1: 名無しさん 2011/10/08(土) 22:36:35.67 ID:+l5axtdU0
勇者「魔王ー、冷蔵庫の中が空だぞ」

女魔王「そうか……では買い出しにいかんとな」

勇者「俺も行くよ。少し武器も見ていきたいし」

女魔王「お前の生まれた地だからとここに住んでいるが……武器も防具も品揃えは悪いぞ」
女魔王「これでは我の配下一人も倒せん」

勇者「もう世界は平和なんだしさ、魔物の領域に足を踏み入れなければ丸腰でも平気だよ」

女魔王「しかし人間との協定を守るやつらだろうか」

勇者「おいトップ。お前が言うな」ハァ



ID:GQVeLCmSO

引用元: ・勇者「女魔王との結婚生活」

4: 名無しさん 2011/10/08(土) 22:45:10.75 ID:GQVeLCmSO
カランコロン

店主『いらっしゃい』
店主「あっ勇者様! ようこそ武器屋へっ!」

女魔王「ひのきのぼうにこんぼう……相変わらずの品揃えだな」

店主「ひっ、まっ魔王……様」ガタガタ

女魔王「そうかしこまるな……今はこの村の基本台帳にも載っている一村民だ」

店主「は、はい……」

女魔王「どうだ? なにかめぼしいものはあったのか??」

勇者「うーん」
勇者「じゃあひのきのぼうを二つ」

店主「あ、ありがとうございます!」ニッ

勇者「行くか」

女魔王「……ひのきのぼうなんてなにに使うのだ?」

勇者「なに、大したことじゃない」

女魔王「そうか……」
女魔王「では次は食料の買い出しだな」ニコ

勇者「肉ばかりじゃなく、付け野菜にやくそうもな……」ハァ

6: 名無しさん 2011/10/08(土) 22:54:16.37 ID:GQVeLCmSO
女魔王「おおがらすの肉……」フム

勇者「やっぱり手下が食料にされるのは抵抗あるだろう」

女魔王「いや、こちらも人間を食ってるし……弱肉強食だ。こいつらも文句はないだろう」

勇者「モンスターってさ、人間よりも純粋な感じがするよ。お前らを見てると」

女魔王「そうか? まあ、人間の近所付き合いも大変だと聞いていたが……存外、相談に乗ってくれると言うし、上っ面だけでも親切じゃないか」シャリ

勇者「おい、精算前にガップリン食うなよ」

女魔王「こいつも人間に食われるよりは我の血肉になるほうが喜ぶだろう」

勇者「いや、精算前だからだって」

女魔王「おぉ、あそこにあるのはキングレオの毛皮」

勇者「……財布と相談する事も覚えてくれよー」タラ

11: 名無しさん 2011/10/08(土) 22:59:07.36 ID:+l5axtdU0
>>9
かわええ

12: 名無しさん 2011/10/08(土) 23:03:27.06 ID:GQVeLCmSO
女魔王「これは見事なモノだな」ナデ

勇者「もう一度聞くが、手下がこういう風に扱われるのは……」

女魔王「何度も言わせるな。負けた者が悪い、それだけだ」
女魔王「床に敷こうか、コートにしようか……」

勇者「防御力はそんなに高くなさそうだな……」

女魔王「これだから戦闘馬鹿は」ハァ
女魔王「"身だしなみ"は大事なものだ。ギガンテスでも知っている」

勇者「あの一枚布は身だしなみだったのか……」

『あら、綺麗な毛皮……』

女魔王「む?」

女賢者「あら……」

女魔王「ほう……久しいな、小娘」

女賢者「魔王さんこそ……幸せそうで羨ましいです」ニコ

女魔王「そう見えるか?」フフ
ダキ

勇者「おいおい……人前だぞ」

女賢者「……相変わらず、モンスターは欲求に忠実なようですね」クス

15: 名無しさん 2011/10/08(土) 23:12:10.37 ID:GQVeLCmSO
勇者「人の妻をモンスター呼ばわりするな」
コツン

女賢者「ぃたっ」
女賢者「……勇者様のコレ、久しぶりですね」エヘ

勇者「そうか? 旅が終わってから日もたつし、そうかもしれないな」

女魔王「まあいい、モンスター呼ばわりは不問に帰す」
女魔王「たしかにお前ら人間からすれば、我も魔物の一人だろう」

女魔王「行くぞ、勇者」

勇者「毛皮は良いのか?」

女魔王「良い。今度ルーラで王都にでも行く」

勇者「……ここで毛皮を買っていた方が安くすんだかもな」ハハ

勇者「でもな魔王」
勇者「マモノはマモノでも、お前は魔者だからな。人間に近いんだ」

女魔王「……そうか」
女魔王「人間に近いというのが我らにとってなんの救いにもならぬがな」フッ

18: 名無しさん 2011/10/08(土) 23:23:22.99 ID:GQVeLCmSO
勇者「で、ルイーダの酒場で呑む。と」

女魔王「酒は良いな。人間が作っても魔物が作ってもこんなに妖しく、美味だ」コク…

勇者「昼間の事は気にするなよ」

女魔王「なんのことだ?」

勇者「……気にしてないなら良いんだが」

女魔王「あんなもの、気にする労力が惜しい」ゴク

勇者「相変わらずザルだな」ゴク…ゴク

女魔王「貴様もな……」
女魔王「どうだ、久方ぶりの"平和的戦闘"は」ニヤ

勇者「……よし、良いだろう」
勇者「先に潰れた方の負けだからな」

女魔王「よし。私が勝ったら明日はキングレオの毛皮を買いに行くぞ」ゴクッ

勇者「気にしてるんじゃないか……」クス

『あれは……』

21: 名無しさん 2011/10/08(土) 23:33:25.39 ID:GQVeLCmSO
――…

ゴクッゴク… ゴクゴクゴクゴク……ゴックンゴックン…ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク

女魔王「ほれ、次を持ってまいれ」ニコニコ

勇者「こっちもだ」ヒック

女魔王「おや……」
女魔王「少し顔が赤いぞ勇者」ニィ

勇者「お前も……顔には出さないが、ニコニコニコニコと……酔いが回ってきてる証拠だぞ」ゴク

『こんちゃっす!』

女魔王「ー?」ゴクッ

勇者「? ……よう、女武闘家」ゴクゴク

女武闘家「久しぶりの再開でも飲むのはやめないんスね」クス
女武闘家「呑み比べなら私も混ぜていだだきたいなと……」ニコ

勇者「構わんぞ」

女魔王「それで、貴様が勝った時はなにを所望するのだ?」
勇者「?」

女魔王「こいつはこう見えて狡猾な女だぞ勇者……魔王の勘だ」

女武闘家「……いやいやまっさかぁ!」ハハハ

23: 名無しさん 2011/10/08(土) 23:44:21.94 ID:GQVeLCmSO
勇者「女武闘家が賢かったら女賢者に口喧嘩で一度も勝てないなんていう事態にはならないと思うな」

女武闘家「それは言わないでくださいよ勇者様」カァ
女武闘家「それで、もし私が勝った時にはですが……」

女魔王「……」

女武闘家「一日、勇者様をお借りしたいなぁ……と」チラ

勇者「俺を? 用事があるならいつでも付き合うぞ」

女武闘家「ということは勇者様はOKという事ですね」ニコ

女魔王「……いいだろう」

女武闘家「本当っ!? やった!」パアァッ

女魔王「サービスだ。貴様は、勇者と二人の合計で私にかかってこい」ニィ

女武闘家「それは……勝負になりませんよ?」

――…

女魔王「よしっ次!」グビッグビッ

女武闘家「も、もうらめ……」グデングデン

勇者「っくしょう……次は剣で勝負だ…」ヒック

女魔王「いいだろう。かかってこいかかってこい」ニコニコ

26: 名無しさん 2011/10/08(土) 23:54:43.24 ID:GQVeLCmSO
女魔王「今宵は楽しかった。小娘Bのおかげだな」ハッハ

勇者「高笑いがここまで様になるお人もいないだろうよ……」ヒック

女武闘家「小娘Bって呼びゅなあ……」クラァ~

女魔王「……女武闘家よ」

女武闘家「ふぇ?」

女魔王「遺恨は必ず残るだろうが、これからは仲良くしてほしい」
スッ

女武闘家「……共存、でしょ。頭の悪い私でも知ってるんらから」ヒック
ギュッ

女魔王「我は頭が良い人間は嫌いじゃ無いぞ」フフ

女武闘家「それはどうもっす~」ニコ

――…

勇者「千鳥足で帰っていったが……大丈夫か? あいつ」

女魔王「問題無い。あやつは強いからな」クス

勇者「……魔王は少し変わったな」

女魔王「そうか? 貴様がそう思うならそうなのだろう」ニコ

29: 名無しさん 2011/10/09(日) 00:03:12.80 ID:FhWWPdzMO
――…

女魔王「スライム分が足りない」

勇者「藪から棒になにを言い出すんだ?」

女魔王「この村に来てからスライムの姿を一目たりとも見たことが無いのだ」ウズ

勇者「スライムなんて村の外に行けば……ああ、今は魔物領に移ってるのか」
勇者「で、その"スライム分"ていうのはなんだ? 栄養素かなにかか??」

女魔王「食うかバカたれが」
女魔王「スライムは愛玩魔物。魔王族に古くから伝わる伝統じゃ」

勇者「へぇ……」
勇者「…………スライムナイトは?」

女魔王「あやつは……スライムも楽しんでいるようだから例外で乗っても良い事にしている」

勇者「なるほど…」
勇者「……じゃあ、結婚してから初めての魔物領旅行と洒落込むか」

女魔王「おぉっ、それは素晴らしい名案だぞ勇者」ニコッ

33: 名無しさん 2011/10/09(日) 00:16:05.52 ID:FhWWPdzMO
勇者「着替えは済んだかー?」
女魔王「あと5分待ってくれ」

――…
勇者「良いかー?」
女魔王「あと5分……」
勇者「女の支度が遅いのは人も魔王も一緒か……」ハハ

――…
勇者「少し買い物を足してから翔ぶから待っていてくれ」
女魔王「了解だ」

ヒソヒソ
女魔王「む?」

ヒソヒソ…
村民A『ひとから聞いた話なんだけどよ……』
村民B『ほうほう』

村民A『勇者様は魔王と結婚することで魔物を実質的に支配下に置き、人間に平和をもたらす。そのために女魔王と一緒になったんだとさ』
村民B『へぇ~勇者様は賢い御方だ』ハァ~

