211 : ◇GKcmsITYJ1lx[saga] 2014/09/30(火) 10:34:39.32 ID:6jEyYUn+0
◆音ノ木坂クエスト 〜Ver.幸福なお姫様〜◆ 

――五月十一日(金曜日) 帰宅後 居間 雪穂 

穂乃果「……はぁ〜。守られるだけのお姫様とか、昨日は意味分からないこと言われたなぁ」 

穂乃果(にこ先輩は一体何を言いたかったんだろう?) 

穂乃果(海未ちゃんが無理して王子様をやってた……かぁ。そうだったのかな?) 

穂乃果「あぁ〜もう。訳わかんないよぉ」 

雪穂「ただいま〜」 

穂乃果「おかえり」 

雪穂「お姉ちゃん日に日に元気なくなっていってない?」 

穂乃果「何それ?」 

雪穂「本当に自覚ないの?」 

穂乃果「自覚ないも何も、別に元気がないわけじゃないし。二日前にも似たようなこと言ってなかった?」 

雪穂「言いたくなるくらいにお姉ちゃんが元気ないんでしょ」 

穂乃果「もう、雪穂うるさい。私部屋に行くから」 

雪穂「まだ話は終わってないよ!」 

穂乃果「私には雪穂の無駄話に付き合ってる暇はないの」 

雪穂「……お姉ちゃん」






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212 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:35:31.65 ID:6jEyYUn+0
――穂むら カウンター内 

雪穂「ねぇ、お母さん。今ちょっといいかな?」 

ママ「今は特にお客さん居ないからいいけど。何か食べる?」 

雪穂「ここで食べるのお母さんの悪い癖だよ」 

ママ「だって、奥で食べててお客さんが来たら困るじゃない」 

雪穂「店主がカウンターで商品食べてる方が反応に困るよ!」 

ママ「別にいいじゃない。大体は古くからの常連のお客さんなんだから」 

雪穂「一見さんにも気を配ってよ」 

ママ「雪穂はうるさいわねぇ」 

雪穂「お姉ちゃんみたいに私が悪いみたいに言わないでよ」 

ママ「ふぅん。ということは、話って言うのは穂乃果のことなのね」 

雪穂「……うん」 

ママ「もう少し考える力を養ってくれれば、あんな風に腑抜けたりはしなかったんだけどね」 

雪穂「あんなお姉ちゃん今まで見たことないよ」 

ママ「今まではことりちゃんと海未ちゃんがいつでもあの子の傍に居てくれたから」 

雪穂「そうだよね」
213 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:36:08.00 ID:6jEyYUn+0
ママ「でも、正直私としてはありがたかったわ。これが高校卒業してからだったら大変なことになってたもの」 

ママ「穂むらを継ぐ前にこういう経験を与えてくれたことに感謝ね」 

雪穂「お母さん酷いよ!」 

ママ「酷いも何も、本当のことでしょ? あんな状態じゃお店を手伝わせることだって出来ないもの」 

雪穂「っ! お母さんはお姉ちゃんとお店どっちが大事なの!?」 

ママ「それって比べるような事じゃないでしょ」 

雪穂「そうだよ、比べることじゃないよ! だからこそお姉ちゃんをどうにかするべきでしょ」 

ママ「当人が何もする気がないのに手を貸したら、またいつか同じことの繰り返しになるわ」 

雪穂「繰り返しになったっていいじゃんか。その時もまたお姉ちゃんなら誰かが手を貸してくれるよ」 

ママ「それで誰も手を貸してくれなければ潰れちゃうってことでしょ」 

雪穂「誰も手を貸さないなんてことありえない。だって、お姉ちゃんなんだよ?」 

ママ「それは勝手な推測。未来なんて誰にも分からないのよ」 

雪穂「分かることだってあるよ。だってそれがお姉ちゃんの魅力だもん!」 

ママ「はぁ〜。あんたのお姉ちゃんっ子もいい年なんだから直しなさい」 

雪穂「家族を大事に思う気持ちに年は関係ないよ」 

ママ「あのね、雪穂。大切にすることと甘やかすことは別物なの」
214 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:36:42.94 ID:6jEyYUn+0
雪穂「……」 

ママ「女の子にとって十六歳から責任ある行動を心がけないといけないのよ」 

雪穂「だからって、お姉ちゃんに何もしないのはおかしいじゃんか」 

ママ「何もするなって言ってないわ。甘やかすなって言ってるの」 

雪穂「もういいよ。お母さんにもう頼らないから!」 

ママ「やれやれ、短気は損気よ。どんな時でも冷静になれるようになって漸く大人の仲間入り」 

雪穂「大切な家族に対して冷たくするくらいなら、私はずっと子供でいいよ」 

ママ「言った直ぐ後に冷静さを失う。……本当に私の子なのかしら」 

ママ「まぁいいわ。これ上げるから《友達》と一緒に見てきて、少しは頭を冷静にしてきなさい」 

雪穂「何かしんないけどそんな物要らないよ! お母さんのことなんてもう知らない!」 

ママ「そんな物って失礼ね。今日これから開催されるUTXのスクールアイドルのライブチケットなのに」 

雪穂「――」 

ママ「要らないっていうのなら、これはゴミ箱入りになっちゃうわね」
215 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:37:31.34 ID:6jEyYUn+0
雪穂「どっ、どうしてそんなプレミアムチケットをお母さんが持ってるの!?」 

雪穂「ことりさんがメンバー入りして初めてのライブということで、一分で即完売したって話しだし」 

雪穂「今回はことりさんに対するアンチが余りにも多かったから特別なイベントが開催されるからより価値があるって」 

ママ「特別なイベント?」 

雪穂「ツバサさんがファンに対して、今回のライブでことりさんがA-RISEに相応しいかどうか決めてもらうって」 

雪穂「見に来たファンの半数以上が相応しくないと判断した場合、ことりさんはA-RISEから脱退するんだって」 

ママ「それってことりちゃんが必要とされてないってこと?」 

雪穂「ううん、その逆。A-RISEのサイトでも二人の個人のブログでも絶対の自信があるって書いてあった」 

ママ「つまり、これはお披露目+ことりちゃんへの認識を一気に変えるライブになるのね」 

雪穂「そうだよ。そんなことも知らないお母さんがどうして……?」 

――― 
―― 
216 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:38:11.29 ID:6jEyYUn+0
(前日夜 穂むら) 

ことり「こんばんは」 

ママ「あら、ことりちゃん。卒業式以来だけど、なんだか久しぶりなような気がするわね」 

ことり「お久しぶりです」 

ママ「来てくれたのにごめんね。穂乃果は今お風呂入ってるのよ」 

ことり「それなら丁度良かったです。時間がないし、今は心を強く保たないといけないから」 

ママ「何かあるの?」 

ことり「はい、色々とちょっと」 

ママ「まぁいいわ。穂乃果に用事じゃないとなると、普通にお買い物かしら?」 

ことり「いえ、これを穂乃果ちゃんを連れてきてくれるような人に渡して下さい」 

ママ「これは?」 

ことり「明日、私が参加するA-RISEの初ライブなんです。そのチケット二人分入ってます」 

ママ「海未ちゃんに渡せばいいのかしら?」 

ことり「海未ちゃんは自分のライブが近いって話を聞いたので、他の人がいいんです」 

ママ「となると……雪穂でいいのかしら?」
217 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:38:54.64 ID:6jEyYUn+0
ことり「はい。雪穂ちゃんなら、アイドルに興味ない穂乃果ちゃんでも連れてきて貰えますね」 

ママ「普通にことりちゃんが出るなら行くと思うけど」 

ことり「……そう思いたいですけど、自信がなくて」 

ママ「穂乃果のことりちゃんと海未ちゃんへの大好きは家族以上よ。そこは自信持っていいわ」 

ことり「はいっ!」 

ママ「それで、これって一枚幾らなの?」 

ことり「招待券扱いなのでお金は掛かってません」 

ママ「普通に買うと幾らするの。アイドルのライブとか私も縁がなくってね」 

ことり「一枚二千円です。普通のアイドルと違ってスクールアイドルなんで安いんです」 

ママ「じゃあ、これ。二人分だから四千円ね」 

ことり「ですから、これはお金掛かってないですからっ!」 

ママ「受け取って頂戴。母親なのにあの子に対して何も出来なかったから。せめてこれくらいさせて、ね?」 

ことり「でも……」
218 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:39:39.13 ID:6jEyYUn+0
ママ「お願い。母親としてカッコ付けさせて」 

ことり「……はい、分かりました。あの、まだお店の営業時間は大丈夫ですか?」 

ママ「本当に穂乃果の友達っていうのが勿体ないくらいに良い子ね」 

ことり「海未ちゃんには負けますけど、ことりも穂むらのお饅頭好きですから」 

ママ「分かった。でも、上限は二千円までよ。それ以上の買い物はNGですからね」 

ことり「では二千円で買えるだけお饅頭下さい」 

ママ「それじゃあ、サービスしておくわね。明日のライブ頑張って」 

ことり「ありがとうございます」 

ママ「ことりちゃんは随分と強くなったのね」 

ことり「私の強さの半分は穂乃果ちゃんと海未ちゃんがくれたんです。だから、もっともっと強くなりたいです♪」 

ママ「そう思える気持ちがあるなら、直ぐに本物の強さに変わるわ」 

――― 
―― 
219 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:40:15.39 ID:6jEyYUn+0
ママ「そんなことは今は関係ないでしょ。要るのか要らないのか」 

雪穂「要る、要ります!」 

ママ「でもな〜お母さんのことなんてもう知らないとか言っちゃう娘だしねぇ」 

雪穂「ごめんごめん! 謝るから、お母さん大好き!」 

ママ「くすっ。そういうところを見ると穂乃果そっくりよね」 

雪穂「なんだろう、お姉ちゃんのことは好きだけどそう言われるのは釈然としない」 

ママ「ほら、これ見てあのお馬鹿にことりちゃんの強さを与えて貰ってきなさい」 

雪穂「お姉ちゃんの馬鹿は否定出来ないなぁ」 

ママ「無駄口叩いてないで、行ってきなさい」 

雪穂「はぁい! お母さん、ありがとうね!」 

ママ「調子が良いところもそっくりね。まったく、面倒な姉妹になったことだこと」
220 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:40:54.35 ID:6jEyYUn+0
――放課後 二年生の教室 にこ 

にこ「悪いわね。呼び出しちゃって」 

ミカ「いえ、一年生の方が今日は早く終わったので」 

にこ「時間がないし端的に言うけど、南ことりの家を知ってる?」 

ミカ「知ってますよ。中学の頃とか普通に遊んでましたし」 

にこ「よし! 一つ頼まれ事してくれない? 無駄足になる可能性が高いんだけど」 

ミカ「なんでしょうか?」 

にこ「海未に似合うドレスのデザインをことりが持ってたら、悪いんだけど今日中に入手して欲しいの」 

ミカ「海未ちゃんに似合う……ですか? 穂乃果だったら持ってると思いますけど、海未ちゃんとなると」 

にこ「ことりって子に会ったことはないけどね、幼馴染の可能性ってやつを私は信じたいの」 

ミカ「幼馴染の可能性?」 

にこ「なかったら普通に考えるからいいわ。もし、会ったら……海未への最高のサプライズになるでしょ?」 

ミカ「そうですね。きっと恥ずかしがって文句言うでしょうけど」 

にこ「で、悪いんだけど手に入れられたら最速で渡して欲しいの。他にもやらなきゃいけないこと沢山で」 

ミカ「分かりました。にこ先輩の頑張りに応えたいですから」 

にこ「ありがとう。海未もあなたもいい子ばかりね」
221 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:41:33.50 ID:6jEyYUn+0
――UTX劇場内 穂乃果 

穂乃果「ねぇ、雪穂。どうして皆してあんな風にことりちゃんの悪口を言うの?」 

雪穂「お姉ちゃん知らないの!?」 

穂乃果「うん」 

雪穂「スクールアイドルの甲子園って言われてるラブライブは知ってる?」 

穂乃果「ううん、何それ」 

雪穂「海未さんだけじゃなくて、ことりさんもスクールアイドルになったって言うのに……」 

雪穂「簡単に言えば高校野球の甲子園みたいな全国ナンバー1のグループを決める大会があるの」 

穂乃果「へぇ〜」 

雪穂「ことりさんが入ったグループは去年のその大会で二位という大きな結果を残したんだよ」 

雪穂「結果的に二位だったけどね、その後の勢いは優勝したグループの比じゃない」 

穂乃果「つまり今一番波に乗ってるグループにことりちゃんが入ったってことだよね」 

雪穂「凄い栄光なことだけど、元々のファンの人にとってはことりさんのことが好ましくないみたい」 

雪穂「もっとも、ことりさんのことを見て応援してくれる人も居るんだけどね。それ以上に……ね」 

穂乃果「酷い! ことりちゃん程可愛い子なんて他に居ないのに!」
222 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:42:08.90 ID:6jEyYUn+0
雪穂「そんなこと私に言われたって困るよ!」 

穂乃果「ことりちゃんもことりちゃんだよ。なんでそんな事言えるような人達の前で歌うの?」 

雪穂「応援してくれる人の為なんじゃないかな? 勿論、自分の為でもあるんだろうけど」 

穂乃果「でも、応援してくれる人の方が少ないんでしょ? おかしいよ!」 

雪穂「他の誰でもない、ことりさんだよ?」 

雪穂「例えばさ、全世界が敵になってもお姉ちゃんと海未ちゃんが応援してくれれば立ち向かえる人だよ、絶対に」 

穂乃果「……ことりちゃん、だもんね」 

雪穂「それに一度引き受けたことを無責任に放り出すような人じゃないでしょ?」 

穂乃果「勿論だよ。ことりちゃんは実は海未ちゃんと同じくらい責任感が強い子なんだから!」 

雪穂「だからこんな状態でも逃げ出したりなんてしない。夢も掴んで、今の幸せも手放さない。凄い人だよ」 

穂乃果「……うん、だってことりちゃんは穂乃果の自慢。穂乃果の理想の女性像だもん」 

雪穂「そろそろ始まる時間だよ。今日の衣装のデザインしたのって、全部ことりさんなんだって」 

雪穂「普通に授業もあって、スクールアイドルの練習もありながら、衣装のデザインまで手がける」 

雪穂「時間がいくらあっても足りないよね。それでも、ことりさんは頑張ってるんだよ」 

穂乃果「ことりちゃん」
223 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:43:05.59 ID:6jEyYUn+0
――夕方 お婆ちゃんのお店 にこあんえり 

絵里「せめて後一週間あれば余裕なのに!」 

あんじゅ「現実っていつもこんなだよね」 

にこ「五十ページも書いてきた海未の所為よ。時間がないのにこんな量を書きやがってからに!」 

絵里「作詞の方は出来そう?」 

にこ「ええ。今日中に作詞を終えて、あんじゅに作曲をお願いするからね」 

あんじゅ「任せて!」 

にこ「穂乃果の友達がドレスのデザインを入手できれば、夜には海未のドレスを作り始めるわ」 

にこ「作詞が終わって、届くまではあの衣装が完成するかどうかね」 

絵里「それだとにこの休む暇がないじゃない。大丈夫なの?」 

にこ「大丈夫よ。てか、ここで無理出来ないなら部長なんてやってられないわ」 

あんじゅ「流石私の自慢のにこにーお姉ちゃん」 

にこ「それに、いい具合にお母さんが早く帰ってこれる上に連休でご飯の準備しなくていいからラッキーね」 

お婆ちゃん「今日の夕ご飯は私に任せなね。栄養たっぷりのご馳走用意するから」 

にこ「ありがとう、お婆ちゃん。本当にありがとう」 

あんじゅ「ありがとうございます♪」 

絵里「私までお邪魔しちゃって申し訳ありません」 

お婆ちゃん「にこちゃんの周りに笑顔が咲く。こういう光景を見るとね、すごく嬉しいんだよ」
224 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:43:45.23 ID:6jEyYUn+0
お婆ちゃん「それから、二人も遠慮せずに甘えてくれていいんだよ」 

にこ「地獄の月曜日までを乗り越えたらお婆ちゃん孝行にお店のことでも何でも手伝うにこ〜」 

あんじゅ「私もいっぱいお手伝いするにこ〜」 

絵里「その時は私も微力ながら手を貸します」 

お婆ちゃん「そうかいそうかい。じゃあ、その時もまたみんなでご飯食べようね」 

佐藤「こんにちは。もう、こんばんはかしら?」 

にこ「佐藤のお姉さん。今日もわざわざありがとうございます!」 

佐藤「早速だけど、昨日まで思い違いしてたんだけど、今回のこれはミュージカルではないのよ」 

にこ「そうですけど」 

佐藤「動きがない状態でいいのなら可能性が出てきたわ。両サイドの人間が紐を引っ張っておくのよ」 

あんじゅ「そうするとどうなるんですか?」 

佐藤「これによってかぼちゃパンツの魔法が完成する筈よ。実際にやれるかどうか時間もないし厳しいけど」 

絵里「可能性が見えたのならやるだけです」 

佐藤「舞台にも上がらない子がドレスってのが浮いてるけど、その辺はそっちはどうするつもりかしら?」 

にこ「そこなんだけどね、途方もない苦肉の策を考えてるんだけど現実的じゃないかなって」 

あんじゅ「何々? 私が手伝えることがあるなら言って」 

絵里「漸く全貌が明らかになったんだもの。全部吐き出しちゃいなさいよ」
225 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:44:20.32 ID:6jEyYUn+0
にこ「本当に現時的じゃないのよ? 仮装パーティーみたいな状態での来場を予定すれば二つの意味で誤魔化せる」 

あんじゅ「そっか、他校の制服も仮装の一つってことだね」 

絵里「でも部活紹介一つにそんな手間掛けてまで見に来てくれる人居るかしら?」 

にこ「そうよね。しかも、開催が三日後だものね」 

あんじゅ「……ううん、大丈夫かもしれない」 

にこ「え?」 

あんじゅ「聞いた話だと音ノ木坂体験が良い感じに働いて運動部からは好感度高いんだって」 

あんじゅ「運動部ってほら、元々ユニフォームとかあるし、そういうノリ良いと思うんだよ」 

絵里「一理あるわね」 

お姉さん「ふむふむ、面白い話してるじゃない」 

にこ「内田のお姉さん。今日もありがとう」 

お姉さん「ていうか、そんな面白い案があるなら言ってよ。私を何サークルだと思ってるの?」 

にこ「演劇サークルじゃなかったらここに呼んでないわ」 

お姉さん「そう、演劇サークル。そして、私はみんなの弱みを握っている悪徳作家!」 

あんじゅ「おぉっ! 凄い邪道なことをまるで正しいみたいに言っててカッコ良い〜!」 

佐藤「今のはチームに一人居るだけで崩壊するような発言ですよ」 

絵里「……にこ、あなたきちんとあんじゅの育成するのよ。こんな風にしちゃ駄目だからね?」
226 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:45:02.32 ID:6jEyYUn+0
にこ「どうして私に言うのよ。でも、気を付けるわ」 

お姉さん「衣装なら私のサークルから貸し出すわよ。毒を盛るには酔わせてからってね」 

にこ「意味が分かんないわよ!」 

お姉さん「他校の制服を着てる子が隣に居たら注目されるでしょ。そんなんじゃ致命傷に至らない」 

にこ「……やるからには徹底的にってことね。やってみましょうか!」 

あんじゅ「じゃあ、ポスターに追加で仮装の案内を書いてもらうように電話でお願いするね!」 

絵里「じゃあ私はSMILEのブログで校内行事のことだけど書いておくわ」 

にこ「上手くいけば今回のプロモの一環として音ノ木坂の仮装してる子達は映るって宣伝もね」 

絵里「なるほどね。ミーハーな子も来てくれそうね」 

あんじゅ「観客だけなら海未ちゃんもドレス着せられるなんて思わないだろうしね」 

にこ「ただ、全ての鍵を握るのは穂乃果よ。あの衣装が完成しても、あの子が決断してくれなければ無意味」 

絵里「信じましょう。穂乃果のことは分からないけど、海未がにこに相談するくらいの子なんだもの」 

お姉さん「海未ちゃんも穂乃果ちゃんも幸せ者ね。いい先輩達に囲まれて。私にもそんな先輩欲しかったわ」 

佐藤「無駄になったとしても、完成させることに意義があります」 

お姉さん「でも、穂乃果ちゃんを目立たなくさせる必要があるから、マイク持たせるのは駄目よね」 

佐藤「それなら私がピンマイクを用意します」 

にこ「申し訳ないですけど、よろしくお願いします。では、行動開始!」
227 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:45:59.16 ID:6jEyYUn+0
――夜 穂むら 厨房 穂乃果 

穂乃果「ねぇ、お父さん。今ちょっと話を聞いてもらってもいいかな?」 

穂乃果「あ、ううん。そのまま作業しながらでいいの。ただちょっと聞いて欲しくて」 

穂乃果「相談事って言えるのか分からないんだけど……」 

穂乃果「今日ね、ことりちゃんがスクールアイドルとして初めてのライブがあったんだー」 

穂乃果「最初はね、ことりちゃんのこと悪く言う人達ばっかりで嫌な気分にされたんだよ」 

穂乃果「でもね、ことりちゃんが一曲目を歌っただけで世界が変わったみたいに他の人達の反応が変わったの」 

穂乃果「昔から歌う姿は可愛かったけど、今日のことりちゃんは可愛いだけじゃなくて、凄く綺麗だった」 

穂乃果「穂乃果にはことりちゃんが輝いて見えた。まるで羽が生えた天使みたいだったんだよ」 

穂乃果「胸がドキドキして、大きな元気をもらったの!」 

穂乃果「うん、昔お父さんが泣いてる穂乃果の為にチョコを入れたお饅頭作ってくれたよね?」 

穂乃果「あの時のお饅頭の味を思い出したよ。ふふふっ、今考えると随分お父さんらしくないことしたよねー」 

穂乃果「あははっ。……うん、スクールアイドルって凄いんだってことりちゃんに教えられた」 

穂乃果「海未ちゃんが始めた時は凄く不思議に思ったんだけど、今日その疑問が解けたよ」 

穂乃果「それでね、ついこないだ学校の先輩にこんなこと言われたの」 

穂乃果「ことりちゃんは既に守られてるだけのお姫様じゃないんだって」
228 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:46:35.64 ID:6jEyYUn+0
穂乃果「本当にそうだった。その後こう言われたの。穂乃果はいつまでも甘えてるだけの存在が良いのかって」 

穂乃果「その時は意味が分からなかったんだけど、今ならその言葉の重みを知ったの」 

穂乃果「……」 

穂乃果「うん、お父さんの言う通りだよね。穂乃果はことりちゃんと海未ちゃんに守られてた」 

穂乃果「いつも傍に居てくれたから気づかなかったけど、ずっと心地いい優しさに甘えてたんだね」 

穂乃果「今まで考えなしで行動出来たのも、二人が居てくれるから出来たことだったみたい」 

穂乃果「一人になった途端、雪穂にすら心配されるくらい弱くなって、お母さんにもお説教されるし」 

穂乃果「自慢のお父さんとお母さんの娘なのにみっともないよね」 

穂乃果「今一人なんだって思うと怖くなるけど、今よりも強くなりたい」 

穂乃果「……え? 穂乃果は一人じゃない?」 

穂乃果「あははっ、そっか。そうだよね、今だってお父さんに話を聞いてもらってるんだもんね」 

穂乃果「だったらもういいや。甘えかもしれない、一人で立ってないのかもしれない」 

穂乃果「それでも穂乃果は穂乃果なりに頑張ってみようと思う。勇気を出してみようと思うの!」 

穂乃果「ことりちゃんみたいにキラキラ輝いてみたいから!」 

穂乃果「うん、お父さんありがとう。私元気出た! お饅頭一つ貰ってもいいかな?」 

穂乃果「ありがとう。これを食べ終わったらお母さんにも雪穂にも心配させたこと謝るね」 

穂乃果「それから、お父さん大好き!」
229 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:47:11.89 ID:6jEyYUn+0
――十二日(土曜日)昼 あんじゅ電話中 

元部員『ビックリしたよ。ポスター出来たからコピーして掲示板に張りに来たらさ』 

元部員『運動部の人達が集まって手伝ってくれたんだよ。アッと言う間に終わっちゃった』 

あんじゅ「こないだ言ってたことって本当だったんだ」 

元部員『そんなことで嘘言わないよ。恩に感じてるんだよ』 

あんじゅ「でも、これで失敗出来なくなっちゃう恐怖もあるよ」 

元部員『大丈夫だよ。あんじゅちゃんとにこちゃんだもん。普通じゃ無理なこと平気でやれるよ』 

あんじゅ「私達ってそういうイメージ付いてるんだ」 

元部員『うん! どこまでも高みに上り詰めて欲しい』 

あんじゅ「出来る限り頑張るよ。それから、お疲れ様でした」 

元部員『ううん、他にもあれば手伝うよ』 

あんじゅ「後はもう当日だけだから。音響と照明のお手伝いよろしくね」 

元部員『任せてって、私の担当じゃないけどね』 

あんじゅ「お礼は全部終わった後ににこと一緒に言いに行くから」 

元部員『笑顔を楽しみにしてるね。それじゃあ、楽しみにしてるから』 

あんじゅ「ありがとう。ばいばい……よし! にこっ! ポスターは全部完了だよっ」
230 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:48:12.84 ID:6jEyYUn+0
――矢澤家 にこあん 

にこ「作詞の方はこれで良いと思うけど、見てくれる?」 

あんじゅ「うん! ……海未ちゃんみたいな歌詞だね」 

にこ「海未たちのこと書いてるんだから当然でしょ」 

あんじゅ「後は大急ぎで作曲か〜」 

にこ「大急ぎも大急ぎ。にこにー特急くらい急いで頂戴」 

あんじゅ「すごい遅そう」 

にこ「なんですって!?」 

あんじゅ「うそうそ。期限はどれくらいが好ましいの?」 

にこ「無理は承知で頼むわ。穂乃果の練習時間与えたいから今日の夜までには作って」 

あんじゅ「にこあん特急並みに急がないとだね」 

にこ「勝手に合体するんじゃないわよ。それで、出来そう?」 

あんじゅ「私を誰だと思ってるの? にこの妹なんだよ。普通は無理でも可能にしちゃうんだから♪」 

にこ「悪いわね。本当に、頼りにしてるわ」 

あんじゅ「えへへ」
231 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:48:45.24 ID:6jEyYUn+0
にこ「ゴールが見えそうでまだ遠いけど、これが完成すれば大分近づくわ」 

あんじゅ「ライブ前なのにライブの練習が全然出来てないけどね」 

にこ「朝から昼前まで濃厚な練習したんだし、ライブの方は大丈夫」 

あんじゅ「でも、本番のライブの時は体力的にかなりピンチな気がするんだけど」 

にこ「海未のドレスに穂乃果の方もまだだからね。寝不足なのはしょうがないじゃない」 

あんじゅ「一睡も出来ないかもねっ」 

にこ「どうしてあんたは嬉しそうなのよ」 

あんじゅ「うふふ。人生で一番充実した忙しさを体験してるから、嬉しくて嬉しくて仕方ないの」 

にこ「私は忙しいのはごめんよ。のんびりとしたいわ」 

あんじゅ「のんびりは老後までお預けにしておこうよ!」 

にこ「やれやれ。ともかく作曲の方よろしくね。私はこれからドレス仕立てにお婆ちゃんの所に行くから」 

あんじゅ「了解。完成したらそっちで合流するね」 

にこ「分かったわ。あ、今回は作曲だけじゃなくて、歌入りの曲をRで焼いておいて」 

あんじゅ「面倒をさり気無くステップアップされたけど、分かった!」
232 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:49:27.61 ID:6jEyYUn+0
――夜 穂むら にこ 

雪穂「いらっしゃいませー」 

にこ「……あなた、小柄ね」 

雪穂「は?」 

にこ「何でもないわ。あなたはここのアルバイトかしら?」 

雪穂「いえ、家のお手伝いですけど」 

にこ「ということは穂乃果の妹の雪穂ね」 

雪穂「そうですけど、どちら様……あっ! 音ノ木坂のスクールアイドルのにこさん!」 

にこ「そうよ。SMILEのリーダー矢澤にこ。穂乃果は居るかしら?」 

雪穂「お姉ちゃんなら部屋に居ますけど」 

にこ「悪いんだけど呼んで来てもらえる?」 

雪穂「分かりました。もしお客さん来たら待っててもらうように言って下さい」 

にこ「ええ、任せて」
233 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:50:00.48 ID:6jEyYUn+0
――穂乃果の部屋 

にこ「部屋まで上げてもらわなくてもよかったのに」 

穂乃果「わざわざ来てくれた先輩に立ち話というのも悪いですから。これ、食べてください」 

にこ「ありがとう。ここのお饅頭好きなのよ」 

穂乃果「それで用というのは?」 

にこ「その前に一言。あんた、随分といい顔するようになったわね」 

穂乃果「はい、昨日色々あったんで」 

にこ「ふぅん。ま、細かいことは気にしないわ。明後日の部活紹介の話覚えてる?」 

穂乃果「はい。……えっと、あれですよね。右手を高く突き上げるやつ」 

にこ「全然覚えてないじゃないの」 

穂乃果「だ、だって突然あんな風に言われたら覚えてる訳ないじゃないですか」 

にこ「やれやれ。もう一度だけ言うわ。海未はお姫様の方が向いていると私は思ってる」 

にこ「だから、あんたが王子になって海未をお姫様にする勇気があるなら、心の剣を持って右手を上に突き上げて」 

穂乃果「そうでしたそうでした」 

にこ「……本当に大丈夫なのかしら。大いに不安だわ」
234 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:50:40.98 ID:6jEyYUn+0
穂乃果「私はやる時はやりますから!」 

