『人形の願い』

【 PART1 魔術師と子供達 】



―町―

魔術師「よいしょ、よいしょ」ヨロヨロ…

主婦「あら、そんなにいっぱい荷物を抱えて。どうなさったの?」

魔術師「たまには子供達にプレゼントを、と思いまして」

主婦「偉いわねえ。身寄りのない子供達を引き取って、プレゼントまで……」

魔術師「いえ、好きでやってることですから」

引用元: ・エルフ13「用件を聞こうか……」ゴーレム「私カラ“幸セ”ヲ奪ッタ奴ラヲ殺シテクレェ!!!」

3: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:13:40.267 ID:XjxDAWSI0
―魔術師の家―

魔術師「みんな、ただいま」

少年「ワーイ!」

少女「お帰りなさーい!」

赤毛「ふん、遅かったじゃんか」

ワイワイ… キャッキャッ…

魔術師「今日はみんなにプレゼントを買ってきたよ」

ワァァァ… ヤッター!

4: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:16:21.472 ID:XjxDAWSI0
ゴーレム「オ帰リナサイ、マスター」

魔術師「ただいま、ゴーレム。みんなの面倒を見てくれてありがとう」



“ゴーレム”とは、土や石の人形に魔力を吹き込んで生み出された人造兵器の総称である……。

主人によってインプットされた命令には絶対忠実であるが、
技量の高い術者であれば意志を持たせることも可能とされている。

このため、戦争だけでなく、介護や災害時における救助作業に活用されるケースも存在する……。

6: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:20:22.202 ID:XjxDAWSI0
少年「やったぁ、ブロックだ!」

少女「ぬいぐるみだー!」

赤毛「俺はおもちゃの剣だ!」

赤毛「よーし、ゴーレム! 俺と勝負しろ!」バシッ バシッ

ゴーレム「マ、参リマシタ!」

赤毛「なんだよー、ちょっとは反撃してこいよ!」

ゴーレム「私ハ、人間ヲ攻撃デキナイヨウニナッテルンデス」

赤毛「ふん、つまらない」

少女「それがいいんじゃない。あたしはゴーレムって優しくて大好きよ」

赤毛「……俺も好きだけどさ」

ハハハハ…

7: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:23:51.857 ID:XjxDAWSI0
魔術師「みんな眠ったか?」

ゴーレム「エエ、眠リマシタ」

ゴーレム「ミンナ、マスターノプレゼントヲ喜ンデマシタヨ」

魔術師「そうか、よかった」

魔術師「私はかつて、国家のために魔導兵器開発に従事していたが、それに嫌気がさし」

魔術師「世話役としてお前を作り、こうして隠居したが……今が一番幸せだ」

魔術師「あの子達が日に日に成長していく姿が、楽しくてしょうがないよ」

ゴーレム「私モデス、マスター」

8: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:26:21.048 ID:XjxDAWSI0
ゴーレム「マスター」

魔術師「ん?」

ゴーレム「私ヲ“人間ヲ攻撃デキナイ”ヨウニシテ下サッテ、アリガトウゴザイマス」

魔術師「なんだ、そんなことか」

魔術師「いいんだよ。君が争いが嫌いなことは、私が一番よく知っている」

魔術師「君は戦いなんかしなくていい。私も自分や子供達を守る力ぐらいはあるつもりだしね」

ゴーレム「ハイ、マスター……」

9: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:30:12.070 ID:XjxDAWSI0
【 PART2 ギャング団 】



―町―

ギャングA「イヤッホーッ!」ガシャーンッ

ギャングB「このリンゴ、いただいてくぜ!」

ギャングC「オラオラ、ギャング団のお通りだ!」

ワハハハハ… ギャハハハハ…



町民A「あのクソガキどもが……好き放題しやがって……」

町民B「だが、逆らっちゃいけねえ。なにしろ、あのギャング団を率いてるのは……」

10: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:34:43.440 ID:XjxDAWSI0
―ギャング団アジト―

御曹司「ジャーン!」

ギャングA「なんすか、それ?」

ギャングB「かっけー!」

御曹司「“銃(ガン)”ってんだ。火薬を爆発させて弾丸を発射するっつー武器で」

御曹司「将来的には戦争で主役になるといわれてる!」

御曹司「しかもこいつは弾丸を何発も装填出来るシロモノよ!」

御曹司「家にあったから、ちょいと借りてきちまった」

ギャングA「御曹司さんの親父さんは、国内有数の大商人っすもんね」

ギャングB「威力はどんなもんなんですか?」

11: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:37:22.930 ID:XjxDAWSI0
御曹司「あそこに野良犬がいる。あいつで威力を試してやるよ」チャッ

ギャングA「おおっ!」

御曹司「…………」

御曹司「それっ!」パァンッ!

