2日後 

リョウ「さて、みんな今日もしんどそうだな」 

拓海「……絶賛筋肉痛だぜ」 

リョウ「そうみたいだな……だが前回みたいな形式だとみんな寝ちまう。だから今日は講師を招いた」 

美波「講師、ですか?」 

リョウ「ああ。いいぞ!」 

ガチャ 


引用元: ・【モバマス×龍虎の拳】リョウ・サカザキ「俺がアイドルのプロデューサー?」【2】

452: 名無しさん 2017/02/10(金) 23:24:49.22 ID:Owd0v+kW0
ユリ「はーい!特別講師のユリでーすっ!」 


悠貴「ユリさんですかっ!?」 


リョウ「ああ、このユリは極限流を習い始めて1年で気功技をほとんどマスターしちまった。認めたくないが、気功だけで言えば間違いなく天才だ。お前たちと年齢もあまり変わらないし、性別も同じだし、感覚が近いだろう」 

ユリ「あ~!お兄ちゃん、なに気功だけって!」 

リョウ「だから、気功だけだ。空手の方はまだてんでなっちゃいない。そもそもわけのわからないアレンジを加えたり……」 

453: 名無しさん 2017/02/10(金) 23:32:43.70 ID:Owd0v+kW0
リョウ「大体だな、俺はまだお前が極限流を習うのは反対なんだぞ。親父がコロッとお前に言いくるめられちまったからこんなことに……」 

ユリ「ちょっと!一体いつまでそんなこと言うつもりなの!?私が極限流を習い始めてもう3年くらい経つんだよ!?今じゃ道場で私より強い人なんてそういないんだから!」 

美波「あ、あの……」 

加蓮「ちょっと……ふたりとも……」 

リョウ「いーや!そもそもお前は心技体の心がなっちゃいない!才能頼みで身に付けた強さで調子に乗ってると、いつか手痛いしっぺ返しを食らって取返しのつかないことに……」 


454: 名無しさん 2017/02/10(金) 23:40:24.65 ID:Owd0v+kW0
ユリ「むっかー!もう怒った!だったらお兄ちゃん、今からここで私の強さを見せてあげるよ!」 


リョウ「上等だ!お前が外で酷い目に合う前にここで目を覚ましてやるのが兄としての……」 

拓海「お、おいお前らいい加減に……」 

キング「ベノムストライク!」 

ズン 


ユリ「……へ」 

リョウ「……キング?」 

455: 名無しさん 2017/02/10(金) 23:43:51.06 ID:Owd0v+kW0
キング「いい加減にしなよあんた達……遊んでる暇があるのかい?」 

ユリ「い、いえ……」 

リョウ「す、すまん……」 



美波(こ……) 

悠貴(怖いですっ!!) 

456: 名無しさん 2017/02/10(金) 23:53:22.28 ID:Owd0v+kW0
外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 



客船 
カジノコーナー 

ギース「……」 



男「ハハハ……この勝負もらった!19!スタンドだ!」 

???「……私の手札は……21!ブラックジャック!私の勝ちね。残念でした♪」

457: 名無しさん 2017/02/10(金) 23:58:37.45 ID:Owd0v+kW0
???「ブラックジャックはたしかに経験がモノを言うゲーム。でも一番大切なのはそれじゃないの。分かるかしら?」 

???「それはね。……勝負所を見極める勘、そして運よ」 

オオオオオオーーー! 

客「いやあ、すごいな彼女は!大見栄切るだけあって、ほとんど負けなしだ。確かレナさんといったかな」 

客2「いやあ美人だし、性格もこざっぱりしてるし、優秀だし、私の個人の秘書として欲しいくらいだよ」 

458: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:04:37.21 ID:hs3KLDE+0
客「いやあそれは難しいだろう?なんせ彼女がディーラーになってからはこのカジノコーナーの収益がだいぶ増えたらしいからな」 

レナ「さて、次に私とお相手したい方はいるかしら?」 

ギッ 

ギース「……一勝負お相手願おう」 

レナ「……貴方、ずっと私の勝負を見ていたわよね。そろそろ観客でいるのは飽きたかしら?」 

459: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:11:56.26 ID:hs3KLDE+0
ギース「ほう?気づいていたか」 

レナ「当然よ。お客さんの動きを見るのもディーラーの仕事よ。これでも本場で腕をならしてきたんだもの」 

レナ「ちょうど退屈してたところだし……貴方は私を楽しめませてくれるのかしら」 

ギース「フッ……Come on」 





ギース「Blackjack……私の勝ちだな」 

レナ「なっ……!」 

460: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:17:09.97 ID:hs3KLDE+0
客「おお!レナさんが負けたぞ!」 

客2「は、初めて見たかもしれない……で、でも一度だけならマグレかもしれないし……」 

レナ「……なかなかやるじゃない。もう一回よ」 

ギース「良いだろう。Take it again and again」 

461: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:25:22.51 ID:hs3KLDE+0



客「……おい、これで何連敗だ?」 

客2「信じられない……あのレナさんが……」 

レナ「そ、そんな……!」 

レナ(ウソ……!?イカサマをしてるような形跡も無かった……こんな、ことって……!) 

ギース「……フン。失礼する」 
ガタ 

レナ「あ……!待って!勝ち逃げする気!?」 

462: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:31:05.09 ID:hs3KLDE+0
ギース「君は先ほど語っていたな。ブラックジャックに大切なものは、勝負所を見極める勘、そして運だと」 

ギース「なるほど、君の勝負勘、それは一流だと言ってやろう。だがな、運などという不確かなものを根拠に挙げているようでは超一流とは言えん」 

レナ「いいえ……!だって現に貴方は私を相手に圧倒的なツキを味方に……!」 

ギース「それは運で勝利したのではない。『私だから』勝利したのだよ」 

レナ「……!」 

ギース「敢えて君が納得できるように言い換えてやるならば……運というものは常に強者にこそ味方するのだ。つまり、私の勝利は必然だったのだよ」 
コツコツコツ 

463: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:37:31.58 ID:hs3KLDE+0
レナ「な……なんなの……」゙ 

男「……なんだか今なら俺でも勝てそうな気がする!一勝負だ!」 

レナ「……」 




レナ「……はい、私の勝ち……」 
ピッ 

男「何故だ!何故一回も勝てない……!!」 

レナ「……」 
ボケー 

客「な、なんだ……やはりレナさん強いじゃないか……」 

客2「で、では先ほどのはいったい……」

464: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:43:22.03 ID:hs3KLDE+0
男「……サマだ」 

レナ「……はい?」 

男「イカサマだ!」 

レナ「……は?」 

男「だってそうだろう!?さっきの男にはあれだけ勝てなかったのに、相手が変わると一度も負けないなんて!こんなバカげた話があるか!」 

レナ「……ちょっと。何を根拠にそんな……ほかの人もこれだけ見てて、イカサマなんてできるはずないでしょう」 


465: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:50:00.71 ID:hs3KLDE+0
男「……ははーん。なら分かった。あんた、あの男の女なんだろ。それであの男に勝たせるために、あの男の時だけ手を抜いてたんだ」 

ザワザワザワザワ 

レナ「な、なにをバカなことを……!私はあの人とは初対面よ!」 

男「じゃああの男に惚れたのか!?どっちでも良い!とにかくお前はイカサマディーラーだ!公平じゃないディーラーは、カジノから出ていけ!」 

ザワザワザワザワ 



オーナー「み、みなさん!落ち着いてください!我々は常に公平です!……兵藤くん、ちょっと私の部屋まで来なさい」 

レナ「……!」 


466: 名無しさん 2017/02/11(土) 00:54:57.25 ID:hs3KLDE+0
オーナー「……兵藤くん。君はここで働き始めてからずいぶん貢献してくれた……だが、カジノは信用が第一だ」 

レナ「……」 

オーナー「もちろん私は君がイカサマをしたなどとは思ってないが、あんな評判が広まった以上、君をここに置いておくわけにはいかない」 


オーナー「……わかってくれるね?」 

レナ「……はい。今までありがとうございました」 

467: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:00:17.15 ID:hs3KLDE+0
レナ「はぁ……まさかクビになるなんて……これからどうしょうかな……」 

レナ「……ちょっと海の風でも当たろうかな……あ、あれは……?」 





ギース「……私に何か用かな?」 

男「しらばっくれるな。お前とあの女が結託してイカサマをしてくれたお陰で俺は死ぬほど恥を搔いたんだ」 

ギース「……それで?私をどうしようというのかね?」 

男「知れたこと、俺に土下座で謝ってもらう。そのあとはカジノに戻って公衆の前でイカサマを宣言してもらう」 

ギース「……断れば?」 

男「断れないさ。……おい!」 

468: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:04:36.06 ID:hs3KLDE+0
屈強な男「はい」 

屈強な男2「お呼びでしょうか」 

男「この通りだ。お前は土下座をするか、魚の餌になるか、どっちかしかないんだ」 


レナ(な……なんてことなの!オーナーに知らせなくちゃ……!) 
タッ 

ギース「……フッ」 

469: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:08:54.75 ID:hs3KLDE+0
男「貴様、何を笑っている!死にたいようだな!」 

ギース「……いや、なに。もし本当に運の良し悪しというものがあるのなら、貴様たちこそ本当の不運だと言うのだろうな」 

屈強な男「何を言っている……?状況が見えてないようだな」 

男「もういい!お前たち、やってしまえ!」 

ギース「嘗て、Mr.KARATEという道化がいた。あの道化は私を心から楽しませてくれたものだったが……度を過ぎた道化は不快だな。せいぜい己の愚かさを恨むがいい」 


470: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:13:25.09 ID:hs3KLDE+0
レナ「ハァ、ハァ……オーナーの部屋……早く伝えなきゃ」 
スッ 


「……しかしオーナー、とんでもない目に遭いましたね」 


「まったくだ。あの女、見た目が良いから働かせてやったのに、何処ぞの若造に色目を使われてあのザマとは。何が本場で腕をならしてきた、だ」 


レナ「……!?」 

471: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:17:49.79 ID:hs3KLDE+0


船長「でも、実際あの女が来てから収益は良かったんでしょう?」 

オーナー「ふん、大方客に色目を使って金を使わせていたんだろう。それが今回は逆になったわけだ。まったく、くだらん」 

船長「はっはっはっは!でもあの女、見た目は良いですからちょっとクビはもったいなかったですね」 

オーナー「どの道、あの女はもう二度とこの業界では働けん。悪評はすぐに伝わるからな。だが……そうだな。どうしてもとあの女が頼み込んでくるのなら、愛人くらいにはしてやってもいいかもな」 

船長「あっはっはっはっは!間違いないですな!」 



レナ「……っ!」 
ダッ 

472: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:23:58.62 ID:hs3KLDE+0


レナ「……はぁ。私の今までの人生ってなんだったんだろう」 

レナ「女だてらに単身アメリカに渡って、本場で勉強して、腕を磨いて」 

レナ「……けど、全部無意味になっちゃった」 

レナ(……もう、いっそのこと海に----) 



ギース「随分浮かない顔をしているな、Ms.ヒョウドウ」 

レナ「……貴方は、さっきの……」 

レナ「……っ!」 
ハッ 

473: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:26:50.88 ID:hs3KLDE+0
レナ「そ、そうだわ!貴方、さっきの連中に……!」 

ギース「ん?」 

レナ(傷どころか……スーツに乱れ一つない!?) 

レナ(っていうことは……さっきの人たちとは和解したのかしら……そ、そうよねきっと……) 

レナ「いえ、何でもないわ……それより私のことは放っておいて」 

ギース「そうはいかん。今にも船から飛び降りそうな雰囲気だったからな。私にもそれで寝覚めが悪くなる程度の心はある」 

474: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:29:35.80 ID:hs3KLDE+0
レナ「……どうでもいいでしょ」 

ギース「……やれやれ。あの勝負師の目はもう見られそうもないか。私は、アレが好きだったのだがな」 

レナ「……え?」 

ギース「だったら、私もお前に何の用も無い。海に飛び込むなり何なり好きにするが良い」 
コツコツ 

レナ「……」 

レナ「待って」 


475: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:36:51.42 ID:hs3KLDE+0
ギース「……まだ何か?」 

レナ「……どうしても納得できない。私と最後の勝負をしてほしい」 

レナ「でないと……私はこれからの人生を歩んでいけない気がするの」 

ギース「……」 
ニヤリ 

ギース「……では、何を賭けるのだ?賭けるもののない勝負などという下らん事をするほど私はヒマではない。君は、何を賭ける?」 

レナ「っ……そ、それは……」 

476: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:40:40.90 ID:hs3KLDE+0
ギース「……どうしてもと言うのなら君の人生を賭けてもらおう。私に負け続けて、もう他に賭ける物もないだろう?」 

レナ「!!」 

レナ「……それは、当然貴方も同じ物を賭ける、ということよね?」 

ギース「もちろんだ。君が勝てば私の命を持っていくが良い」 

レナ「……」 
ゴク 

レナ「それは……刺激的ね。面白いじゃない」 

ギース「……フフ、そうだ、その眼だ……!」 

ギース(その眼をしていてこそ、お前を頂く価値がある……!) 

477: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:45:24.32 ID:hs3KLDE+0
レナ「……それで?勝負は何にするの?ポーカー?それともさっきと同じブラックジャック?」 

ギース「いや……勝負はこれで決めよう」 
ピーン 

レナ「……コイントスね。いいわ」 

ギース「ああ、トスは君がしろ。ただし、コインはこれを使え」 
ポイ 


パシィ 
レナ「……!こ、このコインは!?」 

478: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:48:59.30 ID:hs3KLDE+0
ギース「どうした、早くトスをしろ。それとも、私が渡したコインに何か問題が?」 

レナ「……いいえ。じゃあ行くわよ」 
ピーン 

パシ 

ギース「表だ」 

レナ「……」 
スッ 

ギース「私の勝ちだな。だから言っただろう?運は常に強い方に味方するのだとな……」 

479: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:52:28.21 ID:hs3KLDE+0
レナ「……ちょっと、貴方……」 

ギース「おっと、そこまでだ。お前の人生は最早私のものだ。……この船に小型艇を隠してある、客船から脱出するぞ」 

レナ「え?ちょ、ちょっと!ええーーーー!?」 





都内 
ビリヤードルーム 

レナ「豪華客船、乗客同士の喧嘩か、3名重傷……また、客船内で不法行為が横行か、責任者の容疑を追及へ……」 
ガサッ 

480: 名無しさん 2017/02/11(土) 01:57:24.47 ID:hs3KLDE+0
レナ「これ、全部貴方がやったの?」 
カコン 
コン 

ギース「さて、何のことかな?私はたまたま勘であの船から脱出しただけだ」 

レナ「どうだか……貴方は立派なイカサマ師でもあるからね」 
カコン 
コン 


ギース「……あの客船に乗る前、ある女性ディーラーの噂を聞いた」

481: 名無しさん 2017/02/11(土) 02:00:38.64 ID:hs3KLDE+0
ギース「彼女は若くしてアメリカに渡り、本場のディーラーの技術を吸収していった」 

ギース「その女性ディーラーは美しく、勝負強い……そして、ひとつ矜持というか、独自のルールようなものを持ち合わせていた」 

レナ「……」 
カコン 



ギース「それは、『自分は決してイカサマをしないが、相手のイカサマは一回だけ見逃す』というものだった」 
カコン 
コン 

レナ「……!」 

482: 名無しさん 2017/02/11(土) 02:04:31.57 ID:hs3KLDE+0
ギース「私に言わせれば、甘い。相手が本当の狼ならば、その一度だけで、喉を食い破るからだ」 
カコン 

レナ「……」 
カコン 
コン 

ギース「……だが、同時に誇り高い、とも感じた。だから欲しくなったのだよ。その女性ディーラーがな」 

レナ「……だけど貴方、このコイン……両方表じゃない。こんなあからさまなイカサマコインを相手に堂々と渡すなんて、どんな神経しているのかしら」 
カコン 
コン 

ギース「噂が本当ならば、イカサマの精巧さは問題では無い。初犯か、否か。それだけだ」 

ギース「私は本当に勝たなければならない勝負には、手段を選ばないタチでね」 

483: 名無しさん 2017/02/11(土) 02:09:16.58 ID:hs3KLDE+0
レナ「……じゃあ、このビリヤード勝負は取るに足らない勝負、ということかしら?……はい、これで私の5連勝」 
カコン 
コン 


ギース「フッ……酒の一杯や二杯、私にとっては痛くないのだよ」 
ピッ 

レナ「そう……ん、名刺?」 
クイ 

レナ「覇我亜怒プロダクション、社長兼プロデューサー……」 

レナ「ギース・ハワード……!?」 
ガタッ 

ギース「フンッ……流石にアメリカでディーラー修行をしたのなら、私のことは知っているか……だが、今の私はアイドルのプロデューサーだ

484: 名無しさん 2017/02/11(土) 02:13:05.27 ID:hs3KLDE+0
レナ「え?だってギースって……え?アイドル?え?」 

ギース「……おい、何を呆けている」 

レナ「え?だって……え?」 

ギース「ビリヤードの続きだ。次こそは、私が勝つ」 



外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 
 兵藤レナ スカウト編 

終わり 

499: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:07:43.73 ID:hKoOhTCY0
ユリ「え~っと改めて、特別講師のユリ・サカザキです!みんなよろしくね!」 

有香「よ、よろしくお願いします」 


ユリ「詳しい話は聞いたよ!残り2か月半で龍虎乱舞会得なんて、みんなも無理難題をふっかけられたよね」 


美波「……ユリさんは極限流を習い始めて3年くらいと言われてましたけど、龍虎乱舞はどれくらいで会得されたんですか?」 

500: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:14:33.64 ID:hKoOhTCY0
ユリ「……いや~……それがね……」 

拓海「ん?なんだよ……」 

ユリ「実は私も龍虎乱舞は使えないんだよね。テヘッ」 

加蓮「ちょ、ちょっと教えてもらう立場で言うのもなんだけど、それ大丈夫なの講師として?」 

ユリ「それは大丈夫!私がお兄ちゃんに言われたのは乱舞を教えろ、じゃなくて気功を感じさせろ、だったから!」 


501: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:19:03.86 ID:hKoOhTCY0
ユリ「さっきお兄ちゃんも言ってたけど、私は気功に関してはちょっと自信あるからね!まぁ大船に乗った気分でいてね!」 

拓海「まぁまぁ不安だぜ……」 

ユリ「拓海ちゃんなんか言った?」 

拓海「いや何も」 

502: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:26:18.85 ID:hKoOhTCY0
ユリ「……で、気を認識する上で一番わかりやすいのはやっぱり気合だと思うんだよね」 

ユリ「というわけで、声出し行ってみよー!」 

加蓮「こ、声出し!?」 


ユリ「うん。なんかテキトーに気合が入る言葉を叫んでみて。じゃあ有香ちゃんから」 

503: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:33:44.90 ID:hKoOhTCY0
有香「あ、あたしからですか!?お、押忍!」 

有香「……」 
スクッ 

有香「……お、押忍っ!!!」 
クワッ 

ユリ「はい!次!拓海ちゃん!」 

拓海「うえええ!?」 

504: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:40:18.67 ID:hKoOhTCY0
拓海「……!」 
スクッ 

拓海「……や、やんのかオラァァァァァァァァ!」 
クワッ 

ユリ「こわっ!次美波ちゃん!」 

美波「は、はい!」 
スクッ 

美波(……えーとっ……) 

505: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:46:10.30 ID:hKoOhTCY0
美波「み、みなみ、やりますっ!!」 
クワッ 

ユリ「はい!次加蓮ちゃん!」 

加蓮「……!」 
スクッ 

加蓮「……え~っと」 

加蓮「……お、お~!」

506: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:50:46.43 ID:hKoOhTCY0
拓海「なんだそりゃ!!」 
クワッ 

ユリ「最後!悠貴ちゃん!」 

悠貴「はいっ!」 
スクッ 

悠貴「……」 

悠貴「が、頑張りますっ!!」 
クワッ 

507: 名無しさん 2017/02/13(月) 00:55:15.32 ID:hKoOhTCY0
ユリ「うん、みんな正直気合よりも恥ずかしさが勝ってるね」 

拓海「そ、そりゃいきなり叫べって言われたらこんな感じになるだろ!」 

ユリ「う~ん、それだとだめなんだよね。正直叫ぶ内容自体はどうでもよくて、気合が入ればいいわけだから」 

ユリ「まぁ恥じらいながら叫んでるみんな可愛かったけど♪」 

加蓮(この人楽しんでない……?) 

