1: 名無しさん 2021/05/09(日) 19:52:07.839 ID:bH0KHoxY0
女社長「なるほど、一念発起して大学受験に挑戦したいと」

JK「はい!」

母「もう三年なので厳しいとは思いますが、出来る限りのことはしたいと……」

女社長「それで家庭教師をというわけですね」

JK「お願いします!」

女社長「では、とっておきの家庭教師をご紹介します」

JK「ホントですか!?」

女社長「ただ……性格にちょっと難がありますけど」

引用元: ・女子高生「家庭教師のドライ……?」

2: 名無しさん 2021/05/09(日) 19:56:18.449 ID:bH0KHoxY0
女社長「入ってきて!」

家庭教師「初めまして」

JK「は、はじめまして」

家庭教師「俺がお前の担当につくことになった。人呼んで“家庭教師のドライ”だ」

JK「家庭教師のドライ……?」

家庭教師「ちなみに志望大学はどこだ」

JK「○×大ですけど……」

家庭教師「無謀だな。今の成績から一年で○×大はあまりにも無謀すぎる」

JK「う……!」

3: 名無しさん 2021/05/09(日) 19:59:16.922 ID:bH0KHoxY0
家庭教師「だが、可能性はゼロではない」

JK「可能性あるんですか!」

家庭教師「ただし、俺の指導にちゃんとついてこられればの話だが」

JK「ついていきます!」

家庭教師「誰だって最初はそういうんだ。だが、すぐ音をあげる」

JK「そ、そんなことない!」

家庭教師「ならば口だけでないところを見せてもらおう。さっそく今日からお前の家に行く」

JK「きょ、今日から!」

女社長「こういう家庭教師なんです……」

母「た、頼もしいですわ」

4: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:03:31.529 ID:bH0KHoxY0
母「飲み物をどうぞ」

家庭教師「結構です。飲んでる暇などありませんので」

母「し、失礼しました……」

家庭教師「授業を始めるぞ」

JK「はい!」

家庭教師「まず、この問題から……」

6: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:06:22.910 ID:bH0KHoxY0
家庭教師「ここまでは理解できたか。理解できてなければ正直にいえ」

JK「……!」

JK(この人の授業、淡々としてるけどとても分かりやすい……)

JK「あの、とても分かりやすいです! 教え方上手ですね!」

家庭教師「褒める必要などない」

JK「え」

家庭教師「俺を褒めるのは合格してからでいい」

JK「ご、ごめんなさい」

8: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:09:09.377 ID:bH0KHoxY0
家庭教師「では今日はここまで」

JK「ふぅー、疲れた」

家庭教師「しっかり復習しておくように。授業なんていうのは復習しなきゃなんの意味もない」

JK「は、はいっ!」

家庭教師「また明日来る」

バタン…

JK(雑談とか一切しないし、ホントにドライだった……)

9: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:12:28.584 ID:bH0KHoxY0
……

家庭教師「ここはこうだ」

JK「あの……」

家庭教師「なんだ」

JK「ちょっと休ませてくれませんか? 疲れちゃって……」

家庭教師「ダメだ。休む暇などない」

JK「だけど……」

家庭教師「○×大に受かりたいんだろ。あれはウソだったのか」

JK「分かりましたよ……やります!」

10: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:15:04.269 ID:bH0KHoxY0
JK「あ、解けた!」

家庭教師「正解だ」

JK「自力でこんな難問を解けちゃうなんて嬉しい!」

家庭教師「じゃあ次の問題だ」

JK「あ、あの……ちょっとは余韻に浸らせて下さいよ!」

家庭教師「余韻? そんなものに浸るのは合格してからで十分だ」

JK「はーい……」

13: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:18:40.299 ID:bH0KHoxY0
JK「あのー、分からないところがあるんですけど」

家庭教師「なんだ」

JK「ここなんですけど……」

家庭教師「ああ、これは――」

JK「ありがとうございます!」

JK「あと、これも分からないんですけど……」

家庭教師「こんなの入試に出ないから必要ない」

JK「え、でも、気になっちゃうんですけど……」

家庭教師「不要だ」

JK「受験に役に立たないことは全部切り捨てちゃうんですか!」

家庭教師「そうだ」

JK「こうまで言い切られるともはや何もいえない……」

14: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:22:17.098 ID:bH0KHoxY0
ワイワイ…

「自信あるー?」 「全然勉強してなーい」 「A判定取るぞ!」

JK(今日は夏休み前の模試……)

JK(数ヶ月間私なりに頑張ってきた……その成果を出せるよう頑張るぞ!)

