1: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:07:51.49 ID:qYsOfvLU0
SS6作目です。

今回はとあるシリーズものの歌を参考にしています。
これまでの作品よりも長丁場になる予定ですが、よろしければお付き合い下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1570180071

引用元: ・少年「アヤカシノート」

2: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:09:28.22 ID:qYsOfvLU0
■第一幕 トモダチ■



ーーー学校 教室ーーー



ガララ



同級生A「今日の体育しんどかったわー」

同級生B「ほんとな。マラソン大会の為の外周とか、喜ぶの陸上部くらいだろ……俺昼食い過ぎてめっちゃ脇腹痛くなってた」

同級生A「ゲボッたらお前のあだ名ゲロリアンにすっから」

同級生B「お前にかけたるわ」

ギャハハ!



少年「……」テクテク

少年(…うるさいな。下らないこと喋り続けるなよ)

少年(まぁいいや。次の授業までに早く着替えちゃわないと)ガサゴソ

少年「……!」

同級生A「」ニヤニヤ

同級生B「」ニタニタ

少年(っ……)



『6月10日  曇りのち、雨

鞄の中に絵の具を散らされた。
町中を自分色に染めたがる"イロヌリ瘴女"なる妖怪に目を付けられたみたいだ。ついてない。』





3: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:11:33.81 ID:qYsOfvLU0
ーーー学校ーーー

少年「……はぁ」テクテク

少年(今日もあいつらの居る教室に行かなくちゃいけないのか……早く夏休みにならないかなぁ)



テクテク ガララ...



「あ、来たよ」

「うわ…確かにあれはやってそうな顔してる」

「こっち見てない?きもっ」

ヒソヒソ...



少年「…?」

少年(なんだ?クラスの奴が見てくる…)

少年(……席着こう)

ストッ



...トットットッ



同級生A「なぁ聞いたぜ?」

同級生B「少年さ、お前本当面白いよな」ニヤニヤ

少年「…何だよ」

同級生A「お前昔好きな女子のリコーダー舐めて泣かせたんだって?やっべぇな!今時そんなことするとか勇者かよ!」ゲラゲラ

同級生B「いやー流石だわ!俺たちにゃ出来ないことやってきてるよなぁ!」ギャハハ

少年「はっ!?なんだそれ!そんなことしてるわけないだろ!」

同級生A「今更隠さなくてもいいって!今朝からみんなその話で持ちきりなんだしよ」ニヤニヤ



ヒソヒソ ジロジロ



少年「……っ」



『6月20日  嫌になるほど、晴れ

根も葉もない噂を流された。
雨の様に噂を垂れ流すのが好きな妖怪"イイフラシ"の奴らの仕業だろう。』




4: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:12:19.07 ID:qYsOfvLU0

少女「……」

「少女、どうしたの?」

少女「ん?いや…なんでも」

「それよりさ、今日はどこ行く?」

少女「校庭かなー」

「またー?どうせ今日もノックでしょ」

少女「うん。付き合ってくれる?」

「えー…私はもうパスさせてもらおうかな。行きたいお店あるし」

少女「あはは…そうだよね」

「少女もいい加減その趣味はどうなの?女の子が野球っていうのも変な話」

少女「ほっといて。気が紛れるからやってるだけ」

「ふーん」





5: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:20:31.83 ID:qYsOfvLU0
ーーーーーーー

教師「期末テストの結果、返してくぞ。順番に名前呼ぶから取りに来い。まずは少女」

少女「はい」

教師「ぼちぼち…ってとこだな」

教師「猫又娘」

猫又娘「はーい!」

教師「返事だけなら満点なんだがなぁ…もうちょっと真面目に勉強も取り組むように」

猫又娘「…はーい」

教師「二つ編み」

二つ編み「はい」

教師「…うん。言うことなしだ。この調子で頑張れ」

二つ編み「ありがとうございます」

教師「次は──」

少年(……ほんと、うんざりだ)

少年(バカみたいなことしてくるあいつらにも、それに便乗するクラスの奴らも)

少年(…けどもっと嫌んなるのは、みっともない逃避に縋る自分)

少年("アヤカシノート")

少年(いつからだっけな。こんな風にノートに嫌な出来事を書き付けるようになったのは)

少年(あいつらに言い返すこともしないで、自分で考えた妖怪のせいなんかにして……)

教師「派手娘」

派手娘「ん」

教師「…席ぐらい立ちなさい」

派手娘「はぁ?目の前なんだからそのまま渡して下さいよ」

教師「派手娘」

派手娘「…分かったわよ。面倒くさっ」

少年(……いや、どうせ奴ら様の仕業だ。この世の嫌なこと全部全部、悪い妖怪が起こしてるんだ)

少年(だからしょうがないんだよ。僕が何も出来ないのは。相手は恐ろしい妖怪なんだから)

教師「──少年、居ないのか?」

少年「!は、はい」

教師「聞こえてるなら早く来なさい。後回しにするぞ」

クスクスクス

少年「……」スクッ

少年(……はぁ)



少女「………」



.........





6: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:22:25.16 ID:qYsOfvLU0

教師「お前たち、期末テストが終わったからって気を抜くんじゃないぞ。うちは夏休み前の基礎学力テストがあるんだからな」

教師「内申点に大きく関わってくるから、推薦組もそうだが一般受験組にとっても大事な試験だ」

教師「それが終われば……いよいよ本格的な受験勉強の始まりだ」

少年(受験か…面倒だなぁ嫌だなぁ)

少年(入試なんて、いっそ妖怪が食べてしまってくれたらいいのに)

少年(……ここの奴らと離れられるのだけは清々するけど)







ーーー数日後ーーー

「起立、気を付けー、礼」

全員「さようなら」

ガタッ、ガタッ

「今日から俺塾なんだよね」

「そうなの?あれ、部活は?」

「県予選で負けて引退。いいとこまでいったんだけどさー」

ガヤガヤ

少年(塾…僕もそのうち行けって言われるのかな)

少年(今の成績じゃあんまりいいとこ行けないのは分かってるけど……めんどい)

少年「……ん?あれ…?」

ゴソゴソ

少年(おかしいな、財布、ここに入れといたはずなんだけど)

ガサゴソ

少年「……」

少年(……まさか、あいつら……)



『7月1日  晴れ、のちのち憂鬱

買ったばかりの財布が無くなった。
あームカつく。本当嫌んなる。奴らはきっと知らんぷりだろうし。
……そう、どうせ"カネクイ蟲"にでも喰われたんだ。とんだ災難だ。』





7: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:24:41.30 ID:qYsOfvLU0
ーーー翌日ーーー

少年「……」テクテク

少年「……」テクテク

少年(……くそ……)

少年(今日は靴を隠された。これから帰ろうって時にうざったい。そんなことしてる暇があるならお前らこそとっとと帰れよ)

少年「……」テクテク

少年(…靴の事はまあいい。どうせ教室のゴミ箱辺りから出てくる)

少年(それより、もっとまずいのは…)





少年(──ノートをどこかに落としたみたいだ)





少年(見つかるのが教師ならまだいいけど、あんなのがクラスの誰かに見られたら……)

少年(見つけ出さないと。早く、早く…)

少年「……」スタスタ

少年(やっと戻ってきたか、教室)



ガラッ!



少年「!」

少女「あ…」フリムキ

少年(…誰だっけ。確か同じクラスの……)

少年(…気にしない気にしない。とりあえず靴を見つけてしまおう)チラッ

少年「──!?」

少女「……」

少年(おい……嘘だ……)

少年(この人が手に持ってるの……僕のノート……?)

8: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:26:18.28 ID:qYsOfvLU0

少年「………」

少女「……これ、あなたのだよね?」

少年「……」

少年「……見たのか?」

少女「…まぁ、ちょっとだけ」

少年「………」

少年(……あぁ……最悪だ……)

少年(最悪の失態)

少年(あんな奴らにいいようにやられてるってだけでも情けないのに、居もしない妖怪なんかのせいだと書き殴って…)

少年(こんな惨めな方法で、自分で自分を甘やかしてんだ)

少年(なのに…)



少女「……」



少年(なんでそんな目で見てくるんだよ)

少年(バカにするならバカにしろよ!哀れむなら哀れめよ!)

少年(何もかも見透かしたようなその目をやめろよ…!)

少年「……」グッ...

少年(さっきからなんなんだ…)

少年(こんなしょうもない僕に何か用かよ……)

少年(情けない……情けない……勝手に涙まで出てきそうだ)

少年(??面白いものが見られて良かったろ?満足したならもう消えてくれ)

少年(……そんなこと言えるはずもない)

少年「は……はは……」

少年「どうしようもないだろ。そんな日記」

少女「………」

少年「さぁ、笑ってくれよ」

少年「こんなバカな僕を」

少女「……」

少女「………」

少女「……ううん」フルフル

少年「…?」

少女「ふふっ、違うよ。バカにしたいとかじゃなくて」

少女「…ねぇ、少年君」

スッ(手を差し出す)





少女「友達になってくれませんか?」





9: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:27:43.67 ID:qYsOfvLU0

少年「………は?」

少女「……」ニコッ

少年「え……え?」

少女「もう、いいからっ」ギュッ



グイッ(腕を引く)



少年「わっ」

少女「ちょっと付き合って。最近みんなさ、ぼくの暇つぶしについて来てくれなくなっちゃったんだ」

少年「暇つぶし?な、なにが…」

少女「これだよこれ」

少年「……野球ボールと、バット……?」







ーーー第二校庭ーーー

少女「それじゃ、いくよー」

少年「お、おう」

少女「」スッ



カキン!



ゴロッゴロッ

少年「おっと…!」キャッチ

少女「大丈夫ー?今のでも軽く打ったつもりなんだけどー!」

少年「軽くって言ったって…僕こういうことほとんどしたことないから!」

少女「そうかい?なら良い運動になるよー!」

少年「これからも続ける前提なのか…?」

少女「それよりボールボール!こっち投げて!」

少年「……」

ブンッ

少女「」パシッ

少女「二球目いくよー」

少年「……うーい」



カキン!



.........





10: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:30:23.24 ID:qYsOfvLU0

少年「はぁ……はぁ……疲れた…」

少女「少年君、最初の一球以外ほとんど捕れなかったね」フフッ

少年「だから……慣れてないんだって…!」

少年「…きみはいつもこんなことを?」

少女「きみ…?…あ、もしかして少年君、ぼくの名前知らない?」

少年「う……だって喋ったこともなかったし…」

少女「少女だよ。同じクラスの帰宅部の」

少年(同じクラスなのは知ってたけど、帰宅部…)

少年「…部活、引退したとかじゃなくて?」

少女「いや?元から何も入ってないの。…参考までに訊くけど、ぼくって何部の印象?」

少年「えっと……」チラリ



(手に握られたバット)



少年「……野球部?」

少女「……んふ、ははっ」

少女「ねー、今このバットとボールだけ見て言ったでしょ」

少年「そりゃそうだよ。っていうかもうその印象しかないんだけど」

少女「別にぼく、野球が好きってわけじゃないんだ。ただ、こうやって何も考えないで打ったり捕ったりするのが落ち着くんだよね」

少年「……」

少女「ほら、うちの学校って校庭が二つあるじゃない?放課後、部活でこっちの校庭使われること滅多にないからさ、よくこうやって身体動かしてたんだ」

少年「ふーん、通りで。僕も帰宅部だけど、帰りに少女さんのこと見かけた記憶がないわけだ」

少女「そもそも二年生まではクラス違ったけどね。……ま、最近はもう友達もみんなぼくに付き合ってくれなくなっちゃって。そろそろこの趣味も限界かなって思ってたの」

少年「……それで僕を?」

少女「それもある」ニッ

少年「……」

少年(……)

少年「…あの、さ」

少女「ん?」

少年「見たんだよね……その……ノート」

少年「何も…思わなかったの…?」

少女「思ったよ」

少年「……」

11: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:33:44.56 ID:qYsOfvLU0



少女「──諦めないで、ちゃんと精一杯抵抗してるんだなって」



少年「え」

少年「抵抗…?あのノートの意味、分かってる…?」

少女「もちろん。やられたこと、妖怪の仕業にして日記みたいにつけてたんでしょ?」

少年「分かってるなら──」

少女「だからだよ」

少年「…?」

少女「例え妖怪のせいにしてるんだとしても、嫌なものは嫌だってはっきりと書いてるじゃん」

少女「きみの気持ちはまだ泣き寝入りしてない」

少年「?!」

少年(僕の…気持ち…)

少女「それにさ、ぼく、前から気に入らなかったんだよね。ああいうの」

少年「同級生A達のこと?」

少女「そ。自分さえ面白ければいいと思ってる。いつまでもちっさい子供のままの精神年齢」

少女「ね、何でちょっかい出されるようになったの?」

少年「……なんか、自分のこと僕って言うのが変だってところから絡まれ始めた…」

少女「……」

少女「あっきれた。そんなしょうもないことでずっといじり続けてるんだ?」

少女「ほんと、どこにでもいるんだよね。少しでも周りと違うところがあると鬼の首取ったみたいに騒ぎ立てる人」

少年「…なんか、少女さんてさ」

少女「なに?」

少年「大人っぽい考え方してるね」

少女「…別に。そういう理に適ってないバカバカしいことが嫌いなだけ」

少女「でも、ぼくとおんなじだね」

少年「え、少女さんもあいつらに…?」

少女「違う違う。"ぼく"、だよ」

少年「……!あ」

少女「ふふ」

少年(…さっきも思ったけど、綺麗な笑い方する人だな…)

12: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:35:37.36 ID:qYsOfvLU0

少女「というか!」

少女「なに他人事みたいに話聞いてるの!当事者はきみなんだからね?」

少年「んなこと言ったって……僕から何かしてもますます面倒なことになるだけだよ」

少女「だから、何のためにぼくがいると思ってるの」

少年「…はい?」

少女「あっちは二人、こっちは一人じゃ不公平だもの。ぼくを入れて二人。これで対等」

少年「えー…つまり?」

少女「明日から、ぼくと一緒に過ごせばいいってこと」

少年「……少女さんと?」

少女「」ウンウン

少年「…僕が?」

少女「やっぱり一人の方がいいって?」

少年「い、いやいやそんなこと言ってないけど…!」

少年「……いいの?僕なんかと一緒に居るなんて……」

少女「いいって言ってるでしょう」

少女「あ、その代わり、この二人野球には付き合ってもらうから」ニッ

少年「…次は僕にも打つ方やらせてくれよ?」

少女「!…ふふ、いいよ」

少女「でも、とりあえずそれは少し先になりそう」

少年「え。しばらく僕は捕球の練習してろってこと!?」

少女「違いますー。基礎学力テストが近いでしょ?その勉強しとかないと」

少年「……捕球の方がまだマシだ」

少女「勉強も付き合ってあげるから」

少女「何はともあれ──」





少女「これからよろしくね」ニコッ





少年「……こちらこそ」





13: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:36:50.46 ID:qYsOfvLU0
ーーー神社ーーー

(………)

(………)

(……!)



(裂けた1枚の紙札)



(これは……)

(……良くないことになったようで……)

(………)

(油断していた……)

(まさか……歪み出すか……)



(この世界が──)





14: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:38:42.45 ID:qYsOfvLU0
ーーー翌日 学校ーーー

少女「おはよ、少年君」

少年「あ、おはよう」

少女「思ったんだけど、ぼくたちって席前後同士だったんだね」

少年「そうだね…」

少年(全然気付いてなかった…)

少女「…なんか少年君、かたくない?具合でも悪い?」

少年「いや、その…」

少年(だってクラスの…それも女子と話すことなんて今までなかったし…)

少女「いっつもこの時間てさ、本読んでなかったっけ」

少年「え、うん」

少女「どんなの読んでるの?よかったら少し教えて欲しいかも」

少年「…今読んでるのはこれで」ゴトッ

少年「舞台はファンタジーチックな世界なんだけど、魔法とか剣とかほとんど出てこなくて、むしろ主人公の女の子が最初記憶喪失でさ──」

少女「うん、うん、それで──」



ガララッ



同級生A「へぇ。それマジなの?」

同級生B「最近やたら噂になってんの、聞いたことない?」

同級生A「いや初めて聞いたわ。その、なんだっけ」

少年(…あいつら…)

同級生B「"トドノツマリ様"な」

同級生A「そうそう。願いを聞いてくれるって、試した奴いんの?」

同級生B「そこまでは知らん。なんか代償として血を抜かれるとか人格を取られるとかいう話だしな」

同級生A「ほーん……お、丁度いい奴がいんじゃん」ニヤ

同級生B「俺も、多分お前とおんなじこと考えてる」ニヤ

15: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:40:45.34 ID:qYsOfvLU0

同級生A「おーい、少年よ」

少年「……」

同級生B「無視すんなって(笑)」

少年「…もうすぐ先生来るぞ、座ってろよ」

同級生A「まだ5分以上あるわ。んなことよりさ、お前トドノツマリ様って知ってるか?」

少年「知らない」

同級生B「ま、少年は自分の噂話にも疎いもんな」ククッ

少年「っ」

同級生A「でよ、何でもその人(?)に願いを言うと叶えてくれるんだってよ。お前ちょっとやってみてくんない?」

少年(…全部聞こえてたけどな。代償の話も。どこまで人をバカにすれば気が済むんだ)

同級生A「噂だと場所は神社だって話だぜ。石段の無駄に長いあそこ」

少年「…南町神社だろ?」

同級生A「おう。なぁお前さ、今日か明日かどうせ暇だろうし願い事の一つでも──」

少女「ねぇ、その話長い?」

同級生A「え…」

少女「今ぼくが話してたんだけど、それ長くなるならまた今度でもいいかな?」

同級生A「あ…?いやお前──」



猫又娘「はいはーい、どいてどいてー!」トットットッ



同級生A「おぅ…!?」ドカサレ

同級生B「なんだよ…」サッ

猫又娘「あれ?キミたち、もう先生こっちに歩いて来てるよ?席戻った方がいいんじゃない?」

同級生A・B「「……」」

テクテク

猫又娘「♪」テッテッテッ

少年「……」

少女「……クスッ」ピース

少年「……くふっ」





16: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:43:17.97 ID:qYsOfvLU0
ーーー昼休みーーー

同級生A「──なぁどこ行こうとしてたんだよぉ」

少年「どこだっていいだろ…!離せよ…!」

同級生B「昼飯の時間になって速攻で出てこうとしてたじゃん。…もしかして便所飯とかか?」

同級生A「ぎゃっはは!してそー!便所飯始めましたってか?」

少年「してねーよ。時間なくなるから離せって!」



少女「何してんの?」



同級生A「お?」

同級生B「ん?」

少女「…ぼくと少年君、ご飯食べに行くんだけど、何か用?」ツカツカ

同級生A「用っつーか…こいつがどこ行くか聞いてただけで」

少女「ならもう済んだじゃない」

少女「さ、行こ。少年君」スッ

少年「あぁ…」



スタスタスタ...



同級生B「………」

同級生A「……チッ」







ーーー第二校庭 端のベンチーーー

少年「外で昼食べるのって初めてだ」

少女「そうだねー。普通は教室で食べるからね。でもうち中学なのに購買あるし、その辺結構自由なんだと思ってる」パカッ

少年「まぁね…僕は行ったことないけど」カパッ

少女「…お弁当、それお母さんに作ってもらってるの?」

少年「うん」

少女「いいなぁ。ぼくの家親が忙しくてさ、お金渡すか自分で作るかのどっちかだって言われちゃって」

少年「ん…?じゃあそれは自分で?」

少女「そ。どう?最近は少しずつ慣れてきたと思ってるんだけど」

少年「どう、って……」

少年(すごい綺麗に盛り付けられてるし、美味しそう…)

少女「…ふふ、ありがと」

少年「え!?何も言ってないよ!?」

少女「目、見れば分かるから」クスッ

少年「そ、そんな分かりやすい顔してたかな…」

17: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:45:30.32 ID:qYsOfvLU0

少年(………)

少年「…あの、ありがとう」

少女「んー?」ハムハム

少年「あいつら、追い払ってくれたから。僕に突っかかってきてた時に」

少女「呼んでもないのに邪魔してくるからどいてもらっただけだよ」

少年「……僕より男らしい……」ボソッ

少女「聞こえてますよー。本当はきみがあの人達に強く言えば済むことかもしれないんだよ?」

少年「そう…かな…」

少年「そうは思えなくて…調子に乗ってもっとやられる気がする…」

少女「昨日も同じようなこと聞いた」

少年「……」

少女「そう考えちゃうのは仕方ないと思うけどさ……どこかで変えなくちゃ」

少女「他人を変えたいならまず自分が変わること。そうしないと、ずーっとそのままだよ」

少年「……もうすぐ卒業だし、別に僕が変わらなくても、周りが変わっていくよ……」

少女「……」

少女「それも、一つの考え方かもね」

少年「……」...パク

少女「……」ハム..ハム..

少年「………」

少年「…やっぱりさ、怖いよ」

少女「何が?」

少年「こうやって、僕と一緒に居て、あいつらの邪魔してたらさ…少女さんまで変なちょっかい出されそうで…」

少年「僕のせいで少女さんが目付けられるのは……」

少女「………」

少女「……これ、もらうね」ヒョイッ、パク

少年「…?あ!僕の唐揚げ!」

少女「油断大敵です♪」

少女「あのね、きみはそもそもぼくの心配をする資格はありません!」

少年「へ…?」

少女「自分のこともいっぱいいっぱいの人が他人の心配なんか出来なくていいの」

少女「それに、ぼくがそんなこと気にする人だったら、元より少年君と関わろうとなんか思わないよ」

少女「きみは大人しくぼくの"暇つぶし"に付き合ってくれてればいいんです」

少年「………」

少年(……なんだろう……上手く言い表せられないけど)

少年(…心がくすぐったい)

18: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:48:12.02 ID:qYsOfvLU0

少女「はい」スッ

少年「!」

少女「唐揚げの代わり。要る?」

少年「卵焼き…?」

少女「なーに?唐揚げとじゃ釣り合わないって?」

少年「そうじゃないけど」

少年(これ、少女さんの箸…)

少年「……食べていいの?」

少女「どうぞどうぞ」

少年「……」



パクリ



少女「!?」

少年「」ムグムグ

少女「ぁ…と…」

少年「」ゴクン

少年「うん、美味しいよ。…ってどうしたの?」

少女「いや、てっきりフタか何かに乗せて食べるもんだと思ってたから…」

少年「……あ」

少年(今、そのまま箸ごと口に入れて……!)

少年「ご、ごめん!だよね、普通そうだよね!?箸洗ってくるよ!貸して貸して!ほんとごめんこんな気持ち悪いこと…!」

少女「……ぷっ、あはは!」

少女「いくらなんでも慌て過ぎ!早口言葉じゃないんだから…んふふ…」カタフルワセ

少年「」ポカン

少女「気持ち悪いなんて思ってないよ。ちょっとびっくりしただけ。箸もこのまま使えるから、ぼくは気にしないよ」

少年(き、気にしないって)

少女「」ハムハム

少年(僕が気にするんですけど……)ドキドキ

19: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:49:05.03 ID:qYsOfvLU0

少女「そうそう、後は今日の放課後ね」

少年「あ、もしかして」

少女「うむ」



少女「勉強!」
少年「野球!」



少女「……少年君」

少年「う……」

少女「ぼく言ったよね?基礎学力テストに向けて対策だって」

少年「本当にするのぉ…?」

少女「知ってるんだよ?少年君そんなに成績良くないよね」

少年「」グサリ

少女「基礎なんだから、時間かけてちゃんとやれば確実に点が取れるテストなんです!ここで少しでも内申上げとけば後々本番で効いてくるからさ」

少年「分かってるけどさ」ウーン

少女「…1時間くらい。短く効率的にやろ。ダラダラつまんなく勉強するのも嫌でしょ?」

少年「……」

少年「よろしくお願いします、先生」ペコ

少女「よろしい」ニッコリ





20: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:51:27.02 ID:qYsOfvLU0
ーーー夕方 町中ーーー



テク..テク..



黒服男「……」テク..テク..

黒服男「……」テク..テク..



「わははは!おまえの宝はいただいていくぞー!」タタタッ

「待てー!怪盗エックス!この聖剣で成敗してくれる!」タタタッ

「誰が捕まるものかー!わっはっは」タタタッ

ドンッ

「いたっ」

黒服男「………」

「あ……ごめんなさい」

「なにぶつかってんだよっ」

「だって曲がったらいきなり居たんだもん…」

「…あっちの公園で続きやろう!」タッタッ

「待ってよ!」タッタッ

タッタッタッ...

黒服男「……」

黒服男(随分と)

黒服男(ここの景観も変わったものだ)

黒服男(俺の知る頃とはまるで違う。最早別の世界へ足を踏み入れたようだ)

黒服男(……む?)



同級生A「なぁ、お前、俺たちのこと少女になんか言ったのか?」

少年「言ってないけど…」

同級生B「嘘つけ。あいつ明らかに俺らを敵視してたろ」

同級生A「何チクったんだよ。正直に言え」

少年「だからなんも言ってないって」

少年(自分からはな)

21: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:53:39.27 ID:qYsOfvLU0

少年(……)

少年「…お前らこそさ、少女さんが居ないところでしか僕にでかい顔出来ないの?」

同級生A「…あ?」

少年「こんな時間まで僕のこと待ち伏せて…女子一人にビビってるとか?」

同級生A「あんま調子に乗ってんじゃねーぞっ」ドンッ

少年「っ!」ドサッ

同級生B「抑えろって。こんなザコにムキになるなよ」

同級生A「……はー」

同級生A「俺たちにビビって女子に助けてもらってんのはお前だろ?よかったでちゅね、僕ちゃん。守ってくれるママが出来て」

同級生B「ぶはっ!ほんと、だっせーよなぁ」ケラケラ

同級生A「じゃあな弱虫くん。せいぜいおままごとでも続けてな」ハハハ

テクテクテク...

少年「……く…っそぅ……」

少年(やっぱ、俺が言うだけじゃ……)

少年「……」スクッ

少年「帰ったら…ノートに……」ブツブツ

スタスタ...



黒服男「……」

黒服男「……やはり」

黒服男(景色、時代は変われど)

黒服男(──人間は何一つ変わっていない)

黒服男(愚かで傲慢)

黒服男(醜悪な独善)

黒服男「………」

黒服男(…あの男。何を思い、過ごすのだろうか)

黒服男「……」



ススッ...





22: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:57:25.99 ID:qYsOfvLU0
ーーー数日後 学校ーーー

少女「もー…普通昼休みに機材運搬とか頼むかな。いくら日直だからって」テクテク

少女「うちの担任人使い荒い気がする」テクテク

少女「……戻ったら少年君に今日の勉強の話でもしてやろっかな。どんな顔するだろ」フッ

...トットットッ

同級生A「……」

同級生B「……」

少女「……何?」



黒服男「ほう、これは……」

黒服男(面白いな)







ーーー教室ーーー

ワイワイ ガヤガヤ

少年「……」

少年「………」

少年(少女さん、荷物運んでくるだけって言ってたけど遅いな…)

少年(ちょっと見てこよう)

少年「」ガタッ



トットットッ...





23: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 18:58:12.88 ID:qYsOfvLU0
ーーーーーーー

少女「どいてくれない?そこ邪魔なんだけど」

同級生A「…お前さ、どういうつもりだよ」

少女「は?何が?」

同級生A「何がじゃないっつの。なんであいつの肩持ってんだって訊いてんの」



黒服男(あの娘、かの男を常に見守る者…)

黒服男(否。無償の善意など人の世に存在しない)

黒服男(その心積もり、ついに聞くる時が来たか)



少女「肩を持つ?そうかもね。最近勉強教えてあげてるし」

同級生B「そうじゃない。少年の近くでさ、目障りだから消えてくれって言ってんだよ」

少女「何の目障りになってるの?」

同級生B「そりゃ……」

同級生A「……」

少女「……」

同級生A「…つーかお前、少年のこと好きなん?」

同級生B「おー、なるほど。通りで」

同級生A「マジかぁ。申し訳ないけど、男の趣味見直した方がいいぜ?」

ギャハハ

少女「…答えに詰まったら話を逸らして人格攻撃?ほんと、小物感すごいねあなたたち」

同級生A「は?」

少女「別に少年君のことどう思ってるとか、あなたたちに教える必要ないよね」

同級生B「否定しないってことは好きなんだろ?陰キャラ同士お似合いじゃん」

同級生A「うーわ、おもしれーな。大スキャンダルです!あの少年氏に熱愛が発覚!僕僕コンビの結成と相成りました!」

同級生B「僕僕コンビて(笑)」

少女「……フッ。また噂でも流す?」

少女「この前少年君にしたみたいに」ニヤリ

同級生A・B「「……」」



黒服男「………」

黒服男(……違う)





24: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:03:28.71 ID:thfh8h7eO
ーーーーーーー

テクテク

少年「」キョロキョロ

少年「…どこだろう」

少年(確か視聴覚室とか言ってたけど……もうすれ違ったとかかな)

少年「……」テクテク

少年(あの日から毎日、学校では少女さんと一緒に行動している)

少年(彼女は竹を割ったような性格で、何かとおどおどしてしまう僕とは対照に、常に落ち着いている)

少年(でも急かされてるとか見下されてるとかそういうのはなくて……何だか居心地が良い)

少年(僕に突っかかってくるあいつらも少女さんと居る時は手を出してこなくなった)

少年(……彼女は、何だろう)

少年(僕の都合の良い夢とかじゃあないよな…?)

少年(……いや、絶対夢なんかじゃない。彼女と出会ってからこんなに楽しい時間が、夢でたまるか)

少年(勉強に関しては若干圧を感じなくもないけども……)

少年「…ここだ」



札『視聴覚室』



少年(着いたけど)

少年(…居る気配はしないな。やっぱりもう戻ってるんだろうな)

少年「……?」



黒服男「……」(窓の外を眺めている)



少年(……誰だ…?制服みたいな格好だけど……ここの卒業生?)

黒服男「……」

少年「……」

少年(……気にしてもしょうがない。戻らないと、少女さんに探され──)



黒服男「面白いものが見えるよ」



少年「……え」

黒服男「……」

少年「…僕、ですか?」

黒服男「ほら、見てみな」

少年(?面白いもの…確かにこの人さっきから何を)チラリ

少年「──!」

25: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:05:10.78 ID:thfh8h7eO



同級生A「……──、─!」

少女「──、──?」

同級生B「───。──、──」



少年(少女さん……?)

少年(なんで、あいつらと……)







ーーーーーーー

同級生A「だーかーらー!どこに俺たちが流したっつー根拠があるんだよ!」

少女「根拠、証拠って、推理アニメの犯人の台詞そのもの」

少女「そんなのさ、誰だって分かってるよ。あなたたちが少年君にしてることみんな知ってるし」

少女「…それも知っててあんな茶番やってるんだよね?虚しくならないの?」クスッ

同級生B「あー…お前面倒くさいなぁ」

少女「あなたたちよりはマシだと思うけど」

同級生A「……はっ、正義の味方気取りか」

少女「常識の味方です」フフッ







ーーーーーーー



少女「──」クスッ



少年「……」

少年(何か楽しそう…?いやそんな…)

黒服男「随分仲が良さそうだよね」

少年「……いえ、あの子はあいつら二人が嫌いなのでそんなことは」

黒服男「本当に?俺が見てる時からあんな雰囲気だったけど」

少年「え…」

黒服男「それ、きみの思い込みじゃなくて?よくいるだろう、仲悪いフリしてる人が実は裏では親密な付き合いを続けているなんて」

黒服男「あるいはその逆も」

少年「……」

黒服男「あの女の子も、彼らと楽しく陰口ででも盛り上がっているんじゃないかな?」



黒服男「─一同じクラスの誰かさんの、とか」



26: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:07:06.66 ID:thfh8h7eO

少年「……そんなこと……」

黒服男「そう言い切れるか?」

黒服男「きみはあの娘のことをどれだけ知ってる?」

黒服男「あの娘の本質を」

少年「………」

少年(………)

少年(……ないだろ、少女さんに限って)

けどもしも、その通りなら?

