456: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:34:53.57 ID:p05WfzWS0
――UTX生徒会役員共。 会議室 

希「ということで、今回A-RISEはラブライブ予選には七月二十九日の一度きりを予定しています」 

希「そして、そのライブは今回までとは違って無料にして、ライブもネット生配信という形を希望します」 

「ライブ回数を想定より減らして尚且つ無料? それは通らない」 

「そんな愚を起こす必要性が感じられませんね。普通にライブを行ってもラブライブに優勝はA-RISEで決まりでしょう?」 

「そうですね。そもそも新メンバーは来年度以降に繋がるから良かったですが、ライブを減らすなんて意味がない」 

「当初の予定通り七日間連続ライブをすべきではないですかね」 

副会長(当然ながら先生方の反応は難色を示すだけね) 

希(ま、経営者としては明らかにマイナスでしかないから) 

副会長(でも、綺羅さんに頼まれた時に長考してから受け入れたのだから納得させられる言葉でも考えてきたんでしょ?) 

希(なんとかなるかなってね。ウチ何にも考え付かなかったし) 

副会長(はぁ? あの時何考えてたのよ! それにこの数日だって考える時間くらいあったでしょうが) 

希(無駄に考えて思考が空回りするよりも、副会長の信頼出来る頭脳に期待しようかなってね) 

副会長(あ、呆れた。生徒会長ともあろうものが他力本願とかありえないでしょ)


引用元: ・にこ「夢を諦めたスクールアイドル」 完結編

457: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:35:49.62 ID:p05WfzWS0
希(丸投げするわけじゃないし。言わばここは二人のコンビネーションの見せ所やん) 

副会長(……はぁ~。希のそういうところに慣れた自分が嫌になるわ) 

副会長「発言よろしいでしょうか?」 

「ああ、どうぞ」 

副会長「先生方の言い分は正しいとは思います。私達UTX学院の生徒も今年もA-RISEの優勝を疑っていません」 

副会長「ですがそれは一つの問題が発生しました。かなりの脅威だと考えています」 

「問題とはあの連続合宿とかいうやつのことですか? 所詮は番外の学校が手を組んだというだけでしょう?」 

「ああ、あれですか。あんなのを脅威に感じる程でもないですね」 

「あるのは話題性だけだ」 

副会長「そう思うのは先生方が失礼な言い方ですが青春時代を終えてから随分と経つからだと思います」 

「どういう、ことかしら?」 

副会長「連続でライブをすればそれだけ利益にも繋がります。無料ライブなんて逆に損だけしかないでしょう」 

副会長「ですがそれはあくまで目先の得でしかありません」 

「目先の得? 無料でライブをすることに後の得があるとでも言うつもりかね」

458: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:36:46.17 ID:p05WfzWS0
副会長「生まれ持ってのお姫様みたいな存在はこの世界に余り存在しないでしょう。存在したとして不幸によって地に堕ちるかもしれない」 

副会長「逆に普通に生まれてきてから物語のようなお姫様のような暮らしを体験出来る立場になる可能性は低い」 

副会長「だからこそ思春期の女の子はシンデレラストーリーに淡い期待を持ちます」 

副会長「今回のこの大会は一度でも行われたという事実が残ることこそが真の脅威」 

副会長「劇場のあるUTX学院に通えなくても、それこそ国立で授業料の無料の音ノ木坂学院だとしても夢を見れるかもしれない」 

副会長「実際にはそんな可能性はないに等しい。でも、一番夢見がちな中学生にとってはそのない筈のものがあるように見えてしまう」 

副会長「寧ろスクールアイドルになれれば可能性があると感じてライバルの多いUTX学院を逆に視野から消すかもしれない」 

副会長「そうなってから何か案を出そうとしては遅すぎます。今こそ新しい扉を開いていく岐路が訪れたんだと思います」 

副会長「丁度ラブライブも来年度からはシステムを一新するという噂が実しやかに囁かれています」 

副会長「もしそのシステムが王者であるUTX学院にとって枷になるシステムだったとしたら」 

副会長「今から試作的でも色んなことに挑戦していればいざそうなった時も何か手を打つことが出来ると思います」 

副会長「変化を受け入れられる者こそが強者であるという言葉もあります。私は母校が廃れる可能性を残したくありません」 

副会長「今回の提案はUTX学院が新たな道を歩みだす一歩目という狼煙にしたい。それこそが生徒会とA-RISEの意思です」 

「……」 

副会長「正しき道は時に正しく見えない。だからこそ踏み込む勇気を試されます。どうか勇気のある決断を期待します」

459: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:37:27.06 ID:p05WfzWS0
――会議後 廊下 のんたん 

希「ウチが口を挟む隙すらなかった」 

副会長「希が考えなしっぽいから代わりに奮闘したのよ」 

希「考えがない訳じゃないけど、ウチが口にするよりずっといい言葉を聞かせてもらったよ」 

副会長「あ~あ。今回のことで内申点がかなり下がった気がするわ」 

希「いいやん。内申点より大事な物をウチは見せて――ううん、魅せてもらったよ」 

副会長「そんなの何の役にも立たないわよ」 

希「とか言いながら顔を逸らすのはなんでかなぁ~♪」 

副会長「うるさいわね!」 

希「くすくすっ。賽は投げられた。後は果報を待つだけ」 

副会長「果報かどうかは微妙だけどね。でも、あんな風に綺羅さんに頼まれては結果を出すしかないわ」 

希「スクールアイドルのトップは迫力が凄かったね」 

副会長「そうね」 

希「それに負けないくらいさっきの副会長も――」 
副会長「――もういい加減にしなさいよ!」 

希「顔が真っ赤だよ」

460: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:38:11.56 ID:p05WfzWS0
副会長「一生忘れられない恥の記憶になること間違いなしだわ!」 

希「ウチも今日のことはお婆ちゃんになっても絶対に忘れない自信がある」 

副会長「希は忘れなさいよ!」 

希「大人になって会う度に今日のことで盛り上がれるって」 

副会長「だから忘れなさい!」 

希「今回のことを新聞部に伝えれば副会長の名前が絶対に残ること間違いなし☆」 

副会長「やめてっ! こんな恥ずかしいことで名前を残すくらいなら誰にも覚えられてない方がいいわ」 

希「ツンデレの副会長の言葉を通訳すると『是非お願いします』ってことだね」 

副会長「本気で言ってるのよ!」 

希「今日は良いもの見れたし、練習はお休みにしてケーキ屋にでも寄って行こう。ウチが奢ってあげるから」 

希「副会長はどこのお店がいい?」 

副会長「……あぁ、もう。なんでもいいわ」 

希「じゃあ、表参道のあのお店にでも行こう」 

副会長「はぁ~。希に捕まったことが人生の間違いだった。出会ってなければこんなことには……」 

希「運命を否定するなんてとんでもない♪」

461: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:39:01.29 ID:p05WfzWS0
――新しき道へ 生徒会室 ツバサ 

ツバサ「先生から報告があったわ。私のお願いを通してくれてありがとう。やっぱり二人はとても優秀ね」 

希「二人というより副会長が獅子奮迅の活躍で切り伏せたって感じだけどね」 

副会長「もうその話はしないで」 

ツバサ「何かあったの?」 

希「うふふ。それはもう青春という華が咲き乱れって感じだったんよ」 

副会長「だからそのことは忘れてって言ってるでしょ!」 

ツバサ「あら、顔が赤いわよ?」 

副会長「~っ!」 

希「こんな風に思い出すだけで顔が赤くなるくらい恥ずかしい台詞で先生を説得したんだよ」 

ツバサ「それは是非見てみたかったわね」 

副会長「本来掻く恥は学園祭のライブだけだった筈なのに……」 

希「副会長のお陰でUTXは新しい時代に向かって突き進むことが出来るんだし。胸を張れることだって」 

希「それこそ前会長がここに居れば合同学園祭を実現させる私よりも評価してくれる」 

副会長「あんな人に認められても嬉しくないわよ」 

希「素直じゃないんだから。ということだから、A-RISEは何の心配もなく完成度を満足いくまで高めて」

462: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:40:04.63 ID:p05WfzWS0
ツバサ「ええ、誰の目から見ても最高と謳われるようなステージにしてみせるわ」 

副会長「投票が翌々日で翌日にはオトノキの大会がある。タイミング的に不利になるんじゃないの?」 

ツバサ「それは重々承知してるわ。予選の一位通過は完全に諦めてるから」 

ツバサ「私達が目標としているのは本戦の完全優勝のみ。その為に形振り構ってなんていられない」 

副会長「そこまで気合入れる程のグループがいるの?」 

ツバサ「本当の意味でそのグループの魅力を知ることになるでしょうね。七月三十日のあの大会で」 

副会長「ふぅん。ま、私としてはA-RISEの優勝を疑ってないから別に他のグループはどうでもいいけど」 

希「色々と変わってもUTX以外の学校に対して淡白なのは変わらないね」 

副会長「それだけUTX学院のレベルが高いのよ」 

ツバサ「だったら是非とも三十日に見に行って欲しいわね。きっとその認識も少しは変わるようなライブがそこにあるから」 

希「随分とご執心だね」 

ツバサ「頑張ってくれた二人にだから言うけどね。私にとって憧れであり、ライバルであり、親友でもある」 

ツバサ「そんな人が0からスタートして私達と同じ舞台までたった二年半で上り詰めてこようとしている」 

ツバサ「こんな熱い展開で本気になれないようじゃ、私はスクールアイドルなんてやってないわ」 

副会長「青春してるわね」 

希「ブーメラン」

463: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:40:56.43 ID:p05WfzWS0
副会長「希、何か言った?」 

希「な~んも言ってないよ♪」 

ツバサ「二人はいつまで生徒会に?」 

希「私の引継ぎの時と同じにしようと思ってる。だから合同学園祭の片付けまでだね」 

ツバサ「ということは二学期始まって少しね。生徒会を辞めると寂しくなるんじゃない?」 

副会長「寂しがってる暇なんてないわ。受験勉強に切り替えないといけないからね」 

ツバサ「貴女なら推薦くらい簡単に貰えるでしょ」 

副会長「私は不確実な物に縋る趣味はないの」 

希「ふふっ」 

希(ツバサちゃんには内申点下がった可能性高いから推薦貰えないかもと頭抱えてたことは内緒にしておこう) 

ツバサ「逞しいわね。それじゃあ、私はこれから一年生に鬼と言われる存在にならなきゃだからこれで失礼するわ」 

希「ほどほどにね」 

ツバサ「A-RISEに妥協という言葉は要らないわ」 

副会長「一年生の冥福を祈っているわ」 

希「冗談にならなそうなツバサちゃんの迫力がまた恐ろしい」

464: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:42:18.14 ID:p05WfzWS0
――ことりぼっち レッスン室 A-RISE 

ことり「英玲奈ちゃん。私は何すればいい?」 

英玲奈「ラブライブ本戦の衣装もデザイン済みだし、特にないな」 

ことり「おかしいよ! ツバサちゃんがあんなに一年生を特訓してるのに、私だけ最近は練習軽めで早く帰らされるし」 

ことり「私だってA-RISEのメンバーなのに」 

英玲奈「その言葉は以前も聞いたし、あの頃よりもずっと深いものになっている。が、自分の胸に手を当てて考えてみろ」 

ことり「……」 

英玲奈「この時期から普通に練習量増しのメニューをこなした場合、ことりはどんな無茶をやらかすか」 

英玲奈「今までが今までだ。本戦が始まる前に故障なんてことになりかねない」 

ことり「私はそんな無茶しないよ!」 

英玲奈「ファーストライブに学園祭。心当たりが何もないというのであれば練習メニューを組もう」 

ことり「えへへ♪」 

英玲奈「そういうことだ。抑える時はきちんと抑える。そういう我慢を学んでいると思っておくといい」

465: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:43:19.22 ID:p05WfzWS0
ことり「我慢、かぁ」 

英玲奈「名実共にリーダーとなるんだ。そんなリーダーが無茶や無謀をしていたらA-RISEが崩壊する」 

英玲奈「完全オフにするタイミング。練習時間を短くする代わりに濃厚な練習にする方法」 

英玲奈「今までの練習を振り返って私とツバサが組んだメニューの意味を考えておくことだ」 

英玲奈「ラブライブが終わってからは基本的にことりに任せることにしようという方針になってるから」 

ことり「……私が」 

英玲奈「リーダーが無茶をすれば他のメンバーはより無茶を強いられることになる」 

英玲奈「西木野は自分のことを客観的に見れている節もあるが、ことりに対して対抗心が強い」 

英玲奈「結局は限界を超えてでも食いついてくるだろう。小泉の方はアイドルに対する情熱が非常に高い」 

英玲奈「今はまだ弱音を吐いたり出来るが、もう少し体力がつけば我慢することを選択するだろう」 

英玲奈「自分でスカウトした個性的な二人だ。しっかりと観察して癖や表情を把握しておくように」 

ことり「うん、ありがとう。気をつけるね」 

英玲奈「これからは特に色々な節目になる。ラブライブにUTXありと言わせられるかどうかはことり次第だ」

466: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:44:08.21 ID:p05WfzWS0
英玲奈「ことりの活躍はアイドルを目指すツバサの応援にもなる。時々でいいからそのことを思い出せ」 

英玲奈「恩を仇で返す性格ではないから、無意識にセーブすることを心掛けるようになるだろう」 

英玲奈「……しかし、とても心配だ」 

ことり「英玲奈ちゃんは心配性だなぁ。私だってきちんと出来るんだから」 

英玲奈「そういう台詞に説得力が生まれないからこそ心配なんだ」 

ことり「はぅん」 

英玲奈「まぁ、あと半年以上はあるんだ。それまでに心配要素を減らし、安心して卒業させてくれ」 

ことり「笑顔で卒業してもらえるように努力します」 

英玲奈「ということだ。私だけ練習がなんて愚痴ってないですることがないなら早く上がれ」 

ことり「うん。じゃあ、シャワー浴びてくる」 

英玲奈「時間があるんだからマッサージも受けていくといい」 

ことり「そこまで疲れてないから今日はいいや。あ、そうだ。明日は学校お休みだし、今日英玲奈ちゃんの家に泊まりに行ってもいい?」 

英玲奈「ああ、勿論だ。美伊奈も喜ぶ」 

ことり「じゃあお土産持ってお泊りに行くね!」

467: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:45:06.04 ID:p05WfzWS0
――躍動のことり! 家路 ことり 

ことり「あっ! ほのかちゃ~ん!」 

穂乃果「ことりちゃん! 今帰りなの?」 

ことり「うん! 穂乃果ちゃんも?」 

穂乃果「最近凛ちゃんの底上げってこともあるし、合宿があるから今のうちに穂むらのお手伝いしろってさ」 

穂乃果「穂乃果としては家の手伝いより練習の方が楽しいし、なんだか仲間ハズレみたいで嫌だなー」 

ことり「その気持ちすっごいよく分かるよ! ことりもね、今穂乃果ちゃんと同じような扱いなの」 

穂乃果「ことりちゃんも?」 

ことり「うん。一年生を鍛えるのをツバサちゃんがしてて、私は無茶するから今は軽めの練習以外NGだって」 

ことり「だからこんな早い時間なのに下校してるの。きちんと理由があるから駄々捏ねるわけにもいかないし」 

穂乃果「あははっ。ことりちゃんが駄々こねてるところを見てみたいかも」 

ことり「もぅ。笑い事じゃないよー。えっへへ」 

穂乃果「いやぁ~穂乃果一人だけだと思ってたけど、グループは違ってもことりちゃんと一緒なら我慢出来る」 

ことり「そうだね。私も穂乃果ちゃんとお揃いならいいかなーって思う」 

穂乃果「これから家に遊びにこない? これからは夏休みだけど、お互いに遊ぶ暇もなくなるだろうし」

468: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:46:20.97 ID:p05WfzWS0
ことり「うん! じゃあ、少しだけお邪魔しようかな。丁度穂むらでお買い物しようと思ってたんだ」 

穂乃果「お買い上げありがとうございます♪」 

ことり「今夜は英玲奈ちゃんのお家にお泊りだから、お土産にしようと思って」 

穂乃果「統堂英玲奈さんか。絵里ちゃんみたいに大人びた感じの人だよね」 

ことり「そうなの。お姉ちゃんが居たら英玲奈ちゃんみたいな人がよかったなって思うくらい頼りになるんだよ」 

穂乃果「見た目通りなんだね。絵里ちゃんは……時々年下みたいになったりするんだー」 

ことり「メンバーだからこそ見れる素敵な一面だと思う」 

穂乃果「そう言われるとそうだね。ファンの子の前では素敵なお姉さんの一面が基本的だし」 

穂乃果「そうそう、絵里ちゃんで思い出した。まだ返答はしてないけど、次期生徒会長に海未ちゃんがなるかもなんだよ」 

ことり「あの恥ずかしがり屋さんの海未ちゃんが生徒会長っ!?」 

穂乃果「うん、絵里ちゃんにすっごい熱いアプローチされて今は絶賛考え中みたい」 

ことり「そっかー。私達三人の中で一番変わったのは海未ちゃんかもしれないね」 

穂乃果「えぇー。穂乃果に厳しいのは相変わらずで全然変わってないよ」 

ことり「ふふふっ。そこは変わらないかもだけど、誰よりも早くスクールアイドルになって作詞もするようになったし」 

ことり「出逢った頃は本当に恥ずかしがり屋で声を掛けると瞳を潤ませてたり、中学の時だってポエム見られて泣きそうになって」

469: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:47:20.39 ID:p05WfzWS0
穂乃果「あの時の錯乱、ううんもはや狂乱状態の海未ちゃんは凄かったよねぇ」 

ことり「忘れられない思い出だよね」 

穂乃果「作詞した歌詞にも自信持ってるし、きっと生徒会長の件も受けると思う」 

穂乃果「ことりちゃんの言うとおり一番変わったのは海未ちゃんかも。……穂乃果ももっと頑張らなきゃ」 

穂乃果「一応消去法だったけど次期音ノ木坂学院アイドル研究部部長だから」 

ことり「じゃあ、来年はお互いに皆を引っ張るリーダーってことだね」 

穂乃果「ラブライブが終わったら練習メニューの組み方とか指導の仕方とか覚えないといけないと思うと頭が痛いよ」 

ことり「それに自分の代になったら地位が落ちたらって思うと責任重大だよ」 

穂乃果「A-RISEはまだいいよ。SMILEなんてにこちゃんとあんじゅちゃんの一代の成り上がりからなってるから」 

穂乃果「偉大な三人が抜けたら一気にファンが減るんじゃないかと胸が痛い」 

ことり「新入生が入ってくれるといいね」 

穂乃果「絵里ちゃんの実妹の亜里沙ちゃんが入るのは確実で、雪穂もなんだかんだ興味ありそうなんだよね」 

ことり「新入生が確実に入ってくれるっていうのは羨ましいなぁ。私がリーダーで入ろうと思ってくれる子が居るかどうか」 

ことり「ツバサちゃんの様なカリスマ性もないし、英玲奈ちゃんのような凛々しさもない」

470: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:48:20.50 ID:p05WfzWS0
ことり「頼りになりそうなんて言われたこともないし、決断力も乏しい。デザインなら自信がついてきたんだけど」 

穂乃果「ことりちゃんがそんな自信なくっちゃ、穂乃果なんてもっとないよー」 

穂乃果「それにことりちゃんは自己評価が海未ちゃんと似て厳しすぎるよ。断言出来るのはことりちゃんなら大丈夫ってこと!」 

穂乃果「【脳蕩ボイス】南ことりを応援するスレッド【ちゅん♪】が今どれくらいか知ってる?」 

ことり「ううん。アンチスレならたまに覗くけど、応援スレッドは恥ずかしくて見れないから分からない」 

穂乃果「256だよ! 256! これだけ応援されてるのに自分で評価下げたらファンが悲しむよ」 

ことり「ホノカチャー」 

穂乃果「【実家が】高坂穂乃果の笑顔になるスレッド【和菓子屋】なんて55だよ!」 

穂乃果「入ったばかりの凛ちゃんを覗けばメンバーで一番少ない」 

ことり「でもそれは穂乃果ちゃんが加入したのが遅かったから当然なんじゃない?」 

穂乃果「ちなみに海未ちゃんは128」 

ことり「……あ、はは」 

穂乃果「それなのに次期部長兼リーダーなんだよ。本当に不安だよ」 

ことり「SMILEで一番人気なのは誰なの?」

471: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:49:22.34 ID:p05WfzWS0
穂乃果「にこちゃんだね。ろうにゃんにゃんにょ関係なしに人気だから」 

ことり(老若男女って言いたかったのかな? かわいいっ) 

ことり「でも、穂乃果ちゃんの人気は今回の大会とラブライブ本戦に進むことで一気に加速する可能性高いよ」 

穂乃果「そうなるといいんだけど」 

ことり「少なくともことりの中で一番のカリスマは穂乃果ちゃんだよ。それは絶対に変わることのない心理です♪」 

穂乃果「ことりちゃん」 

ことり「お互いにこの夏に沢山の経験値を貰って、リーダーとして成長しよう」 

ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃんが押してくれた背中。大きく飛躍してリーダーとして胸を張れるようになろう」 

穂乃果「そうだね! それに大事なのは今の評価じゃなくて、リーダーになってからだよね」 

ことり「その前向きさこそが穂乃果ちゃんの魅力だよっ!」 

穂乃果「よ~し! 私とことりちゃんはリーダーとして絶対に成功するよーーーーッ!」 

ことり「ひゃぁっ!」 

穂乃果「ことりちゃんっ、私の家まで競争だよ。負けた方が飲み物奢り」 

ことり「うん、いいよ。中学生までなら絶対に勝てなかったけど、今なら負けないよ」 

穂乃果「じゃあよーいどんでスタートだよ。よーい……ドーン!」

472: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:50:18.65 ID:p05WfzWS0
――メッセージ 七月某日 UTX学院 廊下 ことり 

ことり「あ、ツバサちゃん。おはよう、丁度よかった渡したい物があったの」 

ツバサ「おはよう、ことりさん。渡したい物?」 

ことり「これと言付けを預かってきたの」 

ツバサ「これってにこにー大会のライブチケットじゃない。というかチケットありだったの?」 

ことり「前列の方だけ招待客用にチケットが作られてるの」 

ツバサ「そうだったの。それでこれは誰から?」 

ことり「予想はついてるでしょ?」 

ツバサ「――にこにーから私に」 

ことり「うん。それで言付けなんだけど」 

『キラ星! 見に来る時は完璧な変装をして分からないようにすることね! 全力で下克上する私達に恐怖しなさい』 

ことり「だって」 

ツバサ「くすっ。そう……それじゃあ、誰も私と気付かないような変装をして見に行かないとね」

473: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:51:44.15 ID:p05WfzWS0
ツバサ「ことりさんは見に行くの?」 

ことり「勿論。穂乃果ちゃんと海未ちゃんのライブだもん」 

ツバサ「いくら楽しみだからって前日のA-RISEのライブを疎かにするような真似はしないでね」 

ことり「それは私の台詞だよ。英玲奈さんだって同意してくれると思う」 

ツバサ「にこにーが最高を演出するのなら、私もまた最高を魅せるまでよ」 

ツバサ「理想としてはどちらが良かったと比べるのではなく、どちらも最高だったと思われることね」 

ツバサ「優劣を競うことになると分かっている。最終的には私達が優勝する」 

ツバサ「その気持ちに偽りもないし、気持ちが揺らぐこともない。でも、そんなことを思ってしまうわ」 

ことり「大丈夫だよ。私達も穂乃果ちゃん達も皆が全力を出し切る。優劣は付けられるけど、二日間が最高だった」 

ことり「忘れられないライブだったって思ってもらえるよ」 

ツバサ「そうなったら最高ね。そして、ラブライブ本戦も」 

ことり「なったらじゃなくてなるんです。だから私達はライバルとして切磋琢磨できるんです」 

ツバサ「A-RISEの問題児に諭されるなんて私もリーダーとしてまだまだ甘いわね」 

ことり「も、問題児」 

ツバサ「さ、今日はいつも以上に気合を入れてレッスンするわよ。夏の日は長そうで短いのだから」

474: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:53:06.27 ID:p05WfzWS0
◆矢澤家夜の会◆ 

ママ「なんてこともあったわ」 

あんじゅ「なるほど。そういう部分はにこが色濃くパパさんの性格を受け継いでいるみたい」 

あんじゅ「にこってば私が居ないと本当に無理して潰れちゃいそうだからね」 

ママ「その気持ちよく分かるわ。私もパパに対してそういう気持ちが強かったもの」 

にこ「ママはいいけどあんじゅはおかしいでしょ! いつもいつもまるで私が一人じゃ何も出来ないみたいじゃない」 

あんじゅ「何も出来ないなんて言ってないよ。何でもしようとするから心配なの」 

ママ「そうそう。誰かの為となると自分のこと以上に力を発揮するんだけど、一人で無茶しようとして」 

ママ「周りが沢山手を貸して分担して乗り越えてきたわ。懐かしい」 

あんじゅ「本当ににこそっくり」 

にこ「私は言う程無茶はしてないでしょ」 

あんじゅ「無茶をしなかったことが少ない気がするけど」 

にこ「そんなことないわよ。無茶したのは穂乃果加入の時の衣装作りくらいよ」 

あんじゅ「本気で言ってるなら一番其れが性質が悪いにこよ」

475: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:54:22.78 ID:p05WfzWS0
ママ「お姉ちゃんの苦労性は私の所為でもあるから。家政婦さんでも雇えるような家庭ならね」 

ママ「もっと楽をして子供っぽいことをして過ごせてたんだろうけど」 

にこ「ドラマじゃないんだから家に家政婦なんている家庭なんて存在しないわよ」 

あんじゅ「……」 

にこ「それに私より小さい頃からずっと鍵っ子なんて子だって沢山いるんだから。ママが気負う必要なんてないわ」 

あんじゅ「そうそう! それにお陰でにこの料理の腕は音ノ木坂一番になったし☆」 

にこ「いや、私以上なんて何人でもいるわよ」 

あんじゅ「そんなことないよ。にこなら味王にだって一勝一敗一引き分けっていう伝説を再現できるよ」 

にこ「味王って誰よ」 

ママ「あら、随分と懐かしいわね。私も読んでたわよ、劣勢からの陽一君の追い上げは胸を熱くさせたわ」 

あんじゅ「最終バトルに相応しい展開だったよね」 

ママ「そうね」 

にこ「私が言うのもなんだけど、本当にあんたってば商店街の人達に毒されてるわよね」 

にこ「時代が戻りすぎて私も拾えないネタばかりになってきたわよ」

476: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:55:19.88 ID:p05WfzWS0
あんじゅ「努力が足りない証拠だよ。もっと時間遡行しないと」 

にこ「する必要がないわよ。お婆ちゃんがくれる生活に使える知識だったら必要だけど」 

あんじゅ「使えない知識を溜め込んで悦に入るのは人間だけっていう説があるよ」 

にこ「……その説が既に要らない知識よ」 

あんじゅ「そういえばママとパパさんの出逢いってどんなのだったの?」 

ママ「それはね――」 
にこ「――待って! 実の娘の前でそういう話をされると何とも言えない感情が湧いてくるからやめて」 

あんじゅ「こころちゃんとここあちゃんはもう寝ちゃってるから大丈夫だよ」 

にこ「私のこと言ってるのよ!」 

ママ「ふふっ。あれは私が高校一年生の時だったわ。校内音楽コンクールっていうイベントがあってね」 

にこ「って! ママまで私の言葉スルーしてるし!」 

あんじゅ「にこがスルーされるのはもはや人間国宝レベルだね」 

にこ「意味わかんない!」 

ママ「当時カラオケなんて行くことないくらい真面目だったし、お世辞にも歌が上手ってわけじゃなかった」

477: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:56:27.53 ID:p05WfzWS0
ママ「皆で歌うから音程を外すとかなり目立つし、公園で練習することにしたの」 

ママ「冷静になればお風呂場で練習した方が効率よかったんだけど、必死だったから気付けなかった」 

ママ「今ではそれこそが運命だったと思うんだけどね」 

あんじゅ「よかったね、にこ。もしお風呂場で歌ってたら私もにこも生まれてなかったんだよ」 

にこ「いや、あんたは関係なく生まれてるでしょうが!」 

あんじゅ「じゃあ訂正。死亡フラグが立ってたところだった。死因:にこ欠乏症」 

にこ「生まれてない相手を欠乏症ってどんなパラダイスよ!」 

あんじゅ「うっふふ。そうだね、そうだね。どんなパラダイスだろうね★」 

ママ「朝早い時間なら散歩してる年配の方か犬の散歩の人くらいしかいなかったのよ」 

ママ「だから大丈夫かなって思って、恥ずかしいから目を瞑って歌ってたの」 

ママ「歌い終わって目を終わったらランニングしていた当時のパパと視線が通ってね」 

あんじゅ「視線と一緒に運命までも通っちゃったんだっ♪」 

にこ「うわぁ、もう恥ずかしい!」

478: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:57:30.82 ID:p05WfzWS0
ママ「……それでね、テンパっちゃって。咄嗟に走りよってパパにデコピンをしてた」 

あんじゅ「これは予想してなかった」 

にこ「予想出来たら恐ろしいっていうか、パパ何も悪いことしてないのに」 

ママ「しかも当たり所が悪かったのかパパ気絶しちゃって」 

あんじゅ「ママは秘孔の使い手!? 北斗指弾忘却拳――にこにこにこにこにこっ! 既にお前は忘れている」 

にこ「どうでもいいけど、指弾って小石とかを指で弾くんじゃなかったっけ?」 

あんじゅ「ツッコミの入れる所がそこなのも想定外だったにこ」 

ママ「人生初めての膝枕を余儀なくされたわ。クラスの男の子と話すのも緊張するくらいの優等生だった私が」 

にこ「完全に自業自得だけど」 

ママ「パパが目覚めてから謝って、それから自己紹介。色んな意味でお互い一番強いインパクトある出逢いだったわ」 

にこ「パパに至ってはダメージ付きのインパクトっていうおまけまであったら忘れられないわね」 

あんじゅ「私も初めてにこに逢った時にデコピンするべきだったね」 

にこ「何の対抗心よ!」

479: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:58:35.95 ID:p05WfzWS0
ママ「人の縁はどんなところで生まれるか分からないから、一つひとつを大事にするのよ」 

あんじゅ「うん!」 

にこ「今更言われるまでなく大事にしてきてるわ」 

あんじゅ「でもそっか……。そんなママとパパさんの子供だからにこはちっちゃいのにこんなにも優しくて大きいんだね」 

にこ「盛大に矛盾してるわよ。というかちっちゃいは関係ないでしょ!」 

あんじゅ「正直、羨ましいな」 

にこ「……あんじゅ」 

あんじゅ「でも、だからこそこうしてにこと出逢えたから何も不満はないけどね」 

にこ「あんたの場合はこんな風にならなくても、どこかで必ず出逢ってたと思うけどね」 

あんじゅ「その場合も仲良くなれたかな?」 

にこ「さぁね。ただ、あんたと仲良くならないって可能性が今の私には想像出来ないわ」 

あんじゅ「うふふ♪」 

ママ「ふふふ。本当に二人は喧嘩しない分、こころとここあ以上に姉妹仲がいいわね」 

にこ「あの子達はあれも一つのコミニュケーション」 

あんじゅ「そうだね、なんだかんだ楽しそうなコミュニケーションだよね」

480: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/06/07(日) 08:59:38.53 ID:p05WfzWS0
ママ「あんじゅちゃんのこともパパに会わせてあげたかったわ」 

あんじゅ「私も会ってみたかった」 

にこ「ま、会わせてあげることは無理だけど、見てもらうことは出来るわ」 

あんじゅ「えっ?」 

にこ「パパと虎太郎さんの縁で開かれる大会だもの。絶対にパパが今度のライブを見に来てくれるわ」 

にこ「私の自慢の妹って紹介してやるから、ヘマするんじゃないわよ」 

あんじゅ「最近デレ分が増してきたのでほっぺたニマニマしちゃうね」 

あんじゅ「あっ、そうだ! だったら《歌姫より...》を披露する時はパパさんに合図を送ったらどうかな?」 

にこ「合図?」 

あんじゅ「右手を真っ直ぐに上げて、人差し指で大きく宙に円を描くの。パパさんとの縁が繋がる円を」 

にこ「ソラにマルをねぇ」 

あんじゅ「どうかな?」 

にこ「一昔前のパフォーマンスって気もするけど……でも、いいかもね。パパへの合図はそれにするわ」 

あんじゅ「にこの合図がパパさんに届くといいね」 

にこ「ええ、そうね」 了 


◆ネクスト◆ 
ちょっと忙しいので予定変更。にこ誕の前には完結したい 
次回こそクライマックスのそらまる!

