぐっ...どうしてこんなところに...」 


暗闇、それも牢屋のようなところで細い声が響く。 

そこに下衆が話しかける、この男は隊長も遭遇したことのある者。 

最も鎖に繋がれている彼女も見たことがあるだろう。 


??2「残念だったねぇ...女騎士?」 


女騎士「──魔法使いっ! お前っっ!!!」 


魔法使い「なんだい、僕のお陰で君はこうして生きてるんじゃないか」 


女騎士「ふざけるなっっ!!! お前は私たちを裏切ったんだぞっっ!!」 


魔法使い「うるさいなぁ...また、ひどいことされたいの?」 


女騎士「──っっ...!!!」ビクッ 


魔法使い「怯えちゃって...馬鹿力なのに女っぽさは残ってるんだな」スッ 


女騎士「────近寄るなっ!!」 


魔法使い「ふふふ...」 


女騎士「ひっ...いやっ...」 


魔法使い「綺麗な耳飾りだね、女勇者がくれたんだっけ...でももう二度と会えないよ?」 


魔法使い「お前はここで...僕の奴隷になるんだ...楽しみにしててごらん」 


いやらしく耳元でささやく彼は魔法使い、勇者一向の裏切り者。 

そして彼女は女騎士、不幸にも囚われてしまった逞しき者。 

女を捨て武の道に心を貫いたというのに、彼女はすでに折られてしまっていた。 


~~~~ 
376: :2018/12/02(日) 22:09:29.70 ID:
~~~~ 


隊長「ここが...暗黒街...」 


魔女「そうよ、あんまり人と目を合さない方がいいわよ」 


隊長「...」 


隊長(...スラム街か) 


見渡すと、そこいらに浮浪者が寝そべっている。 

その者達は醜く、そしてどこかでみたような顔つきをしている。 

バツが悪い顔をして、魔女が耳打ちをする。 


魔女「ここの街には、快楽作用のある薬が流通してるみたいなのよ」ボソッ 


隊長(...ドラッグか) 


隊長「...どの世界も一緒だな」 


魔女「え...?」 


隊長「...進もう、絡まれたら面倒だ」 


魔女「そうね、いきましょ」 


隊長「ところで、どこで情報収集をするか」 


魔女「うーん...こんな街だけど、中心部は富裕層がいて安全だからそこにしましょう」 


隊長「...おう」 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「...やたらと暗いな、この街は」 


中心部、そこは先程のスラム街とは打って変わって綺羅びやか。 

とは言い切れず、いたる建物が黒く、暗黒に満ちていた。 


魔女「あ、あそこに掲示板があるわよ」 


隊長「...どれどれ」 


魔女「う~ん...どれもどうでもいい情報ばかりね」 


―――ポタッ... 

肌に感じる水気、ふと見上げてみるとそこには濃い雨雲が。 

これは一雨どころか、局地的豪雨が予想できる降り方であった。 


隊長「...ん?」 
377: :2018/12/02(日) 22:10:38.98 ID:
魔女「最悪...雨ね...」 


隊長「しかたない...あの建物の軒先に避難しよう」 


指示通り彼らは雨宿りを開始する。 

強い振り方の雨、地面に打ち付ける音がやけに心地良い。 

その様子を沈黙しながら、ただ見つめているだけであった。 


隊長「...」 


魔女「...」 


隊長「...どうするか」 


魔女「さすがに、風邪を引くのはいやね」 


隊長「でも...この降り方はすぐ止みそうだな」 


魔女「分かるの?」 


隊長「あぁ...」 


魔女「...そういえば、あんたは元の世界でなにをやってるの?」 


隊長「うん? そうだな...」 


隊長「犯罪者...罪を犯したものを捕まえている」 


魔女「...へぇ、偉いことしてるわね」 


隊長「聞こえはいいかもな...だが、仕方なく捕まえきれずに殺してしまう時がある」 


魔女「...そう」 


隊長「...」 


魔女「...子どもとかいるの?」 


隊長「...いると思うか?」 


魔女「...思うわよ、甲斐性があるしね」 


隊長「...子どもも妻もいない、ずっと独身だ」 


魔女「へぇ...」 


隊長「...」 
378: :2018/12/02(日) 22:12:11.20 ID:
魔女「...私は、雨は嫌いだけど、雨の音は好きよ」 


隊長「...わからんでもない」 


魔女「この雨音に紛れて、なにか大胆に行動したくなるのよね」 


隊長「...」 


魔女「...まぁ、いまは止んでくれるのを待ってるんだけどね」 


隊長「そうだな...! クシュッ!」 


魔女「ぷっ...可愛いくしゃみね」 


隊長「うるせぇ...」 


魔女「はぁ~もうつかれちゃった...地べたに座っちゃお...」ペタッ 


隊長「...」 


魔女「...魔王をどうにかしたら、どうするのあんたは」 


隊長「...大賢者が言うには、魔王が元の世界に戻れる魔法を使えるらしいからな」 


隊長「...魔王を倒して、帽子の願いを果たし...そしたら帰るってところだな」 


魔女「...なら新しい魔王は、帽子の代わりに魔王子に任せればいいんじゃない?」 


隊長「魔王子が信用できる奴ならの話だがな...」 


隊長「魔王子が信頼できなければ、このまま二人で進み...魔王を倒すだけだ」 


魔女「...新しい魔王はどうするのよ?」 


隊長「...」ジー 


魔女「...私は嫌だからねっ!」 


隊長「はぁ...こうなれば今の魔王に無理やり要求を飲むまで説得だな」 


魔女「...拷問?」 


隊長「場合によってはあり得る」 


魔女「魔王に拷問する人間なんて前代未聞よ...」 
379: :2018/12/02(日) 22:14:11.35 ID:
隊長「そうなりたくなければ魔王子に祈っとけ、そもそも出会えるかわからんがな」 


魔女「はいはい、あー神様、どうかうまくことを進めて下さい」 


隊長(神...か) 


(「神業を受け取るんだ」) 


(「これは魔法ではない! 神のご加護は無意味だっ!!」) 


隊長が出会った神を名乗る者、それは彼に神業とやらの力を与えた。 

だが別の神なのだろうか、それは塀の都の民たちを狂わせた。 

同じ神でもここまで違うのか、だが隊長はある1つの共通点を見出していた。 


隊長(俺のあの神業とやらと...あの光る槍の力はどこか似ていたような...) 


隊長(魔法の無力化...俺もあの時、魔闘士の魔法を無力化してたのか?) 


(魔闘士「残念ながら、魔法は得意じゃない...」) 


隊長(いや...そうではないのかもしれない...) 


隊長(そしてこのユニコーンの魔剣...これも神業に似ている...) 


(大賢者「...あくまで仮説じゃが、その魔剣には光属性の魔力を感じる」) 


隊長(ユニコーンの魔剣=神業なら...俺に宿っているのは光属性のなにかなのだろうか) 


隊長(...だめだ、魔法に関してはからっきしだ) 


隊長「...魔女、光属性ってどんなものなんだ?」 


魔女「ふわぁ~あ、ごめん知らないわよ」 


魔女「光属性と闇属性は参考資料が少なすぎて大賢者様ですら詳しくわからないのよ」 


隊長「...まぁそのうちわかるか」 


魔女「なによ」 


隊長「なんでもない...ん?」 


──ポタッ...ポタッ... 

彼が深く考え事をしている間に、彼女が眠気と抗っている間に。 

薄暗い暗黒街に太陽の明かりが刺した、雨は過ぎ去ったようだった。 


魔女「止んだわね」 


隊長「ひとまず、ここで魔王子を探そう」 


魔女「まぁ、暗黒街にすらいない可能性のほうが大きいけどね...」 


~~~~ 
380: :2018/12/02(日) 22:15:25.76 ID:
~~~~ 


??1「あァ...だりィな...やっと雨があがったか」 


??2「フン...うるさい奴だ...」 


??1「あァ? なんだ魔闘士ィ...やんのか?」 


そこにいたのは、例の2人組であった。 

1人はとてつもなく奇妙な大剣を背負い、ゴロツキのような喋り方。 

もう1人は只ならぬ雰囲気を醸し出している、見間違えるはずがない。 


魔闘士「...竜の魔剣士と名高いお前も、案外餓鬼だな」 


魔剣士「うっせーな...ってか本当にここに魔王子いんのかァ?」 


魔闘士「魔王と戦った後、最後に目撃があったのはここ..."暗黒街"だ」 


魔剣士「...さっさと魔王子見つけて、魔王ぶっ飛ばしにいこうぜ?」 


魔剣士「あのクソ爺、痴呆始まってかしらねェけど...やる事無茶苦茶でやる気でねェぜ」 


魔闘士「知るか、俺はただ魔王子に着いていくだけだ」 


魔剣士「へいへい、信頼の厚い部下なこったァ...」 


──ポタッ...ポタッ... 

先程降ったばかりだというのに、太陽も覗き込んでいるというのに。 

お天気雨、再び大地に恵みが降り立つ予兆。 


魔闘士「また...雨か、面倒だな」 


魔剣士「冷えるのは勘弁だ、酒屋にいこうぜ?」 


魔闘士「...仕方ないな」 


魔剣士「あァ...でも、このまま魔王子がいなければ人間界ともおさらばか...人間の造った酒はうまかったなァ」 


魔闘士「フン、どうでもいいな」 


魔剣士「お前なァ...魔王子大好きっ子かよ...」 


魔闘士「そういうお前は、酒大好きっ子だな」 


魔剣士「あァ? やんのかァ?」 


魔闘士「...ひとまず、雨を避けるぞ」 


魔剣士「あァ」 


~~~~ 
381: :2018/12/02(日) 22:16:24.96 ID:
~~~~ 


隊長「...」 


魔女「...まともな人間いないわね」 


隊長「魔王子のことを聞いても、薬か酒の話になるな...」 


魔女「はぁ...どうしよ」 


──ポタッ...ポタッ... 

先程降ったばかりだというのに、太陽も覗き込んでいるというのに。 

お天気雨、再び大地に恵みが降り立つ予兆。 

それは当然彼らにも襲いかかった。 


隊長「またか...最悪だな」 


魔女「また雨...! そうだっ!」 


魔女「酒屋なら雨宿りになるし、話が通じるんじゃないの?」 


隊長「...そうだな、話ができない奴だと店として成り立たないからな」 


魔女「そうと決まれば、行きましょう?」 


隊長「...本題は酒じゃなくて、情報だからな?」 


魔女「わ、わかってるわよっ!」 


~~~~ 


~~~~ 


──からんからんっ 

雰囲気が暗いこの街にしては、軽快な音であった。 

人の入りは少ないが、ここは歴としたお店。 

やや寡黙な酒屋の主人がそこにいた。 


酒屋「...いらっしゃい」 


隊長「すまない、聞きたいことが」 


酒屋「...聞きたいことは、注文をしてからにしろ」 


魔女「じゃあ、私は葡萄酒にしようかしら」 


酒屋「...あんたは?」 


隊長「...水だ」 


酒屋「湿気てんな...」 


魔女「湿気てるわね...」 
382: :2018/12/02(日) 22:17:22.14 ID:
隊長「...」 


酒屋「...座って待ってろ」 


魔女「ほら、いきましょ?」 


隊長「はぁっ...」 


──からんからんっ 

隊長と魔女が椅子に座ると新たなお客様が。 

なぜその顔ぶれがここで見れてしまうのか。 

先に店内にいた彼らはその光景に驚いてしまう。 


酒屋「...いらっしゃい」 


魔剣士「適当に2杯たの────」ピクッ 


魔闘士「────ッ!」ギロッ 


隊長「──なッ...!?」 


魔女「ど、どうしたの?」 


魔闘士「なぜ貴様がここに...」 


魔剣士「へェ...面白れェ偶然だな」 


魔女「...ねぇ、誰なの?」 


隊長「魔闘士と魔剣士だ...ッ!」 


魔女「──こいつらがっ...!?」 


魔剣士「おいおい...戦いに来たわけじゃねェからな?」 


魔闘士「...お前に構っている暇などない」 


隊長「...ッ!」 


魔女「ど、どうするの?」 


酒屋「なんだ、お前たち仲間か」 


隊長「違う...」 


酒屋「仲間なら、奥の4人席に座ってくれ...そこは騒がれると邪魔だ」 


~~~~ 
383: :2018/12/02(日) 22:18:13.98 ID:
~~~~ 


魔剣士「で...なんで素直に4人で座ってんだァ?」 


魔闘士「知るか」 


隊長「...」 


魔女「...ここの葡萄酒おいしいわね」 


魔剣士「呑気な嬢ちゃんだなァ...こっちは数日前、命かけた戦いをしてた相手なんだぜ...?」 


魔女「わ、私は闘ってないし...」 


魔剣士「肝座ってるんだが、座ってないんだか...」 


魔闘士「...」 


隊長「...」 


魔剣士「さっさと酒飲んで行こうぜェ? 魔闘士よォ」 


隊長「...ちょっとまて」 


魔剣士「あァ?」 


隊長「お前たちは魔王子を探してるんだよな?」 


魔剣士「...そォだ」 


隊長「...お前らがここにいるってことは、ここのどこかに魔王子がいるってことだな?」 


魔剣士「...」 


魔闘士「...貴様」 


魔剣士「わりィがよ...返答次第で殺すぞ」 
384: :2018/12/02(日) 22:18:41.40 ID:
「魔王子に何の用だァ...?」 









385: :2018/12/02(日) 22:20:29.45 ID:
魔女「ひっ...!」 


──ピリピリピリッ...! 

初めて目の当たりにする、圧倒的な実力者の怒気。 

思わず魔女は声を上げてしまうが、隊長は臆せずに会話を進める。 


魔剣士「...早く答えろ」 


隊長「...俺たちは魔王子を仲間にし、魔王を倒す」 


魔剣士「...はァ?」 


隊長「そして最後に魔王に無理やり、平和的交渉をうなずかせこの世界を平和にすることだ」 


隊長「魔王が頷かない場合は無理やり辞退させ、新しい魔王を魔王子に就任してもらい平和的交渉をうなずいてもらう」 


魔剣士「...本気か?」 


隊長「...本気だ」 


魔闘士「...もう少し、賢いと思っていたが...とんだ馬鹿だな」 


隊長「悪いが、託されたんでな」 


魔剣士「託されたァ...?」 


魔剣士「...そういえばそのユニコーンの魔剣、なんでお前がもってんだァ?」 


魔剣士「アイツはどうした、あの帽子被った奴」 


魔女「...」 


隊長「...」 


答えることはできない、まだその現実を完全に受け入れていないからであった。 

だがその様子をみて察することのできない者なのいない。 

口を開かない彼らの代わりに、魔剣士が事実をつきつける。 


魔闘士「...死んだか」 


隊長「────あぁ」 


魔剣士「なるほどねェ...ま、ユニコーンが懐く位だ、そんなこと託すわけだなァ」 


魔剣士「...だが、それは無理だなァ」 


隊長「...」 


魔闘士「確かに、恐らくだが魔王子は魔王を討とうするだろう...利害の一致でも狙ったか、だが」 


魔剣士「...お前らじゃ足手まといだ、いらねェんだよ」 


魔闘士「さらに、魔王子は平和などに興味はないだろう」 
386: :2018/12/02(日) 22:22:01.75 ID:
隊長「...」 


魔剣士「まっ、お前らは指くわえてみてろってなァ」 


隊長「...ダメだ、帽子が無念だ」 


隊長「せめて、魔王子に会わせろ」 


魔剣士「...誰に向かって口聞いてんだ...あァ...?」 


魔闘士「人間程度が、調子に乗るなよ...!」 


隊長「魔王子が平和を勝ち取るのであれは身を引こう」 


隊長「...そうでない場合は」 


魔剣士「...ヤるつもりっていうのかァ?」 


隊長「...」 


魔剣士「ふざけるなよ...人間の甘っちょろい考えが通じてると思うなァ?」 


魔剣士「平和ァ? ふざけるな...てめェの言う平和ってのは魔物を迫害することじゃねェか...」 


隊長「...帽子の思想はそんなモノではない」 


魔剣士「知るかァ...興味ねェな────」ピクッ 


興味などない、それは嘘であった。 

1つの要素が帽子という男の正体を証明していた。 

あのユニコーンが魔剣となり、その男に従えているという事実が魔剣士に興味を沸かせていた。 


魔剣士「...」 


隊長「帽子の言う平和とは、人間だけの一方的な平和ではない」 


隊長「...人間と魔物の共存だ」 


魔剣士「...ケッ、あまェ...砂糖よりあめェよ」 


隊長「アイツは根っからの甘い奴だ」 


隊長「だが、それで海底都市の戦争を止めた」 
387: :2018/12/02(日) 22:23:39.41 ID:
魔剣士「...海底都市だァ?」 


隊長「帽子の思想...ただの脳天気野郎と同じにしてもらっては困る」 


魔剣士「...海底都市の真偽はともかく、ユニコーンのことを見るとそうみてェだけどよォ...」 


魔剣士「...チィ! うまく反論できねェなァ!!! 畜生がァ!!!」 


反論ができない、この馬鹿正直な人間に与える言葉が見つからない。 

だがそんな中魔闘士が口を開いた、それは意外な言葉であった。 

一度拳を交えた関係性だからだろうか、なぜ彼は隊長に施すのか。 


魔闘士「...いいだろう」 


隊長「──ッ!」 


魔闘士「会うだけなら、許してやる」 


魔闘士「だがそれ以上のことは魔王子、本人に祈れ」 


魔女「うへぇ...うまくいったわねぇ」 


隊長「そうでなくては、帽子が困る」 


魔剣士「たくよォ...馬鹿みてェな反論されるとこっちは何も言い返せねェぜ...」 


魔闘士「だが...1つ問題がある」 


隊長「...なんだ?」 


魔闘士「この暗黒街の地下に隠された遺跡がある、その奥に魔王子はいるだろう」 


隊長「...どうしてわかる」 


魔闘士「...ここが、魔王子が最後に目撃された場所だからだ」 


魔闘士「それに、魔王の部下の配置にもある」 


隊長「配置...?」 


魔闘士「...魔王はそこに"異端者"を配置している」 


隊長「...」 


魔闘士「俺が無理やり口を割らせた魔王軍の奴によると、そうらしい」 


魔闘士「アイツは俺たちでも厄介だ...近づけさせないようにしてるとしか思えない」 


魔剣士「異端者なァ...あのアホは半端無くだりィな...」 
388: :2018/12/02(日) 22:24:58.90 ID:
魔闘士「...そして恐らく、魔王によって魔王子は封印されているだろう」 


隊長「...異端者を倒し、その封印を解けば完了か」 


魔闘士「...まぁそういうことだ、遺跡も恐らく罠だらけだろう」 


隊長「では、早速いくか」 


魔闘士「...最初の問題は遺跡を探す所だな」 


隊長「...魔王の配置は知っているのに、遺跡の場所はわからんのか」 


魔闘士「...」 


魔剣士「しょーがねェよ、魔闘士は案外抜けてる所あるからよォ」 


魔闘士「黙れ」 


魔剣士「おーこわ」 


魔女「...ってことは、また情報収集...?」 


隊長「...そういうことになるな」 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「じゃ、月が真上になったらまたこの酒場に集合だ」 


魔闘士「...」 


隊長「あぁ...頼んだぞ」 


魔剣士「へいへい...なんでこんな事なっちまっただァ?」 


魔闘士「...我々がユニコーンについて熟知していたからだな」 


魔剣士「あァ...アイツに懐かれたことなんざ、ここ500年生きてるけど一度もねェな」 


魔闘士「...それを説得に持って来られたら、こちらは反論できん」 


魔剣士「...めんどくせェ」 


わりと俗世めいたことを語りながら、夕焼けに消えていった。 

一時的に、魔王子と対面するところまでは協力体制することになった。 

これほど心強い者たちはいない、そんな彼らを見送ると隊長たちも動き出した。 


隊長「さて、こちらも探すか」 


魔女「...不審な箇所を町の人に聞けばいいのかしら」 


隊長「そうだな」 


~~~~ 
389: :2018/12/02(日) 22:25:37.77 ID:
~~~~ 


隊長「...収穫なしか」 


魔女「まともなやつを見つけても、特に答えがなしってのが応えるわね...」 


隊長「はぁ...あいつらに小言を言われそうだ」 


魔女「こうなったらこの街の地図から怪しいと思った場所にいきましょ」 


隊長「...とりあえず、地図が張ってある掲示板のところにいくか」 


魔女「そうね...」 


~~~~ 


~~~~ 


魔女「...特に地図をみても解決しなかったわね」 


隊長「...手詰まりか」 


魔女「はぁ...人訪ねしかないようね」 


隊長「途方も無いな」 


魔女「うーん...あ、丁度いいところに人が...あの~っ!」 


そこに人が通りかかる、その様子には至って健常。 

薬物中毒ではなさそうだ、これなら会話が可能だろう。 

だが彼は、1つだけ違和感を覚えていた。 


???「...なんですか?」 


隊長(...こいつ、どこかで見たような) 


魔女「ここらへんで、なにか怪しい場所を探してるんですが...遺跡の入り口とか」 


隊長(魔女の質問も...なんか間抜けだな) 


???「...知らないね」 


隊長(──...?)ピクッ 


魔女「そ、そうですか...では」 


???「僕は急いでるんだ、じゃあね」 
390: :2018/12/02(日) 22:26:40.48 ID:
隊長「...まて」 


???「...なんだ?」 


隊長「散歩でもしてるのか?」 


???「...そうだ」 


隊長「この冷える夜、それに散歩にしてはすごい汗だな」 


???「...」 


魔女「ちょ、ちょっと...なに言ってるのよ」 


隊長「...」 


隊長には確証がなかった、が長年犯罪者の口を割らせている。 

質問を答えた時の表情、経験、勘を頼りにし強引に話を進める。 

証拠もないのに始めたこの尋問、隊長の世界では許されないだろう。 


???「...た、たまたま汗をかいてるだけだ...そういう体質なんでな」 


???「何度も言わせるな、僕は急いで家に戻りたい」 


隊長「...あぁ、悪かったな」 


そういうと、尋ねた者は早足で去っていった。 

そんな彼から目線を逸らさずに、去っていった方向を注視する。 


魔女「どうしたのよ...」 


隊長「...尾行するぞ」 


魔女「...へっ?」 


隊長「...あいつはお前の質問に対して嘘をついている気がする」 


魔女「そうなの...?」 


隊長「...正直、なにも進まない人尋ねよりはマシだ」 


魔女「まぁね...どうしようもないし尾行しましょ」 
391: :2018/12/02(日) 22:27:17.58 ID:
魔女「...そういえば、あの人から強い魔力を感じたわね」 


隊長「そうなのか?」 


魔女「うん、女賢者さんぐらいのね...それがこの街にいるって考えると、ちょっと怪しかったかもね」 


魔女「多くの人は、この暗黒街に好感を持ってないから...家なんてここに持ちたくないし」 


魔女「あれだけ強い魔力をもってるなら、暗黒街からいつでも引っ越すことも簡単だろうしね」 


隊長「そうか...遺跡でないにしろ、なにか手がかりがあることを祈ろう」 


~~~~ 


~~~~ 


魔闘士「...」 


魔剣士「手がかりねェな」 


魔闘士「...1つだけ、遺跡には関係ないが情報を手に入れた」 


魔剣士「あァ?」 


魔闘士「...勇者一行の"魔法使い"がこの街にいるらしい」 


魔剣士「勇者ァ? なんでだ?」 


魔闘士「ここは魔界に行くには通らざるえない場所ではあるが...」 


魔剣士「盗人、ヤク中、ゴロツキがうようよだ、長いこと滞在したくねェな」 


魔闘士「...情報によると、1週間はいる計算になる」 


魔剣士「...くせェな」 


魔闘士「...魔法使いを探すぞ」 


魔剣士「あァ」 


~~~~ 
392: :2018/12/02(日) 22:28:13.16 ID:
~~~~ 


隊長「...」 


魔女「...」 


???「...」 


隊長「あそこが家か...」 


魔女「えらく、郊外なのね」 


隊長「...普通の民家のようだな」 


──ガチャッ...バタンッ! 

先程の男を尾行する、すると彼は家に到着したようだった。 

家の外観には特に不審なところはない、だからといって家の中に踏むこむ訳にはいかない。 

己の猜疑心は過敏すぎたようだ、どうやら慧眼は鈍ったのかもしれない。 


隊長(...どうやら、見当違いか...疑ってすまなかったな) 


隊長「魔女、引き上げ...」 


魔女「うぇ~...」 


隊長「...どうした?」 


魔女「な、なんかすごい...気分がおかしくなる臭いがする...」 


隊長「...? 俺には感じないぞ」 


魔女「気持ち悪い...」 


隊長「...」 


魔女はほんのり、頬を紅潮させている。 

まるでアルコールを摂取したかのように表情が軽くとろけている。 

そんな女の顔をされ、隊長はたじろぐしかなかった。 


隊長「だ、大丈夫か?」 


魔女「ちょっと...大丈夫じゃないかも...うぇ────」 


――あぐぅっ!!!! 

その時だった、先程の男の家からそれは聞こえた。 

口をふさがれてるような女の人の叫び声、魔女ではない。 
393: :2018/12/02(日) 22:31:07.36 ID:
隊長「──今、建物の中からッ!?」 


魔女「う...い、いってみよう...」 


隊長「...お前はここで待ってろ、すこし離れて休め」 


魔女「げぇ...そ、そうする...ごめんね...」 


隊長「...」 


──ガチャッ...バタンッ! 

彼は一般市民に家に突入した、これは許されることではない。 

特殊部隊である彼が無許可でソレをするならば、不祥事トップニュースの仲間入りだろう。 


~~~~ 


~~~~ 


隊長(...暗いな) 


――パリンッ! 

隊長はアサルトライフルを構えながら、今まで出番のなかったライトを照らす。 

建物が少しだけ、灯りに満たされる。すると内装がみえる。 


隊長(何かを踏んでしまったか...) 


隊長「これは...」 


建物の中、注射器が大量に転がっていた。 

隊長も見たことが有る光景、麻薬中毒者の家に似ている。 


隊長(...女の叫び声...少なくとも被害者がいるのか) 


隊長(遺跡の手がかりでないにしろ...進んでみる価値はあったな) 


隊長「...」 


隊長(血なまぐさいな...) 


―――ぐぅぅぅぅっっっ!!! 

