800 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:34:43.98 ID:PnD9Jman0
――音ノ木坂学院 部室 

戦いの火蓋が切られたのは、本当に偶然だった。 

海未「おや、にことあんじゅはまだですか」 

穂乃果「私と海未ちゃんが最後かと思ってた」 

絵里「確か六時間目が担任の先生の授業だったから、長引いてるのかもしれないわね」 

穂乃果「あぁ〜あれは酷いよね。担任の先生だからってSHRをずらして授業時間長くするなんて!」 

海未「熱心なのか計画性がないのかで評価が分かれますね」 

絵里「二人の担任の先生は前者ね。三年生を担当すると卒業式の日は終わった後、保健室に篭るって話よ」 

穂乃果「保健室に?」 

絵里「ええ、泣いて泣いて涙が止まらなくなっちゃんだって話よ。有名な話みたい」 

海未「教師になるべくしてなったということですね。志すモノがあり、それを叶えた。尊敬出来る人物ですね」 

穂乃果「海未ちゃんが先生だったら卒業式に出ずに保健室で泣いてそうだよね」 

海未「なんですかそれは!」 

穂乃果「それで卒業していく生徒達に引き摺られて式に借り出されるの」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409602583 
801 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:35:45.55 ID:PnD9Jman0
絵里「ふふふっ。面白いわね」 

海未「私はそんな泣き脆くありません」 

穂乃果「でも、一度涙が出ると溢れて止まらなくタイプじゃない」 

海未「それは、そうですが……」 

絵里「イメージ的には体育の先生よりも数学か科学って感じね」 

穂乃果「フレームが横に細い眼鏡とか似合いそうだよね。科学の先生だったら絶対に白衣着てそう」 

海未「変な想像しないでください。いくら日本人とはいえ、形から入るのも限度があります。伊達眼鏡も白衣もなしです!」 

和気藹々とした空気の中で、殺伐とした勝負の火蓋が切って落とされるなんてこの時は誰も想像していなかった。 

にこ「遅くなったわね! でも、今日はどうしても欠かせない戦いが開催されるの!」 

絵里「何よそれ?」 

にこ「秋葉の某ビルで特大セールが行われるのよ! 人数合わせの戦力としてあんじゅを連れて行くわ」 

あんじゅ「といことでごめんね。今日はにことお買い物してくるにこ!」 

にこ「これを逃したら私はアイドル以前に人間失格なのよ!」 

穂乃果「そんなに意気込むことなんだ」
802 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:36:49.79 ID:PnD9Jman0
海未「普段から家事を任されているにこにしてみれば正しい判断だと思います」 

絵里「そうね。なんなら私達も助っ人として参加してもいいわよ」 

にこ「甘いわ! 数が多ければ結果がより良い方向に動くと思うのはセールという戦場を知らない素人発言よ!」 

にこ「誰が何を得るとか最初に決めると逆に縛られて身動きが取れなくなるのよ。しかも結果が伴ってなかったら悲劇だし」 

にこ「それにね、人数が居ると思うと自分の中で気が緩んじゃうのよ。戦場で油断なんて敗北フラグよ」 

にこ「だから気持ちはありがたいけどあんじゅだけで充分。戦力として数えてないも当然だから油断も死角もないわ!」 

あんじゅ「にこはこんな時もツンデレ♪」 

にこ「事実よ!」 

絵里「分かったわ。じゃあ、今日は私達もお休みにするから、気兼ねなくセールに行って」 

にこ「悪いわね。今度何か美味しい物を御馳走するわ」 

穂乃果「にこちゃんのお料理美味しいから楽しみ」 

海未「寒くなってきましたし、食材を持ち合わせて鍋というのもいいですね」 

あんじゅ「エリーちゃんか海未ちゃんのどちらかは鍋奉行な気がする」 

絵里「鍋奉行?」
803 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:37:36.44 ID:PnD9Jman0
穂乃果「ところがどっこい、鍋奉行はなんとことりちゃんだったりするんだよね」 

海未「ことりは鍋になると人が変わりますからね。仕切るというより、奉仕するという言葉の方が似合いますけど」 

穂乃果「自分は食べずに穂乃果と海未ちゃんに食べさせるから。雛になった気分になるよね。ちゅんちゅん♪」 

海未「ふふっ」 

にこ「和んでるところ悪いけど、時間がないから私達は行くわ。じゃあ、また明日ね!」 

あんじゅ「海未ちゃん、今日が特訓の成果を見せるには良いタイミングかも。それじゃあ、ばいばい☆」 

この去り際のあんじゅの言葉こそが、戦いの火蓋を切る切っ掛けだった。 

穂乃果「海未ちゃん、特訓ってなに?」 

海未「以前絵里とカードゲームで勝負すると言ったではないですか。顔に出なくする為の特訓を日々していたのです」 

絵里「Qカードで勝負することは覚えていたけど、本当に特訓してたのね。海未は根が真面目ね」 

海未「負けたままで終わるのは武道家として許せないんです」 

穂乃果「流石海未ちゃん。努力家だもんね」 

海未「後々に残したままでは時間がなくなるなんてこともあるかもしれません。今日これから勝負しましょう」
804 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:39:17.83 ID:PnD9Jman0
絵里「いいわよ。負ける気はないし、これで海未も私の妹になる訳だしね」 

海未「余裕ですね」 

絵里「二人で邪道ポーカーを忘れたとは言わせないわよ」 

海未「あの時は完全敗北でした。ですが、今回はあの時とは別人だと最初に宣言しておきましょう」 

絵里「随分と自信満々なのね」 

海未「絵里は一人ですが私は二人ですから」 

穂乃果「海未ちゃんいつから分身の術を覚えたの? もしかして園田家は忍者の家系だったとか!?」 

海未「違います! 絵里は後でこの言葉を嫌という程知ることになるでしょう」 

絵里「よく分からないけど、条件に変更なしでいいのよね?」 

海未「ええ、私がもし絵里に負けるようなことがあれば姉として尊敬し、妹という立場を受け入れます」 

海未「ですが、絵里が負ければ言うことを一つ聞いてもらいます。よろしいですね?」 

絵里「ええ、それでいいわ」 

海未「穂乃果は見届け人として勝負の行方を見届けて下さい」 

穂乃果「こんなこともあろうかとほむまん持って来てるから熱いお茶でも飲みながら観戦するよ」
805 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:40:15.24 ID:PnD9Jman0
海未「それで構いません。よろしくお願いします」 

絵里「でも、肝心のトランプを用意してなかったわね」 

海未「大丈夫です。常に新品のトランプを鞄に用意してありますから。封は絵里が切ってください」 

絵里「あんじゅの特訓っていうから細工してあるカードでも用意してるのかと思ったわ」 

海未「今は勝つ為に全ての手を打つあんじゅの邪道を私は否定しません。ですが、私はあくまでそういう邪道はしません」 

絵里「してもいいのに。そうすればいい勝負になると思うのに」 

海未「私は何度もあんじゅとQカードをしましたが、絵里は誰かとしたことはあるのですか?」 

絵里「ないわ。でも、必要ないでしょ?」 

海未「……それではフェアとは言えませんね。五回練習をしてから本番の十番勝負と行きましょう」 

言葉巧みに《邪道は使わない》と暗示し、練習も《フェアである》と思い込ませる海未の一の策。 

絵里は完全に油断していたし、海未の正々堂々を目指す心を汲んで普通に練習を受け入れた。 

練習の時に海未は三分の一であるQを三度引き当て、その時に以前のように顔全体に出したりはしなかった。 

だけど、カードを捲りQを引き当てた時は左右に視線を泳がせる。 

練習なのでその時に海未の言葉を無視して捲ったカードを示し、Qであることを確認して三度負けた。
806 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:41:15.06 ID:PnD9Jman0
一秒にも満たない癖だけど練習で得られた情報としては値千金。 

それが毒とも知らずに絵里は内心でほくそ笑んだ。 

本番が始まった一戦目。 

ここでも天は海未に味方した。 

絵里が引いたのはハズレ。 

しかし、海未が引き当てたのもハズレ。 

Qを引いた訳ではないのに練習で見せた癖、視線を左右に泳がせる其れを披露した。 

絵里は一戦目ということもあって、 

絵里「私が引いたカードはハズレよ。安心して選ぶといいわ」 

等と余裕の発言をしていた。 

海未は絵里の性格から嘘ではないと判断して、疑うことなくそのハズレのカードを示した。 

絵里は海未が捲ったカードでない二枚はどちらも安全であるので、気軽に左のカードを選んだ。 

もし、ここで逆のカードを選んでいれば海未の恐怖を知るのはもっと遅かったかもしれない。 

だけど、勝負には魔が宿る。
807 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:43:43.93 ID:PnD9Jman0
これもまたあんじゅの生み出したカードゲームだからだったのかもしれない。 

絵里は自分が選んだカードを開示した時、背筋が凍った。 

絵里「ど、どうして?」 

海未「絵里が選択したのはQですね。私はハズレなので一戦目は絵里の負けです」 

絵里「それは分かるわ。でも、どうしてよ!?」 

絶対の自信があった公式が間違っていたこともあり、絶対な自信にヒビが入った瞬間。 

その隙を見逃さない。 

海未「どうしても何も結果ですから。ほら、Qカードが全部という訳でありませんよ」 

絵里が選んだカード以外を捲ればJとK。 

寧ろ絵里としては三枚Qだった方が精神的に救われていた。 

邪道な手を使わずに自分が騙された? 

あの練習が既に……嘘だったってこと? 

動揺している絵里を回復させない為に直ぐに二回戦に移る。
808 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:44:53.79 ID:PnD9Jman0
絵里が選んだのはまたハズレ。 

海未が選んだカードは今度はQ。 

だけど、海未は練習の時に使った視線を泳がす癖をまた披露した。 

絵里は自分の考えを貫くことが出来ずに先ほどの結果を追い求めてしまう。 

あの癖は自分を嵌める為であり、逆手に取ればその癖が出れば安全なカードなんだと。 

いつの間にか自分の考えと海未に植え付けられた思考が入れ替わっている。 

そのことに絵里はまるで気付いていない。 

海未「私が捲ったのはQですから選ばない方がいいですよ」 

その言葉は《また自分を嵌める為の嘘》だと決め付ける。 

悪魔に魅入られたように、安全である保証もないのに海未が捲ったQのカードを示していた。 

絵里「私が捲ったカードはハズレよ」 

自分を嵌めた相手の言葉を信じる筈がないと再び正解を告げる絵里。 

だけど海未は絵里を信用している。 

海未「ハズレであれば安全ですね。ではこのカードを選ばせてもらいます」
809 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:45:31.48 ID:PnD9Jman0
呆気なく自分の策を水の泡にされる。 

そして開示の時。 

一回戦と同じ結果が待ち受けていた。 

絵里「な、なんで? どうしてどっちを選んでも私はQを選んでいるの?」 

海未「あんじゅの策が私の中で生きているからです。既に絵里は絡め取られているのですよ」 

不敵に笑うと海未は言葉を続ける。 

海未「絵里は一人ですが私は二人。今では痛い程理解しているのではないですか?」 

プロローグに繋がるやり取りが行われる。 

絵里の二戦二敗。 

残り八戦で少なくとも三勝を得なくてはいけないし、残りの五戦を最低でも引き分けにしなくてはいけない。 

ペースを完全に掴まれ、精神的にも大きな開きがある。 

根性論でなんとか凌げる物ではない。 

それでも、逃げ出さないと決めた以上は絵里は勝てると思い込み、自分を奮い立たせる。 

一人で立てないのなら、あんじゅが時々する「にっこにっこにー」を使ってみた。
810 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:46:33.22 ID:PnD9Jman0
絵里「にっこにっこにー」 

海未「激しく似合いませんね」 

穂乃果「絵里ちゃんはクール系だから正直似合わないと思う」 

絵里「いいのよ。お陰で元気が沸いてきたわ。これって効果あるのね」 

簡単に使ったけれど、あんじゅにとってこの行為がどれ程の意味を持つものなのかを語られることになる。 

そして、軽々しく使ったことを若干反省するのだけど、それはまだ先の冬の話。 

絵里「三戦目にいきましょう」 

海未「いいでしょう。しかし、あんじゅに託された策はまだあと二つあります」 

其れは絵里にとって恐怖以外のなんでもない。 

だけど、微笑んで「邪道シスターズの長女は最強なのよ」と言ってのける。 

勿論本心ではなく、ただの強がり。 

でも、口にしていればいつか本当に強くなれるかもしれない。 

諦めずに挑み続けていればいつかきっと……。 

いつかは今日ではなく、訪れるかもしれない可能性。 

この後、絵里は一勝も出来ない大敗を味わった。
811 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:47:37.76 ID:PnD9Jman0
――エピローグ 

海未「勝負は私の勝ちでしたが、最後までゲームを続けたその精神力には感服しました」 

絵里「邪道シスターズは諦めることの愚かさを知ってるからね。だから足掻くのが得意なのよ」 

海未「結果は伴いませんでしたけど」 

絵里「どんなことでも最後まで諦めずにやりきる。そうすればその後、別のことで今回のことがいかせるかもしれない」 

絵里「諦めていたら生まれなかった可能性を生むことが出来る。だから負けても結果がマイナスだとは決め付けないわ」 

海未「負け惜しみに聞こえますが?」 

絵里「どう取られても構わない。生かすもただの負け惜しみだったことになるのもこれからの自分次第だから」 

海未「一つだけ聞いてもいいですか?」 

絵里「何かしら?」 

海未「圧倒的な不利で罰ゲームが掛かっているのにも関わらず、最後まで正解を答え続けたのは何故です?」 

絵里「真っ直ぐに生きてきた海未に嘘を吐いて勝ったとするわ。その時に貴女が素直に私のことを姉と慕える?」 

絵里「答えはきっとノー。だったら負けても自分の信念を貫いた方がカッコいいでしょ?」 

海未「……邪道シスターズを名乗るのに不正を好まず、ですか」 

絵里「今回はあくまで自分の為だったから、そうする必要がなかったっていうのもあるけど」
812 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:48:39.17 ID:PnD9Jman0
海未「やれやれ。私に近いようでいて、それでもやはり私よりもずっと高みに居るということですね」 

海未「罰ゲームを決めました。絵里、今日から私の姉になってください。拒否を認めません」 

絵里「海未!」 

海未「メンタル面で問題のある私にとって、強靭な精神を持つ絵里は目標とすべき人物でもあります」 

絵里「強靭な精神なんかじゃないわ。私もまた一人で戦っていた訳じゃない」 

絵里「この場に居ない他の妹達の力を借りてどうにか戦い抜けただけ。信念を貫けたのもそのお陰よ」 

海未「それも絵里の強さなんです。誰かの為に強く在ろうとする。そんなところが好きです」 

絵里「ふふっ。敗北したのにハッピーエンドを迎えた気分。勝利よりも価値のある敗北を実感したわ」 

海未「今度は私自身が考えた策で、お互いにQの名に相応しい戦いをしましょう」 

絵里「ええ、今度は純粋にゲームとして楽しむ為に信念を置いて戦うと誓うわ」 

穂乃果「いやぁ〜善き青春って感じだねぇ。ずずずっ」 

海未「おや、穂乃果まだ居たのですか?」 

穂乃果「酷いよ!」 

海未「くすっ、冗談です」 

絵里と海未のくだらなくも壮絶な死闘は、姉妹の絆を生むという結果で幕を下ろした……。
813 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:49:44.95 ID:PnD9Jman0
◆お年玉2 のんちゃんと一緒◆ 

――UTX学院 屋上 のんたん 

副会長「どうして会議の途中に休憩なんて挟む必要があるのよ」 

希「副会長の悪いところは自分基準に考え過ぎるところだね。もっと人のことを観察しないと」 

副会長「どういう意味?」 

希「常に上を目指す姿勢は好ましい。でも、上に立つ立場であるなら下に居る子の限界を見極めないと」 

副会長「限界?」 

希「副会長のペースで進めたら追いつけない子達が出てくるんよ」 

副会長「……」 

希「ウチら生徒会役員は他の子より社会に出る前にそういう経験が積めるんだし、学んで直すべきとこは直していかないと」 

副会長「優秀過ぎる人間は異端とされてきた偉大な先人達の気持ちが分からなくもないわ」 

希「ここにはウチと生徒会長の二人しか居ない憎まれ口叩かなくてもいいのに」 

副会長「別に本当のことよ」
814 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:50:29.38 ID:PnD9Jman0
希「自分を貫く個性も大事ではあるけどね」 

副会長「だったら良いじゃない。それに私のペースに合わせられるくらいに皆が成長すれば作業効率も格段に上がるし」 

希「段階を踏んで成長を促していくのが会長と副会長の仕事の一つ。それが出来てないのは自分達の仕事が疎かな証拠」 

副会長「相変わらず東條さんは雲みたいに掴みどころがないというか、無駄に口が立つわね」 

希「関西人やからね」 

副会長「関西出身だったの? その割には独特な口調だけど」 

希「冗談だって。ウチの出身は秘密だよ」 

副会長「隠すようなことじゃないでしょ」 

希「秘密がある方が女性は輝くんよ」 

副会長「女性というより魔女ってイメージだけど。中世に生まれずに良かったわね」 

希「オカルト好きにとってそういう負の歴史は――っと、あれは?」 

副会長「どうかした?」 

希「魔女って指摘されたこともあって嘘だと思われることを告白するけど、ウチな昔は神様とか見えてたんよ」 

希「神様だけやなくて龍みたいなものや言葉に出来ない不思議な物。そんな世界を見て育ってきた」
815 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:51:44.06 ID:PnD9Jman0
希「その所為か知らんけど、カードで未来が見えることも間々あってな。その未来に導かれるように今ここに居る」 

希「だけど、ウチが会長になった頃にほとんど未来が見えなくなった。今まで見えてた物が見えなくなるのは恐ろしい」 

希「でも、だからこそ色んな目には映らない不思議が仰山詰まってるねんな。毎日が楽しい」 

副会長「ふぅん。ま、東條さんなら霞を食べて生きてるとか言われても違和感ないけど」 

希「ふふふ。流石に霞はこの辺にないから食べられないよ」 

副会長「もしあったら食べられるみたいな可能性残すのやめなさいよ」 

希「霞を食べて生活すれば、ウエイトを今より絞って正にボンキュッボンなのだ!」 

副会長「はいはい」 

希「未来は見えなくなったけど、人を見た時に感じるものがあって。だから会議よりそっちを優先することにするわ」 

副会長「は?」 

希「気になる子が居るみたいだから、休憩明けの会議は副会長に一任するから」 

副会長「職務放棄なんて私の目の色が黒いうちにはさせないわよ!」 

希「委員長の目の色って薄い茶色だから黒くない」 

副会長「そういう問題じゃないわよ! どうして東條さんはやたらと破天荒なのよ!」
816 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:52:58.35 ID:PnD9Jman0
希「スピリチュアルを感じて育てばそうなるんだよ」 

副会長「そんな厄介な物は滅べばいいわ」 

希「世界は様々な不思議に包まれているから発展するんだよ。それじゃあ、後はよろしくね。ほな〜」 

副会長「あっ、ちょっとこら! 本気で職務放棄する気!?」 

希「副会長にはただの職務放棄に見えるかもしれない。でも、巡り巡って今日の出来事が後の学院の為になるかもしれない」 

副会長「絶対にならないわよ!」 

希「可能性を閉ざすのは簡単だけど、広げるのは行動しないと始まらない。だからウチはいくんや!」 

副会長「可能性の前に職務を全うしなさいよ」 

希「それはそれ、これはこれ。今しか出来ないことがあるのなら、そっちを優先しないとね」 

副会長「会長なんだから職務以上に優先させることなんてないわよ!」 

希「それ以上が見えて来たらウチは副会長に会長の席を譲る覚悟を固めるよ」 

副会長「思ってもないこと言ってるんじゃないわよ」 

希「思ってるって。ほな〜」 

副会長「あぁ〜もうっ! 東條さんは本当に無茶苦茶なんだから!」
817 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:54:19.16 ID:PnD9Jman0
――UTX学院前 ぱなよ 

花陽(もし受験に受かったらここに通うことになるんだ。A-RISEのライブや大型モニターを観に何度も足を運んで来た) 

花陽(でも、イベント毎じゃなくて毎日あの素敵な白い制服を着て通う……想像出来ないよぉ) 

花陽(そうなった時に頼りになる凛ちゃんは居ない) 

花陽(だから強くならなきゃ。毎日その事実を噛み締めて祈るように念じているけど強くなれる日がくるのかな?) 

花陽(ううん、ダメだよ花陽。強くなれると信じることで結果がついてくるんだから) 

花陽(プラシーボ効果も極めれば凛ちゃんみたいな自信に繋がる……筈) 

花陽(自信満々の自分がやっぱり想像できない。うぅ〜こんなんじゃアイドルなんて夢のまた夢だよ) 

花陽(スクールアイドルだって……ことりさんみたいになれたらいいのに) 

花陽(ここに来る度に思い出しちゃう。多くの心無い雰囲気のまま始まったあのライブ) 

花陽(何もない荒野に天使の歌声でお花畑に変えるような奇跡の光景) 

花陽(人前で歌うどころか、大きな声で喋ることも出来ない今じゃスクールアイドルなんて絶対に無理、だよね) 

花陽(だけど諦めたくない。ずっと抱いてきた夢を叶えてみせたい) 

花陽(他のアイドルを目指す子より多くの努力が必要になると思う。それでも頑張りたい)
818 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:55:13.61 ID:PnD9Jman0
花陽(芸能科じゃなくて一般だけど、ことりさんだって被服科だし) 

花陽(って! 才能あることりさんと私を比べること自体おこがましいよね。ごめんなさい、ことりさん) 

花陽(そもそも花陽がここに受かることがありえないような気がするし……そうなったら凛ちゃんと一緒に高校に通える) 

花陽(気が付けばいつもその結末へと逃げてしまう。凛ちゃんに頼ってばかりいたら強くなれない) 

希「中学生の制服は地味なのが多いのに、どうして高校になるとお洒落に変わるんやろうね?」 

花陽「義務教育でない以上、一定数の入学希望者を得る必要性があるからじゃないでしょうか?」 

希「ふむ。制服で学校を選んだりするものなのかな?」 

花陽「女の子であれば可愛い制服を着て学校に通いたいと思ってしまうと思い――って、えぇぇ!?」 

希「どうかした?」 

花陽「かっ、かかかかか」 

希「きくけこ?」 

花陽「ちっ、ちがいます!」 

希「んふふ。面白い子やね。元気があってよろしい」 

花陽「あの……UTX学院の会長さんですよね?」
819 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:56:10.53 ID:PnD9Jman0
希「あれ、ウチのこと知ってるの?」 

花陽「当然です。UTXの会長さんと副会長さんは何故スクールアイドルを目指さなかったのかという話は有名ですし」 

希「そんな話があるとは、なんか恥ずかしいなぁ」 

花陽「その、私は決して怪しい者ではありませんので」 

希「うん? ああ、別に怪しんでやってきたという訳じゃないよ。ただ少し気になって」 

花陽「……よかった」 

希「ウチは高校からこっちに引っ越してきたから制服で判断出来ないんだけど、あなたは中学生?」 

花陽「はい。中学三年生です」 

希「ということは、うちを受験するから今日はその下見ってところかいな?」 

花陽「下見っていうか、その……」 

希「うん」 

花陽「大切な幼馴染の子と私の我が侭で違う学校になるかもしれなくて」 

花陽「……そのことを考えると勉強に集中出来なくなっちゃいまして」 

希「うん」
820 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:57:56.67 ID:PnD9Jman0
花陽「えっと……その、だから」 

花陽「こうして息抜きっていうか」 

花陽「ここにくれば頑張れるかなって」 

希「実際に目標が目の前にあると頑張れるものね」 

花陽「は、はい」 

希「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」 

花陽(温かい笑顔。さっきから花陽がきちんと言葉に出すまで待っててくれるし、凄く素敵な人だなぁ) 

花陽(凛ちゃんとは違う形の優しさ。二年後同い年の立場になっても、私にはこんな大人っぽい性格にはなれない) 

花陽(どうやったらこんなにも素敵な人物になれるんだろう?) 

希「ウチの両親は転勤族だったから幼馴染ってとっても羨ましい」 

花陽「そうなんですか」 

希「うん。時には一人ぼっちだったから、本が友達ってこともあったくらいだしね」 

花陽(こんなに明るく優しい人でも一人だった時があるなんて) 

花陽(ど、どうしよう。なんだか不安になってきちゃった)
821 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 17:59:03.29 ID:PnD9Jman0
希「あ、ごめんごめん。不安にさせるつもりで言った訳じゃなかったんだけど。あの頃はウチって所謂不思議ちゃんだったから」 

花陽「不思議ちゃんってなんですか?」 

希「う〜ん、所謂オカルトを信じてるヘンコツって感じかな」 

花陽「オカルトですか」 

花陽(ヘンコツってなんだろう?) 

