786: 名無しさん 2010/10/27(水) 01:59:05.11 ID:DYGzl7wo
# 優しさと強さと・・・


 それは中学三年生のときの話。

純「憂ちゃん」

憂「なぁに? 純ちゃん」

純「鼻毛出てるよ」

憂「!?」

 当時の私の何気ない一言は、彼女の顔を紅潮させた。
 自分でも発言した後に気づく。
 「やば、言わないほうがよかった」

 しかし時すでに遅し。

憂「うわーん!!」

純「あっ、ちょっと!?」

 彼女は猛ダッシュでトイレに駆け込んだ。



引用元: ・純「ジャズけん!」

787: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:00:34.21 ID:DYGzl7wo
純「……」

クラスメイト「純…あれはないって」

純「いやだって…出てたからつい…」

 そう、悪気はなかったのだ。
 ただ憂ちゃんの鼻からそよそよと鼻毛が顔を出していたのに気づき
 
 「あ、鼻毛じゃん!」

 と思ったことをストレートに口にしてしまっただけなのだ。
 決して悪気はない。

クラスメイト「だからってそんな直球に言ったら傷つくし」

純「だよね~…やっちゃった」

 だがやはり、自分のやった行いは正しくない。
 彼女を悲しませてしまった。
 ここは素直に謝りに行こう。 
 私は憂ちゃんを追ってトイレに向かった。

788: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:01:29.78 ID:DYGzl7wo
純「はぁ…口には気をつけないとな~」

 憂ちゃんとは三年生になって初めて出会った。
 第一印象はいつもニコニコして、優しそうな人。
 席が近かったこともあり、すぐに打ち解けた。
 
純「なんて言って謝ろうかなー…」

 人畜無害、誰かに悪口を言ったりイジメたりしない子。
 むしろ人の良いところしか見ようとしない。
 そんな純粋な子を傷つけてしまった。大罪だ。

純「あ…着いた」

 色々と考えているうちに私はトイレの入り口まで来ていた。

789: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:02:53.69 ID:DYGzl7wo
純「憂ちゃん…?」

憂「じゅ、純ちゃん…」

 憂ちゃんは鏡の前にいた。
 鼻が真っ赤になっている。
 恐らく鏡で自分の鼻を見ながら鼻毛を抜いていたのだろう。

 恥ずかしいのか、憂ちゃんは私と目を合わせるとすぐに手で顔を隠した。

憂「見ないで~!」

純「と、とりあえず落ち着いて!」

790: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:03:52.54 ID:DYGzl7wo
憂「うぅ…」

純「え~っと…」

 顔を隠すということは、まだ鼻毛が抜けていないということだ。 
 よく見ると耳たぶが真っ赤になっている。
 想像以上の羞恥な事態なのだろう。
 
純「憂ちゃん…」

憂「ちょっと待って! もうちょっと待ってて!!」

 恥ずかしそうにジタバタしている彼女を見て、改めて申し訳ない気持ちになった。
 ここまで彼女を追い詰めてしまうとは…自分は何てことをしてしまったのだろう。
 
純「……」

 謝るだけではダメだ、なにか罪滅ぼしをしなければ。
 それが今の私にできること、やらなければいけないこと。

純「憂!!」

 私は強く彼女の名前を呼ぶ。
 無意識のうちに呼び捨てになっていたが、気にせず言葉を続けた。

純「鼻毛…私が抜いてあげる」

791: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:05:11.13 ID:DYGzl7wo
憂「え…?」

 指の隙間から、憂の顔が少し見えた。
 涙目でこちらを覗いている。

純「ごめんねさっきは…つい口がすべっちゃって…」

憂「……」

純「本当にごめん! 憂の気持ちも考えないで…」

憂「純ちゃん…」

純「ごめん憂!!」

憂「…ううん、私こそ。急に逃げ出しちゃってごめんね」

 顔を隠していた手が解除された。
 憂の鼻には、まだ鼻毛が鼻息に吹かれなびいている。

純「鼻毛抜くの…手伝うよ」

憂「うん…ありがとう」

 私の誠意が伝わったのか、鼻毛排除の許可を得る事ができた。

792: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:07:27.61 ID:DYGzl7wo
純「抜きづらかった?」

憂「うん…」

純「…楽して抜ける鼻毛がないのはどこも一緒だね。まかせて」

 私は指先で憂の鼻毛をつまんだ。
 少しひっぱる。

憂「いたっ」

純「あっ、ごめん」

憂「気にしないで…思いっきり抜いていいよ。自分じゃ怖くてできなかったから…」

純「分かった」

 再度鼻毛をつまむ。

純「じゃあいい? 抜いちゃうよ?」

憂「うん! 一気に抜いちゃって!」

純「すぅ…」

 深く息を吸う。

純「せいやー!!」

 そして私は力の限り、鼻毛を引き抜いた。

793: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:08:13.93 ID:DYGzl7wo
憂「ひゃうっ!?」

純(抜けた!?)

 自分の指先を確認した。
 そこにあるのは黒く長い一本の毛。
 何毛?

 鼻毛だ。

 みごと抜くことに成功したのだ。

純「やったよ憂! ほら!」

憂「ほ、本当だ…」

 憂は鼻をおさえている。
 目も少し涙ぐんでいた。

憂「やった…ありがとう純ちゃん!」

純「そんな…これぐらい当然だよ」

 私は鼻毛をそこら辺にポイっと捨てた。

794: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:08:59.33 ID:DYGzl7wo
純「ごめんね憂…私のせいで」

憂「でも、純ちゃんのおかげで抜くことができたんだし…むしろ感謝してるよ」

 この子は本当に優しい子だ。
 私のことを、こうも簡単に許すなんて。

純「…憂は強いね」

憂「え?」

純「前になにかで聞いたんだけどさ、『許すということは、強さの証』なんだって」

 そう、どっかの偉人が言っていたように、まさにその通りだ。
 人を許すためには、相手の心をわかってあげようとする思いやりとやさしさが必要。
 
 『真の勇気とやさしさは、共に手を携えていく。勇敢な人間は、度量が広く寛大である』
 『寛大さほど強いものはなく、真の強さほど寛大なものはない』

 真の強さとやさしさは共存するもの。
 彼女の優しさは、強さでもあるのだ。

純「憂は強い! 私も見習わなきゃ」

795: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:10:05.64 ID:DYGzl7wo
 私たちは教室へと戻った。

クラスメイト「あ、おかえり…」

純「ねぇ聞いてよ、憂の鼻毛なんだけどさー」

憂「!」

純「あれ実は鼻毛じゃなくて、落ちたまつ毛がくっついてただけだったんだよねー」

クラスメイト「え? そうだったの?」

純「うん、私の勘違い」

憂「純ちゃん…」

クラスメイト「そそっかしいなー純は」

純「あはは」

 私と憂はアイコンタクトをした。
 お互い言わなくても分かる。

 今日のことは秘密にしよう。
 二人だけの秘密。

憂「ふふっ」

純「えへへ」

 秘密を共有したおかげで、憂との仲が深まった気がした。
 そんな気がした。


―――――――――

――――――

―――

796: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:11:22.20 ID:DYGzl7wo
純(…なんてこともあったなぁ)

梓「純? どうしたの?」

純「へ?」

梓「なんかボーっとしてるよ」

純「あぁ…なんでもないなんでもない」

梓「変な純―――…あっ、澪先輩」

純「え!?」

澪「やぁ梓、ちょっといいかな?」

797: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:13:53.60 ID:DYGzl7wo
梓「どうしたんですか?」

澪「今度の練習の時なんだけど…」

純(み、澪先輩! 澪先輩が目の前に!!)

澪「大丈夫かな?」

梓「はい、分かりました」

純「あの…澪先輩」

澪「ん?」

純(ど、どうしよう! 特に用はないけど話しかけちゃった!!)

澪「えっと…」

純「鈴木です、鈴木純っていいます!」

798: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:15:13.51 ID:DYGzl7wo
澪「鈴木さん…どうしたの?」

純「いや…その…」

純「練習がんばってください!」

澪「え…? ありが…とう」

純「あ…はい」

澪「…じゃあ梓、私は戻るから」

梓「はい、お疲れさまです」

純「……」

純「やったー!」

梓「なにが?」

純「澪先輩と話しちゃたよ~」

梓「喜びすぎ――…あっ」

799: 名無しさん 2010/10/27(水) 02:16:25.46 ID:DYGzl7wo
純「なに? また澪先輩が来た!?」

梓「ち、違くて…」

純「じゃあ何?」

梓「だから…その…」

純「?」

梓「……」

純「はっきり言ってよ」

梓「…ちょっと耳かして」

純「え?」

梓「…………純、鼻毛出てる」ボソッ

純「!?」

純「ま、まさか澪先輩に見られたんじゃ…」

梓「それはー…分かんない」

純「うわーん!!」ダダダッ

梓「純!?」


私は猛ダッシュでトイレに駆け込んだ。


# 優しさと強さと・・・

おわり

806: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:43:46.93 ID:xMAfeJYo
# 軽音部の夏


梓「……」

 夏休み――炎天下のなか、私は学校へ向かっていた。
 今日は軽音部の練習がある。
 長期休暇中でもこうやって集まれることは、嬉しいことだ。
 
 これでまともに練習をしてくれれば言うことなしだが…

唯「あーずにゃんっ♪」

梓「にゃっ!?」

 いきなり後から抱きつかれた。
 驚いて思わず声を出してしまう。

唯「偶然だね~、こんなところで会うなんて。今から学校に行くんでしょ?」

梓「そうですけど…」

唯「じゃあ一緒に行こっか」

梓「そ、その前に離れてください。暑いです」

唯「え~? もうちょっとだけ」

梓「ダメです、離れてください」

唯「あぁ~ん、ケチー……あづぃ」

梓「もう…」

807: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:44:46.49 ID:xMAfeJYo
 今の時間はお昼を過ぎたころ、一番気温が高い時だ。
 しかし暑いと言いながら唯先輩は抱きついたままだった。
 夏の陽で熱した体は私から離れようとしない。
 
 こうなると死ぬほど暑くなる。
 
 ミーンミーンというセミの鳴き声が体感温度と苛立ちをさらに上昇させた。

梓「だーーーっ!!」

 私はしがみついた体を力いっぱい振り払った。

梓「いい加減にしてください!」

唯「いやぁ~、久しぶりにあずにゃんに抱きつけると思うと嬉しくて」

 ヘラヘラと笑う唯先輩。

唯「それにしても暑いねー。私、暑いの苦手なんだ~」

梓「だったら抱きついたりしないでくださいよ…」

唯「でもそこにあずにゃんがいるから」

梓「どんな理由ですか!」 

 いつものようにくだらないやり取りをしながら、私たちは横に並んで歩いた。
 セミは鬱陶しいくらいに鳴き続けている。

808: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:45:46.00 ID:xMAfeJYo
 学校に着くとグラウンドでは運動部が練習している。
 この暑いなか真剣に部活をしている姿を見ると、私たち軽音部も身を引き締めなければいけないと思える。

 だがそんな私の気持ちも知らず、唯先輩は行く道の途中で買ったアイスを幸せそうに食べていた。
 そんな姿を見るとため息をついてしまう。
 
 私たちはそのまま部室へと向かった。

 部室にはすでに澪先輩、律先輩、ムギ先輩の三人が先に来ていた。
 そしてあろうことか、部室でカキ氷を食べている。
 わざわざカキ氷機まで用意して。

 そんな光景を見て私は再び、今度は深くため息をついた。

唯「あ~! みんな美味しそうなの食べてるー!!」

紬「ちゃんと二人の分もあるわよ。唯ちゃんはなに味がいい?」

唯「えっとねえっとね~……うーんどれにしようかな」

梓「先輩たち…練習は?」

 少し不機嫌に質問をした。

律「これ食べてからな!」
 
 即答だ。
 信用できないが…ここで文句を言っても仕方がない。
 先輩たちは恐らく食べるのを止めないだろう。 

紬「梓ちゃんも一緒に食べましょ」

 ムギ先輩に促され、しぶしぶ席に座ることにした。

809: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:46:35.04 ID:xMAfeJYo
紬「梓ちゃんはなに味にする?」

梓「じゃあ…いちごで」

唯「はいはーい! 私もそれで!!」

紬「は~い♪」

 楽しそうにカキ氷を作るムギ先輩。

律「ムギ! おかわりー」

 こんな暑い日でも元気いっぱいな律先輩。

澪「律、食べ過ぎるとお腹こわすぞ」

 今日もかっこいい澪先輩。
 けど、もうちょっと強く注意して欲しいときもある。

唯「まだかなまだかな~」

 子どものようにはしゃぎながら、カキ氷ができるのを待つ唯先輩。

 いつもと変わらない風景。
 軽音部は今日も通常運行だ。

梓「……」

 本当にこれでいいのだろうか。
 他のは部活は頑張ってるというのに……

810: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:47:31.74 ID:xMAfeJYo
・・・・・


