1: 名無しさん 2016/04/04(月)09:08:34 ID:eEP
ウィスコンシン州、ミルウォーキー。
ミシガン湖に面した工業と、ビールとハーレダヴィドソンの街である。

この頃、僕はミルウォーキーに住んでいた。

(*゚ー゚)「えぇ、あなたの子よ」

(´・ω・`;)「そ、そうか」

僕の胸中は複雑だった。
この頃の僕は大学院生でまだ定職もなく、経済的にも不安定だったのだ。

(*゚ー゚)「……、嬉しくないの?」

そんな僕の様子を彼女は最初から気づいていたのかもしれない。

(´・ω・`)「何を言ってるんだ。嬉しいに決まっているじゃないか」

デタラメを言ったつもりは無かった。
不安はあるにせよ、僕は子供の命が芽生えた事が嬉しかった。

(´・ω・`)「2人で力を合わせて頑張ろう!」

(*゚ー゚)「うん!」

引用元: ・(´・ω・`)「僕が父親に?」

2: 名無しさん 2016/04/04(月)09:26:58 ID:eEP
大学院の研究室。

友「よー、レオ。なかなか成績優秀らしいじゃないか」

(´・ω・`)「ありがとう。でも、研究が僕の性に合ってるだけだよ」

友「謙遜するなよ。教授もお前のこと褒めてたぜ?」

(´・ω・`)(決して謙遜したつもりはないんだけどなぁ)

友「ところで、これからダウンタウンのクラブに遊びに行くんだが、お前もこないか?」

(´・ω・`)「いや、僕はまだ研究があるから……」

友「お前はほんと、根っからの研究者気質だなw あんまり無理するなよ」

(´・ω・`)「うん、ありがとう」

僕は子供の頃から、生粋の理系人間だった。
じっくりと理詰めで物事を突き詰めるのが好きだったが、反面、人の心の機微には疎いところがあった。

いや、疎いというより避けていたのかもしれない。
正直な話、人と話すよりも、自分の学問と向き合っている時間の方が充実していた。

5: 名無しさん 2016/04/04(月)09:45:07 ID:eEP

(´・ω・`)「ただいま」

カチャッ

(*゚ー゚)「……遅かったね」

(´・ω・`)「ごめん、研究が長引いちゃって」

(*゚ー゚)「私、妊娠してるんだよ? 私と子供よりも研究の方が大事なの?」

(´・ω・`;)「何を言ってるんだ。そんな訳ないじゃないか」

(*゚ー゚)「ウソよ。あなたは私や子供よりもガラクタを弄ってる方が幸せなんだわ!」

(´・ω・`;)「頼むよ、ワガママを言わないでくれ」

(*゚ー゚)「ワガママ!? ワガママなのはあなたじゃない!」

(´・ω・`;)「……」

この頃からだろうか?
僕と妻の間には溝ができ始めていた。

6: 名無しさん 2016/04/04(月)10:03:30 ID:eEP
友「よぅ、レオ。お前が誘いに乗るなんて珍しいじゃないか?」

(´・ω・`)「……今日は飲みたい気分なんだ」

友「さては何か嫌なことがあったな?」

(´・ω・`)「……」

友「安心しろよ。ミルウォーキーにはいくらでも遊べるところがある。嫌なことなんてすぐに忘れちまうよ」

(´・ω・`)「そうなんだ。僕は勉強ばかりであんまり遊ばなかったから……」

友「俺が色々教えてやるよw まぁでも気をつけろよ。この辺の治安は結構悪かったな」

7: 名無しさん 2016/04/04(月)10:04:16 ID:eEP
娼婦「お兄さん、ちょっと遊んで行かない?」

(´・ω・`;)「え、いや、あの」

友「ごめんごめん、俺達行きつけのバーに行くとこなんだよw」

娼婦「なんだ~残念。また来てね」

(´・ω・`;)(何だか凄い世界だなぁ……)

黒人「ヘイブラザー!」

(´・ω・`;)「わっ、何ですか!?」

黒人「君達男同士でこんな所を歩いてどうしたんだい」チラッ

友「チッ」

8: 名無しさん 2016/04/04(月)10:05:38 ID:eEP
友「おい行くぞ、レオ」

(´・ω・`;)「う、うん」

黒人「ブラザー、待てよ」

スタスタ

友「俺にはあんな肌の黒い兄弟はいねぇよ」

友「にしても気持ち悪い野郎だぜ。おい、ああいう連中には気をつけろよ?」

(´・ω・`)「ああいう連中?」

友「お前は本当に世間知らずだな。アイツはゲイだ。ついていったら掘られるぞ?」

(´・ω・`;)「えっ」

この町はウィスコンシン州最大の都市だ。
歓楽街は常に賑わっており、その雑踏の中には有色人種や性的マイノリティーの人々もまた多く集まっていた。

9: 名無しさん 2016/04/04(月)10:20:24 ID:eEP
(´・ω・`;)(あれから明け方まで飲み明かしてしまった)

(´・ω・`;)(あぁ、帰りたくないなぁ……)

カチャッ


(*゚ー゚)「……」

(´・ω・`;)(やっぱり)

(*゚ー゚)「……どういうこと?」

(´・ω・`;)「これは、あの……」

(*゚ー゚)「ねぇ、私の事なんだと思ってるの!?ねぇっっ!?」

(´・ω・`;)「落ち着いてくれよ!」

(*゚ー゚)「落ち着いてなんかいられないわよおおおおお!!!」


妻のヒステリーは日に日に悪化していった。
僕達はちょっとした事ですぐに激昂し、言い争いばかりしていた。

11: 名無しさん 2016/04/04(月)10:36:54 ID:eEP

(*゚ー゚)「いたっ、痛いぃぃぃ!!」

(´・ω・`;)「だ、大丈夫!?」

(*゚ー゚)「大丈夫なわけないでしょ!!早く痛み止めを持ってきてよ!!!」

(´・ω・`;)「わ、分かった」

出産時期が近づくにつれ、妻の症状はどんどん悪化していった。
彼女のヒステリーは言動や行動だけでなく、痛みという身体症状にも表れていたのだ。

(´・ω・`;)(薬だけで20錠もある)

(´・ω・`;)(モルヒネなんて劇薬を妊婦に与えて大丈夫なんだろうか?)

(´・ω・`;)(でも、医者に処方されたものだし、飲ませないわけにもいかないよな)

14: 名無しさん 2016/04/04(月)10:52:37 ID:eEP
そんな現実から逃げるように、僕は研究にかまけていた。
本当に僕は夫として失格だったと思う。

それでも、妻と、産まれてくる子供のために、僕なりの努力はしたつもりだった。

その甲斐あってか、紆余曲折を経たものの、妻は無事に出産にこぎつける事ができた。


(*゚ー゚)「あなた」

(´・ω・`)「お疲れさま。体は大丈夫かい」

(*゚ー゚)「えぇ、それよりみてよレオ」

(´・ω・`)「あぁ……」

彡(-)(-)スヤスヤ

(*゚ー゚)「私達の子供よ」

(´・ω・`)(……)

(´;ω;`)ブワッ


眠っている子供の姿を見て、父親になった実感が湧き上がってきた。クリクリとした青い眼が可愛らしい赤ん坊だった。

僕達はこの子にジェフリーという名前を授けた。

21: 名無しさん 2016/04/04(月)11:46:15 ID:eEP
(*゚ー゚)「あなた、またこんな時間に帰ってきたのね!!もっと家庭を大切にしてちょうだい!!」

(´・ω・`;)「いい加減にしてくれ!!君こそロクに家事もしていないじゃないか!」

(*゚ー゚)「なんですって!?あなたが父親としての責任を果たしていないのよ!!」

(´・ω・`;)「もういい!!」

あれから4年。
僕達夫婦の溝は出産を経ても埋まる事なはく、互いの心の距離は離れていく一方だった。

(´・ω・`)(どうすれば彼女は分かってくれるんだろう?僕にだって研究者としての責任や夢があるんだ)


(´・ω・`)(家庭が大事なのは分かっている。でも、そこを補うのが妻の務めじゃないのか?)

たぶん、この頃の僕も妻も、まだ親になるべき状況じゃなかったのだと思う。
僕達はまだまだ未熟だった。

彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)「あ、ジェフ」

でも、子供の成長は親を待ってはくれない。

(´・ω・`)「一緒に遊ぼうか」

22: 名無しさん 2016/04/04(月)11:56:56 ID:eEP
ウィスコンシンの森や湖を僕は何度かジェフを連れて歩いた。

(´・ω・`)「どうだいジェフ? 湖は綺麗だろう?」

彡(゚)(゚)「せやな」

(´・ω・`;)(『せやな』って…)

(´・ω・`)「ほら、こっちには蝶々が飛んでる。捕まえてみたらどうだい?」

彡(゚)(゚)「ワイに捕まえられるやろか」

(´・ω・`)「大丈夫だよ。ほら、追いかけてごらん」

(´・ω・`)(子供なのに、この子はあまり周りの物事に興味を示さない)

(´・ω・`)(子供の頃の僕に似ているな…)

この子は僕に似ている。
それが、幼いジェフに対する僕の印象だ。
僕もまた幼少時代、興味のある事柄以外にはあまり興味を示さず、自分に自信もない、そんな子供だった。

37: 名無しさん 2016/04/04(月)15:04:20 ID:eEP
(*゚ー゚)「ジェフ、今日は天気がいいから一緒に公園に行きましょう」

彡(゚)(゚)「うん」


~公園~

(*゚ー゚)「あら、ちょうど近所の子達も遊んでるじゃない」

子供達 ワイワイ キャッキャッ

彡(゚)(゚)「……」

(*゚ー゚)「……? どうしたのジェフ、みんなと遊んでいらっしゃい」

子供「ジェフくん、あそぼー!」

(*゚ー゚)「ほら、呼んでるわよ」

彡(゚)(゚)「う、うん」

(*゚ー゚)「……?」

38: 名無しさん 2016/04/04(月)15:10:00 ID:eEP
子供A「ねーねー、砂のお城つくろー!」

子供B「作るー!」

子供C「えー、ぼくはお城より恐竜つくりたい!」

子供達 ワイワイ キャッキャッ

彡(゚)(゚)「……」

子供達『ジェフくん何やってるの? ジェフくんも砂集めてー!』

彡(゚)(゚)「うん」サッサッ

子供達 キャッキャッ

彡(゚)(゚) サッサッ

彡(゚)(゚)(何でみんなこんな事が楽しいのやろ…?)

子供達『ジェフくん、砂集めるのおそいよー!なにやってるの!?』

彡(゚)(゚)「……」

39: 名無しさん 2016/04/04(月)15:19:43 ID:eEP
(*゚ー゚)「ねぇあなた」

(´・ω・`)「なんだい」

(*゚ー゚)「ジェフなんだか様子が変なのよ」

(*゚ー゚)「他の子供達と遊んでても全然楽しそうじゃないの。いつも1人でポツンとしてて」

(´・ω・`)「ジェフは僕に似て大人しい子供だからね。僕も子供の頃はそういう子供だったよ」

(*゚ー゚)「それにしても、ジェフは他の子供となにかが違うわ。もしかして虐められてるんじゃないかしら」

(´・ω・`)「考えすぎだよ。子供も子供なりに色々あるさ」

(*゚ー゚)「考えすぎって!?あなたが考えなさ過ぎなんじゃない!!!」ムキーッ

(´・ω・`;)「おい、こんな事でヒステリーになるなよ」

40: 名無しさん 2016/04/04(月)15:27:38 ID:eEP
彡(゚)(゚)「パッパ、マッマ」

(´・ω・`;)「ジ、ジェフ。いたのか」

彡(゚)(゚)「向こうの部屋の床下から音がするんや」

(´・ω・`;)「床下から?」

彡(゚)(゚)「何かいるみたいなんや」

(´・ω・`)「分かった、今行くよ」

彡(゚)(゚)「ここなんやけど…」

(´・ω・`)「よしらちょっと床下を覗いてみるか」

こうして僕は『床下を開いた』。
思えば、この時から運命の歯車が狂い始めていたのかもしれない。

44: 名無しさん 2016/04/04(月)15:50:55 ID:eEP
ギギギ

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「……特になにもないな」

彡(゚)(゚)「パッパそれ」

(´・ω・`)「え…?」

(´・ω・`;)「ってうわ!?」

ジェフが指差した先には、無残な姿になったネズミなどの小動物の死骸があった。

(´・ω・`;)「ははぁ……こりゃジャコウネコが住み着いてるな。この死骸は餌を食い散らかした後だ」

45: 名無しさん 2016/04/04(月)15:52:33 ID:eEP
彡(゚)(゚)「パッパ、それ取ってや!その白いの!」

(´・ω・`;)「え、それって、この骨の事かい?」

彡(゚)(゚)「せや!」

(´・ω・`;)「あ、あぁ分かったよ(うぇぇぇ)」ヒョイ

彡(゚)(゚)「…………」ジーッ

(´・ω・`;)(ジェフがこれほど何かに関心を持つのは珍しい……けど、また随分変わったものに興味を持ったな)

ジェフは何かに取り憑かれたよにれその骨を眺めていた。
すると、ジェフは突然地面に小動物の骨を叩きつけた。
辺りに骨の砕けた音が鳴り響く。

(´・ω・`;)「ジェフ、なにを」

(´・ω・`;)「……??」


彡(^)(^) ニコニコ


始めてみる顔だった。
この時の僕は、骨を砕く音に心奪われていた息子の姿をみても、少し変わっているなとしか思わなかった。

47: 名無しさん 2016/04/04(月)16:18:41 ID:eEP
ジェフが生まれた6年後。
僕と妻は2人目の子供を授かった。

だが、それは例によって順風満帆な物ではなかった。

(*゚ー゚)「あああ!!隣の家の物音がうるさくて眠れない!!」

(´・ω・`;)「物音って……ただの生活音じゃないか」

(*゚ー゚)「生活音でもなんで私は眠れないのよ!!アンタどうにかしてきてよ!!」

(´・ω・`;)「ムチャ言うなよ……」

(*゚ー゚)「何よこの役立たずのグズ!!最低の夫よアンタなんて!!!」

(´・ω・`;)「おい、言っていい事と悪い事があるぞ!!」

彡(゚)(゚)「……」

僕達夫婦の心は全く通っておらず、幼少時のジェフはそんな僕達の姿を見て育っていった。

48: 名無しさん 2016/04/04(月)16:30:53 ID:eEP
2人目を妊娠して、妻の病状はさらに悪化していた。

彡(゚)(゚)「マッマ、ご飯」

(*゚ー゚)「は?」

彡;(゚)(゚)「え?」

(*゚ー゚)「ママは今つわりで苦しんでるの!棚に缶詰があるから自分で開けて食べなさい!」

彡;(゚)(゚)「でも、ワイ」

(*゚ー゚)「でもじゃないわよおおおお!!!!それくらい自分でやりなさいよおおお!!!」

(*゚ー゚)「アビャビャ!?!?あびゃかあくなめやわふじこ……」

妻は度々、痙攣発作を起こし、意識が消失することがあった。

(*゚ー゚)「……」ビクビク

彡;(゚)(゚)「マッマ!? マッマ!?」

彡;(゚)(゚)「パッパ、早く帰ってきてクレメンス」

彡(;)(;)「パッパ…」

妊娠して情緒不安で、発作まで起こす妻。
僕はそんな妻を半ば見限り、仕事に没頭した。

そのしわ寄せを、僕の知らないところでジェフは一身に背負っていたのかもしれない。

55: 名無しさん 2016/04/04(月)18:27:37 ID:eEP
デイブ「ほぎゃあ、ほぎゃあ」

(*゚ー゚)「よしよし、デイブ。ミルクよ~」

彡(゚)(゚)「マッマ、ワイもお腹減った」

(*゚ー゚)「今、デイブのミルクをあげてるの。分かるでしょ?今日はパパ休みなんだから、パパに言ってちょうだい」

彡(゚)(゚)「…うん」

デイブ「ほぎゃあ、ほぎゃあ」

(*゚ー゚)「よしよし、デイブ。ママがいるからね~」

彡(゚)(゚)「……」

56: 名無しさん 2016/04/04(月)18:28:35 ID:eEP
彡(゚)(゚)「パッパ」

(´・ω・`)「なんだいジェフ」

彡(゚)(゚)「マッマがパッパにご飯作って貰えって」

(´・ω・`;)(アイツ、またろくに家事もしないで)

(´・ω・`;)「すまない、ジェフ。パパも研究の事でやらないといけない事があるんだ」

(´・ω・`;)「冷蔵庫に卵があるから、スクランブルエッグくらい作れるだろう?あと、ダイニングテーブルに食パンがあるからトースターに入れて食べなさい」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「うん」

(´・ω・`)「焼き過ぎに気をつけるんだぞ」

彡(゚)(゚)「うん」

57: 名無しさん 2016/04/04(月)18:29:55 ID:eEP
彡(゚)(゚) ジュージュー

彡(゚)(゚) トントン

彡(゚)(゚) ブリュブリュリュ ※トマトケチャップをかける音です

彡(゚)(゚)(できた)

彡(゚)(゚) ……

(´・ω・`)『ジェフ、ご飯を食べる前には必ずお祈りするんだよ』

(´・ω・`)『僕達がご飯を食べていけるのは神様のおかげなんだ』

(´・ω・`)『主よ、今日も糧をおめぐみ頂きありがとうございます』

彡(゚)(゚)

彡(-)(-)「しゅよ、きょうもおめぐみいただきありがとうございます」

彡(゚)(゚)「パクパク、モグモグ」

59: 名無しさん 2016/04/04(月)18:56:08 ID:eEP
僕は妻や息子たちから目を背けていた。
でも、彼らが僕にとってかけがえのない家族である事に変わりはない。

父親として不出来な僕だが、それでも僕なりに家族が再出発できる道を模索していた。

(*゚ー゚)「引っ越し?」

(´・ω・`)「あぁ、実はもう物件に目星も付けてある。自然に囲まれた素敵な家だよ」

(´・ω・`)「そこで、やり直そう。イチからまた」

(*゚ー゚)「…そうね」

60: 名無しさん 2016/04/04(月)18:57:15 ID:eEP
こうして僕達一家はオハイオ州クリーブランドの家へ引っ越す事となった。

だか、悲しい事だがもう全てが遅すぎたのだと思う。
僕達家族の関係は、引っ越してみても結局のところ何も変わる事はなかった。

(*゚ー゚)「ほら、デイブ。ママがお世話してあげるからね」

(*゚ー゚)「パパは何もしてくれないもんね~。可哀想なデイブ」

(´・ω・`)(当て付けのつもりだろうが、かまってられないよ)

(´・ω・`)(さて、仕事仕事)


彡(゚)(゚) ……

61: 名無しさん 2016/04/04(月)18:59:00 ID:eEP
彡(゚)(゚) ……

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)「ん?どうしたんだジェフ。黙って座り込んで」

彡(゚)(゚)「ううん。別に」

(´・ω・`)「……そうか」

この頃のジェフは何をするでもなくただぼうっと座っている事が度々あった。
その間、彼が何を考えているのか、僕には分からなかった。

63: 名無しさん 2016/04/04(月)19:15:19 ID:eEP
(´・ω・`)「ジェフ」

彡(゚)(゚)「?」

(´・ω・`)「今日はおまえにプレゼントを買ってきたんだ」

彡(゚)(゚)「ほんま?」

(´・ω・`)「あぁ、昆虫標本を作るための道具セットだ。すぐ裏の林で虫を捕まえたら、標本で図鑑でも作ってみたらどうだ?」

彡(^)(^)「パッパ!ありがとやで!」

(´^ω^`)「いいんだ、ジェフ」


こんなに子供らしい顔をする彼を見るのは久しぶりだった。
少しは父親らしい事ができた気がして、この時の僕は嬉しかったのを覚えている。

64: 名無しさん 2016/04/04(月)19:24:11 ID:eEP
彡(^)(^)「虫、虫、どこや~虫」

彡(^)(^) ~?

