786: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:01:02.29 ID:KdkUNOgoo
肩を貫かれ、よろめく。

加持「…ッグ…!」

右腕を引き裂かれる。

加持「ォア…!」

加持「…………!」

加持「ダアアアアッ!!!」


なぎ倒して後ずさる

加持「……ハァ、ハァ…!」


加持「………、」

加持「ここまでか…!」

引用元: ・シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」

787: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:02:01.67 ID:KdkUNOgoo
ヒカリ「内部電源終了…っ!予備電源に切り替わります、活動限界です…!」


シンジ「加持くん…!」


加持「……はぁ、は……」

加持(………よく、やった…)


加持「へへ…」

加持「…よく、ここまでもったな…」

加持「ありがとう」

788: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:03:01.85 ID:KdkUNOgoo
加持「俺もすぐに行くよ」

加持「…今度は、一緒に…」

目を閉じる加持。

刃が迫る。


大きな影。

初号機が飛びかかる

ヒカリ「……!」

ヒカリ「エヴァ初号機、起動!」

789: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:04:03.59 ID:KdkUNOgoo
加持「葛城……!?」


ミサト「……ごめん、遅れちゃって」


加持「………、」

加持「……締まらないな…」


残った機体をなぎ倒していく初号機

加持「………」

790: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:05:02.60 ID:KdkUNOgoo
レイ「…欠けた心の補完」

レイ「不要な身体を捨てて、全ての魂をひとつにする…それが人類補完計画の全容」

レイ「…なぜ先生は、あなたを行かせようとするの…!」


レイ「復讐のためだったと言うの…?すべて、私を育てたことも…」

リツコ「…違うわ」

リツコ「確かに母さんは、セカンドインパクトで愛する人を失った」



リツコ「でもこれは、私が決めたこと…」

レイ「……!」

791: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:06:02.36 ID:KdkUNOgoo
ミサト「…加持くん、腕、大丈夫…?」

加持「…どってことないさ、これくらい…」


加持「…葛城、俺のことは気にするな」

加持「いや…しないでくれ」

ミサト(…………、)


加持「俺は弟たちを身代わりにして生き残った」

加持「悔いることも恐れていた…でも今は分かる」

加持「俺が悪かったんだ」

加持「もうこれ以上、俺は……!」


ミサト「加持くんのせいじゃない」

加持「……、」

792: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:07:16.34 ID:KdkUNOgoo
ミサト「大人が悪いのよ……いえ、セカンドインパクトが。あれが世界を変えてしまった。加持くんたちを苦しめた…」

ミサト「背負う人が違っただけ。あなたを身代りにしても…しなくても、必ず誰かが背負うことになるのよ」

加持「葛城…」

ミサト「………」

ミサト「生きろ、と…言われたの、お父さんに」


ミサト「そう望まれたの…。だから生きるの。私も望んでる。加持くん、あなたに」

ミサト「生きていてほしい、って…」


ミサト「……絶対に生き残るのよ。生き残って、それでも死にたかったら、その時死ねばいい…!」


ミサト「今、死に急ぐような真似したら…!一生許さないから…!」



加持「……、…」

加持「敵わないな…」

793: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:08:06.50 ID:KdkUNOgoo
ヒカリ「エヴァシリーズ、すべて沈黙!」

トウジ「ィヨッシャー!」

ヒカリ「ミサトちゃん!加持くんを安全な所へ運んで」

ミサト「はい!」


加持「………」

加持「葛城、………帰ったら」

ミサト「?」

加持「あの時の続きをしよう」

ミサト「……、!」

ミサト「バカ…!」

794: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:09:07.02 ID:KdkUNOgoo
ヒカリ「……待って」

ヒカリ「…なに、これ……」


加持「!」

加持「葛城、後ろ…!」


シンジ「倒したはずのエヴァシリーズが…!?」


飛び立つエヴァシリーズ

狙いすまされる。乱れ打ち。

加持「ッグ、」

ミサト「加持くん!」

795: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:10:02.35 ID:KdkUNOgoo
対抗するミサト


ミサト「ああああっ!」


ミサト「うぐ…っ!」

腹部を貫かれる

加持「葛城!」

ミサト「…ぅああああああっ!」

加持「……っ」

引き抜いて突き刺す

ミサト「あああああっ!」

加持「葛城……っ」

ミサト「…ぁあああぁ!」

796: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:11:05.57 ID:KdkUNOgoo
ミサト(加持くんは)

ミサト(私が守る、絶対に)

ミサト(話したいことが沢山あるのよ)

ミサト(自分で決めたの)


ミサト(……お父さん、お母さん…!)

