1: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:42:06 ID:iNx
サブストーリー004『全力アイドル下積み中』

~赤牛丸~

桐生「……最近、牛丼屋のおしんこが有り難いと思うようになってしまった」

桐生「いや、まだ老け込む様な歳でもねぇ、やれるトコまではやってやるさ……さ、行くか」

店員「ありがとうございましたー」

桐生「天下一通りの方に歩くか…」

引用元: ・サブストーリー004「全力アイドル下積み中」(龍が如く×デレマス)

2: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:42:23 ID:iNx
看板持ち「お兄さん、いい娘いますよー」

看板持ちB「1時間たったの1万円ポッキリ!いかがですかー」

桐生(……この町じゃ、うまい話程用心しなきゃいけねえ)スタスタ

桐生(安い店だとついていったらハズレを引いたなんて話、腐るほどあるからな)

桐生(ビラ配り、ティッシュ配り…)

3: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:42:33 ID:iNx
キグルミ「あ、あの~、よろしくお願いしますぴにゃぁ」ハイッ

桐生「何だ…あの得体の知れないバケモノは!」

4: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:42:44 ID:iNx
キグルミ「あ、良かったらどうぞですぴにゃあ」ハイッ

桐生「いかん…俺とした事がつい足を止めてしまった……まんまとティッシュを渡されるとは……不覚……」

キグルミ「お願いしまーす!…あ、お願いしますぴにゃあ!」ハイッ

桐生(しかし道行く奴らは気にも止めないな……)

5: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:42:56 ID:iNx
桐生「……ん、このティッシュの広告は…よく見たら悠貴じゃないか」

キグルミ「えっ?」

桐生「ああ、いや……」

キグルミ「あーっ!!!お兄さんこないだの!!!」

桐生「おいよせ、ここでそんな大声を張り上げたら」

警官「こらーっ!悲鳴が聞こえたぞ!!逮捕だ!!!」ピピー

6: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:43:06 ID:iNx
桐生(くっ……別にやましいところはねえが、10年ムショにいた前科があるからな……引っ張られるのはマズイ…)

野次馬「おい何だ何だ」

野次馬B「今の、悲鳴? もしかしてまた誰か死んだのかしら…」

野次馬C「そんなもんこの町じゃ日常茶飯事だろ」

桐生「くっ…野次馬が邪魔だ…」

7: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:43:16 ID:iNx
キグルミ「ぴっ、ぴにゃあ~!!」

桐生「な、何だ……?」

キグルミ「お集まりの皆さん、始めましてぴにゃ! 私の名前は……あれ、ボクだったかな……と、とにかく!ぴにゃこら太だぴにゃあ!」フリフリ

警官「……何だ、ティッシュ配りのパフォーマンスか……周りに迷惑かけないようにね」

8: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:43:27 ID:iNx
野次馬「何だ、ただのティッシュかよ」

野次馬B「事件かと思ったー…」

野次馬C「飯食い行こーぜ」

桐生「……野次馬はいなくなったか…」

キグルミ「あ、あの……」

桐生「ん?」

9: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:43:38 ID:iNx
キグルミ「今、悠貴ちゃんの名前、出してましたよね? 私、悠貴ちゃんと同じ事務所のアイドルなんです」

桐生「ほう、そうなのか…だが、何故俺の事を?」

キグルミ「こないだの生放送ですよ、あのカッコいい野菜スティック捌き!」

桐生「ああ…そう言えば、あの喧嘩の時も放送はされてたのか…」

10: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:43:50 ID:iNx
キグルミ「はい、それで、インターネットとかでもすっかり話題になっちゃって……私、それが何だか、ちょっと羨ましくて……」

桐生「羨ましい?」

キグルミ「その……私、特に名前が売れてるわけでもない、養成所あがりの訓練生みたいなもので…何ヶ月も頑張ってるんですけど、未だに芽が出なくて」

11: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:44:00 ID:iNx
桐生「……確かに、名前を売りたいのならそのキグルミはどうかと思うがな…」

キグルミ「そうでしょうか? でも、このキグルミを着ていると、たまにお兄さんみたいに立ち止まってくれる人がいるんです、私、普段はあまり目立たないから…」

桐生「そうなのか……」

12: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:44:10 ID:iNx
桐生(とはいえ、コイツのやり方は何となくだが違う気がするな)

桐生(昔、「横道シルバーズ」にしてやったように、どうにかして指摘してやれればいいんだが……)

桐生(よし、少し話をしてみるとするか)

13: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:44:22 ID:iNx
桐生「おい」

キグルミ「は、はい、何でしょう?」

桐生「そこを曲がったトコに公園がある。少しだけ、そこで話せないか」

キグルミ「えっと、何の話でしょう」

桐生「そうだな……ちょっと思った事を伝えたいだけだ。すぐに済む」

14: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:44:34 ID:iNx
~第3公園~

キグルミ「それで、お話というのは…」ヒョコヒョコ

桐生「そうだな、まずは……」

桐生「脱いで貰おうか」

キグルミ「えっ」

桐生「…え?」

15: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:44:45 ID:iNx
キグルミ「ぬぬ、脱ぐってそんな、こんは人気のないところで裸にしてどうするつもりなのでしょうか!!!」