希「それに口調が他の子と違ってたっていうのもコンプレックスとは違うけど、何か別物というのが嫌でさ」 

希「だから授業中には一言も喋らない無口になったりもしたから。ウチに一人ぼっちになる原因があったから」 

希「幼馴染の子と別々になってでもここを目指す理由って訊いてもいい?」 

花陽「……はい」 

花陽「私、小さい頃からアイドルが好きで」 

花陽「それで、今年の春のA-RISEの南ことりさんが参入して初めてのライブ」 

花陽「会場内が同じスクールアイドルの、A-RISEのファンなのに嫌な雰囲気に満ち溢れてて」 

花陽「それをたった一曲で浄化するように、荒野をお花畑にするような賛美歌のようなあのライブ」 

花陽「今まで見てきた本物のアイドルよりもずっと心に響いて、憧れて、少しでも近くで見たくて」
822 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 18:00:12.21 ID:PnD9Jman0
花陽「……弱い自分が少しでも強さに近づけるようになれればって、守られているばかりの自分を変えたくて」 

花陽「もっと自信を付けたくて、今の自分を変えたくて」 

花陽「ことりさんのようにはなれないかもしれないけど、もしUTXに入学できたら」 

花陽「様々な経験を積んで、卒業する頃には凛ちゃんの隣を自信を持って歩けるようになりたいんです」 

花陽「今はまだ背中に隠れてたり、手を引いてもらってる状態だから」 

希「そういう考えが出来て行動を起こす勇気が未来を作るんだよ。これは親しい人にしか内緒のことなんだけど耳貸して」 

花陽「はい」 

希「少しだけやけど人の未来が見えることがあるんよ。あなたには輝かしい未来が待ってる」 

希「来年度ここの生徒になって、翌年、翌々年には後輩を引っ張る素敵な存在になってるよ」 

花陽「えぇっ!? わ、私がそんなっ!」 

希「似非占い師っぽい台詞だけど、ウチの言葉を信じて努力を続けるか否かはあなた次第」 

花陽「……私次第」
823 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 18:01:19.60 ID:PnD9Jman0
希「ウチの名前は《希望》の一文字目一つで希って書くんだよ。だから人の希望になれる存在で在りたい」 

希「もしあなたがウチの言葉を信じて努力を続けてくれたら、そういう存在に一歩近づける」 

希「初めての受験って緊張するし、面接なんて特にテンパっちゃうかもしれない」 

希「その時は今日のことを思い出してくれたらそれ以上嬉しいことはないよ」 

花陽「……会長さん」 

希「この学校は頑張ってる子には優しく、人の足を引っ張ろうとするような子は自主的に辞めていく」 

希「つまりは優しさに満ち溢れてるウチの自慢の母校や! ちょっとこわ〜い副会長も居るけどね」 

副会長「東條さん、誰が怖いですって?」 

希「副会長。まだ会議中じゃないの?」 

副会長「東條さんが居ないとやっぱり場が締まらないのよ。いつまでも油売ってないで戻るわよ」 

希「はいはい。ほな、ウチはそろそろ戻らないとだから。後輩になった時に名前、教えてね」 

花陽「あ、はい」
824 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 18:02:06.03 ID:PnD9Jman0
希「素直な優しさを持つ子の強さはね、他の子よりも強さが表に出るのがちょっと遅いんだよ」 

希「だから焦る必要なんてない。きちんとあなたの中で根付いているから」 

希「ウチは努力している子に頑張れなんて言わない。だからもっともっと頑張ろうなんて思ったら絶対にダメ」 

希「無理をし過ぎると……このこわ〜い副会長さんみたいにピリピリしたツンデレさんになっちゃうからね」 

副会長「話はよく見えないけど、人をダシにするんじゃないわ。ほら、役員が待ってるんだから!」 

希「それじゃあ、またね」 

花陽「はい」 

花陽(……花陽の中で根付いている) 

花陽「あ、お礼言うの忘れてた」 

花陽(これじゃあ失礼な子になっちゃう。だから、来年の春になったら自己紹介ついでにお礼を言わなきゃ) 

花陽(それから、同じ学校の後輩としてお世話になりますって伝えなきゃ) 

花陽(その為にも……私のペースで努力していこう。人は人、花陽は花陽。ゆっくりでいいんだ) 

花陽(でも、確実に一歩を二歩目を歩んでいこう) 

花陽(今は遠い存在でも、歩みを止めなければいつか横に並べる。焦りそうになったら今日のことを思い出そう) 

花陽(希望をくれた優しい会長さんの言葉と共に……)
825 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 18:03:03.18 ID:PnD9Jman0
次々回予告! 

寒い冬を越え、物語は最後の年を迎える。 

残る季節は後三つ。 

その一つ目である春の物語。 

音ノ木坂学院とUTX学院それぞれに訪れる出会い。 

まずは音ノ木坂学院から。 

にこ「今年は新入生加入はなしみたいね」 

絵里「新入生の人数が増えてクラスも三クラスから四クラスになったから期待してたんだけどね」 

あんじゅ「廊下とかで応援してますとか言ってくれるからそれだけでも頑張れるよね♪」 

三年生組は想定していた事態にのんびりとする中、穂乃果が動いた。 

穂乃果「見つけたよ! アイドルが似合いそうな子!」 

海未「私から見ると若干暗めな子なので、アイドルが似合いそうかと訊かれたら首を傾げてしまう感じですが」
826 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/14(土) 18:04:06.59 ID:PnD9Jman0
穂乃果「もう! 海未ちゃんってば酷いよ。穂乃果だってSMILEに加入する前は暗かったんだから」 

絶対にスカウトしてみせると意気込む穂乃果に対し、相手はアイドル嫌い。 

新入生の加入はあるのか否かは運命次第。 

にこ「私達ももう三年生だし、人前でする邪道はこれを最後にしましょう」 

あんじゅ「邪道シスターズ最後の聖戦だね★」 

絵里「陸上部との話合いは私が設けるから、二人は好きにやりなさい」 

にこ「じゃあ、好きにするにこ! 作戦はこうよ」 

あんじゅ「えぇ〜! それって海未ちゃんの時の二番煎じじゃない。手抜き反対にこ!」 

にこ「私はあの子がアイドル嫌いじゃなくなって、笑顔になればそれだけでいいのよ。カッコはつけないわ」 

邪道シスターズが暗躍する最後の戦い。 

其れは勧誘ではなく、一人の少女を笑顔にする為の物語。 


ネクストストーリー……冬の小話集!
827 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/14(土) 19:40:56.70 ID:yh/Z7M3fO
待ってた 
828 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/15(日) 14:52:37.95 ID:62dWJcjAO
いつまでかかってもいいのでこの物語を三年卒業までみたいよ
829 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/17(火) 19:19:56.25 ID:WMA4eMbh0
役者が揃うまで後少しか 
期待してます
830 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga] 2015/02/18(水) 18:17:45.17 ID:n1JeW52L0
冬の出来事集 ※時系列はバラバラです。 

◆あんじゅと絵里◆ 

絵里「そういえばこないだあんじゅのアレをやってみたけど、元気が沸いてくるわね」 

あんじゅ「なんのこと?」 

絵里「にっこにっこにーっていうポーズよ」 

あんじゅ「あれは元気の出る魔法だから」 

絵里「くすっ。ええ、実際に元気が沸くし魔法かもね」 

あんじゅ「ううん、かもじゃなくて魔法なの。元々はね、にこが大切な人の為に作った魔法なんだ」 

絵里「そうなの? まぁ、確かに言われてみればにこに相応しい語呂よね。あんじゅしか使わないから気付かなかった」 

あんじゅ「にこが私に貸してくれたから。だからにこはこの魔法を今は使えない状態なの」 

絵里「どういうこと?」 

あんじゅ「いい機会だし、エリーお姉ちゃんには少しだけ話しちゃおうかな」 

絵里「にこにとって大切な話みたいだけど、勝手に話してもいいの?」
831 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga] 2015/02/18(水) 18:18:41.89 ID:n1JeW52L0
あんじゅ「うん。にこには私が話してもいいって思えば話してもいいって言われてるから」 

絵里「だったら是非聞かせて欲しいわね」 

あんじゅ「にこは本当に小さい頃からアイドルを目指してたんだって。ツバサちゃんに出逢うまで、だけどね」 

絵里「一曲とはいえ実際に目の前で見て私も感じ取ったわ。綺羅ツバサの溢れ出る魅力」 

あんじゅ「ハロウィンの時?」 

絵里「そうよ。あんじゅはにこと一緒だったから見てないのよね」 

あんじゅ「にこと違ってA-RISEもツバサちゃんも私は興味がないから」 

絵里「バッサリね」 

あんじゅ「でも、にこがもう一度やり直す為には何がなんでもラブライブでツバサちゃんと再会させてあげる」 

絵里「一年生の海未と穂乃果には悪いけど、私達二年生にとっての目標は其れだからね」 

あんじゅ「うん」 

絵里「それで話は戻るけど幼い頃のにこが関わってくるの?」 

あんじゅ「アイドル好きなにこの為に簡単な歌なんだけどね、お父さんが生前ににこの歌を作ってくれたんだって」
832 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga] 2015/02/18(水) 18:19:19.74 ID:n1JeW52L0
あんじゅ「にこにーにこにーにこにこにー♪」 

あんじゅ「それだけなのに、不思議と笑顔になっちゃうようなそんな素敵な歌」 

絵里「素敵なお父様だったのね」 

あんじゅ「にこもママも大好きな人だから当然だよ!」 

絵里「どうしてあんじゅが胸を張るのよ」 

あんじゅ「そのお父さんが病気で倒れて、辛い闘病生活の中で笑顔になって欲しいと思って改変したのがあの魔法」 

絵里「にこにこにーに弾みを付けたのね」 

あんじゅ「単純かもしれないけど、これほど奥の深い愛情詰まった言葉もないよね」 

絵里「……そうね」 

あんじゅ「お父さんが亡くなる前日に、にこのアイドルの姿を見たかったって言ったんだって」 

あんじゅ「その翌年、アイドルを目指す第一歩として一年間だけという約束で始めたレッスン」 

あんじゅ「皮肉にもそれがにこにとっての夢を奪う出遭いを生んだの」 

絵里「ヤンデレだっけ? あれっぽい言い方やめてよ。不安になるじゃない」 

あんじゅ「うふふ★」
833 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga] 2015/02/18(水) 18:20:05.61 ID:n1JeW52L0
絵里「本当に不安になるからそこは否定して」 

あんじゅ「そんな大切な想い入れのある魔法をね、初対面の私に貸してくれたんだ」 

あんじゅ「捨て子っていうと比喩にしかならないから正確には迷子だね。そんな状態の私ににこは魔法と笑顔をくれた」 

あんじゅ「きっと、あの出逢いはにこのお父さんがくれたんだって今なら思える。私の命の恩人」 

絵里「命って」 

あんじゅ「少しだけ大げさだけど、それくらい大切な出逢いだったの」 

絵里「私の見立てだとあんじゅは何でもこなせそうな気がするけど」 

あんじゅ「何でも出来るから誰にも頼らずに生きられるかというのは違うよ」 

絵里「……」 

あんじゅ「にこが居てくれないと私は駄目な子だから」 

絵里「あんじゅとにこはなんともアンバランスね。それで、そろそろ出逢いの話なんかも教えてくれたりしないの?」 

あんじゅ「にことの出逢いは……」 

海未「遅れて申し訳ありません」
834 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:20:36.25 ID:n1JeW52L0
穂乃果「遅れてごめんね。いや〜放課後に食べるパンは格別な物があって」 

海未「どうして中庭で暢気に食べてるんですか! 見つけるのに苦労したではありませんか!」 

あんじゅ「また、別の機会があったらその時に、だね」 

絵里「その機会が巡ってこない気がするんだけど」 

あんじゅ「うふふ♪」 

絵里「だから否定してってば」 

穂乃果「あれ、にこちゃんまだだよ。急いで来て損しちゃったね」 

あんじゅ「にこは日直という奴隷業に勤しんでるよ」 

海未「ほら見なさい。穂乃果のように自分の都合でただ遅れているわけではありません」 

穂乃果「もーしわけありません」 

海未「説得力がありません!」 

あんじゅ「絵里ちゃんや海未ちゃんや穂乃果ちゃん。他の子との出逢いも私にとっては掛け替えのない宝物だよ」 

絵里「それは私もよ。大切な妹達と仲間だもの」 

あんじゅ「ずっとここで高校生として過ごしていたいな。みんなと一緒に……ずっと、ずっと」 (完)
835 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:21:06.70 ID:n1JeW52L0
◆ことりとアンチ先輩と課題と◆ 

先輩「どうして私が南の課題を手伝わないといけないのよ」 

ことり「とか言いつつきちんと手伝ってくれるのが先輩の鑑ですねっ」 

先輩「何かある毎にそう言ってる時点で確信犯よね」 

ことり「A-RISEの問題児ですから」 

先輩「英玲奈さんも性格までは見抜けなかったのね。最近は特に垢抜けてきた気がするし」 

ことり「この環境も慣れましたから」 

先輩「親しい仲にも礼儀はあり」 

ことり「あ、先輩が珍しくデレ発言」 

先輩「訂正。親しくないから礼節を重んじなさい」 

ことり「可愛い後輩のお手伝いできるなんて先輩冥利に尽きるじゃないですか」 

先輩「そういうのは可愛気のある後輩が言って効果が出るのよ。南の場合はあざと過ぎて腹が立つわ」 

ことり「あはは」
836 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:21:50.23 ID:n1JeW52L0
先輩「ま、そういうのは置いておくとしても、課題をこなしながら練習はやっぱり大変そうね」 

ことり「好きなことは徹夜しても苦にならないタイプなので」 

先輩「将来の寿命を削るような行為を自慢するのは愚者の弁よ。そういう行為は恥じて黙しなさい」 

ことり「はぁい」 

先輩「でも、夢の為に今を頑張るのが苦にならないことは誇ってもいいわね」 

ことり「おぉ! またデレた。今日は何か良い事でもあったんですか?」 

先輩「別に。こんな些細なことでも学院の思い出に残るのだろうと考えたら苦にはならないからね」 

ことり「そういうのは一年早い台詞です。まるでもう卒業するみたいじゃないですか」 

先輩「光陰矢の如し。特にこれからの一年なんてアッと言うまよ」 

ことり「だったら先輩も本格的に卒業後の進路を考えないとですね」 

先輩「そうね。というか、もう明確に出してないといけないんだけどね。考えが纏まらないわ」 

先輩「アイドルじゃなくても劇団関係でもいいかなと思うし、普通に大学に進学してそこで夢を見つけるのもいいし」 

先輩「選択肢が多いと逆に何も選べなくなりそうで怖いわね。吹っ切れれば一番なんだけど」
837 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:22:20.94 ID:n1JeW52L0
ことり「弱ってる今がチャンスとみて提案があるんですけど」 

先輩「かなり嫌な予感するんだけど」 

ことり「嫌なことじゃないです。私の夢です」 

先輩「装飾系の仕事につくんでしょ? 作るのかデザインにするのか両方かは知らないけど」 

先輩「それともアイドルを本格的に目指して、ブランド力を付けてから会社を立ち上げるってプラン?」 

ことり「最後のはなんだか本格的ですね。でも、違います」 

先輩「新しい夢でも見つけたの?」 

ことり「そうですね。ここに入学して出来た夢であり、ここに居る間しか叶えられない素敵な夢です」 

先輩「スクールアイドルとしてラブライブ三連覇とか?」 

ことり「そんな大事じゃないです。……あのですね、先輩と一緒のステージでライブをしたいんです」 

先輩「嫌味?」 

ことり「違います。本心です」 

先輩「残念だけどそれは無理ね。今の私じゃ南の引き立て約にもなれないわ」
838 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:22:50.80 ID:n1JeW52L0
ことり「そんなことないです!」 

先輩「あるわよ。南はもう私が駄目出し出来る部分がなくなるくらい完璧になっちゃったもの」 

ことり「前にも言いましたが、メンバーより厳しい目で指摘し続けてくれた先輩が居たからA-RISEの名に恥じない私になれた」 

ことり「先輩が居なかったら今でもアンチの方はもっともっと居たかもしれません」 

ことり「だから心を鬼にして明日から先輩にことりが駄目出しを出します!」 

先輩「……は?」 

ことり「文化祭が一番いいステージになれると思うんです。だから何か出し物にエントリーしてライブをしましょう!」 

先輩「勝手に決めないで。来年の文化祭って時期的に一番大切になるのよ、三年生には」 

ことり「ことりがもう決めたので拒否は認めません」 

先輩「何よそれ!」 

ことり「メンバー以外未だに先輩しか友達が居ないんです。だったら一生の思い出作りたいじゃないですか」 

先輩「……あなたね、A-RISEの南ことりと比較される私の身にもなってみなさいよ」 

ことり「先輩が自分に誇れればそれでいいじゃないですか。練習時間はたっぷりあるんです」
839 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:23:39.97 ID:n1JeW52L0
ことり「ライブまでに先輩が自信を持って望めるようにしてみせます。それが先輩の生き方なんですよね? えっへん♪」 

先輩「はぁ〜。本当に厄介な子に絡んだものだわ」 

ことり「あ、そうだ。初対面で先輩と一緒に声を掛けてきたリボンの先輩は元気なんですか?」 

先輩「とっくに他校に転校したわよ。人の足を引っ張るだけの子にはここは辛い場所に変わるの」 

ことり「……」 

先輩「ま、私も人のことは余り言えたもんじゃないけどさ」 

ことり「そんなことありません。何度でも言い続けますが、アンチ先輩は私の自慢の先輩です」 

ことり「それは先輩が卒業しちゃってからも、私がここを卒業してからも変わらない気持ちです」 

先輩「……今更取り繕ったって私の中の南の評価は上がったりはしないわよ」 

ことり「ふふっ。それは残念です」 

先輩「仕方ないから文化祭で一緒にってのは承諾してあげる。最高の思い出作りましょう」 

ことり「はいっ!」 (完)
840 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:24:10.36 ID:n1JeW52L0
◆私の姉は小さいですが心は広いです。◆ 

海未「あの、突然そんなことを言われても困るのですが」 

剣道部員「分かってるわ。でも、中学時代の成績を聞いては是非とも指導をお願いしたくて」 

弓道部員「高坂さんの話によると家に弓道場もあって、腕前もまた素晴らしいって聞いてます」 

海未「私も鍛練している身ですから、人に指南出来る程の器ではありません」 

剣道部員「大会ではいつも一回戦敗退だったけど、私達は真剣にやってきた。後輩達には勝つ喜びを教えてあげたいの」 

剣道部員「せめて顧問じゃなくてもこの学校に剣道に精通している先生が居ればよかったけどね」 

弓道部員「私達は大会以前に腕前が全然駄目で。少しでもいいんです、上手く出来るようになる練習の仕方を教えて欲しくて」 

海未「御存知かわかりませんが、私はスクールアイドルをやっているんです。練習に時間を割かれて教える時間はありません」 

あんじゅ「そこで私は言ったんだよ。弱いにこ虐めはやめなさいって」 

にこ「なんで弱い者虐めみたいなフレーズで私が弱くされてんのよ!」 

海未(このくだらない会話。天の助けとは正にこのこと)
841 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:24:40.76 ID:n1JeW52L0
海未「にこ! あんじゅ! ちょっと助けてください」 

にこ「あら、海未どうかしたの?」 

あんじゅ「海未ちゃんが助けを求めるなんて珍しいね」 

海未「実は――」 

にこ「――なるほどね。教えてあげればいいじゃない」 

海未「なっ!?」 

剣道部員「おぉ!」 

弓道部員「やたぁっ!」 

あんじゅ「裏切られた。姉とまで慕っているのに……どうしてこんな時に邪道な反応をするのですか」 

あんじゅ「恨めしい気持ちを抱きながら、射抜くように海未はにこを睨みつける」 

海未「変なナレーションしないでください。というか、にこは何も考えていないのですか!?」 

海未「教えに行くとなるとその分、スクールアイドルとしての活動時間を削られるということになるのですよ?」
842 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:25:15.12 ID:n1JeW52L0
海未「さぁ、これで事態が飲み込めましたね? アイドル研究部の部長として一言どうぞ」 

にこ「だから教えてあげればいいじゃない」 

海未「」 

あんじゅ「あまりのショックに固まっちゃったよ」 

にこ「海未はダンスも歌も運動神経も抜群だしね。練習時間が短縮されればより高い集中力で補えるでしょう」 

にこ「それに、音ノ木坂の仲間が助けを求めてるのなら手を差し出すのは当然のことでしょ?」 

にこ「海未が教えることによって剣道部か弓道部が大会で上位入賞とかすれば音ノ木坂の株が上がるわ」 

にこ「生徒数が増えて、その時に先輩から後輩へ海未の教えが伝わっていったら最高じゃない」 

あんじゅ「もう直ぐ三年生になるだけあって、貫禄がついてきたね。ランドセルが違和感なくなってきたにこ★」 

にこ「誰が小学三年生よ!」 

剣道部員「部長はこう言ってるけどどうかしら?」 

弓道部員「お願いします!」
843 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:25:50.18 ID:n1JeW52L0
海未「謙遜ではなく、本当に私は修行中の身です。それに、名選手が名コーチになるとは限らないという言葉もあります」 

海未「名選手ですらそうなのですから、私が教えたところで結果に繋がるとは限りませんし保証も出来ません」 

海未「それでも良いというのであれば、その真剣な想いに応えたいと思います。それが私の姉の意見のようですから」 

剣道部員「よしっ! 本当にありがとう」 

弓道部員「ありがとうございます! とっても感激です!」 

あんじゅ「皆が羽なのににこだけランドセルっていう衣装はどうかな?」 

にこ「あんたはどんだけ私のことを笑い者にしたいのよっ」 

あんじゅ「にこにーはどんな時でも可愛い(笑)」 

にこ「完全に嘲りじゃないの」 

あんじゅ「そんなことないよ。ランドセルが似合うと思うのは私の本心だから!」 

にこ「失礼過ぎるわ!」 

あんじゅ「でも一番は園児服だよね。だぁだぁ♪」 

にこ「ぐぬぬ!」 

海未「人の道を指しておきながら、くだらない言い合いをしないでくださいよ。まったく、困った姉達ですね」 (完)
844 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:26:22.88 ID:n1JeW52L0
◆生徒会長VS副会長◆ 

希「そっか、本当にありがとう」 

絵里『私にお礼を言うようなことじゃないわ。私はそちらの提案を理事長に繋いだだけだもの』 

希「それが一番重要な仕事だから。これで次の文化祭で生徒会長としての責務を全う出来る」 

絵里『逆に私とっては脅威だけどね。本当に、敵に塩を送った気分よ』 

希「まぁまぁ。そんなツレないこと言わんといてや」 

絵里『追々詳しく決めていくにしても、設備や生徒数の違いでそっちで出来ることも、こっちだと出来ないこともあるし』 

希「交流が第一の目的だし、貸せる人では貸すし、設備だって運べる物は提供できる」 

絵里『自信満々だけどまだ正式な許可は下りてないんでしょう?』 

希「学院側への許可はまず通せる。それくらいの実績は踏んできた」 

絵里『凄い自信ね。正直羨ましいわ』 

希「仮初の自信も言霊に乗せていれば自然とした自信になるからね」 

絵里『ただ強く想うよりも口に出していた方がいいと。確かにそうかもね。それじゃあ、詳しい話は追々にしましょう』 

希「うん、本当にありがとう。絢瀬会長は優秀やんな」 

絵里『東條会長に言われたくないってば。時間があればまたケーキでも一緒に食べましょう』 

希「是非お願いしたいね。それじゃあ、おやすみ」 

絵里『ええ、おやすみなさい』 

希「……ふぅ。これで夢への問題は一つだけ」
845 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:26:57.73 ID:n1JeW52L0
――翌日 放課後... 

副会長「それで、大切な話って何よ?」 

希「副会長に許して欲しいことがあってね」 

副会長「珍しいわね。何かの書類で粗相でもした?」 

希「そうじゃなくてね」 

副会長「何よ、子供じゃないんだからハッキリと言いなさいよ。これからやらないといけないことも多いんだから」 

希「うん」 

副会長「というか、東條さんがそこまで言い淀むっていうのが恐怖でしかないわ」 

希「あんな、ウチ等の最後の学園祭は音ノ木坂学院と合同で実行したいんよ」 

副会長「……へぇ」 

希「内々の話になるけど、向こうの理事長からの許可は出てる。後は生徒会と上に許可を取るだけ」 

希(生徒会っていうか副会長だけが問題なんだけど) 

副会長「一体どこからそんな面倒事をしようとする発想が出てくるのかしら?」
846 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:27:34.09 ID:n1JeW52L0
希「前会長が託した野望。その舞台を成功させたいっていうのが今の私の夢でもある」 

副会長「良いんじゃない?」 

希「本当に!?」 

副会長「ええ、良いわよ。私は生徒会を抜けるから好きにすれば良いわ」 

希「――え?」 

副会長「本当は東條さんを追い出して私が生徒会長になるのが最善なんだけど、私じゃ駄目なのは流石に分かったわ」 

副会長「私が会長になっても前任である東條さんと比べられる。スムーズに行く仕事もその齟齬が機能を悪くする」 

副会長「だったら排除すべきは東條さんではなく、私にすればいい。簡単でしょ?」 

希「どうして副会長が辞めるなんて話になるん?」 

副会長「あの人のプランっていうのがムカつくのが一つ。格下の学院と行動を共にするっていうのが我慢できないのが一つ」 

副会長「それから、只でさえ忙しくなる学園祭を無駄により忙しさを増して役員の時間を奪うのも納得出来ないわ」 

副会長「自分の個人的な感情を生徒会長という立場を利用して行動させる。そんな会長の下にはつけないわ」
847 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:28:03.69 ID:n1JeW52L0
副会長「今までのなら許容範囲だったけど、今回は完全にボーダーラインを突破してるわ」 

希「待って。そう言いたい気持ちは分かる。でも、副会長が居ないとこの学園祭は実行出来ない」 

希「あくまで今の生徒会の戦力あってこそ叶えられる夢」 

副会長「他力本願でしか叶えられない夢なんて捨てなさい。オトノキなんかと共にしないのなら残ってあげるわ」 

副会長「次の学園祭が最後の仕事になるわけだからね。なるべくなら最後まで実行したいし」 

希「これがウチの我が侭だってことは分かってる。それでも、初めての母校と言えるこの学院に証を残したい」 

副会長「私には一切関係ないわ」 

希「どうしても副会長にお願いしたいの」 

副会長「これだけ生徒数居るんだから、帰宅部の優秀な生徒だって居るでしょ。そういう子をスカウトすればいいわ」 

希「それじゃあ駄目なんだよ。信頼出来る副会長だからこそ、この大仕事を任せられる」 

希「それに、他にないくらいに優秀なのは誰よりもウチが知ってるし」 

副会長「そういう発言は嫌味だって何度も言ってるでしょ」 

希「本心だって同じ数だけ言ってるやん?」
848 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:28:33.81 ID:n1JeW52L0
副会長「……メリットがないことに動くのは私のポリシーに反するのよ」 

希「つまりメリットさえあれば生徒会を辞めずにこの話に賛同してくれると?」 

副会長「デメリットよりも上回るメリットであれば、考えてもいいわ」 

希「だったら掛け替えのない大きなメリットが一つあるよ」 

副会長「へぇ。悩むことなく答えられる物があるとは驚きだわ」 

希「だって簡単なことやし。卒業しても変わらないウチとの友情が約束されるってね」 

副会長「」 

希「ついでにUTX学院始まって以来の他校と合同の大きなイベント。次にイベントを起こす生徒会が今回の資料を読んで勉強するし」 

希「副会長が以前言ってたこの学院の歴史に残るって意味でも叶うんじゃない?」 

副会長「……呆れた。そんな台詞を自信満々に言える人間が実在して、しかも目の前に居ることが」 

希「副会長が辞めたら友情が途切れちゃうじゃない」 

副会長「貴女みたいな奇特な人と仕事の繋がりなしで関係していたくないもの」
849 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:29:04.06 ID:n1JeW52L0
希「副会長はいつも酷いな〜」 

副会長「…………しょうがないわね。東條さんとの友情はともかく、確かに生徒会の中では名を残すかもしれないわね」 

副会長「仕方ないから残ってあげる。ただ、オトノキとの話し合いは貴女がやってね。私は嫌よ」 

希「副会長のそういう部分は直りそうもないね」 

副会長「これが私って個性だもの。貴女がその変な喋り方を止めるなら、考えなくもないわ」 

希「それは無理やね」 

副会長「だったら諦めなさい」 

希「しゃあないな。でも、ありがとう。お陰で母校を胸を張って卒業できる」 

副会長「その台詞は一年早いわよ。全てが初めてなんだから、するなら今から上に話を出して、早急に許可出しなさい」 

副会長「まずは大まかな資料を作らないとね。来年度のことで忙しいってのに、厄介な生徒会長に生徒会に戻されたものだわ」 

希「忙しいからこそ、それを乗り越えた時の達成感は格別なのだ!」 

副会長「その語尾聞いてるこっちが恥ずかしいからやめて。ま、達成感を味わう為にも一切の妥協を許さないからね」 

希「それは望むところ! 最高の夢舞台にしよう♪」 (完)
850 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:29:34.18 ID:n1JeW52L0
◆真姫ちゃんダイアリー◆ 

「卒業するまでずっと名前で呼んでくれないかと心配してた」 

これは私の《友達》のまこちゃんが言った台詞。 

短い冬休み、何度も何度も今度は自分から誘おうと思っていながら、結局勇気が出せなかった。 

でも、冬休み明けにA-RISEのライブに一度だけ、たまたま偶然チケットが手に入ったから足を運んであげたの! 