にこ「そうらしいわね。ま、王子になるならお姫様をエスコートする必要が生まれるわ」 

穂乃果「エスコート?」 

にこ「ミュージカルなら二人で歌いながらって感じだけど、生憎と完全なミュージカルじゃないからね」 

にこ「この曲を練習して、歌えるようにはしておきなさい。時間もないから大変だろうけど」 

穂乃果「これは?」 

にこ「あんたの為に生まれた曲よ。魔法が掛かったら海未に歌ってあげなさい」 

穂乃果「魔法が掛かったら歌う……?」 

にこ「その時になったら自然と分かるわよ。私には時間もないし、そろそろお饅頭食べて失礼するわ」 

穂乃果「お饅頭はきちんと食べて行くんだ」 

にこ「好きだって言ったでしょ。これってあんたのパパが作ってるの?」 

穂乃果「そうだよ」 

にこ「……美味しいわけね。あんまりさ、パパやママに心配させないようにしなさいよ」 

穂乃果「え? う、うん」 

にこ「本当に、美味しいわね」
235 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:51:22.81 ID:6jEyYUn+0
――十三日(日曜日)穂むら 穂乃果 

穂乃果「ふんふんふ〜ん♪」 

雪穂「お姉ちゃん。何聴いてるの?」 

穂乃果「あ、雪穂。これ聴いてみてよ。はい、片耳貸して」 

雪穂「もう、自分で付けられるよ」 

穂乃果「最高の曲なんだよ」 

雪穂「…………なにこれ? お姉ちゃん達三人のことを曲にしてるみたい」 

穂乃果「うん、これは私の学校の先輩達が私の為に作ってくれた曲なんだ」 

雪穂「幸せ者だね」 

穂乃果「いや〜本当だねぇ。なんせこんな可愛い妹まで居るんだから!」 

雪穂「ちょっ!」 

穂乃果「雪穂ってば可愛いなぁ〜。すりすりすり〜♪」 

雪穂「も〜っ! 酔っ払いみたいに絡まないでよ」 

穂乃果「心配してくれてたのに、酷い扱いしてごめんね」 

雪穂「……お姉ちゃん」
236 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:51:56.36 ID:6jEyYUn+0
穂乃果「私は雪穂のお姉ちゃんなのに、全然お姉ちゃんらしくないね」 

雪穂「お姉ちゃんは覚えてる? 私が皆よりも補助輪外すのが遅くてさ、皆にハブられちゃった時あったよね」 

穂乃果「子供って残酷だよね。自分たちも少し前まで補助輪使ってたのに」 

雪穂「ふふっ。だから私も補助輪外してもらったけど、当然練習しないと乗れるわけなくて」 

穂乃果「誰もが通る道だよね」 

雪穂「その通る道で『もうユキは大人になっても自転車乗れなくてもいい!』って癇癪起こしたよね」 

穂乃果「あはは、そう言えばあの頃は自分のことユキって言ってたね。懐かしい」 

雪穂「そこは重要じゃないよ!」 

穂乃果「あの日のことは覚えてるよ。お母さんに怒られたもん」 

雪穂「そうそう、泣き止むまで待ってくれて。それから自転車に乗れることがどれだけ凄いか教えてくれて」 

雪穂「結局夕方も終わるまで練習してた。乗れるようになってからお母さんが探しに来て、すっごい怒られたよね」 

穂乃果「あの時のお母さんには角が生えてたね」 

雪穂「でも、その後に抱きしめて自転車に乗れるようになっておめでとうって言ってくれたの嬉しかった」 

穂乃果「私は怒られただけだったけど」 

雪穂「お礼言いたかったけど、達成感と泣いた疲れとお母さんの温もりのコンボで眠っちゃったんだもん」
237 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:52:32.50 ID:6jEyYUn+0
雪穂「だから誓ったんだ。お姉ちゃんにいつかあの時の恩を返すんだって」 

穂乃果「妹なんだから恩とか大げさ過ぎだって」 

雪穂「じゃあ、言葉を変えるね。あの日私にとってお姉ちゃんは憧れになった」 

雪穂「だから誰にでも自信を張って自慢出来るお姉ちゃんで居て欲しい。だから力になりたい」 

穂乃果「も〜からかうのはヤメてよね」 

雪穂「からかってないよ。本当の気持ち」 

穂乃果「だったらしょうがない。雪穂の為にも誇れるお姉ちゃんにならないとね」 

雪穂「うん!」 

穂乃果「今の私に何が出来るか分からないけど、頑張ってみようと思う」 


穂乃果「私は何かを頑張りたいのーッ!」 


雪穂「ちょっと! なんで窓開けて叫んでるの!?」 

穂乃果「いやぁ〜叫びたくなっちゃって」 

ママ「穂乃果! 高坂家が馬鹿に思われるから叫んだりするんじゃないわよ。馬鹿なのは穂乃果一人なのに」 

穂乃果「お母さん酷いよぉ」 

雪穂「くすくすっ。本当にお姉ちゃんは仕方ないな〜」
238 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:53:05.85 ID:6jEyYUn+0
――夜 お婆ちゃんのお店 

にこ「ドレスはやたら面倒だったけど、海未の分はこれで完了!」 

あんじゅ「ひとまずお疲れ様」 

にこ「仕掛けの方がきちんと完成しないことには、お疲れも何もないけどね」 

絵里「でも、着実に完成には近づいてるんだし、後は明日までに完成するかだけよ」 

お婆ちゃん「にこちゃんにお友達だよ。ミカちゃんって子が渡す物があるって」 

にこ「おちびちゃんが?」 

あんじゅ「自分より少しでも小さい子に対して過剰反応しちゃうにこに私は号泣」 

にこ「うっさいわよ! この一年ほとんど同じ物食べてるのに、なんであんたばかり伸びるのよ」 

絵里「今はそんなくだらないことより、ミカさんに顔出すのが先決でしょ」 

にこ「そうだったわ。馬鹿妹に構ってる場合じゃないわ」 

あんじゅ「酷いにこ〜」
239 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:53:38.11 ID:6jEyYUn+0
にこ「……お待たせしたわね」 

ミカ「いえいえ、お忙しい中すいません」 

にこ「それで、どうしたの?」 

ミカ「頼まれてた魔法使いの服が出来ましたので、実際に着て貰おうと思いまして」 

にこ「服? 私が頼んだのローブなんだけど」 

ミカ「ドレスと並ぶとローブだけじゃ手抜きに映るかなって、市販の服を改造して作ってみました」 

にこ「とにかくうちの妹に着せてみるわ。ステッキの方は見つかった?」 

ミカ「ヒデコがクラスの有志集めて本格的な樫の杖みたいに見える物を製作中です。明日までには完成させます」 

にこ「手間もお金も掛からせて申し訳ないわね」 

にこ「ただでさえ、南ことりから海未のドレスデザインまで受け取って、届けてもらったりしたのに」 

ミカ「私も皆も好きでやってることですから。漫画で出てくる文化祭みたいで楽しいです」 

にこ「音ノ木坂の文化祭は規模が小さいから、本物より今の方が大変かもね」
240 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:54:16.78 ID:6jEyYUn+0
あんじゅ「にこにー! どうかなどうかな?」 

にこ「かなりメルヘンチックだけど、あんじゅにはピッタリね」 

絵里「本当。現代版魔法使い(フリル多め)って感じ」 

にこ「マント風にしてある後ろのヒラヒラも可愛いし、これならお姫様海未にも見劣りしないわね」 

あんじゅ「ふっふーん♪」 

絵里「妹は良いところも悪いところも似るわね。今の得意げな顔はにこそっくりだわ」 

にこ「つまり良いところってことね」 

絵里「勿論悪いところよ」 

にこ「なんでよ!?」 

ミカ「あはは……」 

あんじゅ「ミカちゃんありがとうね!」 

ミカ「私だけじゃなくてフミコと一緒だったので」 

あんじゅ「フミコちゃんにもお礼言っておいてね」 

にこ「とにかく、これで懸念すべきは仕掛け付きドレスのみね」 

ミカ「私もお手伝いしましょうか?」 

絵里「高校生になったばかりの子を遅くまで束縛したら生徒会長失格になっちゃうわ。気持ちだけで十分よ」 

にこ「そうそう。あなたには明日穂乃果に完成したドレスを着せるっていう大役が待ってるんだから」 

あんじゅ「この可愛い衣装、本当にありがとう!」
241 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:54:50.14 ID:6jEyYUn+0
絵里「既に遅い時間だし、送っていくわ。親御さんへの挨拶も必要だろうし」 

ミカ「大丈夫です。お母さんにもきちんと説明してあるし、家もそんなに離れてないので」 

絵里「そういう油断が危険を誘い込むのよ。送るついでにデザート買ってくるわ。何が食べたい?」 

にこ「エクレアが食べたいにこ!」 

あんじゅ「じゃあ私はシュークリームにこ!」 

絵里「分かった。その二つは確実に、後は適当に買ってくるわ。さ、行きましょう」 

ミカ「わざわざすいません」 

絵里「どちらにしろ買出しに行くつもりだったんだから気にしないで」 

ミカ「それでは、これで失礼します。がんばってくださいね! 期待してます」 

にこ「期待には応えないとね」 

あんじゅ「うん! 頑張らないと。ねばーぎぶあっぷ」 

にこ「でも、あんた別に必要ないのよね。帰って寝たら?」 

あんじゅ「にこってば酷いよ! 疲れたにこの目の保養になるでしょ? うっふん♪」 

にこ「あいたたた……今のは目にキタわ」 

あんじゅ「どうしてよ!」 

にこ「ま、居ないよりは居た方がマシね。放っておくと心配でしょうがないし」 

あんじゅ「あんじゅってばにこにーに愛されてるにこ〜」 

にこ「だけど傍において置くと胃にダメージが……。なんて面倒な妹なのかしら」 

あんじゅ「えへへ」
242 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:55:42.57 ID:6jEyYUn+0
――十四日(運命の日)朝方 お婆ちゃんのお店 

おじさん「これで決まりだ!」 

佐藤「……当日になりましたが、無事に完成しましたね。いえ、無事かどうかぶっつけ本番ですが」 

お姉さん「ん〜っ! 一回きりだから試せないのが心配だけど、現状で一番上手く出来たから大丈夫でしょう」 

おばちゃん「いやはや。この年になると徹夜は堪えるけど、こんな達成感は久々だよ」 

あんじゅ「すーはー……くーはー……」 

にこ「皆が頑張ってくれてるのに、何もしてないうちの馬鹿が寝ててごめんね」 

絵里「ふぁ……はあ〜ぁ。でも、あれだけ衣装の出来にはしゃいでたら眠くもなるわよ」 

にこ「まるで子供じゃない! ライブがなかったら顔に落書きしてるレベルよ」 

お姉さん「とか言いながら、布団と枕あるのに膝枕してあげてる辺りがツンデレだよねぇ」 

にこ「邪魔だって言うのに、ここで寝始めたこいつが悪いの」 

おじさん「それだけにこちゃんのこと慕ってるってことじゃないか。うちのみっちゃんもそんな頃があったけなー」 

おばさん「完成したんだからそのまま寝かせておやりよ。こんな幸せそうな顔して寝てるんだから」
243 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:56:23.42 ID:6jEyYUn+0
絵里「本当に幸せそう。……でも、にこも寝ずにライブって訳にもいかないだろうし。もう少ししたら布団に――」 
にこ「――いいわよ、起きるか時間までこのままで。今回は色々無理させたからね。ご褒美くらいあげないと」 

お姉さん「こういう幸せな雰囲気から絶望に突き落とすシナリオ書くとネットで荒れて愉快なのよねー」 

佐藤「……あ、あなたのような脚本家と同じサークルの人に同情します」 

お婆ちゃん「朝食には少し早いけど、朝ごはん作ったから皆お食べね」 

おじさん「いやぁ、悪いね。丁度腹の虫が鳴こうとしてたところだよ」 

おばさん「そうね。食べてから寝るのは太る原因だけど、今日くらいわね」 

佐藤「私も頂きます。午後から自分の所の衣装作りあるから、少しでも栄養取らないと」 

お姉さん「喜んでいただきます! 今日は三限目から授業入ってるし」 

絵里「にこは動けないから私が食べさせてあげるわ」 

にこ「いや、腕は空いてるから持ってきてくれれば大丈夫よ」 

絵里「いいからいいから。邪道シスターズ長女のエリーチカお姉ちゃんに甘えなさい★」 

にこ「長女は私よ!」 

絵里「大きい声出したらあんじゅが起きちゃうでしょ。困った妹にこ〜」 

にこ「ぐぬぬ……。もう、好きにしなさい」 

絵里「ふふっ。じゃあ、好きにさせてもらうわ♪」
244 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:57:13.91 ID:6jEyYUn+0
――南ことり誘拐指令! 

絵里「こちらエリーチカ。今UTX前に着いたわ」 

にこ『え、もう着いたの? あんたどれだけ足が早いのよ』 

絵里「時間短縮にタクシー使ったに決まってるでしょ」 

にこ『なっ! た、タクシーですって? この距離をわざわざタクシー!? あんたはお嬢様か!』 

絵里「一秒でも稼げた方が確実でしょ? ということで、今から邪道シスターズ長女として誘拐してくるわ」 

にこ『もう一度だけ訊くわ。生徒会長としての信頼を裏切り、理事長へ喧嘩を売る行為よ。本当にいいの?』 

絵里「言ったでしょ。邪道シスターズの長女として誘拐するって」 

にこ『分かった。こっちもライブの準備とかあるから。上手くいく事を祈ってるわ。……絵里お姉ちゃん』 

絵里「了解にこっ!」 

絵里(にこにはああ言ったけど、足が少し震えちゃうわ) 

絵里(それもそうよね。トウシューズを捨てた以外は基本的に私って良い子だったし) 

絵里(立場的に悪い事をするのを止める側の人間になってたものね) 

絵里(それなのに……こんな悪巧みに自分から率先して首を突っ込むなんてね) 

絵里(お婆様はなんて言うかしら? 不思議ね。何故か怒られるよりも、頭を撫でられる気がするわ) 

絵里(では、作戦開始と行きましょうか!)
245 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:57:48.28 ID:6jEyYUn+0
――エリーチカVS嵐山(UTX受付嬢) 

絵里(流石UTX。普通の会社みたいにこうして受付があって、受付嬢も美人とはね) 

絵里「あの、すいません。少々よろしいでしょうか?」 

嵐山「はい、えっと他校の生徒さんが何か?」 

絵里「私は音ノ木坂学院で生徒会長をしている絢瀬絵里と申します。こちらが生徒手帳です。ご確認下さい」 

嵐山「どれどれ……はい、ご本人様確認出来ました。それで、その生徒会長さんが何の御用でしょうか?」 

絵里「ええ、今回は生徒会長としてというより理事長の個人的な用件の為にお邪魔しました」 

嵐山「音ノ木坂の理事長と言うと、確かこの学校の特待生でスクールアイドルの南さんのお母さん」 

絵里「そうです。これを娘であることりさんに大至急渡して欲しいと頼まれまして」 

嵐山「この《封筒》ですね。はぁ〜流石理事長ともなると達筆なのね」 

絵里「私もいつかはこれくらい綺麗な字が書けるようになりたいです。それで、ことりさんを呼んで頂けますか?」 

嵐山「かしこまりました。丁度今は休み時間なので、ここに呼び出してもらいます」 

絵里「ええ、お願いします」 

絵里(よし! これで後は穂乃果さんとことりさんの絆次第ね)
246 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:58:22.29 ID:6jEyYUn+0
――五分後... 

ことり「お待たせしました。お母さんから預かり物が届いてるって聞いて来たんですが」 

嵐山「これです。こちらの音ノ木坂の生徒会長さんが直々に届けてくれました」 

絵里「初めまして、絢瀬絵里です」 

ことり「こちらこそ初めまして。南ことりと申します。今回はわざわざすいませんでした」 

ことり「でもお母さんってば何だろう? 用件ならメールで入れてくれればいいのに」 

ことり(手紙?) 

『南ことりちゃんへ 穂乃果ちゃんの元気を取り戻す為に協力して欲しいの。 
  今から学校を抜け出して、そのお姉さんと一緒に音ノ木坂に来て下さい。 
  あなたが来てくれれば、穂乃果ちゃんは今日初ライブ(?)を披露してくれる筈です 
  どうか私を信じて!                       矢澤あんじゅ』 

ことり「これって……」 

絵里「無理強いは出来ないわ。どうするかの判断は貴女に一任する」 

ことり「……穂乃果ちゃん」 

ことり「すいません。嵐山さん。私どうしても行かなきゃいけなくて、だから先生に連絡して欲しいんです」 

嵐山「早退するには許可が必要ですので、私の一存では」
247 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:58:57.61 ID:6jEyYUn+0
希「せやったら、ウチが責任を持って南ことりちゃんの早退手続き書いておくよ。正確には副会長が」 

ことり「会長さん! それから副会長さんも、どうしてここに?」 

副会長「また東條さんは勝手なことばかり! どうして私がそんなことをしなくちゃいけないの!」 

副会長「そもそも、会長になれないのなら生徒会に戻されること自体、私はまだ納得してないというのに!」 

希「とか言いながらもウチの助けになってくれるツンデレさん」 

副会長「手を貸さないと貴女が煩いからでしょ! 話は見えないけど、生徒会の方で早退許可を出しておくわ」 

希「早く行ってあげて。あ、それからさっきの質問の答えだけど、カードがそうするように言ったからや」 

ことり「ありがとうございます! 会長さんに副会長さん!」 

希「ことりちゃんをよろしくね、音ノ木坂の生徒会長さん」 

絵里「正式な挨拶と今回のお礼は今度会った時にでも」 

希「その時はここの学食で甘いものでも食べながらしよっか」 

副会長「他校の生徒を私用で招くのは余りよろしいことではないわよ。あなた立場的に生徒の鏡でしょ!」 

希「安くて美味しいなら利用してこそだし。そうカリカリしないで」 

ことり「本当にありがとうございます! それでは、私行きます!」 

絵里「それでは、失礼します!」 

希「いってらっしゃ〜い」
248 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 10:59:38.57 ID:6jEyYUn+0
副会長「……で、私には説明してくれるんでしょうね?」 

希「そんな睨まれてもカードの導き以外言いようがないって」 

副会長「本当に東條さんは私を生徒会から追放した前会長より数段性質が悪いわね!」 

希「最高の褒め言葉だね」 

副会長「一ミクロンも褒めてないわよ」 

希「この出来事が切っ掛けで前会長さんの夢が叶う、そんな予感がしたんだよ」 

副会長「前会長の夢?」 

希「ま、その話は追々教えてあげる。今はことりちゃんの早退手続きを休み時間が終わるまでに提出してね」 

副会長「後二分切ってるから無理よ」 

希「有能な副会長さんなら可能なのだ!」 

副会長「なんでこんなのが会長してて私が副会長なのよ。やっぱり納得がいかない!」 

希「これも素敵な運命やん」 

副会長「呪われた運命よ」 

希「副会長にやる気をあげる。希パワー注入〜♪ は〜い、プシュッ!」 

副会長「ぎゃーっ!」
249 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:00:12.59 ID:6jEyYUn+0
――音ノ木坂へ移動中 ことえり 

ことり「あの、手紙に書いてあった穂乃果ちゃんの初ライブっていったい」 

絵里「詳しくは話せないけど、今日は部活紹介でSMILEがライブをするのは知ってる?」 

ことり「はい、中学時代の友達に話を聞きました。これって海未ちゃんのドレスのデザインと関係あるんですか?」 

絵里「ええ、あなたのお陰で海未の衣装は完成したわ。ありがとう」 

ことり「いえ、私は昔描いたデザインを渡しただけですから。お礼なんて」 

絵里「読んだ通りの良い子なのね、あなたって」 

ことり「読んだ?」 

絵里「ううん、こっちの事。それより質問の方に答えるわ」 

絵里「穂乃果ちゃんが勇気を出して立ち上がってくれるなら、魔法を掛けてファーストライブにするつもりなの」 

ことり「……魔法?」 

絵里「実際に隣で見る訳だから驚くわよ」 

ことり「驚く?」
250 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:01:05.34 ID:6jEyYUn+0
絵里「とにかく穂乃果ちゃんの為に協力してくれてありがとう」 

ことり「でもどうしてSMILEのメンバーが穂乃果ちゃんの為に動いてるんですか?」 

絵里「正確にはもっと大勢が動いたんだけどね。元々は海未の相談事から始まったのよ」 

ことり「海未ちゃんから」 

絵里「色々と分からないこと多いだろうけど、とにかく楽しんで頂戴!」 

ことり「はぁ……分かりました」 

絵里「あと、今回は仮装が条件だから。面倒だけど一度音ノ木坂の制服に着替えてから、ドレスに着替えてもらうわ」 

ことり「ドレス?」 

絵里「貴女に目立たれると作戦失敗する恐れがあるから」 

ことり「ドレスなんて着てたら目立つんじゃないですか?」 

絵里「言ったでしょ、仮装パーティーだって。制服姿の方が逆に目立つの」 

ことり「音ノ木坂っていつもこんな事をしてるんですか?」 

絵里「まさか。こんなこと仕出かす邪道は音ノ木坂の歴史で私達が初めてでしょうね」
251 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:01:39.90 ID:6jEyYUn+0
――裏方 にこあん 

あんじゅ「絵里ちゃんよりメールあり。ことりちゃんの誘拐に成功だって」 

にこ「一つ目の危ない橋は渡り切ったってことね。理事長のサインを悪用したからバレたら大目玉よ」 

あんじゅ「怒られる時は一緒だからね!」 

にこ「なんであんたはそんなに無駄に元気なのよ。てか、一人あれだけ寝れば……ふぁ、元気よね」 

あんじゅ「にこの膝枕最高だったよ♪」 

にこ「こっちは足が痺れて遅刻寸前だったわよ」 

あんじゅ「私が肩を貸してなかったら完全に遅刻だったね」 

にこ「あんたに膝貸してなかったら、睡眠取れた上に遅刻を掛けた朝一ダッシュせずにすんだわよ」 

あんじゅ「そんなことより、穂乃果ちゃんのドレスにきちんとピンマイク付けておいた?」 

にこ「そんなことってねぇ……。大丈夫よ、きちんと付けてからミカに渡したから」 

あんじゅ「もう直ぐ大変だったけど楽しかった時間が終わっちゃうんだね」 

にこ「なによ、寂しいの?」 

あんじゅ「うん。年齢も職業も関係なく集まってこうしてひとつのことに頑張るのってとっても楽しかった」 

にこ「私とあんじゅが居ればまた嫌でも変な出来事が待ってるでしょ。寂しがる暇もないわよ、きっと」 

あんじゅ「えへへ。そうかも!」
252 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:02:19.61 ID:6jEyYUn+0
にこ「それにお礼参りもしないといけないからね。後始末の方が大変よ」 

あんじゅ「そうだね。一緒にありがとう言いに行こうね☆」 

あんじゅ「出来ればあの魔法使いの衣装譲ってもらえないかな?」 

にこ「あんたのサイズに合わせてるんだから、言えば譲ってくれるでしょ」 

あんじゅ「貰えたらにこにーの家で魔法使いごっこが出来るね」 

にこ「いや、そんなことしてどうするのよ」 

あんじゅ「こころちゃんとここあちゃんを笑顔に出来るニコ!」 

にこ「確かにね。なんにせよ、アレが成功するかどうかで名シーンか喜劇になるかね」 

あんじゅ「失敗しても喜劇になるなんて最高じゃない。どっちでも人を笑顔に出来るんでしょ?」 

にこ「あんたも強くなったわね。その通りにこ!」 

あんじゅ「広がれ、笑顔の輪にこ!」 

元部員「凄いよ凄いよ! 全生徒集まってるんじゃないの? ってくらい人が集まってるの」 

にこ「内田のお姉さんが搬入した時に多すぎって突っ込んだけど、結果オーライだった訳ね」 

あんじゅ「もしかしてこれを見越して……!?」 

にこ「ないわよ。あの人は何も考えずに持ってきただけよ」 

元部員「会場からの撮影は任せて。穂乃果ちゃんに魔法が掛かるシーンをバッチリ映しておくから」
253 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:02:58.38 ID:6jEyYUn+0
にこ「本当にありがとうね。あなた達には頭上がらないわよ」 

元部員「ううん、だからそんな気にしないでってば」 

あんじゅ「気にするよ」 

元部員「もし運命が違えば私達が逆恨みしてた、なんて可能性があったかもしれないもの」 

にこ「どんだけ良い子なのよ。それって逆を言えば私が逆恨みする可能性もあったかもでしょ?」 

元部員「それはないよねー」 

あんじゅ「ないねー」 

にこ「にこはそんな綺麗な人間じゃないわよ」 

元部員「キラキラ輝いてるから、こうして力を貸すんだよ」 

にこ「私にはあなた達の方が優しさに満ちて輝いて見えるわ」 

あんじゅ「うふふ。私こういう空気大好き♪」 

にこ「あんたは常にマイペースね。ライブ前でも緊張しないのはいいけど」 

元部員「っと、そうだそうだ。ライブ前だったね」 

にこ「今回は曲数少ないけど、楽しんでいって」 

あんじゅ「衣装コーナーの奥にある箱にペルソナが入ってるよ。良かったら付けてみてね」 

元部員「カメラ撮る時に邪魔になるから仮面はいいや。それじゃあ、またね!」
254 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:03:31.50 ID:6jEyYUn+0
――講堂 穂乃果 

穂乃果「こんなヒラヒラした服着たの小学生以来だよ」 

フミコ「穂乃果ちゃんとっても可愛い」 

穂乃果「そ、そうかな? なんだか恥ずかしいけど」 

ヒデコ「なんで私までこんな格好を……」 

穂乃果「おぉ〜! ヒデコってば胸を強調した服が似合うんだね」 

フミコ「良いなぁ」 

ヒデコ「胸を見るのやめてよ!」 

穂乃果「いや、そんな強調した服着ておいてそんなこと言われても」 

ヒデコ「遅かったからサイズ的にこれしか残ってなかったのよ。というか、何この人数」 

フミコ「後でサイン貰っておこう」 

穂乃果「海未ちゃんは絶対に恥ずかしがって書いてくれなさそう」 

ヒデコ「確かにね」 

穂乃果「そう言えばミカは見に来てないの?」 

ヒデコ「ミカは今サプライズゲストの着替えを手伝ってた」 

穂乃果「サプライズゲスト?」 

フミコ「絶対に穂乃果ちゃんが驚くよ」
255 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:04:15.39 ID:6jEyYUn+0
――五分後... 

穂乃果「ことりちゃん!?」 

ことり「久しぶりだね、穂乃果ちゃん」 

穂乃果「ど、どうしてことりちゃんがここに?」 

ことり「穂乃果ちゃんのファーストライブになるって聞いたから来ちゃった」 

フミコ「驚いたでしょ?」 

ミカ「先生に見つからないかヒヤヒヤしちゃったよ」 

ヒデコ「でも、穂乃果のその顔を見れて私は大満足」 

穂乃果「……ことりちゃんは忙しいんじゃないの?」 

ことり「うん。でも、今日の分の遅れは明日から一時間早く登校して、一時間遅く下校すれば取り戻せるから」 

ことり「ファーストライブ前だったらそんな余裕もなかったけどね」 

穂乃果「ライブ見たよ。凄いキラキラしてて、胸がドキドキした。ことりちゃんが天使に見えたんだよ!」 

ことり「えへへ。ありがとう」 

ミカ(以前の穂乃果に戻ったみたい。これも先輩たちのお陰だね) 

ヒデコ(苦労したけど、先輩たちの苦労に比べれば可愛いものだったんだろうなー) 

フミコ(後はこの仕掛けが上手くいくかどうかなんだね。緊張するなぁ)
256 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:05:07.94 ID:6jEyYUn+0
――裏方 海未 

海未「どういうことですか!? 今回の衣装は王子風という話だったじゃないですか!」 

にこ「にこそんなこと言ったっけ?」 

あんじゅ「あんじゅは聞いてないよ」 

絵里「エリーチカも知らないわね」 

海未「よりによってなんでこんなお姫様みたいなドレスなんですか! 踊りにくいではないですか」 

にこ「海の向こうではフラメンコっていう踊りもあるのよ」 

絵里「衣装を言い訳にするなんて海未らしくないわ」 

海未「私はこんな衣装着てライブなんて出来ません!」 

あんじゅ「そうなると穂乃果ちゃんの勧誘はなしってことになるね〜」 

海未「ぐっ……絵里だけはこの邪道二人とは別だと信じてました」 

絵里「毒も慣れれば癖になるのよ」 

にこ「時間がないんだし、駄々こねてる場合じゃないわよ。人に覚悟を見せるには、自分も覚悟しないとね」 

海未「一度ならず二度も悪に屈した気分です」 

あんじゅ「その内海未ちゃんも邪道が癖になるよ」 

海未「なりません!」 

絵里「もう直ぐ時間だし、早く着替えて」 

海未「次に聞いていた衣装と違った場合は着替えませんからね!」 

にこ「はいはい、分かった分かった」
257 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:05:39.76 ID:6jEyYUn+0
――ライブ終了! 

にこ「今回は三曲だけだったけど、SMILEとしてのライブはここで終わりにこ!」 

あんじゅ「でも今回はスペシャルな新曲があるんだよ」 

絵里「今回限りの海未のソロ曲を発表します。今日来てくれた生徒達は最高に特したわね!」 

海未「ちょっ、ちょっと絵里! ハードルを上げないでください」 

にこ「こんな風に恥ずかしがり屋な海未だけど、どうしても伝えたいことがあるんだって」 

あんじゅ「たった一人に伝える為に書かれた歌詞」 

絵里「ある意味これってラブレターよね」 

キャーーー! 

海未「ちっ、違います! 何を考えてるんですかっ!」 

にこ「それでは私達はお邪魔だから裏に下がらせてもらうわね。見に来てくれてありがとうにこ!」 

あんじゅ「こんなにも大勢の人が見に来てくれて幸せだったにこ!」 

絵里「海未のことも応援してあげてね。それじゃあ、ありがとう!」
258 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:06:22.93 ID:6jEyYUn+0
海未「うぅ……三人がからかう所為で歌い辛いではありませんか」 

海未ちゃんファイトだよ! 

海未ちゃん頑張ってー! 

海未「え、あ……」 

海未「すいません。それではこれは私の大切な一人の友人に捧げる歌です」 

海未「聴いてください」 

『君の笑顔を守りたい』 

海未「いつも元気をくれる笑顔の君に 最近出会えないんだ」 

海未「もしも笑顔を遮る雲があるなら 僕が斬ってみせるよ」 

海未「太陽にも負けない元気が 僕の笑顔をくれる」 

海未「ずっと傍にいてくれた ありがとうの感謝伝えるよ」 

海未「君を傷つけるすべてから 守りたい守り続けたい」 

海未「元気な笑顔をください」
259 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:07:00.07 ID:6jEyYUn+0
ことり(ふふっ。本当に穂乃果ちゃんへのラブレターみたい) 

穂乃果(海未ちゃん。とっても可愛い。本当にお姫様みたいに輝いてる!) 

