1: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:14:21.840 ID:xBsCqQ0V0
俺「……」動物動画じっー…

俺(やっぱり猫や犬はかわいいな。飼いてぇ~)

俺(よし、飼うか)

引用元: ・俺「ペット飼うか」百年間売れ残り続けた妖狐「出さんか! この! 出さんかーー!」ガンガンッ!

2: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:15:03.062 ID:xBsCqQ0V0
~ ペットショップ ~

犬「ワンワン」 猫「ニャーニャー」

俺(うおーこの子すげーかわいいな。値段は? ぉふ、、予想より結構するんだな……無責任な話だけど実は予算はそんなに無いんだよな。よくよく考えたら飼育環境整えるのもそれなりだし)

俺(もうちょっと金貯めてからにするか) トボトボ

女性店員「あの、もしかしてお探しの子います?」

俺「あーいえ、実はそんなに予算が無くてまた今度にしようかなと」

4: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:15:50.205 ID:xBsCqQ0V0
女性店員「……えーっと、もしよかったら話だけでも聞いて欲しいんですけど、実は今物凄くお値打ちな子がいるんですよ。ここ百年くらい売れ残っちゃってて」

俺「百年!? 亀かなんかですか? あの、、一応飼うなら猫か犬にしようかなと思ってるんですけど」

女性店員「あー同じようなもんですよ。『妖狐』って種類なんですけど」

俺「『ヨーコ』?聞いたことありませんね」確かにコヨーテ感はあるけど

女性店員「手が掛からなくて飼育も楽で、見た目も可愛いですよ? 見ていくだけでもどうですか?」

俺「ああ~……じゃあ、見ていくだけなら」

女性店員「こっちです」

ツカツカ…

6: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:16:19.155 ID:xBsCqQ0V0
女性店員「よいしょっと」

床ゴトンッ

俺(地下!?)

女性店員「あ、どうぞ。階段下ってください」懐中電灯カチッ

俺(大丈夫なのか?) ツカ、ツカ、、

妖狐「! 出さんか! この! 出さんかーー!!!」ガンガンッ!

俺(っ…! 確かに見た目はかわいいけど気性が荒い)

女性店員「今日は新しいお客さんを連れてきたの。出たかったら大人しくすることね」

7: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:16:49.443 ID:xBsCqQ0V0
妖狐「ぅ……おいそこの。わしをここから出せ」ムスッ

俺(ん? 何か張り紙がしてある) ペラ

【封】

俺「これこの子の名前ですか? 『フウ』?」

女性店員「あ、いえ……そういう訳でもないんですけど。もしご購入なされたときはお客様から素敵なお名前を付けてあげてください」

8: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:17:14.364 ID:xBsCqQ0V0
俺「……あの、参考までに値段を聞かせてもらっても?」

妖狐「ふんっ。わしは一世を風靡した大妖怪ぞ? くく、そうじゃのぅ……即金一千万両用意できる器の男なら、一夜限り付き合うてやらんことも……」

女性店員「千円でどうですか?」

妖狐「こらぁー!」

俺「え、千円でいいんですか? あーでも既に百年以上生きてるんですよね? なら寿命とかは……」

妖狐「失敬な奴じゃのぅ。わしは後千年は生きるつもりじゃぞ?」

女性店員「らしいです」

俺「……」

9: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:18:04.068 ID:xBsCqQ0V0
女性店員「あ、実際丈夫なんですよ? だってここ百年病気にもかからずこのとおりぴんぴんしておりますし。保証書も勿論お付けします!」

俺「っ~……」

妖狐「疑おうておるようじゃの。もうよいもうよい。見た限りそやつは一千万両出せるタマでもなさそうじゃ。ちれ」シッシッ

女性店員「……あ、金貨でのお支払いを所望しているようですので、五百円でどうでしょうか? 何なら五円でも……」

妖狐「こらぁー!」

10: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:18:18.837 ID:xBsCqQ0V0
俺「……返品保証付きなんですよね?」

女性店員「はいっ」

俺「じゃあ、、五円なら」

女性店員「お買い上げありがとうございますっ」


こうしてヨーコと俺の生活が始まった。
名前は特に思いつかなかったので結局『フウ』と呼ぶことにした。

12: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:19:00.803 ID:xBsCqQ0V0
俺「ただいまー」

