658: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:43:36.62 ID:tMoz5knNo

21:00 

舞園「そろそろプレゼント交換始めましょうか!」 

桑田「いえーい!!」 

朝日奈「誰の当たるかなあ!」 

江ノ島(うわーきたよプレゼント交換!) 

江ノ島(頼んだからね、モノクマ……!) 

戦刃「始めるクマー!」 

江ノ島「」ビクッ 

セレス「クマ……ですか……?」 

戦刃「あっごめん盾子ちゃん! クマーってちょっと口癖になっちゃったかも……」 

セレス「はい?」 

江ノ島「なんでもないから! ほんとに!!」 


引用元: ・苗木「江ノ島さんを更生させてみた」

659: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:44:15.38 ID:tMoz5knNo

苗木「そういえば、プレゼント交換ってどうやってやるの?」 

霧切「あそこに2つ箱があるでしょ?」 

苗木「うん」 

霧切「まず小さい方の箱から紙を1枚引くと、この16人の誰かの名前が書いてあるわ」 

苗木「名前が出てきた人が次の箱から紙を引くってこと?」 

霧切「あら、察しがいいじゃない」 

霧切「大きい箱の中の紙には番号が書いてあって、それと同じ番号のプレゼントがもらえるわ。そして小さい箱から紙を引いて、次の人にバトンタッチよ」 

苗木「ああ、集めたプレゼントに貼ってある番号はそういうことね」 

苗木「ん? それって自分のが当たっちゃう人もいるんじゃ……」 

霧切「その時はその時よ。それに、そういうハプニングは盛り上がるわ」 

苗木「ははは……」 

660: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:44:43.07 ID:tMoz5knNo

苗木「最初に小さい箱から紙を引く人は責任重大だね」 

舞園「何言ってるんですか苗木くん」 

苗木「へっ?」 

江ノ島「トップバッターは『超高校級の幸運』の苗木に決まってんじゃん」 

苗木「えええ!? 聞いてないよ!?」 

江ノ島「だって今決めたもん」 

舞園「みんなに苗木くんの幸運を分けてあげるんですよ!」 

十神「苗木、何をもたもたしている! 早くクジを引かないか!」ソワソワ 

戦刃「はやくはやくー!」ワクワク 

苗木「ああもう、わかったよ! 誰が出ても知らないからね!?」 

霧切「はい、どうぞ」 

苗木「くっ……」ガサゴソ 

苗木「これに決めた!」バッ 

舞園「誰の名前が書いてありますか?」 

苗木「えーっと……」ピラッ 


【苗木】 


苗木「……僕?」 

662: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:45:23.42 ID:tMoz5knNo

江ノ島「!」 

舞園「ええっいきなりですか!?」 

十神「さすがは『超高校級の幸運』、といったところか」 

霧切「あら、いきなり私のプレゼントが苗木くんの手に渡るのね」 

セレス「だから貴女のその変な自信はどこからくるんですか……」 

江ノ島(やばいよ、やばいって、まだ心の準備できてないんですけど!?) 

苗木「次はこっちの箱ね……」ゴソゴソ 

江ノ島(モノクマ……) 

苗木「んと、これかな?」ヒョイ 

江ノ島(お願い……!) 

苗木「ええっと……3番だ!」 

舞園「3番ですね!」 

大和田「おい3番のプレゼントどこだ!」 

664: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:45:56.84 ID:tMoz5knNo

不二咲「あ、あったよ! はい、苗木くん!」 

苗木「うわあ、緊張するなあ」 

江ノ島「……」ゴクリ 

苗木「よいしょ……お、これは……」 

苗木「マフラーだ!」 

江ノ島「……」 

戦刃(盾子ちゃん……) 

セレス「これからの季節にピッタリですわね」 

セレス(私のは当たりませんでしたか……) 

舞園「……」 

朝日奈「誰のプレゼントか当ててみてよ苗木!」 

苗木「ええ!? 当てるのはさすがに無理じゃない!?」 

葉隠「いや案外当たるもんだべ! なんなら特別価格にしとくから占ってやろうか?」 

苗木「うーん……よく気が利く人な気がするな……」 

葉隠「無視!?」 

665: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:46:34.21 ID:tMoz5knNo

苗木「んー……舞園さん……だったりする……?」 

舞園「……」 

苗木「は、ハズレだったかな?」 

舞園「……正解です! 私でした!」 

苗木「よかったあ! ありがとう、舞園さん! 大事に使わせてもらうよ!」 

舞園「はい!」ニコッ 

舞園(よかった……一生懸命選んで、本当によかった……!) 

舞園(でも苗木くんに当たるなら手編みにしたほうがよかったかな……) 

舞園(なーんてね。とにかくよかったぁ……)ホッ 

セレス「貴女じゃありませんでしたね、霧切さん」 

霧切「」 

セレス「霧切さん?」 

霧切「」 

667: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:47:01.55 ID:tMoz5knNo

苗木「えーと次の人は……」 

江ノ島(……) 

江ノ島(いきなり、かあ……) 

苗木「戦刃さんだ!」 

江ノ島(いきなりハズれちゃったなあ……) 

江ノ島(苗木に当ててほしかったなあ……) 

戦刃「わ、わたし!?」 

江ノ島(プレゼント交換でもないと渡す勇気ないのになあ……) 

江ノ島(頼んだって、言ったのに……) 

江ノ島「はぁ……絶望的……」 

江ノ島「ふぇ……」グス 

668: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 21:47:55.38 ID:tMoz5knNo

戦刃「盾子ちゃん盾子ちゃん!」 

江ノ島「……なにお姉ちゃん」ウルウル 

戦刃「じゃじゃーん! 盾子ちゃんのモノクマさん当たったよ!」エヘヘ 

江ノ島「……」 

戦刃「ちゃんと当ててきたよ!」 

江ノ島「……」 

戦刃「ありがとクマー!」クマー! 

江ノ島「……」 

江ノ島「うぷぷっ、感謝しなさいよねお姉ちゃん!」 

戦刃「うん!」 

673: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 22:16:47.92 ID:tMoz5knNo

21:30 

不二咲「き、緊張するねえ」 

江ノ島「そ、そだね」 

江ノ島(あとはあたしと不二咲の2人だけ……残りのプレゼントは、苗木と霧切のプレゼント……) 

江ノ島(苗木のプレゼントをもらえる確率は、2分の1……!) 

石丸「む! 次は江ノ島くんの番だぞ!」 

江ノ島「!」 

江ノ島「はーい!」 

江ノ島(うわあ緊張してきた!?) 

苗木「はい、この箱から引いてね」 

江ノ島「……」ジー 

苗木「江ノ島さん?」 

江ノ島「……なんでもない」プイッ 

江ノ島(苗木の幸運、分けてもらえてるかな……) 

674: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 22:17:24.48 ID:tMoz5knNo

江ノ島「……よっし」 

スッ 

江ノ島(あたし、苗木のプレゼントがもらえたら……) 

ゴソゴソ 

江ノ島(なんて、前のあたしが聞いたら、死亡フラグでも立ててるのかって笑い飛ばしたんだろうな) 

ゴソ… 

江ノ島(初恋って、楽しいなあ) 

ヒョイッ 

江ノ島(ちょっと苦しいけどね) 

ピラッ 

江ノ島「9番だ……」 

675: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 22:18:14.49 ID:tMoz5knNo

舞園「9番はこっちですね。はい、どうぞ!」 

江ノ島「ありがと」 

シュルッ 

江ノ島(けっこう箱大きいな……ていうか長い……) 

シュルシュル 

江ノ島「……天体望遠鏡?」 

舞園「ではそのプレゼントは、苗木くんと霧切さん、どちらのものでしょうか!」 

江ノ島「……」 

江ノ島(苗木の、だったらいいな……) 

江ノ島「……」クルッ 

江ノ島「苗木の……かな……?」 

苗木「……」 

676: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 22:19:05.20 ID:tMoz5knNo

江ノ島「……」 

苗木「……違う、よ」 

江ノ島「……」 

霧切「それは私からのプレゼントよ」 

江ノ島「……そっか」 

江ノ島「ありがとね!」 

霧切「どういたしまして」 

江ノ島「霧切って星好きなの? ちょっと意外なんですけどー!」 

霧切「まあ、どちらかといえば天体望遠鏡は男の子っぽいプレゼントだったかしら」 

江ノ島「くっそー、まさか2択で外すとはねー!」 

霧切「ふふっ。私としてはしてやったりといったところね」 

江ノ島「あははっ!」 

江ノ島「はは……」 

677: ◆3Exch9p5tM 2013/10/03(木) 22:19:31.99 ID:tMoz5knNo

江ノ島「……」 

戦刃「盾子ちゃん?」 

江ノ島「……」 

戦刃「大丈夫?」 

江ノ島「……せっかくだし星ちょっと見てくるね!」 

戦刃「ええっ、今から!?」 

江ノ島「すぐ戻ってくるから!」 

戦刃「わたしも一緒に……」 

江ノ島「だーめ、お姉ちゃんは普段あんまり喋らないんだからクラスメイトと話してなさい! んじゃね!」 

戦刃「あっ……」 

戦刃「盾子ちゃん……」 

688: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 03:58:59.47 ID:+6ZWfcN6o

苗木「あれ?」 

苗木「うーん……」キョロキョロ 

苗木「……」 

苗木「いないや」 

苗木「江ノ島さん、どっか行ったのかな」 

苗木「……」 

苗木「ねえ戦刃さん、ちょっといい?」 

戦刃「苗木くん?」 

―――― 

―― 

689: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 03:59:40.23 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島「おー! 見える見える!」 

江ノ島「へえ、星ってこんなに綺麗だったんだ!」 

江ノ島「天体望遠鏡すげー!」 

江ノ島「霧切には感謝しなくちゃね、ほんと!」 

江ノ島「……」 

江ノ島「霧切って、望遠鏡に詳しそうだよねえ」 

江ノ島「探偵の仕事で使いそうだし」 

江ノ島「苗木の写真撮るのにも使いそうだし」 

江ノ島「……」 

江ノ島「苗木……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「星、きれいだな」 

江ノ島「……」 

江ノ島「ちょっと寒いけど」 

690: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:00:14.18 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島「……」 

江ノ島「あたしのプレゼントは、苗木に当たらなかった」 

江ノ島「苗木のプレゼントも、あたしに当たらなかった」 

江ノ島「……」 

江ノ島「はぁ……」 

江ノ島「絶望的だな……」 

江ノ島「すっごく、絶望的……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「そりゃそうだよね」 

江ノ島「あたしは、『絶望』だったんだ」 

江ノ島「そんなあたしが、あたしなんかが……」 

江ノ島「都合よく、簡単に……幸せになっちゃいけないんだ……」 

苗木「それは……違う、よ……!」 

691: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:00:41.74 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島「!」ビクッ 

江ノ島「な、苗木……?」 

苗木「はぁ、はぁ……江ノ島さん、こんなとこにいたんだ……」 

江ノ島「なんで苗木が……ここにいんの……?」 

苗木「江ノ島さんを、探しに、来たんだ……」 

江ノ島「あたしを……?」 

苗木「うん。ふう、久しぶりにこんな走り回ったよ」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「……なんの用?」 

苗木「なんでパーティ、抜け出したの?」 

江ノ島「星が見たかったの。ちょうど天体望遠鏡もらったことだし」 

苗木「本当に?」 

江ノ島「はぁ? 他に理由なんてないっつーの」 

苗木「……」 

苗木「なら……」 

苗木「江ノ島さんは、なんで泣いているの?」 

692: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:01:13.40 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島「え……?」 

江ノ島「あたしが、泣いてる……?」 

苗木「……」 

江ノ島「なんで? あたし今、泣いてるの?」 

苗木「うん」 

江ノ島「そっか……」 

苗木「クリスマスパーティ、楽しくなかった……?」 

江ノ島「……ううん。楽しかった」 

江ノ島「人生で一番楽しい、クリスマスだった」 

苗木「じゃあ、どうして……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「楽しかったけどね、辛いことも、少しあったんだ」 

苗木「辛いこと?」 

江ノ島「もしこうだったらって考えてたのが、実現しなかった」 

江ノ島「勝手に期待して、勝手に絶望したの」 

江ノ島「それだけの、些細なことだよ」 

693: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:01:40.70 ID:+6ZWfcN6o

苗木「でも、江ノ島さんにとっては大切なことだったんでしょ?」 

江ノ島「別に、そんなこと……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「ううん、そうだね」 

江ノ島「そんな些細なことも、きっとあたしにとっては、とっても大事なことだった」 

苗木「……」 

江ノ島「……」 

苗木「ねえ、江ノ島さん」 

江ノ島「なに?」 

苗木「江ノ島さんに、受け取ってもらいたい物があるんだ」 

江ノ島「は?」 

苗木「はい、これ」 

スッ 

江ノ島「箱……?」 

694: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:02:09.81 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島「開けていい……?」 

苗木「うん」 

江ノ島「……」 

シュル… 

江ノ島「……」 

パカッ 

江ノ島「……」 

江ノ島「ペン、ダント……?」 

苗木「ロケットペンダントだよ」 

江ノ島「これ、あたしに……?」 

苗木「うん」 

苗木「江ノ島さん、誕生日おめでとう」 

695: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:02:37.05 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島「えっ……?」 

江ノ島「な、なんで知ってるの? 雑誌とかでも言ったことないのに……」 

苗木「少し前に、戦刃さんに聞いたんだ」 

江ノ島「……」 

苗木「江ノ島さん、クリスマスパーティを独占したくなかったんでしょ?」 

江ノ島「……」 

苗木「みんなと同じようにクリスマスを楽しみたかった。だから、言わないでいたんだよね?」 

江ノ島「……さあね」 

苗木「それは、そんな優しい江ノ島さんへの僕からのプレゼントだよ」 

江ノ島「プレゼント……」 

苗木「喜んでもらえたらいいんだけど……」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「……嬉しい」 

江ノ島「すっごく嬉しいよ、苗木!」 

苗木「ほんと? よかったあ……」 

696: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:03:04.19 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島「苗木からの、プレゼント……」 

江ノ島(もらっちゃった……) 

江ノ島(苗木からプレゼント、もらっちゃった……!) 

江ノ島「ふぇぇ……」グスッ 

苗木「え、江ノ島さん!?」 

苗木「どうしたの!? 実は気に入らなかったとか!?」 

江ノ島「違うのぉ……嬉しすぎて……」 

江ノ島「ありがとね……ほんとに、ありがと……!」グス 

苗木「そっか……」 

苗木「どういたしまして」ニコ 

697: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:03:32.29 ID:+6ZWfcN6o

江ノ島(あたし、苗木からプレゼントもらえたんだ……) 

江ノ島(……) 

江ノ島(もしも……) 

江ノ島(もしも、あたしのモノクマが苗木に当たったら……) 

江ノ島(それか、あたしが苗木のプレゼントをもらえたら……) 

江ノ島(そのときは……) 

江ノ島(……) 

江ノ島(そうだね、決めていたんだもんね) 

江ノ島「……ふふっ」 

江ノ島「ねえ、苗木」 

苗木「ん、なに?」 

江ノ島「あたしからも、苗木に渡したい物があるんだ」 

苗木「え?」 

江ノ島「これなんだけどさ」 

698: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:04:18.90 ID:+6ZWfcN6o

no title


699: ◆3Exch9p5tM 2013/10/05(土) 04:05:38.70 ID:+6ZWfcN6o

苗木「……手紙?」 

江ノ島「中、読んでよ」 

苗木「うん」 

ペリ… 

苗木「……」 

江ノ島「……」 

苗木「……」ゴクリ 

ピラッ 



『あなたのことが、好きです』 



江ノ島「あのね……」 

江ノ島「江ノ島盾子はね、苗木誠に、恋しちゃったんだ」 

江ノ島「好きだよ」 

江ノ島「大好きだよ、苗木」 

713: ◆3Exch9p5tM 2013/10/06(日) 22:49:40.09 ID:BAupWejlo

セレス「あら?」 

セレス「苗木くんの姿が見当たりませんわね」 

葉隠「苗木っちなら外行ったべ」 

セレス「外、ですか?」 

葉隠「おう。上着着てなかったから、すぐ戻ると思うけどな」 

セレス「……」 

セレス「江ノ島さんも、いませんね」 

葉隠「ありゃ? ほんとだ」 

セレス「……」 

葉隠「まさか2人とも明日の朝まで戻ってこなかったりしてな! はっはっは!」 

セレス「……」 

葉隠「いやあ、苗木っちも大人になったんだなあ」 

セレス「んなの許されるわけねえだろこのダボがッ!!!!」 

葉隠「ひいっ!?」 

714: ◆3Exch9p5tM 2013/10/06(日) 22:50:25.67 ID:BAupWejlo

苗木「え、江ノ島さん? それって、どういう……」 

江ノ島「どういうも何も、そのままの意味ですけどー? 好きなんですけどー?」 

苗木「え……」 

苗木「えええええ!!?」 

江ノ島「やっぱり苗木くんは気づいてなかったんですね……絶望的に鈍いです……」 

苗木「ちょ、ちょっと待ってよ!」 

苗木「その……からかってるわけじゃ、ないんだよね……?」 

江ノ島「たりめーだろうがッ! 今さっきの告白どんだけ恥ずかしかったと思ってんだこの唐変木が!」 

苗木「ごめん……」 

江ノ島「それでそれでー? こーんな可愛い女の子の告白に対する、苗木くんの返事はー?」 

苗木「……」 

江ノ島「どうなのだ、苗木よ! 答えるがよい!」 

苗木「……」 

苗木「僕は……」 

江ノ島「……」 

苗木「僕は、江ノ島さんのこと……友達だと……」 

江ノ島「……」 

苗木「だから……その……」 

715: ◆3Exch9p5tM 2013/10/06(日) 22:51:23.82 ID:BAupWejlo

江ノ島「……」 

苗木「ごめん……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「うぷっ」 

苗木「?」 

江ノ島「うぷぷぷ、それでこそ苗木くんだよ!」 

苗木「え……?」 

江ノ島「こうなることはわかっていました。そのうえで私は、自分の気持ちを伝えたかったのです」 

苗木「……」 

江ノ島「だから……」 

苗木「……」 

江ノ島「だから、これからあんたを振り向かせてやるんだからね!」 

苗木「……」 

江ノ島「覚悟、してなさいよねえ……ふぇ……」グスッ 

苗木「……うん」 

716: ◆3Exch9p5tM 2013/10/06(日) 22:52:10.64 ID:BAupWejlo

苗木「そろそろ戻ろう。風邪ひいちゃうよ」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「苗木が手をつないでくれたら戻る」 

苗木「ええ!?」 

江ノ島「なによ、友達だって手ぐらいつなぐじゃん」 

苗木「そう……なのかな……?」 

江ノ島「そうなの!」 

苗木「はいはい」 

ギュッ 

江ノ島「……えへへっ」/// 



苗木(この後僕たちは、うっかり手を繋いだまま戻ってしまいちょっとした騒ぎになった。江ノ島さんは案の定、顔を真っ赤にして慌てていた) 

730: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 21:31:32.83 ID:zbcUBkZ5o