彡(゚)(゚)「ん、なんやろあれ?」

そこには、狸の死骸が転がっていた。

彡(゚)(゚)(……)

彡(゚)(゚)(あの、動物にもやっぱり、床下のネズミみたいな骨があるのだろうか)

彡(゚)(゚)ドキドキ

彡(゚)(゚)(みたい…)

65: 名無しさん 2016/04/04(月)19:31:45 ID:eEP
彡(゚)(゚)ドキドキ ワクワク

彡(゚)(゚)(でも何だか悪いことな気がする)

彡(゚)(゚)(でも……あの狸は死んでるんだ)

彡(゚)(゚)(死んだらもう、ただのお肉じゃないか)

彡(゚)(゚)ドキドキドキドキドキドキ

彡(゚)(゚)(みよう!)

ジェフは手に先の尖った木の枝を手にした。

彡;(゚)(゚) オソルオソル

ブス

グチャ

ブチィッ

骨を取り出すと、ジェフリーはそれを目に穴が空くほど見つめた。

彡(●)(●)ドキドキドキドキドキドキ

彡(●)(●)(なんてきれいなんだろう)

77: 名無しさん 2016/04/04(月)21:24:22 ID:eEP
(*゚ー゚)「あら、ジェフ。今日もお出かけ?」

彡(゚)(゚)「うん」

(*゚ー゚)「最近は随分活動的じゃない。どこへ行くの」

彡(゚)(゚)「裏の林」

(*゚ー゚)「あなたは随分この町の自然が気に入ったみたいね」

彡(゚)(゚)「……行ってくるで」

(*゚ー゚)「行ってらっしゃい」

78: 名無しさん 2016/04/04(月)21:25:18 ID:eEP
彡(゚)(゚)トコトコ

彡(゚)(゚)(今日は死んだ動物おるかな)

ジェフリーは森で狸の亡骸を解剖して以来、すっかりその魅力の虜となっていた。

彡(゚)(゚) ~?

彡(゚)(゚)「……ん?」

彡(゚)(゚)「あれはなんだろう?」

ジェフリーの視線の先にあったのは、野犬の死骸だった。

79: 名無しさん 2016/04/04(月)21:26:28 ID:eEP
彡(゚)(゚)(す、すごい!)

彡(゚)(゚)(こんなに大きな動物をバラバラにするのは初めてや!!)

彡;(゚)(゚)ドキドキドキドキドキドキ

ジェフリーは家から隠し持ってきたナイフを犬の亡骸に突き立てた。

彡(●)(●)ハァハァ

グサッ

グチャッ

グチョベチョ

80: 名無しさん 2016/04/04(月)21:27:26 ID:eEP
彡(●)(●)ハァハァハァハァ

彡(●)(●)(凄く胸がドキドキする)

グサッ

ビキッビチッ

彡(●)(●)(骨も内臓もキレイや)

彡(●)(●)(首を切り取ろう)

ブチブチィ

グチョ

彡(●)(●)(カッコいい)

彡(●)(●)(このまま捨てるのは勿体無い)

彡(●)(●)(そうや、林の奥にある柵にこれを飾ろう)

ジェフリーは切り取った犬の首を持ち歩くと、それを柵に突き刺した。

彡(^)(^)~?

81: 名無しさん 2016/04/04(月)21:31:32 ID:WGG
家庭環境良くてもこうなったんちゃうか…?

84: 名無しさん 2016/04/04(月)21:38:37 ID:eEP
>>81
生まれ持っての気質で興味はある程度決まるから、どのみちジェフリーは生き物の解体に興味を持ったと思う。
問題は、その興味の発散の仕方について、社会に適合する方法を指し示す事ができる大人が彼の周囲に居なかった事だと思う。

86: 名無しさん 2016/04/04(月)21:46:20 ID:eEP
~学校~

同級生 ヒソヒソ

同級生『ねぇ知ってる?ジェフくんの話』

同級生『動物の話』

同級生『そうそう、こないだシェーンが林の中でジェフくんが死んだ犬をナイフで刺してたんだった』

同級生『何それ怖……アッ』

彡(゚)(゚)……

同級生 シーン

彡(゚)(゚)……

同級生 ……

同級生ヒソヒソ

88: 名無しさん 2016/04/04(月)23:14:37 ID:eEP
(´・ω・`)「みんなで夕飯を食べるのなんて久しぶりだね」

(*゚ー゚)「ほんと、誰かさんがいつも遅いからね」

(´・ω・`;)「やめろよ」

(´・ω・`)「それじゃ、食事の前のお祈りだ」

(´・ω・`)「我らが父たる主よ。今日もあなたのお恵みを頂ける事に感謝します」

彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)「それじゃあ食事を食べよう」

(*゚ー゚)「今日はアナタの好きな牛肉のステーキよ」

(´・ω・`)「焼き加減もいいね。ステーキはやっぱり血の滴るようなレアじゃないと」

89: 名無しさん 2016/04/04(月)23:15:20 ID:eEP
彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)「どうしたジェフ?」

彡(゚)(゚)「パッパ……なんで生き物を殺しちゃあかんのに、ステーキは食べてええんや」

(´・ω・`)「ふむ」

(´・ω・`)「神様は生きるのに必要な糧を得る事は許されている。でも、この世の生き物は神様が創られた宝物なんだ」

(´・ω・`)「悪戯に殺す事はいけない事なんだよ」

彡(゚)(゚)「……ふぅん」

彡(゚)(゚)パクパク

90: 名無しさん 2016/04/04(月)23:24:59 ID:eEP
~次の日~

ジェフリーは今日も林の中を1人で彷徨っていた。

彡(゚)(゚)(うーん)

彡(゚)(゚)(最近は中々死んだ動物が見つからないや)

彡(゚)(゚)(早く見つけてバラバラにしたいなぁ)

彡(゚)(゚)ウズウズ

ガサガサ

彡(゚)(゚)?

ウサギ ピョン

彡(゚)(゚)(野うさぎ……)

彡(゚)(゚)ウズウズ

彡(゚)(゚)(死んでるのが見つからないなら……)

彡;(゚)(゚)ドキドキドキ

(´・ω・`)『この世の生き物は神様が創られた宝物なんだ』

彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)『悪戯に殺す事はいけない事なんだよ』

彡(-)(-)……

ウサギ「?」

ウサギ ピョンピョンピョン

93: 名無しさん 2016/04/05(火)00:30:54 ID:Jm9
(*゚ー゚)「あなた、もうすぐ夕飯ができるからさっさとジェフを呼んできて」

(´・ω・`;)「わ、分かったよ」

(´・ω・`;)(全く、こっちは研究の事を考えていたのにな)

この頃の僕達一家は企業勤めの研究院となり、経済的には安定して来ていた。
だがもう、家族の誰もが、お互いを家族として接する事に限界と諦めを感じていたと思う。

離婚をすればどんなに楽になるだろうと僕は考えていた。

トントン

(´・ω・`)「ジェフ、開けるぞ~」

ガチャ

彡(゚)(゚)「なんや、パッパ?」

(´・ω・`;)「もうすぐ夕飯…ってなんだこの匂い!」

ジェフの部屋には肉の腐ったような悪臭が立ち込めていた。

94: 名無しさん 2016/04/05(火)00:31:51 ID:Jm9
(´・ω・`;)「おいジェフ、お前何をやっているんだ!?そのビンは何なんだ?」

ジェフのデスクの上にはドロドロに濁った泥上の何かが入ったビンが置かれていた。
どうやら、ら臭気はそこから漂っているらしかった。

彡(゚)(゚)「何って……ネズミの死骸やで」

彡(゚)(゚)「前にパッパにもろた薬品あるやろ?あれとネズミの死骸をビンに詰めて肉を溶かしてるんや」

彡(^)(^)「そうすればキレイに骨を取り出せて、ええ標本が作れるやろ?」

(´・ω・`;)「……その死骸はどうしたんだ?」

彡(゚)(゚)「森で死んでたんを持ってきたんや」

(´・ω・`;)「お前が殺したんじゃないんだな?」

彡(゚)(゚)「……ちゃうで」

(´・ω・`;)「そうか…」

その言葉に僕は安堵を覚えた。
ジェフは生き物の死骸を収集する事はあっても、自ら殺したりする事はなかったようだ。

幼い彼にはこの時ちゃんと、生命に対する良心が芽吹きていたのだと、私はそう信じていた。

95: 名無しさん 2016/04/05(火)00:33:03 ID:Jm9
~第1部 『幼少編』 終~

140: 名無しさん 2016/04/08(金)10:25:14 ID:vrE
>>95

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~第1部 『幼少編』 終~

109: 名無しさん 2016/04/06(水)06:22:05 ID:vY5
ジェフリーは高校生となり、身長185㎝、ブロンドヘアで整った顔立ちの青年に育った。
周囲の人々からは少し大人しそうな、ごく普通の青年に見えただろう。


~リビア高校・職員室~

教師「ジェフリーくん、来たまえ」

彡(゚)(゚)「……?」

教師「こないだ受けた知能テストなんだが、君の点数は素晴らしかったぞ」

教師「IQ145だ。これはかなり優秀な数字だぞ」

彡(゚)(゚)「ふーん、そうなんや」

教師「君には素晴らしい才能があるんだ。是非、その才を十分に伸ばして欲しい」

彡(゚)(゚)「おおきに」

111: 名無しさん 2016/04/06(水)06:23:05 ID:vY5
~教室~

女子達『ねぇ、ジェフリーくんて天才らしいよ』

女子達『そうなの?顔も結構ハンサムだよね』

女子達『大人しいけど、そう言うとこも素敵ね』

女子達『……あんた達知らないの?』

女子達『え、何が?』

女子達『中学時代の彼のウワサ。奇行が目立つ問題児だったらしいよ』

女子達『ウソ!?そんな風に見えないけど』

女子達『本当よ。彼と同じ中学だった子が言ってたんだもん!』


彡(゚)(゚)……


ジェフリーの生活は高校生になっても変わることはなかった。
彼はいつだって孤独だった。

112: 名無しさん 2016/04/06(水)06:50:55 ID:vY5
この頃のジェフリーの楽しみは、自室に籠もってもっぱらハードロックやヘヴィメタルを鑑賞することだった。
とりわけ、ブラックサバスが彼のお気に入りだった。


ズンズン

ギュワンギュワン

彡(゚)(゚)(あぁ、やっぱええわ)

彡(゚)(゚)(刺激的な曲調に、セクシーなオジーの歌声)

彡(゚)(゚)(わいに取っては正にサバスや※) ※サバス:キリスト教の安息日のこと

『People think I'm insane because I am frowning all the time(みんなオレがイカれてると思ってる。オレがいつも眉をしかめてるからね)』

ズンズン

『All day long I think of things but nothing seems to satisfy(一日中物事を考え続けてるけど、オレを満足させる答えは見つからない)』

ズンズン

『Think I'll lose my mind if I don't find something to pacify(何か落ち着けるものを見つけられないと、オレはイカれちまう気がする)』


ズンズン

『Can you help me, occupy my brain?(助けてよ、オレの頭の中を満たしてくれ)』

彡(゚)(゚)……


彡(-)(-)……

117: 名無しさん 2016/04/06(水)22:32:51 ID:vY5
この日も夜遅くまで仕事が続き、職場を出たのはもう随分と遅い時間だった。
僕はバーで酒を一杯引っ掛けながら、夕飯代わりのハンバーガーを食べる。

バーを出て家に着いたのは、もう日付が変わろうかという頃だった。

(´・ω・`)……。

もう随分と『ただいま』なんてセリフは言っていない。

家庭という言葉に、多くの人は温かみを感じるだろう。
だが、この時の僕にとって家庭という言葉は冷酷で、重苦しく、ネガティヴなイメージしかなかった。

(´・ω・`)(ジョイスはもう寝たか)

(´・ω・`)(……ふぅ)

僕は家の中に貼られた一本のロープを跨いだ。
これは『僕の領域』と『妻の領域』を視覚化したものだ。
妻が僕の領域を侵したら、ロープに取り付けられた鈴がなり、僕に知らせる仕掛けである。

要するにこの頃の僕と妻は家庭内別居状態だった。

118: 名無しさん 2016/04/06(水)23:12:15 ID:vY5
妻の病状回復に、僕もそれなりには努力したつもりだった。
だが、妻の精神状態は悪化の一途で、一時期は精神病院への入院を余儀なくされた程だ。

僕はもう、妻を諦めていた。

ここまで何とかやってこれたのは、2人の息子、ジェフリーとデイビッドが居てくれたおかげだ。

彼らがいなければ、僕はとうの昔に妻を置いて家を出てただろう。

(´・ω・`)(ん……こんな時間に台所の灯りが?)

119: 名無しさん 2016/04/06(水)23:13:25 ID:vY5
彡(゚)(゚) ……

彡(゚)(゚) グビッ

(´・ω・`)(ジェフか。一体何をしているんだ?)

ジェフが手にしていたのはウィスキーのボトルと、グラスだった。
薄暗い台所で、ジェフは独りで酒を飲んでいたのだ。

(´・ω・`)「……おい、ジェフ」

彡(゚)(゚) ……

(´・ω・`)「まだ、15だろ。酒を嗜むのは早いんじゃないのか?」

彡(゚)(゚) ……

彡(゚)(゚) グビッ

(´・ω・`;)「おい、聞いてるのかジェフ!」

僕が肩を掴むと、ジェフは静かにボトルとグラスをテーブルに置いた。

彡(゚)(゚) 「あぁ……聞いとるで」

ジェフはそう返すと、そのまま台所を出て行った。

(´・ω・`;)(……ジェフ)


心の支えであった息子の心でさえ、僕にはもう分からなかった。

121: 名無しさん 2016/04/07(木)06:52:54 ID:esX
その日、ジェフリーは家の窓から、家の目の前の路地を眺めていた。

深い意味は無かった。
本当にただ眺めているだけだった。

彡(゚)(゚) (……)

彡(゚)(゚) (……)

それはほんの偶然だった

彡(゚)(゚) (……なんの音や?)

少年 タッタッタ

彡;(゚)(゚) ドキッ

家の前を1人の少年がジョギングしており、たまたまそこに居合わせた。
ただそれだけだった筈なのだが。

彡;(゚)(゚) ドキドキドキ

何事にも無感動な青年にある感情が芽生えた。
ジェフリーはその少年に心を奪われたのだ。

124: 名無しさん 2016/04/07(木)07:18:02 ID:esX
ジェフリーは今日も自室にこもり、お気に入りのヘビィメタルと共にアルコールを口にしていた。

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)(忘れられへん)

彡(゚)(゚)(あの男の子は何処の子なんやろ?)