そして消えたのは、唸り声。 

それは下から聞こえる、どうやら地下室があるみたいだ。 


隊長(唸り声...下からか...階段を探そう) 


??1「ははは! いい声だねぇ女騎士ぃ!!!!」 


??2「もっ...もお...やめへぇ...」 


隊長(...性犯罪者で、麻薬中毒か...そんな奴は俺の世界にゴミのようにいたな) 
394: :2018/12/02(日) 22:32:15.10 ID:
隊長(階段か...そろそろライトを消すか) 


階段を下っていく、そしてライトを消して暗闇に身を隠す。 

目はもう慣れており少しぐらいなら周りが見えていた。 

女の悲鳴が響き渡る、どうやらあの男は性犯罪者であることは間違いないようだった。 


隊長「...」 


隊長(...扉の向こうにいるな) 


??2「あっ...あひっ...やだぁっ...」 


??1「早く、僕に素直になりなよ」 


??2「くっ...わっ、わたしはぁ...屈しないっ...!」 


??1「とかいいつつ、すっかり僕のを気に入ってるじゃないか」 


??2「それはっ...薬を使ってるからだろっ...!」 


??1「...本当にそう?」 


??2「こっ...いつぅ...裏切り者...めっ...!」 


??2「おまえが裏切ったからっ...女勇者は魔王軍にっ...!」 


??1「知らないね、僕は君とこうしてたかったんだよ」 


??2「...くずがっ!」 


隊長「...Scum■■」スッ 


―――ドガァァァァッッッッ!!!! 

怒りがこみ上げる、隊長がドアを蹴破った。 

そしてユニコーンの魔剣が一瞬だけ黒く光っていた。 


??1「──なっ!?」 


隊長「────Fuck off...」スチャ 


──ババッッッ 

容赦のない射撃、それは男の足に被弾する。 

当然その痛みに耐えられるわけもなく、彼は跪いた。 


??1「──がああああああああああ足があああああああああっっ!!!」 
395: :2018/12/02(日) 22:33:14.33 ID:
隊長「―――ッッ!!!」スッ 


──バキィィッッ...! 

先ほどの尋ね人が軽く吹っ飛ぶ、強烈なアッパーであった。 

そして隊長は直ぐにマウントポディションを取り、拘束する。 


隊長「...動くな」スチャ 


??1「ッ...!? お前はさっきの...ッ!?」 


??1「くそっ!! 足がっ...!」 


隊長「...お前が存在しているだけで、吐き気がする」 


??1「な、なんだとっ!!」 


隊長「...Die」 


―――バッ 

そして彼はその軽すぎる引き金を引いた。 

脳天に直撃、耐えられるわけがなかった。 


??1「――──」ガクン 


隊長「...」 


??2「...殺したのか?」 


隊長にしてはらしくない行動であった。 

どうやら拘束魔法を受けていたようだ、それが解けて女が裸で近寄ってきた。 


隊長「...不味かったか?」 


??2「...いいや、そんな屑、死んで当然だ」 


隊長「...お前は?」 


女騎士「...女騎士だ、そいつは魔法使い...裏切り者だ」 


魔法使い「―――─」 


女騎士「...お前は?」 


隊長「...Captainだ」 


女騎士「きゃぷてんか...助かったぞ」 


隊長「礼は後だ、その格好を何とかしてくれ、目も合わせられん」 


彼女の名前は女騎士、そしてこの卑劣漢は魔法使いと言うらしい。 

薄暗い部屋のなか、女らしく適度に肉々しい桃色の身体がうっすら見えている。 
396: :2018/12/02(日) 22:34:12.01 ID:
女騎士「あっ...す、すまない...」 


隊長「...この落ちている布を使え」 


女騎士「あぁ...」 


隊長「...一度、外にでるぞ」 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「...!」ガチャッ 


扉を開け、外の空気を感じ取る。 

するとそこには彼ら2人が魔女の様子を眺めながら待っていた。 


魔剣士「あァ、待ってたぜ」 


隊長「魔剣士、魔闘士もか」 


魔闘士「...どうやら、一足遅かったようだな」 


魔剣士「やるねェ」 


魔女「あぁ...やっと楽になった」 


女騎士「...うん?」 


魔闘士「...誰だ?」 


魔剣士「誰だよ?」 


魔女「ほぼ裸じゃない...」 


隊長「...魔法使いとやらに拘束され、暴行を受けていたみたいだ」 


魔剣士「なるほどなァ...って、お前勇者一行の女騎士じゃねェか?」 


女騎士「──なぜ知っている!」 


魔剣士「至る所の都の新聞で写真が記載されてんだ、分かるに決まってんだろ...」 


魔闘士「...魔法使いはどうした?」 


隊長「...やむなく殺した」 


魔女「...!」 


魔闘士「...まぁいい、この建物を調べよう」 
397: :2018/12/02(日) 22:35:02.07 ID:
魔剣士「ところで、女勇者はどこだよォ...なんでお前らだけがここに居るんだァ?」 


女騎士「...話せば長くなる」 


魔剣士「...要点だけ言ってみろ」 


女騎士「...ここの近くで魔法使いに裏切られ、女勇者は魔王軍に連れて行かれた」 


女騎士「そして私は...魔法使いに...」 


魔剣士「...なるほどなァ、結構面倒くせェ事態だな」 


魔女「ね、ねぇ...大丈夫なの?」 


女騎士「あぁ...大丈夫だ...女の自分はとうに捨てた...」 


女騎士「捨てた...はずだったのに...っ...っ!」 


隊長「...魔女、女騎士とここで休んでいてくれ」 


魔女「うん...もう大丈夫だからね?」 


女騎士「っ...あ、あぁ...っ!」 


隊長「俺たちは建物の散策に入る」 


魔闘士「...誰に指示をしている?」 


魔剣士「いいんじゃね? こいつ、お前より指示がうまいぜェ?」 


魔闘士「...」 


~~~~ 
398: :2018/12/02(日) 22:35:37.77 ID:
~~~~ 


魔剣士「...くせェ」 


隊長「...なにも感じないぞ」 


魔闘士「...これは淫魔の雄の血か」 


魔剣士「あァ...雌にだけ効果絶大のヤツか」 


魔闘士「俺たちにはただ臭いだけだな」 


隊長「そうなのか...」 


魔闘士「...この死骸が魔法使いか」 


隊長「...おい、この服の中にこれが」 


魔剣士「手紙ィ?」 


隊長「...」 


魔闘士「...なるほど」 


隊長「どうやら、ここが当たりだったようだな」 


魔闘士「魔王の側近からの手紙か...」 


魔剣士「なになに...貴様に遺跡の番人を任せるゥ?」 


魔闘士「...女勇者を裏切ったわけではなく、最初から魔王側だったようだな」 


隊長「...徹底的にここを調べよう」 


魔闘士「そんなことはわかっている...」 


魔剣士「それより一旦でようぜ? 長いこと居ると臭くてたまんねェわ」 


隊長「...これは」 


~~~~ 
399: :2018/12/02(日) 22:38:46.79 ID:
~~~~ 


魔女「あなた、何歳?」 


女騎士「...20だ」 


魔女「本当? 私も20よ!」 


女騎士「そうなのか...」 


魔女「...」 


女騎士「...」 


魔女(か、会話が続かない...そりゃ元気ないならそうなるわよね...) 


女騎士「...なぁ、あのきゃぷてんとか言う男」 


魔女「...なに?」 


女騎士「凍った山を1人で制圧したそうだな」 


魔女「知ってるの?」 


女騎士「...麓の村で聞いた」 


魔女「...今、その話をあいつにしないほうがいいわよ」 


女騎士「...すまない、私たちが訪れたから」 


魔女「...やったのは魔王軍よ、あんたたちのせいじゃない」 


女騎士「...ありがとう」 


魔女「...」 


――ガチャッ... 

扉を開けると、充満する嫌な匂いが微かに香る。 

よく見ると扉だけではなく窓も全開、どうやら換気をすることにした様だった。 


魔剣士「あァ...新鮮な空気だ」 


魔闘士「雄淫魔の血は、人間の雄には何も感じないと聞いたが...本当だったな」 


隊長「ふぅ...」 


魔女「...おかえり」 


隊長「あぁ...おい、女騎士」 


女騎士「なんだ?」 
400: :2018/12/02(日) 22:41:29.72 ID:
隊長「これ、お前のだろ」 


──ガシャンッ! 

隊長が持ってきた鎧と巨大なランスを地面に置く。 

鎧は男モノにしては細すぎる、そして胸部は膨らんでいる。 

どう考えても女騎士の装備であることは間違いない。 


女騎士「私の装備...あったのか!」 


隊長「それを着れば、人目を注目させないだろう...裸よりはな」 


女騎士「...助かる」 


魔女「なにか、手がかりあったの?」 


隊長「あぁ...ここに遺跡の入り口があるのは間違いないようだ」 


魔女「...運がいいわね」 


隊長「自分でもびっくりするぐらいな...」 


魔剣士「で、今からもう潜入するのか?」 


隊長「...悪いが、人間の俺はそろそろ眠気が限界だ」 


魔剣士「大丈夫だ、魔物もそこは同じ...眠ィ」 


隊長「なら、今日はここで夜を越そう」 


魔剣士「そんじゃ、俺様はさっさと寝るぜェ」 


魔闘士「...なぜ、俺の指示には文句をいうくせに、あの人間の指示には従順なんだ?」 


魔剣士「あァ...? アイツのほうが上に立つ者としての威厳が似合ってるからだ」 


魔剣士「お前の指示は、なんか偉そうなだけなんだよ」 


魔闘士「...貴様」 


隊長(...こいつら、案外面白いな) 
401: :2018/12/02(日) 22:42:41.59 ID:
魔剣士「そもそも、別に個人的に憎しみ合ってるわけじゃねェしな...」 


魔剣士「アイツらと戦ったのも、お前が興味あるとかいって暗黒街よりも先に向かったからだろ?」 


魔闘士「...」 


魔剣士「それに俺様も巻き込みやがって...楽しかったからいいものをよォ...」 


魔剣士「まっ、コレ以上はお前が可哀想だし、寝るわ」 


魔闘士「...」 


魔女(...もうすでに可哀想なんだけど) 


女騎士「着替えたぞ」 


隊長「あぁ、今日はここで野宿をする」 


女騎士「そうか...ところできゃぷてん」 


隊長「...何だ?」 


女騎士「お前の旅、魔女から聞いた」 


隊長「...」 


女騎士「魔王軍に攫われた、女勇者...まだ生きてるかもしれない」 


女騎士「そもそも、私の旅も魔王を討つため...」 


女騎士「...私も、お前の旅に付いて行ってもいいか?」 


魔女「ちょっ...」 


隊長「...好きにしろ」 


女騎士「よろしく頼む!」 


魔女「...」ゲシッ 


隊長「な、なんで蹴るんだ...?」 


魔女「し~らないっ! よろしくね! 女騎士!」 


女騎士「女同士、仲良くしてくれ! 魔女!」 


~~~~ 
402: :2018/12/02(日) 22:43:23.43 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
403: :2018/12/03(月) 22:04:03.91 ID:
~~~~ 


魔剣士「だァァ、ねみィ...」 


魔闘士「もう朝だ、さっさと行くぞ」 


隊長「...」 


魔女「ふわぁ~あ...」 


女騎士「朝だというのに、暗黒街は薄暗いな...」 


──ガチャッ... 

朝の気だるい雰囲気は、人間も魔物も一緒であった。 

そんな中彼らは扉を開け、この民家へと突入する。 


魔女「建物の中はもっと暗いわね...」 


隊長「...魔女、コレを使え」スッ 


魔女「な、なにこれ...すごい灯りね」 


魔闘士「...あの武器といい、珍妙なものを持っているな」 


隊長「話せば長くなる...」 


女騎士「凄いな、照らした先がとても明るい」 


彼が魔女に手渡したのは、軍用のライトであった。 

だがそれが珍しくて仕方ない、それは当然この世界に存在しないからであった。 

太陽光充電式の軍用ライトがこの真っ暗な建物内を照らす。 


魔女「これなら、大丈夫ね」 


魔剣士「カァ...グゥ...」コックリ 


魔闘士「おい、さっさと起きろ」バキッ 


魔剣士「──ってェ!! なにしやがるゥッ!?」 
404: :2018/12/03(月) 22:05:35.41 ID:
魔女「...微かに臭い」 


魔闘士「淫魔の血は濃いからな...これでも大分薄くなったほうだ」 


魔女「うげぇ...」 


女騎士「私は身体に注射されていたから、もう臭いなど感じないな...」 


魔女「...大変だったのね」 


女騎士「過ぎたことを悩んでていても仕方ない」 


隊長(...逞しいな) 


魔闘士「勇者一向に選ばれただけはあるな」 


魔剣士「つーかァ...どこにも入り口はねェな」 


魔闘士「フン...」 


隊長「...」 


魔女「魔法で隠してるとか?」 


魔闘士「...その気配はない」 


女騎士「隠し部屋もないみたいだぞ」 


──ふわふわっ... 

そんなときであった、この逞しい女性に異変が起きた。 

暗くて見にくかったが女騎士の長い髪が揺れた、室内だというのに。 


魔剣士「...風?」 


隊長「...どうやら隠し通路が見つかったな」 


魔闘士「...なるほどな」 


魔剣士「...あァ、そういうことか」 


魔女「...」スッ 


魔女が自分の手袋を脱がし、指をなめてかざしてみる。 

すると感じ取れたのは、空気が移動している様子であった。 


魔女「...こっちの方から風が来てるわね」 


魔剣士「なるほどなァ...じゃあ、俺様の出番か」スッ 
405: :2018/12/03(月) 22:06:50.95 ID:
隊長「なにをする気だ?」 


魔剣士「まァみとけってなァ...」ブンッ 


―――ドガァッッッッ!!!! 

魔剣士が剣を振りかざすと、何かが飛び出した。 

その何かが地下室の壁を崩した、その様子を見て女騎士はつぶやいた。 


女騎士「...剣気か」 


隊長「剣気...?」 


魔女「飛ぶ斬撃みたいなものね...ウルフも、これに似たようなのを使ってたでしょ?」 


隊長「...なるほどな」 


魔剣士「単純に剣から衝撃を飛ばすだけだァ、慣れれば簡単だぜェ?」 


女騎士「...ここまで細かく使えるとは、かなりの腕だな」 


そんな魔剣士のおかげで、壁が秘密を打ち明けてくれた。 

剣気が崩したそこにはどこかへとつながる暗闇の道が存在していた。 


隊長「...道はあったようだな」 


魔闘士「手間をかけやがって...」 


隊長「...魔女、引き続き灯りを頼む」 


魔女「えぇ...それにしても、暗いわね」 


女騎士「...私は最後尾にて、殿を守ろう」 


隊長「あぁ...助かる」 


魔剣士「そんじゃ、俺様が先行するかァ」 


暗い道、それは下りの階段になっている。 

足元を取られないように皆が進んでいると空気感が変わる。 

風の流れが強くなる、なにか大きな空間があるようだった。 


魔剣士「...この先は広いみたいだな」 


魔闘士「...ここまで暗いと敵わんな」 


魔女「真っ暗ね...」 


広い空間であろう場所に魔女が適当にライトを灯してみる。 

そこには、大量の骸骨が野ざらしにされていた。 


魔女「うわ...死体みたいね...」 
406: :2018/12/03(月) 22:08:03.32 ID:
隊長「...財宝目当ての者とかか?」 


魔剣士「この遺跡に、そんな噂聞いたことねェな」 


女騎士「どうする...このまま暗いと動きにくいぞ」 


魔女「ちょっと試したことないけど...私に考えがあるわ」 


隊長「...頼むぞ」 


魔女「..."雷魔法"」 


──バチバチバチッ... 

魔女が放つ雷は、形状を保ちながら地下天上の中心あたりにとどまる。 

雷というとても強い光源が、この広間の視界を開かせる。 


魔女「ふっ...うっ...だ、大丈夫そう?」 


魔闘士「...ほう、魔法をそのまま保つか」 


魔剣士「器用なことできんなァ、俺様にはできねェ」 


隊長(魔女の魔法が、人工太陽代わりになってるのか) 


魔闘士「まぶしいな...だが、これでこの広い空間がはっきりわかったな」 


女騎士「...これが、遺跡という奴か」 


魔剣士「正式名称は、"黒の遺跡"だァ」 


魔女「なんでこんなに黒いの?」 


魔剣士「...遥か昔に、大量の魔物がここで殺されたらしいなァ」 


魔剣士「その血が黒くなって、この遺跡に呪いを残したって魔界では伝えられているぜェ?」 


隊長「...とにかく行くぞ」 


魔闘士「──いや、まて」 


──ガラガラガラッ...! 

魔闘士が呼び止めると、奴らは動き出した。 

それは遺跡の罠なのか、それとも心霊現象なのか。 

魔女が先程照らした亡骸たちが動きだした。 


女騎士「骸骨が動いたっ!?」 


魔女「..."スケルトン"?」 


魔闘士「いや...あれは...」 


動く骸骨なら、スケルトンという魔物が妥当だろう。 

だがそれは違う、動き出している骸骨の周りに存在する黒い光がそれを否定する。 
407: :2018/12/03(月) 22:09:20.60 ID:
魔剣士「..."死霊"か」 


魔女「し、死霊って...そいつが骸骨に取り付いたってわけ...?」 


女騎士「...死霊とは何だ?」 


魔闘士「...亡骸に寄生する、超上級で希少な魔物だ」 


魔闘士「触れられたら魂を持っていかれると言われている、即死攻撃をしてくる厄介者だ」 


魔剣士「魔王の野郎...結構本気じゃねェか」 


隊長「...どうしたらいい?」 


魔闘士「とにかく、近寄らせるな...遠距離攻撃で骸骨を破壊すれば────」 


隊長「──なら話は早いな」スチャ 


──ババッ! 

果たして、人を簡単に貫くことができるこの銃器に敵うだろうか。 

死霊が取り憑いた亡骸はあっという間に砕け散る、そして宿主を失えばどうなるか。 


死霊1「...ッ」 


──ガラガラッ... 

ただ、音を立てて崩れ去るだけであった。 

寄生生物は宿主がいなければ生命活動などできない。 


女騎士「速いな...!」 


隊長「...俺が死霊をなんとかする」 


魔闘士「...意気込むのはいいが」 


死霊2「...」 


死霊3「...」 


死霊4「...」 


魔闘士「...どうやら、順番待ちしているみたいだぞ」 


魔剣士「気をつけろ、ここには寄生先になる屍が多いみたいだぜェ?」 


隊長「...魔女ッ! 灯りを何としても保っておいてくれ!」 


魔女「わかったわ! 私も隙をみて攻撃するわよっ!」 
408: :2018/12/03(月) 22:10:27.94 ID:
魔剣士「俺様も加勢するぜ...あんまり飛距離ねェけど...なァッッ!!」ブンッ 


死霊2「────...ッ」 


―――ドガァッッ!!!! ガラガラッ...! 

射程の長い剣気を飛ばし、死霊を蹴散らす。 

剣士が苦手とする近距離以外を、剣気で補う。 

それがどれだけ優れたことなのか、残り2人はただ傍観するしかなかった。 


魔闘士「...俺は役立ちそうにないな」 


女騎士「...私はせめて、周りを注視しておこう」 


──バババババッッッ!!!! 

──ブンッッッ! ドガァッッッ!!! 

──バチバチバチッッッ!!!! 

三者三様の遠距離攻撃の音が響き渡る。 

近距離を主軸にする2人は、前線の彼らの視野を補助するしかなかった。 


女騎士「──前方に扉があるぞ!」 


隊長「...このまま進むぞッ!」 


魔剣士「たくゥ...きりねェなァ...!」 


隊長「もう少しで扉だッッ!!! 保てッッ!!!」 


魔剣士「わかってらァ!!!」 


触れれば即死、その緊張感が彼らを焦らせる。 

だが司令塔が冷静であるならば、焦燥感が足を引っ張ることはない。 

隊長の的確な指示が幸いし、接触を許さないまま扉に到着することができた。 


魔女「着いたっ!」 


隊長「...入れッ!」 


魔剣士「なんとかなったなァ...」 


──ガチャッ...! 

扉には鍵はかかっておらず、容易に進行が可能であった。 

前線を歩いていた隊長と魔女と魔剣士が先に、魔闘士と女騎士が続こうとすると。 


魔闘士「────ッ!?」 


―――ガシャアアァァァァァァァァンッッ!!! 

爆音と共に、激しい砂埃が舞い上がる。 

まるで上からなにかが降ってきたような、そうとしか思えない騒音であった。 
409: :2018/12/03(月) 22:11:53.22 ID:
隊長「...ゲホッ...ゲホッ...何が起こったッ!?」 


魔剣士「おいおい...厄介なことになってるじゃねェか...」 


魔闘士「くそッ...これが罠だったか...」 


女騎士「...鉄格子か、私たちは広間に閉じ込められたようだな」 


魔女「──後ろっっ!!!」 


女騎士「...死霊が迫ってきてるっ!」 


魔闘士「チィッ...どいてろッッ!!!」 


魔闘士が力づくで鉄格子を壊そうとする。 

隊長をも吹っ飛ばすことのできる彼の剛力ならこのような鉄格子など朝飯前であろう。 

しかしそれは叶わなかった、この障害物にはある属性が込められていた。 


魔闘士「──これはッ...!?」 


隊長「...どうしたッ!?」 


魔闘士「この鉄格子...光属性が宿っているぞ...ッ!?」 


魔剣士「...チィッ!!! 糞がッッ!!!!」 


隊長「壊せないのかッ!?」 


魔闘士「...行けッ!」 


魔剣士「畜生...ッ!! 説明は後だ、行くぞッ!」 


魔闘士「...魔剣士、頼んだぞ」 


魔剣士「あァ、なんとか耐えててくれェ...魔王子連れてすぐ戻るからよォ」 


魔闘士「...」 


隊長(なにがどうあれ、この鉄格子は壊せないらしいな...) 


隊長「...ならせめて、これを受け取れッ!!!」スッ 


魔闘士「これは...」 


隊長「使い方、その身をもって知ってるだろッ!?」 


隊長「15発まで撃てるッ! 撃てなくなったらその棒を入れ替えろッッ!!!」 


魔闘士「...」 
410: :2018/12/03(月) 22:13:20.60 ID:
魔剣士「...早く行くぞッッ!!!」 


隊長「――わかってるッッ!!!」 


魔女「...女騎士! ごめんっ!」 


隊長たちは無理やり魔剣士に引っ張られ、奥に進んでいった。 

彼は鉄格子の隙間からハンドガンとそのマガジン6本全部を渡した。 

遠距離攻撃ができない魔闘士の為に、敵であったこの男にすんなりと手渡す。 


魔闘士「...さて、どこまで耐えられるか、この無限にある屍共に」 


女騎士「さぁな...だが、私の槍もそう甘くないぞ」 


魔闘士「触れるだけで即死だ、気をつけろ」 


女騎士「...そうだな」 


魔闘士「さぁ、この珍妙な武器...使わせてもらうぞ」 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「...」 


鉄格子の先は、またも下りの階段であった。 

早足でそこを駆け抜ける魔剣士、それに追いつくのがやっと。 

何を思ってか彼はずっと無言であった、しかし隊長は疑問を魔剣士にぶつけた。 


隊長「...なぜ壊せなかった、魔闘士なら蹴飛ばせていたんじゃないのか?」 


魔剣士「...光属性は人間界であんま知られてねェのか?」 


魔女「...そうよ」 


魔剣士「...なら教えてやる」 


魔剣士「光属性の前では、どんなものも無力化する」 


魔剣士「質が低ければ魔法だけ、高ければどんなものでも無力化する」 


魔剣士「さらに質が極めて高ければ、相手の気を保つことを無力化させる...気絶させるってことだァ」 


魔剣士「そんでもってェ...あの鉄格子からは、それなりの質の光属性を感じた」 


魔女「...どうして、それが鉄格子に」 


魔剣士「..."魔法の欠片"か..."属性付与"だな、あとはわかんだろ?」 


魔法の欠片、それは女賢者が教えてくれた。 

少しの間魔法を維持しててくれる鉱石、そして属性付与とは。 

それは大賢者が教えてくれた、物に属性を与える単純でいて強力な魔法。 
411: :2018/12/03(月) 22:14:51.18 ID:
隊長「...なるほどな」 


魔剣士「言っておくが...見捨てたわけじゃねェからな」 


魔剣士「だが、魔闘士は近接格闘しかできねェ...死霊と相性は最悪だ」 


魔剣士「...」 


隊長「...どうしたら助けられる」 


魔剣士「...魔王子なら、あの光ごとき簡単に打ち砕くだろうなァ」 


隊長「...では、急ぐぞ」 


魔剣士「もう急いでんだろうがァ...ま、お前の渡した武器で時間稼ぎができれば上等だァ」 


魔剣士「もしくはあの無限にある屍共を殲滅できたら話は簡単だがよ」 


魔剣士「とにかく、この先に居るであろう魔王子と合流したら、すぐにあそこに戻るぞォ」 


魔女「...私は魔法を途切れさせないようにしないとね」 


魔剣士「...そうだなァ、暗闇じゃなおさらだ...頼んだぜ?」 


魔女「うん...」 


魔女はまだ魔法を持続させていた。 

これが一番の生命線、真っ暗の中では何もすることができない。 

雷魔法の光源が尽きないように魔女は精神を集中させる。 


隊長「...先ほどから、蝋燭が灯っているな」 


魔剣士「...誰かいるってのは確かだなァ」 


魔女「また広間みたい...って、あれはっ!?」 


そこには女か男かわからない容姿をしたものがいた。 

肌は雪のように白く、黒い服を着て、目が血のように赤い。 


???「おやおや? こんにちわ」 


魔剣士「あァ、いるよなァ...そりゃ...面倒くせェ奴がよ」 


隊長「...こいつが異端者か」 


異端者「ボクの名前を知っているんだぁ?」 


隊長「動くな...」スチャッ 


隊長(背中に...あれはサムライソードか...?) 


その者の名は異端者、その名に相応しく掴みどころがない。 

奴の背中には鍔のない刀が鞘に収められていた。 

なんとも言えないその存在感に、魔女はやや恐れを感じていた。 
412: :2018/12/03(月) 22:16:12.01 ID:
魔女「こいつ...なにか...怖い...」 


魔剣士「...嬢ちゃん、お前は下がって魔法をきらさねェように待機してなァ...」 


隊長「...こいつはどんな奴なんだ?」 


魔剣士「...すぐにわかる」 


異端者「──あはっ!!」ダッ 


魔剣士「────ッ!!!」スッ 


――グサッッッ!!!! 

異端者が魔剣士に跳びかかった、だが魔剣士は素早く反応した。 

彼は大剣を構えることで、接近してきた異端者を串刺しにしたのであった。 


隊長「...!」 


魔剣士「おいおい...お前みてェな奴を抱きたくないんだがなァ...」 


異端者「やだなぁ、痛いじゃないか」 


――シュッッ!!!! 

異端者が串刺しになりながら背負っている鞘から刀を刺そうとしてきた。 

なぜ生きている、それがこの者が面倒くさいと称される理由であった。 


魔剣士「オラ!! 離れなァッッ!!!」ブンッ 


異端者「おっとっと...」ヨロ 


魔剣士は大剣を振り回し、異端者を吹き飛ばした。 

すると、みるみる異端者の身体の傷がふさがっていく。 


異端者「ふふふ...」 


隊長「...不死身か、なんでもありだな」 


魔剣士「それに、あの刀には毒が塗ってあるんだァ」 


魔剣士「即死はしないが、しばらく動けねェヤツがなァ...」 


異端者「動けない者をいじめるのが好きなんだよね、ボク」 


魔剣士「実力ねェくせに、面倒だこいつゥ...!」 
413: :2018/12/03(月) 22:17:36.75 ID:
魔女「──ねぇ、奥に扉があるわよっ!」 


魔剣士「...無視してもいいなァ、あいつ」 


異端者「...悪いけど、鍵が必要だよあの扉」 


隊長「...鍵はどこだ?」 


異端者「...食べちゃった!」 


魔剣士「...そりゃ、美味しかっただろう...なァッッッ!!!」スッ 


──ブンッッッッッ!!!!!!!! 