12月28日 

苗木家前 

苗木「よし、着いた。久しぶりの我が家だ」 

苗木「2学期は結構忙しかったなあ……」 

苗木「帰ってくるのは2ヶ月ぶり、かな?」 

苗木「3日までは何も考えずにゆっくりできそうだ」 

苗木「実家に帰ってくると、なんだかほっとするよね」 

江ノ島「そう? あたし前から一人暮らししてたしよくわかんないなあ」 

江ノ島「それより早く入ろうよ! 苗木の部屋とか楽しみー!」 

苗木「……」 

江ノ島「あっ! あたしチャイム鳴らしたい!」 

江ノ島「ねえ鳴らしていい?」 

苗木(どうしてこうなったんだっけ……) 

731: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 21:32:05.91 ID:zbcUBkZ5o

2時間前 

希望ヶ峰学園学生寮 

舞園「よいしょ」 

苗木「あ、舞園さん」 

舞園「苗木くん!」 

苗木「荷物多いね。実家に帰るとこ?」 

舞園「まずはお仕事行って、終わったらそのまま実家です!」 

苗木「そっか。じゃあ今年は会うのこれが最後だね」 

舞園「そうですね。最後に苗木くんに会えてよかったぁ」 

苗木「はは、僕もだよ」 

舞園「本当ですか! えへへ、それじゃ行ってきますね!」 

苗木「うん、行ってらっしゃい!」 

732: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 21:32:43.62 ID:zbcUBkZ5o

苗木「さて、そろそろ僕も帰る支度するかな」 

江ノ島「あたしはもう準備オッケーだよ」 

苗木「あっごめんね! 急ぐから!」 

江ノ島「ゆっくりでいいよー」 

苗木「はは、ありが……と……」 

苗木「……」 

苗木「え? どういうこと?」 

江ノ島「あたしも苗木の家行ってみたーい!」 

苗木「いやいやいや!」 

江ノ島「てか行くって決めたから」 

苗木「勝手に決めないでよ!?」 

江ノ島「うぷぷぷ、苗木くんボクと約束したよね?」 

苗木「へっ?」 

江ノ島「私が期末試験をちゃんと最後まで解き、赤点をすべて回避したら1日遊ぶ約束でしたよね?」 

苗木(すっかり忘れてた……) 

江ノ島「それ今日ねー!」 

苗木「で、でも……」 

江ノ島「苗木くんは私との約束を守ってくれないんですか……絶望的に悲しいです……」ウルウル 

苗木「」 

―――― 

―― 

733: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 21:33:12.26 ID:zbcUBkZ5o

苗木(結局押し切られちゃったんだよなあ……) 

ピーンポーン 

苗木「って呼び鈴鳴らしてるし!?」 

江ノ島「てへっ」 

???『はーい!』 

ガチャッ 

苗木妹「どちら様ですかー? あ、お兄ちゃん!」 

苗木妹「お兄ちゃんと江ノ島盾子かあ」 

苗木妹「……」 

苗木妹「江ノ島盾子!!?」 

江ノ島「はいはーい! 江ノ島盾子ちゃんでーっす!」 

苗木「ああもう……」 

江ノ島「この人ってもしかして苗木のお姉さん?」 

苗木「……」 

苗木「……妹だよ」 

江ノ島(あっ) 

苗木「そうだよね……僕より背が高いから姉だと思うよね……」 

江ノ島「え、えと、大丈夫だよそろそろ伸びるって!」 

苗木「ははは……」 

苗木妹「なんで江ノ島盾子がお兄ちゃんと一緒にいんの!? ねえどういうこと!?」 

江ノ島「ほ、ほらとりあえず中入るよ!」 

734: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 21:34:29.88 ID:zbcUBkZ5o

苗木家リビング 

苗木妹「えっと、江ノ島盾子さん……ですよね……? 雑誌によく載ってる……」 

江ノ島「そだよー」 

苗木「希望ヶ峰でクラスメイトなんだ」 

苗木妹「……」ジー 

江ノ島「なに?」 

苗木妹「あ、あのっ!」 

江ノ島「ん?」 

苗木妹「お、お兄ちゃんとどういう関係なんですか!? かっ、彼女さんなんですか!?」 

苗木「ちょっと何言ってんの!?」 

江ノ島「そ、そう見える……かな……」/// 

苗木妹「お兄ちゃん彼女できたなんて言ってなかったじゃん!」 

苗木「いや違うからね!? 江ノ島さんも誤解を生むようなこと言わないで!」 

江ノ島「はーい」 

苗木妹(ち、違うんだ……よかった……) 

江ノ島「まあ、あたしってば苗木に告ってフラれちゃったもんね」 

苗木「」 

苗木妹「え、フラれた? フったんじゃなくてですか?」 

江ノ島「うむ。私様は苗木誠に片想い中なのだー」 

苗木妹「ええええ!?」 

苗木妹(ライバルにしては強敵すぎるよ!?) 

苗木(帰りたい……あ、そういやここ実家だった……) 

743: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 23:36:35.36 ID:zbcUBkZ5o

苗木の部屋 

江ノ島「なにこれ小学生の苗木超かわいい!」 

苗木妹「ですよねー!」 

苗木「もうアルバムはやめようよ! お願いだから!」 

江ノ島「ちぇー」 

江ノ島「あっ妹ちゃん、これあげる」スッ 

苗木妹「え?」 

【苗木の写真by霧切】 

苗木妹「……! あ、ありがとうございます!」 

苗木「何あげたの?」 

江ノ島「あたしのサイン入り写真だよ」 

苗木「へえ、ちょっと見せてよ」 

苗木妹「あ、あたし自分の部屋にいるね!」/// 

苗木「へ? あ、うん」 

江ノ島「……」ニヤニヤ 

苗木妹「あ、お兄ちゃん!」 

苗木「なんだよ?」 

苗木妹「変なことしちゃダメだからねっ!」 

苗木「変なことって?」 

苗木妹「え、えっちなことしちゃダメだよ!!」/// 

苗木「しないよ!?」 

744: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 23:37:39.35 ID:zbcUBkZ5o

苗木「はあ……疲れた……」 

江ノ島「苗木あたしにいかがわしいことしたいの?」 

苗木「その話から離れようか」 

江ノ島「にしても苗木の妹、元気な子だねー」 

江ノ島(苗木狙いなのは驚いたけど) 

苗木「……」 

苗木「江ノ島さん、いつも通りだね」 

江ノ島「落ち込んでよそよそしくしてた方がよかった?」 

苗木「そ、そういうわけじゃないよ!」 

江ノ島「落ち込んでても仕方ないっしょ。これから振り向かせるんだから」 

苗木「はは……」 

江ノ島「そういえばさあ」 

苗木「ん?」 

江ノ島「これって、お家デートみたいだよね」 

苗木「そうだね」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「つ、次! 次なにする!?」/// 

苗木(自分で言って恥ずかしくなったんだろうなあ) 



苗木「うーん、でも僕の部屋でできることなんてそんなにないんだよな……」 

江ノ島「えー何かないのー?」 

苗木「じゃあ>>746とかどう?」 

745: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 23:38:21.60 ID:R5XmwSD8o
スマブラ!

747: ◆3Exch9p5tM 2013/10/09(水) 23:39:25.98 ID:zbcUBkZ5o
スマブラ了解しました 
できればまた明日ノシ

756: ◆3Exch9p5tM 2013/10/12(土) 00:28:31.04 ID:U1tpoFw0o

苗木「じゃあスマブラとかどう?」 

江ノ島「おっ、いいじゃんいいじゃん! 懐かしー」 

苗木「えっと、確かここら辺にしまってあったはずなんだけど……」ガサゴソ 

苗木「あった!」 

江ノ島「ていうか今どき64なんて動くの?」 

苗木「うーん。とりあえず繋いでみようか」ガシャッ 

ピコーン! 

苗木「よしついた!」 

苗木「あ、スマブラやるなら妹呼ぶ?」 

江ノ島「だーめっ」 

苗木「え?」 

江ノ島「私様は2人っきりで遊ぶのを所望する!」 

苗木「はは、わかったよ」 

江ノ島「やったー! あたしプリンね!」 

苗木「じゃあ僕はリンクかな」 

江ノ島「うぷぷぷ、タイマンだよ苗木くん!」 

―――― 

―― 

757: ◆3Exch9p5tM 2013/10/12(土) 00:29:00.85 ID:U1tpoFw0o

苗木「……」 

カキーン! 

江ノ島「っしゃあ!」 

苗木「……」 

カッキーン! 

江ノ島「あたしの勝ちー!」 

苗木(なにこれ江ノ島さんすごく強いんだけど!? プリンの眠るやつ超使いこなしてるよ!?) 

江ノ島「次の対戦いってみよー!」 

苗木「くそっ、次こそは……!」 

Fight! 

江ノ島「ジャンプ! 下A! ほーむっらんー!」 

カキーン! 

苗木「」 

江ノ島「ふははは! まるでリンクがゴミのようだ!」 

苗木(うう……せめてアイテムさえあれば……) 

758: ◆3Exch9p5tM 2013/10/12(土) 00:29:34.56 ID:U1tpoFw0o

苗木「!」 

江ノ島「あちゃー、ハンマー苗木のほうに出たか」 

苗木「これで逆転だ!」 

江ノ島「ふふん、返り討ちにしてやるんだから!」 

苗木「あ、スター取れた」 

江ノ島「えっ」 

ドーン 

江ノ島「ふ、ふんっ! まぐれで調子に乗らないでよね……!」 

苗木「あれ? またスターがこっちに……」 

江ノ島「ええっ」 

ドーン 

江ノ島「やったな!? 2度もやった! てめーはあたしを怒らせたっ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」 

苗木「くっ……!」 

江ノ島「これでトドメ――――」 

苗木「あ、ハートのうつわだ。ラッキー」 

江ノ島「」 

苗木「またハンマーだ!」 

ドーン 

苗木「やった! 江ノ島さんに勝ったぞ!」 

苗木(1勝20敗だけどね……) 

759: ◆3Exch9p5tM 2013/10/12(土) 00:30:07.04 ID:U1tpoFw0o

江ノ島(えっなにこいつ『超高校級の幸運』が珍しく仕事してるんですけど) 

江ノ島「……」 

江ノ島「ふぇ……」 

江ノ島「苗木くんに負けました……絶望的です……」グスッ 

苗木「ええ!? で、でもそれまでは全部江ノ島さんが買ったじゃないか!」 

江ノ島「……」 

江ノ島「まあね! ふふんっ!」 

苗木「はは……」 

江ノ島「ねえ苗木ー、スマブラ飽きたー」 

苗木「えーっと、じゃあ次は何する?」 

江ノ島「うーん……」 

江ノ島「あ、あたしのんびりこたつ入ってたい」 

苗木「リビングにあるよ。行く?」 

江ノ島(あ、そっか。苗木の部屋から出なきゃいけないのか) 

江ノ島(……) 

江ノ島(…………) 

江ノ島(………………) 

苗木「江ノ島さん?」 

江ノ島「よっし。行こっか」 

江ノ島(苗木の部屋、しっかり記憶に焼き付けたし!) 

760: ◆3Exch9p5tM 2013/10/12(土) 00:30:47.41 ID:U1tpoFw0o

苗木家リビング 

江ノ島「はぁ~、絶望的に快適ぃ」 

苗木「それって快適なの?」 

江ノ島「快適すぎて他に何もする気になれないから絶望的なのー」 

江ノ島(苗木の家に来たらイケイケで攻めようかと思ってたけど……) 

江ノ島(……)チラッ 

苗木「やっぱりこたつにみかんは最高だねえ」モグモグ 

江ノ島(こういう、友達として一緒にいるのも楽しいなあ) 

江ノ島「ん、おいし」モキュモキュ 

苗木妹「あれ、お兄ちゃんと江ノ島さんここにいたんだ」 

江ノ島「あっ妹ちゃーん。こっちおいでー」 

苗木妹「いいんですか? じゃあお邪魔しまーす」 

江ノ島「なんかいいなあ、こういうの」 

苗木「江ノ島さんにはちょっと退屈なんじゃないの?」 

江ノ島「んー……」 

江ノ島「苗木と一緒だからかな。苗木となら、まったりしてるのも好きかもー」ニヘラ 

苗木「……そ、そっか」/// 

苗木妹「あーお兄ちゃん顔赤いよ」 

苗木「え!? いやほら、ちょっと暑くって!」 

苗木妹「へえ~」ニヤニヤ 

江ノ島「にっしっし」ニヤニヤ 

苗木(なんでこの2人こんな仲良くなってんの) 

761: ◆3Exch9p5tM 2013/10/12(土) 00:31:35.86 ID:U1tpoFw0o

江ノ島「……」 

江ノ島「やば、あたしちょっと眠くなってきたかも……」 

苗木妹「あ、私もです……」 

苗木「ええ? 風邪ひかないでよ?」 

江ノ島「だいじょーぶ……だいじょー……ぶ……」 

苗木妹「風邪ひいたら……お兄ちゃん看病して……ね……」 

江ノ島・苗木妹「……」zzz 

苗木「あのさ……」 

苗木「妹はともかく、江ノ島さんは男もいるってわかってて寝てるのかな……」 

苗木「ふわぁ……」 

苗木「あ、僕もつられて眠くなってきた……」 

苗木「なんか忘れてる気がするけど……」 

苗木「まあいいや……おやす……み……」zzz 

苗木(あ……そろそろ親帰ってくるんだった……江ノ島さんのこと説明するの……大変そうだな……)zzz 



苗木(結局、帰ってきた親に「誠くんがついに彼女を家に連れ込んだわ!!」とか騒がれて大変だった) 

苗木(江ノ島さんも寝ぼけて「お義母さま!?」とか言うから、もう本当に大変だった……) 

762: ◆3Exch9p5tM 2013/10/12(土) 00:34:39.64 ID:U1tpoFw0o
ここの妹様は苗木をからかおうとすると自滅するけど、素直になんか言うと苗木が顔真っ赤になります

773: ◆3Exch9p5tM 2013/10/14(月) 21:53:47.37 ID:yjDutIkqo

江ノ島「ん……」モゾ 

江ノ島「ふわぁ……いつの間に寝たんだっけ、あたし……」 

江ノ島「ここ教室……?」 

江ノ島「……」 

江ノ島「なんで誰もいないの?」 

江ノ島「とりあえず外に出るか……」 

ガラッ 

???「うわあ!」 

江ノ島「おっとごめ……ん……?」 

???「き、君もこの学園の入学生?」 

江ノ島「」 

江ノ島「ふ、不二咲……?」 

不二咲?「え? うん、僕はフジサキだけど……」 

江ノ島(待て待て待て、こいつが不二咲? いや体格おかしいよね?) 

江ノ島(なんで不二咲がこんな富士山みたいな巨体なのさ?) 

富士咲「僕は『超高校級のプログラマー』、富士咲千尋だよ!」 

江ノ島(あ、これ夢だ。じゃなきゃあの不二咲が、頭が天井につくくらいの巨体なわけがない) 

富士咲「とりあえず玄関ホールに行こうよ」 

江ノ島「これは夢……これは夢……」ブツブツ 

774: ◆3Exch9p5tM 2013/10/14(月) 21:54:20.34 ID:yjDutIkqo

玄関ホール 

??「むむ! 君達遅刻だぞ! 玄関ホールへは8時に集合だったはずだ!」 

江ノ島(……) 

江ノ島(パッと見はいつもと同じだけど……) 

江ノ島「あんた、石丸だよね……?」 

石丸「僕を知っているのか! そう、僕は石丸清鷹だ!」 

江ノ島(どことなくニュアンス違うような気がする……鷹……?) 

江ノ島「!」 

江ノ島「苗木!」 

苗木「ああ、江ノ島さん!」 

江ノ島「あれ? 苗木はあたしのことわかるの? 不二咲と石丸はわかんないみたいだったけど……」 

苗木「夢だからね。なんでもありだよ」 

江ノ島「へ?」 

苗木「あ、茄子食べる?」ブチィ 

江ノ島「」 

江ノ島(苗木がアホ毛を引きちぎったと思ったら茄子になってた。何を言ってるかわからねえと思うが夢ならしょうがないよね、うん夢だもん) 

775: ◆3Exch9p5tM 2013/10/14(月) 21:54:56.08 ID:yjDutIkqo

江ノ島「一富士二鷹三茄子、ね」 

江ノ島「なかなか縁起いい夢じゃん」 

江ノ島「……」 

江ノ島(けど、この状況……どことなく……) 

江ノ島(どことなく、更生前にぼんやり考えていたアレに、似ている……) 

????『ピンポンパンポーン』 

江ノ島「!」 

????『お前ら! 体育館に集合だよー!』 

江ノ島「……」 

苗木「ほら江ノ島さん、体育館行こう!」ギュッ 

江ノ島「へ!? な、なんで手を繋いでんの!?」/// 

苗木「え? 繋ぎたかったからだけど?」 

江ノ島「はああああ!?」/// 

苗木「ほら行くよ! あははは!」グイグイ 

江ノ島(ななななんでこんな積極的なのよ!? そりゃ悪い気はしないけどさ!)/// 

776: ◆3Exch9p5tM 2013/10/14(月) 21:55:59.61 ID:yjDutIkqo

体育館 

モノクマ「いろいろ省略するよ! だってもうすぐ目が覚めちゃうもん!」 

江ノ島「モノクマが動いてる!?」 

モノクマ「えー、君たち2人はこれから一生、この学園で生活してもらいます」 

江ノ島「あれ? いつの間にかあたしと苗木だけになってる……?」 

苗木「この夢にはいらない登場人物だからね」 

モノクマ「ここから出たければ……」 

江ノ島「……」 

江ノ島(苗木と殺し合いとかありえないっつーの) 

モノクマ「真実の愛で結ばれることだよ!」 

江ノ島「……は?」 

モノクマ「んじゃ、イチャイチャ学園生活スタートね! 君たちのあられもない姿はカメラで監視してるから! ばいばーい、うぷぷぷぷ!」 

江ノ島「は? なにこれ?」 

苗木「……」ジー 

江ノ島「な、苗木……?」 

苗木「江ノ島さん、僕とイチャイチャしてくれないか!」 

江ノ島「はああ!?」/// 

苗木「だってモノクマがそう言ってたじゃないか! 好きだ! 江ノ島さん!」 

江ノ島「ちょ、ちょっと」/// 

苗木「はぁ、はぁ、江ノ島さん!」 

江ノ島「ま、待ってまだ心の準備が!」/// 

苗木「江ノ島さん!」 

江ノ島「苗木ぃ!」/// 

モノクマ「はい、ここまでだよ!」 

777: ◆3Exch9p5tM 2013/10/14(月) 21:56:45.23 ID:yjDutIkqo

江ノ島「へ? あれ? 苗木いなくなってる……?」 

モノクマ「もうすぐ目が覚めるって言ったよね? この夢はここまでだよ!」 

江ノ島「はあああ!? お、お願い! もう少しでいいから続きを!!」 

モノクマ「うぷぷぷ! いいねえ、その絶望した顔! 最高に絶望的な表情だよ!」 

江ノ島「イチャイチャ学園生活しろって言ったじゃない!」 

モノクマ「あの時はあの時、今は今だよ。悲しいけれど、これ社会の常識なんだよね」 

江ノ島「そんな……そんな……」 

モノクマ「じゃ、まったねー!」 

江ノ島「絶望的いいぃぃ!!!」 

―――― 

―― 



ガバッ 

江ノ島「ハァ、ハァ……」 

江ノ島「な、なんつー夢を……」/// 

戦刃「あ、盾子ちゃんおはよー! あけましておめでとうだね!」 

江ノ島「……」 

江ノ島「あけおめぇ……」グスッ 

戦刃「なんで泣いてるの盾子ちゃん!? 怖い夢見たの!?」オロオロ 

【1月1日】 

787: ◆3Exch9p5tM 2013/10/16(水) 21:39:34.76 ID:iklkJ7V1o

1月3日 

学生寮・江ノ島の部屋 

戦刃「盾子ちゃん……苦しい……」 

江ノ島「軍人が何言ってんの。このくらいきつくしなきゃずり落ちるよ」ギュッ 

戦刃「振袖って大変なんだね……」ウッ… 

江ノ島「振袖じゃなくて小紋! ほんっと残念だな!」 

戦刃「わたし着物なんて着ないもん……」 

江ノ島「七五三のとき着てたじゃん。たぶん」 

戦刃「そうだっけ?」 

江ノ島「さあ?」 

戦刃「ぶーぶー、盾子ちゃんのいじわるー!」 

江ノ島「もうちょいきつく締めようか」ギュー 

戦刃「ひあっ!? ごめんなさいもうやめてー!」 

江ノ島「って、やっばい遅れちゃう! 急ぐよ!」 

戦刃「あっ待って盾子ちゃん!」 

戦刃「ていうか、初詣2人で行くんじゃなかったの? 誰かと待ち合わせ?」 

江ノ島「さあねー、それは後のお楽しみだよ。うぷぷっ」 

788: ◆3Exch9p5tM 2013/10/16(水) 21:40:30.89 ID:iklkJ7V1o

苗木家 

苗木「それじゃ、行ってきまーす」 

苗木妹「えっ、お兄ちゃんどこ行くの!?」 

苗木「友達と初詣行く約束してるんだよ」 

苗木妹「えええ!?」 

苗木妹(どうしよう江ノ島さんにお兄ちゃん確保しとくって約束しちゃったよ!?) 