ジェフリーは子供の頃から、女性に性的魅力を感じなかった。
だが、良くも悪くも、彼の孤独な環境が彼がゲイであるという現実を突きつけずに済んだのかもしれない。

彡(゚)(゚)(あぁ、あの子と仲良くなりたい)

彡(゚)(゚)(あの子とセックスしたい)

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)(せやけど、友達を作ることもできへんワイに恋人なんて)

彡(゚)(゚)(ましてや、男がワイと付き合ってくれることなんて、天地がひっくり返ってもあり得へんのやろな)


『あなた方は、不義の者が神の王国を受け継がないことを知らないとでもいうのですか。惑わされてはなりません。
淫行の者、偶像を礼拝する者、姦淫をする者、不自然な目的の為に囲われた男、男同士で寝る者、盗む者、貪欲な者、大酒飲み、ののしる者、ゆすり取る者はいずれも神の王国を受け継がないのです』
~新約聖書 コリントの信者への手紙Ⅰより~

キリスト教では、同性愛は神が罰する穢れた行為とされる。
当時のアメリカでは、同性愛者は神に見放された人種だった。

125: 名無しさん 2016/04/07(木)07:37:41 ID:esX
ズンズン

『You've seen life through distorted eyes(おまえは歪んだ目を通して人生を見てきた)』

ズンズン

『You've seen life through distorted eyes(でもおまえは知ろうとしない)』

彡(゚)(゚)グビッ

ジェフリーはひたすらに酒を呷る。

『Nobody will ever let you know(おまえが理由を聞いても誰も答えてくれない)』

ズンズン

『When you ask the reasons why
They just tell you that you're on your own(ただおまえは一人だと教えてくれるだけだ)』

彡(゚)(゚)……

父からも

母からも

友達からも

そして、神からも見放された人間。

それが青年のジェフリー=ダーマーだった。

126: 名無しさん 2016/04/07(木)07:51:33 ID:esX
『But you don't want to know(でもおまえは知ろうとしない)』

132: 名無しさん 2016/04/08(金)09:07:14 ID:vrE
あの日以来、ジェフリーは家の周囲をうろついてはあの少年を探していた。

彡(゚)(゚)(……なかなか会えへんな)

彡(゚)(゚)(……あ)

道の先にようやく少年を見つけることができた。

彡;(゚)(゚)(アカン、どうしよう)

彡;(゚)(゚)(ワイはあの子と仲良くなりたいんや、声をかけな…)

彡;(゚)(゚)(せやけど……)

『ゲイ?気持ち悪いんだよ!』

『この人、怖い』

『うわっ、絶対コミュ障だよこいつ』

彡;(゚)(゚)ドキドキドキ

少年 トコトコ

彡;(゚)(゚)「あ………ぁ」

少年は過ぎ去り、結局ジェフリーは何もする事ができなかった。

自分の愛する人間に拒絶されるのが怖かったのだ。
そして何より、彼は自分のことを拒絶されるべき人間だと感じていた。

133: 名無しさん 2016/04/08(金)09:28:23 ID:vrE
~リビア高校~

同級生『おい、ジェフリーの奴を見ろよ』ヒソヒソ

同級生『アイツ、学校で酒飲んでるぞ』ヒソヒソ

彡(゚)(゚) …グビッ

ジェフリーはコーヒー用の紙コップにウィスキーを注ぎ、教室でそれを飲む事があった。

同級生『ヤバいよなあいつ、いつも1人でいておとなしいのに』ヒソヒソ

同級生『アイツ絶対やばい奴だって…』ヒソヒソ

彡(゚)(゚) チラッ

同級生『あっ……』

同級生『;;;』

彡(゚)(゚)(……)

ジェフリーの飲酒を同級生はみんな知っていた。
だが、誰も彼を咎めなかった。

いや、『咎めてくれる友人』が居なかったのだ。
いつも孤独で無表情で何を考えているか分からないジェフリーに、誰も関わろうとはしなかった。

135: 名無しさん 2016/04/08(金)09:31:22 ID:vrE
教師「えー、解剖学では大きく分けて、骨格と循環器とに…」カキカキ

彡(゚)(゚)「メェ~」

教師・同級生『!?』

教師「ど、どうしたダーマー?」

同級生 ザワザワ

彡(゚)(゚)「メェ~!メ゛ェ゛~~!!」

教師「おい、やめろダーマー!!」

同級生 ザワザワザワザワ

彡(゚)(゚)「メ゛ェ~!!メ゛ェ゛~!!メ゛ェ゛~!!」

教師「やめんか!!!」

ジェフリーは突如動物の鳴き声を真似るなど奇行に走る事があった。

そんな彼を中には面白がるものもいたが、教師を含め大多数の人間が彼を問題視していた。
当然、学業の成績も振るわなかった。

このような奇行は、孤独な彼が考え得る、注目を集める唯一の方法だったのかも知れない。

136: 名無しさん 2016/04/08(金)09:45:24 ID:vrE
(*゚ー゚)「えぇ、はい、はい。そうですか、えぇ。大変申し訳ありませんでした。本人にはよく言って聞かせます。はい、失礼します…」

ガチャ

(*゚ー゚)「……ふぅ」

(*゚ー゚)(また学校から苦情の電話)

(*゚ー゚)(いったいどうなってるのよあの子は)

ジェフリーはリビングのソファーに座りながら、呆っと窓の外を眺めていた。

(*゚ー゚)「ジェフ、また苦情の電話よ!どういう事なの!?」

彡(゚)(゚)……

(*゚ー゚)「ちょっと、聞いてるのジェフ!?」

彡(゚)(゚)「…ちょっとフザけただけだよ。ただのジョークさ」

(*゚ー゚)「ジョークで授業を妨害するのはやめなさいって言ったでしょ!!」

彡(゚)(゚)「ユーモアが欠乏してるんだよ、みんな」

(*゚ー゚)「とにかく!!2度とこんなふざけた事はしないで!!」

彡(゚)(゚)「…あぁ」

(*゚ー゚)「まったく!!誰に似たのかしらね!!」

バタンッ

137: 名無しさん 2016/04/08(金)09:52:13 ID:vrE
母親の説教などジェフリーの頭には入っていなかった。
この時の彼の頭を占めていたのは“あの少年”だった。


彡(゚)(゚)(いつもワイの心にはあの子がおる)

彡(゚)(゚)(無理だとわかっていても忘れられへん)

彡(゚)(゚)(触れたい、キスしたい、セックスしたい)

彡(゚)(゚)(傍にいて欲しい)

彡(゚)(゚)(せやけど、もしワイの気持ちを伝えて、あの子にまで学校の連中みたいな視線を向けられたら…)

彡(゚)(゚)(あの子にまで罵られたり、拒絶したりされたらワイは…ワイは……)

彡(゚)(゚)(………)

彡(゚)(゚)(それなら、力尽くでも……)

138: 名無しさん 2016/04/08(金)10:03:18 ID:vrE
この日、ジェフリーはバットを携えて近所の茂みに身を潜めた。

既に少年の自宅や、行動範囲はあらかた調査済みだった。
計画は周到だ。

後は、いつも通り人気のないこの茂みの前の路地に少年が出てきた所をバットで殴り、気を失わせ、そしてレイプするだけだった。

彡(゚)(゚)(……)

彡(゚)(゚)(このバットであの子の後頭部を強打する)

彡(゚)(゚)(あの子が気を失った所で茂みに引き刷り込んでレイプする)

彡(゚)(゚)(……その後は)

彡(゚)(゚)(その後は……)

トコトコ

彡(゚)(゚)(あ…)

彡;(゚)(゚)(来た…)

少年「~?」

彡;(゚)(゚)(今や……っ!!)




トコトコ

彡;(゚)(゚)(ダメや!ダメや!!)

彡(゚)(゚)(やっぱりこんなことできへん!!)


この時、ジェフリーはすんでの所で凶行を自制する事ができた。
だが、彼の中にある歪んだ願望はこの頃から急速に増大していったのだった。

144: 名無しさん 2016/04/09(土)07:02:22 ID:h62
(*゚ー゚)「ライオネル!!アナタ何度言わせるのよ!!アンタのせいで家庭はメチャクチャよ!!」

(´・ω・`)「このロープから先に入ってくるなと言っただろ、ジョイス」

(*゚ー゚)「そんなロープがなんだっていうの!?私はアナタよせいで身も心もボロボロなのよ!!」

(´・ω・`)「君と接していると、僕もイカレてしまいそうだよ」


(*゚ー゚)「なんですって!?私だけじゃないわ!!アナタのせいでジェフまでおかしな子に育ってしまったじゃない!」

(´・ω・`;)「おい!自分の子になんて事を言うんだ!!」

(*゚ー゚)「本当の事よ!!あの子、見た目だけじゃなく、中身まであなたにそっくりね!」

(´・ω・`;)(こいつ……)

この時、僕は悟った。
僕はもうジョイスと共にはいられない。
一刻も早く離れなければと思った。

僕はカバンに適当に着替えを詰め込むとその日の内に家を出た。
もうこの家に未練などなかった。

152: 名無しさん 2016/04/11(月)00:24:18 ID:9Hk
デイブ「パパ、今日も帰って来ないのかな……?」

(*゚ー゚)「私達はあの男に見捨てられたのよ。でも大丈夫よ、ママが付いてるからね」

デイブ「うん……」

(*゚ー゚)「よしよし」

ガチャ

彡(゚)(゚)「……」

(*゚ー゚)「あら、遅かってじゃないジェフ」

母親と弟のデイビッドが抱き合う姿を、帰宅したジェフリーは無表情で見つめていた。

(*゚ー゚)「ジェフ、私決めたわ。ライオネルを裁判所に訴える事にしたの!あの男はあなた達の父親としての責任を全く果たしていないんですもの!」

彡(゚)(゚)「……そう」

(*゚ー゚)「『……そう』って、あなたもあの男に見捨てられたのよ!?裁判になったら、あなたもママと一緒にあの男を訴えるの!!」

彡(゚)(゚)「……」

(*゚ー゚)「ちょっとジェフ!!」

ジェフリーは母親の言葉を無視して自分の部屋へと戻った。

彡(゚)(゚)「……」

カチャッ

ズンズン?

部屋に引きこもり、レコードをかけながら酒を呷る。
もはや、ジェフリーの居場所はこの部屋しか存在しなかった。

154: 名無しさん 2016/04/11(月)00:36:26 ID:9Hk
~リビア高校~

同級生『もうすぐ卒業だね!』

同級生『だな、卒業パーティーが楽しみだぜ』

同級生『パーティーには誰をエスコートする?ジェニファーはもうオレの先約が入ってるぜw』

同級生『オレの相手は……お前だよサム!』

同級生『ゲェェ!!ゲイかよお前w』

同級生『おお神よ、この小男ジョージは自然の摂理に背く穢れた存在です。どうかその寛大なる御心で救いたまえ!アーメン』

同級生『やめろやw』

彡(゚)(゚)「……」

同級生『ダンスの相手もそうだけど、オレは卒業プレゼントが楽しみだぜ!何せ、車を買ってもらう予定だからな』

同級生『マジかよ!俺の親父じゃ精々スクーターが関の山だぜ』

同級生『おれんちは、卒業の記念に家族でハワイの予定だぜ』

同級生『お、いいねぇ!!』

彡(゚)(゚)「……」

同級生 ガヤガヤ


もうすぐ、ジェフリーの高校生活は終わろうとしていた。
だが、彼には学校での思い出を共に振り返る仲間などいなかった。

155: 名無しさん 2016/04/11(月)00:49:05 ID:9Hk
彡(゚)(゚)「……」

だが、この時ジェフリーは1人の女性に声をかけていた。

彡(゚)(゚)「……やぁ」

女子「え、どうしたのジェフリーくん」

彡(゚)(゚)「今度の卒業パーティー、ダンスをする相手は決まっとるん?」

女子「ま、まだだけど」

彡(゚)(゚)「……よかったらワイにエスコートさせてくれへんか?」

女子「え?」

彡(゚)(゚)「ダメか……?」

女子「うーん……まぁ、いいわよ」

彡(^)(^)「ありがとやで」

クラスの中で孤立していたジェフリーであったが、この時彼は卒業パーティーのダンス相手に女性を誘っていた。

自身の歪んだ性癖や、自身を取り巻く厳しい現実と、この時ジェフリーは彼なりに闘っていたのかも知れない。

156: 名無しさん 2016/04/11(月)01:01:18 ID:9Hk

あれ以来、僕は家には帰らず、もっぱら安いモーテルに寝泊まりしては生活していた。

(´・ω・`)「ジョイスの金切り声を聞かずに生活できるというは、どれほど幸せなことなのだろうか」

僕はモーテルでの生活をそれなりに楽しんでいた。
だが、それでも気がかりはあった。

(´・ω・`)(レオとデイブは元気にしているだろうか……?)

我が子をあの家に残して自分だけ逃げ出したこと。
そこに罪悪感がないはずがない。

158: 名無しさん 2016/04/11(月)06:00:29 ID:sPd
三人兄弟なんか?

159: 名無しさん 2016/04/11(月)06:46:04 ID:9Hk
父ライオネル(レオ)
妻ジョイス
長男ジェフリー(ジェフ)
次男デイビッド(デイブ)

164: 名無しさん 2016/04/11(月)07:18:55 ID:9Hk
ガチャガチャ

(*゚ー゚)「デイブ、その洋服は全部キャリーバッグに詰めてちょうだい」

デイブ「はい、ママ」

(*゚ー゚)「ジェフ!あなたもボサッとしてないで荷造り手伝いなさい!」

彡(゚)(゚)「……」

(*゚ー゚)(あの子、ソファーに座ったきり何もしないでボーッとしてる)

(*゚ー゚)「ジェフリー!!」

(*゚ー゚)「あなたも私達とこの家を出るのよ!早く荷物をまとめてちょうだい!」

彡(゚)(゚)「……」

(*゚ー゚)「……あなた、もしかしてここに残る気なの?」

彡(゚)(゚)「……」

(*゚ー゚)「……」

(*゚ー゚)「いいわ、あなたももう18歳よ。自分の道は自分で決めなさい」

その数日後、ジョイスは次男であるデイビッドを連れて家を出て行った。
ジェフリーを独り残して。

165: 名無しさん 2016/04/11(月)07:31:43 ID:9Hk
~リビア高校卒業式~

合衆国国家が流れ、卒業していく生徒達の姿を父母たちが見守る。

涙を流す者。
笑やがら友人や家族と抱き合う者。

まるで、多くの人々が互いの絆を確かめ合うかのように。

だが、ジェフリーは違った。
彼の元には誰一人として卒業を祝福する人間は居なかった。

彡(゚)(゚)

この時のジェフリーの心境など、語るまでもないだろう。

166: 名無しさん 2016/04/11(月)07:41:03 ID:9Hk
~卒業パーティー~

同級生『卒業おめでとー!!』

同級生『良かったなぁ、サム。ちゃんと女子をエスコートできてw』

同級生『ゲイだから、カモフラージュしてんだろ?』

同級生『えっ、サムってゲイなの!?気持ち悪い!』

同級生『やめろよ!!俺はちゃんと女の子が好きだ。中でも君のことが大好きなんだ。ジェニf』

同級生『おい、あれ見ろよ』ヒソヒソ

同級生『なんだよ人が抱き時なことを言おうとしてるのに!』

同級生『あれだよ、あれ。ダーマーが女子をエスコートしてるぜ』

同級生『えっ、あの孤独の変わり者が!?』

同級生『てゆーか、アイツ卒業パーティー来たんだ』

彡;(゚)(゚) ドキドキ

女の子「ちょっと、ジェフ。凄い緊張してるみたいだけど大丈夫?」

彡;(゚)(゚)「あ、あぁ…」

女の子「しっかりしてよね?エスコートした男子がリードしてくれないと困るわ」

彡;(゚)(゚)「……」

167: 名無しさん 2016/04/11(月)08:08:01 ID:9Hk
BGMが切り替わり、生徒達がペアの手を取りダンスを始めた。

女の子「ジェフ」

彡;(゚)(゚)「ほ、ほな」

女の子の手を取るジェフリー。
だが、交友の少ない彼に、今まで女子をエスコートしてダンスした経験など無かったし、マナーをまともに教えてくれる家族も彼には居なかった。

女の子「痛っ!!ちょっと!今私の足を踏んだわよジェフ!!」

彡;(゚)(゚)「ゴゴゴ、ゴメンやで」

女の子「ダンスくらいちゃんと練習してきてよね!!」

同級生『プークスクス』

女の子「もう!」

彡;(゚)(゚)……

168: 名無しさん 2016/04/11(月)08:09:17 ID:9Hk
こうして、ダンスタイムは終わった。
やがて、司会がマイクを持つと、家族から卒業生へのプレゼントの授与が行われた。

卒業生へ家族からのメッセージが読み上げられると様々な贈り物が渡される。

プランド物のバッグ

新生活を始めるための家電製品

中には乗用車のプレゼントもあった


彡(゚)(゚)

ジェフリーの元にはプレゼントはおろか、メッセージカード1つすら届く事が無かった。

女の子「ねぇ、見てジェフ!パパとママったらこんなに大きな花束をくれたの!!持ちきれないわ」

彡(゚)(゚)「……良かったね」

女の子「ところでジェフ、あなたは何を貰ったの」

彡(゚)(゚)「……何も」

女の子「えっ…?」

彡(゚)(゚)「……」

ジェフリーは無言のまま会場の外へと歩き出した。

169: 名無しさん 2016/04/11(月)08:09:52 ID:9Hk
女の子「ちょっと待ってよジェフ!」

エスコートした女の子を会場に残し、ジェフリーは近くのファーストフード店へと逃げ込んだ。

家族や友人との愛に溢れるあの場の空気に、ジェフリーはもう耐えきれ無かった。

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)(ワイが何をしたんや)

彡(゚)(゚)(ワイにはもう父ちゃんも母ちゃんもおらへん)

彡(゚)(゚)(そばで笑ってくれる友人もおらへん)

彡(゚)(゚)(女の子を好きになれへんけど、いっぱしの男らしく頑張ってエスコートしてみた)

彡(゚)(゚)(せやけど、何もかもうまくいかへん!!)

彡(;)(;)(なんでワイはこんなにも孤独なんや!なんでワイは男が好きなんや!)

彡(;)(;)(なんでなんや!!)

