13: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:13:43.22 ID:dxDLgvSzo
~泉の畔~ 

赤竜「…ここでいいでしょう」 

ボワン 

魔娘「“人変化の術”…」 

シスター「…」 

男「シスター!」ダッ ダキッ 

シスター「…久しぶりですね。男」 

男「うん…うん!シスターだぁ!!うわぁああん!!」 

シスター「どうしたのですか。こんなに大きくなったのに大声で泣いたりして」 

男「うわぁああん!!うわぁああん!!」 


引用元: ・男「…へ?」 魔娘「だから…」 Part2

14: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:14:19.19 ID:dxDLgvSzo
子竜「…ねえ」

魔娘「なあに?」

子竜「なんでないてぅの?」

魔娘「あれは嬉し泣きよ。ずっと離れてたから、また会えたことが嬉しくて涙が出るの」

子竜「ふーん…じゃあ、おねえちゃんはなんでないてぅの?」

魔娘「…もらい泣きよ」

子竜「もぁいなき?」

魔娘「好きな人が嬉し泣きをしているのを見ていると自然に涙が出てくるの。それがもらい泣きよ」

子竜「ふーん…」
  ・
  ・
  ・

16: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:15:40.23 ID:dxDLgvSzo
男「うぅ…」

シスター「落ち着きましたか?」

男「うん…あのね?あの後いろんなことがあったんだよ?村の人たちが引っ越して行っちゃったり…」

男「あ、でも肉屋のおばちゃんは優しかったんだよ?食べ物とか畑とか自由にしていいって言ってくれて…」

男「それから賢者様が一緒にすんでくれたり…ほかにも~~~」

魔娘(男ったら一気にしゃべってる…シスターは優しい顔でそれを聞いてるし…)

魔娘(男のあの表情…小さかったころに戻ってるみたい…)

シスター「そうですか…男も苦労したのですね。私が居なくなったせいで…ごめんなさい」

男「謝らないで。僕、シスターに教えてもらったことのおかげで生きていけたんだよ?だからすごく感謝してるんだ。それからね?~~~」

17: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:16:06.24 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…ね、あっちに行こう?」

子竜「え?どーして?」

魔娘「お話はまだまだ続くみたいだから。卵、見せてもらいたいなぁ。いいでしょ?」

子竜「おねーちゃん、やさしいかぁいーよ!」

魔娘「ふふ。じゃあいこっか」
  ・
  ・
  ・

18: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:16:46.32 ID:dxDLgvSzo
~卵の近くの岩陰~

トテトテトテ

子竜「あ、おとーさま!」パタパタパタ

黒竜「ぬ?」

魔娘「ここに居たのね」

黒竜「…ああ」

魔娘「お邪魔していい?」

黒竜「…勝手にしろ」

魔娘「ええ。勝手にするわ」

19: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:17:12.63 ID:dxDLgvSzo
子竜「ふぁああ…」

黒竜「眠いか?」

子竜「…んん…だいじょーぶ…」

黒竜「初めて魔法を使ったのだ。無理せず眠るがよい」

子竜「でも…ごはんまだだし…」

魔娘「御飯は逃げないわ。安心して」

黒竜「我の膝に乗るがよい」

子竜「ん…おやすみ…おとーさま…」モゾモゾ…

黒竜 ナデナデ

子竜「…スー…スー…」

21: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:17:39.56 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…ふふふ。もう寝ちゃったわ。相当疲れたみたいね」

黒竜「ああ…」

魔娘「…ねえ」

黒竜「ぬ?」

魔娘「どうして赤竜を連れていったの?」

黒竜「…我は妻として赤竜を選んだ。それだけだ」

23: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:18:13.57 ID:dxDLgvSzo
魔娘「なぜ?黒竜人家と赤竜人家は反目していて、顔を合わせる機会なんてなかったはずよ?」

黒竜「…我は以前、家を出て諸国を旅していた。そこで美しい竜に出会ったのだ」

魔娘「それが赤竜?」

黒竜「…そうだ。我は赤竜に心を奪われ、求婚した。だが…」

黒竜「お前がいったように、その頃我ら黒竜族と赤竜族は反目し合っていた。赤竜は我を嫌い、避けるようになった」

黒竜「だが…それでも我は赤竜に近づこうとした。その結果…赤竜は国を飛び出し行方を晦ましてしまった」

魔娘「それで赤竜は人間界に行ったのね」

25: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:19:07.34 ID:dxDLgvSzo
黒竜「…そのことを知った我は親父殿に人間界に行くと告げた。しかし…」

魔娘「だめだったの?」

黒竜「そうだ…それで我は使い魔を使い、人間界で赤竜を探した。そしてようやく見つけたのだ」

魔娘「そう…それで禁を破って人間界に行って赤竜を連れていったのね」

黒竜「そうだ…」

魔娘「ふーん…」

27: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:21:07.24 ID:dxDLgvSzo
黒竜「…あいつは何者だ?赤竜が育てた人間か?」

魔娘「…少し違うわ。赤竜が育てたって言うのは合ってるけど…男は人間とダークエルフとのハーフよ」

黒竜「なるほど、ハーフエルフか…それで合点が言った。我は人間は弱い者と聞いていたからな」

魔娘「そうね…男の強さは人間離れしているものね」

黒竜「ああ…ところで」

魔娘「なあに?」

28: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:21:33.42 ID:dxDLgvSzo
黒竜「お前は何者だ?お前からは嗅いだ事の無い匂いがするが…」

魔娘「…私は魔娘。竜人達は私のことを“姫”って呼んでるわ」

黒竜「“姫”?…まさか…先代主王様の!?」

魔娘「…ええ。娘よ」

黒竜「し、失礼しました!」ガバッ

魔娘「しっ!静かに!!子竜ちゃんが起きちゃうじゃない…」

黒竜「はっ…し、しかし…」

29: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:22:01.79 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…今は主王の娘じゃないわ。わたしはただの“魔娘”よ」

黒竜「…はい」

魔娘「で?どうするの?」

黒竜「どうするとは?」

魔娘「赤竜のことよ」

黒竜「それは…」

男「よっ」

魔娘「あら?」

黒竜「ぬ?」

シスター ペコッ

30: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:22:28.63 ID:dxDLgvSzo
男「お前ら、こんなところで何してたんだ?」

魔娘「ちょっとお話を。ね?」

黒竜「…うむ」

男「ふーん」

魔娘「それで?もうお話はいいの?」

男「ああ。話したいことは色々あるけど、いつでも会えるんだし、追々な」

魔娘「え?」

31: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:22:55.23 ID:dxDLgvSzo
男「…シスター。こいつが魔娘だ」

シスター「魔娘さん。男は貴方に随分助けられたようで…ありがとうございます」ペコッ

魔娘「あ、いえ…」

シスター「男はあなたのことを大切に思っています。これからもよろしくお願いします」

魔娘「あ、いえ。こちらこそ」

黒竜「…」

シスター「どうなさったんですか?」

黒竜「いや…」

38: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:27:23.88 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…ねえ、男」

男「ん?」

魔娘「さっき“いつでも会える”って言ってたけど…」

男「ああ、そのことな。シスターたちはあと3年、この島に居なきゃいけないんだってさ」

魔娘「そうなの?」

青竜人「10年間の島流し。それが罰であったからの」

魔娘「青爺!」

男「今までどこにいたんですか?」

青竜人「水の中じゃ。ちょっと乾燥してきたのでな」

黒竜「…タヌキ爺め」

40: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:27:54.39 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…それで?」

男「ん?…ああ。でも、エルフ母さんにもらったこの転移符を使えば、いつでもここに来れるからさ」

青竜人「それは…エルフの転移符かの?」

男「あ、はい。そうです」

青竜人「エルフの転移符は結界をも通ると言う…おぬし、それをどこで手に入れたのじゃ?」

男「エルフ族の町です。そこに俺の身内が住んでて…」

青竜人「なるほどの…」

41: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:28:32.98 ID:dxDLgvSzo
男「あ、そうだ!エルフ母さんがシスターに会いたいって言ってたよ?」

シスター「私も会ってみたいですね。男のお婆さんに…」

シスター「そして…男の母親のことをお話ししたいです…」

男「うん。3年たったら迎えに来るよ」

シスター「…ええ」

黒竜「…して、お主らはこれからどこに行くつもりだ?」

男「それは…」チラッ

魔娘「な、なんでこっちを見るのよ…男はどうなの?」

43: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:28:58.86 ID:dxDLgvSzo
男「俺は…なにもなければエルフ族の町に行こうと思うんだ。けど、魔娘は行きたいところはないのか?」

魔娘「わたしは…」

青竜人「…ひとまず、黒竜人のところに行かれてはいかがですかな?」

魔娘「どうして?」

青竜人「礼を言わねばなりますまい。あの者、姫たちをここに来させるために、あちこちに頭を下げておりましたからなあ」

黒竜「矜持の高い親父殿が!?信じられん…」

魔娘「…そうね。そうするわ」

男「じゃあ、一緒に行くか」

魔娘「え?」

45: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:29:25.12 ID:dxDLgvSzo
男「え?じゃねえだろ?今更約束忘れたなんて言うんじゃないぞ?」

魔娘「約束?…あっ!//」

男「まあ、魔娘がイヤだって言うんなら仕方ないけどさ」

魔娘「い、イヤじゃないけど…//」

男「なら決まりだな」

シスター「これ、男。無理強いはいけませんよ?」

男「あ、はい」

魔娘「む、無理じゃないけど…心の準備が…//」

47: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:29:54.26 ID:dxDLgvSzo
黒竜「ふっ…して、いつ出立するのだ?」

青竜人「明日にしてくれんか?久しぶりに動き回ったせいで腰が痛くての…」トントン

魔娘「大したこともしてないくせに」ボソッ

青竜人「何か言いましたかな?姫」

魔娘「ううん。なんでもないわ」

青竜人「姫…まあええ。ところでの、男」

男「あ、はい」

49: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:31:02.34 ID:dxDLgvSzo
青竜人「お主…顔つきが変わったかの?幼さが抜けてきたみたいに思うが…」

男「え?そうですか?」

魔娘「…あ…本当…どうしたの!?」

男「あ、いや…俺に言われても…」

青竜人「…お主、黒竜との戦いでその…特殊な能力を使わんかったか?」

男「あ、はい。“転移”と“念動”を…」

青竜人「やはりな…負担が大きかったじゃろ」

男「ええ。あ、でも、“転移”のほうは全然なんともなかったです。“念動”のほうは…かなり辛かったですね。それが何か?」

50: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:31:30.03 ID:dxDLgvSzo
青竜人「お主…その力の源が何か、知っておるのか?」

男「え?いえ。知らないですけど…」

青竜人「…姫」

魔娘「わたしも知らないわ」

青竜人 チラッ

シスター・黒竜 フルフル

青竜人「…まあええ。男よ。お主のその力は…お主の生命力を消費しておるのじゃ」

男「…へ?」

51: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:31:56.15 ID:dxDLgvSzo
青竜人「かつて“エルフの悪夢”を引き起こしたハーフエルフは…500年分の寿命をたったの10日で消費した」

青竜人「じゃからの、お主のその力…負担が大きいときは、あまり使わぬほうが良いぞ?」

男「…わかりました」

青竜人「とは言ってもの、負担が軽けりゃ大したことは無いじゃろ。要は加減じゃな。ふぁっふぁっふぁ」

男「加減…か」

魔娘「…男、ごめんなさい」

男「なんで謝るんだよ」

52: 名無しさん 2013/01/19(土) 01:32:22.66 ID:dxDLgvSzo
魔娘「だって…そんなことだなんて知らなかったから…何度も“転移”とか使わせちゃったし…」

男「あれは殆んど疲れなかったし、どうってことないよ。さっきの戦いのほうがよっぽど大変だったしな」

男「それに“転移”ぐらいじゃ殆んど疲れないし、大丈夫だって。な?」

魔娘「…」

青竜人「…さて、わしは水の中に戻るとするかの?明日、また迎えに来るでな」

男「あ、はい。ありがとうございます」

魔娘「…」

205: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:48:00.28 ID:dxDLgvSzo
うお!すごいスレが伸びてる!

206: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:48:49.10 ID:dxDLgvSzo
~深夜・テントの外~

リー…リー…

魔娘「…」

ガサッ

男「なにしてんだ?こんなとこで」

魔娘「…べつに」

男「そっか…よっと」ドサッ

208: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:49:16.54 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…なによ」

男「なんでもいいだろ?」

魔娘「…へんなの」

男「お互い様だろ」

魔娘「…」

男「…ありがとな」

魔娘「え?」

209: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:49:43.05 ID:dxDLgvSzo
男「魔娘のおかげでシスターに会えた。それにエルフ母さんにも会えた」

魔娘「…いいわよ。そのために男についてきたんだし」

男「けど…お前は…お前の父親は…」

魔娘「…」

男「…ごめん。俺、今まで自分のことしか考えてなかった…」

魔娘「…謝らないで?」

男「けど…」

210: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:52:24.04 ID:dxDLgvSzo
魔娘「いいの。覚悟はしてたから」

男「そっか…」

魔娘「ええ…」

男「…それでさ、魔娘はこれからどうしたいんだ?」

魔娘「わたしは…」

男「…なにかするんだったら手伝うぞ?」

魔娘「…え?」

211: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:52:51.09 ID:dxDLgvSzo
男「…で?」

魔娘「…わからないの…」

男「…」

魔娘「確かにお父様の仇討ちはしたいわ。でもそのために戦争になって…国民が苦しむことになるのは…」

男「…」

魔娘「それで…それよりも男と二人で静かに暮らすって言うのも有りかな…って」

魔娘「でも…考えれば考えるほど分からなくなって…」

男「そっか…」

魔娘「…うん」

212: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:53:19.11 ID:dxDLgvSzo
男「…」

魔娘「…」

男「…あのさ」

魔娘「なあに?」

男「それ…両方やっちまおっか」

魔娘「…え?」

男「だからさ、仇討ちをして、二人でのんびり暮らすってのは?」

魔娘「…はあ?」

213: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:53:57.39 ID:dxDLgvSzo
男「俺と魔娘の二人で仇討ちに行けば戦争にはならないから、国民は苦しまなくてすむだろ?」

男「で、その後どこか静かなところで二人で暮らす。どうだ?」

魔娘「…はあ?本気なの?」

男「ああ」

魔娘「相手の戦力も分からないのに?」

男「何とかなるだろ」

魔娘「二人だけで?」

男「その方が気が楽だろ?」

魔娘「男が“転移”や“念動”を使うほど寿命が短くなるのよ!?」

男「ちゃんと加減はするさ」

215: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:54:33.52 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…死ぬかもしれない…というより、死ぬわよ?」

男「まあ、そんときは二人一緒だろ?まあ、死ぬ気はないけどな」

魔娘「…はあ…時々男がとんでもない大馬鹿者に見えるわ…」

男「なんだと?」

魔娘「でも…嫌いじゃないわよ?大馬鹿者は」

男「…へ?」

魔娘「だから…」

魔娘「…そのときは…フリだけでもいいから守ってね?」スッ…

男「おう!絶対守ってやるからな!!」ギュッ

216: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:55:04.62 ID:dxDLgvSzo
魔娘「うふふふ。…えい!」

男「おわっ!」ドサッ

チュッ

魔娘「…ねえ、どうする?」クスッ

男「…せいっ!」グルッ

魔娘「きゃっ!」トサッ

男「…」

魔娘「…どうしたの?」

男「…変化するなよ?」

魔娘「……ばか」
  ・
  ・
  ・

217: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:55:37.35 ID:dxDLgvSzo
~朝~

魔娘「スー…スー…」

男「zzz…」

赤竜・子竜・黒竜「「「…」」」

子竜「ねえねえ。なんでふたぃともはだかなの?なんでおそとでねてぅの?」

赤竜「…あら?せっかく直した長鉈を忘れてきたみたいだわ?子竜、一緒に取りに行きましょ?」

子竜「はーい」パタパタパタ

赤竜『二人を起こしておいて下さい』コソッ

黒竜『わ、わかった』コソッ

218: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:56:03.59 ID:dxDLgvSzo
黒竜「…」

黒竜「…おい、起きろ」

男「zzz…ん…ん?」

黒竜「起きたか?」

男「ん…おはよ…」

黒竜「寝ぼけてる場合か!さっさと服を着ろ!!」

男「…服?…ん?…あっ!やべっ!!」アタフタ

219: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:56:30.78 ID:dxDLgvSzo
魔娘「ん…なあに?」ゴシゴシ…

男「服!服!」

魔娘「…服?…え?…きゃあああ!!!」ババッ

男「ほらこれ!」

魔娘「ちょ、ちょっと!あっち向いててよ!!」

黒竜「う、うむ…」
  ・
  ・
  ・

221: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:56:58.08 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…」セイザー

男「…」セイザー

黒竜「…」アグラー

黒竜「落ち着いたか?」

魔娘・男「「はい」」

黒竜「それで…何故こんなことになったのだ?」

男「それは…」チラッ

魔娘「…//」チラッ

黒竜「…まあよい。もうすぐ子竜達もここに来る。言い訳を考えておけ」

男「ははは…」

222: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:57:31.10 ID:dxDLgvSzo
~海水湖~

男「これで終わりだな」

魔娘「はい。積み終わったわ」

男「食料と調味料はおいていくから、食べてください」

シスター「ありがとう」

男「…それじゃ」

シスター「…いってらっしゃい。必ず無事に帰ってくるんですよ?」

男「…はい!」

223: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:58:03.83 ID:dxDLgvSzo
魔娘「…じゃ、行きましょう。青爺」

青竜人「はいはい。…そうじゃ、姫?」

魔娘「なあに?」

青竜人「…いきなり3発はヤリ過ぎですぞ?」

魔娘「なっ!?//」

シスター・黒竜「「…」」

子竜「ねえねえ。“いきなぃさんぱつ”ってなあに?」パタパタ

男「あははは…」ポリポリ

224: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:59:01.07 ID:dxDLgvSzo
青竜人「それと声がおおきs」

魔娘「わーっ!わーっ!!だ、“大氷結呪”!!」

青竜人 カチーン…

一同「「「「…」」」」

男「…見事に凍ってんだけど…大丈夫か?」

黒竜「…た、タヌキ爺!?」

赤竜「か、“火焔呪”!」

ジュー…
  ・
  ・
  ・

227: 名無しさん 2013/01/19(土) 23:59:41.68 ID:dxDLgvSzo
青竜人「まったく…ひどい目にあったわい」

魔娘「あ、青爺が変なこと言うからよ!」

黒竜「…怒らせると怖いな」

男「ああ…」

男(魔娘の魔法は“回復”、“解毒”、”変化“の3つ以外は封印されていたはずなのに…まさか…)

男(封印が解けたのか!?いつから?どうやって?)