発売時間に携帯電話と家の電話を同時に鳴らして、頑張ってチケットを購入したとか絶対にないんだから! 

ともかく本当に偶然手に入れちゃったからには行かなきゃ勿体無いというか、失礼でしょ? 

だから観に行ってあげたのよ。 

私の言葉を聞かなかった南ことりが居るA-RISEのライブを。 

なんというか、自分がそこに居ることに大きな違和感を覚えて仕方なかったわね。 

どちらかというとピアノの発表会でステージの上で演奏する側だったから、こうして見る側になるのが変な感じだったのよ。 

でも、そんな余裕があったのはライブが始まる前のざわざわとした間だけ。 

いざ演奏が始まってからは別空間。 

ライブっていうのはただ煩いってイメージがあったんだけど、その場でしか味わえない空気があった。 

ピアノの演奏会を静とするなら、こちらは動。 

同じ土俵ではないのに、心を揺らすという意味では本質は同じなのかもとか少し思っちゃった。
851 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:30:11.01 ID:n1JeW52L0
きっと集団催眠みたいなものだと思うわ。 

そんなことより、南ことりよ! 

ライブ中に私と目が合った筈なのに無視したの、信じられる!? 

あの時のこと謝ってあげようと思ってたのに、何よなの態度。 

ムカつくけど、しょうがないからUTXに入学したら直接謝ってあげるわ。 

というか、一体なんなのよあの声! 

ライブの後、脳に異常がないか本気でパパにCTスキャンを頼もうと思ったくらいよ。 

勉強も手に付かなかったし、お風呂の中で危うく眠っちゃいそうになったし。 

でも、その次の日。 

土曜日だったんだけど不思議と押せなかったまこちゃんへの通話ボタンを軽く押せた。 

それで私は自分から「明日時間ある? あるんだったら自転車で遊びに行かない? どうかな、まこちゃん」ってね。 

別に緊張で声が震えてて返事の前にまこちゃんに笑われたとかそんなことないってば! 

あの脳が蕩けそうなくらいの南ことりの歌声のお陰だとしたら、謝るついでにお礼を言おう。 

お陰で友達が一人出来ましたってね。 

今日はこれくらいにしておきましょう。 

明日もまこちゃんと遊ぶから少し楽しだわ。 (完)
852 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:30:43.79 ID:n1JeW52L0
◆ライバル◆ 

英玲奈「ツバサがアイドル雑誌を読んでいるなんて初めてみた」 

ツバサ「そうかしら?」 

英玲奈「少なくとも私は初めてみる」 

ツバサ「そうね、言われてみればそうかもしれないわ。中学時代は普通に買って読んでたけど」 

英玲奈「何か気になるものでも載っていた?」 

ツバサ「ええ、SMILEがいよいよ雑誌に載ったのよ。思わず三冊も買っちゃって、今日もまたこうして追加で買っちゃったわ」 

英玲奈「どれだけにこにーのファンなんだ」 

ツバサ「サブリミナルというよりは刷り込みに近いわね。私のアイドル活動の始まりだから」 

英玲奈「身長はほぼ同じ。それ以外は贔屓目なしでもツバサの方が全てを上回っているように思えるけど」 

ツバサ「甘いわ、英玲奈にしては大甘ね。でも仕方ないのかもしれないわ」 

ツバサ「にこにーの最大の魅力はその優しさと笑顔。本物に会えば嫌でも感じることになると思う」 

英玲奈「だが、今のレベルでは次のラブライブの予選通過も微妙に思える」 

ツバサ「絶対に大丈夫。太陽は雲に覆われても、その上にはずっとあり続ける。永遠不変な物だから」
853 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:31:18.43 ID:n1JeW52L0
英玲奈「意味が分からない」 

ツバサ「つまり無駄に心配するだけ損ってこと。きっと近くに居ればあの子の魅力に惹かれていた筈よ」 

ツバサ「でも、私はにこにーと違う学校でよかったって思ってる。ライバルは他校で居るからこそ全力で戦える」 

ツバサ「同じグループだと客観的にしか競えないからね」 

英玲奈「お熱いな。ただ、何も背景のない零からここまで築き上げるその実力は純粋に評価出来る」 

ツバサ「そうでしょう? 私と絶対に被らない学校という意味で音ノ木坂学院を選んだと私は思っているわ」 

英玲奈「ツバサと将来対峙する為に茨の道を進んだ、か。本当なら見た目と違って随分と逞しい」 

ツバサ「見た目とのギャップならうちにも随分と腕白な子が居るじゃない」 

英玲奈「初めて会った頃はまさかこんな行動力があるとは思わなかった。我慢強いし」 

ツバサ「逆に言えば私と英玲奈が卒業しても、あの子が居れば間違いなくトップを走れるわ」 

英玲奈「ああ、ことりも来年一年で落ち着きも覚えるだろう。そうなると三年目は絶対的リーダーになる」 

ツバサ「残念な点があるとすれば、ことりさんはプロのアイドルを目指さないかもしれないことね」 

英玲奈「それは仕方がない。装飾科の特待生をスカウトしてきたのだから」
854 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:31:51.31 ID:n1JeW52L0
ツバサ「来年はどうなのかしらね。話題になるような子とかSMILEに入ってくれればいいんだけど」 

英玲奈「ライバルの心配より自分のグループの心配もして欲しいところだ」 

ツバサ「何か心配事ってあった?」 

英玲奈「来年度のメンバー。加入はあるのかないのか」 

ツバサ「私は今の三人で充分だと思うけど、ことりさんのことを考えると新入生から見繕うべきかもね」 

英玲奈「万が一の為にことりのブレーキ役になれるような信の強さを持っていると良いが」 

ツバサ「ただ、ことりさんの加入の時もあるからね。メンタル面のケアは加入する前に色々しないとね」 

英玲奈「同じ鉄は踏まない」 

ツバサ「ことりさんの時は中学生の時からスカウトしたからしょうがなかったけど」 

英玲奈「懐かしいな」 

ツバサ「そうね。高校生活も半分を過ぎて、次の一年でおしまい。アッと言う間なんてありきたりな言葉がしっくりきちゃう」 

英玲奈「成しえてきたことの多さが時間の経過を教える」 

ツバサ「最後のラブライブは約束を果たし、有終の美を飾りましょう」 

英玲奈「私達の終わりは来年の卒業前までだろう」
855 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:32:28.74 ID:n1JeW52L0
ツバサ「気分的な問題よ。目標を終えた後、スクールアイドルをどういう形で、どういう気持ちで続けるのか」 

ツバサ「そういうのが私達への課題かもね」 

英玲奈「寂しい話題だな」 

ツバサ「そうね。でも、私にとってはA-RISEとしての折を抜けて色々と自由にやってみたいわ」 

英玲奈「自由に?」 

ツバサ「手っ取り早くリーダーの座をことりさんに譲って、A-RISEのツバサとしてSMILEと交流を深めるとか」 

英玲奈「名前の通り自由に羽ばたき過ぎる」 

ツバサ「いいじゃない。にこにー以外のライバルとの交流とかもしてみたいし」 

英玲奈「全てをライバルと思うのがスクールアイドルとしての正しさだと私は思う」 

ツバサ「それが正しい道かもしれない。でも、にこにー流はそういうの関係なしに笑顔の輪を広げたがるの」 

ツバサ「自分にとって相手がライバルになるとしても、その笑顔で掬い取るんだと思うわ」 

ツバサ「本質という意味でにこにーを超えるアイドルなんて、私の中で存在しない」 

英玲奈「そこまでいくと妄信の域に思える。信仰していると、いざ対決となった時に声が出なくなったり体が動かなくなったりする」
856 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:33:15.30 ID:n1JeW52L0
ツバサ「大丈夫よ。私はそういう状況にこそ燃え上がるタイプだから」 

英玲奈「なんとも厄介なタイプだ」 

ツバサ「さて、そろそろ帰りましょうか。レンタル屋さん寄って行かなきゃ」 

英玲奈「珍しい。何か借りるのか?」 

ツバサ「んふっ。書籍も売ってるから、もう一冊買っておこうと思って♪」 

英玲奈「……本当に大丈夫か不安になる」 

ツバサ「ライバルはライバル。ファンはファン。英玲奈も記念に一冊買ってみたら?」 

英玲奈「そこで薦めてくる辺りが……」 

ツバサ「次のラブライブの開催はいつになるかしらね? 夏より秋の方がSMILEの人気が上昇してるだろうし、秋がいいわね」 

英玲奈「頼むからA-RISEの加入するだろう新入生を育てる期間が欲しいと思って欲しい」 

ツバサ「その辺は英玲奈が居るし、ことりさんだって居るんだから心配する必要性ないでしょ?」 

英玲奈「信頼されている証拠か。しょうがない、私も一冊買おう」 

ツバサ「流石英玲奈ね。ただ、一冊しか売ってなかったら私が買うからね」 

英玲奈「」 

ツバサ「んふふ♪」 (完)
857 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:33:54.21 ID:n1JeW52L0
◆届いた手紙◆ 

それはある春の訪れを感じさせるにはまだ肌寒さの残る三月初頭。 

にことあんじゅはSMILEの活動は休みということで早く帰宅した。 

こころとここあの「おかえりなさい」の後に続く言葉で始まった……。 

ここあ「にこにーにおてがみきてたにこ!」 

こころ「かわったおてがみだったよ」 

あんじゅ「ついににこに不幸の手紙が!?」 

にこ「ついにって何よ! まるでいつかは来ると分かってたみたいな反応してるんじゃないわよ」 

あんじゅ「にこって薄幸だから」 

ここあ「はっこ?」 

こころ「かっこう♪ かっこう♪」 

あんじゅ「ちょっと運が悪いって意味だよ。道端で転んじゃったり、テストで名前間違えちゃったり」 

にこ「そのことをネタにすんじゃないニコ!」
858 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:34:23.16 ID:n1JeW52L0
あんじゅ「矢澤あんじゅでーす♪」 

にこ「ぐっ……それはそうと、変わった手紙ってどれかしら?」 

こころ「まってて、すぐにもってくるー」 

あんじゅ「これで本当に不幸の手紙だったら笑えないね」 

にこ「笑いしか出なくなるわよ」 

ここあ「えがおはいちばんたいせいなんだよ」 

にこ「そうね。ここあもこころと喧嘩したりしても、直ぐに二人して笑顔になれるものね。えらいえらい♪」 

ここあ「えへへー♪」 

あんじゅ「にこも不幸の手紙にもめげずにいい子いい子★」 

にこ「がるるる!」 

あんじゅ「ひゃぁっ! にこが野生のにこに戻っちゃった。通称クロニコ。鳴き声はにぅっ!」 

にこ「がるるるって威嚇してるでしょうが!」 

ここあ「にぅっ♪」
859 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:35:03.17 ID:n1JeW52L0
あんじゅ「ここあちゃん可愛い♪ 白ココアちゃんだね」 

こころ「にこにーもってきたよ☆」 

にこ「ありがとう、こころ。流石お姉ちゃんね。いい子いい子♪」 

こころ「うふふ♪」 

にこ「でもその笑い方はこのお馬鹿に影響されてるわね。将来が怖いから笑うときは『えへへ』がいいにこよ?」 

あんじゅ「にこってば嫉妬しちゃってかぁわいい〜♪」 

にこ「嫉妬じゃなくて事実よ、事実。って、そんなことよりこれって」 

あんじゅ「エアメール。確かに普通の手紙と違うけど、にこって海外にまで繋がりがあるの?」 

にこ「ないわよ。これってアレかしら? 海外の宝くじがあたった詐欺」 

あんじゅ「そういう詐欺もあったらしいね。でも社名じゃなくて、個人名では普通こないよ。虎太郎だって」 

にこ「こたろう? どっかで聞き覚えがあるわ」 

あんじゅ「それってハロウィンの時じゃない?」 

にこ「あぁ、なんちゃら女のペットの名前だったっけ」
860 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:35:34.59 ID:n1JeW52L0
あんじゅ「お馬鹿だけど優秀なフェレットだよ。好きだった男性教師から名前貰ってるんだけど、漢字は違うね」 

にこ「ま、悪戯なのか間違いなのか不幸の手紙なのかは中身を読めば分かるわね」 

あんじゅ「もしかしてこれって……」 

にこ「何か心当たりがあるの?」 

あんじゅ「あくまでもしかしてなんだけどね、これってSMILEの動画を見た海外のこの人の目に留まった」 

あんじゅ「多分偶然だったんだと思うよ。でもね、目を離せなくなるくらいににこの作った衣装に心惹かれたの」 

あんじゅ「この人は海外でも有名なデザイナーでね、直ぐににこのことを調べさせてこっちで本格的に勉強しないかって」 

にこ「はぁ?」 

あんじゅ「留学するとなると、奇しくもラブライブの予選の終了前になっちゃうの。どちらを選ぶかにこは悩むの」 

あんじゅ「仲間に相談したくても、ラブライブの予選が近いこともあって中々タイミングが掴めないまま日々が流れる」 

にこ「いや、あんたが知るんだからその前提はおかしいでしょ」 

あんじゅ「必ず二十位以内に入ろうと団結するメンバーを前に、もはや言い出せず断ろうと決めた」 

あんじゅ「だけど、絵里ちゃんの耳にふとした拍子でにこの留学の誘いの件を知った」
861 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:36:13.57 ID:n1JeW52L0
にこ「だから、ふとした拍子も何も情報源はあんたが居るでしょってば」 

あんじゅ「絵里ちゃんはメンバー全員を一人ひとり話し合い、にこの背中を押す為にラブライブ予選からSMILEの名前が消える」 

あんじゅ「部長である自分に内緒でこんなことをした絵里に激昂するにこだけど、絵里ちゃんの熱い想いに留学を決意した」 

にこ「いつまで続くのよこれ」 

あんじゅ「みんなへの感謝の気持ちを返す為に頑張ることを決意し、留学当日は一人で空港へ」 

あんじゅ「搭乗手続きを終え、ベンチに座りながらにこは今までのアイドル活動の日々に浸る」 

あんじゅ「余りにも楽しい思い出に笑顔になると同時に、本当に自分の夢は装飾系関係の仕事に就くことでいいのか迷う」 

あんじゅ「にこの本当にやりたいこと、それは……」 

あんじゅ「卒業するまでみんなと一緒にスクールアイドルをしたい。それが今の私の夢にこ!」 

あんじゅ「その言葉を待っていたわ! と、絵里ちゃん率いるSMILEのメンバーが集結。これには意地っ張りのにこも号泣」 

あんじゅ「ラブライブにはもう出られない。でも、今この想いを沢山の人に伝えたい」 

あんじゅ「邪道な私達に常識は通用しないとスクールアイドル初空港でライブを敢行!」 

あんじゅ「それを偶然映していた一般の方が後日ネットにUPしたことで大きな話題になる」
862 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:36:41.93 ID:n1JeW52L0
あんじゅ「理事長にはお叱りを受けたけど、でもその話題性が音ノ木坂学院アイドル研究部SMILEを一躍有名にする」 

あんじゅ「そして、ラブライブの本戦に特別枠ということで出場が決定。代わりにA-RISEはシード権を得る」 

あんじゅ「ツバサちゃんとの約束を果たすためには決勝まで進むしかない。でも、仲間を失う恐怖に比べたらそんなの怖くない!」 

あんじゅ「私達の青春の集大成というべき曲を作りながら本戦を勝ち抜く。対戦したスクールアイドルと絆を重ねながら」 

あんじゅ「ついに約束を果たすべくA-RISEとの決勝戦に望む。勝つのは王者のA-RISEか、それとも大番狂わせのSMILEか」 

あんじゅ「っていう激動ラブライブフラグじゃないかな?」 

にこ「なっっっっっっがいわよ!」 

あんじゅ「日々の特訓の所為かだね。肺活量が凄いよ」 

にこ「こんなので褒められても全然嬉しくないわ! そもそも私が海外になんて行くわけないでしょう」 

にこ「あんただけじゃなくて、可愛い妹達が居るんだから。まぁ、長女も居るし」 

あんじゅ「にこにーお姉ちゃんはエリーお姉ちゃんに負けずのシスコンにこ♪」 

にこ「うっさい!」
863 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:37:20.09 ID:n1JeW52L0
――その日の夜... 

にこ「お詫びをしたいって書いてあったんだけど、ママこの人が誰だか知ってる?」 

ママ「虎太郎さん? とっても懐かしい名前だわ」 

にこ「ママの知り合いなの?」 

ママ「ええ、私ともだけどパパの大親友の人よ。一度だけ赤ちゃんの頃にお姉ちゃんのことも抱っこしてもらったのよ」 

ママ「覚えてないわよね。生後半年くらいだし」 

あんじゅ「覚えてたら怖い話レベルだね」 

にこ「そうね。それでなんでその人がママじゃなくて私に手紙出したのかしら?」 

ママ「手紙読ませてもらえる? スクールアイドルをしていることを知り、パパへのお詫びをお姉ちゃんに返したい」 

ママ「……そっか。そういうことね」 

にこ「どういうこと?」 

ママ「海外で企業を成功させるまで帰らないってパパと約束してたのよ。それでパパは家族を幸せにしてみせるって」 

ママ「約束というか男同士の賭けって感じかしら。幼馴染じゃないけど本当にお互いを理解し合っててね」 

ママ「お姉ちゃんとあんじゅちゃんみたいな関係だったのよ」 

あんじゅ「私とにこ。相当仲が良かったんだ」
864 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:37:48.84 ID:n1JeW52L0
にこ「なんか悪いイメージになっちゃったじゃない」 

あんじゅ「ツンデレツンデレ〜♪」 

ママ「パパも普段素直な人だったのに、時々妙に素直じゃなくなる時があったから。その辺はパパの血を継いでるのかしらね」 

ママ「虎太郎さんはパパが亡くなったのを知ったのが一年以上過ぎてからだったらしく、その頃に手紙が来たの」 

ママ「パパとした約束だからまだ日本の地を踏むわけにはいかないって。でも、知るのが遅れたことを深く詫びていたわ」 

ママ「知っていれば約束を反故にしてでも葬儀に来てくれていたでしょうね。例えそれで自分の未来を捨てる結果になっても」 

ママ「その時の手紙に書いてあったわ。いつかこのお詫びをパパの約束を叶えることで許してもらうつもりだって」 

にこ「……」 

あんじゅ「……」 

ママ「日本に帰ってくる旨も書いてあるし、自分に納得出来る成功を収めてパパに自慢出来るようになったってことね」 

ママ「間違いなく悪い話にはならないから、果報は寝て待ってればいいわ」 

にこ「うん」 

ママ「本当に懐かしいわ」 

にこ「……あんじゅ」 

あんじゅ「ん?」
865 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:38:30.54 ID:n1JeW52L0
にこ「今度は何々フラグとか言わないの?」 

あんじゅ「流石に空気読むよ」 

にこ「愚昧が空気呼んでどうするのよ。それでも私の妹なわけ?」 

あんじゅ「だったらそうだなー……プロアイドルデビューフラグとみた!」 

にこ「それはそれでありえないフラグね」 

あんじゅ「一足飛んでハリウッドデビューにこ♪」 

にこ「自慢じゃないけど私はグラマーが不得意よ!」 

あんじゅ「……ママはグラマーなのにね」 

にこ「そっちじゃないわよ!」 

あんじゅ「じゃあ変化球狙って歌手デビュー……は、ごめん」 

にこ「謝るのが一番失礼でしょうが! そうだ、以前言ってたカラオケ大会するわよ。私の実力魅せてやるわ」 

あんじゅ「森のパンダさんしか十八番ないけどね」 

にこ「決めポーズと得意な曲は一つでいいのよ」 

あんじゅ「強がるにこは可愛い★」 

にこ「強がりじゃないわよ!」
866 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/18(水) 18:39:38.75 ID:n1JeW52L0
これはラブライブの仕様が変わってからも、予選が始まると必ず語り継がれる伝説の始まり。 

夢を諦めて尚、人を笑顔にしたいと願う矢澤にこの奇跡。 

将来、絆を結んだスクールアイドル達と同窓会を開く度に皆でその日のことを懐かしむことになる。 

それはまだ少しだけ先のお話。 (完) 


ネクストストーリー 
◆にこにークエスト Ver.邪道シスターズ 〜音ノ木坂より笑顔に〜◆
867 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/18(水) 19:55:37.39 ID:0TFb74ia0
乙 

次はりんぱなかな?
868 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/19(木) 02:46:33.81 ID:T0B0eqWEo
869 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/19(木) 08:11:08.66 ID:tneXuhoAO
どっかで見たような展開とか名前が出てくる>>857以降の下りにニヤッとした
870 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/19(木) 22:11:43.36 ID:HmtYQLdbO
えらくあっさり引き下がったなぁ副会長 

それとも俺が特別ひねくれてるだけか
871 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/20(金) 21:41:13.42 ID:Ukf3s1SAO
>>870 
のんたんというストッパー兼操縦士のお陰じゃね? 
あの敵意剥き出しの堅物を同じ陣営からうまい事穏便にコントロールできるというのは最高に幸運な事だと思う
872 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga] 2015/02/22(日) 07:41:16.67 ID:Dc9AONNA0
――某中学校 ぱなよ 

「も〜! 小泉さんってば意地悪なんだから〜」 

「本当に。もっと早く本気出して、その美声を披露してくれてれば校内音楽会でもソロパート入れて金賞目指せたのに」 

「凛ちゃんがかよちんの歌は誰よりも上手いって言い張ってた理由分かったわ」 

花陽「そ、そんな。私なんて全然だよ」 

「謙遜なしなし。でも、今まで全然声出してなかったのに、何か切っ掛けとかあったの?」 

「出してなかったって言うか、自信がなくて声が出てなかったって感じだけど」 

花陽「私、A-RISEのことりさんに憧れてて」 

「あぁ〜! ちょっと声の質が似てるかも。脳が蕩ける感じの歌声が」 

「蕩けるって……失礼なようで、なんか嵌ってるけど」 

「言い得て妙だわ」 

花陽「自信は今は小さいけど。どんどん大きくして頑張ろうって」
873 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:41:46.90 ID:Dc9AONNA0
「そういえば小泉さんってUTX行くんだよね?」 

「もしかして将来のA-RISEのメンバーの座を狙ってるとか!?」 

「うーん、でも小泉さんって一般でしょ? 現実的に芸能科じゃないと厳しいんじゃないかしら?」 

「でもことりって芸能科じゃなくて新しく出来た被服科からのスカウトでUTX入りしたんでしょ? ありえるありえる」 

花陽「そそそんな! それに、眼鏡を掛けたままのスクールアイドルってその絶対数が少ないし」 

「だったら高校デビューって訳じゃないけど、入学してからでもいいけどコンタクトにしてみたらどうかしら?」 

「そうすればお眼鏡に掛かってスカウトされちゃうかも。お眼鏡は外してるけど」 

「寒っ!」 

「極寒のロシアの冷たさってこれくらいなのかしら」 

「うっるさいわね! ちょっと口から出ちゃっただけでしょ! 放送事故!」 

花陽「くすっ」 

「そう、この笑顔を見る為に敢えて泥を被ったのよ」
874 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:42:23.98 ID:Dc9AONNA0
「はいはい。あんたは偉い偉い」 

