1: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:23:18.941 ID:TAD6vt0xM
医者「逆行性アルツハイマー病です」

堀裕子「はい?」

医者「逆行性アルツハイマー病です」

こんにちは!皆さん!名乗る程では無いですが
サイキック美少女アイドル堀裕子です!

突然ですが、最近私何かと物忘れが酷くて
この前なんか何を間違えたか家から
リモコン持ってきちゃったんですよ!

しかし、私はサイキッカーですので
ムムムン!と一度念じて
家までリモコンをテレポート!
まさにサイキックです!流石ですね!私!

引用元: ・【モバマスss】P「よぉユッコ」堀裕子「どなた様でしょうか?」

3: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:24:11.461 ID:TAD6vt0xM
あっ、それでプロデューサーさんが
「万が一があったら困るし病院行くぞ」って事で
ただいま病院に居るんですよ

そして私は、逆行性アルツハイマーと言われてしまいました

うーん
何なんですかねそれ
私にはイマイチ分かりません

プロデューサーは知ってますか?

4: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:25:15.951 ID:TAD6vt0xM
P「アルツハイマーって…名前は聞いた事もあるんですが」

お医者さんはちっとも笑わずに淡々と
台本でも読むみたいに言葉を続けます

医者「アルツハイマーに加え堀さんの場合かなり特別なケースです…」

特別…?私が特別って事ですか
褒められてるですかね

P「特別って…どういうことでしょうか」

医者「簡潔にお話しましょう」

6: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:26:06.668 ID:TAD6vt0xM
医者「アルツハイマーと言うのは忘れる病気と思ってください」

P「忘れる病気ですか…?」

あっ私分かります!認知症ってやつですよね!

医者「厳密に言うと違いますがその様なものだと思ってください、初期症状としてご友人の名前を忘れてしまったり、症状が進むとお金の使い方やリモコンの使い方を忘れてしまい、最終的には呼吸の仕方すら忘れて死んでしまう難病です」

ん?死ぬ
この人いま死ぬって言いました?
私死んじゃうんですかね

7: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:27:01.831 ID:TAD6vt0xM
P「でしたら!今すぐ治療を!ユッコはまだ16歳なんです!」

私が言いたい事を伝えてくれました!
流石は私のプロデューサーです!
やはり私達程の仲になると何も言わずとも
サイキックテレパシーで伝わるんですね!
むむむん!

医者「そうしたいのは山々なんですが先程も申し上げた通り堀さんの症状はかなり特別なんです」

8: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:27:47.607 ID:TAD6vt0xM
P「だいぶ遠回しな言い方ですね…」

医者「おっと失礼では端的に申し上げます」

医者「通常のアルツハイマーが新しい記憶から無くなってくのに対して堀さんの場合古い記憶から無くなっていきます現時点で有効な治療方法はありません」

だそうですお父さんお母さん
私、堀裕子は何か凄い病気に
なってしまったそうですアーメン
ところでアーメンって何なんですかね

9: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:28:46.460 ID:TAD6vt0xM
連投規制かかったらごめんなさいする

P「大丈夫か?ユッコ」

堀裕子「何がですか?プロデューサー」

P「いや…さっきさ医者にあんな事言われてさ死んじゃうとか忘れるとか」

堀裕子「まっさかープロデューサーあんな事気にしてるんですか?」

P「そらそうだろ医者が言ったんだし」

10: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:29:05.523 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「ふっふっ私を誰だと思ってるんですか!私はアイドルです!と言うかサイキッカーです!何の心配も要りませんよ」

堀裕子「と言うか私が死んじゃったら誰がプロデューサーの道案内するんですか!ただでさえ方向音痴何ですから」

11: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:30:03.245 ID:TAD6vt0xM
───────事務所

堀裕子「と言う訳で私堀裕子は少しの間アイドルをお休みさせて頂くことになりました!」

一同「えーっ!」

事務所の皆が目をまん丸にして驚いています
それもそのはず、プロデューサーと相談して
一応私の病気については秘匿する事になったので

何でもプロデューサー曰く病気が良くなった時
復帰の際のダメージを少しでも減らしたいから
だそうです

うーむ…大人の世界の話は私にはよく分かりませんが

あまり皆に心配かける訳にもいきませんからね
仕方ありません

12: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:30:45.436 ID:TAD6vt0xM
輝子「あ、アイドル辞めちゃうのか?」

