1: 名無しさん 2010/12/26(日) 19:29:14.06 ID:LYcnUZi80
警察「はい前の白のカローラED、歩道のほうに寄せて止まってくださーい」

男 「え? あ、あぅ」

警察「はい、君ねー別に追われてないでしょう? 別に謎の組織に追われてる
   訳じゃ無いでしょう? あー向こうの交差点から見てたんだよねー。
   バックミラーから見える後ろの車、組織設定したでしょう? ダメだよー」

引用元: ・新ジャンル「邪気帯び運転」

5: 名無しさん 2010/12/26(日) 19:33:41.94 ID:LYcnUZi80
警察「はい免許証見せてーあーなるほどねーはいはい、少しこっち来てもらえますかー?
   はい、ポケットの中見せて、はいはいはい……これね、これかぁ……やっぱりなぁ
   おっかしぃと思ったんだよなぁ……はい振ってみますねーはい開封済みね、はい、はい」

男 「あの……それはただのメントスで、その」

警察「はい静かにしてね、おい、無線。 はいこちら○号車、八潮市道沿いにて、邪気醒剤確認
   運転者は……竹の塚住まいの22歳、男、白のカローラEDにてー」

男 「はぁ!? じゃ、じゃきせいざいって……?」

警察「あー交差点にて停車中……後ろの車を確認後、メントスを何かの薬品と見立てて……
  息を荒立てながら……食し、運転……っと。 あー君今、右手開いてる設定? 設定でしょ?」

12: 名無しさん 2010/12/26(日) 19:43:21.15 ID:LYcnUZi80
警察「はい少し車内見させてもらいますよー」

男 「ちょ、あの! 僕別に、変な事」

警察「はい静かにしてねーお兄さん。 ダメだよー竹の塚なんて高級住宅街に住んでて、こんな事しちゃー
   はい携帯……確保っと、お兄さんなんでこれ開いてるのー? 運転しながら携帯使ってたー?」

男 「い、いえ!? 通話してないです! 見てください、発信記録も無いでしょう!」

警察「……はい、無線。 あーあー先ほどの被疑者ー携帯にて『仮想の取引』を演じてた模様、すぐに応援
   お願いしますー何らかの組織ーもしくは株の取引出来る、スマートな男を演じてた模様」

男 「えぇっ!? えっと……その、あぅう」

警察「はい今日は実際の市場はどこもやってませんよー、少しどいてねー」

14: 名無しさん 2010/12/26(日) 19:54:06.85 ID:LYcnUZi80
警察「はい、息吐いてー」

男 「え、あの……」

警察「はい吐いてー」

男 「……はー」

警察「はい邪気醒剤、飲用の疑いありー。 少しこっち来て真っ直ぐ立ってみようか?」

男 「え、あの……は、はい」

警察「はい右手少し叩きますよー」 ばちん

男 「痛ぇッ!!! な、何を」

警察「……至急応援を呼ぶ……いいか!? 静かにそのまま伏せろ!!! こいつ……右手首まで
  邪気醒剤が回ってやがる! おい、おい! 無線貸せ! ○号車、至急応援を求む、邪気中毒者確保!」

18: 名無しさん 2010/12/26(日) 20:01:09.98 ID:LYcnUZi80
取調べ室
男 「……」

ドア かちゃん

刑事「あーそのままそのまま……あい、どうも草加警察刑事課のものですがねーまず、色々聞いてみよっか?」

男 「ぼ、僕は何も」

刑事「ん、そっか、何もしていないか……んー困ったな、少なくとも、君は運転中に……邪気眼を発動させた疑いが
   あるんだよねー。 誰だって、カッコいい生き様したいもんねー、おじさんもその気持ちは判るよ、はは」

男 「別に……そんなんじゃ」

刑事「僕もね、最初に警察になろうって思ったのは……知ってる? 相棒ってドラマに出てる水谷豊。 その人のね
   警察貴族ってドラマを見てから、かな? この道を目指したのは、はは……今の若い子には判らないかな?」