 カキ氷を食べ終え、一息つくと談笑が始まる。
 案の定、練習は開始しない。

唯「カキ氷って、食べるとなんで頭が痛くなるんだろうね?」

律「なんでだろうなー…冷たいからかな!」

澪「それだけじゃ理由にならないだろ」

紬「アイスクリーム頭痛っていうのよね、確か」

梓「あの…」

 しびれを切らした私は、口を開けた。

梓「そろそろ練習しましょう」

 はっきりと全員に伝わるように話す。
 これでダメなら怒鳴ってしまおうか。

唯「え~…もうちょっと…」

澪「そうだな、始めよう」

 澪先輩が唯先輩の言葉をさえぎる。

811: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:50:13.75 ID:xMAfeJYo
律「んー…ぼちぼちやるか」

 律先輩もそれに賛同する。
 やはり部長として、やるべきことは分かってるみたいだ。

唯「もうちょっと休みたいなー…」

澪「何言ってるんだ、もう十分だろ。せっかく夏休みに集まったんだし、少しは練習するぞ」

 澪先輩たちが味方してくれた。
 これなら唯先輩も押し切れそうだ。 

梓「そうです! 澪先輩の言うとおりです!」

紬「唯ちゃんファイト!」

唯「は~い…………よしっ!」

 急に顔を引き締めた唯先輩は、ギターを手に取りジャーンと鳴らした。

唯「やるからには全力でやるよ! フンス」

梓「唯先輩…!」

 そう、普段だらだらとしているがやるときにはやる人なのだ。
 一度スイッチさえ入れば…

唯「……」

梓「…唯先輩?」

唯「やっぱあづい…」

 そう言うと唯先輩は座り込んでしまう。

梓「はぁ…」

812: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:51:05.89 ID:xMAfeJYo
紬「じゃーん、冷えピタ~」

 ムギ先輩は鞄から冷却シートを取り出し、唯先輩に渡した。

紬「はい、どうぞ」

唯「おぉっ!? これは伝説の冷えピタ!」

梓「なんの伝説ですか」

唯「ぴたっ!」

 冷えピタを手にすると、唯先輩はすぐにおでこに貼った。
 ものすごく気持ちよさそうな顔をしている。

紬「みんなもどうぞ」

澪「悪いな、ムギ」

律「サンキュー!」

紬「梓ちゃんも」

梓「すいません…わざわざ」

紬「いいのよ、気にしないで。これでみんな涼しくなるんだし」

813: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:51:42.65 ID:xMAfeJYo
 ムギ先輩の気配りに感動しつつ、私もシートをおでこに貼った。
 ひんやりとして気持ちがいい。
 頭もすっきりする。

律「よっしゃ、んじゃ始めるか!」

唯「おー!」

 唯先輩も完全に復活したみたいだ。
 各々楽器をセッティングし、自分の立ち位置についた。

律「じゃあまずは…ふでペンからな」

澪「わかった」

唯「ラジャー!」

律「ワンツースリーフォー!」

 スティックを鳴らし、カウントをすると演奏が始まる。

 ・・・・・

814: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:52:36.95 ID:xMAfeJYo
 ・・・・・


律「ぷはぁっ!! もう無理!」

澪「休憩するか…」

 練習を始めて二時間が過ぎた。
 久しぶりに充実した練習ができた気がする。

唯「ム、ムギちゃん…冷えピタの補充をば…」

紬「はいは~い」

 冷却シートはすでにぬるくなっていた。
 汗ではがれかけている。
 ムギ先輩は再度私たちにシートを渡してくれた。

唯「あ゛ぁ~~…なんでこんなに暑いんだろ~」

律「ドラム死ぬんですけど…」

梓「大丈夫ですか?」

 少し心配になり、唯先輩に声をかけた。
 先輩にしては珍しく頑張っていたので、倒れてしまわないか不安だ。

唯「大丈夫じゃないみたいです…」

梓「唯先輩…」

唯「水着のまま南極の海に飛び込みたい…」

梓「死んじゃいますよそれは!!」

815: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:53:06.42 ID:xMAfeJYo
澪「それにしても、今日は本当に暑いな」

紬「ニュースでこの夏一番の暑さって言ってたような…」

律「うげぇ…マジかよ」

梓「熱中症で倒れる人も多くなってるって聞きましたから…気をつけないといけませんね」

唯「ぐはぁっ!!」

 突如唯先輩が奇声をあげた。

梓「唯先輩!?」

唯「ね、熱中症で頭が~!!」

紬「大丈夫!? しっかりして唯ちゃん!!」

律「唯!!」

唯「アイス! アイスが食べたいよ~!!」

澪「結局そっちか!!」

律「まずいな…唯がアイス欠乏症になってしまった」

梓「なんですかそれ」

816: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:53:43.07 ID:xMAfeJYo
唯「うぅ~…あいす~、あいす~」

澪「我慢しろ」

律「仕方ない…ムギ」

紬「はい! なんでしょう?」

律「余ってる冷えピタをくれ」

紬「ラジャー!」

 律先輩に指示されると、ムギ先輩はすぐにシートを渡した。
 まるで何かごっこ遊びを楽しんでいるようだ。

紬「どうぞ」

律「うむっ。では今から応急処置を始める」

 そう言うとシートにはってあるシールを剥がした。

律「覚悟しろよ…?」

唯「え?」

 ニヤリと笑う律先輩。

律「てりゃー!! ぴたっ」

 叫ぶと唯先輩の首筋に冷えピタを首筋にはっつけた。

817: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:54:57.21 ID:xMAfeJYo
唯「ひゃうんっ」

 すっとんきょな声をあげる唯先輩。
 いきなり首に冷たいものをはられたらそうなってしまうのも無理はない。

唯「はぅ~…えぇですの~」

 しかしすぐに冷えピタの快楽に堕ちてしまったようだ。

律「ふふふ…次は澪だー!!」

澪「!?」

 唯先輩に貼り終えると、標的を澪先輩に切り替えた。

律「待てー!」

澪「や、やめろー!!」

 逃げる澪先輩、それを追う律先輩。
 この暑いなか元気に駆け回っている。
 傍から見れば楽しそうだ。

紬「隙あり!」

律「ひゃいっ!?」

 いつの間にかムギ先輩がそれに参加し、律先輩の首元にシート貼り付けた。
 これには私も、「おぉ」と唸らせられた。

818: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:56:08.47 ID:xMAfeJYo
紬「やった~!」

唯「あはは、りっちゃん『ひゃいっ』っだって~」

 床で座りながらそれを見ていた唯先輩が笑う。
 律先輩の顔は真っ赤だ。

律「むぅ~…」

 膨れっ面で唯先輩のもとに近寄った。

律「こんにゃろう! これでもくらえ!」

 そしてシートを二枚、唯先輩の両頬にはる。

唯「あうっ!?」

律「はっはっはっ、どうだー!」

唯「顔が冷たくて力がでな~い」

 満更でもない表情だ。

819: 名無しさん 2010/10/28(木) 04:57:07.09 ID:xMAfeJYo
澪「まったく、なにやって…」

紬「そ~れっ」

澪「ひゃっ!?」

 ムギ先輩が澪先輩をも襲った。。
 冷えピタはりの達人なのだろうか。

律「バカめ! 油断したな!!」

梓「!?」

 不意をつかれた。
 律先輩の魔の手は私にのびた。

律「ていっ!」

梓「にゃあうっ」

 我ながら情けない声をだしてしまった。
 恥ずかしくなってしまう。

律「さてと…」

澪「残るはムギだけだな」

唯「ムギちゃんを捕まえろー!」

紬「きゃー」

梓「ムギ先輩! 自分だけずるいです!!」

 いつの間にか私もこの遊びに参加していた。

822: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:08:10.62 ID:9DkJcbUo
 ・・・・・

 ――しばらくした後、騒ぎも静まり私たちは席に座り一息ついていた。
 いつもよりハードな練習直後にはしゃいだせいか、全員ぐったりしている。

唯「今日はこのままのんびりしよっか~」

澪「いや、まだ時間はあるんだから休んだらまた始めるぞ」

律「あぢぃな~…」

唯「あついね~…」

梓「あんな動き回るからですよ。自業自得です」

 などと言っておきながら、私も汗だくだ。
 こんな姿でなにを言っても説得力がないことは分かっている。
 口では小言を言っておきながら、楽しんでしまったことを少し後悔した。

唯「ムギちゃ~ん…カキ氷ある~?」

紬「ごめんね、もう氷なくなっちゃったの」

唯「あぅ~…」

 残念そうな声をあげながら、唯先輩は机にうつぶせた。

唯「あいすたべたい~…」

823: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:09:10.26 ID:9DkJcbUo
律「唯の言うとおり、なんか冷たいもの食べたいな」

紬「そうね~」

 それには私も賛成だった。
 こうも体が火照ってしまうと、冷たいものを欲してしまう。
 
 私はさっき食べたムギ先輩のカキ氷を思い出していた。
 きめ細かい氷が、口の中に入れた瞬間 にふわっと舌の上で溶けてゆく。
 シロップの甘さが広がり、何ともいえない……

 などと考えてる途中に、ふと我に返った。
 本来カキ氷を食べるなどという行為は、部室でするべきことじゃない。
 もちろんいつものお茶も。

 だが気づかないうちにそれを許容している自分がいる。
 さっきの冷えピタはり合戦もそうだ。
 つい楽しんでしまった。
 このまま軽音部のノリに流されたらマズイいのでは…

梓「あの、そろそろ練習を再開…」

 発言をしようとした、その時だった。

律「よし、買いに行くか!」

澪「何をだ?」

律「アイスをだ」

824: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:09:58.84 ID:9DkJcbUo
唯「本当!? やったー!」

梓「えぇっ!?」

律「と言ってもこのくそ暑いのに全員で行くのはあれだから……かわいそうだが、誰か人柱になってもらおう」

澪「人柱?」

律「じゃんけんで負けたやつがみんなの分を買いに行くのだー!」

紬「楽しそうね」

梓「楽しくないですよ全然!」

律「じゃあいくぞー」

梓「あっ、ちょっと待ってください!」

律「出さなきゃ負けよじゃんけんぽんっ!!」

825: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:10:42.31 ID:9DkJcbUo
 ・・・・・

 ――負けた。
 先輩たちからお金を渡され、結局私が買いに行くことになってしまった。

梓「はぁ…」

 トボトボとコンビニに向かう。
 太陽の光はまだ強い。
 また日焼けしてしまう前に早く用事をすませなければ。
 ペースを速めて歩き出す。

 数分歩き、コンビニに着いた。
 なんのアイスを買おうか…
 考えながら入り口付近まで行くと、窓ガラス越しから見覚えのある姿が見えた。

 あれは―――純だ。
 雑誌コーナーで立ち読みをしている。
 
 知り合いに会えて少し嬉しくなった。
 お店に入り、純のところまで歩を進める。

826: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:11:22.75 ID:9DkJcbUo
梓「純!」

純「あっ、梓じゃん」

 そっけない返事。
 肩透かしをくらったような気分になった。

梓「なにしてるの?」

純「ん? 立ち読みだよ」

梓「それは見ればわかるけど…制服着てるじゃん」

純「うん、部活の買出し中だから」

梓「…なのに立ち読みしてていいの?」

純「それがさぁ――…」

 純は店の奥の方へと視線を向けた。
 私もそれに合わせて同じ方向を見る。

827: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:12:14.74 ID:9DkJcbUo
 そこには桜ヶ丘の制服を着た女の人がいた。
 制服のリボンが青なので、唯先輩と同じ二年生なのだろう。
 赤みがかった髪に凛々しい顔つきをしている。
 一目で真面目そうな人だと判断できた。

 その人は今、アイスが売られているところで眉間にしわを寄せながら何か悩んでいる。

純「どのアイスを買うか迷ってるみたいで…さっきからずっとああなんだ」

梓「ふーん…」

純「だから決まるまでこうやって立ち読みして待ってるわけ」

 純は再び雑誌に目を戻した。

梓「なんの本?」

純「わかんない。なんかの情報誌かな」

梓「読んでるのに分かんないって…」

純「だって適当にパラパラめくってるだけなんだもん。あれ? そういえば梓は何しに来たの?」

梓「私も買出し」

828: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:13:13.07 ID:9DkJcbUo
純「一人で?」

梓「じゃんけんに負けちゃったから。…ちょっと涼んでいこうかな」

 コンビニはクーラーが効いているので心地がよい。
 少しここで避暑することに決めた。

梓「ジャズ研も練習あったんだ」

純「うん、朝からね」

梓「朝から!?」

純「そうだよー、大変だったんだから」

 純の言葉に驚愕した。
 いや、夏休み期間はどの部活もそれぐらいはする日があるのは当然だろう。
 それでも驚くのはやはり軽音部に毒された証拠なのか…

純「午前中はパート別練習に午後はセッションとか色々……まぁ一年は雑用とかもあるんだけどね」

 そう言うわりには先輩をほっといて立ち読みをしている純であった。

梓「へぇ~…」

 しかし純の話を聞いてると羨ましくも思える。
 さっき二時間だけ練習して満足した自分が恥ずかしい。

829: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:13:53.70 ID:9DkJcbUo
純「梓は?」