堀裕子「アイドルは辞めないよ少しの間お休みするだけだから絶対戻ってくるよ」

輝子「ほ、本当か?わ、ユッコが居なくなったら寂しい…からな約束だ…ぞ」

堀裕子「うん!約束ね!輝子ちゃん」

早苗「ウェエエエエン!ユッコちゃん…絶対戻ってきてねぇえええ!セクシーギルティは不滅よおおおお!!」ズビーッ

堀裕子「さ、早苗さん!?泣かないでください!死ぬわけじゃないんですよ!」

いや死ぬんでしたっけ?

13: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:31:10.026 ID:TAD6vt0xM
ううん!死なない死なない
余計な事を考えるのは辞めましょう

雫「ユッコちゃんファイトですよー!」

堀裕子「ありがとうございます!雫ちゃん!私よく分かりませんけど頑張りますね!」

なんだか皆に会えたら元気が湧いてきた気がします

ここはやっぱり私にとって特別な場所なんだなーって改めて思いました

14: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:31:41.156 ID:TAD6vt0xM
卯月「ユッコちゃんお勉強辛いかもしれませんが頑張ってくださいね!」

幸子「ユッコさん!この可愛い僕を先置いて花嫁修行なんて負けませんよ!」

あやめ「くっ…流石はユッコ殿!サイキック修行をする為に渡米とは思い切りましたね!」

堀裕子「あはは…」

プロデューサーがどんな言い訳を使ったのかは
分かりませんが統一性は無さそうです

15: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:32:35.187 ID:TAD6vt0xM
P「ユッコすまんが時間だ行くぞ」

堀裕子「すみません!私行かなくちゃいけないそうです!」

仁奈「もう行っちゃうんでこぜーますか…?仁奈寂しいですよ…」

ヤバいです仁奈ちゃんが今にも泣き出してしまいそうです
ここはサイキッカーとしての使命を!

堀裕子「大丈夫だよ仁奈ちゃんこのスプーン見ててね」

堀裕子「では最後に私からサイキック~スプーン曲げ!ムムムーン!」

16: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:33:00.500 ID:TAD6vt0xM
はい


案の定スプーンは曲がりませんでしたが
皆が笑ってくれたので良しとしましょう!

堀裕子「ではしばらく皆さんお元気で!」

346プロの皆に挨拶を済ませると
私は足早にプロデューサーの車に乗りました

事務所の皆の事は大好きですし
今日言ったことも全部私の本音です!

でも…何故でしょうか何だか嘘をついてるみたいで
少し申し訳なくなりました

そしてここから私の
短くて長い入院生活が始まりました

17: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:33:42.067 ID:TAD6vt0xM
P「よぉユッコ」

堀裕子「へっ?また来たんですかプロデューサー!」

P「俺が…来ないと退屈だろ?ほらお土産」

堀裕子「わぁー!月間モノリスじゃないですか!」

堀裕子「私欲しかったんですよ!こんなんだから買いにも行けませんし!」

堀裕子「あっ…もしや私が欲しがってるのをテレパシーで読み取りました…?」

P「テレパシーなんか使わなくてもユッコの考えてることぐらい分かるよ」

堀裕子「えっ////そ、そうですか////」

18: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:34:08.134 ID:TAD6vt0xM
はい、と言うふうに以外にも入院生活は
プロデューサーのお陰で退屈せずに住んでます

お医者さんにもプロデューサー君は偉いねぇなんて
言われちゃっていや~何か照れちゃいますね
流石は私のプロデューサーですね!

P「あっすまん俺時間だから帰るな!じゃあな!」

まぁ楽しい時間はあっという間なんですが

19: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:34:40.481 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「プロデューサー帰り気をつけてくださいよ?!方向音痴何ですから」

P「分かってるよ早くこの病気直してさ、いつものサイキック道案内してくれよ?」

堀裕子「私のサイキック道案内が外れるわけないですからね!プロデューサーは私が居ないと迷っちゃいますからね!