508: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:00:28.59 ID:hKoOhTCY0
ユリ「……けど、どうしようかなぁ。なんか叫ぶ言葉を合わせればいいのかな……」 

リョウ「……だったら、アレはどうだ?お前たちがLIVE前に円陣組んで叫んでるやつ」 

加蓮「あ、坂崎さん」 


ユリ「あ、お兄ちゃん。いたんだ」 

リョウ「別室で打ち合わせ中だったが、なんか絶叫が聞こえたから様子を見に来たんだよ」 


509: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:06:02.83 ID:hKoOhTCY0
リョウ「で、どうだ?例のアレ」 

美波「……そうですね」 




ユリ「……え~っと、じゃあ私が『きょくげん』って叫んだら、みんなが『FIGHT』って叫ぶんだね』 


ユリ「じゃあいくよ~……きょくげ~ん!!」 

全員「FIGHT!!!」 
クワッ 

ビリビリ 

510: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:11:21.79 ID:hKoOhTCY0
ユリ「……おお!良いんじゃない!?今のかなり気合を感じたよ!」 

拓海「……なんだかんだ言って、気合が入るよなこの掛け声……」 

ユリ「じゃあ今度は一人ずついくよ!きょくげ~ん!」 

ファイト! 
キョクゲ~ン 
ファイト! 
キョクゲ~ン 

・ 
・ 
・ 

511: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:18:06.01 ID:hKoOhTCY0
夕方 


拓海「ぜぇ……はぁ……」 

美波「はぁ……はぁ……」 

ユリ「はぁ、はぁ……というわけで、自分の中に気合が入る感覚はわかってもらえたかな……?」 

悠貴「な、なんとなくわかった気がします……っ!」 

ユリ「うん、これでスタート地点だね……あとはこの気合を「気」としてコントロールするのがこの気のレッスンの目的になるの」 

加蓮「……まだまだ先は長そうだね……」 

512: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:24:11.08 ID:hKoOhTCY0
スタスタ 
ロバート「いや、大きな進歩やで。おぼろげながらも自分の中の気の存在を認識できたんや。これが出来ないとお話しにならんからな」 


美波「社長さん!」 

ロバート「そして指導一日目にしてそれを成し遂げたユリちゃん最高や!どや?この後食事でも……」 

ユリ「え!?ロバートさん良いの?」 


513: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:27:44.50 ID:hKoOhTCY0
ロバート「そんなんエエに決まっとるがな!あ、そや、先日ワイが発見した夜景の綺麗な……」 

ユリ「やったねみんな!今日はロバートさんがごちそうしてくれるって!何食べたい!?」 

ロバート「え」 

拓海「っしゃあああ!マジかよ!肉肉!よっ!社長!ゴチになりやす!」 


514: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:32:37.35 ID:hKoOhTCY0
ロバート「ちょ、待っ」 

リョウ「おーい、キング、トレーナーさん、ちひろさん、ロバートがご馳走してくれるそうなので準備を」 

ロバート「……」 

ヤッター 
ハヤクシャワーアビテキガエナキャ 
ワイワイ 

ロバート「……まぁええか」 

515: 名無しさん 2017/02/13(月) 01:33:42.66 ID:hKoOhTCY0
いったんここまで

518: 名無しさん 2017/02/13(月) 20:29:59.08 ID:hKoOhTCY0
外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 


事務所 

レナ「……それで?この事務所には私しかアイドルがいないわけ?」 

ギース「いや、所属しているのはもう一人いる。が……彼女は奔放だからな。来たい時だけ来るだろう」 

レナ「なにそれ……良いのそんなルーズな感じで……」 

ギース「能力と、私の要求に応えられるのであれば普段どこで何をしていようが構わん」 


519: 名無しさん 2017/02/13(月) 20:36:39.03 ID:hKoOhTCY0
レナ「……ってことは要求に応えられなくなったときが縁の切れ目ってことね」 

ギース「そういうことだ……わかっているではないか」 

ギース「それにメンバーはまだ集めている最中だ。今から私が興味を持っている者がテレビに出る。見てみようではないか」 

レナ「……」 

司会『本日はここ福井から、話題の人物をお呼びしています!女子高生社長、桐生つかささんです、どうぞー』 

つかさ『女子高生社長?なに、そのアオリ。そんなんじゃバズんないでしょ』 

520: 名無しさん 2017/02/13(月) 20:46:52.11 ID:hKoOhTCY0
つかさ『ども。美人ギャル社長で最強JK、桐生つかさです』 



レナ「……え?この娘が貴方が興味を持ってる娘?」 

ギース「フッ……まぁ見てみよう」 



つかさ『仕事はブランドのプロデュース、それからSNSを使ったバイラルコミュニケーション。ま、分かる人に伝わればいいや』 

つかさ「アタシとビジネスしたいっていう強者がいたら、アポちょーだい」 

つかさ「女子高生だからってナメないで。本気のヤツだけ求めてるんで」 

521: 名無しさん 2017/02/13(月) 20:55:07.16 ID:hKoOhTCY0
ギース「……フッ」 

レナ「なに笑ってるのよ……ていうかすごい自信ねこの娘……」 

ギース「自負が強い故だろう。ただのビッグマウスにも見えるが、TVの電波に乗せて言うからには並大抵の覚悟ではあるまい」 

ギース「……まぁ世の中には何も考えていない馬鹿もいないではないが、社長をやっているくらだ。期待させてもらおう」 
ピッピッピ 

レナ「……?どこに電話して……え!?もしかしてあの娘のところ!?」

522: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:06:08.61 ID:hKoOhTCY0
ギース「もしもし。Ms.キリュウか?私はギース・ハワードという者だ」 

つかさ『お、放送見て早速アポくれたのか?いいね、フットワークが軽いところとは仕事がしやすいよ』 

ギース「フッ。私は芸能事務所のプロデューサーをしている。そちらとビジネスの話をしたいのだが、いつならば会えるだろうか。ちなみにこちらは東京だ」 

つかさ『芸能事務所?ふ~ん……あ~、東京なら、3日後だな。別の仕事でそっちに行く予定があるから、16:00からなら時間が取れる』 

ギース「いいだろう。住所は東京都……」 

レナ「……なんかトントン拍子に進んでる……」 

523: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:11:10.42 ID:hKoOhTCY0
3日後 

つかさ「……声で聞いた感じより若いんだね。アタシが桐生つかさ。よろしく」 

ギース「ギース・ハワードだ」 

レナ「……どうぞ」 
コト 

レナ(なんで私がお茶汲みを……)

524: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:16:56.62 ID:hKoOhTCY0
つかさ「で、芸能事務所のプロデューサーがアタシとどんなビジネスしようっての。衣装のプロデュースでも依頼したいとか?」 

ギース「単刀直入に言おう。ツカサ・キリュウ、我が覇我亜怒プロダクションのアイドルになれ」 

つかさ「は?」 

レナ(そりゃ、は?ってなるわよね) 

525: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:25:12.61 ID:hKoOhTCY0
ギース「私の下で、私のプロデュースを受けろ。それだけの価値がお前にはある」 

レナ(上から過ぎるでしょ!何様!?) 

つかさ「……はっ、なかなか面白い事言うなお前。ウケる」 

レナ(この娘も大概だな!お前って) 


ギース「何も可笑しい事はない。私がジョークを好むような男に見えるか?」 

526: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:31:19.33 ID:hKoOhTCY0
つかさ「……本気ってワケ?だとしたら本気で頭沸いてんな。大体、美人でギャルで社長って時点でアタシの人生勝ちパなの。それでアイドルをやることにアタシになんのメリットがあるっての?」 

ギース「何事も頂点をとってこそ初めて真に価値があるのだ。どれもつまみ食い程度にかじって勝ち組気取りとは笑わせる。これはとんだ見込み違いだったかな」 

つかさ「……なに?お前、アタシの何を知っててつまみ食いなんて言ってんだよ。ナメてんのな」 

レナ(……一気に険悪ムードじゃない。っていうか喧嘩腰すぎるでしょ) 

ギース「知らんな。だがお前も私の何を知ったわけでなく私のプロジェクトを否定しただろう。お互いさまだ」 

527: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:39:59.82 ID:hKoOhTCY0
つかさ「……ガキかっての。いいよ、じゃあそのプロジェクトとやらを話してみろよ。聞くだけは聞いてやるからさ」 

ギース「では聞かせてやろう。まず、私が目指すのはアイドル界のトップだ。それ以外は無意味だ」 

つかさ「……!」 

レナ「……!」 

ギース「それにあたり、アイドルの指導方針、期間、作詞作曲の依頼先候補リスト、プロモーションの際のパートナー企業候補など、概ねの計画がこの資料にまとめてある。目を通せ」 
ドサッ 

つかさ「な……!」 

528: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:45:13.55 ID:hKoOhTCY0
レナ(厚っ!ていうかこんな資料いつの間に!私見てないけど!?) 

つかさ「……」 
ペラ 

つかさ(……育成方針のレッスン時間ごとの進捗目標、順調に推移した場合とそうでない場合のパターンごとの対策と計画) 

つかさ(作詞作曲者の候補者リストとその場合の見積もり、CD販売における成功・失敗・中間の3パターンのその後の露出の方向性と計画……) 

つかさ「……!」 

つかさ「おい……この衣装プロデュースの会社って……!」 

529: 名無しさん 2017/02/13(月) 21:50:58.20 ID:hKoOhTCY0
ギース「ん?ああ、そこの会社はなかなか良い衣装をプロデュースをする。感性というのかな、そういった物が今の若者の心を捉えるのだろうな」 

ギース「特に女性物の化粧品の……何と言ったかな、あのCMの衣装は良く出来ていた。あのレベルのものができるのであれば、私のアイドルグループの衣装も充分任せられる」 

つかさ(……アタシの仕事はしっかりリサーチ済ってことね……) 

つかさ「けどさ、もしこの会社に断られたらどうすんだよ。例えば、ここの社長に別の仕事が急に入ったりしたらさ」 

530: 名無しさん 2017/02/13(月) 22:01:09.86 ID:hKoOhTCY0
ギース「フッ、その心配はないだろう。その会社の社長は、両方必ずこなして見せるだろう。それだけのバイタリティがあると、私は踏んでいる」 

つかさ「はっ……両方って……アイドルと衣装のプロデュース、どっちもやらせる気なのな」 

ギース「私はその人間が出来ると思った仕事しか任さん。ただ、その『出来る』というのはその人間の限界値まで使っての仕事になるがな」 

ギース「それに、お前も会社を率いる立場なのだろう?ならば、私から大いに盗み、学べ。何なら踏み台にしてくれても構わん。出来るものならばな」 

531: 名無しさん 2017/02/13(月) 22:06:28.29 ID:hKoOhTCY0
つかさ「……いいね。分かった。だったらこの仕事をやる間はお前をボスと呼んでやるよ。さっさと契約書出して。当然、隅から隅まで確認してやるから」 

ギース「フッ、交渉成立だな」 

つかさ「……それと、アタシのことはつかさで良いから。パートナーに遠慮は罪だろ?」 

レナ(……なんだかよくわからないうちに成立してる……) 

532: 名無しさん 2017/02/13(月) 22:13:22.87 ID:hKoOhTCY0




レナ「……ねぇ、なんで初めあんなに喧嘩腰だったの?結果成功したから良かったものの……」 

ギース「フンッ、あちらの流儀に合わせてやったまでだ」 

レナ「あっちの流儀?」 

ギース「そうだ。ツカサは社長をやっているだろう?あの不遜な態度はヤツの交渉術なのだろう。恐らくは相手に呑まれないための、な」 

レナ「……そういうこと。確かにポーカーなんかの心理戦でも、手札が貧弱なのを表情や態度で隠すことはよくある……あの娘の態度もそういう類ってことね」

533: 名無しさん 2017/02/13(月) 22:17:42.07 ID:hKoOhTCY0
ギース「如何に不遜な態度を取ろうとも、まだ彼女は成人もしていない少女だ。表向きほど内面は不遜でもないのだろう」 

レナ「……まぁあの娘の場合、素の性格もあんな感じのような気はするけど」 


ギース「それで、精一杯の虚勢を張ってくるのだから、私もそれに乗ってやったのだ。交渉のコツは、理解と共感だ」 

レナ「ああそう……」 

534: 名無しさん 2017/02/13(月) 22:23:55.97 ID:hKoOhTCY0
ギース「フフフ、それにしてもこれで三人目か。もう一息だな」 

レナ「ねえ、別に私が心配するようなことでもないんでしょうけど、私たちってレッスンとかしなくていいの?それとも、勝手にどこかでやってこいってこと?」 

ギース「レッスンはメンバーが揃い次第、然るべき講師を招いてスタートする。もしレッスンについてこれないようならクビだから、不安なら自主トレーニングなどをしても構わんぞ。もちろん自信があるならば好きに過ごすが良い」 

レナ「ご忠告、どうも」 

レナ(この事務所の近く、ジムとかあったかしら……) 

535: 名無しさん 2017/02/13(月) 22:27:46.75 ID:hKoOhTCY0
ギース(ふむ……講師か。外部から招いても良いが、それだけではつまらんな) 

ギース「レナ。私は明日から少々事務所を空ける。そうだな……期間はひと月程度か。その間は自由に過ごすといい。別にこの事務所のものを使っても構わん」 

レナ「え?ひと月も?……わかったわ」 

レナ(悪い顔……なにか思いついたのかしら) 

ギース(フッフッフ、所詮は極限流への当てつけ、暇つぶし程度だと思っていたが、なかなかに面白い。待っていろアイドル界よ、安穏とした業界の空気を、私のアイドルたちで切り裂いてくれる!) 

546: 名無しさん 2017/02/15(水) 22:52:58.81 ID:dySjrP2D0
事務所 

リョウ「ユリ、気の特訓の方はどんな調子だ?」 

ユリ「うーん、みんな気の溜め方は身に着いたんだけど、気のコントロールはやっぱり難しいみたいなんだよね」 

リョウ「まぁ気のコントロールがすぐできる奴なんてそうそういない。気の意識が出来てるなら上等といえば上等だが……時間も減ってきている」 

ユリ「私的にはわかりやすく説明してるつもりなんだけど、うまく伝わってないのかなぁ」 

リョウ「明日は気の特訓日だろ?明日は曲の打ち合わせがないから、俺も参加させてもらうぞ」 

547: 名無しさん 2017/02/15(水) 22:58:37.11 ID:dySjrP2D0
翌日 

レッスンルーム 

ユリ「……よーし、みんな気合は一通り入ったね?」 

拓海「おう!」 

加蓮「最近はここまではスムーズに来れるようになってきたけど……ここからがね」 

リョウ(さて、ユリはどんな指導を……) 

548: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:03:27.05 ID:dySjrP2D0
ユリ「はい!じゃあいつも通りグッとお腹に力入れて!」 

美波「……!」 
グッ 

悠貴「……!」 
グッ 

ユリ「そこにジワジワ~っと来たら、グイっと腕に集中!そこでバシッと感じたらコントロール出来てるよ!」 

リョウ「は?」 

549: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:08:54.70 ID:dySjrP2D0
拓海「じわじわ……じわじわ……」 
ググ 

有香「グイ……バシッ……」 
グググ 

リョウ「い、いやいや、待て。待ってくれ」 

ユリ「ん?なあに、お兄ちゃん」 

リョウ「いや、確かに気は感覚的なものだし言葉にするのは難しいが、感覚的にも程があるだろ。誰がわかるんだその説明で」 

ユリ「私は普段その感覚でやってるよ」 

リョウ「……」 

550: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:13:18.12 ID:dySjrP2D0
リョウ「……あ~、みんな。気を充実させたら、まず丹田に気を込めてだな」 

拓海「タンデム?」 

加蓮「気を込めるって?」 

リョウ「丹田だ。タンデムじゃない。気を込めるってのは充実した気合を集中させて……」 

551: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:17:10.06 ID:dySjrP2D0
リョウ「……いや、そもそもその集中させるのだってコントロールだもんな……なんて言えば……」 

リョウ「……こう、内の中の熱いものを……グッっと……」 
ハッ 

ユリ「ね?そうなるでしょ?」 

リョウ(なんてこった……確かに空手の指導はやってても気の指導はやってない……!そもそも道場で教えているのは護身術程度が多いし、気功技は空手が身に着いてからだ……) 


552: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:23:16.10 ID:dySjrP2D0

有香「はぁ、今日も結局コントロールには至りませんでしたね」 

ユリ「まぁしょうがないよ!私も説明考えておくから!」 

悠貴「ありがとうございましたっ!」 

美波「おつかれさまでした」 



リョウ「……有香、ちょっと待ってくれ。少し教えてほしいことがある」 

有香「え?あたしですか?」 



リョウ(……出来れば、頼りたくはなかったが……もう四の五の言ってられないな) 

553: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:27:50.44 ID:dySjrP2D0
翌日 
公園 


リョウ「……よう。悪いな、学校帰りに」 

ザッザッザッザ 
香澄「……わざわざ呼び出して、やっと闘う気になったか、リョウ・サカザキ」 

リョウ「まぁ聞いてくれ。俺の……というかあいつらに関わる話だ」 

香澄「あいつら?事務所のみなさんのことか」 

554: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:34:44.74 ID:dySjrP2D0


香澄「なるほど。そのLIVEでライバルに対抗するために、極限流の奥義を会得させる必要がある、と」 

リョウ「ああ、で、そのためには気のコントロールが必須なわけだが、俺たちでは上手く教えられない」 


香澄「……それで、私に気の指導をしろと?」 

リョウ「ああ。藤堂流の気の扱いについては俺も承知している。それに、こと指導に関しては俺たちよりも藤堂流のほうが得手だと考えてる」 

香澄「ふん、ずいぶんと都合のいい話だな。最終目標は我らが仇の流派、極限流の奥義なのにその土台作りを私に頼むなんて」 

リョウ「勝手なのも都合のいい話なのも百も承知だ。だが……俺たちはどうしてもLIVEに間に合わせたい」 

香澄「……断る。いくら有香ちゃんたちのためといっても、それが極限流に関わることならば私は受けるわけにはいかない」

555: 名無しさん 2017/02/15(水) 23:40:00.03 ID:dySjrP2D0
リョウ「……藤堂の」 

香澄「……もうわかってるだろう?」 

リョウ「……」 

香澄「私に言うことを聞かせたいなら……」 
スッ 

香澄「私と闘え、リョウ・サカザキ」 

568: 名無しさん 2017/02/18(土) 00:11:53.14 ID:bmoR5/qt0
リョウ「……おいおい、本気か?お前、制服だろう」 

香澄「お前もスーツだろう、関係ない」 

香澄「お前が闘わないというならこの話はここまでだ。他を当たれ」 

リョウ「……頼んでるのは俺の方だからな……仕方ないか……」 
スッ 

香澄「やっとその気になったか。……お覚悟、よろしいな」 


569: 名無しさん 2017/02/18(土) 00:21:49.24 ID:bmoR5/qt0
リョウ「……」 


香澄「……てやっ!」 
ビッ 

リョウ「ふっ」 
バッ 

香澄「はっ!てやあ!」 
ガッ 

リョウ「くっ……うわ!」 
ガッシ 

リョウ(基本に忠実な当身の連打……だが、鋭い!) 

570: 名無しさん 2017/02/18(土) 00:31:40.25 ID:bmoR5/qt0
リョウ「ちっ……破ァ!」 
ブオ 

香澄「……はっ!」 
ガシ 

リョウ「!?」 

香澄「たああ!」 
ブン 

リョウ「ぐっ!」 
ドサァ 

571: 名無しさん 2017/02/18(土) 00:41:22.63 ID:bmoR5/qt0
リョウ(あえて攻撃を受けてから、投げた……!これがあいつの古武術の、合気の真骨頂か……!) 

リョウ「やるな、藤堂の……この2年で腕を上げた」 

香澄「当然だ……!すべてはリョウ・サカザキ、お前に勝つために!」 


香澄「食らえ!藤堂流、重ね当て!」 
ズ 

香澄「いやぁーっ!」 
ズバッ 

リョウ「うおおお!」 
ズン 

572: 名無しさん 2017/02/18(土) 00:48:53.08 ID:bmoR5/qt0
リョウ(……強烈!) 

香澄(さすがに気の防御は確かか……!) 

香澄(ならば!もう一度!) 
ズズ 

リョウ「ちっ……とりゃあ!」 
ガシッ 
ブン 

香澄「うわっ!」 
ドサァ 

573: 名無しさん 2017/02/18(土) 00:55:00.22 ID:bmoR5/qt0
香澄(くっ、投げで間合いを取られた……!気の飛び道具が……!) 

