クロスオーバー

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    <十二月二十四日、夜。総武高校奉仕部室> 

    八幡「……終わった、な」 

    雪乃「……ええ。お疲れ様」 

    八幡「言う相手を間違えてるんじゃないのか。双葉にかけてやれよ」 

    雪乃「いいえ。間違えていないわ。むしろ間違えているのはあなたの方」 

    雪乃「……だって、まだ何も終わっていないでしょう?」 

    八幡「……ああ。そうだな」 

    八幡(シールの貼ってある無名の表札。うず高く後ろに積まれた机。何も書かれることのない大きな黒板。閉め切った窓から差す光。主を失ったはずの部屋は、寡黙にこの時を待ち続けていたかのように、変わらないままでいてくれた) 


    雪乃「……四年ぶり、ね」 

    八幡「……変わってねぇよな」 

    雪乃「ええ。……変わったのは、制服と教科書くらい」 

    雪乃「……あの日から。四年前のクリスマスから。……私たちの時間は、止まったままだものね」 

    八幡「……ああ」 

    雪乃「けれど……もう、終わり。溶けない雪は、ないのだから」 

    八幡「……」 

    雪乃「……座らない? もう、紅茶はないけれど」 

    八幡(俺は頷いて、高校時代のように長机の端に置いてある椅子に座った。雪ノ下もまた、記憶の位置そのままに対面に座る。後ろの窓からは、鈍色の雲が立ち込めているせいで月が見えない。外から洩れる僅かな光が、記憶と違う彼女の髪と表情を照らす。雪ノ下の目線は、隣にある空席の椅子に向けられていた) 


    八幡(そこに彼女は、もういない) 
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    <翌日夜、クールプロダクション事務所> 

    絵里「凛ちゃん、もう帰りなさい? 最近は仕事も増えてきて遅くなることも多いんだから、帰れる日はささっと帰った方がいいわよ」 

    凛「うん……もうちょっとだけ、ダメかな?」 

    絵里「うーん……じゃあ、あと三十分だけね」 

    凛「うん、ありがと」 

    ~♪ 

    絵里「……ベース、上手になったのね」 

    凛「うーん、そうかな。真姫さんが作るベースラインってすごくカッコよくて、それを真似してるだけなんだけど」 

    絵里「その曲、私と真姫と海未の曲なのよ。ソロが聞こえてきたから、懐かしくなっちゃった」 

    凛「そうだったんだ。私、一回生で聞きたいなぁ。絵里さん、またステージ上がらない?」 

    絵里「えぇー、嫌よ。もう体力が持たないわ。よっぽどのことがない限りステージに上がるつもりはないわね」 

    凛「金ならある」 

    絵里「おあいにくさま、お金じゃないのよ。というかあなた、最初の提案がお金ってもう完全に毒されてるわね……」 

    凛「あははっ、そうかな」 

    絵里「嬉しそうねぇ」 

    凛「……そうだね、嫌じゃないかな。あーあ、絵里さんがもう一度舞台に立ってくれれば会社に良し業界に良しファンに良しお前に良し俺に良しなのに」 

    絵里「ならディズニーの替え歌でも歌ってみる?」 

    凛「上に干されてモノリスになっちゃうよ……」 

    絵里「……あら、もうこんな時間。ほら、もうタイムオーバーよ。とっととベースしまう」 

    凛「タイムオーバーって実は和製英語らしいんだよね」 

    絵里「……時間稼いでも今日彼は来ないわよ。多分直帰」 

    凛「……バレてたか。あーあ、タイムアップだね」 

    絵里「何か用事だった?」 

    凛「……うん。でもまあ、よく考えたら次に会う時でいいかな。絵里さんももう帰る?」 

    絵里「私はもう少しキリのいいところまで仕事して帰るわ。気を付けてね」 

    凛「わかった。じゃ、またね」 

    ――ばたん。 


    絵里「はあ……。まるで忠犬ね。ああも見せつけられてしまうとね……」 

    絵里「……あの子にはバレてない、わよね?」 

    八幡「何がです?」 

    絵里「きゃあっ!?!? ノノノノックぐらいしなさいよっ!!!」 

    八幡「すすすすいません。いや、この時間にいると思わなかったもんだから……」 

    絵里「私がもし脱いでたらどうするのよっ!!」 

    八幡「えっ、事務所で脱ぐんですか……?」 

    絵里「もののたとえよ! なんで私が引かれてるの!?」 

    八幡「矢吹の加護は受けてないんでありえないっすよ。そうなったら眼福ですが」 

    絵里「……へんたい」 

    八幡「この程度で変態呼ばわりされても困るんですが……」 

    絵里「えっ、更にディープなの……? 膝裏フェチとか……? 流石に対応できない……」 

    八幡「何で一番最初に出てくる候補が膝裏なんだよ……」 
    【比企谷八幡「雪と」 渋谷凛「賢者の」 絢瀬絵里「贈り物」3】の続きを読む

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    比企谷八幡「雪と」 渋谷凛「賢者の」 絢瀬絵里「贈り物」の続きです。