あんじゅ「にこにー。変なところないかな? 大丈夫?」 

にこ「大丈夫よ。段取りの方は頭に入ってる?」 

あんじゅ「大丈夫。まずは海未ちゃんの歌が終わったら、海未ちゃんが穂乃果ちゃんを勧誘するんだよね」 

にこ「穂乃果にライトを当ててね。で、穂乃果が右手を上に突き上げたらあんじゅの出番」 

にこ「ステージのライトを消してあんじゅにライトが当たるようにするからね。緊張しないでよ」 

あんじゅ「大丈夫だよ! それで好きに魔法唱えていいんだよね?」 

にこ「ええ、魔法使い役であるあんたの特権よ。それで唱えたら一瞬穂乃果のライトを消す」 

にこ「魔法が掛かったらあんたは舞台袖に隠れて」 

あんじゅ「了解♪」 

にこ「もう直ぐね。杖を忘れるんじゃないわよ」 


海未「君を傷つけるすべてから 守りたい守り続けたい」 

海未「元気な笑顔をください」 

海未「君の笑顔を 守らせて欲しい」 

パチパチパチ!
260 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:07:37.82 ID:6jEyYUn+0
海未「ありがとうございます。ありがとうついでにここでメンバーの勧誘させていただきます!」 

海未「穂乃果! 私があなたの王子となって貴女の笑顔を守ります」 

海未「だからどうか、私と一緒にスクールアイドルになってください」 

海未「今日は本当は王子の格好の筈だったので決まりませんが、どうか私のお姫様」 

海未「私の願いを聞き届けてください! 答えをこの場で下さい!」 

ことり(海未ちゃんお姫様なのにカッコ良い! ミカちゃん?) 

ミカ(ことりちゃん、ちょっとだけごめんね。穂乃果のドレスの紐を引かなきゃいけないから) 

ミカ(少しの間、膝の上に腕を置かせてね) 

ことり(いいけど、私が引こうか?) 

ミカ(タイミングがあるからごめんね) 

ことり(ううん、いいよ) 

穂乃果「……海未ちゃん。穂乃果の答えはね」 

にこ(よし! 穂乃果が手を上げたわ!) 

海未「え、ライトが消えた!?」 

あんじゅ「にこにーにこにー笑顔の魔法♪ 魔法使いあんじゅ参上♪」 

海未「――は?」
261 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:08:12.22 ID:6jEyYUn+0
あんじゅ「今日は一人の女の子の願いを叶える為に魔法の国からやってきました」 

あんじゅ「海未ちゃんはどう見ても今はお姫様の格好だったよね〜」 

あんじゅ「お姫様が王子を語ってもダメだよ。真の王子様は魔法使いが魔法を掛けてなれるものなの」 

海未「待ってください! こんな話、私は聞いてませんよ!」 

あんじゅ「今からあの子に魔法を掛けるから皆注目! そして、お姫様は静かに……」 

あんじゅ「にこにーにこにー愛されにこにー」 

あんじゅ「あの子をお姫様から王子様にするにこにー! にこにーフラッシュ☆」 

にこ(激しくダサい!) 

絵里(あんじゅのネーミングセンスだけは絶望的ね) 

海未「――」 

「え? 嘘……。一瞬ライト消えただけであの子が王子様に変身してる!?」 

「だって、さっきまでドレスだったよね?」 

「かぼちゃパンツ風の王子様だ。メルヘンだよ!」 

ことり「凄い……こんな仕掛けって出来るんだ」 

ミカ「かぼちゃパンツにするには両側から引っ張ってないとダメっていう欠点があるんだけどね」 

ことり「でも、上は完全に変わったよ」
262 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:08:43.87 ID:6jEyYUn+0
ミカ「元々ミュージカルのシンデレラであった仕掛けなの。だから上だけは最初から大丈夫だったんだよ」 

ミカ「でも下は一回限りのギャンブルだったんだって。使い捨てだから試すことも出来なくて」 

ミカ「完成したのも今朝だって」 

ことり「凄い……本当に凄い。それしか言葉が出ない」 

穂乃果「守られるお姫様は魔法を掛けられる前まで!」 

穂乃果「穂乃果は今日から海未ちゃんも、そしてことりちゃんも守れるくらい強い王子になってみせる!」 

穂乃果「ううん、なってみせるじゃ駄目だね。王子になるったらなる!」 

穂乃果「大切で凄くすっごく強い二人を守れる王子になって、現実なんてぶち壊しちゃう!」 

穂乃果「それでもって! 今日から音ノ木坂スクールアイドルSMILEに入らせてもらいます!」 

海未「……ほのか」 

ことり「ほのかちゃん♪」 

穂乃果「こんな凄い仕掛けまで用意して、色々と準備することもあったと思います」 

穂乃果「その中で私の為に一曲作ってくれた先輩たちに大きな大きな感謝を!」 

穂乃果「私を元気付けようと頑張ってくれた友人たちに大きな大きな感謝を!」 

穂乃果「そして……私の大好きでとっても尊敬している幼馴染二人に大きな大きな愛を!」 

穂乃果「高坂穂乃果歌わせてもらいます。聴いてください」
263 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:09:28.39 ID:6jEyYUn+0
『思い出はいつも笑顔』 

穂乃果「沢山の季節の中を 歩いてきたよね」 

穂乃果「鬼ごっこ 隠れんぼ 追いかけっこ」 

穂乃果「君と出逢った 公園 今も覚えてるよ」 

穂乃果「大きな木に登って 泣いたりもしたけど」 

穂乃果「そこから見た景色 忘れたくない思い出」 


ことり(ふふっ。懐かしいなぁ) 

海未(あのノートは穂乃果を勧誘する為じゃなくて、この歌を作る為だったんですね!) 

にこ(ふぁ〜あ。流石に眠くなってきたわ) 

あんじゅ(お疲れ様。後はもう海未ちゃん次第だから、眠っても大丈夫だよ) 

にこ(ここのどこで寝ろってのよ。机があるならまだしも) 

あんじゅ(泣いたあの日みたいに私の胸を枕にしていいから) 

にこ(息苦しくて眠れ――うぐぅ、もういいわ。寝る……) 

あんじゅ(本当にお疲れ様。にこお姉ちゃんカッコ良かったよ) 

にこ(とうぜんでしょ……にこは、おねえちゃ) 

絵里(出るに出られない状態になっちゃったわね)
264 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:10:02.58 ID:6jEyYUn+0
穂乃果「沢山の幸せの中を 歩いてきたよね」 

穂乃果「お正月 誕生日 クリスマス」 

穂乃果「君と笑った 過去を ずっと覚えてるよ」 

穂乃果「お泊り会のおねしょ 慰めてくれたね」 

穂乃果「優しさ全部覚えてる 忘れられない思い出」 


海未(自分の醜聞まで歌うとは……そうですか、お姫様は終わりなんですね) 

海未(私としては守られる側より守る側の方が得意なのですが) 

海未(いえ、本当は違うのかもしれません) 

海未(甘えてみて分かりました。私はやっぱり弱い人間で、守られる側なのかもしれません) 

海未(今までは鍍金で強がってましたが、それも終わりかもしれません) 

海未(だけど、穂乃果が王子というのは……似合うのか似合わないのか) 

海未(だけど、カッコ良いですよ。私達の王子様) 

ことり(海未ちゃんのお家でお泊りした時にお漏らししちゃったんだよね) 

ことり(家柄もあって、あの頃から既に海未ちゃんはしっかりしてた) 

ことり(泣いてる穂乃果ちゃんをことりが慰めてる間に、お漏らしした布団を片付けてたもんね) 

ことり(そういうことの積み重ねで、いつしか海未ちゃんに守られることに依存してた) 

ことり(穂乃果ちゃんに手を引かれ、海未ちゃんに守られて。今回UTXに入学する時もそうだった) 

ことり(私も穂乃果ちゃんみたいにいつか王子様になりたい!) 

ことり(三人順番に王子様とお姫様になるなんて他の人達じゃ出来ないもんね) 

ことり(今日からもっともっと強くなれるように頑張る!)
265 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:10:37.09 ID:6jEyYUn+0
穂乃果「三人で歩んだ景色 忘れないよ思い出」 

穂乃果「いつまでも 笑顔のままでいようね」 

穂乃果「今目の前の光景 忘れたくない思い出」 

穂乃果「ありがとうございました!」 

パチパチパチパチパチ! 

あんじゅ「にこ。無事に終わったみたいだよ」 

にこ「んぅ……いが……いがぁ……」 

あんじゅ「うふふ。ほっぺたぷにぷに〜」 

にこ「ふぁ、ん……きょうはかれーにこ、すーすー」 

あんじゅ「本当だったら嬉しいにこ」
266 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:11:14.65 ID:6jEyYUn+0
理事長「さて、あちらの二人に訊くのは無粋みたいなので、絢瀬さんにお聞きしてもよろしいかしら?」 

絵里「何でしょうか?」 

理事長「どうして私の娘がここに居るのかについて」 

理事長「先週矢澤さんが私の元へ来たことと勿論関係ない、なんて言いませんよね?」 

絵里「」 

理事長「スクールアイドル全員を集めてお話とお説教をしなければいけませんね」 

絵里「出来れば私だけの処分でお願いします。私は生徒会長ですから」 

理事長「悪いことをした者に貴賎は関係ありません」 

絵里「……申し訳ありませんでした。でも、本当に全ては私の責任なんです!」 

理事長「同じ事を繰り返し言わせるのは賢くない人間のすることです」 

絵里「はい」 

理事長「どんな無茶をしたか知りませんが、寝た子を起こしてお説教するのは一人の母親としては失格になります」 

理事長「ですから、お説教するのは今夜にしましょう。場所は――」
267 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:11:52.64 ID:6jEyYUn+0
――南家 夜 にこあん 

こころ「おすしー!」 

ここあ「にこにー。ここあエビ食べたいにこ!」 

こころ「こころはタマゴ食べたいにこ!」 

にこ「今取ってあげるにこ〜」 

あんじゅ「イクラ美味しいにこ!」 

にこ「あんたもお姉ちゃんなら自分の食べる前に妹の分を取りなさいよね」 

あんじゅ「うぅ〜ごめんね。こころちゃん、ここあちゃん」 

こころ「おすしおいしいもんね」 

ここあ「おいしいからしかたないの」 

あんじゅ「食べたい物があったら私にも言ってね。バンバン取るからね!」 

にこ「で、起きたら理事長の家に居てお寿司食べ始めてる私にそろそろ説明してくれない?」 

あんじゅ「話せば長くなりそうで短いんだけどね、理事長にお説教されると言って集められたの」 

にこ「なのにどうしてうちのおちびちゃん達まで居るのよ」 

あんじゅ「お説教は口実で、こうしてお寿司ご馳走してくれるっていうから、私が連れてきたの」 

にこ「あんたって凄い逞しいわね。私より逞しいわ」 

ここあ「あんちゃん。ここあもイクラ食べたい!」 

あんじゅ「今取ってあげるからね〜。はい、どうぞ」 

ここあ「ありがとう!」 

こころ「にこにー。こころはハンバーグがいい」
268 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:12:27.10 ID:6jEyYUn+0
にこ「回転寿司と違ってハンバーグはないにこ。他は何がいいにこ?」 

こころ「じゃあね、じゃあね。おいしいのがいいにこ!」 

にこ「じゃあ、大トロいっちゃいましょうか」 

こころ「おっきいの? これくらい?」 

にこ「名前だけよ。別に大きい訳じゃないにこよ」 

絵里「エリーチカお姉ちゃんもお邪魔してもいいかしら?」 

にこ「あんたいつまでお姉ちゃんネタ使ってるのよ」 

絵里「え? これからずっとそのつもりだけど。私だけ仲間外れとか寂しいじゃない」 

あんじゅ「家族は増える方が良いっておばちゃんも言ってたよね」 

にこ「確かに言ってたけど、別に仲間外れでもないでしょ。海未は妹じゃないんだし」 

絵里「二年生組では仲間外れじゃない」 

にこ「亜里沙って妹が居るんだから、妹欲しがらなくてもいいでしょうに」 

絵里「したことは怒られることなんだけど、今回すっごく楽しかったのよ」 

あんじゅ「おぉ〜。絵里ちゃんも本格的な邪道の一歩を踏み始めたんだね」 

にこ「生徒会長がそれじゃダメよ」 

絵里「生徒会長としての権限を利用するのは今回限り。それならいいでしょ?」 

にこ「やれやれ。絵里がそんな馬鹿だとは思わなかったわ。好きにしなさい」 

絵里「ええ、好きにするわ。ということでエリーチカお姉ちゃんが好きな物取ってあげるにこ!」 

あんじゅ「……なんていうか、私達というよりもこころちゃんとここあちゃんが本命のような気が」 

にこ「どうでもいいわ。それより、食べることに専念出来そうだし、食べちゃいましょう」
269 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:13:05.15 ID:6jEyYUn+0
――ことのほのうみ 

穂乃果「ウニ、ウニだよ!」 

海未「一本足せば私ですね」 

ことり「くすっ。じゃあ三人でウミちゃんを食べようか」 

海未「ことり、恥ずかしいですから本当に一本足さないでください!」 

穂乃果「ウミちゃん美味しい〜♪」 

海未「穂乃果までやめてください!」 

ことり「ふふっ。楽しいなぁ♪ こうして三人でご飯食べるの去年のクリスマス以来だよね」 

穂乃果「うん。だから穂乃果も今すっごい幸せ!」 

海未「当然ながら私もです。いきなり穂乃果の衣装が王子になった時はどうなることかと思いましたが」 

ことり「凄かったよね。商店街の人達やミュージカルの劇団で衣装担当してる人にも手伝ってもらったんだって」 

海未「私の相談事一つでここまで大掛かりなことを仕出かすとは。これでは怖くて甘えられません」 

穂乃果「大丈夫だよ、海未ちゃん。穂乃果には簡単に甘えてくれていいから。勿論ことりちゃんもね!」 

ことり「わぁ〜い! UTXで何か困ったことがあったら穂乃果ちゃんに相談するね」 

海未「元気になった途端これですか。まったく、現金なものです」 

穂乃果「元気こそが穂乃果の取り柄だもん。笑顔の大事さを今回のことで思い知らされたから」 

穂乃果「今回のことで多くの人に迷惑をかけちゃった」
270 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:13:43.73 ID:6jEyYUn+0
海未「その分、スクールアイドルとしてより多くの人を笑顔にさせていけばいいのです」 

ことり「ステージの上で歌うとね、すっごく癖になっちゃうよ。まだ一回だけなのに凄かった♪」 

海未「癖になるかどうかは別として、別世界が開けるのは確かですね」 

穂乃果「でも、先輩達は穂乃果のこと本当に認めてくれてるのかな?」 

穂乃果「演出上仕方なくスクールアイドル入りをOKしてくれたんじゃないかな?」 

海未「王子になって守ると言ったそばからなんですか。もっと強気になってくれないと困ります」 

穂乃果「だって〜。凄い迷惑掛けちゃったんだもん。特ににこ先輩には……」 

ことり「ほのかちゃん」 

海未「では私が訊いてあげます。にこっ! 穂乃果のSMILE加入をどう思ってますか?」 

にこ「正直最初は絶対にスクールアイドルに向いてないって思ってたわ」 

にこ「逆に海未は絶対にスクールアイドルにしたいって思った。これが本音ね」 

にこ「でも、出会った時の穂乃果が今みたいに笑ってたら、私は迷わず穂乃果を勧誘してた」 

にこ「海未がキラ星よりカリスマ性があるとか言ってたのも強ち間違いじゃないかもね」 

にこ「ま、私は残念ながらキラ星推しだから穂乃果の方が若干下だと思ってるけど」 

ことり「キラ星?」 

海未「綺羅ツバサのことですよ。小学生の時に縁があったとかで」
271 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:14:20.66 ID:6jEyYUn+0
ことり「あぁっ! 英玲奈ちゃんから聞きました。ツバサちゃんがよく口にする子が居るって」 

ことり「その子の名前が……にこにー」 

にこ「キラ星がにこを覚えててくれた……あんじゅ! 絵里! にこの信じる想いは勝ったのよ〜!」 

海未「相当嬉しかったみたいですね」 

穂乃果「もぐもぐ……つまり、どういうこと?」 

ことり「つまりね、にこさんと私のグループのツバサちゃんは縁があるってことみたい」 

海未「再会を約束しているようです。出来ればラブライブの舞台で」 

穂乃果「へぇ〜。なんか漫画みたいな展開だね」 

海未「簡単に流さないでください。それを実現させる為ににこ達がどれほど努力していることか」 

ことり「スクールアイドルは本当に大変なんだよ」 

穂乃果「そっか。でも、穂乃果も頑張る!」 

海未「朝練もあるので、仕方ありません。私が毎日起こしに行きます」 

穂乃果「ダメだよ。お姫様を起こすのは王子の役目だもん。私が海未ちゃんを起こしに行くよ!」 

海未「……初日から遅刻しそうですね」 

ことり「そんな、酷いよ。せめて二日は持つよね?」 

穂乃果「二人とも酷いよ〜!」
272 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/09/30(火) 11:15:19.45 ID:6jEyYUn+0
――穂乃果ダイアリー 

今日から日記を書こうと思います。訳は今日という日から変わりたいから。 

沢山の人に迷惑をかけて、沢山の人に心配されて、守られるお姫様な穂乃果はおしまい。 

これからはことりちゃんも海未ちゃんも守れる強い王子様穂乃果になります! 

といって、直ぐになれるとは思ってません。 

最初の一歩は早起きして海未ちゃんを迎えに行くことです。 

簡単なところから始めていけば、いつか本当の王子様みたいになれるって信じてる! 

今日のことを忘れない内に書いておきます。いや、忘れられないと思うけど。 

ことりちゃんが音ノ木坂に来てくれたことがまず驚きました。 

次は魔法を掛けられて服装がドレスから物語の王子様みたいになった時も本当に驚いたよ。 

でも、海未ちゃんの方が驚いてたから、先に冷静になれちゃった。 

スクールアイドルになってまずは、今回色々してくれた先輩達に恩返しをしたいです。 

ラブライブっていう大会に出れるように、頑張りたいと思います。 

日記を書きながら思わず『思い出はいつも笑顔』ながら今日の日記は終わろうと思います。 

一日目から長いと絶対続かないのが穂乃果の性格だから! 

今日みたいな幸せの日が、これからもずっと巡ってきますように。 


つづく! ネクストストーリー【UTXプロローグ〜始まりの歌、秋葉に響け〜】
273 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/09/30(火) 12:09:13.09 ID:UVZ7dJlyo
274 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/09/30(火) 15:41:30.84 ID:ak45B1/gO
最高
275 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/09/30(火) 19:07:07.89 ID:TPLm89sro
実にハラショー 
やったねにこちゃん姉妹が増えるよ
276 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/01(水) 17:04:28.23 ID:PzmPmvNAO
二次創作だからこそ「『ラブライブ!』という物語には『μ′s』というグループが必ず存在する」という王道を打ち破るいい意味での邪道そのものな思い切ったパラレル設定の話も描けるよね
277 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/01(水) 20:43:48.75 ID:N7K9Aq23O
とてもステキ
278 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/02(木) 14:21:19.12 ID:pdLzqQc40
279 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/03(金) 22:27:17.60 ID:RRzgy+RB0
タイトルからはこんないい話になるなんて想像出来なかった 
続きも期待してます
280 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] 2014/10/06(月) 19:25:50.54 ID:m7gYUtuj0
>>276 
うむ。実にすばらしい!
281 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/13(月) 14:39:44.23 ID:oLwYBqVSO
まだか
282 : ◇GKcmsITYJ1lx[saga] 2014/10/14(火) 14:05:56.26 ID:WwY+Tfp40
◆新生A-RISE〜始まりの歌、秋葉に響け〜 前編◆ 

―― 一年目十二月二十四日 UTX学院 ことり 

先生「今回の課題も実によく出来ていますね」 

ことり「ありがとうございます」 

先生「南さんを推薦した立場としては、誇らしいですよ」 

ことり「そんなっ。私なんてまだまだこれからですし」 

先生「ええ、それは分かっています。ですが、デザインとはセンスがあるかどうかは大事ですから」 

先生「現時点その輝きが見えている時点で将来に期待が出来ます」 

ことり「ありがとうございます」 

先生「次は来年となりますね。お正月は羽を伸ばして、来年からまた課題を仕上げて下さい」 

ことり「分かりました」 

先生「今日はこれで大丈夫ですよ。良きクリスマスを」 

ことり「はいっ、ありがとうございます。それでは失礼します」 

ことり(はぁ〜。何度か来てるのにUTXは緊張するなぁ) 

ことり(当然高校だからというのもあるけど、設備もしっかりしてて、後者も隅々まで綺麗で場違いな感じがする) 

英玲奈「そこの貴女。少し時間いいだろうか?」
283 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:06:27.89 ID:WwY+Tfp40
ことり「え、私……ですか?」 

英玲奈「ああ。どうだろう?」 

ことり「大丈夫ですけど」 

英玲奈「そんな緊張することはない。ただ少し気になったからこうして声を掛けている」 

ことり「……はい」 

ことり(なんだか独特の喋り方。海未ちゃんをより特化させた感じかなぁ) 

ことり(見た目綺麗系なのは同じだけど、髪の長さも海未ちゃんより長いし) 

英玲奈「その制服は中学生で間違いないかな」 

ことり「はい。来年度からこちらの被服科でお世話になります」 

英玲奈「特待生か。だとしても欲しい」 

ことり「え?」 

英玲奈「当たり前の質問をするが、スクールアイドルは知っている?」 

ことり「ええ、当然知ってます」 

英玲奈「私はこのUTXのスクールアイドルをしている。A-RISEの統堂英玲奈という」 

ことり「えっと、私は南ことりと申します」 

英玲奈「擁護したくなる魅力とでもいうべきか、女の私ですらそう思ってしまう見た目」
284 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:07:05.39 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「それ以上にその見た目を倍増させるその声色」 

ことり「……」 

英玲奈「一緒にスクールアイドルをやってくれないだろうか?」 

ことり「え、えぇっ!? ことりがですか?」 

英玲奈「最低でも新入生を一人迎え入れたいと思っていた。時期は少し早いが大丈夫だろう」 

ことり「突然そんなこと言われても困ります」 

英玲奈「興味はない?」 

ことり「……いえ、興味がないと言えば嘘になります。友達もスクールアイドルの練習をしてるので」 

英玲奈「だったら一度練習を見て欲しい。被服科であるなら、衣装のデザインもお願いするかもしれない」 

ことり「アイドル衣装を?」 

英玲奈「ああ。製作までさせる時間はないが、自分でデザインした衣装でお客さんの前でライブを披露する」 

英玲奈「目を閉じて少し考えて欲しい。輝くステージに立つ自分の姿を」 

英玲奈「病み付きになる程の強烈な刺激。自分達の歌とパフォーマンスで魅了し、笑顔に変える瞬間を」 

ことり「……」 

英玲奈「普通のアイドルと違ってスクールアイドルは誰にでもなろうと思えばなれるかもしれない」 

英玲奈「だが、ここUTX学院ではそれは通用しない。本当に一握りの可能性を秘めた人間だけが代表になれる」
285 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:08:01.05 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「無論、その可能性を開花させなければステージに立つ未来は訪れない。努力なくして道はない」 

ことり「でも、私は運動とか得意って訳でもないですし、体力も普通より少ないと思うから」 

英玲奈「そんな物は努力で補える。今求めているのは確固たる決意だけ」 

ことり「」 

英玲奈「とはいえ、今ここでそれを決断させる程愚かではない。とにかく見学して欲しい」 

ことり「で、でも」 

英玲奈「無理強いはしない。特待生である以上その責任から逃れることは出来ない」 

英玲奈「中途半端な意志では挫折しか得る物はないだろう。だからこそ、自らの意志で決意して欲しい」 

ことり「分かりました。見学だけなら」 

英玲奈「ありがとう、ことり。ではこれから大丈夫だろうか?」 

ことり「ごめんなさい。今日はこの後友達と約束しているんです」 

英玲奈「そうか、今日はクリスマス・イヴか。では明日の十三時はどうだろう」 

ことり「それでしたら大丈夫です」 

英玲奈「では明日十三時に受け付け前で待っている。連絡先を交換しても?」 

ことり「あ、はい」 

英玲奈「……よし、南ことり。登録完了した。何かあれば私に連絡して欲しい」
286 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:08:51.31 ID:WwY+Tfp40
ことり「分かりました」 

英玲奈「念の為に動き易い服と着替えを用意をお願いする」 

ことり「はい、分かりました。タオルも必要ですか?」 

英玲奈「タオルや飲み物は学院の方で用意される。勿論、シャワーだけでなくお風呂もある」 

英玲奈「サウナ派でもきちんと完備してあるので心配はない」 

ことり「お風呂にサウナまで……。ここって高校ですよね?」 

英玲奈「芸能科に力を入れている証拠だ。これくらいで驚くことはない」 

ことり「十分に驚きますけど」 

英玲奈「合宿用に宿泊施設もあるし、スポーツジムのような設備も充実している」 

英玲奈「劇場があるので夜中であろうと歌もダンスの練習も可能だ」 

ことり(そ、想像してたよりもずっと凄い学校みたい。パンフレット見直した方がいいかも) 

英玲奈「施設の見学は時間が出来れば私が案内しよう。とにかく明日、ツバサと会ってからだ」 

ことり「ツバサ?」 

英玲奈「A-RISEのリーダー。ことりよりも小柄だが、そのカリスマ性はどこに居ても輝いて見える」 

英玲奈「歌唱力と動きのキレも素晴らしいが、小柄でありながら醸し出す色気」 

ことり「色気?」
287 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:09:26.67 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「その意見は男性ファンの意見なので、女の私にとっては愛らしいとしか思えないが」 

ことり(英玲奈さんは見た目と違って意外と天然さんなところもあるのかも) 

英玲奈「現在のスクールアイドルの中で、個人であれば間違いなくナンバー1の存在」 

ことり「そんなに凄い人なんですか」 

英玲奈「身内だから厳しい採点をして尚、一番だと言い切れるくらいには凄いかな」 

ことり(私と海未ちゃんにとっての穂乃果ちゃんってことだよね) 

英玲奈「グループとしても全国二位だから、誇張表現でないことは保障する」 

ことり「全国二位、ですか」 

英玲奈「スクールアイドルにはラブライブという全国大会がある。今年は残念ながら二位だった」 

ことり「二位でも十分すぎると思います。というか、そんなグループに私が入るなんて流石に無理です」 

英玲奈「結論は見学してから。臆病さは大切だけど、ただの逃げ腰じゃ世界は輝かない」 

英玲奈「勇気ある選択をするからこそ、未来は輝く。ことりもまた、同じ道を歩むと期待している」 

英玲奈「随分と引き止めて悪かった。どうやら、少し浮かれていたようだ」 

ことり「浮かれていた?」 

英玲奈「ああ。ツバサと話していた理想の新メンバーに出逢えたことが嬉しくて」 

ことり「ぅうっ。そんなに持ち上げられても困ります」
288 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:10:15.00 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「サンタも神も信じたことはないが、今日という日の出逢いは誰かからのプレゼントなのかもしれない」 

英玲奈「そろそろ行かないとツバサに怒られてしまう。では、ことり。また明日」 

ことり「は、はい。練習がんばってください」 

英玲奈「ありがとう」 

ことり「……はぁ〜」 

ことり(突然のことで頭が半分くらい回ってなかったけど、大変な事になっちゃった!) 

ことり(海未ちゃんがスクールアイドルを始めてなかったら、絶対に断ってたと思う) 

ことり(何だかんだ言いながらも楽しそうな海未ちゃんを見て、私も少し興味が湧いてたの) 

ことり(可愛い衣装をデザインして作るのも好きだけど、可愛い服を着るのも大好きだからっ) 

ことり(だけど、全国二位と聞いて興味は凍結し、恐怖にも似た感情が生まれる) 

ことり(穂乃果ちゃんなら臆せず興味を持つかもしれないけど、私には無理) 

ことり(それに私は二人の分まで夢を叶えなきゃいけないから。寄り道をしてる場合じゃないよね?)
289 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:10:54.76 ID:WwY+Tfp40
――南家 夜 ことほのうみ 

海未「ほら、穂乃果。口元をそんな汚す食べ方ははしたないですよ」 

穂乃果「だってチキンだよ、チキン! それにクリスマスなんだよっ」 

海未「全く理由になってません」 

穂乃果「ことりちゃんは穂乃果の味方だよね?」 

ことり「えっ? ごめんね、ちょっと考え事してて話を聞いてなかった」 

海未「UTX関係でしょうか?」 

ことり「うん。今日課題出しに行った時にちょっと」 

穂乃果「課題以外にも何かあったの? 私で力になれることがあれば何でもするよ!」 

海未(最近ちょっとだけ穂乃果の元気がないように見えましたが、考え過ぎだったようですね) 

ことり「ありがとう。でも、大丈夫だよ。自分で何とかしてみる」 

海未「穂乃果もことりを見習ってもっとしっかりしてください」 

穂乃果「海未ちゃ〜ん。今日はクリスマスイヴなんだから少しは楽しもうよ」 

海未「そういう台詞は普段しっかりしてる人が言うから意味が生まれるんです」 

海未「普段からお祭り騒ぎの穂乃果ではだらける口実にしか聞こえません」 

穂乃果「ことりちゃ〜ん。海未ちゃんがいじめる〜」
290 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:11:38.30 ID:WwY+Tfp40
ことり「穂乃果ちゃんは来年から頑張る子だよね?」 

穂乃果「そうそう! 今年だらけた分、来年は二倍頑張るから」 

海未「ことりは将来絶対に子育てに失敗するタイプですね」 

穂乃果「そんなことないよ。ことりちゃん程お母さんにした子居ないもん」 

ことり「はぅん。今の年齢でお母さんはちょっと嬉しくないかなぁ」 

穂乃果「料理も美味しいし、よし! 今日からことりちゃんのお家の子になろう」 

海未「その台詞はダイエット以上に聞き飽きましたよ」 

穂乃果「そうだ、ダイエットするんだった。来年から頑張るっ」 

ことり「あ、はは……」 

海未「やれやれ。録音しておいて、来年の今頃に聞かせてあげましょうか?」 

穂乃果「それだとまるで穂乃果が成長しないみたいに聞こえるじゃない」 

海未「成長していないではないですか。いい機会ですから来年の毎月の目標を立ててください」 

海未「目標が達成出来ない場合は、我が家に泊り込みで鍛え直します!」 

穂乃果「ひぃぃっ! 海未ちゃんのやる気スイッチが入っちゃったよ」 

ことり「海未ちゃんに着て欲しい衣装用意したんだ。ミニスカサンタさんをイメージした衣装なんだけど」 

海未「なっ! なななんですかその衣装は。聞いただけで恥ずかしそうではないですか」
291 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:12:17.56 ID:WwY+Tfp40
穂乃果(おぉ〜♪ ことりちゃんの言霊。海未ちゃんにこうかはばつぐんだ!) 