リョウ「……」 
フー 

香澄(……来ない……) 


香澄「……リョウ・サカザキ。何故本気で来ない?」 

リョウ「……なに?」 

574: 名無しさん 2017/02/18(土) 01:07:19.11 ID:bmoR5/qt0
香澄「極限流の神髄は気功の技だろう、なぜさっきから気功を……いや、技を使ってこない?」 

リョウ「……!」 

香澄「……よもや、私を、藤堂流を愚弄しているのか!」 

リョウ「……いや……」 

香澄「おのれ!どこまで私たちを侮るのだ!許せん!」 
ダッ 

575: 名無しさん 2017/02/18(土) 01:16:24.38 ID:bmoR5/qt0
リョウ「!」 

香澄「超……!」 

香澄「重ね当て!」 
ズズズン 

リョウ「うおああああ!」 
ズシャア 



香澄「はぁ、はぁ……」 

香澄「……思えば、2年前のグラスヒル・バレーでもそうだった」

576: 名無しさん 2017/02/18(土) 01:29:41.76 ID:bmoR5/qt0
香澄「サカザキ!なぜ私と本気で闘わない!」 

香澄「一体何を考えているのか知らないが……私が今まで一度でもお前に手を抜いてくれ、負けてくれなどと頼んだことがあったか!」 


リョウ「……元はと言えば、お前の親父が失踪しちまったのは俺と闘ったせいだ」 

リョウ「そんな俺が、お前に本気の拳を向けるなんてことが……」 

香澄「!!」 

577: 名無しさん 2017/02/18(土) 01:38:26.60 ID:bmoR5/qt0
香澄「いい加減にしろ!お前は、父様を破ったのだろう!?」 

香澄「その父様を破った男がこの有様で、今もきっとどこかでお前を打倒するために修行をしている父様に無礼だとは思わないのか!」 

リョウ「……!」 

香澄「こんな男を私は2年待ち続けたのか……!」 

香澄「もういい!これで止めだ!超!」 
ズズズ 

リョウ「……」 

香澄「重ね当て!」 
ズババ 

578: 名無しさん 2017/02/18(土) 01:48:33.24 ID:bmoR5/qt0
リョウ「!」 
ダン 

香澄「!?」 

香澄(跳んだ!?) 

香澄(跳び蹴りか!ならば、殺掌陰蹴で!) 
バッ 

リョウ「……虎煌拳!」 
ドン 

香澄「ああっ!」 
ズドン 

579: 名無しさん 2017/02/18(土) 01:56:40.72 ID:bmoR5/qt0
香澄「そんな……!空中から気を……!?」 



リョウ「……お前の言う通りだ、藤堂の」 

リョウ「お前が2年前、藤堂の娘を名乗って俺の前に現れたとき、俺は内心気が気じゃなかった」 

リョウ「それまで俺は何かを守るために力を振るってきたつもりだった。それは今も変わらない」 

リョウ「だが、お前から藤堂の失踪を聞いて、そしてそれを追ってきたお前を見て、気づいちまった」 

リョウ「俺も、他人の大切なものを奪っちまったんだって」 

香澄「……」 

580: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:11:44.52 ID:bmoR5/qt0
リョウ「そう考えると、俺はお前と立ち合うのが怖くなっちまったんだろうな。当然本気なんか出せるわけがない」 

リョウ「だが、お前はさっきお前が言った通り、俺に負けてくれなんて一言も言わない」 

リョウ「それはお前が親父さんを、藤堂流を何より誇りに思ってるからだ」 

リョウ「だったら、俺が本気で闘わないことが良いことなはずがない」 

リョウ「ありがとよ、藤堂の……いや、香澄。おかげで目が覚めたぜ」 

香澄「……!」 

581: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:20:25.31 ID:bmoR5/qt0
リョウ「そしてここからは、本気だ。今まで悪かったな」 
スッ 

リョウ「オラオラァ!」 
クイクイッ 

香澄「!」 
キッ 
香澄「望むところだ、リョウ・サカザキ!もっと本気で来い!」 
ビシッ 

リョウ「うおおおおお!」 

香澄「はああああ!」 

582: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:27:35.38 ID:bmoR5/qt0



香澄「……はぁ、はぁ……」 
フラッ 

リョウ「……どうした、ここまでか?」 

香澄(つ、強い……!これが極限流の、リョウ・サカザキの真の実力……!) 

香澄(父様はこんなにも強い男と真っ向から挑んだのですね……!) 

香澄(父様……香澄に最後の力を貸してください……!) 

香澄「行くぞ……!リョウ・サカザキ……!」 

583: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:36:11.87 ID:bmoR5/qt0
香澄「超……!」 
ズズズズ 

リョウ(お、おお……限界まで気を重ねて……!) 

香澄「重ね当て!!」 
ズバババババ 

リョウ(この威力……!やむを得ないか……!) 

リョウ「覇王……!」 
ゴゴゴゴ 

リョウ「翔吼拳ーーー!!」 
ズアッ 

584: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:39:06.13 ID:bmoR5/qt0
カッ 
ドオオオン 

香澄「ああーーーっ!!」 
ドォ 



リョウ「……!香澄!」 
ダッ 

香澄「……」 

リョウ「香澄!大丈夫か!」 
ガバッ 

585: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:43:50.21 ID:bmoR5/qt0
香澄「……うっ……くっ……」 
ポロポロ 

リョウ「……香澄」 

香澄「み、見るな……!私の顔を、見るな……!」 
ポロポロ 

リョウ(重ね当てと衝突した分、いくらか翔吼拳の威力が殺されて大怪我にならずに済んだみたいだな) 

リョウ「……最後の重ね当て、見事だった。思わず翔吼拳を撃っちまう程にな。威力、気迫、ともにお前の親父と遜色なかったよ」

586: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:47:29.58 ID:bmoR5/qt0
香澄「……本当か?」 

リョウ「ああ。あれを食らってたら俺がやばかった。見事だったよ」 

香澄「……えへへ」 
ニコ 

リョウ(泣きながら笑って……ひどい顔だぜ) 

リョウ(だけど、最高にいい顔だ) 

587: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:54:19.43 ID:bmoR5/qt0
香澄「……リョウ・サカザキ。今回は私の負けだ。負けた以上は、お前の言うことを聞く」 

リョウ「……ってことは」 

香澄「ああ。事務所のみなさんへの気の指導……私で良ければ引き受けよう」 

リョウ「本当か!香澄!」 

香澄「あ、ああ……この通りすぐには無理だが、傷が癒えたら指導をする」 

リョウ「……すまん、恩に着るぜ」 

588: 名無しさん 2017/02/18(土) 02:57:49.93 ID:bmoR5/qt0
香澄「……それで、その代わりと言ってはなんだが……聞いてくれるか」 

リョウ「ああ、なんだ?できる限りのことはする」 

香澄「私がお前に預けている鉢巻、まだ預かっていてくれ。そしてまた私が力を付けた時に……」 

リョウ「ああ、何度だって相手をしてやるよ。お前と俺はもうライバルだもんな」 

香澄「ライバル……」 

589: 名無しさん 2017/02/18(土) 03:03:23.87 ID:bmoR5/qt0
香澄「……ふふっ」 

リョウ「……どうした?」 

香澄「……!」 
ハッ 

香澄「ず、図に乗るな極限流!お前がわ、私たち藤堂流の仇であることは変わらないんだからな!」 

リョウ「……まぁそんだけ減らず口が叩けるなら心配ななさそうだな……ん?」 


590: 名無しさん 2017/02/18(土) 03:06:38.83 ID:bmoR5/qt0
警察「はーいごめんなさいねーお取込み中」 

リョウ「警察?なんのよ……」 
ガチャン 

警察「はい、15時32分。とりあえず傷害の現行犯で逮捕ね」 

リョウ「……なあああ!?」 

香澄「ええええ!?」 

591: 名無しさん 2017/02/18(土) 03:10:09.57 ID:bmoR5/qt0
警察「いや、言い訳できないでしょ?お嬢さん、可哀想に……怖かったでしょ?そんな……服も……ビリビリに……」 

香澄「え……ああ!?」 

リョウ(さ、さっきの覇王翔吼拳で香澄の制服がボロボロに!気づかなかった!) 

香澄「う、うぅ……」/// 
カーッ 

香澄「うわ、うわああああ!!」 
ダダダダダダ 

リョウ「ええ!?か、香澄!!ど、どこにそんな走っていく元気が!?」 

警察「まぁとりあえずアンタは警察署まで行くぞ。もしもし、パトカー一台手配されたし……」 


592: 名無しさん 2017/02/18(土) 03:13:12.69 ID:bmoR5/qt0
藤堂家 

香澄「はぁ、はぁ……だめだ、もうお嫁にいけない……」 

志津子「香澄、やっと帰ったのですか、生け花の稽古の時間はとっくに……!」 

志津子「な、なんて恰好ですかそれは!一体何をしでかしてきたのです!」 

香澄「か、母様!?い、いえ!これには深いわけが……!」 

志津子「香澄!!」 

香澄「ひいいい!」 

593: 名無しさん 2017/02/18(土) 03:17:11.10 ID:bmoR5/qt0
夜 
事務所 

リョウ「……というわけで、藤堂の母上が香澄を連れて警察署まで来てくれなかったら、俺はもう完全に犯罪者だった」 

ロバート「いやもう本当に堪忍してくれや……ここでお前が逮捕されとったら全部おしまいやでホンマ……なぜ公園で……」 

リョウ「いや、しょうがないだろう……あっちが闘わなきゃ断るってんだから……」 

594: 名無しさん 2017/02/18(土) 03:20:01.53 ID:bmoR5/qt0
ロバート「……ほんで、今度からは藤堂の娘が気のコントロールのレッスンを見てくれるってことでええんか?」 

リョウ「ああ。なんでも藤堂流では門下生の気の指導は行ってたみたいで、香澄も実際に指導していたらしい。これでうまくいけば次の段階に入れる」 

ロバート「そうか……まぁでもLIVEまで残り1か月半……残り期間も少なくなってきた。こっから先は時間との勝負や」 

リョウ「ああ、曲の方ももうすぐ完成する……いよいよ大詰めだ……!」 


602: 名無しさん 2017/02/20(月) 10:08:08.27 ID:rFybApGp0
外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 



ギース「……!」 
タタタン 

ダンサー「ば、馬鹿な……!」 

ダンサー(私のところに『ダンスを教えてほしい』と言ってこの男が現れたのがわずかひと月前……) 

ダンサー(もともと才能はあるように感じた……それにこの男、どこで鍛えたか知らないが、動きに凄まじいキレがある……) 

ダンサー(そう思ったから指導してやることにした……だが)

603: 名無しさん 2017/02/20(月) 10:17:18.09 ID:rFybApGp0
ダンサー(この男は別に私の指導を受けるわけでもなく、ただ私が見せた動きを完全に吸収していった……!) 

ギース「さて先生……これで先生が私に今まで見せてくれた動きはマスターさせて頂いたわけだが……他にまだお見せ頂いてないステップなどはありますかな?」 

ダンサー「……」 

ギース「……どうやらなさそうですな」 

ギース「では、最後に私のダンスを見ていただけますかな?」

604: 名無しさん 2017/02/20(月) 10:28:26.34 ID:rFybApGp0


ギース「……!」 
ザッザッザ 
ズパッ 

ダンサー「……!」 

ダンサー(難易度の高いステップやターンを当然のように連続で組み込み……!) 

ダンサー(さらにあって私のものより精度を高め、自己流にアレンジを……!) 

ギース「……これが、今現在の私の実力です」 

ダンサー「ばかな……ありえない……わたしは……いったい……」 
ブツブツ 

ギース「……心を折られたか。ならばもう貴方に用はない。ダンスの技術、確かに私が頂いた」 
ザッ 

605: 名無しさん 2017/02/20(月) 10:34:56.04 ID:rFybApGp0


ギース(さて、これでダンスは私が指導できるくらいにはなっただろう……後は歌の方だな) 

ギース(こちらも私が指導出来るくらいになれば良いのは良いが……また全て私がやるのも効率的ではないか) 

ギース(どこかに良い人材はいないものか……) 

ギース「ふむ、こういう時は実際に見に行くべきだな」 

606: 名無しさん 2017/02/20(月) 10:40:22.43 ID:rFybApGp0
音楽スタジオ 

ギース「……」 
スタスタ 

???「……」 
スタスタ 

ギース(む……?) 


???「……!」 

ギース「……」 

???「……」 
スタスタ 

607: 名無しさん 2017/02/20(月) 10:50:42.76 ID:rFybApGp0
ギース「……」 

ギース(今の女……動作に全く無駄がない……) 

ギース(……刺客か?) 

???「やあ、ちょっとスタジオを借りてもいいかな?歌いたいんだ」 

スタッフ「あっ木場さん、お疲れさまでーす!どうぞ使ってください」 

ギース「……歌?」 

608: 名無しさん 2017/02/20(月) 10:56:26.06 ID:rFybApGp0
真奈美「~♪」 

ギース(……!) 



ガチャ 

真奈美「ふぅ、こんなもんか……」 

パチパチパチ 
ギース「驚いた。どこぞの刺客かとも思ったが、歌が本業だったとはな」 

609: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:08:13.22 ID:rFybApGp0
真奈美「……おや、アンタはさっきの……廊下ですれ違った」 

真奈美「私の自意識過剰じゃなければさっきは妙に鋭い眼で私を見ていたようだが……私に何か?」 

ギース「ああ、先ほどは無礼を働いた。こういう者だ」 
スッ 

真奈美「ああ、ご丁寧に……!」 

真奈美「ギース・ハワード……!?」 

ギース「おや、私の事をご存知かね」 

610: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:16:23.22 ID:rFybApGp0
真奈美「……これでもこないだまで3年間、アメリカに歌の勉強に行っていてね。アンタはここ2年間は表舞台に出てこなかったが、まさか日本に来ていたとはな」 

ギース「2年……ああ、私がキング・オブ・ザ・ファイターズを開いたのが約2年前だったな」 

真奈美「あちらに友人がいてね。彼女からその大会のとんでもない内容も、主催者の名前も聞いてるよ」 

真奈美「それで、血生臭い格闘大会を開いた青年実業家のアンタが、何の用かな」 

611: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:22:13.01 ID:rFybApGp0
ギース「やれやれ、私の第一印象は最悪だな……それに、名刺に書いてあるだろう、私は今アイドル事務所をやっている」 

真奈美「……それも冗談にしか聞こえないがね」 

ギース「事実だ。……それで、今私のプロダクションでボーカルトレーナーを探していた」 

真奈美「……悪いが今はもう交渉中の事務所があってね。ボーカルトレーナーだったら他を当たってくれないか」 

ギース「いや、そんな些末事はどうでもいい。君、名前はなんという?」 

真奈美「木場……真奈美だが」 



ギース「そうか。ではマナミ、私のプロダクションのアイドルになれ」 

612: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:30:50.08 ID:rFybApGp0
真奈美「……なんだって?」 

ギース「先ほどお前は『ボーカルトレーナー』として交渉中の事務所があると言ったな?だがら私は『アイドル』としてお前をスカウトしているのだ」 

真奈美「……おいおい、アイドルをさせるなら私じゃなくても良いだろう?アイドル業界というのは人材不足なのか?」 

ギース「そうだな、アメリカで磨かれた歌唱力、日々の鍛錬で鍛えているのであろう身体能力、そしてその精悍な顔立ち……これに勝る人材の数というのであれば、不足していると言わざるを得んな」 

真奈美「……えらく褒めてくれるじゃないか」 

ギース「私は世辞など言わん。客観的事実を述べているだけだ」 

613: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:37:06.64 ID:rFybApGp0
真奈美「……だが、私がアイドルなど……」 

ギース「……マナミよ。お前の能力は裏方のそれではない。自らが表舞台に立ち、そして称賛されて然るべき能力だ」 

真奈美「……!」 


ギース「お前は一体なんのためにアメリカで歌唱力を磨いてきた?自己満足の為か?他人に指導するためか?」 

ギース「違うだろう。自らの歌を、他者に認めさせる為だろう」 

ギース「私はその場を設けてやろうというのだ。アイドルとしてのな」 

真奈美「……少し、考えさせてくれ」 

ギース「良かろう。だが、3日だ。それ以上は待たん。その気になったらその名刺の連絡先に掛けてこい」 

614: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:42:00.46 ID:rFybApGp0



真奈美(……) 

真奈美(裏方の仕事が嫌なわけではないし、劣っているとも思わない) 

真奈美(指導もプロの仕事だ。喜びもある) 

真奈美(だが……私は元々、人を喜ばせるために歌い始めたのではなかったか?) 

真奈美(本当は私は、舞台に立って大勢の人に自分の歌を届けたい……そう思っていたはずじゃなかったか?) 

真奈美(しかし、先に交渉している事務所……あそこには大きな不義理を働いてしまう……ボーカルトレーナーとして熱心に私を誘ってくれた) 

真奈美「……私は……」 

615: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:48:54.41 ID:rFybApGp0
事務所 
ガチャ 
ギース「……私だ」 

レナ「あ、ハワードさん。戻ったのね」 

ギース「ああ、当初の目的は果たしたからな。私がいない間、何か変わったことはなかったか?」 

レナ「そうだ、ちょっと貴方、連絡がつかなくなるならちゃんと私以外の娘たちにも伝えておいてよ。あのつかさって娘が連絡がつかない、どうなってるんだって私のところ……っていうかこの事務所に怒鳴り込んできたんだから」 

ギース「別に問題ないだろう。君が対処すれば済む話だ」 

616: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:51:26.79 ID:rFybApGp0
レナ「……ちょっと、私はアイドルのスカウトは受けたけど、貴方の秘書になった覚えはないわよ」 

ギース「お前も私のところのアイドルならば、秘書くらい同時にこなして見せろ」 


レナ「……貴方、碌な死に方しないわよ」 

ギース「フン……」 

レナ「ところでこのひと月、なにしに行っていたの?スカウト?」

617: 名無しさん 2017/02/20(月) 11:55:41.66 ID:rFybApGp0
ギース「色々とだ。そういえば今日が期限だったな」 

レナ「期限?一体何の……」 
プルルルル 

レナ「あ、電話……はい、覇我亜怒プロダクションですが……え?はい、社長なら丁度いま……はい、少々お待ちください」 

レナ「……貴方に電話よ。木場さんって女性の方、スカウトの件だって」 

ギース「うむ、私のいない間に多少仕事を覚えたようだな」 

レナ「……」 
イラッ 

ギース「私だ。マナミか?」 

618: 名無しさん 2017/02/20(月) 12:00:18.03 ID:rFybApGp0
真奈美「木場真奈美だ。よろしく頼む」 

レナ「よろしく、木場さん」 

ギース「やはり舞台に立つことを選んだか。それで良い」 

真奈美「……あんたの思い通りになるのは少々癪だが……私を評価してくれて嬉しかったのは事実だ。プロとして、仕事には全力を尽くさせてもらう」 

ギース「ああ、それとマナミ、お前にはこのプロダクションのボーカルトレーナーも同時に努めてもらう」 

真奈美「……おいおい、アイドルとしてのスカウトじゃなかったのか?」

619: 名無しさん 2017/02/20(月) 12:06:12.91 ID:rFybApGp0
ギース「出来ることはなんでもやってもらうというのが私の方針だ。もちろん、無理だというのなら外部から招聘するが?」 

真奈美「……いや、やらせてもらおう。そういう言い方をされるとな……しかし、釈然としないものはあるが……」 

レナ「こういう奴よ。これから気を付けていきましょう」 

ギース(これでメンバーは4人……あと一人、欲しいところだが、私の眼に適う者は見つかるかな?) 



外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 
 木場真奈美 スカウト編 

終わり 

626: 名無しさん 2017/02/22(水) 00:51:41.94 ID:28R6L8JT0
外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 


事務所 

ギース「……」 

ギース(……マナミが加入してついにレッスンが行えるようになったは良いが……あれから私が欲しいと思えるメンバーが見つからん) 

ギース(別に無理をしてメンバーを加え入れるつもりは毛頭ないが……当初の私の構想である5人組グループは考え直さねばならんか) 

つかさ「お、ボス。なんか思案事か?」

627: 名無しさん 2017/02/22(水) 00:56:34.63 ID:28R6L8JT0
ギース「ツカサか……今日のレッスンはもう終わりか」 

つかさ「ああ、真奈美さんの分はな……今日はアンタはダンスの指導はやらねえの?」 

ギース「今日はな……ふむ……」 

つかさ「いつも全て思い通りだ、みたいな顔してるボスが珍しく煮詰まってそうじゃん」 

ギース「……そう見えるか」 

つかさ「見えるっての。まぁ煮詰まってんならさ、旅行っていうか、気分転換にでも行ってみたら良いんじゃね?環境を変えたら案外すっと問題が解決することもあんだろ」 

628: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:06:11.73 ID:28R6L8JT0
ギース「……フッ、やはり社長をしているだけはあるな。私に仕事の方で提案をしてくるのはお前くらいだ」 

つかさ「提案じゃなくて助言だっつの……ったく。お前、なんか趣味とかねえの?ぬか漬けとか」 

ギース「趣味か……今は私の興味はこのアイドルプロデュースに全て注がれているな」 

つかさ「それじゃあ行ってみたいところとかは?」 


ギース「……そういえば、この国の文化はなかなか素晴らしいな。寺や神社、城……そういったものは非常に好ましく感じる」 

629: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:08:20.58 ID:28R6L8JT0
つかさ「……渋いな……ならそういうものを見に行って来れば。1週間ありゃ目ぼしいところは見て回れるんじゃね?」 

ギース「ふむ……まぁその間はお前たちはボーカルレッスンと自主トレをやっててもらうか……」 

つかさ「ああ、しっかりリフレッシュするのも大事な仕事だしな」 

ギース(私も少々疲れているらしい。ツカサの案を聞いてみるか……) 

630: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:16:06.90 ID:28R6L8JT0
小田原城 

ギース「ほう……これが天守閣からの眺めというわけか……悪くない……」 

ギース「ハッハッハッハッハ!!」 

客「……!?」 
ザワザワ 

ギース「屏風……甲冑……素晴らしい……いずれ私が自分の城を持てばこれらを大量に仕入れよう」 

631: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:19:11.82 ID:28R6L8JT0
日光東照宮 

ギース「おお……!和風建築物がこれほどに……!素晴らしい……!」 

ギース「巨大な鳥居だ……これを作るのに一体どれほどの犠牲を出したのだろうな……!」 


ギース「なんという数の彫刻だ……!この仕事は正気の沙汰ではあるまい」 

632: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:27:45.99 ID:28R6L8JT0
東大寺 

ギース「ふむ……鹿がその当たりをうろついているな……フンッ、餌をねだるなど、野生の獣の本分にそぐわん、欲しくば奪って見せるがいい!この鹿せんべいをな!」 

ギース「……この2体の鬼神……吽形、阿形……金剛力士像か……」 

ギース「なんとも力強い……金剛不壊、か……」 

ギース「……これが、大仏というやつか……巨大だな……」 

ギース「確かに圧倒的だが……表情に覇気が感じられん。悟っているかのような……」 

ギース「それならば、私は先ほどの金剛力士像の方が好みに合っているな。まさにあれこそ鬼、修羅の闘気よ」 

633: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:32:37.18 ID:28R6L8JT0
島根 

ギース(さて……ここでは数多くのこの国の神がいると言われている出雲大社が有名らしい) 

ギース(最も、私は神など信じてはいないが) 


ギース「……どうなっている。歩いても歩いても目的地が見えてこない……人も全くいない」 

ギース(……どうやら道を間違ってしまったらしいな。何処だここは) 

634: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:37:57.78 ID:28R6L8JT0
ギース(……仕方ない、引き返すか。旅の期間も今日までだ) 

ザッザッザッザ 

ギース「……ム?行きにこんな神社などあったか?」 

ギース(……だが丁度いい、せっかくこんなところまで来て何も見ずに帰るのも癪だ。出雲大社の変わりには到底ならんだろうが、少し見ていくか) 

神社 

ギース(……ずいぶん寂れた神社だな。人の気配も無い) 

635: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:44:22.81 ID:28R6L8JT0
ギース(……特に見るべき物もなさそうだな、とんだ無駄足……む?) 