多くの人にとって感動のイベントである卒業。
だが、彼にとっては孤独を深め、心を傷つける物でしか無かった。

176: 名無しさん 2016/04/11(月)15:33:47 ID:9Hk
ハイスクールの卒業から数日後。
ジェフリーは車で郊外のスーパーマーケットへ買い物に出かけていた。

彡(゚)(゚)(とりあえず酒やな)

彡(゚)(゚)(あとは、食料品と何買ったろ…)

車を駐車場に停め、大通りに出た時、彼は一人の青年に出会った。

痩躯にリュックサックを背負い、その青年はどうやらヒッチハイクをしているようだった。

彡(゚)(゚) ……

ジェフリーは無言でその男を見つめていた。

彡(゚)(゚)(なんて素敵な人なんやろ…)

一目惚れだった。
考えるより先に、気がつけば声をかけていた。

彡(゚)(゚)「やぁ」

何故だか、この時ジェフリーは至って自然に声をかける事ができた。
まるで、運命が誘うかのように。

彡(゚)(゚)「君、ヒッチハイカーみたいやけど?」

青年「今、ライブ帰りなんだけどさ、金がなくなっちまったんだ!んで、家まで送ってくれる天使を待っているところなんだよ」

彡(^)(^)「なるほど、どうやらその天使とはワイの事のようやな。ちょうど買い物帰りで暇しとったんや」

青年「本当かい?いやー、今日は付いてるぜ神様!」

彡(^)(^)「ほんま、今日はついてるで。この出会いを神に感謝やな」

この時、ジェフリーは本当にそう感じていた。
一目惚れした見ず知らずの男と、いきなりドライブする機会に巡り会えた。

これを運命と言わずなんと言えばいいのだろうか?

177: 名無しさん 2016/04/11(月)15:48:53 ID:9Hk
『Destiny whispered to him "Be a murder" And "kill yourself in the end".』

『 It isn't possible to resist. 』

『You can't also retrogress.』

『 Because that's destiny.』

179: 名無しさん 2016/04/11(月)16:09:29 ID:9Hk
ジェフリーは青年を車に乗せると、エンジンをかけた。

彡(゚)(゚)「ワイはジェフリー言うんや。ジェフと呼んでくれてかまへんで」

青年「俺はヒックス!よろしくな、天使の兄ちゃん」

彡(゚)(゚)「ライブ帰りや言うてたけど、どんな音楽を聴くんや?」

青年「何ってそりゃーロックよ!激しければ激しいほどいいね!」

彡(゚)(゚)「ほんま!?実はワイも大好きなんや!メタルは聴きよる?」

青年「もちろん!オジー=オズボーンは俺の神様だ!」

彡(゚)(゚)「うおおお!メッチャ気があうやん!!ワイもブラックサバス大好きなんや!!」

青年「本当かい!?兄さん大人しそうなのにいい趣味してるねー!!」

偶然にも2人の音楽の趣味は似通っていた。
互いの好きな曲について盛り上がる2人が打ち解けるのに、そう時間はかから無かった。

203: 名無しさん 2016/04/12(火)07:39:49 ID:YdB
青年「やっぱこの社会はどうしようもないゴミなんだよ!メタルはやっぱこのクソな現実を打破する力をくれるんだ」

彡(^)(^)「ホンマや!こんなに人と気が合うなんて初めてやで!」

それはジェフリーの本心からの言葉だった。
人生で初めて親友になれるかも知れない人に出会えた。

何よりもう、ジェフリーは彼に心を奪われていた。
彼をこのまま返して縁を切らせては絶対に後悔するとジェフリーは悟った。

彡(^)(^)「ヒックスは酒飲むんか?」

青年「もちろん!マリファナをやりながらの酒!最高だね」

彡(^)(^)「ほんま気が合うな!ワイもマリファナと酒が大好きなんや」

青年「ほんと、見かけによらないねー!」

204: 名無しさん 2016/04/12(火)07:40:19 ID:YdB
彡(^)(^)「ヒックスは帰りを急いどるんか?」

青年「ん?いや、そーでもないけど」

彡(^)(^)「ほな、ウチに少し寄っていかへんか?すぐ近くにあるんやけど、酒もマリファナもあるで!もちろん、オジーのレコードもや」

青年「本当に!?いやー、でも流石に悪い気が」

彡(^)(^)「ええんやって。これも何かの縁や」

青年「じゃあ、お言葉に甘えて!」

こうしてヒックスはジェフリーの家へ誘われる事になった。

205: 名無しさん 2016/04/12(火)07:40:57 ID:YdB
2人はブラックサバスの曲を大音量でかけながら語り合った。
マリファナを吸いながら酒を飲み上機嫌な2人の話は尽きなかった。

ジェフリーにとって、どれ程幸福な時間であったろう?
どんな場所にも居場所がなかった彼が初めて心を分かち合える相手ができたのだ。

青年「そうか、父親も母親も家を出ていって、残るのはジェフ、君だけなんだな!」

彡(゚)(゚)「そうなんや。この世はイカサマや。ワイはずっと孤独なんや」

彡(^)(^)「せやけどヒックス!君はワイの求めていた全てや!」

青年「ハハハ、オレは君のマドンナのようだな!」

彡;(^)(^)「冗談とちゃうで!ワイは本気や!」ガシッ

ジェフリーは青年の手を固く握った。

青年「えっ……あ、うん」

彡;(^)(^) ハァハァ

青年(……コイツ、もしかして)

206: 名無しさん 2016/04/12(火)07:41:34 ID:YdB
彡;(^)(^)「そんなに急がんのやったら今日はワイんちに泊まって行ったらどうや?酔いもまわっとるやろ?」

彡;(^)(^)「あっ!先にシャワー浴びてきたらどうや?」ハァハァ

青年「いや、えーと、気持ちは嬉しいんだけど…」

彡;(^)(^)「遠慮することないやで!」ハァハァ

青年「あ、そうだ!」

彡;(^)(^)!?

青年「そう言えば、今日は親父の誕生日パーティーをするんだった!!」

彡;(^)(^)「え…ヒックス??」

青年「すっかり忘れてたよ!本当にありがとうな兄さん、楽しかったよ!!」

彡;(^)(^)「なんでやヒックス、ワイといようや!!」

絶対に帰したくないとジェフリーは思った。
こんなにも楽しい時間を失うのが彼には耐えられなかったのだ。

もう、あんなどうしようもなく孤独な生活に戻りたくなかった。

207: 名無しさん 2016/04/12(火)07:42:28 ID:YdB
青年「じゃあ、荷物まとめて帰るよオレ」

彡(^)(^)「……アカン」

青年「……へ?」

彡(●)(●)「アカンのや、ヒックス」

ジェフリーは近くにあった金属製のダンベルを手に取ると、それで青年の後頭部を強打した。

鈍い音と共に倒れる彼を見ながら、耐え難い激しい感情が沸き起こった。
今まで抑えてきた彼の歪んだ感情はこの時爆発し、混ざり合い、そして一つの形になった。

初めての性行為は死体とだった。
死体は逃げないし、彼を侮蔑することもなかった。まさに理想の恋人だった。

彡(●)(●)

ジェフリーは子供の頃を思い出していた。
動物の死体を解体していた時のあの恍惚を。
彼はナイフ持ってくると青年の肉体に刃物を突き立てた。

血が滴り、ジェフリーの体を赤く染め上げる。
青年の体内から内臓を取り出し、床にぶちまけた。
この時、彼はこの世のものとは思えぬ快感を覚えていた。

彡(●)(●)(なんて美しいんだ)

室内にはレコードが流れ続けていた。

ズンズン

『The gates of life have closed on you(人生の門はおまえには閉ざされてる)』

彡(●)(●) グチャ… ギチャッ…

ズンズン

『And now there's just no return(今では戻ることもできない)』

208: 名無しさん 2016/04/12(火)07:47:15 ID:YdB
no title


~第2部 『もう戻れない道』完~

336: 名無しさん 2016/05/23(月)09:41:43 ID:QGw
家を出て行ってから1年ほどが過ぎた。
僕はかねてより懇意にしていた女性と正式に付き合うようになっていた。

シャリと言う名の彼女は僕の家庭事情を知り、それでもなお僕を励ましてくれた。
ジョイスと違い明るく人情味のある女性だった。

(´・ω・`)「シャリ、話があるんだ」

シャリ「どうしたのレオ?」

(´・ω・`)「僕と結婚して欲しい」

シャリ「……」

(´・ω・`)「僕は前の家庭では夫としても父としても不十分だった」

(´・ω・`)「正直もう、家庭なんてウンザリだと思っていたよ」

シャリ「……」

(´・ω・`)「でも、君が僕を支えてくれて気づいたんだ。僕の望みは君と家庭を築きたいんだって」

(´・ω・`)「僕と結婚してほしい」

シャリ「……」

(´・ω・`;)ドキドキ

シャリ「…………もちろんよ」ニッコリ

(´^ω^`)「シャリ!」

こうして僕はシャリと再婚した。
今度こそ明るく幸せな家庭を築くんだと、僕は心に誓っていた。

337: 名無しさん 2016/05/23(月)09:50:39 ID:QGw
新しい妻との再出発は順風満帆かに思えた。
だけど、そこには大きな気がかりがあった。


シャリ「これから家庭生活を続けていくに、私のアパートじゃ手狭ね」

(´・ω・`)「僕のウチに住もう。名義は僕のままだし、ジョイスもデイビッドを連れてウィスコンシンに帰ったからね」

シャリ「デイビッド君は次男くんよね?長男くんはまだ家にいるのかしら」

(´・ω・`)「うん…たぶんね」

シャリ「たぶんてアナタ。…連絡してないの?」

(´・ω・`)「たまに電話はしていたんだが、最近は電話に出なくてさ」

シャリ「それ、大丈夫なの?」

(´・ω・`)「ジェフは物静かだが、賢い子だ。もう成人しているしどうにかやっているよ」

シャリ「でもまだ十代なんでしょう?」

(´・ω・`)「うん」

シャリ「まぁいいわ。長男くんとは一度会って話すべきよ。それから親子としてやり直せばいいわ」

(´・ω・`)「……そうだね」

339: 名無しさん 2016/05/23(月)10:01:27 ID:QGw
こうして僕は1年ぶりに家に帰る事になった。
ジェフに配慮し、シャリを連れずに僕一人での帰宅だった。

(´・ω・`)「なんだか不思議な気持ちだ」

(´・ω・`)「自分の家なのに、まるで他人の家の前に立っている気がする」

門扉はまるで重苦しい壁のように感じられた。

(´・ω・`;)(…………このまま立ち往生していても仕方がないか)

(´・ω・`;)「おーい、ジェフ!パパだー!入るぞー!」

そう言いながら僕はドアの鍵を開け、家の中へと入っていった。

(´・ω・`;)(レコードが流れている。ジェフが好きなロックだな。という事はジェフは居るみたいだ)

(´・ω・`;)「おーい!ジェフ!」

僕がどんなに大きな声で呼んでも返事はなかった。

341: 名無しさん 2016/05/23(月)10:19:54 ID:QGw
(´・ω・`;)(ゴミが凄いな…さては片付けをロクにしてないな)

僕はレコードの音のする方向へ歩いていった。

(´・ω・`)(どうやらリビングにいるようだな)

ズンズン

(´・ω・`)「ジェフ!」

そこにはリビングのソファーに佇むジェフの姿があった。

彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`;)「ジェフ…」

ジェフは何も言わずに僕を見つめていた。
その顔色は青白く、無精髭を生やし、目は虚ろだった。

テーブルの上には何本も酒の缶やビンが並べられている。

(´・ω・`;)「ジェフ、お前……」

その光景で僕はこの1年、ジェフがどのような生活をしていたのか察した。
このままではジェフはダメになる。

(´・ω・`;)「……」

僕がなんとかしなくちゃいけない、と僕は確信した。

彼の心の闇がどれほど深いのかも知らずに……。

358: 名無しさん 2016/05/27(金)08:01:06 ID:Os1
僕とシャリ、そしてジェフ。
3人の同居が始まっても、ジェフの生活は変わらなかった。

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)グビッ

騒々しいロックが流れる部屋で、酒を飲み続けた。
まるで、魂が抜けたような表情をしながら。
僕はジェフと2人で話し合う事に決めた。

(´・ω・`)「なぁジェフ、話があるんだ」

彡(゚)(゚)「………なんや?」

(´・ω・`)「いつまでこんな生活を続けるつもりなんだ」

彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)「こんな生活を続けていたらどうなるのか、お前もわかっているんだろう?」

彡(゚)(゚)………

359: 名無しさん 2016/05/27(金)08:09:03 ID:Os1
(´・ω・`)「お前には今まで苦労をかけてきた」

(´・ω・`)「その事について、僕は申し訳ないと思ってる」

(´・ω・`)「だから、これから少しでもジェフの力になりたいと思ってるんだ」

彡(゚)(゚)………

(´・ω・`)「何か悩みがあるんじゃないのか?」

彡(゚)(゚)………

彡(゚)(゚)「……いや」

(´・ω・`)「ジェフ、父さんを信頼しろ」

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)「…確かに酒は飲み過ぎやな」

彡(゚)(゚)「父さん、ワイはどうすればええんや?」

(´・ω・`)「今からでも大学に通ってみないか?」

360: 名無しさん 2016/05/27(金)08:17:21 ID:Os1
彡(゚)(゚)「いうても、この1年呑んだくれて勉強なんてしてへんで」

(´・ω・`)「大丈夫、お前はもともと頭の良い子だ」

(´・ω・`)「生活を正して勉強すれば、すぐに学力なんて取り戻せるさ」

彡(゚)(゚)…………

彡(゚)(゚)「せやけど」

(´・ω・`)「ん?」

彡(゚)(゚)「学力は取り戻せても、もうこの1年間は取りもどせんのや」

(´・ω・`)「ジェフ……」

僕はそっとジェフの肩を抱いた。

(´・ω・`)「大丈夫。若い時は1年という時間が重く感じるだろうが、大人になったらそんな事は全然気にもならなくなる」

(´・ω・`)「だから、安心して大学に通いなさい」

彡(゚)(゚)「………せやな」

361: 名無しさん 2016/05/27(金)08:21:41 ID:Os1
その日僕は彼のその言葉に安心して部屋を出た。
父親として初めて、少し彼と向き合えた気がした。



ズンズン

彡(゚)(゚)……

ズンズン

彡(゚)(゚)

ズンズン

彡(゚)(゚)「もう遅いんや……父さん」

ジェフリーの部屋にはただ、ブラックサバスのレコードが流れ続けた。

362: 名無しさん 2016/05/27(金)08:37:06 ID:Os1

彡(゚)(゚)……

ジェフリーはふと立ち上がった。
そして、家族が近くにいない事を確認すると自室のドアにカギをかけた。

彡(゚)(゚)「父さんは、ワイのことなんて何にもわかっとらんのや」

部屋の首脳扉を開けると、中から木箱を取り出した。
40cm四方程度の正方形の箱だった。

彡(゚)(゚)「……ワイにはお前だけや」

ジェフリーは箱のフタを開けた。

彡(゚)(゚)「なぁ、ヒックス?」

そこに入っていたのは、人間の頭蓋骨だった。

363: 名無しさん 2016/05/27(金)08:40:23 ID:Os1
×首脳扉
○収納扉

364: 名無しさん 2016/05/27(金)08:52:23 ID:Os1
ジェフリーはライオネルの支援もあり、オハイオ州立大学に入学することができた。
ライオネルもシャリも、そんなジェフリーを祝福した。

だがら、そんな言葉など、彼には空虚にしか感じられなかった。
大学で専攻した経営学部の講義も同様だ。

何一つ彼には重要な事に感じられなかったし、彼の心に響く事はなかった。

言うまでもなくジェフリー達は大学生達の集団になじむ事ができなかった。
元々の知能が高いとはいえ、勉強をしない彼はすぐに講義の内容にもついていけなくなった。


彡(゚)(゚)……

ジェフリーにとって周囲の世界とは、ぶ厚い曇りガラスを隔てて眺める事しかできない、決して触れる事の叶わぬものであった。

365: 名無しさん 2016/05/27(金)08:53:24 ID:Os1
ジェフリーはライオネルの支援もあり、オハイオ州立大学に入学することができた。
ライオネルもシャリも、そんなジェフリーを祝福した。

だが、そんな言葉など、彼には空虚にしか感じられなかった。
大学で専攻した経営学部の講義も同様だ。

何一つ彼には重要な事に感じられなかったし、彼の心に響く事はなかった。

言うまでもなくジェフリーは大学生達の集団になじむ事ができなかった。
元々の知能が高いとはいえ、勉強をしない彼はすぐに講義の内容にもついていけなくなった。


彡(゚)(゚)……

ジェフリーにとって周囲の世界とは、ぶ厚い曇りガラスを隔てて眺める事しかできない、決して触れる事の叶わぬものであった。

367: 名無しさん 2016/05/27(金)09:01:12 ID:Os1
(´・ω・`)「ただいま」

シャリ「お帰りなさい!今日は早かったのね」

(´^ω^`)「君に会いたかったからね」

シャリ「やだ、あなたったら(ハート」

(´^ω^`)「本当だよ」

シャリ「もう!」

キャッキャッ

ガチャ

彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)「お、ジェフも帰ってきたぞ」

シャリ「お帰りなさいジェフ!」

(´・ω・`)「そろそろみんなで夕飯にするか」

シャリ「今夜はあなたの好きなハンバーグよ」

(´^ω^`)「お、いいねぇ!」

彡(゚)(゚)………

369: 名無しさん 2016/05/27(金)09:26:16 ID:Os1
~夕飯~

(´^ω^`)「シャリ、君の作るハンバーグは最高だよ」モグモグ

シャリ「よかったわ」

彡(゚)(゚)モグモグ

(´・ω・`)「ところで、大学はどうだジェフ?」

彡(゚)(゚)「……」モグモグ

彡(゚)(゚)「ボチボチやな」

シャリ「お友達はできた?」

彡(゚)(゚)「……まぁ」

(´^ω^`)「それは良かった。父さんは勉強漬けでロクに青春できなかったからな。ジェフには是非学生生活を楽しんで欲しいな」

シャリ「そうね。勉強も大事だけど、今しかできない事が沢山あるもの」

彡(゚)(゚)「……あぁ」

560: 名無しさん 2016/08/03(水)09:48:01 ID:gXR
(´・ω・`)「じゃあお休み、」

彡(゚)(゚)「あぁ…」

夕食が終わり、自室に戻るとジェフはベッドに座り込んだ。

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)