20: 名無しさん 2010/12/26(日) 20:08:19.15 ID:LYcnUZi80
男 「……」

刑事「こう、悪い奴がいっぱいいてね、そいつを、バキューン! バキューン! って格好よかったなぁ……水谷豊
   それが実際は銃なんて使う機会、そうそう無いもんでね、現実はじみーに地味に、調べて、聞き込んで、資料あげて
   それをまた確認して、鑑定だの、また聞き込みだの……街中を凶悪犯の車追いかけた事なんて、一度も無いよ」

男 「……」

刑事「……ああ、すまないね、話がそれてしまったようだ、事が終わったら、ツタヤでDVDでも借りて見てみると良い
   格好良いよ、ははは」

男 「あの……」

刑事「現実は、切ないものさ。 それでも皆、平々凡々な日常を頑張っているのさ。 邪気に逃げちゃいけない、妄想に
   逃げちゃいけない、良いかい? 君がつまらなく思っている日常は、誰かの、もしくは君のご両親の血と汗と涙で
   作られたものだよ?」

男 「……はい」

刑事「じゃあ、まず、どういう設定で、走り出したの、かな?」

21: 名無しさん 2010/12/26(日) 20:15:58.46 ID:LYcnUZi80
男 「……交差点で、後ろに、格好よい、黒の車を……見かけて。 自分の車とは違う、凄く凄く格好よい、世界でもトップクラスの
  スポーツカー、黒のシルビアに乗ってました」

刑事「うん、そうだね。 埼玉では目立つね」

男 「その、持ち主は……同じ大学の、同い年の……別のサークルの、人で」

刑事「……知ってたんだ? 運転手」

男 「向こうは、僕の事知りません……向こうは有名だから、何か、色々、色んな噂とか聞くし。 お金持ちだとか、親父さんが社長とか」

刑事「そっか、それで」

男 「ち、違うんです! 別に僕は向こうが嫌いだとかそんなんじゃなく、その……隣に、助手席に、ううっ……うう」

刑事「……隣に?」

男 「……僕の、好きな子が居たんです」

22: 名無しさん 2010/12/26(日) 20:31:08.90 ID:LYcnUZi80
刑事「……そっか」

男 「うう……ぐす」

刑事「ちなみに、竹ノ塚なんて高級住宅街なのに、何故にコンプレックスに苛まれたんだい?」

男 「僕は……その、どっちかと言えば、吉川寄り、なんで」

刑事「ああ、そうか、貧しかった、んだね?」

男 こくり

刑事「はは、胸を張りたまえよー、いいじゃないか! これから頑張って、見返してやればいいんだ、な?」

男 「……はい……ッ!」

刑事「ちなみに、どんな設定だったんだい?」

24: 名無しさん 2010/12/26(日) 20:42:11.95 ID:LYcnUZi80
男 「とりあえず、自分の乗っている車は、マニュアルの、世界でも屈指の名車ロードスターで」

刑事「ふむふむ、カローラが脳内設定でロードスターで、色は?」

男 「赤、です」

刑事「珍しいねー埼玉には一台も無い車なのに、よく妄想出来たものだ!」

男 「はい……前に、貯金して、東京に遊びに行った時に、駅前で見かけて……格好よかったなぁ
  す、すぐにカメラで撮ったんです! それを、車に貼り付けて、僕は今、ロードスターに乗ってるんだ
  埼玉の道を、真っ赤なこいつで駆け抜けてるんだ、って……そんな、風に」

刑事「へぇ……いいね、でもねやっぱり君の車はカローラだよ」

男 「……はい」

29: 名無しさん 2010/12/26(日) 20:50:12.45 ID:LYcnUZi80
刑事「ん、すまないね、話の腰を折ってしまって」

男 「……いえ」

刑事「とりあえず、それから? その車内での君の姿は?」

男 「……銀髪の、髪の長い感じで、その、過去に最愛の人を亡くしてて、世界に絶望していたんです」

刑事「それは設定?」

男 「あ、はい設定です」

刑事「良かった、あまり悲しい話は苦手でね。 それで?」

男 「身なりは、黒の上下で、過去の戦いの古傷でですね、首に大きな傷を背負って、その後遺症で
  メントスみたいな、薬品を飲用しないと……その、まともに動けない、つか、色々不備があって」

