2: 名無しさん 2009/10/13(火) 17:28:14.40 ID:deHZSp5P0

―― 一階 体育館

女性「」

ハルヒ「……眠りに着けたのね、やっと……この子」

キョン「ああ……俺たちが来るのを、ずっと待ってたんだろうよ。誰かに、メッセージを伝えられるのを」

みくる「……ぐす……『模様の部屋』……そこには、一人しか入ったらいけない、そういうことなんでしょうか……」

古泉「ええ……そして、奥の扉から、廊下が伸びていると。
    しかし、見取り図には、それらしき場所が確認できません……」

キョン「……とにかくよ。行ってみるしかねえと思うぜ。
    奥に扉っつったら……一つ見当たるが、ありゃ、用具倉庫か?」

長門「他に、両脇の壁に鉄の扉が、二づつ」

古泉「……とりあえず、用具倉庫から調べて見ましょう。ただし、彼女の言う『模様の部屋』がどこにあるかわかりません。
    十分に注意をしていきましょう……」

キョン「……ハルヒ、行けるか?」

ハルヒ「……当然よ」

ぐしぐし

ハルヒ「この子の遺志、ちゃんと引き継いであげなくちゃ……絶対、脱出するのよ。この学校から」

引用元: ・ハルヒ「そういうわけで、今日は廃校探検!」

kadokawa_s
3: 名無しさん 2009/10/13(火) 17:36:43.42 ID:deHZSp5P0
―― 一階 体育倉庫

ゴウンゴウン

キョン「案の定、暗いな……古泉、ライト頼むぜ」

古泉「はい。……! フレスコ画です、こんな所にまであるとは……
    ……壁にも床にも、『模様』と思われるものは、ありませんね」

ハルヒ「だったら、フレスコ画を確認しましょうよ。あの子の行ってた、廊下ってのがどこから行けるのかとか、分かるかもしれないし」

古泉「ええ、そうしましょう。朝比奈さん、涼宮さん。念のため、入り口で見張っていてください、何か現れないか」

みくる「は、はい」

ハルヒ「オッケーよ。大丈夫よ、みくるちゃん。こっちには武器があるんだから。あんたのみくるフラッシュとか、あたしの木刀とか」

キョン(木刀はまだしも、フラッシュはコウモリ限定じゃねえか……)

古泉「では、照らしましょう……三人で照らしたほうが、効率がいいでしょう」

キョン「しかし、えらく大量に用意してきたんだな、懐中電灯」

古泉「ふふ、もしもの時のためにと思いまして……結果的に役に立っているんですし、良いではないですか」

キョン(……実際に遭遇しちまったら、もしもでもなんでもねーじゃねーか)

長門「見つけた」

キョン「早っ!!」


6: 名無しさん 2009/10/13(火) 17:44:58.19 ID:deHZSp5P0


『幻の部屋にて 窓辺に 銀の輝きを』


古泉「……幻の部屋、ですか……もしかすると、彼女の行っていた、あるはずのない『廊下』と関係しているのかもしれませんね。
    フレスコのメッセージが告げるくらいです、やはり、この体育館にある扉のいずれかから、その『廊下』へ行けるのでしょう」

長門「探索を進めるべき」

キョン(古泉、フレスコのメモなんて取ってたのか。……まあ、この状況じゃ、やるほうがまともか……暇だな、しかし)

チラッ

キョン(ん? ……なんだ、そこの跳び箱の影に……
    ! こいつは……!)


骸骨「」


キョン「なっ……!」

キョン(こ、こいつは……死体だ。やっぱり、若い女の子の……しかし、今までのヤツらと、骨の見た感じが違う……
    それに、服も着てねえ。まさか、『敵』か……!?)

キラッ

キョン(! 違う、この骸骨……『眼鏡』をかけてる! こんなもんを掛けたゾンビはいねえ……
    ……眼鏡越しの、眼窩が、天井を見上げて息絶えてる……天井ッ!?)

8: 名無しさん 2009/10/13(火) 17:48:37.21 ID:deHZSp5P0
古泉「? どうかしましたか?」

キョン(まさか、ここは―――!!)

バッ

キョン「―――天井! 天井の一部に……『模様』がありやがる、古泉ぃぃぃ!!」

古泉「なッ―――!?」

キョン「『模様の部屋』は此k」

ボッグォン

キョン「オウッフ」

古泉「ぐえっ!」

ハルヒ「きゃああっ!? な、何、敵!?」

ドッシャアアアア

キョン(なっ……なんで、俺と古泉が、用具倉庫の外まで吹っ飛んだんだ!?
    まっ、まさか―――)

キョン「長門っ―――うおあッ!?」



―――ボウッッンッ

11: 名無しさん 2009/10/13(火) 17:54:35.25 ID:deHZSp5P0
ハルヒ「きゃああああっ!? ひ、火が、倉庫ん中に! 火があっ!!」

古泉「ばっ、馬鹿な……長門さん!! 火を、火を消すんだぁっ!!」

キョン(あのバカ、フルパワーじゃねえってのに……!!)

みくる「きょ、キョン君!! これっ、消火器! どう使うんですかッ!?」

キョン「! 貸してください! ……こっんのヤロォォォォォォ!!」ブシャァァァァァア

ドジュウウウウウウ……

ハルヒ「ちょ、もっと早く消火してよぉ、キョン!! 有希が、有希がああっ!!」

キョン(俺だって、この五倍は出て欲しいがよ! 機能的限界があんだよ!)

シュウシュウシュウ……

古泉「あらかた消えました……長門さん! くっ、煙で見えない……長門さん!!」

長門「無事」

古泉「うっはぁっ!?」

キョン(いきなり古泉の目の前に!)

ハルヒ「ゆ、有希いいいい!! よかったあ、無事だったの……げほ、ゆ、有希、なんか、けむい……」

長門「消火ガス。そのうち希釈される」

13: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:02:25.46 ID:deHZSp5P0

―――

古泉「なるほど……あの模様の真下のみが、炎が噴出しなかったと」

キョン「『一人しか入っちゃ行けない模様の部屋』の正体、か……確かに、あの模様の下には、一人しか入りきらんな」

長門「足に経度の低温火傷を負った。しかし、問題ないレベル。あなたたちへの蹴りのダメージのほうが大きい」

ハルヒ「もう、無茶しないでよね!」

長門「申し訳ない。しかし、説明する時間はなかった」

みくる「……えっと、それで。フレスコは、なんて?」

古泉「ああ、はい……『幻の部屋にて、窓辺に銀の輝きを』……と、ありました。
    このメッセージがどのような意味を持つのかは分かりませんが……『幻の部屋』があるならば、『廊下』があってもおかしくないでしょう。
    彼女の残したメッセージどおり、『庭の見える廊下』を探してみましょう」

ハルヒ「たしか、奥の扉って言ってたわよね。あの子が居た入り口から、奥っていうと……ステージ側の両脇にある、鉄の扉のどっちかね」

古泉「地理的に、入り口を入って左……つまり、北へ向かうほうの扉は、塀に面しているはずです。となると、おそらく……こちらの。南へ向かう扉が、そうなのではないかと思われます」

キョン「ま、開けてみりゃあいいさ。ハズレなら、おおかた開いてはくれないんだろうしよ」

ハルヒ「よし、いくわよ……この扉ね。あたしとみくるちゃんで開くから、何か飛び出してきたら、斧で真っ二つにしちゃっていいからね」

キョン「へいへい」

ゴウンゴウンゴウン

14: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:11:23.81 ID:deHZSp5P0
キョン「これは……ビンゴだな」

古泉「ええ、『廊下』です。……西向きに、渡り廊下と並行に続いているようです。そして、反対側の壁に『窓』がある」

ハルヒ「! 『中庭』よ、ついに見つけたわ! でも……うっそうとしてて、わけわかんないわね」

古泉「ええ……地理的に考えて、中庭というよりも、サブグラウンドといったところでしょうか。運動部のコートなどがあったものと思われますが。
    草やら岩やらで、面影はないですね……あの、バスケットゴールの塔が、名残でしょうか」

キョン「いくつか、建物っぽいのが見えるのは、運動部の部室か……?」

ハルヒ「発電機が野外にうっちゃってあるとも思えないし……あそこが臭いわね」

長門「まだ、中庭にたどり着けたわけではない。『部屋』を探すべき」

ハルヒ「っと、そうだったわね……まあ、探すまでもなく、こっからでも見えるわよ、ほら、廊下の奥に、中庭のほうに向いたドアがあるわ」

キョン「……おい、古泉」

古泉「はい?」

キョン「……あのドアの先って、多分、この窓からも見える、あの部屋だよな」

古泉「ああ、本当ですね。おそらく、そうでしょう……それが、どうかしましたか?」

キョン「……あの、窓。……『割れて』ないか。人が一人通れるぐらいのデカさに」

古泉「……え……?」

―――

17: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:18:50.77 ID:deHZSp5P0
―― 一階 幻の部屋

