270: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:05:09.23 ID:WwI65blO0
ラウラ「遅いぞ、嫁よ」 

キリコ「……すまなかった」 

シャル「お、遅れてすみません」 

千冬「……よし、揃ったか。明日、お前達に海外に行ってもらう」 

シャル「か、かい……」 

ラウラ「海外……どこですか」 

千冬「ジュネーブにある、ギルガメス共同の研究施設だ」 

キリコ「……ギルガメス?」 

千冬「あぁ……メルキアが出資した金で動いている研究施設だ。この前の大会で、お前達の試合を見ていたお偉いさんが酷く興味を持ったようでな。 
   お前達の機体と能力のデータを取りたいそうだ……」 

ラウラ「……何故、ギルガメスの研究施設が……そのような事を」 

千冬「……この不可侵宙域は、要するに、両陣営から保護されているというだけだ。ヤツらは幅を利かせているのさ、ここでも」 

ラウラ「……」 

キリコ「……」 

千冬「安心しろ。技術はそもそも外に出ないし、新しい物も作る事はできない。純粋な研究機関だ」 

ラウラ「……そう、ですか」 

千冬「私も、何度か見に行った事がある。間違い無い」 

ラウラ「……教官がそう仰るなら」 


引用元: ・キリコ「俺は……死なない!」 箒「キリコーッ!」

271: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:05:50.26 ID:WwI65blO0
シャル「んー……あれ、でも……なんでセシリアは抜きなんでしょうか……あの時、セシリアもいたのに」 

千冬「さぁな。指名されたのはお前達三人だけだ」 

キリコ「……その、お偉いさんというやつの、名は……」 

千冬「ん……名前までは知らんが……この書類を見るに、情報省の人間だな。軍部じゃない、まぁそこは安心して良いだろう」 

キリコ(……ペールゼンでは無い?) 

千冬「それと……お前達のISは、こちらで預からせてもらう」 

キリコ「……」 

千冬「お前達は、来週臨海学校だろう。だから、先に機体だけでもあちらに送り、少しでも研究時間を減らすようにしたんだ。 
   まぁ、それでもこちらに着く頃には、臨海学校初日の昼以降になっているだろうが……」 

シャル「あぁ、ちゃんと配慮して下さってるんですね」 

千冬「まぁな。案外話のわかる所で助かったよ。さて、じゃあISを預かる。お前達は渡航の準備をしろ。 
   明日の朝七時に、正門に集まれ」 

ラウラ「はっ」 

シャル「了解です」 

キリコ「……了解」 



突然の渡航命令。心の蟠りを振り払う事もできず、俺は海外に旅立たされようとしていた。 
二度と、あの手を握る事が無いのではないか、そんな、一抹の不安を抱きながら。 




――

272: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:07:06.43 ID:WwI65blO0



そして、何もできないまま、翌日が来た。 



シャル「んしょっ……ふぅ……キリコ、忘れ物は?」 

キリコ「……無いはずだ」 

シャル「臨海学校用の荷物も持って行かないといけないんだからね? ちゃんと買った物持ってきた?」 

キリコ「……あぁ、全て持ってきた」 

シャル「よろしい」 

ラウラ「嫁よ。アーマーマグナムは持って来たな」 

キリコ「あぁ」 

ラウラ「よろしい」 

シャル「いや、別にまた戦いに行く訳じゃないんだからさ……」 

ラウラ「戦士は、片時も武器を離してはならん。何時、誰が、何処から攻めてくるかなど、わからんのだからな」 

シャル「ま、まぁそりゃそうだけど……」 

キリコ「……」 

273: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:08:04.10 ID:WwI65blO0


「おーい! 三人ともー!」 


キリコ「……」 

シャル「あ、鈴とセシリアだ」 

鈴「ふぅ……いやぁ何とか間に合ったか」 

セシリア「キリコさん達が海外に行かれると聞いて、お見送りしようと思ったのですが……この方が寝坊したおかげで、遅れてしまいました」 

鈴「良いじゃん、間に合ってんだから。いやー、しかし……腕を買われて海を渡るなんざ、カッコいいじゃん三人共」 

シャル「え? え、えへへ……そうかな……」 

ラウラ「これも、教官とキリコ、そして不断の努力のおかげだ」 

キリコ「……さぁな」 

鈴「……キリコ」 

キリコ「何だ」 

鈴「箒に……あれ、渡せた?」 

キリコ「……いや」 

鈴「そ、そっか……まぁ、臨海学校があるって! その時雰囲気でも作って渡せば良いからさ!」 

キリコ「……」 

鈴「安心なさいって! 箒は引きずってでも臨海学校に連れてくから」 

キリコ「……鈴」 

鈴「……何よ」

274: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:08:51.20 ID:WwI65blO0
キリコ「……これを、箒に渡してやってくれないか」 

鈴「こ、これって……あの時のじゃない。自分で渡しなさいよ」 

キリコ「……俺は、渡せそうにない」 

鈴「何よ。怖気づいたっての?」 

キリコ「……」 

鈴「え、マジで?」 

キリコ「……もう、執拗に……彼女を傷つけたくない」 

鈴「……」 

キリコ「俺からは渡せない……」 

鈴「……」 

キリコ「だから、頼む」 

鈴「……」 

キリコ「……」 

鈴「何よっ、それ……」 

キリコ「……」 

鈴「……はいはい、わかりましたよ。あたしから渡しておくから、さっさと海外逃亡でも何でもしなさいこの腑抜け」 

キリコ「……すまない」 

鈴「……はぁ……」 

シャル(キリコ……それは少し残酷だよ……)

275: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:10:11.19 ID:WwI65blO0


キキィイッ 
ガチャッ 


山田「おはようございます皆さん。ちゃんと時間通りですね」 

シャル「あ、おはようございます」 

山田「では、これから空港までお送りしますね」 

キリコ「……」 

シャル「あれ、山田先生が送ってくれるんですか?」 

山田「えぇ。自分が担当している生徒の、門出ですから。私がやりたいってお願いしたんです」 

シャル「か、門出……」 

山田「はいっ」 

シャル「ま、まぁ……そういう事なのかな……」 

キリコ「……行くか」 

ラウラ「そうだな」 

山田「あ、荷物は後ろに乗せて下さいね。席はお好きな所にどうぞ」 

シャル「はーい」 

ラウラ「……よし」ドサッ 

キリコ「……」 

シャル「うんしょ」 

276: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:11:36.09 ID:WwI65blO0
山田「さて、じゃあ忘れ物はありませんね?」 

キリコ「問題無い」 

ラウラ「右に同じ」 

シャル「左に同じです」 

キリコ「……」 

山田「あの……席は、助手席も、後ろにもあるんですけど……狭くないですか?」 

ラウラ「嫁の隣に夫が座るのは当然」 

シャル「こっちの方がお喋りしやすいので、これで大丈夫です」 

キリコ「……俺が、助手席に行くか」 

山田「あ、いえいえ。そういう事なら、気を遣わないで大丈夫ですよ」 

キリコ「……」 

山田「さて、じゃあシートベルトを閉めて……では、しゅぱーつ」 


ブルゥウウンッ 


鈴「キリコー! シャルロットー! ラウラー! ちゃんとお土産買って来なさいよー!」 

セシリア「あちらでのお話も聞かせて下さいねー!」 

シャル「うーん! バイバイ皆ー!」 

ラウラ「土産は任せろー!」 

キリコ「……」 


ブルゥウウンッ…… 


277: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:12:24.32 ID:WwI65blO0
鈴「……」 

セシリア「……」 

鈴「あーあ、行っちゃった……」 

セシリア「ですわね……臨海学校までの間、寂しくなりますね……」 

鈴「……こんな物まで押し付けてくれちゃってさ……」 

セシリア「……」 

鈴「……まっ、それだけ信用されてるって事か……」 

セシリア「……そうですわね」 

鈴「……朝ご飯でも、食べに行きますか。一応、ダメもとで箒も誘って」 

セシリア「……えぇ」 

鈴「……ペアネックレスの片方……ねぇ……」 



――

278: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:13:16.44 ID:WwI65blO0



キィイイイインッ…… 


シャル「わぁーっ……見てよキリコ! あれエベレストじゃない?」 

キリコ「エベレスト?」 

シャル「地球で一番標高の高い山だよ! わぁー……あんな遠くでも見えるのか……いや、違うのかな」 

ラウラ「しかし、チャーター便の豪華仕様とはな……まるで、VIPにでもなった気分だ」 

シャル「うん。ハリウッド映画で大統領とかが乗ってるようなヤツだよね……ホント、凄いなー……」 

キリコ「……」 

シャル「IS以外で、こうやって空飛ぶのも、案外良いものかもね」 

ラウラ「ふむ……嫁よ。飲みものがあるぞ……お前は、酒か?」 

キリコ「……酒は、飲めない」 

ラウラ「そうか。案外強そうに見えるがな……まぁいい、嫁よ、コーヒーを入れてくれ」 

シャル「え、そうなるんだ……」 

キリコ「……わかった」 

ラウラ「ふむ……しかし、快適だ。軍用機とは、雲泥の差だな」 

シャル「そうだねー……」 



……

279: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:13:43.85 ID:WwI65blO0


機長「……」 


ザザーッ 
ピーッ 


機長「ん……はい、聞こえています……」 

機長「……」 

機長「え、今からですか?」 

機長「……」 

機長「はい……わかりました。航路、変更します」 



……

280: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:14:37.84 ID:WwI65blO0


シャル「あ、キリコ。これで映画見れるよ……えっと、こうやって……」 


ウィーンッ 


シャル「おぉ、スクリーンが出てきた」 

ラウラ「ここは定番の、プライベート・ライアンでも見るか」 

シャル「えぇー……もうちょっと他の見ようよ……」 

ラウラ「……おぉ、地獄の黙示録とブレードランナーがあるじゃないか」 

シャル「い、いやぁ……だからこう、もっと柔らかいのを……ね?」 

ラウラ「なら何が良いのだ」 

シャル「えぇ? う、うーん……まぁ、無難に……これは? 最高の人生の見つけ方」 

ラウラ「そんなものは自分で見つける」 

シャル「い、いやこれはタイトルで……」

281: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:15:26.30 ID:WwI65blO0
キリコ「……」 

ラウラ「嫁は何か見たい物があるか」 

キリコ「いや、好きにすると良い」 

ラウラ「そうか。ならばやはり地獄の黙示録を……」 

シャル「ひぃ……キ、キリコー……止めてよぉ……」 

ラウラ「よし、これで操作をす――」 


ガクンッ 


ラウラ「っ!」 

キリコ「!?」 

シャル「うわっ!」

282: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:16:33.02 ID:WwI65blO0
ラウラ「な、何だ! 何事だ!」 

キリコ「ぐっ……」タタタッ 

シャル「うわっ……うわぁっ!」 


ドンドンッ 


キリコ「おい、機長! どうした!」 

機長『わからん! 突然エンジンが止まった! 何とかするから、しっかり捕まっていろ!』 

キリコ「くっ……」 

ラウラ「キリコ! どうした!」 

キリコ「わからない! だが、何かに掴まるんだ!」 

シャル「わ、わかった!」 

キリコ「……」 

283: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:17:37.94 ID:WwI65blO0



ヒュウウゥンッ…… 




急落下する飛行機。そんな中、身を揺らされ、震えながら、俺達は地へと向かっていた。 
地面を抜け、その下に広がる地獄が口を開けて待っている光景が、サブリミナルのように、ちらつく。 
平穏など、俺には無いのか……。 



――

284: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/05(日) 18:18:05.51 ID:WwI65blO0



安らぎの日々が終わる。枕に仕掛けられた不発弾が爆ぜ、平穏は空虚な音を立てて崩れ落ちた。 
急転直下、千錯万綜、崩壊の勢いは止まる事を知らない。 
手をかざし、いくらその儚さを渇仰しても、あの砂と同じく、掌から抜け落ちてゆく。 
砂時計のように、無慈悲にも落ちてゆくしかない。時も、友も、愛さえも。 

次回、「帰還」 

平穏など、始めから幻想に過ぎぬ。 


――

294: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:28:41.53 ID:RfqlAdhG0
キリコ「くっ……機長! どうだ!」 

機長『ダメだ! 上がらん! エンジンが完全にイカレている! 翼も言う事を聞かん!』 


グラグラッ 


シャル「キ、キリコッ……」 

キリコ「……」 

ラウラ「機長! パラシュートは無いのか!」 

機長『あぁ、ある! 誰か、そこのドアの前に立っているなら、そこの横にある扉がそうだ!』 

キリコ「……これかっ!」 

機長『計五つあるはずだ!』 

ラウラ「わかった! お前達も早くこっちに来い!」 

機長『し、しかし……』 

ラウラ「制御が効かん船など降りろ! ここで判断を誤れば皆死ぬぞ!」 

機長『わ、わかった! 我々もそちらに行く!』

295: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:29:57.45 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……よし」カチッ 

ラウラ「キリコ! 二つ回してくれ」 

キリコ「わかった……一つずつ投げる。しっかり取れ」 

ラウラ「任せろ」 

キリコ「……」ヒュッ 

ラウラ「……」パシッ カチャッ 

キリコ「できたな。シャルロットにも回せ」 

ラウラ「わかった」 

キリコ「っ……」ガタンッ 

ラウラ「今だ!」 

キリコ「……」ヒュッ 

ラウラ「よしっ」パシッ

296: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:30:25.57 ID:RfqlAdhG0
シャル「くぅっ……」グラグラッ 

ラウラ「(あの様子では投げるのは無理だな……)シャルロット、今そちらに行く。しっかりそこに掴まっていろ!」 

シャル「う、うんっ!」 

ラウラ(くっ……揺れも酷いが、機体が少しだが横に傾いていてきている……急がねば……)ガタンッ 

ラウラ「……」ガシッ 

ラウラ(少ないが、椅子を頼りにつたっていくしかない) 

ラウラ「……」 

シャル「ラウラ……」 

ラウラ「もう少しだ、落ちついていろ」 


グラッ 


ラウラ「なっ!」 

機長『マズイ! 落ちるぞ! 何かに掴まれ!』  

キリコ「っ……」

297: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:35:26.67 ID:RfqlAdhG0


ガタガタッ 


ラウラ「うわぁあっ!」 

キリコ「ラウラ!」 


ガシッ 


シャル「……」 

ラウラ「はぁ、はぁ……」 

シャル「ラウラ! 大丈夫!?」 

ラウラ「あぁ……(な、何とか椅子に掴まる事ができたか……)」 


ガタンッ 


シャル「うわぁっ!」 

ラウラ「くっ! 今行くぞ!」 

298: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:36:01.91 ID:RfqlAdhG0


機長『皆持ちこたえてくれ!』 


キリコ「……」 

ラウラ「はぁ、はぁ……(よし、あと少しだ……)」 

シャル「ラウラ! 手を!」 

ラウラ「あ、あぁ!」 

シャル「ぐっ……」 

ラウラ「もう……少しだ……」 


ガタンッ 


ラウラ「っ……(し、しまった……手が……)」 


パシッ 


299: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:37:12.18 ID:RfqlAdhG0
シャル「よし! 掴んだ!」 

ラウラ「か、間一髪だな……」 

シャル「ぐっ……離さないでね……引き、あげるから……」 

ラウラ「あぁ……」 

シャル「ふんっ」グイッ 

ラウラ「……よし、もう大丈夫だ。すまない……受け取れ」 

シャル「こ、これはどうやって……」 

ラウラ「まず普通に背負え。そして合図を出したら、そこの紐を引くんだ」 

シャル「わ、わかった!」 

キリコ「ラウラ! お前達はそっちのドアを開けて脱出しろ!」 

シャル「えぇ!? で、でも!」 

ラウラ「キリコ! 生身での降下作戦訓練は!」 

キリコ「受けた! 早くしろ!」 

ラウラ「よし! では先に行く! 何か目印になりそうな場所があったら、それを頼りに来い! 我々もそこを目指す!」 

キリコ「わかった!」

300: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:38:11.79 ID:RfqlAdhG0
シャル「えぇ!? ら、ラウラ!」 

ラウラ「もたもたしてる時間は無い! このドアを開けるのを手伝ってくれ!」 

シャル「……わかった!」 

キリコ「機長! 機体を水平に戻せないか!」 

機長『横にまわらないようにするだけで精一杯だ!』 

キリコ「……できないなら早く来い!」 


ガチャンッ グイッ 
ゴォオオオッ 


シャル「くっ……す、凄い風……」 

ラウラ「私に掴まれ! 同時に出る! 聞こえたか!」 

シャル「う、うん!」 

ラウラ「行くぞっ!」 

シャル「……」 


バッ 
ゴォオオオオッ 


301: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:38:44.27 ID:RfqlAdhG0
シャル(……じ、地面が遠い……けど……迫って来てる……) 

ラウラ(下は……砂漠か……何かあるよりはまだマシか……) 


ヒュウウウウッ 


ラウラ(くっ……ゴーグル無しでは周りの確認しづらいな……) 

ラウラ(ん……あれは……) 

ラウラ(……よし……) 

ラウラ(シャルロットに合図を出す……)クイクイッ 

シャル(あ、あれは……パラシュートを引けって事か……) 

シャル(わかった!) 