487: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:10:31.33 ID:+T6JUyDe0
※長すぎて終わりが見えないので、仕方なく分割します。クライマックス前半。SMILEに覚醒の風が吹く... 

◆それは僕たちの奇跡◆ 

――日曜日 矢澤家 朝 

にこ「全てクリアしてから各校に連絡を入れる筈だったのに、嬉しくてついつい先倒しにしちゃった分を消化しないとね」 

にこ「一校の移動手段が~って問題は内田のお姉さんのお陰で……人の不幸の上に立ってると知ってそういうのは間違いかも」 

にこ「ともかく、小型バスを出してくれるお陰で片付いた。残る問題は三つ」 

にこ「一つは洗濯物ね。歴史ある割には洗濯機もないなんてね」 

あんじゅ「普通の学校に洗濯物はないと思うよ」 

にこ「だったら逆に普通じゃない音ノ木坂だからこそあって欲しかった」 

あんじゅ「ないものねだりしたって解決しないよ」 

にこ「そうね、次の問題はお風呂ね。シャワーはあるけどお風呂はないからね。まったく駄目な学校だわ!」 

あんじゅ「可愛さ余って憎さ百倍なのは分かるけど、学校にお風呂は余りないよ」 

にこ「温泉がある学校も中にはあるって話よ。だったら普通のお風呂くらいあってもいいじゃない!」 

あんじゅ「例えあっても小さいお風呂だから結局あっても時間かかって意味がないよ」

488: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:11:34.42 ID:+T6JUyDe0
にこ「あんたは私がああ言えばこう言うんだから」 

あんじゅ「今回は全くの正論を言ってるだけだよ。にこがおかしいの」 

にこ「確かにね!」 

あんじゅ「素直に納得しちゃった!?」 

にこ「で、最後の問題は食材。人数が多い分どうしても多くなっちゃう」 

にこ「やっぱりカンパって形にしないと駄目かしらね」 

あんじゅ「こればかりは仕方ないと思うよ。食材は策でどうにか捻り出せるものでもないから」 

にこ「そうよね。痛んでた物を貰うくらいは出来るけど、人数が人数だけに焼け石に水」 

あんじゅ「何もかもにこが背負う必要はないよ。私達高校生に出来る限界は確実にあるんだから」 

にこ「あんたに正論ばかり言われるとこれは夢なんじゃないかと思っちゃうわ」 

あんじゅ「何気に失礼なこと言ってるニコ!」 

にこ「普段は百倍は私に失礼なこと言ってるでしょうが」 

あんじゅ「確かに!」 

にこ「素直に納得された!? って、漫才じゃないっての!」 

あんじゅ「うふふ」 

にこ「はぁ~……よしっ! 気分転換も兼ねてお婆ちゃんの家に行きましょうか」 

あんじゅ「うん!」

489: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:12:34.25 ID:+T6JUyDe0
――お婆ちゃん家 にこあん 

にこ「お婆ちゃん家で食べるご飯はなんか落ち着くわ」 

あんじゅ「分かる分かる。落ち着く匂いがするんだよね。歴史のある匂いって感じ」 

にこ「いや、それは意味が分からないけど」 

お婆ちゃん「それで、何かあったのかい?」 

にこ「え、何かって?」 

お婆ちゃん「今のにこちゃんは悩んでる顔をしているよ」 

にこ「そんなことないわ。むしろ一昨日悩み事が(一つだけど)解消されてホッと一息吐いてるくらいだし」 

お婆ちゃん「心配掛けないようにしているつもりだろうけど、そっちの方が心配になるんだよ」 

にこ「……はぁ~。お婆ちゃんに隠し事は出来ないわ」 

あんじゅ「亀の甲より年の功だね」 

にこ「昔の人は上手いことを言うわよね。漫才のルーツって意外と諺からきてるのかもしれないわ」 

あんじゅ「いや、それはないって。それよりも心配させない為にも白状しないと」 

にこ「分かってるわよ。今度ね、他校の子達を招いて学校で合宿を行うの。九日間泊まることになるからお風呂問題」

490: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:13:33.84 ID:+T6JUyDe0
にこ「音ノ木坂にシャワー室はあるんだけど、女の子だからやっぱり毎日お風呂は入りたいの」 

にこ「アイドル活動をしてると色々とお金も使うことがあるし、毎日お風呂代を必要とすると積み重なればって感じで」 

にこ「だからといって私達の家のお風呂を貸すのにも人数的に問題があるし、ちょっと困ってるの」 

にこ「この問題を口にすれば大会の為だしシャワーでも我慢できるって子も多く居ると思う」 

にこ「我慢するよりお金出してでもお風呂に入りに行くって子も当然出てくる筈」 

にこ「そこが一番問題なの。自分達は我慢しないといけないのに、我慢しなくても済む子が居る」 

にこ「今回の合宿は仲間同士の身内で行うわけじゃないから、集団生活でそういう亀裂に繋がる可能性があるの」 

にこ「精神的に優劣が生まれると普段なら出せた筈の結果が出せなくなる、なんてことになったら合宿の意味がない」 

にこ「それに裸の付き合いって本音で語り合えるから出来るのなら絶対に必要なんだけど……解決策の糸口も見えてこないの」 

にこ「高校生しかスクールアイドルにはなれないけど、逆にそのことが私達を縛り付ける」 

にこ「だけど、これすら贅沢な悩みなんだけどね。環境もなく、たった一人で頑張り続けたせんちゃんに比べれば」 

お婆ちゃん「まったく。にこちゃんは昔から背負わなくてもいいことまで背負おうとするんだから」 

あんじゅ「でもパパさんに似たんじゃしょうがないよね」 

にこ「分かってるじゃないの」

491: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:14:22.68 ID:+T6JUyDe0
お婆ちゃん「お風呂の件は私に任せておきなさい」 

にこ「でも、にこってば最近は特にお婆ちゃんに甘えてばかりで」 

お婆ちゃん「何を言ってるんだい。本当の孫とほとんど会えない生活をしてる身としてはねぇ」 

お婆ちゃん「にこちゃんは本当の孫以上に可愛い存在なんだよ」 

にこ「……お婆ちゃん」 

お婆ちゃん「それに以前にも言ったけどね、わたしはにこちゃんの周りに笑顔が咲くのが好きなんだよ」 

お婆ちゃん「今回合宿に来る子もまた、にこちゃんの魅力に当てられて笑顔になって欲しい」 

お婆ちゃん「これは私の願いでもあるねぇ。だからお風呂の問題は任せておきなね」 

にこ「うん、ありがとう。とっても嬉しいにこっ♪」 

にこ「でもどうやって解決するつもりなの?」 

お婆ちゃん「商店街にある銭湯の主人に話をつけるだけさ。ちょっと頑固なところがあるけど、きちんと説得するからね」 

あんじゅ「内田のお姉さんと違って安心感あるね」 

にこ「ええ、そうね。というか比べるのが失礼過ぎるわ。とにかくお婆ちゃんにお任せするにこ!」 

お婆ちゃん「ああ、任せておきな」

492: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:15:27.58 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「高校生じゃ無理なことを次々とその絆で可能にしていく。にこってばまるで漫画の主人公みたい」 

にこ「ふっふーん!」 

あんじゅ「本屋さんから返品殺到するような漫画か、十話で打ち切りの主人公みたい」 

にこ「なんで変な単語が追加されてんのよ、この愚妹!」 

お婆ちゃん「ふぇっふぇっふぇっ。そうやって嬉しそうにしているにこちゃんとあんじゅちゃんが一番の宝だよ」 

にこ「そうだ、お婆ちゃん。今年は私の誕生日を延期するから、七月三十一日に延期になるの」 

にこ「だから三十一日は空けておいてね。とびっきりの料理を――」 
あんじゅ「――はいはーい! カレーがいい☆」 

にこ「誕生日までカレーって、まぁいいわ。カレーとか色々用意するから遊びに来てね」 

お婆ちゃん「何があってもその日は予定を空けておかないとねぇ」 

あんじゅ「色んな人招いたら入りきらなくなるかもね。みんなに愛されにこにー♪」 

にこ「いや、流石にそんな多くは集まらないけど。いや、あの子達にもお世話になってるし招きましょう」 

あんじゅ「新旧SMILE勢揃いだね。シカちゃんとか陸上部部長さんも招いて、あとは練習ないようならだけど」 

あんじゅ「ことりちゃんと花陽ちゃんも招きたいな。亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんは言わずもがなだし」 

あんじゅ「ミカちゃん達三人も招いて、お仕事なければいつものお礼に理事長も招きたいな」

493: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:16:11.26 ID:+T6JUyDe0
にこ「本気で家に入りきらないっての!」 

お婆ちゃん「どこかのホールを借りるのもいいかもしれないねぇ」 

にこ「いやいやいや! お婆ちゃん何言ってるにこ!」 

お婆ちゃん「お風呂のついでに何処かいい所がないか話してみるよ」 

あんじゅ「さっすがお婆ちゃん。話が早くて行動派!」 

にこ「あんたも称賛してないで止めなさいよ!」 

あんじゅ「にこの記念すべき十八歳の誕生日は一生に一度しか訪れないんだから盛大にするのは大賛成♪」 

にこ「十八歳限定じゃなくても一生に一度しかその歳の誕生日は訪れないっての。しかも実際の誕生日が過ぎた後だし」 

お婆ちゃん「誕生日はお祝いする気持ちが全てだよ。実際に生まれた日でなくても充分に意味があるさね」 

にこ「ま、それもそうね。この妹も実際の誕生日に祝ってないし」 

あんじゅ「にこと出逢った日こそが私の誕生日。お婆ちゃんの言うとおりなんだよ☆」 

あんじゅ「それにラブライブ予選通過記念と合わせて三十一日は盛大にするのに賛成以外ないよ」 

にこ「……もう、負けたわ。お婆ちゃん、色々とよろしくね」 

お婆ちゃん「にこちゃんは背負い過ぎずにね」 

にこ「うん、もう少し気楽にやってみるにこよ!」

494: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:17:03.34 ID:+T6JUyDe0
――火曜日 教室 えりにこあん 

あんじゅ「あとの問題点は食材と洗濯だよ」 

にこ「ま、こう次々と助けられるとなんとかなりそうな気がしてきたわ」 

絵里「にこにしては随分ポジティブな発言ね」 

にこ「まるでいつも私がネガティブみたいに思われる発言するんじゃないわよ」 

絵里「そうね。ポジティブな筈なのになんとなくにこっていつも自分で解決したがる所為かそんなイメージがするのよ」 

にこ「そんな失礼なイメージ持つとか長女失格にこよ!」 

絵里「馬鹿ね、にこってば。長女に失格なんてないわよ」 

あんじゅ「なんか凄い女神みたいな笑顔で返した。これにはにこもたじたじ!」 

にこ「この反応はどう切り返せばいいのか……よく分からないけど、私の負けだわ」 

絵里「当然ね」 

「絢瀬さんって意外とお茶目だよね」 

「うんうん。別クラスだったから有能な生徒会ってイメージしかなかったけど、意外とコミカル」 

「一年生の時はすっごい近寄りがたかったけど、今は親しみあるよねー」

495: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:17:53.95 ID:+T6JUyDe0
にこ「そういえば本当に出会った頃の絵里ってば氷の彫刻みたいなやつだったわよね」 

絵里「どうして度々そのことを思い出すのよ」 

あんじゅ「インパクト抜群だったからね」 

絵里「あ、そうだ。前生徒会長が学園祭の二日目、つまりは音ノ木坂の開催の日に来てくれるそうよ」 

にこ「あの人は私達の恩人だし、満足してもらわないと」 

あんじゅ「そうだね。来て良かったって思ってもらえるようにしようね」 

絵里「恥ずかしくて夢を見つけたこと言えてないから、直接伝えなきゃ」 

あんじゅ「そう言えば絵里ちゃんは物語書いてるんだよね。どんなの書いてるの?」 

絵里「今は習作だから何を書いてるっていう訳でもないけど、にこを主人公にした物語を書ける日まで頑張るわ」 

にこ「そういえばそんなこと言ってたわね」 

絵里「ミュージカルで見栄えよくする為にもラブライブで優勝しないとね」 

にこ「予選通過前に本戦のことばかり口にしてたら足元崩れていつかの海未と穂乃果みたいに落ちていくわよ」 

あんじゅ「大丈夫だよ。落ちてもあの時みたいに上ってくればいいんだから」

496: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:18:42.17 ID:+T6JUyDe0
にこ「夢と現実は違うわ。チャンスは一度きりなんだから」 

あんじゅ「にこは鉄仮面が似合いそう」 

にこ「はぁ? スクールアイドルが顔隠してどうするのよ」 

あんじゅ「にこなら顔を隠しても人気が落ちることはないよ!」 

にこ「なんでよ!」 

あんじゅ「ぐふふ★」 

絵里「取り敢えず今日は海未が剣道部と弓道部に付きっ切りになるそうだから、凛のことは私に任せて」 

絵里「穂乃果は今日も家の手伝いをしてもらうとして、二人は早く帰って充分にリラックスして」 

にこ「分かったわ。たまには姉の言葉を素直に受け入れてあげる。問題に頭を捻らせるのは明日からにするわ」 

あんじゅ「久しぶりに二人でカラオケでも行く?」 

にこ「それもいいかもね。私の森のパンダさんに酔いしれなさい!」 

「そういえば学園祭でにこちゃん森のパンダさん歌ってたよね」 

「見た見た。小さい子と手を繋いで歌ってた」 

「あれにはすっごい和んだ」

497: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:19:40.46 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「そんなことしてたんだ」 

絵里「そういえば聞いたわ。迷子の子を面倒見たって」 

にこ「にこは小さい子の扱いは手馴れてるからね」 

あんじゅ「にこ自身も小さい子だけど」 

にこ「ぐっ……なんであんたが伸びる分の身長を私にくれなかったのよ」 

あんじゅ「あ、ごめん。過去形になってるのを聞くともう罪悪感で背のネタは使えないにこぉ」 

にこ「そんな反応される方が傷つくわよ!」 

あんじゅ「ごめんね」 

にこ「瞳のハイライトが消えてて怖いっての!」 

あんじゅ「ごめんねごめんねごめんねごメんねゴめんねごめんネネネごめんね」 

絵里「ひぃっ!」 

にこ「絵里がマジで怖がってるから元に戻りなさい」 

あんじゅ「よし、今度から弄るのは胸の方だけにしよう!」 

にこ「そっちの方がムカつくニコ!」

498: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:20:48.28 ID:+T6JUyDe0
――放課後 昇降口 にこあん 

あんじゅ「そう言えばにこが森のパンダさん歌うようになったのって私が切っ掛けだったよね」 

にこ「あ~そう言えばそうね。あんたが勝手に私の番にあの曲入れて歌ったら波長が合ったのよね」 

あんじゅ「つまり私がいなければにこはカラオケの十八番がなかったってことだね」 

にこ「否定出来ない」 

あんじゅ「もし十八番がなかったらどんなやり方で海未ちゃんを勧誘してたんだろうね」 

にこ「どうだったのかしら。どっちにしろあんたの手の平で踊らされてたに決まってるわ」 

あんじゅ「うん、そうに決まってる♪」 

にこ「くっ! 自分で言ったけど肯定されるとムカつくわね」 

あんじゅ「にこはそういう星の下に生まれた子だからね」 

にこ「そんな残念な運命を背負って生まれてないわ」 

あんじゅ「ううん。私はにこと出逢った瞬間にピーンときたね。この子は私の手の平の上で踊るにこなんだって」 

にこ「名前すら知らなかったでしょうが!」

499: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:22:43.74 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「私の存在に驚いて尻餅をついて印象付けるなんて面白いアプローチなんだろうって思ったよ」 

にこ「誰だって驚くわよ。空き部屋だった隣の部屋のドアの前に気配もなく座ってるんだもの」 

にこ「でも尻餅まではついてないわよ! 勝手に過去を捏造するんじゃないわ」 

あんじゅ「あれはもう尻餅をついてたって言っても平気なくらいの驚きだったって」 

にこ「犠牲になったのはにこのお尻じゃなくて卵達よ」 

あんじゅ「にこだけに二個生き残ってよね」 

にこ「全然上手くないわ!」 

あんじゅ「あんな驚いてたのに怖い話は平気なのはおかしい。絵里ちゃんみたいに怯えるべきだと思う」 

にこ「怖い話と肝試しは別物でしょ? それと同じよ」 

あんじゅ「つまりそれは合宿で肝試しをやるってフラグ?」 

にこ「やらないわよ。夜に騒いでたら先生に怒られるでしょ。この合宿は先生の後押しあってGOサインが出たのよ」 

にこ「恩を仇で返すようなことは出来ないわ」 

あんじゅ「流石にこ。普段はおちゃらけ弄られキャラなのに真面目な時は真面目!」 

にこ「当然なこと言ったのにこの仕打ち。あんたも少しは私に恩を返しなさいよね」 

あんじゅ「大丈夫だよ。私が傍に居ることでにこの心は常にハッピー!」 

にこ「何その頭の中がお花畑な発想」

500: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:24:10.26 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「事実だよ☆」 

にこ「その自信がどこから湧いて出るのかが不思議でならないわ」 

あんじゅ「発生源はにこからの愛情にこっ♪」 

にこ「そんなことよりせっかくだしカラオケ勝負しましょうか」 

あんじゅ「だからどうしてにこはいつも敗北フラグを自分から立てるの?」 

にこ「ずっと言い続けてるけど、どうして敗北フラグにされてんのよ!」 

あんじゅ「蓄積されてきた過去の統計結果=にこの敗北フラグ」 

にこ「式にされるとこれはこれでダメージがくるわね」 

あんじゅ「私が居ることでそんなダメージも直ぐに回復」 

にこ「あんたの言葉にダメージ受けてるのよ!」 

あんじゅ「ダメージを与えた後に回復してあげることで、相手により感謝されるジゴロのやり方」 

にこ「将来詐欺師にならないようにしっかりとリードを握っておかないとね」 

あんじゅ「にこってば私に首輪とリードをつけたいの? しょうがないなー。ボブキャット耳と尻尾も用意してね」

501: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:25:38.10 ID:+T6JUyDe0
にこ「そんなマイナーな耳と尻尾なんて売ってないわ」 

あんじゅ「じゃあにこが作ってよ。そしたら雌ボブキャットのポーズを決めてあげる」 

にこ「そのポーズとやらが私を捕食してるイメージしか湧かなくて怖い」 

あんじゅ「にこを食べちゃうニャー♪」 

にこ「凛が言えば可愛いけど、あんじゅが言うとあざとい以外のなんでもないって」 

あんじゅ「ごろろろろ♪ ……じゅるっ」 

にこ「なんで喉を鳴らした後に獲物を前にしたような舌なめずりするのよ」 

あんじゅ「ワタシニコクウ。ニコノチカラテニイレル」 

にこ「どこの大猿よ!」 

あんじゅ「四十秒で捕食しな!」 

にこ「作品が違うし。どんな酷い海賊よ」 

あんじゅ「はむはむっ。にこを捕食中~♪」 

にこ「ぐあっ! 重いから圧し掛かるんじゃないわ」

502: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:26:48.24 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「お姉ちゃんなら妹をおんぶして帰るくらい出来るよ」 

にこ「おんぶしたらスカートの中身が見える上に、自分より身長高い相手をおんぶなんて出来ないニコ!」 

あんじゅ「ツッコミより女子力を優先させるなんて……まるでにこが小学生じゃなくて女子高生みたいに思えるね」 

にこ「女子高生よ!」 

あんじゅ「そういうことにしておこう★」 

にこ「事実以外のなんでもないわ。あんたが絡むからカラオケ屋どころか、あの校門すら遠い蜃気楼に思えてきた」 

あんじゅ「無事に学校を出れる普段が如何に幸せなことか知ることが出来て良かった良かった」 

にこ「いい話風に纏めてもただ疲れるだけよ」 

あんじゅ「しょうがないなー。早く行かないとこころちゃんとここあちゃんが帰って来ちゃうから普通に行こう」 

にこ「……最近理不尽と友達になってきたわ。そろそろ涙ちゃんとも友達になる日も近いかしら?」 

あんじゅ「大泣きしても今度は動揺することなく捌くことが出来るから安心して泣いていいよ」 

あんじゅ「予行練習も兼ねてにこが泣くようなイベントを用意しなきゃ」 

にこ「絶対に用意するんじゃないわよ」

503: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:28:02.16 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「そうだね。今回はやめておこうかな」 

にこ「何よ、随分とあっさりね」 

あんじゅ「七月三十日に勝手に泣きそうだから。SMILEが予選通ったにこ~って」 

にこ「そんなことで泣く程にこは涙脆くはないわ」 

あんじゅ「ついこないだあれだけ人前で泣いて涙脆くないと言い切るにこにーお姉ちゃん」 

にこ「あれは……しょうがないでしょ。同じ学校の仲間ってだけで皆が手伝ってくれるって言うんだから」 

あんじゅ「同じ学校だけってわけじゃないよ。にこが蒔いた種が芽吹いたんだよ。私達は栄養剤」 

にこ「生徒会長の絵里の力と海未の力が大半でしょ」 

あんじゅ「にこの頑固さに訂正入れるのも面倒になってきた。だからあの言葉を拝借しよう」 

にこ「あの言葉?」 

あんじゅ「にこがそう思うならそうなんだよ。にこの中ではね」 

にこ「何そのムカつく言い方」 

あんじゅ「文句があるなら私にカラオケ勝負に勝ってからにしてもらうニコ!」 

にこ「望むところニコ!」

504: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:29:30.12 ID:+T6JUyDe0
少女「あっ! にこちゃん来た!」 

あんじゅ「おぉっ。出待ち最年少更新かな?」 

にこ「あの子に見覚えがあるわ」 

あんじゅ「商店街の子かな?」 

にこ「住んでる所は知らないけど学園祭に来てた子ね」 

あんじゅ「噂の迷子ちゃん?」 

にこ「そうそう、徳井あいなちゃん。あーちゃんお久しぶり」 

少女「うん! にこちゃんもおひさしぶり」 

ママ「その説では娘がお世話になりました」 

にこ「いえ、それよりもどうかしたんですか?」 

少女「にこちゃんにあいにきたの!」 

にこ「私に?」 

少女「うん♪」

505: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:30:35.39 ID:+T6JUyDe0
ママ「あれからSMILEのことを知って、ファンになったんです」 

少女「あーちゃんはスマイルがだいすきなんだよ」 

あんじゅ「可愛い♪ にこより小さいのににこよりもしっかりしてる」 

にこ「にこよりをわざわざ付ける必要ないでしょ」 

少女「えっへん。あーちゃんはしっかりものなの」 

にこ「わざわざ会いに来てくれたんですか?」 

ママ「それだけではなくてOGとして力になろうと思ってきたんです」 

にこ「力にですか?」 

少女「にこちゃんがおとまりかいするってきいたの!」 

あんじゅ「お泊り会。大連続公開合宿のことだね」 

にこ「自分で名付けておいてなんだけど、あんじゅの言うとおり無駄に長いわね」 

ママ「一時は廃校になってしまうんじゃないかって噂があったのに、学園祭では生徒達の活気で溢れてて」 

ママ「切っ掛けは何かを調べたらスクールアイドルのSMILEに行き当たったんです」 

少女「にこちゃんはすごいの☆」

506: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:32:13.55 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「そうだよ。にこちゃんは小さいけど誰よりもすごいんだよー」 

にこ「小さいは余計だっての」 

にこ「というか、私達はただの切っ掛けです。卒業していった先輩達の助けが多くあって、みんなが音ノ木坂を大好きで」 

にこ「だからこうして生徒数も増えた今に繋がってるんです。お世話になった先輩にすら恩を返せてないくらいですし」 

にこ「私達の我が侭に力を貸してくれた先輩。物凄い無茶を受け入れてくれた先輩達のお陰なんです」 

少女「せんぱい?」 

にこ「同じ学校の年上の人のことなんだけど、あーちゃんにはまだ難しいかしらね」 

少女「んー……えっへへ♪」 

にこ「勿論先輩だけじゃなくて同級生や下級生にだって色々迷惑かけてるくらいですし」 

ママ「それは手を貸したくなる魅力があるってことではないかしら?」 

ママ「現に私は娘がお世話になったこともあるけど、矢澤さんだから力を貸したいと思ったんです」 

ママ「それで話は戻りますけど合宿の際に困ってることがあると耳にしました。洗濯物が多くてどうすべきかと」 

にこ「ええ、音ノ木坂に洗濯機はないですのでどうしようかと」

507: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:33:37.32 ID:+T6JUyDe0
ママ「そのことで力になろうと思って来たんです。洗濯は私に任せてくれませんか?」 

にこ「いえ、一人でどうにか出来る量じゃないです。只でさえ夏場で汗を掻き易い状態なのに激しい運動をしますし」 

にこ「人数だって私達を除いても三十九人ですから」 

ママ「ということは四十五人ですね。大丈夫です」 

少女「だいじょうぶー♪」 

にこ「洗濯だけで一日が終わるレベルですってば。洗濯機フル稼働で干しては洗っての繰り返しですよ」 

ママ「勿論私一人という訳じゃないの。元々はコインランドリーを経営してる私の友人、その子も音ノ木坂卒業生なんですけど」 

ママ「その子からの提案で、駄目元で当時の同級生に声を掛けたら母校の為に頑張ってるなら私達もって二つ返事を貰いまして」 

ママ「プチ同窓会兼部活動みたいな感じになるって勝手に盛り上がったくらいです」 

ママ「ボランティアですから勿論お金は要りません。ただ、流石に個別でという訳にはいかないので」 

ママ「学校別で洗濯する形でよければなんですが、どうでしょうか?」 

にこ「そんな迷惑掛ける訳にはいかないです」 

ママ「ここで断れることが初めて迷惑になるんですよ」

508: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:35:28.33 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ(虎太郎さんと同じで最初から退路を断ってからの提案。私もこの大人のやり方を使えるようにならなきゃ!) 