犬「ギャンッ!」ドサッ

ギャングA「すっげー!」

ギャングB「一発で犬がくたばった!」

御曹司「へっへっへ……」フッ

12: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:40:50.721 ID:XjxDAWSI0
御曹司「あーあ、だけどどうせなら犬なんかじゃなく、“人”を撃ってみてえよなぁ」

ギャングA「人っすか……」

御曹司「どこかにいねえか? 撃っても問題なさそうなやつ」

ギャングA「うーん……」

ギャングB「あ、そうだ!」

御曹司「ん?」

ギャングB「町外れに、身寄りのないガキ飼ってる魔術師がいるんすよ。あれなら……」

御曹司「ほぉ~」

御曹司「“銃VS魔法”か……面白そうだな!」ニヤッ

13: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:44:49.302 ID:XjxDAWSI0
【 PART3 壊される“幸せ” 】



―魔術師の家―

ゴーレム「…………」

ゴーレム「ン……」

ゴーレム「ナンダ……外ニ気配ガスル……」

ドガァンッ!

ゴーレム「! ドアガ……!」

14: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:47:14.799 ID:XjxDAWSI0
ギャングA「ヒャッハーッ!」

ギャングB「出てきやがれ、魔術師ーっ!」

ドカドカドカドカ…

ゴーレム「何者ダ……!」

ギャングA「うおっ! なんだこいつ!?」

ゴーレム「…………」ピタッ

ゴーレム「攻撃……デキナイ……!」

ギャングA「んだよ見かけ倒しかよ。ビビらせやがって」

ドカドカドカドカ…

16: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:51:01.920 ID:XjxDAWSI0
ワイワイ…

ギャングA「こっちにいましたよ、御曹司さん!」

ギャングB「来て下さい!」

御曹司「おお……いい的になりそうだ」

魔術師「なんだ君たちは……!」

少年「ひいい……」

少女「怖いよぉ……」

赤毛「俺は怖くなんかないぞっ!」

17: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:54:30.727 ID:XjxDAWSI0
魔術師「君たちはここらを仕切るギャング団だな? こんな夜更けになんの用だ」

御曹司「用? うーん、とりあえず“強盗”とでもしとこうか」

魔術師「強盗だと……!? 金なら渡すからとっとと帰れ!」

御曹司「ハハッ、そういうわけにはいかないんだな」

ギャングA「オラァッ!」ダッ

ギャングB「とっつかまえてやる!」ダッ

魔術師「くっ……我が魔力よ、悪しき者どもを縛りたまえ!」

ギャングAB「ぎゃっ!?」バチバチッ

ザワザワ…

御曹司「へえ、やるもんだ!」

18: 名無しさん 2020/06/17(水) 21:57:19.362 ID:XjxDAWSI0
魔術師「これで敵わぬと分かっただろう! すぐに家から出ていけ!」

御曹司「ふっふっふ……」

御曹司「あいにくだが、俺は指一本動かすだけであんたを殺せる」

魔術師「…………?」

魔術師(そんなことできるわけがない! こうなればまとめて……)

魔術師「我が魔力よ――」サッ

御曹司「遅いって」パァンッ!

魔術師「ぐ、はっ……!」

ドサッ…

20: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:00:25.613 ID:XjxDAWSI0
御曹司「すっげえ~、やっぱ人間も一発かよ!」

赤毛「あ、あああ……」

赤毛「よくもおおおおおおお!!!」ダッ

御曹司「ちっ、ガキが!」パァンッ!