苗木妹「ちょ、ちょっと待って! どの神社行くの!?」 

苗木「え? 毎年初詣で行ってるとこだけど」 

苗木妹「私も一緒に行くから! だから後1時間待って!」 

苗木「いやそんなに待ってたら約束の時間すぎちゃうし……」 

苗木妹「ううぅ……」 

苗木妹(どうしようどうしよう……) 

苗木妹「うぅ……」グスッ 

苗木「ちょ、泣かないでよ!? わかった、神社でお参りしないで待ってるから!」 

苗木妹「……ほんと?」 

苗木「うん、お参り一緒にしよう?」 

苗木妹「ありがとー! お兄ちゃん大好き!」ダキッ 

苗木「うわあ、くっつくなって!」/// 

苗木妹「えへへ、ちゃんと私たちのこと待っててね!」 

苗木「はいはい。じゃ、行ってきます」 

苗木妹「行ってらっしゃーい!」 

苗木(……私たち?) 

789: ◆3Exch9p5tM 2013/10/16(水) 21:41:35.57 ID:iklkJ7V1o

苗木妹「はぁ、一緒にお参りできるならそれでいいかな……?」 

苗木妹「むしろサプライズみたいになるし、私的にはよかったかも?」 

ピンポーン 

苗木妹「あっ来た! はいはーいちょっと待ってくださーい!」 

『あれ? 盾子ちゃん、表札に苗木くんと同じ名前が書いてあるよ?』 
『だってここ苗木ん家だもん』 
『ええええ!? 待って無理だよ緊張する帰っ、わわっ!?』コケッ 
『着物で走ろうとしたらそりゃこけるっつうの』 

苗木妹「どうぞー!」ガチャッ 

戦刃「ううぅ……あれ? 苗木くんじゃない……?」 

江ノ島「やっほー妹ちゃん」 

苗木妹「こんにちは江ノ島さん! うわあ、着物すっごい似合ってます! 綺麗です!」 

江ノ島「ありがと! 妹ちゃんまじいい子かわいい子!」スリスリ 

苗木妹「わわっ、えへへ」/// 

苗木妹「あっ、えっと、そちらで転んでるのがお姉さんですか?」 

江ノ島「うん、うちの残姉ちゃん」 

戦刃「うぅ……苗木くんの妹さん……?」 

江ノ島「そだよー」 

苗木妹「よろしくお願いしますね!」 

戦刃「うん、よろしくね!」 

苗木妹「お姉さんも着物似合ってますー!」 

戦刃「ほんと? ありがとー!」 

江ノ島「ねえねえ、そういえば苗木は?」 

苗木妹「お兄ちゃんは友達と初詣の約束があったみたいで……あっでもお参りしないで待っててくれるみたいですよ!」 

江ノ島「そっかそっか。んじゃ急いで着替えよっか」 

苗木妹「はい、よろしくお願いします!」 

790: ◆3Exch9p5tM 2013/10/16(水) 21:42:02.51 ID:iklkJ7V1o

苗木妹の部屋 

苗木妹「うわあ……!」 

戦刃「きれい!」 

苗木妹「こ、こんな綺麗な着物、いただいちゃっていいんですか……?」 

江ノ島「いいよー。仕事でもらったはいいけど、あたしの趣味じゃないから着る機会ないもん」 

江ノ島「それに妹ちゃんの方がこれ似合うしね」 

苗木妹「ありがとうございますっ!」 

江ノ島「にっしっし! あんまり待たせるのも悪いし、パパッと着付けやるよ!」 

苗木妹「はい!」 

791: ◆3Exch9p5tM 2013/10/16(水) 21:43:18.19 ID:iklkJ7V1o

神社 

苗木「うーん、ここで待ってるはずなんだけど……」 

??「なーえーぎーくんっ!」トンッ 

苗木「うわっ、ま、舞園さん……?」 

舞園「しーっ! せっかく髪縛って雰囲気変えてるんですから名前呼ばないでください!」 

苗木「あっごめん!」 

苗木(それにしても……) 

苗木(舞園さんの着物姿、可愛いな……) 

舞園「本当ですか! 可愛いですか!? ありがとうございます!」 

苗木「あれっ声出してた!?」 

舞園「いいえ、エスパーですから」ニコッ 

苗木「あはは……僕ってわかりやすいね……」 

苗木「でも本当に可愛いよ。似合ってる」 

舞園「……あ、ありがとうございます」/// 

舞園「お参り! お参り行きましょう!」/// 

苗木「それなんだけどさ……」 

舞園「?」 

苗木「妹が、一緒に行きたいから1時間ほど待っててほしいみたいなんだ……」 

舞園「妹さんですか? 私はいいですよ」 

苗木「本当? 助かるよ!」 

舞園「私、苗木くんの妹さんに会ってみたかったんですよ」 

舞園(好きな人の家族、ですもんね) 

792: ◆3Exch9p5tM 2013/10/16(水) 21:43:46.95 ID:iklkJ7V1o

学生寮 

??の部屋 

??「……!」 

???「どうかしましたか?」 

??「あの2人がSNSの検索に引っかかったわ」 

???「どれどれ……」 

???「断定できるほどの自信はないそうですけど」 

??「変装でもしてるんでしょう。下手したらスキャンダルになってしまうもの」 

???「それで? どちらを追いますの?」 

??「苗木くんの実家に近い方よ」 

???「そんなものいつの間に調べたんですか貴女は……」 

??「ふふん、探偵ですから」ドヤァ 

???「……」 

???「あら? どちらもその苗木くんの実家に近い場所で目撃されているようですが?」 

??「なんですって!? い、急ぐわよ!」 

???「はいはい」 

801: ◆3Exch9p5tM 2013/10/18(金) 20:42:49.68 ID:Q9QPqbrpo

苗木「そろそろ1時間経つかな?」 

舞園「ふふ、妹さんに会うの楽しみです」 

苗木妹「お兄ちゃーん! お待たせ!」 

苗木「あっ、来たみたい――――えっ?」 

苗木妹「着物、着てみたんだけど……どうかな……?」/// 

舞園「わあぁ! 可愛いですよ! ねっ、苗木くん!」 

苗木「う、うん! 似合ってるよ!」 

苗木妹「ほんと!?」 

苗木「ちょっとびっくりしたけどね……」 

江ノ島「やっほー!」 

戦刃「ひ、久しぶり苗木くんっ」 

苗木「ああ、1時間かかるってそういうことか……」 

江ノ島「ふふん、どうよ。妹ちゃんすっごい可愛くなったでしょ!」 

苗木「……そうだね」 

苗木妹(やった! えへへ!)/// 

苗木(妹にドキッとするなんて……僕、最低だ……) 

苗木「……江ノ島さんと戦刃さんも可愛いよ。似合ってる」 

戦刃「へうっ!?」/// 

江ノ島「にしし、当然でしょ!」 

江ノ島(やったー! 着物着てよかった!)/// 

802: ◆3Exch9p5tM 2013/10/18(金) 20:43:27.90 ID:Q9QPqbrpo

江ノ島「てか苗木の友達って舞園だったんだ」 

舞園「中学が同じでしたからね。家も近いんですよ」 

江ノ島「あー、そういや同中だったね。着物姿も相変わらず可愛いじゃん」 

舞園「ありがとうございます。江ノ島さんたちも似合ってますよ」 

江ノ島「ありがとねー」 

江ノ島「……」 

江ノ島「ねえ、もしかしてデートのお邪魔しちゃった……?」ヒソヒソ 

舞園「で、デートというわけでは……」ヒソヒソ 

江ノ島「舞園はデートのつもりで誘ったんでしょ?」ヒソヒソ 

舞園「……」 

江ノ島「……ごめん」 

舞園「わざと邪魔したわけじゃないんだからいいですよ。せっかくなんでみんなで楽しみましょう! ねっ!」 

江ノ島(この子、天使だわ) 

803: ◆3Exch9p5tM 2013/10/18(金) 20:44:00.35 ID:Q9QPqbrpo

苗木妹「あの……舞園さん、というんですか……?」 

舞園「はい、そうですよ」 

苗木妹「も、もしかして、あのアイドルの……?」 

舞園「はい。バレると面倒なんで、外ではあまり名前を呼ばないでくれると助かります」 

苗木妹(江ノ島さんといい舞園さんといい、お兄ちゃんの交友関係どうなってんの!?) 

苗木妹(ていうか2人で初詣って彼女!? 今度こそ彼女なの!?) 

舞園「まだ彼女ではないですよ」 

苗木妹「あれ!? 私声に出してました!?」 

舞園「私、エスパーなんです」 

苗木妹「えっ!?」 

舞園「ふふ、冗談です。ただの勘ですよ」 

江ノ島「あー、それ最初は驚くよね」 

苗木妹「お、驚きました……」 

苗木妹(本当にエスパーだったら私がお兄ちゃん好きなことバレちゃうとこだった……江ノ島さんにはもうバレてるけど……)ドキドキ 

舞園「私としては江ノ島さんたちが苗木くんの妹さんと知り合いだったことに驚きなんですけどね……」 

江ノ島「ああ、この前ちょっと苗木の家行ったときに仲良くなってね」 

舞園「へえ……」 

舞園「……」 

舞園「苗木くんの家に!? わ、私だって行ったことないのに!」 

苗木妹(あれ? 『まだ』彼女ではない? あれ?) 

戦刃「着物にあってる……かわいい……えへへ……」 

苗木「ねえ、お参り行かないの? ねえ!」 

804: ◆3Exch9p5tM 2013/10/18(金) 20:44:37.95 ID:Q9QPqbrpo

「なあ、あれ江ノ島盾子に似てね?」 
「それを言うならあっち舞園さやかに似てないか?」 
「こんな特に大きくもない普通の神社にそんな有名人が2人もいるわけないだろ、夢見すぎだ」 
「それもそっか。でもあの女の子4人に囲まれた男は爆発すればいいと思うの」 
「誰かの弟だろ」 
「舞園さやかに似てる女の子とすれ違ったなう、っと」 

苗木「……」 

苗木「案外2人とも、似てるって思われるくらいなんだね」 

江ノ島「人間なんてそんなもんだよ。他人に興味ないからね」 

舞園「まあ、私たちは特に普段のイメージがしっかりしすぎていますから」 

江ノ島「でも苗木が弟扱いされるのは変わらないんだね」ニヤニヤ 

苗木「……」ズーン 

苗木妹「こ、これから伸びるよお兄ちゃん!」 

戦刃「うん! もう高校生だけどまだ伸びるよたぶん!」 

苗木「……」ズゥーン… 

江ノ島「これだからお姉ちゃんは残念なんだよ!!」 

戦刃「ご、ごめんなさいっ!」 

舞園「あ、そろそろお参りの順番回ってきますよ!」 

805: ◆3Exch9p5tM 2013/10/18(金) 20:45:12.01 ID:Q9QPqbrpo

苗木妹「あれっ財布忘れた!? お兄ちゃんお金貸して!」 

苗木「はいはい」 

戦刃「あっわたしもない!?」 

苗木「はい、戦刃さん」 

江ノ島「あたしもないや」 

苗木「えええ!?」 

江ノ島「嘘だけどね。ちなみにお姉ちゃんの財布は転んだときに拾ったよん」 

戦刃「あった! 盾子ちゃんありがうぅ……」 

舞園「ほら行きますよ!」 


チャリン 

ガランガラン 

パン、パン 


苗木妹(お兄ちゃんがたくさん戻ってきてたくさん一緒にいれますように!) 

戦刃(盾子ちゃんがみんなと仲良く笑っていられますように) 

江ノ島(苗木を振り向かせられますように……!) 

舞園(もっとアイドルとしての実力をつけて、苗木くんとの交際が認められますように……) 

苗木(……) 

苗木(今年も1年、みんなで……みんなで、楽しく過ごせますように……) 

苗木(せめて、今の江ノ島さんが……笑って……) 

舞園「苗木くん、後ろもつかえてるので行きましょう」 

苗木「……うん」 

江ノ島「よーし次はおみくじだー!」 

戦刃「おみくじだーっ!」 

―――― 

―― 

806: ◆3Exch9p5tM 2013/10/18(金) 20:45:44.58 ID:Q9QPqbrpo

江ノ島「……」 

【凶】 
【恋愛:心を入れ替えよ】 

江ノ島「1回更生してんのにどうしろっていうのよ……」ズーン 

舞園「更生したから大丈夫、とも読めますけど」 

江ノ島「うーん……」 

江ノ島(そのうち葉隠に恋愛運とか占ってもらおうかな……) 

江ノ島「舞園は?」 

舞園「小吉でした。恋愛は、【まずは仕事に励め】とのことです」 

江ノ島「当たってんね。つまりあたしのも当たって……ふふ、あはは、すこーし絶望的だわ……」 

江ノ島「だがしかし!」 

江ノ島「この程度で私様を絶望させられると思うたか! こんなおみくじ括り付けてくれるわー!」フハハハ 

戦刃「盾子ちゃんみてみてー! わたし大吉だった!」 

江ノ島「お姉ちゃんと私との差っていったい……絶望的です……」グスン 

舞園「ああもう! ほら括りに行きますよ!」 

苗木妹「お兄ちゃんはどうだったの?」 

苗木「そういうお前は?」 

苗木妹「中吉だったよ。【主役になれるかも】だって!」 

苗木「へえー」 

苗木妹「で、お兄ちゃんは?」 

苗木「……末吉」 

苗木妹(び、微妙……『超高校級の幸運』なのに……) 

807: ◆3Exch9p5tM 2013/10/18(金) 20:46:18.25 ID:Q9QPqbrpo

苗木「さて、そろそろ帰ろうか」 

舞園「私、苗木くんの家に行ってみたいです!」 

江ノ島「おっいいねー!」 

苗木妹「わぁ! 是非どうぞ!」 

苗木「そんないきなり!?」 

ドンッ 

苗木「あ、ごめんなさ―――」 

???「あ、あら奇遇ですわね」 

??「偶然苗木くんに出会うなんて、これは運命というやつかしら?」 

苗木「え? セレスさんと霧切さん……?」 

霧切「わざわざ学校から離れた神社に来たのに。ああ、苗木くんの幸運のおかげね」 

セレス「私たち、初詣に来たのですけどご一緒にいかがですか?」ニコッ 

苗木「ええ?」 

江ノ島「いや、もう帰るとこなんだけど」 

霧切「えっ」 

セレス「えっ」 

苗木「あはは……また学校でね!」 

霧切「」 

セレス「」 

816: ◆3Exch9p5tM 2013/10/20(日) 21:23:28.13 ID:WzocSkdeo

am 6:00 

江ノ島「うぅ~ん」モゾ 

江ノ島「……」 

江ノ島「さっむ……」ブルッ 

江ノ島「なにこれ寒すぎ……」 

江ノ島「外もまだ暗いじゃん……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「雪降ってる!!?」 

江ノ島「ひゃっはー! お姉ちゃーん雪降って――――」 

江ノ島「……」 

江ノ島「少しだけ。少しだけ苗木と2人で遊ぼ」 

江ノ島「別に誘わなくてもみんな勝手に起きてくるだろうしね。うん!」 


prrrrr, prrrrr! 

苗木「ふぁい……もしもし……」 

苗木「雪……?」 

苗木「えぇ……今から……?」 

苗木「5分で出て来い……?」 

苗木「はい……はい……頑張る……」 

苗木「うぅ……」モゾモゾ 

817: ◆3Exch9p5tM 2013/10/20(日) 21:26:10.37 ID:WzocSkdeo

グラウンド 

江ノ島「おっはよー苗木!」 

苗木「おはよ……まだ暗い……」 

江ノ島「そのうち明るくなるって」 

苗木「そういう問題……?」 

苗木「にしても、うーん。結構積もってるね」 

江ノ島「でしょでしょ!」 

苗木「他のみんなは?」 

江ノ島「誘ってないよー」 

苗木「えっ、僕らだけ?」 

江ノ島「苗木くんは私と2人になるのが嫌なんですね……悲しいです……」 

苗木「そ、そういうわけじゃないよ!」 

江ノ島「みんなが起きてくる前に雪ですごい物を作るのだ!」 

苗木「へえ。何作るの?」 

江ノ島「えっ?」 

苗木「えっ?」 

江ノ島「……」 

苗木「何も考えてなかったわけね」 

江ノ島「ごめん……」 

苗木「とりあえず雪だるまでも作ろうか?」 

江ノ島「うんっ!」 

苗木「じゃあ僕が下の玉作るから、上お願いね」 

江ノ島「違うんだよなあ……そうじゃないんだ……」チッチッチ 

苗木「へ?」 

江ノ島「うぷぷぷ。どっちがすごい雪だるま作るか勝負だよ、苗木くん! おっさきー!」ダッ 

苗木「え、江ノ島さん!?」 

苗木「行っちゃった……雪だるまで勝負ってどうするんだろ……」 

―――― 

―― 

818: ◆3Exch9p5tM 2013/10/20(日) 21:27:27.30 ID:WzocSkdeo

江ノ島「ふふん、雪だるま勝負は私様の勝ちだな!」 


【オーガ雪像】 


苗木(……) 

苗木(えっ? これ雪だるまじゃなくて雪像じゃない?) 

苗木(大神さんの雪像だよね? 無駄にクオリティ高いよ江ノ島さん!?) 