久しぶりに、見知らぬ女性と共に帰ってきた父。
今更、人並みの一家団欒を与えられても、彼にはハリボテの幸せにしか感じられなかった。

彡(゚)(゚)「この世界はイカサマや」

ジェフは収納扉を開き、その中にある木箱から頭蓋骨を取り出した。

彡(゚)(゚)「そうやろ?ヒックス」

ジェフが心を許せるのは、この頭蓋骨だけだった。

562: 名無しさん 2016/08/03(水)10:05:43 ID:gXR
だが、当然だが頭蓋骨が何かを語ることはなかっ。
あの時、2人でマリファナと酒を飲み交わしながら語ったあの時間は戻ってこない。


彡(゚)(゚)「ワイは……」

彼の亡骸を見つめる度に安堵と相反する感情が沸き起こった。
友を殺した。

ぬぐい切る事のできない罪の意識が、ジェフの心臓を鷲掴みにする。

彡;(-)(-)

子供の頃から人並みの幸せという物に憧れてきた。
だがその度に、父にも、母にも、学校にも、そして神にも彼は見放されてきた。

彡(-)(-)

ジェフリーは人を殺した事を後悔していた。
できる事なら父の望みに応え、真っ当な人間になりたかった。

だが、最後に引導を渡したのは自分自身だ。

563: 名無しさん 2016/08/03(水)10:16:23 ID:gXR
血液銀行「ダーマーさん、あなた前回の売血からまだ1週間しか経っていませんよ!?」

彡(゚)(゚)「ええんや」

血液銀行「良くないですよ!ちゃんと規定の期間をあけて頂かないと採血するわけにはいきません」

彡(゚)(゚)「ワイがええと言っとるんやからええやろ?はよ血抜いて買い取ってくれや」

血液銀行「ダーマーさん、これ以上話しても分からないようなら、今後もあなたから買い取る事はでき無くなりますよ?」

彡(゚)(゚)「なんやと?」

血液銀行「分かりませんか?ブラックリストに登録させていただくという事です」

彡(゚)(゚)「な…頼むで!金がないんや!」

血液銀行「お引き取りください」

仕事をしていないジェフリーの収入源は、自身の血液を売る事だった。
その金もすぐにアルコールとマリファナに消えてゆく。
ジェフリーが血を売る頻度はどんどん多くなっていた。

564: 名無しさん 2016/08/03(水)10:25:23 ID:gXR
大学にも通わなくなり、結局ジェフリーは酒びたりの生活に戻っていった。
そんな彼が大学を退学処分になるのは当然の事だった。



(´・ω・`)「ジェフ」

彡(゚)(゚)「……なんや」

(´・ω・`)「大学から退学処分の通知が来た」

彡(゚)(゚)……

(´・ω・`)「最近アルコールの量も増えているようだね」

彡(-)(-)

(´・ω・`)「どういうことか説明してくれないか?」

彡(-)(-)……

(´・ω・`)「ジェフ」

順調だと思えたのは初めの内だけだった。
自分の息子なのに、僕はジェフとどう接すれば良いのか分からなかった。

566: 名無しさん 2016/08/03(水)10:41:59 ID:gXR
ジェフはソファーに腰掛けたまま何も言わなかった。

アルコール依存症になり、顔色は悪く、目も虚ろなジェフを見て、人格まで冒されているのだと思った。

でも。

彡(●)(●)

彼の瞳の奥では、何かが絶えずうごめいているような気がした。
厳重に鍵をかけた心の扉のなかで、何かを考え続けているような。

(´・ω・`;)(どうすればいい?)

(´・ω・`;)(どうすればジェフにまともな人生を歩ませられるんだ?)

この時、僕にはジェフが何を考えているのか分からなかった。
だが、今なら分かる。

彼の心は常に人を殺したあの現場を反芻していたのだ。
地獄の光景を永遠と。

彼には僕の言葉なんて戯言にしか聞こえなかっただろう。

569: 名無しさん 2016/08/03(水)11:10:40 ID:gXR
僕の力ではもうジェフを構成することはできない。
その思いは日増しに強くなるばかりだった。

(´・ω・`)「ジェフ、軍に入隊しないか?」

考えた出した結論だった。
軍に入隊し、規律のある生活を送ることでしか、ジェフを更正する手立てを考えられなかった。

(´・ω・`)「このまま今の生活を続けてはダメだ」

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)コクッ

(´・ω・`)「ジェフ」

彼も心の中では変わりたいと願っていたのだろう。
強く反対することもなくジェフは頷いた。

こうしてジェフは我が家を出ることとなった。

570: 名無しさん 2016/08/03(水)11:23:20 ID:gXR

アメリカ陸軍への入隊手続きをとったジェフリーは、憲兵になるための訓練を受けるが挫折。
テキサス州サンアントニオのフォート・サム・ヒューストン基地に転属を命ぜられ、そこで新たに衛生兵としての訓練を受けた。訓練が終了すると、旧西ドイツにある、駐独アメリカ軍基地に配属された。

入隊当初は勤務成績も良く、順調に昇進もしていたが、ドイツ勤務となり基地内の免税店で酒が安く買えるようになると再び酒浸りの日々を送るようになった。

ジェフリー=ダーマーと共に働いた同僚は後にこう語っている。

『あいつの酒の飲み方は異常だったよ』

『何せ、意識が飛ぶまで酒を飲むんだ』

『加減てものを知らなかった』

『普段無口な奴だったよ』

『でも、酒を飲むと違ったな。父親の事ばかり話してたよ』

『……、よっぽど寂しかったんじゃないかな?』

571: 名無しさん 2016/08/03(水)11:26:47 ID:gXR
no title


~第3部 『父と息子』完~

577: 名無しさん 2016/08/03(水)19:42:16 ID:gXR
1987年 9月。
ミルウォーキーの街並みをジェフリーは一人歩いていた。

27歳の彼は無精髭を生やし、服装もラフな格好であった。
有色人種が多く治安も良くないミルウォーキーのダウンタウンに、ジェフリーは完全に溶け込んでいた。

娼婦やバーの呼び込みが、好色な目つきで彼に声をかける。
だが、ジェフリーは微笑を浮かべ慣れた振る舞いでその誘いを断る。

ジェフリーには目的地があった。
程なくしてレンガ造りの建物の前で立ち上がると、彼はその扉を開いて中へ入った。

彡(゚)(゚)

その間際、ジェフリーは入り口の脇に掲げられた看板に目をやった。

『Trash it up at Club 219(クラブ219でメチャクチャにぶち壊せ)』

彡(●)(●)

その謳い文句に目をやると、ジェフリーは薄っすらと笑みを浮かべた。

578: 名無しさん 2016/08/03(水)19:49:29 ID:gXR
クラブ219。
219番地にある事から名付けられた安直な名前のゲイバーだが、人気のダンサーも抱えており連日盛況していた。

クラブの中では半裸の若い男達がダンス音楽に合わせ狂喜乱舞していた。
そのほとんどが黒人やアジア人などの有色人種であったが、中には白人の男達もいる。

皆一様興奮し、踊り狂っている。
そんなお祭り騒ぎの中、ジェフリーは静かにバーカウンターに座った。。

580: 名無しさん 2016/08/03(水)19:58:18 ID:gXR
店員「やぁ、イケメン兄さん。今日も来たのかい?」

彡(゚)(゚)「……暇を持て余しとるんや」

店員「兄さんも好きだねぇ。新顔なのに、兄さんのファンも多いらしいよ」

彡(゚)(゚)「…おおきに」

店員「で、何にします?」

彡(゚)(゚)「…ラムコーク」

店員「承知しました?」

ジェフリーはカウンターに座ったままクラブ内を見渡した。
踊り狂う男達に混ざる事なく、ジェフリーは静かに酒を飲み続ける。

そんな中、ジェフリーは1人の男と目が合った。

582: 名無しさん 2016/08/03(水)20:05:26 ID:gXR
白人の若い青年だった。
青年はジェフリーと目が合うと、笑顔で近づいてきた。

青年「やぁ、隣いいかい?」

彡(゚)(゚)「あぁ」

青年「ジントニックを頼むよ」

店員「はい?」

青年「このクラブは最高だよ。僕達ゲイにとっての天国だ。なぁ、そうだろ兄さん?」

彡(゚)(゚)「せやな」

青年「君は踊らないのかい?」

彡(゚)(゚)

彡(゚)(゚)「……あぁ」

青年「ふっ、どうしたんだ兄さん。ダンスに何か嫌な思い出でも?」

彡(゚)(゚)「……いや」

583: 名無しさん 2016/08/03(水)20:09:16 ID:gXR
彡(゚)(゚)「単純にダンスが苦手なだけや。それに…」

青年「それに?」

彡(゚)(゚)「酒を味わうのが一番だ」

青年「なるほど、アル中ってわけかw」

彡(゚)(゚)「まぁな」

青年「その様子じゃ結構飲みそうだね」

彡(゚)(゚)「あぁ、ワイは飲むで」

彡(゚)(゚)「『眠りこけてしまう』ほどな」

青年「そりゃ、相当だなw」

588: 名無しさん 2016/08/03(水)20:20:17 ID:gXR
青年「兄さん、名前はなんて言うんだい?」

彡(゚)(゚)「ジェフリーや」

青年「ジェフリーか。よろしくジェフ」

青年「僕は近所のダイナーでコック見習いをしてるんだ。毎日毎日こき使われてストレスが溜まってる。んで、ここで『メチャクチャにぶち壊しにきた』ってわけw」

彡(゚)(゚)……

青年「兄さんは何をやってるんだい?」

彡(゚)(゚)「チョコレート工場の作業員や」

青年「へぇ、意外だな。頭良さそうだから、どっかの企業務めかと思ったけど」

彡(゚)(゚)「チョコレートの箱詰めやったら任せてや」

青年「ははっw じゃあ僕はパティシエにでも転職するかなw」

591: 名無しさん 2016/08/03(水)20:31:47 ID:gXR
青年「ずっとチョコレート工場で働いてるのかい?」

彡(゚)(゚)「いや、その前は軍にいたんや」

青年「へぇ、意外だな。でもそう言われてみると言い難いしてるね」

彡(゚)(゚)「言うても衛生兵やけどな」

青年「衛生兵か。それなら、ジェフのイメージに合ってるな」

彡(゚)(゚)「そうか?」

青年「あぁ、なんていうか優しそうっていうか、品があるよアンタ」

青年「僕のタイプw」

彡(゚)(゚)……

青年「ここに集まるのは普段は抑圧されてるマイノリティーばかりさ。特にカラードが多いからな」

青年「白人はよくモテる。連中も白人のケツ穴にぶち込みたがってるのさ」

青年「まぁ、僕は受け専だけどねw」

彡(゚)(゚)……

593: 名無しさん 2016/08/03(水)20:39:48 ID:gXR
彡(゚)(゚)「除隊されたんや」

青年「…へっ!?」

彡(゚)(゚)……

青年「えっ、あ。さっきの話?」

彡(゚)(゚)「ワイは飲んだくれのクズやったんや。それをワイの父さんが心配して入隊を勧めたんや」

青年「なるほど。俺の地元のワルも、性根叩き直して来いって軍にぶち込まれてたよw」

彡(゚)(゚)「最初は良かったんや。せやけどドイツ務めになってから、酒に溺れてもうて除隊や」

彡(゚)(゚)「無様やろ?笑ってや」

青年「いや、無様なんてことはないよ。人は誰だって過ちを犯すものさ」

青年「そこから立て直して、今は工場で仕事をしてるんだろ?立派じゃないか」

彡(゚)(゚)……

594: 名無しさん 2016/08/03(水)20:50:27 ID:gXR
ジェフリーはアルコール中毒のため、勤務継続困難と判断され除隊となった。
ただし、恩赦で不名誉除隊は免れていた。

その後、ドイツから戻ったジェフリーの生活は荒んでいた。
アルコールに溺れ、ゲイバーに足繁く通い、ゲイポルノを買い漁った。

それだけでは飽き足らず、1年ほど前に少年にマスターベーションを見せたとして保護観察処分となった。
ライオネルもそんな彼を持て余し、祖母の元に彼を預けるようになっていた。

彡(゚)(゚)「ワイは…どうすればええんや」

青年「誰でも悩むことはあるさ、そう深刻になるなよジェフ」

彡(゚)(゚)「なぁ…」

青年「ん?」

彡(゚)(゚)「ホテルに行かへんか?」

青年「お、積極的だねwいいぜ、いこう!」

598: 名無しさん 2016/08/03(水)21:00:55 ID:gXR
2人はクラブでしこたま酒を飲んで、千鳥足でホテルのエントランスに入って行った。
部屋に着くなり、2人は狂ったようにセックスした。


ジェフリーの脳の中は興奮と快感で真っ白になっていた。



ズキッ

ズキズキッ

彡;(-)(-)「うっ……痛」

彡;(-)(-)「な、何の痛みや」

彡;(゚)(゚)「ここは……バァちゃんちちゃうな。ホテル…なんで」

身体を襲う痛みで目を覚ましたジェフリーが『それ』を見つけるのに、それほど時間を要さなかった。
なにせ、『それ』は自分のすぐそばに横たわっていたのだ。

600: 名無しさん 2016/08/03(水)21:07:13 ID:gXR
そこには血を流した全裸の若い男が倒れていた。
顔はアザだらけで、歯は折れ、血が溢れている。

彡;(゚)(゚)「なんやこれ!?」

ジェフリーはとっさに青年の胸に耳をつけた。
だが、いくら耳をすませても心音は聞こえてこない。

ズキッ

彡;(゚)(゚)「うっ」

身体を襲う痛みは2種類あった。
1つは頭痛。
これは酒を飲み過ぎたことによる二日酔いだろうと、直ぐに推測できた。

問題はもう1つの痛みの源泉だ。

ジェフリーは自分の拳を見た。
彼の拳は腫れ上がり、乾きかけの血がこびり付いている。

まるで、その拳で誰かを殴り続けたように。

602: 名無しさん 2016/08/03(水)21:15:51 ID:gXR
その瞬間、ジェフリーは全てを理解した。

彡;(゚)(゚)(記憶にはあらへんが、ワイが殺したのは間違いなさそうやな)

彡;(゚)(゚)(そういや、昨日コイツと219で出会ったんやった)

彡;(゚)(゚)……

彡;(-)(-)(またやってもうたのか……)

彡;(-)(-)(どうすればいい?考えるんや)

彡;(-)(-)(大丈夫や。ヒックスの時もバレへんかったんや)

彡(-)(-)……

彡(-)(-)

彡(゚)(゚)(せや)

彡(゚)(゚)(先ずは屍体を処理せんことには始まらんな)

604: 名無しさん 2016/08/03(水)21:26:54 ID:gXR
彡(゚)(゚)(せやけど、どうやって?ここには屍体を解体できるような道具なんてあらへん)

彡(゚)(゚)(いっぺんフロントにキーを預けて道具を持ち込むにせよ、匂いや物音で周りに悟られかねへんし、血液なんかがどっかに付着しとったら清掃員に感づかれるかもしれへん)

彡(゚)(゚)(せやったら外に持ち出すか)

彡(゚)(゚)(デカいスーツケースがいるな。いっぺん外に出て買うてくるか。ホテルやしスーツケースやったら持ち込んでも怪しまれへんやろ)

ジェフリーはなに食わぬ顔でフロントに鍵を預けると、大きなスーツケースを買いまたホテルに戻った。
屍体はちょうどスーツケースに収まった。

ジェフリーは殺害の痕跡を残さぬよう血痕や部屋の乱れを綺麗に直し、ホテルをチェックアウトした。
ホテル員は誰一人として彼を不審には思わなかった。

605: 名無しさん 2016/08/03(水)21:36:13 ID:gXR
ジェフリーはそのまま祖母の家へ帰宅した。
高齢の祖母は耳も遠く、身体もよわかった。

ジェフリーは地下室に屍体を一時保管し、祖母には地下室へ近寄らぬよう言いくるめた。



グチャッ

グチャッ ギチャッ


彡(●)(●)


バキッ

ゴギッ

606: 名無しさん 2016/08/03(水)21:40:37 ID:gXR

バラバラになった手脚


なにも語らない首

彡(●)(●)


グチャッ

それらはジェフリーを非難することもなく、ただひたすらに彼の歪んだ欲望を引きずり出していく。

ゴギベギッ

彡(●)(●)

グチョッ

全てを忘れ、性欲の炎に日頃の悩みをくべる事ができた。

608: 名無しさん 2016/08/03(水)21:51:23 ID:gXR
翌朝、屍体は肉片に分割されゴミ袋数袋に分けられるとゴミ回収に出された。
学業の成績こそ振るわなかったが、ジェフリーは高IQであり、頭がキレる。

彼は誰にも悟られる事なく再び自らの凶行を隠し通す事に成功した。


だが、後始末が終わり冷静になると彼の心に再び深い後悔が刻まれた。


彡(゚)(゚)

『なぜ』

『少しでもマトモになろうと出来る限りの努力はしたのに』

『なのに何故こうも上手くいかないのか』

『なぜこんな人間に生まれついたのか』

『家族にも、友人にも、社会全てに見捨てられたのなら』

彡(●)(●)