桐生「ち、違う、そうじゃない!と言うかそう騒ぐんじゃない!落ち着け!」

16: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:44:58 ID:iNx
~~~~

キグルミ「な、何だぁ……脱ぐってキグルミの事だったんですね……驚いて心臓が止まるかと…」

桐生「それはそれで困る、ちゃんと生きてくれ……」

キグルミ「じゃ、じゃあ、その……脱ぎますね」

桐生「う、うむ…」

キグルミ「………あの」

桐生「ん?」

17: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:45:09 ID:iNx
キグルミ「……背中のファスナーに手が届かないので、手伝って貰ってよろしいでしょうか」シュン

桐生「お前、どうやってここから帰るつもりだったんだ」

18: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:45:21 ID:iNx
女の子「ぷはっ……た、助かりましたぁ……」

桐生「何だ、普通に可愛いじゃないか」

女の子「…普通、ですか…はぁ……」

桐生「ん?」

女の子「普通じゃダメ……だと、思うんですよ、多分ですけど」

桐生「ああ、そういうつもりじゃあないんだが……すまん、気に触った様なら…」

19: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:45:33 ID:iNx
女の子「いえ、違うんです。お兄さんが悪いとかじゃなく……私、普通なんです」

桐生「……どういう事だ」

20: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:45:44 ID:iNx
女の子「これ、私のアイドルとしてのプロフィールなんですけど……」ピラッ

桐生「ふむ……」

名前:島村卯月
身長159cm
体重44kg
スリーサイズ 83 58 87
趣味 友達と長電話

桐生「……何ていうか……普通だな」

卯月「ですよね……」

21: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:45:57 ID:iNx
桐生「因みに、キグルミはわかったが、ティッシュ配りをしてたのは何なんだ」

卯月「あ、これは、どうせキグルミに入るなら事務所の宣伝もした方がいいのかなって」

桐生「ナルホドな……卯月は仲間想いなんだな」

卯月「えへへ……そ、そうでしょうか…あ、ありがとうございます」ニコニコ

22: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:46:07 ID:iNx
桐生「フ、そうして笑ってると、大したモンだと思うけどな」

卯月「笑顔はアイドルの武器ですから!いつも練習、頑張ってます♪」

桐生「そうか…立派な武器があるんじゃねえか」

桐生(だが、何か足りない気がしたんだよな……何だったか)

23: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:46:18 ID:iNx
桐生「卯月、お前はさっき、キグルミを着てティッシュ配りをしていた時に、大切な事を忘れていた……それは気付いてるか」

卯月「大切な事……?」

桐生「ああ、それはな…」

→名前を名乗らなかった
・歌を歌わなかった
・愛を叫ばなかった

24: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:46:29 ID:iNx
桐生「お前は、名前を名乗らなかったんだ」

卯月「え? 何言ってるんですか、名前ならちゃんと名乗ってますよ、ぴにゃこら太ですってば♪」

桐生「それはキグルミの名前だろう、お前はお前自身の名前を名乗らなかったんだ」

卯月「……そうでしたっけ」アオザメ

25: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:46:41 ID:iNx
桐生「このプロフィールを見せるまで、俺にすら頑なに名乗らなかったからな。名を上げたいというならまずはその名を名乗らなけりゃ始まらないだろう」

卯月「私って……」ズーン…

桐生(落ち込んでしまったが、ちゃんと指摘できた様だな)

26: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:46:56 ID:iNx
卯月「じゃあこれからはしっかり気をつける事にします!頑張ります!」フンス

桐生「ああ…だが、頑張ると言っても、どうするつもりだ」

卯月「もちろんキグルミですよ、ぴにゃこら太の力を借りて、ティッシュを…」

桐生「その時にどう名乗るつもりだ」

27: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:47:06 ID:iNx
卯月「え?」

桐生「え?じゃない。キグルミはぴにゃこら太だがキグルミの中身は島村卯月と言います、とでも言うつもりか? 流石に無理があるだろう」

卯月「……い、言われてみればそうでした……!」アオザメ

桐生「そもそも事務所の宣伝にはなってもお前のPRにはならないだろう」

28: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:47:17 ID:iNx
卯月「で、でも、どうしよう……ここにキグルミだけ置いておくわけにも……それに、こんな普通の私じゃ、誰も見向きなんて…」

桐生「どうやらまずお前には自信が足りねえらしいな…」

29: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:47:29 ID:iNx
桐生「こういうのはどうだ、まずキグルミに入ってもらうヤツを探して、キグルミと一緒にティッシュ配りをするんだ」

桐生「ティッシュを渡す時に名前の一つでも名乗るといい」

卯月「で、でも……それならCDとか、ブロマイドとか…」

桐生「そういうのがないからティッシュを配ってるんだろ?」

30: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:47:38 ID:iNx
卯月「うう……でも、それじゃ印象に残りませんよぉ」

桐生「大丈夫だ、策ならある」

卯月「え……?」

