1: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:46:33.543 ID:PUSxsWbHp
第一章 私
 瞬きをした。一度、刹那の瞬きをしただけで時が30分も過ぎている。また寝てしまっていた。なぜ、とも思ったが、高校2年生など授業中に寝入ってしまうなんて普通のことだろう。
 またウトウトとし始めた時、1人の国語教師が私の前に立った。
 「僕の授業はそんなに退屈ですか?」
 優しい声で聞かれた。しかし、本当に退屈ではないし、多分興味のある内容だ。それなのに寝てしまっていた。こう言うこともあるだろうとしか思わなかったので答えるのに少し困った。
 「いや…すみません。そんなことないです。」
 「そうですか。」
 先生はとても悲しそうで、とても冷たいように私の答えに返した。先生は私を起こすためだけにほんの少し時間を使っただけで、授業という体裁を保っただけのようだった。私を起こさないと他の生徒も寝るという連鎖を断ち切っただけなのだろうが、この先生を見るとさながら真面目な授業をしたい人、と言うわけではなく、惰性で授業をしてるように見えるのだが、どうして私を起こしたのだろう。そんなことを考えているうちにお昼休みに入った。
 「あんたまた寝てたね。」
 このクラスで一番仲の良い、いや去年から一緒なのだけれど、友人が話しかけてきた。
 「また?前も寝てたっけ。」
 「あんた成績良くて他の授業真面目に受けてるのにこの時間だけよく寝るよね。」
 「そうだっけ。」
 他の授業も別に真面目に受けてるわけじゃない。内容など全く聞いてない。ずっと頭の中のモヤモヤが消えず、それがなんなのか考えていると時間が過ぎているだけなのだ。
 「てか聞いてよ。木村先生彼女いるらしいんだ~、最悪~。」
 「そうなんだ。木村先生格好良いもんね。」
 友人は、まだまだ私たちと歳の近い顔の整った数学教師がお気に入りのようだ。たしかに顔を見れば女子生徒が惹かれる理由もわかる気がする。でも私は異性を恋愛的に見るという経験が浅く初恋もまだだ。少し気になった人がいたこともあるが、交際をしたいと思ったこともなければ、その人が誰かと付き合ったからと言って嫉妬したわけではない。と、思う。まだそう言うことに疎いのは遅いのだろうか。
 学校に向かい、いつもの席に座り、授業を受ける。お昼休みに友人と話し、帰り道にコンビニに寄る。家に帰り夕食を食べ、お風呂に入り、また翌日も同じことをする。私はこれで満足だ。生きていられるしそれをつまらないと感じているわけでもない。でもずっと頭のモヤモヤは消えない。