江ノ島「このぎりぎりのバランスで成り立つ芸術性! ちょっと風が吹いたら倒れそうなドキドキ感がたまらないわああ!」 

苗木「確かに、足らへんが折れちゃいそうだね」 

ヒュオオオ… 

江ノ島「風つめたっ」 

ポキッ 

苗木「あっ」 

グシャア 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「ふ、ふふ……」 

江ノ島「本当に倒れちまいやがった! 倒れるかもしれないと予測できていたのに防げなかったこの悲劇! はああぁん絶望的いいぃぃい!!」 

江ノ島「ううぅ……せっかく作ったのにぃ……みんなを驚かせたかったのにぃ……」グスッ 

苗木「他の作ろう、ねっ! まだ時間あるから!」 

江ノ島「うん……」 

苗木「何か作りたいのある?」 

江ノ島「かまくら作るぅ……」 

819: ◆3Exch9p5tM 2013/10/20(日) 21:29:22.01 ID:WzocSkdeo

苗木「そういえば……」ヨイショ 

苗木「かまくら作るのって、初めてだ」ペタペタ 

江ノ島「あー。あたしも作ったことないや」 

江ノ島「なかなか雪積もらないもんね、ここらへん」 

苗木「はは、じゃあお互い初めてだね」 

江ノ島「お互いに……初めて……」 

江ノ島「……」/// 

苗木「江ノ島さん? どうかした?」 

江ノ島「なんでもない! どうもしてない!」/// 

苗木「?」 

江ノ島「ほら、みんなが起きる前に完成させるよ!」 

苗木「うん!」 

江ノ島(このサイズだと、2人入ったらぎゅうぎゅうになっちゃうかな……) 

江ノ島(苗木と密着しちゃったりして……) 

江ノ島(……) 

江ノ島(よし頑張るぞー!) 

821: ◆3Exch9p5tM 2013/10/20(日) 21:31:20.39 ID:WzocSkdeo

苗木「で、できたあ……」 

江ノ島「な、なかなか疲れたね……」 

苗木「そうだね。すごい汗かいたよ」 

ヒュウゥ… 

江ノ島「うわっ、動かなくなった途端さむっ!」 

苗木「中入ろうか」 

江ノ島「うん!」 

苗木「よいしょ……」 

江ノ島「んしょ……」 

苗木「んん……」 

江ノ島「苗木、もうちょい詰めて」 

苗木「これ以上は無理……かな……」 

江ノ島(思ったよりも狭かった!) 

江ノ島(そして予想外に苗木と密着してる! 完全に密着してるよねこれ!?)/// 

苗木「あはは、お、思ったより狭いね……」/// 

江ノ島「う、うん……」/// 

苗木「……」 

江ノ島「……」 

苗木「あったかいね」 

江ノ島「ん。あったかい」 

苗木「ふふっ」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「……」コトン 

苗木「え、江ノ島さん!?」 

江ノ島「早起きしたから絶望的に眠い……肩貸して……」 

苗木「う、うん……」 

苗木(うぅ……意識するな……意識するな……)/// 

江ノ島(えへへ、あったかいや)/// 

―――― 

―― 

823: ◆3Exch9p5tM 2013/10/20(日) 21:35:57.81 ID:WzocSkdeo

ベシャッ 

戦刃「わわあ!?」 

桑田「はっはっは! 勝てる! 雪合戦なら戦刃ちゃんにも大神にも勝てるぜ!!」 

戦刃「ううぅ……冷たいよぉ……」 

桑田「雪合戦してるときは戦場にいるのと同じだぜ戦刃ちゃん! 油断大敵だ!」 

戦刃「……戦場?」ピクッ 

桑田「そりゃ! どんどんいくぜ!」シュババッ 

戦刃「……」スゥ… 

ズババッ 

桑田「」 

戦刃「ふぅ……」 

桑田「アポ?」 

不二咲「桑田くんが投げた雪玉を全部斬った!? あれは……バタフライナイフだ!」 

戦刃「戦場なら……わたし負けないよ……?」 

桑田「ひいっ!?」 

ギャアー! 



セレス「それにしても……」 

セレス「早起きしてかまくら作るなんて、貴女は子供ですか」 

江ノ島「そのかまくらに入りながら言ってもねえ」 

セレス「入れと言ったのは貴女でしょう?」 

江ノ島「暖かいっしょ!」 

セレス「ええ、まあ……」 

江ノ島「へへっ」 

セレス「ですが、2人で入るとかなり狭いですわね」ギュウ 

江ノ島「そだね。作ってみたら思ったより小さかったかも」ギュウギュウ 

セレス「……」 

セレス「苗木くんと密着した感想はいかがでした?」 

江ノ島「なあっ!?」/// 

セレス「あら。一緒に入ったのでしょう?」 

江ノ島「うぅ……」 

江ノ島「あ、あったかかったぁ……」/// 

セレス(私も何か理由をつけて苗木くんと入ることにしましょうか……) 

829: ◆3Exch9p5tM 2013/10/21(月) 22:45:08.08 ID:VEGF37JGo

1月11日 

放課後の教室 

戦刃「盾子ちゃんのバカー!」 

江ノ島「お姉ちゃんのわからずや!」 

戦刃「もう知らない!」ダッ 

ドン 

苗木「うわっ!?」 

苗木「戦刃さん……?」 

江ノ島「ふん! 残姉ちゃんってばまじわかってないんだから!」 

苗木「江ノ島さん、戦刃さんと何かあった……?」 

江ノ島「別にっ」プイ 

苗木(ええぇ……) 

江ノ島「あたし帰る!」 

苗木「ちょ、ちょっと江ノ島さん!」 

苗木「はぁ……」 

苗木「珍しいな、戦刃さんが江ノ島さんに怒るなんて……ちょっと様子見てくるか……」 

830: ◆3Exch9p5tM 2013/10/21(月) 22:45:34.64 ID:VEGF37JGo

学生寮・戦刃の部屋 

苗木「えっと……」 

戦刃「……」 

苗木「江ノ島さんと、その……何かあったの……?」 

戦刃「……盾子ちゃんが悪いんだもん」 

苗木「な、なんで?」 

戦刃「だって盾子ちゃん、せっかくの鏡開きなのにぜんざい作るって言うんだよ!?」 

苗木「……へ? ぜんざい?」 

戦刃「そう!」 

苗木「ぜんざいって、お餅と餡子で作るあのぜんざい?」 

戦刃「うん! ありえないよ、お餅はお雑煮が一番おいしいって決まってるのに!!」 

苗木「」 

戦刃「ね! 苗木くんもそう思うよね!?」 

苗木「え、鏡開きの餅で何作るかで喧嘩してたの?」 

戦刃「そうだよ?」 

苗木「……」 

苗木「ちょっと江ノ島さんの部屋行ってくるね……」 

戦刃「盾子ちゃんによーく言い聞かせてね!」 

苗木「あはは……」 

831: ◆3Exch9p5tM 2013/10/21(月) 22:46:02.26 ID:VEGF37JGo

江ノ島の部屋 

苗木「……」 

江ノ島「……」ズーン 

苗木「あの、江ノ島さん……」 

江ノ島「あのお姉ちゃんがあそこまで怒るなんて……絶対嫌われました……絶望的だよぅ……」グスン 

苗木「えっと、たかかがお餅でそこまで……」 

江ノ島「たかが!? 餅はぜんざいに決まってるでしょ!! これだけは絶対譲れないんだから!」 

苗木「えぇ……」 

江ノ島「甘い方が美味しいに決まってるじゃん!」 

苗木「でも妥協しないと戦刃さんと仲直りできないよ?」 

江ノ島「ぜんざいを取るか……お姉ちゃんを取るか……絶望的に迷います……」 

苗木「迷うんだ!?」 

江ノ島「苗木ぃ……ぜんざい食べたいしお姉ちゃんとも仲直りしたいよぅ……」ウルウル 

苗木「えっと……」 

苗木「……」 

苗木「ぜんざいと雑煮、両方作るっていうのはダメなの?」 

江ノ島「……へっ?」 

苗木(あ、その発想はなかったって顔してる) 

832: ◆3Exch9p5tM 2013/10/21(月) 22:46:42.40 ID:VEGF37JGo

1時間後・食堂 

江ノ島「う~ん、ぜんざい甘くておいしぃ~!」 

戦刃「お雑煮おいしい!」 

江ノ島「あ、雑煮ちょっとちょーだい」 

戦刃「いいよ!」 

江ノ島「んっ、はむ……雑煮も美味しいじゃん!」 

戦刃「でしょでしょ!」 

戦刃「ぜんざいも一口ちょうだいっ」 

江ノ島「はいはーい」 

戦刃「あむ……」 

戦刃「おいしい!」 

江ノ島「でしょー!」 

戦刃「お餅と甘いのも合うねえ」 

江ノ島「雑煮もなかなかだったよ」 

苗木「はは、仲直りできてよかったね」 

戦刃「うんっ!」 

江ノ島「そういえばさ、苗木は餅だと何で食べるのが好きなの?」 

苗木「えっ、僕?」 

苗木「うーん。僕は焼き餅かな」 

江ノ島「えっ……」 

戦刃「ちょっとそれは……」 

江ノ島「いくらなんでも……」 

苗木「ええ!?」 

839: ◆3Exch9p5tM 2013/10/24(木) 21:42:50.71 ID:jP6uCxKvo

1/21 

放課後・教室 

キーンコーンカーンコーン 

江ノ島「苗木ー、これから暇?」 

苗木「え? まあ予定はないけど……」 

江ノ島「じゃあさじゃあさ! デート行こ!」 

舞霧セ「」ガタッ 

苗木「どこか行きたいとこでもあるの?」 

江ノ島「うぷぷぷ~。事務所にこれ貰ったんだよねっ」ピラッ 

苗木「えっと……お化け屋敷招待券……?」 

江ノ島「そう、来週オープンするお化け屋敷の先行体験チケット! 行こうよ行こうよー!」 

苗木「この時期にお化け屋敷? 普通は夏じゃない?」 

江ノ島「なんかさー、屋内でできるアトラクションだから実は冬に向いてるんじゃないかってさ」 

苗木「へえ……」 

苗木「そのお化け屋敷、すごく怖かったりしないよね?」 

江ノ島「さあねー」ニヤニヤ 

苗木「うわあ……」 

江ノ島「ほんとは残姉ちゃんと行こうと思ったんだけどねー。怖いの無理って言うから」 

苗木「僕もそういうの得意ではないんだけど……」 

江ノ島「で、行くの? 行かないの?」 

苗木「行くよ。特に予定はなかったし、お化け屋敷なんて小学生以来だから結構楽しめそうだしね」 

江ノ島「やったー!」 

霧切「……」 

霧切「……尾行するわよ」 

セレス「ですが、先行体験ということですし招待券がない私達は中に入れませんよ?」 

霧切「くっ……!」 

舞園「まあまあ。来月は苗木くんの誕生日ですし、そこで挽回しましょうよ」 

840: ◆3Exch9p5tM 2013/10/24(木) 21:43:37.57 ID:jP6uCxKvo

お化け屋敷前 

受付「本日は招待券を持っている方のみのご案内となっておりまーす」 

苗木「ここか……『超絶望ハイスクール』……?」 

江ノ島「廃校になった高校をモチーフにしたお化け屋敷らしいよ」 

苗木「外から見るとわりと普通だね。ちょっと荒れてるけど」 

江ノ島「あっでも窓全部塞いであるよ」 

苗木「えっ、じゃあ中は真っ暗なの?」 

受付「はい、そうですよ。非常灯と懐中電灯で進んでいただくことになります」 

苗木「へえ、怖そうですね……」 

江ノ島「これチケットでーす」 

受付「はい! ではこちらの懐中電灯と、予備の電池をどうぞ。それではあちらから、矢印に沿ってお進みください」 

江ノ島「どうもー」 

苗木「うわあ、緊張するなあ……」 

江ノ島「だいじょーぶ、だいじょーぶ! 泣いちゃっても皆には黙っててあげるからさ!」 

苗木「さ、さすがに泣きはしないよ!」 

苗木(たぶん……) 

受付「……」 

受付「カップルか……」 

受付「ていうか希望ヶ峰の制服だったよな。こんなとこで何やってんだろうな、俺……」ハァ… 

841: ◆3Exch9p5tM 2013/10/24(木) 21:45:01.71 ID:jP6uCxKvo

苗木「ん? 『この部屋で懐中電灯の準備をしてお待ちください』だって」 

江ノ島「はい、苗木の懐中電灯だよ」 

苗木「ありがと」 

江ノ島「説明とかあるのかな?」 

苗木「いよいよかあ……」 



フッ… 



苗木「わっ、電気消えた!?」 

ドンッ 

江ノ島「きゃっ!」 

江ノ島「もう、苗木ってば動揺しすぎでしょー」ケラケラ 

苗木「と、とりあえず懐中電灯点けないと……」 

苗木(あれ? 江ノ島さん、僕とぶつかったと思ってる?) 

苗木(僕は何にもぶつかってないのに……?) 

カチッ 

パッ 

江ノ島「ん、明かりありがt――――」 



女の子「う……あ゙ぁ……」 



苗木「うわあああっ!?」ビクッ 

江ノ島「」 

苗木(さっき江ノ島さんにぶつかったのは……) 

苗木(いつの間にか天井から吊るされていた、制服を着た女の子の……) 

苗木(……蠢く死体だった) 

842: ◆3Exch9p5tM 2013/10/24(木) 21:46:16.72 ID:jP6uCxKvo

苗木「電気消えたときに上から落とされたのか……うわ、左腕ないし……」 

苗木「こ、これはビックリしたね……」 

苗木「……」 

苗木「江ノ島さん?」 

江ノ島「ううぅ……」ビクビク 

苗木「……」 

苗木(気がついたら江ノ島さんが僕の後ろに隠れて怯えてるんだけど) 

苗木「えっ、江ノ島さんってこういうの大丈夫なんじゃなかったの?」 

江ノ島「よく考えたら更生前にホラーを楽しんでたのは怖さに絶望を感じていたからだった気がします……今は普通に怖いんですけど……」 

苗木(ええええ!?) 

苗木「えと、とりあえず進む……? 電気消えてる間にドアも開いたみたいだし」 

江ノ島「もっちろん! こ、これくらい余裕だっつうの!?」 

苗木「はは……」 

苗木(怖いの僕だけじゃなくてよかった……。まあ、こういうのは怖がった方が楽しめるしね) 

ギュッ 

苗木「江ノ島さん!?」 

江ノ島「……」 

江ノ島「怖いから……手、繋いでてよ……」/// 

苗木「う、うん……」/// 

女の子(死体役の前でイチャついてんじゃねーよ! 爆発しろ! 泣きわめいて破局しろ!!) 

850: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 00:32:50.45 ID:K/grKBBmo

苗木「塞がれてた窓って、鉄板が打ち付けられてたんだね。まったく光漏れてこないや」 

江ノ島「ちょっと苗木! 前! ちゃんと前照らしててよ!?」 

苗木「おっと、ごめんごめん」 

苗木「って、江ノ島さんも懐中電灯持ってるじゃん」 

江ノ島「明るいに越したことないでしょー!」 

苗木「ふふっ」 

江ノ島「な、なによっ」 

苗木「いやあ、怖がってる江ノ島さんて新鮮だなって思って」 

江ノ島「……」 

江ノ島「べ、別に怖くなんてないしー?」 

苗木「じゃあ手は離しても大丈夫?」 

江ノ島「それはダメー!」 


ガタタッ 


苗木「!」 

苗木「今の音、聞こえた……?」 

江ノ島「この教室から、だよね……」 

苗木「じゃあ入ろうか」 

江ノ島「やめとこ」 

苗木「え?」 

江ノ島「迂回しよ!」 

苗木「いや、廊下はここで塞がれてるし……」 

江ノ島「よじ登れば向こう側行けそうじゃない?」 

苗木「いやいやいや! 僕が先に入るから、ね?」 

江ノ島「うん……」 

苗木「よし」 


ガラッ… 


苗木「ひっ!?」 

江ノ島「なに!? なんなの!?」 

苗木「だ、大丈夫……人形みたい……」 

苗木「全部の座席に、人形が座らされてる……」 

851: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 00:33:48.75 ID:K/grKBBmo

江ノ島「……」チラッ 

江ノ島「ほんとだ、ただの人形だね……」ホッ… 

苗木「後ろのドアから廊下の向こう側に出れそうだね」 

江ノ島「は、早く行こうよ!」 

苗木「はいはい」 

苗木「……あ、黒板に何か書いてあるよ」 


『 返 し て 』 


苗木「返して? 何を……?」 

江ノ島「……」 

江ノ島「ね、ねえ……苗木……」 

苗木「ん?」 

江ノ島「この人形、どれも左腕がない……」 

苗木「ほ、ほんとだ……」 

江ノ島「気味悪いよ……早く出ようよぉ……」ウルウル 

苗木「そうだね……」 


カツ カツ 


苗木(もうすぐドアだ……) 

江ノ島「ふぅ……」 

苗木(あれ? 教室から聞こえてきた音って結局なんだったんだ?) 

江ノ島「ドア開けるよ!」 

苗木「ねえ、さっきの音って――――」 


男子生徒「うああ゙あ゙ああ!!!!」ガシッ 


江ノ島「いやあああああああ!!?」 

苗木「うわああああああ!!?」 

852: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 00:35:16.37 ID:K/grKBBmo

苗木(最後列の、ドアに一番近い席に座ってたのは人形じゃなかった) 

苗木(叫び声をあげながら、ドアを開けようとした江ノ島さんの手首を掴んで……) 

苗木「だ、大丈夫……?」 

江ノ島「だいじょばない……もう無理……絶望的に怖い……」ガクガクブルブル 

苗木(江ノ島さん、廊下に出てうずくまっちゃった……) 

苗木(腕を掴まれたのが僕だったら、僕がこうなってたかもなあ) 

江ノ島「ううぅ……」 

苗木「ほら、がんばろ?」ギュッ 

江ノ島「……」 

江ノ島「うん……」グスン 

江ノ島(苗木の方から手を繋いでくれた……) 

江ノ島「……絶対リタイアしないから」 

苗木「うん」 


テクテク 


江ノ島「あ、階段だ」 

苗木「2階に上がるのか……」 

江ノ島「何も飛び出してこないよね……」 

苗木「……」 

江ノ島「……」ビクビク 

苗木「2階到着っと。何もなかったね」 

苗木「あ、次の教室、中から光が漏れてるよ」 

江ノ島「あんまり怖くなさそうだね! 行こっ!」 

苗木「あっ待ってよ江ノ島さん!」 


ガララッ 


江ノ島「図書室……だよね……?」 

苗木「そうみたいだね」 

江ノ島「ん? 机にコーヒーが置いてあるんだけど」 

苗木「誰かがさっきまでいたってことかな?」 

江ノ島「……」 

苗木「江ノ島さん?」 

江ノ島「なんでそう怖くなるようなこと言うの!?」 

苗木「えええ!?」 

853: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 00:36:06.27 ID:K/grKBBmo

江ノ島「よし、次行こう。さっさと進もう」 

苗木「うん」ガタッ 

苗木「あれ?」 

江ノ島「どしたの?」 

苗木「このドア、開かないんだけど……」 

江ノ島「え?」 


バサバサッ 


江ノ島「本棚から本が落ち……ひいっ!?」ビクッ 

苗木「ひ、左腕だ! しかもたくさん!?」ゾクッ 

苗木(切り取られた左腕がなんでここに? 本の後ろに隠してあったのか?) 