魔娘「どうしたの?」

男「いや…なあ、魔娘」

魔娘「なあに?」

男「いつから魔法が使えるようになったんだ?」

魔娘「…」

228: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:00:23.33 ID:DMYanI4ro
男「…黙ってるところを見ると、昨日今日の話じゃなさそうだな」

魔娘「…白竜人の菩提所からでて…その後から…」

男「え!?」

魔娘「あの時…魔力が一度に抜けてなくなったでしょ?そのときに封印も壊れたみたいなの」

男「え?…へ?」

魔娘「あの封印はわたしの魔力を使って作動するように仕掛けてあったみたいなのよ」

魔娘「だから、わたしの魔力がなくなったときに消えたみたいなの」

男「えっと…つまり…今、魔娘はいろんな魔法が使えるってことか?」

魔娘「いろんなって言っても、元々覚えてる魔法以外はつかえないわよ?」

229: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:01:02.96 ID:DMYanI4ro
男「じゃあ、どんな魔法を覚えてるんだ?」

魔娘「大したことはないわ。火炎に凍結に雷撃に風圧に地殻に…」

男「攻撃魔法ばっかじゃねえか!!」

魔娘「失礼ね!他にもちゃんと覚えてるわよ!!睡眠に混乱に肉体強化に…」

男「…やっぱり攻撃魔法じゃねえか」

魔娘「…あら?変ねえ…あ、あと転移も出来るわよ?」

男「あ、それは便利かも」

230: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:01:35.38 ID:DMYanI4ro
コンコン

青竜人「…姫。そろそろ出発してもよろしいかな?」

魔娘「あら、ごめんなさい。ええ。」

青竜人「では、ドアを閉めてくだされ」

魔娘「はいはい」

パタン

青竜人『では、行きますぞ?』

魔娘「はい」

ザバーン ゴボゴボゴボ…

231: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:02:04.33 ID:DMYanI4ro
シスター「…」

黒竜「…」

シスター「…ありがとうございます」

黒竜「なにがだ?」

ボワン

赤竜「…最後に大雷撃を放ったとき、男を直撃しないようにしたのだろう?」

黒竜「…何故それを?」

赤竜「男が言っていた。そうでなければ鉈を投げたところで稲妻を避けれなかったとな」

黒竜「あやつめ…分かっていたのか」

232: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:03:04.59 ID:DMYanI4ro
黒竜「…あのとき、すでに決着はついていた。あれは我の意地で放った雷撃だ。当てるつもりはなかった」

赤竜「ふふふ」

黒竜「何がおかしい?」

赤竜「黒竜は相変わらず優しいのだな」

黒竜「なにがだ」

赤竜「我ら竜族は力ずくで嫁どりをする。しかしお前は『嫁になれ』と言うだけだった」

黒竜「…ふん。力ずくは性に合わん」

赤竜「私はそうではなかったぞ?」

黒竜「なに?」

233: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:03:34.34 ID:DMYanI4ro
赤竜「ほかの竜のように雄に攫われたかったのだ。なのにお前はそのようなことを言って一向に攫う気配はなかった」

赤竜「そんなお前にしびれを切らして人間界に逃げたのだ」

赤竜「だから…攫われた時は嬉しかったのだぞ?」

黒竜「…そうか」

赤竜「わたしは今幸せだ。男はひとり立ちし伴侶を見つけ…」

スッ

子竜「おかーさまのだっこだー♪」

赤竜「ふふふ…お前や子供たちと共に過ごせるこの時を幸せと思わずにいられないのだ」

黒竜「…ありがとう」

赤竜「こちらこそだ。ふふふ」

234: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:07:32.47 ID:DMYanI4ro
~海岸~

ザバーン!

青竜人「着きましたぞ」

パカッ

魔娘・男「「…」」ボロボロ…

男「いてて…行きに比べて帰りは荒っぽいなぁ…」

魔娘「あちこちぶつけて痛いわ…青爺、ひょっとして根に持ってるの?」

青竜人「ナンノコトデスカナ?」

魔娘「やっぱり…」

235: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:08:04.92 ID:DMYanI4ro
男「ところで…ここは?」キョロキョロ

魔娘「…海岸みたいだけど…行きとは違うところみたいね…」

青竜人「スパイに知られると面倒なのでな、念のため場所を変えております。しかし…」

魔娘「…どうしたの?」

青竜人「いや…なにやら予期せぬ事態があったようですな。迎えが居りませぬ」

魔娘「え?」

236: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:08:31.09 ID:DMYanI4ro
男「…まあいいさ。おかげで気楽に旅が出来るって。なあ?」

魔娘「…そうね。じゃあ上陸しましょ?」

男「おう。まかせとけ。“転移”」

シュイン

ザッ ザザッ

男「っと。上陸成功!」

ザザーン…

237: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:08:59.07 ID:DMYanI4ro
青竜人「…お気をつけください。なにやら嫌な臭いがしますぞ」

男「ああ…」チャキン

魔娘 ヒクヒク

男「どうした?」

魔娘「いえ…何かが焼ける匂いと…血の臭いがするわ」

男「血の?」

238: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:09:55.65 ID:DMYanI4ro
魔娘「だけど…気配がないの。どういうことかしら…」

男「…とりあえず行ってみよう。その匂いがするほうにさ」

魔娘「…ええ。じゃあ青爺、ありがとう」

青竜人「ほっほっほ。また会える日を楽しみにしておりますぞい。では」

ザッブーン

魔娘「…男、行きましょ」

男「ああ」
  ・
  ・
  ・

239: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:10:22.03 ID:DMYanI4ro
~海岸近くの廃村~

魔娘・男「「…」」

死屍累々

メラメラ…

男「…ひでえな…」

魔娘「…」ギュッ

男「一体…なにがあったんだ?ここは…建物も壊れてるし…村が壊滅してる…」

魔娘「これは…“雷撃呪”ね」

男「…へ?」

240: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:11:36.62 ID:DMYanI4ro
魔娘「誰かがこの村に“雷撃呪”を使ったんだわ。それも何回もね」

男「なんで…いや…誰がそんなことを…」

魔娘「わからないわ…」

男「…とにかく生存者を探そう」

魔娘「…うん」
  ・
  ・
  ・

241: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:12:03.29 ID:DMYanI4ro
男「ほら、しっかりしろ!」

モブ竜「ヒュ…ヒュ…」

男「もう少しだからな?魔娘、頼む」

魔娘「はあ、はあ…“中回復呪”」パァアアア…

モブ竜「ヒュ…はぁ…はぁ…」

男「もう大丈夫だ。けど…」

モブ竜‘s ハァ…ハァ…

男「結局生き残ってたのはこれだけか…」

242: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:12:31.62 ID:DMYanI4ro
魔娘「はあ…はあ…」

男「大丈夫か?魔娘」

魔娘「はあ…大丈夫よ。それより水と食料が必要だわ」

男「わかった。村の中にあったから持って来る」

パタン

男(魔娘は“雷撃呪”だって言ってたけど…首がない死体もいくつかあった…)

男(誰が?一体何のために?…わかんねえ。わかんねえぞ畜生!)
  ・
  ・
  ・

243: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:12:59.38 ID:DMYanI4ro
魔娘「つまり、モブ竜たちの話をまとめると…4人の人間が昨日一晩泊まって、今朝、村を出て行った途端、雷がいくつも落ちてきたらしいの」

男「4人の人間って…新勇者様一行か?」

魔娘「おそらくね。あのパーティーは新勇者以外はまともじゃないから」

男「そうだな…」

魔娘「本当ならわたし達を迎えに行くはずだったんだけど、こんなことがあったから行けなかったって謝ってたわ」

男「それどころじゃないだろ。そうだ!竜人たちにも知らせないと!!」

魔娘「わたしに任せて。転移魔法を使えばいいから」

男「じゃあ頼む。俺はここで怪我人の介護をしてるから」

魔娘「分かったわ」

244: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:13:26.47 ID:DMYanI4ro
~翌日・廃村の近くの天幕~

魔娘「今すぐ国を出ろって…どういうことかしら?」

白竜人「ですから、先ほどから申し上げてますように」

黒竜人「あの村を襲ったのは4人組の人間です」

赤竜人「追跡者を放ちましたのでいずれ住処などは分かると思いますが…」

魔娘「それと男が、どう関係するの?」

245: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:13:53.39 ID:DMYanI4ro
青竜人「…姫よ。あの者は人間とエルフのハーフじゃといっとったな?」

魔娘「え、ええ…」

白竜人「あの村での出来事は今、竜の国中に広がりつつあります。すでに近隣では人間排除の声も上がっている始末」

黒竜人「よって、お連れの方の身を案じ、竜の国を出られることを提案しているのです」

赤竜人「聞けば、姫とお連れの方はやんごとない関係だとか。であればなおさらこの国にいるのは…」

青竜人「…みな、姫の身を案じておるのじゃ。ここはひとつ、わしに免じて従ってくださらんか?」

魔娘「…分かったわ」

バサッ

男「お、やっと出てきたか」

魔娘「っ!?」

246: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:14:19.90 ID:DMYanI4ro
男「なんだよ。そんな湿気た顔して」

魔娘「うるさいわね…」ジロッ

男「…で?次はどこに行くんだ?」

魔娘「…え?」

男「実はさ、聞こえちまったんだ」

魔娘「そう…そんなことだと思ったわ」

247: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:14:46.79 ID:DMYanI4ro
男「…ごめんな?」

魔娘「なんで謝るのよ」

男「え?だってさ…ハーフとは言え俺が人間だからこの国に居られないんだろ?」

魔娘「そうよ。でもそれは男のせいじゃないわ。あの新勇者達のせいよ」

男「…あの新勇者様は話が分かる人だと思ったんだけどなぁ」

魔娘「お付きの連中が良くないんでしょ?きっと」

男「そっか」

248: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:15:17.64 ID:DMYanI4ro
魔娘「それで…荷物は?」

男「ああ。食料品以外はまとめてある。で…どうする?」

魔娘「そうね…とにかくちょっと休みたいわ。わたしもいろいろあって疲れちゃったし」

男「そうだな。のんびりできるところがいいな」

魔娘「のんびり…か。じゃあ、温泉に行かない?」

男「おんせん?」

魔娘「地下から沸いてくるお湯のことよ。温泉なら鬼の国が有名ね」

男「鬼の国!?名前からして物騒な国だな…」

249: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:15:56.82 ID:DMYanI4ro
魔娘「はあ?」

男「いや、だって…鬼って言うとさ、力が強くて乱暴で…ってイメージがあるし」

魔娘「それは人間の勝手な思い込みよ。確かに怒ると怖いけど…」

魔娘「彼らは基本的に温厚でおとなしい種族よ?背丈も私達とほとんど変わらないし」

魔娘「ただ、彼らは…妙に凝り性というか没頭しやすいって言うか…とにかく変わり者なの。魔法も変わったものが多いし」

男「そっか…で、そこに行ってどうするんだ?」

魔娘「温泉は心と身体を癒す効果があるんだって。だからそこで気分転換しましょ?」

男「…ん、了解。で、どこにあるんだ?」

魔娘「このまま海沿いに歩いていって5日ってとこかしら?」

男「じゃあ、行くか」

魔娘「ええ」

250: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:16:31.00 ID:DMYanI4ro
~鬼の国・小さい村~

男「なんと言うか…」

魔娘「…のどかね」

男「この草はなんだろう?麦じゃないみたいだけど…」

魔娘「これは“米”っていうのよ」

男「へえ…これ全部“米”なのか…あんな山の上のほうまで…」

魔娘「鬼の国の特産品なのよ」

男「今日はここで泊まるか?」

魔娘「…そうね。今までずっとテントで寝泊りだったものね」

男「とりあえず飯にしよう。保存食には飽きたしな」

魔娘「ええ。楽しみだわ」

251: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:16:58.83 ID:DMYanI4ro
~飯屋~

男「米ってうまいな!」

魔娘「この煮物もおいしいわ。きっとこの…ショーユ?のおかげね」

男「ミソスープも美味かったしな!」

魔娘「しかもヘルシーだし」

男「食いものは気にいった。ここはいいな」

魔娘「そうね」クスッ

252: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:17:29.13 ID:DMYanI4ro
~宿の部屋~

男「部屋に入るときに靴を脱がなきゃいけないとは思わなかった」

魔娘「これは畳ね」

男「たたみ?」

魔娘「鬼子族独特の文化で、鬼子族はこの上で生活するの」

男「ふーん…ベッドもないんだな」

魔娘「“布団”っていう寝具があるわ」

男「この扉の裏にあるやつか?」

魔娘「そうよ。寝るときはその布団を畳の上に敷いて寝るの」

253: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:18:18.35 ID:DMYanI4ro
男「ふーん…習慣なんかは種族によって違うってことか」

魔娘「そうよ。人魚族に“ベッドで寝ろ”なんて言えないもの」

男「そりゃそうだ。じゃあ風呂に入ってくる」

魔娘「綺麗に洗うのよ?」

男「わかってるって」

パタン

魔娘「…さて、布団を敷いて…バスタオルも忘れずに…ティッシュはどこかしら?」

254: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:18:47.67 ID:DMYanI4ro
~数日後・大きな温泉町~

男「やっと着いた…まずは宿屋だな」

魔娘「そうね…早く休みたいわ」

男「安いところがあるといいんだけどな」

魔娘「まだお金はあるから大丈夫よ?」

男「いや、どれぐらいここに居るか分からないからさ」

魔娘「…そうね。でも、せめて温泉がある宿にしましょ?」

男「了解」
  ・
  ・
  ・

255: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:19:14.12 ID:DMYanI4ro
~宿の部屋~

男「やっぱり畳だな」

魔娘「でも、これはこれでいいわよ?ゴロゴロできるし」

男「アレのときに落ちる心配もないしな」

魔娘「え?」

男「…いや、分からないんならいいんだ」

魔娘「?」

256: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:19:40.11 ID:DMYanI4ro
~町の中~

男「大きい町だけあって、さすがに活気があるな」

魔娘「色々なお店があるわね」

男「ん?あれは…口入屋か?」

魔娘「そうみたいね」

男「覗いてみるか」
  ・
  ・
  ・

257: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:20:06.79 ID:DMYanI4ro
魔娘・男「「…」」

男「…極端だな」

魔娘「田んぼの作業が多いけど…」

男「こっちのほうは…ニンジャコーナー?ニンジャってなんだ?」

魔娘「凄腕のスパイよ。もっとも、今では伝説の存在なんていわれてるわ」

男「でんぜつのそんざい?」

魔娘「ええ。ニンジャは情報収集、破壊工作、暗殺なんかも行なう、隠密のプロだって言われてきたけど…」

魔娘「…誰も見たことがないの」

男「ふーん」

258: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:20:59.56 ID:DMYanI4ro
口入屋「何かご用でしょうか?」

男「あ、いえ。この国は初めてなんで、どんな仕事があるのか見てるんです」

口入屋「そうですか。何かありましたらお呼び下さい」

男「あ、はい」

魔娘「…ねえ、この依頼見て」

男「ん?どれどれ?…え?」

259: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:21:33.77 ID:DMYanI4ro
口入屋「何かご用でしょうか?」

男「あ、いえ。この国は初めてなんで、どんな仕事があるのか見てるんです」

口入屋「そうですか。何かありましたらお呼び下さい」

男「あ、はい」

魔娘「…ねえ、この依頼見て」

男「ん?どれどれ?…え?」

260: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:22:15.51 ID:DMYanI4ro
魔娘「…“調査依頼。ニンジャの方。詳細は面接で”」

男「ニンジャってやっぱりいるんだ…」

魔娘「依頼があるからって本当にいるわけじゃないわよ?」

魔娘「第一、こんな適当な依頼を受けるニンジャがいるのかしら…」

?「いるでござる」

魔娘・男「「え?」」

シュン

261: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:22:50.01 ID:DMYanI4ro
男「…い、今、声がしたよな?」

魔娘「ええ…」

男「なんか…不気味だな…」

魔娘「早く出ましょ?ね?」

男「…そうだな」

262: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:23:17.03 ID:DMYanI4ro
~飯屋~

男「食べ過ぎた…」

魔娘「わたしも…けぽっ」

男「この国は食いものがうまいな!」

魔娘「そうね。それだけでも来た価値があったわ」

男「あははは。そうだな。じゃあそろそろ宿に戻るか?」

魔娘「そうね。宿に戻ってちょっと休んだら、温泉に入ってのんびりしましょ?」

男「そうだな」

263: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:23:43.86 ID:DMYanI4ro
~宿の温泉・男湯~

カポーン…

男「気持ちいいな…」

チャポン

男「…」

~~~~~~~~~~

  男「だからさ、仇討ちをして、二人でのんびり暮らすってのは?」

~~~~~~~~~~

男「…仇討ち…か…」

264: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:24:46.97 ID:DMYanI4ro
男「かっこつけて言っちまったけど…」

男(…どうすりゃいいんだろ…第一どうやって魔王に近づきゃいいんだ?)