「人を言い訳に上手く使える最低の人材だわ」 

「ここは三人が褒めた後に一気に落とすのが定石でしょ! いきなり二人目で落としてるんじゃない!」 

凛「か〜よちん! 凛のお掃除終わったニャー。お待たせ〜」 

花陽「あ、凛ちゃん。お疲れ様」 

「凛ちゃんってば今まで小泉さんの歌声独り占めしてて幸せ者だったわね」 

「幼馴染特権ってやつね」 

「もし小泉さんがスクールアイドルになれば凛ちゃんもオトノキで鼻が高いわね」 

凛「スクールアイドルなんて……」 

「えっ?」 

凛「ううん! なんでもないよ。それより、もう直ぐ卒業だしみんなで遊びに行かない?」 

「いいね。思い出は沢山作って、高校生活で頑張る気力にしないとね」
875 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:42:54.70 ID:Dc9AONNA0
「懐かしむのはいつでも出来るけど、思い出を作るのは今しか出来ないし」 

「私も当然参加するわ」 

花陽「あ、ごめんね。私ちょっとトレーニングが」 

凛「トレーニング?」 

花陽「今日から一ヶ月だけなんだけど、ボイストレーニングをすることになって」 

「なになになに! 本気でスクールアイドル目指す系!?」 

「漲ってきたーとか言っちゃう場面?」 

「あなたたちがはしゃいでどうするのよ」 

凛「なにそれ、凛訊いてないよ?」 

花陽「ごめんね。言うの忘れてて」 

花陽(本当は言おうと思ってたのに、なんだか言い出せなかっただけなんだけど。ごめんね、凛ちゃん) 

凛(左手の薬指と親指をすり合わせてる。かよちんが隠し事する時にたまにみせる癖だ)
876 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:43:33.62 ID:Dc9AONNA0
凛「……そっか、それなら仕方ないね」 

花陽「このレッスンはお母さんが見つけてきて、私なんてまだまだ全然なのに」 

凛「かよちんならレッスンの先生を超越しちゃうよ!」 

「むしろばよえ〜ん喰らった時みたいになっちゃうね」 

「言い得て妙ね」 

「ばよえん?」 

「脳みそを溶かす恐ろしい魔法よ」 

「怖っ! でも、小泉さんの歌声は正にそれ!」 

「せめて誰にも分かるように人魚にしなさいよ!」 

凛「そっか。これからだから、春休みの間もかよちんは忙しいんだ」 

花陽「う、うん。春休みは沢山遊びたかったんだけど」 

凛「アイドルはかよちんの小さい頃からの夢だもん。しょうがないよ」 

花陽「うん、ありがとう」 

凛「…………しょうが、ないよ」
877 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:44:11.63 ID:Dc9AONNA0
◆春、出逢いの季節 〜音ノ木坂〜◆ 

――三年目 春 部室 

絵里「新入生は今日も来ず、かしらね」 

海未「そうですね。やはりラブライブ開催の時期が悪かったようですね」 

絵里「去年は秋だったのにね」 

海未「一つ季節が違うだけで大きなチャンスを逃した気がしてなりません」 

絵里「今年だけ違うって訳じゃないんだし、それを愚痴っても仕方ないわ」 

海未「それはそうなのですが」 

絵里「夏休み前半に予選終了。後半に本戦だから気持ちは分かるけど」 

海未「秋だったら夏休みにたっぷり練習出来るので入ってみようという意欲も湧きますけど」 

絵里「これは如何に新入生を短時間で鍛え上げられるかの勝負よね」 

海未「もしくは、新入生なしで勝負に臨むのか」 

あんじゅ「そのピンチをにこはリモコンツインテールで切り抜けたんだよ」
878 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:44:42.96 ID:Dc9AONNA0
にこ「私は半妖怪かっての!」 

穂乃果「下駄じゃなくて自分の一部をざっくりと飛ばしてる時点で半妖怪以上に妖怪だよねぇ」 

あんじゅ「名付けて妖怪《和毛娘》だね!」 

穂乃果「にこげ?」 

あんじゅ「平和の和に髪の毛の毛と書いてにこげって読むんだよ♪」 

にこ「漢字はともかく、にこげ娘って響きが既に最低なんだけど」 

穂乃果「でもにこちゃん髪の毛飛ばすし、和毛も止むないんじゃない?」 

あんじゅ「で、意味なんだけど柔らかな毛や産毛って意味だよ」 

にこ「意味を知って更に最悪が加速したニコ!」 

海未「……」 

絵里「……」 

海未「にこはこの状況にまるで焦りがないみたいですね。危機意識が欠落しているのではないでしょうか」 

海未「普段からあんじゅに色々されている所為で、麻痺していると考えると納得がいきます」
879 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:45:13.37 ID:Dc9AONNA0
絵里「流石にそれは邪推よ。そもそもね、私達三年生組はラブライブの開催時期が発表される前に想定していたの」 

絵里「考えてもみなさい。東京にはUTXだけでなく、有名校が多くあるスクールアイドル激戦区なのよ?」 

絵里「設備の揃ってない上に、言葉悪いけど一発屋的なグループに所属する為だけに音ノ木坂を受験する方が奇特よ」 

海未「ですが! 努力と根性があれば環境や背景なんて関係ないというのを証明しているではないですか」 

絵里「証明が現在の順位である二十五位だって言いたいの?」 

海未「ただの一発屋だったらこんなにも着々と順位を上げられる筈ないじゃないですか」 

絵里「でも、結局年明けてから二十五位のまま足踏み状態のまま。これを超えて残留し続けるグループにこそ惹かれるんじゃないかしら?」 

海未「そう、ですね」 

絵里「だから入部希望者なしでもしょうがないわ」 

海未「そこです! 確かに他に魅力ある学校も多いでしょう。ですが、だからって新入生が来ないと諦めるのは軽率です!」 

絵里「熱くならないの。海未はもう少しクールにならないと、いつか足元を掬われるわよ?」 

海未「足元を掬われたからこそ、私と穂乃果がここに居るのではないですか」
880 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:45:46.35 ID:Dc9AONNA0
絵里「以前は大吉でも、次は大凶が出るかもしれないじゃない。直せる弱点は直した方が賢明よ」 

海未「……精進します」 

絵里「その堅実さは文句なく海未の魅力よ」 

にこ「嫌な知識を植えつけられたにこぉ」 

穂乃果「でもにこげちゃん、似合ってるよ!」 

にこ「和毛言うんじゃないわ! それに全然似合ってなんかないわ。寧ろ真逆よ、真逆!」 

あんじゅ「真逆……? あっ、確かに」 

にこ「どうして今目線をスカートに移したのよ!」 

あんじゅ「確かに真逆だったね。和毛娘なんて居なかった」 

にこ「ぐぬぬぬぬ!」 

穂乃果「どういうこと?」 

あんじゅ「にこのプライバシー保護の為、黙秘するにこ★」 

にこ「もういいわ。そろそろ屋上に行って練習しましょう。喋ってても胃にダメージが蓄積されるだけだわ」
881 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:46:18.67 ID:Dc9AONNA0
穂乃果「でもほらっ、今から新入生の子が尋ねてくるかもだし」 

にこ「待つのは昨日で最後って言ったでしょ。海未と穂乃果がどうしてもっていうから特別に待ったんだからもう充分でしょ」 

絵里「にこの言うとおりね。どうやって予選を突破するのか、練習しながら考えた方が効率的よ」 

あんじゅ「これから何をするにしても、自分達の実力が未熟なら結果は実らないからね」 

穂乃果「うぅ〜……海未ちゃ〜ん」 

海未「ここは素直ににこ達の意見を受け入れましょう」 

穂乃果「そんなぁ〜」 

海未「明日からは昼休みや練習前の時間を有効的に使って、新入生をスカウトしに行きましょう」 

穂乃果「そっか、そうだね。自分から動けば良かったんだ!」 

海未「もしかしたら隠れアイドル好きな子が居るかもしれません」 

穂乃果「よ〜しっ! そうと決まったら早く練習しよう。やる気出てきたー! 海未ちゃん、いくよ〜!」 

海未「ちょっと、穂乃果! 待ってください。まだ着替えが――」
882 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:46:49.58 ID:Dc9AONNA0
にこ「やれやれ。穂乃果は元気ねぇ」 

あんじゅ「それが穂乃果ちゃんの最大の魅力だから」 

絵里「穂乃果の気持ちも分かるけどね。期待させたくないからああ言ったけど」 

絵里「新入生の人数が増えてクラスも三クラスから四クラスになったから私も期待してたのよ?」 

あんじゅ「廊下とかで応援してますとか言ってくれるから、それだけで私は充分だけどね♪」 

にこ「それに、絵里の考え方は間違ってるのよ。行動せずに未来を期待するのは愚か者のやり方」 

にこ「まずは駄目でも可能性を信じて動いてみる。それこそが今のSMILEになれた理由だし」 

絵里「……そうだったわね。にこにお説教されるなんて、私も随分と焼きが回ったわね」 

にこ「なんなら長女ポジションをにこにしてもいいのよ?」 

あんじゅ「にこに説教されるなんて私ならショックでにこんじゃう」 

にこ「何を煮込むのよ」 

あんじゅ「勿論にこをだよ」 

にこ「猟奇的回答!?」
883 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:47:28.26 ID:Dc9AONNA0
あんじゅ「お風呂で産毛すら生えてないにこ娘を煮込みます」 

にこ「にこげネタとそれに関する言葉を禁止するにこ!!」 

絵里「ふふっ。あんじゅのにこへの愛情はもはや芸術的ね」 

あんじゅ「やったよ、にこげお姉ちゃん♪ 絵里ちゃんに称賛されたよ」 

にこ「って! 私の発言をスルーするんじゃないわよっ」 

穂乃果「もう、三人共遅いよ〜。三年生がやる気出さないでどうするの?」 

絵里「ああ、ごめんなさい。でも、着替えずに屋上へ行っても意味ないでしょう」 

海未「まったくその通りです!」 

穂乃果「えへへっ。だからこうして着替えに戻って来たんじゃない」 

あんじゅ「にこもやる気スイッチ入ったみたいだし、今日は本番のつもりで練習しよう☆」 

にこ「私のやる気スイッチを怒りスイッチと間違ってるんじゃないの!?」 

あんじゅ「にこの場合そのスイッチが一体化してるから大丈夫」 

にこ「全然大丈夫じゃないわよ!」 

あんじゅ「あ、そういえば紅蓮女の想い人は小太郎さんじゃなくて小五郎さんだったね」 

にこ「そんなことどうでもいいわ!!」
884 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:47:59.53 ID:Dc9AONNA0
――凛の部屋 

凛「そうだったんだ」 

花陽『うん、そうなの。だから私も頑張ってみようって思って』 

凛「かよちんが本気になれば誰にも負けないよ」 

花陽『そんなことないよ。私以上なんてこっちじゃ全員くらいだし』 

凛「かよちんの駄目なところは自分を過小評価するところだってば」 

花陽『ううん、今回のは過小評価じゃなくて本当のことだよ。特に見学させてもらった芸能科の人達は凄かった』 

凛「潜在能力ならかよちんは宇宙ナンバー1アイドルになれるくらいにゃ!」 

花陽『規模が大きすぎるよ』 

凛「凛にとってはそれくらいだもん」 

花陽『ありがとう。でもね、正直一人だったら今の時点で諦めてたと思う』 

花陽『でも応援してくれる会長さんが居て、ことりさんが居て、新しく出来た友達も居る』 

凛「……」
885 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:48:30.13 ID:Dc9AONNA0
花陽『だから頑張れると思う。一所懸命頑張って、あのステージの上でライブをしたいの』 

花陽『ううん、ライブをしたいんじゃない。ライブを絶対するの。そう約束したんだ』 

凛「そう、なんだ」 

花陽『凛ちゃんは部活とかしないの?』 

凛「凛は特に入ろうとは思ってないよ」 

凛(でもね、一人で早く帰って来ても余計に時間を持て余して退屈になる。寂しくなる) 

凛(いつもは何もなくてもかよちんが一緒に居てくれたのに。それが今はない) 

凛(凛にとってこんな時間が三年間も続くなんて、そんなの嫌だよ!) 

花陽『同じ目標を志していれば直ぐにとっても仲良しになれるから、楽しいよ』 

花陽『って、花陽と違って凛ちゃんなら常に友達に囲まれてるよね』 

凛「そうだね」 

花陽『音ノ木坂はどうかな? SMILEとか練習してるところとか見かけたりするの?』 

凛「普通だよ。SMILEは見た覚えがないけど、屋上で練習してるとか聞いたよ」
886 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:49:03.00 ID:Dc9AONNA0
凛(聞きたくもないのにクラスメートが喋ってたのが耳に入っちゃっただけだけど) 

花陽『屋上!? そうなんだ。それでも二十五位なんて底力がある証拠だね』 

凛(せっかくのかよちんとの電話なのに。スクールアイドルなんかの話したくない) 

花陽『あ、ごめんね。キャッチが入っちゃった。もう遅いし、また今度電話するね』 

凛「うん、お休み。かよちん」 

花陽『凛ちゃん、お休みなさい』 

凛「……遅いって、まだ十時なのに」 

凛(以前は普通に十一時くらいまで電話することも多かったのに。それに、それに……) 

凛(凛とはお休みなのに掛かってきた相手とは電話するんだ) 

凛(以前のかよちんだったら「キャッチ入っちゃったから、終わったら掛け直すね」って言ってくれたのに) 

凛「かよちんが遠い」 

凛(全部スクールアイドルの所為。なんでそんなのが流行ってるんだろう) 

凛(こんなつまらない現実大嫌い!) 

凛「さびしいよ、かよちん」
887 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:49:42.04 ID:Dc9AONNA0
――三日後(金曜日) 放課後 部室 

絵里「先輩方が卒業した今となっては、もっと多くの交流を持っていれば良かったって思うわ」 

にこ「体育系にはかなりお世話になったものね」 

あんじゅ「逆にこの頃は文化部にも貢献してるよね。海未ちゃんのポエムに穂乃果ちゃんのデッサン教室」 

絵里「にこの洋服の作り方講座にあんじゅのにこ観察記録」 

にこ「最後のだけ大いに納得いかないわよ! アレは既ににこではなく、にこという名前の謎生物じゃない!」 

あんじゅ「でもみんなに受けてるよ?」 

にこ「受ければなんでもありとか思ってる時点でおかしいのよ!」 

絵里「邪道シスターズの次女の言葉とは思えないわね」 

あんじゅ「本当だよ。校内新聞の人気が上がって感謝されてるくらいなんだから」 

にこ「……私ってSMILEのあり方を間違えたのかしら」 

絵里「ふふっ。いいじゃない。学校全体と交流を持とうとするにこには好感が持てるもの」
888 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:50:14.01 ID:Dc9AONNA0
あんじゅ「海未ちゃんの指導のお陰もあって、剣道部は夏の大会に向けて好感触だって」 

絵里「弓道部も漸く形になってきたみたいだし。私達が卒業してから結果に繋がっていくかもしれないわね」 

にこ「そっか……。見送る立場から、見送られる立場になるのね」 

絵里「早いものね。にことあんじゅが生徒会室に来た時からグッと青春が加速したからより早く感じるのかもしれないわ」 

あんじゅ「懐かしいね。あの頃のエリーちゃんは正に氷の女王って感じだったよね」 

にこ「本当にね!」 

あんじゅ「貴女達に関わってる暇はありません。無駄な口を利いてないでお帰りなさい。ハウス!」 

絵里「言ってない言ってない! そんなことまでは言ってないわ!」 

あんじゅ「言ってたにこ★」 

にこ「そう言われると言われた気もするわね」 

絵里「捏造じゃない。こうして冤罪って生まれるのね」 

にこ「冗談よ。でも、会長が機転を利かせてくれなかったら間違いなく絵里を勧誘することは無理だったでしょうね」 

あんじゅ「そうだね、ロシアに居るお婆様と亜里沙ちゃんを巻き込むのは流石に私達じゃ出来なかったもんね」
889 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:50:48.52 ID:Dc9AONNA0
にこ「存在を知らなかったし」 

絵里「そういう意味でも学校ってずるいシステムよね。恩だけ残して返せずに卒業して行っちゃうんだから」 

にこ「情けは人の為ならず。だからこそ恩を後輩に売りつけて私達も卒業していけばいいのよ」 

あんじゅ「でも、にこは留年かもって担任の先生が」 

にこ「んな訳ないでしょ!」 

絵里「あんじゅの気持ち分かるわ。貫禄ついてきたにこをどうしてもボケさせたいから弄るって気持ち」 

にこ「そんな気持ち分かってるんじゃないわよ。あんた、生徒会長で長女でしょうが」 

あんじゅ「隙あればボケて空回る。それこそがにこと私達が共通していた概念だった筈。忘れたにこ?」 

にこ「そんな概念最初からないわよ!」 

絵里「余すことなくボケ倒す。正ににこという妹はそんなキャラだった筈よ」 

にこ「あんた達の脳内のにこはどんな可哀想な物体なのよ!」 

あんじゅ「日向ぼっこしてたら夜になってて、でも温かいからこのまま眠るにこ〜♪」
890 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:51:21.05 ID:Dc9AONNA0
絵里「お腹空いたから目が覚めちゃった。でも、太陽がぽかぽかだから光合成で充分にこ♪」 

にこ「光合成!? もはや植物関係になってる!」 

あんじゅ「よし、次のにこ観察日記はそれにしよう☆」 

にこ「せめて生物でありなさいよっ」 

絵里「にこ。植物だって生きているのよ。友達なんだから」 

にこ「あんた自分が花の写真とか好きだからって、にこを植物にするんじゃないわ」 

絵里「私はにこの頭に花が咲いてても違和感を覚えない自信があるわ」 

あんじゅ「あっ、私も」 

にこ「どういう扱いよ!?」 

海未「すいません、遅れました」 

穂乃果「みんなっ、見つけたよ!」 

あんじゅ「もしかしてにこ切草?」 

穂乃果「そんなどうでもいいもんじゃないよっ」
891 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:51:52.89 ID:Dc9AONNA0
絵里「にこ、残念だったわね」 

にこ「なんで生易しい目を向けられてるのよ。残念に思う部分がまるでないわ」 

あんじゅ「それで見つけたって?」 

穂乃果「見つけたよ! アイドルが似合いそうな子!」 

海未「私から見ると若干暗めな子なので、アイドルが似合いそうかと訊かれたら首を傾げてしまう感じですが」 

穂乃果「もう! 海未ちゃんってば酷いよ。穂乃果だってSMILEに加入する前は暗かったんだから」 

にこ「話を統合すると、他に候補が居なかったから一人無理やり見つけたってところかしら?」 

あんじゅ「にこが解析とかしたら沖縄に雪が降っちゃうよ。沖縄楽しかったね」 

絵里「私は自由行動の時しか一緒になれなかったけど」 

にこ「今年は絵里も一緒のクラスなんだから文句言うんじゃないわよ」 

絵里「でも修学旅行はもうないのよ?」 

あんじゅ「ラブライブが終わったら、みんなで一生懸命バイトして卒業旅行とか」
892 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:52:23.61 ID:Dc9AONNA0
にこ「メイド喫茶辺りならバイトとはいえお給料多いだろうし」 

穂乃果「三人共! そんな遥か遠い未来の計画なんて今にはなんの価値もないよ!」 

海未「そうです。それに……卒業なんて話題を春の今から口にして欲しくありません」 

絵里「ごめんごめん」 

にこ「悪かったわ」 

あんじゅ「それで、暗い子を見つけたって言ってたっけ?」 

穂乃果「暗い子だけど、絶対に笑えば可愛いと思うんだ」 

海未「穂乃果の想像に過ぎませんが」 

穂乃果「海未ちゃんはどっちの味方なの!?」 

海未「今回は状況的に限りなく即戦力になる人材を求められています。なので敵ですね」 

穂乃果「そんなぁ〜」 

海未「穂乃果の気持ちも分かります。ですが、全員を見てきた中で何人かはもはや部活に入っていました」 

海未「ですからもうスカウトは今日で終わりにしましょう。諦めも肝心ですよ」
893 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:52:58.55 ID:Dc9AONNA0
穂乃果「嫌だよ! そもそもSMILEって諦めないからこそ結成したんでしょ?」 

穂乃果「ツバサさんとの約束を守ることを諦めなかったから、スクールアイドルのない音ノ木坂でスクールアイドルが生まれた」 

穂乃果「結果的に二人になっちゃったみたいだけど、それでもスクールアイドルを辞めなかった」 

穂乃果「生徒会長の絵里ちゃんに断られても、それでも諦めずに行動をして仲間にした!」 

穂乃果「スカウトできる人材が居ないと分かると、中学生だった海未ちゃんに目をつけて強引にスカウト」 

穂乃果「暗かった穂乃果を見捨てずに、あんな大掛かりな手段で勧誘してくれた」 

穂乃果「どれも全部諦めてたら叶わなかった奇跡だよ! 最初から諦めるなんてそんなのSMILE流じゃないよ!」 

海未「……穂乃果」 

にこ「あぁ゙〜なんか色々と耳に痛いわねぇ」 

絵里「何だかんだ三年生って立場もあって臆病になってたのかもね」 

あんじゅ「なんというか主役って感じの迫力を感じたね。にこにー部長大ピンチ★」 

にこ「ピンチじゃないわよ。逆に嬉しいくらい。こういうとこはもう立派な王子様じゃない」
894 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:53:29.99 ID:Dc9AONNA0
海未「そうですね、昔からこういう大事な部分では穂乃果は本当に強く、正しい道を指してくれます」 

海未「それでこそ私とことりの王子足る魅力です」 

穂乃果「えへへ!」 

にこ「んじゃま、その穂乃果が目を付けた子をまずは見に行くとしましょうか」 

絵里「そうね。まずは自分の目で見て確認しないとね」 

あんじゅ「うん! 海未ちゃんに出会った時みたいに感じるものがあるかもしれないし」 

海未「そこで私の名前を出されると照れます」 

にこ「照れてる暇なんかないわよ。さぁ、穂乃果! その子の元へ案内するにこ!」 

穂乃果「あ、ごめん。さっき見かけた時にはもう靴に履き替えてたからもう校内に居ないよ」 

絵里「穂乃果。そういう大切なことは先に述べるべきよ」 

あんじゅ「この行き場のない気持ちはにこを弄って解消しよう!」 

にこ「何を抜かしてるのよ、この愚妹!」 

あんじゅ「愚妹と愚昧って似てるよね」
895 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:54:00.44 ID:Dc9AONNA0
海未「まぁ、確かに女と日の違いですからね」 

にこ「訳わかんないこと言ってないで、そうだ丁度いいわ! 持ち越してたカラオケ大会を今日こそするわ」 

海未「いいですね。絵里への借りは返しましたが、結局にこへの借りはまだ返してませんからね」 

穂乃果「カラオケ大会もいいけど、月曜日にはきちんと見に行こうね」 

絵里「放課後だとこっちの授業が終わる前に向こうが帰ってしまうかもしれないし、見に行くなら昼休みの方がいいかもね」 

あんじゅ「じゃあ、月曜日は部室で皆でご飯食べてからってことで。で、ただ普通のカラオケ大会だとつまらないよね?」 

にこ「嫌な予感がするから却下!」 

海未「奇遇ですね、私も嫌な予感しかしません」 

あんじゅ「十八番曲一個で得点高ければ勝利なんて、スクールアイドルのセンターはソレだけで決められるものじゃない」 

にこ「聞いてもないのに勝手に解説始めたわよ。あんたの妹でしょ、どうにかしなさいよ」 

絵里「私が策士状態のあんじゅを止められる訳ないでしょ。海未、貴女の姉でしょ。頑張って」 

海未「そんな、邪道モードのあんじゅに打ち勝てる筈ありません。穂乃果、私の王子様ではないですか。お願いします」 

穂乃果「えぇっ!? なにそれ、穂乃果だってダークオーラ出してるあんじゅちゃんを止められる訳ないよ」 

あんじゅ「それでね、ポイント表を作って合計が高かった人が新曲のセンター!」
896 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:54:31.60 ID:Dc9AONNA0
◆続・生徒会長VS副会長◆ 

――UTX学院 生徒会室 

副会長「何よこれ! 東條さんの差し金!?」 

希「そんな訳ないじゃない。全校生徒の意思だし」 

副会長「こうなることを前提に合同学園祭を提案してたの?」 

希「このアンケートを取ったのはついこないだってこと忘れたとは言わせないよ」 

副会長「私、生徒会を辞めるわ!」 

希「また引き止めて欲しいの構ってちゃん発動かいな? ツンツンなのに甘えん坊やんな」 

副会長「そんな訳ないに決まってるでしょ!」 

希「生徒会に誰よりも拘りがあって、ウチという親友を捨てる覚悟が副会長にあったとは思えないけど」 

副会長「誰と誰がいつ親友になったのよ?」 

希「親友って日々の何気ない積み重ねで気付いたらそうなってるもんなんだって、ウチは初めて知った」 

副会長「私はまだ知らないままよ」
897 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:55:02.39 ID:Dc9AONNA0
希「じゃあ、あの時ウチが引きとめてなければ本当に辞めてたん?」 