21: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:35:33.825 ID:TAD6vt0xM
はい。と言う風に日常は違和感なく過ぎてゆきます

その間、私の病気には特に変化がありませんでした

あれ?これって喜んでいいんですかね…?

お医者さんが言うにはこの病気は分かりづらい病気らしいです普通のアルツハイマーなら親しい人の名前とかでも忘れちゃうから本人も自覚しやすいし周りのサポートもやりやすいそうなんですが

私の場合古い記憶から消えていくので
私以外には分かりようもないらしいんです
古い記憶なんて元々忘れていくものだから
どれがこの病気で忘れたのかも分からないし

それに私は忘れた事を忘れてしまうから

22: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:36:27.235 ID:TAD6vt0xM
この病気が普通のアルツハイマーと比べて
厄介な理由はそこだとお医者さんは言ってました

P「ん…どうしたユッコ?」

堀裕子「あ、はい考え事ですよ!考え事!私だって花も恥じらう乙女ですからね、そりゃ考え事の一つや二つありますよ!」

P「そうか…ならいいんだけどな!」

P「それよりお前UNOって言ってないだろ?俺の勝ちな」ペラ

堀裕子「えっ?あ、やられました!私とした事がズルいです!ズルいです!プロデューサー!」

23: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:36:53.669 ID:TAD6vt0xM
P「入るぞーユッコって」

P「何してるんだそれ…?」

堀裕子「お疲れ様です!プロデューサー!」

堀裕子「これはですね今流行りのアニメを見ていたんです!凄く面白いんですよ」

P「あーこれ確か菜々さんが昔見てたってやつのリメイクか」

堀裕子「らしいですね!私は当時は小さかったので覚えていませんが面白いですよ!」

24: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:37:17.744 ID:TAD6vt0xM
P「…そうか」

P「あとその主人公三話で死ぬぞ」

堀裕子「ちょっ何でネタバレするんですか私まだ全部見れてないんですよ!」

P「あはは」

26: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:38:00.901 ID:TAD6vt0xM
病気って気づいた時には手遅れって言いますよね

いつ見たのかは覚えてませんが、バラエティ番組なんかでこう言う事を見る度に、えーほんとかなー?とか思ってました
この記憶があるって事はそんなに昔の記憶じゃないのかな

あっ、でも私今まで自分が風邪引いた事ないって信じてたんです

熱が出たり、寒くなったり、体が怠くなる事は
たまーにありましたが…

今思い返せばあれは風邪だったのかもしれません

えっ?回りくどい言い方は私に似合わない?

27: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:38:50.227 ID:TAD6vt0xM
失礼なー私だって…ゴホン

まぁ、つまり何が言いたいかと言うと
私今まで気付かないふりをしてきたんですよね

自分は風邪じゃないって気付かないふり
自分は病気じゃないって気付かないふり

私は私が病気になっただなんて認めたく無かったんです

だから

気づいた時には

私は

繧オ繧、繧ュ繝?き繝シ縺ォ縺ェ縺」縺溘?縺

を忘れていました

28: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:40:39.431 ID:TAD6vt0xM
医者「プロデューサーさん、ここ小さくなってるの分かる?」

P「はぁ…」

医者「ここは海馬と言って記憶を司る部分です」

医者「でこれが、堀さんの数週間前の海馬のスキャンです小さくなっているのが分かりますか?」

医者「恐らくですが、彼女は自分の記憶の中でも重要な部分を失ってしまったんでしょう」

医者「…プロデューサーさん大丈夫ですか?」

29: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:41:42.246 ID:TAD6vt0xM
医者「この病気はlv1を抜けるとlv2.lv3と今までとは段違いのスピードが症状が悪化していきます」

医者「辛いかもしれませんが堀さんもそうです我々も全力で手を尽くしますが万が一の覚悟はしておいてください…」

30: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:42:29.988 ID:TAD6vt0xM
志希「人間の体を構成してる細胞ってさ大体250種ぐらいあるんだけどさー」