少年(………)

本当はあいつらと裏で繋がっていて、僕をからかうための芝居を打ってるだけだとしたら…?

少年(……そんなの……)

少年「……」グッ...

黒服男「………」

黒服男(……そうだ。これだ)

黒服男(感じる、この男の"黒き心")

黒服男(紛うことなき人間の本質)

少年「……少女……」

黒服男(人の心など、信ずるに値しない愚物)

黒服男(裏切り、憎しみ、排他)

黒服男(あらゆる汚物で組成されたもの)

黒服男「……」ニィ

黒服男(…若き男よ。俺がその感情の手助けをしてやろう)スッ...



ドクン



少年「………」

少年(…そう、か。よくよく考えればおかしいことだらけだ)

少年(僕のノートを見ても引かないどころか友達になりたがったり、こんな数日であそこまで仲良くしてくれたり)

少年(初めから全部、あいつらの差し金だったんだ)

少年(僕は結局一人アホみたいに舞い上がって……)

少年「……」

少年(あぁ……嫌だ)

少年(僕をバカにする奴も、陰で嘲笑う奴も、みんなみんな…)





──憎い





27: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:08:11.59 ID:thfh8h7eO
ーーーーーーー

同級生A「だー!もうわっかんねーかなぁ!俺たちの前にしゃしゃり出てくるなっつってんの!」

少女「どこで何してようがぼくの勝手じゃない」

同級生B「……あのさ、ムカつくんだよお前。その喋り方とか、余計に」

同級生B「マジで俺らの邪魔しないでくんね?痛い目見ても知らねぇよ?」

少女「……それ脅してるの?」

少女「クスッ、言葉じゃ勝てないから?」

同級生A「………」

同級生B「チッ……」

同級生A「……ぶっ飛ばす」

少女「……その気なら、相手になるけど」

ゴソ...

同級生A「…!?」

同級生B「バット…?」

同級生A「ど…どっから出したんだよ…」

少女「……」ザッ

少女「なに?やるんじゃないの?」スッ...

同級生B「……っ」

同級生B「こいつ、やべぇ…」

同級生A「頭おかしいわ…」



タッタッタッ...



少女「………」

少女「口ほどにもない奴ら」

少女「…なんて、一回口に出して言ってみたかったんだよね」フフ

少女「無駄な時間使った。早く戻ろ」





28: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:10:04.90 ID:thfh8h7eO
ーーー教室ーーー

少女「ごめん、遅くなっちゃった」

少年「………」

少女「もうお昼の時間半分くらいしかないけど……ってあれ、お弁当先食べててよかったのに」

少女「わざわざ待っててくれたの?そういうとこ、律儀だよね。嫌いじゃない」ニコッ

少年「……」

少女「…少年君?」

少年「ね…あいつらの言ってたさ、あの噂」

少女「噂?」

少年「トドノツマリ様」

少女「それどうせ眉唾ものだよ」

少年「僕、少し気になるかも」

少女「えー……」

少年「今週の土曜日さ、一緒に確かめに行ってみない?」

少女「土曜日……空いてるといえば空いてるけど…」

少年「だめ?」

少女「……じゃあその後、勉強まで付き合ってくれるって言うならいいかなー」

少年「決まりだね、行こう」

少女「即決っ」

少女(…なんか反応が薄い…?)

少女「…テストまで後1週間ちょっと。そろそろスパートかけてくけどついてこれるかな?」

少女「あそこで黙々と勉強してる二つ編みさんみたいに」



二つ編み「……」カキカキ



少女「それとも、ちょっと休憩するとき打ってみようか?今度は少年君がね」

少年「……いや、いいよ。ノックはテストの後でも」

少女「……そう?」

少女(……?)





29: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:12:21.65 ID:thfh8h7eO
ーーー夜 少女家ーーー

少女「……」スマホイジイジ

少女「……」スッ、スッ

少女「……んー……」

少女「トドノツマリ様、とどのつまりさま…?」

少女「ダメだなー、どう検索しても引っかからない」

少女(LINEで訊いてみよ。えーと、同じクラスの……)

少女「」スッスッ



少女『トドノツマリ様って知ってる?』



少女「……」



ーーーーー

少年「──いや、いいよ。ノックはテストの後でも」

ーーーーー



少女(……お昼の時から、口数が減った気がする)

少女(気のせいかな)

ピロリン



『知ってるよー。なんか噂になってるやつだよね?神社に居る神様?みたいな』

少女『そうそう。願いを叶えてくれるけど、その代わり何かを取られるって。そんな話聞いたことない?』

『いくつかパターンがあるみたいよ』

『でも意外。少女ってそういうオカルトとか興味ないと思ってた』

少女『んー、まあ誘われたから付いてくだけだよ』

『それで下調べ?結構気合い入ってるじゃん!』

少女『余計な勘繰りしないでよろしい』

30: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:13:00.90 ID:thfh8h7eO

少女『で、パターンがあるって?』

『大抵は願いを叶える対価としてこっちの私物とか身体の一部とか要求されるって話じゃない?』

『けど一つ、私が聞いた中で異色だなって思ったのが』





『願いを聞いてもらうと世界が捻じ曲がるほどの災いが起こる』





少女「はぁ…?」



『んだってー。私的にはそっちの方が後からついてきた創作だと思うんだけどね』



少女「世界って…」

少女(ただの七不思議程度の知名度の割に、大袈裟な話)

少女(余計嘘臭さが助長されてる)

少女(……)

少女「……まぁいっかな」

少女「少年君が満足するまで付き合ってあげますか」ノビー

少女(せっかく向こうから誘ってくれたんだしね)

少女(…そう考えると……ふふっ。ちょっとわくわくしてきたかも)





31: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:15:28.63 ID:thfh8h7eO
ーーー土曜日ーーー

少女「……」テクテク

少女「…あ」

タッタッタッ

少年「……」

少女「早いね。もしかして結構待たせちゃった?」

少年「……あんまり」

少女「ほんとに?実は楽しみ過ぎて1時間くらい前から着いてたとか…」

少年「楽しみではあったよ」

少年「というか少女さん、その服…」

少女「ん?あー……最近もう暑くなってきたしさ、今日神社まで行くんだよね?だから動きやすい格好をってね」

少年「それにしたってTシャツとハーフパンツ……男の子みたい」

少女「失礼な。そういう少年君こそ、なんで制服のワイシャツ?学校に立ち寄る用でもあるの?」

少年「…別に、手近なもの着てきただけだよ」

少女「わざわざ着替えて?そのまま私服で来れば良かったのに。…ふふっ、なんか変だね」

少年「」ピクッ

少年「……行くよ」...テクテク

少女「あ、待ってよ」テッテッ



.........







ーーー神社 石段前ーーー

少女「………」

少年「………」

少女「……これ、登るんだよね?」

少年「……うん」

少女「頂上が見えないんだけど」

少年「……」

少女「…そういえば、夏休みに入った後だけど、ここ大きなお祭りがやってるよね」

少女「石段沿いに屋台がずらりと」

少女「…あれに比べたら手ぶらのぼく達の方が身軽で楽なのかな」

少年「……」...トットッ

少女「……」

少女(………)





32: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:16:58.83 ID:thfh8h7eO
ーーー神社 境内ーーー

少女「はぁ……はぁ……」

少女「さすがに……疲れた……」

少年「」ハァ..ハァ..

少女(少年君なんか肩で息してる)

少女(そんなに無理してでも来たかったのかな。でも……)

少女(それを抜きにしても、石段登ってくる最中一切会話もないなんて…)

少女(4日前くらいからだ。少年君の様子がおかしくなったのは)

少女(どこか後ろ暗いというか、ぼくが話しかける前の少年君に戻っているというか…)

少女(…まさか、見えないところであの二人に嫌がらせされてるんじゃ…)

少年「──少女さん」

少女「!なに?」

少年「なに、じゃなくてさ」

少年「ここだよ。トドノツマリ様が居るって場所」

少年「でも何をすればいいのかな。呼び出す手順なんて聞いたことない…」

少女「そんなの……お願いすればいいんじゃない?」

少年「……」



(数歩前に出る)



少年「……トドノツマリ様!居るならどうか聞いてください!」

少年「僕は平穏な学校生活を送りたいです。誰にも関わらず、誰にも干渉されない、そんな日々を下さい」

少年「……」チラリ

少女「……」

少年「……トモダチなんか、要りません……」ボソッ

少女(……誰にも干渉されない……)

少女(少年君、きみはまだ……)

少年「…叶ったかな」

少女「いくらなんでもせっかち過ぎるよ……学校はまた明後日から!」

少年「………」

33: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:18:46.37 ID:thfh8h7eO

少女「……ふぅ」

少女「ねぇ、任せてよ。それくらいのお願いなら、ぼくが叶えてあげるからさ」

少年「……」

少女「これで一応気は済んだ?結局少年君、すぐに叶うかどうか分からないお願いにしちゃったね」

少女「次はぼくが分かりやすいものを試してみようか?超能力に目覚めさせて下さい!……なんてどう?」フフッ

少年「……」ジロッ

少女「…!」

少女(冷たい、目)

少女(……その目はまさか)



少女(──ぼくに向けられてる?)



少女「………」

少年「どうせ後で……するくせにさ……」ポツリ

少女「え?なに?」

少年「……トドノツマリ様、ここじゃないのかもしれない」

少年「噂では神社ってなってたよね?でも神社のどこかまでは具体的に言及されてないし」

少女「だったらどこだっていう話だけど……まさか、石段の1段1段なんて言わないよね!?」

少年「……こっち」スタスタ

少女「どこ行くの!そっち林道…」



スタスタスタ...



少女「……」

少女(絶対、何かあった)

少女(…少年君…後でちゃんと聞いてあげるからね)

少女「」タッタッタッ





(……あの少年、もしや……)





34: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:21:11.72 ID:thfh8h7eO
ーーー林道ーーー

少年「……」ザッザッ

少女「……」ザッザッ

少年(………)



ーーーーー

少女「──それくらいのお願いなら、ぼくが叶えてあげるからさ」

ーーーーー



少年(よくもまぁわざとらしいことをペラペラと)

少年(僕が何も知らないと思って…)



ーーーーー

同級生A「──!───」

少女「──」クスッ

ーーーーー



少年(………)ギリ...

少年("友達"なんて都合の良い言葉、振りかざす連中は嫌いだ)



──ドクン



少年「……」ザッザッ

少年(……憎い)

少年(バカ正直に人を信じようとした自分が)

少女「……」ザッザッ

少年(僕を嘲笑う、こいつが)



ザッザッ...



少年「………」

少女「へー……」



(大きな池)



少女「こんなところに池なんかあったんだ。ここ、普段来ることなんてなさそうなのによく知ってたね?」

少年「……」

サッサッサッ(数歩前に出る少女)

少女(でも)

少女「……」ジッ

少女(この池、底が暗くて見えない。そんなに深いのかな)

少女(……ちょっと不気味)

35: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:26:08.47 ID:qYsOfvLU0

少女「……ここでお願いすれば、池から出てきてくれるのかな」

少女「泉の女神様みたいに。金の斧と銀の斧じゃなくて二つの願い事を提示してくれたり?」

少年「……」



──ここでこいつを突き落とせばいい



少年(………)

少年(……この人を……突き落とす……)

少年(あぁそうだ……そうすればこいつもあいつらも少しは懲りるかもな……)

少年(他人を変えたいならまず自分が変わること)

少年(きみもそう言っていたしな)

少年(望み通り、変えてやろうじゃないか…)

少年「……」

少女「さて、早いとこ実証して引き返そうよ。ぼく、ここあんまり長居したくないかも」

少年「」スッ



ソー...(手を伸ばす)



36: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:26:48.13 ID:qYsOfvLU0



ーーーーー

少女「──ぼくとおんなじだね」

ーーーーー



少年「………!」

少年(……僕は、何をしようとしてるんだ)

少年(正気の沙汰じゃない…少女さんを池に落とそうとするなんて…!)

ドクンッ!

少年(うっ……頭が、痛い……)



──どうして留まる。それが良心というものか?



少年(ぐ……!)ズキッ



──下らぬ……俺が手を貸してやろう



少年「え……?」スッ

少女「少年君?」フリカエリ





ドンッ





バシャン!

少年「…!?」

少年「少女さんっ!?」

少年(僕が突き落とした!?いや違くて今手が勝手に…!)





37: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:28:32.22 ID:qYsOfvLU0
ーーーーーーー

少女(!…!?)

ゴボゴボ

少女(なに…!?池に落ちたの…?)



ーーーーー

少年「」ドンッ

ーーーーー



少女(なんで……少年君……)

少女(…とにかく上に)



グンッ..グンッ



少女(…!上がれない…!どうして…)

少女(それどころかどんどん下に引っ張られてる…!?)

少女「」ゴパッ

少女(息が……)

少女「……っ」グンッ...



(水面に映る少年の姿)



少女(……少年、君……)

少女「………!」





黒服男「」ニタァ





少女(少年君の、後ろに…)

少女(……あれは……だれ……)

少女「………」



ゴポゴポ...





38: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:29:31.46 ID:qYsOfvLU0
ーーーーーーー

少年「少女さん……」ヒヤリ

少年(上がってこない…!)

少年(助けないと!このままじゃ少女さんが…!)

少年(僕もこの池に飛び込んで──)





グネ..グネ..





少年「ひっ…!?」アトズサリ

少年「な、何だよ今の…!?」

少年(手…みたいだった…池の底から伸びてくるような無数の何か……)

少年「……あ……」

少年「うわぁあああ!!」ダッ!



タッタッタッ...



.........





...ザッ

黒服男「………」

黒服男「当然の帰結」

黒服男「それがお前達人間の、醜い業だ」

黒服男「………フッ」



黒服男「さぁ、始めようか」





39: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:31:18.24 ID:qYsOfvLU0
ーーー神社ーーー

(……!)

(やはり……そうか)

(滲み出してしまった)

(この星の歪み……遠い昔の怨恨……)

(………)





少年「──どうか、どうか!お願い致します…!」





(!この者……)



少年「トドノツマリ様!いらっしゃるのなら僕の願いを聞き届けて下さい!」ポロ..ポロ..



(我、驚愕せり)

(外聞もなく泪を零す、矮小な人であるもしかし)

(──未だ嘗て無い程の、強き心)



少年「どうか、元に戻して下さい…!」

少年「溺れてしまったあの子……」ポロポロ

少年「──僕が殺してしまった少女さんを!」ポロポロ



(………)



少年「お願いです……どうか……」



(叶えようか。其の望みを)



少年「ああぁ……僕は……なんで彼女を……」ウツムキ

少年(違うんだ……あんなの僕のしたかったことじゃ……)



...ガタ、ガタガタ



少年「!…この音……神社から…?」

40: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:32:19.71 ID:qYsOfvLU0



(組み替えよう、生命のベースを)



ガタン!



少年「……?」



──ヒュオオォ



(歪んだ憎悪に蝕まれた哀れな少年よ)

(其の意思、確かに伝わった)



ゴオオオォ!



少年「ん……!」

少年(なんだこの風…!)



(─其の代わり)

(我は欲する)

(そなたの最たる大切物)



ブワァッ!



少年「わっ…!」ズテッ





シーン...





少年「……」

少年「……」

少年「………」





41: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:34:23.23 ID:qYsOfvLU0
ーーー夜 自室ーーー

少年「………」

少年「………」

少年(あれから、どう帰ったのかもよく覚えていない)

少年(気が付いたらもう日は沈んでいて、僕は自分の部屋でこうやってただ座っていた)

少年「……」

少年(…日中の出来事は全部夢だったんじゃないか)

少年(不意に、そう思うこともあった)

少年(……けど)



ーーーーー

──バシャン!

ーーーーー



少年(彼女を突き飛ばしたあの感触は、今もはっきりとこの手に残ってる)

少年(……)

少年(僕はどうして少女さんをあんなに憎んだんだ…?)


少年(あいつらと仲良さそうに話をしていたから?……僕を嘲笑うだなんて、彼女がそんなことをしそうにないのは分かっていたはず…)

少年(そう信じさせてくれたはずなのに……)

少年「………」

少年「……寝よう」

少年(寝て起きれば、何か変わってるかもしれない)

少年(──今日の事は全て嘘だった、とか)

少年「……」



ゴロン...





42: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:35:29.44 ID:qYsOfvLU0
ーーー神社ーーー

(………)

(……月が、サカサマに見ゆる)

(其の意味を我は知らない)

(されど、濃密な禍々しさ)

(………)

(顕現の時か)



...スッ



サッ..サッ..



幼女「……」

幼女(かつての悲劇、憎しみ)

幼女(二度と起こらぬよう、世界への干渉を避けてきた)

幼女(しかし)

幼女(蓋をし、重石を載せただけでは消えたことにはならぬ)



ーーーーー

少年「──どうか、元に戻して下さい…!」

少年「──僕が殺してしまった少女さんを!」ポロポロ

ーーーーー



幼女(……)

幼女(嗚呼……誰が気付くだろう)

幼女(この星の怪異。歪曲にも似た魅えざる"張り裂け"を──)

幼女「………」

幼女「……」サッ、サッ、サッ



(床に落ちた1冊のノート)



幼女「…これがかの少年の…」

スッ(拾い上げる)

幼女「……」ジッ...

幼女(………)

幼女(…この書物…は一体…?)





43: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:37:20.17 ID:qYsOfvLU0
ーーー翌日 日曜日 朝ーーー

少年「………」ボー

少年「……」

少年「……」

少年(………)

少年「………」ボー





ーーー昼ーーー

少年「………」ボー

少年「……」ゴロッ...

少年「………」

オヒルハヤクタベチャッテー!

少年「……」



ノソッ...





ーーー夜ーーー

少年「………」

少年「………」

少年(……あ…授業の用意しとかないと)

少年「……」



ガサ..ゴソ..



少年「……あれ」

少年(ノートがない…)

少年(僕の、"アヤカシノート")

少年「……いいや、別に」

少年「………」

少年(明日は学校)



ーーーーー

少女「──きみは大人しくぼくの"暇つぶし"に付き合ってくれてればいいんです」

ーーーーー



少年「……少女さん……」

少年「……」ツー

少年(僕は……僕は………)

少年「うぅ……」ポロ..ポロ..





44: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:38:57.15 ID:qYsOfvLU0
ーーー翌日 学校ーーー

「おはよー」

「おはよ。ねぇ先週の数学のプリントやった?今日小テストだよね、確か…」

「えっ。そうだっけ!?」



ガヤガヤ



少年「……」

少年(……)



(空いた少女の席)



少年(………)



「あのぉ二つ編みさん」

二つ編み「…?なに?」

「数学のプリント、写させてくれないっ?」

二つ編み「…いいよ、はい」スッ

「やった!ありがとう!やっぱり二つ編みさんだね~、いざというときのセーフティネット!頼りにしてるよ」

二つ編み「どうも…」



猫又娘「数学の小テストぉ?」

猫又娘「みんな慌てなくていいのに。そんなの変えちゃえばいいんよ、こんな風に!」

ポンッ

「おぉ…」

「また猫又娘の手品か?」

猫又娘「にっしし。これで解決!」

派手娘「そのプリント」

猫又娘「」ギクッ

派手娘「提出用なんだけど、元に戻せんの?」

猫又娘「…あはは、平気平気」

派手娘「ふーん」

派手娘「あと、やるなら先生の目の前でやってくれば?追加のプリントいっぱいもらえるわよ」

猫又娘「いやぁ…プリントだけじゃ済まなさそうだから遠慮しときますよー…」ハハハ...

45: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/04(金) 19:40:17.40 ID:qYsOfvLU0



キーンコーンカーンコーン



教師「ホームルーム始めるぞ。席着けー」ガララ



バタバタ



教師「…ん?なんだ、少女はまだ来てないのか?」

少年「っ…」

教師「珍しいな…誰か連絡のあった人はいないか?学校には特にないんだが」

「えー知らない」

「私も。先週トドノツマリ様のことでLINEしたくらい」

「最近少年君とよく一緒に居たよね」

少年「あ…えっと……」



ガラッ

「すいません、遅くなりました」



少年「!」

少年(この声…!)バッ

少年「……!?」

派手娘「は…?」

二つ編み「……」

猫又娘「うそ…」





包帯少女「……」





ザワッ

教師「どうしたんだ…それ。なにでそんな怪我を…」

包帯少女「いえ、怪我というわけでは……」

包帯少女「…あまり気にしないでください」



少年(なんで……あんな)

少年(右膝、左腕、そして右目。包帯が巻かれている)

少年(生きて、いた…?それともトドノツマリ様が…?)

少年(でも、その包帯姿は……)



包帯少女「………」





48: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:24:19.60 ID:qAvjVlqX0
■第二幕 チグハグ■



ーーー教室ーーー

教師「──はい、そこまで」

教師「それじゃあ回収するから、名前書いてあるか確認して後ろから前に送れー」

「やっべぇ…1問しか出来なかった…」

「先生!プリントの問題より全然難しいんですけど!」

教師「そんなの、基礎が出来てればその組み合わせで応用も解けるだろ?いつも言ってるように」

教師「この小テスト、一応基礎学力テストの対策も兼ねてるからな。…間違えた問題は宿題で解き直しだ」



ブーブー



少年「……」スッ(後ろから受け取る)

少年(正直、こんな問題解けないと思ってたけど……この2問目、この間少女さんと勉強したところだ)

少年(………)



包帯少女「少年君」



少年「!…なに?」

包帯少女「なに、じゃないよ」

包帯少女「プリント、早く」

少年「あ、うん」スッ

包帯少女「」クルッ...

少年(──その包帯は何だい?)

少年(そう訊きたいけど、口にしようとする度言葉が喉につっかえる)

少年(見る限り、いつも通りに身体を動かしてる気がする)

少年(そこまで酷い怪我じゃないのかな…?)

49: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:26:06.37 ID:qAvjVlqX0

教師「……」パラパラ

教師「よし、ちゃんと人数分あるな。これは採点して帰りに返すから──」ピタッ

教師「………猫又娘」

猫又娘「はい?」

教師「これは、何だ」



(テストの裏に猫の落書き)



猫又娘「あ、それ可愛く描けたんですよ!」

「ほんと、絵上手!」

「でもテスト用紙に書くなんて、猫又娘さん……」

教師「……お前は、自分の成績が分かってるのか?」

猫又娘「はい!」ニコッ

教師「だったらせめてこういう時くらい真面目にやりなさい」

猫又娘「真面目に考えてよく分からなかったので、少しでも加点してもらおうと思ったんです!」

教師「加点?」

猫又娘「芸術点、とか♪」



ワハハハ!



派手娘「先生ー。猫又娘さん、さっき提出用のプリントでも遊んでましたー」

猫又娘「いっ!?派手娘さんなんで!」

教師「…猫又娘、次の休み時間廊下に立ってなさい」

猫又娘「」ガーン

派手娘「ふんっ。バカやってるからよ」

派手娘(あの貼り付けたような笑顔)

派手娘(…相変わらず見ててイライラするのよね)

教師「取り敢えず、授業始めるからな。教科書開け。前やったところの続きから、ページは──」





50: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:28:07.95 ID:qAvjVlqX0
ーーー昼休みーーー



ヒソヒソ



「ねーあの包帯って……」

「さぁ……何も話してくれないし、人に言えないことでも……」



ヒソヒソ...



包帯少女「……」

少年(みんな、少女さんのことを見てる)

少年(朝からほとんど喋らない少女さんの様子は明らかに変だけど、そんな檻の動物を見るような目…)

少年(……嫌だな……)

少年「……」

少年(…あの日の事)

少年(分かってる、少女さんと話さないといけないこと)

少年(怖いけど…ここで逃げたら僕は今後ずっと、少女さんと話せなくなるような、そんな気がして……)

少年「……」スクッ

少年「少女さん」

包帯少女「…?」

少年「…お昼、食べに行かない?」





51: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:32:12.10 ID:qAvjVlqX0
ーーー第二校庭 端のベンチーーー

少年「……」パクパク

包帯少女「……」ハムハム

少年(む、無言だ…!)

少年(どうしよう、誘ったはいいけどどう切り出せばいいか全然分からない……!)

少年「……」ソワソワ

包帯少女「……」ハム...

少年「……」チラッ

包帯少女「………」

少年「っ……」ガクリ

包帯少女「……ふぅ。なーに?」

少年「」ハッ

包帯少女「何か言いたいことがあるんじゃないの?さっきからずっとこっち見て落ち着きないしさ」

少年「あ、えと…」

少年「…そのお弁当、美味しそうだなって」

包帯少女「……食べたいの?ぼくの箸ごと?」

少年「えぇ!?いやいやもうあんなことは!例え分けてもらうとしても今度はちゃんと──」

包帯少女「冗談」クスッ

包帯少女「少年君、すぐバレる嘘つくからちょっとからかっただけ」

包帯少女「で、本当は何て言いたかったのかな?」

少年「……」

包帯少女「……」

少年「その……」



少年・包帯少女「「包帯のこと」」



少年「っ」

包帯少女「そうだろうね。ぼくだっていきなりこんな人が登校してきたら気になるよ」

少年「…大きな怪我とか…じゃないって言ってたよね?」

包帯少女「うん」

少年「……本当?」

包帯少女「まあこんな見た目じゃ説得力ないよね。なんなら今、包帯外して見せてあげてもいいよ。怪我は何もないから」

52: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:35:56.20 ID:qAvjVlqX0

包帯少女「…でも、夜になると痛み出すんだ」

包帯少女「この目と、腕と、足」

包帯少女「だからこれはおまじないみたいなもの。ちょっと大袈裟かもだけど」

少年「痛むって……病院には行ったの?」

包帯少女「ううん。だって痛み始めたのちょうど昨日からだから」

包帯少女(そう。昨日の夜の、"あの時"から…)

少年「昨日から……」

少年(それって、タイミング的にも、どう見ても異常なこの様子からしても)

少年(……あの出来事が関係してる)

少年(僕が、少女さんを池に落とした、あの……)

少年「……」グッ...

少年「少女、さん」

包帯少女「どうしたの、そんなに怖い顔して」

包帯少女「もしかして相当心配してくれてる?大丈夫だよ、見た目ほど重症じゃないし、少年君が気にするようなことはないって」

包帯少女「それよりきみは基礎学力テストの心配をした方がいいよー?今週の金曜日でしょ?あと4日しかない!」

少年「…土曜日の、ことなんだけど…」

包帯少女「……」

少年「……」

包帯少女「…一昨日?」

少年「そう」

少年「その……あの日、さ……」

包帯少女「……あー……」





包帯少女「ごめんね、急な予定で行けなくなっちゃって」





少年「……え?」

包帯少女「でさ、どうだったの?トドノツマリ様の検証。ぼくも興味が無かったと言えば嘘になるから、結果だけは聞いておきたいと思ってたんだ」

少年(覚えてない…?)

53: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:37:09.42 ID:qAvjVlqX0

少年「……」

包帯少女「少年君?」

少年「…全くのでたらめだったよ」

少年「テストに向けて僕の頭を良くしてくださいって頼んだんだけど、なんにも変わらず。今日の小テストも少女さんが前に教えてくれたところくらいしか解けなかったしさ」

包帯少女「お、ぼくの特別授業ちゃんと役に立ってるんだ」

少年「おかげさまで」

少年「だから…」

少年「…また、お願いしてもいいかな。テスト勉強」

包帯少女「勿論」ニコッ

少年「!」

少年(笑ってくれた……!)

少年「テスト終わったらさ」

少年「またここでやろうよ。二人野球」

包帯少女「ふふっ、いいね。酷い点数取って補習にでもならなければね」

少年「そこは信頼できる少女先生が付いてるから大丈夫」

包帯少女「慢心は敗北のもとですよー?」







少年(その日から、また僕たちは一緒に過ごせるのだと思えた)





54: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:38:14.84 ID:qAvjVlqX0
ーーー登校中ーーー

少年・包帯少女「「あ」」バッタリ

少年「おはよう。今日はいつもより遅いんだね」

包帯少女「…少しね、最近寝不足気味で」

少年「そんなに遅くまで勉強してるの?」

包帯少女「そんなところかな。出来の悪い生徒に教えられるように、ね」

少年「それって僕のことでしょうか…」



テクテク







少年(僕は卑怯だろうか)

少年(少女さんがあの土曜日の事を覚えてないと知った時、思わずホッとしてしまった自分がいた)

少年(彼女が包帯を巻いているその原因すら曖昧にしたままで)





55: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:40:22.80 ID:qAvjVlqX0
ーーー休み時間ーーー

同級生A「なんだよ、いいじゃねーかそのくらい」

派手娘「よくないわよ。あんたが拾いなさい」

同級生A「お前の足元にあんだし、お前の筆箱なんだから自分で拾えって」

派手娘「はっ?あんたがぶつかって落としたんでしょうが。早く拾いなさいよ」

同級生A「だからそんくらいお前が──」

派手娘「 ひ ろ え 」

同級生A「……わ、分かったよ」



少年「こわ……」

少年(派手娘さんて、いつも何かに文句付けてたけど、近頃は一段とイラついてるなぁ…)

少年「あのさ、少女さん……─!」

包帯少女「」スー..スー..

少年(寝てる…)

少年「……」

包帯少女「」スー..スー..

少年(……)







少年(だからだろう)

少年(包帯を巻いたその痛々しい姿が、段々と僕に対する当て付けに見えてきてしまうのは)





56: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:42:07.29 ID:qAvjVlqX0
ーーー放課後ーーー

包帯少女「……」カキカキ

少年「……」カキカキ

少年(……)

少年「……少女さん」

包帯少女「ん?質問?今やってるとこそんなに難しくないはずだけど…」

少年「いや、今日はちょっと、早く帰らないといけなくて。ごめんね、また明日」







少年(しょうもない嘘をついて、彼女の"無言の責め"から逃れる)

少年(当然少女さんにはそんな気はないのだろうけど、僕はどうしても彼女を直視出来なくなっていた)







ーーー昼休みーーー

包帯少女「──少年君、行かないの?」

少年「えーと……何というかその…」

包帯少女「……」

包帯少女「今日は教室で食べようか。お互い自席で」







少年(それは少女さんにも伝わってしまっているようで)

少年(今日の昼食に会話は無かった)

少年(二人前後の席なのに、彼女は終始背中を向けたままだった)

少年(………)





57: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:45:05.78 ID:qAvjVlqX0
ーーー朝 学校ーーー



シトシト



少年「はぁ……雨…」

少年(じめじめして気持ち悪い。靴下も濡れた)



包帯少女「」テクテクテク



少年(少女さん、遅刻ギリギリだ…)

テクテク

包帯少女「……」ストッ

少年「……」

少年(もう…挨拶を交わすことも……)

少年(僕は何がしたいのだろう)

少年(少女さんのことをどう思いたいのだろう…)

少年(こんな自分に手を差し伸べてくれた彼女に対して、僕がしたことと言えば…)



ーーーーー

──ここでこいつを突き落とせばいい

ーーーーー



少年(……あの声……僕の意志だったのか?)

少年(今思えば聞き覚えのある声だった……でもどこで……)

教師「──はいはい、静かにな」

教師「ホームルームの前に、お知らせだ」

教師「今日からうちのクラスに転校生が入る」

ザワザワ

「この時期に転校?」

「何やらかしたんだろうな」

「ヤンキーとか勘弁…」

教師「静かにしなさい!訳ありじゃなくて、明日の基礎学力テストを受けるために今日転入という形で来ただけだ」

教師「入っていいぞ!」

58: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:47:00.83 ID:qAvjVlqX0



ガラッ...