女魔王「……」
女魔王「……くだらぬ、所詮は噂話だ」フワァ

勇者「あくびなんてしてないで。ルーラで翔ぶぞ、捕まれ」
女魔王「……ああ」
ギュッ

勇者「……べつに抱きつかなくても良いんだが」タラ

36: 名無しさん 2011/10/09(日) 00:25:29.30 ID:FhWWPdzMO
【魔物領】

女魔王「やはりここは空気が美味いな」フゥ

勇者「空気というより障気、といった濁りがかったソレだな」

女魔王「……なあ、勇者。こちらで暮らすというのは……」

勇者「どこで暮らすかはお前が越してくる前に話し合っただろう。お前も納得してくれたはずだ」

女魔王「住んでみて今一度確認できた」
女魔王「人間は――穢れている」

勇者「前にも言ったけど、魔物の方がよっぽど純粋だと思う。それは確かにそうだろう」
勇者「でも 女魔王「勇者にとっては守るべき大切なもの、だろう?」

勇者「ああ……すまない」

女魔王「謝るな。今のは我の落ち度だ」
女魔王「魔物領というだけあって、景観も素晴らしい」ニコニコ

勇者「一面、死骸と血にまみれている景色だけどな」アセ

38: 名無しさん 2011/10/09(日) 00:34:24.20 ID:FhWWPdzMO
女魔王「……おや」

ピョン、ピョン

女魔王「おおスライム!」
女魔王「向こうにはベス! メタルにキングも!!」パアァッ

女魔王「すまぬ勇者っ、しばし待っていてくれ!」ニッ
タッタッタ

勇者「いってらっしゃい」ヒラヒラ
勇者「俺は……少し探検するか」

ヒソヒソ
勇者「ん?」

ヒソヒソ
魔物A『知ってるか? 魔王様が勇者と結婚した理由』
魔物B『ほうほう』

魔物A『魔王様が産む子は決して人間などではない、魔物の子だろう。最強である勇者の子さえ産めばその時点で勇者は用済みというワケさ』
魔物B『なるほど、確かにあの二人の子なら優秀な魔王の跡継ぎになってくれるだろう』クックック

勇者「……」

勇者「…………そうか」

勇者「子作り……その発想は無かった」

勇者「感謝する。道ゆく魔物たちよ」

41: 名無しさん 2011/10/09(日) 00:43:31.92 ID:FhWWPdzMO
――…夕方

女魔王「戻ったぞ」ツヤツヤ

勇者「おっ、スライム分は補給出来たみたいだな」ヨイショ

女魔王「ああ、心が満たされるというのはこういう事だったのだな」ハァ

勇者「今度からは、定期的にこっちにも来ようか」

女魔王「本当か!?」

勇者「ああ。スライム分を摂取したらいつまが美人なお前が更に綺麗になったからな、亭主としては嬉しい限りだよ」

女魔王「そうか……」
女魔王「褒め称えられるのは慣れているが…」

女魔王「勇者、貴様に言われるととても嬉しい気分だ」ニコ

勇者「お前は自分に正直だな……」ナデ

女魔王「ああ、我は我だからな」たゆん

勇者「うん、なんか良いお母さんになれる気がするよ」

女魔王「?」

46: 名無しさん 2011/10/09(日) 00:53:25.47 ID:FhWWPdzMO
【勇者宅】

ガチャッ

勇者「ただいまー」

女魔王「ただいま」

女魔王「……不思議だな」

勇者「?」

女魔王「人間領に戻ってくる時は故郷が惜しく感じたのだが…」
女魔王「ここに帰ってきて、中に入れば安心感に似たものを感じる」フゥ

勇者「ここは俺とお前の家だからな」ニコ

女魔王「そうだな」フッ

勇者「……そうだ」

女魔王「?」

勇者「三人の家になるという提案があるのだが」

女魔王「……ほう、詳しい話を聞こうか」

勇者「いや、そう神妙な表情で聞かれても言いづらいんだが」ハァ

50: 名無しさん 2011/10/09(日) 01:01:20.18 ID:FhWWPdzMO
勇者「魔王さえよければ、子作りをしたいと思っている」

女魔王「こ、子作りか」

勇者「嫌か?」

女魔王「……いや、もちろん時期が来れば自然とそういう話になると覚悟していた」
女魔王「だが、なにぶん出産は初めてなものでな」

勇者「それ以前に行為もまだだからな……」

女魔王「ああ……それに…」
女魔王「……口付けすらしていない」

勇者「なんか、その一線はあるよな」

女魔王「我も、キスをしたそこから止まらなくなりそうで……」

勇者「……」

女魔王「あ、あまりじろじろ見るな」カァ

勇者「魔王」

女魔王「……う、うむ」
ヒョイッ

女魔王「ひゃっ」

勇者「……このまま連れていく」

54: 名無しさん 2011/10/09(日) 01:10:13.41 ID:FhWWPdzMO
ギシ…
勇者「……」

女魔王「……」

勇者「……いくぞ」
女魔王「……」コク

勇者「……」ソ~
女魔王「……っ」

チュッ

女魔王「……もう一回」

……チュッ

女魔王「……もう少し長く…」カァ

チュッ… チュパ

女魔王「……」ドキ
女魔王「んっ」ガバッ

勇者「っ?」
女魔王「言ったであろう? 口付けをしたら止まる自信が無いと……」カアァ

チュッ… レロ… ンッ

女魔王「……ん……ぁ…」トロン…

61: 名無しさん 2011/10/09(日) 01:19:42.63 ID:FhWWPdzMO
チュッ… チュパ… チュパレロ…

女魔王「んっ……」

女魔王「……んむ…」チュッチュッ

女魔王「ぁ……らぁ」チュパ…レロ

女魔王「…………ぷはぁ」トロン

女魔王「……はぁっ、はぁ」

女魔王「気持ち良いものだな……これは癖になりそうだ」フフ

女魔王「? ああ」クス
女魔王「まずは服の上から触ってみてはどうだ?」

女魔王「そうだ……満足させてもらうぞ」

女魔王「ぁ……あな、た」テレ
女魔王「う、うるさいっ」カアァ

女魔王「……その前に…」
女魔王「……もう一度、口付けを…してほしいのだ」ドキ

64: 名無しさん 2011/10/09(日) 01:26:24.03 ID:FhWWPdzMO
チュン…チュン…

勇者「……ん…」
勇者「朝……か」

女魔王「起きたか」

勇者「ああ……そっちこそ、昨日は」

女魔王「……」カアァ

勇者「いや、恥ずかしがることなんてないぞ」
勇者「魔王も女だからな……可愛い声で甘えたセリフを… 女魔王「だまれっ!」
ポスッ

勇者「枕投げとは……一晩で攻撃もカワイイものになったなあ」
勇者「どうしてシーツで身体を隠すんだ?」

女魔王「…………う、うるさい」カァ

勇者「その……なんだ…」
勇者「……可愛かったぞ、本当」

女魔王「だまれだまれだまれ~っ!」カアァッ

72: 名無しさん 2011/10/09(日) 01:43:37.28 ID:FhWWPdzMO
――…【王都】

女魔王「さあ、今日は好きなものを買うぞっ」ルンルン
勇者「元気だな……俺は昨日の今日で未だに疲れが残ってるぞ……」

女魔王「だらしがない。それでも我と対等にやり合った勇者か」

勇者「昨日は勝ち越したはずだけどな……」

女魔王「せ、戦闘の話だたわけっ!」アセ

『……あれ? こんなところにいるなんて珍しいですね』

女魔王「この甘ったるい声は……」

女賢者「どうもお久しぶりです」ニコ

女魔王「ああ、久しぶりだな」
ギュッ

勇者「元気そうだな、賢者」ヨッ
ギュッ

女賢者「なっ……ナチュラルに腕組み……前はそんな事してなかったのに…」ハッ

女賢者「……もしかして……」ワナ

女魔王「勇者、アイアンタートルのエキスなんて飲んだらどうなるんだろうな」ニコ

女賢者「っ!」ムゥ

78: 名無しさん 2011/10/09(日) 01:55:35.72 ID:FhWWPdzMO
女賢者「う、うらやましい……」

女魔王「まあ、我を腰砕けに出来るのは勇者くらいのものだろう」

女賢者「ちなみに……」

女魔王「?」

女賢者「一晩で何ラウンドほど……」ピキピキ

女魔王「これくらいだろうか?」
スッ

勇者「2? いや、3くらいじゃないか」

女賢者「三回? ま、まあ、平均じゃないかしら……?? よくわからないけど」

女魔王「三回? なにを言っておる」
女魔王「200回はカタいと言っているだろう」たゆん

女賢者「にひゃっ……3百って……」タラ
女賢者「さ、さすが勇者様……というかどちらも凄いですね、もう、本当」ハァ

勇者「当分は良いです」ゲソ
女魔王「さぁエキスは買ったぞ」ツヤツヤ

104: 名無しさん 2011/10/09(日) 04:43:46.97 ID:FhWWPdzMO
女賢者「もう……これで勇者様が早死になんてしたらアナタのせいですからね」プンスカ