ミサト(私が決めたのよ、守りたいと、思ったの)


ミサト「ぐ…っ!」


ミサト(力を貸して…!)


光が天を貫く。

光の羽を纏い、初号機が立ち上がる


隊員「エヴァンゲリオン初号機…!」

隊員「まさに悪魔か…」



加持「葛城…!」

797: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:12:03.99 ID:KdkUNOgoo
隊員「大気圏外より高速接近中の物体あり!」

隊員「なんだと…!」



カヲル「ロンギヌスの槍…!」



加持「ロンギヌスの槍…!?」


シンジ「ミサトちゃん!」


ミサト「ッア……!」

飛来した槍が初号機の喉元に止まる

798: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:13:02.21 ID:KdkUNOgoo
キール「遂に我らの願いが始まる」

ゼーレ 04「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に還った」

ゼーレ 02「葛城の娘を乗せたままだが」

キール「神が時を選んだのだ」

ゼーレ 03「方舟の行き先は決まっている」

ゼーレ 09「いささか数が足りぬが、やむを得まい」

ゼーレ(全員)「エヴァシリーズを本来の姿に」


全員「我ら人類に福音をもたらす真の姿に」

全員「等しき死と祈りを以て、人々を真の姿に」

キール「それは魂の安らぎでもある」


キール「では、儀式を始めよう」

799: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:14:06.52 ID:KdkUNOgoo
エヴァシリーズが初号機を空へと運ぶ

トウジ「エヴァ初号機が拘引されていく…!」

ケンスケ「高度12000!更に上昇中!」


カヲル「ゼーレめ、初号機を依り代とするつもりか…」


ミサト「…………!」


キール「エヴァ初号機に聖痕が刻まれた」

ゼーレ(全員)「今こそ中心の樹の復活を」


キール「我らが僕、エヴァシリーズは皆この時の為に」

光を放つエヴァシリーズ

ケンスケ「エヴァシリーズ、S2機関を開放!」

トウジ「次元測定値が反転、-を示しとる!…観測不能!数値化できん!」

カヲル「…アンチA.T.フィールドか…」

空に図象が浮かび上がる

ヒカリ「全ての現象が15年前と酷似している…じゃあこれってやっぱり、サードインパクトの前兆なの…!?」

800: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:15:14.86 ID:KdkUNOgoo
隊員「S2機関、臨界!」

隊員「これ以上は、もう…」


戦闘団長「作戦は、失敗だったな…」


辺り一帯が赤く染まる。爆発。


ケンスケ「直撃です!地上堆積層が融解!」

トウジ「第2波が本部周辺を掘削中……外郭部が露呈していく…!」

カヲル「まだ物理的な衝撃波だ。アブソーバーを最大にすれば耐えられる!」




ゼーレ 08「悠久の時を示す」

ゼーレ 09「赤き土の禊を以て」

ゼーレ 11「まずはジオフロントを」

キール「真の姿に」




カヲル「……人類の、生命の源たるリリスの卵…黒き月…今更、その殻の中へと還る事は望まない……」

カヲル「だが、それも…リリス次第か…」

801: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:17:02.21 ID:KdkUNOgoo
遠くで響く爆音。


レイ「終わらせると言うの?この世界を…」

リツコ「……そうじゃない」

リツコ「……手に」


リツコ「触れたいと思ったの」

リツコ「だから掴みにいく」


レイ「そんな……!」


リツコ「さよなら……母さん」

レイ「…、……!」


レイ「リ……!」

802: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:18:02.22 ID:KdkUNOgoo
ケンスケ「ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速接近中!」

トウジ「A.T.フィールドを確認!分析パターン青!」

ヒカリ「まさか、使徒!?」

トウジ「いや、違う…人! 人間…!」


上昇していくリリス。ネルフメンバーの目の前を通り過ぎていく


地中から現れる白い手。

ヒカリ「ひっ…!」


(ヒカリの悲鳴)

803: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:19:02.44 ID:KdkUNOgoo
ミサト「なんなの、これ…」



ミサト「どうなったの…!加持くんは、みんなは…!」

ミサト「はっ」


巨大化したリリス。

ミサト「リツコ…!」


マリ「知らない子だも~ん」

ミサト「マリ……!?」

マリ「………」

ミサト「いや…!」

マリ「…」

ミサト「嫌…っ!」

804: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:20:03.32 ID:KdkUNOgoo
ケンスケ「エヴァシリーズのA.T.フィールドが共鳴!」