シャル「……」カチャッ 


グイッ 
バサッ 


シャル「うわぁっ!」 

ラウラ「……」バサッ

302: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:40:13.33 ID:RfqlAdhG0
シャル「はぁ、はぁ……(な、何とか……助かった?)」 

ラウラ「シャルロットーッ! 聞こえるかーっ!」 

シャル「う、うーんっ!」 

ラウラ「あっちに何か船らしき物が見える! そこに着陸するぞ!」 

シャル「ど、どうやって!?」 

ラウラ「左右の紐で操作するんだ!」 

シャル「こ、これーっ!?」 

ラウラ「そうだ!」 

シャル「わ、わかった!」 

ラウラ(くっ……キリコも、早く脱出してくれ……このままでは合流すらできなってしまう……) 


…… 

303: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:40:40.08 ID:RfqlAdhG0


キリコ「何をしている! 早く来い!」 


ガチャッ 


機長「あ、あぁすまない……」 

副機長「パ、パラシュートは!?」 

キリコ「これだ! 出るぞ!」 


ガチャンッ グイッ 
ゴォオオオッ 


キリコ「くっ……」 

機長「よし、つけたぞ!」 

キリコ「……行くぞ!」 


バッ 
ゴォオオオッ 


304: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:41:11.10 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……」 

キリコ(……目印……何も無い……砂漠だけだ……) 

キリコ「ぐっ……」 

キリコ(……ん? あ、あれは……) 

キリコ(……よし、あれだ) 


グイッ 
バッ 


キリコ「……はぁ……」 

副機長「はぁ、はぁ……」 

機長「な、何とかなったな……」 

キリコ「あそこに、船の残骸が見えるな?」 

機長「ん? ……あぁ、あれか」 

キリコ「あれを目指す。あれだけの大きさなら、ラウラ達からも見えた事だろう」 

機長「わかった。救難信号も出ているはずだ。管制も認知しているだろう、すぐに救助が来る」 

キリコ「……だと良いがな」

305: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:43:34.14 ID:RfqlAdhG0
副機長「くそっ……な、何で俺がこんな目に……」 

機長「泣き事は帰ってからにしろ……見ろ、どこを見ても砂しか無い……」 

キリコ「……」 

機長「上も地獄、下も地獄だ……」 

副機長「……」 

キリコ「……そうらしいな」 



墜落する飛行機から何とか脱出したものの、俺達は離れ離れになってしまった。 
炎熱地獄を眺めながら、俺達はゆらゆらと、風に流されている。 
地平線すら、砂と同化したこの世界で。 


306: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:44:16.56 ID:RfqlAdhG0
―― 


   第十一話 
   「帰還」 



――

307: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:47:33.49 ID:RfqlAdhG0
キリコ「機長。あの墜落船は一体何だ」 

機長「あれか。恐らく、デザート・スキャンダルで沈んだ船だろう。調査が終わった後は、ATの類は撤去されて、うち捨てられたらしい」 

キリコ「……そうか」 

機長「……あそこに行っても、何も無いだろうが……」 

キリコ「だが、仲間と合流する目印にはなる」 

機長「……そうだな。もしかしたら、何か使える物がまだ残っているかもしれん」 

副機長「一応、咄嗟に水を持ってきたので、何とか……」 

機長「おぉ、でかしたぞ」 

キリコ「……着陸の用意をしろ」 


ボサッ 
カチャッ 


キリコ「……」 

機長「はぁ、やっとか……まさか、地上がこれ程恋しくなるとはな……」 

副機長「えぇ、本当です……」 

キリコ「……行くぞ。無駄口は叩くな。余計な体力を使いたくなければな」 

機長「……あぁ」 

キリコ「……」 


ザッ ザッ 



――

308: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:48:35.85 ID:RfqlAdhG0
ウォッカム「……」 

ルスケ「キリコ達を乗せた船は、墜落しました。搭乗者全員、脱出には成功したようです」 

ウォッカム「それは聞くまでもないが……で、今はどういう状況だ」 

ルスケ「はっ。デュノアとボーデヴィッヒが、キリコ達とはぐれたようです」 

ウォッカム「ふん……二組になったか……」 

ルスケ「そして……国籍不明の揚陸機が二機、あの砂漠に上陸したようです」 

ウォッカム「バララントか」 

ルスケ「恐らくは。流しておいた情報に食い付いたようです」 

ウォッカム「ふん……ヤツらも、あの時の対戦を見て、奪いに来ようとようやく思ったか……。 
      わざわざ情報を掴ませたのだ。働いてもらわねばな」 

ルスケ「……しかし、よろしいので? もしバララント側にキリコ達が奪われては……」 

ウォッカム「ヤツらは、所詮ATしか持たぬ雑魚だ。だが、実験には利用できる、放っておけ。 
      万が一捕縛されるような事があっても、こちらにはゴーレムがある」 

ルスケ「わかりました。では、このままゴーレムで監視を続けさせます」 

ウォッカム「あぁ。周囲に何者も近づけさせないようにしろ、そのバララント隊以外はな」 

ルスケ「はっ……」 

ウォッカム(……これで決まる……) 

ウォッカム(異能の遺伝子は、本当に遺伝が可能なのか。異能とは、遺伝以外でも作成する事ができるのか) 

ウォッカム(……キリコは、確かに異能生存体だ。それは疑う余地は無い) 

ウォッカム(しかし……一人では足りぬ) 

ウォッカム(力は、より強大でなければならぬ。得ようとするものが、大きければ……) 

ウォッカム(……) 



――

309: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 17:49:05.89 ID:RfqlAdhG0


ザッ ザッ 


キリコ「はぁ、はぁ……」 

機長「はぁ、しかし……熱いな……」 

副機長「君は、そんな、厚着で大丈夫、なのか?」 

キリコ「耐圧服は、ある程度の環境変化にも対応できる。それと、あまり喋らない方がいい。体力は温存しろ」 

機長「……」 

キリコ(この丘を、登り切れば……) 

副機長「はぁ……ひ、日陰すらない……」 


ザッ ザッ 


310: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:29:03.02 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……見えたぞ」 

機長「んん?」 

キリコ「あれが、空から見えた船だ」 

副機長「……あれが……」 

キリコ「……」 


そこには、小さなビル程の炎の消炭が、風と砂に晒されていた。 
ギルガメスの大型輸送艇が、広大な砂漠にポツリと突き刺さっている。 
あそこに、仲間がいるはずだ。 


キリコ「……」 

機長「ニュースでは見た事はあるが……本当にあるとはな……」 

キリコ「あぁ……移動装置が一機でも残っていれば、幸いなんだがな」 

機長「ついでに、水もな」 

キリコ「……あぁ」 

副機長「しかし、盗賊なんかが荒らしていなければ良いが……」 

機長「この辺は、最も街から離れた場所らしいが……どうだろうな……」 

副機長「最も街から離れた場所、ですか……ははっ、絶望的だ……」 

キリコ「……行くぞ。距離はもう、1kmも無い」

311: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:30:07.37 ID:RfqlAdhG0


ズササッ…… 


キリコ「……」 

機長「おおっと……」 

副機長「……」 

キリコ「……」 


ザッ ザッ 


キリコ「……」 

機長「……」 

副機長「……はぁ、ひぃ……」 

312: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:30:35.51 ID:RfqlAdhG0


ザッ ザッ 
……ィイッ 


キリコ「……」 

機長「……」 

副機長「……」 


ザッ ザッ 
……ュィイイッ 


キリコ「……っ!?」 

機長「ん、どうした」 

副機長「お、オアシスでも見つかったのか?」 

キリコ「静かにしろ……」 


……ュィイイイッ 


キリコ(この音は……)

313: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:33:19.35 ID:RfqlAdhG0
キリコ「マズイ……ATだ」 

機長「AT? そんな馬鹿な……」 

キリコ「走れ!」 


ダッ 


機長「お、おい!」 

副機長「ま、待ってくれ!」 


ザッザッザッ 


キリコ「はぁ、はぁ……」 


キュィイイイッ 


機長「な、なんの音だ!」 

副機長「だ、誰かが助けに来てくれたんじゃ……」 

キリコ「馬鹿を言うな! いいから走れ!」 

314: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:34:52.33 ID:RfqlAdhG0


ザッザッザッ 
キュィイイイッ 


キリコ「くっ……」 


ズガガガッ 


副機長「ひぃーっ!」 

機長「ぐっ……クソッ! 撃って来やがった!」 

キリコ「まだ距離はある! 全力で走るんだ!」 

キリコ(横から来たか……マズイな……このままだとかち合う……) 

キリコ(マグナムで、やれるだろうか……)カチッ 

キリコ「……」 

キリコ(やるしかないか……) 

キリコ(幸い、周囲にはあの艦が落とした破片がある。カバーする事はできる) 

キリコ「あそこの瓦礫に隠れろ! 絶対に頭を出すんじゃないぞ!」 

機長「わ、わかった!」 

315: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:38:35.83 ID:RfqlAdhG0


ズガガガッ 


副機長「がっ……」バシュゥンッ 

機長「お、おい!」 

キリコ「振り返るな! 走れ!」 

機長「くっ……そっ!」 

キリコ「はぁはぁ……」 


バッ 


機長「はぁ、はぁ、はぁ……」 

キリコ(何とか隠れられたが……圧倒的に不利なのに変わりはない) 

キリコ(コイツで、持ちこたえなければ……) 

機長「し、死んだ……アイツが、死んだぞ!」 

キリコ「黙っていろ」 

機長「だが!」 

キリコ「黙れと言った……死にたいなら、そのまま喋っていても良いが……」 

機長「……うぅ……」 

キリコ「……」

316: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:39:42.76 ID:RfqlAdhG0


ズガガガッ 
カキンカキンッ 


キリコ「くっ……」 

機長「ひぃっ!」 

キリコ「……」 


『撃ち方やめ!』 


シュウウッ…… 


キリコ「……」 

機長「う、うぅ……」 

キリコ(……攻撃が止まった?)

317: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:40:47.80 ID:RfqlAdhG0


『キリコ・キュービィー! キリコ・キュービィーはいるか!』 


キリコ(……俺?) 


『貴様が投降すれば、他の者の命は保障する! 我々は、貴様を保護しに来ただけだ!』 


キリコ(あのAT……バララントか……) 

キリコ「何故だ! 俺は、ただの学生だ! 今俺はISも持っていない、ただの人間だ!」 


『知らん。ただ我々は、貴様を確保する為に来ただけだ。貴様の道理などは関係無い!』 


キリコ「ちっ……話にならないか……」 

機長「な、何なんだ一体!」 

キリコ「……さぁな。どうやら、俺の能力とやらが、必要らしい」 

機長「……なら……」 

キリコ「俺が出て行っても、アンタは口封じで殺される。不可侵宙域で奴らは軍事行動をとっているんだからな」 

機長「……」 

キリコ「余計な事は考えるな。俺が援護する、アンタはあれに向かって走れ。良いな」 

機長「……わかった」 

キリコ「……」 

機長「……」

318: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:41:27.92 ID:RfqlAdhG0


『……30秒以内に出て来い! そうすれば、助けてやる!』 


キリコ「……」 

機長「……」 


『10、9、8……』 


キリコ「……」 

機長「……お、おい」 

キリコ「黙れ」 


『5、4、3、2』 


キリコ「今だ!」 


ザッ 


キリコ「くっ」ズキュンズキュンッ 

『うお!』パリーンッ 

キリコ「走れ!」 

機長「はぁっ、はぁっ!」

319: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:42:33.69 ID:RfqlAdhG0


ズガガガッ 


キリコ「くっ……」 

機長「ひぃっ!」 

『発砲は抑えろ! ヤツを生け捕りにするんだ!』 


キュィイイイッ 


キリコ「くっ……(敵は五体か……恐らく、まだいるのだろうが……)」 


ズガガガガッ 


キリコ「……」バッ 


カキンカキンッ 


キリコ「……」カチッ 


ズキュンズキュンッ 
パリンパリーンッ 



『ちぃっ! レンズをやられた!』 

キリコ(ISのおかげか、生身での射撃がやりやすくなったな……)カチャカチャッ 

『雑魚は後で良い! ヤツを捕えろ!』

320: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:43:08.80 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……」ジャキッ 


バッ 


キリコ「……」ザッザッザッ 


キュィイイイッ 


キリコ「……」バキュンバキュンッ 

『うおっ!』パリーンッ 

キリコ(レンズを潰すので精一杯か……) 

『このっ!』キュィイイッ 

キリコ「……」バキュンッ 

『うぉおおっ!』カキンッ 

キリコ(くっ……この距離では……) 

『こいつっ!』グワッ

321: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:44:27.34 ID:RfqlAdhG0


ガシッ 


キリコ「ぐっ……(し、しまった……)」 

『隊長! 標的を捕えました!』 

『よし、よくやった!』 

キリコ「ちっ……(あの船まで、もう少しだと言うのに……)」 

『ちっ、そんなチンケな銃でよくやる気になったもんだ』 

キリコ「……」 

『ISが無きゃただのガキよ……なぁ?』 

『あぁ、そうだ』 

『へっ、手こずらせやがって――』 

322: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:44:54.56 ID:RfqlAdhG0


ズギュウウウンッ 


『うぉっ!』バキンッ 


フラッ 


キリコ「ふっ!」バッ 

『な、なんだ! どこからの攻撃だ!』 


ズギュウウンッ 


『うわぁああっ!』ドガアンッ 


キリコ(カタパルトランチャーを狙った精密射撃……まさか……) 

『追え! 逃がすな!』

323: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:45:54.88 ID:RfqlAdhG0


ズギュウウンッ 


『うぉおっ!』ドガァアンッ 

キリコ(……ラウラか!) 



ラウラ「……」シュウウッ…… 

シャル「キリコは!?」 

ラウラ「無事だ。シャルロット、弾を」 

シャル「う、うん! はい!」 

ラウラ「……」キュイキュイッ 

シャル「あ、キリコと一緒にいた人が船の中に入ったよ!」 

ラウラ「一人か」キュイッ 

シャル「う、うん」 

ラウラ「……そうか」 

324: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:46:56.02 ID:RfqlAdhG0
ラウラ(もう一人は、やられてしまったか……) 

ラウラ(無理も無い、か……) 


ジャキッ 


ラウラ「……」 


ピーッ ピーッ ピーッピーッ 


ラウラ「……」 


ピーピーピーピーピピピピピッ 


ラウラ「……」 


ズギュウウンッ 



325: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:47:30.93 ID:RfqlAdhG0
『うわぁっ!』バシュウンッ 

『くっ……』 

『(レンズが壊された為に、レンズを上にあげていた兵をそのまま撃ち抜くか……やるな……)』 

『一旦あの船から距離を取れ! 本隊と合流するまで、ヤツらをくぎ付けにしろ!』 

『了解!』 



ラウラ(キリコの船までの距離、およそ100……近いが、この状況では遠いな……) 

ラウラ(今の射撃で、良い威嚇にはなっただろうが……この距離では、こいつの有効射程範囲ギリギリと言ったところか……) 

ラウラ(さて……どうする……) 

ラウラ「……シャルロット、カバーしていろ」 

シャル「えっ? う、うん……」 

ラウラ「……」

326: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:48:02.57 ID:RfqlAdhG0


ズガガガガッ 
カキンカキンッ 


シャル「わぁっ! こ、こっち撃ってきた!」 

ラウラ「……」 

ラウラ(現状、敵のATは三体か……まぁ、それだけではあるまい) 

ラウラ(この地球で、あまり目立った行動はできない。少数に分け、動いているのだろう……ヤツらは斥候と言った所か……) 

ラウラ(この攻撃は、本隊が来るまでの時間稼ぎだ。我らを釘付けにするための……) 

ラウラ「……シャルロット! 船の中からまだ使えそうなものが無いか探して来てくれ!」 

シャル「わ、わかった!」 


カキンカキンッ 


ラウラ(今のうちに、あの斥候だけでも残滅せねばなるまい……) 

ラウラ「……キリコ、早く来い」 


327: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:48:31.56 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……」カキンカキンッ 

キリコ(俺への集中が回避されて、幾分やりやすくなったが……) 

『おらおら出て来い!』ズガガガガッ 

キリコ(依然、釘付けなのは変わらず、か……) 

『俺のレンズを割りやがって……早く出てきやがれ!』 

キリコ(レンズ無し、肉眼での確認の為に体が丸見えだ……) 

『そらそらそら!』ズガガガガッ 

キリコ「……」 

『ちっ、弾切――』カチッカチッ 


ズキュウンッ 


『はうっ!』バシュウンッ 

キリコ「その隙が、命取りだ……」シュウウッ…… 

『くっ……クソ、がっ……』ガクッ 

キリコ「……」

328: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:49:55.45 ID:RfqlAdhG0


バッ 
ザッザッザッ 


キリコ「はぁ、はぁ……」 

キリコ(もう、目の前だ……) 

『おい! ヤツが逃げるぞ!』 

『くっ……過度な攻撃はやめろ! 本隊が間もなく到着する、それまで威嚇射撃を続けるんだ!』 


ズギュウウンッ 


『ぐおっ!』ドガンッ 

『おい! 無事か!』 

『う、腕を破壊されました!』 

『残骸に隠れろ! 外に出ていては、動いていても当ててくるぞ!』 

『りょ、了解!』 

『(ちっ、標的が船に入ったか……)』 

329: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:50:28.98 ID:RfqlAdhG0
キリコ「はぁ、はぁ……」ザッザッザッ 

シャル「キリコーッ! こっちーっ!」 

キリコ「シャルロット! 無事だったか!」 

シャル「うん! ラウラも無事だよ! 上の階にいる!」 

キリコ「あぁ、だろうな。あの射撃はヤツだろう」 

シャル「うん。さっ、キリコ、中に入って!」 

キリコ「機長はどこだ」 

シャル「機長さんなら、上に行って休んでる。武器を探さないといけないから、早く!」 

キリコ「わかった」

330: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:51:18.57 ID:RfqlAdhG0
ラウラ(キリコが船に到着したか……一人でATも撃破しているし、さすがは我が嫁と褒めよう……) 

ラウラ(……この対AT用ライフルでも、やりようはある……) 

ラウラ(ISが無くとも、兵士、戦士は戦わねばならない……) 

ラウラ(そこが……戦場ならば……)ジャキッ 


ピーッ ピーッ ピーッピーッ 


ラウラ(瓦礫と瓦礫の間……隙間より見えるカタパルトランチャー……) 


ピーピーピーピーピピピピピッ 


ラウラ(外しは……せんっ!) 