刑事「へぇーちなみに武器とかある? ああ、脳内設定のほうね」

男 「こう、ながーい鎌で」

刑事「ん? ロードスターに乗せられないんじゃない?」

男 「……」

刑事「ごめん、続けて」

30: 名無しさん 2010/12/26(日) 20:59:14.82 ID:LYcnUZi80
刑事「ちなみに、運転中にこれ、この邪気醒剤を飲んだ理由は?」

男 「はい……後ろの黒のシルビアを、僕の恋人を殺した組織の車に見立てて、それから逃亡中に
  急に発作に見舞われて、それを頬張って、そして」

刑事「……決め台詞だね」

男 「はい、『この紅きクインマンサ・ロードスター(高貴なる紅き流星)に追いつけると思っているのか?』って……」

刑事「ん? ガンダム? ああ、カローラならぬロードスターの名前か……やっこしいなぁ」

男 「それで、その」

刑事「はは、でも君は実際は真面目なんだろうね。 その流星に乗ってても制限速度は守ってたらしいじゃないか」

男 カァ~ッ

刑事「気にする事はない、むしろ誇れ。 君はまだ現実に帰ってこれる証明なんだよ」

32: 名無しさん 2010/12/26(日) 21:13:17.51 ID:LYcnUZi80
刑事「ちなみに、敵対する組織の名前と、その大きさなんかも聞きたいな」

男 「敵対組織の名は『ヘビーメタル(重圧の階)』という組織で」

刑事「主に活動内容は?」

男 「せ、世界征服です」

刑事「……そこは大雑把なんだねーいやいや褒めているんだよ、むしろ君の邪気物中毒は軽症の証なんだ」

男 「そうなんですか?」

刑事「ああ、重症になると、世界設定まで構築されすぎて、それ以外の現実を逆に信じなくなってくるのさ
   ここまで来るともう我々の手に負えない、精神鑑定にまずかけられるレベルなのさ」

男 「……そっか、良かった」

33: 名無しさん 2010/12/26(日) 21:17:26.37 ID:LYcnUZi80
刑事「……じゃあ、次だ。 運転中に、電話、というか電話機を通して妄想したのはどういう設定だい?」

男 「その、僕の相棒、というか。 一方的に押しかけられてむしろ困ってるんです! その、彼女はですね
  ちょっと前に何故か追われてて、それを暇つぶしがてらに助けてしまって! そしたら懐かれたというか!
  でもでも! 僕はそれでも、昔失った彼女を忘れてないんですよ! 本当です! 確かに胸は大きめでばいんば――」

刑事「落ち着くんだ!!!」 パーン

男 「痛いッ!! あ、ああ……」

刑事「……そんな子は居ないよ?」

男 「……はい……ッ!」

36: 名無しさん 2010/12/26(日) 21:26:54.71 ID:LYcnUZi80
刑事「すまないね、手を出してしまって。 危険な兆候が見えたものでね」

男 「すいません」

刑事「いいさ、要はその子に何らかの電話を掛けていたと、言うわけだ?」

男 「はい……一応、身の回りに注意して、とりあえず僕が帰るまで、事務所の扉を開けるなと」

刑事「そっか、ふふ、長い鎌を扱うダークヒーローぶっても、何だかんだで優しいね、君は」

男 かぁ~っ

刑事「さて、自供は、こんなもんかな。 良いかいここからは私から、君へのメッセージだ」

38: 名無しさん 2010/12/26(日) 21:28:09.03 ID:LYcnUZi80
刑事「まず、ここは日本でも有数の都会、埼玉草加だ」

刑事「そして、ここ草加はもちろん、この国はダークヒーローなんぞ存在しえない、法治国家なのだよ」

刑事「ここまでは判るね?」

刑事「しかしながら君は、たまたま同じ車線を走る同じ大学の同級生と、同乗していた好きだった女の子を見てしまい
   嫉妬と、妬みと、悲しみから、妄想に逃げた。 そして全身に邪気を帯びたまま、車を運転した」