副会長「ええ、そうよ」 

希「じゃあ副会長の言葉を全部鵜呑みにするとこうなる訳だね」 

希「親友ですらないただの同級生の言葉に、あの自我が強いことに定評のある副会長が自分の行動を曲げて従ったと?」 

希「UTX学院の副会長ともあろうお人が?」 

副会長「くっ」 

希「何かあって無責任に辞められるくらいなら、最初から生徒会に戻ってはくれなかったのとは違う?」 

副会長「ふんっ。好きに解釈すればいいじゃない」 

希「くすくすっ。副会長は本当に素直じゃないんだから」 

副会長「……話を戻すわ。何よこの合同学園祭でして欲しい催し物の第二位!」 

希「第一位がA-RISEのライブだから事実上繰上げ一位だね」 

『オトノキの生徒会長みたいに生徒会長と副会長にライブをして欲しい』 

副会長「うちの子達はふざけてるの? 脱ゆとりに反旗を翻すゆとりなの!?」
898 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:55:33.47 ID:Dc9AONNA0
希「心にゆとりがあるのは豊かな証拠だよ。ゆとりがなくてせかせかしてる人間よりマシだし」 

副会長「全然マシなんかじゃないわよ! 只でさえ合同の所為でどこまで配慮すべきかで忙しさが何倍も上がってるのに」 

副会長「これ以上忙しさを跳ね上げられたらパンクするわ」 

希「いやいや。望まれてライブはパンクじゃないよ」 

副会長「煩いわね、そんな冗談言ってる場合じゃないでしょ。生徒会が暇してるとでも思ってるのかしら、ふざけんじゃないわ!」 

希「副会長がキレたなー。ツンツンが倍々!」 

副会長「茶化す暇があるならどうにかしなさいよ。会長でしょ!」 

希「生徒の意見を実現に向けて行動するのが生徒会だし」 

副会長「無理難題でどうでもいいような案件を押し付けられて実行することが生徒会なら、私は辞めるわ!」 

希「これくらい実行出来ずに辞めたら、学園祭の度に逃げ出した臆病な副会長の話として名を残すね」 

副会長「この私が悪名を残すですって!? ありえないわ!」 

希「だったらこれからはライブの練習もしないとね」 

副会長「理不尽過ぎるわ」
899 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:56:04.49 ID:Dc9AONNA0
希「副会長はカラオケ上手だし、心配することないやん?」 

副会長「そういう問題じゃないでしょ。それに、カラオケはあくまで身内でするから歌えるの」 

副会長「大勢の前で歌うことに喜びを覚える性格なら、初めからスクールアイドルを目指して芸能科に入ってるわよ」 

希「ウチは……副会長と合同学園祭でライブをする。その為にここに入学したんだと思う」 

副会長「そんな安い言葉で私が動くとでも思ってるの?」 

希「ううん、そういうんじゃないよ。カードの知らせでも、スピリチュアルでもなく、今強い運命を感じてる」 

希「その日の為に柄にもない生徒会へのスカウトを受け入れて、こうして頑張ってきたんだと思う」 

希「生徒会長としての最後を飾るのがライブでいいじゃない。ここはUTX学院だもの」 

副会長「片付けまでが生徒会の役目よ」 

希「人前でするって最後をって意味」 

副会長「学園祭終了の挨拶があるでしょ」 

希「細かいことは言いっこなし。目を閉じて耳を澄ませてみて」 

希「……ほら、少しだけ遠い未来。学園祭の喧騒、青春の歌声が聴こえてくる。ウチと副会長のデュエット曲が」
900 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:56:49.50 ID:Dc9AONNA0
副会長「……はぁ〜。結局最後までこうして東條さんに振り回される役目なのね」 

副会長「これが運命だとしたら、私はその運命を押し退けるわ」 

希「無理や。親友と繋がってる運命は一人じゃ決して退かせないって知らなかった?」 

副会長「何よ、勝手なことばかり言って」 

希「これから秋まで本格的に忙しくなるし、信頼関係をより強めて乗り越えていこう」 

副会長「はぁ〜」 

希「溜め息ばかり吐いてないで、ほらウチのこと名前で呼んで。そしたらウチも副会長のこと呼ぶから」 

副会長「何よ、勝手なことばかり言って」 

希「さっきの発言の繰り返しで誤魔化そうなんて甘い」 

副会長「……」 

希「……」 

副会長「……」 

希「……」
901 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:57:20.25 ID:Dc9AONNA0
副会長「…………希」 

希「はいな、副会長♪」 

副会長「なっ! どうして貴女は私を名前で呼ばないのよ!」 

希「ウチは副会長を呼ぶとしか言ってないし」 

副会長「謀ったわね!」 

希「謀ったなんて単語、言われたの生まれて初めてや」 

副会長「やっぱりこのアンケートも希が裏で何かしていたんじゃないの?」 

希「そんなことないってば。それより今日は早く終わらせてデュエット曲の練習の為にカラオケ寄って行こう」 

副会長「練習に託けただけの、ただのカラオケになるだけでしょ」 

希「憎まれ口の前に返事は?」 

副会長「ま、付き合ってやるわ。運命を退かすのは私一人じゃ無理みたいだからね」 

希「運命共同体ってやつやんね♪」 (完)
902 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:57:56.22 ID:Dc9AONNA0
――月曜日 昼休み 部室 

穂乃果「スカウトしたてみたらスクールアイドルなんて嫌いって断られちゃった」 

海未「穂乃果! トイレに行くから先に行っててと嘘吐いて、何をフライングしてしかも失敗してるのですか!」 

にこ「ま、穂乃果らしいっちゃらしいけど」 

絵里「でもスクールアイドルが嫌いって言うのは厳しいわね」 

あんじゅ「恥ずかしいから嫌っていう海未ちゃんとは違うもんね」 

穂乃果「だってだって、まずは勧誘するところからがスタートラインだし」 

海未「その前にまずは皆で見てからって決めていたでしょう。なんで決められたことも守れないのですか!」 

穂乃果「海未ちゃんってば鬼みたいだよぉ」 

海未「誰が鬼です! 穂乃果が悪いのでしょうが!」 

絵里「新学年に上がって浮かれてるってこともあるでしょうし、許してあげましょう」 

海未「甘やかすと碌な大人になりません!」 

にこ「あんじゅ。あんたは耳に痛いんじゃないの?」 

あんじゅ「え、何が?」
903 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:58:35.68 ID:Dc9AONNA0
にこ「甘えん坊の自覚がないの?」 

あんじゅ「私がにこに甘えるのは自然の原理だよ★」 

にこ「なんて厚かましい愚妹なのかしら」 

あんじゅ「うふふ」 

絵里「取り敢えず、本格的に勧誘するかどうか決める為にも本人を見てみましょう」 

海未「穂乃果。今日の練習が終わったら……分かってますね?」 

穂乃果「ナ、ナンノコトデスカァ? ヨキニハカラエミナノシュー」 

海未「何の真似か知りませんが、舐めた真似をするということはそれ相応の覚悟を決めている証拠ですね」 

穂乃果「ひぃっ! 全然違うよっ!」 

海未「知っていますか? 最近の王子はお姫様にお尻を叩かれるらしいですよ」 

穂乃果「どこの界隈の話!?」 

絵里「さて、それじゃあ見に行きましょう」 

にこ「そうね」 

あんじゅ「余り目立たないようにこっそりとね」
904 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:59:08.10 ID:Dc9AONNA0
――十分後... 

にこ「想像以上に暗かったわね。穂乃果以上だったわ」 

あんじゅ「そうだね。元気がないっていうか、気力が尽きてる感じかな?」 

絵里「個人的な意見になるけど、スクールアイドルには向いてないかもしれないわね」 

にこ「こういうのは運命ってことなのかもね」 

あんじゅ「そうだね」 

穂乃果「そんなことないよ! 運命だっていうのなら、あの子が音ノ木坂に入学したことが運命だよ」 

海未「こういう時の穂乃果の直感は頼りになります。昔から最終的には後悔したことがないです」 

にこ「でもねぇ……情報がないことには打つ手がないわよ」 

にこ「海未の時でも最低限の情報があったからあんじゅが策を練れたし、穂乃果の時は嫌ってくらい情報が溢れてたし」 

にこ「今の時点で何かやってみても単に余計に嫌われるだけだと思うわ。あんじゅはどう思う?」 

あんじゅ「私もにこと同意権。策を打つには何よりも情報が必要になるから」 

穂乃果「にこちゃんとあんじゅちゃんならなんとか出来るよ〜」
905 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 07:59:40.37 ID:Dc9AONNA0
にこ「頼られるのは悪い気はしないけど、無理なものは無理よ」 

海未「穂乃果。だから貴女はまだまだ未熟なのですよ」 

穂乃果「海未ちゃん?」 

海未「にことあんじゅの言葉は裏を返せば情報があればなんとでも出来るということです」 

穂乃果「そっか! そうだよね、情報を集めればそれだけで可能性は無限に広がるんだね♪」 

にこ「……揚げ足取るなんて海未らしくないじゃない」 

海未「邪道な姉に影響されたんです」 

絵里「そうだ、漸く思い出せた。あの子を見てからずっとどこかで見覚えがあったのよ」 

絵里「ニコ屋に来てくれた子達よ。確かあの子と一緒に来た子がアイドル好きだった筈」 

にこ「ああ、そういえば幼馴染だった子でA-RISEのことりのファンだった眼鏡の子ね」 

あんじゅ「普段の記憶力は低いのに、アイドル好きという繋がりがあると面白いくらい記憶力が強くなるんだね」 

にこ「当然でしょ。ただ、あの子を音ノ木坂で見た覚えはないわね」 

絵里「いくら幼馴染でも高校も一緒とは限らないっていうのは海未と穂乃果とことりさんが証明してるわ」
906 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:00:11.78 ID:Dc9AONNA0
海未「そうですね」 

穂乃果「もしかしたらそのことで暗くなってるのかもしれないよ?」 

絵里「ありえるかもしれないわ。アイドル好きな幼馴染が居るのにも関わらず、スクールアイドルが嫌い」 

絵里「ニコ屋に来た時はそんな素振りは見せてなかったわよね」 

にこ「幼馴染の前だから嫌を隠してたってこともあるけどね」 

絵里「そんな可能性を言ってたら何も始まらないわ」 

にこ「始まるも何も、憶測で勝手に答えを固めようとするのは危険よ」 

あんじゅ「穂乃果ちゃんの熱でなんだか焦ってる気持ちは分かるけど、確実な情報以外に踊らされちゃ駄目だよ」 

絵里「……そうね。焦ってたみたい」 

海未「穂乃果のことを未熟と言いながら、私も未熟者ですね」 

にこ「探究心を満たすことで真実に近づいたって勘違いしちゃうのは仕方ないわ」 

あんじゅ「とにかく今は情報だね。これは若い穂乃果ちゃんと海未ちゃんに任せよう♪」 

にこ「そうね。海未の時と違って、私達は二年間一緒に過ごすことは出来ないから」 

にこ「勧誘するってことは責任を取らないといけないわ。私たちが卒業してスクールアイドルを続けるのかどうか」
907 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:00:43.44 ID:Dc9AONNA0
にこ「続ける気がないのなら、スカウトしようとするのを止めなさい」 

あんじゅ「逆に言えば私たちが卒業してもスクールアイドルを続ける意思があるなら情報を集めて」 

あんじゅ「そうしたら私たち邪道シスターズがなんとかしてあげるから。ね、エリーお姉ちゃん」 

絵里「なんか三年生になってから二人して急に成長した感じがするわね」 

にこ「長女の座を奪われたくなければ、絵里も成長することね」 

絵里「直ぐに成長してあげるわよ」 

にこ「ということで、海未と穂乃果は二人でよく話し合ってみなさい。どんな結果になっても私達は構わないから」 

海未「穂乃果」 

穂乃果「うん」 

海未「話し合うまでもありません。私も穂乃果も三年生になってもスクールアイドルを続けます」 

穂乃果「こんなに楽しいこと覚えたら止めるなんて選択肢はないよ」 

海未「そういうことですので、明日から情報を集めようと思います」 

穂乃果「だから期待してるからね、邪道シスターズの活躍!」 

あんじゅ「邪道シスターズにお任せだよ☆」
908 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:01:15.07 ID:Dc9AONNA0
――同日 夜 お風呂 にこあん 

あんじゅ「和毛の生えてないにこも〜いつか宇宙へ旅立つ〜小さな背丈気にして泣く♪」 

にこ「にこげネタは禁止だって言ったニコ! それに背丈気にして泣いたりしないわよ! 変な歌を口ずさむんじゃないわ」 

あんじゅ「はぁい♪」 

にこ「まったくもう」 

あんじゅ「ね、にことしてはあの子をSMILEに入れることを本当はどう思ってるの?」 

にこ「新メンバー加入は確かに一つの話題性を生むけど、ね」 

あんじゅ「乗り気じゃない?」 

にこ「最後まで面倒見れるなら躊躇しないけど、今回はそれが出来ないからねぇ」 

あんじゅ「三年生になった途端、遠かった筈の卒業が近くなっちゃったからね」 

にこ「でもま、アイドル好きとしてはスクールアイドルを嫌いってままにしておくのは癪に障るわね」 

あんじゅ「にこは素直じゃないなー。なんだかんだ言っても、ああいう子を放っておけないんでしょ?」 

にこ「あんたは何か勘違いしてるんじゃないの? 私はそんな博愛主義じゃないわ」 

あんじゅ「じゃあ、救わないの?」 

にこ「……邪道シスターズがなんとかするって言った手前、何もしない訳にはいかないじゃない」
909 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:01:46.43 ID:Dc9AONNA0
にこ「勝手に積もらせてなさい」 

あんじゅ「不満ゲージがマックスまで溜まると夜明け前の一番暗くなった時、毎晩必ず金縛りにあうからね」 

にこ「怖っ!」 

あんじゅ「それが嫌ならもっともっと愛情を注ぐべきだよ★」 

にこ「いつから悪霊みたいな能力者になったのよ」 

あんじゅ「これから成るんだよ」 

にこ「それも怖いわよ。しょうがないわねー。ほら、頭洗ってあげるからお風呂から出なさい」 

あんじゅ「うん! やっぱり私はにこに頭を洗ってもらうのが一番幸せ〜♪」 

にこ「なんて現金な妹かしら」 

あんじゅ「うふふ。とにかく、今年も色々ありそうだけど頑張ろうね」 

にこ「ええ、将来のことも本気で考えないとだしね。あんじゅはきちんと考えてる?」 

あんじゅ「勿論。にこの行く未来にあんじゅあり」 

にこ「あっそ。……ま、もう何も言わないわ」 

あんじゅ「うん♪」 


ネクストストーリー 春・音ノ木坂編後半 
◆にこにークエスト Ver.邪道シスターズ 〜音ノ木坂より笑顔にさせて〜◆
910 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:03:19.21 ID:Dc9AONNA0
>>909 の前にこれが入ります。 

あんじゅ「ほら、素直じゃない。でも、穂乃果ちゃんより暗かったしなんとかなるのかなー」 

にこ「あんたより充分マシよ。だったらなんとかなるんじゃないの?」 

あんじゅ「にこってばお気楽〜」 

にこ「人を笑顔にさせるのは気楽なくらいが丁度いいのよ」 

あんじゅ「それもそっか」 

にこ「どう動くかは海未と穂乃果の情報量次第」 

あんじゅ「あんまり期待は出来ないよね」 

にこ「そうね。だから、最悪は私……もしくは、SMILEを恨んでもらう。そんな結果になるでしょうね」 

あんじゅ「素直じゃない上に不器用」 

にこ「冴えたやり方を思いつける頭がないのよ。しょうがないでしょ」 

あんじゅ「でも私はそんな不器用なにこが大好きだよ」 

にこ「はいはい。私もあんたのことが大好きよ」 

あんじゅ「おーざーなーりー」 

にこ「あんたの場合は直ぐに調子乗るからこれくらいで充分にこよ」 

あんじゅ「愛情の裏返しの反応ばかりじゃ、妹は不満が積もるにこよ!」
911 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:04:01.55 ID:Dc9AONNA0
900越えたので本編とは関係ないのを記念投下! 

◆夢を諦めたスクールアイドル 〜Ver.アナザー〜◆ 

にこが入学した春。音ノ木坂学院にて運命は始まる。 

にこ「私と一緒にスクールアイドルをやりませんか? アイドル研究同好会です!」 

ツバサ「まさか私と同じ志を持つ人が居るなんて想像していなかったわ」 

にこ「同じ志?」 

ツバサ「私は綺羅ツバサ。同好会に入るわ。貴女のお名前は?」 

にこ「矢澤にこよ、よろしく」 

二人から始めるスクールアイドル活動。 

ただし、勧誘に成功した唯一の相手は思っていたのとは違っていた。 

そう、志が! 

にこ「ツバサ。あんたなら絶対にUTXでもスクールアイドルになれた逸材よ」 

ツバサ「どうして私があんなつまらない所でスクールアイドルをしなくちゃいけないのよ」 

にこ「つまらない所って……あんたね」 

ツバサ「だってあそこでラブライブを優勝したって面白くないじゃない。だからこそ、音ノ木坂学院を選んだ」
912 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:04:33.29 ID:Dc9AONNA0
ツバサ「スクールアイドルが流行って尚、一度として結成されたことのない都内で唯一の学校」 

ツバサ「って、にこも同じ考えでここに入学したんだからわざわ言わせないで」 

にこ「にこは全然違うわよ!」 

ツバサ「照れっこなしよ。設備も悪い、生徒数も少ない。圧倒的なまでのこの逆境」 

ツバサ「ここから王女を喰らう大番狂わせを起こせたら、正に私達の実力が立証されるわ」 

ツバサ「そのままの勢いでプロになって、今度はオリコンでの一位を目指す」 

ツバサ「にこ、私達の夢を絶対に叶えましょう!」 

小学五年生の時、優木あんじゅに出逢ってアイドルになる夢を諦めた。 

そんな過去を語る暇も与えて貰えず、勘違いを加速させる相方に付き合わされる。 

ツバサ「二人だと色々と限界があるわ。というか、私とにこだとロリータ路線のファンくらいしか獲得が難しい」 

にこ「嫌な現実ね」 

ツバサ「引き抜きをするしかないわね」 

にこ「引き抜き?」 

ツバサ「東條希と絢瀬絵里を引き抜くの」 

にこ「絢瀬ってあの新入生代表挨拶で『私が生徒会長になって音ノ木坂学院を変える』宣言した変人金髪よね?」
913 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:05:06.89 ID:Dc9AONNA0
ツバサ「ええ、そうよ。ああいう男性ファンだけでなく、女性ファンを取り込める人材はグループに必要ね」 

にこ「それは分かるけど、もう一人のなんたらかんたらってのは?」 

ツバサ「ついこないだ敵情視察にUTXに行った時に見掛けてね、思わず声を掛けた子よ」 

にこ「相変わらず無駄に行動派ね。で、肝心な部分を念の為に訊くけど……その子はUTXの生徒とか言わないわよね?」 

ツバサ「UTXの生徒よ。勧誘に成功したら彼女にはオトノキに編入してもらうわ」 

にこ「あんたばっかじゃないの!? 誰が好き好んで天と地の差程もある学院に好き好んで編入するのよ!」 

にこ「大体ね、あの金髪を生徒会から引き抜くって件も無謀もいいところだし」 

ツバサ「無謀だからこそ、突破した時に大きな喜びと経験値を得られるんじゃない」 

ツバサ「にこは面倒な性格よね。心は私と同じ乗り気なくせに、わざと私に考えを言わせて自分はやる気ないアピールするんだもの」 

にこ「私はそんな無謀なことを一切やる気なんてないわよ!」 

ツバサ「はいはい。さ、まずは……時間が掛かる東條さんからスカウトしてみましょう」 

ツバサ「何かいいスカウトの方法とか条件とか考えないとね」 

無謀なこともお構いなしに突き進むツバサに連れられ、にこは次第に不可能を可能にする喜びを覚えていく……。 

ツバサ「ラブライブに出れるまでに思ってたより時間が掛かっちゃったわね」 

にこ「二年半。濃厚な夢物語みたいな日々だったわね」
914 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/22(日) 08:05:49.78 ID:Dc9AONNA0
ツバサ「何を寝ぼけたこと言ってるの? ラブライブは私達の夢の通過点にしか過ぎない」 

ツバサ「これを乗り越えられなきゃプロになってから通用なんてしないわよ」 

にこ「分かってるわよ。絶対に私たちの夢を叶えるにこよ!」 

ツバサ「ええ!」 

夢を諦めた筈の少女は、大きな翼に乗せられて、置き去りにした夢の元へ今舞い戻る。 

そして、今度は夢を現実にするべく輝きの中へ飛び込んでいく。 

あんじゅ「にこ、久しぶりね」 

にこ「会いたかったわ、あんじゅ」 

あんじゅ「まさかオトノキから上がってくるなんてね。完全に想定外」 

にこ「常識に捕らわれない自由な発想こそが、アイドルの本分だもの」 

あんじゅ「うふふ。だけど私達に勝てるかしら?」 

にこ「当然勝つに決まってるでしょ。私達はアイドルになる夢を叶える為に、このステージに上がるんだから」 

そして、ラブライブ決勝が始まる……。 


これはこれでありだったかも。この場合穂乃果はUTX行き間違いなし!
915 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/22(日) 11:03:39.14 ID:9vNa5k96o
うわぁ…それはそれで是非読んでみたい 
期待してますね(意味深)
916 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/22(日) 22:24:14.40 ID:uB59yqyAO
このSSは先が読めない故に面白い 
その上に1ヶ月以内にどばっと更新が来るからエタる気配を感じさせない
917 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/23(月) 08:51:54.80 ID:rt8yGzOMo
いいね
918 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga] 2015/02/27(金) 23:32:38.69 ID:8LMoGuJB0
◆にこにークエスト Ver.邪道シスターズ 〜音ノ木坂より笑顔にさせて〜◆ 

――プロローグ 

「貴女が星空さんだよね」 

凛「そうですけど」 

「私は三年で陸上部で部長やってるんだけどね、貴女の噂聞いたたよ。すごく運動神経良くて足が速いってね」 

凛「だとしたら何ですか?」 

部長「その質問はないでしょ。陸上部の部長が噂を聞きつけて訪ねてきたのなら答えはほぼ一つ!」 

凛「……」 

部長「ノリが悪い子ね。仕方ないから用件も言ってあげよう。貴女、陸上部に入らない?」 

凛「どうして凛が……」
919 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:33:53.92 ID:8LMoGuJB0
部長「噂されるくらい速いからじゃないの。実際にどれだけ運動神経がいいかによっては短距離だけじゃ勿体無い」 

部長「是非とも音ノ木坂から陸上界の記録に名を残しましょう!」 

凛「凛は……陸上部」 

部長「今直ぐ無理に返事を聞かせてなんて言わないからさ」 

部長「明日の放課後にまた来るから。その時に返事を聞かせてよ。走るのは嫌いじゃないんでしょ?」 

凛「走るのは好きだけど」 

部長「何かを吹っ切るのにスポーツは最適だよ。練習の最中は頭が真っ白になるし、記録を更新する喜びは負の感情を忘れさせる」 

部長「無駄に一人で過ごすとゴチャゴチャした思考を生むからね。健全な精神を養うにはスポーツが一番!」 

凛「……うん」 

部長「じゃあ、時間取らせてもらって悪かったね。また明日!」 

凛「……」
920 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:34:37.67 ID:8LMoGuJB0
――夜 凛の部屋 

凛「陸上部」 

凛(中学生の時はかよちんと一緒の美術部に入ってたけど、本当は陸上部に入りたい思ってた) 

凛(音ノ木坂に入学したら、今度はかよちんを引っ張って陸上部に入部するつもりだった) 

凛(あの日、かよちんに告げられるその日まで) 

凛(凛はどうすべきなんだろう? かよちんに相談したいけど、でも……) 

凛「友達」 

凛(UTXで出来た新しい友達という単語が頭から離れない) 

凛(まるでかよちんが遠くの世界に連れて行かれちゃったみたい)
921 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:35:32.19 ID:8LMoGuJB0
凛(ボタン一つで通じる筈なのに、今はそれが酷く恐ろしい) 

凛(どうしてこうなっちゃったんだろう) 

凛(かよちんとの距離はずっと変わらないと思ってたのに) 

凛「……」 

凛(あの部長さんの言ってた通り、運動してればこんなにモヤモヤとしないかな) 

凛(中学と違って高校の部活は好きな時に辞められるし、やってみようかな?) 

