1: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:05:19.798 ID:zw1nex6J0
就活生「……以上が私の強みです!」

面接官「……」

就活生「?」

面接官「君……このままだと落とすけどどうする?」

就活生「え……」

就活生(落ちつけ、こういう圧迫面接もあるってネットで見たことある。冷静に受け答えを……)

就活生「最後まで諦めず、精一杯自分をアピール……」

面接官「いや、残念ながら君を落とすことは確定してるんだ」

就活生「へ?」

パカッ

床が開く。

就活生「うわあああああああああ……!!!」ヒュゥゥゥゥゥ…

引用元: ・面接官「このままだと落とすけどどうする?」就活生「えっ……」

7: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:09:07.939 ID:zw1nex6J0
大学のキャンパス――

男「今日の講義、あいつ見た?」

女「ううん、見てない」

男「このところ、あいつ大学で見かけないよな。どうしたんだろ?」

女「もう就活してるとはいってたけど……。面接も受けるっていってたよ」

男「早っ! あいつらしいなー、俺なんかまだエントリーシートも書いてないぜ」

女「あんたは遅すぎる。でも……だからって講義休むのはおかしいよねえ」

男「うん、ちょっと心配になってきた。これからあいつんち行ってみないか?」

女「そうだね、行ってみよう!」

8: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:12:17.215 ID:zw1nex6J0
アパート――

男「ここか」

ピンポーン ガンガンガン! ガンガンガン!

男「……出ない」

大家「コラ、なにしてるんだ!」

女「あ、私たち、この部屋の人の友達でして……」

大家「なんだ友達か。私は大家なんだが、そこの学生君ならしばらく見てないねえ」

男「あのー……大家さんなら鍵開けれますよね。中を見せてもらうってわけには……」

大家「んー……いいよ! こういうシチュを期待して大家やってるとこもあるし」

男「あざっす!」

女(ノリのいい大家さんで助かった……。ここで部屋は借りたくないけど)

10: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:15:16.075 ID:zw1nex6J0
男「綺麗な部屋だなー、布団もちゃんと畳んである。食器もちゃんと洗ってる」

女「いや、それ普通だから」

男「えーと、金目のものは……」

女「通報するよ」

男「じょ、冗談だよ冗談」

男「これは……≪就活計画≫。あいつ、こんなの作ってたのか」

女「彼らしいね」

男「直近だと×日に面接受ける予定があったらしいな」

女「彼を見なくなったのも、ちょうどそのぐらいだったよね」

11: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:18:29.906 ID:zw1nex6J0
男「もし失踪と面接が関係あるとしたら……」

女「あるとしたら?」

男「例えば、面接で大失敗して、落ち込んでそのまま……」

女「まさかぁ! そんなにメンタル弱くないでしょ」

男「だけど、なんとなく面接と失踪が無関係だとは思えないんだよな」

女「≪就活計画≫見ても、他は合同説明会だとかで、そんな大したイベントはないしね」

男「よし……この面接受けた会社に行ってみるか!」

13: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:21:16.802 ID:zw1nex6J0
会社――

男「だから、こちらの会社で友達が面接受けたから、どういう内容かを知りたいんです!」

受付嬢「弊社の採用活動についてお教えすることはできません」

受付嬢「申し訳ありませんが、お引き取り下さい」



男「ちぇっ、門前払いかよ」

女「そりゃそうだよ……私ら学生なんて相手してくれるわけないって」

男「だけど匂う!」

女「え、ちゃんとお風呂入ったけど」

男「お前じゃないよ。この会社が怪しいんだ。なんとか調べる方法はないか……」

女「だったらストレートにこの会社のサイト覗いてみようよ」

15: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:24:22.123 ID:zw1nex6J0
女「お、出た出た」

男「どうだ?」

女「んー、近頃急速に業績を伸ばしてる優良企業みたいよ」

男「ホワイト企業ってやつか」

女「あと……採用もやってるね」

男「あいつもその情報見て、書類送って面接受けたんだろうな」

女「よし、私試しに受けてみる!」

男「え!?」

16: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:27:09.392 ID:zw1nex6J0
女「受けて、どんな面接だったか確認するよ」

男「それだったら俺も……」

女「だってあんた、エントリーシートもまだ書いてないんでしょ?」

男「まぁ、そうだけど」

女「私は何枚か書いて慣れたから、すぐ仕上げることできるし、とりあえず私が応募してみるよ」

男「そうか、頑張れよ」

女「書類で落とされないようにしないとね」

17: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:30:07.263 ID:zw1nex6J0
……

女「書類通ったよ!」

男「面接はいつだ?」

女「今度の水曜日!」

男「くれぐれも気をつけろよ。ものすごい圧迫面接だったりするかも」

女「大丈夫だってー」

男「あ、そうだ。これ持っとけ」

女「なにこれ?」

男「≪シューショ君≫っていう、俺手製の人形だ」

女「奇妙な人形だね……とりあえず持っておくよ」

18: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:33:10.983 ID:zw1nex6J0
会社――

