1: 名無しさん 19/11/17(日)23:41:57 ID:UW0
最近仕事が忙しく書けていなかったのですが、久しぶりにまとめることができました。
至らぬ点など多いと思いますが、書きたい事を趣味全開でかけて満足です。
もし良ければぜひ。よろしくお願いします。

引用元: ・【モバマスss】雨色伝導【高垣楓】

13: 名無しさん 19/11/17(日)23:48:05 ID:UW0
【雨色伝導】



 雨の街は人通りも少なく。舗装された道路にたまる水はスルリと流れ落ちていく。ふと立ち止まると、アパレルショップのガラスに自分の姿が映る。───あの頃より、優しい顔になっていると感じる。
 別人であるわけはない。私はあのときの自分とずっと地続きだ。あの日の後悔をずっと抱えたまま生きているはずなのに、この変化はどうしてだろう。

 時間が解決する。時薬。そんな言葉がある。でも、いざ自分がぬぐいきれない後悔を抱えた身になると、良薬は口に苦しというべきか──その間はずっと苦しんでいた気がする。でも確かにあの時と今の自分の表情は違う。効いているのに気づかなかっただけ、なのだろうか。

14: 名無しさん 19/11/17(日)23:48:23 ID:UW0
 傘に雨粒がぶつかり、ぽしゃり、ぽしゃりと音楽を歌う。靴底にわずかに水が染みる。なんとなしに歩いてきた先には、ライトアップ前の東京タワー。その真下に来ると顔をあげないとてっぺんが見えない。自然と顎が上がる。
 空は分厚い雲に覆われ、雨粒が目視できる。雨が少し髪にかかるが気にならない。


 ねえ、プロデューサーさん。プロデューサーさんは間違ってなんかいませんでしたよ。もちろん、あの子もそうです。誰も彼も間違っていなかった。ただ、どうしようもなかった。理不尽なことかもしれませんが、でもきっとそうなんです。
 みんなが幸せで、みんなが笑って、そんな未来が来ればよかったけど。でもあなたはその未来のために、力を尽くしてくれたのでしょう? わかっているなんて言葉は、無責任かもしれません。……でも、わかりたかった。私たちを支えてくれるあなたの事を、笑顔にしたいと思った。
 
 あなたが教えてくれた、何事をも乗り越える方法を、私はずっと続けていますよ。
 そうすれば、私はいつも、あなたと一緒にいられる気がするから。今でも、あなたと共に歩んでいる気になれるから。……私って、少し重い女なのかもしれませんね。

15: 名無しさん 19/11/17(日)23:48:55 ID:UW0


 雨はだんだんと弱くなり、すれ違った小学生の男の子たちは、傘をささずに横断歩道で信号待ちをしていた。信号が変わると、男の子たちは示し合わせたように走りだす。
 水溜りに足を踏み入れ、水が跳ねる。ズボンが濡れたことも気にせず、笑いながら走り続ける。そんなことすらただ楽しい日々の一瞬として記録されていく。

 信号の向こう側に、犬の散歩をしているお婆さんがいた。犬が歩くのを渋っているせいか、横断歩道の途中で信号の色が変わりかけている。私は思わず駆け寄り犬を持ち上げ、お婆さんと共に向こう側へ渡る──すなわち戻ってきたのである。

16: 名無しさん 19/11/17(日)23:49:25 ID:UW0
 道を渡りきった先で犬を優しく地面に下ろした途端、ブルリとふるえ、水を弾く。飼い主さんが「申し訳ない、申し訳ない」としきりに謝るものの、申し訳ないことなんてない。「大丈夫ですよ」と返すと、声で素性がわかってしまったようだ。
 私は何も言わず唇に人差し指を当てる。それでお婆さんも察してくれたようで、少し安心した。
「ワンちゃんに触ってもいいですか」と声をかけると、快く了承してくれたので、背中をゆっくりと撫でる。最初は緊張した面持ちだった彼(彼女?)の表情が弛緩したことに手応えを覚えたので、そのまま喉の下、そして頭へと掌をシフトさせていく。
 「この子、ウチの人以外にゃあんまり懐かないんだけどねぇ……」という言葉にそこはかとない満足感が湧き上がる。誰に勝った訳でも無い。何かを成し遂げた訳じゃ無い。こんな、なんでもない出来事で私の心は満たされていく。

 「きっと、心が優しかったからだろうねぇ。」

 とおばあさんが優しい言葉をかけてくれる。

 「いえ。……私も、もしかしたら私のことだけを考えて生きてきたのかもしれません。」
 「そうかい。でも、きっとおばばの言うことが正しいと思うさね。」
 「ふふ。ありがとうございます。そうだったら、嬉しいですね。」
 「ほらさ、その笑顔。テレビで見たときも別嬪さんだと思っちょったけど、本当に会うと、アイドルさんっちゅうのはほんとに綺麗だもんさ。……でもね、綺麗だけじゃないんさ。」

17: 名無しさん 19/11/17(日)23:49:37 ID:UW0
 「悲しくても笑おうって。でも、きっとそれが楓ちゃんのしたいことだったんずら?」

18: 名無しさん 19/11/17(日)23:49:49 ID:UW0
 目を数回見開きした後、また信号が変わった音がする。「ほら、おばばはもう行くから、楓ちゃんも行けし。ありがとうねぇ。ありがとうねぇ。」と握手を繰り返した後お婆さんとワンちゃんとは別方向に歩き出す。

 横断歩道を渡る足が軽い。少し大股で、跳ねるように渡っていく。
 口角が自然と上がってしまう。同時に、涙が流れてしまう。嬉しいのに、悲しくて。辛いけど、幸せで。
 ねぇ、プロデューサーさん。プロデューサーさん。褒められるのって嬉しいですね。わかってもらえるって、嬉しいですね。

 あなたの言っていたことが認められたみたいで、とても嬉しいんです。

 笑顔の力はすごいって、本当ですね。それが伝わるのって、幸せなんですね。

19: 名無しさん 19/11/17(日)23:50:01 ID:UW0

 
 初冬の空が顔を出し、世界から音が消える。

 もしかしたらまた降り始めるかもしれないけど、降り出したら広げて、晴れたら閉じればいい。そんな簡単なことをとかく忘れがちになる。
 もしくは、分かっているはずなのに、というべきか。雨が止んでも、傘をさし続けてしまう。心に弾力がない時は、そういうことが起きてしまう。珍しいことじゃない。誰にだって、どこでだって、いつだって、どんなことはあり得るのだ。

 空を見上げ、月の巡りとともに弱くなる太陽に挨拶をしよう。
 迷った時にはこうやって、目を薄く開いて、小さく微笑って。傘をしまって、足を進めて。

 今日も笑顔で、あなたと一緒に伝えよう。


 平和の空は、青色。

20: 名無しさん 19/11/17(日)23:52:24 ID:UW0
以上です。
なかなか文章を書けていなかったのでまとまりに欠けている部分がありますが、でも頑張って書きました。満足です。
そういえばAmazonプライムにデレアニが来ましたね。また見返そうかな……


他には最近こんなものを書いていました(最近の3つです)。
これらも含め、過去作もよろしければぜひ。
よろしくお願いします。


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