ことり「お部屋は暖かいからお腹冷えないし大丈夫だよ」 

海未「そんなの無理ですっ」 

ことり「穂乃果ちゃんはトナカイ。おへそ出しの可愛いやつ」 

穂乃果「えぇっ!? 穂乃果まで着替えるの。だったらことりちゃんは?」 

ことり「ことりはサンタさんを待つ子供役だからこのままで」 

海未「卑怯ですよ! でしたら私も子供役をします。絶対に着ませんからね」 

穂乃果「公平にジャンケンにしようよ。そしたら海未ちゃんはおへそ出しのトナカイになるかも……ぬふふ♪」 

ことり「それでもいいかも」 

海未「そんなことよりまずは冷める前に食べなきゃ駄目ですよ!」 

穂乃果「海未ちゃんってば自分に都合が悪くなると誤魔化すんだ〜。穂乃果にはいっつも厳しいのに〜」 

海未「ぐっ。それとこれとは別です」 

ことり「あ〜ぁ。海未ちゃんの為に作ったのになぁ。サンタさんな海未ちゃん見たかったなー」 

海未「二人して私を苛めて楽しいのですか?」 

ことほの「すっごく楽しい☆」 

海未「」
292 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:12:51.72 ID:WwY+Tfp40
―― 一方その頃 矢澤家 

にこ「にこにーサンタさんよ!」 

こころ「にこにーサンタさん!」 

ここあ「わぁーい! にこにーサンタさん!」 

にこ「いつも良い子な二人にはプレゼントがあるにこ」 

あんじゅ「トナカイの着替え待たずに出て行くの酷いよ〜」 

にこ「そんなとろくちゃ世界は目指せないわ」 

あんじゅ「着ぐるみ着るの初めてなんだから時間掛かるのしょうがないでしょ」 

ここあ「あんちゃんトナカイー!」 

あんじゅ「よしよし。にこにーと違ってここあちゃんは良い子にこっ」 

こころ「あんじゅちゃんすごーい!」 

あんじゅ「こころちゃんも良い子にこ〜」 

絵里「イヴ当日にトナカイの着ぐるみ貸してくれるなんて、にこの人望の結果よね」 

にこ「何よ、絵里ってば今日は妙に素直じゃない」 

絵里「誘って貰えなかったら一人寂しいイヴを過ごすことになってたからね。少しはよいしょしておかないと」 

にこ「よいしょなんかい! まぁ、いいわ。さ、こころからまずプレゼントにこ♪」 

こころ「やったー。ありがとう、にこにーサンタさん。何かな何かな?」
293 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:13:36.54 ID:WwY+Tfp40
にこ「開けてからのお楽しみにこ。次はここあにこ!」 

ここあ「やたーっ! にこにーサンタさんありがとう!」 

あんじゅ「次は三人目の妹である私にプレゼントだよね」 

にこ「はぁ? あんたにプレゼントなんてあるわけないでしょ」 

あんじゅ「う〜るる〜トナカイシベリアに帰る!」 

絵里「サンタが居るのってグリーンランドかフィンランドじゃなかった? 少なくともロシアには居ないわよ」 

あんじゅ「絵里ちゃんまでいじめる〜るるる〜」 

にこ「もはや悲しみじゃなくて歌になってるわよ。煩いだろうからあんたの分まで用意したわよ」 

あんじゅ「さっすがにこにーお姉ちゃん! 大好きニコ!」 

にこ「本当に現金な子ね。ほら、受け取んなさい」 

あんじゅ「ありがとー♪」 

絵里「本当に用意してたのね。てっきり『にこの笑顔にこ!』とか言うのかと思ってたけど」 

にこ「失礼なやつね。家族の中で一番長い時間過ごす相手だから、いじけられると面倒なのよ」 

絵里「ああ、なるほどね。来年は私も二人と同じクラスになれると良いけど」 

あんじゅ「先生達も学校存続にはSMILEが必要だって思って、一緒のクラスにしてくれるよ」 

にこ「再就職先探すよりはクラス替えで三人一緒にする方が楽だし、そうなるでしょ」 

絵里「ふふっ随分と自信家の姉妹ね。そっくりだわ」
294 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:14:26.28 ID:WwY+Tfp40
こころ「うさぎさんのぬいぐるみー!」 

ここあ「ここあはキツネさんのぬいぐるみ!」 

にこ「にこにーサンタとトナカイからのプレゼントだから大事にするにこよ?」 

こころあ「うん!」 

絵里「そんな良い子な二人に私からもプレゼントよ。すっごく美味しいチョコレート」 

こころ「チョコレート!」 

ここあ「食べてもいいの?」 

にこ「今日はケーキもあるんだから明日以降にしなさい。それから、まずはお礼でしょ?」 

こころあ「ありがとう!」 

にこ「気を遣わせて悪かったわね」 

絵里「亜里沙の小さい頃思い出して嬉しいのよ。だから気にしないで」 

あんじゅ「にこ〜早く戻ろう。トナカイの手じゃプレゼント開けられない」 

にこ「はいはい。着替えてくるから、料理の方運んでてもらっていい?」 

絵里「了解よ。にこの料理は美味しいから食べるのが楽しみだわ」 

あんじゅ「絵里ちゃんの意見に同意! おにくおにく〜♪」 

にこ「こころとここあも汚れるといけないから、ぬいぐるみは部屋に置いてきなさい」 

こころあ「はぁーい」
295 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:15:01.33 ID:WwY+Tfp40
――十二月二十五日 UTX学院 ことり 

ことり「すいません、お待たせしました」 

英玲奈「こちらが十五分前行動をしていただけ。ツバサの元へ案内する。一緒に行こう」 

ことり「は、はい」 

英玲奈「昨日もそうだったが、緊張する必要はない」 

ことり「でも、やっぱり緊張してしまいます」 

英玲奈「やはりここに居る間は自分ももうUTXの生徒なんだと思ってもらえればいい」 

ことり「難しいです」 

英玲奈「私もツバサもことりより一つ年上なだけで、特別ということはない」 

ことり(中学生と高校生だと妙に大きな壁があるように感じるんだけど、分かってないみたい) 

英玲奈「家はここから近いのかな?」 

ことり「お隣の淡路町です」 

英玲奈「それは良かった。もしもの時はタクシーで直ぐに行き来できる」 

ことり「えっと?」 

英玲奈「スクールアイドルになったらの話。遅くなった場合はタクシーで帰るといい」 

英玲奈「タクシーチケットの方を学院側から配布されるので心配することはない」 

ことり(そっちの心配より、既にスクールアイドルになった前提の話をしてる事が心配なんだけど)
296 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:15:37.69 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「泊まりになりそうな時もまた学院から連絡を入れるので安心して欲しい」 

ことり「はい」 

英玲奈「着替え等も新品が用意されているが、自分の物じゃないと嫌だという時はロッカーに置いておくといい」 

ことり「……私、いつも使ってる枕じゃないと中々眠れなくて」 

英玲奈「女の子らしくて可愛いと思う」 

ことり「ありがとうございます?」 

英玲奈「雑誌の取材等は慣れるまでは私とツバサが答えよう」 

英玲奈「ただ、一番最初だけは質問が多くなるだろうから、そこだけは頑張って欲しい」 

ことり(うぅ……どうしよう) 

英玲奈「女子校であることを配慮して、記者もカメラマンも女性が来る。そこまで緊張することはない」 

ことり(英玲奈さんってすっごいマイペースだよぉ) 

英玲奈「他に何か気になる点はあるだろうか?」 

ことり「スクールアイドルってどんなことをするんですか?」 

英玲奈「一に練習、二に練習、三四も練習、五に本番。そんなところかな」 

ことり「練習三昧なんですね」 

英玲奈「見に来てくれるお客さんを満足させるのがスクールアイドルの在り方だと私は思っている」 

ことり「つまりはファンの為ってことですね」
297 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:16:16.27 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「そうでもあるし、或いはそうでもない。私達の場合はスクールアイドルであるけど、プロ意識を必要とされる」 

英玲奈「本物のアイドルではない私達のライブにお金を払って見に来てくれる」 

英玲奈「だからこそ、満足させられなければ私達の存在意義は失われる。故に、より高みを目指せる」 

ことり「……」 

英玲奈「劇場を持っているUTXだからの自論だし、ことりがどう考えるのかは別だ」 

ことり「……やっぱり私には絶対に向いてないと思います」 

英玲奈「もしそうだとしたら、私のセンスがなかったと言うことになる。そして、私は自分のセンスを信じている」 

英玲奈「それからこれも個人の意見だが、悪い事を語る際に《絶対》という言葉は使わない方がいい」 

ことり「え?」 

英玲奈「絶対という言葉は不安を確定させる為にあるんじゃない」 

ことり「……素敵な考えですね」 

英玲奈「だから絶対はこういう風に使う。南ことりは絶対にスクールアイドルになって沢山のファンを魅了する」 

ことり「英玲奈さん」 

英玲奈「昨日も言ったけど、取り敢えず練習を見てから決めて欲しい」 

ことり「はい、すいません」 

英玲奈「謝ることはない。ことりの時間を貰っているのは私の我がままに過ぎない」 

英玲奈「お詫びとして先にこれをプレゼントしておこう」
298 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:16:51.18 ID:WwY+Tfp40
ことり「これは……ライブのチケット?」 

英玲奈「スクールアイドルになるかどうかは分からない。だけど一度でいいからライブを見て欲しい」 

英玲奈「これも私の我がままになってしまうかな?」 

ことり「くすっ。三日後ですね、楽しませてもらいます」 

英玲奈「やっと笑ってくれた。素敵な笑顔だ」 

ことり「あ、ありがとうございます」 

英玲奈「私が男だったら惚れていてもおかしくないな」 

ことり(海未ちゃんが恥ずかしいこと言える性格だったら、沢山の後輩の子が泣いてたかも) 

英玲奈「ツバサの前でもその笑顔でいればA-RISE入りはスムーズに終わる」 

ことり「はぅん」 

ことり(英玲奈さんの中では、もう完全に私がA-RISE入りすることが確定してるよぉ) 

英玲奈「私と違ってツバサは親しみ易いから、緊張することもないだろう」 

ことり「英玲奈さんが居てくれれば多分大丈夫です」 

英玲奈「ふふふ。私に気を遣う必要はないよ」 

ことり「そういうつもりで言った訳じゃなくて本心ですよ」 

英玲奈「ことりは良い子だな。さ、あの扉の向こうにツバサが待っている。心の準備は大丈夫かな?」 

ことり「はいっ!」
299 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:17:27.79 ID:WwY+Tfp40
――UTX劇場 

ツバサ「初めまして、南ことりさん」 

ことり「こ、こんちには。初めまして」 

ツバサ「英玲奈には話しに聞いてるだろうけど、自己紹介させてもらうわね」 

ツバサ「私はA-RISEのリーダーをしてる綺羅ツバサっていうの。これからよろしくね」 

ことり「あの、今日は見学だけでスクールアイドルになるかどうかは決めてないんですけど」 

ツバサ「そういえばそうだった、ごめんね。でも、一緒にやってくれると私は嬉しいな」 

英玲奈「私の想定通り、ツバサのお眼鏡に掛かったようだ」 

ことり「今会ったばかりですよ?」 

ツバサ「スクールアイドルなんて一目で何かを感じないと可能性を感じられないわ」 

英玲奈「秘めた強さとでもいえばいいのだろうか、そういう物を持っている者は輝いて見えるものだ」 

ことり(穂乃果ちゃんなら納得出来るんだけど、ことりは……) 

ツバサ「魅力に見合った自信がないって感じかしら。でも、それはライブを経験していけば蓄積されるものだし」 

英玲奈「私もそう思っている。ただ、昨日も言った通りことりは被服科の特待生だ。私達より練習が少なくなる」 

ツバサ「ただ、それでも十分お釣りがくる人材よね。芸能科で入ってくる生徒の中でこの子以上の逸材は居ないと思うわ」 

ことり「そんなことはないです」 

ツバサ「くすっ。謙遜は美徳だけど、スクールアイドルには無用な物よ」
300 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:18:09.13 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「ことりには謙遜する位のままの方がファンに受けそうだけど」 

ツバサ「それもそうね。気が早いけスクールアイドルになってくれる前提で話すわね」 

ツバサ「入学までは非公式ということで完全オフレコにしてもらうわ。ただ、お母さんは音ノ木坂の理事長よね?」 

ことり「はい、そうです」 

ツバサ「立場ある人なら吹聴したりはしないでしょうから、お母さんには話をしてね。必要なら私達も挨拶に行くから」 

ツバサ「約四ヶ月で一人前のスクールアイドルになってもらって、初ライブはゴールデンウィーク明けてからね」 

ツバサ「メンバー入りの発表は入学したその日に行われるから、取材も同じ日にお願いするわ」 

ツバサ「課題以外の時間は全て学校とスクールアイドルの練習に費やすと思ってね」 

ことり(え、この流れって既に逃げ道を塞がれてるんじゃ) 

ツバサ「何か質問あるかしら?」 

ことり「スクールアイドルになるかどうかは、私が答えを出していいんですよね?」 

ツバサ「ええ、勿論よ。私には夢があるの。だから最高のメンバーが欲しい。でも、強制はしない」 

ツバサ「アイドルっていうのは楽しめなければダメなの。歌が上手いとか、踊りが上手いは二の次よ」 

ツバサ「お眼鏡に掛かっていればというのが前提だけど、ね?」 

ことり「……」 

ツバサ「取り敢えず練習を見て、少し練習に参加して貰えれば今日のところは満足よ」 

ことり「運動とか体育でするくらいで体力の方が本当に少なくて」
301 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:18:44.17 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「ことりには謙遜する位のままの方がファンに受けそうだけど」 

ツバサ「それもそうね。気が早いけスクールアイドルになってくれる前提で話すわね」 

ツバサ「入学までは非公式ということで完全オフレコにしてもらうわ。ただ、お母さんは音ノ木坂の理事長よね?」 

ことり「はい、そうです」 

ツバサ「立場ある人なら吹聴したりはしないでしょうから、お母さんには話をしてね。必要なら私達も挨拶に行くから」 

ツバサ「約四ヶ月で一人前のスクールアイドルになってもらって、初ライブはゴールデンウィーク明けてからね」 

ツバサ「メンバー入りの発表は入学したその日に行われるから、取材も同じ日にお願いするわ」 

ツバサ「課題以外の時間は全て学校とスクールアイドルの練習に費やすと思ってね」 

ことり(え、この流れって既に逃げ道を塞がれてるんじゃ) 

ツバサ「何か質問あるかしら?」 

ことり「スクールアイドルになるかどうかは、私が答えを出していいんですよね?」 

ツバサ「ええ、勿論よ。私には夢があるの。だから最高のメンバーが欲しい。でも、強制はしない」 

ツバサ「アイドルっていうのは楽しめなければダメなの。歌が上手いとか、踊りが上手いは二の次よ」 

ツバサ「お眼鏡に掛かっていればというのが前提だけど、ね?」 

ことり「……」 

ツバサ「取り敢えず練習を見て、少し練習に参加して貰えれば今日のところは満足よ」 

ことり「運動とか体育でするくらいで体力の方が本当に少なくて」 

ツバサ「大丈夫、それも聞いてるわ。今日するのは基礎の基礎だから。正しい声の出し方とかね」
302 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:19:27.71 ID:WwY+Tfp40
ツバサ「そうだ、歌いながら踊った経験ってある?」 

ことり「多分ないと思います」 

ツバサ「やってみると分かるんだけどね、すっごい疲れるわ。それでも笑顔を浮かべないといけない」 

ツバサ「体力と心に余裕が出来ないと難しい。それを約四ヶ月で形にしろっていうのはかなりハードだと思う」 

ツバサ「だから……なると決めたら容赦はしないからね」 

ことり「――」 

英玲奈「いきなり怖がらせるような事を言うな」 

ツバサ「だって、せっかくメンバーになってくれたのに辞められたらショックでしょ?」 

英玲奈「もう少し包み隠す言い方をしないと、メンバーにすらならない」 

ツバサ「和ませる為にも私の秘密を少しだけ。ここだけの話だけどね、私って最初はこういうのするのが嫌だったの」 

ツバサ「お母さんに無理やり月二のレッスンを受けさせられてね、すっごい不貞腐れてた」 

ツバサ「今はこうして好きになって自分からもっともっと輝きたいって思ってる」 

ツバサ「南さんと違って元々バスケットボールが好きだったから体力の方はあったんだけどね」 

ツバサ「同じレッスン生の友達に感化されて、やる気を出すまでに半年も掛かったんだ」 

ツバサ「最初から覚悟を決めてから始めればあんな情けない姿を見られなくて済んだのにって後悔の念もある」 

ツバサ「自分が出来なかったことを人に求めるのは駄目なことだけど、私は南さんに覚悟を求めてる」 

ことり「……」
303 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:20:04.64 ID:WwY+Tfp40
ツバサ「初ライブを前にした時に体が緊張で震えても、時間が来たときにはいつも通りに歌えるメンタルの強さ」 

ツバサ「何かをミスった時にそれすらも上手くパフォーマンスに組み込む機転の良さ」 

ツバサ「歌やダンスで魅了出来るレベルを求められるのは当然。学校側からのプレッシャーもそれなりにある」 

ツバサ「今の南さんでは絶対になれない。だからこそ、強くなる為にどんな時も揺るがない確固たる覚悟を求めているの」 

ことり(ど、どうしよう。そんな話を聞いてるだけで自分が場違いのような気がして体が震え始めちゃった) 

英玲奈「緊張はこうして……抱き締めることで落ち着く。失敗は誰かがフォローする」 

英玲奈「あくまでツバサの言葉は一人の場合を前提に話しているだけだ。大丈夫、怖くはない」 

ツバサ「ラブライブでの優勝が学校側からの要望だから、生半可の気持ちじゃ通じないのは確かでしょ?」 

英玲奈「今日のツバサはいつもと違って本当に厳しいな」 

ツバサ「無意識にそうなってしまうくらい、南ことりの可能性を求めているのかしらね」 

英玲奈「普段のツバサはこんなに怖くないから怯えることはない。もしツバサが何か言ってきたら私が守ろう」 

ツバサ「フォローした後に否定するようなこと言わないで。怖がらせてごめんね」 

ことり「いえ……。私の方こそごめんなさい。あと、英玲奈さん。もう離してもらって大丈夫です」 

英玲奈「そうか」 

ツバサ「英玲奈はこう見えて年離れた妹が居るから年下を甘やかすのが好きなのよ」 

ツバサ「今みたいに子供扱いするようなスキンシップすることもあるから、嫌だったら私に言ってね」 

ことり「私の一番の友達がスキンシップ好きで慣れてますから」
304 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:20:39.27 ID:WwY+Tfp40
ツバサ「こう言ってくれてるけど出会ったばかりの仲なんだし、自粛しなきゃ駄目よ?」 

英玲奈「善処しよう」 

ツバサ「という訳だから、まずは私達がどういうグループなのかを見せないとね」 

英玲奈「音響は?」 

ツバサ「クラスの子が手伝ってくれるから大丈夫。曲順はこないだのライブと同じ」 

英玲奈「了解した」 

ツバサ「南さんにはまだこの制服は新鮮だと思うから、制服のままさせてもらうわね」 

ことり「今からライブをするんですか?」 

ツバサ「実際に目にしてもらった方が早いでしょ? それに、映像と違って生の方が心の奥に響くからね」 

英玲奈「サプライズの歓迎会とでも思って欲しい」 

ツバサ「さ、立ったままだと練習が大変になるわよ。座ってみてて」 

ことり「は、はい」 

ことり(ライブの初めては海未ちゃんかと思ってたけど、A-RISEになるなんて) 

ことり(しかも、観客はたった一人。ことりの為だけのライブ) 

ことり(完全に詰んじゃってるよね。……でも、私がスクールアイドルになれるのかな?) 

ことり(いけないいけない。悩むのはライブが終わってからで大丈夫だよね) 

ツバサ「それじゃあ、一曲目いくよ――」
305 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:21:16.49 ID:WwY+Tfp40
――夕方 練習後 シャワー室 

ツバサ「本来は休日とはいえこんな早い時間に終わるなんてないけどね」 

ことり「…………そ、うです、か」 

英玲奈「使ってなかった筋肉を酷使したんだ、シャワーを浴びた後はマッサージを受けると良い」 

ツバサ「UTXは芸能科があるからマッサージ師も常に待機してるから。あ、女性だから気軽に頼めるから平気よ」 

ことり「……はい」 

英玲奈「体力面はともかく、発生はまぁまぁ良かった。歌は……言葉に出来ない程すごかった」 

ツバサ「んふふっ♪ 南さんの歌は脳が蕩けるような可愛い歌だったわね。強力な武器になるわ」 

英玲奈「その表現が的確だ。脳が蕩けるかと思った」 

ことり「はぅん」 

ツバサ「照れることはないわ。最高の魅力よ。A-RISEになかった可憐さは新しいファンも呼び寄せるわ」 

英玲奈「ことりが入ってくれればラブライブで《絶対》に優勝出来る」 

ことり「……あの、ここまでしてもらってとても嬉しかったです」 

ことり「でも、一日だけで良いんです。スクールアイドルを始めるのかどうか、考えてみてもいいですか?」 

ツバサ「勿論よ。今日実際に目で見て、体験してみた訳だしね。じっくりと考えてみて」
306 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:21:57.08 ID:WwY+Tfp40
ツバサ「私達は明日も練習に来てるから。受付に話を通しておくわ」 

英玲奈「もし、直接言い難い返答ならば私に電話でもメールでも良い。自分で答えを出して欲しい」 

ツバサ「本音を言えば強引にも誘いたいくらい魅力的だけどね。そんなことしたら怒られちゃうから」 

ことり「学校にですか?」 

ツバサ「ううん、私の太陽に。きっと『アイドルっていうのは強引にさせるものなんかじゃないにこ!』って言われるわ」 

ことり「太陽?」 

ツバサ「あっと、ごめんね。今のはなしで。恥ずかしい話だから秘密☆」 

英玲奈「ツバサにはラブライブで優勝するよりも、本物のアイドルになるよりも叶えたい夢があるんだ」 

ツバサ「ちょっと英玲奈。それは秘密だって言ってるでしょ!」 

英玲奈「私は恥じる必要はない話だと思うけどな」 

ツバサ「私は恥ずかしいのよ。でも、いつか話すかもしれないわ。さ、早く着替えてマッサージ受けましょう」 

ことり「マッサージは痛かったりするんですか?」 

ツバサ「……足ツボは絶対に頼まない方が身の為よ。本気で泣くわ」 

英玲奈「好奇心猫を殺すというが、アレは正にそれに通じるものがあった」 

ことり「心に刻みました」
307 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:22:32.70 ID:WwY+Tfp40
――夜 南家 ことり 

ことり「ねぇ、お母さん。少し時間大丈夫かな?」 

ママ「ええ、大丈夫よ。何か悩み事?」 

ことり「うん。あのね、スクールアイドル知ってるよね?」 

ママ「勿論よ。音ノ木坂にも初めてのスクールアイドルが結成されたからね」 

ママ「何よりも海未ちゃんが参加しているし。あの子達のお陰で少し面白いことになってるのよ」 

ことり「面白いこと?」 

ママ「時期が早い内から学校見学も部活に参加してみることも許可する流れになってね」 

ママ「お陰で部活面の方が活性化したらしくて。入学者も減る一方だって予想も覆そうなのよ」 

ことり「へぇ〜」 

ママ「その流れの渦中に居たのが海未ちゃんだったの。初めは少し驚いちゃったわ」 

ことり「海未ちゃんそんな話してくれないから知らなかった」 

ママ「海未ちゃんとしては余り知られたくないのかもしれないわね。ごめんね、話の腰を折っちゃったわね」 

ことり「ううん、えっとね……その、スクールアイドルなんだけど」 

ママ「どうかしたの?」 

ことり「UTXのスクールアイドルの人に一緒にやらないかって誘われちゃって。どうしたらいいのかなって」 

ママ「A-RISEだったかしら?」
308 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:23:09.09 ID:WwY+Tfp40
ことり「うん。良く知ってるね」 

ママ「理事長ともなると近辺の学校の事は色々知っておく必要があるからね」 

ママ「でもA-RISEといえば全国大会で二位に入った有名なグループでしょう?」 

ことり「うん。なのにことりなんかを誘ってくれて……」 

ママ「ことりはどうしたいの?」 

ことり「私は……分かんなくて。だからお母さんにどうすれば良いのか欲しくて」 

ママ「そういう大事な答えは自分自身で出さないと相手にも失礼になるわ」 

ことり「……」 

ママ「お母さんが言えるのはことりがやりたいならやってみるのも良いと思うくらい」 

ママ「こんな時、穂乃果ちゃんならきっと迷わずにその場で即答しちゃうかもしれないわね」 

ことり「うん、きっとそうだと思う」 

ママ「海未ちゃんなら逆に恥ずかしがって穂乃果ちゃんとは逆に即答で断るでしょうね」 

ことり「そうかも」 

ママ「ことりはきっと悩みに悩んで答えを出す。そういう子よね」 

ことり「……うん」 

ママ「だったら沢山悩んでみなさい。大事な事で悩むのは心を成長させるのに必要なことだから」 

ママ「でもね、答えは絶対に出さないと駄目よ? 答えを出せないのは相手に対して一番失礼なことだから」
309 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:23:45.76 ID:WwY+Tfp40
ことり「うん」 

ママ「穂乃果ちゃんの元気な声を聞けば心が軽くなって、良い答えが出るんじゃないかしら?」 

ことり「でも、そうするといつまでも穂乃果ちゃんに頼っちゃうことになるし」 

ママ「ふふっ。少しは大人に近づいたかしら。今までは穂乃果ちゃんに頼りすぎてた面もあったわね」 

ママ「本当に困った時に頼れなくなったら本末転倒。その辺の匙加減を覚えられるともっと大人に近づくわ」 

ことり「まだ大人は遠いかも」 

ママ「焦る必要はないわ。ゆっくり大人になることもまた必要なことだから」 

ことり「結局どうすればいいんだろう」 

ママ「今日帰りが遅かったのは練習に参加してきたからなの?」 

ことり「海未ちゃんみたいに普段から運動してないから凄く大変だったぁ」 

ママ「普通の勉強に被服科としてのデザインに作品作り。そこにスクールアイドルの練習。身体は持つ?」 

ことり「……正直自信がないよ。私は夢を叶える為にUTXに入ったんだし、それだけに集中した方がいいのかな〜」 

ママ「スクールアイドルになることの魅力はあるの?」 

ことり「デザイン次第だけどね、曲と合えばことりがデザインした衣装で踊ることになるんだって!」 

ママ「デザインするのも作るのもだけど、可愛い服を着るのも大好きだものね」 

ことり「うん! キラキラしたステージの上で私の衣装で! そう考えるとドキドキしちゃう♪」 

ことり「それにね、A-RISEの先輩達二人もすごく良い人みたいで。だから力になれるならなりたいって思うの」
310 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:24:21.64 ID:WwY+Tfp40
ことり「だけど、体力もないし足を引っ張っちゃうんじゃないかって心配の方が強いかな」 

ママ「問題はそれだけじゃないわよね。高校になったら新しい環境も始まるし、心的な負担も増えるし」 

ママ「スクールアイドルの活動が忙しすぎて友達が出来なければ高校生活も寂しいしね」 

ことり「あっ……そうだね」 

ママ「常に思考を広く持つことが大切よ。特に悩み事は小さく小さくなっちゃうから」 

ことり「気をつけるね。うぅ〜どうすればいいんだろう」 

ママ「青春は高校を卒業しても出来るけど、スクールアイドルは高校生しかなれない」 

ママ「苦労をした分だけ夢は輝く。夢を言い訳にして楽をしたら、夢を叶えた後に夢は見えなくなるわ」 

ことり「もう、お母さんはどっちを選ばせたいの?」 

ママ「言ったでしょ? 悩みに悩んで自分の答えを出して欲しいのよ」 

ことり「いじわる〜」 

ママ「うふふっ。可愛い娘の成長の為なら意地悪にもなるわ」 

ことり「……明日までじっくり悩んでみる」 

ママ「寝不足はお肌の敵だから、早めに寝て。スッキリした頭で悩んでから答えを出すのも一つの手よ」 

ことり「うん。これって神様が推薦で楽した分の帳尻合わせなのかなぁ?」 

ママ「面白い考えね。でも、見返りは受験の比ではないと思うわ。ことりの答え、楽しみにしているわ」 

ことり「おやすみなさい。あと、ありがとうね」 

ママ「いいのよ。おやすみなさい」
311 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:24:57.54 ID:WwY+Tfp40
――ことりダイアリー? 