苗木「こ、これでここのは終わりかな……?」 

江ノ島「このドアが開かないとなると……次はあっちのドアか……」 

苗木「閉架書庫みたいだね。開けるよ?」 

江ノ島「うぅ……」 


ギィ… 


江ノ島「こっちは明かり点いてない……」 

苗木「結構広いね……」 

江ノ島「よし、行くよ」 

苗木「うん」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

苗木「な、なんだか本棚の間から何か飛び出してきそうだね」 

江ノ島「……やっぱ苗木先に行って」 

苗木(僕も怖いんだけどなあ……) 

苗木(ていうか江ノ島さん、手を繋ぐどころか腕に抱きついてるの気づいてるのかな)/// 

854: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 00:37:35.49 ID:K/grKBBmo


「――、――――」 


苗木「……」 

苗木「今の聞こえた?」 

江ノ島「うん。話し声、だよね……?」 


「――――!」 


苗木「この書庫の出口、あの声の方なんだろうなあ……」 

江ノ島「だよね……」 

苗木(少しすると、話している人たちに近づいたのか、ぼんやりと会話が聞き取れるようになってきた) 


「あ――君――――に綺麗だよ……僕とずっと――――てくれ――?」 


江ノ島「他の参加者……じゃないよねえ……」 

苗木(2人いるみたいだけど、片方の声しか聞こえないな) 


「――かい!? 僕――んて幸せ者なんだろう! いや、君のこと――――幸せにしてみせるよ!」 


苗木「いた……」 

苗木(出口のドアの隣に、人影がうずくまっていた。誰かと会話していたようだけど、傍には誰もいない) 

苗木(僕らはもう1人を探そうと懐中電灯を横に向けようとした。その時――――) 


フッ… 


江ノ島「えっ!? なんで懐中電灯消えてんの!?」ビクッ 

苗木「こんな時に電池切れ!?」 

855: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 00:39:02.99 ID:K/grKBBmo


「おや? 誰かいるのかい?」 


苗木(突然明かりが消えたせいで僕らの目は暗闇に順応していない。うずくまっていた男が立ち上がったようだけど、姿は全く見えなかった。やけにゆっくりと足音が近づいてくる) 

江ノ島「ひいぃ……」グスッ 

苗木(江ノ島さんは半泣きみたいだ。僕もわりと泣きそうだけど) 


「もしかして、告白するの聞かれてたかな?」 

「はは、ちょっと恥ずかしいね」 

「見てよ、付き合い始めたばかり彼女なんだ」 

「……明かり、点けてくれるかい?」 


苗木(そう言って男は、右手に持ったランタンに、左手で小さな火を灯した) 

江ノ島「」 

苗木(青白い肌。見開かれた目。幽霊のような白い髪。僅かな光が、男の顔を中途半端に照らす) 

苗木(その男が嬉しそうに彼女を紹介してくる) 

苗木(本当に嬉しそうに、左腕に頬擦りしている) 

苗木(本来その男の左腕があったであろう所には、可愛らしいマニキュアが塗られた女の子の腕が縫い付けられていた) 

江ノ島「いやああああああああああああああ!!!!!!???」 

苗木「うわああああああああああああ!!!!!??」 



「走っちゃ危ないよー」 

「って、もう聞こえないか……」 

「まさかあんなタイミングで2人とも懐中電灯の電池が切れるとはね。なんて『不運』な人たちだろう」 

「いや、結果としていい演出になったし、やっぱり僕にとっては『幸運』だったかな」 

「この恐怖を乗り越えて、彼らの『希望』が輝くといいなあ!」 

「あはは。日向くんにアルバイト誘ってもらってよかったよ」 

「……なんだか苗木くんに似た声だった気がするけど、さすがに気のせいかな」 

―――― 

―― 

856: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 00:39:39.12 ID:K/grKBBmo

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「クリアできたね……」 

苗木「なんとかね……」 

江ノ島「絶望的に怖かったです……絶対今日の夜あたり夢に出ます……」 

苗木「……」 


「見てあれー!」 
「きゃーラブラブ!」 
「初々しいねえ」 
「爆発しろ!」 


苗木「江ノ島さん、その……人が見てるとこで抱きつくのはちょっと……」 

江ノ島「むりぃ……お願いだからもうしばらくこのままでいて……」グスン 

苗木「はは……」 

苗木「……」 

苗木「ねえ」 

苗木「すごい怖がってたけど、楽しめた?」 

江ノ島「……うん」 

江ノ島「そりゃ怖かったけど……」 

江ノ島「苗木と一緒なら、何してても楽しいし……」 

苗木「そうなの?」 

江ノ島「だ、だって好きだもん」 

苗木「……」 

江ノ島「……」 

苗木「そっか……」/// 

江ノ島「うん……」/// 


日向(終わったらさっさと帰ってくんねーかな……なんで受付の目の前でイチャついてんだよ……) 

865: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 18:10:45.51 ID:K/grKBBmo

am 2:00 

苗木「……」 

苗木「……」 

苗木「どうしよう、眠れない」 

苗木「お化け屋敷けっこう怖かったなあ」 

苗木「あのタイミングで2人して同時に電池切れって……」 

苗木「……」 

苗木「はぁ……」 

コン… 

苗木「」ビクッ 

苗木(な、なんだ今の音……?) 

コン、コン… 

苗木「……!」 

苗木「ドア……ノックされてる……?」 

コンコンコンッ 

苗木「こんな時間に誰か来るわけ……ないよな……」 

苗木「もし来るなら電話なりメールなりしてくるだろうし」 

苗木「……」ゴクリ 

ドンドンッ 

苗木「ひっ!?」 

ドンドンドンッ! 

苗木「あ……うわ……」 

『ねえ……開けてよ……』ドンドン 

苗木「聞こえない……僕には何も聞こえないぞ……」 

『開けてよ……!』ドンドンドン! 

苗木「聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない……」 

『開けてよぉ……苗木ぃ……』グスッ 

苗木「……」 

苗木「えっ?」 

苗木「江ノ島さん!?」 

ガチャッ 

江ノ島「なんですぐ開けてくれないのよぉ……うぅ……」ウルウル 

江ノ島「誰もいない廊下すっごい怖かったんだからね!?」 

苗木「な、何してるのさ江ノ島さん!? こんな時間に!」 

江ノ島「いやー、その……」 

江ノ島「1人じゃ怖くて……眠れなくて……」 

苗木(江ノ島さんもか……) 

866: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 18:11:19.83 ID:K/grKBBmo

苗木「それなら戦刃さんの部屋行けばよかったんじゃない?」 

江ノ島「寝てる残姉ちゃん起こそうとしたら命がいくつあっても足りないっつーの!」 

苗木「あぁ……でもせめて先に連絡してよ!」 

江ノ島「苗木、ケータイ電池切れになってない?」 

苗木「え? あれっ本当だ、ごめん!」 

江ノ島「というわけで一緒に寝よ!」 

苗木「うん……」 

苗木「……」 

苗木「うん?」 

苗木「ね、寝る!? 一緒に!?」/// 

江ノ島「なっ、顔赤くしないでよ! 何想像してんの!?」 

江ノ島「1人で寝るの怖いから同じ部屋で寝よってだけだから! 深い意味はないから! ほんとに!」/// 

苗木「ああ、そういうことか」 

苗木「じゃあ僕は床で寝るから、江ノ島さんベッド使ってよ」 

江ノ島「へっ?」 

苗木「え?」 

江ノ島「えっと……その……」 

江ノ島「べ、べつに同じベッドで寝ればいいんじゃないかな……」 

江ノ島「あたし痩せてるし? 苗木小柄だし?」 

江ノ島「ねっ!」 

苗木「いやダメでしょ!? 完全にアウトだよ!」 

江ノ島「な、なによ! アウトになるようなことあたしにしたいわけ!?」/// 

苗木「そうじゃなくって! やっぱり不味いよ!」 

江ノ島「でも私……ベッドに1人だと怖くて眠れないです……」 

苗木「えぇ……」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「お願い……」 

苗木「わかったよ……背中合わせだからね?」ハァ… 

江ノ島「うんっ!」 

―――― 

―― 

867: ◆3Exch9p5tM 2013/10/25(金) 18:12:02.53 ID:K/grKBBmo

江ノ島「……ねぇ、もう寝ちゃった?」 

苗木「ううん。まだ起きてるよ」 

江ノ島「そっち向いて抱きついていい?」 

苗木「ダメだって……」 

江ノ島「ちぇー」 

苗木「もう……」 

江ノ島「ねえ」 

苗木「なに?」 

江ノ島「背中、あったかいね……」 

苗木「……うん」 

江ノ島「なんだか……安心する……」 

苗木「そうだね」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「ねえ……」 

苗木「なに?」 

江ノ島「今日は……ありがと……ね……」 

苗木「どういたしまして」 

江ノ島「楽しかった……よ……」 

苗木「僕もだよ」 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「……」zzz 

苗木「寝ちゃった……かな……?」 

苗木(おやすみ、江ノ島さん) 

苗木(……) 

苗木(さて……) 

苗木(ここからが問題なんだよなあ) 

苗木(うぅ……江ノ島さん意識しちゃって眠れる気がしない……) 

874: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:06:30.99 ID:P1U+EwBJo

1月27日 

放課後 

苗木「あ、江ノ島さん今日は撮影なんだね」 

江ノ島「ふふふ、セブンティーン4月号の表紙はこの私様であるぞ!」 

苗木「へえ。また持ってきてくれるんでしょ? 楽しみにしてるよ!」 

江ノ島「うん! 見本届いたらすぐ持ってくるよー、じゃあね苗木くんっ!」 

苗木「うん、じゃあね!」 

苗木「……」 

苗木「はぁ……」 

セレス「あら、撮影について行ったりはしないのですね」 

苗木「えっ?」 

セレス「最近の苗木くんはよく江ノ島さんと一緒にいるようでしたから」 

苗木「……そうかな」 

セレス「ええ。ところで苗木くん」 

苗木「ん、なに?」 

セレス「私、オセロがしたくなってきましたわ」 

苗木「へ?」 

セレス「どうせ暇なのでしょう? 娯楽室でオセロでも打ちませんか」 

苗木「……何も賭けないよね?」 

セレス「あら。賭けてもいいですけど?」ニコ 

苗木「い、いや賭けるのはさすがに遠慮しとくよ!」 

セレス「いつか確かめてみたいものですけどね。貴方の『幸運』というものを」 

苗木「はは……」 

苗木(何があってもセレスさんと賭け事はやりたくないなあ……) 

セレス「では行きましょうか、娯楽室に。うふふふ」 

苗木「うん!」 

875: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:06:57.93 ID:P1U+EwBJo

娯楽室 

セレス「オセロをはじめとして、駒を交互に動かすボードゲームというのは運の絡む要素が極端に少ないもの」 

苗木「……」 

セレス「つまり、特殊なルールでもない限り実力が反映されやすいということですわ」ニコッ 

苗木「ははは……」 

苗木(セレスさん強いな……これ何敗目だっけ……) 

セレス「ふう……もし賭けていたら、今頃苗木くんは全裸でしたわね」 

苗木「脱衣オセロなの!?」 

セレス「それとも、窮地に立たされると貴方の『幸運』が発揮されるのでしょうか」 

苗木「オセロは運があまり絡まないって言ったばかりじゃないか……」 

セレス「私が黒と白を見間違えたり、置く場所を間違えたりするかもしれませんよ」 

苗木(それはさすがにないんじゃないかなあ) 

セレス「けれど……」 

苗木「どうかした?」 

セレス「勝ち続けているのに何も得るものがないというのは、少々つまらないですわね」 

苗木(なんか嫌な予感がするぞ……) 

セレス「そうですわ!」 

苗木「な、なにかな……?」 

セレス「全て自分の色で統一して勝ったら、相手になんでも1つ命令できるというのはいかがですか?」 

苗木(全部自分の色に……さすがにそれはセレスさんでも無理だよね……?) 

苗木「まあ、それくらいならいいよ」 

セレス「本当ですか?」 

苗木「うん」 

セレス「ではこの列、いただきましたわ」パタン 

苗木「あっ」 

セレス「まあ! 綺麗に黒一色になりましたわね!」 

苗木「」 

セレス「さて。苗木くんには今日1日、私のナイトになっていただきましょうか」ニコッ 

876: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:07:24.52 ID:P1U+EwBJo

苗木「……へっ? ナイト!?」 

セレス「そうですわ」 

苗木「それって……具体的には何をするのかな……?」 

セレス「わかりやすく言うと執事のようなものですわね」 

苗木「執事!? む、無理だよ!」 

セレス「賭けで負けたというのに、なんて往生際の悪い……」ハァ… 

苗木「そもそもセレスさん、勝てるってわかっててあの条件出したよね」 

セレス「……なんのことでしょうか」プイッ 

苗木「セレスさん?」 

セレス「……」 

セレス「はぁ……ではもっと簡単なものでいいです」 

セレス(まったく、いつになったらあのテイルコートを苗木くんに着せられるのでしょうか……) 

苗木(助かったー!) 

セレス「では……」 

苗木「……」ゴクリ 

セレス「これから1時間、私の質問にはきちんと答える。これでどうでしょう」 

苗木「えっ、そんなのでいいの?」 

セレス「ええ」 

苗木「よかったあ、それくらいなら全然大丈夫だよ」 

セレス「では最初の質問をしましょうか」 

苗木「どうぞ」 

セレス「苗木くん」 

セレス「貴方は今……その……」 

セレス「す、好きな異性はいますか……?」/// 

苗木「ブッ!!? は、えええ!?」 

セレス「ど、どうですの……?」 

苗木「ええ!? その……」 

セレス「……」 

苗木「い、いない……かな……」 

セレス「……そうですか。それは本当なんでしょうね?」 

苗木「う、うん」 

セレス「……」 

セレス「江ノ島さん」ボソッ 

苗木「え?」 

セレス「最近、江ノ島さんと……仲が良さそうだったではありませんか」 

苗木「なっ! そ、そういうわけじゃ!」/// 

セレス「……そうですか」 

877: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:07:53.10 ID:P1U+EwBJo

セレス「江ノ島さんといえば」 

苗木「ん?」 

セレス「先ほどの教室でのため息ですが……」 

苗木「……」 

セレス「貴方らしくもなく、随分とネガティブなものでしたわね」 

苗木「そうだった? 気のせいじゃないかな、はは……」 

セレス「これでも他人の感情の機微には敏い方ですのよ?」 

苗木「……」 

セレス「江ノ島さんについて何か悩みでもあるのではなくて?」 

苗木「……僕って、そんなにわかりやすいかな?」 

セレス「ええ、とても」フフッ 

苗木「そっか。そうだよね、ははっ」 

苗木「……」 

苗木「話、聞いてくれる?」 

セレス「オセロをしながらでよろしければ」 

苗木「……ありがと」 

セレス「……」 

苗木「江ノ島さんの……ことなんだけどさ……」 

セレス「……」 

苗木「告白されたんだ」 

セレス「……は?」 

セレス「はあああああああ!!?」 

セレス「いつ!? いつですか!!?」グイッ 

苗木「うわあ!?」 

苗木「ク、クリスマスパーティのときだけど」 

セレス「そうですか……」 

苗木「……」 

苗木「疑わないんだね」 

セレス「嘘だったのですか?」 

苗木「そ、そうじゃないよ!」 

セレス「冗談です。彼女が貴方に想いを寄せていることは知っていましたわ」 

苗木「えええ!?」 

セレス(それも、本人が自覚するよりも前から……) 

878: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:08:21.36 ID:P1U+EwBJo

セレス「……で?」 

苗木「え?」 

セレス「告白されて、それで? 私に話したかったことはそれで全部ですの?」 

苗木「……」 

苗木「不思議なんだ」 

セレス「不思議?」 

苗木「うん。江ノ島さんがどうして僕を……その……好きになったのか、不思議なんだ」 

セレス「それは自分を卑下しているのですか?」 

苗木「そ、そういう意味じゃ……僕が疑問に思ってるのは、もっと根本的なことだよ……」 

セレス「……」 

苗木「今の江ノ島さんとは仲良くしてたから、なんとも言えないけど」 

苗木「けど、更生する前の江ノ島さんだったら……」 

苗木「僕を好きになるなんてあり得ないって、断言できる」 

セレス「自分で言っているでしょう?」 

セレス「更生後は仲良くしていた。更生前はそうではなかった。それが全てではなくて?」 

苗木「……」 

苗木「そう、かもしれないね……」 

苗木「けど僕は、江ノ島さんの人格を書き換えている」 

苗木「その時の書き換えが、何か影響しているんじゃないかと思って……」 

セレス「……」 

セレス(なんと言いますか……) 

セレス(真面目な話をしているはずなのに、惚気られているようにしか聞こえないのは何故なんでしょうねえええ!?) 

セレス(要は、告白されたけどどうして僕のこと好きなんだろう? ねえなんでだと思う? ねえねえ? という話じゃねえかこの鈍感男が!!) 

879: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:08:47.97 ID:P1U+EwBJo

苗木「ねえ、セレスさんはどう思う?」 

セレス(……私は知っている) 

苗木「根拠も何もない、胸騒ぎがするってくらいの疑問なんだけど……」 

セレス(私だけが、江ノ島さんさえ知らないその答えを知っている) 

苗木「自分でも心配のしすぎかなって思ってて、誰にも言ったことなかったんだ」 

セレス(そんな私にこの話をした。そういう運命だった、ということですかね……) 

セレス「……そうやって疑問に思う貴方なら、遅かれ早かれ知ることだったのでしょう」 

苗木「……」 

セレス「江ノ島さんの更生……いえ、人格の書き換えに使われた標準人格データ」 

苗木「標準人格データ……?」 

セレス「そのデータには、貴方に好意を寄せるパラメータが混入していました」 

苗木「!」 

苗木「じゃ、じゃあ……江ノ島さんの人格にも……」 

セレス「貴方のことが好きである。そのように書き換えられた可能性は高いかと」 

苗木「なっ、そんな……僕は……!」 

セレス「事故みたいなものです。ボタンを押した貴方にも、プログラムを作成した不二咲さんにも責任はありませんわ」 

苗木「……」 

苗木「そっか……そうだったんだ……」 

880: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:09:29.05 ID:P1U+EwBJo

セレス(しばらくして、苗木くんは寮へと戻った) 

セレス(江ノ島さんの好意が書き換えによる物だというのは、予想通りショックだったようですね) 

セレス(……) 

セレス「ショックを受けるのは予想通りでしたが……あそこまで深刻に受け止めるとは予想外ですわ……」 

セレス「ねえ? 葉隠くん?」 

『』ガタッ 

セレス「そろそろ出てきてはいかがですか?」 

葉隠「……いつから、俺がロッカーに入ってるって気づいてたんだ?」 

セレス「最初からですわ。貴方が苗木くんのため息を気にしていたようですから、わざわざ隠れる場所のある娯楽室に移ってあげましたの」 

葉隠「は、はは……」 

セレス「そもそも最近、苗木くんを気にかけすぎですわよ」 

葉隠「そ、そうか……?」 

セレス「まさか貴方……」 

葉隠「……」 

セレス「ホモなのですか?」 

葉隠「ちげえべ!!? 酷い風評被害だべ!?」 

セレス「冗談です。占いですわよね?」 

葉隠「……」 

セレス「どんな結果が出たのですか?」 

葉隠「いい結果じゃねーぞ」ハァ… 

セレス「わかっています。だから注意深く苗木くんを見ていたのでしょう? 外れることを祈って」 

葉隠「さすが、ギャンブラーにはお見通しか」 

セレス「貴方も苗木くんも、わかりやすすぎるだけですわ」 

葉隠「ははは……」 

葉隠「占ったのは、江ノ島っちが更生して半月ちょっとの時だったべ」 

葉隠「結果はこうだ……」 

葉隠「【更生プログラムを使用しなければ苗木誠は『超高校級の絶望』になる】」 

セレス「なんですって?」 

葉隠「そして、さっきのを見た感じだと……たぶんこの占いは、三割に入ってる」 

セレス「……!」 

881: ◆3Exch9p5tM 2013/10/29(火) 20:10:02.64 ID:P1U+EwBJo

prrrrr, prrrrr! 