赤毛「ぐあっ……」ドサッ

御曹司「さて、まだ数匹残ってるな……」

少年「ひ、ひいいい……」

少女「助けて……」

御曹司「助けてやるよ。寂しくないよう、みんなあの世に送ってやるから」

パァンッ… タァンッ… キャァァァ…

22: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:03:50.278 ID:XjxDAWSI0
ゴーレム「…………」

ゴーレム「オ前タチ、許サナイ……オ前タチ、許サナイ……」

ゴーレム「ウガアアアアアアアアアアッ!!!」ガバッ

御曹司「うわっ!?」

ゴーレム「グッ……」ピタッ

御曹司「な、なんだビックリさせやがって……」

ギャングA「そいつ見かけ倒しっすよ! どうやらこっちに攻撃できないみたいっす!」

ギャングB「金目のもん漁って、とっととズラかりましょう!」

御曹司「ああ、なかなか楽しめたぜ。犬コロ撃つよりよっぽどスリリングだった」

アッハッハッハッハ…

23: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:05:45.212 ID:XjxDAWSI0
ゴーレム「マスター……!」

ゴーレム「ミンナ……!」

ゴーレム「私ハ……何モデキナカッタ……」

ゴーレム「ウアアアアアアアアアアッ……!」



…………

……

24: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:10:41.331 ID:XjxDAWSI0
【 PART4 動かない憲兵 】



―魔術師の家―

憲兵A「家主も子供も皆殺しか……」

憲兵B「これはひどいな……」

ゴーレム「アノ……」

憲兵A「む、お前は……?」

憲兵B「家主が作ったゴーレムか」

ゴーレム「私……犯人見テタ。全員マダ若イ……アレハ町ノギャング団ダッタ!」

ゴーレム「バッチリ覚エテイル!」

憲兵A「ギャング団……」

25: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:13:41.072 ID:XjxDAWSI0
ゴーレム「ダカラ早ク捕マエテ……」

憲兵A「うーん……残念ながら、それは無理だ」

ゴーレム「ナゼ!?」

憲兵A「ゴーレムはしょせん魔法で作られた動く人形だ。証言能力は認められてないんだよ」

憲兵A「作り手の都合のいいように、好きなことを喋らせることもできるからな」

ゴーレム「ソンナ……!」

憲兵B「仮に証言が認められたところで、ギャング団を捕まえることは難しい」

ゴーレム「ドウシテ……」

26: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:16:34.308 ID:XjxDAWSI0
憲兵B「ギャング団を仕切ってるのは、ある大商人の御曹司なんだ」

憲兵B「その御曹司を敵に回すってことは、大商人を敵に回すってことだ」

憲兵B「よほどのことでないと、逮捕することなんてできないよ」

ゴーレム「コノ事件ガ、“ヨホド”デハナイトイウノカ!」

憲兵A「悪いが、な」

憲兵A「いってしまえば、隠居してた魔術師と、身寄りのない子供が殺されただけ……」

憲兵A「この程度の事件じゃ上は動かない。大商人が口と金を出して、事件は闇に葬られるだろうさ」

ゴーレム「ナンダトォ!?」

憲兵A「うわっ!」

27: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:19:40.907 ID:XjxDAWSI0
憲兵A「しょうがないだろ……これが“現実”ってやつなんだ」

憲兵B「それに聞いた話じゃ、魔術師だって昔は兵器を開発したりしてたんだろう?」

憲兵B「決して真っ白じゃない。巡り巡って、ツケが回ってきたんだよ」

憲兵A「さ、帰ろう。“めぼしい目撃証言は無し”と報告しないと」

ザッザッ…

ゴーレム「…………」

ゴーレム「コンナコトガ……コンナコトガ許サレテイイノカ……」

29: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:24:25.079 ID:XjxDAWSI0
【 PART5 “思い出”の中に 】



―魔術師の家―

ゴーレム「…………」

ゴーレム「マスター……ミンナ……」

ゴーレム「私ニ、奴ラニ復讐スル方法ハナイ……」

ゴーレム「デキルコトトイエバ、ミンナト過ゴシタ“思イ出”ヲ懐カシムコトダケ……」

ゴーレム「…………」

ゴーレム「イヤ、ソウイエバ……」

30: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:27:26.953 ID:XjxDAWSI0
魔術師『かつて、魔法研究所に勤めていた時、こんな話を聞いたことがある』