ハルヒ「きゃーっ! 見て、窓! 割れてるわよ! ここからなら、中庭に出られるわ!」

キョン(こりゃあ……やっぱり)

古泉「『先行者』の方が、既に解いていたようですね、このからくりは……」

キョン「……なあ。いくつか気になってるんだが、やっぱり、この学校はおかしいぜ」

ハルヒ「は? 何を今更言ってんのよ、はなっから、おかしいのなんてわかりきってるじゃない」

キョン「そういうんじゃなくてだな、こう……あの『亡霊』が、俺らを此処でくたばらせるつもりなら。何故、『ヒント』なんてもんがある?」

ハルヒ「? ……さあ、でも……そういえば、そうかしら」

キョン「それに、この『先行組』だって、あの魔封じの紐や、岩どもを壊したはずだ。
    しかし、岩や紐は、次に入ってきた俺たちの前にも立ちふさがった。だが、この窓だけはそのままってのはどういう事なんだ?」

みくる「ふぇ……そういえば……」

ハルヒ「うーん……わかんないわよ、見落としたんじゃないの? とにかく、今は中庭に行くのが……? あれ、なにこれ……書置き!」

古泉「え……『先行者』のですかっ?」

ハルヒ「多分……えっと」


『聡、律へ 電気を点けたのは私だ、だけど美術室には行けない。三階が明るくなったから、探索してみる』

18: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:25:52.85 ID:deHZSp5P0
キョン(こいつらは、発電機を見つけられたのか……そして、こいつが此処にあるってことは。やっぱ、発電機はこの先で間違いないな)

ハルヒ「……また、初めて見る名前ね。この子達、何人で来たのかしら……」

みくる「えっと、これまでに、その……死んじゃった人と会ったのは」

古泉「四名ですね。しかし、いずれも女性でした。少なくとも、この『聡』という方とは、まだ出会ってないようです」

ハルヒ「……どこかで、あの子達みたいに、死ねずに待っているのかもしれないのね……」

古泉「はい、そして、おそらくこのメッセージの方とも、まだ出会っていないでしょう。この方は三階へ向かわれたようです。僕らは、まだ三階をまともに探索してはいません」

キョン「……こいつらの軌跡を追うのが、一番速そうだな」

ハルヒ「そうと決まれば、さっさと発電機よ! この陰鬱な世界に、光を叩き込んでやるの!」

キョン(そういや、いつの間にかか知らんが、空がドン曇りんなってやがるな……)

古泉「よし、行きましょう。何が有るかわかりません、注意してください……」


―――


――― 東側 中庭

キョン(まったく手入れのされてねえ雑草が、わさわさと……ったく、ゾンビだらけだってのに、草ばっか元気に生きまくりやがって)

古泉「岩さえ壊してしまえば、部室までは遠くないですね……」

19: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:28:51.91 ID:deHZSp5P0
ハルヒ「よっし、いくわよ……ふんっ―――でえええりやあああ!!!」

ドッグバアアアアン

キョン(……気持ちよさそうだな、実際、このハンマー……)

グルルルルルルル……

キョン「ん? ……腹空いてんのか、古泉」

古泉「? ……え、僕ではないですよ? あなたじゃあないんです?」

キョン「いや、俺じゃ」

グルルルルルル……

古泉「……これは、まさか」

キョン「……やべえっ、周りを気をつけろ!」

ハルヒ「へっ!?」

狂犬「ガウウウウ!!」

みくる「ひゃあああっ!!?」

長門「犬」

キョン「見れば分かる!」

20: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:33:45.76 ID:deHZSp5P0
狂犬「ガウウウウルルルッルルルルッルル……」

ハルヒ「な、何よこの目……ふ、フツーの野犬じゃないわよ!?」

古泉「……こいつらの食料、何だと思います? 僕は、一つしか予想できないんですが」

キョン「……俺も一つしか浮かばねえな」

みくる「こ、この犬、わ、私たちのこと、たっ――――」

狂犬「ガアアアアアアアアアウ!!」バッ

みくる「きゃあああっ!?」

キョン「させるか犬畜生がっ!!」ブンッ

バッゴォォォン

狂犬「アギャッ!!」

ハルヒ「うひゃっ!? の、脳天に……や、やりすぎなんじゃ……」

古泉「……涼宮さん、これはそういうレベルではありませんよ……こちらがやらなければ……僕らがエサにされてしまいます……それに、まだいます」

             グルルル……
                          ガウッガウッ……
 グルル…             ルルル……
     ガルルルル……
                           ピッピカチュウ……
 ウウウウ……   WRYYYY……

21: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:37:24.79 ID:deHZSp5P0
ハルヒ「う、うそっ、囲まれてるっ!?」

キョン(多すぎないか、こりゃ……)

古泉「……来ますよ」 ボッ


狂犬「「「「ガアアアアウ!!」」」」ババババッ

ハルヒ「うひゃあああっ!?」 ブンブンブンッ

古泉「ふもォォォォ―――っふ!!」 ドンドンドンドンドンドンドンドンッ

キョン「くっそ……でええええい!!」ブウンッ

長門「…………火」ボソッ

みくる「え」


―――― ボウウウウッ!!


狂犬「「「「アイギャアアアッ!!」」」」

バタバタバタバタ……

古泉「え?」

キョン「え?」

22: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:41:31.31 ID:deHZSp5P0
長門「……あたりの雑草を利用した」 スッ

ボフッ

キョン(あ、一瞬で消えた……長門、お前……図書室ん時より、随分レベルアップしてねえか?)

古泉「……な、なるほど、野生動物は火に弱いですからね……しばらく近寄ってこないでしょう」

ハルヒ「……な、なんか、夢見てるみたい……」ぐしぐし

キョン「夢だとありがたいんだがな……」

長門「雑草も燃えて一石二鳥。今のうちに、あの部室まで」

キョン「よ、よし……岩は最低限だけ壊そう、またあんなんを呼び寄せたら洒落んならん……(なんとかなりそうだが)」

ハルヒ「あ、うん……え、あれってあたしが呼んじゃったの?」

キョン「わりとな」

ハルヒ「……ごめんなさい」

キョン「気にすんな」

古泉「よし、まずこの岩を壊して……無駄ァッ!!」ブゥンッ

ボッグォン

キョン(……俺もやりてえな、アレ)

24: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:45:17.81 ID:deHZSp5P0
古泉「よし、部室までの道を作りました。行きましょう」

長門「!」ダッ

ボグシャァッ

古泉「あうろふっ!」

ドズッシャァァァッ……

キョン「な、長門!? お前、何やって―――ああっ!?」


ガブゥゥッ

長門「く……」

狂犬「アググググググ」

ハルヒ「! ま、まだ残って……有希いっ!!」

キョン「オラァ!!」

ズバッゴォン

狂犬「アグgレgッ……」ドサッ

長門「……うかつだった。残党がいた」だくだくだく……

みくる「な、長門さん、酷い怪我ですよっ!?」

26: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:51:35.61 ID:deHZSp5P0
古泉「つつ……と、とにかく、ここはまた、犬が来るかもしれない……この部室に! そこで、手当てを!」

キョン「な、長門、しっかりしろ! ……お前、回復は!?」

長門「情報操作の範囲外……」

キョン「くそ……とにかく、中に!」



――― 運動部室 A

ハルヒ「あーもう、ここも真っ暗! と、とにかく、有希をどっかに座らせて! みくるちゃん、救急箱!」

みくる「は、はいい! とにかく、血を止めないと!」

長門「……頼む。……あなたと古泉一樹は、室内を探索して。危険な可能性もある」

キョン「あ、ああ……(今度は正真正銘の無茶じゃねえか……!)」

古泉「そ、そうですね……落ち着かなくてはいけない。ここは……どうやら、サッカー部の部室のようですね……
    見た限りは、安全です。今度こそ、天井にもどこにも『模様』はありません」