女「本日はよろしくお願いします」

面接官「おかけ下さい」

女「失礼いたします」サッ

面接官「ではまず……志望動機をお願いします」

女「はい、御社は順調に業績を伸ばしており……」

面接官「……」

19: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:35:16.006 ID:zw1nex6J0
女「以上が私の成功体験です!」

面接官「なるほど。ところで……このままだと落とすけどどうする?」

女「!」

女「そうですね……。ぜひもう一度PRの機会を……」

面接官「それじゃ、落ちてもらうよ」

女「はい?」

パカッ

女「いやぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」ヒュゥゥゥゥゥ…

21: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:39:15.324 ID:zw1nex6J0
ボフッ…

女「いたたた……!」

女「ここは……?」

社員A「来たか」

社員B「新しい奴隷が」

女「へ、奴隷?」

社員A「荷物は全て預かる! もちろんスマホもな!」

女「な、なにすんの!」

社員B「さあ、こっちへ来い!」

22: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:42:12.538 ID:zw1nex6J0
女「なにここ……?」



学生A「ひい、ひい、ひい……」

学生B「えーと、このデータを入力……」

学生C「眠い……」ウト…

社員C「サボってんじゃねえぞ!」ビシッ!

学生C「は、はいぃ!」



女(学生達が鞭で打たれて働かされてる……?)

社員B「お前は向こうで働いてもらう」グイッ

女「いたっ! 髪を掴まないで!」

27: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:45:25.827 ID:zw1nex6J0
女(なんなのこれ? どうなってんの?)

就活生「君は……!」

女「あっ! こんなところにいたの!? ずっと捜してたんだよ!」

就活生「そうだったのか、すまない」

女「あのさ、全然状況がつかめてないんだけど、どういうことなの?」

就活生「僕は少し前、この会社で面接を受けた」

就活生「そしたらあの面接部屋からここに落とされて……この地下で働かされてるんだ」

女「私と全く一緒だ……」

29: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:48:25.975 ID:zw1nex6J0
就活生「この会社の連中は、面接に来た学生をここに落として」

就活生「あれこれと休憩無しで仕事をやらせてるんだ」

就活生「もちろん、給料なんか一円も出ないし、食事は朝と夜にパンとスープが出るだけ」

就活生「といってももう時間の感覚がないよ。奴らが来たら朝、帰ったら夜、と判断してるだけで」

女「ひどい……」

女(学生達をタダでこき使って、面倒なことは全てやらせてるってことか)

女(そりゃ業績も伸びるわけだわ……まさしく“社畜”!)

31: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:52:04.870 ID:zw1nex6J0
女「出る方法は?」

就活生「ない。出ようとすれば、すぐ社員達の鞭の餌食さ」

就活生「ほら、あんな風に」



社員D「なに逃げようとしてんだッ! クズがっ!」ビシッ! バシッ!

学生D「ずびばぜんっ! ゆるじでっ!」

ビシッ! バシッ! ベチッ! ビシッ! バチィッ!



就活生「僕らはここで、死ぬか廃人になるまで働かされるんだろうさ……」

女「いいえ、そんなことない」

就活生「え?」

32: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:55:16.480 ID:zw1nex6J0
女「幸い、この人形は没収されなかったわ」

就活生「変な人形だね」

女「あいつが怒るよ」クスッ

女(きっと……あいつが助けに来てくれる)

社員A「てめえらなにくっちゃべってんだ! 働けぇ!」

就活生「は、はいっ!」

女(信じてるよ……)

――――

――

33: 名無しさん 2021/06/08(火) 18:57:17.068 ID:zw1nex6J0
……

男「ふぅ~……なんとか書類が通ってよかった」

男「いよいよ今日は面接の日……」

男(就活生に続き、あいつまで行方不明になっちまったが……)

男(この会社にあいつらがいるのは間違いない)

男「待ってろ……今行くからな!」

35: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:01:46.320 ID:zw1nex6J0
コンコン…

面接官「どうぞ」

男「失礼いたします」

面接官「おかけ下さい」

男「失礼します」

面接官「では……志望動機をお話し下さい」

男「はい、私は……」

36: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:04:08.183 ID:zw1nex6J0
面接官「本日はお疲れ様でした」

男「ありがとうございました」

面接官「結果は後日、郵送で送付いたします」

男「……」

面接官「早く退室して下さい」

男「あいにく……そうはいかねえんだな」ズカズカ

面接官「えっ!?」

男「オラァッ!」バキッ!