男「…けど、魔娘のためなら…やってやるさ)

男「…はぁ、あっちぃ…」

モブ鬼人「おい兄ちゃん、湯あたりする前にあがんなよ」

男「あ、はい」ザバァ

265: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:25:13.72 ID:DMYanI4ro
~女湯~

チャプン

魔娘「はぁ~…気持ちい~」

パシャン

魔娘「…」

~~~~~~~~~~

  男「俺と魔娘の二人で仇討ちに行けば戦争にはならないから、国民は苦しまなくてすむだろ?」

  男「で、その後どこか静かなところで二人で暮らす。どうだ?」

~~~~~~~~~~

魔娘「…二人で…か」

266: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:25:40.68 ID:DMYanI4ro
魔娘(仇討ちも静かに暮らすのも男と二人で…)

魔娘「そのためには…仇を…」

魔娘(そりゃあ…お父様を殺されて憎いけど…わたしは仇を討ちたいの?それより男と二人で…)

魔娘「二人で…」

魔娘(…きっとここで仇を討たないと後悔するんだろうな…だけど…そうなったら二人とも…)

魔娘「…死んじゃうかもね…」

魔娘(でも…男となら…それもいいかな…)

魔娘「はあ…そろそろ上がろ」ザパァ

267: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:26:10.27 ID:DMYanI4ro
~夜中~

男「そろそろ寝るか」

モゾモゾ

魔娘「もう寝るの?」

男「ああ。温泉に入ったら眠くなってさ。たまには早く寝るのもいいだろ?」

魔娘「…」

268: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:26:37.10 ID:DMYanI4ro
男「ん?どうした?」

魔娘「…お話があるの」

男「話?なんで?」

魔娘「ここに来るまで…ゆっくり話をする時間なんて無かったでしょ?だから…」

男「そうだな…で、どんな話だ?」

魔娘「うん…男はこれからのこと…どんな風に考えてるの?」

男「封印の島で話したろ?」

269: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:27:08.92 ID:DMYanI4ro
魔娘「…本気なの?」

男「魔娘の仇討ちに手を貸して、その後はのんびり二人で過ごしたい」

魔娘「…わたしも…男と一緒に暮らしたい…」

男「…」

魔娘「で、でも…お父様の仇も討ちたい…」

男「手を貸すよ」

魔娘「…お父様は強い人だったわ…」

男「…」

魔娘「だけど…こ、殺されたの…」

270: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:27:41.24 ID:DMYanI4ro
男「…相手は相当強いってことだな」

魔娘「うん…わたしは…そんな強い種族なんて知らないし…もしかしたら…卑怯な手を使ったのかも…」

魔娘「そう思うとね?…その相手のことが憎くて…殺してやりたいって思うの」

男「そっか…」

魔娘「で、でも…わたし達じゃ太刀打ちできない相手かもしれない…もしそうなら…」

魔娘「男は…寿命を削ることになるかもしれないし…最悪、わたし達二人とも死んじゃうのよ?それでも…」

魔娘「…男は…その…わたしに力を…貸してくれるの?」

男「…いやだな」

魔娘「…え?」

271: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:29:06.51 ID:DMYanI4ro
魔娘(やっぱり…死ぬのはいやだよね…)ウルッ

男「俺は…魔娘も死んだりしない。必ず生きて仇討ちをするんだ」

魔娘「あ…」

男「最初から“負ける”とか“死ぬ”とか考えるなって。な?」

男「第一、相手がどんなやつかよく分からないって言うんなら調べりゃいいんだよ」

魔娘「…」ポロッ

男「時間はあるんだ。慌てずにやっていこう?な?」

魔娘「うん…うん!」

272: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:29:33.67 ID:DMYanI4ro
男「じゃあ今夜はぐっすり寝て明日、やっていくことを考えよう。お休み」

魔娘 ゴソゴソ…

男「…なんで俺の布団に入ってくる?」

魔娘「えへへへ」ギュッ

男「抱きつくなって」

魔娘「えへへへ…えぐっ…ヒック…ありがと…ヒック…」

男「…俺のほうこそ…ありがとな…」

273: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:30:07.78 ID:DMYanI4ro
~翌日~

男「で?なんで口入屋なんだ?情報を集めるんなら酒場か飯屋だろ?」

魔娘「そんなところで手に入る情報なんて、どこにでもあるような内容でしょ?」

魔娘「わたし達が欲しいのは、もっと手に入りにくい情報なの。だからここで依頼するのよ」

男「誰にだよ」

魔娘「“ニンジャ”よ」

男「にんじゃあ!?」

魔娘「しっ!声が大きいわよ!!」

男「ご、ごめん…」

274: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:30:34.90 ID:DMYanI4ro
魔娘「わたし達だけじゃ集められる情報は限られるでしょ?だからここに来たの」

魔娘「口入屋は仕事を受けることも出来るけど、依頼することも出来るわ。だからここで情報を集めてくれる人を頼むの」

男「いや、それは分かるんだけどさ…大丈夫なのか?その…魔王側に情報が漏れるとか…」

魔娘「それは…否定できないけど…」

口入屋「そこはうちを信じてもらうしかないですね」

魔娘・男「「!?」」

275: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:31:06.68 ID:DMYanI4ro
口入屋「なにを調べるのかは分かりませんけど、調べ物なら馴染みがいるんで頼んでみましょうか?」

魔娘「…馴染みって?」

口入屋「そういう調べものが得意なヤツですよ。口も堅いし。ただ…ちょっとお高くなりますが」

男「どれぐらいですか?」

口入屋「それは…ちなみに費用はいくらぐらいまで出されますか?」

魔娘「そうね…全部込みで金貨5枚ってとこかしら」

口入屋「そうですか。なら本人と話してみてください。それじゃ」

男「あ、ちょっと!話すったって…どこに居るんだよ…」

くの一「…なにを調べるの?」

魔娘・男「「えっ!?」」

276: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:31:36.00 ID:DMYanI4ro
くの一「しっ!大きな声を出さないで!!」

魔娘「ご、ごめんなさい」

男(まったく気配を感じなかった…この女、一体…)

魔娘「…調べて欲しいのは…魔王のことなの」

くの一「…」

魔娘「どんな種族で、特長とか…あと、周りにいる取巻きなんかも知りたいわ」

魔娘「とにかく、どんなことでもいいから知りたいの」

くの一「…これよ」パサッ

魔娘「え?」

277: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:32:03.68 ID:DMYanI4ro
くの一「この町で手に入る情報。これより詳しい情報が欲しいなら…正式に依頼して」

パラッ…パラッ…

魔娘「…わかったわ。あなたに依頼します」

男「お、おい…」

魔娘「男、この情報みて?」

男「…」ペラッ

魔娘「どう?これだけでもわたし達が調べようとしたら10日以上掛かるわ」

男「そうだな…」

魔娘「でも、この人はこの程度の情報には価値がないって思ってるの」

くの一「ふふっ。その通りよ」

278: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:32:30.08 ID:DMYanI4ro
魔娘「依頼内容は魔王の調査。費用は金貨5枚。どう?」

くの一「…調査期間は2週間。金貨10枚、前金で」

魔娘「高いわ。7枚」

くの一「8枚。これ以下なら受けないわ」

魔娘「くっ…し、商談成立ね」

男「おいおい金貨8枚って…手持ちの半分だぞ?」

魔娘「それぐらいどうってことないでしょ!?」

男「いや、でもさ…」

279: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:33:04.12 ID:DMYanI4ro
魔娘「…きっと彼女ならわたし達よりも効率的に情報を集めてくれるわ。それに…」

魔娘「わたし達じゃ王の国で自由に動けないしコネもないから、きっとすごく大変よ?」

男「…」

魔娘「…王の国までの移動は?」

くの一「転移符を使うわ」

魔娘「それも込みの費用?」

くの一「ホントは別料金にしたいけど…おまけしておくわ」

魔娘「ありがと。じゃあ…はい。金貨8枚」チャラ

くの一「…確かに。2週間後にここで会いましょ。わたしの名は“くの一”」

魔娘「わたしは“魔娘”よ。楽しみにしてるわ」

シュン

男「消えた…」

280: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:33:30.88 ID:DMYanI4ro
口入屋「…話はまとまりましたか?」

男「あ、はい」

口入屋「それはよかった。ヤツは腕は確かなんですが…仕事を選ぶもので…」

魔娘「そうなのね」

男「あと、2週間後にここでって言われたんだけど…」

口入屋「ええ。心得てます」

魔娘「助かるわ」

男「じゃあ…一旦宿に戻るか?」

魔娘「そうね。さっきもらった情報に目を通しましょう」

男「それじゃ、また」

口入屋「はい。また御贔屓に」

281: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:34:46.78 ID:DMYanI4ro
~宿の部屋~

ペラッ…ペラッ…

男「すごい…箇条書きでまとめてある」

魔娘「分かりやすいわ…」

男「説明してくれないか?」

魔娘「“反乱について”、“魔王に関する噂”、“魔王国の政策方針”…どれからにする?」

男「俺はこっちのことは何にも知らないからさ…どれからでも一緒かな?」

魔娘「じゃあ…順番に行くわね。まずは…“反乱について”ね…」

男「これによると…

282: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:35:14.60 ID:DMYanI4ro
   ・反乱は軍の過激派と反乱軍によるもの。

   ・首謀者は軍内部のもの。詳細は不明。

   ・従者のゴブリン族たちを人質に取られ、前主王様が投降して反乱が治まる。

   ・人質になったゴブリン族は前主王様を裏切って反乱軍に寝返った。

   ・投降した前主王様は処刑時に竜族によって連れ去られた。

   ・前主王様の御遺体は白竜人の菩提所にある。

   ・姫様は反乱のあと行方不明のまま。死亡説など諸説あるがどれも信憑性にかける。

   ・魔王は軍を動員して姫様の捜索に当たっている。

283: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:35:42.43 ID:DMYanI4ro
魔娘「ほぼその通りね」

男「まあ、黒竜人や白竜人に聞いたことがあるから、この辺は分かるな」

魔娘「…じゃあ、次。“魔王に関する噂”」

魔娘(敬称抜きで書くなんて…魔王にあまりいい印象はないようね)

魔娘「どんな噂かしら…」

男「魔娘も知らないのか?」

魔娘「ええ。だってわたしは反乱が起こったその日のうちに転移で人間界に飛ばされたもの」

男「そっか。じゃあ…“魔王についての噂”」

284: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:36:10.23 ID:DMYanI4ro
   ・元々軍内部にいた。

   ・但し、過激派ではない。

   ・身長は2mとも。

   ・がっちりした体系らしい。

   ・魔法もつかえるようだ。

   ・従者が居るらしい。


285: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:36:36.68 ID:DMYanI4ro
男「最初の二つ以外はホントに噂だな…」

魔娘「そうね。でも、こういう情報はくの一さんに頼んであるから、そっちを待ちましょ?」

男「ん。で、最後。“魔王国の政策方針”」

286: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:37:04.35 ID:DMYanI4ro
   ・魔王国は軍事力を増強している。

   ・また、スパイを各地に派遣し、反乱分子を洗い出そうとしている。

   ・軍隊維持のため、近々増税される。

   ・公共事業は今のところ問題なく実施される。ただし、予定はいつ変更になるか分からない。

   ・武器や防具の発注が多い。また、輜重部隊も整備されている。

   ・そのため、現時点では国内の景気はよい。

   ・魔王は人間界を戦闘目標にしている。そのため、勇者が攻めてくるのを待っている。

   ・勇者が攻めてきたら、それを口実に人間界に乗り込むつもりである。


287: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:37:31.55 ID:DMYanI4ro
男「…これって…」

魔娘「明らかに人間界に攻め込もうとしてるわね。でも…どうしてかしら?」

男「どうしてって?」

魔娘「だって、主王国から見れば人間界に攻め込んでも、何も得るものはないわ。土地ぐらいなものよ」

魔娘「でも、それだと軍隊を動かすほどのメリットは無いわ。だって大赤字だもの」

男「じゃあ…なんで人間界に?」

魔娘「それが分かれば苦労はしないわ。くの一さんが調べてくれるといいんだけど…」

288: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:37:58.41 ID:DMYanI4ro
~2週間後・口入屋~

パタン

男「こんにちは」

口入屋「あ、あんた!」

魔娘「くの一さん、帰ってきてるかしら?」

口入屋「…あんたら、やつに何を頼んだんだ!?」

男「なにって…魔王のことを…」

口入屋「じゃあなんであいつが!なんでこんな目に!!」

魔娘「ちょ、ちょっと!話が見えないんだけど…」

289: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:38:36.05 ID:DMYanI4ro
口入屋「…こっちにこい!」

男「は、はい」

ガチャッ

くの一「ひゅ…ひゅ…」

魔娘「くの一さん!?どうしたの!!」

口入屋「…昨夜帰ってきたんだ。体中傷だらけだ。しかも毒にも侵されてる…」

男「おい!魔娘!!」

魔娘「わかってる!“解毒呪”!“大回復呪”!!」パァアアアア…

くの一「ひゅ…ひゅ…はっ…はっ…はあ…はあ…」

魔娘「…呼吸が落ち着いてきたわ。あとは意識が戻れば…」

290: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:39:02.87 ID:DMYanI4ro
口入屋「あんたら…上級呪文が使えるのか!?」

魔娘「ええ。とりあえず様子を見ましょう」

口入屋「…助かった…」

男「いったい何があったんだ?」

口入屋「分からない…こいつがこんなひどいことになったのは初めてだ…」

魔娘「ずいぶん心配してるけど…どういう関係かしら?」

口入屋「…こいつは幼馴染でな、俺の…婚約者なんだよ」

魔娘・男「「え?」」

291: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:39:51.82 ID:DMYanI4ro
口入屋「俺達は…お互い一人前になって稼げるようになったら結婚しようって…」

口入屋「こいつは腕がいいからすぐに稼ぐようになって…俺のほうも最近やっと稼げるようになってさ…」

魔娘・男「「…」」

口入屋「次の仕事がうまくいったら…結婚しようって言ってたんだ…それなのに…」

男「その…ごめんなさい」

魔娘「わたし達があんな依頼をしたばっかりに…」

口入屋「…いや、あんたらは悪くない。すまない、八つ当たりしてしまって…」

男「いや…」

292: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:41:25.20 ID:DMYanI4ro
魔娘「…くの一さんの傷、あれは魔法でやられたのね」

口入屋「魔法で?」

魔娘「ええ。火傷に炭化痕に凍傷…火炎魔法と電撃魔法と凍結魔法だわ。しかも一度にかけられてる…」

男(ん?似たようなことがあったような…)

魔娘「相手は相当な手練ね…」

男「けど、おかしくないか?」

魔娘「なにが?」

293: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:42:14.09 ID:DMYanI4ro
男「だってさ、今の魔王のことを調べるだけで、何で魔法で攻撃されなきゃいけないんだ?」

魔娘「よっぽど知られたくないのよ。魔王は自分のことを…ね」

口入屋「…確かに。魔王様に代わって随分経つが…未だに姿を見たっていう人に会ったことがない…」

くの一「…魔王はハーフエルフよ。見た目は碧眼族だけどね」

口入屋「お前!目が覚めたのか!?」

くの一「ええ…わたしの荷物は?」

口入屋「あ、ああ…ここにある」ゴソゴソ

294: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:42:41.72 ID:DMYanI4ro
くの一「持ってきて」

口入屋「…ここでいいか?」

くの一「ありがとう。ねえ、魔娘さん」

魔娘「なあに?」

くの一「これが調査報告書よ」ゴソゴソ パサッ

魔娘「あ、ありがとう…休んでて。まだ体力までは回復してないでしょうから」

くの一「でもまだ仕事は完了してないの。布団の中からで悪いんだけど、簡単に説明するわね」

魔娘「無理しないでね?」

くの一「ええ。じゃあ…まずはそれを読んで。補足するから」

魔娘「分かったわ。じゃあ…」

295: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:43:08.53 ID:DMYanI4ro
  ・魔王は碧眼族のハーフエルフ。

  ・20年ほど前から軍内部で仲間を増やしていった。

  ・10年前には裏で過激派を操るまでになった。

  ・魔王の特殊能力は不明。

  ・とにかく人を遠ざけたがる。

  ・しかし従者とは寝食を共にしている。

  ・従者の詳細は不明。引き続き調査中。

296: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:43:35.78 ID:DMYanI4ro
くの一「…まだ情報が足りないところもあるけど、このザマだから…」

魔娘「いいえ。この短い期間でここまで判れば大きな進歩よ。さすがね」

くの一「全然ダメよ。こんなの…」

口入屋「…」

男「…あの~…」

魔娘「なあに?」

男「これ見ても良くわかんないんだけど…」

くの一・口入屋「「…」」

297: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:44:22.54 ID:DMYanI4ro
男「そ、そんなビックリしなくていいだろ?」

魔娘「…そうね。男は人間界で育ったから、こっちのことは殆んど知らないものね」

口入屋「見た目は人間っぽいと思ってたが…」

くの一「でも、純粋な人間ってわけでもなさそうね」

男「はあ、俺、ハーフエルフなんです」

くの一「道理で…きれいな顔立ちしてると思ったわ」

男「はあ…」ポリポリ

魔娘「…」ツネッ

男「いたっ!なにすんだよ!!」

魔娘「べーつにー?」

くの一「ふふふ」

298: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:44:50.47 ID:DMYanI4ro
魔娘「…じゃあ、最初から説明するわ。ちゃんと聞くのよ?」

男「う、うん」

魔娘「まずは碧眼族。彼らは文字通り青い目と髪を持つ種族よ」

魔娘「彼らは魔法に長けてるわ。性質はいたって普通ね」

魔娘「ただ、矜持は高いわ。彼らの多くは上級魔法の使い手だし」

男「ふーん。で、母親がエルフか…」

くの一「そうとは限らないわ」

男「え?」

299: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:45:18.21 ID:DMYanI4ro
魔娘「父親がエルフだって可能性もあるってことよ」

男「え?…あ、そっか。俺、自分の母親がエルフだから、みんなそうだとばっかり思ってたわ」

くの一「そこまではまだ調査が進んでなかったの…」

魔娘「…話を進めるわよ?」

男「あ、うん」

魔娘「20年ほど前っていうと…先代勇者が魔界に来てから2~3年後ぐらいね。まだ私たちは生まれてないわ」

魔娘「この頃から軍内部で魔王は力をつけていったって…」

くの一「この頃にね、“反乱軍”が出来たの。その中心人物が…」

男「魔王?」

くの一「…そう」

300: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:45:57.49 ID:DMYanI4ro
魔娘「…どうして反乱軍が出来たのかしら…」

くの一「そうね…主王様は主王国の民から慕われていたのに…」

男「そりゃあどんないい人でも嫌うやつは居るだろ?そういうことなんじゃね?」

魔娘 ジロッ

男「うっ…ごめん…」

くの一「でも、あながち間違いじゃないと思うわ」

魔娘「どういうこと?」

301: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:46:28.78 ID:DMYanI4ro
くの一「前主王様は平和のために、争いごとは一切禁止していたでしょ?」