梓「へ?」

純「軽音部、なにやってたの?」

梓「えっと…」
 
 言葉が詰まる。
 まさかカキ氷を食べたあと二時間ぐらい練習して今に至るとは言えなかった。
 そんなことを言ったら笑われそうで…

純「おやつ食べてちょっとだけ練習したとか?」

梓「!!」

純「あれ…あたり?」

梓「……ほぼ正解」

 こういうときに限って鋭い友人だ。
 目をあわせられない。

純「いいな~、楽しそうで」

梓「私は純の方がうらやましいよ…」

830: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:15:11.01 ID:9DkJcbUo
純「あっ、ねぇこれ見て」

 純が雑誌のページを指さす。

純「冬に新しくショッピングモールが出来るんだって。近くだし行こうよ」

梓「冬に、でしょ。今は夏だよ」

純「だから冬に行こうよ。憂と三人で」

梓「だいぶ先の話…まだ半年ぐらいあるよ」

純「そういえばさ、休みの日に三人で出かけたことってないよね」

梓「え?」

 突然の問いかけに一瞬戸惑う。
 言われるとおり、三人で休日の日に出かけたことはない。

純「今度の日曜にどっか行く?」

梓「…ごめん、日曜は家の用事があって」

831: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:15:56.18 ID:9DkJcbUo
純「そっか、私もその日以外だと色々忙しいんだよね…たぶん」

 遊ぼうと思えば今まで遊べたのかもしれない。
 だが軽音部に入部して、生活の中心がそれに移っていた。
 同学年の子といるより唯先輩たちと一緒にいる時間の方が長い。
 私の居場所はすっかり軽音部に定着していた。

 そして今は純もジャズ研に居場所があり、憂にも…

梓「……」

 全員バラバラの所にいる。

純「ま、機会はあるだろうからその時にしよっか」

梓「うん…」

 雑誌を読みながら話しかけてくる純。
 こっちを向いてくれないことに、私は寂しさを覚えていた。

 と、次の瞬間。

純「ねぇ梓」

梓「あ…」

 いきなり私に顔を向けてきた。 

832: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:16:46.49 ID:9DkJcbUo
純「これあげる、手出して」

梓「これは…?」

 渡されたのは、透明な包装用紙につつまれた小さなお菓子。

純「キャラメル。疲れたときにでも食べて」

梓「あ、ありがとう」

先輩C「鈴木、もう戻るぞ」

 レジの方から声がした。
 どうやらジャズ研の先輩が買い物を終えたようだ。

純「あ、はーい。じゃあ梓、私はこれで」

梓「うん」

 雑誌を元のところに戻し、純は立ち去ろうとする。
 その時、純はこちらを振り向くと。

純「…梓」

梓「え?」

純「お互い、がんばろうね」

 そう言い残して、彼女は自分の居場所に戻っていった。

833: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:17:20.25 ID:9DkJcbUo
梓「お互いがんばろう…か」

 シンプルな言葉だが嬉しかった。
 頑張ってね、ではなく一緒に頑張ろう、と。
 所属する部活は違うが、なんだか志は同じようになった気分だ。

 もし軽音部に同学年の子がいたら、今みたいな感じになれたのだろうか。

梓「……そうだ、アイス」

 いや、変な考えはやめよう。
 ありもしないことを思うなんて、ただの妄想。
 虚しいだけだ。

 私は適当にアイスを取り会計を済ませ、コンビニを出た。
 夏の陽が再び私を照らす。

834: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:18:32.73 ID:9DkJcbUo
 帰り道、あれこれと思案していた。
 
 軽音部の四人の先輩。
 普段はだらしなかったりするけど、演奏するといい曲になる。
 その中に私が入っていいのだろうか。
 私が不協和音になるのでは…

梓「……」

 現状、軽音部には不満がある。
 他の部活のように、もう少し真面目に取り組んだほうが良いのではないか。
 比べてしまうと私たちの部は明らかにダメだ。

 だが、そんな状況を楽しんでいたりもした。
 自分たちには必要と言われ、お茶を飲んだりふざけあったり。
 楽しくおしゃべりしたり、笑いあったり…

梓「……?」

 楽しんでるということは、私もあの輪の中にすでに入っているという事なのか?

835: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:20:28.74 ID:9DkJcbUo
 不満不平を言いながらも、それを受け入れてる。
 けどそれを認めることができない自分もいる。
 そんな自分に嫌気もさして…

梓「……」

 ふと、純に言われたことを思い出した。
 
 一緒に頑張ろう。

梓「私も…がんばってみよう」

 すでに部室の前まで来ていた。

 扉を開ける。
 いつもの四人がいつもの席に座っていた。

836: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:21:11.91 ID:9DkJcbUo
律「おーっす、おかえり」

唯「あずにゃんお疲れ~」

梓「律先輩、これお釣りです」

律「ん? いいよいいよ、細かいのはあげる。わざわざ買いに行ってくれたんだし」

梓「そういうわけにはいきませんっ」

 少し口を尖らせて言った。

梓「お金のことは、ちゃんと部長が管理しないとダメじゃないですか」

律「お、おぉ」

唯「あずにゃん、それよりアイスアイス~!」

梓「あ、はい。どうぞ」

唯「やった!」

梓「その前に!」

唯「?」

837: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:21:59.15 ID:9DkJcbUo
梓「これを食べ終えたら、ちゃんと練習するんですよ?」

唯「も、もちろんだよ」

 目を逸らす唯先輩。
 私は少しイジワルな表情をして先輩に返した。

梓「…約束できない人にはアイスあげませんからね」

唯「えぇ~!?」

梓「ちゃんとできますか?」

唯「します! 必ずします!」

梓「ならいいですよ、どうぞ」

唯「あっ、これ私の好きなやつだ! ありがとうあずにゃん」

梓「そうなんですか? 唯先輩がさっき食べてたのと同じのを適当に選んだだけなんですが…」

唯「またまた~、照れちゃって」

 嬉しそうな顔をしながら、唯先輩は私に抱きついてくる。

838: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:22:32.87 ID:9DkJcbUo
梓「もう…暑いじゃないですか」

唯「いいのいいの」

梓「…こんな事してるうちに、アイス溶けちゃっても知りませんからね」
 
唯「そうだ! アイスイス」

 唯先輩は私から離れるとアイスを食べ始めた。
 幸せそうだ。

梓「まったく…」

澪「梓、私のもたのむ」

梓「あ、はい。みなさんどうぞ」

唯「えへへ、あ~ずにゃんっ」

梓「なんですか?」

唯「私の分、ちょっとあげる」

梓「え?」

唯「はい、あーん」

梓「…あーん」

 唯先輩からもらったアイスは甘く、ほんのりと優しい味がした。

839: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:24:00.72 ID:9DkJcbUo
 ・・・・・

 部活を終え、私たちはそれぞれ帰路についた。
 私と唯先輩は来た時と同じように、二人で並んで帰っている。
 太陽は少し沈み始めていた。
 セミが一匹、ミーンミーンと鳴く音がする。

唯「ふぃ~…今日は疲れたね~」

梓「いつもこんな感じだったらいいんですけどね」

唯「そ、それじゃあ死んじゃうよー!」

梓「頑張りましょうよ、死なない程度に」
 
 微笑みながらそう言った。
 
 そうだ、失望や自己嫌悪などせずにもう少し頑張ってみよう。
 私に出来る可能な限りで。
 
 他の部活は関係ない、私はこの中でできることをするだけ。
 この軽音部を――私の居場所にするために。

唯「あっ、私用事があったんだ」

梓「え?」

唯「じゃあねあずにゃん、ここでお別れ」

梓「あ…はい。お疲れ様でした」

840: 名無しさん 2010/10/29(金) 01:24:48.50 ID:9DkJcbUo
唯「バイバ~イ」

梓「……」

 唯先輩の背中を見送る。
 段々と遠くなっていった。
 するとちょうど、さっきまで鳴いていたセミの音が静まる。

 ミーンミー……

梓「……」

 寿命が尽きて死んだのだろうか。

梓「…私も行かなきゃ」
 
 セミは一週間で死ぬ。
 それはセミにとって短いのか、長いのか。
 楽しかったのか、辛かったのか。 

梓「……」

 そういえば、純にキャラメルを貰ったのを思い出した。
 それを食べながら帰ろう。


# 軽音部の夏

おわり

848: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:44:33.24 ID:MWue3Two
# ジャズ研の夏


純「ぜぇー…はぁー…」

 夏休み――炎天下のなか、ジャズ研究会は校庭でランニングをしていた。

純「ぜぇぜぇ…な、なんでこんな朝っぱらから走らなきゃいけないんですか…」

先輩B「はぁはぁ…そんなの、私が知るかっ…」

先輩C「十時にはソフトボール部がグラウンドを使う。私たちが使えるのは今の時間だけだ」

先輩B「使わなくていいよそんなの~…はぁはぁ」

純「はっ、ひっ…」

先輩C「情けないぞお前たち。そんなことでジャズ研究会を生き残れると思っているのか」

先輩B「私、たちは…はぁっ…、軍隊じゃ、ないんだぞ…この、体力バカ」

純「ひぃひぃ…」

先輩C「ふっ、お前たちが体力なさすぎなだけだ。私は先に行くぞ」

先輩「みんなー、あと十週で終わりだから頑張ってー」

先輩B「し、死ぬ…殺される…」

先輩A「ほら頑張って」

純「おえ…」

先輩2「しっかりしなさい」

849: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:45:08.32 ID:MWue3Two
ランニング終了


先輩B「あ゛ー…」

純「…なんで走んなきゃいけないんですかぁ~」

先輩「演奏には体力も必要なの。吹奏楽部だってどこだってやってるわよ」

純「えー…」

純(軽音部はやってるのかなぁ…)

先輩B「頑張って走るのなんて無意味だよ~…バイクで走ったほうが速いんだし」

先輩「それじゃ体力つかないでしょ。グダグダ言ってないで、次は筋トレよ」

先輩「まず二人一組になって」

純・先輩B「うぇ~~…」

先輩A「はい、一緒にやりましょ」

先輩B「筋トレやだぁ~…」

純(せ、先輩とやるんだったら頑張れるかも…)

先輩C「鈴木、お前は私とだ」

850: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:45:59.04 ID:MWue3Two
純「えぇっ!?」

先輩C「鍛えてやる、来い」

純(な、なんで~!?)

先輩B「あいつ体育会系だから…すっごい厳しいぞ~。ご愁傷様」

純(なんでこんな時にあいつ[同級生]はいないのよー!!)

先輩C「鈴木! 早く来い!!」

純「は、はい~!!」

純(入部するとこ間違えたかも…)

先輩C「鈴木、聞くところによるとお前は部内で一、二を争うほど体力がないらしいな」

純「すみません…」

先輩C「いいか? 一年のうちにしっかりと鍛えておかないと来年レギュラーは取れないぞ」

純「はい…」

純(これじゃあ完全に野球部かなんかだよ…)

先輩C「そのためのトレーニングだ。意識してやれ」

先輩C「まずは腹筋、私が足をおさえてやる」

851: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:46:31.68 ID:MWue3Two
純「はぁぁ…」

先輩C「早くしろ!」

純「は、はい!」

純「いっち…に…」

先輩C「もっと上げるんだ、それと背中は地面につけるな」

純「さんっ……し…ぃ……」

純「ぐはぁーっ…もうだめ」

先輩C「まだ十回もやってないぞ!!」

純「だ、だってランニングで疲れて…」

先輩C「はぁ…じゃあ私が先にやるからお前は足をおさえてくれ」

純「は~い」

852: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:47:16.21 ID:MWue3Two
先輩C「いっち、にっ…」

純「すご…どんな腹筋してるんですか」

先輩C「毎日っ、やってるからなっ…」

純「へぇ~…ちょっとお腹触ってみてもいいですか?」ツン

先輩C「きゃあっ!?」ビクッ

純「!」

純(い、今のかわいい声先輩の…?)