    166: ◆I0QEgHZMnU 2015/07/07(火) 12:53:20.07 ID:NSPCnO+e0
    <ライブ二週間前、昼。346プロタレント養成所レッスン室201> 

    『――にこっ☆』 

    ベテトレ「よし。それまで」 

    凛「……ふう」 

    卯月「やった! やりましたっ、ノーミスですっ!」 

    未央「あれれ? 今日、あんまり疲れてない?」 

    にこ「基礎体力ついてきたんじゃない? 凛のレッスンって体力つくから」 

    星空凛「にこちゃんも久しぶりにやってみるー?」 

    にこ「本番明日だから遠慮しとくわ。どう考えても調整向きじゃないわよあの内容……」 

    星空凛「えー、つまんなーい」 


    八幡「おお、今のは良かったんじゃないか」 

    雪乃「ひとまず基準点はクリア、と言ったところかしら」 

    八幡「厳しいな」 

    雪乃「そうかしら。現状だと矢澤さんだけに視線が集中してしまう気がするわ」 

    八幡「あくまでメインは矢澤だろ?」 

    雪乃「否定はしないけれど、わざわざバックダンサーを入れるのよ。一人でやっているのと変わらないのならやる意味はないわ。少なくともこの数曲は個としてより群として完成しなければ駄目よ」 

    ベテトレ「……本当に346の人間は優秀だな。私から言うことが無くなってしまったよ」 

    雪乃「いえ、そんな。出過ぎたことを申しました」 

    ベテトレ「何を言うんだ、建設的な意見とは誰が口にしてもいいものなんだよ。いやしかし、慧眼だね。雪ノ下さんはまだ現場に出て数年なのだろう? ……才能の世界か。社の方針通りだな」 

    八幡「『才能が輝く世界を』、ねぇ」 

    雪乃「胡散臭い方針よね、相変わらず」 

    八幡「全くだ」スタスタ 

    雪乃「どこに行くの?」 

    八幡「休憩がてら飯頼んでくるよ。矢澤に至ってはすぐに移動だし、小泉のおにぎりでも頼んでくる」 

    雪乃「あ、なら一つだけ。道中で双葉さんを見たら回収してきてくれるかしら」 

    八幡「は? あいつ、今日いんの?」 

    雪乃「午後からだから引っ張ってきたのに気付けばいなくなっていたのよ……」 

    八幡「遠い目すんなよ……わかったわかった、見つけたらな」 

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    2: ◆I0QEgHZMnU 2015/07/07(火) 05:40:36.90 ID:NSPCnO+e0
    <都内某所、夜。十二月二十五日。比企谷八幡、二十二歳>

    八幡(吐く息さえ凍りそうな、寒い夜だった)


    八幡(大学の六号館から出ると、外との温度の違いに思わず身震いしてしまう。門をくぐって外に出ると、駅まで続く大通りはクリスマスらしく輝かしいイルミネーションで彩られていた)

    八幡「……そうか。今日は、クリスマスだったな」

    八幡(人と関わることがないと、どうしても日にちの感覚は狂いがちだ。もっとも日付など今の俺にはどうでもいいが。たとえ三百六十五日のうちのどれかだとしても、生きるのが辛いことには変わりない)

    八幡(そう。たとえ誕生日だって俺にとってはただの一日に変わりない。盆。正月。バレンタインデー。何が来ようと揺らがない。……ただ)

    八幡(この日、だけは。クリスマスだけは、別だった)

    八幡「…………あ」

    八幡(鈍色の空は、忘れるなとばかりに無慈悲な白雪を降らせてきた)

    八幡「……雪」

    八幡「………………また、この日が来た、のか」


    結衣『……ごめんね。ごめんね、ヒッキー。あたし、悪い子だから……』
    雪乃『……じゃあね。……さようなら。さようなら、比企谷くん……』


    八幡「……雪は」


    八幡「雪は、嫌いだ」





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    前作
    俺「食戟のソーマ?ボコボコニしてやんよ」2

    の続きです。


    30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/05(日) 21:38:37.52 ID:i36af22z0
    俺「えなりはそれでいいのか?」

    緋沙子「へ?」

    俺「俺さ……よくよく考えてみたんだ」

    緋沙子「何を、ですか?」

    俺「えなりならこんな時どうするかってな」

    俺「婚約者を裏切って他の女を抱くのか」

    俺「それとも愛した女の為に生きるのか」

    俺「えなり……お前はどっちを選ぶ」



    えなり「そうだね女将さん、もしボクがそんな質問をされたら」

    えなり「>>38っていうかな」


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