志希「その大体が一年ぐらいのペースで別の細胞に変わっちゃうわけ」

志希「つまり一年前の私と今の私は大体別物なんだー」

志希「でも私は一年前から変わらずに私な訳じゃない?フレちゃん風に言うと私は私だからー!みたいな感じかなにゃは」

志希「十年前の記憶を持ってるから私、五年前の記憶を持ってるから私、十秒前の記憶を持ってるから私って訳」

志希「じゃあ私が記憶喪失か何かでぜーんぶ忘れちゃって全くの別人として生きることになったら私は私として言えるのかにゃーって」

志希「にゃはは君はどう思う?」

そうですね私は​───────

31: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:43:41.179 ID:TAD6vt0xM
あっちゃー気づかない間に私倒れてたみたいです
私の腕には管みたいなのが刺さってました

本格的にサイキック入院!って感じですかね
アハハ

あと、夢をみてました
志希ちゃんと初めて喋った時の夢
あれっていつの話でしたっけ…?
うーん…思い出せません

あっ、でも覚えてるってことは
そこまでは病気が進んでないって事ですね!
ふー良かった一安心安心

32: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:44:23.305 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「あっお疲れ様です!プロデューサー!」

堀裕子「見てくださいよーこの管凄くぶっといんですよー!」

堀裕子「私だって女の子なんですからね!これで怪我とかあったらどうするんだって話ですよね!」

P「…」

堀裕子「あ、でもこれって私の治療の為の道具なんですよねハハ…勘違いしちゃいました」

P「あのさユッコ」

33: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:44:51.834 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「はい!ユッコです!どうしましたかプロデューサー」

堀裕子「もしかしてあれですか?私の病気がもう治っちゃったみたいなー!まぁ私にかかれば病気なんてサイキック治療で御茶の子さいさいですからね!」

堀裕子「いやー流石ですね私は!サイキック美少女アイドル堀裕子ここにありって!ハハ八」

P「ユッコお前小学校の頃の記憶覚えてるか?」

34: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:45:29.382 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「…」

あーあ言っちゃいましたプロデューサー
気づきたくなかったんですよそれ

P「お医者さんが言うにはお前は大切な記憶を忘れてしまって、そこから来る精神的な負担で倒れてしまったんだって…」

P「ユッコお前…ラジオ番組で前言ってたよな『私がサイキックに目覚めたのは小学校の時です!』」

P「『給食のスプーンを曲げて皆を驚かせました!その時私にはサイキック能力があるのが分かったんです!』って」

P「お前…忘れちゃったのか?」

35: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:46:23.647 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「……………」

堀裕子「はい…多分忘れちゃったんだと思います」

P「多分って…」

多分は多分なんですから仕方ないですよ
私は今に至ってまで自分で信じたくないんです

堀裕子「私、忘れちゃった事すら忘れちゃったんですよ今の話聞いてもピンと来ませんでしたもん」

堀裕子「でも多分それなんだと思います、勿論私は堀裕子である以前にサイキッカーです」

堀裕子「でも私がいつサイキッカーになったのかも覚えていませんし小学生だった頃の記憶もありません」

堀裕子「だからそうなんだと思います」

堀裕子「私は多分私の原点を忘れちゃったんだと思います」

36: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:46:56.337 ID:TAD6vt0xM
莉嘉「えー!絶対嘘だよ!ユッコちゃんが病院になんている訳ないじゃん!」

梨沙「ホントよ!私パパと一緒にデートしてた時に見たんだから!きっとビョーキよ!ビョーキ!」

仁奈「えーっ!ユッコおねーさん病気でごぜーますか!」

莉嘉「しーっ!仁奈ちゃん声大っきいよ」

梨沙「私ユッコが活動休止してる理由サイキック修行って聞いてるもの!絶対何か裏があるわ」

晴「まぁまだ病気って決まったわけじゃねーし? もしかしたら風邪かもしんねーじゃん」

千恵「で、でもユッコさんが風邪になるなんて…」

37: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:47:34.437 ID:TAD6vt0xM
みりあ「じゃあ!皆でお見舞いに行こーよ!お見舞い!」