先輩C「す、鈴木ぃ~…っ!!」

純「ひっ!?」

先輩C「二百回だ! お前は腹筋二百回やれ!!」

純「えぇ~!?」

853: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:48:04.01 ID:MWue3Two
先輩B「あ~ぁ、かわいそうに」

先輩A「寝てないで、お腹上げる」

先輩B「あ~…なんでこんなこと…」

先輩A「体力づくりのためでしょ」

先輩B「若いから体力は大丈夫だよ~」

先輩A「ダイエットにもなるじゃない」

先輩B「太ってないから大丈夫」

先輩A「私なんて最近三キロ増えたのに…」ボソッ

先輩B「そういえば私は胸がおっきくなったんだよね~…Eカップになっちゃった」

先輩A「…自慢?」

先輩B「まさか、こんなの大きくても邪魔なだけだって…」

先輩B「あっ、先輩に胸が重くて腹筋できないって言えばやらなくてもいいかナ?」

先輩A「間違いなく却下されるわ。ていうか逆に怒らせると思う」

854: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:48:48.37 ID:MWue3Two
――数十分後


先輩「みんなお疲れ様。部室に戻って少し休憩したらパート別練習よ」

「「「はい!」」」

先輩B「疲れた…動けない…」

純「私も…」

先輩B「もう帰りたいな」

純「そうですね~…」

先輩「何をしてるの、戻るわよ」

純「あ、はい」

先輩B「おぶって~~」

先輩「甘えないの」

先輩B「全身動けませんよ~…」

姫子「あの…もういいでしょうか?」

先輩「あぁ、ごめんなさい。ほら邪魔だから行くわよ」

先輩B「うぇ~い……純、おぶって」

純「無理ですよ…」

855: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:49:25.80 ID:MWue3Two
――ジャズ研 部室


先輩B「あーたた…体痛い…」

純「もっと鍛えておけばよかった…」

先輩B「なんか楽して体力つく方法ないかな~」

純「…もし私がスーパーサイヤ人だったらトレーニングしなくてもすむんですけどね」

先輩B「じゃあ私は聖闘士にでもなろうかナ」

先輩「現実逃避してないで、しっかり休みなさい」

先輩A「はい、スポーツドリンク」

先輩B「ポカリ?」

先輩A「アクエリ」

先輩B「私はポカリ派なのに…」

先輩「水分補給はちゃんとしてね、熱中症になると困るから」

純「はいっ」

先輩2「…あんたも変わったわね」

先輩「なにが?」

先輩2「だって一年のときなんか――…」ヒソヒソ

856: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:50:08.85 ID:MWue3Two
先輩『もうやだ~走れない~!!』

先輩2『走ろうって言ったのはあんたでしょ』

先輩『だってぇ…』

先輩2『ほら、立って』

先輩『うぅ~…』

先輩2『もう…置いてっちゃうよ? 私先に行くから』

先輩『あっ!? 待ってよー!!』

先輩2『じゃあちょっとは頑張りなさい』

先輩『……』

先輩2『どうしたの?』

先輩『おぶって』

先輩2『…お先に』

先輩『ご、ごめん! 走る、走りますー!!』

先輩2『……』タタタッ

先輩『うわ~ん! 待って~!!』

857: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:50:37.81 ID:MWue3Two
先輩2「…――なんてこと」

先輩「わーーわーーーー!!」

純「!?」ビクッ

先輩「ちょっと! そういうこと言わないでよ!」ヒソヒソ

先輩2「ふふっ、ごめんごめん」

純「ど、どうしたんですか?」

先輩B「さぁね~。ほい、アクエリ」

純「あ、どうも」

先輩A「あの二人だけの素敵なエピソードでもあるんじゃない?」

先輩B「素敵なエピソードねぇ~…」

ガチャッ

同級生「すいません! 遅れました!」

先輩C「遅いぞ」

同級生「ごめんなさい…補習があって…」

858: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:51:16.22 ID:MWue3Two
先輩C「まったく、普段だらしないからそんなことになるんだ」

同級生「ひぃっ」

先輩B「お前もあんまり成績良くないけどな~」

先輩C「わ、私は補習を受けるほど低くはない!!」

先輩B「ギリギリのくせに」

純「なんの補習?」

同級生「数学…」

同級生「しかも明日は英語でしょ、それに古文も…」

純「……留年しても元気でね」

同級生「ま、まだそうとは決まってないよ! それに純だって勉強苦手でしょ?」

純「私は期末テストそこそこだったもん」

同級生「えぇ~? そうなんだ…」

純(直前で憂にノート見せてもらってよかった…)

先輩「全員揃ったことだし、そろそろパート練習始めましょうか」

859: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:52:31.47 ID:MWue3Two
 ・・・・・
 

先輩「初心者の子もいるし、もう一度基礎から教えるわよ」

先輩「ジャズベースっていうのは演奏では、4分音符を連ねたラインを演奏することによって…ウンタラカンタラ」

純「え、えっと…」

純(な、なにが…どうだか…)

先輩「――純、今私が言ったことをもう一度説明してみて」

純「え!?」

先輩「教えたでしょ?」

純(そんなぁ~…全然わかんないよー)

先輩「ほら、早く」
 
純「え~っと…ジャズベースっていうのは――…」

純「弦が四本で…音が低くて…」

先輩「…それはみんな知ってるわよ」

 クスクス

純「ぁうっ…すいません…」

860: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:53:33.87 ID:MWue3Two
先輩「こういう基本的な知識ぐらいは頭の片隅にでも入れておくのよ?」

純「はい…」




先輩2「……」


先輩『……』カキカキ

先輩2『なにしてるの?』

先輩『ジャズの勉強』

先輩2『へぇ…わざわざそんなノートまでとって』

先輩『いつか後輩ができたら私が教える立場になるんだし、完璧に覚えておかないといけないでしょ?』

先輩2『後輩、ね。…できるのかしら』

先輩『で、できるわよ! 来年にはきっと…』

先輩『部室に入りきらないぐらいにね』

先輩2『…ふふっ、だといいね』


先輩2「…クスッ」




先輩「じゃあ…実際に弾きましょうか。みんな、準備して」

先輩「まずはランニングベースからやるわよ」

861: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:54:04.56 ID:MWue3Two
ボンッボンッボンッ♪


先輩「押さえる場所にすばやく指を動かせるように」

先輩「それと的確にね」

ボッ・・・

純「あ…」

先輩「焦らなくてもいいのよ、落ち着いて」

純「は、はい」

ボボッ・・・

純「あっ!?」

先輩「純、慌てなくていいから正確にやりましょ」

純「ご、ごめんなさい!」

純(はぁ~…面目ない)

862: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:54:38.89 ID:MWue3Two
――数時間後


先輩2「そろそろ休憩でいいんじゃない?」

先輩「そうね…ちょっと遅くなったけどお昼にしましょうか」


同級生「やったー! ようやくご飯だ~」

同級生「純、食べようよ」

純「はぁ…」

同級生「なに? 落ち込んでるね。魚肉ソーセージあげるから元気だして」

純「それがさぁ・・・」パクッ

純「練習上手くいかなくて……あ、これ意外と美味しい」モグモグ

同級生「私もだよー、二拍三連のリズムが取れなくて…」

同級生「タカクラケン、タカクラケン…」

純「高倉健? なにそれ」

同級生「えへへ、こうやって叩けばできるって教えてもらった」

同級生「タカクラケン、タカクラケン」

純「タカクラケン、タカクラケン……ホントだ、二拍三連になってる」

同級生「でしょ?」

863: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:55:23.86 ID:MWue3Two
先輩B「~♪」

先輩A「なにやってるの?」

先輩B「スケールの練習」

先輩A「ご飯の時間なのに…熱心ね」

先輩B「今弾きたいから弾いてるだけだヨ」

先輩C「練習もいいが栄養もとれ。倒れても知らないぞ」

先輩B「心配してくれてんの~? 優しいねぇ~」

先輩C「そ、そういうのじゃない!」

先輩B「ならついでに食べさせてくれない? 私はギター弾いてて手があいてないから~」

先輩C「私はお前の召使いか!」

先輩B「私はお前の召使いか!」

先輩C「くっ、人のマネをするな!!」

先輩B「くっ、人のマネをするな!!」

先輩C「やめろ! ふざけるなぁ!!」

先輩B「やめろ! ふざけるなぁ!!」

先輩C「………私はバカです」

先輩B「うん、知ってる~」

先輩C「お前ってやつはーーー!!」

864: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:55:51.81 ID:MWue3Two
先輩A「ほらほら、騒がないの」

先輩B「あ~~…遊んだらお腹すいた」

先輩C(くそっ…いつか目に物見せてやる…)

先輩「それにしても、暑いわね…」

先輩B「この部室クーラーないんですか?」

先輩2「残念ながら…来年つけてもらうしかないわね」

先輩B「今つけてもらわなきゃ意味ないよ~」

先輩2「アイス食べたいわぁ…」ボソッ

ガチャッ

顧問「チィーッす」

純「あ、先生」

865: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:56:33.66 ID:MWue3Two
顧問「練習がんばってる? 様子見に来たよ」

先輩「…なんですか? その袋」

顧問「これ? ふっふっふっ…」

顧問「なんと私…今日パチンコで大当たりしたのだ!」

先輩「は、はあ…」

顧問「はい、お菓子とか色々お土産」

先輩2「アイスありますか!?」

顧問「んなもん溶けるだろ。スポーツドリンクはあるよ」

先輩B「ポカリ?」

顧問「DAKARA」

先輩B「世の中望むようにはいかないもんだナ~…」

顧問「じゃあ私、この後行くところあるからこれで。引き続き練習がんばりなよ」

先輩「どこ行くんですか?」

顧問「ふっ…勝ったらみんなに美味いもんご馳走してあげるよ」

先輩B(あ…競馬場か)

866: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:57:21.61 ID:MWue3Two
先輩A「…自由な人ですね」

先輩2「昔レディースの総長だったらしいわよ」

純「え!?」

先輩B「グレートティ~チャーってやつ?」

先輩「まぁ…優しい先生なんだしいいじゃない」

先輩「それよりみんな、好きなお菓子とっていいわよ」

先輩2「はぁ…アイス…」

先輩B「やったね、軽音部みたいだ」

純「軽音部はもっと高級なお菓子ですよ」

先輩「……」

先輩B「おっと、先輩の前では軽音部の話題は禁止だったかな~」

先輩「別に…そういのじゃないわよ」

先輩「実は私もお菓子持ってきたの。みんなに食べてもらおうと思って」

先輩B「へぇ~…気が利くじゃん」

先輩2(嫌な予感しかしない…)

先輩C「すいません、わざわざ」

先輩「いいのよ別に。私が好きなものをみんなにも食べて欲しいし…」ガサゴソ

先輩「はい、ジンギスカンキャラメル」

867: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:57:55.21 ID:MWue3Two
シーン・・・

先輩「………どうしたの?」

同級生「なんですか? キャラメル? 私食べまーす!」

純「あっ…」

先輩「どうぞ、はい」

同級生「わーい!、……」パクッ

同級生「ッ!?」ドサッ

純「倒れた!?」

先輩「え? なに??」

先輩B「純…そこにある死体を片付けるんだ」

純「は、はい」

同級生「うぅ~ん…」

先輩「ちょ、ちょっとなによ!」

先輩2「あんたねぇ…なんてもの持ってきたのよ」

先輩「えぇ? だって美味しいじゃない」パクッ

先輩B「どんな育ち方したらそうなっちゃうんですか」

868: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:58:21.11 ID:MWue3Two
先輩「普通に育ってきたわよ! それより食べないの?」

先輩C「うっ…私は甘いもの苦手なんで…」

先輩B「甘くないから食べなよ~」

先輩C「お腹いっぱいなんで結構です!!」

先輩「そう?」

先輩A(見つからないように隠れよっと…)

先輩B「そんな殺戮兵器食べれるわけないだろ~」

先輩「殺戮兵器!? 作った人たちに謝りなさいよ!!」

同級生「く、口の中が…世界大戦…」

純「おーい、意味わかんないよー」

先輩「純、あなたは食べるわよね?」

純「え?」

869: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:59:10.96 ID:MWue3Two
先輩「食べるでしょ?」

純「あの…その…」

純(先輩の頼みでもそれは無理…)

先輩「大丈夫、美味しいから」

同級生「河が見える……死んだおじいちゃんがいる…」

純(この状況を見て食べれるわけがない!!)