考えが上手くまとまらないので日記を書いています。 

何かをしていないと弱いことりは穂乃果ちゃんの声を聞いて楽をしてしまいそうだから。 

今回のことは穂乃果ちゃんにも海未ちゃんにも頼らずに自分で答えを見つけなきゃいけない。 

お母さんの話を聞いて、何故かそう確信しました。 

ずっと守られてきた私が変わるチャンスなのかもしれない。 

それに、二人が居ない寂しさを紛らわすことも出来るかもって少し思っちゃいます。 

これだと失礼になるかもしれないと思ったけど、別れ際のツバサさんの言葉を思い出してそうでもないのかなと。 

「スクールアイドルを志す切っ掛けは単純でも身勝手でもいいのよ。自分がしたいと思う理由になればね」 

正に身勝手極まりない理由だと思う。 

でも、始まってしまえばもう逃げることは出来なくなる。 

だったらその枷は自分のやる気になる物が適任だと思う。 

この答えが間違ってるのどうか、今の私には分かりません。 

でも、スクールアイドルを始めて良かったと今日の日記を読み返して笑っていられると良いな。 

穂乃果ちゃんと海未ちゃんと遊べる時間はなくなっちゃうけど、未来の自分達の為に。 

強い自分になれることを信じて、やってみようと思います。 

穂乃果ちゃんの言葉を借りて未来の自分へエールを送っちゃいます。 

「ファイトだよ!」 

もし辛いことがあったら何度も心で唱えて頑張ろうと思います。


312 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:25:31.32 ID:WwY+Tfp40
―― 一月一日 朝 矢澤家 

ママ「さぁ我が愛娘達。一年に一度のお楽しみの日よ。《四人》とも並びなさい」 

ここあ「ここあ一番!」 

こころ「あっ、ここあずるい。こころ二番!」 

あんじゅ「あんじゅ三番!」 

にこ「……いや、今更もうツッコミ入れないけどね。娘が四人な部分に」 

ママ「それじゃあここあから。好き嫌いしてお姉ちゃんを困らせちゃ駄目よ?」 

ここあ「うん!」 

ママ「良い返事ね。それじゃあ、お年玉よ。大事に使うのよ?」 

ここあ「はぁーい! ママありがとにこ!」 

ママ「次はこころ。最近は洗い物を手伝ったりするようになったんだって? しっかり者ね」 

こころ「えへへ! しっかりものー」 

ママ「こころも無駄遣いしないように使うのよ?」 

こころ「うん! ありがとうにこ!」 

ママ「次はあんじゅちゃんね。こころとここあの面倒見てもらってありがとうね」
313 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:26:07.96 ID:WwY+Tfp40
あんじゅ「私自身はにこに面倒見てもらってますから」 

にこ「その通りよ」 

ママ「ああ見えてお姉ちゃんは寂しがり屋だから、あんじゅちゃんが居てくれて一番嬉しがってるのよ」 

にこ「さも本当のことのように捏造しないでよ!」 

あんじゅ「にこにーお姉ちゃんってば寂しがり屋だけじゃなくて照れ屋にこ〜」 

にこ「いつも言ってるでしょ。照れてないっての!」 

ママ「はいはい、お正月から姉妹喧嘩しないの。二人も無駄遣いしないようにね」 

あんじゅ「ありがとうございます」 

にこ「私はいいわよ。もう高校生なんだから」 

ママ「高校卒業するまでは貰わなきゃ駄目よ。お正月にお年玉あげるのは親の特権なんだから」 

にこ「……ありがとう」 

ママ「お姉ちゃんには何から何まで押し付けて悪いと思ってるわ」 

にこ「いいのよ。私は好きでやってるんだから。あんじゅの世話以外」 

あんじゅ「酷いよ〜」 

にこ「あんた部屋に帰ったと思ったら、布団が冷たいとか言って戻ってくるんじゃないわよ」
314 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:26:42.85 ID:WwY+Tfp40
あんじゅ「だってにこの体温高いから温かいんだもん」 

にこ「あんたの体温が低いのよ。手も冷たいし」 

こころ「おてて冷たいと心があったかいの!」 

ここあ「あんちゃん心あったかいにこ〜」 

あんじゅ「えへへ! 二人共ありがとう」 

にこ「あ、そうだママ。朝ごはんなんだけど、友達呼んじゃ駄目?」 

ママ「いいわよ。でも、元旦の朝からって迷惑にならない?」 

にこ「一人暮らしなのよ。食べ終わってたら終わってたで初詣行けばいいし」 

ママ「ああ、友達って絵里ちゃんのことね。お姉ちゃんに友達が居てくれてママ嬉しいわ」 

あんじゅ「大丈夫だよ、にこ。いつでも私が居るから」 

にこ「ちょっとママ! あんじゅが本気になるからそういう大げさな言い方やめてよ」 

こころ「二千円〜。ここあはなに買う?」 

ここあ「きのこの山! こころは?」 

こころ「じゃあこころはたけのこの里!」 

あんじゅ「うふふ。こんなのんびりとした幸せなお正月初めて♪」
315 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:27:22.30 ID:WwY+Tfp40
――朝 神田明神 のんたん 

副会長「生徒会の仕事があるにも関わらず、わざわざ込むと分かっている初詣に来る神経が私には理解出来ないわ」 

希「とかいいながらきちんと付き合ってくれるところが副会長の良いところやんね」 

副会長「東條さんが口うるさいからよ」 

希「日本人としては初詣しておきたいし」 

副会長「それを言うなら日本には八百万も神様が居るんだから、神社まで来る必要もないでしょうに」 

希「気が引き締まるし」 

副会長「私は生徒会室の方が余程気が引き締まるわよ。大体ね、お正月って浮かれるのは中学生までよ」 

希「あ、巫女さんだ」 

副会長「って、人の話くらい聞きなさいよね。お正月の神社に巫女が居るくらい当たり前でしょ」 

希「ウチ巫女さんに何か惹かれるものがあるんだよね」 

副会長「だったら学園祭で巫女にでもなれば? 私は止めないわよ」 

希「それもいいかも。でも、そうなったら副会長も巫女さんだね」 

副会長「私はそんな変な趣味ないから制服のままに決まってるでしょ」 

希「一人だと恥ずかしいし」 

副会長「その恥じらいがあるなら最初から巫女なんてなりたいと思うことを恥じなさい」
316 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:27:55.88 ID:WwY+Tfp40
希「提案したのは副会長じゃない」 

副会長「冗談のつもりで言ったのよ。大体、私達が仕切る初めての学園祭になるのよ? そんな余裕ないと思うわ」 

希「だったらするとしても三年目やね」 

副会長「代々語り継がれる汚名を背負うことになるわよ」 

希「副会長の好きなUTXの歴史に名を刻むチャンスじゃない」 

副会長「私は正当な評価で名を残したいの。色物思考をなんとかしなさい」 

希「およ? 金髪さんが居る」 

副会長「秋葉なんだから外国人なんて普段から見慣れてるでしょ」 

希「そうだけど、あんな美人さんの金髪さんは初めて見るし」 

副会長「どこよ?」 

希「ほら、あそこ」 

絵里「おトイレとか行きたくなったら我慢しないで言ってね?」 

こころ「だいじょうぶだよ」 

ここあ「ここあもだいじょうぶ! あ、にこにー。いい匂いがするー」 

にこ「おせち料理を食べたばかりなのにまだ食べたいの?」
317 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:28:28.84 ID:WwY+Tfp40
ここあ「たこ焼きはべつにこ!」 

こころ「こころも食べたいにこ!」 

あんじゅ「じゃあお参りしたらあんじゅお姉ちゃんが買ってあげるにこ〜」 

にこ「あんまり甘やかすんじゃないわよ」 

絵里「お正月なんだし良いじゃないの。他に欲しいのがあったら私が買ってあげるからね」 

副会長「んーっと、そうそう思い出したわ。あれは音ノ木の生徒会長だった筈ね」 

希「あの人が音ノ木坂の生徒会長」 

副会長「有能だからと違って多分生徒数がすくないからだと思うけど、同じ一年よ」 

副会長「歴史しかない貧乏校で生徒会会長するなんて神経を疑うわ」 

希「それ以上他校の文句を言うならわしわしするよ〜?」 

副会長「ひっ! な、何よ本当のことでしょ?」 

希「そういうところがあるから前会長に生徒会から追い出されたんやん?」 

副会長「UTXが優れているのも音ノ木が廃れてるのも事実じゃない」 

希「事実であれば口にしても許される訳じゃないよ」 

副会長「分かったよ。それから、確かあの生徒会長と一緒に居るのって確かスクールアイドルやってたわ」
318 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:29:06.83 ID:WwY+Tfp40
希「生徒会長自らがスクールアイドル?」 

副会長「学校の方針なのか知らないけどね。客寄せパン――悪かったから、胸に当ててる手をどけてくれる?」 

希「でも輝いて見えるし、スクールアイドルやってるのも納得出来る」 

副会長「東條さんが言うと皮肉に聞こえるけどね。日本人なのにあっちよりスタイル良さそうだし」 

希「副会長からお年玉発言貰った〜。今年は良い事ありそうやね」 

副会長「私は事実しか口にしないわよ」 

希「ふふっ。しょうがない、お参り終わったら好きな屋台の出し物を一つ買ってあげよう」 

副会長「要らないわよ。子供じゃないんだから。そんな物食べてる暇があったら学院に早く戻るわ」 

希「相変わらず仕事一筋だね」 

副会長「うちのスクールアイドルがあれだけ頑張っていたらその努力に報いてあげなきゃ嘘でしょ?」 

希「ウチな、副会長のそういう真っ直ぐなところは好きだよ」 

副会長「だったらたまには私の言うこと聞いて欲しいわね。独自路線ばかりで付いていくのが大変すぎよ」 

希「そんな風に憎まれ口叩くところも好きだけどね」
319 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:29:38.55 ID:WwY+Tfp40
――お昼 UTX ことり 

ことり「はぁはぁ……はぁ〜」 

ツバサ「休憩には少し早いわよ。もう少し頑張って」 

ことり「すいません」 

英玲奈「謝ることはない。まだ若干緊張が抜けていない所為で体力の減りが早いだけ」 

ツバサ「練習なんだからって気を抜いてもらっては困るけど、緊張されるのも困りものね」 

ことり「二人の動きが洗練された動きを見ると無意識に緊張しちゃって」 

ツバサ「初めの内は別メニューの方が効果的なのかしら?」 

英玲奈「そうとも言えないだろう。ことりの性格を考慮すると一人にするとオーバーペースになる」 

英玲奈「このまま続けている方が後々の為になるし、慣れて緊張が抜けなければライブで一緒に歌えない」 

ツバサ「それもそうね。……早めにお昼にしましょう。その代わり食後は少し長く練習するからね」 

ことり「は、はい」 

ツバサ「それで一週間。一日はライブがあって軽めだったけど、実際のところどう思ってる?」 

ことり「やっぱりやるんじゃなかったって、後悔してる」 

ツバサ「んふふ。その素直なところ好きよ。でも、後悔をバネにしないとね」
320 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:30:14.42 ID:WwY+Tfp40
英玲奈「後悔なんてものは結果を出せばなくなる曖昧なものだ」 

ことり「でも、全然付いていけてないし」 

ツバサ「そんなこと気にしてたの? 私達は芸能科で一年近く多く経験してるのよ」 

ツバサ「これで差が全然なかったら自暴自棄になっちゃうわ」 

英玲奈「初ライブは五月半ば。焦ることはない」 

ことり「だけど、やっぱり後悔と焦る気持ちが半々で……」 

英玲奈「今のことりは花が早く咲いて欲しいと願って水をあげ過ぎるようなもの」 

英玲奈「花は繊細で、当然ながら過剰に水を与えれば枯れてしまう」 

ツバサ「そういうこと。やる気は十分にあるんだし、焦らないでいいわ」 

ことり「でも……私もA-RISEの一員になる訳だから」 

ツバサ「まぁ、普通に考えるとプレッシャーよね。全国二位のグループに入るなんて」 

ツバサ「でもね、それはあくまで過去のこと。今の私達には関係がないわ」 

英玲奈「二人だったA-RISEはもうない。新生A-RISEは私とツバサとことり。三人で結果を出して初めて今の評価に繋がる」 

ツバサ「だから緊張する必要もないし、無駄に焦ることもない。メリハリは大切だけど」 

英玲奈「どうしても私達と比べてしまうというのなら、正しい比べるべき相手を用意すればいい」
321 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:30:53.52 ID:WwY+Tfp40
ことり「正しい比べるべき相手?」 

英玲奈「居るだろう? 昨日の自分という常に傍に居てくれる存在が」 

英玲奈「昨日の自分より毎日優れる自分を目指していけば、最高の自分という未来が待っている」 

英玲奈「目を瞑って昨日を思い出すと良い。今日の自分は昨日より駄目なのか優れているのか」 

ことり「……昨日よりはマシになってる、かな」 

ツバサ「そこは自信持っていいわ。ことりさんは昨日より動きが良くなってる。それは私が保証するわ」 

英玲奈「昨日の自分に負けた時、その時は本気で焦れば良い。だから今はその必要はない」 

ことり「英玲奈さん、ツバサさん。ありがとうございます! 弱音吐かずにもっと頑張ってみますっ」 

ツバサ「ただ最初に言ったけど、家での勝手なトレーニングは禁止だからね?」 

英玲奈「身体を休めるのもまたトレーニングの一環だ」 

ことり「はい、分かってます」 

ツバサ「じゃあ汗を流しちゃいましょう。シャワー浴びる前にしっかりと汗を拭き取るのを忘れないでね」 

英玲奈「汗を掻いたままシャワーを浴びると心臓に負担が掛かると言われている」 

ツバサ「眉唾かどうか分からないけど、万が一がある可能性があるなら配慮する。その姿勢が大切だから」 

ことり「はい!」
322 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:31:32.39 ID:WwY+Tfp40
――三月 某中学卒業式後... 

海未「こうして三人で迎える卒業式は最後になりましたね」 

穂乃果「……そうだね」 

ことり「だけど、いつでも三人一緒って想いは変わらないから」 

海未「ことりは最近強くなりましたね。穂乃果もことりを見習わなければいけませんよ」 

穂乃果「分かってるよー」 

海未「挨拶とかは平気ですか? 卒業したら先生に会いに行くというのはけっこうハードルが高くなりますから」 

穂乃果「分かる分かる。会いたいなーって思っても、会いに行けなかったりするもんね」 

海未「穂乃果は目立つからいいですよ? 私なんて会いに行って覚えていなかったらと思うと……」 

ことり「だ、大丈夫だよ。海未ちゃんのお家は凄く有名だし」 

海未「つまり家が有名でなければ存在を忘れられて当然ということですね!」 

穂乃果「海未ちゃんの痛いスイッチが入っちゃった!」 

海未「いいんです。どうせ私は多芸と言われる割に存在感が薄いんです」 

ことり「剣道であれだけ強かったんだから、母校以外の先生だって覚えてるレベルだと思うよ?」 

穂乃果「そうそう。打倒園田を掲げてた先生も多いんじゃないかな」
323 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:32:07.08 ID:WwY+Tfp40
海未「そうでしょうか?」 

ことり「うん!」 

穂乃果「なんなら今度一緒に小学校に挨拶しに行ってみる?」 

海未「……いえ、やっぱりいいです。気持ち軽くなったのでもう十分です」 

穂乃果「海未ちゃんはいつも自信満々なのに、時々すっごい臆病になるよね」 

ことり「そこが海未ちゃんのとっても可愛いところだけどね♪」 

海未「か、可愛くなんて」 

穂乃果「後輩の子からは慕われてるし」 

ことり「音ノ木坂に入学したらスクールアイドルになるんだし、ラブレターとか貰っちゃったりしてぇ」 

穂乃果「ラブレター!? それって、やっぱり同じ学校の子ってことかな?」 

海未「ど、どうして女の子からのラブレターを私にくるのですか。おかしいではありませんか!」 

穂乃果「絶対に貰いそうだよね」 

ことり「それをきちんと玉手箱みたいな箱に大事にしまってくれそう」 

海未「そんな箱持っていませんよ!」 

穂乃果「あははっ。じゃあ、これから三人でカラオケでも行こうか。何か歌いたい気分!」
324 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:32:40.15 ID:WwY+Tfp40
ことり「あ、ごめんね。今日もこれからUTX行かないといけなくて」 

穂乃果「あ……そうなんだ」 

海未「クリスマス以来ずっとですね。特待生というのはそこまでする必要があるのですね」 

ことり「う、う〜ん。ちょっと色々あって」 

穂乃果「でも今日は卒業式なんだよ? UTXの人だって分かってくれるよ」 

海未「穂乃果。我がままはいけませんよ」 

穂乃果「だって」 

ことり「ごめんね、穂乃果ちゃん。ことりも三人で遊びたいんだけど……今は無理だから」 

穂乃果「……じゃあ、春休みの間は?」 

ことり「少なくても五月半ばまでは無理、かな」 

穂乃果「……」 

ことり「……」 

海未(穂乃果。ことりのUTX入学を勧めたのは私達なんですよ? 笑顔で応援するのが礼儀というものです) 

穂乃果(……分かってるよ) 

穂乃果「じゃあ、五月過ぎたら遊ぼうよ。ことりちゃんと一緒に遊びに行くプランとか沢山考えるから」
325 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:33:13.98 ID:WwY+Tfp40
ことり「うん! その日のことを考えて今を頑張るね!」 

ことり「あ、ごめんね。そろそろ行かないとだから」 

海未「月並みで申し訳ありませんが、頑張って下さい」 

穂乃果「ことりちゃん! ファイトだよ!」 

ことり「はいっ!」 

穂乃果「……ことりちゃん、行っちゃったね」 

海未「忙しいみたいですが、それでも充実した表情を浮かべていますね」 

穂乃果「穂乃果と海未ちゃんと遊ぶより楽しいってことなのかな」 

海未「そんな訳ないじゃないですか。そういうのとは少し違うと思いますよ」 

海未「どちらかというと新しいことを見つけて一直線で頑張る穂乃果に近いと私は思ってます」 

穂乃果「私に近い?」 

海未「大変なことを大変と感じないくらいに毎日が充実してる。そんな感じがします」 

穂乃果「夢の為に頑張ってるんだね」 

海未「夢の為だけではないと思います。強く在ろうとしているように見受けられます」 

海未「今のことりなら、例え夢を叶えられなくても、それに変わる大切な物を掴めるような気がします」
326 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:33:46.67 ID:WwY+Tfp40
穂乃果「そっか。ことりちゃんは凄いんだね」 

海未「私達もことりの幼馴染として恥じない自分で在りたいものですね」 

穂乃果「……うん」 

海未「さて、今日は練習は休みなので二人ですがどこかに遊びに行きますか?」 

穂乃果「うん! ことりちゃん居ないし、カラオケよりも久しぶりにボウリングしよっか」 

海未「ほぉ。ボウリングですか」 

穂乃果「いつもことりちゃんの一人勝ちだし。練習して驚かせちゃおうよ」 

海未「いいですね。ですが、最初はガーターレーンなしで練習しませんか? そうでないとスコアが酷いことになります」 

穂乃果「そ、そうだね。私と海未ちゃんだけだと凄いことになっちゃうもんね」 

海未「ええ、恥じるべきではありません。有る物は有効活用する心が必要です」 

穂乃果「よ〜し! 今日の目標はガーターレーンなしでやった時はスコア60を目指そう」 

海未「はい! 大きな目標ですが……やってやれないことはないと信じたいです」 

穂乃果「うん。ことりちゃんの出す、スコア100前後を目指す第一歩だよ!」
327 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:34:28.20 ID:WwY+Tfp40
ことえれに慣れるまで更新速度が落ちる可能性があります。 
救済処置としてショート集(時系列は一年目)置いておきます。 

◆はたらく会長さま!◆(のんたん)十一月頃 

副会長「ねぇ、東條さん」 

希「ん、なぁに?」 

副会長「私に何か言うべきことがあるんじゃないの?」 

希「こっちの件もよろしくね」 

副会長「仕事を振れって言ってるんじゃないわよ。ったく……じゃなくて、これはやるけど」 

希「副会長さんは有能やんね」 

副会長「あなたに褒められるとムカつくわよ、本来は私がその座に就いてた筈なのに」 

希「まぁまぁ。副会長は他校に対して見下す発言するのがあるから駄目なんよ?」 

副会長「だってここはUTX学院なのよ? 他の学校なんて古いだけじゃない」 

希「自由の国に生まれてれば成功してたかもしれないなぁ」 

副会長「なんで東條さんは私のこと引き戻したのよ」 

希「なんかほっとけなかったんだよ。それに爆弾は自分で抱いてたいし」 

副会長「人を爆弾扱いするんじゃないわ。そもそも、あなたの方が十分厄介者じゃない。はい、終わったわ」 

希「ウチは前会長さんのプッシュで会長になっちゃっただけだし?」 

副会長「その顔が腹立たしいわね! はい、こっちもおしまい」 

希「副会長は上に立つには少し冷静さが足りないかな。はい、これとこれもお願いね」
328 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:35:07.30 ID:WwY+Tfp40
副会長「あなた以外になら冷静になれるわよ。A-RISEのウィークデイライブの整列は今回は誰でしたっけ?」 

希「桜川さんと大橋さんだったかな。……うん、合ってた」 

副会長「ラブライブは惜しくも二位だったけど、来年は是非とも優勝して欲しいわね。入学生が増えるわ」 

希「副会長は将来はここの先生でも目指してるの?」 

副会長「え、そんなことないわよ。私の夢は通訳だもの。はい、これも終了」 

希「だったら入学生の数は気にしなくてもいいんじゃない」 

副会長「後に語られたいじゃない。UTXはあの生徒会が居た時により増え始めたとかね」 

希「年代は語られても生徒会までは語られないんやないの?」 

副会長「やるからには万全を尽くし、完璧な結果を求める。人間としては当然のことでしょ?」 

希「……根は良い子だよね」 

副会長「はい? 何か言ったかしら?」 

希「ううん。なんもー」 

副会長「ま、性格はともかく東條さんの有能さは認めるけどね。ええ、性格はともかく」 

希「二度も言われると嫌味みたいやん」 

副会長「嫌味よ! はい、おしまい。まったく、分かっててそういう返しをするから素直に認められないのよ」 

希「ふふっ。ウチは副会長のこと十全に信頼してるし認めてるよ〜」 

副会長「あぁ〜もう! 嫌味にしか聞こえないわよ!」 

希「くすくすっ。さ、もう少しで今日の分は終わるし頑張ろう」 

役員(会長も副会長も凄過ぎ。あんなに会話してて私達の倍以上の速度で仕事をしてるなんて……本当に凄い)
329 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:35:43.51 ID:WwY+Tfp40
◆姉妹電話◆(絢瀬姉妹) 

絵里「そっちは元気でやってる?」 

亜里沙『うん、元気でやってるよ。毎日ブログ楽しみにしてる』 

絵里「きちんとブログと言えるようになったのね」 

亜里沙『もぅ、お姉ちゃんのいじわる。にこさんにしっかりと教え込まれたもの』 

絵里「相変わらず半分が料理ネタばかりだけどね。あんじゅはネタ被り気にしないから」 

亜里沙『ファンもそういう部分も楽しんでるよ。それにコメントも違う訳だし』 

絵里「実際ににこの料理は美味しいけどね。食べる度に癖になるのよね」 

亜里沙『いいな〜。亜里沙もまたにこさんの料理を食べたいなー』 

絵里「次にまた日本に来た時にお願いすればいいわよ。にこは年下には優しいからね」 

亜里沙『お姉ちゃんと同じタイプだよね。だから好き!』 

絵里「亜里沙が甘え上手っていうのもあるんだろうけど」 

亜里沙『そんなことないよ。最近はしっかりしてきたってお婆ちゃまも褒めてくれたもの』 

絵里「お婆様も亜里沙には甘いからね」 

亜里沙『パパもママも日本に行ってから随分変わったって褒めてくれたわ』 

絵里「くすっ。みんな亜里沙に甘いからね」 

亜里沙『もぉ〜ホントにお姉ちゃんのいじわる〜♪』
330 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:36:22.42 ID:WwY+Tfp40
絵里「何だかいつもより声が弾んでるわよ。何か良い事あった証拠ね?」 

亜里沙『ハラショー! さすがお姉ちゃん』 

絵里「正解みたいね。で、何があったの?」 

亜里沙『来年の十月にそっちに引っ越しても良いって認めて貰えたの』 

絵里「え、予定では早くても再来年って話だったじゃない」 

亜里沙『日本から帰ってからずっと説得したてたの。漸く許可貰えたわ』 

絵里「……本当に亜里沙には甘いんだから」 

亜里沙『お姉ちゃんダメ?』 

絵里「スクールアイドルの練習もあるし、生徒会もあるから夕ご飯一人で食べることになるかもしれないわよ?」 

亜里沙『寂しいけど大丈夫。疲れて帰ってきたお姉ちゃんに食べてもらえるように、今から料理も沢山練習するから』 

絵里「亜里沙が料理? ……それは色んな意味で心配ね」 

亜里沙『日本に住むようになったらにこさんにも是非料理を教えてもらいたい』 

絵里「その台詞をにこが聞いたら『うちの大きい妹とは別だわ』って言いながら泣いて喜ぶでしょうね」 

亜里沙『あんじゅさんはにこさんに甘えるのが大好きだから。にこさんも頼られて嬉しそうだったわ』 

絵里「そうね。本当の姉妹みたいよね」 

亜里沙『日本に行ったら皆でまた百均に行きたいな〜』 

絵里「観光でスクールアイドルショップの次に百均に連れて行くとは思ってなかったわ」
331 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:37:02.72 ID:WwY+Tfp40
亜里沙『でも亜里沙すっごい楽しかったよ!』 

絵里「ええ、それは知ってるけど、でも何だか納得いかないっていうかね。複雑なのよ」 

亜里沙『笑顔になれるかどうかが重要ってにこさんが言ってた』 

絵里「そうね。姉としてはなんだか負けた気がするけど、笑う門には福来るよね」 

亜里沙『笑うかど?』 

絵里「門っていうのは家や家族のことでね、笑顔のある家族には良い事がやってくるって意味なの」 

亜里沙『へぇ〜。なんだかカッコ良い♪』 

絵里「亜里沙も日本に住むなら諺とかも覚えてた方が良いわよ。親しみ易さが増すから」 

亜里沙『お婆ちゃまにしっかりと教えてもらうわ』 

絵里「歌や踊りの練習もしておけば商店街のイベントで一緒に踊れるわよ」 

亜里沙『それが一番楽しみ! お姉ちゃんと早く踊りたいな』 

絵里「私も楽しみよ。亜里沙のお陰でこうしてまた踊れてるんだから」 

亜里沙『会長さんもだよ』 

絵里「分かってるわ。会長の卒業までに何か恩を返そうと思ってるの」 

亜里沙『素敵!』 

絵里「何をすればいいのかまだ決まってなくて。亜里沙も一緒に考えてくれる?」 

亜里沙『勿論。喜んでもらえるのを考えないと』
332 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:37:41.90 ID:WwY+Tfp40
◆学園祭準備期間にて...◆(えりにこあん) 

にこ「どうして学園祭の講堂使用がくじ引きなのよ!」 

絵里「伝統の始まりを作ったお茶目な人に文句言ってよ」 

あんじゅ「私はくじ引きって発想良いと思うな〜」 

にこ「私だって当たればそう言ってやるわ。でも、こういう流れって嫌なオチしかつかない気がするのよ」 

絵里「にこが居る時点でお察しって感じよね」 

あんじゅ「にこにー部長だもんね」 

にこ「だからこそ、私は言いたいの。あんじゅか絵里が引く方がいいんじゃないかってね」 

絵里「部長がそんな他力本願でどうするのよ」 

あんじゅ「そうそう。にこが落ち込むのを慰めるの私好きだよっ」 

絵里「笑顔で言う台詞じゃないわね」 

にこ「というか、姉のピンチなんだからあんじゅ助けなさいよ」 

あんじゅ「だから私は失敗したにこお姉ちゃんを慰める役目があるから」 

にこ「結果の後じゃなくて、その結果をどうにかする役目を背負いなさいよね」 

絵里「上に立つ立場であることを選んだのなら、こういう場で責務を果たさないのは駄目よ」
333 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:38:18.98 ID:WwY+Tfp40
にこ「そうよね、逃げちゃダメよね」 

あんじゅ「……にこ。大丈夫、お約束だから誰もダメージ受けないから」 

絵里「ええ、そうよ。ここで当たりを引けたらそれはにこではないわ」 

にこ「美人短命という言葉があるように、」 

役員「あの、そろそろ引いて貰ってもよろしいですか?」 

にこ「あ、すいません。今引きます」 

あんじゅ「にこにー頑張って!」 

にこ「えいっ! ……あ゙ぁ゙〜っ」 

絵里「ハズレ引いてるにこを見て安堵してる自分が居るわ」 

あんじゅ「それでもショックを受けるにこは可愛いな〜」 

絵里「ふふっ。否定出来ないわね。馬鹿な子ほど可愛いっていうし」 

にこ「せめてどっちでもいいけど慰めなさいよね!」 

絵里「そういえばあのガラガラの正式名称ってなんだったかしら?」 

あんじゅ「あれに名前ってあるんだ」 

にこ「……にこぉ〜」 

あんじゅ「うふふ♪ でもやっぱりこの鳴き声で落ち込むにこが一番可愛いニコ!」 

絵里「悪女の素質抜群ね」
334 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:39:04.25 ID:WwY+Tfp40
◆バザー参加◆(SMILE) 

海未「あの、どうしてライブが終わったのに私達がバザーに参加してるんでしょうか?」 

絵里「お婆様に電話でバザー会場でもライブをしていることを伝えたら、ロシアから色々送られてきたのよ」 

あんじゅ「地域交流を深めることに理解あるお婆様なんだって」 

にこ「しかも、売ったお金を衣装代にしていいって話よ。正直助かるわ」 

海未「なるほど。だから見たことない物や変わったマトリョーシカがあるんですね」 

にこ「でも、こんな変なマトリョーシカ買う奴なんて居ないんじゃない?」 

あんじゅ「ユニークで良いと思うよ。私は歴代の大統領じゃなくて矢澤家マトリョーシカなら欲しかったけど」 

にこ「そうよね。こんなの要らないわよね」 

絵里「そういうのは心の中で思っても、ロシアの血を引いてる私の前で言うことではないでしょ?」 

にこ「だったらあんたはこれ欲しいの?」 

絵里「……。全部売れればいいわね」 

海未「絵里もロシアの方に失礼な反応ですよ。もし売れなかったら私が買いましょう」 

絵里「え゙!? 海未ってそういう趣味があるの?」 

海未「ですからその反応はおかしいですから。うちの母が好きそうなんですよ」 

にこ「海未の母親と言われると厳しそうな人を連想するけど違うの?」 

海未「確かに厳しい方ですが、少し天然が入ってる部分があるので」
335 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:39:38.17 ID:WwY+Tfp40
絵里「早く完売したら海未のご両親に挨拶しなくちゃいけないわね」 

にこ「そうね。中学生を高校生が連れ回していたら親御さんが心配するものね」 

海未「正直、最初は音ノ木入学後に弓道部にも剣道部にも入らないと言った時は渋い顔をしていました」 

海未「しかし、こうして地域の催し物や商店街のイベントに参加することが大きな好印象を与えたようです」 

海未「だからわざわざ挨拶する程ではないですよ」 

にこ「これを言ってるのが海未じゃなければ、暗に来るなって言われてるって思うわよね」 

あんじゅ「そうだね。ということで、頑張って完売させて海未ちゃんのお家に行こう!」 

絵里「そうね。張り切って売りましょう」 

海未「あれ? これは何ですか?」 

にこ「メンバーの写真よ! 購入得点としてその場でサインするっていう最高の思い出もプレゼントにこっ」 

あんじゅ「えぇ〜? スクールアイドル本人がそんなことしたらイメージダウンじゃない?」 

絵里「でも背に腹は括れないのも事実なのよね。生徒数が少ないから予算も少ないし」 

海未「というかいつこんな写真を撮ったんですか!?」 

にこ「元部員の子に隠し撮りを頼んでおいたのよ。一枚百円よ!」 

あんじゅ「写真一枚+サインでおうどん三玉分かぁ……。高いね」 

絵里(基準がそういう部分で考えるのね。今日は食材を私が買って、矢澤家でご馳走になりましょう) 

海未(見た目だけなら十分お嬢様系なのに……。大変なのですね)
336 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:40:16.64 ID:WwY+Tfp40
あんじゅ「あ、あれ? 絵里ちゃんと海未ちゃんの目が心なしか生暖かい気がするんだけど」 

にこ「それはそうよ! あんた料理しないんだから、背伸びしてるように思われて当然よ」 

絵里(そこじゃないわよ!) 