女魔王「早死に? そういえば人間の寿命はどれくらいなのだ?」

勇者「そうだなあ」

女魔王「1000年くらいか? 勇者ならもう少し上??」

勇者「いまの時代で平均寿命が60だから……」

女魔王「?」
女魔王「60……万年? そこまでゆくと冗談も面白みが褪せるぞ」ハァ

女賢者「なにを言っているんですか?」
女賢者「人間の寿命はどんなに頑張っても100以上にはなりません」

女魔王「ぇ……」

勇者「俺は長生きする自信があるから……今から50年は生きられるな」

女魔王「…………え?」

勇者「50年かぁ……まだ想像出来ないな」ウーム

女魔王「桁がいくつか違うようだが……」

女賢者「お二人の300回戦とはワケが違うんです」ハァ

108: 名無しさん 2011/10/09(日) 04:56:11.22 ID:FhWWPdzMO
女魔王「50年……しか生きる事が出来ないのか?」

勇者「ああ」

女魔王「それは病が原因なら我が治療法を……」
勇者「老衰だ。健康でも100まで身体がもたない」

女魔王「…………本当、か?」
勇者「……ああ」

女魔王「どうしてだ?」
勇者「どうしてって……寿命は変えられな… 女魔王「ちがう」

女魔王「どうして、残りの刹那に等しい僅か50年を我と過ごす」
勇者「それは……」

女魔王「今から家に帰ろう、勇者」
勇者「……」

女魔王「ほんの50年なら、どこにも出かけずお前と二人で……」

勇者「……」

ポンッ

女魔王「……ひっく」グスッ

勇者「大戦でも弱音一つ吐かない魔王が泣くなよ……」

女魔王「だって……だって」ヒック

112: 名無しさん 2011/10/09(日) 05:08:52.60 ID:FhWWPdzMO
女魔王「……」
ギュ

勇者「……わるい、賢者。今日はここらで帰る」

女賢者「はい……」

勇者「行くぞ、魔王」

女魔王「……」コク

ルーーーーーーーーーバシューンーーーーーーーーーーーーーラ

女賢者「行っちゃった……」
女賢者「残り50年、かあ」

女賢者「どうにかしてあげられないかな……」

女賢者「いやっ、それは決してあの女(ひと)のタメではなく、勇者のタメであって……」

女賢者「……当たり前だけど…」
女賢者「……泣くんだ…魔王でも」フゥ

113: 名無しさん 2011/10/09(日) 05:22:30.08 ID:FhWWPdzMO
ガチャッ

勇者「ただいま」

女魔王「……」

勇者「そういえば、魔王の寿命はどのくらいなんだ?」

女魔王「わからない……1万やそこらではきかないが…」
女魔王「……寿命が来るまえに死んでしまうからな」

勇者「どうしてだ?」

女魔王「先代も、これまでも……魔王は勇者に倒されるまでが寿命なのだ」

勇者「それは……すまないな」

女魔王「気にするな……その一人に負けるまで、何百、何千の勇者を屠っておる」

勇者「そうか……やっぱり強いな、魔王は」

女魔王「貴様も強い」
女魔王「我と同等に戦い、打ち負かす可能性を秘めた者の寿命が両手で数えるより少ないとは……」

勇者「指一本10年計算か、さすが魔王様だ。ふつう人間は一本をそのまま1として数えるんだ」

女魔王「スケールの違いだ……」

勇者「そういうものかな」ハハ

115: 名無しさん 2011/10/09(日) 05:33:24.57 ID:FhWWPdzMO
女魔王「我は……」
勇者「?」

女魔王「我はどうすればよい」ウル
女魔王「今から貴様になにをしてやれるのだ」ホロッ

勇者「……うーん」
勇者「じゃあなぜ俺はお前にプロポーズしたでしょうか」

女魔王「それは……戦いの最中に、お互い感じるものが…」
勇者「ちがう、まだ前だ」

女魔王「我の先制攻撃が華麗だったから?」
勇者「まだ前だな」

女魔王「戦闘前の口上が素晴らしかったから……?」

勇者「さっきから、随分自信があるんだな」クス
勇者「……その前だ」

勇者「玉座に座っているお前を見た瞬間からだよ」
女魔王「……っ」

勇者「一目惚れってやつだ。勇者が、魔王にだぜ?」
勇者「それくらい、お前は美しく、妖艶で……魅力的だった」
女魔王「……そ、そうか」カァ

勇者「機嫌、なおったか?」ナデ

女魔王「…………べつに、怒っていたわけではない……」プイ

116: 名無しさん 2011/10/09(日) 05:40:45.45 ID:FhWWPdzMO
勇者「じゃあ魔王は?」

女魔王「?」

勇者「お前は、どうして戦いの最中に告白してくるようなヤツに心を許したんだ?」

女魔王「それは……」
女魔王「あの時の貴様の仲間共の目が点になった顔といったら……」クク

勇者「おいおい、そこは触れないでくれよ……」

女魔王「ひんしにまで追いやったはずの女戦士が『えっ?』と言って起き上がったのがまた……」ククク

勇者「まあ、あれで場の雰囲気は弛んだよな、殺し合うなんて状況じゃあなくなった」ハハ

女魔王「強いていえば…」
女魔王「貴様が、強かったからだな」クス

勇者「それは……強かったら誰でも良かったのか?」

女魔王「ちがう」
女魔王「貴様だから良かったのだ……勇者」
ギュ

勇者「そ……そうか」ポリ

118: 名無しさん 2011/10/09(日) 05:51:52.36 ID:FhWWPdzMO
女魔王「我と互角にやりあえる生物を初めて目にした」

女魔王「そいつは、愚直なまでに自らの種を愛し」

女魔王「純粋すぎる精神で、我を殺しにきた」ニコ

勇者「そこ、笑うところか?」タラ

女魔王「ああ、愉快ではない…」
女魔王「……嬉しいのだ」

勇者「……勿論、戦闘前には口で説得も試みたさ」

女魔王「話し合いが通じるなら初めから大戦など起こらぬ」
女魔王「……ソイツは、我の全力の攻撃を受けても倒れず…」

女魔王「最大呪文を受けても、なお直進してくる。我から見ても十分な化物であった」

勇者「怖かった?」

女魔王「そんなハズがない」フルフル
女魔王「倒しても倒れず、殺しても死なない。無二の親友に出会ったような気分に気持ちが高揚し、えにも言えぬ幸福感にこの身は包まれていた」

勇者「確かに……魔王目線から見ても、化物だな。ソイツは」ポリ

119: 名無しさん 2011/10/09(日) 06:04:08.28 ID:FhWWPdzMO
女魔王「そうしてどちらがいつ地に伏してもおかしくはない極限状態の最中に…」
女魔王「……『惚れた』などと言われれば、驚くなという方が無理な話だ」ハハ

勇者「それで、お前はこう言ったんだ」

勇者「『いっ、一週間待て……返事は追ってする』」クス

女魔王「な、なにが面白い」カァ
女魔王「我は真面目に答えたのだ。興味が無ければ必殺呪文と一緒に返事を突き返しておったわ」

女魔王「それで……いまさら、あの時の話などをして……どういう腹持ちだ?」ジト

勇者「なに、なんてことない」
勇者「俺は……魔王、お前と一緒にいられるだけで幸せなんだ」ニッ

女魔王「っ」

勇者「お前がなにをするでもなく、俺は、お前によって既に幸せなんだ」
ナデ

女魔王「な、撫でるな……」カアァ

121: 名無しさん 2011/10/09(日) 06:09:09.30 ID:FhWWPdzMO
すみません、少し離れます。

140: 名無しさん 2011/10/09(日) 09:03:47.65 ID:FhWWPdzMO
勇者「それで、寿命の話に戻るんだけど」ハハ

女魔王「……」ジト

勇者「そんな顔をするな、こう言ってはなんだが……俺の人生は魔王討伐のためにあった」

女魔王「……そのようだな」

勇者「しかし、それが思ったよりも早く、思いもしない最高の形でその役目を果たすこととなる」
勇者「ただ倒すだけでは今のような平和にはならなかったのかもしれない」

女魔王「……そこでひとつ良いか? 勇者」

勇者「……いいぞ」

女魔王「共存、と耳に心地良い言葉を使ってはいるが…」
女魔王「……今の段階ではただの"住み分け"だ。貴様の目指す平和とは少し違う気がするのだ」フム

勇者「俺が掲げる共存は、人間も魔物も分け隔てなく暮らしていける世界だからな……」

勇者「だがどちらもどちらともを食す状態で、理想ばかりでは……」ウーム

144: 名無しさん 2011/10/09(日) 09:19:07.09 ID:FhWWPdzMO
女魔王「まあ、今する話でも無かったか……すまぬ、話が逸れた」

勇者「逸れる大いに結構だ」ニコ
勇者「これからは指標の無い中での人生」

勇者「ただ漫然と生きるわけではなく、俺の人生だけじゃない……それこそ子孫代々に続いていくんだ」
勇者「子育てが一番のメインになるかもしれないな」

女魔王「子育てか……」
女魔王「……その子は人間として育てるのか? 魔物として育てるのか」

勇者「どちらでもないと思うな……」
勇者「俺と魔王の子供。それだけで良い、育て方はその都度産まれてくる赤ん坊に合わせていけば良いだけさ」

女魔王「随分達観しているな……なにを悟っている、それとも諦めか?」

勇者「悟っているわけでも諦めたわけでもないよ」
勇者「人生に希望を持っているだけだ」ニッ

女魔王「それは……勇者らしい生き方だ」クス

147: 名無しさん 2011/10/09(日) 09:29:57.49 ID:FhWWPdzMO
女魔王「……よかろう」
女魔王「寿命の方については、我も色々と考えておく」