剣気が放たれる、それは鈍くとも鋭くもある。 

当たれば確実に致命傷を与えることができる。 

問題は上記の通り、当たればの話だが。 


異端者「──"転移魔法"」シュン 


異端者「その速度の剣気、当たる気がしないね」 


魔剣士「だァァァァァ...糞がッ...空振りだァ!」 


異端者「このまま、外に逃げてもいいんだけ時間かければ扉ごと壊させちゃうしね」 


異端者「まぁ、ボクがいる間は時間なんてかけさせないけど」 


魔剣士「...ほんと、面倒くせェなお前」 


異端者「さぁ、ボクと遊ぼうか!」 


隊長「...付き合ってやるしかないようだな」 


魔剣士「あァ...」 


魔女(この不死身、どうやって倒せばいいの...っ?) 


~~~~ 
414: :2018/12/03(月) 22:18:53.38 ID:
~~~~ 


魔闘士「―───ッ!」スチャ 


──ダンッ ダンッ! 

慣れていない、よって精度はお粗末なモノである。 

だがこの銃という武器は、当たりさえすれば大きな損傷を与えることができる。 


死霊7「────っ...!」 


──ガラガラガラッ... 

死霊の一匹、宿りを失いそのまま果てていく。 

魔闘士は順調に身に迫る危険を処理している様だった。 


女騎士「──はあああああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!」ブンッ 


―――ガギィンッッッ!!!! 

一方彼女は、大きな槍を振り回していた。 

その鈍器の様な攻撃に、亡骸は砕け散るしかなかった。 


死霊8「────っ...!」ガラガラッ 


女騎士「くそっ...キリがないな...」 


魔闘士「...これでも良い方だろう、俺に至ってはこの武器でしか攻撃できん」 


女騎士「その武器...魔力を感じないのに、女勇者の剣に匹敵しそうな威力だな────」 


魔闘士「──後ろだッッ!!!」スチャ 


死霊9「...」 


気づけば、彼女の後ろには新手の死霊が接近していた。 

魔闘士はそれを察知したはいいが、慣れぬ銃器故に引き金を引けずにいた。 

このままだと接触してしまう、だがそれは杞憂に終わった。 


女騎士「────ふんっ!」 


―――だぁんっっっ!!! 

ランスを棒高跳びのように利用し、大きく跳ねることで避けることができた。 

その大胆な動き、女性ならではの身体の靭やかさだが、魔闘士が驚いたのはそこではなかった。 


魔闘士(あの鎧姿でこの身のこなし...ッ!) 
415: :2018/12/03(月) 22:19:47.22 ID:
女騎士「..."衝魔法"っ!」 


──ズシィッ...! 

空中の女騎士から、少し心もとない魔法が繰り出される。 

だが、そんな威力でも骨を砕くには十分であった。 


死霊9「────っ...!」ガラガラッ 


女騎士「──っ...!」ダン 


女騎士(さすがに...着地は膝にくるな...) 


魔闘士「...仮にも、勇者の仲間か」 


女騎士「残念ながら、魔法はあんまり得意ではないけど────」 


──ダンッ! 

すると突然、魔闘士は彼女に向かって発砲した。 

もう少しで女騎士に被弾していた、ずれていたら彼女の長い髪の毛が巻き込まれていただろう。 

だが今巻き込まれたのは、再び背後に現れた新手であった。 


女騎士「──っ!」 


死霊10「────っ...!」ガラガラッ 


女騎士(...また背後を取られていたか) 


魔闘士「もう少し、視野を広くするんだな」 


女騎士「あぁ...助かるぞ」 


魔闘士「...」 


魔闘士(奴から受け取ったこの武器...この棒の換えが残り4本か) 


魔闘士(...頼む、持ってくれ...この武器も...この灯りも) 


~~~~ 
416: :2018/12/03(月) 22:21:11.29 ID:
~~~~ 


──ババババババババッッッ!!! 

広間に響く、銃火器の激しい音。 

だがそれを受ける者の声は、とても緊張味のないモノであった。 


異端者「いたいいたいっ!」 


隊長「...効果なしかッ!?」 


魔剣士「ならこれはどうだァ!!!」スッ 


異端者「──ぁはっ!!」 


――ギィィィィィィィインッッッ!!!! 

耳につんざくその音は、刃物通しの接触音。 

魔剣士の大きな剣が、異端者の刀と鍔迫り合う。 


魔剣士「...その細せェ刀で俺様の剣をよく受けれんなァッ!」 


異端者「凄いでしょ?」 


魔剣士(汗一つかいてねェな...これだから不死身は) 


隊長「──援護するッ!」スチャ 


──バババババババッッッッ!!!!! 

その弾幕は、すべて奴の身体に被弾する。 

しかしその効果は今ひとつ、異端者は嘲笑を含みながらこう言った。 


異端者「意味ないよ?」 


魔剣士「──どこ見てんだァッッッ!?!?」 


―――─ザシュッッッッッ!!!!! 

剣同士の取っ組み合いから、魔剣士は強烈な斬り上げを炸裂させる。 

隊長が与えてくれた援護とはこれであった。 

彼の銃撃に気を取られた異端者は、胴体を真っ二つにされる。 


異端者「──...!」 


魔剣士「下半身と上半身が離れちまったぜェ?」 


異端者「...へぇ~」 


魔剣士「これでも意味ねェか...ッ!」 


隊長「──フッ!!」ダッ 


──ドガァァァァァァ...!! 

隊長は直ぐ様に突撃し、奴の下半身を思い切り蹴飛ばした。 

それでもなお異端者は話しかけてくる。 
417: :2018/12/03(月) 22:22:28.44 ID:
異端者「ボクの下半身を蹴っ飛ばさないでよ!」 


魔剣士「...チッ! 気味のわりィ奴だぜ本当に」 


異端者「"転移魔法"」シュンッ 


──ゴリゴリゴリッ...グチャッ...! 

蹴飛ばされ倒れ込んだ下半身のもとへと転移する。 

そして異端者は下半身を無理やり上半身と繋ぐ、繋いだだけであった。 


隊長「...あれも治るか、どうする?」 


魔剣士「さァな...俺様は昔っからアイツにだけは関わらないようにしてんだァ」 


隊長「...魔女、大丈夫か?」 


魔女「へ、平気よ...はぁっ...はぁっ...」 


魔女から汗が滝のように流れる。 

魔女の魔法が途切れてしまえばどうなってしまうか。 

魔闘士たちのいる場所は真っ暗になり、死霊に屠られるであろう。 


魔剣士「...頼む、少しでもいい...魔法を持続させてくれ」 


魔女「ごめん...この闘いに参加できなさそう...」 


隊長「...心配するな、お前はそっちを集中していてくれ」 


魔女「うんっ...少し来た道を戻って待機してるわねっ...」 


異端者「...もういいかい?」 


隊長「...」カチャッ 


魔女が安全圏へと対比した、その間にアサルトライフルのマガジンをリロードした。 

それが終わると背負っていた武器と持ち替える、ついに新たな武器の出番であった。 

どんな状況でも頼れるのはこのショットガンという武器である。 


隊長(...映画の話だと、化け物相手にはコレって相場は決まっているな) 


魔剣士「...武器を持ち替えたか」 


隊長「あぁ...前方を全体的に攻撃するものだ、俺の前に立つな」 


魔剣士「あァ...わかったよ」 


魔剣士(...あの時は持ってなかったやつだな...どんな武器か気になるなァ) 
418: :2018/12/03(月) 22:24:05.74 ID:
異端者「..."転移魔法"」シュン 


異端者が隊長の目の前に姿を表す。 

そのまま斬りかかられてしまえば、おしまいだ。 


魔剣士「──あぶねェッッ!!」 


隊長「――──ッ!」スチャ 


──ダァァァーーンッッッッ!!!! 

しかし、異端者は間違えてしまった。 

この武器を前にして、立ち尽くすなど愚の骨頂。 


異端者「へっ...?」ドサッ 


──ジャコンッッッッ!!! 

激しい銃声、その後に続く独特なポンプ音。 

異端者の胴体がひき肉状になる、それと同時に思い切り吹き飛ばされる。 

これがショットガンという武器、決して人に向けてはいけない。 


異端者「...ちょっと痛いかも」 


魔剣士「へェ...お前の武器、どこで手に入るんだァ?」 


隊長「それは後で教えてやる...それより、落とし物だぞ」スッ 


異端者「...へぇ、落としちゃったみたいだね」 


魔剣士「...なるほどなァ、そのひき肉になった腹から落としたわけか」 


異端者「やるねぇ、人間の分際で...本気になろうかなぁ」 


──ピリピリピリッッッ...! 

腹に受けた散弾、それが胃に穴を開け鍵を落としてしまう。 

それがキッカケとなり、異端者はついに本気を見せつける。 


魔剣士「気をつけろ、俺様は今までアイツの本気をみたことがねェ」 


隊長「...どんなことをしてくるか、楽しみだな」 


魔剣士「お前、結構面白れェじゃん...死ぬなよ?」 


異端者「...悪いけど、ふたりとも死んでもらうからね?」 


隊長「...行くぞっ!」 


魔剣士「あァッッ!!!」 


―――ドゴォッッッッッ!!!!! 

魔剣士と少しばかり、関係性が進んだ。 

そんな明るい場面であったが、その鈍い音が現実を知らしめる。 

その衝撃は隊長の腹部へと向かわれた。 
419: :2018/12/03(月) 22:25:09.38 ID:
隊長「――ッ...!?」 


異端者「...ふぅ、遠くまで吹き飛ばせなかったか」 


魔剣士「なァッ...!?」 


魔剣士(見えなかった...どうなってやがる...ッ!) 


隊長「――ゲホッ...ゲホッ...」 


隊長(これはッ...) 


気づけば異端者は、隊長の懐に入り込んでいた。 

そして繰り出したのは掌打、その光景は見たことがある。 

一体なぜこの者が、彼の力を真似できているのか。 


異端者「...どうだい? ボクの拳は────」 


隊長(──魔闘士の力に似ている...ッ!) 


魔剣士(──まるで魔闘士みてェじゃねェか...ッ!) 


異端者「────ふふふ、魔闘士みたいだろ?」 


魔剣士「てめェ...」 


異端者「――ハッッ!!!!」 


──ガギィィィィィンッッッ!!! 

異端者は蹴りを繰り出した、それを受けるのは魔剣士。 

大剣と足が鍔迫り合う、だというのに聞こえるのはこの音であった。 


異端者「防御が精一杯みたいだね?」グググ 


魔剣士「チィィッ...ッ...ッ...!」グググ 


異端者「ほらほらっっ!!!」 


魔剣士「...クソッ!」 


異端者「刀もどうかなぁ?」スッ 


魔剣士(まじィ...このままじゃ防御しきれねェ...) 


防御が突破され少しでも斬られたら、毒が身体にまわり動けなくなる。 

奴の攻撃だけは受けてはいけない、だが魔闘士のような力がそれを許してくれない。 

大剣と対峙するのは異端者の足、よって奴の両手は手持ち無沙汰である、つまりは刀など簡単に扱える。 


魔剣士(だからといって、この馬鹿力...そう簡単に逃してくれねェな...) 
420: :2018/12/03(月) 22:26:55.23 ID:
異端者「ほらほらほらほら!」 


──ダァァァァァァァァンッッッッ!!! 

そんな時、痛みをこらえながらも再び発砲した。 

その何かが炸裂するような銃声が、異端者を怯ませた。 


異端者「いたっ...!」 


隊長「...」ジャコンッ 


魔剣士「────でかしたァッ!」ダッ 


異端者「あーあ、逃げられちゃった...次は邪魔しないでね」 


隊長「...それはできない」 


隊長(鍵を手に入れたからといって...ここはスルーできないな) 


魔剣士「はァッ...はァッ...!」 


魔剣士「この俺様が消耗されるとはなァ...」 


隊長「...おい、どうする」 


魔剣士「不死身の上、なぜか魔闘士の力を持ってやがる...やべェな」 


異端者「...ボクを倒すことは、無理だね」シュン 


隊長「──ッ!」ピクッ 


魔剣士「────しまったッ!?」 


彼の目の前に現れる、せっかく距離を置いたというのに。 

その転移魔法の詠唱は、魔剣士ともあろう男ですら気づけなかった。 


隊長「――魔剣士ッ!!」 


──ドガァッ...! 

その音は、優しく足で彼を護る音。 

隊長が魔剣士を蹴飛ばし、身を挺してかばう。 


魔剣士「なッ────」ドサッ 


異端者「なぜなら────」 


――――シュッッッッ!!!! 

背中の刀を抜刀する、その速度は達人並。 

だがこの極限状態が隊長の感覚を高めていた。 


隊長「―――ッ!」ガバッ 


魔剣士(屈んだッ...!? あの抜刀速度が人間に見えるのかッ!?) 
421: :2018/12/03(月) 22:28:44.85 ID:
異端者「────あと1人だから」 


しかし、異端者は瞬時に刀の持ち方を変える。 

この早業は同じ剣士である、魔剣士にしか見えなかった。 


魔剣士(──抜刀からの斬り下げ...ッッ!?) 


魔剣士「──あぶねェッッッ!!!」 


――――サクッ... 

その刃は、わずかに彼の二の腕を掠めた。 

それが致命傷であった、すぐさまに感じる身体の痺れ。 


隊長「しまっ────」ガクッ 


隊長(力が入らない...ッ!?) 


異端者「...腕、少しかすり傷ができちゃったね」 


隊長「ッ...!」 


異端者「死んで」スッ 


―――ガキィィンッッッ...! 

刃物がエモノを捉える音、そのはずだった。 

その音は余りにも高い、人を切り裂くときには鳴らない音だ。 

では一体なにか、それは刃物が刃物をぶった斬る音であった。 


異端者「...刀が切れた」 


魔剣士「悪いがよォ...いい加減キレちまったぜェ?」 


魔剣士「竜の逆鱗にいつまでも────』 


魔剣士『────触ってるんじゃねェよ...ッ!』 


魔剣士の声が、なにか動物の唸り声のようなモノと重なる。 

それだけではない、彼の持つ魔剣が、彼自身と一体化を始めていた。 

そこから発せられる殺気は、その対象ではない隊長すらを震え上がらせる。 


隊長「──ッ!?」ゾクッ 


隊長(な、なんだこの威圧感...まるで激怒している動物みたいだ...) 
422: :2018/12/03(月) 22:29:46.21 ID:
異端者「...へぇ」 


魔剣士『おい、きゃぷてん...這いずってでも下がってろォ』 


隊長「...ッ!」ピクッ 


隊長(匍匐前進ならギリギリできるか...とにかく今は魔剣士に任せよう)ズルズル 


異端者「初めて見るよ、魔剣の本当の力を」 


魔剣士『...気安く話しかけんなァ、今ブチキレてるんだァ...俺様も...』 


魔剣士『...この"竜"もなァァァッッッッ!!!!』 


魔剣士『──"属性付与"..."爆"ゥゥゥッッッッ!!!!』 


一体化している魔剣が、魔力に満ち溢れる。 

その魔力には爆が込められている、微かに聞こえるのは何かが破裂する音。 


魔剣士『行くぞォォォッッッ!!!!!』 


魔剣士『この剣気の弾幕...避けられるかァァァッッ!?』スッ 


―――――――――ッッッ!!!! 

音も鳴らない素早さで空を斬る、斬って斬って斬りまくる。 

このメチャクチャな剣気に、さらに魔法が加わる。 


異端者「──なっっ!?!?」 


──バゴンッッ!!  

その繰り出される剣気達は、着弾したと同時に爆発を繰り返す。 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 
423: :2018/12/03(月) 22:30:45.87 ID:
魔剣士『まだまだ終わらせねェぞッッッッ!!!!』 


――――――ッッッッ!!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 


隊長(おいおい...遺跡が崩れるぞ...!) 


安置に身をおいた隊長が、その威力に文字通り頭を抱える。 

爆発が数百回繰り返されると、魔剣士はようやく剣を振るうのをやめた。 


魔剣士『ハッ、どうだ参ったかァ?』 


隊長(...あれほどのことをしておいて、まだ余裕そうな表情か) 


魔女「な...なにが起きたの...?」 


隊長「...!」 


隊長(説明してやりたいが、口が動かせん...) 


魔女「...毒を受けたのね、"治癒魔法"」ポワッ 


隊長「──助かる...というより、毒も治せるのか」 


魔女「傷以外を治癒させるには、結構鍛錬が必要なのよ...」 


隊長「...そういえば、大丈夫か?」 


魔女「大丈夫とは言い切れないけど...なんとか安定してるわ」 


隊長「そうか...って、あれはッ!?」 


魔女との会話をしている内に、爆破によって生まれた煙が晴れ始めていた。 

そこには人の形をした者などいなかった、あるのはただ1つの肉塊。 

頭部だけとなった異端者が、無残にも転がっていた。 


異端者「はぁっ...はぁっ...!」 
424: :2018/12/03(月) 22:31:46.65 ID:
魔剣士『流石不死身、頭だけでも生きてるかァ』 


異端者「ふふふ...死ねないんでね...」 


魔剣士『お前が死なねェ理由なんか知らねェが、いい加減勘弁してくれよ...』 


異端者「君の魔力が尽きるのが先か、ボクが諦めるのが先か...」 


魔剣士『...こうなってる俺様だと、あと3日は続くぞ』 


異端者「すごいね...魔剣の本当の力...ボクも魔剣欲しいなぁ」 


異端者の身体が頭に集まり始めている。 

肉塊になっても、不死身の身体は健在であった。 

このままでは肉体は再生するだろう、そんな彼に隊長はプレゼントを送る。 


隊長「──そんなに欲しいなら、くれてやる」スッ 


―――グサッッッッ!!!! 

異端者の頭に何かが刺さった。 

それは亡き親友の形見、奇妙な柄の入った細い剣。 

光につつまれた魔剣、それはユニコーンの魔剣。 


異端者「へっ...?」 


魔剣士『...あーあァ、終わったな』 


異端者「どういうこと...ッ!?」ピクッ 


異端者「これは、光属性...だとッ!?」 


隊長「...魔剣士、光属性はどんなものでも無力化させるんだったな?」 


魔剣士『あァ、そうだ...ユニコーンとなれば、そりゃ偉い高品質なモノだ」 


魔剣士「どんな魔物も普通の"人間"程度にしか活動できないだろうなァ」 


魔剣士は勝利を確信し、魔剣と一体化していた姿を元通りにし始める。 

そして、異端者に集まろうとしていた肉片の動きが止まる。 

勝利はもうすぐそこであった。 


異端者「あっ...あっ────」 


隊長「..."人間"は首だけでは生きれない」 


異端者「―――─」 


魔剣士「...ふゥ、やっと終わったなァ」 


魔女「...お、終わったの?」 


隊長「あぁ...俺たちの勝ちだ、もうこっちに来ていいぞ」 
425: :2018/12/03(月) 22:33:40.26 ID:
魔剣士「しっかし、魔剣の力を発揮させると...さすがに疲れるなァ」 


隊長「あの姿は...?」 


魔剣士「...魔剣っつーのは、常に魔力に満ち溢れてるモノだァ」 


魔剣士「その魔力を、自分の魔力と一体化することであんな感じになるぜェ」 


魔剣士「...まァ、自分が魔剣そのものになるってことだァ」 


隊長「...このユニコーンの魔剣でもできるのか?」 


魔剣士「...今すぐは無理だな」 


魔剣士「これができる条件は、時間だけだ」 


魔剣士「いきなり知らねぇ雌に告白しても断られるだろォ?」 


魔剣士「何回も自分を魅せることで雌とうまくいくのと同じでよォ」 


魔剣士「魔剣と自分の魔力を馴染ませなきゃいけねェんだ」 


魔剣士「...まぁ、運が悪くても数十年単位は必要だがなァ」 


隊長「...意外と、面倒な女だな」 


魔剣士「ハッ、そうだなァ...」 


魔女「も、もう少しまともな例えはなかったの...?」 


魔剣士「知るかァ、てめェで考えろ」 


隊長「...進むぞ」 


魔剣士「...あァ、ゆっくりしてる暇はねェな」 


隊長「...」スッ 


──グチャァッ... 

隊長が魔剣を異端者から引っこ抜く。 

めちゃくちゃ気持ち悪い光景であったが、帽子の形見を置いていくわけにはいかない。 
426: :2018/12/03(月) 22:35:22.42 ID:
魔剣士「おい、行くぞ」 


魔女「まって..."治癒魔法"」ポワァッ 


隊長「あぁ...助かるぞ、魔女」 


魔剣士「へェ...あの雷魔法まだ続いてるんだろ?」 


魔女「え? そうよ?」 


魔剣士「それなのに普通に、治癒魔法使いやがって...やるなァ」 


魔女「これでも、大賢者様に修行してもらったのよ」 


魔剣士「あァ、そうなのかァ」 


――ガチャッッッ! 

腹から出てきた、やけにぬめぬめした鍵で扉を開ける。 

手応えあり、どうやら偽物とかではなかった。 


隊長(もうこの鍵はいらないな)ポイッ 


魔剣士「扉もあいたみたいだし、行くぞォ」 


魔女「早く、女騎士たちと合流しないとね...」 


扉を開けると、すぐそこに魔力で満ち溢れた何かがあった。 

その色はとでも黒く、触れることを思わず躊躇ってしまうほどの迫力があった。 


隊長「...これが封印か?」 


魔剣士「結界魔法だなァ...魔王によるヤツだから結構面倒だなァ...」 


魔女「ど、どうするの...?」 


魔剣士「どうするか迷っていたが、いいもん持ってるじゃねェか」 


隊長「...ユニコーンの魔剣か」 


魔剣士「そうだァ、その質の光なら...一部分を一瞬だけでも結界を崩せるはずだ」 


隊長「...やってみよう」 


魔剣士「穴があいたら、全員一斉に入るぞ」 


隊長「...」 


──スッ...! 

隊長が魔剣をかざしてみる。 

するとすぐに反応を示した、当然こちらもすぐに動かなければならない。 


魔剣士「────入るぞォッッ!!!」 


~~~~ 
427: :2018/12/03(月) 22:36:09.11 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
428: :2018/12/04(火) 22:18:37.93 ID:
~~~~ 


隊長「...どうやら、うまくいったようだな」 


──■■■■... 

あたりから聞こえるのは黒い音。 

そして異様な感覚が身に迫る、ここは魔王の結界の中。 

だがそれだけではない、魔王以外のなにかが魔女に緊張感を与える。 


魔女「な、なにこの魔力の量...っ!?」 


魔剣士「なるほどなァ...これは魔王子の剣気の影響だなァ」 


隊長「...俺にも感じるぞ、殺気みたいなモノが...大丈夫かこれは?」 


魔剣士「大丈夫だ、魔王の結界を破ろうとしてるだけだァ...俺様たちに向けられたモノじゃねェ...」 


魔女「はぁっ...はぁっ...!」 


隊長「...」スゥー 


すると突然始まった過呼吸。 

なにか、膨大な力を持つものが近寄ってくる。 

隊長は深く呼吸をして、来るべき者に備え始めた。 


魔女「うぅ...はぁっ...」 


魔剣士「大丈夫だァ、落ち着け嬢ちゃん」 


隊長「魔女、深呼吸をしろ...」 


魔女「そっ...そうねっ...」スゥー 


──どくんっ......どくんっ...... 

何かが近寄ってくる度に、魔女の鼓動が早くなる。 


魔剣士「...来たなァ」 


──どくんっ...どくん...どくんっ...どくんっ... 

それは止まることができない、身体が悲鳴をあげている。 

まさかその男の顔を見ただけで、ここまで苦しみを味わうとは思わなかった。 

ついに目の前に現れたのは、魔界を統べる王の息子。 


魔剣士「...よォ、魔王子ィ...久しぶりだなァ」 
429: :2018/12/04(火) 22:21:43.15 ID:
魔王子「────...」 


隊長「...」 


魔剣士「...この人間は...知り合いだァ...なんでも、話したいことがあるってよォ」 


魔王子「...」 


魔剣士「...おら、言っちまいな」 


隊長「...助かる、魔剣士」 


隊長「俺はCaptainと名乗っている...魔王子に頼みがある」 


魔王子「...」 


隊長「...俺の仲間になって、一緒に魔王を倒そう」 


魔王子「...なぜだ?」 


隊長「...俺の友は死んだ、魔物と人間が平和に共存できる世界を手に入れるという...夢なかばにだ」 


隊長「俺はその世界を託された...魔王に平和を叩きつけるために」 


隊長「...魔王に話を飲ませる状況にするには、お前の力が必要だ...ッ!」 


魔王子「...力なき者に、貸す力などない」 


隊長「...だったら、お前を納得させるまでだ」 


魔王子「...ほう」 


―――─ブワッッッ...! 

いままで殺気をぶつけられて恐怖をしたことはあった。 

魔闘士、魔剣士、さらには自分自身が放ったこともあった。 

だが、今の殺気はそれらの次元ではなかった。 


隊長「────ッッ!?」 


――ガリィッッ!!!! 

隊長の口から血がでる、彼が思い切り舌を噛んだのであった。 

そうでもしてなければ、この男は気絶を余儀なくされていただろう。 


魔剣士「お、おい...魔王子ィ...」 


魔王子「俺を仲間にしたければ...実力を見せてみろ」 


魔王子「魔剣士を魅了したお前が、どこまでできるか?」スッ 


魔王子が取り出したのは、鞘に入れられた剣であった。 

独特な形などしていない、無駄な装飾などない。 

ただの剣であった、だがそれが恐ろしい程の気迫を醸し出す。 
430: :2018/12/04(火) 22:23:15.67 ID:
隊長「──魔女ッ...援護を頼むッッ!!」スチャ 


魔女「う、うんっ!!」 


魔王子「...」 


魔剣士「お、おいッッ!! 待てッッ!!!」 


魔剣士「相手は人間だぞッ!? 簡単に死ぬに決まってるだろォッッ!?」 


魔王子「──貴様はどちらに付く」 


魔剣士「──ッッ...!!」 


魔剣士は葛藤する、普通なら人間などを味方にしない。 

だが己の好奇心には抗えない、未知なる武器を所持し、あの魔闘士を撃退したこの男。 

そして信頼する仲間でもない分際で、先程の異端者戦で自分が庇われたことを唐突に思い出してしまう。 


魔剣士「...クソッ!!」 


隊長「...魔剣士、これは俺の問題だ...離れていてくれ」 


魔剣士「...!」ピクッ 


魔剣士(ふざけるな...あんな表情しやがって...ッッ!!!) 


