1: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 20:54:18.33 ID:Weenz6vS0
―塔付近、金レイアと銀レウスの巣―

銀レウス 「金さんや……おぅい、金さんやよぉい」
金レイア 「何だい銀さんや……今夕飯できるがんねェ、よよい待ってておくんなせぇなぁ」
銀レウス 「ちょい出てきてくんねぇもんかなぁ」
金レイア 「まーた腰痛かい? ンだから、無茶はせんよぅ言うてるのに……」
銀レウス 「ちゃうよぉ。お客やお客」
金レイア 「客ゥ? こーんな夜更けに誰だいのぉ?」

引用元: ・イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 その2

3: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 20:55:47.33 ID:Weenz6vS0
バサルモス 「ひっく……ひっく……」
金レイア 「あんれまぁ、グラビっとこの坊主じゃねぇけぇ。まーたかぃ?」
銀レウス 「家の前で泣いててのぉ。どないすんべか、金さんや」
金レイア 「とっかく、そげんとこいちゃぁ風邪ぇ引くけんの。中いれぇな」
銀レウス 「おうよぉ。ほいよぉ、坊主、あっだけェ飯食わしてやっから、ンな泣くなよぉ」
バサルモス 「うぅ……うう……」

4: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 20:56:48.31 ID:Weenz6vS0
金レイア 「ンだぁ? まーた父ちゃんにブン殴られたかぃ?」
銀レウス 「今薬草とっできてやっかんねェ。ここ座りぃ」
バサルモス 「ひっく……ごめん……銀のじいちゃん……金のばあちゃん……」
金レイア 「いいっでいいっで。だけんども、オットコの子なら、そんくれぇで泣くんでねぇよ」
銀レウス 「んだァ。じいちゃんもなぁ、わけェころは、頭の鱗なんざあ、毎日剥がれてたわ」
金レイア 「そのせいでじいちゃんハゲてんよ」
銀レウス 「んでもまぁ、わけぇうちはまた生えてくっから。おらみてえにはなんねぇよぉ」

6: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 20:57:49.39 ID:Weenz6vS0
銀レウス 「今はァ昔に比べっど平和な時代になったもんよォ。坊主はらっきぃなんだぞぉぃ」
金レイア 「泣くんでねェよ。ほぅれ、交換爺からもらっだこんがり魚Gだぞぃ」
バサルモス 「…………」
金レイア 「食っでみ。ほぅれ」
バサルモス 「(もぐもぐ)……うまい……う……(ぼろぼろ)」
銀レウス 「何だことなァ。オットコの子がそげに泣くんでねぇ。ほーれ、傷みしてみぃ」

7: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 20:58:44.58 ID:Weenz6vS0
バサルモス 「いてて……」
銀レウス 「しこたまやられたなぁ。ンだぁ? 父ちゃんまーたキノコでラリってんのがい?」
金レイア 「しっかたねぇ親父だなぃ。母ちゃんどした?」
バサルモス 「ママは……しごと……」
銀レウス 「そんでここに逃げてきたんかぁ」
バサルモス 「うん……」

10: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 20:59:37.66 ID:Weenz6vS0
金レイア 「とりあえず、飯ィ食いなぁね。今日は泊まっていきぃ。明日になりゃぁ、父ちゃんも元に戻っだろうさ」
銀レウス 「ンだなぁ。雪も降ってきだし、しがたねぇ。明日(あすたァ)、じいちゃんが一緒に行ってやっがら」
バサルモス 「ごめん……じいちゃん、ばあちゃん……」
金レイア 「魚冷めっぞぃ。気にすんなってぇ。坊主一匹の寝床ぐらいなら、いつだって用意してあっがらよぉ」
銀レウス 「坊主、今日はじいちゃんとばあちゃんと一緒に寝っぺなぁ」
バサルモス 「(もぐもぐ)うん……うん……(ぼろぼろ)」

13: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:00:52.98 ID:Weenz6vS0
―深夜―

金レイア 「銀さんやぁ、坊主は寝たがい?」
銀レウス 「満腹になっだらぐっすりさぁ」
金レイア 「あだしらも寝っかねぇ。しっかし、グラビは坊主にゃぁつらーくあだるなぁ」
銀レウス 「三年前のシュレイド城攻略作戦で、あいづひでぇ怪我してっがんなぁ。荒れてんだべぇ」
金レイア 「んだでも、これは酷いべぇ。見てみぃ。頭の鱗が焦げてっぞぃ」
銀レウス 「目にでも当たっだら大変などこだったなぁ」

14: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:01:51.02 ID:Weenz6vS0
金レイア 「とっかく、明日(あすたァ)、火山に連れてってやってくんなましよ」
銀レウス 「わがった。おらが、きっぢり、グラビには説教してやっかんな」
金レイア 「頼んだでぇ、銀さんやぁ」
バサルモス 「グゥ……グゥ……」
金レイア 「こげなちっせぇ子供だっつぅのに、生傷が耐えねぇもんだなぁ」
銀レウス 「シュレイド城の戦いで、おがしくなっだ奴はいっぱいいっがらなぁ」
金レウス 「グラビもこんくらいン時があったんけども……昔のことになっちまったわ」

15: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:03:23.97 ID:Weenz6vS0
金レイア 「ラオシャンロンも、そういやァ、目ェよぉ見えんくなった言ぅてたわ」
銀レウス 「歳だべ? あいづも、おら達とたいして変わらんかんねぇ」
金レイア 「んだぁ? もうンな歳かいな」
銀レウス 「んだ。でもよ、何でもかんでもぶくぶく太りゃあいいっでもんじゃねぇよぉ。ラオのは多分そのせいだぁ」
金レイア 「あいづも気にしとったよ。老後の介護は、誰に頼もうどかなぁ」
銀レウス 「だーれもやりたがんねぇべ。あんな小山みでぇな奴、体ァ洗うだけで、一週間経っぢまう」

20: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:06:46.10 ID:Weenz6vS0
金レイア 「ほんになぁ。んだでも真面目な話、そろそろ後継者とがぁ決めなきゃぁなんねぇべ」
銀レウス 「しっでも、ラオシャンロンの代わりなんでいねぇがらなぁ」
金レイア 「アゴ美とキバ代は頼りになんねぇがんなァ」
銀レウス 「あいづらァ、他人のことなんざァどーでもいいんだっぺ」
バサルモス 「う……グ……グゥ……」

22: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:08:37.22 ID:Weenz6vS0
金レイア 「あんらァ、坊主が起きちまっぞ。寝っぺ、銀さんや」
銀レウス 「そうすっかねぇ。ほんだら、坊主を挟んでやっがぃ」
金レイア 「なーんだか昔ィを思い出すなァぃ」
銀レウス 「金さんやぁ、照れでんのがぃ?」
金レイア 「ばーか抜かすなぃ。阿呆言っでねぇではよ寝っぺぇ」

24: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:09:41.26 ID:Weenz6vS0
―雪山、フルフルの洞穴、入り口―

ティガ弟 「ふぁぁ……あ゛ッ! 兄者、暇だなァ」
ティガ兄 「ちっ。こんな大吹雪じゃ、巣にも帰れねぇ。シクったぜ。ババァの言うことなんざ、ほいほい聞くもんじゃねーな」
ティガ弟 「……なぁ、ノリでメンチ切っちまったけど、おじきぃ本気(マジ)で怒らせたら、相当ヤバいぜ? どうするよ」
ティガ兄 「ンだぁ? てめぇ、ビビってンのか?」
ティガ弟 「おいおい……寒さでイカれたかい? 誰があのもうろく白ヒゲに。俺が心配してンのは、ラージャンのことだよ」

25: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:11:03.76 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「……あァ……あ゛ーっ……忘れてた。あのバカ猿、調子こくだろうな……」
ティガ弟 「前からあいつ、俺らの縄張りよこせとか、しょっぱいこと言ってきてたじゃん?」
ティガ兄 「確かになァ、ブランゴ一族総出で来られたら、うっぜぇーな」
ティガ弟 「ま、タリぃけどよ。俺と兄者がいりゃあ、あの汚猿なんざぁ屁でもねー……けどなァ」
ティガ兄 「いや……ラージャン来たら、絶対俺らかあいつ、どっちか死ぬぜ。本気(マジ)でかかんねぇとな……」
ティガ弟 「構うこたぁねぇんじゃねぇの? もういっそのことよ……」

26: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:11:52.33 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「やめろや。ナナ先生に言われてるだろォが」
ティガ弟 「……あぁぁ゛、それ言われると……だぁぁ! もう!」
ティガ兄 「先生が悲しむことだけはしねェって約束じゃねェか。あの女(ひと)、俺らが同級生殺したつったら泣くぜ?」
ティガ弟 「ちぃ。先生は優しすぎんだよ。あんなゲス野郎、とっととあの時溶岩に叩きこみゃぁ良かったんだ」
ティガ兄 「おい、弟者。先生の悪口は許さねぇぞ」
ティガ弟 「言ってねぇーよ。ただ、先生の最大の長所が、ゲスに利用されてンのが、我慢なんねぇって言っただけだ」

30: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:13:55.35 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「……ちっ……あのくそ野郎の顔思い出したら、ムカついてきたぜ……」
ティガ弟 「俺もだ……いっちょ、外に向かって大雪玉でも吹っ飛ばすか?」
ティガ兄 「いい提案だぜ弟者。じゃあ、あっちのボボの巣にでも向かってよ」
ティガ弟 「へっへっへ。奴ら、こんな夜中に雪投げ込まれたら、びびって飛び出してくるぜ?」
ティガ兄 「奴らの間抜けな顔でスッキリするか? へへ…………行くぜ、一……」
ティガ弟 「二の……」

31: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:15:18.71 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「さ……」
キリン 「地獄兄弟のお二人とも、見張りご苦労様です」
ティガ兄 「!!」
ティガ弟 「!!」
キリン 「ど、どうしたんですか? 二人で、固まって……」
ティガ兄 「い……いや、俺たちは何もしてねェ」
ティガ弟 「あァ、何もしようともしてねェ」

32: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:16:33.57 ID:Weenz6vS0
キリン 「? フルフルのお婆ちゃんが、もうブランゴさんたちは来ないだろうから、中に入ってきなさいって」
ティガ兄 「あん? ったく、くそババァが。能天気なことぬかしやがって。奴らのしつこさは、折り紙つきなんだぜ?」
キリン 「でも、もう手を出さないって約束をしてくださったじゃないですか」
ティガ弟 「おいおい。いいかい? ねえちゃん。猿だけは信用しちゃダメだ。奴らの約束っつーのは、俺らの約束とは違う」

33: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:17:19.52 ID:Weenz6vS0
キリン 「どういうことですか?」
ティガ兄 「猿の一族にとっちゃァ、自分ら以外は全部劣等種なンだよ。家畜って考え方なんだ」
ティガ弟 「ああ。ねえちゃんは、例えば虫ケラと何か約束して、それを律儀に守るかい?」

35: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:18:05.67 ID:Weenz6vS0
キリン 「虫さんたちも生きているわ。約束したのなら、ちゃんと守らないと」
ティガ兄 「……っがァァ! しょっぺぇ! 何だ? 今時の若い娘は、こういうのがトレンドなのか!?」
ティガ弟 「わからねぇ……わからねぇが兄者……口の中が塩っ辛くて吐きそうだ!!」
キリン 「え……あ、あの……何かおかしなことを言ったかしら……」
ティガ兄 「あのなァァァねえちゃん。みんながみんな、アンタみてーなお花畑だったら、そもそも争いなんて起こんねーの!」
ティガ弟 「そうそう。大人たる者、本音と建前は割り切んなきゃ、やってけねェぜ?」

37: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:19:25.89 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「あの身勝手さ、見ただろ? 奴らは、一度仕留めそこなった獲物は絶対に諦めねぇ」
ティガ弟 「無駄にプライドだけは高ェからな。事情は聞いたけどよ、あのチビ人間、もう終わりだぜ?」
キリン 「そ……そんな……」
ティガ兄 「お……おい。そんな顔すンな。俺らはただ、事実を言っただけで……」
キリン 「女児ちゃん……何も、何も悪いことをしていないのに……」
ティガ弟 「おい、泣くなよ? 絶対泣くなよ? 俺らが泣かせたみてぇじゃねぇか!」

38: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:20:22.15 ID:Weenz6vS0
キリン 「(ぐす……)地獄兄弟さんたち……どうすればいいの?」
ティガ兄 「どうすればって、アンタにできるこっちゃ何もねぇよ。ドドのおじきは、横の繋がりが広いから、下手にブチ殺せねぇ」
ティガ弟 「アンタが、猿を一匹も傷つけなかったのは正解だぜ? 敵としてブランゴ一族に総出で狙われたら、命はねぇだろうさ」
キリン 「いいえ……私……怖くて、何もできなかっただけなんです」

39: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:21:38.53 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「…………」
キリン 「それに、女児ちゃんとドドさまを引き合わせてしまったのも、私の責任なんです」
ティガ弟 「…………」
キリン 「私が、お婆ちゃんの傷薬を、人間の里に取りに…………女児ちゃんを連れて行かなければ……」

41: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:22:51.23 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「まァ……ババァはそれで良くなったんだろ?」
キリン 「え……」
ティガ弟 「クックのおっさんも、傷を治すことができたじゃねぇか。いーじゃんそれで」
キリン 「でも…………」

48: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:29:52.22 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「おじきが帰ってくりゃあ、遅かれ早かれ見つかってたさ。早かったか、遅かったかの違いってこと」
ティガ弟 「ま、帰ってきてソッコーっつーのは悪運にもホドがあるっつー問題だけどな」
ティガ兄 「ちげぇねぇ! ガヒャヒャヒャ!!」
ティガ弟 「悪運もまた運ってなァ! ヒャッヒャッヒャ!! いーことあるぜーいつか!! いつかな!!」