魔娘「え、ええ…」

くの一「平和っていいものだと思うわ。でもね、中には…狩猟種族みたいに餌場を確保するために縄張り争いをしたり…そうやって常に戦っていた種族も居るのよ?」

くの一「そんな種族の中には、戦いのない日々に不満を持つものが居たとしてもおかしくはないわ」

魔娘「…」

くの一「いろんな種族がいるんだもの。全部の種族が満足する世の中なんて不可能じゃない?」

くの一「それよりはもっと規律を緩めて、小競り合いや喧嘩ぐらいは黙認する世の中のほうがうまくいきそうに思うのよ」

302: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:47:00.45 ID:DMYanI4ro
口入屋「おい、お前喋りすぎだろ」

くの一「あら、ごめんなさい。ついお喋りに夢中になっちゃって」

魔娘「…別にいいわ」

くの一「でも、わたしがさっき言ったことは本心よ?」

男「あの…そろそろ続きを…」

魔娘「…そうね。それから10年ほどで、魔王は裏で過激派を操るまでになった…」

男「その10年で勢力を伸ばしていったのか…」

くの一「勢力を伸ばしたって言うより…裏工作って感じね」

男「うらこうさく?」

303: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:47:27.75 ID:DMYanI4ro
くの一「ええ。過激派は反乱のその瞬間まで、国軍としての責務は果たしていたの。ねえ?」

口入屋「ああ…それが突然寝返って…」

魔娘「え?」

口入屋「俺はそのころ修行の旅をしてて、反乱が起こったとき、ちょうど王の国の城下町にいたんだ。で、反乱を目撃してしまったんだ…」

魔娘「そうなのね…それで?」

口入屋「びっくりしたさ。今の今まで反乱軍に向かっていってた国軍が、いきなり向きを変えて反乱軍と一緒に城に向かっていったんだ」

口入屋「俺は身を隠しながら様子を見て、反乱軍が城内に入った隙に転移符で帰ってきたんだ」

魔娘「…」

304: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:47:56.31 ID:DMYanI4ro
男「…大体分かった。で、次なんだけど…」

魔娘「…」

男「…もう止めるか?」

魔娘「え?」

男「いや、なんかさ…辛そうだし?」

魔娘「…大丈夫よ。次は…魔王の特殊能力ね」

くの一「これは不明って書いたけど…洗脳術だと思うの」

男「洗脳術って…人に自分の思い通りのことを信じ込ませるっていうやつか?」

305: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:48:23.15 ID:DMYanI4ro
くの一「そう。しかもその洗脳はあっという間に行われるみたいなの」

魔娘「それって洗脳って言うより…催眠術みたいね」

くの一「そうね。それでわたしは、魔王はその力で反乱軍や過激派を洗脳していったって思ってるの」

魔娘「その可能性はあるわね。でも…反乱軍と過激派、合わせて数万人を洗脳するなんて…本当に出来るのかしら…」

くの一「出来るわ。だって魔王は…ハーフエルフだもの」

魔娘「!?」

男「あー…」

魔娘「…そうね。そうだったわ」

男「…ハーフエルフの力…か」

306: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:49:05.48 ID:DMYanI4ro
魔娘「次は…わたしにもよく分からないんだけど…」

男「どうした?」

魔娘「…ねえ、くの一さん。この3つは…」

くの一「魔王は人に会うことを避けてるとしか思えないの。お城の奥に従者と一緒に引き篭もってて…」

魔娘「…どうして?」

男「…へ?」

307: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:49:32.33 ID:DMYanI4ro
魔娘「どうして?反乱を起こして魔王になったのに、なんで引き篭もってるの!?」

男「お、おい、落ち着けって。な?」

魔娘「どういうことよ!じゃあ何のために反乱を起こしたのよ!!」

くの一「…分からないわ」

魔娘「どうして!どうしてよっ!!魔王になりたかったんでしょ!?どうして引き篭もるのよ!!」

男「もうっ…この…落ち着け!」ブチュッ

魔娘「!!」

くの一・口入屋「「…」」

魔娘「んー!んー!!んんーっ!!」ジタバタ

308: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:50:05.32 ID:DMYanI4ro
男「…ぶはあ!」

魔娘「はあ…はあ…」

男「落ち着いた?」

魔娘「はあ…あのねえ…くの一さん達が呆れてるじゃない」

くの一「…若いっていいわねえ…」

口入屋「俺たちもするか?」

くの一「…ばーか。ふふっ」

309: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:50:45.53 ID:DMYanI4ro
魔娘「ごめんなさい。取り乱しちゃって…」

くの一「いいの。落ち着いた?」

魔娘「ええ。じゃあ…魔王は人目を避けて従者とともに城の奥に引き篭もってる」

魔娘「従者の正体は不明。以上よ」

くの一「そこに書いてあるとおり、魔王は表立って活動はしていないわ」

魔娘「じゃあ、行政は?」

くの一「大臣が全て取り仕切ってるわ。魔王は山のように詰まれた書類にサインをしたらまた引き篭もるの」

魔娘「なにそれ…」

310: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:51:35.62 ID:DMYanI4ro
くの一「それで、魔王と従者のことを調べようとして城の奥に潜り込んだのよ」

くの一「魔王はエルフ族と碧眼族の特徴を併せ持った顔をしてたわ。だからハーフエルフだって分かったのよ」

くの一「それで、従者のほうを調査しようとしたら黒い霧に攻撃されて…何とか城の外まで逃げて、転移符で帰ってきたの」

男「えっと…その傷はその霧の魔法でやられたんですよね?」

くの一「ええ…」

男(黒い霧って…菩提所で魔娘が出してたのと同じものか?)

311: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:52:45.00 ID:DMYanI4ro
魔娘「毒はどこでやられたの?」

くの一「城から逃げるときに毒の吹き矢でやられたのよ」

魔娘「毒の吹き矢って…警備兵が!?」

くの一「…ええ。今は警備兵に毒の吹き矢を装備させてるの」

男「それは…厄介だな…」

魔娘「そうね…」

312: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:53:11.91 ID:DMYanI4ro
口入屋「…とにかく、お前が生きてて良かった」

くの一「縁起でもないこと言わないでよ。わたしはあんたの嫁になるまでは死ねないんだからね?」

男「惚気ですか…」

魔娘「お熱いことで」

くの一「あら。あなた達には負けるわよ?人前で接吻なんて、私にはできないもの」

魔娘「えっと…//」

男「ははは…」ポリポリ

313: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:53:38.90 ID:DMYanI4ro
口入屋「…で、どうしますか?」

男「…へ?」

くの一「わたしは…こんな中途半端で終わりたくない。報酬分は働くわ」

魔娘「え?でももう依頼した仕事は終わってるでしょ?」

くの一「そんな中途半端な報告書だけなんて、わたしが納得できないの。お願い」

男「…どうする?」

魔娘「わたしに聞かないで!男も考えてよ!!」

男「じゃあ…碧眼の国に行かないか?」

魔娘・くの一・口入屋「「「…へ?」」」

314: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:54:06.54 ID:DMYanI4ro
男「もちろん、くの一さんの怪我が治ってからだけどさ」

魔娘「…そんなところに行って何をしようって言うの?」

男「いや、魔王が碧眼族のハーフエルフだって言うから、じゃあ行っとく?みたいな?」

魔娘・くの一・口入屋「「「…」」」

男「…エ、エルフ族の町ではみんな俺のことは知ってたけど、他にハーフエルフが居るみたいなことは言ってなかったし」

男「だったら、碧眼の国に魔王の肉親が居るんじゃないかなーって…な?」

315: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:54:37.69 ID:DMYanI4ro
魔娘「…仮に肉親が居るとして、どうやって探すつもり?」

くの一「見つけることは出来ると思うわ」

魔娘「え?」

くの一「但し、大金を積めばね。それと調査期間も必要よ」

魔娘「じゃあ無理ね。だいたい、肉親を見つけたからって何かあるの?」

男「あ、いや…どんな人か教えてもらえるだろ?」

魔娘「…そんなことのために時間とお金を使いたくないわ!」

316: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:55:05.95 ID:DMYanI4ro
くの一「…あなたは何でそんなことを知りたいの?」

男「あ、はい。あの…スッキリしなくて…」

魔娘「なにが?」

男「いや、反乱軍を作ったり勢力を拡大したりするような人が、何で今さら引き篭もりになってんのかが分かんなくてさ」

くの一「…確かにそうね。わたしが見た魔王はごく普通の碧眼族って感じだったし、何より覇気がなかったわ」

魔娘「…それで?」

くの一「つまり、反乱を起こすような人物には見えなかったの」

魔娘「でも実際に反乱は起こったわ。そしてヤツが今の魔王よ」

男(魔娘、言葉を選んで話そうとしてるな。冷静になろうとしてるのが分かる…)

317: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:55:32.44 ID:DMYanI4ro
くの一「…ねえ。わたしもスッキリしないわ。碧眼の国に行きましょ?」

魔娘「はあ?」

くの一「肉親を探すんじゃないわ。魔王の情報を集めるためよ。それなら契約の範疇でしょ?」

魔娘「それは…そうだけど…」

男「なら、決まりだな」

魔娘「…じゃあ、男はくの一さんの怪我が治るまで、働いてお金を稼いでね?」

男「…へ?」

口入屋「今ならこんな仕事もありますが」

魔娘「どれどれ?…あら。いいじゃない。男、この仕事やりなさいよ」

男「俺の意思は無視かよ!」

318: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:56:01.58 ID:DMYanI4ro
~その頃・魔王城~

従者「城内を探索しましたが、もう賊はいません。魔王様」

魔王「そうか…」

従者「お前達も下がってよい」

警備兵「はっ!失礼します」

パタン

魔王「…」バサッ

319: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:56:28.33 ID:DMYanI4ro
従者「…もう大丈夫よ、勇者。あなたには指一本触れさせないから」

魔王「ああ…すまないな、魔法使い」

魔法使い(従者)「ううん。勇者のことが好きでしていることなんだもの。あたしのほうこそ感謝してるのよ?」

魔法使い「…ありがとう。あたしを傍に置いてくれて」チュッ

魔王「ん…」

ドサッ

魔法使い「あ…あん…」
  ・
  ・
  ・

320: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:56:55.07 ID:DMYanI4ro
魔法使い「スー…スー…」

魔王「…」ナデナデ

魔王(軍も洗脳した…官僚も洗脳した…商人たちも洗脳した…)

魔王(名も無いハーフエルフだった俺が…今じゃ魔王だ…)

チラッ

魔王(魔法使い…お前に出会って…恋をして…俺の運命は大きく動き出したんだ…)

321: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:57:40.65 ID:DMYanI4ro
~~魔王の回想~~

  俺は小さい頃ひ弱だった。

  腕力もないし強力な魔法も使えない。

  俺は臆病者だった。

  うちは貧乏だった。

  母さんは娼婦をしていた。

  俺には父さんはいない。

  娼婦をしている母さんと、母さんの客だったエルフ族のオトコとの間に生まれたのが俺だ。

322: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:58:10.74 ID:DMYanI4ro
  …そう、俺は悪名高いハーフエルフだ。

  あの“エルフの悪夢”を引き起こしたハーフエルフと同属だ。

  ハーフエルフは寿命を消費することで巨大な力を得ることが出来る。

  それぐらいは知ってる。

  でも、死ぬのが怖いから使うことはなかった。

  そんな風に…情けないほど臆病だったんだ。

  そんな俺にも友達がいた。幼馴染だ。

  幼馴染は母親が母さんと同じ娼館で働いていたから、俺たちはいつも二人でいた。

  俺たちは姉弟のように育った。あの事件が起こるまでは…

~~~~~~~~~~

323: 名無しさん 2013/01/20(日) 00:59:34.04 ID:DMYanI4ro
魔王「…」

~~~~~~~~~~

  俺が15歳、幼馴染が…16歳のときだ。

  その頃俺は、幼馴染を“女”として意識していた。

  幼馴染は…かわいかった。

  ある日の夜中、幼馴染の母親が家に駆け込んできた。

  幼馴染がどこに行ったか知らないかと。

  その日の夕方、俺は幼馴染に会っていた。

  幼馴染は夕飯の買い物に行くといっていた。

  母親は、幼馴染はいつもなら起きて自分の帰りを待っているのに、今日は家に居ないのだと。

324: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:00:09.12 ID:DMYanI4ro
  俺は全身に鳥肌が立った。

  俺は…最後に幼馴染にあった場所に向かった。

  大声で名前を呼んだ。

  通行人にうるさいと怒られた。

  俺は---初めてあの力を使った。

  周りにいた人…200人ほどを洗脳し、幼馴染を探させた。

  やっとのことで見つけた幼馴染は…似蛇族独特の臭いの体液にまみれて死んでいた。

  俺は幼馴染の身体を綺麗になるまで拭き、家につれて帰った。

~~~~~~~~~~

325: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:00:39.54 ID:DMYanI4ro

魔王「あれは辛かったな…」ポロッ

~~~~~~~~~~

  俺は似蛇族の溜まり場に行こうとした。

  けど…行けなかった。怖かったんだ。

  幼馴染を辱め殺した似蛇族に復讐することも出来ない、情けない俺…。

  俺は…現実から逃げるために家をでた。

~~~~~~~~~~

326: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:01:28.26 ID:DMYanI4ro
魔王「でも…」

~~~~~~~~~~

  知らない土地で十日ほど何も食べずに歩いていたら、いつの間にか意識を失っていた。

  気がつくと建物の中にいた。

  傭兵達が助けてくれた。

  彼らは名前と年以外、余計なことは聞かなかった。

  けど、数日後、費用を請求された。

  お金を持ってなかった俺は傭兵になって稼ぐしかなかった。

~~~~~~~~~~
 

327: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:01:55.66 ID:DMYanI4ro

魔王「そのおかげで…」

~~~~~~~~~~

  傭兵生活は悪くはなかった。

  喧嘩や小競り合いはあるものの、割と平等に扱われた。

  しばらくして、俺たちの部隊は獣の国と妖精の国の国境に近い小さな要塞に派遣された。

~~~~~~~~~~

328: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:02:22.76 ID:DMYanI4ro

魔王「そこで…初めて魔法使いと出逢ったんだ」

~~~~~~~~~~

  要塞で見張りをしていると、森の中の道を魔法使い達が歩いていたんだ。

  俺は目を疑ったよ。

  だって…魔法使いは…髪と目の色以外は幼馴染にそっくりだったんだ…。

  俺は仲間に言われて後方の師団に伝令に行って…その師団に斥候として同行することになった。

  師団は大きな損害を受けたけど---“勇者”を倒した。

  そのとき、俺は気を失っている魔法使い達の近くで、仲間を牽制していた。

  そして魔法使い達は転移で消えて…何とか無事に逃げてくれたんだ。

  そのあと俺は軍曹になったけど、相変わらずあの要塞にいた。

~~~~~~~~~~

329: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:03:14.37 ID:DMYanI4ro

魔王「そして…奇跡が起こったんだ」

~~~~~~~~~~

  それから数年後、俺はいつものように周辺の見回りに行った。

  そこで…魔法使いに巡り合ったんだ。

  魔法使いは俺を見て攻撃しようとした。

  俺は…何もしなかった。出来なかった。

  防御するでもなく、攻撃するでもなく…俺は…魔法使いを見つめているだけだった。

  魔法使いは攻撃しなかった。

  勇者を知らないかと尋ねられた。

  俺はとりあえず安全な場所に魔法使いを連れて行った。

  そこで俺は、勇者が死んだことを魔法使いに告げた。

~~~~~~~~~~

330: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:03:41.33 ID:DMYanI4ro

魔王「それで…」

~~~~~~~~~~

  魔法使いは信じなかった。

  怒って立ち去ろうとしたので、俺は洗脳呪を使って魔法使いに俺が勇者だと信じ込ませた。

  それから魔法使いは優しくなった。

  魔法使いは俺の言うことは何でも聞いた。

  俺は魔法使いを抱いた。

  俺は魔法使いを要塞の自分の部屋に軟禁した。

~~~~~~~~~~

331: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:04:08.11 ID:DMYanI4ro

魔王「結構幸せだったなぁ…」

~~~~~~~~~~

  けれどそんな日々は長くは続かなかった。

  魔法使いは俺に、主王様を倒しに行かないのかと言ってきた。

  困った俺は一計を思いついた。

  俺は洗脳呪で要塞の中にいる者全てを、主王様に反発する反乱軍として洗脳した。

  その上で魔法使いに、今はまだ兵力が足りないと説得した。

  魔法使いは喜んだ。

  魔法使いは一度軍隊と戦ったことがあるせいか、兵力を増強することに同意してくれた。

  俺たちは辺境の要塞で反乱軍ごっこをしていたんだ。

~~~~~~~~~~

332: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:04:34.79 ID:DMYanI4ro

魔王「この頃はまだよかったんだ…」

~~~~~~~~~~

  けど、軍の過激派が反乱軍ごっこに気付いた。

  要塞に来た過激派の使者は、全員俺が洗脳した。

  そのうち使者は来なくなった。

  そして過激派が行動を起こした。

~~~~~~~~~~

333: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:05:01.37 ID:DMYanI4ro

魔王「あの時の魔法使い、すごかったなぁ…」

~~~~~~~~~~

  俺は夜中に轟音で目覚めた。

  見ると横で眠っていた魔法使いは…頭に天井から落ちてきた柱が直撃していたんだ。

  慌てて助けだし気を失っていた魔法使いを起して、窓の外を見たんだ。

  要塞はすでに囲まれていた。

334: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:05:28.20 ID:DMYanI4ro
  俺は焦った。

  もうおしまいだと思った。

  俺たちの要塞にいる反乱軍は弱小部隊で、過激派の師団になんか敵うはずなかった。

  そのとき、窓の外から閃光と耳を劈く轟音が聞こえた。

  魔法使いが大雷撃呪を使ったんだ。

  そのすさまじい威力に、過激派の師団は退却していった。

~~~~~~~~~~

335: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:05:55.36 ID:DMYanI4ro

魔王「それから…急展開だったな…」

~~~~~~~~~~

  過激派のリーダーが面会に来た。

  反乱軍のことを知って協力したいって言われたんだ。

  それで魔法使いが乗り気になって、なだめるのに苦労したんだ。

  情報を集めるほうが先だという俺に魔法使いは…本当に勇者か?って尋ねたんだ。

  正直、ビビッた。

  魔法使いに、一刻も早く平和な世界を作るのが勇者の役目じゃないか?とか、

  もう何年も待ったとか、

  士気も高まってる今がチャンスだとか。

  そんなこと言われて詰め寄られて…もう開き直るしかなかったんだよなあ。

~~~~~~~~~~

336: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:06:22.27 ID:DMYanI4ro

魔王「あの時は我武者羅にやってた…」