江ノ島『苗木だー!はーいもしもーし!』 

苗木「あ、いきなりごめんね江ノ島さん。ちょっと聞きたいことあるんだけど」 

江ノ島『なにー?』 

苗木「あのさ……えっと、僕のこといつから好きだったの?」 

江ノ島『はにゃ!? なっ、何よいきなり!?』/// 

苗木「あはは、ちょっと気になってさ……」 

江ノ島『えっと……確か最初にデートした帰りだったかな、自覚したのは』 

苗木「……そっか」 

江ノ島『これ改まって言うの絶望的に恥ずかしいんですけど……苗木くんってサドなんですか……』 

苗木「ごめんごめん、ありがとうね。それじゃ」 

江ノ島『うぅぅ、苗木のバカー!』/// 

pi 

苗木「最初のデートってことは、更生プログラムから半月くらいか」 

苗木「どう考えても早すぎる……書き換えたせい、か……?」 

苗木「はぁ……」 

苗木「これが、江ノ島さんの言う絶望的って感覚なのかな」 

892: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:42:12.66 ID:shW4HGJAo

1月29日 

放課後・教室 

十神「全員揃ったようだな」 

朝日奈「苗木と江ノ島ちゃんと舞園ちゃんがいないよ?」 

十神「あの3人は今は学校を離れている。……おい、間違いないんだろうな?」 

霧切「ええ。苗木くんは舞園さんが連れ出しているわ」 

戦刃「……盾子ちゃんは、今日も撮影だよ」 

十神「ふん。では、これより学級裁判を始める」 

桑田「ちょっと待てよ。いきなり集められて意味がわかんねーっつうの」 

セレス「それは私から説明させていただきますわ」 

大神「……何人かは事態を把握しているようだな」 

セレス「女子は私、霧切さん、戦刃さん、舞園さん。男子は十神くんと不二咲くん、そして葉隠くんがすでに知っています」 

桑田「葉隠ぇ? その面子だとなんか葉隠だけ浮いてね?」 

葉隠「桑田っちいくらなんでも酷いべ!? そもそも俺がきっかけなんだぞ!」 

石丸「なに! 葉隠くんがきっかけということは占い関係かね!?」 

セレス「そう。彼が2ヶ月前に占ったことが当たりそうなのです」 

山田「えーっと、その占いの結果というのは……?」 

葉隠「……」 

葉隠「【更生プログラムを使用しなければ苗木誠は『超高校級の絶望』になる】」 

桑田「は?」 

石丸「なん……だと……?」 

山田「はああああ!?」 

大和田「な、なんだよそりゃ……!?」 

大神「なんと……」 

腐川「ぐぬぬ……なんで白夜様が知っていたのに私は知らないのよ……わ、私が汚いから誰も教えようとしなかったのね!? そ、そうに決まってるわ!」 

十神「腐川、貴様は黙っていろ」 

腐川「……」 

893: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:42:43.87 ID:shW4HGJAo

朝日奈「な、なによそれ! どういうこと!?」 

セレス「そのままの意味ですわ。今日はその結末を回避するために集まったのです」 

十神「とは言ってもその方法も占いに出ているがな」 

不二咲「更生プログラムの……使用だね……」 

霧切「そう。あれを正しく使えば問題ないわ」 

桑田「待てよ! あの前向きが取り柄って自分で言うくらい前向きな苗木だぞ!? あいつが『絶望』とかあり得ねーだろ!」 

戦刃「桑田くん……」 

セレス「すでに兆候は見えていますわ。……私のせいで」 

霧切「セレスさん、貴女のせいではないわ。遅かれ早かれ苗木くんは知ってしまっていた」 

桑田「兆候だあ? だ、だとしてもよお、葉隠の占いが当たる確率は三割だろ? 残りの七割はハズレってことだ! 途中まで合ってたからって、ぴったり一致するとは限らねーだろ!」 

葉隠「桑田っち……俺の占いは、当たりか外れかしかねえんだ……」 

桑田「は?」 

十神「そいつはなんの予備知識も無しに三割の確率で占いを当てる。少し外れるも少し当たるもない、ぴったり当たるか完全に外れるかの2つだけだ。だから、『超高校級の占い師』なんだよ」 

石丸「つ、つまり……その占い結果の兆候が見られたということは、当たるのが確定しているということか……?」 

葉隠「そうだべ……」 

桑田「じゃあ、じゃあよ! 占いが当たるってんなら、更生プログラムを使えば苗木は『絶望』しないんだな!?」 

十神「最初からそう言っているだろう。正しく使えればの話だがな」 

大神「しかし、更生プログラムの使い方に正しいも正しくないもないのではないか?」 

不二咲「……」 

霧切「不二咲さん、説明してあげて」 

894: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:43:21.76 ID:shW4HGJAo

不二咲「あれは、名前こそ更生プログラムってなってるけど……実はそれ以外のことにも使えるんだよ……」 

朝日奈「それ以外?」 

不二咲「まず、ベースにしたい人格データさえ準備できればその人格に書き換えることができるんだ」 

大和田「あん? そうやって更生させるんじゃねーのかよ?」 

不二咲「たとえばの話なんだけど……もし『絶望』してる人の人格データで上書きすれば、普通の人を『絶望』させることもできちゃうんだ……!」 

山田「そ、それでは丸っきり更生の逆ではありませぬか!?」 

不二咲「そしてもう1つ」 

桑田「な、なんだよ……」 

不二咲「不完全だけど……」 

不二咲「記憶領域を空白で書き換えることで、記憶を消すこともできる……と思うよ」 

山田「記憶を消すううぅ!? ちーたん怖いですぞ!?」 

霧切「今回重要なのは記憶を消す機能よ。それを使うか使わないか。判断を下すのに、このクラス全員の意見が必要だと思ったの」 

戦刃「……」 

十神「そもそも何故苗木が『絶望』するのかについてだが……」 

十神「要因は2つある。1つ目は――――」 

クシュンッ 

十神(今の音……まさか……!) 

ジェノ「久しぶりに出て来てじゃじゃじゃじゃーん! あれ? 何みんな集まってんの? そんな辛気臭い顔してると殺っちゃうぞッ!」エヘッ 

ジェノ「まあお前ら萌えねーから白夜様とまーくんとちーたんしか殺んねーけどな!! あっでも3人もいると鋏より重い物は持てないか弱い殺人鬼には重労働かも? ゲラゲラゲラ!」 

ジェノ「って、全員いるのかと思ったらまこぴょんいねえじゃんシィット!!」 

十神「ジェノサイダー、少し黙っていろ」 

ジェノ「はーいっ」 

戦刃「今ね、葉隠くんの占いについて話し合ってるの。占いの結果は、更生プログラムを使わないと苗木くんが『超高校級の絶望』になるっていうもので……たぶん当たり……」 

ジェノ「えっなに、まこちん『絶望』しちゃうの? 弱っちゃうの? 儚い系男子なの? はああぁぁあんんん萌えるわあああぁぁぁ!!!」 

十神「黙っていろと言ったはずだが……?」ゴゴゴ 

ジェノ「……」オクチチャック 

895: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:43:49.11 ID:shW4HGJAo

十神「……では話を続けるぞ。1つ目の要因は、苗木が更生プログラムのスイッチを押したことだ」 

大和田「はあ? なんでそれが『絶望』に繋がるんだよ?」 

十神「奴は、江ノ島の人格を書き換えたことに罪悪感があった。自分がスイッチを押し、元の江ノ島盾子の人格を消去したと考えている」 

石丸「更生させたのだから彼は正しいことをしたはずだぞ! 何を恥じる必要があるのだね!」 

十神「それはお前の考えであって奴の考えではない、自分の価値基準が他人にも適用されると思うな。苗木はお人好しすぎる。奴でなければここまで責任を感じていないだろうな」 

霧切「でも、お人好しの彼以外は誰もスイッチを押す覚悟がなかったのだから仕方ないわね」 

桑田「……2つ目はなんだよ」 

セレス「人格の書き換えに使われたベースとなる人格データに、苗木くんのことが好きだというパラメータが混入していました。それにより江ノ島さんは、苗木くんが好きであるように人格を書き換えられましたの」 

山田「ああ、それでああいうことに……爆ぜろリアル弾けろシナプス爆発しろ苗木誠殿!!」 

セレス「苗木くんは、江ノ島さんの人格を書き換えたことに負い目を感じていながらも、『今の江ノ島さんが幸せならそれでいい』と思っていたようなのです」 

朝日奈「けどその『今の江ノ島ちゃん』の恋心も、苗木が書き換えた結果だった……てこと……?」 

セレス「ええ。それを知り、彼は酷く深刻に受け止めているようですわ」 

霧切「根拠としては、難しい顔で上の空になる時間が以前の8倍、溜息の回数が以前の6倍になったわ。これはそのことを知った日からどんどん増えているわ」 

朝日奈「……」 

セレス「……」 

桑田「うわあ……」 

896: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:44:25.55 ID:shW4HGJAo

十神「これらを元に、俺は苗木の人格書き換えによる更生と、江ノ島を更生プログラムにかけてからの記憶の消去を提案する」 

戦刃「!」 

桑田「苗木の……記憶を消す……?」 

十神「認められないか」 

桑田「たりめーだ! なんであいつが記憶を消されなきゃなんねえんだよッ!!」 

十神「江ノ島の人格書き換えのスイッチを押したのが自分であると知らなければ、苗木が絶望することはないんだ」 

桑田「でも……!」 

戦刃「待って十神くん。スイッチを押したっていう記憶だけを消せばいいんじゃないの? それ以降の記憶はそのままでも……」 

十神「それでは苗木がスイッチを押したことを後悔していた記憶は残る」 

不二咲「そもそも、そんなピンポイントには消せないよ……長期間をまとめて消去するしかないんだ……」 

戦刃「それじゃあ……盾子ちゃんとの思い出は……」 

十神「これが俺の考える最善だ。思い出はまた作ればいいだろう」 

桑田「ふざけんなよ十神! なんの権利があって苗木の記憶をお前が……!」 

十神「黙れ愚民が。俺が好き好んで苗木の記憶を消したがってるとでも思うのか? 他により良い方法があるなら従ってやる」 

桑田「くっ……!」 

ジェノ「んー……」 

十神「なんだ、ジェノサイダー」 

ジェノ「いやー、江ノ島盾子の人格をもう一度最初の通りに書き換え直しちゃえばいいんじゃね?」 

戦刃「……!」 

十神「なっ!?」 

不二咲「ええ!? 確かに江ノ島さんの元の人格データは残ってるけど……」 

セレス「……なるほど、苗木くんが『絶望』する要因は2つとも取り除かれますわね。そして占いの結果とも合致します」 

霧切「けど代わりに江ノ島さんが『超高校級の絶望』に戻るわよ」 

十神「却下だ、却下! それでは振り出しに戻るだけじゃないか!」 

ジェノ「ちぇー、いい方法だと思うんだけどなー」 

897: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:45:01.58 ID:shW4HGJAo

桑田「やっぱ、十神の方法しかねーのかよ……」 

石丸「くうぅ……!」 

大神「……」 

朝日奈「そんな……」 

十神「異論はないな。では、実行日についてだが……」 

霧切「ちょっと待って。それについて舞園さんから伝言を託されているわ」 

十神「舞園だと?」 

霧切「ええ。貴方はどうせ明日にでも実行したいんでしょう? 苗木くんが『絶望』する前に、できるだけ早く」 

十神「……」 

霧切「舞園さんの伝言は、『1週間待ってほしい』ということよ」 

セレス「1週間後というと、確か……」 

霧切「2月5日。苗木くんの誕生日ね」 

十神「理由は?」 

霧切「江ノ島さんが、嘘をつかず、これまで通りの接し方で苗木くんの誕生日を祝える最後の機会。だそうよ」 

セレス「十神くんの提案を完全に予測していたということですか」 

十神「ふん。現状考えうる最善の方法なだけだ、舞園が思い至っても不思議ではない」 

霧切「じゃあ、更生プログラムの使用は2月5日の夜。苗木くんが寝ている間に行うということでいいかしら?」 

桑田「……」 

戦刃「……」 

十神「決まりだな。……おい、戦刃むくろ」 

戦刃「なに?」 

十神「わかっているとは思うが、江ノ島にこのことは絶対に話すなよ。奴が知るのは全てが終わってからだ」 

戦刃「……うん、わかってるよ」 

898: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:45:28.17 ID:shW4HGJAo

同1月29日 

放課後・公園 

舞園「あっ見てください苗木くん! あのクレープ美味しそうですよ!」 

苗木「わあ、いろんな種類があるんだね」 

舞園「キャラメルクッキーバニラください」 

ハイヨッ 

苗木「ってもう買ってるし!」 

舞園「クレープは一期一会なんです。見つけたらすぐ買わないと!」 

苗木「へえ、そうなんだ」 

オマチドウ! 

舞園「嘘ですけどね」アリガトウゴザイマスー 

苗木「嘘なの!?」 

舞園「はい、苗木くん! 一口どうぞ!」 

苗木「ありがと……えっ、このまま?」 

舞園「もちろんです、これはデートなんですから! はい、あーんっ」アーン 

苗木「うぅ……あむ……」パクッ 

舞園「美味しいですか?」 

苗木「うん、美味しいよ……」 

苗木(けどそれ以上に恥ずかしいよ! すっごいじろじろ見られてるし!)/// 

899: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:46:00.41 ID:shW4HGJAo

苗木(舞園さんだってバレてないよな……?) 

舞園「大丈夫ですよ。まだバレてません」 

苗木「あっ……」 

舞園「ふふっ、私――――」 

苗木「エスパーだから?」 

舞園「ああー! 人の決め台詞取らないでくださいよ!」 

苗木「ええっ、決め台詞だったの!?」 

舞園「なーんてねっ」 

苗木「はは……」 

苗木(舞園さんには敵わないな……) 


bbb… 


舞園「あっと。ごめんなさい、ちょっとクレープ持っててもらっていいですか?」 

苗木「うん」 

舞園「ありがとうございます」 


pi 

『from 霧切さん 
2/5の夜に決まったわ』 


舞園「……」 

苗木「舞園さん?」 

舞園「……クレープにアイス入ってるから、ちょっと冷えてきちゃいましたね」 

苗木「あー、そうだね」 

舞園「そろそろ戻りましょうか」 

900: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:46:39.94 ID:shW4HGJAo

苗木「うん。はい、クレープ」 

舞園「……」 

舞園「食べさせてください」 

苗木「えっ?」 

舞園「苗木くんが食べさせてください」 

苗木「ええ!?」 

舞園「せっかくのデートなんですから!」 

苗木「うぅ……」 

苗木(デートって言われると、そんなわけないってわかってても少し期待しちゃうよなあ……) 

苗木「ほら、あーん……」 

舞園「あむっ……なんだか自分で食べるより美味しい気がします!」 

苗木「そ、そうかな?」/// 

舞園「はい!」 

舞園「……」 

舞園「ねえ、苗木くん」 

苗木「なに?」 

舞園「私、忘れませんよ。こうして苗木くんと遊んだこと」 

苗木「え? 僕だって忘れないよ」 

苗木(ていうか、忘れられるわけないよ!) 

舞園「ふふっ、じゃあ今度こそ戻りましょう!」 

苗木「うん!」 

舞園(そしてきっと、江ノ島さんも忘れない) 

舞園(苗木くん……たとえあなたが忘れてしまっても、私たちはちゃんと覚えていますから……) 

901: ◆3Exch9p5tM 2013/10/30(水) 19:47:07.45 ID:shW4HGJAo


夜・江ノ島の部屋 


コンコン 


『盾子ちゃん、ちょっといい?』 

江ノ島「どうぞー。鍵開いてるよー」 

戦刃「お邪魔するね」 

江ノ島「お姉ちゃんどうしたの?」 

戦刃「あのね……」 

戦刃(わたしは……他の誰よりも、盾子ちゃんのために……) 

江ノ島「ん?」 

戦刃「盾子ちゃんに、お話ししたいことがあるんだ」 

戦刃(だから……) 

江ノ島「何よ?」 

戦刃「今日の放課後のことなんだけどね――――」 

戦刃(ごめんね、十神くん) 

904: ◆3Exch9p5tM 2013/10/31(木) 21:12:04.25 ID:K+D8cpOKo

苗木『以前の江ノ島さんの人格を壊したのは僕だ』 

苗木『ならせめて今の江ノ島さんには幸せになってほしいと思った』 

苗木『けど、今の江ノ島さんの恋心を偽造したのも僕だった』 

苗木『僕が江ノ島さんに好かれるなんて、普通に考えればあり得ないだろう?』 

苗木『結局、僕は江ノ島さんを狂わせているんだよ』 

苗木『ははは、あはははは……』 

―――― 

―― 

苗木「ふあ……」 

苗木「んー、なんか嫌な夢を見た気がするな……」 

苗木「まあいいか。いつも通り、前向きに行こう」 

苗木「いつも通り……いつも通り……」 

苗木「って、もう授業始まる時間ぎりぎりじゃないか!?」 



1月30日 



江ノ島「苗木なに遅刻してんのよー。夜更かしでもした?」 

苗木「えーっと、そういうわけじゃないんだけど……なかなか寝付けなくてね」 

江ノ島「なになに? あの熱い夜のこと思い出しちゃった?」ニヤニヤ 

舞園「な、なんですか熱い夜って!?」ガタッ 

苗木「何もなかったからね!? 一緒のベッドで寝ただけだよ!」 

セレス「一緒のベッド……ですって……!?」 

苗木「はっ!? い、今のは言葉の綾っていうか――――」 

霧切「浮気するなんて酷いわ苗木くん! 私のことは遊びだったの!?」 

苗木「えええ!?」 

苗木「た、助けてよ江ノ島さん!」 

江ノ島「うぷぷぷ~」 

戦刃「盾子ちゃん楽しそうだね」 

江ノ島「ああ、絶望的に楽しいぜ!」 

苗木(うわあ、絶望的だ……あっ、江ノ島さんの口癖移っちゃった) 

905: ◆3Exch9p5tM 2013/10/31(木) 21:12:41.61 ID:K+D8cpOKo

1月31日 

化学実験室 


ボンッ 


霧切「……」 

霧切「この薬品、消費期限が切れているわ」 

江ノ島「いやいやあり得ねーって。ベタすぎるって。どう失敗すれば化学実験で爆発すんだよ!」 

霧切「滑りをよくしようとグリセリンを使ってみただけよ。もう一度やってみるわ」 

江ノ島「ねえそれニトログリセリンじゃない? ねえ? どこから持ってきたのよ、ねえ!?」 


ボンッ 


苗木「なんか今、高校の実験で聞こえるはずのない音が聞こえなかった?」 

戦刃「今の音はニトログリセリンだね」 

苗木「音だけでわかるものなの!?」 

戦刃「戦場で物資が足りないとき、自分で手榴弾とか作る必要があるから」 

苗木(忘れがちだけど、戦刃さんってすごい軍人なんだよなあ……) 

苗木「じゃあ化学実験みたいなのは得意なんだ?」 

戦刃「うんっ! お姉さんに任せなさい!」エッヘン! 

