1: 名無しさん 2020/11/16(月) 21:48:21.828 ID:Hz4uerXm0
このスーパーでは19時になると、惣菜に半額シールが貼られる。

女店員(そろそろ、19時――お客さんがみんなソワソワしてる)

客A「……」ソワソワ

客B「……」ドキドキ

客C「……」ワクワク

女店員(んもう、せっかちなんだから……よーし、そろそろ貼ってやるか!)

男「……」サッ

女店員「え……!?」

引用元: ・女店員「すごい……あの人、半額シールが貼られる前にお惣菜を買っていった……」

11: 名無しさん 2020/11/16(月) 21:51:17.818 ID:Hz4uerXm0
男「……」スタスタ

女店員(すごい……! まだ半額シールは貼られてないのに……!)

ドヨドヨ… マジカヨ…

女店員「ちょっと待って!」

男「ん?」

女店員「どうして……!? どうして半額シールが貼られる前にお惣菜を買ったんです!?」

男「俺は……金持ちだからね」キラッ

女店員(彼の真っ白とはいえない歯が光った時……私のハートはときめいていた)

21: 名無しさん 2020/11/16(月) 21:54:11.100 ID:Hz4uerXm0
……

女店員「A牛乳はさっぱり売れないなぁ……」

A牛乳 200円

B牛乳 180円

女店員(この二つの牛乳、B牛乳の方が味もいいし、当然いつもBばかり売れ、Aは売れ残る)

女店員(だけど――)

男「……」サッ

女店員(この人はいつもA牛乳を買っていく!)

27: 名無しさん 2020/11/16(月) 21:56:41.039 ID:Hz4uerXm0
女店員「待って!」

男「ん?」

女店員「どうして……どうしていつもA牛乳を買うの?」

女店員「B牛乳の方が安くておいしいのに……」

男「俺は……金持ちだからね」キラッ

女店員「……!」ドキンッ

30: 名無しさん 2020/11/16(月) 21:59:26.367 ID:Hz4uerXm0
……

男「……」

女店員(今日の買い物は500mlペットボトル一本だけか……)

女店員(十分手で持って帰れるけど……)

男「レジ袋ください」

レジ係「かしこまりましたー」

女店員「なんですって!? なんでわざわざ……!」

33: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:02:38.480 ID:Hz4uerXm0
女店員「あ、あのっ!」

男「なんだい?」

女店員「どうしてレジ袋を……?」

女店員「今は有料ですし、ペットボトル一本なんて袋に入れるほどのものでもないのに……」

男「俺は……金持ちだからね」キラッ

女店員「すごい……!」

38: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:05:17.063 ID:Hz4uerXm0
女店員「試食いかがですかー」

女店員「お一ついかがですか?」

男「……買わせてもらうよ」

女店員「えっ、試食もせずにどうして……!?」

男「俺は……金持ちだからね」キラッ

女店員(シビれちゃうぅぅぅぅぅ!)

44: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:09:08.984 ID:Hz4uerXm0
女店員(あの人ってどのぐらいお金持ちなんだろう?)

女店員(実家が資産家なのか、社長をやってるのか、株で儲けたのか……)

女店員(有名人と比較すると、誰ぐらいだろう……)

女店員(まさか……ビル・ゲイツ級!?)

女店員(家にはポルシェ? ベンツ? ランボルギーニ? タイガー戦車? スペースシャトル?)

女店員(夏休みは軽井沢の別荘で、晴耕雨読の日々!?)

女店員(あーん、想像もつかないっ!)

47: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:12:08.406 ID:Hz4uerXm0
……

19時直前――

男「……」サッ

オオー… マジカヨ… ザワザワ…

男「……」スタスタ

女店員(今日も半額シールを貼る前に買っていった……)

女店員(よーし……今日は思い切って……!)