「……」トットットッ



「女子…!」

「すごい可愛い…」



「……」

教師「軽く自己紹介してくれるか?」

「………」

「…夢見娘です」

夢見娘「東中学校から来ました」

少年(すごく眠たそうな目をしてる)

少年(…不思議な子だな。見てるとこっちまで眠くなりそう)

夢見娘「………」

教師「………」

「……え、それで終わり?」

教師「…コホン。夢見娘、席はあそこだ。後ろの方で悪いが、何か不都合があったら言ってくれ」

夢見娘「……」



トットットッ



夢見娘「」チラッ

少年「…?」

夢見娘「……」トットッ

少年(今、こっちを見た…)

少年(僕と少女さんの方を)

少年(…気のせい…?)





59: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:49:28.66 ID:qAvjVlqX0
ーーー放課後ーーー

少年「……」カキカキ

少年(最初は偶然かとも思ったけど……夢見娘さん、事あるごとに僕らの方を見ていた)

少年(あの眠そうな目で)

少年(僕には全く心当たりがないんだけど…)

少年「少女さん、今日来た転校生なんだけどさ」カキカキ

少年「もしかして少女さんの知り合いだったりする?」

包帯少女「……」ウト..ウト..

少年「……」

少年(まただ。ここ数日ずっとそう。いつも疲れた顔をしてる)

少年(目の下の隈も日に日に濃くなってきてるような気がする)

少年「……少女さん」トントン

包帯少女「んっ」ピクッ

包帯少女「…あ、ごめん」

少年「ううん、いいよ。それより体調良くないなら無理せず休んだ方がいいんじゃない?」

少年「…僕に付き合ってるよりもさ」

少年(また僕はそんな、突き離すようなことを…)

包帯少女「………」

包帯少女「そう、だね」

少年「っ!」

包帯少女「うん。明日はテストの日だし、お言葉に甘えてぼくは帰らせてもらうよ」

包帯少女「少年君も、もう赤点レベルの科目はないだろうしね」

ガサゴソ(帰り支度)

包帯少女「」スクッ

包帯少女「…それじゃ」

少年「…うん」

テクテク

60: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:51:43.35 ID:qAvjVlqX0

少年(……)

包帯少女「──テスト勉強」

少年「?」カオアゲル

包帯少女「お疲れ様。教えたこと忘れないように、明日頑張ってね」

包帯少女「こうやって二人で勉強するのも今日が最後だから」

包帯少女「……だから……」

少年「……」

包帯少女「…この時間、嫌いじゃなかった…」ボソッ

少年(─!)

包帯少女「……」...テクテク



テクテクテク...



少年「………」

少年(………)

少年(……僕は……)

少年(……………)



そうだ、きっとこれは、妖怪のせい。友人の仲を引き裂こうとする醜いアヤカシ"ナカタガイ"がやったこと。



少年(……そういえば)



僕のノートはどこ行った?





61: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:53:38.81 ID:qAvjVlqX0
ーーー夜 少女の自室ーーー



(ベッドに仰向けになる少女)



包帯少女「………」

包帯少女「……少年君……」



ーーーーー

少年「──土曜日の、ことなんだけど…」

ーーーーー



包帯少女「……」

包帯少女(あんな…怯えた顔されたら)

包帯少女(ぼくはきみに殺された記憶があります……なんて言えるわけないじゃない)

包帯少女(あの日)



ーーーーー

少女「」ゴポゴポ...

ーーーーー



包帯少女(ぼくは確かに溺れたはずだった)

包帯少女(ぼくの口から漏れるソーダ水のような泡沫。暗い湖底に沈んでいくぼくの意識)

包帯少女(でも次に目を覚ました時、ぼくはこのベッドで横になっていたんだ)





62: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 22:57:09.48 ID:qAvjVlqX0
===昨週 日曜日===

少女「……うぅ……」

少女(苦しい……)

少女(たす…けて……)



ーーーーー

「──消え去れ化け物!この穢らわしい存在めが!」

ーーーーー



少女「…!はぁっ!」ガバッ

少女「はぁ……はぁ……」

少女「……ここは……ぼくの部屋…?」

少女「……」スッ

ポチポチ スッ



スマホ『7月7日 日曜日 07:30』



少女「日曜日……」

少女「昨日は土曜日…」

少女「!!」

ペタペタ サワサワ

少女「…ぼくの身体…」

少女「ぼく、生きてる…?」

少女(昨日のあれは夢だった?)

少女(いやでも…あの水の冷たさ、どうにも出来ない息苦しさ……鮮烈に思い出せる)

少女(それに)



ーーーーー

黒服男「」ニタァ

ーーーーー



少女(あの男…はっきりと顔は見えなかったけど)

少女(笑っていた。一瞬見えた少年君の悲痛な表情とは対照的に)

少女「……」

少女(昨日、何があったのか……ぼくに何が起こったのか…)

少女(訊いてみれば分かるかな)

少女「……」スッスッ



スマホ『連絡先 少年:080-XXXX-XXX』



少女「………」

少女「………」

少女(………)

63: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:02:39.07 ID:qAvjVlqX0



少女(あれ)



少女(あと1cm指を動かすだけ。それだけでコールが出来るのに)

少女(今少年君と話すのがとても……気後れする)

少女「……」

少女「…もうちょっと、心の準備が出来てから」



.........







ーーー夜ーーー

少女「……あー……」ゴロン...

少女(結局、彼に電話をかけることは出来なかった)

少女(ぼくの中の怖れが消えることはなく、ついぞ事実は確かめられないまま…)

少女「ぼくってこんなに臆病だったっけ……」

少女(ま、明日になれば嫌でも顔を合わせることになるし、明日訊けばいいか)

少女(さすがに面と向かって言えないことはないよね)

少女(……そう決めたら、眠くなってきた)

少女(今日はほとんど何もしてないはずなのにな……)

少女「……」ウトウト

少女(また…明日から……彼との日常に、戻れ……る……)



コツッ、コツッ



少女(……?)



コツッ、キィ...



少女「……!?」バッ

少女「な、なにこれ…!?」



「……」ユラ..ユラ..



少女(ぼくの目がおかしくなった…?目の前に、巨大な鳥類の足骨のような物体が立っている…)

少女(骨盤から下までしかない。最も奇妙なのは…膝の関節らしき部分に挟まってる目玉)

少女(ゆらゆら揺れながら、まるで意思を持っているようにぼくの方に…)

64: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:05:50.66 ID:qAvjVlqX0

「……」コツ..コツ..

少女「ひっ…!こ、来ないで…!」アトズサリ

「……」コツ..コツ..

少女「あ……や……」

カラン

少女「!」

少女(ぼくのバット…)

少女「……こ、の…!」ブォン



ガシャン!



パッ...

少女「消えた……?」

少女「なんだったの、今の…」

少女「…!お父さん、お母さん、みんな大丈夫かな…!」

ガチャッ トットットッ







ーーーーーーー

少女「……」トットッ

少女(みんな寝てた。何事もないようにぐっすり)

少女(…けど、普段この時間でも起きてるお父さんまで寝てるのは、偶々そうなだけ…?)

少女「……ぁ」



「……」フワフワ



少女(今度は……何?)

少女(風鈴ともクラゲとも似つかない生物(?)が玄関前を漂ってる)

少女「……」...タッタッ



バキン!



少女「……もしかしてこいつら、外から来てる?」

少女(…確かめないと)

カチッ



ガチャッ



少女「……」テク..テク..

少女「……え」

少女「嘘だ……」

65: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:20:16.77 ID:qAvjVlqX0





(無数の目玉の怪物)

(足の異様に長いハリネズミのような生物)

(空飛ぶあばら骨)





少女「これは…夢……」

少女「起きたら忘れられる悪夢…」



目玉怪物「」ギョロ



少女「やっ…!」

バタン! カチッ

少女「………ぷはっ!」

少女「ふぅ……ふぅ……」

少女「家中の窓、閉めてこないと…!」

ドタドタ



.........





66: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:22:13.28 ID:qAvjVlqX0
ーーー少女の自室ーーー

ガチャ...

少女「……」フラフラ

少女(……なんとか、外から入れそうな所は全部塞いできたけど……)

少女「覚めない……覚めないよ」

少女(こういうの、明晰夢って言うんだっけ。夢の中で夢を自覚出来る夢)

少女「…また横になれば、次は朝になってるよね」

少女(忘れよう。あんな異様な光景。それこそ、夢に出てきそうな非現実)



チクッ



少女「痛っ」

「……」

少女(針玉みたいな物体が足元に…!)

少女「」ブンッ

グシャ!

少女「……いつの間にここに居たんだろ…」



ゾクッ



少女「!」

少女「え…あ……」

グッ(顔と足を押さえる)

少女「い……たい…!」

少女(なに…!?痛い、痛いよ…!)

少女(右目が焼けるように痛い!)

少女(左腕が、右足が千切れそうなほど痛い!)

少女「ぐぅぅ…!」トサッ

ゴロ、ゴロン



バタバタ ググ...





ーーー翌朝ーーー

少女「………」

少女「………ハッ」

少女「……朝?」

少女「腕……足……付いてる」

少女「右目も、ちゃんとある」

少女「………」

少女(………)



=======

67: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:23:53.69 ID:qAvjVlqX0



包帯少女(その日からぼくの身体にあの痛みが染み付いて…こんな大仰な包帯までする始末)

包帯少女(少し遅れて学校に登校した時、周りは当然びっくりしていたけど、ぼくはもっと驚いた)

包帯少女(だって……彼に──少年君に話しかける勇気がまるで湧かなかったから)

包帯少女(以前の自分なら躊躇いなく出来ていたはずのこと。どうして話しかけることすら出来ないのか……思い通りに動けない自分に嫌気が差してきた時、彼の方から声を掛けてくれた)



ーーーーー

少年「──またここでやろうよ。二人野球」

ーーーーー



包帯少女(怯えた顔の少年君についた、ぼく自身の怯えた嘘)

包帯少女(でもそのおかげで、彼に少しばかり元気が戻った気がした)

包帯少女(結局土曜日の事は無かったことにしてしまったけど、それで少年君との日々が戻ってくるなら……そう思っちゃったんだ)

包帯少女「……」

包帯少女(けど、違った)

包帯少女(どんなに嫌だと思っても、無かったことに出来ないこともあった)

包帯少女(それは……あの奇怪な生き物たち)

包帯少女(ぼくはあれらを"オニ"と呼ぶことにした)

包帯少女(あれから毎夜、オニ退治を続けている。…おかげで寝不足の日も続いてる)

包帯少女(触らぬ神に祟りなし。放っておけばいいものをと言う人もいるかもしれない)

包帯少女(でもぼくは見てしまったんだ)

包帯少女(一昨日の晩。外のオニを減らそうとしていた時、1匹のオニが通りがかった通行人に触れた)





包帯少女(その通行人は間も無く、オニになった)





68: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:26:29.44 ID:qAvjVlqX0

包帯少女(あの人がどこの誰だったのかは知らない。けれどあの光景が嘘じゃないなら……)

包帯少女(……ぼくが、やらなくちゃ)

包帯少女(この町で何かが起きている。それに気付いているのは多分、今のぼくくらい)



ーーーーー

少年「──今日はちょっと、早く帰らないといけなくて。ごめんね、また明日」

ーーーーー



包帯少女(……少年君……)

包帯少女(何となく察していたのかな。今のチグハグなぼくを)

包帯少女(まるで腫れ物を扱うかのような態度……)



ーーーーー

少年「──僕に付き合ってるよりもさ」

ーーーーー



包帯少女(………)

包帯少女(…少し、寂しい…)

包帯少女「……」ゴロン...

包帯少女(……大丈夫、安心して。きみはぼくが守る)

包帯少女(きみをオニにはしないから)

包帯少女「さてと…」

包帯少女(今日も行こう)

包帯少女(ここ数日でいくつか分かったことがある)

包帯少女(まず、オニは夜にしか姿を見せない。次に、普通の人にはオニの姿は見えないみたい。そして──)

包帯少女(どうやらオニは皆、南町神社の方角からやって来ているようなんだよね)

包帯少女「……」

ゴトッ(バットを手に取る)





69: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:29:17.03 ID:qAvjVlqX0
ーーー石段前ーーー

ヒョコヒョコ

ユラリ...

包帯少女「……いるいる」

包帯少女(見たこともないような奴らがウヨウヨ…)

包帯少女(こいつらは何だろう……足から胴まで全部背骨のような身体のくせに、頭の部分には大きな花…?が乗っかってる)

包帯少女「………」

「……」コト..コト..

包帯少女(オニはこちらを視認したからといってひたすらに飛び掛かってくるわけじゃない)

包帯少女(ただ……気が付くと──)

包帯少女「!」バッ

ブォン ガシャン!

包帯少女(…すぐ近くまで寄っていたりする)

包帯少女「…っ」

包帯少女(奴らに触れられてもないのに、もう痛み始めてきた)

包帯少女(……この包帯部位の痛みも、ひしめくオニたちを消すことが出来れば、一緒に消えてくれるのかな)

包帯少女「……」

タッタッタッ



ブォン!



.........





ガシャァン!

包帯少女「一体何匹いるの…」ハァ..ハァ..

包帯少女(斃しても斃してもキリがない…!)

包帯少女(…やっぱり、元を断たないとダメなんでしょうね)

包帯少女「……」ミアゲル

包帯少女(考えられるのは、この石段の上…)

包帯少女(……ともすれば……あの池の付近、だったり……)

70: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:31:59.16 ID:qAvjVlqX0





少年「──この上に、落としてきたのかな…」





包帯少女「!?」

包帯少女「少年君…!?なんでここに…!」

少年「こんな時間に行くのはちょっと怖いけど…あのノートが無いと僕は…」

包帯少女(ノート?…アヤカシノートのこと?)



「……」ジリジリ...



包帯少女「!少年君、危ない!」

少年「………」

包帯少女「…くっ」ダッ

タタタッ!

包帯少女「彼に手を出さないで!」ブンッ

ガシャン!

──バシッ

包帯少女「やっ…!」

包帯少女(蹴られた!?近付き過ぎた…!)

包帯少女(腕が痺れて……それより!)

包帯少女「少年君、無事!?」

少年「…やっぱり、怖いな。もうあそこには行きたくない…」

包帯少女「……少年君?」

少年「新しいノートにでも書くかな。でもそれだと──」ブツブツ



トボトボ...



包帯少女「………」

包帯少女「聞こえて、ないの…?」

包帯少女(……見えてもいないみたいだった……)

包帯少女「まさか、無視されたとかじゃ…」

包帯少女(それはないと思いたい、けど)

71: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:33:32.03 ID:qAvjVlqX0

フラ...

包帯少女「おっと…」

包帯少女(体のバランスが……っ!?)

包帯少女「腕が…!」

包帯少女(取れてる…!ぼくの左腕!)

包帯少女(けどなんで、取れた左腕の部分だけ、痛みが無くなってる)

包帯少女「あんなところに落ちてるっ…」

タッタッ(駆け寄る)

包帯少女(きっとさっき蹴られた時だ)

包帯少女(…嫌な感覚。ぼくの身体がぼくじゃなくなるみたい…)

包帯少女「……」ヒロイアゲ

包帯少女「………」

包帯少女(………ぇ………)



(拾った左腕の手のひらに、目玉)



包帯少女「……」

...トクン

包帯少女「………」

トクン、トクン

包帯少女「………」

ドクン、ドクン

包帯少女(…………)



──ドクンッ





72: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/07(月) 23:36:24.69 ID:qAvjVlqX0







ーーーーー

「──私と生涯を共にして頂けませんか?」

ーーーーー







ーーーーーーー



ピピピピッ! ピピピピッ!



包帯少女「!!」ガバッ

包帯少女「……朝……」

包帯少女「……」スマホカクニン

包帯少女「金曜日……テストの日……」

包帯少女(腕は付いてる…ちゃんと)

包帯少女「……」ニギニギ

包帯少女(…普通の、腕…)

包帯少女「………」

包帯少女「………」

包帯少女(分かんない。何もかも)

包帯少女(この町のオニたちも、あの黒服の男も、一度溺れたはずのぼく自身も)

包帯少女(……どうしよう……)

包帯少女(今、すごく……)





──怖い





73: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/08(火) 01:06:06.19 ID:zHsEh1qz0
ーーー神社ーーー

幼女「……」

幼女「……」

幼女「………」

幼女「……やはりそうか」

幼女「人にも妖禍子(アヤカシ)にも非ず。その者の意図、人の世を亡くす所業」

幼女「…なれば、我は其れを阻もう」

幼女(何故ならば、我が止めねばならぬ因果が、そこに在る故)

幼女「だがあれ程の狂気、如何にして諫めるべきか…」

幼女「……」

(アヤカシノートを手に取る)

幼女「………」パラ..パラ..

幼女「……」

幼女「………」パラ..パラ..

幼女「………」



(最初のページが白紙)



74: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/08(火) 01:06:46.19 ID:zHsEh1qz0
幼女「………感じる」

幼女「……」スッ



...ヒュオオォ



パラ、パラパラ



パラパラパラパラ!





──ポンポン、ポンッ





イロヌリ瘴女「……!」

イロヌリ瘴女「♪」ヌリヌリ

ピョン

イロヌリ瘴女「~♪」ヌリヌリ



イイフラシ「なー聞いてくれよ。この前麓に住んでる偏屈爺さんがさ──」ペチャクチャ



カネクイ蟲「……」モゾ..モゾ..

カネクイ蟲「……ヴァ」



幼女「……成る程」

幼女(見つけたり、この書物の力。創造主たるかの少年の思想の具現化である)

幼女(……然し、未だ全ての実体を捉えることは敵わず)

幼女「………」

幼女「差し当たりて」

幼女「行使の余地は有、か」





76: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:36:26.87 ID:AthaJ31d0
■第三幕 ギタイするもの■



ーーーーーーー



お困りですか?みなさん!



世の中って暗くなっちゃうことばっかりですよね。

毎日毎日辛そうに残業しているそこのあなた!

学校のテストで親に叱られてるそこのあなた!

友達と喧嘩して泣いているそこのあなた!

思い通りにならないなって、こんな世界嫌だなって、思っていませんか?

でもご安心を!

そんな不安や憂鬱、私が全部変えてご覧にいれましょう。



愛と勇気に満ち足りたトラブルシューターこと私、猫又娘をどうぞよろしく!





77: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:39:18.00 ID:AthaJ31d0
ーーー校門前ーーー

猫又娘「ふんふ~ん♪」テクテク

猫又娘(今日も良い天気~♪)

猫又娘(雲一つ無い快晴!)

猫又娘(…きまつテストなんてものも無かったら、完璧なんだけどなー)

猫又娘「おや?」



女生徒「……」ソワソワ



猫又娘「?」

猫又娘(この子が手に持ってるのは、手紙かな?)



男子生徒「」テクテクテク



女生徒「ぁ……!」

女生徒「うー…」イジイジ

猫又娘「…ほほう、これは」

猫又娘(さてはあれはラブレターというものでは!)

猫又娘(……)

猫又娘(手紙を奪う→走って男子生徒にぶつかる→手紙を落とす→女生徒「あ、それ私のです」男子生徒「きみの?」女生徒「あの…あなたが好きです!」)

猫又娘「これだ!」

猫又娘(ではでは早速)

ドロンッ

仔猫(やっちゃいますよー!)

スタッスタッ!

78: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:39:57.06 ID:AthaJ31d0

女生徒「どうしよ…」

女生徒「渡したい、けど…」オロオロ



スタッスタッスタッ



仔猫「」ヒョイッ

女生徒「あっ」

仔猫「」スタタタ

女生徒「ま、待って!」

仔猫(よしよーし。後はこのまま──)

女生徒「──危ないよ!」

仔猫「フニャ?」



「うわっ!?」キィー!



ゴチン! スポッ

ドシャッ

「わー痛そ…」

「自転車漕いでた奴大丈夫か?」

「猫ちゃんの顔面ヒットからの綺麗に籠に……見事なホールインワンだ」

「いつつ……何だ…?猫?」



仔猫in籠「ミャ……」ピク..ピク..





あれ、おかしいなー。





79: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:40:55.60 ID:AthaJ31d0
ーーー休み時間ーーー

猫又娘「さてさて、みんな集まってくれたかな?」

猫又娘「本日お見せするのは飛び出すマジックだよー!」

「わぁ…!」

「また新しいネタ仕入れてきたんだ」ハハ

「今日こそトリックを暴いてやるわ…」

猫又娘「ここに取り出したるはみんな大嫌い数学の教科書」

猫又娘「これをこーして、こーすると……」

ビヨーン

「おぉ、伸びた?」

「バネみたい…!」

猫又娘「とまあ、楽しい遊具に早変わりってわけですよ!」

パチパチパチ

猫又娘「えへへ」ビヨンビヨン

「……あ。でも猫又娘さん、その教科書……」

猫又娘「んー?」チラッ



名前欄『派手娘』



猫又娘「……!?」

猫又娘「…す、すり替えマジックも同時上映!…なんちて」

派手娘「へぇー。なら次はあんたの頭の中身ごと入れ替えてもらいたいわねぇー」

猫又娘「!!??」バッ

派手娘「どうしたの?やらないの??」

猫又娘「え、えとえと…」

猫又娘「大丈夫大丈夫!こんなのぐるぐるっと巻き戻せばすぐ元通りに──」ビリッ

猫又娘「あ」

派手娘「………」

猫又娘「………」

派手娘「………」



派手娘「」ニコッ



ニャアアアアアァァ!





うーん。失敗ばっかり、なかなかうまくはいかないもんです。





80: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:43:47.11 ID:AthaJ31d0
ーーー郊外ーーー

番犬「グルルル…」

「……こ、こわいよ……」プルプル

(この先行きたいのに、どうしよう…)



猫又娘「──きみ、どうしたの?」



「!あ、えっと…」

猫又娘「…向こうに行きたいんだ?」

猫又娘「けどそこのワンちゃんのせいで怖くて通れない…違う?」

「……」ションボリ

猫又娘「ふふん、お姉ちゃんに任せて」

「え…?」

猫又娘「」タッタッタッ

「あ!近付いたら…!」

番犬「ウー…ワンッ!ワンワンッ!」

猫又娘「あなた、きちんとお留守番できるお利口さんなんだね!…そんなあなたにプレゼント!」クルクルヒョイッ

ポンッ

「え……えぇ…!」



(ブサカワ衣装&メイクの番犬)



番犬「…!?」

猫又娘「どう?これなら怖くないんじゃない?」

「……あははは!」

「なんかサーカスのお犬さんみたい!」

「お姉ちゃん、ありがとう」

猫又娘「どーいたしまして♪」





どうですか?私やるときはやるんです!





81: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:47:04.83 ID:AthaJ31d0
ーーー月曜日 教室ーーー

猫又娘「おはよー!」

「あ、猫又娘ちゃんおはよう」

「いつ見ても元気よねー。逆に安心するわ」

猫又娘「それだけが取り柄ですから♪」

アハハッ ソンナコトナイヨー

猫又娘(そうそう。何はともあれ笑顔!)

猫又娘(世の中難しいことだらけだけど、一人でも多く笑ってくれれば、世界も少しは明るくなるから)

猫又娘(……きっと"キミ"も)

猫又娘「ん?」ガサッ



(机の中にバツだらけの答案用紙)



猫又娘「……」

猫又娘(…ほーんと、人間社会って難しいなー)

「ねね、猫又娘ちゃん!数学の課題プリントってやった?」

猫又娘「プリント?」ハテ?

「よかったぁ~、実は私もやってなくてさ。今日小テストあるとかすっかり忘れてて…猫又娘ちゃんのことだからやってないと思ってましたよ~仲間だね仲間♪」

猫又娘「数学の小テストぉ?」

猫又娘(それでこんなに騒がしいんだ)

猫又娘「みんな慌てなくていいのに。そんなの変えちゃえばいいんよ、こんな風に!」

ポンッ

「おぉ…」

「また猫又娘の手品か?」

猫又娘「にっしし。これで解決!」

派手娘「そのプリント」

猫又娘「」ギクッ

猫又娘(派手娘さん…何かと私に突っかかってくる子。ちょーっと苦手な子)

派手娘「提出用なんだけど、元に戻せんの?」

猫又娘「…あはは、平気平気」

派手娘「ふーん」

派手娘「あと、やるなら先生の目の前でやってくれば?追加のプリントいっぱいもらえるわよ」

猫又娘「いやぁ…プリントだけじゃ済まなさそうだから遠慮しときますよー…」ハハハ...

猫又娘(うぅ、睨まれてる…。前に教科書破っちゃったのそんなに恨まれておりますか…)

82: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:48:30.20 ID:AthaJ31d0



キーンコーンカーンコーン



教師「ホームルーム始めるぞ。席着けー」ガララ



バタバタ



猫又娘(でも私は挫けないよ!)フンス

猫又娘(いつか派手娘さんの仏頂面だって笑顔に変えて見せるんさ!)

猫又娘(どんな困難にもめげずに立ち向かう。それができなくしてトラブルシューターは名乗れませんからな)



でもさー、大きな困難って意外と思いもしないタイミングに訪れたりするんだよねー。



ガラッ

「すいません、遅くなりました」



猫又娘「うそ…」



自分の身近なところにさ。





包帯少女「……」





ザワッ

教師「どうしたんだ…それ。なにでそんな怪我を…」

包帯少女「いえ、怪我というわけでは……」

包帯少女「…あまり気にしないでください」





そう。例えばこれなんかはきっと、私の出番なわけです。





83: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:50:46.43 ID:AthaJ31d0
ーーー昼休みーーー



ヒソヒソ



「ねーあの包帯って……」

「さぁ……何も話してくれないし、人に言えないことでも……」



ヒソヒソ...



包帯少女「……」

猫又娘「……」チラッ

猫又娘(少女さん、だったかな)

猫又娘(クラスの中でもあんまり目立たない子だけど、すごく責任感が強いんだよね。引き受けたこととか掃除とか、絶対にサボったりしないし)

猫又娘(最近、少年君とよく一緒にいる。あの二人少しずつ笑うようになってきたからお互いに相性の良い間柄だったんだと思うけど)

猫又娘(…今日はあの子たち、全然喋ってない)

少年「……」スクッ

少年「少女さん」

包帯少女「…?」

少年「…お昼、食べに行かない?」

猫又娘(さすが、男の子!)

猫又娘(これなら私の出る幕は無いかも?)

猫又娘(……でも、気になるなぁ)

猫又娘(少女さんを見た時に感じた、あの包帯の下の……)



猫又娘("私と同じ"感覚)



猫又娘「……」

猫又娘(…もうちょっと、彼らの行く末見守りますか)





84: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:51:52.82 ID:AthaJ31d0
ーーー金曜日 テスト当日ーーー



カキカキカキ サッサッ



猫又娘「……」カキ...

猫又娘(うーむ…)

猫又娘「………」

猫又娘「」カキカキ

猫又娘「……」ジッ

猫又娘(……にゃー!もう分かりませーん!)

猫又娘(ついこの前きまつテストなるものが終わったばかりなのにまたこんなテストなんて……多過ぎ!)

猫又娘(みんなさー、もっと楽しいことしよーよ)

猫又娘「……」チラリ

少年「……」カキカキ

包帯少女「」グッタリ

猫又娘(…月曜日、あの子たちは何を話したんだろ)

猫又娘(最初は、またこれまで通り二人仲良く過ごしてるように見えた。……けどその認識は間違ってたみたい)

猫又娘(二人の間の拭えない隔たり。そんなものが見え隠れするみたいに、彼らの距離が少しずつ開いているような気がして)

猫又娘(今日それは確信に変わった)

猫又娘(あの二人、目も合わせてない)

二つ編み「……」ソワソワ

二つ編み「」カミグシャァ

猫又娘(いつも誰より集中して問題を解いてる二つ編みさんも、どこかおかしいし)

夢見娘「……」カキ..カキ..

猫又娘(突然やって来た転校生ちゃん。あの子なんて間違いなく"私と同じ"……)

派手娘「……」ホオヅエ

派手娘「…?」チラッ

猫又娘「っ」メソラシ

猫又娘(最近ますますトゲトゲオーラが増してきた派手娘さん…そのうち吊るされそうでちょっと怖いです…)

85: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:53:12.18 ID:AthaJ31d0

猫又娘「………」

猫又娘(…分からないことだらけだなー)

猫又娘(けど一つだけ、間違いなく言えるのは)

猫又娘(──この世界に悪いことが起きようとしてる)

猫又娘(そう言えるのはなにも、みんなの様子がおかしいからってだけじゃなくて、私がこの目で直接見たから)



猫又娘(夜の町を闊歩する有象無象のお化けたち)



猫又娘(あれらがどんな生き物だったところで、とてもじゃないけど友好的には見えなかったもん)

猫又娘(………)



Q. 私に何ができますか?

A. この世界を守る!

Q. どうやって?

A. そりゃもう"変える"しかないわけです。唯一私の得意なこと!



猫又娘(決まり)

猫又娘「……」フゥー

猫又娘(もう少し、待っててね)

猫又娘(ギクシャクした間柄も、収まらないイライラも、のさばるお化けたちも)

猫又娘(私がみーんな変えてあげるから!)

猫又娘「」クスッ





86: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:55:29.25 ID:AthaJ31d0
ーーー翌週月曜日 学校ーーー

教師「全員お待ちかね、基礎学力テストの採点が終わってるから、順番に返却していくぞー」

「誰も待ってないです!」

「ずっと返さなくていいのに…」

教師「これくらいでブーたれるなよ?入試はこういう基礎に加えて標準問題、応用問題もあるんだからな」

「うぇー……」



.........







ーーーーーーー

「ねー二つ編みさん職員室に呼ばれてるって本当?」

「なんかテストの点めちゃくちゃ低かったみたいよ?」

エー ウソー



少年「……」ペラ..ペラ..

少年(うん。我ながら悪くない出来かも)

少年(特にこの科目、もっと悪いと思ってたのに)

少年(……少女さんとの特訓のおかげなんだろうな)



ーーーーー

包帯少女「──この時間、嫌いじゃなかった…」ボソッ

ーーーーー



少年(………)

少年(少女さんはどうだったんだろう。テスト中も相当、机に突っ伏してたけど…)

包帯少女「」スー..スー..

少年「……」

少年(……こんなに近くに居るのに、なんでだろう)

少年(すごく遠く感じる…)

少年「………」

少年(ノートも無い)

少年(少女さんもいない)

少年(今の僕には、何も無い)

少年(……)

少年(いや、元に戻っただけ…か)

少年(少女さんと知り合う前、ノートに逃避する前の自分に)

87: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:57:39.03 ID:AthaJ31d0

同級生A「よぉ、少年」

同級生B「」ニヤニヤ

少年「っ!…なんだよ」

同級生A「テストどうだったん?見してよ」

少年「なんでだよ」

同級生A「いいから見せろって」グイッ

少年「あ、おい!」

同級生B「うわ、マジか。俺こいつに負けたわ」

同級生A「だっさ(笑)。でも俺もどっこいどっこいって感じ」

同級生A「僕ちゃん成績上がって偉いねぇ~」

同級生A「…やっぱあれか?放課後イチャイチャ勉強してたからかぁ?こいつと」ニヤ

包帯少女「」スースー

少年「別に普通に勉強してただけだけど」

同級生B「またまたー」

同級生A「お前、こいつに何かやらかしたんだろ?」

少年(…!)ドキッ

同級生A「こいつが変な包帯巻き出してからお前ら明らかに険悪になってったもんな」

同級生A「どうせあれだろ?初めて出来た彼女だからとか浮かれて襲いでもしたんだろ。んで、拒否られた腹いせにボコったんじゃねーの?」

同級生B「包帯着けさせる怪我とかやばすぎ」ケラケラ

少年「は!?するわけないだろそんなこと!」

少年「第一付き合ってもいないからな!」

同級生A「そうやって必死になるとこますます怪しー!」クハハ

同級生B「ワンチャン階段から突き落としたとかじゃないか?」

少年(──っ)

同級生A「もうそれ犯罪だろ」

ゲラゲラゲラ

少年「………」

同級生A「でもよぉ、良かったな!これで女子に甘えなきゃ生きてけない変態男子の汚名は免れるじゃん」

同級生B「今思うと、こいつが少女の弱み握ってた説あるよな。こいつにいきなり女子との接点とか出来るわけないし」

同級生A「そしたら殴ってまで言うこと聞かせようとしねーんじゃね?」テクテク...

