1: 名無しさん 2021/06/06(日) 19:57:27.723 ID:OTq/Ingt00606
男「どうしたどうした?」ニヤニヤ

子供A「くっ……≪ヘルガーゴイル≫を場に出す!」バッ

男「そんなカードで、この私のデッキに勝てると思ってるのかね?」

子供A「なにっ!?」

男「そろそろこいつを出そう……銅の竜≪ブロンズドラゴン≫!」

子供A「ゲッ!?」



子供B「超がつくレアカードじゃん! 初めて見た!」

子供C「たしかネット上だと数万円単位で取引されてるって……」

引用元: ・子供「あのおじさん、子供のカードゲーム場で無双して恥ずかしくないのかな……」

6: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:01:50.480 ID:OTq/Ingt00606
男「まだ終わらないぞ……≪シルバードラゴン≫!」サッ

男「さらに≪ゴールドドラゴン≫!」サッ

子供A「マジかよ……」

男「そして、こいつら金銀銅三体が揃った時のみ場に出せる合体ドラゴン――」

男「≪ポディウム(表彰台)ドラゴン≫! 攻撃力10000!」

男「当然……攻撃ッ!」

子供A「うわあああっ! 負けだぁぁぁぁぁ!」



子供B「≪ポディウムドラゴン≫って、世界に数枚しかないやつだろ!?」

子供C「なんでそんなの持ってんだよ、このおじさん……」

7: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:04:20.270 ID:OTq/Ingt00606
男「レアカード≪完全無敵バリア≫を発動!」

子供B「僕のデッキにあれを崩せるカードはない……!」



男「死人の皇帝≪ゾンビエンペラー≫を出す!」

子供C「ダメだ……倒しても倒しても復活する……!」



子供A「ちくしょう、誰も勝てない……」

子供B「大人はずるいぜ! 金でレアカード集めてさ!」

子供C「あのおじさん、子供のカードゲーム場で無双して恥ずかしくないのかな……」



男(快感~! これだよ、俺が味わいたかったのはこれなんだよ!)

10: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:07:30.569 ID:OTq/Ingt00606
少年「お前ら、どうした?」

子供A「あ、チャンプ! 今日このゲーム場にあのおじさんがやってきてさ……」

子供B「強いカードばかり持ってて、誰も勝てないんだ……」

子供C「なんとかやっつけてよ!」

少年「ふうん……俺に任せな」

11: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:10:24.478 ID:OTq/Ingt00606
少年「おい、おじさん」

男「なんだね?」

少年「俺はここらで一番『モン戦(モンスター戦争)』が強いんだ」

少年「みんなからは“チャンプ”って呼ばれてる」

男「ほう……」

少年「俺と勝負しろ!」

男「いいだろう、かかってきたまえ。返り討ちにあっても泣くんじゃないぞ」

12: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:13:43.608 ID:OTq/Ingt00606
少年「≪爆裂ラビット≫を出す」

男「私のターン。おっと、いいカードを引いたよ」

男「悪魔の戦車≪デビルタンク≫だ」ニヤッ

子供A「あんなカード見たことねえ!」

子供B「あれもかなりのレアカードだ」

男「砲撃開始! 君のモンスターは破壊される!」

少年「……」

男「どうやらチャンプとやらも大したことないねえ~!」

子供C「ダメだ……完全に押されてる!」

13: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:16:09.216 ID:OTq/Ingt00606
少年「俺のデッキを舐めるなよ」

男「ん?」

少年「≪悪魔除去≫」サッ

男「なっ……!」

少年「これで≪デビルタンク≫は消滅する」

男(そんな……こんなあっさり≪デビルタンク≫が無力化されてしまうなんて!)

15: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:19:24.405 ID:OTq/Ingt00606
男(だが、私にはまだ切り札がある!)

男「≪ブロンズドラゴン≫!」

男「さらに≪シルバードラゴン≫≪ゴールドドラゴン≫も場に出す!」

子供A「あっ、僕がやられた流れだ……」

男「さぁ、出てきたまえ。最強の≪ポディウムドラゴン≫!」

男「攻撃力10000! 君のデッキを一発で消し飛ばせる! 喰らえッ!」

16: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:22:40.395 ID:OTq/Ingt00606
少年「≪リフレクト鏡≫発動」ペラッ

男「え?」

少年「これでその攻撃はそっくりそのまま跳ね返る」

男「うわっ……!」

少年「さらに≪攻撃力倍加≫も追加発動」サッ

男「コンボだと!?」

少年「反射攻撃――おじさんの負けだ」

男「ああああああっ……!」

20: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:25:41.788 ID:OTq/Ingt00606
男(この少年……罠カードである≪リフレクト鏡≫を発動する機会は何度かあったのに)

男(私が最強攻撃を仕掛けるのを読んで、≪リフレクト鏡≫を温存していたということか……!)

男(しかも、コンボ攻撃まで決められた……!)

少年「おじさん」

男「……な、なんだ」

少年「ずいぶん強いカードばかり持ってるようだけど……」

少年「『モン戦』はレアカードで固めただけのデッキで勝てるほど、甘いゲームじゃねえんだよ」

男「ぐ……」

男「ぐううううう……ッ!」

22: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:28:26.584 ID:OTq/Ingt00606
子供A「やったな!」

子供B「あのおじさん、がっくり肩を落として帰っていったよ! ざまあみろ!」

子供C「さすがチャンプ!」

少年「へへへ……。俺ああいう大人嫌いだから、ついムキになっちゃったよ」

子供A「そういや、今度全国大会に出るんだろ? 絶対優勝してくれよ!」

子供B「みんなで応援行くからさ!」

少年「うん、任せてくれよ!」

23: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:32:38.202 ID:OTq/Ingt00606
カードゲーム『モンスター戦争』全国大会――

司会者「厳しい地方予選を勝ち抜き、全国から集まった64人の猛者たち!」

司会者「準備はいいかーっ!?」

オーッ!

