770: ◆6RLd267PvQ 22/05/03(火) 17:25:50 ID:hjTu
~とある霊園~

P「………よし、手入れは大体こんなモンかな…線香線香と」

P「……社長」

~~約7年前・事務所~~

社長『今にも命を投げ出しそうな顔をしているな、キミは』

P『……見ず知らずの爺さんに、いきなり連れ込まれてそんな事言われる筋合いもないもんだ…大体何の会社だよ』

社長『芸能プロダクション・810(ハート)プロ…アイドル事務所を作ろうと思っていてね』

P『アイドル、ね…そこの綺麗なおねーさん位しか見当たらないっすけど、女の子』

ちひろ『あら、綺麗だなんて、ちょっと照れちゃいますよ』

社長『アイドルはこれから集めるんだ、長い時間をかけてね』


引用元: ・中野有香「可愛さ十段…二人なら…!」ぷちなかの「おふこおす!」

771: ◆6RLd267PvQ 22/05/03(火) 17:26:20 ID:hjTu
P『…一応聞くけど、それアテとかツテとかあるんすか』

社長『それも今から考える。これぞ、という、ピンと来た子を探しているのだが…中々ねえ。大体200人も集まれば上々だと思っているよ』

P『このオンボロ事務所に200て、パンクするだろ』

ちひろ『そこはまぁ私が魔力で空間をちょちょいーっと広げて…外見よりは広くなると思いますよ』

P『……よくわからんが、そんな突拍子もない夢、一体何で……』

社長『人間、最期が近くなるとね…ある日突然思うんだよ。私には、何かを成すことができただろうか、と…まぁ、年寄りの欲、みたいなものさ』

P『……』

773: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 00:29:16 ID:zxLw
社長『キミの過去に何があったのかは分からないが…』

社長『今にも死にたいって顔をしている、死相もくっきり出ているというのに』

社長『その目は死んでいない。何か……探しているんじゃないのかね、生きる意味、夢、存在理由…そんなものを』

P『……会ったばっかの爺さんに、一体俺の何が分かるっていうんすか』

社長『……さてねぇ』

社長『寂しそうに見えた。端的に言えばだがね』

社長『まるで、何もかもを失って、進む道に迷っているような……そんな風に私の目には映ったのだがね』

774: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 00:30:02 ID:zxLw
P『道……夢…』

社長『預けてみないか。そして、託されてくれないか。キミの進む道の、その先の夢を、私に』

社長『心と心が交わる場所……この事務所で、キミの人生を、生きる理由を……探してみないか』

P『………俺みたいな、何の取り柄もない人間が、どれだけ夢を見たって……叶わぬ願いってのが、世の中には幾らでもあるでしょう』

社長『或いはキミが一人きりでなら、そうかもしれないな』

社長『……まだ見ぬ仲間が、きっとキミを導いてくれる。探してみないか。生きる理由を』

社長『どうせ絶望するなら、とことん見苦しく足掻いて藻掻いて…それからでも遅くはないと、私は思うのだがね』

775: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 00:30:45 ID:zxLw
P『…………随分と無責任な押し売りだな』

社長『はっは、キミの可能性を感じたからこそだ』

P『まだ見ぬ仲間……か。……こんな俺の人生にも、意味なんてあるのかな』

P『……仕方ねえ、手伝ってやるよ、爺さん。まず何をすればいいんだ、俺は』

社長『言わなかったかな、200人、アイドル候補生を集めてきてほしい』

P『俺一人で!?無茶苦茶言うなアンタ!』

社長『なぁに、大体10年もかければそれくらいは集まるだろう、選りすぐりのアイドルが集まって、心を1つに繋げられる場所……』

社長『さぁ、そうと決まれば行った行った!時は金なりだ、きっと女の子達もキミを待っているぞ!!』

P『どんだけご都合主義な爺さんなんだか……まぁ、やってやるよ』

~~~~

776: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 09:52:02 ID:zxLw
~霊園・社長の墓前~

P「気付けばだいぶ、大所帯になりましたよ、事務所」

P「正確にはアイドルじゃないちっこいのまでわらわら集まってきて、めちゃくちゃカオスな事になってるけど……」

P「心と心を繋ぐ場所……アンタの想いは、知らず知らず皆に伝わってると思う」

P「あの日、本当は俺は……死のうと思ってたよ、アンタの言った通りさ」

P「急に人生が虚しくなった。憧れていた夢にも届かねえ、半端モンの俺には生きてる理由なんかないんじゃないかってな」

P「けど……そんな俺でも、アイツらの夢の、道標になれるんなら」

P「……生きてみますよ、社長」

P「アンタの叶えたかった夢のその先の景色……俺も見てみたいと思えたから、さ」

~~~~

777: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 09:52:43 ID:zxLw
~数日後・事務所~

ちひろ「はぁ、社長にお電話ですか……至急の用でないなら、後からこちらから折り返し連絡させていただきますが…ええ、はい…」ガチャ

ちひろ「……Pさんも頑固な人ですよねえ」

~~~

P『社長?俺が?』

ちひろ『社長、亡くなる前に探していたんです。自分の後を継いで、誰かを導いてくれる、そんな人を』

P『…俺には重すぎますよ』

ちひろ『Pさん』

P『肩書なんかどうだっていいじゃないですか。俺には今も、社長と呼べるのはあの人だけだから』

P『仕事は引き継ぎます』

P『あの人の夢の景色……見てみたい、俺も』

778: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 09:53:10 ID:zxLw
ちひろ『…やっぱり社長の言う通りの人ですね、Pさんって』

P『あ?何が』

ちひろ『…だって、毎日今にも死にそうな顔して駆けずり回ってるのに、ちっとも目が死んでないんですから』

P『死んでる場合じゃないんですよ、俺はもう』

P『【アイドルにはなれなかった】俺でも、まだきっと、やれる事があるはずだから…』

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779: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 17:11:22 ID:zxLw
~現在・レッスン室~

P「この後は土手でランニングして、その後発声トレーニングな。無理はするんじゃないぞ、キツくなったら言ってくれ」

加蓮「もう、Pさんってばいつまで経っても過保護なんだから」

有香「ちゃんとついていきますから、ご安心下さい!」

未央「それに辛くなったら未央ちゃんとぷちみーのミオニウムもたっぷりストックしてるからね☆」

P「おう…そんじゃ、行くとするか」

P「まだ先は長いけど…見てろよ爺さん」

加蓮「それじゃ行くよ!810プロ、ファイトっ!」

未央有香P「「「おーっ!」」」

※夢追い人は走り続ける。
いつかその先の景色が、空の向こうにも届くように……

おわれ。

780: ◆6RLd267PvQ 22/05/04(水) 17:12:40 ID:zxLw
以上、事務所の掘り下げ回でした。
事務所の名前等は初出です。前々から考えてはいたんですけどね。

最終回とかではないので今後も続きますよ~。
お目汚し、失礼をば。