『それなら、もういっそ』

609: 名無しさん 2016/08/03(水)21:54:16 ID:gXR













『好きにしてやればいい』

610: 名無しさん 2016/08/03(水)22:10:33 ID:gXR
1988年1月16日

クラブ219、近くのバス停で一人の少年がバスが来るのを待っていた。
インディアンの血を引く、褐色の肌の幼い少年だ。

彡(^)(^)「これからお出かけかい?」

ジェフリーはその少年に笑顔で声をかけた。

少年「うん!」

彡(^)(^)「君、急ぎじゃなかったらアルバイトせんか?」

少年「アルバイト?」

彡(^)(^)「せや。実はワイはカメラマン何やけど、モデルになって欲しいんや」

少年「モデルって何すればいいの?」

彡(^)(^)「ワイがお願いしたポーズを取ってくれればそれだけでええんやで。写真数枚撮らしてもろたら500ドルあげるやで」

少年「500ドル!?やるやる!!」

彡(^)(^)「せやったらワイについて来てや~」

少年「うん!」ワクワク

彡(●)(●)……

611: 名無しさん 2016/08/03(水)22:18:47 ID:gXR
ジェフリーは祖母の家に少年を連れ込むと、彼を地下室に誘った。

彡(^)(^)「ほな、撮影する前にのど渇いてるやろ?オレンジジュース飲み」

少年「うん、ありがとう!」ゴクゴク

彡(●)(●)

少年「ぶはっ!美味しかった!」

彡(●)(●)「そうかそれは良かった」

少年「…あれ?なんだか……頭がボーッとする……」

彡(●)(●)「それはいかんな。ちょっと横になって休んだらどうや?」

少年「う……うん………」

少年 スースー

彡(●)(●)

彡(●)(●)(薬が効いたようやな)

612: 名無しさん 2016/08/03(水)22:23:22 ID:gXR
ジェフリーは睡眠薬で少年が昏倒したのを確認すると、彼の服を引き剥がし、舐め回すように全身を眺めた。


彡(●)(●)(美しい)


彡(●)(●)(この体はもうワイのものや)


彡(●)(●)(ワイの……)


ジェフリーは少年の首に手をかけた。
その手に力を込めてゆく。

少年「グッ……ゴガッ!」

彡(●)(●)グググ

少年「ガッ!……ゲェッ!」

ゴギッ

彡(●)(●)

613: 名無しさん 2016/08/03(水)22:30:27 ID:gXR
屍体との性行為を終えると、ジェフリーは処理に取り掛かった。
今回は今までと異なり事前に処理の準備をしていたのだ。

少年の屍体は刃物でバラバラに解体された。
肉は硫酸で溶かし下水に。
骨はバラバラに砕かれ周辺地域に遺棄された。


自宅に言葉巧みに標的を誘い、睡眠薬入りの飲料を飲ませ昏倒させ殺害する。


ジェフリー=ダーマーのルーティンが完成した瞬間だった。

614: 名無しさん 2016/08/03(水)23:01:39 ID:gXR
同年3月24日

『フェニックス』というゲイバーで知り合った褐色の肌の青年を、ジェフリーは同様の手口で殺害している。

だが、ジェフリーにとって、殺害は決して『目的』ではなかった。


あくる日も、ジェフリーは黒人青年を家に連れ込み、睡眠薬で眠らせた。
だが、この日ジェフリーはその青年を殺す事はしなかった。

彡(゚)(゚)……

ジェフリーは眠っている青年の胸に耳をつけた。

彡(-)(-)

トクトク、と。
心臓の鼓動が聞こえる。

生きている温もりの中で、ジェフリーは安らぎに包まれた。

615: 名無しさん 2016/08/03(水)23:09:38 ID:gXR
翌朝

青年「ん……、どうやら寝ちまったようだな」

彡(゚)(゚)「おはよう、調子はどうだい?」

青年「なんだかダルイが大丈夫だ。すまんな、一晩泊めて貰っちまったな」

青年「機能のアナルセックスが激しすぎたせいかね?」

ガハハと青年は大きく笑った。
この日、ジェフリーは青年をそのまま返している。

この日以外にも、少年のポルノ写真を撮るだけの日もあった。

彼にとって重要なのは自身のせい欲を満たすこと。
そして何より耐え難い孤独感を埋め合わせることだった。

彼にとって殺害はあくまでも、その一手段だった。

616: 名無しさん 2016/08/04(木)00:01:45 ID:Sy6
『自分から離れる事なく、自分を軽蔑する事のない、筋肉質で褐色の肌をした、大人しい青年』

それが、ジェフリーにとっての理想の恋人像だった。
殺害は、あくまで相手を理想の恋人に仕立て上げるための作業だった。

できる事なら、ジェフリーも生きた温もりのある恋人が欲しいのだ。
それが叶わぬからこその凶行である。

彼は常に理想の恋人を得るための方法について思案していた。

617: 名無しさん 2016/08/04(木)00:18:40 ID:Sy6
プルル プルル

プルル プルル

シャリ「あなたーごめんなさい!今料理で手が離せないの、電話に出てちょうだい!」

(´・ω・`)「はいはい」

ガチャッ

(´・ω・`)「もしもしダーマーですが」

祖母『ライオネルかい?アタシだよ』

(´・ω・`;)「母さん!どうしたんだい?もしかしてまたジェフが何か……」

祖母『それがあの子ったら地下室で何かをやってるみたいなのよ』

(´・ω・`;)「地下室で?何かってなにをしてるんだい?」

祖母『それが教えてくれないんだよあの子。でも、地下室へがここの所ひどく臭くて一階のリビングまで臭ってくるんだよ』

(´・ω・`;)「臭い…?」

祖母『何か散らかしてんならアタシが片付けてやるって言ってるのに、あの子ったら地下室に入れてくれないんだよ』

(´・ω・`;)……

祖母『悪いけど、アンタ見に来てくれんかね』

(´・ω・`;)「分かった、すぐに行くよ」

ジェフリーが何をやっているのかは僕には分からなかった。
無論、頭をよぎるのは嫌な予感ばかりだった。

618: 名無しさん 2016/08/04(木)00:26:27 ID:Sy6
(´・ω・`)「待たせたね母さん」

祖母「待ってたよ」

(´・ω・`;)「それにしても酷い臭いだ」

(´・ω・`;)「この臭い、昔どこかで」

ふと記憶が蘇る。
これはそう、まだジェフが小学生の頃だ。

ジェフが森で拾ってきた小動物の屍体を酸で溶かしてビンに詰めていたことがある。
あの時も確か同じような悪臭が部屋に立ち込めていた。

(´・ω・`;)……

僕は意を決して地下室へ向かうことにした。

619: 名無しさん 2016/08/04(木)00:33:20 ID:Sy6
(´・ω・`:)(一見すると特に何もなさそうだけど)

(´・ω・`;)(……そうだ、臭いの元を辿れば)

(´・ω・`;)クンクン(おえぇぇ)

(´・ω・`)(こっちか…)

(´・ω・`)!

(´・ω・`;)(なんだこのドス黒いものは…)

部屋の片隅に赤黒い塊があった。
臭いは明らかにそこからしているようだった。

(´・ω・`;)(……血か?)

620: 名無しさん 2016/08/04(木)00:41:29 ID:Sy6
彡(゚)(゚)「困るな父さん、勝手に入られちゃあ」

(´・ω・`;)「ジェフ!」

彡(゚)(゚)「ワイかてプライベートってものがあるやろ?」

(´・ω・`;)「ここはおばあちゃんちだろう。なんでおばあちゃんを入れさせないんだ!」

彡(゚)(゚)「まぁ、色々な」

(´・ω・`;)「色々ってなんだ?それはこの血だまりと関係があるのか!?」

彡(゚)(゚)……

彡(-)(-)「だから嫌やったんや」ハァ

(´・ω・`;)「何んしたんだ、ジェフ。正直に言いなさい」

彡(゚)(゚)

彡(゚)(゚)「動物の標本を作っとるんや」

622: 名無しさん 2016/08/04(木)00:49:21 ID:Sy6
(´・ω・`;)「動物の標本?」

彡(゚)(゚)「せや、昔よーやっててやろ?裏の林から動物の屍体を拾ってきて」

彡(゚)(゚)「あの頃が急に懐かしくなってな。そんで、最近になってまたやり始めたんや」

彡(-)(-)「せやけど、ええ大人になってこんな事やっとったらみんな反対するやろ?せやから言いたくなかったんや」

(´・ω・`;)(……確かにジェフの言っている事に矛盾はない)

(´・ω・`;)(この血だまりも、動物の標本を作る過程でできたものだとすれば説明はつく)

(´・ω・`;)……

(´・ω・`;)「信じていいんだな?」

彡(-)(-)コクッ

624: 名無しさん 2016/08/04(木)00:58:08 ID:Sy6
(´・ω・`;)「何にせよ、もう標本作りはやめなさい」

(´・ω・`;)「動物の標本作り自体が悪いわけじゃないが、臭いがひどくておばあちゃんが迷惑してる」

(´・ω・`;)「この部屋を綺麗に掃除をして、この家ではもう2度とやるな」

(´・ω・`;)「ジェフ、お前ももういい大人だ。どうしても趣味を続けたければ、自分でアパートを借りてやりなさい」

彡(゚)(゚)

彡(-)(-)「……しかたあらへんな」

こうしてジェフは自立する事になった。
今思えば、この時の僕の判断は大きな間違いだった。

626: 名無しさん 2016/08/04(木)01:13:06 ID:Sy6
こうして、ジェフは一人暮らしを始める事となった。
しかし、その矢先。

プルル プルル

プルル プルル

シャリ「あなた、ごめんなさい!洗濯物干してるから電話出て!」

(´・ω・`;)「はいはい」(また僕か)

ガチャッ

(´・ω・`)「もしもし、ダーマーですが」

警察『こちら警察ですが、ライオネル=ダーマーさんのお宅で間違いありませんか?』

(´・ω・`:)「け、警察!?はい、僕がライオネル=ダーマーです」

警察『息子さんのジェフリーくんなんですけどね、彼が同じアパートに住む青年に睡眠薬を飲ませたそうなんですよ』

(´・ω・`;)「えぇ!?」

警察『今は警察にて彼を拘留しています。できるだけ早く、署まで来ていただいてもよろしいでしょうかね?』

(´・ω・`;)「わかりました」

672: 名無しさん 2016/08/06(土)19:00:11 ID:yg3
ドルルル

(´・ω・`)……

警察署へ車を走らせながら、僕はジェフの事を考えていた。
何がいけなかったのだろう?

僕が父親として不出来なのは分かってる。
母親も、彼にとって決して恵まれた母親とは言えない。

それでも、僕は僕なりに精一杯の愛もって接してきたつもりだった。
ジェフは元々頭がいい。

年齢だってまだ若い、これからいくらでもやり直せる筈なのに。
なぜ彼はこうも道を踏み外し続けるのだろう?

生来的な何かドス黒いものを、彼は心の中に抱えているのだろうか?
小さい時から、親の私にも分からぬように、心の扉の中で隠し続けてきた、醜悪な何かが……。


(´・ω・`)……

だが、いくら考えてみても、納得のいく結論は見つからなかった。

674: 名無しさん 2016/08/06(土)19:15:59 ID:yg3
警察署へ着くと、警官から事の詳細を聞いた。

祖母の家を出て、一人暮らし用のアパートを借りたジェフは、“その日の内に”近所のラオス人の少年を言葉巧みに自室へ連れ込んだ。
そして、睡眠薬入りのコーヒーを少年に飲ませ、そして“強姦”しようとしたという。

少年は意識が朦朧としながらも何とか逃げ出し事なきを得た。
だが、その後は意識が昏倒し現在は病院に入院しているとのことだった。

警官「お父さん。彼は1986年の9月にも少年に自信のマスターベーション姿を見せつけたとして保護観察処分になっています。彼のこういった奇行に何か心当たりが?」

(´・ω・`)……

675: 名無しさん 2016/08/06(土)19:28:28 ID:yg3
(´・ω・`)「彼の実の母親と私は離婚しています。ジェフリーが赤ん坊の頃から、夫婦仲は険悪でした」

(´・ω・`)「彼には相当な辛い思いをさせたと思います。学生時代から彼の奇行は学校で問題視されていたようですが、私は致し方のない事だと思っていました。これは恵まれない家庭環境に対する一種の憂さ晴らしなのだと……」

(´-ω-`)

(´・ω・`)「ですが、彼は家庭の環境が落ち着いても一向に立ち直る事ができなかった。いや、それどころか、彼の奇行はエスカレートする一方でした」

(´・ω・`)「マスターベーションを少年に見せつけた件そうです。そして今回は……」

(´・ω・`)……

(´;ω;`)ブワッ

警官……

(´;ω;`)「僕は……彼に何もしてあげる事ができませんでした」

676: 名無しさん 2016/08/06(土)19:44:11 ID:yg3
警官は僕にそっとハンカチを差し出すと、僕の背中に手を置いた。

警官「……お父さんのせいではありませんよ」

(´;ω;`)「僕は、息子の事がわからないんです」

(´;ω;`)「今回の件で確信しましたが、彼はゲイです。ぼくは、そんな大事な事すら今の今まで分からなかった」

(´;ω;`)「でも、それを察する兆候はあったんです。僕と新しい妻と3人で暮らしていた頃、彼は男性のマネキンを部屋に隠していた」

(´;ω;`)「僕は彼がなぜそんな事をするのか分からなかった。血の繋がった僕よりも、再婚した妻の方が彼の心の闇に気が付いていた位です」

(´;ω;`)「僕は……」

警官「……お父さん」

(´;ω;`)ウッ…ウッ……

677: 名無しさん 2016/08/06(土)20:05:27 ID:yg3
その後、僕は落ち着くまで時間を貰い、その後ジェフとの面会へ向かった。
警官の立会いの中、デスクを隔てて対面したジェフの顔はいつにも増して土気色に見えた。

(´・ω・`)……

彡()()

(´・ω・`)「ジェフ……」

僕は彼になんて言えば良いのか分からなかった。
部屋を静寂が支配する。

(´・ω・`)「何か…言いたい事はあるか?」

そう言ったところで、ジェフが心を開かない事はわかっていた。
僕はそんな事しか言えない自分に嫌気がさした。

彡(゚)(゚)

彡(゚)(゚)「いや…」

(´・ω・`)……

(´・ω・`)「そうか」

その後、僕は部屋を後にした。
もうこれ以上語るべき事などなかった。

678: 名無しさん 2016/08/06(土)20:12:03 ID:yg3
(´・ω・`)「ジェフはどの位で出てこれるんです」

警官「反省しているようですし、1週間もすれば出られるでしょ」

(´・ω・`)……

(´・ω・`)「保釈までの期間をもっと延長していただく事はできませんか?」

警官「え?」

(´・ω・`)「僕も八方手を尽くしてきたつもりだからわかります。ジェフリーの心の闇は決して治療できていません」

(´・ω・`;)「このまま保釈されてもまた同じ、いや…もっと大きな過ちを繰り返してしまう気がするんです」

警官「……掛け合っては見ますが、まぁ難しいでしょうな」

(´・ω・`)「そう…ですか」

警官の言ったように、ジェフは1週間ほどで保釈された。
結局、僕の申し出が通ることはなかった。

679: 名無しさん 2016/08/06(土)20:18:31 ID:yg3
彡()()……

彡()()(父さんはワイを見て何を思ったんやろか)

彡()()(昔から問題ばかり引き起こすだけじゃなく、ゲイで強姦事件まで起こしとる)

彡()()(……実際には“強姦殺人”やけどな)

彡()()

彡()()(もう遅いんや)

680: 名無しさん 2016/08/06(土)20:20:09 ID:yg3



彡(●)(●)


『もう』

682: 名無しさん 2016/08/06(土)20:42:35 ID:yg3

ーー半年後の1989年3月。


『……』


ーージェフリーは性的暴行の罪で有罪判決を受け、判決公判が4ヶ月後に開かれることになった。


『グチャッ』


ーーゲイバー通いを再開していた彼は、モデル志望のの黒人青年と知り合い



『ゴキッ』


ーー写真のモデルになってくれと祖母の家に連れ込むと、睡眠薬入りの飲み物、絞殺、解体というルーティンが繰り返され


『ベチャ…』


ーー切り取られた頭部は鍋で茹でられ、皮膚と肉を剥がされて、頭蓋骨は彩色され彼のコレクションの1つとなった。




彡(●)(●)『……』

683: 名無しさん 2016/08/06(土)21:00:51 ID:yg3
同年5月23日

ジェフリーは1年間の刑務所外労働と5年間の保護観察処分を言い渡された。
この寛大な判決により、ジェフリーは日中は勤務先で働き、夜や週末は刑務所で過ごすことになった。

彼はほとんど日常と変わらぬ生活を送り、時にはゲイバー通いもしていた。

中毒者や依存症患者は須らく、その対象を目の前にすると理性を失い自制が効かなくなってしまう。
例えばアルコール依存症患者への最も効果的な対処は、アルコールやそれを連想させるものを目に触れさせる事のない生活を送る事だ。

ジェフリーは、睡眠薬入りの飲料を飲ませ、殺害し、犯し、解体するこのルーティンの中毒となっていたのかもしれない。
そんな彼が、ゲイバーに通う事で自信の欲望を自制できるはずなどなかった。


1990年3月

ダーマーは仮釈放となり、ミルウォーキー有数のスラム街に居を構えた。

『オックスフォード・アパートメント 213号室』

この部屋は後に『The shrine of Jeffrey Dahmer(ジェフリー・ダーマーの神殿)』として世界の犯罪史に名を残す事となる。

684: 名無しさん 2016/08/06(土)22:36:37 ID:yg3
no title


~第4部『entrance of 213』完~

713: 名無しさん 2016/08/22(月)12:05:34 ID:P41
彡(-)(-) クカー zzz

彡(-)(-)スピー…

彡(-)(-)……ンゴッ!