勇者「変に思い込まないようにな」

女魔王「わかっておる……だが今はこうして勇者も生きているわけだ」

勇者「おう、たぶん世界一元気だぜ」ハハ

女魔王「そうだな……ではとりあえず…」
ガチャ

女魔王「……買い出しにでも行くか」クス

勇者「あー、冷蔵庫が空だな」

勇者「それじゃあルーラで……」
女魔王「待て」

女魔王「また頭をぶつけるぞ……その場で翔ぶ癖を直せ。外に移動するぞ」フゥ

勇者「天井のシミの数より多いかもなあ……頭突きの跡」ハハ

149: 名無しさん 2011/10/09(日) 09:45:15.49 ID:FhWWPdzMO
――…

女魔王「そうだ勇者」

勇者「?」

女魔王「夜の方の話なのだが」ズイ
勇者「は、はい」

女魔王「やはり精力を奪われるのは酷だろう……」
勇者「まあほどほどが一番だと思うぞ……」

女魔王「ほどほどとはどれほどだ? 50? 100??」

勇者「これくらいかな」スッ

女魔王「人差し指に中指、薬指の3本か……30回か、妥当だな」

勇者「だから人間は一本を1と数えるんだって」
勇者「3回から……まあ俺は体力もあるし、5回もすれば多いほうだろう」

女魔王「なっ……ご、5回……だと……」アゼン
女魔王「…………」モジ

勇者「ん?」

女魔王「6回じゃ……ダメ、か?」カァ

勇者「……10回でも20回でもっ」グッ
勇者「(萌え殺しが一番心臓に来る……な)」ハァ

151: 名無しさん 2011/10/09(日) 09:52:37.64 ID:FhWWPdzMO
――…

女賢者「ご懐妊ですね……」スチャ

女魔王「……そうか」ナデ

女賢者「私に診察させるなんて嫌がらせですか?」

女魔王「いやなに…」
女魔王「……これから見せるところは見せるワケだ。信頼のおける人間に視てほしいと思うのが普通だろう」ニコ

女賢者「そうですかそうですか」ハァ

勇者「実感が湧かないな……」

女魔王「嬉しいが、少し残念な部分もあるな」

勇者「?」

女魔王「これからは、あの全身が痙攣するような絶頂を味わう数も減るわけだろう」フム

勇者「ははは……人前ではそういうの言っちゃダメだからな」

女賢者「私の前も人前なんですけどっ」タラ

152: 名無しさん 2011/10/09(日) 10:05:29.58 ID:FhWWPdzMO
『すみませーん』

女賢者「はーい」

勇者「この声は……」

女戦士「賢者さん、この前お借りした……っ!」

勇者「久しぶりだな」

女戦士「ゆ、勇者様……お久しぶりですっ」ペコッ

勇者「相変わらず律義だな……」

女魔王「おや、その小娘も見覚えがあるな……」

女戦士「……魔王…」

女魔王「戦士の割りに華奢で……やたら若い…ああ」ポン
女魔王「小娘Cではないか」ニコ

女戦士「小娘Cという名ではありません……」キッ

女賢者「そうか……戦士ちゃんまだ余裕で10代半ばだもんね…うらやましい」ハァ

勇者「それで、魔法の杖なんて借りて……なにに使ったんだ?」

女戦士「は、はい……その…………ええと」ボッ

女賢者「若いわねえ……」クスッ

155: 名無しさん 2011/10/09(日) 10:13:40.89 ID:FhWWPdzMO
女戦士「実は……魔法を習っていまして」カァ

勇者「魔法……」

女戦士「魔法も修得すれば、更に勇者様に近づけるかと……」カアァ

勇者「確かに鍛錬は大事だが…」
勇者「……これからの時世、冒険に出る必要もないからそこまで強くなることもないんじゃないか?」

女戦士「でも……」
女戦士「前に、勇者様が……『俺より強くなったら…」ゴニョ

勇者「どうだ? 魔王から見て、戦士の才能は??」

女魔王「素養はあるみたいだが…」
女魔王「容姿的に、いま流行りの職業、アイドルでもやっていた方が合うぞ」

女戦士「それは貴方にそっくりそのままお返しします」ニコ

勇者「戦士……目が笑ってないぞ」ハァ

157: 名無しさん 2011/10/09(日) 10:19:56.09 ID:FhWWPdzMO
女戦士「そういえば……お二方はどうしてここに?」

勇者「ああ、すこし診察にな」

女賢者「ご懐妊です」ニコ

女戦士「っ! それはおめでた…」

女戦士「……い…ことで……」チラ

女魔王「?」たゆん

女戦士「くっ……」
女戦士「やっぱり大きいのが一番なんだ……」ブツブツ

勇者「おいおい、明るくなったり暗くなったり……忙しいやつだな」

女賢者「気をたしかにもって、戦士ちゃん」グッ

女戦士「……私たち、いや…女武闘家さんにも持ち合わせていない武器をあの女は……」
女賢者「そっ、それは言わないでよ……」ハァ

女魔王「?」たゆんたゆん

158: 名無しさん 2011/10/09(日) 10:29:22.59 ID:FhWWPdzMO
――…
女魔王「~♪」

勇者「いつになく上機嫌じゃないか」

女魔王「勇者こそ、珍しく買い物も奮発して……顔が弛んでるぞ」フフ

勇者「そ、そうか……」ニタ

女魔王「一人では成し得ない経験も、貴様と二人なら休む暇なく享受する毎日だ」

勇者「俺もだよ、楽しなあ……毎日」

女魔王「楽しい……それもそうだが…」チラ

勇者「ん?」

女魔王「幸せだなっ、それが一番当てはまる」ニコッ

勇者「……ああ」

勇者「幸せだな……」ニッ

164: 名無しさん 2011/10/09(日) 10:45:10.38 ID:FhWWPdzMO
――…

勇者「世界中からお祝いの品が届いているんだが……」

女魔王「人間からも、魔族かも……か」

勇者「人間からはベビー用品がわんさか来るし……」

女魔王「魔物達からは身体に効く薬などと……ゴールドか」

勇者「旅に出ていた頃はいつも思ったんだが、モンスターはどうしてゴールドを持っているんだ? 倒せば落とすし」

女魔王「我も末端まで詳しく把握しているワケではないからな……」

勇者「……にしても祝いの電なんだが」

『魔物から平和を末永く守ってくれる勇者様の子孫を!』
『魔物の力を確かなモノにするために強い魔王様の系譜を!』

勇者「好き勝手に言うなあ……」ハハ

女魔王「そういうものだろう。不安なのだ、皆一様に」フッ

165: 名無しさん 2011/10/09(日) 10:50:10.48 ID:FhWWPdzMO
早めに朝ごはん済ませてきます。

179: 名無しさん 2011/10/09(日) 11:37:04.56 ID:FhWWPdzMO
コンコン

『ごめんくださーい』

女魔王「……客だな…」

勇者「お前は休んでろ」

ガチャッ

――…

女戦士「お久しぶりです」

女魔王「……ああ、やはりお前か」

女戦士「わかっていたんですか?」

女魔王「気配とか諸々でな……」

女戦士「……元気が無いようですが」

女魔王「……人間との出産方法の違いだ」
女魔王「我の魔力を供給して育てているからな……時期が近くなると、自然と気性も穏やかになる」クス
女魔王「見舞いにきてくれたのか」

女戦士「……その件なんですが…」

――…
勇者「合図があるまでしばらく二人きりにしてほしいとな……」フゥ

182: 名無しさん 2011/10/09(日) 11:51:18.14 ID:FhWWPdzMO
女戦士「"境目の街"である噂を耳にしまして……」

女魔王「魔物領と人間領の唯一の境……土産話を聞かせてくれる…という表情ではないな」フフ

女戦士「あそこは人間領に踏み入ようとする魔物を相手に、修行にうってつけの地なので…」
女戦士「……"魔王は、勇者の子を産むだけのために今の生活に身を投じている"と断末魔代わりに教えてくれた魔物がいましてね」

女魔王「ほう……それは、穏やかではないな」クス

女戦士「私は真面目な話をしに来ているんです」

女魔王「それで、勇者を外に出したわけか……」

女戦士「……事実確認をしに来たんです」

女魔王「そうだな…」
女魔王「確かに、そう告げた」

女戦士「っ! 」キッ
スチャ

女魔王「物騒だな。魔物でも身重の時分なのだが……」

女戦士「覚悟して、ここに来ているんです」チャキ

185: 名無しさん 2011/10/09(日) 12:03:06.05 ID:FhWWPdzMO
女戦士「……お腹の子には悪いですが、全ての怨恨は私が引き受けます…」
女戦士「……勇者様にも二度と会う事は無いでしょう」

女魔王「……今の状態でも我は一人で人間を根絶やしに出来るであろう」クク

女戦士「……それが、最後の言葉ですか」

女魔王「だが、貴様は強くなった」

女戦士「……貴方が残虐な魔王のままでいてくれて、あの玉座に座していてくれたならば……今、この瞬間を楽しめていたはずです」スゥ…

女魔王「ああ、勇者…とまではいかないが、勇者を名乗るに値する力だ……」

女魔王「……どうだ? それだけ強くなって」

女戦士「……惑わそうとしても…」

女魔王「いま、その身体を包むのは幸福感か? いや、違うだろうな……」

女戦士「私に貴方を刺す気が無いとでも思っているのなら、それはとんだ無謀、とんだ楽観です……」
ズサッ

189: 名無しさん 2011/10/09(日) 12:13:22.31 ID:FhWWPdzMO
女戦士「……っ」

女魔王「おっと、枕が破れてしまったわ」

女戦士「この初撃を枕で軽々と受けきるなんて……余裕みたいじゃないですか」

女魔王「今の動きが最後の抵抗だ」
女魔王「まあ、言っても信じはせんだろうが…」

女魔王「……その噂話は事実であり、事実ではない」

女戦士「……くだらない問答で時間稼ぎですか…」

女魔王「あの場ではああ言うしか他の魔族を納得させる事が出来なくてのう……魔王といえど、一人の魔界を動かす一つの歯車にせんということだ」

女戦士「……勇者様を一人占めにして…」

女魔王「それが本音か?」クス

女戦士「……っ」カアァッ

女魔王「よい……貴様も人間と…勇者を想っての此度の無礼なのだろう…」
女魔王「我は問題にせん、不問に帰すぞ」

女戦士「…………話は終わっていません……」ジャキッ

194: 名無しさん 2011/10/09(日) 12:25:05.56 ID:FhWWPdzMO
女戦士「助けを求めないんですね」

女魔王「貴様は賢しい……勇者は良い仲間に恵まれたな」フッ

女戦士「これが愚かな行為だということは百も承知…」
女戦士「……それでも、私は…」

女魔王「誰のために?」

女戦士「人間の……」

女魔王「……」フゥ
女魔王「我はこの数ヶ月、勇者を死なせない…死んでもこの世に残す方法を模索していた」

女戦士「また、時間稼ぎ……」

女魔王「ああ、そのことだが…」
女魔王「……勇者には、貴様が訪れたらこうなるだろう事は告げてある」

女戦士「!」

女魔王「すまぬな……貴様とは腹を割って話をしてみたかったのでな」
女魔王「実際に腹を割かれては困るが」クックック

女戦士「魔王ジョークですか、笑えませんね……」

199: 名無しさん 2011/10/09(日) 12:37:48.43 ID:FhWWPdzMO
女戦士「愛する貴方が窮地に立たされているのを見過ごす勇者様じゃありません……」

女魔王「アイツは信じているからな……」

女戦士「仲の良いことで……羨ましいです」

女魔王「なにを勘違いしておる。勇者が信じているのは貴様の方だ……女戦士」

女戦士「っ」
女戦士「今日はよく舌が回るみたいですね……」

女魔王「そう誉めるな」クク
女魔王「話せばわかり合えると思ったからこそ、二人で会う事を認めているのだ」

女魔王「信頼されているのだ、貴様も」

女魔王「長い旅を連れ添った仲間なのだろう……無理に我を信じろとは言わん…」
女魔王「だが……我を信じる、勇者を信じる事は出来るのではないか?」

女戦士「っ……」
女戦士「……卑怯ですね、やっぱり……貴方は魔王です」ウル

女魔王「ああ……我は魔王だ」ニィ

205: 名無しさん 2011/10/09(日) 12:48:47.50 ID:FhWWPdzMO
女戦士「私は……まだ未熟です」
女戦士「もしかしたら、ここで貴方を手にかけなかった事を後悔するかもしれません」

女魔王「勇者に対する信頼の、何分の一くらいは我を信じてみてはどうだ」ニコ

女戦士「無理ですね」
女魔王「随分とハッキリと言うものだな……」

女戦士「だって……」
女戦士「勇者様は私の……初めての人ですから」ポウッ

女魔王「……」ピキッ

――…
勇者「話は終わったようだな……」

女魔王「勇者。ちょいと、我の前に顔を近づけてくれ」ニコ

勇者「……おいおい、客の前でなにをするんだ?」テレ
女魔王「我としては優秀な遺伝子を他にばらまくのに魔族として否定はしないが…」

勇者「んー?」スッ
バキッ!!

勇者「ぶべらっ!?」バゴーンッ

女魔王「なぜだか……えにも言えぬ苛立ちが生じてな…………」ニコッ

女戦士「……おっかないです…」サアァ

216: 名無しさん 2011/10/09(日) 13:07:01.14 ID:FhWWPdzMO
勇者「誤解でふ……」

女魔王「まったく……紛らわしい言い方を…」
女魔王「……すまん」ペコッ

勇者「いや、俺も油断していたからな……」
勇者「……女戦士も」

女戦士「は、はい……」モジ

勇者「その……あのキスは事故で…」

女戦士「わかってますよ」ニコ
女戦士「でも……私にとっては大事なことなんです……」カァ

勇者「そうか……」チラ

女魔王「……」ニコ

勇者「……」タラ
勇者「……お前は、可愛い妹のような存在だからな…可愛い後輩でもあるし……」

女戦士「わかってます」クス
女戦士「まだ、始まったばかりですから」ニコッ

勇者「……なにが?」チラ

女魔王「……我に聞くな」ジト

220: 名無しさん 2011/10/09(日) 13:25:58.05 ID:FhWWPdzMO
――…
女戦士「はい、飲みものです」

女魔王「……すまぬな」

――…

女戦士「着替え、ここに置いていきますね」ニコ

女魔王「…………ああ」

――…

女魔王「おい、勇者」

勇者「どうかしたか?」

女魔王「あの小娘C、どうしてあれから良くするのだ」
勇者「よくわからないんだけどな……自分の時のために色々出産について知っておきたいらしいぞ」

勇者「さっきも『まるで勇者様と子育てをしているみたいで嬉しい』って、なにが嬉しいかはわからないが良い子じゃないか」ウンウン

女魔王「……あの小娘め…」

女戦士「勇者様っ、今日の夕飯の献立はなにが宜しいですか?」ニコッ

女魔王「出ていけ!!」

勇者「家事もやってくれてるんだし……そう邪険にするなよ…な?」タラ

222: 名無しさん 2011/10/09(日) 13:32:36.34 ID:FhWWPdzMO
少しだけ会社の上司に会ってきます。
始末書の問題だけなので長くはかからないと思います。

260: 名無しさん 2011/10/09(日) 15:40:46.15 ID:FhWWPdzMO
4時あたりに帰れます

うちの会社の場合、10万円以下の損失は顛末書になるみたいです
今回は片手分なので始末書ですね。

……4時ちょいに投下していきます…

274: 名無しさん 2011/10/09(日) 16:16:56.33 ID:FhWWPdzMO
保守ありがとうございます。投下していきます。

>>262
自分の一本は100万なんです

281: 名無しさん 2011/10/09(日) 16:21:47.71 ID:FhWWPdzMO
――…コンコン

ガチャッ

女武闘家「こんにちわっす!」

バタン

コンコン!!