ズギュウウンッ 


331: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:51:59.63 ID:RfqlAdhG0


ドガァアアンッ 



ラウラ(これで、残り一機……)ジャキッ 



『た、隊長! クソッ! 腕もやられたってのに、やってられるか! 本隊に合流する!』 


キュィイイイッ 


ラウラ(撤退し、本隊に合流か……良い判断だ、動物としてはな……) 

ラウラ(だが……相手の能力を見抜けないようでは……所詮戦士として三流よ……) 

ラウラ(今度は、足ごと貰うぞ!) 


ズギュウウウンッ 


『うわ、うわぁあっ!』バキンッ 


ドガァアンッ 


ラウラ「……」スッ 

ラウラ(……斥候排除、完了……) 

ラウラ(使えるATを確認する暇は無い……) 

ラウラ(本隊が来るまでに、トラップを仕掛けねば……)タタタッ 



……

332: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:52:44.80 ID:RfqlAdhG0
シャル「や、やった! キリコ! 水と食べ物があるよ!」 

キリコ「本当か」 

シャル「うん、ちゃんとボトル入りで未開封だから、多分大丈夫なはず」 

キリコ「……良かった」 

シャル「えっと……ここにあるのは、2Lが10本と、缶詰が……皆の合わせて、二日分、かな……」 

キリコ「……」 

シャル「び、微妙……」 

キリコ「無いよりは、良いだろう」 

シャル「う、うん……そうだね」 

キリコ「こっちも、良い物を見つけた」 

シャル「……何それ」 

キリコ「対AT地雷だ。直接反応タイプと、タイマー式があった。中々の数だ」 

シャル「使える?」 

キリコ「あぁ、何とかな」 

シャル「そっか……」

333: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:53:42.40 ID:RfqlAdhG0


ラウラ「キリコーッ!」タタタッ 


キリコ「ラウラ……」 

ラウラ「キリコ、怪我は無いか」 

キリコ「あぁ。お前のおかげでな」 

ラウラ「あれくらいはどうという事は無い。お前の持っているそれは、対AT地雷か」 

キリコ「あぁ」 

ラウラ「貸してくれ。私が設置してこよう」 

キリコ「こっちが直接反応、こっちがタイマー式だ」 

ラウラ「わかった」 

シャル「えっ、まだ何かやるの」 

ラウラ「敵があれだけなはずはあるまい。まだ来るぞ……最低でも、残り15機はな」 

シャル「そ、そんな……」 

ラウラ「キリコ、私が狙撃をしていた場所に、パイルバンカーカスタムが一丁ある。持って行け」 

キリコ「……わかった」

334: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:54:09.66 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「私はこっちのパイルバンカー無しのリパルサーで十分だ……シャルロットは、何か使える武器を見つけたか」 

シャル「ううん……食糧は見つけたけど、キリコが見つけた地雷以外の武器は、なにも……」 

ラウラ「そうか……だが、でかした。食糧が少なからずあれば、多少は粘れる。敵のATでも奪って、ここから脱出すれば街まですぐだろう」 

シャル「うんっ」 

キリコ「……シャルロット、これを」スッ 

シャル「えっ……これって……」 

キリコ「丸腰よりは、このアーマーマグナムでも持っておくと良い。弾は残り12発程しかないが」 

シャル「……うん、わかった。ありがたく使わせてもらう」 

キリコ「……俺は、銃を取りに行けば良いんだな」 

ラウラ「あぁ。それが終わったら、手伝いに来てくれ。コイツを持ちながら動くのは、中々難儀でな」 

キリコ「あぁ」 

シャル「それ、置けば良いんじゃ……」 

ラウラ「武器を手から離してどうする。こんな状況で」 

シャル「う、うん……でもそれ何キロあるの?」 

ラウラ「30キロだ。小さい子供を担ぐ程度だ」 

シャル「さ、30……」 

ラウラ「……急げ。あまり時間は無い。何ならあの機長にも探させろ」 

シャル「わ、わかった」タタタッ

335: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:54:39.24 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「ISの無い時に……面倒だな」 

キリコ「前にもこういう事があったがな……」 

ラウラ「……あの密告者が、タイミングを図っている、か……あの研究施設とやらも、一枚噛んでいるのだろう」 

キリコ「……まず間違いないだろう。俺は行くぞ」 

ラウラ「あぁ、頼む」 


タタタッ 


ラウラ「……」 

ラウラ(我々を招待したのは、ギルガメスの共同機関……か……) 


…… 

336: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:55:30.71 ID:RfqlAdhG0


タタタッ 


キリコ(……これか) 

キリコ「……」ジャキッ 

キリコ(……時代遅れの、兵器だ) 

キリコ(このゴーグルも、いつ以来だろうか……)シュイッ 

キリコ(ISが、如何に進んだ兵器かわかるな……) 

キリコ「……ん?」 

キリコ(これは……猟兵用のマントと、耐圧服か……) 

キリコ(俺のサイズに合っているらしい、着替えるとしよう。この制服では、目立ち過ぎる) 

キリコ「……」バサッ 

キリコ(……ラウラ達のマントも持って行くか) 

キリコ(……やるぞ) 


タタタッ 


337: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:56:35.73 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……ラウラ、状況は」 

ラウラ「もう地雷は仕掛け終わってしまった。直接式をとりあえず入口に二つ、瓦礫付近に残りのを。タイマー式は、逃げる時にでも使えるだろうから、まだだ。 
    敵の姿は、まだ確認できんな」 

キリコ「そうか……すまん。マントだ、無いよりは良いだろう」 

ラウラ「おぉ、すまない……ん、耐圧服か。私達のサイズは、流石に無いか」バサッ 

キリコ「あぁ、見つけたのもこれ一着だけだ……シャルロット達は、大丈夫だろうか」 

ラウラ「機長は一般人だ、期待はしていない。シャルロットはああ見えて、お前に近いくらいの反応能力は持っている。 
    ある程度は、自分の身は守れるだろう」 

キリコ「……そうか」 

ラウラ「……こいつの訓練は」 

キリコ「何度かな」 

ラウラ「そうか……リーチャーズ・アーミー……彼らがどういう心境だったのか、今ならわかる。 
    武装車に生身で突っ込むなど、どうかしている」 

キリコ「……そうだな」 

ラウラ「……」 

キリコ「……」

338: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:57:14.10 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「……来たぞ」 

キリコ「何機見える」 

ラウラ「……十五機か。予想通りだな」 

キリコ「AT揚陸機二機分か……」 

ラウラ「……距離、およそ2000……」 

キリコ「……」 

ラウラ「1800、1700……」 

シャル「キリコ!」 

キリコ「何か見つけたか」 

シャル「ううん、もう何も……この変なのくらいしかなかった……」 

キリコ「……ジャッキか」 

シャル「ジャッキってあれ? 車とか上げるヤツ?」 

キリコ「そうだ……シャルロット」 

シャル「な、何?」 

キリコ「それをくれ。一応、万が一の為にな」 

シャル「わ、わかった」 

キリコ「……」カチャカチャッ

339: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:58:10.09 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「1500を切った、用意しろ」 

キリコ「わかった」 

ラウラ「シャルロットは機長とどこかに身を隠せ。侵入されるまでは、なんとか我々でやる」 

シャル「わ、わかった」タタタッ 

キリコ「……」 

ラウラ「有効射程は60m……」 

キリコ「心許ないな」 

ラウラ「だが、地雷を撃ち抜くには、そんなの関係無い。私が指示した場所を狙え」 

キリコ「了解」 

ラウラ「まず最初に狙う地雷はここから11時方向、距離およそ400のATの残骸に仕掛けた。足の関節部分だ」 

キリコ「……あれか」 

ラウラ「ポリマーリンゲルがまだ生きてるなら……一層ドカンといくはずだ」 

キリコ「……」 

ラウラ「二回目は、ちょうどそのまま照準を下に30m動かしてみろ。そこに仕掛けた。瓦礫にまぎれているが、下部を注視しろ」 

キリコ「……確認した」 

ラウラ「後は設置した地雷でどうにか、と言った所だが……そう上手くはいかないだろう。 
    この艦のAT搬入口にも仕掛けたから、いざとなったら使え。壁と、床に設置した」 

キリコ「……そこまでとは……仕事が早いな」

340: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 18:58:37.44 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「まぁな。もっと余裕があれば、ATも取りに行けたが……1000を超えた、来るぞ……狙え……」ジャキッ 

キリコ「……」ジャキッ 

ラウラ「……」 

キリコ「……」 

ラウラ「……700」 

キリコ「……」 

ラウラ「……500」 

キリコ「……」 

ラウラ「今だっ」 


ズギュウウンッ 
ドガァアアンッ 


341: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 19:00:19.27 ID:RfqlAdhG0
キリコ「二機撃退」 

ラウラ「こちらもだ。次、狙え」 

キリコ「……」 

ラウラ「今だっ」 


ズギュウウンッ 
ドガァアンッ 


ラウラ「一機だけか……」 

キリコ「こっちもだ」 

ラウラ「後は仕掛けた地雷にどれだけかかってくれるか……」 

342: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 19:00:59.67 ID:RfqlAdhG0


キュィイイイッ 
ズガガガガッ 


キリコ「くっ……」 

ラウラ「ソリッドシューターが来るぞ! 退避!」 


バッ 

シュウウッ 
バゴォンッ 


キリコ「無事か」 

ラウラ「あぁ、何ともない。次の射撃ポイントに行く、ついて来い!」タタタッ 

キリコ「了解」 



……

344: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 19:50:03.42 ID:RfqlAdhG0
機長「ひぃっ!」 

シャル「機長さん! 早く安全な所に行きましょう! ここじゃもし侵入されたら真っ先にやられてしまいます!」 

機長「な、何故だ……何故こんな事に……わ、私は……ただのパイロットなのに……」 

シャル「しっかりして下さい! ほら! あっちの方に!」 

機長「さ、触るなぁ!」バッ 

シャル「ちょ、ちょっと! 外に出たら危ないですよ!」 

機長「はぁ、はぁ、はぁっ」タタタッ 

シャル「も、戻って来て下さい!」 


バッ 


機長「はぁ、はぁっ!」 


キュィイイッ 


機長「助けてくれぇーっ! 私は、何も関係無いんだぁっ!」 

345: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 19:51:37.52 ID:RfqlAdhG0


ズガガガガッ 


機長「がっ、ぐっ……あっ……」 


ドサッ 


シャル「あっ……あぁっ……」 


『一人射殺。入口にもう一人見える、どうやら女だ』 

『構わん、撃て!』 


ドガァアアンッ 


『うわぁあっ!』 

『ちっ、まだ地雷があったか!』 

346: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 19:52:20.72 ID:RfqlAdhG0


ズガガガッ 


シャル「うわっ!」 

シャル(こ、ここにいたら危険だ! 早く奥に戻らないと……) 

シャル「えぇいっ……」タタタッ 


ズガガガッ 
カキンカキンッ 


シャル「はぁっ!」ズサァッ 

シャル(よし……何とかここなら……) 

シャル(……こ、こんな銃一つで……大丈夫なのかな……) 

シャル「……」ドクンドクンッ 

シャル(あ、あの二人が、何とかしてくれる、はず……) 

シャル(ラウラは軍の少佐らしいし、キリコは元レッドショルダー……軍人でも筋金入りの部類……) 

シャル(ぼ、僕に今出来る事は、二人の邪魔にならないように、安全な場所に隠れる事……) 

シャル(そ、そうだ……今はそうしないと……) 

シャル(いざという時の為に、これは託されたんだから……) 

シャル(まだ……その時じゃない……) 

シャル「今は……逃げないと……」 


タタタッ 


……

347: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:38:14.68 ID:RfqlAdhG0


ズガガガガガッ 
カキンカキンッ 


ラウラ「ちっ……もう目の前まで来ているな……キリコ! 直接狙うぞ!」 

キリコ「了解」 

ラウラ(銃だけを出し……スコープで見る……) 

ラウラ(スコープの映像は、直接このゴーグルに送られる……) 

ラウラ(故に……このような撃ち方も……) 


ズギュウウンッ 
バゴォオンッ 


ラウラ(……可能……) 

キリコ「……」 


ズギュウウンッ 
ドガァアアンッ 


キリコ「こっちも一体仕留めた」 

ラウラ「残りは六、七機か……だいぶ減らせたな」 

キリコ「あぁ……」 

ラウラ「また移動するぞ、そろそろ侵入される頃合いだ。仕掛けた罠のポイントへ急げ」 

キリコ「了解」

348: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:38:45.49 ID:RfqlAdhG0


タタタッ 



『えぇい、地雷が邪魔だ! 入口付近の地面をマシンガンで撃ちまくれ!』 

『ハッ!』 


ズガガガッ 
ドカンドカンッ 


ラウラ「入口に突っ込んでくる程、馬鹿ではない、か」 

キリコ「地雷はどこだ」 

ラウラ「あの柱だ。中腹を見ろ」 

キリコ「……発見した」 

ラウラ「よく狙えよ。そいつを上手く起爆できれば、上から瓦礫を落とせるだろう。 
    そこで足を止めた奴らを、私が狙う」 

キリコ「わかった」 

ラウラ「グレネードか閃光音響弾でもあれば、もっとやりようがあるがな……」 

キリコ「……」 

ラウラ「来るぞっ」 

349: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:39:54.30 ID:RfqlAdhG0


キュィイイイッ 


『機内に潜入! これより捜索を開始します!』 


キリコ「……」 

ラウラ「合図を待て……」 

キリコ「……」 

ラウラ「……」 


キュィイイッ 


『このカーゴの後ろには……ちっ、いないか。そっちはどうだ?』 

『こっちも同じだ』 

『ちっ、ガキ共が……ちょこまかと……』 


ガインッ ガインッ 


キリコ「……」 

ラウラ「……」 


『おい、ちょっとこっちに来てくれ。コイツが邪魔なんだ』 

『わかったよ……』 


ラウラ「今だっ」 

キリコ「……」 


ズギュウンッ

350: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:40:23.10 ID:RfqlAdhG0


ドガァアンッ 


『うわぁっ!』 

『わ、罠があったか!』 


ガラガラッ 


『ぐっ、瓦礫が……』 


ラウラ「……」 


ズギュウンッ 


『がぁっ……』バゴンッ 


ドガァアンッ 


ラウラ「……」シュウウッ…… 


『いたぞ! あそこだ!』 


ズガガガガッ 


ラウラ「こっちだキリコ!」 

キリコ「あぁ」

351: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:42:49.82 ID:RfqlAdhG0


タタタッ 


『このガキがぁ!』ズガガガガッ 

『よせ! 無駄な発砲はするな!』 

『こっちの道から昇れるぞ!』 


キュィイイイッ 


キリコ「次はどうする」 

ラウラ「奴らは、下の道を通って来るだろう。そこへ行く」 

キリコ「直接対決か」 

ラウラ「いや、もう弾が無い。まだ罠を仕掛けてあるから、そいつにおびき寄せる」 

キリコ「わかった」 

ラウラ「こっちだ」 

キリコ「……」 


タタタッ 


ラウラ「ここだ。一瞬だけ出て、すぐに右に曲がれ。その際、そこのワイヤーに触れてくれるなよ」 

キリコ「わかった」 

ラウラ「合図するまで待て」

352: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:43:24.57 ID:RfqlAdhG0


キュィイイッ 


『奴ら、どこへ行ったんだ……』 

『この船はさして大きくない。すぐに見つかるさ』 

『野郎、ぶっ殺してやる』 

『男は殺すなよ。俺らまで首が飛ばされちまう』 


ラウラ「……」 

キリコ「……」 


キュィイイッ 


ラウラ「今だっ」バッ 

キリコ「……」 


『おっ、いたぞ!』 

『撃つなよ! 追い詰めるんだ!』 

『わかっている!』 


ラウラ「ふっ」ダッ 


『そっちに行ったぞ!』 

『曲がれ曲がれ!』 

『……ん? あ、あれは……おい! 待て!』 

『あぁ? 何か――』 

353: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:43:54.77 ID:RfqlAdhG0


プツンッ 
ドガァアンッ 


『はぁっ、はぁああっ!』 

『うわぁああっ!』 

『チッ、味な真似を!』 


ラウラ「残りは二機のはずだ……」 

キリコ「……残りのトラップは」 

ラウラ「もう無い。コイツでやるしかないな」 

キリコ「……」ジャキッ 

キリコ(ライフル弾は、一発……パイルバンカーの弾薬も同じ、か……) 

ラウラ「こっちは残り一発だ」 

キリコ「こっちもだ」 

ラウラ「ふっ……私達なら、二発もあれば十分か」 

キリコ「……」 

ラウラ「こっちで待ち伏せするぞ。ついてこい」 

キリコ「……」 

354: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:44:37.90 ID:RfqlAdhG0


タタタッ 


ラウラ「ここだ」 

キリコ「……」 

ラウラ「……」 


キュィイイイッ 


キリコ「……」 

ラウラ「……」 


ピーッ ピーッ ピーッピーッ 


キリコ「……」 

ラウラ「……」ゴクッ 


ピーピーピーピピピピッ 


ラウラ「撃て!」 

キリコ「……」 


ズギュウンッ 


『ぐはっ!』 

355: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:45:38.53 ID:RfqlAdhG0


ズギュウンッ 
ガキンッ キュィイイッ 


『ちっ、当たるかよ!』 


ラウラ「なっ……ターンピックだと!? 陸戦ファッティーには無いはずだ!」 

キリコ「……奴は、ただの雑魚とは違うらしいな」 

ラウラ「ちっ……」 


『喰らえっ!』バシュウンッ 


ラウラ「くっ」バッ 

キリコ「……」バッ 


ドゴォオオンッ 
ガラガラッ 


ラウラ(が、瓦礫がっ!) 