???「……」 

ギース(……女?) 

???「……あら?珍しいですね、人と会えるなんて」 

ギース「……女、いつからそこにいた?」 

???「はい?私は前からここにいましたよ~?」 

636: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:49:58.23 ID:28R6L8JT0
ギース「……」 

ギース(なんだ?この女……) 

???「あの、ご参拝に来られたんですか?それでしたら、こちらに……」 

ギース「ふん、私は神になど興味はない。何か視覚的に面白いものが無いか見に来ただけだ」 

???「あ、そうなんですか~……それなら、見て面白いものはあまり無いかもしれませんね……」 

ギース「……だが、お前には今少々興味がある。私はこういうものだ」 
ピッ 

637: 名無しさん 2017/02/22(水) 01:55:46.46 ID:28R6L8JT0
茄子「あっ、お名刺、どうも……ギース・ハワードさん、芸能事務所のプロデューサーさんですか。私は鷹富士茄子と申します」 

ギース「タカフジ……カコ?今まで私が聞いた日本人の名では異質だな……どういう字を書くんだ」 

茄子「え?字ですか?こういう風に……」 
サラサラ 

ギース「……この下の字は確かナスと読むのではなかったか?」 

茄子「もう、ナスじゃなくてカコですよ~!それはそうとハワードさん、せっかく神社に来られたのですから、ご一緒におみくじ引きませんか~?」 

638: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:01:24.00 ID:28R6L8JT0
ギース「オミクジ?」 

茄子「ご存じありませんか?おみくじは、吉凶を占うために引くくじで、まぁ運試しみたいなものなんですよ~」 


ギース「……いいだろう」 

茄子「それでしたら私から引いて見せますね」 

茄子「この木の箱を振って、出た木の棒に書いてある番号の引き出しから一枚おみくじを引くんです」 
ガシャガシャ 

639: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:06:58.42 ID:28R6L8JT0
茄子「7番……あ!見てください!大吉です!一番良い結果ですよ!」 

茄子「ふむふむ……待人来る……」 

ギース「……」 

茄子「さあ、貴方も引いてみてください!大丈夫!きっといい結果が出ますよ」 

ギース「……」 
ガシャガシャ 

茄子「はい、1番ですね……これです、どうぞ開けてみてください」 

ギース「……」 
ピラ 

640: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:12:43.35 ID:28R6L8JT0
茄子「……わっ、大吉ですよ~!一番いい結果ですね、おめでとうございます!貴方も強運の持ち主なんですね♪」 

茄子「内容はなんと書いてありましたか?もし見かたがわからなければ私が読んであげますよ……えっと、待人来る……あら?」 

茄子(争事……勝てども後に恨みあり……?) 

ギース「……くだらん」 

茄子「え?」 

ギース「先ほどから黙って聞いていれば……こんな紙切れの結果が良かろうが悪かろうが、一体どうしたというのだ」 

641: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:18:35.47 ID:28R6L8JT0
ギース「運、などというモノは存在しない。人の運命を決めるのは本人の意思、能力がすべてだ。決してこのようなくだらん紙切れに左右されるようなものではない」 

茄子「あ、あの、ごめんなさい、お気に障ってしまいましたか……?」 

ギース「フンッ……装いや建築物の文化は私好みだが、この迷信めいた精神的信仰は私には受け入れられんな。縁?運?馬鹿馬鹿しい、目に見えぬ不確定要素を盲信して縛られるなど、愚者そのものだ」 

茄子「……!」 


ギース「それよりもナス、アイドルになる気はないか?お前のそのルックス、そしてその妙な神秘性……十分な素質を……」 

642: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:26:34.11 ID:28R6L8JT0
茄子「……待ってください」 

ギース「……なに?」 

茄子「確かに貴方の言う通り、すべての物事の決め手は最後は自分自身かもしれません」 

茄子「ですけど、人と人との縁……それらを全て否定することは、出来ないと思います」 

ギース「……ほう?では、お前は目に見えぬ、証明することも出来ぬものに価値があるというのか?」 

茄子「はい。今だって、私とあなたはこうして出会えたじゃないですか。これだって、縁です」 

643: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:34:21.74 ID:28R6L8JT0
ギース「……面白い。では、どうする?」 

茄子「……あなたはアイドル事務所をやっているんでしょう?なら私にお手伝いをさせてください。あなたにきっと、この縁を良いものだったと思わせてみせます」 

茄子「そして、もしあなたがそう思ったなら、考え直してください。人同士の絆の大切さを……」 


ギース「フンッ、私はお前がアイドルをやるというならば別にどうでもいい。……だが、そうだな」 

ギース「お前が、アイドルとして少しでも私の心を動かせたなら、考え直そう。その目に見えない、縁とやらを少しは信じてやる」 



ギース(フフフ、この女、やや得体が知れんがアイドルとしては十分すぎる素質を感じる……やはりたまには遠出をしてみるものだな) 

644: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:38:55.50 ID:28R6L8JT0
レナ「……それで、自分からアイドルになりたいって?」 

茄子「はい♪これからよろしくお願いしますね、皆さん♪」 

真奈美「……見た目はおっとりとしているが、肝が据わっているというか、芯がしっかりしているというか……」 

つかさ「まぁ理由はなんでもいいよ。要はアタシらはアイドルとしてのパフォーマンスをこなせるかどうかってとこだけだしな」 

ギース「その通りだ。だが……私が各地を出向いてスカウトしてきた甲斐があった……」 

645: 名無しさん 2017/02/22(水) 02:54:39.71 ID:28R6L8JT0
ギース(そうだ、このメンバーは運や縁などという目に見えぬもので集まったのではない) 

ギース(私が、私の眼で選び、連れてきたのだ) 

ギース(ナスよ、お前にもじきにわかるだろう。純粋な力の前に、運などという言葉はあまりにも脆弱なのだと) 

ギース(そしてナス……お前もその力を持っているのだとな) 


外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 
 鷹富士茄子 スカウト編 

終わり

657: 名無しさん 2017/02/24(金) 00:17:35.68 ID:vDvxsi7o0


リョウ「よし、みんな集まったな」 

拓海「なんだよ、今日は気のレッスン日だろ?」 

リョウ「ああ、それでコロコロ変わって申し訳ないんだが、今日からまた別の奴に講師を頼んである」 

美波「えっ、ユリさんじゃないんですか?」 

ユリ「うん、私も一緒に参加するけど、ちょっと私じゃあこれ以上教えられそうにないしね……」 

658: 名無しさん 2017/02/24(金) 00:24:59.83 ID:vDvxsi7o0
加蓮「坂崎さんでもユリさんでもないとしたら……社長?」 

リョウ「いや、違う。おーい、入ってきてくれ!」 

スタスタ 

香澄「……どうも」 

拓海「香澄!?」 

有香「香澄ちゃん!」 

659: 名無しさん 2017/02/24(金) 00:31:01.55 ID:vDvxsi7o0
リョウ「ああ、今回からは香澄に講師を頼んだ。気の指導に関しては確実に俺たちよりわかりやすくやってくれるはずだ」 

ユリ(……あれ?お兄ちゃん、香澄ちゃんを名前で呼んでたっけ) 

リョウ「というわけで、頼むぞ香澄」 

香澄「……」 
プイッ 

有香(……坂崎さんにそっけないのは前からですけど……) 

美波(……何か……以前と雰囲気が違うような……) 

660: 名無しさん 2017/02/24(金) 00:37:23.37 ID:vDvxsi7o0
香澄(うう……あんなはしたない恰好を見られて……顔が見れない……) 

香澄「……コホン。では、僭越ながらこの藤堂流、藤堂香澄が皆さんの気のコントロールについての指導を務めさせて頂きます」 

悠貴「よろしくお願いしますっ!」 

香澄「あ、はい、よろしくお願いします」 

香澄「聞けば皆さんは既に気を身体に溜める事は出来るとの事ですが……」 

661: 名無しさん 2017/02/24(金) 00:43:47.93 ID:vDvxsi7o0
拓海「ああ、気合を入れたらなんとなく身体に気力が漲ってる……ぽい感じはわかるんだけどよ、その溜まった気合を身体のどこそこに……ってのがわかんねぇんだよな」 

香澄「ふむふむ……あと、皆さんは平行してダンスをとにかく繰り返し練習しているとか」 

美波「うん。基礎的な動作ではあるけど、とにかく身体に染み込ませる為に、反復練習をしてるよ」 

加蓮「お陰で最近はもう毎日筋肉痛みたいな感じだよね……初めに比べれば体力もまた付いてきたと思うけど……」 

662: 名無しさん 2017/02/24(金) 00:51:30.52 ID:vDvxsi7o0
香澄「……その反復練習を始めてもう一月半くらいでしたね?それでしたら皆さん、それぞれ一番得意な動きが出来ているのではないですか?」 

悠貴「……確かに、一番自信があるというか、好きな動きはありますっ」 

拓海「個人的に一番気合が入るステップはあるな」 

香澄「それです。気が充実した時に最も得意な技を繰り出せば、自ずと気が乗る可能性が高まる。そしてそれを繰り返し、『動きに気が乗る』という感覚を掴めば、気のコントロールは成ったも同然です」 

リョウ「なるほど……だが、みんなは前日にそれこそ倒れるまでのダンス特訓をこなしてる……身体は、動くか?」 

663: 名無しさん 2017/02/24(金) 00:57:29.43 ID:vDvxsi7o0
加蓮「やるよ。やる。もうそんなこと言ってられる段階じゃないしね」 

有香「もうここまで来たら根性です!」 

リョウ「……そうか」 

香澄「それじゃあ皆さん、気合を溜めてください。そこから、ぞれぞれ一番得意なステップや動きを、出来るだけ気持ちを込めて行ってください」 


ガチャ 
ロバート「リョウ、ちょっとええか?」 

リョウ「どうした?」 

ロバート「曲……届いたで」 

リョウ「なに?わかった、行こう。香澄、頼んだぜ」 

香澄「……わかってる」 

664: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:05:45.98 ID:vDvxsi7o0


リョウ「……激しい曲だな」 

ロバート「いうて乱舞用の曲やからな、そうならざるを得ん」 

キング「構成としては終盤までは激しくいって、最後のラスサビあたりから乱舞演技……ってことだね」 

リョウ「ああ、体力的にそのあたりで限界を迎えるような構成になってる。乱舞は追い込まれないと発動しないからな」 

ロバート「ただ、体力的に追い込まれるだけでなく、逆に気力は限界まで充実してないとアカン……こら難儀やなぁ、わかっとったけど」 

665: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:14:30.41 ID:vDvxsi7o0
リョウ「キング、明日からはこの曲のダンス指導に移ってくれ。これを繰り返し練習してれば、自ずと体力も追い込まれるはずだ」 

キング「ああ。で、気のレッスンの方はどうなんだい?」 

リョウ「ああ、香澄がやってくれてるはずだ。見に行ってみるか」 



美波「はぁっ!」 
タタン 

有香「覇っ!」 
ダン 

悠貴「それっ!」 
スパッ 

リョウ「……!」 

666: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:22:16.54 ID:vDvxsi7o0
リョウ(驚いた……!個人差はあるが、みんな気が乗っている……!) 

ロバート「おお……!」 

香澄「……どうですか皆さん?気が込められている感覚はわかりますか?」 

加蓮「……なんだかステップしてる間、足がじんわりあったかいような……」 

有香「……あたしははっきり『熱い』と感じます」 

拓海「そうだな、アタシもけっこう熱いって感じたぜ」 

香澄「その辺りは個人差があるようですが、先ほど見た感じでは皆さん、気が乗っていました」 

667: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:28:47.91 ID:vDvxsi7o0
悠貴「ほ、ほんとですかっ!?」 

美波「この暖かさが……気……」 

香澄「はい。そして、気を込めたステップやターン……何も込めてない時と比べると、かなり疲れたと思います」 

拓海「確かに……こりゃ連日の疲れとは別もんだぜ……」 

香澄「それは気力を消費したからです。気力の消費は体力の消費とはまた別のもの……精神的な疲れとでも言いましょうか」 

香澄「気を伴った動きは何をするにしても気力を使うものです」 

668: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:37:29.97 ID:vDvxsi7o0
リョウ「その通りだ。そして乱舞を使うにはこの気力を充実させていなければならない」 

加蓮「坂崎さん」 

リョウ「この短期間での気の習得、見事だ。お前たち、本当に頑張ってくれたんだな」 

拓海「おいおい、まだ肝心の乱舞が成功したわけじゃねえだろ……」 

リョウ「それでも、本当に凄いことなんだこれは。ウチの道場で気を使える門下生も数えるくらいしかいない」 

リョウ「……でも、そうだな。乱舞だったな。乱舞は身体は極限まで追い詰められて、しかし気力は極限まで充実して初めて条件が揃う」 

669: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:47:31.26 ID:vDvxsi7o0
リョウ「ヘロヘロの身体を、気力が動かす。そんなイメージだ」 

リョウ「お前たちは連日の特訓で、自分たちの身体の限界を知ったはずだ。残りの乱舞会得のカギは、気力」 

リョウ「あと、さっき今度のLIVE用の曲が届いた。明日からは、ダンスレッスンはこれの完成に向けて切り替える」 

美波「曲が……!」 

リョウ「あともう少しだ……あともう少し、俺たちについてきてくれ」 

悠貴「はいっ!」 

拓海「ったりめーだ!」 

670: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:53:10.20 ID:vDvxsi7o0
ハンバーガーショップ 

加蓮「……それにしても、本当に私たち、気なんてものを使ったんだね……なんか信じられないかも」 

拓海「普通に生きてる分にはおおよそ関わりがねぇだろうからな……」 

加蓮「ホント、アイドルになってからは信じられないことばっかりだよ……もちろんいい意味でね」 
モグモグ 

拓海「ほんとお前ポテト好きだな……」 

671: 名無しさん 2017/02/24(金) 01:59:03.12 ID:vDvxsi7o0
加蓮「いいの、これが私の元気の源……あれ?」 

拓海「どした?」 

加蓮「あそこに座ってるの、Reppuの娘じゃない?」 

拓海「……なに?」 
クルッ 



つかさ「つまりさ、これをアタシらがやれば絶対バズると思うんだよ」 

志希「うんうん、バズるバズるー♪」 
モグモグ 

つかさ「ちゃんと聞いてるか!?」 




拓海「……いい所で会えたもんだぜ。きっちり話、つけなきゃな」 
ガタッ 

676: 名無しさん 2017/02/27(月) 21:06:05.37 ID:9IKQa2xc0
加蓮「拓海?……ちょっと、喧嘩はやめてよね」 

拓海「ちげーっての!」 




拓海「よう、邪魔するぜ」 

つかさ「……ん?アンタ、確か極限drea娘の向井拓海か」 

拓海「……思ったより覚えてんだな、アタシらの事。もう忘れられてんのかと思ったぜ」 

つかさ「前共演したことがあって、また今度共演する予定がある同業者の顔くらい覚えてるっつーの。馬鹿にすんなよ?」 


677: 名無しさん 2017/02/27(月) 21:10:21.74 ID:9IKQa2xc0
志希「そうそう。一度嗅いだ良い匂いはそうそう忘れないよー?あっちの、加蓮ちゃんもね」 

加蓮「!?」 

加蓮(うそ……私そんなに体臭きついの……!?) 

つかさ「それより、何か用か?別に和気あいあいと談笑する仲でもないだろ?」 

拓海「つれねえなオイ……まぁいいや。ちょっとこっちから提案があるんだよ。今度のLIVE……QOIの事でさ」 

つかさ「……へえ?」 

678: 名無しさん 2017/02/27(月) 21:20:06.87 ID:9IKQa2xc0





つかさ「……まぁまぁ面白い提案だけど、そりゃアンタの案か?」 

拓海「んにゃ、美城のニュージェネレーションズの奴からだよ。本当はそいつがお前らに直接提案したかったらしいけど、お前ら最近全然番組とかに出てこねぇから共演の機会がないからって事で共演歴があるアタシが代わりに頼まれた」 

つかさ「ふーん……まぁいいや、一回ウチのボスに話を通して……」 

拓海「あー、それなんだけどよ、この件は内密のうちに進められねぇか?プロデューサー連中も含めてサプライズって事でさ」 

つかさ「……そりゃいくらなんでも無謀なんじゃね?QOIはウチのボスの主催で開催すんのにそのボスに内密でやるのは筋が通らなくね」 

679: 名無しさん 2017/02/27(月) 21:32:06.39 ID:9IKQa2xc0
拓海「別に何もLIVEをめちゃくちゃにしようってんじゃねえ、ファンサービスの一環みたいなもんなんだしさ、なんとかなんねえか?こんな機会もう今後二度とないかもしれないだろ?」 

志希「うんうん、良いんじゃないの♪」 

つかさ「……確かにウチの事務所のアイドルにも反対する奴はいないと思うけどな……まぁいいや。じゃあ他のメンバーには伝えといてやるよ」 

つかさ「それと、コレはアタシの個人アドレス。必要なデータとかはこれに送れよ」 

加蓮「あ、じゃあそれは私がやるよ。拓海あんまりメールとかわかんないでしょ」 

拓海「……」 

680: 名無しさん 2017/02/27(月) 21:41:04.56 ID:9IKQa2xc0
つかさ「じゃあそろそろアタシらは行くわ……けど、忘れんなよ。今度のLIVEも一番のパフォーマンスをするのはアタシたちReppuだからな」 

拓海「……へっ、言ってろ。目にもの見せてやるぜ」 



加蓮「……とりあえず、なんとか乱舞を完成させないと目にもの見せられないね」 

拓海「わかってるっつーの。明日からはいよいよ本番曲のレッスンだろ!このまま完成まで突っ走ってやるぜ」 


681: 名無しさん 2017/02/27(月) 21:52:31.72 ID:9IKQa2xc0
翌日 
キング「さて、昨日リョウからあったように、今日からは本番用の曲の完成を目指していく。これまたキツイ曲だが、あくまでこの曲の根幹は乱舞だからね……まずは振付を覚えるんだ」 

悠貴「はいっ!」 



拓海「……ハードだなこれは」 

有香「ですけど、後半部分の何も振付が設定されてない部分……そこが……」 

キング「ああ、肝心の部分さ。この当たりからはあんた達はもう乱舞に入って、自分たちの本能に従ったダンスをしている……予定さ」 

キング「ま、とにかくLIVEはもう少しだ!気合いを入れな!」 

682: 名無しさん 2017/02/27(月) 21:54:00.28 ID:9IKQa2xc0



香澄「集中力を切らしてはいけません!気力を十全に、全身に満ちるような感覚を!」 

美波「……!」 

悠貴「えいっ……!」 

拓海「うおおお!身体が熱いぜ!」 

683: 名無しさん 2017/02/27(月) 22:05:12.36 ID:9IKQa2xc0


ギース「……完成だな。Reppuよ、良くやった」 

レナ「はぁ、はぁ……ようやく、お墨付きを貰えたわね……」 

志希「……今回の曲はさすがに難しかったねー!」 

真奈美「全く……無茶をさせるな、私たちのボスは」 

ギース「お前たちなら出来ると思ったからやらせたのだ。そして事実、お前たちは完成させた。あとはこれをQOIでやればお前たちの勝利は揺るぎない」 

684: 名無しさん 2017/02/27(月) 22:16:56.08 ID:9IKQa2xc0
茄子「……でも私たちが本当にほしいのは勝利じゃなくて、ファンの皆さんや見てくれる人たちの感動ですよ」 