みりあ「そしたらユッコちゃんも直ぐに元気になって前みたいに一緒にアイドル出来るよ!」

梨沙「ふーん…まぁいいんじゃない?」

仁奈「仁奈もいくでごぜーます!」

晴「俺はパスで」

38: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:47:50.175 ID:TAD6vt0xM
梨沙「ちょ晴!ここは行く流れでしょ!」

晴「いやこう言うのは人数居てもあれだしな」

梨沙「まぁそうね…じゃあ私もパパとデートするからパスで」

千恵「すみません私しばらくお仕事があって…」

莉嘉「あたしはいくー!」

みりあ「じゃあ来週私と仁奈ちゃんと莉嘉ちゃんの三人でお見舞いね!」

仁奈「楽しみでごぜーます!」

40: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:48:25.564 ID:TAD6vt0xM
今の私ってなんなんだろうって思う

私はサイキック美少女アイドル堀裕子なのに

自分がどうしてサイキッカーになったのかも
忘れてしまって

アイドル活動も休止して

私自身を見失ってしまうのも時間の問題だと思う

あっ、でも病気になっても私は美少女ですよ

って言うことをプロデューサーさんに伝えたら

P「ユッコは変わらないなぁ」って

なんですか、それ褒めてるんですか
分かりませんよープロデューサー

でも、もし褒めてくれてたんだとしたら

嬉しいなぁ

42: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:49:18.591 ID:TAD6vt0xM
「「「失礼しまーす」」」

おやお医者さんでしょうか?
それともプロデューサー?

闔牙?「あー案外元気そう!さてはサボったなー!」

縺ソ繧翫≠「ユッコちゃん!久しぶり!病気だいじょーぶ?」

莉∝・「ユッコおねーさん!サボりはいけねーんでごぜーますよ!」

あれ?

すみません?どなた様でしょうか
私に小さな女の子のお友達なんて居ましたっけ

43: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:49:49.607 ID:TAD6vt0xM
縺ソ繧翫≠「あれーどうしたのユッコちゃん?さっきからずーっとぼーっとしてるよ」

闔牙?「ヤバっ!もしかして本当に風邪だったの?大丈夫!?」

莉∝・「お、お医者さんの気持ちになるですよー!」

あーなるほど!
カンの鈍い私でも分かっちゃいました!

私は忘れちゃったんですねこの子達の事

44: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:50:28.643 ID:TAD6vt0xM
P「ユッコ来たぞー」

P「…反応が無いけど入るぞー」ガチャッ

P「よぉユッコ」

堀裕子「…」

P「どうした?今日はテンション低いな」

P「いつもだったらサイキックなんちゃら~とかサイキックうんたら~とかいってるだろ」

堀裕子「…あのプロデューサー」

P「なんだ?」

堀裕子「さっき女の子が来たんです小さな女の子が三人」

P「おう」

45: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:51:14.712 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「私がアイドルをしていた頃のお友達なんだと思います」

堀裕子「その子たち…私が風邪だって思ったみたいで」

堀裕子「凄く心配してくれました」

堀裕子「熱は無い?気分は悪くない?寒くない?って」

堀裕子「でも、私その子たちの事忘れちゃってるみたいで」

46: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:51:37.161 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「ありがとーありがとーって」

堀裕子「名前で呼んであげられなくて…」

堀裕子「あれ…そう言えば私なんでアイドルになったんでしたっけ…あはは…」

堀裕子「ごめんなさい…プロデューサーさん…ユッコはアイドル失格です…」

P「…ユッコ」

47: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:52:37.903 ID:TAD6vt0xM
P「ちょっと痛いかもしれないけど許してな」

堀裕子「はい?どう言うこ…あいたぁっ」ブチッ!

