126: ◆tdNJrUZxQg 2019/11/07(木) 21:02:28.70 ID:NOmScrmB0
曜「ホントだよ!」
鞠莉「……そっか、それならよかった……」
鞠莉ちゃんは心底、ホッとしたような声で言う。
鞠莉「わたし……曜のこと、からかい過ぎちゃったかもって……」
曜「あはは……あれくらいのことで怒ったりしないって」
まあ、からかいすぎだとは思うけど……。
とはいえ、あれが鞠莉ちゃんなりのコミュニケーションくらいに捉えているつもりだ。
鞠莉「曜……」
曜「なにかな……?」
鞠莉「……近くに行って良い……?」
曜「もちろん」
私は自分の隣をぽんぽんと叩く。
鞠莉「うん……♪」
すると、鞠莉ちゃんはおずおずと私のすぐ隣に移動してきて──そっと手を重ねてきた。
曜「鞠莉ちゃん……?」
鞠莉「……わたしね、どうすれば曜の恋人らしく振舞えるか、ずっと考えてたの」
曜「……」
鞠莉「恋人って、どういう距離感なんだろうって……。一緒にご飯を食べたり、膝枕してあげたり……一緒にお風呂も入るのかなって」
今日一日、やたらと鞠莉ちゃんのスキンシップが激しかった理由がやっとわかってきた。
鞠莉ちゃんなりに、恋人同士のお泊りを再現しようとしていたんだ。
鞠莉「わたしが、曜の心の隙間を埋めてあげるんだって……息巻いて……でも、結局よくわからなくって……」
曜「鞠莉ちゃん……」
考えてみれば、鞠莉ちゃんも恋人が出来たことはないと言っていた。なら、恋人同士の距離感だって、鞠莉ちゃんも手探りのはずだ。
私が恋人の振りだということに拘って、変な一線を引いていたせいで、実は鞠莉ちゃんも悩んでいたんじゃないだろうか。
鞠莉「ねぇ、曜……どうすれば、わたし、曜の恋人らしく振舞える……?」
鞠莉ちゃんは、振りでもホンキでやってくれていたんだと改めて認識する。
それも、全て──私の失恋の傷を癒すために……。だけど……。
引用元: ・曜「神隠しの噂」
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