苗木「あはは、戦刃さんとペアになれてよかったよ」 

戦刃「ほんと? えへへっ」/// 

戦刃「よし次いこー!」 

苗木「うん!」 


ボンッ 


苗木「」 

戦刃「あれ!? 滑りをよくしようとグリセリン使っただけなのに!?」 

906: ◆3Exch9p5tM 2013/10/31(木) 21:13:14.51 ID:K+D8cpOKo

2月1日 

土曜日 


苗木妹「おっ邪魔しまーす!」 

江ノ島「妹ちゃんいらっしゃーい!」 

戦刃「ようこそー!」 

舞園「初詣以来ですね!」 

苗木「……ここ僕の部屋なんだけど」 

苗木妹「へえー、お兄ちゃんこんな広い部屋に住んでるんだ! さすが希望ヶ峰だね!」 

苗木「あのさ、僕は入校パス発行した覚えないんだけど……だいたい予想はつくけどさ……」 

江ノ島「はいはーい! あたしが発行しておきましたー!」 

苗木「やっぱり……」 

苗木妹「だってお兄ちゃん、もう3学期だっていうのに1回も呼んでくれないんだもん」 

苗木「はぁ……希望ヶ峰の中、案内しようか?」 

苗木妹「うんっ!」 



夜・食堂 

苗木妹「うぅ~ん、希望ヶ峰の食堂おいしいー!」 

苗木「……」 

苗木妹「こんなの毎日食べられるんだ。お兄ちゃんの幸せ者っ!」コノコノー 

苗木「……ねえ、いつ帰るの?」 

苗木妹「え? 明日は日曜日だから泊まるけど?」 

苗木「えっ」 

苗木妹「せっかく来たんだもーん」 

苗木「ええええ!? ぼ、僕は明日のパス発行しないからな!?」 

苗木妹「実はもう舞園さんに発行してもらってたり」テヘッ 

苗木「」 

苗木妹「久しぶりにお兄ちゃんと一緒に寝ようかなーって。えへっ」/// 

舞園「ダメですよ。妹ちゃんは私のお部屋です」 

苗木妹「ちぇー。でも舞園さんのお部屋も楽しそう! 夜更かししちゃいましょう!」 

舞園「もう、少しだけですよ?」フフ 

苗木(なんでいつの間にかどんどん超高校級のみんなと仲良くなってんの!?) 

907: ◆3Exch9p5tM 2013/10/31(木) 21:13:42.29 ID:K+D8cpOKo

2月2日 


ワイワイ 


桑田「あれが苗木の妹か……アリだな……!」 

山田「拙者、この学園に来てから3次元への理解が深まった気がしますぞ! ふぅ……」 

苗木「ははは……妹に手を出したら怒るから」ボソッ 

桑田・山田「「ゴメンナサイ」」 

江ノ島「じゃあ苗木が手ぇ出しちゃったら?」ニヤニヤ 

苗木妹「……!」ピクッ 

苗木「なに言ってんの!?」 

苗木妹「お、お兄ちゃん私のことそんな目で見てたの!?」/// 

苗木「なわけないだろ!」 

江ノ島「あー苗木いじんの楽しい」 

苗木「もう……」 

苗木妹「……」ジー 

苗木「なんだよ?」 

苗木妹「もうちょっと背が高ければなあ……」 

苗木「」 

江ノ島「妹ちゃんの方が高いもんねー」 

苗木「なんで女の子みんな僕より背が高いんだよ……絶望的だ……」 

苗木妹「冗談だよー、恋に身長とか関係ないってばっ!」 

江ノ島(惚れてる本人が言うと説得力あるよねー) 

江ノ島(あたしもだけど) 

江ノ島(あたしもだけどさ!)/// 

苗木妹「……ねえ、お兄ちゃん」 

苗木「ん?」 

苗木妹「江ノ島さんたちと、仲良くね」ニコ 

苗木「へ? うん……」 

苗木妹「そろそろあたし帰るねー」 

苗木「送ってくよ」 

苗木妹「いいっていいって。じゃね!」 

苗木「あっ、おい! ……行っちゃった」 

苗木妹(じゃあね……お兄ちゃん……) 

908: ◆3Exch9p5tM 2013/10/31(木) 21:14:22.59 ID:K+D8cpOKo

2月3日 


江ノ島「鬼は外ー!」ヒュッ 

葉隠「……なんで俺が鬼なんだ?」ペチンペチン 

セレス「やられ役のような髪型……でしょうか」 

葉隠「人の体のことをからかうなんて酷いべ! どう考えてもオーガが鬼に相応しいべ!」 

朝日奈「さくらちゃんのことバカにしてんの!? 葉隠サイッテー! やっちゃって戦刃ちゃん!」 

戦刃「え、えっと……鬼は外……?」ビュンッ! 

葉隠「ちょ!? いた、やめて手加減して!?」ビシッ バシッ! 

江ノ島「でもって、福は内だよー」 

苗木「……何この手?」 

江ノ島「『幸運』の苗木くんにー、食べさせてあげようと思って! はい、あーんっ!」アーン 

苗木「ああ、そういうことね。あー……」 

苗木「……」 

苗木「ねえ、その……」 

江ノ島「ん?」ニコニコ 

苗木「豆みたいに小さいものだと……あの……どうしても指まで口に……」/// 

江ノ島「うぷぷぷ、僕は苗木くんに指を舐められたって気にしないから大丈夫だよ」 

苗木「僕が気にするんだよ!」 

江ノ島「ごちゃごちゃ言ってないで私様に食べさせられなッ!」グイッ 

苗木「もがっ!!? んー、んー!?」 

江ノ島(あ、やばいこれけっこう……その……恥ずかしくなってきたんですけどおおお!?)/// 

苗木「ぷはっ!」 

朝日奈「な、苗木の変態っ!」/// 

苗木「なんで!?」 

909: ◆3Exch9p5tM 2013/10/31(木) 21:15:14.76 ID:K+D8cpOKo

2月4日 

放課後 


江ノ島「ねえ、苗木」 

苗木「なに?」 

江ノ島「明日の放課後って空いてる?」 

苗木「明日? うん、空いてるよ。それがどうかした?」 

江ノ島「ほら、明日って苗木の誕生日じゃん」 

苗木「えっ、なんで江ノ島さんが知ってるの!?」 

江ノ島「ふふーん! とある妹ちゃんからの情報よ!」 

苗木「ああ……」 

江ノ島「で、明日はみんなで軽く苗木の誕生日を祝います」 

苗木「そうなんだ」 

江ノ島「ちなみにサプライズです」 

苗木「ええ!? それ言っちゃダメなんじゃ……」 

江ノ島「サプライズ誕生会なんて絶望的につまらねえんだよ! 時代は逆サプライズだッ!!」 

苗木「逆サプライズ……?」 

江ノ島「うむ! 明日の授業が終わったら、一旦あたしが苗木を教室の外に連れ出すことになってるんだけ。その時あたしの部屋で逆サプライズの準備するからね!」 

苗木「面白そうだね。うん、わかったよ」 

江ノ島「じゃ、あたしは明日の準備してくるねー!」 

苗木「じゃあね。……はは、逆ドッキリみたいなものか。うまく行くといいけどね」 



夜・江ノ島の部屋 

戦刃「盾子ちゃーん……お、終わったよ……」 

江ノ島「あたしもうちょい。お姉ちゃん帰っていいよー」 

戦刃「盾子ちゃんが冷たい……うぅ……」 

江ノ島「冗談だって、ありがとね!」 

戦刃「もう……盾子ちゃんもあんまり無理しないでね?」 

江ノ島「わかってるってー!」 

江ノ島(明日は苗木の誕生日か……) 

917: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:11:19.78 ID:j5e1/Cczo

2月5日 

教室 


キーンコーンカーンコーン 


苗木「ふう。今日の授業も終わりか」 

十神「……」チラッ 

江ノ島「……」コク 

江ノ島「ねえねえ苗木、面白いもの買ったから見せてあげるよ」 

苗木「面白いもの? 変なものじゃないよね……?」 

江ノ島「もう、苗木くんってば心配性なんだから。うぷぷ」ニヤニヤ 

苗木「すごく嫌な予感がするんだけど……」 

江ノ島「気にしない気にしない。あたしの部屋だよ、行こ!」 

舞園「な、苗木くんを部屋に連れ込むんですか!?」 

江ノ島「やましいことなんてしないから大丈夫だって。じゃあねー」 

苗木「あはは……またね、舞園さん」 

セレス「……行きましたわね。準備を始めましょうか」 

霧切「まあ、飾り付けとかはしないからすぐに終わるでしょうけどね」 

戦刃「……」 

918: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:11:46.54 ID:j5e1/Cczo

江ノ島「ふふっ、みんな予定通りだと思ってるね」 

苗木「なんだか申し訳ない気がするなあ……」 

江ノ島「ほら、とりあえずあたしの部屋行くよ!」 

苗木「うん!」 

江ノ島(お姉ちゃん、任せたよ) 



江ノ島の部屋 



ガチャッ 

江ノ島「あたしの部屋へようこそー!」 

苗木「そういえば江ノ島さんの部屋に入るのって初めてだね」 

江ノ島「どうどう? 現役女子高生ギャルの部屋に入った感想は?」 

苗木「ええ!?」 

江ノ島「どうなのよー?」 

苗木「うぅ……」 

江ノ島「……」ワクワク 

苗木「お、思ったより片付いてるね……」 

江ノ島「そこ!?」 

苗木(危ない……うっかりいい匂いがするって言うとこだった……!)/// 

苗木「と、ところでさ! 逆サプライズって何するの?」 

江ノ島「んー……」 

苗木「?」 

江ノ島「もうちょい時間あるから、のんびりしてようよ」 

苗木「え? うん」 

江ノ島(もう少しだけ……いつものままでいてもいいよね……) 

919: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:12:19.32 ID:j5e1/Cczo

教室 

十神「準備が整ったな。全員クラッカーは持っているか」 

桑田「おいおい、まーたクラッカーかよ」 

十神「ん? 祝い事にはクラッカーだと苗木に聞いたが?」 

腐川「く、桑田の分際でなに白夜様に口答えしてるのよ……! ぐぎぎ……!」 

桑田「俺への当たり強くね!?」 

葉隠「桑田っちだからなあ」 

山田「桑田怜恩殿ですからなあ」 

桑田「ひでえ!」 


ギャーギャー 


セレス「では戦刃さん、江ノ島さんに連絡をお願いします」 

戦刃「うん。15分くらいしたらこっち来るようメールすればいいんだよね?」 

舞園「あれ? すぐには来ないんですか?」 

セレス「すぐに教室に戻るのは不自然に思われるかもしれませんので」 

不二咲「はぁ、緊張するなあ……」 

朝日奈「元気出して不二咲ちゃん! 思いっきり苗木を祝ってあげようよ!」 

大神「そうだな……それが、我らの責務だ」 

戦刃「……」 

霧切「私ちょっとお手洗いに行ってくるわ」 

舞園「ちゃんと苗木くんより早く帰ってきてくださいよ?」 

霧切「ええ、わかっているわ」 

920: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:12:49.64 ID:j5e1/Cczo

江ノ島の部屋 


upp… 

『from 残姉 
こっちは準備できたよ。あと15分くらいで戻って来いって』 


江ノ島「……」 

苗木「あ、連絡きた? 僕らもそろそろ準備する?」 

江ノ島「……」 

苗木「江ノ島さん?」 

江ノ島「ちょっと待ってて」ガサゴソ 

苗木「?」 

江ノ島「はい、苗木。これあげる」スッ 

苗木「へ?」ウケトリ 

苗木「……アルバム?」 

江ノ島「うん。あたしたちが希望ヶ峰に入ってからの写真、集めたの」 

苗木「へえ、いつの間に……」パラッ 

江ノ島「最近ね」 

苗木「あれ? 僕の写真多くない?」 

江ノ島「うん。だってそれ、あたし達から苗木への誕生日プレゼントだもん」 

苗木「あ、そうだったんだ」 

苗木「……」 

苗木「ええええええ!!? 今もらっちゃっていいの!?」 

江ノ島「本当は教室で渡すことになってたんだけどねー」 

苗木「へっ?」 

921: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:13:18.02 ID:j5e1/Cczo

江ノ島「それより見て見て! ここから先はあたしが写真選んだんだよ!」 

苗木「……!」 

苗木「これ……10月末……」 

江ノ島「うん。更生したところから」 

苗木「……」 

江ノ島「ふふっ、次のページの写真見てよ」ペラッ 

苗木「ちょ!? なんでワンピース着たときの写真なんて入ってるのさ!!?」 

江ノ島「可愛いし?」 

苗木「うぅ……他の人に見られたくないんだけどなあ……」/// 

江ノ島「観念しなさーい」 

苗木「もう……」ペラッ 

江ノ島「……」 

苗木「調理実習……」 

苗木(うっ……思い出したら胃が痛くなってきた……) 

江ノ島「そういえばさ、結局誰の料理が一番美味しかったの?」 

苗木「ええーっと……」 

江ノ島「まあ、普通に舞園あたり?」 

苗木「戦刃さんかな。意外性込みで」 

江ノ島「えええ!?」 

苗木「いやほんと美味しかったんだよ、レーション」ペラッ 

江ノ島「うへえ、予想外すぎるでしょ……」 

922: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:13:53.78 ID:j5e1/Cczo

苗木「これはクリスマスパーティのときのだね」 

江ノ島「ああ、十神がやけにそわそわとツンデレしてたクリスマスね」 

苗木「それ本人に言ってないよね?」 

江ノ島「その日のうちに言っちゃってたりー!」 

苗木「ああ……だと思ったよ……」 

江ノ島「あたしってば正直ちゃんだから」テヘッ 

苗木「はは……」ペラ 

江ノ島「あー! 信じてないでしょ!」 

苗木「あ、初詣……やっぱりみんな着物きれいだね」 

江ノ島「当然っしょ!」 

苗木「これは雪降った日か」 

江ノ島「このかまくら、すぐに壊れちゃったんだよねー」 

苗木「そうだったね。また作るなら次はもっとちゃんと作りたいなあ」ペラッ 

江ノ島「今度はみんなで作ろっか」 

苗木「うん。あっ、これ……」 

江ノ島「苗木がちょー怖がってたお化け屋敷じゃーん!」 

苗木「……」 

江ノ島「えと……せめてツッコんで……」 

苗木「はは、ごめんごめん」 

江ノ島「うぅ……」/// 

923: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:14:27.61 ID:j5e1/Cczo

苗木「それにしても、つい最近のことなのに懐かしいね」 

江ノ島「ふふん! 私様セレクションは気に入ったか!」 

苗木「うん、もちろんだよ!」 

江ノ島「へへっ!」 

苗木「でも、プレゼントにアルバムって珍しいね」 

江ノ島「……」 

苗木「みんなで決めたの?」 

江ノ島「うん」 

苗木「へえ……」パラッ 

江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「……苗木にね、ずっと覚えていてもらいたくて」 

苗木「えっ?」 

江ノ島「苗木が忘れてもまた思い出せるように、アルバムに決めたんだって」 

苗木「はは、そんな簡単には忘れないよ」 

江ノ島「ほんとにー?」 

苗木「うん!」 

江ノ島「ふふ。よかった」ニコ 

924: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:15:07.10 ID:j5e1/Cczo

江ノ島「あっ、でもね……」 

江ノ島「アルバムにした理由、あたしはちょっと違うんだ」 

苗木「違う?」 

江ノ島「うん。少しだけ別の理由」 

苗木「……?」 

江ノ島「あたしがこうやって笑ってたことを、苗木に覚えていてほしいの」 

苗木「それ、どういう……」 

江ノ島「あっ、この写真見てよ! 小泉に撮ってもらったやつ!」 

苗木「へっ?」 

江ノ島「いい笑顔してるでしょ!」ニシシ 

苗木「うん……可愛いね」 

江ノ島「なっ、か、かわいっ!?」/// 

苗木「あっ!? いや、その!」 

苗木(うわあ、思ったことそのまま言っちゃった!)/// 

江ノ島「……ねえ、あたしって可愛い?」 

苗木「ええ!?」 

江ノ島「答えて」 

苗木「う……か……」 

江ノ島「……」 

苗木「か、可愛い……と思うよ……」/// 

江ノ島「……そっか」 

苗木「ううぅ……」/// 

江ノ島「そっかそっか、うぷぷぷ」 

苗木「え、江ノ島さんそういうの言われ慣れてるでしょ!?」 

江ノ島「苗木に言ってもらうのが嬉しいの!」 

苗木「もう……」 

江ノ島「こーんな可愛い私様のこと、忘れないでよね?」 

苗木「だから忘れないって」 

江ノ島「ふふっ」 

925: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:15:54.67 ID:j5e1/Cczo

苗木「……」 

苗木「ねえ、江ノ島さん。何かあった?」 

江ノ島「え? なんで?」 

苗木「いや……今日の江ノ島さん、いつもと違うから……」 

江ノ島「へえ~、そんなにあたしのことよく見てくれてるんだ」ニヤニヤ 

苗木「ちゃ、茶化さないでよっ」/// 

江ノ島「うぷぷぷっ」ケラケラ 

苗木「ねえ、本当に……」 

江ノ島「なんでもなーいー!」 

苗木「……」ジッ… 

江ノ島「……」 

江ノ島「はぁ。しょうがないな……」 

苗木「どうしたの……?」 

江ノ島「ちょっと、いろいろあったんだ」 

苗木「……?」 

江ノ島「目、つむって」 

苗木「えっ?」 

江ノ島「そしたら教えてあげる」 

苗木「う、うん……つむったよ……?」 

江ノ島「……」 

926: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:16:30.11 ID:j5e1/Cczo

江ノ島「目、開けないでね?」 

苗木「うん」 

江ノ島「……」 

苗木「江ノ島さん?」 

江ノ島「もう少し、そのままでいて」 

苗木「うん……」 

苗木(そういえば前にもこんなのあったな……) 

苗木(あ、江ノ島さん近づいてきた) 

苗木(……) 

苗木(いい匂いだな……なんか、安心する……) 

苗木(また近づいてきた。江ノ島さんの息遣いが聞こえてくる……) 

苗木(うぅ……まだ開けちゃダメなのかな……すごくドキドキするんだけど……)/// 


江ノ島「目、閉じたまま聞いてね……返事しなくていいから……」 

苗木「……?」 

江ノ島「……」 

江ノ島「あのね……」 

江ノ島「苗木……好きだよ……」 


チュッ 


927: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:17:25.06 ID:j5e1/Cczo

江ノ島「ん……」 

苗木「んぅ!?」ゴクン 

江ノ島「ふうっ」 

苗木「え、えええ江ノ島さん!?」/// 

江ノ島「ファーストキス、しちゃった……」 

苗木「なっ!?」 

江ノ島「えへへっ」 

苗木「て、ていうか今……何か飲ませ……」フラッ 

江ノ島「おっと、危ないよ」ガシ 

苗木「あ、れ……?」 

苗木(なんだこれ……) 

江ノ島「安心して」 

苗木(なんだか……眠く……) 

江ノ島「ただの睡眠薬だから」 

苗木(睡眠……薬……?) 