キョン「……ん? 何だ、このデカイ機械……パソコンか?」

古泉「? ……っ! これ、発電機です! 僕らの探していたものですよ!」

キョン「な、マジか!?」

古泉「はい、間違いありません! ……この紐がエンジンだ、これで電気が通るはずです!」 ビッ

28: 名無しさん 2009/10/13(火) 18:57:00.89 ID:deHZSp5P0



キョン「……」

古泉「……あ、あれ?」

長門「……燃料を、見て」

キョン「! そうか、燃料……古泉、こういうのは、何を燃料にするんだ?」

古泉「ガソリン……でしょうか。でしたら、部室の隣に、災害時用の小屋がありました。そこにあると思います」

キョン「よし、俺たちで取りに行くぞ、古泉! ハルヒ、長門の様態は?」

ハルヒ「血は大体、止まったけど、かなり深いわ……しばらく休ませたほうがいいかもしれない」

長門「……問題ない。ほんの少しだけでいい。……燃料を取りに行って、二人とも」

キョン「あ、ああ、分かった。すぐ戻るが、俺ら以外が来ても、絶対にドアを開けるなよ! よし、行くぞ古泉!」

古泉「はい!」



―― 中庭

キョン(ガソリン……あった、こいつか! このニオイ、間違いないぜ……)

古泉「よかった、無かったらまずいことになってましたよ……まあ、『先行組』が発電機を作動させられたなら、あるだろうとは思っていましたが」

29: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:06:30.45 ID:deHZSp5P0
キョン「よし、あいつらん所に戻……」

古泉「? ……どうかしましたか?」

キョン「……いや、このガソリン……校舎にぶっかけて、盛大に火を起こしちまうとかじゃ……駄目だろうな、やっぱ」

古泉「……分かりませんが、恐らく、効果はないと思いますよ。……『亡霊』の力が、涼宮さんのものと同レベルだとすれば、恐らく、何らかの方法で、僕らを束縛しつづけるでしょう」

キョン(ですよねー……)

古泉「……あの、長門さんは。……何故、あんな無茶なことを……」

キョン「!」

古泉「いえ、助けていただいたのは分かっています。ですが、今の長門さんは、情報操作の能力はかなり限られています。
    ……こんなことを言うと、なんというか、縁起が悪いのですが。……心配なんです、今の彼女を見ていると。
    いつもの調子で僕たちを助けようとして……こんなことが続けば、いつか、彼女は」

キョン(……確かに、な……今のあいつは、ちっとばかり火が起こせて、大人二人をぶっ飛ばせる蹴りを打てるだけの、一介の女子高生だ……)

キョン「……あいつなりに、気にしてんだよ。いつもの調子が出ないことを」

古泉「……そうなのでしょうか」

キョン「ああ、そうだよ。……確かに、俺も、あの怪我は心配だ。こんなことがたびたびあったら……とも不安になるさ。
    ……だから、全力で防ぐつもりだ。俺だって、いつもよりは、少しばかり戦力になれるんだしな。
    次は長門がお前を蹴り飛ばす前に、俺がお前を蹴り飛ばす……それしかねーだろ」

古泉「……そう、ですね。すみません、迷うようなことを言って……よし、戻りましょう、みなさんのもとへ。
    発電機を作動させなくては……先に進めません」

32: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:11:54.14 ID:deHZSp5P0
――― 運動部室 A

ハルヒ「あ、お帰り! どう、ガソリンはあった?」

キョン「ああ、見つけたよ。……ところで、こりゃどこに注げばいいんだ?」

古泉「少し、待ってくださいね……あった、恐らくこのキャップです。満タンまで入れれば、2、3日で切れるようなことは無いでしょう」

キョン(んな長居、絶対にしたくないがな……)

古泉「では……ふんっ」ビッ


パッ


ハルヒ「きゃっ! ……つ、点いた! ライトが点いたわよ、キョン!!」

キョン「ああ……これで、学校のほうにも回ったのか?」

古泉「恐らくですが。……どうやら、体育館の電灯も点いたようです。薄暗くなってきましたし、ちょうどいいタイミングでたどり着けましたね」

長門「あの書置きの目的地……三階へ行くべき」

キョン「あ、ああ……しかし、長門、お前の怪我は―――あ、あれ? ……お前、怪我は?」

ハルヒ「ふっふっふ……キ・ョ・ン。安心しなさい、有希のケガは、キレイさっぱり治してあげたわ。
    このあたしが――――『心の力』でねッ!」

キョン「何ィィィィっ!?」

34: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:17:24.51 ID:deHZSp5P0
みくる「あ、あの、本当なんです。涼宮さんが、長門さんの腕をこう、ぎゅっと握ったら、長門さんが」

長門「治った」

みくる「って」

キョン(……え、ちょっと待てよ? たしか、この学校じゃ、あの亡霊の力……ハルヒに似た力が働いていて
    それが俺たちに影響して、妙なパワーを発揮できるとか、そういう話だったよな?)

古泉「……どうやら、いつも通りの彼女の力というのとは、少し違うようですね」ボソ

キョン「!」

古泉「彼女は基本的に、力を無意識に発揮します。自分の記憶にも残りません。
    彼女も、僕らの『心の力』と同じく。その名のとおり、彼女自身の『心』が、この学校を包むパワーと呼応して発生したのでしょう」

キョン「……なるほどな」

古泉「しかし、回復が可能なのは心強い。……これは、少しばかり道が明るくなったと言って良いですね。二つの意味で」

ハルヒ「よし! 発電機が動いたら、もうこんな岩だらけの庭に用は無いわ! 目指すは三階!
    あの書置きを残した人が、まだ、その先に居るかもしれないわ……行きましょう!」

キョン「ああ……そうだな」


―――



35: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:27:24.93 ID:deHZSp5P0
キョン(道中。あの書置きに残されていた、『美術室にいけない』という記述の真の意味を俺たちはこの目で目撃した)

ハルヒ「これ……東側の廊下が、ヘンな光の壁に覆われてるわ」

古泉「恐らく、『結界』でしょうね……さきほどは見落としましたが、こういうことだったのですか」

キョン(結界。恐らく、その動力源は……あの『亡霊』の『力』なのだろう。俺たちが破ろうとしても、無理だろうな)


―― 三階 北側校舎 廊下

ハルヒ「さて、ついたわね……明かりがあれば、こんなの、ただの木造建造物よ、怖くもなんとも無いわ」

キョン(ただの木造建造物に、怨霊は憑いてねえだろ、ただの木造建造物には!)

古泉「一番最初の部屋が、ハンマーを見つけた家庭科室……見た限り、突き当たりの角まで、部屋はありませんね」

キョン「あとは、バケモノの類が居ないか、だな……よし、行こう。古泉、今度、お前が後ろ頼む。俺の斧は前線向きだろ」

古泉「……これは頼もしい。なんだか、いつもの貴方からは想像できない、頼りがいのようなものを感じますね。今の貴方には」

ハルヒ「……ま、確かになかなかがんばってるわね、キョンにしちゃ。いいわ、あたしの前を行くことを許してあげる」

キョン(そりゃ、こんな状況だ、いやでも成長するっての……でねーと、ゾンビか犬のエサんなっちまうんだ)

ハルヒ「みくるちゃん、いつでもみくるフラッシュできるように、準備しときなさいよ! 何なら、みくるビームでもいいからね!」

キョン「――ッ、あれはやめてくれッ! ノーコンにも程がある!」

みくる「ふぇ」

36: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:32:55.17 ID:deHZSp5P0

―― 三階 東側校舎 廊下

キョン(……北側の廊下は、問題なく突っ切れた。そして、東に折れようとすると……)

ハルヒ「あ、これ、たしか『魔封じの紐』だっけ?」

古泉「そのようですね。問題なく、ライターで」

長門「マジシャンズ・レッド」ボソッ

ボォォォフッッッ

古泉「……それ以前の問題すらありませんでしたね」

キョン(長門。お前、ちょっと楽しんでるだろ)

長門「……紐があったと言う事は、この先、新たな敵が跋扈している可能性がある。注意して」

キョン「だな……」

みくる「でも、さっきから、あんまり人魂さんとか、ゾンビの人とかに会いませんね……」

古泉「恐らく、明かりが点った影響でしょうね。古来より、あの手のものは、暗い場所を好みますから」

ハルヒ「みくるちゃん、遠慮してないで、目から光なり紫外線なりぶっ放しちゃっていいからね?」

キョン「やめとけ、メラノーマんなるぞ」

みくる「ふぇ」

37: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:40:38.24 ID:deHZSp5P0

―――

古泉「教室は、三つ……三年E組から、C組までですね。とりあえず、このE組には、『フレスコ画』もありませんでしたし、手がかりも見当たりませんでした」

キョン「つーことは、A組とB組もあんのか……また、時代の割りに、えらく大所帯な学校だな」

古泉「まあ、この規模ですからね。当時、それなりに敷居が高いか、門が広いかのどちらかだったのでしょう」

ハルヒ「一階の西側は確認したわよね? 東側は行けないし、二階は西側だけしか見てないけど、あの書置きからして、東にフレスコはなかったのね、きっと」

キョン「だろうな、でなきゃああは書かんだろ。西側って断定してたしな」

みくる「えーっと、二階の北側が、職員室と、校長室と、会議室でしたっけ?」

長門「そう。そして、一階の北側校舎には、科学室と音楽室があった。どちらも進入不可能」

ハルヒ「体育館も探したし……つまり、残りはこの三階にあるはずよね。何枚あるのか知らないけど」

キョン「ああ、とりあえず、東側はあと二部屋……」

ガラッ

キョン(! D組のドアが、開きやがった……ひとりでに、前も後ろも同時に!)