キリコ「っ……」

356: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:46:14.02 ID:RfqlAdhG0


ガラガラガラッ 


キリコ「こ、これは……」 

ラウラ(ぶ、分断されたかっ……) 

『けっ、標的は瓦礫の向こうか……』 

ラウラ(これは……マズイな……) 

『まぁ、良い……先に死んでもらうぜ! 嬢ちゃん!』 

ラウラ「ちっ……(万事、休すかっ……!)」 



……

357: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:51:30.03 ID:RfqlAdhG0



キリコ「ラウラッ! 無事か!」 


「キリコッ!」 


キリコ「シャ、シャルロットか」 

シャル「ラウラは!?」 

キリコ「この瓦礫の向こうだ」 

「キリコ! お前は逃げろ! コイツは引き受ける!」 

キリコ「だが!」 

「この先の道で合流する! 早く行かんか!」 

キリコ「ラウラッ!」 

358: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:52:35.03 ID:RfqlAdhG0


ズガガガガッ 


キリコ「ラウラァッ!」 

シャル「キリコ! 早く行こう!」 

キリコ「くっ……」 

シャル「ラウラはそう簡単にやられない! そんな事より、早く合流する事を考えないと!」 

キリコ「っ……行くぞ!」 

シャル「うん!」 


タタタッ 


キリコ「この先の道で、また合流できるはずだ。あの機長は」 

シャル「……死んだ」 

キリコ「……そうか。急げ」 

シャル「わかった」

359: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:53:00.93 ID:RfqlAdhG0


タタタッ 


キリコ「ここだ……向こうの道が、あの場所から繋がっているはずだ……」 

シャル「……」 

キリコ「どこか隠れられる場所は無いか……このカーゴしかないか……狭いが、我慢してくれ」 

シャル「う、うん」 

キリコ「……」 

シャル「こ、ここに隠れてればいいんだね」 

キリコ「あぁ、俺の後ろにいろ」 

シャル「と、ところで……た、弾は?」 

キリコ「……パイルバンカー一発だけだ」 

シャル「そ、それじゃ……」 

キリコ「倒せない訳じゃない。ラウラがちゃんとここまでおびき寄せてくれれば……俺が懐に飛び込んで、仕留める」 

シャル「……」 

キリコ「……お前も、銃を出しておけ」 

シャル「わ、わかった」チャキッ 

キリコ「……」 

シャル「……」 

キリコ「……まだか」 

シャル「……ね、ねぇキリ――」

360: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:53:32.52 ID:RfqlAdhG0


ドクンッ 


シャル「……」 

キリコ「……何だ」 

シャル「……」 

キリコ「……どうしたんだ、シャルロ――」 

361: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:54:22.41 ID:RfqlAdhG0


チャキッ 


キリコ「……」 

シャル「はぁ、はぁ……」 

キリコ「……何の……真似だ……」 

シャル「……前にも……あった……」 

キリコ「……」 

シャル「キリコを見てると、殺したくなる時がある……」 

キリコ「……何?」 

シャル「自分でも、わからない……初めてあった時も、この発作が起きた……皆といる時は出ないのに、二人になると、決まって出る……」 

キリコ「……シャルロット、銃を、降ろせ」 

シャル「わかってる……でもっ、体が言う事を聞かないんだ!」 

キリコ「……」 

シャル「キリコ……は、離れて……」 

キリコ「……」 

シャル「離れてっ!」 

キリコ「……」 

シャル「うわぁぁああっ!」 

362: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:54:52.36 ID:RfqlAdhG0


パシッ 


キリコ「くっ……」 

シャル「離して! 離してよ!」 

キリコ「お前の脳は、何か細工を施されているはずだっ」 

シャル「わかってる……わかってるよ! ……でもっ!」 

キリコ「ぐっ……(ど、どこからこんな力が……)」グググッ 

シャル「だぁっ!」ブンッ 

キリコ「うぉっ!」ドサッ 

シャル「はぁっ!」ガシッ 

キリコ「ぐっ……(く、首が……)」

363: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:55:53.31 ID:RfqlAdhG0
シャル「はぁ、はぁ……キリコを見てると……自分が、いつかキリコのせいで死ぬんじゃないかって思いに駆られる……」 

キリコ「……かっ……」 

シャル「自分が、酷い死に方をするんじゃないかって……そんな、はず……無い、のに……」ギリギリ 

キリコ「……シャ、ル……ロッ……」 

シャル「殺す……殺したい……」 

キリコ「……がぁっ……」 

シャル「殺すっ!」

364: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:56:52.89 ID:RfqlAdhG0


「ふんっ!」ブンッ 


バキッ 


シャル「がっ……」 


ドサッ 


キリコ「っ……かはぁー……はぁー……はぁー……」 

ラウラ「はぁ、はぁ、はぁ……」 

キリコ「ラウ、ラ……」

365: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:57:28.93 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「何だ……今のは……」 

キリコ「はぁ、はぁ……」 

ラウラ「何故、シャルロットがお前の首を絞めていた……」 

キリコ「はぁはぁ……」 

ラウラ「答えろ!」 

キリコ「……わからない……」 

ラウラ「わからないだと? わからないのに突然首を絞めてきたというのか!」 

キリコ「……そうだ」 

ラウラ「……」 


『おっと……手を上げろ』 


ラウラ「っ!?」 

キリコ「……」

366: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:58:03.79 ID:RfqlAdhG0


『やっと追い詰めたぞ……このガキ共……』 


ラウラ(ちっ……私とした事が、平静を失っていたかっ……) 

キリコ「……」 

『さぁ、キリコとやら。こっちに来い』 

キリコ「……ん?」 

キリコ(この手に触れている感触は……) 

『俺の部隊を……全員殺しやがって……』 

キリコ(……俺のマントの中に……シャルロットが落としたアーマーマグナムが入ったか……) 

『早く立て! そっちのお嬢ちゃんを今から撃ってもいいんだぞ!』 

キリコ「……」 

キリコ(……ばれないように……) 

ラウラ「キ、キリコ……」 

キリコ(コイツを作動させ……マグナムを……回収……) 

367: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 20:58:54.23 ID:RfqlAdhG0


ズガガガガッ 


キリコ「っ!」 


カキンカキンッ 


キリコ「……」 

ラウラ「……」 

『……次は、当てるぞ。早く立て。そんで、まぁどうせ弾切れなんだろうが……その重そうな武器を降ろせ』 

キリコ「……」 

キリコ(何とか、回収はできた……) 

キリコ「……」スッ 

ラウラ「キリコ……」 

キリコ「言うとおりにしろ……」 

ラウラ「……」 

368: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:01:28.32 ID:RfqlAdhG0


ドサッ ドサッ 


キリコ「……すまない」 

ラウラ「……」 

『えぇえぇ、お利口ちゃんだ……おい、お前はこっちに来い』 

キリコ「……」 

ラウラ「キリコッ」 

『嬢ちゃんは黙ってな』カチッ 

ラウラ「っ……」 

キリコ「……」 


ガシッ 


キリコ「ぐっ……」 

『へへへっ、獲物鷲掴みってな……任務達成だ……』 

ラウラ「……」 

キリコ「……」

369: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:01:59.80 ID:RfqlAdhG0
ラウラ(このままでは……) 

『んで……まぁあれだな……これからは口封じって訳だ……』 

ラウラ「……貴様っ」 

『おぉおぉ、その歳で良い目力だ事……嬢ちゃんかわいいし、殺すのには、惜しいが……』 

ラウラ「……」 

『これも、仕事でね』 

キリコ「……」 

ラウラ(私は……キリコを……守ると決めたはずだ……) 

『……正直いえば、あんまり好きじゃないんだがな……こういうのは……』 

ラウラ(なのに……) 

『あばよ、嬢ちゃん』 

ラウラ(なのにっ!)

370: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:03:03.95 ID:RfqlAdhG0


「それは、こちらの台詞だ」チャキッ 


『――なっ!?』 


キリコ「……」 


『(コ、コイツいつの間に銃を!? いや、そんなはずはない! コイツの事はそれなりに強く掴んでいたはずだ!)』 

『(……ん? あ、あのマントから見えるヤツは……)』 


キリコ「軍用トラックも押し上げるジャッキだ。隙間を作るくらい、訳は無いさ」

371: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:04:18.71 ID:RfqlAdhG0


『――きさまぁああっ!』ジャキッ 


ズキュウウンッ 
パリーンッ 


キリコ「ラウラッ! やれっ!」 


パシッ 


ラウラ「……うぉおおおおっ!」 

『み、見えねぇ! クソッ、どこだ!』ズガガガッ 


カキンカキンッ 


ラウラ「はぁあああっ!」 

372: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:05:09.44 ID:RfqlAdhG0


ズドンッ 


『なっ!?』 


ラウラ「これで、終わりだぁああっ!」 


ブォオオオッ 


『く、クソッタレがぁあああっ!』 

キリコ「……」 

ラウラ「っ……」

373: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:05:40.96 ID:RfqlAdhG0


ジャキンッ…… 


ラウラ「……」 

キリコ「……」 

『……』

374: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:06:17.31 ID:RfqlAdhG0


ジジジジジッ…… 
シャキンッ…… 


ラウラ「はぁ……はぁ……」 

キリコ「……」 


フラッ 


キリコ「くっ……」ドサッ 

ラウラ「や、やった……のか……」 

キリコ「あぁ……ATからこれだけ血が漏れてるんだ……死んださ……」 

ラウラ「……そうか……」 

キリコ「……はぁ……」 

ラウラ「……」 

キリコ「……」

375: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:06:48.34 ID:RfqlAdhG0

ラウラ「……シャルロット……奴は……一体……」 

キリコ「……」 



砂地獄に足を絡まれ、生き残ったのは俺達三人だけだった。 
吸血鬼、戦士、そして、錯乱の殺し屋……。 
冥府魔道を行くこの妙な一団は、一息の休息をようやく手に入れた。 

まだ自らが、砂地獄に足を入れたままだと、知らずに。 




――

376: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:07:18.63 ID:RfqlAdhG0
前半ここまで 
飯食ってきますわ

378: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 21:25:38.08 ID:RfqlAdhG0
うん、ゴメン 
これ下手したら3スレ目行くわ

382: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:26:16.17 ID:RfqlAdhG0



夢を見ていた。残酷な夢を。 
友達に銃を突きつけ、首を絞め、殺そうとしている夢を。 
友達は必死で抵抗しているのに、僕も必死でやめようとしているのに、体が言う事を聞かない。 

そして、ここからはぼんやりとしていた。 
友達が、僕に凶器を振るって、それで僕もそうしていて。 
そして最後に、友達が、僕を見下ろしながらとても怖い顔をしていた。 
悲痛で、何かに駆られたような顔で。 

そんな顔、見たはずもないのに。 
いやに、現実的だった。 

383: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:27:29.10 ID:RfqlAdhG0


「……」 


(ん……ここは……) 

(確か……僕達の乗っていた飛行機が砂漠に墜落して……それで……) 

(なんか、沢山のATと戦ってたような……) 

(……キリコ……) 

(そうだ、キリコだ……キリコは何処?) 

(し、死んでないよね? そ、そんなはずは……) 

(……キリコ) 

(キリコッ!) 


「……キリコ……」 


「起きたか、貴様」チャキッ 


384: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:28:12.26 ID:RfqlAdhG0
シャル「……」 

ラウラ「……」 

シャル「ラウ、ラ……」 

ラウラ「起きたところですまないが……貴様に質問がある」 

シャル「……何の、事……」 

ラウラ「貴様、何故キリコを殺そうとした……」 

シャル「キリ、コ?」 

ラウラ「とぼけるな……貴様は、敵ATが攻めて来ているという危機的状況で、キリコの首を絞めていた! 
    その理由を聞かせろと言っているんだ!」 

シャル(……僕が? キリコを?) 

シャル(そんな……そんな訳は……) 

387: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:29:53.91 ID:RfqlAdhG0


殺す……。 


シャル(……あっ……) 


殺したい……。 


シャル(……そうだ、僕は……) 


殺すっ! 


シャル(僕は……) 


シャル「キ、キリコは! キリコはどこ!」 


388: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:35:56.84 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……どうした、シャルロット」 

シャル「あっ……よ、良かった……生きてた……」 

ラウラ「どの口が言う……」 

キリコ「……ラウラ、銃を下げろ」 

ラウラ「コイツは、お前を殺そうとした」 

キリコ「……下げろ」 

ラウラ「仲間だと、思っていたのに……」 

キリコ「下げろと、言っている」 

ラウラ「悪いが……それはできない。私は、お前に害を成す者に、手を抜けないし抜く気も無い。それが、私の誓いだ」 

キリコ「……ラウラ」 

ラウラ「……」 

シャル「……」 

ラウラ「……答えろ」 

シャル「……」

389: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:36:34.29 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……シャルロットは、どうやら脳に細工を施されたようだ」 

ラウラ「コイツが言ったのか」 

キリコ「違う。が、そう見て間違いないだろう」 

ラウラ「……密告者、いや、監視者と言った方が良いか……そいつに、やられたと?」 

キリコ「あぁ。シャルロット、症状を話してみろ」 

シャル「え、あ、うん……」 

ラウラ「……」 

シャル「別に、キリコ以外の人がいる時は、キリコを見ても普通なんだ。いつも通り、会話もできるし、何も負の感情なんて湧かない。 
    でも……キリコと二人きりになった時は……まず間違いなく、発作が来る」 

ラウラ「……一時期、キリコと同室だったらしいが……どうやって抑えた」 

シャル「キリコより早く寝て……キリコより遅く起きてた。単純だけど、それでなんとか……」 

ラウラ「……」 

キリコ「それで、妙に部屋でお前が起きてるのを見なかった訳だ」 

シャル「うん……」

390: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:37:25.80 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「……では、今はどうだ」 

シャル「えっ……今は、全然……多分、ラウラがいてくれてるから……」 

ラウラ「……そうか」 

シャル「……」 

ラウラ「なら、私がいれば無害、という訳か」 

キリコ「らしいな」 

シャル「う、うん……多分、そう……」 

ラウラ「……キリコ」 

キリコ「何だ」 

ラウラ「……銃を返す。勝手に抜いて悪かった」スッ 

キリコ「……あぁ」カチャッ 

ラウラ「……シャルロット」 

シャル「な、何?」 

391: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:39:22.86 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「私は……まだお前を許した訳じゃない。今度、また不穏な動きを見せれば……」 

キリコ「ラウラ、いい加減にしろ」 

シャル「……キリコ、いいんだよ。友達を殺そうだなんて、妙な発作が起きる僕が悪いんだから……」 

キリコ「……」 

ラウラ「……私も、過去の自分からして、あまり言えた身分じゃないのはわかっている……。 
    だが、今の私はこういう人間なんだ。わかってくれ」 

シャル「……うん、わかってる」 

ラウラ「……お前のような、明るく、面倒見の良いヤツとは……友人でいたい。 
    もう、その発作なんてものを起こさないでくれ……頼む……」 

シャル「……ラウラ」 

ラウラ「……キリコ。そろそろ行くか」 

キリコ「……あぁ」 

シャル「そろそろって……ここは……」 

ラウラ「砂漠の、ど真ん中だ」 

シャル「……」 

392: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:40:05.11 ID:RfqlAdhG0
ラウラ「お前は、あれから丸一日も寝ていたんだ。それまで運んでくれたキリコに礼を言っておけ」 