魔剣士は隊長の指先を見てしまう。 

アサルトライフルを構え、トリガーにかけている指を。 


魔剣士(...震えてるじゃねェか) 


魔剣士(...人間の分際でよォ...魔王子に勝てるわけねェのに...) 


隊長の姿は、無謀にも見える。 

その無謀さが、自分に重ね合わさる。 

無謀にも魔王子に挑み、完膚なきまでに叩きのめされた過去を。 


魔剣士(...ハッ、気でも触れたか?) 


魔王子「...ほう」 


隊長「──魔剣士ッッ!?」 


魔剣士「悪ィがよォ...コイツらは俺様の"友"だァ...』 
431: :2018/12/04(火) 22:23:47.85 ID:
『死なせはしねェ...』 









432: :2018/12/04(火) 22:26:10.37 ID:
魔王子「...面白い」 


隊長「おいッッ! お前ッッ!?」 


魔剣士『なァに、気にするなァ...気が向いてるだけだァ』 


隊長「ッ...!」 


魔剣士『魔王子の脳筋に一泡吹かせてやれェ...嬢ちゃん、治癒魔法だけを集中してくれ』 


魔女「...わかったわ」 


魔剣士『俺様が魔王子を抑える...きゃぷてんはその魔剣で魔王子を斬れッッ!!!』 


魔王子「...竜が魔王に楯突くのはよくある話だ」 


魔王子「だが、勝つのは魔王と相場が決まっている...」 


魔王子「..."属性付与"、"闇"」スッ 


──ブン■■■■ッッッ―――――――!!!!! 

彼の身体が黒に包まれる、それと同時に剣気を放つ。 

魔王子の基本戦術、それは抜刀居合。 

その射程は遥か彼方まで届くであろう。 


隊長「──なッ...!?」 


魔剣士『────ハアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!』ブンッ 


――――ドガァァッッッッッ!!!! 

彼が魔王子からの攻撃を防いでいた。 

魔剣との一体化、それで得れるのは攻撃性能だけではない。 

魔剣士の放った分厚い剣気が、黒色の剣気を薙ぎ払った。 


隊長「──何が起きたッッ!?」 


魔剣士『剣気だァ! 属性を付与して剣を振っただけだァッッ!! あれがすべてを無力化する"光属性"と対なす────』 


魔剣士『──すべてを破壊する"闇属性"だァッッ!!!!』 


隊長「...次元が違いすぎるぞ」 


魔剣士『諦めんのかァッッ!?』 


隊長「...諦めてたまるかッ! 魔女ッッ!!!」 


魔女「"治癒魔法"」ポワッ 


魔剣士『助かるぜェッ...きゃぷてんッ! その魔剣が鍵だァッッッ!!!!』 


魔剣士『流石の俺様も、魔王子の攻撃を何度も受け流すことはできねェッ! 短期決戦に持ち込めェッ!』 
433: :2018/12/04(火) 22:27:27.49 ID:
隊長「あぁッッ!」スッ 


取り出したのは、彼の形見。 

そこから溢れるのは光、刀身が輝く。 

それは魔王子の闇を萎えさせる、とても心強いモノであった。 


魔王子「...光属性か」 


隊長(帽子...ユニコーン...力を貸してくれ...ッ!) 


魔王子「...」シュン 


すると彼は突然目の前に現れた。 

魔闘士と同じく、魔法を使わずに死ぬほど早く動いただけ。 

まるでわざわざ、その光を確かめに来たかのような動きであった。 


隊長「──ッ!?」 


魔王子「死ね」 


――ギィィィィイィィンッッッッ!!! 

闇と光が鍔迫り合う、その優劣は僅差であった。 

白が闇を萎えさえ、闇が白を喰らう。 


隊長「クッ...!」グググ 


魔王子「...この質の光属性は、差し詰めユニコーンの魔剣といったところか」グググ 


魔剣士『どこ見てんだよォ...?』スッ 


一瞬にして間合いに詰め寄った魔剣士。 

一体化したその魔剣が魔王子に牙をむこうとした。 

だがそれは命取りであった、やはりこの男は魔剣士よりも格が上。 


魔王子「────邪魔だ」 


――スパ■■ッッッッ...! 

────ボロンッッッッッ... 

隊長と魔王子の鍔迫り合いに魔剣士が乱入したかと思えば、何かが落ちた。 


魔剣士『────は?』 
434: :2018/12/04(火) 22:30:07.41 ID:
隊長「...魔剣士ッ!?」 


魔剣士『なっ...」 


魔剣士(腕が...ッ!?) 


魔剣士「──がああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!」 


彼は右腕を切り落とされた、その右腕とは魔剣を一体化させている重点部分。 

そんな重要な部位が無くなれば、当然その力も失うことになる。 

そして彼から流れ出るのは、竜の紅き体液。 


隊長「──クソッッッ!!!!」ゲシッ 


隊長「魔女ッッッ!!! 頼んだぞッッッ!!!」 


魔女「わ、わかったわよっ!」 


魔剣士「ぐ...ッ!!!」ダッ 


隊長は足元に転がっている魔剣と一体化している腕を魔女の方に蹴飛ばす。 

そしてそれを追うように、魔剣士が魔女の元に向かった。 


魔女「"治癒魔法"っっっ!!! "治癒魔法"っっ!!!」ポワッ 


魔剣士「ガァッッ...クソッタレェ...ッ!」ピクッ 


魔女「動かないでっっ!! 変な風に腕がくっつくわよっ!?」 


魔剣士「悪ィ...」 


魔王子「...」サッ 


隊長「──ッ!?」グッ 


隊長が尻目に、魔剣士の様子を伺う。 

すると突然手応えを失った、それが意味するのは1つ。 

魔王子が鍔迫り合いをやめたのであった。 


魔王子「...俺にかかれば、貴様など簡単にああできる」 


魔王子「もう少し...俺を楽しませてみろ」 


隊長「...あぁ、後悔するなよ」 


身体の底から力がみなぎる。 

その力とは、以前に魔闘士を苦しめた白き輝き。 

魔法かどうかもわからない、神業と称される不思議な力。 


魔王子「────ほう」 


隊長(...これは、魔闘士の時のか) 
435: :2018/12/04(火) 22:32:11.87 ID:
隊長「...生憎だが剣は得意じゃない、こちらで行くぞ」スチャ 


魔王子「好きにしろ────」 


──ダァァァァァァァン□□ッッッッ!!!! 

好きにさせた矢先、炸裂音と白き音が響き渡る。 

その聞いたことのない音色、そして攻撃方法に彼は思わず対処できずにいた。 


魔王子「──うッッッ...!?」 


隊長「――ッ...!」ジャコンッ 


隊長「─―――AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッ!!!!!」スッ 


──バキィィ...ッッ!!! 

威力のあるショットガンでようやく怯んだ。 

その隙を逃す訳にはいかない、彼は全力で振りかぶり拳を彼の顔面にぶち当てた。 

魔王子の身体は軽く吹き飛ぶが、そのまま受け身を取られ直ぐ様に立ち上がった。 


隊長「はぁッ...はぁッ...」 


魔王子「なるほど..."光の属性付与"か...それも武器ではなく、俺と同じで自分の身体にかけているな?」 


魔剣士「...アイツ、そんなもん使えるのかァ?」 


魔女「し、知らなかったわ...」 


そして口に溜まった血を吐き捨てながら彼は分析した。 

どうやら隊長の神業は、光の属性付与であることが判明した。 

思わぬ人物がなぜ高等魔法を扱えているのか、彼側の者たちも思わず驚いていた。 


隊長「...悪いが、よくわかっていない」 


魔王子「そうか...では、それを活かしてみろ」 


隊長「────ッ!」ピクッ 


魔王子「最強と言われた4代目魔王の力が眠るこの魔剣...直に味わえ...ッッ!!!』 


隊長「これは...魔剣士の...ッッ!?」 


魔剣士「──キャプテンッッッ!!! 前を見ろォッッッッ!!!」 


──ミシミシミシミシッッッッッ!!!!!!! 

判断が遅れていれば、彼の餌食になっていただろう。 

身体に帯びた光、それは手に持っている銃器をも包み込む。 

闇属性を帯びた剣と、光属性を帯びたショットガンの銃身がぶつかり合う。 


隊長「──グゥゥゥゥゥゥゥッッッ!?」 
436: :2018/12/04(火) 22:33:50.39 ID:
魔王子『...』 


──ダァァァァァァン□□ッッッッッ!!! 

そこにいたのは、魔剣と一体化した驚異的な存在。 

彼は無言のままであった、だがそれがどれほど恐ろしいモノか。 

先程怯ませる事のできたこの銃撃に、全くの無反応であった。 


隊長「なっ...!?」ジャコンッ 


魔王子『...』 


隊長「ならッ...!!」 


──ダァァァァン□ッッッ!!! ジャコンッッッ!! ダァァァァァン□□□ッッッ!!! 

今度はポンプアクション動作を派生した、2連撃ちを炸裂させる。 

だが数が多ければいいという話ではない、思い出すべきは属性の相性である。 

白き銃弾は、すべて闇に飲み込まれている。 


隊長「──嘘だろッ...!?」ジャコンッ 


魔王子『...効かないな』 


隊長(...すべてを無力化する光と、すべてを破壊する闇...確か────) 


大賢者の別荘にあった本を思い返す。 

その優劣は、質の差で変わる。 


魔剣士「きゃぷてんッッ! 今の魔王子はお前の光属性を凌駕しているッ!!」 


魔剣士「魔王子の闇属性の質は、お前の光属性より上だァッッ!!!」 


隊長(...そうだろうと思ったところだ) 


魔王子『──...ッ!』スッ 


──ブン■■■ッッッッッ―――――!!! ブン■■■■ッッッ――――!!! 

力強い2連続の抜刀、そしてそこから放たれる剣の風と闇の音。 

それを防御するべく彼が取り出したのはこの魔剣。 

だがこれを持ってしても魔王子の闇には敵うことはなかった。 


隊長「──ッ...!」スッ 


──ガギィィィィィィィィンッッッッ...! 

それは弾かれた音、あまりの衝撃に彼の手は支えることができなかった。 

ユニコーンの魔剣が弾かれた、そして神業という名の属性付与も通用しない。 


隊長「まずいな...ッ!」 


魔女「魔剣が吹き飛ばされた...っ!」 


魔剣士「...クソッ!」 
437: :2018/12/04(火) 22:37:51.95 ID:
魔王子『...』スッ 


隊長「...!」スチャ 


──ダァァァァァァァァンッッッ!!! ジャコンッッ!!! 

────カチッ...カチッ... 

無謀な抵抗、それは彼に追い打ちをかけた。 

リロードをする余裕などない、引き金が鳴らした音は弾切れの合図であった。 


隊長「...弾切れか」 


魔王子「終わりか...ならば死ね」 


──ブン■■ッッッッ―――――!! 

――――ドガァァァッッッッッッッ!!!!!!! 

その剣気はまたたく間に、闇によって破壊される。 

だがそのおかげで、隊長はその餌食にならずに済んだ。 

そこには完全復活した彼が、人間の男を庇う竜が立ち尽くす。 


魔剣士『...よォ...さっきは良くもやってくれたなァ...!』 


隊長「ま、魔剣士...ッ! 治ったのかッ!?」 


魔女「な、なんとか間に合った...っ!」 


魔王子『..."竜"が"魔王"に勝てると思うなよ』 


魔剣士『あァ...?』 


魔剣士『..."属性付与"ォッッ!!!! "爆"ゥッッ!!!!』 


魔剣士『きゃぷてェんッッッ!!! 退避してろォッッ!!!』 


隊長「すまないッッッ!!!!」ダッ 


魔女「きゃぷてんっ!」 


隊長「大丈夫だッッ!!」カチャカチャ 


隊長(今のうちにリロードしとかないと...ッ!) 
438: :2018/12/04(火) 22:39:09.49 ID:
魔剣士『オラァッッッッッ!!!!!』 


魔王子『...』 


──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!! 

────ブン■■■ッッッ―――――!! ブン■■ッッッ―――――!!! 

魔剣士の爆発と、魔王子の闇が相殺しあっている。 

だが明らかに優劣がついている、軍配は黒の白星であった。 

そして剣気のぶつけ合いが終わると、2人は接近し鍔迫り合う。 


魔王子『...無駄だ』グググ 


魔王子『下位属性の炎属性に...上位属性の闇属性を相手に勝ち目などない』 


魔剣士『...あァ!? 舐めんなァァッッ!!!』グググ 


魔王子『..."翼"をもがれた竜になにができる』 


魔剣士『てめェの言う翼ってのはァ...過去の俺様だァ』 


魔剣士『いつまでも...過去に縋ってるようじゃァ"餓鬼"のまんまだぜェ?』 


魔王子『...殺してやろう■■■』 


魔剣士『ケッ...青二才がァ...』 


――――ッッッッッ!! ――――ッッッ!!!! 

両者ともに、音が捉えきれないほどの剣撃を交わしている。 

目で追えるギリギリの速度、超越した剣術同士の戦いがコレであった。 


魔女「...とても助太刀できそうにないわね」 


隊長「あぁ...だが、あの闇をどうにかしなければ」 


魔女「...」 


この状況、魔女にはどうすることできない。 

申し訳程度にできるのは、隊長や魔剣士の治癒ぐらいであった。 

再び闘いに赴こうとする隊長を注視することしかやれることなどなかった。 


魔女「...あんたの装備、血だらけね」 


隊長「今は血が流れているわけでない、汚れただけだ」 


魔女「...っ!」ピクッ 


魔女「────まって、いいこと思いついたっ!!」 


~~~~ 
439: :2018/12/04(火) 22:40:14.27 ID:
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@fqorsbym
441: :2018/12/05(水) 23:31:42.17 ID:
~~~~ 


女騎士「はぁっ...はぁっ...な、なんとかなったな...」 


魔闘士「...流石に骨が折れたな」 


女騎士と魔闘士は死霊を殲滅していた。 

骨が折れた、それは文字通りの意味であった。 

この遺跡に蔓延った大量の亡骸は、無残にもすべて砕け散っていた。 


魔闘士(この換えの棒も1本分余ったな...) 


女騎士「ところで、ここで待機するのか?」 


魔闘士「...鉄格子が光属性を帯びている、進むのは無理だ」 


女騎士「だな...」 


魔闘士「...しかし、未だに雷魔法を維持するなんてな」 


女騎士「あぁ、魔法は持続が一番魔力を消費するからな...魔女は凄いな」 


魔闘士「...どうやら凄いのは、俺たちの運も同様みたいだな」 


女騎士「どうした?」 


魔闘士「先程の発言は撤回させてもらおう...」スッ 


―――ドガァッッッッ!!!! 

魔闘士が鉄格子を蹴飛ばす。 

なぜなのか、光属性はすべてを無力化させるというのに。 

理由は極めて単純、魔女の持続性能を見習って欲しいモノだった。 


魔闘士「たった今、光が消え失せたようだな...効力切れか?」 


女騎士「...できればもっと早く、効力が切れて欲しかったな」 


魔闘士「逆を言えば死霊に追われる心配はない、とでも言っておこうか...さて、魔剣士たちと合流だ」 


女騎士「まぁ...このまま待機するのは退屈だしな」 


魔闘士「...どうやら奥に行けば蝋燭が立っているらしいな」 


魔剣士たちが先に進んだこの道。 

そこには僅かな光源が並べられており、歩行が可能であった。 

下り階段の道を降りていくと、激戦区跡地に到着する。 
442: :2018/12/05(水) 23:33:39.70 ID:
女騎士「広間のようだな」 


魔闘士「そのようだな...とてつもない爆発後だ...魔剣士の仕業か」 


女騎士「それよりも...生首が転がっているぞ」 


魔闘士「あれは...異端者ッ!?」 


魔闘士「...おかしい、奴は不死身のはず」 


女騎士「どう見ても死んでいるぞ...どちらにしろ動き気配はなさそうだが」 


魔闘士「...まぁ、死んでいるならそれでいい...それよりも向こうの扉だ」 


女騎士「...あそこから嫌というほどの魔力を感じるぞ、これが魔王のモノか?」 


魔闘士「そうだ、急ぐぞ」 


???「────急がなくてよろしいですよ」 


魔闘士「...誰だ?」 


女騎士「どこから声がした...?」スッ 


その時だった、どこからか声が聞こえた。 

思わず彼らは足を止めてしまう、新手に備えて女騎士は槍を構えた。 

だがその声色など熟知している彼は、この厄介者に頭を抱えていた。 


???「...下です」 


魔闘士「...やはり生きていたか、異端者ッ!」 


女騎士「不死身もここまで生き抜くか...まさか生首に話しかけられるとは思わなかったぞ...」 


異端者「...」 


魔闘士「...邪魔をする気か? 異端者よ」 


異端者「私は...異端者ではありません」 


魔闘士「...なんだと? なにを抜かしている」 
443: :2018/12/05(水) 23:35:57.08 ID:
異端者「私は"天使"なのです...行き過ぎた折檻により...堕天を命じられた...」 


女騎士「天使...?」 


異端者「...私は堕天により記憶をなくし、狂人のような性格になりました」 


異端者「身体は人間に弄くられ...あなたのような穢れた馬鹿力を得たのです」 


異端者「堕天した私は殺されたようですが、そのかわり天使としての私の記憶を完全に取り戻しました」 


魔闘士「...随分とつまらん奴になったな、冗談の質が落ちたのでは?」 


異端者「──私がなぜ不死身なのか、教えて差し上げましょう...」 


異端者に白い身体が現れる、そして背中には翼。 

天使の翼は純白、そして優しそうな柔らかな作りだった。 

しかしその優しさが逆に異物感を高める、そして仕上げにはあの白い言語。 


異端者「さぁ、この世界に存在する全ての生物に私の恨みを...□□□□□」 


女騎士「これは...光属性...っ!?」 


魔闘士「...なるほど、あの鉄格子は...異端者、お前の仕業だな?」 


異端者「..."結界魔法"」 


異端者の周りに結界が張られる。 

空間が隔絶される、それはこの異端者の魔法により。 

もう逃げ場などない、この魔法から脱出する方法など限られている。 


魔闘士「...仮に本当に天使だとしても...随分と攻撃的な奴だな」 


女騎士「どうする...っ!?」 


魔闘士「無論、天使であろうと神であろうと...邪魔者は消すまでだ」 


異端者「私の前では全ての武力は無力なのです...」 


魔闘士「...ならば、この魔闘士の剛力、受けてみろ」 


女騎士「...光属性と相まみえるのは、初めてだな」 


異端者「あなたは、人間だというのに魔物に肩を貸すのですね」 


女騎士「...私には、お前が胡散臭く見える」 


異端者「...あなたには救済ではなく、裁きが必要のようですね」 


──メキメキメキメキメキッッッッ... 

その音は結界内部の地面が崩れ去る音。 

そんな中、異端者だけは翼を使い宙に舞う。 
444: :2018/12/05(水) 23:38:35.78 ID:
異端者「──□□□□□□□□□□□...」 


魔闘士「チィッ..."風魔法"ッ!!!」 


──ふわっ...! 

風が魔闘士と女賢者を優しく包み、宙に浮く。 

機敏に動くことのできる彼の体術とは裏腹に、この魔法はとても穏やかなモノであった。 


女騎士「──助かるぞっっ!!!」 


魔闘士「魔力は膨大にあるが魔法は得意ではない...あの女の雷魔法のような長時間は無理だ」 


女騎士「さっさと、倒すしかないな...っ!」 


異端者「...□□□□□□□」 


女騎士「くっ..."属性付与"っ! "衝"っっっ!!!」 


女騎士「私には剣気は放てないが...これならっっ!!!」 


──ブンッッッ!!! ブンッッッ!!!! 

ランスを宙に向かって刺すことで、衝撃を生む。 

それは例え剣気を扱えなくても、騎士である彼女の苦手分野である遠距離対応力を補ってくれる。 


異端者「..."光魔法"」 


――──□□□っ... 

異端者に向けられた衝撃が光に包まれる。 

あの激しい衝撃は、白き音と共に消え去ってしまった。 


女騎士「ダメかっっ!!!」 


魔闘士「...ある程度、質の高い光属性の持ち主のようだな」シュン 


風のように早く異端者に近寄る。 

それは浮遊していても同じことであった。 

彼の得意な超高速移動、そして繰り出されるのは。 


魔闘士「―――ッッ!!!」 


――バキィィィッッッ...!!! 

その拳は、異端者の腹部に直撃するはずだった。 

だが彼に感じた手応えは、存在しなかった。 


女騎士「やったかっ!?」 
445: :2018/12/05(水) 23:40:24.32 ID:
魔闘士「...いや」 


異端者「無駄です、私に魔法及び暴力は通じません...□□□」 


魔闘士「クッ...一度退かせてもらうか...」シュンッ 


女騎士「ど、どうするっ!?」 


魔闘士「...光魔法を使わせるな...魔法の合間を狙えッ...!」 


異端者「さぁ、審判を下しましょう」 


異端者「...光の矢を、受けなさい」 


──ぽわぁっ...ぽわぁっ...ぽわぁっ... 

優しげな音、だがそれとは裏腹に尋常ではない量の矢が創造される。 

なにもないところから何かを創り出したのであった、やはりこの者は本当に天使なのだろうか。 


魔闘士「...光の属性付与よりはマシか」 


女騎士「そんなことできるのは勇者ぐらいだろうっ!?」 


魔闘士「...実は身近にいるぞ」 


女騎士「今はそれより、どうするか決めろっっ!!!」 


魔闘士「────避けろッッッ!!!」 


──ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ... 

止まることない、その矢が空気を切り裂く音。 

地獄のような光景であった、それを作り出しているのは自称天使。 

だが2人は抵抗する、卓越した回避術、魔闘士だけではなく女騎士も見事に避けきった。 


異端者「審判を受け入れなさい、その罪は重いのです」 


女騎士「はぁっ...またあの矢が放たれたら避けきれる自信はないぞっ...!」 


魔闘士(...すでにコイツは消耗されたか、いや...今のを避けれるだけ十分か...人間にしてはな) 
446: :2018/12/05(水) 23:41:59.29 ID:
魔闘士「チィィ...」 


異端者「なにもすることはないのです、ただ審判を受け入れればいいのです」 


魔闘士「調子に乗るな...その苛々させる言葉使いをやめろ」 


異端者「...そのような言葉も、重罪なのです」 


魔闘士「その苛つく翼、へし折ってやろう...」 


魔闘士(...光魔法の恐ろしいところは、自分の攻撃の威力は一切影響しないところだ) 


魔闘士(いかに強力な防御魔法を纏っていても、光を帯びた矢で撃たれれば簡単に身体を貫かれる) 


魔闘士(...いやまて、今までに"奴"に倒された者は強力な肉体を持っていたはずだ) 


魔闘士(恐らく、"この武器"を使ったんだろう...この光属性のような武器を...) 


魔闘士(魔王軍の強靭な身体を貫く、この武器を...ッ!) 


魔闘士(普通の武器なら光魔法に通じはしない...だが、この未知の武器に賭けるッ!)ギュッ 


異端者「さぁ、光に貫かれる準備はできましたか?」 


魔闘士「...1分だ」 


異端者「...はい?」 
447: :2018/12/05(水) 23:42:25.94 ID:
「1分でお前を片付ける...ッ!」 









448: :2018/12/05(水) 23:43:33.99 ID:
異端者「...魔物に夢を見る権利はありません」 


魔闘士「目標は大きくすると叶いやすいのだ...」 


女騎士「お、おいっ...」 


魔闘士「お前はそこで指を咥えて待っていろ...その身体じゃ持たんだろう」 


女騎士「...!」 


女騎士(くっ...もう限界だって気づいてたのか...っ!) 


魔闘士(...この武器に15発、替えの棒が1本で合計30発) 


魔闘士(力を貸りるぞ...!)スチャ 


異端者「さぁ、滅しなさ────」 


――ダンッ! 

彼が握りしめていたのは、あの男から手渡された未曾有の武器。 

それは今までの強敵を仕留めてきた、驚異的な一撃。 

人間も魔物も関係ない、はたまた天使であっても。 


異端者「──うっ...っ!?」 


女騎士「...効いた?」 


魔闘士「...フッ、速いだろう...この俺ですら避けるのは厳しいモノだ」 


異端者「────な、なんですかこれはっ...!?」 


魔闘士「ご自慢の光魔法も通じないようだな」 


異端者「し、知らない...こんな攻撃...っ...痛いっ!?」 


魔闘士「その様子だと、いままで痛みを感じたことが少ないようだな」 


魔闘士「...これから1分、どこから放たれるかわからない未曾有の攻撃に襲われるのだ」 
449: :2018/12/05(水) 23:44:14.19 ID:
「覚悟しろよ...羽蟲...ッ!!」 









450: :2018/12/05(水) 23:45:30.60 ID:
~~~~ 


~~~~ 


魔剣士『ゲホッ...グッ...ハッ...』 


魔王子『...もう、終わりか?』 


魔剣士(やべェ...もうもたねェ...)フラッ 


魔剣士『...クソッタレ...ッ!」 


魔王子『一体化も解けたようだな...』 


激戦区、魔王子戦。 

その相手をしていたのは魔剣士であった。 

だが彼はもう限界、立つことすら不可能な状態に叩き込まれた。 


魔王子『...死ね』 


魔剣士(畜生...ッ!) 


魔王子『──!』ピクッ 


――バチィンッッッ!!!! 

────スパン■■ッッッ!!!!!! 

何かが魔王子を貫こうとした。 

だがその稲妻は、瞬時に両断されてしまった。 


魔女「...悪いけど、私がいるのを忘れないでね」 


魔剣士「──やめろォ! お前じゃ死ぬぞォッッ!!!」 


魔王子『...威力は認めるが、雷魔法如きでは止められんぞ』 


魔女「...威力は認めたことを後悔するのね」 


魔女「―――"雷魔法"っ...!」 


――――バチィンッッッッッッ!!!!!! 

魔女の周りに纏わっている雷が轟く。 

塀の都で見せてくれた、巨大な雷球が魔王子に襲いかかる。 


魔王子『──...ッ!』スッ 


――スパ■■■ッッ...! 

しかし、それは呆気なく対処された。 

魔王子の抜刀が、そして付与された闇が魔女の雷を破壊する。 


魔剣士(ダメだ...雷魔法如きじゃ、魔王子に斬られて終わりだァ...) 

451: :2018/12/05(水) 23:46:56.28 ID:
魔王子『その短い詠唱でこの威力は褒めてやろう...だが────』ピクッ 


魔女「────まだまだっっっ!!! 終わらないわよっっ!!!」 


魔剣士「な、なんだァ...?」 


魔王子『...2連撃目だと?』 


――――バチィィィンッッッッッッ!! 

――――スパッッッッッ...! 

続くのは同じ音、だが微かに変化が訪れていた。 


魔女「────まだよっっ!」 


魔王子『3連撃...ッ!?』 


――――バチバチィッッッッッッ!!!! 

――――――――――スパッッッ!!!! 