ギース「心配するな、これを見て魂が打ち震えぬ者はいないだろう」 

茄子「それは貴方も、ですか?」 

ギース「フン、どうかな。それは本番でのお前たちの出来次第だ」 

茄子「……」 

ギース「ハッハッハッハ!待ち遠しいなQOI!いや、我らがアイドル界のトップに立つ日が!」

685: 名無しさん 2017/02/27(月) 22:22:23.71 ID:9IKQa2xc0



リョウ「……みんな、集まったな」 

美波「はい、5人、集まりました」 

拓海「……おいおい、キングさんも香澄も、みんな集まってんじゃねえか。何事だよ」 

リョウ「……ここ3か月、みんな本当によく頑張ってくれている。キングからも、香澄からもいい報告を聞いてるよ」 

悠貴「ほ、本当ですかっ?えへへっ」 

686: 名無しさん 2017/02/27(月) 22:27:25.85 ID:9IKQa2xc0
リョウ「……だが、本番まで残りは一週間だ。というわけで、ここいらで一つ仕上げに入りたい」 

加蓮「……っていうことは」 

リョウ「ああ。お前たちがこの段階で乱舞に至ったかどうか、確認をしたい」 

リョウ「今から本番の時と同じように曲を通しでやってもらう。その中で乱舞が発動するかどうか……みせてもらう」 

美波「……リハーサル、ですね」 

リョウ「ああ。キングと香澄、トレーナーさんにも一緒に見てもらって、曲と気……両方の完成度を測る」 

リョウ「準備ができたら、始めてくれ」 


687: 名無しさん 2017/02/27(月) 22:31:59.19 ID:9IKQa2xc0

美波(……振付は、もう何度も練習した。確かにハードなダンスだけど……) 
タッタン 

有香(この辺りはもう……モノにしています!) 
タッタッタ 

加蓮(……あとは気力を霧散させないように) 
スパッ 

悠貴(だけど、ダンスは全力で……!) 
タン 

拓海(乱舞に、入ってやる!!) 
ダン 


688: 名無しさん 2017/02/27(月) 22:39:59.00 ID:9IKQa2xc0
美波「はぁ……はぁ……」 

拓海「……クソ……なんで……」 

有香「……」 

悠貴「……乱舞に……入れませんっ……!」 

リョウ「……いや、みんなご苦労さま。キングたちと少し話し合うから、今日はもう上がって身体を休めてくれ」 

加蓮「……」 

689: 名無しさん 2017/02/27(月) 22:48:54.24 ID:9IKQa2xc0
キング「……曲の完成度は十分だよ。最近の特訓のお陰でダンスのキレが本当に増してる」 

香澄「気のコントロールも皆さんかなり上達しました。……今なら得意の動きならかなりの精度で気を乗せられる」 

キング「……ただ」 

香澄「ただ……」 

リョウ「……乱舞には、未だ至らない……か」 


ロバート「はぁ~……イケると思たんやけどな……」 

690: 名無しさん 2017/02/27(月) 23:01:52.05 ID:9IKQa2xc0
キング「実際ダンスの方は乱舞部分以外ほぼ完璧だよ。この短期間でよくぞここまで仕上げたと思う」 

香澄「……気の方も、皆さん最後まで集中を切らさず、乱舞パートまで持続させていました」 

リョウ「何が足りない……って言っても最初から上手くいく保障はなかったんだが……俺の目から見ても乱舞発動の足りない要素が見当たらなかった……」 


キング「ダンスや気は指導出来ても、乱舞に関しては私たちはわからない……リョウ、ロバート、わかるのはあんた達だけだよ」 

リョウ「……ロバート、レッスンルームに来てくれ」 

ロバート「……おう」 


691: 名無しさん 2017/02/27(月) 23:08:53.71 ID:9IKQa2xc0
レッスンルーム 


リョウ「……どう思う?ロバート」 
ヒュッ 

ロバート「どうもこうもあらへんがな……何が足りひんのやら」 
ブン 

リョウ「……乱舞発動に足りないもの……」 
シュッ 

ロバート「……」 
パシッ 

リョウ「……待てよ。そもそも、乱舞発動と言ってるが、俺もお前も、今まで自分が狙ったタイミングで乱舞を発動出来たことがあったか?」 

692: 名無しさん 2017/02/27(月) 23:17:09.27 ID:9IKQa2xc0
ロバート「……ワイはワイラーとやった時やな……あの時もかなり追い込まれて、もうアカンってなった時に自然に……」 

リョウ「それだ。俺はMr.KARATE……親父と闘った時、ギースと闘った時、そしてこの前のBIGと闘った時……いずれも発動しようと思って発動出来たわけじゃない……極限まで追い込まれて、自然に発動した……」 

ロバート「……ってことは」 

リョウ「……ああ」 

ロバート「せやけど、いよいよ一か八かになるで。本番前なんやから、万一ということもあるし試すというわけにもいかんからホンマにぶっつけになる」 

リョウ「……だったら、あとはもう少しでも確率を上げる為に動くだけだ。明日からのレッスンは軽めの調整にして、本番にすべてを賭けるしかない」 

693: 名無しさん 2017/02/27(月) 23:27:14.22 ID:9IKQa2xc0
翌日 
悠貴「……えっ?」 

美波「振付の動作を確認して、終わり……ですか?」 

キング「ああ。リョウからの指示でね。これから本番までは、とにかくケガだけないように、心身をピークに持っていけるように調整だとさ」 

香澄「同じく、気のレッスンも気の持続の訓練のみです」 

拓海「なんだそりゃ!?昨日アタシらがしくじったからって、もう乱舞は諦めんのか!?」 

694: 名無しさん 2017/02/27(月) 23:32:42.66 ID:9IKQa2xc0
有香「まだ、あと6日あるじゃないですか……!」 

キング「落ち着きな。リョウは諦めるとは一言も言ってなかった」 

加蓮「……あれ?そういえば坂崎さんは?」 

ロバート「リョウならちょっと交渉に行っとる。乱舞を成功させるためにな」 

美波「交渉……?」 

695: 名無しさん 2017/02/27(月) 23:41:43.48 ID:9IKQa2xc0
覇我亜怒プロダクション事務所 

リョウ「……」 

ギース「……ようこそ覇我亜怒プロへ。LIVEも目前だというのに、一体何のようだ、リョウ・サカザキ」 

リョウ「……今日は、交渉に来た」 

ギース「交渉だと?」 

696: 名無しさん 2017/02/27(月) 23:50:55.62 ID:9IKQa2xc0
リョウ「……ああ。今度のQOI……ステージに上がる順番はもう決まってるんだよな?」 

ギース「無論だ。お前たち極限drea娘はトリのReppuの一つ前だ。中々良い位置を用意してやったと思っているが」 

リョウ「……無理を承知で、頼む。極限drea娘をトリに置いてくれないか」 

ギース「……なんだと?」 

リョウ「……」 

ギース「これは大胆に来たものだ。私が主催するこのQOIで、私のReppuをトリから外せというのか」 

リョウ「……ああ」 

697: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:02:01.47 ID:YS0L+lnP0
ギース「言っておくが、ステージに上がる順番を後にすればReppuを上回れると考えているのなら、勘違いも甚だしいぞ。今度のReppuの新曲はその程度の小細工でひっくり返るような完成度ではない」 

リョウ「Reppuは関係ない……俺たち側の都合だ……」 

ギース「フン……だが、聞けんな。QOIはReppuが最高のパフォーマンスをして、最高の盛り上がりのまま終幕を迎える。これは決定事項だ」 

リョウ「……」 

リョウ「トリまで待ってもらえたら……ウチもそれに対抗出来るモノを見せられるとしたら?」 

ギース「なに?」 

698: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:13:53.93 ID:YS0L+lnP0
リョウ「詳しくは話せないが、ウチは今パフォーマンスが完成するかどうかの瀬戸際のところにある。もし成功すれば、あんた達に勝る……かどうかは約束出来ないが、見劣りしないモノを見せられる」 

リョウ「そして、その成功率を上げるには少しでも本番直前に時間が欲しいんだ……頼む」 
バッ 

ギース「……頭を下げてまでか」 

ギース「……なるほど、それだけのモノが見られると言うのなら私も再考しないこともない。どのみちReppuが最高のパフォーマンスをするのは揺るがんだろうがな」 

リョウ「……本当か!」 

699: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:14:38.56 ID:YS0L+lnP0
ギース「だがリョウ、これは交渉だ。もし貴様が言うパフォーマンスが失敗し、私を失望させたとしたら、貴様は一体どう落とし前をつける」 

リョウ「……それは……」 

リョウ「……もし極限drea娘がパフォーマンスを失敗すれば……俺は、拳を捨てよう」 

ギース「……!」 

700: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:20:14.67 ID:YS0L+lnP0
ギース「……一体、何をそんなに必死になる?リョウ。極限流空手はお前の人生そのものだろう」 

ギース「そしてこのアイドルのプロデュースなど、ただの片手間、お遊びのようなものだろう。その為に、貴様は命とも言える拳を捨てられるというのか」 

ギース「それとも、貴様にとって拳はその程度の価値しかないか?今後はずっとアイドルプロデュースで食っていく気か?」 

リョウ「……極限流は俺の人生……お前の言う通りだ、ギース」 

リョウ「アイドルのプロデュースが片手間……それもお前の言う通りだ。この前まではな」 

701: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:27:20.68 ID:YS0L+lnP0
リョウ「だが、今の俺にとってはあいつらは家族も同然……かけがえのないものになった。それこそ、極限流と秤にかけられるくらいにな」 

リョウ「それに、俺はあいつらは条件さえ整えてやれば、必ず成功させると信じてる。だから、拳を捨てる気も本当はさらさら無いのさ」 

ギース「……大した自信だな。良いだろう、ステージに上がる順番は調整してやる」 

ギース「そこでもし、極限drea娘がReppuに匹敵するパフォーマンスを見せなければ、私自らお前の格闘家生命を断ってやろう」 

リョウ「……ああ。礼を言うぜ、ギース」 

ギース「礼などいらん。せいぜい今のうちに成功率を少しでも上げる努力をすることだ」

702: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:37:24.10 ID:YS0L+lnP0
リョウ「ああ……じゃあこれで失礼するぜ。……ああ、そうだ」 

ギース「……なんだ?まだ何かあるのか?」 

リョウ「……いや。だが、あんたのReppuを語るときの顔……悪党とは思えん、無邪気な顔だと思ってな。まるで自慢の娘を紹介する父親のような……俺も大概だと思うが、あんたも大概だぜ」 
ガチャ 
バタン 

ギース「……戯言を」 

ギース「……」 

ギース(……私が、無邪気……?) 

703: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:44:14.02 ID:YS0L+lnP0
6810プロ事務所 

リョウ「……戻ったぞ」 

ドドドド 

拓海「オイ!てめえサカザキ!このレッスンメニュ-どういうことだオラァァァァァ!!」 

有香「もう乱舞は諦めてしまったんですか!?坂崎さん!」 

リョウ「うおおお!……脅かすな、乱舞を諦めたなんて、そんなことあるか」 


704: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:50:56.00 ID:YS0L+lnP0
美波「……ですけど坂崎さん、残りの期間は本番に向けて調整って……まだ乱舞は成功してないのに……」 

加蓮「そうだよ。説明してくれなきゃ、諦めたと思われてもしょうがないんじゃない?」 

拓海「それに交渉に行ってきたって聞いたけど、どこに何の交渉に行ってきたんだよ」 

リョウ「……そうだな。順に話す」 

リョウ「まず、交渉に行ってきた件だが、今度のQOI、極限drea娘はトリを務めることになった」

705: 名無しさん 2017/02/28(火) 00:58:07.22 ID:YS0L+lnP0
悠貴「……ええっ!?」 

有香「い、一番最後ってことですか!?」 

ロバート「ほ、ホンマか!?」 

リョウ「ああ、今ギースの所に交渉に行ってきた」 

キング「……よくそんな無茶をあの男が承諾したね」 

リョウ「……まぁそれは俺の交渉力だな。成長してるんだ、俺も」 

ロバート「……」 

706: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:01:38.46 ID:YS0L+lnP0
美波「……けど、私たちがトリを務めることと、乱舞の成功にどういう関係が?」 

リョウ「それだ。……今まで俺たちは乱舞の発動に向けて厳しいレッスンを課してきた。それにお前たちは文句も言わずついてきてくれた。本当にありがとう」 
ペコ 

拓海「な、なんだよ……気持ち悪いな……」 

リョウ「だが、俺は気やダンスの精度に注目し過ぎで、一番重要なことを忘れていた」 

リョウ「今まで俺たちは狙って乱舞を出せたことはない。出せたのは、『本当に極限まで追い込まれた時』だけだった」 

加蓮「……まさか」 

リョウ「ああ。だから、今度のLIVE本番直前にお前たちを極限まで追い込む。その方法が……」

707: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:05:48.39 ID:YS0L+lnP0


拓海「……マジで頭おかしいな」 

加蓮「さすがの私もちょっと引くよ」 

美波「……しかもここまでやって、成功するかどうかはわからない……」 

有香「それどころか、これ本番ちゃんとあたし達ステージにまともに立てるんでしょうか……」 

悠貴「うう……」 

リョウ「俺も馬鹿げてると思う。だが……他に思いつかなかった」

708: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:10:23.57 ID:YS0L+lnP0
リョウ「どうする?これが本当に最後の確認だ。この馬鹿げた案に乗るか。今からでも遅くない、乱舞を通常のダンスに差し替えてやるか。実際お前たちのダンスはこの3か月で飛躍的に上達した。むしろその方が良いパフォーマンスが出来るかもしれない」 

拓海「……そうだな。流石に今回のこれは馬鹿としか言いようがねぇよ」 

加蓮「おまけにそこまでやっても分が悪いしね」 

リョウ「……」 

有香「……けど」 

拓海「けど、それを言うならこの事務所の、主にプロデューサーが散々馬鹿げた事を今までやらかしてきてるからな」 

709: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:16:01.82 ID:YS0L+lnP0
悠貴「そうですねっ!トラック吹き飛ばしたりっ!」 

加蓮「人前で天狗のお面被ったり……命を懸けて私たちを守ってくれたり」 

美波「だから坂崎さん、今更私たちは逃げたりしません」 

有香「だから……あたしたちも最後まで坂崎さんについていきます」 

リョウ「……よし!なら、プラン通り、本番当日までは今までの特訓で疲弊した身体の回復と調整だ!すべては当日、乱舞を成功させるために!」 

710: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:20:03.59 ID:YS0L+lnP0
夜 
ロバート「……それにしても馬鹿げた案やな」 

リョウ「ああ……だが、あいつらは今や体力も相当なものになった。体力的に追い込もうとしたら、もう生半可なものじゃ無理だ」 

ロバート「まぁそれはわかるけどな……」 

ロバート「……なぁリョウ」 

リョウ「なんだ?」 

ロバート「正直に言うてくれ。お前、ギース・ハワードとどんな交渉をしたんや?あいつがトリを譲るなんて、半端な条件やないやろ」 


711: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:25:01.68 ID:YS0L+lnP0
リョウ「……お見通しか。参ったな」 

ロバート「アホ、伊達に社長やないねんでワイは。……で、どうなんや?」 

リョウ「……実は」 




ロバート「はああ!?もし本番失敗したら、拳を、極限流を捨てる!?」 

リョウ「声がでかいぞ……」 

ロバート「そらでかくもなるわ!何考えとんねん!お前から極限流取ったら何が残るんや!」

712: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:30:37.82 ID:YS0L+lnP0
リョウ「……酷え言い草だな。元々空手しか無いって俺にプロデューサーをやらせたのはお前じゃねえか」 

ロバート「そ、そらそうやけども……いくらなんでもそれは……」 

リョウ「心配するな。みんなが本番を成功させてくれれば済む話だ」 

リョウ「……それに、今回の乱舞だって、あいつらにとってはリスクだらけの賭けだったんだ。それを首謀した俺がなんのリスクも背負わねえのは対等じゃないしな」 

ロバート「……お前はアホやアホやとは思っとったけど、そこまでアホやとはな……ったく、何が交渉力や」 

713: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:38:15.03 ID:YS0L+lnP0
リョウ「すまないな」 

ロバート「別にワイに謝られても……いや、無理言ってリョウを日本に連れ出して、帰ってきたら格闘家生命終わってました、なんてことになってたらワイ師匠に殺されるな……」 

リョウ「……すまん」 

ロバート「……もうエエわい!お前が格闘家生命賭けるってんならワイはモノホンの命賭けたる!本来なら責任取るのはトップの仕事やからな!」 



香澄「……そんな……!」 

714: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:43:57.66 ID:YS0L+lnP0
本番3日前 

リョウ「みんな、集まったな?本番用の衣装が完成して、今日届いたぞ」 

悠貴「わあっ!可愛いっ……!」 

拓海「おお……こりゃベースは空手着なのか……けど、アタシらそれぞれデザインが違うんだよな」 

リョウ「ああ、基礎のベースは統一しつつ、細かいデザインは一人ひとりのイメージに合わせて変えてある。もちろん、お前らの希望に応じてな」 

ユリ「デザインは私もちょこっと口出ししたんだよ!」

715: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:50:47.95 ID:YS0L+lnP0
ロバート「その名も、『キョクゲンドレス』!金かかっとるで~デザイン料も個別やからな」 

ロバート「ほら、みんなが加入した時にワイが最高にイカした2つ名を付けてたやろ?」 

ロバート「美波ちゃんは女神、拓海は特攻隊長、有香ちゃんは黒帯、悠貴ちゃんは恐るべき13歳、加蓮ちゃんは純情かれん……」 

ロバート「その2つ名をデザイナーに伝えてイメージさせて作った衣装や!どや!参ったか!」 

キャイキャイ 

リョウ「……聞いてないな」 

ロバート「……」 

716: 名無しさん 2017/02/28(火) 01:57:20.52 ID:YS0L+lnP0
リョウ「よし、衣装の確認も終わったな。あとは軽く調整して、今日は終わりだ」 

ちひろ「あ、プロデューサーさん、ちょっと良いですか?領収書で確認したいことが」 

リョウ「!?なんか間違えてましたか!?」 
タタタタ 

ロバート「おっと、ワイも会食の時間やな……ほなみんな、カーマン呼んどるから早いとこ帰るんやで」 

美波「はい。お疲れ様でした」 

717: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:00:50.94 ID:YS0L+lnP0
拓海「……んじゃあ、アタシらも帰るか」 

香澄「……待ってください。皆さんにお伝えしなきゃいけない事があります」 

有香「香澄ちゃん?……どうしたんですか、改まって……」 




加蓮「……私たちが失敗したら……」 

有香「坂崎さんの格闘家生命が断たれる……!?」 

香澄「はい。そういう話になっていると、先日聞きました。みんなに話すかどうか迷ったけどやっぱりみんな知っておいた方が良いと思って」 

718: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:06:19.65 ID:YS0L+lnP0
加蓮「なんでそんな……」 

拓海「ほんとワケわかんねえ野郎だなアイツは……なんでそこまですんだよ……」 

美波「……信じてくれてるからじゃないかな」 

香澄「……え?」 

美波「坂崎さんは私たちが絶対に成功させるって信じてるから、無茶な条件に応じたんだと思う」

719: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:12:06.86 ID:YS0L+lnP0
悠貴「……そうですねっ」 

拓海「……まぁそうだな。元々アタシらも失敗する気なんてねえ」 

加蓮「……そうだね」 

有香「香澄ちゃん、話してくれてありがとうございます。お陰で、ますます絶対に成功させるって気持ちが強まりました」 

拓海「よっしゃあ!アタシらがやる事は変わらねえ!絶対に当日成功させんぞ!」 

悠貴「おーっ!」 


香澄(……余計な心配だったかな) 

香澄(だけど、誰かの為、というのは最後の最後に力になることがある。願わくば、これが皆さんの背中を押す最後の力になれば……) 


720: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:16:26.14 ID:YS0L+lnP0
LIVE前日 

リョウ「いよいよ明日が本番だ。みんな、今日はゆっくり休んで体調を整えてくれ。……明日は修羅場だからな」 

「はいっ!」 

美波(いよいよ明日……全部出し切るっ……) 

拓海(ブッコむだけだ……アタシの全てを……!) 

有香(坂崎さん……社長さん……事務所の皆さん……香澄ちゃん……師匠……見ててください……あたしの全身全霊……!) 

悠貴(きっと成功させて……みんなで笑って終わるんですっ!) 

加蓮(こんなところで終わらせない……坂崎さんのこれから……私たちのこれからを……!) 