少女「あーちゃんもね、にこちゃんたちのおてつだいするんだよ♪」 

にこ「……分かりました。お願いします。ですが無料という部分だけは了承しかねます」 

にこ「元々コインランドリーは有料ですから。それを使わせてもらうのに無料なのは心苦しいので」 

ママ「そう言うと思ったわ。そういう切り返しできたらって伝言を頼まれてます」 

ママ「学園祭で食べたカレーをラブライブが終わった後に御馳走して欲しいとのことです」 

ママ「私達はカレーを食べに行ってないんですけど、あの子は食べに行ったそうで大変お気に入りのようです」 

にこ「私の作ったカレーなんかじゃ釣り合いが取れてません」 

ママ「人が持つ価値観は誰かが言葉で否定できる物ではないわ。だからこそ個性があるんですよ」 

ママ「あの子は両親が仕事好きで家庭の味に憧れが強いんです。学園祭のカレーはそんなあの子の憧れの体現だったみたいで」 

ママ「あの子にとっては其れが適正の報酬ということです。あ、勿論私達にも振舞ってくれるなら喜んで頂きますよ」 

あんじゅ(これはにこの負けだね。もっともっと知識を吸収して早く大人にならなきゃ) 

にこ「…………。分かりました。十日近くの間とても大変だとは思いますがよろしくお願いします!」 

少女「うん! あーちゃんにおまかせなの☆」

509: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:36:30.14 ID:+T6JUyDe0
ママ「断られたら一人で勝手に話を進めただけで頓挫したって責められるところでした」 

あんじゅ(さらりとした一言でアフターケアーも万全。大人恐るべし) 

にこ「伝言をお願いします。今回の報酬に見合う特製カレーに仕上げてみせますと」 

ママ「きちんと伝えておきます。洗濯物の回収と届ける時間帯等の詳しいことは追々決めていく形でいいですか?」 

にこ「はい。では連絡先を交換させてください」 

ママ「ええ、赤外線のやり方がわからないのでメモって来ました。これです」 

にこ「では登録してメールでこちらの番号をお伝えしますね。それから漂白剤と洗剤は各自で用意しますので」 

ママ「残念だけどそれはもうこっちで用意してしまったので大丈夫です」 

にこ「そこまで甘える訳にはいきません!」 

ママ「どちらかと言うとこっちの方が甘えなんですよ。だって持ち込まれた物を運ぶのも一苦労ですから」 

ママ「それに用意した洗剤でしたら全部同じで済みますから。持ち込まれてどこの学校がどの洗剤とか変えるのは一苦労です」 

あんじゅ(容赦ないくらいのにこの完封負け。自分の邪道が子供の遊びに思えちゃう) 

にこ「私のメンバーの幼馴染がご飯を炊くのが凄く上手らしいので、その子にもお願いして過去最高のカレーを提供することをお約束します」 

ママ「はい。楽しみにしてますね。あーちゃんもにこちゃんのカレー楽しみだよね?」 

少女「うん♪ あーちゃんカレーだいすきだもん」

510: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:37:32.80 ID:+T6JUyDe0
――十分後... 

にこ「カラオケって気分じゃなくなったわね」 

あんじゅ「そうだね。もっと精進しないと駄目って分かったね」 

にこ「えっ? なんの話よ」 

あんじゅ「こっちの話。それよりも流石にこだね。勝手に解決フラグを立ててたなんて」 

にこ「全てフラグで管理されてるみたいな言い方するんじゃないわ。これは音ノ木坂学院の魅力でしょうが」 

にこ「無駄に歴史がある学校だからこそ、そこで過ごした卒業生達にとって他の学校より馴染みがあるんでしょうね」 

にこ「所謂フルハウスみたいなものよ。ここはもう一つの家で、色んな家族がごっちゃになってる感じね」 

あんじゅ「フルハウス?」 

にこ「海外の長寿ドラマ。アットホームで面白いわよ」 

あんじゅ「へ~。じゃあ、今度機会があったら借りなきゃね」 

にこ「とか言ってあんたが借りるのはホラーばっかりでしょ」 

あんじゅ「そろそろ旧作で借りられる限界が訪れた気もするんだよね。早く準新作が旧作に落ちてこないかなー」 

にこ「ああいうのって店舗によっても差があるから落ちない物は中々落ちないのよね」 

にこ「今日は早く帰って、あの子達が何か借りたいのあるか訊いてレンタルショップにでも行きましょうか」 

あんじゅ「そうだね。映画を観て敗北感を一層して明日から頑張ろう!」 

にこ「何のことよ? ま、いいわ。残る解決すべき問題は食材だけだし。今日はそのことを忘れましょう」

511: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:39:11.25 ID:+T6JUyDe0
――水曜日 部室 SMILE 

あんじゅ「夕方になると雨になるって、もう梅雨を通り越して夏みたいだよね」 

絵里「そうね。でも、明日の放課後までには屋上は完全に乾いているからその辺は助かるわね」 

海未「グラウンドより優れている少ない利点ですね」 

穂乃果「屋上に屋根があれば万全だったのに」 

凛「そうだね。そうすればもっと快適に練習出来るのに」 

にこ「屋上がこうして解放されてるだけありがたいと思いなさい」 

にこ「環境に愚痴を言うのは肉体的には余裕があるけど心にゆとりがない証拠よ」 

絵里「にこの言うとおりね。環境で全てが決まるのなら、スクールアイドルなんて流行ってないでしょ」 

海未「そんな甘いことを考えられないように筋トレを始めますよ」 

凛「雨になると陸上部の練習と一緒にゃ~」 

穂乃果「筋トレよりダンス練習の方が楽しいのに~」 

海未「そんなこと知りません。ここは他の人が通ることは滅多にありませんからね。遠慮なく始めますよ」 

海未「二人は私が見てますから三人はするべきことをしてください」 

あんじゅ「それじゃあ、ちょっと生徒会の手伝いをしながら頭悩ませてくるね」 

にこ「うーん。頭悩ませたところで食材だけはどうしようもないと思うけど」

512: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:40:20.33 ID:+T6JUyDe0
絵里「せめて両親だけでも日本に住んでれば何とか力になれたかもしれないけど、ロシアだから……」 

あんじゅ「考えつくかどうかは置いておいて、生徒会のお手伝いは必須だから」 

絵里「悪いわね。もうちょっと楽になると思ったのだけど、やっぱり夏休み前に決めるべきことを決めておく必要が出てきて」 

絵里「生徒会とはいえ生徒だからね。家庭の事情で出席出来ない子が多くなったら困るから」 

海未「生徒会長はやはり大変ですね」 

絵里「今回は特別よ。それに、合同学園祭が成功したら苦労に見合った達成感が待ってると思えば苦じゃないわ」 

絵里「何より私よりも向こうの生徒会長の希さんの方が何倍も大変だもの。弱音なんて吐く暇ないわ」 

海未「穂乃果と凛も絵里を見習って下さい。二人共やる気が燃えると一気に燃え上がるタイプなのは分かってます」 

海未「ですがその火をより強い状態で維持することを学んでこそより強い魅力になります」 

海未「ということで、まずは腕立て二十回始めますよ!」 

穂乃果「凛ちゃん、頑張ろう!」 

凛「うん、頑張ろうね!」 

あんじゅ「三人共頑張ってね」 

にこ「くれぐれもやり過ぎには気をつけなさいよ。海未にはいつも言ってるけど自分を基準にしないこと」 

海未「分かってます。蒸し暑いですし、水分補給も兼ねて小まめに休憩を入れますので」 

絵里「それじゃあよろしくね」

513: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:41:21.02 ID:+T6JUyDe0
――二十分後... 小休止中 

穂乃果「三年生は練習だけじゃなくて色んなこと抱えてて大変そうだね」 

海未「合同学園祭が毎年もしくは三年に一度くらいに行事の一つだったら別だったんですけど」 

凛「でも、凛はそのお陰でかよちんと真姫ちゃんが通うUTXでライブが出来て嬉しいよ☆」 

穂乃果「初めて観たスクールアイドルのライブ。その場所で自分が歌うことになるなんて不思議だなー」 

海未「ことりのファーストライブですか。私も見たかったです。そう言えばそのライブに凛も居たんですよね?」 

凛「うん。凛はかよちんの付き添いだったけどね」 

穂乃果「そう考えると不思議だね。あの場に居たスクールアイドルじゃなかった二人が音ノ木坂でスクールアイドルになっただなんて」 

凛「かよちんを奪ったスクールアイドルなんて大嫌いだったのに……本当に不思議」 

海未「合宿には他校のスクールアイドルが大勢来ますが大丈夫ですか?」 

凛「大丈夫だよ。カテゴリー的に嫌いってだけで個人が嫌いって訳じゃないから」 

凛「二人には悪いけどことりさんのことはすっごい大嫌いだったけどね」 

穂乃果「あー……そっか。凛ちゃんにとっては花陽ちゃんを奪った悪代官みたいなものだもんね」 

海未「ことり自体は誰よりも優しい部類の子なんですよ?」

514: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:42:18.43 ID:+T6JUyDe0
凛「それはかよちんと真姫ちゃんからも話を聞いてるから知ってるよ。でも、まだ直接会ったりはしたくないなー」 

凛「会ったら一言くらい文句言っちゃいそう」 

穂乃果「ことりちゃんなら絶対に謝るね」 

海未「そうですね。謝った後に花陽さんがA-RISEには必要な人材ですとか言いそうです」 

凛「かよちんが憧れた人に認められたっていうのは嬉しいんだけどね。複雑な気分でもあるんだー」 

穂乃果「その気持ちは分かるよ。私もUTXにことりちゃんを奪われた気分になってUTXに対して嫌な気分はあったし」 

穂乃果「UTXはことりちゃんのことを誰よりも評価してくれたからこそ新しい被服科の特待生としてスカウトしてくれたのに」 

穂乃果「分かってても……寂しかったし、一緒に通う筈だった音ノ木坂に通えないのが悲しかったもん」 

海未「私も確かに寂しいとは思いましたがUTXに対しては悪い気持ちは抱きはしませんでした」 

海未「むしろ私は……これはにこには内緒ですが綺羅ツバサが憎いです」 

凛「A-RISEのリーダーが?」 

海未「間接的とはいえにこのアイドルになるという夢を奪った相手ですから」 

海未「私にとってにこは誰よりもアイドルに向いています。それなのに本人が其れを否定してしまう現状」 

海未「悔しくて仕方ありません。もし綺羅ツバサに出会ってなければもっとにこは自分に自信を持てたでしょう」

515: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:43:40.67 ID:+T6JUyDe0
海未「でも、そんな事を今言ったところで意味がありません。だから私はにこにもう一度アイドルを目指して欲しい」 

海未「にこがアイドルを目指してくれることが夢を持つことを許されなくなった私の新しい夢です」 

穂乃果「海未ちゃん」 

穂乃果(……そっか。海未ちゃんが最近特に輝いて見えたのは新しい夢を持ったお陰なんだ) 

凛「夢を持つことを許されなくなったってどういうことなの?」 

海未「家を継ぐことが決まっているからです。だから夢を持つことなんて本来はもうありえなかったことなんです」 

凛「そっか海未ちゃんのお家って道場なんだっけ」 

海未「いえ、道場も確かにありますが私が継ぐのは家元の方です」 

凛「そっか。あれ? そうなると穂乃果ちゃんもお饅頭屋さんを継ぐのが決まってるの?」 

穂乃果「お饅頭屋じゃなくて和菓子屋だけどね。うーん、多分私が継ぐのかな? 雪穂と年が近いしもしかしたら雪穂かもだけど」 

海未「長女なのですからしっかりしないといけませんよ。私達ももう高校二年生なんですから」 

穂乃果「そっか。もう直ぐのことなんだよね」 

凛「色々と大変なんだね」 

海未「そうでもありません。何もないからこそ悩み苦しむという場合があるのですから」

516: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:45:14.98 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「にこちゃんと絵里ちゃんのこと?」 

海未「ええ。二人は夢を諦めた経験者ですから。それでも絵里は新しい夢を見つけた。流石邪道シスターズの長女ですね」 

穂乃果(私も同じ長女としてしっかりしないと……) 

海未「今は夢のことより目先の問題です」 

凛「生徒会のお仕事は手伝わせてくれないけど、食材の問題は何か知恵でも貸せたらいいよね」 

海未「人数と日にち的にかなり厳しいですね。やはり参加者による有志のカンパが必要不可欠になるかと」 

海未「こうなると社会勉強としてアルバイトをしていなかったことが悔やまれます」 

穂乃果「海未ちゃんは只でさえ忙しい身なんだから、バイト経験なくてもしょうがないよ」 

海未「……なんとかなればいいのですが」 

凛「移動費があるし、学生だからお小遣いも高がしれてるもんね。厳しいにゃ~」 

穂乃果「にこちゃん達でも解決が無理そうな問題を私達で解決出来る訳ないよね」 

海未「私は諦めませんよ。絶対に無理なようなことを可能にしてきた姉達の背中から学びました」 

海未「自分の常識に捕らわれていては突破出来る壁も超えられないと」 

海未「それに何か案を出さないとにこが無理を抱えこみそうで不安なんです」

517: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:46:17.33 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「あっ……そうだね。にこちゃんって本当に無理するもんね」 

凛「凛の時がそうだったよね」 

海未「私がなんとか出来ればするのですが」 

穂乃果(なんとかする方法……。皆が思いつかないからこそ、出来ること) 

穂乃果(家を継ぐのかどうか。長女としてしっかりする。食材問題…………にこちゃん達の背中) 

穂乃果「穂乃果に出来ること、見つけた」 

海未「何か言いましたか?」 

穂乃果「ううん。なんでもないよ」 

穂乃果(可能かどうかなんて考える前にまず行動。それこそが穂乃果の背中の羽根がレプリカから本物に戻る方法だよね!) 

海未「それでは練習を再開しましょうか」 

凛「うん! 凛はやっぱり考えるよりも体を動かす方が似合ってるみたい」 

穂乃果「……」 

海未「穂乃果? ボーっとしてるようですがまだ休憩が必要ですか?」 

穂乃果「あっ、ごめんごめん。大丈夫だよ、さぁ頑張ろう!」

518: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:47:53.17 ID:+T6JUyDe0
――生徒会室 三年生組 

絵里「今回のような合宿も初の試みだから先人の案を参考にしたり出来ないのが厄介よね」 

あんじゅ「こんなことを考える人は居ないし、例え居ても実行には移さないよ」 

にこ「そう聞くとにこがまるで非常識みたいじゃない。いや、今更否定は出来ないけど」 

あんじゅ「進んで肯定しない辺りがにこらしさ」 

絵里「あんじゅなら胸を張るところだけどね」 

にこ「そんなことで張る胸なんてないわ」 

あんじゅ「そうだね。にこには胸がないもんね★」 

にこ「なんですってー!?」 

あんじゅ「にっこにこ♪」 

にこ「にこにこっ!」 

絵里「でもほら、胸は成長期を越えても大きくなる可能性はあるからまだ大丈夫よ」 

にこ「まるで身長はもう伸びないみたいな言い方するんじゃないわ」 

あんじゅ「……まだ希望を持ってたんだね。もう無理だよ。にこの身長は154で止まっちゃったんだよ」 

にこ「ま、まだ高校生の内は伸びる可能性が0じゃないと信じてるの」

519: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:49:15.36 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「希望は時に人を殺すって言うし。早く捨てた方が身の為にこ!」 

にこ「嫌なこと言うんじゃないわ。というか、身長が伸びないからって死んだりするわけないでしょ」 

にこ「モデル目指してる訳でもないんだから」 

絵里「そうね。モデルは高身長が望まれるから大変ね」 

あんじゅ「ファッション誌のモデルくらいなら身長そんなに要らないけどね」 

にこ「絵里くらいならなってもおかしくないわ」 

絵里「私の夢は聞いたでしょ? それにモデルは基本短命だから目指すにはちょっとね」 

あんじゅ「その短い間に女優なりなんなりの道を見つけて……って、かなりハードモードだよね」 

にこ「そういうのを夢見れる程、私はシンデレラじゃないわ」 

あんじゅ「にこは赤ずきんちゃんだもんね。私に捕食されるの」 

にこ「最近なんなのよ、その意味不明の捕食ブーム」 

あんじゅ「にこへの愛情とい名のヤンデレレベルがアップしたから、捕食して一つになりたい願望が生まれた設定」 

にこ「何その滅茶苦茶怖い設定。却下よ却下!」 

絵里「ヤンデレは奥が深いわね」 

にこ「極端な例だから参考にしない方がいいわ。というか、絵里はどちらかというと被害者の方よね」

520: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:50:20.79 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「そうだね。元スクールアイドルで女子高で生徒会長を勤めたクォーター美人さん。思い切り危ないね」 

あんじゅ「男女関係なく大学では色んなフラグが待ち受けてる気がしてならない」 

にこ「でも大丈夫でしょ。佐藤のお姉さんと内田のお姉さんが穂乃果の勧誘の時の縁で仲がいいらしいから」 

にこ「何かあっても内田のお姉さんが処理するでしょ」 

あんじゅ「ふ、フラグ消滅フラグ。純粋な悪の前にはフラグも無意味だね」 

あんじゅ「ということでエリーちゃんのキャンパスライフは安心みたい」 

にこ「告白祭りはあるでしょうけど、それくらいじゃない。よかったわね」 

絵里「話が見えてこないけど二人がそう言うなら安心出来るわ。でも、今は私の大学生活よりも合宿の問題よ」 

にこ「軽い現実逃避してたわ。あんじゅは何かいい邪道とかないの?」 

あんじゅ「最近純粋の悪と大人のイロハを見せられたから、邪道スランプに陥ってるの。だから多分無理」 

絵里「……? 何かあったの?」 

あんじゅ「まだまだ自分が子供なんだなーって思い知らされただけだよ」 

にこ「人生はまだまだ深いってことね」 

あんじゅ「私より幼い――じゃなかった。私より青いにこに言われたくないにこっ!」 

にこ「わざと言い間違えるんじゃないにこよ!」

521: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:51:34.72 ID:+T6JUyDe0
絵里「解決への道は険しいそうね。合宿までまだ日はあるとはいえ、余裕なんてないし」 

にこ「でもま、打てる手もない現状だもの。諦めもまた時として必要だと思ふぁふぇふるのほぉ!」 

あんじゅ「ほっぺたむにむに♪ だからにこは諦めるって単語使っちゃ駄目だってば」 

絵里「そうそう。余裕はなくても、現実的に難しくても……信じることを諦めちゃ駄目よ」 

絵里「絆の力で解決してきたのなら、この問題も私達が紡いできた絆によって解決する」 

絵里「そんな風に思って笑顔で過ごしてた方が福がやってくるわ」 

あんじゅ「そうそう。笑う角にはラッキーがくるんだもん♪」 

にこ「楽観的ねぇ」 

絵里「にこが運んできてくれた奇跡だもの。後はこのエリーチカに任せておきなさい。無事に解決してみせるわ」 

絵里「私を誰だと思ってるの? 邪道シスターズ長女・エリーチカよ!」 

あんじゅ「今解決フラグが立った気がする」 

絵里「でしょ? だから私に任せてにこは安心して待ってなさい」 

にこ「すっごい絵里のが噛ませ犬フラグに思えるんだけど」 

あんじゅ「うん、そうだね。絵里ちゃんのは絶対に何も出来ずに終わるフラグだよね」 

にこ「間違いないわね」 

絵里「うわぁ──ん! エリチカ、おうちに帰る!!!」

522: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:55:16.40 ID:+T6JUyDe0
――ススメ→トゥモロウ 高坂家 穂乃果 

ママ「どうしたの? 改まって私とお父さんに話があるだなんて。もしかして数学で赤点でも取ったの?」 

穂乃果「そこまで悪くは……悪くは、なくはないけど。そんなことで改まったりしないよ」 

ママ「何がそんなことよ。あんたは全くもう誰に似たのか。どうして経営者の娘でありながら数学が苦手なの」 

ママ「算数の時から苦手で二年生の時の掛け算覚えてる?」 

ママ「担任の先生に九九がクラスで唯一覚えられてないから家庭でも勉強して欲しいって言われたこと」 

ママ「あの時は本当に顔から火が出るかと思うくらいに恥ずかしかったわ」 

穂乃果「そんな忘れたいこと今更言い出さないでよ!」 

ママ「結局ことりちゃんが根気良く教えてくれたお陰で覚えられたけど」 

ママ「ことりちゃんだけじゃなくて海未ちゃんもそうだけど、あの二人が居なかったらと思うとゾッとするわ」 

穂乃果(これからお願いしようと思ってたのに、なんだか嫌な方向に話が進んじゃってるよ) 

ママ「ことりちゃんはUTX学院の特待生。海未ちゃんは次期生徒会長なんでしょ?」 

穂乃果「ま、まだ生徒会長になるって返事はしてないけど」

523: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:56:27.15 ID:+T6JUyDe0
ママ「責任感の強い子だもの。断る筈がないわ」 

穂乃果「そうかもしれないけど」 

ママ「私の娘なのに生徒会長に推薦されないなんて……私は立派に生徒会長として勤めたのに」 

穂乃果「立派かどうかは分からないけど、穂乃果は部長を務めることになってるから」 

ママ「どうせ海未ちゃんが生徒会に入るからそのお零れでって形でしょ」 

穂乃果「うっ、鋭い」 

ママ「ま、中学三年生の途中からことりちゃんのライブを見に行くまでのように元気がないよりはマシだけど」 

穂乃果(海未ちゃんを鬼とするならば、お母さんは般若だよ) 

ママ「それで、何の話なの?」 

穂乃果「お母さんの般若」 

ママ「穂乃果っ!」 

穂乃果「わっ! ごめん、思ってることが口に出ちゃった」 

ママ「そう、つまりは本音ってことね」 

穂乃果「ひぃっ! そ、そんなことよりも大事な話があるんだってば」

524: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:57:58.26 ID:+T6JUyDe0
ママ「明日から一週間おやつ抜き」 

穂乃果「せめて三日に……」 

ママ「いいから早く話を進めなさい。私達は穂乃果と違って忙しいのよ」 

穂乃果(忙しいのは主にお父さんだけじゃんか) 

ママ「何か?」 

穂乃果「何でもありませんっ」 

ママ「よろしい」 

穂乃果「お父さんとお母さんに一生のお願いがあるの」 

ママ「あんたって小さい頃から何度一生を繰り返してるわけ。一番使ったのはケーキ屋の娘になりたいだったわね」 

ママ「その次は毎日おやつが洋菓子になりますようにだったかしら」 

穂乃果「そんな昔のことは忘れてよ。叶わなかったお願いは無効だよ」 

ママ「はいはい。何度か叶えてあげたお願いもあったけど忘れてあげましょう」 

ママ「高校生になって使うんだからそれなりのことなんでしょ?」

525: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 02:59:01.44 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「うん」 

ママ「胃薬残ってたかしら」 

穂乃果「何なら穂乃果が走って買って来るよ」 

ママ「胃の心配は無用とか優しい言葉は返ってこないのね」 

穂乃果「そこは覚悟して欲しいなって」 

ママ「長引かせると余計に胃に悪そうね。ちゃっちゃっと本題を言ってちょうだい」 

穂乃果「穂むらの歴史とその絆を信じてお願いがあるの」 

穂乃果「合宿の約十日分・四十九人+先生の分のお米と食材を用意して欲しいんです」 

穂乃果「勿論その分に掛かったお金は穂乃果が出世払いで払うから。それだけじゃないよ」 

穂乃果「これからは今よりももっと勉強するし、スクールアイドルをやりながらだけどお店の方もきちんと手伝うから」 

穂乃果「だからお願いします!」 

ママ「確かに穂むらのお得意様にお願いしていけば量は多くとも良い物が揃うでしょうね」 

ママ「一つ訊きたいんだけどそれは皆で決めたことなの?」

526: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:00:23.14 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「ううん。これは穂乃果の勝手な我がまま。にこちゃん達は穂乃果達に負担を強いるようなことはしないから」 

穂乃果「でも、だからこそこのまま何もしないで居るなんて出来ないの。だって、もう直ぐ三年生は卒業しちゃう」 

穂乃果「甘えて、守られて、卒業していく時に恩を何も返せなかったなんて後悔したくない」 

穂乃果「今回のことだけで穂乃果が与えられた恩を返せるなんて思ってないよ」 

穂乃果「だけどソレを理由に行動しないなんて絶対にヤダもん!!」 

穂乃果「新しい目標をくれたにこちゃんとあんじゅちゃんと絵里ちゃんの力になりたいの」 

穂乃果「本当は自分ひとりで解決しなきゃ意味ないのかもしれない。でも今の穂乃果には一人で解決出来る力なんてない」 

穂乃果「そんな時にこちゃん達は自分の絆を使って多くの人を笑顔にしてきた」 

穂乃果「そのお陰で穂乃果も元気になれた。自分でデザイン出来るようになったからより分かるんだ」 

穂乃果「あの日の穂乃果の為に作ってくれた衣装がどれだけ難しくて、どれだけ大変だったのか」 

穂乃果「でもそんな大変を見せずに笑顔で私の入部を受け入れてくれた。普通ならあんな苦労してまで勧誘なんてしないのに」 

穂乃果「えっと……ごめん。何を言いたいか分からなくなっちゃったけど、とにかく穂乃果のわがままに力を貸して下さい!」 

ママ「……まったく。変なところで熱くなるのはお父さんに似たのかしら」 

穂乃果「お父さんに?」

527: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:01:57.12 ID:+T6JUyDe0
ママ「今でこそ丸くなったけど、お父さんは昔はブイブイ言わせてたんだから」 

穂乃果(ブイブイってなんだろう? とにかく死語だよね) 

ママ「考えなしに取り敢えず喋って纏めきれなくなるのは中学生の頃までの私に似たわね」 

穂乃果「中学生の頃のお母さんに」 

ママ「高校生になってからは生徒会に入ったから考えなしで喋ったりはしなくなったからね」 

穂乃果「想像出来ないけど」 

ママ「想像出来なくても事実よ。お馬鹿な生徒会長なんてのが許されるのは穂乃果が無駄遣いして買う漫画の中くらいよ」 

ママ「お願いを聞き入れたら、その漫画も暫くは無縁の関係になりそうだけどね」 

穂乃果「……うん」 

ママ「このお願いを聞き入れるってことは穂むらを正式に継ぐことになるということと同じよ」 

ママ「小さい頃はケーキ屋さんになりたいってずっと言ってたけど、穂乃果に覚悟はあるの?」 

穂乃果「夢ってよく大人に近づくに連れて現実を知ってなくなっていくみたいに言うよね」 

穂乃果「穂乃果とことりちゃんと海未ちゃん。三人の中で一番早く現実を知ったのが海未ちゃんだった」

528: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:03:08.65 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「穂むらをいつか継ぐっていうのは分かってるけど、私の場合は年の近い妹の雪穂が居るからって思考を逸らしてた」 

穂乃果「ことりちゃんはしっかりと未来を見据えながら夢を叶えようと努力してる」 

穂乃果「穂乃果だけが宙ぶらりんのまま。そんな中ね、海未ちゃんは最近になって新しい夢を見つけたんだって」 

穂乃果「自分のことじゃないけど、にこちゃんをアイドルにするって夢」 

穂乃果「夢を持った海未ちゃんは今までで一番輝いてる。まるで今が人生のピークみたいに」 

穂乃果「正直羨ましいなって思っちゃくらい。だからそろそろ私も夢を現実にしようと思うの」 

穂乃果「穂むらを継ぐということを夢にして、現実にする為にその退路を断つ」 

穂乃果「私はころころと考えが変わるからね。でも、退路がなければどこにも行けない」 

穂乃果「餡子が飽きたなんて言葉はもう言わない。いつかお父さんの味を受け継いでみせるよ」 

ママ「軽々しく宣言するといつか今日の自分を恨むことになるわよ?」 

穂乃果「というか絶対に恨むし後悔すると思う。でも、何も返せないままで見送る方が比べられないくらいの後悔だもん」 

穂乃果「だったら未来の私もしょうがないなーって苦笑いして許してくれるよ」

529: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:04:41.18 ID:+T6JUyDe0
ママ「……いい先輩達に巡り会えたわね。生涯の宝物よ」 

穂乃果「うん!」 

ママ「分かったわ。じゃあ、穂むらの伝を使った完璧な用意してもらいましょう。お婆ちゃん達にもお願いしないとね」 

穂乃果「ありがとう。それからカレー! にこちゃんはカレーが得意で初日はカレーにするから、カレーの食材をよろしく」 

ママ「分かったわ。お父さんは何か言うこと……あら、もう。娘の前で泣いたりしないの」 

穂乃果「くすっ。お父さんってば気が早いよ。まだ継ぐって決めただけじゃない」 

穂乃果「泣くのは穂乃果が穂むらの味を再現出来た時に取っておいてよ。でも、喜んでもらえて嬉しいな」 

穂乃果「高坂穂乃果はお父さんとお母さんの娘として生まれてきて良かったよ。穂むらの娘で最高に幸せだよ!」 

雪穂(……せめてそういう話するんだったら私も呼んでくれればいいじゃんか) 

雪穂(まったくもう、お姉ちゃんは自分勝手なんだから) 

雪穂(しょうがないから、お姉ちゃんが結婚するまでは看板娘として穂むらを手伝ってあげようかな) 

雪穂(私もお父さんとお母さんの娘に生まれてきて良かったよ。そして、お姉ちゃんの妹でよかった) 

穂乃果「穂乃果はこれから頑張ってみせるよーッ!」 

ママ「だから高坂家が馬鹿に思われるから叫ぶなって言ってるでしょうが!」

530: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:06:04.44 ID:+T6JUyDe0
――土曜日 屋上 SMILE 

海未「穂乃果、どうかしたのですか? 携帯電話を見ながらニヤニヤと笑って」 

穂乃果「吉報が届いたからついね」 

海未「吉報……ですか?」 

穂乃果「うん。にこちゃん! 最後の心配事は無事解決出来るみたいだよ」 

にこ「最後の心配事? 穂乃果と凛がきちんと夏休みの宿題を終えられる算段がついたってこと?」 

凛「はっ! そうだ、今まではかよちんが同じ学校に居たからどうにかなってたけど……全部自分でしなくちゃなんだ」 

海未「それが当然のことです」 

凛「でも、穂乃果ちゃんがなんとかしてくれるってことかな!?」 

穂乃果「えっ!?」 

海未「穂乃果が人に教えられる訳がありません」 

穂乃果「事実だけど酷いよ!」 

あんじゅ「賑やかだけど何かあったの? ほら、にこ。お花摘んできたよ」 

にこ「トイレ行くこと比喩してるのかと思ったら、何で本当に花を摘みに行ってるにこ!」

531: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:07:48.69 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「うふふ。冗談冗談。これはトイレから帰る時に貰ったの」 