49: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:31:26.22 ID:Weenz6vS0
キリン 「…………ありがとう。少し、元気が出ました」
ティガ兄 「そうか? よくわかんねーけどな!」
ティガ弟 「んじゃ、兄者よ。中に入るか? 確かによ、こんな猛吹雪じゃァ猿も出歩けねーだろ」
ティガ兄 「……ンー……だなァ。こりゃ、明日も続くかもしんねェ」

52: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:32:55.07 ID:Weenz6vS0
ティガ弟 「あーあ。桜レイアちゃんと塔行く予定だったのに……残念でした、だぜ、兄者よォ」
ティガ兄 「……あァ゛!! 忘れてた!! ンだよ畜生が!! マジかよ!!!」
キリン 「す……すみません」
ティガ弟 「あぁこっちの話。気にすんな」

54: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:34:20.10 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「弟者! 何でさっさと言わなかったァァァァ!」
ティガ弟 「さぁぁ~。俺も今思い出したしィィ」
ティガ兄 「どーすりゃいーんだよこれェェ!!」
ティガ弟 「兄者、また次があるさ。女なんざぁ、星の数ほどもいるって」
ティガ兄 「そーいう問題じゃねぇんだよ! 蒼レウスがいねぇ時にやっと呼び出せたんだぞ!! てめぇ責任とれ!!」

57: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:35:43.13 ID:Weenz6vS0
ティガ弟 「知るかっつーの! 俺達にはナナ先生さえいりゃあいいんだよ!」
ティガ兄 「それとこれとは話は別だ! スッタコがァァ!」
ティガ弟 「何をォォォ! 聞き捨てならんぞ兄者!! あんなビッチ、先生の足元にもおよばねェじゃねぇぇぇかッ!!」
ティガ兄 「桜レイアちゃんの悪口を言うなやァァァ!!」
キリン 「ふっ……二人とも落ち着いてください! 入り口が……入り口が壊れる!」

58: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:37:11.13 ID:Weenz6vS0
キリン 「(あぁ……何なのこの人たち……)」
キリン 「(ん……? 何だろう……崖の下、何か動いてる……?)」
キリン 「地獄兄弟さんたち! 何かいます!」
ティガ兄 「あんだとォォォ!?」
ティガ弟 「っつせぇ黙ってろィィィィ!!!」

60: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:38:15.26 ID:Weenz6vS0
キリン 「それどころじゃないです。もしかしたら、ドドさまたちかも……」
ティガ兄 「どォォーでもいいンだよッ今ァンなことはよォォォ。てめっ、外出ろや。コルァ?」
ティガ弟 「んだぁ? やんのかコラァ?」
ティガ兄 「上等だァ買ってやんよォォ!」

62: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:40:25.35 ID:Weenz6vS0
ティガ弟 「てめーから外出ろやオルァ!」
ティガ兄 「あぁぁ゛ん? てめぇから出るのが礼儀っつーもんだろーが!!」
ティガ弟 「礼儀のレの字も知らねェ分際で生意気なんだよォォォォ!」
ティガ兄 「一字一句間違わずにてめぇのケツに刻み込んだろかァァァァ!?」

63: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:41:18.18 ID:Weenz6vS0
キリン 「(何か聞こえる……)」
××××× 「ギャォォォォォ! ギャォォォォォ!」
キリン 「(あれは、助けを求める声だわ……誰かが、雪の中で迷ってるんだ……!)」
キリン 「地獄兄弟さんたち! 誰か遭難してます!」

65: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:43:04.77 ID:Weenz6vS0
ティガ弟 「むささびドラゴンがァァ!!」
ティガ兄 「んだとォ? せむしトカゲがぁぁぁ!!」
キリン 「同じ顔です! 二人とも、話を聞いて!!」

66: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:44:50.31 ID:Weenz6vS0
キリン 「……話を!! 聞いて!!(ピシャァァン!)」
ティガ兄 「(バリバリバリ)ギャァ!」
ティガ弟 「(バリバリバリ)ビャァ!」
キリン 「あ……今のは……雷!? 私、初めて雷を呼べた……!!」
ティガ兄 「…………」
ティガ弟 「…………」

69: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:46:38.38 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「…………何だ? 今一瞬目の前が真っ白になったような気がしたんだが……」
ティガ弟 「…………俺もだ兄者。まるで、先生に叱られた時のようだった……」
ティガ兄 「この体に走る痛みは……懐かしいあの……」
ティガ弟 「……恋の衝撃……!!」
××××× 「ギャォォォォ!! ギャォォォォォォ!!」
キリン 「さ、行きますよ二人とも」

72: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:47:57.11 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「ンだぁ? 誰か騒いでやがるな」
ティガ弟 「バッカじゃねぇの? ヒャハハ! 遭難してやがんの!!」
ティガ兄 「お、おいねえちゃん! 外はあぶねぇ。凍っちまうぜ!」

73: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:48:42.70 ID:Weenz6vS0
キリン 「もう私一人で行きます!」
ティガ弟 「ちょっ、そういうわけにはいかねぇだろ。兄者、行くぞ」
ティガ兄 「なんだよクソっ……しゃぁぁーねぇーな……今日は厄日だぜ」

75: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:49:50.62 ID:Weenz6vS0
―雪山、フルフルの洞穴、内部―

女児 「おじさん……」
クック 「女児、どうして私に相談しなかった?」
女児 「私……あのね……」
クック 「どうして勝手に出て行ったのかと聞いているんだ。答えなさい」

76: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:52:29.70 ID:Weenz6vS0
女児 「私……私(ひっく)」
クック 「泣いても駄目だ。キリンちゃんにも言ったが、お前は、危うく殺されかけていたんだぞ?」
女児 「ごめんなさい……おじさん、ごめんなさい……ゆるして……」
クック 「許す許さないの問題ではない。私が言っているのは……」

79: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:55:02.22 ID:Weenz6vS0
フルフル 「まぁ、そのへんで良いだろう。クック、この子は、傷薬を取りに人間の里まで降りた。ドドに遭ったのは不可抗力だ」
クック 「しかしフルフルさん。迂闊すぎる。この子には、自分が何であるかという自覚がない!」
女児 「(びくっ)」
クック 「それでは、いくら守ろうとしても無駄だ。受ける側がこれでは、ラオシャンロンも……」

80: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:56:06.98 ID:Weenz6vS0
女児 「ごめんなさい……ごめんなさい! おねがいおじさん、わたしをすてないで!」
クック 「何を……私はそんな話はしていない!」
女児 「ごめんなさいぃぃ……うぇぇぇぇん……」

81: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 21:57:02.25 ID:Weenz6vS0
クック 「…………」
フルフル 「女児よ、あんたが里まで行って、あたしの傷薬を取ってきてくれたのは、感謝をするよ」
女児 「(ひっく……ひっく……)」
フルフル 「あたしもクックも、あんたを怒っているのではないのだよ。心配していたのだ」
女児 「しんぱい……」

85: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:00:26.45 ID:Weenz6vS0
フルフル 「あァ。あんたのことを、大事に思っているからこそ、クックはここまで言うのだ。分からないかい」
女児 「わたし……わたし、しっぱいしたから……」
クック 「…………」
女児 「しっぱいしたから、おじさんに、すてられるんじゃないの……?」

87: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:02:37.72 ID:Weenz6vS0
クック 「そんなことはせん。ならば、駆けつけたりはしなかった……」
女児 「おじさん……」
クック 「危ないじゃないか……もし、傷ついて、取り返しのつかない傷を負ってしまったら」
女児 「…………」
クック 「どうするんだ……」

89: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:04:41.65 ID:Weenz6vS0
女児 「ごめんなさい……! 私、もうおじさんにだまって、勝手なことしない……」
クック 「……うむ……」
女児 「(ぐす……)」

92: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:08:10.65 ID:Weenz6vS0
クック 「来なさい、凍えているだろう。温まらなければ」
女児 「…………」
クック 「もう、私の体は大丈夫だ。フルフルさんもな……」
フルフル 「人間の薬は、よく効くねェ」
女児 「(ぎゅ……)」

95: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:10:32.15 ID:Weenz6vS0
キリン 「お婆ちゃん! お婆ちゃん、大変なの!! 動ける!?」
フルフル 「む……キリンが入り口で騒いでるね」
クック 「そういえば、地獄兄弟が入ってこないな……礼を言わねばならんというのに」
フルフル 「あんたらは動くんじゃないよ。あたしが行くよ」

96: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:13:13.66 ID:Weenz6vS0
フルフル 「どうしたぃ、キリンよ。地獄兄弟も何ぐずぐずしてるんだい」
ティガ兄 「うっせぇくそババァ! てめーのおかげで今日はトコトン厄日だぜ!!」
ティガ弟 「地獄から来た俺たちに、一日に二回も人助けさせるなんて、どういう了見だコルァ! 殺す気か!!」
キリン 「お二人とも、静かにしてください!」

98: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:14:15.46 ID:Weenz6vS0
黒グラビモス 「はぁ……はぁ……(ガチガチ)」
フルフル 「ん……このにおいは、グラビんとこの嫁かい? どうしたんよ」
キリン 「ものすごい熱なの! もう、ほとんど意識がないわ!! 病気かしら!?」

101: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:16:12.85 ID:Weenz6vS0
黒グラビモス 「も……申し訳……ありません……か……体……が……」
フルフル 「火山の竜が、こんな吹雪の中歩いてたら、体力がなくなるのは当たり前さね。地獄兄弟、奥に運んでやりな」

104: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:18:23.95 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「あーあー腹減ったなァァ!」
ティガ弟 「腹が減って動けねェなァァ!!」
ティガ兄 「もう一歩も動けねェなァァ!!」

107: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:20:56.11 ID:Weenz6vS0
フルフル 「ぶつくさ言うんじゃないよ。あたしはねぇ、あんたたちが子竜のころ、トイレの世話まで……」
ティガ兄 「わぁぁーったよ! ちぇっ、運べばいーんだろ運べば!」
ティガ弟 「おばさん重いんだからよぉぉー、ちょっとは自分で体ァ動かす努力しろよォ!」
黒グラビモス 「申し訳……あり……ません…………」

109: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:22:02.17 ID:Weenz6vS0
ティガ弟 「ぶっはぁぁ! 疲れたァァ!!」
ティガ兄 「おらァ! これで文句はねぇだろ!」
クック 「やや……! 黒グラビさん!? どうしてこんな雪山に……!!」
女児 「うわぁ……おっきい、黒い竜さん……」

112: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:28:08.78 ID:Weenz6vS0
フルフル 「女児が持ってきてくれた薬が、まだあったね。飲ませておやり」
キリン 「ええ。分かったわ。おばさま、聞こえる? このお薬を飲んで……」
黒グラビモス 「(ごく……ごく……)」

114: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:29:01.30 ID:Weenz6vS0
黒グラビモス 「……はぁ……はぁ……」
キリン 「熱が引かないわ。お婆ちゃん、どうしよう!」
フルフル 「慌てるんじゃないよ。そんなにすぐに効くものかい。しかし……違うにおいもするね……もしかして……」

115: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:29:41.50 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「ババァよぉ、これただの疲労じゃぁねーぜ」
ティガ弟 「あァ。俺らも昔やられたことがあンだ。こりゃ、兵隊ランゴスタの毒だな」
クック 「黒グラビさん、しっかりするんだ! 私だ、クックだ。分かるかい?」
黒グラビモス 「イャン……クック様……ど……どうして…………こ、ここに……」

125: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:39:48.07 ID:Weenz6vS0
フルフル 「ここは、あたしの洞穴だよ。あんたを見つけて運び込んだのさ」
黒グラビモス 「フルフル……さま……?」
クック 「確かに、これはランゴスタの毒だ。こんなに沢山、柔らかい目の近くを刺されている……」

126: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:40:50.69 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「刺されすぎると、あの腐れ蜂どもの毒でも、すっげぇ効いてくんだよなァ?」
ティガ弟 「ラリってきたりしてな? 慣れると快感になってくるぜ。ギャハハ!」
ティガ兄 「キメすぎだぜおばさんよォ? 中毒死だなァこりゃ!」
キリン 「お二人とも、不謹慎です!!」

128: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:41:34.98 ID:Weenz6vS0
黒グラビモス 「さむい……こごえてしまう……バサル……いま……いま、ママが……かえるから……」
フルフル 「ふむ……ランゴスタの巣の中に入ったのか……反撃を受けたとみえるね」
クック 「どうしてそんなばかなことを!! しっかりするんだ、黒グラビさん!!」

129: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:42:26.60 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「どうしてって……おっさん、そりゃ、ランゴが集めてるキノコとかよ、ハチミツとかよ、それ狙ったんじゃね?」
ティガ弟 「あいつらそーとータメこんでっからな」
ティガ兄 「何だっけ? マンドラゴラとか、混沌茸とかよ、そういうヤクの元になるキノコがいっぱいあんだよ」

130: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:43:13.42 ID:Weenz6vS0
ティガ弟 「おいおいヤク分捕る前にラリっちまったか? ダッセェーなぁ!」
ティガ兄 「じごーじとくじゃね?」
ティガ弟 「違ェねぇ!! まぬけドラゴンだ! ゲヘヘ!!」

131: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:44:06.84 ID:Weenz6vS0
キリン 「…………(ピシャァァァン!!)」
ティガ兄 「(バリバリバリバリバリ)ギャァァァァ!」
ティガ弟 「(バリバリバリバリバリ)ビャァァァァ!」
クック 「キリンちゃん……雷を覚えたのか……!」
ティガ兄 「……(ビリ)………(ビリ)………」
ティガ弟 「……(ビリ)………(ビリ)………」
キリン 「この人たち、下品です……」

132: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:45:38.85 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「……(ビリ)………(ビリ)………」
ティガ弟 「……(ビリ)………(ビリ)………」
フルフル 「しかし、解毒剤なんてここにはないねェ。ランゴスタに刺されすぎて、毒が頭に回っちまったんだ……」