彡(-)(-)ムニャムニャ

彡(゚)(-)「ん……」

彡(゚)(゚)「朝か……」

彡;(゚)(゚)「ウッ……頭痛いな。また酒飲み過ぎてもうたみたいやな」

寝ぼけ眼でジェフリーはベッドルームを見渡す。
床には解体された男の肉体が無造作に散らばり、ジェフリーのすぐ脇にはその男のものと思われる頭部が転がっていた。

714: 名無しさん 2016/08/22(月)12:18:36 ID:P41
彡(゚)(゚)

彡(゚)(゚)(昨日も殺したんやった……)

彡(゚)(゚)(……そういや時間は)チラッ

彡;(゚)(゚)「ファッ!?工場の始業時間過ぎとるやんけ!」

彡;(゚)(゚)……

父ライオネルの保護から離れ、祖母の家から離れたジェフリーの生活は完全に荒みきっていた。
アルコール依存症は増悪し常に酒浸りになっていたし、夜中はゲイバーに足繁く通う事で昼夜逆転状態であった。
勤めていた工場の欠勤・遅刻は常習的になり、出勤しても業務のミスが多く勤務評価は下がる一方だった。

以前は同居している家族にも隠し通せるほど完璧に隠蔽していた殺害の証拠も、今ではベッドルームの床に今まで殺してきた幾人もの遺体の『一部』が散乱している有様だった。

715: 名無しさん 2016/08/22(月)12:27:13 ID:P41
彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)(流石に片付けなアカンな。『次』が困る)

ジェフリーは慣れた手つきで遺体から心臓や大腿部の筋肉などを切り取り、冷蔵庫に入れた。
また、大きな鍋いっぱいに水を張り、その中に頭部を入れると煮込んだ。

残りの肉体は全て260リットルと大容量のポリ容器の中に入れた。
その中では、既に何人かの肢体が酸でドロドロに溶かされ混ざり合ってきた。


彡(゚)(゚)(ふぅ、あらかた片付け終わったな)

彡(゚)(゚)グ~

彡(゚)(゚)(…腹、減ったな)

716: 名無しさん 2016/08/22(月)12:36:24 ID:P41
ジェフリーは冷蔵庫を開いた。
中には今まで殺害してきた人間の一部、心臓などの内臓や手足、頭部が収められていた。
それ以外にはアルコール類だけであり、『一般的な』食料品は一切入っていない。

彡(゚)(゚)(これ、そろそろ食ってまわないと腐るな)

ジェフリーは心臓を取り出すと、肉たたきで叩き、塩胡椒をふりかけた。
そしてフライパンでそれを焼くと、食器に移しステーキソースをかけた。

彡(゚)(゚)「ええ具合に焼けたな」

ナイフとフォークを突き立てると、ジェフリーは大きな口を開けた。

彡(^)(^)「ほな、いただきm『ピンポーン』

彡(^)(^)……?

『ピンポーン』

彡;(^)(^)「誰やねん、ええとこやのに」

717: 名無しさん 2016/08/22(月)12:45:27 ID:P41
ガチャ

彡(゚)(゚)「はい」

大家「こんにちはジェフリーさん」

彡(゚)(゚)「こんにちは」

大家「早速ですけどね、ジェフリーさん。あなたに他のお部屋の人からクレームが入ってるのよ」

彡(゚)(゚)「クレーム、ですか」

大家「えぇ、あなたの部屋から異臭がするって。何か心当たりがあるかしら」

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)「そういえば、こないだパーティ用に大きな牛肉のブロックを買ったんです」

大家「牛肉のブロック?」

彡;(゚)(゚)「ええ、でもそんな時に限って冷蔵庫が壊れて腐らせてしまって酷い匂いが。恐らくそのことでしょう」

大家「それは災難だったわね。それ、ちゃんと処理できそうかしら?」

彡;(゚)(゚)「えぇ、ご迷惑おかけしてすみませんでした」

大家「まぁ、そういう事なら仕方ないわね。それと、家賃先月分の分がまだだからよろしくお願いしますすね」

彡;(゚)(゚)「はい、わざわざすみませんでした」

バタン


彡(゚)(゚)

彡(゚)(゚)……

718: 名無しさん 2016/08/22(月)12:53:41 ID:P41
周囲の人間も少しづつ、ジェフリーの奇行に気づき始めていた。
だが、この街は有色人種や貧困層などが入り乱れているスラムであり、街ではいつも何かしらの事件があった。

木を隠すなら森、とでも言うのだろうか。
この街で毎晩のように男を家に連れ込み、部屋から腐臭を漂わせ、部屋から夜な夜な奇妙な音を立てること男は、さほど浮いていなかったようだ。

ただ、それはあくまで目立たなかったというだけの話だ。
彼がこの街に溶け込んでいたわけではない。

子供の頃から何も変わらない。
言いようもなく、ジェフリーは孤独だった。

719: 名無しさん 2016/08/22(月)13:04:56 ID:P41
オックスフォードアパートメントに転居してすぐの1990年5月、ジェフリーは既に1名の刑務所から出所してばかりの青年を殺害している。

約1ヶ月後の6月24日には更に1名。

7月にもやはり殺害を企てるも、今回は失敗し、ほとほりが冷めるまで自粛期間に入る。

しかし、それもわずか2ヶ月しかもたず、同年9月には2名を殺害した。

ジェフリーの衝動は抑えるどころかどんどんと増大し、自身でも抑えることはできなかった。
好みの男の肉体を支配する悦びと快楽にジェフリーは争うことができなかった。

720: 名無しさん 2016/08/22(月)13:24:58 ID:P41
だが、快楽は永続的なものではない。
睡眠薬を飲ませ、殺し、性行為をし、絶頂を迎えた後。
ジェフリーの心に訪れるのは決まって『虚無』だった。

1991年2月18日。

彡(●)(●)……

19歳の黒人青年がまた1人ジェフリーの犠牲となっていた。
犠牲者の血液や体液、そして己の精液に塗れたジェフリーの心には言いようもない空虚さがあった。

彡(●)(●)(ワイは……)

彡(●)(●)(ワイはいつまでこんなことを繰り返しとるんや)

もはやただの肉塊となったモノを見下ろしながら、ジェフリーは思案していた。

721: 名無しさん 2016/08/22(月)13:33:39 ID:P41
彡(●)(●)(どんなに美しい肉体を持っていても、殺せばいつか腐ってゆく)

彡(●)(●)(骨を磨いて飾り付けたって、そんなモノを増やして何になる?)

彡(●)(●)(ワイは……)

確かにジェフリーは人体の解体に興奮を覚えていたし、死者の頭蓋骨を眺めて心を落ち着かせることもあった。
だが、ジェフリーが本質的に望んでいたのはきっとそうではない。

彡(●)(●)(欲しい)

彡(●)(●)(ワイから離れないで、ワイを裏切らないで、なんでも言うことを聞く“恋人”が)

彡(●)(●)(腐ることがない、生きた生身の恋人が欲しい)

彡(●)(●)(……ふふ)

彡(●)(●)(そんなもの、魔術でゾンビでも作らん限りはむりやな)

彡(●)(●)……

722: 名無しさん 2016/08/22(月)13:47:41 ID:P41
同年4月7日。

ジェフリーはいつものように若い黒人青年を家に連れ込むと、睡眠薬入りの飲料を飲ませ昏倒させた。
青年が深い眠りに落ち、反応しなくなったことを確認するとジェフリーは部屋の奥から小さな電動ドリルを持ち出した。

彡(●)(●)……

電動ドリルが金切り声をあげながら回転する。
ジェフリーはそれをゆっくりと青年の頭部に押し当てた。

『ギュリリリリ!!』

鈍い音が部屋に響く。
ドリルが頭蓋骨を貫通したことを確認すると、脳を傷つけないよう慎重に引き抜いた。

青年の頭部には小さな穴が穿たれていたが、髪の毛に隠れる程度の大きさであり普通にしていれば気づかれない程度のものだった。
青年は相変わらず昏倒していたが、しっかりと呼吸を続けていた。

彡(●)(●)(準備は成功や。後は……)

ジェフリーは塩酸の入った小瓶とスポイトを取り出した。

723: 名無しさん 2016/08/22(月)13:57:01 ID:P41
彡(●)(●)(死なない程度に塩酸で脳を破壊する)

彡(●)(●)(そうすれば、わいの思い通りのゾンビになるはずや!)

スポイトに塩酸を含ませ、ジェフリーはそれを数滴青年の頭蓋骨内に注入した。
すると、途端に先ほどまで昏倒していた青年が目を覚ました。

青年「ひっいっ!ぎゃああ!!」

彡(●)(●)……

青年「痛い!!頭が痛い!!!」

彡(●)(●)「騒ぐな、すぐに収まる」

青年「なんだよアンタ!なんかしたのか!?うっ、ぉぼぇぇぇ」

青年は嘔吐すると、床をのたうちまわりなが叫んだ。

青年「痛い!!!誰か!!!ぎゃああああ!!」

彡(●)(●)(このままやと、叫び声が外に漏れてまう)

彡(●)(●)(……失敗や)

ジェフリーは青年に馬乗りになり、首に手をかけると力一杯締めあげた。
青年は激しく抵抗したがやがて息絶えた。

彡(●)(●)……

724: 名無しさん 2016/08/22(月)14:11:21 ID:P41
彡(●)(●)(何がいけなかったんや)

彡(●)(●)(塩酸やと刺激が強すぎたんやろか)


5月24日、31歳の聾唖者をジェフリーは殺害しているが、これはいつものルーティン通り殺害し解体している。
だが、そのわずか数日後、ジェフリーは再びおぞましい計画を実行に移すこととなった。

被害者は僅か14歳のラオス人の少年であった。
ジェフリーはこの青年を眠らせると、まずは肉体を損壊することなくレイプした。
そしてひとしきり少年の肉体を堪能すると、電動ドリルを手にし少年の頭部に穴を穿った。

彡(●)(●)(今回は酸やなくて熱湯や)

彡(●)(●)(酸のよりも刺激が少ないはずやから、今度こそきっとうまく行く)

ジェフリーは少年の頭部に熱湯を注入した。
だが、少年は起き上がることなくそのまま眠り続けている。

彡(●)(●)ドキドキ

彡(●)(●)(ちゃんと息はしとる。せやけど起き上がってこん)

彡(●)(●)(……成功や!今度は成功したんや)

ジェフリーは脳に熱湯を注がれても眠り続ける少年を確認すると狂喜乱舞した。

725: 名無しさん 2016/08/22(月)14:20:07 ID:P41
彡(^)(^)「ついにやったんや!こら酒でも飲んで祝わな!」

彡(゚)(゚)「って、酒切らしとるやんけ!」

彡(゚)(゚)……

少年「」

彡(゚)(゚)「ま、起きてこんし大丈夫やろ。ちょっと買ってくるか」

彡(゚)(゚)「大人しく待っとるんやぞ、ハニー」

ジェフリーは少年の額にキスをすると、酒を買いに部屋を後にした。

だが。


彡(^)(^)「さて、ビールも買うたし完璧や。ハニーは大人しくしとるかな?」

ガヤガヤ

彡(゚)(゚)「ん、なんやかうちの近所が騒がしいな」

彡(゚)(゚)……

ジェフリーの脳裏に嫌な想像がよぎった。
だが、それは現実のものとなった。

オックスフォードアパートメントのちくの路地で、あの少年が全裸で蹲り、その周りを近隣の人々が取り囲んでいた。

726: 名無しさん 2016/08/22(月)14:25:18 ID:P41
彡;(゚)(゚)(って、警察官まで来とるやんか。このままじゃアカン)

警察「君、どこから来たの!?なんで裸でこんな所にいるんだい??」

青年「あ…あの……ぁ」

警察「あのね、しっかりと話してくれなくちゃんからないよ!!」

彡(゚)(゚)「すみません」

警察「ん、あなたは?」

彡(゚)(゚)「僕は彼の恋人です」

警察「恋人だって?」

彡(゚)(゚)「はい、言いにくいことなんですが、僕達はゲイなんです」

警察「そりゃあ…」

728: 名無しさん 2016/08/22(月)14:32:44 ID:P41
彡(゚)(゚)「僕達は付き合っているんですけど、ちょっとしたことで痴話喧嘩になってしまいましてね」

彡(゚)(゚)「随分情緒不安定になって、裸のまま部屋を出て行ったから連れ戻しに来たんですよ」

警察「そうなのか…?」

少年「ぁ……」

警察(ダメだこりゃ)

彡(゚)(゚)「彼はラオスから来ていてまだあまり英語が上手くないんですよ」

警察「なるほど。ま、喧嘩は構わないが、公衆の面前の迷惑にならないように!次やったら猥褻物陳列罪で検挙しますとパートナーに伝えておいてくださいね!」

彡(゚)(゚)「えぇ、お騒がせてしまい申し訳ありませんでした」

こうして、少年は再びジェフリーの魔の手に落ちた。
だが、一度人目につい彼を放って置くわけにもいかない。

ジェフリーは少年を殺害すると、後はいつもの手筈通りに弄び、処理した。

729: 名無しさん 2016/08/22(月)14:39:16 ID:P41
※ロボトミー実験の2人目の被害者も塩酸を頭蓋骨内に注入されていました。誤りです。

730: 名無しさん 2016/08/22(月)14:54:43 ID:P41
そんなある日、ジェフリーのもとに一通の通知が届けられた。

彡(゚)(゚)「…督促状?」

それは大家からの、家賃の督促状だった。
来月末まで家賃を滞納するのであれば、強制的に退去させる旨が書かれていた。

だが、ジェフリーは遅刻欠勤を理由に大幅な減給処分を下されていた。また、それだけでなく夜のゲイバー通いやアルコールに多額の金を使い、貯金は底をついていた。

だが、退去となれば大問題である。
冷蔵庫は解体した肉片がギュウギュウに詰められており、床には収めきれなかった肉片が散乱している。
酸を入れ肉を溶かした巨大な樽は2つに数を増やしており、被害者を収めた写真や骨などのコレクションも相当の数に達していた。

退去となれば、これらを人目につかずに処理しなければならなくなる。
だが、そんなことは不可能だったし、もはやこれらのコレクションはジェフリーの全てであった。

これらのコレクションを全て捨てて、ジェフリーはどこへ行くというのだろう?
残された道は、ゲイバー通いをやめ、酒を絶ってでもなんとか家賃を収める以外に道は残されていなかった。

731: 名無しさん 2016/08/22(月)15:01:14 ID:P41
しかし、不運は続くものだ。


彡(゚)(゚)「クビ……ですか」

工場長「そうだ。理由はもう説明する必要もないと思うが」

彡(゚)(゚)「……いえ」

遅刻欠勤の常習者で、仕事の能率も悪い。
当然と言えば当然の結末だ。

ジェフリーは何も言い返せなかったし、言い返す気もなかった。

彡(゚)(゚)……

この時、ジェフリーは悟った。
もはや、手詰まりだ、と。

732: 名無しさん 2016/08/22(月)15:13:20 ID:P41
同年6月30日、シカゴ。
ジェフリーはゲイ・プライド・パレードを見物し、そこで新たな犠牲者を誘い、殺害した。

そして、それから僅か5日後。
再びシカゴを訪れたジェフリーは23歳の黒人青年をオックスフォード・アパートメント213号室に誘った。

この時、ジェフリーの素性を不安に感じた青年は、友人に誘いを受けるべきかどうか相談した。
だが、白人で端正な顔立ちのジェフリーをみた友人は、「行けよ。彼、まともそうなじゃないか」と答え青年を送り出した。
だが、青年は3人目のロボトミー実験の犠牲者となった。脳に熱湯を注がれた彼はそのまま起き上がり、目を見開いたまま死亡したという。

7月15日、トラック運転手の青年を殺害。

その4日後の7月19日。
仕事を探すためにミルウォーキーを訪れていた白人青年をオックスフォード・アパートメント213号室へ招待した。

17人目の犠牲者だった。

733: 名無しさん 2016/08/22(月)15:27:07 ID:P41
ジェフリーは完全に暴走していた。
犯行は行き当たりばったりになり、頻度もほとんど週に一度のペースになっていた。

もともとは頭のキレる男である。
自分の行く末は分かっていたのだろう。

言うなれば『殺し収め』のつもりだったのだろうか。
ともかく、タイムリミットは目前に迫っていた。

735: 名無しさん 2016/08/22(月)15:37:19 ID:P41
1991年7月22日午後11時30分。

ミルウォーキー北25番街を2人の警官が定期巡回していた。

警官A「いやー、それにしても暇だな」

警官B「忙しくなられちゃ困るだろw」

警官A「早く非番にならねぇかな」

警官B「アメフトの試合でも観に行ってこいよ」

警官A「お、それいいねぇ!こないだの試合は熱かったな!逆転された時には叫び声みたいな歓声を」

『ぎゃああ!!誰かーー!!!』

警官A「そうそう、ちょうどあんな感じの歓声!って、何だ何だ!?」

警官B「おい、銃の準備しとけよ」

警官A「了解」

2人がパトカーを急停車させると、前方から片手に手錠をぶら下げた黒人の男が走ってきた。

736: 名無しさん 2016/08/22(月)15:42:11 ID:P41
警官A「何だあいつ!?脱走犯か!?おいてめー!!それ以上近づいたら撃つぞ!!」

警官B「おいまて!何か様子が変だ!!」

青年「お、お巡りさん!!よかった!!助けてくれ!!」

警官B「落ち着いて!何があったんです?」

青年「頭のイカれた野郎に殺されかけたんだ!!落ち着いてなんかいられないよ!!」

警官B「殺されかけた!?」

青年「そうだよ!!ギリギリのとこで逃げてきたんだ!!」

警官2人は緊張した面持ちで顔を見合わせた。
青年の様子から、明らかに嘘をついているようには見えなかったからだ。

737: 名無しさん 2016/08/22(月)15:51:11 ID:P41
青年の話によると、白人の男に誘われて部屋に行ったら、いきなり手錠をかけられて、殺されそうになったというのだ。