にこ「どんな奇特な生徒よ!」 

あんじゅ「オカ研の部長さん」 

にこ「……あー、納得」 

あんじゅ「それで何があったの?」 

にこ「なんか穂乃果が夏休みの宿題の解決策を思いついたらしいわ」 

絵里「漸く生徒会の仕事が終わったと思ったら、面白い話をしてるわね。穂乃果、ズルは駄目よ。めっ!」 

穂乃果「違うよっ! それとどうして子供を叱るみたいに注意するの」 

絵里「冗談よ。穂乃果はそういう小細工する子じゃないって分かってるわ」 

海未「小細工する知恵を考える間に熱を出すタイプですね。まぁ、知恵熱は実際には赤ちゃんが出すものらしいですが」 

凛「やっぱり自分でなんとかしなくちゃ駄目なのか~」 

絵里「大丈夫よ。コツコツ勉強をみてるんだし、夏休みに入ってる間には苦手教科もスムーズに解けるようになってるわ」 

絵里「ううん、そうしてみせるから安心して」 

凛「……最近悪夢を見ると必ず絵里ちゃんか海未ちゃんが出てくるんだよね。二人共物凄く怖い笑顔を浮かべてるの」

532: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:09:15.03 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「分かる分かる。特に海未ちゃんは角と金棒持ってて怖いんだよ。恐ろしいんだよ。ひぃっ!」 

海未「なんて失礼な夢をみているのですか、貴女は……」 

絵里「穂乃果はともかくとして、凛にそんなイメージをもたれてることがショックだわ。まだ短い付き合いなのに」 

あんじゅ「でもそれだけ相手のことを親身になれるのが二人の魅力だよ。いつか二人もそのことに気付いてくれるよ」 

にこ「そうね。勉強なんて何の役に立つんだーみたいに言うけどさ。こういう苦労を出来ない人間が社会じゃ役に立たないし」 

にこ「何よりもさ、こういう苦労を分かち合えることが一番の宝物って感じがするのよ」 

にこ「これがもし個人で進み方が変わるようなシステムだったらほとんど孤立してて、学校がまるで墓地みたいな静けさになってそう」 

にこ「分からない箇所を教えてもらったり、逆に得意分野ではその恩を返したり。支え合う喜びを教えてくれる」 

にこ「そういう小さな積み重ねは大人になった時の掛け替えのない思い出なのよ」 

にこ「その一つひとつは忘れちゃうのかもしれない。でも、皆で勉強した思い出は消えたりはしないわ」 

にこ「……そう思って乗り越えるのよ。これが私の高校に入ってからの地獄の夏休みの宿題を支えた心の在り方よ」 

絵里「凄くいいことを言ったと思っていたら最後で台無しね」 

海未「まぁ、そこがにこらしいですね」 

凛「そっか。そうだね……うん、その思い出凛も乗り越えてみせるよ。夏休みの宿題は三回もあるんだもんね」

533: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:10:32.15 ID:+T6JUyDe0
穂乃果(お父さんとお母さんに言ったんだし、泣き言は控えて結果を積み重ねていこう) 

穂乃果「よ~しっ! 穂乃果も頑張るよ!」 

あんじゅ「結果オーライなのかな? じゃあ、練習再開しようか。絵里ちゃんはまず準備体操からね」 

絵里「ええ、直ぐに済ませるから」 

凛「ところで穂乃果ちゃんは結局何が言いたかったの?」 

穂乃果「あぁっ! そうだよ。SMILE時空に巻き込まれて言いたいことを言うの忘れるところだった」 

にこ「変な造語が生まれたのに意味が自然と伝わるのが怖いわね」 

穂乃果「発表します! 合宿の食材問題なんだけど、穂乃果がSMILEの活動をしてることを知っている古くからの常連さん達」 

穂乃果「実家が農家だったりする人が多くて、その人達のプレゼントという形で食材の方はなんとかなります!」 

にこ「それ本当ッ!?」 

穂乃果「うん。穂むらに歴史ありだからね♪」 

にこ「ありがとう穂乃果! ありがとう穂むら! 全ての常連さんにありがとう!」 

あんじゅ「まさか絵里ちゃんが何かをする前に解決するなんて……噛ませ犬フラグ以前の問題だったね」 

にこ「そうね! 流石邪道シスターズの長女ね。何もせずとも解決に導くなんて」

534: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:11:57.88 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「フラグ管理委員会、見た!? 長女エリーチカお姉ちゃんの実力を!」 

絵里「何か行動起こす前に解決されたのにこの言われよう……本当にお家帰りたい」 

海未「絵里、何があったか分かりませんが合宿の問題点はこれでお風呂だけになりましたね」 

凛「そういえばお風呂問題はきちんとは解決してなかったよね?」 

にこ「ああ、言い忘れてたわね。お婆ちゃんから連絡があったの。銭湯の女湯を八時から貸切にしてくれるって」 

海未「それだと余りにも銭湯としての利益が」 

にこ「元々四時から六時までがメインらしいから。と、言ってるけどラブライブが終わったら色々とお手伝いに行くわ」 

あんじゅ「にこが石鹸を踏んで扱けるんだね。頭を打って入院しないようにキャッチしてあげるね」 

にこ「そんなコントみたいな展開あるわけないでしょ!」 

絵里「銭湯……私銭湯は初めてだわ」 

凛「凛は久しぶりにゃー」 

海未「私もお婆上様と住んでた頃はよく連れて行ってもらいましたが、最近は全くですね」 

穂乃果「お風呂が壊れた時以外行かないもんね」 

あんじゅ「私も絵里ちゃんと同じでお風呂屋さんは初めて」

535: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:13:25.19 ID:+T6JUyDe0
にこ「初めてでもそうでなくても、銭湯を存分に楽しみましょう。緊張してる子が居れば気を配ってリラックスさせてね」 

にこ「でも良かったわ。これで無事に大連続公開合宿を開催できる。今日中にグループリーダーに連絡入れないとね」 

絵里「それは私に任せて。それにしてもやっぱり地域に根付く絆っていうのは強いわね。とってもハラショーだわ」 

あんじゅ「この青空のように大きく広がってるんだね。歴史も絆も熱さも」 

海未「しかし、与えられた恩が多すぎて返すのが些か大変そうですね」 

にこ「確かにね。ゆっくりでもいいから返していきましょう」 

あんじゅ「そうだね」 

穂乃果「合宿も大会もラブライブも頑張ろうね」 

絵里「あ、そうだ。コンピュータ部から三十日の大会に名前をつけて欲しいって話よ」 

絵里「サイトで一日限りの大会みたいじゃインパクトが弱いって」 

にこ「だったら簡単ね。《大下克上》単純だけど分かり易くていいでしょ?」 

あんじゅ「それしかないもんね」 

海未「見事成しえてみせましょう。咲かせてみせます、邪の華を」 

穂乃果「大逆転があってこその人生だもんね」 

凛「胸がドキドキしてきたよ。楽しみにゃ~!」

536: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:14:55.19 ID:+T6JUyDe0
――日曜日 部室 SMILE 

あんじゅ「無事に全て解決したね」 

絵里「本番はこれからなんだけど、でも上手くいったことが弾みになるわ」 

海未「この調子で合宿をこなして、ライブを成功させたいものです」 

穂乃果「そうだね。そして、目標であるラブライブ本戦!」 

凛「でも、そういうの忘れて今日はこれからラーメンを食べに行くにゃ!」 

あんじゅ「うん、食べに行こう。餓えて死にそう。にこ~骨までしゃぶらせて」 

にこ「にこっ!? 捕食のレベルが進化してる!」 

あんじゅ「ヤンデレレベルが究極になった為、骨まで食べられるヤンデレに進化したの。……傍にいるよ」 

にこ「そんな恐ろしいヤンデレなんて傍に居させないわよ!」 

あんじゅ「しかしにこ頭巾ちゃんはあんじゅちゃんに食べられてしまいました。ハイパーエンド★」 

にこ「食欲なくなるようなこと言ってるんじゃないわよ。無事乗り越えたご褒美という名の親睦会に行くわよ」 

絵里「ラーメン屋は凛のお薦めのラーメン屋よね?」 

凛「うん! どの味のラーメンも美味しいから行く度にどれを食べようか迷うんだよっ♪」

537: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:16:09.89 ID:+T6JUyDe0
海未「ラーメンを食べに行くのは久しいですね。最後に行ったのはいつのことか」 

穂乃果「私と海未ちゃんとことりちゃんの三人で行ったのは確か中二の冬だったかな?」 

穂乃果「屋台のラーメン屋があったからついつい食べたんだよ。あの日のラーメンは美味しかったなぁ」 

海未「確か仲直りの切っ掛けだった気もします」 

あんじゅ「三人も喧嘩することあるんだ」 

海未「ええ、忘れたい記憶なので詳細は伏せますが」 

穂乃果「海未ちゃんのポエムを私とことりちゃんが読んだことに海未ちゃんが怒ってさー」 

海未「ちょっと穂乃果! 私が伏せたのに何故言うのですか!」 

穂乃果「だってあれ程恐ろしい海未ちゃんはかつてなかったんだもん」 

穂乃果「鬼を超えた形容し難い何かだったよ」 

あんじゅ「紅蓮女と同じで《恐人》の部類になってたったことだね」 

凛「きょうじん?」 

にこ「小説で出てきた独特の言い方で、簡単に言えば恐ろしいと思わせる人って意味ね」 

穂乃果「そんな生易しくなかったよ!」

538: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:18:01.88 ID:+T6JUyDe0
絵里「そういえば作詞をお願いした時にも海未が言ってたわね」 

絵里「去年のポエムブームが忘れたい歴史だって」 

海未「よく覚えてましたね」 

凛「でも海未ちゃんがメンバーに入ってからの去年だと中学三年生のことじゃないの?」 

あんじゅ「言ってなかったっけ? 海未ちゃんは中学三年生の秋からメンバーだったんだよ」 

凛「ことりさんがそうだったって言うのはかよちんから聞いたことあったけど、海未ちゃんもなんだ」 

にこ「私が考え付くような策はキラ星だってお見通しってことよ。一等星の輝きは伊達じゃないわ」 

穂乃果「にこちゃんはツバサさんの事を話す時は嬉しそうだよね」 

絵里「……」 

にこ「当然でしょ。キラ星は私の憧れなんだから」 

絵里(話を聞いた後だからツバサさんが何か悪い事をしたって訳じゃないのを十二分に理解してる) 

絵里(でも、素直にその実力を認めることを感情が拒む。何よりA-RISEに勝ったとしてにこは夢を取り戻せるのかしら?)

539: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:19:15.31 ID:+T6JUyDe0
絵里(根付いた諦めの力がどれ程強いのかはメンバーの中で私が一番深く知っている) 

絵里(でも、にこは強い。何よりもにこの心を深く包み込むあんじゅも居る。そして私達も……) 

海未「絵里、どうかしましたか?」 

絵里「……考え過ぎなのが私の悪い癖ね。周期的に陥る思考なのに解決策がないのが厄介」 

海未「にこの夢のことですね」 

絵里「自分が新しい夢を見つけたからよりもどかしいわ。喉から手が出るほどに」 

海未「気持ちは分かりますが、その使い方は間違えてます」 

絵里「え、そうなの?」 

にこ「さってと、それじゃあそろそろ行きましょうか」 

凛「うん! お昼だから早くしないと混んじゃうよ!」 

穂乃果「決めた! 何を食べるのかはお店についてから決める!」 

にこ「決めてないじゃない」 

あんじゅ「今決めないことを決めたんだよ。結局は決めてないんだけど……決めないことへのパラドックス」 

穂乃果「なんか格好いいね☆」

540: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:20:31.99 ID:+T6JUyDe0
――店内にて 

絵里「これが噂の券売機!?」 

にこ「切符だって同じようなものなんだから衝撃を受けるようなものじゃないでしょ」 

絵里「切符と注文するメニューじゃ別物よ」 

凛「ロシアにはこういうのないの?」 

絵里「ないわね。多分日本独自の文化だと思うわ」 

海未「穂乃果は何を食べるんですか?」 

穂乃果「うーん……悩むんだけど、普段食べないものがいいかなって。だから豚骨にする!」 

海未「太りますよ?」 

穂乃果「大丈夫だよ。運動沢山してるんだから」 

海未「確かにそうですけど」 

あんじゅ「微妙にフラグっぽい会話だったね」

541: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:21:43.56 ID:+T6JUyDe0
にこ「ま、穂乃果が太ったところで海未が鬼となってダイエットさせるから心配ないでしょ」 

あんじゅ「それもそうだね。にこは何を食べる?」 

にこ「二択で悩んでるのよねー。今日は暑いし塩分補給に塩ラーメンにするか、それとも好きな味噌ラーメンにするか」 

あんじゅ「だったら私が味噌ラーメン頼むからにこは塩ラーメン頼んで。半分ずつにしようよ」 

にこ「ラーメンを半分って難しいけど、でもいい案だわ。そうしましょう」 

絵里「凛は何を頼むのかしら?」 

凛「今日は野菜が沢山食べたい気分! だから野菜ラーメン。絵里ちゃんは?」 

絵里「私は最初から決まってるの。初めてくるラーメン屋の券売機は左上ってね」 

絵里「一番のお薦めが左上にするのが基本なんだって、亜里沙がそうテレビで言ってたって言ってたわ」 

にこ「回りくどっ! それって普通にテレビで見た情報だったら重要視しなかったでしょ」 

あんじゅ「今日も今日とてエリーお姉ちゃんのシスコンっぷりは健在だね」 

凛「シスコンより今はラーメンだよ。早く買って渡さないと迷惑になっちゃう」 

絵里「それもそうね。券売機にはしゃいでたわ。早く席に着きましょう」

542: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:23:14.14 ID:+T6JUyDe0
――お食事中 

あんじゅ「そっちのスープが飲みたいな」 

にこ「飲めばいいでしょ。レンゲあるんだから」 

あんじゅ「あ~ん♪」 

にこ「しょうがないわねぇ。ほら、飲みなさい。あーん」 

あんじゅ「んーっ♪ 美味しいにこ☆」 

にこ「それは良かったわね」 

あんじゅ「今度は私がお返しする! はい、あ~ん♪」 

にこ「はいはい。あーん……んっ、ごほっごほっ。小さいメンマまで丸呑みしちゃったわ」 

あんじゅ「にこってばお茶目さんだよね」 

にこ「あんたの掬い方が悪いのよっ!」 

海未「とても平和ですね」 

穂乃果「頭を悩ます問題が全部解決したんだもん。平和にもなるよ」 

絵里「その解決もまたにこを中心とした絆のお陰なのよね」 

凛「にこちゃんを中心とした?」

543: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:24:58.73 ID:+T6JUyDe0
絵里「ええ。もしにこがツバサさんともしスクールアイドルになって再会することを約束していなかったら」 

絵里「きっとにこはなろうと思いながらも、きっと高校生になってアイドル研究部を立ち上げることはなかった筈よ」 

絵里「そうなってたら虎太郎さんという方のにこのお父さんへの約束が果たせぬことになってしまっていた」 

海未「ありえますね」 

絵里「今回の問題を解決したのはにこのお婆様との絆。商店街の方との絆。学園祭で迷子をお世話した絆」 

絵里「そして、」 

穂乃果「私との絆だね」 

絵里「そうよ。それも海未を勧誘し、その結果穂乃果を勧誘した。全てにこのお陰でしょ?」 

絵里「運命すら感じるこの道こそカリスマと言わずに何と呼ぶのかしら」 

にこ「……あのねぇ、絵里のシスコンっぷりを私にまで振るうんじゃないわよ。私はそんな凄いもんじゃないって」 

にこ「自分の力で解決できてない時点で全然ダメダメなのよ。って、こういうといつもの切り替えしするんでしょ?」 

絵里「にこが頑固なのが悪いのよ」 

あんじゅ「はい、にこ今度は交換。私が塩食べる~」 

にこ「絵里はあんじゅくらいお気軽でいいのよ。誰が中心かなんて連続ドラマの脚本が今回は誰だったのかくらい気にもしないことよ」 

穂乃果「あ~確かに一人が書いてるものですら脚本が誰だったのかとか気にしないなー」

544: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:26:00.79 ID:+T6JUyDe0
凛「凛も面白ければそれでいいって思っちゃう」 

あんじゅ「スープでフヤフヤになった海苔って好きじゃないからにこにあげるね」 

にこ「しょうがないからメンマを少しあげるわ」 

海未「にこ」 

にこ「んー? 話してばかりだとラーメンが伸びちゃうわよ」 

海未「誰が書いているのか気にする人だって居るんですよ。そして、そのことに強く影響を受ける人もまた居るんです」 

海未「色々と悩んでいましたが、この場の方がSMILEらしいので言いますね」 

海未「にこ達姉の影響を受けて成長した私、園田海未は次期生徒会長になることを受諾します」 

絵里「本当!?」 

海未「ええ、自信がなかったのですが……妹が先に勇気を見せれば姉のにこの退路を断つことになりそうですから」 

にこ「……」 

海未「私はにこにアイドルになってもらうという夢を叶える為に手段は選びません。邪道大歓迎です」 

にこ「……海未」 

絵里「ここまで妹に言わせたら逃げてばかりじゃいられないわよ。本格的に覚悟を決めるべきじゃないかしら?」 

にこ「絵里」

545: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:27:02.75 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「予選を通過して、本戦を終えたら今度は合同学園祭。楽しい行事がいっぱい待ってるよ」 

あんじゅ「楽しいことを体験しながら自分の中でゆっくりと答えを見つけ出すくらいでいいと思うの」 

あんじゅ「普段から無駄に考えると答えが遠ざかるんだよ。焦らせちゃ駄目だよ。……はい、あ~ん」 

にこ「あんじゅ――んぐっ!」 

凛「感動してる瞬間に容赦なく麺を食べさせる。すごいにゃー」 

あんじゅ「ということでシリアス終了。というか、ラーメン屋さんで青春トークなんて恥ずかしいよ」 

あんじゅ「カラオケ屋で正義や邪道を語るくらいに恥ずかしい」 

海未「うっ! ……わ、私の忘れたい歴史の一つ」 

穂乃果「噂の海未ちゃん勧誘の邪道だね。海未ちゃんとにこちゃんがあんじゅちゃんの手の平で踊らされたっていう」 

凛「その話詳しく聞きたいな」 

海未「止めて下さい! あれは若気の至りです」 

絵里「ねぇ、にこ」 

にこ「んー?」 

絵里「もし、にこが考えた末にアイドルにならなくてもいい。でもその時はお願いがあるの」 

にこ「何よ?」

546: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:28:21.10 ID:+T6JUyDe0
絵里「私がいつか立ち上げるだろう劇団の団員になって欲しいの。そのカリスマ性を買いたいのよ」 

にこ「ま、その時にやることなかったら手伝ってあげるわ」 

あんじゅ「にこがするなら私も勿論一緒にやるよ!」 

絵里「ええ、大歓迎だわ。そうだ、凛は夢ってあるの?」 

凛「んーっ、難しいなぁ。でも凛は走るのがやっぱり好きだからマラソン選手とか目指すかも」 

海未「体育大学ですか。音大程ではありませんがかなり知性が必要とされた筈です」 

絵里「だったら猛勉強が必要ね。今から苦手科目を徹底的に潰していけば大学受験には間に合う筈よ」 

穂乃果「うわぁ……大変だね、凛ちゃん。陸上にスクールアイドルに猛勉強」 

海未「何を他人事みたいに言ってるんです。穂乃果だって経営者になる為には大学に行くんでしょ?」 

穂乃果「家業なんだから大学なんていいんじゃないかなー」 

海未「よくありません! 大学に通いながらおじさんに鍛えてもらって穂むらの味を継ぐ努力をするのが穂乃果の未来です」 

海未「穂乃果は『頑張る頑張る』と言いながら昔のような加速的頑張りが出てませんからね」 

海未「王子様詐欺になりつつあるので私もそろそろ本格的に厳しくしていこうと思います。生徒会長にもなることですし」 

穂乃果「穂乃果に厳しくするのと海未ちゃんが生徒会長になるのって関係ないよね!?」 

穂乃果「それに穂乃果は穂乃果で色々と……正体を知られちゃいけない変身ヒロインの気持ちが分かったよ」

547: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:29:43.46 ID:+T6JUyDe0
海未「何を言ってるのですか?」 

穂乃果「頑張ってないわけじゃないんだよ?」 

海未「問答無用です!」 

凛「……勉強は嫌だにゃー」 

穂乃果「海未ちゃんの熱血モードの扱きに比べたら絵里ちゃんによる猛勉強なんてマシな方だよ!」 

海未「そうですか。では面倒かもしれませんが絵里、時間があれば生徒会で忙しい時は穂乃果の勉強を見てあげてください」 

絵里「ええ、いいわよ。私の猛勉強が海未よりマシなのかどうかその身を持って知ってもらうわ」 

にこ「お、おかしいわね。今日は親睦会にきたのに空気が無駄に重いわ」 

あんじゅ「そうだねー。このチャーシュー美味しいね。噛むと口の中で蕩けていくみたい」 

にこ「そうね。今度くる時はチャーシュー麺にしようかしら」 

あんじゅ「じゃあ私は凛ちゃんが美味しそうに食べてた野菜ラーメンにしようかな」 

にこ「チャーシューと野菜を半分ずつにすればバランスいい感じになるわね」 

あんじゅ「そうだね♪」 

絵里「その時は亜里沙とこころちゃんとここあちゃんも連れて来てあげましょう」 

あんじゅ「ハーフラーメンとハーフチャーハンのセットもあるみたいだし、満足してもらえそう」

548: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:30:57.17 ID:+T6JUyDe0
にこ「そうね。ただ、少なくとも予選を終えた後ね」 

穂乃果「どうして明日ってくるのかな?」 

凛「眠らなくてもきちゃうよね」 

穂乃果「たまに昨日に戻ってくれてもいいのに」 

凛「そうだね。そうすれば一日分お得だもんね」 

海未「穂乃果だけでなく凛まで。二十四時間体勢で勉強したいということですか」 

海未「分かりました、ラブライブ後の夏休みの過ごし方のスケジュール表を二人分製作しましょう」 

穂乃果「そんなこと言ってないから!」 

凛「そんなことになったら凛は明日に向かって走り続けるよ!」 

あんじゅ「平和だねぇ」 

にこ「そうね。あ、チャーシューが下に隠れてた。ほら、半分あげるわ。あーん」 

あんじゅ「あ~ん♪」

549: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:31:50.63 ID:+T6JUyDe0
――七月 生徒会 三年生組 

理事長「お仕事中ごめんなさいね。今大丈夫かしら?」 

絵里「理事長。お疲れ様です。どうぞ、今から休憩を入れようと思ってたところです。どうぞそこの椅子に座って下さい」 

理事長「それじゃあ、少しの間だけ失礼するわね」 

にこ「理事長がここに来るなんて何か問題がありましたか?」 

あんじゅ「きっとにこが処理した懸案全てが問題だったんだよ」 

にこ「ミスがないように二人よりゆっくりやってるわよ!」 

理事長「ふふっ。悪い知らせではありません。寧ろ応援というべきかもしれませんね」 

にこ「応援、ですか?」 

理事長「これらのスクールアイドル雑誌の編集者から取材の申し込みがありました。全て合宿中ですね」 

絵里「凄い……取材が五件もですか?」 

あんじゅ「これってもしかしてスクールアイドル雑誌の全部じゃない?」 

にこ「いいえ。A-RISEの表紙が特徴の元祖スクールアイドル雑誌の『BiBi』だけないわ」

550: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:32:54.30 ID:+T6JUyDe0
にこ「あそこは本当に上位のスクールアイドルを特集する雑誌だからね。私達はそういうレベルじゃないわ」 

にこ「二十位以内に入り込んでない時点でお呼びでないのよ」 

あんじゅ「そう言われると悔しいなぁ」 

絵里「しょうがないわ。というより、それ以外のスクールアイドル雑誌関連の人達が取材してくれるだけでも追い風でしょ」 

あんじゅ「それはそうだけど……」 

にこ「今までは無料のタウン誌と『Printemps』で取材して貰っただけじゃない」 

にこ「それがこんなに注目浴びてるのよ。悔しがるなんて贅沢。誇りに思うべきにこよ」 

あんじゅ「……うん」 

理事長「こちらの返事待ちですがどうしますか? 答えは決まっているみたいですが」 

にこ「勿論受けさせていただきます。これに反対するリーダーは今回の合宿に参加する訳ないですし」 

理事長「分かりました。日程の方は向こうの都合と折り合いをつける形で私の方から通しておきます」 

にこ「ありがとうございます」 

理事長「……それにしても凄いですね。スクールアイドル。正直あなた達が活動するまで詳しくなかったのですが」

551: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:34:16.29 ID:+T6JUyDe0
理事長「設備も何もないような学院からこんなに注目される存在になるなんて」 

絵里「理事長の厚い擁護があってこそだと思っています」 

にこ「そうね。穂乃果勧誘の際のことなんて普通なら停学受けてもおかしくないことだったし」 

あんじゅ「停学どころか美味しいお寿司まで頂いて」 

理事長「私は未来に向かって輝く子供の味方なだけですよ」 

にこ「SMILEの次期リーダーは穂乃果になります。最近は本当にやる気が目覚しいので、来年は色んな無茶をするかもしれません」 

にこ「少しでも寛大な処置をお願いします」 

理事長「流石に約束はし兼ねますが、でも穂乃果ちゃんの無茶は懐かしいですね」 

理事長「昔はうちの子も穂乃果ちゃんみたいに腕白だったから色んな無茶をしては時に怪我をすることもありました」 

理事長「沢山の無茶をしたお陰で最近は随分と女の子らしくなりましたが」 

にこ(キラ星や英玲奈さんのブログだと随分と破天荒なことしてる子みたいに言われてるけど……言わぬが花ね) 

理事長「どんな無茶を仕出かすのか少しだけ楽しみでもありますね。理事長という立場ではそうは言えませんが」 

あんじゅ「でも穂乃果ちゃんには海未ちゃんがついてるから大きな心配は不要かもしれませんね」

552: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:35:17.98 ID:+T6JUyDe0
理事長「いえ、普段は海未ちゃんは穂乃果ちゃんに厳しいです。ですが、一度正しいと思ったら一緒に無茶をする子なんです」 

理事長「だからこそ今でも親友で居られるんですよ。常に一緒ではなくても、根っこの部分は同じなんです」 

にこ(確かに認めた相手には若干甘くなるし、中二病という大きな発火点があるものね) 

にこ(それも魅力なんだけど、悪い意味で病気が炸裂したらと思うと怖くもあるわ。反面、面白くなりそうだけど) 

理事長「そうそう。生徒数が戻ってきたこともあって静かだった職員室にも活気が戻ってきているようですよ」 

理事長「これも皆さんのお陰ですね。今回の合宿もUTX学院との合同学園祭も張り切っています」 

絵里「ただ、合同学園祭は音ノ木坂にとって毒になるのか薬になるのか現状では分かりません」 

絵里「私は今の音ノ木坂なら向こうに憧れるなんてことはないと信じています」 

絵里「でも皆が皆私のように思ってくれるのかは分かりません。だから来年度の生徒数が其れが原因で減る可能性もあります」 

絵里「そうなった時が一番申し訳ないです。よくしてくれている先生方に恩を仇で返すことになってしまうから」 

理事長「大丈夫ですよ。それに噂に聞いて知っていたと思いますが、あなた達が入学した頃」 

理事長「このまま減り続けるようなら学院は廃校にって上から通達があったんです」 

理事長「それがこうして活気に溢れている生徒達に包まれている。夢のような光景があるんです」

553: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:36:33.71 ID:+T6JUyDe0
理事長「それを生み出してくれたあなた達を悪く思うことなんてありえませんよ」 

理事長「それどころか過去最高の生徒会長の一人として語られることでしょうね。穂乃果ちゃんのお母さんのように」 

あんじゅ「穂乃果ちゃんのお母さんって生徒会長だったんですか?」 

理事長「ええ。私の方が一年生の時にあの人は三年生で生徒会長をしていたんですが、二歳しか変わらないとは思えないくらい立派でした」 

絵里(私にとっての会長のような存在だったのね) 

理事長「絢瀬さんは今の一年生からはきっと同じように尊敬の目で見られていると思いますよ」 

絵里「そうでしょうか? 正直、全然自信がありません」 

理事長「即座に付く自信もあれば、後から付いてくる自信もあるんですよ。もう一つだけ思い出話」 

理事長「きぃ先輩――あ、これは穂乃果ちゃんのお母さんのことね。きぃ先輩に凄く懐いていた先輩が居たの」 

理事長「私の一つ上にあたる先輩だったんだけど、高校もきぃ先輩が居るからって音ノ木坂に入学して」 

理事長「生徒会にも入って、一生懸命に仕事をしてて私達からみればその人もまた凄い先輩だったわ」 

理事長「でも、本人はきぃ先輩を基準に考えてるから自分のことが凄いって気付いてなかったの」 

にこ「人のことすっごい凄いみたいに言ってる割に自分の凄さに気付かない。どこかの長女にそっくりね」

554: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:37:41.54 ID:+T6JUyDe0
絵里「だ、誰のことかしら」 