凛(でも、そんなつもりで始めるのもなんか嫌だな) 

凛(逃げる為に好きな運動をするのはやっぱり嫌かも) 

凛「もぅ〜! どうすればいいのっ!」 

凛(凛一人じゃ何が正解なのか全然分からないよ。助けて、助けてよ……かよちん)
922 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:36:12.79 ID:8LMoGuJB0
――翌日 放課後 

部長「待たせちゃったかな?」 

凛「いえ」 

部長「それはよかったわ。で、まず最初に紹介しておくわ。この子は次期部長のシカコことシカちゃん」 

シカコ「どうも。シカちゃんとかシカコ先輩とか言ったらぶん殴ります」 

部長「勧誘したけど、私はこの夏で引退の身だからね。実際に面倒見るのはこの子になるから」 

凛「まだ凛は入部するとは言ってません」 

部長「あ、そうだった。ごめんごめん。でも、実際に練習観に来て、ちょっと参加してくれればやる気出る筈だし」 

シカコ「こういう強引な手は私は好まないんですけど」 

部長「こんな風に年上相手でも言いたいことズケズケ言う子だから少し怖く感じる時もあるかもだけど、大丈夫だから」 

部長「根っこの部分は……きっと大丈夫だから!」 

シカコ「本人を前に大分失礼なことを言ってます。謝罪を求めます」 

部長「ガムみたいなもので、噛めば噛むほど味が出てくるから」 

シカコ「それを言うならスルメです。ガムだと噛めば噛むほど味がなくなっていきます。それより謝罪を求めます」
923 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:37:15.86 ID:8LMoGuJB0
部長「そうそうスルメスルメ。女子高生とスルメって関連ないから出てこなかったわ」 

凛(この次期部長さんは怖そうで嫌かも) 

シカコ「謝罪はもういいです。それより、しなやかな筋肉ですね。伸びが良さそうです」 

シカコ「正直な話、時間の無駄だと思ってましたが、これは思わぬ拾い物かもしれません」 

シカコ「青空さんでしたっけ?」 

凛「星空です」 

シカコ「失礼しました。星空さん、鍛えれば私の跡を継ぐ逸材になれます」 

シカコ「前日にスカウトしたとかで部長が不快な思いをさせたかもしれませんが、それは一切忘れてください」 

シカコ「この人はいつ消えてもいい存在なので、今日初めて陸上部にスカウトされたと思ってください」 

凛「……はぁ」 

部長「シカちゃんはいつも失礼ね」 

シカコ「まずは練習を見学して、実際に参加してみてから入部するかどうかを考えてみてくれればいいわ」 

凛「えっと、」 

にこ「その勧誘ちょっと待ったぁ!」
924 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:38:04.62 ID:8LMoGuJB0
部長「にこちゃんにあんじゅちゃんじゃん。やっほー」 

あんじゅ「うふふ。ごきげんよう」 

にこ「和やかに淑女的な挨拶交わしてる場合じゃないでしょ。その勧誘はなしよ!」 

シカコ「何ですか?」 

にこ「その子はアイドル研究部がSMILEの新規メンバーとしてスカウトさせてもらうわ!」 

シカコ「後から出しゃばって来て勝手なことを言わないで下さい。いくら先輩でもやっていいことと悪いことがあります」 

あんじゅ「にこを見て先輩と分かるなんて、目利きだね」 

にこ「なんで誰でも分かるところを褒めてんのよ!」 

シカコ「見た目では正直後輩にしか思えませんが、この学校でSMILEのメンバーを知らない人は恐らく居ないでしょう」 

部長「そりゃそうよね。SMILEの活動は広いし、シカちゃんがオトノキに入学した理由だって音ノ木坂体験が理由だったし」 

部長「つまりはシカちゃんがここに居るのはSMILEのお陰ってことね」 

シカコ「その点については感謝します。ですが、それはそれこれはこれです」 

にこ「海未を合法的に学校に入れる為の即興が回り回って面白いことになってるわね」 

あんじゅ「あれがあったからこそ、こうして運動部からの信頼は絶大な物になったからね」
925 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:38:39.05 ID:8LMoGuJB0
シカコ「その信頼に泥を塗るようなことをするのは若輩者ながら止めていただきたいです。軽蔑の対象になります」 

にこ「有能な子をスカウトしない方が失礼に当たるわ。その方が軽蔑の対象よ!」 

シカコ「それも一理ありますね」 

あんじゅ「納得しちゃうんだ!」 

部長「独自路線を突き進むタイプだから。そういうところに慣れると面白くて思わず可愛がっちゃうんだよね」 

シカコ「一理ありますが、勧誘出来る星空さんは一人。となれば先着順が妥当でしょう。つまりは陸上部に権利があります」 

にこ「運命は先着順を超越するのよ。寧ろ、その辺を飛び越えてこそ運命にこ♪」 

シカコ「運命は自己記録を更新する瞬間に訪れる。それ以外にはありえない」 

にこ「面白い考えね。スポ根は嫌いじゃないわ」 

あんじゅ「にこじゃやっぱり役者が足りてないね。交渉は私がするよ」 

シカコ「私、にこ先輩は好きですが、貴女と生徒会長は嫌いです」 

あんじゅ「にこを好きなんてやっぱり目利きがある!」 

にこ「自分のこと嫌いって言われてるんだから、まずはそこにショックを受けなさいよ」 

あんじゅ「え、だって理由がなんとなく分かったし」 

シカコ「何故そこで私の胸元を見つめるのですか? いくら先輩とはいえぶん殴りますよ」
926 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:39:41.41 ID:8LMoGuJB0
あんじゅ「とまぁ、背はあるのににこクラス。なら私やエリーちゃんが嫌いでも必然かなって」 

にこ「ぐぬぬ! 何故か私も悔しい」 

部長「陸上ではない方がありがたいんだってば」 

シカコ「ありがたく思えば恨むことはないということはありません。人間とは強欲な生き物」 

あんじゅ「強欲な生き物だからこそ、先着順なんて守らなくてもいいでしょ?」 

シカコ「最低限の礼儀は必要。星空さんはどう?」 

凛「凛はスクールアイドルには絶対にならない」 

シカコ「と、言ってますけど?」 

あんじゅ「私の妹にはスクールアイドルになることを嫌っていた恥ずかしがり屋さんが居たよ」 

あんじゅ「でも、今では私達が卒業してもスクールアイドルを続けてくれるって言ってくれた」 

あんじゅ「今は嫌悪感があっても、未来ではどうなってるのかなんて分からないんだよ」 

シカコ「強引過ぎます」 

部長「まぁまぁ。シカちゃんの気持ちも分かるけど、少しは落ち着こうよ」 

シカコ「部長は黙っててください。これは陸上部とSMILEの問題です」
927 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:40:10.54 ID:8LMoGuJB0
部長「いやいや、私が陸上部の代表だから」 

シカコ「……そういえば《まだ》そうでしたね」 

にこ「あんたってば部長なのに舐められてるわねぇ」 

部長「にこちゃんにだけは言われたくないってば」 

にこ「どういう意味よ!?」 

あんじゅ「もう面倒だから勝負しない?」 

シカコ「勝負?」 

あんじゅ「うん。陸上部で貴女何を専攻してるの?」 

シカコ「短距離走ですが」 

あんじゅ「だったら丁度いいや。私と短距離走で勝負しよう」 

シカコ「はい?」 

あんじゅ「だから勝負。正直ね、部活紹介のライブは盛況だったけど、一人も獲得出来なかったから」 

あんじゅ「スクールアイドルSMILEの実力をアピールするにはいいかなって。陸上部に陸上競技で勝っちゃうとかね」 

シカコ「――」 

あんじゅ「最高のデモンストレーションになるでしょ?」
928 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:40:43.35 ID:8LMoGuJB0
シカコ「ふふふふ。面白いですね。その男を喜ばせるしか使い方がない無駄肉に思考能力を奪われてるんじゃないですか?」 

あんじゅ「――」 

シカコ「それから陸上を舐めすぎです。同じ土俵に立とうと考えるその思考が既に終わってます」 

あんじゅ「男性を喜ばせる為に使うなんて一生ありえない」 

あんじゅ「私のは泣いてるにこを慰める為、眠そうなにこの枕に使う為。だから大きいの!」 

にこ「――」 

部長「ねぇねぇ、にこちゃん。とっても複雑な顔してるところ悪いけど、あの噂って本当のことなの?」 

にこ「あの噂?」 

部長「にこちゃんとあんじゅちゃんが百合な関係ってやつ」 

にこ「そんな噂まであるの? ……なんか色々とトドメを刺されたにこぉ」 

あんじゅ「もう怒った! 手加減せずに本気で貴女の土俵で完全勝利してあげる」 

シカコ「返り討ちにしてSMILEの優木あんじゅの哀れっぷりを見てた人達に見せ付けてあげます」 

あんじゅ「それはこっちの台詞!」 

シカコ「その自信がどこからくるのか知りませんが、貴女が勝つことなんてありえません!」 

絵里「校内で喧嘩って聞いて来てみれば……あんじゅ、貴女が当事者?」
929 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:41:56.72 ID:8LMoGuJB0
あんじゅ「あ、絵里ちゃん」 

絵里「あ、絵里ちゃん。じゃないわよ。スクールアイドルが校内で喧嘩とかしちゃ駄目でしょ」 

絵里「にこも傍に居ながら何やってたのよ」 

にこ「……にこぉ」 

部長「色々とあったみたいだから許してあげて」 

絵里「は?」 

部長「なんでもないよ。とにかく喧嘩って訳じゃなくて勝負する流れになったみたい」 

絵里「勝負?」 

あんじゅ「邪道シスターズの出番だよ。陸上部に赤っ恥かかせてあげるニコ!」 

シカコ「当然の結果を目の辺りにしてなんて言い訳を始めるのか今から楽しみです」 

絵里「結局どういうことなのよ」 

あんじゅ「絵里ちゃん! 生徒会主催の元、邪道シスターズVS陸上部の開催を承諾して!」 

シカコ「邪道シスターズというのが分かりませんが、とにかく私と優木さんが短距離で戦えるなら何でも構いません」 

部長「プライドを賭けた負けられない戦いがそこにある!」
930 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:43:01.63 ID:8LMoGuJB0
絵里「もういいわ。これ以上騒ぎになると先生が来る恐れがあるから、関係者は生徒会に来て」 

あんじゅ「じゃあ、詳しい話は生徒会で!」 

シカコ「ええ、何なら二秒ハンデあげてもいいですよ?」 

あんじゅ「負けた時の言い訳? そんなもの要らないよ」 

シカコ「寝惚けた言葉ばかり。本当に胸に思考力を奪われてるんじゃないですか?」 

部長「さ、当事者の一人である星空さんも一緒に行こっか」 

凛「どうして凛まで」 

部長「この流れで行かないと他の生徒から質問攻めされちゃうよ?」 

凛「……うぅ」 

部長「ね、だから行こう」 

凛「うん」 

部長「にこちゃんもいつまでも混乱してないで行こう」 

にこ「……姉の威厳って何かしら?」 

部長「あーその反応だとさっきの泣いてるとか眠たいとかの話は実話なんだ。超気になる!」 

凛「……もう、訳がわからないにゃ」
931 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:43:36.08 ID:8LMoGuJB0
――生徒会室 

絵里「話の流れは分かったけど、一体どうしたらこんな風になるのか一々考えるのは無駄ね」 

あんじゅ「思考の放棄は脳の老化を加速させるよ」 

絵里「貴女達の常識を行動を推測する方が心に負担が掛かるわ」 

あんじゅ「エリーお姉ちゃんってばひど〜い」 

シカコ「漫談はけっこうです。それで、生徒会としてはどうでしょうか?」 

絵里「今日のことが変に噂されるのを防ぐという意味では、これからと明日のお昼に放送を入れましょう」 

絵里「そのまま明日の放課後に異例の陸上対決としましょう」 

あんじゅ「陸上というか短距離走だけどね」 

シカコ「いいのですか? 売名行為としては陸上部のみ得をしますが」 

絵里「あんじゅがやる気ってことは止めても無駄だからね。なんとかなるんじゃないかしら」 

シカコ「陸上競技でなんとかなるなんて曖昧なモノが入り込む余地なんてありません。訂正してください」 

絵里「そういうつもりじゃなかったの、ごめんなさい。ただ、この子達は貴女の常識の範囲外で行動してくるかもしれない」 

絵里「そういう意味では色々と注意しないと足元を掬われるわよ?」
932 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:44:21.20 ID:8LMoGuJB0
シカコ「つまり不正をしてくる可能性がある、と」 

あんじゅ「後輩相手にそんなことをする必要がないよ。正々堂々の完全実力で勝てるから」 

シカコ「今吐いた唾は舐めとっても完全には戻せませんよ?」 

あんじゅ「そんな汚い真似しないから安心して」 

部長「凄いピリピリしてるね」 

凛「こんな所に居たくないのに」 

にこ「ホントに悪いわね。明日まで付き合ってくれれば、きっと変わるから」 

凛「変わる?」 

にこ「なんでもないわ。ただ、ここは音ノ木坂学院。暗い顔は似合わない場所なのよ」 

凛「やっぱり意味が分からないにゃ」 

絵里「では、生徒会が承認します。ただ、勝負後のいざこざはなしよ。スポーツマンシップに乗っ取った心を持ってね」 

シカコ「当然です」 

あんじゅ「勿論だよ」 

にこ「……後はピエロとボブキャットの結果次第ね」 

凛「?」
933 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:46:35.58 ID:8LMoGuJB0
――夜 凛の部屋 

凛(なんだか面倒なことに巻き込まれちゃった) 

凛(スクールアイドルになんかなる気はないけど、陸上部はどうしよう) 

凛(やってみたいなって気持ちは確かに生まれてる) 

凛(でも、どうしても踏ん切りがつかない) 

凛「かよちん」 

凛(夜九時。今なら大丈夫だよね? 昨日は押せなかったけど……えいっ!) 

花陽『もしもし、凛ちゃん?』 

凛「かよちん。今いいかな?」 

花陽『勿論大丈夫だよ。何かあったのかな』 

凛「ううん、こっちは何にもないにゃ」 

花陽『そうなの?』 

凛「うん。何にも起こらなくて拍子抜けしてるくらいにゃ」
934 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:47:10.03 ID:8LMoGuJB0
花陽『そうなんだ』 

凛「そうにゃ」 

花陽『凛ちゃん、悩み事とかある?』 

凛「そんなものないにゃー」 

花陽『ね、凛ちゃん。あのね、時々だけど隠し事する時に凛ちゃんってほぼ全部語尾ににゃが付く時があるんだよ』 

凛「えっ?」 

花陽『今の凛ちゃんがそう。だからきっと花陽に何か話したいことがあるんじゃないかな?』 

凛「……よく分かったね」 

花陽『凛ちゃんのことなら大体分かるよ。だって、花陽の大切な幼馴染だもの』 

凛「かよちん! あのね、なんだか分からないんだけど――」 

花陽『――そうなんだ。でも、どうしてSMILEと陸上部の人達が短距離走で勝負なのぉ?』 

凛「その場に居た凛も全然意味が分からなかった」 

花陽『だよね。スクールアイドルの記事でもこんなこと読んだことないからどうすればいいんだろう』
935 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:48:06.75 ID:8LMoGuJB0
凛「こんなことが過去にあったらそれはそれでスクールアイドルの在り方を疑うよ!」 

花陽『フォローできない』 

凛「本当にわけわかんないニャ!」 

花陽『でも、流石凛ちゃんは凄いなぁ。スクールアイドルと陸上部の二つから激しい勧誘されてるんだもん』 

凛「でも、凛は……」 

花陽『入部するかどうか悩んでるんだね。だったら、凛ちゃんの興味がある方に仮入部って形で参加させてもらえば?』 

凛「仮入部」 

花陽『勝負の行方次第で勝った方に勝手に入れられる訳でもないだろうし』 

凛「そうなったら最悪だよ! そもそも、この勝負本当に意味がないよ」 

花陽『う、うん。正直言って私も意味があるように思えない』 

凛「かよちんもそう思うなら絶対に意味がないよ!」 

花陽『でも、聞いた話によるとことりさんの幼馴染の穂乃果さんがSMILEに入った時にも一騒動あったんだって』 

花陽『だからSMILE的に何かの意図があるのかもしれない』
936 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:50:06.17 ID:8LMoGuJB0
凛「そんなの偶然に決まってるよ。すっごい子供っぽかったもん」 

花陽『そうなのかな?』 

凛「かよちんだって今日の現場に居たら分かったよ」 

花陽『でも、カレー屋さんの時はとっても良い感じだったよ』 

凛「あれは他からもお客さんが来るから仮面を被ってただけだよ!」 

花陽『私はそんなことないと思うけど』 

凛「かよちんはアイドル好きだから変なファクターが掛かってたんだよ」 

花陽『ひ、否定は出来ないけど』 

凛「どうして凛がよく分からない対決を見届けないといけないんだろう」 

花陽『きっと必要になることなんだよ』 

凛「えっ?」 

花陽『凛ちゃんを縛る鎖を壊してくれるって、そんな予感がする』
937 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:52:54.85 ID:8LMoGuJB0
凛「かよちんまでどうして意味分からないこと言い出すの」 

花陽『まだ分からなくてもいいんだよ。何ヶ月か経ってから今日の事をふと思い出した時に、この意味が分かると思うから』 

凛「……」 

花陽『花陽のことを信じてくれるなら、仮入部の件を本気で考えてみて。それを頭に置いて明日を迎えて』 

凛「かよちん」 

花陽『そしてね、明日が凛ちゃんにとっての記念日になればいいなって思うの。そうなれば私も今以上に頑張れるから』 

凛「……よく、分からないよ」 

花陽『うん、混乱させてばかりでごめんね。とにかく、先入観に捕らわれずに明日を迎えて』 

凛「分かったよ、かよちん。話聞いてくれてありがとうね」 

花陽『ううん。きちんとした相談にならなくてごめんね』 

凛「そんなことないよ! 明日、取り合えずかよちんの言葉を考えながら見届けることにするよ」 

花陽『うん』 

凛「それじゃあ、なんだか疲れちゃったからからもう寝るね。おやすみ、かよちん」
938 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:53:37.33 ID:8LMoGuJB0
――花陽の部屋 

花陽「うん、凛ちゃん。おやすみなさい」 

花陽(SMILEにはことりさんが自慢する二人の幼馴染が居る) 

花陽(それだけじゃない。ことりさん自身が感謝しているっていう人達も居る) 

花陽(そんな人達が意味もなく凛ちゃんを巻き込んで陸上部と勝負なんてするかな?) 

花陽(勝手な希望かもしれない。でも、あの人達なら凛ちゃんを縛るあの日の鎖を壊してくれるって予感がする) 

花陽(花陽が弱かった所為であの時、凛ちゃんを庇うことが出来なかった) 

花陽(そして、その鎖を解いてあげる力も臆病な花陽にはなかった) 

花陽(他力本願になっちゃう上に厚かましいけど、出来るなら可愛い衣装を着てステージに立つ凛ちゃんがみたい) 

花陽「でも、今花陽がすべき事はただ想像することじゃない」 

花陽(十時過ぎ……。ことりさんはまだ練習してるかな? でも、メールじゃなくて電話で直接お願いしたいから) 

花陽(うぅ〜。でも、ことりさんに電話するなんて緊張するなぁ。あぁ、指が震える。あっ、押しちゃった!)
939 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:54:09.74 ID:8LMoGuJB0
ことり『もしもし、ことりです。花陽ちゃんから電話なんて初めてだね』 

花陽「はっはい! そのぉ、今お電話大丈夫でしょうか?」 

ことり『うん、大丈夫だよ。丁度練習が終わって着替え終わったところだから』 

花陽「よかった」 

ことり『何かあったのかな?』 

花陽「はい。すごく自分勝手な用件なんですけど、どうしてもことりさんに頼るしかなくて」 

ことり『私は何をすればいいのかな?』 

花陽「ことりさんの幼馴染の穂乃果さんか海未さんにお願いして、音ノ木坂の生徒会長の絢瀬さんと連絡取りたいんです」 

ことり『絵里さんと?』 

花陽「はい、どうしても譲れない我が侭を伝えたくて」 

ことり『うん、ちょっと待っててね。穂乃果ちゃんに連絡してみるから』 

ことり『あ、もし大丈夫のようなら花陽ちゃんの連絡先を絵里さんに教えても平気?』 

花陽「はい、お願いします」 

プロローグ・終了
940 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:54:45.17 ID:8LMoGuJB0
――SMILE 部室 

にこ「意外と情報が集まったのね」 

海未「ええ、星空さんと同じ中学校出身の子が何人か居ましたので。皆さん非常に協力的で助かりました」 

穂乃果「SMILEのファンだって言ってくれたんだよ♪」 

あんじゅ「ただ問題はこの中で使える情報が幾つあるかが重要だよね」 

にこ「そうね。一番良いのはあの眼鏡の子から直接話を聞きたいところだけど、それが出来ない以上は仕方ないわ」 

あんじゅ「そうだね、これで頑張って策を練ってみよっか」 

にこ「ま、何にしろ言えることが一つあるわ」 

にこ「私達ももう三年生だし、人前でする邪道はこれを最後にしましょう」 

あんじゅ「邪道シスターズ最後の聖戦だね★」 

にこ「何と聖戦って、私達は何と戦うつもりよ。ともかく、邪道な話は私たち三年のみで話を進めることにするわ」 

絵里「いいえ、話はにことあんじゅの二人で進めて。どんなことをするにしても、生徒会は援護するから。二人は好きにやりなさい」 

にこ「どうして話し合いに参加しないのよ?」 

絵里「その方が二人の邪道を客観的に楽しめるでしょう?」
941 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:56:16.90 ID:8LMoGuJB0
あんじゅ「エリーちゃん。邪道シスターズの長女としてその発言はどうなのかなーって」 

絵里「いいじゃない。長女っていうのは妹達を見守り、最後に責任を取る立場って昔から決まってるのよ」 

にこ「そんな話聞いたことないわよ」 

穂乃果「あっ、聞いたことがあるかも」 

海未「本当ですか?」 

穂乃果「うん。普段は楽をしてるんだけど、最後にビシッと決めてくれるのが長女なんだっけな?」 

絵里「そうそう、そんな感じよ」 

海未「その与太話は置いておいて、絵里の気持ちは分かります。何を仕出かすかわからない二人の邪道を楽しみたい」 

穂乃果「穂乃果もよく分かるよ。一度は当事者にされた訳だからね。一生の思い出だよ☆」 

にこ「策を練る前から勝手に期待されても困るわよ。今回のは単純、だけど意味の生まれる邪道になるだけだと思うし」 

海未「穂乃果の時のように大掛かりにされては逆に心配してしまいますから、大人しいくらいが丁度いいです」 

絵里「そうね。大掛かりなら私も参加したいし、その場合は声を掛けてね」 

穂乃果「もっちろん! その時は穂乃果と海未ちゃんにもね!」 

にこ「あんじゅ。今夜はこの資料を頼りに作戦会議をするわ」 

あんじゅ「うん! 了解だよ☆」
942 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:56:48.83 ID:8LMoGuJB0
――夜 にこの部屋 

にこ「はぁ〜。この情報の中で使えそうな物がほぼないわ」 

あんじゅ「海未ちゃんと穂乃果ちゃんの努力を一刀両断だね」 

にこ「ここで嘘吐いても仕方ないでしょうが」 

あんじゅ「それはそうだけど」 

にこ「あんじゅは何か思いついた?」 

あんじゅ「ううん。この情報からあの子を救うって言うのは正直難しいかな」 

にこ「でしょうね。だからやっぱり……今回はSMILEを憎んで笑顔を取り戻してもらいましょう」 

あんじゅ「何するの?」 

にこ「つまりね――」 

あんじゅ「――それって海未ちゃんの時の二番煎じじゃない。手抜き反対にこ!」
943 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:57:55.23 ID:8LMoGuJB0
にこ「使える物はなんでも使う。リサイクルの精神は大切なのよ」 

あんじゅ「でも、海未ちゃんの時と違って相手の土台に立って勝てるなんて保証もないし」 

にこ「そこよね。情報もパズルのピースも全然足りないからリサイクルしようとしても破綻してるわね」 

あんじゅ「何かいい案とかフラグとかあればいいのにね」 

にこ「そんな物があるなら……あるなら」 

あんじゅ「何か思いついた?」 

にこ「あった、あったわよ! あんたがいつだか立てたフラグが!」 

あんじゅ「何か立てたっけ?」 

にこ「陸上部よ、陸上部。陸上部と対決するとかいうフラグ! あれを有効活用しましょう」 

あんじゅ「つまり陸上部に協力してもらうってこと?」 

にこ「ええ、これなら……そうね、にこが泥土の中に飛び込めば大体なんとかなるでしょう」
944 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:58:29.00 ID:8LMoGuJB0
あんじゅ「でも、それだとにこの人気が」 

にこ「そんなもんであの子を笑顔に出来るなら喜んで人気を落とすわよ。それがスクールアイドルって生き方よ」 

にこ「あの子をニコ屋に来てた時のような柔らかい雰囲気と笑顔を取り戻すにこよ!」 

あんじゅ「にこがそう望むなら、私はにこの手足となって動くよ」 

にこ「ありがとう。じゃあ、明日私が陸上部の部長に話をつけてくるわ」 

あんじゅ「エリーちゃんには情報どうするの?」 

にこ「当日に指令をメールで出して、生徒会として騒ぐになってるから様子を見に来たとか言わせればいいわ」 

あんじゅ「ほとんど情報なしなんだね」 

にこ「その方が客観的に楽しめるでしょ。それに、かしこい長女なら空気を読んで話を合わせてくれるでしょ」 

あんじゅ「ついでにアドリブの楽しさを教えてあげようってことだね」 

にこ「ま、そういうこと。ただ楽をさせるなんてこと許す訳ないじゃない」 

あんじゅ「うふふ。流石私のにこにー♪」
945 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:59:11.66 ID:8LMoGuJB0
――翌日 昼休み 三年の教室 

部長「珍しいね。何かのイベントで人手が欲しいのかな?」 

にこ「そっちが言ってる意味とは違うけど、回答的にはイエスね」 

部長「どゆこと?」 

にこ「SMILEのイベントというよりは有望な新入生一人を入部させる為のイベントを開催するの」 

部長「へぇ〜。SMILEのメンバーが増えるってことかー」 

にこ「入部するのはアイドル研究部じゃなくて陸上部の方よ」 

部長「陸上部に? 音ノ木坂体験のお陰で部員に困ってはないんだけど」 

にこ「その入部させようって子が黄金の足を持ってるって言ったらどう?」 

部長「黄金だと足が重くて鈍足に聞こえるけどね」 

にこ「そういうツッコミはなしにこ!」 

部長「こりゃ失敬! でも、そうなると私よりも次期部長のシカちゃんに話を通した方がいいかも」 

にこ「いや、それは駄目なの。色々あってね、イベントを起こす際に本気でいがみ合って貰った方がいいのよ」 

部長「ふむふむ。つまり陸上部内では私だけが知ってればいいってことか」 

にこ「そうよ。ただ、イベント当日に練習時間を少し奪うことになると思うの。後、一年生三人程貸して欲しいわ」 

部長「それくらいお安い御用だけど、一年生は何をするの?」 

にこ「憎たらしいピエロとダンスしてもらうのよ。今回の件は全てが終わった後も絶対に他言無用だからね!」
946 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/27(金) 23:59:44.55 ID:8LMoGuJB0
――イベント当日(金曜日) 放課後 グラウンド 