刑事「これはすなわち、国内法に反した『邪気帯び運転』なのだよ、いいかね」

刑事「これまでの調書を元に、君は裁判に掛けられ、如何程かの判決が下るだろう」

刑事「……ここまでは現実だ」

刑事「しかし、ここから、罪を償ったら君は無限だ、法に反しない限りなんだって出来る、何だってなれるんだよ?」

刑事「……この言葉を胸に刻み、歩みたまえ。 それじゃ、今日はお疲れ様だったね」

42: 名無しさん 2010/12/26(日) 21:38:16.26 ID:LYcnUZi80
カラス かぁー かぁー

刑事「……」

警察「お疲れ様です、落としのマサさん」

刑事「止めな、その二つ名は。 もう過去の話さ……」

警察「へッ! そういいつつ、今日もマサさん、彼奴を落としまくってたくせに」

刑事「……あいつ、恐らくまた、邪気に覆われるだろうな」

警察「……マサさん、俺たちの仕事はここまでだ、ここから先は、アイツ次第なんだぜ」

刑事「フッ……そうだな、後は神のみぞ知る、って奴か」

警察「俺はね、思うんですよ、マサさん。 確かにアイツは重度の邪気中毒だ、だけどね
   今日マサさんと会ったのは、ただの偶然だったとしても」

刑事「……」

45: 名無しさん 2010/12/26(日) 21:47:30.65 ID:LYcnUZi80
警察「俺はこうも思うんですよ」

刑事「……」

コーヒーカップ カチャリ

警察「この世の偶然って奴は、どんな形の偶然でも、どんなタイミングでの偶然、でも」

刑事「……」

警察「この世界の偶然って奴は、幾分かの奇跡を含んでいる、ってね。 逆に考えりゃ
   この世界の奇跡は、幾分かの偶然で出来ているんじゃねぇーかって」

刑事「……フッ、若造が」

警察「……アイツを信じてやるのも、アイツに降りかかる奇跡もまた、ありえない話じゃないんですよ」

刑事「ふぅー今日はお前さんに教えられた気分だね、これもまた奇跡、か」

警察「そいつはひでぇや! マサさん!」

刑事「さて、そろそろパトロールの時間じゃねぇか、若造!」

警察「へいへい、さぁて、エイト・ゲート(八潮市)の見回りでも行ってきますぜ! マサさん!」



女事務「……(あ、あの二人もキメてんじゃねぇーの? 邪気醒剤)」

カラス かぁー かぁー

47: 名無しさん 2010/12/26(日) 22:05:16.41 ID:LYcnUZi80
警察「ぶぉーん」

MR2 キキッ

警察「……(ん? MR2だなんて、軽トラと軽バンしか走ってない八潮では珍しい車だな)」

MR2 どっどっどっどっど

警察「……(ケッ! しかも色までご丁寧に黄色と来てやがる、カァーッ、ブルジョワさんだね!)」

警察「……(どんな野郎が乗ってやが――)」

女 「……」

手袋 キュッ

女 ニタァ~ッ

警察「……(こ、これは、運転中に黒の指だし手袋だと!? しかも手袋を絞めなおしやがった!)」

MR2 ぶおおおおおおおおん

警察「……邪気帯びの疑い、アリだな」

51: 名無しさん 2010/12/26(日) 22:38:02.80 ID:LYcnUZi80
警察 こんこん

女 「?」

警察「はい、ちょっと免許証見せて、ちょっと降りてもらえますか?」

女 「あ、あのー? 何か?」

警察「はい、君ねー信号で止まる度に、その手袋キュッって締めたでしょう?
   別に運転中に手袋なんて必要無いですよねー? 特にスピード出してる
   訳でも無いのに、おっかしぃと思ったんだよなぁ、これ、はいヤンマガ酔いでしょう?」