引用元: ・猫

2: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:47:10.304 ID:PUSxsWbHp
 次の日、また現代国語の授業中、気がつくと寝てしまっていたらしく、目を開けると授業は残り5分だった。今日は注意されないのかと不思議に思った。昨日は30分すぎた頃に注意されたのにそれよりもずっと時間が過ぎている。いや、今日は先生が私が寝ていることに気がつかなかっただけなのだろうと思い、残りの時間授業を聞いて過ごした。もちろん内容などわかるわけもなく、どうやらこの授業で扱っている話は大詰めのようであったことだけは分かった。
 「あ、おはようございます。よく眠れましたか。」
 気付いていたのかとはっとしたが、嫌味たらしくない言い方をされたのですぐに焦りは無くなった。
 「また、寝てしまっていたみたいで…すみません。気をつけます。」
 そうやって先生に返答したが、クラスの皆はクスクスと笑っていた。しかし先生はまるで気にしていないように返事をした。
 「そうですか。」
とてもそっけないその言葉を言う時だけ何故か少し悲しげなのは、気のせいだろうか。今日もまた、ここからお昼休みだ。
 「あんたあの時間だけ本当よく寝るよね。いや現国だけか。」
 「なんでだろうね。私にも全然わからないや。」
 「あっそうそう、木村先生がさ~…」
 また、友人の色恋を聞かされそうになったので適当にあしらった。私にはよくわからないことだ。必要ないとは思わないけど、まだ理解してないこと。つまらないものではないのだろうけどまだ面白くはないこと。そんな風に考えていた。
 「あっ、そういえば。」
 また始まるのかと思い、友人の話を適当に聞き流そうとした。
 「現国の先生結婚してるんだって。」
 息が詰まった。そんなこと考えたことがなかったのだけれど、先生も27歳だ。結婚には適した年齢であるし、不思議なことは何もない。何もないのに。なんでこんなに考えているのか。疑問点は特にない。特にないのに。
 「あっ、そうなんだ。年齢もそのくらいだしね。」
 私にはそう答えるのが精一杯だった。他に考えて答えることができなかったのだが、それが何故なのかはわからない。
 2日後、お昼前の現代国語の授業。私は寝なかった。高校2年生になってこの授業に寝ていないことの方が珍しいのかもしれない。周りの反応が私にそう教えてくれた。みんなは不思議そうにこちらを見ている。
 「今日は珍しいですね。しっかり聞いていただけるのですか。」
 「ちゃんとしないといけないと思いまして。」
 「いつも思ってくれるとありがたいのですが…」
 クラスの皆は少し笑い、この先生にしては珍しく授業を止め、少し私との会話に興じた。
 「嬉しいですよ。みんながちゃんとこっちを見てくれて授業を受けてくれるのは。」
 「本当ですか?私には先生が楽しんで授業をしているとは思えないのですが…」
 いきなり本心を言ってしまった。こんなにこの先生と喋ったのが初めてで、気づかないうちに焦ってしまっていたのかもしれないと思った時
 「…楽しいですよ。」
と、少し間を開けて先生が答えた。でもそう答えた先生の横顔は、とても楽しんでる人がする顔と言うには無理があった。もう少し話していたいと思った気もしたが。その返事以降は特に会話もなく授業は淡々と進んだ。

3: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:48:25.311 ID:PUSxsWbHp
第二章 先生
 最近、授業中によく寝る生徒がいる。その生徒だけ寝ている。と言う訳ではないのだが、その生徒だけ毎時間必ず寝ている。お昼休み前に疲れてしまっているのだろうか。他の先生方に伺っても寝ていないらしく、真面目に授業を受ける生徒らしい。私の授業は退屈なのだろうか。
 「僕の授業はそんなに退屈ですか?」
 その生徒が目覚めた時に率直に聞いてしまった。少し嫌味のように聞こえただろうか。僕は別に叱りたいわけでもなく、単純に疑問に思った。確かに僕の授業は淡々としているかもしれない。僕の学生時代でもこう言った先生の授業は寝る生徒が多かったかもしれない。だが、その生徒だけは毎時間寝ているのが気がかりだった。他の生徒は割としっかりとこちらに目や体をしっかりと向けてくれている。たまに寝る生徒を見かけるだけで、すぐに目覚めて続きを学んでくれる。
 次の日もその生徒は寝ていたが何も言わなければどれほど寝るのかと思い放っておいていると、授業終了の5分前まで寝ていた。
 「あ、おはようございます。よく眠れましたか。」
 また嫌味に聞こえただろうか。どこまで寝るのか興味が湧いていたので、その質問に違和感を覚えることなく聞いてしまった。退屈な教師に嫌味を言われるともっと授業を聞かなくなるのではないだろうか。でも僕は授業を聞いてほしいとは思っていない。先生という仕事をしているのだから先生らしくあろうとしているのだろう。
 仕事が終わり、家に着くと飼っている猫の鈴(リン)が迎えてくれた。一撫でして抱き抱え、廊下を渡りリビングに向かう。猫の毛をある程度払ってお茶を入れ、タバコに火をつけた。
 ふと、仕事のことを考えた。悩みというほどでもないが、改善できるならと考え、僕と同じく教師である妻が何かヒントをくれるかもしれない。そう思い、相談してみた。
 「僕の授業だけ毎時間寝る女子生徒がいるんだ。なんでだろう?」
 「高校2年生なら寝てしまうものじゃない?」
 「確かにそうも思ったんだけど、他の授業じゃ寝てないらしいんだ。」
 「あなたの授業は退屈そうだもの」
 「そうですか。」
 ヒントはもらえず、退屈そうであるという印象を答えられた。実際、僕自身わかっていたことだ。ただこうやってやる以外に僕には難しい。
 「少しコミュニケーションを取ってみたらどうかしら。」
 「コミュニケーションか…難しいな…」
 「少しでいいのよ」
 「そうですか。」
 難しいと思っていた矢先、難しい課題を出された。