51: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:14:03.852 ID:Hz4uerXm0
女店員「すいませんっ!」

男「?」

女店員「この後おヒマですか?」

男「もう家に帰るだけだけど……」

女店員「じゃあ、ぜひご一緒させて下さい!」

男「え!? 別にいいけど……」

56: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:17:56.910 ID:Hz4uerXm0
女店員「あなたはいつも、半額シールを貼る前にお惣菜を買いますよね」

男「まあ、そうだね」

女店員「値段の高いA牛乳を買うし、必要なさそうなレジ袋を買うし、きっとものすごいお金持ちなんでしょうね!」

男「いや、ものすごいってことは……」

ブロロロロ…

女店員「あ、ポルシェ!」

男「左ハンドルだ、すげー!」

女店員「だけど、あなたはあんなの何台も持てるぐらいのお金持ちなんでしょう?」

男「……!?」

男(なにいってんだこの子……!?)

58: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:20:28.378 ID:Hz4uerXm0
男(半額シールを貼られる前に買ってたのは、あんなもん見栄張ってただけだし)

男(A牛乳買うのは単にそっちのが好きだからだし、レジ袋買うのは家で使ったりするから)

男(試食断ったこともあったな……あれはもう味知ってたからだし)

男(見栄半分冗談半分で、“金持ち”を自称してたのに、この子の中の俺はどんだけの大富豪になってんだ!?)

男(どうしよう……!)

女店員「どうしました?」

男「な、なんでもないよ……ハハハ」

64: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:23:16.211 ID:Hz4uerXm0
男「……あれだよ。あれが俺の家」

女店員「え……アパート?」

女店員「そうか、アパートを経営なさってるんですね!」

男「違うんだ……」

男「俺はただのアパート暮らしの会社員……今までずっと見栄張ってただけなんだ!」

女店員「えっ……」

男「ごめんっ!」ダッ

女店員「あっ!」

女店員「……」

――――

――

70: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:26:27.380 ID:Hz4uerXm0
男(あれ以来――俺はあのスーパーに行けなくなった)

男(そりゃそうだ。下らない見栄を張って、そのメッキが剥がれた以上、彼女に会わす顔がない)

男(別に知らん顔して行けばいいとも思うが、これもまた、俺なりの“見栄”ってやつなのだろう)

男(ホント小さな男だ……)





女店員(あれ以来――あの人はスーパーに来なくなってしまった)

女店員(たしかに、彼の正体を知ってしまった時はショックではあったけど)

女店員(だけど、あの時感じた感情は――)

74: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:30:04.715 ID:Hz4uerXm0
男(今日も遠回りして、遠くのスーパーで買い物して帰るか)

男(下らない見栄張ったせいで、いつもより20分は多く歩くはめになっちまった)

スタスタ…

男「!」

女店員「!」

男「あ……ど、どうも……」

女店員「お久しぶり……です」

77: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:33:11.210 ID:Hz4uerXm0
男「今日はどうしたの……?」

女店員「仕事が終わって帰るところだったんです」

男「ああ、そうなんだ……ハハ」

女店員「最近、うちのスーパーに来なくなっちゃいましたね」

男「もっといいスーパーを見つけてさ……アハハ」

女店員「そうですか……」

男(くそっ、また見栄を張ってやがる! 本当は恥ずかしくて足が遠のいてただけなのに!)

82: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:36:03.057 ID:Hz4uerXm0
女店員「私、あなたに伝えたいことがあったんです」

男「え、なに……?」

男(どうせ、ろくなことじゃないだろうが……)

女店員「私、あなたが見栄を張ってたって知ったあの時――」

ブロロロロッ!

キキィッ!

女店員「きゃっ!」

男「この間のポルシェ!?」

91: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:40:11.026 ID:Hz4uerXm0
ナンパ男「へい、彼女~! ボクとドライブしない?」

女店員「えっ?」

ナンパ男「ボクはこの愛車で走り回り、可愛い子を見つけたらナンパするのが日課なんだけどさ」

ナンパ男「キミのことは前から気になってて、ようやくチャンスが巡ってきたというわけさ!」

女店員「そんなこと急に言われても……」

ナンパ男「さ、行こう」ガシッ

女店員「きゃっ……!」

ナンパ男「大丈夫、怖いことなんてないって。何でも好きなものを買ってあげるからさ」キラッ

男「待てよ!」

98: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:43:46.541 ID:Hz4uerXm0
男「彼女……嫌がってるじゃないか!」