女 「い、いえ……あの」

警察「ん?」

女 「うッ……うう、実は……ここに、大きな傷があって……ううッ」

警察「!?」

56: 名無しさん 2010/12/26(日) 22:48:32.69 ID:LYcnUZi80
ロッカー どがぁっ

警察「ぜぇ……ぜぇ、ちくしょう!」

刑事「どうした、随分荒れてるなぁ」

警察「アイツはねぇ! どう見たってクロなんだ! それを……みすみす、クソォ!」

ロッカー どがぁっ

刑事「ったく、開かなくなってもしらねぇぞ。 とりあえず話してみろよ、な?」

警察「さっき、八潮の市道をですよ! 黄色のMR2が走ってたんですよ! そして運転手は手袋付けてやがる!
  しかもですよ!? 指だしの黒の手袋だ! こう……信号で止まるたんびに、ニタニタと締めやがるんです!
  どう考えたって、邪気帯びだ! それを……アイツは」

刑事「ふむ、もちろん手袋は調べたんだよな?」

警察「ええ……きっちり取らせましたよ、そしたら……家事炊事でやられた傷だらけだったんですよ」

59: 名無しさん 2010/12/26(日) 22:54:53.63 ID:LYcnUZi80
刑事「……」

警察「くそぉ! 今日は頭に血が上ってまともにかんがえきれねぇ! 少しブラついてきますよ!」

刑事「……女事務ちゃん、お茶入れてくれる?」

女事務「え? ええ、はいどうぞ」

刑事「どう思う? 同じ女の子の立場として」

女事務「んーでも私は少し気持ち判るなぁ、手が傷だらけで、何かで隠したくなる気持ち、なら」

刑事「あーだろうね。 でもアイツはそれも理解した上で、悩んでやがるのさ。 傷を曝け出して
   しまった己の未熟さ、それとどう見てもクロなのに、それを見逃してしまった未熟さ、そう
   そんな二つに挟まれて苦しんでやがる」

女事務「……大変ですね」

刑事「大変だろう?」

63: 名無しさん 2010/12/26(日) 23:00:11.22 ID:LYcnUZi80
刑事「ま、アイツも色々背負ってるから、な」

女事務「背負ってるって?」

刑事「アイツほど、邪気帯び運転に怒りを持っている奴はいねぇ、私情を交えさえしなければ、とても有能だ」

女事務「え……何で」

刑事「……アイツの妹は、その昔、邪気帯びでの運転事故に巻き込まれて亡くなった設定なのさ」

女事務「そんな、過去が。 って設定!?」

刑事「悲しい、奴なのさ」

女事務「あ、お茶碗片付けましょうね」

69: 名無しさん 2010/12/26(日) 23:09:15.69 ID:LYcnUZi80
自販機 ごとん

警察「ったくよぉ……ってつめてぇっ!!! どぁーーーー!!! ちくしょーーー!!!」

刑事「まだ暴れてるんかい、この若造が」

警察「んだよ!? ってマサさんか……ほっといてく――」

A4用紙 ぺらッ

警察「……これは……マサさん!」

刑事「これは埼玉都民の八割は手袋代わりに白の軍手を愛用しているという資料だ、おそらくそいつはクロだろう」

警察「マサさん……」

刑事「良くある邪気症状だ、軽めの傷に脳内で後遺症を併発させて、過剰に包帯だの手袋だのサポーターだのを
   着ける症状は昔からあるのさ。 車のナンバーは控えてるかい?」

