1: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:28:04.700 ID:3X1yHSZg0
女「遅くなっちゃった……夜道は怖いなぁ」

ブロロロロ… キキッ

女「?」

男「よかったら家まで送っていくよ」

女「ハイエース……!?」

男「どうする?」

女(私の人生……どうやらここまでみたいね)

女「お願いします」

引用元: ・男「よかったら家まで送っていくよ」女「ハイエース……!?」

2: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:31:16.279 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロ…

男「次は?」

女「えーと、次は右で……」

男「ここは?」

女「まっすぐ行って下さい」

男「分かった」

女「あ、あそこのコンビニ曲がって下さい」

3: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:34:23.622 ID:3X1yHSZg0
女「ここでいいです」

男「じゃあ、降ろすよ」

キキッ

男「それじゃ、気をつけて帰ってね」

女「はい、ありがとうございました!」

ブロロロロロ…

女(あれ? 想定してた展開と違う……)

5: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:37:35.252 ID:3X1yHSZg0
女友「ああ、それ? “送り屋”さんだよ」

女「送り屋?」

女友「なんでもハイエースについた悪いイメージを払拭するために」

女友「ボランティアで人の送り迎えとかをしてるんだって」

女友「人柄もいいし、運転も上手いし、結構評判いいみたいよ」

女「へぇ~」

6: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:41:16.307 ID:3X1yHSZg0
塾生徒「ふぅ……やっと終わった。算数難しかったなー」

ブロロロロ… キキッ

男「お待たせ」

塾生徒「送り屋さん!」

男「さ、乗って。遅くなるとお父さんお母さんが心配するから」

塾生徒「うん!」

7: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:43:18.777 ID:3X1yHSZg0
キキッ

男「到着!」

塾生徒「送り屋さんいつもありがとう!」

男「勉強頑張れよ!」

塾生徒「うん!」

男「さて、次は……」

8: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:46:52.826 ID:3X1yHSZg0
酔っ払い「ウ~イ……」ヨロヨロ…

酔っ払い「うぇ~っぷ」ヨタヨタ…

酔っ払い「飲みすぎちゃったぁ~っと……」フラフラ…

ブロロロロ… キキッ

男「ずいぶん酔ってますね。この辺りは交通量も多いし、よろしければ送りましょうか?」

酔っ払い「え~、助かるなぁ~、ありがと~」

男「なんの、もし車に轢かれでもしたら後味が悪いですから」

9: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:50:05.823 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロロ…

酔っ払い「うっぷ……」

酔っ払い「オエエエッ!」

酔っ払い(吐いたら、一気に酔いが覚めて……)

酔っ払い「すいませんすいませんすいません! 私ときたらとんでもないことを……!」

男「お気になさらず。乗せる時からこうなることも想定してましたから」

男「住所によると家はこっちでいいんですよね?」

酔っ払い「このお礼とお詫びは後日必ず……」

11: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:53:33.410 ID:3X1yHSZg0
病人「ううっ……」

病人(胸が……苦しい……。しかし、声も出せない……)

病人(このまま……ここで死ぬのか……)

ブロロロロロ… キキッ

男「あの、もしかして胸が苦しいのでは?」

病人(え、なんで……)

男「声も出せないようですね。すぐ病院に送ります!」

12: 名無しさん 2020/11/25(水) 20:57:13.428 ID:3X1yHSZg0
医者「いやー、お手柄でした」

医者「もう少し処置が遅かったら、手遅れになっていたかもしれません」

男「よかった……」

男「では、俺はこれで」

ブロロロロロ…

病人(あのハイエースの運転手さんは命の恩人だ……)

13: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:00:30.389 ID:3X1yHSZg0
女「また遅くなっちゃった……。ったく、この辺街灯もっと明るくしてよね」

女「絶好の痴漢スポットじゃない」

ブロロロロ… キキッ

女(あっ、このハイエースは……!)ドキッ

男「よかったら、また送っていこうか?」

女「お願いします!」

ブロロロロ…

14: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:03:53.710 ID:3X1yHSZg0
女「あのー……送り屋さん」

男「ん?」

女「どうしてハイエースのイメージを払拭しようと?」

男「俺はハイエースが好きなんだよね」

男「大きさ、フォルム、安全性……全てにおいて高水準だ」

男「そんなハイエースに変なイメージがついちゃってるのが、悲しくてね」

男「だから、こんなことを始めたんだ」

男「最初はかえって怪しまれたけど、だんだん常連さんもできてきて……」

女「……」

15: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:06:02.341 ID:3X1yHSZg0
男「ここでいいよね?」

女「はいっ、ありがとうございました!」

男「それじゃ!」

ブロロロロロ…

女(もっと乗っていたかった……)

女(家じゃないところに送って欲しかった……)

16: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:09:37.415 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロロ…

男「……」

男(あの人、なかなか可愛いよな)

男(おっと、何を考えてるんだ! こういう邪心を持ったら、俺は送り屋失格だ!)

男(自分を厳しく戒めないと!)