警官B「話は分かりました。そのアパートを教えてもらえますか?」

青年「分かったよ。本当は近寄りたくないけどね!」

そして青年の案内通りに警官たちはアパートへと向かった。

警官A「オックスフォードアパートメント、か」

青年「ここの213号室がソイツの部屋です」

警官Aゴクリ

警官2人は互いに銃のチェックをすると、213号室のベルを鳴らした。

警官AB「……」

2人とも緊張していた。
どんな凶悪なツラをした奴が現れるのか、と、

738: 名無しさん 2016/08/22(月)16:00:09 ID:P41
ガチャ

彡(゚)(゚)「はい」

出てきたのは2人の予想に反して、いたって普通の青年だった。
また、特に警官を恐れる様子もなかった。

警官B「突然すみません」

彡(゚)(゚)「なんでしょう?」

警官B「通報がありましてね。なんでもあなたに殺されかけたと」

彡(゚)(゚)「それまた大袈裟な」

警官A「なぁ、コイツで間違いないんだよな?」ボソッ

青年「間違いありませんよ!アイツです」

彡(゚)(゚)「……」

警官B「彼がね、あなたに手錠をかけられたって言うんですよ」

彡(゚)(゚)「ええ、確かにあの手錠をかけたのは僕ですね」

739: 名無しさん 2016/08/22(月)16:03:44 ID:P41
警官B「手錠を?なぜそんな事を」

彡(゚)(゚)「最近勤めていた職場をクビにされてムシャクシャしててんですよ。ほんの悪戯です」

警官B「失礼ですが本署に問い合わせるのでお名前と住所を教えてもらえますか」

彡(゚)(゚)「………分かりました」

740: 名無しさん 2016/08/22(月)16:08:40 ID:P41
警官が本署に問い合わせると、帰ってきた返答は芳しくなかった。

警官B「前科照会をおこなったところ、1989年に少年に対する性的暴行の過度で有罪判決を受け、5年間の保護観察下に置かれていたという事ですが間違いありませんか?ダーマーさん」

彡(゚)(゚)「えぇ……」

警官B「……手錠の鍵はどこに?」

彡(゚)(゚)「リビングのテーブルの上に。今持ってきましょうか?」

警官B「いえ、あなたはここにいてください。おいお前、取ってこい」

警官A「え、オレが!?」

警官B「そうだ」

警官A「えー!!」

警官B「早く行ってこい!!」

741: 名無しさん 2016/08/22(月)16:21:37 ID:P41
青年「あの…」

警官A「ん?」

青年「アイツ、刃物持ってるんで気をつけて下さい」

警官A「…分かった」

こうして警官は213号室の中へと入っていった。

警官A「ウッ。なんて匂いだ、生ゴミの腐ったような匂いがしやがる」

部屋の中には腐敗臭の他に、蝿が飛び交っていた。
警官の脳裏に最悪の発想が横切った。

警官A「テーブルの上に鍵なんてねーじゃねーか。こん中か?」

警官が引き出しを開けると、写真の束がその中に入っていた、

警官A「写真……?って!なんじゃこりゃ!!!」

そこには、人間の肉体がバラバラに解体された様が克明に写されていた。

警官Aのら叫び声を聞いた瞬間、ジェフリーは暴れ出した。
警官Bは咄嗟にジェフリーを組み伏せると彼の腕に手錠をかけた。

彡(●)(●)「ニャーーオ」

その時、ジェフリーは猫の声真似をして見せた。

742: 名無しさん 2016/08/22(月)16:26:23 ID:P41
その騒動を聞きつけると、野次馬が集まってきた。

警官Aが部屋の中を捜索しながら悲嘆の声を上げる。
野次馬達は我先にと部屋の中を覗き込んだ。

警官Aが冷蔵庫の扉を開けた時、誰ともなく叫びが上がった。

『なんてこった!!人の頭が入ってやがるぞ!!!』

ジェフリーダーマーの神殿が暴かれ、『ミルウォーキーの食人鬼』がついに衆目の目に曝された瞬間だった。

743: 名無しさん 2016/08/22(月)16:32:57 ID:P41
この日、僕はいつもと変わらない1日を過ごしていたと思う。
その平穏を破ったのは、我が家のチャイムだった。

ピンポーン

(´・ω・`)「ん、お客さんかな?」

シャリ「こんな時間に誰かしら?」

(´・ω・`)「変だな、僕が出てくるよ」

玄関開けると、そこに立っていたのは警察官だった。
その瞬間、僕は悟った。

(´・ω・`)「ジェフリーですね?」

警官「はい」

(´・ω・`)「今度は何をしたんです」

警官「連続殺人の容疑がかかっています」

(´・ω・`)

僕は何も言えなかった。
ただしばらくそこに立ち尽くすことしかできなかった。

744: 名無しさん 2016/08/22(月)16:40:00 ID:P41
『ミルウォーキーの食人鬼』

アメリカの犯罪史上でも未曾有の凶悪な事件であり、ジェフリーは全米の関心を集めた。
裁判の様子は全米のニュースとなった。

この犯人は何者なのか?
なぜこのような事件を起こしたのか?

その関心はジェフリー本人に留まらずに、家族の及んだ。

746: 名無しさん 2016/08/22(月)16:48:06 ID:P41
事件から当分の間なんてなかった。
それもそのはずだった。

僕は全米を震撼させた、史上最悪の殺人鬼の父親だった。

(´・ω・`)「シャリ、行ってくるよ」

シャリ「えぇ。なんて言っていいか分からないけど、ジェフリーによろしつ伝えて」

僕はジェフリーの裁判に出席すべく、玄関を出た。

その瞬間、眩しいフラッシュの嵐が僕を襲った。

パシャパシャ!!

(´・ω・`;)「うっ」

『ダーマーさん!!息子さんの裁判について一言!!』

『父親の責任についてどうお考えですか!?』

『ジェフリーの幼少時代に虐待があったのではないですか!?』

『ダーマーさん!被害者の方へ一言!!!』

『ダーマーさん!!父親として息子さんに言いたいことは!?』

(´・ω・`;)「すみません!通してください!」

事件が発覚してから、こんな日は珍しくもなかった。

747: 名無しさん 2016/08/22(月)16:57:42 ID:P41
裁判所でジェフに会うたび、僕は彼になんて声をかければいいのか分からなかった。

(´・ω・`)「ジェフ、身体の調子はどうだ」

彡(゚)(゚)「…悪くないよ」

(´・ω・`)「そうか。シャリもお前を気遣ってたぞ」

彡(゚)(゚)「うん…」

(´・ω・`)……

こんな淡白な会話を繰り返し、彼の傍で裁判に出席する。
そんな日々が続いた。

その間にも連日のようにマスコミのインタビューに答えた。
当然だとは思うが、それらは風当たりの厳しいものばかりだった。

750: 名無しさん 2016/08/22(月)17:16:49 ID:P41
犯罪心理に精通するマイケル・ストーン博士の殺人犯罪の22等級では、ジェフリーダーマーは最も凶悪な22段階と評された。

その反面、プロファイリングの第一人者であるロバート=K=レスラーは、彼を精神病による無罪だと訴え、牢屋ではなく精神病院に入院させるべきだと主張した。

プロファイリングは犯罪者の内面、その行動原理を探ることを重視する。
レスラーは何度かの面接を通す中で、ジェフリーにある質問を投げかけた。

レスラー「ジェフリー。君が殺した人々は社会に不要だったと思うかい?」

しばしの沈黙のあと、ジェフリーは口を開いた。

彡(゚)(゚)「ウィスコンシン州がよこした心理学者も同じことを聞いてきたで」

そう前置きした上で、ジェフリーは強く否定した。

彡(゚)(゚)「ワイは一度もそんなことを思ったことはない。いつも、こんな事をしてはいけないという罪悪感があった」


精神医学博士のロバート・サイモンはこう書いている。

『彼はほんもののネクロフィリアではなかった。むしろ生きた相手を最後まで切望していたのだが、誰もそばにいてくれそうになかったので、死体を代わりに置くことにしたに過ぎない』

751: 名無しさん 2016/08/22(月)17:27:26 ID:P41
僕はできる限り裁判に参加した。

ジェフリーは自分の行った罪を認めていた。
その上でジェフリーが望んだのは、自分自身の死刑だった。

検察「ジェフリー、あなたはなぜこのような凶悪な犯罪に手を染めたんです!?」

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)「それは自分でも分かりません。たぶん、私は悪魔なんだと思います」

(´・ω・`)……

死刑を望み、自分を悪魔だという息子を見て僕は胸が締め付けられる思いだった。
僕はなぜ彼を救う事ができなかったんだろう?

752: 名無しさん 2016/08/22(月)17:33:51 ID:P41
1992年2月15日。
陪審は過半数で弁護側の主張を退け、最初の殺人事件と、告発を断念した2件目の殺人事件を除く15件の殺人事件について有罪を評決した。

2日後の2月17日。
ローレンス・グラム判事は15件の殺人事件に対して、累計で936年の禁固刑に相当する終身刑を宣告した。のちに、オハイオ州で行われた裁判でも終身刑が宣告されている。

ジェフリーはその全てを淡々と聞き、受け入れていた。

こうして、ウィスコンシン州ポーテージにあるコロンビア連邦刑務所に彼は送致される事となった。

754: 名無しさん 2016/08/22(月)17:44:13 ID:P41
シャリ「あなた、こんな遅くまで何をやっているの?」

(´・ω・`)「ん、いやちょっとね」

書斎に籠りっきりの僕を見て、シャリは心配そうに声をかけてくれた。

シャリ「あまり無理をしないでね」

(´^ω^`)「うん、ありがとう」

僕は、出版社から持ちかけられた原稿の執筆をしていた。
印税を少しでも遺族のために使うべきだと思ったし、なにより父親としての自分自身の責任を問い直す上で重要な事だと思った。

(´・ω・`)「小さい頃のジェフ、可愛かったなぁ。親バカなのかもしれないけど」

僕はジェフとの思い出をできる限り鮮明に思い出すために、アルバムを開いていた。

(´^ω^`)「これはデイブが生まれた時に、ジェフがあやしてあげてる写真だ!こんな事もあったな」

(´^ω^`)「あは、あはは」

(´;ω;`)

757: 名無しさん 2016/08/22(月)17:55:36 ID:P41
思えば子供の頃、ジョイスがモルヒネなど多量の薬を服用してたのがジェフの発達に悪影響を与えたのか?

それともやはり、僕とジョイスの冷え切った夫婦関係が彼を歪めてしまったのか?

いや、それともやはり生得的な歪みだったのか?
釣りをした時、まだ子供のジェフは捌いた魚の内臓を興味深く見つめたいたこと、床下の小動物の骨に興味を持った事。

もしかしたはら、あの頃から既に悪しき心が育っていたのだろうか?

今までは何の変哲もなかった思い出までも、僕は不吉な物事の予兆に思えた。

直接的な原因はやはり分からない。
それでも、やはりこれだけは言える。

僕はもっと、ジェフと向き合わなければいけなかった。

758: 名無しさん 2016/08/22(月)18:01:29 ID:P41
『a father's story』

僕はジェフリーに対する父親としての思いをできる限り本の中に注ぎ込んだ。
そして、僕はこの本を獄中のジェフに贈ることにした。

彼に対してどのような影響を与えるのは分からなかった。
でも、父親として僕が何を考え、どういう思いで彼に接してきたのか。

それをジェフに伝えなければならないと思った。

760: 名無しさん 2016/08/22(月)18:11:04 ID:P41
また、僕はそれより以前からジェフに聖書を渡していた。
今、ジェフに必要なのは神の救いなのだと思ったからだ。

ジェフは熱心に聖書を読んでいるようだった。
そして、神の教えに感銘を受けたようだった。

どんな大罪を犯した罪びとも、悔い改めれば神は赦して下さる。
その教えを届けることが、唯一、僕が彼にできる慰めだった。

761: 名無しさん 2016/08/22(月)18:16:19 ID:P41
ジェフは模範囚として獄中生活を全うしているようだった。
世間からの好奇の目少しづつ薄れてきたかなと思ったころ、テレビ局から一本の取材依頼が来た。

それは、レポーターとジェフ、そして僕が直接インタビューを受けるという内容だった。
僕は取材を受けるべきなのか悩んだ。

でも、今後第2、第3のジェフを作らないためにも、僕はインタビューを受けなくてはならないと感じた。
僕はインタビュー依頼を受ける事にした。

762: 名無しさん 2016/08/22(月)18:21:34 ID:P41
久々にあったジェフは思ったよりも元気そうで、僕は少し安心した。

(´・ω・`)「やぁ、ジェフ」

彡(゚)(゚)「うん」

僕は息子と抱き合った。

僕とジェフは隣り合って座り、僕たちに向かい合ってインタビュアーが座っていた。

インタビュアーは流暢に話を進めていく。
現在の調子の事や、殺人をした時の感情など。

そして、僕の書いた本についても質問を投げかけてきた。

763: 名無しさん 2016/08/22(月)18:28:48 ID:P41
インタビュアー「お父さんの書いた本は読まれましたか?」

彡(゚)(゚)「えぇ」

インタビュアー「どう感じた?」

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)「興味深かったです。父が感じてる事を知れて良かった」

インタビュアー「世間ではあなたの生育歴に問題があったのではないかという声がありますが」

彡(゚)(゚)……

彡(゚)(゚)「罪を犯したのはは僕自身の問題です。昔から僕は自分の気持ちを表に出すのが好きじゃなかった」

彡(゚)(゚)「父にも何も話していなかった。だから、父がどうにかする事なんて無理だったんです」

(´・ω・`;)「それは違う。今思えば僕はたくさんの予兆を気づけたはずなんだ」

彡(゚)(゚)「僕は自分の気持ちを誰にも言わなかった。友達にも、誰一人」

彡(゚)(゚)「だから、僕の家族を攻める社会の風潮はおかしいと思っています」

(´・ω・`;)「ジェフ…」

彡(゚)(゚)……

764: 名無しさん 2016/08/22(月)18:33:36 ID:P41
インタビューはその後も長く続いた。
そして、取材が終わる時、僕はもう一度ジェフと抱き合った。

(´・ω・`)「ジェフ」

彡(゚)(゚)

(´・ω・`)「愛してるよ」

彡(゚)(゚)…

(´・ω・`)「またな、ジェフ」

彡(゚)(゚)「うん、父さんも元気でな」

こうしてインタビューは終わった。
どんな大罪を侵したとしても、やはり僕はジェフに会えてよかったと思った。

765: 名無しさん 2016/08/22(月)18:50:41 ID:P41

1994年11月28日。

連邦刑務所のシャワールームで、ジェフリーは黒人収容者に撲殺された。

ただちにジェフリーは救急車で病院へ搬送されたが、搬送中に死亡が確認された。

殺害した黒人容疑者は、自分は「神の息子」で、「父」から殺害するよう啓示されたと話している。

享年34歳。
世界を震撼させた連続殺人犯の最期であった。

766: 名無しさん 2016/08/22(月)18:52:04 ID:P41
父、ライオネル=ダーマーは息子が逮捕された後も一貫してこう語っていた。


『私はジェフリーを愛しています』


no title


~最終章『a father』完~

767: 名無しさん 2016/08/22(月)18:52:10 ID:P7V
何と言っていいか、最後はあっけなかったんだな…。

768: 名無しさん 2016/08/22(月)18:59:12 ID:P7V
イッチ乙。

775: 名無しさん 2016/08/22(月)19:11:12 ID:P7V
「家庭環境が荒んでいても立派に育つ人はいるから、殺人犯になる奴は絶対に許さない」と言う人もいるけれど
「どうすれば、家庭環境が荒まないのか」(家庭以外のところでフォローするべきではないのか)など
そういう視点は絶対に必要なはずなんだけど、そういうのが無くなっている気がする。

780: 名無しさん 2016/08/22(月)19:39:26 ID:aJe
完走お疲れさん面白かったで
ただ書き溜めなかったり長期間空けたりするとあらしがわいて大変だから今後の参考にして欲しいやで
次回作も期待してます

772: 名無しさん 2016/08/22(月)19:06:11 ID:P41
途中、長い空白期間を開けてすみませんでした。
これで終わりです。

内容的にははっきり言って事実と異なる部分や、時系列がおかしい部分があるのであくまで参考程度に考えて頂けると幸いです。
内容的にも基本的にネットに落ちてる情報をコピーして再構築しただけです。

私は殺人犯について調べる中で、ジェフリー=ダーマーに興味を持ちました。彼がシリアルキラーとなった原因は、幼少の頃から本能的に持っていた生き物を解体したいという欲望。そしてそれ以上に、自分のそばにいてくれる人が欲しいという孤独感でした。
異常な自分自身の性質に悩み、なんとかまともな人生を歩もうともがき、殺人に対する罪悪感に苛まれつつもどんどん殺人鬼としての泥沼にはまっていく。
そんな彼の姿を見て、本当にこのような結末しかなかったのかと悲しくなります。
少なくとも、殺害自体を愉しんだり、殺害をアートのように捉え自身の承認欲求や自己顕示欲のために利用するような殺人鬼とは一線をかくす人物だと思います。

決して、殺人犯を礼賛する目的はありません。
もしも自分の子供や兄弟がジェフリーの様に悩んでいたらどうするか。考える一助になれば嬉しいです。