同級生B「殴ったことは決定なのかよ(笑)」テクテク...



(離れてく二人)



少年「……」

少年「……」

少年「……違う……僕は………」

少年「あんなこと………」

包帯少女「……」





88: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 00:59:33.92 ID:AthaJ31d0
ーーー放課後ーーー

「猫又娘ちゃんってさ、トドノツマリ様って信じる?」

猫又娘「えー?」

「みんな結構噂してるでしょ、最近。南町神社にいるっていう願いを叶えてくれる神様」

猫又娘「……居たら面白いとは思うかなー。神様ではなさそうだけど」

「そうなの?」

猫又娘「その噂だと、対価としてなにかとんでもないもの奪われるって話だよね?」

猫又娘「…それはむしろ悪魔との契約に近いのでは?」ヒュードロドロ

「こわっ。その効果音どこから鳴ってるの?」

「でもそうだよね。世の中そんなにうまい話はないよねー」

猫又娘「うむうむ」

猫又娘(……けど私は知ってる)

猫又娘(あの神社には人じゃない"何か"がいる気配がある)

猫又娘(この頃見かけるお化けたちとはまた少し違う気配……もしやあの生き物の親玉!?)

猫又娘(って思ったりもしたけど…そういう気配じゃないんよね。よもや本当に願いを叶える神様なんているわけないし)

「それはそうとさ!猫又娘ちゃん今日は新しい手品はしないの?」

猫又娘「へ?」

「実は密かに楽しみにしてたり」エヘ

猫又娘「うーん…今日はねー」チラッ

包帯少女「……」グデ...

猫又娘「すこーし忙しいかもだから──」



夢見娘「私も……見てみたい……」



猫又娘(!夢見娘さん…?)

夢見娘「……」

「ほ、ほらほら!夢見娘ちゃんもこう言ってるよ!」

猫又娘(この子、普段誰とも関わらないのになんで…?)

夢見娘「……」ウズウズ

猫又娘「……分かりました!じゃあ一回だけ」

「やった!」

89: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:01:08.51 ID:AthaJ31d0

猫又娘「じゃ始めるよ?」

猫又娘「…こちらはなんでしょう?」スッ

「それ、今日返されたテスト?」

猫又娘「ご名答!もちろん全部私のです」パララ

「…猫又娘ちゃん、これ夏の補習に引っかかっちゃってるんじゃ…」

猫又娘「と思うでしょ?でもこーすれば…」

サササ スッ

猫又娘「じゃん!全教科満点に早変わり!」

「…?けど点数変わってないよ?」

猫又娘「よーく見て」

「……」ジッ

夢見娘「……」ジー

「……あ、百点満点じゃなくなってる」

猫又娘「その通り!ちなみにこっちの模範解答もみんな私の点数が満点になっております」

「あはは!なにそれ地味だけどすごい!」

夢見娘「……」パチパチ

「ねーいっつもさ、それってどうやってるの?一つくらい仕組み知りたい!」

猫又娘「それは秘密です♪」

猫又娘(だってタネも仕掛けもありませんから)



包帯少女「」テクテク

ガラッ



猫又娘「!」

猫又娘「今日はここまで!私もう行かなくちゃ」

猫又娘「じゃね!」ササッ

「今度私にだけでも教えてよー!」

夢見娘「……」テフリフリ

夢見娘(……)

夢見娘「……まぶしい……」ポツリ

「?」





90: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:02:52.40 ID:AthaJ31d0
ーーー校門前ーーー

タッタッ

猫又娘「あっれー?見失った?」



包帯少女「」スタスタ



猫又娘(あ、居たっ)

猫又娘「」タッタッタッ

猫又娘(少女さんと一緒に帰って、彼女の話を聞き出す。それが今日の私のミッション)

猫又娘(なんとなくだけど、ちょっと前から現れお化けたちと、あの子が包帯をして様子がおかしくなり始めたこととは、繋がってる気がするんよね。あくまで私の勘)

猫又娘(そしてきっと、あの子は苦しんでる)

猫又娘(誰にも言わず…言えず、重たいものを抱え込んでる)

猫又娘(そういう雰囲気がひしひし漂ってるんだ)

猫又娘「むむ?」...ピタッ



同級生A「な、試しに泣きついてみてくれねー?僕とよりを戻してくださいお願いしますぅってよ」

同級生B「足蹴にされんのがオチだろうな」ハハ

少年「…だから付き合ってないって」



猫又娘「あれは……」

猫又娘(少年君、またあの人たちに絡まれてる)

猫又娘(…少女さんは気付いてないのかな。少し前まで少年君の手助けをしてたはずだよね…)



包帯少女「」スタスタ



猫又娘「……」



同級生A「」ペチャクチャ

同級生B「」ケラケラ

少年「……」



猫又娘(どうすべきか)

猫又娘「ぐぬぬ…」

猫又娘(……ここは!)

91: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:04:23.54 ID:AthaJ31d0

猫又娘「」クルリッ

ドロン



同級生A「──なーそれくらい言えや。あいつお前に何がしたかったんだよ。別れた後なんだからどうでもいいだろ教えろって」

ガチガチ

少年「っ…知らない。僕が知りたい」

同級生B「嘘つけ。あんな調子乗っておいて知りませーん、じゃないわ」

ガチガチガチ

同級生A「だーもうなんだよ!さっきからうるせ──」



がしゃどくろ「……」ガチガチ



同級生A「………へ?」

がしゃどくろ「」カタカタカタ!

同級生A・B「「ぎゃあああ!」」ダッ

タッタッタッ!

がしゃどくろ「」カタ...

がしゃどくろ「……」

ドロン

猫又娘「ふぅー。案外怖がりさんなんだねぇ。かーわいー」クスッ

猫又娘「さて」

猫又娘「──お困りですか?おにいさん!」

少年「」キゼツ

猫又娘「……ありゃ」

猫又娘「もしかして、やり過ぎた?」タハハ...



「今すごい声聞こえなかった?」

「したした!向こうに走ってった男子だよ!」

「あそこに居るのって1組の猫又娘さんじゃない?」

「そばに男の子倒れてるけど…また悪戯?」



ザワザワ



猫又娘「あ……やばっ」

少年「」

猫又娘「…ちょっと失礼」カツギアゲ

オォ..モチアゲタ

猫又娘「それではみなさんごきげんよう!にゃははー!」ピューン



スタタタ...





92: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:06:33.01 ID:AthaJ31d0
ーーー小山の麓ーーー

少年「………」

少年「……ハッ!」

少年「ガイコツ!喰われる!?」ガバッ

少年「…?……?」



猫又娘「いやー、さっきはごめんね?まさか気失うとは思わなくって」



少年「猫又娘さん…?」

少年「え?ってことはあのガイコツは」

猫又娘「思ってる通り、それは私でした」ニシシ

猫又娘「きみがつまらなそーにあの二人に絡まれてたからさ、ちょっと脅かしたつもりだったんだけど…怖過ぎたみたい?」

少年「うっ」

少年(気絶しちゃうとか、恥ずい…)

少年「…あれは、出来良過ぎだよ。いっそお化け屋敷にでも住んでみれば?」

猫又娘「そんなに褒められると照れるなぁ」

少年「……もうそれでいいよ」

猫又娘「もっかい見る?」

少年「やめて」

少年「……そういや、ここどこ?」

猫又娘「ここ?人目に付きにくいところ!…っといったらこの辺しか思いつかなくてさ。神社のあるお山の裾だよ」

猫又娘「さすがに学校の目の前にきみを寝かせとくわけにもいかないので、連れてきたんよ」

少年「運んだの?…僕を!?」

猫又娘「うむ!」

少年(意外に力持ちなんだ…?)

少年「……その、一応、ありがとう」

猫又娘「んん?」

少年「あいつら追い払ってくれたんだよね。僕は倒れちゃったけど…」

少年「……」

少年「猫又娘さんは、なんでいつもそんなに明るいの?」

少年「普通さ、どこかしらで落ち込んだり滅入ったりするときがあるじゃん」

少年「でも猫又娘さん、いつ見ても笑ってるか叱られてもケロっとしてるか…」

猫又娘「あはは…」

少年「……正直、羨ましいよ。どうしたらそうなれるのかな。下らない悩みとかさ、全部吹き飛ばすんだ」

少年「そしたら……」

猫又娘「……」

93: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:07:50.64 ID:AthaJ31d0

猫又娘「悩みたまえ、男の子よ」

猫又娘「そうやって苦悩のときがあるからこそ、報われた瞬間の尊さを強く感じることができるんだよ」

猫又娘「…なーんて!どう?今のそれっぽくなかった?」

少年「えぇ…」

猫又娘「そんな顔しないでよぉ。私、人の気持ちとか学校のテストとか難しいことよく分かんなくってさ」

猫又娘「だから単刀直入に訊くね?」

猫又娘「──きみ、少女さんと何があったの?」

少年「っ……」

少年「…別に、何もないよ」

猫又娘「強がんなくていいよ。ここんとこのきみたちを見てれば何かしらあったなんて明白じゃん」

少年「……」

猫又娘「あんね、私はきみを責めようだとかからかってやろうだとか思って訊いてるんじゃないんよ」

猫又娘「だって苦しそうにしてるから。きみも、少女さんも」

少年「………」

猫又娘「あの包帯を巻いてから、だよね。きみたちの関係がねじれ始めたのは」

少年「……包帯のことについては、本当によく分かってないんだ。ただ、怪我はしてないって。少女さんは夜になると痛み出すから着けてるだけって言ってた…」

猫又娘(痛むだけ……そんなことある?包帯で痛みが収まるわけでもないのに巻いてるってそれは)

猫又娘「…尋常じゃない痛み、とか」

少年「!そ、そうなのかな…!?」

少年「確かに最近はよく学校で寝てて、もしそれが痛みのせいで夜に眠れてないからだとしたら…」

少年「……病院、行ってるんだよな……?」

猫又娘「病院で解決できるものならいいんだけどね…」

少年「?それってどういう…」

猫又娘「それより!今包帯のことについて"は"って言ったよね。少女さんに何があったかやっぱ知ってるんだ?」

少年「う、ん……」

少年「知ってるといえば知ってるけど、知らないといえば知らない……みたいな」

猫又娘「??」

少年「………」

猫又娘「…話すのが、辛い?」

少年「……」

少年「………僕……少女さんに酷いことをしたんだ」

少年「そんなつもりはなかったのに、少女さんを……少女さんをっ……」

少年「──池に、突き落とした」

猫又娘(……)

94: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:09:32.44 ID:AthaJ31d0

少年「……少女さん、そのまま上がってこなくて……僕も飛び込もうとしたけど、池の中に変な手が蠢いてるのが見えたら、すごく怖くなっちゃって…」

猫又娘「手?」

少年「うん。それに、声が聞こえたんだ。少女さんを、ここで突き落とせって」

少年「初めは僕の中の声かと思った…けどあれは、なんか違うような……」

猫又娘「……その話本当?だったらあの子は今頃──」

少年「少女さんは身に覚えがないみたいなんだ。彼女の中ではその日、僕と一緒に居なかったことになってる」

少年「……だから僕も、あれは夢だったのかなって、考えてる……」

少年「たまに妙にリアルな悪夢を見ることあるでしょ?それと同じさ」ハハ...

猫又娘「夢、ね」

猫又娘「少年君は、たかが夢一つ見ただけで人を突き離しちゃう人間さんだったのかな?」

少年「つ、突き離すなんて……」

少年(………)

少年「……分からないんだよ……」

少年「僕だってまた少女さんと一緒に居たかった…他愛ないこと喋って、笑って」

少年(そんな当たり前を楽しいと教えてくれた彼女と)

少年「けどダメだった。先週からずっと、少女さんとどんな顔で接すればいいか分からなくなって……それまでどんな風に会話してたのかも思い出せない」

少年「なにより、あの事が夢かどうかも分かってないのに元通りに過ごすなんて、出来っこない…!」

少年「もし夢なんだとしても、心の底で少女さんを邪魔者と思ってるのかもしれないし、夢じゃないんだとしたら……」

少年「──僕は少女さんを殺した張本人だ」

少年「そんな人間が……彼女の隣にのうのうと居座る権利なんてあるわけないだろ……」

猫又娘「……」

猫又娘(………)

95: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:12:19.35 ID:AthaJ31d0





猫又娘「本当かウソかなんてどうでもいいんさ」





少年「……?」

猫又娘「きみを苦しめてるその出来事が!」

猫又娘「だって現に少年君も少女さんもちゃんと生きてるじゃない。きみの深層心理がどうこうなんて関係ないさ。大切なのは今のきみが少女さんをどうしたいのか、じゃないの?違う?」

少年「…簡単に言うなよ…」

猫又娘「簡単だよ!さっき自分で言ってたでしょ?"また少女さんと一緒に居たかった"って」

猫又娘「もう答えは出てるのに、なんで諦めようとしてるんだろーね?」

少年「………」

少年(………)

猫又娘「ていっ」ビシッ

少年「あいたっ」

猫又娘「泣きそうな顔しない。私がここにいる意味、忘れてもらっちゃ困りますよ」

猫又娘「私にお任せあれ!きみは大船に乗った気分でいればいい!」ニコッ

少年「な、なにが?」

猫又娘「明日、少女さんに贈るプレゼントを持ってくること」

少年「プレゼントって」

猫又娘「なんでもいいんよ。話せるきっかけにでもなるものなら」

少年「………」

猫又娘「例えばこーんな風に」



ポンッ



少年「…え?それ、僕のノート…!」

猫又娘「ふふふ…きみがいつも大切に持ち歩いてたよね?」

猫又娘「私からの餞別です!はいどーぞ♪」

少年「」スッ

パラパラパラ...

少年(あれ、白紙だ…)

猫又娘「それはあくまで私の作った模倣品だからね~。何も書いてない新品だよ!今のノートが埋まったらご利用くださいな」

少年「…早速使わせてもらうよ。前持ってたの丁度無くしちゃったから」

猫又娘「あれま」

96: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:15:06.34 ID:AthaJ31d0

少年「……」ジッ

少年(僕の持っていたやつにそっくりだ)

少年(…思えば、このノートがきっかけで少女さんと話すようになったんだよな…)

少年「……」

猫又娘「……」

猫又娘(少しはマシな顔付きになったね)クスリ

猫又娘「大丈夫。きっと現実じゃない。少女さんが生きてるのが何よりの証拠さ。あの子に酷いことをした少年君は存在しないんよ」

少年「……そう、だよな……」

少年「はは…それか本当に、トドノツマリ様のおかげだったり…」

猫又娘「……え?」

少年「ちょっとあやふやだけどあの後、彼女を生き返らせてくれって願った記憶があるんだ」

猫又娘(……)

少年「けど普通そんなのに頼らないで警察とか救急車とか呼ぶよな。おかしな行動取るっていうのは夢じゃありがちなことだし…」

猫又娘「……そうそう!考えれば考えるほど変なことだらけなら、悩むだけ無駄ってことよ!」

少年「ありがとう。……元気付けてくれて」

猫又娘「お礼を言うのはまだ早いですな」ニヒ

猫又娘「ではでは、私はもう行くね!くれぐれも明日のこと忘れないよーに!」



スタタタッ



少年「あっ、待っ…」

少年「は、速い」

少年(………)

少年「……少女さん」





少年(やっぱり僕は、きみと友達でいたい……)





97: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:18:35.17 ID:AthaJ31d0
ーーー夕暮れ 公園ーーー

猫又娘「………」

(ジャングルジムの頂上に腰掛ける猫又娘)

猫又娘「…包帯」

猫又娘「池」

猫又娘「水の中の手」

猫又娘「聞こえた声」

猫又娘「あとは…トドノツマリ様」

猫又娘(……少年君から聞いた話と、少女さんのあの状態)

猫又娘(十中八九関係があるんだろうと私は思ってる)

猫又娘(この世界はみんなが思ってる以上の不思議で溢れてるから。嘘みたいな現実が起きることだってある)

猫又娘(でもそうなると引っかかるのは……あの神社と、包帯から感じる違和)

猫又娘(結局、あの子のことについては謎のまま…)

猫又娘「……そういえば」

猫又娘(この近くの池って言ったら、神社横のあそこくらいだったよね)

猫又娘(……………)

猫又娘「……う~……」

猫又娘(つながりそうで……つながらない……)モヤモヤ

猫又娘(頭発熱しそう…)

猫又娘「……」

猫又娘(……こんなとき、"キミ"ならどうするのかな)

98: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:19:20.70 ID:AthaJ31d0



ーーーーー

「──お困りですか?お嬢さん」

ーーーーー



猫又娘(複雑に絡まった糸。私の頭じゃ解けないよ)

猫又娘(夢の中でもいい。キミがまた私を、助けてくれるなら…)

猫又娘「………」

猫又娘「」ブンブン



パシンッ(自分の頬を叩く)



猫又娘「私が弱気になってどーする!」

猫又娘(そうだよ、私に難しい考え事なんて土台無理なわけで)

猫又娘(だったら目の前にある単純な問題を片付けていくしかないわけで!)

猫又娘(まずは)

猫又娘「……そろそろお出ましかな?」



...ニョロニョロ

カツ..コツ..



(姿を現す異形たち)



猫又娘「…こんばんは」

猫又娘「今日はね」





猫又娘「きみたちがどこから湧いてるのか、リサーチしようと思います♪」





99: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:21:22.28 ID:AthaJ31d0
ーーー夜ーーー



ガシャンッ ドスッ



包帯少女「……」

ウネウネ

包帯少女「」ブンッ

グシャ!

包帯少女「………」

包帯少女(……いつまで、こんなことが続くんだろう)

包帯少女(こうしてどれだけ夜の町に繰り出したところで、オニたちの勢いが弱まる事はない)

包帯少女(それどころか、どんどん増えてきてる気さえする。ぼくがしていることなんて所詮、焼け石に水…?)

包帯少女(………)



ーーーーー

同級生A「──、─!」

同級生B「」ケラケラ

少年「……」

ーーーーー



包帯少女(……あの時、ぼくは最後まで寝たフリをしてしまった)

包帯少女(どうして?)



ーーーーー

少女「──友達になってくれませんか?」

ーーーーー



包帯少女(…あの日きみの手を取ったぼくは一体どこへ行ってしまったのかな)

包帯少女「……っ」ギリッ

包帯少女「いい加減にして……」

包帯少女「返してよ…!ぼくの日常…」

包帯少女(崩れていく。ぼくも、ぼくの周りも何もかも……)

100: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:21:57.80 ID:AthaJ31d0



──ゴォン



包帯少女「!」

包帯少女(……!?)



(遠くにそびえる巨大なオニ)



包帯少女(あんなに大きなの、見たことない)

包帯少女(生き物には見えない…まるで建物みたいに動いてないけど)

ゴォン...

包帯少女「う……痛い……」

包帯少女(この音……アレから聞こえてくる……)

包帯少女(……あの方向は神社の……)

包帯少女(腕の取れたあの夜以来、怖くて神社には近付かないようにしてた)

包帯少女(でも、分かる。アレは絶対に放置しちゃいけない。そのままにしてしまったらきっと、この町は……)

包帯少女「……行かなくちゃ」



タッタッタッ...





101: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:23:11.74 ID:AthaJ31d0
ーーー神社ーーー

ポンッ!

「ガウガウ!」

幼女「……」スッ

「クーン……」

幼女「………」チラリ



(自由に動き回る数多の妖怪たち)



幼女「…これ程まで創り上げたが……尚この書物の力、知るに至らずか」

ペタペタ

幼女「む」

イロヌリ瘴女「キシシッ♪」ヌリヌリ

幼女「……」

幼女「」ジィ...

イロヌリ瘴女「……?」

パタッ

イロヌリ瘴女「」スゥスゥ

幼女「些か騒々しくなり過ぎたな」



──ゴォン



幼女「…!」

幼女「…最早悠長に構えては居れぬ」





102: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:26:25.64 ID:AthaJ31d0
ーーー石段前ーーー

包帯少女「こんなのどうしろって言うの…」



巨大オニ「……」



包帯少女(見ているだけで押し潰されそう)

包帯少女「……」

包帯少女「ねぇ、きみたちは、なんなんだい?」

包帯少女「目的は?名前は?」

包帯少女「ぼくたちをどうするつもりなの?」

包帯少女「この町を、この世界を蹂躙して」

包帯少女「何を得ようとしているの?」

巨大オニ「………」

包帯少女「……答えてよ!」ブンッ!



ガィン!



包帯少女「…!」ヨロ...

包帯少女(…鉄を叩いてるみたい…)

包帯少女「………」

... ブォン!

包帯少女「なんで!」ガンッ

包帯少女「どうして!」ガンッ

包帯少女「ぼくなの!?」ゴンッ

包帯少女「消えて…!」ガンッ

包帯少女「全部消えて!!」ガキィッ!



巨大オニ「……ゴォオオン」



包帯少女「ぐっ……」

ボトッ

包帯少女「っ──」

包帯少女(また、腕が……!)

103: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:30:05.86 ID:AthaJ31d0

巨大オニ「ゴォオオン」

包帯少女「あ゙ぁ゙……や゙…」ドサッ

包帯少女(…どうしちゃったのぼくの身体…)

包帯少女(思う通りに動かない)

包帯少女(いたミも痒みも何も感じナイ)

包帯少女「………」

包帯少女(……でも、いいのカモしれナいなぁ)

包帯少女(どうせぼくは一度シんでるんだし、またキエタところデ大差なイヨネ)

包帯少女「……フフッ……」

包帯少女(……ア?)チラッ



(ミラーに映った自分の姿)



包帯少女「──」



ーーーーー

包帯少女(──ぇ………)

(拾った左腕の手のひらに、目玉)

ーーーーー



包帯少女(……ソッカ)

包帯少女(ボクハ……モウ………)





猫又娘「みーんな、変わっちゃえー!」





ポン、ポン

包帯少女(……?)

猫又娘「それ、それ!」ポポン!

猫又娘「そこのでっかいきみも……えいやっ!」

ドロンッ

ネズミ「…チューチュー」

猫又娘「そっちの方が可愛いよ♪」

包帯少女(コノ子……同じクラスの…)

猫又娘「……ふぃー。なんとかうまくいったみたいだねー」

猫又娘「……」クルリ

包帯少女「……猫又娘、さん」

猫又娘「うん」ニコッ

猫又娘「間に合ってよかったよ、少女さん」



.........


104: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:32:44.20 ID:AthaJ31d0



猫又娘「──むむむ……っと、これでくっついたかな?」

... ポロッ

猫又娘「あら」

包帯少女「…いいよ。多分明日の朝には治ってるから」

猫又娘「わお。すごいね、取り外し可能ロケットアームみたいな」

包帯少女「……」

猫又娘「ごめんなさい冗談のつもりでした」

包帯少女「怒ってはないけど、猫又娘さんのその格好…」

猫又娘「?」ネコミミ&シッポ

猫又娘「あ、これ?」

猫又娘「この姿じゃないとあんまり力出せなくってさ」

猫又娘「…作り物とかじゃないんよ?ちゃんと自前で生えてるものですので!」

包帯少女「え…」

猫又娘「ほいっ」ドロン

仔猫「…ミャー」

包帯少女「!」

包帯少女「……」ソー...

ドロン

包帯少女「わっ…!」

猫又娘「というわけなのです」

猫又娘「猫又っていうんだって。私も詳しいことは知らないんだけど、そう教えてくれた」

猫又娘「…要するに私、普通のヒトじゃないんだ」

包帯少女「……あなたも、この町を壊しに…?」

猫又娘「とんでもない!むしろ私はみんなが笑って過ごせるように日々努力してるんです!少女さんも知ってるでしょー?」

包帯少女「いつもの赤点テストも努力の賜物?」

猫又娘「ゔ…それは、置いといていただけると…」タハハ...

包帯少女「なんか、実感湧かないな…クラスメイトに妖怪?が紛れてたなんて言われても」

包帯少女「…って、以前のぼくなら思ってたところだけど、こんな状況で言われたらさすがに、ね」

猫又娘「………気持ち悪い、かな…?」

包帯少女「………」

猫又娘「……」ウツムキ

包帯少女「……」

105: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:34:10.18 ID:AthaJ31d0



ギュッ



猫又娘「に゙ゃ!?」

包帯少女「うん、予想通り触り心地の良い尻尾だね」ニギニギ

猫又娘「くすぐったいぃ…あんまり乱暴にしないで…」ウルウル

包帯少女「ふふ、弱点みーつけ」

包帯少女「気持ち悪くなんかないよ。ぼく、猫好きだし。それにそんなこと言ったらぼくの方が──」

包帯少女(…あれ?そういえばぼく、普通の姿だ)

包帯少女(さっき映ってたあの自分は……)

包帯少女「……」ギュー

猫又娘「~~!ギブギブ!少女さんギブー!」

包帯少女「あ、ごめん」パッ

猫又娘「い、意外にSっ気あるんだね…」ハァハァ

包帯少女「ちょっと考え事してた」

猫又娘「人の尻尾掴みながら考え事しないでください…」

包帯少女(……)

包帯少女「猫又娘さんは、ぼくを助けに来てくれたの?」

猫又娘「いやぁ、私はこのお化けたちの出所を突き止めて、"変えられる"ものなら変えてやるつもりだったんだけど」

猫又娘「そしたらなんかやばそうなのが出てきたじゃん?急いで駆け付けたらさ、これまたやばそうなクラスメイトが居たもんで、こうやって介抱してあげたわけです」

包帯少女「!じゃあ、猫又娘さんもオニ退治をしてるんだ?」

猫又娘「オニ?」

包帯少女「こいつらのこと。ぼくがそう呼んでるだけ」

猫又娘「退治かー……そうだね」

猫又娘「少女さんも気付いてるんだろうけどさ、この町で今何かが起ころうとしてる。いや、もう起こってるんだと思う」

猫又娘「そしてそれは多分…」

包帯少女「…良くないこと」

猫又娘「」コクリ

猫又娘「…私的には少女さんがバット一本で戦ってることの方が驚いたけどね…」

包帯少女「……」

猫又娘「……」

106: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:35:40.97 ID:AthaJ31d0

猫又娘「…ともかく!積もる話はまた明日しよ!私もうくたくただよー」

包帯少女「積もる話って…?」

猫又娘「これまで分かったこととか、作戦会議とか。現状この事態に気付いてるの私たちくらいなんだし、協力して解決していこ!」

包帯少女「………」

猫又娘「…無理強いはしないよ。もう嫌だって言うなら、私一人でも──」

包帯少女「ううん、大歓迎。一人旅じゃ辛いなーって思ってたところだから」

猫又娘「……へへっ」

猫又娘「まっかせて!途中加入のチートキャラとは私のことよ♪」

包帯少女「期待してます」クスッ

猫又娘「あ、そうそう。前準備として少女さんにやっておいて欲しいことがあったんだ」

包帯少女「なにを?」



猫又娘「少年君と仲直り」



包帯少女「──……」

包帯少女「…な、なんで少年君が…」

猫又娘「なんでじゃないでしょー?あんなにギクシャクしといてさ。しっかり仲直りして蟠りは無くしておくべし!」

包帯少女「……言っとくけど、彼を巻き込むのは反対だからね?」

猫又娘「そんなこと言ってませんー」

猫又娘「…少年君のこと嫌い?」

包帯少女「嫌い…なわけない。でも、こんなおかしくなったぼくが少年君と一緒にいるなんて……」

猫又娘(なーんだ、少年君とおんなじだ。二人とも変なところで鈍いんだ)

猫又娘「そんなこと言ったら、そもそもヒトじゃない私がみんなといること自体おかしな話ですよ」

猫又娘「明日の朝!少年君と話をすること!いい?」

包帯少女「……けど……」

107: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 01:36:54.47 ID:AthaJ31d0

猫又娘「もぉー!」

グイッ

包帯少女「え、ちょっと…!」

パサッ(おぶられる少女)

猫又娘「これ以上言いたいことがあるなら、明日聞きますよー」

猫又娘「今日はもう帰ろ?家まで送っていってあげる」

テクテク

包帯少女「……」

猫又娘「……」テクテク

包帯少女「……ありがと……」

猫又娘(……お礼はまだ早いって)フフッ

猫又娘「♪」

猫又娘「……あ、背負った時気付いたんだけどさ」

包帯少女「ん?」

猫又娘「少女さんて、意外に胸大きいんだね」

包帯少女「………」

ギューッ!

猫又娘「に゙ゃー!!転ぶ!転んじゃうからぁ!尻尾はやめてぇ!」



フラフラテクテク...





108: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 03:27:47.28 ID:AthaJ31d0
ーーーーーーー

幼女「」ヌッ

幼女「……不可思議である」

幼女「人にして妖禍子(アヤカシ)にもある者……人の世に擬態し、人に寄り添う事が何故出来ようか」

幼女「人と妖禍子が共に在ることなど、何れ綻ぶ定めとあろうに…」

幼女(…然し、既に"怪"へ立ち向かう者が居るとは…)

幼女(そしてその者等……猫の怪、人の怪)

幼女(因果の転ぶ先は分からぬものだ)



ーーーーー

包帯少女「──どうして!」ガンッ

包帯少女「──ぼくなの!?」ゴンッ

ーーーーー



幼女(……黄泉から還した女)

幼女(其の期限の来たる前に、戻す必要がある)



幼女(この世界を)



幼女「……」

幼女「皆、我の声を聞け」

妖怪たち「「「……」」」

幼女「そなた達の為す事は一つ。この町に散らばる"怪"を萃めること」

幼女「我はこの山を離れることが適わぬ故、"怪"を封じる事に傾注せむ」

幼女「……ゆけ!」



バサバサ

スタッスタッ

ゴツゴツゴツ



.........





109: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 03:29:43.75 ID:AthaJ31d0
ーーー翌朝 教室ーーー

オハヨー

キノウノテストオヤニオコラレター

ワタシハノーコメントダッタヨ



ガヤガヤ



少年「……」ソワソワ

少年「……」イジイジ



...トットットッ



包帯少女「」トットッ

少年(あ…!)

包帯少女「……」トットッ...

少年「……その、おはよう」

包帯少女「……うん、おはよ」

スッ(席に座る少女)

少年「……」

包帯少女「……」

少年「…あの、さ」

包帯少女「…なに?」

少年「……暑いよね、最近」

包帯少女「……そうだね」

少年「……」

包帯少女「……」

110: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/15(火) 03:30:55.60 ID:AthaJ31d0



猫又娘「………」

猫又娘(なーにやってんのかなぁ、あの二人は!)

猫又娘「」ガタッ



スタスタスタ



──ポン(二人の肩に手を置く)

少年・包帯少女「「」」ビクッ

猫又娘「…ほら、少年君」

少年「……少女さん、これ」

スッ

包帯少女「…本?」

少年「うん。この前話してたやつ。僕のおすすめ。…少女さんにあげるよ」

少年「だからその……また、色んなお喋りとかしてくれると嬉しい…な、って…」

包帯少女「………確か、主人公が記憶喪失で始まるって物語だっけ」

少年「!覚えててくれたの?」

包帯少女「まあね」フフッ

包帯少女「だってあの時の少年君あんまりにも熱心に喋ってたから」

少年「そ、そうだったかな…?」

包帯少女「……うん、ぼくも、またきみとお喋りしたい」

少年「─!」

包帯少女「お昼、一緒にあの校庭まで行こっか」ニッ

少年「…是非行こう!」

包帯少女「ふふっ、なにその意気込み」

猫又娘「」ウンウン

猫又娘「よかったよかった。美しきかな友情……だよ!」





やっぱり笑顔が一番……だよね!