堀裕子「どうしたんですか!急に管みたいなやつ外して!」

P「ユッコ…行くぞ」

堀裕子「行くってどこにですか!私、道も忘れちゃうから外にも出るなって言われてるんですよ!」

P「大丈夫大丈夫、全部俺のせいにしていいからさ取り敢えず手を握ってくれ」

堀裕子「は、はい?」

49: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:54:30.172 ID:TAD6vt0xM
プロデューサーさんは良く分かんない人です
いつも皆の前で笑っててすごく優しくて

だって私サイキックサイキック言ってますけど
プロデューサーさんの前で成功させた事
無いんですよ?

今となってはあんまり覚えてないですけど

それに私がこの病気になってから
プロデューサーさんは一度だって
欠かさず顔を合わせに来てくれましたよね

ユッコが俺の事忘れてもすぐに思い出せるよう

って冗談めかして笑って

私聞きましたよ?
プロデューサーさんは私に会いに来てくれた後も他の皆の業務もしないといけないからって
毎日事務所に残って作業してるんですよね

50: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:55:14.530 ID:TAD6vt0xM
体を壊すから無茶しないようにって
言っても聞かないんだよ!って

あの子たちに怒られちゃいました

それに今だって私の手を引っ張って
行こう!って

あぁ私に読心術があればなぁ
プロデューサーさんが何を考えてるか
すぐに分かっちゃうのになぁ

プロデューサーさんは本当に分からない人です

ねぇプロデューサーさんはどうして
私の為にここまでしてくれるんですか

51: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:55:55.596 ID:TAD6vt0xM
>>48
する


P「あ痛っ!」

堀裕子「大丈夫ですかプロデューサー!?って血が出てるじゃないですか!」

P「こんなの何でも無いから大丈夫だ…それにほら着いたぞ」

─長い長い階段を登るとそこは屋上
何処にでもある普通の屋上のはずでした

堀裕子「わぁ…綺麗」

本当の本当に美しい風景

52: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:56:41.471 ID:TAD6vt0xM
真っ白な空のキャンバスにオレンジ色の絵の具を混ぜたみたいな空
まるでこの世界には私たち二人しか居ないんじゃないかなって思わせてくれるようなそんな夕焼け

P「綺麗だろ…?」

P「ユッコは多分今から色んな事を忘れてくだろうし俺のことも忘れるんだと思うけどさ」

P「この光景だけは絶対に忘れられないだろ?」

あぁそっか
やっぱりそうなんだ
プロデューサーはやっぱりそうなんだ

プロデューサーがわかんない人だなんて
そんな事ありませんでした

53: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:57:13.580 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「ダメです…」

堀裕子「ダメですよプロデューサー私これだけじゃあ明日にでも忘れちゃいますよ」

堀裕子「私は欲張りなんですから」

日が赤色の空と夕映えの雲に名残を留めて
黒く染まる

堀裕子「だから…」

堀裕子「テレパシーじゃあ…伝えられない事プロデューサーの口から言ってください…!」

さっきまで空を覆っていたオレンジ色の世界は
一瞬の内に黒色に世界を飲み込み変えていく

54: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:57:37.586 ID:TAD6vt0xM
P「そっか」


P「ユッコ…俺さユッコの事…」






あぁ、もし私に犬みたいにしっぽがあったら、きっと嬉しさを隠しきれずにぶんぶんと振ってしまうと思う。

「あたしは犬じゃなくて、よかったなあ」

なんてほっとしながら思って、そういうことに、「私って馬鹿だなあ」ってあきれちゃいました

55: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:59:08.120 ID:TAD6vt0xM
P「おーいユッコ居るかー」

堀裕子「はーい居ますよー」

P「お邪魔しまーす」

P「よぉユッコ」

堀裕子「どなた様でしょうか?」

56: 名無しさん 2020/07/03(金) 22:59:57.702 ID:TAD6vt0xM
P「あー案外早かったな」

堀裕子「あっ…ごめんなさい私病気で忘れちゃう病気らしくて」

堀裕子「もしかして私のぷろでゅーさーさんですか?」

P「あ、なんだ俺の事覚えてるの?」

堀裕子「あ、いえすみません…さっき女の子達が来ててこれ346プロの名簿だってくれたんです」

堀裕子「手作りみたいで頑張ったんでごせーますよ!って言ってましたうふふ」

堀裕子「あ、すみません!それでここの最後に載ってるPって人と貴方の姿がそっくりだったのでそうかなーって思っちゃって」

57: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:00:39.816 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「私この病気になる前はアイドルやってたんですね!信じられません!」

