765: 名無しさん 2012/01/20(金) 02:24:42.73 ID:yjFdXGrro
緊急放水路外周部・非常用階段。
巨大な構造物にの周囲や内部には必ずメンテナンス用の空間が存在する。
いくら学園都市の技術力が優れているとはいえ、やはり人の目によるチェックは欠かせない分野もあるのだ。
縦穴である放水路の外郭を取り囲むようにキャットウォークが何十層も設けられ、各階層間を非常用の階段が繋いでいる。
外壁に沿って大きく螺旋を描くその階段を番外個体と一方通行は降りていた。
「メンテナンス用の階段なのに、通路の外側にあってどォすンだ。
内側の方が壊れやすそォな気がするが」
「内側にも一応通路や階段はあるらしいよ? ただ水を流し込んだ時のショックで壊れると困るから、使う時以外は壁面に格納されてるらしいけどさ。
排水する時は何千トンって水を捨てるんだろうし、ちょっとした抵抗でももの凄い負荷になりそうね」
一方通行は杖突きの身であるが、ただ歩くだけのことに能力を使ってチョーカーの電源を無駄使いするのも馬鹿らしい。
速度の都合から必然的に先行する形になる番外個体の肩や腰には、いくつかの火器が吊るされていた。
例えば『妹達』の標準装備であった『オモチャの兵隊(トイソルジャー)』など見慣れたものも含まれている。
「……そンな重火器、どこから調達しやがった」
ざっと見ただけでもアサルトライフルが1挺、拳銃が数挺、そして彼女が動くたびに何やらゴツゴツした物音を立てる大きなミリタリーバッグ。
大きなサバイバルナイフや手榴弾と思しき物体もいくつか腰にぶら下げていた。
「んー? 病院のミサカたちに借りた分と、あとは冥土帰しに調達してもらった。
ほら、この『演算銃器(スマートウェポン)』なんか、ゴツくてカッコいいでしょ」
見せびらかすように番外個体が取り出してみせたのは、引き金の手前に太いマガジンが二本突き刺さった奇妙なフォルムの大型拳銃。
かつて一方通行が殺害した駒場利徳が所持していたものと同一モデルであり、これもまた一方通行に苦い思いを抱かせた。
「『鋼鉄破り(メタルイーター)』は威力としては申し分なかったんだけど、あれデカいし重いんだよね。
機動攻撃を主軸とした高速戦闘を前提に戦略を組み立てられてる『第三次製造計画』のミサカじゃあ、あれの真価は発揮できない」
「そもそもあれって超遠距離狙撃用の対戦車ライフルだろ。今回みたいな施設攻略には向いてねェンじゃねェか?」
「こういう閉所戦だと大口径の火器は充分な脅威になるよ。
別に徹甲弾に限らず、同じ口径の焼夷弾ぶっ放してもいいわけだし。
ま、今回は相手に死人を出しちゃいけないって縛りもあるけどねぇ」