134: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:46:44.79 ID:Weenz6vS0
クック 「どうすればいい? 黒グラビさんは、子供のころから知っている。助けてやりたい!」
フルフル 「ランゴスタの毒は、はやり病のようなものだよ。クイーンが抗体を持っているはずさね……しかし……」
クック 「クイーンが……そんな……彼女は、ドド以上に話が通じないじゃないか」
フルフル 「うむ……そうさね……」

136: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:48:09.85 ID:Weenz6vS0
キリン 「その、クイーンさんに解毒剤を分けていただければ、おばさまは助かるの? なら、私行くわ!」
フルフル 「おやめ。同じ目に遭って、死ぬのが落ちだよ」
キリン 「どうして!? だってこのままじゃ、この人、熱で死んでしまうわ!!」
フルフル 「無論、黒グラビを見捨てたりはせぬよ。しかし、闇雲にランゴスタの巣に突っ込んでも、いかんともしがたいのよ」

139: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:49:06.73 ID:Weenz6vS0
クック 「どういうことだ?」
フルフル 「蜂族は、猿族以上に、敵か、同族かという目で判断をする。巣に近づく者はみな敵よ。話し合いなどできまい」
クック 「ぐぅ……」
フルフル 「それに、クイーン以外はたいした知性を持っていないのだよ。虫族とはそういうものだ」

140: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:49:55.75 ID:Weenz6vS0
クック 「では、クイーンと何とかして話をせねばなるまいな……」
フルフル 「だが、集会は一ヵ月後だからね……とても間に合うまいよ」
女児 「おじさん……この竜さん、どくでくるしいの?」
クック 「ああ。何とかしてやりたいのだが……」

141: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:50:46.45 ID:Weenz6vS0
女児 「目のまわりがはれてる……私、水でふいてあげるよ!」
クック 「やってあげてくれ。毒針が残っているかもしれないから、気をつけてな」
女児 「うん! ……わ……熱い……くるしそう……」
フルフル 「女児、あたしの後ろに湧き水があるよ。草に浸して使うがええ」
女児 「分かったよ、お婆ちゃん。黒い竜さん……今、ふいてあげるからね……」

142: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:51:31.67 ID:Weenz6vS0
黒グラビモス 「はぁ……はぁ……」
女児 「よいしょ……よいしょ……」
キリン 「女児ちゃん、私も手伝うわ。私の背中を台にして」
女児 「お姉ちゃん、ありがとう……」

144: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:52:12.31 ID:Weenz6vS0
キリン 「……お婆ちゃん、地獄兄弟さんたちにお願いすることはできないかしら……?」
フルフル 「さすがのこいつらも、巣に入ってはひとたまりもないだろうねェ」
ティガ兄 「……(ビリ)………(ビリ)………」
ティガ弟 「……(ビリ)………(ビリ)………」
キリン 「そうなの……じゃあ、どうしたら……」

145: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:53:05.28 ID:Weenz6vS0
フルフル 「その道の専門家に頼むしかあるまいね」
キリン 「専門家……?」
フルフル 「ああ。旧密林に、蜂どもも食べてしまう、猫の奇面王がおる。奴に警護してもらえば、中まで入れるだろう」
クック 「チャチャブーの王(キング)か! そうだな! 彼に頼めば、道を開いてくれるかもしれない!!」

147: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:53:53.90 ID:Weenz6vS0
キリン 「じゃあ私、すぐに旧密林に行く!」
フルフル 「この吹雪じゃぁ無理だ。お前たちも遭難しちまう。朝になれば、少し収まるだろう。その時に行きな」
女児 「私も行く!」
キリン 「女児ちゃん……」
クック 「だめだ」
女児 「え……」

150: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:58:00.25 ID:Weenz6vS0
クック 「女児は、ここに残るんだ。キリンちゃんもだ。私が行ってこよう」
キリン 「そ……そんな……」
女児 「おじさん……! けががまだ、ぜんぶなおってないのに! 私もいっしょに……」
クック 「お前は、ここでフルフルさんと一緒にいるんだ。フルフルさん、頼む」
フルフル 「ああ、その方がいいだろうねェ」

151: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 22:58:42.72 ID:Weenz6vS0
女児 「やだ! おじさんとはなれたくない!!」
キリン 「私もご一緒するわ!」
クック 「黒グラビさんの命がかかっているんだ。虫が相手では、お前達を、危険から守る暇がないかもしれない」
女児 「いやだよ……私も……」
クック 「聞き分けてくれ。みすみす危険だと分かっている場所に、子供たちを連れて行きたくないのだ」

153: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:00:06.17 ID:Weenz6vS0
女児 「(ぐす……)」
フルフル 「あとは、黒グラビが、吹雪が弱まるまでもつかどうか……」
キリン 「おばさま……」
黒グラビモス 「……はぁ…………くるしい……うぅ…………」

154: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:00:30.59 ID:Weenz6vS0
フルフル 「とにかく、刺されたところを拭いてやったら、体を温めようぞ。クック、火を起こしておくれ」
クック 「分かった……ところで、地獄兄弟はまだ感電しているのか?」
ティガ兄 「……(ビリ)………(ビリ)………」
ティガ弟 「……(ビリ)………(ビリ)………」
キリン 「ちょっと強く雷を落としすぎたかしら…………」

156: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:01:40.19 ID:Weenz6vS0
―朝―

キリン 「雪が収まってきたわ……」
女児 「黒い竜さん、がんばって。わたし、ずっとおいのりしてる! だから、もうちょっとだけがんばって!」
黒グラビモス 「はぁ…………はぁ…………に…………人間…………ちゃん………………」
女児 「お婆ちゃん! 黒い竜さんが、しゃべった!!」

160: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:03:01.41 ID:Weenz6vS0
フルフル 「おぉ。良かったわぃ……まだ大丈夫そうだな……」
黒グラビモス 「ありがとう……ありがとう…………」
フルフル 「解毒剤が来るまで、あんたは余計な体力を使うんじゃないよ。喋ンなくともいいさね」
黒グラビモス 「バサルを…………息子を…………ひとり、で…………火山に……………………」
フルフル 「バサル坊主がどうしたぃ?」

162: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:04:32.36 ID:Weenz6vS0
黒グラビモス 「あの人…………………………バサルを………………(ゲホッ! ゲホッ!!)」
女児 「しっかりして! しゃべっちゃだめだよ!!」
フルフル 「うぅむ……キリンや、水を汲んできておやり。木の実の殻を使うがええ」
キリン 「分かったわ、お婆ちゃん」

164: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:06:29.52 ID:Weenz6vS0
クック 「だいぶ雪が弱まったな……よし、それでは、そろそろ旧密林のチャチャブーの国に行ってくる」
フルフル 「あァ。とは言っても、まだ視界は悪いかんね。十二分に気をつけな」
クック 「分かっている。みんな、黒グラビさんを、頼むぞ……女児、心配するな」
女児 「うん………………おじさん…………」

165: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:07:57.29 ID:Weenz6vS0
フルフル 「待ちなクック。キングと取り巻きどもに、こいつを渡してやんなよ」
クック 「これは……高級マタタビじゃないか!」
フルフル 「あいつらは物欲に滅法弱いのよ。最初に全部渡しちゃァいけんよ。少しだけちらつかせりゃ、言うことを聞く」
クック 「助かる。かたじけない」
フルフル 「あとは、この婆の名前でも出せばいいさ。あたしは、ここで黒グラビと子供たちを見てるから、安心して行ってきな」
クック 「ああ。すぐに戻ってくる!」

168: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:09:38.29 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「んじゃ、俺らはここでオサラバするかンな? オサラバするかンな!?」
ティガ弟 「兄者、もー無理だって。太陽昇っちまったじゃん」
ティガ兄 「桜レイアちゃんは……待っていてくれる! 待っていてくれるはずなんだよォ!!」
ティガ弟 「……あ゛ー駄目だこりゃ……」
フルフル 「地獄兄弟よ、出来りゃぁ、クックについてってやってくれるとありがたいんだがねェ」
ティガ兄 「あぁぁぁあん!? ン馬鹿言うなやァァ! 俺達ァこれから予定があンだよ!! 勝手にやってろ!!」
ティガ弟 「俺は別に何もねーけどな」
ティガ兄 「弟者ァ! 貴様ァァ!!」

173: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:13:05.79 ID:Weenz6vS0
フルフル 「別に、無理にとは言わんよ。ただ、リオレウス家族の洞穴は、丁度チャチャブー王国の近くにあると思ってね」
クック 「地獄兄弟、共に来てくれれば、これほど心強い味方はいない。頼めないか?」
ティガ弟 「……まァ、確かにリオ家は密林にある。でもな……てめぇら、ナメてんのか?」
ティガ兄 「くそババァ……俺らをパシりと勘違いしてやがんじゃぁねぇだろうな?」
ティガ弟 「おぅともよ。おっさん、悪ィけどもう俺らにゃぁ関係ねェ。やるならあんたらだけでやれや。特に予定はねーけどな」
ティガ兄 「俺はあるンだよ!!」

174: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:13:45.40 ID:Weenz6vS0
フルフル 「そうかい……残念だねェ。ナナ・テスカトリにあんた達の後見人を頼まれて、はや十年……そろそろ潮時かねェ」
ティガ兄 「なっ……ババァ! 何企んでやがる!?」
ティガ弟 「先生を使って脅しても無駄だぜ! しわくちゃ労害くそばばぁ!!」
フルフル 「いや、何。あたしは別にいいのだよ。あんた達の暴れっぷりにはホトホト手を焼いてるかんねェ」
ティガ弟 「ちょっ……何するつもりだ!」
ティガ兄 「何をチクる気だァァ!!」

176: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:19:05.53 ID:gsFixDnk0
フルフル 「そういえば、先々週、ボボの家族が泣きながらここに来たねェ……」
ティガ兄 「!!」
ティガ弟 「!!」
フルフル 「ドス一族のギアノス兄ちゃんも、確か…………」
ティガ兄 「くっ……汚ねェぞ!」
ティガ弟 「チ……チクる気ならやってみやがれ! こ……怖くもなんともねェぞ!!」
フルフル 「あァ。あたしはね……別に、いいのだよ? ナナに『あのこと』を言ってもねェ」
ティガ兄 「……!!」
ティガ弟 「……!!」

180: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:22:25.48 ID:gsFixDnk0
ティガ弟 「(ひそひそ)兄者……このババァ、まさか『あのこと』を……」
ティガ兄 「(ひそひそ)弟者……いや、バレてねぇはずだ……じゃあ『あのこと』か?」
ティガ弟 「(ひそひそ)どのことだよ……心当たりが多すぎて分かんねぇ」
ティガ兄 「(ひそひそ)まったくだぜ……でも、もしかしたら適当抜かしてんじゃねェのか……」
ティガ弟 「(ひそひそ)いやでもよ……万が一ってこともあるじゃねぇか……『あのこと』がバレたらヤベェって……」
ティガ兄 「(ひそひそ)『あのこと』も知ったら、先生怒るよな……」
ティガ弟 「(ひそひそ)『あのこと』もな……洒落になんねェぞ……ドス一族は随分虐めたからな……」
フルフル 「…………」
ティガ兄 「…………」
ティガ弟 「…………」

182: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:24:00.43 ID:gsFixDnk0
キリン 「地獄兄弟さんたち、私からもお願いします。おじさまを、助けて……」
フルフル 「キリン……」
クック 「キリンちゃん……」
キリン 「おじさまに協力してくださったら、私のたてがみでも、角でも、何でも差し上げますから……」
ティガ兄 「……!!」
ティガ弟 「……!!」

184: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:25:01.36 ID:gsFixDnk0
キリン 「お願い……あなたたちの強さを、信じさせて……!!」
ティガ兄 「……がッ!! やめろねえちゃん! 頭なんて下げンなァァ!!」
ティガ弟 「女に頭下げられたァァ!!」
ティガ兄 「地獄の権威が地に落ちるゥゥゥ!! 俺たちが! よりにもよって!」
ティガ弟 「感謝されて! しかも頼られているゥゥゥゥ!! 女に!! 気持ち悪ゥゥゥゥ!!」

187: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:26:27.81 ID:gsFixDnk0
女児 「こわいかおの竜さんたち……わたしも……わたしもおねがいします! おじさんをたすけてください!」
ティガ兄 「人間の女にまで頭下げられたァァ!!」
ティガ弟 「しょっぺぇ! しょっぱすぎる展開だぞ兄者ァァ!!」
ティガ兄 「ちぃぃぃぃぃ!! 外道めらァァ!! わぁぁぁぁったよ! ただ、旧密林までだぞ! おっさんそれでいいな!」
ティガ弟 「しょぉぉがねぇーな……しょっぱすぎて死ぬかと思ったぜ……」
クック 「すまない、この恩は、いつかちゃんと返させてもらうからな……」
ティガ弟 「ならとっとと解放してくれることを願うよ!!」
ティガ兄 「まったくだぜ! オラ行くのか!? 行かねェのか!?」

189: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:27:35.37 ID:gsFixDnk0
クック 「これで何とかなりそうだ……それじゃ、黒グラビさん。もう少しだけ辛抱するんだ。行ってくるよ」
黒グラビモス 「はぁ……はぁ……す……すみま…………せん…………バ……バサル…………」
女児 「おじさん……(ぎゅ)」
クック 「……いい子にしているんだぞ。地獄兄弟、ゆくぞ!」
ティガ兄 「じゃーな! くたばれババァ!!」
ティガ弟 「二度と来ねェかンな!! くそばばあ! とっとと老衰で死ね!!」
フルフル 「…………やっと行ったか。まったく、騒がしい馬鹿どもだよ」

198: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:36:16.08 ID:WEUWxiRH0
女児 「おじさん……だいじょうぶかな……」
フルフル 「地獄兄弟は、知能は足りんが、戦闘力だけは一級だかんね。チャチャブーごときにゃやられやせん」
キリン 「間に合うといいのだけれど……」
フルフル 「翼があるから、ひとっとびさね。キリン、あんたが行ったら、かえって足手まといになるわ」
キリン 「うん……黒グラビのおばさま、がんばって……」
黒グラビモス 「ウ……ウゥ…………」

