498: 名無しさん 2019/05/23(木) 20:24:39.66 ID:KXAxisGco
凛「うん。ちょっと……興味があって」 

拓海「凛が興味があるって言ってんだぞ!? なっ!?」 

凛「拓海の言う、『その風の先』が気になって」 

拓海「危ねえ真似はしねえって! アタシを信じろ!」 


武内P「向井さんの後ろに、渋谷さんを乗せて二人乗りをしたい、と」 

武内P「……そういう事でしょうか?」 


凛「うん」 

拓海「ああ!」 


武内P「絶対に駄目です」





引用元: ・武内P「援助交際、ですか」

499: 名無しさん 2019/05/23(木) 20:33:12.26 ID:KXAxisGco
凛「……何で?」 

拓海「オイ、コラ! そりゃどういう事だよ、えぇ!?」 

武内P「バイクで二人乗りが出来る様になるには、条件があります」 

凛「条件?」 

武内P「はい。……ですが、その前に」 


武内P「高速道路には、行かれますか?」 


拓海「…………行か」 


武内P「はい、絶対に駄目です」 


拓海「せめて最後まで言わせろやコラァ!」

500: 名無しさん 2019/05/23(木) 20:38:39.49 ID:KXAxisGco
武内P「『その先の向こう』……かなりの速度を出すという意味に取れました」 

凛「うん、限界までかっとばす、って言ってた」 

拓海「オイ、コラ!?」 

武内P「そうですね、速度を出す場合はそうなります」 

拓海「……!」 


武内P「ですが、高速道の二人乗りをする場合」 

武内P「運転者は、二十歳以上でなければいけません」 

武内P「……向井さんは、まだ未成年ですね?」 


拓海「あ……アタシがガキだって言いてぇのか!? あぁ!?」 


凛「……」 

武内P「……」

501: 名無しさん 2019/05/23(木) 20:44:39.07 ID:KXAxisGco
凛「それじゃあ……諦めるしか無いかな」 

拓海「オイオイ!? 何言ってんだよ!?」 

凛「でも……」 

拓海「チッ! 高速に乗らなきゃ良いんだろ!?」 

武内P「……」 


武内P「……渋谷さんは、バイクに乗った事自体がありません」 

武内P「向井さんは、その渋谷さんを後ろに乗せて……」 

武内P「……安全な走行が、出来ますか?」 

武内P「私は、とても危険だ、と」 

武内P「……そう、思います」 


凛・拓海「……」

502: 名無しさん 2019/05/23(木) 20:49:26.00 ID:KXAxisGco
武内P「……すみません」 

武内P「渋谷さんの、新しい世界を知りたいという気持ち」 

武内P「向井さんの、それを見せてあげたいという気持ち」 

武内P「……どちらも、理解出来ます」 

武内P「ですが、貴女達にもしもの事があってはいけません」 

武内P「……なので、私は許可出来ません」 


凛「……そう、だね」 

拓海「……ああもう、クソッ! アンタ、プロデューサーだろ!?」 

拓海「こういう時に、何か方法を考えるのが仕事じゃねぇのか!?」 


武内P「そう、ですね……」 

武内P「……有るには……有りますが」 


凛・拓海「!」

503: 名無しさん 2019/05/23(木) 20:57:09.02 ID:KXAxisGco
  ・  ・  ・ 

346プロ、前 


凛「この時間に此処で、って言われたけど……」 

拓海「……アイツ、適当な事言って誤魔化したんじゃねぇだろうな」 

凛「それは……無い、と思う」 

拓海「……チッ、いつまで待たせんだ!」 


黒ヘル「――すみません、お待たせしました」 


凛・拓海「っ!?」 

凛「だ……誰……!?」 

拓海「オイ、テメェ! 顔を見せやがれ!」 


…カポッ! 

