1: 名無しさん 2022/12/30(金) 00:59:21.685 ID:wg/JUZ2j0
リョウ「シンプルな題名にしてきたね」

虹夏「ぼっちちゃん。また目の下にクマが…」

喜多「大丈夫?後藤さん」

ぼっち「す、すみません、こ、今回も詞を書いてたら寝るのを忘れてしまって…」

虹夏「ぼっちちゃん、今回の歌詞もすごくいいよ。歌詞書くのうまいよね、
こんな言葉、わたしのボキャブラリーからはでないよ」

喜多「私もです、あ、わたし、ここのフレーズ好きですよ」

ぼっち「あ、あありがとうございます…ふへへへ」

リョウ「……」

ぼっち「………、あ、あの…リョウさんはどうですか?」

リョウ「…、ああ。今回も全体に歌詞が暗めだね。けど、今回の歌詞も
少ないかもしれないけど誰かに深く刺さるんじゃないかな」

ぼっち「そ、そうですか…ありがとうございます、うへへ」

リョウ「帰ってからじっくり見てみる。この歌詞に合う
曲を考えてみるよ」

虹夏「たのんだよーリョウ」

引用元: ・ぼっち「あ、あのみなさん、新曲の歌詞…、描いてきました」リョウ「『あのバンド』…?」

2: 名無しさん 2022/12/30(金) 00:59:48.608 ID:wg/JUZ2j0
リョウの家


リョウ「(ぼっちはホントに歌詞書くのうまいな…)」

リョウ「(前回の曲もぼっちの歌詞みてたら、結構すぐ曲が浮かんで
きたし、今回もすぐできそう…、ぼっちと私、愛称いいのかもな)」

リョウ「それにしても、こんな尖った歌詞、あのぼっちが書いたなんて
信じられない、ここのフレーズなんてすごく…、ん?あれ…なんだろう」


リョウ「…この歌詞みてたら、ちょっとだけ昔のこと思い出しちゃったな」

3: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:00:18.064 ID:wg/JUZ2j0
……

とあるライブハウス

バンドメンバー1「バンドをやめるって、本気で言ってるのリョウ!?」

リョウ「うん、ごめん」

バンドメンバー2「なんでよ、中学のころからずっと一緒にやってきたじゃん、いまさらなんで」

リョウ「…もう、わたしはこういう曲作りたくないし、演奏もしたくない。
こういう売れ線狙った曲じゃなくて…、わたしはこのバンドのもっと昔の曲が好きだったんだ」

バンドメンバー3「何それ、昔の曲って…、そんな曲でライブしてたってこれまで
10人も集まらなかったのに…、今の路線に変えてからお客さんもものすごく増えてきたじゃない」

バンドメンバー1「そうだよ、もうライブハウスのノルマなんて余裕だし、このまま行ったらレーベルに声かける
可能性だってあるかもなのにっ」

バンドメンバー2「それに今の路線のほうがお客さんだってあんなに喜んでくれてる、前のバンドの路線じゃこんなこと
全然」

リョウ「けどっ…、個性はなくなった!これはただ人気バンドの曲をまねてるだけで、このバンドの個性なんて何もないっ、
個性捨てたら死んでるのと一緒だよっ」


バンドメンバー1「…はあ、もういいよ。リョウは変人だもんね。自分でそう言ってるし、私たちとは音楽的な才能も
感性も全然レベルが違うから仕方ないね」

バンドメンバー2「そうだね、わたしらは、リョウみたいに楽器も歌もうまくないし、お客さんに寄り添わなきゃ、
 うえになんていけないよ」

バンドメンバー3「あーあ、そっか、こういうのが、『音楽性の違い』
ってやつなんだ。これまでありがとう。じゃあねリョウ」


リョウ「…」

4: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:00:52.373 ID:wg/JUZ2j0
駅の踏切


リョウ「(これで…いいんだ。わたしは、自分のやりたい音楽をやっていきたい)」

  
リョウ「(まあ、言う通り変人だしね…、理解してくれる人なんてそういない…)」

リョウ「……」

リョウ「(…ただ、それでも…、長く付き合ってきたみんなの気持ちに、これっぽっちも
寄り添えないこと、一体になれないことに負い目だって、ずっと感じてきた…)」


リョウ「(あれ、それならやっぱり、変人のわたしが少しは寄り添うべきだった…?)」

リョウ「わたしの…選択…、間違ったのかな…?」

リョウ「…」


……

虹夏『あれーリョウから連絡あるなんて珍しいね』

リョウ「そうだっけ?なんか、急に誰かと話してみたくなって、…ぐす」

虹夏『ええ、なにそれ、らしくないじゃん。あれ、リョウひょっとして…、ううんなんでもない』

虹夏『リョウ、ウチ来る?久しぶりに一緒にごはんたべよーよ』

リョウ「………、行く」

5: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:01:32.186 ID:wg/JUZ2j0
………


