1: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:08:00.83 ID:gLaA3QUg0
女「じゃんけん、ぽん」

二人の教室。

男「……俺の勝ちだな」

女「うむ……負けてしまったね」

男「じゃあ帰るぞ」

女「せっかく二人なんだよ?」

男「どういうことだ」

何を考えてたんだよ。

引用元: ・女「二人の教室で」

2: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:12:50.59 ID:PWCz1ARXP
教室に、帰宅部が残る理由なんてない。

せめてなにかの行事でもなきゃ、いる意味なんて全然ないぞ。

女「じゃんけんで勝ったら、なんでも一つ命令できるんだよ?」

男「だから、『帰る』んだ」

女「それはダメだよ。ゲームが終わっちゃうじゃないか」

また、このパターンか。

男「毎日毎日、俺に勝てないお前が悪いんだろ」

ここまで弱いと逆に凄い。

3: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:16:43.68 ID:PWCz1ARXP
女「確かにそうかもしれない、だけど、それじゃあ君は毎日勝ち逃げじゃないか」

男「命令を聞くゲームなんだからそれでいいんだろうが」

お前に文句を言われる筋合いはない。

女「……仕方ない、今日は帰るよ」

男「今日も、な」

女「ふふ、そうだね」

バッグを持って、教室を後にした。

5: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:21:22.76 ID:PWCz1ARXP
女「ふむ……」

今日は物思いにふけっている。

男「……」

横目でチラリと見る。

女「ん?」

そのチラリに、タイミング良くこちらをみる。

本当に、一瞬だったのに。

女「どうしたんだい?」

7: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:41:00.60 ID:PWCz1ARXP
男「別に」

女「ボクに色目をつかうなんて」

使ってない。

女「ふふ、魅力的だったよ」

男「してないだろうが」

女「嘘だね、くずぐっちゃうよ?」

手をワキワキとさせる。

8: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:44:18.27 ID:PWCz1ARXP
男「意味無いからやめろ」

女「それはどうかな? えいっ!」

俺の脇の下やら、首筋やらを攻めてくる。

女「こちょこちょこちょ」

やめい。

男「……」

俺、効かないから。

10: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:49:19.08 ID:PWCz1ARXP
女「だいぶ、効いたみたいだね」

効いてねぇよ。

女「ふふっ、参ったか」

なんて爽やかな笑顔だろう。

女「というわけで、ボクの勝ち、命令は……」

男「……」

俺は無言で、やつの脇をつつく。

女「あっ」

こいつは、くすぐりに相当弱い。

11: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:52:53.22 ID:PWCz1ARXP
男「誰がお前に負けたって?」

女「あはっ、ちょ、ちょっと、ダメだよ」

脇をちょこまかとくすぐる。

やっぱり効いてる。

女「ぼ、ボクは、そこをいじられると……あぁん」

男「!」

思わず手を止める。

男「変な声を出すな」

なんか、変なことしたみたいだろうが。

13: 名無しさん 2011/01/29(土) 21:57:31.06 ID:PWCz1ARXP
女「当然の成り行きさ」

どこがだ。

女「ボクは君のテクニックにやられた、一人の被害者である」

さっきのくすぐりのどこがテクニックだ。

男「認めん」

女「判決、半ケツ……」

男「くだらん」

誰でも思いつくようなダジャレで笑ってんじゃねえ。

16: 名無しさん 2011/01/29(土) 22:00:28.59 ID:PWCz1ARXP
女「でも、半ケツだよ?」

男「女の子がそういうことを言うもんじゃない」

女「ほほう」

とても嬉しそうに笑って。

女「ボクはおんな、にカテゴリされているのか」

ああ、そうだ。

女「どこで? 胸? 顔? お尻? はたまた脚?」

17: 名無しさん 2011/01/29(土) 22:03:34.34 ID:PWCz1ARXP
えっと、だな。

女「も、もしかして……ないから?」

下半身を抑えて、顔を朱に染める。

見た事ねえよ。

男「違う」

女「じゃあ……なんだい? 履いているパンツ? ブラジャー? におい?」

お前、ブラジャーつけてたのか。

一応、パンツも見てないし、ブラジャーも見てないからな。

18: 名無しさん 2011/01/29(土) 22:13:41.92 ID:PWCz1ARXP
男「……服装」

女「ふむ」

やつの服装は、制服で、スカートだ。

だから、おんなだ。

女「女装、という可能性は?」

男「そんなやつが学校に通えるか」

女「ふふっ、そうだね」

またつっかかってくるかと思ったが、そんなことはなかった。

19: 名無しさん 2011/01/29(土) 22:17:06.49 ID:PWCz1ARXP
女「ボクももっと色んなことを知っていればなぁ」

空を仰いで、そうぼやいた。

男「十分色んなこと知ってるだろ」

女「そうかな?」

ああ。

俺はそう思う。

女「でも、ボクは君を笑わせる術を知らない」

20: 名無しさん 2011/01/29(土) 22:23:04.96 ID:PWCz1ARXP
男「……」

その背中は、切なそうだった。

女「ふふっ、帰ろう」

知らぬ間に足を止めていた俺達だったが、やつが歩き始める。

女「!」

そんなやつを、俺が止める。

男「明日も、じゃんけんしようぜ」

21: 名無しさん 2011/01/29(土) 22:27:22.92 ID:PWCz1ARXP
女「え?」

男「それでいい、お前は俺を笑わせることができる」

それだけでいい。

女「……そうか」

やつは口に微笑みを浮かべた。

22: 名無しさん 2011/01/29(土) 22:30:19.96 ID:PWCz1ARXP
女「ここでお別れだね」

男「おう」

俺とやつの家路分断の道だ。

男「じゃあな」

女「うん」

そう言って、別れる。

女「男」

男「あん?」

女「また、二人の教室で」

男「ああ、二人の教室で」

END