721: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:23:01.84 ID:YS0L+lnP0
覇我亜怒プロダクション 
事務所 


ギース(私が無邪気だと?……何を言っているのだあの男は) 

レナ「……ちょっと。こないだまでノリノリだったのに、6810プロのプロデューサーさんが来てから口数が減ったじゃない。本番は明日なのよ?」 

つかさ「そうそう、何か景気付けの一言もないのかよ?」 

ギース「……特に必要ないだろう?お前たちが今までやってきた事を出せば、栄光は向こうからやってくる」 

722: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:27:01.46 ID:YS0L+lnP0
真奈美「……」 

茄子「……何か、ありましたか?」 

ギース「別に、何もない」 

ギース(……そうだ、私は何も変わってはいない。アイドルのプロデュースも所詮は余興だ。天下を取れば、それで終わりの余興……) 

ギース(それが終われば私は再びサウスタウンへ、あの飢狼の街へと戻り、邪魔者を消す。その為に私は日本に来たのだ) 

ギース(だが……なんだこの胸のざわめきは) 

ギース(もしや私は、続けたいと思っているのか?このアイドルたちのプロデュースを……) 


723: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:32:58.56 ID:YS0L+lnP0
志希「……確かに、最近のボスの匂いは会った時から変わったかもね?」 

志希「危険な、刺激的な感じは減ったけど、優しい匂いになった気がする。志希ちゃん的には、今の匂いの方が好きかも。にゃははははっ♪」 

ギース「……!」 

レナ「……ハワードさん?」 

ギース「……無駄口は終わりだ。明日全力を尽くせるよう、今日はもう帰宅するが良い」 

つかさ「……まぁそれもそうだな。じゃあ帰って休ませてもらうわ」 

724: 名無しさん 2017/02/28(火) 02:39:34.63 ID:YS0L+lnP0
真奈美「ああ、明日は最高のパフォーマンスをしよう」 

志希「それじゃ、おっつかれ~♪」 

レナ「……」 

茄子「……ハワードさん、明日……きっと貴方の心も動かして見せますからね」 
ガチャ 
バタン 

ギース「……」 

ギース(私は……) 

731: 名無しさん 2017/03/04(土) 14:19:48.59 ID:hN1d7W2o0
翌日 
会場 
ワアアアアアアアア 


ユリ「……すごい人の数だね」 

ロバート「そうやな……まぁ箱のでかさも然ることながら、今回のは本当にアイドル達の祭典みたいな感じやからな……」 

キング「この熱気……開演してからもう尋常じゃないね」 

732: 名無しさん 2017/03/04(土) 14:24:18.78 ID:hN1d7W2o0
MC「さあ次のユニットは謎のプロデューサーHUHAが手掛ける圧倒的声量を誇る二人組ユニット、『G・S・G(グレート・シャウト・ガールズ)』!」 

恵磨「さあ!!いくよ茜!!!」 

茜「はい!!!恵磨さん!!!」 

不破(忍隠れ)「ゆけいっ!!!声量こそパワー、パワーこそ絶対だということを見せつけてやるのだ!!!」 


恵磨「ッシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 

茜「ボンバアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 

不破(忍隠れ)「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 

733: 名無しさん 2017/03/04(土) 14:30:26.26 ID:hN1d7W2o0
ビリビリ 

ギース「……会場が揺れているようだが」 

レナ「今歌ってる子たちの声とお客さんたちの歓声ね……何か野太い叫び声も聞こえる気がするんだけど」 

ギース(ふむ……ここまで序盤を消化して、客の盛り上がりも上々……招待したアイドル達は皆良いパフォーマンスをしてくれているようだ) 

ギース(だが、最も盛り上がるのは我がReppuのステージだ……それまでステージを温めてくれるが良い……しかし……) 


ギース「……おい、極限drea娘は、まだ会場入りしていないのか?」 

スタッフ「え?は、はい、引率のプロデューサーの方も含めて連絡がつかないようで……」 

ギース(……リョウ、何を考えている……まさか逃げたのではあるまいな……) 


734: 名無しさん 2017/03/04(土) 14:36:40.29 ID:hN1d7W2o0
路上 

拓海「はぁっ……はぁ……」 
タッタッタッタ 

通行人「……おい、あの娘たちって、アイドルの……なんだっけ?」 

有香「ふうっ……はっ……」 
タッタッタッタ 

通行人B「あれだよ、確か極限drea娘だ。なんでこんなところ走ってんだ」 

加蓮「はぁ……はぁ……」 
タッタッタッタ 

735: 名無しさん 2017/03/04(土) 14:46:35.61 ID:hN1d7W2o0
通行人「しかもあの恰好……あれって多分LIVE用の衣装じゃね?」 

悠貴「はっ、はっ」 
タッタッタッタ 

通行人B「……え?ってことは何?走ってLIVE会場向かってんのか?」 

美波「はあ……はあ……」 
タッタッタッタ 

リョウ「出演予定時間まで2時間を切ったぞ!みんな、ペースを上げていくぞ!!」 
タッタッタッタ 


~~~~~~~~~~~~~~ 
~~~~~~~~ 
~~~~ 


736: 名無しさん 2017/03/04(土) 14:53:21.66 ID:hN1d7W2o0
6日前 

リョウ「俺は気やダンスの精度に注目し過ぎで、一番重要なことを忘れていた」 

リョウ「今まで俺たちは狙って乱舞を出せたことはない。出せたのは、『本当に極限まで追い込まれた時』だけだった」 

加蓮「……まさか」 

リョウ「ああ。だから、今度のLIVE本番直前にお前たちを極限まで追い込む。その方法が……」 

リョウ「お前たちには、LIVE直前にフルマラソンを走ってもらう」 

拓海「……は?」 

美波「あの、坂崎さん、良く意味が……」

738: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:05:05.08 ID:hN1d7W2o0
リョウ「この6810プロの事務所からQOIの会場までの距離が大体約40キロだ。そこまで、走って向かう」 

有香「……え?その、走って会場入りして、そのままステージに立つってことですか?」 

加蓮「いやいや、さすがに無理でしょ……色々と無理な点はあるけど……」 

リョウ「お前たちがアイドルになってからというもの、徹底的な体力トレーニングと最近までやっていたダンスレッスンでお前たちの体力ははっきり言ってアイドルとしては破格のものだ」 

リョウ「それはフルマラソンを走破出来るレベルになってると俺は見ている……だが、ただ完走するだけじゃ、逆にお前たちは極限までは追い込まれない。ちょっと鍛えすぎたな」 

739: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:09:28.51 ID:hN1d7W2o0
リョウ「悠貴、フルマラソンの女性ランナーの完走者の平均タイムはどれくらいだ?」 

悠貴「え?えっとっ、確か大体5時間……10分くらいですっ」 

リョウ「じゃあお前たちを限界まで追い込むには4時間くらいのペースだな」 

拓海「待て待て待て!アタシらその後LIVEだぞ!?しかも曲自体も相当ハードだぞ!」 

リョウ「そうだ、無茶な位じゃないと極限状態まではいかない。だから当日はこの事務所を出演予定時間から逆算して4時間前に出発する。その為に出演の順番を最後に回してもらった」 

美波「あの……そんなギリギリのスケジュールだと、着替えやお化粧の時間が無いと思うんですけど……」

740: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:15:03.30 ID:hN1d7W2o0
リョウ「もし予定より早く着けば時間は取れるが、間に合わない可能性もある。だから最悪会場に着いたその足でステージに立てるよう衣装を着たまま走る。化粧は……最悪、なしだ」 

加蓮「ええ~……」 


リョウ「我ながら馬鹿げていると思うし、最悪LIVEに間に合わないかもしれない。だが、乱舞が出るくらいまでお前らを追い込むにはこれくらいしないとだめだと思った」 

リョウ「どうだ?」 

~~~~ 
~~~~~~~~ 
~~~~~~~~~~~~~~ 


拓海「……やっぱり……冷静に考えると……頭おかしい……」 
タッタッタッタ 


リョウ「さあ!急げ急げ!」 

742: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:21:27.99 ID:hN1d7W2o0
会場 

ロバート「ああ……しかし不安や……一応カーマンに張り付かせてるとは言え……」 

キング「そもそも会場入りに間に合わないかもしれないってんだからとんでもない話だよ全く……」 





MC「さあ次はこれまた謎のプロデューサーEIJIが手掛ける和武術系ユニット!『KISARAGI』の登場だ!」 


あやめ「忍術!」 

珠美「剣術!」 

翠「きゅ、弓術……」 

影二「往け……各々の技を持って、KISARAGIこそ最強であることを証明するのだ……!」

743: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:27:33.99 ID:hN1d7W2o0
ギース「ほう、これはまた凝ったパフォーマンスだ……クナイに竹刀に矢が飛び交っているぞ」 

真奈美「……いや普通に危険じゃないのか?」 

ギース「盛り上がっているのだ、別に構わん」 

つかさ「いいのか……」 

744: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:36:10.82 ID:hN1d7W2o0

加蓮「……」 
タッタッタッタ 

有香「……加蓮ちゃん……大丈夫ですか……」 
タッタッタッタッタ 


加蓮「はあ……はあ……」 
フラッ 

悠貴「あっ……!」 


ガシッ 
拓海「……シャキッとしやがれ。全員でステージに立つんだよ」 

加蓮「……拓海……うん、ありがとう……」 

美波「みんな、がんばろう……!もう半分は過ぎてるよ……!」 

リョウ「そうだ!もし途中で倒れたら全員俺が背負ってく!心配するな!」 


745: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:42:30.14 ID:hN1d7W2o0

MC「さあ!次は最近人気急上昇中!美城プロからニュージェネレーションズの登場だ!」 

卯月「それじゃあ……行きましょう!凛ちゃん!未央ちゃん!」 

凛「うん、私たちの……ステージへ!」 

未央ちゃん「よーし!それじゃあ行くよ!せーの!」 

「「「生!ハム!メロン!」」」 

ワアアアアアアアアアア 


流れ星を探そうよ 夜が明ける前に 
この物語は 
一つ星たちの 出会いのキセキ

746: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:48:06.50 ID:hN1d7W2o0
ギース「……」 

茄子「……どうしましたか?ニュージェネレーションズの子たちに何か感じましたか?」 

ギース「……フン、余計な詮索は良い……それより、もうすぐ出番だぞ。準備は万全か?」 


レナ「……」 


つかさ「……」 


ギース「フン……出番が近づいてきて緊張してきたか」 

747: 名無しさん 2017/03/04(土) 15:57:36.20 ID:hN1d7W2o0
真奈美「まぁ、流石にな」 

志希「まぁ大丈夫じゃない?こないだもつかさちゃん本番前はガチガチだったけどちゃんとやってたし~」 

つかさ「バッ、おま、余計な事言うな!」 

志希「にゃはははは!」 

レナ「……ふふっ」 

ギース(フン、これなら心配はいらんな) 

ギース(……極限流はまだ来ないか) 

748: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:04:07.35 ID:hN1d7W2o0


リョウ「頑張れみんな……あと少しだ……!」 

有香「はぁ……はぁ……」 

悠貴「うう……」 

リョウ「……思い出せ。今までのレッスンを……!」 

美波「……」 

リョウ「思い出せ……!あの時の悔しさを……!」 

拓海「……!」 

リョウ「思い出せ!あの喜びを、達成感を!」 

有香「……!」

749: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:12:00.38 ID:hN1d7W2o0
リョウ「お前たちが経験した苦しさ、喜び!血の滲むようなレッスン!全てはステージで出し切るために!」 

悠貴「……!」 

リョウ「お前たちを待っているファンのために!そして何より……お前たち自身の努力に報いる為に!頑張れ!美波!拓海!有香!ユウキ!加蓮!」 

加蓮「……!」 

有香(……そうだ、立たなきゃ……!) 

悠貴(待ってくれているファンの人たちの為にも……!) 

拓海(これまでバカみてーなレッスンに耐えてきた自分のためにも……!) 

美波(けど、それだけじゃない……) 

加蓮(私たちを信じて自分の一番大切なものを懸けてくれた……坂崎さんの為にも……!) 


リョウ「……!」 

751: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:20:46.94 ID:hN1d7W2o0
ロバート「……さて、次はいよいよ大本命、Reppuの出番やな……」 

キング「前回の曲の時点で完成度や技術的なところはずば抜けていた……なら今回は一体どれほどのモノを出してくるのか……怖くもあり、正直楽しみでもあるね……」 

ユリ「……なんだかお客さんたちもさっきまでの熱狂ぶりが嘘みたいに逆に静かになってきてるね」 

ロバート「そんだけReppu目当てに来た客も多いんやろな……」 






ギース「……まず、ひとつ。良くぞここまで私の要求に応えてきてくれたな。お前たちは間違いなく私が見込んだ通りの逸材だった」 

レナ「……」 

つかさ「……」 


752: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:26:50.48 ID:hN1d7W2o0
ギース「だが、それもすべては今日の為だ。今日もし失敗すれば今まで積み上げてきたものは全て水泡に帰すと言っていい」 

志希「……」 

真奈美「……」 

茄子「……」 

ギース「……しかしだ。お前たちに限ってそれはないと私は確信している」 

ギース「何故なら、失敗する要素がないからだ。お前たちの研鑽の日々、そして今の表情……成功しか見えんよ」 

ギース「これが私からの最後の要求だ。Reppuよ!今こそアイドル界をその風で席巻し、簒奪するのだ!」 

753: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:33:07.44 ID:hN1d7W2o0
志希(始めは暇つぶしくらいに思った。だけどその人に連れてきてもらったステージは今までのどんな匂いより刺激的で、いつのまにかここから離れられなくなった) 

レナ(一時は自棄を起こした。だけどステージに立つうちに、ここにこそ私が求める刺激があると思った。いつしか、ステージに立つのが楽しみになっていた) 

つかさ(始めは馬鹿げていると思った。だけど、本気じゃない奴なんて誰もいなかった。いつしか、本気でステージで輝きたいと思ってるアタシがいた) 


真奈美(歌えればどこでも良いと思っていた。だが、思い出した。私は多くの人に自分の歌を聴いてもらいたいから歌い始めたのだと。ステージで歌うことこそが私の生きがいであると) 

茄子(この人を心から笑顔にさせたいと思った。それは今も変わらない。変わったことと言えば、笑顔にしたい人の人数が増えたことくらいだった) 



MC「さあ!ついにこの人達が登場だ!アイドル界に激震をもたらしたデビュー曲から謎の沈黙を経て、新曲を引っ提げて帰ってきた!覇我亜怒プロ、Reppu!歌う曲は、『キッスにしょうゆ』!」

754: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:40:23.10 ID:hN1d7W2o0
ワアアアアアアアアア 


ロバート「な、なんやその曲名!?全然わからん!」 

キング「……!全員、和装してる……!?」 

ユリ「かわいい!」 



kiss me kiss me kiss me kiss me baby 

kiss me kiss me kiss me kiss me baby 

ロバート「こ、これは……」 

ユリ「和ロック!和ロックだよロバートさん!」 

キング「ダンスは……舞踊ベースだけど、激しい……!」 

755: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:48:59.62 ID:hN1d7W2o0
I want what, and you are a kiss, or is it soy sauce? 

Because it which hands both is your wish 

ロバート「和装で、和風音楽で、ダンスは舞踊で、歌詞は英語!?ど、どないなっとんねんこれは……!」 

I want all of you in return 

No, because I have value not to let you say same as it 



ワアアアアアアアアアア 

756: 名無しさん 2017/03/04(土) 16:54:16.67 ID:hN1d7W2o0
レナ「ハァ……ハァ……」 

つかさ「……やった……」 

志希「うん……完ぺき……」 

真奈美「ふう……」 

茄子(……どうでしたか、ハワードさん……!) 


ギース「……」 
パチパチパチ 

ギース「……」 


ギース「……よく、やったな。シキ、レナ、ツカサ、マナミ、カコ」 

757: 名無しさん 2017/03/04(土) 17:07:23.67 ID:hN1d7W2o0
ワアアアアアアアアアアアア 


ロバート「……」 
パチパチ 

キング「……」 
パチパチ 

ユリ「……すごかったね」 

ロバート「ああ……これは認めるしかないわな……」 

キング「私は日本舞踊には明るくないが……あの激しい曲調に一体となって融和する美しい舞い……尋常な訓練ではなかっただろうに……」 


758: 名無しさん 2017/03/04(土) 17:15:54.20 ID:hN1d7W2o0
ワアアアアアアアアアア 

ロバート「会場も盛り上がりまくっとる……しかしリョウたちは……」 

香澄「いえ……みんな、着いたようです」 

ユリ「香澄ちゃん!」 





ギース「……何?今舞台裏に極限drea娘が到着した?フラフラで?」 

スタッフ「は、はい……どうやら走って会場入りしてきたようで……どうしますか?化粧直しの時間などは……」 

ギース「時間が押している。もしステージに上がる気があるようならもう今すぐ上げさせろ。化粧直しの時間など取れん」 

スタッフ「は、はい!」 
ダッ 

ギース「フン……リョウ、何が狙いだ?」 

759: 名無しさん 2017/03/04(土) 17:24:33.25 ID:hN1d7W2o0
舞台裏 

ロバート「み、みんな!よ、予想は出来てたけどフラフラやんけ!」 

美波「……」 

拓海「……」 

ユリ「汗だくだし、髪の毛も乱れてるし、ドレスもくちゃくちゃだよ!い、急いで直さないと……」 

有香「……」 

悠貴「……」 

加蓮「……」 

スタッフ「す、すみません!極限drea娘さん、もしステージに上がれるならもう出てください!時間が押してるので!」 

760: 名無しさん 2017/03/04(土) 17:33:30.15 ID:hN1d7W2o0
リョウ「……いけるか?みんな……」 

拓海「……ったりめー……だ……」 

加蓮「なんの……ために……ここまで……きたと……」 

キング「……」 

美波「だい……じょうぶです……」 

有香「……ぜったいに……ステージを……」 

悠貴「乱舞を……っ」 

リョウ「……極限drea娘!!」 

「!」 

761: 名無しさん 2017/03/04(土) 17:41:11.24 ID:hN1d7W2o0
リョウ「いいか!行くぞ!!」 

リョウ「極限!!!」 

美波「……ふぁい、と……」 

ロバート「……極限!!」 

拓海「……ファイト」 

有香「ファイト……」 

ユリ「極限!!」 

悠貴「ファイトっ……!」 

加蓮「ファイト……」 


リョウ「極限!!!」 

「FIGHT!!!」 



762: 名無しさん 2017/03/04(土) 17:49:33.58 ID:hN1d7W2o0
MC「……おっと!ついに本日トリを務めます極限drea娘が姿を現しました……が……?これは……」 

ザワザワザワ 


「オイオイ、なんかボロボロじゃねえか?」 

「みんなフラフラしてるし……」 

「LIVEできんのかコレ」 

「最後の最後にどうなってんだよ」 

「るっせー!アネゴ達が舞台に立った以上、ハンパなモン見せるわきゃねーだろが!!」 



ザワザワ 

763: 名無しさん 2017/03/04(土) 17:55:12.32 ID:hN1d7W2o0
MC「あ~……本日トリを務めます極限drea娘、曲は『乙女乱舞』、どうぞ!!」 


キング「……」 

香澄「……」 

ユリ「神様……お願い……」 

ロバート「……」 

リョウ「……」 

764: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:02:23.07 ID:hN1d7W2o0
乱るる花びら、髪、乙女 

舞うは花びら、髪、乙女 

命燃やして乱れ舞う 

美波(つ、つらい……!い、意識が…) 

加蓮(だめ……もう、もうもたないかも……) 



ギース「……あの状態で、激しいダンスをよくやっていると評価は出来るが……」 

ギース「……?」 


765: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:10:51.56 ID:hN1d7W2o0
誰がために乙女は舞うのか 

何のために乙女は舞うのか 



拓海(ああ……やべえ……音楽が聞こえなくなってきた) 

加蓮(これ、やばいんじゃないの?死ぬの?) 



ユリ「……あれ?これって……もしかして……」 

香澄「もしや……」 


766: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:15:22.89 ID:hN1d7W2o0
誰の為でもない 

何の為でもない 

悠貴(私、今踊れてるのかな……?わからなくなってきた……) 

有香(ああ、何も聞こえない……けど……身体は……動く……) 

ただ乱れ舞うために在る 

その為の命

767: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:19:52.71 ID:hN1d7W2o0
ロバート「……おい、リョウ……」 

リョウ「……ああ」 

美波(自分がどんな顔をしているかもわからない……けど、身体の底から湧き出してくる、これが……) 

ギース「……馬鹿な……!」 
ガタッ 

ギース「乱舞……龍虎乱舞……か!?」 



乱るる花びら、髪、乙女 

舞うは花びら、髪、乙女 

命燃やして乱れ舞う 


768: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:26:03.24 ID:hN1d7W2o0
リョウ(パッと見ただけだと、5人が全員バラバラの動きをめちゃくちゃにやっているようにも見える) 

リョウ(だが、会場にいる者は皆感じている……そうじゃないと) 

リョウ(今ここで行われているのはまさに生命の、魂のパフォーマンス) 

リョウ(もはや理屈じゃない。この乱舞は見る者の心を、魂を、燃やし尽くすまで打ち続ける!) 