199: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:38:33.50 ID:WEUWxiRH0
―雪山のふもと―

ガルルガ 「うぅぅぅ~寒ぃ。腹が凍えるゥゥ(ガクガク)」
ヒプノック 「ヘイ、ガルルガよぉ。こんな雪の中、マジにクックはフルフルんとこ行ったのかよ(ガクガク)」
ガルルガ 「あァ間違いねェ。優等生どもがよ……くそ面白くもねぇ!」
ヒプノック 「Yo、でも、ドドが戻ってきたンなら人間の餓鬼なんてよ、もうすでにダイ(死亡)してんンじゃねェか?」
ガルルガ 「だとしたらドドを許さねぇ。クックも! 人間も味方する奴も、全部敵だ!」
ヒプノック 「ヒャァ! 今日もキレまくってるな! ドドも恐れねぇ、さすが『キレたナイフ』だ!」
ガルルガ 「くそ猿どもに渡してたまるかよ……あれは俺が最初に目ェつけたんだ……」
ヒプノック 「……ビッグボスに止められてンじゃねェのォ? 怒らせたらマジ怖いぜ」

200: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:39:36.44 ID:WEUWxiRH0
ガルルガ 「あんなガン黒の言うことなんざ! 前々から、あの野郎は大きい顔しやがって……気にくわなかったぜ!」
ヒプノック 「ヒュゥ! 大胆発言! やっぱ次のビッグボスはガルルガしかいねぇよ!」
ガルルガ 「軟弱野郎どもが大きな顔しやがって……イラつくぜまったくよォ」
ヒプノック 「でも、仲間内で戦うのはラオシャンロンが禁止してるじゃねぇか。ノーモアバトル、ノーモア戦争。ヘドが出る!」
ガルルガ 「…………」
ヒプノック 「それに、フルフルには、あの馬鹿兄弟(ブラザーズ)がついてるぜ? こりゃVery厄介だ」
ガルルガ 「ちっ…………」

203: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:41:31.55 ID:WEUWxiRH0
ガルルガ 「…………ン? 何か飛んでるな…………」
ヒプノック 「ありゃあ……クックと馬鹿兄弟じゃねぇか。でもどこ行くんだ? 」
ガルルガ 「何も背中に乗ってる節はねェな……くく……何だ? 別行動かァ?」
ヒプノック 「Yo! こりゃチャンス! マジラッキー! つまり洞穴には、おいぼれとスモールガールだけってことだ!」
ガルルガ 「ドドに先越されちゃたまんねぇ。無駄な手間が省けてるうちに、あの小娘さらうぜ……」
ヒプノック 「WHY(何で)?」
ガルルガ 「……ようは俺が殺さなきゃァいいんだろォ? 運ぶだけだ。運ぶだけなら誰にもバレずにコトを済ませられる」
ヒプノック 「ヘイ、ブラザー、どこに運ぶのさ? ドドのハウス(家)に?」
ガルルガ 「バッカ! 猿に渡してどうすんだよ……おい、火山によォ、ヤク中が一匹いたよなァ?」

208: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:42:43.75 ID:WEUWxiRH0
ガルルガ 「バレないように、こっそりとやんだよ。子供だ。勝手に抜け出すこともあるだろ。そこをヤク中に襲わせて……」
ヒプノック 「ヒュゥ! グラビか! 確かにあいつなら、ラリった末の事故って片付くぜ!!」
ガルルガ 「足元にちょい、と置いてくるだけだ。俺たちは人間がつぶれるとこを、物陰からじっくり鑑賞って寸法よ……」
ヒプノック 「GOODプランだぜ! 悪知恵大将はやっぱあんただ!」
ガルルガ 「クックやフルフルの絶望の顔が目に浮かぶぜェ」
ヒプノック 「Oh,Yes! そうと決まったら、フルフルの洞穴まで猛ダッシュ! だ! ぜ!」
ガルルガ 「ああ。汚ねぇ人間め……たっぷりと恐怖を味あわせてやる……」

209: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:43:30.08 ID:WEUWxiRH0
―旧密林―

イャンクック 「はぁ……はぁ……ぐっ……」
ティガ弟 「おい……おっさん!? 兄者! おっさんの高度が下がってやがる!」
ティガ兄 「ンだとォ!? ちぃぃぃ! まだ猿どもにやられた傷が、完全に治ってやがらねぇんだ!!」
ティガ弟 「このままじゃ墜落するぜ!! 兄者、受け止めねぇと!」
ティガ兄 「弟者! 右から挟めやぁ!」
ティガ弟 「任せろやぁぁぁ!!」

211: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:44:10.46 ID:WEUWxiRH0
ティガ弟 「(ドザザザザッ!)…………っ……痛てててて…………腹の鱗が剥けたぜ…………」
ティガ兄 「あぁ゛くそが! (ゴキ、ゴキ)おっさん! おいコラァ!」
イャンクック 「ぐっ……うぅ……す……すまない。落ちてしまったのか…………」
ティガ弟 「世話ァ焼かせんなァ! 殺されてぇのか!!」
ティガ兄 「ちぃっ。着地点がズレちまった。俺たちァ、こんな森ン中じゃ、滑空できねェから飛びたてねェ」
イャンクック 「すまない……っ……ぐ……」
ティガ弟 「おっさん……右羽が裂けてやがる。何で今まで言わなかった! クラァ!」

212: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:45:02.15 ID:WEUWxiRH0
イャンクック 「これしき……どうということはない。飛んだらキズが開いてしまった……それだけだ……ぐっ……」
ティガ兄 「これで雪山から飛んできたってのか……」
ティガ弟 「はぁぁぁぁぁ~~~~~……もーどーすんだよ。出オチ甚だしいぜ」
イャンクック 「大丈夫だ……まだ飛べる……」
ティガ弟 「んじゃ一人で行けや。俺達ァ、一回降りたら、高ェとっから飛び降りねぇと、飛行できねぇんだよ」
イャンクック 「失敗した……君達、苦労をかける……」
ティガ兄 「いや……そうでもねぇらしい」

213: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:48:16.16 ID:Weenz6vS0
××××× 「(ガサガサガサ)何やらすごい音がしたわ……あなた、見てきなさい」
××××× 「(ガサガサガサ)えぇぇ? やだよ! 凶暴な奴だったらどーするんだよ!?」
××××× 「(ガサガサガサ)戦いなさいな。その結果死んだとしても、大丈夫。ちゃんと私が骨を拾うから」
××××× 「(ガサガサガサ)勘弁してくれよ……お前が行けばいいだろ?」
××××× 「(ガサガサガサ)あなた、か弱い女性に偵察をさせるつもりなの? ハンターだったらどうするのよ!」
××××× 「(ガサガサガサ)それこそお前が戦えよ! 一ひねりだろぉ!?」

218: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:49:10.74 ID:Weenz6vS0
ティガ弟 「ヒャッハァ! ツイてるぜ! あの情けねェ声と、ドSな声は!!」
ティガ兄 「リオママとリオパパじゃねぇか!」
リオレウス 「うぅ……何で俺が……(ひょこ)あー……誰かいますかー……?」
ティガ兄 「パパさんよォ! ここだここォ!」
リオレウス 「ひぃ! 何かいた!(ガサガサガサガサ)」
リオレイア 「(ひそひそ)あなた!! 何がいたの!? ハンター!?」
リオレウス 「(ひそひそ)分からない! 分からないがきっと恐ろしいものだ! お前、行って倒してこいよぉ!」
リオレイア 「(いそひそ)情けない……男なら当たって砕けて死んできなさい! そんな軟弱な夫に育てたつもりはないわ!!」

220: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:49:57.46 ID:Weenz6vS0
リオレウス 「ひぃぃ! 尻尾はやめて! 毒はだめ!」
リオレイア 「行きなさい。私はここで見守っているわ。強くなりなさい」
リオレウス 「くぅぅぅ! 死んだらお前のせいだからな!」
リオレイア 「死ぬほど戦えたら、少しは見直してもいいわ」
リオレウス 「あぁ……俺はここで死ぬんだ……妻に見放されて、俺は死ぬんだ……」
リオレイア 「動かなければ、どっちみちここで死んでもらうわよ」
リオレウス 「えぇぇぇ゛!? びぃぃぃぃ! お助けェェ゛!」

222: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:50:48.38 ID:Weenz6vS0
リオレウス 「ちくしょぉぉぉ! 死なばもろともォォォ゛!!(ズシンズシンズシンズシン)」
ティガ兄 「あの馬鹿親父、突撃してくるぞ!」
ティガ弟 「何でだよ!? あぁ! くそ! 止めるぞ兄者!」
ティガ兄 「スタンバイだ弟者!」
リオレウス 「キェェェェェ!!」
ティガ兄 「ふんっぬっ! はぁ゛ッ!!」
ティガ弟 「ふんっぬっ! はぁ゛ッ!!」
リオレウス 「(ズドンッ!)ぐぅっはぁぁぁ!」

224: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:51:45.65 ID:Weenz6vS0
リオレウス 「な……何だ……はね……跳ね返された……」
リオレイア 「(ひょこ)あなた、何をしているの。あら! 地獄兄弟の坊やたち。ごきげんよう」
ティガ兄 「はぁ……はぁ……はぁ……」
ティガ弟 「はぁ……はぁ……はぁ……」
リオレウス 「お前…………」
リオレイア 「何よ。無様な格好よあなた。早く起き上がりなさい」
リオレウス 「鬼か……」

231: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:53:14.26 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「何すんだ……」
リオレウス 「何だ……地獄兄弟か……お前! 何攻撃させてくれてんだ! ごめんよ君達! こいつのせいなんだ!」
リオレイア 「あなたが勝手に向かっていったんじゃない。人に責任を擦り付けないで欲しいわ」
リオレウス 「向かっていかなきゃ殺すって言われたんだけども!」
リオレイア 「うるさいわ。あら……イャンクックさん。どうかなさったの? 空から落ちてきたような気がしたのだけど」
イャンクック 「やぁ……リオさん達。久方ぶりだな……」

232: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:54:07.98 ID:Weenz6vS0
リオレウス 「お前……人の前だからって猫被ろうとしても無駄だぞ! 今日こそははっきり言わせてもらう。俺はお前の……」
リオレイア 「やかましいわね……ごめんなさいねェ。今黙らせますよ(きゅ)」
リオレウス 「ピィ! (ビクンッビクンッ)」
ティガ兄 「相変わらずだなママさん!」
ティガ弟 「躊躇なくパパさんを締め落とす、その姿サイコーにカッケェぜ!!」
リオレイア 「ありがと。皆さんおそろいで、どうかした? 桜レイアなら、さっき蒼レウスとナナ先生のところに出かけたわ」
ティガ兄 「マジでか!? くっそぉぉぉ! 入れ違いかよ!」
クック 「……………………」
リオレイア 「…………何か事情がおありのようね」
クック 「ああ……」

233: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:55:25.74 ID:Weenz6vS0
リオレイア 「…………ふぅん。そんなことがあったの。イャンクックさんも災難ねぇ」
クック 「お見苦しいところを……」
リオレイア 「ドドさんが帰ってきてるっていうのは知らなかったわ。足がお悪いんですもの、不覚をとったのは仕方ないわ」
クック 「……そういうわけで、チャチャブーの王国に急がねばならない。方向だけでも、教えてもらえないか?」
リオレイア 「あの蛮族どもと交渉に行かれるの? ……まともに話し合いなんて、できないと思うけれど」
クック 「それでも、クイーンランゴスタに会わねばならない。そのためには奇面王の力が必要なんだ」
リオレイア 「うぅん……とりあえずその羽のキズはどうにかした方がよくってよ。あなた、とっとと起きなさい(ゲシッ)」
リオレウス 「……ん? ん……あぁ? 何だ……俺は気を失っていたのか……」
リオレイア 「あなた、ハチミツの血止め持ってたでしょう? 出して」
リオレウス 「えぇ? 何で?」
リオレイア 「イャンクックさんが怪我をしているのよ。血止めくらいはした方がいいでしょう」

237: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:56:42.15 ID:Weenz6vS0
リオレウス 「あれ……イャンクックさん。お久しぶり……すまん、どうせ妻が失礼をしていたと思うが……」
リオレイア 「早くしなさい」
リオレウス 「はい……どこにしまったかな……あァ、あったあった。どうしたんだ、この傷は……」
クック 「ちょっと、不覚をとってしまってね……」
リオレウス 「これでよしっ……と。少し経てば血は止まるけど、激しい動きは禁物だよ」
クック 「あァ、だいぶ楽になった。すまないね、おふた方」
リオレイア 「いいんですよ。薬を塗るくらいしか能がありませんからこの人」
リオレウス 「お前…………」

242: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:58:36.17 ID:Weenz6vS0
ティガ兄 「俺らも、このおっさんとチャチャブーの国に行かなきゃなんねーんだよ。どっちだっけ?」
リオレウス 「奇面族の? それなら、この先の地下洞を抜ければ、彼らの里の入り口に出られるけど……」
リオレイア 「ちょっと待って。イャンクックさん、少しお家で休んでいかれない? 顔色が真っ青よ」
クック 「そういうわけにはいかない。この先だな……ありがとう。また後日、お礼に伺うよ」
リオレイア 「これくらいのことで、お気になさらないで。うーん……そうね……じゃあ、あなた。ご案内してさしあげて」
リオレウス 「え? ……えぇぇえ!? 俺が!? 自分が行けよ!!」
リオレイア 「私はこれから、蒼と桜と私のお夕飯を作らなきゃいけないの」
リオレウス 「俺の分は!?」
リオレイア 「ご案内をちゃんとまっとうできたら考えないでもないわ」

248: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/01(金) 23:59:55.79 ID:Weenz6vS0
リオレウス 「ちくしょう……ご一緒させていただきます」
ティガ兄 「えぇぇ~……パパさん来んのォ?」
ティガ弟 「いいよ無理すんなよ」
リオレウス 「何をぅ! 君たち! 明らかに俺を馬鹿にしているだろう!!」
ティガ弟 「ああ、邪魔」
リオレウス 「何だとぅ!?」
リオレイア 「そう言わないで。肉の盾くらいにはなるわ」
リオレウス 「お前ェ!」