P「それに普通のアイドルじゃなくてサイキック美少女アイドルだからな個性強すぎるんだよ」

堀裕子「うっ…私そんな事言ってたんですね覚えてないとは言え恥ずかしいです…」

P「あ、そう言えば丁度持ってきたんだ」

P「ほれ先割れスプーン」

堀裕子「なんでしょうかこれ?」

P「昔のお前はな、こうスプーンを持ってムムムーン!ってスプーン曲げしてたんだよ」

堀裕子「うぇーっ…昔の私って本当に個性強かったんですねー」

P「じゃあさ、いい機会だし一回やってみようよ」

58: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:01:14.579 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「えっ私がですか?いや無理ですよムーリ!」

P「いやーそんな事言わずにさ一回だけでいいから!お願い!」

堀裕子「んー…いやそんな顔しないでくださいよ!分かりましたからって!一回だけですよ?」

堀裕子「私、サイキッカーとかじゃないんですから期待しないでくださいよ…?」

堀裕子「では…スプーンよ曲がれー!ムムムーン!」

P「おおっ!」

堀裕子「えっ!?」

59: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:01:36.896 ID:TAD6vt0xM
P「……」

堀裕子「…風で手元が揺れただけでしたねスミマセン」

P「いや無茶振りさせたのはこっちだしさ気にしないでいいよ」

P「まぁそれより話をしよう!まずは何がいいかな…そうだ!お前が雨雲をとっぱらって晴れにした話でもするか!」

堀裕子「ええっ!私そんな事してたんですか!」

60: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:01:58.852 ID:TAD6vt0xM
P「よぉユッコ入るぞ」

堀裕子「えっどなたですか!?」

P「俺だよ俺プロデューサー」

堀裕子「分かりませんので名前で名乗ってください!」

61: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:02:35.220 ID:TAD6vt0xM
P「でさー菜々さんが泣いちゃって」

堀裕子「ふふっ」

P「あ、時間みたいだな」

P「じゃあ明日またくるわ」

堀裕子「そ、そうですかではさよならー…」

62: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:03:02.931 ID:TAD6vt0xM
P「よーユッコ」

堀裕子「どなた様でしょうか?」

P「おれお前のプロデューサー分かる?」

堀裕子「わかんないですよ!」

63: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:03:52.654 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「すごいんですね!繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シさんって!」

繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シ「…呼びにくいんなら無理にプロデューサーって呼ばなくていいからさ全然適当に呼んでよ。何ならお前とかでも大丈夫だぞ?」

堀裕子「あっ…分かっちゃいました?じゃあスーツさんって呼びますね!」

繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シ「あはは外見の特徴だけじゃねーか!」


さんは本当に優しい

こんなすぐに忘れてしまう私にも
何日も何日もお見舞いに来てくれたんだと思う

私は忘れてしまうので確証は持てないから多分

64: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:05:00.730 ID:TAD6vt0xM
でも、私は数日中に確実に死ぬ

この病気になり始めた頃は昔の記憶が
思い出せない程度だったらしいけど
今の私には昨日の事も思い出せない

次に私が忘れてしまうのは体の動かし方
お医者さんは言ってました

だからこの人と意識を持って会うのもたぶん今日が最後
そう思うと何だか感慨深い物がある

死の輪郭が形を持って私の前に立っている
と言うのに今の私にはそれすら感じられない

死が怖くないって点では、私はこの病気になって
良かったのかもしれない

だから私に多分悔いは無い
自分を全うして生きることが出来たから

こんなに健やかな気持ちで死を迎えられる

65: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:05:33.338 ID:TAD6vt0xM
繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シ「あっすまんもう時間か!」

繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シ「じゃあ明日もまた来るからな!そん時にはまた自己紹介だ!じゃあな!」