1つの詠唱から、ここまでの威力を誇る雷魔法が3つも放たれた。 

だが驚くのはそこではない、攻撃頻度こそが魔女の猛攻の真骨頂である。 


魔剣士(──魔王子の抜刀の感覚が遅くなってきているッッ!?) 


魔女「────はああああああああああっっっっ!!!」 


魔王子『まだ続くか...』 


――――バチバチバチィッッッ!! 

――――――――――――――――スパッッッ!!!! 

抜刀居合、それが彼の得意戦術、だからこその弱点であった。 

抜刀が終わるたびに納刀しなければいけない、このルーティンが崩れればどうなるか。 

プロのアスリートですら、己のルーティンが崩れると調子も崩れてしまう、それは魔王子も同じであった。 


魔王子『いい加減にしろ...』 


魔女「くっ...! 5連撃ぃぃっ...!」 


――――バチバチバチバチィィィッッ!!! 

―――――――――――スパッッッ...!! 

しかし、そのような小賢しい策では倒すことができない。 

彼は深呼吸をもせずに、自らの調子を整えたのであった。 


魔王子『...所詮、威力だけで単調だな』 


魔剣士(クソッ...ここに来て落ち着いて対処しやがってェ...) 


魔女「はぁっ...はぁっ...」 


魔王子『その威力、1回の詠唱だけであれだけの魔法をよく放ったな』 

452: :2018/12/05(水) 23:48:06.65 ID:
魔女「...ま、まだよ...っ!」 


魔王子『...死ね』スッ 


魔女「っ...」 


魔王子『──ッ!』ピクッ 


──ババババババババババ□□ッッッッ!!!!! 

光を帯びた弾幕が放たれる。 

魔女の首をはねようとした魔王子がソレに襲われる。 

だが虚しくも効果は得られず、相も変わらず光は闇に飲まれたままであった。 


隊長「...ッ!」 


魔王子『遠くから狙っても無駄だ、俺の闇属性の前では...■■■』 


闇が、彼の攻撃に備え一部に纏まった。 

その見た目は分厚い盾、万が一を起こさないための防御策であった。
453: :2018/12/05(水) 23:48:50.21 ID:
「────"属性付与"、"雷"っ!」 









454: :2018/12/05(水) 23:50:19.46 ID:
魔王子『なッ...!?』 


──バチバチッ...! 

その雷は、彼から聞こえた。 

魔王子の身体の一部に、雷が付与された。 

それがどのような意味を持っているのか。 


魔女「はぁっ...やっと有効範囲でよそ見してくれたわね...」 


魔女「その魔法の初めては、きゃぷてんにあげる予定だったのに...ありがたく思いなさいよ」 


魔王子『...先ほどまでの雷魔法は陽動か』 


その顔色には、少しばかり焦りが込められた。 

属性付与、それはどちらかといえば強化の意味を含む魔法である。 

なのになぜ彼は焦るのか、それは魔王子の闇が問題であった。 


魔女「...水と泥が混ざれば、水の質は下がるのと同じ」 


隊長「...果たして、下位属性の雷属性という不純物を帯びてもなお」 


魔剣士「その圧倒的な質の闇属性を維持できんのかァ...? ってかァ?」 


上位属性と言われる光と闇、その優劣は質の差で決まる。 

今彼らが持つ手段の中には光というモノが存在する、ならば決め手はこれしかない。 

闇の質を下げれば攻撃がまともに通用するはず、血で防具を汚した隊長を見て彼女はそれを思いついたのであった。 


魔王子『...』 


魔剣士「...どうやら、対処できねェみてェだな」 


魔剣士「もう、一体化する元気はねェが...初めて俺様の攻撃がまともに通りそうな状況だァ」 


魔剣士「楽しませてもらうぜェ? 魔王子ィ...ッ!」 


隊長「反撃開始だ...ッ!」 


魔王子『...面白い、久々に痛みと共に闘おう』 


魔女「わ、わるいけど...私はもう...無理よ...っ!」 


隊長「あぁ、下がって休んでいてくれ...ッ!」 


魔剣士「きゃぷてェん...援護頼んだぜェ?」 


隊長「...OKッッ!!」スチャ 


──バババババババ□□□ッッッ!!! 

先程までは、ただ闇に喰われるだけであったこの光。 

だが今は違う、明らかにソレは彼を苦しめていた。 
455: :2018/12/05(水) 23:53:47.71 ID:
魔王子『これが...これが本来の威力か、面白い■■■■■■』 


魔剣士「──魔王子の奴、ブチ切れたなァッッ!!」 


魔剣士「いくら攻撃が通るようになったからってェ! 油断するなァッッ!!!」スッ 


──ブン■■ッッッッ――――――!!! 

────ガギィィィィィィンッッッッッ!!!! 

その余波は計り知れない、再び剣士たちは己の魔剣をぶつけ合う。 


魔剣士「──腕が吹っ飛びそうだァッッ!!!」グググ 


隊長「耐えてくれッッッ!!!」 


──ババババババババ□□□ッッッッ!!!!! 

白き弾幕が魔王子を貫く、がこれでもまだ倒れない。 

あと一歩、あと一押しがなければ、この魔王の息子を倒せることができない。 


魔王子『ッッ...! ■■■■■■■ッッッ!!!』グググ 


魔剣士「光属性をォ...撃ちこみまくれェッッッ!!!」グググ 


魔剣士が盾となり、隊長がその後方から銃を撃ちまくる。 

彼がいなければ隊長は既に死んでいる、様々なめぐり合わせが今の状況を作っている。 


魔王子『■■■■■■■■ッッッッッ!!!』 


──バババババババババババババババッッッッッ!!!! 

―───カチッ カチッ...! 

アサルトライフルの弾が切れる、すると即座に彼は武器を入れ替えた。 

ショットガンでもない、ハンドガンでもない、ナイフでもない、これがトドメの一撃。 


魔王子『■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!』 


魔剣士「──向こうも俺様も、限界がちけェぞォォォォッッッッ!!!!」 


隊長「────とどめだ!」スッ 


魔剣士「――――ッ!」 


魔王子『――――■ッ!』 


────からんからんっっ...! 

隊長が魔王子の足元に手榴弾を投げた。 

もちろん、その見た目はとても輝かしい光に包まれていた。 


魔王子「────」 


―――パキッ...! 

そして最後に聞こえたのは、この音であった。 


~~~~ 
456: :2018/12/05(水) 23:55:16.55 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
458: :2018/12/06(木) 22:05:54.98 ID:
~~~~ 


魔闘士「...口ほどにもなかったな」 


異端者「痛いっ...痛いっ...」 


魔闘士「...もう、光魔法を唱えることもできないか」 


異端者「やめて...くださいっ...」 


魔闘士「雑魚の分際で時間をかけさせやがって...」 


女騎士「...もうそのへんにしてやれ」 


羽はもがれた、そして身体中に銃痕が残る。 

流れ出る紅き血がこの白き天使を染め上げていた。 

そんな様子を見かねて、女騎士はつい同情を施してしまう。 


魔闘士「...おい、結界魔法を解除しろ」 


異端者「ひっ...」 


魔闘士の威圧に押され、簡単に魔法を解除してしまう。 

すると崩れた地面は元に戻り、全て無かったことのようになった。 

それを見届けると、彼は手刀を異端者の首に構える。 


魔闘士「...では失せてろ」スッ 


異端者「た、助け──」 


――ザシュッ...! ゴロンッ... 

不死身の身体は、再び首をはねられる。 

もう二度とこの者は立ち上がることはできない。 

植え付けられた痛みと恐怖心が、この者の心を完全に殺したからであった。 


魔闘士「...不死身と言えど、心が壊れれば動けなくなってしまうようだな」 


女騎士「...野蛮だな」 


魔闘士「フン、所詮魔物と人間だ...相容れぬ」 


女騎士「...」 


魔闘士「...行くぞ」 


女騎士「あぁ」 


―――ガチャッ 

扉を開けようとした、開けようとしただけである。 

なのにこの扉は独りでに動き始めた、自動で開いてくれる代物ではない。 
459: :2018/12/06(木) 22:07:25.61 ID:
魔女「へっ...?」 


女騎士「魔女っ!?」 


魔闘士「これは...?」 


隊長「──魔闘士ッ! 無事だったのか...!」 


魔剣士「よォ...どうしてここにいんだァ...?」 


魔闘士「それより、先にそっちを説明してくれ...」 


隊長「...見ての通りだ」 


魔王子「────」 


そこにいたのは、脂汗をかいている魔女。 

ぐったりとしている魔剣士、そして最後に。 

まさかの人物が、この隊長という男におぶさっている。 


魔剣士「へッ...俺様たちで魔王子を倒しちまっただけだァ」 


魔闘士「...なんだと」 


隊長「話したいのは山々だが...ここは埃っぽいし、激しい戦闘があった...地盤が崩れたら面倒だ」 


女騎士「そうだな、出るか」 


魔剣士「あァ...きゃぷてん、悪ィがそのまま魔王子を運んでくれェ...今の俺様には無理だァ」 


隊長「あぁ」 


魔闘士「...おい」 


隊長「...どうした?」 


魔闘士「借りていた物だ、全て返すぞ」スッ 


借りていた物、それは彼の武器であった。 

数発残ったハンドガンと空のマガジン全てを渡される。 


隊長「あぁ、確かに受け取った」 
460: :2018/12/06(木) 22:08:41.14 ID:
魔闘士「...その武器、思いの外役に立った」 


隊長「...そうか、それはよかった」 


女騎士「思いの外って...お前の攻撃ほとんどそれだったぞ」 


魔闘士「黙れ...」 


魔女「ぷっ...」 


魔闘士「...おい、雷魔法による灯りの恩はあるが...笑い者にするとならば話は違うぞ」 


魔女「...はいは~い」 


魔剣士「おォ、魔闘士が俺様以外からもいじられてらァ...」 


隊長「...平和だな」 


魔剣士「案外、お前の言う通りになるかもな」 


隊長「...帽子に見せてやりたいな」 


魔剣士「フッ...」 


隊長「...お喋りは後だ、さっさと出るぞ」 


魔剣士「あァ、さってと...」スッ 


魔剣士がよろけながらも、転がっている何かを拾い上げた。 

それは冒涜的な気配を漂わせる、邪悪な魔剣。 


魔剣士(...魔王子の剣にヒビが入ってやがる) 


魔剣士(歴代最強の魔王をここまで追いやるなんてな...) 


魔剣士(いくら、本来の力をあの戦術で弱めたと言っても...) 


魔剣士(...こりゃ、しばらく魔王子の奴はコレを使えねェな) 


~~~~ 
461: :2018/12/06(木) 22:09:46.08 ID:
~~~~ 


──からんからんっ 

軽快な音が鳴り響く。 

どうやら大勢の客が入った模様。 


酒屋「...昨日の客か、何にする」 


隊長「...水だ」 


魔剣士「あと適当に酒と濡らした布をくれェ」 


酒屋「...大人数なら、奥の大きな机に行ってくれ」 


魔剣士「悪ィ、個室とかねェか?」 


酒屋「...怪我人がいるようだし、特別に貸してやる」 


魔剣士「ありがとよォ」 


魔闘士「...こっちだな」 


──ガチャッ... 

快く個室に入ることができた。 

そして隊長は背負っていた魔王子をゆっくり降ろす。 

語ることは多すぎる、だがまずは休息の一呼吸を味わった。 


魔王子「────」 


隊長「ふぅ...」 


魔剣士「おう、ご苦労ゥ」 


女騎士「代わりにきゃぷてんの武器を持っていたが...こんなに重いのか」ガチャガチャ 


魔女「ほら、飲み物もらってきたわよ」 
462: :2018/12/06(木) 22:12:32.45 ID:
魔闘士「...さて魔剣士よ、いろいろ説明して貰おうか」 


魔剣士「そうだなァ...事の流れはこうだァ」 


魔剣士「鉄格子で二手に別れたあと、異端者に遭遇ゥ」 


魔剣士「不死身に手を焼いたが、身体がバラバラになった時にこのユニコーンの魔剣をぶっ刺したァ」 


魔闘士「...不死身を無力化したのか、光属性というモノは恐ろしいな」 


魔剣士「その後、魔王の結界をコレで一瞬こじ開けたァ」 


魔剣士「そんで、魔王子ときゃぷてんが交渉...その結果は勝った方の言うことを聞くみたいな感じだったなァ」 


魔剣士「俺様は気が向いたから、きゃぷてんの方に着いたァ」 


魔剣士「...まァ、なぜかきゃぷてんが光の属性付与を使用してるわ」 


魔剣士「嬢ちゃんに陽動させて、魔王子の闇属性の質をさげ...そのままゴリ押しって感じだったァ...」 


魔剣士「それで、魔王子が今も気を失ってる状況までになったなァ」 


魔闘士「...なるほどな」 


女騎士「...ちょっとまってくれ」 


納得した者は果たしているのだろうか。 

誰1人として状況を飲み込めずにいた、それは当人でさえ。 

なぜ光という強力な魔法を手にしているのか、彼に尋ねるしかなかった。 


魔女「そうね...1つどうしても気になる点があるわ」 


魔女「きゃぷてん、あんたから魔力を一切感じないのに...どうして魔法...それも光の属性付与を使えるの?」 


女騎士「属性付与ですら高等の魔法なのに...さらに超希少な光属性だなんてな」 


隊長「...俺も良くわからん...使えるようになったのは魔闘士と戦った時が初めてだ」 


魔闘士「...あの時が初めてだったのか」 


隊長「あぁ...あの時、俺は死にかけた」 


隊長「もしかしたら、俺の幻視かもしれんが...その時に神を自称する奴に出会ったんだ」 


隊長「...その神に、この属性付与とやらを受け取ったみたいなんだ...」 


正直話についていけない、少なくとも魔女と魔剣士はそうだった。 

しかし彼ら2人は、ギリギリ話を繋げることができた。 

それはあの人物に出会ったから。 


魔闘士「神か...本来なら話にならんが、1つだけ信じるに値する出来事があった」 
463: :2018/12/06(木) 22:14:44.76 ID:
女騎士「...次はこっちの話をしよう」 


女騎士「鉄格子で閉じ込められた後、私たちはなんとか死霊を殲滅した」 


女騎士「丁度殲滅し終わった時に、鉄格子にかかっていた光が解けたんだ」 


女騎士「それで、進んでみると首だけの異端者がいてな」 


魔剣士「...そうだろうなァ」 


魔闘士「だが、奴は生きていた」 


魔剣士「...本当かよ」 


魔闘士「あぁ...だが、性格は正反対だったな」 


魔闘士「奴は、天使を自称していた...それも光魔法を使っていた」 


魔剣士「...神も天使も、空想上の存在ではなく...本当に実在していたことになるのかァ?」 


魔闘士「神がいれば、その使いである天使がいても可笑しくはない...その逆でも言える」 


魔闘士「少なくとも天使が実在した...ならばその主である神がいても不思議ではない」 


魔女「ってことは...きゃぷてんは本当に神に出会ったことになるのね」 


隊長「...話が大きくなってきたな」 


女騎士「おとぎ話などでは良く耳にするが...実在してたなんてな」 


魔剣士「...で、その天使はどうなったんだァ?」 


魔闘士「比較的高い質の光魔法を放っていた、俺や女騎士の攻撃など通用しなかったが...」 


魔闘士「...不思議なことに、あの武器だけは通じた」 


魔闘士「後は、簡単だ...あの武器で詠唱できなくなるほど痛めつけ、心を殺して動けなくさせた」 


魔闘士「そして、お前たちに合流したって所だな...」 


皆の視線が集まる、それは当然であった。 

神に出会った、そして未曾有の武器、さらにその武器は光すらを貫く。 

この男の正体が一切見えない、だからこそこの場にいる者たちに問い詰められた。 


魔剣士「光の属性付与...光魔法すら貫くその武器、きゃぷてん...お前は────」 


女騎士「──何者なんだ...?」 
464: :2018/12/06(木) 22:16:38.84 ID:
魔女「えぇっと...言っていいの?」 


隊長「...俺は異世界から来た人間だ」 


女騎士「...っ!?」 


魔剣士「はァ?」 


魔闘士「...随分と軽く告白するものだな」 


隊長「...詳しく話せば長くなるが、気づいたらこの世界にいたんだ」 


隊長「そして、元の世界に戻るために情報集めとして旅をしてきた...」 


隊長「その途中、後に親友になる帽子たちに出会い...今に至るわけだ」 


魔剣士「...天使、神、異世界人...俺様は夢でもみてんのかァ?」 


魔闘士「...光属性はすべてを無力化する...だが、それはこの世界での話」 


魔闘士「異世界の武器、全くもって未知だからこそ光魔法を貫通したのか...?」 


隊長「...そうかもしれない」 


魔剣士「...なんかよォ、もう疲れちまったぜェ」 


魔闘士「同感だ、今日はいろいろありすぎる」 


魔剣士「人間界は魔界に比べると魔力が薄すぎる...基本的に全力はだせねェし...」 


隊長「...あれで全力じゃなかったのか?」 


魔剣士「あァ、魔界の空気には大量の魔力が含まれているんだぜェ?」 


魔剣士「空気が薄いと派手な運動できねェだろ、それと同じだァ」 


魔剣士「逆をいえば、魔界にいる魔物は今まで出会った奴らより強いかもなァ」 


魔女「こ、これから魔界に向かうの不安になってきた...」 


魔闘士「...もう1ついえば、魔物は戦闘の質が格段に上昇するだろう」 


魔女「...ちょっと安心したかも」 


隊長「俺は安心できないぞ...」 


女騎士「私もだ...」 


魔剣士「女騎士はしらねェが、きゃぷてんも一応属性付与の質上がるんじゃねェか?」 


隊長「...問題は常には使えないみたいだ」 


魔剣士「はァ? そうなのかァ?」 
465: :2018/12/06(木) 22:18:12.76 ID:
隊長「なんだ...こう、昂った時にしか使えないみたいだ」 


魔剣士「...そもそもだがよォ、魔力がねェのがおかしいしなァ」 


魔女「...思いを込めれば込めるほど、魔法の質はあがるのは知ってるけど」 


魔剣士「思いを込めれば込めるほど、魔力が満ちるってのは聞いたことねェな」 


隊長「...そもそも、魔力はどうやって回復したりするんだ?」 


魔女「肉体的に疲れれば体力が減るのと同じで、精神的に疲れれば魔力も減ってくるわ」 


魔剣士「まァ、寝れば治るってなァ」 


隊長「...自分のことだが、この身に何が起きているのか不安で仕方なくなってきたぞ」 


魔闘士「なに、簡単なことだ」 


隊長「...わかるのか?」 


魔闘士「神と名乗るだけあって、そのぐらいの融通は聞くんじゃないか?」 


魔剣士「...有り得なくはねェがよォ」 


魔女「理にかなってないのが、もどかしいわね...」 


魔闘士「知るか、神にでも聞け」 


女騎士「...ところで、今日も野宿か?」 


魔女「...正直、もう眠い」 


魔剣士「あァ、適当に宿でも行くかァ?」 


魔闘士「...で、誰が宿代とこの飲み代を払うか」 


魔女「...手持ちない」 


魔剣士「悪ィが、人間の通貨はもってねェ」 


魔闘士「俺は先ほどの遺跡で落としてしまったようだ」 


女騎士「...身ぐるみなんて剥がされてたから金などない」 


沈黙が訪れる、だがみんなが同時に思っていたことはある。 

異世界人がこの世界の通貨なんて持っているわけがない。 

そのはずだった。 


隊長「俺は金貨4枚、銀貨3枚と銅貨6枚しかないぞ」 


~~~~ 
466: :2018/12/06(木) 22:20:51.14 ID:
~~~~ 


魔剣士「全然起きねェなァ、魔王子」 


魔闘士「本来の闇を介さずに光を帯びた攻撃を食らったんだ、仕方ないだろう」 


隊長「...ふぅ」 


暗黒街の一番まともそうな宿に泊まる、それはこの男のおかげ。 

隣の部屋には女騎士と魔女がいる、わざわざ2部屋も借りれたのはこの男のおかげ。 

そんな奇跡にも近い芸当を成し遂げた彼は装備を外していく。 


魔剣士「...すげェ筋肉だな」 


魔闘士「魔力がなくても、あの威力に納得だな」 


隊長「...お前たちは威力から考えると細すぎるな」 


魔剣士「まァ、魔物だしよ」 


隊長「...そういえば、質問が1つある」 


魔剣士「あァ?」 


隊長「お前や女騎士は武器に帯びさせるようだが...」 


隊長「俺と魔王子は属性付与を身体に帯びさせていただろ? なにか差はあるのか?」 


魔剣士「いや、ねェな...むしろ身体に帯びさせるほうがいい」 


隊長「そうなのか?」 


魔剣士「下位属性と上位属性の差ってやつだな...」 


魔剣士「上位属性ってのは、基本的に自分に害がでないんだ」 


魔剣士「光属性を纏ったら無力化の影響で動けなくなっちまう、それじゃ光属性の存在意義がねェだろ?」 


隊長「...そうだな、それだったら俺もなんらかしらが無力化されてるはずだな」 


魔剣士「つまり身体に纏わせれば攻撃と防御、両方を備えられるってことだァ」 


魔剣士「一方、下位属性はそうはいかねェ」 


魔剣士「風魔法ならともかく爆魔法なんてもってのほか、自分でも爆風は食らっちまう」 


魔剣士「ましては、爆発を自分の身体に帯びさせたくねェわ..」 
467: :2018/12/06(木) 22:23:48.74 ID:
魔剣士「そんで今回の戦術、闇属性が己に害を与えることができない...って穴と、不意をついたものだったなァ」 


魔剣士「闇が雷と混ざっちまっても闇は闇だ、雷だけ破壊するという都合のいい害ができるわけねェ」 


魔剣士「まァ、魔王子も予測してればアレをする前に、闇が雷を破壊してたかもなァ...予測できるわけねェけど」 


隊長「なるほどな...」 


魔闘士「そのような戦術...誰も試したことないだろうな」 


魔剣士「闇属性といい光属性といい、希少すぎてそういった実験もできねェし前例もねェ」 


隊長「...思いついた魔女に感謝だな」 


魔闘士「それで...これから先、どうするつもりだ?」 


隊長「...魔王子にはこのまま着いてきてもらうぞ」 


魔闘士「...」 


魔剣士「仕方ねェだろ、現に魔王子負けたしィ」 


魔闘士「フン、この人間の手助けしといてその言い草か」 


魔剣士「魔王子も見つかった今、俺様は単純に魔王子に着いてくだけだぜェ?」 


隊長「...着いてきてくれるのかッ!?」 


魔剣士「...逆に着いていかねェと魔王子がブチ切れるだろ」 


魔闘士「魔王子は魔剣士と人間に負けたんだ、負かした張本人たちの1人がいなければおかしい話だ」 


魔剣士「つーことで、俺様と魔闘士は魔王子に...つまりきゃぷてんに着いてくぜ?」 


隊長「本当かッ!?」 


魔闘士「...俺は魔王子に着くだけだ、勘違いするなよ」 


隊長「あぁ! とても助かるぞッ!」 


魔剣士「異世界人がどこまでやれるか、面白いことになってきたなァ」 


魔闘士「...ところで、魔界の地理は知っているのか?」 


隊長「正直、全くわからない...そもそも人間界と魔界の違いすらわかっていない」 


魔闘士「だろうな...まだ体力があるようなら夜通しで教えてやろう」 


魔剣士(魔王子に着くって言ってる割には、乗り気だな) 


隊長「あぁ、頼む」 
468: :2018/12/06(木) 22:25:50.70 ID:
魔闘士「いいか? まずこの暗黒街から魔界はすぐだ」 


魔闘士「このまま北上すれば、四半日で魔界に通づる巨大橋にたどり着く」 


隊長「...なにか障害はあったりするのか?」 


魔闘士「いや、特にそういった地形や建造物はないはずだ」 


魔闘士「問題は橋だ、そこに番人の"黒騎士"がいるはずだ」 


隊長「...黒騎士か」 


魔闘士「奴は知性もあるが、魔物以外には容赦はしない」 


隊長「橋の下を渡るのはどうだ?」 


魔闘士「だめだ、橋の下の海は深く...大量の魔物がいるだろう」 


隊長「...強行突破か」 


魔闘士「それしかないが、それをしたら魔界の態勢は厳しくなるだろう」 


隊長「強行突破後は、時間の勝負か」 


魔闘士「あぁ、だが橋から魔王城までは...少なく見積もっても1週間はかかるぞ」 


隊長「...1週間ではまずいな」 


魔闘士「お前ほどの切れ者には理解できるはずだ」 


暗躍者を倒してから、わずか数日にも満たない。 

その情報の速さこそが、追跡者や復讐者と対峙した原因であった。 


隊長「1週間もあれば、場所の特定から大量の魔物を送ることができるだろうな」 


魔闘士「その通りだ、どんな戦闘も数の暴力には不利だ...時間との勝負だ」 


隊長「...最短距離ではなく、隠れながら遠回りするしかないな」 


魔闘士「俺もそう考えたが、今は違うのだ」 


隊長「...?」 


魔闘士「今は"列車"というものが作られている」 


隊長「列車だと...ッ!?」 
469: :2018/12/06(木) 22:28:29.04 ID:
魔闘士「...知っているのか?」 


隊長「あ、あぁ...俺の世界に数多く存在するぞ」 


魔闘士「そうなのか...俺は魔王軍の発明家が開発とした思っていた」 


隊長「...俺の世界の物が蔓延りだしてるのか?」 


魔闘士「いや、今のところ大きく話題になってるのは列車のみだ」 


隊長「で...列車を乗っ取るのか」 


魔闘士「そうだ、これで大幅の短縮ができ、4日で魔王城に到着できる」 


隊長「橋から乗れるのか?」 


魔闘士「残念ながら開発途中だ、丁度...橋から魔王城の中間から乗れるはずだ」 


隊長「...それでも十分だな」 


魔闘士「常に高速で動いてる、特定は出来てもすぐに大量の兵を送ることはできん」 


隊長「...地図とか持っていないか?」 


魔闘士「悪いが手持ちにないな...だが、記憶から写してやろう」 


隊長「助かるぞ、魔闘士」 


魔闘士「勘違いするな...魔王子を倒したお前が簡単に死なれては、魔王子の名が廃るからだ」 


魔剣士「グゥ...ガァ...」スピー 


魔闘士「...このトカゲのように寝たらどうだ?」 


隊長「いや...できるだけ早く地理の把握や戦略を考えたい...出来上がるまで起きているぞ」 


隊長「だが...少し、風呂に浴びてくる」 


魔闘士「さっさと行って来い、そのころには出来上がってるだろう」 


隊長「あぁ、頼んだ」 


~~~~ 
470: :2018/12/06(木) 22:29:45.96 ID:
~~~~ 


隊長(ここにも大浴場があるとはな...) 