キョン「何か来る、気をつけろ! 教室から出てくる!」

ハルヒ「! な、何……ゾンビ、コウモリ!? 何でも来なさいよ!」

キョン(いや、ヤツらは、ドアなんか開ける力は無い……!)

39: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:45:45.15 ID:deHZSp5P0
ガッシャン ガッシャン

鎧×2「「……」」


キョン「なっ……鎧―――ッ!? 西洋の『甲冑』だ!」

ハルヒ「ハァッ!? なんで学校に『甲冑』なの!? 馬鹿なの!? 死ぬのッ!?」

キョン「俺が知るかぁっ!!」

みくる「な、何か持ってますぅ!!」

古泉「『槍』です!! まずい、来ます!」

キョン「『槍』だぁっ!? こっちは『斧』だぞチクショウっ!?」

長門「大丈夫、ファイエムなら有利」

キョン「此処はファイエムじゃねえ!」

鎧A「―――」ヒュッ

キョン「やばい、散れ! 一突きにされんぞォ―――ッ!?」バッ

ハルヒ「うっきゃああっ!?」バッ

長門「……マハラギダイン」ボソッ

ゴオオオオォォォッ!!

41: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:50:18.62 ID:deHZSp5P0
メラメラメラ

鎧A「……」 ガシャンガッシャン

キョン「駄目だ、効いてねえ! そりゃそうだな、中身がねえ鎧ならそうだろうよ畜生!!」

長門「解除」フッ

古泉「僕が隙を作ります、その隙に斧で攻撃を! ―――WAAAAAAAANAAAAAABEEEEEEE!!!」ドンドンドンッ

ボグボグボグォォン

鎧A「―――」ふらっ

キョン「っし、槍が来ない、今だ!」ブォンッ

長門「駄目」グイッ

キョン「ぐえ゛ッ! な、何す」

ヒュッ←キョンの鼻先で槍先が止まった音

キョン「」

長門「もたもたしていたら、後ろの鎧が追いついてしまった」

キョン「すいませんでした!」

古泉「まとめてふらつかせればいいだけです……オラオラオラオラオラオラァ!」 ドンドンドンドンドンドンッ

42: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:53:35.61 ID:deHZSp5P0
ボグボグボグボグォォン

鎧AB「「……」」ぐらっ

キョン「ウリャァァァァッ!!」ブンッ

みくる「み、みくるフラ――――ッシュ!!」 カッ

ガイィィィィイイインッ!

キョン「いぎっ!?」

鎧A「……」ヒュッ

長門「危ない」グイッ

キョン「ぐえッ!」

古泉「……斧が、効かない……!」

みくる「ふ、フラッシュもです……」

キョン「それはわかってます」

みくる「ふぇ」

ハルヒ「ちょ……来るってば!」

鎧AB「「――」」ヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ

43: 名無しさん 2009/10/13(火) 19:57:33.72 ID:deHZSp5P0
キョン「ぬおっ!?」

古泉「く……まずい、劣勢です! WRYYYYY!!」ドンドンドンッ!!

ボグボグボグ

鎧AB「「―――」」フラ……ガシャッガシャッ

古泉「駄目です、コレでも、倒しきれません!」

みくる「こ、こうなったらっ! みくるビームッ!! ……あ、で、出ないですうう!」

キョン(え、今、あなたの目の前には俺の背中がないですか?)

ハルヒ「心の力が足りないのよ!」

鎧A「――」ヒュヒュッ

キョン「何ッ!?」ガンガンッ!!

ハルヒ「『心の力でしか、抗えない』って言ってたじゃない、あの階段の子が!」

鎧B「――」ヒュオンッ

キョン「だから、何だって!?」

ハルヒ「――――でえええええい!!」 カッ


――――ドヒュウウゥゥゥゥウウウッッッ!!

44: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:01:54.82 ID:deHZSp5P0
キョン(なっ、んだこりゃ、『風』かッ―――!?)

ハルヒ「このっ――――フッ飛べぇぇぇぇ!!!」


ドギャァァァァァンッ


鎧AB「「!!」」 ズオォッ


ドガッシャァァァァァン……



鎧AB「「」」

キョン(……え、何だ、今の?)

ハルヒ「……なんだ、割と簡単じゃない。『心の力』って」

古泉「……涼宮さんの言ったとおり、『フッ飛び』ました、鎧が……そして、何かが『抜け』ていくのを見ました。恐らく、霊魂かなにかでしょう……」

長門「……『心の力』に間違いない」

ハルヒ「……フフン、こんなもんよ」

みくる「た、倒しちゃった……今のだけで……」

キョン(……こいつの思い込みの強いのが、こんなとこで役に立つとは……)

46: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:10:12.68 ID:deHZSp5P0
ハルヒ「これ、割と応用が利くみたいよ。古泉くんも有希もみくるちゃんも、もっと色々できるんじゃない? 一種類だけじゃなくって」

古泉「……驚きましたね」

長門「……あの鎧は、もうただの無機物」

ハルヒ「ほんと? ねえ、じゃあ、あの槍! あれ、使えないかしら? あれなら結構軽そうよ! あたし、もうちょっとまともな武器が欲しかったのよね!」

タッタッタ……

キョン(……いらねえだろ、今のあったら……)

古泉「……兎に角、危機は逃れました。……涼宮さんが居てくれてよかったです。僕らだけでは、かなりまずい状況でしたよ」

キョン「ああ、マジにな……」

古泉「それに……『心の力』は、使いようだということも分かりました。彼女ほど柔軟には難しいかもしれませんが、僕らにもできることの幅が増えるかもしれません」

キョン「……正直、それっぽいもんをまだ発揮できてねえ俺には、えらく置いていかれちまった気分だ」

古泉「ふふ、あなたは常識的過ぎるのでしょうね。ここでは、常識なんて通用しません」

キョン「……お前の話じゃ、ハルヒはアレでかなりの常識人だったんじゃないのか?」

古泉「ええ。ですから、彼女は、この状況が『非常識』であることが、ちゃんと分かっているんです。其れもまた、『常識的』であるということですよ」

キョン(……コレをきっかけに、あいつの常識の箍が外れたりしなけりゃいいが)

ハルヒ「キョン、この槍軽い! 使えるわよ! ほら、あの女の子が言ってたじゃない!
    斧と槍は魔除けになるって! 良いもん拾ったわ。でも、片方は曲がっちゃって使い物にならないけど……もったいない

47: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:18:19.33 ID:deHZSp5P0

―― 三階 南側校舎 廊下

キョン(さて、東側の残る二クラスも探索完了、問題なしとして。俺たちは、位置的に、あの昇降口の二階上となる、この南側廊下に居る)

みくる「見取り図だと……此処は、中央の南側に『生徒会室』があるだけですね……あの扉がそうでしょうか?」

ハルヒ「それしか見当たらないわね。よし、行くわよ、みんな!」

キョン(いつのまにかハルヒに先頭になられちまった……)

ハルヒ「! ……みんな、来て! この部屋のドアに、紙が張ってあるの、『書置き』よ!」

キョン「! また、『聡と律』へのか?」

ハルヒ「そうよ……でも、これ、どういうことかしら?」


『聡、律。この先の床はおかしい、ネバネバしてる。気をつけて』


古泉「また、この二人を名指しですね……察するに。この紙を書いた方が、僕らと同じ道のりを来たなら。
    少なくとも、あの渡り廊下の少女と、体育館、体育倉庫、の死体は見かけているはずです。
    すると、恐らく……この『聡と律』の二人とは、僕らはまだ、出会っていないのかもしれませんね」

キョン「あの、『ライトにつぶされた死体』と、『階段の白骨死体』のどっちかが、『律』のほうだって可能性はねえのか?」

古泉「……考えられます。しかし、確実に。僕らがこれまでに見かけてきた死体は、皆女性のものでした。『聡』という名前から、女性は想像できません。
    『聡』と、このメモを書いた方……この二名は、少なくとも、まだ僕らが出会ってきた中には居ないと考えていいでしょうね」

48: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:24:56.62 ID:deHZSp5P0
ハルヒ「……この部屋は、安全かしら。中で電気は点ってるみたいだから、ゾンビやコウモリの類はいなさそうだけど……」

キョン「攻撃できる準備はしとくさ。それに、何かヤバイなら、この書置きに書いてあるだろ」

ハルヒ「それもそうね……じゃ、開けるわよ。せーのっ!」ガラッ



古泉「! ……敵は居ません、フレスコも……見当たりません。しかし、これは……」

キョン(『床』が、一切なくなってやがる……デカイ『穴』が開いてる。いや、ただの穴じゃない!
    この穴……普通なら、下の階が見えるはずだ。だが、何も見えない……!)