あんじゅ「うふふ。長女と言えば穂乃果ちゃんもそうだけど、自分でもその単語を使ってる人は一人だけだよね★」 

絵里「お、思いつかないわ」 

理事長「ふふっ。秋になってきぃ先輩が次の生徒会長に指名したのがその先輩で本人は本気で無理だと思って断ってたの」 

理事長「でも、尊敬する先輩に貴女しか居ないって強く推されて根負けしたの。推薦されるだけの存在だった」 

理事長「それなのに生徒会長の時はずっときぃ先輩に比べて自分は全然駄目な生徒会長だって言ってたわ」 

理事長「誰もが認めていながら自分だけが認めてあげないっていう可哀想なパターン」 

理事長「でもね、学園祭の日にきぃ先輩が遊びに来て先輩に言ったの。貴女に任せて本当に良かったって」 

理事長「色んな人に貴女の評価を訊いたけど、誰もが満足していたわ。私でも出来なかったことを貴女はやったの」 

理事長「それを本人が認めないのは勿体無いわ。もっと自分に自信をつけて、心に栄養を与えてあげて」 

にこ「……そんな素敵な人からあの穂乃果が」 

絵里「にこ。それは穂乃果に失礼よ」 

にこ「あ、うん。でも穂乃果って基本的にゆっくりマイペースみたいなイメージ強いから」

555: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:38:50.67 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「でも最近は何か心の変化があったみたいで、今まで以上に熱心で集中してるよね」 

絵里「そうね。それがずっと続いてくれれば来年も安泰なんだけど。それで、その先輩はどうなったんですか?」 

理事長「きぃ先輩の言葉をきちんと理解し、生徒会長を終えてからも色んな生徒の相談役として大人気でしたよ」 

理事長「それでね、きぃ先輩の去り際の『自信が付けば絶対に教師に向いてるわ』って言葉が夢になって」 

理事長「今は中学校の先生をしているの。ことりと穂乃果ちゃんと海未ちゃんが三年生の時に担任を務めていたんですよ」 

理事長「三者面談で再会した時は驚いたし、そこで知ったんですけど」 

絵里「穂乃果のお母様は凄く素敵な方ですね。私も人に夢を与えられるような存在になりたいです」 

にこ「どうしてそこでにこを見るのよ」 

あんじゅ「私も人に夢を与えられるような存在になりたいです」 

にこ「なんで絵里の言葉をあんたまで繰り返してんのよ! というか、あんたが敬語を使うと変な気分だからやめなさい」 

理事長「絢瀬さんだけでなく矢澤さんとあんじゅさんも自分の心にきちんと栄養を与えられる人になってください」 

理事長「少なくとも後から付いてくる自信もあるということを覚えておいて下さいね」 

理事長「長々と私の昔話に付き合ってくれてありがとう。私は失礼するわね」

556: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:39:45.59 ID:+T6JUyDe0
絵里「いえ、とても為になりました」 

あんじゅ「面白かったです」 

理事長「合宿にラブライブに学園祭。体を壊さないように体調管理は徹底してください」 

にこ「はい、充分に気をつけます」 

理事長「それでは」 

絵里「縁は巡るって言うけど、素敵な縁が輪を描いて和を築く。そんな輪に入れればあの頃の私に誇れる自分になるわ」 

絵里「ううん、もうその輪の中に入ってるのかもしれない。にこが作ったこの優しい輪の中に」 

あんじゅ「うふふ♪」 

にこ「……」 

絵里「さ、休憩おしまい。二人共もう少し手伝ってね。そしたらお姉ちゃんが帰りにケーキ奢ってあげる」 

絵里「ううん、待って。亜里沙も呼んで矢澤家で家族一緒にケーキを食べた方がいいわ。そうしましょう!」 

絵里「そうと決まれば考え込んでる暇なんかないわよ。ほら、ちゃっちゃっと終わらせて笑顔の輪を作るわよ!」 

あんじゅ「は~い♪ にこ、頑張ろうねっ」 

にこ「なんというか、うちの長女こそ真のマイペースな気がしてならないわ」

557: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:40:35.26 ID:+T6JUyDe0
――七月十二日 部室 SMILE 

絵里「にこ、面白い連絡が入ったわ」 

にこ「どんなの?」 

絵里「十周年記念によるラブライブ仕様一部変更のお知らせ。十日後の二十二日の午前十時からランキングが非公開へ」 

絵里「予選終了後の午後三時の発表は一位から順に公開って流れになるみたい」 

穂乃果「まるで私達の合宿に合わせてランキングを隠すみたいだね」 

凛「こんな偶然もあるんだね☆」 

海未「いえ、これは確実に意図的に変更したとみて間違いないでしょう。どうでしょうか、あんじゅ」 

あんじゅ「海未ちゃんの意見で間違いないと思うよ。私達へのエールというか大会を盛り上げて欲しいってメッセージだね」 

穂乃果「どうしてエールになるの?」 

絵里「合宿中に毎日ランキングを見て、変化がない日が続けばこの合宿には意味がないのかもしれない」 

絵里「このままだと三十日の大下克上だって効果が表れないないんじゃないか。っていうことになったら凛はどうなると思う?」

558: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:41:34.83 ID:+T6JUyDe0
凛「どんどんやる気が落ちていくと思うよ。自分では崩れたフォームを直してるつもりなのに、逆にタイムが落ちる時と同じで」 

絵里「いい例えね、流石陸上部の期待の新人。それだけじゃなくて、変な焦りだって生まれてくる」 

絵里「他グループ内でのギスギスした関係が生み出して、最悪は合宿は空中分解のままで失敗。大下克上もグダグダになる」 

絵里「そんな可能性をなくす唯一の方法がランキングの非公開。私達じゃ出来ないことを大会本部がしてくれたのよ」 

にこ「こんなこと十周年記念って免罪符がなければ贔屓と取られてもおかしくない暴挙だけどね」 

海未「しかし、今までとおりの現在上位二十位まで入ってるグループがそのまま予選通過するだけよりは見る側としては面白くなるかと思います」 

穂乃果「そうだね。隠されてる分、二十位から遠くったって入れてるかもしれないって希望が持てるし」 

にこ「緊張感は維持しないといけなくなるけど」 

凛「でも、こういう緊張感に打ち勝てないと大会で緊張し過ぎて何も出来なくなっちゃうにゃ」 

穂乃果「凛ちゃんの言うとおりだよ。スクールアイドルならこれくらいの緊張に負けたりしないよ」 

海未「穂乃果は本当に昔の感じに戻ってきましたね。何事にも捕らわれない自由な行動力」 

穂乃果「完全にやる気モードだから!」

559: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:43:06.73 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「何事にも捕らわれない自由さ……SMILE二代目リーダーはにこの邪道を受け継げる逸材になるかもしれないよ」 

にこ「そんな駄目なところを受け継がせる訳ないでしょうが!」 

海未「その点については安心してください。穂乃果は悪知恵は働きませんから」 

絵里「真っ直ぐさが武器だものね」 

凛「時々本当に何考えてるのか分からないことがあるくらいだし」 

穂乃果「みんなして穂乃果のこといじめてる!?」 

にこ「いじめてなんてないわよ。期待の裏返しってやつじゃない」 

あんじゅ「残念ながらSMILEは引き継がれても邪道シスターズは私達の代で永久欠番だね」 

海未「欠番って、言いたいことは伝わりますが間違ってますからね?」 

穂乃果「まっ、なんでもいいや! 大会本部が応援してくれたんだから、見事に成功させて頑張らないとね!」 

凛「よ~しっ! それじゃあ屋上に戻って練習再開しよう♪」 

海未「ええ、練習をっと言いたいところですが。その前に二人には昨日出した宿題を返してもらいましょう」

560: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:44:19.06 ID:+T6JUyDe0
海未「もしやっていなかった場合は……分かっていますね?」 

穂乃果「も、勿論やってきたよ。やってきたんだけど、途中いくつか分からなくて後でやろうとしたら忘れちゃって」 

凛「り、凛昨日は見たい番組があって、それを最後まで観てたらついつい忘れちゃって」 

海未「穂乃果は解いてある問題の数に応じて罰を緩めます。凛、あなたには相応の罰を与えますので覚悟してください」 

凛「絵里ちゃん助けて!」 

絵里「自業自得よ。勉強は他の誰でもない自分の為なんだから。しっかりとすること」 

凛「あんじゅちゃん助けて!」 

あんじゅ「今から勉強をしっかりすれば、三年生になった時の夏休みが楽になるから頑張ってね」 

凛「にこちゃん助けて!」 

にこ「ちょっと待っててー。海未の罰が終わったら助けてあげるから」 

凛「それ意味ないよ!」 

海未「さて、凛。覚悟は出来ましたか?」 

凛「にゃ~っ! 誰か助けてーーー!!」

561: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:45:48.32 ID:+T6JUyDe0
――星と太陽 七月 ツバサ&英玲奈 

英玲奈「今度のライブの件なんだが」 

ツバサ「大下克上のことね。変装する準備はもう用意してあるわ。シークレットブーツって視点が大きく変わって面白いわ」 

ツバサ「勿論変装だからね、当日は黒髪のツインテールで行くことにするから他の人にバレることはない筈よ」 

英玲奈「自分達のライブの前に思い浮かぶのが向こうのライブか」 

ツバサ「あ、もしてかしてA-RISEのライブのこと?」 

英玲奈「真っ先に普通気が付くだろう」 

ツバサ「花陽さんも真姫さんもベクトルは違えどいい感じよ。花陽さんは愛情の強さからラブライブが近づくにつれて根性が座ってきてる」 

ツバサ「真姫さんの方は頭の回転が英玲奈みたいに速いから、後は身体が付いてくれば怖いものなしね」 

英玲奈「若干心配していたが、きちんと見ているんだな」 

ツバサ「当然でしょ。私はA-RISEのリーダーなんだから」 

英玲奈「そう心配になるくらいに思考が音ノ木坂方向に向いている気がするんだが」 

英玲奈「そもそも最初の頃はライバルだから優劣を付けるとか言ってた筈なのに、いざ対決出来るような状況が近づくと」 

英玲奈「優劣なんかよりもお互い魅せ合いたいみたいな意見に見事変わっているし」 

ツバサ「UTX学院のスクールアイドルとしては全てより優れていることを目指さなければいけない」

562: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:47:00.78 ID:+T6JUyDe0
――星と太陽 七月 ツバサ&英玲奈 

英玲奈「今度のライブの件なんだが」 

ツバサ「大下克上のことね。変装する準備はもう用意してあるわ。シークレットブーツって視点が大きく変わって面白いわ」 

ツバサ「勿論変装だからね、当日は黒髪のツインテールで行くことにするから他の人にバレることはない筈よ」 

英玲奈「自分達のライブの前に思い浮かぶのが向こうのライブか」 

ツバサ「あ、もしてかしてA-RISEのライブのこと?」 

英玲奈「真っ先に普通気が付くだろう」 

ツバサ「花陽さんも真姫さんもベクトルは違えどいい感じよ。花陽さんは愛情の強さからラブライブが近づくにつれて根性が座ってきてる」 

ツバサ「真姫さんの方は頭の回転が英玲奈みたいに速いから、後は身体が付いてくれば怖いものなしね」 

英玲奈「若干心配していたが、きちんと見ているんだな」 

ツバサ「当然でしょ。私はA-RISEのリーダーなんだから」 

英玲奈「そう心配になるくらいに思考が音ノ木坂方向に向いている気がするんだが」 

英玲奈「そもそも最初の頃はライバルだから優劣を付けるとか言ってた筈なのに、いざ対決出来るような状況が近づくと」 

英玲奈「優劣なんかよりもお互い魅せ合いたいみたいな意見に見事変わっているし」 

ツバサ「UTX学院のスクールアイドルとしては全てより優れていることを目指さなければいけない」

563: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:48:07.14 ID:+T6JUyDe0
ツバサ「そう心を偽っていたんだけど、再会出来るとなればそんな偽りは消えてしまったわ」 

英玲奈「いや、最初から全く隠れてすらいなかった」 

ツバサ「しょうがないわよ。私の始まりであり、憧れの存在なんだから」 

英玲奈「今まではツバサの妄想というか、過大評価に過ぎないと思っていた」 

英玲奈「でも、いざ調べてみれば中々に面白いことをしてきたようだ。スクールアイドルなき学院から上り詰めようとするのは伊達ではない」 

ツバサ「漸く気が付いた? SMILEがスクールアイドル誌で初めて載った時に買った過去を誇れるわね」 

英玲奈「それはどうかは知らないがあの雑誌は結局何冊買ったんだ?」 

ツバサ「五冊か六冊だったかしらね。大事に取ってあるわよ」 

英玲奈「買い過ぎだ。一応訊くが私達A-RISEが初めて載った雑誌は何冊買った?」 

ツバサ「二冊ね。きちんと一冊は残してあるわよ」 

英玲奈「……。まぁいい。まだ噂程度の話だがツバサには嬉しいだろう知らせがある」 

ツバサ「何かしら?」 

英玲奈「オトノキ合宿で複数の出版社から取材のオファーが入ったらしい」 

ツバサ「変装するのにお小遣い全部使っちゃったのよね。子供の頃から貯めてるお年玉を切り崩す時がきたわね」

564: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:49:32.19 ID:+T6JUyDe0
英玲奈「私やことりの前ではまだいいが、西木野と小泉の前ではそのファン過ぎる一面は隠してくれ」 

英玲奈「大会の決まりの時にあれだけ嬉しそうに笑っていたからバレバレだが、やる気を削る可能性があるからな」 

ツバサ「その辺はきちんと注意してるから安心して」 

英玲奈「かつてない程に不安だからこそ、わざわざ口にしたんだ」 

ツバサ「でもあの二人のライバルもSMILEに居るって話だし、やる気が燃え上がるとは思うけどね」 

英玲奈「ことりもそうだが、中々にオトノキとは縁があるな」 

ツバサ「縁があるなんてものじゃないわ。これは私とにこにーが再会する為に彩る為の運命よ」 

英玲奈「そこまで言う割にはハロウィンイベントの矢澤にこに見に来るなという条件はなんだったんだ?」 

英玲奈「逆の立場になった矢澤にこはツバサにチケットまでプレゼントしたというのに」 

ツバサ「再会はラブライブでって盲目的に思ってたし、それに今回と違ってSMILEのライブ前に変装して私のライブを見てとは言えないでしょ?」 

ツバサ「なんてそれは後付けの言い訳で、太陽と星の器の大きさの違いだったわ」 

ツバサ「あの頃の私はまだにこにーに見られる自信がなかったのよ。でも、このメンバーなら別」 

ツバサ「このまま本戦までに完璧に仕上げれば文句の付けようがないわ。にこにーに胸を張って見てもらえる」 

英玲奈「そこまで言い切れるようなら何も言わない。後は好きにするがいいさ。私はただ最後まで付き合うだけだ」 

ツバサ「ありがとう、英玲奈。好きにさせてもらうわ」

565: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:50:19.32 ID:+T6JUyDe0
――ことりぼっちⅡ ケーキ屋 

ことり「と言う訳なんですよ」 

先輩「ふーん。というか、なんで私は南の愚痴ばかり聞かなきゃいけないわけ」 

ことり「A-RISEの愚痴を語れるのはアンチ先輩しか居ないですから」 

先輩「というか、特待生なんだから愚痴ってないで本業の方をやったらどうなの」 

ことり「クラスに友達が居ないまま卒業まで行きそうですからね。お陰さまで効率を極めました」 

ことり「だから課題の方も入学前とは比べ物にならないくらい簡単になってます」 

先輩「頼る相手が居ないから強くなったわけね。寂しいと言うべきか逞しいと言うべきか」 

先輩「でもUTXって元々はそういう学校だから。南の所為で忘れかけてたけど」 

ことり「私の所為だけじゃないと思いますよ。生徒会長さんが助け合う雰囲気を出してますから」 

先輩「そうね。有能だけど変わり者って話だけど」 

ことり「凄く素敵な性格ですよ」 

先輩「人柄の良さと性格は別物でしょ。あんまり知らないからどうでもいいけど」

566: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:51:45.85 ID:+T6JUyDe0
ことり「どうでも良くないですよ。私もお世話になりましたし、花陽ちゃんもお世話になったみたいです」 

先輩「そんなこと言われても私には関係ないし」 

ことり「アンチ先輩とライブが出来るのは会長さんが合同学園祭を実行してくれたからです」 

先輩「それ関係あるの?」 

ことり「関係大有りです。新しい風を取り入れてくれたお陰でより自由な出し物が出来るようになったんです」 

ことり「もし会長さんが違っていたらきっとA-RISEの私は個人として他の人と出ることは許されなかった筈です」 

先輩「いや、私はそれはそれで別に良かったけど」 

ことり「アンチ先輩は嘘を吐く時に視線を逸らす癖があります」 

先輩「……南とのライブっていう目標があるから日々のレッスンに力を入れられる面があるのは確かだからね」 

先輩「先生にも褒められることが多くなってきたし、感謝はしてるわ」 

ことり「いいえ、こうして愚痴を聞いてもらってるのでお互い様です」 

先輩「はぁ~。なんというかカリスマと言っていいのか分からないけど、本当に南って独特の雰囲気よね」 

ことり「そうですか?」

567: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:52:47.54 ID:+T6JUyDe0
先輩「私が後輩の面倒をこうして見ることになるなんて思わなかったもの」 

ことり「アンチ先輩は何だかんだで面倒見いいから、大学だとモテる可能性大きいです」 

先輩「卒業後をどうするか決めなきゃいけない時期だから、そんな未来はどうでもいいわ」 

ことり「教師とか似合いそうです」 

先輩「UTXの芸能科に入っておいて教師を目指すっていうのもなんだか癪ね」 

ことり「じゃあアイドルを目指すべきです」 

先輩「等身大の私じゃ限界は見えてるのよね。って、否定的な考えばかり浮かんできて思考が迷宮を彷徨ってるわ」 

ことり「んーアンチ先輩ならある時に閃くみたいに将来を決めそうですね」 

先輩「それでもいい。学園祭が終わるまでには閃いて欲しいものだわ」 

ことり「取り敢えず今はケーキをお代わりするかどうかを考えましょう」 

先輩「そうね。……私は南と違って今日も充分運動したし、もう一個くらい平気ね」 

ことり「そういうことを言われるとお代わりし難いじゃないですか」 

先輩「私だけ悩むのは不公平だもの。南は美味しく頂く私の前で大いに羨むといいわ」 

ことり「はぅん。アンチ先輩の意地悪ぅ」

568: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:53:42.34 ID:+T6JUyDe0
――いつか頂制する日まで まりぱな 

真姫「ねぇ、花陽」 

花陽「何?」 

真姫「今日の練習って本当にスクールアイドルに必要だったの?」 

花陽「ど、どうなのかな?」 

真姫「絶対に意味ないと思わよ。だって即興劇とスクールアイドルじゃ関係ないじゃない!」 

花陽「必ずしもって訳じゃないよ」 

真姫「嘘、絶対関係ないわ」 

花陽「ラブライブの歴史の中で一曲の時間を長くして劇を組み合わせたグループがあったの」 

花陽「新しい試みが上手くいったお陰で予選を見事に突破したの」 

真姫「でもA-RISEはそんなことしないから意味ないじゃない」 

花陽「……でも、ツバサさんが考えてくれたことに無駄はないと思う」 

真姫「私だってツバサさんを疑ってる訳じゃないけど、今回だけは納得出来ない」 

真姫「それにそういう奇策って一度だけしか有効じゃないのが常でしょ?」 

花陽「う、うん。確かにそういうのを真似ようとしたグループもあったけど、結局上手くはいかなかったみたい」

569: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:54:55.31 ID:+T6JUyDe0
真姫「完全に意味がないことさせられただけじゃない。無駄に何度も何度もさせられて」 

花陽「うーん、どうなのかなぁ」 

真姫「明日も今日と同じだったら絶対に抗議するわ!」 

花陽「でも真姫ちゃん」 

真姫「何よ?」 

花陽「無駄なことをさせられる余裕がないからライブの回数をただの一回にしたんだよ」 

花陽「意味もないことをして一日のレッスンを無駄にさせるなんてやっぱりありえないよ」 

真姫「……それは、そうだけど。今日の練習に意味があるなんてどうこじつけたって難しいじゃない」 

真姫「それともアイドル好きな花陽になら考えつくの?」 

花陽「アドリブを鍛える為。緊張に慣れてそれを自覚する為。レッスンすればする程頂の高さを実感して焦ってきてたからそれを解す為」 

花陽「その何れか、もしかしたら全部なのかも。ううん、もっと他の思惑があるのかも」 

真姫「驚いた。見ようによってはそういう見解もあるのね」 

花陽「体力作りだけじゃなくて精神面も鍛えていくつもりなんだろうね」 

真姫「上等よ。心身ともに完璧にならなきゃ意味がないもの。それがA-RISEのメンバーに与えられた使命でっしょー」 

花陽「うん、私達の代が一番って言われる目標の為にも頑張らないと」

570: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:55:54.78 ID:+T6JUyDe0
真姫「そうよ。私はピアノをやってたから大事な局面での失敗は何度か経験ある」 

真姫「だから大丈夫。なんて言える程にはスクールアイドルのステージは甘くないんでしょうね」 

真姫「ピアノは一人で演奏するし、ミスも自業自得で済むけど……スクールアイドルはそれだけじゃ済まされない」 

真姫「私のミス一つで皆が練習してきた全てを台無しにするのと同じ。その瞬間に訪れる罪悪感は想像出来ないくらい」 

真姫「正直ミスをしたら頭が真っ白になって動けないし歌えなくなるかもしれない」 

花陽「真姫ちゃん」 

真姫「でも、それはあくまで今現在の私の場合よ。そうね、疑って掛かって文句言うなんてしてたら最高にはなれない」 

真姫「どんな理不尽すらも乗り越えてこそ精神面でも成長出来る。きっとそういうことなのよね」 

花陽「そうだね。あのね、真姫ちゃん。私は他の人よりも成長が遅いかもしれない」 

花陽「もしかしたら来年になった時、A-RISEに入ったばかりの後輩の子の方が上手くなるかもしれない」 

花陽「でも、絶対に三年生になる時には完璧になってみせる。真姫ちゃんに花陽が居ないとA-RISEじゃないって言ってもらえる未来にしてみせる」 

花陽「だから、それまで迷惑いっっっぱいかけちゃうかもしれないけど、よろしくお願いします!」 

真姫「私の方が迷惑掛けるかもしれないし、そんな気負う必要なんてないわよ」 

真姫「凛がこないだ言ってた。かよちんは誰よりも強い子なんだって」 

真姫「まだ短い付き合いだけど野性の勘みたいに鋭い部分もある凛がそう言うんだから、花陽はきっと誰よりも強くなれる」

571: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:57:28.21 ID:+T6JUyDe0
真姫「勿論、花陽が強くなることをを諦めないっていう前提が入ってのことだけど」 

花陽「うん、ありがとう。絶対に諦めたりなんかしない。私は真姫ちゃんと一緒に凛ちゃん率いる音ノ木坂とラブライブで優勝争いしてみせる」 

真姫「その活きよ。っと、それじゃあ私はこれから病院に行くから。ここでお別れね」 

花陽「こんな遅い時間からでも病院に行くんだ」 

真姫「まぁね。患者さんを診るんじゃなくて、病院内の雰囲気を肌で馴染ませて、雑用のお手伝いをさせてもらうだけだから」 

真姫「帰りはパパと一緒に帰るから歩いて帰るより安心だしね」 

花陽「真姫ちゃんはスクールアイドルも将来の夢も真っ直ぐですごいなぁ」 

真姫「花陽がスクールアイドル頑張るのは夢のことと直結してるじゃない。A-RISEでリーダーしてラブライブで優勝」 

真姫「そうしたら間違いなくプロのアイドルにスカウトされるわ」 

花陽「わ、私が本物のアイドルに!?」 

真姫「くすっ。今更何を驚いてるのよ。私や英玲奈さんみたいに実家を継いだり、ことりの様に他の夢があるなら別だけど」 

真姫「花陽は小さい頃からの夢なんでしょ? 私より一足先に夢を叶えちゃいなさいよ」 

花陽「どうしよう。今までA-RISEで頑張ることしか頭になくてそのことを考えてなかった。だっ、誰か助けてー!」 

真姫「もう、何をパニックになってるのよ。ツバサさんに花陽は特に精神面を鍛えて欲しいって言っておかないとね」 

真姫「って、いい加減に正気に戻りなさいよ。まったく……これじゃあ心配で別れられないじゃない」 

真姫「しょうがないから家までこの真姫ちゃんが送ってあげるわよ。世話の掛かる未来のアイドルねぇ」

572: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 03:58:27.33 ID:+T6JUyDe0
――UTX学院 会議室 

希「今回の話し合いはここまで大丈夫かな?」 

絵里「ええ、でも本当にごめんなさいね。本来ならもっと頻繁にこうして顔を合わせた会議をするべきなのに」 

絵里「こっちの事情に気を使って、会議の数を減らしてメールや電話での対応にしてくれて」 

希「スクールアイドルが盛り上がれば必然的にUTXを目指す生徒が増えることに繋がるから」 

希「だから別に気にすることはないよ。それに、生徒会長なのに歌って踊れるなんて格好良いし」 

絵里「そういう希さんだって学園祭一日目でライブを披露するじゃない」 

希「生徒のアンケートで繰り上げ一位になっちゃったからね。ウチは運動とか得意じゃないからかなりキツイんだけど」 

希「うちの副会長のやる気を出させる為にそんなこと言い出せなくて。だから練習が大変でも弱音吐けなくて苦労してるんよ」 

絵里「謙遜することないわよ。ことりさん経由で希さんの凄さは耳にしてるわ」 

希「ことりちゃんがどんな評価をしたかは分からないけど、それは完全な身内贔屓ってやつだよ。ただ」 

絵里「何かしら?」 

希「スピリチュアルパワーはなくなっちゃったんだけど、最後に見た光景の為にも頑張ろうかなって」

573: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:00:07.64 ID:+T6JUyDe0
絵里「不思議な力は信じてないけど、以前占ってもらった時は本当に当たったのよね」 

希「今のウチが占っても当たるも八卦当たらぬも八卦になっちゃったけどね」 

絵里「それで、どんな光景が見えたの?」 

希「それは……ふふっ。学園祭一日目のお楽しみ。未来は知ってたら面白くないやん」 

絵里「焦らすわね。でも、その顔を見れば少なくとも明るい未来なのは察することが出来るわ」 

絵里「ということは、無事に合同学園祭が開かれるのね。頑張る気力が増すわ」 

希「そういうこと。ということで、今回の課題は次回の会議、もしくは時間をみての連絡ということにしようか」 

絵里「ええ、分かったわ。こっちの生徒会でも色んな方針考えてみるから。他の案が出たらまた連絡する形で」 

希「うん、了解」 

絵里「本当ならこのまま場所を変えてお茶をしながら雑談したいところなんだけど、今は色々と忙しくて」 

希「合宿問題があるもんね。ゆっくりとするのはラブライブが終わった後にでも」 

絵里「くすっ。その時は学園祭に追われてとてもゆっくり出来ないわよ」 

絵里「学園祭が終わって、お互いに生徒会長を引き継いだ後になるのかしらね」

574: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:01:28.06 ID:+T6JUyDe0
希「もう直ぐ夏休みだっていうのに、ゆっくり出来るのが秋になってからっていうのも女子高生としては切ない話やね」 

絵里「んー、でも恋愛は大人になっても出来るけど、こうした生徒会業務や学園祭の準備とかは今しか出来ないことじゃない?」 

絵里「女子高生としては切ないかもしれないけど、高校生としては最高だと私は思ってるわ」 

希「それもそうだね」 

絵里「それに私の場合は可愛い妹達に囲まれてるから切ないなんて思う心の隙間がないわ」 

絵里「っと、それじゃあ慌しくて悪いけど私はこれで。またね」 

希「気をつけてね。ほな~」 

希「……ふふふっ」 

希(スピリチュアルパワーがなくなっても笑顔で居られるのはこの学院に入学したお陰やね) 

希(人との距離を置く為の壁は私にはもう必要ない。神様がそう思って卒業させたのかも) 

希(スピリチュアルパワーが最初からなければ私はとても臆病で人前になんて出れない性格だった筈だもの) 

希(だから与えてくれていた神様にとっても感謝してる。生徒会に引き入れてくれた会長さん。共に歩んでくれる副会長) 

希「私――ウチは幸せ者やんな」

575: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:04:50.84 ID:+T6JUyDe0
――七月十二日 休憩室 ツバサ&英玲奈 

英玲奈「……これは。ツバサ、面白いことになったようだ」 

ツバサ「面白いこと? 今でも充分面白いことになってるんだけど」 

英玲奈「ツバサは三十日を楽しみにし過ぎだ。それはともかく、これを見てみろ」 

ツバサ「えっと……ラブライブ予選仕様一部変更のお知らせ。七月二十二日午前十時よりランキング非公開へ」 

ツバサ「三十一日正午の締め切り後、発表の午後三時にランキング一位より順次公開」 

ツバサ「ふふふっ。非公式の日付的に考えても明らかににこにーの連日の合宿を意識してるわね」 

英玲奈「間違いないな。大会本部にとっても固定された上位陣だけが予選通過という動きのないままよりも」 

英玲奈「大下克上と銘打った大会からのランキング外のグループの予選通過に期待しているということか」 

ツバサ「それもそうよね。ラブライブ十周年記念の今のシステム最後の大会が動きのないままの予選より」 

ツバサ「固定ファンが多いランキング上位すら覆せる可能性を秘めた大会なんだとイメージさせた方が来年以降の参加グループに影響が出るもの」 

英玲奈「そういうことを期待しているのが分かった以上、新しいシステムはどんな学校でもチャンスが生まれる仕様になりそうだ」 

ツバサ「そうね。でも、そういう型に嵌ってないやり方がことりさんの自由な行動を輝かせる結果に繋がりそう」

576: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:06:02.22 ID:+T6JUyDe0
英玲奈「『A-RISE=ことりの破天荒』というイメージになりそうだが」 