隊長は大浴場に向かう。 

その途中で楽しそうな会話をする者たちが近づいてきた。 


魔女「あれ、まだ起きてたの?」 


隊長「魔女と女騎士か」 


女騎士「あれだけの戦闘があったんだ、休んだらどうだ?」 


隊長「いや、魔闘士と戦略を練っているところだ...寝るわけにはいかん」 


魔女「へっ、魔闘士?」 


隊長「あぁ、どうやら魔闘士と魔剣士はこの旅に着いてきてくれるみたいだ」 


魔女「嘘っ! 凄いじゃない!」 


女騎士「彼らは強力だ、心強いな」 


隊長「あぁ、とりあえず風呂に入って...軽く気分転換しようと思ってな」 


女騎士「むっ、奇遇だな...私たちも入るところだ」 


隊長「そうなのか...」 


隊長(...まさか混浴じゃないだろうな) 


過去の苦い思い出が湧き返る。 

若干、冷や汗をたらりとかいてしまう程に。 


魔女「混浴はあるけど、残念ながらちゃんと女湯に入るわよ」 


隊長「...そ、そうか...よかった」 


魔女「...うん?」 
471: :2018/12/06(木) 22:30:39.41 ID:
女騎士「...それにしても、逞しい身体だな」 


女騎士「いつもは独特の鎧で隠れていたが...凄いな」 


魔女「見なさい、腕の太さが私の4倍はあるわよ」 


隊長「仕事柄こうなってしまったな...」 


女騎士「しかし、それだけ筋肉があると背中に手が届かなそうだな」 


隊長「あ、あぁ...確かにそんな時があるな」 


女騎士「...よかったら、背中を流してやろうか?」 


隊長「は?」 


魔女「ちょっ...えっ!?」 


女騎士「なにか変なことをいったか?」 


隊長「いや...俺は男だぞ...?」 


女騎士「大丈夫だ、よく後輩の男騎士共と風呂に入っていた」 


隊長(どう考えても大丈夫じゃないだろ...) 


魔女「ちょ、ちょっと...何言ってるのよ...」 


女騎士「大丈夫だ、女の私はもう居ない」 


隊長(俺から見れば、お前は十分女だ...) 


女騎士「さぁ、風呂にいくぞ」グイッ 


女騎士の怪力が、筋肉集合体である隊長を引っ張る。 

その先は希望と絶望、光と闇の混浴の暖簾であった。 


隊長「ま、まてまてまてまてまてッッ!!!」 


女騎士「その筋肉、参考にさせてもらうぞ」 


魔女「か、勘弁してあげて...」 


~~~~ 
472: :2018/12/06(木) 22:32:51.43 ID:
~~~~ 


隊長「...ふぅ」 


魔闘士「フン...随分と早かったな」カキカキ 


隊長「あぁ...」 


魔闘士「もう少しで完成する、待ってろ」カキカキ 


魔剣士「くかァー...」スピー 


隊長(...暇だな、弾でも込めるか) 


──コンコンッ! 

部屋の扉から音がなる、どうやら来客の様子であった。 

対応を行ったのは、この無愛想な男であった。 


魔闘士「...入れ」 


魔女「お邪魔するわ...それで、さっき頼まれたの持ってきたわよ」 


隊長「早かったな...丁度訪ねようとしたところだ」 


魔闘士「...それは?」 


魔女「この武器に必要な物よ」 


隊長「いうなれば、この武器に対する魔力みたいなものだ」 


彼女が持ってきてくれたこの荷物、そこには大量の弾薬や実包が複製されていた。 

やはり好奇心というモノは強い、地図を書く手が止まってしまう程に。 


魔闘士「ほう...これが発射されてたわけか」 


隊長「あぁそうだ...では、早速使わせてもらうぞ」 


魔女「はいはい、私はもう寝るわね...ふわぁ~あ...」 


隊長「あぁ、ゆっくり休め」 


魔女「あ、そうそう女騎士がね」 


隊長「...なんだ?」ビクッ 


魔女「...今度、稽古をつけてくれってさ」 


隊長「...おう」 


魔女「...そ、そんな怯えないであげて」 


隊長「だ、大丈夫だ...大丈夫なはず...」 


魔闘士「...?」 
473: :2018/12/06(木) 22:34:30.62 ID:
魔女「魔闘士も休みなね~、おやすみっ!」 


──ガチャンッ 

そんな就寝の挨拶も返さずに、彼は地図を書き進める。 

そうして書きなぐった渾身のソレは、ついに完成する。 


魔闘士「...出来たぞ」 


隊長「なるほど...こういった地理になっているのか」 


魔闘士「列車に乗れば、湖に密林...そして魔王城下町を通過できる」 


隊長「だが...列車までに2つほどの障害があるみたいだな」 


魔闘士「あぁ、橋を抜けたらまずに村が存在する...」 


魔闘士「あそこは低能魔物共が住み着いている、大規模乱戦は不可避だ」 


隊長「地形的にも遠回りはできなさそうだな...」 


魔闘士「まぁ、魔王子や俺がいる今では余裕だろう...問題は次だ」 


隊長「...山岳地帯か?」 


魔闘士「あぁ、一応遠回りはできるが...列車に向かうとしたら大幅な遅れとなる」 


隊長「厄介な地理だな...」 


魔闘士「山岳地帯には野生の魔物が居る...話し合いなど到底無理だ」 


隊長「それぞれ、どんな魔物がいるか一例を出してくれ」スッ 


魔闘士「図鑑か...丁度いいな」 


魔闘士「まず、村では亜人系...例えるならば、魔女を下劣にしたような感じだ」 


魔闘士「魔法や、ずる賢い罠ぐらいに注意することだ」 


隊長「...なるほどな」 


魔闘士「山岳地帯には、獣系だ...どれも上級の者達だ」 


魔闘士「注意すべきは"リザード"だ、奴は強靭な上に賢い...」 


隊長(...いよいよ、ファンタジーの有名どころが増えてきたな) 


魔闘士「そしてなりより...稀に"ドラゴン"も出現することだ」 


隊長「それは...氷竜みたいな奴か?」 


魔闘士「...そういえば、氷竜を倒したのだったな」 


魔闘士「あいつは確かに強いが、すこし知性に欠ける...」 


魔闘士「本場の竜はもっと知的だ...」 
474: :2018/12/06(木) 22:36:06.71 ID:
隊長「どちらにしろ...遭遇しないことを祈るか」 


魔闘士「地形的にも、物量的にも不利だが...1つだけ喜ぶ点がある」 


隊長「なんだ?」 


魔闘士「あそこには魔王軍の傘下はいない...完全に野生動物と同じ扱いだ」 


隊長「なるほどな...拉致や人為的な罠はなく、単純に戦闘だけみたいだな」 


魔闘士「そうだ、だが戦闘になればキツイものになるだろう」 


隊長「...ここまでは、多く見積もれば3日程度か?」 


魔闘士「たぶんな...そこから列車にのれば1日で魔王城に着く...はずだ」 


隊長「...魔界にも都があるところ、戦争を望まない者も多いみたいだな」 


魔闘士「...そうだな、奥地などにある町の民たちは争いを好まない」 


隊長「そこは人間界と同じだな」 


魔闘士「よく勘違いされるが、魔物が全員好戦的というわけではない」 


魔闘士「魔王城への最短距離を直進してもらえば、城下町を除く町や都などに戦火は降りないはずだ」 


隊長「...魔王城を配置した場所...考えてあるな」 


魔闘士「...そういう解釈もできる」 


隊長「しかし...今でこそ列車ができているが、この直進距離だけでも大々的な旅だな」 


魔闘士「それだけで、物語にするなら十分な経験になるな」 


隊長「...」 


魔闘士「...こんなもんだろう、一応この手書き図は渡しておくぞ」ガサゴソ 


隊長「あぁ...」 


魔闘士「...俺は、もう寝るぞ」 


隊長「...ゆっくり休んでてくれ」 


魔闘士「フン...お前もな、明日は人間界と魔界の違いを魔剣士にでも教えてもらえ...」 


隊長「...そうだな、ありがとう」 


隊長(今日で...2週間と4日目が終わる...) 


~~~~ 
475: :2018/12/06(木) 22:37:01.67 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
476: :2018/12/08(土) 22:42:35.64 ID:
~~~~ 


隊長「ここは...ッ!?」 


どこかで見た光景、隊長という男はそこにいた。 

それはあの時の悪夢で見たはずだった。 


隊長「...」 


──ぞわぞわぞわっ... 

悪寒が止まらない、それでいて大量の汗が垂れる。 

生きた心地がしない、口内が異常に乾燥し始めている。 


隊長「また...夢なのか...?」 


隊長「たのむ...早く目を覚ましてくれ...」 


体感温度は温暖であるのにもかかわらず、鳥肌が止まらない。 

意地でも動こうとしない、というより底知れぬ恐怖から動けない。 


隊長「...?」 


―─――■■■... 

すると、どこかしらから黒いなにかが鈍く輝く。 

聞いたこともない擬音、それが黒と共に隊長を刺激した。 


隊長「────...ッ!?」 


隊長「こ、こっちに...迫って...ッ!?」 


隊長「逃げなければ...ッッ!!」 


冷静に判断をするのは彼の役割でもある。 

だが、この時の判断は恐怖心からの判断だった。 


隊長「はぁっ...はぁっ!!!」 


──ぞくぞくぞくぞくっっ...!! 

後ろを振り向かなくてもわかる。 

着実に黒いなにかが迫ってきている。 


隊長「はぁっ...はぁっ...た、たすけてくれッッ!!!!」 
477: :2018/12/08(土) 22:43:58.14 ID:
隊長「...あ、あれはッッ!?」ピクッ 


助けてくれ、その命乞いは意外にも届くことになる。 

少し離れた場所には、親友からの形見が突き刺さっていた。 

もしかしたら、あの光でこの黒を無力化にできるかもしれない。 


隊長「────ッ...うおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」ダッ 


──ぞくぞくぞくっっっ...!! 

半ば諦めかけていた走行から、本気の走行に切り替わる。 

迫りくる悪寒は、先程よりも強くなる。 


隊長「もう少しだッッッ!!」 


隊長(あと少しッッ!!!) 


隊長(あと少しッッッ!!!) 


隊長(あと...少しッッッッ!!!) 


―――ガシッッ!!! 

あと少し、迷いのない走行が可能にした。 

掴んだのはあの輝かしいユニコーンの魔剣。 

これがあれば、これさえあればどうにかなる。 


隊長「...取った────」 


―――─■■■... 

おかしい、それは力強く握られた右手から聞こえた擬音であった。 

身体のなかに、未曾有の何かが入り込む感覚がする。 


隊長「――――ッッ!!!」 


???「────大丈夫かァッ!?」 


~~~~ 
478: :2018/12/08(土) 22:45:14.57 ID:
~~~~ 


隊長「――ハッ...!?」ガバッ 


脂汗が止まらない、その様子を見かねたある男が声を掛ける。 

それは先日まで味方ではなかった、魔物の男。 

魔剣士は心配そうに隊長を見守っていた。 


隊長「はぁッ...な、な...」 


魔剣士「...大丈夫かァ?」 


隊長「ここは...宿...?」 


魔剣士「そうだァ、しっかりしろォ」 


魔闘士「...お前ほどの男でも、悪夢に魘されるモノなのだな」 


魔剣士「まァ...言ってもコイツも人間だしなァ」 


隊長「...夢、だったのか」 


隊長(...にしては、やけに頭にハッキリと焼き付いている) 


軽く頭痛がする、だがすぐに頭を切り替えなければならない。 

なぜなら、そこに立っていた人物がいるからだ。 

魔王子、魔王の息子が目を覚ましていた。 


魔王子「...」 


隊長「魔王子...」 


魔剣士「あァ、さっき目を覚ました」 


魔闘士「それでお前を起こそうとしたら、さっきの出来事だ」 


隊長「...そうだったのか」 
479: :2018/12/08(土) 22:46:21.04 ID:
魔剣士「まァ、あとは任せた」 


隊長「...は?」 


魔闘士「俺様たちは朝飯を確保してくる」 


魔剣士「それに、俺様は魔王子と談笑する仲でもねェしな」 


魔闘士「ではさらばだ、30分ぐらいで戻る予定だ」 


魔剣士「金、借りるぜェ」ヒョイ 


隊長「.........あぁ」 


──ガチャッ...バタンッ!! 

いろいろ突っ込みどころがあったが、隊長はそれを受け入れた。 

魔剣士達は暗黒街の商店街へと旅だった。 


魔王子「...」 


隊長「...」 


隊長(人のことは言えんが...無口だな) 


魔王子「...おい」 


隊長「...なんだ?」 


魔王子「幾ら神の名を借りた力を得たとしても、人間に敗れるとは...」 


魔王子「...俺もまだ、力が足りぬか」 


隊長「...」 


魔王子「...実力は見せてもらった、ここで破れば、この名が廃る...」 


魔王子「...貴様の旅に、同行しよう」 


隊長「...あぁ、お前の力に期待しているぞ」 


魔王子「...だが、1つ問題がある」 


隊長「...なんだ?」 


魔王子「...この剣にヒビが入ってしまった」 


魔王子「このままでは到底使い物にならん...」 


魔王子「...よって、しばらく実力は発揮できん」 


隊長「な、なんだって...」 


魔王子「...」 
480: :2018/12/08(土) 22:47:50.63 ID:
隊長「...これは使えないか?」スッ 


魔王子「...何?」 


彼が魔王子に差し出したのは、細すぎる剣。 

これは親友の大事な大事な物、決して軽々しく扱ってはならない。 

だが、だからこそ隊長は魔王子に渡そうとした。 


隊長「...それは、俺の親友の形見だ」 


魔王子「...この世を、魔物と人間を共存させると申す者だったか」 


隊長「あぁ、そうだ...」 


隊長「俺とお前の目的は違うと思うが...間接的にお前がこの世界を救うことにもなるんだ」 


隊長「魔物の王子がそれを使って、世界を救ったのなら帽子も喜ぶだろう」 


先日の勝負に勝ったことで、この魔王子という男は隊長に力を貸すことを約束した。 

つまりは一緒に魔王を倒すことになる、その際にこの魔剣を扱ってくれるというのなら。 

彼の目的はどうであれ、結果として魔王子が平和を導く一因なるだろう。 


魔王子「...俺が魔王を討つ理由を教えてやろう」 


隊長「...あぁ、教えてくれ」 


魔王子「少し前の魔王...親父は人格者であり、強大な力を持つ者であった」 


魔王子「俺は尊敬をしていた...その強大な力で傲慢にならず威厳のある対応をしていた」 


魔王子「...しかし、近年になり親父は変わった...望みもしない人間界への侵略を企てるようになった」 


魔王子「その影響で魔界は劣悪の政治環境になり...徴兵された野蛮なクズ共が魔王城の城下町に蔓延り、民が脅かされるように...」 


魔王子「侵略されるであろう人間界のことなどは知ったことない...だが肝心なのは俺の中にある崇高な魔王の像が崩れたことだ」 


魔王子「今の親父...魔王など尊敬に値しないクズだ」 


魔王子「俺は落ちぶれていく魔王をこれ以上見たくはない...そして寂れていく民を眺めたくない...」 


魔王子「ならば親父を殺し...俺が新たな魔王になり、魔界を救ってみせる」 
481: :2018/12/08(土) 22:48:33.85 ID:
「そのためなら...俺に反逆する同胞を躊躇なく殺してでも、叶えてみせる...」 









482: :2018/12/08(土) 22:50:39.90 ID:
魔王子「...笑うか? 人間よ...俺の行動は愚かか?」 


隊長「...さぁな、少なくとも俺は笑えんな」 


隊長「俺は目的の為なら、簡単に人を殺せてしまう...だから、お前のことを笑うことはできない」 


隊長「...だが、これだけは言える」 


隊長「...お前の行動は、俺の親友の行動と似てる...ってな」 


隊長「先程はこの魔剣を一時的に貸すつもりだったが...お前に託すことにする」 


魔王子「...」 


隊長「...」 


魔王子「...ユニコーンが心を開いている、だからこそその理念は純粋」 


魔王子「その帽子とやらの行動を誇りに思う...」 


隊長「...そうか」 


魔王子「...確かに受け取った」スッ 


隊長から渡された、この光の剣。 

魔王子はその鞘を抜いて、刀身の輝きを目に焼き付けた 


魔王子「...昨日より、光属性の質が上がっているな」 


隊長「...そうなのか?」 


魔王子「皮肉だな、闇の王子が光を纏う剣を扱うなどとは」 


隊長「...フッ」 


~~~~ 


~~~~ 


魔女「...」 


魔王子「...」 


女騎士「...」 


隊長「...」 


魔闘士「...」 


魔剣士「...いやァ、悪かった」 


問い詰められるのはこの男。 

そして鼻につく、朝からは嗅ぎたくないこの酔いの匂い。 

彼の買ってきた買い物袋、そこに入っていたモノとは。 
483: :2018/12/08(土) 22:53:48.01 ID:
魔女「...朝ごはんを買いにいったのよね?」 


隊長「...俺の金でな」 


魔剣士「いやァ...竜ってのは...酒豪なんだァ...」 


魔闘士「貴様は竜人だろう...厳密な竜ではない...」 


女騎士「...悪いが、かなり空腹なんだ」 


魔王子「...」 


隊長「...今日の朝食は酒か」 


魔闘士「ふた手に別れたのが失策だったが...俺の買った物だけじゃ全員の腹を満たすのは難しいな」 


魔剣士「...まッ、パァ~ッと行こうぜェ?」 


女騎士「...はぁぁああ」 


魔闘士「人間も魔物も、食べ物の恨みはでかいぞ...?」 


魔女「うぅ...足りないかも...」 


隊長「...そういえば」ゴソゴソ 


隊長は若干潰れたレーションを取り出した。 

ウルフに1つ食べられてしまった、緊急用の携帯食料。 


女騎士「...それは?」 


隊長「俺の世界の携帯食料だ、緊急用だからかなり空腹が満たされるはずだ」 


魔闘士「お前という奴は...頼りになるな」 


女騎士「...5つあるな」 


魔闘士「魔剣士は酒だけでいいみたいだ」 


魔剣士「は、反論できねェ...」 


隊長「ほら、受け取れ」スッ 


魔王子「...頂こう」 


女騎士「甘いな...」モグモグ 


魔女「...おいしいっ!!」 


隊長「ウルフも喜んで食べてたな」 


魔闘士「甘いものは、疲れが取れるから嫌いではない...」 


~~~~ 
484: :2018/12/08(土) 22:55:32.95 ID:
~~~~ 


隊長「では...出発するぞ」 


魔闘士「このまま四半日には、橋に到着予定だ」 


女騎士「さて、久々の旅だ、腕がなるな」 


魔王子「...」 


魔女「...ねぇ、あんた」 


旅が始まる、そんな中で魔女は彼に近寄った。 

その表情はどこか険しいモノであった、それはなぜか。 

太陽の光が反射する、その豪華であり奇妙な装飾のついた剣の鞘が煌めく。 


魔王子「...何だ?」 


魔女「...その剣、大事に使ってよね」 


魔王子「...承知だ」 


女騎士「それにしても...まさか、魔物を仲間にして魔王城を目指すとはな」 


魔闘士「不満か?」 


魔剣士「俺様たちは魔王子についってってるだけだけどなァ」 


女騎士「...私はそもそも、魔物を敵としているが...目の敵にしてるわけではない」 


魔闘士「所詮、戦争相手というだけだな」 


魔剣士「まァ、仮に人間界で内戦が起きていたら...お前だって人間を殺すだろォ」 


女騎士「あぁ、騎士や軍人とはそんなものだ」 


隊長「...」 


魔女「魔王子の連れが、現勇者の仲間と談笑してるだなんて...こんなことってある?」 


隊長「...随分、賑やかになったな」 


魔女「人間と魔物が仲良く...しているのかしら、これ? まぁ、帽子に見せてやりたいわね」 


隊長「あぁ、この旅...なにがなんでもやり遂げてやる」 


6人が歩む、人間と魔物が共に肩を並べて。 

決して心の底から信頼しあっているわけではない。 

だがこのような軽い関係性であるからこそ、彼らは気兼ねなく居れている。 


魔剣士「...そういえばよォ、きゃぷてんは異世界の人間なんだよなァ?」 


隊長「あぁ、そうだが...」 
485: :2018/12/08(土) 22:56:52.68 ID:
魔剣士「...どうやって元の世界に戻るつもりだァ?」 


隊長「あぁ...それはだな────」 


彼が魔王に挑む理由、それは2つ存在している。 

1つはもちろん帽子の為、もう1つは己の為である。 

魔王は世界を跨ぐ魔法を扱えるかもしれない、それを彼に伝えた。 


魔剣士「...へェ、面白いなァ」 


隊長「...そうか?」 


魔剣士「いや、面白れェよ...つまりそれって...魔王を殺す前にその魔法を使わせるつもりなんだろォ?」 


隊長「そうなるな...そうでないと俺は帰れん...」 


魔剣士「...なんだァ? 拷問でもするつもりかァ?」 


隊長「...状況に応じてくれない場合は、強硬手段に入るしかない」 


魔剣士「...人間が魔王相手にそこまで強気になっている奴なんて、初めて見たわァ...」 


魔剣士「つーかよォ、その魔法を使わせる前に魔王を殺しちまったらどうするんだァ?」 


隊長「...」 


己がどれほどのことを口にしているのか。 

わかっているつもりではある、だがこの矛盾に近い発言が魔剣士のツボであった。 

決して嘲笑されているわけではない、単純に魔剣士はニヤけていた。 


隊長「...やめてくれ、深く考えさせるな」 


魔剣士「悪ィな...まァ、帰れなかったら俺様の酒の席に付き合ってくれよなァ?」 


隊長「...嫌味か?」 


魔剣士「まァ、とりあえず魔王に会ってから考えよォぜ? 案外すんなり家に返してくれるかもなァ...」 


隊長「...」 


絶対そのようなことはない、魔剣士のニヤけ具合を見ればわかる。 

嫌がらせのような突きつけが隊長を沈黙させていた、だが険悪な雰囲気ではない。 

そんな中彼は1つ思い出す、昨晩魔闘士に言われたことだ。 
486: :2018/12/08(土) 22:58:14.36 ID:
隊長「...そういえば、人間界と魔界の違いってなんだ?」 


魔剣士「...そんなことも知らねェで魔王と戦おうとしてんのかァ?」プルプル 


隊長「笑いすぎだ、魔剣士」 


魔剣士「悪ィ悪ィ...まァ、話は簡単で...この世界は大まかに2つの大陸があってだなァ」 


魔剣士「その大陸を統治しているのが、人間か魔物かの違いでしかねェよ」 


隊長「...意外と単純だったな」 


魔剣士「まァ、その違いも曖昧でよォ...人間界に住んでいる魔物も居るしよォ」 


隊長「...なるほどな」 


魔剣士「人間界も魔界もかなり広いぜェ? 暗黒街や賢者の塔があるココらへんは人間界の辺境だからなァ」 


魔剣士「...帰れなかったら、どっちの大陸に住むつもりなんだァ?」 


隊長「...また嫌味か」 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「...ついたな」 


人間界の大地はここで終わり、彼らは橋に足を踏み込んだ。 

雄大な海原に建造されたこの端は、あまりにも大きく、長い。 

先の方角、そこには別の大陸の大地が微かに見えていた。 


女騎士「...ついに魔界に突入か」 


魔闘士「そのようだな、魔力が微かに溢れてくる」 


魔女「ほ、本当だ...これが魔界の空気ってやつ?」 


魔剣士「いんや、厳密に言うと違ェな」 


魔女「えっ...魔界の空気って魔力が含まれてるって言ってなかった?」 


魔剣士「それは本当だァ...だが、この魔力は空気じゃなくて...アレだなァ」スッ 


魔剣士は大橋から身を乗り出し、指をどこかに向けた。 

その場所は、魔界の海の波が創りだした崖であった。 
487: :2018/12/08(土) 22:59:42.48 ID:
女騎士「...なるほど、ここで採取ができるのか」 


隊長「あれは...鉱石か?」 


魔闘士「そうだ、あれが魔法の欠片だ」 


魔女「あぁ...これがその」 


魔剣士「あの鉱石が魔法を維持させるのは、鉱石自体に魔力が灯っているからだァ」 


魔剣士「嬢ちゃんが感じてる魔力は魔界の空気じゃなくてェ、この魔法の欠片ってことだなァ」 


魔女「なるほど...」 


隊長(...正直俺にはなにも感じない) 


女騎士「...正直私にはなにも感じないぞ」 


魔剣士「...そこはあれだなァ、先天的か後天的かの違いだろうなァ」 


魔剣士「結局、先天的に魔力を持った魔物には魔力が必須...空気と同じィ」 


魔剣士「空気を感じ取れるのと一緒で、俺様ら魔物は魔力を感じ取れるってところかァ?」 


隊長「...魔剣士、前々から思っていたが」 


魔剣士「あァん?」 


魔女「あんたって、意外に博識というか...教鞭に向いているわね」 


魔剣士「...どういう意味だそれはよォ」 


魔闘士「言葉遣いはゴロツキそのものだが、そこは認めてるところだ」 


魔剣士「...相方が脳筋な訳だァ、必然と頭が回るようになるわなァ」 


魔闘士「...死にたいようだな?」 


女騎士「...ふっ」 


魔女「...」ジー 


隊長「...魔女、どうした?」 


魔女「ちょっと...あの鉱石掘ってくるわね」 


そういうと返事も聞かずに道を戻り、崖の上に露出していた鉱石を削岩し始めた。 

持ち前の雷魔法を駆使して必要な分だけ採取する、とても乙女の行動ではなかった。 


隊長「...行動が早いな」 


魔剣士「魔法主体の嬢ちゃんなら、確かに応用できそうだがなァ」 
488: :2018/12/08(土) 23:01:41.50 ID:
女騎士「しかし...ここを超えればついに魔界か」 


魔闘士「よもや、人間と共にここを渡るとはな」 


隊長「...その前に、黒騎士を倒さないとな」 


魔王子「...黒騎士か」 


魔剣士「魔界の門番を任されるだけあって、アイツの剣技は凄まじいぞ」 


隊長「大きな被害がでなければいいが...とにかくここを渡るしかないな」 


この先の障害に立ち向かわなければならない。 

魔剣士が一目を置いている黒騎士を、超えられるだろうか。 

少し頭を悩ませていると、魔女が削岩を終え戻ってきた。 


魔女「おまたせ、それじゃ出発かしら」 


隊長「あぁ、じゃあ向かうぞ」スチャッ 


アサルトライフルの安全装置を外し構える。 

ここからは人間界とは違う、様々な困難に対応できるように早くも警戒を始める。 


隊長(さて...どうなることか) 


魔剣士は背負っている魔剣の柄を握りながら、女騎士も同じく背負っているランスを。 

魔闘士は歩きながら軽く準備運動をし身体を暖めていた。 

隊長は辺りを見渡しながら、魔女はそれをサポートするような見渡し方であった。 

そして魔王子は、ただ前を見ていた、前を見つめていた。 


隊長「...遠いな」 


魔闘士「いい忘れていたが...数十分はかかるぞ」 


隊長「まぁ...それは地図を見たらわかった」 


魔女「えぇ...」 


警戒をしながら、軽く雑談をする。 

そんな中、魔剣士があることに気づいた。 
489: :2018/12/08(土) 23:03:03.24 ID:
魔剣士「...妙だなァ」 


女騎士「なにがだ?」 


魔闘士「俺も思ったが...この辺りでも雑魚の一匹程度は現れると思っていたが...」 


魔剣士「あァ、この近辺に雑魚の気配はねェ」 


隊長「警備が手薄すぎるってところか...確かに、怪しいな」 


魔闘士「もう少し歩けば中間に着く、そこに黒騎士もいるだろう」 


魔剣士「とにかく、進むしかねェな」 


魔女「罠じゃなければ...いいけれど」 


隊長「...あぁ」 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「...どうなっていやがる」 


魔王子「...」 


隊長「これは...」 


橋の中間に到着する、そこは激しい戦闘の跡が残っていた。 

その傷は新しいものではなく、過去の数々の修羅場によって作られたものであった。 

傷によって橋が朽ちてもおかしくはない、だが朽ちてはいない。 

その様から威厳さが感じ取れた、だがその主はここにはいなかった。 


魔闘士「見当たらんな、黒騎士が」 


隊長「...策略かなにかか?」 


魔闘士「その可能性はある...が、奴がここにいないのは初めてだな」 


女騎士「...油断でも狙っているのか?」 


魔剣士「それ以前に、既にこっちの情報が魔王に伝わっんのかァ...?」 


隊長「...それはありえない、ここ数日つけられてる気配はなかった...はずだ」 


隊長(あくまでも、人間の俺がわかる範囲でだが...) 