112: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:21:38.07 ID:uZMymJ9Z0
■第四幕 ユメを食むもの■



ーーーーーーー



ガブリ



一番最初に食べたのは、きみのユメ。

まだ目覚めて間もない時。自分が何者かも分かってなかった時。

目の前に美味しそうな色したユメがあったから、つい齧り付いちゃったんだ。

夢見娘(あの味は今も忘れてない)

きみを初めて知った味だから。







ーーーーーーー



ガブリ



私の親はきみ。

それも、きみが最初に描いたマヤカシ。

…嬉しかった。きみに頼りにされてることが。

夢見娘(苦い悪夢は、私が食べてあげる)

代わりにどんな現実が欲しいかな?







ーーーーーーー



ガブリ



きみが好き。

そう言うことが出来るのは、ユメの中だから。

…今日もきみの顔は見れないなぁ。

夢見娘(だって、こんなにも照れてしまう)

本当に顔を合わせたら、火を噴いてしまいそう。





113: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:22:55.31 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー



ガブリ



色んなユメに目を向けてみた。

……………。

こうして見ると、楽しそうなユメは思ったより少ない。



ーーーーー

派手娘「うるさいイヤホンを電車でするな!」

派手娘「不味いと分かってる料理を客に出すな!!」

派手娘「その気も無いのに友達面するな!!!」

ーーーーー



不満を声高に叫んでいたり。



ーーーーー

二つ編み母「いい?あなたにはその頭しか取り柄がないんだから、これからもお勉強に手を抜くことがないようにするのよ?」

二つ編み「はい。分かってます」

二つ編み父「父さん達の顔に泥を塗らないでくれよなー。はははっ」

二つ編み「……」

ーーーーー



食いしん坊なオトナたちの餌にされていたり。



ーーーーー

同級生A「お前自分のこと僕とか言ってんだ?」

同級生B「おもしれー。お坊っちゃまじゃん。髪も坊ちゃん刈りとかにしないの?(笑)」

ーーーーー



…弱者に縋るワルモノたちが居たり。

みんな私が食べてしまえたら、きみの周りもちょっとは楽しくなるのかな。

夢見娘(明日はどんなユメを見るんだろう)

今日より優しいユメを見れてますように。





114: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:24:22.17 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー



とっても怖いユメに出会った。



今じゃない時。ずっと昔の時代。

感じたのは、駆ける大きな身体と、大勢の怒号、取り囲む炎……それと、強い怒りの気持ち。

そのユメは食べなかった。食べてしまったら、私まで呑まれてしまう気がして。

……………うん。

やっぱりきみのユメにお邪魔します。

きみの楽しいユメは、私も楽しいし。

きみの嬉しいユメは、私も嬉しい。

きみの辛いユメは――私が食べちゃうんだ。

それだけでこんなに胸が高鳴るのは、なんでだろうね?

夢見娘(きみの隣に居たい)

けれどそれは叶わない。

きみと私は、コインの表と裏の住人。

相容れないって分かってる。







ーーーーーーー



ガブリ



きみのユメを食べちゃった。

とってもとっても悲しい結末だったんだ。

ねぇ。

泣かないで?

溺れてしまったクラスメイト。きみにとっての大切な人?

泣かないで…ってば。

あぁ……。

今日はユメは覗きません。きみの涙が止まるまで、悲しいユメを食べ続けるのです。

夢見娘(大丈夫だよ)

せめてユメの中だけでも、笑っていてくれるなら。



.........





115: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:25:27.67 ID:uZMymJ9Z0



ガブリ



消えない、消えない…なくならない。

食べても食べてもきみの悪夢がなくせないんだ。

それに、もう一個嫌なこと。



──世界は、壊れ始めてきてる



元々小さな孔は空いていた。それを"あのヒト"が無理矢理こじ開けた。

ユメの中の私にまで響いてくる、負の感情。……きみがあてられるのも仕様がないよ。



ガブリ



もうお腹はいっぱいだけど、きみを苦しみから遠ざけられるなら、私の食欲はまだまだ尽きません。



ガブ...



……………。

本当は、知ってるんだ。

こんな風にユメを食い散らかすだけじゃ、きみを救ったことにはならないって。

でもね?まるでゲームみたいだったんだ。夜が来るたび、私という理不尽なリセットボタンできみを全部変えられるような気がしていた。

そんなわけないのに。

偉そうにきみを助けているつもりで、していたことはユメを壊すことだけ。

……それでも、私に出来るのはそれだけ。

夢見娘(それが私。ユメを食べるヒト)

…溢れる、溢れてくる。

きみの悪いユメも、世界のねじれも。

間に合わないよ…。

まだ食べ残しがたくさんあるのに…!

やってきちゃうんだ。ユメの世界の終わり──





──午前7時の魔法





116: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:27:44.55 ID:uZMymJ9Z0
ーーー朝ーーー



ピピピピッ ピピピピッ



夢見娘「」パチッ

夢見娘「………」

夢見娘「……」ムクリ

時計『AM 7:00』

夢見娘「………」

夢見娘「……私も……」

夢見娘「行くから……待ってて……」





夢に篭ってるだけじゃきみを助けられないなら、いっそきみの近くで見守っていればいい。

それくらい…いいよね?







ーーー教室ーーー

夢見娘「──夢見娘です」

夢見娘「東中学校から来ました」

生徒たち「………」

夢見娘(ここが学校…普段きみが過ごしている場所…)

少年「……」

夢見娘(!)

夢見娘「………」ドキドキ

教師「………」

「……え、それで終わり?」

教師「…コホン。夢見娘、席はあそこだ。後ろの方で悪いが、何か不都合があったら言ってくれ」

夢見娘「……」



トットットッ



夢見娘「」チラッ

少年「…?」

夢見娘「……」トットッ

夢見娘(……こうしてきみと直接会うのは初めてだね)

夢見娘(きみと同じ所に居るだけでうるさいくらい心臓が跳ね回るけど……)





きみの"厄"を払いにやってきました。





117: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:29:57.19 ID:uZMymJ9Z0
ーーー昼休みーーー

夢見娘「……」ボー



同級生C「な、なぁ。俺あの転校生ちゃんと昼食べようかなって思うんだけど…!」

「転校生ちゃんて…お前もしかしてああいうのが?」

同級生C「どストライク」

「やめといた方がいいんじゃ?あの子誰かと喋るどころかほとんど動こうともしないだろ。謎過ぎる」

同級生C「そこがいいんだよ!謎に満ちた大人しい子……だからこそ時折見せる表情の変化が愛おしいんじゃないか…!」

「お、おう」

同級生C「よーし、行ってくる」

「せいぜい頑張れ…」



夢見娘「……」ボー



少年「……」パク...

包帯少女「……」ハム..ハム..



夢見娘(………)

夢見娘(……背中合わせの二人……)

同級生C「夢見娘、さん…!」

夢見娘「……?」

同級生C「その……お昼ってもう食べちゃった?」

夢見娘「……食べてない……」

同級生C「!じゃ、じゃあ一緒に食べない?夢見娘さんのこと、色々知りたいし!」

夢見娘「お腹、空いてない……」

同級生C「え、そうなの…?」

夢見娘(みんなのユメが無尽蔵に転がってるから)

118: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:30:47.31 ID:uZMymJ9Z0

夢見娘「………」

同級生C「……えーと……そだ!」

ゴソゴソ

同級生C「はいっ」

夢見娘「?」

同級生C「飴だよ。ちょっとしたお菓子ならどうかなーって」

夢見娘「………」

夢見娘「……」ソッ

夢見娘(……アメ……ユメ……)

夢見娘(似ては、いない…)

カサカサ

夢見娘「」アム

同級生C「!」

夢見娘「……」モム..モム..

同級生C(口だけ少し動いてる……かわいい…!)

夢見娘「……」モム..モム..

夢見娘(……甘い……)

夢見娘(きみのユメとどっちが甘いのかな)

夢見娘(……多分、今食べてるアメの方)

夢見娘(今のきみのユメは、少しだけ……苦い気がする)

夢見娘「……」モム..モム..

同級生C「……」ホッコリ



「なにしにいったんだ、同級生Cのやつ…」





119: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:32:44.41 ID:uZMymJ9Z0
ーーー放課後 教室の外ーーー

夢見娘「……」



「──少女さん」

「んっ……あ、ごめん」

「ううん、いいよ。それより体調良くないなら無理せず休んだ方がいいんじゃない?…僕に付き合ってるよりもさ」



夢見娘(……放課後の教室。二人だけのお勉強会)

夢見娘(きみと居られるってだけで、とっても素敵なシチュエーション)

夢見娘(……なのに……)



「そう、だね……うん。明日はテストの日だし、お言葉に甘えてぼくは帰らせてもらうよ。少年君も、もう赤点レベルの科目はないだろうしね」

ガサゴソ

「…それじゃ」

「…うん」

テクテク



夢見娘(ままならない……のかなぁ)

夢見娘(二人とも、本心にないことしかしてないよ)



「──テスト勉強、お疲れ様。教えたこと忘れないように、明日頑張ってね」

「こうやって二人で勉強するのも今日が最後だから………だから………」

「…この時間、嫌いじゃなかった…」ボソッ

...テクテクテク



夢見娘(あ、来る)

夢見娘「」スス...

包帯少女「……」テクテクテク...

120: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:33:38.78 ID:uZMymJ9Z0

夢見娘(……)

夢見娘「……」チラリ



少年「……」ウツムキ



夢見娘「………」

夢見娘(また、視えない涙を流してる)

夢見娘(歪に生き返ったその子)

夢見娘("あのヒト"の焼け付くような怒りに巻き込まれて、きみとその子の関係はねじれ出しちゃった)

夢見娘(ユメと現実の狭間で、きみの心は押し潰されそうになってるんだ…)

夢見娘(………)

夢見娘(…一緒に支えてあげたいな)

夢見娘(きみに触れることは叶わなくても、そう、一言……ううん、二言くらい交わすだけなら)

夢見娘「……」ドキ.. ドキ..

夢見娘(……その前に)



きみを取り巻くその厄介なユメたちを、食べちゃおうか。



ガブリ





121: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:34:42.45 ID:uZMymJ9Z0
ーーー金曜日 テスト当日ーーー

夢見娘「……、…」

少年「……」ノートパラパラ

夢見娘(……きみに話しかける……ことがこんなに難しいなんて……)

夢見娘(……分かってた、けど)

夢見娘(──少年くん)

夢見娘(~~……名前、呼ぶのは出来ないかも…)

同級生C「や。もしかしてテスト、緊張してる?」

夢見娘「……アメの人……」

同級生C「覚え方…」ハハ...

同級生C「俺、同級生Cって言うんだ。よろしくね」

夢見娘「……」

同級生C「それと!今日は飴の人じゃないんだなぁこれが」ガサゴソ

同級生C「はいあげる」

夢見娘「……チョコレート」

同級生C「頭への糖分補給。気休めだけどさ」

夢見娘「……」

同級生C「甘いもの好きかなって思ったんだけど…違った?」

夢見娘「……食べる……」

スッ パク

夢見娘「……」モグ..モグ..

同級生C(はー…!ほんと、小動物みたいだ)

夢見娘(……同級生Cくん……同級生Cくん……)

夢見娘(………少年、くん………)

夢見娘(やっぱり、きみの名前は特別)



教師「うーし。ほら、テスト始めるぞ!ノートはしまえ。カバンは教室の後ろな」



同級生C「もう時間かぁ。夢見娘さん、テスト頑張ろうね」

夢見娘「……」コク

夢見娘「…あなたも」

同級生C「!…あぁ!」

同級生C「♪」テクテク

夢見娘(……頑張る……)



きみのために。





122: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:36:03.25 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー

生徒たち「「「さようなら」」」

ハヤクカエロー!

テストドウダッター?



ガヤガヤ



夢見娘「スゥ……ハー……」

少年「……」イソイソ

夢見娘(……うん)

夢見娘「」スクッ

トットットッ

少年「……」テクテク

夢見娘「……」トットッ

夢見娘「……あ、の──」

同級生C「夢見娘さーん!もう帰る?もしよかったら途中まで一緒に帰らない?」

夢見娘「……っ、……私は……」



少年「」テクテクテク...



夢見娘(あ……)

同級生C「あ、ごめん。用事とかあったかな?」

夢見娘「……」

同級生C「それなら昇降口のとこまでとか!…夢見娘さんと話がしたいなーって思ったり…」チラッ

夢見娘「……」ジッ

同級生C「……夢見娘さん?」

夢見娘「………」ジー

同級生C「え…俺の顔、なんか変?」

夢見娘「………」ジーーッ

同級生C(えー!?なに!?なんでこんなに見つめて……はっ!もしかしてついに夢見娘さんの心を開くことに──)

夢見娘「…あなたのユメ、食べてあげない…」ボソッ

同級生C「へ?」

スタスタスタ

同級生C「ちょ、あれ?夢見娘さん?なんて言ったの!ねえっ!?」

「あーあ、振られてやんの」

同級生C「はあ!?ちげぇし!まだちょっとシャイなだけだから!」

同級生C「……だよな?俺、嫌われたんじゃないよな…?」

「いや知らんがな。顔色一つ変わんなかったかんな、あの子」

同級生C「うぅ…頼むぅ……」

同級生C(けどなんとなく……怒ってた……?)





123: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:37:11.02 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー



ガブリ



ご機嫌いかがですか?私はちょっと斜めです。

きみと話すこともまだ出来てないんだもん。

ユメの中ならたくさん会ったのになぁ…。

世界はちょっとずつ壊れてる。

苦いユメも少しずつ増えている。

きみと私は交わっちゃいけないもの……人と妖禍子(アヤカシ)。

……けど本当は、そんなことよりも、

夢見娘(きみに触れたい)

私を創ってくれたきみが、どうしようもなく好きだから。

コインの表と裏だって、たまには重なったっていいでしょう?





124: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:39:26.26 ID:uZMymJ9Z0
ーーー翌週月曜日 学校ーーー

少年「……」テクテク

夢見娘(……落ち着いて、私……)

夢見娘(息、整えて……目、逸らさないで……胸、静かにさせて……)

少年「……」テクテク

夢見娘「………ぁ………」

テクテク...

夢見娘(……行っちゃった)シュン





ーーー休み時間ーーー

「ねー二つ編みさん職員室に呼ばれてるって本当?」

「なんかテストの点めちゃくちゃ低かったみたいよ?」

エー ウソー



少年「……」ペラ..ペラ..



夢見娘「……」

夢見娘(今、なら……)

同級生C「──やっほ、夢見娘さん!元気にしてた?」

同級生C「…あのさ、先週、俺なんか嫌なことしちゃったかな…?もしそうだったら謝ろうと思って…」

同級生C「これ!お詫びのしるし……」スッ

同級生C「俺の好きなチューイングキャンディ。名前だけ聞くとちょいおしゃれだよね」

夢見娘「………」

夢見娘「」ヒョイ、パク

夢見娘「……」モムモムモム

同級生C「……おいしい?」

夢見娘「」コクリ

同級生C(かわい過ぎる)キュン

夢見娘「……でも、今日は話しかけないで…」

同級生C「」ガーン





ーーー休み時間2ーーー

夢見娘(今度、こそ……)

夢見娘「……」ギュッ(目を閉じる)

夢見娘(……はじめまして、少年くん……はじめまして、少年くん……)

夢見娘(シミュレーションは、大丈夫……)

夢見娘「……あの、はじめ…まし──」フリカエリ

(少年離席中)

夢見娘「……………」





125: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:41:05.86 ID:uZMymJ9Z0
ーーー放課後ーーー

ワイワイ ガヤガヤ

夢見娘「……」

夢見娘(…結局、今日もダメだった…)

夢見娘(きみはもう教室から出て行った)

夢見娘「……はじめまして……」ポツリ

夢見娘(ではない…んだけれど)



「猫又娘ちゃんってさ、トドノツマリ様って信じる?」

猫又娘「えー?」

「みんな結構噂してるでしょ、──。───」



夢見娘(あの子……)

夢見娘(私と同じ、妖禍子(アヤカシ)の子)

夢見娘(人の住む世界に紛れて、人と一緒に笑い合って……どうしてそんなことが出来るのだろう)

夢見娘(……少し、気になる……彼女のユメも……)



「──それはそうとさ!猫又娘ちゃん今日は新しい手品はしないの?」

猫又娘「へ?」

「実は密かに楽しみにしてたり」エヘ

猫又娘「うーん…今日はねー、すこーし忙しいかもだから――」

夢見娘「私も……見てみたい……」

猫又娘「!?」ギョッ

夢見娘「……」

「ほ、ほらほら!夢見娘ちゃんもこう言ってるよ!」

夢見娘(近くで見たことはみたかったな…)

夢見娘「……」ウズウズ

猫又娘「……分かりました!じゃあ一回だけ」

「やった!」

126: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:42:30.23 ID:uZMymJ9Z0

猫又娘「じゃ始めるよ?」

猫又娘「…こちらはなんでしょう?」スッ

「それ、今日返されたテスト?」

猫又娘「ご名答!もちろん全部私のです」パララ

「…猫又娘ちゃん、これ夏の補習に引っかかっちゃってるんじゃ…」

猫又娘「と思うでしょ?でもこーすれば…」

サササ スッ

夢見娘(!)

猫又娘「じゃん!全教科満点に早変わり!」

「…?けど点数変わってないよ?」

猫又娘「よーく見て」

「……」ジッ

夢見娘「……」ジー

「……あ、百点満点じゃなくなってる」

猫又娘「その通り!ちなみにこっちの模範解答もみんな私の点数が満点になっております」

「あはは!なにそれ地味だけどすごい!」

夢見娘「……」パチパチ

夢見娘("変える"力……でもなんだろう、この子によく似た影が、ほんの少し見え隠れしてる…?)

「ねーいっつもさ、それってどうやってるの?一つくらい仕組み知りたい!」

猫又娘「それは秘密です♪」

猫又娘「!…今日はここまで!私もう行かなくちゃ」

猫又娘「じゃね!」ササッ

「今度私にだけでも教えてよー!」

夢見娘「……」テフリフリ

夢見娘(……)

夢見娘「……まぶしい……」ポツリ

「?」



まるで自分の影さえ照らすようなその様は……少し羨ましいと思った。





127: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:43:28.98 ID:uZMymJ9Z0
ーーーーーーー

あなたのユメを覗いちゃった。

……………。

…分かってしまった。あなたがそこに居る意味、絶え間なく笑う意味、──この世界を守ろうとする意味。

そっか。あなたの本質はあの眩しさにはないんだ。

あなたなりに、その"影"を演じようとしているんだね。

私にも、そんな強さがあればきみを救うことが出来るのかな?

きみに話しかけることも出来ない私なんて……



...ガブリ



夢見娘(!)

…今日のきみのユメは少し、苦くなくなっていた。





128: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:45:41.96 ID:uZMymJ9Z0
undefined

129: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:47:00.61 ID:uZMymJ9Z0
ーーー翌朝 教室ーーー

夢見娘「……」テクテク

夢見娘(……)



少年「……その、おはよう」

包帯少女「……うん、おはよ」



夢見娘「……」ストッ



少年「…あの、さ」

包帯少女「…なに?」

少年「……暑いよね、最近」

包帯少女「……そうだね」



夢見娘「………」



猫又娘「」ガタッ

スタスタスタ ポン

猫又娘「…ほら、少年君」



夢見娘(……あなたが動いてくれたんだ)

夢見娘(昨日のユメが苦くなかったのはきっと…そのおかげ)

同級生C「…あの…おはよーございます…」ソローリ

夢見娘「……」

同級生C「…き、今日は夢見娘さんに話しかけても、いい日…?」

夢見娘「……」

同級生C「ごめん。しつこくて嫌だってことだったら、もう話しかけたりしないよ。……だめ、かな」

夢見娘(……この人みたいに、喋ることが出来たらな……)

夢見娘「………別に、いい……」

同級生C「ほんと!ありがとう!」

130: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/19(土) 02:48:39.94 ID:uZMymJ9Z0



包帯少女「──お昼、一緒にあの校庭まで行こっか」ニッ

少年「…是非行こう!」

包帯少女「ふふっ、なにその意気込み」



夢見娘(………)

夢見娘(よかった)フッ

同級生C「!?」

同級生C「今、笑った…?」

夢見娘「!」ハッ

夢見娘「……わ、笑ってない」

同級生C「え、嘘だよ!今絶対笑ってたよねっ。口元がニヤッて…!」

夢見娘「……っ…」プイッ

同級生C(やっばいな本当かわいいこの子)

同級生C「そうだもう一回だけ今の笑顔お願い!今度はちゃんと残しておけるように絶好のシャッターチャンスを──」スマホカマエ

夢見娘「……」ジトー

同級生C「──待っていよう、か……なんて」

夢見娘「……」

同級生C「……」

夢見娘「………」

同級生C「…すみませんでした」

夢見娘「……お菓子……」

同級生C「んえ?」

夢見娘「くれたら、許す……」

同級生C「…!あげるあげる!いくらでも食べて!」ガサゴソ

夢見娘(……)チラリ



少年「─、──。」

包帯少女「──?」

猫又娘「──♪───!」



夢見娘(…うん)




君の、笑った顔。

それを守れれば幸せだなって。

きみの近くにはもうきみを助けようとしてくれるヒトたちがついてるから……

私は私にしか出来ないことを続けてみようと思いました。





132: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 00:59:03.79 ID:OOuoymdI0
■第五幕 ミえていないことにするもの■



ーーー第二校庭ーーー

カキーン

ゴロゴロゴロ...

包帯少女「おっとぉ…!」ズサァ

包帯少女「ふぅ、なんとか捕れた。…少年君!こっち側は道路の方だよー!」

少年「ご、ごめーん!コントロールが難しくて…!」

少年「打つ方も楽じゃないんだな…」

包帯少女「教えなくちゃいけないのは勉強だけじゃないみたいだね?」

少年「えー?なんて言ったの!」

タッタッタッ

少年「あれ、少女さんこっちに来たってことは…打つの交代?」

包帯少女「ううん。また先生になりに来たの」

少年「はい?」

包帯少女「打ち方、教えてあげる。ほらバット構えて」

少年「そんなに酷かったかな」

包帯少女「ボールこれ一個しかないからさ、ちゃんとぼくのいる方に打ってくれないと、なくしちゃうかもしれないじゃない?」

少年「あはは…」

ギュッ

包帯少女「いい?まず握り方はこう。でもって振り初めは──」

少年(…この時間がすっごく楽しい)

少年(またこうして少女さんと過ごせるようになるなんて、思ってなかった)

少年(……大切にしたい。この人との関係)

ムニュ

少年「!!」

包帯少女「──ここまで振り抜いちゃっていい……これが一通りの動き。どう?出来そう?」

少年「え、えと…」

包帯少女「?分かんなかった?…ふふ、今朝の意気込みはどこいったの?」

包帯少女「もう一回補助するから、動きをなぞってみること」グイッ

ムニュリ

少年「いやその…!」

少年(当たってます…分かり過ぎるほど当たっちゃってます…!)

少年「」モンモン

包帯少女「?」

133: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:00:50.54 ID:OOuoymdI0

少年「…そ、そういえば!」

少年「猫又娘さん、結構遅いね」

包帯少女「あー、あの子の頭じゃね…今頃補習授業のプリント山積みにしてるんじゃないかな」

少年「えぇ…補習ってプリント解いて提出しないと帰れないんじゃなかったっけ…」

包帯少女「多分あの子のことだから、適当なところで先生誤魔化して抜け出しくる…なんてことしてそう」

少年「さすがに一枚くらいは真面目に提出するんだと思うけど」



猫又娘「おーい!お二人さーん!」テッテッテッ



少年「噂をすれば」

猫又娘「ふぃ~…お待たせ」

包帯少女「補習、お疲れ様」

猫又娘「もーほんとだよー!どうして補習なんてものがこの世にあるのかな!一回授業でやったこともっかいやり直すだけの作業なんてさー!」

少年「一回の授業で覚えられてないからだろうね…」

包帯少女「でも補習終わったってことはある程度頭に入れられたんだよね?」

猫又娘「……えへへ」

少年「…まさか」

猫又娘「いやいやいや!ちゃんとプリントは提出してきましたよ!……ちょーっとお茶目な答えが多いけど」

少年・包帯少女((これは真面目にやってないな))

134: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:02:28.45 ID:OOuoymdI0

猫又娘「そんなことよりさ!帰ろ帰ろ!早いとこ作戦会議と洒落込もうじゃあないか」

少年「作戦会議?」

猫又娘「あ…こっちの話」ニシシ

包帯少女「ちょっと待って。その前に」



タッタッタッ



包帯少女「少年くーん!ラスト一回、さっき教えた通りに打ってみてー!」

少年「!…少女さん…」

猫又娘「やきゅう?だっけ。玉当て…私もできるかなぁ」

少年(教えた通りに…)



ーーーーー

包帯少女「──動きをなぞってみること」ムニュリ

ーーーーー



少年(……!)

少年「」ブンブン

猫又娘「?」

少年「…よし」

少年「いくよ!少女さん!」

包帯少女「いつでもどうぞー!」

少年「……」スッ

少年(……ここ!)ブン

カキン!



猫又娘「にゃ?」



──ゴチン!





135: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:03:28.06 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「…ごめんよ、猫又娘さん」テクテク

猫又娘「いいっていいって!こんなのすぐ治るから!」テクテク

包帯少女「綺麗なタンコブになっちゃったね…」テクテク

少年「う……ちゃんと真っ直ぐ打てるように練習します……」

猫又娘「気にしなくていいって言ってるのにー」

猫又娘(この前派手娘さんにシメられた時の方が痛かったくらいなので…)

少年「……けど知らなかったな」

少年「猫又娘さん、僕だけじゃなくて少女さんとも話をしたことがあったんだね」

猫又娘「…まぁね~」

少年「僕たちの仲直りの為に奔走してくれてたんだなって思ってさ……猫又娘さんが居なかったら僕たちは今頃…」

包帯少女「……」

猫又娘「悩みあるところに私あり、ですから!」

猫又娘(それでも、まだ何も解決してないからなー)

包帯少女「…ん」テク...

包帯少女「この道、ぼくと猫又娘さんは右なんだ」

少年「猫又娘さんも?僕は真っ直ぐだから──」

猫又娘「ここで、お別れなんですね…」ヨヨヨ

包帯少女「変なお芝居してないで、行くよ?」

猫又娘「はーい」

少年(面白い人だよなー…)

包帯少女「それじゃ少年君、また明日」テフリフリ

少年「!…あ、あぁ!」フリフリ

少年(また、明日…)

少年(……♪)



タッタッタッ...



.........





136: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:05:30.14 ID:OOuoymdI0



猫又娘「さーてと」

包帯少女「……」

猫又娘「…やっと、二人きりになれたね、少女ちゃん…//」

包帯少女「また尻尾掴まれたい?」

猫又娘「真面目にやりますはい」

包帯少女「…第1回作戦会議…って感じでいいの?」

猫又娘「イエス!今日はまず、情報の整理から始めたいかな」

包帯少女「というと?」

猫又娘「私のことはある程度話したよね?だからお次は、少女さんがなんであの化け物と戦ってるのかを知りたいな」

包帯少女「……戦ってる……そう、だね…」

包帯少女「ぼくが初めてオニを見たのは2週間前の…日曜日。夜眠ろうとしてたら部屋に歩く骨みたいなのが入ってきてさ。その時は相当驚いたけど、思わずバットで殴り壊してたよ」

猫又娘「わぁお…」

包帯少女「でもその後…外のあの光景を見た。悪夢か何かだと思ったよ。けどね…」

包帯少女「…次の日の夜も変わらなかったの。身体の痛みもなくならない」

猫又娘「……」

包帯少女「ねぇ、あのオニたちが何をしているのか見たことある?」

猫又娘「なにって…我が物顔で町を飛び回って、侵略…とか?」

包帯少女「ある意味そうなのかもね」

包帯少女「……オニに触られた人が、同じようにオニになるのを見たんだ」

猫又娘「…!」

包帯少女「だからぼくは、あいつらを少しでもこの町から減らそうとしてたんだけど、ちっぽけな一人の力じゃなかなか厳しかったみたいでさ…後はあなたも知っての通りだね」

猫又娘(触られたら、同じ化け物にされる…?)

猫又娘「…あのさ、それならさ、そのオニにされちゃったって人、捜索願いとか出されてるんじゃ…」

猫又娘「ううん、仮にそれが一人だけじゃないんだとすると、もう何人も行方不明になってますってニュースの一つや二つ流れてもいい気がする」

包帯少女「確かに聞かないね。ここの近くで起こってないってだけとか」

猫又娘「うむむ…」

包帯少女「……」

137: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:08:00.85 ID:OOuoymdI0

猫又娘(……)

猫又娘「…少女さんがその包帯着けてるのって、さっき言ってた身体が痛むから、なんだよね?」

包帯少女「うん」

猫又娘「んで、痛みが出てきたのも2週前の日曜日」

包帯少女「…うん」

猫又娘「……その前に、何かあった?」

包帯少女「……」

猫又娘「例えば、土曜日に奇妙なことが起こった…とか」

猫又娘(少年君の言ってた、池に突き落とした出来事はまさにその土曜日だったはず)

包帯少女「………」

猫又娘「……」

包帯少女「…何も、ないよ」

猫又娘(!)

包帯少女「どうしてそんなこと訊くの?」

猫又娘「…だってさ、その包帯巻き始めたのも、化け物共が湧き始めたのも同じ日曜日のタイミングだったんでしょ?」

包帯少女「そうだけど…」

猫又娘「……本当に、何もなかった?」

包帯少女「………」

包帯少女「……溺れる、夢を見た」

包帯少女「南町神社あるよね?あの神社の横道を少し行ったところに変な池があってね、そこに溺れて沈んでいく……そんな夢を見たくらい」

猫又娘(……それは多分、夢じゃないんだろうね。そう分かってるから、そんな思い詰めた顔をする)

猫又娘(少年君の名前を出さないのは、彼を庇うため?それとも認めたくないから…?)

包帯少女「──猫又娘さんは?」

猫又娘「ほへ?」

包帯少女「ある程度話したとか言ってたけど、あなたがそもそもどうやって生きてきたのかとか、全然知らないよ?」

猫又娘「私!?……は、物心ついた時にはこうだったんよね。気付いたら猫又としてここに居ました、みたいな」

包帯少女「…やっぱり、あなたオニだよね?」

猫又娘「んー、確かにあの化け物たちと同じような感覚はあるけど…」

包帯少女「……撃退しなきゃ」ユラァ

猫又娘「にゃ!?ストップストップ!オニはオニでも悪いオニじゃないから!」

包帯少女「冗談だよ」クスッ

猫又娘(バット構えるのは冗談でも怖い)

138: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:09:40.63 ID:OOuoymdI0

猫又娘「というか!その点で言ったら少女さんも他人事じゃないんよ!」

猫又娘「その包帯の下、私たちとおんなじ気配がしてるんだからね?」

包帯少女「──!」

包帯少女(……そっか……)

包帯少女「…じゃあぼくも猫又娘さんみたいに魔法使えるようになるかな?」

猫又娘「魔法って言うとすごくファンタジックに聞こえるね……少女さんの場合、そのバットに魔力が宿ってるのでは?」プププ

包帯少女「へぇー、そう」グリグリ

猫又娘「痛い痛いバット押し当てるのやめてー!」

包帯少女「…それで、自称良いオニの猫又娘さんはなんで他のオニたちを斃してまわってたの?」

猫又娘「そりゃあねぇ。私たちの住むこの町が好き勝手にされるなんて見過ごせないじゃん?」

包帯少女「…正義のヒーロー?」

猫又娘「そんな大層なもんじゃないよ。私はただ」

猫又娘「──世界を少し、明るくできたらいいなって」

猫又娘「…それだけ」ニコッ

包帯少女「……初めて頼もしく見えたかも」

猫又娘「なにをー!昨日絶体絶命のピンチを助けてあげたじゃんか!」

包帯少女「それはそれ。これはこれ」

猫又娘「意味分かんないから!」

包帯少女「そういうからかい甲斐があるところのせいかなー」ククク

猫又娘「む……」

139: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:10:51.08 ID:OOuoymdI0

猫又娘「……とにかく!」

猫又娘「あとは今後の方針を決めていきましょ!」

猫又娘「私思ったんだけど、これまでみたいに闇雲にあいつらを倒してくだけじゃダメなんだよきっと」

包帯少女「それには同意。結局のところあの怪物が何処から現れたのか、そもそもなんなのかが分からないと前に進まない気がする。…でも昨日みたいなのが出てきたら危ないとも思う…」

猫又娘「あー、あのでっかいやつね。野放しにしてたら間違いなく何か起きてたよねぇ…」

包帯少女「うん。だから今まで通りオニ退治は──」

猫又娘「そこだよ!」

包帯少女「え?」

猫又娘「あの化け物退治!それは私一人でやります!具体的には、見張り兼退治ってところですけど」

包帯少女「そんな──」

猫又娘「やられそうになってた誰かさんは大人しく家で寝ててくださいな。そのかわり情報収集の要は任せたから!」

包帯少女「………そういうことなら」

猫又娘「物分かりがよくて助かりますな~」

包帯少女「でもどこから探してけばいいのかな」

猫又娘「…それを考えるのもお任せします」

包帯少女「……」ジトッ

包帯少女「…猫又娘さん、同じ猫又の知り合いとかいないの?」

猫又娘「いないいない。居たらその子にもじゃんじゃん協力してもらってるよー」

猫又娘「……あ」

猫又娘「そうだ言ってなかった。猫又じゃないけどさ、居たよ、うちのクラスに」

包帯少女「そうなの…!?」

猫又娘「うん。ほら先週転校してきたあの子」

包帯少女「あの子って」



包帯少女「…夢見娘さん…?」





140: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:12:41.05 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「……」テクテク

少年(…少女さん…)

少年(柔らかかったな……)

少年「…って、ダメだダメだ。なに考えてるんだ」

少年「ん?」



夢見娘「!」

夢見娘「」タッタッタッ...