海未(そこじゃありません!) 

あんじゅ「う〜るる〜」 

にこ「まっ、気を取り直してバザー開始いっくわよ〜!」 

あんじゅ「うん! 頑張ろうね☆」 

中学生のお財布でも出せる1コインの値段は好評で、用意した分の写真は全て完売した。 

大統領マトリョーシカも含めたロシア土産も全て完売し、記念(?)として再びステージで歌うことになった。 

しかし、この日のブログはブレることのないあんじゅによる料理の事だけ。 

にこ「あんた普通ライブやった日はその感想書きなさいよ! 買ってくれたファンにも失礼でしょ!」 

あんじゅ「だってだって! カレー丼なんて初めてだったんだもん! すっごい美味しかったぁ〜♪」 

にこ「喜んでもらえるのは嬉しいけど、それよりまずはファンを大事にしなさいよ」 

あんじゅ「でもコメントは大好評だったよ?」 

にこ「……そりゃ、ライブやったのにカレー丼の記事載せられたら、褒める以外のコメントは出来ないでしょ」 

あんじゅ「来年の学園祭はにこのカレー屋さんにしよう!」
337 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:40:54.73 ID:WwY+Tfp40
◆最高のカレー◆(にこあん) 

にこ「たまには外で食べるカレーも乙なものでしょう?」 

あんじゅ「そうだね。にこのカレーが最高である確認する為にも時には必要なことだよね」 

にこ「……チェーン店とはいえ、そんな断言するのは失礼よ」 

あんじゅ「大丈夫大丈夫。えっとね、私は普通の中辛にしよっと」 

にこ「私も同じでいいわ。というか、あんた中辛大丈夫なのね」 

あんじゅ「激辛は舌が痛くなるから無理だけどねぇ」 

にこ「私が家で作るのはおちびちゃん達に合わせて甘口でしょ?」 

にこ「それをあんなに美味しいって言うんだもの、てっきり甘口派かと思ってたわ」 

あんじゅ「にこのカレーは愛情という魔法が掛かってるからね♪」 

にこ「何なら中辛も作ってあげるわよ? 私も元々中辛の方が好きだし。少し手間が増えるし、お鍋が必要になるけど」 

あんじゅ「ううん、にこのカレーは甘口のままでいいよ。というか、そのままだから最高なの」 

にこ「どうしてよ?」
338 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/14(火) 14:41:46.33 ID:WwY+Tfp40
あんじゅ「にこのカレーは家族皆で同じ味を食べるから最高に美味しいんだよっ」 

にこ「……あんた、恥ずかしいことを平気で言うわね。こっちが恥ずかしくなるわ」 

あんじゅ「だって本当のことだもん。だから今のままが良いの」 

にこ「あっそ。私は楽出来るからいいけど」 

あんじゅ「あぁ〜にこってば照れてる。とびっきり可愛いにこ〜♪」 

にこ「うっさいわよ!」 

あんじゅ「うふふ。普段お世話になってるお礼ににこにーの分、半額出してあげるね☆」 

にこ「中途半端過ぎるわ!」 

おしまい★ 

ネクストストーリー【新生A-RISE〜始まりの歌、秋葉に響け〜 後編】につづく!
339 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/14(火) 21:22:58.57 ID:4XXTXosxo
乙 
スマイルは独特の存在で可愛い
340 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/15(水) 00:21:26.55 ID:+K1vAH2sO
乙 
あんにこ最高ですね。
341 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/15(水) 16:49:11.85 ID:uzsEA2lAO
不定期だけど毎回いっぱい更新してくれるのが嬉しい 
まきりんぱなの登場はまだ先だろうけど彼女らの活躍も今から楽しみにしてる
342 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/15(水) 20:25:11.68 ID:/Kh3Fo3H0
おつ 
次が待ち遠しいにこぉ
343 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 2014/10/16(木) 00:33:41.28 ID:8q8AVjaAO
いつの間にかにことあんじゅの組み合わせに違和感を覚えなくなってきている… 
ことえれも早くも違和感が薄れてきてます
344 : ◇GKcmsITYJ1lx[saga] 2014/10/20(月) 23:41:48.16 ID:69Tc9Tvg0
◆新生A-RISE〜始まりの歌、秋葉に響け〜 後編◆ 

――二年目 四月六日 小泉家 りんぱな 

花陽「あっ、ちょっとごめんね。もう直ぐA-RISEの重大発表があるらしいの……」 

凛「かよちんは本当にアイドルが好きだよね」 

花陽「う、うん。だってあんな風に素敵な存在なんて他にはないから」 

凛「それで、重大発表って?」 

花陽「今日の十六時からA-RISEの公式サイトから生放送があるんだって」 

凛「ふぅん」 

花陽「何だろう! もしかして本格的なアイドルデビューしちゃったりとか?」 

花陽「ううん、夏休みに全国ツアーしちゃうのかも! それとも新曲発表かなっ?」 

花陽「それとも生中継でライブしちゃったりとか! はぁ〜ん! ドキドキが止まらないっ!」 

凛「アイドルのことになると暴走するのがかよちんの癖だねぇ」 

花陽「等身大サイズの抱き枕発売とかだったらどうしよう!? アイドルグッズで既にお年玉は使い果たしちゃったし」 

花陽「どうして中学生は働いちゃ駄目なんだろう!」 

凛「いつになくかよちんがヒートアップしてるにゃー」 

花陽「あっ! 動画が始まった!!」 

ツバサ『みなさーん! 今日は私達A-RISEの為に見てくれてありがとうね』 

英玲奈『ありがとう』
345 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:42:52.13 ID:69Tc9Tvg0
ツバサ『お知らせの通り重大発表があるの』 

ツバサ『去年はラブライブ二位に甘んじたけど、今年は優勝することを宣言するわ』 

ツバサ『自信過剰? ううん、絶対なる自信がなければこんなこと言えないよ』 

ツバサ『あんまりファンの人を焦らすのも問題かな?』 

ツバサ『じゃあ、そろそろ本題に入ろうか』 

ツバサ『本日よりA-RISEに新メンバーが加わります』 

花陽「新メンバー!?」 

凛「び、ビックリした」 

ツバサ『ライブのお披露目は来月の半ばからなんだけどね。先に挨拶しておこうと思って』 

ツバサ『じゃあ、心の準備はいいかな?』 

花陽「……ごくっ」 

ツバサ『A-RISEの三人目! 南ことり!』 

ことり『は、初めまして。ご紹介頂きました南ことりです』 

英玲奈『緊張することはない』 

ことり『は、はいっ』 

ツバサ『なんとことりは今年度からスタートした被服科の特待生!』 

ツバサ『三人でする初ライブの衣装もことりがデザインしたものになるのよ』 

ツバサ『人前に出るというのにまだ慣れてないけど、未完だからこそ一番可能性を秘めてる』
346 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:44:01.08 ID:69Tc9Tvg0
ツバサ『ラブライブの予選が始まる頃にはA-RISEで一番人気だったりしてね』 

英玲奈『ふふっ。リーダーの座が危ういな』 

ツバサ『そうね。誰よりも早くことりの歌声を聴きたい人は来週発売予定のチケットを購入してね』 

英玲奈『A-RISEの新しい伝説の始まり。観に来ないと後悔することになる』 

ツバサ『伝説は言いすぎだけどね。ほら、ことりも見てくれている人に一言』 

ことり『自分に出来る精一杯を表現できるように頑張ります』 

ツバサ『二人で行うライブは今月までだから、記念にそっちも是非足を運んでね』 

ツバサ『それじゃあ、いつも応援ありがとう! A-RISEからのお知らせでした』 

花陽「……みなみことり」 

凛「かよちん?」 

花陽「A-RISEの構成は可愛い面もあるけど、鋭いダンスのキレのツバサさん。女性ファンを虜にしてきた英玲奈さん」 

花陽「今回のことりさんは完全に可愛い路線。これは上手く調和することが出来れば……とんでもないことになるよ!」 

花陽「何よりも特徴的だったあの声! もし歌う時もあの声のままだとしたら恐ろしい!」 

花陽「脳が蕩けちゃう可能性がるかも。ディープなアイドルファンならことりさんのこの恐ろしさに気付く筈!」 

凛「かよちんの歌声の方が脳が蕩けると凛は思うなー」 

花陽「はっ!? こうしちゃいられない! 掲示板を確認しなきゃ! きっともういくつもスレッドが立ってる!」 

花陽「――放送はついさっきなのにことりさんアンチスレがこんなにいっぱい」 

花陽「A-RISEのファンなのにどうしてこんな風に感じるんだろう。UTXの方針を知らないのかな?」
347 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:44:49.43 ID:69Tc9Tvg0
凛「UTXの方針?」 

花陽「スクールアイドルの勧誘、又は加入はスクールアイドルに一任する。それがUTXの方針なの」 

凛「つまり?」 

花陽「つまりね、ことりさんの加入はスカウトなのか面接なのかそこは分からないけど」 

花陽「確実に言えるのがツバサさんと英玲奈さんの二人が認めたからメンバーに加わったってことなの」 

凛「んー?」 

花陽「学校の介入で勝手にメンバー入りするような事がないから、実力があるってことだよ」 

凛「なるほど!」 

花陽「好きな人が認めた相手なのに、まだほとんど何も分かってない状態なのに……」 

花陽「どうしてこういう意味のない悪意を書き込むのかな?」 

花陽「同じスクールアイドル好きな筈なのに。A-RISEが好きな筈なのに」 

花陽「こんな書き込みみても不快にはなっても、誰も笑顔になんてさせられないのに」 

花陽「アイドルと正反対の位置になるのに……どうしてなんだろう」 

凛「……かよちん。あっ、でもほら。【新生A-RISE・南ことりを応援するスレッド】ってあるよ」 

花陽「でも、アンチスレは現時点だけで8個以上」 

凛「そんなの関係ないよ! そんな毒しか吐けない奴の数なんて0と一緒だよ!」 

凛「凛はかよちんみたいに本気で好きだからこそ応援する。そんな人の発言にしか価値が宿らないと思う」
348 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:45:26.41 ID:69Tc9Tvg0
花陽「凛ちゃん……そう、だよね。ありがとう凛ちゃん」 

凛「といっても、凛はアイドルのこと良く分からないんだけどね☆」 

花陽「くすっ。凛ちゃんは元気をくれるし笑顔にさせてくれる。そんな凛ちゃんの魅力こそがアイドルと同じなんだよ」 

凛「恥ずかしいよぉ」 

花陽「凛ちゃんはもっと自信を付ければ花陽よりアイドルに近づけるのに」 

凛「……凛がアイドルなんて絶対にないよ。それより南ことりの応援スレを見ようよ」 

花陽(そんなことないのに) 

花陽「あっ、やっぱりあの声が一番話題に上がってる。皆分かってるんだっ」 

凛(そのかよちんの笑顔こそが凛に笑顔と元気をくれてるんだよ) 

花陽「私も書き込まなきゃ!」 

凛「かよちんが使命感に燃えてるにゃー」 

花陽「そうだ! 凛ちゃんにお願いがあるの!」 

凛「お願いなんて珍しいね。いいよ、何かな?」 

花陽「来週の土曜日。三人になって初めてのA-RISEのライブチケットが販売するの」 

花陽「そのチケット取るの手伝って欲しいんだよ。お金は私が出すから二枚取れたら一緒に行こう!」 

凛「うん、分かったよ」 

花陽「ありがとう、凛ちゃん!」
349 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:46:07.91 ID:69Tc9Tvg0
――同時刻 音ノ木坂 部室 SMILE 

にこ「南にもことりにも聞き覚えあるわね」 

あん「南は理事長と同じ苗字だよ」 

絵里「そういえば、理事長の娘さんがことりって名前じゃなかった?」 

にこ「そう言えばそうだった気がするわ。海未、あんたの友達だっけ?」 

海未「……」 

絵里「海未?」 

海未「あっ、すいません。余りにも驚いてしまいまして。それで、何でしょうか?」 

にこ「このことりってあんたの友達? 同い年?」 

海未「はい。私の大切な友達です。年齢も同じですよ」 

あんじゅ「その様子だと話は聞いてなかったのかな?」 

海未「ええ、去年のクリスマスから一度も遊ぶ機会がなくなって不思議に思っていたのですが。納得がいきました」 

にこ「ふふふふふっ♪」 

あんじゅ「どうしたのにこにー? ちょっと不気味だよ」 

絵里「かなり不気味よ。笑う要素なんてどこにもなかったじゃないの」
350 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:46:48.00 ID:69Tc9Tvg0
にこ「これが笑わずにいられる? 海未と同い年ってことは南ことりは今日UTXに入学した訳よね?」 

海未「はい、そうです」 

にこ「つまりA-RISEも私たちと同じことを考えて実行していたってことよ」 

あんじゅ「それが嬉しいの?」 

にこ「これを嬉しくないなんて言ったらいつ嬉しいって言葉を使えばいいのよ?」 

あんじゅ「私に褒められた時だね」 

絵里「テストで赤点回避した時かしら」 

海未「正しい行いをして報われた時でしょうか」 

にこ「そんなの全部ゴミ箱に捨てるレベルよ!」 

あんじゅ「それを捨てるなんてとんでもない!」 

絵里「赤点回避しないと先生たちの心象を悪くしちゃうでしょ」 

海未「少しは世の為になることをしてください」 

にこ「ウダウダと煩いわね。私のハッピータイムを邪魔するんじゃないわよ」 

あんじゅ「にこの倖時間は後の絶望フラグにしか見えないにこぉ」 

にこ「いつもいつも不吉なこと言うんじゃないわよ。海未も正式なメンバーになったんだからこれから良い事尽くめよ」
351 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:47:30.10 ID:69Tc9Tvg0
海未「……とてつもなく嫌なことが起こる予感がするのですが」 

絵里「私は生徒会長なんだから、変なことしないでよ?」 

にこ「私の実績考えてもう少し部長を信頼しなさいよ。今までも変なことはしてないでしょ」 

海未「中学生の私をスクールアイドルに加入させたではないですか。邪道な絡め手で」 

絵里「しかも校内で練習させる為に新しい規則まで作っちゃうし」 

にこ「ほら、こんな時こそ妹の出番でしょ。姉を庇いなさいよ」 

あんじゅ「地域清掃したり、イベントで歌うことで集客を増やしたり、何よりカレーが美味しい!」 

にこ「いや、最後のはおかしいでしょ。でも、きちんとやることはやってるのよ」 

海未「そうだからこそ性質が悪いんですよね」 

絵里「邪道だけど完全に悪に染まらない。義賊みたいよね」 

にこ「にこが盗むのはファンのハートだけにこっ♪」 

あんじゅ「出待ちは一番にこが少ないけどね」 

絵里「海未なんて正式なメンバーじゃないにも関わらず、出待ち多かったものね」 

海未「絵里が一番多いではないですか!」 

あんじゅ「絵里ちゃんは高校生がメイン。海未ちゃんは中学生がメインって感じだよね」
352 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:48:07.41 ID:69Tc9Tvg0
絵里「あんじゅの場合男性ファンがメインだから出待ちが出来ないからね」 

にこ「私はろうにゃくにゃんにょに人気だからねぇ。出待ちが少ないのも圧倒的アイドル力の所為だしぃ〜?」 

海未「老若男女です。言えないのなら背伸びしない方が賢いですといつも言ってるでしょう」 

にこ「くっ」 

あんじゅ「にこの場合は商店街の人達とか小学生に人気だから、出待ちする層じゃないのは確かだよね」 

絵里「何だかんだで愛されてるからね」 

にこ「ふっふーん!」 

あんじゅ「にこにーぶちょーかぁわいい〜♪」 

にこ「頭撫でるんじゃないわよ!」 

海未「それにしても、ことりがスクールアイドルですか」 

絵里「歌や踊りが得意な子なの?」 

海未「いえ、運動能力はそれ程ではありません。ただ、歌がすごいです」 

絵里「すごい? 上手いってことかしら?」 

海未「そうですね、上手いは上手いのですが……。西洋でいう人魚的存在です」 

絵里「歌声で船を惑わして沈めるんだっけ?」
353 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:48:51.71 ID:69Tc9Tvg0
海未「ええ。ことりの場合は魅了して脳を溶かすようなレベルの歌声です。幼馴染耐久でもすごい威力ですよ」 

にこ「こらっ! いつまで撫でるつもりよ」 

あんじゅ「にこにこ〜♪」 

にこ「日本語喋りなさいよ!」 

あんじゅ「2525〜♪」 

にこ「更に日本語から遠くなったわよ!」 

海未「ラブライブで再会するには決定打が欠けている気がします」 

絵里「そうかもしれないけど、にこならなんとかしてくれそうに思うわ」 

海未「随分と信用してるのですね」 

絵里「そうね。あの二人みたいな妹が居たらダンスを諦めてなかっただろうなって思うくらいにね」 

海未「私には年の離れた姉が――もう結婚して家を出ています――居ますがあの二人が姉というのは遠慮したいです」 

絵里「くすっ。そのうち海未も毒されて姉と呼び始めるかもしれないわよ?」 

絵里「手始めに私のことをエリーチカお姉ちゃんと呼んでみてもいいわ!」 

海未「お断りします」 

絵里「……」
354 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:49:31.68 ID:69Tc9Tvg0
――放送直後 UTX A-RISE 

ことり「まだ胸がドキドキしてる」 

ツバサ「最初はそんなものよ。でも、声に固さがなかったからことりさんは十分上手くやれてたわ」 

英玲奈「第一歩としては満点だろう。ファンの反応はライブで決まる。次のライブでも満点を目指そう」 

ことり「うん。……でも、もう来月なんだよね」 

ツバサ「注射と同じよ。一度経験すれば怖くないでしょ?」 

ことり「私注射大嫌いで」 

英玲奈「私の妹も注射の度に泣くから気持ちは分かる」 

ツバサ「それなら注射と違って一度やれば平気になれるから安心よ」 

英玲奈「そうだな。一度経験すれば世界が少し違って見える、というと少々大げさかな」 

ツバサ「そうでもないかも。ステージに立つ者も魅了する何かがあるからアイドルは永久不滅なのよ」
355 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:50:09.91 ID:69Tc9Tvg0
ツバサ「一ヶ月以上あるんだから、それまで自信になる下地を作り上げればいいのよ」 

ことり「……うん」 

ツバサ「自分の期待を裏切るのは怠惰。だから頑張っていることりが期待に裏切られることはないわ」 

ことり「ありがとう、ツバサさん」 

ツバサ「私の場合さん付けだとさが二つ続くから言い難いでしょ? ちゃん付けでも呼び捨てでもいいのに」 

英玲奈「後者は私も同じ意見だ。完全なメンバーになったのだから」 

ことり「ごめんね。敬語はともかく、まだ名前をちゃん付けで呼ぶのは勇気が出なくて」 

ツバサ「だったらことりが素直にここが自分の居場所なんだと自信を持てた時、ちゃん付けで呼んで欲しいな」 

英玲奈「ツバサ、名案だ。名前が呼びにくいならレーナと呼んでくれてもいい」 

ことり「それは遠慮しておくね」 

英玲奈「……」
356 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:50:52.08 ID:69Tc9Tvg0
――四月十二日 UTX 昼休み 廊下の隅 ことり 

ツインテ「何の実績もない癖にA-RISE入りとかさー。普通辞退するよね?」 

リボン「うんうん。身の程を知れって感じ? クスクス」 

ことり「……」 

ツインテ「大体さ、A-RISEはカッコ良い系で揃ってた訳よ」 

リボン「貴女の居場所はないの。普通分かるよ」 

ことり「……そう思われても、私はA-RISEの一員です」 

ツインテ「この学校だけじゃなくてもさ、あんたのことをA-RISEの一員なんて認めてるやつなんて居ないよ」 

リボン「もしかして検索したことないんじゃない? スクールアイドル専用大型掲示板で自分の名前検索してみなよ」 

ツインテ「そこに現実が待ってるからさ」 

リボン「ぷっ。確かに現実だね。無知は罪っていうけど、本当だよね」 

ツインテ「私があんたの立場だったら絶対に平然としてられないわ」 

リボン「私だって直ぐに辞退してるっていうか、そもそもA-RISE入りなんておこがましい真似出来ないよ」 

ツインテ「てか、芸能科ですらない癖にでしゃばんなっていうの」 

リボン「貴女って被服科の特待生なんでしょう。A-RISEを売名行為に使う気?」 

ツインテ「今すぐに英玲奈さんとツバサさんに謝って来なさいよ」
357 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:51:41.55 ID:69Tc9Tvg0
リボン「そうそう。それでA-RISEから抜けなさいよね」 

ことり「……っ」 

副会長「ふぅん。私には謝るのはあなた達二人の方だと思うのだけど、違うかしら?」 

ツインテ「ふっ、副会長!?」 

リボン「あの、そのっ!」 

副会長「重要性がないから名前までは覚えてないけど、二人とも芸能科で統堂さんに強く憧れてたわよね」 

副会長「このことを彼女が知ったらどう思うのか……私よりあなた達の方が想像に容易いと思うのだけど?」 

副会長「そして、彼女の中で二人の顔を知らないけど名前だけは認識されて、軽蔑されることになるわね」 

リボン「ひぃっ!」 

ツイテン「待ってください! それだけはっ!」 

副会長「この学院の方針は才能有る者を贔屓し、より伸ばしていくこと。足を引っ張るのは正しくないわね」 

副会長「それも理解出来ないような人間の言葉なんて聞く耳持たないわ」 

副会長「あなた達が暢気に羽を伸ばしていたお正月。その時点で南さんはA-RISEとして練習をしていた」 

副会長「貶める発言をするには相手より多くの努力をして結果を出した者だけが許される特権なのよ?」 

副会長「ま、他校の生徒を貶める発言なら許せるけど、UTX学院のせい――ぎゃっ!」 

希「他校の生徒でも貶めるような発言は許せないって言わなきゃいけないよね? おっ、少し大きくなったかな?」
358 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:52:21.60 ID:69Tc9Tvg0
副会長「ぐぁっ、東條さんっ! 胸を揉むのやめなさいっ!」 

希「学校の方針にケチつけるつもりはないけど、皆が楽しめる学校を作るのがウチの目標の一つ」 

希「間違っても他校の生徒も含めて傷つけるような生徒が居ないのが望ましい」 

副会長「説教しながら揉むなっての!! ……はぁはぁ、これが東條さんの一番最低な部分よね」 

希「ツンデレさんの言葉だから変換すると『最大の魅力』って褒め言葉かな?」 

副会長「胸揉んでくることを褒めるような変態いないわよ。ったく、それよりもそこの二人の件が先でしょうが」 

希「おっと、そうだった。何か悩みや嫌なことがあったら生徒会に来て、生徒を拒む戸なんてないのだ!」 

ツインテ「……」 

リボン「……」 

ことり「……」 

副会長「たまに出るその変な語尾直しなさい。痛い生徒会長と思われたらUTXの品位が下がるわ」 

希「場を和ませようとしただけやん」 

副会長「とにかく、そこの二人は今から生徒会に来てもらうわ。罰を与えないとね」 

希「今回は二人の代わりに副会長がわしわしを受けたから帳消しでいいじゃない」 

副会長「貴女が勝手に揉んだだけでしょ!」 

希「ということで二人とも。次同じ事をしたら……わしわしMAXするからね?」
359 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:52:57.09 ID:69Tc9Tvg0
ツインテ「すいませんでした!」 

リボン「申し訳ありません!」 

希「それから、今日のような行いをしたら罰せられると一人三十人に伝えないと同じくわしわしMAXだから」 

ツインテ「分かりました! 絶対に直ぐに伝えてみせます」 

リボン「同じくです!」 

希「それならもう行っていいよ」 

ツインテ「失礼しました!」 

リボン「失礼します!」 

副会長「……ふんっ。甘いわね」 

希「厳しすぎたら余計に見えない所で鬱憤解消するかもしれないからね。で、あの子達は何をしたん?」 

副会長「呆れた。何も知らないで首を突っ込んで、そのまま開放したの?」 

希「最初から居たら副会長が変なこと言い出す前に止めてるし」 

副会長「本当に有能なのかそうじゃないのか東條さんは理解の範疇を超えるわ」 

副会長「それで、何があったのかだけど。簡単に言えば醜い嫉妬よ。その子があの二人に言いように言われてたの」 

副会長「まったく。努力も出来ない人間はどうして口だけはああも動くのかしら」 

副会長「優れた人間に泥を塗って、自分の方が優れているとか思い込むんじゃないでしょうね」
360 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:53:39.52 ID:69Tc9Tvg0
副会長「本当に優れた人間っていうのは、実力ある相手を素直に認められるものよ」 

副会長「それを理解も出来ずに居る時点で自分の殻も破れてない半人前だって言うのに……」 

希「まぁまぁ。つまり南ことりちゃんの活躍が羨ましかったってこと?」 

副会長「ええ。確かに芸能科の誰かならまだしも、被服科の特待生にその座を奪われたら嫉妬する気持ちも解るけど」 

副会長「でも、ただ言いがかりを付けるのは違うわ。彼女達にはプライドって物がないのかしらね」 

ことり「あの、助けて頂いてありがとうございました」 

副会長「今回のことは有名税とでも思って諦めて。次があったら報告してね。生徒会が厳しい罰を与えるから」 

希「女の子だけあって伝達速度は早いだろうから大丈夫だと思うけど」 

副会長「人を呪わば穴二つ。自分の行いや発言に責任を持てないのが許されるのは小学生までよ」 

副会長「未来の受験は知力より人間性が重点されるようになるんじゃないかしらね」 

希「そうピリピリしないで。ことりちゃんの努力を知らないんだし、しょうがないよ」 

副会長「人の努力を自分の目の前でしてくれないと気付けないなんていうのは問題外よ」 

副会長「先入観や自分の色眼鏡を外して相手を見極めろなんて言うのが難しいのかしら?」 

希「そうだね。もう少し人に揉まれて経験積まないと難しいかもね」 

副会長「東條さんが言うと物凄く嫌な意味に聞こえるけど、その通りね」 

希「この先オーディションを受けて不合格。そんな挫折を繰り返して、成長していけばいいんよ」
361 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:54:15.79 ID:69Tc9Tvg0
副会長「今のままだと三回くらい挫折したら完全に諦めそう。で、周りが悪い、私は悪くないって言い出しそうよ」 

副会長「やっぱりもっと規律を増やすべきよ。見えない所でこういう事件が重なったら大問題だし」 

希「規律よりもウチは生徒達の心を尊重し、今のままでもきちんと出来るって信じたい」 

副会長「その理想で風紀が悪くなったら、私が引導渡して次の生徒会長なってあげるわ」 

希「ふふ。さすが爆弾やね。そうならないように気をつけるよ」 

希「っと、長々と束縛しちゃってごめんね」 

副会長「私は貴女に期待してるわ。今年はラブライブ優勝してくれるってね」 

希「ウチも勿論ことりちゃんには期待してるよ。両立は厳しいだろうけど、頑張ってね」 

ことり「ありがとうございます」 

副会長「お昼食べる前に昼休みが終わっちゃいそうね。それじゃあ、失礼するわ」 

希「早く食べちゃわないとね。ほな〜」 

ことり「ありがとうございました」 

ことり「……」 

ことり「……」 

ことり「……ほのかちゃん」 

ことり(ファイトだよ! 私を守ってくれる魔法。穂乃果ちゃん、海未ちゃん。二人の夢の分までがんばるからね)
362 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:54:53.18 ID:69Tc9Tvg0
――四月十三日 UTX A-RISE 

英玲奈「どうかしたのか? 元気がないみたいだが」 

ことり「昨日ね、ネットでスクールアイドルの専用掲示板を見たの」 

ツバサ「あ〜あ。見ちゃったのね」 

ことり「ツバサさんは知ってたんだ」 

ツバサ「見てるスレッドがあるからね。立ってるスレッド名は目に入っちゃうし」 

ことり「……私、ファンの人には必要とされてないみたい」 

ツバサ「批判が多いからってそんな風に思う必要はないわ」 

ことり「多いなんてものじゃないの! すっごくすっごく沢山あって」 

英玲奈「ことり。とにかく落ち着いて」 

ツバサ「若干だけど目の充血してるのはそれが理由だった、と。ことりさんは純粋ね」 

ツバサ「そもそも、どうして書き込んでいるのがA-RISEのファンだと思えるの?」 

ことり「だって、ファンの人じゃなかったらわざわざ批判なんて……」 

ツバサ「その考えが既に純粋なのよ。世の中には何も知らなくても批判する人間は多いのよ」 

ツバサ「何か話題になってるから真似して書き込んでおこうみたいにね」 

ツバサ「ま、確かにA-RISEのファンが半数くらいは居る可能性を否定は出来ないのも事実だけど」 

ツバサ「ただ、こう考えれば批判もまたライブを彩るカラーに変わるのよ」 

ことり「……?」
363 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:55:32.95 ID:69Tc9Tvg0
ツバサ「本物のファンで批判している人達が、新生A-RISEのライブを観に来て一気に意見を変えるんだってね」 