魔闘士「それには同感だ、仮に密偵がいたとしても情報が早過ぎる」 
490: :2018/12/08(土) 23:05:29.89 ID:
魔女「もしかして、異端者がヤラれたり...結界魔法が破られたのに気づいたとか?」 


魔闘士「魔力の感知することで生死を確認をできるが、人間界は流石に遠すぎるはずだ...恐らく定時連絡が要だ」 


魔闘士「だが、異端者はそのような規則正しい行動が取れる者ではない...つまり定時連絡の有無は関係ないはず」 


魔闘士「それに結界魔法は完全には破いていない...さすがの魔王も気づかないだろう」 


魔女「じゃあ、たまたま...黒騎士がいなかったってこと?」 


魔闘士「...そうなるな」 


女騎士「そうなるなら...進むしかないな」 


魔剣士「...チィッ、裏をかかれてるみてェでムカツクぜ」 


隊長「考えても俺たちにはわからない、行くぞ」 


魔剣士「あァ...」 


隊長(戦闘が減っただけ、ありがたいと思っておくか...) 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「────あァ?」 


結局、魔界へ通ずる大橋での戦闘はゼロだった。 

順調に魔界へ侵攻するが、またもやイレギュラーが発生する。 

橋を抜けた先、ここは魔界にある村の1つ。 


魔女「誰も...いないの? 村なのに?」 


魔闘士「そんなはずは...ここには野蛮な魔物どもが蔓延っているはずだが」 


女騎士「現にもぬけの殻だぞ...」 


魔王子「チッ...」 


魔剣士「やっぱり、情報が漏れんのかァ...?」 


魔闘士「策略にしても、ここで村人共との大規模戦闘は定石のはずだ」 


魔剣士「...じゃあ、俺様たちを馬鹿にしてるとしか思えねェな」 


女騎士「魔王とて、そこまで拍子抜けなことをするとは思えないぞ」 


女騎士「戦闘をさせることでこちらの消耗を図る、それをしないとなると愚かの一言だ」 


魔闘士「...同感だ、これは策略ではない、偶然の出来事だと思いたい」 
491: :2018/12/08(土) 23:08:01.03 ID:
魔女「...ねぇ、あんたはどう思う...ってあれ?」 


女騎士「いないな...どこへ行ったんだ?」 


魔物の男たちが頭を悩ませていると、彼は消えていた。 

それに気づいた女たちは辺りを見渡してみる。 

すると民家と思しき建物の中から隊長の声が響く。 


隊長「────ちょっと来てくれ」 


魔剣士「...あァん?」 


魔女「──これってっ!?」 


その声にしたがって、皆が建物の中へ移動する。 

そこには亜人系の魔物が数人横たわっていた。 

そのうなだれかたには、一瞬命を感じさせない様に見えた。 


魔剣士「いや...まだ息はあるなァ」 


隊長「あぁ...だが、辺りの民家はみんなこうなっていたぞ」 


魔闘士「...この村の住人だろうな、どうなっているのやら」 


女騎士「意識は...ないみたいだ、これでは尋ねることもできないな」 


隊長「...これは病気によるものか?」 


魔剣士「いやァ...この症状は聞いたことねェなァ...」 


魔闘士「発熱もなし、咳もなし...病気ではなさそうだ」 


魔女「気味が悪いわね...」 


隊長「...まるで進むことに誘導されているみたいだな」 


魔闘士「全くだ...だが、進むしかないだろう」 


魔剣士「まァ、消耗もなしに早い段階で列車に乗れるって考えもあるぜェ?」 


隊長「...このまま山岳地帯に向かうか、ここで一夜を過ごすか」 


魔闘士「そうだな...早朝に出れば早めに山岳地帯を抜けられるかもしれんな」 


魔剣士「安全なここでたっぷり休むか、危険な山で休みを入れながら進むか...決まったなァ」 


隊長「...今日はここで過ごすぞ」 


魔闘士「本来なら黒騎士とここでの戦闘で一日潰れる予定だったが、丁度いいな」 


隊長「...一応、警戒は怠らないでくれ」 


~~~~ 
492: :2018/12/08(土) 23:09:39.16 ID:
~~~~ 


女騎士「この民家、誰もいないみたいだし鍵もかけれるようだぞ」 


隊長「ここを今日の宿にするか...」 


魔女「流石にここじゃ、まとまって寝たほうがいいわよね」 


隊長「あ、あぁ...そうだな...」 


魔女(寝顔とか寝相とか...気をつけないと) 


女騎士「さて、この重苦しい鎧を脱ぐか」ゴソゴソ 


隊長「...」ビクッ 


魔女(...未だに、苦い思い出のようね) 


魔剣士「おォーい、酒が大量にあったぜェ?」 


魔闘士「...お前の頭は酒しかないのか?」 


魔剣士「大丈夫だァ、飯も見つけたぞ」 


隊長「...お前はPartyが似合うな」 


魔剣士「ぱーてィ? なんだそりゃァ」 


隊長「俺の世界で言う...宴のことだな」 


魔剣士「あァ宴か、酒も飲めるし好きだぜェ?」 


魔闘士「それは宴が好きではなく、酒が好きなだけだろう...」 


隊長「...いつもこんな感じなのか、魔王子?」 


魔王子「...2人の漫才は昔から記憶にある」 


魔闘士「漫才ではない...」 


魔女「あ、あはは...」 


魔女(今のは魔王子なりの冗談なのかしら...恐くて追求ができないわね...) 


隊長「...俺はこの民家の周りに罠を作っておこう」 


隊長「魔女、縄になりそうなものを探してくれないか?」 


魔女「えぇ、わかったわ」 


~~~~ 
493: :2018/12/08(土) 23:10:56.24 ID:
~~~~ 


魔女「この家の人の武器なのか、鎖鎌があったわ...これでも大丈夫?」 


隊長「...糸は持っているか?」 


魔女「えぇっと...ごめんなさい、服のほつれ糸しか用意できないわ...」 


隊長「それでも大丈夫だ」ゴソゴソ 


魔女が探している間に地面にいくつか刺していた短い木の棒に鎖鎌をくくる。 

そして手榴弾を取り出し、安全ピンとほつれ糸を器用に結び始めた。 


魔女「それって...爆弾よね?」 


隊長「あぁ、これで罠を作る」 


魔女「どんな感じに?」 


隊長「そうだな...手榴弾、爆弾はこの線を抜くことで起爆するんだが」 


隊長「それをこの鎖鎌に...まぁ見てもらったほうが早いな」 


手際よくこなしたものは、すでに完成していた。 

そこにはとても原始的な罠が造られていた。 


魔女「...あぁ~、それで足を引っ掛けて起爆させるってわけね」 


隊長「まぁ...威力には期待はしてないが、なにせ大きな音が出る」 


魔女「奇襲に気づけるってことね...」 


隊長「あぁ、これである程度は気兼ねなく休める...といいが」 


魔女「まっ、酒飲んでる奴よりかは役に立ちそうね、この罠」 


その罠は夕暮れ時の現在でも、すでに見難い。 

夜になればその実力は発揮されるだろう。 

最も、実力は今発揮されることになってしまうが。 


魔剣士「──よォ、お前らも飲...おわァッ!!!!」グラッ 


──ガチャッ!! 

魔剣士が鎖鎌に引っかかると同時に、何かが抜ける音がした。 

その様子を見た魔女は思わず青ざめた。 


魔女「────っ!」 


隊長「──SHITッッ!!!!」ドカッ 


素早い判断で、半ば強引に蹴飛ばす。 

民家もこの村人もいない場所へ手榴弾は飛んでいった。 

そして遠くから聞こえた爆発音。 
494: :2018/12/08(土) 23:14:55.12 ID:
隊長「──ふぅ...」 


魔女「結構吹っ飛んだわね...って、それよりも!」 


魔剣士「あァん...どういうことだ...?」 


状況がいまいちつかめていない魔剣士。 

まもなく、空いたドアから魔闘士と女騎士が慌てて飛び出してきた。 


女騎士「──敵襲かっ!?」 


隊長「いや...魔剣士が俺の作った罠に引っかかっただけだ」 


魔闘士「...」ピキピキ 


魔剣士「...はァん、なるほどなァ」 


女騎士「いや...なるほどなって...」 


魔剣士「即席でこんな罠つくれるなんてなァ...やっぱお前はやるなァ」 


魔女「...もう出来上がってるの?」 


魔闘士「...魔界の酒は強い...あとは任せたぞ」スタスタ 


隊長「...魔剣士、お前はしばらく禁酒だ」 


魔剣士「...へッ?」 


──パリーンッ ガシャンッ! パキパキッ! 

その言葉が聞こえたのか、民家から瓶が割れる音が響いた。 

これは先に家に入っていった彼の仕業、隊長と魔闘士の意見は合致した。 


魔剣士「...えェェッ!?」 


魔女「あー、アホらしい...またほつれ糸作んなきゃいけないじゃない」 


隊長「...すまんが、手榴弾も作ってくれ」 


魔女「...はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」 


女騎士「魔女...手伝おうか?」 


魔女「ありがとう、でも私にしかできないことなの」 


魔剣士「俺様の...酒がァ...」ガーン 


隊長「こんなんで大丈夫なのか...?」 


頭を抱えため息をついてしまう、本日は戦闘をすべて回避して終わる。 

魔界にきて1日、異世界にきて2週間と5日。 


~~~~ 
495: :2018/12/08(土) 23:15:59.19 ID:
~~~~ 


隊長「...ん」 


──カチャカチャ... 

耳元で細かい音が響く、まだ日は鋭く差していない。 

薄明かりの中で室内を見渡す、するとそこには彼女が。 


魔女「あっ、ごめん...起こしちゃった?」 


隊長「あぁ...だが、気にするな...本来なら徹夜して奇襲に備えるはずだったが...」 


魔女「休めるときは休むべきよ、今日は珍しく熟睡してたみたいだけど...♪」 


隊長「...? 朝から上機嫌だな」 


魔女「あ、あら...そうかしら...」 


隊長「それで...なにをしてたんだ?」 


魔女「えぇっと、ちょっとした武器を作ってたのよ」 


段々と目が覚めてきた、魔女の周りにはいろいろと物が並べられていた。 

この民家にあった小さな空の瓶と、太い針みたいな形状に加工した魔法の欠片。 

そして、新たに魔女は小瓶を取り出した。 


隊長「それは...魔法薬か?」 


魔女「そうよ、大賢者様の餞別よ」 


隊長「そうなのか」 


魔女「あっ、その欠片に触らないでね、まだ雷魔法を宿らせてるから」 


隊長「...あぁ、察しがついたぞ」 


魔女「あら...お楽しみにならなかったかしら」 


女騎士「...私には察しがつかないな」 


魔女「──わっ! 起きてたの!?」ビクッ 


女騎士「あぁ、武器を作る云々から目を覚ました」 


魔女「そ、そうなの...よかった」ホッ 


女騎士「なにがだ? ところで早くその武器を教えてくれ」 


隊長「あぁ...火炎瓶みたいな物だろう?」 
496: :2018/12/08(土) 23:17:23.53 ID:
魔女「あちゃー...大当たり、それの雷版ってところね」 


少し残念そうに、テキパキと作業をこなしていく。 

小さな空の瓶に少量の魔法薬を流し込み、コルクの蓋をしめる。 

それと同時に、すこしばかり光を帯びていた欠片が無反応になった。 

それを見計らって、先ほどの瓶の蓋に欠片を原始的に突き刺した。 


魔女「よし、完成ね」 


隊長「それを投げつけ、割れた瓶から魔法薬が漏れ...それを欠片に反応させるわけか」 


女騎士「その魔法薬...随分と魔力を含んでいるから威力が高そうだ」 


魔女「これなら詠唱をしなくても使えるし、不意はつけそうね」 


魔女「ちょっと、外で試してくるわね」 


隊長「あぁ、気をつけろよ」 


そう言って、寝癖も治さずに魔女は外へ飛び出した。 

扉の開閉音が響いたが、男の魔物3人はまだ目を覚まさなかった。 


隊長「魔法か...」 


女騎士「興味でもわいたのか?」 


隊長「...女騎士はどうやって魔法を使えるようになったんだ?」 


女騎士「私は騎士の鍛錬で学んだぞ」 


隊長「すまん、言い方が悪かった...どうやって魔力を得たんだ?」 


女騎士「あぁ...そういうことか」 


隊長「魔物は先天的に、そうでないものは後天的に魔力を得ると聞いたんだが」 


女騎士「そうなんだが...実は、わからないんだ」 


隊長「...どういうことだ?」 


女騎士「私も周りの者も、気づいたら魔力が使えるようになっていた」 


女騎士「後天的に魔力を得る者は、突如という場合が絶対らしい」 


隊長「...ますます、魔法というのはわからんな」 
497: :2018/12/08(土) 23:19:05.53 ID:
女騎士「まぁ...きゃぷてんも気づいたら使えるようになるかもな」 


女騎士「って、すでに属性付与は使えるのか...謎だな」 


隊長「朝から難しいことは考えるべきではない────」 


────バチバチバチバチバチッッッッ!!! 

外から聞こえた、雷の激しい音。 

まだ薄暗いとはいえ空には雲1つありはしない。 

これは魔女による新たな装備の実験、それはどうやら成功のようだった。 


女騎士「...原始的だが、威力は絶大みたいだな」 


隊長「あぁ...それより、今のでみんな起きたな」 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「ふァ~あ...ねっみいなァ」 


魔闘士「だらしない奴だ、それでも誇り高き魔物か?」 


女騎士「いや...魔闘士、寝癖がひどいぞ...」 


隊長「...さて、そろそろ出発するか」 


魔女「その前に、身体を拭いてからでいいかしら...」 


女騎士「...あぁ、同感だ、私はよく汗を流すから今のうちに拭いておきたい」 


隊長「俺も便乗するか...先に拭いててくれ、俺たちは外で待っている」 


魔剣士「...女ってのは面倒くせェな」 


魔闘士「汗など放っておけばいいだろう」 


魔女「はいはい、面倒くさくて悪かったわね」 


隊長「いや、身体に付着した悪性のBacteriaなどがいる場合がある、こういうのは重要だぞ」 


魔闘士「...ばくてりあ?」 


隊長「...すまん、細菌だ」 


女騎士「...さいきん?」 


隊長「...少し違うが...微生物、ならわかるか?」 


魔女「びせいぶつ...」 


隊長「...本気で言っているのか?」 


~~~~ 
498: :2018/12/08(土) 23:21:49.19 ID:
~~~~ 


隊長「...さて、準備は終わったな?」 


魔剣士「あァ」 


魔闘士「そんなものとっくに済んでいる」 


魔王子「...」 


魔女「...ここからが本番ってわけね」 


女騎士「どんな敵が現れるか...少し楽しみだな」 


隊長「...」 


まだ日の光は淡く気温も低い。 

寝起き特有の頭痛、そして早朝の雰囲気が隊長の気を引き締めた。 


隊長「...行くぞ」 


魔女「えぇ!」 


魔闘士「まずは...このまま直進だな、それで山岳地帯へたどり着くはずだ」 


~~~~ 


~~~~ 


隊長「──ここがか...」 


目のあたりにする光景に思わず言葉を漏らす。 

連峰の頂点には濃い雲がかかり、その全貌を見ることはできなかった。 

広大な魔界の自然が産んだ、山岳に少しおののいてしまう。 


魔女「でっか...あの凍ってた山より遥かに大きいわね」 


魔闘士「フン、人間界の山などと比べてもらっては困る」 


隊長「...急勾配が見当たらないだけ、マシか」 


魔剣士「まァ、登山には向いてるかもなァ...やる奴はいねェけど」 


魔闘士「登山だけならな、問題は野生の魔物がいることだ」 


隊長「...本当に1日で越えられるのか?」 


魔闘士「安心しろ、この山がでかいだけだ」 


魔闘士「残りの連峰は比較的小さいうえに、獣道だがある程度通路が確保されている」 


隊長「そうか...なら、早速登るぞ」 


~~~~ 
499: :2018/12/08(土) 23:23:53.21 ID:
~~~~ 


魔女「ふぅ...やっと6合目ってところかしら?」 


魔闘士「そのようだな、そろそろ雑魚が出てきてもおかしくはないぞ」 


魔剣士「なにも仕掛けられてなければ、だなァ」 


魔女「でも、登ること自体は楽ね、不思議と」 


魔剣士「...それは、あれを見てから言いなァ」スッ 


多少の汗はかくものの、楽な表情で話す魔女。 

それに反応した魔剣士は、後続の者たちを指差した。 


女騎士「ふぅっ...私も鍛錬不足と言ったところか...」ダラダラ 


隊長「俺はまだ大丈夫だが...どうしてそこまでスラスラと登れる...?」 


隊長は少しだけ苦しそうな表情をしながら質問した。 

女騎士はかなり汗をかいていた、体質にしてもかなり消耗されてると見える。 


魔闘士「これは人間と魔物の差というものだ」 


女騎士「はぁっ...魔界の空気って奴か...」ダラダラ 


魔剣士「こればかりはどうしようもねェなァ...少し休むかァ?」 


隊長「...すまないがそろそろ休憩を入れさせて貰う」 


女騎士「正直...腹が減ったぞ」グゥ 


魔剣士「そうだなァ...ちょっとまってなァ」スタスタ 


隊長「どこに行くつもりだ?」 


魔剣士「昼飯を確保だァ...ここらへんなら肉が歩いてるに違ェねェ」 


そう言うと魔剣士はどこかへ歩き出した。 

残されたものは待機するしかない。 


隊長「...魔闘士、現在は順調なのか?」 


魔闘士「そうだな、少し遅れているといったところか」 


魔闘士「もうじき、雲や霧が掛かった部分に差し掛かる...」 


魔闘士「そこでの奇襲に気をつけることだな」 


隊長「そうか...今のうちに少しでも休んだほうがいいみたいだな」 
500: :2018/12/08(土) 23:25:14.16 ID:
魔女「...ここ、ドラゴンが出るんでしょ?」 


魔闘士「そうだが...遭遇は稀だ」 


隊長「...戦闘は極力避けたいな」 


魔闘士「この山は標高が高めで、基本的には魔物は寄り付かん...戦闘は次の連峰からが濃厚だな」 


隊長「...休みを入れられるのはここで最後か」 


魔闘士「そうなるな、ここは徹夜で乗り切るか、交代で睡眠をとるかをしないと無理だ」 


隊長「昨日、十分に睡眠が取れただけでもマシか...」 


隊長(まずいな...登山だけで消耗させられている...足を引っ張らなければいいが...) 


単純な山登りでさえ、じわじわと体力を奪われている状況に頭を抱えるしかなかった。 

そのアクションは極々小さいものであったが、彼女は見逃さなかった。 


魔女「らしくないわよ、いつもの調子はどうしたの?」 


隊長「...魔女」 


魔女「まだ登山しているだけ、大丈夫よ」 


魔闘士「...励ますつもりなどないが、人間にとってここが鬼門だ」 


魔闘士「この山を越えれば、戦闘はあるが地形で体力を奪われることは少なくなるはずだ」 


魔闘士「...簡単にくたばってもらっては困るぞ」 


隊長「...あぁ、そうだな...少し、らしくなかった」 


魔女「そうよ、いつも通りに冷静にね♪」 


隊長(落ち着け...我を少しでも忘れるな...)スゥ 


珍しくも、焦燥感に惑わされる。 

らしくもない自分を抑えるために深呼吸をして抵抗を試みる。 


魔剣士「──おォい、食い物とってきたぞ」 


隊長「あぁ、助か──」 


丁度いい気晴らしになるだろうと思っていた。 

食事をすることで癒やしを得ようとしたが、その前に生まれたものがあった。 

それは疑問、魔剣士の持ってきた食料に猜疑心が生まれる。 


隊長「...食べれるのか、それ...?」 
501: :2018/12/08(土) 23:26:12.75 ID:
魔女「げぇ...なんなの...?」 


魔剣士「魔界の大蛇だなァ、毒はねェ」 


女騎士「...」グゥ 


魔闘士「...腹に物を入れておかなければ、なおさら体力は奪われるぞ」 


隊長「あぁ...一理あるが...まぁ、俺が捌こう」スッ 


魔女「...いつものあんたね...はぁ」 


女騎士「...でかすぎるぞ」 


魔剣士「腹は満たされるだろうがァ」 


魔女「...はぁ、昨日たべたあのあま~い奴が恋しいわね」 


隊長「魔女、火を起こしてくれ」 


魔女「はいはい」 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「食った食ったァ」 


魔女「...意外とおいしかったわね」 


女騎士「空腹は最高の調味料といったところか...」 


隊長「...」 


食事を終え、早くも脳内で指示を練る。 

天候の悪化からか、すでに眼前に見えているものがあった。 


隊長「...これから、雲がかかっている地帯に突入する」 


隊長「奇襲の可能性もある、陣形を成して備えようと思う」 


魔闘士「...妥当だな」 


魔剣士「そうだなァ...まとまるより、警戒の範囲を広げたほうがいいなァ」 


女騎士「異議なしだ」 


魔王子「...」 
502: :2018/12/08(土) 23:27:21.30 ID:
隊長「なら、前方と後方である程度の距離を取るぞ」 


隊長「前方に魔剣士、魔闘士、女騎士」 


隊長「後方に俺、魔女、魔王子でどうだ?」 


魔剣士「...攻撃範囲的に考えるとそうなるわなァ」 


隊長「俺や魔女が遠距離で支援をする、魔王子は緊急事態に備えて素早く行動できるようにしていてくれ」 


魔王子「...承知した」 


隊長「...前方は任せたぞ」 


魔剣士「あァ、背中は頼んだぜェ?」ケタケタ 


軽く笑いながら、隊長に信頼を託す。 

本当に信頼しているのかは不明だが、冗談を言う仲にはなっている。 

そして前方の部隊が雲へ突入するのを見計らって、隊長も行動を開始する。 


隊長「...だいぶ雲が濃いな」 


魔女「そうね、これより離れたら女騎士たちが見えなくなるわね」 


隊長「あぁ...おい、魔剣士ッ!」 


魔剣士「わーってるよォ、これ以上離れねェように努力するゥ」 


隊長「...どうやら、耳もいいみたいだな」 


魔王子「...」 


前方の者たちに靄がかかり見辛くなっている中、着々と進んでゆく。 

会話も声を張れば可能、分断される心配はなかった。 

しばらく歩いていると、前方部隊がある気配に気がついた。 


魔剣士「...」ピタッ 


女騎士「どうし...」ピクッ 


魔闘士「...ついに現れたか」 


魔剣士「...いやがるなァ、おォいきゃぷてんッ!!」 


隊長「──敵か?」 


魔剣士「あァ...姿はまだ見えねェが気配がするぞ」 


魔闘士「...まだ仕掛けてこないようだ、こちらを伺っているかもしれん」 
503: :2018/12/08(土) 23:28:29.26 ID:
魔剣士「このまま進むぞ、気をつけ────」 


──バババババババババババッッッ!!! 

返事をしたのは、アサルトライフルの銃声だ。 

警戒の範囲を広げたが、敵の警戒範囲のほうが一枚上手であった。 


魔剣士「...分断されたなァ」 


女騎士「助けに行くぞっ!」 


魔闘士「待て、それよりも攻撃に備えろ」 


女騎士「──クソっ」 


魔闘士「...リザードか?」 


魔剣士「多分なァ...こっちもくるぞ、数も増えてやがる」スッ 


各々武器を握りしめたり等、攻撃に備える。 

そして、霧の中からついに敵が姿を現す。 


魔剣士「ハッ、見え見えなんだよ...ッ!?」ピクッ 


──ガギィィィィィィィンッッ!!! 

敵は奇襲に失敗して、剣で防御されてしまった。 

しかし、魔剣士はその姿に驚きを隠せなかった。 


魔剣士「────誰だてめェッッ!?」グググ 


??1「アアアアアアアアアアアア......」グググ 


魔剣士「──チッ、離れやがれェッ!」ブンッ 


すぐさまに魔物を吹き飛ばすことで距離を保った。 

冷静さを欠いたが静かに分析をする、魔界に精通している者だからこそ困惑をしてしまう。 

彼らはこの魔物を見たことがないのであった。 


魔剣士「あれは...リザードなのかァ?」 


魔闘士「いや、リザードに近かったが...突然変異か?」 


女騎士「分析は後にしてくれ...来るぞっっ!!!」 
504: :2018/12/08(土) 23:30:42.07 ID:
??2「アアアアアアアアアアアアアア......」ガバッ 


女騎士「──効かんぞっっっ!!!」ブンッ 


──ドガァァァァァァッッッ!!!!! 

女騎士は両手で、騎兵用の槍であるランスを巧みに扱う。 

相手の跳びかかりに反応して、柄の部分を鈍器のように扱い敵を叩き落とした。 


??2「アアアアアアアアアアア......」ムクッ 


女騎士「怯みはするが、復帰が早いな...」 


魔剣士「...邪魔だァッッ!!!」ブンッ 


??3「アアアアアアア......」スッ 


魔剣士「チィッ...避けられたか、視界の悪いの中でよく素早く動けるなァ」 


魔闘士「まずい...どんどん沸いてきているな」 


~~~~ 


~~~~ 


魔女「くっ..."雷魔法"っっ!!」バチバチ 


──ビリィッッッ!!! 

魔力の消費を抑えながらも、威力のある先鋭された雷が魔物を覆った。 

だがその様子はとても静かなモノであった。 


??4「アアアアアアアアアア...」ビリビリ 


魔女「無反応...効いてるのかがわからないわねっ!」 


魔王子「下がっていろ...」スッ 


────ブンッッッ!!! 