武内P「――正面に乗り付ける予定だったのですが……」 


凛・拓海「……はいっ!?」

504: 名無しさん 2019/05/23(木) 21:04:01.86 ID:KXAxisGco
凛「そ、その格好……何!?」 

武内P「えっ? バイクに乗って来たので……」 

拓海「乗ってきた!? アンタが!?」 

武内P「はい」 


武内P「その……少し、驚かせようと思い」 

武内P「ヘルメットを被ったまま来たのですが……」 

武内P「……やはり、慣れない事はするものではありませんね」 


凛「いや、驚いたから! その……色んな意味で!」 

拓海「オイ、ちょっと待て……あぁ!? 何だぁ!?」

505: 名無しさん 2019/05/23(木) 21:09:44.93 ID:KXAxisGco
凛「プロデューサーって、バイクの運転出来たの!?」 

武内P「はい、プロデューサーですから」 

拓海「理由になってねえぞ!」 

武内P「えっ?」 


武内P「346プロダクションのプロデューサーは……」 

武内P「……もしもの時に備えて」 

武内P「様々な免許や資格を有している、と」 

武内P「……ご存知、ありませんでしたか?」 


凛・拓海「初耳!!」

506: 名無しさん 2019/05/23(木) 21:17:03.87 ID:KXAxisGco
武内P「中には、船舶の操縦が出来る者も」 

凛「じゃあ、今日って……プロデューサーが!?」 

武内P「はい」 

拓海「オイオイ……マジかよ!?」 


武内P「今日は、渋谷さんに……」 

武内P「バイクの二人乗り――タンデムの仕方を教えよう、と」 

武内P「……そう、考えています」 


凛・拓海「……!」

508: 名無しさん 2019/05/23(木) 21:26:22.64 ID:KXAxisGco
  ・  ・  ・ 

346プロ、地下駐車場 


武内P「この奥に、私のバイクが停めてあります」 

凛「来たこと無かったけど……こんなに広かったんだ」 

拓海「アタシも、入り口近くに停めてて……気にしてなかったぜ」 

凛「あっ、もしかしてあれ?」 


武内P「いえ、あれは――パッソルですね」 


拓海「ああ、たまに見かける原付だな」 

凛「ふーん……どう違うの?」 

拓海「たまに、オバチャンが運転してるの見ねぇか?」 

凛「ああ、確かに同じ見た目かも」

509: 名無しさん 2019/05/23(木) 21:32:52.91 ID:KXAxisGco
拓海「アタシのバイクなら、ソッコーでぶっ千切って……っ!?」 

凛「えっ? 何、どうしたの?」 

拓海「……オイ、なんだこのバケモンは!?」 

凛「はっ?」 


武内P「パッソルが好きな者も居まして……」 

武内P「……ですが、どうしても限界があります」 

武内P「なので、その限界を越えるために」 

武内P「――スズキ・ガンマ(RG500Γ)のエンジンを載せた」 

武内P「――パッソル=Γ "ウォルターウルフ"ですね」 


拓海「そりゃもうパッソルじゃねぇだろ!?」 


武内P「それでは、行きましょうか」 

凛「あっ、ちょっと!」 

拓海「……何なんだよ、この事務所は……!?」

510: 名無しさん 2019/05/23(木) 21:43:01.73 ID:KXAxisGco
  ・  ・  ・ 

武内P「――こちらが、私のバイクになります」 

凛「へえ……かなり大きいんだね」 

拓海「……ぶ」 


拓海「ブサ乗りだったのかよ!?」 


凛「……ブサ?」 

武内P「SUZUKIの隼を略して、ブサと呼ぶ事があります」 

拓海「しかも、かなりカスタムがされてやがる……!」 


武内P「……隼改」 

武内P「――ピニャコラッター、ですね」 

武内P「現在は、通常モードになっています」 


拓海「名前がだせぇ!!」 

凛「……通常モード?」

513: 名無しさん 2019/05/23(木) 21:53:24.06 ID:KXAxisGco
武内P「では、早速ですが――向井さん」 

拓海「お、おう?」 

武内P「渋谷さんに、タンデムの仕方を教えてあげて頂けますか?」 

拓海「あ、アタシがやんのかよ!?」 

武内P「はい」 


武内P「私は乗車していますので――」 

グッ…! 