妖狐「お、帰ったか」

俺「ん」つパック稲荷寿司

妖狐「おぉ~~♡ わさび稲荷とは分かっておるのぅ♡ ふふっ褒めてつかわすぞ」もぐもぐ


ヨーコというのは動物にしては珍しく油揚げが好物だそうで、特に稲荷寿司を与えておけば間違いないという。
勿論店員さんから聞いた話だ。

16: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:20:12.449 ID:xBsCqQ0V0
俺「……」キョロキョロ

妖狐「お、そうじゃそうじゃ。見よ! もう『うるのーが』とやらを倒したぞ! ふふんどうじゃ? すごいじゃろ」どやー シッポユラユラ

俺(もう特に部屋を荒らされてはないな)

来たばかりの頃は冷蔵庫から本棚まで部屋中を荒らされて大変だったが、興味を示していたゲーム機一つを与えたらそんなことも無くなった。

18: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:20:55.866 ID:xBsCqQ0V0
\ピピー!/ オフロガワキマシタ

妖狐「くぁ……ふぅ、、今日は流石に疲れたの。先に湯につからせてもらうぞ」スタスタ

俺「ん、分かった」

最初は『手がかからない』なんて詐欺だとも思ったが、ちゃんと教えれば部屋を荒らすこともないし風呂だって自分で入る。
一先ずあの店員さんが言っていたことは本当だったようだ。

妖狐「!」ピタ

俺「?」

妖狐「ふふっ、いくらわしが絶世の美女だからというてこの柔肌を覗いてくれるなよ? まあどうしてもと言うなら二の腕くらいは見せてやるがの!」

「あーはっはっ!」\ガラガラバタン!/

俺「……」

と、こんな風に偶によく分からないことを言う。気になる事があって『ヨーコ』で調べてもそれらしい情報は全然手に入らないため、知らない事は全部店員さん頼りだ。

19: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:21:45.803 ID:xBsCqQ0V0
そのまま何だかんだで数ヶ月が経った。

21: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:22:03.345 ID:xBsCqQ0V0
俺「ただいま……」ガタ、ガタ、

妖狐「んー」ゲームポチポチ

俺「はい」つパック稲荷寿司コト

俺(めちゃくちゃ疲れた。風呂入ってさっさと寝よう) フラフラ

\ガラガラバタンッ/

妖狐「……」チラ

22: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:22:29.244 ID:xBsCqQ0V0
~ 風呂場 ~

ジャー…

俺「ふぅ、、」

\ガララ/

俺「? 悪いまだ入って……」チラ

妖狐「ふふんっ♪」とてとて…

俺(待てないか。もう出よう) スッ

妖狐「よいよい。これもわしの戯れじゃ。勤勉な眷属に褒美をくれてやろうと思うてな。偶には労ろうてやろうというわけじゃ」肩ぴとっ

俺「?」

24: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:22:53.246 ID:xBsCqQ0V0
妖狐「んっ、、しょ」泡泡…

背中ゴシ、ゴシ

俺「!」

妖狐「むぉ~……だだっぴろい背中じゃのぅ……むぅ。力を失う前ならここまで苦労することもなかったのじゃが」ゴシ、ゴシ

俺「……」

どうやら知らないうちに人の背中を流すことも覚えたらしい。
よく出来たペットだなと思う。

26: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:23:27.275 ID:xBsCqQ0V0
俺「……ん、ありがとう」なでなで

妖狐「! ふん。感謝せえよ? わしに身体を清めてもらうなぞ、吉原ですら叶わぬことぞ」ごし、ごし

頭をなでても怒らないあたりどうやらやっと懐いてくれたらしい。
『背中を流す』というのは考え過ぎだったか。これはきっと動物でいうところの『仲間内での毛繕いのようなもの』なのだろう。

28: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:23:56.678 ID:xBsCqQ0V0
そこからはフウとの距離が急激に近くなった。

妖狐「くっ! このわしよりでかい顔をしおって! このっ! このっ! ええい鬼人化じゃあっ!!!」ポチポチ

俺「……」ポチポチ

妖狐「おぉ~! 桃の化狐をやっつけたぞ! ……ん? なんじゃ体験版とやらはここまでなのか。三月が楽しみじゃのぉ♪」

一緒にゲームをしたり

29: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:24:10.116 ID:xBsCqQ0V0
妖狐「おい。もっとちこうよれ」布団モゾモゾ