少年「……あの人……」





141: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:15:06.02 ID:OOuoymdI0
ーーー二つ編み宅ーーー



ガチャリ



二つ編み「…ただいま帰りました」

ドタドタドタ

二つ編み母「ちょっと!帰りが遅いんじゃないの!?」

二つ編み「すみません。補習課題があったもので…」

二つ編み母「そんなのあなたの自業自得でしょう!家のお勉強もあるんだからさっさと帰ってきなさい!」

二つ編み「……はい」

二つ編み母「分かったら部屋に行ってお勉強の続き!今日の分が終わらなかったら承知しませんからね」

二つ編み母「まったく補習だなんて恥ずかしいったらないわ…」トットットッ...

二つ編み「……」





ーーー自室ーーー

二つ編み「……」カキカキ

二つ編み「……」カキ...

二つ編み「………」

二つ編み(……まただ)



──いやぁああ!

──やめてくれ…!

──くる…しい……



二つ編み「………」

グシャッ

二つ編み「やめて欲しいのはこっちの方よ…!」

二つ編み(頭に響く気味の悪い悲鳴)

二つ編み(それは2週間前の日曜日から始まった。最初に聞こえたのは訳の分からない呻き声。でも周りにはわたし以外の人物は見当たらない)

二つ編み(それからずっと、この変な声と…)

二つ編み「……っ」

二つ編み(…何かに見られてるような気配が、わたしの思考を掻き乱す)

二つ編み(本当煩わしい。ただでさえ面倒臭い世界だっていうのに、これ以上わたしの邪魔をしないでよ…!)

二つ編み「……」...カキカキ

二つ編み(……おかげで基礎学力テストの成績は最悪。いつもなら難なく解ける問題も、あの日は全く頭に入ってこなかった)



──もうやだよ……たすけて……



二つ編み(……消えて、くれないかしら……)

二つ編み(この悲鳴も、口うるさい親も、わたし自身も……全部!)





142: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:16:28.21 ID:OOuoymdI0
ーーー翌朝 教室ーーー

二つ編み「……」カキカキ

二つ編み(結局昨日終わらなかった…。今の内に片付けておかないと、また怒鳴られる)



「聞いた?二つ編みさんが補習に引っかかってるって…」

「知ってるー、前のテスト悲惨だったんだってさ」

「ぷっ、あのガリ勉から勉強取ったらなにが残るのよ」

クスクス...



二つ編み(……うるさいわね)

二つ編み(どうせ他人を利用することしか能がないくせして、群れたら他人を貶めようとする)

二つ編み(一人じゃ何も出来ないんでしょ?)

二つ編み「……」カキカキ

二つ編み(…一人じゃ何も出来ないのは、わたしも同じか…)



──ここから出してよ…



二つ編み(……すすり泣くような声)

二つ編み(わたし、呪われたのかしら。それとももうすぐ死ぬ?)

二つ編み(それならそれでいいけれど……)

二つ編み(このままこの苦痛しかない日々を続けさせられるのは、ごめんだわ)

二つ編み「……」ググッ...

ポキッ

二つ編み「!」

二つ編み「……」カチカチ

...ジロッ

二つ編み(っ!)

二つ編み「」バッ



(談笑するクラスメイトたち)



二つ編み「……っっ」

二つ編み(誰……誰なの!?)

二つ編み(お願いだから、もうわたしを見ないで…!)





143: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:48:40.79 ID:OOuoymdI0



包帯少女「──夢見娘さんが?」

少年「そう。僕の家の近くに居たんだよ」

猫又娘「見間違いじゃなくてー?」

少年「はっきり顔を見たからそれはないはず。僕に見つかったら逃げていったし…」

少年「それでさ、この前聞きそびれちゃったんだけど、あの人少女さんの知り合いだったりする?」

少年「学校でもよくこっちを見てるんだよね」

包帯少女「え」チラリ



夢見娘「…!」フイッ



包帯少女(…本当だ)

包帯少女「あの子も、人じゃないんだよね?」ヒソヒソ

猫又娘「うむぅ…でも変な悪さするような子には見えないけどなぁ」ヒソヒソ

包帯少女「けど万が一ってことも…」ヒソヒソ

少年「え、なに?二人とも心当たりあったりする?」

包帯少女「知らない子だけど…」

猫又娘「ふむ…」

少年「?」

猫又娘「……だったら直接本人に訊くしかないっしょ」

包帯少女「なっ」

少年「それしかないかなぁ。ずっと見てくるの、気になるしなぁ」

包帯少女「なに考えてるの…!そんな危ないこと…」ヒソヒソ

猫又娘「大丈夫大丈夫、いざとなれば私もいるんだし。それに…あっちの派手娘さんに話しかけるよりはハードル低いと思うから」ヒソヒソ



派手娘「なんであんたらはいつもいつも──!」ガミガミ

同級生A・B「「……」」チヂコマリ



包帯少女「…あれは、また別次元の話でしょ」

144: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:52:32.17 ID:OOuoymdI0

猫又娘「ともかくだ、少年君!気にかかることはそのままにしといちゃいかん!」

猫又娘「もしかしたら、あの子きみのことが好きなのかもしれないし?」

少年「!?」

包帯少女「」ムッ

猫又娘「そうと決まれば善は急げ♪行った行った!」



同級生C「──夢見娘さん、おはよう!」

夢見娘「……」コクリ

同級生C「今日は我ながら素晴らしい報告が──」



猫又娘「…あちゃー」

包帯少女「同級生Cくん、だっけ」

猫又娘「ま、しょうがない。あの子が捕まるタイミングで行くしかないね」

包帯少女「……彼、絶対夢見娘さんのこと好きだよね」

猫又娘「ん~…!いいじゃんいいじゃん!恋って素敵だよー!」

猫又娘「私的にはあれくらいアタックしてくれる方が燃えるな~!」

猫又娘「ね?少年君?」

少年「え!?なんで僕!?」

包帯少女「……そうなの?」

少年「いや……えぇ…?僕は…」

包帯少女「……」

少年(えも言われぬ圧力を感じる…)

少年「…好きとか好きじゃないとか、よく分かんない、かな」

猫又娘「えー?つまんなーい。もっとキュンキュンするような話をさー、聞かせておくれよー」

包帯少女「そこ、いい加減黙る」ビシッ

猫又娘「あたっ」

少年「ははは…」

少年(……好きな人、か……)

包帯少女「あなたほんとその元気はどこから湧いてくるの…」

猫又娘「いつでもみんなの太陽ですから!」エッヘン

少年「……」

包帯少女「…ん、どうかした?」

少年「な、なんでもない」





145: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:55:58.63 ID:OOuoymdI0
ーーー放課後 学校ーーー

二つ編み「……」テク..テク..

二つ編み「はぁ……」

二つ編み(足が重い…)

二つ編み(家、帰りたくない…)

二つ編み「……」テク..テク..

二つ編み(わたしって何が楽しくて生きてるんだろう)

二つ編み(学校にはただただ文字を書き殴りに来て、家に戻れば両親の言いなり人形)

二つ編み(人並みの遊びなんか知らない…)

二つ編み(挙句……意味分からない呪いまで貰ってきちゃって)

二つ編み(……わたしはなんなの?)

二つ編み「……ぅ……」

二つ編み(気分悪く……)

二つ編み(お手洗い…)

フラフラ



包帯少女「──、─」

猫又娘「──?───」



二つ編み「……」フラ..フラ..

二つ編み(…あの二人…クラスの……)



猫又娘「──見に行ったら、目に見えて少なくなってたんよ」

包帯少女「あの大きなオニがオニを作り出してたってこと?でも──」



二つ編み「……?」フラ...

二つ編み(何の話をしてるのかしら…)

二つ編み(……とりあえず、早く行──)



猫又娘「んにゃー、私はどうしても先々週の日曜日がキーポイントだと思うんだよねぇ。今のところ全部、そこが起点になってるじゃん?」



二つ編み(!!)

二つ編み(2週前の、日曜日…!)

スタスタスタ!

二つ編み「ねぇ!!」

包帯少女「?」

猫又娘「!?」



二つ編み「その話、詳しく聞かせてくれない…?」





146: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 01:56:59.36 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「一人で帰ってると、やっぱ物足りない気がするなぁ」テクテク

少年(それだけ最近、誰かと一緒にいることが多いんだろうな)

少年(少女さん、今日は猫又娘さんの勉強を見るって言って学校に残ってった……僕は戦力外通告ってことか。まぁ自覚はあるけどさ)

少年(件の夢見娘さんには同級生C君(だっけ?)がベッタリくっついてて話す隙さえなかったし)

少年「なんだろうなー……」テクテク

少年(この引っかかる感じ)

少年(噛み合わない歯車を見てるような、日々…)

少年「……」

少年(やっぱり、あの包帯が……)

少年(……いつ取れるんだろ)

テクテク...





夢見娘「……」ソッ...





147: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:00:07.12 ID:OOuoymdI0
ーーー学校ーーー

二つ編み「つまり、その日以来あなたたち二人でその怪物を減らそうとしてたってこと?」

猫又娘「実際協力しようってなったのは一昨日からだけどね~。それまで少女さんが戦ってることも知らなかったもんで」

二つ編み「戦う……あなた陰陽師か何か?」

包帯少女「ぼくは普通の人間だよ」

猫又娘「…趣味はバットによる殴打です」ボソリ

包帯少女「」ギロッ

猫又娘「ひっ!じ、事実じゃん…!?」

包帯少女「偶々手近にあった武器なだけだから」

二つ編み「なんか、思ってたより勇ましい人なのね…」

包帯少女「…というか、信じるの?こんな話」

二つ編み「えぇ。信じる…いえ、信じるしかないの」

二つ編み「だってわたしも、ここ最近ずっとおかしなことが続いてるから」

二つ編み(この地獄から抜け出せるなら、藁にだって縋る)

猫又娘「何があったの?」

二つ編み「頭の中で悲鳴や泣き声が聞こえてきたり、なにかに見られてるような気がしたり…」

...ギョロ

二つ編み「っ!い、今も…」

猫又娘「…誰もいない、はずだけど」

二つ編み「きっとあなたたちの言う怪物の仕業なのよ…!」

二つ編み「だから……わたしも手伝うわ。このバカみたいな事態と一刻も早くおさらばしましょう」

猫又娘「そんな強引に」

包帯少女「…その申し出は正直ありがたいけど、二つ編みさんは平気なの?」

二つ編み「なにがかしら?」

包帯少女「自分から関わっていくとなると、もっと酷いことが起きるかもしれない……そんな可能性が付き纏うんだよ」

二つ編み「…今以上に酷くなることなんてないわよ」

包帯少女「……そう」

二つ編み「………」

猫又娘(…?)

148: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:02:06.42 ID:OOuoymdI0

二つ編み「……今分かってることは?」

包帯少女「え?」

二つ編み「手伝うって言った手前情けないけど、わたしそいつらが見えたことないから戦うとかは出来ないと思う。調べ物の方に手を貸すわ。…本当はこの手で叩き潰してやりたいのに…」

猫又娘「例え見えたとしても戦うのは危ないからね!?」

猫又娘(女の子って好戦的な子ばっかりなんだなぁ…)

包帯少女「その話もしようと思ってたところ」

包帯少女「昨日、色々調べてみたんだけど…ごめん、今のところ収穫はゼロ。妖怪とか魔物とかそれらしいワードで検索かけてみたんだけどね…ぼくが見たようなオニの画像はまったく引っかかんなかった」

二つ編み「よく聞くような妖怪じゃないってことね」

包帯少女「うん。確かにどれ一つとして見たことない……それこそ得体の知れない姿形だったからね」

包帯少女「例外もあるけど…」チラッ

猫又娘「にゃはは…」

二つ編み「事実は小説より奇なりとは言うけれど……」

二つ編み(妖怪……そういえば)

二つ編み「…案外、かなりマイナーな怪異とかだったりするのかもしれないわね」

猫又娘「あんなに大暴れしてるのに?」

二つ編み「規模は関係ないのよきっと。あなたたちも聞いたことあるでしょう?」



二つ編み「トドノツマリ様」



包帯少女・猫又娘「「!」」

二つ編み「あの噂だって全く有名ではないけどここ南町ではそれなりに昔から伝えられてきた話だって聞いたわ」

二つ編み「それと同じように、あなたの見た怪物も地域の限られた伝承なんじゃないかしら」

包帯少女「なるほど…」

猫又娘「おー」

包帯少女「…あなたも少しは考えて」

猫又娘「これでも考えてるよ!?」

149: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:04:44.72 ID:OOuoymdI0

包帯少女「でも、そんなのどう探していけばいいのかな」

包帯少女「トドノツマリ様みたいな噂になってるとして、一人ずつ聞き込みをしていく…くらい?」

猫又娘「それなら私に任せて!人を集めるのは得意なのですよ!」

二つ編み「いいえ。それは最終手段くらいでいいと思う」

二つ編み「わたしのおばあ……祖母が経営してる古書店があるのよ。多分そこならローカルな言い伝えとかある程度は調べられるはず」

猫又娘(!…私のことも載ってるんかな)

二つ編み「あ。…ごめんなさい、それは明日でもいいかしら」

包帯少女「ぼくは構わないよ」

猫又娘「そういえば二つ編みさんいっつも早々と帰ってるよね。習い事か何か?」

二つ編み「いえ…うち、親が少し厳しいから…」

包帯少女(……)

猫又娘「……その顔!」

二つ編み「え…?」

猫又娘「さては普段からずっとそういう暗い顔してるでしょ」

猫又娘「二つ編みさんがオニたちの影響を受けてるの、案外そういう気の持ちようのせいだったりするんじゃない?」

猫又娘「笑顔は万病の薬だよ!無理矢理でも笑えば、楽しくなってくるよ!」

猫又娘「こうやって!」ニーッ

二つ編み「何の話…」

猫又娘「ほらほら」

二つ編み「……」

包帯少女「……そこまで。二つ編みさん困ってるから」

包帯少女「引き留めてごめん。急いでるんだよね?また明日よろしく」

二つ編み「…そう、ね」

二つ編み(…!もうこんな時間…!)

二つ編み「先に帰るわね、さよなら…!」



スタスタスタ...



猫又娘「……あーあ、結局笑った顔見れなかったなー」

包帯少女「見境ないよね、あなた」

猫又娘「んー?そうは言うけど、あの子は特別だよ。だって」



猫又娘「──二つ編みさんの笑顔、今まで一回も見たことないんだもん」



包帯少女「…!」

包帯少女「……そういうとこ、尊敬するよ」

猫又娘「ほんと?やったっ」





150: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:10:32.83 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

二つ編み「……」スタスタ

二つ編み(……怪物……)

二つ編み(胸糞悪いわ。本当にそいつらのせいなのだとしたら、どうしようもないじゃないの)

二つ編み(そんなの…あまりに理不尽過ぎる)

二つ編み「……」スタスタ



ーーーーー

猫又娘「――無理矢理でも笑えば、楽しくなってくるよ!」

ーーーーー



二つ編み(……)

二つ編み(……笑顔なんて、関係あるのかしら……)

スタスタ...





黒服男「………」





黒服男「…思惑に沿わぬ現況」

黒服男「その要因を探りに来たが……よもや人の子らだったとはな」

黒服男「一つは純粋な人」

黒服男「一つは人と妖禍子(アヤカシ)の混じった猫」

黒服男「一つは…」

黒服男(…水底に沈んだはずのあの娘…)

黒服男「……」

黒服男(だが、それだけではあるまい)

黒服男(あの妖禍子の減りよう……)

黒服男「……娘を現世に戻した存在か」

黒服男(同じ気配を感じる)

黒服男「…道を塞ぐものは除くのみ」





151: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:13:05.28 ID:OOuoymdI0
ーーー翌日放課後 校門前ーーー

包帯少女「……」スッ..スッ(スマホいじってる)

タッタッタッ

二つ編み「お待たせ。行きましょうか」

包帯少女「…本当に来れたんだね。補習は平気だったの?」テクテク

二つ編み「ちょっと先生に頼み込んで、プリント繰り上げて終わらせたのよ」テクテク

包帯少女「そんなこと出来たんだ」

二つ編み「…えぇ」

二つ編み(元々成績"だけ"は良かったから…特別処遇ね。こういう時だけは助かる)

包帯少女「でも今日補習の日だったなんてね……猫又娘さん、律儀に出席しちゃうから…」

二つ編み「あの子ただでさえ教師に目付けられてるものね。…さっき補習室出る時すごい目で見てきたけど」

包帯少女「今日分かったことは後でちゃんと教えるって言っといたのに」

二つ編み「…なんか好奇心旺盛な子供を見てるみたい」

包帯少女「言えてる」クスッ

二つ編み「……」

包帯少女「……」

二つ編み(………)

二つ編み「……ねぇ、その包帯」

二つ編み「それも例の怪物にやられたの?」

包帯少女「……これはちょっと違うと思ってる」

包帯少女「あいつらに触れたりするとすごい痛み出すの。それが尾を引いちゃって……着けてないと不安になるようになっちゃった」

二つ編み「…始まりはやっぱり2週間前の日曜日なのよね?」

包帯少女「そう」

二つ編み「……全部その日が……いえ、でもそこに固執するのも……もしかして見えているものが全てとは……」ブツブツ

二つ編み「──その前の日、土曜日あたりに何か変わったことはなかった?」

包帯少女「っ…!」

包帯少女(……)

二つ編み「……聞こえてる?」

包帯少女「…うん」

包帯少女「なかったよ、特に」

二つ編み「………」

包帯少女「………」

152: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:14:40.39 ID:OOuoymdI0

二つ編み「嘘ね」

包帯少女「!どうして…」

二つ編み「分かるわよ、それくらい」

二つ編み「でもいい。無理に聞こうとはしないから」

二つ編み「人に知られたくないことの一つや二つ、あるものね」

包帯少女「……」

二つ編み「けど覚えておいて。それがこの怪奇現象の打開の鍵を握ることがあれば、いずれ向き合うことになる」

包帯少女「………知ってるよ」

包帯少女(言われなくても、自分が一番分かってる…)

包帯少女「…二つ編みさんにも、あるの?知られたくないこと」

二つ編み「……あるわ」

二つ編み(……誰にも晒したくないもの……)



ーーーーー

二つ編み母「──あなたの頭なら、この高校くらい行けるでしょ?受験しなさい。いいわね?」

二つ編み「はい」

ーーーーー



二つ編み(………)



二つ編み(それはわたしの──弱さ)





153: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:15:33.26 ID:OOuoymdI0
ーーー古書店ーーー

二つ編み「──おばあちゃん、居る?」



...ガララ



老婆「おや…二つ編みちゃん、いらっしゃい」

二つ編み「あのね、今ちょっとした調べ物してて。ここの本、少し読ませてもらってもいいかな?」

包帯少女(口調が柔らかい……意外におばあちゃん子?)

老婆「ええよええよ遠慮せんで。…そちらはお友達かい?」

包帯少女「あ…はい、そうです。不躾なお願いなのに、ありがとうございます」

老婆「しっかりしとるのぉ。気にしなくてええけんの」

老婆「気の済むまで見てっておくれ」ニッコリ



.........





ガサゴソ

二つ編み「……」パラパラ

ガサッ

包帯少女「……んー……」ペラ...

二つ編み「……」パララ

二つ編み「……これは違う?」スッ

包帯少女「ん?…違うね」

二つ編み「はー……これだけ探しても見つからないなんて」

包帯少女「知らなくてよかったような言い伝えなら嫌になるほどあったのにね…」

二つ編み「どれも昔教えて貰ったのばっかりよ」

包帯少女「昔?」



老婆「調べ物は順調かねぇ?」



二つ編み「おばあちゃん……あんまり進んでないの…」

老婆「そうかい……」

老婆「あれま。懐かしいねぇ」

老婆「物の怪、妖怪の本。…二つ編みちゃんの小さかった頃、たくさんお話聞かせたっけねぇ」

二つ編み「うん……覚えてる」

老婆「あんまり怖がらせると夜外に出たがらなくなるもんだから、おうちに帰るのも一苦労だったわね」

二つ編み「そ、そういうのはいいから!」

包帯少女(…なんだか、楽しそう)

154: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:16:43.03 ID:OOuoymdI0

老婆「ほほほ。まぁ、根詰めるのも程々にの。茶菓子でも食べて、休憩しなされ」コトッ

二つ編み「…ありがと」

老婆「お友達もどうぞ」

包帯少女「ありがとう、ございます」

包帯少女(すごく優しいおばあちゃんだな…家が厳しいって言ってたけど、このおばあちゃん見てると全然そんな気はしないのに)

包帯少女「……」スッ

包帯少女「あ…!」

包帯少女「これ…これだよ!」

老婆「はて?」

二つ編み「どうしたのよ…?」

包帯少女「このお盆に描いてある絵!」

(1体の異形の絵)

包帯少女「ぼくが見たオニにそっくり!」

二つ編み「そうなの!これが…!」

老婆「ほぉ……」

老婆「あんたたち、妖禍子(アヤカシ)について調べてたのかい?」

包帯少女「あやかし…?」



.........





155: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:17:54.77 ID:OOuoymdI0



老婆「ほれ、この本だったはずだよ」スッ

二つ編み「……表紙、何も書いてないよ?」

老婆「古い伝記みたいなものだからねぇ。売り物としても置けないさね」ホホ

二つ編み「……」パラ...

包帯少女「……」ノゾキコミ



『妖禍子。それは古来よりこの南町に語り継がれる異形の存在。その由来や行動目的など、彼らについて判明していることは非常に少ない。しかし唯一はっきりしているのは、彼らの存在は我々人間の世を脅かしかねないということ。見つけ次第封印を施さねばならない。

彼らを知らずに、見逃してしまうことのないようこの書には知りうる限りの見聞を記す。』



包帯少女(……)

二つ編み「……」パラ..パラ..

包帯少女「…!」

包帯少女「これ、見たことある。こっちのも」

二つ編み「どうやら、間違いなさそうね」

二つ編み「妖禍子……これがわたしたちが消し去るべき…」

二つ編み「敵」

包帯少女「………」

二つ編み「………」

ペラ

老婆「こりゃ驚いた……まさか妖禍子に会ったっちゅうんかね?」

二つ編み「わたしは見てないけど、この子がね」

二つ編み「ねぇおばあちゃん、この端書きにある封印って、具体的に何をするの?この本肝心な方法が書いてないよ」

老婆「封印ねぇ……」

包帯少女(…!これ…)



『猫又』



包帯少女(小さな猫に尻尾が二本……猫又娘さんと同じだ)

老婆「具体的にこう封印しますよ…って話は聞いたことないけどねぇ」

老婆「ばあちゃんが知っとるんは、昔々…大勢の妖禍子達がうちらの神社に封じ込められたなんちゅう逸話くらいさね」

包帯少女「!」

二つ編み「それって、南町神社?」

老婆「そうそう」

156: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:19:18.43 ID:OOuoymdI0

二つ編み「……」

包帯少女「……」

二つ編み「段々、繋がってきたわね」

包帯少女「うん」

二つ編み(けれど、あと一歩……足りない。封印の件は置いといたとして、まだはっきりとしない部分があるのよね…)

二つ編み「おばあちゃん、妖禍子について他に知ってることってないの?何でもいいの。どんな小さいことでも…!」

老婆「なんだろねぇ……ふーむ……」

老婆「……そのヒトら、今でこそ妖禍子なんて呼ばれて忌み嫌われてるだろう?けんども、ばあちゃんにはねぇ」

老婆「なんとなくだけど、悪さするようなもんにゃ思えないんだよねぇ」

二つ編み「それは感想じゃないの…」

老婆「ほっほっ。何でもええ言うたのは二つ編みちゃんさね」

二つ編み「そうだけどぉ…」

包帯少女「…二つ編みさんさ」

二つ編み「なに?」

包帯少女「おばあちゃんのこと大好きなんだね?」

二つ編み「はっ!?いきなり何言い出すのよ…!?」

包帯少女「だっていつもより楽しそうにお話してるじゃない」

二つ編み「そんなこと…!」

老婆「ばあちゃんと居るのは楽しくないかえ?それは悲しいのぉ」ヨヨヨ

二つ編み「そ、そうじゃないけど……おばあちゃんまで乗っからないでっ」

老婆「ほほほ」

包帯少女「へぇー…なんか、かわいいね」フフッ

二つ編み「!?///」

二つ編み「……わたし、散らかした本片付けてくるから!」

包帯少女「それならぼくも──」

二つ編み「少女さんは待ってて。どの本がどこにあったかなんて覚えてないでしょう?」



スタスタ...



包帯少女「行っちゃった…」

老婆「まあ……本の並び順なんてうちは気にしてないのにねぇ」

包帯少女「あ、そうなんですね」

包帯少女(じゃあ…照れ隠し?)

包帯少女(なんだ、ちゃんと人間臭いところあるんじゃない)

包帯少女(猫又娘さんが居たら、ちょっと面白かったかもね)

157: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:20:08.63 ID:OOuoymdI0

老婆「…お友達さんや、名前は何て言うんだい?」

包帯少女「少女です。二つ編みさんとは同じクラスなんです」

老婆「少女さんね……うんうん、覚えたよ」

老婆「のぅ少女さん。あの子、学校での様子はどんなものかね?」

包帯少女「学校で、ですか。普段は…勉強を頑張ってますね。とても真面目ですよ。生徒の中で一番大人びてると思います」

老婆「……そうかい……」

包帯少女「……どうかしたんですか?」

老婆「うんにゃ……ちぃとくらいは気を緩められるようになって欲しゅうてねぇ」

包帯少女「気を……」

包帯少女「……あの、二つ編みさんの親御さんが厳しい、と…本人から聞きました」

老婆「………」

包帯少女「………」

老婆「……あの子と今暮らしてるのは、本当の両親じゃあないのさ」

包帯少女「え…」

老婆「あの子の親はね、あの子が中学に上がる前に交通事故で亡くなってしまってねぇ」

老婆「轢き逃げだって。他にも何人か犠牲になった人がおったっちゅう…」

包帯少女「その事件、覚えてます。この近くで起きたやつですよね」

老婆「うむ……」

老婆「結局、親戚中をたらい回しにされた後、今の……義理の両親さね、養子として迎え入れたのよ」

老婆「子供欲しがっとる言う遠縁の夫婦さね。だども……今のあの子を見てると、とてもじゃないけど良くしてもらっとるようにゃ見えんでねぇ」

老婆「このばばあが引き取りたいっちゅう思いもあるんじゃが…老い先短い身じゃ。あの子の巣立つまで保たん…」

包帯少女「……」



二つ編み「」テキパキ



包帯少女(……そんなの、全然知らなかった)

158: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:24:41.84 ID:OOuoymdI0

老婆「あの子、笑わんじゃろ?」

包帯少女「!」

老婆「それどころか、どんな辛いことがあろうと表情に出そうとせん」

老婆「小さい頃からそうじゃった。自分の弱いところを決して見せようとしないのさ」

包帯少女(……直接オニが見えるぼくでもあんなに恐怖を感じるのに……相手の見えない二つ編みさんは)

包帯少女(どれだけの苦痛と闘っているんだろう…)

老婆「そんなだから今の家で不自由を感じていたところで、それを打ち明けることもないんだろうねぇ…」

包帯少女「………」

老婆「……じゃから、少女さんには感謝しておるのよ」

老婆「あの子が友達を連れて来よるなんて初めてでねぇ。ばあちゃんも少し、安心したよ」

包帯少女「ぼくは、そんな大層なものでは…」

包帯少女(うぅ…まともに話したのが昨日からだなんて言えない……まして妖禍子繋がりで…)

老婆「これからも、二つ編みちゃんの友達で居てくれるかい…?」

包帯少女「……」

包帯少女「勿論です」

老婆「……」ニッコリ

二つ編み「──終わったわ…おばあちゃん、あれでいいんだよね?」

老婆「おぉおぉ、上出来だとも」

二つ編み「良かった」

二つ編み「…で、二人とも何の話で盛り上がってたの?妖禍子の言い伝え?」

包帯少女「……二つ編みさんのかわいいエピソードを少々」

二つ編み「え」

二つ編み「なに?なに話したの、おばあちゃん…!」

老婆「さてさて、何だったかねぇ」

包帯少女「ふふっ」

二つ編み「………」

二つ編み「わたしばっかり……少女さん、あなたこそ彼氏放っておいていいのかしら?」

包帯少女「は、え?」

二つ編み「少年君。近頃ずっとベッタリでしょ?寂しがってるんじゃない?」

包帯少女「いや…彼はそういうのじゃ…!」

二つ編み「それにしてはやけに焦るわね」シテヤッタリ

包帯少女(少年君が彼氏…)

159: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:27:30.23 ID:OOuoymdI0



ーーーーー

少年「──好きとか好きじゃないとか、よく分かんない、かな」

ーーーーー



包帯少女(ぼくが彼に声を掛けたのはなんとなく放って置けなかったからであって…)

包帯少女(友達、だと思ってた)

包帯少女(……けど……)

二つ編み「ま、いいわ。そういう話題は猫又娘さんの方が好きそうだし」

二つ編み「この本、借りてくねおばあちゃん」パラパラ

老婆「ええよ。失くさんようにの」

二つ編み「妖禍子について書いてある本、これだけかな?」

老婆「それ一冊だけだったと思っちょるよ……探して、見つかったら連絡でもしようかね?」

二つ編み「ありがと。じゃあわたしの携帯に掛けて。番号、今書くから」

ストッ ススッ

包帯少女「……」

(妖禍子の本を手に取る)

パラ..パラパラ..

包帯少女(……!)