男「嫌がる女の子をムリヤリ連れていくなんて、それはただの誘拐だ!」

ナンパ男「ん~? キミ、彼氏?」

男「いや、違うけど……」

ナンパ男「はい、100万円」パサッ

男「!?」

ナンパ男「それやるからさ、見逃しておくれよ」

ナンパ男「さ、行こう。夜のドライブを楽しもうじゃないか!」

女店員「私は……!」

104: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:46:27.695 ID:Hz4uerXm0
男「……おい」

ナンパ男「なんだい? もっと欲しいのかい? だったら200万――」

男「ちげえよ……」

男「こんなもんいるかァァァァァ!!!」ブンッ

ナンパ男「いたっ!」ビタッ

ナンパ男「何するんだ! 本当は欲しいくせに! 見栄張っちゃってさ!」

男「ああ、そうさ! 欲しいさ! 喉から手が出るほどにな! 靴舐めてでも欲しすぎるわ100万円!」

男「だけど……だけど……」

108: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:49:11.999 ID:Hz4uerXm0
男「男には見栄を張らなきゃならねえ時ってもんがあんだよ!」

ナンパ男「ひっ!」



男「特に……好きな女の前ではなァ!!!」



ナンパ男「あ、あわわわわ……」ヘタ…

女店員「……!」

120: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:53:15.391 ID:Hz4uerXm0
男「はぁ、はぁ、はぁ……あ」

女店員「……」

女店員「今の……聞いちゃいました」

男「え!? あ……参ったな。いやー、店員さんに惚れるなんてとんだストーカー……だよね」

女店員「私もです」

男「?」

女店員「私もあの時、あなたが見栄を張ってたって知った時……そんなあなたに惚れてしまったんです!」

女店員「食わねど高楊枝をくわえるあなたに……!」

男「……!」

女店員「私と……お付き合い頂けませんか?」

男「は、はい!」

127: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:56:33.792 ID:Hz4uerXm0
ナンパ男「ボクも惚れました!」

男「え!?(いたのかよ)」

ナンパ男「あなたを兄貴と呼ばせて下さい! このポルシェ差し上げます!」

男「いや、いいよ(左ハンドルなんて怖くて乗れないし)」

ナンパ男「!」ガーン

ナンパ男「フラれた者同士、仲良く帰ろうか……」

ポルシェ「……」ウン

ブロロロロ…

男(根は悪い奴じゃなさそうだな……)

132: 名無しさん 2020/11/16(月) 22:59:22.787 ID:Hz4uerXm0
男「えーと、これからどうしようか」

女店員「じゃあ、あなたのアパートに……」

男「いいの? 汚いし、ろくなもんないけど……」

女店員「はい! ありのままのあなたを見せて下さい!」

男「雪の女王じゃなく埃の大王みたいな部屋だけどね……」

――――

――

141: 名無しさん 2020/11/16(月) 23:02:51.179 ID:Hz4uerXm0
その後――

ブロロロロ…

男「悪いね、ボロ中古車でデートだなんて」

女店員「いえ、いい車ですよ」

男「ここに……駐車と」モタモタ

男「あれ……上手く入れられない……」モタモタ

男「いつもなら、華麗なバックで一発なんだけど……」

女店員「ふふっ、たまたま調子が悪かったみたいですね」

147: 名無しさん 2020/11/16(月) 23:05:44.634 ID:Hz4uerXm0
男「予告通り、今日は俺がご馳走するから!」

女店員「嬉しい!」

男「えーと、ここらへんに食事できるところがあるはずなんだけど……」



『ボロボロ食堂』

『レストラン・セレブ』



男「……!」ゴクッ

152: 名無しさん 2020/11/16(月) 23:08:20.182 ID:Hz4uerXm0
男「レ……『レストラン・セレブ』にしようか」

女店員「あえて『レストラン・セレブ』を選ぶだなんて……あなたってホント素敵!」

男「俺は……金持ちだからね」キラッ

女店員「だけど、『ボロボロ食堂』にしましょっか」

男「はい……よろしくお願いします」







― 終 ―