ガチャッ

女武闘家「どうして閉めたんですか!?」
勇者「魔王がな……女武闘家が来た時には一度ドアを閉めろって」

女武闘家「ただの嫌がらせじゃないですか!?」
女武闘家「あっれー? もしかして私、嫌われてます??」

勇者「いや、そんなことないと思うぞ…」
勇者「……パーティの中ではお前が一番お気に入りだと思う…俺の目から見てだがな」

女武闘家「本当ですかー?」アセ

――…

女魔王「来たか、さあ、座れ」ポンポン

女武闘家「……子供扱いされてるの?」ジト

勇者「それは…………否定は出来ん」タラ

284: 名無しさん 2011/10/09(日) 16:31:06.98 ID:FhWWPdzMO
女武闘家「お腹も大きくなりましたね~」

女魔王「そうだな……」

女武闘家「あれ? 体調すぐれません??」

女魔王「今日は良い方だ……貴様も見舞いに来てくれたことだしな」

女武闘家「……」
女武闘家「(勇者様~っなんか優しいですー!)」パチパチ<アイコンタクト

勇者「(だろう? ちょっと良ければ理由を聞いてみてくれないか)」パチ、パチ

女武闘家「あのぉ~、魔王さん?」

女魔王「……どうした?」クス

女武闘家「私のこと、どう思います?」ドキドキ

女魔王「ふむ……」
女魔王「産まれてくる子が貴様のようだったら良いなと思ってな」ニコ

女武闘家「(勇者様~っ! 不意の笑顔に惚れちゃいそうですー!!)」パチパチ<アイコンタクト

勇者「(安心しろ、俺も惚れ直したっ)」グッ

287: 名無しさん 2011/10/09(日) 16:38:29.89 ID:FhWWPdzMO
女武闘家「それは……評価していただきありがたきなんたらです」ヘコヘコ

女魔王「なにをかしこまっておる」フフ
女魔王「頭も良く、人当たりも良い。おまけに最高クラスの戦闘力を持つときた」

女魔王「人間の世界で暮らしていくに、この上ない要素ではないか」
ナデ

女武闘家「はは……頭を撫でられるのって久しぶりですね」クシャクシャ

女魔王「ほう、そうなのか」

女武闘家「勇者様は最近かまってくれませんし…」
女武闘家「前なら一緒にお風呂にも入ったのに……」シュン

女魔王「それは……寂しいな」

女武闘家「はい……」

女魔王「…………」ニコ

勇者「(目を合わせずとも怒気が伝わってくる……)」ブルッ

291: 名無しさん 2011/10/09(日) 16:48:31.50 ID:FhWWPdzMO
女武闘家「実は、私が勇者様のパーティに一番に入ったんですよ」ニコッ

女魔王「そうなのか……そういえば旅の馴れ初めを聞くのは初めてだな…」

女武闘家「初めは二人でLV上げとかして……」

女魔王「当然のことだが、勇者にも弱い時期があったのだな」フム

女武闘家「3つ目の町くらいまでは二人でやっていったんですよ」エヘヘ

女魔王「それは……すごいのか?」チラ

勇者「まあ……二人パーティも珍しいからな」

女武闘家「でも、二人では限界が来て……新しい仲間を加入させようって話になって…」
女武闘家「私、正直、少し嫌だったんです」

女武闘家「勇者様と二人きりだったパーティに知らない人が入ってくるのが……」ハハ

勇者「……俺がいる事を忘れているのか?」
勇者「(なんなら出て行…)」チラ

女魔王「(……聞け、その方がお前と武闘家、両方のためになる)」パチ

294: 名無しさん 2011/10/09(日) 16:57:55.83 ID:FhWWPdzMO
女武闘家「それで……ルイーダの酒場に行ったんです。あそこ、興信所の役割もあるので」

女魔王「そうなのか……ただの酒場ではなかったのだな」

女武闘家「すぐにパーティに入ってもらえそうな人をリストから探していたんですけど…」
女武闘家「……子供二人のパーティに入ってくれる人も中々いなくて…」

女魔王「それは……確かにな」ムゥ

女武闘家「でも、そこで逆に話しかけてくれた人がいたんです」ニコ

女魔王「ほう」

女武闘家「それが女賢者さんなんですよ」ニッ

女魔王「……」ジトー

勇者「(露骨にイヤそうな顔をするなよ)」タラ

女武闘家「なんか、勇者様って、お姉さんから好かれる顔してるって」ニコニコ

女魔王「あの女……魔王討伐を出会いの大義名分にしておったのか…」カチン

女武闘家「あの時は私も14歳で、勇者様も一つ上でしたから」ニコ

296: 名無しさん 2011/10/09(日) 17:09:20.32 ID:FhWWPdzMO
女武闘家「賢者さん、初めから賢者だったので即戦力でしたっ」
女武闘家「そして三人で冒険をしていた時に……」

―――――……………

勇者『このパーティに足りないのは男だと思う』グッ

女武闘家「えー、今でも十分やっていけてるよ?」

女賢者「男なんて入れたら勇者様の身体が危険にさらされますよ」ウル

勇者「どうしてボクが危険になるんだ…」
勇者「……とにかくっ、無性に男同士でバカやりたくなる時があるんだっ」

女武闘家「稽古相手なら私がしますし……」
女賢者「女の子に話しずらい話なら私が聞きますよー」

勇者「賢者の言い分は支離滅裂すぎて意味がわからない…」
勇者「でも男分が足りないんだ!」

―――――……………

女武闘家「それで、再びルイーダの酒場に……」ハハ

女魔王「どれだけ男が欲しかったのだ……よほどの執着力だぞ」ハァ

勇者「……言い訳する言葉も無い」ハハ

303: 名無しさん 2011/10/09(日) 17:21:24.00 ID:FhWWPdzMO
―――――……………

勇者『掲示板の前に立っていた戦士を勧誘してきました!』

女賢者「……ええと、どこにもいないですけど…」キョロ

勇者「ほら……後ろに隠れてないで…」

戦士『は、はい……』ヒョコッ

戦士「あの……年は規定の年齢に達していませんが、実力は人並み以上の自信があります」

戦士「よ、よろしくお願いします」ペコッ

女武闘家「またかわいい子を連れてきて…」ナデ
女武闘家「ぼく、お姉さんは武闘家で……」

女賢者「…………違う」
女武闘家「え?」

女賢者「同性の匂いがします……」キッ
勇者「……もしかして、だけど…君って……」

女戦士「? 私、女……ですけど」キョトン
勇者「   」

―――――……………
女武闘家「今さらパーティから出ていけなんて言えるはずもなく……」タラ

女魔王「はは……苦笑いしか出てこぬわ」フゥ

309: 名無しさん 2011/10/09(日) 17:33:38.14 ID:FhWWPdzMO
女魔王「貴様らの馴れ初めはわかった…」
女魔王「それで、トントン拍子で魔王城まで辿りついたと。」

女武闘家「そんなに順調にはいきませんでしたよ…」
女武闘家「……戦士ちゃんが加入して5年かかりましたから」

女魔王「パーティ完成から5年で魔王討伐をほぼ完遂したのならすさまじいな」ホォ

女武闘家「戦士ちゃんが入った時はまだ10歳でしたから」ハハ

女魔王「15? あの小娘、あのナリで15なのか??」

女武闘家「すごい美人さんになりましたよねー……正直、私よりもスタイル良いですし」ガク

女魔王「貴様ら三人供、似たようなサイズではないか」ジー

女武闘家「胸の話はしていませんっ!」イーッ

312: 名無しさん 2011/10/09(日) 17:42:17.87 ID:FhWWPdzMO
女武闘家「魔王城に到着する頃には暗黙の了解が出来ていて……」

女魔王「……続けろ」

女武闘家「魔王を倒すまでは抜け駆け無し、という不文律が……」カァ

女魔王「ほう……それは…」

女武闘家「そうして、魔王を倒すか倒されるかとなった時に――」

女魔王「……その、なんと言えばいいのだろうか」

女武闘家「魔王さんは気にしないでください」クス
女武闘家「私たちも同じように驚きましたから」ハハ

女武闘家「ひんし状態の女戦士ちゃんも起き上がったくらいですし」クスクス

女魔王「ああ……アレには…悔しいが笑わされた」クックッ


勇者「(よくわからんが、また女戦士をネタに笑ってるのは理解した)」

316: 名無しさん 2011/10/09(日) 17:53:24.09 ID:FhWWPdzMO
――…

女武闘家「えっ、今日は泊まっていってもいいんですか??」

女魔王「ああ……良いだろう? 勇者」

勇者「俺に反対する理由は無いな」

女武闘家「本当ですかっ?」
女武闘家「わ~いっ! 久しぶりに勇者様とお泊まりお泊まり♪」

女魔王「喜んでくれたのならこちらも嬉しい」フフ

勇者「……」

女魔王「……どうした?」

勇者「出産が近いから合わせて優しくなってるのかな、と思っていたんだが…」
勇者「……お前ら二人は相性が良さそうだな」ニコ

女魔王「そうか? ……」チラ

女武闘家「寝間着はどうしよう……お風呂上がりはいつもと違う髪型になんかしたりして…」エヘヘ

女魔王「妹……というより娘に近い感覚だな」クス

勇者「俺には仲の良い姉妹に見えるぞ」

320: 名無しさん 2011/10/09(日) 18:04:39.10 ID:FhWWPdzMO
――…
勇者「"今日は別の部屋で寝ろ"?」

女魔王「ああ、今日は一人で寝たい気分なのだ」
勇者「いつもは『一緒にいられるだけくっついていたい』って言うのに……」

女魔王「……き、今日は特別なんだ」
女魔王「寝室は女武闘家と二人で使え、あとは知らん」

勇者「うーん……お前がそう言うなら」

女魔王「(まあ、女武闘家にはそうする機会くらい与えてやってもいいだろう……)」

――…チュンチュン

女武闘家「ふぁ~あ、おはようございます」フワァ

女魔王「眠たそうだな……」クス

女武闘家「はっはい! 実は昨日……勇者様が…」
女魔王「ああ……」

女武闘家「寝ぼけていたのか、私を抱き枕みたいに抱き締めてくれて~っ!」キャー
女魔王「……は?」

女武闘家「もう、勇者様分満タンですよ~」ツヤツヤ

女魔王「まぁ……いらぬ世話だったか」
女魔王「そいつは……良かったな」ニコッ
ナデナデ

321: 名無しさん 2011/10/09(日) 18:12:12.78 ID:FhWWPdzMO
――…

女武闘家『元気な赤ちゃんを産んでくださいね~』パタパタ

ガチャンッ!!