4: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:49:13.946 ID:PUSxsWbHp
2日後珍しくその生徒が起きていたので、実践してみる時だと思い話しかけてみた。
 「今日は珍しいですね。しっかり聞いていただけるのですか。」
 これだけでも精一杯コミュニケーションをとってるつもりだ。別に聞いてもらわなくたって構わないのに。何か義務感を覚えていたのだろうか。
 「ちゃんとしないといけないと思いまして。」
 「いつも思ってくれるとありがたいのですが…」
 こう答えるとクラスの皆は少し笑った。こんな風に授業を展開すればモチベーションは上がるのかと少し学べた気がした。
 「嬉しいですよ。みんながちゃんとこっちを見てくれて授業を受けてくれるのは。」
 「本当ですか?私には先生が楽しんで授業をしているとは思えないのですが…」
 僕は驚いた。見透かされている。いつも寝ているから興味を持たれていないと思っていたのに、彼女には何か僕から感じとれるものがあったのか。
 「…楽しいですよ。」
 そっけなく答えてしまった。でも僕にはこれが精一杯の限界ギリギリだった。これ以上踏み込まれてしまうと、僕は崩壊する。それを無意識に感じ取っていた。
 いつからこんなに仕事に興味がなくなったんだろう。これは僕が一番考えてはいけないことだ。すぐに切り替え、仕事をしてそそくさと家路についた。
 今日も鈴が玄関に来てくれた。撫でて抱き抱え、廊下を渡りリビングに向かう。お茶を入れタバコに火をつける。これをつまらないとは思わない。毎日生きていられる。だが生とはそれほどまでに必要なことなのだろうか。また悪い思考に入ってしまったので、気を紛らわすために妻に話をした。
 「今日は少しだけどコミュニケーションを取ることができたよ。」
 「あら、頑張ったのね。よかったじゃない。」
 多分これでもよかった方なのだろう。僕はそれほどまでに魅力のない人間だ。妻は僕を選んでくれた唯一の人だ。どうして僕なのだろうとずっと考えていたし、今も考えている。一番辛い時、そばにいてくれる。そんな人なのだ。