………


リョウ「『目を開ける孤独の称号、受け止める孤高の衝動…』」

リョウ「ここ良いな…、かっこいいね、うん。ほかのフレーズも…
なんとなくインスピレーションがわいてきたな。郁代とぼっちもいるし、コードはシンプル目に…
けどエネルギッシュな曲調にしよう。それでいて…」

リョウ「……、あれ…?」

リョウ「なんでわたし、泣いてるんだろ…?」

リョウ「ああ、そうか…なんだ、刺さってたのか」


『誰かに深く刺さるんじゃないかな』



リョウ「はは、誰か、ってなんだよ…、ぼっちの歌詞に刺さってるのわたしじゃん…ぐすっ…」

6: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:01:57.502 ID:wg/JUZ2j0
……

リョウ「そういえばわたし、以前ぼっちに前のバンドでの話、少し話したことあったっけ…」

リョウ「……、」


……

翌日 スターリー

リョウ「『あのバンド』、曲つくってきたよ」

虹夏「うおー、今回はすごく早かったねーリョウ。それにすごい
かっこいい曲じゃん」

喜多「それに歌いやすくて弾きやすそうで、わたし向きかも」

ぼっち「(リョウさんすごい…、わたしのつくった歌詞のイメージを
組んだメロディーはめ込んできてくれてる…)」

リョウ「ぼっち」

ぼっち「え?」

7: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:02:15.364 ID:wg/JUZ2j0
リョウ「その、今さらだけど、この曲の歌詞ってどういうことイメージしてかいたの?」

ぼっち「えっ!?こ、これはそのっ…、き、聴いてると胃酸があがってくるような
青春コンプレックスを刺激する曲ばかり書くバンドに対する
思いをぶちまけてみたというか…ふへへ」

虹夏「お、おおう…うすうす感づいていたけど今回もぼっちちゃんの
こころの闇に触れた歌詞だったんだやっぱり…」

喜多「どうしよう…、全然理解できない…、わたし後藤さんの気持ち
うまく代弁して歌えるかしら…」

ぼっち「あとは…その…、………、いえ…なんでも」

リョウ「……、そっか」

8: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:02:29.591 ID:wg/JUZ2j0
リョウ「ぼっちはやっぱり、歌詞うまいね、褒めて遣わす」ナデナデ

ぼっち「でへへへ…ほ、ほんとですか」

喜多「んなっ…」

リョウ「うん。ありがとね。おかげでようやく完全に振り切れた気がする」

ぼっち「え…?」

喜多「ちょ、せ、先輩!?最近、後藤さんばかりほめ過ぎじゃないですか!
わ、わたしも頑張ってるんですよっ」

リョウ「うん、郁代もすごいすごい」

喜多「ほ、ほんとですか、それなら私にもなでなでをくださいっ」

9: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:02:48.506 ID:wg/JUZ2j0
リョウ「(そうだ。わたしは、孤独の称号をもち、孤高の衝動を受け止めて生きる変人。
…けど、変人に負けないばらばらな個性をもったメンバーが、ここにいる)」

リョウ「(陰キャラ少女、リア充っ子、元気なおせっかい天使、ばらばらの個性をもった
メンバーがあつまって、それがバンドの色になるんだ、そうでなきゃおもしろくない)」

リョウ「さあ、それじゃさっそくこの曲をあわせてみようか」

ぼっち「あ、あの…その、その前にリョウさん」

リョウ「え?」

10: 名無しさん 2022/12/30(金) 01:03:10.580 ID:wg/JUZ2j0
ぼっち「こ、こ、この間貸した喫茶店の食事代、そろそろ返してほしいんですけど…」

リョウ「……」

ぼっち「……」

リョウ「よし、さっそくこの曲あわせてみよっか」

ぼっち「え、あ、あの…そのりょ、リョウさん…、ガン無視、されるとその」

リョウ「ふー、あのね。ぼっち」

リョウ「……、ごめんなさい、来月まで待ってください」

ぼっち「は、はい…」


おわり