海未「生徒会の放送効果とSMILEのネームバリューのお陰で思っていた以上に見物人が居ますね」 

穂乃果「それはそうだよ! だって他の学校じゃ絶対にありえないよ。スクールアイドルと陸上部が戦うところなんて!」 

絵里「ありえても困るわよ。それすらもあの子達にとっての注目させるという意味合いがあるんだろうから」 

海未「しかし、舞台は整いましたがこれからどうやって勧誘に繋げられるのかサッパリ分からないのですが」 

穂乃果「そうだね。これだとまるでSMILEにスカウトするんじゃなくて、陸上部を薦めてるみたい」 

絵里「私にもそうとしか思えないけど、何か手段があるんじゃないの?」 

海未「にことあんじゅでなければ絶対にないと断言してしまう局面ですね」 

穂乃果「そもそも、陸上部次期部長の得意分野で戦うっていうのが敗北フラグに思えるんだけど」 

海未「単純には言い切れません。それくらいあんじゅは速いです」 

絵里「でも、流れ的にあの次女があんじゅだけに任せると思えないわ」 

海未「そうですね。にこには確かに瞬発力がありますが、正直陸上部に勝てる程の足は持っていないかと」 

穂乃果「何か秘密兵器の靴とかあるとか?」
947 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:00:53.16 ID:K5atqcVi0
絵里「流石にそんな物を用意はしないでしょう。スタートに何か仕込んであるとか」 

海未「待ってください。陸上部に邪道な手を打ったら、せっかく今まで築いた好感度が下がります」 

海未「只でさえ今回のことで迷惑をかけているんです。そんな手は打たないと思います」 

絵里「となると、にこが勝つビジョンがまるで見えてこない」 

穂乃果「勝つことに意味はないのかな?」 

海未「そうなるとあんじゅの戦う意味すらなくなるというか、最初から戦う意味というものが欠落しているように思えます」 

絵里「う〜ん、考えれば考えるだけ無駄な気がしてきたわ」 

海未「思考の放棄は個人的に好ましくありませんが、相手が相手だけにそれが正解な気がします」 

穂乃果「どんなスカウトするのか楽しみだね」 

あんじゅ「きっと穂乃果ちゃん辺りが、どんなスカウトするのか楽しみとか言ってそうだね」 

にこ「期待にはまるで添えないけどね。打てる手はもう打った。後は運命を動かす力が……邪道シスターズにあるかないか」 

あんじゅ「おぉ! にこが初めて邪道シスターズの名前を使った。本当に最終回って感じだね!」 

にこ「最終回っていうか、最後の聖戦なんだから使うくらいのサービスはするわ」
948 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:01:43.91 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「それじゃあ、三女はにこにーお姉ちゃんに絶対にバトンを繋がないといけないね」 

にこ「そうね。私達が打てる手ではあんじゅの結果が全てに繋がるといえるからね」 

あんじゅ「大丈夫だよ。にこと勝利の女神は私に優しいから」 

にこ「なにそれ。新しいバッドエンドフラグ?」 

あんじゅ「全然違うニコ!」 

にこ「ふふっ。冗談よ、冗談」 

あんじゅ「にこにはまた私の手の……」 

にこ「何か言った?」 

あんじゅ「ううん、にこは私が守るって言ったんだよ」 

にこ「生意気言ってるんじゃないわ。今回のあんたは勝負の行方だけ心配しておきなさい」 

あんじゅ「うふふ」 

部長「さっすがSMILEの人気効果だね」 

シカコ「それは認めますが、その人気がアダとなる場合が今日です」
949 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:02:18.69 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「大勢の前で恥を掻く前の威勢のいい鳴き声」 

部長「シカって何て鳴くんだっけ?」 

シカコ「私はシカじゃありません」 

部長「でもバンビだとダサいし、略してバンちゃんだとカッコ悪いし」 

シカコ「シカなら許せるその感性が理解不能です」 

あんじゅ「鹿如きなら兎の私が脱兎の如く出し抜いてあげる」 

シカコ「シカじゃないって言ってます」 

にこ「そもそも、あんたが兎っていうのが納得行かないわよ。精一杯可愛くしてもボブキャットが関の山よ」 

あんじゅ「いいね、ボブキャット。鹿も捕食するらしいからね」 

シカコ「ですから私は……いえ、だったらシカに逆に捕食されるボブキャットとして卒業までその汚名を被るといいです」 

シカコ「準備運動をしたら始めましょう」 

にこ「おっと、勝負はまずは私からよ。今回は特別に一年生達にスクールアイドルの洗礼を受けさせてあげる」 

にこ「まずはそこの一年生! にこにーの可憐なる実力を魅せ付けてあげるにこ☆」
950 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:02:55.03 ID:K5atqcVi0
「え、私ですか?」 

にこ「こんな風に戦えることを他の子に自慢することね!」 

「あの、勝負って何を?」 

にこ「短距離ね。百メートル走で勝負してあげる」 

「わ、私って専攻が高飛びなんですけど」 

にこ「うっるさいわね! このにこにーが勝負してあげるって言ってるの。この意味分かってんの?」 

にこ「つまり、あんたは黙って私と勝負すりゃいいのよ。そして、将来それを自慢すりゃいいのよ」 

「えっ」 

にこ「さ、準備運動しなさい。あと、他の一年も念のために準備運動しておくこと。記念に遊んであげるかもしれないからね」 

穂乃果「なんだろう、あのにこちゃんの言動」 

絵里「何かの作戦……なのかしら。あれじゃあ、普段のにこを禄に知らない一年生の反感を買うわよ」 

穂乃果「小悪魔ほどにこちゃんに似合わない存在はないのにねー」 

絵里「実妹のこころちゃんとここあちゃん同様、にこも天使だからね」
951 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:03:27.38 ID:K5atqcVi0
海未「ええ、にこは邪道を良しとしますが心根は優しい人です。そして、私はあんな風なにこを見たことがあります」 

海未「私の時と同様に自分を餌にするのでしょう。あんじゅの策でしょうか」 

絵里「でも、シカコちゃんだっけ? あの子を挑発するならまだしも、一年生相手じゃ意味ないんじゃない?」 

海未「そう、ですね。私の時と似ていながらも違います。けど、本音でないことだけは確かです」 

穂乃果「それくらいなら穂乃果にだって分かるよ」 

絵里「身内をからかうのは好きでも、基本的に悪く言わない子だものね」 

海未「そうですね。悪く言うのは本当に親しい相手だけ。三年生同士の絆が羨ましいです」 

絵里「ふっふーん♪」 

穂乃果「あははっ。にこちゃんの真似だね」 

「えっと……私は、」 

部長「いいんじゃん、勝負すれば。こんな態度取られて黙ってるなんて、陸上部自体が格下って思われちゃうし」 

部長「スクールアイドルだからって何でも許されるとか思われたら気分悪いからね」 

にこ「何でも許されるわよ。だって、音ノ木坂で一番貢献してるのは間違いなくこの矢澤にこだもの」
952 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:04:08.07 ID:K5atqcVi0
部長「事実関係はともかく、あの天狗になった鼻をへし折る意味でもやっちゃって、茜ちゃん。必殺チョップよ!」 

「は、はぁ……私、チョップで人は殺せませんけど」 

部長「そこは冗談だからスルーしてよ。あっちも普段から短距離走やってる訳じゃないし、筋肉の付き方が違うから楽勝だよ」 

部長「中学から陸上部で鍛えた実力を披露しちゃいなさい」 

「分かりました。正直やりたくないですけど、スポーツを舐めてるような言動は少しムカッとしたので」 

にこ「スポ根の人間は直ぐにスポーツを舐めてるって言うわね。にこが普段舐めるのはスポーツじゃなくてスイーツだっての」 

にこ「即興の割には上手いこと言えたにこっ☆」 

海未「完全に駄々滑った発言なのに、自ら悦に入りました」 

絵里「なんていうか、素のにこが出たわね」 

穂乃果「普段ならあの後すぐにあんじゅちゃんのからかいが出る場面だけどねぇ」 

海未「なんだか嫌な予感がしますが大丈夫でしょうか?」 

絵里「既に賽は投げられた。私達は見届けることしか出来ないわ……。そう言えば賽って何のことだったかしら?」 

穂乃果「時々絵里ちゃんって年下と思うような可愛い言動あるよね」 

海未「そこが絵里の魅力です」 

絵里「え、いや、答えは……?」
953 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:04:40.59 ID:K5atqcVi0
――にこVS一年生ダイジェスト 

にこ「ま、軽く揉んでやるわ! スポーツ根性より華麗ならステーズで輝く私の方が優れているとね!」 

「ステーズ?」 

にこ「……」 

「ステーズって――」 
にこ「うっさいわね! 通はステージのことをステーズって言うのよ!」 

「そ、そうなんですか」 

にこ「そ、そうよ」 

海未「……久々の所為かもはや憎むに憎めない可愛いキャラですね」 

絵里「でも、一年生にとっては憎むべき存在になりつつあるみたいね」 

穂乃果「う、うん。ちらほらと見に来てる人が噂してるね」 

一年生「にこちゃん先輩ってもっと可愛い人かと思ってて幻滅しました」 

三年生「そう評価するのは早計よ。矢澤にこってスクールアイドルはそんな評価は不似合いなんだから」 

一年生「だけど、あんな傲慢な態度。正直陸上部が可哀想です」 

三年生「きっと何か意味があるのよ」
954 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:05:14.05 ID:K5atqcVi0
一年生「どうして先輩がそんな風に思うのか理解出来ません」 

三年生「大きいことも、小さいことも色々としてきたのがあの子がリーダーを務めるSMILEだから」 

海未「二年・三年生からの評価は磐石ですね」 

穂乃果「おぉっ! 海未ちゃんが自分のことじゃないのにドヤ顔なんて珍しい」 

絵里「ふふっ。さ、勝負が始まるみたいね」 

一人目終了... 

シカコ「哀れとしか言いようがないんですが」 

部長「これぞにこちゃんって結果だったね」 

にこ「ふぅ……ま、一人目だからね。ちょっと手を抜いたのよ」 

「そ、そうですか」 

にこ「良かったわね。将来自慢出来るわよ。手を抜いてくれたとはいえこのにこにーに勝ったんだから」 

シカコ「何故短距離走で三秒も差を付けられてあんなことを言えるのか理解出来ません」 

にこ「三秒くらいでいい気になるから所詮短距離走なのよ。私はもっと広い世界で輝きたいわ」 

シカコ「ふむ、陸上に限らずタイムを計る競技ではドンドン狭い世界を競うんですが……広い世界の例えは?」
955 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:05:48.63 ID:K5atqcVi0
にこ「えっ、例え?」 

シカコ「はい」 

にこ「…………今度はもうちょっと本気でやってあげる。さ、そこのあんた掛かって来なさい!」 

シカコ「完全に誤魔化しましたね。無駄な言い訳しない潔さは好きですね」 

部長「本ッ当にシカちゃんの感性は独特だよね」 

「先輩に挑まれた勝負ですからしますけど」 

部長「やる気出して頑張ってね。中学では水泳部だったらしいけど、アスリート魂は同じだってところ魅せ付けて!」 

「はい、頑張ります」 

にこ「あ、水泳が得意なの? 水着用意してたらプールで勝負をつけてあげてもよかったんだけどね」 

にこ「でも良かったわね。これで負けた時の言い訳が出来るわ。さっきの子より力入れるから」 

「……はぁ」 

にこ「更にやる気ないアピール? それくらいしないとね。負ける勝負なんだから」 

二人目終了...
956 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:06:48.36 ID:K5atqcVi0
穂乃果「何か自分のことじゃないのに胸が痛くなってきちゃったよ」 

海未「これなら自分のことの方がマシです」 

絵里「あの子ってば何を考えてあんなことをしてるのかしら?」 

海未「ええ、反感を買うのが目的ならば勝負を挑むまでないと思うのですが」 

穂乃果「なんでもいいけど、もう早くあんじゅちゃんの勝負が始まって欲しいよ」 

「なんかダサいね」 

「私にこにーのファンだったんだけど、正直もういいやって感じ」 

「だから言ったじゃん。海未さんの方が素敵だって」 

「今日から絵里さんファンになる」 

にこ「さぁ! 次で最後でいいわ。疲れるしね、遊びはここまで。本気で挑んであげる」 

にこ「言わば今までは両手を使わずに戦ってたようなものよ。今度は両手も使ってアイドル力は五十三万!」 

シカコ「一般的なスクールアイドルのアイドル力の平均はどれくらいなのでしょうか?」 

にこ「えっ?」 

シカコ「今のままだと五十三万がどれ程のものか判断が付きませんので」 

にこ「……えっとね、A-RISEの綺羅ツバサは百万アイドル力を軽く突破してるわ」
957 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:07:53.04 ID:K5atqcVi0
シカコ「ここで自分を最強にしない辺り、好感が持てます」 

にこ「あっ。ち、違うわよ! A-RISEが凄いだけで、後は有象無象よ。矢澤にこの前に敵はないわ」 

穂乃果「この瞬間だけが痛む心を癒してくれるねぇ」 

海未「ですが、普段なら突っ込むところで無言のままのあんじゅが不自然というか、不気味です」 

絵里「あんじゅだけじゃなくて、目的の星空さんも無言よ」 

海未「無理もありません。見たくないのにここに来て、更に見たくない勝負を見せられてるんですから」 

絵里「あの子達の邪道を信じてるけど、本当にこれってどうにかなるの?」 

海未「ありえない話ですが、リバーシで残り一マス以外は白の状態で、黒を置いた瞬間に全部が黒に変わる」 

海未「そんな光景を望んでいたのですが。今回は違うようですね」 

絵里「もう無事に終わってくれればそれでいいわ」 

穂乃果「あぁ〜……三人目は接戦だったけど、ギリギリで負けちゃったよ」 

海未「にこ。貴女は何を考えているのですか?」 

ダイジェスト終了...
958 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:08:58.05 ID:K5atqcVi0
にこ「くしゅんっ! 誰か私のことを噂してるわね。有名人は辛いわ。それはともかく、今年の陸上部は駄目ね」 

にこ「にこを120%本気にさせてくれるようなツワモノが居なかったわ」 

部長「それはまた辛辣な意見だね」 

シカコ「そもそもまだ五月です。鍛えるのはこれからですし、専攻が短距離なのは最初の子だけですから」 

にこ「そんなことはいいわ。結局のところね、異種対決の場合はメインの勝負で勝てばいいのよ」 

にこ「さ、そろそろ今回のメインを飾りましょうか。私の自慢の妹・矢澤あんじゅ対陸上部次期部長!」 

シカコ「退屈な勝負になるかと思いましたが、にこ先輩のお陰で退屈しませんでした」 

にこ「ふっふーん! でしょ? そう思って陸上部の希望なき一年生衆を遊んであげたのよ」 

シカコ「優木さん、覚悟はよろしいですか?」 

あんじゅ「優木ではなく、今の私は邪道シスターズ三女。矢澤あんじゅよ。お見知りおきを」 

シカコ「にこ先輩と間際らしいので、今だけはあんじゅさんとお呼びしましょう」 

部長「そういえばなんでさん付けなの? にこちゃんは先輩って呼んでるのに」 

シカコ「私は尊敬していない人間を先輩と呼びたくないので」 

部長「……部長という役職が取れた後になんて呼ばれるのか、ちょっと怖いわね」 

シカコ「自虐ネタはお腹いっぱいなのでもういいです。始めましょうか」 

あんじゅ「うん。にこにバトンを繋ぐ為にも……。運命も私の手の平の上で回す」
959 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:09:41.23 ID:K5atqcVi0
――あんじゅVSシカコ(陸上部次期部長) 

シカコ「ここに立った以上、もう言葉は不要です」 

あんじゅ「うん」 

絵里「二人が並んだ瞬間から空気が変わったわね」 

海未「本格的な大会いう程ではありませんが、対抗試合そのものに近いですね」 

穂乃果「にこちゃんがあんな風だったから、あんじゅちゃんが勝てるのかどうか心配になってきちゃったよ」 

絵里「そうね。どこかに細工でも仕込んでるのなら心配もしなくていいんだけど、こんなことなら全部聞いておけばよかった」 

海未「にこではないですが胃が痛いです」 

絵里「私もよ。これならあの事を隠さずににことあんじゅに伝えておけばよかった」 

海未「あの事とはなんですか?」 

絵里「えっとね――」 
穂乃果「――始まったよ!」 

部長「二人共最高のスタートを切った。若干あんじゅちゃんが優勢だね。こんなこと言いたくないけど才能ってやつかな」 

海未「私の姉も毎朝鍛練しています。才能というより、短時間で如何にして体を動かすのかを理解さていっただけです」
960 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:10:13.58 ID:K5atqcVi0
部長「そういうのを出来るから才能があるっていうんだよね。センスって言い換えてもいいけど」 

穂乃果「やった! あんじゅちゃんの勝ち!」 

絵里「才能がなくっても、今回の勝負であんじゅが負けることはなかったわよ」 

部長「どうして?」 

絵里「あの子が誰よりも慕うにこが勝利を望んだから」 

部長「理屈じゃないってことか。そういうの好きだよ。というか、あんじゅちゃん陸上部に欲しいなー」 

絵里「私の自慢の妹は誰もあげないわ」 

部長「そりゃ残念。さってと、シカちゃんを慰めに行こうっと」 

穂乃果「いやぁ〜あんじゅちゃんもあの子も本当に速かったね」 

海未「そうですね。鍛練の時以上に力を発揮していました。邪道シスターズの絆ですね」 

穂乃果「陸上部の油断を誘う為ににこちゃんは一年生に負けたのかな?」 

海未「いいえ、それは違うでしょう。油断なんてものはありませんでした」 

穂乃果「これだと凛ちゃんをスカウトなんて出来ないと思うけど」
961 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:10:53.77 ID:K5atqcVi0
海未「……そうですね」 

あんじゅ「ふぅ。本当に勝ててよかった」 

シカコ「本気で走ったのに負けました」 

あんじゅ「ほんの僅差だったけどね」 

シカコ「僅差でも負けは負けです」 

にこ「二人共お疲れ様。素晴らしい勝負だったわ。本当のメインの引き立て役としては別格だったわ」 

あんじゅ「うふふ。にこにきちんとバトンを渡せたよ」 

シカコ「本当のメインですか?」 

にこ「完全に傍観者になってる当事者の星空凛!」 

凛「何ですか?」 

にこ「これはあんたの勧誘劇なのに当事者がただつまらなそうに見てるだけじゃ意味がないでしょ!」 

にこ「だから本当の勧誘をこれから行うわ。私が勝ったらスクールアイドル嫌いだかなんだか知らないけど、うちに入ってもらうわ!」 

凛「どうして凛が……」
962 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:11:42.87 ID:K5atqcVi0
にこ「当事者だからよ。あんたが負けたら次期部長が私の自慢の妹に負けた陸上部にでも入るといいわ」 

にこ「その代わり、私が勝ったら絶対にあんたをうちに引き込むわ」 

凛「そうなったら幽霊部員になるだけ」 

にこ「そんなことを部長のこの私が許す訳ないでしょ! 毎日放課後に部室に引っ張って行くわ!」 

にこ「短距離だとアッと言う間だしね、今度は八百メートル走で勝負にこよ!」 

凛「……えー」 


海未「完全にやる気なしですね」 

絵里「そうね。あ、ごめん電話だわ――もしもし、あっもう直ぐ着くのね。うん、なんだか状況が分からないことになったの」 

絵里「何故かにこと星空さんが八百メートル走で勝負することになったんだけど、星空さん全くやる気がなくて」 

絵里「ええ、なんとか引き伸ばしてみるわ。それじゃあ、また」 

海未「どなたですか?」 

絵里「ごめん、話しは後で。にこ!」 

にこ「ということで勝負開始よ! って、何よ人が良い気持ちで決めたってのに」
963 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:12:45.20 ID:K5atqcVi0
絵里「もっと何か言うことないの?」 

にこ「もはや語る舌も持たないわ。結果を見せるのみよ」 

絵里「何かあるでしょ? ほら、星空さんも」 

凛「とっととやって早く終わらせたいにゃ」 

絵里「そんなこと言わないで!」 

にこ「……何があるのか知らないけど、絵里」 

絵里「何よ」 

にこ「運命って言うのは待ってくれないの。勝負を始めるわ」 

絵里「もうっ! 何かあるって分かるのなら勝負を遅らせなさいよ」 

にこ「スクールアイドルっていうのはね、こういう時に魅せられてこそなのよ」 

絵里「……はぁ。もう何も言わないわ」 

あんじゅ「にこ。最後まで頑張って踊ってね」 

にこ「ええ、ピエロ魂魅せつけてやるわ」
964 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:13:56.01 ID:K5atqcVi0
――にこVS凛 

穂乃果「スタートしたけど、やる気ないとはいえ声援が凛ちゃんに集まってるね」 

海未「でも声援を送ってるのが一年生だけです。二三年生は見守っている感じですね」 

海未「それで、先ほどの電話は誰からだったのですか?」 

絵里「予想はついてるんでしょ?」 

海未「念のためです」 

穂乃果「にこちゃんがんばれー!」 

絵里「文化祭の時に来てくれた眼鏡の子よ」 

海未「どういう経由で?」 

絵里「ことりさん経由で穂乃果に連絡いって、そこから私に繋がって直接連絡したの」 

海未「どうして穂乃果はこういう大事なことを私に言わないのですか」 

絵里「私が口止めしておいたのよ。にことあんじゅにとってのサプライズにしようと思ってたの」 

絵里「今は本当に後悔してる。というか、にこはどうしてこういう時に頑固なのかしら」
965 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:14:55.15 ID:K5atqcVi0
海未「こういう時に甘えないからこそ、にこはあの強さを手に入れたのでしょう」 

海未「あんなに小さい背中なのに、私にはずっと大きく感じます」 

絵里「姉としては沢山甘えて欲しいんだけど」 

海未「今回は星空凛の勧誘が目的ではなかったのですね」 

絵里「あの子を笑顔にさせるのが目的みたい。情報を集めてもらったのに悪いわね」 

海未「絵里が謝ることではありません。にことあんじゅに謝られても困ります」 

海未「それに、元々にこの本質は人を笑顔にさせることですからね」 

絵里「どんなアイドルすらも叶えられないことをにこならやれると思う」 

海未「私もそう思います。にこがアイドルになれば……きっと今より多くの人が笑顔になれるでしょう」 

絵里「素敵な未来ね」 

海未「にこがアイドルになる夢を諦めたというのなら、私たちで取り戻してあげたいです」 

絵里「過去に置き去りにした夢をもう一度、ね。ラブライブ優勝よりも骨が折れそうね」 

海未「ええ、だから夢を取り戻すついでに優勝しましょう」
966 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:15:28.36 ID:K5atqcVi0
絵里「ふふふっ。大きく出たわね」 

海未「今日のにこを見て改めて思いました。夢を奪った綺羅ツバサの居るA-RISEに勝ちたいと」 

絵里「でもA-RISEにはことりさんも居るのよ?」 

海未「ことりと本気で戦うことなんてありえませんでした。ですが、それを経験出来るのは今という運命だけ」 

海未「だったら骨の髄まで楽しむまでです。ことりもああ見えて根っこの部分は負けず嫌いな部分がありますから」 

絵里「本当に私の妹達は自慢の言葉しか出せないわ」 

海未「それは妹を姉に置き換えて私も言いたいです」 

海未「何をするのか分からなくても責任を取ると言い張り、実際に生徒会主催で行った今回の邪道」 

海未「にこが望む結果を見事に出してみせたあんじゅ。そして、自ら泥を被りながらも今も相手の笑顔を望むにこ」 

海未「邪道シスターズは最高です。運命だって動かせますよ。心配はもう要りません」 

絵里「そうね、心配するだけ無駄な気がしてきたわ」 

穂乃果「もう! 二人共真面目に応援しなよ。にこちゃんもう半分走ってるっていうのに」 

穂乃果「凛ちゃんが全然やる気ないからまだにこちゃんの半分。これは勝負決まったね」
967 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:16:16.05 ID:K5atqcVi0







花陽「花陽に全力の凛ちゃんを魅せて!!」 






968 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:16:51.85 ID:K5atqcVi0
絵里「さっきのがあんじゅの言うところのフラグだったのかしら?」 

海未「間に合いましたね。これで何が変わるか分かりませんが」 

凛「かよちん?」 

花陽「花陽は常に本気で真っ直ぐな凛ちゃんを応援したい! だから頑張って!」 

凛「……うん! 凛頑張るよ、かよちんと自分の為に!」 

穂乃果「すごい急加速したよ!」 

絵里「にことの差は圧倒的。でも、あの速さなら……追いつけるかもしれない」 

海未「この場合どちらを応援すべきなのでしょうか?」 

絵里「えっと、そうね。あんじゅはどう思う?」 

あんじゅ「私はにこを応援するよ。だって、自慢のお姉ちゃんだもの。でも、」 

絵里「そうよね、迷うことなくここはにこを応援しましょう」 

海未「にこー! 頑張ってください!」 

穂乃果「にこちゃんがんばってー!」 

絵里「邪道シスターズに敗北は要らないわ! 頑張りなさい!」 

あんじゅ「……でも、ピエロが最後まで成功することはない」
969 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:17:33.74 ID:K5atqcVi0
部長「黄金の足を持つとかにこちゃん言ってたけど、半端ない加速力」 

シカコ「これは次期部長の座が危うくなります」 

部長「その割りに嬉しそうな顔してるじゃん」 

シカコ「ライバルが居るということは最高の喜びですから」 

部長「……悪かったね。私じゃ力不足で」 

シカコ「いいえ、私が音ノ木坂体験でここに入りたいと願ったのは部長が居たからです」 

シカコ「そのお陰でこうしてライバルと巡り合えたというのなら、私とって嬉しき運命です」 

部長「なによ、私を泣かせようって魂胆?」 

シカコ「部長の涙なんて私には何の価値もありません」 

部長「相変わらず酷いわー」 

シカコ「泣くのは卒業まで取っておいてください。そうしたら、価値が生まれて貰い泣きしますから」 

部長「……星空さんに劣等感を抱かないようにね」 

シカコ「私は歪んだ心を保てる程の人間性を持ってません。偏屈ですから」 

部長「あはっ☆ 自覚あるなら直せってば」
970 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:18:17.74 ID:K5atqcVi0
真姫「花陽、勝負は?」 