面接官「がふっ!」

37: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:06:31.985 ID:zw1nex6J0
面接官「うう……」

男「面接中になんか起こったとすると……なにか仕掛けがあるはずだ」

男「あった! これだ!」ポチッ

パカッ

男「なるほど、このスイッチを押すと床が開いて、面接者は下に落ちるわけね」

男「じゃ……奴らを助けに行くか」

バッグを持って、穴に落ちる。

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

39: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:09:12.468 ID:zw1nex6J0
ボフッ…

男「つつ……結構な高さから落ちたな」

社員A「な、なんだ貴様!?」

社員B「面接官から信号は来てないぞ!」

男「すみません、どうしても友達に会いたくなって来ちゃいました」

社員A「なんだと!?」

男「お~い!」ダッ

社員B「コラ、待てェ!」

40: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:12:57.392 ID:zw1nex6J0
男「あ、いたいた!」

就活生「男君! 君も来たのか!」

女「来てくれたのね!」

男「お前に渡したシューショ君……」

女「あ、これ?」

男「そいつには発信器をつけててな。ずっと会社から反応があるから、会社に捕まったってことはすぐ分かった」

男「しかも、電波が弱くなってるから、地下にいることは推測できた」

男「だから俺も面接受けて、ここにたどり着いたってわけさ」

女「やるぅ!」

就活生「変な人形だなんていってごめん!」

男「へ、変かなぁ」

41: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:15:16.673 ID:zw1nex6J0
就活生「だけど……ここからどう逃げるつもりだい?」

男「決まってんだろ。みんなで社員どもをブッ飛ばすのさ」

就活生「残念だけど……それは無理だ」

学生A「……」ビクビク

学生B「……」オドオド

就活生「みんな、長い監禁生活ですっかり疲れて、怯えきってる」

女「しかも社員は全員鞭を持ってるの。戦っても勝てるかどうか……」

社員A「その通りだ!」ニヤッ

社員B「反逆者と侵入者はこの鞭で徹底的にいたぶる!」ビュンッビュンッ

42: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:18:31.149 ID:zw1nex6J0
男「……大丈夫だ」

女「え?」

男「俺が持ってきたこのバッグにはな……」パカッ

女「これは……!」

就活生「スタンガンにエアガン、ヌンチャク、トンファー、十手……他にもたくさん」

男「たっぷり武器が入ってるんだ!」

男「後は……みんな次第だ」

44: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:21:11.362 ID:zw1nex6J0
男「みんなァ!」

ザワッ…

男「俺はお前たちを救出にやってきた! 武器もここにある!」

男「だが、出られるかどうかはお前たち次第だ!」

男「みんなはこんな地下労働させられるために、大学入って勉強してきたわけじゃないだろう!?」

男「自分の未来のために、今ここで戦うんだ!」

男「自由を勝ち取るんだ!!!」

「……」

45: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:24:22.841 ID:zw1nex6J0
学生A「……やるよ!」

学生B「俺も戦う!」

学生C「早く外に出て、ちゃんとしたご飯食べたい!」

男「よし、武器を取れ!」

女「私はヌンチャク!」

就活生「僕はトンファーにしようかな」

男「んじゃ、俺は十手だ!」

社員A「! こ、こいつら……!」

社員B「学生の分際で我々社会人に逆らう気か!」

男「うるせえ、お前らのどこが社会人だ! やってることは完全に反社じゃねえか!」

46: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:28:05.749 ID:zw1nex6J0
男「みんな、行くぞォーっ!!!」

女「うん!」

就活生「オッケー!」ジャキンッ

オーッ!!!

ドドドドドドド…

社員A「うわっ、まずい! 全員闘志むき出しだ!」

社員B「ひいいいっ!」

社員C「応援を……!」



武器と勇気を得て、怒りに燃え上がる学生達を止める術は会社側にはなく――

地下は瞬く間に学生達によって制圧された。

47: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:31:08.187 ID:zw1nex6J0
男「みんな、外だぞ!」

女「まぶしい!」

就活生「久しぶりの太陽だ……!」

ワーイ! やったやったーっ! 出られたぞーっ!



彼らが明るい場所に出られたことで、全ての悪事は明るみになった。

48: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:35:22.375 ID:zw1nex6J0
警察署――

署長「君たち、お手柄だったよ」

署長「あの会社は学生相手の面接を開いては、優れた学生を地下に落とし、奴隷としていたらしい」

署長「全ては人件費削減や業績アップのために……」

署長「君たちがいなければ、今日もまた新たな犠牲者が出ていたかもしれない」

署長「これから頑張って、就職活動を続けてくれたまえ」

就活生「はいっ!」

女「はい!」

男「……」

51: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:38:32.179 ID:zw1nex6J0
女「大変だったね……長い間閉じ込められちゃって」

就活生「いや……おかげで貴重な体験ができたよ」

就活生「この体験は、きっと他の企業を受ける時に格好のネタになる!」

女「さすが……めげないね」

男「……」

女「さっきからどうしたの? ずっとうつむいちゃってさ」

就活生「そうだよ。君はヒーローじゃないか!」

男「だって……」

53: 名無しさん 2021/06/08(火) 19:41:32.934 ID:zw1nex6J0
男「俺、あの会社の面接受けて……普通に退室を促されたんだ。床の下に落とされなかったんだ」

女「あ……」

男「それってつまり、あの会社的には俺は優秀じゃなかったってことだろ? 面接は落ちたってことだろ?」

男「面接自体は本気でやったのに……それがショックでさ……」

女「ま、まぁ……あまり気を落とさないでよ」







おわり