武内P「――宜しく、お願いします」 


拓海「ははぁ……アタシを試そうってんだな?」 

拓海「面白ぇじゃねえか! やってやんよ!」 

凛「……ふふっ、よろしく」

514: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:00:41.13 ID:KXAxisGco
拓海「良いか、凛! バイクってのはサイコーだが、危険もある!」 

凛「事故……とかだよね」 

拓海「まぁな……不運と踊っちまう事もある」 

凛「は、ハードラック……?」 


拓海「――そうならねえように!」 

拓海「今から、アタシがイロハのイを叩き込んでやる!」 

拓海「……覚悟は良いな!?」 


凛「……うん」 

凛「『その風の先』を見るために、必要な事なら」 

凛「拓海……私に、力を貸して」 


拓海「……くぅ~っ! このノリ、燃えるぜぇ!」ニカッ! 

凛「まあ……私も、嫌いじゃないよ」ニコッ! 


武内P「……良い、笑顔です」

515: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:10:05.15 ID:KXAxisGco
拓海「――まずは、アタシが手本を見せる!」 

凛「うん、わかった」 

拓海「――メットを被る!」 

…カポッ! 

凛「拓海って、普段はヘルメットしてなくない?」 

拓海「……してねえ時もある!」 

凛「……」 


武内P「本来ならば、フルフェイスの物が好ましいです」 

武内P「ですが、頭にフィットしていないと十分に安全とは言えません」 

武内P「向井さんの講習が終わった後、選びに行きましょう」 


凛「えっ? それって……」 

拓海「ヒューッ! 太っ腹じゃねえか!」 


武内P「渋谷さんの安全のためですから、当然です」 


凛「う……うん」モジモジ!

516: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:13:56.30 ID:KXAxisGco
拓海「――そして! 横のタンデムステップを出す!」 

ガコッ!…ガコッ! 

凛「これは何?」 

拓海「後ろに乗った時、足はどうする?」 

凛「あぁ、これに足を乗せておくんだ」 

拓海「へへっ、そういうことだ!」 


拓海「……よっ、と!」 

グッ…ポスンッ! 

武内P「……」 

拓海「――こんな感じだな!」 


凛「うん……成る程」

517: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:19:19.61 ID:KXAxisGco
拓海「それで、体勢だが――……」ピタッ! 

凛「拓海?」 

拓海「……」 


拓海(……凛は、そもそもバイクに乗ったことがねえんだ) 

拓海(だったら、取るべき体勢は――アレしかねえ) 

拓海(後ろから、前に両腕を回して……両手の指を噛み合わせる) 

拓海(絶対に安定しねぇだろうから、体も背中に密着させて……) 

拓海「……」 


武内P「……」 


拓海「……――なっ、簡単だろ!?///」 


凛「えっ? な、何が?」

518: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:26:07.43 ID:KXAxisGco
凛「それが……二人乗りの体勢なの?」 

拓海「い、いや……違うけど、よぉ……!?///」 

凛「なら、ちゃんと教えて」 

拓海「教えろっつったってお前……あぁ!?///」 

凛「お願い」 

拓海「っ……!?///」 


拓海「……上等だコラァ!///」 

拓海「よっく見とけよ、ちゃんとした体勢っつーのをよぉ!///」 


凛「……うん!」コクリ!

519: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:31:46.30 ID:KXAxisGco
拓海「お前はぁ!/// 体勢がぁ!/// ぅ安定しねぇだろうからよぉ!?///」 

凛「うん」 

拓海「こ、こう……こっ、こう……こうだなぁ!?///」 

凛「……どう?」 


拓海「かっ……体を密着させてぇ!///」 

むにゅんっ! 

武内P「……」 

拓海「うおおあああっ!/// オラァァァッ!///」 


凛「……」 

凛「ちょっと待って」

520: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:34:40.09 ID:KXAxisGco
拓海「ま、前!/// 前で手を組む……組むんだよぉ!///」 

さわさわさわさわっ! 

武内P「……」 

拓海「な、無い!/// 無い!?/// アタシの手が無い!?///」 

さわさわさわさわっ! 