みくる「これ……な、なんだか、すっごく、深くないですか……?」

ハルヒ「……みくるちゃん、ちょっと、『ライト』やってくれる?」

みくる「え? あ、はい……」カチッ

ハルヒ「違うわよ! ライトよ、目から『ライト』! 『みくるスポットライト』よ! 目からフラッシュ焚けるなら、それぐらいできるでしょ! つか、できるの! 思い込むのよ!」

みくる「ふぇ、は、はい……えーっと……ライト、ライト……むー……!」

キョン(またハルヒのやつは、アホなことを……)


カッ


キョン(マジで?)

51: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:30:36.40 ID:deHZSp5P0
みくる「ふえ? あれ、今、何か出てますかぁ?」

ハルヒ「それよそれ! みくるちゃん、穴を見下ろしてみて! その『ライト』で照らすの!」

みくる「は、はい」

キョン「……何も見えねえぞ。かなりの光量のライトだってのに」

古泉「……どう考えても、おかしいですね。下階を貫通しているというわけでもないようです……」

キョン「別世界につながってる、とか言うんじゃねーだろうな」

古泉「……心を読む心の力とは、恐ろしい」

キョン(マジかよ……)

ハルヒ「……ま、別世界っていうか、ちょっとした次元のゆがみみたいのだったら、あってもおかしくないわね。こんな状況だもの」

みくる「あ、あの、なんだか目が熱いんですけど……」

キョン「! も、もう大丈夫です、光を止めてください」

みくる「あ、はい……あ、消えました、よね?」

古泉「はい。……実は、先ほどの鎧との戦いで、僕もすこし自覚していますが……『心の力』の多様は避けるべきかもしれません。
    その名のとおり、僕らは『精神力』を消費して、あれらの能力を発揮しているようだ……あまり乱用すると、ガタが来るかもしれません」

ハルヒ「何よ、ややこしいわね……ま、いいわ。この部屋は、とりあえずほっといて……東側校舎を探索しましょ。教室が二つ残ってるはずよ」

キョン「ああ……しかし、この書置きが気になるな。ネバネバしてる……こりゃ、いったい何の話だ?」

53: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:38:17.86 ID:deHZSp5P0
長門「……あれ」

ハルヒ「? ……! な、なにあれ……電気の陰になって、見づらかったけど……あっちの床、なんか妙なもんが、床にぶちまけてあるわ!」

キョン(! マジだ、ありゃ……な、何だ? 溶岩みたいにも見えるが、違う……)

古泉「察するに、あれが『ネバネバ』というものでしょう。……ふむ、普通の靴だと、足をとられるかもしれませんね。
    一応、雪山や泥濘を進む為の『安全靴』を二足持ってきてありますが……あいにく、僕のサイズでして」

キョン「いくつだよ」

古泉「27です。お三方にはまず大きいでしょう。あなたは」

キョン「27.5だ。まあ、ちっとキツいぐらいは我慢するさ。そのほうが足をとられんかもしれんしな」

ハルヒ「……え、もしかして、二人だけで行くの?」

キョン「あの床が正体不明だからな。ここらは安全のようだし、お前の『心の力』がありゃあ、少しの間くらい大丈夫だろ?」

ハルヒ「まあ、特に不安はないけど……有希の火もあるし、あたしの槍もあるしね。新兵器、みくるスポットライトも」

キョン(役に立つのか? あれ、敵に)

古泉「……よし、僕は準備できました。あなたも履き替えてください」

キョン「ん……サイズは問題ないな。じゃ……行くかね、三階東側、残り二部屋だ」

古泉「……何か、あるはずです。残るは、この先の二部屋だけだ……何らかの手がかりか。あるいは、この生徒会室の穴に関する情報……何かが」

キョン(その『何か』が……『聡』ともう一人の死体、でないことを、ひたすら祈るぜ……)

54: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:48:38.77 ID:deHZSp5P0

―― 三階 東側校舎 ネバネバ廊下

キョン(……思っていたより、『ネバネバ』は強力じゃなかった。ローファーやらスニーカーやらではきついだろうが、この手の靴を履けば、問題なく歩行できる)

古泉「……手前の部屋は、『フレスコ』は見あたりません。それに、机や椅子といった類のものもありません……そのほかにも、目につくものはない。
    こちらから壁を叩いた限り、入り口からは見えない位置に『フレスコ画』がかけられている様子も無い……扉を開ける必要はないでしょう」

キョン「えらく慎重だな……ま、ハルヒも居ないし、余計な動きはしないに越したことはないか」

古泉「ええ。……もし、次の教室に何も無ければ、この教室にも入ってみましょう」

キョン(次の教室……『三年B組』か)

古泉「……! この部屋……床が『ネバネバ』でありません。それに、机や椅子もある……
    フレスコは、ここから見える場所にはありませんが……この部屋には、何かあるかもしれません」

キョン「分かった……行こう」


ガラッ


キョン(……なんだ、この教室。なんつーか、妙だ……これまでの教室と、明らかに何かが違う。
    ここまでの教室にあった『異様さ』が感じられない……)

古泉「……ありました、『フレスコ画』です! 廊下側の壁に掛けられている……!
    遠巻きから照らします、メッセージを探してもらえますか?」

キョン「ああ、分かった…………いや、悪い。探すまでも無かった。ど真ん中に浮かび上がってきたぜ……『メッセージ』だ」

55: 名無しさん 2009/10/13(火) 20:56:14.67 ID:deHZSp5P0
―― 三階 東側校舎 三年A組


『彼女は事故で、愛する人を失ってしまった』


キョン「……なんだ、こりゃ? 何のヒントでもねえ……」

古泉「『彼女』とは、恐らく……あの『亡霊』の少女のことでしょうね」

キョン(……まあ、その程度の予測は、俺にもできる。しかし……本格的に、わけがわからねえぞ)

キョン「やっぱり、この『フレスコのメッセージ』を残してるのは、あの『亡霊』の女とは別の誰かなのか……? なら、いったい誰が?」

古泉「……それは、わかりませんね……」

キョン(? 何だ、古泉の奴、一瞬何か言おうとしたような……)

古泉「……? すみません、少しいいですか……この、机」

キョン「机?(……古泉が、窓際の後ろから二番目の席に向かって、まっすぐ歩いていく)」

古泉「……これは……なんでしょう、『日記』……でしょうか?」

キョン(! 机の中から、古泉が取り出したのは……『本』だ。文学書の類じゃない、布張りの表紙の冊子……)

キョン「日記だって? ……その、机の中に入ってたのか? ……お前、何でそんなもんがあるって分かったんだ? 中を見たわけでもないのに」

古泉「……わかりません。ただ、何か、呼ばれるような感覚が……!!
    この日記……! 『美術部』の『部員日誌』です! 表紙に書かれている―――!!」

59: 名無しさん 2009/10/13(火) 21:05:52.28 ID:deHZSp5P0
キョン「何だって……『美術部』!? マジか、それはっ!?」

古泉「っ、何でもマジかと訊かないでください! 書いてあるんです、ここに! 表紙です! 背表紙にも書かれてる!」

キョン(な、何だ、古泉……妙に気が立ってるってか……)

キョン「……わ、悪い……だが、確かに『マジ』だ……『部活動日誌 美術部 八』……八? このほかには、無いのかよ?」

古泉「いえ、この机には、これしか……た、ただし、『鍵』が掛かっています、この日誌には……読めないんです。
    でも……これは、持って行くべきです! 絶対に、何か、この中に記されている……
    僕も、何故こんなことを強く感じるのかわからない! しかし、間違いない! これは、持って行くべきなんだ!」