シャル「ま、丸一日も……」 

キリコ「……よほど、脳に負荷か何かがかかったんだろう。無理も無い」 

シャル「……ごめんなさい、キリコ」 

キリコ「気にしていない。ほら、お前も水を飲んでおけ」 

シャル「……あり、がとう……」 

ラウラ「水は貴重だ。考えて飲むんだぞ」 

シャル「……うん」 

ラウラ「汗が出たら舐めろ。でないと、電解質が失われ、早死にするぞ」 

シャル「……わかった」 

ラウラ「そろそろ……岩石砂漠地帯のようだ……遠くの方に、少しだけ見える。その周辺なら、もしかしたら遊牧民なんかがいるかも知れん。 
    それまで、倒れてくれるな」 

シャル「……うん」

393: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:40:33.31 ID:RfqlAdhG0
キリコ「……シャルロット、もう自分で歩けるか」 

シャル「う、うん。もう大丈夫だよ……」 

キリコ「そうか……」 

ラウラ「キリコ、今度は私が荷物番をしよう」 

キリコ「いや、だいぶ軽くなったはずだ。俺がやる」 

ラウラ「だが……」 

キリコ「……俺がやる」 

ラウラ「……無理はするなよ」 

キリコ「あぁ……シャルロット、お前は従軍経験が無い。辛くなったらいつでも言え。また俺が運んでやる」 

シャル「そ、そんなの悪いよ……今まで歩いて無かった分、僕も頑張るから」 

キリコ「……そうか」 

ラウラ「……行こう」 

キリコ「……あぁ」 



大海の中から、俺達は希望という一滴の雫を探し、歩き始めていた。 
あるのは、水のように滑らかな砂と、その青で全てを熔かさんと照りつける空のみ。 
自らの足で、踏みしめ、足が沈む。上気した呼吸とその音が合わさり、規則的なリズムを作っていた。 

394: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:42:48.61 ID:RfqlAdhG0

キリコ「……」 

シャル「はぁ、はぁ……」 

ラウラ「……」 

シャル「そ、そういえば……ATは奪えなかったの?」 

ラウラ「全て地雷の爆発に呑み込まれたのか、制御系がイカれていた。最後に倒した奴も、パイルバンカーで回路ごと貫いてしまったからな」 

シャル「……そっか」 

キリコ「……」 

ラウラ「……あまり、喋るな。疲れるぞ」 

シャル「……うん」 



まだ、先は見えない。地平の先が。 
俺達が歩いているのか、景色が俺達に合わせて動いているのか、それすらもわからない錯覚に陥る。 
地獄はもう近い。向こうから迫る必要も無い。ただ、落ちてくるのを、待つ、ばかり。 
俺達に握らされた切符は、片道切符ではない。地獄を往復する、切符なのだ。 



――

395: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/06(月) 23:44:09.99 ID:RfqlAdhG0
ウォッカム「……どうだ」 

ルスケ「はっ、バララントのAT隊20機を撃退してから二日経ちましたが……以前、三人は生きています」 

ウォッカム「そうか……水も食糧も尽きたはずだが、中々しぶとい……」 

ルスケ「……ボーデヴィッヒは、生き残るのでしょうか……」 

ウォッカム「さぁな。生き残れば、異能である証拠。死ねば、ただの紛い物……それだけだ」 

ルスケ「はい……」 

ウォッカム「……監視を続けろ」 

ルスケ「……はっ」 

ウォッカム「……」 



―― 

396: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:31:36.35 ID:DYi8UAgs0


バララントが襲撃してから、早くも三日目。食糧も水も尽き、俺達は幽鬼のように歩いていた。 



キリコ「はぁ、はぁ、はぁ……」 

シャル「……」 

ラウラ「はぁ、はぁ……」 


砂の風景は消えたが、辺りは乾ききった地表が覆う岩石砂漠となっていた。 
しかし、何が変わったと言う事も無い。人も、生命すら通らない不毛な大地。 
俺達は、肩を落とし、そこを歩き続ける。 


シャル「はぁ、はぁ……」 


ドサッ 


397: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:32:31.70 ID:DYi8UAgs0
シャル「はぁ、はぁ……」 

シャル(も、もう……ダメ……) 

シャル(視界が……揺らいでる……) 

シャル(いや……もう、見え、ない……) 

シャル(キリコ、と……ラウラ、を……よば、なきゃ……) 

シャル(おいてか、ないで……) 

シャル(僕を……一人に、しない、で……) 

シャル(……)

398: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:33:00.94 ID:DYi8UAgs0
シャル(虫が……よす、ぎる、か……) 

シャル(友達を、危険に、晒したり……殺そうと、したりして……) 

シャル(それで、また迷惑を、かけて……) 

シャル(最期には……一人は、嫌だなんて……) 

シャル(……) 

シャル(……いや……) 

シャル(いやだよ……) 

シャル(……おいてかないで……) 

シャル(……) 

399: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:33:40.86 ID:DYi8UAgs0
シャル(まえにも……こういうこと、あったっけ……) 

シャル(あのときは……じゅうをつきつけられて……) 

シャル(ひっしで……こころのなかで、いのちごいしてたっけ……) 

シャル(……はぁ……) 

シャル(……) 

400: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:34:41.05 ID:DYi8UAgs0
シャル(つかれちゃったな……) 

シャル(このまま、ねちゃおう……) 

シャル(おきたら、きっと……みんながいて……) 

シャル(キリコと、ラウラと……ほうきも……セシリアとりんがけんかしてて……) 

シャル(……) 

シャル(……おやすみ……) 


401: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:35:52.06 ID:DYi8UAgs0


「何を、涙なんて、貴重なものを流している……」 


シャル「……」 

ラウラ「起きろ……シャルロット」 

シャル「……」 

ラウラ「起きろと言っている……二度も、言わせるな……」 

シャル「……ラウ、ラ……」 

ラウラ「泣くんじゃない……今は、水分が、一番大事なのは……わかっている、だろう……」 

シャル「……」 

ラウラ「早く立て……キリコも待っている……」 

シャル「……もう……」 

ラウラ「何だ」 

402: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:36:37.11 ID:DYi8UAgs0
シャル「……もう、僕の事はいいから……二人だけで、先に行って……」 

ラウラ「……」 

シャル「僕が、いても……足手、まとい、だから……」 

ラウラ「……民間人が、舐めた口を聞くな……ほら、肩を貸す。歩くぞ」 

シャル「でも……」 

ラウラ「……この私に、友人を見殺しにしろと言うのか……この私に、そんな不名誉な事をさせろと言うのか」 

シャル「……」 

ラウラ「殴る元気があったら、殴り飛ばしている所だ……だが、今はお前に肩を貸す程度の元気しか無い。 
    これで、我慢しろ」 

シャル「……」

403: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:37:28.28 ID:DYi8UAgs0
ラウラ「……返事は」 

シャル「……うん」 

ラウラ「よし、ではいくぞ……ふんっ……」 

シャル「……」 

ラウラ「これで、歩けるな」 

シャル「……うん」 

キリコ「……大丈夫か」 

ラウラ「あぁ、なんとか、な……」 

キリコ「……そうか」 

シャル「はぁ、はぁ……」 

ラウラ「……行こう」 

キリコ「……あぁ」

404: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:38:44.50 ID:DYi8UAgs0



まだ、見えない。本当にこの先に何かあるのかすら、疑わしい。 




キリコ「……」 

ラウラ「……」 

シャル「……」 




405: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:39:42.88 ID:DYi8UAgs0
そうして、俺達は。 



ラウラ「うっ……」フラッ 

シャル「……」ドサッ 

ラウラ「はぁ……」ドサッ 

406: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:42:03.03 ID:DYi8UAgs0
全員が一斉に。 



キリコ「……ぐっ」 


ドサッ 



407: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:42:29.20 ID:DYi8UAgs0



力尽きた。 




408: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:43:46.95 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「……」 

ルスケ「三人とも、倒れました」 

ウォッカム「……そうか」 

ルスケ「……」 

ウォッカム「……やはり、異能生存体などという物は、眉唾物だったいう事か……」 

ルスケ「……」 

ウォッカム「それとも、対生物のみにはその能力が適用されるが、環境などに干渉できるのには限度があったと見るべきなのか……」 

ルスケ「……」 

ウォッカム「……仕方あるまい。今回の戦略動議は、彼ら抜きで認証を得ねばならんな」 

ルスケ「ゴーレムだけも、十分に可能かと……」 

ウォッカム「……それはわかっている。だが、実に残念だ。死なない、完璧な兵士……そのような存在を、一度この手に治めてみたかった」 

ルスケ「……お察しします」 

ウォッカム「……」

409: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:52:25.86 ID:DYi8UAgs0



『生命体には、他に比べ、群を抜いて生存率の高い個体が存在する』 


……。 


『私は、それを仮に”異能生存体”と名付けた』 


……異能……。 


『遺伝確立250億分の1。それが、お前だ』 


……俺が……。 


410: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:53:16.81 ID:DYi8UAgs0


『躊躇するな! 焼きつくせ!』 


……コイツは……。 


『全てだ! 一人残らず、研究施設ごと焼きつくせ!』 


……。 


『こやつらが、異能生存体とかいうものならば、自ずと生存の術を見つけ出すはずだ!』 


……俺が、異能……。 


411: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:54:15.21 ID:DYi8UAgs0


『それを、お前に教えてやろう』 


……そんな事は、どうでもいい。 
俺は、まだ生きなければならない。 
ここで死ぬ訳には……いかない……。 


アイツが、待っている……。 
俺の……。 
俺の、宿命が……。 

412: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:54:58.44 ID:DYi8UAgs0



箒が……。 



413: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:55:37.28 ID:DYi8UAgs0


ピーッ ピーッ 



ルスケ「……っ!?」 

ウォッカム「……どうした。ゴーレムの故障か」 

ルスケ「か、閣下……」 

ウォッカム「何だ」 

ルスケ「あり得ない事です……」 

ウォッカム「……どうしたのだ」 

414: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:56:50.32 ID:DYi8UAgs0

ルスケ「キリコ達のいる付近に、突如、て、低気圧が……」 

ウォッカム「何っ!?」 

ルスケ「何の予兆も無かったはずです……ですが、雨雲を形成し、大きくなっています……ふ、普通ではあり得ない速度で……」 

ウォッカム「……ば、馬鹿なっ……」 


415: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:57:48.55 ID:DYi8UAgs0

キリコ「……」 

シャル「……」 

ラウラ「……」 


ポツッ 


キリコ「ん……」

416: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:58:20.78 ID:DYi8UAgs0


ポツポツッ 


キリコ(……何だ) 


ポツポツポツポツッ 


キリコ(……冷たい物が……当たっている……) 


ザァーッ 


キリコ(これは……) 

キリコ「……雨……」 


ザァーッ 


キリコ「……」 

417: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 00:58:49.00 ID:DYi8UAgs0


キリコ「……こ、これはっ……シャルロット! ラウラ! 起きろ!」 


シャル「う、うぅん……」 

ラウラ「……ん……」 

キリコ「雨だ! 雨が降っている!」 

シャル「あ……」 

ラウラ「……め?」 

キリコ「あぁ! 早く飲め! まだまだ降って来ている!」 

シャル「あ、め……え? 雨?」 

ラウラ「そ、そんな……馬鹿な……」 

418: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 01:00:10.85 ID:DYi8UAgs0
キリコ「本当だ。この冷たさ、この喉を通る感覚……水だ……雨が降っている」 

ラウラ「……は、はは……」 

シャル「ほ、本当に……」 

キリコ「あぁ」 

ラウラ「雨……雨だ……」

419: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 01:00:43.17 ID:DYi8UAgs0
シャル「……ぃやったぁーっ!」 

キリコ「……」 

シャル「冷たい……本当に、雨だ……」 

ラウラ「夢じゃ……ないよな……」 

キリコ「あぁ。余ったボトルに入れておく。お前達も、今のうちに体を冷まして、水を飲むんだ」 

ラウラ「……こんな……奇跡が……」 

シャル「あははっ! 雨って、こんな気持ちいい物だったんだ!」 

キリコ「あぁ……」 

シャル「キリコ! 夢じゃないよね! 僕ら、今! 雨にうたれてるんだ!」 

キリコ「……あぁっ」 

シャル「あははっ! さいっこうだ! さいっこうだよ!」 

ラウラ「……信じなければならないな……森羅万象を超えた、法則があるということを……」 

キリコ「……」

420: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 01:01:14.56 ID:DYi8UAgs0


希望の一滴は、確かに存在した。大海に混じり込んだ、その一滴は。 
俺達の渇きを癒し、活力を漲らせてくれた。 

これが、ペールゼンの話した俺の能力なのかはわからない。 
だが、確かに言える事は、俺達は生きているという事だ。 



ザァーッ 



キリコ「……」 

シャル「ラウラッ! 久しぶりのシャワーだよ!」 

ラウラ「……あぁ……一生の中で、一番気持ちの良い……シャワーだ……」 


……

421: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 01:01:44.48 ID:DYi8UAgs0


ウォッカム「……」 

ルスケ「……閣下……」 

ウォッカム「……ふふふ……」 

ルスケ「……閣下?」 

ウォッカム「素晴らしい……素晴らしいぞ、ペールゼン……貴様の見つけた異能生存体は!」 

ルスケ「……」 

ウォッカム「素晴らしい……私は、奇跡を見た……生きる奇跡を!」 

ルスケ「……」 

ウォッカム「……ルスケ」 

ルスケ「はっ」 

ウォッカム「彼らを回収し、動議書を纏めろ。軍の連中の重い腰を、一瞬にして砕く」 

ルスケ「はっ、かしこまりました」 

ウォッカム「……」 

ウォッカム(異能……生存体っ……) 

ウォッカム(最高だ……) 


――

422: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 01:59:05.96 ID:DYi8UAgs0




鈴「……はぁ……授業終わっても暇ねぇ……」 

セシリア「そうですわねぇ……」 

鈴「キリコ達帰って来るのまだ先だしさぁ……」 

セシリア「ですわねぇ……」 

鈴「箒もうんともすんとも言わないしさぁ……」 

セシリア「えぇ……」 

鈴「頼まれたは良いけど、これ……どうやって渡せって言うのよ……」 

セシリア「……」 

鈴「はぁ……ペアネックレス……かぁ……」 

セシリア「……」 

鈴「アイツ、こういうの疎い癖に……こうなると、一直線よねぇ……」 

セシリア「……えぇ……」 

鈴「……あたし達、負けちゃったのかなぁ……」 

セシリア「……」 

鈴「はぁ……」

423: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:00:26.46 ID:DYi8UAgs0
セシリア「らしくありませんわねぇ、鈴さん」 

鈴「だってさぁ……明らかにキリコの接する態度が違うんだもん……この前あたしと箒が怪我した時だってさぁ……。 
  箒には、待っていろ、だなんて言う癖に、あたしには言ってくれないし」 

セシリア「……まぁ……」 

鈴「それと今回のこれでしょう? 箒と同じ幼馴染のはずなんだけどなぁ……」 

セシリア「……」 

鈴「はぁーあー……」 

セシリア「……溜息は、幸運を逃すキッカケになりますわよ?」 

鈴「うるさい……」ゴンッ 

セシリア「食事する場所に頭を突っ伏さない」 

鈴「痛た……」 

セシリア「そんな勢いつけてぶつければ痛いに決まってますわよ」 

鈴「はぁーあー……」

424: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:01:56.79 ID:DYi8UAgs0
セシリア「あぁもう! ジメジメと! まだ負けたと決まった訳じゃないでしょう!」 

鈴「でもさぁー……明らかに、こう手ごたえが無いというか……」 

セシリア「それは、私も同じです」 

鈴「自覚あるなら説教しないでよ……」 

セシリア「自覚があるから、こうして友人を諭してるんでしょう?」 

鈴「何ソレ」 

セシリア「私だって、そう感じてはいます……切実に。ですけど、それをグチグチと聞かされる身にもなって下さいまし」 

鈴「……偉そうに……あたしがどんだけ前からキリコを好きだと思ってんのよ」 

セシリア「……」 

鈴「アンタみたいに、つい最近知り合った仲じゃないんだよ……ずっと昔からなんだ……。 
  ふと、あっ、キリコといると、なんか良いなぁって思ってから……その瞬間から、ずっと好きだったんだ……」 

セシリア「……」 

鈴「はぁ……それがまさか、あたしと似たようなのがいて、そっちになびいて……何が悪かったのかなんて考えて……。 
  堂々巡りよ……そりゃ落ち込むわよ……」 

セシリア「……」 

鈴「……なんだろうなぁ」 

セシリア「……」

425: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:03:25.48 ID:DYi8UAgs0
鈴「キリコは、兵隊なるとか言って勝手に消えて、そう思ったらまたここに来て……。 
  そんでもってこの学園では妙に女侍らせて……まぁ、それは本人が興味無いんだろうけどさ……。 
  それで興味無いと無いと思ったらこれだもんなぁ……」 

セシリア「……」 

鈴「……何黙って聞いてんのよ」 

セシリア「……もう諦めて聞き流してましたの」 

鈴「……頬の一発でも引っ叩かれると思ったのに、こういう展開だと」 

セシリア「叩く気にもなりませんわよ」 

鈴「……そっ」 

セシリア「……」 

鈴「はぁ……」 

セシリア「……叩きましょうか?」 

鈴「……やっぱ、いい」 

セシリア「……そうですか」 

鈴「……」 

セシリア「……」 

鈴「……あれ?」 

セシリア「……どうされましたか」 

427: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:04:24.60 ID:DYi8UAgs0
鈴「……なんか、ムカついてきた」 