扉の外<扉を閉める勢い強すぎじゃないですか!? もしかして早く出ていって欲しかったとか!?
キャーキャー

勇者「……今のでいいのか?」

女魔王「ああ……あやつを弄るのはまこと、愉快だ」クス

勇者「ほどほどにな……」ハァ

ガチャッ

勇者「忘れ物か……?」

女魔王「いや……違うな…」

『勇者様~(ハァト』

勇者「この声は……」

女魔王「すぐに追い返すのだ」ジト

勇者「そう言うなよ……」ハハ

322: 名無しさん 2011/10/09(日) 18:18:32.39 ID:FhWWPdzMO
コトッ

女賢者「あっ、お構い無く」ニコ

女魔王「……なんの用だ」

女賢者「知人と話がしたいだけ……じゃ、駄目でしょうか」フフ

女魔王『駄目だ。』

勇者「どんだけ嫌いなんだよ……」

女魔王「それに、聞いたぞ小娘……」

女賢者「……はい?」ニコ

女魔王「ルイーダの酒場を出会いの場として使用していた、勇者のパーティにあるまじきその性魂。穢らわしい……魔物以上に欲求に忠実な女よ…」

女賢者「なっ、なにをおっしゃって……」チラ

勇者「?」

女賢者「良いじゃないですか別に!」ドンッ

勇者「なにかしらんが開き直ったのは理解したぞ」

326: 名無しさん 2011/10/09(日) 18:30:28.48 ID:FhWWPdzMO
女魔王「良いか勇者、人間・魔族に問わず、猫をかぶって男の機嫌を伺う雌を、雌は一番嫌うのだ」キッ

勇者「身体に響くぞ……あまりハッスルしないようにな…」

女賢者「確かに、初めはごく微量に下心があったかもしれません……」

女魔王「なにがごく微量だ。隣の商屋比120%増しに見え見えだわ」

女賢者「でも、一緒に旅を続けるにつれ……パーティの皆との連帯感も生まれ、仲間意識が強まり…」

勇者「うんうん……」

女賢者「勇者様も私の予想以上に、逞しく…素敵になられて……」ホゥ
女賢者「旅の最中でも、綺麗だね。とか、賢者の髪は今まで見た中で一番美しいよ、とか」クネクネ

女魔王「腰をくねらせるな。毒イモムシか貴様は」チッ

女賢者「それに、前にもおヘソが綺麗だって……やですよもうー」テレテレ

336: 名無しさん 2011/10/09(日) 18:45:53.69 ID:FhWWPdzMO
女魔王「自分語りが終わったのならすぐに帰れ」

女賢者「過去の話をぶり出したのは魔王さんの方ですよ」

女魔王「もう話をする事はない」
女賢者「あら、勇者様とまだ話してませんよ」フフ

女魔王「」ブチッ
女魔王「それなら家の外でも話せるであろう……あまり苛立たせるな」ゴゴゴゴゴ

女賢者「わ、わかりましたから……そこまで本気にならないでください…」

――…

勇者「おい……」
コツン

女賢者「ぃたっ」

勇者「そろそろ産気付いてもおかしくない時期なんだから……あまり興奮させるな」ハァ
女賢者「つい……猫をかぶっていると言われましたが、私からすると向こうの方がよっぽど泥棒猫ですよ……」ツンツン

女賢者「あと……これ」ガサ
勇者「ん? 土産か??」

女賢者「私が祷りを込めた、安産間違いなしのお守りです」

勇者「これを持ってきたなら始めに出せば……」

女賢者「だから……あの人の前だと、つい感情的になってしまって……」ハハ

344: 名無しさん 2011/10/09(日) 18:58:35.89 ID:FhWWPdzMO
――…

ガチャ…

勇者「……気分はどうだ?」

女魔王「あやつのせいで、せっかく上機嫌だったものが台無しだ」ムゥ

勇者「賢者なりに元気付けようとしたんだよ」

女魔王「そうか? ……そうだろうか…」
女魔王「……ちがうな」ウム

勇者「あと……これ、あいつが祷りを込めたっていう安産祈願というか、安産確定のお守りらしい」
スッ

女魔王「……」
女魔王「……受け取っておく」ギュッ

――…

女魔王「勇者ー」

勇者「どうした?」

女魔王「このお守りだが…」
女魔王「ロザリオのようにとはいかんが、身に付けられるように出来ないだろうか……」テレ

勇者「……」ニッ
勇者「問題無い。賢者も喜ぶぞっ」ニコ

348: 名無しさん 2011/10/09(日) 19:06:48.84 ID:FhWWPdzMO
――…

勇者「待ってろ! いま女賢者を呼んでくる!!」

――…

女賢者「はぁっ……はあっ」
女賢者「今さらだけど、人間の出産方法と同じでいいのかしら……?」

勇者「ここまで一緒だったんだっ、とにかく頼むぞ……」

女賢者「……わかりました」コクッ

――…

女賢者「……おそらく、人間と同じでしょう」

勇者「……魔王」

女賢者「勇者さんに出来る事は事前にお教えしましたよね」

女魔王「……なにを慌てておる…」
女魔王「……我は魔王だ、お前ら人の基準と一緒にす…」

女賢者「はい強がりですねわかりますーまずは息を吸って~……吐いてー…」

勇者「……」バク…バク…
ギュッ

349: 名無しさん 2011/10/09(日) 19:09:17.97 ID:FhWWPdzMO
夕飯いってきます。

380: 名無しさん 2011/10/09(日) 20:12:58.70 ID:FhWWPdzMO
――…先日

勇者「生まれてくる子は……人型、だよな?」

女魔王「そうは断言出来ぬ…」
女魔王「……過去には人型ではない魔王もいたと聞いておる」

勇者「……そうか」
勇者「性別は……?」

女魔王「……わからぬ」
女魔王「人型でもあれば魔物の姿をしていたり、雌雄が有ればどちらでも無かったり」

女魔王「絶対というものは無いのだ」
勇者「……そうか」

女魔王「我はどちらの形をしていようが気にせぬが……」

勇者「……考えるだけ無駄かもな…」
勇者「その時になればわかるだろう」

女魔王「……そういうものか」
女魔王「我は、はやくその姿を拝みたいところだ」ニッ
――…

女賢者「もう少しですよーっ魔王さん!」

スッ…

勇者「……っ!」

390: 名無しさん 2011/10/09(日) 20:26:50.95 ID:FhWWPdzMO
――…

勇王(娘)『おとうさーん』

勇者「……元気だなー、お前は」

娘「おかあさんの?」

勇者「……ああ、お前は写真でしか見たことないからな」

勇者「……魔王の、ロザリオ。届けに行くんだ」

娘「またお留守番ー?」

勇者「いや、今日はお前も連れていく…」
勇者「……大事な日だからな」ニコ

娘「おー、大事……?」

勇者「おかあさん似だな、お前は」
勇者「……行くか」

娘「女戦士さんは?」

勇者「あいつはお留守番だ」

娘「そっか……」
テク、テク…

422: 名無しさん 2011/10/09(日) 20:36:57.38 ID:FhWWPdzMO
――…
勇者「ここで、眠っているのがおかあさんだ」
娘「ほー……」
娘「おかあさん、恐い?」

勇者「……ああ、おとうさんよりずっと恐いぞ」ニコ
娘「……きんちょうしてきた」

勇者「起きないから、緊張せんでも良いぞ」

ガチャ…

『……おぉ、来たか』

勇者「お前っ、もう目が覚めたのか!?」
女魔王「なんだ……早くに目を醒められてはいけい理由でもあったのか」クス

勇者「いや、医者の話だと一週間の間面会謝絶と聞いていたからな…」
勇者「……でも、良かった」

ギュッ
女魔王「……ふふ、随分と久しい気がする………ん?」

娘「…………」ガクブル
女魔王「っ! ……」ウル
スッ…
娘「ゃっ」サッ
スカッ

女魔王「な……っ」ガーンッ

446: 名無しさん 2011/10/09(日) 20:48:26.31 ID:FhWWPdzMO
娘「……」ビクッ

勇者「お前に似て美人だろう」
勇者「小さい頃の魔王もこんな感じだったんだろうな」
女魔王「確かに……だが、魔族の匂いが薄いな」

勇者「というか成長スピードがとんでもないんだが…」
勇者「生後一週間で歩いて、言葉も初めからある程度知っていて……人間でいえば6歳くらいか」

女魔王「魔族は一番弱い時期が一番短いからな」フム
女魔王「生後あたりから成長のスピードは緩やかになっていく……」

女魔王「ほら、ここに……おいで」チョイチョイ
娘「……」
娘「……」
テクテク…

女魔王「捕まえたっ」ガバッ

娘「!?」

女魔王「可愛いなぁまったく…」
女魔王「……本当に、涙が出るほどに愛らしい…」グスッ

娘「……」クス
娘「おかあさん、こわくないね」

女魔王「……魔族にしては威厳が足りないようにも見えるな…」
勇者「そこはまあ、半分勇者の血も混ざっているということでさ…」
勇者「……威厳が無いのをそのせいにはしないでくれよ…」ポリ

456: 名無しさん 2011/10/09(日) 21:02:26.73 ID:FhWWPdzMO
――…【自宅】
女魔王「久方ぶりの我が家だな」フゥ

ガチャッ

女賢者&女武闘家&女戦士『退院おめでとうございます!!』パンッ パンッ

女魔王「……」キョトン

勇者「本当はもっと大勢で集まる話だったんだが…」
勇者「女戦士が、こういう時に大勢の対応をさせるのもかわいそうだから。ってさ」

女魔王「……そうか」
女魔王「気恥ずかしいな……こういう慣わしは、魔族にはないから慣れておらなんだ」

女戦士「……お帰りなさい…」ニコ
女魔王「……ああ、ただい… 娘『戦士おかあさ~んっ』ピョンッ

ポフッ

女戦士「こら、あまりはしゃぐと、怪我の元ですよ」

女魔王「……? どういうことだ、今のこれは」

娘「戦士おかあさんが一緒の時は"おかあさん"って呼んでいいよって!」ニコッ

女戦士「…………」キョロ…

女魔王「……おい、目を合わせろ…」ニコ

462: 名無しさん 2011/10/09(日) 21:12:32.29 ID:FhWWPdzMO
女戦士「だって……赤ん坊の頃に側に母親がいないのは可哀想じゃないですか」キョロ