キョン「わ、分かったって! 分かったから、少し落ち着け、古泉! 何でお前がそんなに焦ってんだァ!?
    確かにそれは『怪しい』ぜ、俺だって間違いなく持って行く! 何しろ、『ヒント』になってる『フレスコ画』を書いたのは、この学校の『美術部員』だってんだ!
    別に俺は、そいつを持っていくことを拒んだりしねえよ! お前、冗談抜きに、『心の力』の使いすぎで疲れてるんじゃねえか!?」

古泉「……い、いえ……すみません、確かに、今の僕はヘンでした……何か、ただ、この日誌を、決して離してはいけないような気がして……
    ……え、っと……この部屋は、これくらい、でしょうか?」

キョン「ああ、いや、落ち着いてくれたなら良いんだがよ……そうだな、この部屋にはもう……ッ!?
    ……いや、まだある……まだある、『手がかり』が! 何で……コレに、最初に気づかなかったんだ……!?」

古泉「え……! ……黒板に、文字!? こんなもの、外から見たときは見当たらなかったのに……
    それに、教卓に何か乗っている……! ……これは、『ロープ』……いや、違う! 『縄梯子』だ!」

キョン「おい、古泉……この黒板の文字、『書置き』だ! しかし、『聡や律』にじゃねえ……この、『書置き』の送り先は―――!!」



『私たちと、同じ運命を辿ってきたしまった人へ』

61: 名無しさん 2009/10/13(火) 21:18:46.43 ID:deHZSp5P0

『もしも、私たちと同じように、この呪われた学校を訪れてしまった人がいたなら。その人たちへ、このメッセージを残します。
 この学校は。彼女、恐らく、あなたたちも出会ったであろう、あの女の子の亡霊の謎を解き明かさなければ、脱出することはできない。
 私たちは、もう、二人きりになってしまった。けれど、できるだけ、あの亡霊を鎮める方法を探します。
 生徒会室の穴を見ましたか? まだなら、見てください。あそこは、どこか別の場所へ続いている。その先に秘密があると思う。
 私たちが見つけた縄梯子を、三つ置いていきます。これを使えば、穴の中へ降りていけると思います。
 念のため、三つとも繋げて使ったほうがいいと思う。
 どうか、ご武運を。 秋山澪 田井中聡』


キョン「これは……俺たちへの、メッセージだ……!!」

古泉「……二人、だって!? 馬鹿な、あの鎧相手ですら、僕ら五人でやっとだっていうのに!!
    たった二人で、何ができるっていうんだ! ……しかも、僕らに、この縄梯子を残していったっていうのか!?
    穴がどこまで降りているか分からない、いくつ持っていたか知らないが、あるだけつなげるべきだ!!
    ……何故、こんな事を……!!」

ガンッ ガンッ

キョン(いや、この書置きもショックだが……俺はむしろ、この古泉の錯乱っぷりのほうが気になる!)

キョン「古泉、落ち着け。やっぱ、あの『穴』は重要だ、それは間違いない。
    それにだ、こいつらがまだ生きている可能性だってゼロじゃねえだろ!
    ……と、とにかく、今はこいつらの所業より、俺たち自身の事だ! この縄梯子を持って、ハルヒたちのところに帰るんだよ!
    そして、あの穴の先に行くしかないんだ! 俺たちに他に道があるか? あ?」

古泉「……す、すみません。どうしたというんでしょう、僕は……」

キョン(俺が聞きたいんだよ、それは……
    ……『秋山澪』と、『田井中聡』……こいつらが自分で言ってるんだ、恐らく、こいつらのほかの仲間は全滅したんだろう……この先にいるのか、あんたたちは……?)

64: 名無しさん 2009/10/13(火) 21:26:53.85 ID:deHZSp5P0
―― 三階 南側校舎 生徒会室・異次元への穴

ハルヒ「……つまり。やっぱり、あの『ムギ』って子や、『律』は……あたしたちが出会ってきたうちの、誰かだったのね」

キョン(そういうことになる、か……いったい、どいつがどいつだったのか、さっぱりわからんが……少なくとも、あいつらのうちの三人は。
    ……どれほどの時間かしらんが、魂を持ち続けて。俺たちに、メッセージを伝えるために、この学校に留まり続けていたわけだ……)

ハルヒ「で、この日誌ね……鍵つきなんて、めんどくさいわね。でも、鍵なんてどこにあるのかしら……やっぱり、美術部室かな?」

長門「何にしろ。今、行くべき道は、この『穴』の先にしかない」

キョン(……見れば、穴の淵に、でかい『出っ張り』がある。ここに、縄梯子の両端を掛けりゃいいのか。
    ……『澪』に、『聡』……『縄梯子』は見当たらないが、きっと。そいつらも、この先へ降りたんだろうな……)

古泉「……大丈夫です、引っかかりました。三つの結び目も、可能な限り固く結びました。
    ……いきましょう。この先に、何があるか……わかりませんが」

みくる「……ごく」

長門「……」

キョン「……一番手、失礼するぜ」

ハルヒ「え……キョン、あんた……」

キョン(……古泉も、理由はわからんが、かなりキテんだ。俺が行かなきゃ―――)

ハルヒ「自分の次に有希を指名して、ノゾこうとか考えてんのね!?」

キョン(真にキテんのはこいつだったか……)

65: 名無しさん 2009/10/13(火) 21:32:19.50 ID:deHZSp5P0
―― ??階 異次元への穴

ギッ ギッ

キョン(……縄梯子は丈夫に作られているようだが、やっぱ、不安なのは仕方ないよな……)

ハルヒ「---ン!! --コエルー!!?」

キョン「ああ、聞こえるよ!! ……はあ」

キョン(しかし、もうとっくに、十階分ぐらいは降りた気がするんだが……相変わらず、暗闇は―――!!)


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

キョン(……さっきまで、暗闇だったはずの、俺の真下に……いつの間にか! 目の届く位置に、『床』があるッ……!?
    ……まさか。これが、『次元』を超えるってことなのか……!?)

ギッギッギッ

キョン(やっぱりだ……数段上を境に、この段を下りれば、床が見えるって地点がある……!)

キョン「……ハルヒ、古泉、長門、朝比奈さあああん!! 大丈夫だ、床に通じてる!! 問題なく降りてこれるぞおおお!!!」

……グッ

キョン(……聞こえたみたいだな。梯子に、誰かが足をかける感覚があった……となると、縄の耐久力を考えて、俺はさっさと床に降りるべきか……)


―――

66: 名無しさん 2009/10/13(火) 21:37:48.71 ID:deHZSp5P0

―――??階 異次元の部屋

ギッギッ

古泉「ふう……これは、驚きましたね……『学校』とは、まったく無縁の内装だ。……まさに、異次元というところですか」

キョン(……梯子を降りた先は。『部屋』だった。扉があり、その左右に壁がある。その壁の一方には……)

ハルヒ「これ、『フレスコ画』よね!? でも……どうして、異次元にまで『フレスコ』があるのかしら……」

みくる「そ、それより、この……この先って、どうなってるんでしょうか……?」

キョン(そう。この部屋には、当然、『天井』はない。天井は、『異次元』へとつながっているからだ。そして、それと同じく……)

長門「……扉と対面の壁が、『無い』……この先も、恐らく、別次元へ続いている」

キョン「……異次元ってのは、真っ暗なんだな……始めて知ったぜ」

ハルヒ「この先も、どっかに続いてるって事……? で、でも、進むべき道じゃ、ないわよね……?」

キョン「当たり前だ、こっちにまともなドアがあるってのに、なんでこんな得体の知れない風穴に飛び込まなきゃいけねーってんだ。
    それより……『フレスコ』だ。こいつにも、メッセージは残されてるのか……長門、頼むぜ」

長門「分かった」

古泉「では、照らします……」


カチッ

68: 名無しさん 2009/10/13(火) 21:50:21.61 ID:deHZSp5P0
長門「……見つけた。右上」

キョン「えらく見づらいところにあるな、おい……」

ハルヒ「っし、みくるちゃん! 『みくるテレスコープ』よ! 双眼鏡になったつもりになりなさい!」

みくる「は、はあ、えーっと……」

シュウウウウ……

みくる「はえ? あ、嘘! ほんとに、読めます!」

キョン(……この人、ハルヒが言えば、はかいこうせんすらぶっ放すんじゃないだろうか)