先輩「いらないの…?」

純「あっ…と……」

純(でもさっき練習で迷惑かけたし…もらっておくべき…なのかな)

純「じゃあ…お昼ご飯食べたあとにいただきます…」

先輩「そう、よかった」

純(後で適当に処分しておこう…)

先輩B「私はそんなクソ不味いもんいらないんで」

先輩「あんたなんかにあげないわよ!」

870: 名無しさん 2010/10/30(土) 09:59:53.49 ID:MWue3Two
先輩2「はぁ…そんなもの持ってくるならアイス持ってきなさいよ」

先輩「あんたはさっきからそればっかね」

先輩2「暑いんだし…しょうがないじゃない」

「先輩、のりありますか?」

先輩「え?」

「あとテープやマーカーも」

「ジャズ研のポスター作ろうと思ってるんですけど…」

先輩「備品がないの?」

先輩2「じゃあ買ってくればいいじゃない。ついでにアイスも」

先輩B「完全なアイス中毒者ですね」

先輩C「なら私が行ってきます。ちょうど欲しいものがあるんで」

先輩B「そんじゃ~、あれも買ってきて。ポカリ」

先輩C「私はお前のパシリじゃない」

先輩B「いいだろ~どうせ行くんだから~~。はい、お金」

先輩C「まったく…鈴木、お前も一緒に来い」

純「私ですか? なんで…」

先輩C「視界に入ったからだ」

純「えー…」

871: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:00:26.27 ID:MWue3Two
――コンビニ


純「はぁ~…涼しい」

先輩C「それよりさっさと買い物をすませるぞ」

純「なに買うんでしたっけ?」

先輩C「まずはセロテープ…」

純「ありましたよ、はい」

先輩C「…これはガムテープだ」

純「くっつけば同じじゃないですか」

先輩C「セロテープだ! セロテープ以外認めない!!」

純「は、はい!」

先輩C「次にのり…」

純「どうぞ」

先輩C「そうそう、のりといえばこの黄色に赤ラベルの…って、これはボンドだろ!! 木工用の!!」

純(ノリ突っ込みだ…)

872: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:01:40.02 ID:MWue3Two
先輩C「もういい…私一人でやる」

純(せっかく来たのに…)

純「じゃあ私、立ち読みしててもいいですか?」

先輩C「好きにしろ」

純「はーい」

先輩C「さてと、アイスだが…」

先輩C「……」

先輩C「どれを買えば…」

先輩C「むむ…」



純(なんか悩んでる…)

873: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:02:54.79 ID:MWue3Two
先輩C(ソフトクリーム? ガリガリくん?)

先輩C(いや、スイカバーもあるぞ…)

先輩C(まさかハーゲンダッツか!?)

先輩C(くっ…あの人は一体どのアイスが好きなんだ!?)

先輩B『そんなのも分かんないのか~? ば~~~か』ニヤニヤ

先輩C(くそ~っ!! なんでこんな時にあいつの顔が思い浮かぶんだー!!)

先輩C(腹立つーーーーっ!!)

先輩C「……」

先輩C(落ち着け私…冷静になるんだ)

先輩C(自分を信じるんだ、私は正しい)

先輩C(そう、この場合選ぶべきものは…)

先輩C(ブラックサンダーアイス! アイスとブラックサンダーが融合したハイブリットアイス!!)

先輩C「ふっ…これで決まりだ」

874: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:04:43.36 ID:MWue3Two
先輩C「さてと、目的の品も買ったし……あっ」

先輩C(そういえばアイツにポカリを頼まれていたんだ……しかたない、買うか)

先輩C「……あれ?」

先輩C(ポカリ…二種類ある…)

先輩C(普通のやつと、イオンウォーター…)

先輩C「……」

先輩C(あいつはどっちが好きなんだーーーー!!)

875: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:06:14.64 ID:MWue3Two
 ・・・・・


店員「ありがとうございましたー」

先輩C(結局二本とも買ってしまった…しかも一本自腹で)

先輩C(くそっ、なんで私があいつなんかのためにここまで……)

先輩C「鈴木、もう戻るぞ」

純「あ、はーい。じゃあ梓、私はこれで」

先輩C「はぁ…」

先輩C(そもそもあいつの頼みなんだから適当に選べばよかったんだ)

先輩C(なんならアクエリアスにしてあいつの残念がる顔を拝め…)

純「お待たせしました」

先輩C「…行くぞ」

ガーッ

876: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:06:51.65 ID:MWue3Two
純「うわ、外は暑いですねー」

先輩C「さっき誰かと話していたみたいだが…友達か?」

純「はい、梓っていう…軽音部の子です」

先輩C「なに? 軽音部だと?」

純「ギターすっごく上手い…らしいんですよ」

先輩C「ふん…」

純(あれ? もしかして軽音部嫌い…?)

純「そ、そういえばセンパイの欲しいものってなんだったんですか?」

先輩C「私か? 私はこれを…」ガサゴソ

純「…なんですかそれ?」

先輩C「プリキ○アのカードだ」

純「……観てるんですか?」

先輩C「い、妹が欲しがってただけだ! 勘違いするな!!」

877: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:07:37.05 ID:MWue3Two
――ジャズ研 部室


純「戻りましたー」

先輩「お疲れ様」

先輩C「どうぞ、アイスです」

先輩2「ありがと」

先輩C「あ…そのアイスでよかったでしょうか?」

先輩2「え? アイスならなんでもいいわよ」

先輩C「……そうですか」

先輩B「私のは~?」

先輩C「…ほら」

先輩B「さんきゅ~さんきゅ~♪」

先輩B「……ん? なんで二本あるの?」

先輩C「そ、それは…」

先輩A「どっちが好きか分からないから、二本買ったの?」

878: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:08:33.43 ID:MWue3Two
先輩C「!?」

先輩B「なんだそりゃ、普通のやつでいいのに」

先輩C「ち、違うこれは……そうだ! お前が飲むと思って」

先輩A「私アクエリ派なんだけど」

先輩C「それも違う! お前はポカリ派だ!!」

先輩A「はいはい、じゃあポカリ派でいいわよ」

先輩C「なんだその顔は!?」

先輩B「うるさいやつだな~」

先輩C「黙れ!! お前のせいでどれだけ私が苦しんだことか…」

先輩B「なんで私が悪者になってるんだよぉ~」

同級生「う、う~ん……」

同級生「あれ? 私なにやって…」

純「あ、起きた」

879: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:09:20.76 ID:MWue3Two
 ・・・・・

先輩「さて…そろそろ練習再開しましょうか」

先輩2「えぇ、分かったわ」

先輩「みんな集まって」

先輩B「あ~だるいな~~」

先輩C「しゃきっとしろ」

先輩A「ふふっ」

同級生「ねぇ純、私記憶がないんだけど…なにがあったのかな?」

純「…思い出さないほうがいいんじゃない?」

同級生「?」

先輩「じゃあまず始めに――…」


―――――――――
――――――
―――

880: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:10:58.80 ID:MWue3Two
キーンコーンカーンコーン


先輩「お疲れ様、今日の練習はここまでよ」

先輩B「んーっ…やっと終わった~」

同級生「純、帰ろー」

純「うん……あ、ちょっと待って」

純「先輩」

先輩「なに?」

純「今日の練習…迷惑かけてすいませんでした」

先輩「迷惑?」

純「あの…いっぱいミスしちゃったし」

先輩「…そうね。確かにミスは多かったけど……」

先輩「別にいいんじゃない? 練習なんだし」

純「先輩…」

先輩「まぁ一つアドバイスするなら――…」

先輩「上達の近道は毎日コツコツとやること。これだけよ」

881: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:11:35.43 ID:MWue3Two
純「毎日…」

先輩「そ、頑張ってね」

純「は…はいっ!」

純「今日はありがとうございました!」

同級生「純ー、行こーよー」

純「今行くよ」

先輩「気をつけて帰ってね」

先輩2「あんたは帰らないの?」

先輩「私は…まだいいや」

先輩2「そう、あんまり無理しちゃだめよ」

先輩「分かってるって」



先輩B「……」

882: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:12:39.86 ID:MWue3Two
 ・・・・・

――帰り道


同級生「う~ん…なんで気絶してたんだろう」

純「だから思い出さなくていいって」

同級生「あっ!」

純「え?」

同級生「…お腹すいた」

純「なんだ……そういえば私もすいたかも」

同級生「どっか食べに行かない?」

純「賛成ー!」

同級生「私ハンバーガー食べたいんだけど」

純「ファミレス行きたい」

同級生「……」

純「……」

純・同級生「じゃんけんぽんっ!」

883: 名無しさん 2010/10/30(土) 10:13:25.74 ID:MWue3Two
――ジャズ研 部室


先輩「さてと、みんなもいなくなったし…」

先輩B「一人で練習ですか?」

先輩「!?」

先輩「な、なんであんた…」

先輩B「つれないな~…誰か誘ってやればいいのに」

先輩「…みんな疲れてるのにそんなことできるわけないでしょ」

先輩B「先輩は疲れてないの?」

先輩「私は…『疲れた』なんて言えないの。部長なんだから」

先輩B「やれやれ……ま、付き合ってあげますよ。練習」

先輩「さっきだるいとか言ってたくせに」

先輩B「大丈夫、後で先輩が美味しいものおごってくれるから」

先輩「するわけないでしょ」

先輩B「な~んだ」

先輩「……」

先輩B「……」

先輩「ジンギスカンキャラメル食べる?」

先輩B「いらない」


# ジャズ研の夏

おわり

895: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:48:37.84 ID:0DkKRPIo
# 憂と梓と純


――駅前


純「梓まだー?」

憂「もうちょっとで来るんじゃないかな?」

純「あ~…ヒマだなぁ」

純「ねぇ、しりとりでもしようよ」

憂「え? いいけど…」

純「んじゃー…梨」

憂「シール」

純「ル、ル…ルビー」

憂「ビール」

純「ル? ルー…ルアー!」

憂「アール」

純「また『ル』!?」

896: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:49:16.19 ID:0DkKRPIo
純「ル、ル、ル…」

純「ルックス!」

憂「スリル」

純「また!?」

憂「がんばって純ちゃん」

純「う~ん……ルーレット」

憂「トーテムポール」

純「っ……ルー大柴」

憂「バール」

純「いじわる~!」

憂「ふふっ」

純「う~~~ん……そうだ! ルール!!」

憂「ルイスキャロル」

純「!?」

梓「おまたせー、ごめん遅れちゃって」

純「梓ぁー! 憂がいじめてくる~!!」

梓「??」

897: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:49:54.35 ID:0DkKRPIo
憂「ごめんね、純ちゃん」

純「もう憂とは絶対しりとりしないからね」

梓「よく分かんないけど…早く行こうよ、ショッピングモール」

純「あっ、そうだ。来るの遅いよ梓」

梓「さっき謝ったじゃん」

憂「それじゃあ行こっかー」

梓「うん…どんぐらいかかるっけ?」

憂「ここから…十分ちょっとぐらいかな?」

憂「冬にできたんだよね? 私まだ行ったことないんだ」

梓「私も。楽しみだね」

純「なに買おうかな…二人はなに買うの?」

憂「私は春物の服とかかな。梓ちゃんは?」

梓「私も服と…あとなにか小物」

純「私はなにしようかなー」

梓「決めてないの?」

純「んー…着いてから決める」

898: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:50:34.79 ID:0DkKRPIo
――ショッピングモール

純「うわ…想像してたのより広いね。人多いし」

憂「休みの日だからしょうがないよ」

純「梓、迷子にならないでね」

梓「ならないから!!」

純「よし、それじゃ服から見に行こっか」

憂「うん」

梓「あっ、ちょっと待って…」

ワイワイガヤガヤ ワイワイガヤガヤ

純「人多いなー…進みづらい」

憂「純ちゃんこっちこっちー」

純「あっと…そっちか」

純「あれ? 梓は?」





梓「憂ー! 純ー! どこー!?」

899: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:51:06.83 ID:0DkKRPIo
――十分後

純「あ、来た来た」

梓「ふ、二人ともひどいよ。置いていくなんて…」

純「いやだって、気づいたらいなくなてったんだもん」

憂「梓ちゃん大丈夫?」

純「だから迷子にならないでって忠告したのに」

梓「むぅ…」

憂「とりあえずお店入ろっか、もう目の前だし」

純「よっし、買うぞー」

梓「あ、買うもの決めたんだ」

純「うん、お店に入ってから決める」

900: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:51:35.85 ID:0DkKRPIo
――店内

純「おお…可愛い服がいっぱい」

憂「どの服にしようかなー♪」

純「こっちのオレンジのやつとかどう?」

憂「あっ、かわいい~。お姉ちゃんに似合うかも」

純「お姉ちゃんの服かい」

梓「自分のは買わないの?」

憂「う~ん…どうしようかな」

純「買えばいいじゃん、せっかく来たんだし」

憂「そう…だね。そうしようかな」

純「じゃあ憂の服選び手伝ってあげよう。憂の任せると全部お姉ちゃんのにしそうだし」

梓「そだね」

901: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:52:11.82 ID:0DkKRPIo
純「これはどう? ヒラヒラのやつ」

梓「このワンピースの方がいいんじゃない?」

純「だったらこっちのシャツにそのデニムを…」

梓「ダメダメ、それはバランスが悪い」

憂「ふ、二人とも…?」

純「厳しいね、梓」

梓「さわ子先生に教えてもらったからね。私も色々着させられたし」

純「ほぉ~、すっかり軽音部の一員ですなぁ…」

純「あっ、これなんかいい感じじゃない?」

梓「それと…、あとはこれとこれも…」

純「もうめんどくさいから全部憂に着せよっか」

憂「え…」

梓「うん、そうしよう」

純「じゃあ憂、これ全部着て」ドッサリ

憂「全部!?」

純「試着はタダだし」

902: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:52:48.93 ID:0DkKRPIo
――数十分後