『トドノツマリ様』



二つ編み「はい。これわたしの番号ね」

老婆「はいよ」

包帯少女「……おばあさん、訊いてもいいですか?」

老婆「ん?」

包帯少女「この…"トドノツマリ様"について」

包帯少女「この絵、小さい女の子に見えるんですけど、これも妖禍子なんですか?」

老婆「そうさね。そこに載っとるんは全部、そう呼ばれるものじゃから」

包帯少女「……トドノツマリ様が、人の願いを叶えてくれるというのは、本当ですか?」

老婆「あぁ…そんな噂が立っとるみたいねぇ。大抵そういうんは都合良く作られた迷信だったりするがね」

老婆「…どうやらトドノツマリ様に至っては、あながち嘘でもないんじゃ」

二つ編み「そうなの…?」

160: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:31:37.29 ID:OOuoymdI0

老婆「ばあちゃんの周りにも居ったよ?やれ辛抱強く願ったら叶えてくれたって叫んでたっけね」

老婆「その人は身長が欲しいと言ってて…事実、20過ぎにも関わらずそれから不自然なくらい背丈が伸びてってねぇ」

老婆「ま、異性に注目されたいなんちゅうしょうもない動機やったらしいけども」

包帯少女「…不思議、ではありますね」

包帯少女(……)

包帯少女「あともう一個。…願いを聞いてもらうと世界に災いがもたらされる…なんて話も聞きました」

老婆「災い?そんなはずないさ」

老婆「トドノツマリ様は、うちらの守り神なんじゃからの」

二つ編み「守り神…」

老婆「遠い昔からずー…っと、あの神社のお社でこの町を見守って下さっとるんじゃ」

老婆「ばあちゃんはそう言い聞かせられて、育ったものよ」

包帯少女「……」

二つ編み「……」

包帯少女「……妖禍子が封じられたのも神社、トドノツマリ様が町を見守ってる場所も神社……」

包帯少女「何か、関係があるのかな…」

老婆「悪い妖禍子が出てこないように見張ってくれとる……というのが有力さね」

老婆「妖禍子に悪いも何も無いと思うんじゃけどねぇ…」

包帯少女(……トドノツマリ様に、神社に、妖禍子に……そして、生き返ったぼく)

包帯少女(あの時、少年君は……もしかして……)

老婆「けんども、少女さん、妖禍子を見たんじゃもんなぁ」

包帯少女「そう、ですね。夜になると、たくさん徘徊してるんです」

老婆「…もし真実なら、あるいは…」





老婆「神社に、良くないことが起きとるのかもねぇ……」





161: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:33:30.91 ID:OOuoymdI0
ーーー神社ーーー

幼女「………」

幼女「……何用か?」



黒服男「用など、言わなくても分かっているだろう?」



幼女「……立ち去るがよい。そなたの望む物は此処には無い」

黒服男「俺が何を為すつもりか、把握しているような口振りだな」

黒服男「なら、少し違う。俺が今望むのは…」

黒服男「障害の排除」

幼女「……」

黒服男「お前のような妖禍子(アヤカシ)が存在するとはな」

黒服男「見てくれは人だが……その異能。他の妖禍子を遣い、俺の妨害をしていたか」

黒服男「……何故人間に加担する?」

幼女「………」

幼女「加担には非ず。我の所業は単純」

幼女「人と妖禍子の混ざらぬ事」

黒服男「人間が俺達を受容することは無いからな。その思考は同意する」

黒服男「だからこそ、愚かな人間共を除き去る必要がある」



幼女「……紅(あか)と碧(あお)の獣」



黒服男「…!」

幼女「あの凄惨が繰り返されてはならぬ。我等と人、其の均衡は保たれて然るもの」

黒服男「……」

162: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:35:19.92 ID:OOuoymdI0

黒服男「それを知っていて尚、俺を止めようとするか…」

幼女「…憎しみが最後に残すは、虚な無でしかない」

黒服男「その憎しみを生むのも、増長するのも人間だ」

幼女「我等とて完全な存在ではあるまい。相互不干渉、其れが最適解となるのだ」

黒服男「…どうやら言葉を交わすだけ無駄なようだな。お前と俺とでは決定的に価値観が異なる」

...ザッザッ

幼女「………我を消すか?」

黒服男「いや」ザッザッ

黒服男「言っただろう。障害を排除することが目的だと」ザッ...



バシュンッ!



幼女「っ」バッ

幼女「…………?」

黒服男「ほう、こんなノートで妖禍子を生み出せるのだな」ペラ..

幼女「!」

黒服男「む…これは……」

黒服男(奇妙な繋がりだ。あの男の持っていたものか)

幼女「…返還せよ」

黒服男「返すと思うか?」

幼女「……」

黒服男「……」

黒服男「……愚人のように飛びかかるかと思ったが、聡明だな」

黒服男「お前では俺を止められない」

幼女「………」

黒服男「………」

ザッザッザッ...

黒服男「……安心しろ。消えるのは人間だけだ」ザッザッ



スッ...(闇に紛れる黒服男)



幼女「……………」





163: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:37:23.06 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み(……何かしらね。今日は少し…)

二つ編み(楽しかった気がする)

二つ編み(おばあちゃんと話してるだけの時とはまた違う…)



ーーーーー

包帯少女「──へぇー…なんか、かわいいね」フフッ

ーーーーー



二つ編み(少女さんが居たから…?)

二つ編み「……」テクテク

二つ編み(ふぅ…楽観視出来る状況じゃないのにね)

二つ編み(………ふふ)

二つ編み「…そういえば変な悲鳴が聞こえてくることも無かった」

二つ編み(本当にあの子の言ってた"笑顔"なんてものが……影響するのかしら…)

二つ編み「……」テク..

(二つ編み宅)

二つ編み「………」



ガチャ



二つ編み「…!」

二つ編み母「………」

二つ編み「……遅くなりました」

二つ編み母「……」

二つ編み母「どこに行ってたの?」

二つ編み「それは、連絡した通り補習で──」

二つ編み母「嘘をつくんじゃない!」

二つ編み「っ…」

二つ編み母「あなたがあんまり遅いものだから、学校に電話してみたのよ。そしたら補習なんてとっくに終わってるって言うじゃないの!」

二つ編み母「言いなさい、どこに行ってたの?」

164: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:44:38.65 ID:OOuoymdI0

二つ編み「……祖母の書店で、調べ物を……」

二つ編み母「あのおばあさん…!またあなたに余計な時間を使わせたのね!?」

二つ編み母「あぁ嫌だわ…!もっと遠くに越せば良かった!そうすればあなたが無駄な寄り道をすることもないのに!」

二つ編み「!…嘘ついたことはすみません。でも必要な調べ物だったんです」

二つ編み母「あなたに今必要なのは成績でしょう!他は二の次!」

二つ編み母「もう高校合格するまで、おばあさんに近付いちゃ駄目ですからね!」

二つ編み「なっ…成績はちゃんと取り返します!祖母は関係ありません!」

二つ編み母「口答えする気……?」

二つ編み「その調べ物だって勉強に集中するために必要なものなんです」

二つ編み「何でもかんでも無駄だゴミだって、決め付けないで下さい」

二つ編み(…あ)

二つ編み母「」ブチッ

二つ編み母「あなたねぇ…!」

二つ編み母「誰のおかげで生活出来てると思ってるの!?路頭に迷いかけてたあなたを引き取った恩を──」

二つ編み(やってしまった)

二つ編み(つい、口から零れてた)

二つ編み(だって今日の全てを否定されたような気がしたんだもの…)

二つ編み母「──あなたが救われた恩はあなたの人生をかけて返すべきでしょう!親が誇れる子供になる。私は無理なことは一言も言ってないはず──」

二つ編み(耳障り…)

二つ編み母「──それなのに最近──だったその成績──、─!──つもり───!?」

二つ編み(あれ…?)

二つ編み母「───!──、────」





二つ編み(この人の顔、のっぺらぼうだったっけ?)





二つ編み(声も、喋ってるのは分かるのに聞こえない……)

二つ編み「あの…すみません」

二つ編み「さっきから何を言ってるのか全然分からないんですけど…」

二つ編み母「~~っ!」

二つ編み母「」ギャーギャー

ガミガミ

二つ編み「……?」





165: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:45:50.75 ID:OOuoymdI0
ーーー深夜 自室ーーー

二つ編み「……」ボー

二つ編み「……」



──いやだ…

──しにたい



二つ編み(……そうね……)

二つ編み「………」



──だれかぁ…



二つ編み「………」

二つ編み「……あや……かし……」

二つ編み(……そう)

二つ編み(何もかも)





そいつらのせいなのよ。





166: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:47:20.14 ID:OOuoymdI0
ーーー翌日 学校ーーー

猫又娘「妖禍子(アヤカシ)…って言うんだ…」

包帯少女「うん。で、これが今話してた本」トリダシ

猫又娘「ほほぉ」ペラペラ

猫又娘「……お、私が載ってる」

包帯少女「そ。ついでに猫又娘さんが何者かもはっきりしたね」

猫又娘「ついで扱いなのぉ?」

包帯少女「……でも、これでやっと色々見えてきた」

猫又娘「…そだね」

猫又娘「しっかし、トドノツマリ様は守り神だったんね。あの神社に何かが住んでるのは感じてたけど、土地神様だとは……」

包帯少女「まだそうと決まったわけじゃないよ。あくまでも伝聞でしかないから、だから…」

包帯少女「南町神社に行って、確かめてこよう」

包帯少女(なんだかんだで避けてきてしまっていたあの場所…)

猫又娘「……怖い顔してるよ」

猫又娘「少女さんが無理して向かうくらいなら、私だけで見てこよっか?」

包帯少女「ううん。ぼくも行く。あそこに何があるのか、ちゃんと自分で見てこないと」



二つ編み「……」トットットッ



猫又娘「あ、戻ってきた!」

二つ編み「もう昨日の話は共有出来た?」

猫又娘「バッチリです!」

包帯少女「ありがとね。二つ編みさんのおかげで大分筋道が立てられるようになった」

二つ編み「わたしも早く元の日常に戻りたいだけよ」

包帯少女(…元に戻っても、友達のままでいられるよね)

包帯少女「それで、昨日あの後連絡はあったの?」

二つ編み「?何のこと?」

包帯少女「妖禍子について書かれた本が見つかったら追って伝えるって、約束してたでしょ?」

二つ編み「……?…誰と?」

包帯少女「誰って…おばあさんだよ。古書店の、二つ編みさんのおばあちゃん」

二つ編み「おばあちゃん……祖母?」

包帯少女「そう」





二つ編み「わたし、会ったこともないわよ?」





167: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:48:36.48 ID:OOuoymdI0

包帯少女「………え」

包帯少女「何言って…昨日古書店で会ったよね…!?」

二つ編み「古書店には行ったけど、その本買って読んでただけよね」

包帯少女(なに?どういうこと…?)

包帯少女(おばあさんのこと知らないなんて、そんな嘘をつくとは思えないけど……)

包帯少女「…じゃあ、トドノツマリ様の昔話をしてくれたのは?」

二つ編み「それはわたしが知ってたから聞かせてあげたんじゃない」

包帯少女「………」

二つ編み「……どうしたの?いきなり祖母の話なんか持ち出して…」

包帯少女「………いや、何でもない。ぼくの勘違いだったみたい」

二つ編み「そう…?」

二つ編み「あと、先に謝っておくわね。わたししばらく放課後は付き合えない。昨日、帰りが遅過ぎるって言われちゃって」

包帯少女「っ…ごめん、ぼくたちのせいで…」

二つ編み「気にしないで」

二つ編み「あなたたち神社に行くのよね?わたしはわたしで妖禍子の封印について探ってみるつもり」

二つ編み「収穫があれば報告するわ。そっちもよろしくね」クルッ



トットットッ(自席に戻る)



包帯少女「………」

猫又娘「……少女さん、さっきの」

包帯少女「うん、おかしかった」

包帯少女「古書店のおばあさん、間違いなく二つ編みさんのおばあちゃんだったはず…」

猫又娘「んぅ……私も昨日行けてれば…!」

168: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:51:50.48 ID:OOuoymdI0

少年「──二人とも、今平気?」

包帯少女「…少年君」

猫又娘「おやおやどうしたよお兄さん。思い詰めた顔しちゃって」

少年「……」

少年「…相談があるんだけど…」

猫又娘「割と深刻なやつだったり…?」

少年「まぁ、その……」

少年「夢見娘さんのことで」

包帯少女「──!」

包帯少女(色々あって忘れてた……あの子もつまり…)

包帯少女(妖禍子なんだよね…?)

猫又娘「おー、そういえば少年君に気がある──」

包帯少女「大丈夫なの!?なにかおかしなことされた!?」ズイッ

少年(近っ…!)

少年「…おかしなことというか」



少年「尾けられてるみたいなんだ」ボソリ



包帯少女「……ん?」

少年「下校の時、僕の後ろを付いてくるんだよ…!」ヒソヒソ

少年「気付いたのは一昨日からだけど、多分もっと前からされてたんだと思ってる」ヒソヒソ

少年「一度僕の家まで来てたことがあったし…」ヒソヒソ

169: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:53:10.46 ID:OOuoymdI0

猫又娘「わお…」

猫又娘「……ストーカーの妖禍子?」

少年「あや……なに?」

猫又娘「んーん、なんでもない」

少年「だからさ、今日途中まででいいから一緒に帰ってくれないかな」

少年「──猫又娘さん」

猫又娘さん「私?」

包帯少女「……」チラリ

猫又娘「…少女さんは?」

少年「し、少女さんは…」チラッ

少年「っ」メソラシ

猫又娘(?)

少年「明日、とか」

包帯少女「……明日からはまた一緒に帰ろうか。二人で」

猫又娘「え゙」

猫又娘「私は仲間外れ!?」

包帯少女「ははは本気じゃないよー」

猫又娘(目が笑ってないんですが)

包帯少女「……ま、ぼくも今日は行かなくちゃいけないとこがあるしね」

包帯少女(おかしくなったのはぼくか、二つ編みさんか……)

包帯少女「神社には明日、少年君を送ってから向かおう。夢見娘さんのことは任せたから」ヒソ

猫又娘「りょーかい」ヒソ





170: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:56:00.78 ID:OOuoymdI0
ーーー放課後 学校ーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み「……」テクテク



「ねー、お願い!明日までの宿題、終わったら手伝って!」

「ちょっとは自分でやればー?ってか、あんたいつも二つ編みに見せてもらってなかった?」

「だって今のあの人使えなさそうなんだもん。たまに変な独り言言ってて不気味だしぃ」

「友達じゃなかったの?」

「まっさかー(笑)」



二つ編み(………)

二つ編み「……」テクテク

テクテク...







ーーー昇降口ーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み「……」テクテク



同級生A「頼むよー。こんくらいでいいからよ、今月も足りなくなさそうなんだわ」

下級生「でも、俺ももうお金は…」

同級生B「いいだろ?俺たち友達じゃん。そのうちちゃんと返すからさ」

下級生「…そのうちって、い、いつになるんですか…」

同級生A「近いうちにはぜってーだよ。俺らが信用出来ねぇの?」



二つ編み「………」

二つ編み「……」テクテク

テクテク...





171: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:56:48.21 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

二つ編み「……」テクテク

二つ編み「……」テクテク



──ヒック...グスッ...



二つ編み(……)

二つ編み「……」テクテク



ギョロリ



二つ編み(……っ)

二つ編み「」...スタスタ



スタスタスタ...





172: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 02:57:44.25 ID:OOuoymdI0
ーーー古書店ーーー

包帯少女「ここ…だよね」

包帯少女「………」

包帯少女(うん。並んでる本も昨日見てたものと同じ。ここから見えるところにおばあさんはいないけど…)

包帯少女「……すみませーん」



シーン



包帯少女「すみません!誰かいませんかー!」

...ガタッ

包帯少女(!)

トットットッ ガラッ

中年「あい、いらっしゃい」

包帯少女(え…)

中年「なんかね?お会計かい?」

包帯少女「…あの、このお店におばあさんていませんか?」

中年「ばあさん?さぁ知らんなぁ。ばあさんの客はたまに来るけども。それかほれ、おっさんならここにおるでな、ぶはは!」

包帯少女「……この書店、あなたが持ってるものなんですか?」

中年「いんや、ここは兄が趣味でやってるような店だ。今日は俺が店番してるっつーだけよ」

包帯少女「お兄さん…」

中年「あぁ。別に店番でばあさん雇ったいう話も聞いてねぇからな……君、来る店間違えたかい?」

中年「いやまぁ!俺としちゃ君みたいな子が来てくれるだけで良い清涼剤になっけどなー!ははは!」

包帯少女「……」

包帯少女「…妖禍子って知ってます?」

中年「あやかしぃ?なんでぇ、妖怪のことけ?そこらに置いてある本にしこたま書いてあんじゃねぇか?」

包帯少女「………」

包帯少女「すいません、お騒がせしました」ペコリ

中年「おう、帰るんか。気を付けてな」



テクテクテク...



中年「…学生かぁ。戻りてぇよなぁ、俺もなぁ」

中年(にしても今の子、すげぇ包帯してたけど、怪我は平気なんかね)





173: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:00:57.56 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー

少年「──どう、見える?」テクテク

猫又娘「…うーん、まだどこにも見えないかなー」テクテク

少年「おかしいな…昨日はもうこの辺りで後ろにいたんだけど」

猫又娘「誰かといるときはストーキングしないとか?」

少年「どうかな…」

猫又娘「…けど、後をつける以外何もされてないんだよね」

少年「うん、まあ」

猫又娘「その時に訊いちゃえばよかったのに。なんで付け回すのって」

少年「……実際されてごらんよ。結構怖いんだ」

猫又娘「えー?私ならズバッと尋ねちゃうよ?」

少年「みんなが猫又娘さんみたいなわけじゃないから」

少年(……)

少年「……少女さんのこと、なんだけどさ」

少年「最近よく猫又娘さんといるだろ?…その、僕のこと、何か話してなかった?」

猫又娘「少年君の?」

猫又娘(あの子といる時は異変の話しかしないからなぁ)

猫又娘「特にしてないよ」

少年「そっか…」

猫又娘「どしたの?もしや少女さんのこと気になってたりー?」

少年「………」

猫又娘「え……ほんとに?」

猫又娘「つ、ついにお二人さんが──!」

少年「そう決まったわけじゃ…!前にも言ったけど、自分でもまだよく分かってないんだよ」

少年「少女さんが気になるのはその通りでさ。でもそれが友達として気にかかるだけなのか…好きとしての気になるなのかは、全然」

少年「あの包帯だって、いつまで着けてるのか気がかりだし…」

猫又娘(包帯…)

猫又娘(……あの子の包帯からはずっと、私たちと同じ妖禍子(アヤカシ)の気配がしてる)

猫又娘(……それってもしかして……)

174: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:02:14.67 ID:OOuoymdI0

猫又娘「……ん?」チラッ



夢見娘「……」ソロリ



猫又娘「あ…!」

猫又娘「いたよ少年君!かなり後ろの方に!」ヒソヒソ

少年「!いつの間に…」

猫又娘「よーし、任せて。私が問い詰めてくるから!」ヒソヒソ

猫又娘「」クルッ

ダッ!



夢見娘「!」

夢見娘「」タッタッタッ



猫又娘「逃げた!?待ちなさいー!」スタタタ

少年「待ってよ僕も──」



スタタ...



少年「……はや……」

少年「………」

少年「………」



ーーーーー

少女「」ニコッ

ーーーーー



少年(あの笑顔がまた見たいって思うのは……)

少年(好き、だからなのかな……)

少年「……………」

ピロリン

少年「!」



[LINE]
猫又娘『ごめーん、見失っちゃった(T_T)』



少年「えぇ……」





175: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:06:05.16 ID:OOuoymdI0
ーーー夜ーーー



ザッザッ



黒服男「……」ザッザッ

黒服男(……満月の夜)



ーーーーー

女「~~♪」

ーーーーー



黒服男(未だに貴女を思い出す)

黒服男「……」ザッザッ...

黒服男「………」

黒服男(……もう少しで、あの無念を晴らすことが出来る)

黒服男「……」スッ



...キイィ

ゴオオオォォ...!

シュン、シュン、シュン!



「キシャア!」

「キュー、キュー」ヒラッ

「……」ガシャガシャ

「グオォ…」ゴゴゴ



黒服男「………」



(夥しい数の妖禍子達)



黒服男「……あわれあわれや」...ザッザッ

黒服男「だれぞおにか」ザッザッ

黒服男「てのなるところ」ザッザッ



ゾロゾロワラワラ



黒服男「さいてさいてや」ザッザッ

黒服男「あかいはな」ザッザッ

黒服男「ははなるところ…」ザッザッ...



.........





176: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:07:26.27 ID:OOuoymdI0
ーーー少女の自室ーーー

包帯少女「……どうして……」

包帯少女(あの古書店、二つ編みさんのおばあちゃんの居る感じが全くなかった。代わりに雑なおじさんが出てきて…)

包帯少女(まるで最初から居なかったかのように……)

包帯少女「夢でも見てた…?」

包帯少女(店員が知り合いのおばあちゃんになる夢…?)

包帯少女「……」



ーーーーー

老婆「──二つ編みちゃんの友達で居てくれるかい…?」

ーーーーー



包帯少女(そんなはずない!あれが嘘だったなんて、そんな残酷なこと…!)

包帯少女「…訊いてみよう、かな」

ポチッ スッスッ

包帯少女(昨日交換しておいたLINE)



[二つ編みとのトーク]
『唐突だけどさ、二つ編みさんのおばあちゃんって、どんな人だったか覚えてる?』



包帯少女「………」

包帯少女(これで送信すれば)



...ズキッ



包帯少女「痛っ…!」

包帯少女(な、に……急に身体が…!)



ザワザワ...ガサガサ...



包帯少女(変な音……外から…?)

包帯少女「……」ソッ..



「「「……」」」ゾロゾロゾロ



包帯少女「…!?」

シャッ(カーテンを閉める)

177: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:12:40.98 ID:OOuoymdI0

包帯少女(なに今の……!)

包帯少女(あれ全部……妖禍子……?)

ズキズキ

包帯少女「あ゙ぃ……!」

包帯少女(痛い…!)

包帯少女(なんで…?奴らに近付いてもない、家中の鍵も締めて入れないようにしてるのに…!)

包帯少女「はぁ…!ぅぐ……」



ーーーーー

「──おい!向こうへ逃げたぞ!」

「──追えー!化け物を逃がすなー!」

「──妖禍子は根絶やしにするのじゃ!」

ーーーーー



包帯少女(…これは…?)



ーーーーー

メラメラ..

ボオォ..



女「」

「……俺は……」

「──生まれて来て善かったのか…?」

ーーーーー



包帯少女(……誰かの、記憶……?)





178: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:14:04.25 ID:OOuoymdI0
ーーー二つ編みの自室ーーー

二つ編み「……」スッ、スッ



スマホ『"妖禍子 封印" の検索結果』



二つ編み「………」

二つ編み「…見つかれば苦労しないわよね…」

二つ編み(またあの古書店に行くしかないのかしら)



ーーーーー

包帯少女「──古書店の、二つ編みさんのおばあちゃん」

ーーーーー



二つ編み「……」

二つ編み(…無性に気になる)

二つ編み(あそこにはわたしの知ってる人なんていないけれど……)

二つ編み(わたしの祖母…どんな人なのかしら…?)

二つ編み(……)

二つ編み「…気になるわ」

二つ編み「……」スッ、スッ



[少女とのトーク]
『あなた、わたしの祖母について何か知ってるの?』



二つ編み「……」

二つ編み(そもそもなんで少女さんが祖母の話を出したのか、今思うと疑問ね)

二つ編み(あるいは、あの子にしか見えてなかったものでも…?)

二つ編み「……いいわ。こんな時間にLINEで訊いてももどかしくなりそうだし」

二つ編み(どうせ明日は土曜午前授業。少しくらいお昼過ぎたところでうちの人は気付かないでしょう)

179: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:15:09.22 ID:OOuoymdI0



──あああああぁぁ!

──憎い…!



二つ編み「っ……」

二つ編み(また……)

二つ編み「………」

二つ編み「…………」

二つ編み「……………」

二つ編み「……………っっ!」

ダンッ!

二つ編み「もういい加減にして!!」

二つ編み「さっきから何度も何度も何度も何度も!」

二つ編み「わたしの中で叫ばないで!消えなさいよ!」

二つ編み「はぁ……はぁ……」

二つ編み(…!)

二つ編み(わたしのバカ!あんな大声出したら、あの人に聞かれてまた余計なことに…!)

二つ編み「……」

二つ編み「………」

二つ編み(………来ない……?)



ザワザワ...ガサガサ...



二つ編み「………?」

二つ編み(何かしら……足音とは違う、妙な音が)

二つ編み(……外から?)

二つ編み「……」



トットットッ





180: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:16:37.48 ID:OOuoymdI0
ーーー玄関ーーー

二つ編み「……」トットッ...

二つ編み「………」



ガシャ、ガシャ

ズズズズ...バサッ



二つ編み(何の音なの?誰かのイタズラ…?)

二つ編み(だとしたら迷惑極まりないわ。ただでさえしつこい悲鳴にうんざりだっていうのに)

二つ編み(…静かにしてちょうだいよ)

...ガチャ



二つ編み「………は………?」



ゾロゾロゾロ(大量の妖禍子の行軍)



二つ編み「な………え………」

二つ編み(……っ!)

二つ編み(まさか……これ、が……)



目玉怪物「……」ギョロッ



二つ編み「──!!」ゾクッ

二つ編み(今の視線……)

二つ編み「……………」

二つ編み「……………」

二つ編み「……は、はは……」

二つ編み(──なんだ、そうだったんだ)

二つ編み(わたし、ずっと勘違いをしてた)

二つ編み(妖禍子が見えなかったわけじゃない……ただ)

二つ編み(わたしが見ようとしていなかっただけなんだ)

181: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:17:49.55 ID:OOuoymdI0



バサッ、バサッ

ゴゴゴゴ



二つ編み(あの人ののっぺらぼうな顔も)

二つ編み(周囲にひしめく悪意も)

二つ編み(見えていないことにして…)

二つ編み(……それに、なぜ気付かなかったのかしら)

二つ編み(あの悲鳴…そこに混じるすすり泣く声も……あれは全部──)





二つ編み(──わたしの声じゃないの)





二つ編み「…あはは…!」

二つ編み(笑えちゃうわね!!)

二つ編み(自分の弱さを必死に隠しておきながら、その実それをぼやかしていたのはわたし自身だなんて!!)

二つ編み(元々壊れテたのは、クルってたノハ、ワタシの方ダッタ!!)

二つ編み「ソンナの、どんなニ足掻イタところデ、ドウにもならナい──無イミにキマッてるのに!」

二つ編み「ソウデショウ?アヤカシサン」



目玉怪物「ゴオォ……」ズッ...



二つ編み「アハ、ハハハハハ!」





アハハハハハハハハハハハ──!





182: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:18:57.92 ID:OOuoymdI0
ーーー翌朝 学校ーーー

猫又娘「──少女さん!大変だよ!」テテテッ

猫又娘「昨日の夜外で見張りしてたらさ、見ちゃったんだ!」

包帯少女「…妖禍子(アヤカシ)の群れ?」

猫又娘「!……もしかして少女さんも?」

包帯少女「……」コクッ

包帯少女(包帯の下の痛みと、知らない情景も一緒に…ね)

包帯少女「……ぼく思うんだよ。もうあんまり悠長にしていられる時間はないんじゃないかって」

猫又娘「うん……」

猫又娘(…正直ちょっと気楽に構えてた)

猫又娘(最近は妖禍子の数も少なくなってきてたから、そっちよりもみんなの仲を取り持つことにばかり気がいってた)

猫又娘(そんなんじゃ、根本的な解決にはならないよね)

包帯少女「ねぇ」

包帯少女「今日、早退しよう」

猫又娘「へ?」

包帯少女「神社に行くの。もうなりふり構ってられない」

包帯少女「二つ編みさんも連れて、二限らへんであがろ」

猫又娘「三人いっぺんに?さすがに許してもらえないんじゃ…」

包帯少女「言い訳はぼくが考えておくから。それでもダメそうだったら猫又娘さんの魔法で…」

猫又娘「私変えることくらいしか出来ないよ?」

包帯少女「…先生を変えちゃう」

猫又娘「そこまでの凶行はしないからね!?」

包帯少女「それはそうと夢見娘さんの方はどうだったの?」

猫又娘「え……あー、それが……」

猫又娘「……あと尾けてるところは見つけたんですが、逃げられてしまいまして…」ニャハハ...

包帯少女「………」

猫又娘「……いっそあの子も神社に連れてっちゃう?」

包帯少女「……」

包帯少女「…ありかもね」

包帯少女「今は少しでも、解決の糸口が欲しいから」

猫又娘「きっとあの子、良い妖禍子だから協力してくれるよ!」

包帯少女「…今日に限ってまだ夢見娘さんも二つ編みさんも来てないなんて…」

猫又娘「ぐぬぬ…二人とも遅刻したことなんかないはずなのに」

183: ◆YBa9bwlj/c 2019/10/28(月) 03:20:45.74 ID:OOuoymdI0



ガラッ



教師「よーし、夏休み前最後の土曜授業。出席取ってくぞー」

夢見娘「……」トコトコトコ



包帯少女(時間ぴったりに入ってきた)



夢見娘「……」トコトコ

ストッ

同級生C「夢見娘さん、ぎりぎりセーフだよ…」

夢見娘「………」



包帯少女(……なんだろ、少し慌ててるような……)

包帯少女(遅刻しそうだったから…?)

教師「──少女」

包帯少女「!はい」

教師「OKと」

教師「とりあえず全員居るみたいだな」

包帯少女(…?いやいや)

包帯少女「あの、先生。二つ編みさんがまだ来てません」

教師「んー?二つ編み?」

包帯少女「はい。…体調不良の連絡とか来てたんですか?」





教師「よその学年の子か?」





包帯少女「──!」

教師「俺の知る限り三年には居ないよな」

猫又娘「え…」

派手娘「っ」

少年「な…!?」

教師「悪いが他学年の出欠までは分からん。俺じゃなくて、その子の担任に訊いてくれ」

包帯少女「………」



包帯少女(……………)





185: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:17:32.91 ID:uBwrWeJb0
■第六幕 マブタのストーカー■



ーーー休み時間ーーー

少年「少女さん…!」

少年「二つ編みさんって…!僕の勘違いじゃないんだよね、このクラスに居たよね!?」

包帯少女「……」

少年「みんなおかしくないか…?二つ編みさんなんて初めから居ないみたいに振る舞って…」

少年「少女さんもあの人のこと覚えてる……んだよね…?」

猫又娘「…ね、こうなったらもう」

包帯少女「………」

包帯少女「少年君、二つ編みさんがどんな人だったかって言える?」

少年「え、と……いつも勉強してる人。少女さんが僕にテスト勉強つけてくれてた時もひたすらやってたっけ」

少年「こんな髪型で、あんまり他の人と話してる印象がないけど…成績は毎回トップだったはず…」

包帯少女「……そうだね」

包帯少女「合ってるよ、ぼくの知る二つ編みさんと」

包帯少女(……)

包帯少女「…今この町に起きてること、きみにも話しておくよ」



.........





少年「──じゃあ…二つ編みさんはそのアヤカシってやつに消されたってこと?」

包帯少女「多分。あの子のおばあちゃんも同じ居なくなり方しててね…その人に関する記憶ごとなくなってるっていう」

少年「………」

少年「……で、そっちの猫又娘さんは……」

猫又娘「どーも、良い子な方の妖禍子、猫又娘ちゃんです♪」

包帯少女「ぼくも初めはちょっとびっくりしたけどね。いたずら好きの猫って思えば違和感ないんじゃない?」

少年「あ、確かに」

猫又娘「あれはみんなを楽しませる手品だからっ」

186: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:19:06.66 ID:uBwrWeJb0

少年「…ちなみに、すごい力持ちだったりする?」

猫又娘「力?そうだなー、少年君なら片手で持ち上げられるくらい?」

少年(通りでこの前僕を運べたわけだ)

包帯少女「……それで、ぼくと猫又娘さんはこれから例の神社に向かうつもり」

少年(─!)