~~~~~~~~~~

  反乱を起こすことが確定して、俺は出来るだけ多くの兵士を洗脳した。

  みんなで話し合った結果、夜襲することになったんだ。

  夜襲は見事成功した。

  そして…主王様が投降した。

  従者を人質にしたとか、ゴブリン族がどうしたとか行ってた気はするけど。

  主王様の処刑は、俺には性に会わなかったんで、リーダーが行った。

  嬲り殺しにしている途中で竜人たちに主王様を奪われたと聞いたけど、もう生きてはいないだろう。

~~~~~~~~~~

337: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:06:49.10 ID:DMYanI4ro

魔王「そして…」

~~~~~~~~~~

  しばらくして、誰が王になるのかって話になったとき、魔法使いがおかしいって言い始めたんだ。

  やっと主王様を倒したのに、どうして次の王を決めるのかって。

  あの時は説明するのに疲れたよ。

  今は治安も行政も、いろんなことが混沌としてるから、誰か号令をかける人が必要なんだって。

  一番手っ取り早いのは、誰かが王になって号令を掛ければいいんだって。

  そうしないとみんな身勝手な行動をしちゃうだろ?って。

~~~~~~~~~~

338: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:07:17.64 ID:DMYanI4ro

魔王「そのとき…魔法使い、君はとんでもないことを言ったんだ」

~~~~~~~~~~

  魔法使いは俺に魔王になれと。

  いきなりそんなこと言うもんだから、思わず君のおでこに手を当てちゃったね。

  だけど君はちょっと怒りながらこう言ったんだ。

  “わたしは人間界に戻ってもお尋ね者だから、勇者さえよければ、一緒に魔界で暮らすのもいいよ”

  それを聞いて俺は決心したんだ。

  “俺が魔王になる”

~~~~~~~~~~

339: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:07:53.03 ID:DMYanI4ro

魔王「あれは殆んど自棄だったよなぁ」

~~~~~~~~~~

  それからは軍だけじゃなく、従者や城下町の住民の洗脳をしたんだ。

  そのときにかなり疲れちゃったから倒れて…。

  そしたらリーダーが、ゆっくり養生しろって、仕事は任せとけって言ってくれたんだ。

  そうしてゆっくり養生することが出来た。

  そして…久しぶりに魔法使いと二人っきりの時を過ごせたんだ。

~~~~~~~~~~

340: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:08:19.65 ID:DMYanI4ro

魔王「ホント、リーダーには感謝だな…」

~~~~~~~~~~

  体調も大分よくなったけど、リーダーは無理はしなくていいって言ってくれた。

  リーダーはいつの間にか大臣になってて、仕事の大部分をこなしてくれていた。

  おかげで俺は書類にサインをするだけでよかった。

  おかげで今もこうやって魔法使いと一緒に過ごすことが出来る。

  しかもスパイとかから俺を守るために別邸を作って、警備兵までつけてくれてる。

  リーダーは本当によくしてくれてる。

  俺みたいな、何も出来ないやつが魔王をやっていけてるのもリーダーのおかげだな…。

~~~~~~~~~~

341: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:09:06.71 ID:DMYanI4ro
魔王「…zzz…」

魔法使い パチッ

ムクッ ゴソゴソ

魔王「zzz…」

チラッ

魔法使い「…もうすぐ…全てが動き出すのね…」

342: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:09:33.38 ID:DMYanI4ro

~~魔法使いの回想~~

  このオトコと出会ってからもう何年になるのだろう…

  森の中で初めて出会ったとき、このオトコは驚いていたようだった。

  わたしは攻撃しようとしたのに…このオトコはただわたしを見つめていた…

  敵対する様子もなかったので勇者のことを聞いたらここは危険だから安全なところに行こうって…

~~~~~~~~~~

343: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:09:59.96 ID:DMYanI4ro

魔法使い「信用したわけじゃないけど何か知ってるみたいだったから付いて行ったら…」

~~~~~~~~~~

  勇者は死んだと…

  もちろんわたしは信じなかった。

  そしてこのオトコの許を離れようとしたら洗脳されて…このオトコを勇者だと…

~~~~~~~~~~

344: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:10:26.80 ID:DMYanI4ro

魔法使い「…」

~~~~~~~~~~

  それからわたしはこのオトコを勇者だと信じて行動を共にした。

  オトコはわたしを要塞の自分の部屋に連れて行って…わたしを抱いた…

  しばらくは要塞のオトコの部屋に潜伏して様子を伺っていたけど…

  一向に魔王退治に行かないオトコを不審に思って聞いてみた。

  『魔王を倒しに行かないの?』って…

  このオトコは魔王を倒すため、反乱軍と行動を共にしているって…

  今はまだ勢力が小さいから、勢力を拡大中なんだって…

  このオトコを勇者だと思い込んでたわたしはその言葉を信じた。

~~~~~~~~~~

345: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:11:04.54 ID:DMYanI4ro

魔法使い「あなたは知らないでしょうけど…あのとき、わたしは洗脳が解けたのよ?」

~~~~~~~~~~

  寝ている間に頭に衝撃を受けたわたしはまどろみの中にいた。

  意識がはっきりしてくると、このオトコがわたしの顔を覗き込んで心配していた。

  目の前には“勇者”と名乗る碧眼のオトコ。

  わたしが知っている勇者は黒目なのに…

346: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:12:22.85 ID:DMYanI4ro

  わたしが混乱しているとオトコは窓の外を見て絶望的な声をあげた。

  わたしも窓の外を見ると…魔族の軍隊が押し寄せてきていた。

  身の危険を感じたわたしは大雷撃呪で軍隊を蹴散らした。

  このオトコは…心底喜んでわたしに抱きついた。

  驚いたけど温かかった…頼りないけど優しくてわたしを包み込むような温かさだった。そして慣れ親しんだ…

  その時…わたしはこのオトコに初めてを捧げたことを理解した。

~~~~~~~~~~

347: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:12:49.51 ID:DMYanI4ro

魔法使い ギリッ…

~~~~~~~~~~

  このオトコが憎かった。

  この男を殺そうとした。

  でも、このオトコはあまりにも無防備だった。

  わたしが殺気だって睨んでもこのオトコは身構えることも無く…

  まるで母親に甘える子供のように無邪気に微笑んだ。

  わたしは…この男を殺すことを諦めた。

348: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:13:17.07 ID:DMYanI4ro
  わたしは冷静に考えた。

  このオトコの言う通りなら勇者はすでに死んでいる。

  なら…わたしは勇者の遺志を継ぎ、魔王を倒そう。

  そしてわたしたちを犯罪者に仕立て上げた人間の国の国王もこの手で…

  そのためには…私一人では無理。魔王や国王には強い軍がついているから。

  このオトコは自らを勇者と名乗り、小さいながらも反乱軍を率いている。

  だからこのオトコの協力は必要であり不可欠。

  ならば…このオトコを利用しよう。

  そして魔王と国王を倒した暁には…

~~~~~~~~~~

349: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:13:43.35 ID:DMYanI4ro
魔法使い「…」

ガチャッ パタン

大臣(リーダー)「従者殿」

魔法使い「どうしたのですか?大臣」

大臣「今仕事が終わったところです」

魔法使い「そうですか…ご苦労様です」

350: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:14:15.91 ID:DMYanI4ro
大臣「…魔王様は?」

魔法使い「部屋でお休みになっておられます」

大臣「そうですか。来月の一般参賀についてお話を…と思っていたのですが…」

魔法使い「来月…ですか」

大臣「ええ。魔王様は今まで殆んど表舞台に出てこられなかった。そのため周辺国では魔王様の存在を疑うものまで出る始末」

大臣「このままでは魔王様の威厳が保てなくなりますので、今回の一般参賀を企画したのですが…」

魔法使い「それは大事なことですが…またの機会にしていただけますか?」

大臣「…しょうがないですね。では明日にでも時間を作っていただきたい」

魔法使い「分かりました…では、ごきげんよう」

トテトテトテ…

大臣「…ふん。人間風情が」
  ・
  ・
  ・

353: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:14:56.57 ID:DMYanI4ro
~城の最深部~

コツッ コツッ コツッ…

ギギギギ…

ウオオオオオン…

「あと少しだ…あと少しで新勇者が来る…」

ウォオオオオン…

「新勇者よ…早く来い…その時こそ…」



----最も優秀な我が民族が世界を治めるために----

354: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:15:33.96 ID:DMYanI4ro
~~大臣の回想~~

  俺は以前、この城の清掃係だった頃、サボるために身を隠す場所を探していて、最深部に迷い込んだことがある

  そこには結界に守られた扉があった

  俺がその扉にもたれかかりサボりの言い訳を思案していたら急に景色が変わり…目の前にはこの武具があった

  武具が長い歳月を掛けて作り上げた結界の綻びに俺は落ちたのだ

  武具は俺の頭に直接話しかけてきた

  ---魔力をよこせ---と

355: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:16:11.19 ID:DMYanI4ro
  俺は寝ぼけているんだと思った

  夢なら何があっても怖くないと思った俺は尋ねた

  魔力と引き換えに、何をしてくれるのかと

  武具は俺に力をくれると約束した

  武具は剣を取れと

  言われるままに剣を取った

  そのとき武具全体が鳴動した

  すると魔力を全て吸われた

  目眩がして倒れそうになったが、元々持っている魔力が微々たるものだったこともあり、何とか意識を保っていた

  ---力を与えよう---

356: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:16:37.51 ID:DMYanI4ro
  俺は体中に力がみなぎるのを感じた

  武具から力をもらったのだ

  そのとき俺は、今までの出来事が夢ではなく現実だと知った

  そして…俺の中の野心に火がついた

  この国を…この世を支配したいと

  我が民族を虐げてきた者共を見返し、支配したいと

  優秀なる我が民族がこの世の全てを牛耳るのだと

357: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:17:22.02 ID:DMYanI4ro
  俺は武具を元に戻し、封印を避けるようにして抜け道を作ってその部屋を出た

  封印を破ったり武具を持ち出したりすると騒ぎになるからだ

  そして野望の実現のために軍に志願した

  最初は馬鹿にしていた将校達も俺の剣捌きを見て黙り込んだ

  俺は軍で力を見せ付け、過激な発言で注目を集めた

  腑抜けた連中を尻目に俺はトントン拍子に出世した

  気がつけば過激派と言われ、軍の中でもそこそこ大きな勢力になっていた

358: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:18:10.73 ID:DMYanI4ro
  そして反乱軍ごっこなどと生意気なお遊びをしている連中をからかうつもりで進軍したら…魔王たちが居た