司会者「表彰式には『モン戦』生みの親である社長さんも来る予定になってるから」

司会者「みんな、日本一を目指して頑張ってくれ!」

ワーワー… ワーワー…



少年(ようし、絶対優勝するぞ!)

25: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:35:28.768 ID:OTq/Ingt00606
トーナメント一回戦――

審判「両者、席に座って下さい」

メガネ「よろしく」クイッ

少年「どうも」ペコッ



子供A「相手は……大学生の人だって」

子供B「勝てるかなぁ……」

子供C「大丈夫さ、こないだだっておじさんに圧勝してたし!」

27: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:38:24.282 ID:OTq/Ingt00606
ところが――

少年(なんてデッキだ! 全然つけいるスキがない……!)

メガネ「そろそろ決めようかな」

メガネ「≪キラードーナツ≫≪ブラッディレモン≫≪血に飢えた皆の衆≫」

メガネ「この三枚のカードが揃った時のみ発動できる……“ドレミコンボ”!」

少年「うわあああああっ……!」

少年「ま、負けました……」

メガネ「君もよくやったよ」

ワーワー…

29: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:41:24.974 ID:OTq/Ingt00606
少年「せっかく応援してくれたのにごめん……」

子供A「……ドンマイ!」

子供B「しょうがないよ、よくやったよ!」

子供C「またデッキ作り直して、大会出ようよ!」

少年「……うん」トボトボ

子供A「まさかチャンプがなー……」

子供B「あんなあっさり負けちゃうなんて……」

子供C「やっぱり全国大会はレベル高いね……」

31: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:45:28.301 ID:OTq/Ingt00606
少年「あーあ、せめてベスト8に入りたかったなぁ……」トボトボ

少年「……ん?」



「すまないね、本当は開会式から出たかったんだが」

秘書「いえいえ、社長はお忙しい方ですから」



少年「……あ」

少年(『モン戦』作った社長さんだ……! どんな人だろう……)

32: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:48:05.923 ID:OTq/Ingt00606
少年「……」チラッ

男「ん?」

少年「あっ!」

男「君は……」

少年「あの時のおじさん!」

少年(おじさんが『モン戦』を作った人だったなんて……!)

33: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:51:28.536 ID:OTq/Ingt00606
男「君はチャンプ君だね。ひょっとして全国大会に?」

少年「は、はい」

男「今のところ調子はどうだい? 君ならばきっと――」

少年「実は……一回戦で負けちゃって」

男「え、そうなのかい」

少年「カードの引きは悪くなかったのに、手も足も出ず惨敗でした……」

男「そうか……」

34: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:55:39.106 ID:OTq/Ingt00606
男「しかし、ゲームというのは勝ったり負けたりするものだ。くよくよするな」

少年「はい……」

男「……そうだ、君にこれをあげよう」

少年「これは……あなたが使ってた四枚のドラゴンカード!」

少年「いいんですか!?」

男「ああ、この間は楽しくゲームさせてもらったからね。そのお礼さ」

男「それじゃ、あまり落ち込まず……最後まで大会を楽しんでくれよ。試合以外にもイベントがあるから」

少年「ありがとうございますっ!」

少年(あの時は大人げないおじさんだと思ったけど……とてもいい人だ……)

35: 名無しさん 2021/06/06(日) 20:58:49.814 ID:OTq/Ingt00606
……

男「……」

男「ウソだろ!?」

男「あの子なら全国大会上位間違いなしだと思ってたのに……てか優勝だと思ったのに……」

男「あの子で一回戦負け……しかも惨敗かよ!?」

男「どんだけレベル高いんだよ、この界隈はよ!」

男「これじゃあの子にいいようにやられた私の立場は一体……」

37: 名無しさん 2021/06/06(日) 21:01:55.957 ID:OTq/Ingt00606
男は子供の頃から、カードゲームが大好きであった。

いくつものトレーディングカードゲームに興じており、小遣いは全てカード代に消えていた。

しかし、弱かった。

友達に連戦連敗する日々。悔しくて悔しくて男が至った結論は――



男「そうだ、俺がカードゲームを作ろう!」

男「作って、社長権限開発者権限で、強いレアカードかき集めれば……俺が最強になれる!」



これが大人気トレーディングカードゲーム『モンスター戦争』が生まれたきっかけだった。

38: 名無しさん 2021/06/06(日) 21:05:23.697 ID:OTq/Ingt00606
秘書「社長、今日の全国大会……大成功でしたね!」

男「……そうだね」

秘書「これでますます『モン戦』は盛り上がりますよ。……社長?」

男「……」

秘書「なぜ落ち込んでるんです?」

男「いや、落ち込んでなんかいないさ……アハハ」

秘書「しっかりして下さいよ。このカードゲームの中核を担ってるのは社長なんですから」

秘書「社長にはカードゲームを作る才能があるんです!」

男「うん、そうだね……」

男(出来ればカードゲームを作る才能じゃなく、カードゲームをプレイする才能が欲しかった……)





END