1: 名無しさん 2021/09/15(水) 19:54:46.534 ID:NlYzEOQf0
枚方近郊のとある村はずれ。

夜分遅く、村の親分である猟師の亀右衛門のところに来た若い衆が二人。

若い衆の言うには「馬を買う」と言って借り受けた村の金十両を女郎屋で使い込んでしまい、もう大坂に夜逃げするしかないからいとまごいに来た、とのこと。

引用元: ・【悲報】「　ふ　た　な　り　」

3: 名無しさん 2021/09/15(水) 19:55:15.874 ID:NlYzEOQf0
しかしその実、亀右衛門に金策をさせる腹づもりであった。

まんまとその手に乗せられ、「十両ぐらい何でもないこっちゃ。隣村から借りてきたる！」、と言ってしまった亀右衛門。

しかし隣村に行くには昼でも恐ろしい「栴檀の森」を通らねばならない。

5: 名無しさん 2021/09/15(水) 19:56:25.230 ID:NlYzEOQf0
若い衆の前では「怖いもんは無い！」といきがった亀右衛門、実は大の怖がり。

怖がりながら「栴檀の森」を通っていると、化け物が現れた！と思いきや、若い娘であった。

聞くと、「男と道ならぬ仲になり、一度はままよ二度三度、ついにお腹に子を宿してしまった。駆け落ちをすることになったが、男が直前になって自分を捨てて逃げてしまい、この上は死ぬより他ないから、遺書として書置きを書いて、死後に誰か回向をしてくれる人を待っていた」とのこと。

6: 名無しさん 2021/09/15(水) 19:57:41.240 ID:NlYzEOQf0
当初は死のうとする娘を止めた亀右衛門であったが、娘が「親の目を盗んで十両の金を持って来ている」と聞いて目の色が変わる。

「ああ。そんなら死に！」

「へ！」

「死んだらええねん！もう、帰るとこもないねんし、さっさと死んだらええ。わいが手伝おたるさかい」

「おおきにありがとさんでございます」

8: 名無しさん 2021/09/15(水) 19:59:28.155 ID:NlYzEOQf0
亀右衛門は「十両の金な。お前はんの回向代として預かっとくわ」と旨いことを言って十両を強奪し、死ぬのをためらう娘に「死に方の手本を見せたる」と言って良い枝振りの木を探し、紐をかけ、首をかけ、足元の石を蹴り…亀右衛門は自殺してしまった。

9: 名無しさん 2021/09/15(水) 20:01:35.567 ID:NlYzEOQf0
その様子を見た娘、「あら。なんや。この親爺。……死んでもたわ。まあ、えらい顔やこと。わたいも首吊ったらあないになるのかしらん。いややなあ……」と死ぬ気をなくした。

それどころか、「そういうたら、こいつ、死んだらあかん。死んで花見が咲くもんやあらへんし。て、さんざん言うてたくせに、人が金持ってんのん聞いたら、とたんにころっと言うてんの替えやがって……ようし、この金取り戻して、どっか逃げてこましたろ」

と気が変わり、金子を取り返し代わりに持っていた書置きを亀右衛門の懐に入れ、いずこへと消えてしまった。

10: 名無しさん 2021/09/15(水) 20:02:40.926 ID:NlYzEOQf0
帰ってこないのを心配した若い者が森に来て亀右衛門の死体を見つけ村中大騒ぎ、息子はさっそく役人の取調べを受ける。

「さては亀右衛門、金策に失敗したのをはかなんで…」しかし亀右衛門の懐から書置きが見つかったから話がややこしくなった。

「『一度はままよ二度三度、重ねてみれば情けなや。ついにお腹に子を宿し…』な、何じゃこれは」。見ると確かにこの親爺、腹が出ている。しかし股間には立派な逸物が。

11: 名無しさん 2021/09/15(水) 20:03:48.148 ID:NlYzEOQf0
役人は息子に問う。「これ、亀右衛門は男子か？女子か？」

「はい、猟師（両子）にございます」

「こりゃあこの親爺はふたなりか？」

「いいえ。宵に出たなりでございます」

12: 名無しさん 2021/09/15(水) 20:03:54.186 ID:NlYzEOQf0
おわり