ツバサ「それはそれでいいんじゃない? 後輩達が塗り替えて行く方がA-RISEの歴史が深まるもの」 

英玲奈「塗り替えて……か。そういう意味では矢澤にこは恐ろしい」 

ツバサ「にこにーが?」 

英玲奈「段々とツバサが注目する意味が分かってきた。矢澤にこには人を動かす力があるようだ」 

英玲奈「商店街・私達A-RISE・今回の合宿に参加するグループ・今回のようにラブライブ大会本部すら」 

英玲奈「ツバサのような人を魅了するカリスマ性と対になる、その時代の流れを動かすカリスマ性」 

英玲奈「矢澤にこには後者の物を持っているように思える。そして、前代未聞の行為すら正しい行いのように感じさせる魅力」 

ツバサ「今更にこにーの本当の魅力に気付けたのね。にこにーの魅力は努力しても身に付けられない類の物よ」 

ツバサ「にこにーという太陽に近づく為にカリスマ性を磨いてきた。でも、星じゃあ太陽の輝きには及ばない」 

英玲奈「もし、オトノキにもう少し設備があれば、スクールアイドルとしての歴史があれば……そう思うと背筋が寒くなる」 

英玲奈「だが、ツバサが矢澤にこより輝いてないという点に置いては否定しよう」 

英玲奈「ツバサに圧倒的なまでの魅力があるからこそA-RISEはトップに輝いていられる」

577: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:07:19.87 ID:+T6JUyDe0
英玲奈「いつもみたいに自信を持つべきだ」 

ツバサ「ありがとう。でもね、にこにーは人を良い方向に変えて、突き動かさせるっていう最高の武器があるの」 

ツバサ「あれを実際にされた側になるとね、この人には敵わないって思わされるわ」 

ツバサ「正にアイドルになる為に生まれてきたと言っても過言じゃない」 

英玲奈「ファンを笑顔にして元気付けるだけじゃないアイドル……か」 

ツバサ「それこそが私が目指すアイドルの究極系」 

英玲奈「アイドルになることだけが目的の子が多い中、高すぎる目標だな」 

ツバサ「目標は高くなくっちゃね。名前負けしない私でありたい」 

英玲奈「私が最も認めているスクールアイドルだ。いつかその目標すら超えていくだろう」 

ツバサ「そうありたいものだわ。それじゃあ、このことをあの子達にも教えて炊きつけてくる」 

英玲奈「程々にな」 

ツバサ「あら、英玲奈ってば面白いこと言うのね。キラ星と呼ばれた私に妥協や程々なんて生易しい言葉はないのよ☆」

578: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:09:19.59 ID:+T6JUyDe0
◆No brand girls◆ 

――七月二十二日 合宿開始日 家庭科室 

にこ「カレーは昨日の内に用意して寝かせてるけど、ご飯も用意しておかないとね」 

にこ「みんな食べてくるとは思うけど移動の関係で朝食抜きの子も居るかもだし」 

にこ「ということで、お米を研ぐわ。SMILEで戦力になるのは……絵里と海未。それから穂乃果は大丈夫?」 

穂乃果「やだなぁ。流石にお米くらいは普通に研げるよ。穂むらが忙しい時期は穂乃果がお米炊いたりしてたんだから」 

海未「当たり前のことが当たり前に見られてない証拠ですよ。そういうイメージを払拭する為にも頑張ってください」 

穂乃果「うん!」 

にこ「それで凛はどうかしら?」 

凛「凛の得意料理はカップラーメンだよ!」 

にこ「なるほどね。じゃあ、凛には悪いんだけど黄金の足を活かした役割を与えたいんだけどいいかしら?」 

凛「そっちの方が凛としては嬉しいな☆」 

にこ「じゃあ悪いんだけど、もしも駅前からここまでが不安ってグループが居たら駅まで迎えに行ってあげて欲しいの」 

にこ「東京って遠くの子からするとけっこう緊張するみたいだし、慣れてない所を彷徨わせるのは心配だからね」

579: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:10:48.16 ID:+T6JUyDe0
凛「了解ニャ!」 

にこ「それからクッキング部。一応料理できるのよね?」 

「うん、任せて。学園祭の人形劇は伝統だからやってるだけで、普通に料理できるよ」 

「卵焼きでも目玉焼きでもオムレツだって作れるし」 

「タコさんウィンナーもカニさんウィンナーもソーセー人だってお手の物」 

「おやつだったらお任せあれですよ」 

にこ「……その回答に恐ろしいくらいに期待値が下がったんだけど。本当に大丈夫なのかしら」 

絵里「大丈夫でしょ。もし戦力にならないのならこの場に出向くわけないもの」 

にこ「戦力外なのに椅子に座ってうたた寝モードのやつがいるんだけど」 

あんじゅ「スー……スー……」 

穂乃果「あんじゅちゃん、最近は特に甘えん坊さんだよね。今まで以上にベッタリって感じで」 

凛「片時も離れたくないね。おトイレも絶対に付いて行くし」 

海未「ラブライブが近くなって不安なのでしょう」 

穂乃果「予選通過を通過出来るかってこと?」

580: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:11:54.94 ID:+T6JUyDe0
海未「いえ、本戦に進める進めないはあんじゅにとっては些末なことだと思います」 

凛「どういうことかな?」 

海未「あんじゅにとっての一番はにこですから。そのにこに多大な影響を与えた綺羅ツバサとの再会が心配なんですよ」 

絵里「海未の言うとおりね。夢を奪われただけでなく、再会した時にまたにこが傷つくんじゃないかって心配なのと」 

絵里「にこが変わっちゃうんじゃないかって不安なのよ。だから最近甘えん坊で、中々寝付けなくて寝不足気味みたい」 

にこ「……そういう勝手な憶測はせめてにこが居ないところでしてくれない?」 

海未「憶測ではなく事実ではないですか。合宿も始まりますし、不安も少しは紛れてくれればいいのですが」 

絵里「私達の間ではなるべくA-RISEの話題は控えるようにしましょう。せめてあんじゅの心が安定するまで」 

海未「そうですね。特に綺羅ツバサの話題は厳禁とします」 

にこ「あんた達は考え過ぎだっての。あんじゅが私に甘えてるのなんていつものことでしょう」 

絵里「にこ、それを本気で言ってるの?」 

にこ「……」 

絵里「寝付けないあんじゅに付き合ってるんでしょ? 誤魔化してるんだろうけど、私だってにことの付き合いは長いんだから」 

絵里「隠そうとしてることくらい気付くわよ。私と海未が言ったことも頭では理解してるんでしょ?」

581: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:13:21.79 ID:+T6JUyDe0
絵里「でも自分だけじゃどうしようもないし、あんじゅの不安を解放してあげたいのに解放させてあげる手段がない」 

絵里「違う?」 

にこ「……理解力あり過ぎる長女っていうのは面倒なものね。絵里の言うとおりよ」 

にこ「でも、そもそもあんたの言葉に惑わされてるんだからね!」 

海未「絵里が何かを言ったのですか?」 

にこ「にこは夢を諦めたんじゃなくて、ただ夢の時間が停止しているだけとか抜かしたのよ」 

絵里「私はその可能性を信じているのよ」 

海未「流石絵里ですね。停止してる時間が戻ればにこがアイドルを目指す夢のトビラが開かれます」 

にこ「何度も何度も言うけど。あんたたちはにこを買いかぶり過ぎてるの」 

にこ「私なんて……この子の不安すら拭えないくらいなんだから。アイドルなんて夢のまた夢よ」 

穂乃果「夢のまた夢でもさ、いいんじゃないかな?」 

にこ「えっ?」 

穂乃果「にこちゃんの好きなせんちゃんの歌で《夢なき夢は夢じゃない》ってあるじゃない」

582: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:15:11.87 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「夢のまた夢だって夢に変わりないんだよ。だったら叶うよ。にこちゃんなら叶えられるよ♪」 

にこ「――」 

絵里「ハラショー!」 

凛「穂乃果ちゃんってば良いこと言うニャー」 

海未「穂乃果は本当に昔の誰をも惹きつける魅力を取り戻しつつあるようですね」 

穂乃果「にこちゃんみたいにアイドルに詳しくないし、ツバサさんのことだって二度しかライブを観たことない」 

穂乃果「でもね、一つ言えることがあるの。にこちゃんとツバサさんは異なる魅力を持ってるんだよ」 

穂乃果「それなのに無理やり比べちゃうのがまず間違ってるんだよ。穂乃果にしてみれば海未ちゃんとことりちゃんだね」 

穂乃果「二人共とっても素敵な魅力があって、でもその魅力は正反対なくらいに違ってる。そういうことなんだと思う」 

にこ「……それでも比べられるのがアイドルなのよ。タイプが違うとかはただの言い訳に過ぎないわ」 

穂乃果「でもにこちゃんが劣ってるって誰か言ったの?」 

にこ「いや、だってそんなの訊くまでもないじゃない。A-RISEの人気は磐石でSMILEは――」 
穂乃果「――それはグループの人気の差だよ。A-RISEは元々UTXのスクールアイドルっていうブランド力があるんだから」 

穂乃果「にこちゃんはツバサさんがにこちゃんのことをどう思ってるのか知ってるの?」 

にこ「どういう意味よ?」

583: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:16:16.77 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「これは本当は言っちゃいけないことなのかもしれないけど、穂乃果はいけない子だから言っちゃうね」 

穂乃果「こないだことりちゃんにチケット届けて貰った後に届けた事を伝えてくれた時に言ってたの」 

穂乃果「ツバサちゃんの理想はね、見に来てくれた人に自分達A-RISEとにこちゃんが居るSMILEと比べるのではなく」 

穂乃果「どちらも最高だったと思われることだって言ってたんだって。これがどういう意味か分かるかな?」 

にこ「……」 

穂乃果「自分と対等だと思ってる相手じゃないとそんな言葉出てこないと思うよ」 

穂乃果「にこちゃんとラブライブで再会するっていう約束があるだけでそんな言葉使うかな?」 

穂乃果「自分と同等以上だと思ってる相手にしかそんな素敵な言葉が出てこないと思うんだ」 

穂乃果「他のみんなはどう思う?」 

絵里「そうね、自分より下だと思っていたら絶対に出てこない言葉なのは間違いないわ」 

海未「誰よりも認めた相手にしか使えないですね」 

凛「本気でにこちゃんをライバルだと思ってるからこそ、頂点にいるのに使える言葉だと思うよ」 

穂乃果「ツバサちゃんがにこちゃんをどう思っているのかよく考えて欲しいの。直ぐに考えを改めるのは難しいよね」 

穂乃果「でもにこちゃんなら出来ると思う。だって、誰かを笑顔にしようとする時のにこちゃんは無敵だもん」

584: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:17:12.89 ID:+T6JUyDe0
にこ「どうしてにこが少し考えを変えるだけであんじゅが笑顔になると思うのよ」 

穂乃果「今の自分を卑下した状態のにこちゃんだと不安になるけど、自信を持ったにこちゃんなら安心出来るもの」 

穂乃果「あんじゅちゃんは強いにこちゃんを望んでる訳じゃないと思う。でもね、誰よりも自信を持ってて欲しいって願ってると思うんだ」 

穂乃果「自信満々に間違えて、みんなを笑顔にしてくれるにこちゃんを待ってるんだよ」 

にこ「なんで間違える前提なのよ!」 

絵里「確かに。にこは自信満々の時はけっこう間違えてるわよね」 

海未「ですがその方がにこらしくて安心出来ます」 

凛「確かににこちゃんって失敗してる方が保護欲を掻き立てるよね」 

にこ「二つも下の凛に保護欲とか言われたくないニコ!」 

凛「えっへへ♪」 

絵里「絶対な自信を取り戻したら、次は綺羅ツバサとラブライブ本戦で再会して夢の時間を取り戻しましょう」 

海未「取り敢えずにこも他のグループの方達が集まるまでは少し休んでいてください」 

海未「ご飯くらいなら私達で充分出来ますから」 

にこ「クッキング部の実力がすっごい怪しいんだけど」

585: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:18:29.49 ID:+T6JUyDe0
「えっ、もしかしてあんな噂本気で信じてるの?」 

「さっきも言ったけど超戦力だってばー」 

にこ「お米を洗う方法を答えなさい」 

「勿論この洗剤を使って!」 

「そんなベターな返しないわよ。てか、そんなのありえる分けないでしょ。洗剤って高いのよ?」 

「そうそう。使うのはこのお手軽価格で購入出来る石鹸だよ!」 

「いや、薬用石鹸レベルになるとけっこうなお値段するし」 

「ああ、あのなんていったっけ?」 

穂乃果「ミューズだね」 

「それそれ」 

「ミューズを使うのは中級家庭以上のステータスだからね」 

「今までの石鹸を仕様した場合の九倍も美味しく炊けるって評判です」 

凛「どうして九倍なの?」 

「昔話にミューズって九人の歌の女神が出てくる話があってね。あの古いカラオケ屋のムーサイって名前もミューズの別名だね」

586: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:19:35.91 ID:+T6JUyDe0
海未「昔話ではなく神話と言ってください」 

にこ「九人の歌の女神ねぇ」 

絵里「あれ? 今何か変わった音がしなかった?」 

凛「変わった音? 何も聞こえなかったけど」 

穂乃果「穂乃果も別に何も聞こえなかったよ」 

海未「ええ、私もです」 

絵里「おかしいわね。……確かに何かピーコンっていう音が聞こえた気がするんだけど」 

にこ「何そのあんじゅが自称フラグが立った時の音みたいな効果音」 

絵里「あっ、それかもしれないわね。これがフラグが立った時の音なのね」 

にこ「あれはあんじゅの遊びであって、本当にそんな音がするわけないでしょ。それにどこの誰にフラグが立つのよ」 

海未「ふむ。絵里関係のフラグとなると間違いなく妹関係。私か亜里沙かこころちゃんかこころちゃんの何れかですね」 

絵里「謎は全て解けたわ!」 

穂乃果「どこかで聞いたことがあるような?」 

凛「いつも連続殺人を目の前で起こされるのに名探偵と呼ばれるようなアニメで使われる台詞だよね」

587: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:20:43.97 ID:+T6JUyDe0
絵里「来年六人の新入生がSMILEに加入するフラグに違いないわ!」 

にこ「……人のこと言えないくらい、こう自信満々の絵里の発言は空振るのがお約束よね」 

海未「六人ですか。一気にそれだけ増えると色々な問題が起きそうですが、今の勢いの穂乃果なら安心です」 

にこ「いつもは穂乃果に厳しいことばかり言ってるのに珍しい発言じゃない」 

海未「昔の皆を引っ張るリーダー気質の穂乃果ならば、例えどんな困難でも乗り越えられる」 

海未「なんていうのは大げさですけどね。そんな気持ちにさせてくれるんです。付いていくのが大変になることだってあります」 

海未「けれど、そんな大変すらいい思い出に変えてしまうのが穂乃果の最大の魅力です」 

海未「にこよりも心配させる度合いが高いので、残りの高校生活の間にもっと成長して欲しいと望んでいます」 

にこ「まるで穂乃果の姉というか母親ね。面白いSMILEが出来上がりそうね」 

凛「そんな個性的な二人の後のリーダーになるって思うと、少し心配になってくるにゃー」 

絵里「そんなことで心配することはないわ。凛にはSMILE一の魅力があるじゃない」 

凛「運動能力かな?」 

絵里「それもあるけど女の子らしさね。料理も覚えれば間違いなくSMILEのアイドル乙女ね」 

凛「凛が乙女だなんてありえないよー。寧ろ凛は男の子って思われることの方が多いと思うし」

588: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:21:30.55 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「でも凛ちゃんって外で座る時とか、制服だとハンカチひいて座るよね。ああいう所可愛いなって思う」 

海未「普通に過ごしている時の仕草等も乙女らしいですし」 

絵里「語尾のニャが何より可愛いわ」 

にこ「その辺にしておきなさい。凛が耳まで真っ赤になってるにこよ」 

凛「~~っ!」 

絵里「くすっ。それじゃあお米を研ぎましょうか」 

海未「そうですね」 

「あ、もう私達でやっておいたから大丈夫」 

「そもそもこれ無洗米だったから後は四十分くらい水につけた後に炊く感じでいいみたいよ」 

新聞部「ということなので、SMILE青春劇を続けてください。裏話として使えます」 

にこ「い、何時の間に居たのよ」 

新聞部「今日から合宿開始ですからね。朝一からスタンバイ済みです。コンピュータ部も手伝ってくれてますし」 

絵里「色々と面倒掛けて悪いわね」

589: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:22:37.99 ID:+T6JUyDe0
新聞部「いいえ。私達新聞部はこういうお祭り騒ぎを心待ちにしていました。正に私達の躍動の時ですから」 

絵里「私達はいいけど、他のグループの子には許可を取ってから取材なり撮影してね」 

新聞部「勿論です。身内に厳しく、他人に優しくがモットーですから」 

にこ「……そうね。こないだの新聞はとても厳しいものだったわ!」 

凛「にこあん百合の花咲き乱れるだっけ?」 

にこ「その言葉記憶から消しなさいよ!」 

穂乃果「でもクラスメートのみんなもあの記事よかったって言ってたよ」 

絵里「一応配慮してたみたいだけど、うちのクラスの子達も気に入ってたし、生徒会の子も嵌ってる子多いわよ」 

にこ「何その知りたくない事実!」 

凛「一年生は凛の時の勧誘劇と合わせて大盛り上がりだったよ☆」 

にこ「追撃するんじゃないわ。どうして年頃になると性別すら超越してまで恋バナに発展したがるのよ」 

にこ「というか、スクールアイドルなのになんで私とあんじゅがその標的になるのか謎過ぎるわ」 

海未「そういう話にしたがるくらいに二人が仲が良いということでしょう」 

穂乃果「同棲してるって点が一番話を広げ易いんじゃないかな?」

590: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:23:42.37 ID:+T6JUyDe0
新聞部「そうですね。色んなことを想像出来ますからね。一緒にお風呂とか一緒の布団で寝てるとか」 

にこ(……想像じゃなくて事実だけど、新聞部には絶対に黙っておきましょう) 

にこ「風紀的にNGなんじゃないの?」 

絵里「確かに恋愛物、しかも同性愛的なニュアンスを含めた内容だけど、あれくらいなら平気よ」 

絵里「我が校の売りは生徒の自由さだからね。何よりも生徒会長がOKだしてるから安心して」 

にこ「裏切り者が直ぐ傍に居た!?」 

新聞部「元々新聞発行は許可を得てからになりますから。問題を起こして部費が減っては困りますし」 

海未「なるほど。そういうのも生徒会の仕事なんですね。勉強になります」 

新聞部「元々は他の誰も見てくれない可能性があるので、そういう建前をつけて生徒会に読んでもらうというものだったらしいですが」 

凛「生徒数が少なければ校内新聞の最大読者数もまた少ないってことだもんね」 

海未「誰か読んでくれるかもしれないという希望に縋るよりも、絶対に読ませる方法を見つけた。邪道の一手ですね」 

新聞部「今はSMILEの皆さんの協力もあり、多くの方に読んでもらえていて幸せの限りです」 

新聞部「お礼を兼ねて何かSMILEの名を頂に届かせる力添えを出来ればいいと思って、防水機能までついたビデオを用意しました」 

穂乃果「気持ちは嬉しいけど防水機能付いてても意味あるのかな?」

591: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:24:39.67 ID:+T6JUyDe0
新聞部「水浴び遊びをするかもしれないですし、プールで遊ぶかもしれないじゃないですか」 

新聞部「スクープとはどんな時に生まれるか分からないものです。であればこそ、より良い物を用意すべきです」 

「うわー。うちの部と違って大真面目だ」 

「部活動のあり方は真面目であるだけが本質ではないと、かの有名な私様が仰ってます」 

「ふざけて友達と思い出を作るのも部活の醍醐味だもんね!」 

絵里「そうね。特に大会みたいな目標がない部は楽しむことが一番ね」 

新聞部「発表の場が学園祭しかないようだと余計にそういう考えになるかと」 

海未「その反面、二束草鞋でありながら両方頑張る生徒も居ます。凛は生徒の手本ですね」 

凛「そんなこと言われると照れるちゃうよー」 

絵里「当然のことだけど、色んな考えの人が居て、色んな部があって、でもこうして力を合わせられる」 

絵里「この学院の流れがこの後も続いていけたら素敵よね。期待してるわよ、次期生徒会長園田海未さん」 

海未「ええ、任せて下さい。絵里姉さんの意思を汲んだ素敵な学院を目指します」 

新聞部「初耳です。次期会長は園田さんなんですね」 

絵里「ええ、忙しくて伝えてなかったわね。そういうことだから、生徒募集の広報アイドルとして海未を立ててあげて」

592: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:25:53.03 ID:+T6JUyDe0
海未「やめてください! 受験生を集うのであれば、生徒会長なんかよりも理事長の方が適任ではないですか」 

にこ「でもUTXの学校案内のパンフにもきちんとUTXの写真と記事が載ってたし、今はそういうのを武器にすべきでしょ」 

にこ「SMILEを知らない子でも海未みたいな生徒会長が居るならって音ノ木坂を選ぶかもしれないし」 

にこ「生徒数は多ければいいって訳でもないけど、生徒が少なければ弊害も多い。なら生徒数を増やす手を打つべきよ」 

海未「……にこがそういうのであれば、甘んじて受け入れましょう」 

「にこちゃんの信頼って凄いよね。魔術的な何かを感じるよね」 

「もしかしてあの存在感の薄いオカ研で何かを学んだとか」 

絵里「今はこうだけど最初の頃は親の仇とまではいかないけど、かなりにこに冷たかったのよ」 

「そういうの箇条書きでもいいからまとめて新聞部に提出してさ、字数の少ない読み易い話にまとめて欲しいなー」 

「校内新聞だけじゃ勿体無いから、学校のHPに校内新聞号外みたいにしてその記事をUPしたらどう?」 

新聞部「それは面白いですね。この合宿で一番良い園田さんの写真とSMILEの集合写真も貼り付ければ素晴らしい出来になりそうです」 

穂乃果「名台詞は海未ちゃんが好きそうな『集え! ウミンディーネの名の下に!』みたいな感じかな?」 

凛「それか『歌って踊れる生徒会長園田海未。気軽にウミンディーネ会長と御呼び下さい』みたいな感じかも」 

「ウミンディーネってあんじゅちゃんの記事のやつ?」

593: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:26:44.09 ID:+T6JUyDe0
「やっぱりウミンディーネって海未ちゃんのことなんだね」 

新聞部「是非とも二人の台詞は有力候補としてメモさせてもらいます」 

海未「そんな変な台詞やめてください!」 

絵里「変って言ってもウミンディーネって言い出したのは確か海未よね」 

にこ「邪道ポーカーが生まれた日よね。ことりに中二病を解説してもらったから色濃く覚えてるわ」 

穂乃果「海未ちゃんってば恥ずかしがらずに吹っ切ってみたらどうかな? 穂乃果みたいに覚醒出来るかもしれないよ」 

海未「そんな覚醒するくらいなら今までの私で充分です」 

凛「覚醒?」 

穂乃果「生まれ変わるっていうか、新しい状態にパワーアップすることだよ」 

凛「凛初めて知った」 

新聞部「一般的にはそういう意味合いは勿論含まれていません。目を覚ます的な意味合いですね」 

にこ「海未は色んな物を背負ってる分溜め込み易いから。そういう方面を薦めるわけじゃないけど」 

にこ「一度くらい好きにやってみたらスッキリするんじゃないかしら? もしそれが後の黒歴史になったとしてもね」 

にこ「それに、今は私達姉が居るんだからやりたいことをやって失敗しても慰めてあげることくらいなら出来るわ」

594: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:27:27.73 ID:+T6JUyDe0
にこ「何よりも、そんな思い出も大人になれば笑い合えるかもしれないじゃない?」 

にこ「お酒なんか飲みながらあんなこともあったねって笑えたら素敵だと思うわ。これはあんじゅの受け売りみたいなものだけどね」 

にこ「まだ立場上は一般生徒兼スクールアイドルなんだし。逆に言えば好きにやれるのは今だけなんだから」 

海未「……そうですね。もっとにこの様に自分を出せるように精進します」 

にこ「うーん、精進するっていうよりも力を抜く方が正しいかもね。海未は頑張り過ぎだもの」 

にこ「もっと姉に甘えてきなさい。遠慮ばかりしてたら卒業しちゃうんだから」 

海未「はい」 

「……何あのイケメン」 

「にこちゃんに似た何かかしら?」 

穂乃果「にこちゃんは時々こうして真面目になるんだよ」 

凛「あんじゅちゃんが甘えたくなる気持ちも分かるよね」 

新聞部「今のを記事にするには私の感性では不可能です。もっと柔軟な文章を書けるようにならないと」 

にこ「さってと。合宿初日の朝からこんな雰囲気にしてないで、もっと気楽で明るくしなきゃね」 

にこ「まだ他のグループが来るまで時間あるし、何をしようかしら」

595: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:28:13.22 ID:+T6JUyDe0
あんじゅ「んー……あれ? にこ、どこ?」 

絵里「にこはあんじゅの隣に居てあげて。なんならSMILEの泊まる教室で布団引いて寝ていても構わないわ」 

にこ「何言ってるのよ。私が寝てたら誰が出迎えるっていうのよ」 

絵里「そういう役割は生徒会長の肩書きのある私で充分でしょ。校舎内の案内は私達だけじゃなくても出来るし」 

「そうそう。私達はここが戦場だから別だけど、校舎に居る子は普通に案内出来るしね」 

新聞部「事前に案内の札も出してありますし、もし校内で迷った時の為に色んな箇所に案内用のプリントも設置済みです」 

新聞部「勿論校舎内用の物だけでなく、オトノキ研が製作した音ノ木坂を中心とした地図も置いてあります」 

絵里「そういうこと。一団となって迎え入れようとしてるんだもの。にこ一人居ないくらいで何も変わらないわ」 

穂乃果「そうだよ、にこちゃん。それでも気が咎めるっていうのならここは次期部長を育成させる場として譲ってよ」 

にこ「……本当にあんた穂乃果なの? いつも何かある毎に頑張ると言うだけで特別頑張ってなかった穂乃果なの!?」 

穂乃果「その反応は普通に酷いよ!」 

海未「私も同じような反応をしましたが、これが正常の反応なんです。今までが弛み過ぎでした」 

穂乃果「うぅ~。デザインなんて経験ほぼ0から頑張ってるのにこの言われよう」 

海未「そうは言いますがにこは元々作詞・デザイン・衣装製作までこなしてました」

596: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:30:09.78 ID:+T6JUyDe0
海未「あんじゅは他の誰も出来ない作曲を。絵里は生徒会を兼任しながら指導し、振り付けまで考えています」 

海未「そういう意味では作詞とデザインだけの私達は評価の対象というよりは出来て当たり前だったんですよ」 

穂乃果「それを言われるとぐうの音も出ない」 

海未「過去を恥と思えるのは成長した証です。そして、これからは良いことを言うのが穂乃果らしいと言わせるように勤めましょう」 

穂乃果「そうだね!」 

絵里「見事な飴と鞭をみたわ」 

あんじゅ「んぅ……にこぉ」 

にこ「はいはい。隣に居るわよ」 

あんじゅ「えへへ」 

にこ「寝てるあんじゅを起こすのも忍びないし、暫くはここであんじゅと休んでるわ」 

にこ「もし駅から案内欲しいって電話が着たら凛に連絡するから、その時は迎えよろしくね」 

凛「うん、任せて!」 

にこ「穂乃果。グループの三年生以外は来年の良きライバルになるんだから、粗相のないようにお願いね」 

穂乃果「任せて。SMILEの中で一番接客が上手いのは穂乃果なんだから」

597: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:31:22.40 ID:+T6JUyDe0
にこ「そういえばそうね。去年の学園祭で一番活躍したものね」 

穂乃果「だからにこちゃんは安心して休んでいて」 

にこ「張り切りすぎて無駄に体力使わないように海未、しっかり見守っててね」 

海未「お任せ下さい」 

にこ「絵里は私が何かを言う必要なんてないわね」 

絵里「ええ。全体的に見回って何か不備がないか確認してくるわ。先生方にも挨拶しておきたいし」 

絵里「用意してくれた食材は多いから先生方にも是非食べに来て下さいって伝えるわ」 

絵里「勿論、他校の生徒の方が多い中で一緒にっていうのを遠慮する先生も居るだろうし」 

絵里「職員室への出前も承る旨もしっかりと伝えるから安心して」 

にこ「頼りにしてるわ」 

新聞部「私もコンピュータ部とネット配信がきちんと正常に出来るかを確認してきます」 

にこ「ありがとう。今回の合宿の出来次第ではあんじゅとの百合小説を許してやるわ」 

新聞部「こないだのような素晴らしい写真を追加していただけると嬉しいです」

598: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:32:31.07 ID:+T6JUyDe0
にこ「あのことは忘れなさいよ、このパパラッチ!」 

絵里「日本人って変なところでドイツ語を使うのは何故なのかしらね?」 

にこ「どうでもいいからどっか行きなさい! あんじゅが目を覚ましちゃうでしょ!」 

穂乃果「一番声を張り上げてるのはにこちゃんだけど……ううんっ! なんでもないよ。それじゃあ、海未ちゃん行こう」 

海未「はい。それでは行って来ます」 

絵里「それじゃあ、私は最初は各グループの眠る教室のチェックしてるから。何かあったらコールしてね」 

新聞部「それでは、失礼します」 

にこ「……それじゃあ、悪いんだけどお米の方は任せてもいいかしら?」 

「うん、大丈夫だよ。いいもの見たしねぇ」 

「静かにソーシャルゲームでもしてるからゆっくりお休みよ」 

「私達と違って練習があるんだしね。体力は温存しないと」 

にこ「ありがとう。それじゃあ、絵里の言ってたとおり寝不足だから少し眠るわ」 

あんじゅ「……んぅ」 

にこ「お休み」

599: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:33:50.39 ID:+T6JUyDe0
――UTX レッスン室 ツバサ 