  奴らは強かった

  いや、奴等の特技がすごかったのだ

  魔王は一瞬で多くの群集を洗脳し、魔法使いはその強大な魔力で数々の強力な攻撃魔法を繰り出した

  俺は思った

  “これを利用しない手はない”と…

  奴らを隠れ蓑にして俺の野望を実現してやるのだ

~~~~~~~~~~

大臣「…もう少しだ…もう少しで我が悲願が達成する…ふふふふ…ふはははは…ははははは!!」

359: 名無しさん 2013/01/20(日) 01:18:56.68 ID:DMYanI4ro
今日はここまでです

おやすみなさいノシ

377: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:04:32.58 ID:DMYanI4ro
では行きます

378: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:05:49.85 ID:DMYanI4ro
~碧眼の国~

男「…見事なまでに青い髪と目だな…」

魔娘「でも、それ以外はわたし達とほとんど変わらないわ」

くの一「そうね。ここではわたし達のほうが珍しいんだけどね」

魔娘「それで…どうするの?」

くの一「わたしは情報を集めてくる。だから…夜に宿屋に戻るわ」

魔娘「別行動ね。分かったわ」

379: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:06:24.67 ID:DMYanI4ro
くの一「じゃあ」

シュン…

男「…で、俺たちはどうするんだ?」

魔娘「そうね、とりあえず…町をブラブラしましょ?」

男「…買い物か?」

魔娘「そう。必要なものを買い揃えなきゃね。市場はどこかしら?」
  ・
  ・
  ・

380: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:06:51.50 ID:DMYanI4ro
~数日後・路地裏~

くの一「こっちよ」

男「薄暗くて不気味なんだけど」

魔娘「変な臭いもするし…」

くの一「文句言わないの」
  ・
  ・
  ・

381: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:07:18.28 ID:DMYanI4ro
くの一「ここよ」

魔娘「ここって言われても…」

男「…廃墟?」

くの一「…入るわよ」

ギギィ…

男「真っ暗だな…」

魔娘「やっぱり変な臭い…」

ガタッ

魔娘「ちょっと!」

男「悪い、足元が見えないから…」

382: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:07:44.63 ID:DMYanI4ro
?「…誰だ」

一同「「「!?」」」

くの一「…ある人を探してるの」

?「…ここには私しか居ない…帰りなさい」

魔娘「!?」

男「どうした?」

魔娘「その声…喋り方…側近なの!?」

383: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:08:11.32 ID:DMYanI4ro
?「…側近など知らない。帰りなさい」

魔娘「…じゃあいいわ。回復魔法と変化魔法と解毒呪以外使えないような封印をわたしにかけた側近かと思ったけど…」

?「っ!?」

魔娘「帰るわね」

男「え?マジで帰るのか?」

魔娘「ええ。あとはよろしくね、くの一さん」

くの一「…」

384: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:08:41.09 ID:DMYanI4ro
?「…お、お待ちください!!」

カッ コツッ カッ コツッ…

男(この人…足が悪いのか?杖を突いて…)

?「…すみません。フードを取ってお顔を見せてください」

魔娘「…」

パサッ

魔娘「…これでいい?」

385: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:09:07.60 ID:DMYanI4ro
?「おおぉ…姫様!御無事で!!」ギュッ

魔娘「やっぱり側近なのね?」

?改め側近「はい!」

魔娘「…ごめん、ちょっと離れて」

側近「え?」

魔娘「臭いが…ね?」

クンクン…

側近「…身支度をしてきますので今しばらくお待ちください」
  ・
  ・
  ・

386: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:09:36.44 ID:DMYanI4ro
側近「そうですか…ご苦労をされたのですね…すみませんでした」

魔娘「もういいわ。それに…」チラッ

男「…へ?」

魔娘「そのおかげで男に会えたんですもの」

側近「姫様…」

男(この人…さっきはわかんなかったけど…髪をちゃんと梳かしたら優しそうなおばさんだったんだ…)

魔娘「じゃあ…今度は側近のことを聞かせて?あの後…わたしを人間界に送った後、何があったのか」

387: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:10:27.86 ID:DMYanI4ro
側近「…主王様のことではないのですか?」

魔娘「お父様のことは…もういいわ」

男「俺たち、白竜人の菩提所も行ってきたんですよ。そこで前主王の亡骸と…」

側近「そうでしたか…申し訳ありません。私がもっと警戒をしていれば…」

魔娘「それはしょうがないことよ」

側近「しかし…」

魔娘「しょうがないことなのよ…」

側近「…申し訳ありません」

388: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:10:54.12 ID:DMYanI4ro
魔娘「それで、どうして側近はこんなところに居るの?どうやって暮らしていたの?」

側近「はい。今は代書屋などをして暮らしております」

魔娘「え?なんで?側近ならもっと他に仕事があるんじゃ…」

側近「…姫様、私の左目を見てください」

魔娘「左目?…眼帯?」

側近「あの反乱で…主王様とともに戦っているときに矢が刺さりまして」

側近「それ以来、魔法を使おうとすると頭の芯が痺れて…魔法が使えなくなってしまったのです」

魔娘「そうだったのね…」

389: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:11:20.56 ID:DMYanI4ro
側近「それに…矢が刺さって倒れている間に、足に毒を喰らってしまい…」

側近「何とか解毒はしたのですが…思ったように動かなくて…」

魔娘「それで私を探しにこれなかったのね」

側近「申し訳ありません!必ず迎えに行くと言っておきながら!!」

魔娘「もういいわ。謝らないで」

側近「しかし!」

魔娘「側近が人間界の一番いい場所に飛ばしてくれたから…わたしはこうして戻ってこれたの。だからもういいのよ」ニコッ

側近「姫様…」

390: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:11:46.82 ID:DMYanI4ro
男「ところで、どうやって主王城からここまで逃げてきたんですか?」

側近「…姫様。こやつは?」

魔娘「わたしの伴侶よ」

側近「…はい?」

男「魔娘の夫です」ペコッ

側近「…いやいや!姫様にはもっと相応しい伴侶をですね!!」

男「俺じゃダメだってんですか?」

側近「当然です!姫様は主王様のお血筋!!それがこんなわけの分からないオトコとなんて!!」

391: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:12:15.86 ID:DMYanI4ro
魔娘「まあ、確かに大馬鹿者ね」

側近「やっぱり!」

男「フォローする気もないの!?」

魔娘「お人好しでマザコンで、わたしのために命さえ投げ出そうとするような大馬鹿者よ」

男「えらい言われようだな…」

側近「し、しかし…このような貧弱な身体では…」

魔娘「男はね、クラーケンを撃退したことがあるのよ?」

側近「クラーケンを!?」

魔娘「ええ」

男「いや、あれは腹が減ってたから食おうとしただけだって。結局逃げられたし」

側近 アゼーン

392: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:12:59.01 ID:DMYanI4ro
男「…って、ちょっと待った。話が逸れてる」

魔娘「そうね。どんな話してたっけ?」

男「側近さんはどうやってここまで逃げてきたんだ?って」

魔娘「そうだったわね」

側近「…主王様です」

魔娘「え?」

側近「矢が刺さり…毒に犯された私を主王様は…転移魔法で碧眼の国まで転移してくださいました」

魔娘「そう…」

393: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:13:25.16 ID:DMYanI4ro
側近「私は…主王様をお守りすることも出来ず…姫様をお助けすることも出来ず…申し訳ありません!」

魔娘「もういいってば…」

側近「ひ、姫様ぁああ…」グスッ

魔娘「ちょっと!いい大人が泣かないの!!」ナデナデ
  ・
  ・
  ・

394: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:13:56.50 ID:DMYanI4ro
くの一「~~~と、こっちで調べたのは大体こんなものね」

側近「分かりました。では、こちらの情報ですが…大体同じようなものです。すみません…」

魔娘「ううん。側近は良くやってくれたわ。そんな身体なのに…」

側近「勿体無いお言葉…ありがとうございます」

男「…ちょっと気になったんだけどさ」

魔娘「なあに?」

男「俺たち、魔王や従者のことばっか調べてるけど、他に気になることって…ないのか?」

くの一「他にって?」

男「いや、なんとなく言ってみただけなんだけどさ」

魔娘・くの一・側近「「「…」」」

395: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:14:23.54 ID:DMYanI4ro
魔娘「何かあるのかと思ったら…」ジトー…

くの一「ただの思いつきだなんて…」ジトー…

男「うぅ…視線が冷たい…」

側近「…」

魔娘「側近も呆れて言葉が出てこないみたいだわ」

側近「…いえ。実は…気にかかることがありまして…」

魔娘「どんなこと?」

396: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:14:49.45 ID:DMYanI4ro
側近「はい…実は…獣の国にレジスタンスがいるとの情報が」

魔娘「レジスタンス?」

くの一「あ、それはあたしも聞いたわ。軍がゲリラに攻撃されてるって」

男「ゲリラ?」

側近「それで獣の国に軍が移動しているんです」

男「それって…チャンスじゃないのか?」

くの一「そうでもないわ。王の国の軍隊は移動していないもの。移動しているのは周辺の国の軍隊だけよ」

魔娘「じゃあダメね…」

397: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:15:16.86 ID:DMYanI4ro
側近「そのことに関連して…憂慮していることがあるのです」

魔娘「どんなことかしら?」

側近「はい。軍を動かすと費用が発生します。先の反乱で国庫の資金はかなり減っているはずなのですが…」

くの一「資金源が分からないってこと?」

側近「はい。それで憂慮しているのは…城内のものを売却しているのではないかと」

魔娘「装飾品とか?」

側近「いえ、装飾品であればそれほど気にすることはないのですが…」

魔娘「じゃあ…なあに?」

398: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:15:43.70 ID:DMYanI4ro
側近「はい…わたしが憂慮しているのは武具…“呪いの武具”のことなのです」

くの一「“呪いの武具”だって!?」

男「物騒な名前だな…」

くの一「ホントにあったのね…」

魔娘「くの一さん、知ってるの?」

くの一「あくまで噂だけどね」

側近「姫様が御存知ないのも無理はありません。あれの話は忌諱に触れますから…」

魔娘「…どういうことかしら?」

399: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:16:09.58 ID:DMYanI4ro
側近「…姫様」

魔娘「なあに?」

側近「姫様は…“エルフの悪夢”をご存知ですよね?」

魔娘「え、ええ…」

側近「しかし、どうやって事態が収束したか…御存知ないですよね?」

魔娘「それは…ええ。知らないわ」

400: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:16:39.48 ID:DMYanI4ro
側近「あの時のハーフエルフは…その寿命を魔力に換えて、無差別に攻撃していました」

側近「そこで当時の主王様が、“呪いの武具”を身に纏い、ハーフエルフの魔力を吸収して倒したのです」

魔娘「すごい武具じゃない。それがどうして“呪いの武具”なの?」

くの一「噂では…“呪いの武具”は魔力を“力”に換えるって聞いたわ」

魔娘・男「「…え?」」

側近「そうです…“呪いの武具”は相手の魔力だけでなく、それを纏ったものの魔力までも貪欲に吸い取ってしまうのです」

側近「そのため、ハーフエルフを倒した当時の主王様は武力は上がったものの…二度と魔力が回復することはありませんでした」

男「恐ろしい武具だな…」

魔娘「ホントね…一体誰が、何の目的で作ったのかしら…」

くの一「噂では人間が作ったって話だけど…」

401: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:17:18.32 ID:DMYanI4ro
側近「…その噂は正しいです」

一同「「「え!?」」」

側近「“呪いの武具”は今から遙か以前…勇者が身に纏っていた武具なのです」

男「勇者様が!?」

側近「…その頃の勇者は魔法を使えなくて、主王様の魔法に対抗するために人間達が生み出したのが“呪いの武具”だと聞いています」

男「人間が…」

側近「“呪いの武具”は兜、鎧、盾、剣の4つです。しかし、魔力を吸収しなければ普通の武具と変わりはありません」

側近「結局、当時の主王様は魔法を使わず剣での戦いになり、勇者は討たれました」

402: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:17:51.58 ID:DMYanI4ro
側近「それでもその武具は近づくものの魔力を吸い取ろうとしたと…ですので、主王様は“呪いの武具”として城の奥深くに封印していたのです」

男「なるほどなぁ…」

魔娘「お城の奥には近づいちゃいけないって言われてたけど…そういうことだったのね」

側近「私の懸念は、彼らがその“呪いの武具”に手を出していないか…ということなのです」

魔娘「…でも、封印してるのよね?」

側近「それは…はい。結界でおいそれとは近づけないはずです」

魔娘「じゃあ大丈夫じゃない?王家の結界ならちょっとやそっとじゃ解けないでしょ?」

側近「そうなのですが…なにやら胸騒ぎがするのです…」

魔娘「え?」

403: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:18:17.68 ID:DMYanI4ro
側近「王家の結界は生半可な魔力では解けません。それこそ全盛期の私の様な術者でないと…」

側近「しかし…もし魔王側に力を持った術者がいたら…」

魔娘「そ、そんな術者はそうそういないわよ。ね?」

側近「そうですね…それにもし結界を破ったとしても、部屋の中に入った途端、“呪いの武具”に魔力を吸い取られるでしょうし…」

側近「…私の杞憂であればよいのですが…」

一同「「「「…」」」」

404: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:18:43.72 ID:DMYanI4ro
男「あの~」

魔娘「なあに?」

男「もしさ、元々魔力を持ってない人が“呪いの武具”に近づいたら…どうなるんだ?」

魔娘・くの一「「え?」」

側近「それは…なんともなりませんね」

魔娘「どういうこと?」

側近「“呪いの武具”は近づくものの魔力を吸い取り、力に換えます。ですので魔力のないものが近づいても…」

くの一「何にも起こらないって事ね…」

405: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:19:42.57 ID:DMYanI4ro
側近「ですが…主王国の民でそのようなものは殆んどおりませんし…」

側近「それこそ杞憂だと思いますよ?」

男「そっか。じゃあさ、魔力を吸い取られたらどうなるんだ?」

側近「…一瞬で魔力を吸い取られるため、気を失ったり動けなくなったり…最悪、死ぬこともあります」

男「物騒だな…」

魔娘「そんなものを持ち出されたら…大変ね…」

406: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:20:23.94 ID:DMYanI4ro
男「…まあ、“呪いの武具”については封印してあるってことで後で考えるとして…」

魔娘「そうね。今は…出来ることを考えましょ?」

側近「そうですね…もし術者がいたら、すでに結界は解かれているでしょうし…」

魔娘「そうよ。だから今ここで悩んでたって仕方ないもの」

男(もし結界が解かれていたら…魔法は使えない上に接近戦もダメってことだよな…)

側近「では…これからどうするか…ですね」

魔娘「ええ…」

407: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:20:49.87 ID:DMYanI4ro
側近「その前にお聞きしたいのですが…姫様はどうなさるおつもりですか?」

魔娘「わたしは…」チラッ

男 コクッ

魔娘「…お父様の仇を討ちたい。このままじゃ…お父様がかわいそうだもの」

側近「そうですか…では…どのようにいたしますか?」

魔娘「え?」

408: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:21:17.12 ID:DMYanI4ro
側近「仇を討つとして…相手は過激派を中心とする屈強な軍を持っています」

側近「主王様の仇を討つためには、その軍を相手にすることを念頭に置かねばなりません」

魔娘「そんなもの!わたしの魔法で蹴散らして!!」

側近「それに、首尾よく仇を討ったとして…反乱軍が残っていれば、混乱が生じると思われます」

側近「姫様は反乱軍を全滅するおつもりですか?」

魔娘「そ、それは…」

側近「…仇を討つのであれば、そのあとのことも考えるべきです。混乱が生じれば…苦しむのは民なのですから」

側近「主王様は…民の幸せを第一に考えておられました。ですから姫様も…」

魔娘「…」

409: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:21:43.03 ID:DMYanI4ro
くの一「あたしはレジスタンスのことを調べたほうがいいと思うよ?」

魔娘「え?」

男「俺もそう思う」

魔娘「なぜ?」

くの一「レジスタンスの目的が分からないからね」

男「それにさ、レジスタンスってことは魔王に反発してるってことだろ?もしかしたら味方になるかもしれないじゃないか。な?」

くの一「それはどうかわからないけど…場合によってはレジスタンスも相手にする可能性があるわけだし…」

男「え?なんで?」

410: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:22:08.97 ID:DMYanI4ro
くの一「もしレジスタンスの目的が、自分達が王になることだったら?」

男「あ…」

くの一「だから、情報を集めておいて損はないと思うわ」

側近「ふうむ…私もそう思います」

魔娘「…そうね」

男「じゃあ決まりだな。次の目的地は…」

魔娘「ええ。獣の国よ」

411: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:22:45.68 ID:DMYanI4ro
~獣の国・小さな町~

ジロジロ…

男「なんか…見られてるな…」

魔娘「ええ…」

男「初めて“辺境の港”に行ったときみたいだ…」

くの一「気をつけたほうがいいわね…」

ザザッ

男「!?」チャキッ

412: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:23:12.78 ID:DMYanI4ro
馬人「お前ら、この国のもんじゃねえな」

牛人「怪我したくなかったら有り金全部置いて行けや」ニヤニヤ

くの一『二人とも、逃げるわよ』コソコソ

馬人「おっと。逃げようったってそうはいかねえぞ?俺ぁ脚が早いんだぜ?」ニヤニヤ

牛人「俺ぁ力はあるぜえ?」ニヤニヤ

男「頭悪そうな連中だな…」

馬人・牛人「「なに!?」」

413: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:23:41.87 ID:DMYanI4ro
牛人「てめぇ!」ブン!

男「おっと」ヒョイ

馬人「せいっ!」グワッ!

男「よっ」ヒョイ

馬人「…俺のけりをかわすたぁ…やるじゃねえか」

男「大したことないな。動きが遅い」

牛人「…てめえ」ジロッ

馬人「俺たちを本気で怒らせたようだな…」ジロッ

414: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:24:08.60 ID:DMYanI4ro
魔娘「何やってんのよ!」

男「いや、だってこいつらが…」

くの一「もう!どうするのよ!!もう逃げられないじゃない!!」

モブ獣人 ゾロゾロ…

くの一「ほら!仲間が出てきたじゃない!!」

魔娘「何とかしなさい!」

男「何とかって言ってもなあ…」ポリポリ

415: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:24:39.27 ID:DMYanI4ro
「お前ら何をやってる!」

馬人「…ち、牙狼族の奴らだ」

牛人「引き揚げだ」

ゾロゾロ…

狼男1「大丈夫か?」

男「ああ。ありがとうございます」

魔娘「助かったわ。あいつら、いきなり絡んできたから」

くの一「あなたたち…さっきの連中が“牙狼族”っていってたけど…」

狼男2「ああ。一応、この町で自警団をやっている」

男「自警団?」

狼男1「ああ」

416: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:25:05.43 ID:DMYanI4ro
魔娘「さっきの連中はなんなの?」

狼男1「…軍の兵士だ」

魔娘「今のが!?確か軍は規律が厳しかったはずよ?あんな連中がいるなんて…信じられないわ!」

狼男2「…魔王軍は今、軍を大きくしようとしている」

狼男2「それで傭兵だけじゃなくゴロツキどもも取り込んでいるんだ」

くの一「どうりで。ところで…あなたたちは大丈夫なの?」

狼男1、2「「ん?」」

417: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:25:31.66 ID:DMYanI4ro
くの一「わたしたちを助けたら、貴方たちがあいつらに狙われるんじゃない?」

狼男1「その心配はいらない。自警団は族長直属の組織だからな。たとえ魔王軍と言えど、風紀を乱すものは遠慮なく罰する」

男(族長って…確か各国を統治している人だよな?)

男「あの…それで軍と対立したりしないんですか?」

狼男2「…軍の中にも我等の同族はいるのだ」

魔娘「そうね。自警団に反抗すると軍内部の同族が黙っていないものね」

418: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:26:06.36 ID:DMYanI4ro
狼男2「そう言うことだ。それよりお前達、旅人のようだが…この町に留まるのか?」

魔娘「そうね。少なくとも今夜はね」

狼男2「そうか。なら、この通りの三つ目の十字路を左に入って3件目の宿に泊まるといい」

くの一「安いの?」

狼男2「値段は普通だが、俺の同属がやっているから少しは安全だ」

男「そうですか。ありがとうございます」

狼男1「早くいけ。また面倒なことに巻き込まれないうちにな」

魔娘「わかったわ。助けてくれてありがとう」

くの一「…さ、急ぎましょう」

419: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:26:32.67 ID:DMYanI4ro
~宿の部屋~

男「わりといい部屋だな」