トウジ「さらに、増幅しています!」

カヲル「…赤木リツコと同化を始めたか」


(ミサトの悲鳴)


ケンスケ「心理グラフ、シグナルダウン!」

トウジ「デストルドーが形而化されていく…!」

カヲル「…これ以上はパイロットの自我が持たない…」



ゼーレ「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」

キール「三度の報いの時が、今」

805: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:22:01.69 ID:KdkUNOgoo
ミサト(はっ)


ミサト(ここは、どこ)


ミサト(私はどうなったの…)



マリ「こーっちだよーっ」

ミサト(…あれ。私……)

リツコ「こっちよ」

ミサト「あ…」

加持「遅れるぞ?」

806: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:23:01.54 ID:KdkUNOgoo
ケンスケ「ソレノイドグラフ反転!自我境界が弱体化していきます!」

ケンスケ「A.T.フィールドもパターンレッドへ!」


コアに槍が刺さり、初号機との同化が始まる


カヲル「使徒の持つ生命の実と、人の持つ知恵の実。その両方を手に入れたエヴァ初号機は神に等しき存在となった…」

カヲル「そして今や生命の胎芽たる生命の樹へと還元している。この先にサードインパクトの無から人を救う方舟となるのか…人を滅ぼす悪魔となるのか」

カヲル「未来は子どもらの手に委ねられた……」


ヒカリ「ねえ!私たち、正しいわよね?」

ケンスケ「分かるもんか」


生命の樹となる初号機。

807: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:24:01.93 ID:KdkUNOgoo
ミサト(ここはどこ、)

ミサト(私は…?)


ミサト(なんだろう…とても、重い…)


リツコ(それは私たちが負った柵)

リツコ(託された望みなのよ)




マリ(重いなら、捨てれば?)

リツコ(とても重い)

ミサト(だけど、必要……)

808: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:25:01.74 ID:KdkUNOgoo
ミサト「リツコ?」

リツコ「はっ」

ミサト「リツコ……どうしたのよ、早く乗っちゃいましょ」

アナウンス「列車が発車します 黄色い線の内側までお下がりください」

リツコ「私は……」


(リツコ「代わりはいる…」)

(リツコ「もう気づいて泣く人もいないわ…」)


リツコ「……なぜ戻ってきたの」



リツコ「ミサト…」

809: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:26:01.52 ID:KdkUNOgoo
ミサト「さ~ねん」

ミサト「忘れちゃったわ」

ミサト「…きっと、そうしたかったから。」


リツコ「自分勝手ね」

ミサト「自分を殺しているよりかはいいわ」


ミサト「……」


リツコ「……私にはできない」


リツコ「私は捨てても平気」

リツコ「でも、私の体は…」

810: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:27:01.85 ID:KdkUNOgoo
ミサト「……」

ミサト「嫌になったら、捨てればいい」

リツコ「また欲しくなったら?」

ミサト「また拾えばいいのよ」


リツコ「……もう手が届かなかったら?」

ミサト「届く範囲で探すのよ」

リツコ「忘れられなかったら?」

ミサト「……」

811: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:28:06.81 ID:KdkUNOgoo
(ミサト「加持くんっ」)

リツコ「あなたは怖くないの?一度関わりを持ったら…」

ミサト「手を離すのが怖い?」

リツコ「……」

ミサト「簡単よ、リツコ」

ミサト「嫌になったら、離せばいいのよ」



(リフレインする意識)



リツコ「嫌になったら…?」

(葛城「リツコ」)

(レイ「リツコちゃん」)

812: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:29:02.28 ID:KdkUNOgoo
不幸な人を見たくないのよ

私がいないと不幸になる人


幸福が誰かの存在に依存していることが


リツコ「嫌だった、ずっと……」


ミサト「自分がかわいいのね」

リツコ「そうよ」



リツコ「私のせいにしてほしくないの。それだけ」

813: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:30:03.23 ID:KdkUNOgoo
「それ」無しでは生きられない人の

「それ」になりたくないのよ


私で何かを埋め合わせようとしている


捨てきれない人の

捨てられないものになりたくないのよ

私なしでは可哀想になってしまう人たち

私を縛る人たち


リツコ「煩わしいのよ!」

リツコ「優しさと保身を一緒にしないで!」

リツコ「自分がどうあるかなんて、」

リツコ「そんなもののために、私を使わないでよ!」

814: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:31:02.22 ID:KdkUNOgoo
トウジ「パイロットの反応が限りなく0に近づいていく…!」