憂「まだ着るの?」

純「なんか人に着せるのって楽しいね」

梓「でしょ?」

憂「もう私はいいよ~」ヌギヌギ

梓「あっ、カーテンカーテン」シャー

純「……」

梓「どうしたの純?」

純「今チラっと見えたんだけどさ…」

純「憂の胸って大きいよね」

梓「ちょ、なに言って…!?」

純「だって見えちゃったものは見えちゃったんだもん」

純「大きかったなー、憂の胸。どんぐらいあるんだろう」

903: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:53:31.85 ID:0DkKRPIo
梓「もぅ…」

純「なんで梓が顔赤くしてるの?」

梓「だ、だって意識しちゃうから…」

純「変なの。女どうしなのに」

純「あっ、そういえば澪先輩も大きいよね」

梓「はぇっ!? そ、そうだね…///」

純「ジャズ研の先輩にも大きい人がいるんだけど…どっちが大きいのかなー」

梓「…澪先輩は形もキレイだよ」ボソッ

純「え? なに?」

梓「ななっ、なんでもない!!」

純「?」

シャー

憂「おまたせー、今度は梓ちゃんが試着していいよ」

梓「あっ…うん」

904: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:54:16.20 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

梓「ど、どうかな? カジュアルな感じにしてみたけど」

純「うん、かわいいじゃん」

憂「梓ちゃんかわいい~!」

梓「えぇ? かっここいいの選んだつもりなのに…」

純「梓が着るとなんでも可愛くなっちゃうんだよ。梓補正で」

梓「そんな補正いらなーい!!」

憂「思い切ってロック系の服にしてみたら?」

 ・・・・・

梓「どう?」

純「だめだ、かわいい」

憂「梓ちゃんかわいい~!」

梓「うぅ…」

純「次はお姉系とかは?」

 ・・・・・

梓「これならどう?」

憂「かわいい~!」

梓「なっ!?」

純「梓は何を着ても梓系になっちゃうね」

梓「うれしくなーい!!」

905: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:54:58.12 ID:0DkKRPIo
――――

梓「純は買うもの決まった?」

純「私? これとこれとこれ」

梓「試着しないの?」

純「平気平気。気に入ったもの買ってるから」

憂「一応した方がいいんじゃないかな?」

純「えー? 似合ってると思うんだけどなぁ」

 ・・・・・試着中

憂「純ちゃんどんな感じになるんだろう」

梓「……」ジーッ

憂「梓ちゃん?」

梓「えっ!?」

憂「どうしたの? 私になにかついてる?」

梓「う、ううん…なんでもない」

梓(さっき純が変なこと言ってたせいで…憂の胸を凝視してしまった…)

シャー

純「じゃじゃーん! どう?」

憂「純ちゃんかわいい~!」

梓「似合ってるよ」

憂「じゃあお会計すませよっか」

梓「うん」

純「あれ? なんかあっさりしてない!?」

906: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:56:09.14 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

純「さてと、いきなり買い物したし次は色々見て回ろっか」

憂「色んなお店があるねー」

純「んー…あっ、楽器屋もあるみたいだし行ってみない?」

梓「いいかも」

純「憂もいい?」

憂「うん、いいよ」

純「よし、じゃあ行こう行こう!」

梓「そういえばさぁ…」

純「うん?」

梓「純ってなんの楽器やってるんだっけ?」

純「!?」

純「憂! 梓ったらひどいよぉ~!!」

憂「よしよし」ナデナデ

梓「ご、ごめん。つい忘れてて…」

純「いいもん、梓なんか。憂は知ってるよね? 私のパート」

憂「え?」

純「ね? 知ってるよね?」

憂「えっとぉ~……」

憂「タンバリン、とか…?」

純「!?」

907: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:56:54.01 ID:0DkKRPIo
――楽器店

梓「わー! すごい!」

梓「思っていたのより良いのいっぱいあるな~!」

憂「すごいね~、ギターだけでも数え切れない」

純「ムスッ……」

梓「ほら純、いじけないで」

憂「純ちゃんごめんね。元気出して」

純「いいもんいいもん…私は一人でベース見てますよーだ」

梓「ごめんごめん、謝ってるじゃん」

純「むぅー…しょうがないなー」

純「許してあげよう」

梓「どうもありがとうございます」

憂「純ちゃん優しいっ」

純「そ、私は強い子優しい子!」

908: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:57:51.44 ID:0DkKRPIo
純「ところでさ、憂はなんか楽器やらないの?」

憂「私?」

純「うん、弾けるんでしょ? ギター」

梓「そうそう、すっごく上手かったんだよ!」

憂「わ、私は別にいいよ~」

純「もったいなー、上手いならやればいいのに」

梓「宝の持ち腐れだよ? それじゃあ」

憂「う~ん…」

純「そうだ! ジャズ研に入らない?」

純「憂ならレギュラー取れるよ!」

梓「だめだめ、憂は軽音部に入るの!」

憂「それ決まってるの…?」

909: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:58:27.26 ID:0DkKRPIo
純「えー、いいじゃーん別に。そっちは唯先輩がいるんだし」

梓「唯先輩はなぁ……そうだ!」

梓「憂は軽音部で引き取るから、唯先輩はジャズ研にあげるよ。交換成立でしょ?」

憂「えぇ!?」

純「唯先輩かぁー…唯先輩じゃうちの空気に合わないと思うなぁ」

純「澪先輩だったらいいよ」

梓「絶対ダメ。なら唯先輩とジャズ研のギターの上手い人を交換しようよ」

梓「ほら、あの身長が高い…」

純「それはもっとダメ。部長だもん、あの人」

憂「お姉ちゃんの扱いって…」

純「冗談冗談」

910: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:58:54.66 ID:0DkKRPIo
――雑貨店

憂「あっ、これかわいい! ねえ梓ちゃん」

梓「どれ?」

憂「ほらこのバスケットが付いてる壁掛け」

梓「本当だ…いいかも」

憂「私もなにか買おうかなぁ・・・」

梓「このケースとかいいんじゃない? 雰囲気あって」

憂「わぁ」

梓「あっ、このネコの置物…唯先輩好きそう」

憂「あはっ、そうかも。じゃあ二つとも買っておこうかな」

梓「……あれ? 純は?」

憂「え? 純ちゃん?」

梓「いないんだけど…」

憂「どこいったのかな…?」

梓憂「???」

911: 名無しさん 2010/11/03(水) 06:59:52.50 ID:0DkKRPIo
梓「じゅーん!!」

憂「純ちゃーん!」

梓「も~…どこ行ったの」

憂「純ちゃんの行きそうなところは…うーん」

梓「純はなにが好きなのかな…それが分かればそこにいるんだろうけど」

憂「あちこち回ったけどけど見つからなかったし……ここかな?」

梓「寝具のコーナー?」

憂「ベッドで寝てたりして」

梓「まさか…ないない」

憂「でも純ちゃんよく寝るから――…あっ」

純「ぐぅー…」

憂梓(ほんとに寝てた!?)

912: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:00:57.63 ID:0DkKRPIo
純「ぐぅ…ぐぅ…」

梓「純ー、起きてー」

純「うぅ~ん…」

梓「ほら起きて。恥ずかしいよ」

純「…あれ? いま何時?」

純「午後の1時ごろだよ」

純「え? ・・・学校は?」

梓「なに寝ぼけてるの…」

純「あれ……あっ、そっか」

純「ふぁあ~…」

純「……」

純「おやすみ」

梓「起ーきーてー!!」

913: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:01:33.91 ID:0DkKRPIo
――ファミレス

純「あはは、ベッド見つけたらつい眠くなって」

梓「まったく…」

純「寝たらお腹すいちゃったなー…なに食べよう」

憂「ドリンクバー頼んでおく?」

純「んー、おねがーい」

梓「何にしようかな…」

純「注文決まった?」

梓「まだ……む~」

純「私ハンバーグにしよっと」

憂「じゃあ…私はパスタで」

梓「むぅぅ~……」

純「まだ決まんないの? 私が決めてあげよっか」

梓「自分で決めるよ」

梓「……」

梓「私もパスタ」

914: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:02:54.50 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

店員「お待たせしました。ご注文の品でございます」

純「きたきた!」

憂「おいしそうだね~」

純「ハンバーグとパスタと、パスタ…」

純「私だけハンバーグ!?」

梓「今気づいたの?」

純「なにこの疎外感…私もパスタにすればよかったぁ~」

梓「もう遅いよ」

純「憂、それちょっとちょうだい」

憂「じゃあ交換しよっか」

純「さんきゅっ」モグモグ

純「うまっ! パスタうまっ!」

憂「ハンバーグも美味しいよ」

梓「……」ジーッ

梓(ハンバーグ美味しそう…)

純「はい梓、ハンバーグあげる」

915: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:03:28.80 ID:0DkKRPIo
梓「え?」

純「なんか欲しそうな顔してたから」

梓「べ、別に食べたいわけじゃ…」

純「その代わり、梓のもちょーだい」

梓「あ、ちょっと! 行儀悪いよ」

純「気にしない気にしない」

純「そうだ、今のうちにデザート決めておこ」

梓「はやっ」

純「けっこう種類あるね……あっ、飲み物なくなったからドリンクバー行ってくるね」

梓「………いそがしいなぁー、純」

憂「ふふっ」

916: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:03:59.29 ID:0DkKRPIo
梓「それにしも、結構買い物したね。お金大丈夫かな…」

憂「目に入るとつい買っちゃうよね。私も使いすぎちゃった」

純「おまたせっ」

梓「…なにそれ。変な色」

純「え? コーラとかメロンソーダとか混ぜたらこうなった」

梓「いるよね…そういう人」

純「なによー、いいじゃん。おいしいんだし」ゴクゴク

純「梓も飲む?」

梓「遠慮しておく」

純「一応こだわってブレンドしたんだけどなぁ…」

純「おっと、デザート決めよっと」

梓「その前に食べ終えなよ」

純「んー、決めてからー」

917: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:04:52.04 ID:0DkKRPIo
梓「はぁ…自由だね、純」

純「急になに?」

梓「そう思っただけ。気楽そうでいいなーって」

純「失敬な、こう見えても毎日大変なんだから」

純「苦労してるんだよ私も」

梓「例えば?」

純「え? 朝の髪のセットとか」

梓「なにそれ」

純「癖毛は大変なの。ストレートの人には分からないんだろうけど」

梓「ふーん…」

憂「純ちゃん、頭にホコリがついてるよ」

純「うそ!? とってとって」

憂「はい、取れた」ヒョイッ

純「さんきゅーっ、憂」

梓「…やっぱ純は純だね」

918: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:05:46.76 ID:0DkKRPIo
純「なんかバカにされてる気がするぅー」

梓「別にそんなんじゃないよ」

純「梓は一度ジャズ研に来ればいいよ。私だってそこでは真面目に猛練習してるんだから」

梓「なんか想像できなないなー」

純「真面目にやってますー!」

憂「練習厳しいんだよね、ジャズ研」

純「うん。部長が代わってから少しは緩くなったけど、それでも厳しいほうかな」

純「軽音部はどう? 相変わらず?」

梓「相変わらずって…最近はちゃんとやってるよ」

純「本当に?」

梓「やってる。…学際終わってから少しだれたりもしたけど、先輩たちとは前よりも団結したし」

純「ほぉ~、そうですか」

梓「私もだけど、先輩たちだってちゃんと練習してるんだから。家とかで」

憂「そうそう、お姉ちゃん毎日ギター弾いてるんだ」

純「へぇ…」

919: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:06:27.97 ID:0DkKRPIo
憂「昨日も夜中まで弾いてて、寝るの遅くなっちゃったの」

純「そうなんだ。あの唯先輩が…」

梓「唯先輩って、なにか一つのことに夢中になると止まらないよね」

憂「けどそれがお姉ちゃんらしいっていうか…お姉ちゃんの良いところだし」

梓「この前も軽音部で練習したときにさ――…」

純「……」

憂「あはは、それ私もお姉ちゃんから聞いた。律さん大変だったんだよね~」

梓「そうそう、あれにはまいったよ」

憂「そいえばこれもお姉ちゃんが言ってたんだけど、先週軽音部で――…」

純「……」

梓「うんうん、あれも大変だったなぁ。軽音部全員大騒ぎで…」

純「もぉーー!!」

梓「ど、どうしたの純?」

純「二人ばっか軽音部の話しってズルイー!!」

920: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:07:11.05 ID:0DkKRPIo
純「私も話しに参加させてよ!」

梓「ごめんごめん。じゃあさ、ジャズ研の話聞かせてよ」

純「へ? ジャズ研の?」

梓「うん。なんか気になるし」

純「いきなりそんなこと言われてもなー…みんなが集まるときはだいたい練習とかだし」

純「でもいい先輩はいっぱいいるよ。上下関係に厳しい人もいるけど、基本優しい人ばかりだし」

純「あと同じ学年の子たちとも話してて楽しいかな」

梓「ふーん…」

純「ていうか…軽音部みたいに毎日ドタバタがあるわけじゃないから、そんな特に面白い話もないけどね」

梓「わ、私たちだって毎日騒がしいわけじゃないよ。やるときはやるんだから」

純「あっ、そうだ。これは結構前の話なんだけど…」

純「夏休みの練習に先輩がお菓子もってきたんだけどさ、それなんだったと思う?」

憂「なに?」

純「なんと…ジンギスカンキャラメルだったの! しかも先輩それが大好物みたいで」

梓「へぇ……ん?」

梓(ジンギスカンキャラメル?)