5: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:49:46.939 ID:PUSxsWbHp
第三章 私の心
 瞬きをした。いつもと違う。時間は1秒もすぎていなかった。そうか、私は何故か現代国語の授業中に寝れなくなったのか。よかったことなのだろう。そうなのだろうけど、あることに気がついた。寝ていない時私はずっとモヤモヤとしている。先生以外の授業はモヤモヤして時間が過ぎていた。それなのに、先生の授業でもモヤモヤするようになった。この感情は高校2年生になってからだ。
 私が寝なくなってから、先生は淡々といつも通り授業を進めるけれど、話しかけられることも無くなった。当たり前なのだけれど、なんだか不安になったような気がした。またモヤモヤが増えてしまったような、そんな気がした。
 お昼休みに入りまた友人と話をした。
 「すごいじゃん最近。まじで寝なくなったね。」
 褒められてるのかすらよくわからなかったけれど、寝れなくなったことすらモヤモヤとしてしまっているので、少ししんどかった。正直なところ誰でもよかったのだろうけれど、その友人に初めてこのことを伝えてみようと思った。
 「ずっとモヤモヤしてるんだよね。他の授業でも寝てない理由はそれだったし。最近先生の授業で起きてる時もモヤモヤしてるんだ。寝てる時は何も考えてなかったのに。」
 悩み相談などあまりしてきたことがなかったのでなんと言われるかわからず、鼓動が速くなった。
 「へぇ。あんたもそういうのあるんだね。」
 さっぱりわからない。皆こういう風になるということだろうか。友人も経験があるような口ぶりで、そうであるならちゃんと話を聞いてみたいと思った。
 「えっ、どういうこと?」
 「恋愛なんか一切しないような真面目ちゃんだと思ってたんだけどね~。意外と可愛いとこあるのね。」
 どういうことなのか解決していないし、質問の答えにすらなってない。でも恋愛と言われて少しだけ、ほんの少しだけ納得してしまうような私がいることに一番驚いた。
 「私が誰か好きってこと?」
 「あんたやっぱ疎いね。先生じゃない。」
 そんなはずない。はずないのに。先生という言葉に狼狽した自分が確実にいたのだ。その日はその相談だけで疲労困憊してしまい、コンビニにも寄らず家にすぐに帰った。
 私が先生を好き?それと寝ることになんの関係があるのか。少し考えた。恋愛と睡眠と、なんの因果関係もない。いや、そうか。先生が目の前にいない時、私はモヤモヤが止まらなかった。ずっと意識してしまっていたんだ。この考えになった時にスッと心に収まった気がした。先生の声、先生の姿、それを見つけると安心してしたのだ。モヤモヤして疲れていたところに安心を与えられて私は落ち着いて寝てしまっていたんだ。先生が結婚していると聞いた時に息を詰まらせた。これが恋かと、急に顔が熱くなった。告白すらしていないのに。既に私にはなすすべなどないのに。その日は晩御飯に手をつけることすらできず床に着いたけれど結局深夜まで眠ることはできなかった。

6: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:50:30.008 ID:PUSxsWbHp
第四章 先生の心、私
 半年以上経ったが、いつからか女子生徒は寝なくなった。もうコミュニケーションも取る必要はない。僕はこのまま自分の仕事をこなすだけだ。そう思っていた。なのに女子生徒は寝なくなっただけじゃなかった。視線が熱くなっている。ものすごく授業に興味があるのだろうか。まぁ僕にとってはそんなことどちらでも良いのだけれど。
 いつもの通りのお昼休み。職員室で昼食を取ろうとした時、用があるということで生徒に呼び出された。こんな時間に誰だと思ったのだが、顔を見て驚いてしまった。よく寝ていた女子生徒だ。
 「お昼時にいきなりすみません…今日の放課後は空いてませんか…?」
 「ええと、時間は作れますが、今ではダメですか?」
 「昼食時ですので…」
 「では放課後に。」
 そう答えたは良いのだが、一体なんの用なのだろう。授業にものすごく興味が湧いているようであるし質問であろうか。なんにせよ晩御飯には遅れると妻に連絡を入れなければ。きっと返信はしてくれないけれど。
 放課後、教室に1人残っていた彼女に話しかけた。
 「お話しはなんでしょうか?質問ですか?」
 彼女はまどに手をかけ外に目を向けながら僕に答えた。
 「先生はご結婚されてるんですよね。」
 「ええ。してますよ。」
 誰から聞いたのだろうか。別に隠していた訳ではないので構わないのだが、そんな質問がされるとは思ってもおらず不思議だった。
 「奥さんはどんな方ですか?」
 「どんな方、ですか。僕には勿体無いです。僕と同じ教師の道を選び、生徒から尊敬される人でした。」
 「でした…?今は違うんですか。」
 何故僕は過去形で話したんだろうか。今でもそうだ。妻は僕にはもったいないくらいしっかり者で美人で。今でもそうなのに。
 「いや、今でももちろんそうですよ。」
 「先生はなんだか含みがある言い方するんですね。授業で私と話した時も辛そうで悲しそうで。不思議でした。」
 そんな風に思われていたのかと驚いたのと同時に、自分を顧みた。そうか。僕はそんなにやられてしまっていたんだな。彼女に質問をされるたびに少しずつ言い訳が厳しくなった。