セシリア「……」 

鈴「箒も箒よ。キリコがレッドショルダーにいたからって、アイツが変わったりする訳ないじゃん。 
  昔に何があったかなんて知らないし、そもそも今のキリコ見なさいって説教したのに、塞ぎこんで……」 

セシリア「……」 

鈴「それでキリコが好意表してきたら引きこもって……良い御身分じゃない……」 

セシリア「……」 

鈴「……ちょっと」 

セシリア「なんですか?」 

鈴「やっぱちょっと叩いてよ」 

セシリア「はい?」 

鈴「いいから叩きなさいよ。気合い入れるから」 

セシリア「……もしかして、そういう趣味なんですの?」 

鈴「冗談言ってるとこっちが先に殴るわよ。いいからさっさと――」 


パチンッ 


428: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:05:46.40 ID:DYi8UAgs0
鈴「イタッ!」 

セシリア「……これでよろしいですか?」 

鈴「しゃ、喋ってる時にやらないでよ! タイミング考えなさいって!」 

セシリア「貴女の愚痴を聞かされて、こちらもやる気が無くなってま――」 


パチンッ 


セシリア「ひゃっ! ……な、何をするんですの!?」 

鈴「なんとなく」 

セシリア「な、なんとなく!? 渇を入れるとかでなくて、なんとなくっ!?」 

鈴「うん。なんかムカついたから」 

429: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:06:14.26 ID:DYi8UAgs0
セシリア「なっ……この!」パチンッ 

鈴「イタッ! ……この!」パチンッ 

セシリア「このっ!」パチンッ 

鈴「このっ!」パチンッ 

セシリア「このぉっ!」バチンッ 

鈴「こんのぉっ!」バチンッ 

セシリア「はぁはぁ……」 

鈴「はぁはぁ……」 

セシリア「はぁっ……鈴さん?」 

鈴「はぁはぁ……な、何よ?」 

セシリア「何だか……まだ、頭に、来ません?」 

鈴「うん、すっごく……」 

430: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:07:32.09 ID:DYi8UAgs0
セシリア「二人で、殴り、合うのも、不毛、ですので……はぁっ……」 

鈴「うん、何よっ……」 

セシリア「ちょっと……この原因に当たりません?」 

鈴「うんっ……なんか、ムカつくから、あの引きこもりに当たろう」 

セシリア「いつまでもウジウジとされては、こちらも腹が立ちますわ!」 

鈴「よし……何がなんでも一発入れてやる!」 

セシリア「行きますわよ!」 

鈴「おうっ!」 


タタタッ 


セシリア「はぁああっ!」 

鈴「だぁああっ!」 


タタタッ 


431: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:09:23.50 ID:DYi8UAgs0
鈴「ここかぁっ!」 

セシリア「えぇ! ここですわっ!」 


ドンドンドンドンッ 


鈴「おら! 箒いるんでしょ! 開けなさいよ!」 

セシリア「早く開けなさい!」 

鈴「シカトしてんじゃないわよ! このモップ!」 

セシリア「ここは掃除用具入れじゃなく、部屋なのですよ! 早く開けなさい!」 

鈴「ちっ……こんだけ騒いでも出て来ないとは……」 

セシリア「鈴さん! もう扉ごと壊してやりなさい!」 

鈴「当たり前よ!」キュイイインッ 

セシリア「敵は本能寺にあり!」 

鈴「でやりゃぁああっ!」

432: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:10:32.06 ID:DYi8UAgs0


バゴオオンッ 


「なっ……」 

鈴「あ、いたっ!」 

セシリア「確保! 確保ですわ!」 

「お、おいっ……何しに来たっ」 

鈴「決まってんでしょ! 憂さ晴らしよ!」 

「う、憂さ晴らし?」 

セシリア「キリコさんのハートを盗んでおいて、掴んだ後に拒絶するだなんて虫が良すぎますわ!」 

鈴「そうだそうだこの泥棒猫!」 

「……」 

鈴「いつまでもウジウジウジウジしてんじゃないわよ! キリコにフラれたあたし達の身にもなってみなさいよ!」 

セシリア「そうですわ!」 

433: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:11:01.25 ID:DYi8UAgs0
「……黙れ」 

鈴「誰が黙るもんですか!」 

セシリア「こちらはもう頭に来てるんですのよ!」 

「お前達に……何がわかる……」 

鈴「わかってたまるか!」 

「なっ……」 

鈴「前にアンタに有りがたい説教してやったの忘れたの!? 過去のキリコじゃなく、今のキリコを追えって言ったじゃない! 
  何!? そんなのも覚えられないくらい頭悪いの!?」 

「……それは……」 

鈴「あぁ、そう? それとこれとは話の次元が違うとかほざいちゃうんでしょ? 
  出た出た、陰気な女はこれだから困るのよねぇ……」 

「……いいかげんにしろ……」 

セシリア「鈴さん、もっと言ってやりなさい!」 

鈴「すっこんでなさいレーション以下。アンタの過去に何があったかなんて、知った事じゃないのよ」ダレガレーションイカデスノ!? 

「……いいかげんにしろと、言った……」 

鈴「口調までキリコに似せちゃってまぁ……ムカツク……そんな風にね、自分が恵まれてる癖に、 
  悲劇のヒロイン演じちゃってる子を見ると、虫唾が走るのよ!」 

「……このっ!」ブンッ 


バキッ 


434: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:11:38.11 ID:DYi8UAgs0
鈴「イッタッ! この、やったわね! このモップ!」バキッ 

「ぐっ……この無神経女!」バキッ 

鈴「掃除道具!」バキッ 

「中国産!」バキッ 

鈴「モッピー!」バキッ 

「爆弾女!」バキッ 

セシリア「鈴さん! 右! 右ですわ! そこをブロー!」 

鈴「はぁ、はぁ……」 

「はぁ、はぁ……」 

鈴「コイツッ!」グイッ 

「ぐっ……」 

435: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:12:39.11 ID:DYi8UAgs0
鈴「アンタに、レッドショルダーが何したのかなんて、知らないわよ。家族を殺された、故郷が焼かれた。 
  恐らくそんな所なんだろうけど……」 

「……」 

鈴「でもね、自分だけが不幸だなんて思ってんじゃないわよ。キリコの方が、アンタのうん倍も不幸じゃない!」 

「……なぜ、そう思う」 

鈴「アイツも、サンサにいたんでしょ……アンタと一緒に……それくらい、なんとなくわかるわよ。 
  キリコが何処から来たのかも聞いた事がある。あたしだってアイツの幼馴染なんだ!」 

「……」 

鈴「それなのに、自分の故郷を焼いたレッドショルダーに自ら進んで入ると思う!? 
  嫌々入れさせられたに決まってるじゃない!」 

「……」 

鈴「それで、考えてみなさいよ……そんな場所に放り込まれて……アイツが、どれだけ苦しい思いをしたか……。 
  想像ぐらいつくでしょう!?」 

「っ……」 

鈴「そんな部隊で生きなきゃいけなかったキリコの方が、ただ好きだった人が予想と違っただけで引きこもってるアンタよりも! 
  百倍は不幸よっ!」 

「……」 

鈴「それなのに……こんな……詫びにだなんてプレゼントまで買ってきたのに、それを無碍にして……。 
  アンタ何様よっ! えぇっ!?」 

「……」

436: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:13:43.92 ID:DYi8UAgs0
鈴「受けとんなさいっ!」ズイッ 

「……」 

鈴「これが、キリコがアンタの為に買ってきた物よ。受け取んなさい」 

「……」 

鈴「あぁもう! 何躊躇してんのよ! 貰いなさいよ! あたしが持ってても意味ないんだから!」 

「……あいつは……」 

鈴「何よっ!」 

「あいつは……どうせ、私の事を……まだ忘れているままなんだ……」 

鈴「……はぁっ?」 

「あいつは、最初からそうだ……ここで出会った時から、私の事を忘れて……。 
 お前みたいに、私の事は覚えていてくれていないんだぞ?」 

鈴「……」 

「それなのに……私が大事だと? 嗤わせる……そんなの、詭弁だ……。 
 本当に大事だと覚えているなら、そんな場所に入る訳が無い!」 

鈴「……」

437: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:14:24.65 ID:DYi8UAgs0
セシリア「……箒さんの誕生日……」 

「……?」 

セシリア「7月7日、だそうですわね」 

「……どこで、それを」 

セシリア「キリコさんが言ってましたわよ。箒の誕生日は俺と同じ日だ、と」 

「……」 

セシリア「……あの方は……貴女を忘れていません。もし貴女を忘れていたとしても、それは何か悪い悪夢によって、 
     見えないようにさせられていた……しかし、キリコさんは今、確実に、貴女の事を覚えていらっしゃいますわ」 

「……」 

セシリア「……それでも、受け取れないというのなら……貴女に、キリコさんを慕う資格はありません。 
     さっさと、この学園から出るなりなんなりして下さい」 

「……」 

セシリア「……私の知っている篠ノ之箒は、もっと強い御方でした。凛々しく、強者の空気を纏った……。 
     貴女がそれと同一人物だと言うのなら、受け取りなさい!」 

「……」 

セシリア「貴女がそのように、尊敬できる方に見えたのは、キリコさんへの想いがあったからでしょう!?」 

「……」

438: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:15:38.99 ID:DYi8UAgs0
セシリア「……」 

鈴「……」 

「……私は……」 

鈴「……何よ」 

「私は……篠ノ之箒だ」 

鈴「……」 

「キリコは……私の……」 

セシリア「……」 


箒「……大事な、人だ……」 


439: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:16:36.41 ID:DYi8UAgs0
セシリア「……やっと……」 

鈴「わかったわね、この石頭」 


箒「……キリコは……私の、運命だ……そう言っても良い。そんな、存在のはずなのに……私は……」 


鈴「おうおう、言ってくれるわね」 

セシリア「流石ですわねぇ」 

箒「……私は……酷い事を……」 

セシリア「お久しぶりですわね、箒さん」 

箒「……」 

鈴「ほれ、反省するより先に挨拶しなさいよ」 

箒「……心配を、かけた」 

セシリア「はいっ」 

440: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:17:15.88 ID:DYi8UAgs0
鈴「まぁ、あんま気にする事無いんじゃないのー。キリコがRS入ったのと、今回の引きこもりで、イーブンって感じで」 

セシリア「こらっ! 少しは口を慎みなさい鈴さん!」 

鈴「馬鹿ねぇ。おあいこなんだから、もう気にする必要も無いって意味よ」 

箒「……」 

鈴「で、気兼ね無く受け取れるでしょ? これ」 

箒「……あぁ」 

鈴「あら、何? キリコちゃんから直接受け取りたいとか言わないわよね」 

箒「い、いや、そんな贅沢は言わん……だから……その……」 

鈴「いやしんぼねぇ。ほら、受け取んなさい」スッ 

箒「……ありがとう。鈴、セシリア」 

鈴「礼はアイツに言いなさいよ」 

箒「……あ、開けても……良いのだろうか……」 

鈴「ったく早速惚気ちゃって……勝手にしなさいよ」 

箒「わ、わかった……」 

441: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:18:19.33 ID:DYi8UAgs0


ガサガサッ 


箒「こ、これは……」 

セシリア「キリコさんも、きっと箒さんに似合うだろうと、喜んで買ってらっしゃいましたわよ? 
     最初は、私達全員で買おうと言う話でしたのに、自分一人で買って贈りたいからと、聞かなくて」 

箒「そ、そうか……」 

鈴「ほら、開けたんならつけてみなさいって」 

箒「わ、わかった……」 


スッ 


箒「……はぁ……」 

鈴「嬉しい溜息ついてないで感想」 

箒「き、綺麗、かな?」 

鈴「なんで聞くのよ。まぁ、悔しいけど……綺麗よ」 

セシリア「とても美しいですわ」

442: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:18:50.85 ID:DYi8UAgs0
箒「そ、そうか……これを、キリコが……」 

鈴「……元気、出た?」 

箒「……あぁ」 

鈴「そっ、じゃあ良いわ。でね?」 

箒「あぁ……ま、まだ何かあるのか」 

鈴「さっきっからぶち破った入口の前で、織斑先生がすっごい顔でコッチ見てるんだわ。 
  ちょっと、グラウンド三百周してくるから、後よろしくねっ」 

箒「……あっ」 

セシリア「わ、私も……ですか?」 

鈴「当たり前じゃない。さっ、行きましょ行きましょ」 

セシリア「……では、箒さん。また」 

箒「あ、あぁ……あのっ」 

セシリア「なんですか?」 

箒「そ、その……キリコは?」 

セシリア「今は、海外の研究機関に御呼ばれして、ここにはいませんの。臨海学校には戻ってきますから、その時にお礼を言って下さいね」 

箒「そうか……」 

セシリア「では、また明日。ご一緒に食事でも食べましょう」 

箒「……あぁっ」

443: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:19:59.20 ID:DYi8UAgs0


ファンリンインタイサ! タダイマトウチャクシマシタ! 
ゴツンッ 
イタイッ! 
……ケッキョクソレキニイッテンジャアリマセンコト? 


箒「……」 

箒(……綺麗な、ネックレスだ……) 

箒(これを……キリコが……) 

箒(……) 

箒(私は、馬鹿だったな……) 

箒(過去を見ない! だなんて、決意した途端にこれだものな……) 

箒(そりゃあ、友人から殴り飛ばされるはずだ……) 

箒(……)

444: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:20:28.03 ID:DYi8UAgs0
箒(早く、キリコに会って謝らなければ……) 

箒(そして、伝えなければ) 

箒(もう、気にしていないと……酷い事を言ってすまなかったと……) 

箒(そして……) 

箒(回りくどい言い方ではなく、正面から好きだと!) 

箒(……) 

箒(というか……アイツらなんで最初からあんなに怒っていたんだ?) 

箒(最初はまったく違う理由で殴られていたような気がするが……) 

箒(……まぁ、良いか) 

箒「よし、そうと決まれば、素振りをするか! 集中力を戻すぞ!」 


パシッ 


箒「待っていろ! キリコ!」 



――

446: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:30:24.29 ID:DYi8UAgs0


キリコ「……はぁ……」 

シャル「生き返った、ね……」 

ラウラ「あぁ……そうだな……」 

シャル「本当に……死ぬかと思った……」 

ラウラ「あぁ……自分も、まさか銃弾ではなく、環境にやられるのか、と……腹をくくっていた」 

シャル「九死に一生だねぇ……あれ、前にもこんな事あったなぁ」 

ラウラ「そうなのか?」 

シャル「うん、前にちょっと、ね……」 

ラウラ「ふーん……なら、この幸運も、お前のおかげかもしれないな」 

シャル「そ、そうかな……」 

キリコ「……ちょうどいいくらいの雨量になったな」 

シャル「そうだねぇ……このまま、これくらいの感じでずっと降っててくれないかなぁ……」 

ラウラ「水もだいぶ確保できた。これなら、街につく事も可能だな」 

キリコ「……あぁ――」

447: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:31:03.67 ID:DYi8UAgs0


キュゥウウウンッ 
ドサァアアアッ 


キリコ「っ!?」 

ラウラ「何だ!」 

シャル「ど、どうしたの!」 


『……』 


キリコ「こ、こいつは……」 

ラウラ「IS……きゅ、救助がようやく来たか……」 

シャル「……違うよ、これ……この機体……前にキリコ達を……」 


『……』ジャキッ 


ラウラ「っ! な、何のつもりだ! お前達!」 

キリコ「……無駄だ。コイツらは、無人機だ」 

ラウラ「無人、機……」 

シャル「……」 

448: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:31:46.00 ID:DYi8UAgs0


『キリコ・キュービィー、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ。我々と一緒に来てもらう』 


ラウラ「貴様ら……何者だ!」 

キリコ「……」 


『……』 


ズガガガガッ 


キリコ「ふぉっ!」 

ラウラ「うわぁっ!」 

シャル「きゃあっ!」 


『……』ジャキンッ 


シュウウッ…… 


449: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:33:19.11 ID:DYi8UAgs0


キリコ「……」 

ラウラ「……」 

シャル「……」 


『目標無力化。これより、帰還します』 



450: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:33:53.62 ID:DYi8UAgs0




再度現れた無人機が、疾風の如く俺達を襲った。 
状況をかき回すだけだった監視者が、ついに俺達を捕まえに来たのだ。 
実験動物を、手に戻す為に。 

混濁する意識の中、俺は二人の仲間に手を伸ばそうとした。 
二度と触れる事のできぬ錯覚に陥りながら、俺の意識は、ブラックアウトした。 



――

451: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:34:23.91 ID:DYi8UAgs0


野心と盲信、疑心と献身、それらを乗せて船は動き出した。 
策謀の渦に飲みこまれ、異能の因子は流れてゆく。 
朔望の表裏のように、裏切りの戦士は流れてゆく。 
昨日の友は今日の敵、今日の友は明日の敵。 
それより先は、知りたくもない。 

次回、「別離」 

これも、異能の成せる業なのか。 


――

452: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 02:36:07.18 ID:DYi8UAgs0
はい、今回はここまで 
しかしおかしいな。このスレ来てまだ三話なのに、もう500近くまで来たぞ(白目) 
スレタイのセリフをこのパートで使えんではないか……

458: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:39:10.38 ID:DYi8UAgs0
鈴「イェーイ! 臨海学校だー!」 