ツバサ「いよいよ今日からね」 

英玲奈「なんだか上の空だと思ったら、合宿のことか」 

ことり「十時になる直前に見たランキングは以前のそのままだったから、SMILEが本戦に進むには最低でも五位も順位を上げないと駄目だね」 

ツバサ「本当に最低の条件でそれね。実際はもっと困難な状況よ」 

英玲奈「招いた自分達より上位、つまりは本戦に届く可能性のあるグループが居るわけだからな」 

ツバサ「ええ。最低でも十位は上げるくらいの活躍をする必要がある」 

英玲奈「話題性のある合宿と大下克上という名の野外ライブ。注目度は確かにある。が、ある意味では諸刃の剣」 

英玲奈「注目度が高い分、失敗すれば一気に失望されてランキング外に繋がる」 

英玲奈「まるで冬場の朝方に池に張った薄い氷の上を歩いて渡れるかどうかの度胸試しみたいだな」 

ことり「一番心配なのは何か失敗した時だよね。他グループと一緒ってことは色んな問題が起きそう」 

英玲奈「ランキングが見えない以上、お互いどちらが現時点で上なのか分からずにギスギスとしそうだ」 

ことり「もしそんな状態になったら……ライブ成功出来るのかな」 

ツバサ「要らぬ心配ね。にこにーなら大丈夫よ。太陽の笑顔で人を魅了して、そんな無駄な思考は消されるわ」 

ツバサ「寧ろ、失敗が駄目みたいに思ってるのはあくまで英玲奈とことりさんがこちら側の人間だからよ」

600: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:34:51.64 ID:+T6JUyDe0
ツバサ「練習を公開するということは寧ろ失敗の方が多くなる。普段見えない努力の影を見せるなら完璧とは逆」 

ツバサ「だからこそ応援したくなるし、今まで見てきたライブの成功には語り継がれない失敗があったんだと知ることが出来る」 

ことり「つまり追い風になる確率が高いってことだね」 

ツバサ「ええ、でも普通はそう頭で分かっていても実行する勇気はない。だから誰もしてこなかった」 

ツバサ「前人未到の大地を照らし出すにこにーは語り継がれることになるでしょうね」 

ツバサ「逆に言えば今回の成功によって、次のラブライブでは皆が使ってくる常套手段に変わる」 

ツバサ「新システムだけでも苦戦するかもしれないのに、危険な種を蒔かれたわね」 

英玲奈「危険と言いながらツバサは笑顔だな」 

ツバサ「んふっ♪」 

ことり「でも一番危険なのはそんな些細なことじゃありません」 

ツバサ「あら、じゃあ何が一番危険なのかしら?」 

ことり「ラブライブ本戦というステージを経験し、注目度も全国区になった来年のSMILE」 

ことり「私の幼馴染の穂乃果ちゃんがやる気スイッチが入ったかもって海未ちゃんが言ってたから」 

ことり「もし本当なら私にとって最大の壁になるのはSMILEしかないよ」

601: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:36:19.36 ID:+T6JUyDe0
ツバサ「なるほどね。私達の代からA-RISEとSMILEの縁が生まれるのかしら」 

英玲奈「それはどうだろう。こちらは磐石であるが、オトノキは設備があるわけじゃない」 

英玲奈「SMILEが栄えるのは一時的な物かもしれない」 

ツバサ「……流石英玲奈、クールな意見ね」 

ことり「確かにそうかもしれない。でも、きっとみんなの心にSMILEってグループ名は残ると思うの」 

ツバサ「過去のA-RISEの好敵手SMILE。例えSMILEがなくなっても、私達の記憶からは絶対に消えないしね」 

英玲奈「一体どっちの味方なんだか」 

ツバサ「勿論A-RISEよ。でも……」 

英玲奈「でも?」 

ツバサ「私には明確なライバルが居たから自分を磨き上げることが出来た。そういうグループが居るから凄く楽しい」 

ツバサ「こういう気持ちを未来のA-RISEは味わえなくなるんじゃないかって思うと、SMILEには残って欲しいと願ってしまうわ」 

ことり「そうだよね」 

英玲奈「いや、別にライバルになり得るグループは他にも……いや、無駄か。使い方は間違っているが恋は盲目だな」 

ツバサ「さて。合宿初日の様子や未来のSMILEも気になるけど、いつまでも一年生を休憩させて甘やかすのも問題だし」 

ツバサ「練習を再開しましょう!」

602: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:36:55.86 ID:+T6JUyDe0
――音ノ木坂 校門前 ほのうみ 

穂乃果「海未ちゃん! あの子達って絶対にスクールアイドルだよね。なんだかキラキラしてるし」 

海未「そうですね。あの子達は今回の合宿参加グループの中でにこが一番評価していたグループです」 

海未「名古屋の《geroge》ですね。全員が一年生でランキング三十位。絵里曰く一番電話対応が元気だったとのことです」 

穂乃果「五人全員が一年生で三十位って凄いね」 

海未「ええ、これはにこが言っていました」 

『来年のSMILEの壁はA-RISEとgerogeになりそうね』 

海未「あのにこがそう言う程ですからね。私達のライバル候補です」 

穂乃果「ことりちゃん達だけに目を向けてたら駄目ってことだね」 

「あっ! SMILEの海未さんに穂乃果さんっ! 私は名古屋のスクールアイドルでgerogeリーダーの岡本楓って言います!」 

楓「今回はこんな素敵な合宿に招待していただいてとってもとっても嬉しいです。それがあのSMILEさん……感激です!」 

海未「ふふっ。話に聞いてたとおり元気な方ですね。移動で疲れているでしょうから、まずは皆さんが寝泊りする教室へ案内します」 

穂乃果「普段は他の生徒や他のグループの練習の邪魔にならなければ基本どこに居てもいいから」 

穂乃果「ただ、公開練習の時間は決まってるからなるべくその時間は参加して欲しいな」

603: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:38:02.03 ID:+T6JUyDe0
楓「はいっ勿論です。あの、それでご飯のことなんですけど」 

海未「事前の連絡したとおり食事も洗濯もこちら側で対処しますから大丈夫ですよ」 

楓「いえ、そうでなくてですね……にこさんの料理を味わえたりするのかなって思いまして」 

穂乃果「今日のお昼はニコ屋のカレーだよ。にこちゃんお手製で甘口・中辛・激辛の三種類用意されてるよ」 

穂乃果「ただ、激辛は喉を考慮して他のと比べると少なめだから、カレーは激辛じゃないと駄目って子は気をつけてね」 

楓「私達は甘口を希望するので大丈夫ですっ。嗚呼……あの憧れのにこさんのカレーを遂に食べれるなんて」 

楓「ありがとうございます!」 

海未「い、いえ。お礼は後でにこに直接言ってあげてください。一晩寝かせる為に昨日頑張って作ったので」 

楓「その時の動画とかないんですか?」 

海未「流石に料理してるシーンを映すなんてことはしてません」 

楓「そう、ですか。あっ、希望すればにこさんの料理を手伝ったりとか出来ますか? それとも迷惑でしょうか」 

穂乃果「ううん、料理が出来る子でお手伝いしてくれる子が居ればにこちゃんやクッキング部の人達も大助かりだから」 

楓「では是非お手伝いさせてもらいます♪」

604: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:39:01.75 ID:+T6JUyDe0
楓「それで今にこさんは――」 
「――ぴょんちゃん。来たばかりで色々言うのも迷惑になるよ。他のグループの人もこれから来るんだから」 

楓「あっ、そうだね。すいません。とっても嬉しくて興奮してました」 

海未「いえ、元気なことはいいことです。それでは案内しましょう」 

オトノキ研「丁度手が空いたところなので、案内は私にお任せ下さい」 

海未「それではよろしくお願いします。お昼まで自由行動で、正午になったら呼びに行きますので誰か一人は残っていてください」 

楓「分かりました。gerogeのリーダー岡本楓です。案内よろしくお願いします」 

オトノキ研「gerogeの皆さん、ようこそ音ノ木坂学院へ。それでは案内させていただきます」 

穂乃果「ねぇ、あの子って」 

海未「ええ、にこのファンみたいですね」 

穂乃果「そうじゃなくてなんでぴょんちゃんってあだ名なのかな?」 

海未「そんなことどうでもいいです! 本人にでも訊いてください」 

穂乃果「冗談だよ。あ~なんだかあんな風に楽しみにされるなんて素敵だよね」 

海未「にこのカレーは正直な話、家で出るカレーよりも美味しいですから」 

穂乃果「分かる分かる。なんだかすっごい安心するし、あれがお袋の味ってやつなのかな」

605: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:40:13.90 ID:+T6JUyDe0
海未「それは間違ってます」 

穂乃果「穂乃果もあんな風に楽しみに思ってもらえるようになれればいいな」 

海未「そう思われたいのならにこや絵里のように毎日料理をしないと難しいですよ」 

穂乃果「ううん、そうじゃなくて穂むらの味をだよ。お客さんに楽しみに思ってもらえたら良いなって」 

海未「……そうですね。穂乃果がやる気ならきっと、いいえ絶対に叶います」 

穂乃果「そうだといいなー」 

海未「にこにあれだけ言ったんです。自分の夢も叶えられないでは説得力がありません」 

穂乃果「あははっ。それもそうだね。じゃあ、一生懸命頑張らなきゃ」 

海未「穂乃果がやる気を出した切っ掛けはもしかして」 

穂乃果「ん?」 

海未「いえ、なんでもありません。空が綺麗な蒼ですね」 

穂乃果「そうだね。海未ちゃんの綺麗な髪が光に透けると蒼く見えるけど、それに似てるかも」 

海未「…………恥ずかしい例えを持ち出さないでください」 

穂乃果「海未ちゃんってば本当に照れ屋さんだなー。でも、私達変わったよね。ことりちゃんよりは遅いけど」

606: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:41:10.63 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「だけど、ゆっくりと成長出来てるよね」 

海未「ええ、それは私が保証します。穂乃果のこの背中の羽根はもう本物で、疑う余地はありません」 

海未「ことりと同じようにこの蒼い空を飛べる羽根です。サンライトウイングと名付けましょう」 

穂乃果「そんな変な名前を勝手につけないで!」 

海未「いい名前ではないですか。太陽のような穂乃果だからこそ似合っている羽根です」 

穂乃果「そんなのが似合ってるとか嫌過ぎだよ!」 

海未「どこが悪いというのですか?」 

穂乃果「ハッキリ言ってあんじゅちゃん並みのセンスだよ。というか太陽と羽根って相性最悪じゃない」 

海未「何故ですか?」 

穂乃果「ほら、小学生の時に音楽の時間に習ったじゃない。イカロスだっけ? あの人が鳥の羽根で飛んで太陽に近づいて死んじゃうやつ」 

海未「蝋を使って固めた鳥の羽根。熱く照らす太陽。広大なる海」 

海未「なるほど。私と穂乃果とことりが出逢うのは遥か昔の神話で予言されていたのですね」 

穂乃果「えっ?」 

海未「鳥の羽根は勿論ことり。その羽根を燃やす太陽の穂乃果。墜落してきた者を包み込む海の私」

607: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:42:14.95 ID:+T6JUyDe0
穂乃果「包み込む以前に海面に叩きつけられて死んでるし!」 

海未「本当は助かっていました。私が言うのだから間違いありません」 

穂乃果「間違いとかそれ以前の問題だよっ」 

海未「これから私達を神話トリオと名付けるのはどうでしょうか? いつかギリシャに旅行に行きたいですね」 

穂乃果「海未ちゃんが夏の太陽にやられて変なスイッチは入ってる」 

海未「何を失礼なことを言っているのです。にこのアドバイスを忘れたのですか?」 

海未「私はもっと自分を出した方がいいと。これはその為の練習です」 

穂乃果「間違えた方向に自分を出しちゃってるよ。せめて出すならポエムとか聞かせるとかそういうのがいいと思う」 

海未「ポエムは私の忘れがたい歴史です」 

穂乃果「こっちの方が絶対に黒歴史っていうやつになるよ」 

海未「なりません。おや、次のグループが来たみたいですね。無駄口を叩いてないで迎え入れましょう」 

穂乃果「聞こえた。今間違いなく海未ちゃんの黒歴史になるフラグの音が穂乃果には聞こえたよ」 

海未「そんな音なんてないとにこが言ってました。あんじゅや絵里の悪い部分の影響を受けないでください」 

穂乃果「サンライトウイングとか言ってた海未ちゃんが正論言っても正しく聞こえないよ!」

608: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:43:32.18 ID:+T6JUyDe0
――エリーチカVSロボット部 廊下 

ロボ部「おはようございます。いよいよ今日から合宿開始ですね。サンちゃんが必要ではないですか?」 

絵里「うちのメンバーが出迎えてるからその必要はないわ」 

ロボ部「そうですか。無骨なのがいけないという意見を取り入れ、音ノ木坂の制服を着せてお洒落させてみたのですが」 

絵里「あの場ではあんな反応だったけど、今にして思えば充分に凄いわよね。普通の高校生なのにきちんとした物を作れるなんて」 

ロボ部「好きこそ物の上手なれという素敵な言葉を体現したまでです。それに、世間的評価としては不遇です」 

ロボ部「ロボット系で注目されるのは結局は大学レベルからですし、何よりそこはもう大人の力を介入してます」 

ロボ部「スクールアイドルのような大きな大会とまでは言いませんが、高校生ロボット大会が地区規模であってくれればとは思います」 

絵里「難しい分野だと人が集まらないし、一部の人だけしか注目もしないから厳しい話ね」 

ロボ部「ええ、分かっています。今のロボット部が私にとっての奇跡の時間」 

ロボ部「正直言って、同好会を立ち上げた時は部になれる以前に誰も加入することなんてないと思ってました」 

ロボ部「だからこそ、最初から一人ではなかったアイドル研究部長に少し嫉妬していました」

609: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:44:36.22 ID:+T6JUyDe0
ロボ部「しかも直ぐに人数を集めて部になりましたから」 

絵里「今でも私達アイドル研究部が憎い、とか?」 

ロボ部「まさか。そうだったら私達の自慢の娘をお披露目しようなんてしません」 

ロボ部「アイドル研究部が居てくれたから、憎しむべき相手が居てくれたから一人でも心が折れずに済んだんです」 

ロボ部「だからこそ、私は今大切な仲間と一緒にロボットを育てることが出来てます」 

絵里「心が強いのね」 

ロボ部「いいえ、強くないです。でも、負けず嫌いだったんです。今は感謝しても足りないくらい」 

ロボ部「だからこそ、大会のない私達の代わりに活躍して欲しいんです。ありきたりな言葉ですが、頑張ってください」 

絵里「ええ、応援ありがとう。今の言葉はそれとなく他のメンバーにも伝えておくわ」 

ロボ部「はい。サンちゃんが必要なようでしたらロボット部までお越し下さい」 

絵里「……ええ、一応他のメンバーにもそれとなく伝えておくかもしれないわ」 

ロボ部「それでは、私はこれで。失礼します」

610: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:45:48.52 ID:+T6JUyDe0
――エリーチカと美術部 

絵里「あら、こんにちは」 

元部員「あ、会長さん。こんにちは」 

絵里「素敵なポスターをありがとうね。今回はプレッシャーがあったんじゃない?」 

元部員「ええ、そうですね。もう二度とこんな依頼はごめんだって思いました」 

絵里「ふふっ。流石にもうこんな依頼はないから安心して」 

元部員「それは安心です。でも、美術部一同で一致団結して一つの物を完成させる」 

元部員「スクールアイドルでは出来なかったことを、美術部として成せたことで漸く罪悪感はほとんど消えました」 

絵里「どれだけあなた達に救われているか……。にこももう辞めさせてしまったことを吹っ切れたんだから」 

絵里「貴女もそんな悲しい気持ちに捕らわれないで」 

元部員「頭で分かっていても、心が妙に頑固で許してくれないんですよ。物語みたいに夢に見ることはないですけど」 

元部員「あの日の――にこちゃんに退部届けを出した時の泣きそうなのを我慢して笑うあの顔を何度も思い出して」

611: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:47:19.70 ID:+T6JUyDe0
元部員「あんな風な顔をさせるなら、最初からアイドル研に入らなければ良かったんじゃないかって思って」 

絵里「それだけは絶対にないわ。にこだってとっても苦しんだと思う、でも絶対に其れを肯定したりはしないわ」 

元部員「ええ、知ってます。でも、後悔ばかりしてました。だから何があっても手伝おうって、応援しようって決めてました」 

絵里「実際にファーストライブからずっと応援してくれてるし、手伝ってくれてきたものね」 

絵里「言葉に出来ないくらい感謝してるの。だってね、あなた達が居なければアイドル研究部は同好会のままだった」 

絵里「私がにこ達に出逢うことなく生徒会長についてたら、生徒数が少ないことを理由に同好会を減らさせてたかもしれない」 

絵里「にこの笑顔を……私が奪ってたかもしれない。あなた達が居てくれたお陰で、そんな最悪は訪れなかった」 

絵里「私にとても自慢の妹達を引き合わせてくれたのは、アイドル研究部が、SMILEがあって、メンバーが居なくなって」 

絵里「それで漸く訪れる出来事だったの。だから、罪悪感を感じないで欲しい。自分勝手なことを言ってるけどね」 

元部員「……変わりましたね。一年生の頃に初めて見た時は氷のような表情だったのに」 

絵里「恥ずかしい過去よ。にことあんじゅにも酷いことしちゃったし、自分一人で何でも出来ると思ってたの」 

絵里「今考えると本当にお馬鹿さんだったわ。沢山の人達と絆を結んで尚、出来ないことが多いっていうのに」

612: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:48:33.79 ID:+T6JUyDe0
絵里「あのままだったら卒業する時に誰も見送ってくれないような、そんな最低の生徒会長になってた」 

元部員「良い方へ変われたというのは素敵ですね」 

絵里「にこのお陰よ。あの子は人だけじゃない、この学校や商店街までも良い方向へ変えてくれる」 

絵里「魔法使いみたいに」 

元部員「太陽みたいなあの笑顔で、ラブライブの歴史すら変えてくれそうですね」 

絵里「それは面白いわね。あ、引き止めちゃってごめんね」 

元部員「いいえ。美術部は自由参加ですが基本誰か美術室に居るので、何か手伝うようなことがあれば声を掛けて下さい」 

元部員「部長権限で二つ返事で手伝うようにって伝えてあるので」 

絵里「寧ろこっちが労わなきゃいけないくらいよ。カレーがかなり多めにあるから、よかったらお昼に家庭科室に食べに来て」 

元部員「その誘いに逆らう術を知らないので、お邪魔させてもらいます。にこちゃんのカレー美味しいから」 

絵里「他の部員の子も是非声掛けてみて。それじゃあ、またね」 

元部員「はい。あ、にこちゃんとあんじゅちゃんに頑張れって伝えておいてください」 

絵里「了解よ」

613: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:49:52.94 ID:+T6JUyDe0
―― 一日目 二十三時 SMILE部屋 

穂乃果「ねぇ、海未ちゃん。まだ起きてる?」 

海未「……ええ。いつもなら直ぐに熟睡できるのですか、どうやら気分が高ぶっているみたいです」 

穂乃果「だって仕方ないよ。こんなに楽しいんだもん。こんなに充実してるんだもん」 

穂乃果「今年だけっていうのが勿体無いくらい。眠っちゃうのすら惜しいよ」 

海未「今の私が言っても説得力に欠けますが、まだ一日目なんですよ? 気持ちをセーブしなければ怪我しますよ」 

海未「穂乃果のやる気モードはストッパーがないから心配になってしまいます」 

穂乃果「無理はしないよ。無茶はするかもしれないけどね」 

海未「そんなことを自慢げに言わないでください。全くもう……困った王子様です」 

穂乃果「海未ちゃんとことりちゃんを守れるくらいに強くもなるよ。夢を現実にする為にも」 

海未「穂乃果の夢、ですか?」 

穂乃果「うん。ことりちゃんがデザインしてくれた穂むらの制服を着て、海未ちゃんも納得するほむまんを作るの」 

海未「それは素敵な夢ですね」 

穂乃果「生半可な努力と気持ちじゃお父さんの味に追いつけないけどね」 

海未「穂むらを継ぐ決意を固めたのですね」 

穂乃果「うん」

614: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:51:23.26 ID:+T6JUyDe0
海未「そうですか。喜んだでしょうね、おじさんもおばさんも」 

穂乃果「お父さんなんてまだ覚悟決めただけなのに泣いちゃってさ。その時ね、改めて思ったの」 

穂乃果「穂乃果ってば自分のしたいことだけばっかりして、言いたいことばかり勝手に言ってたんだって」 

穂乃果「もっとするべきことがあって、言わなきゃいけないことがあったんだってさ」 

穂乃果「今更になって気が付いて、だからこそ今まで以上に頑張ろうって思うんだ」 

海未「なんだか一気に大人っぽくなりましたね」 

穂乃果「うーん、どうだろう。きっと一ヵ月後にはまた勝手なことを言ってそう」 

海未「ふふっ。それが穂乃果らしいとも言えますが」 

穂乃果「でも、既に退路はないからね。穂乃果は夢を叶えることが約束されてるんだー」 

海未「退路はない?」 

穂乃果「えっへへ。ま、その話はもっと大人になるまで秘密。ふわぁ~あ……そろそろ眠くなってきちゃった」 

海未「穂乃果は本当に自由ですね。ですが、穂乃果の話を聞いて私も何故か安心して眠くなってきました」 

海未「明日も早いですし、そろそろ休みましょう。おやすみなさい、穂乃果」 

穂乃果「うん、海未ちゃん。おやすみなさい」

615: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:52:44.84 ID:+T6JUyDe0
――真・始まりの詩 合宿一日目 真夜中 

「にこ……起きて、にこ」 

体を揺すられながら夢の中から現実へと引き戻された。 

起こしたのは誰でもない隣に寝ていた筈のあんじゅ。 

「何よ、明日からは合宿も本番だって言ったでしょう」 

「おトイレ一緒に行こう」 

目を擦りながら電気の点いていない教室の時計を見た。 

時間は二時四十分。 

夜中だから一人でトイレにいけないなんてことは今までなかった。 

「何よ、学校のトイレが怖いわけ?」 

「ううん。にこと一緒がいいの」 

どう返事を返したものか少し悩んだ後、起き上がって伸びをする。

616: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:53:41.92 ID:+T6JUyDe0
「仕方ないから付き合ってあげるわよ」 

「うふふ。ありがとうにこっ」 

「本当に最近あんたは甘えん坊よね。完全にここあより甘えてるわ」 

大げさな言い分ではなく、其れは紛れもない事実。 

言われた本人もその自覚があるらしく、何故か自信満々に頷かれた。 

この反応には苦笑いしか浮かべられない。 

「今日は月のお陰で明るいし、電気消したまま行くわよ。電気点いてたら寝付けない子が起き出したりするかもだし」 

「うん」 

上履きを履くと、あんじゅが左手を握ってくる。 

「それじゃあ、行こう♪」 

「はいはい。早く行って早く寝るわよ」 

眠気の残る足に活を入れ、静かに教室を後にした...

617: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:54:26.67 ID:+T6JUyDe0
――トイレ後 ⇒ 廊下 

「小学生の頃ならきっと夜の学校は恐ろしかったんでしょうね」 

「成長と共に不思議な世界へのトビラは閉じていっちゃうよね」 

夜はどうして暗いのか。 

空はどうして青いのか。 

ピーマンを残すとピーマンマンが出てくるのか。 

謎が謎じゃなくなる度に、自分の中の不思議が一つ、また一つと消えていく。 

大人になるってことは不思議が不思議じゃなくなることなのかもしれない。 

そのことをあんじゅに告げると「そうかもしれないね」と同意された。 

「だけど、不思議以上の物は残るんじゃないかな」 

「不思議以上の物?」 

「人は其れに気付いて以来こう呼んでるんだよ――運命って」 

「運命、ねぇ」 

皆でこうしている今すらも奇跡のような物で、ソレは確かに運命と呼べる物だ。

618: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:56:01.73 ID:+T6JUyDe0
「だから少しだけ寄り道していこう」 

なにが『だから』なのか分からないけど、何か言ったところで無駄そうなので手を引かれるままにする。 

「何処へ行くつもりよ?」 

「音楽室」 

既に行き先は決まっていたらしく、即答で返された。 

ううん、最初からトイレに行きたいから起こしたんじゃなくて、音楽室にでも行きたかったのかもしれない。 

「そういえば音ノ木坂の音楽室って七不思議の一つよね」 

「というか、どこでも音楽室は七不思議に入るんじゃないかな?」 

「まぁ、それもそうだけど。あの図書館の物語でも定番のピアノだったわね」 

「高校生になって肖像画の目が光ったところで何か仕掛けがあるんじゃないかと疑うだけだし」 

大人に近づくと疑い深くなるということでもあるのかも。 

それも当然のこと。 

守られていた存在から抜け出し、自立して、今度は守ってくれた存在を守る側にならなきゃいけないのだから。

619: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:57:28.25 ID:+T6JUyDe0
「でも本当の七不思議ってピアノも肖像画も関係なかった気がするけど」 

「人によって色が変わる鳴かない猫ちゃん、だっけ?」 

「と言ってもその目撃例は私達が入学する前には既になかったけど」 

その猫が成仏したのか、それとも居場所を変えたのかは分からない。 

そもそも最初から存在等していなかった方が現実的だ。 

「学校の七不思議自体もいつかは風化しちゃうのかな?」 

「どうかしらね。でも、子供って怖い話好きでしょ? 物語の中では残り続けるわよ」 

「それでもって、想像力豊かな子が自分の通う学校に七不思議を作って、それが噂となって広まるんじゃない」 

そうやって紡いでいくのが七不思議の本当の魅力なのかもしれない。 

「なるほど。そして自作自演する為に変装したい願望に目覚めて第二第三の紅蓮女の誕生だね!」 

「あんた本当にそのネタ好きよね。怖いメイクして街中歩いて人を脅かすようにならないか心配だわ」 

「そんなことしないニコ!」 

否定しておきながら「でもハロウィンの日はまた皆でコスプレしたいね」なんてことを笑顔で言っている。 

これが後の変装徘徊フラグになってないことを切に願う。

620: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 04:58:42.07 ID:+T6JUyDe0
――音楽室 

「流石にピアノの音もしなければ、猫ちゃんも居ないね」 

「肖像画にいたってはこの学院張ってないし。ま、何か不思議が起こられても困るけど」 

「私ならこうするね。ここで話してる最中に絵里ちゃんが来るの」 

左手の人差し指をピンと立てて名探偵のように解説を始めるあんじゅ。 

「二人が居ないから心配したのよ。明日も練習なんだし、いつまでも起きてちゃ駄目よ」 

「だからほら、早く帰りましょう。そうやって月明かりが雲に隠れ、より暗くなった中でもハッキリ分かる白い手を差し伸べてくるの」 

「寝起きでまだ完全に頭の回ってないにこはその手を疑問も持たずに取ろうとしちゃって、私が慌ててにこの体を後ろに引くの」 

「突然何すんのよあんたは! って怒鳴るんだけど、私はそれに答える余裕はなくて絵里ちゃんを凝視するの」 

「でも絵里ちゃんは優しく微笑んで、小首を傾げて見せるの。ギャーギャー言ってたにこも私の無反応なのに気付いて怪訝に思う」 

「そこで漸く目の前の其れの正体に気付いて身を固くするんだ。どうしたの、二人共。早く帰りましょう」 

「再度手を差し伸べてくる白い手。一歩身を引いた時、雲に隠れていた月がまた教室を照らすの」 

「暗かった中でも目立っていた白い手は、青白い色に変わっていた。顔を見るとそこには血を流す絵里ちゃんとは別の顔」 

「一緒に帰るのよ。あなた達だけ生きているなんてずるい。地獄へ連れて帰る」

621: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:01:29.84 ID:+T6JUyDe0
「ここでコマンド失敗するか捕まるとデッドエンド! しかも制限時間九十秒」 

何故か最後はゲーム形式になっているところで溜め息が漏れる。 

「寝惚けてたってあの暗がり怖い絵里が明かりも点けずに来た時点で本物じゃないって気付くわよ」 

「そういう勘が良すぎる主人公はエスパーかって言われちゃうから駄目」 

「何その理不尽!? というかどうしてにこが主人公になってるのよ」 

「うふふ。にこは私の主人公なの」 

いつかの絵里の誕生日で披露した怪談話よりはよく出来ている。 

身近な存在を怪談にするとより怖さが増すし、唐突に怪談になるんじゃなくて気付ける要素がある分楽しめる。 

これをもうちょっと肉付けして文にしてあげれば絵里はとても嫌がるだろう。 

今度の絵里の誕生日に披露するのもありかもしれない。 

「次の誕生日に絵里ちゃんにこの話するのもありかも★」 

姉妹揃って長女に対する嫌がらせ回路は同じらしい。 

「ま、それはそれでいいけど。音楽室にきて何かしたいことでもあるの?」 

「うん。一曲だけピアノ弾きたいなって」

622: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:03:39.47 ID:+T6JUyDe0
「ピアノって、もう三時よ。世が世なら草木も眠る時間よ」 

「眠らない街と呼ばれる東京でそんなこと言われても困るにこ」 

眠らない街とはいうけど、この辺は比較的早く静かになる。 

秋葉だって賑わっているのは夜と呼ばれる時間帯までで、十時を過ぎると大体の店は閉まっていて閑散としている……筈。 

そんな時間に外に出ないから本当の夜の世界を知らないけど。 

「本当に一曲だけだから」 

「しょうがないわねぇ。誰か起きてきたら一緒に謝ってあげるから、弾くなら早く弾いて戻って寝ましょう」 

元気よく「うん!」と返事を返すと、あんじゅはピアノの蓋を開けて赤いカバーを取った。 

椅子に座ると何故か自分の膝を叩いた後に、こっちに両手を広げる。 

「何よ?」 

「今日はにこをあんじゅの夜のピアノツアー特等席にご招待♪」 

「もう招待されてるじゃない」 

「違うよ。ここに座るの」 

先ほどと同じように自分の膝をポンポンと叩いている。

623: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:04:23.11 ID:+T6JUyDe0
つまり私があんじゅの膝に座らされたまま一曲弾き終えるのを待てと? 