ケンスケ「エヴァシリーズ及びジオフロント、E層を通過。なおも上昇中」


アナウンス「現在、高度、22万キロ。F層に突入」


トウジ「エヴァシリーズ全機健在!」

ケンスケ「リリスよりのアンチA.T.フィールドさらに拡大、物質化されます」


巨大化したリリスがジオフロントを抱く


トウジ「アンチA.T.フィールド臨界点を突破!」

ケンスケ「駄目です!このままでは固体生命の形が維持できません!」

リリスが羽を広げる

カヲル「…ガフの部屋が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか…」

815: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:32:02.15 ID:KdkUNOgoo
リツコ「愛しさが私を満たしていく…空しさが私を埋めていく……そうか…心地よかったのね、私…」

リツコ「誰かの心に蓋をするのが…」



ネルフメンバーの周囲に現れるリツコ(リリス)


カヲル「……シンジくん…」

カヲル「すまない。僕は…」

カヲル「あの時彼女をとめるべきだった…。彼女にその覚悟があっても、君にはないと…分かっていたはずなのに…彼女をとめられなかった」

微笑むシンジ(リリス)


カヲル「シンジくん、君は…」

カヲル「幸せになれたのかい」


融ける

816: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:33:13.09 ID:KdkUNOgoo
トウジ「あ、あぁ…!」

ヒカリ(リリス)がトウジにキスをする

融ける


ケンスケ「ひ、ひぃ……っ!」

大量のリツコ(リリス)がケンスケに迫る

融ける


ヒカリ「…A.T.フィールドが、みんなのA.T.フィールドが消えていく。これが答えなの。私が求めていた……はっ!」

トウジ(リリス)がヒカリを抱き締める


ヒカリ「鈴原……私、わたし……っ!」


融ける

817: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:34:06.95 ID:KdkUNOgoo
レイ「碇くん……?」

微笑むシンジ(リリス)

レイ「いいえ。私の中のあなたなのね…こんなときまで」


レイ「私も嘘つきね…」


手を握る

融ける



アスカとシンジ

シンジ「アスカ……!」

シンジ「……僕たち、これで良かったよね…?」




キール「始まりと終わりは同じところにある。良い。全てはこれで良い」

818: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:36:01.90 ID:KdkUNOgoo
葛城とその妻


「……君か」

「ようやく会えたな…」

「……」

「…会わせる顔も、ないが…」



「…バカね」

「あなたはよくやったわよ…」

「分かるわ…」

「ずっと、側にいたんだもの…」

819: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:37:01.98 ID:KdkUNOgoo
「これが…」

「生命の理に背いた…報いか」



「ええ…でも、これで終わりじゃない」

「あなたと私の子どもが、私たちの分まで未来を紡いでくれる」



「……」

「本来なら…私が望むはずだった…人との共存を」

「だが、私は逃げてばかりだった…君からも、仲間からも」

「結果…巻き込むまいとして遠ざけた我が子に、全てを託す形となってしまった」

「……」

820: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:38:02.07 ID:KdkUNOgoo
「私に望みはない」

「今際の際に、何を望むか分からない。私の幸せの道は過去にしかない」


「信じている……」

「あの子らの、望む力を」



「……」

「ええ…」

821: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:39:01.97 ID:KdkUNOgoo
自らのコアを貫くエヴァシリーズ

光の群れがリリスの手に向かう

リリスの額に生じた亀裂

初号機が取り込まれていく


(シンジ「…買い換えどきかな……」)


リツコ「大切なものは二度と帰ってこない」

大切なものが何もないから、どこででも生きていけると思った

(本当に?)

疲れるの、人を好きになるのって。

構ってもらえないと悲しいから

失うと心が欠けるから

だからもう一人になって、

一人のままで生きようと思ったのよ



ミサト「馬っ鹿ねぇ」

ミサト「そんなこと考えてたの?」

822: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:40:01.59 ID:KdkUNOgoo
マリ「だからなるだけ遠ざけて?」

加持「そう。縁のない場所に自分を追いやる」

マリ「自分がかわいーんだ」

加持「悪いか?」

マリ「いんやー。自然なことじゃない?」

マリ「誰だって自分が一番かわいいでしょ」

(リフレイン)