250: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:00:59.45 ID:8xAfd/1y0
ティガ兄 「ママさん行っちまったな」
ティガ弟 「いつ見ても大人の色香だぜ。乳くせぇガキとはえらい違いだ!」
リオレウス 「……ちくしょう…………」
ティガ弟 「いや、ほんと無理すんなよ。パパさん、帰れって」
ティガ兄 「あんたが戦力として役立つ場面が、想像できねェよ」
リオレウス 「ごくごく一般で平凡な飛竜である俺に何を求めてるってんだ!」
ティガ兄 「うわっ、逆ギレしやがった。ウゼッ!」
リオレウス 「何をぉぅ!? そういえば、俺はまだ、君と桜の交際をだな!」
ティガ兄 「あーあー聞こえない聞こえない」
クック 「……レウスさん、すまない。先を急ぐんだ」
リオレウス 「あ……あぁ。チャチャブーの国ならこっちだ。どうも記憶がないんだけど、道すがら事情を聞かせてくれないか」

252: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:02:18.31 ID:8xAfd/1y0
リオレウス 「……何だって!? 黒グラビ奥さんが! そいつは一大事だ」
クック 「毒が頭に回ってしまっている。早く、クイーンに解毒剤をもらわないと危険だ」
リオレウス 「ふぅむ……グラビ君は、三年前のシュレイド城の戦いで、大きな傷を負ってから、おかしくなってしまってる」
クック 「グラビさんが? どういうことだい?」
ティガ兄 「…………」
ティガ弟 「…………」
リオレウス 「これは、あまり口外してはいけないことなんだけど……どうも彼は、心を病んで麻薬に溺れてしまっているとか」
クック 「何だって!? ……じゃあ、黒グラビさんは、彼のために、その材料を探しに……」

253: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:03:04.81 ID:8xAfd/1y0
リオレウス 「シュレイド城の戦いは、沢山の仲間達に深い傷を与えたから……クスリに溺れた者も少なくはないし……」
クック 「……そのことは、ラオシャンロンは知っているのか?」
リオレウス 「勿論だ。父さんと母さんが、彼の息子のバサルモスを保護したことがあって。その時に、グラビ君を見に行った」
クック 「…………」
リオレウス 「怪我の後遺症は勿論のこと、どちらかというと禁断症状に苦しんでいるようだった」
クック 「黒グラビさんは優しいからな……彼の苦痛を、和らげてやりたかったのか……」
リオレウス 「ラオシャンロンは、絶対にクスリは止めるようにって厳命したんだが……こんなことになるなんて……」
クック 「……私は、そんなことは知らなかった……」

256: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:04:29.62 ID:8xAfd/1y0
ティガ兄 「……ケッ。弱ェからそうなンだ」
ティガ弟 「心も体もな!」
リオレウス 「君たち! そうやって軽々しく他人を非難するものじゃない。大体君たちは年上を敬う気持ちってものがねェ……」
ティガ兄 「ケッ…………」
ティガ弟 「…………」
リオレウス 「……着いた。ここを抜ければ、チャチャブーの国だけど……本当に行くのか? あいつらは下品で頭がおかしいぞ」
クック 「大丈夫だ。こちらには備えがある(スッ)」
リオレウス 「高級マタタビか。うーん……通じるかな……」
クック 「駄目かな?」
リオレウス 「いや。キングにはそれでいいかもしれないが、門番には、どちらかというと宝石の方が喜ばれる。物欲の塊だから」
クック 「宝石? そんなものは持ってきていないな」
ティガ兄 「俺らも持ってねェな」
ティガ弟 「あァ。きんきらした飾りなんざァ、男の持ち物じゃねェ」
リオレウス 「…………はぁ…………俺が出すよ…………」

257: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:05:13.22 ID:8xAfd/1y0
―密林、奇面族チャチャブーの里―

門番チャチャブーA 「止まれ……」
門番チャチャブーB 「合言葉を述べろ……」
リオレウス 「ピュアクリスタルをやるから通せ。キングに用がある(ポイッ)」
門番チャチャブーA 「………………」
門番チャチャブーB 「………………」
クック 「(宝石を拾って考え込んでいるぞ……)」
クック 「(人間が使うような刃物を持っている……下手に前に出ないほうが良さそうだ)」

258: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:05:53.83 ID:8xAfd/1y0
門番チャチャブーA 「(ごそごそ)」
門番チャチャブーB 「(ごそごそ)」
クック 「(宝石をしまった……しかし目を剥いてこちらを睨みつけている……)」
ティガ兄 「ンだコラァ! やんのかオルァ!」
ティガ弟 「上等だァかかってこいやァ!!」
リオレウス 「バカ……! 下がってろ!」
門番チャチャブーC 「…………」
門番チャチャブーD 「…………」
クック 「(何!? 増えた……いや……続々と中から出てくる……しかも全員、刃物を持っている!)」

259: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:06:38.19 ID:8xAfd/1y0
リオレウス 「……カブレライト鉱石もあるぞ。これは珍しい、陽翔原株だ(ポイッ、ポイッ)」
リオレウス 「急いでいる。門を開けて通せ」
門番チャチャブーA 「(ごそごそ)」
クック 「(一匹レウスさんに近づいてきた……)」
門番チャチャブーA 「…………オレに……もう一個よこせ…………」
リオレウス 「……持って行け。ドラグライト鉱石だ」
門番チャチャブーA 「…………門を開けろ…………」
チャチャブー達 「ピィィィ! ピィィィィ!」

260: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:07:25.90 ID:8xAfd/1y0
クック 「レウスさん、すまない……随分と宝石を……」
リオレウス 「こいつらは、群れて襲ってくるから、怒らせると危険なんだ。これくらいで済むならいい方だ」
ティガ兄 「……むなくそ悪ィぜ。どいつもこいつも死んだ魚のような目ェしやがって……」
ティガ弟 「噛み殺してやりてぇ、ドブ沼みてェな目だ。ナタぎらつかせやがって……」
チャチャブー達 「………………」
クック 「(子供も大人も、みな刃物を持ってこちらを睨んでいる……)」
クック 「(これは殺気だ……ブランゴ族のような威嚇ではない……侵入者に対する、殺意だ……)」

262: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:08:13.03 ID:8xAfd/1y0
リオレウス 「いつ来ても気分がいい場所じゃないな……」
クック 「前にも来たことがあるのかい?」
リオレウス 「あァ。蒼レウスが小さい頃、こいつらに捕まったことがあって。レイアを抑えるのに苦労した……」
ティガ弟 「アン? ンだァ、このおどろおどろしい音楽は……」
ティガ兄 「不気味な太鼓だぜ……火を燃やしてやがる」
リオレウス 「儀式の最中なんだろ。いいか? 地獄兄弟。決して噛み付いたりするなよ? 目玉抉り出されるぞ」
ティガ兄 「こんなチビども、襲ってきても皆殺しにしてやらァ」
リオレウス 「ここにいるのは、ほんのごく一部だ。地下には数百匹も隠れてる。戦えば無傷じゃ済まない」

264: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:09:29.17 ID:2T7f3qQl0
ティガ弟 「ちっ。くそつまんねぇトコに来ちまった」
クック 「(何だ……円形の広場の中央で、炎が燃え盛っている……)」
クック 「(沢山のチャチャブーが、回りながら踊っている……炎の中央で燃えているのは……)」
クック 「(あれは……! ガウシカ族やケルビ族! 縛られて、丸焼きにされている……!!)」
クック 「(死んでいるようだが……ムゴい! チャチャブーとは、こういう種族だったのか!)」
ティガ兄 「……ッ、音楽が止まったな」
クック 「(踊りも止まった……)」
クック 「(全員が、刃物を担いでこちらを睨んでいる……)」

265: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:10:08.98 ID:YbBhax9M0
リオレウス 「イャンクックさん、用があるんだろ? 早く」
クック 「あ……あァ。チャチャブーの皆さん、邪魔をしてすまない。急ぎの用で、キングと話がしたいんだ」
チャチャブー達 「………………」
ティガ兄 「あ゛ーッ!? 何とか言えコルァ!! くそ猫が!」
クック 「やめるんだ……私達は、キングにお願いをしに来たんだ。他意はない」
チャチャブー達 「………………」
クック 「(停止している……何故だ? とても、不気味な雰囲気だ……)」

269: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:11:32.23 ID:YbBhax9M0
チャチャブー 「ビィィィ! ビィィィ!!!」
クック 「な……音楽がまた鳴り始めた……!」
リオレウス 「チャチャブー達が整列していく……良かった。キングのお出ましだ」
クック 「(炎の向こうから……ひときわ大きいチャチャブーが出てきた……キングだ!!)」
ティガ弟 「くそ……この耳障りな太鼓はどうにかなんねェのか!!」
キング 「…………ブフゥゥゥ~…………(もぐっちゃ、もぐっちゃ)」
ティガ兄 「野郎……ナメてんのか……肉食いながら…………!」

271: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:12:19.30 ID:YbBhax9M0
クック 「キング! 私だ、イャンクックだ。力を貸して欲しい!」
キング 「…………」
クック 「一刻を要するんだ。頼む!!」
キング 「…………(げっぷ)……クックゥ? …………礼儀ィ……なってねェんじゃねェか……」
ティガ弟 「ンだこらぁぁあ!!」
リオレウス 「やめろ!」
クック 「……そうだな、すまなかった。気が急いてしまったようだ。これは、高級マタタビだ。皆で分けてくれ」
キング 「……(くいっ)」
チャチャブーA 「……(とことことこ)よこせ……」
クック 「これだ」
チャチャブーA 「…………(サッ!)…………ゴッドファーザー…………どうぞ……」
キング 「……(くんかくんか)……ぺろ…………ふん…………」

272: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:13:01.00 ID:YbBhax9M0
クック 「まだ沢山ある。頼みを聞いてくれれば、全て差し上げよう」
キング 「……………………誰を、殺してほしい…………?」
クック 「違う。ランゴスタクイーンに会いたいんだ。彼女のところまで、あなた達に警護をお願いしたい」
キング 「ヤクを探してんのか……? てめェ……そんな風にはみえねェがな…………」
クック 「訳を話す。刃物を下ろさせてくれ」
キング 「…………(くいっ)」
チャチャブー達 「(ザッ)」
クック 「(全員綺麗に陣を……さすが、奇面族の戦士……)」

275: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:14:17.95 ID:YbBhax9M0
キング 「…………」
クック 「……そういうわけなんだ。なるべく、双方に犠牲が出ないようにしたい。蜂を皆殺しにして欲しいわけではない」
キング 「…………めんどくせェな…………」
クック 「そう言わずに……頼む。黒グラビさんは、子供の頃から私は知っている。彼女は……仲間だ」
キング 「…………」
クック 「こんなことで、失いたくはない……」

278: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:15:22.17 ID:YbBhax9M0
キング 「……女王蜂には……オレが行かねば、余計な争いになる……てめェよ……オレに、腰ィ上げろってか?」
クック 「命令ではない。お願いをしているんだ。頼む……」
ティガ兄 「おっさん!? こんなデブに頭下げンな!」
キング 「…………」
クック 「ただ、クイーンの所に辿りつかせてくれればいい。お願いだ……」
ティガ弟 「おっさん!」
キング 「…………女か、よォ…………」
クック 「……?」
キング 「酒だろォが……頼みごとってのァ、そいつが礼儀だ……」

283: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:16:19.49 ID:YbBhax9M0
クック 「(これは……殺気!? 周りのチャチャブー達から……!!)」
クック 「(刺激をしては駄目だ……)」
クック 「……私のような、しわがれた労害でよければ、終わった後、美味い酒をご馳走するよ。共に、飲み明かそう」
キング 「…………」
クック 「……付き合うよ」
キング 「…………ツチハチノコの地酒だ……」
クック 「え……」
キング 「…………在庫が……足りねェ……」
クック 「分かった。約束する」

284: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:17:08.85 ID:YbBhax9M0
キング 「…………」
クック 「…………」
キング 「……奇面の民……一番隊は、オレと共に来い……」
チャチャブー達 「ビィィィ!!(ジャキン!)」
キング 「蜂は殺すな……打ち落とせ……」
チャチャブー達 「ビィィ! ビッ! ビィィ!」
クック 「じゃあ……! キング……!!」
キング 「ゆくぞ……夕餉の時間までには……戻る……」

290: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:18:44.88 ID:YbBhax9M0
―火山―

ガンランス 「ッあぁぁ~熱ッィ! こんなトコ来ンじゃなかったぜ!」
ヘビィ 「まーた収穫はカニだけか(ジャラジャラ)しかも今日のは小ぶりだ……」
ライト 「やっぱよぉ、大物は、こんな村の近くにゃもういねェんだって。シュレイド城のアレで奥地にいっちまったんだ」
ハンマー 「…………」
ガンランス 「無駄足かよ。ちっ……」
ライト 「クーラードリンクも切れてきたし、もう帰ろうぜ?」
ヘビィ 「あぁぁ~、そうすっか。ふぅ……酒でも飲みてぇ」
ガンランス 「パブにでも行くかァ?」
ヘビィ 「つっても、ふもとの里は病気にやられてんじゃん。オレァやだぜ。伝染されんのはよ」
ライト 「隣町まで降りんのもなァ」
ガンランス 「はぁ……考える気力もなくなるぜ。とにかくよ、こっから出ようぜ? 脳みそまで煮えちまう」

294: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:20:22.19 ID:YbBhax9M0
ハンマー 「…………お前達は帰れ。俺は、もう少し探索をしていく」
ヘビィ 「はぁぁ? もー何もねぇって。ここらあたりは、鉱石も採リ尽くしちまったから、歩くだけ無駄無駄」
ハンマー 「しかし、ここまでの準備賃のモトをとっていない……せめて、竜の鱗でも見つけないと、本当の無駄足になる」
ガンランス 「だーかーらー、もう無駄足なんだっての。あーあーいいよ好きなだけ残りゃぁいいさ。俺ァ帰る」
ヘビィ 「同感だな。ま、せいぜい死なないよーに気をつけな」
ランス 「また会えればの話だけどな」
ハンマー 「…………」