男「そうだよな、ハイエース!」

18: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:14:24.182 ID:3X1yHSZg0
女(あれからなかなか会えないなぁ……)

女(いつも色んな人の送り迎えをしてるからしょうがないけど……)

女友「おーい!」

女「……」

女友「もしもーし!」

女「……」

女友「ブロロロロロ……」

女「ハイエース!?」バッ

女「って、なーんだあんたか。紛らわしいなぁ」

女友「こりゃ重症だわ」

19: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:17:13.249 ID:3X1yHSZg0
ある夜のこと――

ブロロロロ… キキッ

女「?」

女(車……ハイエースじゃないようだけど……)

茶髪「よかったら、送ってくよ?」

女(やっぱり違う人だ……残念。だったら……)

女「いえ、結構です」

20: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:20:14.351 ID:3X1yHSZg0
茶髪「今度送り屋に会わせてあげるといっても?」

女「!」

女「あなたは送り屋さんの知り合い?」

茶髪「うん、あの人はちょうど先輩に当たるんだ。ちょくちょく会ってる」

女「私、あの人に会いたいんです! だったら乗せて下さい!」

茶髪「オッケー」ニコッ

21: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:23:36.173 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロロ…

女「次の角を右です」

茶髪「……」

女「もしもし?」

茶髪「……」

女「あの、家からどんどん離れてってますけど……」

茶髪「お前アホかァ? 俺は送り屋なんて知らねーよ!」

女「え……!」

22: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:26:05.969 ID:3X1yHSZg0
茶髪「この辺りで評判のハイエース乗りがいるっていうから、ちょっと名前出してみたら」

茶髪「まさかこうも簡単に引っかかるとはなァ! このまま人のいねえとこに連れてってやるぜ!」

女「そ、そんな……」

女(車から出なきゃ! 飛び降りてでも――)サッ

茶髪「おーっと」バチバチッ

女「あぐっ!?」

茶髪「スタンガンだ。気絶するほどじゃねえが、しばらくは痺れて動けねえ」

女「ううっ……!」

女(なんてバカなの……私!)

23: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:29:07.214 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロ…

男「さて、今日はもう帰るか。ハイエース、今日もお疲れさん」

男「ん?」

ブロロロロロ…

男(今すれ違った車……助手席にぐったりした彼女が――)

男「まさか!?」

男「ハイエース、すまないがもう一働きしてくれ!」

ギュルルッ!

24: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:32:56.762 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロ…

女「……」

茶髪「どうやら観念したようだな。今日はいい拾いモノしたぜ」

茶髪「ん……? 後ろから……?」

茶髪「なんだありゃ……!」

茶髪「ハイエースが追いかけてきやがった!」

女「!」

25: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:34:33.437 ID:3X1yHSZg0
茶髪「ふざけんな! 追いつかれてたまるかい!」グンッ

女「きゃああっ!」

ブオオオオオッ!



男(スピードを上げた……逃げ切るつもりか……)

男「そうはさせない!」

ブオオオオオッ!

26: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:37:57.313 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロロロ…

茶髪「へへへ、この峠は俺のホーム……もうミラーにも映らねえ……」チラッ

茶髪「ゲ!?」

茶髪(余裕で追いついてきやがる!)



ハイエース「……」ギャルルッ!



茶髪「しかも華麗なドリフトまで決めやがって……クッソなんて奴だ!」

28: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:40:30.646 ID:3X1yHSZg0
ブオオオオオッ!

茶髪「ハッ!?」

茶髪「まずい、スピード出しすぎて――!」

茶髪(このままじゃ崖の下に――)

女「いやぁぁぁぁぁっ!」

男「ハイエース!」グイイイッ

ギュオオオオオオッ! ギャルルルルルルッ!

30: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:43:23.863 ID:3X1yHSZg0
フワッ…

茶髪「な……!?」

茶髪(ハイエースがスピンしまくって、その遠心力で俺の車をふわりと止めた……!)

茶髪(自分でもなに言ってんのか分かんねーけど……助かった……)

男「ふぅ……」キキッ

男「もう大丈夫だよ」ガチャッ

女「ありがとうございます!」

男「さて……」ギロッ

茶髪「ひっ!」

31: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:46:09.952 ID:3X1yHSZg0
男「俺は“送り屋”ってもんだ」

茶髪「あ、あんたが……!」

男「お前のような女性を拉致するクズは――」

男「地獄へ送ってやろうか!?」ギロッ

茶髪「ひいいいいいっ!」

男「それが嫌なら……警察署に送ってやる」

茶髪「署で! 署でお願いします! 今までの余罪も全部白状しますぅぅぅぅぅ!」

32: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:49:10.954 ID:3X1yHSZg0
ブロロロロ…

男「危ないところだったね」

女「ありがとうございました……」

男「俺も迂闊だったよ。評判が立てば、ああいう奴も出るってことに気付かなかった」

女「いえ、そんな……」

男「このまま今日は送っていくよ。いつもの場所でいいね?」

女「……」

35: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:52:21.912 ID:3X1yHSZg0
女「私……帰りたくない」

男「え」

女「このままどこかに連れてって……」

男「そういわれても……」

女(お願い、ハイエース……私の願いを叶えて!)

プスンプスン… ガクガク…

男「なんだ? 車が急に止まって……」

男「どこも異常はないのに、どうして……!」

36: 名無しさん 2020/11/25(水) 21:55:29.737 ID:3X1yHSZg0
男「ここは――ラブホテル!?」

女(やった……願いを叶えてくれた!)

男「……」

男「え、えぇと……」

男「よかったら、今夜はここに泊まっていかない?」

女「はい、イエース!」







END