31: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:47:48 ID:iNx
~再び天下一通り~

ぴにゃ桐生「……しかし、キグルミを着る人間を用意しろと言い出したのは俺だが、だからって何も俺にキグルミを着せる事ないだろう」ヨタヨタ

卯月「あ、桐生さん、語尾はぴにゃでお願いしますね、一応事務所のマスコットなので」

ぴにゃ桐生「……ぴにゃあ…」

32: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:48:15 ID:iNx
卯月「じゃあ、始めますね……うう、素の私で人前に立つの、やっぱり何か慣れません……」

ぴにゃ桐生「数ヶ月の経験はどうしたんだ、人前に出たりもしたんだろう」

卯月「私、ほとんどが会場設営とか裏方のお手伝いばっかりで……バックダンサーとかもやりましたけど、目立つポジションじゃ……」

33: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:48:30 ID:iNx
桐生「何にせよ、やると決めたからには腹を括ってだな……」

卯月「うう……よ、よしっ」パンッ!

卯月「こ、こんにちは~! ティッシュ、配ってまーす! お、お願いしまーす!」

ぴにゃ桐生「お願いしますぴにゃあ 島村卯月ですぴにゃあ」

34: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:48:42 ID:iNx
野次馬「おい、何かやってんぜ」

野次馬B「わ、何あのキグルミ、変なのー」

野次馬C「声渋ぃ、オッサンだぜオッサン」

桐生(しまった……何故だが知らんがキグルミばかり目立っている…)

35: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:48:53 ID:iNx
卯月「う、うう……あ、あの…」

チンピラ「おっとお」ドンッ

卯月「きゃっ」バラバラバラ……

※ぶつかってきた男によろめいてティッシュを落としてしまった…

チンピラ「いってえ~!! これ骨折れたぜマジ!!」

チンピラB「慰謝料だ慰謝料、早く払えコラァ」

36: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:49:06 ID:iNx
卯月「あ……う……」ジワッ

ぴにゃ桐生「……おい」

チンピラ「アァ?」

 △極!

ウラァ!! ギャアアアアア!! シャアアアア!!

【驚愕の極み(ティッシュ配りの天啓)】でチンピラを一掃した……。

37: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:49:18 ID:iNx
チンピラ「な、何だよ……何だよこれえ」ガタガタ

ぴにゃ桐生「骨が折れただと?」グイッ

チンピラ「ひっ……」

ぴにゃ桐生「女泣かせといて何イキがってんだ……バラバラにされてえのか!!」

ヒッ ヒイイイイイ……!

※チンピラは命からがら逃げ出した…

38: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:49:28 ID:iNx
卯月「ひっく……あの、ありがと、ございます……うっく……」グスッ

ぴにゃ桐生「いや…こっちこそすまねえな……このキグルミ、マスコットなんだろ……つい、暴れちまった」

卯月「いえ…ぐず、いいんれす」ズズー

卯月「どうせ、私なんて、元々芽が出ない女の子だったんです」

39: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:49:37 ID:iNx
卯月「だから……だから……」

ぴにゃ桐生「だから諦めるってのか? ……人間はな、そんな簡単に諦められるモンを、夢とは呼ばねえはずだ」

卯月「………」ズビッ

ぴにゃ桐生「口で何言ってもな…顔に書いてあんだよ、諦めたくないですってな…」

40: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:49:49 ID:iNx
野次馬「喧嘩だってよ!」

野次馬B「誰か死んだ? ねえ」

野次馬C「警察まだかよ」

ザワザワザワ…

ぴにゃ桐生「……ティッシュ、まだ残ってるな」ヒロイ

卯月「え、でも、そのティッシュは落としたやつで……」

ぴにゃ桐生「ここに来る前に言った事、覚えてるか?」

41: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:49:59 ID:iNx
卯月「え……確か、作戦があるって…」

ぴにゃ桐生「ああ。だがその為には、そんなぐちゃぐちゃな顔じゃあな」ハイッ

卯月「これ……私が配ってたティッシュ…」

42: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:50:09 ID:iNx
ぴにゃ桐生「ああ。最初にお前に不意討ちで渡されたティッシュだ。これで涙と鼻水を拭いて、とびきりの笑顔でティッシュを渡してやれ」

ぴにゃ桐生「多分、お前はそれだけでいい」

卯月「……」グシグシッ

卯月「……が、頑張ります!! 島村卯月……頑張って、みます!」

ぴにゃ桐生「ああ」

43: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:50:19 ID:iNx
~~~~

桐生(結論から言うと……あの1件は成功した)スタスタ

桐生(ただの笑顔だけで何をそんな……と言う人もいるかもしれないが、アイツの笑顔にはそれだけのモノがあったんだ)

桐生「……フーッ」スパー…

桐生「フ……」

44: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:50:29 ID:iNx
~劇場前~

※野外ステージに人だかりができている……。

センターの少女「……では、一曲聴いていって下さい!」

「曲の名前は………S(mile)ING!」

桐生「…もう名前、忘れるんじゃねえぞ」ニッ

45: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:50:34 ID:iNx
おわれ。

46: ◆6RLd267PvQ 21/02/25(木)18:51:01 ID:iNx
夢は夢で終われない。

お目汚し、失礼をば。