296: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:23:06.71 ID:YbBhax9M0
ガンランス 「ちっ……。もう汗で地図がぐっちゃぐちゃだ」
ヘビィ 「一度溶岩から離れようぜ? じゃぁーな、ハンマー」
ライト 「誰か回復薬もってたらくれよ。喉が渇いて死にそうだ」
ヘビィ 「ほらよ。これで最後だ」
ライト 「ありがてぇ」
ハンマー 「…………(ん? 何だ……あの溶岩の隣……妙に乱雑に岩が積まれている……)」

298: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:23:49.13 ID:YbBhax9M0
ハンマー 「(いや、崩れているのか……?)」
ハンマー 「(…………やはり、これは何か、大きなモノが這い出た後だ……)」
ハンマー 「(よく見れば、地面も抉れている……)」
ハンマー 「(溶岩へ続いている……これは……まさか……)」
ライト 「……ぷはぁ。生き返ったぜ(ポイッ)」
ヘビィ 「おいおい、ゴミ投げ捨てんなよ」
ライト 「どーせ時間が経ちゃぁ、満ちてきた溶岩で燃えるだろ」

299: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:24:30.00 ID:YbBhax9M0
××××× 「グルル……グ……ルルル……」
ハンマー 「(あの声は……!)」
ハンマー 「三人とも! そこを離れろ!!」
ガンランス 「あぁん? だから俺達は帰るって……」
グラビモス 「ブグォォォォォォッ!!!」
ヘビィ 「な……何だァ!?」
ライト 「後ろだ! ありゃ……鎧竜じゃねェか! 溶岩の中から……でけェ!!!」

302: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:25:13.23 ID:YbBhax9M0
グラビモス 「グル……グル……グル……グル……」
ハンマー 「(何だ……この鎧竜。様子がおかしいぞ……)」
ハンマー 「(胸の鱗が全て剥がれている……それに、目の色が……)」
グラビモス 「キシャァァァァァ………………」
ハンマー 「……!! よけろ!」
ガンランス 「くそっ……俺の後ろに隠れろ!!(ガシャコン)」

304: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:26:41.40 ID:YbBhax9M0
グラビモス 「(ゴゥゥゥゥゥゥッ!!)」
ハンマー 「(熱線を吐いた……!!)みんな!!」
ガンランス 「……っ……ガ……ガードが……き……かねぇ……(ガク……)」
ヘビィ 「……ガンランス!!」
ライト 「……野郎!!」
ハンマー 「(ガシャコン)みんなを守らねば……」
グラビモス 「(バシュゥゥゥゥゥゥ)」
ハンマー 「……ッ! 催涙ガスか!?」

306: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:27:44.93 ID:YbBhax9M0
ヘビィ 「…………う……ぁ……」
ライト 「く……そ……目が……」
グラビモス 「シャァァ! シャァァァ!! ギャォォォォ!!!(ズンズンズンズンズン)」
ヘビィ 「(ドゴォ!)がぁぁ!!」
ライト 「(ドガ!!)ぐはぁ!!!」
グラビモス 「グルル……グル! ギャォォォォ!! ギャォォォォ!!(バシュゥゥゥ、バシュゥゥゥゥ)」
ハンマー 「間違いない……あの鎧竜、正気をなくしている……!」

312: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:31:57.72 ID:CbQ/Cg460
ハンマー 「このままではみんなが危ない……俺がやらねば……!」
ハンマー 「うおぉぉぉぉ!!(ズンッ!)」
グラビモス 「ギャァァ!」
ハンマー 「(よろめいた……効いている! 弱っているのか!!)」
ハンマー 「っうぉぉぉ!(ズン! ズン!)」
グラビモス 「ギャァァ! ギャァ!」

316: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:32:41.79 ID:CbQ/Cg460
ライト 「くそ……! ハンマー、これを使え!!(ビュン!)」
ハンマー 「(パシッ)これは……シビレ罠! 助かる!」
グラビモス 「キシャァァァァァァ……!!」
ハンマー 「(熱線を溜めている! くそ……!)」
ヘビィ 「ハンマー! 目をつむれ!!(ヒュッ!!)」
ハンマー 「……! 閃光弾か!」

319: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:33:24.72 ID:CbQ/Cg460
グラビモス 「(パシャァァ!)ギャォォォォォ!!」
ハンマー 「効いた……! 今のうちに、シビレ罠で……!!」
ライト 「……いょっしゃぁ! マヒったぜ!」
ヘビィ 「くそ竜が! 捕獲弾をブチこんでやる! 思い知れ!!(ドゴッ! ドゴッ!)」
グラビモス 「ギャァ! ……………ガ…………グ…………(ゆら……ズゥゥゥゥン!)」
ハンマー 「はぁ……はぁ……」

321: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:34:19.31 ID:CbQ/Cg460
ヘビィ 「いぃやっほぅ! でかしたぜ! ハンマー!!」
ライト 「こりゃでけぇ! 村に持ってって解体したら、当分生活にゃ困らねェ!!」
ハンマー 「…………いや……俺が攻撃する前に、この竜は随分と弱っていた……」
ヘビィ 「関係あるかよ! いやぁ、しっかしこりゃ、村からアイルーたらふく連れて来ねぇと、運べねぇな」
ガンランス 「…………っつ……」
ライト 「ガンランス! 無事だったか」

324: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:35:02.77 ID:CbQ/Cg460
ハンマー 「…………とにかく、誰か村に下りてアイルーと、他のハンター達を連れて来てくれ」
ガンランス 「……ちっ……大口開けて寝てやがる。ムカつくぜ! くそ竜が!(ドガッ)」
ハンマー 「やめろ! 起きてしまったらどうするつもりだ!」
ガンランス 「あぁ? 今度こそ突き殺してやんよ(ジャキン)」
ライト 「じゃ、俺が降りてくるわ。ちょっくら待ってな」
ハンマー 「ああ、頼む」

325: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:36:08.56 ID:CbQ/Cg460
―数時間後、火山別エリア―

銀レウス 「ふぅぅぅぅぅ~~火山は暑っちぃぃぃのぉぉぉぉぉ、じいちゃんには辛いわぁ」
バサルモス 「パパ……もう、怒ってないかな…………」
銀レウス 「もーぅさすがに、母ちゃん止めてっぺぇ。だーいじょうぶだぁ。もしものとぎは、じいちゃん守ってやっがらなぁ」
バサルモス 「うん…………じいちゃん……ありがとう……(ぼろぼろ)」
銀レウス 「まーた泣くんでねぇ。オットコの子だべぇ? ほんだばぁ、こっくらで弁当にでもすっかい?」
バサルモス 「え? 弁当……?」
銀レウス 「おめさんの家はもうちっとかかっがんな。金さんが作ってくれだんだぁ。うんめェぞぉ」
バサルモス 「ばあちゃん……俺、うれしいよ……」
銀レウス 「こっち来なぁ。じいちゃんと一緒に食べっぺなァ」

328: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:37:00.15 ID:CbQ/Cg460
×××× 「(バサッ! バサッ!)あぁぁぁ! 銀さん! 何でここに!? バサルも!」
バサルモス 「あ……こんにちは……」
銀レウス 「あんれまぁぁ、ガブラスの小僧じゃねぇっけぇ。ひんさしぶりだなァ」
ガブラス 「い、いや、それどころじゃねぇんでぇ! でも丁度良かった!」
銀レウス 「どしたぁ、そげに慌ててよぉ」
ガブラス 「人間のハンターが、下層に攻め込んできてるんだ!! グラビモスがやられた!!」
バサルモス 「え!? パパが!!?」
銀レウス 「何じゃとゥ? なしてこげなおもてに出てきただ!」

331: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:39:55.28 ID:CbQ/Cg460
バサルモス 「パパ……! じ、じいちゃん、どうしよう!!」
ガブラス 「十や二十じゃねぇんでぇ! 猫と人間が、大勢で、眠らせたグラビモスを連れてこうとしてんだぃ!」
銀レウス 「そげな数……戦争でもやらかすつもりがぃ!」
ガブラス 「おいらも、上飛んでただけで、人間に矢を撃たれた! どうーすりゃいいんでぇ!」
バサルモス 「パパ……助けなきゃ……!」
銀レウス 「待つんだぃ坊主!」
バサルモス 「で……でも、パパが人間の里に連れてかれちゃうよ!」

333: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:41:42.84 ID:8xAfd/1y0
銀レウス 「……黒グラビはいんがったがぃ?」
ガブラス 「い……いや、グラビモスだけだ。今、下層はパニックになってる。じき、みんなこの上層に避難してくる!」
バサルモス 「ママ……もしかして、人間に……!」
銀レウス 「いんゃ、引きずってねェんなら大丈夫だぁ。グラビも、ラリってだんだべぇ……」
ガブラス 「おいら、テオさんとナナさんに知らせてくる!」
銀レウス 「今からじゃァ、旧火山は間にあわねぇ……そんれに、ハンターが多すぎるだァ」
ガブラス 「銀さん! じゃぁどうすりゃ……」
銀レウス 「……キバ代を呼ぶぞぃ。流石に、おら一匹じゃァ無理だァ」
ガブラス 「アカムトルムを!? でも、あのオカマ、溶岩の下に引きこもってて、出てこねェじゃん!」
銀レウス 「すっても、あいづの力がありゃぁ、グラビを助けられるべぇ」
ガブラス 「でも、どうやって……!」

337: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:43:04.48 ID:8xAfd/1y0
銀レウス 「このちかぐに、おら達古株しか知らねェ溶岩下への抜け道があンだァ」
ガブラス 「マジでか! さすが銀さん!!」
銀レウス 「んだども、そこを抜けるにゃぁ、あっづい溶岩の中の石ィ抜いで、他の溶岩を、脇に流さなきゃぁなんねぇ」
バサルモス 「じいちゃん! 俺やるよ!」
銀レウス 「あァ。おめぇなら溶岩に潜れっかんなァ。オットコの子なら、じいちゃんと一緒に、父ちゃん助けっぺ!」
ガブラス 「分かった! おいらは、間に合わなくても、とにかく超速でテオさんとナナさんに知らせてくる!!」
銀レウス 「途中の仲間だちにも、上層を動くなっつってぐれ」
ガブラス 「合点承知だぜ!!」
銀レウス 「坊主ぅ、いっくぞぅい」
バサルモス 「うん! じいちゃん!!」

341: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:44:29.75 ID:8xAfd/1y0
―雪山、フルフルの洞穴―

黒グラビ 「うぅ…………バサル……」
女児 「黒い竜さん、がんばって…………」
キリン 「日が頭の上まで昇ってしまったわ……おじさま……地獄兄弟さんたち……」
フルフル 「熱が高いね……キリンや、外で雪を集めてきておくれ」
キリン 「ええ、分かったわ、お婆ちゃん」
フルフル 「しっかりするんだよ、黒グラビ。お前の子供が待ってるよ」
黒グラビ 「うう…………」

346: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:46:38.92 ID:8xAfd/1y0
キリン 「(おじさま……お願い、間に合って……)」
キリン 「(雪はだいぶ収まったけれど、まだ降ってる……)」
キリン 「(私は、ここで待つことしかできないの……?)」
キリン 「(…………早く、雪を集めなきゃ…………)」
キリン 「(木の実のお椀に、詰め込んで……)」
キリン 「(これでよし……と。戻らなきゃ……)」

347: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:47:18.37 ID:8xAfd/1y0
キリン 「(……あら……何だろう、変な、甘い匂いがする……)」
キリン 「(入り口の方から……)」
キリン 「(不思議な匂い……ハチミツが燃えたような……)」
キリン 「(ん? 入り口に誰かいる……おじさまかしら!)」
キリン 「おじさ……うっ!」

349: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:48:34.04 ID:8xAfd/1y0
キリン 「(な……何? 急に、目の前が、ぐらりって……)」
キリン 「(何この……眠気……)」
キリン 「(もしかして……この匂い…………)」
キリン 「(眠っちゃ……眠っちゃだめ…………)」
キリン 「(眠っちゃ……)」
キリン 「(ドサッ)…………」

350: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 00:49:17.22 ID:8xAfd/1y0
ヒプノック 「……Yo! 効果てきめん! 俺の睡眠ガスにはどんな女もイ・チ・コ・ロパーフェクツ!」
ガルルガ 「見慣れねェのがチラッと見えたな……念のため、もっとガスを吐き出して、流し込め」
ヒプノック 「Oh,Yes! ババァもガキもみんな仲良くおねんねしな!(ヒュゥゥゥゥ)」
ガルルガ 「……ケケッ……クックめ。生温い理想は通用しねェって、教えてやるぜ」

第三章に続きます

474: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:17:15.36 ID:oez/cUC10
―3年前―

ラオシャンロン 「…………」
ウカムルバス 「……ちょっとやりすぎじゃないかしら」
アカムトルム 「ここまでやることはないと思うのよ、アタシ達」
ラオシャンロン 「…………」
ウカムルバス 「確かにねェ、人間はアタシ達のとこに土足で上がりこんでくるけどネ」
アカムトルム 「だからっていって、皆殺しにする必要もないと思うのヨ」
ウカムルバス 「今までどーり、てきとーにあしらって、てきとーに追い返すことって、できないのかしら?」