江ノ島「罪木ちゃん特製のね。超即効性なんだ」 

苗木(なんで……) 

江ノ島「……」 

苗木(江ノ島……さん……?) 

江ノ島「ばいばい、苗木」 

苗木(……?) 

江ノ島「今の、このあたしのこと……忘れないでね……」 

苗木(……) 

江ノ島「じゃあね」 

苗木(……) 

江ノ島「……苗木のこと、好きになれてよかったよ」 


キィ 

バタン… 


928: ◆3Exch9p5tM 2013/11/02(土) 23:18:41.43 ID:j5e1/Cczo
no title


たぶん次で終わりです

937: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:16:41.63 ID:oiRby/vHo

戦刃『ねえ、盾子ちゃん』 

戦刃『苗木くんが『超高校級の絶望』になっちゃうんだって』 

戦刃『だから、苗木くんの人格を書き換えて……それから記憶を消すんだって』 

戦刃『ねえ、盾子ちゃん』 

戦刃『盾子ちゃんはどうしたい?』 

戦刃『私は、どんなことがあっても盾子ちゃんの味方だよ』 



セレス「戦刃さん」 

戦刃「……」 

セレス「戦刃さん?」 

戦刃「あ、ごめん……なに?」 

セレス「江ノ島さんから連絡はありませんの?」 

戦刃「ないよ」 

セレス「そうですか……苗木くん達、遅いですわね」 

十神「確かにな。江ノ島は何をやっているんだ」 

舞園「私ちょっと見て来ましょうか?」 

セレス「そうですわね。お願いします」 

舞園「はい、行ってきますね」 

戦刃「……」スッ 

舞園「戦刃さん?」 

戦刃「……ごめん」 

舞園「え?」 

戦刃「ごめんね、舞園さん。ここは通せないの」 

十神「……!」 

舞園「それって、どういう……?」 

戦刃「……」 

十神「ちっ、そういうことか。貴様、江ノ島に話したな?」 

舞園「ええっ!?」 

938: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:17:21.16 ID:oiRby/vHo

戦刃「……」 

十神「何を企んでいる?」 

戦刃「苗木くんの記憶は……盾子ちゃんとの思い出は、消させない」 

石丸「だ、だが! それでは苗木くんが『絶望』してしまうのだぞ!?」 

戦刃「そんなことはさせない」 

朝日奈「えーと……つまり……?」 

セレス「……なるほど。江ノ島さんを『超高校級の絶望』に戻すのですね」 

山田「なんですとー!!?」 

戦刃「……」 

十神「そこを通せ」 

戦刃「嫌」 

十神「ふん。……大神、戦刃を退けろ」 

大神「しかし……」 

戦刃「……」 

十神「……今のうちにもう片方のドアから出ろ、桑田」ボソッ 

桑田「……おう」スッ... 


パァン!! 


桑田「おおう!!?」 

十神「なっ!?」 

朝日奈「い、戦刃ちゃん……それ……銃!?」 

戦刃「ゴム弾だから死にはしないよ」 

セレス「本気なのですね」 

戦刃「うん。私の戦場は、ここって決めたから」 

大神「どうする。やはり我が行くか……?」 

十神「……」 

939: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:17:52.49 ID:oiRby/vHo

舞園「待ってください」 

十神「なんだ?」 

舞園「戦刃さん。これが、あなた達の選んだ答えなんですよね?」 

戦刃「……うん」 

舞園「後悔していませんか?」 

戦刃「してないよ」 

舞園「そうですか……」 

戦刃「……」 

舞園「では、仕方ありませんね」 

戦刃「!」 

十神「おい!」 

舞園「本人が決めたことですし、それに……たぶん教室にいる私達じゃどうしようもないです」 

十神「どうしてそう思う?」 

舞園「ふふっ、ただの勘ですよ」 

十神「……ちっ」 

戦刃「……」 

戦刃「ありがとう」 



セレス「嘘がお上手ですね」 

舞園「嘘は言ってないですよ。戦刃さんは誰も通さないだろうし、この教室にいる私達にはどうしようもないです」 

セレス「まあ、そうでしょうね……彼と、彼女次第ですか……」 

舞園「はい」 

セレス(貴女はこれを見越して外に出たのですか? 霧切さん……) 

―――― 

―― 



霧切「ふぅん。そういうこと」 

霧切「とりあえず、そうね……」 

霧切「江ノ島さんの部屋にでも行ってみましょうか」 

940: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:18:27.45 ID:oiRby/vHo

物理準備室 


江ノ島「懐かしいな……」 

江ノ島「この機械で更生させられたの、もう3ヶ月も前なんだよね」 

江ノ島「それとも、まだ3ヶ月かな?」 

江ノ島「まさかもう一度使うことになるなんてねえ……」 

江ノ島「うぷぷぷ。絶望的なジョークみたい」 

江ノ島「うぷぷ……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「よし……」ピッ 


ジジ...ウイーン... 


アルターエゴ『こんにちは、ご主人タマ!』 

江ノ島「はは、なにこれ。不二咲ってばこんなの搭載してたんだ」 

アルターエゴ『あ、あれ? 江ノ島さんがなんで……』 

江ノ島「ごめんね。セーフモードに移行、っと」カタタ 

アルターエゴ『待っ――――』ブツン 

江ノ島「さーて、あたしの人格データはどこにあるのかなー?」 

941: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:19:05.12 ID:oiRby/vHo

江ノ島の部屋 


カチ…カチリ… 

カタンッ 


霧切「邪魔するわよ」ガチャ 

霧切「苗木くんの部屋の鍵を開けてきた経験がここで活きるなんてね」 

霧切「あら? これは……」 

苗木「……」スー、スー 


霧切「 苗 木 く ん が 1 人 で 寝 て い る で す っ て ? 」 


霧切「これは……」 

霧切「……」ゴクリ 

霧切「ふ……ふふ……」 

霧切「うふふ……失礼するわよ、苗木くん……」 


ギシ… 


苗木「……」スー、スー 

霧切「ハァ……ハァ……」 

霧切「やっぱり苗木くんに馬乗りになるのは最高ね」ゾクゾク 

霧切「うっ、いけない、また鼻血が出てしまうところだったわ……」 

942: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:19:43.61 ID:oiRby/vHo

霧切「ふう。落ち着いたかしら」 

霧切「さて、それじゃ……」 

霧切「失礼するわよ、苗木くん」 


バシンッ!! 


苗木「いったあああ!!!?」 

霧切「おはよう、苗木くん」 

苗木「き、霧切さん? 何を……?」 

霧切「ええ、あなたの正妻の響子よ。寝ていたようだからビンタで起こしてみたの」 

苗木「は? 正妻? へっ??」 

霧切「そんな分かり切ったことよりも、今はもっと気になることがあるんじゃないの?」 

苗木「気になること……? あ、あれ? そういえば江ノ島さんは?」 

苗木(確か……ばいばい、って……) 

霧切「おそらく物理準備室よ」 

苗木「物理準備室?」 

霧切「ねえ、苗木くん。あなたに面白い話を聞かせてあげるわ」 

苗木「……?」 

霧切「きっかけは、葉隠くんの占いだったわ――――」 

943: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:20:12.34 ID:oiRby/vHo

物理準備室 


『該当の人格データを発見しました』ピピッ 


江ノ島「あったあった」 

江ノ島「標準人格データサンプルフォルダ……こんな所に隠してたのね」 

江ノ島「悪用されるのが嫌なら消しちゃえばよかったのに」 

江ノ島「でもまあ、不二咲も苗木に負けないくらいお人好しだもんね。勇気がちょっと足りてないけど」 

江ノ島「あたしの元の人格、消せなかったんだろうな……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「さて、と」 

江ノ島「確か頭にこの輪っかみたいなの着ければいいんだよね……」カチャッ 

江ノ島「えーっと……」 

江ノ島「フルインストール、かな?」ピッ 


『人格のフルインストールが選択されました』 

『部分インストールと違い、書き換え及び書き換え準備スキャンに時間がかかります』 

『また、フルインストールでは人格の大幅変化による精神破綻の危険があります』 

『人格のフルインストールを実行しますか?』 


江ノ島「……」 

江ノ島「怖くない……怖くないよ……」 

江ノ島(苗木にもらったロケットペンダントがあるから……あたしは大丈夫……)ギュッ 

江ノ島「……」 

江ノ島「よし……」ピッ 


『人格のフルインストールを準備しています』 

『機器を頭に取り付け、横になってください』 


江ノ島「このベッド、あんまり寝心地よくないんだよねえ。ははっ」 

江ノ島「はは……」 

944: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:20:53.46 ID:oiRby/vHo

『機器の接続が確認されました』 

『既存人格のスキャンを行っています。しばらくお待ちください』 


江ノ島「……」 

江ノ島「はぁ……」パカッ 

江ノ島「苗木と撮ったプリクラ、ここに入れといてよかった」 

江ノ島「苗木の写真見ながらだったら、怖くないよ」 

江ノ島「えへへ……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「苗木、怒るかなあ……」 

江ノ島「怒ってくれるといいな……」 

江ノ島「でもね、あたしのせいで苗木の記憶がなくなるくらいなら……あたしはもう一度『絶望』に戻るよ……」 

江ノ島「……ううん」 

江ノ島「苗木のためじゃない」 

江ノ島「苗木があたしとの3ヶ月を忘れるのが怖いから……」 

江ノ島「結局は、あたしのためだし? 苗木のためじゃないし?」 

江ノ島「そもそも苗木があたしとの思い出忘れたら、たぶんあたし『絶望』するもんね!うぷぷぷ!」 

江ノ島「うぷぷ……」 

江ノ島「……」 

江ノ島「苗木ぃ……怖いよ……」ジワ… 


バタン! 


苗木「江ノ島さん!!」 

江ノ島「なえ……ぎ……?」 


ピー 


『スキャンが終了しました』 

『インストール人格を最適化しています。接続を解除しないでください』 

『接続を解除した場合、人格構造に重大な問題が発生する可能性があります。接続を解除しないでください』 

945: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:21:33.34 ID:oiRby/vHo

江ノ島「なんで……なんで苗木が……?」 

苗木「霧切さんに、全部聞いたよ」ハァ、ハァ… 

江ノ島「霧切……? ああそっか、お姉ちゃん残念だもんね、あはは……」 

苗木「江ノ島さん、とりあえずその装置を外そう!」 

江ノ島「さっきの警告聞いたでしょ? もう取り外せないんだよ」 

苗木「そんな!」 

江ノ島「来るのが少し遅かったね」 

苗木「なんで、こんなことを……!」 

江ノ島「……」 

苗木「思い出ならまた作ればいいじゃないか! いくらでも付き合うから!!」 

江ノ島「……」 

苗木「せっかく……せっかく江ノ島さんは普通の女の子になれたのに!!」 

江ノ島「……」 

苗木「僕のせいだ……全部……」 

苗木「ああ……全部、僕のせいだ……!!」 

苗木「僕が君を壊した!! 僕が君を歪めた!!!」 

江ノ島「それは違うよ、苗木」 

苗木「でも! そもそも僕が君の人格を書き換えたから!!」 

江ノ島「あたし、言ったよね?」 

江ノ島「今が楽しいんだ、って」 

江ノ島「更生させてくれてありがとう、って」 

946: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:22:08.94 ID:oiRby/vHo

苗木「じゃあなおさらだよ! 江ノ島さんが『絶望』に戻る必要なんてない!!」 

江ノ島「ううん……」 

江ノ島「大好きな人が『絶望』するなんて耐えらない」 

江ノ島「それを防ぐために、大好きな人の記憶から消えることは……もっと耐えられない……」 

江ノ島「だから……」 

苗木「でもっ!! その好きっていう感情だって、僕のせいじゃないか!?」 

江ノ島「……」 

苗木「普通の女の子になれた君の初恋は、僕が歪めてしまったじゃないか!!」 

江ノ島「苗木……」 

江ノ島「たとえきっかけがそうだとしても……」 

江ノ島「あたしは、苗木を好きになれてよかったよ」 

苗木「……え?」 

江ノ島「理屈じゃないんだよ。恋愛を知ったばっかのあたしが言うのもなんだけどさ、好きになった理由なんてどうでもいいんだ」 

江ノ島「きっかけが書き換えられたものでも構わない。江ノ島盾子は苗木誠に恋をした」 

江ノ島「優しいところが好き」 

江ノ島「一緒にいると安心できるところが好き」 

江ノ島「苗木を好きになれて、あたしは幸せだったよ」 

苗木「で、でも……!」 

947: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:22:39.41 ID:oiRby/vHo

『インストール人格の最適化が整いました』 

『残りおよそ3分で、人格のフルインストールを開始します』 


苗木「……!!」 

江ノ島「ねえ、苗木」 

苗木「なに……?」 

江ノ島「あたしね、『絶望』には戻るけど、幸せになるのを諦めてなんかないよ」 

苗木「え?」 

江ノ島「今度はね、この機械に頼らないで更生するの」 

江ノ島「どんなに時間がかかっても……」 

江ノ島「どんなに大変でも……」 

江ノ島「絶対にいつか、もう一度更生してみせる」 

苗木「更生……」 

江ノ島「そしてね……」 

江ノ島「そして、もう一度、苗木に恋をするんだ」ニコ 

苗木「……!」 

948: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:23:08.97 ID:oiRby/vHo

江ノ島「あたしは一度、『絶望』に戻るよ」 

江ノ島「けどね、楽しかったこの3ヶ月の記憶がある」 

江ノ島「苗木との……ううん、みんなとの思い出があるから……」 

苗木「思い出……?」 

江ノ島「舞園たちと仲良くなれた思い出がある」 

江ノ島「妹ちゃんと友達みたいに遊んだ思い出がある」 

江ノ島「お姉ちゃんの大切さを知った思い出がある」 

江ノ島「大勢でパーティをして楽しんだ思い出がある」 

江ノ島「そして……苗木に恋をした思い出がある」 

苗木「……」 

江ノ島「このたくさんの思い出が、あたしの『希望』なんだ」 

苗木「『希望』……」 

江ノ島「うん。だから、あたしは大丈夫」 

苗木「……」 

江ノ島「あたしも苗木も、一緒にハッピーエンドを迎えたい」 

江ノ島「『絶望』なんかに負けないで、頑張ろうよ」 

苗木「……」 

苗木「江ノ島さんは、強いね……」 

江ノ島「知らなかったの? 恋する乙女は強いんだから!」 

苗木「はは……」 

江ノ島「ふふっ……」 

949: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:23:54.02 ID:oiRby/vHo

『残りおよそ1分で、人格のフルインストールを開始します』 


江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「ねえ、あたしが『絶望』に戻っても見捨てないでくれる?」 

苗木「当たり前じゃないか」 

江ノ島「ほんと?」 

苗木「うん」 

江ノ島「ほんとにほんと?」 

苗木「約束するよ」 

江ノ島「もし更生できなかったら、一緒に『絶望』になってくれる?」 

苗木「えええ!?」 

江ノ島「ぷっ、くくっ、冗談だよ」クスクス 

苗木「えっ酷い!?」 

950: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:24:21.21 ID:oiRby/vHo

『残りおよそ30秒で、人格のフルインストールを開始します』 


江ノ島「……」 

苗木「……」 

江ノ島「ねえ、苗木……」 

苗木「うん?」 

江ノ島「あたし、怖い……」 

苗木「……」 

江ノ島「頭、撫でててくれる?」 

苗木「お安い御用だよ」ナデ… 

江ノ島「えへへ……念願の苗木のナデナデだあ……」 

苗木「念願って……はは……」 

江ノ島「今までに2回も拒否られてるからね」 

苗木「あ、あの状況じゃ仕方ないじゃないか!」/// 

江ノ島「でも今撫でてくれたから許す!」 

苗木「ありがとうね、江ノ島さん」 

951: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:24:49.57 ID:oiRby/vHo


『残りおよそ10秒で、人格のフルインストールを開始します』 


江ノ島「ねえ……」 

苗木「なに?」 

江ノ島「あたし、更生できるよね……?」 

苗木「もちろんさ。僕も手伝う」 

江ノ島「ふふっ……そうだよね……」 



江ノ島「あたしに『希望』を教えたのは苗木なんだから、責任とって更生させなさいよね!」 



『エノシマさんがクロにきまりました』 

『じんかくのフルインストールをかいしします』 



end 

953: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:35:04.86 ID:oiRby/vHo
終わったー!長かった! 
本編はここまでです。 
エピローグを明日1レスだけ投下するつもりだったけど、ちょっと唐突感があるんで今から書いてきます。

954: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:57:50.76 ID:oiRby/vHo

苗木(結論から言うと……) 

苗木(江ノ島さんは1週間も経たずに更生した) 



2月14日 



江ノ島「苗木ー、あたしの本命チョコあげる!」 

苗木「わあ、ありがとう江ノ島さん! 家族以外からチョコをもらうなんて初めてだよ!」 

江ノ島「ふふん! 感謝するのだぞ!」 

苗木「うん!」 

江ノ島「ところでこのチョコレートですが……」 

苗木「ん?」 

江ノ島「私が一生懸命、それはもう頑張って作ったものです。プライスレスです」 

苗木「うん……」 

苗木(ああ、このパターンは……) 

江ノ島「だからー、苗木くんからのホワイトデーの3倍返し、すっごい期待してるよー!」 

苗木「あはは、頑張るよ……」 

江ノ島「あたしが満足できなかったらその唇を奪うからなッ!」 

苗木「ええ!?」 

舞園「江ノ島さん!」 

霧切「それは協定違反よ!」 

江ノ島「協定? なんだっけそれ? うぷぷぷ!」 


ギャーギャー 


セレス「……」 

戦刃「ふふふ、盾子ちゃん楽しそう」 

955: ◆3Exch9p5tM 2013/11/03(日) 22:58:58.85 ID:oiRby/vHo

セレス「なんともまあ、あっさりと更生したものですね」 

戦刃「うん」 

セレス「貴女は最初からわかっていたのですか?」 

セレス「『絶望』に戻った彼女がすぐに更生すると」 

戦刃「確証はなかったよ。でも、たぶんこうなるって思ってた」 

戦刃「盾子ちゃんは産まれたときから『絶望』だったから」 

セレス「どういうことですか?」 

戦刃「産まれたときからすべてに『絶望』してた」 

戦刃「産まれたときからすべてに飽きていた」 

戦刃「産まれてときから『絶望』以外を知らなかった」 

セレス「……」 

戦刃「そんな盾子ちゃんが、『希望』を知ったから……」 

戦刃「『希望』の暖かさを知ったから、盾子ちゃんの心は『絶望』よりも『希望』を選んだ」 

戦刃「それだけの話だよ」 

セレス「はぁ……」 

セレス「まったく、学級裁判で騒いでいたのがバカらしいほどのハッピーエンドですわね」 

戦刃「うん。よかったね」 

セレス「……そうですわね」 



江ノ島「だから最初に食べるのはこの私様のチョコに決まってんだろ!!」 

舞園「いいえ私のです!!」 

霧切「苗木くん、早く私を食べなさい!!」 

苗木「」 

セレス(まあ、苗木くんは今朝すでに私のチョコを食べているのですけどね) 

戦刃「ふふっ」 



End.