魔娘「その分ちょっとお高いけどね」

男「このダブルベッドも毛がついてるかと思ったけど、そうでもないし」ポン

魔娘「獣人は他の種族の体毛には敏感なのよ。だから丁寧に掃除してるのよね」

男「そうなんだ」

コンコン

男「!?」チャキッ

420: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:26:58.49 ID:DMYanI4ro
くの一『あたしよ。入ってもいい?』

男「あ、はい。どうぞ」

ガチャ

くの一「一応周りも確認したけど、とりあえず安心していいわ」

魔娘「そう。ありがとう」

くの一「もう少ししたらあたしは情報を集めてくるわ。あなた達は?」

男「あ、そうですね…道具とか買い物してこようかと」

魔娘「あと保存食もね」

421: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:27:24.61 ID:DMYanI4ro
くの一「気をつけてね?さっきみたいに自警団の人が助けてくれるとは限らないから」

男「いざとなったら逃げますよ」

くの一「そうね。それがいいわ。それじゃ」

シュン

男「…くの一さん、頼りになるなあ」

魔娘「男も十分頼りになるわよ?」

男「そうか?」

魔娘「トラブルも多いけどね」

男「ははは…」

魔娘「…さ、わたし達もそろそろ行きましょ?」

男「そうだな」

422: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:28:04.36 ID:DMYanI4ro
~町中~

オラオラネーチャンアソンデコウゼ サワンジャナイヨ ツレネエナー ワハハハ

男「…ガラが悪いなぁ…」

魔娘「何処も彼処もチンピラだらけね…」

男「さっさと買い物を済まして帰ろう」

魔娘「ええ」
  ・
  ・
  ・

423: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:29:15.92 ID:DMYanI4ro
男「これで大体のものは買ったかな?」

魔娘「えっと…そうね、早く帰りましょう」

男「よし。じゃあ荷物を抱えて…」

魔娘「あ…男…」

男「どうした?…ん?」

兵士1「へっへっへー」ニヤニヤ

兵士2「よお姉ちゃん。俺たちといいことしようぜぇ」ニヤニヤ

兵士3「俺たち似蛇族は血交じりはできねえからよぉ、中に出しても安心なんだぜぇ?」ニヤニヤ

424: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:29:43.15 ID:DMYanI4ro
魔娘「…」ジリジリ

兵士4「おっと。逃げようったって無駄だぜ?おい!」

ゾロゾロ…

男「なんだなんだ?いっぱい出てきたぞ?」

魔娘「…鬱陶しいわね…」

兵士‘s「「「「へっへっへー」」」」ニヤニヤ

男「…どうする?逃げるか?」

425: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:30:08.30 ID:DMYanI4ro
兵士1「おい、お前」

男「ん?俺か?」

兵士2「さっきから目障りなんだよ!消えろ!!」

男「…と言われてもなあ…」ポリポリ

兵士3「…おい」

ザザザ

魔娘「…取り囲まれたわね」

男「そうだな」

426: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:30:34.58 ID:DMYanI4ro
兵士4「なに余裕こいてんだゴルァ!てめえら気にいらねえ!!」

魔娘「あら、奇遇ね。わたしもあなた達のことが大嫌いよ?」

兵士1「っんだとお!」

魔娘「それに臭いわ。似蛇族特有の臭いね、これは」

兵士2「…てんめぇ!」

魔娘「あ、そうそう。似蛇族が血交じりが出来ない理由って知ってる?種が根本的に違うかららしいのよねえ」

兵士3「それ以上言ったら許さねえぞ!」

魔娘「どんな風に許さないのかしら?種が違うのはあなた達が元々…ミミズだからなのよねぇ」

男(魔娘のヤツ…よっぽどこいつらのことが嫌いなんだな…)

427: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:31:00.65 ID:DMYanI4ro
兵士4「やつらを捕まえろ!!女はみんなで姦すぞ!オトコのほうは遣っちまってもかまわねえ!!」

一同「「「おるぁ!」」」ドドドド

男「一斉に押し寄せてきたな…“転移”」

シュイン

兵士1「え?ちょっ!と、止まれー!うわあぁぁぁ!!」グシャ ペキッ
  ・
  ・
  ・

428: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:31:26.94 ID:DMYanI4ro
~宿の前~

シュイン トサッ

男「周りの様子は…」キョロキョロ

魔娘「…どう?」

男「…大丈夫みたいだ」

魔娘「そう。良かった」

男「早く宿に帰ろう」

魔娘「ええ」

429: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:31:55.73 ID:DMYanI4ro
~宿の部屋~

ドサッ

男「買い物もとりあえず終わったな」

魔娘「そうね。荷造りしておきましょう」

男「ああ。それにしても…魔娘って似蛇族が嫌いなのか?」

魔娘「似蛇族が嫌いっていうか…弱いものには強く出るけど強いものには媚び諂う奴は嫌いなのよ」

魔娘「そういう奴に限って、ひとりじゃ何もできないくせに大勢集まると傍若無人な振る舞いをするの。さっきもそうでしょ?」

男「あー、確かにな」

魔娘「あれなら、この町で最初に絡んできた馬人や牛人のほうがマシだわ」

男(いや、どっちもダメだろ…)

430: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:36:15.87 ID:DMYanI4ro
魔娘「ついでに言っておくと、似蛇族を軍に登用することはないわ。だってすぐに逃げるし寝返るし…身勝手なんだもの」

男「え?でもさっきの連中って…兵士じゃないのか?」

魔娘「ええ…正規軍の兵服を着ていたわ…」

男「ってことは正規軍の兵士だろ?」

魔娘「そうね…何があったのかしら…」

コンコン

魔娘・男「「!?」」チャキッ

431: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:36:42.11 ID:DMYanI4ro
くの一『あたしよ。入っていい?』

男「なんだ…どうぞ」

ガチャ

くの一「帰ってきてたのね」

魔娘「ええ。買い物も終わったし」

くの一「なんだか通りのほうが騒がしいけど…何かあったの?」

男「あー、ちょっとね」

くの一「ちょっとって?」

432: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:37:23.18 ID:DMYanI4ro
魔娘「似蛇族の兵士に絡まれただけよ。なんてことないわ」

くの一「あら。それはちょっと厄介かもね…」

男「なんで?」

くの一「この町の軍のトップがじじゃぞくらしいのよ」

魔娘・男「「はあ?」」

くの一「そうだよねー。あたしも思わず耳を疑ったわ」

魔娘「まあ、大丈夫でしょ。この宿屋の主人は牙狼族だもの」

くの一「そうね。でも、気をつけるに越したことはないわ」

433: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:38:10.81 ID:DMYanI4ro
くの一の台詞が…orz

○くの一「この町の軍のトップが似蛇族らしいのよ」

×くの一「この町の軍のトップがじじゃぞくらしいのよ」

434: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:38:50.87 ID:DMYanI4ro
魔娘「それより、何か情報はあったの?」

くの一「ええ。信じられないことが起こってたわ」

男「どんな?」

くの一「ここ何年かの間にね、軍の幹部や兵士が大量に解雇されたらしいの」

魔娘「…え?」

くの一「どうやら現魔王は自分に都合のいい軍隊を作ろうとしているらしいわ」

魔娘「どういうこと?」

435: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:39:17.15 ID:DMYanI4ro
くの一「解雇された人たちは…親主王派だったのよ」

魔娘「!?」

くの一「魔王の目的は人間界への侵攻。そのために自分達の言うことを聞こうとしない人達を解雇したのね」

男「うわあ…」

魔娘「…解雇された人たちは?」

くの一「それが今のレジスタンスよ」

魔娘・男「「え?」」

436: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:39:44.28 ID:DMYanI4ro
くの一「それで…レジスタンスの幹部にコンタクトを取ったんだけど…」

魔娘「今日一日でそこまで出来たの!?」

くの一「あたし達ニンジャは単独で行動するけど、情報は共有するようにしてるの」

くの一「まずはこの国に居るニンジャにコンタクトを取って、会って来たの」

くの一「この国に居るニンジャは優秀な人でね。レジスタンスの幹部にコネクションを持っていたのよ」

男「すごいんだなニンジャって…」

437: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:40:13.53 ID:DMYanI4ro
くの一「…どう?会ってみる?」

男「また唐突だな…大丈夫なのか?」

くの一「それは分からないわ」

男「おいおい…」

くの一「コネクションを持っているからと言って、そこまで深い付き合いじゃないの」

魔娘「…」

438: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:40:39.57 ID:DMYanI4ro
男「どうする?嫌なら辞めてもいいんだぞ?」

くの一「でも、会ってみないと分からないでしょ?敵なのか、味方なのかは。ね?」

男「そりゃそうだけど…」

魔娘「わたしは…6:4で会ったほうがいいと思うわ」

男「また低い割合だな…」

魔娘「だって、相手がどんな人か分からないのに手放しで信用はできないでしょ?」

男「…そうだな」

くの一「じゃあ決まりね。連絡してくるわ」

シュン

439: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:41:05.64 ID:DMYanI4ro
男「…ホントに大丈夫なのか?」

魔娘「ここまで来たらやるだけやってみるわ。行動しないと何も変わらないもの」

魔娘「それに…いざとなったら男の転移で逃げれるでしょ?」

男「魔娘って…ホントに割り切るのが早いな。さすが姐さん!」

魔娘「どういう意味よ!」

440: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:41:34.91 ID:DMYanI4ro
~夜・レジスタンスの隠れ家の近く~

魔娘・男「「…」」

くの一「どうしたの?」

男「いや…すごい森だな…」

魔娘「…ねえ、ホントにここなの?」

くの一「ええ」

男「でもさ…建物も何もないじゃん!」

魔娘「しかもいろんな魔物の匂いがするわよ?」

441: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:42:01.14 ID:DMYanI4ro
くの一「ここで間違いないわ。あなた達、エルフの結界って知ってる?」

魔娘「ええ、知ってるわ」

くの一「この森はエルフの結界で守られてるの。見た目はただの森だけどね」

くの一「そして隠れ家に行くためにはエルフの結界を抜けなきゃいけないの」

男「でもさ、森に火を着けられたら一発でばれるんじゃ…」

魔娘「そんなことをしたら族長が黙ってないわね」

男「なんで?」

442: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:42:27.21 ID:DMYanI4ro
魔娘「獣の国の民にとって森は狩りや山菜なんかを得るために重要な場所なの。だからむやみに手出しできないのよ」

魔娘「そして軍の兵士の半数ほどが獣人族よ。だから獣の国の族長を怒らせるようなことはしちゃいけないの」

男「なるほど」

くの一「…こんなところで長居したら危険だわ。さ、行きましょ」

男「そうだな。じゃあ…」

くの一「待って。そっちじゃないわ」

男「え?でも道はここしかないんじゃ…」

443: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:43:07.05 ID:DMYanI4ro
くの一「入口はこっちよ」

男「え?そこって茂みじゃ…あれ?あそこ、なんか揺らいでるような…」

くの一「あなた、見えるの!?あたしは“エルフの目薬”で何とか見える程度なのに…」

男「ええ、まあ…」ポリポリ

魔娘「男はハーフエルフだからね」

くの一「そうだったわね…ほら、手を繋いで」

男「じゃあ…魔娘を真ん中にして」

魔娘「…ありがと」

男「俺は後ろを警戒する」

くの一「そうね。じゃあ…行くわよ」
  ・
  ・
  ・

444: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:43:33.21 ID:DMYanI4ro
男「ずいぶん歩くんだな…」

魔娘「もう15分ぐらい歩いてるわ…」

くの一「もうすぐ出口よ」

パァアアア…

くの一「…着いたわ」

男「ここが…」

魔娘「レジスタンスの隠れ家ね…」

男「すごい…ちょっとした村だな」

「とまれ!」

魔娘・男 ビクッ

445: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:44:00.24 ID:DMYanI4ro
熊男「…お前ら、どうやってここまで来た?」

くの一「“エルフの目薬”を使ってきました」

熊男「“エルフの目薬”だと!?お前ら…誰から手に入れた?」

くの一「わたし達、地元ニンジャさんの紹介で来たんです。これが紹介状です」

熊男「紹介状だあ?貸してみろ…ふん、確かに。軍師に会いに行くのか」

くの一「ええ。それじゃあ」

熊男「おっと、その前にお前達の匂いを嗅がせてもらう」

男「…匂いフェチ?」

446: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:44:27.07 ID:DMYanI4ro
熊男「誰がだ!お前らが武器や毒なんかを持ってないか調べるんだよ!!」

男「そう言うことですか」

くの一「じゃあ、あたしから行くわね」
  ・
  ・
  ・

447: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:44:53.64 ID:DMYanI4ro
熊男「…よし、行っていいぞ」

くの一「ありがとう。さ、行くわよ」

熊男「妙なマネはするなよ?女子供を牙に欠けるのは性に合わないからな」

男「女子供って…」

魔娘「あなたが子供に見えるってことでしょ?見た目だけじゃなくて中身も」

男「おいどういう意味だそれ」

熊男「騒ぐんじゃねえ!」

魔娘・男 ビクッ

448: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:45:20.11 ID:DMYanI4ro
くの一「はぁ…ごめんなさい。さっさと連れて行くわ…」

熊男「ああ、そうしてくれ。軍師はここをまっすぐいった先のでかいテントの中にいる」

くの一「ありがとう。あなたたち、ちゃんと付いてきなさいよ!」

魔娘・男「「はーい」」
  ・
  ・
  ・

449: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:45:46.33 ID:DMYanI4ro
くの一「…ここね」

魔娘「軍師って言ってたけど…どんな人なの?」

くの一「さあ?」

男「おいおい…」

くの一「とにかく、会ってみないと分からないでしょ?行くわよ」

魔娘「…そうね」

男(なんだろう…くの一さん、なんか焦ってるような…)

450: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:46:14.63 ID:DMYanI4ro
~軍師のテント~

バサッ

ラミア「失礼します。軍師さんにご面会ですわ」

軍師「相変わらず艶っぽいなぁ♪こっちにおいで♪」

ラミア「うふふ。だぁめ。ちゃんとお仕事してくださいな」

軍師「ははは。ラミアちゃんは真面目だなぁ。ところで…誰だ?」

ラミア「こちらの方々ですわ」

451: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:47:21.83 ID:DMYanI4ro
くの一「あ、くの一といいます。地元ニンジャさんの紹介で…」

軍師「ああ、話は聞いている。立ち話もなんだし、そこの椅子に座ってくれ」

くの一「ありがとうございます」トサッ

男(なんか…軽そうな黒豹だな…)

魔娘「…」トサッ

軍師「…そこの人、顔が見えないからフードを取ってくれないか?」

魔娘「…」

パサッ

452: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:47:48.91 ID:DMYanI4ro
魔娘「…これでいいかしら?」

軍師「…その角、まるで先代の主王様みたいだ…名前は?」

魔娘「魔娘よ。あなたはおと…先代の主王様を見たことがあるの?」

軍師「…あるよ。俺はこう見えても城での作戦会議に出たこともあるんだぜ?」

魔娘「そう…」

軍師「そうそう。城には姫様がいてなあ。俺を見かけると声をかけてくれたんだよなあ」チラッ

魔娘「…“黒猫”」ボソッ

軍師「猫じゃねえ!豹だってーの!!」

魔娘「…やっぱり“黒猫”なのね」

453: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:48:15.24 ID:DMYanI4ro
スチャッ

軍師「お久しぶりです、姫様」ヒザマヅキー

魔娘「ちょっとやめてよ。もう姫じゃないんだもの。さっきみたいに普通に話をしましょ?」

軍師「はい…では、失礼して…なんでここに来たんだ?」

男「変わり身すごっ!」

くの一「まさに豹変ってやつね…」

魔娘「そのほうが話しやすいわ」クスッ

454: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:48:42.05 ID:DMYanI4ro
軍師「まあな。いつもこんな感じで話してたもんな。で、目的は?」

魔娘「レジスタンスの目的を探るためよ」

軍師「レジスタンスの目的かぁ。それを知ってどうするんだ?」

魔娘「どうもしないわ」

軍師「…へ?」

魔娘「わたし達に敵対するのかどうかが知りたいだけよ。どう?レジスタンスはわたし達をどう扱うの?」

軍師「…」

455: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:49:08.51 ID:DMYanI4ro
魔娘「どうかしら?」

軍師「…まず、我々の目的は軍の傍若無人な振る舞いによって苦しんでいる民を救済することだ」

くの一「今の軍の兵士は殆んどゴロツキだものね」

軍師「…そのために障害になるものであれば敵対する。たとえそれが姫様であってもな」

魔娘「そう…ならいいわ。わたし達は軍にもレジスタンスにもつかないから」

軍師「…何を考えてるんだ?」

456: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:49:35.59 ID:DMYanI4ro
魔娘「なんてことない、ただの仇討ちよ」

軍師「仇討ち!?…3人で?」

くの一「あたしは違うわよ?」

軍師「それじゃあ…」

魔娘「…わたしと男の二人でね」

軍師「馬鹿な!死ぬつもりか!?」

魔娘「死ぬつもりはないわ」

457: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:50:20.58 ID:DMYanI4ro
軍師「魔王の城には常時衛兵が居るんだぞ!?」

軍師「竜人ならともかく、そこの優男なんか姫様の足手纏いになるだけだろ!!」

男「えらい言われようだな。もう慣れたけどさ」

くの一「あなた、見た目は普通だものね」

魔娘「…男はね、黒竜に勝ったことがあるの」

軍師「…はあ?」

男「いや、あれは引き分けだって」

458: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:50:49.06 ID:DMYanI4ro
軍師「…いやいやいや、さすがに嘘だろ…黒竜って言ったら竜人の中でも一番の強さじゃないか!」

くの一「クラーケンを撃退したり黒竜と引き分けたり…さすがハーフエルフね」

軍師「ハーフエルフだと!?」

男「はあ、まあ…」ポリポリ

軍師「…なるほど。そういうことか。“エルフの悪夢”の話は俺も聞いたことがある」

魔娘「わたしにとって仇は魔王ひとり。他の人とは戦いたくないの」

魔娘「だから男と二人で魔王のところに行くわ」

軍師「そうか…何かできることがあったら言ってくれ」

459: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:51:22.23 ID:DMYanI4ro
魔娘「ううん。これはわたし個人の問題なの。だから他の人を巻き込みたくないのよ」

軍師「いや、そういう訳には行かないだろ」

魔娘「なぜ?」

軍師「…もし仇討ちが成功したとしよう。そうすると主王国は混乱するだろうな」

魔娘「え、ええ…」

軍師「いきなりトップが居なくなるんだ。秩序は乱れ、法は破られ、民は苦しむことになるだろう」

魔娘「…」

軍師「そうなったとき、誰が民を守る?姫様一人で守れるか?」

魔娘「そ、それは…」

460: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:51:58.02 ID:DMYanI4ro
軍師「…軍のほうは俺たちで抑えることはできる」

軍師「けど、混乱を沈めるためにはカリスマが必要だ。それも、誰もが認めるような…カリスマがな」チラッ

魔娘「…」

バサッ

ラミア「失礼します。森の中に侵入者を確認しました」

軍師「軍の兵士か?」

ラミア「いいえ。4人組の人間のようですわ」

軍師「またあいつらか…」

男「あー…」

461: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:52:24.48 ID:DMYanI4ro
軍師「ん?あいつらを知ってるのか?」

魔娘「たぶんね。新勇者一行だと思うわ」

軍師「新勇者だって?なんでまた今頃…」

魔娘「現魔王のせいで人間界にも影響が出ているみたいよ?」

軍師「それでか…まあ、新勇者のほうは放っておいてかまわないだろ」

魔娘「どうして?」

462: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:52:51.31 ID:DMYanI4ro
軍師「この森は“エルフの結界”で守られてる。この隠れ家に近づいたら迷ってもとの場所に戻るだけだ」

ラミア「もう2回もこの森で迷ってるのに、また来るなんて…御馬鹿な人たちねえ」

魔娘「それは否定しないわ」

男「ひでえな…あ、そう言えばさ」

魔娘「なあに?」

男「ここに来るまでの間エルフ族を見てないんだけど、誰がこの結界を張ってるんですか?」

魔娘「そんなのエルフ族に決まってるでしょ?」

463: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:53:17.92 ID:DMYanI4ro
軍師「…いや。この結界を張ってるのは…鬼子族だ」

魔娘・くの一・男「「「え!?」」」

軍師「元々俺の部隊にはエルフ族がいたんだ。そいつは優秀で…いろんな魔法が使えたんだ」

軍師「しかも人格者だったからな。そいつを慕う奴は大勢いた」

軍師「今、この森に結界を張っているのはそいつの弟子だ。エルフ族とほとんど同じ結界を張ってくれている」

男「その…エルフ族の人は…」

軍師「…反乱の時にな、死んじまったよ」

男「そうですか…」

464: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:53:44.17 ID:DMYanI4ro
魔娘「男…もしかして…」

男「うん、たぶん…」

軍師「それがどうした?」

男「あ、いや…なんでもないです」

魔娘「…」

男「ありがとうございました」ペコッ

軍師「…変なやつだな」

男(お爺さん…すごい人だったんだ…)