セシリア「はーい!」 

鈴「海だー!」 

セシリア「海ですわー!」 

鈴「山だー!」 

セシリア「山ですわー!」 

鈴「おいしい料理だー!」 

セシリア「ですわー!」 

鈴「そう考えていた時期があたしにもありました……」 

セシリア「ですわねー……」 

箒「……」

459: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:40:21.09 ID:DYi8UAgs0
鈴「あぁもう! なんで雨なんて降るのよ!」 

セシリア「日頃の行いが悪かったからじゃありませんのー……ふふっ……」 

箒「ぞっとしないな」 

鈴「はぁーあー……こっちにつくなりゲリラ豪雨だもんなぁ……しかもその癖中々上がらないんだもん……」 

セシリア「そうですわねー……」 

鈴「せめてキリコ達が早く帰ってくればなぁ……ラウラの眼帯伸ばして遊べるのに……」 

セシリア「ほんっとうに碌でもない……」 

鈴「キリコさぁ……結局耐圧服できそうじゃない?」 

セシリア「……まぁ……服は個人の自由ですから」 

鈴「にしたって限度があるでしょう。何が好きで高校生活の中で軍の服着てくる馬鹿がいるのよ」 

セシリア「まぁ……そういうものに興味が無いのかもしれませんわね」 

鈴「まぁねぇ……おじいちゃんかっての……」 

箒「アイツは無欲だからな……基本的に」 

セシリア「そうですわね。まぁ、それも良い所の一つなのですけど」

460: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:41:00.67 ID:DYi8UAgs0
鈴「まぁね。まぁこうやって愚痴るのもなんだし、トランプでもやってましょっか」 

箒「そうだな」 

セシリア「そうですわね」 

鈴「はい、じゃあセシリア配るのよろしく」 

セシリア「……」 

鈴「ルールどうするー?」 

箒「私は何でも良いぞ。まぁ三人だし、大富豪かババ抜きくらいだろう」 

鈴「そうね。じゃあ大富豪でいっか。はーいセシリラさん手ぇ動かしてぇ」 

セシリア「……全く、何で私がこんな……」チャッチャッ 

箒(文句は言うがやるんだな……) 

鈴「それにしても、箒ちゃんもあれねぇ」 

箒「な、何だ」 

461: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:42:40.50 ID:DYi8UAgs0
鈴「そのネックレス早速身につけちゃって……よほど気に入ったみたいね」 

箒「ま、まぁな……それに、キリコがいつ帰って来ても良いように、つけておかないとな」 

鈴「日々は短し、恋せよ乙女、ねぇ……」 

箒「だ、誰が乙女だ!」 

鈴「アンタ以外だれがいんのよここに!」 

セシリア「鈴さーん、私もいますのよー」 

鈴「口動かす前にさっさと配んなさいよ、殴って痛くするわよ」 

セシリア「……このっ……」 

箒(諦めろセシリア、端から見ても鈴の方が上だ……) 

セシリア(というか自分も数に含んでいないのは自覚があるからでしょうか……)サッサッ

462: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:44:01.11 ID:DYi8UAgs0
鈴「今何か変な事考えたでしょ」 

セシリア「な、何でもありません。さ、お好きな束を選んで下さい」 

鈴「んじゃあたしこれー」 

箒「まぁ、目の前ので良いよな」 

セシリア「では私はこれで……げっ」 

鈴「セシリアは革命でも狙う事ねぇー……よし、ジャンケンやるわよ」 

セシリア「ま、まだ負けた訳じゃありません……」 

箒(そうやって自分の強さを吐露した時点で、敗戦は濃厚だと思うが……) 

鈴「はいジャーンケーン、ぽんっ……はいあたしの勝ちー。じゃあはい、10のスリーカードー」 

箒「おいっ」 

セシリア「ぐぬっ」 

鈴「誰も出せないわねー? よーし、Kのスリーカードー。4の四枚で革命ー」 

箒「はぁ?」 

鈴「そんで8のスリーカードでで八切りでしょー。3の二枚出しー、で6の二枚出しで勝ちー」 

セシリア「……ろ、ローカルルールは無しですわ!」 

箒「……いや、もういい」

463: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:45:51.21 ID:DYi8UAgs0
鈴「テレビでも見よー」ポチッ 

セシリア「……やめますか」 

箒「そうだな……」 

鈴「え、やめんの。決着つくまでやればいいのに」 

箒「バ、ババ抜きにしよう! なっ? それならアッサリ終わらないだろ?」 

鈴「んー、まぁあたしはどっちでもいいわよ」 

セシリア「……どうせまた私が切るのでしょう……」チャッチャッ 

鈴「わかってるじゃない」 

セシリア「……はぁ……」 

鈴「……」ポチッ ポチッ 

セシリア「……」チャッチャッ 

464: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:46:17.85 ID:DYi8UAgs0


ガラガラッ 


山田「どなかか呼びましたか?」 

鈴「呼んでないです」 

山田「あ、あれー? 確かに呼ばれたような……」 

鈴「織斑先生じゃないですかね」 

山田「う、うーん……そ、そうですか……」 


ガラガラッ 


鈴「……」 

箒「……雨だなぁ……」 

セシリア「ですわねぇ……」サッサッ

465: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:47:11.76 ID:DYi8UAgs0
箒「……キリコ、遅いな」 

鈴「あっちでシャルロット達とキャッキャウフフでもしてんじゃないのー……」 

箒「そ、そんなはずあるか! アイツには私がっ……」 

鈴「シャルロットを舐めない方が良いわよー……フランス人なんだから」 

箒「だ、だが……シャルロットは、ちゃんと応援してくれると……」 

鈴「ふっ、それ男って偽ってた時じゃない。それに、ラウラもいるのよ」 

箒「あ、あいつが? あいつは、キリコを憎んでたろ?」 

鈴「それがどういう風の吹き廻しか、ベッタリよ。私の嫁だとかいう飛び道具的な言い回し使ってね」 

箒「よ、嫁……」 

鈴「噂じゃ通い妻みたいな真似してるとか……」 

箒「かっ……通い……」 

セシリア「はい、配り終わりましたわよ」 

鈴「はい、あんがと」 

箒「通い、妻……だと……?」 

鈴「そうよー……えっと……あれ、これのペアあったような……」 

箒「……」 

セシリア「えっと……これを捨てて……」

466: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:48:04.65 ID:DYi8UAgs0
鈴「うげぇ……ババじゃん……」 

セシリア「ふふっ、今度は負けませんわよ?」 

鈴「よーし……見てなさいよ……因果律捻じ曲げてあんたの所にババ行くようにしてやるから」 

箒「お、お前達は……」 

鈴「何? ババ欲しいの?」 

箒「わ、私の事を、お、応援とかは……」 

鈴「あ゛ぁ?」 

箒「ひっ」 

セシリア「鈴さん、今のは女性がやってはは良い声と顔じゃありませんよ」 

鈴「いや、ちょっとあまりにもふざけた事抜かされたから……え、今箒なんて言ったの?」 

箒「え、お、お前らも、まだキリコを狙うと言うのか?」 

鈴「当たり前じゃんなに言ってんの? 引きこもってIQ下がった?」 

セシリア「当たり前ですわ」 

箒「んなっ……」

467: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:49:33.54 ID:DYi8UAgs0
鈴「あの時アンタを説教したのは、ただ明らかに落ち込んでるキリコを見てて、居た堪れないからやっただけよ。 
  なんで、敵の応援するのよ」 

セシリア「そんな都合の良い話が何処にあるのか聞きたいくらいですわ」 

箒「……」 

鈴「わかったら、前みたいにもっとがっついてきなさいよ。私と付き合ってもらう! みたいにさ」 

箒「い、言うなっ!」 

セシリア「な、何ですの!? それは!」 

鈴「え、アンタ知らなかったっけ、箒さ、タッグトーナメン……むぐっ」 

箒「い、言うんじゃない! わ、私が悪かったから!」 

鈴「わ、わかったわよ……」バッ 

箒「はぁ、はぁ……」 

鈴「ったく、この暴走乙女が……ほら、引きなさいよ」 

箒「……そ、外の空気を吸ってくる!」ガラガラッ 

鈴「あっ、え、ちょっと! えぇ……」 

セシリア「……たくましいんだか、ウブなんだか、よくわかりませんわね……」

468: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:50:39.39 ID:DYi8UAgs0
鈴「……ちょっとだけ札を……」 

セシリア「鈴さん」 

鈴「はい」 

セシリア「いけません」 

鈴「はい」 

セシリア「まぁ、箒さんが帰ってくるまで、明日の予定でも再構築していましょうか。 
     あの様子だと、時間がかかるようですし」 

鈴「そうねー……タケノコ掘りは?」 

セシリア「どれだけ早起きがしたいんですの……」 



……

469: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:52:36.60 ID:DYi8UAgs0


箒「はぁはぁ……」 

箒(に、逃げるように出て来てしまった……) 

箒(ど、どいつもこいつも、お、乙女などと……) 


ザァーッ 


箒(雨、かぁ……) 

箒(……どうせ、もうやる事と言ったら風呂に入るくらいだし、この雨にうたれるのも……良いかもしれんな) 


パチャッパチャッ 


箒(ふぅ……頭が冴えるな、この冷たさは……) 

箒(全く、鈴のヤツ……いつまであれを引っ張るつもりなんだ……) 

箒(はぁ……)

470: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:53:06.14 ID:DYi8UAgs0
箒(結局、ライバルは減らず、か……) 

箒(まぁ、当然だよなぁ……) 

箒(キリコのヤツ、人当たりが少し柔らかくなったらしいし、ISの操縦技術は、まぁ最低でもこの学年では最強だろうし) 

箒(顔も、まぁ、悪くは無い……いや、どうだ? 世間一般でいう女受けする顔ではないだろうが……) 

箒(まぁ、なんだかんだで、今つるんでるヤツらは、キリコに心底惹かれてしまっているからな……) 

箒(……ウカウカしてられんな……) 

箒(……) 

箒(ん、あの岬に行ってみるか……)

471: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:54:07.95 ID:DYi8UAgs0


ザザァーンッ…… 


箒(雲で覆われてはいるが……やはり、広いという印象は変わらないな……自然というのは) 

箒(……この海の向こうに、キリコがいるのか……) 

箒(海外の研究機関にお呼ばれ、か……) 

箒(……私は、もう置いていかれているな) 

箒(キリコは、こちらを見て、待っていてくれてるのかもしれない) 

箒(だが、早く追いつかなければ、いつ先に行ってしまうやら……) 

箒(……) 

箒(私にも……専用機があれば……) 

箒(他の皆は、全員専用機持ちだ……無論、腕が立つのは言うまでもない) 

箒(そして、まぁなんだ……)

472: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:55:20.98 ID:DYi8UAgs0
箒(セシリアは自信家だし、育ちも良い。スタイルだって、そうだ……) 

箒(鈴は、相手をグイグイと引っ張っていける力を持っているし、退屈はしないだろう。ある意味、猫のようだから、男性はほっとかないと、思う) 

箒(シャルロットは、気配りもできるし、とても物腰が柔らかい……実に、女性らしい) 

箒(ラウラは……話した事もあまり無いし、キリコを好きになったという事実がよくわからんが……。 
  まぁ、男性からすれば、とてもかわいいという部類だろう) 

箒(……全員、顔も良いしなぁ……) 

箒(何なんだ一体……顔が良くないと専用機持ちにはなれんのか……) 

箒(わ、私は……無理か、十把一絡げの部類だろう……他人から、あまり評価とか聞かないしな……基準が無い) 

箒(はぁ……) 

箒(……いや、いや。いかんぞ箒。またネガティブになったらダメだ。陰気な女に見られてしまう) 

箒(別に、今からでも遅くは無いのだ。努力して、成績を上げて、勝ち取れば良い。専用機を) 

箒(そうすれば、キリコも喜んで迎えてくれるはずだ) 

箒(……ようし、やってやるぞ) 

箒(この大海のように、デカイ存在になるのだ。キリコの目に、ずっと留まれるような!) 

箒(こうと決まればこうしちゃおれん! 早速――)クルッ 


箒「……」 


ザァーッ 


473: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:57:08.36 ID:DYi8UAgs0


束「……」 


箒「……えっ」 

束「やぁやぁ、箒ちゃん……久しぶりだねぇ」 

箒「姉、さん……」 

束「こんな所にいたら、風邪ひいちゃうんだぞー。あーでもでもー、それを看病するのは、束さん的にはおいしいかもー」 

箒「な……なんで、ここに……」 

束「うーん? 知りたいー?」 

箒「……」 

束「それはねー、箒ちゃんを迎えに来たのさー!」 

箒「……迎え?」

474: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:58:08.79 ID:DYi8UAgs0
束「うん! そうだよー。これからキリコちゃんに会いに行くから、箒ちゃん達もいないといけないでしょ?」 

箒「キ、キリコ? な、何だ……キリコが行った研究機関って言うのは、姉さんが噛んでる所だったのか……。 
  も、もしかして、ちゃんとした研究機関に勤め始めたのか?」 

束「そんな訳ないじゃーん」 

箒「……え?」 

束「これから、箒ちゃんとちーちゃん、それとキリコちゃんが、ずーっと一緒にいられる場所に行くのさ」 

箒「……いや……言ってる意味が……」 

束「もっちろん、この束博士も一緒だよ!」 

箒「姉さん? どういう意味だ?」 

束「……来れば、わかるよ」 


ガシンッ ガシンッ 


475: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:59:16.44 ID:DYi8UAgs0


『……』 


箒「……おい……それ、まさか……」 

束「職人束さん入魂のハンドメイド作、無人ISベルゼルガ・レヴレンスちゃんだよー!」 

箒「……キリコ達を、襲った機体じゃないか……」 

束「うーん、酷い使い方するよねー。しかもなんかゴーレムとか言う変な名前つけてくるしー。 
  あぁ、でもあの時はパイルバンカー積んだらキリコちゃん死んじゃうかなーって思って積まなかったから、 
  それが原因で変な名前付けられちゃったのかなー」 

箒「や、やはり……」 

束「あの時は酷い事しちゃったからねー……早くキリコちゃんに会って謝らないと」 

箒「……ね、姉さんが……」 

束「……さて、と……」 

箒「……」 

束「じゃあ、一緒に行こっか……箒ちゃん――」 

箒「……」 


476: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 21:59:59.69 ID:DYi8UAgs0
―― 



   第十二話 
   「別離」 



―― 

477: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:03:01.71 ID:DYi8UAgs0


メルキア 
国家最高戦略ビル 




ウォッカム「我々が体験した事の無い世紀が、今、着実に訪れようとしています。 
      長過ぎた戦争、この百年戦争がついに終結するのです」 

ウォッカム「我がギルガメス、そしてバララント、両陣営の外交方の粘り強い秘密交渉によって、期日も決定しました。 
      この情報は、今、この場にご出席なされている方々にだけ知られている事実であります」 


ザワザワ…… 


478: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:04:08.39 ID:DYi8UAgs0


ウォッカム「このまま待てば、我々は平穏裏に終戦を迎える事になります。 
      バララントとの終戦を予想し、作成された戦略構想ZO-5。 
      兵員の消耗を限りなく減らし、来るべき平和を迎える為に作られた最良のシナリオです」 

ウォッカム「しかし、これで良いものでしょうか? 情報省は、政府及び国防総省、そして本会議に御列席の全ての省庁各位に、 
      新たな戦略構想を動議致します!」 



ザワザワ 



ウォッカム「歴史は教えています。意味の薄い、一戦の勝利よりも、一つの意味ある地政学的勝利を選べと。 
      ……問題は、ZO-5のシナリオには、戦後が織り込まれていない事です」 

ウォッカム「来るべき平和の為にすべき事は何か!」

479: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:05:27.16 ID:DYi8UAgs0


ウォッカム「――地球です」 


「何だと?」 
「不可侵宙域である、あの惑星を?」 


ウォッカム「ギルガメス盟主たる我々メルキアの未来。豊かな発展を、終戦は保障してくれません。 
      どのように戦いを終えるかで戦後が決まります」 

ウォッカム「太陽系第三惑星地球の掌握は、我々に課せられた、歴史的使命なのです!」 


ウォッカム「地球の戦略的重要性、それはこの惑星のみが所有している兵器、インフィニット・ストラトス。 
      通称、ISと呼ばれる兵器にあります。 
      この兵器の異常性を、この私如きが説明するのは僭越というものです」 

ウォッカム「バララント、ギルガメス両陣営は、この技術の戦争導入を恐れ、戦争使用禁止という条約を締結しました。 
      しかし、兵器という名のついた、戦争で禁じられた物体を所有する星。これを、ただ見過ごす訳にはいきません」

480: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:05:58.48 ID:DYi8UAgs0


「ウォッカム次官、質問があります」 


ウォッカム「どうぞ」 

「ZO-5の策定には、情報省も多大な関与があるはずです。何故、この終戦直前になって今更軍事行動を起こすのか。 
 真意が、わかりかねます」 

ウォッカム「情勢の変化です」 

「動議書によれば、我が軍は1億2千万の兵員導入をするとありますが、この数字は、常軌を逸してはいませんか」 

ウォッカム「地球を確実に制圧するには、ささやか、と申しあげましょう」 

「これまで記録に見られる最高の兵員導入は、2200万。これのおよそ五倍以上の兵員、ギルガメスの持てる力全てを、 
 終戦直前に浪費する? 情報省は、これによる損失がいか程になるのか、予想が無い訳ではないでしょう」 