凄まじい威力の抜刀居合が敵を本当に沈黙させた。 

その切れ味は魔物を2つに分けていた。 


??4「────」ドサッ 


隊長「2人とも、大丈夫かッ!?」 


魔女「...だめ、どうやら一撃で倒せる威力じゃないと足止めにもならないみたい」 


隊長「みたいだな...奴ら、何が何でも特攻を仕掛けてくるぞ」 


魔王子「...あのような魔物、見たことはない」 


隊長「新種かなにかか...いや、それよりも...」 


魔女「話している間にも、どんどん集まってきているわよっ!」 
505: :2018/12/08(土) 23:32:37.08 ID:
??5「アアアアアアアアアアア......」ゾロゾロ 


??6「アアアアアアアアア...」ゾロゾロ 


隊長「...少なくとも数十匹はいるな」 


魔王子「...ゆけ、貴様らでは足止めもできん...魔剣士たちと合流をしろ」 


隊長「...すまない、必ず追いついてくれ」 


魔王子「俺を誰だと思っている...」 


隊長「...魔女ッ! 魔剣士たちと合流をして雲を抜けるぞッ!」 


魔女「わかったわっ!」 


~~~~ 


~~~~ 


魔剣士「やべェかもなァ...」 


??7「アアアアアアアアアアアアア......」ゾロゾロ 


魔闘士「せめて視界が良ければ、細かな動作が読めるんだがな...」 


女騎士「...今は視界の範囲に現れているが、囲まれてしまってはな」 


??8「アアアアアアアアアアア......」 


魔剣士「反撃はできても、復帰や新手が早いこったァ...」 


魔闘士「...どうやら、ある程度本気で挑むしかないな」 


魔剣士「あァ...地形が崩れる危険性もあるが...仕方ねェな」 


女騎士「...私も、一枚噛もう」 


魔剣士「はッ...人間がこの俺様についてこれるかってんだァ」 


女騎士「これでも女勇者の一行だ、舐めてもらっては困るぞ」 


魔闘士「この山が無くならなければいいが...」 


──ピリピリピリピリッッ... 

3人がそれぞれの威圧感を醸し出す。 

恐らく、今後の戦闘に向けて力をセーブしていた様子であった。 

その努力が無駄に終わった苛立ちが、この未知の魔物に向けられた。 
506: :2018/12/08(土) 23:35:58.17 ID:
??9「アアアアアアアアア...」ピクッ 


魔女「────"風魔法"っ!」 


──ヒュンっっっ!!! 

殺気を向けられてか、魔物が一瞬見せた隙に強い風が切り裂いた。 

その風は雲と数匹の魔物を吹き飛ばし、僅かな間だが道ができた。 

そして道の先には、日の光と山の地肌の光景が差し込んでいた。 


魔剣士「──デカしたァッッッ!!!!」ダッ 


隊長「走れッッッ!!! すぐそこまでいけば視界が晴れているぞッッ!!!」 


魔闘士「──ッッ!」シュッ 


女騎士「あぁっ!!!」ダッ 


隊長と魔女が与えた僅かな時間を、彼らは有効活用する。 

こういった機会を逃さないのが彼らの強さであった。 

魔王子を除く全員が無駄な力を使わずに、雲からの脱出に成功する。 


魔剣士「魔王子はどうしたァッ!?」 


隊長「足止めをしてくれている、必ず追いつくはずだ」 


??10「アアアアアアアアアア......」ゾロゾロ 


魔女「...来たわねっ!」 


魔闘士「...身体つきだけはリザードそのものだな」 


魔剣士「あァ、あちこちに縫合や手術痕がなければなァ」 


女騎士「人工的に創られたというのか...気味が悪いな」 


魔闘士「新種かと思ったが、どうやら違うようだな」 


魔剣士「さァて、手こずらしてくれた分を返さねェとなァ」スッ 


隊長「...くるぞ」スチャッ 


奴らがぞろぞろと集まりだした。 

雲の中とは違い、相手の全体を目視できる。 

攻撃を仕掛けてくると予測して各々が反撃できるように構える。 


??10「...」ピタッ 


隊長「...?」 


魔女「攻撃...してこない?」 


魔剣士「────後ろだァッッッ!!!」 
507: :2018/12/08(土) 23:37:12.63 ID:
???「────ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」 


──バサァッッッ!! 

大きな怒声、羽音と共に咆哮が劈く。 

その轟音は耳を貫き、人間2人と魔物の娘の行動を封じる。 


魔女「──きゃっっ!」ビリビリ 


女騎士「──なんて音だっっ...!?」ビリビリ 


隊長「────ッ!?」ビリビリ 


隊長(この感じ...まさか!?) 


魔闘士「この忙しい時にドラゴンと来たか...」 


魔剣士「こいつも見たことねェ種類だなァ」 


隊長たちが耳を塞ぐので手一杯な中、魔剣士と魔闘士は再び首を傾げた。 

対峙しているドラゴンの様な者もまた手術痕だらけであった。 


???「フッー...フッー...」 


魔剣士「...苦しそうだなァ、言葉も喋れねェか」 


魔闘士「大方、身体を弄くられた影響といったところか...?」 


魔剣士「まァ...楽にしてやるのがせめてもの助けってヤツだァ」 


隊長「クッ...頭が割れそうだ...」 


魔剣士「きゃぷてんッ、そっちは任せるぞォッ!」 


隊長「...あぁ! 任せろッ!!」 


再びふた手に別れる、魔剣士と魔闘士が竜を相手にする。 

軽くふらつくが、隊長たちはリザードもどきの相手をしなければならない。 

ドラゴン、それは隊長の元の世界ですら有名なモンスター、苦戦は必須だろう。 
508: :2018/12/08(土) 23:40:57.72 ID:
隊長「魔女、女騎士...奴らをここに通すなよッッ!!」 


隊長「魔王子が合流するまで持ちこたえろッッ!!」 


魔女「うっ...当然よっっ!!」 


女騎士「...承知したっ!」 


今も身体に硬直が残る中、2人の女は奮い立たせる。 

そしてついに魔界での闘いが始まる、そのはずであった。 

彼女らの身体に強烈な違和感が生まれる、それはすぐに彼にも伝わった。 


魔女「────ぁ...ぅ...」フラッ 


隊長「────魔女?」 


女騎士「うっ...ぐっ...なんだ...っ!?」 


────ガクッッ!!! 

魔女が倒れこみ、女騎士は槍を杖代わりにしてようやく立っている。 

そして背後から轟音が響いた、その音とともに彼が隊長の視界に飛び込んできた。 

なぜこの男が、かなりの手練であるはずの彼が意識を失っているのか。 


魔剣士「────」 


隊長「────魔剣士?」 


魔闘士「光魔法だッ!!! このドラゴンは極めて────」 


その注意は虚しく、次第に隊長の意識は激しい痛みとともに消え失せていった。 

隊長は異世界にきて初めて大敗を喫する、数々の激戦を乗り越えてきたというのに。 

彼が最後の見えたのは、こちらに向かってくる竜の尻尾であった。 


~~~~ 
509: :2018/12/08(土) 23:41:40.03 ID:
今日はここまでにします、近日また投稿します。 
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。 

@fqorsbym
511: :2018/12/09(日) 19:25:39.26 ID:
~~~~ 


???「では、いってきますね」 


数日しか経っていないというのに、どこか懐かしい声がした。 

その声の主は、かつて冒険を共にした彼女であった。 

場面は代わりここは賢者の塔。 


大賢者「...やはり、心配じゃのう」 


女賢者「大賢者様、私なら大丈夫ですよ」 


大賢者「ふむぅ...しかし、女賢者がワシのこと以外で積極的なるのは初めてじゃのう」 


女賢者「...そういえばそうですね」 


大賢者「彼らとの出会い、いい影響を受けたな」 


女賢者「はい...私も力になりたいと思いました」 


大賢者「ふむ! ならゆくがよい!」 


女賢者「はい!」 


──ずびーっ! ずばばばっ! 

女賢者でもなく、大賢者でもない第三者が鼻をすする音。 

それはかなり豪快なものであった、余程の感情が押し寄せている様子。 


女賢者「...そんなに泣かないでください」 


女僧侶「だってぇ...すごい献身的で感動しちゃいますぅ...」ズビビッ 


大賢者「罪づくりな女じゃのう...」 


女賢者「...もう、私までもらい泣きしそうですっ」ホロリ 


女僧侶「ずびびっ...これぇ、旅先でお腹が空いたら食べてくださいねっ!」 


女賢者「ありがとうございます、帰ってきてからも作ってくださいね?」 


女僧侶「わかりましたぁっ! 絶対に帰ってきてくださいねっ!」ズビッ 


512: :2018/12/09(日) 19:27:13.15 ID:
大賢者「...ふむ、そろそろじゃな」 


女賢者「はい、お願いします」 


大賢者「...気をつけるんじゃぞ」 


女賢者「...彼らと一緒なら、何があっても大丈夫ですよ」 


大賢者「それもそうじゃな...では、ゆけ我が愛弟子よ」 


大賢者「────"転地魔法"」 


髪をなびかせ、その表情はどこか決意のあるモノであった。 

彼女は魔法に包まれた、するとどこかへ消えてしまった。 

これが転地魔法というモノである、女賢者が向かった場所とは。 


~~~~ 


~~~~ 


女賢者「──とっ、ここが塀の都ですか」 


女賢者(門を通らずに、直接入ってしまいましたが大丈夫でしょうか) 


女賢者(もう、魔界へ行ってしまったのでしょうか...ともかく、ここで情報収集をしましょうかね) 


あたりを見渡してみる、都というだけに店がたくさんならんでいる。 

人に声をかければなんらかしらの情報が手に入るだろう。 

だが、それ以前に生まれたのは疑問であった。 


女賢者(なんというか...活気がありませんね) 


女賢者(店も閉まっているのが多く、人の表情もどこか暗い...) 


女賢者(これが塀の都というやつなんでしょうか、とにかく話しかけてみましょう) 


女賢者「あの、すみません」 


町民1「...なんだ?」 


女賢者「えぇと...見たことのない防具をした筋骨隆々な男性を見ませんでしたか?」 


町民1「...知らないな」 


女賢者「では...帽子を被った、剣を持った金髪の男性は?」 


町民1「......」 


女賢者「...?」 


町民1「答えたくないね...」 
513: :2018/12/09(日) 19:28:35.47 ID:
女賢者「...知っているんですか?」 


すると、答えを聞く前に相手はどこかへ行ってしまった。 

この後何度も人を変えて試みるものの、すべて同じ反応で対処されてしまった。 


女賢者(どうなっているんですかね...) 


女賢者(せめて、向かった方角を知りたかったんですが...仕方ありませんね) 


女賢者(確実ではありませんが、あの山を登って暗黒街へ向かいますか...) 


女賢者(山を遠回りしている場合もありますけど...すれ違いにならなければいいですが) 


~~~~ 


~~~~ 


女賢者「...都とは思えないほどに暗い雰囲気でしたね」 


女賢者「なんだか...不安になってしまいました」 


女賢者「...コレを渡さなければいけませんのに」 


都を抜け、彼女は草原地帯を歩み始めていた。 

思わずひとりごとをぽつりと言ってしまう。 

とぼとぼと歩いて行くと、オブジェクトが見える。 


女賢者「...お墓?」 


不格好な、不揃いの木が地面に刺さっている。 

その形は十字架に見えるように細工されてあり、辺りには花が手向けられていた。 


女賢者「...毎日お花を手向けているみたいですね」 


??1「...あれっ?」 


??2「女賢者さん...?」 


女賢者「...あなたは────」 


女賢者を見つけたのは、知っているはずの2人組であった。 

柔らかそうな毛並みをした白い狼、瑞々しい青肌の彼女。 


女賢者「────まさかっっ!?」 


彼女がお墓を凝視する、まだ確定もしていないのに涙がこみ上げてくる。 

女性ゆえの感情表現であり、その脳への伝達速度は尋常ではない対応であった。 

彼女は柄にもなく、震えた声で彼女らに質問を投げかけた。 


~~~~ 

514: :2018/12/09(日) 19:31:20.07 ID:
~~~~ 


隊長「...うっ」ピクッ 


どこか暗い場所、そして冷たい床。 

意識が戻ると同時に強烈な痛みが脇腹を襲う。 

身体は拘束されていはいないがしばらくは動けない。 


隊長「ここ...は...?」 


???「...目覚めたか?」 


隊長「...魔闘士ッ!? どこだッ!?」 


魔闘士「隣の牢屋といったところか...」 


隊長「牢屋...?」 


魔闘士「...視界が開けてきたらわかるだろう」 


隊長「...」ゴシゴシ 


隊長「そうか...捕まったのか...」 


魔闘士「そのようだな」 


隊長「...武器も奪われている」 


ハンドガン、ショットガン、アサルトライフル、ナイフ、手榴弾。 

それ以外のものは所持していると、彼は冷静に確認を行った。 

次に隣の牢屋に魔闘士を確認、それ以外の者はいない様子。 


隊長「...何が起きたんだ」 


魔闘士「あのドラゴン...どうやら光属性の魔法を使ったらしい」 


魔闘士「...それも、かなり質の高いやつだ」 


魔闘士「為す術もなく敗れ、何者かによってここに運ばれてきたらしい」 


隊長「ここは...どこなんだ?」 


魔闘士「...わからん」 


隊長「...参ったな」 


沈黙が続く。 

大敗を喫した後だ、語ることはなかった。 

それに耐えきれずに、魔闘士は思わず口を滑らした。 
515: :2018/12/09(日) 19:32:32.00 ID:
魔闘士「...言わせてもらおうか」 


隊長「...あぁ」 


魔闘士「俺が知る限りで、光魔法を使うドラゴンなど存在しないはずだ」 


魔闘士「それでこそ、神と同義だろう...所詮は物語にしか登場しない」 


隊長「だが...存在したな」 


魔闘士「...」 


隊長「...」 


魔闘士「...このような惨敗、2度目だ」 


隊長「...1度目は?」 


魔闘士「...魔王子だ」 


隊長「あぁ...なるほどな」 


魔闘士「俺も若気のころ、無謀にも魔王子に挑んだものだ」 


隊長「昔話を...聞かせてくれるのか?」 


魔闘士「あぁ...身体も動かんしな...お前も暇だろう?」 


隊長「...身体が動かないのか?」 


魔闘士「そうだ、ドラゴンと対峙した時程ではないが...」 


魔闘士「光の海に浸かっているような...じわじわと力を抑えられている感覚だ」 


隊長「...詰んでいるな」 


魔闘士「そうだな」 


隊長「...で、魔王子とはどうだったんだ?」 


魔闘士「聞くまでもないだろう、惨敗だ」 


魔闘士「奴の闇魔法には心底ウンザリさせられる...」 


隊長「それは...共感できる」 


魔闘士「いつかは復讐を...と思っていたが、いつの間にかあのような関係になっていた」 


隊長「...フッ」 
516: :2018/12/09(日) 19:34:02.04 ID:
魔闘士「牢獄での笑い話には丁度いいみたいだな」 


隊長「そうだな...うん、俺も大敗は2度目といったところか」 


魔闘士「ほう...お前のような男でも負けるのか」 


隊長「当然だ、小さな負けは数えきれない程あるぞ」 


魔闘士「...それで、1度目の大敗とは?」 


隊長「...特殊部隊といってな、俺は元の世界では罪を犯した者を捕らえる仕事をしているんだが」 


隊長「一度、凶悪犯を取り逃してしまってな...今も追い、憂いている」 


魔闘士「ほう...」 


隊長「そいつは、違法な実験を繰り返すMadscientist...狂気の研究者だった」 


隊長「数々の子どもや女が実験台にされ、理解できないものを造っていた」 


隊長「そんな奴を、捕まえられなかった...足取りも掴めないで10年も経っている」 


魔闘士「...逃げ足は一流だったようだな」 


隊長「あぁ、今も誰かが奴の被害に遭っていると思うと、虫唾が走る...」 


隊長「この世界は色々と大変だが、奴がいないだけ十分に綺麗だ」 


隊長「...元の世界に戻ったら、必ず牢獄に叩き込んでやる」 


魔闘士「...大敗だな」 


隊長「そうだ...だから、お前も落ち込むな」 


魔闘士「落ち込んでなどない...」 


隊長「...そういうことにしてやろう」 


魔闘士「...」 
517: :2018/12/09(日) 19:35:21.30 ID:
隊長「これから...どうなるんだろうな」 


魔闘士「さぁな、助けがなければこのまま死刑か?」 


隊長「...魔女たちは、どこにいるんだろうか」 


魔闘士「...わからん」 


隊長「...もうひと踏ん張り、するしかないな」ムクッ 


魔闘士「まだ...力を振り絞れるのか」 


隊長「あぁ...あいにく諦めが悪いんでな」 


魔闘士「人間とは...魔物よりも劣ると思っていたが...」 


隊長「...人間とか魔物とか関係ない、所詮気の持ちようだ」 


魔闘士「...そうか、そうだな」 


魔闘士「昔話をして、しんみりしている場合ではないな」ムクッ 


隊長「あぁそうだ、まずはここから脱出するぞ」 


魔闘士「お互い、立つのがやっとだ...鉄格子は破壊できんな」 


隊長「武器もない...どうしたものか」 


薄暗い牢屋の中、詰んでいる状況に頭を抱えるしかない。 

だが2人とも、諦めの悪い性格であった。 

その心は決して折れず、希望に溢れていた。 


~~~~ 


~~~~ 


女騎士「...っ」ピクッ 


女騎士「ここは...そうか、捕まってしまったのか」 


同じく、牢屋に連れ込まれていた女騎士が目覚めた。 

鎧は剥がされてはいないが、槍は没収されていた。 

拘束はされてはいないが、身体に鈍い痛みと謎の倦怠感が残っていた。 
518: :2018/12/09(日) 19:37:06.04 ID:
女騎士「ぐっ...脱出しなければ...!」グググッ 


彼女の強みはその性格にあった。 

出会いこそ、卑劣漢に責められ涙を流していたが今は違う。 

武器を奪われ、身体が言うことを聞かなくても絶対に心は折れない。 

彼女が勇者の一行に選ばれた理由は、その極められた騎士道が要因であった。 


女騎士「うっ...なんとか、立てるな...」ヨロヨロ 


女騎士「...鍵か」 


壁伝えに歩き、鉄格子の前に移動する。 

辺りには誰かいる様子はなく、心もとない蝋燭が灯っている。 


女騎士「...女勇者、すまん」スッ 


耳、正確には耳たぶに手を当てる。 

謝罪をしながら耳飾りを外し、装飾を崩し始めた。 

そして残った骨組みの針金を棒状の形状に再加工をする。 


女騎士「鍵開け...子どもの頃にやったきりだが大丈夫だろうか...」カチャカチャ 


女騎士「...」カチャカチャ 


女騎士「......」カチャカチャ 


────カチャッ 

牢屋に小さく響いたのは、針金の音ではなく施錠音。 

喜びの声も挙げずに、音を立たせないよう静かに脱出を試みる。 


女騎士「...殺されてなければいいが」 


~~~~ 
519: :2018/12/09(日) 19:39:19.23 ID:
~~~~ 


女騎士(...通路ばかりだな) 


壁伝えに歩く、鎧特有の金属音が微かに響く。 

見つからないことを祈りながら前に進むしかない。 


女騎士(薄暗い...いや、この場合は薄暗い方が見つかりにくいか) 


女騎士「...ん?」 


終わりが見えないほどに長い通路の先に、輝かしい光が見えた。 

その光は人工的で暖かみのあるものではなかった。 


女騎士(魔物の気配はしないな...光に群がらせてもらおうか) 


動物としての本能だろうか、光へ向かう。 

拍子抜けなほどに警備が薄い、もはや早歩きで音が鳴っても問題はなかった。 

光が刺す空間へ辿り着いた。 


女騎士「...なんだこれは?」 


女騎士(この部屋...見たことのない材質の物だらけだな) 


未知の物体に驚愕するなか、部屋を探索する。 

彼女も騎士の前に人間だ、気になるものが広がればそうなってしまう。 

だがそれが功を奏した。あるものを発見する。 


女騎士(──あれは、きゃぷてんの武器じゃないかっ!?) 


女騎士「...合流するまで使わせてもらうぞ」 


アサルトライフルとショットガンを付属していたベルトで背負う。 

鎧にある申し訳程度の収納に、手榴弾とナイフを無理やり詰め込む。 

そしてハンドガンを握りしめる、ようやく武器を手にした女騎士から不安が消え失せる。 


女騎士(重たい...だけど、急いで合流しなければ) 


女騎士(武器がここにあるということは...彼は丸腰だろう) 


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520: :2018/12/09(日) 19:40:19.19 ID:
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魔剣士「...チィッ」 


魔剣士「とっとと出しやがれェッッ!!!」 


血みどろの竜が吠える。 

魔剣を奪われ、仲間を奪われ、身体の自由を奪われている。 

拘束はされていない、だがそれが竜の逆鱗に触れてしまっていた。 


魔剣士「クソがァッ...なんで身体が動かねェ...畜生ォ」 


魔剣士「見張りはいねェ...脱出の機会っつうのによォ...」 


魔剣士「ムカつくぜェ...クソォ...」 


魔剣士「...」 


────シーン... 

不気味なほどに手薄な牢獄。 

その孤独感が意外にも魔剣士に響いてしまう。 


魔剣士「...情けねェな、俺様」 


魔剣士「どんなに練度を上げても...上位属性の前には敵わねェのかよォ...」 


弱音を吐いてしまう、力はともかく今は魔力すら振り絞れない。 

身体の内から光魔法を浴びているかのような感覚に陥っていた。 

いままで簡単にやっていたことが突如できなくなるというのは、どれほどの不安を誘うものか。 


魔剣士「────畜生...」 


──ガチャッ...! 

気づけば鉄格子の鍵が開いていた。 

薄暗い牢屋の中、徐々に目が冴えてくる、この見慣れた武器は間違いなく奴だ。 


???「──大丈夫か...?」 


魔剣士「...きゃぷてんかァ?」 


女騎士「いいや、女騎士だ」 


魔剣士「...お前、どうやって」 


女騎士「なに、少しばかり鍵開けを嗜んでいてな」 


魔剣士「...ハッ、心強いことでェ」 


少しばかりか、不安が消え失せていた。 

相変わらず魔力や力を振り絞れないが、勇気が湧いてきた。 
521: :2018/12/09(日) 19:41:44.86 ID:
女騎士「立てるか?」 


魔剣士「悪ィ...そいつはちょっとばかり出来ねェなァ...」 


女騎士「なら肩を貸してやろう」グイッ 


魔剣士「お、おう...」 


女騎士「...軽いな」 


魔剣士「るせェ...それより剣かなんかねェか?」 


女騎士「きゃぷてんの刃物ならあるぞ」 


魔剣士「...だめだ、短すぎる」 


女騎士「なら、これで我慢してくれ」スッ 


そういうと、女騎士はハンドガンを渡してきた。 

肩を支えてもらっていて、片腕だけしか動かせない魔剣士でも発砲が可能だろう。 

そして女騎士は、背負っているアサルトライフルを同じく片腕で構える。 


魔剣士「なるほどなァ...つーか、お前はそれを片手でやるつもりかァ?」 


女騎士「所詮私は人間...だが、極限まで鍛えたつもりだ」 


女騎士「それに...やるしかないだろう?」 


魔剣士「違ェねえな、それじゃ運搬よろしくゥ」ケタケタ 


女騎士「言ってくれるなぁ...まぁ、早くきゃぷてんと合流しなければ」 


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隊長「...そっちの調子はどうだ?」 


魔闘士「だめだ、まだ立つので精一杯だ」 


隊長「...この牢獄自体に光魔法がかかっている可能性は?」 


魔闘士「...ありえる、だが1つ矛盾点がある」 


魔闘士「光魔法がかかっているなら、お前も同じ症状を得るはずだ」 


魔闘士「...お前は万全なのか?」 
522: :2018/12/09(日) 19:43:06.45 ID:
隊長「...身体に鈍い痛みは残っているだけで、それといった症状はないな」 


魔闘士「なら...現時点では原因不明だ」 


隊長「参ったな...」ポリポリ 


現状では、内側からはなにもすることができない。 

そして、魔闘士だけが光魔法を受けたような症状に頭を悩ませる。 

今できることは頭のかゆみを解消することだけであった。 


魔闘士「...神に祈ってみるか?」 


隊長「その神の使いの天使を殺したのは誰だ?」 


魔闘士「...くだらん冗句は言うものではないな」 


隊長「あぁ...だが、仲間に祈ってはいるぞ」 


魔闘士「...」 


──ガチャッ...! 

気づけば、鉄格子の鍵が開いていた。 

薄暗い牢屋の中、目が冴えていなくともわかる、見慣れないこの風貌は間違いなく敵だ。 


???「やぁ」 


魔闘士「...何者だ?」 


隊長「...」 


???「この施設の最高責任者だよ」 


魔闘士「なぜ、牢屋を開けた...」 


???「君たちに教えたいことがあってね」 


???「ほら、さっさと歩いてくれ、時間は無限じゃないんだ」 


魔闘士「...」 


隊長「...断るといったら?」 


???「断るわけない、今だって現状を打破できなかったじゃないか」 


???「君たちは付いてくるしか、ここから脱出する目処は立たないよね?」 


魔闘士「...チッ」 


???「さぁ、こっちだ、言っておくけど脅しは聞かないからね」 


???「君は歩くことも辛いはずだ...君は違うみたいだけど、どちらにしろ急な運動は無理でしょ?」 
523: :2018/12/09(日) 19:44:27.41 ID:
魔闘士「...癇に障る奴だな」 


隊長「だが、事実だ...従うしかない」 


大人しく従うしかない、このままだと永遠に牢獄に入れられたまま。 

せめて、仲間が助けに来る可能性に縋りたかったが、敵が目の前にいるのなら話は別。 

既に仲間がくるまで待機という選択は消されている、彼らは少しふらつきながら奴に付いて行く。 


???「...しかし、君も大変だったね」 


隊長「...大変にしたのはお前らだろう」 


???「いや、そうじゃないさ...まぁ直にわかる」 


隊長「...?」 


他愛のない会話、まるで囚人と看守のようなものだった。 

意味深なことを言い放つこの者に疑問を抱える。 

だが、それとは別に隊長には気になる点があった。 


隊長(...こいつの服、白衣か?) 


夜目が効いて、ようやく確認ができた。 

この白い服装は間違いなく、科学者が着るようなアレだ。 

この世界には似つかわしくない、非現実的であり、現実的すぎる服。 


隊長「────お前、まさか」 


一瞬だけ頭に過ぎった、過ぎってしまった。 

その後姿は過去に見たことがある、見てしまったことのある者。 

追ってきたその背中を見間違えることは絶対にない、だがその言葉は遮られてしまう。 


???「さぁ、到着したよ」 


魔闘士はその見たことのない光に目を白黒させる。 

そして隊長はその見慣れた光に目を白黒させる。 

明かりで奴の、この施設の最高責任者の顔を確認できてしまった。 


隊長「────なぜここにいる」 


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