みくる「えっと……? ちょっと、意味が分からないですけど、読みますね」


『緑の扉は、眠るべき場所へと続いている』


ハルヒ「……眠るべき場所? なにそれ、寝室?」

キョン「学校に寝室はねえだろ……こりゃ、俺の推測だが……」

キョン(……俺の脳裏に浮かんでいるのは。あの――昇降口から見えた、グラウンドの端に立てられていた、奇妙な『塔』……)

ハルヒ「? 何よ、言ってみなさいよ」

キョン「……俺がみた、あの『塔』……ありゃあ、『供養塔』だったんじゃねえか? と、ふと思ったんだよ」

75: 名無しさん 2009/10/13(火) 21:59:14.60 ID:deHZSp5P0
ハルヒ「供養塔……って、あの、昔、お墓とかに、墓石代わりに立てたってやつ?」

キョン「ああ。今だってあるぜ、『原爆供養塔』だとか、その手の奴が、わりと。現代で、新しくおっ建てるやつは少ないかもしれんが」

みくる「それって、つまり……『眠るべき場所』っていうのは、あの女の子の幽霊の『眠るべき場所』……そういうことですか?」

キョン「……推測ですけど、大体、そんな感じです」

ハルヒ「うーん……でも、そんなの、学校の敷地内に建てる? 普通……」

長門「……これらの『フレスコ画』を描いたのが、あの『亡霊』の少女であるとするならば、可能性はある」

ハルヒ「学校が、『天才』の生徒のお墓を、敷地内に立てたっての? ……いまいち、納得いかないわね……」

キョン(ま、俺だってありえんと思うさ……しかし)

みくる「『眠るべき場所』がどこだとしても、『フレスコ』が示す場所なら、そこを目指すべきなんじゃ……」

ハルヒ「そうね……たしかにそうね。で、つまるところ、この『緑の扉』っていうのは、この部屋を出た先にあるのかしら?
    ……? なにしてんの、古泉くん?」

キョン(そういえば、古泉の声がしない……何してんだ、あいつ? ドアに耳を当てたりして……また、向こうの様子を探ってるのか?)

古泉「……いえ、すこし、奇妙な感覚がしまして……気づきませんか? この、音に」

みくる「音、ですか? ……そういえば、なんだか、すごくこう……重い音が聞こえる、ような?」

ハルヒ「あ……いわれてみれば、なんか聞こえるわね。どっかに『滝』でもあるのかしら……
    っつっ! って、何今の……『耳鳴り』? なんでいきなり……」

76: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:08:35.36 ID:deHZSp5P0
キョン(耳鳴りに、滝? ……そういえば、俺も感じる。妙な『重い』音……まるで、こりゃ、アレだ。『水族館』にでもいるような感じ……!?)

古泉「……は、梯子を……! 皆さん、『梯子』に上ってください!! この部屋の天井より高くにですっ!!
    やっぱり、ぼくの気のせいじゃない! この、ドアの向こう……『水』があるんです! あるどころじゃあない、『張り詰めている』んです!
    涼宮さんの『耳鳴り』も、そのせいだ……『気圧』がおかしくなってるんです! しかも、どんどん『水』は押し寄せている!!
    このままじゃ……『壁』が、決壊します! 『水』が押し寄せてくる!!」

キョン「なっ……何ィィィィィッ!!?」

ハルヒ「う、嘘でしょォッ!? だって、こんな古い作りの建物……あ……」

キョン(……そう、この『異次元』の部屋は……さっきまでの『学校』とは、作りがまるで違う!
    壁は、『コンクリート』のような、頑丈な材質でできてる―――しかし、それさえも!)


   ピ   シ   ッ


古泉「! ―――まずい! 『決壊』する――早く、『梯子』へ上るんだあッ!!」

ハルヒ「ちょ、ちょっと、待っ……」

古泉「待ってる暇があったら、こんなに叫ばないィッ!! ―――駄目だ、間に合わないッ!! 壁が―――ッ!!」


    ビ  シ  ッ    ピ キ ピ キ  ビ  キ  ビ  キ   バ     キ    バ     キ   …………

                 ――――   ド  グ  ォ  ッ  ! ! !

キョン(うわ、マジだよ……『壁』が見る見るうちにひび割れて……『水』が押し寄せてきやがった―――まだ、誰も『梯子』に上れてねえじゃねえか)

80: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:16:55.65 ID:deHZSp5P0

  ズ   ド  オ  ォ  ォ  ォ  ォ


キョン(そいや……毎年2、3人、『鉄砲水』で死ぬ奴がいるよな……まさに、これみたいなやつにやられるのか―――
    うわ、やばい、なんかスローモーションで見えてきた……ここで『アウト』か? 亡霊でも、なんでもない、ただの『水』でリタイヤかよ……)


古泉「だッ―――!!」

ハルヒ「きゃああああっ!?」

みくる「ふえええっ!?」

長門「―――!!!」


キョン(長門――ああ、そうだ、今の長門は、こういうの向きじゃねえんだったっけ―――ああクソ、せめて古泉が、あの『赤玉』になれりゃいいのに……
    ……あ、でも、全員俺より後ろに居るな―――いや、そういう問題じゃねーだろ、これ。俺が受け止めて、残るメンバーは助かりました。ってレベルじゃねえ。
    このまま、仲良く吹っ飛ばされる以外に道はねえか……こういうのに向いた『心の力』って、無かったっけ?
    ハルヒは……いまんとこ、回復と攻撃だけか。長門は火、朝比奈さんはバリエーション豊富な眼光線、古泉はふもっふ……あー、あと、誰だ。
    俺か。あ、俺、そういやまだ何もねーか。
    
    思い込めってか。
    ……思い込んだら、何とかなるってか。

    ……いいだろうよ、どうせこのままじゃ、全員くたばるんだ。
    思い込めっつーなら、死ぬほど思い込んでやろうじゃねーか―――『水がなんだってんだ、畜生』ってなァ――!!)

キョン「ッ――――んの―――ドチクショウがああああああ――――ッ!!」 カ ッ 

82: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:21:18.90 ID:deHZSp5P0

――――ドッグォォオオオオオオオオオン!!!


古泉「なっ―――!?」



  ド  ド  ド  ド  ド  ド  ド  ド  ……


キョン(……すげえな、コレ……マジで、思い込みでなんとかなるんだな、おい……)


ハルヒ「な、なにこれ、『水』が、『割れ』てる……」

長門「……『壁』」

ハルヒ「え?」

長門「『壁』が発生している……彼を中心に。……『シールド』」



 ド ド ド  ド  ド  ド  ド  ド  ッ…………


古泉「……お、収まった……『水』が、止まった……!!」

キョン(ああ…………こりゃ、確かに疲れるわ―――――――)

86: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:29:30.30 ID:deHZSp5P0


―――


キョン「いや……おとなしく気絶もさせてくれんのか、お前は……」

ハルヒ「あ、当たり前じゃないの……このまんまくたばりそうだったから、無理矢理たたき起こしたのよ!!」

古泉「……な、何と言うか。しかし、これで一通りはそろいました。『攻撃』に『防御』に『回復』……『探索』向きの朝比奈さんを加えれば、かなり心強いですよ」

キョン(意識が遠のいたと思った十秒後、俺はハルヒの往復ビンタのもとに、敢え無くこの、非現実的現実世界に引っ張り戻された……正直、ちょっと寝たかったんだが)

古泉「……どうやら、先の鉄砲水で、この空間に溜まっていた『水』は排出されたようです……しかし、ところどころに『水溜り』があります」

長門「『流れ』もある。おそらく、まだ、どこかから『水』は出続けている。しかし、この部屋の『異次元への壁』が排出口の役目を果たす。先のような事態にはならない」

キョン「……えらく眺めがよくなったな……しかし、何だ、此処は……」

キョン(『鉄砲水』で決壊した壁の向こうには……なにやら、『洞窟』のような空間が広がっている。
    明かりは無いが、壁全体が淡い光を帯びていて、薄暗くは無い……)

ハルヒ「どう見ても、『現実』の世界じゃないわね……せっかくなら、『夢』だったらよかったのに」

キョン「同意権だ、畜生め」

古泉「……此処から先、正真正銘、何が居るか分かりませんね。
    ですが、この先は、先ほどまで『水』が溜まっていた空間です。『生物』の敵が居るとは考えにくい……と、思いたいのですが」