921: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:08:00.53 ID:0DkKRPIo
憂「すごい人だね。あれ不味いって聞いたんだけど」

純「うん、普通にかっこいい先輩なんだけどね」

梓「あーーーっ!!!」

純「な、なに!?」

憂「どうしたの梓ちゃん?」

梓「あの時のキャラメル、思い出した!!」

純「あの時…?」

梓「夏休みの!!」

純「………………あっ」

梓「死ぬかと思ったんだからね!?」

純「で、でも今こうして生きてるじゃん」

梓「そういう問題じゃなーい!!」

922: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:08:32.81 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

純「ふぅ…満腹」

梓「これからどうする? ここ広いから遊べるところいっぱいあるけど」

憂「そうだねー…ゲームセンターとかボーリング場もあるよね」

梓「どうしよっか。ねぇ純、どこがいい?」

純「んー? どこでもいいよ。私飲み物とってくる」

梓「あ…もう。どうしよっか?」

憂「うーん……梓ちゃんが決めていいよ」

梓「えぇ…? 困ったなぁ」

憂「梓ちゃんの好きなところでいいんじゃないかな?」

梓「む~…」

純「ただいまっと。どうしたの? 難しそうな顔して」

梓「これからどうしようか悩んでるの」

純「どこでもいいのに」

梓「だから悩んでるんじゃん」

純「ふーん…だったらさ、カラオケでも行く?」

923: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:09:14.56 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・


――カラオケ

憂「久しぶりだなぁ~、カラオケ」

純「歌うぞー、っと」

梓「なんでカラオケ?」

純「思いついただけ。イヤだった?」

梓「ううん、全然」

梓「……なに歌おうかな」

憂「う~ん…」

純「二人とも決まった?」

梓「ま、まだ」

純「じゃあ私先に入れちゃうね」ピピッ

~♪

純「それじゃあ一番手いきまーす!」

憂「わー!」パチパチ

純「コホン」

~♪

純『花は恥じらうものー!鳥はさえずるものー♪』

憂「純ちゃん上手~!」

純(ふふん、私の歌で盛り上げてやる)

純『目立つのはやだけどなんで? 歌作っちゃう♪』

梓「憂、なに歌うか決まった?」

憂「あ、どうしようかな~」

924: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:10:11.71 ID:0DkKRPIo
純『ベースが肝心、どんな物、人だって♪』

憂「次私が入れてもいい?」

梓「うん、いいよ。……あっ」

憂「どうしたの?」

梓「唯先輩からメールきてた」

憂「わっ、見せて見せて」

純『ブン!ブン!ブン!ブーーン!!』

~♪

 ・・・・・演奏終了

純「はぁ、はぁ…ど、どうだった?」

梓「唯先輩、律先輩たちと遊んでるんだって」

憂「楽しそう~」

純「聞いてない!?」

925: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:10:51.92 ID:0DkKRPIo
梓「あ…聞いてた聞いてた」

純「もぉー! 二人ともひどいよー!!」

憂「ほら、点数出てるよ」

純「え?」チラッ

純「75点!?」

純「びみょ~…」

梓「カラオケの点数はあんまり気にしなくてもいいんじゃない?」

憂「あっ、次私だ」

梓「私も今のうちに入れておこ」ピピッ

純「ついでに私も」ピピッ

梓「もう決めたの?」

純「十曲ぐらいは決めてるよ」

梓「そういう時は行動早いよね…純」

~♪

憂『朝陽浴びて 大きく伸びをしたら♪』

純「おぉ、優しい歌声」

926: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:11:28.55 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

憂「なんでもどんどんやりたくなる 愛言葉♪」

~♪

梓「いいなぁ、憂いいなぁー」

憂「えへへ、お粗末様でした」

純「癒された~」

憂「はい梓ちゃん、マイク」

梓「次は私かぁ…なんか緊張する」

純「なに言ってんの、ライブじゃ大勢の前でギター弾いてるくせに」

梓「いや歌うとなると、なんか…」

梓(誰かとカラオケ来るのも久しぶりだし)

純「いつか軽音部でも歌う日がくるかもしれないんだし、練習だと思ってやれば?」

~♪

憂「始まったよ、梓ちゃん」

梓「わわっ!?」

梓『た、ただ、独りきりじゃ知ることなかったグルーヴへ~、じゃじゃ馬つれて♪』

927: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:11:54.47 ID:0DkKRPIo
憂「梓ちゃんの歌ってる姿ってかわいいよね~」

純「ほんと…なんか小動物みたい」

梓『ちっちゃなボディは私の分身! 抱えて一歩踏みだす道場破り♪』

純「おっ、なんかのってきた」

憂「わぁ~」

梓『今!背伸びして見た憧れだったstageへー♪絶対行くんだ!!」

純「なんか…踊り始めてない?」

梓『目を閉じても耳を澄ませばわかる、自分の居場所♪』

梓『理屈じゃないよね?ハート震えるNew World~♪』

梓『おーーー!!』

純「わっ、シャウト!?」

928: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:12:55.91 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

梓「あ~…なんかすっきりした」

純「ずいぶんと楽しそうだったね、梓」

梓「ちょ、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかな」

憂「あはは、でも良かったよ」

梓「なんか…恥ずかしくなってきたんだけど」

純「まぁカラオケだし、そんぐらのテンションはいいんじゃない。あっ、飲み物頼もっと」

純「二人も飲むでしょ?」

憂「うん、喉カラカラだよぉ」

~♪

梓「次の曲、純じゃない?」

純「そうだった。梓、代わりにメロンソーダ頼んどいて」

梓「ん、分かった」

憂「純ちゃんがんばれー!」

~♪

純『チャッティングナウ!』

純『ガチでカシマシネバーエンディングガールズトーク♪』

梓「ノリノリだ」

憂「楽しいねー♪」

純『ドキドキが止まんない!フルスロットルな脳内!!』

929: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:13:37.47 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

純「いいね~、やっぱ大声出して歌うと気持ちいいー」

梓「純はジャズとか歌わないの?」

純「ジャズ? 歌の方は私あんま知らないんだよね」

梓「ジャズ研なのに…?」

純「だ、だって私ベースだし」

梓「そういうの覚えたほうがいいよ。良い曲いっぱいあるし」

純「うーん…英語で歌えるかなぁ」

梓「日本語のやつもあるから大丈夫だよ…」

梓「そうだ! 帰りにうちに来なよ。CD貸してあげる」

純「…急だね」

梓「オススメとかあるし、ね? いいでしょ?」

純「はいはい、じゃあ後でね」

憂「私、ちょっとトイレ行ってくるね」

純「あ、うん。いってらっしゃ~い」

930: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:14:14.24 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

――廊下

憂「ふぅ…」テクテク

憂「……」

憂(あれ? なんか見覚えのある姿が見えたような…)

憂(たしかこの部屋…)

憂「……」チラッ

さわ子『Maddy candy!! Maddy candy!! Maddy candy!!』

憂(あ、先生だ…しかも一人)

さわ子『アタマ!!アタマ!!首ぃ!!!』

憂「……」

憂(見なかったことにしよう…)

931: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:14:59.22 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

~♪

憂『制服脱いだらちょっとスゴいよ? 着ててももちろん凄いけど♪』

純「たしかに憂は脱いだらすごいよね」

梓「ぶっ!?」

梓「い、いきなりなに言ってんの!!」

純「だってそうじゃん。私が男だったらほっとかないなー」

梓「いやらしいよ…純」

純「梓は脱いだらどうなるのかなー?」

梓「なっ!?」

純「なーんてね、大体想像つくから期待してないけど」

梓「お、大きなお世話!!」

憂『ゴキゲンなフレーズ♪ 無制限にリフレイーン♪』

 ・・・・・

932: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:15:34.50 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

梓『猫みたいに、爪を立てて自分守るように♪』

純「梓ってさ、ボーカルやんないのかな?」

憂「え? どうなんだろう」

純「絵的にはかわいいから似合いそうなのにね」

憂「そうだね~…お姉ちゃんとデュエットなんていいかも」

梓『同じステージの上にいるじゃん! ってそれだけでなんか勇気沸くね♪』

憂「梓ちゃんかわいい~!」

純「なんだかんだで気持ちよさそうに歌ってるなー」

憂「そうだ、写メに取ろう!」パシャリ

梓『低俗だってー高潔だって♪』

 ・・・・・

933: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:16:34.03 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

梓「あっ、もうそろそろ時間だよ」

憂「じゃあこれで最後の曲だね」

純「どうせならさ、三人でなにか歌おうよ」

梓「なに歌うの?」

純「んー…これ! 『レッツゴー』」ピピッ

~♪

純「ほらほら、始まったよ。二人ともマイク持って」

レッツゴー!レッツゴーゴー♪ レッツゴー!レッツゴーゴー♪

梓「はい憂、マイク」

憂「ありがとう、梓ちゃん」

レッツゴー!レッツゴーゴー♪ レッツゴー!レッツゴーゴー♪

純「ふふーん、最後だし思いっきり歌うぞー」

憂「レッツゴー♪」

純『やっちゃった! 8時起床ヤバイ誰も起こしてくれない♪』

純『あ、今の出だし良くなかった?』

梓『いやそれより歌の続き…』

憂『観覧車よりもお姉ちゃんgogo!』

梓(勝手に歌詞変えてる!?)

梓『あーもー! 私も好きに歌うからね!!』

934: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:17:11.70 ID:0DkKRPIo
梓『発射ースタンバイ♪ちょっと不安だね♪』

純『ここまできたらー閉めるシーットベルトーーーーーー!!ゴホッゴホッ』

梓『のばしすぎ!?』 

憂『おk♪』

純『ギリギリ遅k…あ、あれ?このマイク音でないよ』

憂『言い訳ジョーク♪』

純『ねぇー、これ音出ないよこれー』

梓『壊れたんじゃないの? シンドイ時もナミダな時も♪』

純『ここにきて故障!?』

憂『赤点ショックショックショック!』

純『ちょ、梓貸してー!』

梓『信号ウェイトウェイトウェイト♪ 無理に決まってるでしょー』

純『じゃあ二人で使おうよ! 気まぐれロックロックロック♪』

梓『あっ、ちょっと!!』

憂『もっと行ける♪ 私も梓ちゃんのマイク使うー!』

梓『わわっ!?』

純『反省しても後悔しないでー♪どうにかー…』

純憂『レッツゴーーー♪』

梓『ゴーーーーーー!!』

935: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:17:43.28 ID:0DkKRPIo
 ・・・・・

――帰り道

純「あー! 楽しかった」

憂「また今度行こうね」

梓「はぁ…なんだか疲れちゃった」

純「梓が一番ノリノリだったよね」

梓「なっ、カ、カラオケだから別にいいの!!」

憂「梓ちゃんが歌ってるところ写メで取っちゃった」

梓「!?」

梓「け、消して消してー!!」

憂「え~、あとでお姉ちゃんに見せたいんだもん」

梓「ダメー!!」

純「疲れたって言ってるのに元気だね、梓」

梓「むぅ~……あっ、そうだ純」

純「ん?」

梓「うちに行こうよ。さっき言ったとおりCD貸してあげる」

936: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:18:25.05 ID:0DkKRPIo
――中野家


純「別に今日じゃなくてもいいのに」

梓「でもせっかくだし」

憂「ここが梓ちゃんの家かぁ」

純「そういえば初めて来るね」

梓「はい純、これ」ドッサリ

純「そんなに!?」

梓「だって聞いて欲しいのがたくさんあるんだもん」

純「だからってこんな聞けないって」

梓「パソコンの中にでも入れて後でじっくり聞きなよ」

梓「ジャズなんだし、勉強にもなるでしょ?」

純「先輩みたいなこと言って…しょうがないなぁ」

純「じゃ、ありがたく借りておくよ」

梓「うんうん、感想も聞かせてね」

純「それじゃあ私たちは帰ろっか」

憂「うん、バイバイ梓ちゃん」

純「またね」

梓「あ…うん」

梓「……」

梓「ちょっと待って!」

純「うん?」

梓「送っていく」

937: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:19:49.04 ID:0DkKRPIo
――帰り道

憂「最後の曲楽しかったよね~」

梓「滅茶苦茶だったけどね」

純「マイクが壊れたのは困ったなー」

梓「純の使い方が悪いんだよ」

純「えー、私は悪くないよー」

純「きっと私に罪を着せようとするカラオケ店の陰謀だね」

梓「はいはい」

憂「こうやって三人でなにかするのって楽しいよね。またなにかやりたいなぁ~」

梓「うん。また歌おうね」

純「それまでにちょっと練習しておこうかなー」

梓「じゃあさ、今度一緒にジャズ歌おうよ!」

純「梓歌えるの?」

梓「歌えるよ、一応」

純「へぇー…なら私もこれ聞いて練習しようかな」

梓「絶対歌おうね!」

純「はーい」

938: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:20:43.34 ID:0DkKRPIo
憂「ふふっ…あっ、もうここら辺でいいよ」