465: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:54:10.62 ID:DMYanI4ro
~夜・宿の部屋~

ドサッ

男「よし。これで荷造りは完了っと」

魔娘「…」

男「…どうした?」

魔娘「え?う、ううん。なんでもないわ」

男「そうか?腹でも減ってるんじゃないのか?」

魔娘「そ、そうね!早く行きましょ!?」

男「そうだな」

ガチャ
  ・
  ・
  ・

466: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:54:44.25 ID:DMYanI4ro
~食事中~

モグモグ…

魔娘・男「「…」」

男(魔娘…さっきのことを考えてるんだろうな…)

魔娘(カリスマ…か)

男(軍師さんは魔娘にカリスマになれと言ってるんだ…)

魔娘(軍師の言ってることは分かるわ…でも…わたしは…)

男(軍師さんの言っていた条件に合うのは魔娘だけだろうな…)

魔娘(わたしは…男と一緒に…しがらみを捨てて…)

男(誰が考えても…やっぱり魔娘がカリスマになるべきだろうな…)

467: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:55:12.21 ID:DMYanI4ro
くの一「…あなたたち暗いわよ?」

男「あ…食べるのに夢中になってたよ。あはは…」

魔娘「そう言うくの一さんも最近暗いじゃない?どうしたの?」

くの一「…なんでもないわ」

魔娘「そう言えば…鬼の国を出てからそろそろ一カ月になるわね」

くの一「…」

468: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:55:38.57 ID:DMYanI4ro
魔娘「くの一さんはよくやってくれたわ」

くの一「それは…最初の依頼が中途半端になったから…」

魔娘「もう十分だわ。あとはわたし達の問題だもの」

くの一「そりゃそうなんだけど…」

魔娘「…くの一さん。今までありがとう」

男「ありがとう」

くの一「…うん」

469: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:56:08.92 ID:DMYanI4ro
~翌朝~

くの一「じゃあ、出発するわ」

男「今までありがとうございました」ペコッ

魔娘「ありがとう。おかげで随分助かったわ」

くの一「いいのよ。全部契約のうちなんだし」

魔娘「ううん。くの一さんは契約以上のことをしてくれたわ。調査期間だって随分と延びちゃったし」

くの一「それはあたしがちゃんと仕事を終わらすことが出来なかったからよ。ごめんね?」

470: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:56:35.24 ID:DMYanI4ro
魔娘「謝らないで。すごく感謝してるんだから。ね?」

男「そうだよ。俺たちだけじゃここまで出来なかっただろうし」

くの一「でも…」

魔娘「口入屋さんが心配してるわよ?とっくに契約期間は過ぎてるのに、あなたが帰ってこないから」

くの一「あ、知ってたんだ…」

魔娘「ええ」ニコッ

男「…あ、そうか!それでくの一さん、焦ってたんだ」

くの一「焦ってたって言うか…ちょっとイラついていたのは確かね」

魔娘「だから、早く帰って安心させてあげて。ね?」

くの一「…分かったわ。それじゃ…」

シュン

471: 名無しさん 2013/01/20(日) 23:57:03.42 ID:DMYanI4ro
男「…行っちまったな」

魔娘「ええ…」

男「これからが本番だ」

魔娘「ええ、そうね」

男「それじゃ…俺たちも行きますか!」

魔娘「…ええ!王の国に向けて!!」

491: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:08:58.29 ID:/JdfTSIKo
~王の国と獣の国の国境・関所~

番兵1「…よし!次!!」

男「あ、はーい。俺です」

番兵1「うむ。では、鞄の中のものを全て出せ」

男「はいはい。えっと…」ゴソゴソ

番兵1「ん?」

白スライム(魔娘)「ぴい?」

番兵1「…くくく」

プークスクス…

492: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:09:24.36 ID:/JdfTSIKo
男「な、なんですか?」

番兵1「くくく…お前、そのスライム…」

男「…コイツが何か?」

白スライム プルルン

番兵1「そ、そんなに白くなるまで…この好きモノめ!わははは!!」

ワーハッハッハ!ワカイッテイイヤネエ!

男「え?…え?」

493: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:09:54.63 ID:/JdfTSIKo
番兵1「わははは!…スライムとヤルのもいいが、さすがにこれはヤリ過ぎだぞ」

番兵2「スライムは体内に取り込んだものの色に染まる。こんなに白くなるまでヤルとは…このスケベ!わははは!!」

男「…あ」

番兵1「この先の町に娼館がある。そこで抜いてもらえ。ほら、さっさと行け!わははは!!」

男「あ、はい…」コソコソ…
  ・
  ・
  ・

494: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:10:22.99 ID:/JdfTSIKo
男「…おい」

白スライム『なあに?』

男「お前、知ってたんだろ!白スライムの意味!!」

白スライム『ナンノコトダカ?』

男「とぼけんな!おかげですんげえ恥ずかしかったんだぞ!!」

白スライム『あながち間違いじゃないでしょ?。するときは最低でも3回はするくせに』

男「そ、それとこれとは別だろ!?」

495: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:10:50.26 ID:/JdfTSIKo
白スライム『いいじゃない。おかげで大した検査も受けずに関所を通れたんだから。ね?』

男「そういう問題じゃねえ!!」

白スライム『しょうがないわねえ。今夜はサービスしてあげるから機嫌を直してよ。ね?』

男「………ふ、ふん!誤魔化されないぞ!!」

白スライム『一瞬、間があったけど?』

男「…サービスかぁ…確か荒縄があったよな?」

白スライム ヒキッ

496: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:11:19.66 ID:/JdfTSIKo
~数日後・王の国・首都の手前の小さな村~

魔娘「今日はここで休みましょ?」

男「え?まだ日は高いし、夕方には首都につくだろ?」

魔娘「…ちょっとね…気になることがあるの」

男「気になること?」

魔娘「…魔王はわたしを探しているわ」

魔娘「だから…一旦この村に拠点を置いて、男に調べてきてほしいの」

男「調べる?」

497: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:11:46.16 ID:/JdfTSIKo
魔娘「そうよ。首都の雰囲気とか、街の様子とか…軍の規模や城の警備なんかもね」

男「…ちょっと用心しすぎじゃないか?魔娘も人間に変化してるし、見つからないと思うぞ?」

魔娘「…ここまで来てミスはしたくないの。用心するに越したことはないでしょ?」

男「…まあ、魔娘がそう言うなら…わかった」

魔娘「そうと決まれば今日はここでのんびりしましょ?きっとこの先はのんびりなんてしてられないでしょうし。ね?」

男「のんびりか…夜もか?」

魔娘「…綿ロープ買ってくれる?荒縄だと跡が付くし擦れて痛いのよ」

男 ヒキッ

498: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:12:16.11 ID:/JdfTSIKo
~朝~

男「そろそろ行ってくるわ」

魔娘「無理はしないで、危険だと思ったらすぐに帰ってくるのよ?」

男「俺は子供か!信用ねえのな…」

魔娘「男のことは信用してるわ。だからこそ無事に帰ってきてほしいのよ」

男「…うん。分かった。じゃあ行ってくる。帰るのは夜中になると思う」

魔娘「…うん。気をつけてね」

499: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:12:50.09 ID:/JdfTSIKo
~首都・魔王城の近くの広場~

ガヤガヤ…

男「…」

ガヤガヤガヤ…

男「…なんなんだこの人混みは…」

リンゴーン リンゴーン…

男「鐘の音?」

ガヤガヤ シーン…

男(急に静かになった!?)キョロキョロ

500: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:13:15.37 ID:/JdfTSIKo
聴衆 シーン

男(みんな城のベランダを見て動かない…どうなってるんだ?あそこに何が…あ、誰か出てきた)

『魔王様だ!』

マオウサマー! ワレラガマオウサマー!!

男(あれが…魔王か…)

魔王「…」スッ…

501: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:13:54.16 ID:/JdfTSIKo
大臣「…偉大なる我らが魔王様に忠誠を誓う民よ」

大臣「優秀なる我らが民よ」

大臣「貴公等の忠誠は確かに魔王様に届いておる」

大臣「新たなる勅命が下るまで、日々精進せよ」

大臣「魔王様は貴公等と共にあるのだ。魔王様、万歳!」

ウォオー! マオウサマー! マオウサマー!!

マオウサマバンザーイ! マオウバンザーイ! マオウバンザーイ!…

魔王ノシ

男(なんなんだこいつら…目が死んでる…気持ち悪い!)

502: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:16:02.35 ID:/JdfTSIKo
~夜・小さな村の宿~

男「…と言う訳でさ、とにかく気持ち悪くて…」

魔娘「そう…」

男「ちょっと町の人にも魔王について聞いてみたんだけどさ、“魔王様ばんざーい!”って感じでな?まともに話にならないんだ」

魔娘「話を聞いてるだけでも気持ち悪いわね…」

男「ああ。だから町中で情報を手に入れるのは難しいな…」

魔娘「じゃあ…どうするの?」

503: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:16:42.16 ID:/JdfTSIKo
男「うん、考えたんだけどさ…魔王城に侵入してみる」

魔娘「え!?それは危険よ!!」

男「まあ、大丈夫だろ。いざとなったら転移で逃げるし」

魔娘「ダメよ!城の中で迷子になるだけだわ!!」

男「くの一さんに見取り図をもらってるから、それはないって」

魔娘「ダメだってばぁ…男に何かあったらどうするのよぉ…」

504: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:17:10.30 ID:/JdfTSIKo
男「危ないことはしないって。それに情報を集めるためには必要なことだろ?」

魔娘「でも…男に万が一のことがあったらわたしは…」

男「無理はしないから大丈夫だって。明日の夜にでも行ってくる」

魔娘「…絶対、無事に帰ってくるのよ!でないと許さないんだから!!」

男「ああ、分かってるって」

505: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:17:39.92 ID:/JdfTSIKo
~翌日の夕刻・魔王城~

警備兵1「うぅ…寒くなってきたな…」

警備兵2「そうか?そんなことないだろ」

警備兵1「お前はアヒルだから自前の羽毛のおかげで温かいんだろ?…いいよなぁ。ちょっとモフらせろよ」

警備兵2「ちょっ!おまっ!!猫の癖にそんな趣味があったのか!?」

警備兵1「ちげえよ!温そうだからモフらせろ!」

警備兵2「こっちくんな!」

ヤイノヤイノ

506: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:18:06.58 ID:/JdfTSIKo
男「…隙だらけだな。簡単に城内に進入できたぞ」

男「えっと…くの一さんにもらった見取り図によると…あっちか」

コソコソコソ…
  ・
  ・
  ・

507: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:18:36.45 ID:/JdfTSIKo
男「…ここが魔王と従者が住んでる離れか…警備兵は…」

警備兵3「…」

男「入口を見張ってるのか…けど変だな。何で離れのほうを向いてるんだ?」

警備兵3「ん?」

男(やばっ!)

警備兵3「…誰かいるのか?」ガタッ

コツッ コツッ コツッ…

男「…」

508: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:19:07.16 ID:/JdfTSIKo
ガサガサッ

スライム「ぴい!」

警備兵3「なんだ、お前か。よしよし」ナデナデ

スライム「ぴいぃ…」

警備兵3「…ちょっとぐらいならいいだろ。来い。トイレでスッキリしよう」

スライム「ぴい♪」

男「…助かった…今のうちに離れの中に…」

コソコソコソ…

509: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:19:33.42 ID:/JdfTSIKo
~離れの中~

男「見取り図によると…奥が寝室みたいだな」

ミシッ ミシッ…

男(ナニの最中に出くわしたりしないだろうな…)

カ…チャッ ソー…

男(…誰も居ないみたいだな…他の部屋に行って見るか)

ミシッ ミシッ…

510: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:20:04.32 ID:/JdfTSIKo
男(手前はリビングって書いてあるけど…)

ガチャッ

男(中から人が出てきた!?)

魔法使い「っ!?誰!?」

男「あ、怪しいものではないんで!すぐに帰りますんで!!」アタフタ

魔法使い「…大雷げk」

キラッ

511: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:20:34.38 ID:/JdfTSIKo
魔法使い「え?…それは!?」

男「ははは、はい!?」

魔法使い「その鉈についているのは…盗賊のお守りでは!?」

男「え?…あ、はい。そうですけど…」

魔法使い「あなた…盗賊と知り合いなの?」

男「はい。盗賊さんは俺のお師匠さんで…父親代わりなんですけど…なんで盗賊さんのことを?」

512: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:21:01.62 ID:/JdfTSIKo
魔法使い「…わたしは魔法使いよ」

男「…へ?あなたがあの“生意気な小娘”さんですか!?」

魔法使い「…小雷撃呪!」バチバチバチ!

男「あ痛!しびびびれるううぅぅ!」

魔法使い「まったく…そんなことを言うのは賢者ね?あなた、賢者とも知り合い?」

男「は、はい。賢者様は俺の母親代わりですが…」

魔法使い「賢者が!?…あなた、性格が捻じ曲がってない?大丈夫?」

男(えらい言われようだな…)

513: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:21:35.35 ID:/JdfTSIKo
魔法使い(賢者と盗賊…あの二人はきっとわたしには協力しない…でも…)

魔法使い「…ねえ」

男「なんですか?」

魔法使い「…久しぶりに賢者と盗賊に会いたいわ。連れて来てくれないかしら?」

男「…はい?」

魔法使い「だってもう20年ぐらい会ってないんだもの。どうかしら?」

魔法使い(このオトコ…お人好しっぽいからたぶん大丈夫…)

514: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:22:08.92 ID:/JdfTSIKo
男「は、はあ…あ、その前に聞いておきたいことがあるんですけど…」

魔法使い「どんなことかしら?」

男「はい。あの…魔法使い様は何でこんなところに居るんですか?」

魔法使い「…賢者達に会えたら話すわ。それを言うなら…あなたはなぜここに居るの?」

男「はあ。それはちょっと複雑な事情がありまして…時間があるときに説明します」

魔法使い「そう…」

515: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:22:53.15 ID:/JdfTSIKo
男「それで…魔法使い様は賢者様たちに会いたいんですよね?」

魔法使い「ええ。…どう?」

男「とりあえず…一旦帰って聞いてみます。俺だけじゃ判断できないんで…」

魔法使い「…そうね。それじゃ、建物の外まで送ってあげるわ」

男「あ、いえ。勝手に帰りますんで」

魔法使い「警備兵に見つかると厄介でしょ?」

男「あー…そうですね。お願いします」

魔法使い「…ふふふ」

516: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:23:31.02 ID:/JdfTSIKo
~小さな村の宿~

魔娘・男「「…」」

男「俺は…正直言って、これは俺たちだけの問題じゃないと思うんだ」

魔娘「…そうね。これは賢者様たちに相談する内容だわ」

男「そうだな…」

魔娘「賢者様達と別れた魔法使いがなぜ魔界へ行ったのか。魔界で何をしていたのか。そして…」

男「なぜ今、魔王城に居るのか…」

517: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:24:12.64 ID:/JdfTSIKo
魔娘「それらを知ることはきっとこの先、わたし達がとるべき行動を決める手がかりになると思うの」

男「うん…」

魔娘「…わたしも男も、魔法使いのことは詳しいことは知らないから…よく知っている人に聞くのが一番だわ」

男「そうだな」

魔娘「だから…明日、わたしの転移魔法で賢者様達のところに行きましょ?」

男「ああ。そうしよう」

魔娘「それと…今夜は用心したほうがいいわね」

男「なんで?」

518: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:24:41.41 ID:/JdfTSIKo
魔娘「魔法使いがなにをしてくるかわからないもの」

男「いや、その心配はないんじゃないか?魔法使い様は賢者様達に会いたいって言ってるんだし」

魔娘「念のためよ。ここまで来て何かあったら…今までの苦労が水の泡よ?」

男「魔娘がそう言うんなら…そうするか」

魔娘「ええ。じゃあ私は先に寝るわね」

男「あ!おい!!」

519: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:25:07.98 ID:/JdfTSIKo
~翌日・賢者たちの家~

賢者「なるほど…」

男「魔法使い様は賢者様達に会いたがっています。目的は分かんないですが…」

盗賊「…怪しいなぁ。こりゃあ罠の可能性が高いぜ?」

賢者「…」

520: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:25:34.48 ID:/JdfTSIKo
魔娘「ちょっといい?」

盗賊「ん?なんだ?」

魔娘「魔法使いってどんな人だったの?」

盗賊「一言でいやあ…ガキだな」

男「ガキって…」

賢者「身も蓋もない言い方ですね。純粋と言うこともできます」

魔娘「純粋…なの?」

521: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:26:04.45 ID:/JdfTSIKo
賢者「ええ。あの小娘は…もういい大人でしょうが、思い込んだら一直線なところがあります」

賢者「ですから今の小娘の状況は大変危険だと言うこともできます」

男「危険?」

賢者「…ええ。あの小娘には目的があり、そのために今現在、魔王城に居ると考えるべきでしょう」

魔娘「目的って?」

賢者「それは分かりません。ですが…魔界の権力の中枢にいることで可能になる目的…」

賢者「私にはそれが良いこととは思えないのです」

盗賊「そうだな。そう考えると…俺たちに会いたいってのもその目的のためってことになる」

魔娘・男「「…」」

522: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:26:38.62 ID:/JdfTSIKo
賢者「…会ってみましょう」

魔娘・男・盗賊「「「え!?」」」

賢者「あの小娘の目的が分からない以上、ここで議論をするのは時間の無駄だと思います」

賢者「であれば、会って直接聞くほうが早いと…そう思うのです」

賢者「魔娘、男。私達を連れていってください。小娘のところに」

魔娘「…はい」

523: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:27:18.11 ID:/JdfTSIKo
盗賊「へへっ。久しぶりの魔界だな」

男「…なんか楽しそうですね…」

盗賊「最近刺激がなかったからよ、久しぶりに血が騒ぐぜ」

賢者「盗賊。戦いに行くわけじゃないですよ?」

盗賊「分かってるって。こちとら旅行気分なだけだ」

賢者「まったく…暢気ですね、盗賊は…」

524: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:27:45.81 ID:/JdfTSIKo
盗賊「鬼が出るか蛇が出るか、行ってみなきゃ分かんねえんだ。それに魔界の中心ってのも見てみたいしな」

賢者「…まあ、それぐらいリラックスしているほうがいいでしょう。では、今から準備をしますので、明日にでも出発しましょう」

魔娘「はい」

男「じゃあ俺はちょっと出てきますね」ガタッ

魔娘「あ、わたしも行くわ」

525: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:28:12.11 ID:/JdfTSIKo
賢者「どこへ行くのですか?」

男「お墓と…村の様子を見に行ってきます」

賢者「お墓はいいですが村まで行くのは…もうすぐ日が暮れます。またの機会にすればいいのでは?」

男「最後に…いえ、なんでもないです」

盗賊「…おい賢者」

賢者「…あまり遅くならないようにね?」

魔娘・男「「はい」」

526: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:28:39.85 ID:/JdfTSIKo
~ダークエルフの墓~

男「お母さん…俺、エルフ母さんに会って来たよ」

魔娘「…」

男「エルフ母さんはエルフの村でさ、俺のこと待っててくれるってさ」

男「俺…すごく嬉しかったんだ…エルフ母さんは今でもお母さんのこと忘れずにいてくれててさ…」

男「お母さんのことも…いっぱい教えてもらったんだ…」

527: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:29:20.85 ID:/JdfTSIKo
男「…あ、そうだ。これ…」

男「お母さんが作った転移符。エルフ母さんにもらったんだ」

男「これ…お母さんだと思って大事にするよ」

男「それからシスターにも会ってきたよ」

男「元気にしてたよ。子供も居たんだ。かわいい子だったよ」

男「…じゃあ、また来るからね。お母さん」スッ…

魔娘「男…もういいの?」

男「ああ」

528: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:29:47.88 ID:/JdfTSIKo
魔娘「じゃあ…私にもお参りさせて?」

男「いいよ」

魔娘「…お母さん。出来れば御存命のうちにそう呼びたかった…」

魔娘「わたしは…あなたの大切な男を危険な目にあわせてしまうかもしれない…」

魔娘「もしもの時は…私も死んでお詫びをします。だから…」

魔娘「男のこと…見守っててください」スッ…

男「魔娘…」

529: 名無しさん 2013/01/21(月) 23:30:15.11 ID:/JdfTSIKo
~近くの村~

男「…この村、相変わらず誰もいないんだな…」

魔娘「そうね…ひっそりしてて寂しいわ…」

男「もうあそこの家なんて壊れ始めてる…」

魔娘「人の住んでいない家はすぐに壊れちゃうものね…」

男(これで見納めになるかもな…)

魔娘「…そろそろ帰る?」

男「…そうだな」

533: 名無しさん 2013/01/22(火) 22:33:33.70 ID:phNK7tMlo
~王の国・首都の近くの小さな村~

シュイン ドサドサッ

盗賊「…ここが王の国か…あれは?」

魔娘「あそこが宿のある村よ」

賢者「…見た目は人の町と変わりませんね」

男「じゃあ、行きますよ」
  ・
  ・
  ・