警察「あ、ああ! へへっ! 落としのマサさんの本領発揮だな!」

73: 名無しさん 2010/12/26(日) 23:15:01.55 ID:LYcnUZi80
刑事「……ふむ、埼玉の高級住宅街南越谷住まい、か」

警察「何か読めましたか?」

刑事「南越谷なら殆どの住人はネギ畑仕事だ、そんな中で手袋ってのは異端だな、こりゃあますます怪しいぜ」

警察「へッ! やっぱり俺の読みは正しかったんだな!」

刑事「だが、もう一手たりねぇな、もう一つ何か……おい、車内に何か気になるのは無かったか?」

警察「そう言ってもな、車のフロントの所に、白いモコモコがあったくれぇだぜ!」

刑事「何……ッ!? おい、携帯にジャラジャラストラップは在ったか!?」

警察「あ、ああ……」

刑事「リア充か……アリバイ成立だな……」

76: 名無しさん 2010/12/26(日) 23:27:58.09 ID:LYcnUZi80
店員「ありがとうございましたー」

女 てくてく

刑事「……」

刑事「……(奴の動きはどうも妙だ、普通の埼玉都民は煌びやかなコンビニでは緊張してどもるもんだが
   こいつは平然と買い物しやがる……もしかして地元民じゃない?)」

刑事 かちゃっ しゅぼっ すーっ はーっ

刑事「……」

女 ニタニタ

手袋 キュッ

刑事「……もしや湾岸ミッドナイト、イニシャルD路線の邪気じゃねぇ……かもな」

タバコ ぽいっ けしけし

刑事「アイツにゃあ……まだ秘密があるぜ……宵闇の手(黒手袋)の女、覚悟しな」

80: 名無しさん 2010/12/26(日) 23:35:00.84 ID:LYcnUZi80
南越谷 ずんちゃかずんちゃか

刑事「ん……そうか、そろそろ南越谷阿波踊りの季節か、早いもんだぜ」

女 「……」

手袋 ぎりぎり

刑事「ん……祭りの準備風景を睨みつけてるな……何故だ?」

女 かちゃっ

MR2 ぶろおおおおおおおお

刑事「……あの南越谷の閑静な住宅街に一際浮いた黄色のMR2……」

刑事「何故こんなネギ畑しか無いあぜ道をお前はわざわざスポーツカーで……」

刑事「ん……そういや」

83: 名無しさん 2010/12/26(日) 23:42:07.91 ID:LYcnUZi80
回想
警察『そういやマサさん、あの女、えらく口調がゆっくりで、声も小さくって、どえらい取調べに苦労しましたよ』

刑事『おめぇの顔が怖いんだよ』

警察『そ、そりゃぁねぇよマサさぁ~ん!』

刑事『ははははは』


刑事「繋がったぜ……そうだ、やっぱりあの若造の言っていた事は正しかったんだ!!!!」

84: 名無しさん 2010/12/26(日) 23:49:28.09 ID:LYcnUZi80
MR2 どっどっど かちゃっ

女 「ふぅ……今日も買い物疲れたわ」

刑事「こんにちわ、草加警察の者ですが」

女 「……何か?」

刑事「そんな緊張せずに、リラックスリラックス、ね?」

女 「ワタシ、邪気帯びなんかしてません、から」

刑事「いやいやいや、今日はたまたまです、いやぁどうですか? 埼玉名物南越谷阿波踊り、もうご覧になりました?」

女 「クッ!? わ、ワタシ大宮育ちでして、このようなお祭り初めてですわ」

刑事「そーですかーいやぁー都会ですなー大宮。 さすが都心だけありますね」

女 「御用は、それだけですか? それでは」

刑事「はははは、でも一度はご覧になったほうが良い、阿波踊りは南越谷発祥ですからなぁー」

88: 名無しさん 2010/12/27(月) 00:09:56.36 ID:mhkq4JAY0
女 「……」

刑事「こりゃあ埼玉の誇るべき伝統芸能ですからなぁ」

女 「ちがう……」

刑事「はい? 何かおっしゃいました?」

女 「ちゃう! じゃらじゃらした事言わんね! あんなこんまい阿波踊りは本場じゃせらん!」

刑事 ニタァ

女 「ハッ!」

刑事「はははは、尻尾を出しましたな……埼玉都民の八割は阿波踊りの発祥は埼玉南越谷だと思っているのさ!
   さあ、邪気中毒の容疑、及び邪気帯び運転の容疑で逮捕するぅ!!!」