梓「え?」

純「そうだね。見送りご苦労さま、梓」

梓「あ、うん。…気をつけてね」

憂「バイバイ梓ちゃん」

梓「うん……」

純「……」ジーッ

憂「……」ジーッ

梓「…なに?」

憂「梓ちゃん、なんか寂しそうな顔してる」

梓「え?」

純「ははーん、私たちが帰っちゃうから寂しいんだ」

梓「ちょ、なにそれ! 全然そんなんじゃないよ」

純「よしよし、かわいい子だねぇ」ナデナデ

憂「よしよし」ナデナデ

梓「だーーっ!!ちがーーーう!!」

純「素直じゃないなー、梓」

梓「す、素直とかそんなんじゃないし…」

純「まぁさ、明日もまた学校で会えるんだし寂しがらなくてもいいんだよ?」

憂「そうそう、また明日があるんだし」

梓「明日……って」

梓「寂しがってないって! しつこいなー」

純「はいはい、それは失礼しました」

939: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:21:18.09 ID:0DkKRPIo
憂「そうだ! 一緒に写真撮らない? 携帯で」

純「え?」

梓「えぇ…いいよそんな」

憂「いいからいいから、二人とも集まって」

梓「もう…しょうがないなぁ憂は」

純「いいんじゃない? この三人で写真撮るのも初めてなんだし」

梓「そういえば…そうかも」

純「ほらほら梓、そこつめて」

梓「きつい…」

純「三人入ってる?」

憂「うん…たぶん大丈夫」

純「ピース!」

梓「純、手が私の顔と被ってる」

憂「いくよー。せー、の――…」

――パシャッ


# 憂と梓と純

おわり

940: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:22:18.46 ID:0DkKRPIo
# ジャズ研究会



――ジャズ研 部室

ガチャッ

純「こんにちはー」

先輩B「おいーっす」

純「あれ? 部長だけですか?」

先輩B「まぁねぇ~…珍しくまだ誰も来てないみたい」

先輩B「それにしてもなんかこそばゆいねぇ~、部長って響き」

純「部長がそう呼べって言ったんじゃないですか」

先輩B「そうだっけ? まぁどうでもいいんだけどさ~そんなのは」

純「なにしてるんですか?」

先輩B「部室の整理。純も手伝え」

純「えー」

先輩B「部長の言うことは絶対じゃ」

純「…は~い」

941: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:23:17.59 ID:0DkKRPIo
――職員室

先輩「失礼します」

顧問「ん?どうした? 三年は今日休みだろ?」

先輩「えぇ、そうなんですけど…受験も終わってやることがなくて」

顧問「そっか、タバコ吸う?」

先輩「吸いません」

顧問「あぁそう」

先輩「体に悪いですよ?」

顧問「たとえ体に悪かろうが値段が上がろうが、それでも戦い続けるのが喫煙者なんだよ」

先輩「……あの」

顧問「なに?」

先輩「前から失礼を承知で聞こうと思ってたんですけど……」

先輩「先生が元暴走族って本当ですか?」ボソッ

942: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:23:48.86 ID:0DkKRPIo
顧問「あぁ゛ん?」

先輩「ひっ…ご、ごめんなさ…」

顧問「なんてね、ウソウソ。ちなみに元暴走族ってのもね」

先輩「な、なんだ」

顧問「なんか顔が恐いからってさー、よく間違われるんだよね。高校のときなんか爽やかなテニス部だったのに」

先輩「そうだったんですか…」

顧問「ヒマなら私の青春時代の話でも聞いてく?」

先輩「いえ、結構です。暴走族かどうか知りたかっただけなので。ありがとうございました」

先輩「では失礼します」

顧問「え……それ聞きに来ただけ?」

943: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:24:56.85 ID:0DkKRPIo
――廊下

先輩(ふぅ…ずっと気になってたことが聞けてすっきりした)

先輩「……」

先輩(これからどうしよっかなー)

先輩「……」

先輩(部室…まだ練習は始まってないかな)

先輩(暇だし行ってみよう)

944: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:25:46.38 ID:0DkKRPIo
――ジャズ研 部室

ガサゴソ ガサゴソ

純「このスコアはどうするんですか?」

先輩B「あ~~…そっちにしまっといて」

純「はーい」

純「結構ゴチャゴチャしてますね、部室」

先輩B「私はゴチャゴチャしたままでも別にいいんだけど……おっ、面白そうなの見つけた」

純「え?」

先輩B「じゃ~ん、謎のノート~」

純「ノート?」

先輩B「読んでみようよ~」

純「いいんですか? 勝手に」

先輩B「いいのいいの、部室にあったんだし」

先輩B「整理してるとこういうのが見つかるから楽しいよね~」

純(まさか初めからそれが目的で…)

945: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:26:25.30 ID:0DkKRPIo
先輩B「どれどれ…」ペラペラ

先輩B「『今日はウォーキングベースを弾けるようにがんばった』」

純「……なんですかそれ」

先輩B「知らん。まだなにか書いてある」ペラペラ

先輩B「『誰も来なくて寂しい』…」

先輩B「……」

純「?」

ガチャッ

先輩「あれ? もう来てたんだ」

946: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:27:17.24 ID:0DkKRPIo
純「あっ、先輩」

先輩B「今日三年は休みじゃなかったんですか?」

先輩「やることないから…ってなにそれ?」

先輩B「このノート? さっき部屋掃除してたら見つけた」

先輩「それ…」

純「知ってるんですか?」

先輩「懐かしい…私が一年のときに買ったやつだ」

先輩B「一年のときに? そのわりには数ページしか書き込まれてませんけど…」ペラペラ

先輩B「こんなの何に使ってたんですか?」

先輩「まぁ…ジャズ研の日誌みたいなものよ。その日にあった楽しいことや思い出を書き残そうと思って」

先輩「けど私が一年のときは部員二人でまともに活動もできなかったし…途中で書くことがなくなっちゃったのね」

先輩B「そりゃまた暗い学校生活だったようで」

先輩「うるさい。二年になってからは急に忙しくなったから…ノートとることも忘れてたみたい」

947: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:31:07.16 ID:0DkKRPIo
先輩B「ふ~~ん…」ペラペラ

純「先輩、このあと予定とかありますか?」

先輩「え? ないけど」

純「あの、それじゃあ…よかったら練習を」

先輩「そうね、せっかく来たんだし」

純「!」

純「ありがとうございます!」

先輩B「ねぇ」

先輩「なに?」

先輩B「このノートさぁ~…使ってもいい?」

先輩「いいけど……あっ」

先輩「だったらちょっと貸して」

948: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:33:55.83 ID:0DkKRPIo
先輩B「ほい、なにするんですか?」

先輩「久しぶりに…なにか書こうと思ってね」

先輩「……」カキカキ

先輩B「……もう寂しくないですもんね」

先輩「え?」

先輩B「いえいえ、なんでもないですよ~」

ガチャッ

先輩A「こんにちは~」

先輩C「先輩? どうしてここに」

先輩「あなた達の様子を見にね」

先輩B「うそつけ、暇なだけだったくせに」

先輩「うるさい。はい、ノート」

先輩「ちゃんと書くのよ」

先輩B「へいへい」ペラペラ

先輩B「……」





     ジャズ研は桜ヶ丘で一番最高の部活!!
     みんな大好き!!
                 byジャズ研元祖部長                






先輩B(シンプルだなぁ~…)



# ジャズ研究会

おわり

949: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:35:31.61 ID:0DkKRPIo
終わりです。長くなって申し訳ございません。

950: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:48:46.27 ID:0DkKRPIo
というわけでこのスレはこれでおしまいです。
拙劣なところが多々あったと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

ジャズ研のキャラは当初予定していたよりも大幅に一人歩きしてしまった・・・

なにか批評や不満点などがあったら遠慮なく言ってください。

次スレはしばらくしたらこっそりと再開する予定です。
では。

952: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:57:40.01 ID:0DkKRPIo
>>785のリクエストにより

~どうでもいい設定集~

先輩
・ジャズ研のかっこよくて頼りになる先輩。パートはベース。
・部長。
・一年の時はヘタレだったが、先輩になるにあたって毅然とした態度を貫くよう心がけている。
・でもたまにヘタレる。
・泣き虫。怖がり。
・理想を求めすぎて現実が見えないときがある。
・部長としての責任か、なんでも一人で背負おうとする節がある。
・間が抜けてる。
・味覚音痴。それでも自称料理上手。
・口癖は「うるさい」。
・日々迷走している。
・困ったときは素数を数えている。
・姉が二人いて両方とも優秀なためコンプレックスがある。
・趣味はファッションとガーデニング。
・軽音部に対しては色々と複雑な感情があった。
・努力家。
・面倒見はよく根は優しい。
・学年が上がるにつれて、それ相応に精神的に成長した。
・この人がいなかったら純は音楽に対して真面目にならなかった、という感じで書いた。
・先輩を主役にしたジャズ研創設期の話を考えていたが、純が出ないので没。
 代わりに憂の鼻毛という思いつきとノリだけの話を書いてしまってちょっと後悔。できればあれはバッサリなくなって欲しい。

953: 名無しさん 2010/11/03(水) 07:59:17.94 ID:0DkKRPIo
先輩2
・クールな性格。
・パートはピアノ。
・副部長。
・先輩とは小学校からの付き合い。
・なにかとヘタレな先輩を気にかけている。
・猫舌。
・アイスが好き。冬でも食べる。
・家ではアイスの棒を使ってなにか工作をしている。
・趣味はアイスと絵を描くこと。
・思ってたより動かせなかったキャラでした。


先輩A
・ジャズ研のお姉さん的存在。
・パートはピアノ。
・穏やかで優しく礼儀正しい性格だが怒るとこわい。
・純のモフモフした髪を気に入っている。
・歌が上手い。
・先輩BとCのじゃれあいを優しい目で見守る係。
・カバンの中には常に飴と絆創膏が入っている。
・コーヒーが好き。先輩Bのアルバイト先でよく飲んでいる。
・これからどう動かそうか考えてるキャラ。

954: 名無しさん 2010/11/03(水) 08:00:49.12 ID:0DkKRPIo
先輩B
・新部長。
・パートはギター。
・マイペース。
・身長高くておっぱい大きい。
・なんだかんだで頑張ってる先輩のことは一番尊敬してる。
・先輩をイジることが楽しい。
・純とは波長が合う。
・料理上手。
・表には出さないが寂しがりや。
・趣味はバイク。
・喫茶店でアルバイトをしている。
・運動が苦手。勉強は得意。
・辛いものが苦手。
・小動物的なかわいいものが好き。
・最初はちょい役で出すつもりがいつの間にか勝手に動き出して出番が多くなったキャラ。
・ジャズ研が一人歩きしたのもたぶんこのキャラのせい。

955: 名無しさん 2010/11/03(水) 08:02:40.91 ID:0DkKRPIo
先輩C
・新副部長。
・パートはサックス。
・体育会系。
・厳格な性格をしている。
・妹がいる。
・運動が得意。勉強が苦手。
・機械系が苦手。
・先輩Bとはよく軽口をたたきあっている。
・一年のころは唯と同じクラスで、社会科見学のとき唯の行動があまりにトロトロしていてキレたことがる。という無駄エピソードがある。
・年上の前では真面目な子になる純に漫才ができる先輩を用意したいと思って書いたキャラ。
・最初は某最高な人と同じような性格だったが、あまりにキャラが濃すぎるので没。パートもベースだった。
  ・先輩C「なるほど、しかしなぜ私に?」
    純「……先輩が……最高だから……」
   先輩C「聞こえないな。もっと大きな声で言え」
    純「先輩は最高です!! どうか弟子にして下さい!!」没ネタ。
・そしていざ書いてみるとバルクホルンにキャラが似てると言われ、読み返してみると確かにバルクホルンだった。
・それでも名護さんは最高です!

956: 名無しさん 2010/11/03(水) 08:04:18.32 ID:0DkKRPIo
同級生
・ジャズ研のアホ。
・パートはドラム。
・特に得意なことはない。
・アホだけが取り得。
・純のことを一番の友達だと思っている。

顧問
・顧問の先生。
・顔がこわいだけで元暴走族ではない。
・趣味は麻雀パチンコ競馬。
・パチンコで当った景品をたまにジャズ研に差し入れたりする。
・音楽のことはよくわからない。


名前は伏せました。
こんな設定はあってもなくても気にしなくていいです。
自己満足です、はい。

957: 名無しさん 2010/11/03(水) 08:06:37.35 ID:0DkKRPIo
no title