包帯少女「…きみは、どうする?」

少年「僕は……」

猫又娘(……少年君……)

少年「………」

包帯少女「………」

包帯少女「…分かった」

包帯少女「少年君はここに居て。他に知り合いが消えてたなんてことがあったら報告してくれる?」

少年「…!」

包帯少女「神社はぼくたちで行ってくるから。きみはきみでしっかり周りを見てて欲しい」

包帯少女「出来るよね」

少年「……まぁ」

包帯少女「頼んだよ」ニッ

少年(っ…)ドキッ

187: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:20:08.45 ID:uBwrWeJb0

包帯少女「さてもう行こう。そろそろ予鈴がなっちゃう」

猫又娘「私はいつでもオッケーだよ!」カバンセオイ

包帯少女「行動の早さは見習いたいね…」

包帯少女「…ん、夢見娘さんは?」

猫又娘「あら。ほんとだ、席いないね」

少年「?夢見娘さん?」

猫又娘「そそ。重要参考人としてあの子も連れて行きたいんよ」

猫又娘「彼女も妖禍子だからね。きっと良い子の!」

少年「え」

猫又娘「と言っても私らも全然喋ったことないけどさー」

猫又娘「あ。おーいCくん!」

同級生C「……ん…?」トボトボ

猫又娘「夢見娘さんどこ行ったか知らないかな。きみよく一緒にいるじゃん?」

同級生C「あぁ…それがさ、具合が悪くなったって言って帰っちゃったんだ…」

同級生C「夢見娘さん……はぁ、大丈夫かなぁ」

包帯少女「……神社かもしれない」

猫又娘「私もおんなじこと思った」

包帯少女「急ごう…!」

ガタッ スタスタ

猫又娘「そうそうC君!私と少女さんも体調良くないので早退しますって伝えといて!よろしくー!」ガラッ



タッタッタッ



同級生C「え、なんで俺が…」

「お前転校生さんだけじゃなくて猫又娘とも仲良くなったの?物好きだなぁ」

同級生C「今のが仲良くに見えるかよ。俺は夢見娘ちゃん一筋だっ」キリッ

「いっそ清々しいな…」



少年(………)





188: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:21:06.54 ID:uBwrWeJb0
ーーー廊下ーーー

包帯少女「気が利くね、さっきの」タッタッ

猫又娘「でしょでしょー?どうせ先生に言いにいっても揉めるだろうし、逃げるが勝ちってね」タッタッ

包帯少女「…頼りにしてるよ、相棒」タッタッ

包帯少女「なんて」フフッ

猫又娘「…!」タッタッ

猫又娘「任せんしゃい!」ニカッ







ーーーーーーー

夢見娘「………」

夢見娘「………」

夢見娘(………)

夢見娘「……」



「キューキュー」カツカツ



夢見娘「………」

夢見娘(……どうか壊れないで……)

夢見娘(きみのセカイ)

夢見娘「……」スッ

「…?」カツ...



...パタ





189: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:22:13.65 ID:uBwrWeJb0
ーーー神社 境内ーーー

包帯少女「」ゼェ..ゼェ..

包帯少女「やっと、着いた…」

仔猫「」ピョン、ピョンッ

仔猫「……」スススッ

ドロン

猫又娘「ここの階段こんな長かったんね」

猫又娘「だいじょぶ?」

包帯少女「ハァ…ハ…ずるくない…?それ」

猫又娘「いやぁ猫の方が身軽なもので」

猫又娘「さてさて、ここが神社…来るのは初めてだけど…」



(物静かな社)



猫又娘「…なるほどやっぱり、ちょっと空気が違うよ」

包帯少女「夢見娘さんは…」

猫又娘「いないみたい…」

包帯少女「………」



ザッザッ



包帯少女(前来た時はそこまでじっくり見なかったけど)

包帯少女「……」

猫又娘「…お札、だね」

包帯少女「…普通、こんなにびっしり貼るかな」

猫又娘「どうだろ……」

猫又娘「少なくとも何か封じてますよって主張してくれてはいるんね」

猫又娘「これが妖禍子の封印…?」

包帯少女「この中に何があるか分かる?」

猫又娘「分かんないなぁ…お札のせいかもしれないけど、何の変哲もないお社にしか見えない」

包帯少女「そっか…」

190: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:24:56.04 ID:uBwrWeJb0

包帯少女(……あれ……?)

包帯少女「……」ソーッ

猫又娘「!開けない方が──」

包帯少女「違う、これ」



(裂けた1枚の紙札)



包帯少女「これだけ破れてる」

猫又娘「……ほんとだ」

包帯少女(乱暴に千切られたような跡。破けてるのはこの一枚だけ…)

包帯少女(誰かが破った?それとも──内側から破かれた?)

猫又娘「いつこうなったんだろ。もし最近なんだとしたら…」

包帯少女「………」

包帯少女「……トドノツマリ様」

包帯少女「トドノツマリ様が本当に居るなら、ここで起きたことも町に起きてる異常も何なのか知ってるはず」

包帯少女「神社に誰かの気配を感じるって言ってたよね。それは今もあるの?」

猫又娘「うん、でも…」

猫又娘「何処からするのか分からない」

猫又娘「この山に居るのは間違いないのに、気配自体はそこら中に四散してるんよ」

包帯少女「……山の中探すしかないってこと?」

猫又娘「そうなる……かも」

猫又娘「いっそ願い事すれば出て来てくれないかなぁ」

包帯少女「それで会えたら苦労はしないけど…」

猫又娘「よーし!」

ポンッ

猫又娘「……」ネコミミ&シッポ

猫又娘「──みんなが楽しく笑える世の中に!」

猫又娘「…してくれませんか?」



ーーーーー

少年「──誰にも関わらず、誰にも干渉されない、そんな日々を下さい」

ーーーーー



包帯少女(……)

猫又娘「………」

191: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:27:28.94 ID:uBwrWeJb0

猫又娘「…なーんて。それは私の役目ですから、叶えてくれる必要はありません」

猫又娘「ただ、この町に蔓延るお化けたちはみんなから笑顔を奪っていくんです」チラッ

包帯少女(…ぼく?)

猫又娘「だから!ちょっとでいいんです、力を貸してもらえませんか!」

包帯少女「………」

猫又娘「………」

包帯少女「…まあ、ね」

猫又娘「恥ずかしがり屋さんなんだねきっと」

包帯少女「なんで耳と尻尾出したの?」

猫又娘「こうした方が声届くかなーって。トドノツマリ様も同じ妖禍子だからさ」

包帯少女「てっきり魔法でも使うのかと思ったよ」

猫又娘「お社にイタズラでもしたら出て来てくれるかもね」ニシシ

猫又娘「ま、切り替えていきましょー!押してダメならもっと押すだけ」

猫又娘「山の隅から隅まで徹底的に探し回ってやろうじゃないの!」

包帯少女「…それしかないね」

包帯少女(結局ぼくたちが出来ることと言ったらそのくらいしかない…)

...ズキッ

包帯少女(っ……もうあんまり時間がないのに)

猫又娘「──少女さん、後ろ!」

包帯少女「!」クルッ



目玉蛇「シュー…」ニョロニョロ



包帯少女(蛇……?ううん、体中に目が付いてる蛇なんて…)

包帯少女「………妖禍子」

猫又娘「まだ昼間なのに…!?」

猫又娘「とりあえずっ」タッタッ



ポンッ

蛙「ゲコッ」




192: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:28:58.03 ID:uBwrWeJb0

猫又娘「……どういうことだろ」

猫又娘「明るい時間にも活動出来るようになった?」

包帯少女「…それかここが特別な場所だから……とか?」

猫又娘「」キョロ..キョロ..

猫又娘「他には見当たらないけど…」

包帯少女「………」

包帯少女(…昨日の妖禍子の群れ)

包帯少女(二つ編みさんが消えた事件)

包帯少女(そして、それに気付いてた少年君……)

包帯少女「……ねぇ。ぼく嫌な予感がする」

猫又娘「……うん、私も」





包帯少女・猫又娘「「少年君が危ない」」





193: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:32:11.73 ID:uBwrWeJb0
ーーー正午前ーーー

少年「……戻って来なかったな、少女さんたち」テクテク

少年「早退扱いで出てったんだから学校には戻らないか」テクテク

少年(それでも帰る時間くらいにはまた来てくれないかなんて思ってた……今一人で居るのはどことなく怖い)

少年(付いていくって言わなかったのは僕だ。でもあの神社に少女さんと一緒に向かうのは……)

少年「………」

少年「……アヤカシ……」

少年(僕たちが神社に行ったあの土曜日以降に現れ始めたって言ってた)

少年(そう、神社に)

少年(僕が少女さんを突き落とした、あの──)

少年「……」

少年(……やっぱり、あれは夢なんかじゃないんだろう)

少年(彼女の包帯も、彼女自身もずっとその違和感を主張していたのに、見て見ぬフリをしようとしてたんだ)

少年(僕があの出来事を幻と思い込ませている間に、彼女たちはずっと立ち向かっていた)

少年(猫又娘さんと少女さんの二人の気持ちに甘えて、何も知ろうとせず、しようとせず…)

少年(……なんだよ、まるで変わってないじゃないか)

少年(少女さんと出会う前──ノートを使って現実逃避していたあの時から)

少年「……くそ……」

少年(…そういえばアヤカシノートが無くなったのも日曜日だったっけ)

少年("アヤカシ"……関係あるのかな)

少年(猫又娘さんに貰ったもう一つのノートは結局何も書いてないや)



ーーーーー

包帯少女「──頼んだよ」ニッ

ーーーーー



少年「……少女さん」

少年(………)

少年(二つ編みさん以外に消えた人はいなかった)

少年(人の痕跡ごと消す妖怪……?)

少年「……」テク...



(本屋)



少年「………」

少年(…このままじゃダメだ)

少年(僕に何が出来るかなんて関係ない)

少年(これは僕自身の問題でもあるんだ)





194: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:33:59.13 ID:uBwrWeJb0
ーーー本屋ーーー

少年(……うーん)

少年「……」スッ

ペラ..ペラ..

少年(とは言っても少女さんたちの真似事以外に思い付くことはない)

少年(何か手掛かりになること…)

少年「……」ペラ...

少年(人を食べる妖怪、化かす妖怪、連れ去る妖怪)

少年(有名なものからまったく聞かないようなものまで……色々載ってるけど、人を消す妖怪はないな…)

少年「……はぁ……」

少年(…少女さんの言ってた、古書店みたいなところじゃないとアヤカシを書いた本はないのかな)

少年(とりあえず一冊だけでも…)



表紙『怖いほどよく分かる妖怪大辞典』



少年(…あれにするか)

少年「」スッ



──スッ



派手娘「あ」

少年「え」

少年(派手娘さん…!?)

少年(なんでこんな所に…)

少年(というか派手娘さんもこの本を?)

195: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:34:51.71 ID:uBwrWeJb0

派手娘「あんた、これ読むの?」

少年「あ…うん」

派手娘「ふーん」

ストッ(本を手に取る)

派手娘「じゃ、これあたしが買ってくから」

少年「うん……え!?」

少年「ちょっと待ってよ!僕もそれ読みたいんだって…!」

派手娘「はぁ?その辺に似たようなのいっぱいあんでしょ?」

少年「ここにあるのは大体見ちゃったから…」

派手娘「どーせ立ち読みじゃない」

派手娘「あたしが買った方が絶対読むし、有効活用になんのよ」

少年「そんな横暴な」

派手娘「みみっちいわね。そんなに欲しいなら……」

ヒュッ

少年「!?」

ボスッ!

少年「ぐぇ…!」

少年(お、お腹に…)

派手娘「それ使ってあの包帯ちゃんとボール遊びでもしてなさい」

派手娘「プレゼントにもなって最適でしょ?あたしってやさしー」

派手娘「じゃね」テクテク

少年「う……ぅ……」ウズクマリ

少年(鳩尾に思いっきり入った……)

少年(しかもこのボール、硬式…)

店員「!」ギョッ

店員「君、大丈夫かい…?」





196: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:35:58.46 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー

少年「……酷い目に遭った」テクテク

少年(店員に言い訳するの大変だったし、あの本の在庫は無いって言うし)

少年(なんだってこう、上手くいかないんだよ…)

少年「…やっぱ、少女さんに付いていくべきだったか…?」

少年(……まだ神社に居るのかな)

少年(………)

少年「………」

少年「今日は、帰ろう…」



テクテクテク...



「……」コソッ



.........





197: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:36:53.17 ID:4547r8BBO

少年「……」テクテク

少年「……」テクテク

少年(……?)

少年(何だろう)

少年「………」

少年(…誰かに見られてるような気がする)



...ギョロ



少年「っ!」バッ

少年(……誰もいない)

少年「………」

少年(いや、そもそもここの通り)

少年(こんなに静かだったか…?)

少年「……っ」

少年(なんか、気味悪いな)

少年(さっさと帰──)





「ダメ…触らないで…!」





──ゾクッ

少年(──!?)

少年「ぁ……?」

少年(なんだ、これ……)

少年(意識が……)

少年(立って……られな……)



グラリ...





198: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:38:33.83 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー

夢見娘「……」テクテク

夢見娘「……」テクテク



少年「……」テクテク



夢見娘「……」ミアゲ



(空を舞う妖禍子たち)



夢見娘(今すぐここから離れて)

夢見娘(……って言えたらいいのにな……)



少年「」テクテク



夢見娘(前を歩くきみにとって、理不尽をばら撒くあの子達と)

夢見娘(同じ妖禍子である私はきっと)

夢見娘(…忌むべき存在)

夢見娘「……」

夢見娘(……それでも構わないよ)

夢見娘(きみが悲しまないでいられる世界)

夢見娘(それを守れるなら、私はどんな盾にでもなってあげる)

夢見娘(………)

夢見娘(……それが……)





きみの隣だったら……なぁ。





199: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:39:30.89 ID:4547r8BBO



少年「」ピタッ...



夢見娘「…!」

夢見娘(止まった…どうしたの…?)



少年「っ!」バッ



夢見娘「」サッ

夢見娘(…気付かれちゃった…?)

夢見娘(……今度は、きみが追いかけてきてくれるのかな……)ドキドキ

夢見娘(──え)



目玉怪物「……」ズズ...



夢見娘(あの子……少年くんの方に……)

夢見娘(………!)

夢見娘「ダメ…触らないで…!」ダッ



目玉怪物「」ベシャッ

少年「」ゾクッ

少年「ぁ……?」グラリ...



夢見娘「…少年くん…!」タッタッ

ギュッ

少年「……ぅ……」

夢見娘(良かった……まだ心は食べられてない……)

目玉怪物「ゴォ…」

夢見娘「…あっち、行って」

目玉怪物「……」



ズズズ...




200: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:40:38.33 ID:uBwrWeJb0

少年「うぅ……いや…だ……」

夢見娘「……ごめんなさい」

夢見娘(きみをこんな目に晒してしまうなんて)

夢見娘(……きみを守るなんて、そんな力)

夢見娘(私なんかじゃ、足りないんだろうな)

夢見娘「……」

少年「……ゆるして……」

少年「少女…さ……」

夢見娘(でも)





きみの悪夢を齧ることが出来るのは、私だけ──





ガブリ





201: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:41:42.17 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー



タッタッタッ



猫又娘「……居た!あそこ!」



少年「」

夢見娘「……」



包帯少女「夢見娘、さん…?」

猫又娘「…!」

スタタッ

夢見娘「………」

猫又娘「…何してるの?」

夢見娘「……」

猫又娘「少年君に、何をしたの?」

夢見娘「……守ってた」

夢見娘「あなたたちが、居なかったから」

包帯少女「守るって、少年君を…?」

夢見娘「……」コクッ

夢見娘「……あの子に……」



(遠目に見える目玉の怪物)



猫又娘「あんなのまで…」

包帯少女「っ」

夢見娘「…もう少しで、妖禍子にされるところだった」

少年「」スー..スー..

包帯少女(よく見たら眠ってるだけだ)

猫又娘「私たちを助けてくれたんだ?やっぱりこの子、良い妖禍子ちゃんなんだよ」ヒソヒソ

包帯少女「……」

202: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:44:23.84 ID:uBwrWeJb0

包帯少女「…夢見娘さん」

包帯少女「この際だから訊いておきたい」

夢見娘「……」

包帯少女「あなたは一体、何者なの?」

夢見娘「………」

夢見娘「……私は……」

夢見娘「……」チラリ

少年「」スー..スー..

夢見娘「……彼に望まれて、生まれた…もののヒトリ」

猫又娘「…?」

夢見娘「……」

ガサゴソ

夢見娘「これ…」

猫又娘「あっ!それって」

包帯少女「…"アヤカシノート"」

夢見娘「……少年くんの逃げ場所だった」

猫又娘「逃げ場所?どゆこと?」

包帯少女「…少年君はさ、クラスのバカ連中にしょっちゅうからかわれてたでしょ?」

包帯少女「嫌なことをされる度、妖怪のせいにして日記みたいに書き付けてたの。それがそのノート」

猫又娘(そんな後ろ向きなノートだったんだ…)

夢見娘「……色んな妖禍子を描いてた。その中で一番最初に描いてもらったのが」

夢見娘「私」

包帯少女「え…」

夢見娘「私は彼の嫌なユメを食べるために生まれた妖禍子。少年くんが苦しまないように、ただ静かに見守ってる……」

夢見娘(…だけのはずだった)

猫又娘「…少年君がノートに書いた妖禍子が実体化した…ってこと!?」

猫又娘「なにそれ初めて聞いたよ!なんで私たちに秘密にしてたのかな?」

包帯少女「ううん、多分少年君も知らなかったんだと思う」

包帯少女「知ってたら…それ使って同級生Aたちに仕返しでもしてるんじゃない?」

猫又娘「なるほど」

203: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:46:40.26 ID:uBwrWeJb0

包帯少女「夢見娘さん、それ貸してもらってもいい?」

夢見娘「……」スッ

パラパラパラ

包帯少女「…何も書いてない」

猫又娘「あー、そっちは私があげた方だからね。前のは失くしちゃったんだって」

包帯少女(失くした…あんなに大切そうにしてたのに…?)

猫又娘「しっかしほんとに全然使ってないんね。暗いこと書くよりかマシだけど、これはこれで少し寂しいかも」

包帯少女「…夢を食べる妖禍子ってことは…」

夢見娘「……」

包帯少女「………"獏"?」

夢見娘「……そう、呼ばれることもある…」

包帯少女「……」

包帯少女「あなたが少年君を助けてるんだってことは分かった」

包帯少女「じゃあなんで、今になってぼくたちのクラスに転入して来たの?」

包帯少女「少年君の後を付け回したりして…」ボソッ

夢見娘「………それは」

夢見娘「あなたも、よく分かっているはず……」

夢見娘「──この世界の、壊れる音がするから」

夢見娘「笑顔を振り撒くよりも早く」

猫又娘「─!」

夢見娘「歪んだ身体を引き摺るよりも歪に」

包帯少女「……」

夢見娘「闇が……"あのヒト"の嘆きが、すべてを覆い尽くそうとしてる……」

夢見娘「……だからここに来ただけ」

夢見娘「彼の…そばに……」

猫又娘「…もしかして夢見娘さん、この町に何が起きてるのか知ってる…?」

夢見娘「………」

猫又娘「だったら教えてくれないっ?今私たちが相手にしてる妖禍子が何なのか、どうしたらアレらが居なくなるのか」

猫又娘「……"あのヒト"って何?」

204: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:48:13.52 ID:uBwrWeJb0

夢見娘「……」

夢見娘「…昔」

夢見娘「人から追われる妖禍子が居た」

夢見娘「大きな身体で、大切に抱えた何かを庇いながら…逃げて、逃げて……」

夢見娘「……でも、最後には息絶えてしまうの」

夢見娘「無慈悲な炎と、たくさんの人に囲まれながら……」

包帯少女(その光景って……)

夢見娘「……私が見た"あのヒト"のユメは、それだけ」

夢見娘「…少女、さん」

包帯少女「!」

夢見娘「あなたはもう、何度か見ている…」

夢見娘「……よね?」

包帯少女「………」

夢見娘「…今この町を飛び交う妖禍子は、みんな"あのヒト"の怒りにあてられた子」

夢見娘「あの子たちを使って、人を妖禍子に変え…"居なかった"ことにしようとしている…」

夢見娘「でも、最初の犠牲者は」

夢見娘「他ならない、あなた」

包帯少女「──」

夢見娘「だから時々、"あのヒト"のユメを見る……見てしまう……」

夢見娘「……違う?」ジッ...



ーーーーー

黒服男「」ニタァ

ーーーーー



包帯少女(一瞬だけ見えた顔)

包帯少女(まさかたまに見るあの夢は、全部あの男の……)

205: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:49:29.01 ID:uBwrWeJb0

猫又娘「ちょ、ちょ、ちょっと待って」

猫又娘「さっきから全く付いていけてないんですけど……つまり、どういうこと?」

包帯少女「…この現象には黒幕が居るってことだよ」

猫又娘「それが"あのヒト"?」

包帯少女「そう。私たちを襲ってくる妖禍子はそいつに操られてるんだって」

猫又娘「怒りにあてられるってそういうこと…」

猫又娘「じゃあさ……ここまでのことをする何かが、そのヒトの過去にあったってことだよね?」

夢見娘「……あれ以来、そのユメは見てない……」

包帯少女「ぼくも断片的にしか…」

猫又娘「………」

猫又娘「…結局のところ奴らをどうこうする方法もないままってことか…」

猫又娘「……ま」

猫又娘「ひとまずさ」ポン

夢見娘「…?」

猫又娘「私たちもあなたに協力させてよ」ニコッ

夢見娘「……」

猫又娘「夢見娘さんの力を貸してもらえればこの異常事態の解明もすぐ出来ると思うんよね」

猫又娘「少年君のこと守りたいんでしょ?今までみたいにこそこそしてないで、堂々と隣に居られるよ!」

夢見娘「……」フルフル

夢見娘「……それは無理……」

猫又娘「え」

夢見娘「本来、妖禍子は人の中に居てはいけない存在…」

猫又娘「…そんなこと」

夢見娘(何より……恥ずかしくて、きみの顔、見れないから……)

夢見娘「……」スクッ

夢見娘「…はい」

包帯少女「わ、ちょっと…!」

少年「」ノシッ...

包帯少女(お、重い)

夢見娘「……あなたたちの手伝いはする」

夢見娘「でも隣には居れない」

206: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:50:31.25 ID:uBwrWeJb0

夢見娘「……」チラッ...

夢見娘「…少年くんを、お願いします…」

包帯少女「……」

夢見娘「……」...テクテク



テクテク



夢見娘「……」ピタリ

夢見娘「……派手娘さん、なら」

猫又娘「」ピクッ

夢見娘「力になってくれる……かも」

夢見娘「あの子もたくさんの妖禍子と戦ってる…」



テクテクテク...



包帯少女「……派手娘って、あの派手娘さん?」

猫又娘「うちの学校の派手娘さんて言ったら一人しかいないね…」

包帯少女「…派手娘さんまで妖禍子だって言うんじゃ…」

猫又娘「それはないよ。あの人はれっきとした人間…だから多分…」ヒキツリ

包帯少女「?なにその顔」

猫又娘「いやぁ、あの人ちょっと苦手で…」

包帯少女「猫又娘さんにも苦手なものあるんだ」

少年「」ズルッ...

包帯少女「…!…ごめん、少年君支えるの変わってもらいたい…」

猫又娘「ん」ヒョイ

猫又娘(……)

猫又娘「…けどさ、夢見娘さんは正体が分かっても不思議ちゃんだったね」

包帯少女「まぁあの喋り方とか雰囲気とかは独特……あれが獏の性格なのかな」

猫又娘「ノーノーそこじゃあなくって」



猫又娘「…妖禍子は人と居られないなんて言う割に、ずーっと少年君に膝枕してたじゃん」





207: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:52:13.77 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー

「……や………ノート…」

「さっきと…………になる……」



少年(……ん……)



猫又娘「そこは何でも試して──あ」

猫又娘「起きたよ!」

少年(あ…れ……?)



包帯少女「おはよ、少年君」



少年「…!?」

少年(少女さん…!?)

少年(え、っていうか僕見下ろされてる…?ここどこ?何があったんだっけ??)

猫又娘「おーい、寝ぼけてるー?」

包帯少女「無理ないよ、いきなり知らない部屋で目覚めたらね」

包帯少女「ここはぼくの部屋。もう夕方だけど、日付は変わってないよ。土曜日のまま」

包帯少女「…少年君きみはね、妖禍子に襲われたんだよ」



.........





208: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:53:44.60 ID:uBwrWeJb0

少年「……アヤカシノートの、妖怪…?」

少年「夢見娘さんが?」

包帯少女「そう言ってたね」

少年「……」

猫又娘「心当たりある?」

少年「うん、かなり前に…そんな妖怪をノートに書いた覚えがある」

少年「確か、最初のページだったような…」

包帯少女・猫又娘「「!」」

猫又娘「…合ってる、ね」

包帯少女「……」

猫又娘「ねね、試して欲しいことがあるんだ」

猫又娘「ほい」スッ



(アヤカシノートとペン)



少年「…書いてみろ、って?」

猫又娘「うむ」

猫又娘「これは知っての通り本物じゃないし、さっき私たちが書いても何も起きなかったんだけど」

猫又娘「少年君が書けばもしかしたらもしかしたり…?」

少年「……」

少年「………」

少年「…何書けばいいのか…」

猫又娘「何でも──怖くない妖禍子ならどんな子でもオッケー」

少年「そう言われると…んー…」

猫又娘「何なら私とおんなじ猫又ちゃん書いてよ!上手くいけば友達が増えるっ」ニシシッ

少年「………」

少年「」サラサラサラ



『7月20日  一日中曇り

イタズラ好きの猫又が二人に増えていた。ただでさえ賑やかなクラスがもっと活気付いたんじゃないだろうか。』




209: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:54:59.38 ID:uBwrWeJb0

三人「「「……」」」

猫又娘「…すぐには変化なしか」

猫又娘「あーあ、これはもう本物のノートで検証しないとダメなんだろーなー。気になるなぁ」

少年(…ノートのことは勿論僕も気になる……けど、もっと気になるのは)

包帯少女「安全な妖禍子が出てくるとは限らないんだから、今思えば実体化しないで良かったかもね」

猫又娘「それ知ってるよー。酸っぱいぶどうって言うんだ」

少年(…どうしてさっき僕は少女さんに膝枕をされていたんだろう)

少年(少女さんはどういうつもりで僕を……気になる……すごく……)

包帯少女「──何かの手掛かりにはなりそうだよね」

包帯少女「ねぇ少年君、あのノートってどこで買ったの?」

少年「!え、と…」

少年「あんまりよく覚えてないんだ…買った記憶はないけどいつの間にか持ってた、みたいな」

猫又娘「そういえばなんで失くしちゃったのかも訊いてなかったね」

少年「っ……」

少年「それは…」

少年(……)

少年「それも、分からない。知らないうちになくなってたから」

少年「……気付いたのは2週間前の日曜日だけど」

包帯少女「…!」

猫又娘「偶然…にしちゃあ出来過ぎてるなぁ。さすがにここまで重なったらさ」

猫又娘「ね、二人とも」

少年「……」

包帯少女「……」

猫又娘(……?)

猫又娘(!…そっかこの二人、まだあの池の話に触れてないのか)

210: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 00:57:08.72 ID:uBwrWeJb0

猫又娘「………」

バシッ

少年「おぅ!?」

猫又娘「まぁまぁ、そう気落ちしなさんな!」

猫又娘「活路はあるよ絶対に」

猫又娘「私たちは今、真相まであと一歩のとこにいる。ここまで酷くなった世界だけど、最後はきっと私たちが──勝つ!」

猫又娘("キミ"が好きだったこの世界……あんなヒトたちに渡してたまるかってね)

包帯少女「……ふふ、確かに勝ち負けの方が分かりやすいね」

猫又娘「フフン」

猫又娘「…きみも」

少年「な、なに?」イテテ...

猫又娘「聞いたよ?あのノート、暗いことばっかり書き殴ってたって」

猫又娘「私のあげたそれ、まだ使ってないんなら今度は楽しいことでも書いてみなよ」ニッ

少年「…普通の日記みたいに?」

猫又娘「そ♪」

猫又娘「嫌いなものばっかり書いてあるなんて寂しいじゃん」

少年「……」チラリ



(窓からのぞく曇り空)



少年(…次晴れた時にでも、書いてみようか?)



──クネクネクネ



少年「…えっ!」

少年(なんだあれ!?)

包帯少女「少年君…?」



(羽をうねらせ飛ぶ妖禍子)



包帯少女「……もしかして、妖禍子が見えてる?」

少年「あ、あれが妖禍子…!?」

猫又娘「なんと」

猫又娘「…妖禍子にされそうになったから、見えちゃうようになったのかね」

猫又娘「良いことなのか悪いことなのか…」

少年(二人とも全然動じてない……あんなのを今まで相手にしてたんだ…)

211: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 01:00:55.48 ID:uBwrWeJb0

包帯少女「……思うにさ、少年君が狙われた以上、一人でいるのはもう危ないんじゃないかな」

猫又娘「そうだね…奴らが見えるって言っても抵抗するすべなんかないわけだし」

猫又娘「また気絶しちゃうかもしんないもんね」チラッ

少年「う…」

包帯少女「うーん」

包帯少女「……じゃあ」



包帯少女「ぼくの家、泊まる?」



少年「………!?」

猫又娘(おー…)

包帯少女「…?何?事情知らない人の所に居ても意味ないでしょ?もうすぐ夏休みだし、数日くらいなら平気だと思うから」

少年「…ちなみに、僕はどこで寝れば…?」

包帯少女「別々に居るのも怖いから、ぼくと一緒に…………!?」

包帯少女「あっ…違うよ!別におかしな意味とかはなくて…!」

猫又娘「いや~実に大胆ですなぁ、少女さん」

包帯少女「そういう意味で言ったんじゃないの!」

猫又娘「そういう意味とはー?」ニヤニヤ

包帯少女「この……!」

シッポダシナサイ!

ニャー!ボウリョクハンターイ!

212: ◆YBa9bwlj/c 2019/11/08(金) 01:03:37.71 ID:uBwrWeJb0

少年(少女さんの家で過ごす……)

少年(……)ドキドキ

猫又娘「どうどう…!分かった分かったよ!」

猫又娘「少年君には私が付いてるから、それで手打ちにしよ…!」

包帯少女「…あなたが?」

猫又娘「だいじょーぶ!少年君の家に居る時は見つかんないように」

ドロン

仔猫「ニャーオ」

ドロン

猫又娘「こうやって猫になっとくから」

包帯少女「……ちゃんと少年君の壁になってよ」

猫又娘「ご安心を」

猫又娘「………ん?壁?」

包帯少女「そういうわけだから少年君も、妖禍子に近付いちゃわないよう気を付けること」

少年「う、うん」

包帯少女「…ぼくの家は…普通に遊びに来る分にはいつでも、来てよ」ボソ...

少年「!…」

少年「」コクリ

少年(この騒動が解決したら…お邪魔させてもらおう)

猫又娘「さーて!」

猫又娘「それではおさらいでもしましょっか!」

猫又娘「私たちがこれからやるべきこと、知るべき事実!」

猫又娘「まずはトドノツマリ様と本物のノート探し」

猫又娘「トドノツマリ様は妖禍子の封印方法を知ってるかもしれないし、夢見娘さんが生まれたみたいに本物のノートが大きな鍵になる可能性もあるからね」

少年(……ノートに……トドノツマリ様……)

猫又娘「あとは元凶君の過去」

猫又娘「少女さんが時折見るっていう夢。それが紐解ければ、一連の出来事の根っこを掴める」

包帯少女(……あの夢は強い怒りだけじゃない)

包帯少女(微かに悲しみの念も混ざってる)

猫又娘「そして……あー、これが前途多難なのですが……」





猫又娘「──派手娘さん説得作戦」