花陽「あっ、真姫ちゃん。もう直ぐ決着」 

真姫「髪の短い子が凛よね。このままだと微妙そうね」 

花陽「それでも凛ちゃんは勝つよ。だって、凛ちゃんより速い子なんて居ないから」 

真姫「自信満々ね」 

花陽「うん。だって本当のことだから」 

真姫「羨ましいわ」 

花陽「ありがとうね、真姫ちゃん。真姫ちゃんがタクシーで待っててくれなかったら間に合わなかった」 

真姫「私の分まで生徒会長にオトノキの敷地に入る許可を申請を頼んでおきながら、抜けてるわよね」 

花陽「ごめんね」 

真姫「謝る暇があるなら自慢の幼馴染を応援してあげなさい」 

花陽「うん! 凛ちゃんラストスパート頑張ってー!!」 

真姫「やっぱり声音がいいわよね。これが常に出せるようになれば花陽は完全に化ける」
971 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:19:36.41 ID:K5atqcVi0
穂乃果「あっ!」 

絵里「にこが転んだ」 

海未「短距離とはいえ三回走った後で足にきてたのが原因でしょうか?」 

あんじゅ「最後の最後で逆転されてにこの負け、だね」 

穂乃果「にこちゃん大丈夫かな? 私行って来るね!」 

海未「あっ、私も行きます!」 

絵里「あんじゅがついてながら、どうしてこんな邪道を許したの?」 

あんじゅ「何のこと?」 

絵里「とぼけないで。あの転び方は膝を擦り剥かないように配慮してた。わざと転んだんでしょ?」 

あんじゅ「よく分かったね」 

絵里「つまり全部にこの考え通りの結果だった。最初からにこは星空さんに勝つ気はなかった」 

あんじゅ「場合によってはもう一パターンあったけど、運命が動いたからね」 

絵里「運命って花陽さんのことよね。来てなかったらどうしていたの?」
972 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:20:33.37 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「ここで勝った後に凛ちゃんのアキレス腱というか絶対にやる気になる言葉を投げかけるつもりだったんだと思う」 

あんじゅ「あの花陽ちゃんっていうの? あの子を悪く言えば何があってもやる気は出る」 

あんじゅ「そのやる気のままもう一度勝負して、一年生と違って本気を出して大差で負ける」 

あんじゅ「そうすれば今と同じような空気になるから」 

絵里「どういうこと?」 

あんじゅ「凛ちゃん自身は当然ながらスクールアイドルになる気はなくなる。その反面で陸上部への執着が湧く」 

あんじゅ「陸上部の一年生の間ではアンチにこの気持ちが強くなってるから一体感が生まれて馴染むのは早くなるでしょ?」 

あんじゅ「笑顔になる近道を用意したんだよ。もし陸上部に入る気がそこまで強くなかったとしても」 

あんじゅ「この場の空気がそれを許さない。流れ的に仮入部でも入るでしょ。そうなれば結果は同じ」 

あんじゅ「陸上部が宿り木になって笑顔は取り戻せる。これがにこの邪道だった筈」 

あんじゅ「私に全部説明してくれた訳じゃないけどね」 

絵里「それを知っていてどうして止めなかったの!?」 

あんじゅ「私はにこの邪道を止めることなんて出来ない。だって、妹だもの」
973 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:21:27.46 ID:K5atqcVi0
凛「かよちん! どうしてここに?」 

花陽「えへへ。音ノ木坂の生徒会長さんにお願いして凛ちゃんが生まれ変わるの応援しにきちゃった」 

凛「生まれ変わるって大げさだよ。ただ、勝つべきして勝っただけだもん」 

花陽「ううん、そんなことないよ。だってすっごい素敵な笑顔浮かべてるもの」 

花陽「花陽の我が侭の所為でその笑顔が去年の夏の終わりから見えなくなっちゃって、でも漸くまた再会出来た」 

凛「……かよちん」 

花陽「改めて一緒にここへ通えなくてごめんね、凛ちゃん」 

凛「かよちんが謝るような……ううん、本当だよ! その所為で凛すっごい寂しい思いしてるんだから!」 

凛「何をするにしても気分が乗らなくて、全部つまらなくて、家に帰ってから時間がいっぱい余って」 

凛「どうしようかって思ってたんだよ!」 

花陽「うん、ごめん」 

凛「でも、今日で吹っ切れたにゃ! 星空凛は明日から陸上部に入部します!」 

部長「うん、陸上部は星空さんを大歓迎するよ。じゃあ後で職員室で入部の手続きしようね」
974 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:22:37.21 ID:K5atqcVi0
凛「はい!」 

真姫「で、いつ私のことを紹介してくれるのかしら?」 

花陽「あっ、真姫ちゃん。ごめんね」 

真姫「別に謝ることじゃないけど」 

花陽「凛ちゃん。こちらは真姫ちゃん。私のUTXで出来たお友達なの」 

真姫「西木野真姫よ。貴女とは今日初めて逢った気がしないわ」 

凛「え?」 

真姫「耳にタコが出来るくらいに花陽が貴女のことを語るかもしれないわね」 

花陽「まっ、真姫ちゃん!」 

真姫「だからその……凛って呼んでもいいかしら?」 

凛「うん! その代わりUTXでのかよちんのことをいっぱい聞かせて欲しいにゃ!」 

真姫「ええ、沢山聞かせてあげる」 

花陽「二人がお友達になって花陽感激っ」
975 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:23:53.19 ID:K5atqcVi0
にこ「ふふっ。これで邪道シスターズの聖戦はおしまいよ」 

海未「何を格好つけてるのですか!」 

穂乃果「そうだよ! 一年生に反感買ってまでこんなことの為に情報をにこちゃんのばかぁ!」 

海未「穂乃果、言葉絡まってますよ。ですが心情は穂乃果と同じです」 

にこ「SMILEの人気が少し低下することは謝るわ」 

穂乃果「そこじゃないよ!」 

海未「にこのことは尊敬しています。姉と慕う程に強く尊敬してるんです。だからもうこんなことは止めてください」 

にこ「大丈夫よ。最後の聖戦だって言ってるじゃない。次はきっとないわ」 

穂乃果「きっとじゃ駄目だよ!」 

絵里「そうよ、今回のことは充分に反省してもらうからね。この後反省会するから」 

にこ「……絵里。まず先にお礼を言わせて、あんたが運命を導いてくれたから最悪には至らなかったわ」 

にこ「ありがとう、絵里お姉ちゃん」
976 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:24:42.62 ID:K5atqcVi0
絵里「もうっ! 怒るに起これなくなるから先にそんなこと言うんじゃないわよ」 

あんじゅ「まぁまぁ。にこは最後の最後まで踊ってくれて疲れてるんだから、もうこれでよしにしようよ」 

海未「一番納得いかないのはあんじゅです! どうして止めなかったのですか!」 

あんじゅ「流石姉妹だけあって絵里ちゃんと同じこと言うんだね」 

海未「茶化さないでください!」 

あんじゅ「同じ言葉で返すのも芸がないから言葉を変えようかな」 

あんじゅ「にこにはにこの邪道が、私には私の邪道がある。そういうことだよ」 

海未「意味が分かりません」 

あんじゅ「それは海未ちゃんが今頭に血が上ってるからだよ。さ、今日はにこにマッサージしてあげるね」 

にこ「それは助かるわ。あんたマッサージは上手いからね。時々、寝ちゃって重くて目が覚めたらあんたが背中に乗ってるけど」 

あんじゅ「だって疲れちゃうんだもん」 

にこ「お陰で解れた筋肉も疲労追加で意味がなくなるけどね」
977 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:25:14.56 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「それこそがにこを更に強くするんだよ」 

穂乃果「あんじゅちゃんがマッサージなら、穂乃果はほむまん持って行くね!」 

にこ「持って行くって、私の家に来るってこと?」 

穂乃果「心配だから今日はにこちゃんの家にお泊り! 明日土曜日だし、いいよね?」 

にこ「別にいいけど唐突ね」 

海未「では私は疲労によく効く塗り薬を持参しましょう」 

にこ「海未まで来る訳!?」 

海未「いけませんか?」 

にこ「いけなきゃないけど、一つの布団に穂乃果と一緒に寝てもらうことになるわよ」 

海未「構いませんよ。暑いわけではないですからね」 

穂乃果「お泊り会楽しみ☆」 

絵里「だったら私は亜里沙を連れて行くわ」 

にこ「いやいやいや! 待ちなさいよ。更に二人追加とか、あんたの家と違ってうちは狭いのよ」
978 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:26:01.69 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「私の部屋を使う?」 

にこ「あんたは矢澤あんじゅでしょ。あんたの部屋は私の部屋よ。隣の部屋はあんたの部屋じゃないわ」 

あんじゅ「うん」 

にこ「とはいえ、流石に寝るスペースが確保出来ないわ。最悪台所で一人寝るしか」 

穂乃果「待って、にこちゃん。つまり寝なければいいんだよ!」 

海未「稀に貫徹もありですね」 

あんじゅ「トランプ大会しよっか」 

絵里「新しいゲームを皆で考えるのも面白いわね」 

あんじゅ「うふふ。抜け道を作ってみせるよ★」 

にこ「問題の根本的解決になってないわよ! トンチじゃないんだから」 

あんじゅ「大丈夫だよ。にこが眠ったら私が抱っこしててあげるから」 

にこ「なんにも大丈夫じゃないっての! もういいわ。邪道シスターズのやるべきことは終わったから撤収しましょう」
979 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:26:45.84 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「うん!」 

絵里「ええ!」 

にこ「……いい笑顔ね。ああいう笑顔こそスクールアイドル向きなんだけどね」 

あんじゅ「勿体無かったかな?」 

にこ「しょうがないわ。それからあの釣り目の子」 

あんじゅ「あの赤い髪の子がどうかした?」 

にこ「ううん、なんでもないわ」 

あんじゅ「言い掛けて止めるのはバッドエンドフラグだからきちんと言うにこ!」 

にこ「ただ、あの子はキラ星と似た雰囲気を感じるってだけ。今年か来年か知らないけど、きっとスクールアイドルになるわ」 

海未「つまり、私たちの代のA-RISEのメンバーとなるということですね」 

穂乃果「ライバルだね!」 

絵里「きっと花陽ちゃんもスクールアイドルになると思うわ。応援の時の声がとても綺麗だったし」 

にこ「そうね。もしかしたら今のA-RISEすら超越したA-RISEが誕生する、なんてこともあるかもね」
980 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:27:31.69 ID:K5atqcVi0
――エピローグ 

にこ「な、何よこれぇぇぇっ!?」 

『道化を演じ、一人の少女を陸上部に推したスクールアイドル・矢澤にこの軌跡』 

あんじゅ「何って校内新聞だよ」 

にこ「そういうこと言ってんじゃないの! 内容よ内容。なんで私の記事が書かれてんの!?」 

海未「情報提供者の欄に名前が書いてありますよ。矢澤あんじゅ・陸上部部長・星空凛」 

絵里「これで一年生からの不信も拭えるわね」 

にこ「そういう問題じゃないわよ! 私の口止めよりあんじゅの言に惑わされたって言うの!」 

あんじゅ「違うよ、にこ。あの日、にこが部長さんに話をしに行く前、海未ちゃんとの鍛練の後に学校まで来たの」 

あんじゅ「そこで朝練する部長さんにこれからにこがイベントを起こすから、それが終わったら新聞部長の部長さんと話をして欲しいと」 

あんじゅ「それを記事にすることを先生立会いの下で承認してもらったの」 

穂乃果「おぉ! にこちゃんの行動を読み切ったからこその手回しだね」 

あんじゅ「うん。それから絵里ちゃんと買い出しに行く時に花陽ちゃん経由で凛ちゃんとお話させてもらって協力を願い出たの」 

にこ「よく断られなかったわね」 

あんじゅ「穂乃果ちゃんと同様、元々元気な子だったから。根が真っ直ぐでにこの演技も薄々分かってたみたい」
981 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:28:16.18 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「お陰で元気も取り戻せて、目標も出来たからって日曜日に集まってこの新聞を作ってんだよ」 

にこ「珍しく休日に単独行動をしてたと思ってたら、あんたはなんで余計なことばかりすんのよ!」 

にこ「って! あの時『にこにはまた私の手の』で言葉区切って訂正したけど手の平で踊ってもらうって言おうとしたのね!?」 

あんじゅ「希望の船に乗っても生き抜けるくらいの推理力だね★」 

にこ「がるるるる!」 

あんじゅ「にこが怖いにこ〜♪」 

絵里「だからあの邪道を止めなかったのね」 

海未「これがあんじゅの邪道。……正に邪道シスターズの参謀ですね。ある意味にこより性質が悪い」 

穂乃果「笑顔を生んでハッピーエンド! これこそSMILEのあり方だと思う」 

海未「ですね。一時はどうなることかと思いましたが」 

絵里「本当よ。海未と穂乃果が最初に望んだ結果には繋がらなかったけどね」 

海未「今は温かさで胸が一杯ですから。これはこれで良かったんだと思います」 

穂乃果「一緒にライブをしてみたかったけど、陸上部を頑張るならそれを応援したい」 

穂乃果「いつか陸上部の大会で応援歌ならぬ応援ライブするよ!」 

絵里「新入生が入らなくても続けてくれる気なのね」
982 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:28:49.01 ID:K5atqcVi0
海未「当然です」 

穂乃果「当然だよ!」 

あんじゅ「にこは常に私の手の平でいいんだよ。守ってあげるから」 

にこ「いつ握りつぶされるのか心配で怖すぎるわ!」 

あんじゅ「ぷちゅん!」 

にこ「何の音よ!」 

こんこん…… 

あんじゅ「あ、新聞部長の部長さんかも。こんな素敵な記事を書かせてくれたことを直接お礼を言いたいって言ってたから」 

にこ「私にとっては不本意の塊だけどね!」 

絵里「一年生以外はにこの痛い小悪魔っぷりを温かく見守ってたんだから、回答編くらい設けて当然でしょう」 

にこ「にこの名演技を舐めるんじゃないわよ!」 

あんじゅ「あれ? 凛ちゃん。どうしたの?」 

凛「にこ部長にお話があってきました!」 

海未「吊るし上げでしょうか?」 

にこ「お話って言ってるじゃない! 怖いこと言うんじゃないわよ」
983 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:29:32.15 ID:K5atqcVi0
穂乃果「あははっ。こういうにこちゃんこそが平常運転で安心するよ」 

にこ「あぁ……あんじゅと絵里に海未と穂乃果まで毒されてるわ」 

にこ「それはともかく、罵詈雑言ならメンバーが居ない所で受け取るわ」 

凛「全然違います。これを私に来ました」 

絵里「果たし状?」 

にこ「だからどうして変な方向に持って――入部、届け?」 

凛「はいっ!」 

にこ「でも、だってあなたは陸上部に入部したじゃない」 

凛「陸上を頑張りながらスクールアイドルも頑張る。半年以上やる気なかった分を取り戻すニャ!」 

あんじゅ「……これは完全に想定外」 

凛「それに、かよちんがUTXで必ずスクールアイドルになるって凛に約束してくれたの」 

凛「だから、凛も同じスクールアイドルになってかよちんの前に立ちたい」 

凛「スクールアイドルは正直嫌いだけど、SMILEは別。凛にとって切っ掛けを与えてくれたから!」 

凛「どうか凛をアイドル研究部に、音ノ木坂学院のスクールアイドルSMILEに入れてください!!」
984 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/02/28(土) 00:30:17.49 ID:K5atqcVi0
あんじゅ「にこ、どうするの?」 

絵里「こういうのは部長の独断で決めるべきよね」 

海未「そうですね。にこに一任しましょう」 

穂乃果「ふぁいとだよ!」 

にこ「揃いも揃ってみんなしていい笑顔して。分かったわよ、認めればいいんでしょ、新聞の記事もこの子の入部も!」 

にこ「二束わらじだからって手加減しないからね。陸上の練習試合や大会の翌日だって、こっちのスケジュール次第では練習させるからね!」 

凛「凛は体力には絶大な自信があります!」 

にこ「あんな暗い顔をしてたら退部だからね!」 

凛「もうあんな風には絶対にならないよ!」 

にこ「SMILEに入るなら、メンバーに対しての敬語も先輩呼びも禁止!」 

凛「うん♪」 

にこ「憎まれる筈の相手をこうして歓迎するのは妙な気分だけど、SMILEへようこう!」 


ネクストストーリー 
◆春・UTX編◆ この物語最大の難所。誰かたすけてー!
985 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/28(土) 00:38:36.92 ID:P57CuYrQO
ヤバい、おもしろ過ぎる。
986 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/28(土) 00:59:22.71 ID:50CEcE1/o
乙です
987 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/28(土) 01:12:40.08 ID:MfNyBr9lO
おつかれ!
988 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/28(土) 10:14:08.29 ID:oFyp39pP0
おつおつ 
花陽いつの間にことりの連絡先を手に入れていたのだろうか
989 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/28(土) 11:25:38.09 ID:NlbN2PaAO
凛加入が実現して丸く収まってよかった 
真姫と花陽の馴れ初めとかは次回かな? 

ただ最初の部分のシカコが強い恨みがある訳でもないのに明らかに度を越した暴言吐いてたのがちょっと気になった
990 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 2015/02/28(土) 12:39:31.43 ID:XWo+epAb0
乙です! 
そろそろ完全に役者が出揃うな 
物語も終盤に突入って感じか
991 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga] 2015/03/01(日) 18:43:36.03 ID:++nmKv6m0
最初で最後の1000記念だからやりたいことをやる!  

◆外伝・時を駆けぬスクールアイドル◆ 

あんじゅ「明晰夢、かな?」 

夢の中なのに妙に実感があって、本当に夢の中なのか怪しく思える。 

あんじゅ「……神田明神?」 

自分が居るのは神田明神。 

男坂と呼ばれる長めの坂の下。 

海未との朝練の際に使わせてもらったりもする場所。 

でも、夢に見るほど印象的かと言われると「そうでもない」と否定したくなる場所。 

あんじゅ「にこ〜!」 

呼んでみても音のない世界に声が吸い込まれるだけ。 

何度となく目覚めろと念じてみても、本体は目を覚ましてくれない。 

あんじゅ「……」
992 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:44:06.63 ID:++nmKv6m0
にこと出逢う少し前。 

一人ぼっちの絶望感が込み上げてきて、思わず足が震える。 

ただの夢だと思い込ませても、一度湧き上がった恐怖は簡単には拭えない。 

そんな時、 

『ここでお百度をすると出逢ったあの日に戻れるわよ。記憶を引き継いで、ね』 

にこに似て異なる何かの囁き声。 

音のないこの世界には妙に響いた。 

マンションの部屋の前。 

戻れない現実に身動きが取れなくなって、ただ膝を抱えて居たあの日。 

私に気が付いて驚いた声を上げた後、優しく声を掛けてくれた……。 

あんじゅ「あの日に……戻れる?」 

もう一度にこと楽しい日々をやり直せる。 

夢の中なのに夢と忘れ、気が付けば誰かに操られるようにお百度を始めていた。
993 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:44:40.45 ID:++nmKv6m0
一度…… 


五度…… 


十度…… 


十五度…… 


二十度…… 


二十五度……。
994 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:45:37.83 ID:++nmKv6m0
夢の中と思えない、本当の現実としか感じられない疲労感。 

気が焦ってペース配分を間違え、足がパンパンになったので二十五回目の途中で下に戻る前に境内で休む。 

「お疲れ様」 

あんじゅ「っ!」 

夢であって夢でない。 

でも、誰も居ない世界だと思い込んでいたあんじゅにとって、先ほどとは違う人の声に驚きを隠せなかった。 

「あ、ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだ」 

あんじゅ「……いえ、宮司さん?」 

「うーん、まぁそういうことでいいかな。それよりも、お百度をするつもりかな?」 

あんじゅ「だってすれば大好きな人とまた長い間、以前よりもっと楽しい時間を過ごせるから」 

最初の半信半疑ではなく、何かに憑り付かれたようにお百度をすれば過去に戻れると妄信している。
995 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:46:18.00 ID:++nmKv6m0
「そっか。それは自分の為だけに?」 

あんじゅ「いいえ、出逢ってからずっと守られてきた。今も大事に守られてる」 

あんじゅ「でも、時を戻れば今度は私がにこを守ってあげられる。大切にしてあげられる」 

「自分の為でもあるけど、にこにーの為でもある、と」 

あんじゅ「そう!」 

「そっか。現在までの流れを把握しているから守りきれると?」 

あんじゅ「絶対に守ってみせる」 

怪しい宮司を睨むあんじゅ。 

「果たしてそれがにこにーの為になるのかな? 傷つくのは誰だって嫌だよ。でも、だからこそ強くもなれる」 

「ソレを経験する前では知らなかった価値観や経験を得られる。守られているだけじゃ決して見えてこない世界を知れる」 

「そして何より、知識があれば絶対に守れるというのは傲慢であり、不足の事態に動いた時に自分の行いに絶望する」
996 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:47:04.20 ID:++nmKv6m0
「そこで気付くことになるんだ。元居た世界が如何に幸せであり、奇跡の産物であったのか」 

あんじゅ「奇跡の産物?」 

「誰に指示された訳でなく、自分達で見つけて、出逢って、輝こうとする青春の日々」 

「やり直すことの出来ない時間だからこそ、その一瞬を笑顔で在ろうと出来る」 

「今この瞬間を楽しめるのはね、戻ることがないと知っているから。逆に一度でも戻れたらもう一度戻りたいと願う」 

「何度も何度も繰り返し戻りたいと。例えそれが叶っても永遠に前に進めなく」 

「そんなことよりもさ、今この瞬間を楽しめば後から結果が付いてくるんだから、笑顔で突き進むだけでいい」 

「心躍る場所が掛け替えのない場所なんだから」 

あんじゅ「そうですね。守られてきたけど、だからこそ私はにこの妹になれた」 

あんじゅ「もし戻って守る立場になってたら、今の関係は絶対にありえなくなって、きっと戻りたいと願ってた」 

あんじゅ「掛け替えのない今という時間はたった一度きり。だから最高に楽しくて……幸せで」 

「だったらお帰り。夢から覚める呪文がある。それは毎朝好きな人に伝えたいと思う言葉」
997 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:47:58.39 ID:++nmKv6m0
――矢澤家 

あんじゅ「おはよう、にこ!」 

にこ「盛大に昼間で寝てた癖に何がおはようよ」 

あんじゅ「にこってば寝起きからツンツンしちゃって可愛い〜♪」 

にこ「寝起きなのはあんただけよ。こころとここあなんて午前中からお弁当持って友達とお出掛けだってのに」 

あんじゅ「あんじゅはにこの妹だから〜♪」 

にこ「今更言われなくてもそんなこと分かってるわよ。だからもう少ししっかりしろって言ってんの!」 

あんじゅ「そうそう、聞いて! 今日ね、変な夢みたの」 

にこ「人の話を聞くのはあんたが先でしょうが……。はぁ〜、それでどんな夢を見たって?」 

あんじゅ「んっとね――」 

にこ「――随分と臭いこと言う宮司ね。私だったらそんな奴の言葉に従わないけど」 

あんじゅ「従わなかったなら永遠に覚めない夢の世界に連れて行かれてた気がする」 

あんじゅ「それこそ、何度も何度も繰り返し時を遡行して、一生前に進めない終わっている世界に」 

にこ「いつこの世界はSFが日常化したのよ」 

あんじゅ「なんでもいいや! 今この瞬間が最高に幸せなんだって再認識出来たから☆」 

にこ「その前にお払いにでも行った方がいいんじゃないの? その宮司はきっと悪霊よ」 

あんじゅ「んー、ストーカーだったんじゃないかな?」
998 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:48:54.53 ID:++nmKv6m0
にこ「夢にまで出てくる程にあんたを追い詰めるストーカーが居たの!?」 

あんじゅ「違う違う。物語の案内人って意味のストーカーだよ」 

にこ「間際らしいわね。どちらにしろ、そんな臭い台詞を吐く奴に限って、一度の挫折で引きこもりになったりすんのよ」 

あんじゅ「臭い台詞と関係ないよ」 

にこ「なんか今日は私が変な夢を見る気がするわ」 

あんじゅ「これは何かのフラグかな?」 

にこ「だとしたら嫌なフラグね」 

あんじゅ「神田明神行ってみる?」 

にこ「嫌よ。夢の中で会ったって宮司が実在したらリアルナイトメアじゃない」 

あんじゅ「あ〜にこってば怖がりにこ〜♪」 

にこ「怖がってないわよ。あんたのことを心配してあげてるんでしょ!」 

あんじゅ「ぐふふ♪」 

にこ「変な笑いするんじゃないわよ、この愚妹!」
999 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:50:22.40 ID:++nmKv6m0
翌日、にこは長い不思議な夢を見た。 

そして、目が覚めると寝惚けながらもノートに一つの曲を書き上げた。 

それはSMILEによるカラオケ大会で優勝した絵里のセンター曲となる。 

曲名は『歌姫より...』 

たどたどしい歌詞なのに何故か心に響く、アイドルらしくないそんな歌。 

この曲を披露して以降、絵里がSMILEの女神と称されることになるのだけど、それはまだ先のお話。 (完)
1000 : ◆GKcmsITYJ1lx[saga sage] 2015/03/01(日) 18:51:00.41 ID:++nmKv6m0
策士ポジションの先輩ということもあり、特別出演。 

何で宮司の格好なのか、誰得なのかはともかくとして、次スレへ! 


にこ「夢を諦めたスクールアイドル」 完結編 
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425203370/