魔術師『裏の世界には、弓矢でどんな標的をも狙撃する恐るべきプロがいるという』

魔術師『そのプロは、どんな権力にもなびかず、一匹狼を貫いてるそうだ』

魔術師『私や君が関わることはないだろうが、その名も……』



…………

……

32: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:31:40.154 ID:XjxDAWSI0
【 PART6 人は攻撃できないが…… 】



―魔術師の家―

ゴーレム「アナタガ……“エルフ13”……」

エルフ13「用件を聞こうか……」

ゴーレム「私ノマスタート、ココデ暮ラス孤児達ハ……ギャング団ニ殺サレタ」

ゴーレム「命乞イモ聞キ入レラレズ、次々ト……虫ケラノヨウニ……」

ゴーレム「復讐ヲシタイガ、私ニハ人ヲ攻撃スルコトハデキズ、憲兵モ動イテクレナイ……」

ゴーレム「ナゼナラ、ギャング団ノリーダーガ有力者ノ息子ダカラ……」

ゴーレム「ダカラ……私ノ代ワリニアイツラヲ殺シテクレ!」

ゴーレム「私カラ“幸セ”ヲ奪ッタ奴ラヲ殺シテクレェ!!!」

エルフ13「…………」

33: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:34:54.078 ID:XjxDAWSI0
ゴーレム「報酬ノコトハ心配イラナイ……」

ゴーレム「私ハ……人ハ攻撃デキナイガ、“自分”ハ攻撃デキル!」

ボゴォッ!!!

エルフ13「!」

バラバラ…

ゴーレム「私ニハ……高価ナ鉱石ガ多数使ワレテル……」

ゴーレム「コレヲ売レバ……依頼料ニナル、ハズ……」

エルフ13「…………」

35: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:39:04.924 ID:XjxDAWSI0
ゴーレム「普通ノプロナラバ、私ノヨウナ人形ノ依頼ナド受ケナイダロウ……」

ゴーレム「ダガ……アナタナラ引キ受ケテクレルト思ッタ……」

ゴーレム「頼ム……」

ゴーレム「マスター、ト……子供達ノカタキ、トッテクレ……」ガクッ

ゴーレム「…………」

エルフ13「…………」



…………

……

37: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:44:16.123 ID:XjxDAWSI0
【 PART7 報い 】



―ギャング団アジト―

ギャハハハ… アハハハ…

ギャングA「いやー、さすが御曹司さんの親父さんですね。見事に事件を揉み消しちゃって」

ギャングB「町じゃすっかりあんな事件、なかったことになってますよ」

御曹司「当然だろ、このあたりで親父に逆らえる奴なんざいねえ」

御曹司「さすがに親父から小言を喰らったが、ほとぼりが冷めたらまたやりたいもんだ」

ギャングA「ハハハ……」

ギャングB「だけど大丈夫ですかね?」

御曹司「なにが?」

38: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:47:56.557 ID:XjxDAWSI0
ギャングB「もし、誰かが復讐しにきたら……」

御曹司「復讐ぅ?」

御曹司「あんな薄汚ねえ魔術師やガキども殺して、いったいどこの誰が復讐に来るってんだ?」

ギャングB「たしかに……」

御曹司「仮に来たところで、俺の銃で返り討ちにしてやるがな」チャッ

御曹司「むしろ、来て欲しいぐらいだよ」

ギャングA「御曹司さんの腕はすげえっすもんね」

ギャングB「おっと、そろそろ見張り交代の時間だ。次はお前だろ」

ギャングC「おう」スッ

39: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:51:22.773 ID:XjxDAWSI0
ギャングC「た、大変です!」タタタッ

御曹司「どうした」

ギャングC「見張り役が……殺られてます! 矢で一発だ!」

ギャングA「なんだとぉ!?」

ギャングB「よそのグループの襲撃か!?」

御曹司「ふん……恐れることはない。弓の射程なんざたかが知れてる」

御曹司「とっとと見つけ出して、俺んとこに連れてこい」

御曹司「そしたら、こいつでアタマブチ抜いてやるからよ」

ギャングA「分かりました!」

タタタッ… タタタッ…

41: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:55:17.995 ID:XjxDAWSI0
シーン…

御曹司「…………」

御曹司「ちっ、いつまでかかってやがる」

御曹司「チンタラしやがって……俺の楽しい射撃タイムが始まらねえじゃねえか」

ザッ…

御曹司「おお、遅かった――」

御曹司「!?」

エルフ13「…………」

御曹司「なんだお前はァ!? あいつらはどうしたァ!?」

エルフ13「お前の仲間は全滅した……」

御曹司「な、なんだとぉ!?」

42: 名無しさん 2020/06/17(水) 22:59:23.560 ID:XjxDAWSI0
御曹司(この尖った耳……こいつエルフか!?)