俺(狭い)

妖狐「ふぅ、、冬は冷えるでのぅ。こうした方が賢かろ」ぎゅ…

一緒に寝たりするようになった。

30: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:25:04.015 ID:xBsCqQ0V0
ある時は一緒のものを食べたり、またある時は意味もなく会社の愚痴を聞いてもらったりもした。

妖狐「むぅ。確かにそやつはロクな奴じゃないのぅ。ま、しかし辞めてはくれるなよ? わしが困ってしまうからの。ふふっ……これでもおぬしの根城を結構気に入っておるのじゃぞ?」

相変わらず身体を壊す素振りも見せず、何なら人間よりも丈夫なんだそうで、ぶっちゃけ俺にはヨーコの欠点があまり見当たらなかった。


何故みんなヨーコを飼わないのか不思議にすら思った。
そんなある日の出来事だった。

31: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:25:44.099 ID:xBsCqQ0V0
俺「今度お客さん連れてくるよ」ゲームポチポチ

妖狐「客とな…? 珍しいのぅ」ポチポチ

俺「最近彼女にフウの話してたら、見てみたいって言ってきてさ」ポチポチ

\ガタンッ!/

妖狐「なっ…!? お、女子とな……? わしというものがありながら……よいわけなかろうがっ!」><

33: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:26:07.695 ID:xBsCqQ0V0
俺「は? 何でだよ」

妖狐「むぅ゛~~! この阿呆! もう知らん!」電源ポチッ!

俺「あ! こら…!」

妖狐「……」布団ぼふっ!

俺「……?」

何故かフウが急に口を聞いてくれなくなった。

34: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:26:22.737 ID:xBsCqQ0V0
何か機嫌を損ねたのかと心配になり店員さんを訪ねたがどうやらお手上げのようで、店員さんは俺の話を聞いている間、終始苦笑いだった。
インターネットで調べてみてもやっぱりオノ・ヨーコの情報ばかりが流れ込んできてよく分からなかった。

割といいこと尽くめに話していた手前彼女に無愛想なフウを見せるわけにもいかず、俺はペットお披露目会をあえなく断念した。

36: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:27:04.460 ID:xBsCqQ0V0
俺「ごめん。何かあいつ割とシャイだったみたいでさ、普段はちょっと腹立つくらい堂々としてるんだけど……」

彼女「へぇ……残念。でもそういうことなら仕方ないね」

俺「はあ。全くだよ……あ、そろそろ稲荷寿司に特売シールが貼られる頃だからもう帰らないと。ごめんじゃあまたね」

彼女「……」

俺「あーやばいやばい」スタスタ

39: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:28:14.251 ID:xBsCqQ0V0
彼女「あのさ!」

俺「?」クル

彼女「その子、女の子なんだよね」

俺「え? そうだよメスだけど……言ってなかったっけ?」

彼女「ふふっ」

俺「?」

彼女「ね、私たち、もう別れちゃおっか」

41: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:28:50.076 ID:xBsCqQ0V0
俺「は!? ぇ、ちょっ……!?」

彼女「ごめんねっ」スタスタスタ

俺「待っ……!」

俺「……えぇ」

そうすると今度は急に彼女に振られたが、失恋に涙する俺の話を聞くフウの顔は、何だか元に戻っているみたいだった。

42: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:29:14.035 ID:xBsCqQ0V0
その後も同じようなことが短い期間で一、二回ほど続いてから俺はやっと気がついた。

俺(なるほどヨーコを飼育することの欠点は交際ができなくなる所にあったのか)

ということはこれから先、フウが俺を置いて先に逝くことも無さそうなので俺は一生独身ということになるわけだが……

俺(成程)

哀れなことに俺はフウが百年間売れ残り続けた理由を知った頃には

妖狐「なんと! 今日はいつもより稲荷寿司が二パックも!? よいのか!? よいのか!?」

俺「馬鹿。一つは俺が食うんだよ」

妖狐「なんじゃつまらんのぅ」

そんな人生も悪くないかと、思ってしまっていたのであった。

43: 名無しさん 2021/01/14(木) 00:29:19.628 ID:xBsCqQ0V0
おしり