476: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:20:20.14 ID:oez/cUC10
ショウグンギザミ 「シェ…………愚問だな…………オカマども…………」
ウカムルバス 「何よ! アタシ達は真・面・目に、ラオちゃんとお話してるのよーぅ! 失語症は黙ってらっしゃい!!」
アカムトルム 「そうヨ! アゴ美のアゴクラッシュが炸裂するわよーぅ!」
ウカムルバス 「ラオちゃぁ~ん、こーんな薄気味わるぅ~ぃ奴らと戦うよりも、アタシ達と、さっさと帰ってイイコトしましょ」
ショウグンギザミ 「…………シェ…………シェ…………腰ぬけどもが……(ニタニタ)」
アカムトルム 「うるっさいわねヤドカリ親父! 黙ってらっしゃぃ! やるの!? アゴ美のアゴは何でも砕けるのよーぅ!!」
ウカムルバス 「ちょっとキバ代ぉ、さっきからアゴアゴうっさいわよ」

477: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:21:37.44 ID:oez/cUC10
ショウグンギザミ 「……ぶくぶくに太った……醜い竜どもの…………戯言には……つきあいきれんまでよ…………」
ウカムルバス 「ちょっとアンタ! あたしのアゴくらいたいのぅ!?」
ドドブランゴ 「……全くだ。ここまで来てしまったからには、もはや行けるところまで行くのみよ。臆病者は去れ……」
アカムトルム 「なぁぁんですって!?」
ドドブランゴ 「貴様らには分かるまい……蹂躙され、略奪され続けてきた、我ら一族が、どれだけこの時を待ち望んでいたか……」
ウカムルバス 「しぃぃったこっちゃないのよーぅ!! ちょぉっと! アタシ達の話、邪魔しないでくれるぅ!?」
ドドブランゴ 「…………聞く価値もない。もはや、戦いは架橋に差し掛かった……一族の血気を止めるのは、不可能よ……」

479: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:23:13.90 ID:oez/cUC10
ウカムルバス 「だぁかぁら、それはアンタ達だけでやりなさいって。アタシ達は、ラオちゃん連れて帰るから」
アカムトルム 「そうよぅ。これ以上アタシ達が暴れたら、ホントのホントに、人間根絶やしになっちゃうわ」
ショウグンギザミ 「それがどうした…………我らは、そのために…………ここにいる…………シェ……キシャ……」
ラオシャンロン 「…………」
金レイア 「……ンだなァ。アゴ美とキバ代の言うとおりだっぺェ」
銀レウス 「こんくらい痛めつけりゃァ、もう十二分だァ。シュレイド城こえりゃァ、人間の子供だぢさいるだ」
金レイア 「そっげな無抵抗なァのブッ殺しても、しゃァねェべぇ」
ドドブランゴ 「金銀……貴様らまで臆病風に吹かれおったか……」

481: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:24:59.77 ID:oez/cUC10
金レイア 「ンだァ。正直そうだァ」
ウカムルバス 「…………」
アカムトルム 「…………」
銀レウス 「金さんとよォ、話ィすたんだけんどもよ、やっぱす、こんりゃァやりすぎだぁ」
金レイア 「これ以上やっだら、おらだちにも被害が出るだ」
ドドブランゴ 「……戦いの中で死ぬのなら、本望よ……我らの民は、その覚悟はできている……」
金レイア 「ふんぬぅ……おめだぢはどぅだ?」

484: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:27:45.36 ID:oez/cUC10
キングチャチャブー 「……オレ達は、依頼を受け……その結果ここにいる。戦いが終わりというなら、そこで帰るまでよ…………」
銀レウス 「あいがわらず主体性がねェなァ」
キングチャチャブー 「一人殺せば……それから十人殺しても、百人殺しても、罪は変わらねェ……戦争という枠ン中じゃァな」
ナナ・テスカトリ 「…………わたくしは、金さんと銀さんに賛成ですわ。これ以上の戦いは無意味です」
キングチャチャブー 「…………」

485: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:30:46.52 ID:oez/cUC10
ナナ・テスカトリ 「この戦いには、わたくしの教え子達も沢山参加しています。彼らが取り返しのつかない怪我を負う前に……」
テオ・テスカトル 「……全くだ。若い者は、血気が流行りすぎている。人間も必死だ。このままでは必ず死者が出る」
ドドブランゴ 「……戦いに死者はつきものだ。貴様らは、みすみす勝利を目の前にして、それで引き上げろと言うのか……」
ナナ・テスカトリ 「その、何をもって勝利とするのかを、ウカム様と、アカム様は仰っているのではないでしょうか、ドド様」

487: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:32:05.25 ID:oez/cUC10
ウカムルバス 「そーのとうりよぉ。アタシ達は、もーじゅうぶんなの。満足したわ」
アカムトルム 「そーよぅ。よわっちぃ人間踏み潰しても、ぜーんぜん面白くないわぁ。それより、帰ってイイコトしましょぅよぉ」
シェンガオレン 「……気色……悪ィんだよ……オカマども…………」
ショウグンギザミ 「…………父上…………起きて…………らっしゃったのです…………か…………キシャ…………」
ウカムルバス 「カニどもうるさいよ! 今はアタシ達が話してンのよ!!」
アカムトルム 「いい加減にしないと、アゴ美のアゴクラッシュが炸裂するわよ-う!!」

488: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:33:13.91 ID:oez/cUC10
シェンガオレン 「…………いいじゃ……ねえか…………帰れ、役立たずども…………」
ウカムルバス 「ンなんですって!!」
アカムトルム 「キィィ! アンタ、誰に話をしてるか、分かってるの!」
シェンガオレン 「あぁ……どうしようもねェ……臆病者の……くそ野郎……くそオカマとな…………ガキが…………」
ウカムルバス 「!! ……ちょぉぉ~っと、カチンときたわ」
アカムトルム 「アンタが勝手なことばっかりするから、アゴ美が今日、みんなの盾になったんじゃなぃ! ナメんじゃないわよ!」
シェンガオレン 「………………知るか…………役立たずどもは…………みな、死ね…………邪魔だ……」

489: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:35:03.51 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「アゴ美、キバ代、落ち着くんじゃ。シェンも、そんなに攻撃的では、話し合いにならぬ」
シェンガオレン 「…………(ニタニタ)」
ウカムルバス 「……!! でぇもぉ、おじいちゃん、このカニ生意気なのよ!!」
アカムトルム 「ンもう! 不愉快だわ! 行きましょ、キバ代。アタシ達の美肌が、磯臭くなっちゃう!」
ウカムルバス 「もう、寝る! ラオちゃん! とにかく、アタシ達、これ以上は割に合わないから、考えさせてもらうわよーぅ!」
ラオシャンロン 「…………」

490: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:37:25.31 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「……行ってしまったかぃ……何だい、話し合いにならん……」
ランゴスタクイーン 「…………あたいはここを外すよ。無駄な議論は……あんたたちでやりな……」
金レイア 「女王蜂よ! ちょっくらまぢぃ! …………行っちまッだ……」
キングチャチャブー 「オレも……戻らせてもらう。民が待っているからな……」
ラオシャンロン 「…………」
シェンガオレン 「…………ケッ…………猫の手など……いらねぇ…………獣臭ぇ、蛮族どもが…………」
ナナ・テスカトリ 「シェン様! 彼は、わたくしたちの仲間ですよ!」
キングチャチャブー 「…………カニ料理は食い飽きたもんでな…………食材の言葉なんざァ……聞こえねェな……」

492: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:45:19.36 ID:8xAfd/1y0
シェンガオレン 「…………」
ショウグンギザミ 「…………」
ナナ・テスカトリ 「行ってしまわれた……これでは、集会になりません!」
テオ・テスカトル 「ラオシャンロン、とにかく、明日の攻撃をどうするか、それくらいは話し合わないと」
ラオシャンロン 「…………そうだな。その通りだ」
ドドブランゴ 「決まっている……明日は、シュレイド城に攻め込む。貴様らが臆病風に吹かれるなら、いいだろう。わしらがゆく」

495: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 21:53:27.93 ID:8xAfd/1y0
ショウグンギザミ 「…………シェ…………キシェ……ギザミ一族も…………準備は……できている…………」
シェンガオレン 「……皆殺しの…………な…………」
ヤマツカミ 「……お主ら、先ほどから聞いていたが、どうにも、この戦いの主旨を、間違えてはおらぬか?」
シェンガオレン 「…………何ィ…………?」
ヤマツカミ 「わしらは、人間の侵攻を威嚇するために集まった。殺すことが目的ではないのじゃ」
ナナ・テスカトリ 「ええ。その点では、もう、十分目的は達したと、わたくしは思いますわ」
テオ・テスカトル 「私も同感だ。それに、これ以上、我が校の生徒達が蛮虐に走るのは、いい気分はせぬ」

500: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:03:25.78 ID:8xAfd/1y0
ドドブランゴ 「……戦士は、戦ってこその戦士だ……テオ、ナナよ……貴様ら、何のために戦闘を彼らに教えた……?」
ナナ・テスカトリ 「わたくしが教えたのは、人殺しのすべではございませんわ。大切な人の身を守るための、力のありようです」
シェンガオレン 「…………キシェ……キシェ……キシェ……キシェ……キシェ!!」
ナナ・テスカトリ 「……!」
テオ・テスカトル 「シェン殿、我が妻は、何かおかしなことを言っただろうか」
シェンガオレン 「おかしすぎて…………はらわたが飛び出るかと…………思ったぜ………………キシェ……キシェ!!」
ショウグンギザミ 「シェ……シェ……(ニタニタ)」

510: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:10:12.47 ID:8xAfd/1y0
シェンガオレン 「簡単だ…………人間、皆殺しに……すりゃぁ…………敵は、もう、どこにもいねェ…………」
ナナ・テスカトリ 「……しかし、それはもはや威嚇ではなく、単なる蛮行ではないでしょうか?」
ドドブランゴ 「……ナナ、テオ……貴様らには分かるまいよ」
テオ・テスカトル 「ドド殿……何を、ですか?」
ドドブランゴ 「ぬるま湯で育っている貴様らと、貴様らの教え子には、分からぬことがある……」
ナナ・テスカトリ 「…………」

512: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:13:36.47 ID:8xAfd/1y0
ドドブランゴ 「一族の悲しみと、苦しみ…………それを、貴様らは、蛮行の一言で片付けるか…………」
ナナ・テスカトリ 「だからと言って、何をしても許されるわけではないのでは? 感情論では、命は語れません」
ドドブランゴ 「……貴様の言葉は、人間に対して発せられるべきものよ…………愚女が…………」
テオ・テスカトル 「…………我が妻に対する罵倒は許さぬ。ドド殿とはいえ、聞き捨てならぬな」
ドドブランゴ 「…………」
ナナ・テスカトル 「あなた様、良いのです。ドド様、少々言葉が過ぎました。ご容赦を」
ドドブランゴ 「…………」

514: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:19:19.62 ID:8xAfd/1y0
金レイア 「……おめら、喧嘩はよそでやれェ」
銀レウス 「んだんだ。餓鬼じゃねンだがらよぉ」
シェンガオレン 「…………」
ヤマツカミ 「ラオシャンロン、どうするんじゃ?」
ラオシャンロン 「…………シェンの長、ドドの長、あなたたちの言い分は分かります。もっともだ」
ドドブランゴ 「…………」
ラオシャンロン 「鬱積した恨み、つらみ……悲しみ、絶望……犠牲になった仲間は、数知らず……」

515: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:23:48.11 ID:8xAfd/1y0
ラオシャンロン 「私は、その亡骸を見てきた……人間に蹂躙され、骨のみになった無残な遺骸も、この目で、しかと」
シェンガオレン 「…………」
ドドブランゴ 「…………」
ラオシャンロン 「さぞや、無念であっただろう……さぞや、心をお痛めなさっただろう……その苦しみ、察するに余りあります」
ヤマツカミ 「…………」
ラオシャンロン 「しかしながら……おふた方。しばし、私に考える時間を、いただけませぬか?」

517: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:29:05.72 ID:8xAfd/1y0
ドドブランゴ 「……この、敵の根城を目の前に、怖気づいたのか……」
ラオシャンロン 「いいえ……ギザミ一族、そしてブランゴ一族の武勇は、この両眼に刻み込まれております」
ドドブランゴ 「…………」
ラオシャンロン 「あなた方のお力があれば、人間を殲滅することも可能でしょう。そして、人間はそれに値する愚行をしました」
シェンガオレン 「……なら…………何でだ……? なにゆえ……すぐに殺らせねェ……」
ラオシャンロン 「…………」
シェンガオレン 「獲物ォ…………目の前によォ…………いつまで……生殺しすりゃァ…………気が済むよ…………」

519: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:31:55.01 ID:8xAfd/1y0
ラオシャンロン 「私たちは、住処から離れすぎています。分かりませんか?」
ドドブランゴ 「…………!!」
ラオシャンロン 「……そうです。今、住処に残っているのは、女、子供……老人のみ。襲われれば、ひとたまりもありません」
ドドブランゴ 「……その前に、叩き潰すことを提案しているのだ……」
ラオシャンロン 「偵察隊が……人間達が、他所に助けを求めにいく動きを見せているとの、情報を掴んできました」
テオ・テスカトル 「……!」
ナナ・テスカトリ 「……!」

521: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:34:35.72 ID:8xAfd/1y0
ラオシャンロン 「私たちが今、すべきこと……それを、見定める必要があります」
シェンガオレン 「…………知るか…………弱ェ奴らは死ぬ…………それが、自然の……摂理じゃァねェか…………?」
ナナ・テスカトリ 「……わたくしたちが守るべきものは、子供たちです。それが、一番大切なことです」
シェンガオレン 「……黙ってろ…………バカ女…………てめェらの……出る幕じゃ…………ねぇ…………」
テオ・テスカトル 「………………(グルルルルルル)」
ヤマツカミ 「テオよ、不敬じゃ」
テオ・テスカトル 「…………失礼した」
シェンガオレン 「……労害は…………すっこんでろ…………止められても…………オレァ……やるぜ? 腰抜けは……死ね……」