女 「いやぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」

92: 名無しさん 2010/12/27(月) 00:20:26.47 ID:mhkq4JAY0
取調べ室
女 「……始めは、見栄やった」

刑事「……」

女 「徳島なんね、辺境の地から、来たがやって、恥ずかしかも」

刑事「そんな事ありませんよ、良い所です。 空気が綺麗で、空気が美味しくて、空気が澄んでいて」

女 「……こそばいわ、そんな」

刑事「はは、貴方はでも、一つだけ埼玉都民に勝てる要素があった」

女 「……」

刑事「それは、スポーツカーを所有していると言うこと、盲点でした。 確かに徳島には信号が殆ど無い為
   スポーツカーの普及が、こちらよりも進んでいたと言うこと」

女 「かなんなぁ、おっちゃん」

刑事「わ、私は結構若いんだよ、まだまだ」

95: 名無しさん 2010/12/27(月) 00:31:37.49 ID:mhkq4JAY0
お茶 こぽこぽ

女事務「でもおかしくないですか? 何でそれで邪気帯びなんです?」

刑事「ん? 彼女はね元々は大宮に住む予定だったらしいよ。 徳島から旦那の転勤先
   大宮の都庁近くに」

女事務「へぇー」

刑事「けど、何故か旦那の勤務先は南越谷だったらしい、そりゃあ浮くだろうね、大宮の人は
   皆、お洒落な手袋をしているもんさ、大宮なら恐らく検挙出来なかっただろうね、彼女の
   都会人演技は、ギリギリまでは完璧だったのだから。 南越谷だからこそ、暴けたのさ」

女事務「……ん? んー? んぅー」

刑事「悲しい、邪気を纏って、彼女は己のコンプレックスを暴かれぬよう、傷つかぬよう守っていたのだろう」

女事務「……(い、意味が判らないわ)」

刑事「それもこれも、地方と都会の地域格差の生んだ、悲しい事件だったのかもしれないね
   徳島という辺境の地から舞い降りし純白の天使は、都会のスモッグに抱かれ、その羽を
   黒く染め上げてしまった、その宵闇の黒き羽で、己を守るので精一杯だった、そんな事件だよ……」

女事務「……(つーかこいつ逮捕したほうが良いんじゃ?)」

101: 名無しさん 2010/12/27(月) 00:40:04.99 ID:mhkq4JAY0
警察「け、けけけけけ刑事ぃぃぃぃぃーーー!」

刑事「ぐはぁ」 どごっ

警察「や、やっぱりマッサんだぜ! 俺はアンタを信じてたよー!」

刑事「ど、どかんか! この馬鹿たれ!」

警察「おりゃぁよぉ、おりゃぁよぉ、もう嬉しくって嬉しくって」

刑事「はいはい、ったくこの小僧は……」

急須 かちゃかちゃ こぽこぽ

刑事「……もうすぐ、君の妹さんの命日だろう?」

警察「ん? ああ……そっか、もうそんな季節か……阿波踊りの季節、だものな」

刑事「明日にでも休暇を取ると良い……そして、自分の働きを妹さんに伝えてやりな」

警察「……そうですね、アイツの好きだった、ラナンキュラスの花でも買っ――」



女事務「はいそれじゃお疲れさまでしたー」

102: 名無しさん 2010/12/27(月) 00:46:22.88 ID:mhkq4JAY0
南越谷 やっとさー! やっとやっとー! しゃんしゃん

女事務「……わぁ、今年も凄い煌びやかだぁ」

南越谷 やっとさー! やっとやっとー! しゃんしゃん

女事務「あはっ、写メ撮ろうっと」 ぱしゃっ

女事務「ん? この看板、邪気帯び運転撲滅キャンペーンだ」



看板 「大丈夫! そんな組織無いよ!」


南越谷 やっとさー! やっとやっとー! しゃんしゃん


女事務「……ん、良い街だよね。 ネギ臭いけどこの位ならご愛嬌だよ」

女事務「はぁーあ、来年は素敵な彼氏と来れたらいいなぁー」


南越谷 やっとさー! やっとやっとー! しゃんしゃん

103: 名無しさん 2010/12/27(月) 00:47:43.58 ID:mhkq4JAY0
おしまい
じゃ、後は誰かwwwww