ウォッカム「その点については、企画書をご覧下さい」 

481: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:06:53.25 ID:DYi8UAgs0
「更に、その企画書とやらには、地球にあるISを確保するとあります。だが、あのような兵器をどうやって拿捕する気なのですか!」 

ウォッカム「確かに、我々の所有する兵器では、惑星そのものは破壊できても、あの小さな兵器を拿捕する事は、難儀でしょう。 
      その前に、あの兵器一体だけで、AT隊二個師団が成す術も無く壊滅してしまいます」 

「では!」 

ウォッカム「目には目を、歯には歯を……そして、ISには、ISを……」 


ブゥーンッ…… 


ウォッカム「この映像をご覧下さい。これは、我々情報省が所有するIS部隊、通称ISSです。 
      IS開発者篠ノ野束博士の協力の下、我々情報社は秘密裏にISを作成していました」 

「なっ……」 
「何だと!?」 

482: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:08:48.12 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「この殆どが、無人機です。確実に任務をこなし、常人では反応しきれない攻撃にも反応し、迎撃する。 
      この大隊の隊長となるのは人間ですが、その者はこの無人機の反応を遥かに上回る能力を持っています。 
      その者が駆るISは、まさに一騎当千の鬼神と呼ぶに相応しい。並の操縦者では一たまりも無く敗れ去ります」 

「……」 


ウォッカム「我らがISSは、必ず地球を陥落させ、そして生きて帰ってくる。 
      そう、運命付けられた部隊なのです」 

ウォッカム「まず、我がISSが地球に降着。量産型のISを破壊し、戦力を削減。 
      そして、専用機と呼ばれるカスタマイズされた機体をAT隊と共同で消耗させ、拿捕するのです」 

「し、しかし! いくら対抗できる戦力があると言っても、何故この状況なのですか! 
 期日の96時間前までの軍事行動の許容はあります、しかし地球は不可侵宙域です! 
 このような場所を攻撃しては……」

483: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:09:55.55 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「不可侵宙域、確かにそうです。ですが、逆にこうは考えられませんか? 
      地球は、戦火に晒される事なく、ISという技術を蓄え、将来我々にも牙を剥く可能性があると……」 

「……」 

ウォッカム「地球は小さな惑星です。しかし、軍事力は我々メルキアに勝るとも劣らない。 
      そう、このISという小さな兵器の為に」 

ウォッカム「例えるなら、小さな獣です。小さい頃は、まだかわいらしく、人間からも守られる立場にあるでしょう。 
      ですが、成長し、自らが戦えると自覚した瞬間、獣はどうなります? 
      獣と我々は相容れないのです。故に、被害を小さく抑えられる内に、叩かねばならないのです」 

「……」

484: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:11:29.53 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「終戦が決定している現在、確かに常軌を逸した作戦かも知れません。 
      未曾有の兵力投入は、バララントとの合意の全面的破棄に繋がりかねず、戦争を後百年続ける事もあり得ます。 
      しかし、私はこれだけは申し上げたい……」 

ウォッカム「目の前にある不安、そして、それを除けば、強大な力を我々の物とする事ができるかも知れないという状況で、 
      動かないとするならば、以降、我がギルガメスの歴史における最大の損失、そして、恥となる事でしょう」 

ウォッカム「安穏と平和を受け入れ、失った物を忘れ去るような屈辱的な終戦よりも、茨の道を選ぶべきだと!」 


ウォッカム「情報省は、この会議の厳粛なる意思に従うものであります。そして、皆様の、賢明なる判断を、私は心より期待しております。 
      御清聴、感謝致します」 



……

485: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:12:28.77 ID:DYi8UAgs0
ルスケ「閣下、素晴らしい戦略動議でした」 

ウォッカム「ふっ、軍部も反対はできまい……我々のISSの映像を見た時の、奴らの顔と言ったら……」 


「ウォッカム君」 


ウォッカム「……これはこれは、ペールゼン閣下」 

ペールゼン「見事な動議だった。君が、あそこまで強かな人間だとは、私も思っていなかった」 

ウォッカム「そのような会話をしに来た訳では、無いはずですが」 

ペールゼン「……キリコは、君の部隊から除外しろ」 

ウォッカム「いえ、彼は我がISSの隊長となって貰わねばなりません。 
      彼の異能という赫奕たる能力が、あの部隊を纏めるのにふさわしい」 

ペールゼン「それならば、ボーデヴィッヒでも良いだろう。彼女の方が、軍での経験、階級、そのどちらもがキリコより上だ」 

ウォッカム「彼女でも良いのなら、キリコでも構わないはずですが?」 

486: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:13:30.31 ID:DYi8UAgs0
ペールゼン「……彼女らは、近似値に過ぎん」 

ルスケ「近似値?」 

ペールゼン「所詮、人間の手によって作られた模造品だ。彼女らは、異能生存体などでは無い。 
      限りなくそれに近いが、死なない個体などでは無い」 

ウォッカム「何故否定するのです。御自身の画期的な発見を」 

ペールゼン「間違いだからだ。そして、それを知る者によっては、有害になるからだ」 

ウォッカム「サンサにあった異能生存体の研究施設、そこにあった製法を貴方は見つけた。 
      そして、キリコ以外の異能生存体を二人作り出す事に成功した。 
      それが、今私が持っている貴方のファイルに記してあった事実です」 

ペールゼン「……」

487: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:14:41.55 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「謹んで、このファイルをお返ししましょう」 

ペールゼン「私とした事が、こうも簡単に隠匿した事実を知られるとは、情けない」 

ウォッカム「貴方のファイルに記された二人、その二人は確かに常人ならざる能力を持ち、 
      そして、過酷な環境を生き延びた。 
      彼女達も、異能生存体なのです」 

ペールゼン「……まだ、わからんようだな」 

ウォッカム「……」 

ペールゼン「繰り返すが、彼女達は異能生存体では無い。異能生存体は、キリコだけだ。 
      そして、キリコをそのような作戦に参加させる事は、非常に危険だ」 

ウォッカム「……ふふっ」 

ペールゼン「何だね」 

ウォッカム「近似値でも、構わないのですよ。それで、十分なのです。 
      彼女らの機能と、結果としての効用があれば、十分なのですよ」 

ペールゼン「……」 

ウォッカム「そして、キリコは、私に従うしかない」 

ペールゼン「……どういう意味だ」

488: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 22:15:33.21 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「人質をとらせて頂きました。キリコが、貴方の部隊に焼かれた地で、キリコと共にいた少女を」 

ペールゼン「そんな者が、生きていたとはな。てっきり、焼き殺したものだとばかり思っていた」 

ウォッカム「支配を拒否するならば、そうできないようにするまでです」 

ペールゼン「……中々に、君も私と同類のようだな」 

ウォッカム「私は、貴方のような完璧主義者では、ありませんがね……」 

ペールゼン「……身を、滅ぼすぞ」 

ウォッカム「御忠告、感謝致します。作戦には、閣下の部隊にもお力添えを願うと思いますが、その折に、また……」 

ペールゼン「……」 


カツカツッ 


ペールゼン(……キリコ……) 

ペールゼン(私はやはり……触れてはならぬ者を、呼び起こしてしまった……) 


――

489: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:44:54.42 ID:DYi8UAgs0



「……」 

「嫁よ」 

「……」 

「起きるんだ、キリコ」 

「……ん……」 

「早く起きろ、緊急事態だ」 

「ラウ、ラ……」 


490: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:45:51.63 ID:DYi8UAgs0
ラウラ「……起きたか」 

キリコ「……」 

ラウラ「どうやら、我々は拉致されたらしい」 

キリコ「……拉致?」 

ラウラ「あぁ……それに、シャルロットの姿も見当たらん」 

キリコ「シャルロットが?」 

ラウラ「……」 

キリコ「……まず、ここがどこだかわかるか」 

ラウラ「わからん。しかし、地球では無い事はまず間違いないだろう。若干重力が違う」 

キリコ「……そうか」 

ラウラ「あれから、何日が経ったか……とりあえず、ベッドから出ろ。代えの耐圧服もそこにある。 
    今の内に着替えておけ。私はもう着替えた。中にはISスーツも着こんだしな」 

キリコ「……あぁ(アーマーマグナムが無い、か)」

491: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:46:31.38 ID:DYi8UAgs0


サッ シュッ 


キリコ「……」 

ラウラ「どうやら、ここは監視者の本拠地らしいな」 

キリコ「あぁ」 

ラウラ「私の推測だが……ここはギルガメス領だろう」 

キリコ「あの研究機関とやらは、ダミーか何かだったらしいな」 

ラウラ「あぁ……しかし、わからんな……何故よりによって私とシャルロットまでお前と一緒に拉致されたか。 
    お前以外は、用済みだと思うのだが……」 

キリコ「……」 

ラウラ「……すまん。まだシャルロットの安否がわからない状態だったな」 

キリコ「アイツも、ただじゃ死なない。きっと無事だろう」 

ラウラ「……あぁ」 


プシューッ 


キリコ「っ!」 

ラウラ「誰だ!」ジリッ

492: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:47:51.30 ID:DYi8UAgs0
「キリコ・キュービィー、ラウラ・ボーデヴィッヒ。こちらに来い」 

ラウラ「貴様……何者だ、名を名乗れ」 

ルスケ「私は、コッタ・ルスケだ。いきなりお前達を拉致した事は詫びよう。しかし、今は時間が無い。 
    モタモタせずに、ついてくるのだ。ついた先で、詳細を話す」 

キリコ「……」 

ラウラ「……どうする、キリコ」 

キリコ「……行くしか、無いだろう」 

ルスケ「呑み込みが早くて助かる。では、こちらに来たまえ」 

キリコ「……」 

ラウラ「……」 


プシューッ 
カツカツッ 


ルスケ「……失礼します、閣下」 


プシューッ 


ルスケ「キリコ・キュービィー、ラウラ・ボーデヴィッヒをお連れしました」 

493: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:48:34.10 ID:DYi8UAgs0
「……来たか」 

キリコ「……」 

ラウラ「……誰だ」 

ルスケ「口を慎め」 

「構わん、ルスケ。私は、この二人に会えて感動しているのだ」 

ルスケ「……はっ」 

「名乗るのが遅れたな。私は、メルキア情報省次官、フェドク・ウォッカムだ」 

ラウラ(メルキア情報省……しかも高官か) 

キリコ「……」 

ウォッカム「ルスケ、彼らに説明を」 

ルスケ「はっ……お前達は、IS学園より除籍及び地球の所属からも除隊、新たに情報省直轄IS部隊ISSに所属する事になった」 

ラウラ「何だと?」 

キリコ「……」 

ルスケ「仕事は、まぁお前達も元軍人だ。そことやる事はさして変わらん。 
    だが、報酬等は雲泥の差だ。何か質問は」 

ラウラ「ま、待ってくれ。除隊だと? シュヴァルツェ・ハーゼから?」 

ルスケ「そうだ。貴様は、これよりメルキア情報省の精鋭となった」 

ラウラ「ば、馬鹿な……不可侵宙域に何故それ程の影響力が!」 

ウォッカム「君は、まだ子どもだからわからんかも知れんが、不可侵宙域と言っても、両陣営に保護されているに過ぎん。 
      影響力など、裏から回せばいくらでも作れる」 

ラウラ「っ……」 

494: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:49:09.74 ID:DYi8UAgs0
ルスケ「他に質問は」 

キリコ「……あります」 

ウォッカム「デュノアの事なら、安心しろ。彼女は別室にいる。が、今は会える状態では無い。 
      彼女は今、少々調整をしている最中でな」 

ラウラ「調整……そうか……シャルロットの脳に細工を施したのは!」 

ウォッカム「そうだ、我々だ。が、この技術を見つけたのは別の者だ。恨むなら、その者を恨め」 

ラウラ「……」 

キリコ「……俺の質問は」 

ルスケ「うん?」 

キリコ「もし、命令に従わなかった場合どうなるのかと、聞きたかったのですが」 

ルスケ「……」 

ウォッカム「ふっ、さすがはペールゼンが泣き事を漏らすだけの事はある。 
      安心しろ、その場合の対処もしてある」 

キリコ(ペールゼン……こいつの後ろに、ヤツがいるのか?) 

ウォッカム「さて、この映像を見ろ」 


ブゥーンッ…… 


495: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:49:48.29 ID:DYi8UAgs0


キリコ「……っ!?」 

ラウラ「こ、コイツは……」 

ウォッカム「そうだ。まぁ、単純な話、彼女は人質だ。御理解頂けたかな?」 


キリコ「……箒……」 


496: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:50:27.79 ID:DYi8UAgs0


ラウラ「っ……アンタは、人間の屑だなっ!」 

ルスケ「貴様っ!」 

ウォッカム「私としても、お前達を扱うにあたって保険が必要でな……こういう事はしたくなかったのだが、 
      仕方が無い事だったのだ」 

ラウラ「……」 

キリコ「……」 

ウォッカム「お前達を、あのIS学園に集めたのは私だ。お前達に共通するある能力を試す為にな」 

キリコ「あの、襲撃事件の二件や、ラウラのISに仕掛けられたシステム、そしてあの飛行機も、それですか」 

ウォッカム「そうだ。まぁバララントの襲撃は、私の直接的な指揮では無いがな」 

ラウラ(共通する……能力? 何だ……ISの操縦技量か? いや、そんなはずは……) 

ウォッカム「その辺りは、作戦終了後に詳しく説明してやる……ルスケ、続けろ」 

キリコ(作戦?) 

497: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:50:55.76 ID:DYi8UAgs0
ルスケ「は、はっ……お前達は三日間、これより休暇をとって貰う。そしてその後、我々ギルガメスは全力を挙げた作戦を決行する。 
    お前達は、最も重要な任を負うISSの隊長、副官について貰う」 

キリコ「……俺が?」 

ウォッカム「そうだ。キリコ、お前が隊長だ。他の二名は、副官として回す」 

ラウラ「……」 

キリコ「……攻め込む、場所は」

498: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:52:20.79 ID:DYi8UAgs0
ルスケ「地球だ」 

キリコ「!」 

ラウラ「そ、そんなっ……」 

ルスケ「今回のお前達の任務、それは地球に存在するIS全ての回収及び破壊だ」 

キリコ「っ……」 

ルスケ「地球は中立、不可侵宙域にありながら、壊滅的なまでの兵器ISを所持している。 
    軍は、これ以上、この自体を容認する事ができなくなった。故に、ISを吸収し、更に軍備を強化する事となった」 

ラウラ「馬鹿な……」 

ウォッカム「嫌とは、言わせん……」 

キリコ「……」 

ウォッカム「どうする。承諾してくれるかね? 私としても、双方の同意があった方が、後腐れなくできるというものなのだが」 

キリコ「……」 

499: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:53:23.12 ID:DYi8UAgs0
ラウラ「……キリコ」 

キリコ「何だ」 

ラウラ「……私は……」 

キリコ「……」 

ラウラ「私は、お前の決定に従う」 

キリコ「……ラウラ」 

ラウラ「お前は、私の嫁だ。命を懸けて良い存在だ……」 

キリコ「……」 

ラウラ「だから、お前の、意思に従う」 

キリコ「……」 

ラウラ「あそこに映っていた彼女が、大切だと言うならば……お前がどうしても助けたいと言うのなら……。 
    私は、喜んでこの作戦に参加する。地球を、敵にとる……」 

ウォッカム「……うむ、素晴らしい自己犠牲の精神だ……それで、キリコ……決まったか。 
      仲間に背中を後押しされているのだぞ?」 

キリコ「……俺は……」

500: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:53:51.13 ID:DYi8UAgs0



地球のISを破壊し、回収すると言う事。 



キリコ「……」 



501: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:54:31.25 ID:DYi8UAgs0



それはとどのつまりは。 



キリコ「俺は……」 


502: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:55:07.96 ID:DYi8UAgs0



――友殺し。 



キリコ「……やり、ます」 


503: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:56:01.57 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「……そう言ってくれると思っていた。ルスケ」 

ルスケ「はっ。話は以上だ。お前達は、この館の一階部を自由に使え。プール、食堂、そう言った設備もある。 
    この三日間にそれらを利用し、十分に体を休める事。わかったな」 

キリコ「……了解」 

ラウラ「……了解」 

ウォッカム「デュノアもすぐに向かわせる。安心したまえ」 

キリコ「……」 

ラウラ「……」 

ルスケ「では、こちらに来い」 

キリコ「……はっ」 

ラウラ「……」 


プシューッ 


504: ◆S.3OfNv5Fw 2013/05/07(火) 23:56:29.88 ID:DYi8UAgs0
ウォッカム「……」 

ウォッカム(……同じだ) 

ウォッカム(キリコも、あの娘も、何ら変わりない。三人全てが、異能生存体なのだ) 


プルルルルッ 


『閣下、メルキアから連絡が入りました。最高戦略会議は、全員一致で可決です。軍は、我々の作戦を全面的に支持すると』 


ウォッカム「……そうか、御苦労。我々の部隊を見ては、何もできまい」 


『では、失礼いたします』 


ガチャッ 


ウォッカム「何もかもが、順調だ……」 



――