524: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:38:07.16 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「シェン……暴言が過ぎる。戦いとはいえ、本質を見誤っては、犠牲になった仲間にも、申し訳が立たん」
シェンガオレン 「…………死んだのァ…………弱ェからだ…………クズどもが……いくら死のうが……オレぁ……知らん……」
金レイア 「……いんやァ……そりゃぁ、アンタ、ちょいっと違ぇべ」
銀レウス 「すったごと言っちまっだら、おめ、何のだめに戦ってンだァ?」
シェンガオレン 「……決まってる…………血だ……」
ナナ・テスカトリ 「……!」
シェンガオレン 「血が…………足りねェ……………………」

529: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:44:16.72 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「……長とは思えぬ言葉じゃな」
シェンガオレン 「何とでも…………言え…………」
ラオシャンロン 「シェンの長、ドドの長。明日の正午だ……」
シェンガオレン 「…………?」
ラオシャンロン 「明日の正午まで、お待ちいただけないだろうか。私の顔を、立てると思って……」
シェンガオレン 「………………」
ドドブランゴ 「…………良かろう。我が戦士たちに、そう伝える……」
ラオシャンロン 「ドドの長……すまない」

535: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:51:20.25 ID:8xAfd/1y0
シェンガオレン 「…………(ズシン……ズシン……)」
ショウグンギザミ 「(ギロ……ズシン……ズシン……)」
ヤマツカミ 「……行ってしまった。あの者たち……分かっているのか? 本当に……」
銀レウス 「はぁぁ~……カニはどぉーも苦手だなぁ金さんや」
金レイア 「んだなァ。あいづら、余計なごとすねぇどいいげんども」
ナナ・テスカトリ 「……ラオシャンロン様。人間が増援を呼んだというのは……?」
ラオシャンロン 「……そのように、私は聞いています」
ナナ・テスカトリ 「あぁ……何てこと……」

538: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:53:35.83 ID:8xAfd/1y0
テオ・テスカトル 「子供たちがもし襲われでもしたら……」
ヤマツカミ 「……フルフル達が残っておる……上手く立ち回ると思うがの……心配じゃ」
ナナ・テスカトリ 「あなた様、わたくし、一足先に火山へと戻ります」
テオ・テスカトル 「ああ。それがいいだろう。ラオシャンロン、妻を先に帰らせてもよろしいか」
ラオシャンロン 「……仕方がないでしょう。それをお願いしようと思っておりました。クシャル姉妹も、連れて行ってください」
テオ・テスカトル 「承った。我が妻よ、すぐに彼女たちと共に、ここを発つのだ。子供たちを守りなさい」
ナナ・テスカトリ 「かしこまりました、あなた様。失礼をいたします(スッ)」

543: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 22:58:41.98 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「…………ラオシャンロン、引き際を誤ると、あとが怖いぞぃ」
ラオシャンロン 「分かっております、森の神よ。少し……考えさせてください」
ヤマツカミ 「…………」
テオ・テスカトル 「それでは、私も失礼する。ラオシャンロン、少し休まれよ」
ラオシャンロン 「はい。あなた方も、お仲間のもとへ、お戻りください。あまり遅いと、みな不安になる」
ヤマツカミ 「……そうさせてもらうとするかいな……」
金レイア 「んだなァ。ラオぉ、あんま難しぃく考えんじゃぁねぇよ」
銀レウス 「そんだな。おめさんが、全部しょうこだぁねんだ。みぃんな、仲間だかんな」
ラオシャンロン 「ご老人方……お心遣い、痛み入ります」

552: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:18:55.46 ID:8xAfd/1y0
―深夜、別エリア―

クック 「(人間達の砦に動きはない……)」
クック 「(……もう一ヶ月近く、巣に帰っていない……蒼レウス……子クック達……)」
クック 「(私は……無事に戻ることができるんだろうか……)」
クック 「(それに、ラオシャンロンの侵攻……これは、どう考えてもやりすぎだ……)」
クック 「(抵抗力がない人間達の、野営地を襲うなんて……)」
クック 「(沢山死んだ……あの中には、私のように……家に、家族がいる者もいたのだろうか……)」

554: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:22:12.42 ID:8xAfd/1y0
ナルガクルガ 「クックよ。何を、見ている……」
クック 「あァ、ナルガ……休まないのかい?」
ナルガクルガ 「…………眠れなくてな…………」
クック 「…………そうか。こちらへ、来るといい。夜風が当たる」
ナルガクルガ 「…………お前は…………」
クック 「? どうした?」
ナルガクルガ 「…………いや……気にするな。これは酒だ。飲め」

555: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:25:24.85 ID:8xAfd/1y0
クック 「悪いな(グビリ)うむ、美味い」
ナルガクルガ 「……(グビリ)」
クック 「お前は……森に、想い人はいないのか? 気には、ならないか?」
ナルガクルガ 「…………こんな顔をした男を好く、物好きな女はいないな。俺は一人身よ……」
クック 「……そうか」
ナルガクルガ 「……独りが気楽だ……独りはいい。余計なことに、気を回さずに済む……」

557: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:29:37.03 ID:8xAfd/1y0
ナルガクルガ 「女ァ守って、餓鬼守って、そんながんじがらめの生活ァ、俺はまっぴらだ。神経を疑う」
クック 「……はは。違いない」
ナルガクルガ 「………………」
クック 「…………(グビリ)」
ナルガクルガ 「…………歯ごたえがなかった」
クック 「……何がだ?」
ナルガクルガ 「ここに近づくにつれ、人間の抵抗が弱まってきている。今日は、無抵抗に近かった」

559: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:30:44.45 ID:8xAfd/1y0
クック 「…………」
ナルガクルガ 「胸の奥がな……ムカムカする。この感情は、何だ? このイラつきは……何だ?」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「俺ぁ、人間が嫌いだ。反吐を吐くほど嫌いだ。奴らは小ずるく、卑しく、卑怯だ。威厳も尊厳もありはしない」
クック 「……(グビリ)」
ナルガクルガ 「だが……抵抗も、逃走もせず……ただ、ただ恐怖の目で俺を見る。あの目だ……あの目が……」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「気にいらねェ(グビリ)」

561: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:40:04.58 ID:8xAfd/1y0
クック 「それは、お前が戦士だからだよ……ナルガ」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「……戦いとは、その先にあるものを見据えんと、途端に空虚に、むなしくなるものさ……」
ナルガクルガ 「クックよ。俺は、殺してもいいのか」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「このまま、命令の赴くまま、殺してもいいのか。皆殺しにしてもいいのか」
クック 「それは……私にも、分からん。誰にも分からん」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「ただ……私は、妻や、子供が安心して……ハンターの脅威がない世界で暮らせるよう、それだけを願っている」

562: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:45:56.80 ID:8xAfd/1y0
クック 「殺す理由、戦う理由、そんなものは分からん……ただ、それだけだ」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「それだけなんだ……」
ナルガクルガ 「…………(グビリ)」
両耳ガルルガ 「クック、見張り交替の時間よ」
クック 「あァ、両耳ガルルガさん。息子さんは、大丈夫だったかい?」
両耳ガルルガ 「ええ。少し前に出すぎて、爆弾が耳をかすっただけ。いたって無事。ナルガさん、こんばんは」
ナルガクルガ 「…………ああ」

569: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:50:40.47 ID:8xAfd/1y0
両耳ガルルガ 「お酒? 私にもくれない?」
ナルガクルガ 「……(スッ)」
両耳ガルルガ 「どうも(グビッ)~~っ、効くわァ」
ナルガクルガ 「女に飲める酒じゃァねぇ」
両耳ガルルガ 「カッコつけてくれるじゃない。これくらい何てことはないわ(グビリ)」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「……なァ、息子さんは、ここいらで森に帰したほうがいいと、私は思うんだ」
両耳ガルルガ 「…………そうねェ。万が一のことがあって、死んだあの人の後でも追ったらたまんないわ……」

574: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/02(土) 23:55:52.62 ID:8xAfd/1y0
ナルガクルガ 「……ガルルガか……奴は俺の隊だったな……」
両耳ガルルガ 「あの子、どう? 戦士として使えそう?」
ナルガクルガ 「命令を聞かん。あれでは邪魔になるだけだ。性根からどうにかしなければ、使い物にはならん」
両耳ガルルガ 「あははは! はっきり言うわね!」
ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「……まっ……あの子は、随分と甘やかしてきたから。あの人との、今残ったたった一つの思い出だしね……」
クック 「…………帰すべきだ。もう、勝敗は決した。今なら危険もない。帰り道に襲われることもない」

581: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:05:26.40 ID:UXXN61bI0
両耳ガルルガ 「…………分かってる。分かってるよ。明日、帰すつもりなんだ」
クック 「そうか……あんたも、一緒に戻ったらいい」
両耳ガルルガ 「……! 私はまだ戦えるわ! 女だからって、甘く見ないでほしいものね」
ナルガクルガ 「…………戦いの場に女はいらねェ。目障りだ」
両耳ガルルガ 「なっ……言ってくれるじゃない。二人とも。女の強さ、分かってないみたいね」
ナルガクルガ 「…………そのかしましさが、目障りだと言っている」
両耳ガルルガ 「はぁ、青臭いボーヤが、母と大地は敬えって、習わなかった?」

582: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:08:01.32 ID:UXXN61bI0
ナルガクルガ 「……俺は孤児だ。生まれた瞬間に、冷たい谷底に捨てられた」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「事故なのか……故意なのかは知らんがな。母も、大地も、俺にとっては忌まわしい単語でしかない」
両耳ガルルガ 「…………ぷっ……(バシバシ)」
ナルガクルガ 「な……何をする……!」
両耳ガルルガ 「なぁに、それ? 悲劇の主人公ぶっちゃってさァ、新手のくどき文句?」
ナルガクルガ 「ひっつくな……」
両耳ガルルガ 「あんた、よく見るといーい男じゃない。そんなしかめっ面してなきゃ、可愛いわよ」
ナルガクルガ 「…………! 離れろ……!!」

588: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:11:45.03 ID:UXXN61bI0
両耳ガルルガ 「ねぇ、そんな野暮なこと言わずにさァ、お姉さんと飲もうよ」
ナルガクルガ 「……ちっ。俺に触るな!!」
両耳ガルルガ 「(ひょい)おぉっと。情熱的なアプローチ! いい男が、そんなしわ寄せてちゃ、台無しだよ」
ナルガクルガ 「~~~……!!」
クック 「両耳ガルルガさん、若い男をあんまりからかうものじゃないよ」
両耳ガルルガ 「私が若い女じゃないっての? まだまだ現役よ」
ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「あれ? 黙っちゃった? 悲劇の過去の、続きはないの? だーめよ、女の子には最後まで話しなきゃ」

595: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:20:54.53 ID:UXXN61bI0
ありがとうございます。GW、ゆっくり過ごされてくださいね

ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「……ふぅん、そういうキャラでいくんだ(グビリ)ま。寡黙な男ってのもいいかもね」
クック 「……両耳ガルルガさん、ラオシャンロンの決定は、まだ出ないか?」
両耳ガルルガ 「あぁ、そうねぇ……このまま砦に攻め込んで、終わりじゃない? 人間達、もう抵抗する気ないでしょ?」
クック 「やはり攻め込むのか……」
両耳ガルルガ 「あとは、カニと猿。あいつらをどうにか上が抑えてくれることを願うわ」
ナルガクルガ 「……ギザミ一族は、勝手な行動が多すぎる……今日の侵攻も、八割がた奴らの殺戮だった……」
両耳ガルルガ 「…………(ぐびり)」

606: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:37:20.65 ID:UXXN61bI0
お心遣い、痛み入ります。少し気が楽になりました

両耳ガルルガ 「……ま、この戦いも、もうじき終わるわ。いいじゃない。私たちへの被害が、段々減ってるんだから」
クック 「…………私は、そうは思わないんだ……」
両耳ガルルガ 「……え?」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「妙な胸騒ぎがする……何だか、酷いことが起こりそうな……」
両耳ガルルガ 「やだ、不安になるようなこと言わないで」
クック 「…………あァ。すまない」
ナルガクルガ 「……いや、俺もそれは感じている」

608: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:40:11.77 ID:UXXN61bI0
両耳ガルルガ 「ナルガさんまで……悪いことが起こって欲しいの? あなたたち」
ナルガクルガ 「い……いや、そういうわけではないが……」
クック 「…………」
両耳ガルルガ 「じゃ、もっと気楽にいきましょ。ほら、顔の皮が突っ張っちゃうわよ。一、二、はい笑ってー」
ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「……駄目ね。女の子に好かれないわよ。男はね、時々ふっと見せる顔が一番素敵なの。折角いい男なのに」
ナルガクルガ 「……余計なお世話だ(ぷいっ)」
両耳ガルルガ 「あ、ちょっと今照れた? ねぇ照れた?」
ナルガクルガ 「………………」
両耳ガルルガ 「顔赤くなってるわよぉ、照れてるんでしょう?」
ナルガクルガ 「………………」

610: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:41:26.54 ID:UXXN61bI0
クック 「(……あのナルガが、怒鳴りつけないとはな……)」
クック 「(両耳ガルルガさんの人柄もあるのだろうが、彼もまた、不安になっているのだろう……)」
クック 「(……いやな風だ……生温い……)」
クック 「(星も見えない……明日は雨か?)」
クック 「(黒い空だ……まるで、ぶちまけた血のようだ……)」
クック 「(人間の砦には、気配がない…………)」
クック 「(もう、勝利は確定しているというのに、この胸騒ぎは一体何だ……?)」

635: 三毛猫 ◆58jPV91aG 2009/05/03(日) 00:57:01.61 ID:UXXN61bI0
持続せずに、ご迷惑をおかけいたします
胸の痛みが、少々きつくなってまいりました
このスレに不快な思いをなさった方がいましたら、申し訳ありませんでした

明日、21:00にまた投稿をさせていただきます
このスレが残っていた場合は、ここに
残っていなかった場合は

ウカムルバス 「最近アゴ美の顎関節症が酷くてねェ」

というスレタイで、新しく立てさせて頂きます

それでは、明日は日曜日ですね。イッテQが野球でつぶれてしまったのが、とても悲しいです
みなさま、温かいお言葉、感謝をいたします

おやすみなさい