前前前話比企谷八幡「雪と」 渋谷凛「賢者の」 絢瀬絵里「贈り物」
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前話比企谷八幡「雪と」 渋谷凛「賢者の」 絢瀬絵里「贈り物」3
466: ◆I0QEgHZMnU 2015/07/08(水) 23:25:46.85 ID:BqstzqO00
<十二月二十四日、夜。総武高校奉仕部室>
八幡「……終わった、な」
雪乃「……ええ。お疲れ様」
八幡「言う相手を間違えてるんじゃないのか。双葉にかけてやれよ」
雪乃「いいえ。間違えていないわ。むしろ間違えているのはあなたの方」
雪乃「……だって、まだ何も終わっていないでしょう?」
八幡「……ああ。そうだな」
八幡(シールの貼ってある無名の表札。うず高く後ろに積まれた机。何も書かれることのない大きな黒板。閉め切った窓から差す光。主を失ったはずの部屋は、寡黙にこの時を待ち続けていたかのように、変わらないままでいてくれた)
雪乃「……四年ぶり、ね」
八幡「……変わってねぇよな」
雪乃「ええ。……変わったのは、制服と教科書くらい」
雪乃「……あの日から。四年前のクリスマスから。……私たちの時間は、止まったままだものね」
八幡「……ああ」
雪乃「けれど……もう、終わり。溶けない雪は、ないのだから」
八幡「……」
雪乃「……座らない? もう、紅茶はないけれど」
八幡(俺は頷いて、高校時代のように長机の端に置いてある椅子に座った。雪ノ下もまた、記憶の位置そのままに対面に座る。後ろの窓からは、鈍色の雲が立ち込めているせいで月が見えない。外から洩れる僅かな光が、記憶と違う彼女の髪と表情を照らす。雪ノ下の目線は、隣にある空席の椅子に向けられていた)
八幡(そこに彼女は、もういない)
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八幡「……終わった、な」
雪乃「……ええ。お疲れ様」
八幡「言う相手を間違えてるんじゃないのか。双葉にかけてやれよ」
雪乃「いいえ。間違えていないわ。むしろ間違えているのはあなたの方」
雪乃「……だって、まだ何も終わっていないでしょう?」
八幡「……ああ。そうだな」
八幡(シールの貼ってある無名の表札。うず高く後ろに積まれた机。何も書かれることのない大きな黒板。閉め切った窓から差す光。主を失ったはずの部屋は、寡黙にこの時を待ち続けていたかのように、変わらないままでいてくれた)
雪乃「……四年ぶり、ね」
八幡「……変わってねぇよな」
雪乃「ええ。……変わったのは、制服と教科書くらい」
雪乃「……あの日から。四年前のクリスマスから。……私たちの時間は、止まったままだものね」
八幡「……ああ」
雪乃「けれど……もう、終わり。溶けない雪は、ないのだから」
八幡「……」
雪乃「……座らない? もう、紅茶はないけれど」
八幡(俺は頷いて、高校時代のように長机の端に置いてある椅子に座った。雪ノ下もまた、記憶の位置そのままに対面に座る。後ろの窓からは、鈍色の雲が立ち込めているせいで月が見えない。外から洩れる僅かな光が、記憶と違う彼女の髪と表情を照らす。雪ノ下の目線は、隣にある空席の椅子に向けられていた)
八幡(そこに彼女は、もういない)