ツッコミを入れて話を長くすると睡眠時間を削られるだけなので、ここはもう素直に従うことにした。 

他グループを招いておきながら、一日目に寝不足で動きがグダグダじゃ笑われる。 

勢いをつけてあんじゅの両膝に座ると、キャッチするように両手を回される。 

「……人の膝に座るなんていつ以来かしら」 

「私と出逢う少し前くらいとか?」 

「中学生でこんなことされる娘がどこに居るのよ!」 

「あれ? にこって飛び級で高校生やってるだけで十歳じゃなかった? 髪の毛で空を飛べるんだよね」 

「なにそれ!?」 

そもそも日本に飛び級なんて制度はないし、私の学力では落ちることはあっても上がることはない。 

もし日本が学力至上主義になってて、学力に見合ってない限り上にいけないような法律だったら危なかった。 

「でも今のにこはツインテールじゃないから空は飛べないか」 

「いつもの髪型でも空なんて飛べないわよ! 大体飛んだのなんて穂乃果くらいでしょ」 

「今思うとおしいことをしたよね。屋上に居る時点で夢って気付けてたらアイキャンフラーイ出来たのに」

624: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:05:15.19 ID:+T6JUyDe0
「なんで英語なのよ。そんなことより無駄話してないで演奏しなさいよ」 

気を抜けば直ぐに脱線してしまう。 

「うん。それじゃあ演奏を開始するけど、膝から落ちないようにね」 

「落ちないわよ」 

演奏の邪魔にならないように両手を膝の上で交差させるように起き、肩を中央に寄せる。 

鍵盤の上にあんじゅの細くて長い指が置かれる。 

こうして見ると、手のモデルになれそう。 

そんなことを思っていると、指が優しく動き始める。 

生まれたメロディはよく知るもので、高校の音楽室には不似合いなもの。 

森のパンダさん。 

子供の頃はお母さんや幼稚園で歌う童謡。 

私のカラオケでの十八番でもある。 

「私の演奏会はゲストに歌ってもらうのがルールなんだよ」 

「……青く晴れた日に~森の中で出会ったパンダさ~ん♪」

625: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:06:27.06 ID:+T6JUyDe0
あんじゅの演奏と私の歌声が音ノ木坂の音楽室に生まれては消えていく。 

不思議な気分がした。 

あんじゅと出逢った日、私は時間がなくて商店街まで行かずにスーパーで買い物をした。 

丁度欲しかった卵が特売をしていて迷わずに買い、他のは最低限だけ買って家路に着く。 

階段を上り、いざ家の前までっていう瞬間に今こうしている最中の光景を観た気がする。 

そして、その光景は自分視点ではなくてとても低い位置から見上げるような感覚だった。 

四つんばいになっているよりも更に低い。 

そう、まるで猫の視点とでも言えば納得出来るようなそんな視線の低さ。 

私と知らない子であったあんじゅがこうしてピアノを弾き、私が歌う。 

幻のような光景が終わった瞬間、隣の部屋の前で膝を抱えているあんじゅを見て驚き買い物袋を落とした。 

その時に落として割れた卵がショックで忘れていたけど、今完全に思い出した。 

歌いながら視線を横に向ける。 

正確には右横の床辺り。 

そこには薄い白色の猫がこちらを見上げていた。

626: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:08:04.45 ID:+T6JUyDe0
口を開いているけれど、その鳴き声は聞こえない。 

目撃例すら途絶えた七不思議。 

でも、今そこに本物が居る。 

「大きな切り株の上~一緒に踊りましょう♪」 

大人になるっていうのは不思議が不思議じゃなくなること。 

でも、今目の前に不思議がある。 

それはまるで…… 

自分勝手な解釈だと分かってる 

……でも 

まだ私は子供でいても良いんだって言われてる気がした 

そう自分の中で思った時、猫の薄い白色が徐々に薄れて、最後に声なく一鳴きして溶けるように消えていた――。 


「ねぇ、あんじゅ見た?」 

「え、何を?」 

とぼけているような声色ではなく、演奏していたあんじゅは余所見をする余裕はなかったようだ。

627: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:08:58.10 ID:+T6JUyDe0
普通に演奏してる時ならまだしも、私を膝に乗せて演奏していたのだからそれも当然ね。 

「運命っていうのはどこでどう繋がっているのか分からないものね」 

不思議そうにしながら返答はせず、ギュッと私のお腹の前に回した手に力を入れて抱き締めてくる。 

「それで、急にこんな風に演奏したりするなんて何かあったんでしょ?」 

「というか、最近甘えん坊な理由も同じよね。一体あんたに何があったの?」 

今ここは二人だけ。 

誰かに話を聞かれることもない。 

相手を気遣う必要もない 

本音で喋っていい、そんな二人の世界。 

「……ラブライブ」 

暫くしてからあんじゅがポツリと呟いた。 

いつもの明るい声ではなく、出逢った頃のような不安と怯えの含まれた声。 

「全国中継だし、ラブライブは出たくない?」 

「ううん、そうじゃない」

628: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:09:43.85 ID:+T6JUyDe0
ギューッと抱き締められて一瞬息が出来なくなったけど、これでないとなると何が原因なのか分からない。 

「規模が大きい大会なのが不安なの? それなら今回の代下克上だって同じだけど」 

「違うの。ラブライブは……本戦にはA-RISEが居るから」 

「A-RISEが怖いの?」 

確かに争うという面で考えれば一番の強敵であるのは間違いない。 

ランキングが見えていた今日の、日付的には既に昨日ね。 

昨日の公開終了するまでの間に表示されていた一位はA-RISE。 

「A-RISEじゃなくて……」 

あんじゅらしくなく、弱々しく言葉が途切れた。 

「もう、どうしたのよ。きちんと言ってみなさいよ」 

元気付けるようにおへその前でロックされているあんじゅの手に自分の両手を重ねる。 

「私は綺羅ツバサが怖いの。にこを連れて行ってしまいそうだから。にこに置いていかれてしまいそうで、怖いの」 

不安を体現するように、あんじゅのその言葉は酷く震えていた。 

でも、どうしてキラ星に怯えているのか検討がつかない。

629: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:10:44.95 ID:+T6JUyDe0
「にこにとって綺羅ツバサは本当の家族を除いて一番特別な存在だから。にこには夢を取り戻して欲しいって願ってる」 

「でも、夢を取り戻した時は綺羅ツバサと一緒に走って行っちゃうんじゃないかって不安で」 

「今までは大丈夫だったけど、実際にラブライブ本戦に出場できる可能性が出てきた今、不安が大きくなってしまって」 

「だから……ごめんなさい」 

音楽室に零れた謝罪は誰の為なのか。 

「あんじゅが謝る理由がないわ。それに、敬語はやめろって言ったでしょ!」 

「私が弱いのがいけないのよ。あんじゅが不安にならないくらい強くて、夢をきちんと志すことが出来ないから」 

「一生懸命考えてるんだけど、でもまだ答えが出なくて」 

「ラブライブに出れば答えが出るかもしれない。キラ星と再会すれば答えが出るかもしれない。それでも出ないかもしれない」 

「こればかりは自分のことなのに一番分からないの」 

色んな事を思い出す。 

パパの言葉。 

キラ星と出会って感じた違い。 

あんじゅとの出逢い。

630: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:12:01.63 ID:+T6JUyDe0
SMILEのリーダーとして皆を纏められなかったこと。 

キラ星と画面越しの再会をしたこと。 

今のメンバー達と出会って、経験してきたこと。 

それでも……私はまだ自分がどうしたいのか答えが出せないでいる。 

「ただね、これだけは言えるわ」 

「あんじゅは勘違いしてるわよ。キラ星が本物の家族を除いて一番特別な存在っていつ私が言ったのよ」 

「だって、にこはいつもキラ星は憧れで一等星で誰よりもアイドルに向いてるって嬉しそうに言ってるもん」 

拗ねるようなあんじゅの言葉に、場違いながら笑いが零れてしまった。 

「キラ星が特別な存在であるのは間違いないわ。一等星の輝きを持っていて、誰よりもアイドルに向いていると思う」 

「それは嘘偽りのない私の本音。でもさ、私も絵里のこと言えないくらいにシスコンなのよ」 

「面倒臭くて、人の真似ばっかりして、家事は全然駄目で、最近は時代を逆走する知識ばかり見につけたりする」 

「そんなお馬鹿な妹を私は一番特別だって思ってるわ。っていうか、そうでもなきゃ一緒に住んだりしないわよ」 

「一緒にご飯食べて、一緒にお風呂入って、一緒の布団で寝て、一緒に登校する。誰よりも一緒に居るじゃない」 

「それで不安になられたら困るレベルにこよ。それに、あんじゅとの出逢い程驚いた出逢いなんて他にないもの」

631: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:12:59.93 ID:+T6JUyDe0
「運命って言葉を一度だけ使えるんだとしたらさ、あんじゅと出逢ったあの日にこそ相応しいわ」 

「神様が間違えて私とあんじゅの指に赤い糸でも付けちゃったんじゃないかって疑うくらいよ」 

「これでもまだ不安だって言うなら特別よ。本来はこんな素直に胸の内を語ったりしないんだからね」 

「あんじゅが惚れ込むような男が現れるか、あんじゅが私に飽きるまでずっと一緒に居てあげるわ」 

「私がどんな未来を歩むことになるなんて今は分からないけど、でもそれだけは約束できる」 

「キラ星を一等星とするなら、あんじゅは私と同じ四等星。輝きなんか関係ないくらい寄り添う姉妹星」 

天文学には疎いけど、姉妹星なんて単語は恐らくないだろう。 

でも、そんなの邪道な私達には関係ないわ。 

「……っ、ひっぐ」 

小さな嗚咽と共に、首元に熱い雫が垂れ落ちた。 

「そういえば、あんじゅが泣くなんて初めてね」 

「んぐっ、うぅっ……ぐすっ」 

「パパが言ってたわ。素直に泣けるのは強くなれる子だって。だからあんじゅは今よりももっと強くなれるわ」 

慰めるように重ねている手を優しく、でも強く握る。

632: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:14:20.53 ID:+T6JUyDe0
「でも、あんまり強くなり過ぎると何もしてあげられなくなっちゃうわね。只でさえ、あんじゅの手の平の上なのに」 

「ぞんなっ、ことな゙い゙にこぉ」 

「ま、あんじゅが強くなるなら私も強くなればいいだけの話だものね。さっきね、不思議なことがあったの」 

「ここに来るまでの話がフラグだったのか、それとも他のどこかの絆と繋がっているのか知らないけど」 

「でも、教えられたの。まだ私は子供なんだって。子供で居ていいんだって」 

「だから……夢のことももっと悩んで、足掻いて、苦しんでみようと思うの。今までが逃げ腰過ぎたから」 

「さっきも言ったけど、私は弱いから答えを出せるのがいつになるか分からない」 

「でも、そんなに長くはないと思うの。ずっと見えなかった出口が今は見えてきた気がする」 

「夢を諦めた私が辿り着く答えが何なのか、誰よりも真っ先にあんじゅに聞いて欲しい」 

「うんっ!」 

涙に濡れたあんじゅの元気な返事に自然と笑顔が生まれた。 

「そんな訳だからさ、不安にならずに楽しみなさいよ。せっかくの最初で最後のラブライブなんだから」 

「って、まだ出場出来るって決まった訳じゃないけどね」 

「ううん、絶対にSMILEは出場出来るよ。だって、にこがリーダーを務めてて、その姉妹星の私も居るんだもん」

633: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/07/04(土) 05:16:18.82 ID:+T6JUyDe0
「だから出場出来ない筈がないよ! 私は今まで以上に輝いて、にこと一緒に一等星の姉妹星になるにこっ☆」 

元気になったのはいいけれど、姉妹星を連呼されると無性に恥ずかしい。 

私のネーミングセンスも、あんじゅや絵里のことを言えないかもしれない。 

邪道シスターズは揃いも揃ってダメダメね。 

だけど、そんな駄目な私達だから出逢う運命が生まれたのかもしれないわ。 

「大下克上のSMILE最後に歌う《歌姫より...》の時は私とにこは小指に赤い糸巻いて出ようね」 

「嫌よ! 只でさえ何か知らないけど百合疑惑が立てられてるって知ったんだから」 

「ツンデレの了承入りました~♪ あ、でも百合って白いから白い糸の方がいいかな?」 

「だから巻かないって言ってるニコ!」 

私達は何でもない話を続け、部屋に戻ったのは外が完全に明るくなってからだった……。 


これは学園祭も終わった秋の深まった頃になるのだけど、あの透明の猫の正体が判明することになる。 

凛の過去に繋がっていることが判明し、その時にまた一騒動あるのだけど、それは語られることのない……秘密の物語。 


■次回クライマックス後編■ 
次回の続きは合宿一日目のにこが目覚めるところからなので、少しだけ時間が戻ります 
もう長くても妥協しないので残る更新はあと2回! 

この物語が無事に完結したら、百合にこあんを再開するんだ...  ピコーン フラグの音色です

644: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/08/04(火) 10:11:55.56 ID:bsdi516U0
※これはまだ観れてない劇場版を予想した映画の予告です 

【劇場版 ラブライブ! ~始まりのスクールアイドル~】 

その日、四人の少女が同じような夢を見た 

否、夢というには余りにもリアリティがあり、まるで起こりえた筈の未来を体験したかのよう 

目覚めた時、そこが現実なのか夢の続きなのかそれぞれの少女達は気付くのに少なくない時間を要した 

四人の内の一人 

UTX学院のまだ真新しい制服を着込む綺羅ツバサは考える 

スクールアイドルという新しい発想 

アイドルを志す自分にとって、高校生活の最高の刺激になり得る 

何よりも 

ツバサ「夢と分かっていても、一勝一敗じゃ決着とは言い切れない。次こそ勝つわ」 

夢であると認識して尚、現実にμ'sというグループが存在することになると確信するような強い想い 

ただ、不思議なくらいμ'sのメンバーの顔や名前が抜け落ちる 

覚えているのは自分と同じA-RISEになる二人は覚えていた 

一人はクールが板につく統堂英玲奈 

もう一人はふんわかお嬢様といった感じの優木あんじゅ 

とても楽ではないグループ練習を重ね合い、一番の仲間でありながら最大のライバルでもあった二人 

ツバサ「……そうだ、花よ」 

A-RISEのことを回想する中で、μ'sに繋がる一人の名前を思い出すことに成功した 

矢澤にこ 

自分と同じくらいの背丈で、メンバーに愛される弄られキャラってところだったかしら? 

でも、ファンの前ではどう見られるかを意識して行動に移せる小悪魔 

学校は……オトノキだったわよね 

霧が掛かっているような記憶の中で掬い取れた最後の情報 

ツバサ「まずは行動からね。実在すれば夢は夢ではなくなるし、存在しなかったとしたらそれでもいい」 

其れはただの夢だったんだと結果を出すという意味ではない 

ツバサ「どちらにしてもスクールアイドルを始めるのは変わりはないもの」 

無から有を作り出して魅了し、流行らせてこそアイドルになる資格がある 

スクールアイドルは私がアイドルになれるかどうかの運命の賽のような物 

夢から覚めた時点で綺羅ツバサの運命は動き始めた……。

645: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/08/04(火) 10:12:53.46 ID:bsdi516U0
とても変な夢を見た所為で朝食を作る時間が遅れて、指に火傷を負った 

あんな夢をあたかも現実なんじゃないかと少しでも思ってしまった自分が憎い 

アイドルになる夢を叶えたいとは思う 

でも、その手段が何一つない現状では妹達よりもっと小さな子が描く将来の夢と同レベル 

自分が誰かに影響を与えられるなんて……今はもう思えない 

友達とアイドルの話で盛り上がることはたまにある 

でも、それは小さい頃からアイドルが好きな自分にとっては本を開かずにその表紙だけ見て評価するような物 

アイドルについて満足いくまで話せるような友達は一人として居ない 

小学生の頃に満足いくまでアイドルの話をしたらウザがられたことを切っ掛けに自分の中の夢に陰りが生まれた 

そして、その影響で根拠もなく輝いていた自信を曇らせて今に至る 

音ノ木坂学院に入学しても自分でアイドル研究同好会を立ち上げることもせず、帰宅部として早く帰る 

にこ「スクールアイドル……ねぇ」 

あんな風に仲間達とアイドルのように輝くステージでライブが出来たらどれだけ幸せか 

あの子と一緒にアイドルの話で満足いくまで盛り上がれたらどれだけ嬉しいか 

私みたいな頼りにならない先輩の誘いに乗って、メンバーが離れても尚付いてきてくれるなんて夢は所詮夢よね 

どうしてこんな夢を見たんだろう 

にこ「……アイドルになりたいって気持ちが消えてないってことね」 

部屋の机の引き出しにしまってあるUTX学院の学校案内が何よりの証拠 

道端で倒れてる人を助けたらその人が大手プロダクションの社長で恩を返す為に君をデビューさせる 

なんて夢の方が無駄に考えないで済んで良かったのに 

にこ「……μ's」 

九人の歌姫から取られたグループの名前 

出来事は覚えているのに、メンバーの名前が思い出せない 

何人かの顔がうっすらと思い出せるだけ 

夢なんて目覚めていれば何れは忘れてしまうもの 

にこ「そのくせに起きて抱く夢はいつまで経っても消えてはくれないにこね」 

アイドルになりたい 

その夢は諦めてしまいたくても、決して消えてはくれない 

まるで呪いのように胸に刻まれている 

そう、まだこの時は矢澤にこにとって消せない夢は呪いでしかなかった……。

646: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/08/04(火) 10:13:27.19 ID:bsdi516U0
突拍子もない夢を見た 

それなのに目覚めてから夢であると知って尚、胸の高鳴りは収まらない 

ずっと探していた宝物を見つけ当てたかのような気分 

穂乃果「スクールアイドル!」 

思わず声に出してみた 

胸がその単語を発した瞬間、キュンっと呼応する 

正直アイドルについてなんて何も知らないに近い 

可愛い衣装を着てるという時点で幼馴染のことりの方が詳しいかもしれない 

でも、そんな些細なことは高坂穂乃果には関係なかった 

穂乃果「九人揃ってμ's」 

素敵な言葉だと浸りながらもそのメンバーのことを誰一人として覚えていない 

だけど知っている 

自分が無茶をする時に一緒に無茶をしてくれる二人の名前を 

ことりと海未 

あの二人が一緒じゃない筈がないもんね! 

勝手に納得し、どう説得しようか考える 

スクールアイドルになろうと誘っても、あくまでも其れは夢の話でしかない 

それに何より穂乃果達は受験生 

アイドルを真似た練習に付き合ってくれるとは流石に思えない 

受験が無事終わっても、恥ずかしがり屋な海未は首を縦に振ってくれるとは考え難い 

考えれば考える程に夢は夢であり夢でしかないと感じた 

穂乃果「でもいいや!」 

不安に包まれる心に渇を入れるように声を張り上げる 

穂乃果「夢なき夢は夢じゃない! 可能性感じたんだからやってみなきゃ!」 

取り敢えずは学校に行く前にコンビニでアイドル雑誌を買おう 

当然中学校でそんな雑誌を持って行ったのがバレたら没収後お説教コースだけどそんな考えは既に頭にない 

穂乃果の頭に描かれているのは最高のステージで歌う自分達の姿 

胸の高鳴りはまだまだ収まりそうにはなかった……。

647: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/08/04(火) 10:14:10.41 ID:bsdi516U0
とても不思議で素敵な夢を見た 

自信のない私だけど、凛ちゃんを始めとした他の八人のメンバーに引っ張られて成長していくそんな夢 

解散の危機もあったし、憧れのグループのライブを目の前で見て自信が揺らぎそうになったり 

九人のメンバー全員で歌詞を考えて一つの曲を作り 

そのお陰で最高と謳われたグループに勝手ラブライブ本戦へ 

花陽「ラブライブって素敵な響きだよね」 

小泉花陽は覚えていた単語を口にして、本当にあったら良いのにと残念に思った 

本当にスクールアイドルがあって、ラブライブがあったのならもっともっと楽しい日常が待っている 

だけど、その反面強く思うことになると思う 

《私もスクールをやりたい》《花陽なんかじゃ絶対に無理だよね》 

二律背反の思いが心の中で争って、結局は無理だと現実を見るのだろうと 

あんな素敵な夢のように強くなんてなれない 

幼馴染の凛のように強くなれない 

花陽「……でも」 

切っ掛けがあれば変われるのかも 

都合の良い話なんて現実には落ちてない 

だから自分で紡ぎださないと何も始まらない 

この夢をただの夢として終わらせればいつもどおりの日常が待ってる 

ただアイドルが好きな自分の日常が…… 

だけど、行動してみることで変われるのかもしれない 

今より少しでも進歩した自分へと 

夢の中の凛が大きな成長を魅せたように 

自分も頑張って変わってみようと決意する 

花陽「一人じゃ怖いから凛ちゃんに付き合ってもらえないかな……」 

まだ自信はなく、幼馴染の後ろに隠れる臆病な花陽 

μ'sという明るい太陽に注がれて花開くのはもう直ぐ……。

648: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/08/04(火) 10:15:06.56 ID:bsdi516U0
ツバサ「ねぇ、そこの貴女。この学校に矢澤にこさんって居るかしら?」 

絵里「矢澤にこ? 何年生かしら」 

ツバサ「存在しているのなら一年生よ」 

絵里「存在していたら……ふざけているの?」 

ツバサ「まさか。私はいたって真面目よ。こんな冗談を言う為にそこの階段を上ってきたとでも思う?」 

絵里「馬と鹿の区別も出来ないような人間は、無自覚だから怖いのよ」 

ツバサ「ハッキリと言うのね。そういうのは嫌いじゃないわ」 

ツバサ「だけど確認だけはしておきたいの。貴女の信頼を損ねてもね」 

絵里「矢澤にこなんて生徒は私は知らないわ」 

希「ウチは知ってるよ」 

ツバサ「本当!?」 

絵里「……東條さん」 

希「エリち酷いやん。先生に用事があるから少し遅れるって伝えてたのに先に出るなんて」 

絵里「待ってるとは言ってないもの」 

ツバサ「そんなやりとりは私が居なくなってからして! それで、矢澤にこは本当に存在するの?」 

希「不思議な言い方するね。一年B組に矢澤にこさんって生徒がいるのは確かだよ」 

希「B組のHRはウチが教室出る頃に終わりそうだったから、そろそろ出てくるんじゃないかな」 

ツバサ「二人共どうもありがとう。機会があれば今度何か甘い物でも御馳走するわ」 

絵里「……私は何もしてない。それじゃあ、二度と遭わないことを祈ってるわ」 

希「ウチもエリちと帰るから行くね。甘い物期待してるから、ほな~」 

ツバサ「ええ、またね」 

ツバサ(矢澤にこは存在する。でも、夢の中のような子なのかどうかはまだ不明) 

ツバサ「きたっ!」 

ツバサ(でも、見た目は確かあんな感じの子。果たして私だけの夢なのか。それとも奇跡はあるのか) 

ツバサ「矢澤さん♪」 

にこ「ん? あんた誰よ?」 

ツバサ「私は綺羅ツバサ。一緒にスクールアイドルを始めない?」 

にこ「スクールアイドル!! 何であんたがその単語を知ってるの!?」 

ツバサ「――運命が私と貴女を選んだから、かもしれないわね」

649: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/08/04(火) 10:16:04.83 ID:bsdi516U0
花陽「あのね、凛ちゃん。今日帰ってから付き合って欲しい所があるんだけど」 

凛「別にいいよ。でもまたアイドル専門ショップは懲り懲りにゃー」 

花陽「ううん、今日は違うよ」 

凛「パンケーキでも食べに行くの?」 

花陽「そうじゃないの。遊びに行くんじゃなくて……勇気が欲しくて」 

凛「ゆうき?」 

花陽「うん。その為に西木野総合病院に付き合って欲しいの」 

花陽(私が覚えていたのは凛ちゃんと同い年の西木野真姫ちゃんだけ) 

花陽(本当に存在する病院の一人娘って夢ではなってたけど、実際に居るのかどうか確かめてみたい) 

凛「病院ってかよちんどこか怪我でもしたの!?」 

花陽「そ、そうじゃなくて……その、夢が夢じゃなかったら勇気を貰えるから」 

凛「意味がわかんないよ」 

花陽「自分でもよくわかってないの。でもね、変われるチャンスなんだって不思議と分かるの」 

花陽「ここで行動をすることで私は強くなれる……かもしれないって」 

凛「かよちん?」 

花陽「あのね、私今より強くなりたいの。凛ちゃんと一緒に成長したい」 

花陽「変な話かもしれないけど、病院に行ってみることでそう成れるのかどうか分かると思うんだ」 

凛「よく分からないままだけどいいよ。かよちんが納得するまで凛は付き合うニャー!」 

花陽「ありがとう、凛ちゃん」 


穂乃果(ry 


ツバサ「ということで、私と一緒にスクールアイドルやってみない? A-RISEには貴女が絶対に必要なの」 

英玲奈「そんな不明瞭なことに付き合う暇人ではない」 

走り出したツバサに待ち受けるのは拒絶 

ツバサ「後悔は絶対にさせないわ」 

あんじゅ「面白いわね。私はそんなことをするより一分でも多くレッスンを受ける方が身の為になるわ」 

あんじゅ「貴女は頑張って無駄な遠回りしていればいいと思う。ライバルは少ない方がいいからね」 

アイドルになるという狭き門を信じて目指すUTX学院の生徒に隙はない 

けれど、拒まれただけで諦めるツバサではない 

A-RISE結成の為に二人のスカウトを諦めはしない 

何度もめげることなく二人に話をし、次第に統堂英玲奈と優木あんじゅは綺羅ツバサのカリスマ性に惹かれていく

650: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/08/04(火) 10:17:07.97 ID:bsdi516U0
四人の主人公から紡がれるスクールアイドル創生の物語 

それが劇場版ラブライブ! 

スクールアイドルが流行り、見事にラブライブが開催されるのか…… 

答えは劇場にて! 


★おまけ★ 

ツバサ「あんじゅ! メンバーになってくれるのならこの矢澤にこをプレゼントするわ」 

にこ「何あんたは変なことを言い出すのよ!」 

あんじゅ「……あら、素敵な子ね。うふふ、頂いておくわ」 

にこ「にこぉ!?」 

あんじゅ「可愛い鳴き方ね。にこにこっ♪」 

にこ「んぅ」 

優木あんじゅゲット! にこあんフラグが成立しました☆ 


……前回更新してからもう一ヶ月!? 
ら、来週はお盆で三連休あるし、一日十時間ずつ書けばクライマックスなんて一撃で終わります。遅れたけど穂乃果誕生日おめでとー

658: ◆GKcmsITYJ1lx 2015/09/18(金) 03:03:52.00 ID:vbWpgT9b0
◇エピローグ◇ 

あんじゅ「くぅ~疲れたね。あっという間に九月かぁ」 

にこ「早いものね。それほど充実していたっていうのもあるけど」 

あんじゅ「夏終わらないでと願っても、時は進み続けるものだもんね」 

にこ「ええ、だからこそ何事も愛しく思えるのよ」 

あんじゅ「うん。……合宿楽しかったね」 

にこ「大下克上と名づけておいて不甲斐なさ過ぎる結果だったけど」 

あんじゅ「結局は私たちだけが予選通過。しかも十九位だもんね」 

にこ「それなのに全部のグループが私達を応援してくれて。申し訳ない気持ちもあったけど」 

にこ「とっても嬉しかったわ」 

あんじゅ「穂乃果ちゃんのお陰でもあるよね」 

にこ「……認めるには些か納得がいかないというか、複雑だけどその通りね」 

あんじゅ「まさかあんな風になるなんて」 

にこ「海未の中二病が感染するとは本気で思ってなかった」 

あんじゅ「ホノカイザー。まさかファンタジーネームがないのがフラグだったなんて」 

にこ「あんたの書いた物語がすべての原因の気がするわ」 

あんじゅ「それは横暴だよ」 

にこ「事実よ事実! なんであの三人組もあんな仮面とマントなんて用意するのよ」 

あんじゅ「ひふみちゃん達に罪はないって」 

にこ「わかってはいるけど……いや、お陰で注目度が増して結果予選通過に繋がったけど」 

あんじゅ「結果オーライにこよ」 

にこ「そうしとかないと胃が痛むから納得しておくわ」 

あんじゅ「話は進むけどラブライブ本戦は凄かったよね」 

にこ「ええ、夢のような舞台。ううん、夢の世界だった」 

あんじゅ「そうだね、あれは舞台の域を超えて世界だった」 

にこ「音ノ木坂がラブライブの歴史に名を刻むことになるなんてね」 

あんじゅ「A-RISEとのW優勝だけど」 

にこ「充分じゃない。本戦に進めることが奇跡だったのに、キラ星達と優勝を分け合うなんて」 

あんじゅ「で、どうするの?」 

にこ「どうするって何がよ」 

あんじゅ「この話題からならこれしかないでしょ。綺羅ツバサの『にこにー。私との決着はプロのアイドルになってからね』って言葉の返事」 

にこ「……」 

あんじゅ「夢を奪ったのが綺羅ツバサなら、それを取り戻すアシストをするのも綺羅ツバサ。個人的にはムッとするけど」 

あんじゅ「でも、それでもにこがまた夢を目指してくれるなら我慢する」 

にこ「どんな言い分よ」 



嘘エピローグの途中ですがここで本題に入ります 
ノートパソが半壊れになって……正直困ってます 
でも、いつまでも先延ばしにしてもしょうがないですし、今日から一ヵ月 
どうにかそれまでにクライマックス後編を書いて更新出来れば最終回も続投 
それが叶わなかった場合、素直にエターナルを宣言して完結までのあらすじを全部出して依頼を出すことにします