武内P「……あの、向井さん」 

拓海「くっそあああああ!?/// どこだコラァァァ!!///」 

むにゅんっ! さわさわさわさわっ! 


凛「ふざけないでよ!」 

凛「ねえ、何なのそれ!?」

521: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:38:36.64 ID:KXAxisGco
  ・  ・  ・ 

拓海「…………あんな感じでやんだよ」 

凛「何を!? さっきの、明らかにおかしかったでしょ!」 

拓海「……うるせぇな! しょうがねえだろうが!」 

凛「大声を出して誤魔化そうとしないで! ねえ!」 

拓海「あぁ!? ケンカ売ってんのか凛、コラァ!」 

凛「キレるのがヤンキーの特権だと思わないでくれる!?」 


武内P「あの……ケンカは」 


拓海「……だったらテメェもやってみろよ!」 

凛「言われなくても! そのために来たんだから!」

522: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:42:23.03 ID:KXAxisGco
  ・  ・  ・ 

凛「ま、前!/// 前で手を組……ふぅぅぅん!///」 

さわさわさわさわっ! 

武内P「……」 

凛「ど、どこ!?/// どこ!?/// 私の手、どこ!?///」 

さわさわさわさわっ! 

武内P「……あの、渋谷さん」 

凛「ふっ、ふうううぅぅぅん!/// ふひいいいぃぃぃん!!///」 

むにっ! さわさわさわさわっ! 


拓海「オラァ! わかったか凛コラァ!」 

拓海「なんかわかんなくなんだろうが! えぇオイよぉ!?」

523: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:49:26.36 ID:KXAxisGco
  ・  ・  ・ 

凛「…………さっきはごめん」 

拓海「いや……アタシも悪かった、気にすんな」 

凛「何か、真っ白になって……」 

拓海「……わかるぜ、手が見つからねぇんだよな?」 

凛「そう! 右手で探しても、左手で探しても無かった!」 

拓海「だよな!? どこにもなくて、マジで焦んだよな!」 


武内P「……お話中の所、すみません」 

武内P「今回の反省点を踏まえて……」 

武内P「……続きはまたの機会、という事で宜しいですか?」 


凛・拓海「……」 

凛「……うん」拓海「……おう」

524: 名無しさん 2019/05/23(木) 22:57:43.75 ID:KXAxisGco
  ・  ・  ・ 

武内P「――という訳で、二人乗りの目処はまだ立っていません」 

ちひろ「それは……残念でしたね」 

武内P「……はい」 

ちひろ「プロデューサーさん……楽しみにしてたのに」 

武内P「……」 


武内P「……バイクで風を切り裂いていく、あの感覚」 

武内P「同じ速度でも、車とはまるで違う世界……」 

武内P「それを渋谷さんに……体験して頂きたかったのですが」 

武内P「…………」ションボリ… 


ちひろ「……」

525: 名無しさん 2019/05/23(木) 23:03:10.02 ID:KXAxisGco
武内P「彼女に、見たことの無い世界を見せたい、と」 

武内P「……そう、考えていました」 

ちひろ「……」 

武内P「私は……嫌われているのでしょうか?」 

ちひろ「えっ!?」 

武内P「すっ、すみません! 何でもありません……はい」 

ちひろ「ぷ、プロデューサーさん……」 


武内P「…………笑顔です」ションボリ… 


ちひろ「……」

526: 名無しさん 2019/05/23(木) 23:13:35.02 ID:KXAxisGco
ちひろ「――嫌われてなんかいませんよ!」 

武内P「千川さん……?」 

ちひろ「ただ、ちょっと急だったから……準備が出来てなかったんです!」 

武内P「準備……ですか?」 

ちひろ「はい! だから、落ち込まないで下さい!」 

武内P「ですが……」 

ちひろ「もうっ! しゃんとしてください! 良いですね!?」ビシッ! 

武内P「……はい、わかりました」 

ちひろ「よろしい♪」ニコッ! 


武内P「次の機会までには――」 


ちひろ「ふふっ♪ 心の準備が出来t」 



武内P「サイドカーを取り付けておきます」 




おわり