ツバサ「こんなに価値を生むライブもそうそう体験出来るものではないわ」 

ツバサ「経験者が語ってるんだから説得力はあるつもりだけど。どうかしら?」 

ことり「経験者?」 

英玲奈「去年私達がUTXのスクールアイドルになった時は、とてつもなく多い批判があった」 

ツバサ「元々三年生だったスクールアイドルのメンバーを抑えて私達がなった訳だから当然だけどね」 

英玲奈「誤解を生むかもしれないから補足しておく」 

英玲奈「生徒達の前でライブを行い、どちらのグループが代表に相応しいのか勝負をしようと言ってきたのは先輩達」 

ツバサ「負けた後に自分を応援してくれた生徒達に、これからはこの子達を応援してあげてって言ってくれた」 

英玲奈「私達が先輩達の立場だったらショックでそんな言葉を掛けられなかっただろう」 

ツバサ「だから私達はそんな批判を変える為に努力に努力を重ねた。先輩たちの分もね」 

英玲奈「その時のリーダーは今大学で演劇サークルに入って活躍している」 

ツバサ「あくまでこれは私達の話だけどね。ことりさんは自分が応援してくれてるスレッドは見たの?」 

ことり「……いえ、見てないです」 

ツバサ「アイドルなんだから応援してくれる人の意見をきちんと目を通さなきゃ駄目よ」 

ツバサ「一体感があってね、すごいことりさんの事を評価してるのよ。くすくすっ」 

ツバサ「容姿以上にそのユニークな髪型と声がよく話題になるんだけどね」 

ことり「髪型と声?」
364 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:56:26.49 ID:69Tc9Tvg0
ツバサ「その髪型は私も初めてみたし。声に気付くのは流石よね。ことりさんの最大の魅力だもの」 

英玲奈「ことりの声はその優しさと純粋さがあってこそだ」 

ツバサ「その通り。それを理解してくれようとしている。そんな人たちの声を聞いてあげて」 

ツバサ「私達のことを細かいところまで見ていてくれる人が本当のファン」 

ツバサ「多くの悪意に対して傷つくよりも、一つの善意によって笑顔になれる人間になって」 

ツバサ「スクールアイドル足るものそれくらいのメンタルを持ってないと駄目なのよ」 

ことり「一つの善意で笑顔に」 

ツバサ「そうだ、良い事考えた。言葉だけで納得出来ないでしょうからこんなのはどう?」 

ツバサ「次のライブの終わり。ファンの半数以上がことりさんをA-RISEに必要としないと言うなら除名する」 

英玲奈「ツバサっ!!」 

ツバサ「英玲奈。私は《絶対》にことりさんがA-RISEに必要だと思ってる」 

ツバサ「何よりもファンの人達が受け入れる逸材だと受け入れ、応援すると信じてる」 

英玲奈「……」 

ツバサ「勿論ことりさんが嫌ならしない。でも、これで目に見えてライブ後の自分に自信が付いていくと思うけど」 

ことり「……一日だけ考えてみてもかな?」 

ツバサ「ええ、スカウトの時と同じくらい重要なことだもの。しっかりと考えてみて」 

ツバサ「こういう問題を自分の中で答えを出すことでメンタルが強くなるからね」 

ことり(ツバサさんはお母さんと少し似た考えの持ち主かも)
365 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:57:09.74 ID:69Tc9Tvg0
英玲奈「ことり。明日は幸いなことに土曜日で学院は休みだ。良かったら私の家に泊まりにこないか?」 

ことり「え?」 

英玲奈「一人で悩むよりは誰かが傍に居た方が心落ち着くだろう」 

ツバサ「ふふっ。本当に英玲奈はことりさんがお気に入りね」 

英玲奈「大切なメンバーだ。意地悪をするツバサとは違う」 

ツバサ「意地悪じゃないんだけど、まぁいいや」 

英玲奈「ということだ、どうだろう?」 

ことり「じゃあ今日はお世話になります」 

英玲奈「良かった。妹がことりに会いたがっていたし」 

ことり「妹さんが?」 

英玲奈「ことりの話をしていたら会ってもほとんど見てもいないのにファンになっている」 

ツバサ「素敵なファンじゃない。大切にしないとね」 

ことり「くすっ。そうだね」 

英玲奈「その笑顔を浮かべたまま、一歩いっぽと歩み続ければ良い」 

英玲奈「そうすればことりのファンが自然と増えていく。恐れることは何もない」 

英玲奈「A-RISEに南ことりは《絶対》に必要だと言われる。それだけだ」 

ことり「うん!」 

ツバサ「さ、時間を浪費すればするだけ帰りが遅くなるからそろそろ練習始めるわよ!」
366 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:57:43.91 ID:69Tc9Tvg0
――就眠前 英玲奈の部屋 ことえれ 

英玲奈「妹の美伊奈がはしゃいで申し訳なかった」 

ことり「あんなに子供に懐かれたの初めてだから嬉しかったよ」 

英玲奈「そうか。ことりはお母さんが似合いそうだ」 

ことり(うぅっ。私そんなに母親タイプなのかな? まだ高校生になったばかりなのに) 

英玲奈「まだまだ先の話だけど、美伊奈が高校生になったらスクールアイドルをやるそうだ」 

ことり「可愛い系の衣装とか似合いそう♪」 

英玲奈「そうだな。……薄々はそういう事を言い始めるだろうとは思ってたが」 

ことり「何か問題があったの?」 

英玲奈「ことりがお風呂に入ってる時にこう言ったんだ」 

英玲奈「『ことりおねえちゃんみたいなスクールアイドルになる!』ってね」 

ことり「わ、私?」 

英玲奈「可愛い物好きだから、その理想系がことりだったということだろう」 

英玲奈「小さいことかもしれない、成長する間に変わってしまうかもしれない」 

英玲奈「それでもことりは美伊奈の憧れになった。目標とすべき存在になった」 

ことり「……」 

英玲奈「ことりとっては迷惑な話かもしれない」
367 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:58:25.60 ID:69Tc9Tvg0
英玲奈「それでも、私はいつまでも美伊奈の心に残る最高のスクールアイドルになって欲しいと思っている」 

英玲奈「普段はそんなに気に掛けていなかったが、あれでも一応私の妹だ。笑顔で居て欲しい」 

ことり「英玲奈さん」 

英玲奈「ツバサの提案を受け入れるも受け入れないのもことりの自由だ」 

英玲奈「見方を変えれば失礼極まりない提案であるしな」 

ことり「英玲奈さんは受けた方が良いと思ってるよね?」 

英玲奈「結果が決まっているなら自信に繋がる方を選ぶ方が良い。私はそういう考えしか出来ないからな」 

ことり「どうしてそこまで信じてくれるの?」 

英玲奈「そういうのを聞くのは野暮だ。だけど、今回だけは特別に答えよう」 

英玲奈「ことりの練習メニューだけど限界ギリギリまで絞り込む為に組んだ本当にハードなものだった」 

英玲奈「だけどことりは一日も欠かすことなく今日まで来た」 

英玲奈「そんな相手に対してリスペクト出来ないメンバー等居ない。だから全幅の信頼を寄せているんだ」 

ことり「……でも、まだまだ二人に並ぶには遠いって自覚出来るし」 

英玲奈「絶対的な経験の差は埋まり難い。何よりもまだことりはライブを経験していない」 

英玲奈「以前にも言った通り、比べるのは昨日の自分だけで良い。ことりは日々成長している」 

英玲奈「その成長速度は完成に近づいている私達とは比べ物にならない速さだ」 

ことり「私って駄目だね。直ぐに不安になってぶれちゃう」
368 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:59:02.75 ID:69Tc9Tvg0
英玲奈「それは心が敏感な証拠だ。感受性が強いというのは魅力の一つ」 

ことり「英玲奈さんは素敵な言葉で包み込んでくれるね。すごく優しい」 

ことり「ことりは一人っ子だからお姉ちゃんは居ないけど、もし居たら英玲奈さんみたいだったのかなぁ」 

英玲奈「どうだろう。美伊奈に好かれる自信はないからな」 

ことり「うふふっ。大丈夫だよ! 英玲奈さんみたいなお姉ちゃんを嫌う筈ないもの」 

英玲奈「そういう部分での自信はまるでない」 

ことり「くすくすっ」 

英玲奈「さ、そろそろ寝よう。寝不足ではきちんとした考えも出ないだろう」 

ことり「もう大丈夫。答えは出たよ」 

英玲奈「そうか」 

ことり「聞かないの?」 

英玲奈「ことりの声に張りが出ていた。つまり答えてるようなものだ」 

ことり「バレバレかぁ」 

英玲奈「素直なのは良い事だ。何を考えているのか分からないと言われるよりな」 

ことり「もしかして英玲奈さんのこと? 誰かにそんなこと言われたの?」 

英玲奈「ああ。当時は相当にショックだった。自分では皆と同じつもりだったから」 

英玲奈「少し塞ぎこんだけど、そんな時私に元気を与えてくれたのがTVで歌うアイドルだった」
369 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/20(月) 23:59:50.12 ID:69Tc9Tvg0
英玲奈「私が中学になる直前に引退してしまったけど。今でも何かある毎に曲を聴いている」 

英玲奈「マザコンではないが、もう一人の母とでも言える存在かもしれない」 

英玲奈「傷ついた時はこの曲を。嬉しい時はこの曲を。悲しい時はこの曲を。笑顔になりたい時にはこの曲を」 

英玲奈「去年のラブライブで二位だった夜もあの人の曲を聴いていた」 

ことり「明日起きたら私も聴かせてもらってもいいかな?」 

英玲奈「ああ、といってもことりも知ってるかもしれないけど」 

ことり「ううん、多分知らないと思う。私本当にアイドルとか興味がなかったから」 

英玲奈「だったら是非聴いて欲しい。すごく素敵な曲だから」 

ことり「明日が楽しみで眠れないかも」 

英玲奈「それは駄目だ。明日も一日中練習があるんだ、きちんと眠る必要がある」 

ことり「うん、分かってる」 

英玲奈「では今度こそ寝よう。変な話をして悪かった」 

ことり「凄くすっごく嬉しかった。ありがとう」 

英玲奈「……うん」 

ことり「おやすみなさい、英玲奈さん」 

英玲奈「ああ、おやすみ。ことり」
370 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:00:31.40 ID:iCh2NRtb0
――翌日 UTX A-RISE 

ことり「ツバサさん、おはようございます」 

英玲奈「ツバサ、おはよう」 

ツバサ「二人共おはよう」 

ことり「昨日の件なんですけど」 

ツバサ「いいわよ。その顔を見れば言わずとも分かるわ」 

ことり「そんなに私顔に出てる?」 

ツバサ「顔よりも声が弾んでるもの。じゃあ、初ライブの日付なんだけど正式に決まったわ」 

ことり「いつになったの?」 

ツバサ「半ばを予定してたけど少し早めて五月十一日の金曜日」 

英玲奈「ことりの晴れ舞台は金曜日か。お客さんの変化が実に楽しみだ」 

ツバサ「そうね。今日にでもサイトにことりの企画を告知してもらえるように連絡しておかないとね」 

ことり「お願いしますっ」 

ツバサ「ふふっ。昨日より断然綺麗な笑顔ね。ファンに光を与えて笑顔の花を咲かせてみせましょう」 

英玲奈「ラブライブ優勝宣言をした新生A-RISEの実力を魅せつけよう」
371 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:01:11.13 ID:iCh2NRtb0
ことり「はいっ!」 

ツバサ「やる気も十分になったみたいだけど、怪我にだけは気をつけてね?」 

ことり「そうですね。怪我をしたら全てが水の泡だもんね」 

英玲奈「プロでなくとも怪我をしないことが大切。注意力散漫にならないように気を付けよう」 

ツバサ「気合が空回りしないようにする為にも、柔軟の時間を少し増やしましょう」 

英玲奈「そうだな。少なくとも初ライブが終わるまではそうする方が良い」 

ことり「ごめんなさい」 

ツバサ「ことりさんの所為じゃないわよ。私達も今まで以上に気合入ってるから」 

英玲奈「最高のライブになるのが決まっているから。気合が入るのは仕方ない」 

ことり「そんなに持ち上げられると困るんだけど……」 

ツバサ「身内からのプレッシャーくらいには勝てないと、本番が辛いわよ。今日から慣らしていきましょう」 

ツバサ「ということで、念入りに柔軟してから練習を始めるわよ!」 

英玲奈「ああ」 

ことり「うん!」
372 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:01:49.77 ID:iCh2NRtb0
――四月十三日 小泉家 りんぱな 

花陽「ついに運命の日だよ! 新生A-RISEの初ライブを観れるかどうかの運命の分岐点!」 

凛「今日のかよちんはフルスロットルだね」 

花陽「当然だよ。後少しでチケット予約開始なんだもん。タイミングと運の良さが全てを決めるの!」 

凛「アイドルには興味ないけど、かよちんとライブっていうのを体験するのは楽しみかも」 

花陽「ライブってCDと違ってね、パフォーマンスやダンスしながら歌うから普段聞いてる歌い方と全然違うの!」 

花陽「魅力や迫力もそうなんだけど、一体感を感じるんだ。皆の感覚が一つになるんだ〜♪」 

花陽「応援の振りを覚えるの楽しいし。MCもその日しか聞けないコメントが聞けるから素敵だし」 

凛「かよちん。そろそろ開始時間だよ」 

花陽「はっ! ありがとう凛ちゃん。花陽もう少しで一生後悔するところだった」 

凛「凛とかよちんは持ちつ持たれつだもん。気にしないで!」 

花陽「うん。……後三十秒。発信ボタンを押す準備しておいてね」 

凛「大丈夫だよ。番号確認も三十回したでしょ?」 

花陽「そ、そうだね。ちょっと不安になってきちゃった……取れなかったらどうしよう」 

凛「肝心なところでいつものかよちんに戻っちゃったにゃー。もう時間になるよ。しっかり押してね!」 

花陽「う、うんっ!」
373 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:02:26.61 ID:iCh2NRtb0
――UTX 休憩中 A-RISE 

ツバサ「良い感じになってきたわね。ゴールデンウィークに合宿して仕上げる感じにすれば完璧ね」 

ことり「合宿って学校でですよね?」 

ツバサ「うん。その時は噂のマイ枕を持参してね」 

ことり「はいっ」 

ツバサ「勿論合宿中も被服科の課題をする時間も組み込むから安心して」 

英玲奈「そいえばことりは被服科か。忘れていた」 

ツバサ「今更だけど負担掛けてるわよね。ことりさんの性格的に普通の勉強だってしてるんでしょ?」 

ことり「はい。お母さんも特待生を怠ける言い訳にするのは駄目って言ってるから」 

ツバサ「流石は歴史ある学校の理事長ね」 

英玲奈「学校で習う勉強の大半は社会に出ても必要ないと言う者がいるが、それは間違いだと思う」 

英玲奈「勉強を怠らない者は何事にも身を入れることが出来る存在になる。勉強とはそういう姿勢を作る」 

ツバサ「英玲奈は小難しく考えるわね。私は勉強もライブも楽しんだ者勝ちだと思うわ」 

ことり「そういう考えも素敵かも」 

英玲奈「学ぶ時にきちんと学べる人は、いざという時に機転を利かせられる人間になる」 

ことり「ことりは機転とか利かせられないから、そういう人になれればいいなぁ」 

英玲奈「ことりなら何れそういう人間になれる」
374 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:03:24.68 ID:iCh2NRtb0
ことり「ありがとう!」 

ツバサ「それで話を戻すけど、普通の勉強に被服科の勉強。それにA-RISEの練習。大丈夫?」 

ことり「くすっ。A-RISE入りする時にその覚悟を決めさせたのはツバサさんだよ」 

ツバサ「覚悟と負担はやっぱり別物だもの。心配になるわ」 

ことり「全く平気だよって言うのは嘘になっちゃうかもしれないけど、充実した疲れで毎日が楽しい」 

ツバサ「そう。もう少ししたら普通に休みの日も入れるから、友達と遊ぶなりして気分転換してね」 

英玲奈「よかったらまた今度私の家に泊まりに来て欲しい。美伊奈がまたことりおねえちゃんに会いたいと煩くて」 

ことり「はいっ。美伊奈ちゃんにもまた泊まりに行くねって伝えておいてください」 

英玲奈「了解した」 

ツバサ「さってと、そろそろ練習再開しましょうか。……もう、チケットは完売したかしらね」 

ことり「完売って、まだ予約開始から五分も経ってないよ?」 

英玲奈「今回は二分で完売していてもおかしくはない。大方がことりを悪く言っていたお客さんだろうが」 

ツバサ「ことりさんには悪いけど、そういうファンが多い方が今回は面白くなるわね」 

ことり「ツバサさん酷い」 

ツバサ「今回のライブの主役の座をことり個人に譲るんだもの。楽しむ側に回らせて♪」 

英玲奈「では私も楽しむ側に回るとしよう」 

ことり「じゃあ、二人も含めてとびっきり楽しませるからね。ファイトだよ!」
375 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:04:00.59 ID:iCh2NRtb0
――五月十一日(初ライブ)客入り前 UTX A-RISE 

ことり「今日がついに来ちゃったよぉ」 

ツバサ「そんなに緊張していたらラストまで持たないわ」 

ことり「分かってるんだけど、心がそわそわして体が無意識に震えて」 

英玲奈「昨夜は眠れた?」 

ことり「全然。最後に時計見たのが四時過ぎで、起きたの五時半」 

ツバサ「正味一時間半ね」 

ことり「ううん。時計何度も見てたら余計に眠れなくなると思って、目を閉じてけっこう羊を数えてたから」 

ツバサ「三十分眠れたかどうかも怪しいのかしら?」 

ことり「……はい」 

ツバサ「本番までまだ時間あるし少しでも横になった方がいいわね」 

ことり「今横になったら余計に疲れる気がする」 

ツバサ「それでも横になるべきよ。舞台で倒れるなんてことは絶対にしてはならないことだから」 

ツバサ「ファンに心配をかけることはアイドル失格よ。そうならない様に今出来るのは横になって目を瞑ってること」
376 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:04:36.16 ID:iCh2NRtb0
ツバサ「体もそうだけど目もいつも以上に酷使されてるからね。後で目薬用意しておくから使ってね」 

ことり「本当にすいません」 

英玲奈「ことりにとっては初めてのこと。仕方がない」 

ツバサ「そうね。スクールアイドルを目指してきた私達と違うんだもの」 

ツバサ「寧ろこうなることを前提に手を打てなかった私の失態でもあるし」 

ツバサ「もっときちんと配慮しておくべきだったわ。謝るのは私の方よ。ごめんね」 

ことり「そんなっ! 私が勝手に緊張して眠れなかっただけなのに」 

ツバサ「緊張を解す為にも昨夜は学院で三人一緒に眠るべきだったわ」 

英玲奈「昨日の最終リハが順調に行き過ぎて気が回らなかった。すまない」 

ことり「どうして英玲奈さんまで謝るんですか!」 

ツバサ「私達は先輩だからね。こういう時に責任が生まれるのよ」 

英玲奈「去年は自分と同じ環境の人間が居てくれたからそこまで緊張しなかった」 

英玲奈「だが、ことりは一人。完全に配慮不足」 

ツバサ「とにかく今は横になって目を瞑っていて。掛ける物を直ぐに用意するから!」
377 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:05:19.09 ID:iCh2NRtb0
英玲奈「お気に入りの枕代わりにならないだろうが、私の膝を枕にするといい」 

ことり「でもっ」 

英玲奈「今の私はことりの姉だ。遠慮される方が困る」 

ことり「英玲奈さん」 

英玲奈「それに今日は大切な幼馴染が見に来るのだろう? 情けない姿なんて見せたら心配させてしまう」 

ことり「じゃあ、膝枕お願いします」 

英玲奈「ああ。あの枕と違って寝心地は悪いだろうけど」 

ことり「……そんなことない。ことりのお気に入りの枕みたいに安心する」 

英玲奈「お世辞はいいぞ」 

ことり「お世辞じゃないよ。今日のライブは美伊奈ちゃんも見に来るの?」 

英玲奈「ことりのファンだから。きちんと見にくる」 

ことり「じゃあ《絶対》に成功させなきゃ。少しだけ眠れそう」 

英玲奈「眠れるなら眠るといい。五分でも眠れるなら大違いだ」 

ことり「最高のライブで魅せようね」 

英玲奈「ああ」
378 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:05:48.20 ID:iCh2NRtb0
――秋葉 にこあん 

にこ「お隣もいいけど、秋葉もいいわよね! スクールアイドルショップがあるというのが良いわ」 

あんじゅ「といってもまだ三件しかないけどね」 

にこ「贅沢なのよ? 地方じゃスクールアイドルショップなんて存在しないんだから」 

にこ「注目度は高いけど、本物のアイドルと違って入れ替わりが激しいからね」 

あんじゅ「そっか。高校生限定だから三年だもんね」 

にこ「そうよ。といっても、本物のアイドルだって三年で引退するような人も居るけど」 

にこ「中にはデビューから二年だけの活躍で伝説となったアイドルも居るわ」 

あんじゅ「伝説に時間は要らないってことだねぇ」 

にこ「恋は一瞬って言葉もあるし、人の心を掴むのに時間は関係ないのよ」 

あんじゅ「恋をしたことがないにこにーが恋って単語を使うと違和感あるにこ〜」 

にこ「煩いわね! スクールアイドルが恋なんてしたらブログが炎上するわ」 

あんじゅ「アイドルじゃなくても絶対ににこは恋なんて出来なさそうだけど」
379 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:06:24.30 ID:iCh2NRtb0
にこ「にこ程の魅力的な女の子だと男の方から――」 
あんじゅ「――あ、桃花ちゃんだ。お〜い!」 

にこ「って、人に話を振っておいて、勝手に他の方に興味示してんじゃないわよ!」 

桃花「あっ、あんじゅおねーちゃんににこおねーちゃん!」 

にこ「秋葉に一人でなんてどうしたの? おばちゃんは一緒じゃないの?」 

桃花「お母さんはお家にいるよ。今日は友達とA-RISEのウィークデイライブに行くんだよ」 

あんじゅ「A-RISEのファンだったの?」 

桃花「ううん、私は勿論SMILEのファンだよ! でも、友達が一人だと怖いからって」 

にこ「でも良く取れたわね。今日のライブはチケットが二分経たずに完売して新記録だったらしいのに」 

桃花「私の友達はA-RISEのねっきょう的なファンだから」 

あんじゅ(小学四年生が熱狂的ファンとか言ってて可愛い〜♪) 

にこ「桃花ちゃんもライブを楽しむといいわ。今日のA-RISEはスクールアイドルの伝説。その一つになると思うから」 

桃花「伝説!? なんかすごいね」 

にこ「新生A-RISEの初ライブだもの。それに、スクールアイドル史上初のラブライブ優勝を宣言したんだから」
380 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:06:59.34 ID:iCh2NRtb0
桃花「にこおねーちゃんはチケット取れなかったの?」 

にこ「取ろうともしてないわ。私がA-RISEのライブを直接見るのは、ラブライブの舞台で対戦する時だから」 

にこ「私の分まで楽しんできてね」 

桃花「うん! あ、そろそろ時間だから私は行くね。にこおねーちゃん、あんじゅおねーちゃんまたねっ!」 

あんじゅ「ばいば〜い!」 

あんじゅ「ああは言ったけど本当は観に行きたかったんじゃないの?」 

にこ「誰よりも観に行きたくて、誰よりも観に行きたくない。矛盾してるわね」 

あんじゅ「二律背反だね。気晴らしにカラオケでも行こうよ。久しぶりににこの森のパンダさん聴きたい☆」 

にこ「しょうがないわねぇ〜。海未を負かせたにこにーの美声を聞かせてあげるわ!」 

あんじゅ「にこのその単純なところが変わらず大好きニコ!」 

にこ「あぁん? 今何か言った?」 

あんじゅ「なんでもな〜い♪」 

にこ「ムーサイに行くわよ!」 

あんじゅ「うん!」
381 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:07:33.85 ID:iCh2NRtb0
――ライブ開始前 UTX劇場内 りんぱな 

凛「ライブってこんな嫌な言葉ばっかり口にする場なの?」 

凛「凛はてっきりかよちんみたいに好きを一杯口にする場かと思ってたのに」 

凛「かよちん聞いてる?」 

花陽「凛ちゃん、雑音は聞き流せばいいんだよ。花陽に聞こえてくるのはね、ことりちゃんに期待するファンの声だけ」 

花陽「それに新生A-RISEならこんな空気一曲で吹き飛ばしてくれるって信じてるし」 

凛「最近かよちん何だか少し強くなった気がするにゃー」 

花陽「そ、そうかな? ことりさんの応援スレの人達のコメント見てたらね、もっと頑張ろうって思えたんだ」 

凛「どんなコメントがあるの?」 

花陽「もしことりさんの立場に自分が置かれていたらって言うのが多いかな?」 

花陽「後はね、まるでドラマの主人公が逆境から輝くアイドルになるシンデレラストーリーみたいだねって」
382 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:08:12.95 ID:iCh2NRtb0
凛「確かにそれはあるかも。これだけ多く批判されてたら」 

花陽「批判する材料もほとんどない状態で否定するのは批判じゃないよ。だから雑音なの」 

凛「なるほどー」 

花陽「……ねぇ、凛ちゃん」 

凛「なぁに?」 

花陽「もし私が今のことりさんより酷い状態になっても……凛ちゃんは私を応援してくれる?」 

凛「もっちろんだよ! 凛は一人でもかよちんを応援するにゃ!」 

花陽「そっか。一人でも凛ちゃんが応援してくれるなら何よりも心強いなぁ」 

花陽(……でも、もし。私が音ノ木坂じゃなくて、UTXを受験したいって言っても応援してくれるのかな?) 

花陽(最近そんなこと考えちゃう。気が早いよね、まだファーストライブも観ていないのに)
383 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:08:51.18 ID:iCh2NRtb0
――ライブ開始! 

ことり「秋葉に響け! 私の歌! 新生A-RISEの産声! いくよ〜っ!」 

ことり「新曲『初めましてを届けたい』聞いてください」 


ことり『えぇっ!? 最初の挨拶なしでいきなり新曲から入るの?』 

ツバサ『今回はその方が良いと思うの。インパクトが大切だからね』 

英玲奈『ではあの掛け声をツバサが言ったらいきなり新曲披露でいいのだろうか?』 

ツバサ『あれもことりに言ってもらうことにしたから。今回は完全にことりが主役だからね』 

ことり『でも、初めの掛け声はリーダーがするものだよね?』 

ツバサ『常識に縛られてちゃアイドル界が廃れちゃうよ。私達は自由にやっていこう』 

ことり『でも、そんな……』 

英玲奈『順当に行けば私達の卒業後、グループを纏めるリーダーはことりになる』 

英玲奈『少し早い予行練習くらいに考えておけばいい』
384 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:09:32.19 ID:iCh2NRtb0
ことり『もっと気が重くなること言わないでよぉ』 

ツバサ『それだけの元気が戻ったのなら安心ね。今度私も頼もうかしら、英玲奈の膝枕』 

ことり『確かにぐっすり眠れたけど……って、そうじゃなくて』 

英玲奈『元気も出て緊張も抜けている。なら、やれることは全部やってみた方が良い』 

ツバサ『まだ自信がないっていうのなら、私と英玲奈が自信を分けてあげるから』 

ことり『……うん。やってみる。少ないかもしれないけど、応援してくれるファンの為に』 

ことり『そして、困っているのに手を貸せない大切な、私の一番の友達の元気になる為に』 

ツバサ『真っ直ぐな想いは人を魅了する。ことりの歌で全員の脳を蕩けさせちゃって』 

英玲奈『ことりの魅力を思う存分魅せ付けると良い。遠慮は要らない』 

ことり『はいっ!』 

ツバサ『じゃあ、そろそろいくよ。新生A-RISEスタート!』
385 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:10:08.71 ID:iCh2NRtb0
ツバサ「今日はライブにきてくれてありがとう! サイトにはライブ終了時に訊くって書いてたけどもう訊いちゃうね」 

ツバサ「A-RISEに南ことりが必要だと思うファンは大きな声でことりの名前を叫んでね!」 

ツバサ「せぇ〜のっ!」 

ことり(その瞬間の声は自分の名前を呼ばれたと思えないくらいの大きな声だった) 

ことり(それでも自分の名前を皆が叫んでくれたと理解出来たのは、一番私を呼んでくれる声が聞こえたから) 

ことり(私の大好きな穂乃果ちゃんの声が確かに聞こえたから) 

ことり(ごめんね、穂乃果ちゃん。大変だって聞いたのに力になれなくて) 

ことり(それなのに穂乃果ちゃんはことりがスクールアイドルをすることに応援してくれるんだね) 

ことり(スクールアイドルをしてなければ直ぐに穂乃果ちゃんの元へ駆け寄りたかった) 

ことり(でも、応援してくれる人達の為にも、気を緩めることが出来なくて……) 

ことり(穂乃果ちゃん。勝手なこと思っちゃうけど、私達のライブを観て元気になって!) 

ことり(ファイトだよ! この穂乃果ちゃんの言葉がずっと私を支えてくれてるんだよ) 

ことり(だからことりが言うね。穂乃果ちゃん、ファイトだよ!) 