乱るる花びら、髪、乙女 

舞うは花びら、髪、乙女 

命燃やして乱れ舞う 

769: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:31:38.59 ID:hN1d7W2o0
ワアアアアアアアアアアアアアア 

美波「……」 

拓海「……」 

有香「……」 

悠貴「……」 

加蓮「……」 


ロバート「……見事や」 

キング「……ああ」 

ユリ「うう~……みんな……すごいよ……」 
グスグス 

香澄「やり遂げましたね、皆さん……」 

リョウ「……本当にすごい奴らだよ、あいつらは……」 

770: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:35:53.41 ID:hN1d7W2o0
ギース「……」 

ギース(技術的なところで語れば、Reppuと極限drea娘は比べるまでもない。というよりやつらのパフォーマンスは無茶苦茶だった。評価のしようがない) 

ギース(だが、やつらは物差しで測れぬ人の感情の奥底……魂に訴えかけてきた) 

ワアアアアアアアアアアアアアアア 

ギース(その証拠がこの歓声……Reppuの時のモノに勝るとも劣らない……) 

ギース(フン……認めてやろう、リョウ。貴様の、いや、貴様らのパフォーマンスはトリまで待ってやるだけの価値があったと……!) 


ギース「……おい、今日の日程は終了した。早く幕を下げろ」 

スタッフ「い、いえ、それが……」 

ギース「……なんだ?」 

771: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:41:39.51 ID:hN1d7W2o0
リョウ「……おい、あいつら、動かないぞ……気絶してるんじゃ……」 

ロバート「いや、待て、リョウ!なんや様子が……」 



拓海「……最後に、もう一発だな」 

悠貴「はいっ……!」 



ゾロゾロ 

つかさ「おう、お疲れ。流石の私たちもちょっとビビったぜ」 

真奈美「とんでもないことをやってのけるな君たちは……」 

レナ「遅れてやってきてボロボロだった時は何事かと思ったけどね」 

志希「にゃはははは!すごい!よくわかんなかったけどすごいよキミたち!」 

茄子「本当に、すごかったですよ~♪」 

772: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:47:24.10 ID:hN1d7W2o0
ギース(あいつら……?ステージに上がって何を……いや、Reppuだけじゃない……!) 

未央「お疲れー!Reppuも極娘もすごいね!」 

卯月「私、感動しました!」 

凛「……けど、大丈夫?今にも倒れそうだけど……」 

加蓮「大丈夫だよ……!せっかくの機会だしね……!」 


ロバート「今日の出演グループが……全部ステージに?何する気や」

773: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:52:40.90 ID:hN1d7W2o0
ザワザワ 

~♪ 


リョウ「音楽が流れ始めた……!これは……全員で合唱するのか……!」 

ユリ「この曲……美城プロの曲の……『つぼみ』だ……!」 




ちらばった星屑ひとつ 
拾い上げてくれた君の 
手のひらの中 
ひそかに輝きはじめてる 

774: 名無しさん 2017/03/04(土) 18:58:47.47 ID:hN1d7W2o0
ギース「勝手な真似を……!奴ら全員共犯者か……」 



いつもと同じ空なのに 
感じていた 胸さわぎは 
今日という未来を感じてたから 



リョウ「……」 

ロバート「……」 




夢の  
夢の中の出来事じゃなく 
この場所から 君へと歌うよ 

776: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:04:01.53 ID:hN1d7W2o0
小さな光を 胸に抱いて 
青空へと飛ばそう 希望の種 
歩んできたみち 忘れないように 
君がいれば 
またひとつ花は咲く 

ギース「……」 

ギース(私は……)

777: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:06:04.62 ID:hN1d7W2o0

リョウ(様々な想いが交錯し、そして発露したクイーンズ・オブ・アイドルズ……QOIは成功でその幕を閉じた) 

リョウ(しかし、その後第2回QOIが開かれることは二度と無かった) 

リョウ(運命の夜が終わり、新たなる宿命が始まる) 

778: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:10:33.28 ID:hN1d7W2o0
数日後 


リョウ「おはよう、みんな」 

美波「た、大変です坂崎さん!」 

リョウ「どうしたんだ、そんなに慌てて……」 

拓海「と、とにかくテレビを見ろって!」 

ギース『ええ、先ほどから何度も申し上げております通り、我が覇我亜怒プロダクションは本日付で解体となり、当プロダクションに所属しているグループ『Reppu』及びそのメンバーたちは解散となります』 

リョウ「……Reppuが、解散だと!?」 

779: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:15:22.70 ID:hN1d7W2o0
数時間前 

つかさ「……は?よく聞こえなかったんだけど」 

ギース「ならばもう一度言おう。Reppuは本日をもって解散だ」 

レナ「……何を言っているの?正気?」 

ギース「お前たちは先日のQOIで見事その力を証明した。もう私がやることは何もない。だから解散だ」 

真奈美「……それは短絡的に過ぎるだろう」 

780: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:21:33.47 ID:hN1d7W2o0
ギース「今後のお前たちの身の振り方ならば心配することはない。お前たちほどの実績があればどこでも移籍は拒まんだろう。紹介状も書いてある。それとも、何ならツカサ、お前がそのまま社長になるか?それならば形は変わらずそのままだ」 

つかさ「……要するに、アンタが出ていきたいだけってか。何だ?こないだのLIVEで何か気に食わない事でもあったのか?」 

茄子「……最後の、合唱ですか?私たちが勝手な事をしたから……」 

ギース「ふっ……そうではない」 

つかさ「じゃあなんだっての!」 
バン 

781: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:26:42.29 ID:hN1d7W2o0
ギース「……」 

ギース「……飽きたからだ」 

志希「……!」 

レナ「……!」 

つかさ「なん……だって?」 

ギース「私の君たちに対する、アイドルに対する興味は尽きた。中々に楽しませてもらったが、生涯の仕事にするには足らなかった」 

真奈美「……」 


782: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:31:09.68 ID:hN1d7W2o0
ギース「どうだ?ツカサ、納得したか?で、どうする?この覇我亜怒プロの全てをそっくりそのままお前に譲って……」 

つかさ「ふざけんな。マジで失望したわ……こんなヤツを今までボスにしてきて、アタシ自身の見る目の無さに」 

つかさ「じゃあな。もう二度とアタシの前に現れるなよ」 
ガチャ 
バタン 


ギース「……というわけだ。お前たちももう自由にしてくれて構わんぞ」 


783: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:35:05.61 ID:hN1d7W2o0
志希「ん~……これからどうしょっかな?アイドルは結構楽しかったし、どこかに移ろうかな……」 


志希「あ、ハワードさん?」 

ギース「なんだ?」 

志希「楽しかったよ?刺激的な体験、ありがとね?にゃはは♪」 
ガチャ 
バタン 

ギース「……ふん」 

784: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:39:03.25 ID:hN1d7W2o0
真奈美「……私も失礼させてもらう」 

ギース「これからどうするつもりだ?」 

真奈美「さてね……私は歌えればどこでも良いさ。短い間だったが、得難い経験を与えてくれたことだけは、礼をいっておくよ」 

ギース「礼などいらん。それはお前の力にふさわしい対価だった」 

真奈美「……アンタ……いや、やめておこう。それではな」 
ガチャ 
バタン

785: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:45:28.93 ID:hN1d7W2o0
ギース「……どうした?お前たちも、どこへでも行くがいい」 

茄子「……ハワードさん。貴方こそ、この後どうするつもりなんですか?」 

ギース「お前たちには関係ない……と言いたいところだが、私はサウスタウンに帰る。そこから先はお前たちは知る必要はない」 


レナ「……それは、私たちには手伝えない仕事……なんでしょうね」 

ギース「無理だ。お前たちは今後一切関わる必要もない。この国で、穏やかに過ごすがいい」 


786: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:48:37.78 ID:hN1d7W2o0
茄子「ハワードさん……最後にひとつ、聞かせてくれませんか」 

茄子「私たちの歌は……パフォーマンスは……貴方の心に届きませんでしたか?」 

ギース「……」 

ギース「……そうだな」 

ギース「もう行け。私もすぐにここを発つ」 

茄子「……ハワードさん。貴方に幸運を」 

レナ「……じゃあね。もう会うこともないでしょう」 

ガチャ 
バタン 

787: 名無しさん 2017/03/04(土) 19:55:02.93 ID:hN1d7W2o0
茄子「……」 

レナ「……」 

茄子「うっ……」 
グス 

茄子「うええええええ……」 
ポロポロ 

レナ「……よしよし。泣かないで茄子ちゃん」 

茄子「レナ……さん……私……あの人を……助けてあげられませんでした……うっ……」 
グスグス 

レナ「……自分を責めないで。あの人を縛っている鎖が何なのかはわからなかったけど……それを断ち切ってあげられるのは……私たちじゃなかったみたい」 

レナ「あとは祈りましょう……あの人をいつか誰かが解放してくれるように……」 



レナ(何も心に届かなかったですって……?) 

レナ(……最後の最後で、嘘が下手なんだから)

788: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:02:17.84 ID:hN1d7W2o0


ギース「……」 

ギース「……貴様か」 

リョウ「……ああ」 

リョウ「聞いたぜ。どういうつもりだ」 

ギース「別にどうもこうもあるまい。私はアイドルプロデュースの目的を果たした。だから終わりにした。それだけだ」 

リョウ「……嘘つけよ。あんなに楽しんでたやつが……急にこんな心変わりを起こすか」 

789: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:08:29.15 ID:hN1d7W2o0
ギース「自分の物差しで私を測るな。初めから私にとってアイドルプロデュースなど単なる余興、暇つぶしに過ぎなかったのだ。興味が尽きれば、捨てる。それだけだ」 

リョウ「……怖かったんだろう」 

ギース「……なに?」 

リョウ「はじめは余興だったかもしれない。だがプロデュースをしていくうち……その魅力に触れていくうち……」 

リョウ「Reppuをみているうち、あんたはこの生き方も悪くないと思い始めた」 

790: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:14:19.90 ID:hN1d7W2o0
ギース「……黙れ」 

リョウ「そして、この間のQOI……そこであんたは決定的な程心を動かされるのを感じた!それで、あんたは思ったわけだ!自分は牙を失いかけているんじゃないかと!」 

ギース「黙れ!」 
ズバッ 

リョウ「ッツ!」 

ギース「ずいぶんお喋りになったな、リョウ……!元々私はこの日本には最強の武術を得る為に来ていたのだ。サウスタウンに帰り、君臨する前に貴様の身体を使って最強の私を試してやろうか……!」 


791: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:20:51.49 ID:hN1d7W2o0
リョウ「……いつもの余裕はどうした?図星を突かれたか」 

リョウ「……だが、どのみちこのままのお前を放っておくわけにはいかない……!俺が、力づくでもお前を止めてやる」 

ギース「リョオオオオオオオオ!!!」 

リョウ「ギィイイイイイイス!!」

792: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:25:51.15 ID:hN1d7W2o0




リョウ「……」 

ギース「……床がアスファルトでなくて命拾いしたな……貴様の奥義をもってしても私を止めることはできなかった……クッ……」 
ヨロ 

ギース「ハァ……ハァ……!」 

リョウ「……どうしても、行くのか……」 

ギース「……リョウ。私には、この生き方しか出来ん。今まで血に濡れた道を歩んできた。そしてこれから更に血に塗れるだろう」 

ギース「全ては……あの男……クラウザーに抗うために……その為の道だったのだ……」 

リョウ「……」 

793: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:32:22.45 ID:hN1d7W2o0
ギース「アイドル達と歩んだこの道は……悪くなかった。だが、やはり私にはこの道を歩み続けることは出来ん。この道は……あの娘たちは……私には眩しすぎたのだ」 

リョウ「例え今は眩しくても……見つめ続ければそのうち目が慣れてくるだろう」 

ギース「ハッハッハ……無理だな。目が慣れるには、些か私は暗い所に居すぎた」 

リョウ「……」 

ギース「さらばだ、極限流最強の男よ。私はサウスタウンに帰る。もし、私を止めたくばいつでもかかってくるが良い。その時こそは……どちらかが死ぬまで闘おう」 

794: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:37:11.83 ID:hN1d7W2o0
リョウ「ギース……」 

ギース「……リョウ」 

ギース「……礼をいう」 
ザッザッザッザ 

リョウ「……なんて顔しやがる……これじゃあお前を憎みきれねえじゃねえか……」 


その後、俺が再びギースと生きて会うことはなかった 

そしてReppuという伝説のアイドルユニットは、そのあまりにも短い活動期間の中で数々の痕跡をアイドル界に残した。まさにその名の如く、烈風のように。 

そして、俺も…… 


795: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:42:08.75 ID:hN1d7W2o0
数か月後 

ちひろ「あ、プロデューサーさん?今ちょっとよろしいですか?」 

リョウ「はい?どうしましたか?」 

ちひろ「なんだか国際電話が掛かってきてて……タクマさんという方からみたいなんですけど」 

ロバート「……んな!?」 

リョウ「……親父!?」 

796: 名無しさん 2017/03/04(土) 20:49:06.47 ID:hN1d7W2o0
タクマ『……リョウ、久しぶりだな』 

リョウ「親父……急にどうしたんだ?何かあったのか?」 

タクマ『いや、お前たちの活躍はこちらの方にも届いてきている……日本で大人気のアイドルだそうだな。先に帰ってきたユリに聞いてるぞ』 

リョウ「ああ……おかげさまでな」 

タクマ『うむ……お前たちの活躍のおかげで極限流の知名度も、収入も……ゲフンゲフン、お前もかなり成長したと聞いてる』 

リョウ「……親父?」 

タクマ『……ここいらが潮時だ。リョウ、お前に道場を任せようと思う。サウスタウンに、帰ってこい』 

リョウ「……な、なんだって……!?」 

806: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:06:21.86 ID:egMIYKsb0
ロバート「……またエラく急な話やな……」 

リョウ「ああ……俺ももう少し猶予をくれと言ったんだが……」 

ロバート「……まぁ確かに先だってのQOI以降、極娘の人気も上がってトップアイドルの仲間入りしたと言ってエエからな」 

リョウ「ああ、QOIな……結局、乙女乱舞はもうあれっきりの曲になっちまったな」 

ロバート「そらそうやろ……1曲やるたびにフルマラソン走らせたらホンマ死んでまうで」 

ロバート「……あれから、いろいろあったなぁ」 

807: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:12:36.45 ID:egMIYKsb0
リョウ「そうだな……美波は最初のグラビア以降も撮影系の依頼はかなり入ってきてるし、なんというか……色んな……うん、色んな衣装を着てるな」 

ロバート「それで言うたら拓海も大概衣装着とるな。まぁ主にかわいい系の……けどだいぶ慣れてきたみたいやな。最初のグラビア撮影の時は大変やったで説得するの……」 

リョウ「有香はこの前拓海と一緒にテレビ出たな」 

ロバート「ああ、バレンタイン企画のチョコ作るやつやな。有香ちゃんは意外とこう、バラエティ向きなんかもしれんな。空手技でスタジオ沸かせられるし」 

ロバート「悠貴ちゃんはこないだバンビのコスプレしとったな」 


808: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:15:52.86 ID:egMIYKsb0
リョウ「ああ、本人も楽しそうだったし、現場からの評判も良かった。あの娘にも今後はそういった仕事がたくさん入ってくるかもな」 

ロバート「加蓮ちゃんはどうや?あのドラマ以降は?」 

リョウ「そうだな。サブキャストとしては良く出演依頼が来てる。主役のオーディションも受けてるが、やはりなかなか難しい。だが、何より本人がやる気だ。落ちても腐らず、課題をもって普段のレッスンに取り組んでる」 



ロバート「……なんていうか、若い娘の成長の速さってのは凄まじいなぁ。みんなこの約1年の内に別人のようや」 

リョウ「そうだな」 


ロバート「……まぁ、だからこそ6810プロはもう安定軌道に入ってるし、サウスタウンに戻ったキングの後のトレーナーも雇えてる」 

リョウ「……つまり、プロデューサーも新しい人は雇えるってわけか……」 

ロバート「人員としてだけの話で言えばな。……けど、あの娘たちに話せるか?」 


リョウ「……話すさ。遅かれ早かれ、いつかは必ずこの時は来たんだ」 


809: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:19:48.53 ID:egMIYKsb0
ロバート「ああ~、みんな、集まってくれたかいな?」 


美波「はい、5人、集まりましたよ」 

拓海「なんかこういう招集久しぶりだな!QOI以来のLIVEの仕事か!」 

有香「最近はソロでのお仕事ばかりでしたからね」 

リョウ「それだけみんなが世間に認知されたってことだな」 

悠貴「えへへっ……でも、やっぱりグループでのお仕事もしたいですよねっ!」 

加蓮「まぁ、確かにね。で、何の招集なの?」 

810: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:24:42.04 ID:egMIYKsb0
ロバート「……え~と、その……まぁなんというかやな……」 

リョウ「良い、ロバート」 

リョウ「みんな、聞いてくれ」 

拓海「……?」 

リョウ「この度、俺、リョウ・サカザキはサウスタウンに帰って道場を継ぐ事になった。それに当たって、お前たちのプロデューサー職も降りることになった」 

811: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:26:55.39 ID:egMIYKsb0
美波「……え?」 

拓海「……おい?嘘だろ?」 

有香「そ、そんな……!?」 

悠貴「えっ?……えっ……?」 

加蓮「……!!」 

リョウ「いや、本当だ。急な話で申し訳ないが、後任は必ず見つかる。それまではロバートが兼任でやってくれる」 

リョウ「みんな、1年間、頼りないプロデューサーだったが、数々の無茶についてきてくれて本当にありがとう」

812: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:30:13.04 ID:egMIYKsb0
拓海「い、いや!いやいやいや!何急に勝手な事言ってんだよ!アタシらに相談もなしで!筋が通んねえじゃねえのか!?」 

ロバート「……拓海。しゃーないことなんや。もうお前も知っとるやろうけど、元々リョウは道場を継ぐ人間やったのを、ワイが無理言ってプロデューサーにしたんや。先代が今すぐ継げと言った以上、コレはもう覆らん」 

美波「……それでも……急過ぎます……!」 

悠貴「そ、そうですよっ……」 

有香「……でも、しょうがないことなのかもしれません……」 

拓海「有香……!?」 


有香「道場の名は、それこそ創始者の方であれば何より重んずる物……坂崎さんのように強い後継者の方がいるなら、なるべく早く継いでもらいたいというのは当然だと思います……」 

813: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:32:48.65 ID:egMIYKsb0
悠貴「有香さん……」 




加蓮「……いつ、帰るの?」 

リョウ「……明日だ」 

加蓮「明日……」 

拓海「だから早えって!アタシらもこれから仕事入ってんのに……これじゃロクに別れも……」 

リョウ「……俺も引継ぎや整理があるからお前らの仕事には同行できない。こんな最後の最後までバタバタして迷惑かけるが……どうか仕事はいつも通り取り組んでくれ。それが俺のプロデューサーとしての最後の指示だ」 


814: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:36:24.58 ID:egMIYKsb0



加蓮「……」 

拓海「……」 

美波「……ほら、加蓮ちゃん、拓海ちゃん……加蓮ちゃんはこの後ドラマの撮影でしょ?拓海ちゃんもイベントあるし……そんな暗い顔してたら、スタッフの人もファンの人も困っちゃうよ」 

加蓮「……美波はさ、平気なの?もうすぐ坂崎さん、いなくなっちゃうんだよ」 

悠貴「……」 

拓海「明日……明日でアイツいなくなっちまうんだぞ!」 

有香「……加蓮ちゃん……拓海ちゃん……」 

815: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:39:04.06 ID:egMIYKsb0
美波「……本当は平気なんかじゃないよ。けど、もう1日しかないからこそ、残りの時間は笑顔で過ごしたいって、思わない?」 

美波「坂崎さんも暗い顔してる私たちより、笑ってる私たちとお別れしたいと思ってるんじゃないかな」 

拓海「……!」 

悠貴「……うんっ、そうですよねっ!」 

有香「きっと、そうですよ!」 

816: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:42:08.62 ID:egMIYKsb0
加蓮「……ずるいよ。そんな事言われたら……もうウジウジしてられないじゃん」 

拓海「……そうだな。正直文句は全く言い足りねえけど、それは帰った後に社長にぶつけるか」 

有香「そ、それはどうなんですか……」 





美波「……それじゃあちひろさん、坂崎さん、お疲れ様でした」 

拓海「おつかれ~っす」 

有香「お疲れ様です!」 

悠貴「お疲れ様でしたっ!」 

加蓮「……お疲れ」 


リョウ「おう!みんな、お疲れ!」

817: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:45:50.43 ID:egMIYKsb0
リョウ「う~ん……」 
カリカリ 

リョウ「ええい!」 
グシャグシャ 

ちひろ「それじゃあお先に失礼しまーす……あれ?何を書いてるんですか?」 

リョウ「ああ、ちひろさん、お疲れさまです……いや、あいつらに手紙……なんでもないです」 

ちひろ「……ふふ、変に考えずに、素直に思った事を書いたらいいですよ」 

リョウ「……どうも」 

リョウ「……」 
カリカリ 

リョウ(……素直に思ったことを、か。まぁそりゃそうだな。俺は小細工は苦手だしな) 

リョウ「……」 
カリカリ 

リョウ「……そういやこの万年筆……美波に貰ったものだったな……」 

818: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:48:19.11 ID:egMIYKsb0
翌日 
空港 

リョウ「……さて、悪いなみんな、空港まで見送りに来てもらって」 

ちひろ「いえいえ……1年でしたけど、プロデューサーさんとお仕事出来て良かったですよ」 

リョウ「ちひろさん……俺も本当に迷惑をお掛けしました。いつまでたっても頼りっきりで申し訳なかった」 

ちひろ「そんなことありませんよ。プロデューサーさんは本当に成長されてましたよ。最初は領収書を切るって事も知らなかったのに……」 

リョウ「ははは……」 

819: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:51:23.38 ID:egMIYKsb0
リョウ「美波、拓海、有香、ユウキ、加蓮。お前らも元気でな」 

美波「坂崎さんも……お体に気を付けてくださいね」 

拓海「……また日本に来たら連絡よこせよ」 

有香「はい……道場にもきてください。師匠がよろしく言っておいてくれと」 

悠貴「……また一緒に走りましょうねっ!」 

加蓮「……絶対また私たちに会いに来てよ」 

リョウ「もちろんだ」 

820: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:55:09.58 ID:egMIYKsb0
有香「ああ、それと……香澄ちゃんから伝言が。『またいつかそちらに行くから、その時まで首を洗って待っていろ極限流』……だそうです」 

リョウ「……香澄らしいな」 



リョウ「……ああ、そうだ。これをお前たちに」 
スッ 

美波「お手紙……ですか?」 

拓海「……何書いてあんだ?ていうか今すぐ口で言えよまどろっこしい」 

リョウ「あー!待て待て!読むのは俺が飛行機に乗ってからにしろ!恥ずかしいから!」 

821: 名無しさん 2017/03/05(日) 19:57:30.05 ID:egMIYKsb0
加蓮「へ~?恥ずかしいようなことが書いてあるんだ?これは楽しみだねぇ」 

リョウ「……まったくカンベンしてくれよ……」 

悠貴「……ふふっ」 

拓海「へへっ」 

有香「ふふふ……」 

美波「あはははは……」 

822: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:00:29.55 ID:egMIYKsb0
リョウ「……っと、時間だな」 

ロバート「おう。それじゃ向こう着いたらまた連絡くれや」 

リョウ「ああ。じゃあな!みんな」 

美波「はい。……みんな、いい?」 

拓海「ああ」 

美波「うん、じゃあ……せーのっ」 

823: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:03:06.99 ID:egMIYKsb0
「ありがとうーーー!」 

リョウ「……!」 

サンキューなサカザキーー! 