御曹司(たしかにエルフは弓の扱いに長けるというが……あの人数を一人で……!?)

御曹司「何が目的だ!? 金か!? それともここらの縄張りか!?」

エルフ13「…………」

御曹司「答えねえのか……まぁいい。いっとくが、俺は指一本動かすだけでお前を殺せる」

御曹司「俺を遠くから撃たず、のこのこ現れるなんてとんだマヌケだな」

御曹司「言い残したことがあったら聞いてやってもいいぜ?」

エルフ13「…………」

御曹司「ケッ!」シャッ

43: 名無しさん 2020/06/17(水) 23:04:31.676 ID:XjxDAWSI0
ザクッ!

御曹司「あぐあぁぁぁぁぁ……っ!?」

御曹司「み、右手がっ……!」

御曹司(こいつ……俺が引き金を引くよりも速く……矢を放ったってのか……!? バカな!)

御曹司(銃が……弓矢に負ける、なんて……)

エルフ13「…………」スッ…

御曹司「! ま、待ってくれっ!」

御曹司「俺は大商人の息子だぜ……? 俺を殺したらとんでもないことに……」

御曹司「そ、そうだ! 金をやるよ! 助けてくれたら何万ゴールドだってくれてやる!」

エルフ13「…………」

44: 名無しさん 2020/06/17(水) 23:08:39.976 ID:XjxDAWSI0
エルフ13「お前が殺した子供達も……」

エルフ13「“命乞い”をしたが……聞き入れられなかったそうだ、な……」

御曹司「あ……!」

御曹司「うわぁぁぁぁぁっ!!!」ダッ

ヒュッ

ビシッ!



…………

……

45: 名無しさん 2020/06/17(水) 23:12:44.190 ID:XjxDAWSI0
【 PART8 事件の行方 】



―ギャング団のアジト―

憲兵A「ったく、今度はギャング団が全滅とは……いったいこの町はどうなってるんだ」

憲兵B「まったくだな」

憲兵A「しかし、いい腕だな……」

憲兵A「ほとんどの死体が、一発の矢で額を射抜かれて仕留められてる」

憲兵B「間違いなく……プロの仕業だろうな」

46: 名無しさん 2020/06/17(水) 23:15:45.817 ID:XjxDAWSI0
憲兵A「証拠はないが……上の方じゃだいたい犯人(ホシ)の目星がついてるらしい」

憲兵B「誰だよ?」

憲兵A「“エルフ13”……」

憲兵A「エルフでありながら、金さえ払えば思想・イデオロギーに関係なくどんな標的も射抜くっていう」

憲兵A「凄腕のプロフェッショナルだ」

憲兵A「矢を撃つ速度は、最速で0.17秒っていわれてる」

憲兵B「化け物(モンスター)じゃねえか……」

憲兵A「息子を殺された大商人も、この件からは早くも手を引いたらしい」

憲兵A「いくら金をつぎ込んでも、エルフ13に挑むのは自殺行為だって悟ったんだろうさ」

47: 名無しさん 2020/06/17(水) 23:18:28.879 ID:XjxDAWSI0
憲兵B「だけど、犯人が本当にそのエルフ13だったとして、一体だれが依頼を……?」

憲兵A「俺たちが思いつく依頼人というと……」

憲兵B「もしかして……あの時のゴーレムが……?」

憲兵A「ハハ……まさか! いくらなんでも、人形なんかの依頼なんざ受けるわけない!」

憲兵B「だよなぁ! プロに支払う金だってないだろうしな!」

憲兵A「きっとヤンチャが過ぎて、どこかの大物を怒らせちまったのさ……」







END