リツコ「…心が、落ち着かないのよ」

弱い人間が傷ついているのを見ると

脆い人間が俯いているのを見ると

健常で、笑っている人だけを見ていたいのよ

それは人間の一面にすぎない

私は人間が苦手なのよ

ひどく憂鬱になるの、見てると…

823: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:41:01.83 ID:KdkUNOgoo
加持「これ以上誰かに自分の存在を脅かされたくないんだ」

べき、べきじゃないの姿をこれ以上増やしたくない

俺は天の邪鬼だからな

愛せない存在を、わざわざ生むことはない

傷つけると分かっていて関わるのは暴力だ

溺愛したって、それが相手の重荷にならないとも言えないんだ



ミサト「意地でも幸せになって、そうなるために生まれてきたことにするのよ」



加持「意味なんてないさ。ただ欲しいものを欲すだけ…」

リツコ「そうすれば…」


リツコ「私は幸せになれるの?」

ミサト「あなたが望むのよ」

加持「きみが望めばね」

824: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:43:03.35 ID:KdkUNOgoo
電車が揺れている


リツコ「……」

ミサト「…ね、この戦いが終わったらさ、みんなで旅行しない?」

リツコ「旅行?」

ミサト「そ。青葉くんとかマヤちゃんとか、ほかのみんなも誘ってさ」

リツコ「……」


ミサト「お金はネ、なんとかなるわよ。なんたって私たち、世界を救うスーパーチルドレンなんだから」

リツコ「……」

ミサト「ね!」

リツコ「……温泉」

ミサト「ん?」

リツコ「温泉、私はあのとき一緒じゃなかったから」

ミサト「…それじゃあ、決まりね」

825: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:44:02.30 ID:KdkUNOgoo
リツコ「……」

リツコ「欲しいものは、別にいい。私はいらないものの話がしたいの」

リツコ「捨て方が分からないのよ」

ミサト「……手を離せばいいんじゃないの?」

リツコ「繋がれていたら?向こうが離さなかったらどうするの?」

ミサト「どっかに逃げ込むことね…今は無理でも。大人になれば…」


電車が止まる



ミサト「でも、寂しいわね。解放されることでしか幸せを得られないなんて」

リツコ「そうね。でも」

リツコ「私にはそれが一歩なの」

826: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:45:19.21 ID:KdkUNOgoo
ミサト「……リツコ」


ミサト「…行きましょう、一緒に」

手をのべるミサト

リツコ「……、」


リツコ「……そう、手を…。」

ミサト「……」


リツコ「あの時はじめて…」


(ミサト「馬鹿…!」)

(加持「すまない…また」)


リツコ「…引き留めたいと思った」

827: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:47:01.56 ID:KdkUNOgoo
ミサト「それでいいのよリツコ」

ミサト「掴みたいときに掴んで、嫌になったら離せばいいのよ」


リツコ「我儘ね…」


ミサト「我儘でいい」

ミサト「我儘でいてほしいと思うときがあるのよ」


リツコ「それは少し……分かる気がする」

リツコ「私に自由を望む人たち」

リツコ「私を愛する人たち…」


血を噴き出すリリス

828: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:49:01.80 ID:KdkUNOgoo
(水滴が落ちる音)

あたりが真っ白になっている

リツコ(……)



リツコ「他人の存在を今一度願えば、再び心の壁が全ての人々を引き離すわ。また、他人の恐怖が始まるのよ」

ミサト「分かってる。……それでいいのよ」


ミサト「私はきっと逃げ出しても良かった……でも、逃げたところにも良いことはなかった。だって私がいないもの。誰もいないのと、同じだもの」

829: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:50:01.24 ID:KdkUNOgoo
マリ「再びA.T.フィールドが君や他人を傷付けても良いの?」

ミサト「構わない。でも、私の心の中にいるあなたたちは何?」

リツコ「可能性なのよ。分かり合えるのか、諦めるのか……どちらにも伸びる道のひとつなの」

マリ「過去の痼。分かり合えないという形の」


ミサト「…でもそれは見せ掛けのもの。自分勝手な思い込み。希望だってそう。ずっと続くはずない……」


ミサト「後悔と自己嫌悪の繰り返し。でも…その度に、前に進めた気がするから…」



ミサト「もう一度望むわ。会いたいと。」

ミサト「……たとえ分かり合えなくても」

ミサト「それを確かめに行く」


倒れるリリス

人々の魂が解放されていく

830: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:52:02.28 ID:KdkUNOgoo
マリ「現実は知らないところに。夢は現実の中に」