キョン「逆に、『霊体』ならいくらだっているかもしれねーわけだ……ここの照明は、俺たちが発電機でともした明かりとは関係なさそうだしな」

88: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:39:02.77 ID:deHZSp5P0


―――異次元空間 『鏡の回廊』


ハルヒ「……見る限り、敵の類は見当たらないわね。……にしても、何か気分悪いわ……全体から『怨念』みたいのを感じるっていうか」

長門「間違いではない。この空間は、あの『亡霊の少女』が構築した、異空間であると思われる。『怨念』がその構成に含まれている可能性もある」

みくる「つまり、ここのどこから『ユーレイ』が出てきても、おかしくないんですよね……」

キョン(つっても、『霊体』なら、朝比奈さんのフラッシュだって十分通用する……俺は『魔除け』の斧、ハルヒは『魔除け』の槍を持ってる……
    仮に、此処にいくら『人魂』が出ようと、俺らにはたいした問題じゃァないと思うが……)

ハルヒ「ユレイの作った空間ねえ……その割には、リアリティが溢れてるけど。壁は岩っぽいし、天然の鍾乳洞みたいだわ。明かりがあるのを除けばね」

古泉「……長門さん。『松明』のような炎を作れませんか? ライトで一点を照らすより、全体を照らせたほうが都合がいいのですが」

長門「……」 ボゥッ

キョン「うお」

長門「できた。この『炎』は、私を中心としたある程度の範囲内でならば、操れる。『精神力』の消耗も、たいした程度ではない」

ハルヒ「万能ね、有希……じゃ、あたしたちから、4~5メートルくらい先に、浮かべていられる?」

長門「可能」

キョン(……なんつーか、さすが長門だな……
    道は、今のところ一本道か。たしか、目指すのは『緑の扉』だったよな……んなもんがあるのか、果たして?)

92: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:44:31.47 ID:deHZSp5P0

―――チラッ

ハルヒ「? 今、突き当りで、何か光ったわ……有希の炎が、何かに反射したみたい」

キョン「あ? ……突き当たり?」

トットット

キョン「って、おい! また、不用意に近づいてんなよ!」

ハルヒ「……鏡だったわ。ただの。でも、こんな『洞窟』みたいな所に『鏡』なんて、ちょっと妙ね……」スイッ

古泉「――! 涼宮さん、その鏡――何か、おかしい! 離れてください!」

ハルヒ「えっ――――」


鏡「―――」 ヌ ゥ ッ 


ハルヒ「きゃあっ!!?」

キョン「! 鏡から、何か出やがった―――!! 古泉ィ、長門ォ――――!!」

古泉「ウリャァァァアアア!!」 ボッ――――ドンッ!!

長門「――――直進」 ギュンッ ボフッ!!

ズドンッ!!

93: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:50:32.95 ID:deHZSp5P0

鏡「」

パキィィィン……パラパラ

ハルヒ「び、びっくりした……ふざけてんの!? 『鏡』と見せかけて、そっからなんか出てくるなんて!」

キョン「だから、油断するなっつったじゃねえか……ほれ、立て立て」スッ

ハルヒ「う……言われなくったって、立つわよ!」グイッ

みくる「あ、あの、今の鏡の向こう……これ、何か……『部屋』になってませんか……?」

ハルヒ「え?」

キョン(! 本当だ、ぶっ壊れた鏡の向こうに、別の空間が見える……だが、この部屋にあるのは……何だ、こりゃ?)

古泉「……これは、『噴水』……のように見えますね。周りの床に、噴出した水が溢れ出しています。なるほど、このあたりに散乱している『水』の水源は、これですか」

ハルヒ「噴水? あ、本当だ……なんか、すっごくキレイな水……ね、この部屋、調べてみない? 『手がかり』があるかもしれないわ」

古泉「そうですね……幸い、今の鏡が砕けた穴で、人が一人通るくらいのスペースは確保できましたし、調査してみましょう」

長門「噴水…………」


―――



95: 名無しさん 2009/10/13(火) 22:57:40.25 ID:deHZSp5P0
――異次元空間 『噴水の部屋』

古泉「……狭い部屋ですね。それだけ、探索もしやすいですが……見た限り、物陰の一つもありません。
    気になるのは、この『噴水』くらいでしょうか……」

ハルヒ「ね、なんか、すごく綺麗よ、この水。透き通ってるし、何も混ざってない感じ……
    キョン、あんたたしか、ペットボトル持ってたわよね?」

キョン「あ? ああ、あるが……汲むのかよ? こんな、わけわからねーとこの水なんか、飲むつもりか?」

ハルヒ「だって、ぜんぜん綺麗じゃない。ね、有希、この水って、問題ないわよね?」

長門「……解析完了。人体に支障のある成分は含有していない。硬度は低いが、飲用して問題はない」

ハルヒ「ね、やっぱり。キョン、どうせだし、あたしの水筒にも汲んでくれる?」

キョン(……長門の解析が通用したんなら、まあ、問題ねえだろうな)

キョン「分かったよ。俺のボトルと、お前の水筒しか、空いてる容器はねえし、それだけだが、いいか?」

ハルヒ「ま、いいわ。……それにしても、なんていうか……久々に綺麗なものを見たからかしら、すごく……落ち着くわ……」

キョン(確かに……この噴水は、『綺麗』っつってもいいな……なんとなく、心が洗われるような……『心の力』で消費したものが、満たされてくような気がする……)

みくる「本当、綺麗……とっても、おいしそう……」すっ

ハルヒ「あ、ずるい……あたしも、飲んでみよ……」すっ


ぱしゃ―――

97: 名無しさん 2009/10/13(火) 23:05:46.22 ID:deHZSp5P0
トクトクトクトク

キョン(……ん、二人とも、水を飲んでるのか……まあ、いいだろ、別に。この水に、問題はないだろうしな)

キョン「よし、汲み終わったぞ……ハル―――――なっ!!?」

ハルヒ「んく、んく……ぷは、キョン! この水、すごく美味しい! なんか、すごい! 体中が綺麗になるみたい!」

みくる「ぷは……ほ、本当……なんだか、汚れたものが、全部なくなっていくような……透き通って……て…………え…………?」

キョン(―――俺が、二人を見た、瞬間―――!!
    何だ、こりゃ? さっきまで透き通っていた筈の! とんでもなく『綺麗』だった、筈の、噴水が―――『赤く染まって』いる―――!?)

みくる「え、あれ……なんで、手が、汚れ……え、ひ……あ、あ、あああああ…………!!!」

ハルヒ「え、み、みくるちゃ……! ちょ、ちょっと、その口、どうしたの!? あっ、手も!
    どうして『血まみれ』なの、みくるちゃんッ!!? 怪我でも―――え……う、うそ……」

キョン「っ、二人とも、噴水から離れろ!!!」

キョン(い、いきなり、『臭って』きやがった―――この! この『噴水』が吹き上げているのはっ!!)


ハルヒ「な、なんで、『血』……わ、わたし、これ、飲んで……うっ……」

みくる「ひっあぐ……ぐ、げえ……ぐっ、えぐっ……げえええッ―――!!」

古泉「っ―――駄目だ、この部屋から―――出ましょう! ここは―――この空間は、全て! あの『亡霊』の支配下だ!!」

キョン(―――マジかよ……おい――!)

99: 名無しさん 2009/10/13(火) 23:13:56.64 ID:deHZSp5P0

ガシャンッ

ハルヒ「うっ、げぼ……あ、あたし……何、うそ、あの、噴水……綺麗な水が、あったのに……!!」

キョン「お、落ち着け、ハルヒ、朝比奈さん! こんなの、あれだ―――幻だ! ありえないだろうが、あんな噴水から―――『血』なんか出てくるわけねえ!」

みくる「で、でも゛っ、ぐっ、えぐっ……この、あじ……これ、ぜったい……うっ……げえっ―――っ!!」

バシャバシャッ

キョン(赤い……やっぱり、『血』……! 長門……長門! 『解析』はっ!?)

長門「……間違いなく、これは、人間の『血液』……先刻の解析の結果と、全く異なっている……有り得ない」

ハルヒ「そ、んな……ぅ……えぐッ―――っ!」

ビシャッ バシャッ……

古泉「……まずかった、あの部屋に踏み入ったのは……あの水を『飲んだ』のは……
    この先、何があるか分からない! 『フレスコ』だ、『フレスコ』のメッセージ以外に、何も信じてはいけない……」

キョン(……ああ、思い知ったよ……これ以上、あの『亡霊女』の手の中で踊ってたら、こっちが参っちまう……!!
    ……『フレスコ画』は! ただ一つ、この呪われた世界で、あの『亡霊女』ではない、誰かが残した『メッセージ』なんだ!)

ハルヒ「う、うぐ……がほっ、げほっ!!!」

バシャッ  パシャッ……

  ―――