って

本当にこれで良かったんだろうか

私の人生

私はまだこの人に何も出来てないんじゃないだろうか

私は​───────

堀裕子「あっあの!」

繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シ「ん?どうした」

66: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:06:04.311 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「わたし多分今日が最後…だと思います直感的に分かるんです…あっサイキック直感!ってやつですかね」

堀裕子「あの…だから!今までありがとうございました!」

堀裕子「覚えてないですけど多分凄くお世話になったので!私楽しかったです!」

言えた

繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シ「なんだ…そんな事か…俺もユッコとの時間本当に楽しかったよ」

言えて良かった

繝励Ο繝?Η繝シ繧オ繝シ「じゃあこれで本当にサヨナラだな元気で」

だからサヨナラ

堀裕子「お元気で!」

ありがとうございました

私あなたとアイドルをやれて本当に幸せでした

67: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:10:03.471 ID:TAD6vt0xM
ごめんなさい

私はやっぱり欲張りみたいです

一つじゃ我慢出来ません

思い出さなくてはいけないことが山ほどあるんです

あなたとの思い出は一つじゃ足りない

あなただけじゃない仲間との思い出も

68: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:10:46.892 ID:TAD6vt0xM
髪をふたつに結んだ人

朗々とした人

笑顔の素敵な人

カワイイ人

忍者の人

着ぐるみを着た女の子

色んな色んな人

全部思い出さなきゃいけません

70: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:11:22.665 ID:TAD6vt0xM
だから

だから

だから

だから!

私はムムムーン!と唱えてみました

71: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:12:07.483 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「待ってくださいプロデューサー!」

P「ん…どうした?さっきが最後のお別れじゃなかったのか?」

堀裕子「あっ…あの!」

堀裕子「もう私が居なくても迷わないでくださいね!約束ですからね!」

堀裕子「あっ、あと!皆に宜しくお願いしま
す!」

堀裕子「あっ!それと!夕焼け綺麗でした!」

P「…」

P「…おっけー!」

72: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:13:06.215 ID:TAD6vt0xM
P「じゃあユッコも強く生きろよ!」

堀裕子「はい!なんだって言って私はサイキック美少女アイドルですよ!もちろん強く生きてやりますよ!」

P「じゃあ行くぞ!ほんとに元気でな!」

堀裕子「はい!お元気で!プロデューサー!」

P「ホントにホントに元気でな!」

堀裕子「恥ずかしいんですから早く行ってください!」

P「分かった!じゃあな!」

ガチャン

堀裕子「行っちゃいましたね…」

73: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:14:18.491 ID:TAD6vt0xM
あぁ意識が薄くなってきた

あれからどれくらい時間が流れたんだろう
あれ?あれからってなんだっけ…

まぁいっか

私の周りで色んな人が泣いてる
皆必死に泣いて「死なないで」って

あぁそっか私は死ぬんだ

私はこの半生で何を成し遂げられただろうか

今となっても忘れてしまったけど

でも

あっ…思い出しました!

74: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:15:33.431 ID:TAD6vt0xM
にゃはは君はどう思う?

私はそれでもいいんじゃないかと思います!

だって私はアイドルですから!私が私の事を忘れちゃったとしても皆の心の中に私は生き続けますよ!

私はサイキック美少女アイドル堀裕子ですからね!

あぁそっか

自然と笑みがこぼれていた

私はちゃんと残せていたんだ

75: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:16:51.697 ID:TAD6vt0xM
私が忘れちゃっても
私には私を思い出してくれる

仲間が

ファンが

大切な人が居るから

あー良かった!良かった!です

私アイドルやってて良かったです!

だからありがとうございました



そして私は

ゆっくり

ゆっくり目を閉じました

76: 名無しさん 2020/07/03(金) 23:17:42.531 ID:TAD6vt0xM
堀裕子「と言うお話なんですけども…」

菜々「え゛ぇ゛え゛え゛!良か゛っだでずぅ!」

P「うーん良かった!」

堀裕子「あっ!プロデューサーさん今適当な事言いましたね!」

おわり