リツコ「そして、真実は心の中にある」

マリ「人の心が自分自身の形を作り出しているからね」

リツコ「そして新たなイメージがその人の心も体も変えていくわ。イメージが、想像する力が、自分たちの未来を、時の流れを作り出しているもの」

マリ「ただ人は、自分自身の意思で動かなければ何も変わらない」

リツコ「だから、見失った自分は自分の力で取り戻すのよ。たとえ自分の言葉を失っても、他人の言葉に取り込まれても」

槍が消滅する

リツコ「……自らの心で自分自身をイメージできれば、誰もが人の形に戻れるわ」

831: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:54:02.08 ID:KdkUNOgoo
父と母

「…生きろ」

「生きなさい」



ミサトとシンジ

「生態系が戻ってる?」

「うん…少しずつだけど。本当は、夏だけじゃなくて…四季があったんだけどね」

「冬、とか?」

「そう。ミサトちゃんは雪って知ってる?」

「ええ、見たことは、ないですけど」

「…見せてあげたいな。本当に綺麗なんだ、秋も、春も…」

832: ◆gcWj88zLkc 2020/12/07(月) 23:55:01.67 ID:KdkUNOgoo
ミサトとリツコ


ミサトがリツコを抱き締めている

ミサト「…大丈夫」

リツコ「……」

ミサト「そう…」

ミサト「もういいのね」


リツコ「ええ」




「……待ってる」

「また、あなたが」

「あなたたちが……還ってくるのを」

833: ◆gcWj88zLkc 2020/12/08(火) 00:00:02.12 ID:DuEu8EUlo
○○年。居酒屋


一同「ハッピバースデェーイディーア」

一同「ミサト~~~~」

一同「ヒューヒュー」



加持「……あっちの席やけに賑やかだな」

男「誕生会だろォ。加持オイ!俺の話聞いてるかァ?」

加持「飲みすぎだぞ、お前…」

834: ◆gcWj88zLkc 2020/12/08(火) 00:01:01.96 ID:DuEu8EUlo
一同「ハッピバースデェートゥーユー!」

一同「イエーッ」

ミサト「ふーっ、ちょっち、休憩…っと」

加持「…いいのかい?主役がいなくなって」

ミサト「いーのいーの、みんな騒ぎたいだけなんだから!」

ミサト「……あれ、あなた…どっかで会ったことある?」

加持「……あったら、忘れたりしないさ。こんな美人のこと」

ミサト「ブーッ、ちょっともぉ、やめてよ!」

男「おいっ、リョウジずりーぞ!」

ミサト「キザーッ!」

ミサト「……ねぇっ、一緒に呑みましょーよ!」

男「呑もう呑もう!」

加持「……はは」

ミサト「ったくもー!あいつまだ来てないのォ?!」

ミサト「んっとに仕事の虫ね~」

835: ◆gcWj88zLkc 2020/12/08(火) 00:02:02.19 ID:DuEu8EUlo
一同「カンパ~イ」

ミサト「プッッッ……」

ミサト「…………ハァァァ~~~~~!」

女「ミサトォ!」

男「ペース早すぎだよ」

ミサト「こォの一杯のために生きてるようなもんよねェ~」

加持「……この一杯のために生きてる、か」

ミサト「そォよお?ヤ~なことがあったって、楽しいことがあれば明日も頑張れる!」

ミサト「でしょ?」


加持(……!)

836: ◆gcWj88zLkc 2020/12/08(火) 00:03:01.95 ID:DuEu8EUlo
女「ま~たミサトォ!」

女「知らない子にお酒あげてるー」

ミサト「いいじゃないのよォ!今日くらい」

ミサト「サービスサービス♪」トクトクトク…

加持「……はは」

加持「頂くよ」

ミサト「そーぉこなくっちゃ!」

加持「………」

837: ◆gcWj88zLkc 2020/12/08(火) 00:04:01.74 ID:DuEu8EUlo
「葛城さん…ッ、俺と…!」

「おーっとぉ!これは3度目のォー?!」

「……ごめんッ!」

「ダメだったァーッ」

「ギャハハ」





一同「カンパ~~~~イ」

加持「……、…」


加持「頑張ろう……明日も」





THE END

838: ◆gcWj88zLkc 2020/12/08(火) 00:05:22.38 ID:DuEu8EUlo
以上です

840: ◆gcWj88zLkc 2020/12/08(火) 07:11:41.33 ID:DuEu8EUlo
原作知らないのによく最後まで付き合ってくれたな…!
ありがとう