女魔王「筋の通ってる事を言っている自信があるならば目を反らす必要がどこにある……」

娘「おかあさんが帰ってきても、女賢者さんはおとうさんと同じ部屋で寝るの?」

女魔王「なっ……」キッ

女賢者「この季節はですね……毛布より人肌の方が暖かいんですよ」ニコ

女魔王「……」ピキ

娘「武闘家おねえちゃんも、おとうさんと結婚するんだよねっ」ニコッ

女武闘家「……ええと…」
女武闘家「……うんっ♪」ニコッ

女魔王「いや、そこは気まずそうにするところだ……」ハァ
女魔王「……」チラ

勇者「!」
勇者「……お帰り、魔王」ニッ

ギュッ

女魔王「……ん」
女魔王「ただいま……勇者…」チュッ

467: 名無しさん 2011/10/09(日) 21:22:57.33 ID:FhWWPdzMO
――…数年後

娘「お父さん、キラーマジンガにバイキルトをかけたら手がつけられなくなっちゃった……」

勇者「……支度をするから少し待ってなさい」

――…

娘「お母さーん、隣の国の王様が無理矢理、私を誘拐しようとしたから咄嗟にマダンテ使っちゃったんだけど……」

女魔王「またか、よいよい。その場に放っておけ」

勇者「いや死んでしまう死んでしまう」アセ

勇者「……支度をするから、待っていなさい」ハァ

――…

娘「お父さん……戦士おかあ…女戦士さんが修行で手加減してくれなくて…」

勇者「それは仕方がない、アイツも顔は避けてくれている辺り良心的じゃないか」

娘「お母さん~」

女魔王「小娘Cにやられるとは情けない……勝つまで負けてこい」

娘「~っ」
娘「このバトルばか夫婦っ!」ハァ

477: 名無しさん 2011/10/09(日) 21:37:25.33 ID:FhWWPdzMO
――…

娘「お父さんっ、はい! チョコレートっ」ニコッ

勇者「おう、ありがとうな」ナデ

娘「へへ……」

――…翌年

娘「お父さんっ今年のチョコっ」ニコッ

勇者「ありがとう」ニコ

女魔王「娘がなついてくれるとは喜ばしい限りじゃないか」クス

勇者「それもいつまで続くか……毎年、これが最後のチョコだと思って食べてるよ」ポリ

――…翌年
娘「お父さん……? これ、チョコ」スッ

――…翌年
娘「お、お父さん……こ、これ」カァ

――…翌年
娘「あの……チョコだけじゃなく、セーターも、あ、編んだの…………」カアァ

勇者「うちの娘はグレずに育ってくれて嬉しい限りだよ……」パクッ

女魔王「勇者と魔王の子は、常識には当てはまらないのかもしれぬな」フム

492: 名無しさん 2011/10/09(日) 21:48:13.11 ID:FhWWPdzMO
――…

娘「そういえば……」
娘「弟か妹って出来ないの?」

勇者「っ」ゴホッ、ゴホッ

女魔王「なにを焦っておる……」
女魔王「そうだな……勇者次第だな」ニコ

勇者「娘一人でも体力的にキツい現状だからな……」

女魔王「まあ、我は毎日相手をしてもらっているからな……不満は無い」

娘「そっかー」

娘「で、どうして弟妹が出来るのにお父さんの了承が必要なの?」

勇者「っ」ブフォッ

女魔王「まったく……ほれ、顔をこっちに向けろ」
フキ… フキ

娘「結局、どうしてかわからないままだよう……」

499: 名無しさん 2011/10/09(日) 21:56:39.91 ID:FhWWPdzMO
――…
女魔王「最近は、『おおききなったらお父さんと結婚するーっ』と言わなくなったな」

勇者「そうだな……仕方がないよそれは」ハハ
勇者「娘がいつか俺を邪険に扱う日がくるのさ……」ウル

娘「? 私、お父さん好きだよ??」

勇者「優しいなあ、娘は」ウンウン

娘「だって、お父さんはお母さんのものだから」ニコ

娘「結婚出来なくても私はお父さんの事、好きだよっ」ニコッ

勇者「……魔王」

女魔王「……?」

勇者「お前といい娘といい、魔族の血が流れている者は、割りきりがしっかりしているというか…」
勇者「……大物だよな」

女魔王「我なら愛した者に相手がいようが関係ないだろうが…」
女魔王「……身をひくあたり、やはり人間の血も混ざっているということだろうな」

勇者「やっぱり……二人の子なんだな、って思うよ」ニコ

505: 名無しさん 2011/10/09(日) 22:11:14.57 ID:FhWWPdzMO
――…
娘「戦士おかあさんは、結婚しないの?」

女戦士「っ……まだ、良い」

娘「私がいま11歳で…私が産まれた時に戦士おかあさんは15歳だから……」
娘「25、6歳? まだ若いねえ」

女戦士「鍛錬が足りないという事です」

娘「好きな人はいるの?」
娘「戦士おかあさんすっごく美人だから、お母さんと同じくらい綺麗なの、戦士おかあさんだけだよっ」ニコ

女戦士「……誉めてくれるのは嬉しいですが…」チラ
女戦士「正直、容姿よりも…戦闘の方で貴方に追い抜かれた事の方がショックです……」ハァ

娘「大丈夫だよっ、お父さんを抜かせば人間で一番強いからっ!」ニッ

女戦士「……勇者様と同等が貴方の母、その下に貴方…」
女戦士「私の現目標は娘さん、貴方という事になりますね……」スチャ

娘「いや……でも戦士おかあさんより強いって自覚ないし…戦士おかあさんに勝てる気がしないし……」タラ

女戦士「そうですね……」
女戦士「では、ハンデ無しのマジバトル。いきましょうか」ニコッ

娘「ううぅ……親に匹敵する戦闘バカだよぉ女戦士さん…」グスッ

510: 名無しさん 2011/10/09(日) 22:19:24.54 ID:FhWWPdzMO
娘「痛た……」ヨロ

娘「どんな体さばきをすれば、あの人みたく空中で変化出来るのかな……」イタタ

『お疲れのようね、娘ちゃん』

娘「この声はっ!」パアァッ

女武闘家「どうも、"はじまりの村に吹く一陣の風"女武闘家ですっ」キリッ

娘「わーかっこいい~」パチパチ

女武闘家「一部始終は見させてもらったよ」ニコッ

娘「見てました? …丁度よかった」
娘「女戦士さん、教会に連れていってあげてください……たぶん自力じゃ動けないと思います」

女武闘家「娘ちゃん、私も20代じゃなくなるから……」

娘「?」

女武闘家「手合わせお願いしますっ♪」ニコッ

娘「えぇ~っ!」ガーン

514: 名無しさん 2011/10/09(日) 22:27:12.67 ID:FhWWPdzMO
娘「あの……出来れば、日を改めて…」
娘「というかどうして私なんですか?」

女武闘家「私には心残りが一つあってね…」
女武闘家「……本当は、旅が終わったからはその人に戦闘で勝てたら告白しようと思っていたんだけど……」

女武闘家「いよいよ無理そうで……」ハハ

娘「ふむふむ……」

女武闘家「なので、悔いを残さぬよう、勝っても負けてもあの人を吹っ切ろうと思うの」ニッ

娘「わー素敵っ」
娘「……私が相手じゃなければ…」ズーン

娘「お父さんやお母さんじゃ駄目なんですか?」

女武闘家「勇者様は無理だし、魔王さんは本当に無理っ」ニコッ
女武闘家「それじゃあ……よろしくお願いしますっ!」スゥッ…

娘「もう……勇者パーティの鬼ぃ~っ!」グスッ

517: 名無しさん 2011/10/09(日) 22:35:44.47 ID:FhWWPdzMO
――…

娘「……ん…」チラ
娘「ここ…は?」ガバッ

『まだ安静にしてなきゃ駄目よー』

娘「この甘ったるい声は…」
娘「……女賢者さん!」

女賢者「正解ー♪」パチパチ

女賢者「それより……女武闘家ちゃんが痛々しい姿で貴方を運んできたんだけど……事情を教えてくれないかしら?」

娘「実は……」

――…

娘「女武闘家さん、お母さんの言っていたとおり、狡猾な人なのかもしれません……」

女賢者「というか、私にはあの戦士ちゃんと戦った後の連戦で武闘家ちゃんをメタメタにした貴方に感心するわ」タラ

娘「親に鍛えられてますから…」
娘「……女賢者さんは結婚しないんですか?」

女賢者「どうかしら……」ウーン

娘「どうしてみんな美人なのに結婚しないんだろう……」フム

522: 名無しさん 2011/10/09(日) 22:42:39.32 ID:FhWWPdzMO
女賢者「でも、娘ちゃんも勇者様が好きでも結婚しないでしょう?」