ツバサ「私がラブライブ優勝を宣言出来た理由を理解してくれて嬉しいよ♪」 

英玲奈「みんな、ありがとう。ことりをスカウトしたのは私だから自分が認められる以上に嬉しい」 

ツバサ「さ、ことりも応援してくれるファンに一言」 

ことり「ファイトだよ!」 

ツバサ「元気なコメントありがとう。じゃあ、続けて二曲目いくよ!」
386 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:10:48.90 ID:iCh2NRtb0
――ライブ終了後... A-RISE 

ことり「ごめんね」 

ツバサ「やりきたった後に熱が出るなんてね」 

英玲奈「張り詰めていた緊張と疲労が一気に出たのかもしれない。寝不足も多少は関係しているだろう」 

ツバサ「ステージ衣装を着替えさせたらそのまま病院に行くからね」 

ことり「うん」 

英玲奈「この時間だと西木野総合病院かな」 

ツバサ「自分で着替えられる? 私が着替えさせた方がいい?」 

ことり「大丈夫……かな? 迷惑かけちゃって本当にごめんね」 

ツバサ「やっぱり練習メニューがハード過ぎたんだわ。全て私の責任。ご両親にも謝らないと」 

英玲奈「ツバサだけじゃない、私の責任でもある。一緒に謝ろう」
387 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:11:23.58 ID:iCh2NRtb0
ことり「ううん、違うよ。ツバサちゃんも英玲奈ちゃんも悪くないよ」 

ことり「今日のステージで私少し強くなれた。夢の為にももっと強くなりたいってそう思えた」 

ことり「だから感謝してるんだ。謝るなんてされたら、申し訳なくてスクールアイドル続けられなくなっちゃう」 

英玲奈「ことり、今私達のことを」 

ことり「直ぐに呼べるようにって、二人の前以外ではちゃん付けして呼んで練習してたんだぁ」 

ことり「英玲奈ちゃん。ツバサちゃん。ありがとう」 

ツバサ「仕方ないから今回だけは謝るのはやめておくわ。でも、次があったら絶対に謝りに行くからね?」 

ことり「こんな失態二度はしないよ」 

英玲奈「ふふふ。そう信じたいもの。では私はタクシーの手配と病院の方に連絡を入れておこう」 

ツバサ「タオルと水を用意するわ。その間ことりは着替えておいて。一人じゃ無理そうなら無理しないでね」 

ことり「うん、ありがとう」 

ことり(この後、私は土日ともに家で安静を余儀なくされ、穂乃果ちゃんに会うことは出来なかった)
388 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:11:56.14 ID:iCh2NRtb0
――五月十四日 夜 南家(お寿司中) ことほのうみ 

穂乃果「へぇ〜。あのライブの後にそんなことになってたんだ」 

ことり「念のために家から出るなって言われちゃって。土曜日のお昼には熱も下がってたんだけどね」 

海未「大事な一人娘ですからね。多少過保護にしてしまうのは仕方ありませんよ」 

海未「穂乃果もことりの様に無理して倒れたりしないでくださいね?」 

穂乃果「ウミちゃん美味しい〜♪」 

海未「もうそのネタはいいですから! 誤魔化さないでください!」 

ことり「王子様だからって無理したら絶対に駄目だよ?」 

穂乃果「うん。でも、穂乃果は皆より頑張らないと駄目な立場だし」 

海未「頑張るのと無理をするのはまるで別物です。勝手なトレーニングは禁止ですからね?」 

穂乃果「海未ちゃんってば穂乃果のこと全然信用してないよ〜」 

ことり「でも、私もツバサちゃんに何度も勝手なトレーニングは禁止だって言われるよ」 

海未「無理な鍛錬で体を壊したり、怪我をしては本末転倒ですからね」 

穂乃果「だけど海未ちゃんは家で色々してるじゃんかー」
389 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:12:34.30 ID:iCh2NRtb0
海未「私の場合は昔からの習慣で体が慣れていますから。付け焼き刃とは違います」 

海未「その辺は絵里からも厳しく言われるでしょう。今はあんなににこにこしてますが練習では鬼になりますからね」 

穂乃果「穂乃果には優しいお姉さんって感じにしか見えないけど」 

ことり「にこさんの妹さんすっごい可愛い! 後で抱っこさせてもらえないかなぁ」 

海未「ええ、本当に可愛いですよね。それはともかく、A-RISEには後で正式な謝罪をしなければいけませんね」 

ことり「さっきメールで今回の件は成長の糧となったろうから気にしないでって言われたわよ」 

海未「……A-RISEの先輩二人は本当にことりのことを大切にしてくれいてるんですね」 

穂乃果「ことりちゃんは可愛いからね。優しくしたくなる気持ちは分かるよね!」 

海未「それもありますが性格が良いからでしょう。ことりならばいつお嫁に出しても大丈夫です」 

ことり「お嫁になんていかないよ〜」 

海未「そうですね。ことりに釣り合うような稀有な男性は存在するかも怪しいですから」 

穂乃果「いざとなれば穂乃果と一緒に穂むらで働きながら装飾系の仕事すればいいし」 

海未「自分が楽する為にことりを穂むらで働かせないでください。まったく穂乃果は……」 

ことり「ふふふ♪ でもそれはそれで面白そうっ」
390 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:13:08.60 ID:iCh2NRtb0
海未「あ、それはそうとことり! 初ライブにどうして私を誘ってくれなかったのですか」 

穂乃果「その台詞を海未ちゃんが使うのはどうかと思うよ」 

ことり「そうだね。海未ちゃんはライブがあってもオフレコで教えてくれなかったから」 

海未「そ、そうですが……私の場合は恥ずかしかったからで」 

穂乃果「自分が出来ないことを人に要求するのは駄目な子だよー」 

海未「うぅっ。穂乃果に正論を言われるとは屈辱です!」 

ことり「今度ライブのチケットを貰えたら海未ちゃんにあげるから、元気出して」 

穂乃果「そうだ! ことりちゃん、ファーストライブが終わったから今までみたいに遊べないってことはないんだよね?」 

ことり「うん。これからは放課後や休日も練習が空く日があるから」 

穂乃果「だったらその時はボウリング行こうよ。海未ちゃんと二人で特訓したんだから!」 

ことり「本当? 楽しみっ♪」 

海未(何故穂乃果は自信満々に誘えるのですか。前回二人で行った時のスコアを忘れたのですか) 

海未(ですが、三人で遊びに行けるのであれば勝負の結果は多めにみましょう) 

ことり「じゃあ最下位の人が罰ゲームっていうのはどうかな?」 

海未「なしです! 罰ゲームがあるのならボウリングはなしです!!」
391 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:13:45.36 ID:iCh2NRtb0
――五月某日 UTX 廊下 ことり 

ことり「……あっ」 

ツインテ「ん? なんだあんたか」 

ことり「こ、こんにちは」 

ツインテ「ファーストライブ観たわよ。全然駄目ね」 

ことり「……」 

ツインテ「左ステップ踏むときに半分くらいだけど、一瞬足元を見てたわ」 

ことり「え?」 

ツインテ「A-RISEのメンバーだって豪語するなら常にお客さんを見なさいよね」 

ことり「は、はい」 

ツインテ「あとあんたのMCは全然何も考えてきてないのがまる分かり。少しくらい考えてきなさいよ」 

ことり「……はい」 

ツインテ「歌の方ももっとボイトレしておきなさい」
392 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:14:25.07 ID:iCh2NRtb0
ことり「分かりました」 

ツインテ「直すところを直して少しはマシになることね」 

ことり「すごいよく見ててくれたんですね」 

ツインテ「はぁ?」 

ことり「きちんと見てくれてる人がちゃんとしたファンだってツバサさんが言ってました」 

ツインテ「何を勘違いしてんのよ。私はあんたの粗が捜ししただけ。アンチよアンチ」 

ことり「お名前なんて言うんですか? よかったら私とお友達になってください」 

ツインテ「私の話を聞きなさいよ。ていうか、あんたの友達なんて真っ平ごめん!」 

ことり「被服科は特待生ってだけで距離開いちゃってて、しかもA-RISE入りしたから特待生同士でも距離があって」 

ことり「だから友達が欲しかったんです!」 

ツインテ「あんたのそんな事情誰も聞いちゃいないわよ!」 

ことり「それで先輩のお名前はなんですか?」 

ツインテ「ああっ、もう煩いわね!」 

ことり「あ、きちんとした自己紹介してなかったですね。私は南ことり。新生A-RISEのメンバーです♪」
393 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:15:00.02 ID:iCh2NRtb0
※絵理誕生日記念。一年目ですが絵里が邪道シスターズ長女なので若干パラレル世界。誕生日を忘れてたので量少なめ。 

◆長女エリーチカお姉ちゃん◆ 

こころ「エリちゃんおたんじょうびー! おめでとう♪」 

ここあ「エリーちゃんおたんじょうびっ! おめでとー♪」 

あんじゅ「エリーお姉ちゃん誕生日おめでとう☆」 

にこ「お婆ちゃんに手伝ってもらってもらっただけあって、最高の衣装ね!」 

絵里「皆ありがとう。でも、にこ。なんで誕生日なのに巫女なのよ?」 

にこ「未来の絵里が巫女をしている夢を見たのよ。だから是非誕生日は巫女装束にしようと思ってね」 

ここあ「はらたっまー」 

こころ「きよたっまー」 

あんじゅ「二人とも物知りだね。こころちゃんとここあちゃんならミニスカ巫女服とか似合いそう」 

こころあ「えへへ!」 

絵里「そんな理由で……いや、凄く良く出来てるから文句はないんだけど」 

にこ「巫女っぽいポーズしなさいよ。亜里沙に写メール送ってあげるから」 

絵里「巫女っぽいポーズってどんなのよ?」 

あんじゅ「こんな感じじゃない?」 

絵里「なるほどね。箒を持ってる感じね。確かに巫女と言えば境内の掃除してるイメージが強いわね」 

絵里「こころちゃんとここあちゃんも一緒に撮りましょう」
394 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:15:39.43 ID:iCh2NRtb0
こころ「うん!」 

ここあ「いっしょにとるー!」 

にこ「さぁ、こころとここあも可愛いポーズ撮ってね」 

あんじゅ「にっこにっこにー♪」 

にこ「あんたも入るの? 納まるかしら……まぁ、いいわ。いくわよ、はいっ! にこにー☆」 

ピロリロリン♪ 

にこ「うん、あんじゅが目を瞑ってたけど綺麗に撮れたわ」 

あんじゅ「えぇっ!? もう一枚撮ってよ〜」 

にこ「こういう自然な写真の方がホーム的な雰囲気を感じて見る側は喜んでくれるもんよ」 

絵里「撮り直してあげましょうよ。次は私がしゃがんでこころちゃんとここあちゃんを抱きしめてるから」 

ここあ「きゃっ! ここあつかまっちゃった!」 

こころ「えへへ! こころもエリちゃんにたいほされたにこっ」 

絵里「うふふ♪ 天使な二人はエリーチカお姉ちゃんの妹にこ〜♪」 

あんじゅ「じゃあ私はみんなを後ろから抱きしめる感じで」 

にこ「今度は目を瞑るんじゃないわよ。いくわよ、はいっ! にこにー☆」 

ピロリロリン♪ 

にこ「うん、今度は完璧ね。付属文は早く日本に越してくるニコ! でいいわね。送信っと」 

絵里「じゃあ、さっそくだけどケーキ食べましょうか」
395 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:16:11.96 ID:iCh2NRtb0
こころあ「ケーキ!」 

にこ「……誕生日なのに、自分で買ってくるとか少し罪悪感を覚えるわね」 

あんじゅ「しかも二種類も買ってくるなんてね」 

にこ「料理は私が作ったけど、食材提供は絵里だしね」 

絵里「いいじゃないの。亜里沙が居ないのは残念だけど、妹四人に囲まれる幸せを味わえてるんだから」 

絵里「そんな瑣末なこと気にしないでよ」 

にこ「というか、なんで二種類も買ってきたの? サイズ大きくすればいいじゃない」 

絵里「一種類だとメッセージの板チョコが一枚で、割ったサイズの違いで喧嘩になっちゃうかもでしょ?」 

絵里「最初から二枚あれば一枚ずつあれば仲良く食べれるもんねー」 

こころあ「ねー♪」 

あんじゅ「物凄いシスコン。にこも負けてられないよ。私にもっともっと優しくしなきゃ!」 

にこ「あんたに優しくしたら私は宇宙ナンバー1メイドにでもなっちゃうわよ」 

あんじゅ「にこの場合はメイド服より何気に執事服の方が似合うかも。髪の毛首の後ろで一本に結んで」 

絵里「ぷっ! 確かに似合うかもね」 

にこ「噴き出してから肯定すんじゃないわよ!」 

こころ「にこにーひつじさんになるの?」 

ここあ「ひつじさんカワイイ! でも、キツネさんの方がもっとすきー!」 

こころ「こころはうさぎさんがいい!」
396 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:16:47.47 ID:iCh2NRtb0
絵里「ふふふっ。確かににこには兎とか狐の方が似合ってるわね」 

あんじゅ「着ぐるみでどこかの幼稚園を訪問とかいいかもっ」 

にこ「本格的にスクールアイドルなのか見失われるから止しなさい」 

絵里「私は子供大好きだから幼稚園でも小学校でも機会があればやりたいけど」 

にこ「本気で止めなさいってば。どこで何のフラグが立つか分からないのよ?」 

にこ「今は海未のSMILE入りするフラグだけで十分よ」 

絵里「あの性格だと半々って感じね。実際にライブを経験してみてどう答えを出すのか」 

あんじゅ「私は海未ちゃんはもう大丈夫だと思ってるけど。真面目な子って刺激にけっこう素直だから」 

ここあ「ケーキまだぁ?」 

こころ「ここあ。話のとちゅうでわりこんだらめっ! だよ」 

ここあ「でもケーキ食べたいニコ!」 

絵里「くすっ。ごめんね、じゃあケーキ運んでくるからね」 

あんじゅ「いいよいいよ。お誕生日なんだし座ってて。私が運んで、にこが切り分けるから」
397 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:17:24.28 ID:iCh2NRtb0
にこ「あんたに二つ運ばせると大惨事になりかねないからね、私も一つ運ぶわ」 

あんじゅ「んふふ♪ にこにーお姉ちゃんってば優しいにこ〜」 

にこ「ケーキが心配なのよ。食べ物をお腹に入れば同じとか言う人間と違って、私は見た目から味わいたいの」 

あんじゅ「ツンとした台詞を吐きながら、その瞳は妹を優しくみつめるにこであった」 

にこ「その変なナレーション止めなさいっていつも言ってるでしょうが!」 

あんじゅ「いやん。個性の没収は法律で禁止されてるもん」 

にこ「そんな法律ない!」 

――― 
―― 
398 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:18:00.25 ID:iCh2NRtb0
こころ「おいしかった〜」 

ここあ「おなかの中がケーキでたくさん☆」 

あんじゅ「上品な味わいだったね。でも、チョコケーキの方も子供でも食べられるようになってて美味しかったよ」 

にこ「私はいつものケーキの方が美味しく感じたけどね」 

あんじゅ「いつもの憎まれ口だね」 

にこ「え、本気で言ってるんだけど……」 

絵里「庶民舌っていうやつね。噂には聞いたことがあるわ!」 

にこあん「庶民舌?」 

絵里「ええ、例えば一つ五円のプリンよりも、三つで百円のプリンの方が美味しいと感じてしまうのが庶民舌よ」 

あんじゅ「……にこ。大丈夫だからね。大人になったら美味しいもの食べて舌を肥やそうね」 

にこ「庶民なんだから庶民舌でいいじゃない。節約上等だわ」 

絵里「逞しいわね。ささ、こころちゃんとここあちゃんはエリーチカお姉ちゃんの両脇に座りましょうね」 

こころ「エリちゃんにぎゅーっ!」 

ここあ「エリーちゃんにもぎゅっ!」 

絵里「ハラショー!」 

あんじゅ「エリーお姉ちゃん昇天しそうなくらい幸せそう」 

絵里「地上の楽園というやつね。妹が五人も居るなんて、私程幸せなお姉ちゃんはいないわ」 

にこ「そんな事を断言する痛い奴がそもそも居ないわよ」
399 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:18:37.07 ID:iCh2NRtb0
あんじゅ「まぁまぁ。そうだ、せっかくの誕生日なんだし。普段とは毛色の違う話でもしようよ」 

にこ「普段とは毛色の違う話ねぇ」 

絵里「いいわね。今ならどんな話もOKよ。……でも、変な話はなしだからね?」 

にこ「大丈夫よ。おちびちゃんたちが居るからソフトな話にするわ。と言ってもどんな話にするのよ、あんじゅ」 

あんじゅ「捏造絵里物語なんてどうかな? 絵里ちゃんを主人公にしたお話を語るの」 

絵里「いいわね。童話とかの主人公を私に変えるとかそんな感じ? シンデレラとか似合うかしら」 

にこ「絵里がシンデレラしたら舞踏会じゃなくて武道会にでも参加しそうよね。ガラスの剣とか持って」 

あんじゅ「寧ろそんなシンデレラと戦う方じゃないかな? ほら、最初は鋼鉄生徒会役員エリーちゃんだったし」 

にこ「……そうね。そう言えばそうだったわね」 

絵里「どうしてそんな怖い声出すのよ。まだ親しくなる前の話じゃない」 

にこ「決めたわ! 泊まりに来た時に発覚したけど、絵里ってば暗いのが苦手よね」 

あんじゅ「そうだね。豆電球点けてないとヤダって駄々こねてたもんね」 

絵里「駄々はこねてないけど……。で、それが何よ?」
400 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:19:13.27 ID:iCh2NRtb0
にこ「有名な都市伝説二つを混ぜ込んだ捏造絵里物語(微ホラー)を聞かせてあげる」 

あんじゅ「にこってば邪道シスターズって顔してるよ★」 

絵里「まっ、待ちなさいよ。一人暮らししてる私に怖い話聞かせるなんて、そんなの法律が許さないわ!」 

にこ「そんな法律ないわ。って、あんじゅと似たようなこと言うんじゃないわよ。馬鹿に思われるわよ?」 

あんじゅ「お馬鹿なにこに馬鹿って言われた〜」 

こころ「あんじゅちゃんは頭いいよ」 

ここあ「ドリルのもんだい、やり方をおしえてくれるの!」 

絵里「ふふふっ。にこへのフォローがないわね。さ、これに懲りたら怖い話なんてしないことね」 

にこ「タイトルは『開けないで』よ」 

絵里「ちょっと! こころちゃんとここあちゃんも居るのよ?」 

にこ「ママが怖い話好きだからそっち系には耐久性があるから平気よ」 

絵里「あんじゅだって一人暮らしだから怖い話とか嫌よね、ね?」 

あんじゅ「夏に怖い話すっごい沢山読んだよ。都市伝説からの発展話くらいなんともないかな」 

にこ「天はにこに味方するのよ! さぁ、恐怖なさい。あの日の涙の恨みを晴らすにこ〜!」
401 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:19:50.70 ID:iCh2NRtb0
【開けないで...】 

「これはまだ私が暗いのが平気だった頃の話よ。じゃあ、話すわね」 

その時の感覚は目が覚めたというよりも、自分がふと気づいたら部屋に居た。 

そんな感じに近かったわ。 

何故か水の印象が頭に染み込んでいて、それできっとトイレに行きたくて目が覚めたと思ったのよ。 

部屋の明かりを付けてベッドから降りたわ。 

寝起きということもあって曖昧な感覚のまま、廊下に出たの。 

私の部屋は二階で、トイレは二階にも付いてるから直ぐに行ける距離ね。 

その少しの距離で音が聞こえてきたのよ。 

トイレに入る前に立ち止まってその音の正体を探ったわ。 

…………ポタッ…………ポタッ 

それは蛇口から漏れる水音。 

私って少し神経質な部分があるから、そうならないように必ず強めに締めるのよ。 

だからそんな音が聞こえてくることに疑問を感じた。
402 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:20:25.39 ID:iCh2NRtb0
ううん、その前に気付いてしまったの。 

目の前の洗面所から聞こえる水音ならまだ知らず、一階から聞こえてくるなんておかしい。 

そもそも、私は絶対に強く締めてたから水なんて出る筈がない。 

トイレに行くのも忘れて私は階段を下りたわ。 

……ポタッ……ポタッ 

心なしか水音の間隔が短くなった気がする。 

一人暮らしに慣れてきたけど、恐怖心がない訳じゃないわ。 

しかもこんな真夜中となれば、普段眠ってる分の恐怖心だって目を覚ます。 

一度立ち止まってみて気がついてしまったのよ。 

二階から一階に下りてきたのに、聞こえてくる水音の大きさがまるで変わってないことに。 

ポタッ……ポタポタ…… 

まるで私を招くように水音は速度だけ増している。 

部屋に戻って無理やりにでも眠るか、財布を持ってどこかで朝まで過ごすか。 

普段浮かぶ筈の考えは一切思い浮かばなかったわ。
403 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:21:15.38 ID:iCh2NRtb0
私の足は無意識に音のする方へ向かっていくの。 

脱衣所に繋がる戸を開けて、消した筈のお風呂場の明かりが点いてるのに気づいたわ。 

ポタッポタポタ……ポタポタッ……ジャー 

曇り戸には当然だけど誰の影も映っていないのに、捻ったように水が流れ始めた音が響く。 

脱衣所の蛇口は一滴も流れ落ちていない。 

お風呂場の中で《なにか》が居る。 

喉を鳴らし、カチカチと音を立てそうになる歯を力を入れて食いしばった。 

私の中に存在する感情は恐怖ともう一つ。 

この戸を開けなければという焦りにも似た義務感。 

戸に手を伸ばそうとした時、誰も居ないお風呂場から声がしたの。 

「お願いだから開けないで、死んじゃうから」 

今度こそ限界だった。 

口の中では歯がガチガチと音を立て、足はバレエコンクール前でも経験したことがないくらい震えている。 

逃げたい……逃げたい……それは駄目!
404 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:21:52.28 ID:iCh2NRtb0
視界が涙でぼやけ、顔はもう体液塗れ。 

腕は鳥肌が立ち、手のひらは汗で汚れている。 

それでも逃げ出せない。 

私は両手を添えて戸を押したの。 

「絶対に開けないで! お願いだから、死んじゃうから!」 

普段なら何の抵抗もなく開く戸が、内側から押さえつけているように開かない。 

実際に《なにか》が押さえつけているのだろう。 

完全に恐慌に陥った私は、体当たりするように戸を押したわ。 

「やめてっ! 開けないでっ、開けないで!」 

鬼気迫る声が耳に届くが、私は力の入らない足に活を入れて押し切る。 

「開けるなっ! 開けるな開けるな開けるな開けるな開けるな開けるな開けるな!」 

ソレは完全に呪詛。 

声は女の子のものから低音になったり高音になったり人の声ではなくなっていた。 

私は狂ったように叫びながら、戸を押し開けるの。 

「開けるな!」 

その声が最後。 

私は戸を開くことに成功した――。
405 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:22:32.25 ID:iCh2NRtb0
――気付いたらね、バスタブの中に居たの。 

生徒会の仕事とスクールアイドルの活動の二束草鞋で相当疲れてたんだと思うわ。 

少し熱めだった湯はぬるま湯に変わり、顔が半分湯の中に沈んでて慌てて体を起こした。 

もし、目覚めることなく眠っていたら完全に溺死していた。 

先程の悪夢でお風呂場の戸を開けていなかったら……。 

関係ないと言い切れず、恐怖で全身の毛穴が開いたわ。 

それから逃げるようにお風呂場を出て、お風呂場の電気を消したの。 

その時、微かに耳に届いたのよ。 

「あ〜あ。開けなければ死んでたのになぁ。次は絶対に逃がさないから」 

私は髪も乾かさずに大慌てでパジャマに着替えて、部屋に戻ると財布と携帯を持って外に出たわ。 

夜中の三時だけど構わず友人に電話を掛けた。 

コンビニから深夜もやっているタクシーを呼んで、起きてくれた友人の家に泊めてもらったの。 

次の日、私は学校を休んで神社でお払いを頼みに行ったわ。 

それ以降、あの声を聞くことはなかったけど、電気を消して眠るのが怖くて出来なくなった。 

これは私が実際に体験した本当の話よ。
406 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:23:14.44 ID:iCh2NRtb0
あんじゅ「えー。全然怖くない。もっと怖い都市伝説からの改変かと思って期待してたのに」 

こころ「こわくなかった」 

ここあ「ここあはちょっとだけこわかったにこ」 

こころ「ここあってばこわがりにこ!」 

ここあ「こわがりじゃないもん!」 

にこ「二人とも喧嘩しないの。誕生日をもっと前に知ってればきちんとした怖い話を用意したんだけどね」 

あんじゅ「というか、会長さんが教えてくれなかったら私達知らないままだったもん」 

にこ「来年は絶対に泣かせてやるわ!」 

あんじゅ「じゃあ私はにこのした怖い話を改変して、滑る話に変えてあげるね」 

にこ「誰得よ!」 

あんじゅ「うふふ♪」 

ここあ「エリーちゃん?」 

絵里「はっ! わ、私暫くここに泊まるから。異論は認められないわ!」 

にこ「は?」 

こころ「エリちゃんおとまりー?」 

ここあ「わぁーい! ここあエリーちゃんとねるの♪」 

こころ「こころもいっしょにねるニコ♪」 

あんじゅ「エリーお姉ちゃんってば、今のにこの話が怖かったの?」 

絵里「怖いわよ、怖いに決まってるでしょ! 一人暮らしで一番怖いのは夜のお風呂なんだからね」
407 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:23:58.38 ID:iCh2NRtb0
絵里「今の話聞いたら怖くて入れなくなっちゃうじゃない」 

絵里「かといって朝からお風呂まで入ってる時間なんてないし、今の季節だと湯冷めして風邪ひきそうでしょ?」 

にこ「いや、そこまで怖がられると苛めてるみたいで罪悪感沸くんだけど」 

にこ「これは有名な車で走ってたら女の人を跳ねちゃって、急ブレーキ踏んだら崖から落ちる寸前」 

にこ「助けてくれたんだと思ってたら、耳元で『死ねばよかったのに』って言われるやつと」 

にこ「四人で遊びに行って、帰りの車が事故に遭って、自分の彼氏だけが死んだって聞かされて」 

にこ「でも死んだ筈の彼氏がドアを叩いて開けてくれっていうやつを合わせたのよ。そんな怖い話じゃないでしょ?」 

絵里「なっ、なんで死んだ彼氏がドアを叩くのよ! 開けちゃ駄目よ!」 

あんじゅ「実は死んだと話してる友人二人が死んでて、彼氏は生きてたってオチなんだよ」 

あんじゅ「彼氏を信じて開けようとしたら、友人二人の姿が悪魔に変わって主人公が開けようとするのを邪魔するの」 

あんじゅ「どうにか開けると……主人公は病院のベッドで目を覚ますんだよ。腕には悪魔に捕まれた痣が残ってるんだ」 

絵里「ひぃぃっ!」 

こころ「だいじょうぶだよ! おばけはいい子のところにはこないの!」 

ここあ「エリーちゃんいい子だからだいじょぶー」 

にこ「一番下の妹達に慰められてたら世話ないわね」 

あんじゅ「弱点があるお姉ちゃんの方が可愛いっていうのはにこにーが証明済みだよ」 

にこ「胃が痛くなる妹も要らないってのはあんたで証明済みよ」 

あんじゅ「じゃあ、私が胃にも優しいというところを見せてあげる。エリーちゃん聞いてね」 

あんじゅ「さっきのにこの怖い話を滑る話に改変したので恐怖心を紛らわしてあげるにこっ!」
408 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:24:35.68 ID:iCh2NRtb0
【開けないで...Ver.ツンデ霊】 

途中までにこが話してくれたのと同じだから省略するね。 

「あ、開けるんじゃないわよ。死んじゃうんだからね!」 

私は不思議とこの言葉に逆らわなきゃって思ったのよ。 

これはにこを弄りたくなる時の感覚に似て「ひゃうっ! にこ、わき腹突っつかないでよ〜。言い直すから!」 

これは亜里沙が私にお願い事をしてきた時みたいに、逆らう事が出来ない感覚と似ているわ。 

自分の体が勝手に動いて戸に手を当てて押していたの。 

何の抵抗もなく戸は開いたわ。 

そして、気付けば私の顔は冷め始めていたお湯の中に半分漬かってたの。 

慌てて体を起こして酸素を肺に送って生きてる現実を噛み締めた。 

もし、あのまま戸を開けてなかったら……。 

そう考えるとゾッとしたわ。 

それからあの阻止しようとしていた声の主がこのお風呂場に居るんじゃないかと考えに辿り着いた。
409 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:25:12.87 ID:iCh2NRtb0
私は逃げるようにお風呂から上がり、脱衣所に逃げたわ。 

戸を閉めてお風呂場の電気を消した。 

その時に耳元で声が聞こえたの。 

「あのまま死んでれば私の友達にしてあげたのに! べ、別に生きてて嬉しいとか思ってないんだからね!」 

ツンツンした声を聞いて、私の恐怖心が一気に溶けていくのを感じたわ。 

この子が私の命を救ってくれたのだと本能的に悟ったの。 

翌日、玩具屋でお風呂で浮かせる有名なアヒルの玩具を買ったわ。 

常にお湯を張ってる訳じゃないから、洗面器に水を入れて浮かべておいてあげようってね。 

たまに、一階で歯磨きをしているとお風呂場の中から小さな物音がするのよ。 

きっとあの子がアヒルの玩具で遊んでいるんだと思うの。 

後日、お風呂から出た後に再びあの声が聞こえた。 

「アヒルさんだけじゃなくて、船も欲しいとか思ってないんだから!」 

少し我がままな妹が一人増えたみたいで、私はくすっと笑っちゃった。 

翌日の学校帰り、私が何処に寄り道したか……それは内緒よ。
410 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2014/10/21(火) 00:26:20.60 ID:iCh2NRtb0
あんじゅ「もう何も怖くないよ」 

にこ「お風呂の玩具でアヒルと船って家にあるやつじゃない」 

こころ「アヒルさんはこころの!」 

ここあ「ふねはここあの!」 

絵里「私の家のお風呂に幽霊なんていいいいないわ! エリチカ矢澤家の長女になる!」 

あんじゅ「これは邪道シスターズ改め、矢澤シスターズに改名だね★」 

にこ「やれやれ。面倒臭い長女だこと」 

おしまい☆ 


次のお話……梅雨か一気に飛ばして秋か冬の物語につづく!