7: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:50:58.224 ID:PUSxsWbHp
「先生の奥さんは幸せ者ですね。先生みたいな素敵な人と結婚して一緒に暮らしているんですから。」
 
 その言葉を聞いた時、僕の目から涙が溢れて止まらなくなってしまった。自分でも泣くなんて一切思っていなかった分、焦りや不安でパニックになりかけていた。
 「先生どうされたんですか!大丈夫ですか!」
 「すみません。大丈夫ですよ。嬉しいんです。」
 彼女は妻以外に僕を認めてくれた人だった。僕は昔から鈍感と言われていた。妻の苦しみにも全然気付いてやれなかった。しっかりものだから大丈夫だと思い込んでいた。いつも僕の悩みばかり聞いてもらい、彼女の言葉は聞こうとしなかった。それでも彼女は僕に当たることはなく自分で解決していたんだ。それも限界だったのに。それすらわかってやれなかった。
 「先生…?」
 こんなことを考え黙り込んでいると彼女は声をかけてくれた。ずっと現実逃避していたことに、彼女が現実に引き戻してくれた。彼女はきっと何も知らず質問をしただけなのだろう。でも、思い返せば返すほど溢れ出てくる記憶に僕は対応できていなかった。
 「大丈夫ですよ。少し質問とはズレますが僕の話をしますね。

妻は自殺しました。

 僕はその事実を認められませんでした。妻の話をする人などいなかったので、ずっと忘れようとして、結局気がつけば頭の中でまだ生きてるかのように振る舞ってしまってたんですよ。
 家に帰ったら妻と飼っていた猫だけで。その子を妻と思い込んで話しかけて返事をくれていると思い込むようにして心を守っていました。」
 「…」
 そりゃあ何も言えなくなる筈だと思い、涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭き、一言謝り出て行こうとした時
 「待ってください。もっと聞かせてください。先生。」
 「いいんですか。」
 「もう遅いですよ。」
 彼女は少しはにかみそう言ってくれたので、気持ちが少し落ち着きもう一度話し始めることにした。

8: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:51:26.675 ID:PUSxsWbHp
「妻も教師だといいましたが、勤務してる学校は異なり、妻の学校の状況は妻本人から聞くしかありませんでした。僕も気に留めていなかったのですが、妻が勤務していた時ちょうど荒れた年らしく、生徒からのいじめが酷かったようです。モンスターペアレンツや上司の圧力も相当あったでしょう。ですが妻は強いふりをしました。僕がそれを聞いたらきっと心配をして余計なことを考えると思ったのでしょう。なんでも僕を一番に考えてくれる唯一の人でしたから。でもそれが裏目に出たようです。自殺したくなるほど追い込まれたことにも気づけなくなっていました。どれほど辛かったでしょうね。僕にはもう知る由もありません。だから僕は楽しむこともなく仕事をするようになったんですね。気づくことができました。ありがとう。」
 「唯一じゃないですよ。」
 「え…?」
 「私、先生が好きです。」
 「いや、そんな、生徒と教師ですよ。それに君はずっと僕の授業を寝ていたじゃないですか。」
 「すみません。他の授業じゃモヤモヤして、眠れなかったみたいなんですけど、先生を見たら安心して寝てしまってたみたいです。やっと気づけました。」
 「でも、僕は…」
 「奥さんが忘れられませんか?大丈夫ですよ。私も先生を愛しています。何年でも何十年でも待ちます。まだ私未成年ですし先生にも迷惑かけたくないですから。でも、忘れないでください。先生にはちゃんと先生を愛してる人がいるんですよ。」
 彼女がそう言ってくれたのは僕の心に強く響き奥底に杭を突き立てられたような感覚だった。強い安堵で僕の涙は止まった。
 家に帰り、迎えてくれた猫を抱き抱えリビングに向かいお茶を入れ、線香に火をつけた。
 

9: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:54:38.072 ID:Tzfdgd9q0
猫画像どこだよ

10: 名無しさん 2021/03/25(木) 13:57:07.862 ID:PUSxsWbHp
>>9
no title