試験官「では始めて下さい」

JK「……」ババッ

カリカリ… カリカリ…

15: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:25:16.155 ID:bH0KHoxY0
家庭教師「これが模試の結果か」

JK「はい! 結構いい点でしょ! ちょっとは可能性あるって出ました!」

家庭教師「この時期の模試の判定なんてのは甘く出るものなんだ。気休めにもならん」

JK「だけど努力の成果は出たかと……ちょっとぐらい褒めてくれたって……」

家庭教師「褒める? 俺が褒めるのは合格した時だけだ」

家庭教師「模試の話は終わり。授業を始めるぞ」

JK「先生ってホントドライ!」

16: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:28:29.641 ID:bH0KHoxY0
夏休み――

JK「今日から夏休み! はりきって……」

家庭教師「勉強だな」

JK「う……。今日一日ぐらい遊んだって……」

家庭教師「お前は自分の立場を分かってるのか。ライバル達に比べてまだまだ遅れてるんだ」

家庭教師「追いつくにはこの夏休み、一日一時間一分一秒も無駄にできない。分かったな」

JK「はいはい、頑張ります!」

19: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:31:24.417 ID:bH0KHoxY0
JK「エアコンつけててもあづぅぅぅい……」

家庭教師「……」

JK「先生、一枚脱いでいい?」

家庭教師「好きにしろ」

JK「先生、女子高生がこんな薄着になってるのになにも感じないの?」

家庭教師「何も感じん」

JK「汗すらかいてないし、ドライすぎるよ!」

22: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:34:17.101 ID:bH0KHoxY0
JK「あづぅぅぅい……」

家庭教師「飲め」

JK「ポカリスエット……いいの?」

家庭教師「熱中症になったら元も子もない。むしろどんどん水分補給しろ」

JK「それじゃ遠慮なく」グビグビ

JK「んまぁい! 先生は飲まないの?」

家庭教師「まだそこまで喉は渇いてないからな」

JK「ドライだから渇きには強いんだ……」

24: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:37:53.488 ID:bH0KHoxY0
冬が来る――

家庭教師「この時期は風邪やインフルエンザが流行る」

家庭教師「くれぐれも体調管理に気をつけろ。体調を崩したら受かるものも受からん」

JK「はいっ!」

JK「先生は風邪ひいたことってあるんですか?」

家庭教師「軽い風邪ならあるが、重くなったことはない」

JK「ドライって風邪にも強いんですね」

25: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:41:51.863 ID:bH0KHoxY0
JK(いよいよ大詰め! 入試までラストスパート!)

JK「先生、今日は?」

家庭教師「過去問を解いてもらう」



JK「……どうでした?」

家庭教師「この年の合格ラインは超えている」

JK「やった!」

家庭教師「もっとも過去の合格ラインを超えてもなんの足しにもならんがな」

JK「そういうと思ってました」

26: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:44:01.684 ID:bH0KHoxY0
入試当日――

JK(受験票良し! 筆記用具良し! 体調良し!)

JK「それじゃ、行ってきます!」

母「行ってらっしゃい」

父「まぁ、あれだ。ダメでも落ち込むなよ」

JK「うん、大丈夫!」

JK(ドライ先生……見てて! とにかく実力を出し切ってくるから!)

28: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:47:39.327 ID:bH0KHoxY0
家庭教師「試験はどうだった?」

JK「手応えは……あります」

家庭教師「そうか。ただし、解答欄を間違えていたりしたら、何にもならんがな」

JK「嫌なこというなぁ」

JK「あとはどうしましょう? 祈ってればいいですか?」

家庭教師「祈れば点数が上がるわけでもあるまい。時間の無駄だ」

JK「最後の最後までドライでしたね、先生」

29: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:50:19.375 ID:bH0KHoxY0
……

父「ほう、今は合格発表をスマホで見られるのか」

母「どうだった?」

JK「……」

JK「そんなぁ……」ガクッ

母「え……」

JK「受かったーっ!!!」

母「フェイントかけないでよ。心臓に悪いわね」

父「よかったな!」

JK「うん!」

31: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:54:16.260 ID:bH0KHoxY0
女社長「まぁ、よかった。おめでとうございます」

JK「ありがとうございます!」

母「いい先生を紹介して下さったおかげです」

JK「先生も一年間ありがとう!」

家庭教師「よくやった」

JK「え、それだけ?」

家庭教師「成果に対してきちんと褒めた。不足か?」

JK「本当に最後の最後までドライなんだから……」

家庭教師「……」

女社長「もういいのよ。受験は終わったんだから」

家庭教師「そうですね。では……」

JK「?」

32: 名無しさん 2021/05/09(日) 20:56:19.996 ID:bH0KHoxY0
家庭教師「よかったなぁぁぁぁぁ!!!」ドバァッ

家庭教師「あんなに頑張ったんだ! 合格出来て本当によかったぁ!」ドバァァァァァ

JK「先生……!」

母「すごい量の涙……滝みたい……」

女社長「彼、この時だけは“家庭教師のウェット”になるんです」







おわり