ありがとうございましたーーー! 

また、絶対、帰ってきてねーーーー! 



リョウ「……ああ!約束だーーーー!!!」 

824: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:07:38.30 ID:egMIYKsb0
みんなへ 


突然こんな事になってしまって本当にすまない。 

俺は口下手だし、お前らに泣き顔も見られたくないから、手紙に書いて渡す。 

男らしくないと、怒ってもらって構わない。 

元々俺はプロデューサーになるのは乗り気じゃなかった。 

今まで空手しかしてこなかった俺が、拳でしかモノを語れない俺が。 

プロデューサーなんて出来るわけないと思っていた。 

825: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:10:28.07 ID:egMIYKsb0
だが、お前たちと一緒に悩み、悲しみ、喜ぶ事によって、 

いつの間にかこの場所は、お前たちは俺にとってかけがえのないモノになっていた。 

それに俺自身も以前の何倍も成長出来たと思う。 

頼りないプロデューサーだったが、ついてきてくれて本当にありがとう 

826: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:13:57.62 ID:egMIYKsb0
拓海へ 

初めて出会った時は、荒れてるな、と思った。 

だがその内面に触れていくうちに、拓海という人間の懐の深さを知った。 

今のお前は、真の強さを誰よりも知っていると思う。というより、最初から知っていたんだと思う。 

これからもその強さで大切なものを守ってやってほしい。 

それと、峠でのバイク対決、沖縄での相撲対決、俺は負けっぱなしだ。 

日本に帰って来た時は、借りを返そうと思う。 

827: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:17:22.31 ID:egMIYKsb0
有香へ 

有香は真面目だ。 

何事にも手を抜かず取り組むところ、ちょっと融通が利かないところ。 

有香を見てたら、なんだか自分を見てるようだった。 

外から見ていたら、ちょっと力を抜いても良いんじゃないかという周りの声も俺はやっとわかった気がした。 

だが、その鋼の意思こそが、何よりも強い武器になる事を俺たちは知ってる。 

これからもその強い意思を持ち続けてほしい。 

俺が日本に来たときは、また組手をやろう。 

828: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:20:36.19 ID:egMIYKsb0
悠貴へ 

悠貴は素直だ。 

その素直さを嫌う人間はこの世にはいないと思う。 

素直に、ひたむきに。 

その気持ちがある限り、周囲は悠貴への助力を惜しまないだろう。 

それはお前自身の可能性も同じことで、お前はどこまででも成長できる。 

また会う時は、一層成長した姿を俺に見せてくれ。 


829: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:23:56.31 ID:egMIYKsb0
加蓮へ 

加蓮は、この1年で本当に成長した。 

初めて会った時、確かに燻っているのは感じたが、よもやこれほどの炎を秘めているとは正直思わなかった。 

挫折を知っていて、そこから立ち上がった人間は本当に強い。 

加蓮はこの先何があってもきっと乗り越えられる。 

そう断言出来るほどの強さを、この1年で加蓮は俺に見せてくれたのだから。 

やりたい事を、怖がらずにやりたいだけやってくれ。 

830: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:26:53.65 ID:egMIYKsb0
美波へ 

例えば俺が最初に着た空手の道着がオレンジだったように、最初というのは大事なものだ。 

あの日、初めて俺がスカウトしたアイドル。 

それが美波じゃなかったら、そして、美波にスカウトを断られていたら。 

俺は、プロデューサーとしてここまでやれてなかっただろう。 

いつでも俺を支えてくれていた。いつだって俺の味方でいてくれていた。 

これからも、周りを助けてやってほしい。 

ただ、たまには息抜きもしてくれ。 

831: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:30:00.22 ID:egMIYKsb0
俺たちはどんなに離れていても家族だ。 

それは変わらない。 

だが、それと同時にこれからは俺たちはライバルだ。 



俺は、極限流空手を広めることを。 

お前たちはアイドルを。 

競い合うことで得られる力の凄さを俺は知ってる。 



勝負だ。 


また会える時を楽しみにしている。 

ありがとう。 


リョウ・サカザキ 

832: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:32:33.05 ID:egMIYKsb0
美波「……さか、ざきさん……」 

拓海「……いつでも、かかってきやがれ。返り討ちに……してやんよ……」 

有香「はい……!きっと、もっと強くなって見せます……!」 

悠貴「……きっとっ、もっと成長してみせますからっ……!」 

加蓮「……驚かせてやるんだから。絶対に……!」 

833: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:34:44.86 ID:egMIYKsb0
道場 

タクマ「よくぞ帰ったな、リョウ」 

リョウ「ああ。本当に急に言い出しやがって……」 

タクマ「ああ。……では、帰って早々だが、この1年でお前が本当に成長したのか……プロデューサー業で腕が鈍っていないか、儂に見せてみよ!」 
スッ 


リョウ「……おいおい、親父、あんまり無理するなよ……」 

タクマ「……」 
コォォォォォ 

リョウ「……冗談じゃねえか。わかった。この1年で得た俺の強さ……見てもらうぜ!」 

タクマ「それでこそ我が息子よ![ピーーー]気で来い!儂もその気で行くぞ!リョウ!」

834: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:37:35.67 ID:egMIYKsb0





タクマ「……ふふふ、見事だ、息子よ……」 
ガクッ 

リョウ「ハァ、ハァ……一体どこの世界に組手で覇王至高拳を撃ってくる奴がいるんだよ……」 

タクマ「言ったであろう、[ピーーー]気で行くと……しかしお前は儂の本気の拳を超えていった……道場を託すに、文句は無い……」 

リョウ「親父……」 

タクマ「……それでは、正式にお前に道場を託す」 

リョウ「……」 

835: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:40:00.94 ID:egMIYKsb0
1週間後 

拓海「あれからもう1週間後か……はえ~なぁ……」 

加蓮「そうだね……で、今日やっと後任のプロデューサーさんが来るんでしょ?」 

美波「うん、昨日社長さんが言ってたから……」 

悠貴「どんな人なんでしょうねっ?」 

有香「しっかりした人ならいいんですが……」 

836: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:43:16.21 ID:egMIYKsb0
事務所 

ロバート「あ~、みんな集まったかいな?」 

美波「はい、全員集まりました」 

ロバート「それでは新しいプロデューサーが決まったから、挨拶や。もう入ってきてええで」 

加蓮(どんな人だろう……) 

拓海(もしナヨナヨした奴だったら、一発ヤキ入れて……) 

837: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:46:53.30 ID:egMIYKsb0
ガチャ 

美波「……!」 

加蓮「……!」 

有香「……!」 

悠貴「!!!!」 

拓海「……」 


838: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:50:28.61 ID:egMIYKsb0
拓海「……おい、何の冗談だ?」 

ロバート「……あ~、新任プロデューサーの、2代目Mr.KARATEプロデューサーや」 


2代目Mr.KARATE「……俺の名前は2代目Mr.KARATE……新しく君たちのプロデューサーとして……」 





拓海「ふざけんなァァァァァァァ!結局その天狗面かああああ!!アタシらの涙返せゴラァァァァ!!」 
ガッシャアアアアン 

美波「た、拓海ちゃん!落ち着いて!!」 

839: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:53:08.60 ID:egMIYKsb0
2代目Mr.KARATE「な、なにを言ってるのかサッパリだ。俺は2代目Mr.KARATE、新しくプロデューサーに……」 

加蓮「もうバレてるから!今更そのお面で騙される人いないから!」 


ギャーギャー 

拓海「……で?どういうことなのか説明しろよ」 

リョウ「……いや、それがな……」 

~~~~~~~~~~~~~~ 
~~~~~~~~ 
~~~~ 

840: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:57:07.12 ID:egMIYKsb0
タクマ「……それでは、正式にお前に道場を託す」 

リョウ「……」 


タクマ「……リョウ。お前を、極限流空手日本支部の師範に命ずる!」 

リョウ「押忍……ん?日本支部?」 

タクマ「そうだ。お前たちの活躍により、日本支部設立の予算が……ゲフンゲフン。今こそ極限流世界進出の第一歩を進める時だ」 

リョウ「……ここのサウスタウンの道場は?」 

タクマ「引き続き儂が師範を務める。お前は何も心配せず日本に戻るが良い」 

リョウ「……」 

~~~~ 
~~~~~~~~ 
~~~~~~~~~~~~~~

841: 名無しさん 2017/03/05(日) 20:59:45.64 ID:egMIYKsb0
リョウ「……で、こないだ別れたばっかりの手前、またすぐに顔出すのは恥ずかしかったからな……」 

拓海「……ったく、お前ってやつは……」 

有香「……でも、道場の師範のお仕事があるんですよね?それだとプロデューサーは出来ないんじゃあ……」 

ロバート「ああ……それなら心配いらん。道場はこの事務所の裏に作って、ワイとリョウが交代で門下生の面倒も見る」 

リョウ「まぁ確かに以前のようにお前たちに付きっ切りにはなれないが……お前たちも成長したからな」 

843: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:02:22.87 ID:egMIYKsb0
悠貴「それじゃあ……本当に……っ」 

リョウ「ああ……これからも、よろしく頼むぜ、みんな」 

美波「……坂崎さん!」 

加蓮「……よかった」 

拓海「お前ら、泣いてんじゃねーよ!」 

有香「もうお約束ですけど、拓海ちゃんも泣いてます!」 

悠貴「もうみんな泣いてますっ!あははっ!」 




リョウ「俺がアイドル達のプロデューサーだ」 


844: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:06:12.79 ID:egMIYKsb0
外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 



15年後 
ギースタワー 



「パワァァァァ……!」 

「レイィジング……」 


「ゲイザァァァァァ!!!」 

ズドオオオオオオオン 

845: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:08:02.21 ID:egMIYKsb0
敗北か。 

「ギイイイイイスゥゥゥ!!!」 

フンッ。なんて顔だ、我が宿敵よ。 

「グッバイ」 

「ハッハッハッハッハ……」 



…… 

これが走馬灯か。 

ジェフ……クラウザー…… 

タクマ……リョウ…… 

そして……テリー・ボガード。 

846: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:10:43.67 ID:egMIYKsb0
フフフ……いい強敵達と出会えた。 

この飢狼たちとあいまみえ、そして我が愛したこの街を墓標に眠る…… 


出来過ぎではないか。何の悔いがあろうか…… 



……ロック。お前はお前の信じた道を往くが良い。決して間違えはしないだろう……この街には気高き狼たちがいるのだからな……。 


……フン。完全に忘れたつもりだったが、まさか今際の際に脳裏によぎるとはな。 

彼女たちは、幸せに暮らしているだろうか―――― 

847: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:13:13.47 ID:egMIYKsb0
数か月後 


スラム 

チンピラ「へっへっへ、ネエちゃん……良い女がこんな所を一人で歩くなんざ、襲ってくれと言ってるようなもんだぜ」 

チンピラ2「そうだぜ。ギース・ハワードが死んでからこの街の王はいなくなった。今やそこらへんの誰も彼もが今まで抑圧されてきたモンを発散したくてしょうがねえんだからよ……」 

女性「……」 

???「ヘイ、そんなに発散したいのか?だったら俺が代わりに遊んでやるよ」 

848: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:15:11.44 ID:egMIYKsb0
チンピラ「あ~ん?誰だか知らねえが邪魔……んな!?」 

チンピラ2「……ま、まさか……お前は……サウスタウン・ヒーロー……」 

チンピラ・2「「テリー・ボガード!!?」」 

テリー「ヘイ!カモンカモン!」 



ロック「……あ~あ……完全に気絶してる。テリー、やり過ぎだよ」 

テリー「いや、つい力が入っちまった!お嬢さん、ケガはないか?」 

849: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:17:11.76 ID:egMIYKsb0
女性「いえ、助かりました」 

テリー「だけど、あいつらが言っていたのも一理あるぜ。この辺は美人のお嬢さんが一人で歩くには危険だ。……あんた、日本人か?俺の知り合いにも何人か日本人がいるぜ」 


女性「ふふっ、ありがとうございます。けど、私はお嬢さんって歳じゃありませんし、たぶん貴方より年上ですよ」 

テリー「……!?マジかよ……20代前半にしか見えねえが……」 

ロック「ちょっと、テリー……女の人に年齢の事をズケズケ聞くのは……」 

女性「ふふ……貴方は紳士的なんですね」 
ニコ 

ロック「……!ぁぅ……」 
スス 

女性「あら?」 


テリー「ああ、コイツは女性に対してシャイなんだ。許してやってくれ!ハッハッハ!」 

850: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:19:00.74 ID:egMIYKsb0
テリー「……それで、姉さんは何しにここへ?」 

女性「……はい。先ほどの人も言われてましたが……ギース・ハワードさんのお墓を訪ねてきました」 

テリー「……!」 

ロック「……!」 

テリー「……お姉さん。あんた、ギースの知り合いだったのかい?」 


851: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:20:53.82 ID:egMIYKsb0
女性「ええ、昔お仕事を一緒にしていたことがあって……まぁ期間は1年足らずでしたけど……」 

テリー「仕事……?」 

女性「ええ、リョウさん……いえ、その時知り合った方に今回の訃報を聞いて……お花をお供えできないかと思ってサウスタウンに来たんですけど、迷ってしまって」 

テリー「……そうかい」 

ロック「……テリー」 

テリー「いや、いいんだロック。……ギースの墓なら、ないぜ。この街が、サウスタウン自体があいつの墓標だ。そうアイツが望んでいた……らしい」 

女性「え……?」 

852: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:22:57.95 ID:egMIYKsb0



女性「そうですか……最期は笑って、あなたの手を……」 

テリー「……だが、言い訳する気はない。アイツをこの手に掛けたのは俺だ。その様子なら、あんたはギースに恨みを持った人間じゃないんだろ?」 

女性「……逆にその言い方だと、あの人は多くの人に恨みを持たれるような事をしていたということなのでしょう?」 

テリー「……ああ。俺もそうだ。いや、かつてはそうだった。あいつは確かに悪人だった。けど、何度も闘ううちに、憎しみは自然と薄れていっていた……」 


テリー「それはきっと、俺もアイツも楽しかったから、なんだろうな。闘うのが・・・・・・」 


女性「……じゃあ、そっちの子は……」 

テリー「ああ……アイツの子だよ」 

853: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:25:00.77 ID:egMIYKsb0
女性「……ロック君、かな?もし良かったら、よく顔を見せてくれないかな」 

ロック「……」 

テリー「ロック」 

ロック「……うん」 
スス 

女性「……」 
ジッ 

ロック「……」/// 

女性「……ふふっ」 

女性「……日本に帰ります。私が欲しかった答えは、見つかりました」

854: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:26:53.94 ID:egMIYKsb0
テリー「……俺に罵声の一つも浴びせないのかい?」 

女性「いいえ。逆です。……あの人を開放してくれて、ありがとうございました。これで日本で待ってるほかのメンバーにもいい報告が出来そうです」 

テリー「……」 

女性「ロック君。いつか、日本に遊びに来てね。それとテリーさんも……その時は私が案内しますから」 

テリー「ああ……機会があれば、いずれ」 

女性「それでは……」 

ロック「……行っちゃった。なんだか不思議な人だったね、テリー」 

テリー「……ああ」 

855: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:29:09.33 ID:egMIYKsb0
さらに数年後 


極限流道場 


リョウ「……おっ、こりゃ懐かしいものが出てきたな」 

マルコ「むっ、リョウ総帥!何ですかなそのDVDは!ムフフなヤツですか!?」 

リョウ「……まだまだ雑念が多いようだなマルコ。この後俺と組手だ」 

マルコ「ヒイイイイイ!ボケツを掘ったァァァァ!!」 

856: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:30:53.94 ID:egMIYKsb0
夜 
道場 

リョウ「……よう。大体20年ぶりくらいか?」 

ギース?「……」 

リョウ「昼間見つけたDVD……あの時の、QOIのDVDだった。それを見つけた途端出てくるとはな。あんたも結局コレは忘れられなかったか」 


ギース?「……」 

リョウ「……いや、今のあんたはいわば俺の夢……差し詰めナイトメア・ギースってか?このDVDを見て俺が真っ先に思い出したのがあんただった、てことか」 

ナイトメア・ギース「……」

857: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:32:54.54 ID:egMIYKsb0
リョウ「あんたの育てたアイドル達はその後も立派に活動してたよ。あんまり完ぺきになんでもこなすもんだから、プロデューサー泣かせだったってな」 

ナイトメア・ギース「……」 
フッ 

リョウ「あんたが死んだって聞いて……みんな悲しんでたよ。いや、つかさは怒ってたかな。だが、死んで一人でも悲しんでくれる人間がいる以上、あんたはやっぱりただの悪人じゃなかったってことだな」 


ナイトメア・ギース「……」 

リョウ「……俺か?俺はもちろん今もあいつらと付き合いはあるぜ。まぁ世界を飛び回ってるからそう日本ばかりには行けないが……顔出さないとうるさいしな」 

858: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:34:53.56 ID:egMIYKsb0
リョウ「……本当に、色々あったぜ」 

ナイトメア・ギース「……」 

リョウ「……そうだな。あんたもただ俺とアイドル談義するためにあの世から出てきたわけじゃないか」 
スッ 

ナイトメア・ギース「……」 
スッ 

リョウ「……それじゃあ……久しぶりの再会を祝して……」 

ナイトメア・ギース「……」 

リョウ「来い!ギース!!」 


外伝 
 プロデューサー・ギース・ハワード 
 さらば、ギース 

終わり

859: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:35:30.26 ID:egMIYKsb0
ART OF PRODUCE 
 龍虎のP 

完 

860: 名無しさん 2017/03/05(日) 21:36:48.74 ID:egMIYKsb0
これで終わりです。 

長々とお付き合い頂いた方ありがとうございました。

876: 名無しさん 2017/03/07(火) 00:18:26.59 ID:CPuxVIyZ0
勝手に後日談 
美波:ミッキー・ロジャース復帰戦にラウンドガールとして出演。 
悠貴:響チャレンジのマラソン企画で響に大差をつけて圧勝。 
有香:極限流の稽古にも参加しだす。菊地真とあわせて「アイドル界の龍虎」と称されたとか。 
加蓮:演技派アイドルを目指す一方、「気」の応用による健康法を模索。後に本として出版され大ヒットに。 
拓海:独学で覇王翔吼拳を出そうとするも出ない。後の矢吹真吾である。