娘「それは……お母さんがいるし…」

女賢者「皆も一緒よ」クス

娘「……そうかわかった」
娘「みんなも好きな相手が結婚してるんだ……っ!」ポンッ

女賢者「う……ん、当たりといえば当たりね」ニコ

娘「そっかー……」

――…

娘「ということがあってね……」

勇者「戦士よりも強くなったのか……これは俺も鍛え直す必要が……」

女魔王「我は勇者を入れて4人を同時に相手取ったのだぞ……せめて小娘三人には同時にとは言わぬが、連戦なら勝ってほしいところだな……」

娘「二人とも? 一人娘が絆創膏だらけの包帯グルグルなのにはなにも感想無いの……?」タラ

528: 名無しさん 2011/10/09(日) 23:00:29.76 ID:FhWWPdzMO
――…

勇者「俺も30になったか……」

女魔王「見た目は変わらぬな」

勇者「これから皺とか出てくるんだろうなー」フゥ

女魔王「我は、お前がどんなに老けようが愛し続けるぞ」
女魔王「大事なのは、容姿ではなく、魂なのだから」

勇者&女魔王「この約10年……」
勇者「あっという間だったな……」 女魔王「長く、充実していたな……」

女魔王「おや……」

勇者「50年は刹那に等しい時間、なんじゃなかったのか?」

女魔王「勇者こそ、50年が想像出来んほど長いと言っておったではないか」

勇者「……くくっ」

女魔王「……不思議だな…」

勇者「ああ……お前と一緒だから、この10年が短く感じられたんだ」

女魔王「貴様と一緒だから、この10年が今までのどの10年よりも充実し、とても思い出しきれないほどに……長いものに感じられるのだ」ニコ

532: 名無しさん 2011/10/09(日) 23:09:22.81 ID:FhWWPdzMO
女魔王「それでな……勇者」

勇者「……ん」

女魔王「お前の寿命を延ばす方法も見つかったのだが……きっとお前は使わないだろう?」

勇者「……そうだな…」
勇者「パーティの皆も死んでしまうだろうし、仮にその三人も寿命を延ばしても……今度は俺たちだけ、というワケにはいかなくなる」

女魔王「我も考えたのだ…」
女魔王「……貴様と生きる1000年も素晴らしいものだろう」

女魔王「だが」
女魔王「貴様と生きる50年が、その1000年に及ばぬものでなど決してないと」

勇者「俺も、そう信じたいよ」

女魔王「信じたい? 勇者にしては弱気だな」フッ

勇者「……前言撤回、その1000年になんか必ず負けない…お前の言う、"充実"した50年にするよ。俺が約束する」

女魔王「……ああ」
女魔王「貴様がそう言うのなら、間違いないな」クス

女魔王「我の最後の不安も、今ので全て、払拭されたわ」ニコ

539: 名無しさん 2011/10/09(日) 23:26:18.43 ID:FhWWPdzMO
――…

勇者「最近、娘相手に苦戦するようになってきたなあ」

女魔王「いつまでも若いわけじゃあるまいし、いつかは越えられる日が来る」

勇者「確かに、子に自らを越えられるというのはそう悪いものでもないな……」

女魔王「負けた日は、慰めてやるから。思いっきり泣き言を言え」ニッ

勇者「お前はいつまでも若々しいな……」

女魔王「勇者が喜んでくれるのなら、我も嬉しいのだが……」

勇者「よしっ、今日は張りきるか……」パクッ ハグッ

女魔王「そ、そうか……そうやる気を出されると、嬉しいぞこちらも」テレ

勇者「まだまだ妻にも娘にも負けてたまるか……っ」ガツガツ

543: 名無しさん 2011/10/09(日) 23:34:23.13 ID:FhWWPdzMO
――…

勇者「強くなったなー、父さん嬉しいぞ」
ナデ

娘「うん……ありがとう」グスッ

勇者「どうしてお前が泣くんだよ……」ハハ

娘「だって……」
娘「お父さんの背中が小さく見えて……」グスッ グスッ

勇者「……そうか」
勇者「お前が大きくなったんだ。魔王とそっくりだよ」

娘「今日まで育ててくれてありがとう……お父さん。これからも…よろしくお願いしますっ」ペコッ

勇者「ああ……これからも、よろしくな」ニコッ
ナデッ

――…

女魔王「よくやったよ……勇者」

勇者「……ああ、今日まで…すごく長かった気がするよ」

女魔王「まだだ……これから、まだまだ我らの人生は充実していくんだからな」
ギュッ

551: 名無しさん 2011/10/09(日) 23:44:00.76 ID:FhWWPdzMO
――…

勇者「温泉か……若い内には来られなかったなあ」チャプン

女魔王「そうだな……ふう、やすらぐ…」

カポーン

勇者「こうやって、夕陽に染まる外の景色を一望しながら、お前と二人で風呂に入っている今が幸せだ」
勇者「そして、明日はまた一番幸せ。毎日が一番幸せなら、それは一番幸せな人生だということだな」フゥ

女魔王「ああ、勇者……我も、幸せだ」
ザバァ

女魔王「ふぅ……」

勇者「……」

女魔王「どうした?」

勇者「……改めて見ても、お前が綺麗でな…」
勇者「人生で二度、同じやつに一目惚れするとは思わなかった」

女魔王「勇者よ……我も少しは年をとっているのだ…」
女魔王「……最近は、貴様に誉められる足袋に…顔が、赤くなってしまう……」ブクブク…

559: 名無しさん 2011/10/09(日) 23:53:25.27 ID:FhWWPdzMO
――…
勇者「魔王……少し、外を歩かないか?」

女魔王「良いだろう……いま一度、村を見て回ってみるか?」フフ

――…

キャッキャ ワイワイ

勇者「平和だな……」

女魔王「ああ、平和だ」ニコ

勇者「人々が活気に溢れ、子供達が楽しそうに遊んでいる……」

女魔王「これは、貴様が取り戻した平和だ」
女魔王「貴様の人生は……人々のためになった…」

勇者「……そうなら良いと思うよ」

女魔王「勇者が存在していた事を、歴史も…人々も…」
女魔王「……我も、必ず、忘れぬ…」ポタッ

勇者「おいおいお前も娘じゃないんだから……私のために泣かないでくれ」ニカ

566: 名無しさん 2011/10/10(月) 00:01:04.71 ID:rBEAbl8fO
――…
勇者「……よいしょっ、と」ググ

女魔王「一人で起きてきたのか……今日は調子が良いんだな」ニコ

勇者「今からもう一度、冒険に出ても良いくらいだよ」ハハ

女魔王「そうか……貴様が再び来てくれるなら、我は再びあの玉座に座して待っていてやろう」

勇者「はは……三度目の一目惚れをさせる気かい?」

女魔王「ああ……我もまた、一層、貴様を愛することだろう…」

勇者「……愛しているよ、魔王」

女魔王「……ああ、我もだ。勇者よ」
ギュッ…

576: 名無しさん 2011/10/10(月) 00:08:04.58 ID:rBEAbl8fO
――…

女魔王「勇者……聞こえるか?」

勇者「……ああ、おはよう。魔王…」

女魔王「今日三回目の挨拶だな」ニコ

女魔王「夕飯の支度が出来た。今日は消化の良いものだけでなく、貴様の好物を食べさせても良いと、賢者から許しを得ておる」

勇者「それは……楽しみだな…」

女魔王「前は見えるか?」

勇者「微かにな……明かりはもう少し強くならないのか?」

女魔王「これが限界だ……これ以上は身体に障る…」

勇者「そうか……」
勇者「……不思議だな…視界がぼやけても、君の姿だけははっきりと映る…」

女魔王「……勇者…」
女魔王「我が、貴様の手となり足となろう……目の代わりにだってなってやるからな」ニコ

595: 名無しさん 2011/10/10(月) 00:16:58.21 ID:rBEAbl8fO
――…
娘「お父さん、私……今度、結婚することになったの」

勇者「そうか……それは朗報だ」ニコ

娘「……」グスッ
娘「お父さんっ……!」
ダキッ

娘「お父さん……っ、お父…さん……っ」ヒック…ヒック

勇者「泣くんじゃないよ……新しい門出じゃないか…」
勇者「……綺麗になったなあ…」

娘「お父さん……」グスッ

チュッ

娘「私……ずっと、お父さんの事が 勇者「それは……言わずに行くんだ」

娘「お父…さん?」

勇者「魔族の血が流れるお前は無意識に人の魂を見て、綺麗なソレを持つ者を選ぶ…」
勇者「……その人と、幸せにな…」ニコッ

娘「は……い、ありがとう……お父…さん…っ」ヒック…グスッ

勇者「良い子だ……」
ナデ…

606: 名無しさん 2011/10/10(月) 00:23:54.32 ID:rBEAbl8fO
――…

勇者「……」

女魔王「二人でこうして、日向に座っている事が日常になって、どれくらいだろうな……」

勇者「……」

女魔王「貴様と肩を寄せ合う……それだけで、我の胸は満たされる」

勇者「綺麗な夜空だな……」

女魔王「……ああ、とても、綺麗だ」

勇者「娘も見ているだろうか……」

女魔王「当たり前だ。あの子も伴侶と共に幸せを歩んでいく……勇者、貴様と同じものが見えぬはずがない…」ニコ

勇者「暖かいなあ……」

女魔王「ああ……、とても良い天気だ…」

622: 名無しさん 2011/10/10(月) 00:33:23.19 ID:rBEAbl8fO
――…
 勇者っ、聞こえるか?

 勇者っ、勇者っ!

「……」

 勇者!

勇者「……ああ、また眠っていたのか…」

女魔王「勇者……」グスッ…

勇者「魔王……どうしてそんなに泣いているんだ?」
女魔王「……っ…っ」グスッ… グスッ

勇者「……そうか…」
勇者「その時が来たというわけか……」

勇者「さながら、いま意識がはっきりしているのは風前の灯火というやつか……」チラ
女魔王「勇者……」グスッ

勇者「魔王……今まで、ありがとう」

女魔王「勇者っ、勇者……」ヒック

勇者「一片の悔いも無い……素晴らしい人生だった…」
勇者「……君のおかげだ…」ニコ

女魔王「……わ、我も……勇者のおかげ……で…ひっ、く……」グスッ

640: 名無しさん 2011/10/10(月) 00:45:42.08 ID:rBEAbl8fO
勇者「最後にこうして君と話せて……万感の想いがめまぐるしく浮かび上がってくるよ…」
勇者「……そうだ、浮かび上がってきたといえば…そこの棚、その奥を探ってごらん」

女魔王「……?」グスッ

ガサ…ゴソ

スッ

女魔王「これは……」

勇者「初めて君が、スライム分が足りないと言って故郷に戻る時があっだろう?」
勇者「その時に5分ほど時間をもらって買いに行ったんだ…」

女魔王「あの時の……毛皮…」ヒック…

勇者「君ならいつでも買えると思うけど……当時の私は、買ったはいいが、渡すのが恥ずかしくなってね……」コホッ、コホッ

女魔王「……ありがとう…」
ギュッ

勇者「……こちらこそ、ありがとう…」
ギュッ

656: 名無しさん 2011/10/10(月) 00:53:46.82 ID:rBEAbl8fO
勇者「好きだよ、魔王」

女魔王「我も……好き、だ」

勇者「愛している」

女魔王「我の方、が……愛して…いる…」グスッ

勇者「私の方が……感謝している…」ニコ

女魔王「……この、負けず嫌いめ…」ハハ

勇者「……ありがとう」

女魔王「……ありがとう」

勇者「魔王、私は君と歩んだ人生に満足している……」…

女魔王「我もだっ、我も満足しているっ!」ヒック
女魔王「我も……勇者、貴様といられて…」

女魔王「しあわせ、だった……」ニコッ グスッ

 おやすみ……勇者…

 チュッ

675: 名無しさん 2011/10/10(月) 01:03:17.07 ID:rBEAbl8fO
――…

『母さん』『お母さんっ』

女魔王「……ここは…」
女魔王「……そうか、今際の際……というやつか……」

『お母さん!』『母さんっ!!』

女魔王「あれから……何千年と人と共に過ごし…勇者の言う共存を現実のものとするために尽力した」
カアサン! オカアサンッ!!

女魔王「いつの間にか我は魔王と呼ばれる事も無くなり…柄にもなく、母と人々に呼ばれ…親しまれた……」

女魔王「勇者……今なら貴様の気持ちも理解出来よう…」
女魔王「人間も、魔族も……等しく、かけがえのない命だ……」

女魔王「我も……いま、そちらに行く…」

カアサン! イヤ… オカアサンッ!!

女魔王「我は……幸せ…だったぞ…………」


女魔王『…………なあ? 勇者』ニコッ

692: 名無しさん 2011/10/10(月) 01:10:31.99 ID:rBEAbl8fO

 とある勇者と魔王の物語。

 勇者と魔王が最果ての地で出会った事実は、永遠になくならない……。

 勇者と魔王が共に生活し、人々と暮らしながら魔物との共存を夢見た事は無駄にはならない。

 勇者と魔王が子を成し。育て。共に幸福な人生を歩んだ事を、世界は忘れない。

 勇者と魔王の幸せで、この上ない……人生という名の物語は、人々の記憶で、伝承で、書物で……永遠に残っていくことだろう……。


 勇者と魔王……

 二人は……確かに、幸せであった。



  <完>